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特表2024-508923眼科用デバイスの製造のためのモールド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】眼科用デバイスの製造のためのモールド
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
G02C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553667
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2022054644
(87)【国際公開番号】W WO2022184542
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/157,130
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522110555
【氏名又は名称】ボシュ + ロム アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、アルヴィンド エム.
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BC07
(57)【要約】
方法は、眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、眼科用デバイスモールド形成材料を第1の不活性ガス環境での乾燥条件に供することと、実質的に乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形することと、第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を、第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品中の全ての酸素を実質的に除去するのに十分な期間、第2の不活性ガス環境に供することと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
(a)眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、前記眼科用デバイスモールド形成材料を第1の不活性ガス環境での乾燥条件に供することと、
(b)前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形することと、
(c)前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品を、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品中の全ての酸素を実質的に除去するのに十分な期間、第2の不活性ガス環境に供することと、を含む、方法。
【請求項2】
(d)所定量の眼科用デバイス形成モノマー混合物を前記第1の眼科用デバイスモールド部品中に配置することと、
(e)前記第1の眼科用デバイスモールド部品と、前記第2の眼科用デバイスモールド部品と、その間の前記眼科用デバイス形成モノマー混合物とを組み立てることと、
(f)前記眼科用デバイス形成モノマー混合物を重合して、眼科用デバイスを形成することと、
(g)前記第1の眼科用デバイスモールド部品を前記第2の眼科用デバイスモールド部品から分解し、前記第1の眼科用デバイスモールド部品又は前記第2の眼科用デバイスモールド部品のいずれかから前記眼科用デバイスを切り離すことと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の眼科用デバイスモールド部品が、後側眼科用デバイス表面を提供するように整形された成形表面を有する後側モールドセクションを含み、前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、前側眼科用デバイス表面を提供するように整形された成形表面を有する前側モールドセクションを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記眼科用デバイスモールド形成材料を少なくとも約60℃の温度に加熱することを更に含む、請求項1~3に記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料が、前記第1及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形するステップ(b)まで、前記第1の不活性ガス環境に維持される、請求項1~4に記載の方法。
【請求項6】
前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品を成形することが、前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料を射出成形することを含む、請求項1~5に記載の方法。
【請求項7】
前記眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、前記眼科用デバイスモールド形成材料を前記第1の不活性ガス環境での乾燥条件に供する前に、前記眼科用デバイスモールド形成材料を高温に加熱することを更に含む、請求項1~6に記載の方法。
【請求項8】
前記眼科用デバイスモールド形成材料が、ポリオレフィン又は環状ブロックコポリマーのうちの1つである、請求項1~7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記環状ブロックコポリマーが、完全水素化スチレン共役ジエン環状ブロックコポリマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の前記眼科用デバイスモールド形成材料が、ポリマーフィルム、メルトペレット、及びホットメルトのうちの1つを含む、請求項1~10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)が、前記眼科用デバイスモールド形成材料を真空乾燥させることを含む、請求項1~11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約30分~約2時間の期間、前記第1の不活性ガス環境に供される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の不活性ガス環境が、窒素ガス環境である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)の後、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約1重量%未満の酸素含有量を有する、請求項1~14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(c)の後、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約0.5重量%未満の酸素含有量を有する、請求項1~14に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(c)の後、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約0.01重量%未満の酸素含有量を有する、請求項1~14に記載の方法。
【請求項18】
システムであって、
メモリに結合されたプロセッサを備える少なくとも1つの処理デバイスを備え、
前記少なくとも1つの処理デバイスが、
(a)眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、前記眼科用デバイスモールド形成材料を第1の不活性ガス環境での乾燥条件に供するステップと、
(b)前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形するステップと、
(c)前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品を、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品中の全ての酸素を実質的に除去するのに十分な期間、第2の不活性ガス環境に供するステップと、を実施するように構成される、システム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの処理デバイスが、
(d)所定量の眼科用デバイス形成モノマー混合物を前記第1の眼科用デバイスモールド部品中に導入する眼科用デバイスを形成するステップと、
(e)前記第1の眼科用デバイスモールド部品と、前記第2の眼科用デバイスモールド部品と、その間の前記眼科用デバイス形成モノマー混合物とを組み立てるステップと、
(f)前記眼科用デバイス形成モノマー混合物を重合して、眼科用デバイスを形成するステップと、
(g)前記第1の眼科用デバイスモールド部品を前記第2の眼科用デバイスモールド部品から分解し、前記第1の眼科用デバイスモールド部品又は前記第2の眼科用デバイスモールド部品のいずれかから前記眼科用デバイスを切り離すステップと、を実施するように更に構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品を成形することが、前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料を射出成形することを含む、請求項18又は19に記載のシステム。
【請求項21】
前記処理デバイスが、ステップ(a)の前に、前記眼科用デバイスモールド形成材料を高温に加熱するステップを実施するように更に構成される、請求項18~20に記載のシステム。
【請求項22】
ステップ(a)が、前記眼科用デバイスモールド形成材料を真空乾燥させることを含む、請求項18~21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約30分~約2時間の期間、前記第1の不活性ガス環境に供される、請求項18~22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の不活性ガス環境が、窒素ガス環境である、請求項18~23に記載のシステム。
【請求項25】
前記処理デバイスが、前記眼科用デバイスモールド形成材料を少なくとも約60℃の温度に加熱する前記ステップを実施するように更に構成される、請求項18~24に記載のシステム。
【請求項26】
前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料が、前記第1及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形するステップ(b)まで、前記第1の不活性ガス環境に維持される、請求項18~25に記載のシステム。
【請求項27】
ステップ(c)の後、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約1重量%未満の酸素含有量を有する、請求項18~26に記載のシステム。
【請求項28】
ステップ(c)の後、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約0.5重量%未満の酸素含有量を有する、請求項18~26に記載のシステム。
【請求項29】
ステップ(c)の後、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約0.01重量%未満の酸素含有量を有する、請求項18~26に記載のシステム。
【請求項30】
製造物品であって、1つ以上のソフトウェアプログラムの実行可能コードをその中に符号化したプロセッサ可読記憶媒体を備え、1つ以上の処理デバイスによって実行されるとき、前記1つ以上のソフトウェアプログラムが、(a)眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、前記眼科用デバイスモールド形成材料を第1の不活性ガス環境での乾燥条件に供するステップと、(b)前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形するステップと、(c)前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品を、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品中の全ての酸素を実質的に除去するのに十分な期間、第2の不活性ガス環境に供するステップと、を実施する、製造物品。
【請求項31】
前記1つ以上の処理デバイスによって実行されるとき、前記1つ以上のソフトウェアプログラムが、
(d)所定量の眼科用デバイス形成モノマー混合物を前記第1の眼科用デバイスモールド部品中に導入する眼科用デバイスを形成するステップと、
(e)前記第1の眼科用デバイスモールド部品と、前記第2の眼科用デバイスモールド部品と、その間の前記眼科用デバイス形成モノマー混合物とを組み立てるステップと、
(f)前記眼科用デバイス形成モノマー混合物を重合して、眼科用デバイスを形成するステップと、
(g)前記第1の眼科用デバイスモールド部品を前記第2の眼科用デバイスモールド部品から分解し、前記第1の眼科用デバイスモールド部品又は前記第2の眼科用デバイスモールド部品のいずれかから前記眼科用デバイスを切り離すステップと、を更に実施する、請求項30に記載の製造物品。
【請求項32】
前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品を成形することが、前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料を射出成形することを含む、請求項30又は31に記載の製造物品。
【請求項33】
前記1つ以上の処理デバイスによって実行されるとき、前記1つ以上のソフトウェアプログラムが、ステップ(a)の前に、前記眼科用デバイスモールド形成材料を高温に加熱するステップを更に実施する、請求項30~32に記載の製造物品。
【請求項34】
ステップ(a)が、前記眼科用デバイスモールド形成材料を真空乾燥させることを含む、請求項30~33に記載の製造物品。
【請求項35】
前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約30分~約2時間の期間、前記第1の不活性ガス環境に供される、請求項30~34に記載の製造物品。
【請求項36】
前記第1の不活性ガス環境が、窒素ガス環境である、請求項30~35に記載の製造物品。
【請求項37】
前記1つ以上の処理デバイスによって実行されるとき、前記1つ以上のソフトウェアプログラムが、前記眼科用デバイスモールド形成材料を少なくとも約60℃の温度に加熱する前記ステップを更に実施する、請求項30~36に記載の製造物品。
【請求項38】
前記乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料が、前記第1及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形するステップ(b)まで、前記第1の不活性ガス環境に維持される、請求項30~37に記載の製造物品。
【請求項39】
ステップ(c)の後、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約1重量%未満の酸素含有量を有する、請求項30~38に記載の製造物品。
【請求項40】
ステップ(c)の後、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約0.5重量%未満の酸素含有量を有する、請求項30~38に記載の製造物品。
【請求項41】
ステップ(c)の後、前記第1の眼科用デバイスモールド部品及び前記第2の眼科用デバイスモールド部品が、約0.01重量%未満の酸素含有量を有する、請求項30~38に記載の製造物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、その内容が、全体的に参照により本明細書に組み込まれる、2021年3月5日に出願された「Molds for Production of Ophthalmic Devices」という名称の米国仮特許出願第63/157,130号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、旋盤加工及びキャスト成形を含む様々な方法によって製造されてきた。旋盤加工は、大量生産及び高速生産の要求を満たすことができない。旋盤加工に固有のコスト上の欠点を減らすための努力は、旋盤加工及びキャスト成形のハイブリッドであるプロセスを生み出してきた。例えば、レンズの片側をキャスト成形し、反対側を旋盤加工することによってレンズを調製してもよい。このプロセスは、旋盤加工よりも安価ではあるが、完全なキャスト成形プロセスほど安価ではない。
【0003】
キャスト成形は、2つの補完的なモールドの使用が必要である。前側半分モールドは、レンズの前側表面を画定する。後側半分モールドは、レンズの後側表面を画定する。半分モールドは、伝統的には1回だけ使用され、その後、完成したレンズのパッケージングの要素として機能するか、又は廃棄される。所望の半径又は出力のコンタクトレンズ半分モールドを製造するために、後側及び前側のステップツールを使用して、ベースラインモールドのバッチを製造する。ベースラインモールドを、正確さについて測定し、次いで、得られる半分モールドにおいて所望の寸法が達成されるまで、一連のステップ変更を行わなければならない。所望の最終レンズ製品は、必要な後側及び前側の半分モールドの設計を決定付ける。
【0004】
例えば、コンタクトレンズは、一般に、硬化性液体を、2つの半分モールドによって画定されたモールドキャビティに堆積させることによって成形される。これらのモールドは、多くは使い捨てであり、各々の新しいレンズのためのモールドを交換するコストは、最終レンズの総コストのかなりの部分である。次いで、上述の液体が、モールドキャビティ内で硬化される。硬化プロセスに続いて、硬化したレンズは、モールドキャビティから取り出される。次いで、レンズは、典型的には、完成したレンズを生成するために、他の硬化後ステップを通って移動する。
【発明の概要】
【0005】
例示的な実施形態によれば、方法は、(a)眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、眼科用デバイスモールド形成材料を第1の不活性ガス環境での乾燥条件に供することと、(b)乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形することと、(c)第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を、第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品中の全ての酸素を実質的に除去するのに十分な期間、第2の不活性ガス環境に供することと、を含む。
【0006】
別の例示的な実施形態によれば、システムは、メモリに結合されたプロセッサを備える少なくとも1つの処理デバイスを備える。少なくとも1つの処理デバイスは、(a)眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、眼科用デバイスモールド形成材料を第1の不活性ガス環境での乾燥条件に供するステップと、(b)乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形するステップと、(c)第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を、第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品中の全ての酸素を実質的に除去するのに十分な期間、第2の不活性ガス環境に供するステップと、を実施するように構成される。
【0007】
更に別の例示的な実施形態によれば、製造物品は、1つ以上のソフトウェアプログラムの実行可能コードをその中に符号化したプロセッサ可読記憶媒体を備え、1つ以上の処理デバイスによって実行されるとき、1つ以上のソフトウェアプログラムが、(a)眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、眼科用デバイスモールド形成材料を第1の不活性ガス環境での乾燥条件に供するステップと、(b)乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形するステップと、(c)第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を、第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品中の全ての酸素を実質的に除去するのに十分な期間、第2の不活性ガス環境に供するステップと、を実施する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して、以下により詳細に説明される。
【0009】
図1】例示的な実施形態による、代表的なモールドアセンブリの概略分解図である。
図2】例示的な実施形態による、コンタクトレンズをキャスト成形するために組み立てられた図1のモールドアセンブリの概略断面図である。
図3】1つ以上の例示的な実施形態による、モールドアセンブリを作製するためのプロセスのフロー図を示す。
図4】例示的な実施形態における方法のステップを実施するためにシステム内で利用され得る処理プラットフォームの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な実施形態を、ソフトコンタクトレンズなどの眼科用デバイスの製造のためのモールドを作製するための例示的な方法及びシステムを参照して、本明細書に説明する。しかしながら、本明細書に記載される実施形態は、示される特定の例示的な方法及びシステムと共に使用することに限定されないことを理解されたい。
【0011】
大きな体積の眼科用デバイスを調製するプロセスにおいて、通常の大気条件における酸素の存在は、眼科用デバイスの表面における反応性モノマー混合物の阻害、したがって不完全かつ非均質な硬化を引き起こす場合がある。これは、次に、例えば、キャプティブバブル接触角などの眼科用デバイスの物理的特性を不利に変更することがある。酸素の存在は、典型的には、モノマー混合物のキャスト成形及び硬化の前に、眼科用デバイスを作製するために使用されるモールドを少なくとも約8~約12時間脱気させることを必要とする。この脱気時間は、モールド表面上の吸収及び吸着された酸素を除去するために必要である。この脱気時間がなければ、得られた眼科用デバイスは、接触角などの表面特性が悪く、加えて、モールドからの眼科用デバイスの離型を妨害することがある。
【0012】
本明細書に記載の方法及びシステムは、脱気時間を、有利には、約8時間~約12時間の脱気時間から、約30分~約2時間の脱気時間に短縮する。このことは、例えば、少なくとも、モールド部品を脱気する前に、眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、眼科用デバイスモールド形成材料を不活性ガス環境での乾燥条件に供することによって達成される。したがって、この方法から形成された結果として生じる眼科用デバイスは、モールド部品を約8~約12時間脱気する通常のプロセス下で製造された眼科用デバイスよりも有意に短い時間で、同様のレンズ低接触角(CBCA)を達成することができる。
【0013】
ここで、例示的な実施形態が、眼科用デバイスの製造のためのモールドアセンブリに関して、更に詳細に考察される。本明細書で使用される場合、「眼科用デバイス」及び「レンズ」という用語とは、眼内又は眼上に存在するデバイスを指す。これらのデバイスは、光学補正、創傷ケア、薬物送達、診断機能、美容的向上、又はこれらの特性の任意の組み合わせを提供することができる。このようなデバイスの代表的な例としては、ソフトコンタクトレンズ、例えば、ヒドロゲルソフトレンズ、非ヒドロゲルソフトレンズなど、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼内挿入物、光学挿入物、保護レンズ、及び治療用レンズなどが挙げられるが、これらに限定されない。当業者によって理解されるように、レンズが壊れることなくそれ自体に折り返すことができる場合、レンズは「ソフト」であるとみなされる。例示的な実施形態の高含水量コンタクトレンズなどの眼科用デバイスは、球状、トーリック、遠近両用であってもよく、美容的な色合い、不透明な美容的パターン、それらの組み合わせなどを含有し得る。
【0014】
例示的な実施形態では、本明細書に記載のモールドアセンブリは、嵌合可能なモールド部品の対を少なくとも含む。本明細書で使用するためのモールドアセンブリの代表的な例は、一般に、図1及び図2でモールドアセンブリ25として示される。特に、モールドアセンブリ25は、後側モールドキャビティ画定表面31(成形レンズの後側表面を形成する)を有する後側モールド30と、前側モールドキャビティ画定表面41(成形レンズの前側表面を形成する)を有する前側モールド40と、を含む。モールドセクションが組み立てられると、モールドキャビティ32が、その中で成形されるコンタクトレンズの所望の形状に対応する2つの画定表面の間に形成される。図1及び図2に見られるように、前側モールド40は、前側モールドキャビティ画定表面41に対向する表面42と、前側モールド40の間にセグメント43を画定する表面41及び42と、を含む。前側モールド40の対向する表面42は、コンタクトレンズをキャスト成形する際に重合性レンズ混合物に接触せず、すなわち、対向する表面42は、モールドキャビティ32の一部を形成しない。
【0015】
ここで、図3のフロー図を参照して、モールドアセンブリを作製するための方法及びシステムの例示的な実施形態を説明する。具体的には、図3は、ステップ310が、眼科用デバイスモールド形成材料を実質的に乾燥させるのに十分な期間、眼科用デバイスモールド形成材料を不活性ガス環境での乾燥条件に供することを伴う、方法300を示す。眼科用デバイスモールド形成材料の乾燥は、例えば、超臨界乾燥、亜臨界乾燥、熱乾燥、蒸発空気乾燥、真空乾燥、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。例示的な一実施形態では、眼科用デバイスモールド形成材料は、真空乾燥される。
【0016】
例示的な実施形態では、眼科用デバイスモールド形成材料は、例えば、真空乾燥によって、約0.25時間~約8時間の範囲の期間、約10mmHg~約125mmHgの範囲の圧力で乾燥させることができる。別の例示的な実施形態では、眼科用デバイスモールド形成材料は、約0.5時間~約2時間の範囲の期間、約15mmHg~約50mmHgの範囲の圧力で真空乾燥される。乾燥は、窒素ガス環境などの不活性ガス環境で行うことができる。典型的には、乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料は、以下に記載される第1及び第2の眼科用デバイスモールド部品を成形するステップまで、不活性ガス環境に維持される。
【0017】
例示的な一実施形態では、眼科用デバイスモールド形成材料は、乾燥前、又は乾燥中に、少なくとも約60℃の温度に加熱することができる。例示的な一実施形態では、眼科用デバイスモールド形成材料は、約60℃~約100℃の温度に加熱することができる。
【0018】
眼科用デバイスモールド形成材料は、一般に、レンズに特定の物理的特徴を提供するプラスチック材料から作製される。好適なプラスチック材料としては、例えば、一般に比較的高い酸素透過性を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。例示的な一実施形態では、眼科用デバイスモールド形成材料は、例えば、主にポリオレフィンを含有するポリマー及びコポリマーを含む。好適なポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。例示的な一実施形態では、プラスチック成形材料は、ポリプロピレンである。
【0019】
別の例示的な実施形態では、眼科用デバイスモールド形成材料は、例えば、環状ブロックコポリマーを含む。好適な環状ブロックコポリマーとしては、例えば、スチレン共役ジエン環状ブロックコポリマー及び完全水素化スチレン共役ジエンブロックコポリマーなどのスチレン系環状ブロックコポリマーが挙げられる。一実施形態では、環状ブロックコポリマーは、以下に示すように、非水素化又は完全水素化スチレン-ブタジエンコポリマーであり得る。
【化1】
【0020】
スチレン-ブタジエンコポリマーは、当該技術分野で既知の方法によって、又は例えば、USI Corporation(Kaohsiung City,Taiwan)からのViviOn(商標)8210環状ブロックコポリマーとして市販されている方法によって作製することができる。前述の非水素化又は水素化スチレン-ブタジエンコポリマーなどの環状ブロックコポリマーは、約100,000~約900,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0021】
眼科用デバイス形成材料は、例えば、材料フィルム、メルトペレット、又はホットメルトなどの形態であり得る。各形態について、以下のように説明する。
【0022】
フィルム-材料フィルムは、(i)フィルム押出又は(ii)圧縮成形の2つの方法によって調製することができる。フィルム押出の場合、眼科用デバイス形成材料の材料ペレットが、押出機へと供給され、溶融材料が、スリットダイを強制的に通過し、冷却してフィルムになる。圧縮成形の場合、眼科用デバイス形成材料の材料ペレットが、一軸若しくは二軸のスクリュー押出機、又は共回転若しくは逆回転加熱ニーダー(例えば、Banbury又はBrabenderミキサー)で、約100℃~約150℃の温度で溶融される。このプロセスでは、溶融物をプレート上に押出し、次いで、第2のプレートでキャップし、約135℃、7000psiでおよそ10分間、加熱されたCarverプレスでプレスして、約200~約1000ミクロンのフィルム厚さを生成する。次いで、このフィルムの比較的小さい部分、例えば、およそ10×10mmが、成形機の底部キャビティ上に配置される。次いで、上部キャビティを整列させ、レンズを形成するフィルム上に押し下げる。
【0023】
メルトペレット-メルトペレットは、一軸スクリュー押出機で、眼科用デバイス形成材料の材料ペレットを溶融することによって調製することができ、次いで、メルトペレットの所望の直径よりもおよそ25%小さいオリフィスを強制的に通過させる。材料がオリフィスから押出されると、ダイフェイスナイフを使用して、材料の溶融球を切断する。このようにして、メルトペレットが製造され、レンズへのその後の圧縮成形のために、成形キャビティへと送ることができる。
【0024】
ホットメルト-このプロセスでは、材料ペレットを、押出機又は加熱シリンダーで溶融し、次いで、ピストン又は圧縮空気のいずれかを使用して、直径がおよそ0.1~2mm(好ましくは直径が0.5~1mm)のオリフィスを強制的に通過させる。これにより、モールドキャビティに直接的に落下させるか、又は噴霧され、その後、レンズへと圧縮成形される小さな溶融ビーズが生成される。
【0025】
図3は更に、ステップ320が、ステップ310の乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品(すなわち、後側モールド部品及び前側モールド部品)を成形して、図1及び図2に関して上に記載したようなモールドアセンブリを形成することを伴う、方法300を示す。例示的な実施形態では、第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品(すなわち、前側モールド及び後側モールド)は、当該技術分野で既知の任意の適切な射出成形装置において、乾燥させた眼科用デバイスモールド形成材料から射出成形される。
【0026】
図3は、ステップ330が、ステップ320で生成された第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品を、第1の眼科用デバイスモールド部品及び第2の眼科用デバイスモールド部品中の全ての酸素を実質的に除去するのに十分な期間、不活性ガス環境に供することを伴う、方法300を更に示す。例示的な実施形態では、第1及び第2の眼科用デバイスモールド部品は、窒素ガス環境で脱気される。第1及び第2の眼科用デバイスモールド部品を脱気するための期間は、約2時間~約8時間の範囲であり得る。一実施形態では、第1及び第2の眼科用デバイスモールド部品を脱気するための期間は、約2時間~約4時間の範囲であり得る。第1及び第2の眼科用デバイスモールド部品を窒素などの不活性ガス環境に曝露した後、それらの表面における酸素レベルは、許容限界内にあり、通常、機器能力内で本質的にゼロであり、例えば、約1重量%未満、又は約0.5重量%未満、又は約0.01重量%未満の酸素含有量である。
【0027】
本明細書に記載のモールドアセンブリは、例えば、フリーラジカル重合技術を使用したキャスト成形プロセスによって製造されたコンタクトレンズの表面品質を改善するために特に有用である。一般に、コンタクトレンズを形成するためのモノマー混合物、成形プロセス、及び重合プロセスは周知であり、本発明は、主に、改善された表面特性を有するコンタクトレンズを達成するためのモールドアセンブリを形成することに関する。加えて、本明細書に記載される例示的な実施形態の結果として生じるモールドアセンブリはまた、最終重合生成物に所定の形状を提供するために本明細書に作製されるモールド部品を使用する任意のフリーラジカル重合プロセスを用いて表面品質を改善するために使用することができる。
【0028】
本明細書に記載のモールドアセンブリを、任意の眼科用デバイスを製造するために使用することができ、モノマー混合物、及び眼科用デバイスを形成するために使用される特定のモノマーは、重要ではない。一実施形態では、本明細書に記載のモールドアセンブリは、ソフトコンタクトレンズ、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニル-ピロリドン、グリセロールメタクリレート、メタクリル酸、及び酸エステルを含むがこれらに限定されない、シリコーン及び/又は非シリコーンモノマーから調製された、ヒドロゲルレンズ(例えば、シリコーンヒドロゲルレンズ)と一般的に称されるものを製造するために使用される。しかしながら、コンタクトレンズの作製に有用なポリマーを形成することができるモノマー混合物中のレンズ形成モノマーの任意の組み合わせが使用されてもよい。疎水性レンズ形成モノマーはまた、シリコーン部分を含有するものなども含み得る。レンズの表面における重合度及び/又は架橋密度の程度は、典型的には美容的な欠陥を示さないものであっても、全てのコンタクトレンズにおいて改善されると考えられる。
【0029】
一実施形態では、本明細書で得られる眼科用デバイスは、それ自体が親水性ではない材料から形成されるデバイスを含む。このようなデバイスは、当該技術分野で既知の材料から形成され、例として、ポリシロキサン、ペルフルオロポリエーテル、フッ素化ポリ(メタ)アクリレート、又は例えば他の重合性カルボン酸に由来する等価のフッ素化ポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、又は他の重合性カルボン酸に由来する等価のアルキルエステルポリマー、又はフッ素化ポリオレフィン、例えば、フッ素化エチレンプロピレンポリマー、又はテトラフルオロエチレン、好ましくは、ジオキソール、例えば、ペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールと組み合わせたものを含む。好適なバルク材料の代表例としては、限定されないが、ロトラフィルコンA、ネオフォコン、パシフォコン、テレフォコン、フルオシルフォコン、パフルフォコン、シラフォコン、エラストフィルコン、フロロフォコン、又はTeflon(商標)AF材料、例えば、約63~約73mol%のペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール及び約37~約27mol%のテトラフルオロエチレンのコポリマー、又は約80~約90mol%のペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール及び約20~約10mol%のテトラフルオロエチレンのコポリマーであるTeflon(商標)AF 1600又はTeflon(商標)AF 2400が挙げられる。
【0030】
別の実施形態では、本明細書で得られた眼科用デバイスは、それ自体が親水性の材料から形成されるデバイスを含み、これは、例えば、カルボキシ、カルバモイル、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、アミン、アンモニウム又はヒドロキシ基などの反応性基が材料中に固有に存在するため、それらから製造される眼科用デバイスの表面にも存在するからである。このようなデバイスは、当該技術分野で既知の材料から形成され、例として、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド(DMA)、ポリビニルアルコールなど、及びこれらのコポリマー、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ビニルアルコールなどから選択される2つ以上のモノマーからのコポリマーが挙げられる。好適なバルク材料の代表的な例としては、ポリマコン(Polymacon)、テフィルコン(Tefilcon)、メタフィルコン(Methafilcon)、デルタフィルコン(Deltafilcon)、ブフィルコン(Bufilcon)、フェムフィルコン(Phemfilcon)、オキュフィルコン(Ocufilcon)、フォコフィルコン(Focofilcon)、エタフィルコン(Etafilcon)、ヘフィルコン(Hefilcon)、ビフィルコン(Vifilcon)、テトラフィルコン(Tetrafilcon)、ペルフィルコン(Perfilcon)、ドロキシフィルコン(Droxifilcon)、ジメフィルコン(Dimefilcon)、イソフィルコン(Isofilcon)、マフィルコン(Mafilcon)、ネルフィルコン(Nelfilcon)、アトラフィルコン(Atlafilcon)などが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なバルク材料の例としては、サムフィルコンA、バラフィルコンA、ヒラフィルコンA、アルファフィルコンA、ビラフィルコンBなどが挙げられる。
【0031】
別の実施形態では、本明細書で得られた眼科用デバイスは、少なくとも1つの疎水性セグメントと、少なくとも1つの親水性セグメントと、を含有し、これらが結合又は架橋部材を介して連結した両親媒性セグメント化コポリマーである材料から形成されるデバイスを含む。
【0032】
コンタクトレンズを含む眼科用レンズに一般的に使用される軟質材料及び硬質材料の両方を含む本明細書の生体適合性材料を使用することは、特に有用である。一般に、非ヒドロゲル材料は、その平衡状態で水を含有しない疎水性ポリマー材料である。典型的な非ヒドロゲル材料は、シリコーンアクリル、例えば、嵩高いシリコーンモノマーから形成されるもの(例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、一般的に「TRIS」モノマーとして知られている)、メタクリレートでエンドキャップされたポリ(ジメチルシロキサン)プレポリマー、又はフルオロアルキル側基を有するシリコーン(ポリシロキサンは一般にシリコーンポリマーとしても知られる)を含む。
【0033】
一般に、ヒドロゲルは、平衡状態で水を含有する水和した架橋ポリマー系を含む周知の種類の材料である。したがって、ヒドロゲルは、親水性モノマーから調製されるコポリマーである。シリコーンヒドロゲルの場合、ヒドロゲルコポリマーは、少なくとも1つのデバイス形成シリコーン含有モノマーと少なくとも1つのデバイス形成親水性モノマーとを含有する混合物を重合することによって一般的に調製される。シリコーン含有モノマー又は親水性モノマーのいずれかは、架橋剤(複数の重合性官能基を有するモノマーとして定義される架橋剤)として機能することができるか、又は別個の架橋剤が用いられてもよい。シリコーンヒドロゲルは、典型的には、約10~約80重量パーセントの含水量を有する。
【0034】
有用な親水性モノマーの代表的な例としては、限定されないが、アミド、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN,N-ジメチルメタクリルアミド、環状ラクタム、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、並びに(メタ)アクリレート化ポリ(アルケングリコール)、例えば、モノメタクリレート又はジメタクリレートエンドキャップを含有する様々な鎖長のポリ(ジエチレングリコール)が挙げられる。なお更なる例は、米国特許第5,070,215号に開示されている親水性ビニルカーボネートモノマー又は親水性ビニルカルバメートモノマー、及び米国特許第4,910,277号に開示されている親水性オキサゾロンモノマーであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。他の好適な親水性モノマーは、当業者には明らかとなるであろう。例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)は、前述の親水性モノマーと混合して使用され得る、周知の親水性モノマーである。
【0035】
モノマー混合物はまた、共重合性基と反応性官能基とを含む第2のデバイス形成モノマーを含んでいてもよい。共重合性基は、好ましくは、エチレン系不飽和基であり、その結果、このデバイス形成モノマーが、初期のデバイス形成モノマー混合物中の親水性デバイス形成モノマー及び任意の他のデバイス形成モノマーと共重合する。加えて、第2のモノマーは、1つ以上の重合性多価アルコールと1つ以上の重合性フッ素含有モノマーの反応生成物であるコポリマーの相補的反応性基と反応する反応性官能基を含み得る。言い換えれば、デバイス形成モノマー混合物を共重合することによってデバイスが形成された後、第2のデバイス形成モノマーによって提供される反応性官能基は、コポリマーの相補的反応性部分と反応するために残存する。
【0036】
一実施形態では、第2のデバイス形成モノマーの反応性基は、エポキシド基を含む。したがって、第2のデバイス形成モノマーは、エチレン系不飽和基(モノマーが親水性デバイス形成モノマーと共重合することを可能にする)と、エポキシド基(親水性デバイス形成モノマーと反応しないが、コポリマーとの反応を維持し、コポリマーは、1つ以上の重合性多価アルコールと1つ以上の重合性フッ素含有モノマーの反応生成物である)の両方を含むものである。例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルビニルカーボネート、グリシジルビニルカルバメート、4-ビニル-1-シクロヘキセン-1,2-エポキシドなどが挙げられる。
【0037】
上述のように、眼科用デバイス基材材料の一種は、シリコーンヒドロゲルである。この場合、初期デバイス形成モノマー混合物は、シリコーン含有モノマーを更に含む。シリコーンヒドロゲルの形成に使用するための適用可能なシリコーン含有モノマー材料は、当該技術分野において周知であり、数多くの例が、米国特許第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,260,000号、同第5,310,779号、及び同第5,358,995号に提供されている。本明細書で使用するための好適な材料の具体例としては、米国特許第5,310,779号、同第5,387,662号、同第5,449,729号、同第5,512,205号、同第5,610,252号、同第5,616,757号、同第5,708,094号、同第5,710,302号、同第5,714,557号、及び同第5,908,906号に開示されているものが挙げられ、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
適用可能なシリコーン含有モノマーの代表的な例としては、嵩高いポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。嵩高いポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーの一例は、式Iの構造で表され、
【化2】

式中、Xは-O-又は-NR-を表し、Rは水素又はC~Cアルキルを表し、各Rは独立して水素又はメチルを表し、各Rは独立して低級アルキル基、フェニル基、又は以下の式で表される基を表し、
【化3】

式中、各R2’は独立して低級アルキル又はフェニル基を表し、hは1~10である。
【0039】
嵩高いモノマーの例は、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチル-シロキシ)シラン又はトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(時にTRISと呼ばれる)、及びトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルビニルカルバメート(時にTRIS-VCと呼ばれる)などである。
【0040】
このような嵩高いモノマーは、分子の2つ以上の末端に不飽和基でキャップされたポリ(オルガノシロキサン)であるシリコーンマクロモノマーと共重合してよい。米国特許第4,153,641号は、例えば、アクリロキシ又はメタクリロキシ基などの種々の不飽和基を開示している。
【0041】
別の種類の代表的なシリコーン含有モノマーとしては、例えば、シリコーン含有ビニルカーボネート又はビニルカルバメートモノマー、例えば、1,3-ビス[4-ビニロキシカルボニロキシ)ブタ-1-イル]テトラメチル-ジシロキサン;3-(トリメチルシリル)プロピルビニルカーボネート;3-(ビニロキシカルボニルチオ)プロピル-[トリス(トリメチルシロキシ)シラン];3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート;t-ブチルジメチルシロキシエチルビニルカーボネート;トリメチルシリルエチルビニルカーボネート;トリメチルシリルメチルビニルカーボネートなど、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
別の種類のシリコーン含有モノマーとしては、ポリウレタン-ポリシロキサンマクロモノマー(時にプレポリマーとも呼ばれる)が挙げられ、これは、従来のウレタンエラストマーのような硬質-軟質-硬質ブロックを有し得る。これらは、HEMAなどの親水性モノマーでエンドキャップされてもよい。このようなシリコーンウレタンの例は、Lai,Yu-Chin,“The Role of Bulky Polysiloxanylalkyl Methacryates in Polyurethane-Polysiloxane Hydrogels,”Journal of Applied Polymer Science,Vol.60,1193-1199(1996)を含む、様々な又は出版物に開示されている。PCT公開出願第WO96/31792号は、このようなモノマーの例を開示し、その開示は全体的に参照により本明細書に組み込まれる。シリコーンウレタンモノマーの更なる例は、式II及びIII:
E(*D*A*D*G)*D*A*D*E’、又は(II)
E(*D*G*D*A)*D*A*D*E’、又は(III)
で表され、式中、
Dは独立して、6~約30個の炭素原子を有するアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル、又はアルキルアリールジラジカルを表し、
Gは独立して、1~約40個の炭素原子を有するアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを表し、主鎖にエーテル、チオ又はアミン結合を含有してもよく、
*は、ウレタン又はウレイド結合を表し、
aは少なくとも1であり、
Aは独立して、式IVの二価の重合性ラジカルを表し:
【化4】

式中、各Rは独立して、炭素原子間のエーテル結合を含有し得る1~約10個の炭素原子を有するアルキル又はフルオロ置換アルキル基を表し、m′は少なくとも1であり、pは、約400~約10,000の部位重量を提供する数であり、
E及びE′の各々は独立して、式Vで表される重合性不飽和有機ラジカルを表し:
【化5】

式中、Rは水素又はメチルであり、
は、水素、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又は-CO-Y-R基であり、Yは-O-、-S-、若しくは-NH-であり、
は、1~約10個の炭素原子を有する二価アルキレンラジカルであり、
は、1~約12個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、
Xは、-CO-又は-OCO-を表し、
Zは、-O-又は-NH-を表し、
Arは、約6~約30個の炭素原子を有する芳香族ラジカルを表し、
wは0~6であり、xは0又は1であり、yは0又は1であり、zは0又は1である。
【0043】
一実施形態では、シリコーン含有ウレタンモノマーは、式VIで表され、
【化6】

式中、mは少なくとも1であり、好ましくは3又は4であり、aは少なくとも1であり、好ましくは1であり、pは約400~約10,000の部位重量を提供する数であり、好ましくは少なくとも約30であり、Rは、イソホロンジイソシアネートのジラジカルなどのイソシアネート基の除去後のジイソシアネートのジラジカルであり、各E”は、以下によって表される基である。
【化7】
【0044】
別の実施形態では、シリコーンヒドロゲル材料は、(バルクで、すなわち、共重合されるモノマー混合物中で)約5~約50重量パーセント、又は約10~約25重量パーセントの1つ以上のシリコーンマクロモノマーと、約5~約75重量パーセント、又は約30~約60重量パーセントの1つ以上のポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーと、約10~約50重量パーセント、又は約20~約40重量パーセントの親水性モノマーと、を含む。一般に、シリコーンマクロモノマーは、分子の2つ以上の末端に不飽和基でキャップされたポリ(オルガノシロキサン)である。上記の構造式中の末端基に加えて、米国特許第4,153,641号は、アクリロキシ又はメタクリロキシを含む追加の不飽和基を開示している。フマレート含有材料、例えば、米国特許第5,310,779号、同第5,449,729号、及び同第5,512,205号に開示されているものなども、本明細書に記載の実施形態による有用な基材である。シランマクロモノマーは、シリコーン含有ビニルカーボネート若しくはビニルカルバメート、又は1つ以上の硬質-軟質-硬質ブロックを有し、親水性モノマーでエンドキャップされたポリウレタン-ポリシロキサンであってもよい。
【0045】
代表的なシリコーン含有モノマーの別の種類は、フッ素化モノマーを含む。このようなモノマーは、例えば、米国特許第4,954,587号、同第5,010,141号、及び同第5,079,319号に開示されるように、フルオロシリコーンヒドロゲルの形成において、それから作製されたコンタクトレンズ上の堆積物の蓄積を減少させるために使用されてきた。また、ある特定のフッ素化側基、すなわち-(CF)-Hを有するシリコーン含有モノマーの使用は、親水性モノマー単位とシリコーン含有モノマー単位との間の適合性を改善することが見出されている。例えば、米国特許第5,321,108号及び同第5,387,662号を参照されたい。
【0046】
上述のシリコーン材料は単なる例示であり、様々な刊行物に開示されており、コンタクトレンズ及び他の医療デバイスなどの眼科用デバイスを製造する際に使用するために継続的に開発されている他の材料も、使用することができる。例えば、眼科用デバイスは、カチオン性シリコーン含有モノマー又はカチオン性フッ素化シリコーン含有モノマーなどの少なくともカチオン性モノマーから形成され得る。
【0047】
本明細書に記載のモールドアセンブリで得られた眼科用デバイスを形成する際に使用されるモノマー混合物は、当該技術分野で周知のように、架橋剤、強化剤、フリーラジカル開始剤及び/又は触媒などを含むこともできる。更に、好適な溶媒又は希釈剤は、そのような溶媒又は希釈剤が重合プロセスに悪影響を及ぼさず、又は干渉しないことを条件に、モノマー混合物中に使用することができる。
【0048】
重合又は硬化の方法は、本発明の実施にとって重要ではない。したがって、重合は、使用される特定の組成物に応じて、様々な機構によって生じ得る。例えば、フリーラジカル重合技術である熱、光、X線、マイクロ波、及びそれらの組み合わせを本明細書で用いることができる。例示的な一実施形態では、熱重合及び光重合が使用される。別の例示的な実施形態では、光硬化が使用される。
【0049】
一般に、成形レンズは、本明細書に記載のモールドアセンブリのモールドセクションのモールドキャビティに重合性モノマー及び/又はマクロマーなどの硬化性液体を堆積させ、液体を固体状態に硬化させ、モールドキャビティを開き、レンズを取り出すことによって形成される。次いで、レンズの水和などの他の処理ステップを実行することができる。キャスト成形技術も周知である。キャスト成形プロセスの例は、米国特許第4,113,224号、同第4,121,896号、同第4,208,364号、及び同第4,208,365号に開示されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。もちろん、本明細書で使用することができる他の多くのキャスト成形の教示が利用可能である。
【0050】
次いで、本明細書で得られる、結果として生じる眼科用デバイスは、眼科用デバイスの製造の直後に、顧客/着用者に送られる前に、水性パッケージング溶液に眼科用デバイスを浸漬することによって包装されてもよい。あるいは、パッケージング溶液中の包装及び保管は、最終顧客(着用者)へと送る前であるが、乾燥状態での眼科用デバイスの製造及び輸送の後の中間点で行ってもよく、乾燥眼科用デバイスは、眼科用デバイスをパッケージング溶液に浸漬することによって水和される。したがって、顧客に送るための包装は、水性パッケージング溶液に浸漬された1つ以上の未使用の眼科用デバイスを収容する密封容器を含んでいてもよい。
【0051】
上から明らかなように、本明細書に記載の方法は、モールドアセンブリ及び得られた眼科用デバイスを作製するための方法のステップを実行するためのシステム上で実行することができる。概して、本システムは、それぞれがコンピュータ、サーバ、ストレージデバイス、又は他の処理プラットフォーム要素上で実行され得る、システムの処理モジュール又は他の構成要素のうちの少なくとも1つ以上を含むことができる。所与のそのような要素は、本明細書でより一般的に「処理デバイス」と呼ばれるものの例とみなされ得る。処理プラットフォームの一例は、図4に示される処理プラットフォーム400である。
【0052】
この実施形態における処理プラットフォーム400は、システムの一部を含み、402-1、402-2、402-3、・・・402-Kで示される複数の処理デバイスを含み、これらは、ネットワーク404を介して互いに通信する。
【0053】
ネットワーク404は、例として、インターネットなどのグローバルコンピュータネットワーク、WAN、LAN、衛星ネットワーク、電話若しくはケーブルネットワーク、セルラーネットワーク、WiFi若しくはWiMAXネットワークなどの無線ネットワーク、又はこれら及び他の種類のネットワークの様々な部分若しくは組み合わせを含む、任意の種類のネットワークを含み得る。
【0054】
処理プラットフォーム400内の処理デバイス402-1は、メモリ412に結合されたプロセッサ410を備える。
【0055】
プロセッサ410は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、テンソル処理ユニット(TPU)、ビデオ処理ユニット(VPU)、又は他の種類の処理回路、並びにこのような回路要素の一部又は組み合わせを含み得る。
【0056】
メモリ412は、任意の組み合わせで、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ又は他の種類のメモリを含み得る。本明細書に開示されるメモリ412及び他のメモリは、1つ以上のソフトウェアプログラムの実行可能プログラムコードを格納する「プロセッサ可読記憶媒体」とより一般的に称されるものの例示的な例として見られるべきである。
【0057】
そのようなプロセッサ可読記憶媒体を備える製造物品は、例示的な実施形態とみなされる。所与のそのような製造物品は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ若しくは他の電子メモリ、又は多種多様な他の種類のコンピュータプログラム製品のうちのいずれかを含む、ストレージアレイ、ストレージディスク又は集積回路を含み得る。本明細書で使用される「製造物品」という用語は、一過性の伝播信号を除外すると理解されるものである。プロセッサ可読記憶媒体を備える多くの他の種類のコンピュータプログラム製品を使用することができる。
【0058】
また、処理デバイス402-1には、ネットワークインターフェース回路414も含まれ、これは、処理デバイスをネットワーク404及び他のシステム構成要素とインターフェース接続するために使用され、従来のトランシーバを含み得る。
【0059】
処理プラットフォーム400の他の処理デバイス402は、図中の処理デバイス402-1について示されるものと同様の方法で構成されると仮定される。
【0060】
ここでも、図に示される特定の処理プラットフォーム400は、単なる例として提示され、本システムは、追加の又は代替の処理プラットフォーム、並びに任意の組み合わせでの多数の個別の処理プラットフォームを含んでもよく、そのような各プラットフォームは、1つ以上のコンピュータ、サーバ、記憶デバイス、又は他の処理デバイスを備える。
【0061】
したがって、他の実施形態では、追加の要素又は代替の要素の異なる配置が使用され得ることを理解されたい。少なくとも、これらの要素のサブセットは、共通の処理プラットフォーム上に集合的に実装されてもよいし、各々のそのような要素が、別個の処理プラットフォーム上に実装されてもよい。
【0062】
先に示されるように、モールドアセンブリ及び得られた眼科用デバイスを作製するための方法のステップを実行するための本明細書に開示されるシステムの構成要素は、少なくとも一部には、メモリに記憶され、かつ処理デバイスのプロセッサによって実行される、1つ以上のソフトウェアプログラムの形態で実施され得る。例えば、本明細書に開示されるようなモールドアセンブリ及び得られた眼科用デバイスを製造するための機能の少なくとも一部は、1つ以上の処理デバイス上で動作するソフトウェアの形態で例示的に実施される。
【0063】
以下の実施例は、当業者が本発明を実施することを可能にするために提供され、単なる本発明の例示である。実施例は、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。実施例では、以下の略語が使用される。
【0064】
接触角(CBCA):キャプティブバブル接触角データを、First Ten Angstroms FTA-1000 drop Shape Instrument上で収集した。全ての試料を、試料表面から包装溶液の成分を除去するために、分析の前にHPLCグレードの水中ですすいだ。データ収集の前に、全ての実験に使用される水の表面張力を、ペンダントドロップ法を使用して測定した。水が使用に適していると判断されるためには、70~72ダイン/cmの表面張力値が期待された。全てのレンズ試料を湾曲した試料ホルダー上に置き、HPLCグレードの水で満たされた石英セル中に水没させた。前進時及び後退時のキャプティブバブル接触角を、各資料について収集した。前進時の接触角は、気泡がレンズ表面から後退している(水が表面にわたって前進している)ときに水中で測定される角度として定義される。試料/気泡界面上に焦点を合わせた高速デジタルカメラを使用して、全てのキャプティブバブルデータを収集した。接触角は、試料/気泡界面にわたって接触線移動の直前に、デジタルフレームで計算した。後退時の接触角は、気泡が試料表面にわたって膨潤している(水が表面から後退している)ときに水中で測定される角度として定義される。
【0065】
実施例1~4
ポリプロピレンペレットを、3つの別個のチャンバからなる真空乾燥機に供給した。ポリプロピレンペレットを第1のチャンバ内に配置し、82℃に加熱した空気をチャンバ内に30分間通し、樹脂を加熱した。次いで、ポリプロピレンペレットを自動的に第2のチャンバに移し、そこで真空を25mmHgで30分間適用して、ポリプロピレンペレットから存在する任意の水分を除去した。真空時間が完了した後、乾燥したペレットを保持ホッパーチャンバに移し、ペレットを窒素下で保持した。次いで、ペレットを、窒素を含むチューブを介して、射出成形機上のホッパーに移した。ホッパーも窒素下にあった。次いで、ペレットをモールドベース内の光学ツールと非光学ツールとの間で射出成形して、前側モールド及び後側モールドを形成した。次いで、前側モールド部品及び後側モールド部品を、酸素低減環境のチャンバ内に配置し、それぞれ2、4、6、及び8時間の期間(ODE時間)、窒素に曝露した。
【0066】
脱気した前側モールド部品及び後側モールド部品をチャンバから取り出した。次に、サムフィルコンAシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成モノマー混合物を、モノマー混合物を脱気した前側モールド部品及び後側モールド部品のアセンブリに導入することによって、コンタクトレンズへとキャスト成形した。モールドアセンブリ及びモノマー混合物を光硬化させて、コンタクトレンズを形成した。得られたコンタクトレンズをモールドアセンブリから放出させ、接触角(CBCA)を、表1において以下に示されるように測定した。
【0067】
比較例1及び2
比較例1のモールドアセンブリは、真空乾燥されず、比較例2のモールドアセンブリは、酸素低減環境のチャンバ内に配置され、15分未満の最小限の期間、窒素に曝露されたことを除き、上の実施例1~4について記載したように、モールドアセンブリ及びコンタクトレンズを調製した。
【表1】
【0068】
ここからわかるであろうが、実施例1~4のモールドアセンブリを使用して調製された結果として生じるコンタクトレンズは、比較例1及び2のモールドアセンブリを使用して調製された結果として生じるコンタクトレンズと比較して、同等かつ有意に改善された接触角を有していた。
【0069】
実施例5及び6
ポリプロピレンペレットを第1のチャンバ内に配置し、82℃に加熱した空気をチャンバ内に30分間通し、樹脂を加熱した。次いで、ポリプロピレンペレットを自動的に第2のチャンバに移し、そこで真空をそれぞれ25mmHgで30分間及び60分間適用して、ポリプロピレンペレットから存在する任意の水分を除去した。真空時間が完了した後、乾燥したペレットを保持ホッパーチャンバに移し、ペレットを窒素下で保持した。次いで、ペレットを、窒素を含むチューブを介して、射出成形機上のホッパーに移した。ホッパーも窒素下にあった。次いで、ペレットをモールドベース内の光学ツールと非光学ツールとの間で射出成形して、前側モールド及び後側モールドを形成した。次いで、前側モールド部品及び後側モールド部品を、酸素低減環境のチャンバ内に配置し、それぞれ2時間及び1.25時間の期間(ODE時間)、窒素に曝露した。
【0070】
脱気した前側モールド部品及び後側モールド部品をチャンバから取り出した。次に、サムフィルコンAシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成モノマー混合物を、モノマー混合物を脱気した前側モールド部品及び後側モールド部品のアセンブリに導入することによって、コンタクトレンズへとキャスト成形した。モールドアセンブリ及びモノマー混合物を光硬化させて、コンタクトレンズを形成した。得られたコンタクトレンズをモールドアセンブリから放出させ、接触角(CBCA)を、表2において以下に示されるように測定した。
【0071】
比較例3
比較例3のモールドアセンブリは、真空乾燥されず、酸素低減環境のチャンバ内に配置され、16時間、窒素に曝露されたことを除き、上の実施例5及び6について記載したように、モールドアセンブリ及びコンタクトレンズを調製した。
【表2】
【0072】
ここからわかるであろうが、実施例5及び6のモールドアセンブリを使用して調製された結果として生じるコンタクトレンズは、比較例3のモールドアセンブリを使用して調製された結果として生じるコンタクトレンズと比較して、同等の接触角を有していた。加えて、実施例5と実施例6を比較すると、真空乾燥時間を30分から1時間に増加させることによって、ODE時間をおよそ45分短縮することができることがわかる。
【0073】
実施例7~10
ポリプロピレンペレットを、3つの別個のチャンバからなる真空乾燥機に供給した。ポリプロピレンペレットを第1のチャンバ内に配置し、82℃に加熱した空気をチャンバ内に30分間通し、樹脂を加熱した。次いで、ポリプロピレンペレットを自動的に第2のチャンバに移し、そこで真空を25mmHgで30分間適用して、ポリプロピレンペレットから存在する任意の水分を除去した。真空時間が完了した後、乾燥したペレットを保持ホッパーチャンバに移し、ペレットを窒素下で保持した。次いで、ペレットを、窒素を含むチューブを介して、射出成形機上のホッパーに移した。ホッパーも窒素下にあった。次いで、ペレットをモールドベース内の光学ツールと非光学ツールとの間で射出成形して、前側モールド及び後側モールドを形成した。次に、前側モールド部品及び後側モールド部品を、それぞれ15、30、45、及び60分間、空気に曝露した。次いで、各実施例について、前側モールド部品及び後側モールド部品を、酸素低減環境のチャンバ内に配置し、2時間の期間(ODE時間)、窒素に曝露した。
【0074】
脱気した前側モールド部品及び後側モールド部品をチャンバから取り出した。次に、サムフィルコンAシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成モノマー混合物を、次いで、モノマー混合物を脱気した前側モールド部品及び後側モールド部品のアセンブリに導入することによって、コンタクトレンズへとキャスト成形した。モールドアセンブリ及びモノマー混合物を光硬化させて、コンタクトレンズを形成した。得られたコンタクトレンズをモールドアセンブリから放出させ、接触角(CBCA)を、表3において以下に示されるように測定した。
【0075】
比較例4
比較例1のモールドアセンブリが真空乾燥されなかったことを除き、実施例7~10について記載したように、モールドアセンブリ及びコンタクトレンズを調製した。
【表3】
【0076】
ここからわかるであろうが、実施例7~10のモールドアセンブリを使用して調製された結果として生じるコンタクトレンズは、比較例4のモールドアセンブリを使用して調製された結果として生じるコンタクトレンズと比較して、同等かつ有意に改善された接触角を有していた。
【0077】
実施例11
ViviOn(商標)8210環状ブロックコポリマー(USI Corporation)から得られたペレットを、3つの別個のチャンバからなる真空乾燥機に供給した。ペレットを第1のチャンバ内に配置し、82℃に加熱した空気をチャンバ内に30分間通し、樹脂を加熱した。次いで、ペレットを自動的に第2のチャンバに移し、そこで真空を25mmHgで30分間適用して、ペレットから存在する任意の水分を除去した。真空時間が完了した後、乾燥したペレットを保持ホッパーチャンバに移し、ペレットを窒素下で保持した。次いで、ペレットを、窒素を含むチューブを介して、射出成形機上のホッパーに移した。ホッパーも窒素下にあった。次いで、ペレットをモールドベース内の光学ツールと非光学ツールとの間で射出成形して、前側モールド及び後側モールドを形成した。次いで、前側モールド部品及び後側モールド部品を、酸素低減環境のチャンバ内に配置し、2時間の期間(ODE時間)、窒素に曝露した。
【0078】
脱気した前側モールド部品及び後側モールド部品をチャンバから取り出した。次に、サムフィルコンAシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ形成モノマー混合物を、モノマー混合物を脱気した前側モールド部品及び後側モールド部品のアセンブリに導入することによって、コンタクトレンズへとキャスト成形した。モールドアセンブリ及びモノマー混合物を光硬化させて、コンタクトレンズを形成した。得られたコンタクトレンズをモールドアセンブリから放出させ、接触角(CBCA)を、表4において以下に示されるように測定した。
【表4】
【0079】
ここからわかるであろうが、実施例11のモールドアセンブリを使用して調製された結果として生じるコンタクトレンズは、ポリプロピレンペレットから得られた上に記載のモールドアセンブリを使用して調製された結果として生じるコンタクトレンズと比較して、同等の接触角を有していた。
【0080】
簡潔にするために、本明細書に開示される様々な特徴は、単一の実施形態の文脈において記載されるが、別々に、又は任意の好適なサブコンビネーションでも提供され得る。実施形態の全ての組み合わせは、各々及び全ての組み合わせが個別に及び明示的に開示されているかのように、本明細書に開示される例示的な実施形態によって具体的に包含される。加えて、そのような変数を記載している実施形態に列挙される全てのサブコンビネーションはまた、本製剤によって具体的に包含され、各々及び全てのそのようなサブコンビネーションが本明細書に個別に及び明示的に開示されているかのように、本明細書に開示される。
【0081】
上述の実施形態は、例示のみを目的として提示されることを再度強調されるべきである。多くの変形例及び他の代替的な実施形態が使用されてもよい。例えば、開示される技術は、広範囲にわたる他の種類の情報処理システム、保管システム、モデル、測定基準、消光曲線、性能に影響を与える事象などに適用可能である。また、システム及びデバイス要素の特定の構造、及び図面に例示的に示される関連する処理操作は、他の実施形態で変えることができる。更に、例示的な実施形態を説明する過程で上記になされた様々な仮定はまた、本開示の要件又は制限ではなく、例示的なものとみなされるべきである。添付の特許請求の範囲内の多数の他の代替実施形態は、当業者に容易に明らかになるであろう。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】