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特表2024-508929アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法及びその応用 [関連出願の相互参照] 本出願は、2021年03月04日に出願した中国特許出願第202110241311.7号の特許出願に基づく優先権を主張し、この中国特許出願の全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
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  • 特表-アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法及びその応用  [関連出願の相互参照]  本出願は、2021年03月04日に出願した中国特許出願第202110241311.7号の特許出願に基づく優先権を主張し、この中国特許出願の全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法及びその応用 [関連出願の相互参照] 本出願は、2021年03月04日に出願した中国特許出願第202110241311.7号の特許出願に基づく優先権を主張し、この中国特許出願の全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
(51)【国際特許分類】
   C01G 35/00 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
C01G35/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553742
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 CN2021102381
(87)【国際公開番号】W WO2022183640
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】202110241311.7
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509031567
【氏名又は名称】中国科学院過程工程研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF PROCESS ENGINEERING,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】NO.1 Zhongguancun North Second Street,Haidian District Beijing 100190,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ダン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュアンポー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ナイリャン
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AB02
4G048AC05
4G048AD03
4G048AE06
4G048AE08
(57)【要約】
本発明は、機能性材料の技術分野に関し、具体的には、アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料並びにその製造方法及び応用に関し、前記方法は、炭素源水溶液を加熱反応し、濾過、洗浄及び乾燥を経て炭素球テンプレートを得るステップ1)と、ステップ1)において得られた炭素球テンプレートを第1金属塩溶液に分散して、加熱吸着、オーブン乾燥して第1固体前駆体を得るステップ2)と、ステップ2)において得られた固体前駆体を第2金属塩溶液に再度分散して、吸着、オーブン乾燥して第2固体前駆体を得るステップ3)と、ステップ3)において得られた第2固体前駆体を焙焼して、アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料を得るステップ4)と、を含み、本発明は、2段階の強化吸着法により金属酸化物中空球に欠陥制御性を有するドーピングエネルギーレベルを導入させ、それにより太陽スペクトル中の各波長域の効率的な吸収を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法であって、
炭素源水溶液を加熱反応し、濾過、洗浄及び乾燥を経て、炭素球テンプレートを得る、ステップ1)と、
ステップ1)において得られた炭素球テンプレートを第1金属塩溶液に分散して、加熱吸着、オーブン乾燥して第1固体前駆体を得る、ステップ2)と、
ステップ2)において得られた固体前駆体を第2金属塩溶液に再度分散して、吸着、オーブン乾燥して第2固体前駆体を得る、ステップ3)と、
ステップ3)において得られた第2固体前駆体を焙焼して、アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料を得るステップ4)と、を含み、
前記第2金属塩溶液中の水和イオンの濃度が前記第1金属塩溶液中の水和イオンの濃度以上である、ことを特徴とするアモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ1)における炭素源は、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、澱粉及びクエン酸のうちの1つ又は2つ以上を含み、前記炭素源水溶液中における炭素源の濃度が0.1~6Mである、ことを特徴とする請求項1に記載された製造方法。
【請求項3】
前記ステップ1)における加熱反応は、水熱反応であり、前記水熱反応が反応釜で行われ、水熱反応の温度が175~220℃であり、水熱反応の時間が100~180minであり、乾燥の温度が60~100℃であり、乾燥の時間が6~24hである、ことを特徴とする請求項1に記載された製造方法。
【請求項4】
前記ステップ2)及びステップ3)における第1金属塩溶液及び第2金属塩溶液は、いずれも塩化タンタル溶液、硝酸タンタル溶液、硫酸タンタル溶液、アセチルアセトナトタンタル溶液、シュウ酸タンタル溶液及びタンタルエトキシド溶液のうちの1つ又は2つ以上を含み、
第1金属塩溶液の濃度が0.01~0.5Mであり、第2金属塩溶液の濃度が0.5~5Mであり、
前記第1金属塩溶液の溶媒が水、アセトン及びエタノールのうちの1つ又は2つ以上を含み、第2金属塩溶液の溶媒が水及び/又はエタノールを含む、ことを特徴とする請求項1に記載された製造方法。
【請求項5】
前記第1金属塩溶液の溶媒がアセトン及び/又はエタノールを含み、第2金属塩溶液の溶媒が水である、ことを特徴とする請求項4に記載された製造方法。
【請求項6】
前記ステップ2)において、前記吸着温度が20~60℃であり、吸着時間が1~48hであり、乾燥温度が60~100℃であり、乾燥時間が6~24hであり、
前記ステップ3)において、吸着温度が20~60℃であり、前記吸着時間が4~24hであり、乾燥温度が60~100℃であり、乾燥時間が6~24hである、ことを特徴とする請求項1に記載された製造方法。
【請求項7】
前記ステップ4)における焙焼がマッフル炉、管状炉又は窯炉で行われ、
前記焙焼温度が200~600℃であり、焙焼時間が0.5~10hであり、焙焼の昇温速度が0.1~20℃/minであり、
前記焙焼の雰囲気が空気、又は窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスであり、なお、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス中における酸素ガスの比率が5~40%である、ことを特徴とする請求項1に記載された製造方法。
【請求項8】
アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料であって、
前記アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料は、請求項1~8のいずれか1項に記載された製造方法で得られたものである、ことを特徴とするアモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料。
【請求項9】
前記アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料は、少なくとも1つの空洞及び少なくとも1層のシェル壁を含み、前記シェル壁の表面に2種類以上の金属酸化物が堆積され、前記金属酸化物がナノ粒子又はナノロッドであり、金属酸化物が酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化レニウム、酸化チタン及び酸化タングステンのうちの1つ又は2つ以上を含み、
シェル壁が2~4層であり、シェル壁が太陽スペクトルを多段階で順次に吸収することが可能であり、
シェル壁の表面に堆積した金属酸化物が欠陥制御性を有し、
太陽スペクトル中における紫外光部分、可視光部分、近赤外光及び中赤外光部分を多段階で順次に吸収し、
前記シェル壁の金属酸化物の吸光度が10~95%内にある、ことを特徴とする請求項8に記載されたアモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料。
【請求項10】
光熱水蒸発のための金属酸化物材料であって、
前記光熱水蒸発のための金属酸化物材料は、請求項8又は9に記載されたアモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料を含む、ことを特徴とする光熱水蒸発のための金属酸化物材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性材料の技術分野に関し、具体的には、アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料並びにその製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーは、永遠に利用できるクリーンエネルギーの一種として、大きな発展の可能性を持つが、エネルギー密度が低くて安定しない要素があるため、より効果的な光変換材料を設計して太陽エネルギーの効率的な取得及び利用を実現する必要がある。太陽光で駆動する光熱界面水蒸発システムは、近年以来新興の効率的で便利な浄水技術であり、太陽光のみで光熱材料を水の沸点温度近くまで加熱し、そして水源を材料の表面に導いて表面蒸発及び凝縮水の回収により浄化・殺菌の効果を実現する。従来の水のバルク加熱に比べて、主に以下のような独特な利点を有し、その一の、表面加熱システムが受熱の体積を減少させて熱伝達効率を向上させて熱損失を低減することができることと、その二の、単位体積当たりの蒸気量を生産するために消費したエネルギーが著しく減少することに体現されることである。また、太陽光で駆動する光熱界面水蒸発システムは、水源の品質への要件が低く、光熱変換効率が高く、水蒸発速度が速く、殺菌浄水効果が顕著で、及びデバイスを持ちやすいといった特徴を有し、海水淡水化、汚水から飲用水への転換、細菌含有廃水の浄化に用いられてもよく、極めて過酷な環境における飲用水の迅速な自作にも用いられてもよい。
【0003】
マルチシェルの中空マイクロ/ナノ構造は、比表面積が大きく、密度が小さく、特別な内部空洞構造、及び低次元ナノ粒子又はナノロッドからなる調整可能なシェル壁を有するといった特徴を有し、従って、多くの分野、例えば薬物の徐放、触媒、センサ、水質汚染の対策、ナノ反応器及びエネルギー貯蔵システムなどにいずれも広く使用されることが実現される。光熱水蒸発分野に応用されると、金属酸化物の中空マルチシェル材料は、入射光をシェル間で複数回散乱させて、光路を効果的に延長させて、材料による光の捕獲を強化することができ、全スペクトルで太陽光を効率的に吸収して光熱変換効率を向上させることに寄与する。また、金属酸化物の中空マルチシェル材料は、より多い有効的な比表面積を提供することができ、水の迅速な輸送及び蒸発に寄与し、反応効率を更に向上させる。
【0004】
現在、マルチシェル酸化物中空球の製造方法は、主にソフトテンプレート法及びハードテンプレート法の2種類がある。ソフトテンプレート法とは、溶液の中でミセル又はエマルジョンの液滴をテンプレートとして用い、二つの相の界面で化学反応が起こって、最後に分離して乾燥させて、中空ミクロスフェアを製造して得ることを意味する。現在に報道されているソフトテンプレート法は、特定の化合物のマルチシェル中空球の製造のみに適用され、且つ合成された製品は形態の均一性がより低く、大量の有機溶媒を用いて逆ミセル又は逆マイクロエマルションを製造する必要があり、大量生産に適せず、汎用性を有することが困難である。ハードテンプレート法とは、単分散の無機物、高分子ポリマー又は樹脂マイクロナノ粒子をテンプレートとして用い、その表面に様々な化学材料を堆積し、次にか焼(calcination)又は溶媒の抽出によりテンプレートを取り出して均一な中空球材料を形成することを意味する。ハードテンプレート法で製造されたコアシェル材料は、単分散性が高く、再現性が高く且つ製品の形態が安定するといった利点を有し、研究者に広く注目されている。
【0005】
CN102464304Aには、マルチシェル金属酸化物中空球及びその製造方法が開示されており、水熱法により炭素球テンプレートを製造し、金属塩を炭素球懸濁液に溶解し、金属塩の濃度、溶液のpH値、浸漬温度及び時間などの吸着条件を調整することにより金属塩が炭素球に入った数量、深さ及び勾配分布を制御し、金属イオンを吸着した炭素球を熱処理すれば、マルチシェル金属酸化物中空球を得ることができる。該方法で製造された中空球は、そのシェルが金属酸化物のナノ結晶粒を堆積してなり、シェル数を2~4層に調整することができ、中空球の寸法及びシェルの厚さがいずれも制御可能である。本発明は方法が簡単で行いやすく、制御性が高く、汚染が少なく、コストが低く且つ汎用性を有する。製造された製品は中空構造及び厚さがナノ尺度のシェルを有するとともに、多層構造であるため内部空間を効果的に利用することができ、ガス検知及び光触媒に応用され、従来のナノ材料及び単層中空球よりも優れた性能を示す。
【0006】
CN103247777Aには、リチウムイオン電池に応用される四酸化三コバルトマルチシェル中空球の負極材料及びその製造方法が開示されている。水熱法で製造された炭素球をテンプレートとし、コバルト塩溶液中の水とエタノールとの比率、溶液の温度及び炭素球の吸着能力を制御することにより炭素球中のコバルトイオンの数及びその入る深さを制御し、シングル、ダブル、トリプル及びクワドロプルシェルの四酸化三コバルト中空球が製造される。しかしながら、該方法で製造されたマルチシェル中空球はリチウムイオン電池の負極材料を製造することに用いられ、光熱分野における応用が依然として制限されている。
【0007】
上記製造方法で得られたものがいずれも金属酸化物結晶である。また、マルチシェル中空球を光熱に用いることについての研究はまだ実例がなく、半導体についての光熱研究も酸化銅、硫化銅などの狭いバンドギャップの半導体ナノ粒子、ナノワイヤーアレイに限定されている。従って、マルチシェル中空球のナノ空間尺度としての奥行きにおける利点によって、異なる欠陥含有量を有するアモルファスマルチシェル中空球が制御可能に合成され、更にアモルファス内部の欠陥含有量を調整することにより金属酸化物の光熱特性を向上させることについての研究は、依然として少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記欠点に基づいて、本発明は、アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法及び応用を提供し、2段階の強化吸着によって吸着後の炭素球テンプレートにおける金属イオンが明らかな濃度勾配を有させ、それにより焙焼後に太陽スペクトルを効率的に吸収できるアモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料を得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するために、本発明は以下の技術案を用いる。
【0010】
本発明は、アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法を提供し、
炭素源水溶液を反応釜に入れて加熱反応し、濾過、洗浄及び乾燥を経て、炭素球テンプレートを得る、ステップ1)と、
ステップ1)において得られた炭素球テンプレートを第1金属塩溶液に分散して、加熱吸着、オーブン乾燥して第1固体前駆体を得る、ステップ2)と、
ステップ2)において得られた固体前駆体を第2金属塩溶液に再度分散して、吸着、オーブン乾燥して第2固体前駆体を得る、ステップ3)と、
ステップ3)において得られた第2固体前駆体を焙焼して、アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料を得る、ステップ4)と、を含み、
前記第2金属塩溶液中の水和イオンの濃度が前記第1金属塩溶液中の水和イオンの濃度以上である。
【0011】
該方法において、か焼(calcination)温度及びか焼(calcination)雰囲気は、アモルファス酸化物の合成及びアモルファス内部の欠陥含有量の調整における主な要素である。高融点を有する金属酸化物材料を選択し、金属酸化物において、酸素原子の拡散遷移エネルギーが低く、低温下で酸素原子のネットワーク構造を形成でき、酸素原子に比べて、これらの高融点の金属イオンの拡散遷移エネルギーが高く、一定時間内の遷移距離が1つの単位胞のサイズよりも小さい場合、アモルファス酸化物を形成することとなる。従って、か焼(calcination)温度を金属酸化物の結晶温度以下に制御し、即ちか焼(calcination)熱が金属イオンの拡散遷移エネルギーに達しない場合、アモルファス酸化物を形成することとなる。か焼(calcination)時の雰囲気(酸素分圧)は、アモルファス酸化物の欠陥含有量を直接制御し、一般的な法則は、酸素分圧が低ければ低いほど、得られたアモルファス酸化物の欠陥含有量が高くなることである。アモルファス酸化物の欠陥含有量は、広い吸収範囲及び高い吸収強度の効率的な光吸収材料を得る主な調整方式である。
【0012】
一方、炭素球で金属塩を吸着する溶媒の選択も非常に重要であり、異なる溶媒を前駆体溶液として選択し、吸着後の炭素球テンプレート中の金属イオンの吸着深さに明らかな相違を生じさせる。まず、異なる溶媒は、金属塩の溶解分散能力が異なり、且つ金属陽イオンの溶媒における凝集サイズに大きな相違がある。ステップ(2)において、分散及び撹拌吸着操作によって比較的小さなイオン凝集半径を有する金属塩溶液を炭素球の内部に深く吸着できるようにし、ステップ(3)において、分散及び吸着操作によって比較的大きなイオン凝集半径を有する金属塩溶液を主に炭素球の表面に凝集させ、このようにステップ(3)において得られた固体がより大きな金属吸着量及び濃度勾配を有し、焙焼後に得られた金属酸化物中空球がより多くのシェル数を有する。それと同時に、表面光熱水蒸発分野に応用するとき、アモルファスマルチシェルにおける各層の欠陥含有量に相違があり、各層の光吸収効率が重畳されることができ、且つマルチシェルの内部に相対的に密閉された円球状を形成する。光の領域制限効果が顕著で、効率的な光吸収効果を実現する。アモルファス酸化物例えば酸化タンタルは間接バンドギャップ半導体であり、光熱変換過程においてフォノンの熱発生への支援即ち単位胞間の相互振動による熱伝達に関する。第2として、高含有量の欠陥がフォノン散乱のレベルを向上させる。最終的に、光熱変換効率を強化する。
【0013】
本発明の炭素含有の前駆体水溶液を反応釜に入れて水熱反応し、冷却、濾過、洗浄、乾燥を経て炭素球テンプレートを得る方法は、従来のメカニカルミリング法に比べて、水熱法で製造された炭素球は、粒径が均一で、サイズが制御できるとともに、表面に大量の活性官能基を含有し、優れた親水性及び表面反応活性を有し、金属イオンの吸着に寄与し、コアシェル構造材料を製造する常用のテンプレートである。
【0014】
本発明におけるステップ2)に記載された吸着が強化吸着であり、強化吸着とは、炭素球テンプレート及び金属塩溶液をビーカーに入れて2回に加熱吸着して、加熱状態において炭素球テンプレートによる金属イオンの吸着を強化し、冷却、遠心分離、洗浄、乾燥を経て、金属塩イオンリッチの固体前駆体を得る方法を指す。
【0015】
好ましくは、前記ステップ1)における炭素源が、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、澱粉及びクエン酸のうちの1つ又は2つ以上を含み、より好ましくは蔗糖である。
【0016】
前記炭素源水溶液中における炭素源の濃度は、0.1~6Mであり、例えば0.1M、0.5M、1M、1.5M、2M、2.5M、3M、3.5M、4M、4.5M、5M、5.5M又は6Mであってもよく、好ましくは1~5Mであり、より好ましくは2~3Mである。
【0017】
好ましくは、前記ステップ1)における加熱反応は、水熱反応であり、前記水熱反応の温度は、175~220℃であり、例えば175℃、180℃、185℃、190℃、195℃又は200℃であってもよく、より好ましくは190~205℃であり、更に好ましくは195~200℃であり、
水熱反応の時間は、100~180minであり、例えば100min、110min、120min、130min、140min、150min、160min、170min又は180minであってもよく、より好ましくは、120~140minであり、更に好ましくは、125~135minであり、
乾燥の温度は、60~100℃であり、例えば60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃又は100℃であってもよく、より好ましくは、70~90℃であり、更に好ましくは、75~85℃であり、
乾燥の時間は、6~24hであり、例えば6h、8h、10h、12h、14h、16h、18h、20h、22h又は24hであってもよく、より好ましくは、15~24hであり、更に好ましくは、18~20hであり、
脱イオン水、メタノール又はエタノールのうちの1つ又はいずれか2つの組み合わせを用いて洗浄し、該組み合わせは例えば、脱イオン水、メタノール、エタノール、脱イオン水及びメタノールの組み合わせ、脱イオン水とエタノールとの組み合わせ、又はメタノールとエタノールとの組み合わせであってもよい。
【0018】
前記洗浄回数は、2~5回であり、例えば2回、3回、4回又は5回であってもよく、好ましくは3~4回である。
【0019】
好ましくは、前記ステップ2)及びステップ3)における第1金属塩溶液及び第2金属塩溶液は、いずれも塩化タンタル溶液、硝酸タンタル溶液、硫酸タンタル溶液、アセチルアセトナトタンタル溶液、シュウ酸タンタル溶液及びタンタルエトキシド溶液のうちの1つ又は2つ以上を含み、より好ましくは、塩化タンタル溶液、アセチルアセトナトタンタル溶液、シュウ酸タンタル溶液のうちの1つ又は少なくとも2つの組み合わせであり、本発明において選択した金属塩溶液は、より小さな水和イオン半径を有する金属塩であり、金属の炭素球における吸着深さを強化し、太陽スペクトル中の可視光及び赤外光部分を複数回吸収することに用いられる。
【0020】
第1金属塩溶液の濃度は、0.01~0.5Mであり、例えば0.01M、0.1M、0.15M、0.2M、0.25M、0.3M、0.35M、0.4M、0.45M又は0.5Mであってもよく、より好ましくは、0.05~0.2Mであり、更に好ましくは、0.1~0.15Mであり、
第2金属塩溶液の濃度は、0.5~5Mであり、例えば1M、1.5M、2M、2.5M、3M、3.5M、4M、4.5M又は5Mであってもよく、より好ましくは、1~3Mであり、更に好ましくは、1.5~2.5Mであり、
なお、前記第1金属塩溶液の溶媒が、水、アセトン及びエタノールのうちの1つ又は2つ以上を含む。
【0021】
好ましくは、前記第1金属塩溶液の溶媒がアセトン及び/又はエタノールを含み、第1金属塩溶液の溶媒がエタノールであることがより好ましく、
第2金属塩溶液の溶媒が水、エタノール又はそれらの混合物を含み、第2金属塩溶液の溶媒が水であることがより好ましい。
【0022】
好ましくは、前記ステップ2)における前記吸着は、中温撹拌吸着であり、
前記吸着温度は、20~60℃であり、例えば20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃又は60℃であってもよく、より好ましくは30~60℃であり、更に好ましくは40~50℃であり、
吸着時間は、1~48hであり、より好ましくは3~36hであり、更に好ましくは6~24hであり、
吸着後に、吸着して得られた混合液を遠心分離し、下層の固体を取り出して洗浄し、脱イオン水、メタノール又はエタノールのうちの1つ又はいずれか2つの組み合わせを用いて洗浄し、該組み合わせは例えば、脱イオン水、メタノール、エタノール、脱イオン水及びメタノールの組み合わせ、脱イオン水とエタノールとの組み合わせ、又はメタノールとエタノールとの組み合わせであってもよい。
【0023】
前記洗浄回数は、2~5回であり、例えば2回、3回、4回又は5回であってもよく、より好ましくは3~4回であり、
乾燥温度は、60~100℃であり、例えば60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃又は100℃であってもよく、より好ましくは、70~90℃であり、更に好ましくは、75~85℃であり、
乾燥時間は、6~24hであり、例えば6h、8h、10h、12h、14h、16h、18h、20h、22h又は24hであってもよく、より好ましくは15~24hであり、更に好ましくは18~20hである。
【0024】
前記ステップ3)における前記吸着は、中温加熱による強化撹拌吸着であり、
吸着温度は、20~60℃であり、例えば20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃又は60℃であってもよく、より好ましくは30~50℃であり、更に好ましくは35~45℃であり、
前記吸着時間は、4~24hであり、例えば4h、6h、8h、10h、12h、14h、16h、18h、20h、22h又は24hであってもよく、より好ましくは8~20hであり、更に好ましくは10~18hであり、
吸着後に、吸着して得られた混合液を吸引濾過及び洗浄し、脱イオン水、メタノール又はエタノールのうちの1つ又はいずれか2つの組み合わせを用いて洗浄し、該組み合わせは例えば、脱イオン水、メタノール、エタノール、脱イオン水及びメタノールの組み合わせ、脱イオン水とエタノールとの組み合わせ、又はメタノールとエタノールとの組み合わせであってもよい。前記洗浄回数は、2~5回であり、例えば2回、3回、4回又は5回であってもよく、より好ましくは3~4回である。前記洗浄時間は、0.5~24hであり、例えば2h、4h、6h、8h、10h、11h、14h、16h、18h、20h、22h又は24hであってもよく、より好ましくは5~20hであり、更に好ましくは10~15hである。
乾燥温度は、60~100℃であり、例えば60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃又は100℃であってもよく、より好ましくは70~90℃であり、更に好ましくは75~85℃であり、
乾燥時間は、6~24hであり、例えば6h、8h、10h、12h、14h、16h、18h、20h、22h又は24hであってもよく、より好ましくは15~24hであり、更に好ましくは18~20hである。
【0025】
好ましくは、前記ステップ4)における焙焼は、マッフル炉、管状炉(チューブ炉)又は窯炉で行われ、
前記焙焼温度は、200~600℃であり、例えば200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃又は600℃であってもよく、より好ましくは、300~550℃であり、更に好ましくは、400~500℃であり、
焙焼時間は、0.5~10hであり、例えば0.5h、1h、1.5h、2h、2.5h、3h、3.5h、4h、4.5h、5h、5.5h、6h、6.5h、7h、7.5h、8h、8.5h、9h、9.5h又は10hであってもよく、より好ましくは1~6hであり、更に好ましくは2~4hであり、
焙焼の昇温速度は、0.1~20℃/minであり、例えば0.5℃/min、1℃/min、1.5℃/min、2℃/min、2.5℃/min、3℃/min、3.5℃/min、4℃/min、4.5℃/min、5℃/min、5.5℃/min、6℃/min、6.5℃/min、7℃/min、7.5℃/min、8℃/min、8.5℃/min、9℃/min、9.5℃/min又は10℃/minであってもよく、より好ましくは0.5~10℃/minであり、更に好ましくは1~10℃/minであり、
前記焙焼の雰囲気は、空気、又は窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスであり、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス中における酸素ガスの比率は5~40%であり、例えば5%、8%、10%、12%、15%、18%、20%、25%、30%、35%、40%であってもよい。より好ましくは、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス中における酸素ガスの比率が10~30%であり、更に好ましくは、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス中における酸素ガスの比率が15~25%である。本発明は、窒素ガス・酸素ガスの混合雰囲気を用いてか焼(calcination)することにより、中空マルチシェル中空球を調整して製造するだけでなく、マルチシェルの欠陥含有量も調整する。中空マルチシェルによる太陽光スペクトルの吸収能力を広範囲で調整し、光熱変換効率及び水蒸発速度を最適化する。
【0026】
本発明の製造方法において、焙焼前に、ステップ1)及びステップ2)を1~5回繰り返すことができ、それによりシェルが2~4層のアモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料を得る。
【0027】
本発明は異なる水和イオン半径を有する2種類の金属塩の濃度、吸着温度、繰り返し吸着回数、か焼(calcination)雰囲気などの合成条件を調整することにより、シェル中の異なる金属酸化物の含有量を変化させることができ、それにより異なるシェルによる異なる波長の光の効率的な吸収を実現し、太陽スペクトルを全スペクトルで順に吸収する効果を更に実現し、製造されたマルチシェル中空球の光熱材料の光吸収能力を強化し、更にその光熱変換効率を向上させる。
【0028】
本発明は、前記製造方法で得られたアモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料を提供し、前記アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料は、少なくとも1つの空洞(キャビティ)及び少なくとも1層のシェル壁を含み、前記シェル壁の表面に2種類以上の金属酸化物が堆積され、前記金属酸化物がナノ粒子又はナノロッドであり、金属酸化物が酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化レニウム、酸化チタン及び酸化タングステンのうちの1つ又は2つ以上を含むことが好ましいが、それに限らない。
【0029】
シェル壁は、2~4層であり、例えば2層、3層又は4層であってもよく、
シェル壁は、太陽スペクトルを多段階で順次に吸収することができ、前記シェル壁の外シェル壁の表面に堆積した金属酸化物の欠陥含有量が内シェル壁の表面に堆積した金属酸化物の欠陥含有量よりも小さい。
【0030】
シェル壁の表面に堆積した金属酸化物が欠陥制御性を有し、
太陽スペクトル中の紫外光部分、可視光部分、近赤外光及び中赤外光部分を多段階で順次に吸収する。
【0031】
前記シェル壁の金属酸化物の吸光度が10~95%内に調整可能である。
【0032】
本発明は、光熱水蒸発のための金属酸化物材料を提供し、前記光熱水蒸発のための金属酸化物材料は、前記アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料を含み、
前記光熱水蒸発のための金属酸化物材料は、100mW/cmのソーラーシミュレーターの照射によって1.6kg/mhの蒸発速度で効率的な表面水蒸発を行う。
【発明の効果】
【0033】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0034】
第1)として、本発明において製造して得られた複合金属酸化物の中空マルチシェル材料は、より強い光吸収能力を有し、マルチシェルの複雑な多段階構造は、入射光の材料内部における光路経路を明らかに延長させることができる。また、マルチシェル自身の特徴によって材料に一層大きな比表面積を有させ、材料と水との接触をより十分にし、上記中空球を光熱水蒸発に応用すると、太陽スペクトルを全スペクトルで効率的に吸収することが実現されることができ、100mW/cmソーラーシミュレーターの照射によって1.6kg/mhの蒸発速度で効率的な表面水蒸発を行うことができる。且つ、48hを超える反応安定性を取得することができ、その性能が同じ成分のナノ粒子よりも遥かに高い。
【0035】
第2)として、本発明は、2段階の強化吸着法により金属酸化物中空球に欠陥制御性を有するドーピングエネルギーレベルを導入させ、それにより太陽スペクトル中の各波長域の効率的な吸収を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は本発明の実施例1において製造されたアモルファストリプルシェルTa中空球の透過型電子顕微鏡写真である。
図2図2は本発明の実施例2において製造されたアモルファスダブルシェルTa中空球の透過型電子顕微鏡写真である。
図3図3は本発明の異なるシェルにおけるアモルファスTa中空球のX線回折図である。
図4図4は本発明の異なる温度でのか焼(calcination)におけるトリプルシェルTaの紫外-可視光吸収スペクトルである。
図5図5は本発明の実施例1において製造されたアモルファストリプルシェルTa中空球の電子常磁性共鳴スペクトルである。
図6図6は本発明の実施例1において製造されたマルチシェルTa中空球の光熱水蒸発の性能図である。
図7図7は本発明の実施例1において製造されたアモルファストリプルシェルTa中空球がウラン含有溶液の光熱蒸発浄化に用いられる前後の濃度の比較図である。
図8図8は本発明の実施例1において製造されたアモルファストリプルシェルTa中空球が偽ウイルスSC2-P含有溶液の光熱蒸発浄化に用いられる前後の濃度の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、具体的な実施形態によって本発明を更に詳しく説明する。
【0038】
本発明は、アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法を提供し、前記方法は、
0.1~6M濃度の炭素源水溶液を175~220℃の反応釜に入れて100~180min水熱反応し、自然冷却して吸引濾過し、且つ2~5回洗浄した後、生成物を60~100℃で6~24h乾燥して、炭素球テンプレートを得る、ステップ(a)と、
ステップ(a)において得られた炭素球テンプレートを0.01~0.5M濃度の第1金属塩溶液に分散し、第1金属塩溶液を塩化タンタル溶液、硝酸タンタル溶液、硫酸タンタル溶液、アセチルアセトナトタンタル溶液、シュウ酸タンタル溶液、タンタルエトキシド溶液のうちの1つ又は少なくとも2つの組み合わせとし、20~60℃で1~48h加熱吸着し、吸着後の混合液を遠心分離し、下層の固体を取り出して脱イオン水、メタノール又はエタノールで2~5回洗浄し、60~100℃で6~24h乾燥して、第1固体前駆体を得る、ステップ(b)と、
ステップ(b)において得られた第1固体前駆体を0.5~5M濃度の第2金属塩溶液に分散し、第2金属塩溶液を塩化タンタル溶液、硝酸タンタル溶液、硫酸タンタル溶液、アセチルアセトナトタンタル溶液、シュウ酸タンタル溶液、タンタルエトキシド溶液のうちの1つ又は少なくとも2つの組み合わせとし、20~60℃で4~24h撹拌吸着して吸引濾過し、脱イオン水、メタノール又はエタノールで2~5回洗浄し、0.5~24h洗浄し、60~100℃で6~24h乾燥して、固体前駆体を得る、ステップ(c)と、
ステップ(c)において得られた固体前駆体をマッフル炉又は窯炉に置いて空気、又は酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス中の酸素ガスの比率が5~40%の雰囲気下で0.5~10h焙焼し、焙焼温度を200~600℃とし、昇温速度を0.1~20℃/minとし、冷却して前記アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料を得る、ステップ(d)と、を含む。
【0039】
実施例1
アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法であって、前記方法は、
1.5M濃度の蔗糖水溶液を200℃の反応釜に入れて135min水熱反応し、自然冷却して吸引濾過し、且つ水で3回洗浄し、生成物を60℃のオーブンに置いて24h乾燥して、2.9μm直径の炭素球テンプレートを得る、ステップ(1)と、
ステップ(1)において得られた炭素球テンプレートを30mLの0.1M濃度のTaCl溶液に分散し、超音波にて炭素球を均一に分散させてビーカーに入れて、30℃の水浴に置いて4h加熱吸着し、吸着後の混合液を遠心分離し、下層の固体を取り出して脱イオン水で3回洗浄し、60℃のオーブンに入れて24h乾燥して、第1固体前駆体を得る、ステップ(2)と、
ステップ(2)において得られた第1固体前駆体を0.5M濃度のTaCl溶液に分散し、40℃で24h撹拌吸着して吸引濾過し、脱イオン水で3回洗浄し、60℃のオーブンに入れて24h乾燥して第2固体前駆体を得る、ステップ(3)と、
ステップ(3)において得られた固体前駆体をマッフル炉に置いて0.5℃/minで500℃まで昇温し、か焼(calcination)雰囲気を窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスとし、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス中の酸素ガスの比率を15%とし、恒温で2h焙焼し、自然冷却してトリプルシェル(Triple shell)Ta中空球を得て、シェルの寸法が約0.8μmである、ステップ(4)と、を含む。
【0040】
生成物の透過型電子顕微鏡写真は図1に示され、アモルファストリプルシェル中空球である。図5に示すように、異なるか焼(calcination)温度で形成したトリプルシェル中空球の電子常磁性共鳴スペクトルにおいて、400℃、500℃、600℃でか焼(calcination)して形成したアモルファスマルチシェルはg=2.002で積分面積が増加してから減少し、欠陥含有量が増加してから減少する。図4における吸収スペクトルの結果は以上の法則に合致し、500℃で紫外可視近赤外吸収率が最大に達する。且つ、図6に示すように、100mW/cmソーラーシミュレーターの照射によって1.6kg/mhの蒸発速度で効率的な表面水蒸発を行うことができる。且つ、48hを超える反応安定性を取得することができ、その性能が報道におけるナノ粒子よりも遥かに高い。更に、蒸発水源をウラン含有の放射性廃水及び偽ウイルス(SC2-P)含有の培養液に広げる。蒸発前後に水中のウランの含有量がICPで特徴付けされ、特徴付け結果が図7に示される。200ppmから8*10-5ppmまで低減する。ウランの濃度がほぼ6つのレベル低減し、完全にWHOの標準に合う。蒸発前後にSC2-P含有溶液の濃度がPCRを用いてウイルス数を増幅定量する。特徴付け結果は図8に示される。10particles/mLから蒸発にて11.8particles/mLまで低減して(蒸発後に収集した溶液を100倍濃縮した後の結果)ウイルスの濃度が6つのレベルで低減する。
【0041】
実施例2
アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法であって、前記方法は、
2.5M濃度の蔗糖水溶液を180℃の反応釜に入れて130min水熱反応し、自然冷却して吸引濾過し、且つ水で2回洗浄し、生成物を70℃のオーブンに置いて24h乾燥して、2.7μm直径の炭素球テンプレートを得る、ステップ(1)と、
ステップ(1)において得られた炭素球テンプレートを30mLの0.2M濃度のアセチルアセトナトタンタル溶液に分散し、超音波にて炭素球を均一に分散させてビーカーに入れて、40℃の水浴に置いて3h加熱吸着し、吸着後の混合液を遠心分離し、下層の固体を取り出して脱イオン水で3回洗浄し、60℃のオーブンに入れて24h乾燥して、第1固体前駆体を得る、ステップ(2)と、
ステップ(2)において得られた第1固体前駆体を1M濃度のTaCl溶液に分散し、60℃で12h撹拌吸着して吸引濾過し、脱イオン水で3回洗浄し、70℃のオーブンに入れて12h乾燥して第2固体前駆体を得る、ステップ(3)と、
ステップ(3)において得られた第2固体前駆体をマッフル炉に置いて空気中で3℃/minで600℃まで昇温し、恒温で1h焙焼し、自然冷却してトリプルシェルTa中空球を得て、シェルの寸法が約0.8μmである、ステップ(4)と、を含む。
【0042】
100mW/cmソーラーシミュレーターの照射によって、1.4kg/mhの蒸発速度で効率的な表面水蒸発を行うことができる。
【0043】
実施例3
アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法であって、前記方法は、
1.5M濃度の蔗糖水溶液を195℃の反応釜に入れて150min水熱反応し、自然冷却して吸引濾過し、且つ水で4回洗浄し、生成物を70℃のオーブンに置いて18h乾燥して、2.5μm直径の炭素球テンプレートを得る、ステップ(1)と、
ステップ(1)において得られた炭素球テンプレートを30mLの0.2M濃度のシュウ酸タンタル溶液に分散して、超音波にて炭素球を均一に分散させてビーカーに入れて、20℃の水浴に置いて10h加熱吸着し、吸着後の混合液を遠心分離し、下層の固体を取り出して脱イオン水で3回洗浄し、60℃のオーブンに入れて24h乾燥して、第1固体前駆体を得る、ステップ(2)と、
ステップ(2)において得られた第1固体前駆体を1M濃度のアセチルアセトナトタンタル溶液に分散し、60℃で12h撹拌吸着して吸引濾過し、脱イオン水で3回洗浄し、70℃のオーブンに入れて12h乾燥して第2固体前駆体を得る、ステップ(3)と、
ステップ(3)において得られた第2固体前駆体をマッフル炉に置いて、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス中の酸素ガスの比率が35%の雰囲気下で16℃/minで600℃まで昇温し、恒温で1h焙焼し、自然冷却してトリプルシェルTa中空球を得て、シェルの寸法が約0.8μmである、ステップ(4)と、を含む。
【0044】
100mW/cmソーラーシミュレーターの照射によって、1.3kg/mhの蒸発速度で効率的な表面水蒸発を行うことができる。
【0045】
実施例4
アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法であって、前記方法は、
5M濃度の蔗糖水溶液を200℃の反応釜に入れて110min水熱反応し、自然冷却して吸引濾過し、且つ水で3回洗浄し、生成物を80℃のオーブンに置いて24h乾燥して、2.5μm直径の炭素球テンプレートを得る、ステップ(1)と、
ステップ(1)において得られた炭素球テンプレートを30mLの0.1M濃度のタンタルエトキシド溶液に分散し、超音波にて炭素球を均一に分散させてビーカーに入れて、20℃の水浴に置いて4h加熱吸着し、吸着後の混合液を遠心分離し、下層の固体を取り出して脱イオン水で3回洗浄し、60℃のオーブンに入れて24h乾燥して、第1固体前駆体を得る、ステップ(2)と、
ステップ(2)において得られた第1固体前駆体を3M濃度の五塩化タンタル溶液に分散して、50℃で12h撹拌吸着して吸引濾過し、脱イオン水で3回洗浄し、70℃のオーブンに入れて12h乾燥して第2固体前駆体を得る、ステップ(3)と、
ステップ(3)において得られた第2固体前駆体をマッフル炉に置いて、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス中の酸素ガスの比率が40%の雰囲気下で2℃/minで400℃まで昇温し、恒温で1h焙焼し、自然冷却してトリプルシェルTa中空球を得て、シェルの寸法が約0.8μmである、ステップ(4)と、を含む。
【0046】
100mW/cmソーラーシミュレーターの照射によって、1.5kg/mhの蒸発速度で効率的な表面水蒸発を行うことができる。
【0047】
実施例5
アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法であって、前記方法は、
3M濃度の蔗糖水溶液を210℃の反応釜に入れて130min水熱反応し、自然冷却して吸引濾過し、且つ水で5回洗浄し、生成物を90℃のオーブンに置いて10h乾燥して、3μm直径の炭素球テンプレートを得る、ステップ(1)と、
ステップ(1)において得られた炭素球テンプレートを30mLの0.3M濃度の硫酸タンタルアセトン溶液に分散し、超音波にて炭素球を均一に分散させてビーカーに入れて、50℃の水浴に置いて4h加熱吸着し、吸着後の混合液を遠心分離し、下層の固体を取り出して脱イオン水で3回洗浄し、60℃のオーブンに入れて24h乾燥して、第1固体前駆体を得る、ステップ(2)と、
ステップ(2)において得られた第1固体前駆体を3M濃度の五塩化タンタル溶液に分散して、50℃で12h撹拌吸着して吸引濾過し、脱イオン水で3回洗浄し、70℃のオーブンに入れて12h乾燥して第2固体前駆体を得る、ステップ(3)と、
ステップ(3)において得られた第2固体前駆体をマッフル炉に置いて、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス中の酸素ガスの比率が30%の雰囲気下で5℃/minで250℃まで昇温し、恒温で1h焙焼し、自然冷却してトリプルシェルTa中空球を得て、シェルの寸法が約1μmである、ステップ(4)と、を含む。
【0048】
100mW/cmソーラーシミュレーターの照射によって、1.2kg/mhの蒸発速度で効率的な表面水蒸発を行うことができる。
【0049】
実施例6
アモルファス金属酸化物の中空マルチシェル材料の製造方法であって、前記方法は、
2M濃度の蔗糖水溶液を200℃の反応釜に入れて160min水熱反応し、自然冷却して吸引濾過し、且つ水で3回洗浄し、生成物を60℃のオーブンに置いて24h乾燥して、2.8μm直径の炭素球テンプレートを得る、ステップ(1)と、
ステップ(1)において得られた炭素球テンプレートを30mLの0.5M濃度の五塩化タンタルアセトン溶液に分散し、超音波にて炭素球を均一に分散させてビーカーに入れて、30℃の水浴に置いて12h加熱吸着し、吸着後の混合液を遠心分離し、下層の固体を取り出して脱イオン水で3回洗浄し、60℃のオーブンに入れて24h乾燥して、第1固体前駆体を得る、ステップ(2)と、
ステップ(2)において得られた第1固体前駆体を4M濃度の五塩化タンタルアセトン溶液に分散し、40℃で24h撹拌吸着して吸引濾過し、脱イオン水で3回洗浄し、70℃のオーブンに入れて12h乾燥して第2固体前駆体を得る、ステップ(3)と、
ステップ(3)において得られた第2固体前駆体をマッフル炉に置いて、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス中の酸素ガスの比率が10%の雰囲気下で10℃/minで550℃まで昇温し、恒温で1h焙焼し、自然冷却してトリプルシェルTa中空球を得て、シェルの寸法が約1μmである、ステップ(4)と、を含む。
【0050】
本発明において詳しく説明しない内容は、いずれも本分野の通常の技術知識を用いてもよい。
【0051】
最後に説明すべきことは、以上の実施例は、単に本発明の技術案を説明するためのものであって、制限のためのものではない。実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者であれば理解されるように、本発明の技術案に対して行われる修正又は等価置換は、いずれも本発明の技術案の主旨及び範囲から逸脱することなく、それらはいずれも本発明の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】