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特表2024-508962基板のレーザ加工のための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】基板のレーザ加工のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/382 20140101AFI20240220BHJP
   B23K 26/142 20140101ALI20240220BHJP
【FI】
B23K26/382
B23K26/142
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554395
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2021056084
(87)【国際公開番号】W WO2022188969
(87)【国際公開日】2022-09-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510060497
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ イタリア エス. アール. エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン, ジェフリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】フューリン, ヴァレンティーナ
(72)【発明者】
【氏名】チェッレレ, ジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーハバーベケ, スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】レシュキース, カーティス
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ハン-ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ギベク, パク
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD12
4E168CB04
4E168DA02
4E168DA04
4E168DA43
4E168EA15
4E168EA20
4E168FB03
4E168FC01
4E168FC04
4E168JA12
4E168JA17
(57)【要約】
基板に穿孔するための装置が提供される。この装置は、基板上の区域のセットに対応する所定の位置にレーザビームを順序付けて導くことによって基板上の区域のセットから材料を除去するために、基板にレーザビームを当てるように構成されたレーザシステムを含む。この装置は、基板の片面または両面に沿って流体流れを生成するように構成された換気システムを含む。この装置は、レーザビームが第1のレーザビーム移動方向および第2のレーザビーム移動方向に従って順次に位置決めされるように、レーザビームを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に穿孔するための装置であって、
前記基板上の区域のセットに対応する所定の位置にレーザビームを順序付けて導くことによって前記基板上の前記区域のセットから材料を除去するために、前記基板に前記レーザビームを当てるように構成されたレーザシステムであって、前記順序付けは、前記区域が前記レーザビームを受ける順序を定義する、レーザシステムと、
前記基板の片面または両面に沿って流体流れを生成するように構成された換気システムであって、前記流体流れが、流体流れ方向に導かれる、換気システムと、
前記レーザビームが第1のレーザビーム移動方向および第2のレーザビーム移動方向に従って順次に位置決めされるように、前記レーザビームを制御するように構成されたコントローラとを備え、前記レーザビームが、前記区域のセットに対応するそれぞれの位置に、少なくとも3回、繰り返し導かれ、前記区域のセットからの区域が前記レーザビームを受ける都度、その後、前記レーザビームを受けた区域のうち少なくとも半分が、少なくとも50ミリ秒の間冷却を許容され、前記第1のレーザビームの移動方向と前記流体流れ方向との間の角度がq1として定義され、前記第2のレーザビームの前記移動方向と流体流れ方向との間の角度がq2として定義され、
cos q1とcos q2との両方が0以下である、または
q1およびq2の各々が、20°を上回り、かつ340°未満である、または
q1もしくはq2のいずれかが、20°未満であるか、もしくは340°を上回り、前記順序付けて前記レーザビームを受ける前記領域が、前記順序において先に前記レーザビームを受けた領域から2つ以上の領域だけ離れるように、前記レーザビームの動きが制御される、装置。
【請求項2】
第2のレーザの移動は、前記レーザが第2の移動によって移動した後前記順序において前記レーザビームを受ける区域が、前記順序において先にレーザビームを受けた区域から、6つ以上の区域、特に少なくとも11以上の区域離れているようなものである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記区域が、外周を含む形状を有し、前記レーザビームが前記区域の前記外周に対応する所定の位置に導かれる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のレーザビーム移動方向および前記第2のレーザビーム移動方向のうち1つが前記流体流れ方向と反対であり、かつ/または前記第1のレーザビーム移動方向および前記第2のレーザビーム移動方向のうち1つが、前記流体流れ方向に対して垂直である、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記区域のセットが、少なくとも1,000の区域、詳細には少なくとも10,000の区域、より詳細には少なくとも100,000の区域を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記流体流れが、不活性ガス、詳細にはヘリウムまたはアルゴン、および窒素から成るグループからの1つまたは複数を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記流体流れが、一方向の層流であって、流速が、前記基板の前記片面または前記両面の上の1mm~2mmの空間を含む容積において1m/秒を超える、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記基板が、シリコン基板またはポリマーフィルムもしくはポリマー複合材料フィルムを含む基板である、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
ガス入口およびガス出口を含む筐体をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
基板に穿孔するための方法であって
前記基板上の区域のセットに対応する所定の位置へ、レーザビームを順序付けて導くことにより、前記基板に前記レーザビームを当てることであって、前記順序付けが、前記区域が前記レーザビームを受ける順序を定義し、前記レーザビームが前記区域のセットから材料を除去する、レーザビームを当てることと、
前記基板に前記レーザビームを当てる一方で、前記基板の片面または両面に沿って流体流れを生成することであって、前記流体流れが、流体流れ方向に導かれる、流体流れを生成することと、
前記レーザビームを順序付けて当てることであって、
第1のレーザビーム移動方向および第2のレーザビーム移動方向に従って前記レーザビームを順次に位置決めすることを含む、前記レーザビームを順序付けて当てることとを含み、前記レーザビームが、前記区域のセットに対応するそれぞれの位置に、少なくとも5回、繰り返し導かれ、前記区域のセットからの区域が前記レーザビームを受ける都度、その後、前記レーザビームを受けた区域のうち少なくとも半分が、少なくとも50ミリ秒の間冷却を許容され、前記第1のレーザビーム移動方向と前記流体流れ方向との間の角度がq1として定義され、前記第2のレーザビーム移動方向と前記流体流れ方向との間の角度がq2として定義され、
cos q1とcos q2との両方が0以下である、または
q1およびq2の各々が、20°を上回り、かつ340°未満である、または
q1もしくはq2のいずれかが、20°未満であるか、もしくは340°を上回り、前記レーザビームを前記順序付けて当てられる前記区域が、前記順序において直前に前記レーザビームを受けた前記区域から2つ以上の区域だけ離れるように、前記レーザビームの移動が制御される、方法。
【請求項11】
前記区域のセットのうちの区域に前記レーザビームを当てたときに生じた破片の少なくとも一部を、前記流体流れによって運び去ることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記区域のセットのうちの区域に前記レーザビームを当てたときに生成された、イオン化ガス、エーロゾル、または蒸発した基板材料のグループのうち1つの少なくとも一部を、前記流体流れによって運び去ることを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板が、区域の1つまたは複数のセットを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項14】
前記レーザが前記区域のセットに導かれる回数が、基板材料に依存する、前記基板の厚さの関数であり、回数が、マイクロメートル単位での前記基板の厚さの10分の1よりも大きい、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【請求項15】
前記レーザビームを受けた前記区域の各々が、少なくとも50ミリ秒の間冷却を許容され、または前記レーザビームを受けた前記区域の少なくとも半分が、少なくとも50~100ミリ秒または少なくとも100ミリ秒の間冷却を許容される、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステムまたは方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、基板のレーザ加工のための装置および方法に関する。より具体的には、本明細書で説明される実施形態は、特に結晶シリコン(c-Si)基板またはポリマー複合材料基板といった基板に、特にビア孔を形成するための効率的かつ正確なレーザ加工のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代PCB(プリント回路基板)製造、ディスプレイ製造、または太陽電池製造などの分野において、結晶シリコン(c-Si)基板、特にc-Siウエハ、または味の素ビルドアップフィルムなどのポリマーベースのビルドアップフィルムを含む基板などの基板の、大量処理の需要が増加している。大きい処理量および高精度を実現するために、基板は、特にレーザ穿孔、レーザ切断といったレーザ加工方法を用いて処理され得る。
【0003】
基板に、高速で、したがって高レーザエネルギーで、高精度の処理をするとき、課題が生じる。基板は、レーザ光が当たると、望ましくない場所が熱くなり、さらには局所的に溶けてしまう可能性がある。そのような状況では、もはや高精度を保証することができない。さらに悪いことに、そのような状況では、不変のパラメータを用いてレーザ露光を継続すると、穿孔の効率や品質が悪くなる可能性がある。その上、穿孔プロセスによって生じた破片が、正確な処理をさらに妨害して、レーザ加工の精度を低下させる可能性がある。コストの理由で、基板は通常薄くて脆弱であり、特に損傷や破損しやすく、機械加工プロセスの困難さがさらに高まる。
【0004】
以上のことから、当技術における問題のうち少なくともいくつかを克服する、基板のレーザ加工のための新規の方法および装置が有益である。
【発明の概要】
【0005】
一態様によれば、基板に穿孔するための装置が提供される。この装置は、基板上の区域のセットに対応する所定の位置にレーザビームを順序付けて導くことによって基板上の区域のセットから材料を除去するために、基板にレーザビームを当てるように構成されたレーザシステムを含む。順序付けは、各区域がレーザビームを受ける順序を定義する。この装置は、基板の片面または両面に沿って流体流れを生成するように構成された換気システムをさらに含む。流体流れは、流体流れ方向に導かれる。この装置は、レーザビームを、第1のレーザビーム移動方向および第2のレーザビーム移動方向に従って順次に位置決めし、区域のセットに対応するそれぞれの位置に、少なくとも3回、繰り返し導くように制御するように構成されたコントローラをさらに含む。区域のセットからの区域がレーザビームを受ける都度、その後、レーザビームを受けた区域のうち少なくとも半分が、少なくとも50ミリ秒の間冷却を許容される(allowed to cool)。第1のレーザビーム移動方向と流体流れ方向との間の角度はq1として定義され、第2のレーザビーム移動方向と流体流れ方向との間の角度はq2として定義される。
- cos q1とcos q2との両方が0以下である、または
- q1およびq2の各々が、20°を上回り、かつ340°未満である、または
- q1もしくはq2のいずれかが、20°未満であるか、もしくは340°を上回り、レーザビームを順序付けて当てられる区域が、順序において先にレーザビームを受けた区域から2つ以上の区域だけ離れるように、レーザビームの動きが制御される。
【0006】
一態様によれば、基板に穿孔するための方法が提供される。この方法は、基板上の区域のセットに対応する所定の位置へ、レーザビームを順序付けて導くことにより、基板にレーザビームを当てることを含む。順序付けは、各区域がレーザビームを受ける順序を定義する。レーザビームは、区域のセットから材料を除去する。この方法は、基板にレーザビームを当てる一方で、基板の片面または両面に沿って流体流れを生成することをさらに含む。流体流れは、流体流れ方向に導かれる。レーザビームを順序付けて当てることは、レーザビームを、第1のレーザビーム移動方向および第2のレーザビーム移動方向に従って順次に位置決めし、区域のセットに対応するそれぞれの位置に、少なくとも3回、繰り返し導くことを含む。区域のセットからの区域がレーザビームを受ける都度、その後、レーザビームを受けた区域のうち少なくとも半分が、少なくとも50ミリ秒の間冷却を許容される。第1のレーザビーム移動方向と流体流れ方向との間の角度はq1として定義され、第2のレーザビーム移動方向と流体流れ方向との間の角度はq2として定義される。
- cos q1とcos q2との両方が0以下である、または
- q1およびq2の各々が、20°を上回り、かつ340°未満である、または
- q1もしくはq2が、20°未満であるか、もしくは340°を上回り、レーザビームを順序付けて当てられる区域が、順序において先にレーザビームを受けた区域から2つ以上の区域だけ離れるように、レーザビームの動きが制御される。
【0007】
態様によれば、本明細書で開示された、穿孔のための方法および装置は、1つのまたは2つの第1のレーザビーム移動方向と、1つまたは2つの第2のレーザビーム移動方向とから成る。それらの態様では、レーザは、それだけではないが、開始位置へレーザを移動させることまたは休止位置へ戻すようにレーザを誘導することなどの補助アクションのためを除けば、穿孔プロセス中に別の方向に移動されることはない。
【0008】
態様によれば、レーザビームの移動直前に、レーザビームを当てられる区域が、レーザビームの移動直後に、レーザビームを当てられた区域から2つ以上の区域だけ、詳細には6つ以上の区域だけ離れるように、レーザビームの動きが制御されるとき以外は、レーザビーム移動の方向が流体流れ方向と同一になることはない。加えて、態様によれば、穿孔プロセス中のレーザビームのあらゆる移動方向と流体流れ方向との間の角度は、レーザビームの移動前に、レーザビームを当てられる区域が、レーザビームの移動直後に、レーザビームを当てられた区域から2つ以上の区域だけ、詳細には6つ以上の区域だけ離れるように、レーザビームの動きが制御されるとき以外は、20°未満になったり、340°を上回ったりすることはない。
【0009】
実施形態は、開示された方法を実行するための装置も対象とし、それぞれの上記方法の態様を実行するための装置部を含む。これらの方法の態様は、ハードウェア構成要素、適切なソフトウェアによってプログラムされたコンピュータ、この2つの任意の組合せ、または他のやり方によって実行され得る。その上、本開示による実施形態は、説明された装置を動作させるための方法も対象とする。説明された装置を動作させるための方法は、装置のすべての機能を実行するための方法の態様を含む。
【0010】
上記に列挙された本開示の特徴が詳細に理解され得るように、上記で簡単に要約された本開示が、実施形態を参照して、より詳細に説明され得る。添付図面は本開示の実施形態に関係するものであり、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本明細書で説明された実施形態による、基板のレーザ加工用の装置の概略図である。
図2】本明細書で説明された実施形態による、基板のレーザ加工用の装置の概略図である。
図3】処理される区域の概略セットと、流体流れに関する、区域の間のレーザビームの移動とを示す図である。
図4】処理される区域の概略セットと、流体流れに関する、区域の間のレーザビームの移動とを示す図である。
図5】処理される区域の概略セットと、流体流れに関する、区域の間のレーザビームの移動とを示す図である。
図6】処理される区域の概略セットと、流体流れに関する、区域の間のレーザビームの移動とを示す図である。
図7】処理される区域の概略セットと、流体流れに関する、区域の間のレーザビームの移動とを示す図である。
図8】レーザビーム移動方向と流体流れ方向との間の角度q1およびq2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本開示の様々な実施形態が詳細に参照され、それらの1つまたは複数の例が図に示される。図の以下の説明では、同一の参考番号は同一の構成要素を指す。一般に、個別の実施形態に関して差異のみが説明される。それぞれの例は、本開示の説明として提供され、本開示の制限を意味するわけではない。さらに、一実施形態の一部として示されるかまたは説明される特徴は、さらなる実施形態をもたらすために、他の実施形態において、または他の実施形態に関連して使用され得る。説明は、そのような変更形態や変形形態を含むことが意図されている。
【0013】
本開示の用途は、プリント基板(PCB)、半導体パッケージ、太陽電池もしくは光電池、LCD、OLEDもしくはマイクロLEDベースの画面などの表示デバイス、または孔のあるポリマー薄膜を含む、c-Siのウエハもしくは基板の、高精度のハンドリングを必要とする任意のタイプのデバイスなど、あらゆるタイプの多層電子アセンブリの生産に特に関する。
【0014】
一態様によれば、基板は、結晶シリコン(c-Si)基板またはウエハなどのシリコンベースの基板であり得る。基板には、たとえば電気接続をもたらすための、半導体デバイス、誘電体層、ドープ層、金属層などの、基板上に設けられる構造、機能層またはデバイス、あるいは半導体製造において一般に知られている他の構造が含まれ得る。基板は、誘電体フィルムなどのポリマーベースの層を含むことができる。誘電体フィルムはポリマー複合材料フィルムなどのポリマーフィルムであり得る。ポリマーベースの層は、味の素ビルドアップフィルムなどのフィルムを含むことができる。基板は、担持構造体上に設けられ得、たとえばシリコンベースの担持構造体上に設けられたポリマーフィルムであり得、穿孔することは、下にあるシリコンベースの担持構造体に及ぶことなく、ポリマーフィルムに穿孔することを含み得る。
【0015】
本明細書で理解されるように、孔は、基板の全部の厚さを通り抜ける貫通孔を指し得る。代替として、またはそれに加えて、本明細書の理解として、孔は袋孔を指し得る。詳細には、本明細書の理解として、孔は、孔の配列を指し得る。孔は、基板にビアを形成するように構成され得る。孔は、その中に構成要素を設けるように構成され得る。孔は、基板の機械的特性、電気的特性または熱特性を変更するように有利に構成され得る。孔は、孔を含む後続の製造作業を可能にするように構成され得る。
【0016】
本開示の態様によれば、いわゆる震動ドリル、すなわち、それぞれの孔を、1回のレーザ露光、レーザの投射または「ショット」などの1回のアクションのみで穿孔することは構想されない。むしろ、それぞれの孔を反復プロセスにおいて穿孔することが提案される。本明細書で使用される反復プロセスは、それぞれの孔が、ある特定の期間の間、毎回、本明細書で「ショット」と称されるレーザビームを繰り返し当てられるものと理解され得る。それぞれのショットは、レーザビームが当たる区域から材料を除去することを目標とする。基板の厚さに関して、除去される材料は、たとえば、レーザビームが当たる区域の位置において、基板の厚さの高々25%、より詳細には高々20%、または高々15%に相当する。
【0017】
一態様によれば、穿孔プロセスは、基板上の区域のセットから材料を除去するために基板にレーザビームを当てるように構成されたレーザシステムを含む。レーザシステムは、レーザ発光器を含むレーザ光源を含み得る。レーザ光源は、固体レーザ、ダイオード励起レーザ、パルスレーザ、および/または炭酸ガスレーザなどの紫外線(UV)もしくは赤外線のレーザを含み得る。レーザ光源は、レーザビームの波長が基板材料において高い吸収率を得られるように、たとえば有利な実施形態によって、基板材料に応じて選択され得る。詳細には、c-Si基板用には1,000nmを超える波長の赤外線レーザが選択され得、ポリマー基板、特にABFベースの基板用には、400nm未満の波長のUVレーザが選択され得る。
【0018】
一態様によれば、レーザシステムは、レーザビームを形成するためにレーザビームを合焦する光学アセンブリをさらに含み得る。レーザビームは、高い空間コヒーレンスを伴う狭いビームでよい。レーザビームは、一般的には、たとえば穿孔される孔の直径といったサイズに相当する狭い露光面積をもたらすように、円錐形でよく、かつ/または基板上に合焦されてもよく、たとえば、狭い露光面積は、穿孔される孔の直径の20%~50%または40%未満など、5%~90%を有し得る。一実施形態によれば、レーザビームを受ける区域は外周を含む形状(a shape with a circumference)を有し得、レーザビームは、区域の外周に対応する所定の位置に導かれ得る。
【0019】
一態様によれば、レーザシステムは、レーザビーム配向アセンブリを含み得る。レーザビーム配向アセンブリは、1つまたは複数のレーザビーム配向ミラーを含み得る。レーザビーム配向ミラーの表面は多角形であり得る。レーザビーム配向ミラーは可動でよく、詳細には回転可能でよい。たとえば、レーザビームは、レーザビーム配向ミラーの第1の面に導かれることにより、基板の、穿孔される第1の区域に導かれ得る。一旦、レーザビーム配向ミラーが動かされ、回転され、または枢動されると、レーザビームは、レーザビーム配向ミラーの第2の面に当たって、穿孔される基板の第2の区域へジャンプし得る。
【0020】
一態様によれば、穿孔プロセスは、通常は、特に、穿孔される基板上の区域のセットに対応する位置を定義する順序などの所定の順序で穿孔される区域のセットに対応する基板上の所定の位置を含む。これらの区域を穿孔するための装置はコントローラを含み得る。コントローラは、レーザを、順序に従って、穿孔される区域にのみ放射するように、レーザビームの移動を制御するように構成され得る。これらの区域の間の、穿孔されるように設計されていない領域は、レーザビームを受けない。これは、たとえば、2軸走査ガルボシステムなどの、特に2軸ガルバノメータアセンブリといったガルバノメータアセンブリに含まれる、ミラーなどの制御可能なレーザビーム配向ミラーを与えることによって行われ得る。
【0021】
一態様によれば、レーザビーム配向ミラーは、レーザビームを反射して基板上の所望の位置に導く反射面を有し得る。基板上の所望の位置は第1の位置であり得、レーザビーム配向ミラーは、レーザビームを、第1の位置に導くように制御され得、次に、基板上の所望の位置であり得る第2の位置に導くように制御され得る。第1の位置と第2の位置との間の移行は高速であり得、第1の位置と第2の位置との間のレーザビームのジャンプを含み得る。詳細には、レーザビーム配向ミラーは、複数の位置の間の高速の移行を可能にするように構成され得、たとえば第1の位置から第2の位置への移行が、0.1~100kHz、0.5~50kHzまたは1~30kHzの周波数において生じ得る。
【0022】
加えて、または代替として、一態様によれば、レーザビーム配向ミラーは、レーザビームを、基板の上、特に穿孔される区域のセットを含む基板の区域の上で、連続的に移動させるように構成され得る。連続的な移動は種々の速度を含み得る。レーザビームは連続的であり得る。たとえば穿孔される区域の間の領域にレーザが入射するのを回避するために、レーザビームはシャッタによって繰り返し遮断され得る。シャッタは、コントローラによって、本明細書で説明されたように制御され得る。シャッタは、区域のセットに対応する基板上の所定の位置を穿孔することができるように制御され得る。詳細には、シャッタは、穿孔される区域の間の領域がレーザビームに露光されないように制御され得る。シャッタの代わりに、またはシャッタに加えて、たとえばシャッタを上記で説明されたように動作させること、および/またはパルスレーザなどの、パルス動作用に構成されたレーザ光源を用意することによって、レーザビームがパルス化され得る。一態様によれば、パルス動作用に構成されたレーザ光源は、Qスイッチング用に構成されたレーザ光源を含み得、すなわち、能動的または受動的なQスイッチなどのQスイッチ、および/またはレーザをパルス化するための音響光学変調器を含むレーザ光源を含む。
【0023】
一態様によれば、本明細書で説明された一般的な実施形態では、基板に孔の配列が生成され得、配列はn行×m列からなり、nおよびmは整数である。結果的に、合計でm×nの数の孔が穿孔される。さらなる実施形態では、配列は、n・mの基板に孔のセットを穿孔しないことを含み得る。配列は、設計によって、孔または区画の「欠落」を有し得る。配列はいくつかの部分配列を含み得、部分配列はn・mの配列として定義可能である。実施形態によれば、複数の部分配列に基づいて複雑なパターンが形成され得、部分配列は本明細書で説明されたような配列である。
【0024】
一態様によれば、本明細書で説明されたデバイスおよび方法は、孔のセットを生成するために、基板を処理するように、すなわち、少なくとも1,000の区域、詳細には少なくとも10,000の区域、または少なくとも100,000の区域を含む基板上の区域を処理するように、構成される。
【0025】
一態様によれば、基板に、孔の配列が1つ生成され得る。一態様によれば、基板に、孔の配列がいくつか生成され得る。孔の配列は区域のセットを含み得る。基板は、孔のいくつかの配列、すなわち、区域の少なくとも2つのセット、区域の少なくとも4つのセット、区域の少なくとも6つのセットまたは区域の少なくとも10のセットなど、区域のいくつかのセットを含むように処理され得る。本開示の態様によれば、孔の第1の配列が、完成するまで穿孔されてよく、次に、孔の第2の配列が、完成するまで穿孔されてよい(たとえば少なくとも4つの配列といった、さらに多くの配列がある場合も同様である)。
【0026】
孔の配列をいくつか生成することは、本明細書で説明されたように、基板の第1の区画に孔の配列を生成してから、基板を装置に対して移動させて、基板の第2の区画に孔の次の配列を生成すること含み得る。実施形態によれば、装置には、たとえば区域のセットが処理された後に、装置に基板を供給し、装置に対して基板を移動するように構成された2軸作業台または回転作業台など、サセプタ、保持具、作業台などの基板支持体が含まれ得る。実施形態によれば、処理中に、基板は移動するのではなく固定され得、レーザシステムが、基板または装置に対して移動するように再配置され得る。
【0027】
レーザシステムの加工可能な区域または「視野」が、処理される全体の基板面積よりも小さい場合には、後に孔の配列をいくつか生成するのが特に有利であり得る。一例では、レーザシステムは、レーザシステムが処理可能な区域に対応する「視野」を有し得、区域のセットは視野の範囲内にある。視野は、少なくとも50mm×50mm、少なくとも100mm×100mm、少なくとも165mm×165mm、さらには少なくとも250mm×250mmであり得る。
【0028】
一態様によれば、実施形態において、レーザビームは、穿孔される区域に対応するそれぞれの位置に、少なくとも3回、さらには少なくとも5回もしくは少なくとも10回、導かれる。穿孔プロセスは、ショットの回数が、基板の中に所定の深さの孔を得るように、特に設計され得る。詳細には、所定の深さは基板厚さでよい。この場合、穿孔プロセスは、貫通孔が生成されるようにショット回数があらかじめ設定されるように設計される。
【0029】
一態様によれば、実施形態において、レーザが区域のセットに導かれる回数は、基板材料に依存する、基板の厚さの関数であり、すなわち、薄い基板を露光するパルスまたはショットの回数は、厚い基板の回数よりも少なくなり得る。区域のセットにレーザが導かれる回数は、マイクロメートル単位での基板厚さの10分の1よりも大きくなり得る。第1の例では、レーザは、100μm以下の厚さのシリコン基板の区域に、少なくとも5回、繰り返し導かれる。第2の例では、レーザは、1000μm以上の厚さのシリコン基板の区域に、少なくとも200回、繰り返し導かれる。第3の例では、レーザは、100μm以下の厚さのポリマーフィルム基板またはポリマー複合フィルム基板の区域に、少なくとも20回、繰り返し導かれる。第4の例では、レーザは、1000μm以上の厚さのポリマーフィルム基板またはポリマー複合フィルム基板の区域に、少なくとも400回、繰り返し導かれる。この例では貫通孔が得られる。
【0030】
一態様によれば、区域のセットからの区域は、レーザビームを受ける都度、その後、レーザビームを受けた区域の少なくとも半分は、少なくとも50ミリ秒は冷却を許容されてから、再びレーザビームを受ける。その区域は、少なくとも60ミリ秒、少なくとも80ミリ秒、または少なくとも100ミリ秒、さらには少なくとも500ミリ秒、冷却を許容される。実施形態によれば、レーザビームを受けたそれぞれの区域が冷却を許容される。有利な例では、その区域は、別の区域が処理されている間に冷却を許容され、詳細には、区域のセットにおける個別の区域が冷却を許容される間に、区域のセットは連続的に処理され得る。
【0031】
一態様によれば、実施形態において、穿孔するための方法およびレーザビームを制御するように構成されたコントローラは、基板のすべての孔のサイズ(たとえば直径として測定)および/または深さが等しくなるように設計される。この文脈における「等しい」は、理論的に等しいことと理解され得、実際には、たとえば基板などのわずかに異なる材料特性によるずれを含むものとする。
【0032】
区域のセットに対応するそれぞれの位置に、レーザビームを数回繰り返し導き、その区域の、レーザビームを受けた後の冷却を可能にすることにより、もたらされる孔の均一性および位置決めが改善され得る。その上、基板の局部加熱が回避され得て、区域のセットのエッジにおける孔と区域のセットの中心における孔との間の均一性がより高くなり得る。
【0033】
場合によっては、区域にレーザビームを当てている間に生じる破片が、ある条件下で、たとえばレーザビームを望ましくないやり方で散乱するかまたは吸収することにより、隣接区域の穿孔作業に妨げになり得ることが実験的に観測された。これは、穿孔作業の得られる速度または品質を制限する可能性がある。そのような望ましくない影響は、本明細書でより詳細に説明される装置および方法の態様によって克服され得る。
【0034】
一態様によれば、換気システムが用意される。換気システムは、基板の片面または両面に沿って流体流れを生成するように構成される。基板の片面または両面は、通常は基板の表面を含み、詳細には、基板の表面は穿孔される区域のセットを含む。流体流れは、流体流れ方向に導かれる。流体流れは一方向になり得、すなわち、流体は、区域のセットのそれぞれの区域について、実質的に同一方向に流れることができる。
【0035】
一態様によれば、流体流れは、空気、不活性ガスまたはその混合物などのガスを含み得る。ガスは、基板またはレーザビームの特性に応じて選択されてよい。一例では、ガスは、基板または破片の酸化もしくは燃焼を防止するため、または低波長のレーザビームを使用するときオゾンの生成を防止するために、酸素を含まないことがある。ガスは、特に赤外線レーザビームが使用されるとき、ガスの赤外線吸収を低減するために、乾燥されてよい。ガスは窒素を含み得る。ガスは、ヘリウムまたはアルゴンなどの貴ガスを含み得る。換気システムは、流体流れを再循環させるための循環システムを含み得る。
【0036】
一態様によれば、装置は筐体を含み得る。筐体は、レーザシステム、基板支持体および/または基板を密封することができる。筐体は、ロードロックチャンバまたはドアなど、基板の搬入および搬出のためのポートを含み得る。筐体は、流体流れを供給するように、また、流体組成物を維持するために、すなわち上記で説明されたようにガスを密封するように、構成され得る。筐体は、ガス入口およびガス出口を含むことができる。ガス入口およびガス出口は、特に筐体の内部に流体流れを供給するために、換気システムと流体連通することができる。筐体は、換気システムの一部を形成することができる。
【0037】
一態様によれば、流体流れは層流または実質的な層流であり得る。本開示の文脈における層流は、実質的に乱流的な特性なしで流れる流体として定義され得る。本開示の文脈における層流は、たとえば基板の表面を定義する空間的寸法、またはすべての空間的寸法に沿った、区域のセットのそれぞれの区域の間の間隔によって定義される流れの容積、詳細には基板の表面に隣接する流体流れの容積、詳細には基板の表面の上の2mmまでの空間を含む容積などの流れを含む容積の間に、実質的な水平方向の混合がない流れとしてさらに理解され得る。流体流れは、基板の表面に隣接しない区域における非層流の一部を含み得る。
【0038】
流れは、基板の片面または両面の上の1mm~2mmの空間を含む容積において、1m/秒(m/s)を超える流速、2~5m/秒などの2m/秒を超える流速、または10m/秒を超えるものなど5m/秒を超える流速、すなわち速度を有し得る。流体流量は立方フィート/分(CFM)で表現され得、100mm×100mmの基板を処理するように設計された装置は、通常は少なくとも100CFM、詳細には200CFMを上回る流体流量を有する。
【0039】
一態様によれば、流体流れは、区域にレーザビームを当てたときに生じる破片の少なくとも一部を運び去る。破片は、固体もしくはガス、あるいは、イオン化気体、浮遊粒子および/またはレーザ露光中に基板から蒸発した基板材料などのエーロゾルもしくは蒸気などの実質的にガス状の特性との混合物を含み得る。破片を運び去ることは、区域に再びレーザビームを当てる前に破片を運び去ることを含み得る。破片を運び去ることは、破片を、流体流れ方向に、場合によっては区域のうちのセットの他の区域にわたって、搬送することを含み得る。本明細書でより詳細に説明されるように、ある区域の上に他の区域からの破片がある間は、その区域には、レーザビームを当てないのが有利であり得る。
【0040】
一態様によれば、本明細書で説明されるレーザビームは、一般的には第1の移動方向および第2の移動方向を有する。移動方向は、第1の区域と、次にレーザビームを受ける第2の区域との間の移動の方向として理解され得る。レーザビームは、移動方向を定義する移動中は非活動でよく、すなわち、レーザビームは、移動方向に従って第1の位置から第2の位置へ移動するとき、レーザビームが当たることを意図されていない区域を横切ることがあり、たとえばシャッタによってオフにされてよい。レーザビーム移動方向は、基板の表面に対して定義され得、すなわち、穿孔される区域のセットがある基板の表面によって形成される2次元の平面に沿った移動方向であり得る。同様に、流体流れ方向は、基板によって定義される平面に対する流体流れ方向であり得る。
【0041】
一態様によれば、第1の移動方向および第2の移動方向は、区域のセットのうちの各区域の間のレーザビーム移動方向であり得る。各区域は、詳細には第1のレーザビーム移動方向を定義する各区域は、隣接し得る。第1の移動方向と第2の移動方向とは異なり得、たとえば、その間に、基板によって定義される、平面に沿った角度を有する。一般的な実施形態では、第1の移動方向と第2の移動方向との間の角度は+90°および/または-90°でよい。区域のセットのうちの各区域は、区域のセットのうちの他の区域を横切らずに相手の区域に到達することができる場合には、隣接であり得る。区域のセットのうちの各区域は、それらの区域が、区域のセットの中で最も近い間隔を有する場合、隣接であり得る。本開示の文脈における隣接は、区域同士の接触を伴うものと理解されるべきではなく、すなわち、隣接区域は物理的に間隔があってよい。
【0042】
態様によれば、第1の移動方向は、穿孔プロセス中に、少なくとも1回、実施形態では複数回、変化し得る。詳細には、第1の移動方向は、第1の番号の区域に関する特定方向であり、第2の番号の区域に対する反対方向であり得る。態様によれば、第2の移動方向は、穿孔プロセス中に、少なくとも1回、実施形態では複数回、変化し得る。詳細には、第2の移動方向は、第1の番号の区域に関する特定方向であり、第2の番号の区域に対する反対方向であり得る。
【0043】
一態様によれば、移動方向、詳細には第2の移動方向は、以下で詳細に定義されるように、ある条件下で、区域のセットのうちの非隣接区域の間のレーザビーム移動方向であり得る。区域のセットのうちの各区域は、直接的または間接的に区域のセットのうちの他の区域を横切らなければ相手の区域に到達することができない場合には、非隣接であり得る。区域のセットのうちの各区域は、非隣接区域の間に間隔をあけて隣接する他の隣接区域および/または非隣接区域どうしよりも非隣接区域のいずれかにより近い区域を有する場合には、非隣接であり得る。
【0044】
密集した区域を含む区域は、1つの区域から次の区域へのレーザビームの移動が、次の区域に先立って別の区域に到達し得る場合には、非隣接であり得る。各区域は、レーザがレーザビーム移動によって移動した後に、順序付けでレーザビームを受ける区域が、順序付けで先にレーザビームを受けた区域から、2つ以上の区域、6つ以上の区域、特に少なくとも11以上の区域離れているようなレーザビーム移動であれば、非隣接であり得る。
【0045】
一態様によれば、第1のレーザビーム移動方向と流体流れ方向との間の角度はq1として定義され、第2のレーザビーム移動方向と流体流れ方向との間の角度はq2として定義される。たとえば、レーザビーム移動方向が流体流れと平行であれば、角度は0°である。レーザビーム移動方向が流体流れに対して反対であれば、角度は180°である。レーザビーム移動方向が流体流れに対して垂直であれば、角度は90°または270°である。本明細書で説明された装置および方法は、実施形態では、q1およびq2の定義に関して鏡像対称であり得、したがって、角度の90°と270°とは同等であり得、かつ/または値空間は0°~180°の角度範囲に定義され得る。レーザビームを当てる区域の順序を定義すること、および/またはq1とq2との間の定義された関係に従って穿孔を実行することにより、それぞれの区域の破片は、次にレーザビームを当てる区域の妨げにならないように運び去られ得る。q1およびq2について好ましい範囲および例を含む有利な実施形態が、以下でより詳細に説明される。
【0046】
次に図を参照しながら、上記で論じられた全般的な態様が、より詳細に、実施形態に関連して説明される。
【0047】
図1は、本開示の一実施形態による装置の概略図である。レーザ100はレーザビーム120を放射する。レーザビームは、基板110に直接放射され得る。一般に、この機構に限定されることなく、レーザを移動させるためのアクチュエータ(図示せず)が設けられ得る。移動は、並進運動および/または回転運動を含み得る。図1の実施形態では、示されるように、レーザビームはビームディレクタ105に導かれる。ビームディレクタ105は、レーザビームに所定の順序を辿らせるなど、レーザビームを案内するための、1つまたは複数のミラーおよび/または1つまたは複数のレンズを特に含み得る。加えて、またはその代わりに、ビームディレクタはシャッタを含み得る。シャッタは、通常は、ブロック時間中はレーザビームを遮断して、照射時間中はレーザビームを通すように、コントローラによって制御される。詳細には、シャッタは、基板の穿孔される区域の外部にレーザビームが当たるのを回避するように、レーザビームを遮断し得る。
【0048】
実施形態によれば、シャッタは、2つのショットの間はレーザビームを遮断するように制御され得る。たとえば、第1のショットは、穿孔される区域に対応する基板上の位置において、基板に当てられてよい。次に、レーザビームは、シャッタによって遮断されてから、穿孔される第2の区域に導かれ、その後、しばらくすると、シャッタはレーザビームの遮断を解除する。本明細書で使用される、シャッタの制御は、レーザビーム移動の制御と合致し得る。
【0049】
基板110は基板支持体115上に留まってよい。基板支持体は可動式であり得る。他の実施形態では、基板支持体が固定されてよい。本開示の装置は、基板支持体上に基板を位置決めするためのグリッパなどの基板移動装置を含み得る。基板支持体は、基板がレーザ加工されても完全に静止していることを保証するように基板の底部に減圧をかけるように構成された減圧吸引ユニットを含み得る。
【0050】
本開示の装置は、換気システム125をさらに含み得る。示されるように、換気システムは流体流れ15を生成する。本開示で論じられる流体流れ15は、通常は、基板支持体表面および/または基板に対して平行に配向される。流体流れは、レーザ加工中に生じる破片を運搬するかまたは運び去る流れ15を生成すると想定される。詳細には、本開示は、穿孔プロセスを最適化して、区域の穿孔中に生じた破片が、近隣区域または隣接区域などの別の区域の穿孔に悪影響を与えないことを保証するように、レーザ移動の制御が、流体流れ方向に関連して設計されているという利益を提供するものである。
【0051】
図2に関して例示的に示されるように、装置は筐体を含み得る。換気システム125は、筐体の外部に設けられてよい。筐体の中に流体流れを案内する、図2に示されるチャネルなどの吸気開口130が設けられ得る。基板は筐体の内部に与えられ得る。筐体は、流体流れが筐体を出ることを可能にするための出口開口135をさらに含み得る。代替実施形態では、換気システムは筐体の内部に設けられる。その上、以前に説明された実施形態のうち任意のものと組み合わされ得る実施形態では、流体流れ吸引システムが設けられ得る。流体流れ吸引システムは、換気システムによって供給された流体流れを吸引するように構成され得る。このようにして、基板から破片などを除去するのに特に最適化され得る閉じた流体流れが供給され得る。流体の再循環を可能にするために、循環システムなどの流体運送システムによって、換気システム125に出口開口135が接続され得る。出口開口135を出た後に、流体から破片をフィルタリングするためにフィルタが設けられ得る。
【0052】
一態様によれば、区域のセットのうちの各区域から材料を除去するために基板にレーザビームを導く順序は、以下の3つの条件のうちいずれかを満たすように定義される。
1)cos q1とcos q2との両方が0以下であること。言い換えれば、q1とq2との両方が90°~270°の範囲にある。流体流れ方向に対する第1または第2のレーザビーム移動方向は、この範囲内にあり、すなわち、移動方向は、流体流れに直交し得、または直交する移動に加えて、流体流れ方向と反対の移動成分を有する方向になり得る。一例では、この条件が満たされるのは、第1のレーザビーム移動方向および第2のレーザビーム移動方向のうち1つが、流体流れ方向と反対の場合、および/または第1のレーザビーム移動方向および第2のレーザビーム移動方向のうち1つが、流体流れ方向に対して垂直の場合である。
2)q1およびq2の各々が、20°を上回り、かつ340°未満であること。または
3)q1またはq2が、20°未満であるか、または340°を上回り、順序付けてレーザビームを受ける区域が、順序において先にレーザビームを受けた領域から2つ以上の領域だけ離れるように、レーザビームの動きが制御されること。この条件では、レーザビーム移動方向は、流れの方向と一致する移動成分を有する。隣接区域には、先にレーザビームを当てられた区域の破片が及び得るが、離れた区域は影響を受けずに済む。有利な例では、この条件は、第1のレーザビーム移動方向または第2のレーザビーム移動方向のうち1つのみに関して選択される。有利な例では、この条件が選択されるのは、たとえば条件1)もしくは2)による代替の移動方向が利用不可能な場合、または条件3)による移動によって、条件1)もしくは2)に従ういくつかの次の動作が可能になる場合のみである。
【0053】
以下では、レーザ移動のためのいくつかの例示の順序が、図を参照しながら論じられる。
【0054】
図3図7に例示的に示されるように、円10は穿孔を想定される区域を表す。図を見やすくするために、これらの円のうち数個だけが、参照番号10によって明示的に表されている。本開示によって供給される流れは、図の矢印15で示される方向を有する。第1のレーザビーム移動方向は全体的に実線で表され、第2のレーザビーム移動方向は全体的に点線で表されているが、これは限定と見なされるべきではなく、この慣例からの例外は以下の例において明らかになる。本明細書で説明されたすべての実施形態に組み合わされ得る、または含まれ得る、全般的な態様によれば、第1のレーザビーム移動方向は、隣接区域の間のレーザビームの移動の方向であり得、かつ/または第2のレーザビーム移動方向は、非隣接区域の間のレーザビームの移動の方向であり得る。
【0055】
次に図3を参照して、一実施形態による、基板上の区域のセットが示されている。図示の容易さのために、以下の図に示される区域のセットは、本開示の用途と比較して、より少なくなっている。区域のセットは4×8の配列として示されている。区域のセットのうちそれぞれの区域が、ショットの順序に従って複数回レーザビームを受ける。矢印で示される方向を有する流体流れ15が、供給される。順序は、たとえば左下の区域20から始まり得る。続く区域は、ライン1すなわち流体流れ方向に対する90°の角度q1を有する実線で表された第1のレーザビーム移動方向に沿って、順次にレーザビームを受け、したがって条件1)を満たす。
【0056】
レーザビームは、右下の区域に到達したとき、次のラインの左端の区域に到達するように、第2のレーザビーム移動方向(点線)に移動される。第2のレーザビーム移動方向2は、流体流れ方向に対する260°の角度q2を有し、したがって条件1)を満たす。
【0057】
これらの動作は、右上の区域25に到達するまで繰り返され、その後、第2のレーザビーム移動方向2は、レーザビームを左下の区域20へ戻すように調節される。この移動に関する第2のレーザビーム移動方向2は流体流れ方向q2に対して300°であり、したがって条件1)または2)はどちらも満たされない。しかしながら、右上区域は、左下区域からいくつかの区域だけ離れており、したがって条件3)が満たされる。
【0058】
次に図4を参照して、一実施形態による区域のセットが示されている。区域のセットは、図3に関連して説明された区域のセットでよく、したがって、レーザビームの位置決めにおける差のみが説明される。順序は、たとえば右下の区域20から始まり得る。続く区域(一番下のラインで示されている)は、ライン、すなわち流体流れ方向に対する270°の角度q1を有する実線で表された第1のレーザビーム移動方向1に沿って、順次にレーザビームを受け、したがって条件1)を満たす。
【0059】
レーザビームは、左下の区域に到達したとき、次のラインの左端の区域に到達するように、第2のレーザビーム移動方向2に移動される。第2のレーザビーム移動方向は流体流れ方向と反対であり、したがって、流体流れ方向に対する180°の角度q1を有し、したがって条件1を満たす。
【0060】
ラインに沿って続く区域は、続いて、先のようにレーザビームを受けるが、第1のレーザビーム移動方向1は、以前の第1のレーザ移動方向に対する反対方向の移動に調節されて、流体流れ方向に対して90°の角度q1を有する実線として表され、したがって条件1)を満たす。
【0061】
これらの動作は、右上の区域25に到達するまで繰り返され、その後、第2のレーザビーム移動方向は、レーザビームを右下の区域へ戻すように調節される。この移動に関する第2のレーザビーム移動方向2は、流体流れ方向と同一であり、したがってq2は0°である。そのような状況については、条件1)も2)も満たされない。しかしながら、右上区域25は、右下区域20からいくつかの区域だけ離れており、したがって条件3)が満たされる。区域25から区域20への移行は、図4には理解しやすさのみの理由から曲線として表されており、すなわち、移行は、区域25と20との間の直線に一致して実行され得ることに留意されたい。しかしながら、実際には、角度q2=0°に沿った第2のレーザビーム移動方向へのこの移動の後にレーザが配置される区域(図4では参照番号20と表されている)は、この移動前の区域から少なくとも10の区域、より具体的には少なくとも20の区域だけ離れるので、参照番号25で表された区域の穿孔からの破片が、さらなる穿孔作業に危害を及ぼすことはない。加えて、区域25の処理によって生じた破片が流体流れによって一掃されて区域20の処理の妨げにならないことを保証するために、区域25と20との間の移行は、ゆっくりと、または遅れて実行され得る。
【0062】
次に図5を参照して、一実施形態による区域のセットが示されている。区域のセットは、図3または図4に関連して説明された区域のセットでよい。図3または図4に関連して説明された実施形態に対する差のみが論じられる。順序は、区域のセットのうちの左上コーナーの区域20の処理から始まる。区域の第1のラインが処理された後に、レーザビームは、次のラインの左端の区域に向けて、第2のレーザビーム移動方向に移動される。角度q2は250°であり、したがって条件2)を満たす。その上、左端の区域は、先の区域からいくつかの区域だけ離れており、したがって条件3)を満たす。区域25から区域20へ戻る移行は、150°の角度q2の第2のレーザビーム移動方向を有し、したがって条件1)を満たす。
【0063】
次に図6を参照して、一実施形態による区域のセットが示されている。区域のセットは、図3図5に関連して説明された区域のセットでよく、したがって、レーザビームの位置決めにおける差のみが説明される。順序は、たとえば右下の区域20から始まり得る。続く4つの区域は、ライン、すなわち流体流れ方向に対する180°の角度q1を有する実線で表された第1のレーザビーム移動方向に沿って、順次にレーザビームを受け、したがって条件1)を満たす。
【0064】
レーザビームは、右上の区域に到達したとき、次のラインの一番下の区域に到達するように、第2のレーザビーム移動方向に移動される。第2のレーザビーム移動方向は、流体流れ方向に対する345°の角度q2を有し、したがって、条件1)または2)はどちらも満たされない。しかしながら、右上区域25は、右下区域20からいくつかの区域だけ離れており、したがって条件3)が満たされる。実際には、少なくとも10区域、具体的には21区域以上、さらには31区域以上離れている。
【0065】
これらの動作は、左上の区域25に到達するまで繰り返され、その後、第2のレーザビーム移動方向は、レーザビームを右下の区域20へ戻すように調節される。この移動の角度q2は60°であり、したがって条件2)を満たす。その上、左端の区域は、先の区域からいくつかの区域だけ離れており、したがって条件3)を満たす。
【0066】
次に図7を参照して、一実施形態による区域のセットが示されている。区域のセットは4×6の配列として与えられている。処理動作は、配列における一番下のライン区域20から始まり、270°の角度q1を有する第1の方向に沿って、最も外側の区域に到達するまで外側へ移動する。レーザビームの第1の移動方向は条件1)を満たす。次いで、レーザビームは、配列において開始区域20に隣接する区域のラインにおける区域に到達するために、90°のレーザビーム移動方向q2に移動される。第2の方向に沿った移行は、図7には理解しやすさのみの理由から曲線として表されており、すなわち、移行は、直線に一致して実行され得ることに留意されたい。したがって、レーザビームの第2の移動方向は条件1)を満たす。
【0067】
移行の後に、第1のレーザビーム移動方向q1の方向が90°に調節され、最も外側の区域に到達するまで、配列の中の区域のラインの区域が処理される。次いで、区域の配列の中の区域の次のラインへの移行が、110°の角度q2を有する第2のレーザビーム移動方向で実行され、したがって条件1)を満たす。
【0068】
これらの動作は、右上の区域25に到達するまで繰り返され、その後、第2のレーザビーム移動方向は、レーザビームを左下の区域20へ戻すように調節される。この移動に関する第2のレーザビーム移動方向は流体流れ方向q2に対して300°であり、したがって条件1)または2)はどちらも満たされない。しかしながら、右上区域は、左下区域からいくつかの区域だけ離れており、したがって条件3)が満たされる。
【0069】
説明された実施形態、特に上記で説明された条件1)~3)のいずれかを満たす実施形態によってレーザビームを導くことにより、区域のセットの高速処理が実現され得る一方で、所定の順序に従って次の区域が処理されている間に、区域のセットのそれぞれの区域を少なくとも50ミリ秒の間冷却することも同時に可能になる。その上、レーザ作業を実行している間に生じた破片は、流体流れによって、流体流れ方向に運び去られ、その一方で、それぞれのレーザショットは破片による影響を受けない。結果的に、レーザショットの間の待ち時間が不要になり、その一方で、既知のプロセスでは得られない高い処理品質を維持する。
【0070】
図8は、角度q1およびq2を示すことを目標とするものである。矢印15は流体流れ方向を表し、各区域20の間のさらなる矢印は、第1のレーザビーム移動方向または第2のレーザビーム移動方向を表し得る。第1または第2のレーザビーム移動方向(図8では「1/2」として表されている)と流体流れ方向との間の角度は、200で表され、図8の例では270°になる。
【0071】
前述のことは本開示の実施形態を対象とするものであるが、その基本的な範囲から逸脱することなく本開示の他の実施形態やさらなる実施形態が考案され得、その範囲は以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】