(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】推進翼後縁の排気領域制御
(51)【国際特許分類】
F02K 1/08 20060101AFI20240220BHJP
B64D 33/04 20060101ALI20240220BHJP
F02K 1/12 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
F02K1/08
B64D33/04
F02K1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553951
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 IB2022051659
(87)【国際公開番号】W WO2022185165
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523336099
【氏名又は名称】ウィスパー エアロ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク ダグラス ムーア
(72)【発明者】
【氏名】イアン アンドレアス ヴィラ
(72)【発明者】
【氏名】デヴォン ジェダムスキ
(57)【要約】
推進機および排気口領域制御機構を備える推進機システムが記載される。排気口領域制御機構は、推進機の出口に接続され、空気が推進機システムを出る面積を変化させるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推力を生成するように構成された推進機ファンの出口に接続するように構成された第1の端部であって、推進機ファンの出口の断面形状と実質的に一致する第1の断面形状を有する第1の端部と、
前記第1の断面形状とは異なる第2の断面形状を有する第2の端部であって、推進機ファンによって生成された排気を排気制御システムの前記第2の端部から出るように構成された第2の端部と、
前記排気制御システムの前記第2の端部の面積を第1の面積から前記第1の面積よりも小さい第2の面積に変化させるように構成された排気口領域制御機構と、
を備える、排気制御システム。
【請求項2】
前記排気口領域制御機構は、前記排気制御システムの前記第2の端部に接続された複数のフラッペロンを備える、請求項1に記載の排気制御システム。
【請求項3】
前記排気制御システムが、前記第1の断面形状を有する前記第1の端部から、前記第1の断面形状とは異なる前記第2の断面形状を有する前記第2の端部に移行するように構成された移行部であって、前記移行部が、前記第1の端部および前記第2の端部を含む、移行部、をさらに備え、
前記複数のフラッペロンのそれぞれは、前記移行部の前記第2の端部における複数の縁部の1つに接続される、請求項2に記載の排気制御システム。
【請求項4】
前記複数のフラッペロンの少なくとも1つが、前記複数のフラッペロンの別の1つとは独立に作動するように構成される、請求項2に記載の排気制御システム。
【請求項5】
前記複数のフラッペロンは同時に作動するように構成される、請求項2に記載の排気制御システム。
【請求項6】
前記複数のフラッペロンは、前記第2の端部の面積が減少し、それによって推進機ファンの推力が減少するように、前記第2の端部の中心に向かって作動するように構成され、前記複数のフラッペロンは、前記第2の端部の面積が増加し、それによって推進機ファンの推力が増加するように、前記第2の端部の前記中心から離れるよう作動するように構成される、請求項2に記載の排気制御システム。
【請求項7】
前記第1の断面形状が円形断面を含み、前記第2の断面形状が矩形断面を含む、請求項2に記載の排気制御システム。
【請求項8】
推力を生成する推進機ファンに接続するように構成された第1の端部と、
前記第1の端部の反対側の第2の端部と、
前記第1の端部と前記第2の端部との間に配置された中間部であって、前記中間部が、前記第1の端部の直径および前記第2の端部の直径よりも大きい直径を有する、中間部と、
前記第1の端部に配置された排気口領域制御機構であって、前記排気口領域制御機構は、推進機ファンの出口内の前記中間部の位置が変化し、それによって推進機ファンの出口の面積が変化するように、排気制御システムの長さを調整するように構成される、前記排気口領域制御機構と、
を備える、排気制御システム。
【請求項9】
前記排気口領域制御機構は、
前記第1の端部に配置された複数の重なる同心円状の環部であって、前記複数の同心円状環部の各々の少なくとも一部が、前記複数の同心円状環部の別の1つの一部と重なる、前記複数の重なる同心円状環部と、を備え、
前記排気制御システムの前記長さは、前記複数の同心円状環部の間の重なりの量の調整に対応して調整される、請求項8に記載の排気制御システム。
【請求項10】
前記第2の端部に接続された制御機構であって、前記複数の同心円状環部の間の前記重なりの量を調整して、推進機ファンの出口の面積を変化させるように構成される、制御機構、をさらに備える、請求項9に記載の排気制御システム。
【請求項11】
前記制御機構は、前記中間部が前記第1の端部により近くなるよう、前記排気制御システムの前記長さを短くするために、前記複数の同心環部間の前記重なりの量を増加させるように構成され、それによって、推進機ファンの出口の面積を増加させて推力を増加させる、請求項10に記載の排気制御システム。
【請求項12】
前記制御機構は、前記中間部が前記第1の端部から遠くなるよう、前記排気制御システムの長さを増加させるために、前記複数の同心環部間の前記重なりの量を減少させるように構成され、それによって、推進機ファンの出口の面積を減少させて推力を減少させる、請求項10に記載の排気制御システム。
【請求項13】
推力を生成するように構成された推進機ファンであって、第1の断面形状を有する出口を含む推進機ファンと、
推進機システムの出口の面積を変化させるように構成された排気制御システムであって、前記排気制御システムは、
前記推進機ファンの前記出口に接続された入口であって、前記推進機ファンの前記出口と前記排気制御システムの前記入口が第1の断面形状を有する、入口と、
前記第1の断面形状とは異なる第2の断面形状を有する出口であって、前記推進機ファンによって生成された排気を、前記排気制御システムの前記出口から出るように構成された出口と、
前記排気制御システムの前記出口の面積を第1の面積から前記第1の面積よりも小さい第2の面積に変化させるように構成された第1の排気口領域制御機構と、
を備える、推進機システム。
【請求項14】
前記第1の排気口領域制御機構は、前記排気制御システムの前記出口に接続された複数のフラッペロンを備える、請求項13に記載の推進機システム。
【請求項15】
前記排気制御システムは、
前記排気制御システムが、第1の断面形状を有する前記入口から、前記第1の断面形状とは異なる第2の断面形状を有する前記出口に移行するように構成された移行部、を備え、
前記複数のフラッペロンのそれぞれは、前記移行部の前記出口における複数の縁部の1つに接続される、請求項14に記載の推進機システム。
【請求項16】
前記複数のフラッペロンの少なくとも1つが、前記複数のフラッペロンの別の1つとは独立に作動するように構成される、請求項14に記載の推進機システム。
【請求項17】
前記複数のフラッペロンはそれらが同時に作動するように構成される、請求項14に記載の推進機システム。
【請求項18】
前記複数のフラッペロンは、前記排気制御システムの前記出口の中心に向かって作動し、それによって前記排気制御システムの前記出口の面積が減少して、前記推進機ファンの推力が減少するように構成され、前記複数のフラッペロンは、前記排気制御システムの前記出口の前記中心から離れるよう作動し、それによって前記排気制御システムの前記出口の前記面積が増加して、前記推進機ファンの推力が増加するように構成される、請求項14に記載の推進機システム。
【請求項19】
前記第1の断面形状が円形断面を含み、前記第2の断面形状が矩形断面を含む、請求項13に記載の推進機システム。
【請求項20】
前記推進機ファンの前記出口内に配置された第2の排気制御システムをさらに備え、前記第2の排気制御システムの長さは、前記推進機ファンの前記出口の面積を変化させるように調整される、請求項13に記載の推進機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月3日に出願された米国仮特許出願第63/155,968号、2021年3月3日に出願された米国仮特許出願第63/156,063号、2021年3月3日に出願された米国仮特許出願第63/156,067号、および2021年3月3日に出願された米国仮特許出願第63/156,076号の優先権を主張し、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、可変排気口領域を有する、ダクト移送推進機に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の推進機は、入口端および出口端の両方に円形またはその他の円状の断面を有する。円形形状の全体にわたる連続性によって推進機を通る滑らかな空気の流れが可能となり得るが、円形断面の出口を有することは出口領域を扱うことができる方法を制限する。円形出口断面を有するいくつかの従来例は、推進機の出口領域を制御するためにスライドプレートを用いる。しかしながら、出口が円形断面であるため、円形出口に沿ったスライドプレートの配置やスライドプレートの制御が複雑になる。
【発明の概要】
【0004】
推進ファンシステムが開示される。一実施形態では、推進機ファンシステムには、排気制御システムおよび推進機ファンが含まれる。排気制御システムは、推進機ファンに接続され、推進機ファンシステムの排気面積を変化させるように構成される。排気面積を変化させることによって、推力の大きさおよび/または推力方向を調整することができる。
【0005】
一実施形態では、排気制御システムは、第1の端部、第2の端部、および排気面積制御機構を含む。第1の端部は、推力を生成するように構成された推進機ファンの出口に接続されている。第1の端部は、推進機ファンの出口の断面形状に実質的に一致した第1の断面形状を有する。しかし、排気制御システムの第2の端部は、第1の断面形状とは異なる断面形状を有する。排気制御システムの第2の端部の断面形状によって、排気制御システムの第2の端部の面積を変化させるように構成された排気面積制御機構の複雑さが低減される。
【0006】
一実施形態では、排気制御システムは、推進機ファンに接続され、可変長としている。推進機ファンに接続する排気制御システムの端部に配置された排気面積制御機構は、排気制御システムの長さを変化させるように構成されている。排気制御システムの長さが変化するにつれて、推進機ファンの排気面積が変化する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態による推進機ファンの斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、一実施形態による推進機ファンの第1の分解図である。
【
図2B】
図2Bは、一実施形態による推進機ファンの第2の分解図である。
【
図3A】
図3Aは、一実施形態による推進機ファンのダクトリップの斜視図を示す。
【
図3B】
図3Bは、一実施形態による推進機ファンのダクトリップの正面図を示す。
【
図3C】
図3Cは、一実施形態による推進機ファンのダクトリップの側面図を示す。
【
図3D】
図3Dは、一実施形態による推進機ファンのダクトリップの断面図を示す。
【
図4A】
図4Aは、一実施形態による、推進機ファンのノーズコーン断面の斜視図を示す。
【
図4B】
図4Bは、一実施形態による、推進機ファンのノーズコーン断面の正面図を示す。
【
図4C】
図4Cは、一実施形態による、推進機ファンのノーズコーン断面の断面図を示す。
【
図4D】
図4Dは、一実施形態による、推進機ファンのノーズコーン断面の斜視図を示す。
【
図5A】
図5Aは、一実施形態による推進機ファンのハブの正面図を示す。
【
図5B】
図5Bは、一実施形態による推進機ファンのハブの側面図を示す。
【
図6A】
図6Aは、一実施形態による推進機ファンのファン翼の斜視図を示す。
【
図6B】
図6Bは、一実施形態による推進機ファンのファン翼の正面図を示す。
【
図8A】
図8Aは、一実施形態による推進機ファンの固定リングの斜視図を示す。
【
図8B】
図8Bは、一実施形態による推進機ファンの固定リングの正面図を示す。
【
図8C】
図8Cは、一実施形態による推進機ファンの固定リングの側面図を示す。
【
図9A】
図9Aは、一実施形態による推進機ファンの張力リングの斜視図を示す。
【
図9B】
図9Bは、一実施形態による推進機ファンの張力リングの側面図を示す。
【
図10A】
図10Aは、一実施形態による推進機ファンの内部ダクト本体のハウジングの斜視図を示す。
【
図10B】
図10Bは、一実施形態による推進機ファンの内部ダクト本体のハウジングの正面図を示す。
【
図10C】
図10Cは、一実施形態による推進機ファンの内部ダクト本体のハウジングの側面図を示す。
【
図12A】
図12Aは、一実施形態による推進機ファンのテールコーンの斜視図を示す。
【
図12B】
図12Bは、一実施形態による推進機ファンのテールコーンの正面図を示す。
【
図12C】
図12Cは、一実施形態による推進機ファンのテールコーンの側面図を示す。
【
図12D】
図12Dは、一実施形態による推進機ファンのテールコーンの断面図を示す。
【
図13A】
図13Aは、一実施形態による推進機ファンの周縁駆動システムの斜視図を示す。
【
図13B】
図13Bは、一実施形態による推進機ファンの周縁駆動システムの正面図を示す。
【
図13C】
図13Cは、一実施形態による推進機ファンの周縁駆動システムの側面図を示す。
【
図14】
図14は、別の実施形態による推進機ファンの周縁駆動システムを示す。
【
図16】
図16は、一実施形態による推進機ファン配列の例示的な適用を示す。
【
図17A】
図17Aは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む、ホバリングするドローンの正面図を示す。
【
図17B】
図17Bは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む、ホバリングするドローンの側面図を示す。
【
図17C】
図17Cは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む、ホバリングするドローンの上面図を示す。
【
図18A】
図18Aは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む映画ドローンの正面図を示す。
【
図18B】
図18Bは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む映画ドローンの側面図を示す。
【
図18C】
図18Cは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む映画ドローンの上面図を示す。
【
図19A】
図19Aは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む輸送機の正面図を示す。
【
図19B】
図19Bは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む輸送機の側面図を示す。
【
図19C】
図19Cは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む輸送機の上面図を示す。
【
図20A】
図20Aは、一実施形態による推進機ファン配列を含む垂直離着陸(VTOL)航空機の正面図を示す。
【
図20B】
図20Bは、一実施形態による推進機ファン配列を含む垂直離着陸(VTOL)航空機の側面図を示す。
【
図20C】
図20Cは、一実施形態による推進機ファン配列を含む垂直離着陸(VTOL)航空機の上面図を示す。
【
図21A】
図21Aは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む搬送ドローンの正面図を示す。
【
図21B】
図21Bは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む搬送ドローンの側面図を示す。
【
図21C】
図21Cは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む搬送ドローンの上面図を示す。
【
図22】
図22は、第1の実施形態による排気制御システムを有する推進機ファンシステムの第1の斜視図を示す。
【
図23】
図23は、第1の実施形態による排気制御システムを有する推進機ファンシステムの第2の斜視図を示す。
【
図24】
図24は、第1の実施形態による排気制御システムを有する推進機ファンシステムの断面図を示す。
【
図25A】
図25Aは、第1の実施形態による排気制御システムの異なる状態を示す。
【
図25B】
図25Bは、第1の実施形態による排気制御システムの異なる状態を示す。
【
図25C】
図25Cは、第1の実施形態による排気制御システムの異なる状態を示す。
【
図26A】
図26Aは、第2の実施形態による排気制御システムを有する推進機ファンシステムの断面図を示す。
【
図26B】
図26Bは、第2の実施形態による排気制御システムを有する推進機ファンシステムの断面図を示す。
【
図26C】
図26Cは、第2の実施形態による排気制御システムを有する推進機ファンシステムの断面図を示す。
【
図27】
図27は、第2の実施形態による排気制御システムの詳細図を示す。
【
図28】
図28は、第3の実施形態による排気制御システムを有する推進機ファンシステムの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面および以下の説明は、例示のみを目的として特定の実施形態を説明するものである。当業者は、本明細書で示される構造および方法の代替的な実施形態が、本明細書に記載される原理から逸脱することなく用いられ得ることを以下の説明から容易に認識する。いくつかの実施形態を詳細に参照し、その例は、添付図面に図示される。実施可能な場合は、いつでも、同様または類似の参照番号が図で用いられ、同様または類似の機能を示す場合があることに留意されたい。
【0009】
推進機ファンと駆動システム
一実施形態では、推進機ファンおよび駆動システムが開示される。一般に、推進機ファンおよび駆動システムは、推力を生成するように構成される。推進機ファンおよび駆動システムは、航空機からリーフブロワなどの手道具までの様々な用途のための推力を生成するものとすることができる。しかしながら、推進機ファンおよび駆動システムの用途は、本明細書に記載されるものに限定されない。
【0010】
図1は、一実施形態による推進機ファン100の斜視図を示す。一般に、推進機ファン100は、推力生成中に推進機ファン100から出されるノイズをトータルで低減する複数の構成要素を含む。従って、推進機ファン100は、騒音公害を低減する。例えば、推進機ファン100は、複数のファン翼板を含んだ、張力が作用するファン翼を含む。ファン翼に張力をかけることによって、推進機ファンが最大推力を生成しているか、または動作していない(例えば、静止している)かにかかわらず、ファン翼板の角度は実質的に同じ角度に維持される。その結果、従来の推進機ファンと比較して、騒音汚染が低減され、推力効率が向上する。推進機ファン100は、ファン翼板の角度が所定の許容範囲内に維持されることを前提として騒音汚染を低減する。例えば、推進機ファン100は、300フィートのサイドライン/5,000lbfで65dBA未満のノイズを放出する。
【0011】
図2Aは、一実施形態による推進機ファン100の第1の分解図を示し、
図2Bは、一実施形態による推進機ファン100の第2の分解図を示す。推進機ファン100は、
図2Aおよび
図2Bに示されるように複数の異なる構成要素を含む。一実施形態では、推進機ファン100は、ダクトリップ201、ノーズコーン203、ハブ205、ファン翼209、固定リング210(
図8A~
図8Cに示される)、張力リング211、モータ215、本体ハウジング217、複数の外側ケーシング213Aおよび213B、ステータ219、およびテールコーン221を含む。推進機ファン100の他の実施形態は、
図2Aおよび
図2Bに示される以外の他の構成要素を含むことができる。一実施形態では、ダクトリップ201、外側ケーシング213、およびステータ219の一部(例えば、219C)は、
図1に示されるように、全体で、推進機ファンの構成要素を収容する循環ダクトを形成する。
【0012】
図3A、
図3B、
図3C、および
図3Dは、一実施形態による推進機ファン100のダクトリップ201の斜視図、正面図、側面図、及び断面図をそれぞれ示す。一実施形態では、ダクトリップ201は、推進機ファン100に空気の乱れのない流入を与えるように構成される。ダクトリップ201は、一実施形態では、本体ハウジング217に接続されるように構成される。ダクトリップ201は、
図2Bに示されるように、ダクトリップ201の背面に複数の取り付け穴223を含むことができる。留め具(例えば、ナットおよびボルト、リベットなど)は、以下でさらに説明されるように、ダクトリップ201を本体ハウジング217の第1の端部1001に接続するために、取り付け穴223に入れられる。
【0013】
ダクトリップ201は、全体としてダクトリップ201を形成する複数のパネルを含むことができる。例えば、ダクトリップ201は、全体としてダクトリップ201の内面309を形成する第1の複数のパネルを含むことができ、また、ダクトリップ201が、空気をファン翼209に導く中空中心を有するように、ダクトリップ201の外面307を全体として形成する第2の複数のパネルを含むことができる。第1および第2の複数のパネルは、締結具(例えば、ネジ、ナット、ボルト)などの様々な締結手段を介して、または溶接を介して互いに接続され得る。第1および第2の複数のパネルは、アルミニウムまたはチタンなどの金属、または炭素繊維などの複合材料で作ることができる。代替として、ダクトリップ201は、単一の材料から作られてもよく、例えば、3Dプリントで作られてもよい。
【0014】
一実施形態では、ダクトリップ201は、第1の端部303(例えば、入口)および第2の端部305(例えば、出口)を含む。第1の端部303は、空気を受け入れ、空気は、第2の端部305を出る。
図3Cに示されるように、第1の端部303の直径は、第2の端部305の直径よりも小さいが、他の実施形態として同じであってもよい。ダクトリップ201の第1の端部303および第2の端部305の直径は、推進機ファン100の用途に依る。例えば、ダクトリップ201の第1の端部303および第2の端部305の直径は、リーフブロア用途と比較して、航空機用途ではより大きい。
【0015】
図3Dは、一実施形態による、
図3Bに示される平面A-A’に沿ったダクトリップ201の断面図である。上述のように、ダクトリップ201は、外面307および内面309を含む。外面307および内面309は共に、ダクトリップ201の第1の端部303からダクトリップ201の第2の端部305に向かって延在する。空気は、ダクトリップ201の内面309を通って流れる。ダクトリップ201の内面309の曲率311Aおよびダクトリップ201の外面307の曲率311Bは、異なる条件(例えば、クルーズ、離陸、および着陸などの飛行条件)およびレイノルズ数などの様々な要因のバランスをとるように設計されている。当業者は、注目する、速度状況や飛行モードにわたる好ましい圧力勾配のためにダクトリップ半径を適合させることができる。
【0016】
図4A、
図4B、
図4C、および
図4Dは、一実施形態による、推進機ファン100のノーズコーン203の断面の斜視図、正面図、断面図、および斜視図をそれぞれ示す。ノーズコーン203は、近づいて来る気流の挙動に合せて、空気力学的抗力を低減するように構成される。ノーズコーン203はまた、広帯域または音ノイズに大きく影響を与えることなく、冷却空気流量で空気を流す羽根車を備えて構成することもできる。
【0017】
一実施形態では、ノーズコーン203は、ノーズコーン203とモータ215との間に配置されたハブ205によってモータ215に接続するように構成される。ノーズコーン203は、
図2Bに示されるように、ノーズコーン203の背面に複数の取り付け穴を含むことができる。締結具207(例えば、ナットとボルト、リベットなど)は、ノーズコーン203をハブ205の第1の端部に接続するために、取り付け穴に入れられる。以下でさらに説明されるように、締結具207は、ハブ205を通って延在し、モータ215の第1の端部に接続する。
【0018】
一実施形態では、ノーズコーン203は、円錐形である。しかしながら、他の実施形態として、ノーズコーン203は異なる形状を有することができる。
図4Aから
図4Dに示されるように、ノーズコーン203は、ノーズコーン203の第1の端部に開口部403(例えば、穴)を含む。ファン翼209が回転すると、空気がノーズコーン203の開口部403を通って引っ張られ、モータ215を冷却する。内部部品を冷却するために必要な二次流量は、ノーズコーン203の開口部403の内径を決定する。当業者は、この直径を、異なる電動モータの熱要件や、それらを最も制約的な条件、典型的には最大連続動作で、冷却するために必要な空気に依存して導出することができる。
【0019】
図4Cは、一実施形態による、
図4Bに示される平面B-B’に沿ったノーズコーン203の断面図である。一実施形態では、ノーズコーン203は中実ではなく、空洞を含んでいる。例えば、一実施形態では、ノーズコーン203は、空気経路405を備える。空気経路405は、ノーズコーン203の開口部403から、ノーズコーン203の第2の端部(例えば、背面)の円周の周りに配置された複数の開口部407まで延在する。空気は、開口部403から空気経路405を通って流れ、複数の開口部407を出て、モータ215を冷却する。一実施形態では、空気経路405は、
図4Cおよび
図4Dに示されるように、ノーズコーン203の外面409とノーズコーン203内に形成された突起部411との間に形成される。
【0020】
一実施形態では、突起部411は、ノーズコーン203の第2の端部から、ノーズコーン203の開口部403に向かって内側に突出している。突起部411は、ノーズコーン203と同様の形状を有することができる。例えば、突起部411もまた、円錐形状である。しかしながら、他の実施形態として、突起部411は、ノーズコーン203とは異なる形状を有することができる。
【0021】
概して、突起部411は、モータ215を冷却するための流量の空気流に合わせて調整されたサイズおよび形状を有する。一実施形態では、突起部411は、突起部411を通って形成された空気経路413を含み、この経路を通って、空気経路413の開口部415からノーズコーン203の第2の端部の開口部417に空気が流れる。一実施形態では、空気経路413の中心は、ノーズコーン203の開口部403の中心と整列している。
【0022】
図5Aおよび
図5Bは、一実施形態による推進機ファン100のハブ205の正面図および側面図をそれぞれ示す。ハブ205は、推進機ファン100の中心部分であり、以下でさらに説明されるように、ファン翼209の中心に配置される。ハブ205は、一実施形態では、ノーズコーン203、固定リング210、およびモータ215に接続するように構成されている。
【0023】
図5Aから
図5Bに示されるように、一例では、ハブ205は円筒形である。一実施形態では、ハブ205の第1の端部507の直径は、ノーズコーン203の第2の端部の直径と一致する。ハブ205の第1の端部507(例えば、前面)は、ハブ205の厚さ部分を貫くように形成される複数の取り付け穴501A~501Fを含む。取り付け穴501の位置は、ノーズコーン203の第2の端部がハブ205の第1の端部507に接続するときに、取り付け穴501がノーズコーン203の取り付け穴と整列するようになっている。締結具207は、取り付け穴501A~501Fを通り、モータ215の第1の端部(例えば、前面)に接続するように構成されている。例えば、締結具207は、モータ215の第1の端部のねじ穴225にねじ込まれる。
【0024】
一実施形態では、ハブ205はまた、開口部503Aおよび503Bなどの、ハブ205の厚み部分を通って延在する複数の開口部503を含む。複数の開口部503は、ノーズコーン203の後面の開口部407と合致する(例えば、同じである)形状およびサイズを有する。開口部503は、ノーズコーン203とハブ205が互いに接合するときに、ノーズコーン203の後面の開口部407と整列するように構成されている。従って、ノーズコーン203の開口部407から出た空気は、ハブ205の開口部503を通って流れる。一実施形態では、ハブにおける複数の開口部503は、異なるサイズを有する。例えば、開口部503Aは、開口部503Bよりも小さい。
【0025】
一実施形態では、ハブ205はまた、ハブ205の厚み部分を通って延在する開口部505を含む。開口部505は、ハブ205の中心に配置されている。一実施形態では、開口部505の中心は、ノーズコーン203の空気経路413の中心と整列するように構成されている。従って、ノーズコーン203の空気経路413から出た空気流は、ハブ205内の開口部505を通って流れ、モータ215を冷却する。
【0026】
一実施形態では、第1の端部507の反対側にあるハブ205の第2の端部511は、ハブ205の第2の端部511の外周の周りに接続機構509を含む。接続機構509は、ハブ205を固定リング210に接続するように構成されている。一実施形態では、接続機構509は、ハブ205が固定リング210にねじ込まれるようなねじ山である。ハブ205が固定リング210に接続されると、固定リング210は、ハブ205の外周を取り囲む。モータ215は、ハブ205の第2の端部511の外面に接合するように構成されている。
【0027】
一実施形態では、ハブ205は、ハブ205の第1の端部507と第2の端部511との間に配置された中間領域513を含む。一実施形態では、ファン翼209は、ハブ205がファン翼209の中心を通るよう配置されると同時に、中間領域513の円周の周りに位置されるように構成される。
【0028】
図6Aおよび
図6Bは、一実施形態による推進機ファン100のファン翼209の斜視図および正面図をそれぞれ示す。
図6A~
図6Bに示されるように、ファン翼209は、複数の翼板601を含む。ファン翼209に含まれる翼板601の総数は、2~5枚の翼板を有する従来の推進機ファンにおける翼板の数よりも著しく多い。一実施形態では、ファン翼209は、20枚から840枚までの範囲の翼板601を含み得る。しかしながら、5枚を超える数であれば任意の数の翼板を用いることができる。一般に、ファン翼209に含まれる翼板601の総数は用途に応じたものとなる。一実施形態では、多翼ファンの翼板用の材料は、多翼ファンの用途の種類にも依る。翼板は、アルミニウムまたはチタンなどの金属、または炭素繊維などの複合材料で作ることができる。
【0029】
一実施形態では、ファン翼209は、ファン翼209が小さい先端速度(約300~450フィート/秒)で回転するときに、全体的な翼ノイズを低減する。本明細書に記載されるように、張力が作用したファン翼209によって、より多くの翼板が機械的な材料限界内にあってなお、超音波シグネチャおよび小さい亜音速先端速度を達成することが可能となる。さらに、翼板601の数が多いと、音ノイズが人間の可聴性の上限(典型的な成人の場合は16,000Hz以上)を超えた超音波周波数に上昇する。さらに、より多い翼板数による低い翼板荷重はまた、広帯域ノイズを引き起こす渦と渦の衝突の程度を低減する。
【0030】
図6Aおよび
図6Bに示されるように、複数の翼板601は、ハブ205が配置される中空の中心を有した、円形の円環形状を形成するように配置される。それぞれの翼板601は、翼板601の前縁部と後縁部の少なくとも一部が、隣接する翼板601と重なるように配置される。例えば、翼板の前縁部は、その翼板の左側の翼板の後縁部と重なり、翼板の後縁部は、その右翼板の右側の翼板の前縁部と重なり合う。複数の翼板601の重なり合った配置は、流入する空気流に対して機能するための堅牢性を増す。この堅牢性の調整は、局所的な空力効果を考慮し、翼板内および翼板間の流れの層流付着に影響を与える可能性のあるレイノルズ数効果を考慮して調整することができる。
【0031】
図7A、
図7B、
図7C、および
図7Dは、一実施形態による、
図6Aおよび
図6Bに示されるファン翼209における翼板601の斜視図、正面図、側面図、および上面図をそれぞれ示す。一実施形態では、それぞれの翼板601は、第1の固定端部605、第2の固定端部603、および第1の固定端部605と第2の固定端部603との間に配置された翼部607を備える。翼板601は、他の実施形態として本明細書に記載されているもの以外の他の特徴部を含むことができる。
【0032】
一実施形態では、第1の固定端部605は、翼板601の先端に位置する。第1の固定端部605は、張力リング211に挿入され、翼板601を、その先端が引張られるように張力リング211に固定するよう構成される。翼板601の先端を引っ張ることによって、翼板601の先端のピッチ(例えば、角度)は、推力生成中、または推進機ファン100が停止している間に実質的に同じにすることができ、それによって騒音汚染を低減する。
【0033】
図7A~
図7Dに示されるように、第1の固定端部605は、面取りされた縁部を有する長方形形状であるが、他の形状を第1の固定端部605に用いることができる。一実施形態では、第1の固定端部605は、翼部607の先端の幅および厚さよりも大きい幅および厚さを有する。しかしながら、他の実施形態では、第1の固定端部605は、翼板601の先端と同じ幅またはより狭くてもよい。当業者は、張力による局所的な応力およびひずみを考慮して、縁部、面取り、表面処理、およびベゼル処理を調整することができる。
【0034】
一実施形態では、第2の固定端部603は、翼板601の根元に配置される。第2の固定端部603は、固定リング210に挿入され、翼板601を固定リング210に固定するように構成される。翼板601の根元を引っ張ることによって、翼板601の根元のピッチ(例えば、角度)は、推力生成中、または推進機ファン100が停止している間、実質的に同じであり、それによって騒音汚染を低減することができる。
図7A~
図7Dに示されるように、第2の固定端部603は、複数の異なる面(例えば、直線状の面および湾曲面)を有して、翼板のたわみを低減するように固定リング210に接触する面積を増加させる。一実施形態では、第2の固定端部603は、翼板601の根元部分よりも大きく、第1の固定端部605の幅よりも広い幅を有する。しかしながら、他の実施形態では、第2の固定端部603は、翼板601の根元と同じ幅または狭くてもよい。
【0035】
翼部607は、第1の固定端部605と第2の固定端部603との間に位置する。一実施形態では、翼部607は、翼部607内に幾何学的ねじれ部609を有する。幾何学的ねじれ部609は、翼板601の根元を基準に測定される、翼部の入射角の変化である。すなわち、翼部607は、幾何学的ねじれ部609によって、翼部607の長さ方向にわたって複数の異なる入射角となる。例えば、翼部607は、幾何学的ねじれ部609の第1の側部(例えば、
図7A~
図7Cの幾何学的ねじれ部609の下側)に第1の入射角を有し、幾何学的ねじれ部609の第2の側部(例えば、
図7A~
図7Cの幾何学的ねじれ部609の上側)に第2の入射角を有し得る。
【0036】
幾何学的ねじれ部609の結果として、第1の固定端部605および第2の固定端部609は、
図7Dに示されるように、翼板601の上面から見たときに互いにずれている。一実施形態では、幾何学的ねじれ部609は、翼板601の先端よりも翼板601の根元に近い、翼部607の一部分から開始する。根元の翼弦と先端の翼弦との間の幾何学的ねじれ609は、45度まで変化し得る。
【0037】
図6Aおよび
図6Bに戻って参照すると、一実施形態では、翼板601は、第2の固定端部603が円周の周りで互いに対して平行に配置され、それによってファン翼209の中心に穴を形成する。その結果、第1の固定端部605も互いに平行に配置され、各翼板601の翼部607は、翼部607における幾何学的ねじれ部609によって、隣接する翼板601の他の翼部と重なる。
【0038】
図8A、
図8B、および
図8Cは、一実施形態による推進機ファン100の固定リング210の斜視図、正面図、および側面図をそれぞれ示す。一般に、固定リング210は、ファン翼209およびハブ205に接続するように構成され、翼板601の根元に有益な張力を作用する。従って、ファン翼209の翼板601には、動作中に翼板601の角度を維持するために、先端および根元の両方で張力が作用する。固定リング210は、アルミニウムまたはチタンなどの金属、または炭素繊維などの複合材料で作ることができる。
【0039】
固定リング210は、第1の端部801および第2の端部803を含む。一実施形態では、第1の端部801は、第2の端部803の直径よりも小さい直径を有し、それによって円錐形状を形成する。この形状の調整は、ファンへの一次内部流(すなわち、冷却流ではない)の必要性によって行われ、また、ファンの存在下で中央本体に沿った任意の境界層圧力勾配を考慮してもよい。一実施形態では、固定リング210の第1の端部801は、ファン翼209を固定リング210に直接接続するように構成され、それによって、ファン翼209を固定リング210に固定することができる。固定リング210の第1の端部801は、複数の固定歯805を備える。一実施形態では、固定歯805は、固定リング210の本体から、固定リングの第2の端部803に垂直な基準に対してある角度で延在する突起である。
【0040】
複数のスロット807は、固定歯805によって形成される。例えば、スロット807は、固定歯805Aと固定歯805Bを含む一対の固定歯の間に形成される。スロット807は、ファン翼209における第2の固定端部603の寸法に合った幅および深さを有する。スロット807は、例えば、固定リング210の厚さの4分の3など、固定リング210の厚さ部分を部分的に通って延在する。
【0041】
一実施形態では、複数のスロット807のそれぞれは、ファン翼209の複数における翼板601の対応する1つに接続するように構成される。特に、それぞれの翼板601の第2の固定端部603は、スロット807の1つに挿入され、それによって、第2の固定端部603の面とスロットを形成する固定歯805との直接接触を介して、翼板601を固定リング210に固定する。一実施形態では、エポキシなどの締結具もまた、各翼板601の第2の固定端部603に付与され、翼板601と固定リング210との間の接続をさらに強化する。翼板601の第2の固定端部603を固定リング210に固定することによって、翼板601の根元のピッチは、推力生成中または停止中に実質的に同じに維持され、それによって、ピッチの変化が人間の耳に知覚可能であるため、推進機ファン100から放出される可聴ノイズを低減することができる。
【0042】
一実施形態では、固定リング210の第2の端部803は、固定リング210の第2の端部803の内周に接続機構809を備える。接続機構809は、例えば、固定リング210を、ハブ205の接続機構509に接続するように構成されている。一実施形態では、接続機構809は、ハブ205の接続機構509のねじ山に合うねじ山であり、それによって、ハブ205が固定リング210にねじ込まれることが可能となる。モータ215がハブ205に接続されているので、ハブ205は回転し、それによって固定リング210およびファン翼209も回転する。
【0043】
図9Aおよび
図9Bは、一実施形態による推進機ファン100の張力リング211の斜視図および側面図をそれぞれ示す。張力リング211は、ファン翼209の円周の周りに配置されることによって、ファン翼209に接続するように構成されている。より具体的には、張力リング211は、一実施形態による、ファン翼209の第1の固定端部605の総てに接続するように構成されている。翼板601の第1の固定端部605を張力リング211に固定することによって、翼板601の先端のピッチは、推力生成中または停止中に実質的に同じ値に維持され、それによって、ピッチの変化が人間の耳に知覚可能であるため、推進機ファン100から放出される可聴ノイズを低減することができる。従って、張力リング211を用いて翼板601に前もって張力を作用させることは、先端の隙間に起因する非効率性を低減する。一実施形態では、張力リング211は、アルミニウムまたはチタンなどの金属、または炭素繊維などの複合材料で作られる。しかしながら、他の実施形態として、他の材料を用いることもできる。
【0044】
図9Aおよび
図9Bに示されるように、張力リング211は、第1の端部903および第2の端部905を備える。一実施形態では、第1の端部903は、第2の端部905の直径と実質的に同じ直径を有する。張力リング211の本体909は、第1の端部903と第2の端部905との間に配置される。
【0045】
一実施形態では、張力リング211の本体909は、張力リング211の厚みの全体を通って延在する複数の開口部(例えば、スロット)907を含む。それぞれの開口部907は、複数の翼板601のうちの1つの第1の固定端部605に接続するように構成されている。従って、張力リング211のそれぞれの開口部907と翼板601との間には、1対1の関係がある。一実施形態では、エポキシなどの締結具もまた、各翼板601の第1の固定端部605に付与され、翼板601と張力リング210との間の接続をさらに強化する。
【0046】
一実施形態では、複数の開口部907は、第1の端部903または第2の端部905に垂直な基準に対して角度を付けて形成される。開口部907が形成される角度は、翼板601の第1の固定端部605のピッチに合致する。開口部907の寸法は、第1の固定端部605が張力リング211の開口部907に挿入されて、第1の固定端部605が張力リング211と直接接触すると、第1の固定端部605が張力リング211に固定されるように、第1の固定端部605の寸法と実質的に一致する。
【0047】
図10A、
図10B、および
図10Cは、一実施形態による推進機ファン100の内部ダクト本体ハウジング217(以下、“本体ハウジング”と称する)の斜視図、正面図、および側面図をそれぞれ示す。一実施形態では、本体ハウジング217は、推進機ファン100の構成要素を収容する(例えば、部分的に取り囲む)ように構成されている。例えば、一実施形態では、ファン翼209、ハブ205、張力リング211、固定リング210、およびモータ215は、本体ハウジング217内に収容される。他の実施形態では、推進機ファン100の他の構成要素は、本体ハウジング217内に収容することができる。一実施形態では、本体ハウジング217は、アルミニウムまたはチタンなどの金属、または炭素繊維などの複合材料で作られる。しかしながら、他の実施形態として、他の材料を用いることもできる。
【0048】
一実施形態では、本体ハウジング217は、円筒形状であり、第1の端部1001(例えば、入口)および第2の端部1003(例えば、出口)を含む。第1の端部1001は、一実施形態では、第2の端部1003の直径よりも大きい直径を有する。第1の端部1001は、本体ハウジング217の第1の端部1001の円周の周りに形成される複数の取り付け穴1005を含む。一実施形態では、本体ハウジング217の第1の端部1001は、ダクトリップ201の取り付け穴223が本体ハウジング217の取り付け穴1005と整列するようにしてダクトリップ201の第2の端部305に接続するように構成されている。上述したように、締結具207は、ダクトリップ201をダクト本体ハウジング217の第1の端部1001に固定するために用いることができる。
【0049】
一実施形態では、本体ハウジング217の第2の端部1003は、本体ハウジング217の第2の端部1003の円周の周りに形成される複数の取り付け穴1007を含む。一実施形態では、本体ハウジング217の第2の端部1003は、ステータ219の第1の端部(例えば、入口)に接続するように構成されている。本体ハウジング217の第2の端部1003がステータ219の第1の端部に接続されている間、本体ハウジング217の第2の端部1003の取り付け穴1007は、ステータ219の第1の端部の取り付け穴と整列している。締結具(例えば、ナット、ボルト、リベット)を用いて、本体ハウジング217の第2の端部1003をステータ219の第1の端部に固定することができる。
【0050】
一実施形態では、本体ハウジング217は、それぞれが推進機ファンの異なる構成要素を収容するように構成された複数の中間部分1009を備える。複数の中間部分1009は、第1の端部1001から延在する第1の中間部分1009Aと、第2の端部1003から延在する第2の中間部分1009Bと、を含む。本体ハウジング217の中間部分1009は、本体ハウジング217の第1の端部1001と第2の端部1003との間に位置する。
【0051】
図10Cに示されるように、第1の中間部分1009Aは、第2の中間部分1009Bの直径とは異なる直径を有する。例えば、第1の中間部分1000Aの直径は、第2の中間部分1000Bの直径よりも大きい。さらに、第1の中間部分1009Aは、第1の端部1001よりも小さい直径を有し、第2の中間部分1009Bは、第2の端部1003よりも小さい直径を有する。
【0052】
一実施形態では、第1の中間部分1009Aは、ハブ205、ファン翼209、固定リング210、および張力リング211を収容するように構成されている。張力リング211は、第1の中間部分1009Aに収容される構成要素のうち最大直径を有するため、第1の中間部分1009Aの直径は、張力リング211の直径に基づいている。一実施形態では、第1の中間部分1009Aの直径は、張力リング211の直径と実質的に同じであり、それによって、例えば、圧入によって、張力リング211が第1の中間部分1000A内にしっかりと固定されることが可能となる。
【0053】
一実施形態では、第2の中間部分1009Bは、モータ215およびステータ219の一部を収容するように構成されている。第2の中間部分1009Bの長さは、モータ215の長さおよび中間部分に収容されるステータ219の部分の長さに基づいている。第2の中間部分1000Bは、モータ215およびステータ219の一部を第2の中間部分1009Bに含むようにするために、モータ215およびステータ219の一部と少なくとも同じ長さを有する。一実施形態では、第2の中間部分1009Bの直径は、ステータ219に出入りする空気の流量に基づいている。当業者は、この直径を、流体の剥離または渦を最小限にするよう、複数の、目的の設計速度にわたって好ましい圧力勾配を誘導するために調整することができる。第2の中間部分1009Bの内部空洞はまた、ノイズを低減するように調整することもできる。
【0054】
図11A、
図11B、
図11C、および
図11Dは、一実施形態による推進機ファン100のステータ219の斜視図、正面図、側面図、および断面図をそれぞれ示す。一実施形態では、ステータ219は、複数のステータ翼板219A、モータハウジング219B、およびステータハウジング219Cを備える。ステータ219は、他の実施形態では、
図11A~
図11Dに示される構成要素以外の構成要素を含むことができる。
【0055】
一実施形態では、モータハウジング219Bは、円筒形状であり、
図11Dに示されるように、第1の端部1101および第2の端部1103を含む。
図11Dは、一実施形態による、
図11Bの平面C-C’に沿ったステータ219の断面図を示す。
図11Dに示されるように、モータハウジング219Bは、第1の端部1101と第2の端部1103との間に位置する空洞1105を含む。空洞1105は、第1の端部1101から第2の端部1103に向かって延在し得るが、第2の端部1103までは延在していない。一実施形態では、空洞1105は、モータ215を収容するように構成されている。すなわち、モータ215は、モータハウジング219Bの空洞1105内に配置される。従って、空洞1105の形状およびサイズは、モータ215の形状およびサイズに依る。モータ215が空洞1105内に配置され、モータ215がハブ205に間接的に接続されるので、ステータ219はまた、ハブ205および推進機100の他の構成要素を支持するための構造構成要素として機能する。
【0056】
一実施形態では、モータハウジング219Bは、
図11Bおよび
図11Dに示されるように、モータハウジング219Bの中心を通る穴1113を含む。穴1113の直径は、モータ215が穴1113を通って落下するのを防ぐように、モータ215の直径よりも小さい。穴1113は、モータハウジング219B内に位置し、放熱を補助し、それによってモータ215を冷却する。
【0057】
図11Bを参照すると、ステータ219は、複数のステータ翼板219Aを含む。ステータ翼板219Aは、モータハウジング219Bから放射状に延在する。すなわち、それぞれの翼板219Aの根元は、モータハウジング219Bに接続され、ステータ翼板219の翼は、モータハウジング219Bから外向きに延在する。一実施形態では、それぞれの翼板219Aは、ステータ翼板219Aが延在する、モータハウジング219B上の根元の点から垂直に延びる基準線を基準として測定された角度で、モータハウジング219Bから離れるように延在する。
【0058】
一実施形態では、ステータ翼板219Aは、モータ215から離れるように熱を伝導する。翼板219Aは、モータ215を収容するモータハウジング219Bに接触しているので、翼板219Aを通りすぎる空気は、モータ215によって生成された熱を放散する。一実施形態では、翼板219Aの配置構成はまた、ファン翼209によって生成されるノイズを低減し、推進機ファン100によって生成される推力を制御する。ステータ翼板219Aの翼板数は、ステータの高調波がファン翼209の高調波を相殺するように選択することができる。超音波ファンの場合、翼板に沿った局所的に低いレイノルズ数のため、当業者は、ファン翼209が、好ましい音響のためにステータ翼板219Aよりも総数(例えば、総量)が多い複数の翼板601を保持してもよいことを理解できる。これによって、特定の設計上の音の組に対して、翼板数が50%から200%の間のいずれかとすることができる。
【0059】
一実施形態では、ステータハウジング219Cは、ステータ翼板219Aおよびモータハウジング219Bを収容するように構成されている。すなわち、ステータ翼板219Aは、ステータハウジング219Cが翼板219Aの外周を取り囲むように、ステータハウジング219C内に配置される。一実施形態では、ステータハウジング219Cは、第1の端部1107(例えば、入口)および第2の端部1109(例えば、出口)を含む。
図11Cに示されるように、第1の端部1107は、第2の端部1109の直径よりも大きい直径を有する。このように、ステータハウジング219Cは円錐形状を有することができる。しかしながら、ステータハウジング219Cは、他の実施形態として、他の形状を有し得る。
【0060】
図11Dを参照すると、一実施形態では、翼板219Aの先端は、ステータハウジング219Cの内面1111と接触している。このように、ステータの翼板219Aは静止している。翼板219Aをステータハウジング219Cの内面1111と接触させることによって、各翼板219Aの位置は固定である。
【0061】
図12A、
図12B、
図12C、および
図12Dは、一実施形態による推進機ファン100のテールコーン221の斜視図、正面図、側面図、および断面図をそれぞれ示す。テールコーン221は、一実施形態では、推進機ファン100から出る空気と共に、ステータハウジング219Cの面積の適切な変化を生み出すように構成される。テールコーン221は、アルミニウムまたはチタンなどの金属で作られてもよく、または炭素繊維などの複合材料で作られてもよい。
【0062】
テールコーン221は、第1の端部1201(例えば、入口)および第2の端部1203(例えば、出口)を含む。一実施形態では、第1の端部1201は、第2の端部1203の直径よりも大きい直径を有する。一実施形態では、テールコーン221の直径は、テールコーン221の長さ方向に沿って異なる。
図12Cに示すように、テールコーン221の直径は、中間の点1205に到達するまで、第1の端部1201から第2の端部1203に向かって減少する。中間点1205から第2の端部1203までは、テールコーン221の直径は比較的一定である。
【0063】
一実施形態では、テールコーン221の第1の端部1201は、ステータ219のモータハウジング219Bの第2の端部1103に接続するように構成されている。このように、テールコーン221の第1の端部1201の直径は、ステータ219のモータハウジング219Bの第2の端部1103の直径と実質的に合致する。一実施形態では、テールコーン221の第1の端部1201は、モータハウジング219Bの第2の端部1103と接続(例えば、接触)する取り付け面1209を備える。取り付け面1209は、例えば、留め具を用いてモータハウジング219Bに取り付けることができる。しかしながら、他の実施形態として、他の取り付け機構を用いることもできる。
【0064】
図12Dを参照すると、
図12Bに示す平面D-D’に沿ったテールコーン221の断面図が示されている。一実施形態では、テールコーン221は、テールコーンの第1の端部1201から開始しテールコーンの第2の端部1203に至るテールコーン221の長さにわたって形成された空洞1207を含む。テールコーン221の後部形状は、翼板円盤および/またはステータに続くジェットの膨張に関して、テールコーン221の内部から排気された二次流によって調節される。
【0065】
一実施形態では、推進機ファン100は、中央ハブ駆動モータ215を含む。すなわち、一実施形態では、単一のモータ215を用いて推進機ファン100を駆動する。推進機ファン100に用いられる例示的なモータは、電動モータである。しかしながら、他の実施形態として、ガスモータまたはジェットタービンなどの他のタイプのモータを推進機ファン100で用いることもできる。一般には、推進機ファン100の用途に応じて、異なるモータタイプおよびサイズが用いることができる。
【0066】
マルチモータ駆動システム
別の実施形態として、推進機ファン100は、上述した単一のモータ215だけではなく、複数のモータによって駆動されてもよい。
図13A、
図13B、および
図13Cは、一実施形態による推進機ファン100の周縁マルチモータ駆動システムの斜視図、正面図、および側面図をそれぞれ示す。
【0067】
単一のモータ215による推力駆動の代わりに、複数の補助モータ1301A、1301B、1301C、および1301Dが本体ハウジング217内に配置され、リングギア1303を介してファン翼209を駆動する。複数の補助モータ1301は、一実施形態では、電気モータとすることができる。しかしながら、他のタイプのモータを用いてもよい。
【0068】
一実施形態では、リングギア1303は、張力リング211に接続することができる。補助モータ1301が上述のモータ215に置き代わってもよく、またはモータ215と併せて用いられてもよい。マルチモータの冗長性によって、推進機ファン100システムの格別なフォールトトレランスが可能となる。例えば、4つの補助モータ1301を用いると、一つの補助モータの損失は推進機の通常の動作には重要な影響をほぼ与えることはない。他のモータの損失があっても、残りの補助モータ1301は、十分な推力を生成するために制限を超えて速度を増すことができる。
【0069】
図13A~
図13Cに示されるように、補助モータ1301A~1301Dは、総てが、推進機のハブ205に配置される代わりに、推進機100の外周の周りに半径方向に広がっている。それぞれの補助モータ1301の端部は、リングギア1303に接続されるギアを備える。放射状配置では、等しい角度間隔に限定される必要はない。例えば、ファンは、ダクトの下部象限に向かって偏った3つのモータによって駆動されてもよい。さらに、中央に収容されたモータ215を支持するためのハブ205を支持するためにステータ219を必要とせずに、推進機は、モータおよびその負荷に対処するためにダクト構造自体を利用することができる。これはまた、重量および抗力が除かれることに加えて、典型的には、ステータにおける流れの相互作用によって引き起こされる広帯域ノイズがより少なくなるという結果をもたらす。一実施形態では、補助モータ1301は、より高い20,000rpmで作動し、5kW/kgの比出力でより重く、より低い速度のモータと比較して、より高い15kW/kgの比出力を生成することができる。補助モータ1301は、ギア滑り(軸方向および半径方向)を除外するために、リングギア1303を一斉に駆動する。この低い支持圧力は、より低いギアノイズをもたらす。
【0070】
図14は、他の実施形態による、推進機ファン100の周縁駆動システムのさらに他の実施形態を示す。
図14に示される実施形態は、
図13に説明される例と同様である。但し、
図14に示される駆動システムは、中央の駆動モータ215が省かれ、推力生成を補助モータ1301に依存する。
推進機配列
図15Aおよび
図15Bは、一実施形態による配列した推進機ファンの正面図および斜視図をそれぞれ示す。一実施形態では、推進機ファンの配列1500は、推進機ファンの列を形成するように横方向に配置された複数の推進機ファン100を含む。
図15Aおよび
図15Bに示される例では、推進機ファン配列1500は、第1の推進機ファン100A、第2の推進機ファン100B、および第3の推進機ファン100Cを含む。複数の推進機ファン100A~100Cの各々は、本明細書に記載される推進機ファン構造を含む。3つの推進機ファン100が推進機ファン配列1500に含まれるが、配列は、2つを超える任意の数の推進機ファンを含み得る。
【0071】
図16は、一実施形態による推進機ファン配列の例示的な用途を示している。
図16に示されるように、推進機ファン配列1600は、本明細書に記載されるように、複数の推進機ファンを含む。一実施形態では、推進機ファン配列1600は、航空機1605のダクトウイング1603に組み込まれる。複数の推進機ファンを横方向に組み合わせて、ダクトウイング1603を形成することができる。ダクトウイング1603は、必要に応じて、複葉のスタガー、スイープ、テーパ、およびダイヘドラルが追加され得る、受動のリフティング複葉を作成するように成形することができる。配列1600に含まれる推進機ファンの総数および推進機ファンのサイズは、例えば、航空機に乗る乗客の数、航空機1605の速度条件、および高度条件などの航空機の条件に依る。
【0072】
推進機ファンを配列に組み合わせることで、いくつかの制御および推力偏向の機会が開かれる。ヨーイング、ローリング、またはピッチングのモーメントを引き起こすために、推力を、それぞれの推進機ファン100の間で単純に変化させることができる。推進機ファンの間の相対的なスパン方向のピッチ差を用いて、より速い上昇と降下を促進することができる。これは、後縁に設けられた追加の制御面によってさらに増強することができる。
【0073】
ダクトのスパン方向の組み合わせは、翼に沿って、または複葉翼自体としてでも、組み合わせるのに適している。配列は、システムのニーズに合わせてスイープ、スタガー、ダイヘドラルおよびテーパを備えた複葉ウイングとして配置し、また延長することができる。推進機ファンの配列を完全な複葉ウイングとして組み込むという選択は、必要な推力量(負の抗力)と推進機ファンの相対的なサイズに依る。
【0074】
推進機ファンの用途
図17A、
図17B、および
図17Cは、一実施形態による、ホバリングするドローンの正面図、側面図、および上面図をそれぞれ示す。ホバリングドローン1700は、第1の推進機ファン100A、第2の推進機ファン100B、および第3の推進機ファン100Cを含む推進機ファンの配列を含んでいる。ホバリングドローン1700には3つの推進機ファンのみが含まれるが、ホバリングドローン1700は、
図17A~
図17Cに示されるよりも、追加の推進機ファンまたはより少ない推進機ファンを含むことができる。
【0075】
ホバリングドローン1700は、本明細書に記載されるような推進機ファン配列を含む、静かな電動の垂直離着陸(VTOL)ドローンである。ホバリングドローン1700は、都市部などの近距離地域に用いることができる。ホバリングドローン1700は、360度カメラおよびセンサを有することができ、例えば、15分を超えるホバリング飛行時間に用いることができる。一例では、推進機ファン100A~100Cは、それぞれ、6.4lb/ft2の増大された円盤荷重の、1fの直径を有することができる。ホバリングドローン1700は、30ポンドの最大離陸重量を有することができる。
【0076】
図17Aに示される例では、それぞれの推進機ファン100A~100Cは、上述したように、ハ.ブを駆動する中央に位置したモータ215ならびに補助モータ1301を含む。しかしながら、ホバリングドローン1700は、補助モータ1301を省いて中央に位置するモータ215のみを含んでもよく、または中央に位置するモータ215を省いて補助モータ1301のみを含んでもよい。
【0077】
図18A、
図18B、および
図18Cは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む映画ドローン1800の正面図、側面図、および上面図をそれぞれ示す。一般に、シネマドローン1800は、シネマニーズに用いられる、静かな偏向後流のVTOLドローンである。シネマドローン1800は、総て電気式あるいはハイブリッド式であってもよい。シネマドローン1800は、例えば、最大35ポンドのジンバルに搭載の機器(例えば、メインカメラ)を有することができる。シネマドローン1800は、補助カメラやセンサを有してもよい。シネマドローン1800は、20分を超えるホバリング飛行時間に用いることができる。シネマドローンは、一実施形態では、50mphを超える最大巡航速度を有することができる。
【0078】
一実施形態では、シネマドローン1800は、複葉機であり、ずれのないスタガーを有している。
図18Aに示されるように、シネマドローン1800は、第1のウイング1801および第2のウイング1803を含む。第1のウイング1801および第2のウイング1803のそれぞれは、複数の推進機ファンを含む推進機ファンの配列を含む。例えば、ウイング1801に含まれる推進機ファン配列は、推進機ファン100A、100B、100C、および100Dを含み、ウイング1803に含まれる推進機ファン配列は、推進ファン100E、100F、100G、および100Hを含む。このように、推進機ファンの半分は、胴体1805の第1の側にあり、推進機ファンの残りの半分は、胴体1805の第2の側にある。
図18A~
図18Cに示される例では、推進機配列は、8つの推進機を含むが、任意の数の推進機が用いられてもよい。
【0079】
図18A~
図18Cに示されるシネマドローン1800の各ウイング1801、1803は、胴体1805の前方に向かう、2つの翼の間に形成された角度スイープを有する。
図18~18Cに示される例では、ウイング1801および1803は、20度のアンヘドラル(下反角)翼を有し、30度のスイープ翼(前進翼)を有し得る。しかしながら、他の実施形態として、他の角度とすることもできる。
【0080】
一実施形態では、
図18A~
図18Cに示されるシネマドローン1800は、一例では、最大離陸重量75ポンドで、目標最大積載重量30ポンドである。それぞれの推進機ファン100は、例えば6.0lb/ft
2の増大された円板荷重の1ftのファン直径を有することができる。シネマドローン1800の胴体1805は、5.5ftの長さおよび0.6ftの幅を有することができる。シネマドローン1800の翼長は、例えば、4.3lb/ft
2の翼荷重、17.4ft
2の翼面積で、8.8ftとすることができる。
【0081】
図19A、
図19B、および
図19Cは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む輸送機1900の正面図、側面図、および上面図をそれぞれ示す。輸送機1900は、任意選択で有人のVTOL飛行機である。輸送機1900は、ハイブリッド駆動または総電気駆動とすることができる。輸送機1900は、例えば、1,000~2,000フィートの動作高度において、130~250ノットの巡航速度で20~60海里の範囲を飛行し得る。
【0082】
一実施形態では、輸送機1900は、複葉機であり、わずかな負のスタガーを有する。輸送機1900は、第1のウイング1901および第2のウイング1903を含む。胴体1905の前方に向かうように、2つのウイング1901および1903の間に角度が形成される。
図19A~
図19Cに示される例では、ウイングは、5度のダイヘドラル翼および-25度のスイープ翼を有する。しかしながら、他の実施形態として、他の角度とすることもできる。
【0083】
一実施形態では、推進機ファンの配列は、それぞれのウイング1901および1903に組み込まれる。推進機ファンの第1の配列は、胴体1905の第1の側にあって、ウイング1901に組み込まれ、推進機ファンの第2の配列は、胴体1905の第2の側にあって、ウイング1903に組み込まれる。例えば、ウイング1901に含まれる推進機ファン配列は、推進機ファン100A、100B、100C、および100Dを含むのに対し、ウイング1903に含まれる推進機ファン配列は、推進ファン100E、100F、100G、および100Hを含む。このように、推進機ファンの半分は、胴体1905の第1の側にあり、推進機ファンの残りの半分は、胴体1905の第2の側にある。
図19A~
図19Cに示される例では、推進機の配列は、8つの推進機ファンを含むが、任意の数の推進機ファンを用いることができる。
【0084】
一実施形態では、輸送機1900は、一例として、最大離陸重量1,000ポンド、および目標最大積載重量220ポンドを有する。それぞれの推進機ファン100は、例えば6.0lb/ft2の増大された円板荷重の、3ftのファン直径を有することができる。輸送機1900の胴体1905は、9.2フィートの長さおよび3.75フィートの幅を有し得る。輸送機1900の翼長は、9.4lb/ft2の翼荷重で、106.3ft2の翼面積の、28.7ftとすることができる。
【0085】
図20A、
図20B、および
図20Cは、一実施形態による推進機ファン配列を含む垂直離着陸(VTOL)航空機2000の正面図、側面図、および上面図をそれぞれ示す。VTOL航空機2000は、任意選択で有人のVTOL飛行機である。VTOL航空機2000は、ハイブリッド駆動または総電気駆動とすることができる。VTOL航空機2000は、1,000~2,000フィートの動作高度において、130~250ノットの巡航速度で、20~400海里の範囲を飛行し得る。一実施形態では、VTOL航空機2000は、ホバリングすることが可能である。
【0086】
図20A~
図20Cに示される例では、VTOL航空機2000は複葉機であり、わずかな負のスタガーを有している。VTOL航空機2000は、第1のウイング2001および第2のウイング2003を含む。一実施形態では、2つのウイング2001、2003の間には、胴体2005の前方に向かうような角度が形成される。ウイング2001、2003は、5度のダイヘドラル翼および-25度のスイープ翼を有し得る。しかしながら、他の実施形態として、他の角度とすることもできる。
【0087】
一実施形態では、推進機ファンの配列は、それぞれのウイング2001および2003に組み込まれる。推進機ファンの第1の配列は、胴体2005の第1の側にあって、ウイング2001に組み込まれ、推進機ファンの第2の配列は、胴体2005の第2の側にあって、ウイング2003に組み込まれる。例えば、ウイング2001に含まれる推進機ファン配列は、推進機ファン100A、100B、100C、および100Dを含むのに対して、ウイング2003に含まれる推進機ファン配列は、推進ファン100E、100F、100G、および100Hを含む。このように、推進機ファンの半分は、胴体2005の第1の側にあり、推進機ファンの残りの半分は、胴体2005の第2の側にある。
図20A~
図20Cに示される例では、推進機の配列は、8つの推進機ファンを含むが、任意の数の推進機ファンを用いることができる。
【0088】
VTOL航空機2000は、一例として、最大離陸重量5,000ポンドおよび目標最大積載重量1,000ポンド(例えば、3~4人の乗客)を有するものである。それぞれの推進機ファン100は、例えば11.0lb/ft2の増大された円板荷重の、5ftのファン直径を有することができる。VTOL航空機2000の胴体2005は、例えば、24.7フィートの長さおよび5フィートの幅を有し得る。VTOL航空機2000の翼長は、例えば、16.7lb/ft2の翼荷重で、300ft2の翼面積の、49ftとすることができる。
【0089】
図21A、
図21B、および
図21Cは、一実施形態による、推進機ファン配列を含む配送用ドローン2100の正面図、側面図、および上面図をそれぞれ示す。配送用ドローン2100は、360度カメラおよびセンサを有することができ、20分を超えるホバリング飛行時間に用いることができる。配送用ドローン2100は、一実施形態では、50mphを超える最大巡航速度を有する。
【0090】
配送用ドローン2100は、内部の荷物を配送するように構成された電気テールシッターVTOLドローンの例である。示される例では、配送用ドローン2100は、複葉機であり、ずれの無いスタガーを有している。配送用ドローン2100は、一実施形態では、胴体2105の後方に向かうように、2つの翼の間に形成された角度スイープを有した、第1のウイング2101および第2のウイング2103を含む。
【0091】
一実施形態では、推進機ファンの配列は、それぞれのウイング2101および2103に組み込まれる。推進機ファンの第1の配列は、胴体2105の第1の側にあって、ウイング2101に組み込まれ、推進機ファンの第2の配列は、胴体2105の第2の側にあって、ウイング2103に組み込まれる。例えば、ウイング2101に含まれる推進機ファン配列は、推進機ファン100A、100B、および100Cを含むのに対し、ウイング2103に含まれる推進機ファン配列は、推進ファン100D、100E、および100Fを含む。このように、推進機ファンの半分は、胴体2105の第1の側にあり、推進機ファンの残りの半分は、胴体2105の第2の側にある。
図21A~
図21Cに示される例では、推進機の配列は、6つの推進機ファンを含むが、任意の数の推進機ファンを用いることができる。
【0092】
一例では、配送用ドローン2100は、最大離陸重量55ポンド、および目標最大積載重量5.5ポンドである。それぞれの推進機ファン100は、例えば6.0lb/ft2の増大された円板荷重で、1ftのファン直径を有することができる。配送用ドローン2100の胴体2105は、6.7フィートの長さおよび1.3フィートの幅を有し得る。配送用ドローン2100の翼長は、例えば、2.5lb/ft2の翼荷重で、21.9ft2の翼面積の、8.8ftとすることができる。
【0093】
フリー翼板
本明細書に記載の推進機ファン100は、150mphを超えるより高い速度能力を有するので、翼板角度を可変とすることまたは質量流量調整のいずれかによって推進効率の増大をもたらすことが望ましい。上述したように、推進機ファン100は、従来の推進機よりも著しく多い翼板数を含んでいる。典型的な可変ピッチプロペラ機構を実装することは、機械的複雑さの観点から過度に煩雑になり得る。
【0094】
一実施形態では、上述のような推進機ファンの配列は、フリー翼板構造を用いて航空機に組み込まれる。フリー翼板構造は、例えば、
図17~
図21にて上述した航空機のいずれかに実装され得る。フリー翼板は、それぞれの翼板の空力中心より前方での質量バランスにより、放射軸で自由に回転できる推進機ファンである。すなわち、ファン翼209は、それぞれの翼板の空力中心の前方で質量バランスをとることにより、翼板の放射軸に関して自由に回転することができる。フリー翼板は、翼型設計、翼質量バランス、翼旋回軸を組み合わせて、総ての飛行条件にわたって一定のCLでピッチングモーメントがゼロに自己調整することで、翼が自由に旋回できる機能を実現する。
【0095】
フリー翼板構造と推進機ファン100との組み合わせによって、一定の翼板荷重を維持しながら、翼板の迎角(AoA)の可変のためのパッシブシステムを作成する。このことは、電気モータが広範囲のRPM(回転速度)にわたって高効率で動作することができるため、電気モータ駆動の推進機ファン100に独自の相乗効果をもたらし得る。電気モータは、異なる流入速度にわたって、より高いまたはより低い視線速度で動作することが可能あり、これと共に、翼板は“フローティング”によってAoAを整列させ、調整された同じ揚力係数(CL)を維持する。この機能はまた、異なる飛行条件および乱流レベルで高いノイズをもたらす翼板ストールを回避する方法として、低ノイズを達成する価値をもたらし得る。
【0096】
フリー翼板を用いることによって、多くの利点がもたらされる。例えば、フリー翼板は、前縁翼板の質量を加えることによって、それらのL/DmaxCL(典型的には、0.5~1.0)に近いAoAに常に存在するようにピッチバランスされる。これによって、翼板のAoAが常に流入と合致するよう合わされ、剥離流がないことが保証される。さらに、周縁駆動であることから、内部ハブ領域が空である場合に推進機ファン100において質量バランスが可能であり、最も軽い質量バランスのための釣り合い重りのために翼板の前方に(そして流れにさらされない)容積を提供することができる。これによって、推進機ファン100は、異なる飛行部分で約50%のオーダーでそのRPMを変化させ、翼板が常にそれらの最適な前進比に近くなることを可能にする。電動機と組み合わせてフリー翼板を用いると、タービンやICエンジンとは異なり、電動モータは高効率の広範囲のRPMを有するため、特に利点がある。従って、タービンまたはICエンジンは、所与の電力に対して固定のRPMで動作する必要があるが、電気モータはそうではない。これによって、推進機は、異なる飛行部分で約50%のオーダーでそのRPMを変化させ、翼板が常にそれらの最適な前進比に近くなることが可能となる。最後に、フリー翼板は、より広い範囲のAoA変化および推力ニーズにより、より大規模なVTOLの統合を可能にするのにも役立ち得る。
【0097】
流れダクト制御
一実施形態では、流れ制御機構は、ダクトリップ201に配置される。流れ制御機構は、ダクトリップ201で空気のジェットを吹くように構成される。ダクトリップ201おいて空気を加えることによって、ダクトリップ201が実現することができるリップ吸引量が増大する。一実施形態では、遠心圧縮機または軸流圧縮機と組み合わせた電気モータが、ダクトリップ201での流れ制御の吹くことおよび/または吸引を増加させるために、残りのダクト部分の容積に組み込まれ得る。ダクトリップ201で吹く内部流れ制御のために電気分散推進(DEP)を適用することによって、推進機に追加の電力を加えるよりも低い電力で静的および低速の推力増強を達成することができる。DEPのこの内部適用は、推進機ファン100と航空機統合レベルの両方で、航空機統合の利点を最大化する。ダクトリップ201に流れ制御を適用することにより、例えば、同じファン電力で静的推力が最大40%増加する。
【0098】
一実施形態では、流れ制御の高いジェット吹き速度(すなわち、ほぼ音波騒音のジェット)を必要とする、高いPRおよび吸気速度の非常用電源ラムの空気タービンである。静かな低速ジェット(~300ft/秒)を用いることができ、小さな内部ダクト電気遠心ブロワによって動力を得ることができる。
【0099】
より低い速度の流れ制御のジェットは、はるかに低いPRおよび静的なダクト流入速度を考慮すると、推進機の推力増強の点で同様に影響を与える可能性がある。流れ制御の有効性は、Vjet/Vintakeの関数である。流れ制御ダクトリップ吹き出しの別の興味深い態様は、大きな迎角(すなわち、遷移中)でのダクト内リップにおける剥離の回避である。これは、ダクト式eVTOLの重要な考慮事項である。仮に吸気流がダクトリップで剥離する場合には、ファン翼板が、周期的な翼板への荷重をもたらす振動する流れ状態となるためノイズを大幅に増加する。
【0100】
約300ft/秒のジェット速度でダクトリップ201において吹き出す流れ制御を適用することによって、ダクトリップ吸引力は増加して、総静的推力の約75%を占めることができる。ダクトリップ201で空気を吹き出すことは、ダクトリップに効果的に空気力学的形状の変形をもたらして、周囲の空気を追加的に取り込む。吹き出しをオンにすると、流入空気は静的な状態で望まれるよりはるかに大きな受け口ダクトリップを“見る”ことになる。実際の受け口ダクトの吸気口を用いる場合は、巡航時に大きな抵抗が発生する。ダクト流れ制御吹き出しは、吹き出しが比較的効果的でない、巡航飛行中にはオフとすることができる。コンパクトな高速遠心吹き出し機は、超音波の翼板通過周波数で動作し、内部吹き出しをもたらす。流れ制御吹き出しは、高いノズルジェット速度(音速付近が最適)で最も効果的であるが、出願人のノズルジェットは、低ノイズを実現するために低ジェット速度用に設計されている(ジェットノイズはノズル速度の10乗で変化する)。このダクトの先端への適用では、流入転向角を最大化し、ダクト先端リップでの失速を防ぐことが目的である。
【0101】
一実施形態では、流れ制御ダクトは、本明細書に記載される航空機の実施形態のいずれかにおいて、ダクトリップ201に適用することができる。
【0102】
排気口領域制御システム
前述したように、ステータハウジング219Cの第2の端部1109は、推進機ファン100の排気口(例えば、出口)である。排気口は、一実施形態では、空気が推進機ファン100から流出し、開放環境に流入する領域である。例えば、排気口は、推進機ファン100から空気が流出するノーズコーン203から最も遠い、ステータ本体219Cの第2の端部1109によって画定される断面である。
【0103】
一実施形態では、排気制御システムは、推進機ファン100に接続されて、推進機ファン100の排気口の面積(排気面積)を変化させる。排気制御システムは、推進機ファン100の排気面積を変化させて質量流量を調節し、それによって、個々の推進機ファン100の推力の大きさおよび/または推力の方向を調節する。例えば、空気が推進機ファン100を出る排気面積を増加させると、初期設定の排気面積推力に対して推力が増加し、一方、空気が推進機ファンを出る排気面積を減少させると、初期設定の排気面積推力に対して推力が減少する。排気制御システムの異なる構成を以下にさらに説明する。以下の説明は、個々の推進機ファン100に結合された排気制御システムの異なる実施形態に関するものであるが、排気制御システムは、前述の推進機ファンの配列に追加され得る。
【0104】
図22は、第1の実施形態による排気制御システム2201を有する推進機ファンシステム2200の第1の斜視図を示し、
図23は、第1の実施形態による排気制御システム2201を有する推進機ファンシステム2200の第2の斜視図を示す。推進機ファンシステム2200は、一実施形態では、前述したような推進機ファン100と、推進機ファン100の排気口に接続された排気制御システム2201とを含む。
【0105】
上述したように、ステータ219の第2の端部1109は、推進機ファン100の排気口である。推進機ファン100の排気領域の断面は、円などの第1の形状を有する。推進機ファンシステム2200の第1の実施形態では、排気制御システム2201は、第1の形状とは異なる第2の形状を有するように推進機ファンシステム2200の排気口の断面の形状を変更するべく、ステータ219の第2の端部110に接続される。一実施形態では、第2の形状は、第1の形状の面積を変化させることと比較して排気口の面積を変化させることがより容易である任意の形状である。例えば、第2の形状は、正方形、長方形、平行四辺形、または三角形などの閉鎖領域を形成する直線の縁部を有する任意の形状である。円の湾曲した性質のため、円の面積を制御することは、矩形の面積を制御することよりも複雑である。
【0106】
第1の実施形態では、排気制御システム2201は、移行部2202、複数のフラッペロン2205、およびフラッペロン制御機構(例えば、モータ2401およびロッド2403)を含む。排気制御システム2201は、本明細書に記載されている以外の構成要素を有し得る。一実施形態では、移行部2202は、推進機ファン100の排気口に対応する第1の形状から排気制御システム2201の排気口に対応する第2の形状に排気口形状を移行するように構成される。
【0107】
一実施形態では、移行部2202は、ステータ本体219Cの第2の端部1109に接続された第1の端部2203を含む。移行部2202の第1の端部2203は、ステータ本体の第2の端部1109の形状(例えば、第1の形状)に一致した形状を有する。例えば、移行部2202の第1の端部2203は、ステータ本体の第2の端部1109の直径に一致した直径の円形状を有する。移行部2202の第2の端部2204は、推進機ファンシステム2200の排気口であり、第2の形状を有する。
【0108】
いくつかの実施形態では、移行部2202の第1の端部2203の面積は、移行部2202の第2の端部2204の面積と実質的に同じ(例えば、10%以内)であり、空気の流れが移行部2202全体にわたって定常流を保つことを確保している。滑らかでノイズのない流れを確保するために、移行部2202は、内部の合わせ目または端を有さないように、または少なくとも内部の合わせ目または端の数を減少させるように成形される。移行部2202は、第1の形状(例えば、円形断面)を有する第1の端部2203から第2の形状(例えば、矩形断面)を有する第2の端部2204まで緩やかに傾斜しまたは広がる。移行部2202は、ステータ本体219Cと同じ材料で作られ、例えば、金属または複合材料とすることができる。従って、移行部2202は、推進機ファンシステム2201の排気領域形状を変更するための滑らかな移行をもたらす。
【0109】
一実施形態では、細長いダクトが、推進機ファン100および排気制御システム2201の構成要素から形成される。
図22および
図23に示すように、細長いダクトは、ダクトリップ201、外側ケーシング213Aおよび213B、ステータ本体219C、および移行部2202を備える。
【0110】
図23は、排気制御システム2201に含まれる複数のフラッペロン2205を示している。フラッペロン2205は、推進機ファンシステム2200の排気口面積を変化させるように調整される排気面積制御機構の例である。
図23に示されるように、複数のフラッペロン2205は、移行部2202の第2の端部2204に接続される。
図23に示される例では、複数のフラッペロン2205は、合計4つのフラッペロンを含む。しかしながら、排気制御システム2201には任意の数のフラッペロン2205が含まれ得る。
【0111】
一実施形態では、それぞれのフラッペロン2205は、前縁部および後縁部を有する翼である。フラッペロン2205は、矩形断面を有し、例えば、金属または複合材料で作られているが、他の断面形状であってもよい。複数のフラッペロン2205のそれぞれの前縁は、移行部2202の第2の端部2204に接続される。一実施形態では、それぞれのフラッペロン2205の前縁は、ヒンジ2405(
図24に示される)によって移行部2202の第2の端部2204に接続され、それにより、フラッペロン2205の位置または状態の角度が変化し、それによって推進機ファンシステム2200の排気口面積が変化することが可能になる。すなわち、フラッペロン2205は、それらが移動するにつれて、フラッペロン2205が排気領域の一部を遮断し、面積を収縮させ得るか、または排気領域を制限しない位置に移動し得るように作動することができる。
【0112】
このように、推進機ファンシステム2200の第1の実施形態では、空気は、ダクトリップ201を通って推進機ファン100内に流れ、ファン翼209(図示せず)、テールコーン221、およびステータ219Aを通って、移行部2202内を流れ、移行部2202の第2の端部によって作られた第2の形状を有する移行部2202の排気領域から流れ出る。移行部2202の第2の端部2204に接続されるフラッペロン2205は、それらが移動するにつれて、推力および/または推力方向の大きさを制御するために推進機ファンシステム2200の排気口面積が変化するように作動することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、フラッペロン2205は、それぞれのフラッペロンの位置が他のフラッペロンとは独立して変化することができるように、個別に制御可能である。例えば、フラッペロン2205A、2205B、2205C、および2205Dのそれぞれは、互いに異なる方向に移動することができる。他の実施形態では、平行なフラペロン2205が、例えば、上部フラッペロン2205Aがテールコーン221に向かって内側に移動すると、下部フラッペロン2205Cがテールコーン221に向かって同じ量で内側に移動し、左側フラッペロン2205Dがテールコーン221に向かって内側に移動すると、右側フラッペロン2205Bがテールコーン221に向かって同じ量で内側に移動するように、共に動作することができる。それぞれが排気制御システム2201を有する推進機ファンの配列がある実施形態では、それぞれの排気制御システム2201のフラッペロン2205は、個別に制御することができる。他の実施形態では、同じ位置にあるフラッペロン2205(例えば、配列における各推進機の上部フラッペロン2205A)は、一緒に動作可能とすることもできる。
【0114】
図24は、一実施形態による、
図22に示される平面A-A’に沿った推進機ファンシステム2200の断面図を示す。フラッペロン2205は、ダクトの翼型の形状を滑らかに継続するように成形される。一実施形態では、それぞれのフラッペロン2205は、モータ2401およびロッド2403を含むフラッペロン制御機構によって作動される。モータ2401は、ロッド2403を押してロッド2403を延ばし、それによってフラッペロン2205をテールコーン221に向かって内側に移動させるか、またはロッド2403を引っ張ってロッド2403を収縮させ、それによってフラッペロン2205をテールコーン221から外側に移動させる、トルクモータまたはサーボモータである。
【0115】
示される実施形態では、モータ2401がロッド2403を押すと、フラッペロン2205はヒンジ2405の周りで回転し、その結果、フラッペロンが内側(例えば、テールコーン221に向かって)傾斜する。モータ2401がロッド2403を収縮させるためにそのロッドを引っ張ると、フラッペロンは、ヒンジ2405の周りで回転して、外向きに(例えば、テールコーンから離れるように)角度が付けられる。このように、フラッペロン2205が内側に移動するにつれて、推進機ファンシステム2200の排気口領域の断面積が減少し、それによって、ファン翼209が一定のRPM(回転速度)で回転すると仮定した場合に、推力が減少する。同様に、フラッペロン2205が外側に移動するにつれて、推進機ファンシステム2200の排気口領域の断面積が増加し、それによって、ファン翼209が一定のRPMで回転すると仮定した場合に推力が増加する。このように、排気制御システム2201を作動させるのに必要な動力よりも多くの動力を消費することになる、より大きい推力を生成する場合に、ファン翼209の速度を増加させるための追加の電力が必要とされないことから、動力を節約することができる。
【0116】
フラッペロン2205ごとの一つのモータ2401が簡略化のために図に示されているが、フラッペロン2205を有する推進機の他の実施形態は、モータまたはサーボの故障の場合にフラッペロンが依然として制御可能であることを保証するために、フラッペロン2205ごとに少なくとも2つのモータ2401またはサーボモータを含むことができる。いくつかの実施形態では、ロッド2403は、モータ2401が回転するときに、モータ2401の回転方向に応じて前方または後方に並進するスクリューである。
【0117】
一実施形態では、各フラッペロン2205のモータ2401は、ステータ本体219Cの空洞(例えば、中空空間)に収容され、ロッド2401は、中空のステータ本体219Cからフラッペロン2205の中空部に延び、フラッペロン2205の端に固定される。現在示されているロッド2403は、フラッペロン2205の内側の縁部に取り付けられていることに留意されたい。代わりに、ロッド2403がフラッペロン2205の外向きの縁部に固定されている他の実施形態では、ロッド2403の伸長および収縮は、フラッペロン2205を上述した方向とは反対の方向に移動させる(例えば、伸長は外向きの回転とし、収縮は内向きの回転とする)。
【0118】
一実施形態では、ヒンジ2405は、ピンがステータ本体219Cに接続されたソケットおよびフラッペロン2205に接続されたソケットが通されるドアヒンジと同様であり、それによってステータ本体219Cおよびフラッペロン2205をヒンジ2405で一緒に保持する。ヒンジ2405は、フラッペロン2205の内向き縁部または外向き縁部のいずれかに配置され得る。ボールおよびソケット結合などの他の回転手段も用いることができる。
【0119】
フラッペロン2205を作動させることによって、排気口領域のサイズを変化させて推力を変化させることができ、さらに、気流の方向を変化させて揚力を変化させるように作動させることができる。
図25A、
図25B、および
図25Cは、一実施形態によるフラッペロン2205の異なる位置を示している。簡略化のために、ノーズコーン203、モータハウジング219B、およびテールコーン221は、単一の中央部分2503として
図25A~
図25Cにおいて示されている。
図25Aでは、上部フラッペロン2205Aは中央部分2503に向かって内側に傾斜し、下部フラッペロン2205Cは外側に傾斜している。推進機が水平である使用例では、
図25Aにおけるフラッペロン2205の位置は、垂直離陸など、空気が下向きに導かれて揚力を増加させるものである。
【0120】
逆に、
図25Bのフラッペロン2205の位置(上部フラペロン2205Aは外向きに傾斜し、下部2205Cは内向きに傾斜している)は、空気が上向きに押されて、航空機を低下させおよび/または回転させるなどの、下向きの推力および正味のモーメントを引き起こすものである。フラッペロン2205の外向きの回転はαで表され、最大90度とすることができ、内向きの回転はβで表され、最大90度とすることができる。
【0121】
図25Cは、フラッペロン2205の両方がほぼ最大角度で内側に回転し、推進機ファンシステム2200に関して可能な最小の排気口面積をもたらし、従って、空気が推進機ファンシステム2200を出るときに最低推力をもたらすことを示している。一実施形態では、フラッペロンの最大内向き角度は約60度であるが、他の最大内向き角度であってもよい。
【0122】
一実施形態では、フラッペロン2205は、信号がモータに送信されないときにフラッペロンが初期位置に位置するように、0度の初期位置を有することができる。例として、フラッペロンの初期位置を
図24に示す。
【0123】
図26A、
図26B、および
図26Cは、第2の実施形態による推進機ファンシステム2600の断面図を示す。一実施形態では、推進機ファンシステム2600は、推進機ファン100および排気制御システム2601を含む。第1の実施形態による排気制御システム2201とは対照的に、第2の実施形態の排気制御システム2601は、作動可能なテールコーン2609および作動可能なテールコーン2609のための制御機構を含む。第2の実施形態では、作動可能なテールコーン2609は、第2の実施形態による作動可能なテールコーン2609の長さを変化させることによって、推進機ファンシステム2600の排気口面積を変化させるように構成されている。
【0124】
第2の実施形態では、作動可能なテールコーン2609は、上述したテールコーン221にとって代わる。
図27は、第2の実施形態による作動可能なテールコーン2609の詳細図を示している。作動可能なテールコーン2609は、第1の端部2701および第2の端部2703を含み、第2の端部は、前述したテールコーン221と同様の方法でステータ219に接続される。一実施形態では、テールコーン2609の第2の端部は、複数の同心円状環部2607を含み、各環部2607は、同心円状環部の別の1つによって少なくとも部分的に重なり合う少なくとも1つの端部を含む。複数の同心円状環部2607は、以下でさらに説明されるように、排気領域制御機構と見なされ得る。各対の環部の間には、空気がテールコーン2609の中空部に入るのを防ぐ可撓性シールが存在する。
【0125】
例示的な作動可能なテールコーン2609では、複数の同心円状環部は、第1の環部2607Aおよび第2の環部2607Bを含む。第1の環部2607Aは、作動可能なテールコーン2609の第1の端部2701に対応し、ステータ219に接続する第1の端部と、第2の環部2607Bの第1の端部に接続する第2の端部とを有する。第1の環部2607Aの第2の端部は、第1の環部2607Aの第2の端部が第2の環部2607B内に配置されるように、第2の環部2607Bの第1の端部と部分的に重なり合っている。以下でさらに説明されるように、同心円状環部2607の間の重なり量は変化することができ、それによって作動可能なテールコーン2609の長さを変更して、推進機ファンシステム2600の排気口面積を変更する。
【0126】
一実施形態では、作動可能なテールコーン2609は、作動可能なテールコーン2609の、第1の端部2701と第2の端部2703との間の中間部分2705を含み、この部分は、第1の端部および第2の端部の直径よりも大きい直径を有している。従って、作動可能なテールコーン2609の中間部分2705は、ボウリングピンの下半分のものと同様の広がった形状を有する。作動可能なテールコーン2609が延びると、最大直径を有する中間部分2705がステータ219に向かって排気口領域に移動し、それによって排気口面積が減少し、推力が減少する。
【0127】
図26Aを参照すると、作動可能なテールコーン2609は、第2の実施形態による完全に引っ込んだ状態(例えば、位置)で示されている。完全に引っ込んだ状態では、同心円状環部2607の位置は、同心円状環部2607の間に最大量の重なりが生じるように調整される。完全に引っ込んだ状態では、排気制御システム2601は、推進機ファンシステム2600の排気口面積を、推進機ファンシステム2600の最大推力に対応する面積まで増加させる。例えば、推力は、最も制約のある設計速度で増加される。作動可能なテールコーン2609の中間部分2705がステータ219に向かって内側に移動するので、排気口面積が増加する。
【0128】
図26Cは、第2の実施形態による、完全に伸長した状態の作動可能なテールコーン2609を示している。完全に伸長した状態では、同心円状環部2607の位置は、同心円状環部2607の間に最小量の重なりが生じるように調整される。完全に伸長した状態では、排気制御システム2601は、推進機ファンシステム2600の排気口面積を、推進機ファンシステム2600の最小推力に対応する面積まで減少させる。例えば、推力は、制約のある設計速度で減少させられる。作動可能なテールコーン2609の中間部分2705がステータ219から離れて外側に移動し、それによって排気口面積が減少するので、排気口面積は減少する。
【0129】
図26Bは、第2の実施形態による、完全に伸長された状態と完全に引っ込んだ状態との間の中間状態にある作動可能なテールコーン2609を示している。中間状態では、同心円状環部2607の位置は、同心円状環部2607の間に中間的な量の重なりが生じるように調整される。中間量の重なりは、完全に伸長された状態での最小量の重なりよりも大きいが、完全に収縮した状態での最大量の重なりよりも小さい。ただ一つの中間状態が示されているが、作動可能なテールコーン2609は、完全に伸長された状態と完全に収縮した状態との間にある複数の異なる中間状態に位置することができる。
【0130】
一実施形態では、作動可能なテールコーン2609の最小および最大の長さは、それが用いられる用途によって変化する。例えば、推進機ファンシステム2600が小型ドローンで用いられる場合、作動可能なテールコーン2609は、人を輸送するように構成された航空機で用いられる作動可能なテールコーン2609の長さ範囲よりも短い長さ範囲を有し得る。
【0131】
推進機ファンシステム2600の第2の実施形態では、
図26に示される実施形態のダクト2603の端部は、
図25に示される推進機ファンシステム2200のダクト2501とは形が異なる。推進ファンシステム2600の第2の実施形態におけるダクト2603の排気口領域は、推進機ファン100の出口と同様の形状または同じ形状を有し得るものである。このように、推進機ファンシステム2600の排気口領域は円形でもよいが、推進機ファンシステム2600の排気口領域は例えば矩形であってもよい。一実施形態では、ダクト2603の内面は、作動可能なテールコーン2609の中間部分2705の外面の形状に基づいて(例えば、テールコーン2609が凸状である場合にダクト2603の内面が凹状であるように)成形(例えば、輪郭に合せる)される。
【0132】
上述したように、第2の実施形態の排気制御システム2601は、作動可能なテールコーン2609を作動させるための制御機構を含む。制御機構は、例えば、モータ2605およびロッド2611を含むことができる。制御機構は、他の実施形態として、他の構成要素を含むことができる。
【0133】
モータ2605は、例えば、サーボモータまたはトルクモータとすることができる。ロッド2611の第1の端部は、モータに接続され、ロッド2611の第2の端部は、作動可能なテールコーン2609の先端に接続される。ロッド2611は、例えば、スクリューとすることができる。モータ2605は、ロッドがテールコーン2609の第2の端部を押したり引いたりするようにロッド2611を移動させ、環部2607を相互にスライドさせてテールコーン2609の長さを変化させる。ただ一つのモータ2605が示されているが、他の実施形態では、モータ故障の場合に制御の損失を低減するために、一つのテールコーン2609を作動させる複数のモータ2605が存在する。
【0134】
図28は、第3の実施形態による推進機ファンシステム2800の断面図を示す。推進機ファンシステム2800の第3の実施形態は、複数の排気制御システムを含んでいる。例えば、推進機ファンシステム2800の第3の実施形態は、
図22~
図25に示されるような、フラッペロン2205を有する排気制御システム2201と、
図26~
図27に示されるような、作動可能なテールコーン2609を有する排気制御システム2601の両方を含む。
【0135】
排気制御システム2201および排気制御システム2601は、第3の実施形態では、推進機ファンシステム2800の排気口の面積を変化させるように個別に制御され得る。例えば、
図28は、排気制御システム2201に含まれるフラッペロン2205および排気制御システム2601に含まれる作動可能なテールコーン2609が個別に作動可能であることを示している。両方またはいずれか一方を変更して、排気制御システム2201、2601の第1および第2の実施形態に関して上述したように推力を変更することができる。いくつかの使用例では、フラッペロン2205を用いて揚力を変更する一方、テールコーン2609を用いて推力を変更することができる。他の例では、例えば、大きな推力が必要とされる離陸中など、テールコーン2609およびフラッペロン2205の両方を作動させて、排気口面積を可能な限り増大させることができる。
【0136】
結び
本明細書における“一実施形態”または“実施形態”への言及は、特定の特徴、構造、または特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所に現れる“一実施形態において”という語句は、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らない。
【0137】
本開示は、1つの実施形態およびいくつかの代替実施形態を参照して特に示され、説明されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を行うことができることは、関連技術分野の当業者によって理解されることになる。
【国際調査報告】