(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】クリアランスアッセイ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240220BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
C12Q1/02 ZNA
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554382
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2022055950
(87)【国際公開番号】W WO2022189463
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521455419
【氏名又は名称】アーケシュフース ウニヴェルスィテーツスィーケフース ハーエフ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フラッドビー トールモー
(72)【発明者】
【氏名】ウェッターグリーン マリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ クルブーシャン
(72)【発明者】
【氏名】ギスラドッティル バーグリンド
(72)【発明者】
【氏名】キルセボム ビョルン-エイヴィン
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QQ91
4B063QR48
4B063QS33
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA50
(57)【要約】
神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の単球食細胞系(MPS)細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を判定するex vivoの方法である。方法は、i)MPS細胞の試料をMPS細胞が生きたままとなる条件下で維持する工程と、ii)MPS細胞の試料を作用物質及び疾患マーカー産物に曝露して、MPS細胞による疾患マーカー産物の食作用を可能にする工程と、iii)MPS細胞の試料における疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出する工程と、iv)疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量と、作用物質の不存在下でのコントロールMPS細胞において測定された同じ疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量とを比較する工程とを含む。疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片のMPS細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を、工程iv)の比較結果によって判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の単球食細胞系(MPS)細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を判定するex vivoの方法であって、前記方法は、
i)MPS細胞の試料を前記MPS細胞が生きたままとなる条件下で維持する工程と、
ii)前記MPS細胞の試料を作用物質及び疾患マーカー産物に曝露して、前記MPS細胞による前記疾患マーカー産物の食作用を可能にする工程と、
iii)前記MPS細胞の試料における前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出する工程と、
iv)前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量と、前記作用物質の不存在下でのコントロールMPS細胞において測定された同じ疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量とを比較する工程と、
を含み、ここで、
前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片のMPS細胞による触媒作用に対する前記作用物質の効果を、工程iv)の比較結果によって判定し、かつ、
前記疾患マーカー産物がAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)である場合、工程iii)は、Aβ
1-40(配列番号2)の断片又はAβ
1-42(配列番号1)の残基41を含むAβ
1-42(配列番号1)の断片の細胞内量を検出することを含む、方法。
【請求項2】
前記MPS細胞は、ミクログリア細胞、マクロファージ、又は単球、好ましくは単球である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、単球をマクロファージに分化させる工程を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記MPS細胞は、ヒト被験体から得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記MPS細胞は、CSF試料又は血液試料、好ましくは血液試料から得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程ii)は、前記MPS細胞を培養することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記作用物質は、MPSのオートファジー系及び/又はエンドリソソーム系の刺激物質若しくは阻害物質であるか、又は炎症性活性化物質であり、好ましくは、前記作用物質は、Aβ
1-42、Aβ
1-40、FFAR4アゴニスト、α7 nAChRアゴニスト若しくはPAM、ラパマイシン、バフィロマイシン、ネプリライシン阻害物質、IDE阻害物質、BACE阻害物質、FFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト若しくはPAMの組合せ、又はIDE阻害物質、ネプリライシン阻害物質、及びBACE阻害物質の組合せであり、好ましくは、前記FFAR4アゴニストは、DHAであり、前記α7 nAChRアゴニスト又はPAMは、NS1738であり、かつ前記FFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト又はPAMの組合せは、DHA及びNS1738の組合せである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片は、タウタンパク質、α-シヌクレイン、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)若しくはTDP-43、若しくはそれらの断片であるか、又は前記断片は、Aβ
1-40(配列番号2)の断片若しくはAβ
1-42(配列番号1)の残基41を含むAβ
1-42(配列番号1)の断片である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片は、アルツハイマー病に関連している、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程iii)は、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21、残基34、又は残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによってAβ
1-40(配列番号2)の断片又はAβ
1-42(配列番号1)の残基41を含むAβ
1-42(配列番号1)の断片の細胞内量を検出することを含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
工程iii)は、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24、残基31~残基34、又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによってAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程iii)は、配列番号6のN末端、配列番号6のC末端、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域、及び/又はAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域を検出することによってAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
工程iii)は、配列番号6のN末端又はC末端、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の領域の2つ以上を検出することによって、好ましくは、
i)残基21~残基24を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、及び残基31~残基34又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、
ii)配列番号6のN末端、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域、好ましくは、配列番号6の残基1~残基6、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域、
iii)配列番号6のC末端、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24、好ましくは残基21~残基29を含む断片の領域、及び/又は、
iv)Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24、好ましくは残基21~残基29を含む断片の領域、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域、
を検出することによってAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの断片は、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)がアミノ酸残基19とアミノ酸残基20との間、及び/又はアミノ酸残基34とアミノ酸残基35との間で切断されたものである、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法の工程iii)は、抗体、好ましくは配列番号3又は配列番号7に特異的な抗体、及び配列番号6のC末端に特異的な又は配列番号4に特異的な抗体、好ましくはまた配列番号5、配列番号8、又は配列番号9に特異的な抗体を使用してAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程iii)は、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、又はMBPの少なくとも1つの断片の細胞内量を検出することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記断片は、
タウがアミノ酸残基280とアミノ酸残基281との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間、又はアミノ酸残基305とアミノ酸残基306との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間で切断されたもの、
α-シヌクレインがアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間、アミノ酸残基52とアミノ酸残基53との間、及び/又はアミノ酸残基72とアミノ酸残基73との間、又はアミノ酸残基75とアミノ酸残基76との間、及び/又はアミノ酸残基90とアミノ酸残基91との間で切断されたもの、
TDP-43がアミノ酸残基310とアミノ酸残基311との間、及び/又はアミノ酸残基334とアミノ酸残基335との間、又はアミノ酸残基320とアミノ酸残基321との間、又はアミノ酸残基323とアミノ酸残基324との間、又はアミノ酸残基360とアミノ酸残基261との間、アミノ酸残基245とアミノ酸残基246との間、及び/又はアミノ酸残基255とアミノ酸残基256との間、又はアミノ酸残基285とアミノ酸残基285との間、及び/又はアミノ酸残基331とアミノ酸残基332との間で切断されたもの、
MBPがアミノ酸残基29とアミノ酸残基30との間、及び/又は残基70と残基71との間で切断されたもの、
である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記断片は、
タウタンパク質がアミノ酸残基280とアミノ酸残基281との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間で切断されたもの、
α-シヌクレインがアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間で切断されたもの、
TDP-43がアミノ酸残基310とアミノ酸残基311との間、及び/又はアミノ酸残基334とアミノ酸残基335との間で切断されたもの、又は、
MBPがアミノ酸残基29とアミノ酸残基30との間、及び/又は残基70と残基71との間で切断されたもの、
である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程iii)は、前記疾患マーカー産物の2つ以上の断片の細胞内量を検出することを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程ii)において、前記作用物質は、MPSのオートファジー系及び/又はエンドリソソーム系の刺激物質又は活性化物質であり、かつ工程ii)は、前記MPS細胞の試料を炎症性活性化物質に加えて前記作用物質に曝露することを含み、好ましくは、前記炎症性活性化物質はLPSである、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記コントロールMPS細胞は、請求項1の工程i)及び工程ii)を経た細胞であるが、但し、前記コントロールMPS細胞は、前記作用物質には曝露されていない、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用に対する一連の作用物質の効果を比較し、前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用に対して最大の効果を有する前記作用物質を特定するものである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記神経変性及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する病態の治療において使用される作用物質をスクリーニングするものである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、神経変性及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する疾患又は病態の診断において使用するものである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、個別化医療において作用物質がヒト被験体に有効な治療であるかどうかを判定するのに使用するものであり、ここで、前記方法の工程i)は、ヒト被験体から得られたMPS細胞の試料を前記MPS細胞が生きたままとなる条件下で維持することを含み、かつ前記作用物質の前記ヒト被験体に対する有効性を、工程iv)の比較結果によって判定する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
タウ(配列番号14)の残基306を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基246を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、又は、
MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
を含むキット。
【請求項27】
前記キットは、
Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、
α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、
タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、
TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、又は、
MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、
を含む、請求項26に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の単球食細胞系(MPS)細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を判定する方法に関する。本発明はまた、そのような方法において使用されるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
Aβの異化及び除去(クリアランス)は、シナプスで、脳実質において、脳血管系に沿って、それぞれアルツハイマー病(AD)及び脳アミロイド血管症(CAA)におけるアミロイド沈着を回避するのに不可欠である(非特許文献1、非特許文献2)。シナプス前及び関連の酵素活性によりシナプス周囲間質液(ISF)へのAβの放出が誘発され、そこから拡散、血管周囲輸送、ミクログリア及びニューロンによる取り込みによって、クリアランスが促進される(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)。年齢、APOεE4アレル、APPに関連する遺伝因子、Aβ、シナプス前β部位APP切断酵素1(BACE1)、及び骨髄性細胞は、ADにとっての主要な危険因子である(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。拡散によるクリアランス、血管周囲クリアランス、並びに例えば日周パターン、日中の活動、及び併発感染症の一部としてのニューロン活性及び免疫活性における変化を通じて、これらの因子は恒常性のバランスを保ち、それによって神経毒性代謝物の形成が制限される。この防護機能は、シナプス及び実質のミクログリア、血管周囲のマクロファージ、並びに周皮細胞によって補助されている。恒常性が十分に損なわれると、続いてAβ代謝異常、並びにアミロイド斑及び血管周囲アミロイドの沈着が起こる。他の疾患関連のペプチド及びタンパク質の脳沈着は、他の神経変性疾患及び神経変性に関連する病態における単球食作用系(MPS)代謝異常にも関連している。AD及びその他の神経変性疾患においては、遺伝的危険因子及び後天的危険因子、炎症、自然免疫不活性化、並びに小血管疾患によって代謝恒常性が損なわれている可能性がある。
【0003】
Aβのクリアランスは複雑な過程であり、その中でもAβの食作用及び分解/異化が2つの重要な要素である。脳の自然免疫細胞(すなわち、ミクログリア)及び末梢血の自然免疫細胞(例えば、単球及びマクロファージ)における異化は、Aβクリアランスに寄与する(非特許文献12)。幾つかのプロテアーゼは、細胞内活性、細胞膜活性、及び細胞外活性により、in vitro(非特許文献13)及びin vivo(非特許文献14によるCTADポスター)の両方でAβを分解する。プロテアーゼ活性は細胞の活性化状態を表し得ることから、これらを、治療を目的として操作することができる。細胞内プロテアーゼの活性により、幾つかの異なる残基に欠損を有する幾つかのAβ中間ドメインペプチド(すなわち、中間ドメイン断片)が生ずる(非特許文献15)。Aβ
1-42命名法におけるアミノ酸残基19(Phe)とアミノ酸残基20(Phe)との間、及びアミノ酸残基34(Leu)とアミノ酸残基35(Met)との間の2つの切断部位により、Aβ
20-34ペプチドが生成される(
図1及び
図2)。
【0004】
Aβの毒性は、タンパク質分解も阻害し得る中央の二量体/ヘアピン構造(
図1)を含むAβペプチドのより短い断片において保持される(非特許文献16)。これを裏付けるように、以前の質量分析実験では、おおよそアミノ酸残基20及びアミノ酸残基33/34でのAβ
1-42の優先的な細胞内単球食作用系(MPS)触媒作用の証拠が示されたが、介在するセグメントにおいては触媒作用が欠如している。これらの実験により、エンドソームの再循環及びAPP分解を起源とすることが推定されるAPP由来ペプチドの内因性起源の証拠も明らかになった(
図2;非特許文献17)。実際、Aβ
1-42のアミノ酸残基34とアミノ酸残基35との間での切断により得られる中間ドメインAβ
x-34断片は、アミロイドクリアランスのマーカーであることが示唆されている(非特許文献18)。
【0005】
Aβの異化の治療による強化は、AD治療にとって魅力的な注目点である。この目的のために、ラパマイシン類似体(「ラパログ」)、エンドリソソーム酵素活性の強化、及びマクロオートファジーが提案されている(非特許文献19、非特許文献20、非特許文献17、非特許文献1)。
【0006】
AD等の神経変性疾患には炎症も関与しており、ここで、神経炎症は部分的に神経免疫軸によって調節されており、その際、自然免疫細胞上のα7-ニコチン性受容体(α7ニコチン性アセチルコリン受容体;α7 nAChR)の刺激が重要な要素である(非特許文献21、非特許文献22)。ADへの進行は炎症によっても特徴付けられることが明らかになっており(非特許文献23)、現在では、初期のADにおいてミクログリアの特性が変化し、患者がAD誘発性認知症に向かって進行するにつれて炎症性表現型を獲得すると考えられている。非特許文献24では、Aβの一般的な形態であるAβ40が、末梢血単核細胞(PBMC)による炎症の収束に重要な役割を果たす特異的炎症収束性メディエーター(specialized proresolving mediator)(SPM)の産生を減少させることが実証された。Ω3脂肪酸(Ω3-PUFA)を含む多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、以前にドコサヘキサエン酸(DHA;IUPAC名(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸))が豊富なサプリメントを使用して実証されたように自然免疫活性を改変し、この種類の介入はAD関連のPBMC及びミクログリアのプロファイルを改善し、認知力の向上と関連していることが明らかになっている(非特許文献24、非特許文献25)。MPSに対するΩ3 PUFAの効果は、主に遊離脂肪酸受容体4(FFAR4)に起因する(非特許文献26)。Ω3 PUFAはNF-κBを間接的に阻害することから、炎症に対抗することができる(非特許文献27、非特許文献28)。NF-κB及びポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)を含むα7アゴニストは、α7 nAChRの発現を調節することができる。活性化されたα7 nAChRは、重病を含む多くの疾患に対する潜在的な防護的役割を伴う広範な抗炎症反応及び免疫調節反応に関連しているが、上方調節されたCHRFAM7Aの転写及び発現はCHRNA7発現又はα7 nAChR機能を妨げることが知られていることから、炎症性活性化を促進し、α7ニコチン作動性シグナル伝達を妨げることが推定される(非特許文献29、非特許文献30、非特許文献31、非特許文献32)。
【0007】
AD患者、その他の神経変性疾患を伴う患者、及び炎症性病態を伴う患者では、恐らく部分的にはLPS/Toll様受容体系の活性化のため、自然免疫活性化が増加している(非特許文献33、非特許文献34)。
【0008】
自然免疫モデル系における細胞のDHA処理により、Aβ1-42の食作用及び分解が増加し、食作用の増加は原形質膜でのCHRNA7発現の増加によって媒介されることが明らかになっている(特許文献1)。したがって、FFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト又はPAMを使用する併用治療がADの治療に提案されている(特許文献1)。
【0009】
個別化医療又は精密医療は、急速に発展している分野である。Aβの幾つかの異なる突然変異がADを引き起こすことが知られており(その一部を
図1に示す)、患者によって異なる突然変異を有する。同様に、喫煙及び肥満等のライフスタイル要因を原因とするような自然免疫関連のエピジェネティックな変化は、AD発症のリスクに影響を与えると考えられており、MPSの様々な部分に影響を与える可能性がある。Aβに対する様々な突然変異及び様々なエピジェネティックな変化は、MPS細胞における様々なエンドリソソーム酵素がAβ及びその断片を異化する効力に影響を及ぼすことになり、それによってAβのクリアランスに影響が及ぼされる。(
図3に示される通り)、治療薬によってMPSの標的とする部分が異なり、影響を与えるエンドリソソーム酵素が異なると考えられている。したがって、ADの個々の原因を考慮して、個別化医療及び精密医療を提供することが求められている。
【0010】
アミロイド血管症、ウイルス感染症、パーキンソン病、多発性硬化症、前頭側頭型認知症、及び筋萎縮性側索硬化症等の神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する他の病態もMPSの機能不全を特徴とするため、ペプチドの異常なクリアランスが引き起こされ、バイオマーカー産物又はその断片が存在する。例えば、AD、パーキンソン病(PD)、進行性核上性麻痺、及び前頭側頭型認知症のそれぞれに関連するタウも、MPSによって触媒される(
図3)。神経変性及び/又は炎症性活性化に関連するタンパク質は、ペプチドの凝集又は蓄積及び/又は神経毒性に関連する領域を有することが判明している。例えば、突然変異誘発により、タウの凝集の誘導におけるタウのR3領域(残基306~残基336)の重要性が明らかになっており、タウの残基244~残基372に対応する断片により、細胞及び動物モデルにおけるタウの凝集挙動の多くが再現される(非特許文献35)。TDP-43の2つの領域、すなわち、TDP-43のRRM-2ドメイン及びC末端ドメインそれぞれにおける残基246~残基258及び残基311~残基323は、顕著な凝集を示すことが判明している(非特許文献36)。これらの領域内で、残基246~残基255及び残基311~残基320が非常に凝集しやすいことが判明している(非特許文献36)。非特許文献37により、TDP-43のSegA(残基311~残基360)及びSegB(残基286~残基331)がヒトTDP-43凝集の病原性コアであると思われることが報告された。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)も、脱髄疾患においてオリゴデンドロサイトの内部又は神経細胞の周囲で凝集し、MBPの結合がニューロン特異的な毒性を誘導し得ることが以前に示唆されている(非特許文献38)。MBPは分解されにくい形態で凝集することも示唆されている(非特許文献38)。さらに、ウイルスカプシドの選択的MPSエンドリソソーム触媒作用は、場合によってはウイルスの複製に必要とされ、LPS/Toll様受容体系によって強化される(非特許文献39、非特許文献40)。同一の触媒酵素がAβタンパク質の触媒作用に関与する(非特許文献41、非特許文献42)。したがって、MPS機能不全に関連する他の神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する疾患マーカー産物の異化も、介入の標的となり得る疾患進行の必須要素に関連する測定可能な異化産物をもたらすことが予想される。
【0011】
したがって、MPSの機能不全に関連する神経変性疾患の疾患マーカー産物及びその断片のMPS細胞による異化及び細胞内クリアランスを研究することが必要とされる。特に神経変性疾患及びMPS機能不全に関連する炎症性活性化が、細胞内クリアランス及びその調節に及ぼす効果を研究することも必要とされる。また、特にMPS内の様々な治療標的を考慮して、様々な療法がMPSの機能並びに疾患マーカー産物及びその断片のクリアランスをどのように調節するかを特徴付け、神経変性疾患及び炎症性活性化を治療する新しい改良された療法を特定することも必要とされる。さらに、神経変性疾患に関連する個々の遺伝的変異体及びエピジェネティック変異体を考慮して個別化医療方法を開発することが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Sikanyika, Parkington et al. 2019
【非特許文献2】Greenberg, Bacskai et al. 2020
【非特許文献3】Cirrito, Yamada et al. 2005
【非特許文献4】Roberts, Elbert et al. 2014
【非特許文献5】Bakker, Bacskai et al. 2016
【非特許文献6】Ries and Sastre 2016
【非特許文献7】Clayton, Van Enoo et al. 2017
【非特許文献8】Yuksel and Tacal 2019
【非特許文献9】Belloy, Napolioni et al. 2019
【非特許文献10】Jansen, Savage et al. 2019
【非特許文献11】Tamura, Chiu et al. 2020
【非特許文献12】Simard et al. 2006
【非特許文献13】Rogeberg et al. 2014
【非特許文献14】Torsetnes et al. 2019
【非特許文献15】Rogeberg et al. 2015
【非特許文献16】Schmidt, Rohou et al. 2015
【非特許文献17】Malik, Maddison et al. 2019
【非特許文献18】Henium et al., 2020
【非特許文献19】Du, Liang et al. 2013
【非特許文献20】Jha, Jha et al. 2015
【非特許文献21】Maldifassi et al., 2018
【非特許文献22】Eduardo et al., 2019
【非特許文献23】Nordengen et al. 2019
【非特許文献24】Wang et al. 2015
【非特許文献25】Antonietta et al. 2012
【非特許文献26】Im, 2016
【非特許文献27】Dyall, 2015
【非特許文献28】Cirpo et al., 2015
【非特許文献29】Ren et al., 2017
【非特許文献30】Can et al., 2019
【非特許文献31】de Lucas-Cerrillo et al., 2011
【非特許文献32】Marioli et al., 2019
【非特許文献33】Zhan, Stamova & Sharp, 2018
【非特許文献34】Gambuzza et al., 2014
【非特許文献35】Stohr et al., 2017
【非特許文献36】Saini & Chauhan, 2011
【非特許文献37】Cao et al 2019
【非特許文献38】Frid et al., 2015
【非特許文献39】Pislar et al., 2020
【非特許文献40】Creasy & McCoy et al., 2011
【非特許文献41】Hook et al., 2002
【非特許文献42】Cermak et al., 2016
【発明の概要】
【0014】
本発明は、CNS疾患バイオマーカー産物の恒常性の低下を、自然免疫細胞、すなわちMPSによる異化を測定及び監視することによって調べることができ、自然免疫活性化を調節することによって恒常性を改善することができるという知見からもたらされる。特に、本発明は、神経変性疾患及びMPS機能不全における凝集及び/又は毒性に関連するタンパク質の領域が、触媒作用を受けにくい断片に対応するという知見からもたらされる。したがって、これらの中間ドメイン断片の異化を測定及び監視することによって、CNS疾患バイオマーカー産物の恒常性の低下を調べることができる。
【0015】
したがって、本発明の第1の態様において、神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の単球食細胞系(MPS)細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を判定するex vivoの方法であって、方法は、
i)MPS細胞の試料をMPS細胞が生きたままとなる条件下で維持する工程と、
ii)MPS細胞の試料を作用物質及び疾患マーカー産物に曝露して、MPS細胞による疾患マーカー産物の食作用を可能にする工程と、
iii)MPS細胞の試料における疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出する工程と、
iv)疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量と、作用物質の不存在下でのコントロールMPS細胞において測定された同じ疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量とを比較する工程と、
を含み、ここで、
疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片のMPS細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を、工程iv)の比較結果によって判定する、方法が提供される。
【0016】
好ましくは、MPS細胞は、ミクログリア細胞、マクロファージ、又は単球、好ましくは単球である。
【0017】
好都合には、方法は、単球をマクロファージに分化させる工程を含む。
【0018】
有利には、MPS細胞は、ヒト被験体から得られる。
【0019】
好ましくは、MPS細胞は、CSF試料又は血液試料から得られる。
【0020】
好都合には、MPS細胞は、血液試料から得られる。
【0021】
有利には、工程ii)は、MPS細胞を培養することを含む。
【0022】
好都合には、作用物質は、MPSのオートファジー系及び/又はエンドリソソーム系の刺激物質若しくは阻害物質であるか、又は炎症性活性化物質である。
【0023】
好ましくは、作用物質は、Aβ1-42、Aβ1-40、FFAR4アゴニスト、α7 nAChRアゴニスト若しくはPAM、ラパマイシン、バフィロマイシン、ネプリライシン阻害物質、IDE阻害物質、BACE阻害物質、FFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト若しくはPAMの組合せ、又はIDE阻害物質、ネプリライシン阻害物質、及びBACE阻害物質の組合せであり、好ましくは、FFAR4アゴニストは、DHAであり、α7 nAChRアゴニスト又はPAMは、NS1738であり、かつFFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト又はPAMの組合せは、DHA及びNS1738の組合せである。
【0024】
好都合には、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片はアルツハイマー病に関連している。
【0025】
有利には、疾患マーカー産物は、Aβ1-42(配列番号1)、Aβ1-40(配列番号2)、タウタンパク質、α-シヌクレイン、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、又はTDP-43である。
【0026】
好都合には、少なくとも1つの断片は、Aβ1-42(配列番号1)、Aβ1-40(配列番号2)、タウタンパク質、α-シヌクレイン、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、又はTDP-43の断片であり、ここで、Aβ1-42(配列番号1)の断片は、Aβ1-42(配列番号1)の残基41を含む。
【0027】
有利には、方法の工程iii)は、疾患マーカー産物の少なくとも1つの断片の細胞内量を検出することを含む。
【0028】
好都合には、方法の工程iii)は、疾患マーカー産物の2つ以上の断片の細胞内量を検出することを含む。
【0029】
有利には、方法の工程iii)は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21、残基34、又は残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによってAβ1-40(配列番号2)の断片又はAβ1-42(配列番号1)の残基41を含むAβ1-42(配列番号1)の断片の細胞内量を検出することを含む。
【0030】
好ましくは、方法の工程iii)は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24、残基31~残基34、又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによってAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む。
【0031】
好都合には、方法の工程iii)は、配列番号6のN末端、配列番号6のC末端、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域、及び/又はAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域を検出することによってAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む。
【0032】
有利には、方法の工程iii)は、配列番号6のN末端、配列番号6のC末端、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域、及び/又はAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域を検出することによってAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む。
【0033】
好ましくは、方法の工程iii)は、配列番号6のN末端又はC末端、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の領域の2つ以上を検出することによって、好ましくは、
i)残基21~残基24を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、及び残基31~残基34又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、
ii)配列番号6のN末端、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域、好ましくは、配列番号6の残基1~残基6、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域、
iii)配列番号6のC末端、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24、好ましくは残基21~残基29を含む断片の領域、及び/又は、
iv)Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24、好ましくは残基21~残基29を含む断片の領域、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域、
を検出することによってAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む。
【0034】
好ましくは、少なくとも1つの断片は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)がアミノ酸残基19とアミノ酸残基20との間、及び/又はアミノ酸残基34とアミノ酸残基35との間で切断されたものである。したがって、本発明の方法において検出されるAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片は、そのN末端として残基20を含み、及び/又はC末端として残基34を含む。
【0035】
好ましくは、方法の工程iii)は、配列番号6のN末端を検出し、かつ配列番号6のC末端を検出することによってAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む。
【0036】
有利には、方法の工程iii)は、配列番号6のN末端を検出し、配列番号6のC末端を検出し、かつ配列番号1又は配列番号2のC末端を検出することによってAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む。
【0037】
好ましくは、方法の工程iii)は、抗体を使用してAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む。
【0038】
有利には、方法の工程iii)は、配列番号3又は配列番号7に特異的な抗体、及び配列番号6のC末端に特異的な又は配列番号4に特異的な抗体を使用してAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む。
【0039】
好都合には、方法の工程iii)は、配列番号3又は配列番号7に特異的な抗体、配列番号6のC末端に特異的な又は配列番号4に特異的な抗体、及び配列番号5、配列番号8、又は配列番号9に特異的な抗体を使用してAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む。
【0040】
好ましくは、方法の工程iii)は、α-シヌクレイン(配列番号10)、タウ(配列番号14)、TDP-43(配列番号17)、又はMBP(配列番号20)の少なくとも1つの断片の細胞内量を検出することを含む。
【0041】
有利には、断片は、
タウ(配列番号14)がアミノ酸残基280とアミノ酸残基281との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基232との間、又はアミノ酸残基305とアミノ酸残基306との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間で切断されたもの、
α-シヌクレイン(配列番号10)がアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間、アミノ酸残基52とアミノ酸残基53との間、及び/又はアミノ酸残基72とアミノ酸残基73との間、又はアミノ酸残基75とアミノ酸残基76との間、及び/又はアミノ酸残基90とアミノ酸残基91との間で切断されたもの、
TDP-43(配列番号17)がアミノ酸残基310とアミノ酸残基311との間、及び/又はアミノ酸残基334とアミノ酸残基335との間、又はアミノ酸残基320とアミノ酸残基321との間、又はアミノ酸残基323とアミノ酸残基324との間、又はアミノ酸残基360とアミノ酸残基261との間、アミノ酸残基245とアミノ酸残基246との間、及び/又はアミノ酸残基255とアミノ酸残基256との間、又はアミノ酸残基285とアミノ酸残基285との間、及び/又はアミノ酸残基331とアミノ酸残基332との間で切断されたもの、
MBP(配列番号20)がアミノ酸残基29とアミノ酸残基30との間、及び/又は残基70と残基71との間で切断されたもの、
である。
【0042】
したがって、本発明の方法において検出されるα-シヌクレイン(配列番号10)の断片は、そのN末端として残基39、残基53、又は残基76を含み、及び/又はそのC末端として残基53、残基72、又は残基90を含む。しかしながら、N末端が残基53である場合、C末端は残基53ではなく、かつN末端が残基76である場合、C末端は残基53でも残基72でもない。本発明の方法において検出されるタウの断片は、そのN末端として残基281又は残基306を含み、及び/又はそのC末端として残基322を含む。本発明の方法において検出されるTDP-43(配列番号17)の断片は、そのN末端として残基311を含み、及び/又はそのC末端として残基320若しくは残基334を含み、又はそのN末端として残基246を含み、及び/又はそのC末端として残基255を含む。本発明の方法において検出されるMBP(配列番号20)の断片は、そのN末端として残基30を含み、及び/又はそのC末端として残基70を含む。
【0043】
好都合には、断片は、
タウ(配列番号14)がアミノ酸残基280とアミノ酸残基281との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間で切断されたもの、
α-シヌクレイン(配列番号10)がアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間で切断されたもの、
TDP-43(配列番号17)がアミノ酸残基310とアミノ酸残基311との間、及び/又はアミノ酸残基334とアミノ酸残基335との間で切断されたもの、又は、
MBP(配列番号20)がアミノ酸残基29とアミノ酸残基30との間、及び/又は残基70と残基71との間で切断されたもの、
である。
【0044】
好都合には、工程ii)において、作用物質は、MPSのオートファジー系及び/又はエンドリソソーム系の刺激物質又は活性化物質であり、かつ工程ii)は、MPS細胞の試料を炎症性活性化物質に加えて作用物質に曝露することを含む。
【0045】
有利には、炎症性活性化物質はLPSである。
【0046】
好ましくは、コントロールMPS細胞は、方法の工程i)及び工程ii)を経た細胞であるが、但し、コントロールMPS細胞は、作用物質には曝露されていない。
【0047】
好都合には、方法は、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用に対する一連の作用物質の効果を比較し、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用に対して最大の効果を有する作用物質を特定するものである。
【0048】
有利には、方法は、神経変性及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する病態の治療において使用される作用物質をスクリーニングするものである。
【0049】
好都合には、方法は、神経変性及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する病態の診断において使用するものである。
【0050】
好ましくは、方法は、個別化医療において作用物質がヒト被験体に有効な治療であるかどうかを判定するのに使用するものであり、ここで、方法の工程i)は、ヒト被験体から得られたMPS細胞の試料をMPS細胞が生きたままとなる条件下で維持することを含み、かつ作用物質のヒト被験体に対する有効性を、工程iv)の比較結果によって判定する。
【0051】
本発明の第2の態様において、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
タウ(配列番号14)の残基306を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基246を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、又は、
MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
を含むキットが提供される。
【0052】
好ましくは、キットは、
Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、
α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、
タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、
TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、又は、
MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、
を含む。
【0053】
有利には、キットは、配列番号3に特異的な抗体、配列番号4に特異的な抗体、配列番号5に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体を含む。
【0054】
好都合には、配列番号7に特異的な抗体、配列番号8に特異的な抗体、及び配列番号9に特異的な抗体。
【0055】
有利には、キットは、配列番号3に特異的な抗体、配列番号4に特異的な抗体、及び配列番号5に特異的な抗体を含む。
【0056】
好ましくは、キットは、配列番号5に特異的な抗体、配列番号7に特異的な抗体、配列番号8に特異的な抗体、及び配列番号9に特異的な抗体を含む。
【0057】
本明細書において使用される「疾患マーカー産物」という用語は、人体内の分子の異常なレベルが病状と相関している分子を指す。幾つかの実施の形態において、疾患マーカー産物は疾患マーカーのタンパク質又はポリペプチドである。
【0058】
本明細書において使用される「単球食作用系細胞」又は「MPS細胞」という用語は、異物の食作用及び分解に関与する自然免疫細胞を指す。これらの細胞は全て骨髄系譜に属し、同様の個体発生分化過程を経て、共通のエピジェネティック修飾が生じ、発生の後期になって初めて異なるサブセットに分化する。MPS細胞としては、限定されるものではないが、単球、マクロファージ、ミクログリア、及び様々な種類の組織特異的マクロファージ(例えば、肺胞マクロファージ及び間質性肺マクロファージ)が挙げられ、これらは、例えば皮膚樹状細胞のような他の骨髄性細胞と密接に関連している。
【0059】
本明細書において使用される「中間ドメインペプチド」という用語は、神経変性及び/又はMPS機能不全、及び/又はその病理、症状、及び/又は効果に関連する、凝集に関連し、かつ触媒作用を受けにくい断片を生成するタンパク質の切断によって生成されたペプチドを指す。例えば、1つの中間ドメインペプチドは、Aβ1-42のアミノ酸残基19とアミノ酸残基20との間、及び/又はアミノ酸残基34とアミノ酸残基35との間での切断によって生成される。「中間ドメイン断片」という用語は、「中間ドメインペプチド」という用語と区別なく使用され得る。
【0060】
本明細書において使用される「MPS刺激物質」という用語は、MPSによる食作用及び/又は触媒作用を増加させる作用物質を指す。この用語には、エンドリソソーム酵素の活性を増加させる作用物質が含まれる。
【0061】
本明細書において使用される「MPS阻害物質」という用語は、MPSによる食作用及び/又は触媒作用を減少させる作用物質を指す。この用語には、エンドリソソーム酵素の活性を減少させる作用物質が含まれる。
【0062】
本明細書において使用される「炎症性活性化物質」という用語は、炎症性応答を誘導する作用物質を指す。
【0063】
本明細書において使用される「FFAR4」という用語は、「ロドプシン様」Gタンパク質共役受容体(GPCR)ファミリーのメンバーであり、長鎖脂肪酸によって選択的に活性化される遊離脂肪酸受容体を指す。FFAR4は、以前はGPR120として知られていた。その更なる詳細は、Free Fatty Acid Receptors, Springer, 2018, pp33-56(引用することにより本明細書の一部をなす)に見出し得る。
【0064】
本明細書において使用される「α7 nAChR」という用語は、5つの同一のα7サブユニットから構成されるニコチン性アセチルコリン受容体を指す。
【0065】
本明細書において使用される「アゴニスト」という用語は、受容体に結合して直接活性化する物質を指す。これには、完全なアゴニスト及び部分的なアゴニスト(すなわち、完全なアゴニストと比較して部分的な効力しか有しないアゴニスト)の両方が含まれる。
【0066】
本明細書において使用される「オメガ-3脂肪酸」という用語は、末端メチル基から3原子離れたところに二重結合が存在することによって特徴付けられるn-3多価不飽和脂肪酸を指す。
【0067】
本明細書において使用される「ポジティブモジュレーター」という用語は、標的タンパク質に対する一次リガンドの効果を間接的に増加させる物質を指す。
【0068】
本明細書において使用される「ポジティブアロステリックモジュレーター」という用語は、オルソステリック結合部位とは異なる部位に結合することにより、標的タンパク質を直接活性化することなしに、該タンパク質に対するアゴニストの効果の増加を間接的に誘導させる物質を指す。
【0069】
本明細書において使用される「その薬学的に許容可能な塩」という用語は、遊離型化合物を酸又は塩基と反応させることによって形成される塩を意味する。薬学的に許容可能な塩の例として、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、及びヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩;塩酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、及びエタンスルホン酸塩等の低級アルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩等のアリールスルホン酸塩;酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、及びマレイン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、及びリチウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、及び鉄塩等の金属塩;アンモニウム塩等の無機塩;t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジルフェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩等の有機塩を含むアミン塩;並びにグリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、及びアスパラギン酸塩等のアミノ酸塩が挙げられる。
【0070】
本明細書において使用される「医薬組成物」という用語は、意図されるヒト又は動物の被験体に対する治療目的の投与に適した医薬製剤を意味する。幾つかの実施の形態において、医薬組成物は、有効成分に加えて、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】二量体化Aβ
1-42の二次構造(非特許文献16)、Aβ
1-42(配列番号1)の一次構造、抗体が産生されたエピトープ(配列番号2~配列番号4)、及びADを引き起こすAβ
1-42における最も一般的な突然変異の位置を示す図である。
【
図2】単球において見られるAβペプチドのペプチド結合切断パターンを示す図である。四角形は、Aβ
1-42内のペプチドについてのペプチド結合切断(pbb)を示すのに対して、菱形はAPP配列全体のペプチドからのpbbである。x軸はペプチド結合の数を示し、y軸は各ペプチド結合が破断された回数を示す。ボックス内の数字は、最も頻度の高い切断部位を強調している。
【
図3】Aβ及びタウの細胞内触媒作用経路を示す図である。
【
図4】Aβ
20-x(A)、Aβ
x-34(B)、及びAβ
x-40(C)のそれぞれの分解に対するエンドリソソーム酵素阻害物質(バフィロマイシン)及びオートファゴソーム活性化物質(ラパマイシン)の効果を示す図である。
【
図5】Aβ
20-x(A)、Aβ
x-34(B)、及びAβ
x-40(C)のそれぞれの分解に対する様々なエンドリソソーム酵素阻害物質(IDE阻害物質、ネプリライシン阻害物質、及びBACE阻害物質)及びそれらの3種の組合せの効果を示す図である。
【
図6】Aβ
20-x(A)、Aβ
x-34(B)、及びAβ
x-40(C)のそれぞれの分解に対する、FFAR4アゴニスト(DHA)、α7 nAChR PAM(NS1738)、並びにFFAR4アゴニスト及びα7 nAChR PAMの組合せ(DHA+NS1738)のそれぞれの効果を示す図である。
【
図7】Aβ
20-x(A)、Aβ
x-34(B)、及びAβ
x-40(C)のそれぞれの分解に対するFFAR4アゴニスト及びα7 nAChR PAMの組合せ(DHA+NS1738)の効果と、エンドリソソーム酵素阻害物質(バフィロマイシン)及びオートファゴソーム活性化物質(ラパマイシン)の効果との比較を示す図である。
【
図8】Aβ
20-x(A)、Aβ
x-34(B)、及びAβ
x-40(C)のそれぞれの分解に対する、LPSによって誘導される炎症性活性化を背景とするFFAR4アゴニスト(DHA)、α7 nAChR PAM(NS1738)、並びにFFAR4アゴニスト及びα7 nAChR PAMの組合せ(DHA+NS1738)のそれぞれの効果を示す図である。
【
図9】実施例4のイムノアッセイにおいて使用されるAβ断片及び抗体を示す図である。
【
図10】実施例4において単球試料を用いて得られた検量線を示す図である。
【
図11】細胞内タンパク質分解及び細胞外タンパク質分解に関与する5つの異なる酵素:カテプシンB(CatB)、カテプシンD(CatD)、エンドセリン変換酵素-1(ECE-1)、インスリン分解酵素(IDE)、及びネプリライシン(NEP)によるα-シヌクレインのペプチド結合切断パターンを示す図である。x軸はペプチド結合の数を示し、y軸は各ペプチド結合が破断された回数を示す。
【
図12】
図11の拡大区画を示す図であり、
図11の予測される保存されたストレッチが実際には3つのより短い保存されたストレッチから構成されていることを示している。
【
図13】細胞内タンパク質分解及び細胞外タンパク質分解に関与する4つの異なる酵素:カテプシンB(CatB)、カテプシンD(CatD)、エンドセリン変換酵素-1(ECE-1)、及びインスリン分解酵素(IDE)によるタウのペプチド結合切断パターンを示す図である。x軸はペプチド結合の数を示し、y軸は各ペプチド結合が破断された回数を示す。
【
図14】細胞内タンパク質分解及び細胞外タンパク質分解に関与する4つの異なる酵素:カテプシンB(CatB)、カテプシンD(CatD)、エンドセリン変換酵素-1(ECE-1)、及びインスリン分解酵素(IDE)によるMBPのペプチド結合切断パターンを示す図である。x軸はペプチド結合の数を示し、y軸は各ペプチド結合が破断された回数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、Aβ1-42のアミノ酸配列である。
【0073】
配列番号2は、Aβ1-40のアミノ酸配列である。
【0074】
配列番号3は、抗体が産生されたAβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)のエピトープのアミノ酸配列である。
【0075】
配列番号4は、抗体が産生されたAβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)のエピトープのアミノ酸配列である。
【0076】
配列番号5は、抗体が産生されたAβ1-42(配列番号1)のエピトープのアミノ酸配列である。
【0077】
配列番号6は、Aβ1-42及びAβ1-40の中間ドメイン断片、すなわち、Aβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)の残基20~残基34のアミノ酸配列である。
【0078】
配列番号7は、抗体が産生されたAβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)のエピトープのアミノ酸配列である。
【0079】
配列番号8は、抗体が産生されたAβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)のエピトープのアミノ酸配列である。
【0080】
配列番号9は、Aβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)の中間ドメイン断片を検出するAβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)のエピトープのアミノ酸配列である。
【0081】
配列番号10は、α-シヌクレインのアミノ酸配列である。
【0082】
配列番号11は、α-シヌクレインの中間ドメイン断片、すなわち、α-シヌクレインの残基39~残基53のアミノ酸配列である。
【0083】
配列番号12は、α-シヌクレインの中間ドメイン断片、すなわち、α-シヌクレインの残基53~残基72のアミノ酸配列である。
【0084】
配列番号13は、α-シヌクレインの中間ドメイン断片、すなわち、α-シヌクレインの残基76~残基90のアミノ酸配列である。
【0085】
配列番号14は、タウのアミノ酸配列である。
【0086】
配列番号15は、タウの中間ドメイン断片、すなわち、タウの残基306~残基322のアミノ酸配列である。
【0087】
配列番号16は、タウの中間ドメイン断片、すなわち、タウの残基281~残基322のアミノ酸配列である。
【0088】
配列番号17は、TDP-43のアミノ酸配列である。
【0089】
配列番号18は、TDP-43の中間ドメイン断片、すなわち、TDP-43の残基311~残基334のアミノ酸配列である。
【0090】
配列番号19は、TDP-43の中間ドメイン断片、すなわち、TDP-43の残基246~残基255のアミノ酸配列である。
【0091】
配列番号20は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)のアミノ酸配列である。
【0092】
配列番号21は、MBPの中間ドメイン断片、すなわち、残基30~残基70のアミノ酸配列である。
【0093】
詳細な説明
本発明がもたらされるのは、目下、驚くべきことに、Aβ
1-42の残基20~残基34(配列番号5)等のいわゆる「中間ドメイン断片」に対応するAβ
1-42(配列番号1)の断片を、MPSの機能又は機能不全、Aβ
1-42の異化及びクリアランスの尺度として使用し、MPSの様々な点での様々な作用物質の効果を評価することができることが明らかになったからである。特に、Aβ
1-42の中間ドメイン断片は触媒作用及び分解を受けにくいことが目下明らかになった(
図2)。これらの中間ドメイン断片は毒性を保持しており、かつアルツハイマー病(AD、
図1)を引き起こす既知の家族性突然変異と一致するため、これらの断片の触媒作用及びクリアランスを測定及び監視して、MPSの機能又は機能不全を監視し、MPSのAβの触媒作用に対する様々な作用物質の効果を評価するのに有用である。神経変性及びMPS機能不全に関連する他のタンパク質の中間ドメイン断片(この中間ドメイン断片は凝集及び/又は毒性に関連する)は、触媒作用及びクリアランスを受けにくいことも判明した。したがって、これらの中間ドメイン断片を、MPSの機能又は機能不全、タンパク質の異化及びクリアランスの尺度として使用し、MPSの様々な点での様々な作用物質の効果を評価することもできると予想される。
【0094】
さらに、ADに関連する炎症性活性化とMPSの機能との関係だけでなく、様々な作用物質が炎症性活性化を背景とするMPSを調節する能力も評価することができる。特に、様々な作用物質がMPS炎症性活性化及びAβ1-42異化の両方をどのように変化させるかを評価することが目下可能である。
【0095】
また、驚くべきことに、ヒト被験体から得られた生きたMPS細胞をMPS機能及び炎症性活性化の評価において使用することができ、これがAD治療用の個別化医療の開発に有益であることも判明した。特に、ヒト被験体から得られたMPS細胞はin vivoで存在したのと同じMPS機能不全を保持している。それというのも、これらは遺伝的変化及びエピジェネティックな変化によって引き起こされるからである。したがって、ヒト被験体からの生きたMPS細胞をそのヒト被験体のMPSのモデルとして使用することができ、そのヒト被験体を治療する様々な作用物質の効力を評価して、その被験体に対して最も有効な治療の選択を可能にすることができる。
【0096】
上記で論じたように、同様にMPS機能不全を示すAD以外の神経変性疾患及び炎症性活性化を伴う疾患に関連する疾患マーカー産物及びその断片に関しても、MPSの同様の評価を行うことができると考えられる。特に、MPSによる異化によって産生されるこのような他の疾患マーカー産物の断片は、Aβ1-42中間ドメイン断片と同様に、毒性を保持し、かつ疾患に影響を与える可能性が高い。
【0097】
方法
一般的に、方法は、神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の単球食細胞系(MPS)細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を判定するex vivoの方法である。方法は、
i)MPS細胞の試料をMPS細胞が生きたままとなる条件下で維持する工程と、
ii)MPS細胞の試料を作用物質及び疾患マーカー産物に曝露して、MPS細胞による疾患マーカー産物の食作用を可能にする工程と、
iii)MPS細胞の試料における疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出する工程と、
iv)疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量と、作用物質の不存在下でのコントロールMPS細胞において測定された同じ疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量とを比較する工程と、
を含む。
【0098】
疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片のMPS細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を、工程iv)の比較結果によって判定する。
【0099】
幾つかの実施形態において、工程ii)の部分工程(すなわち、MPS細胞の試料を作用物質に曝露する部分工程、及びMPS細胞の試料を疾患マーカー産物に曝露する部分工程)を同時に行う。他の実施形態において、MPS細胞の試料を作用物質に曝露する部分工程を行った後に、MPS細胞の試料を疾患マーカー産物に曝露する。更なる実施形態において、MPS細胞の試料を疾患マーカー産物に曝露した後にMPS細胞の試料を作用物質に曝露する部分工程を行う。
【0100】
MPS細胞
MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞は、独立して、細胞バンク又はヒト被験体から得られたものであってもよい。実施例5に示されるように、本発明の方法を使用して、ヒト被験体から得られたMPS細胞における疾患マーカー産物の断片を確実に検出することができる。ヒトドナーから得られる場合に、MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞は、独立して、血液試料又はCSF試料から分離されたものであってもよい。好ましくは、MPS細胞の試料は血液試料から得られる。好ましくは、MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞は同じ供給源から得られたものであり、例えば、どちらも同じヒト被験体からの血液試料又はCSF試料から得られたものである。したがって、幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞はどちらも、ヒト被験体からの血液試料から得られたものである。特に、血液試料はCSF試料よりも収集が容易であり、収集するのにより侵襲性が低い。
【0101】
血液試料及びCSF試料からMPS細胞を分離する方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、フローサイトメトリー、磁気抽出、密度勾配遠心分離、ビーズ分離、「RosetteSep」、プラスチックへの付着、又は抗体の使用によるものである。
【0102】
MPS細胞の試料がヒト被験体から得られる場合、ヒト被験体は健康であっても、又は神経変性疾患及び/又は炎症性活性化を患っているか、又はそれを患っている疑いがあってもよい。幾つかの実施形態において、ヒト被験体は、AD、パーキンソン病(PD)、多発性硬化症、前側頭型認知症、又は筋萎縮性側索硬化症を患っている疑いがあっても、又はそれらを患っていると診断されていてもよい。
【0103】
細胞型
MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞は、独立して、脳MPS細胞又は末梢MPS細胞であってもよい。幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞は、独立して、マクロファージ、単球、又はミクログリア細胞である。好ましくは、MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞は、独立して、単球である。MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞は同じ型であっても、又は異なる型であってもよいが、好ましい実施形態において、MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞はどちらも単球である。
【0104】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を分化させる工程を含む。幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を分化させる工程を行った後に、細胞を疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片と、適宜、作用物質とに曝露する。MPS細胞がヒト被験体から得られたものである実施形態において、ヒト被験体から得られた試料からのMPS細胞を分離した後に、MPS細胞を分化させる工程を行ってから、細胞を疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片と、適宜、作用物質とに曝露する。
【0105】
幾つかの実施形態において、細胞バンク又はヒト被験体から得られたヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)を、ミクログリア、単球、又はマクロファージ等のMPS細胞に分化させる。ヒト被験体から得られたhiPSCは、好ましくは、ヒト被験体から得られた線維芽細胞に由来する。例えば、hiPSCをミクログリアに分化させることができる。代替的には、hiSPCを単球に分化させ、任意に更にマクロファージに分化させることができる。hiPSCを生成する方法、及びhiPSCをMPS細胞に分化させる方法は既知であり、いずれも本発明の方法において使用することができる。
【0106】
幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞は、独立して単球であり、本発明の方法は、単球をマクロファージに分化させる工程を含む。単球は、上記で論じたようにhiPSCに由来するものであってもよく、又は細胞バンク若しくはヒト被験体から直接得られたものであってもよい。単球をマクロファージに分化させる当該分野において知られるあらゆる方法を使用することができる。
【0107】
MPS細胞が生きたままとなる条件下でのMPS細胞の維持
MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞を、MPS細胞を生きた状態に保つのに適切な培地に播種する。このような適切な培地は当該技術分野において知られており、例えば、RPMI 1640又はイスコフ改変ダルベッコ培地(IMBM)であり得る。細胞を成長させる必要はないが、MPSの機能及び細胞の任意の作用物質への曝露の効果を効果的に評価することができるように、細胞が生きたままとなることが必要とされる。さらに、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞がヒト被験体から得られたものである場合、in vivoでヒト被験体のMPS細胞に影響を与えるあらゆる遺伝的変化又はエピジェネティックな変化は、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞においてin vitroで維持されるため、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞はヒト被験体のMPSのモデルを提供する。
【0108】
方法がMPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を分化させる工程を含む場合、この分化工程を行った後に、それぞれのMPS細胞を疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片と、適宜、作用物質とに曝露する工程を行うことができる。言い換えると、MPS細胞を分化させる工程を行った後に、方法の工程ii)を行うことができる。幾つかの実施形態において、細胞を分化させる工程は、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を生きたままとなる条件下で維持する工程(方法の工程i))中に行われる。したがって、幾つかの実施形態において、方法の工程i)は、単球であるMPS細胞の試料をマクロファージに分化させることと、MPS細胞の試料をMPS細胞が生きたままとなる条件下で維持することとを含む。したがって、MPS細胞を生きたままとなる条件下で維持する工程は、未分化の細胞(すなわち、単球)及び分化した細胞(たとえば、マクロファージ)の両方に適用される。
【0109】
幾つかの実施形態において、単球であるMPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞をマクロファージに分化させる工程は、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を12-O-テトラデカノイルホルボール13-アセテート(TPA)又はマクロファージコロニー刺激物質(MCSF)に曝露した後に、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片と、適宜、作用物質とに曝露することを含む。好ましくは、単球がhiPSC由来の単球である場合、単球をMCSFに曝露して、これらをマクロファージに分化させる。幾つかの実施形態において、細胞をTPAに曝露した0時間~14時間後に、これらを疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片と、適宜、作用物質とに曝露する。細胞をTPAに曝露した0時間後に、これらを疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片と、適宜、作用物質とに曝露する場合、これは、TPAを細胞に添加した直後に、細胞を疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片と、適宜、作用物質とに曝露する工程を行うことを意味する。
【0110】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を培養して、細胞を成長させる工程を含む。
【0111】
MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を、最大48時間、最大36時間、最大24時間、最大12時間、最大11時間、最大10時間、最大9時間、最大8時間、最大7時間、最大6時間、最大5時間、最大4時間、最大3時間、最大2時間、又は最大1時間生きたままにすることができるか、又は培養することができる。幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を、最低でも30分間、又は最低でも1時間生きたままにすることができるか、又は培養することができる。幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、又は10時間、好ましくは6時間生きたままにすることができるか、又は培養することができる。幾つかの実施形態において、細胞を得た直後に、MPS細胞の試料を作用物質及び疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に曝露し、コントロールMPS細胞を疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に曝露する。
【0112】
MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を凍結させ、引き続き融解させた後に、細胞を生きたままとなる条件下で維持することができる。
【0113】
作用物質及び疾患マーカー産物への曝露
MPS細胞の試料を作用物質及び疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に曝露する。幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料を作用物質に曝露した後に、これを疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に曝露する。
【0114】
コントロールMPS細胞は、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に曝露されるが、作用物質には曝露されない。
【0115】
MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞の曝露は、好ましくは、細胞が生き続ける条件下で行われる。
【0116】
幾つかの実施形態において、方法は、適宜、作用物質及び/又は疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に曝露している間にMPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を培養する工程を含む。
【0117】
MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に1時間~4時間、好ましくは2時間曝露する。
【0118】
MPS細胞の試料を、作用物質に1時間~16時間、好ましくは4時間曝露する。
【0119】
MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に10ng/ml~1000ng/ml、10ng/ml~750ng/ml、50ng/ml~750ng/ml、50ng/ml~600ng/ml、50ng/ml~500ng/ml、100ng/ml~500ng/ml、100ng/ml~250ng/ml、100ng/ml~200ng/ml、又は100ng/ml~150ng/mlの濃度で曝露することができる。幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片は100ng/ml又は500ng/mlの濃度である。幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の濃度は100ng/mlである。2つ以上の疾患マーカー産物及び/又はそれらの少なくとも1つの断片が使用される場合(例えば、疾患マーカー産物及び/又はその1つの断片、又は疾患マーカー産物の2つの断片)、それぞれは上記の濃度であってもよい。
【0120】
MPS細胞の試料を、作用物質に50nM~200μM、50nM~150μM、50nM~100μM、100nM~100μM、200nM~100μM、100nM~1μM、又は200nm~1μMの濃度で曝露することができる。幾つかの実施形態において、作用物質は100nM、200nM、1μM、10μM、又は100μMの濃度である。
【0121】
MPS細胞の試料を、作用物質に50ng/ml~200ng/ml、50ng/ml~150ng/ml、75ng/ml~150ng/ml、又は75ng/ml~100ng/mlの濃度で曝露することができる。幾つかの実施形態において、作用物質は50ng/ml、100ng/ml、又は150ng/mlの濃度である。
【0122】
疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の検出
MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞における細胞内疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の量を検出する工程を、当該技術分野において知られるあらゆる技術を使用して実施することができる。例えば、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片を検出する工程は、イムノアッセイ、質量分析技術、ウェスタンブロット等の半定量的技術、顕微鏡法、フローサイトメトリー、又はELISA技術を使用することができる。MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を、作用物質及び/又は疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に曝露している間に細胞を生きた状態に保つ条件下で維持するが、細胞内疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の量を検出する工程は、典型的には、細胞の溶解を必要とする。
【0123】
疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片を検出する工程は、疾患マーカー産物及び/又はその断片のあらゆる部分を検出することができる。幾つかの実施形態において、検出は、疾患マーカー産物及び/又はその断片の1つの末端、例えば、タンパク質又はペプチドである疾患マーカー産物及び/又はその断片のN末端又はC末端を検出することを含む。
【0124】
幾つかの実施形態において、方法は、疾患マーカー産物の少なくとも1つの断片を検出することを含み得る。幾つかの実施形態において、方法は、疾患マーカー産物の2つ以上の断片を検出することを含む。好ましくは、方法は、疾患マーカー産物の2つ、より好ましくは3つの断片を検出することを含む。
【0125】
疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片を検出する工程は、当該技術分野において知られるあらゆる適切な検出技術を使用することができる。幾つかの実施形態において、細胞内疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片を検出する工程は抗体検出を使用する。
【0126】
本発明の方法は、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を洗浄する工程と、細胞溶解物を生成する工程との後に、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出する工程を含み得る。方法は、追加的に又は代替的に、溶解物を、例えば-80℃で凍結させる工程の後に、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出する工程を含む。溶解物が凍結された後に検出工程を行う場合、溶解物を解凍した後に、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出する工程を行う。
【0127】
作用物質
MPS細胞の試料が曝露される作用物質は、既知の又は疑いのあるMPSモジュレーター(例えば、刺激物質又は阻害物質)又は炎症性活性化物質であり得る。MPSモジュレーターは、MPSのオートファジー系及び/又はエンドリソソーム系を調節する。幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料が曝露される作用物質は、作用物質又はその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物である。
【0128】
幾つかの実施形態において、MPSモジュレーターは、ラパマイシン、ラパマイシン類似体(いわゆる「ラパログ」)、FFAR4アゴニスト、α7 nAChRアゴニスト若しくはポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)、バフィロマイシン、IDE阻害物質、ネプリライシン阻害物質若しくはBACE阻害物質、又はそれらの2つ以上の組合せである。
【0129】
幾つかの実施形態において、MPSモジュレーターはMPS刺激物質である。幾つかの実施形態において、MPS刺激物質は、ラパマイシン、ラパマイシン類似体(いわゆる「ラパログ」)、FFAR4アゴニスト若しくはα7 nAChRアゴニスト若しくはポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)、又はそれらの2つ以上の組合せである。幾つかの実施形態において、作用物質は、FFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト又はPAMの組合せである。幾つかの実施形態において、作用物質は、ラパマイシン、DHA等のPUFA、NS1738、又はDHA及びNS1738の組合せである。特に、ラパマイシンはマクロオートファジーを強化することが知られており(Spilman et al, 2010、非特許文献17)、
図4は、ラパマイシンがAβ断片のAβ
x-34のクリアランスを増加させることを示している。さらに、DHAはAβ
1-42の食作用及び分解を増加させることが明らかになっている(特許文献1)。
図6は、MPS細胞をDHA単独に曝露すると、Aβ断片のAβ
x-34の量が減少し、DHAをα7 nAChR PAM NS1738と組み合わせて投与すると、Aβ断片のAβ
20-x、Aβ
x-34、及びAβ
x-40の3つ全ての量が大幅に減少することを示している。さらに、α7 nAChR PAM NS1738単独で処理すると、Aβ断片のAβ
x-34の量が減少する。したがって、ラパマイシン、DHA、及び/又はNS1738を、MPS機能を評価する、特に特定のヒト被験体のMPS機能及び様々な治療に対するヒト被験体のMPS機能の調節を評価する作用物質として使用することができる。さらに、
図8は、LPSによって誘導される炎症性活性化の存在下で、DHA及びNS1738が3つのAβ断片のAβ
20-x、Aβ
x-34、及びAβ
x-40のレベルに影響を及ぼし続けるため、本発明の方法を使用して、炎症性活性化を背景とするMPS機能に対する作用物質の効果を評価することができることを示している。
【0130】
幾つかの実施形態において、MPSモジュレーターはMPS阻害物質である。幾つかの実施形態において、MPS阻害物質は、バフィロマイシン、IDE阻害物質、ネプリライシン阻害物質若しくはBACE阻害物質、又はそれらの2つ以上の組合せである。幾つかの実施形態において、MPS阻害物質は、IDE阻害物質、ネプリライシン阻害物質、及びBACE阻害物質の組合せである。特に、
図4及び
図5は、これらのMPS阻害物質がAβ断片のAβ
20-x及びAβ
x-40の量を増加させること、並びに様々な阻害物質が様々なAβ断片のレベルに影響を与えることを示している。したがって、MPS阻害物質を使用して、MPS機能をその様々な点で評価することができる。
【0131】
代替的に、作用物質は炎症性活性化物質であり得る。幾つかの実施形態において、炎症性活性化物質は、リポ多糖(LPS)、TPA、又はビグリカン、ヒアルロナン、ヘパラン硫酸等の損傷関連分子パターン(DAMP)、Aβ1-42、Aβ1-40、又はAβ1-42若しくはAβ1-40の断片である。特に、Aβは炎症誘発性機能を調節し、炎症誘発性サイトカインであるMCP-1/JEがAβに応答して放出されることが明らかになっている(Meda et al., 1996)。幾つかの実施形態において、作用物質は、Aβ1-42、Aβ1-40、又はAβ1-42若しくはAβ1-40の断片であり、好ましくはAβ1-42又はAβ1-40である。これらの実施形態において、疾患マーカー産物は、以下に記載されるAβ1-42、Aβ1-40、又はAβ1-42若しくはAβ1-40のあらゆる断片のいずれかであり得る。好ましくは、炎症性活性化物質はLPSである。
【0132】
幾つかの実施形態において、作用物質はMPS刺激物質又はMPS阻害物質であり、MPS細胞の試料を作用物質に曝露する工程は、MPS細胞の試料を炎症性活性化物質に曝露することを更に含む。幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料を、MPS刺激物質又はMPS阻害物質、及び炎症性活性化物質に曝露し、コントロールMPS細胞を、同じMPS刺激物質又はMPS阻害物質に曝露するが、炎症性活性化物質には曝露しない。幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料を、MPS刺激物質又はMPS阻害物質、及び炎症性活性化物質に曝露し、コントロールMPS細胞を、同じ炎症性活性化物質に曝露するが、MPS刺激物質又はMPS阻害物質には曝露しない。幾つかの実施形態において、MPS細胞の試料を、MPS刺激物質又はMPS阻害物質、及び炎症性活性化物質に曝露し、コントロールMPS細胞を、MPS刺激物質、MPS阻害物質、及び炎症性活性化物質のいずれにも曝露しない。
図8に示されるように、治療的介入を、炎症性活性化の文脈におけるMPSに対するそれらの効果について評価することができる。これは、MPS機能、及び炎症性背景があるMPS機能に対する候補となる治療的介入等の作用物質の効果を評価することができるという利点をもたらす。これにより、in vivoのMPS機能のより正確なモデルが提供される。さらに、本発明の方法は、神経変性病態以外の、炎症性活性化及びMPS機能不全に関連する病態を、MPSによるクリアランスから生じる関連する疾患マーカー産物の断片を検出することによって研究することができることを意味する。このような炎症性病態に対する候補となる介入のMPS機能に対する効果を評価することもできる。
【0133】
幾つかの実施形態において、方法は、同じ供給源からのMPS細胞の試料を一連の作用物質に曝露することと、MPS機能に対する各作用物質の効果を比較することとを含む。これは、MPS細胞の試料を多数の部分試料に分けることを含み得る。したがって、幾つかの実施形態において、方法は、MPS細胞が生きたままとなる条件下でMPS細胞の2つ以上の試料を維持することと、MPS細胞の各試料を同じ疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片に曝露することと、MPS細胞の各試料における疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出することと、MPS細胞の各試料を様々な作用物質に曝露することと、MPS細胞の各試料における疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を互いに比較するだけでなく、一切の作用物質の不存在下でのコントロールMPS細胞とも比較することとを含む。したがって、本発明の方法は、一連の作用物質の中でどの作用物質がMPS機能に対して最も大きな効果(すなわち、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用)を有するか、又はMPS機能を所望のように変更するかを特定するためのものであり得る。
【0134】
MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞の比較
MPS細胞の試料において検出された細胞内疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の量を、コントロールMPS細胞において検出された細胞内疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の量と比較する。2つの量の差は、MPS細胞の試料に投与された作用物質のMPSに対する効果、及び疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用を示すことから、それによりMPSの機能性の指標が提供される。検出された断片の種類によって、MPSの機能性、詳細には、神経変性及び/又は炎症性活性化によって影響が与えられるMPSの部分の指標も提供され得る。したがって、検出された疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の量、並びに疾患マーカー産物の断片の種類は、MPS細胞の試料が曝露された作用物質の効果を示す。特に、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の量の差は、MPS細胞の試料が曝露された作用物質によって影響が与えられる特定のエンドリソソーム酵素の指標となる。さらに、方法が、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を炎症性活性化物質に曝露する工程を含む場合、細胞内疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の量の差は、この作用物質が炎症性活性化とどのように相互作用してMPSに影響を与えるかを示すこともできる。
【0135】
疾患マーカー産物及びその断片
疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片は、神経変性及び/又は炎症性活性化に関連している。幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物及び関連する神経変性及び/又は炎症性活性化は、MPS機能不全、及び疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の異常なクリアランスと関連している。好ましくは、神経変性は炎症性活性化と関連している。幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片は、炎症性病態若しくは炎症性疾患、自己免疫疾患、又はRNAウイルス感染症等の感染性疾患に関連している。幾つかの実施形態において、神経変性及び/又は炎症性活性化、及び妥当な関連する疾患マーカー産物は、以下のうちの1つである:
AD:Aβ1-42、Aβ1-40、タウタンパク質、又はα-シヌクレイン、
アミロイド血管症:Aβ1-42、Aβ1-40、基底層タンパク質、脂質、及びリポタンパク質、
PD:ユビキチン、タウタンパク質、又はα-シヌクレイン、
多発性硬化症:ミエリン塩基性タンパク質、
前頭側頭型認知症:タウタンパク質又はTDP-43、
筋萎縮性側索硬化症:タウタンパク質又はTDP-43、
レビー小体型認知症:α-シヌクレイン、
血管性認知症(アミロイド血管症、アテローム性動脈硬化症、及び動脈硬化症)を含む炎症成分を伴う血管変性疾患:基底層タンパク質、脂質、及びリポタンパク質、
多系統萎縮症:α-シヌクレイン、
進行性核上性麻痺:タウタンパク質、
RNAウイルス感染症:カプシドタンパク質。
【0136】
幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物及びその少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物の1つ以上の断片、例えば、2つの断片又は3つの断片を検出する。2つ以上の断片を検出する場合、2つ以上の断片は、重複するアミノ酸のストレッチを含み得る(すなわち、2つ以上の断片は、断片に共通のアミノ酸のストレッチを含む)。代替的には、2つ以上の断片を検出する場合、2つ以上の断片は、2つ以上の断片間で重複しないアミノ酸のストレッチを含み得る(すなわち、2つ以上の断片は、共通のアミノ酸のストレッチを含まない)。これは、MPS機能及び異化の様々な点に対する作用物質の効果を評価するのに有利である。
【0137】
幾つかの実施形態において、2つ以上の異なる疾患マーカー産物を検出する。幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物及び異なる疾患マーカー産物の少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、異なる疾患マーカー産物の2つ以上の断片を検出する。疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片のそれぞれを上記リストから選択することができる。これらの実施形態において、MPS細胞の試料及び/又はコントロールMPS細胞を、単一の多重化試験又は部分試料に対する別個の試験のいずれかにおいて2つ以上の異なる疾患マーカー産物及び/又はそれらの断片に曝露し、細胞内量を比較する工程(すなわち、工程iv)は、MPS細胞の試料における各疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量と、コントロールMPS細胞における同じ又は対応する疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量とを比較することを含む。
【0138】
幾つかの実施形態において、適宜、疾患マーカー産物及び/又はその断片のそれぞれに、MPS細胞の別個の試料を使用する。幾つかの実施形態において、適宜、疾患マーカー産物(複数の場合もある)及び/又はその各断片の検出を多重化して、同時の検出を可能にする。
【0139】
Aβ
幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)、好ましくはAβ1-40(配列番号2)である。特に、実施例は、Aβ1-40(配列番号2)の幾つかの様々な断片を検出することができ、そのクリアランスに対する様々な作用物質の効果を評価することができることを示している。したがって、これらの実施形態において、MPS細胞の試料が、神経変性疾患を患っていることが疑われるヒト被験体、又は神経変性疾患を患っていると診断されたヒト被験体から得られる場合、神経変性疾患はADである。特に、上記で論じたように、Aβ1-42及びAβ1-40のより短い断片は毒性を保持しているため、これらは測定可能なAβの触媒作用における岐路となる。Aβ1-42及びAβ1-40は、例えば残基18と残基19との間、残基19と残基20との間、残基20と残基21との間、残基33と残基34との間、及び/又は残基34と残基35との間の切断によって、中間ドメイン断片に異化されることが知られているため(非特許文献15、Henjum et al., 2020)、中間ドメイン断片のN末端及び/又はC末端の検出によって触媒作用産物を検出することが可能である。これらの中間ドメイン断片はMPSによる触媒作用の影響を受けにくいため、これらの中間ドメイン断片はMPS細胞において細胞内に保持され、したがって検出可能であることが予想される。したがって、上記で論じたように、AβのクリアランスにおけるMPSの機能及び効力だけでなく、MPSに対する様々な作用物質の効果及び炎症との相互作用も評価することが可能である。
【0140】
したがって、幾つかの実施形態において、方法は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の少なくとも1つの断片を検出することを含む。幾つかの実施形態において、方法は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の2つ以上の断片を検出することを含む。幾つかの実施形態において、方法は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の2つの断片、好ましくは3つの断片を検出することを含む。
【0141】
方法は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)がそれらのアミノ酸残基19とアミノ酸残基20との間、及び/又はそれらのアミノ酸残基34とアミノ酸残基35との間で切断されたものであるAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の少なくとも1つの断片を検出することを含み得る。
【0142】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの断片は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)がそれらのアミノ酸残基19とアミノ酸残基20との間で切断されたものである。これらの断片は、本明細書においては「Aβ20-x」と呼称される。これらの実施形態において、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域を検出することによって、好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基29を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号6のN末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、残基21を含む上述の領域のいずれか1つを検出するか、又は配列番号6のN末端を検出し、更にAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34又は残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸残基を含む断片の領域、好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40を含む断片の領域を検出し、より好ましくは配列番号9を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域を検出し、かつAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号3のN末端及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40を含む断片の領域を検出し、好ましくは配列番号6のN末端を検出し、かつ配列番号9を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号6のN末端に特異的な抗体を使用して、好ましくは配列番号3に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、好ましくは配列番号9に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号6のN末端に特異的な抗体、及び配列番号9に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。
【0143】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの断片は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)がそれらのアミノ酸残基34とアミノ酸残基35との間で切断されたものである。これらの断片は、本明細書においては「Aβx-34」と呼称される。これらの実施形態において、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基31~残基34を含む断片の領域を検出することによって、好ましくは配列番号6のC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、残基34を含む上述の領域のいずれか1つ又は配列番号6のC末端を検出し、更にAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域、より好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号6のC末端を検出し、かつAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域を検出することによって、より好ましくは配列番号6のC末端を検出し、かつAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号6のC末端を検出し、かつ配列番号7を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号6のC末端に特異的な抗体を使用して、好ましくは配列番号4に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な抗体、好ましくは配列番号7に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号6のC末端に特異的な抗体、及び配列番号7に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。
【0144】
幾つかの実施形態において、少なくとも1つの断片は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)がアミノ酸残基19とアミノ酸残基20との間、及びアミノ酸残基34とアミノ酸残基35との間で切断されたものであるため、少なくとも1つの断片は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。これらの実施形態において、配列番号6のN末端又はC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号6のN末端及びC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号6のN末端又はC末端に特異的な抗体、好ましくは配列番号3又は配列番号4に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号6のN末端に特異的な抗体、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片にそのC末端で結合する抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号6のN末端に特異的な抗体を使用し、かつ配列番号6のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号3に特異的な抗体、及び配列番号4に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。
【0145】
幾つかの実施形態において、方法は、配列番号1又は配列番号2のN末端を検出することによってAβ1-42(配列番号1)若しくはAβ1-40(配列番号2)又はそれらの少なくとも1つの断片を検出する工程を含む。幾つかの実施形態において、方法は、配列番号1又は配列番号2のC末端を検出することによってAβ1-42(配列番号1)若しくはAβ1-40(配列番号2)又はそれらの少なくとも1つの断片を検出する工程を含む。これらのペプチド及びそれらの断片は、本明細書においては「Aβx-40」と呼称される。これらの実施形態において、検出は、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによるものであり得る。幾つかの実施形態において、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸の領域を検出することによって、好ましくは配列番号2のC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、Aβ1-42(配列番号1)の残基39~残基42、残基34~残基40、若しくは残基34~残基41を含む断片の領域、又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、残基40を含む上述の領域のいずれか1つ又は配列番号2のC末端を検出し、更にAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域、より好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号2のC末端を検出し、かつAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域、より好ましくは配列番号2のC末端及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、Aβ1-42(配列番号1)の残基39~残基42、残基34~残基40、若しくは残基34~残基41を含む断片の領域、又はAβ1-40(配列番号2)の残基34~残基40を含む断片の領域を検出し、かつAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、上述の領域のいずれか1つ又は配列番号1若しくは配列番号2のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号5に特異的な抗体、配列番号8に特異的な抗体、又は配列番号9に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号9に特異的な抗体は、配列番号8及び/又は配列番号5にも特異的である。幾つかの実施形態において、配列番号8に特異的な抗体は、配列番号5にも特異的であり、その逆も同様である。幾つかの実施形態において、配列番号7に特異的な抗体、及び配列番号5、配列番号8、又は配列番号9に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。
【0146】
幾つかの実施形態において、方法は、Aβ20-x、Aβx-34、及びAβx-40を検出する工程を含む。他の実施形態において、方法は、Aβ20-x及びAβx-34、Aβ20-x及びAβx-40、又はAβx-34及びAβx-40を検出する工程を含む。これらの断片のそれぞれを、上記の方法のいずれかを使用して検出することができる。幾つかの実施形態において、これらの断片のそれぞれを、上記のように、それぞれのN末端又はC末端に特異的な抗体を使用して検出する。幾つかの実施形態において、これらの断片のそれぞれを、配列番号3又は配列番号7に特異的な抗体、配列番号4に特異的な抗体、及び配列番号5、配列番号8、又は配列番号9に特異的な抗体を使用して検出する。これは、Aβの様々な断片のクリアランスにおけるMPSの効力を評価し、かつ様々なエンドリソソーム酵素が作用物質によってどのように影響を受けるかを評価するのに有益である。
【0147】
抗体を使用して疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片を検出する方法において、Aβ1-40(配列番号2)又はAβ1-42(配列番号1)に特異的なより包括的な抗体を、検出方法の一部として使用することができる。
【0148】
幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物は、α-シヌクレイン(配列番号10)、タウ(配列番号14)、TDP-43(配列番号17)、又はMBP(配列番号19)である。特に、α-シヌクレイン、タウ、及びMBPのそれぞれには、エンドリソソーム酵素による切断の影響を受けにくいと予想される領域があることが判明しており(
図11~
図14)、これらの領域は、神経変性疾患及びMPS機能不全における凝集及び/又は毒性において重要であると以前に考えられた領域と関連している(上記で論じた)。したがって、目下、これらの中間ドメイン断片はMPS細胞において細胞内に保持され、検出することができるため、これらの断片はMPSの機能又は機能不全、並びにMPS及びタンパク質の異化及びクリアランスに対する様々な作用物質の効果を評価するのに有用となることが予想される。さらに、TDP-43の幾つかの領域が凝集に重要であることが知られており(非特許文献36、非特許文献37)、Aβ
1-42、Aβ
1-40、α-シヌクレイン、タウ、及びMBPの分解されにくい断片と、凝集及び/又は毒性に関連する断片との関連性を考慮すると、TDP-43のこれらの領域も分解されにくいことが目下予想される。したがって、TDP-43のこれらの中間ドメイン断片を検出して、MPSの機能又は機能不全、並びにMPS及びタンパク質の異化及びクリアランスに対する様々な作用物質の効果を監視及び測定することができると予想される。
【0149】
α-シヌクレイン
幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物はα-シヌクレイン(配列番号10)であり、方法は、α-シヌクレイン(配列番号10)又はその少なくとも1つの断片を検出することを含む。幾つかの実施形態において、検出は、α-シヌクレイン(配列番号10)がアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間で切断されたものの検出であり得る。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基39~残基42を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号11のN末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基50~残基53を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号11のC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む、好ましくは残基39~残基42を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出し、更にα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基50~残基53を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号11のN末端を検出し、かつα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基50~残基53を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号11のC末端を検出し、かつα-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基39~残基42を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号11のN末端及びC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。上述の領域のいずれか又はC末端若しくはN末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む、好ましくは残基39~残基42を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号11のN末端に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基50~残基53を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号11のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号11のN末端に特異的な抗体を使用し、かつα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基50~残基53を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号11のC末端に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む、好ましくは残基39~残基42を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号11のN末端に特異的な抗体、及び配列番号11のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。特に、
図11及び
図12は、残基39と残基53との間には、エンドリソソーム酵素による切断の影響を受けにくい領域があることを示しており、こうして、α-シヌクレインのこの断片は分解されにくく、MPS細胞において細胞内で検出される可能性がより高いことが示される。したがって、MPS細胞におけるこの断片のレベルを検出及び測定することによって、MPSの機能又は機能不全を評価することができる。
【0150】
幾つかの実施形態において、方法は、α-シヌクレイン(配列番号10)がアミノ酸残基52とアミノ酸残基53との間、及び/又は残基72と残基73との間で切断されたものを検出することを含む。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53~残基56を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号12のN末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基69~残基72を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号12のC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む、好ましくは残基53~残基56を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出し、更にα-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基69~残基72を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号12のN末端を検出し、かつα-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基69~残基72を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号12のC末端を検出し、かつα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53~残基56を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号12のN末端及びC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。上述の領域のいずれか又はC末端若しくはN末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む、好ましくは残基53~残基56を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号12のN末端に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基69~残基72を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号12のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号12のN末端に特異的な抗体を使用し、かつα-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基69~残基72を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号12のC末端に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む、好ましくは残基53~残基56を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号12のN末端に特異的な抗体、及び配列番号12のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。特に、
図11及び
図12は、残基53と残基72との間には、エンドリソソーム酵素による切断の影響を受けにくい領域があることを示しており、こうして、α-シヌクレインのこの断片は分解されにくく、MPS細胞において細胞内で検出される可能性がより高いことが示される。したがって、MPS細胞におけるこの断片のレベルを検出及び測定することによって、MPSの機能又は機能不全を評価することができる。
【0151】
幾つかの実施形態において、方法は、α-シヌクレイン(配列番号10)がアミノ酸残基75とアミノ酸残基76との間、及び/又は残基90と残基91との間で切断されたものを検出することを含む。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基76~残基79を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号13のN末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基87~残基90を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号13のC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む、好ましくは残基76~残基79を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出し、更にα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基87~残基90を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号13のN末端を検出し、かつα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基87~残基90を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号13のC末端を検出し、かつα-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基76~残基79を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号13のN末端及びC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。上述の領域のいずれか又はC末端若しくはN末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む、好ましくは残基76~残基79を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号13のN末端に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基87~残基90を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号13のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号13のN末端に特異的な抗体を使用し、かつα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基87~残基90を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号13のC末端に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む、好ましくは残基76~残基79を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号12のN末端に特異的な抗体、及び配列番号13のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。特に、
図11及び
図12は、残基76と残基90との間には、エンドリソソーム酵素による切断の影響を受けにくい領域があることを示しており、こうして、α-シヌクレインのこの断片は分解されにくく、MPS細胞において細胞内で検出される可能性がより高いことが示される。したがって、MPS細胞におけるこの断片のレベルを検出及び測定することによって、MPSの機能又は機能不全を評価することができる。
【0152】
幾つかの実施形態において、α-シヌクレイン(配列番号10)の2つ以上の断片、例えば、2つ以上のα-シヌクレイン(配列番号10)を検出する。α-シヌクレイン(配列番号10)の2つ以上の断片のそれぞれは、α-シヌクレイン(配列番号10)がアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間で切断されたもの、α-シヌクレイン(配列番号10)がアミノ酸残基52とアミノ酸残基53との間、及び/又は残基72と残基73との間で切断されたもの、及びα-シヌクレイン(配列番号10)がアミノ酸残基75とアミノ酸残基76との間、及び/又は残基90と残基91との間で切断されたもののあらゆる組合せであり得る。断片の上述の領域のいずれかと、N末端及びC末端とをいずれかの組合せで検出することによって、2つ以上の断片を検出することができる。MPS細胞におけるα-シヌクレインの2つ以上の中間ドメイン断片の量を検出及び測定することによって、MPSの機能又は機能不全をより良好に評価することができる。
【0153】
タウ
幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物はタウ(配列番号14)であり、方法は、タウ(配列番号14)又はその少なくとも1つの断片を検出することを含む。幾つかの実施形態において、検出は、タウ(配列番号14)がアミノ酸残基305とアミノ酸残基306との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間、好ましくは残基280と残基281との間、及び/又は残基322と残基323との間で切断されたものの検出であり得る。幾つかの実施形態において、タウ(配列番号14)の残基306を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはタウ(配列番号14)の残基306~残基309を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはタウ(配列番号14)の残基281~残基284を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号15又は配列番号16のN末端、好ましくは配列番号16のN末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、タウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはタウ(配列番号14)の残基319~残基322を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号15又は配列番号16のC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、タウ(配列番号14)の残基306又は残基281を含む、好ましくは残基306~残基309又は残基281~残基284を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出し、更にタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはタウ(配列番号14)の残基319~残基322を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号15又は配列番号16のN末端を検出し、かつタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはタウ(配列番号14)の残基319~残基322を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号15又は配列番号16のC末端を検出し、かつタウ(配列番号14)の残基306又は残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはタウ(配列番号14)の残基306~残基309又は残基281~残基284を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号15又は配列番号16のN末端及びC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。上述の領域のいずれか又はC末端若しくはN末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、タウ(配列番号14)の残基306若しくは残基281を含む、好ましくは残基306~残基309又は残基281~残基284を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号15若しくは配列番号16のN末端に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはタウ(配列番号14)の残基319~残基322を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号15若しくは配列番号16のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号15又は配列番号16のN末端に特異的な抗体を使用し、かつタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはタウ(配列番号14)の残基319~残基322を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号15又は配列番号16のC末端に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基306又は残基281を含む、好ましくは残基306~残基309又は残基281~残基284を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号15又は配列番号16のN末端に特異的な抗体、及び配列番号15又は配列番号16のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。特に、タウのR3領域(残基306~残基336)がタウの凝集の誘導において重要であることが以前に明らかになっており、タウの残基244~残基372により、細胞及び動物モデルにおけるタウの凝集挙動の多くが再現される(非特許文献35)。タウ(配列番号14)の残基281と残基322との間には、凝集に関連し、かつエンドリソソーム酵素による切断を受けにくい領域があることが目下判明している(
図13)。したがって、MPSの機能又は機能不全、並びにタウの異化及びクリアランスに対する作用物質の効果を、タウのこの中間ドメイン断片の異化及びクリアランスを測定及び監視することによって評価することができると予想される。
【0154】
TDP-43
幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物はTDP-43(配列番号17)であり、方法は、TDP-43(配列番号17)又はその少なくとも1つの断片を検出することを含む。幾つかの実施形態において、検出は、TDP-43(配列番号17)がアミノ酸残基310とアミノ酸残基311との間、及び/又はアミノ酸残基334とアミノ酸残基335との間で切断されたものの検出であり得る。幾つかの実施形態において、TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基311~残基314を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、TDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基331~残基334を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のN末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、TDP-43(配列番号17)の残基311を含む、好ましくは残基311~残基314を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出し、更にTDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基331~残基334を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のN末端を検出し、かつTDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基331~残基334を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のC末端を検出し、かつTDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基311~残基314を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のN末端及びC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。上述の領域のいずれか又はC末端若しくはN末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、TDP-43(配列番号17)の残基311を含む、好ましくは残基311~残基314を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号18のN末端に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基331~残基334を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号18のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のN末端に特異的な抗体を使用し、かつTDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基331~残基334を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のC末端に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基311を含む、好ましくは残基311~残基314を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のN末端に特異的な抗体、及び配列番号18のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。
【0155】
幾つかの実施形態において、検出は、TDP-43(配列番号17)がアミノ酸残基245とアミノ酸残基246との間、及び/又はアミノ酸残基255とアミノ酸残基256との間で切断されたものの検出であり得る。幾つかの実施形態において、TDP-43(配列番号17)の残基246を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基246~残基249を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、TDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基252~残基255を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号19のN末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、TDP-43(配列番号17)の残基246を含む、好ましくは残基246~残基249を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出し、更にTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基252~残基255を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のN末端を検出し、かつTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基252~残基255を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のC末端を検出し、かつTDP-43(配列番号17)の残基246を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基246~残基249を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のN末端及びC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。上述の領域のいずれか又はC末端若しくはN末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、TDP-43(配列番号17)の残基246を含む、好ましくは残基246~残基249を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号18のN末端に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基252~残基255を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号18のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のN末端に特異的な抗体を使用し、かつTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基252~残基255を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のC末端に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基246を含む、好ましくは残基246~残基249を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号18のN末端に特異的な抗体、及び配列番号18のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。
【0156】
上記で論じたように、TDP-43の領域、すなわち残基246~残基255、残基246~残基258、残基286~残基331、残基311~残基323、及び残基311~残基360は凝集しやすいことが報告されている(非特許文献36、非特許文献37)。特に、非特許文献36により、残基311~残基323、特に残基311~残基320(両端を含む)にわたるペプチドは、増加した凝集傾向を有することが示された。しかしながら、非特許文献36は、これらのペプチドの凝集をC末端で伸長したペプチドと比較しておらず、触媒作用に関しては、ペプチドの結合特性が凝集に重要である可能性がある。非特許文献37は、Cryo-EMを使用して、残基312から残基346まで延びるペプチドが緊密な結合で凝集することを示し、このペプチドのコア領域が残基312~残基334であることを明らかにした。目下、神経変性疾患及び/又は炎症性活性化における凝集及び/又は毒性、及びMPSの異常な機能に関連するタンパク質は、凝集しやすく、かつリソソーム酵素により分解されにくい中間ドメイン断片を含むことが分かっているため、TDP-43のこれらの凝集しやすい領域は、リソソーム酵素により分解されにくいことが予想される。したがって、TDP-43のこれらの中間ドメイン断片を使用して、MPSによる異化を監視及び測定し、MPSの機能又は機能不全に対する作用物質の効果を評価することができると予想される。さらに、非特許文献36及び非特許文献37の教示を考慮して、凝集に関連し、かつMPS細胞において細胞内に保持されるTDP-43の断片は、これらを使用してMPSの機能又は機能不全を測定及び監視することができるように、TDP-43の残基246~残基255及び残基311~残基334であることが予想される。
【0157】
MBP
幾つかの実施形態において、疾患マーカー産物はMBP(配列番号20)であり、方法は、MBP(配列番号20)又はその少なくとも1つの断片を検出することを含む。幾つかの実施形態において、検出は、MBP(配列番号20)がアミノ酸残基29とアミノ酸残基30との間、及び/又はアミノ酸残基70とアミノ酸残基71との間で切断されたものの検出であり得る。幾つかの実施形態において、MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはMBP(配列番号20)の残基30~残基33を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、MBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはMBP(配列番号20)の残基67~残基70を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出する。幾つかの実施形態において、配列番号21のN末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号21のC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、MBP(配列番号20)の残基30を含む、好ましくは残基30~残基33を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出し、更にMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはMBP(配列番号20)の残基67~残基70を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号21のN末端を検出し、かつMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはMBP(配列番号20)の残基67~残基70を含む領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号21のC末端を検出し、かつMBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはMBP(配列番号20)の残基30~残基33を含む断片の領域を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号21のN末端及びC末端を検出することによって、少なくとも1つの断片を検出することができる。上述の領域のいずれか又はC末端若しくはN末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、MBP(配列番号20)の残基30を含む、好ましくは残基30~残基33を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号21のN末端に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはMBP(配列番号20)の残基67~残基70を含む断片の領域に特異的な、又は配列番号21のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号21のN末端に特異的な抗体を使用し、かつMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、好ましくはMBP(配列番号20)の残基67~残基70を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号21のC末端に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基30を含む、好ましくは残基30~残基33を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。幾つかの実施形態において、配列番号21のN末端に特異的な抗体、及び配列番号21のC末端に特異的な抗体を使用して、少なくとも1つの断片を検出することができる。エンドリソソーム酵素により分解されにくいMBPの領域があることが分かっており、この領域はMBPのアミノ酸残基30とアミノ酸残基70との間(及びそれらを含む)にある(
図14)。MBPの凝集が神経変性疾患と関連していることが知られており、凝集したMBPは多発性硬化症(MS;非特許文献38)において神経毒性効果を有すると考えられている。神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する病態は、上記で論じたようにMPSの機能不全を特徴とすることが知られているので、したがって、これは今まで知られていなかったこのMBPの分解されにくい断片を測定及び監視して、MPSの機能又は機能不全を評価するのに有用である。特に、凝集、MPSの機能不全、及び神経変性疾患に関連するタンパク質断片は、エンドリソソーム酵素により分解されにくく、かつ凝集に重要なタンパク質の領域と少なくとも重複する領域を含むことが目下判明した。また、これらの分解されにくい中間ドメイン断片を測定及び監視することによって、MPSの機能又は機能不全に対する作用物質の効果を評価することも可能であると予想される。
【0158】
使用
本発明の方法は、
図8によって示されるように、炎症性活性化を背景とすることを含むMPS機能を評価及び研究するのに有用である。したがって、本発明の方法は、神経変性及び/又は炎症性活性化に関連するMPS機能不全の研究において使用される。特に、本発明の方法により、疾患マーカー産物のクリアランスに対するMPSの様々な部分の阻害又は活性化の効果を研究することが可能となる。実施例は、Aβクリアランスの正確な細胞内作用を測定することができ、それを行う方法が、提案された治療的介入の効果を測定するのに十分な感度であることを明らかにしている。これらの研究は、Aβクリアランスが「創薬可能」であり、既存の薬物及び栄養補助食品によって強い効果が示されることも明らかにしている。α-シヌクレイン、タウ、TDP-43、及びMBP等の神経変性疾患及びMPS機能不全に関連する他のタンパク質の細胞内クリアランスも同様にして測定することができると予想される。
【0159】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、新しい治療的介入を特定するものである。これらの実施形態において、疾患マーカー産物のクリアランスによって判断される、MPS機能に対する1つ以上の候補作用物質の効果を評価することができる。したがって、幾つかの実施形態において、方法は、神経変性及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する病態の治療において使用される作用物質をスクリーニングするものである。幾つかの実施形態において、方法は、アルツハイマー病、アミロイド血管症、PD、多発性硬化症、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、レビー小体型認知症、血管性認知症を含む炎症成分を伴う血管変性疾患、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、及び/又はRNAウイルス感染症の治療において使用される作用物質をスクリーニングするものである。幾つかの実施形態において、方法は、アルツハイマー病及び/又はアミロイド血管症の治療において使用される作用物質をスクリーニングするものである。
【0160】
幾つかの実施形態において、方法は、疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用に対する効果を評価することによって、MPS機能に対する一連の様々な作用物質の効果を比較するものである。幾つかの実施形態において、方法は、触媒作用に対して最も大きな効果を有する作用物質を特定するものである。
【0161】
本発明の方法を、個別化医療に使用することもできる。このような実施形態において、MPS細胞の試料及びコントロールMPS細胞は、MPS機能不全に関連する神経変性及び/又は炎症性活性化を患っていると診断された又はそれら患っていると疑われるヒト被験体から得られたものである。MPS細胞の試料とコントロールMPS細胞との間の疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量の差は、ヒト被験体の治療における試験された作用物質の効力を示す。したがって、MPS細胞の試料を生きた状態に維持して、ヒト被験体のMPS機能を維持することが特に有利である。幾つかの実施形態において、方法は、ヒト被験体からのMPS細胞の2つ以上の試料及びコントロールMPS細胞に対して一連の作用物質を試験することと、MPS細胞の2つ以上の試料及びコントロールMPS細胞において疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片を検出することによってMPS機能に対する様々な作用物質の効果を比較することと、ヒト被験体に対して最も大きな有益な効果を有する作用物質を特定することとを含む。幾つかの実施形態において、方法は、特定された作用物質をヒト被験体に投与して、神経変性及び/又は炎症性活性化を治療することを含む。
【0162】
幾つかの実施形態において、方法は、神経変性疾患及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する疾患又は病態の診断において使用するものである。幾つかの実施形態において、方法は、アルツハイマー病、アミロイド血管症、PD、多発性硬化症、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、レビー小体型認知症、血管性認知症を含む炎症成分を伴う血管変性疾患、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、及び/又はRNAウイルス感染症の診断において使用するものである。幾つかの実施形態において、方法は、アミロイド血管症の診断において使用するものである。
【0163】
幾つかの実施形態において、方法は、神経変性及び/又は炎症性活性化の遺伝的原因及びエピジェネティックな原因の研究に有用である。特に、生きた状態に維持された又は培養されたMPS細胞は、それらの起源(特定の細胞系統又はヒト被験体等)の遺伝的変化及びエピジェネティックな変化を保持する。
【0164】
キット
本発明はまた、疾患マーカー産物及び/又はその1つ以上の断片に特異的な抗体を含むキットに関する。幾つかの実施形態において、キットは2つ以上の抗体を含み、ここで、これらの抗体は疾患マーカー断片及びその少なくとも1つの断片に特異的であるか、又はこれらの抗体は疾患マーカー産物の様々な断片に特異的である。
【0165】
幾つかの実施形態において、キットは、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)及び/又はそれらの断片の上記の領域のいずれか1つ、又はそれらのN末端若しくはC末端を検出する1つ以上の抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21、残基34、又は残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24、残基31~残基34、又は残基39及び残基40を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な、好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域に特異的な抗体、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な、好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基31~残基34を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な、好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域に特異的な抗体、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な、好ましくはAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基39及び残基40を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号6のN末端に特異的な抗体、及び配列番号6のC末端に特異的な抗体、又は配列番号6のN末端に特異的な抗体、及び配列番号1若しくは配列番号2のC末端に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号6のN末端に特異的な抗体、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基39及び残基40を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、及び配列番号6のC末端に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、及びAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)のC末端に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の上述の領域、N末端、及びC末端のそれぞれに特異的な抗体、例えば、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、Aβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)又はAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体を含む。
【0166】
幾つかの実施形態において、キットは、配列番号3に対して産生された抗体、配列番号4に対して産生された抗体、及び配列番号5に対して産生された抗体、配列番号7に対して産生された抗体、配列番号8に対して産生された抗体、及び配列番号9に対して産生された抗体のうちの1つを含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号7に対して産生された抗体、及び配列番号4、配列番号5、配列番号8、又は配列番号9に対して産生された抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号7に対して産生された抗体、及び配列番号5又は配列番号8に対して産生された抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号7に対して産生された抗体、及び配列番号4に対して産生された抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号3に対して産生された抗体、及び配列番号9に対して産生された抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号2に対して産生された抗体、及び配列番号4に対して産生された抗体、配列番号2に対して産生された抗体、及び配列番号5、配列番号8、若しくは配列番号9に対して産生された抗体、又は配列番号4に対して産生された抗体、及び配列番号5、配列番号8、若しくは配列番号9に対して産生された抗体を含む。好ましくは、キットは、配列番号3に対して産生された抗体、配列番号4に対して産生された抗体、及び配列番号5に対して産生された抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号7に対して産生された抗体、及びAβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、配列番号7に対して産生された抗体、及び配列番号8に対して産生された抗体、又は配列番号9に対して産生された抗体、及び配列番号6のN末端に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号7に対して産生された抗体、配列番号8に対して産生された抗体、配列番号9に対して産生された抗体、Aβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ1-42(配列番号1)及びAβ1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、並びに配列番号6のN末端に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号3に対して産生された抗体、配列番号4に対して産生された抗体、配列番号7に対して産生された抗体、配列番号8に対して産生された抗体、及び配列番号9に対して産生された抗体を含む。
【0167】
幾つかの実施形態において、キットは、α-シヌクレイン及び/又はそれらの断片の上記の領域のいずれか1つ、又はそれらのN末端若しくはC末端を検出する1つ以上の抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39、残基53、残基72、残基76、又は残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39~残基42、残基50~残基53、残基53~残基56、残基69~残基72、残基76~残基79、又は残基87~残基90を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基39~残基42を含む断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基50~残基43を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53~残基56を含む断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基69~残基72を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基76~残基79を含む断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な、好ましくはα-シヌクレイン(配列番号10)の残基87~残基90を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号11のN末端に特異的な抗体、及び配列番号11のC末端に特異的な抗体、又は配列番号12のN末端に特異的な抗体、及び配列番号12のC末端に特異的な抗体、又は配列番号13のN末端に特異的な抗体、及び配列番号13のC末端に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、α-シヌクレイン(配列番号10)の上述の領域、N末端、及びC末端のそれぞれに特異的な抗体、例えば、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体を含む。これらの実施形態において、キットは、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の第1の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の第2の領域に特異的な抗体を含み、ここで、第1の領域は第2の領域とは異なる。
【0168】
幾つかの実施形態において、キットは、タウ(配列番号14)及び/又はそれらの断片の上記の領域のいずれか1つ、又はそれらのN末端若しくはC末端を検出する1つ以上の抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、タウ(配列番号14)の残基281、残基306、残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、タウ(配列番号14)の残基281~残基284、残基306~残基309、又は残基319~残基322を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な、好ましくはタウ(配列番号14)の残基281~残基284を含む断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な、好ましくはタウ(配列番号14)の残基319~残基322を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、タウ(配列番号14)の残基306を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な、好ましくはタウ(配列番号14)の残基306~残基309を含む断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な、好ましくはタウ(配列番号14)の残基319~残基322を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号15のN末端に特異的な抗体、及び配列番号15のC末端に特異的な抗体、又は配列番号16のN末端に特異的な抗体、及び配列番号16のC末端に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、タウ(配列番号14)の上述の領域、N末端、及びC末端のそれぞれに特異的な抗体、例えば、タウ(配列番号14)の残基218を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、タウ(配列番号14)の残基305を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体を含む。
【0169】
幾つかの実施形態において、キットは、TDP-43(配列番号17)及び/又はそれらの断片の上記の領域のいずれか1つ、又はそれらのN末端若しくはC末端を検出する1つ以上の抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、TDP-43(配列番号17)の残基246、残基255、残基311、又は残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、TDP-43(配列番号17)の残基246~残基249、残基252~残基255、残基311~残基314、又は残基331~残基334を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、TDP-43(配列番号17)の残基246を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基246~残基249を含む断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基252~残基255を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基311~残基314を含む断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な、好ましくはTDP-43(配列番号17)の残基331~残基334を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号18のN末端に特異的な抗体、及び配列番号18のC末端に特異的な抗体、又は配列番号19のN末端に特異的な抗体、及び配列番号19のC末端に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、TDP-43(配列番号17)の上述の領域、N末端、及びC末端のそれぞれに特異的な抗体、例えば、TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基246を含む少なくとも4つのアミノ酸残基を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体を含む。
【0170】
幾つかの実施形態において、キットは、MBP(配列番号20)及び/又はそれらの断片の上記の領域のいずれか1つ、又はそれらのN末端若しくはC末端を検出する1つ以上の抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、MBP(配列番号20)の残基30又は残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、MBP(配列番号20)の残基30~残基33又は残基67~残基70を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な、好ましくはMBP(配列番号20)の残基30~残基33を含む断片の領域に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な、好ましくはMBP(配列番号20)の残基67~残基70を含む断片の領域に特異的な抗体を含む。幾つかの実施形態において、キットは、配列番号21のN末端に特異的な抗体、及び配列番号21のC末端に特異的な抗体を含む。
【0171】
幾つかの実施形態において、キットは、2つ以上のタンパク質の断片を検出する抗体を含む。これらの実施形態において、キットは、上記の抗体のあらゆる組合せを含み得る。
【0172】
キットを本発明の方法において上記開示のように使用することができる。
【実施例】
【0173】
統計学(実施例1~実施例4)
様々な実験についての測定値の日間変動を調整するのに、実験の各日の基準としてベースライン条件を使用し、以下の式を使用して値を正規化した:[(バイオマーカー値/平均バイオマーカー値)/100)]。一元配置ANOVAモデルを使用して統計分析を実施した。有意な(p<0.05)オムニバス(F検定)ANOVAが示された場合、仮説に従って計画的比較を実施した。これは、参照条件と実験条件(エンドリソソーム阻害物質及びオートファゴソーム活性化物質)との間の主比較を含んでいた。したがって、図面は、各バー内に、基準条件(100%)と比較した場合の、パーセンテージ変化、及び関連する統計的有意性(p値)又はその欠如(有意ではない)を示している(すなわち、主比較)。一部の実験(
図4、
図5、及び
図7)では、仮説に従って実験条件間の追加の比較を行った。これらの比較についての群間の有意差を、関連する統計的有意性(p値)又はその欠如(有意ではない)を伴う水平バーで示す。
【0174】
実施例1
Aβの異化及び解毒、並びにそれらに対する例示的な阻害物質及び活性化物質の効果を、細胞内Aβ中間ドメインペプチド、すなわち異化産物に特異的な抗体を使用して測定した。特に、エンドリソソーム活性の阻害は、分解を減少させ、種の濃度を増加させると予想され、ここでは、V-ATPアーゼを遮断し、エンドリソソームの酸性化を阻害し、それによってエンドリソソームの酵素活性を阻害するバフィロマイシンを用いて研究した。エンドリソソーム酵素の阻害物質であるネプリライシン(Saido 2013)及びインスリン分解酵素の添加は、同様の効果をもたらすと予想されるが(非特許文献20、非特許文献1)、BACE1はAβ生成及び34’-触媒作用の両方に関与する(Vassar, Kovacs et al. 2009、Liebsch, Kulic et al. 2019)。ラパマイシンを使用したマクロオートファジーの強化もAβの異化を増加させると予想される(
図3;Spilman, Podlutskaya et al. 2010、非特許文献17)。
【0175】
抗体及び一次アッセイ
イムノアッセイを、アミロイドβタンパク質の様々なエピトープ(
図1に示す;配列番号3~配列番号5)に対する独自開発した抗体を使用して、単一分子アレイ(single molecule array)(Simoa)プラットフォーム(Quanterix、米国)上で展開した。Aβ
x-40/42アッセイは、40~42の末端に特異的なヒツジモノクローナルAB.4D7(Bioventix plc、英国)を捕捉抗体として使用し、中間ドメインエピトープ(配列番号7)に関するヒツジモノクローナルAB.2A9(Bioventix plc、英国)を検出抗体として使用した。40~42の末端に特異的な抗体は、配列番号5に示されるエピトープに対して産生され、Aβ
1-42(配列番号1)及びAβ
1-40(配列番号2)の両方のC末端に結合する。Aβ
20-xアッセイは、同じAB.4D7抗体を捕捉抗体として使用し、高度に特異的な20カットポイントのヒツジモノクローナル抗体ABNT.2B8(Bioventix plc、英国)を検出抗体として使用した。Aβ
x-34アッセイでは、AB.2A9を捕捉抗体として使用し、配列番号6のC末端を有する断片に優先的に結合する抗複合体抗体のBVX.33420/H3(Bioventix plc、英国)を検出抗体として使用し、こうして中間ドメインx~34の特異性を保証した。
【0176】
試薬
アミロイドベータ(Aβ)ペプチド(1~40)ヒト、カタログ番号A1124(ApexBio、米国)。バフィロマイシンA1、カタログ番号B1793(Sigma、米国)。ラパマイシン、カタログ番号R0395(Sigma、米国)。ネプリライシン阻害物質;ホスホラミドン二ナトリウム塩、カタログ番号6333(Tocris、英国)。BACE阻害物質;LY2886721、カタログ番号7081(Tocris、英国)。インスリン分解酵素阻害物質;6bK、カタログ番号5402(Tocris、英国)。
【0177】
チェイスアッセイ
THP-1細胞を、100nMのTPA(12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート)で48時間処理することによってマクロファージへと分化させた。培地を、オートファジー系/エンドリソソーム系のモジュレーター:100nMのバフィロマイシン、100nMのラパマイシン、100μMのネプリライシン阻害物質、200nMのBACE阻害物質、若しくは1μMのIDE阻害物質、又は酵素阻害物質であるネプリライシン阻害物質、BACE阻害物質、及びIDE阻害物質の3種の組合せを含む又は含まない新しい培地と交換した。細胞を1時間インキュベートした後に、100ng/mlのAβ40を細胞に加えた。細胞を更に2時間インキュベートした後に、Aβ40を除去し、それぞれのモジュレーターの存在下又は不存在下で4時間追跡を続けた。細胞を洗浄した後に、溶解緩衝液を加えた。溶解物を分析まで-80℃で維持した。
【0178】
結果
これらのアッセイの結果を
図4及び
図5に示す。特に、
図4及び
図5は、Aβ
x-40/42及びAβ
20-xが4時間の追跡中に有意に減少するのに対して、Aβ
x-34は不変であることを示している。これらの結果はまた、エンドリソソーム阻害(バフィロマイシン)がAβ
x-40/42及びAβ
20-xを有意に増加させ、Aβ
x-34を非有意に増加させること、そしてラパマイシンを使用したオートファジーの強化によりAβ
x-40/42レベル及びAβ
20-xレベルは不変のままであるが、Aβ
x-34レベルが大幅に減少することも示している。
図5は、4時間の追跡と比較して、酵素阻害物質の3種の組合せ(ネプリライシン阻害物質、BACE阻害物質、及びIDE阻害物質)により、Aβ
x-40/42レベルが有意に増加するが、Aβ
20-xのレベルには影響せず、Aβ
x-34の非有意の増加(傾向レベル)がもたらされる(幾つかの実験)ことを示している。ネプリライシン阻害物質のみを使用した阻害により、Aβ
x-40/42及びAβ
20-xが増加するのに対して(それぞれ
図5C及び
図5A)、Aβ
x-34レベルは不変である。BACE阻害物質のみを使用した阻害により、Aβ
20-xは増加するが、Aβ
x-34又はAβ
x-40/42に対して影響は及ぼされない。IDE阻害物質を使用した阻害により、Aβ
20-xは増加するが、Aβ
x-34又はAβ
x-40/42のレベルに対して影響は及ぼされない。
【0179】
したがって、MPS機能及びMPSの様々な特定の点に対する様々なMPS阻害物質及び活性化物質の効果を評価することができる。この方法は、様々な阻害物質及び活性化物質の効果を測定するのに十分な感度がある。
【0180】
実施例2
MPS機能の指標として、ADについて提案されている治療的介入(すなわち、FFAR4アゴニスト及びα7 nAChR PAM;特許文献1)のAβの異化及び解毒に対する効果も評価した。
【0181】
方法
実施例1と同じ抗体及び実施例1と同様の方法を使用して、メソスケールプラットフォーム上でイムノアッセイを構成した。細胞をDHA(100μM)及び/又はNS1738(10μM)とともに一晩(16時間)インキュベートした。Aβ1-40を500ng/mlの濃度で加え、培地から除去した後に4時間の追跡を行った。DHA及びNS1738を4時間の追跡中に培地から除去した。
【0182】
結果
図6は、DHA+NS1738の組合せがAβ
20-x、Aβ
x-34、及びAβ
x-40の3つ全てを有意に減少させ、NS1738単独及びDHA単独のそれぞれがAβ
x-34を減少させたことを示している。この実施例において、主比較についての基準条件は、Aβ40の4時間の追跡であった。
【0183】
したがって、MPS機能及びその特定の点に対するADについての様々な治療的介入の効果を、様々な触媒作用産物に対する治療的介入の効果を測定することによって評価することができる。
【0184】
実施例3
MPS機能に対するDHA及びNS1738の組合せの効果を、ラパマイシン及びバフィロマイシンの効果と比較した。イムノアッセイ法は実施例2と同じであり、これらの結果を
図7に示す。
【0185】
図7は、DHA及びNS1738の組合せが3つ全てのAβ断片のレベルを有意に減少させたことを示しており、この薬物の組合せがMPS機能の改善に有効であることが明らかになる。
【0186】
実施例4
ADは炎症性活性化と関連しているため、炎症性活性化を背景とするMPS機能及びAβクリアランスに対する様々な薬物及び薬物の組合せの効果を評価した。
【0187】
方法
メソスケールプラットフォーム上でイムノアッセイを構成した。THP-1細胞を、12-O-テトラ-デカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)との48時間のインキュベーション中に、食作用性の単球/マクロファージへと分化させた。培地を、LPS単独、又はLPSとDHA若しくはNS1738とを一緒に、又はDHA及びNS1738の組合せを含む新たな培地と交換し、一晩インキュベート(16時間)した。マーカータンパク質(Aβ1-40)を細胞に加えて、更に2時間インキュベートした。培地を、添加剤を一切含まない新たな培地と交換し、細胞を更に4時間の追跡期間にわたってインキュベートした。細胞を冷たく保ち、培地を除去し、細胞を冷PBSで洗浄した。プロテアーゼ阻害剤及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む溶解緩衝液を細胞に加えた。溶解後に、細胞を剥離してチューブに移し、-80℃の冷凍庫内に保管した。溶解物を超音波処理し、DNアーゼで処理した後に、分解アッセイで分析した。
【0188】
結果
図8は、クリアランスアッセイの結果を示し、全ての薬物及びそれらの組合せが、3つ全てのAβ断片を有意に減少させることを示している。この実験では、主比較についての基準条件は、LPS+Aβ40の4時間の追跡であった。
【0189】
したがって、クリアランスアッセイを使用して神経変性疾患に関連する炎症性背景をモデル化し、治療的介入のin vivo効果のより正確な評価をもたらすことができる。さらに、炎症性活性化とMPS機能との間の相互作用を評価することもできる。
【0190】
注目すべきは、Aβ
x-34エピトープと比較した場合の、Aβ
20-xエピトープ及びAβ
x-40エピトープの触媒作用に対するエンドリソソーム酵素阻害物質の効果における顕著な差である(
図5Bに対する
図5A及び
図5C)。しかしながら、DHA及びNSによる処理は、全ての断片について同様に有効であった(
図7及び
図8)。これらの差は、触媒作用が異なる酵素の結合により生ずる可能性が高く、ここで、DHA及びNSは炎症(Aβ誘発性又はLPS誘発性)に対抗し、構成的なカテプシンプロテアーゼに結合する可能性が高い(非特許文献40)。このように、Aβ
x-34アッセイは際だっており、カテプシンの結合及び調節について広く適用可能である可能性が高いマーカーが生ずる(非特許文献41、非特許文献42)。
【0191】
実施例5
Aβクリアランスアッセイを、血液ドナーから得られた単球を使用して検証した。
【0192】
方法
イムノアッセイを、Quanterix(米国カリフォルニア州)の単一分子アレイ(Simoa)プラットフォーム上で展開し、独自開発の抗中間ドメインヒツジモノクローナル抗体(mAb 2A9)を捕捉抗体として使用した(米国特許第9,625,474号に開示される)。検出試薬は、最適なAβ中間ドメインペプチド特異性及びアッセイ感度を補助する抗複合体抗体(Bio-Rad HuCAL technology)であった(非特許文献14によるCTADポスター)。これらを
図9に示す。抗複合体抗体は、Ab2A9及び34を末端とする中間ドメインAβペプチドの両方が存在する場合にのみ結合する(非特許文献14)。
【0193】
密度勾配遠心分離及びStemCell Technologies(カナダ)製のRosetteSep抗体の組合せを使用して、白血球画分から血液ドナー由来の単球を分離した。単球計数を行った後に細胞溶解し、単球濃度を1μl当たり20000個の細胞に調整した。
【0194】
健康なドナー(18名の女性及び15名の男性)からの33個の試料を年齢別にしたところ、20歳~70歳の範囲に及んでいた。
【0195】
結果
Simoaプラットフォームにおいて分析された2つの抗Aβ中間ドメイン抗体を用いたアッセイにより、0.78pg/mlの検出限界(LOD)及び1.38pg/mlの定量下限(LLOQ)(LOD及びLLOQはSimoa 4PLアッセイ開発ツールによって評価された)でAβ中間ドメインペプチドを検出する高感度のイムノアッセイがもたらされたため、単球溶解物において測定可能なレベルのペプチドが得られた(
図10及び表1)。
【0196】
【0197】
希釈係数及びスパイク、並びに単球溶解物における回収:プールされた試料をアリコートに分け、希釈効果だけでなく、様々な量の標的中間ドメインAβペプチドを加えた効果についても試験した。回収結果を表2に示す。
【0198】
【0199】
枯渇研究:プールした試料をアリコートに分け、標的中間ドメインAβペプチドを試料の半分に加えた。非特異的抗体(LB509)及び捕捉抗体(mAb 2A9)を、処理済の試料及び未処理の試料の両方で別々にプレインキュベートした。ここで、これらの抗体は、表2の作成に使用した判定工程において使用した捕捉抗体の量と比較して1:3の比率で添加される。この枯渇研究の結果を表3に示す。
【0200】
【0201】
したがって、イムノアッセイは健康な血液ドナー由来の単球中のAβ中間ドメインペプチドを定量し、これによりスパイク希釈研究(表2)における良好な回収を通じて信頼性のある結果が実証された。さらに、過剰な抗体を用いた枯渇研究によりシグナルを除去した(表3)。これはイムノアッセイが細胞内Aβを検出することができ、生体試料において許容可能な特異性を有し、高感度であることを示している。
【0202】
実施例6
細胞内タンパク質分解及び細胞外タンパク質分解に関与することが知られている酵素を使用して、α-シヌクレイン、タウ、及びMBPを酵素分解し、消化産物を特性評価した。
【0203】
細胞内タンパク質分解及び細胞外タンパク質分解に関与することが知られる5つの酵素:カテプシンB(CatB)、カテプシンD(CatD)、エンドセリン変換酵素-1(ECE-1)、インスリン分解酵素(IDE)、及びネプリライシン(NEP)を用いてα-シヌクレインを消化した。
【0204】
細胞内タンパク質分解及び細胞外タンパク質分解に関与することが知られる4つの酵素:カテプシンB(CatB)、カテプシンD(CatD)、エンドセリン変換酵素-1(ECE-1)、及びインスリン分解酵素(IDE)を用いてタウ及びMBPを消化した。
【0205】
ペプチド加水分解産物をLC-MSによって特定した。酵素消化産物を様々なインキュベーション時間後に特性評価し、こうして最初の切断部位及びより長い消化時間で生成された全てのペプチドの完全な概要の両方を特定した。
【0206】
材料
α-シヌクレイン(カタログ番号S-1001-2、rPeptide、米国ジョージア州)を1mg/mlの濃度まで1mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解し、アリコートに分け、使用するまで-20℃で貯蔵した。
【0207】
タウ-441、2N4R(カタログ番号T-1001-2、rPeptide、米国ジョージア州)を1mg/mlの濃度まで1mlの水中に溶解し、アリコートに分け、使用するまで-20℃で貯蔵した。
【0208】
ミエリン塩基性タンパク質(MBP)(アミノ酸1~197、Hisタグ付き)(カタログ番号PAT-82347-2、Nordic Biosite)を0.5mg/mlの濃度で供給し、アリコートに分け、使用するまで-20℃で貯蔵した。
【0209】
CatD(ヒト肝臓、製品番号C8696、Sigma-Aldrich、米国ミズーリ州、セントルイス)を冷えた100mMのギ酸(FA)/ギ酸ナトリウム緩衝液(pH3.3)中に6.25U/mLの濃度まで溶解し、アリコートに分け、使用するまで-80℃で貯蔵した。活性CatB(ストック濃度20ng/μl、Sigma-Aldrich、米国ミズーリ州、セントルイス)。0.08mg/mLのNEP(ヒト、組換え体、アミノ酸53~750、カタログ番号BML-SE532-0010、Enzo Life Sciences、スイス、ラウゼン)、0.55mg/mLのIDE(ラット、組換え体、アミノ酸43~1019、カタログ番号I8601-04)及び0.50mg/mLのECE-1(マウス、組換え体、アミノ酸89~769、カタログ番号E3650-02)(どちらも、USBiological(米国、マサチューセッツ州)から購入)の水溶液を、使用するまで-80℃で貯蔵した。製造業者の推奨に従い、組換え酵素を使用前に精製せず、ネガティブコントロール実験も行わなかった。ZnCl2(0.1M)、NH3水溶液(25%(容量/容量))、及びLC-MS品質の水、並びに0.1%のFAを含むアセトニトリルをSigma-Aldrichから入手した。緩衝液の調製及びpH調整のために、NaCl、HCl、及びMESヘミナトリウム塩をSigma-Aldrichから購入し、一方で、NaOH及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)をMerck(ドイツ、ダルムシュタット)から購入した。
【0210】
酵素消化
α-シヌクレイン、タウ、及びMBP(全て30ng/μlの最終濃度)を各酵素で消化して、ペプチド分解パターンを調べた。酵素と基質との比率は、CatB及びCatDの場合は1:50であり、IDE、ECE-1、及びNEPの場合は1:25であった。ECE-1加水分解にはMES緩衝液(50mMのMES、0.1MのNaCl、pH6.0)を使用し、CatB加水分解にはMES緩衝液(25mMのMES、0.05MのNaCl、pH5.0)を使用し、IDEにはトリス緩衝液(50mMのトリスHCl、0.1MのNaCl、pH7.5)を使用し、NEPにはトリス緩衝液(50mMのトリス、pH9.0)を使用し、CatDの消化を100mMのギ酸ナトリウム/FA緩衝液(pH3.3)中で行い、全ては製造業者の推奨に従った。インキュベーションを37℃で様々な時間(0.5分、10分、30分、60分、90分、120分、150分、180分、及び210分)にわたって行った。IDE消化及びECE-1消化にZnCl2を加えて(それぞれ54pmol及び73pmol)、高い酵素活性を実現した。所望の時間後に、CatDの場合にはNH3(25%(容量/容量))水酸化アンモニウム水溶液を、そしてCatB、ECE-1、IDE、及びNEPの場合には濃FAを1%(容量/容量)の最終濃度まで添加することにより、酵素反応を停止させた。
【0211】
液体クロマトグラフィー-質量分析
カラムを含む全てのLC-MS装置をThermo Scientific(米国マサチューセッツ州、ウォルサム)から入手した。IDEタンパク質分解、ECE-1タンパク質分解、及びNEPタンパク質分解から得られたペプチドの場合は、Accela 1250 UHPLCポンプ及びC4 Accucoreカラム(2.1mmの内径(i.d.)×150mmの長さ(L)、2.6μmの粒子)に接続されたPALオートサンプラーを使用してLC分離を実施したのに対して、CatDでタンパク質分解されたペプチドの場合はBioBasic C18(2.1mmのi.d.×50mmのL、5μmの粒子)を使用した。全ての分析に300μL/分の流速を使用し、注入容量を20μLに設定した。Accucoreカラムでのペプチド分離の場合は、20分で0.1%のギ酸(FA)を含む水中1%から45%までに及ぶアセトニトリルの溶媒勾配を適用し、BioBasicカラムの場合は27.5分で2%から70%までに及ぶメタノール水(0.1%のFA)のメタノール勾配を適用した。BioBasicカラム及びAccucoreカラムの場合は、溶媒をそれぞれ0.5分間及び2.5分間、廃棄物へとそらした。
【0212】
+3.2kVで動作する加熱型エレクトロスプレーイオン化源を備えたQ-Exactive Orbitrapにおいて質量分析を実施した。データ依存型MS/MSによって、70000(MS)及び17500(MS/MS)の分解能、m/z 400~1500のスキャン範囲、並びに3e6(MS)及び2e5(MS/MS)のAGCターゲットを使用して、データを記録した。正規化された衝突エネルギーを25%~35%に設定し、アンダーフィル比を1%に設定した。30秒のダイナミックエクスクルージョン並びに+1及び+6以上の電荷を有するペプチドの除外を適用した。モノプロトン化ペプチド(+1の電荷)を、確実な確認のためにターゲットMS/MS法を使用して個別に分析した。
【0213】
結果
これらの結果を
図11~
図14に示す。特に、これらの図面は、酵素が多数の切断部位を標的とするものの、各タンパク質が、少数の切断部位を有する又は切断部位を有しない少なくとも1つの領域を含むことも示している。特に、α-シヌクレインの場合、分解されにくいこれらの領域は残基39~残基53、残基53~残基72、及び残基76~残基90であり、タウの場合、分解されにくい領域は残基281~残基322であり、MBPの場合、分解されにくい領域は残基30~残基70である。これらの結果は、これらの分解されにくい断片がMPS細胞において保持されているため検出することができると予想され得ることを示している。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の単球食細胞系(MPS)細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を判定するex vivoの方法であって、前記方法は、
i)MPS細胞の試料を前記MPS細胞が生きたままとなる条件下で維持する工程と、
ii)前記MPS細胞の試料を作用物質及び疾患マーカー産物に曝露して、前記MPS細胞による前記疾患マーカー産物の食作用を可能にする工程と、
iii)前記MPS細胞の試料における前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出する工程と、
iv)前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量と、前記作用物質の不存在下でのコントロールMPS細胞において測定された同じ疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量とを比較する工程と、
を含み、ここで、
前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片のMPS細胞による触媒作用に対する前記作用物質の効果を、工程iv)の比較結果によって判定し、かつ、
前記疾患マーカー産物がAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)である場合、工程iii)は、Aβ
1-40(配列番号2)の断片又はAβ
1-42(配列番号1)の残基41を含むAβ
1-42(配列番号1)の断片の細胞内量を
、Aβ
1-42
(配列番号1)又はAβ
1-40
(配列番号2)の残基21~残基24、残基31~残基34、又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによって検出することを含む、方法。
【請求項2】
前記MPS細胞は、ミクログリア細胞、マクロファージ、又は単球である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、単球をマクロファージに分化させる工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記MPS細胞は、ヒト被験体から得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記MPS細胞は、CSF試料又は血液試料から得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程ii)は、前記MPS細胞を培養することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記作用物質は、MPSのオートファジー系及び/又はエンドリソソーム系の刺激物質若しくは阻害物質であるか、又は炎症性活性化物質であ
る、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記作用物質は、Aβ
1-42、Aβ
1-40、FFAR4アゴニスト、α7 nAChRアゴニスト若しくはPAM、ラパマイシン、バフィロマイシン、ネプリライシン阻害物質、IDE阻害物質、BACE阻害物質、FFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト若しくはPAMの組合せ、又はIDE阻害物質、ネプリライシン阻害物質、及びBACE阻害物質の組合せであ
る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記作用物質は、前記FFAR4アゴニストは、DHAであり、前記α7 nAChRアゴニスト又はPAMは、NS1738であり、かつ前記FFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト又はPAMの組合せは、DHA及びNS1738の組合せである、請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片は、タウタンパク質、α-シヌクレイン、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)若しくはTDP-43、若しくはそれらの断片であるか、又は前記断片は、Aβ
1-40(配列番号2)の断片若しくはAβ
1-42(配列番号1)の残基41を含むAβ
1-42(配列番号1)の断片である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片は、アルツハイマー病に関連している、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程iii)は、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24、残基31~残基34、又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによってAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程iii)は、配列番号6のN末端、配列番号6のC末端、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域、及び/又はAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域を検出することによってAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項1又は1
2に記載の方法。
【請求項14】
工程iii)は、配列番号6のN末端又はC末端、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の領域の2つ以上を検出することによって、
Aβ
1-42
(配列番号1)又はAβ
1-40
(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
工程iii)は、
i)残基21~残基24を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、及び残基31~残基34又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、
ii)配列番号6のN末端、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域の残基34~
40残基又は残基34~残基41を含む断片の領域、
iii)配列番号6のC末端、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域、及び/又は、
iv)Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域、
を検出することによってAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項1
4に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの断片は、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)がアミノ酸残基19とアミノ酸残基20との間、及び/又はアミノ酸残基34とアミノ酸残基35との間で切断されたものである、請求項
1~1
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法の工程iii)は、抗体
を使用してAβ
1-42
(配列番号1)又はAβ
1-40
(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法の工程iii)は、配列番号3又は配列番号7に特異的な抗体、及び配列番号6のC末端に特異的な又は配列番号4に特異的な抗体
を使用してAβ
1-42
(配列番号1)又はAβ
1-40
(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法の工程iii)は、配列番号5、配列番号8、又は配列番号9に特異的な抗体を使用してAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項1
8に記載の方法。
【請求項20】
工程iii)は、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、又はMBPの少なくとも1つの断片の細胞内量を検出することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記断片は、
タウがアミノ酸残基280とアミノ酸残基281との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間、又はアミノ酸残基305とアミノ酸残基306との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間で切断されたもの、
α-シヌクレインがアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間、アミノ酸残基52とアミノ酸残基53との間、及び/又はアミノ酸残基72とアミノ酸残基73との間、又はアミノ酸残基75とアミノ酸残基76との間、及び/又はアミノ酸残基90とアミノ酸残基91との間で切断されたもの、
TDP-43がアミノ酸残基310とアミノ酸残基311との間、及び/又はアミノ酸残基334とアミノ酸残基335との間、又はアミノ酸残基320とアミノ酸残基321との間、又はアミノ酸残基323とアミノ酸残基324との間、又はアミノ酸残基360とアミノ酸残基261との間、アミノ酸残基245とアミノ酸残基246との間、及び/又はアミノ酸残基255とアミノ酸残基256との間、又はアミノ酸残基285とアミノ酸残基285との間、及び/又はアミノ酸残基331とアミノ酸残基332との間で切断されたもの、
MBPがアミノ酸残基29とアミノ酸残基30との間、及び/又は残基70と残基71との間で切断されたもの、
である、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記断片は、
タウタンパク質がアミノ酸残基280とアミノ酸残基281との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間で切断されたもの、
α-シヌクレインがアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間で切断されたもの、
TDP-43がアミノ酸残基310とアミノ酸残基311との間、及び/又はアミノ酸残基334とアミノ酸残基335との間で切断されたもの、又は、
MBPがアミノ酸残基29とアミノ酸残基30との間、及び/又は残基70と残基71との間で切断されたもの、
である、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
工程iii)は、前記疾患マーカー産物の2つ以上の断片の細胞内量を検出することを含む、請求項1~
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程ii)において、前記作用物質は、MPSのオートファジー系及び/又はエンドリソソーム系の刺激物質又は活性化物質であり、かつ工程ii)は、前記MPS細胞の試料を炎症性活性化物質に加えて前記作用物質に曝露することを含
む、請求項1~
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記コントロールMPS細胞は、請求項1の工程i)及び工程ii)を経た細胞であるが、但し、前記コントロールMPS細胞は、前記作用物質には曝露されていない、請求項1~2
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用に対する一連の作用物質の効果を比較し、前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用に対して最大の効果を有する前記作用物質を特定するものである、
前記方法は、前記神経変性及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する病態の治療において使用される作用物質をスクリーニングするものである、
前記方法は、神経変性及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する疾患又は病態の診断において使用するものである、又は
前記方法は、個別化医療において作用物質がヒト被験体に有効な治療であるかどうかを判定するのに使用するものであり、ここで、前記方法の工程i)は、ヒト被験体から得られたMPS細胞の試料を前記MPS細胞が生きたままとなる条件下で維持することを含み、かつ前記作用物質の前記ヒト被験体に対する有効性を、工程iv)の比較結果によって判定する、請求項1~2
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
タウ(配列番号14)の残基306を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基246を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、又は、
MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
を含むキット。
【請求項28】
前記キットは、
Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、
α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、
タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、
TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、又は、
MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、
を含む、請求項2
7に記載のキット。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性及び/又は炎症性活性化に関連する疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の単球食細胞系(MPS)細胞による触媒作用に対する作用物質の効果を判定するex vivoの方法であって、前記方法は、
i)MPS細胞の試料を前記MPS細胞が生きたままとなる条件下で維持する工程と、
ii)前記MPS細胞の試料を作用物質及び疾患マーカー産物に曝露して、前記MPS細胞による前記疾患マーカー産物の食作用を可能にする工程と、
iii)前記MPS細胞の試料における前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量を検出する工程と、
iv)前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量と、前記作用物質の不存在下でのコントロールMPS細胞において測定された同じ疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の細胞内量とを比較する工程と、
を含み、ここで、
前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片のMPS細胞による触媒作用に対する前記作用物質の効果を、工程iv)の比較結果によって判定し、かつ、
前記疾患マーカー産物がAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)である場合、工程iii)は、Aβ
1-40(配列番号2)の断片又はAβ
1-42(配列番号1)の残基41を含むAβ
1-42(配列番号1)の断片の細胞内量を、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24、残基31~残基34、又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域を検出することによって検出することを含む、方法。
【請求項2】
前記MPS細胞は、ミクログリア細胞、マクロファージ、又は単球である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、単球をマクロファージに分化させる工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記MPS細胞は、ヒト被験体から得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記MPS細胞は、CSF試料又は血液試料から得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程ii)は、前記MPS細胞を培養することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記作用物質は、MPSのオートファジー系及び/又はエンドリソソーム系の刺激物質若しくは阻害物質であるか、又は炎症性活性化物質である、請求項1~6のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項8】
前記作用物質は、Aβ
1-42、Aβ
1-40、FFAR4アゴニスト、α7 nAChRアゴニスト若しくはPAM、ラパマイシン、バフィロマイシン、ネプリライシン阻害物質、IDE阻害物質、BACE阻害物質、FFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト若しくはPAMの組合せ、又はIDE阻害物質、ネプリライシン阻害物質、及びBACE阻害物質の組合せである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記作用物質は、前記FFAR4アゴニストは、DHAであり、前記α7 nAChRアゴニスト又はPAMは、NS1738であり、かつ前記FFAR4アゴニスト及びα7 nAChRアゴニスト又はPAMの組合せは、DHA及びNS1738の組合せである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片は、タウタンパク質、α-シヌクレイン、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)若しくはTDP-43、若しくはそれらの断片であるか、又は前記断片は、Aβ
1-40(配列番号2)の断片若しくはAβ
1-42(配列番号1)の残基41を含むAβ
1-42(配列番号1)の断片である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片は、アルツハイマー病に関連している、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程iii)は、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24、残基31~残基34、又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つ
のアミノ酸を含む断片の領域を検出することによってAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程iii)は、配列番号6のN末端、配列番号6のC末端、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基29を含む断片の領域、及び/又はAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域を検出することによってAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項1又は12に記載の方法。
【請求項14】
工程iii)は、配列番号6のN末端又はC末端、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の領域の2つ以上を検出することによって、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
工程iii)は、
i)残基21~残基24を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、及び残基31~残基34又は残基39及び残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含む断片の領域、
ii)配列番号6のN末端、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域、
iii)配列番号6のC末端、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域、及び/又は、
iv)Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21~残基24を含む断片の領域、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34~残基40又は残基34~残基41を含む断片の領域、
を検出することによってAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの断片は、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)がアミノ酸残基19とアミノ酸残基20との間、及び/又はアミノ酸残基34とアミノ酸残基35との間で切断されたものである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法の工程iii)は、抗体を使用してAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法の工程iii)は、配列番号3又は配列番号7に特異的な抗体、及び配列番号6のC末端に特異的な又は配列番号4に特異的な抗体を使用してAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法の工程iii)は、配列番号5、配列番号8、又は配列番号9に特異的な抗体を使用してAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片を検出することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程iii)は、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、又はMBPの少なくとも1つの断片の細胞内量を検出することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記断片は、
タウがアミノ酸残基280とアミノ酸残基281との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間、又はアミノ酸残基305とアミノ酸残基306との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間で切断されたもの、
α-シヌクレインがアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間、アミノ酸残基52とアミノ酸残基53との間、及び/又はアミノ酸残基72とアミノ酸残基73との間、又はアミノ酸残基75とアミノ酸残基76との間、及び/又はアミノ酸残基90とアミノ酸残基91との間で切断されたもの、
TDP-43がアミノ酸残基310とアミノ酸残基311との間、及び/又はアミノ酸残基334とアミノ酸残基335との間、又はアミノ酸残基320とアミノ酸残基321との間、又はアミノ酸残基323とアミノ酸残基324との間、又はアミノ酸残基360とアミノ酸残基261との間、アミノ酸残基245とアミノ酸残基246との間、及び/又はアミノ酸残基255とアミノ酸残基256との間、又はアミノ酸残基285とアミノ酸残基285との間、及び/又はアミノ酸残基331とアミノ酸残基332との間で切断されたもの、
MBPがアミノ酸残基29とアミノ酸残基30との間、及び/又は残基70と残基71との間で切断されたもの、
である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記断片は、
タウタンパク質がアミノ酸残基280とアミノ酸残基281との間、及び/又はアミノ酸残基322とアミノ酸残基323との間で切断されたもの、
α-シヌクレインがアミノ酸残基38とアミノ酸残基39との間、及び/又はアミノ酸残基53とアミノ酸残基54との間で切断されたもの、
TDP-43がアミノ酸残基310とアミノ酸残基311との間、及び/又はアミノ酸残基334とアミノ酸残基335との間で切断されたもの、又は、
MBPがアミノ酸残基29とアミノ酸残基30との間、及び/又は残基70と残基71との間で切断されたもの、
である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程iii)は、前記疾患マーカー産物の2つ以上の断片の細胞内量を検出することを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程ii)において、前記作用物質は、MPSのオートファジー系及び/又はエンドリソソーム系の刺激物質又は活性化物質であり、かつ工程ii)は、前記MPS細胞の試料を炎症性活性化物質に加えて前記作用物質に曝露することを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記コントロールMPS細胞は、請求項1の工程i)及び工程ii)を経た細胞であるが、但し、前記コントロールMPS細胞は、前記作用物質には曝露されていない、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用に対する一連の作用物質の効果を比較し、前記疾患マーカー産物及び/又はその少なくとも1つの断片の触媒作用に対して最大の効果を有する前記作用物質を特定するものである、
前記方法は、前記神経変性及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する病態の治療において使用される作用物質をスクリーニングするものである、
前記方法は、神経変性及び/又は炎症性活性化及び/又は神経変性に関連する疾患又は病態の診断において使用するものである、又は
前記方法は、個別化医療において作用物質がヒト被験体に有効な治療であるかどうかを判定するのに使用するものであり、ここで、前記方法の工程i)は、ヒト被験体から得られたMPS細胞の試料を前記MPS細胞が生きたままとなる条件下で維持することを含み、かつ前記作用物質の前記ヒト被験体に対する有効性を、工程iv)の比較結果によって判定する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基72を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、α-シヌクレイン(配列番号10)の残基76を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基90を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
タウ(配列番号14)の残基306を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、TDP-43(配列番号17)の残基246を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基255を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、又は、
MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体から選択される1つ以上の抗体、
を含むキット。
【請求項28】
前記キットは、
Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基21を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片の領域に特異的な抗体、Aβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基34を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、及びAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の残基40を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むAβ
1-42(配列番号1)又はAβ
1-40(配列番号2)の断片に特異的な抗体、
α-シヌクレイン(配列番号10)の残基39を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、及びα-シヌクレイン(配列番号10)の残基53を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むα-シヌクレイン(配列番号10)の断片の領域に特異的な抗体、
タウ(配列番号14)の残基281を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、及びタウ(配列番号14)の残基322を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むタウ(配列番号14)の断片の領域に特異的な抗体、
TDP-43(配列番号17)の残基311を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、及びTDP-43(配列番号17)の残基334を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むTDP-43(配列番号17)の断片の領域に特異的な抗体、又は、
MBP(配列番号20)の残基30を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、及びMBP(配列番号20)の残基70を含む少なくとも4つのアミノ酸を含むMBP(配列番号20)の断片の領域に特異的な抗体、
を含む、請求項27に記載のキット。
【国際調査報告】