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特表2024-508937吸着及び脱着構成を有する可撓性収着性ポリマー複合体物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】吸着及び脱着構成を有する可撓性収着性ポリマー複合体物品
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/28 20060101AFI20240220BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240220BHJP
   B01D 53/06 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
B01J20/28 Z
B01J20/34 F
B01J20/34 G
B01J20/34 H
B01D53/06 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553998
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 US2022019104
(87)【国際公開番号】W WO2022187729
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/157,451
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/302,852
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エイチ.カリー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン エム.スコッティ
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4D012CA03
4D012CC01
4D012CD02
4D012CD08
4G066AA14D
4G066AC11C
4G066BA01
4G066BA03
4G066BA22
4G066CA35
4G066DA01
4G066GA01
4G066GA06
4G066GA11
(57)【要約】
吸着のための複合収着性ポリマー複合体物品が開示される。収着性ポリマー複合体物品は、収着剤及び可撓性多孔質ポリマーを含み、収着性ポリマー複合体物品は、収着性ポリマー複合体物品が供給流の1つ以上の成分を吸着するように構成された吸着構成と、収着性ポリマー複合体物品が収着性ポリマー複合体物品から1つ以上の成分を除去するように構成された脱着構成を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収着剤と可撓性多孔質ポリマーとの可撓性を有する複合体を含む収着性ポリマー複合体物品であって、前記収着性ポリマー複合体物品は、
前記収着性ポリマー複合体物品が供給流の1つ以上の成分を吸着するように配置された吸着構成、
前記収着性ポリマー複合体物品が前記収着性ポリマー複合体物品から1つ以上の成分を除去するように配置された脱着構成、
を有し、そして
前記可撓性多孔質ポリマーの可撓性は、前記吸着構成と前記脱着構成との間の変形を容易にする、収着性ポリマー複合体物品。
【請求項2】
前記収着性ポリマー複合体物品はキャリアをさらに含む、請求項1記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項3】
前記供給流は二酸化炭素を含む、請求項1記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項4】
前記収着性ポリマー複合体物品は、前記吸着構成において実質的に層状であり、前記脱着構成において実質的に筒状である、請求項1記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項5】
前記収着性ポリマー複合体物品は、
吸着構成における拡張配置、及び、
前記脱着構成における圧縮配置、
を含む、請求項1記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項6】
前記収着性ポリマー複合体物品は、前記吸着構成において実質的に展開されており、そして前記脱着構成において実質的に折り畳まれている、請求項1記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項7】
前記収着剤を含まない非孔質部分をさらに含み、前記非孔質部分は前記複合体に結合されている、請求項1記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項8】
前記非孔質部分は前記複合体の最外端部に結合されている、請求項7記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項9】
前記収着性ポリマー複合体物品が前記脱着構成にあるときに、前記複合体の多孔質ポリマーが一時的に前記非孔質部分によって覆われる、請求項7記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項10】
前記収着性ポリマー複合体物品の吸着容量又は吸着平衡に達すると、前記収着性ポリマー複合体物品は前記吸着構成から前記脱着構成に移行する、請求項1記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項11】
前記収着性ポリマー複合体物品は、前記脱着構成から前記吸着構成に戻る、請求項1記載の収着性ポリマー複合体物品。
【請求項12】
収着性ポリマー複合体物品を使用する方法であって、
収着剤及び可撓性多孔質ポリマーを含む多孔質複合体部分を含む収着性ポリマー複合体物品を提供すること、
第一の構成にある前記収着性ポリマー複合体物品を、二酸化炭素を含む供給流に暴露すること、
前記収着性ポリマー複合体物品が前記第一の構成にある間に、二酸化炭素の少なくとも一部を前記収着剤上に吸着させること、
前記吸着させる工程の後に、前記収着性ポリマー複合体物品を第二の構成に配置すること、及び、
前記収着性ポリマー複合体物品が前記第二の構成にある間に、前記収着性ポリマー複合体物品から二酸化炭素を脱着すること、
の工程を含む、方法。
【請求項13】
前記収着剤が二酸化炭素容量又は平衡に達するまで、前記収着性ポリマー複合体物品を前記第一の構成に維持することをさらに含み、前記配置する工程は、前記二酸化炭素容量又は平衡に達したら行われる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記提供する工程は、可撓性ポリマーを有する非孔質部分を前記多孔質複合体部分の前記可撓性多孔質ポリマーに結合することをさらに含み、
前記暴露する工程は、前記収着性ポリマー複合体物品を実質的に層状の形態に配置することをさらに含み、そして
前記配置する工程は、実質的に筒形に収着性ポリマー複合体物品を配置することをさらに含み、前記多孔質複合体部分は前記非孔質部分によって隠蔽される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記脱着する工程は、前記第二の構成の前記収着性ポリマー複合体物品の中心に水蒸気を注入し、そして前記二酸化炭素の少なくとも一部を回収することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記脱着する工程の後に、前記収着性ポリマー複合体物品を前記第二の構成から前記第一の構成に戻すことをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項17】
第一の部分と第二の部分とを有する経路に沿って前記収着性ポリマー複合体物品を交替させることをさらに含み、
前記第一の構成にある前記収着性ポリマー複合体物品を用いた暴露工程中に、前記収着性ポリマー複合体物品の一部は前記経路の前記第一の部分に配置され、そして
前記第二の構成にある前記収着性ポリマー複合体物品を用いた配置工程中に、前記収着性ポリマー複合体物品の一部は前記経路の前記第二の部分に配置される、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記交替させる工程により、前記収着性ポリマー複合体物品が占める体積が減少する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記脱着する工程は、前記第二の構成にある前記多孔質複合体部分を物質中に浸漬して二酸化炭素を脱着することをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記物質は水又は水蒸気である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記脱着する工程の後に、抽出された二酸化炭素を回収することをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項22】
前記交替させる工程は、前記収着性ポリマー複合体物品が前記第一の構成と前記第二の構成との間で連続的に移行するように連続的に行われる、請求項17記載の方法。
【請求項23】
前記暴露する工程は、前記収着性ポリマー複合体物品を拡張構成に配置することを含み、そして
前記配置する工程は、前記収着性ポリマー複合体物品を圧縮構成に配置することを含む、請求項12記載の方法。
【請求項24】
前記収着性ポリマー複合体物品の高さは、前記拡張構成において、前記収着性ポリマー複合体物品の前記圧縮構成における高さよりも高い、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記脱着する工程は、前記第二の構成にある前記収着性ポリマー複合体物品を、二酸化炭素を脱着する物質中に浸漬することをさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記収着性ポリマー複合体物品は、前記収着剤を保護する端部シール領域をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項27】
液滴を実質的に除去するために前記収着性ポリマー複合体物品を動かすことをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項28】
前記供給流は水蒸気又は熱をさらに含む、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年3月5日に出願された米国仮出願第63/157,451号及び2022年1月25日に出願された米国仮出願第63/302,852号に対する優先権を主張し、各出願の開示の全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
分野
本開示は、収着性ポリマー複合体物品、収着性ポリマー複合体物品を形成する方法、及び、二酸化炭素の直接空気回収(DAC)のための吸着を含む、吸着の目的での収着性ポリマー複合体物品を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
温室効果ガスの排出に伴う二酸化炭素(CO)レベルの増加は、環境に有害であることが示されている。Climate.gov article “Climate Change: Atmospheric Carbon Dioxide,”で報告されているように、2019年の大気中の平均COレベルは409.8ppmで、過去80万年間で記録された最高レベルであった。大気中のCOの増加速度も、過去数十年間の速度よりもはるかに高くなっている。
【0004】
気候変動を許容レベルに抑えるためには、近い将来にCO排出量をゼロに減らすだけでなく、CO排出量をマイナスにすることが必要である。マイナス排出を達成するには、幾つかの可能性が存在し、例えば、発電のためのバイオマテリアルの燃焼と、燃焼煙道ガスからの CO回収及びその後のCO隔離(「BECCS」)又はCOの直接空気回収(「DAC」)を組み合わせたものがある。
【0005】
吸着によるガス分離は、産業において多くの異なる用途を有し、例えば、ガス流から特定の成分を除去し、ここで、所望の生成物は、ガス流から除去された成分、残りの減耗流、又はその両方のいずれかになることができる。これにより、ガス流の微量成分と主要成分の両方を吸着プロセスの対象にすることができる。1つの重要なガス分離用途は、煙道ガス、排気ガス、産業廃棄ガス、バイオガス、大気などのガス流からCOを回収することにある。大気は、COの希釈供給流と考えられる。
【0006】
DACと呼ばれる、大気からのCOの直接回収は、人為起源の温室効果ガス排出を軽減する幾つかの手段のうちの1つであり、商品市場及び合成燃料の生産のための非化石で場所に依存しないCO源として魅力的な経済的見通しを有する。大気からCOを回収することの具体的な利点としてはa)DACは、世界の温室効果ガス排出量の大部分を占め、経済的に実行可能な方法で排出現場にて現在回収することができない分散発生源(例えば、陸、海及び空の乗物)の排出に対処できること、b)DACは従来の排出に対処でき、したがって、真にマイナスの排出を生み出すことができること、c)DACシステムは排出源に取り付ける必要がなく、場所に依存せず、COをさらに処理又は使用する場所に設置することができることが挙げられる。
【0007】
これらのプロセスをより効率的に開発及び改善し、プロセスで必要なエネルギーを最小限に抑えながら大気から除去されるCOの量を最大化する意欲が高まっている。
【0008】
図1は、従来のDACシステム10に関与するプロセスの概略図である。非CO希釈剤18中にCO分子16の混合物を含む入口供給流11は提供される。例えば、入口供給流11は空気流であることができる。吸着プロセス中に、入口供給流11は収着剤12にさらされる。CO分子16は収着剤12に吸着するが、非CO希釈剤18は収着剤12を通過してシステム10から排出される。次いで、収着剤12は収着剤12からCO分子16を放出するために脱着プロセスを受ける。脱着プロセスには、液体の水又は水蒸気の形態の水分、又はシステムに供給される反応又はエネルギーによるシステム温度の変化が関与することができる。この脱着プロセスは、繰り返してCOの吸着と脱着とを行う周期的なプロセスを規定するために「スイング」吸着と呼ばれる。水分スイング吸着が使用されるならば、収着剤12は、水蒸気又は液体水の形態の水分にさらされ、CO分子16の脱着を引き起こすことができる。温度スイング吸着が使用されるならば、収着剤12に熱を加えて、CO分子16の脱着を引き起こすことができる。これらの水分及び/又は温度の変動は、分子を収着剤12に保持する結合を一時的に破壊し、それにより、CO分子16を解放することができる。したがって、脱着されたCO分子16は収着剤12から分離され、生産品14として収集される。収集されたCO分子16は次に濃縮され、使用又は貯蔵される前にさらに必要な処理を受けることができる。使用される収着剤12が、CO分子16を分離するのに必要な環境、例えば、高温及び高湿条件に繰り返し耐えることができることが重要である。
【0009】
DACについては確立された論文及び技術が存在する。1つの例は、収着性材料を支持することができるか又は収着性材料でコーティングされることができるモノリスなどの基材を含む物品を使用することである。基材の種類と使用する収着剤を変更することで変更が確立される。しかしながら、これらの以前に確立された論文及び方法では、吸着状態と脱着状態の間を効率的に循環させる能力に限界がある。また、物品の耐久性に関しても制限がある。また、物品は、高温又は高湿のレベルの環境、あるいはそれらの組み合わせにさらされるときに劣化する可能性があり、その結果、寿命が短くなる可能性がある。
【発明の概要】
【0010】
要旨
吸着のための収着性ポリマー複合体物品が開示される。収着性ポリマー複合体物品は、収着剤及び可撓性多孔質ポリマーを含み、前記収着性ポリマー複合体物品は、前記収着性ポリマー複合体物品が投入物から1つ以上の成分を吸着するように構成された吸着構成と、前記収着性ポリマー複合体物品が前記収着性ポリマー複合体物品から1つ以上の成分を除去するように構成された脱着構成とを有する。
【0011】
1つの例(「例A」)によれば、収着性ポリマー複合体物品は、収着剤と可撓性多孔質ポリマーとの可撓性を有する複合体を含み、前記収着性ポリマー複合体物品は、前記収着性ポリマー複合体物品が供給流から1つ以上の成分を吸着するように構成された吸着構成と、前記収着性ポリマー複合体物品が前記収着性ポリマー複合体物品から1つ以上の成分を除去するように構成された脱着構成とを有する。可撓性多孔質ポリマーの可撓性により、前記吸着構成と前記脱着構成の間の変形が容易になる。
【0012】
第二の例(「例B」)によれば、収着性ポリマー複合体物品の使用方法は、収着剤及び可撓性多孔質ポリマーを含む多孔質複合体部分を有する収着性ポリマー複合体物品を提供すること、第一の構成にある収着性ポリマー複合体物品を、二酸化炭素を含む供給流に暴露すること、前記収着性ポリマー複合体物品が前記第一の構成にある間に、二酸化炭素の少なくとも一部を前記収着剤に吸着させること、吸着工程の後に前記収着性ポリマー複合体物品を第二の構成に配置すること、及び、前記収着性ポリマー複合体物品が前記第二の構成にある間に、前記収着性ポリマー複合体物品から二酸化炭素を脱着することの工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面の簡単な説明
図1図1はDACシステムに関与するプロセスの概略図である。
【0014】
図2図2は本開示の第一の収着性ポリマー複合体物品の立面図である。
【0015】
図2A図2A図2の第一の複合体物品の第一の複合体領域の概略立面図である。
【0016】
図2B図2B図2の第一の複合体物品の圧縮形態の第一の複合体領域の概略立面図である。
【0017】
図2C図2C図2Bの第一の複合体物品のさらに圧縮された形態の第一の複合体領域の概略立面図である。
【0018】
図2D図2Dは本開示の端部シール領域を含んで示す図2の第一の収着性ポリマー複合体物品の立面図である。
【0019】
図3図3図2の収着性ポリマー複合体物品を使用する方法を示すフローチャートである。
【0020】
図4A図4Aは、第一の層状構成にある収着性ポリマー複合体物品の斜視図である。
【0021】
図4B図4Bは、第二の巻かれた構成にある図4Aの収着性ポリマー複合体物品の立面図である。
【0022】
図4C図4Cは、本明細書に開示される別の実施形態による、第一の層状構成にある収着性ポリマー複合体物品の側面図である。
【0023】
図4D図4Dは第二の巻かれた構成にある図4Cの収着性ポリマー複合体物品の立面図である。
【0024】
図5図5は、第一の構成と第二の構成との間で交替する連続収着性ポリマー複合体物品の立面図である。
【0025】
図6A図6Aは、第一の拡張構成にある収着性ポリマー複合体物品の立面図である。
【0026】
図6B図6Bは、第二の圧縮構成にある図6Aの収着性ポリマー複合体物品の立面図である。
【0027】
図6C図6Cは、本明細書に開示される別の実施形態による第一の拡張構成にある収着性ポリマー複合体物品の立面図である。
【0028】
図6図6Dは、第二の圧縮構成にある図6Cの収着性ポリマー複合体物品の立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
定義と用語
この開示は、限定的に解釈されることを意図したものではない。例えば、本出願で使用される用語は、その分野の専門家がその用語に帰するであろう意味の関係で広く読まれるべきである。
【0030】
不正確さの用語に関しては、「約」及び「およそ」という用語は、記載された測定値を含む測定値、及び記載された測定値に合理的に近い測定値も含む測定値を指すために、互換的に使用されうる。記載された測定値に合理的に近い測定値は、関連技術の当業者によって理解され容易に確認されるように、記載された測定値から合理的に小さな量だけ逸脱している。このような逸脱は、測定誤差、測定及び/又は製造装置の校正の違い、測定値の読み取り及び/又は設定における人為的エラー、他の構成要素に関連する測定値の違いを考慮した性能及び/又は構造パラメータを最適化するために行われた微調整、特定の実装シナリオ、人又は機械による対象の不正確な調整及び/又は操作などに起因することがある。関連技術の当業者がそのような合理的に小さな差異の値を容易に確認できないと判断される場合には、「約」及び「およそ」という用語は、記載された値のプラス又はマイナス10%を意味すると理解できる。
【0031】
「フィブリル」という用語は、本明細書で使用されるときに、長さと幅が実質的に互いに異なる、ポリマーなどの長尺材料片を記載する。例えば、フィブリルは、幅 (又は厚さ)が長さよりもはるかに短いか又は小さい、ストリング又は繊維片に似ていることができる。
【0032】
「ノード」という用語は、本明細書で使用されるときに、少なくとも2つのフィブリルの接続点を記述し、この接続は、2つのフィブリルが永久的又は一時的に互いに接触する位置として定義されうる。幾つかの例において、ノードは、フィブリルよりも大きな体積のポリマーを、そして、ノードを通る同フィブリルの明確な継続なしにフィブリルが開始又は終了する場所を記述するために使用することもできる。幾つかの例において、ノードはフィブリルよりも幅が広いが、長さは短い。
【0033】
本明細書で使用されるときに、「ノード」及び「フィブリル」は、通常、必ずではないが、接続又は相互接続されており、例えば、顕微鏡サイズを有する物体を記述するために使用されうる。「微視的な」物体は、物体又は物体の詳細が肉眼では見えないか、又は、顕微鏡(走査型電子顕微鏡(SEM)などを含むがこれらに限定されない)、又は、適切なタイプの拡大装置の助けなしに観察することが不可能でないとしても困難であるほど実質的に小さい少なくとも1つの寸法(幅、長さ又は高さ)を有する物体として定義されうる。
【0034】
様々な実施形態の説明
本開示は、収着性ポリマー複合体物品、収着性ポリマー複合体物品を形成する方法、及び、供給源流から1つ以上の所望の物質を吸着しそして分離するために収着性ポリマー複合体物品を使用する方法に関する。収着性ポリマー複合体物品を空気などの希薄供給流からのCOのDACに使用すること関して説明するが、他の吸着方法及び用途に使用することもできる。これらの方法としては、限定するわけではないが、他のガス供給流(例えば、燃焼排気)及び液体供給流(例えば、海水)を含む様々な投入物からの物質の吸着が挙げられる。吸着される物質はCOに限定されない。他の吸着される物質としては、限定するわけではないが、他の気体分子(N、CH、COなど)、液体分子、溶質などを挙げることができる。特定の実施形態において、投入物は、吸着される物質を100万分の1部(ppm)オーダーで含む、希釈されたものであってもよい。
【0035】
図2は、第一の複合体領域28を含む本開示の第一の例示的な収着性ポリマー複合体物品20を示す。第一の複合体領域28は、第一の多孔質ポリマー22、及び、収着性材料24、24’を含む。第一の複合体物品28はまた、場合により、キャリア26を含むこともできる。第一の複合体領域28の各要素については以下でさらに説明する。
【0036】
第一の複合体領域28の第一の多孔質ポリマー22は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張(膨張、エキスパンデッド、延伸又は発泡)ポリエチレン(ePE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は別の適切な多孔質ポリマーのうちの1つであることができる。ナノスパン、メルトブローン、スパンボンド及び多孔質キャストフィルムなどの不織布材料は、他の様々な適切な多孔質ポリマー形態でありうることが理解されるであろう。第一の多孔質ポリマー22は、制御された温度及び制御された延伸速度でポリマーを延伸し、ポリマーをフィブリル化させることによって膨張されうる。膨張後、第一の多孔質ポリマー22は、複数のノード30と、隣接するノード30を接続する複数のフィブリル34との微細構造を含むことができる。これらの例において、第一の多孔質ポリマー22は、フィブリル34とノード30によって境界が定められた細孔32を含む。例示的なノード及びフィブリルの微細構造は、Goreの米国特許第3,953,566号明細書に記載されており、その全体を参照により本明細書に取り込む。第一の多孔質ポリマー22の細孔32は、微細孔と考えることができる。このような微細孔は、単一の細孔サイズを有することができ、又は細孔サイズの分布を有することができる。平均細孔サイズは、特定の実施形態では0.1ミクロン~100ミクロンの範囲であることができる。
【0037】
第一の複合体領域28の収着性材料24、24’は、投入物からの所望の物質を吸着によって固体表面上に保持するように構成された表面を有する基材である。収着性材料24、24’は、どの物質が吸着の対象となるかに基づいて変化する。様々な実施形態において、収着性材料24、24’は二酸化炭素収着性材料であり、限定するわけではないが、イオン交換樹脂(例えば、Dowex(登録商標)Marathon(登録商標)A樹脂などの強塩基性アニオン交換樹脂、Dow Chemical Companyから入手可能)、ゼオライト、活性炭、アルミナ、有機金属フレームワーク、ポリエチレンイミン(PEI)、又は別の適切な二酸化炭素吸着性材料、例えば、乾燥剤、カーボンモレキュラーシーブ、カーボン吸着剤、グラファイト、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、アルミノリン酸塩、シリコアルミノリン酸塩、ゼオライト吸着剤、イオン交換ゼオライト、親水性ゼオライト、疎水性ゼオライト、変性ゼオライト、天然ゼオライト、フォージャサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、金属交換シリコアルミノリン酸塩、単極性樹脂、双極性樹脂、芳香族架橋ポリスチレンマトリックス、臭素化芳香族マトリックス、メタクリル酸エステルコポリマー、黒鉛系吸着剤、炭素繊維、カーボンナノチューブ、ナノマテリアル、金属塩吸着剤、過塩素酸塩、シュウ酸塩、アルカリ土類金属粒子、ETS、CTS、金属酸化物、化学吸着剤、アミン、有機金属反応体、ハイドロタルサイト、シリカライト、ゼオライト系イマダゾレートフレームワーク及び 金属有機フレームワーク(MOF)吸着性化合物及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0038】
収着性材料24、24’は、以下にさらに説明するように、コーティング、充填物、同伴粒子として、及び/又は別の適切な形態で第一の多孔質ポリマー22中に存在することができる。図2に示される実施形態において、第一の多孔質ポリマー22は、収着性材料24が第一の多孔質ポリマー22のノード30及び/又はフィブリル34上に実質的に連続したコーティングを形成するように、収着性材料24でコーティングされる。収着性材料24が第一の多孔質ポリマー22のノード30及び/又はフィブリル34中に取り込まれるように、第一の多孔質ポリマー22が収着性材料24で充填されることも本開示の範囲である。図2の例示される実施形態において、収着性材料24’が第一の多孔質ポリマー22のノード30及び/又はフィブリル34の間の細孔32を占めるように、キャリア26上の収着性材料24’の粒子は第一の多孔質ポリマー22中に同伴される。
【0039】
第一の複合体領域28の場合により存在するキャリア26は、それが占める領域の表面積を増加させるように構成された材料であり、所望の物質の吸着に利用可能な表面積の増加を可能にできる。キャリア26としては、メソポーラスシリカ、ポリスチレンビーズ、多孔質ポリマー床又は球体、酸化物支持体、別の適切なキャリア材料を挙げることができる。キャリア26は、硫酸カルシウム、アルミナ、活性炭、ヒュームドシリカなどの多孔質無機材料を内部に含む多孔質フィルムをさらに含むことができる。上述したように、キャリア26は、収着性材料24’でコーティング又は機能化された高表面積粒子として第一の複合体領域28の細孔32内に存在することができる。収着性材料24’でコーティングされたキャリア26の組み合わせにより、吸着に利用可能な表面積が増大する。これらの実施形態において、ノード30及びフィブリル34は、収着性材料24でコーティングされても又はされなくてもよい。ノード30及びフィブリル34がコーティングされないときに、第一の多孔質ポリマー22の元の疎水性は保持されうる。
【0040】
収着性ポリマー複合体物品20の第一の複合体領域28は、第一の側72(例えば、図2の上側)及び第二の側74(例えば、図2の下側)を含む。収着性ポリマー複合体物品20は、第二の多孔質ポリマー40を含む第二の領域36をさらに含み、第二の領域36は、第一の複合体領域28の第一の側72に隣接して配置されている。様々な実施形態において、収着性ポリマー複合体物品はまた、 第三の多孔質ポリマー48を含む第三の領域38を含み、第三の領域38は、第一の複合体領域28の第二の側74に隣接して配置されている。このようにして、第一の複合体領域28は、第一の側72にある第二の領域36と第二の側74にある第三の領域との間に挟まれることができる。第二の領域36の第二の多孔質ポリマー40は、複数のノード42、隣接するノード42を接続する複数のフィブリル46、及び、それぞれのノード42とフィブリル46との間に各々形成された複数の細孔44を含むことができる。同様に、第三の領域38の第三の多孔質ポリマー48は、複数のノード50、隣接するノード50を接続する複数のフィブリル52、及び、それぞれのノード50とフィブリル52との間に形成された複数の細孔54を含むことができる。第二の多孔質ポリマー40の細孔44及び/又は第三の多孔質ポリマー48の細孔54は、上でさらに説明したように、微細孔と考えることができる。
【0041】
収着性ポリマー複合体物品20の第一の複合体領域28、第二の領域36及び第三の領域38は、異なるプロセスを使用して形成されうる。特定の実施形態において、第一の複合体領域28、第二の領域36及び/又は第三の領域38は別個の層として形成され、その後に、互いに結合されてもよい。この場合に、第一の複合体領域28の第一の多孔質ポリマー22、第二の領域36の第二の多孔質ポリマー40及び/又は第三の領域38の第三の多孔質ポリマー48は区別可能な構造であることができる。他の実施形態において、第一の複合体領域28、第二の領域36及び/又は第三の領域38は、一緒に形成され、その後、以下にさらに説明されるように、異なるコーティングプロセス又は表面処理を受けて、特定の領域を区別することができる。この場合に、第一の複合体領域28の第一の多孔質ポリマー22、第二の領域36の第二の多孔質ポリマー40及び/又は第三の領域38の第三の多孔質ポリマー48は連続構造又は一体構造であることができる。
【0042】
収着性ポリマー複合体物品20の第一の複合体領域28、第二の領域36及び第三の領域38は異なる程度の疎水性を有することができる。疎水性は、限定するわけではないが、プラズマエッチング及び微細トポグラフィー特徴部の適用を含むことができるコーティング又は表面処理の適用など、様々な方法によって変更することができる。第一の複合体領域28は第一の疎水性を有し、第二の領域36は第二の疎水性を有し、第三の領域38は第三の疎水性を有することができる。第一の疎水性は、第二の疎水性及び第三の疎水性のそれぞれよりも低い。第二の疎水性は、第三の疎水性より小さいか、大きいか、又は等しくてもよい。第二の領域36及び第三の領域38の疎水性がより大きいことにより、それぞれの領域36、38を通る液体の水の浸透性を減少させ、このようにして、周囲の液体の水と第一の複合体領域28の構成要素との間にバリアを形成することができる。これにより、液体の水によって引き起こされる可能性がある第一の複合体領域28内の収着性材料24、24'の劣化が減少し、収着性ポリマー複合体物品20の寿命及び耐久性が向上する。第一の複合体領域28の第一の疎水性に対して第二の領域36の疎水性が大きく、また、第三の領域38の疎水性が大きいことは、第二の領域及び第三の領域36、38内に収着性材料24、24’が存在しないことに起因することができる。
【0043】
幾つかの実施形態において、第一の複合体領域28はコーティング(図示せず)でシールされる。特定の例において、コーティングは、上述の収着性材料24、24’と同様の炭素吸着性材料となるように構成される。
【0044】
第二の領域36の第二の多孔質ポリマー40及び第三の領域38の第三の多孔質ポリマー48は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、膨張ポリエチレン(ePE)又は他の適切な多孔質ポリマーのうちの少なくとも1つであることができる。第二の領域36の第二の多孔質ポリマー40は、第三の領域38の第三の多孔質ポリマー48と同一であっても又は異なっていてもよい。さらに、第一の複合体領域28の第一の多孔質ポリマー22、第二の領域36の第二の多孔質ポリマー40及び第三の領域38の第三の多孔質ポリマー48は、同一であっても又は異なっていてもよい。
【0045】
様々な実施形態において、第二の領域36の厚さは、第一の複合体領域28の厚さよりも薄く、第三の領域38の厚さは、第一の複合体領域28の厚さよりも薄い。収着性ポリマー複合体物品20の全体の厚さは約0.1mm~約5.0mmであることができる。特定の実施形態において、第一の複合体領域28の厚さは、全体の厚さの大部分、例えば、全体の厚さの約70%、約80%、約90%又はそれ以上を占めることができる。
【0046】
第一の複合体領域28、第二の領域36及び第三の領域38のそれぞれの多孔質ポリマー22、40、48の細孔特性は可変である。特定の実施形態において、第二の領域及び第三の領域36、38は、第一の複合体領域28よりも少ない及び/又はよりも小さい細孔44、54を有して、第一の複合体領域28中への所望の分子(例えば、CO)の透過を許容しながら、第一の複合体領域28への望ましくない汚染物(例えば、水)の透過を選択的に制限することができる。対照的に、第一の複合体領域28は、第二の領域及び第三の領域36、38より多くの及び/又はより大きい細孔32を有して、吸着及び脱着のための第一の複合体領域28を通るCOの移動を促進することができる。
【0047】
さらに、細孔特性は、異なる実施形態の間で変えることができる。細孔特性のこの変化は、収着性ポリマー複合体物品20の全体の厚さ、ならびに第一の複合体領域28、第二の領域36及び第三の領域38の個々の厚さに依存しうる。
【0048】
図2Aは、図2の収着性複合体物品20の第一の複合体領域28の概略立面図である。この実施形態において、収着性ポリマー複合体物品20(図2)は比較的厚く、例えば約3mmであり、第一の複合体領域28は収着性ポリマー複合体20の全体の厚さの大部分を占める厚さT1を有する。収着性ポリマー複合体物品20には、比較的大きな空隙率を保持するために、所望の量の収着性材料24(例えば、約60%の収着性材料24)が装填されることができ、ここで、空隙率とは、第一の複合体領域28の全体の体積に対する第一の複合体領域28の空隙空間の体積の相対比である。このようにして、収着性ポリマー複合体物品20は構造的に比較的開放的であり、収着性材料24へのアクセス可能性が比較的高い。この実施形態では厚さT1であるため、ガスの拡散のために必要な距離はさらに遠くなる可能性があるが、収着性材料24はガスにアクセス可能なままである。結果として、本明細書で説明するように、より薄い実施形態と比較して、収着性材料24に吸着するガスの初期速度は遅くなる可能性があるが、収着性材料24に吸着するCOの平衡に迅速に到達することができる。
【0049】
図2Bは、図2Aの第一の複合体領域28の代替実施形態であり、ここで、収着性複合体物品20(図2)は、例えば約0.5mmのメジアン厚さを有する。この実施形態において、第一の複合体領域28は、収着性ポリマー複合体物品20の全体の厚さの大部分を占める厚さT2を有する。この場合に、第一の複合体領域のポリマー22(図2)の量が及び収着性材料24の量が前の実施形態と比較して一定であるならば、空隙率は図2Aの第一の複合体領域28の空隙率よりも相対的に小さくなる。したがって、収着性ポリマー複合体物品20は、ガスが収着性材料24にアクセス可能であるが、図2Aの実施形態の収着性材料24よりは比較的アクセスしにくい多孔性を維持する。結果として、収着性材料24に吸着するガスの初期速度は、拡散距離がより短いために、より速くなりうるが、CO吸着の平衡に至るまでの時間は、図2Aの実施形態に比べて増加する。
【0050】
図2Cは、図2A及び図2Bの第一の複合体領域28の代替実施形態であり、ここで、収着性ポリマー複合体物品20(図2)は比較的薄く、例えば約0.1mmである。この実施形態において、第一の複合体領域28は、収着性ポリマー複合体物品20の全体の厚さの大部分を占める厚さT3を有する。この場合に、第一の複合体領域28のポリマー22(図2)の量及び収着性材料24の量が上記の2つの実施形態に対して一定であるならば、ポリマー22及び利用可能な収着性材料24は、収着性ポリマー複合体物品20内でさらに凝縮される。ガスが物品20を通過するのに必要な拡散距離は、収着性ポリマー複合体物品20の圧縮された厚さに起因してより短いが、収着性材料24はまた、ガスにアクセス可能性が低い。結果として、収着性材料24へのガスの初期吸着速度は前の実施形態よりも速くなるが、システムがCO吸着平衡に達するまでにより長い時間がかかる可能性がある。
【0051】
図2に戻って参照すると、収着性ポリマー複合体20の細孔特性は、各層内で変化しうるが、収着性ポリマー複合体物品20の厚さ、第一の複合体領域28の厚さ、収着性ポリマー複合体物品20内で使用される収着性材料24、24’の量及びポリマー22の量を含む様々な特性を変化させた結果として、様々な実施形態にわたっても変化しうる。このようにして、拡散長と収着性材料24、24’のアクセス可能性との間の関係は、収着性ポリマー複合体物品20の機能を最大化するために変化させることができる。
【0052】
さらに、第一の複合体領域28、第二の領域36及び第三の領域38の疎水性、厚さ、細孔特性及び他の特性を変化させる能力は、収着性ポリマー複合体物品20の耐久性及び適合性を増加させることができる。さらに、比較的薄くて可撓性の収着性ポリマー複合体物品20を使用することにより、収着性ポリマー複合体物品20がCOの吸着及び脱着のための異なる形態に適合することが可能になりうる。
【0053】
図2D図2の収着性ポリマー複合体物品の追加の立面図であり、追加の端部シール領域21を含む。特定の実施形態において、収着性ポリマー複合体物品20は、収着性ポリマー複合体物品20の構成要素を保護するためにこの端部シール領域21を含む。例えば、収着性ポリマー複合体物品20が生産又は製造目的など、任意の様式で切断又は分割されるならば、収着性ポリマー複合体物品20の特性に有害である可能性のある水、蒸気又はデブリなどの外部環境要素にさらされる第一の複合体領域28、したがって、第一の複合体領域28内の収着性材料24、24’を残す可能性がある。したがって、端部シール領域21を備えた実施形態が望ましいことがある。図2Dに示されるように、端部シール領域21は、第二の領域36のポリマー40と第三の領域38のポリマー48とを接続することができ、第一の複合体領域の露出したポリマー28を少なくとも1つの側で覆うように配置される。
【0054】
図2Dの例示の実施形態において、端部シール領域21は、シーリング材料47の追加層を収着性ポリマー複合体物品20上に適用することによって形成される。シーリング材料47は、第二の領域36及び第三の領域36の材料と同じであっても又は異なっていてもよい。例えば、シーリング材料47は、ePTFE(図2Dに示すとおり)、ePE、シリコーンエラストマー、又は第一の複合体領域28を保護する任意の他の適切な非孔質及び/又は疎水性材料であることができる。他の実施形態において、端部シール領域21は、第二の領域36及び第三の領域38を延長し、領域36、38を結合(例えば、挟む、接着)することによって形成されうる。この端部シーリング工程を追加すると、複合材料内に保持された収着剤を保護し、また複合材料の前方端(空中の破片及び高速衝撃による損傷が最も起こりやすい領域)を強化することにより、複合材料に利益がもたらされる。
【0055】
図3は、DACのための収着性ポリマー複合体物品20(図2)を使用する方法100を示すフローチャートである。収着性ポリマー複合体物品20(図2)の使用方法は、DACへの使用を参照して説明されるが、この方法は、DAC以外の異なる吸着プロセスで使用するために変更されうる。この方法100の第一の実施形態の例は図4A~4Dに示されている。したがって、方法100について、最初に図3、4A、4B、4C及び4Dを参照して説明する。次に、後続の段落では、図5及び図6A~6Dを参照して方法100について説明する。
【0056】
ブロック102において、方法100は、まず、多孔質複合体部分62を有する収着性ポリマー複合体物品20を提供することを含む。特定の実施形態において、多孔質複合体部分62は、吸着性材料24、24'と第一の多孔質ポリマー22とを有する第一の複合体層28、第二の層36及び第三の層38を含み、図2に関して上で図示及び説明したとおりである。特定の例において、ブロック102は、収着性ポリマー複合体物品20の多孔質複合体部分62に結合された非孔質部分64を提供することをさらに含むことができる。図4A及び4Cの実施形態において、非孔質部分64は、収着性ポリマー複合体物品20の多孔質複合体部分62の最外端部68に位置する。多孔質複合体部分62、非孔質部分64の長さ及び/又は収着性ポリマー複合体物品20の全長は可変である。
【0057】
ブロック104において、方法100は、第一の吸着構成にある収着性ポリマー複合体物品20を供給流60に暴露することを含む。収着性ポリマー複合体物品20は、多孔質部分62が非孔質部分64により隠されることなく供給流60にさらされるように、第一の構成において実質的に層状の形態を有することができ、その例を図4A及び図4Cに示す。この第一の構成において、収着性ポリマー複合体物品20は支持構造70によって保持されうる。収着性ポリマー複合体物品20の可撓性の性質により、収着性ポリマー複合体物品20が布製の旗又は横断幕のように支持構造70から外側に広がることが可能になりうる。図4A図4Dの例示的な実施形態では水平構成が記載されているが、追加の複数の垂直方向の構成が考えられる。幾つかの例において、収着性ポリマー複合体は、収着性ポリマー複合体物品20の各端部で構造70によって支持されてよく、その材料は支持体70の間を横切る。様々な実施形態において、供給流60は、少なくともCO及び他の1つの物質を含む。供給流60は、図1を参照して図示及び説明した投入物11の供給流と同様であることができる。供給流60は、図4A及び図4Cに示すように、収着性ポリマー複合体物品20を横切って実質的に平行な方向、実質的に垂直な方向、又は別の適切な方向に向けることができる。
【0058】
ブロック106において、方法100は、収着性ポリマー複合体物品20が第一の構成にある間に、収着性ポリマー複合体物品20の収着性材料24、24’(図2)上にCOを吸着させることを含む。様々な実施形態において、供給流60中のCOの少なくとも一部は、収着性ポリマー複合体物品20の多孔質部分62の収着性材料24、24’(図2)上に吸着される。特定の例において、収着性ポリマー複合体物品20は、COの吸着容量に達するまで、第一の構成に維持される。これは、収着性ポリマー複合体物品20の収着性材料24、24’上に吸着されたCOの量が、収着性ポリマー複合体物品20の収着性材料24、24’が吸着できるCOの最大量に等しいときに起こる。収着性ポリマー複合体物品20がその吸着容量に達する前にブロック106の吸着工程を中止することも本開示の範囲内である。例えば、システムの動特性は、収着性材料24、24’上に吸着されたCOの量が、吸着容量に達する前に平衡及びプラトーに達するように制限されうる。この例では、ブロック106の吸着工程は、収着性材料24、24’上に吸着されたCOの量がプラトーになったときに中止されうる。
【0059】
ブロック108において、方法100は、前のブロック106において収着性ポリマー複合体物品20にCOを吸着させた後に、収着性ポリマー複合体物品20を第二の脱着構成に配置することを含む。特定の例において、ブロック108のこの配置工程は、吸着容量に達した後又は達する前に起こる。収着性ポリマー複合体物品20は、第二の構成において、実質的に巻かれた又は巻き取られた筒形を有することができ、多孔質部分62が多孔質ドラム72上に巻かれ、非孔質部分64が多孔質部分62上に巻かれている。したがって、幾つかの例によれば、内側の多孔質部分62は、外側の非孔質部分64によって隠蔽されることができる。非孔質部分により、多孔質ドラム72内に真空を課すことができる。真空又は負圧を課すことは、脱着されたCOを抜き出す標準的な方法である。幾つかの例において、多孔質部分62は、非孔質材料の1つ以上の層を含むことができる外側の非孔質部分64によって一時的に覆われることができる。幾つかの例において、多孔質部分62は、外側の非孔質部分64によって外部環境から物理的に隔離、絶縁又は保護されることができる。
【0060】
ブロック110において、方法100は、収着性ポリマー複合体物品20を脱着源80(例えば、水、水蒸気及び/又は熱)に暴露することによって、収着性ポリマー複合体物品20が第二の構成にある間にCOを脱着することを含む。図4B及び図4Dに示される実施形態において、ブロック110のこの脱着工程は、第二の構成にあるときに、収着性ポリマー複合体物品20の中心を通して長手方向に脱着源80として水蒸気を注入することを含む。端部シール領域21(図2)は、収着性材料24、24’を保護することができる。脱着工程中に材料がはるかに小さい形状に制限されるため、脱着に必要なエネルギーは従来のシステムと比較して最小限に抑えることができる。収着性ポリマー複合体物品20は、ヒンジ及び追加の構成要素を必要とせずに、第一の構成と第二の構成との間の変形を容易にするある程度の可撓性を備える。ブロック110のこの脱着工程は、交替する地理的地域、季節、温度及び気候によって異なることができる。
【0061】
水滴の形成は、ブロック106の吸着工程中に供給流60からの吸着と、ブロック110の脱着工程中に発生するCOの脱着の両方を阻害する可能性がある。供給流60は、COの吸着を阻害する液滴が収着性ポリマー複合体物品20上に形成されるのに十分な水蒸気を含んでいる可能性がある。同様に、液滴は、脱着中に収着性ポリマー複合体物品20上で凝縮する可能性がある。このような状況において、収着性ポリマー複合体物品20を振とうさせたり、振動させたり、揺動させたり、その他の方法で移動させることにより、収着性ポリマー複合体物品20から液滴を除去することができる。これらの技術は、吸着効率と脱着効率をそれぞれ改善することができる。この可動性は、収着性ポリマー複合体物品20の可撓性のさらなる利点を示す。液滴を除去するために運動を与える様々な手段は当業者に公知であり、収着性ポリマー複合体物品20を物理的に振動させること、構造体70を振とうさせること、パルス空気を適用すること、及び/又は音又は磁気形態によって構造体70を振動させることなどを挙げることができる。収着性ポリマー複合体物品20を振とう又は振動させるこの工程は、ブロック104の暴露工程、ブロック106の吸着工程、ブロック108の配置工程及びブロック108の脱着工程110と同時に、その前に及び/又は後に行うことができる。
【0062】
特定の例において、方法100は、抽出されたCOを回収することをさらに含む。この回収プロセスは、解放されたCOを回収するために真空を使用して実行できる。
【0063】
図3の方法100の別の実施形態は、図5に示す収着性ポリマー複合体物品20'の使用に関する。収着性ポリマー複合体物品20’は、以下に説明する点を除いて、上述の収着性ポリマー複合体物品20と同様とすることができ、同様の参照番号は同様の要素を識別する。
【0064】
図5に示される実施形態において、ブロック102(図3)の提供工程は、第一の部分82(例えば、図5の上部)及び第二の部分84(例えば、図5の下部)を有する連続経路81に沿って、ベルト状多孔質複合部分62を配置することを含む。収着性ポリマー複合体物品20’が第一の構成にあるブロック104(図3)の暴露工程は、多孔質複合体62の少なくとも一部を経路81の第一の(例えば、上部)部分82に供給流60と連通して配置することを含む。ブロック106(図3)の吸着工程は、供給流60からのCOを、第一の構成に配置された収着性ポリマー複合体物品20'の部分に吸着させることを含む。収着性ポリマー複合体物品20’が第二の構成にあるブロック108(図3)の配置工程は、多孔質複合体62の少なくとも一部を経路81の第二の(例えば、下部)部分84に脱着源80と連通して配置させることを含む。ブロック110(図3)の脱着工程は、第二の構成で配置された収着性ポリマー複合体物品20’の部分を脱着源80に暴露してCOを脱着することを含む。図5に示される実施形態において、この脱着源80は水蒸気である(例えば、水蒸気を含む温室)。温室の例において、解放されたCOは植物によって使用されうる。特定の他の実施形態において、抽出されたCOは、ブロック110の脱着工程の後に回収されうる。
【0065】
図5に示されるように、収着性ポリマー複合体物品20'は、ローラ86a、86b、86c、86dによって支持され、経路81に沿って連続的に交替(回転)することができる。この実施形態において、収着性ポリマー複合体物品20'は、経路81の第一の部分82に配置されたときの第一の構成と、経路81の第二の部分84に配置された時の第二の構成との間で連続的に交替(回転)する無限トラックとして動作する。このようにして、収着性ポリマー複合体物品20'の長さに沿った各点は、第一の構成での吸着、第二の構成に交替されたときの脱着及び再生、第一の構成に戻るように交替されたときのさらなる吸着などを経験することができる。収着性複合体物品20の可撓性により、ヒンジ構成要素を含むがこれに限定されない追加の構成要素を必要とせずに、第一の構成と第二の構成との間の移行が容易になる。この実施形態はまた、単一の収着性ポリマー複合体物品20’で吸着と脱着を同時に行うことを可能にする。例えば、第一の構成に配置された収着性ポリマー複合体物品20’の上半分で吸着が起こり、第二の構成に配置された収着性ポリマー複合体物品20の下半分で同時に脱着が起こりうる。収着性ポリマー複合体20’が移動する速度は、その吸着及び脱離の容量に従って、又は平衡に達するときの動特性に基づいて変更することができる。
【0066】
図3の方法100の別の実施形態は、収着性ポリマー複合体物品20''の使用に関するものであり、その例は図6A~6Dに示されている。収着性ポリマー複合体物品20''は、以下に説明する点を除いて、上述の収着性ポリマー複合体物品20と同様であることができ、同様の参照番号は同様の要素を識別する。
【0067】
この実施形態において、ブロック104(図3)の暴露工程に対応する第一の構成は、拡張され又は展開された構成であり、その例は図6A及び図6Cに示されている。ブロック108(図3)の配置工程に対応する第二の構成は、圧縮され又は折り畳まれた構成であり、その例は図6B及び図6Dに示されている。収着性ポリマー複合体物品20''は、そのような展開及び折り畳みに適応するヒンジ点91を有する格子構造体であることができる。この実施形態において、収着性ポリマー複合体物品20''の高さ90は、第一の拡張構成において、収着性ポリマー複合体物品20''の第二の圧縮構成における高さ92よりも大きい。
【0068】
特定の実施形態において、収着性ポリマー複合体物品20''は、収着性材料24を含む領域(例えば、充填領域)と、収着性材料24を含まない領域(例えば、非充填領域)とを含むことができる。収着性材料24を含まない領域は、収着性材料24を含む領域よりも形態適合性が高くなることができる。収着性ポリマー複合体物品20''の適合性を制御するこの能力により、ヒンジ点91の位置を制御することも可能になりうる。耐久性を高めるために、シリコーンなどの物質を、収着性材料24を含まない収着性ポリマー複合体物品20の領域に同伴してもよい。収着性複合体物品20の可撓性により、コストを増加させ、寿命及び耐久性を低下させる機械的ヒンジ及び追加の構成要素を必要とせずに、第一の構成と第二の構成との間の変換が容易になる。
【0069】
さらに、ブロック110(図3)の脱着工程は、収着性ポリマー複合体物品20''を脱着源80に暴露することを含むことができる。図6B及び6Dに示される実施形態において、脱着源80は水であってよく、それにより、脱着工程は、第二の圧縮構成にある間に収着性ポリマー複合体物品20''を水中に浸漬してCOを脱着することを含む。他の実施形態において、脱着源80は水蒸気又は熱であることができる。当業者であれば、脱着工程中に収着性ポリマー複合体が占める体積を最小限に抑えることによるエネルギー節約の可能性を明確に認識するであろう。この体積の減少は、エネルギー使用量の削減及び最終的にはコストの削減をもたらす。
【0070】
可撓性収着性ポリマー複合材料のさらなる利点は、体積低下の能力(折りたたむ、丸める、巻き取るなど)によってもたらされる。空気接触器又はモジュールの体積を最小限に抑えることで、CO回収サイトの保管スペース、製造サイトの在庫スペース、輸送及び梱包コストを削減できる。これらの利点は列挙されているが、限定を意図していない。さらに説明すると、本発明の収着性ポリマー複合体を交換するのに必要な作業員の削減など、体積削減の利点は広範囲に及ぶことができる。例えば、展開又は吸着構成において、収着性ポリマー複合体はかさばり、それを扱いそして交換するには技術者のチームが必要であるが、本発明の折り畳まれた又はスプールされた収着性ポリマー複合体では、かつては複数の技術者が必要であった同作業を行うのに、1人の技術者だけを必要とすることができる。
【0071】
本開示の範囲から逸脱することなく、説明した例示的な実施形態に対して様々な変更及び追加を行うことができる。例えば、上述の実施形態は特定の特徴について言及しているが、本開示の範囲には、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態及び記載された特徴のすべてを含まない実施形態も含まれる。したがって、本開示の範囲は、特許請求の範囲に含まれるすべての代替、変更及び変形形態を、そのすべての均等とともに包含することが意図される。
図1
図2
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
【国際調査報告】