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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】局所用のバイオポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/00 20060101AFI20240220BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240220BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240220BHJP
   C12P 19/04 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C08B37/00 P
A61K8/73
A61Q19/00
A61Q19/08
A61K31/716
A61P17/16
C12P19/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554289
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022019290
(87)【国際公開番号】W WO2022192216
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,268
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/251,205
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523337878
【氏名又は名称】エキソポリマー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェルズ デレク
【テーマコード(参考)】
4B064
4C083
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
4B064AF12
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE03
4B064DA01
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC212
4C083AC242
4C083AC272
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC682
4C083AC782
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD211
4C083AD212
4C083CC01
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD33
4C083EE12
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA21
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA22
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C090AA01
4C090AA04
4C090AA09
4C090BA70
4C090BB03
4C090BB12
4C090BB13
4C090BB29
4C090BB32
4C090BB35
4C090BB52
4C090BB65
4C090BB72
4C090BB92
4C090BB97
4C090BC20
4C090BD03
4C090BD24
4C090BD36
4C090BD37
4C090CA36
4C090CA39
4C090DA03
4C090DA05
4C090DA23
4C090DA26
(57)【要約】
反復多糖単位を含むバイオポリマー、バイオポリマーの調製物、及びバイオポリマーを含む局所組成物、並びに使用方法が本明細書に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、前記グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、前記ガラクトースの少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%がピルビル化されている、バイオポリマー調製物。
【請求項2】
前記グルコース及びガラクトースがβ-1,3グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合によって連結されている、請求項1に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項3】
構造:
【化1】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、前記二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、前記二糖単位の60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、バイオポリマー調製物。
【請求項4】
前記バイオポリマー中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比が1:1:0.4~1:0.6~1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項5】
前記バイオポリマー調製物中の前記バイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項6】
前記バイオポリマー調製物中の前記バイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項7】
前記バイオポリマー調製物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%がバイオポリマーであるか、又は少なくとも95%(w/w)がバイオポリマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項8】
等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍又は少なくとも3倍の水を吸収することができる、請求項1~7のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項9】
前記バイオポリマー調製物の初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%又は少なくとも500%の量の水を吸収することができる、請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項10】
吸水率が、前記バイオポリマー調製物の乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、請求項9又は10に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項11】
前記バイオポリマー調製物の25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満若しくは1%未満がスクシノグリカンであるか、又は前記バイオポリマー調製物がスクシノグリカンを実質的に含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項12】
固体又は粉末である、請求項1~11のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項13】
前記バイオポリマー調製物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満が水である、請求項1~12のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項14】
グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、前記グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、前記ガラクトースの15%未満、10%未満又は5%未満がピルビル化されている、バイオポリマー調製物。
【請求項15】
前記グルコース及びガラクトースがβ-1,3グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合によって連結されている、請求項14に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項16】
バイオポリマー調製物であって、バイオポリマーが、構造:
【化2】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成され、該二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、該二糖単位の15%以下、10%以下又は5%以下がピルビル化されている、バイオポリマー調製物。
【請求項17】
前記バイオポリマー中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比が1:1:0.5未満:0.6~1である、請求項14~16のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項18】
前記バイオポリマー調製物中の前記バイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、請求項14~17のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項19】
前記バイオポリマー調製物中の前記バイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、請求項14~17のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項20】
前記バイオポリマー調製物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%(w/w)がバイオポリマーである、請求項14~19のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項21】
等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍又は少なくとも1.5倍の水を吸収することができる、請求項14~20のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項22】
前記バイオポリマー調製物の初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、請求項14~21のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項23】
吸水率が、前記バイオポリマー調製物の乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、請求項21又は22に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項24】
前記バイオポリマー調製物の25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満又は1%未満がスクシノグリカンである、請求項14~23のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項25】
固体又は粉末である、請求項14~24のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項26】
前記バイオポリマー調製物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満が水である、請求項14~25のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項27】
構造:
【化3】
(ここで、点線は多糖単位間の結合を表す)の反復多糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、前記多糖単位の30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がアセチル部分を欠き、前記多糖単位の10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、バイオポリマー調製物。
【請求項28】
前記バイオポリマー調製物中の前記バイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、請求項27に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項29】
前記バイオポリマー調製物中の前記バイオポリマーの平均分子量が1.6kDa~40kDaである、請求項27に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項30】
前記バイオポリマー調製物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%がバイオポリマーであるか、又は少なくとも95%(w/w)がバイオポリマーである、請求項27~29のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項31】
等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、又は少なくとも1.5倍の水を吸収することができる、請求項27~30のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項32】
前記バイオポリマー調製物の初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、請求項27~31のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項33】
吸水率が、前記バイオポリマー調製物の乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、請求項31又は32に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項34】
固体又は粉末である、請求項27~33のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項35】
前記バイオポリマー調製物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満が水である、請求項27~34のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項36】
反復多糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、各多糖単位が2個~15個又は2個~12個又は2個~10個の単糖を含み、前記バイオポリマーの前記反復多糖単位中の負電荷:単糖の比率が、少なくとも0.3又は少なくとも0.35又は少なくとも0.4又は少なくとも0.45である、バイオポリマー調製物。
【請求項37】
前記多糖単位が、少なくとも1つのグルコースに連結された少なくとも1つのガラクトースを含む、請求項36に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項38】
少なくとも1つのガラクトースがβ-1,3グリコシド結合を介してグルコースに連結されている、請求項37に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項39】
前記バイオポリマー調製物中の前記バイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、請求項36~38のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項40】
前記バイオポリマー調製物中の前記バイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、請求項36~38のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項41】
前記バイオポリマー調製物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%(w/w)がバイオポリマーである、請求項36~40のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項42】
等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、又は少なくとも3倍の水を吸収することができる、請求項36~41のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項43】
前記バイオポリマー調製物の初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、請求項36~42のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項44】
吸水率が、前記バイオポリマー調製物の乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、請求項42又は43に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項45】
固体又は粉末である、請求項36~44のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項46】
前記バイオポリマー調製物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満が水である、請求項36~45のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物。
【請求項47】
バイオポリマーを含む局所組成物であって、前記バイオポリマーが、グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成され、前記グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、前記ガラクトースの少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%がピルビル化されている、局所組成物。
【請求項48】
前記グルコース及びガラクトースがβ-1,3グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合によって連結されている、請求項47に記載の局所組成物。
【請求項49】
バイオポリマーを含む局所組成物であって、前記バイオポリマーが、構造:
【化4】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成され、該二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、該二糖単位の60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、局所組成物。
【請求項50】
前記バイオポリマー中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比が1:1:0.4~1:0.6~1である、請求項47~49のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項51】
前記局所組成物中の前記バイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、請求項47~50のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項52】
前記局所組成物中の前記バイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、請求項47~51のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項53】
前記バイオポリマーが、等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍又は少なくとも3倍の水を吸収することができる、請求項47~53のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項54】
前記バイオポリマーが、該バイオポリマーの初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%又は少なくとも500%の量の水を吸収することができる、請求項47~53のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項55】
吸水率が、前記バイオポリマーの乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、請求項53又は54に記載の局所組成物。
【請求項56】
請求項1~13のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物を含む、請求項47~55のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項57】
スクシノグリカンを実質的に含まない、請求項47~56のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項58】
バイオポリマーを含む局所組成物であって、前記バイオポリマーが、グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成され、前記グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、前記ガラクトースの15%未満、10%未満又は5%未満がピルビル化されている、局所組成物。
【請求項59】
前記グルコース及びガラクトースがβ-1,3結合及びα-1,3結合によって連結されている、請求項58に記載の局所組成物。
【請求項60】
バイオポリマーを含む局所組成物であって、前記バイオポリマーが、構造:
【化5】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成され、該二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、該二糖単位の15%以下、10%以下又は5%以下がピルビル化されている、局所組成物。
【請求項61】
前記バイオポリマー中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比が1:1:0.5未満:0.6~1である、請求項58~60のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項62】
前記局所組成物中の前記バイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、請求項58~61のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項63】
前記局所組成物中の前記バイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、請求項58~61のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項64】
前記バイオポリマー調製物が、等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍又は少なくとも1.5倍の水を吸収することができる、請求項58~63のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項65】
前記バイオポリマー調製物が、前記バイオポリマーの初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、請求項58~64のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項66】
吸水率が、前記バイオポリマーの乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、請求項64又は65に記載の局所組成物。
【請求項67】
請求項14~26のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物を含む、請求項58~66のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項68】
スクシノグリカンを実質的に含まない、請求項58~67のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項69】
バイオポリマーを含む局所組成物であって、前記バイオポリマーが、構造:
【化6】
(ここで、点線は多糖単位間の結合を表す)の反復多糖単位から構成され、該多糖単位の30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がアセチル部分を欠き、該多糖単位の10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、局所組成物。
【請求項70】
前記局所組成物中の前記バイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、請求項69に記載の局所組成物。
【請求項71】
前記局所組成物中の前記バイオポリマーの平均分子量が1.6kDa~40kDaである、請求項69に記載の局所組成物。
【請求項72】
前記バイオポリマー調製物が、等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍又は少なくとも1.5倍の水を吸収することができる、請求項69~71のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項73】
前記バイオポリマー調製物が、前記バイオポリマーの初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、請求項69~72のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項74】
吸水率が、前記バイオポリマーの乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、請求項72又は73に記載の局所組成物。
【請求項75】
請求項27~35のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物を含む、請求項69~74のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項76】
バイオポリマーを含む局所組成物であって、前記バイオポリマーが、反復多糖単位から構成され、各多糖単位が2個~15個又は2個~12個又は2個~10個の単糖を含み、前記バイオポリマーの前記反復多糖単位中の負電荷:単糖の比率が、少なくとも0.3又は少なくとも0.35又は少なくとも0.4又は少なくとも0.45である、局所組成物。
【請求項77】
前記多糖単位が、少なくとも1つのグルコースに連結された少なくとも1つのガラクトースを含む、請求項76に記載の局所組成物。
【請求項78】
少なくとも1つのガラクトースがβ-1,3グリコシド結合を介してグルコースに連結されている、請求項77に記載の局所組成物。
【請求項79】
前記局所組成物中の前記バイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、請求項76~78のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項80】
前記局所組成物中の前記バイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、請求項76~78のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項81】
前記バイオポリマー調製物が、等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍又は少なくとも3倍の水を吸収することができる、請求項76~80のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項82】
前記バイオポリマー調製物が、前記バイオポリマーの初期乾燥重量と比べて少なくとも同等、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍の量の水を吸収することができる、請求項76~81のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項83】
吸水率が、前記バイオポリマーの乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、請求項81又は82に記載の局所組成物。
【請求項84】
請求項36~46のいずれか一項に記載のバイオポリマー調製物を含む、請求項76~83のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項85】
0.01%~10%(w/w)又は0.05%~5%(w/w)の前記バイオポリマーを含む、請求項47~84のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項86】
1つ以上の増粘剤、安定剤、乳化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、レオロジー調整剤、皮膜形成剤、酸化防止剤、添加剤、活性剤、バター、精油、浸出油、粘土、泥、抽出物、ヒドロゾル水、角質除去剤、補給剤、ワックス、濃厚剤、塩、ミネラル、酸、塩基、キャリアオイル、固定油、界面活性剤、防腐剤、パール化剤、品質改良剤、構造化剤、増白剤、湿潤剤、浸透圧調節物質、閉塞剤、洗浄剤、着色剤、顔料、香料、UV-A遮断薬、UV-B遮断薬、及び/又は栄養剤を含む、請求項47~85のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項87】
ヒアルロン酸を含む、請求項47~86のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項88】
ヒアルロン酸を含まない、請求項47~86のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項89】
クリーム、ローション、軟膏、バーム、チンキ、リニメント、シャンプー、石鹸、コンディショナー、日焼け止め、リンス、デオドラント又は化粧品である、請求項47~88のいずれか一項に記載の局所組成物。
【請求項90】
請求項47~89のいずれか一項に記載の局所組成物を適用することを含む、被験体における皮膚状態を治療又は予防する方法。
【請求項91】
前記皮膚状態が乾燥皮膚、しわの多い皮膚、たるんだ皮膚、老化した皮膚、傷のある皮膚、負傷した皮膚、染みのある皮膚、座瘡及び/又は日焼けした皮膚の1つ以上である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記皮膚状態が炎症性皮膚状態である、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
前記炎症性皮膚状態が乾癬、湿疹又はアトピー性皮膚炎である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記局所組成物を前記被験体の顔、耳、額、首、腕、上胸部、脚、足及び/又は手に適用する、請求項90~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記局所組成物が経表皮水分喪失を減少させ、経表皮水分喪失を逆転させ、表皮水分保持を改善し、しわの出現を軽減し、皮膚のたるみを減少させ、皮膚の滑らかさを増加させ、皮膚の膨潤を増加させ、皮膚の柔軟性を改善し、皮膚のきめを改善し、皮膚の染みを減少させ、及び/又は皮膚の乾燥を減少させる、請求項90~94のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年3月8日付で出願された米国仮出願第63/158,268号及び2021年10月1日付で出願された米国仮出願第63/251,205号の優先権の利益を主張し、それぞれの全体があらゆる目的で引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
反復多糖単位を含むバイオポリマー、バイオポリマーの調製物、及びバイオポリマーを含む局所組成物、並びに使用方法が本明細書に提供される。
【背景技術】
【0003】
水を結合し、保持するポリマーが、そのアンチエイジング効果及び抗しわ効果のためにパーソナルケア製品及び化粧品において求められている。これらの特性を有するポリマーは、皮膚の表面に適用した場合に、上皮の保水性(hydration)を増加させる。分子量が十分に低いポリマーは、皮膚上皮の外層を通過することができる。保水性及び水分量の増加がしわの出現を効果的に軽減し、より滑らかでより柔軟な皮膚をもたらすため、水を結合し、保持する能力は重要である。
【0004】
アンチエイジング配合物、特に高級パーソナルケア製品に最も一般的に使用されているポリマーは、ヒアルロン酸(HA)である。HAは動物の皮膚、結合組織及び滑液に自然に見られる高分子量(HMW)ポリマーであり、水分を保持し、潤滑性を与えることによって機能する。HAは栄養補助食品、関節潤滑のための注射剤、癒着防止のための外科手術補助剤、皮膚充填剤、皮膚表面保湿剤として、またLMW製品の上述の皮膚浸透特性、水結合特性から、パーソナルケア製品及び化粧品に広く使用されている。HAは通例、動物由来であり、従来は雄鶏のとさかに由来し、またブタ又はウシの加工施設からの副産物としても得られる。HAは、自然にHAを細胞莢膜に組み込む病原性細菌であるストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus zooepidemicus)又は近縁種の発酵によっても生産され得る。
【0005】
動物由来及び発酵由来のHAの製造コストはどちらも高い。動物の場合、コストは、比較的低い組織量当たりのHAの収量と、精製製品を生産するのに必要とされる幾つかの下流の処理工程とに左右される。S.ズーエピデミカス(S. zooepidemicus)のHAの場合、生産生物が感染因子であるため、大規模発酵を厳密に規制された条件下で行う必要がある。さらに、最終製品に入り込む可能性がある、細菌によって産生されるあらゆる潜在的な毒素を低減するために、下流の処理工程が必要とされる場合もある。最後に、どちらの製品も、皮膚浸透を可能にする分子量のHAを生産するために化学的又は酵素的に処理する必要がある。
【0006】
コスト及び製造上の制限にもかかわらず、HA市場は、化粧品におけるHAの強力な抗しわ性能及びアンチエイジング性能のために成長し続けている。現在、HAと同じか又はより良好な機能性をもたらす競合技術は殆どない。改善された水分結合を示し、表面上に留まることができるか、又は皮膚に浸透することができ、実質的により低コストで生産することができる代替製品は、市場の大幅な成長及び拡大を可能にするであろう。パーソナルケア業界及び化粧品業界における幅広いニーズに対応するために、水分結合性の炭水化物ベースのポリマーが必要とされており、また不足している。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、HA等の既知の作用物質と比較して改善された水分結合能を有する、自然に生産された非動物由来の炭水化物バイオポリマーを提供する。本明細書に提示される実施例に示されるように、本開示のバイオポリマーは、HAと比べて顕著に改善された水分結合能を示す。本開示のバイオポリマーは、パーソナルケア用途及び化粧品用途に特に適しており、標準試験において細胞毒性を欠く。さらに、本開示のバイオポリマーは、ローションベース中の機能性成分として使用した場合に、改善された皮膚保水性能を示す。
【0008】
幾つかの実施の形態において、本開示のバイオポリマーは、経皮浸透性を示す。幾つかの実施の形態において、皮膚に浸透することが可能なバイオポリマーは、常に低い分子量を有する。幾つかの実施の形態において、浸透性バイオポリマーの分子量は、3kDa未満である。幾つかの実施の形態において、浸透性バイオポリマーの分子量は、3kDa~0.5kDaの範囲である。
【0009】
本開示のバイオポリマーは、少なくとも動物源に由来せず、農産物原料を用いた非病原性微生物の発酵によって作製することができるため、HA等の作用物質よりも改善されている。
【0010】
実施の形態1.グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、ガラクトースの少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%がピルビル化されている(pyruvylated)、バイオポリマー調製物。
【0011】
実施の形態2.グルコース及びガラクトースがβ-1,3グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合によって連結されている、実施の形態1のバイオポリマー調製物。
【0012】
実施の形態3.構造:
【化1】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、二糖単位の60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、バイオポリマー調製物。
【0013】
実施の形態4.バイオポリマー中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比が1:1:0.4~1:0.6~1である、実施の形態1~3のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0014】
実施の形態5.バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、実施の形態1~4のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0015】
実施の形態6.バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、実施の形態1~4のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0016】
実施の形態7.バイオポリマー調製物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%がバイオポリマーであるか、又は少なくとも95%(w/w)がバイオポリマーである、上記の実施の形態のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0017】
実施の形態8.等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍又は少なくとも3倍の水を吸収することができる、上記の実施の形態のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0018】
実施の形態9.バイオポリマー調製物の初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%又は少なくとも500%の量の水を吸収することができる、上記の実施の形態のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0019】
実施の形態10.吸水率が、バイオポリマー調製物の乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、実施の形態9又は10のバイオポリマー調製物。
【0020】
実施の形態11.バイオポリマー調製物の25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満若しくは1%未満がスクシノグリカンであるか、又はバイオポリマー調製物がスクシノグリカンを実質的に含まない、上記の実施の形態のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0021】
実施の形態12.固体又は粉末である、上記の実施の形態のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0022】
実施の形態13.バイオポリマー調製物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満が水である、上記の実施の形態のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0023】
実施の形態14.グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、ガラクトースの15%未満、10%未満又は5%未満がピルビル化されている、バイオポリマー調製物。
【0024】
実施の形態15.グルコース及びガラクトースがβ-1,3グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合によって連結されている、実施の形態14のバイオポリマー調製物。
【0025】
実施の形態16.バイオポリマー調製物であって、バイオポリマーが、構造:
【化2】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成され、二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、二糖単位の15%以下、10%以下又は5%以下がピルビル化されている、バイオポリマー調製物。
【0026】
実施の形態17.バイオポリマー中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比が1:1:0.5未満:0.6~1である、実施の形態14~16のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0027】
実施の形態18.バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、実施の形態14~17のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0028】
実施の形態19.バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、実施の形態14~17のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0029】
実施の形態20.バイオポリマー調製物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%(w/w)がバイオポリマーである、実施の形態14~19のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0030】
実施の形態21.等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍又は少なくとも1.5倍の水を吸収することができる、実施の形態14~20のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0031】
実施の形態22.バイオポリマー調製物の初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、実施の形態14~21のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0032】
実施の形態23.吸水率が、バイオポリマー調製物の乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、実施の形態21又は22のバイオポリマー調製物。
【0033】
実施の形態24.バイオポリマー調製物の25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満又は1%未満がスクシノグリカンである、実施の形態14~23のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0034】
実施の形態25.固体又は粉末である、実施の形態14~24のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0035】
実施の形態26.バイオポリマー調製物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満が水である、実施の形態14~25のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0036】
実施の形態27.構造:
【化3】
(ここで、点線は多糖単位間の結合を表す)の反復多糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、多糖単位の30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がアセチル部分を欠き、多糖単位の10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、バイオポリマー調製物。
【0037】
実施の形態28.バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、実施の形態27のバイオポリマー調製物。
【0038】
実施の形態29.バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量が1.6kDa~40kDaである、実施の形態27のバイオポリマー調製物。
【0039】
実施の形態30.バイオポリマー調製物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%がバイオポリマーであるか、又は少なくとも95%(w/w)がバイオポリマーである、実施の形態27~29のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0040】
実施の形態31.等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、又は少なくとも1.5倍の水を吸収することができる、実施の形態27~30のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0041】
実施の形態32.バイオポリマー調製物の初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、実施の形態27~31のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0042】
実施の形態33.吸水率が、バイオポリマー調製物の乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、実施の形態31又は32のバイオポリマー調製物。
【0043】
実施の形態34.固体又は粉末である、実施の形態27~33のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0044】
実施の形態35.バイオポリマー調製物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満が水である、実施の形態27~34のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0045】
実施の形態36.反復多糖単位から構成されるバイオポリマーを含むバイオポリマー調製物であって、各多糖単位が2個~15個又は2個~12個又は2個~10個の単糖を含み、バイオポリマーの反復多糖単位中の負電荷:単糖の比率が、少なくとも0.3又は少なくとも0.35又は少なくとも0.4又は少なくとも0.45である、バイオポリマー調製物。
【0046】
実施の形態37.多糖単位が、少なくとも1つのグルコースに連結された少なくとも1つのガラクトースを含む、実施の形態36のバイオポリマー調製物。
【0047】
実施の形態38.少なくとも1つのガラクトースがβ-1,3グリコシド結合を介してグルコースに連結されている、実施の形態37のバイオポリマー調製物。
【0048】
実施の形態39.バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、実施の形態36~38のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0049】
実施の形態40.バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、実施の形態36~38のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0050】
実施の形態41.バイオポリマー調製物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%(w/w)がバイオポリマーである、実施の形態36~40のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0051】
実施の形態42.等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、又は少なくとも3倍の水を吸収することができる、実施の形態36~41のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0052】
実施の形態43.バイオポリマー調製物の初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、実施の形態36~42のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0053】
実施の形態44.吸水率が、バイオポリマー調製物の乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、実施の形態42又は43のバイオポリマー調製物。
【0054】
実施の形態45.固体又は粉末である、実施の形態36~44のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0055】
実施の形態46.バイオポリマー調製物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満が水である、実施の形態36~45のいずれか1つのバイオポリマー調製物。
【0056】
実施の形態47.バイオポリマーを含む局所組成物であって、バイオポリマーが、グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成され、グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、ガラクトースの少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%がピルビル化されている、局所組成物。
【0057】
実施の形態48.グルコース及びガラクトースがβ-1,3グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合によって連結されている、実施の形態47の局所組成物。
【0058】
実施の形態49.バイオポリマーを含む局所組成物であって、バイオポリマーが、構造:
【化4】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成され、二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、二糖単位の60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、局所組成物。
【0059】
実施の形態50.バイオポリマー中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比が1:1:0.4~1:0.6~1である、実施の形態47~49のいずれか1つの局所組成物。
【0060】
実施の形態51.局所組成物中のバイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、実施の形態47~50のいずれか1つの局所組成物。
【0061】
実施の形態52.局所組成物中のバイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、実施の形態47~51のいずれか1つの局所組成物。
【0062】
実施の形態53.バイオポリマーが、等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍又は少なくとも3倍の水を吸収することができる、実施の形態47~53のいずれか1つの局所組成物。
【0063】
実施の形態54.バイオポリマーが、バイオポリマーの初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%又は少なくとも500%の量の水を吸収することができる、実施の形態47~53のいずれか1つの局所組成物。
【0064】
実施の形態55.吸水率が、バイオポリマーの乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、実施の形態53又は54の局所組成物。
【0065】
実施の形態56.実施の形態1~13のいずれか1つのバイオポリマー調製物を含む、実施の形態47~55のいずれか1つの局所組成物。
【0066】
実施の形態57.スクシノグリカンを実質的に含まない、実施の形態47~56のいずれか1つの局所組成物。
【0067】
実施の形態58.バイオポリマーを含む局所組成物であって、バイオポリマーが、グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成され、グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、ガラクトースの15%未満、10%未満又は5%未満がピルビル化されている、局所組成物。
【0068】
実施の形態59.グルコース及びガラクトースがβ-1,3結合及びα-1,3結合によって連結されている、実施の形態58の局所組成物。
【0069】
実施の形態60.バイオポリマーを含む局所組成物であって、バイオポリマーが、構造:
【化5】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成され、二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、二糖単位の15%以下、10%以下又は5%以下がピルビル化されている、局所組成物。
【0070】
実施の形態61.バイオポリマー中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比が1:1:0.5未満:0.6~1である、実施の形態58~60のいずれか1つの局所組成物。
【0071】
実施の形態62.局所組成物中のバイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、実施の形態58~61のいずれか1つの局所組成物。
【0072】
実施の形態63.局所組成物中のバイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、実施の形態58~61のいずれか1つの局所組成物。
【0073】
実施の形態64.バイオポリマー調製物が、等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍又は少なくとも1.5倍の水を吸収することができる、実施の形態58~63のいずれか1つの局所組成物。
【0074】
実施の形態65.バイオポリマー調製物が、バイオポリマーの初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、実施の形態58~64のいずれか1つの局所組成物。
【0075】
実施の形態66.吸水率が、バイオポリマーの乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、実施の形態64又は65の局所組成物。
【0076】
実施の形態67.実施の形態14~26のいずれか1つのバイオポリマー調製物を含む、実施の形態58~66のいずれか1つの局所組成物。
【0077】
実施の形態68.スクシノグリカンを実質的に含まない、実施の形態58~67のいずれか1つの局所組成物。
【0078】
実施の形態69.バイオポリマーを含む局所組成物であって、バイオポリマーが、構造:
【化6】
(ここで、点線は多糖単位間の結合を表す)の反復多糖単位から構成され、多糖単位の30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がアセチル部分を欠き、多糖単位の10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、局所組成物。
【0079】
実施の形態70.局所組成物中のバイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、実施の形態69の局所組成物。
【0080】
実施の形態71.局所組成物中のバイオポリマーの平均分子量が1.6kDa~40kDaである、実施の形態69の局所組成物。
【0081】
実施の形態72.バイオポリマー調製物が、等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍又は少なくとも1.5倍の水を吸収することができる、実施の形態69~71のいずれか1つの局所組成物。
【0082】
実施の形態73.バイオポリマー調製物が、バイオポリマーの初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%又は少なくとも400%の量の水を吸収することができる、実施の形態69~72のいずれか1つの局所組成物。
【0083】
実施の形態74.吸水率が、バイオポリマーの乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、実施の形態72又は73の局所組成物。
【0084】
実施の形態75.実施の形態27~35のいずれか1つのバイオポリマー調製物を含む、実施の形態69~74のいずれか1つの局所組成物。
【0085】
実施の形態76.バイオポリマーを含む局所組成物であって、バイオポリマーが、反復多糖単位から構成され、各多糖単位が2個~15個又は2個~12個又は2個~10個の単糖を含み、バイオポリマーの反復多糖単位中の負電荷:単糖の比率が、少なくとも0.3又は少なくとも0.35又は少なくとも0.4又は少なくとも0.45である、局所組成物。
【0086】
実施の形態77.多糖単位が、少なくとも1つのグルコースに連結された少なくとも1つのガラクトースを含む、実施の形態76の局所組成物。
【0087】
実施の形態78.少なくとも1つのガラクトースがβ-1,3グリコシド結合を介してグルコースに連結されている、実施の形態77の局所組成物。
【0088】
実施の形態79.局所組成物中のバイオポリマーの平均分子量が3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である、実施の形態76~78のいずれか1つの局所組成物。
【0089】
実施の形態80.局所組成物中のバイオポリマーの平均分子量が0.5kDa~40kDaである、実施の形態76~78のいずれか1つの局所組成物。
【0090】
実施の形態81.バイオポリマー調製物が、等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍又は少なくとも3倍の水を吸収することができる、実施の形態76~80のいずれか1つの局所組成物。
【0091】
実施の形態82.バイオポリマー調製物が、バイオポリマーの初期乾燥重量と比べて少なくとも同等、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍の量の水を吸収することができる、実施の形態76~81のいずれか1つの局所組成物。
【0092】
実施の形態83.吸水率が、バイオポリマーの乾燥サンプルを30℃の加湿チャンバーに5日間置くことによって測定される、実施の形態81又は82の局所組成物。
【0093】
実施の形態84.実施の形態36~46のいずれか1つのバイオポリマー調製物を含む、実施の形態76~83のいずれか1つの局所組成物。
【0094】
実施の形態85.0.01%~10%(w/w)又は0.05%~5%(w/w)のバイオポリマーを含む、実施の形態47~84のいずれか1つの局所組成物。
【0095】
実施の形態86.1つ以上の増粘剤、安定剤、乳化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、レオロジー調整剤、皮膜形成剤、酸化防止剤、添加剤、活性剤、バター、精油、浸出油、粘土、泥、抽出物、ヒドロゾル水、角質除去剤、補給剤、ワックス、濃厚剤、塩、ミネラル、酸、塩基、キャリアオイル及び固定油、界面活性剤、防腐剤、パール化剤、品質改良剤、構造化剤、増白剤、湿潤剤、浸透圧調節物質、閉塞剤、洗浄剤、着色剤、顔料、香料、UV-A遮断薬及びUV-B遮断薬、及び/又は栄養剤を含む、実施の形態47~85のいずれか1つの局所組成物。
【0096】
実施の形態87.ヒアルロン酸を含む、実施の形態47~86のいずれか1つの局所組成物。
【0097】
実施の形態88.ヒアルロン酸を含まない、実施の形態47~86のいずれか1つの局所組成物。
【0098】
実施の形態89.クリーム、ローション、軟膏、バーム、チンキ、リニメント、シャンプー、石鹸、コンディショナー、日焼け止め、リンス、デオドラント又は化粧品である、実施の形態47~88のいずれか1つの局所組成物。
【0099】
実施の形態90.実施の形態47~89のいずれか1つの局所組成物を適用することを含む、被験体における皮膚状態を治療又は予防する方法。
【0100】
実施の形態91.皮膚状態が乾燥皮膚、しわの多い皮膚、たるんだ皮膚、老化した皮膚、傷のある皮膚、負傷した皮膚、染みのある皮膚、座瘡及び/又は日焼けした皮膚の1つ以上である、実施の形態90の方法。
【0101】
実施の形態92.皮膚状態が炎症性皮膚状態である、実施の形態90の方法。
【0102】
実施の形態93.炎症性皮膚状態が乾癬、湿疹又はアトピー性皮膚炎である、実施の形態92の方法。
【0103】
実施の形態94.局所組成物を被験体の顔、耳、額、首、腕、上胸部、及び/又は手に適用する、実施の形態90~93のいずれか1つの方法。
【0104】
実施の形態95.局所組成物が経表皮水分喪失を減少させ、経表皮水分喪失を逆転させ、表皮水分保持を改善し、しわの出現を軽減し、皮膚のたるみを減少させ、皮膚の滑らかさを増加させ、皮膚の膨潤を増加させ、皮膚の柔軟性を改善し、皮膚のきめを改善し、皮膚の染みを減少させ、及び/又は皮膚の乾燥を減少させる、実施の形態90~94のいずれか1つの方法。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】多糖バイオポリマーの代表的な反復単位を示す図である。個々の糖残基は、グリコシド結合によって連結されている。多糖ベースのバイオポリマーは、グリコシド結合によって接続された糖残基の主鎖からなる。主鎖は糖残基からなる側鎖を有することもあり、それぞれが異なる化学修飾を有することがある。バイオポリマーの主鎖及び側鎖は、化学修飾とともに反復単位を構成する。反復単位はグリコシド結合によって接続され、より長いポリマーを生成する。
図2】バイオポリマー構造を示す図である。ガラクトグルカンは、ガラクトース及びグルコースの反復二量体であり、ピルビル修飾及びアセチル修飾を有する。スクシノグリカンは、1つのガラクトース及び7つのグルコース残基の反復八量体であり、ピルビル修飾、アセチル修飾及びスクシニル修飾を有する。グルクロノグリカンは、2つのガラクトース、2つのグルクロン酸及び5つのグルコース残基の反復九量体であり、ピルビル修飾及びアセチル修飾を有する。
図3】HAと比較した単離バイオポリマー及び混合バイオポリマーの吸水率を示す図である。質量増加によって測定される、水を結合する能力を個々のバイオポリマー及び混合バイオポリマーについて決定した。各バイオポリマーの質量増加をヒアルロン酸(HA)の質量増加で除算し、水分保持の相対倍率変化を導き出した。
図4】負電荷と吸水率との間の相関を示す図である。各バイオポリマーの電荷を酸性修飾基又は糖酸のpKaに基づいて生理的pHで算出した。次いで、この値を反復単位中の糖残基の数で除算し、各バイオポリマーについての比率を得た。電荷密度を各バイオポリマーの質量増加パーセントに対してプロットした。
図5】HAと比較した非ピルビル化ガラクトグルカンの吸水率を示す図である。水を結合する能力を実施例4及び図3に記載されるように測定した。質量増加をHAの値に対して正規化し、倍率変化を算出した。
図6】バイオポリマーの細胞毒性を示す図である。細胞毒性試験をISO 10993-5規格に従って行った。バイオポリマーを1%(w/v)の濃度でPBSに溶解し、加熱殺菌し、細胞毒性アッセイに使用した。各バイオポリマーについての値を陽性対照及び陰性対照の両方と比較した。
図7】皮膚保水性測定を示す図である。Corneometer 825(Courage + Khazaka)を用いて測定を行った。2人の健康ボランティアが、0.2%(w/v)のガラクトグルカンを含有するローションベース又は対照ベース(等量の水を含有する)のいずれかを身体の2つの異なる部位、すなわち手及び肘に48時間にわたって塗布した。各参加者について身体の各部位のベースライン測定からの保水性の変化の平均値(Corneometerによって測定される任意単位)を示す。
図8】ガラクトグルカン処置によるしわの出現の軽減を示す図である。実施例8からの参加者P1の手の甲の画像。丸印は、しわの出現の軽減が観察され得る部位を強調している。
図9】経皮浸透性及び皮膚保持性アッセイの結果を示す図である。ex vivoヒト皮膚組織を介した一方向の透過性を、フランツセルを用いて決定した。5%(w/v)の非ピルビル化ガラクトグルカンのドナー溶液で4時間処理した後の代表的なレセプターチャンバー(透過液)内の炭水化物の量についての結果を示す。フランツセルアッセイの終了後に皮膚サンプルをすすぎ、続いてPBSに浸漬して、皮膚表面に吸収された又は付随する炭水化物を溶出させた。レセプター溶液又は溶出皮膚サンプル中の全炭水化物を、アントロンアッセイを用いて決定した。対照レセプターチャンバー及び皮膚サンプルからのバックグラウンドレベルを減算して、報告値を導き出した。
【発明を実施するための形態】
【0106】
低分子量(LMW)であり、非病原性微生物の発酵によって生産される、改善された水分結合特性を有する天然産物バイオポリマーは、多数の異なる理由から魅力的である。第一に、かかるバイオポリマーは、従来のヒアルロン酸よりも生産面のコスト効率が高く、パーソナルケア製品及び化粧品により高濃度で添加し、改善された抗しわ性能及びアンチエイジング性能を達成することができる。第二に、これらのバイオポリマーは、皮膚浸透性及び保水性により性能が改善されるリップバーム、シェービングクリーム、日焼け止め、シャンプー、コンディショナー及び石鹸等の実質的により広範なパーソナルケア製品に添加することができる。第三に、微生物発酵によって生産されるバイオポリマーは、動物由来HAの魅力的な代替品であり、動物使用に関連する社会的及び/又は倫理的問題を軽減する。無害な微生物に由来するバイオポリマーは、病原性微生物とは対照的に、安全な製品を製造するために必要とされる下流の処理工程がより少ない。最後に、LMWで自然に生産されるバイオポリマーは、性能仕様を達成するために幾つかの付加的な下流の処理工程を必要とする現在のLMW HA製造プロセスに比べてかなりの利点を有する。
【0107】
本発明は、土壌細菌の非病原性種によって産生される菌体外多糖をベースとしたバイオポリマーの組成物、並びにその化粧品的及び/又は皮膚科学的若しくは医薬的使用を提供する。高い水結合能及び皮膚保持性/浸透性は、アンチエイジング効果及び抗しわ効果を有するパーソナルケア成分の望ましい特性である。これらの特性を有する、最も広く使用されているポリマーは、ヒアルロン酸であり、動物又は病原性細菌のいずれかに由来する。ヒアルロン酸と比較して実質的に改善された水結合特性を有する単離バイオポリマーが本明細書に提供される。幾つかの実施形態において、単離バイオポリマーは、リゾビウム科細菌に由来する。これらの細菌は、皮膚に浸透する能力を有する低分子量バイオポリマーを自然に産生する。発酵によるこれらのバイオポリマーの製造は、ヒアルロン酸の生産プロセスと比べて非常に有利である。
【0108】
本発明者らは、HAよりも優れた水分保持特性を有するため、広範なパーソナルケア配合物及び化粧品配合物におけるアンチエイジング製品としての使用に理想的な或る特定のバイオポリマーを特定した。第1の分子であるガラクトグルカンは、ピルビル修飾及びアセチル修飾を有するガラクトース及びグルコースの反復二糖である。ガラクトグルカンは、細菌シノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)(別名エンシフェル・メリロティ(Ensifer meliloti))に由来し、発酵中に低分子量(LMW)で自然に産生される。ガラクトグルカンは、この生物によって自然に産生される2つのバイオポリマーのうちの1つであり、水分結合特性は、もう一方のバイオポリマーであるスクシノグリカンとは独立してガラクトグルカンでのみ観察することができる。本発明者らは、ガラクトグルカンがHAの3.5倍超の水分保持能を有することを実証した。ピルビル修飾を欠くガラクトグルカンの変異体は、HAの1.7倍の水分保持能を示す。第2の分子であるグルクロノグリカンは、ピルビル修飾及びアセチル修飾を有するガラクトース、グルクロン酸及びグルコースを含む反復九糖である。グルクロノグリカンは、細菌シノリゾビウム・フレディイ(Sinorhizobium fredi)(別名エンシフェル・フレディイ(Ensifer fredii))に由来し、高分子量及び低分子量の混合物として自然に産生される。本発明者らは、グルクロノグリカンがHAの1.7倍の水分保持能を有することを実証した。
【0109】
水分保持性能の増大に加えて、ガラクトグルカン及びグルクロノグリカンは、標準前臨床モデルにおいて非毒性であり、これは化粧品的及び皮膚科学的用途における化合物の適性の前提条件である。幾つかの実施形態において、これらのLMWバイオポリマー画分は、in vitroフランツセルアッセイにおいて皮膚サンプルに浸透する。パーソナルケア配合物では、幾つかの実施形態において、代表的なローションベースにリゾビウム科由来のバイオポリマーを加えることで、皮膚への保水性の改善がもたらされる。
【0110】
本発明は、パーソナルケア配合物及び化粧品配合物にアンチエイジング成分及び抗しわ成分として使用するための有益な性能特徴である水分保持性、皮膚表面保持性及び/又は浸透性を有する微生物ポリマーを提供する。これらの微生物バイオポリマーは、アンチエイジング特性のために多くのスキンケア製品に使用されている業界標準の有効成分であるヒアルロン酸と比較して実質的に改善された水分保持性を示す。本明細書に記載されるリゾビウム科由来のバイオポリマーは、広範な水性スキンケア配合物への使用に適しており、多くの消費者製品において皮膚保水性の効力の増大をもたらすことができる。さらに、発酵によるLMWバイオポリマーの生産は、下流の処理を殆ど必要とせず、特定の分子量の動物又は微生物由来のHAの製造のための既存の技術と比較して経済的に有利な生産方法を提供する。
【0111】
バイオポリマー及びバイオポリマー調製物
土壌中に生息する共生細菌の科であるリゾビウム科は、そのマメ科植物宿主に固定窒素を供給する能力について数十年にわたって研究されてきたが、現在までバイオ産製品、医薬品又は化粧品の生産のための発酵微生物としては十分に活用されていなかった。これらの細菌は、宿主植物との共生及びバイオフィルム形成の両方に関与する水溶性の菌体外多糖、すなわちバイオポリマーを自然に産生する。リゾビウム科が産生する菌体外多糖の多様性から、幾つかの市場に相当な付加価値を与え得る新たな機能性を有する新規のバイオポリマーの幅広さが示唆される。
【0112】
スクシノグリカン及びガラクトグルカン
シノリゾビウム(エンシフェル)・メリロティは、2つの酸性菌体外多糖:スクシノグリカン(EPS I)及びガラクトグルカン(EPS II)を自然に産生する(Barnett 2018)。スクシノグリカンは、S.メリロティ(S. meliloti)によって産生される主要な菌体外多糖である。スクシノグリカンの反復単位(図2)は、7:1の比率のグルコース及びガラクトースからなり、アセチル修飾、ピルビル修飾及びスクシニル修飾を有する(Reuber 1993)。スクシノグリカンは、S.メリロティによって高分子量及び低分子量の両方で自然に産生される。スクシノグリカン生合成の一般的機構は、比較的よく理解されており、同様のバイオポリマーを産生する関連生物で共通している可能性が高い。
【0113】
ガラクトグルカン産生は、系統学的にS.メリロティに近い種に限定される。ガラクトグルカンの反復単位(図2)は、1:1の比率のグルコース及びガラクトースからなり、アセチル修飾及びピルビル修飾を有する(Glazebrook 1989)。特定の結合は、β-D-Glcp-(1-3)-α-D-Galp-(1-3)であり、殆どのD-グルコース残基に6-O-アセチル、全てのD-ガラクトースに4,6-O-ピルビルを有する(Her 1990)。ガラクトグルカンは、S.メリロティによって低分子量で自然に産生される。スクシノグリカンと比較して、ガラクトグルカンの生合成経路については比較的僅かしか知られていない。
【0114】
グルクロノグリカン
シノリゾビウム(エンシフェル)・フレディイは、5:2:2の比率のグルコース、ガラクトース及びグルクロン酸からなり、アセチル修飾及びピルビル修飾を有する酸性菌体外多糖を自然に産生する(Djordjevic 1986)(図2)。図2に示すバイオポリマーは、NGR234、HH103(ATCC51809)、及びおそらくはUSDA257を含む幾つかのS.フレディイ(S. fredii)基準株によって産生される(Gray 1991、Pueppke 1999、Rodriguez-Navarro 2014)。構造分析によると、グルクロノグリカンの側鎖上の末端ガラクトースは、4,6-ピルビル化されており、同じ糖残基の2番目、3番目のいずれか又は両方の炭素でアセチル化されている可能性がある。HH103株に由来するグルクロノグリカンには、第3のアセチル基も検出されており、したがって他の株も同様である可能性が高いが、その位置は解明されていない(Staehelin 2006、Rodriguez-Navarro 2014)。これらのS.フレディイ種のエキソ領域は28kbに及び、スクシノグリカン生合成に関与するS.メリロティクラスターと高度のシンテニーを有する。その遺伝子の多くは、S.メリロティのエキソ遺伝子と相同性を有する(Zhan 1990)。グルクロノグリカンは、スクシノグリカンと類似した構造を有するが、グルクロン酸を含み、スクシニル化されていない。グルクロノグリカンの主鎖は、6つの糖残基からなるが、スクシノグリカンの主鎖は、4つの糖残基を含む。グルクロノグリカンは、S.フレディイ株によって高分子量及び低分子量の両方で産生される(Staehelin 2006)。
【0115】
幾つかの実施形態において、グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成されるバイオポリマーであって、グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、ガラクトースの少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%がピルビル化されている、バイオポリマーが提供される。幾つかの実施形態において、グルコース及びガラクトースは、β-1,3グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合によって連結されている。幾つかの実施形態において、構造:
【化7】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成されるバイオポリマーであって、二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、二糖単位の60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、バイオポリマーが提供される。幾つかの実施形態において、バイオポリマーは、バイオポリマー調製物に含まれる。幾つかのかかる実施形態において、バイオポリマー調製物中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比は、1:1:0.4~1:0.6~1である。幾つかの実施形態において、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満又は1%未満のスクシノグリカンを含むバイオポリマーの調製物が提供される。幾つかの実施形態において、バイオポリマーの調製物は、スクシノグリカンを実質的に含まない。
【0116】
幾つかの実施形態において、グルコース及びガラクトースを含む反復二糖単位から構成されるバイオポリマーであって、グルコースの少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%がアセチル化されており、ガラクトースの15%未満、10%未満又は5%未満がピルビル化されている、バイオポリマーが提供される。幾つかの実施形態において、グルコース及びガラクトースは、β-1,3グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合によって連結されている。幾つかの実施形態において、構造:
【化8】
(ここで、点線は二糖単位間の結合を表す)の反復二糖単位から構成されるバイオポリマーであって、二糖単位の40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下がアセチル部分を欠き、二糖単位の15%以下、10%以下又は5%以下がピルビル化されている、バイオポリマーが提供される。幾つかの実施形態において、バイオポリマーは、バイオポリマー調製物に含まれる。幾つかのかかる実施形態において、バイオポリマー調製物中のグルコース:ガラクトース:ピルビル:アセチルのモル比は、1:1:0.5未満:0.6~1である。幾つかの実施形態において、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、3%未満又は1%未満のスクシノグリカンを含むバイオポリマーの調製物が提供される。幾つかの実施形態において、バイオポリマーの調製物は、スクシノグリカンを実質的に含まない。
【0117】
幾つかの実施形態において、バイオポリマーであって、バイオポリマーが構造:
【化9】
(ここで、点線は多糖単位間の結合を表す)の反復多糖単位から構成され、多糖単位の30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は1%以下がアセチル部分を欠き、二糖単位の10%以下、5%以下又は1%以下がピルビル部分を欠く、バイオポリマーが提供される。幾つかの実施形態において、多糖単位は1つ、2つ又は3つのアセチル基を含む。幾つかの実施形態において、1多糖単位当たりのアセチル基の平均数は1~3である。
【0118】
幾つかの実施形態において、バイオポリマーであって、バイオポリマーが反復多糖単位から構成され、各多糖単位が2個~15個又は2個~12個又は2個~10個の単糖を含み、バイオポリマーの反復多糖単位中の負電荷:単糖の比率が、少なくとも0.3又は少なくとも0.35又は少なくとも0.4又は少なくとも0.45である、バイオポリマーが提供される。幾つかの実施形態において、多糖単位は、少なくとも1つのグルコースに連結された少なくとも1つのガラクトースを含む。幾つかのかかる実施形態において、少なくとも1つのガラクトースは、β-1,3グリコシド結合を介してグルコースに連結されている。
【0119】
様々な実施形態において、バイオポリマー調製物であって、バイオポリマー調製物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%(w/w)が本明細書に提供されるバイオポリマーである、バイオポリマー調製物が提供される。幾つかの実施形態において、バイオポリマー調製物は、固体又は粉末である。幾つかの実施形態において、バイオポリマー調製物の5%未満、4%未満、3%未満、2%未満又は1%未満が水である。
【0120】
様々な実施形態において、バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量は3000kDa未満、1000kDa未満、300kDa未満、100kDa未満又は40kDa未満である。幾つかの実施形態において、バイオポリマー調製物中のバイオポリマーの平均分子量は、0.5kDa~40kDa又は1.6kDa~40kDaである。
【0121】
幾つかの実施形態において、バイオポリマーは、等量のヒアルロン酸と比べて少なくとも同量、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、1.5倍、少なくとも2倍又は少なくとも3倍の水を吸収することができる。幾つかの実施形態において、バイオポリマーは、バイオポリマー調製物の初期乾燥重量の少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%又は少なくとも500%の量の水を吸収することができる。吸水率は、例えばバイオポリマー又はバイオポリマー調製物の乾燥サンプルを、ほぼ一定温度の加湿チャンバーに一定時間にわたって置くことによって測定することができる。幾つかの実施形態において、温度は約20℃、約25℃、約30℃、約35℃又は約37℃である。幾つかの実施形態において、一定時間は1日、2日、3日、4日、5日、6日又は1週間である。
【0122】
株の構築
S.メリロティ及びS.フレディイはどちらも遺伝子改変に適しており、株操作の一般的な方法は、相同組換え、抗生物質耐性及びスクロース対抗選択(Quandt 1993)を用いて、ゲノム中の特定の領域を欠失させることである。改変されたゲノム領域を含むプラスミドを構築した後、天然の領域を標的変化に置き換えるために使用することができる。これらの非複製プラスミドを接合伝達によって導入することで、単一組込みを有する株を抗生物質耐性によって選択し、PCRによって確認することができる。副次的には、スクロースの存在下でグラム陰性細菌に致死的なレバンスクラーゼをコードするsacB遺伝子の存在により、組込みプラスミドを対抗選択することができる。次いで、抗生物質感受性のスクロース耐性株が野生型に組み換えられるか、又は構築したプラスミドに存在していた欠失、挿入若しくは他の改変が組み込まれる。改変株は、PCR及びシークエンシングによって確認することができる。
【0123】
S.メリロティの未改変の非馴化株は、スクシノグリカン及びガラクトグルカンの両方を産生し、両方のバイオポリマーの同時生産に適している。Rm1021(ATCC51124)等の或る特定の基準株においては、ガラクトグルカンを産生する能力は、実験室での株馴化のために失われている(Charoenpanich 2015)。馴化株の場合、ガラクトグルカン産生株を構築することができる方法は幾つかある。例としては、無傷のexpR遺伝子の修復、mucRのノックアウト、WggRの過剰発現(Bahlawane 2008)又はリン酸塩制限培地での成長(Mendrygal 2000)が挙げられる。
【0124】
ガラクトグルカンの非存在下でのスクシノグリカンの生産には、基準株Rm1021を使用することができる。幾つかの調節遺伝子を改変して、スクシノグリカンを過剰産生する株を得ることができる。これらの遺伝子としては、exoR、exoS、chvI、syrM及びnodD3が挙げられる(Barnett 2015)。他にはsyrA、mucR(Keller 1995)及びexoX(Zhan 1990)が挙げられる。S.メリロティの非馴化株を使用する場合、スクシノグリカンのみを産生する株を作製するためにガラクトグルカン生合成遺伝子をノックアウトする必要がある。ガラクトグルカン生合成に必要とされる遺伝子は、pSymBの32kb領域に含まれ、6つの予測グリコシルトランスフェラーゼと、dTDP-グルコース及びdTDP-ラムノースの合成に必要なタンパク質をコードすると予測される4つの遺伝子とが含まれる(Becker 1997)。ガラクトグルカンの産生を排除するために、wgaB又はwgeB等の幾つかのグリコシルトランスフェラーゼのいずれかを切除することができる。
【0125】
スクシノグリカンの非存在下でガラクトグルカンを生産するために、スクシノグリカン生合成遺伝子に突然変異を有するS.メリロティの野生型株を、pJQ200SKを用いて作製することができる。さらに、上記の方法のいずれかによってガラクトグルカンを産生する能力を回復させた馴化株を使用してもよい。スクシノグリカンに特異的な生合成クラスターは、pSymB上の22kb領域に位置する。このクラスターの遺伝子の幾つかに構造的及び調節的役割が割り当てられている(Reuber 1993)。スクシノグリカン生合成を排除するために、exoA、exoF、exoL、exoM、exoP、exoQ、exoT又はexoY等の幾つかの遺伝子のいずれかを遺伝学的に切除することができる。
【0126】
グルクロノグリカンは、野生型S.フレディイの主要産物であり、このバイオポリマーの生産に株の改変は必要とされない。上述の株のいずれかを物質の生産及び更なる分析に使用することができる。
【0127】
バイオポリマーを作製する方法
バイオポリマーの生産には、幾つかの異なる液体成長培地を使用することができる。S.メリロティ株は、LB培地又はTY培地でよく成長し、産物の産生を増進するために、これらにグルコース、スクロース又はコハク酸塩等の付加的な炭素源を添加してもよい。S.フレディイは、TY培地で成長させることができ、付加的な炭素源の添加は産生に有益である。S.メリロティ及びS.フレディイはどちらも、M9又はMOPS-マンニトール等の規定の最小培地で成長させることができ、より高い収量を得ることができる。最小培地により、リン酸塩濃濃度、pH、微量栄養素、硫酸塩濃度及び炭素源等の発酵変数の正確な制御が可能となる。
【0128】
発酵後のバイオポリマーを精製するためにアルコール沈殿を用いてもよい。通例、細胞は遠心分離又は濾過によって発酵ブロスから除去される。発酵ブロスの高い粘度により、細胞分離手順を補助するために1容量~2容量の水の添加を要する場合がある。残留細胞又は細胞残屑を更に除去するために、無細胞上清をプロテアーゼとともにインキュベートしてもよい。バイオポリマーを沈殿させるために、1mM前後の濃度範囲のイソプロパノール又はエタノール、更にはKCl又はCaCl等の一価又は二価カチオンを、通例は培養液量の1倍~2倍で無細胞上清に添加してもよい。バイオポリマーは混合により沈殿し、遠心分離又は濾過によって単離することができる。この時点で、塩濃度を低下させるか、又はポリマーとともに沈殿した可能性がある任意の細胞残屑を低減するために更なる精製工程を行ってもよい。これらの工程としては、所望の最終用途に適した付加的なアルコール洗浄、プロテアーゼ処理、再水和、遠心分離、透析、溶媒洗浄、凍結乾燥等を挙げることができる。精製した生成物を質量が安定するまで(全ての非結合水が蒸発するまで)炉内で乾燥させることができる。乾燥させた生成物を粉砕、摩砕又は他の形で処理して、最終的な精製バイオポリマーを生成することができる。
【0129】
局所組成物
ヒアルロン酸(HA)は、皮膚の老化に重要な役割を果たし、HA添加を多くのパーソナルケアローション及びクリームに見ることができる。或る特定の一般的な配合物においては、HMW HAが皮膚の表面上に留まり、空気から水を吸収することによって保水することから使用される。他の配合物においては、LMW HAが皮膚に浸透し、アンチエイジング効果又は抗しわ効果をもたらし得ることから使用される。皮膚浸透性がポリマーの長さに直接関連することが示されている(Essendoubi 2016、Witting 2015)。表皮の下層への浸透性、水の結合及び皮膚の膨潤が、しわの出現の軽減に寄与する。したがって、これらの性能を有する分子は、老化の出現を軽減するスキンケア配合物に強く求められている。
【0130】
機能性成分は通例、パーソナルケア製品に2%(w/v)以下の濃度で含まれる。より高濃度であれば、皮膚外観の改善により効果的であり得るが、原料コストのために2%を超えるレベルで成分を加えることができない可能性が高い。高いコストのために、一般的に使用されるパーソナルケア製品により広範に使用することができない可能性もある。これらの制限にもかかわらず、皮膚充填剤及び局所アンチエイジングパーソナルケア配合物においてHAの性能及び効力に競合し得る代替製品は殆どない。皮膚充填剤の代替品としては、生体鉱物のヒドロキシルアパタイト等の製品又はポリメチルメタクリレート等の石油由来の製品が挙げられる。生物学的代替品としては、HAと組み合わせて使用されることが多いアガロース、非炭水化物ベースのポリグルタミン酸(PGA)、又はタマリンド種子抽出物に由来するポリマーが挙げられる。
【0131】
局所的に適用される製品の例としては、クリーム、ローション、セラム、軟膏、バーム(リップバーム等)、チンキ、リニメント、シャンプー、石鹸、コンディショナー、日焼け止め、リンス、化粧品、デオドラント又は皮膚に直接使用される任意の他の治療剤等の任意の水溶液、アルコール又は水中油型エマルションが挙げられる。本明細書に提供される局所組成物は、概ね流体であってもよく、膏薬、エマルション、クリーム、乳液、軟膏、含浸パッド、合成洗剤、溶液、セラム、ゲル、スプレー若しくはエアロゾル、フォーム、懸濁液、ローション、又はスティックの形態であってもよい。
【0132】
様々な実施形態において、本明細書に提供される少なくとも1つのバイオポリマーを含む局所組成物が提供される。幾つかの実施形態において、局所組成物は、本明細書に提供されるバイオポリマーの1つ、2つ又は3つを含む。幾つかの実施形態において、組成物は0.01%~30%、1%~30%、0.01%~20%、1%~20%、0.01%~10%又は0.05%~5%(w/v)の本明細書に提供されるバイオポリマーを含む。幾つかの実施形態において、局所組成物は、本明細書に提供される少なくとも1つのバイオポリマーとヒアルロン酸とを含む。幾つかのかかる実施形態において、ヒアルロン酸は0.01%~5%、0.01%~3%、0.01%~2%、0.01%~1%、0.1%~2%又は0.1%~1%(w/v)の濃度で存在する。
【0133】
様々な実施形態において、本明細書に提供される局所組成物は、1つ以上の薬学的及び/又は美容的に許容可能な増粘剤、安定剤、乳化剤、皮膚軟化剤、保湿剤、レオロジー調整剤、皮膜形成剤、酸化防止剤、添加剤、活性剤、バター、精油、浸出油、粘土、泥、抽出物、ヒドロゾル水、角質除去剤、補給剤、ワックス、濃厚剤、塩、ミネラル、酸、塩基、キャリアオイル及び固定油、界面活性剤、防腐剤、パール化剤、品質改良剤、構造化剤、増白剤、湿潤剤、浸透圧調節物質、閉塞剤、洗浄剤、着色剤、顔料、香料、UV-A遮断薬及びUV-B遮断薬、及び/又は栄養剤を含む。当業者であれば、所望の用途に基づいて局所組成物に適した成分を選択することができる。好適な成分の多くのリスト及び説明が当該技術分野で利用可能であり、例えばcir-safety.org及び/又はwww.fda.gov/cosmetics/cosmetic-products-ingredientsが挙げられる。非限定的な粘度及び/又はレオロジー調整剤の例としては、ポリアクリレート、その誘導体及びコポリマー、ポリソルベート及び誘導体、ミリステート、ポリクオタニウム、セルロース及び誘導体、セテアリルアルコール、カルボマー、キサンタンガム、ダイユータンガム、カプリン酸グリセリド、加工糖、他の多糖ポリマー、パラフィン、ポリエチレングリコール、グリセロール、プロパンジオール、オレイン酸誘導体、並びにヒアルロン酸が挙げられる。非限定的な保湿剤の例としては、ヒアルロン酸、メチルグルコースエーテル、エチル化メチルグルコース、グリセロール、ポリエチレングリコール、グリコール誘導体、コラーゲン、尿素、ソルビトール、アラントイン及びαヒドロキシ酸が挙げられる。非限定的な皮膚軟化剤の例としては、鉱油、ラノリン、シアバター、ココアバター、ヤシ油、蜜蝋、ヒマワリ油、他の植物油、植物性及び動物性脂肪、ワセリン、並びにスクアレンが挙げられる。局所組成物の付加的な成分としては、シリコーン誘導体(滑沢剤)、トコフェロール(ビタミンE)、パラベン(防腐剤)、ステアリン酸及びオレイン酸、ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)、ケラチン、エラスチン(タンパク質)、アミノ酸及びペプチド、並びにベントナイト粘土が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
局所組成物の使用
皮膚は熱、感染、毒性物質への曝露、及び水分喪失等の外的課題に対するヒト身体の防御の第一線である。表皮の最外層は、角質層と呼ばれ、保水しない積み重なった非生存細胞から構成される。角質層の主要機能は、過剰な経表皮水分喪失を防ぐことによって皮膚の恒常性を維持することである。角質層の下に残りの表皮があり、ケラチノサイト及びメラノサイト等の様々なタイプの代謝活性細胞から構成される。表皮の下には真皮及び皮下組織があり、血管、神経細胞及びアポクリン腺を含む(Abd 2016)。
【0135】
角質層が水分喪失に対する一次障壁であるが、表皮の代謝活性層におけるHAの存在が、皮膚の全体的な保水レベルにおいて最も重要な因子であることが示されている。加齢又は老化した皮膚は、ポリマーの長さの減少及び表皮中のポリマーの全体的な喪失の両方を特徴とする(Papakonstantinou 2012)。角質層の障壁を通過し、表皮に浸透することができる水分保持ポリマーは、上述の皮膚老化の影響を潜在的に相殺する可能性がある。クリーム、ローション、セラム又は他の局所組成物を皮膚に適用することで、ポリマーが表皮のより深層に浸透し、皮膚に保持される水分量が全体的に増加し得る。これにより皮膚が膨潤し、しわの出現が全体的に軽減され得る。水分保持ポリマーは、他の有効成分の乾燥作用に対抗するか、又は更なる保湿及び/又は消費者への価値を与える配合物を作り出すために、更なる保水性が有用である多数の他のパーソナルケア製品にも使用され得る。
【0136】
幾つかの実施形態において、本明細書に提供されるバイオポリマーを含む局所組成物を適用することを含む、皮膚状態を治療又は予防する方法が提供される。幾つかの実施形態において、皮膚状態は乾燥皮膚、しわの多い皮膚、たるんだ皮膚、老化した皮膚、傷のある皮膚、負傷した皮膚、染みのある皮膚、座瘡及び/又は日焼けした皮膚の1つ以上である。幾つかの実施形態において、皮膚状態は乾癬、湿疹又はアトピー性皮膚炎等の炎症性皮膚状態である。幾つかの実施形態において、皮膚状態は創傷皮膚である。幾つかの実施形態において、局所組成物は、被験体の顔、耳、額、首、腕、上胸部、脚、足及び/又は手に適用される。
【0137】
様々な実施形態において、局所組成物の適用は、経表皮水分喪失を減少させ、経表皮水分喪失を逆転させ、表皮水分保持を改善し、しわの出現を軽減し、皮膚のたるみを減少させ、皮膚の滑らかさを増加させ、皮膚の膨潤を増加させ、皮膚の柔軟性を改善し、皮膚のきめを改善し、皮膚の染みを減少させ、及び/又は皮膚の乾燥を減少させる。幾つかの実施形態において、改善は、局所組成物の最初の適用の直前である第1の時点と比較して第2の時点で決定される。幾つかの実施形態において、局所組成物は1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回又は1週間に1回適用される。幾つかの実施形態において、局所組成物は1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年又はそれ以上にわたって適用される。幾つかの実施形態において、改善は2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月若しくは1年、又はそれ以上にわたって局所組成物を使用した後に明らかになる。
【実施例
【0138】
実施例1.S.メリロティ及びS.フレディイによって産生される天然バイオポリマー
選択リゾビウム科株が産生する自然発生バイオポリマーを図2に示す。EPSIとも称されるスクシノグリカンは、シノリゾビウム・メリロティによって産生される。反復単位は、1つのガラクトース及び3つのグルコース単糖の線状主鎖と、4つのグルコース分子の側鎖とからなる。主鎖糖は、β-1,3グリコシド結合及びβ-1,4グリコシド結合によって連結されている。側鎖糖は、β-1,3グリコシド結合及びβ-1,6グリコシド結合によって連結されている。スクシノグリカンは、主鎖のグルコース3でアセチル化され、側鎖のグルコース3でスクシニル化され、側鎖の末端グルコースでピルビル化されている(Reuber 1993)。EPSIIとも称されるガラクトグルカンも、S.メリロティによって産生される。ガラクトグルカンは、β-1,3グリコシド結合及びα-1,3グリコシド結合によって連結されたガラクトース及びグルコースの線状の反復二量体である(Glazebrook 1989)。ガラクトース残基は完全にピルビル化されており、グルコース単位のおよそ70%がアセチル化されている(Her 1990)。グルクロノグリカンは、シノリゾビウム・フレディイによって産生される。グルクロノグリカンは、β-1,3グリコシド結合、β-1,4グリコシド結合及びβ-1,6グリコシド結合によって連結された1つのガラクトース及び5つのグルコース単糖から構成される主鎖と、α-1,3グリコシド結合、α-1,4グリコシド結合及びβ-1,4グリコシド結合によって連結された2つのグルクロン酸及び末端ガラクトースの側鎖とからなる。側鎖上の末端ガラクトースは、アセチル化され(炭素2及び/又は炭素3で)、かつ4,6-ピルビル化されている(Djordjevic 1986)。グルクロノグリカンは、第3の未知の位置でアセチル化されることがある(Rodriquez-Navarro 2014)。
【0139】
実施例2.株の構築
選択されたORFの標的欠失、挿入要素の切除又はSNPの修正のために、ポジティブ選択マーカー及びネガティブ選択マーカーを有する非複製プラスミドベクターを使用した。S.メリロティ及びS.フレディイは、どちらも標準的な分子生物学及び株操作の手法を用いた遺伝子改変に適しているため、この方法により、それらのゲノムを迅速かつ正確に変化させ、所望の遺伝子型を作り出すことが可能である。初めに、欠失カセットを有するpJQ200SKプラスミド(Quandt 1993)の誘導体を作製した。欠失カセットについては、開始コドン及び終止コドンを含む標的ORFの上流及び下流の領域(通常は500bp)をPCRによって増幅した。野生型DNAの導入については、挿入要素の上流及び下流の領域をPCRによって増幅した。次に、CPEC法(Quan 2009)を用いてプラスミドを組み立て、S.メリロティへの導入前に配列を検証した。プラスミドを三親交雑によってS.メリロティに導入し、相同ゲノム領域に単一組込みを含む株を抗生物質耐性について選択し、増幅領域外のプライマーを用いたPCRによって検証した。次いで、プラスミドの組込みについて陽性の株を画線培養して精製し、スクロース上で成長する能力について選択した。組み込まれたpJQ200プラスミド上のsacB遺伝子の存在は、株をスクロース上で成長させた場合に致死を引き起こす。したがって、スクロース上で増殖する株は、sacB自体に突然変異を有するか、又は組み換えられて組込みプラスミドが「ループアウト」し、野生型に戻るか、又はプラスミド中に元々存在していた欠失若しくは改変された配列を有することになる。
【0140】
Rm1021株等のS.メリロティの馴化株は、ガラクトグルカンを産生する能力を失っており(Pellock 2002)、この機能を回復させるために導入することができる遺伝子改変が幾つかある。これらの改変としては、mucR遺伝子の欠失、野生型対立遺伝子expR101のexpR遺伝子座への復元(Gonzalez 1996)、又は野生型expR ORF及びプロモーターの導入(Charoenpanich 2015)が挙げられる。これらの変化は全て、スクシノグリカンに加えてガラクトグルカンを産生するRm1021由来株をもたらす。本研究では、上記の方法を用いて野生型expRをRm1021株に導入した。これにより、S.メリロティの両方のバイオポリマーを同時に産生するEXO3株が得られた。
【0141】
EXO3株を用いて、いずれかの菌体外多糖の生合成に関与することが知られているORFを欠失させることにより、スクシノグリカン又はガラクトグルカンのいずれかを単独で産生する誘導株を作製した。例えば、スクシノグリカンを産生する株は、ガラクトグルカンの合成に関与するwgaB又はwgeBを含む幾つかのグリコシルトランスフェラーゼのいずれかの欠失によって作製することができる(Becker 1997)。ガラクトグルカンを産生する株は、スクシノグリカン生合成の初期段階に関与するexoF、exoA又はexoY(Gonzalez 1996、Glazebrook 1989)等の幾つかのグリコシルトランスフェラーゼのいずれかの欠失によって作製することができる。上記の手法を用いて、wgeB ORFを欠失させ、スクシノグリカンのみを産生することが可能なEXO3誘導体を作製した。ガラクトグルカン産生株を作製するために、EXO3においてexoY ORFを欠失させた。これらの株であるEXO1及びEXO2(表1)を、その後のスクシノグリカン又はガラクトグルカンの生産にそれぞれ使用した。
【0142】
上記の標的欠失方法を用いて、化学修飾を欠くような変異体バイオポリマーを産生する株を作製することができる。例えば、スクシノグリカンのスクシニル化及びアセチル化に関与する遺伝子であるexoH及びexoZをS.メリロティのゲノムから欠失させてもよい。修飾型のガラクトグルカンを生成するために、ピルビル化に関与する遺伝子であるwgaEをS.メリロティから切除した。
【0143】
【表1】
【0144】
実施例3.バイオポリマーの生産及び精製
ベンチスケールでの成長及びバイオポリマー生産については、振盪フラスコでのバッチ培養を用いた。産生株を培養プレートからTY培地に接種し、30℃の振盪インキュベーター内で一晩成長させた。翌日、一晩培養物を、通例は1:100又は1:200の比率で産生培地へと希釈した。産生培地は、2%~4%(w/v)の濃度のグルコース又はスクロースのいずれかの炭素源、硫酸アンモニウム等の窒素源、中性pHを維持するためのバッファー、MgSO及びCaCl等の二価カチオン、微量元素、並びにビタミンを含有するM9等の規定の最小培地からなるものであった(米国特許第7371558号)。株を産生培地中で最大3日間成長させた後、精製のために採取した。
【0145】
バイオポリマーの回収及び精製は、初期細胞分離後のアルコール沈殿によって行った。高分子量ポリマーについては、培養物を2容量又は3容量のいずれかの水で希釈し、上清を遠心分離によって細胞から分離した。低分子量バイオポリマーについては、細胞分離前に培養ブロスを希釈する必要はなかった。次いで、およそ1mMのCaClを上清に添加し、2容量のイソプロピルアルコールの添加によってバイオポリマーを室温で沈殿させた。沈殿物を遠心分離によって単離した後、70%又は90%のいずれかのエチルアルコールで洗浄した。洗浄工程後に、沈殿物を低速遠心分離によって再び単離し、残留水がないことを示す重量減少の安定まで60℃の炉内で一晩乾燥させた。次いで、乳鉢及び乳棒を用いるか、又はベンチスケールミルを用いて最終生成物を粉砕した。
【0146】
実施例4.バイオポリマーの特性評価
バイオポリマーを分析法によって特性評価する。場合によっては、NMR分光法を用いて、組成、配列分布、置換パターン及び分子量についての構造情報を決定することができる。バイオポリマーを溶液NMR又は固体NMRによってアッセイしてもよい。多糖の溶液NMRでは、物質の高い粘度のために、サンプルを酵素消化又は前処理に供することがある(Her et al. 1990)。13C交差分極マジック角回転(CPMAS)NMR(Schaefer 1976)等の固体法を用いて、サンプルを前処理なしにアッセイすることができる。より詳細な構造分析及び/又は定量化は、例えばYao 2021に記載されているような2D NMRによって評定することができる。当業者は、各分析法が明白な利点及び不利点を有することを理解し、バイオポリマーの構造、修飾の程度、及び/又は純度レベルに関する所望の情報を生成するために適切な分析法を選択することができる。これらの方法を用いて、多糖鎖中の糖の修飾の程度を定量化することができる。例えば、アセチル化、ピルビル化、スクシニル化又は他の修飾化学基のレベルをバイオポリマーのサンプルについて決定することができる。
【0147】
実施例5.吸水率
バイオポリマーの水結合能を決定するために、サンプルを密閉加湿チャンバーに5日間入れ、質量増加をヒアルロン酸と比較して測定した。バイオポリマーを実施例3の手順に従って精製した。吸水実験を行う前に、バイオポリマーサンプルを60℃で30分間乾燥させ、残留水が全て蒸発することを確実にした。次いで、少量(通例25mg~50mg)を秤量し(値m)、個々の風袋計量済プラスチック又はアルミニウムトレイに入れた。全てのサンプルを250mlの温水(およそ35℃)の入った密閉プラスチックチャンバー内の台上に置いた。次いで、全てのサンプルを入れたチャンバー全体を30℃のインキュベーターに入れた。5日後に、加湿チャンバーを開け、個々のサンプルを秤量し(値m)、質量増加を算出した。各サンプルの水結合能(WBC)を以下の式:(m-m)/mに従って算出した。この生の値は膨潤の程度を表し、100を乗算することによって質量増加パーセントとして表すことができる。
【0148】
ヒアルロン酸の純粋な5kDa調製物(HAworks)を水結合実験の対照として使用した。上記のように測定したヒアルロン酸のWBCは、通例200%~300%であった。より高分子量のHA(100kDa、HAworks及び1000kDa超、Acros Organics)を試験したところ、低分子量サンプルと同様の吸水能が示された。実験サンプルの倍率変化を算出するために、バイオポリマーの質量増加についてのWBC値を実験内のHAについてのWBC値に対して正規化した。
【0149】
図3は、単離ガラクトグルカンのWBCがHAと比較して3.5倍も増加していることを示す。このWBC値は、複数の実験にわたって再現可能であった。生の質量増加パーセントは、ガラクトグルカンについては650%であり、HAについて測定された185%の増加よりも相当高かった。加湿チャンバー内での更なるインキュベーション後に、ガラクトグルカンの質量増加は、その初期質量の720%にまで達した。ガラクトグルカンがグルコース、スクロース及びコーンシロップを含む複数の炭素源に由来する場合も結果は同様であった。S.フレディイから単離されたグルクロノグリカンは、HAと比べて1.7倍の水結合性の増加を示した。グルクロノグリカンについての質量増加パーセントの生の値は、311%であった。単離スクシノグリカンは、ガラクトグルカン及びグルクロノグリカンとは対照的に、HAと比較して水結合性の減少を示し(0.7倍への減少又は129%の生の質量増加)、スクシノグリカン及びガラクトグルカンの混合物は、更に減少した(0.3倍への減少又は60%の生の質量増加)。ガラクトグルカンの場合、WBCの改善は、ガラクトグルカンを独立して精製した場合にのみ観察され、S.メリロティに由来するガラクトグルカン及びスクシノグリカンの両方の自然発生混合物としては観察されなかった。
【0150】
単糖のタイプ及び含有量、化学修飾、グリコシド結合、並びに分子量は全て、バイオポリマーの挙動に影響を及ぼす可能性があるが、これらのリゾビウム科の種に由来するバイオポリマーについては、負電荷の程度がWBCにおける支配的な因子であるようである。図4は、S.メリロティ及びS.フレディイのバイオポリマーについて、負電荷と水結合性能との間に相関があることを示す。x軸の値については、各反復単位の負電荷を生理的pHでの化学基又は糖酸のpKaに基づいて算出した。例えば、グルクロノグリカンの2つのグルクロン酸及びピルベート修飾は、それぞれ中性pHで1つの負電荷をもたらすため、反復単位中の全糖に対する負電荷の比率は1:3、すなわち0.33となる。ガラクトグルカンでは、この比率は1:2、スクシノグリカンでは、この比率は1:4である。これらの比率を各バイオポリマーの質量増加パーセントの値に対してプロットした。図4に示されるように、反復単位中の単糖に対する負電荷の比率が最も高い分子であるガラクトグルカンは、最も高い水結合能を有していた。他の根粒菌バイオポリマーは、この近似曲線に高いR値で正確に適合した。単糖に対する電荷の比率が同様に1:2であるヒアルロン酸(灰色の丸)は、近似曲線に適合せず、この分子については、電荷比以外の又はそれに加えて何かが水分保持に影響を及ぼすことが示された。キサンタンガム(Modernist Pantry)は、HAと比較して低い水結合能を示し、同様に近似曲線に適合しなかった。
【0151】
図5は、wgaE遺伝子を切除したS.メリロティ株に由来する非ピルビル化ガラクトグルカン分子(NP-ガラクトグルカン)の構造を示す。NP-ガラクトグルカン分子も、完全にピルビル化されたガラクトグルカンほどではないにせよ、HA対照よりも多くの水を保持した。HAと比較して、NP-ガラクトグルカン分子は、水を結合する能力の1.7倍の増加を示した。
【0152】
実施例6.細胞毒性
細胞毒性について試験するために、バイオポリマーを実施例3に従って精製し、Ca、Mgを含まないPBS溶液に1%(w/v)の濃度で再懸濁した。次いで、これらの溶液を水浴内にて60℃で30分間加熱殺菌した。下記の細胞毒性アッセイをカリフォルニア州ハーキュリーズのPacific Biolabsで行った。
【0153】
試験手順:総表面積1.0cmの平らな表面を有する滅菌濾紙を、約0.1mLの試験溶液で飽和させ、10cmのウェルの中央の細胞培養単層上に直接置いた。三連の調製物を調製した。三連の陽性対照及び陰性対照を試験品と同様に試験した。全てのウェルを5±1%のCOの入った加湿インキュベーター内にて37±1℃で24時間以上インキュベートした。インキュベーション後に、試験品及び対照をウェルから静かに取り出した。細胞培養物を倒立顕微鏡下にて倍率100倍で細胞毒性応答について試験した。応答は0~4の段階で等級分けした。2を超える等級数の達成を細胞毒性効果とみなす。
【0154】
本研究はISO 10993-5:2009に従って行った。値0は反応性なしとみなし、値1は僅かに反応性を有するとみなす。図6は、単離されたスクシノグリカン、ガラクトグルカン、グルクロノグリカン、並びにスクシノグリカン及びガラクトグルカンの混合物が本アッセイにより細胞毒性を有しないことを示す。
【0155】
実施例7.スキンケア用の局所配合物
バイオポリマー及び/又はその誘導体を実施例3に従って生産し、精製する。精製バイオポリマーを以下の市販のローションベース:Dermabase Cream(商標)(Paddock Laboratories)、Crafter’s Choice(商標) Basic Lotion Base(Crafter's Choice Brands LLC)及びStephenson Easy Lotion Base(Stephenson)、又は他の同様のベースに添加する。これらのローションベースは、様々な室温で安定したスキンケア用の水中油型エマルションである。バイオポリマーは、ローションベースに直接添加するか、又は適切な最終濃度を達成するために添加前に水若しくはPBS(Ca、Mgを含まない)に再懸濁する。典型的な配合物としては、最終濃度が0.1%~2%(w/v)のバイオポリマー又は誘導体が挙げられる。
【0156】
ローションベースの成分:
Dermabase Cream(商標)-精製水、鉱油、ワセリン、セトステアリルアルコール、プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸イソプロピル、イミダゾリジニル尿素、メチルパラベン及びプロピルパラベン。
Crafter’s Choice(商標) Basic Lotion Base-水、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、ポリソルベート-60、ステアリルアルコール、ヒマワリ油、アラントイン、プロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピル、ワセリン、ジアゾリジニル尿素、メチルパラベン、プロピルパラベン、BHT、カルボマー、ベンゾフェノン-4、ステアリン酸。
Stephenson Easy Lotion Base-水、ヒマワリ種子油、ポリソルベート20、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、フェノキシエタノール、カルボマー、ソルビン酸カリウム、水酸化ナトリウム。
【0157】
バイオポリマーの皮膚保水性試験については、以下の水中油型ベースローションを使用した:蒸留水、パパヴェル・ソムニフェルム(Papaver Somniferum)(ポピーシード)種子油、グリセリン、ペンチレングリコール(植物由来)、オリーブスクアラン、ステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸グリセリル、ステアリルアルコール、トコフェロール、ロニセラ・ジャポニカ(Lonicera Japonica)(スイカズラ)花エキス、ロニセラ・カプリフォリウム(Lonicera Caprifolium)(スイカズラ)花エキス、0.2%(w/v)ガラクトグルカン、アラビアゴム、キサンタンガム、フィチン酸ナトリウム、アルコール及び乳酸。
【0158】
実施例8.in vivo皮膚保水性研究
実施例7に記載したバイオポリマー含有ローションベース配合物を、プラシーボ組成物とともに皮膚の水分量の比較in vivo試験に使用する。バイオポリマーを含有する各ローションベースのプラシーボ組成物は、等容量のPBS又は滅菌水を添加することで生成する。
【0159】
皮膚保水性研究では、バイオポリマーを含有するローションベースの標準量を顔の右側、プラシーボ組成物を顔の左側に塗布するよう被験体に指示する。被験体には、常に同じ組成物を顔の同じ側に塗布するよう指示する。被験体は、これらの組成物を1日2回、規定の時間にわたって塗布し、研究組成物とは無関係のいかなる他の局所組成物の使用も控えるよう指示される。皮膚保水性の測定は、Corneometer 825(Courage and Khazaka)を用いて行う。
【0160】
ガラクトグルカンを上記の手順に従って精製し、皮膚保水性研究に使用した。皮膚保水性は、0.2%(w/v)ガラクトグルカン又は対照として等量の水のいずれかを含有する、実施例7に記載したポピーシードオイル配合物を用い、48時間にわたって測定した。47歳の男性(P1)及び49歳の女性(P2)の2人の健康ボランティアについてのベースライン皮膚保水性測定(Corneometer 825による任意単位)を研究の開始前に行った。本研究では、任意単位でのCorneometer測定値は通例、20~50の範囲であり、機器の最大値は120である。参加者には、およそ0.3mlを身体の2つの異なる部位、すなわち手の甲及び肘に塗布するよう指示した。試験サンプル及び対照サンプルを1日4回塗布し、各塗布の前に皮膚保水性の変化をモニタリングした。図7は、24時間の処置後に行った測定での身体の各部位についてのベースラインからの保水性の変化の平均値を示す。ガラクトグルカンを含有するローションベースでの処置は、ローションベース対照と比較して、P1及びP2の両方について身体の両部位で保水性値の一貫した増加をもたらした。注目すべきは、処置の24時間後に保水性の傾向が十分に確立され、保水効果が累積的であり、より長時間の処置により、ガラクトグルカンを含有するローションと対照との間に更に大きな保水性の差が生じることが示唆される。図8は、処置の36時間後の参加者P1の手の甲の画像を示し、対照ローションベースで処置した手と比較して、ガラクトグルカンで処置した手では、しわの出現の明らかな軽減を観察することができる。丸印は、しわの出現の軽減が特に明らかな部位を強調している。参加者は、実験処置又は対照処置のいずれでも赤み、刺激、腫れ、過敏又は不快感を報告しなかった。
【0161】
実施例9.バイオポリマーのin vitro経皮吸収
ex vivo皮膚研究を用いて、皮膚浸透性を評定し、透過性又は蓄積性の点でバイオポリマーをランク付けし、配合物を効力について最適化する。ヒト又はブタの皮膚を用いて、フランツ拡散セル(Franz 1975)内で研究を行い、経皮吸収を評定する。バイオポリマー配合物をフランツセルの上(外)面に適用し、下(漿膜)面と接触するバッファーが入ったリザーバから所定の時点でサンプルを取り出し、測定する。対照ポリマー又は他の化合物は、品質管理のために同時投与するか(試験バイオポリマーが溶液中の場合)、又は並行して実行する(試験バイオポリマーが他の何らかのタイプの配合物中の場合)。皮膚を研究の終了時に摘出し、試験化合物の蓄積性を定量化してもよい。
【0162】
非ピルビル化ガラクトグルカンサンプルを用いてフランツセルアッセイを行った。具体的には、単一ドナーから切除したヒト死体皮膚の厚さを測定した後、37℃にサーモスタット制御されたフランツ垂直拡散セル(FDC-6、Logan instruments、ニュージャージー州サマセット)に取り付けた。レセプター溶液(PBS、pH7.4)を添加し、37℃で30分間平衡化した(32℃の皮膚表面温度に達するように)。平衡化時間の後、レセプター溶液の全容量(およそ11ml)を取り出して捨て、新たな予め温めたレセプター溶液と交換し、実験開始前にバッファー中に放出された内因性バックグラウンドを除去した。
【0163】
5%(w/v)のバイオポリマーをPBS(pH7.4)に添加し、50℃で30分間インキュベートすることによって投与溶液を調製した。1mlの投与溶液を各ドナーチャンバーに添加した。このため、各チャンバーのバイオポリマーの総量は50mgであった。ドナー溶液は0時間、8時間及び24時間の時点でサンプリングした。レセプター溶液は0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間及び24時間の時点でサンプリングした。24時間後に組織を取り外し、透過時間後にブランクPBSで軽くすすぎ、秤量し、個別に-20℃で保存した。バイオポリマーの定量では、レセプターサンプル中のタンパク質バックグラウンドを低減するために、アントロン法(Morris 1948)をカレッツ(Carrez)試薬(EMD Millipore)とともに用いた。アントロン法は、溶液中の炭水化物の存在を検出するために一般的に用いられる。レセプターサンプルについては、1.5mLチューブに入れた400μLのサンプルに4μLのカレッツ試薬Iを添加し、チューブをボルテックスによって混合した。次いで、更に4μLのカレッツ試薬IIを添加し、チューブを再び混合した。試薬を2.5μLの1N NaOHで中和し、チューブを16000×gで5分間遠心分離した。濃硫酸中の625μLの0.2%アントロンを氷上で325μLの上清と混合した。サンプルを99℃で15分間加熱した後、氷上で冷却した。
【0164】
皮膚に保持されたバイオポリマーを検出するために、取り外したサンプルを、2mLチューブに入れた1mLのPBSに37℃で4時間、次いで4℃で3日間浸漬した。PBSを回収し、16000×gで5分間の遠心分離を2回行い、残屑を除去した。カレッツ試薬を用いてサンプルを上記のように清澄化した後、PBSで10倍に希釈した。
【0165】
全てのサンプルについて吸光度を620nmで測定し、カレッツ試薬を用いて明確化した標準曲線との比較によって炭水化物濃度を決定した。対照フランツセル(バイオポリマーを含まない)のバックグラウンド吸光度を算出し、値から減算して、炭水化物濃度を導き出した。図9は、4時間のインキュベーション後のレセプターチャンバー(透過液)からの代表的な結果を示す。このサンプル中で検出された炭水化物は、バイオポリマーが表皮層に浸透したことを示す。レセプターチャンバー内のバイオポリマーの最高濃度は通例、これらの時点で観察された。図9はまた、取り外したサンプルを上記のようにPBSに浸漬した後に、或る特定量のバイオポリマーが皮膚自体に含まれるか、又は付随することを示す(皮膚)。これらの所見から、フランツセルのドナーチャンバー内の物質の一部が皮膚サンプルを完全に透過し、別の部分が皮膚サンプル内に保持されるか、又は付随することが示される。いかなる特定の理論にも束縛されることを意図するものではないが、非ピルビル化ガラクトグルカンの皮膚浸透性画分は、サンプル中で最も低分子量である可能性があり、より高分子量の画分が表皮表面に吸収され、及び/又は保持される可能性がある。
図1
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【国際調査報告】