(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】送気システム用ソレノイド
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554069
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 US2022019073
(87)【国際公開番号】W WO2022192101
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500103074
【氏名又は名称】コンメッド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルツ マイケル エル. ジュニア
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF48
4C160MM23
(57)【要約】
方法は、第1の期間の間、作動電圧をソレノイドに印加して、付勢に逆らってソレノイドを作動させることを含む。方法は、第2の期間の間、ソレノイドに印加される電圧を作動電圧より低い保持電圧へと低下させて、付勢に逆らってソレノイドを保持することを含む。ソレノイドは、作動電圧および保持電圧が印加されるコイルを有する。コイルは、定格電圧での連続動作に対して定格である。作動電圧は定格電圧を上回る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の期間の間、作動電圧をソレノイド弁に印加して、前記ソレノイド弁を付勢に逆らって作動させることと、
前記ソレノイドへと印加した電圧を低下させ、かつ前記ソレノイドを第2の期間の間前記付勢に逆らって保持するために前記作動電圧よりも低い保持電圧へと低下させることと、
を含み、
前記ソレノイドが前記作動電圧および保持電圧が印加されるコイルを有し、前記コイルが定格電圧における連続的な動作に対して定格であり、かつ前記作動電圧が前記定格電圧を上回る、方法。
【請求項2】
前記保持電圧が前記定格電圧を下回る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作動電圧を前記ソレノイドへと印加することが、前記付勢が緩和され、かつ前記ソレノイドに印加された電圧が、前記コイルが第1の温度へと冷却される期間の間、前記保持電圧を下回って低下し、前記コイルが、前記第2の期間の間に第2の温度へと上げられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の期間が、前記コイルが前記第1の期間の間に前記第2の温度を超えないように十分短い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ソレノイドが、前記弁を通る流れを可能にするための開位置と、前記弁を通る流れを防止するための閉位置とを有する弁に動作可能に接続され、前記付勢が前記弁を前記開位置へと付勢し、前記ソレノイドを前記付勢に逆らって作動させることが、前記弁を前記閉位置へと作動させ、かつ前記付勢に逆らって前記ソレノイドを保持することが、前記弁を前記閉位置に保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
送気ライン内の過剰圧力に応答して前記保持電圧を下回って電圧を低下させることをさらに含み、それによって前記弁を前記付勢下で前記開位置へと開放して、前記送気ライン内の前記過剰圧力を解放する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電力喪失事象において電圧をゼロへと低下させ、それによって前記弁を前記付勢下で前記開位置に開放して、患者の外科手術腔内の圧力を解放することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記開位置において前記弁を通る流れを濾過して、前記弁を通過する粒子を低減または防止することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記作動電圧および前記保持電圧のうちの少なくとも一つが、前記それぞれの作動電圧および/または保持電圧において平均される交流波形として印加される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
作動電圧が、定格電圧より高いが、前記第1の期間が、前記コイルに対する故障モードを引き起こすことなく前記第1の電圧を印加するために十分短く、前記故障モードが、絶縁破壊、ハウジングもしくはボビンの溶融もしくは歪み、または電機子の焼き付きのうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記作動電圧が48ボルトであり、かつ前記保持電圧が5ボルトである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記作動電圧を印加することが、20ワットを前記ソレノイドへと印加することを含み、また前記ソレノイドを前記付勢に逆らって第2の期間の間、保持することが、前記保持電圧において1ワットを前記ソレノイドへと印加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ハウジング内に着座するコイルと、
前記コイルを通り、かつ前記ハウジングの第1の端部から出て、長手方向に延在する電機子であって、前記電機子が、外部磁界に応答する材料を含み、かつ前記コイルおよび前記コイルの磁界に応答するハウジングに対する移動のために前記ハウジング内に据え付けられる、電機子と、
前記ハウジングの第2の端部に据え付けられ、かつ前記電機子が後退した位置にある状態で前記電機子と接触するように構成されたラッチ面を含む、ラッチ部材と、
前記ハウジングの第1の端部において、前記電機子の周りに円周方向に分散される複数の永久磁石と、
を備える、ソレノイド。
【請求項14】
前記ラッチ部材が、前記ハウジングに対して前記ラッチ部材を回転することによって、前記ハウジング内の前記ラッチ面の軸方向位置を調整するために、ねじ山を用いて前記ハウジングと係合される、請求項13に記載のソレノイド。
【請求項15】
前記電機子を中心として円周方向に分散された四つの永久磁石がある、請求項13に記載のソレノイド。
【請求項16】
前記永久磁石のそれぞれの極性が、前記長手方向に対して半径方向に向けられる、請求項15に記載のソレノイド。
【請求項17】
前記永久磁石の各々に対して、半径方向内部極が磁南であり、かつ半径方向外部極が磁北である、請求項16に記載のソレノイド。
【請求項18】
前記コイルが、前記ハウジングのボビンの外向き面の周りに巻かれ、前記ボビンの内向きに面する面が、摺動ベアリング面として前記電機子と係合する、請求項13に記載のソレノイド。
【請求項19】
ハウジング内に着座するコイルと、
前記コイルを通り、かつ前記ハウジングの第1の端部から出て、長手方向に延在する電機子であって、外部磁界に応答する材料を含み、かつ前記コイルおよび前記コイルの磁界に応答するハウジングに対する移動のために前記ハウジング内に据え付けられる電機子と、
を含むソレノイド、及び、
前記コイルを制御するために動作可能に接続されたコントローラであって、機械可読命令を含むコントローラ、
を備え、
前記機械可読命令は、前記コントローラに、
第1の期間の間、前記コイルに作動電圧を印加して、前記ソレノイドを付勢に逆らって作動させ、かつ
前記ソレノイドへと印加した電圧を、前記作動電圧より低い保持電圧へと低下させて、前記ソレノイドを第2の期間の間、前記付勢に逆らって保持させるように構成されており、
前記コイルが定格電圧における連続的な動作に対して定格であり、かつ前記作動電圧が前記定格電圧を上回る、システム。
【請求項20】
前記電機子と一緒に移動するように据え付けられた弁部材と、
弁ハウジングであって、前記弁ハウジングの入口から前記弁ハウジングの出口までの流路を画定する弁ハウジングであって、前記流路が弁シートを通過し、第1の位置にある前記弁部材および電機子により、前記弁部材が前記弁座に対して密封して、前記流路を通る流れを防止し、かつ第2の位置にある前記弁部材および電機子により、前記弁部材が前記弁座から離隔して、前記流路を通る流れを可能にする、弁ハウジングと、
をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記弁座の下流の前記弁ハウジング内の前記流路内に着座し、前記第2の位置にある前記電機子および弁部材により前記弁ハウジングから外へ出る粒子の流れを防止するように構成される、濾過材をさらに備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
送気装置をさらに備え、前記送気装置が、
圧力源と、
前記圧力源を、前記送気装置を、患者の外科手術腔に送気するためのトロカール管セットに接続するように構成されたコネクタに接続する空気圧ラインであって、前記弁ハウジングの前記入口が、前記空気ラインからの圧力逃がし流れを選択的に許容または遮断するために、前記空気圧ラインからの分岐に接続される、空気ラインと、
を含む、請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月8日に出願された米国仮特許出願第63/158,090号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、ソレノイドに関し、より具体的には、送気システムで使用されるようなソレノイド弁に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
送気装置およびガス密封トロカールシステムは、一般的に、ガス流を制御するために、ソレノイドを採用する。これらのソレノイドは本質的に、コイルワイヤの電気抵抗に起因して電気的に通電された時に、熱エネルギーを生成する。この熱は、一般的に冷却ファンの使用によって消散されなければならず、これは、追加的な電力の要求、サイズの増加、および重量の増加により、さらにシステムの負担になる。現代の手術室は、外科的手技のために使用される医療用電気機器の量の増加によって絶えず課題を抱えており、そしてこの機器は、空間と電力を消費し、また筋骨格系傷害の危険を人員に提示し、その人員は手技の合間に常に機器を持ち上げ、そして循環させなければならない。したがって、より小さい、より軽い、より電気的に効率的な医療用装置に対する継続的なニーズが依然として存在する。
【0004】
送気装置およびガス密封トロカールシステムの中で使用されるソレノイドは、典型的に3~9の番号が付けられ、実質的にシステム全体のサイズ、重量、および電力消費に寄与する。圧力および流量の要件の増加とともに、ソレノイドのサイズも増大する。この現象は、ポペットに作用する圧力または圧力エリアが増加するにつれて、増加するポペットを変位させるために必要とされるソレノイド力に関連する。
【0005】
従来の技法は、それらの意図された目的に対して満足できるものであると考えられてきた。しかしながら、より小さい、より軽い、そしてより効率的なソレノイドおよびソレノイド弁のための改善されたシステムおよび方法に対するニーズが常に存在する。本開示は、このニーズに対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【0006】
方法は、第1の期間の間、作動電圧をソレノイドに印加して、付勢に逆らってソレノイドを作動させることを含む。方法は、第2の期間の間、ソレノイドに印加される電圧を作動電圧より低い保持電圧へと低下させて、付勢に逆らってソレノイドを保持することを含む。ソレノイドは、作動電圧および保持電圧が印加されるコイルを有する。コイルは、定格電圧での連続動作に対して定格である。作動電圧は定格電圧を上回る。
【0007】
保持電圧は、定格電圧を下回る場合もある。付勢が緩和され、そしてソレノイドに印加された電圧が、コイルが第1の温度へと冷却される間の、ある期間の間、保持電圧を下回って降下した後、ソレノイドへの作動電圧の印加を実施することができる。第2の期間の間に、コイルを、第2の温度へと上昇させることができる。第1の期間は、コイルが第1の期間の間に第2の温度を超えないように、十分に短くすることができる。作動電圧は、定格電圧よりも高くすることができるが、第1の期間は、コイルに対する故障モードを引き起こすことなく第1の電圧を印加するために十分短くすることができる。ここで、故障モードは、絶縁破壊、ハウジングもしくはボビンの溶融もしくは歪み、または電機子の焼き付きのうちの少なくとも一つを含む。作動電圧および保持電圧のうちの少なくとも一つは、平均がそれぞれの作動電圧および/または保持電圧である交流波形として印加することができる。
【0008】
ソレノイドは、弁を通る流れを可能にするための開位置と、弁を通る流れを防止するための閉位置とを有する弁に動作可能に接続することができる。付勢は、弁を開位置へと付勢することができる。ソレノイドを付勢に逆らって作動させることで、弁を閉位置へと作動させることができる。ソレノイドを付勢に逆らって保持することで、弁を閉位置に保持することができる。方法は、送気ライン内の過剰圧力に応答して保持電圧を下回って電圧を低下させ、それによって弁を付勢下で開位置へと開放して送気ライン内の過剰圧力を解放することを含むことができる。また、方法は、電力喪失事象において電圧がゼロへと低下し、それによって弁を付勢下で開位置に開放して、患者の外科手術腔内の圧力を解放することを含み得ることも企図される。方法は、開位置において弁を通る流れを濾過して、弁を通過する粒子を低減または防止することを含むことができる。
【0009】
例えば、作動電圧は48ボルトとすることができ、また保持電圧は5ボルトとすることができる。作動電圧を印加することは、20ワットをソレノイドへと印加することを含むことができ、ソレノイドを付勢に逆らって第2の期間の間、保持することは、例えば、保持電圧で1ワットをソレノイドへと印加することを含む。
【0010】
ソレノイドは、ハウジング内に着座したコイルを含む。電機子は、コイルを通り、そしてハウジングの第1の端部の外へと長手方向に延在する。電機子は、外部磁界に応答する材料を含み、またコイルの磁界に応答するコイルおよびハウジングに対する移動のためにハウジング内に据え付けられる。ラッチ部材は、ハウジングの第2の端部に据え付けられ、そして電機子が後退した位置にある状態で電機子と接触するように構成されたラッチ面を含む。複数の永久磁石が、ハウジングの第1の端部において、電機子の周りに円周方向に分散される。
【0011】
ラッチ部材は、ラッチ部材をハウジングに対して回転することによって、ハウジング内のラッチ面の軸方向位置を調整するために、ハウジングへとねじを用いて係合することができる。電機子を中心として円周方向に分散された四つの永久磁石が存在することができる。永久磁石の各々の極性は、長手方向に対して半径方向の向きにすることができる。永久磁石の各々について、半径方向内部の極は、磁南とすることができ、また半径方向外部の極は、磁北とすることができる。コイルは、ハウジングのボビンの外向きの面の周りに巻くことができ、ボビンの内向きに面した面は、摺動ベアリング面として電機子と係合する。
【0012】
システムは、ハウジング内に着座したコイルを有するソレノイドを含む。電機子は、コイルを通り、そしてハウジングの第1の端部の外へと長手方向に延在する。電機子は、外部磁界に応答する材料を含み、またコイルの磁界に応答するコイルおよびハウジングに対する移動のためにハウジング内に据え付けられる。コントローラは、コイルを制御するために動作可能に接続される。コントローラは、コントローラに、第1の期間の間、ソレノイドを付勢に逆らって作動させるために、作動電圧をコイルへと印加し、そして第2の期間の間、ソレノイドを付勢に逆らって保持するために、作動電圧より低い保持電圧へのより低い電圧をソレノイドへと印加させるように構成された機械可読命令を含み、コイルは、定格電圧での連続的な動作に対して定格が決められ、また作動電圧は、定格電圧を上回る。
【0013】
弁部材は、電機子と一緒に移動させるために据え付けることができる。弁ハウジングは、弁ハウジングの入口から弁ハウジングの出口への流路を画定することができる。流路は、弁座を通過することができる。弁部材および電機子が第1の位置にある状態では、弁部材は弁座に対して密封することができ、流路を通る流れを防止することができる。弁部材および電機子が第2の位置にある状態では、弁部材は弁座から離隔して、流路を通って流れることができる。濾過材は、弁座の下流の弁ハウジング内の流路内に着座させることができ、電機子および弁部材が第2の位置にある状態で、弁ハウジングから粒子が流れ出るのを防止するように構成される。
【0014】
送気装置は、圧力源を含むことができる。空気圧ラインは、圧力源を、患者の外科手術腔に送気するためのトロカール管セットへと送気装置を接続するように構成されたコネクタへと接続することができる。弁ハウジングの入口は、空気圧ラインからの圧力逃がし流れを選択的に許容または遮断するために、空気圧ラインから分かれた分岐へと接続することができる。
【0015】
本開示のシステムおよび方法のこれらおよび他の特徴は、図面と併せて以下の発明を実施するための形態から、当業者にはより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示が属する技術分野の当業者が、過度の実験を有することなく本開示の装置および方法を作成および使用する方法を容易に理解するように、その好ましい実施形態を、特定の図面を参照して以下に詳細に記述する。
【0017】
【
図1】
図1は、患者に送気を提供する送気装置を示す、本開示に従って構築されたシステムの実施形態の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、圧力源とトロカールとの間に延びるガスライン内の分岐に接続されたソレノイドおよび弁を示す、
図1のシステムの概略図である。
【
図3】
図3は、閉位置または流れが通らない位置にある弁を示す、
図2のソレノイドおよび弁の断面側面図である。
【
図4】
図4は、弁を通る流れを許容する、開位置にある弁を示す、
図3のソレノイドおよび弁の断面側面図である。
【
図5】
図5は、永久磁石を示す、
図3のソレノイドの断面平面図である。
【
図6】
図6は、
図2のシステムに対する機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、
図2のシステムに対する電圧および状態効果の線図である。
【
図8】
図8は、
図2のシステムに対する非周期弁サイクリングの実施例を示す、電圧対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、同様の参照番号が、本開示の同様の構造的特徴または態様を特定する図面を参照する。説明および例示の目的で、本開示によるソレノイド弁システムの例示的な実施形態の部分図は、
図2に示され、また概して参照符号100によって示されるが、これに限定されない。本開示によるシステムの他の実施形態、またはその態様が、記述されるように、
図1および
図3~
図8に提供される。本明細書に記述されるシステムおよび方法は、送気装置内のものなどの弁を作動させるために使用することができ、それぞれのソレノイドは、より従来のソレノイド弁よりも改善されたサイズ、重量、および効率を有する。
【0019】
ここで
図1を参照すると、送気装置または送気システム10が図示される。送気装置10は、患者の外科手術腔16と連通する第1のトロカール18へとつながる入口流路22を含み、それを通して送気ガスの流れが外科手術腔16へと送達される。送気装置10は、外科手術腔16と連通する第2のトロカール26からつながる出口流路24を任意選択で含み、例えば、それを通して煤煙ガスの連続的な流れを外科手術腔16から除去することができる。本明細書では機械的に密封されたトロカールの例示的な文脈で示され、記述されるが、当業者であれば、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、本開示の範囲から逸脱することなく、空気圧的に密封されたトロカールおよび/または機械的に密封されたトロカールとともに使用することができることを容易に理解するであろう。
【0020】
ここで
図2を参照すると、送気装置10は、送気装置10に接続された外部の加圧ガス供給40、および/または、例えば、外部のガス供給40の圧力が送気のためにそれ自体では不適切である場合に送気圧力を維持することができるポンプ50を含むことができる、圧力源30を含む。空気圧ライン、すなわち入口流路22は、圧力源30を、
図1に示すように患者の外科手術腔16に送気するために、送気装置10をトロカール管セット20へと接続するように構成された、コネクタ60へと接続する。弁70は、入口流路22の分岐72と流体連通して、入口流路22に圧力逃がしを提供する。ソレノイド80は、弁70を作動させるために動作可能に接続され、またコントローラ90は、弁70の制御された作動のために、次にソレノイド80を制御するために接続される。
【0021】
ここで
図3を参照すると、ソレノイド弁システム100が記述されている。システム100は概して、
図2に示されるソレノイド80および弁70を含む。ソレノイド80は、ハウジング104内に着座し、かつ長手方向軸Aの周りを巻くコイル102を含む。電機子またはプランジャー106は、長手方向に、すなわち、軸Aに沿って、コイル102を通して、かつハウジング104の第1の端部108の外へと延在する。電機子106は、外部磁界に応答する材料を含み、またコイル102の磁界に応答するコイル102およびハウジング104に対する長手方向移動のために、ハウジング104のボビン110内に据え付けられる。コイル102は、ハウジング104のボビン110の外向き面の周りに巻かれ、ボビン110の内向きに面する面は、摺動ベアリング面として電機子106と係合する。
【0022】
図3を引き続き参照すると、ラッチ部材112が、第1の端部108とは反対側のハウジング104の第2の端部114に据え付けられる。ラッチ部材112は、
図3に示すように、電機子106が後退した位置にある状態で電機子106と接触するように構成されたラッチ面116を含む。ラッチ部材112は、ハウジング104に対してラッチ部材112を回転することによって、ハウジング104内のラッチ面116の軸方向位置(軸Aに対して)を調整するために、ねじ118を用いてハウジング104と係合される。
【0023】
複数の永久磁石120は、コイル102の磁界を形作るために、ハウジング104の第1の端部108において、電機子106の周りで円周方向に分散される。
図5の断面に示されるように、プランジャーに横方向の力を付勢しないように、対称的なパターンで、電機子106を中心として円周方向に分散された四つの永久磁石120がある。永久磁石120の各々の極性は、
図3に示される長手方向に対して半径方向の向きにされる。
図5に示すように、永久磁石120の各々について、半径方向内部の極は、磁南(
図5でSとして示される)であり、また半径方向外部の極は、磁北(
図5でNとして示される)である。
【0024】
図3~
図4を再度参照すると、弁部材122またはプランジャーは、電機子106と一緒に移動するように据え付けられる。弁ハウジング124は、弁ハウジング124の入口128から弁ハウジング128の出口126への流路を画定する。流路は、弁ハウジング124の弁座130を通過し、そして太い流れの矢印で
図4に示される。弁ハウジング124は、ベアリング部材132を含み、その内側面は、弁部材122の直線移動のための摺動ベアリング面として作用する。弁座130は、弁ハウジング124のベアリング部材132とマニホールド部分134との間に位置付けられる。
図4に示す流路は、マニホールド部分134、弁座130、およびベアリング部材132の各々を通る通路136、例えば、半径方向の通路またはこれに類するものを含む。
【0025】
図3に示す第1の位置、または閉位置にある、弁部材122および電機子106により、弁部材122は、弁座130に対して密封し、流路を通る流れを防止する。
図4に示す第2の位置、または開位置にある、弁部材および電機子により、弁部材122は、弁座130から離隔して、流路を通して流れることが可能である。濾過材138は、弁座130の下流の弁ハウジング124の出口126内の流路内に着座される。濾過材138は、例えば、
図1の外科手術腔16のガスからの圧力逃がし中に、
図4に示す第2の位置または開位置にある電機子106および弁部材122により、弁ハウジング124から送気装置10の筐体の中へと出る凝縮などの粒子流れを防止するように構成される。弁ハウジング124の入口128は、空気圧ライン22(
図1および2にラベル付け)から離れて分岐72に接続されて、空気ライン22からの圧力逃がし流れを選択的に許容または遮断する。弁70が開放している時、圧縮流れは、濾過材138を通してガスジェットから転換される。流れ方向は、より伝統的なシステムでは逆転して、ばね140および保持開放電圧V
lowを下回るソレノイド弁80の正味の力に打ち勝つことによって、高い圧力が弁70を吹き出して開放することを可能にする。
【0026】
図3~
図4を引き続き参照すると、ばね140は、ベアリング部材132の座と弁部材122との間に着座する。ばね140は、弁部材122および電機子106を、
図4に示す開位置に向けて付勢する。そのため、コイル102に対して十分な電力がない場合、電機子106に作用する磁気力は、ばね140の付勢より弱く、そのため弁部材122は
図4に示す開位置へと移動する。コイル102への十分な電力により、電機子106に作用する磁気力は、ばね140の付勢に打ち勝つことができ、弁部材122を
図3に示す開位置へと動かすことができる。上述のように、ハウジング104内のラッチ部材112のラッチ面116の位置の調整は、
図3に示す閉位置における弁部材122の密封要素142の過剰圧縮を防止するために使用することができる。
【0027】
ここで
図3および
図8を参照すると、ソレノイド弁システム100は、コントローラ90(
図2でラベル付けされている)を含み、コントローラ90は、ソレノイド弁80のコイル102を制御するために動作可能に接続される。コントローラ90は、コントローラ90に、第1の期間t1の間、作動電圧V
highをコイル102へと印加させて、ばね140の付勢に逆らって、ソレノイド弁80(および弁70)を作動させ、次いで作動電圧V
highよりも低い保持電圧V
lowの、より低い電圧をソレノイド80のコイル102へと印加して、ソレノイド80の電機子106だけでなく弁部材122も、第2の期間t2の間、付勢に逆らって
図4に示す開位置に保持するように構成された、機械可読命令を含む。
図8は、上述の電圧の経時的なサイクルの三つの実施例を有するグラフを示す。例えば、作動電圧V
highは、48ボルトとすることができ、また保持電圧V
lowは、5ボルトとすることができる。 例えば、作動電圧V
highを印加することは、20ワットをソレノイドへと印加することを含むことができ、ソレノイドを付勢に逆らって、第2の期間の間、保持することは、保持電圧V
lowで、1ワットをソレノイドへと印加することを含む。
【0028】
図3~
図4のコイル102は、定格電圧での連続動作に対して定格である。作動電圧V
highは、定格電圧を上回る。これは、保持電圧V
lowが定格電圧を下回るため、および第1の期間t1が比較的短いためである可能性がある。コントローラ90(
図2の)は、ばね付勢が弛緩し、かつソレノイドへと印加された電圧が、コイル102が第1の温度へと冷却される期間の間、保持電圧V
lowを下回って降下した後、作動電圧をソレノイド80へと印加する。コイル102は、第2の期間t2の間、第2の温度、例えば、
図3に示す閉位置にあるソレノイド弁システム100の保持の間の動作温度にされる。作動電圧V
highにおける第1の期間t1は、十分に短いので、第1の期間の間、コイル102は第2の温度を超えず、すなわち、コイル102は、コイルの安全な動作温度へと加熱するのに十分長い間その定格電圧を超えるのみである。作動電圧V
highは、定格電圧より高いが、第1の期間t1は、コイル102に対して故障モードを引き起こすことなく、第1の電圧V
highを印加するほど十分短い。コイル故障モードは、絶縁破壊、ハウジングもしくはボビン溶融もしくは歪み、または電機子の焼き付きのうちのいずれかを含むことができる。作動電圧V
highおよび保持電圧V
lowのうちの少なくとも一つは、それが生み出すパルス幅変調(PWM)波形、または交流波形として印加することができ、また平均はそれぞれの作動電圧および/または保持電圧である。正方形、三角形、正弦波、鋸刃、および半正弦を含むがこれに限定されない共通の形態を取るアナログ方法によって生成される交流電流波形などの任意の適切な波形を使用することができる。また、波形は、例えば、デジタル信号生成によって、平均効果が電圧をもたらす限り、不規則または動的に変化することも可能である。連続的な直流電流を使用することもできる。
【0029】
弁70が、
図3に示す閉位置にあり、またコントローラ90が送気ライン22(
図2でラベル付けされている)内の過剰圧力を検出する場合、コントローラ90は、コイル102上の電圧を保持電圧V
lowを下回って低下させ、それによってばね付勢下で
図4に示す開位置へと弁80を開放して、送気ライン22内の過剰圧力を解放することができる。同様に、コイル102への電圧をゼロに低下させる電力喪失事象がある場合、弁70は、ばね付勢下で
図4に示す開位置へと開放して、
図2~
図4でラベル付けされている送気ライン22およびその分岐72を通して患者における外科手術腔16(
図1でラベル付けされている)内の圧力を解放する。
【0030】
本開示は、少なくとも二つの電圧状態を有する制御を採用する、ソレノイドおよびソレノイドコントローラを記述し、少なくとも二つはゼロでなく、ソレノイドコイルへと印加される。第1の状態は、第2の状態より高い電圧であり、また弁を作動させるのに十分な引き込み力を有するように選択される。第1の電圧は、第2の状態電圧がプランジャーを引き込み状態に保持するために十分に遠くまで、ソレノイドプランジャーが変位するまで一時的に保持される。第2の電圧は、戻りばねまたはガス圧力を含む戻り力に反して、引き込み状態を維持するように選択される。加えて、第2の状態電圧は、必要とされるコイルサイズおよび熱損失を低減するように選択される。
【0031】
最終的に、ゼロであってもよい第3の電圧状態は、保持力を、戻りばねの総和およびポペットに作用する圧力の力より小さい値へと低減し、ポペットをその引き込み前の位置に戻す。
【0032】
一実施形態では、第1の電圧は、24ボルトであり、1秒の持続時間の間、印加される。保持機能を果たす第2の電圧状態は10ボルトであり、また解放機能を果たす第3の電圧状態はゼロである。すべての実施形態において、第2の電圧は、第1の電圧の10%~90%とすることができる。
【0033】
個々の電圧は、連続的な直流であってもよく、または他の実施形態では、周期平均降伏電圧ステップでパルス幅変調されてもよい。さらに他の実施形態では、電圧ステップは、独特のものでなくてもよいが、連続的に減少する電圧であってもよい。
【0034】
図6は、ソレノイドコントローラが、上述の多段階制御電圧をソレノイド弁に提供する機能ブロック図を示し、これは、弁への、および弁へのガス流れを許容する、または許容しないという物理的効果を有する。
図7は、上述の電圧の状態および効果を示す。
【0035】
定常状態の電流制限は、短期間超えることができ、また同様に、100%未満のデューティサイクルは、定常状態の電流制限を超えることを可能にする。これは、抵抗発熱がコイル材料の熱容量を越え、コイル温度を損傷レベルまで上昇させるのに必要とされる時間に起因して許容可能である。
【0036】
本開示は、過小サイズのコイル、すなわち、10ボルトの連続定格のコイルを過剰に駆動し、かつ、例えば、24ボルトを印加することによって、連続定格を短時間超えることを可能にする。コイルを過剰に駆動する効果は、より大きい24ボルトの力であり、連続コイルが引き込み段階の間に短時間生成され、その期間は、ソレノイド弁の必要とされる力が最も高い。1秒の引き込みの間、例えば、生成された熱出力は、許容される連続出力の240%とすることができる。この過剰な電力は、コイルの熱質量の意図的な設計によって吸収され、かつ適合され、そしてその間にコイル冷却が発生する低電力の第3の電圧状態を実施する。
【0037】
より単純に表現すると、本明細書のシステムおよび方法は、公称システム電圧における過小サイズの電力定格、すなわち24ボルトシステムにおける11ワット定格を有する、ソレノイドコイルを採用することができる。完全システム電圧24ボルトで駆動する場合、コイルは63ワットで短時間過剰駆動され、実質的により大きい力を生成する。当業者であれば、例として本明細書で提供される期間、ワット数、および電圧は、その代わりに、所与の用途に対して任意の適切な期間、ワット数、または電圧とすることができることを容易に理解するであろう。
【0038】
上述し、かつ図面に示すように、本開示の方法およびシステムは、送気装置における弁などの作動を提供し、弁を作動させるソレノイドは、より伝統的なソレノイド弁より改善されたサイズ、重量、および効率を有する。本開示の装置および方法を好ましい実施形態を参照しながら示し、かつ記述してきたが、当業者であれば、変更および/または修正が、本開示の範囲から逸脱することなくなされてもよいことを容易に理解するであろう。
【国際調査報告】