(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】眼科用溶液
(51)【国際特許分類】
A61K 31/728 20060101AFI20240220BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20240220BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240220BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K31/728
A61P27/04
A61K9/08
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554392
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2022056158
(87)【国際公開番号】W WO2022189557
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522110555
【氏名又は名称】ボシュ + ロム アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルニアク、ヴィッキー
(72)【発明者】
【氏名】ショイアー、キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】レインデル、ウィリアム ティー.
(72)【発明者】
【氏名】デュエックス、ジョン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジャロンバルド、アンドレア イー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD38
4C076EE37
4C076FF57
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA25
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA20
4C086ZA33
(57)【要約】
眼科的に適合する溶液は、(a)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科的に適合する溶液であって、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、
(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、
(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む、眼科的に適合する溶液。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、約100,000~約3,000,000ダルトン(Da)の範囲の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項3】
前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、を含む、請求項1又は2に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項4】
前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、
約0.1~約10%(w/w)の前記1つ以上の緩衝剤と、を含む、請求項1~3に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項5】
前記1つ以上の緩衝剤が、ホウ酸又はその塩を含む、請求項1~4に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項6】
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の前記塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、を含む、請求項1~5に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項7】
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.08~約0.4重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.08重量%の前記塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、を含む、請求項1~5に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項8】
ヒアルロン酸ナトリウム、エリスリトール、塩化カリウム、ホウ酸及びホウ酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項9】
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸ナトリウムと、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の塩化カリウムと、
(d)約0.1~約10%(w/w)のホウ酸及びホウ酸ナトリウムと、を含む、請求項8に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項10】
1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項1~9に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項11】
前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項1~9に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項12】
前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項1~9に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項13】
前記1つ以上の潤滑剤が、グリセロールを含む、請求項10~12に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項14】
点眼剤の形態での、請求項1~13に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項15】
界面活性剤を含有しない、請求項1~14に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項16】
非イオン性界面活性剤を含有しない、請求項1~14に記載の眼科的に適合する溶液。
【請求項17】
ドライアイの状態を低減するか、軽減するか、治療するか、又は抑制するための方法であって、前記方法が、患者の罹患した眼に、眼科的に適合する溶液であって、(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(e)1つ以上の緩衝剤と、を含む、眼科的に適合する溶液を投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、約100,000~約3,000,000ダルトン(Da)の範囲の重量平均分子量を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、約0.1~約10%(w/w)の前記1つ以上の緩衝剤と、を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上の緩衝剤が、ホウ酸又はその塩を含む、請求項17~20に記載の方法。
【請求項22】
前記眼科的に適合する溶液が、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の前記塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、を含む、請求項17~21に記載の方法。
【請求項23】
前記眼科的に適合する溶液が、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.08~約0.4重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.08重量%の前記塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、を含む、請求項17~21に記載の方法。
【請求項24】
前記眼科的に適合する溶液が、ヒアルロン酸ナトリウム、エリスリトール、塩化カリウム、ホウ酸及びホウ酸ナトリウムを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記眼科的に適合する溶液が、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸ナトリウムと、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の塩化カリウムと、
(d)約0.1~約10%(w/w)のホウ酸及びホウ酸ナトリウムと、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記眼科的に適合する溶液が、1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項17~25に記載の方法。
【請求項27】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項17~25に記載の方法。
【請求項28】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項17~25に記載の方法。
【請求項29】
前記1つ以上の潤滑剤が、グリセロールを含む、請求項26~28に記載の方法。
【請求項30】
前記眼科的に適合する溶液が、点眼剤の形態である、請求項17~29に記載の方法。
【請求項31】
前記眼科的に適合する溶液が、界面活性剤を含有しない、請求項17~30に記載の方法。
【請求項32】
前記眼科的に適合する溶液が、非イオン性界面活性剤を含有しない、請求項17~30に記載の方法。
【請求項33】
角膜を再湿潤させる方法であって、前記方法が、眼科的に適合する溶液を角膜に投与することを含み、前記眼科的に適合する溶液が、(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む、方法。
【請求項34】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、約100,000~約3,000,000ダルトン(Da)の範囲の重量平均分子量を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、を含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、約0.1~約10%(w/w)の前記1つ以上の緩衝剤と、を含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上の緩衝剤が、ホウ酸又はその塩を含む、請求項33~36に記載の方法。
【請求項38】
前記眼科的に適合する溶液が、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の前記塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、を含む、請求項33~37に記載の方法。
【請求項39】
前記眼科的に適合する溶液が、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.08~約0.4重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.08重量%の前記塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、を含む、請求項33~37に記載の方法。
【請求項40】
前記眼科的に適合する溶液が、ヒアルロン酸ナトリウム、エリスリトール、塩化カリウム、ホウ酸及びホウ酸ナトリウムを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記眼科的に適合する溶液が、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸ナトリウムと、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の塩化カリウムと、
(d)約0.1~約10%(w/w)のホウ酸及びホウ酸ナトリウムと、を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記眼科的に適合する溶液が、1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項33~41に記載の方法。
【請求項43】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項33~41に記載の方法。
【請求項44】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項33~41に記載の方法。
【請求項45】
前記1つ以上の潤滑剤が、グリセロールを含む、請求項42~44に記載の方法。
【請求項46】
前記眼科的に適合する溶液が、点眼剤の形態である、請求項33~45に記載の方法。
【請求項47】
前記眼科的に適合する溶液が、界面活性剤を含有しない、請求項33~46に記載の方法。
【請求項48】
前記眼科的に適合する溶液が、非イオン性界面活性剤を含有しない、請求項33~46に記載の方法。
【請求項49】
人工涙液として有用な、又は角膜を再湿潤させるか、若しくは潤滑させるためのシステムであって、前記システムが、約1~約30mlの眼科的に適合する溶液であって、(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む、眼科的に適合する溶液を保持することができる液滴ディスペンサを備える、システム。
【請求項50】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、約100,000~約3,000,000ダルトン(Da)の範囲の重量平均分子量を有する、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、を含む、請求項49又は50に記載のシステム。
【請求項52】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、約0.1~約10%(w/w)の前記1つ以上の緩衝剤と、を含む、請求項49又は50に記載のシステム。
【請求項53】
前記1つ以上の緩衝剤が、ホウ酸又はその塩を含む、請求項49~52に記載のシステム。
【請求項54】
前記眼科的に適合する溶液が、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の前記塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、を含む、請求項49~53に記載のシステム。
【請求項55】
前記眼科的に適合する溶液が、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.08~約0.4重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.08重量%の前記塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、を含む、請求項49~53に記載のシステム。
【請求項56】
前記眼科的に適合する溶液が、ヒアルロン酸ナトリウム、エリスリトール、塩化カリウム、ホウ酸及びホウ酸ナトリウムを含む、請求項49に記載のシステム。
【請求項57】
前記眼科的に適合する溶液が、
(a)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%のヒアルロン酸ナトリウムと、
(b)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%のエリスリトールと、
(c)前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の塩化カリウムと、
(d)約0.1~約10%(w/w)のホウ酸及びホウ酸ナトリウムと、を含む、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記眼科的に適合する溶液が、1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項49~57に記載のシステム。
【請求項59】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項49~57に記載のシステム。
【請求項60】
前記眼科的に適合する溶液が、前記眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の1つ以上の潤滑剤を更に含む、請求項49~57に記載のシステム。
【請求項61】
前記1つ以上の潤滑剤が、グリセロールを含む、請求項58~60に記載のシステム。
【請求項62】
前記眼科的に適合する溶液が、点眼剤の形態である、請求項49~61に記載のシステム。
【請求項63】
前記眼科的に適合する溶液が、界面活性剤を含有しない、請求項49~62に記載のシステム。
【請求項64】
前記眼科的に適合する溶液が、非イオン性界面活性剤を含有しない、請求項49~63に記載のシステム。
【請求項65】
角膜を再湿潤させるための、請求項1~16に記載の眼科的に適合する溶液の使用。
【請求項66】
患者のドライアイの状態を低減するか、軽減するか、治療するか、又は抑制するための、請求項1~16に記載の眼科的に適合する溶液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、その内容が、全体的に参照により本明細書に組み込まれる、2021年3月10日に出願された「Ophthalmic Solutions」という名称の米国仮特許出願第63/159,097号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
通常の使用中、コンタクトレンズは、レンズの性能を低下させる可能性のある多種多様な化合物で汚れたり、又は汚染されたりする。例えば、コンタクトレンズは、涙液中に存在し、レンズ表面に付着するタンパク質又は脂質などの生体材料で汚される。また、コンタクトレンズの取り扱いにより、皮脂(皮膚の油)、化粧品又は他の材料がコンタクトレンズを汚す可能性がある。これらの生物学的汚染物質及び外部の汚染物質は、使用中、及び一日の終わりに、視力及び患者の快適さに影響を与える可能性がある。したがって、1つ以上の洗浄成分を含有するレンズケア洗浄消毒溶液を使用して、継続的に快適に使用するために、レンズ表面から何らかの破片を除去することが重要である。レンズケア洗浄消毒溶液が、コンタクトレンズ消費者、特に、しばしばドライアイ症候群と呼ばれる状態である、乾燥性角結膜炎と診断された消費者にあるレベルの眼の快適さ又は水和を提供することも重要であり得る。
【発明の概要】
【0003】
例示的な実施形態によれば、眼科的に適合する溶液は、(a)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む。眼科的に適合する溶液は、例えば、角膜を再湿潤させるために、コンタクトレンズを装着していない眼に投与され得る。
【0004】
別の例示的な実施形態によれば、ドライアイの状態を低減するか、軽減するか、治療するか、又は抑制するための方法は、患者の罹患した眼に、眼科的に適合する溶液であって、(a)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む、眼科的に適合する溶液を投与することを含む。
【0005】
更なる例示的な実施形態によれば、角膜を再湿潤させる方法は、眼科的に適合する溶液を角膜に投与することを含み、眼科的に適合する溶液が、(a)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む。
【0006】
なお更なる例示的な実施形態によれば、人工涙液として有用な、又は角膜を再湿潤させるか、若しくは潤滑させるためのシステムが提供され、本システムは、約1~約30mlの眼科的に適合する溶液であって、(a)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む、眼科的に適合する溶液を保持することができる液滴ディスペンサを備える。
【0007】
更になお更なる例示的な実施形態によれば、角膜を再湿潤させるための、眼科的に適合する溶液の使用であって、眼科的に適合する溶液が、(a)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む、使用。
【0008】
更になお更なる例示的な実施形態によれば、患者のドライアイの状態を低減するか、軽減するか、治療するか、又は抑制するための、眼科的に適合する溶液の使用であって、眼科的に適合する溶液が、(a)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む、使用。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載される様々な例示的な実施形態は、眼科用溶液、例えば、(例えば、角膜を再湿潤させるために)コンタクトレンズを装着していない眼に投与され得る再湿潤液滴又は点眼剤として有用な眼科的に適合する溶液を含む。本明細書に記載される他の例示的な実施形態はまた、例えば、ドライアイの状態を低減するか、軽減するか、治療するか、又は抑制するのに有用な眼科的に適合する溶液を対象とする。
【0010】
ドライアイは、一般的に乾燥性角結膜炎及び涙液異常(dyslacrima)としても知られており、何百万人もの人々に影響を及ぼす一般的な眼科障害である。ドライアイを有する患者は、灼熱感、乾燥感、及び持続的な刺激を経験する可能性がある。重度の場合、ドライアイは、人の視力を深刻に損なわせる可能性があり、したがって、運転などの活動で罹患者の障害となる可能性がある。シェーグレン病などの特定の疾患は、ドライアイの症状を顕在化させる。また、人は年を取るにつれて、眼の涙腺がほとんど水分を生成しなくなり、眼が乾燥し、炎症を起こし、かゆみ及び砂の入ったような状態になる可能性がある。
【0011】
ドライアイは、様々な根底にある無関係な病原性の原因に起因する可能性があるように思われるが、状態の全ての提示は、共通の影響、すなわち、眼の前側の涙液膜の分解を共有し、これは、一般的に、露出した眼の外面の脱水を引き起こし、したがって、上記の症状を引き起こす。
【0012】
ドライアイの治療には、いくつかのアプローチが存在する。1つの一般的なアプローチは、一日を通して人工涙液で眼の涙液膜を補完することであった。涙液の代替アプローチの例としては、緩衝された等張性生理食塩水溶液及び水溶性ポリマーを含有する水溶液の使用が挙げられ、これらは、溶液をより粘性にし、したがって、涙液の洗浄作用によって眼によって容易に流出されることはない。
【0013】
ソフトコンタクトレンズは、1980年代から利用可能であった。コンタクトレンズを正常に装着することができる人が多くいる一方で、コンタクトレンズに関係するドライアイに起因して、コンタクトレンズを短期間しか装着することができない人も多い。この障害の症状としては、例えば、薄い涙膜及び/又は不安定な涙膜、角膜染色、並びに眼の不快感、灼熱感/刺激、及び乾燥などの主観的な症状が挙げられる。コンタクトレンズの装着は、これらの症状の発症を引き起こすか、又は症状を悪化させることがある。コンタクトレンズに関連するドライアイを有する人々は、一般的に、限られた時間(例えば、6時間未満、場合によっては4時間未満)だけ快適にコンタクトレンズを装着することができる。
【0014】
ヒアルロン酸は、非免疫原性物質であり、その粘弾性及び親水性の特性のために、ヒアルロン酸は、眼科手術における眼の硝子体液又は関節液置換剤として、又は支持媒体として長年にわたって使用されてきた。関節液では、ヒアルロン酸溶液は、細胞に保護環境を提供するための潤滑剤として機能し、このため、炎症を起こした膝関節の治療に使用される。ヒアルロン酸を含む製品を消費者が使用するには、製造業者が消費者製品を滅菌する必要があり、オープンな複数用量の製剤として使用する場合は、製剤製品を保存するために追加のステップを実行しなければならない。
【0015】
ヒアルロン酸は、熱滅菌プロセスに比較的敏感であることが知られているバイオポリマーの一種である。ヒアルロン酸の熱滅菌は、ヒアルロン酸の加水分解又は酸化を加速し、それによってバイオポリマーの平均分子量の有意かつ多くは有害な減少を引き起こすことが知られている。多くの医薬用途において、製剤中の比較的低分子量形態のヒアルロン酸は、望ましくない。典型的には、低分子量形態のヒアルロン酸は、高分子量形態のヒアルロン酸の所望のレオロジー特性を提供しない。前述の熱滅菌方法におけるヒアルロン酸の分解を補うために、望ましい分子量よりも高い分子量を有するヒアルロン酸から始めることができる。しかしながら、この調節は、バイオポリマーの平均分子量が増加するにつれてヒアルロン酸の生成物収率が減少するため、プロセスの非効率性を引き起こす。
【0016】
本明細書に記載の例示的な実施形態は、ヒアルロン酸の実質的な分解を起こさずに滅菌に供することができる、ヒアルロン酸又はその塩の改善された滅菌の眼科的に適合する水溶液を製剤化することによって、上述の問題を克服する。特に、本明細書に開示される眼科用溶液中でヒアルロン酸とエリスリトールとを組み合わせることによって、オートクレーブ処理などの滅菌条件に供された場合のヒアルロン酸の経時的な分子量低下は、エリスリトールの非存在下でのヒアルロン酸を含有する眼科用溶液よりも、統計的に有意に優れている。したがって、ヒアルロン酸の分子量低下が改善される本明細書に開示される眼科用溶液は、有利には、より少ないpHの問題、より少ない有効性の問題、改善された粘度、並びにより少ない酸化及び熱分解を示し、それによって、より高い安定性及びより長い貯蔵寿命をもたらす。加えて、本明細書に開示される眼科用溶液はまた、ヒアルロン酸をエリスリトールと組み合わせることによって達成され、それによってより堅牢な溶液を提供する、溶液を調製するために使用される水に含有される任意の鉄に対するより高い耐性を有利に示す。
【0017】
1つ以上の非限定的で例示的な実施形態によれば、眼科用溶液は、眼科的に適合する溶液であって、(a)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩と、(b)眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%のエリスリトールと、(c)塩化ナトリウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせと、(d)1つ以上の緩衝剤と、を含む、眼科的に適合する溶液であり得る。
【0018】
本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、少なくとも約0.005~約2重量%のヒアルロン酸又はその塩を含む。ヒアルロン酸は、交互のβ-(1,4)及びβ-(1,3)グリコシド結合を介して連結された、2つの代替的に連結された糖であるD-グルクロン酸及びN-アセチルグルコサミンから構成される周知の天然に存在する水溶性生分解性ポリマーである。ヒアルロン酸は、タンパク質及びスルホン基への共有結合を含まないため、他のグリコサミノグリカンと区別される。ヒアルロン酸は、動物においてユビキタスであり、最も高い濃度は、軟質結合組織において見出される。それは、体内の機械的目的及び輸送目的の両方にとって重要な役割を果たし、例えば、関節に弾力性を与え、脊椎動物の椎間板に剛性を与え、また、眼の硝子体の重要な成分でもある。
【0019】
ヒアルロン酸ポリマーは、親水性であり、比較的低い溶質濃度で水溶液中で高粘度である。ヒアルロン酸ポリマーは、ナトリウム塩であるヒアルロン酸ナトリウムとして自然発生することが多い。市販のヒアルロナン及びその塩を調製する方法は、周知である。ヒアルロナンは、例えば、Seikagaku Company、Clear Solutions Biotech,Inc.、Pharmacia Inc.、Sigma Inc.、HTL Biotechnology、Contipro、Bloomage Biotechnology Corporation、及び多くの他の供給業者から購入することができる。ヒアルロン酸は、以下の式によって表される構造の繰り返し単位を有する。
【化1】
したがって、ヒアルロン酸中の繰り返し単位は、以下のようにすることができる。
【化2】
【0020】
概して、ヒアルロン酸又はその塩、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム及びヒアルロン酸カリウムは、約2~約1,500,000個の二糖単位を有し得る。一実施形態では、ヒアルロン酸又はその塩は、約10,000~約3,000,000ダルトン(Da)の範囲の重量平均分子量を有していてもよく、下限は、約10,000、約20,000、約30,000、約40,000、約50,000、約60,000、約70,000、約80,000、約90,000、約100,000、約200,000、約300,000、約400,000、約500,000、又は約600,000Daであり、上限は、約200,000、約300,000、約400,000、約500,000、約600,000、約700,000、約800,000、約900,000、約1,000,000、又は最大約2,800,000Daであり、下限のいずれかを、上限のいずれかと組み合わせてもよい。
【0021】
例示的な実施形態では、ヒアルロン酸又はその塩は、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.005~約2重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。別の例示的な実施形態では、ヒアルロン酸又はその塩は、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.2重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。
【0022】
本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、エリスリトールを更に含有する。例示的な実施形態では、エリスリトールは、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。別の例示的な実施形態では、エリスリトールは、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.05~約0.5重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。別の例示的な実施形態では、エリスリトールは、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.08~約0.4重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。
【0023】
本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、有効量の1つ以上の張度調節成分を更に含有する。好適な張度調節成分としては、例えば、様々な無機塩などの眼科用製品に従来から使用されているものが挙げられる。例示的な実施形態では、好適な張度調節成分としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。1つ以上の張度調節成分の量は、溶液に所望の程度の張度を提供するのに有効な量である。
【0024】
例示的な実施形態では、1つ以上の張度調節成分は、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。別の例示的な実施形態では、1つ以上の張度調節成分は、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。別の例示的な実施形態では、1つ以上の張度調節成分は、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約0.08重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。
【0025】
本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、1つ以上の緩衝剤を更に含有する。「緩衝剤」及び「緩衝系」という用語は、単独で、又は少なくとも1つの他の化合物と組み合わせて、緩衝能(すなわち、元のpHを比較的ほとんど変化させないか、又は全く変化させずに、限界内で、酸又は塩基(アルカリ)のいずれかを中和する能力)を示す溶液中の緩衝系を提供する化合物を意味すると理解される。「緩衝能」という用語は、1リットル(標準単位)の緩衝溶液に添加されたときにpHを1単位変化させるのに必要な強酸又は塩基(又はそれぞれ、水素イオン又は水酸化物イオン)のミリモル数(mM)を意味すると理解される。緩衝能は、緩衝剤成分の種類及び濃度に依存するであろう。緩衝能は、約6~約8、又は約7.4~約8.4の開始pHから測定される。
【0026】
好適な緩衝剤としては、例えば、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウムなどのホウ酸及びその塩が挙げられる。ホウ酸緩衝剤はまた、例えば、溶液中でホウ酸又はその塩を生成する四ホウ酸カリウム又はメタホウ酸カリウムなどの緩衝化合物を含む。ホウ酸緩衝剤は、特定の高分子ビグアナイドの有効性を高めることで知られている。例えば、米国特許第4,758,595号は、ホウ酸緩衝剤と組み合わせた場合に増強された有効性を示すことができるPHMB又はPAPBとも称されるポリ(ヘキサメチレンビグアナイド)を含有するコンタクトレンズ溶液を記載している。他の好適な緩衝剤としては、ジグリシン(グリシルグリシン)及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0027】
例示的な実施形態では、1つ以上の緩衝剤は、約0.1~約10%(w/w)の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。別の例示的な実施形態では、1つ以上の緩衝剤は、約0.5~約5%(w/w)の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。別の例示的な実施形態では、1つ以上の緩衝剤は、約0.75~約2%(w/w)の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。
【0028】
本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、有効量の1つ以上の潤滑剤成分を更に含有し得る。好適な潤滑剤成分としては、例えば、眼科用製品に従来から使用されているものが挙げられる。例示的な実施形態では、好適な潤滑剤成分は、グリセロール及びプロピレングリコールなどの非イオン性ジオール、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0029】
例示的な実施形態では、1つ以上の潤滑剤成分は、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約5重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。別の例示的な実施形態では、1つ以上の潤滑剤成分は、眼科的に適合する溶液の総重量に基づいて、約0.01~約1重量%の範囲の量で、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液中に存在する。
【0030】
本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、前述の成分に加えて、1つ以上の防腐剤、コンフォート剤、pH調節剤、キレート剤、粘度調整剤、粘滑剤などを更に含有し得る。例えば、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、1つ以上のコンフォート成分又はクッション成分を更に含有し得る。コンフォート成分は、レンズ表面を調節して、レンズ表面をより親水性(より親油性)にすることができ、かつ/又は眼の粘滑剤として機能することができる。コンフォート成分は、レンズの配置中に眼表面への衝撃を緩和し、眼の刺激を和らげるのにも役立つと考えられている。
【0031】
好適なコンフォート成分としては、例えば、水溶性天然ガム、セルロース由来ポリマーなどが挙げられる。有用な天然ガムとしては、グアーガム、トラガカントガムなどが挙げられる。有用なセルロース由来のコンフォート成分としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース由来のポリマーが挙げられる。いくつかの非セルロースコンフォート成分としては、プロピレングリコール又はグリセリンが挙げられる。コンフォート成分は、約0.01%~約1%(w/w)の範囲の量で溶液中に存在し得る。
【0032】
例示的な実施形態では、水和した角膜表面を維持すると考えられるコンフォート剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)である。PVPは、1-ビニル-2-ピロリドンモノマーに由来する少なくとも90%の繰り返し単位を含む直鎖ホモポリマー又は本質的に直鎖ホモポリマーであり、モノマー組成物の残りは、中性モノマー、例えば、ビニル又はアクリレートを含み得る。PVPの他の同義語としては、ポビドン、ポリビドン、1-ビニル-2-ピロリジノン、及び1-エテニル-2-ピロリオノン(CAS登録番号9003-39-8)が挙げられる。PVPは、約10,000~約250,000、又は約30,000~約100,000の重量平均分子量を有し得る。そのような材料は、ISP Technologies,Inc.を含む様々な企業によって、BASFから、商標PLASDONE(登録商標)K-29/32で、商標KOLLIDON(登録商標)、例えば、KOLLIDON(登録商標)K-30又はK-90で販売される。また、医薬品グレードのPVPを使用することが好ましい。
【0033】
例示的な実施形態では、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、界面活性剤を含有しない。例示的な実施形態では、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、非イオン性界面活性剤を含有しない。例示的な実施形態では、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、ポロキサマー及びポロキサミンのうちの1つ以上を含有しない。
【0034】
本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、生理学的に適合性である。具体的には、溶液は、「眼科的に安全」でなければならず、すなわち、溶液は眼と毎日接触するのに安全であり、かつ快適でなければならない。眼科的に安全な溶液は、眼に適合し、ISO(国際標準化機構)標準及び米国FDA規制に従って非細胞傷害性である材料及びその量を含む張度及びpHを有する。この溶液は、発売前の製品中に微生物汚染物質が存在しないことが、そのような製品に必要な程度にまで統計的に実証されなければならないという点で、無菌であるべきである。
【0035】
非限定的で例示的な実施形態では、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、少なくとも約200mOsmol/kg~最大約400mOsmol/kg、又は約250~最大約400mOsmol/kgの範囲の浸透圧を有することができる。例示的な実施形態では、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、少なくとも約200mOsmol/kg~最大約300mOsmol/kg、又は約250~最大約300mOsmol/kgの範囲の浸透圧を有することができる。眼科的に適合する溶液は、実質的に等張性又は高張性(例えば、わずかに高張性)であり、眼科的に許容される。
【0036】
非限定的で例示的な実施形態では、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、約4.0~約9.0、又は約5.0~約8.0、又は約6.0~約8.0、又は約6.5~約7.8のpH範囲内のpHを有し得る。
【0037】
例示的な実施形態では、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、例えば、角膜を再湿潤させるために、コンタクトレンズを装着していない眼に投与され得る。例示的な実施形態では、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液は、眼の刺激を和らげるために点眼剤として製剤化され得る。点眼剤の例は、処方箋なしで店頭販売(OTC)で入手可能であるドライアイのための局所人工涙液及び潤滑剤である。これらの涙液代替物は、眼表面の湿度を増加させ、潤滑性を改善する。加えて、人工涙液は、ドライアイ患者の角膜表面を滑らかにし、視力の改善に寄与する効果を有する。
【0038】
例示的な実施形態では、ドライアイの状態を低減するか、軽減するか、治療するか、又は抑制するための方法が提供される。例示的な実施形態では、本方法は、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液を、患者の罹患した眼に投与することを含む。
【0039】
更なる例示的な実施形態によれば、角膜を再湿潤させる方法が提供される。例示的な実施形態では、本方法は、本明細書に開示される眼科的に適合する再湿潤溶液を投与することを含む。
【0040】
非限定的な例示的な実施形態では、人工涙液として有用な、又は角膜を再湿潤させるか、若しくは潤滑させるためのシステムは、約1~約30mlの本明細書に開示される眼科的に適合する溶液を保持することができる液滴ディスペンサを備える。
【0041】
以下の実施例は、当業者が本発明を実施することを可能にするために提供されるものであり、単なる例示である。実施例は、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定するものとして読まれるべきではない。
【0042】
実施例1
角膜を再湿潤させるのに適した眼科的に適合する溶液の調製。量は、100重量%になるまでの適量の精製水を用いた溶液の総重量に基づく重量%又はppmである。
【0043】
ホウ酸(0.6重量%)、ホウ酸ナトリウム(0.25重量%)、塩化カリウム(0.21重量%)、エリスリトール(0.3重量%)、及びグリセロール(0.5重量%)を添加することによって、第1の溶液を調製した。次いで、溶液の試料を40℃又は75℃まで加熱した。
【0044】
室温まで冷却した後、ヒアルロン酸ナトリウム(0.15重量%)を添加し、一晩撹拌した。
【0045】
簡潔にするために、本明細書に開示される眼科的に適合する溶液の様々な特徴は、単一の実施形態の文脈において記載されるが、別々に、又は任意の好適なサブコンビネーションでも提供され得る。実施形態の全ての組み合わせは、各々及び全ての組み合わせが個別に及び明示的に開示されているかのように、本明細書に開示される例示的な実施形態によって具体的に包含される。加えて、そのような変数を記載している実施形態に列挙される全てのサブコンビネーションはまた、本組成物によって具体的に包含され、各々及び全てのそのようなサブコンビネーションが本明細書に個別に及び明示的に開示されているかのように、本明細書に開示される。
【0046】
本明細書に開示される実施形態に様々な修正を加えることができることが理解されるであろう。したがって、上記の説明は、限定的と解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の例示としてのみ解釈されるべきである。例えば、上に記載される、本発明を動作させるための最良の態様として実施される機能は、例示目的のみのためである。当業者であれば、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、他の構成及び方法を実施することができる。更に、当業者は、本明細書に追加される特徴及び利点の範囲及び趣旨内で他の修正を想定するであろう。
【国際調査報告】