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特表2024-508970(4S)-24-クロロ-4-エチル-73-フルオロ-35-メトキシ-32,5-ジオキソ-14-(トリフルオロメチル)-32H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-74-カルボキサミドを含んでいる医薬剤形
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  • 特表-(4S)-24-クロロ-4-エチル-73-フルオロ-35-メトキシ-32,5-ジオキソ-14-(トリフルオロメチル)-32H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-74-カルボキサミドを含んでいる医薬剤形 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】(4S)-24-クロロ-4-エチル-73-フルオロ-35-メトキシ-32,5-ジオキソ-14-(トリフルオロメチル)-32H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-74-カルボキサミドを含んでいる医薬剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20240220BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240220BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P7/10
A61P9/00
A61P9/10
A61P7/02
A61P27/02
A61K9/20
A61K9/10
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/20
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554814
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2022055519
(87)【国際公開番号】W WO2022189278
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161493.8
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】メルケル,ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】ゼルノ,ペーター
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC14
4C076DD28U
4C076DD29U
4C076DD41C
4C076DD57F
4C076DD67A
4C076EE16F
4C076EE23F
4C076EE23H
4C076EE31A
4C076EE32B
4C076EE32H
4C076FF02
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF21
4C076FF33
4C076FF52
4C076FF53
4C076FF68
4C076GG12
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC60
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA10
4C086NA11
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA54
4C086ZA83
(57)【要約】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナ-ヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる、非晶質固体分散体(ASD)及び経口投与用の固形医薬剤形(ここで、これらは、活性成分(I)が該非晶質固体分散体(ASD)及び経口投与用の固形医薬剤形から即時に放出されることを特徴とする)に関し、及び、さらに、それらを調製する方法、薬剤としてのそれらの使用にも関し、及び、さらに、疾患(特に、心血管疾患、好ましくは、血栓性又は血栓塞栓性の疾患、及び、浮腫、及び、さらには、眼科疾患)を治療及び/又は予防するためのそれらの使用にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる、経口投与用の固形医薬剤形。
【請求項2】
(a) (4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる、非晶質固体分散体(ASD);
(b) 少なくとも1の滑沢剤;
(c) 少なくとも1の崩壊促進剤;
(d) 場合により、1以上の増量剤;及び、
(e) 場合により、1以上の界面活性剤;
を含んでいる、請求項1に記載の経口投与用の固形医薬剤形。
【請求項3】
装置2(パドル)を使用する欧州薬局方の放出方法に従って、30分後に活性成分(I)の少なくとも85%を放出媒体中に放出することを特徴とする、請求項1又は2に記載の経口投与用の固形医薬剤形。
【請求項4】
前記剤形が錠剤であることを特徴とする、請求項1~3に記載の経口投与用の固形医薬剤形。
【請求項5】
前記薬学的に許容されるマトリックスが、固体分散体ベースと担体の組合せで構成されていることを特徴とする、請求項1~4に記載の経口投与用の固形医薬剤形。
【請求項6】
前記固体分散体ベースが、ポリマーポリビニルピロリドン(PVP)であることを特徴とする、請求項5に記載の経口投与用の固形医薬剤形。
【請求項7】
(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる、非晶質固体分散体(ASD)。
【請求項8】
(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含み、並びに、場合により、甘味料、香味料及び着色剤を含んでいる、請求項7に記載の非晶質固体分散体(ASD)。
【請求項9】
(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))が非晶質形態で存在していることを特徴とする、請求項7又は8に記載の非晶質固体分散体(ASD)。
【請求項10】
前記薬学的に許容されるマトリックスは、固体分散体ベースと担体の組み合わせで構成されていることを特徴とする、請求項7~9に記載の非晶質固体分散体(ASD)。
【請求項11】
前記固体分散体ベースが、ポリマーポリビニルピロリドン(PVP)であることを特徴とする、請求項10に記載の非晶質固体分散体(ASD)。
【請求項12】
前記担体は、増量剤、滑沢剤、崩壊促進剤、界面活性剤、甘味料、香味料及び/若しくは着色剤又はそれらの組み合わせの群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の非晶質固体分散体(ASD)。
【請求項13】
(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を調製する方法であって、該非晶質固体分散体(ASD)を湿式造粒によって調製することを特徴とする、前記方法。
【請求項14】
前記非晶質固体分散体(ASD)を流動床造粒(ここで、活性成分(I)を50%エタノールと50%アセトンの混合物を含んでいる造粒液に溶解させ、そして、流動床造粒機に導入する)によって調製することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法によって製造することができる、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナ-ヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる、非晶質固体分散体(amorphous solid dispersion)(ASD)及び経口投与用の固形医薬剤形(ここで、これらは、活性成分(I)が該非晶質固体分散体(ASD)及び経口投与用の固形医薬剤形から即時に放出されることを特徴とする)に関し、及び、さらに、それらを調製する方法、薬剤としてのそれらの使用にも関し、及び、さらに、疾患(特に、心血管疾患、好ましくは、血栓性又は血栓塞栓性の疾患、及び、浮腫、及び、さらには、眼科疾患)を治療及び/又は予防するためのそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
活性成分(I)、即ち、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド〔これは、4-({(2S)-2-[4-{5-クロロ-2-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]ブタノイル}アミノ)-2-フルオロベンズアミドとも称される〕は、WO2017/005725から知られており、そして以下の式で表される:
【化1】
活性成分(I)は、第XIa因子阻害薬として作用し、そして、この特異的な作用機序により、経口投与後、疾患の治療及び/又は予防において、好ましくは、血栓性若しくは血栓塞栓性の疾患及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性の合併症、特に、心血管疾患(これは、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞又はステント血栓症を包含する)、並びに、脳血管動脈における疾患、及び、一過性虚血発作(TIA)をもたらす他の疾患、虚血性脳卒中(これは、心塞栓性脳卒中及び非心塞栓性脳卒中を包含する)、並びに/又は、末梢動脈疾患(これは、末梢動脈閉塞、急性四肢虚血、切断、インターベンション(例えば、血管形成術、ステント移植又は外科手術及びバイパス形成手術)の後の再閉塞及び再狭窄、及び/又は、ステント血栓症を包含する)をもたらす末梢動脈の疾患の治療及び/又は予防において、有用である。
【0003】
経口投与用の固形医薬剤形を開発するために、活性成分(I)、即ち、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミドは、非晶質形態として、又は、結晶変態Iとして、又は、非晶質形態と結晶変態Iの混合物として、使用される。
【0004】
長期間にわたる治療が必要な疾患の場合、又は、疾患を長期間予防するためには、薬剤の摂取頻度をできるだけ少なく維持し、錠剤のサイズをできるだけ小さく維持することが望ましい。これは、患者にとって利便性が高まるだけでなく、不規則な摂取によるデメリットが軽減される(コンプライアンスの向上)ことで治療の信頼性も高まる。コンプライアンスを高めるために、特に、高齢患者におけるコンプライアンスを高めるために、特に高投薬量に関しては、錠剤は、可能な限り小さくあるべきであり、即ち、高濃度の活性成分を有しているべきである。
【0005】
開発の過程で、活性成分(I)が少なくとも2つの固体状態の形態(非晶質形態及び結晶変態I)で利用できることが見いだされた。また、開発の過程で、活性成分(I)の結晶変態Iを投与した場合、ラットにおける相対的な生物学的利用能が11%まで低下することも分かった。また、経口固形剤形の溶解挙動は、活性成分(I)の結晶変態Iを含有する経口固形剤形(例えば、錠剤)が当業者に既知の標準的な方法によって製造される場合、劣っている。さらに、活性成分(I)は、2つのエナンチオマー形態で入手可能であるが、そのうちの1つの形態は、インビボで効果を示さない。
【0006】
従って、開発の目的は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロ-メチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形(ここで、該経口固形剤形は、優れた溶解挙動及び活性成分(I)の良好な生物学的利用能を示す)を提供することであった。さらに、活性成分(I)のエナンチオマー純度は、当該固形医薬剤形の中においてのみではなく、その製造プロセス中においても、保護されるべきである。最小の錠剤サイズを確保するために、高い薬物含有量(剤形あたり活性成分(I)>20%)を達成すべきである。さらに、活性成分(I)の非晶質形態は、長期保存中に、該固形医薬剤形中で安定であるべきである。
【0007】
驚くべきことに、活性成分(I)がその中に非晶質形態で存在している非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる固形医薬剤形は、優れた溶解挙動及び良好な生物学的利用能を示す。さらに、活性成分(I)のエナンチオマー純度は、該非晶質固体分散体(ASD)の中においてのみではなく、該固形医薬剤形の中及び湿式造粒を使用するその製造プロセス中においても、保護され得るが、一方、同時に、高い薬物含有量(剤形あたり活性成分(I)>20%)も達成され得る。活性成分(I)の該非晶質形態は、非晶質固体分散体(ASD)の中で賦形剤によって安定化される。活性成分(I)は標準的なIR錠剤中では安定化されていないので、非晶質の活性成分(I)の結晶化を阻害しない標準的な製剤アプローチでは、溶解性及び生物学的利用能を達成することができない。活性成分(I)の結晶化により、溶解速度が低下し、活性成分(I)の生物学的利用能が低下する。
【0008】
さらに、特定の賦形剤の組み合わせ及び特定の溶媒の組み合わせを用いた製造プロセスによって、非晶質形態及び/又は結晶変態Iの活性成分(I)を用いて製造プロセスを開始することが可能となり、そして、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロ-メチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形が得られ、ここで、活性成分(I)の非晶質形態は、非晶質固体分散体(ASD)中で安定化される。
【0009】
本発明に関連して、用語「非晶質固体分散体(ASD)」が使用されているが、文献中において、一部の著者は、本発明に関連する固体分散体と同じ意味を有する用語「固溶体」を使用している。
【0010】
以下では、異なる種類の固体分散体(固溶体、ガラス溶液、ガラス懸濁液、結晶性担体中の非晶質沈澱、共晶又は偏晶(monotecic)、化合物又は錯体形成、及び、それらの組み合わせ)を集合的に固体分散体と称する。
【0011】
本発明に関連して、用語「結晶化(crystallization)」は、活性成分が以前は結晶質ではなかった場合の結晶化、及び/又は、活性成分が結晶質であり、その後、非晶質形態に移行し、非晶質形態で安定化され、その後、再び結晶化した場合再結晶を意味する。
【0012】
本発明による「マトリックス」は、活性成分(I)を溶解又は分散させることが可能な、高分子賦形剤、非高分子賦形剤及びそれらの組み合わせである。本発明に関連して、「マトリックス」は、非晶質固体分散体(ASD)の製造プロセス中に使用される「固体分散体ベース(solid dispersion base)」と「担体」の組み合わせで構成される。従って、「マトリックス」は、非晶質固体分散体(ASD)の不可欠な部分になる。従来技術において、一部の著者は、マトリックスの代わりに、又は、マトリックス剤の代わりに、用語「担体」を使用している。
【0013】
非晶質固体分散体(ASD)及びその製造プロセス自体は、知られている。
【0014】
C. Leuner及びJ. Dressman「Eur. J. Pharm. Biopharm., 50 (2000) 47 to 60」は、固体分散体の調製方法を、ホットメルト法と溶媒法に大別している。C. Leuner及びJ. Dressmanによれば、固体分散体の製造へのホットメルト押出しの適用は、固体分散体の調製に適した方法とみなされている。著者らは、溶媒を除去するために使用される条件のわずかな変化が製品性能における非常に大きな変化をもたらす可能性があるという理由で、非溶媒法としてホットメルト押出しを好んでいる。
【0015】
J. Breitenbach「Eur. J. Pharm. and Biopharm., 54 (2002) 107-117」は、固体分散体を製造するための最も関連する技術を、噴霧乾燥、共蒸発、共沈、凍結乾燥及びロール混合又は共粉砕を用いた包埋、ホットスピン混合に分類している。一般に、溶媒蒸発に基づく既知方法は、例えば、以下のものである:凍結乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、粉末、顆粒又はペレットの積層、及び、流動床造粒。J. Breitenbachは、固体分散体は、例えば化学的及び物理的安定性に関して、異なる、殆ど予測不可能な挙動を示すと述べている。
【0016】
R. J. Chokshi et al.「J. Pharm. Sci., 97(6) (2008) 2286-2298」及びG.P. Andrews et al.「J. Pharm. Pharmacol. 62 (2010) 1580-1590」は、固体分散体は本質的に不安定であると述べている。薬物の溶解を促進するための固体分散体アプローチは、薬物が高い内部エネルギーと比体積を有する準安定な非晶質状態でその中に存在するガラス溶液の生成を含んでいる。これにより、保存中に結晶化する傾向を有する系が生じる。
【0017】
結晶化を回避するために適用される製造プロセス及びパラメータの選択、並びに、結晶化を回避するための適切な賦形剤の識別も、当業者にとって自明ではない。N. Shah et al., 2014, page 130 (Fig. 4.2)によると、非晶質固体分散体を構成するためのさまざまな潜在的な賦形剤を考えることができる。これらの賦形剤の全てが、非晶質固体分散体の調製に同様に適しているわけではない。
【0018】
G. Van den Mooter「Drug Discovery Today: Technologies, Vol. 9 (2) (2012) e79-e85」は、非晶質固体分散体の使用及び製造について記載しており、そして、学術界と製薬業界の両方において多大な研究努力が行われているにもかかわらず、固体分散体技術に依存する製品はほとんど市場に流通していないことについて言及している。この不一致に関する主な理由として、保存期間中の物理的安定性の問題が認識されている。
【0019】
薬物放出、薬物透過性、熱力学的安定性に関して薬物送達システムを改変又は強化することが可能な特性を有し、従って、生物学的利用能に影響を与える少なくとも2種類の化合物で構成される(担体)マトリックスの中に1種類以上の薬物が分散されている、所謂、多成分固体分散体が、L. M. De Mohac, et al.「Journal of Drug Delivery Science and Technology, 57 (2020) 101750」に記載されている。
【0020】
K. Six et al.「J. Pharm. Sic., 93 (2004) 124-131」は、2種類のポリマーの組み合わせ(PVPVA64、N-ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー、及び、Eudragit E100、アミノメタクリレートコポリマー)の中におけるイトラコナゾールの固体分散体について研究し、そして、組み合わされたポリマーを含んでいる固体分散体の安定性及び溶解性が単一のポリマーのみを使用して達成され得る安定性及び溶解性よりも優れていることを見いだした。
【0021】
しかしながら、Y. Huang et al.「Acta Pharmaceutica Sinica B, 4(1) (2014) 18-25」において、分子間の薬物-ポリマー相互作用が常に固体分散体の設計と性能の決定要因であるということが強調されている。固体分散体の安定性は、保存中の吸湿によっても影響される。
【0022】
例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)は、水分を吸収することで知られており、ヒドロキシプロイルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)などの吸水に抵抗性を示すポリマーが、安定した固体分散体を調製するための最初の選択肢となった。これは、D. T. Friesen et al.「Mol. Pharm., 5(6) (2008) 1003-1019」において言及されている。
【0023】
薬物と担体の組み合わせに応じて、固溶体の放出特性は変化するため、それらは、固体分散体の性能に大きな影響を与えるものの1つとなる。C. Leuner及びJ. Dressman「Eur. J. Pharm. Biopharm., 50 (2000) 47 to 60」は、製剤に対する最適な比率を見つけるために、薬物と担体の比率を非常に徹底的に確認する必要があることを強調した。担体の量が増加すると、放出速度は遅くなり得る。組み込まれる担体又は担体混合物に応じて、ゲルが形成される可能性があり、その結果、放出速度が低下する。従って、活性成分(I)を含有する非晶質固体分散体を調製するために、どの賦形剤を使用するか又はどの製造プロセスを適用するかは、当業者にとって明白ではない。
【0024】
さらに、WO2020/210629には、第XIa因子阻害薬である(9R,13S)-13-{4-[5-クロロ-2-(4-クロロ-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)フェニル]-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリミジン-1-イル}-3-(ジフルオロメチル)-9-メチル-3,4,7,15-テトラアザトリシクロ[12.3.1.02,6]オクタ-デカ-1(18),2(6),4,14,16-ペンタエン-8-オンを含んでいる非晶質固体分散体(ASD)が記載されている。この化合物は、噴霧乾燥によってヒドロキシプロイルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)などの薬学的に関連するポリマーの中の非晶質固体分散体として製剤化され、その非晶質固体分散体は、剤形あたり20%未満の活性成分(I)の薬物含有量を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】WO2017/005725
【特許文献2】WO2020/210629
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Eur. J. Pharm. Biopharm., 50 (2000) 47-60
【非特許文献2】Eur. J. Pharm. and Biopharm., 54 (2002) 107-117
【非特許文献3】J. Pharm. Sci., 97(6) (2008) 2286-2298
【非特許文献4】J. Pharm. Pharmacol. 62 (2010) 1580-1590
【非特許文献5】N. Shah et al., 2014, page 130 (Fig. 4.2)
【非特許文献6】Drug Discovery Today: Technologies, Vol. 9 (2) (2012) e79-e85
【非特許文献7】Journal of Drug Delivery Science and Technology, 57 (2020) 101750
【非特許文献8】J. Pharm. Sic., 93 (2004) 124-131
【非特許文献9】Acta Pharmaceutica Sinica B, 4(1) (2014) 18-25
【非特許文献10】Mol. Pharm., 5(6) (2008) 1003-1019
【非特許文献11】Eur. J. Pharm. Biopharm., 50 (2000) 47 to 60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上記で述べたように、非晶質固体分散体(ASD)を調製する際に最も頻繁に生じる課題は、非晶質固体分散体の物理的安定性、マトリックスの種類と量、放出速度における必要な増加を促進するために必要な薬物とマトリックスの比率及び非晶質固体分散体と組み込まれた薬物の物理的及び化学的安定性を保護するための適切な製造プロセスの選択とそのスケールアップである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
驚くべきことに、優れた溶解挙動及び活性成分(I)の良好な生物学的利用能を示し並びに活性成分(I)のエナンチオマー純度の保護を示す、活性成分(I)を含んでいる本発明による非晶質固体分散体(ASD)は、(a)使用されるマトリックス、(b)製造プロセスにおいて使用される溶媒、及び、(c)製造プロセスに依存することが見いだされた。本発明のために選択される方法及び賦形剤は、いくつかの態様において、当業者に既知である方法及び賦形剤並びに非晶質固体分散体(ASD)を調製するために一般的であることが知られている方法及び賦形剤とは対照的である。
【0029】
(a) マトリックス
さらにまた、驚くべきことに、本発明による非晶質固体分散体に含まれている活性成分(I)の非晶質形態は、マトリックスとして1種類の単一ポリマーのみを適用することによって安定化され得ることが見出された。このことも、マトリックスとして少なくとも2種類のポリマーを適用する多成分系を支持する従来技術(K. Six et al., J. Pharm. Sic., 93 (2004) 124-131 and L. M. De Mohac, et al., Journal of Drug Delivery Science and Technology, 57 (2020) 101750)とは対照的である。
【0030】
さらに、マトリックスポリマーとしてポリビニルピロリドン(PVP)を使用することにより、本発明による活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体(ここで、活性成分(I)の非晶質形態は、製造プロセス中のみではなく、長期保存又は開放保存の間も安定化される)を製造することが可能であったことも驚くべきことであり、このことは、PVPがその吸水挙動に起因して劣っていると記載しているD. T. Friesen at al.とは対照的である。驚くべきことに、ヒドロキシプロイルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)は、望ましい溶解基準(30分間の調査期間後に、活性成分(I)の少なくとも85%を放出媒体中に放出する)に至らず、そして、その非晶質形態にある活性成分(I)を安定化できない可能性がある。このことも、HPMCASをPVPよりも優先しているD. T. Friesen et al.とは対照的である。
【0031】
本発明の利点は、単一ポリマーとしてのポリビニルピロリドン(PVP)をマトリックスの中にのみ適用することによって、非晶質固体分散体(ASD)中で活性成分(I)の非晶質形態を安定化することが可能であることであり、それによって、薬物含有量が高い(剤形あたり活性成分(I)>20%)固形医薬剤形が得られ、小さな錠剤サイズが可能になる。
【0032】
(b) 製造プロセスにおいて使用される溶剤
驚くべきことに、溶媒であるエタノールとアセトンの組合せにより、純粋なエタノールを使用した場合の溶解度と比較して溶解度が5倍以上向上し、及び、純粋なアセトンを使用した場合の溶解度と比較して溶解度が約2倍向上した。造粒プロセスにおける該溶媒によって、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を、非晶質形態若しくは結晶変態Iの形態にあるか又は両方の形態の混合物である非晶質固体分散体(ASD)を調製する方法に導入することが可能になる。
【0033】
(c) 製造プロセス
驚くべきことに、活性成分(I)を含んでいる本発明による非晶質固体分散体(ASD)は、C. Leuner及びJ. Dressmanによって提案及び支持されているようなホットメルト押出しによっては製造できないことが分かった。ホットメルト押出しなどの非溶媒法を適用すると、活性成分(I)のラセミ混合物が得られた。活性成分(I)の1つのエナンチオマーのみがインビボで有効であるので、ホットメルト押出しによって製造された活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体を動物又はヒトに投与した後、生物学的利用能の低下が観察されるであろう。従来技術とは対照的に、本発明による活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体は、湿式造粒法によって製造することが可能であり、この方法では、製造される全てのバッチにおいて、エナンチオマー純度が再現可能な方法で保護される。
【0034】
非晶質固体分散体(ASD)
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる、非晶質固体分散体(ASD)を提供する。
【0035】
本発明は、さらに、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含み、並びに、場合により、甘味料、香味料及び着色剤を含んでいる、非晶質固体分散体(ASD)を提供する。
【0036】
本発明は、さらに、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))が非晶質形態で存在している、非晶質固体分散体(ASD)を提供する。
【0037】
本発明に関連して、薬学的に許容されるマトリックスは、固体分散体ベースと担体の組み合わせで構成されている。
【0038】
本発明に関連して、固体分散体ベースは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(コポビドン)(例えば、Kollidon VA64)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシアルキルメチルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit(登録商標)タイプ)、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ビニルアルコール/酢酸ビニルコポリマー、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される、薬学的に許容されるポリマーである。好ましい固体分散体ベースは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(コポビドン)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール及びポリエチレンオキシドからなる群から選択される。極めて好ましい固体分散体ベースは、ポリマーポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0039】
本発明に関連して、担体は、増量剤、滑沢剤、崩壊促進剤、界面活性剤、甘味料、香味料及び/若しくは着色剤又はそれらの組み合わせの群から選択される。
【0040】
(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))及び固体分散体ベースは、非晶質固体分散体(ASD)中に、1:0.5~1:20の活性成分(I)と固体分散体ベースの比率で存在している。好ましくは、活性成分(I)と固体分散体ベースの比率は、1:0.5~1:10であり、さらに好ましくは、活性成分(I)と固体分散体ベースの比率は、1:0.5~1:5であり、極めて好ましくは、活性成分(I)と固体分散体ベースの比率は、1:2である。特に、1:2の活性成分(I)と固体分散体ベースの比率は、高い薬物含有量及び小さな錠剤サイズを可能にする。
【0041】
非晶質固体分散体(ASD)の中の活性成分(I)の薬物含有量は、>20%であり、好ましくは、非晶質固体分散体(ASD)の中の薬物含有量は、≧25%である。
【0042】
(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))及び担体は、非晶質固体分散体(ASD)の中に、1:0~1:20の活性成分(I)と担体の比率で存在している。好ましくは、活性成分(I)と担体の比率は、1:0~1:5であり、極めて好ましくは、活性成分(I)と担体の比率は、1:1である。これは、マトリックス内で利用可能な担体は存在できないことを意味する。
【0043】
固形医薬剤形
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる、経口投与用の固形医薬剤形を提供する。
【0044】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含み、並びに、場合により、甘味料、香味料及び着色剤を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる、経口投与用の固形医薬剤形を提供する。
【0045】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含み、さらに、薬学的に許容される賦形剤も含んでいる、経口投与用の固形医薬剤形を提供する。
【0046】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含み並びに場合により甘味料、香味料及び着色剤を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含み、さらに、薬学的に許容される賦形剤も含んでいる、経口投与用の固形医薬剤形を提供する。
【0047】
本発明は、さらに、
(a) (4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる、非晶質固体分散体(ASD);
(b) 少なくとも1の滑沢剤;
(c) 少なくとも1の崩壊促進剤;
(d) 場合により、1以上の増量剤;及び、
(e) 場合により、1以上の界面活性剤;
を含んでいる、経口投与用の固形医薬剤形を提供する。
【0048】
本発明は、さらに、
(a) (4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる、非晶質固体分散体(ASD);
(b) 少なくとも1の滑沢剤;
(c) 少なくとも1の崩壊促進剤;
(d) 場合により、1以上の増量剤;及び、
(e) 場合により、1以上の界面活性剤;
を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形において、装置2(パドル)を使用する欧州薬局方の放出方法に従って、30分後に活性成分(I)の少なくとも85%を放出媒体中に放出する、前記経口投与用の固形医薬剤形を提供する。
【0049】
経口投与の場合、活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体は、粉末、顆粒、ペレット、錠剤、サッシェ、カプセル、糖衣錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、トローチ、ロゼンジ、メルト、溶液、懸濁液又はエマルションなどの固体又は液体の調製物に製剤することが可能であり、そして、医薬組成物の製造分野で知られている方法に従って調製することができる。
【0050】
本発明による医薬剤形は、錠剤である。
【0051】
本発明による医薬剤形は、即時放出錠剤である。
【0052】
本発明による医薬剤形は、場合によりコーティングで覆われている錠剤であり、好ましくは、錠剤は、コーティングで覆われている。
【0053】
錠剤中の活性成分(I)の薬物含有量は、>20%であり、好ましくは、錠剤中の薬物含有量は、≧23%である。
【0054】
本発明による医薬剤形は、また、マトリックス中に活性成分(I)を含有し、場合により甘味料、香味料及び着色剤を含有し、サッシェに製剤化された、非晶質固体分散体(ASD)でもある。
【0055】
(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))は、錠剤の中に、2mg~100mgの量で、好ましくは、5mg~50mgの量で、同様に好ましくは、20mg~50mgの量で、さらに好ましくは,50mgの量で、存在している。
【0056】
該固形医薬剤形(特に、錠剤の形態にある固形医薬剤形)及び該非晶質固体分散体(ASD)の顆粒は、長期間保存安定性、好ましくは、長期安定性であることが期待される。
【0057】
該固形医薬剤形(特に、錠剤の形態にある固形医薬剤形)及び該非晶質固体分散体(ASD)の顆粒は、少なくとも3ヶ月間、好ましくは、少なくとも6ヶ月間、同様に好ましくは、少なくとも12ヶ月間、同様に好ましくは、少なくとも24ヶ月間、同様に好ましくは、少なくとも30ヶ月間、さらに好ましくは、少なくとも48ヶ月間、保存安定である。
【0058】
長期保存とは、24ヶ月を超える保存を意味する。
【0059】
保存安定とは、活性成分(I)の分解が最大10%(好ましくは、活性成分(I)の分解が最大3%)で、且つ、活性成分(I)の非晶質形態が保存されている、安定を意味する。
【0060】
安定性を評価するための保存条件は、例えば、密閉容器25℃/相対湿度60%、若しくは、密閉容器30℃/相対湿度75%、又は、開放容器25℃/相対湿度60%、若しくは、開放容器40℃/相対湿度75%(ストレス条件)である。
【0061】
活性成分(I)を含んでいる該固形医薬剤形の驚くべき優れた安定性挙動は、ストレス条件(40℃、相対湿度75%で6ヶ月間屋外保存)であっても、活性成分(I)の該医薬剤形の非保護包装(例えば、乾燥剤を含まないHPDEボトル)を可能にする。
【0062】
本発明に関連して、即時放出錠剤は、特に、装置2(パドル)を使用する欧州薬局方の放出方法に従って、30分後に少なくとも85%の活性成分(I)を放出媒体中に放出する錠剤である。撹拌機の回転速度は、900mLの放出媒体中で75rpm(1分間当たりの回転数)である。
【0063】
本発明によれば、該放出媒体は、酢酸緩衝液pH4.5+0.1%SDS若しくは+0.15%SDS若しくは+0.2%SDS若しくは+0.3%SDS、又は、0.01M塩酸+0.1%SDS若しくは+0.2%SDSである。SDSは、ラウリル硫酸ナトリウムとも称されるドデシル硫酸ナトリウムの略称である。
【0064】
本発明は、さらに、本発明による経口投与用の固形医薬剤形を調製するための、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミドの使用にも関する。
【0065】
活性成分(I)は、本発明による医薬剤形中に非晶質形態で存在している。
【0066】
本発明は、固形医薬剤形を提供し、ここで、該非晶質固体分散体は、実質的に均質である。
【0067】
本発明に関連して、「賦形剤」は、増量剤、滑沢剤、崩壊促進剤、界面活性剤、甘味料、香味料及び着色剤である。従って、当業者は、類似又は同一の物質を上述の物質の群の2以上のメンバーに割り当てることが起こり得る。しかしながら、本発明に関連して、それらに割り当てられたそれぞれの特性を明確にするために、該物質の機能的説明には特定の物質が意図的に記載されている。
【0068】
表現「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題や合併症を伴うことなく、合理的な利益/リスク比に見合った、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した賦形剤を示している。
【0069】
本発明による製剤の中で使用することが可能な増量剤は、セルロース粉末、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、三ケイ酸マグネシウム、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、乳糖(無水物、又は、水和物として、例えば、一水和物として)、デキストロース、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース又はマルトデキストリンからなるリストから選択される増量剤である。増量剤として好ましいのは、微結晶性セルロース若しくはラクトース又はそれらの組み合わせである。極めて好ましくは、増量剤を使用しない。
【0070】
滑沢剤は、成分が、例えば製造設備に、固着するのを防止する。本発明による製剤の中で使用することが可能な滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリン、モノベヘン酸グリセリン、ベヘン酸カルシウム、水素化植物油脂、ポリエチレングリコール及びタルクからなるリストから選択される滑沢剤である。本発明による好ましい滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸及びタルクからなるリストから選択される滑沢剤である。滑沢剤として極めて好ましいのは、ステアリン酸マグネシウムである。
【0071】
崩壊促進剤は、濡れると膨張して溶解する。それらは、消化管内で当該剤形をバラバラに分解し、活性成分を放出させるために使用することができる。本発明に関連して適切な崩壊促進剤は、アルギン酸、架橋ポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン、加工デンプン、及び、デンプン誘導体、例えば、カルボキシメチルデンプンナトリウム、セルロース誘導体、例えば、カルメロースカルシウム(カルボキシメチルセルロースカルシウム)及びクロスカルメロースナトリウム(カルボキシメチルセルロースナトリウムの架橋ポリマー)又は微結晶性セルロース又はクロスカルメロースナトリウムと微結晶性セルロースの組み合わせからなるリストから選択される崩壊促進剤である。崩壊促進剤として好ましいのは、クロスカルメロースナトリウム又は架橋ポリビニルピロリドンである。崩壊促進剤として極めて好ましいのは、クロスカルメロースナトリウムである。
【0072】
界面活性剤は、通常、両親媒性の有機化合物であり、これは、それらが疎水基(尾部)と親水基(頭部)の両方を含んでいることを意味する。従って、界面活性剤には、水不溶性(又は、油溶性)成分と水溶性成分の両方が含まれており、特定の化合物の可溶化に役立つ。本発明による界面活性剤は、錯化剤、例えば、シクロデキストリン及びエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)、共溶媒、例えば、エタノール、プロピレングリコール及びジメチルアセトアミド、界面活性剤(tenside)、例えば、脂肪アルコール(例えば、セチルアルコール)、リン脂質(例えば、レシチン)、胆汁酸、ポリオキシエチレンステアレート脂肪エステル(例えば、ポリオキシエチレン)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪エステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン-ブロックコポリマー(例えば、ポロキサマー)、アルキル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セチルステアリル硫酸ナトリウム)、アルキル石鹸(例えば、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム)及びサッカロース脂肪酸エステルである。界面活性剤として好ましいのは、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0073】
甘味料として好ましいのは、砂糖に似た風味を有する薬学的に許容される賦形剤である。本発明に関連して適切な甘味料は、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、サッカリンカウム若しくはサッカリンカルシウム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、アリテーム、グリチルリチン若しくはソーマチン、又は、糖類、例えば、グルコース、マンニトール、フルクトース、サッカロース、マルトース、マルチトール、ガラクトース、ソルビトール若しくはキシリトールからなるリストから選択される甘味料である。本発明に関連して、甘味料は当業者に知られている量で添加される。
【0074】
本発明に関連して、香味料は、医薬剤形の効果を補完し、また、その優雅さを高めるために、医薬剤形の心地よい風味を改善する又は与えるのに適した薬学的に許容される賦形剤である。本発明に関連して、香味料は、植物若しくは動物の原料から得られる天然香味物質であるか、合成によって得られるか若しくは化学的プロセスを通じて単離される、自然と同一の香味物質であり、これらは、ヒトが消費することを意図した製品中に天然に存在する香味物質及び人工香味料物質と化学的及び感覚的に同一である。本発明に関連して、香味料は当業者に知られている量で添加される。本発明に関連して適切な香味料は、以下のものからなるリストから選択される香味料である:合成/人工香味料、例えば、酢酸アミル(バナナ香料)、ベンズアルデヒド(チェリー又はアーモンド香料)、酪酸エチル(パイナップル)、アントラニル酸メチル(ブドウ)、天然香味料、例えば、製油及び含油樹脂、ハーブ及びスパイス、並びに、合成によって得られるか若しくは化学的プロセスを通じて単離され、その化学組成が天然の対応物と同一である香味物質である天然同一香味料。本発明に関連して、香味料は、当業者に知られている量で添加される。
【0075】
本発明に関連して、着色剤は、医薬剤形の効果を補うために、及び、さらに、その優雅さを高めるために、未着色の医薬剤形を着色するのに若しくはその色を増強するのに適した、又は、バッチ間の変動を最小限に抑えるのに適した、又は、既に存在している色を置き換えるのに適した、薬学的に許容される賦形剤である。それは、任意の染料、レーキ又は顔料、例えば、インジゴカルミン、リボフラビン及び二酸化チタンなどであることができる。本発明に関連して、着色剤は、当業者に知られている量で添加される。
【0076】
本発明に関連して、場合によるコーティングは、以下のものなどの当業者によく知られた通常のコーティング剤及びフィルム形成剤を添加して実施される:ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(例えば、Kollidon(登録商標) VA64、BASF)、シェラック、トリメチルアンモニウムメチルアクリレートとのアクリル酸及び/又はメタクリル酸エステルコポリマー、ジメチルアミノメタクリル酸と中性メタクリル酸エステルのコポリマー、メタクリル酸又はメタクリル酸エステルのポリマー、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸-アクリル酸メチルコポリマー、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール3350)、グリセロールトリアセテート若しくはクエン酸トリエチル、及び/又は、着色剤/顔料、例えば、二酸化チタン、酸化鉄(例えば、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄)、インジゴチン、又は、適切なカラーレーキ、及び/又は、粘着防止剤(antitacking agent)、例えば、タルク、及び/又は、不透明剤、例えば、二酸化チタン。本発明の場合によるコーティング剤及びフィルム形成剤としては、ヒプロメロース及びポリエチレングリコールが好ましく、着色剤としては、酸化鉄レッドが好ましく、不透明剤としては、二酸化チタンが好ましい。
【0077】
本明細書中で言及されているコーティング物質の混合物は、商品名Opadry(登録商標)で市販されているような即時使用可能なコーティングシステムとして使用することもできる。Opadry 14F94373(登録商標)は、約60重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、約19.4重量%の二酸化チタン、約0.6重量%の酸化第二鉄及び約20重量%のポリエチレングリコールの混合物である。商品名Opadry(登録商標)で入手可能な即時使用可能なコーティングシステムが好ましい。
【0078】
好ましくは、該コーティングは、コーティング錠剤製剤の約0.5重量%~10重量%、好ましくは、コーティング錠剤製剤の0.5重量%~4.5重量%、さらに好ましくは、コーティング錠剤製剤の約1.5重量%~4.5重量%である。
【0079】
本発明による比較製剤には、結合剤が使用されている。使用可能な結合剤は、セルロース粉末、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、三ケイ酸マグネシウム、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、乳糖(無水、又は、水和物として、例えば、一水和物として)、デキストロース、マルトース、スクロース、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン又はヒプロメロース(例えば、ヒプロメロース3cP)である。結合剤として好ましいのは、ヒプロメロース(例えば、ヒプロメロース3cP)である。
【0080】
非晶質固体分散体(ASD)の製造プロセス
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、該非晶質固体分散体(ASD)を湿式造粒によって調製することを特徴とする。
【0081】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、該非晶質固体分散体(ASD)を流動床造粒によって調製することを特徴とする。
【0082】
湿式造粒は、ミキサー、噴霧乾燥機又は流動床造粒機で実施することができる。流動床造粒機における湿式造粒(=流動床造粒)が好ましい。
【0083】
湿式造粒では、活性成分(I)を造粒液に溶解させ、流動床造粒機に導入する。最も好ましくは、活性成分(I)を含んでいる造粒流体を、流動床造粒によって担体上に噴霧する。
【0084】
本発明に関連して、該造粒液は、固体分散体ベースと溶媒で構成されている。
【0085】
流動床造粒などの溶媒蒸発プロセスによる非晶質固体分散体の製造に適した溶媒は、活性成分(I)を溶解することが可能な任意の溶媒であり得る。該固体分散体ベースのポリマーも、当該プロセスを実行可能とするために、充分に可溶性でなければならない。好ましい溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、及び、ブタノール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及び、メチルイソブチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル、及び、酢酸プロピル)、及び、さまざまな他の溶媒、例えば、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、環状エーテル、及び、1,1,1-トリクロロエタンなどがある。ジメチルアセトアミド又はジメチルスルホキシドなどの低揮発性溶媒も使用可能である。活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体を製造するための好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、アセトン又はそれらの混合物である。活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体を製造するのに同様に好ましいのは、エタノール、又は、20%エタノールと80%アセトンの混合物、又は、50%エタノールと50%アセトンの混合物である。活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体を製造するのに極めて好ましいのは、50%エタノールと50%アセトンの混合物である。
【0086】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、該非晶質固体分散体(ASD)を流動床造粒によって調製することを特徴とし、ここで、活性成分(I)は造粒液に溶解され、流動床造粒機に導入される。
【0087】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、該非晶質固体分散体(ASD)を流動床造粒によって調製することを特徴とし、ここで、活性成分(I)は造粒液(ここで、該造粒液は、50%エタノールと50%アセトンの混合物を含んでいる)に溶解され、流動床造粒機に導入される。
【0088】
該非晶質固体分散体(ASD)は、好ましくは、粒状体として単離される。
【0089】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
(a) (4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を適切な溶媒又は溶媒混合物に溶解させる;
(b) ポリマー(固体分散体ベース)を添加して造粒液を得る;
(c) 前記造粒液を担体上に噴霧する;
(d) 前記1種類又は複数種類の溶媒を蒸発させて顆粒とする;
ことを特徴とする。
【0090】
追加の段階(e)では、段階(d)から得られた顆粒を、場合により、甘味料、香味料及び着色料と混合させ、及び/又は、粉砕し、及び/又は、篩にかけ、及び/又は、圧縮することによって、さらに処理して、固形医薬剤形として使用することが可能な顆粒とする。
【0091】
上記で記載した方法の内の1つで製造することができる、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)。
【0092】
上記で記載した方法の内の1つで製造される、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)。
【0093】
固形医薬剤形の製造プロセス
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
(a) (4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を最初に調製する;及び、
(b) 次いで、前記非晶質固体分散体(ASD)を、場合により薬学的に許容される賦形剤を添加して、前記医薬剤形に変換させる;
ことを特徴とする。
【0094】
さらに、 本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
(a) (4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を最初に調製する;及び、
(b) 次いで、前記非晶質固体分散体(ASD)を、場合により薬学的に許容される賦形剤を添加して、前記医薬剤形に変換させる;
ことを特徴とし、ここで、装置2(パドル)を使用する欧州薬局方の放出方法に従って、30分後に、活性成分(I)の少なくとも85%は放出媒体中に放出される。
【0095】
さらに、本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
(a) (4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を湿式造粒によって調製する;及び、
(b) 次いで、前記非晶質固体分散体(ASD)を、場合により薬学的に許容される賦形剤を添加して、前記医薬剤形に変換させる;
ことを特徴とする。
【0096】
非晶質固体分散体(ASD)を調製する造粒プロセスにおける溶媒によって、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を、非晶質形態若しくは結晶変態Iの形態にあるか又は両方の形態の混合物である固形医薬剤形を調製する方法に導入することができる。
【0097】
プロセス段階(b)における医薬剤形への変換は、例えば、錠剤化すること、カプセル(好ましくは、硬ゼラチンカプセル)に充填すること又はサシェとして充填することを含み、いずれの場合も、当業者によく知られている慣習的な方法に従い、適切な場合には、薬学的に適切なさらなる賦形剤を添加する。
【0098】
プロセス段階(b)における固形医薬剤形への変換のために、顆粒として単離された非晶質固体分散体を、さらなる賦形剤の有無にかかわらず、ローラー圧縮及び粉砕して、ローラー圧縮顆粒を得ることができる。さらなる賦形剤賦形剤の有無にかかわらず得られた顆粒は、錠剤などの医薬剤形に圧縮される。
【0099】
さらに、本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
(a) (4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を湿式造粒によって調製する;
(b) 前記非晶質固体分散体(ASD)に、さらなる薬学的に許容される賦形剤を添加する;
(c) 得られた混合物を圧縮して錠剤とする;及び、
(d) 前記錠剤に、場合によりコーティングして、前記医薬剤形を得る;
ことを特徴とする。
【0100】
さらに、本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、
(a) (4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を薬学的に許容されるマトリックスの中に含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を湿式造粒によって調製する;
(b) 前記非晶質固体分散体(ASD)に、さらなる薬学的に許容される賦形剤を添加する;
(c) 得られた混合物をローラー圧縮し、及び、場合により、粉砕する;
(d) 場合により、さらなる薬学的に許容される賦形剤を添加する;
(e) 得られた混合物を圧縮して錠剤とする;及び、
(f) 前記錠剤に、場合によりコーティングして、前記医薬剤形を得る;
ことを特徴とする。
【0101】
上記で記載した方法の内の1つで製造することができる、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形。
【0102】
上記で記載した方法の内の1つで製造される、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド(活性成分(I))を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる経口投与用の固形医薬剤形。
【0103】
薬剤及び使用
選択された賦形剤によって安定化され、エナンチオマー純度を保証するプロセスによって製造された非晶質活性成分(I)の非晶質固体分散体を含んでいる経口固形剤形の投与は、ヒトにおいて、85%~100%の範囲の、好ましくは、88%~100%の範囲の、高い相対的生物学的利用能をもたらす。
【0104】
本発明は、さらに、活性成分(I)を含んでいる本発明による経口投与用の固形医薬剤形を含む薬剤を提供する。
【0105】
本発明は、さらに、活性成分(I)を含んでいる本発明による経口投与用の固形医薬剤形の使用、並びに、疾患〔好ましくは、血栓性若しくは血栓塞栓性の疾患及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性の合併症、特に、心血管疾患(これは、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞又はステント血栓症を包含する)、並びに、脳血管動脈における疾患、及び、一過性虚血発作(TIA)をもたらす他の疾患、虚血性脳卒中(これは、心塞栓性脳卒中及び非心塞栓性脳卒中を包含する)、並びに/又は、末梢動脈疾患(これは、末梢動脈閉塞、急性四肢虚血、切断、インターベンション(例えば、血管形成術、ステント移植又は外科手術及びバイパス形成手術)の後の再閉塞及び再狭窄、及び/又は、ステント血栓症を包含する)をもたらす末梢動脈の疾患〕を治療及び/又は予防するための薬剤を調製するための固形医薬剤形の使用にも関する。
【0106】
本発明は、さらに、疾患〔特に、心筋梗塞、虚血性脳卒中(これは、心塞栓性脳卒中及び非心塞栓性脳卒中を包含する)、急性四肢虚血、インターベンション(例えば、血管形成術、ステント移植又は外科手術及びバイパス形成手術)の後の再閉塞及び再狭窄、及び/又は、ステント血栓症〕を予防、二次予防及び/又は治療するための活性成分(I)を含んでいる本発明による経口投与用の固形医薬剤形の使用にも関する。
【0107】
以下に、好ましい実施例によって、本発明について詳細に説明する;しかしながら、本発明は、これらの例に限定されるものではない。別途示されていない限り、記載されている全ての量は、剤形のmgを示している。
【実施例
【0108】
実験部分
略語
PXRD: 粉末X線回折
IR錠剤: 即時放出錠剤
rel.BA: 相対的生物学的利用能
AUC/D: 用量あたりの曲線下面積
Cmax/D: 用量あたりの最大濃度
HPMCAS MG: AquaSolveTM ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート Typ MG
SDS: ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウムとも称される)
rh: 相対湿度
初期: 製造後の分析の最も早い時点。
【0109】
活性成分(I)結晶とは、結晶変態Iの活性成分(I)を意味する。
【0110】
保存条件に関して「開放」又は「密閉」の記載がない場合は、密閉保存を意味する。
【0111】
1. 活性成分(I)の調製
1.1. 非晶質形態にある活性成分(I)の調製
活性成分(I)は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド〔これは、4-({(2S)-2-[4-{5-クロロ-2-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]ブタノイル}アミノ)-2-フルオロベンズアミドとも称される〕であり、これは、WO2017/005725の実施例234及び実施例235(非晶質形態)に準じて調製することができる。
【0112】
1.2. 結晶変態Iの活性成分(I)の調製
結晶変態Iの活性成分(I)は、非晶質形態の活性成分(I)を不活性溶媒に溶解させ、結晶変態Aの式(II)で表される化合物の種結晶を用いて結晶変態Iの活性成分(I)を結晶化させることによって、得ることができる。
【0113】
結晶変態Iの活性成分(I)のエタノール中における溶解度は、約35mg/mLであり、アセトン中では、約80mg/mLであり、エタノール/アセトン(1:1)の混合物の中では、約180mg/mLである。
【0114】
1.2.1. 4-({(2S)-2-[4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]プロパノイル}アミノ)-2-フルオロ-ベンズアミド(式(II)で表される化合物)の調製
1.2.1.1. 1-(2-ブロモ-4-クロロ-3-フルオロフェニル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール
【化2】
1-(2-ブロモ-4-クロロ-3-フルオロフェニル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾールは、2-ブロモ-4-クロロ-3-フルオロアニリン(WO2016/168098、頁59-60)から出発して、最初に、アジド誘導体を生成させ(亜硝酸tert-ブチル及びトリメチルシリルアジドの存在下; WO2017/005725、頁92-93の実施例2.18Aの合成と同様)、及び、2番目に、トリフルオロプロピンを用いて前記アジド誘導体の付加環化を実施する(酸化銅(I)の存在下; WO2017/005725、頁102の実施例2.26Aの合成と同様)ことによって、合成した。
【0115】
1.2.1.2. 4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-2,5-ジメトキシ-ピリジン
【化3】
1-(2-ブロモ-4-クロロ-3-フルオロフェニル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール(982mg、2.85mmol)と(2,5-ジメトキシピリジン-4-イル)ボロン酸(WO2019/175043、頁23-24)(626mg、3.42mmol、1.2eq.)と炭酸カリウム(1.18g、8.55mmol、3.0eq.)の混合物を1,4-ジオキサン(50mL)に溶解させ、アルゴンを10分間流した後、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド モノジクロロメタン付加体(233mg、0.29mmol、0.1eq.)を添加した。その反応混合物を100℃で(既に100℃に予熱しておいた油浴)一晩加熱した。追加の(2,5-ジメトキシピリジン-4-イル)ボロン酸(209mg、1.14mmol、0.4eq.)及び[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド モノジクロロメタン付加体(116mg、0.14mmol、0.05eq.)を添加した。その反応混合物を100℃でさらに5時間撹拌し、週末の間室温で放置し、Celite(登録商標)を通して濾過し、それを1,4-ジオキサンで洗浄した。その濾液を合して、減圧下で濃縮した。その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル 勾配)で精製した。収量:432mg(理論値の38%)。
【0116】
LC-MS (方法 2): Rt = 2.13 分; MS (ESIpos): m/z = 403 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ [ppm] = 9.17 / 9.16 (2x s, 1H), 8.03 / 8.01 (2x d, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.75 / 7.75 (2x d, 1H), 6.82 (s, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.54 (s, 3H).
1.2.1.3. 4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-ピリジン-2(1H)-オン
【化4】
ピリジンヒドロブロミド(429mg、2.68mmol、2.5eq.)を、4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-2,5-ジメトキシピリジン(432mg、1.07mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解させた溶液に添加した。その混合物を100℃で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。その残渣を水に溶解させた。酢酸エチルを添加し、相を分離させた後、その水相を酢酸エチルで2回抽出した。その有機相を合して、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/メタノール 勾配)で精製した。収量:285mg(理論値の68%)。
【0117】
LC-MS (方法 2): Rt = 1.46 分; MS (ESIpos): m/z = 389 [M+H]+
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ [ppm] = 11.3 (br s, 1H), 9.23 (s, 1H), 8.10-7.99 (m, 1H), 7.77 (m, 1H), 7.15 (s, 1H), 6.41 (s, 1H), 3.45 (s, 3H).
1.2.1.4. 4-({(2S)-2-[4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]プロパノイル}アミノ)-2-フルオロベンズアミド(式(II)で表される化合物)
【化5】
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(420μL、3.35mmol、3.0eq.)を、アルゴン雰囲気下、室温で、4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシピリジン-2(1H)-オン(438mg、1.12mmol)を2-プロパノール/アセトン(4:1、7.5mL)に溶解させた溶液に添加した。その混合物を室温で15分間撹拌し、続いて、4-{[(2R)-2-ブロモプロパノイル]アミノ}-2-フルオロベンズアミド(WO2020/127504、実施例1.19A、頁76)(355mg、1.23mmol、1.1eq.)及びさらなる2-プロパノール/アセトン(4:1、7.5mL)を添加した。その反応混合物を室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/メタノール 勾配)及び分取HPLC(逆相、溶離液:アセトニトリル/水 勾配)で精製した。収量: 539mg(理論値の81%)。
【0118】
LC-MS (方法 2): Rt = 1.65 分; MS (ESIpos): m/z = 597 [M+H]+
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ [ppm] = 10.72 / 10.63 (2x s, 1H), 9.24 / 9.13 (2x s, 1H), 8.06-7.99 (m, 1H), 7.79-7.74 (m, 1H), 7.72-7.60 (m, 2H), 7.56-7.48 (m, 2H), 7.38-7.32 (m, 1H), 7.27 / 7.25 (2x s, 1H), 6.48 / 6.47 (2x s, 1H), 5.51-5.44 (m, 1H), 3.47 / 3.45 (2x s, 3H), 1.65 / 1.64 (2x s, 3H).
1.2.2. 式(II)で表される結晶変態Aの化合物の調製
306mgの式(II)で表される非晶質形態の化合物を、50体積%のエタノールと50体積%の水の混合物20mLに室温で溶解させた。その溶液を室温で24時間撹拌して、白色固体が沈澱した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させた。得られた固体を、真空オーブン中で、40℃で16時間乾燥させた。273mgの式(II)で表される結晶変態Aの化合物が得られた。
【0119】
1.2.3. 結晶変態Iの活性成分(I)の調製
30mgの非晶質形態の活性成分(I)を、室温で、2mLのエタノールに溶解させた。その溶液に、濁った溶液が観察されるまで、660μLの水を滴下して加えた。次いで、その溶液に、1mgの式(II)で表される化合物の結晶変態Aを種結晶として加えた。種結晶を加えた直後に、さらに小さな粒子の沈澱が観察されたが、その粒子は撹拌すると急速に消失し、外見的には透明な溶液が得られた。室温で48時間撹拌した後、懸濁液が得られた。その固体を真空下で濾過し、周囲条件下で一晩乾燥させた。得られた固体のXRPDパターンは、活性成分(I)の結晶変態Iに対応する。得られた固体のH-NMR分析は、その固体が約5重量%の式(II)で表される化合物を含んでいることを示した。
【0120】
1.2.4. 結晶変態Iの活性成分(I)の純粋な活性成分(I)としての調製
20.0gの非晶質形態の活性成分(I)を、室温で、40.0gのプロパン-2-オールと10.0gのアセトンの混合物に溶解させた。その混合物を60℃まで加熱し、得られた溶液に、126.0gの水を60分間かけて加えた。得られた混合物に、100.0mgの活性成分(I)の結晶変態Iを種結晶として加え、60℃で3時間撹拌した。次いで、追加の4.8gの非晶質形態の活性成分(I)を添加し、その混合物を60℃で一晩撹拌した。得られた懸濁液を60分間で20℃まで冷却し、20℃で90分間撹拌した。こうして得られた懸濁液を、真空下で濾過し、42.5gのプロパン-2-オール:アセトン:水混合物(質量比4:1:12)で2回洗浄し、真空下、40℃で乾燥させた。収量:22.4g(理論収量の90.3%)の淡白色固体。
【0121】
2. 放出/溶解方法
欧州薬局方、第10版、モノグラフ01/2016の最終改訂に従って、該経口固形剤形を装置2(パドル)で試験する。撹拌機の回転速度は、900mLの以下に挙げられている媒体の中で75rpm(1分間あたりの回転数)である。30分間の調査期間後に、6つの被検体全てが活性成分(I)の少なくとも85%を放出媒体中に放出した場合、放出基準は満たされる。
【表1】
3. 液剤の調製方法
実施例1-1(比較例)
チロースと水を撹拌しながら混合させる。結晶変態Iの活性成分(I)を加え、撹拌を続ける。
【0122】
実施例1-2(比較例)
非晶質形態の活性成分(I)をエタノールに溶解させた後、PEGを添加して、ポリエチレングリコール(PEG)溶液を調製した。水を加え、その溶液をよく混合させる。
【0123】
4. 流動床造粒による調製方法
実施例2-1、実施例2-2及び実施例2-3(比較例としての錠剤)
結合剤及び界面活性剤を水に溶解させ、この溶液中に活性成分(I)を懸濁させる。流動床造粒の過程で、この懸濁液を、造粒液として、崩壊促進剤の一部と増量剤で構成される初期装入物に噴霧する。得られた顆粒を乾燥させ、篩いにかけた後、崩壊促進剤の残りの部分と滑沢剤(これも、場合により、ステアリン酸マグネシウムである)を加えて混合させる。このようにして得られた即時圧縮可能な混合物を圧縮して錠剤を製造する。次いで、その錠剤に、コーティング剤とフィルム形成剤で構成される水溶液中に懸濁させた顔料でコーティングする。
【0124】
実施例3-1(非晶質固体分散体(ASD))
固体分散体ベース及び活性成分(I)を有機溶媒に溶解させる。流動床造粒の過程で、この溶液を、造粒液として、増量剤と崩壊促進剤(担体)で構成される初期装入物に噴霧する。乾燥させ、篩いにかけた後、顆粒が得られる。有機溶媒は、エタノール、アセトン又はそれらの組み合わせであることができる。
【0125】
実施例3-2、実施例3-3、実施例3-4、実施例3-5、実施例3-6、実施例3-7、実施例3-8及び実施例3-9(非晶質固体分散体(ASD))
固体分散体ベース及び活性成分(I)を有機溶媒に溶解させる。流動床造粒の過程で、この溶液を、造粒液として、崩壊促進剤(担体)の初期充填物に噴霧する。乾燥させ、篩にかけた後、顆粒が得られる。有機溶媒は、エタノール、アセトン又はそれらの組み合わせであることができる。
【0126】
実施例4-1(非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる医薬剤形(錠剤))
実施例3-1から得られた顆粒を、添加された増量剤及び界面活性剤と一緒に混合させる。この混合物をローラーで圧縮し、粉砕し、その後、滑沢剤を加えて混合させる。このようにして得られた即時圧縮可能な混合物を圧縮して錠剤を製造する。次いで、その錠剤に、コーティング剤及びフィルム形成剤で構成される水溶液中に懸濁させた顔料でコーティングする。その錠剤中には、活性成分(I)が5mgの量で存在している。
【0127】
実施例4-2及び実施例4-3(非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる医薬剤形(錠剤))
実施例3-1から得られた顆粒を、添加された増量剤、崩壊促進剤及び界面活性剤と一緒に混合させる。この混合物をローラーで圧縮し、粉砕し、その後、滑沢剤を加えて混合させる。このようにして得られた即時圧縮可能な混合物を圧縮して錠剤を製造する。次いで、その錠剤に、コーティング剤及びフィルム形成剤で構成される水溶液中に懸濁させた顔料でコーティングする。その錠剤中には、活性成分(I)が、それぞれ、15mg及び25mgの量で存在している。
【0128】
実施例4-4、実施例4-5及び実施例4-6(非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる医薬剤形(錠剤))
実施例3-3から得られた顆粒を、増量剤、崩壊促進剤及び界面活性剤と一緒に混合させる。滑沢剤を加え、その後、再度混合させる。このようにして得られた即時圧縮可能な混合物を圧縮して錠剤を製造する。その錠剤中には、活性成分(I)が、50mgの量で存在している。
【0129】
実施例4-7、実施例4-8、実施例4-9及び実施例4-10(非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる医薬剤形(錠剤))
実施例3-4又は実施例3-5から得られた顆粒を、添加された崩壊促進剤及び界面活性剤と一緒に混合させる。この混合物をローラーで圧縮し、粉砕することができる。その後、その混合物に滑沢剤を加えて、再度混合させる。このようにして得られた即時圧縮可能な混合物を圧縮して錠剤を製造する。次いで、その錠剤に、コーティング剤及びフィルム形成剤で構成される水溶液中に懸濁させた顔料でコーティングすることができる。その錠剤中には、活性成分(I)が、20mg又は50mgの量で存在している。
【0130】
実施例4-11及び実施例4-12(非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる医薬剤形(錠剤))
実施例3-5から得られた顆粒を、ローラーで圧縮し、粉砕することができる。その後、滑沢剤と一緒に混合させる。このようにして得られた即時圧縮可能な混合物を圧縮して錠剤を製造する。次いで、その錠剤に、コーティング剤及びフィルム形成剤で構成される水溶液中に懸濁させた顔料でコーティングすることができる。その錠剤中には、活性成分(I)が、20mg又は50mgの量で存在している。
【0131】
実施例4-13、実施例4-14、実施例4-15、実施例4-16、実施例4-17及び実施例4-18(非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる医薬剤形(錠剤))
実施例3-4、実施例3-5、実施例3-6、実施例3-7、実施例3-8又は実施例3-9から得られた顆粒を、添加された崩壊促進剤と一緒に混合させる。この混合物をローラーで圧縮し、粉砕することができる。その後、その混合物に滑沢剤を加えて、再度混合させる。このようにして得られた即時圧縮可能な混合物を圧縮して錠剤を製造する。次いで、その錠剤に、コーティング剤及びフィルム形成剤で構成される水溶液中に懸濁させた顔料でコーティングすることができる。その錠剤中には、活性成分(I)が、20mg又は50mgの量で存在している。
【0132】
5. ホットメルト押出しによる調製方法
実施例5-1、実施例5-2、実施例5-4及び実施例5-5(比較例としての粉砕された押出し物)
活性成分(I)、界面活性剤及び固体分散体ベースを混合/ブレンドさせる。その混合物を、実験室用二軸押出し機を180℃の温度で使用して、押し出した。その押し出された材料は、切断し、続いて、インパクトラボミルを使用して粉砕することができる。得られた顆粒は、そのまま使用することができるか、又は、さらに、例えばサッシェ製剤、カプセル製剤又は錠剤製剤に、製剤化することもできる。
【0133】
実施例5-3及び実施例5-6(比較例としての粉砕された押出し物)
活性成分(I)及び固体分散体ベースを混合/ブレンドさせる。その混合物を、実験室用二軸押出し機を180℃の温度で使用して、押し出した。その押し出された材料は、切断し、続いて、インパクトラボミルを使用して粉砕することができる。得られた顆粒は、そのまま使用することができるか、又は、さらに、例えばサッシェ製剤、カプセル製剤又は錠剤製剤に、製剤化することもできる。
【0134】
6. 剤形の組成(mg/剤形)
6.1. 比較例としての液体製剤及び錠剤(表1
【表2】
6.2. 非晶質固体分散体(ASD)(表2)
【表3】
6.3. 非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる固形医薬剤形(錠剤); 流動床造粒による調製方法(表3)
【表4】

6.4. 非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる固形医薬剤形(粉砕された押出し物): ホットメルト押出しによる調製方法(比較例)(表4)
【表5】
7. 生物学的利用能、溶解及び結果
7.1. 液体製剤と非晶質固体分散体(ASD)の比較(動物モデル)
比較例1-1及び比較例1-2の液体製剤並びに実施例3-1の非晶質固体分散体について、ラットで試験した。単回用量を、雄ラット(4匹)に投与した。
【0135】
該液体製剤は、0.5%チロース水溶液の中の結晶変態Iの活性成分(I)の懸濁液であった(実施例1-1)。
【0136】
実施例3-1の非晶質固体分散体顆粒を、投与前に水に懸濁させた。
【0137】
実施例1-1及び実施例3-1は、実施例1-2のPEG溶液に対して試験した。
【0138】
動物(雄ラット)に、体重1kg当たり3.00mgの活性成分(I)を投与した。投与溶液の体積は、5.00mL/kg体重であった。投与後0、0.25、0.5、0.75、1、2、3、5、7、24、30及び48時間に、留置頚静脈カテーテルを介して約0.5mLの全血を採取した。その血液サンプルを遠心分離して血漿を得た。その血漿を、次いで、適切にラベルを付けたバイアルに移し、分析まで冷凍保存した(<-15℃)。血漿サンプルを活性成分(I)の濃度についてLC/MSMSで分析し、薬物動態パラメータを計算した。結果は、表5に示されている。
【表6】
結果: AUC及びCmaxデータは、実施例1-1及び実施例1-2の液体製剤と実施例3-1の非晶質固体分散体(ASD)を経口投与した後の活性成分(I)の曝露に関して有意な差を示している。実施例1-2のPEG溶液を100%参照標準として使用する。実施例3-1の非晶質固体分散体(ASD)の投与後に得られる曝露は、実施例1-1の液体製剤の曝露と比較して著しく高い。実施例3-1の非晶質固体分散体(ASD)では、AUCは約5.8倍増加し、Cmaxは約6.8倍増加する。
【0139】
活性成分(I)が結晶変態Iで使用される場合、活性成分(I)は、低い生物学的利用能及び劣った溶解プロフィールを示す。結晶変態Iの活性成分(I)は、僅かに11%の相対的生物学的利用能を示すが(実施例1-1)、非晶質形態の活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体は、ラットに投与された場合、65%の相対的生物学的利用能を示す(実施例3-1)。
【0140】
これは、液体に溶解させた非晶質形態の活性成分(I)(実施例1-2)又は非晶質固体分散体の形態の活性成分(I)を含んでいる実施例3-1の非晶質固体分散体(ASD)としての活性成分(I)投与することによって、結晶変態Iの活性成分(I)を含んでいる実施例2-1の標準的なIR錠剤を模倣している実施例1-1の液体製剤と比較して、吸収及び経口曝露が著しく改善されることを示している。非晶質固体分散体(ASD)は、安定化された非晶質活性成分(I)を提供するが、標準的なIR錠剤(実施例2-1、比較例)と比較して、結晶化のリスクを示さない。
【0141】
7.2. 標準的なIR錠剤とPEG溶液の比較(ヒト)
比較例2-1、比較例2-2及び比較例2-3は、流動床造粒を用いて製造した。比較例2-2及び比較例2-3では、非晶質形態の活性成分(I)を使用して、50mg用量(例2-2)及び5mg用量(例2-3)の錠剤を製造する。5mgの活性成分(I)を含有する錠剤を、25mg用量(各5mgの活性成分(I)の錠剤5錠)として、ヒトにおいて、実施例1-2のPEG溶液に対して試験した。結果は、表6に示されている。
【表7】
結果: 比較例2-3は、実施例1-2のPEG溶液と比較して、AUC/Dについては、89.5%のrel.BAを示し、Cmax/Dについては、86.0%のrel.BAを示した。
【0142】
同じ賦形剤及び賦形剤濃度が使用されているが、活性成分(I)が、比較例2-2及び比較例2-3の非晶質形態と比較して、結晶変態Iの形態で使用される場合(比較例2-1)、溶解速度は劇的に低下する。結果は、表7に示されている。
【表8】
結果: 比較例2-1の溶解の結果は、比較例2-2及び比較例2-3と比較して、明らかに低く、生物学的利用能の低下を示しています(図1を参照されたい)。
【0143】
比較例2-2及び比較例2-3は、安定化剤(例えば、ポリマー)を含まずに非晶質形態の活性成分(I)を含んでおり、結晶化のリスクを有する。結晶化が起こると、生物学的利用能は、低下する。
【0144】
7.3. 非晶質固体分散体(ASD)と液体製剤の比較(動物モデル)
実施例3-1~実施例3-5の非晶質固体分散体(ASD)は、流動床造粒によって製造する。使用されるポリマーは、結晶化を防止する安定剤として働く。実施例3-3で用いられる結晶変態Iの活性成分(I)は、この製造法を用いることにより非晶質状態に移行する。担体として、増量剤と崩壊促進剤の混合物を使用すること(実施例3-1)、又は、崩壊促進剤のみを使用すること(実施例3-2~実施例3-5)が可能である。溶媒は、エタノール(実施例3-1及び実施例3-2)又はエタノールとアセトンの混合物(実施例3-3~実施例3-5)のいずれかであることができる。
【0145】
液体製剤(実施例1-1及び実施例1-2)と比較した、非晶質固体分散体(ASD)(実施例3-1)からの活性成分(I)の曝露は、表5に示されている。
【0146】
7.4. 非晶質固体分散体(ASD)の医薬剤形と標準IR錠剤の比較(ヒト)
実施例4-1~実施例4-14は、実施例3-1~実施例3-5で製造された顆粒を使用した非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる医薬剤形(錠剤)について記載している。実施例4-1~実施例4-3では、実施例3-1の顆粒を、さまざまな量の活性成分(I)及びさまざまな量の付加的な賦形剤を用いて、錠剤に製剤化する。
【表9】
結果: 全ての実施例(実施例4-1~実施例4-3及び実施例4-14)について、その溶解プロフィールは、比較実施例2-2の溶解プロフィールに匹敵する。
【0147】
実施例4-3は、実施例3-1で製造された顆粒を使用した非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる医薬剤形(錠剤)について記載している。25mgの活性成分(I)を含んでいる錠剤を、ヒトにおいて、実施例2-2の50mg用量の錠剤に対して25mg用量として試験した。結果は、表9に示されている。
【表10】
実施例4-14は、実施例3-5で製造された顆粒を使用した非晶質固体分散体(ASD)を含んでいる医薬剤形(錠剤)について記載している。50mgの活性成分(I)を含んでいる錠剤を、ヒトにおいて、実施例4-3の25mg用量に対して50mg用量として試験した。結果は、表9aに示されている。
【表11】
結果: 実施例3-1の非晶質固体分散体(ASD)を使用して製造された錠剤(実施例4-3)は、実施例2-2のIR錠剤と比較して、ヒトにおいて、高い相対的生物学的利用能(AUC/Dについては、94.3%のrel.BA、及び、Cmax/Dについては、95.5%のrel.BA)を示した。さらに、実施例3-5の非晶質固体分散体(ASD)を使用して製造された錠剤(実施例4-14)は、実施例4-3の錠剤と比較して、ヒトにおいて、高い相対的生物学的利用能(AUC/Dについては、94.9%のrel.BA、及び、Cmax/Dについては、88.8%のrel.BA)を示した。流動床造粒の製造技術は、当該プロセスに使用される活性成分(I)の初期変態(非晶質形態又は結晶質変態I)とは無関係に、活性成分(I)を非晶質形態に移行させ、同時に、非晶質形態の活性成分(I)を安定化させて結晶化を防止するので、そのような流動床造粒の製造技術は、高い生物学的利用能をもたらす結論付けることができる。
【0148】
本発明による流動床造粒及び賦形剤を使用することにより、ASDを製造するのに使用される初期多形形態がその製造プロセス中にポリマーで安定化された非晶質形態に移行されるという理由で、ヒトにおける生物学的利用能に対する活性成分(I)の変態(非晶質形態又は結晶質修飾I)の主要な影響が平準化されるということが、実施例4―4~実施例4―6によって立証される。これらの実施例4-4~実施例4-6では、実施例3-3の非晶質固体分散体(ASD)を使用して、錠剤中に種々の量の増量剤を含んでいる錠剤を製造している。増量剤の量は活性成分(I)の迅速な溶解にとって重要ではなく、全ての実施例4-4~実施例4-6は、所望の溶解特性を有する錠剤になると結論付けることができる。所望の溶解特性を有する50mgの用量の錠剤製剤では、実施例4-7(実施例3-2の非晶質固体分散体(ASD)を使用)における増量剤を低減させてゼロとすることさえ可能であった。実施例4-8では、実施例3-4の非晶質固体分散体(ASD)を使用して、所望の溶解特性を有する20mgの錠剤を製造するためにブレンド後において増量剤を除去することも可能であることが立証された。実施例4-9~実施例4-14では、実施例3-5の顆粒を使用して、種々のレベル/量の崩壊促進剤を含んでいる錠剤を製造した。錠剤からの活性成分(I)の最も望ましい溶解特性を達成しながら、同時に、ブレンド後の段階においてゼロに至るまで広範囲の崩壊促進剤を使用することが可能であることが示すことができる。実施例4-11~実施例4-14では、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを使用することなく、錠剤からの活性成分(I)の所望の溶解特性を達成することも可能であることが示すことができる。実施例4-1~実施例4-14の活性成分(I)錠剤の溶出速度の比較は、表3に記載されている。
【0149】
固体分散体ベースとしての各種ポリマーの比較:
固体分散体ベースとして、実施例4-15及び実施例4-17では、Kollidon VA64が使用されており、並びに、実施例4-16では、HPMCAS MGが使用されている。驚くべきことに、得られた溶解値は非常に低いままであり(実施例4-15の場合:11%、実施例4-16の場合:65%、実施例4-17の場合:13%)、30分後に活性成分(I)の少なくとも85%を放出する基準を満たさない。さらに、特に、Kollidon VA 64錠剤は、30分を超える長い崩壊時間を示した。HPMCAS MGもKollidon VA64も、30分後に活性成分(I)の少なくとも85%を放出するという所望の溶解基準を達成するのには適していないと結論付けることができる。これは、固溶体ベースとして選択されたPVPの優位性を明確に示している。
【0150】
実施例4-18では、実施例3-9の顆粒を使用して、1:3の活性成分(I)と固体分散体ベースの比率を有する錠剤を製造した。実施例4-18は、30分後に活性成分(I)の少なくとも85%を放出する溶解基準を満たすが、実施例4-14と比較して、ほぼ1.5倍延長された崩壊時間及び低減された薬剤含有量を示す。
【0151】
7.5 活性成分(I)を含有する医薬剤形を製造するためのホットメルト押出し - エナンチオマー純度への影響
ホットメルト押出しプロセスでは、使用した固体分散体ベース、界面活性剤又は活性成分(I)の変態(非晶質形態又は結晶変態I)とは無関係に、ヒトにおいて不活性であることが知られている不適切なエナンチオマーが大量に生成された。結果は、表10に示されている。
【表12】
結果: ホットメルト押出しプロセス(表10の実施例5-1~実施例5-6)では、活性成分(I)の初期エナンチオマー純度と比較して、インビボでは効果のない不適切なエナンチオマーの生成が明らかに増加/増大した。従って、ホットメルト押出しは、適切なプロセスとは考えられない。ホットメルト押出しプロセスとは対照的に、流動床造粒プロセスは、活性成分(I)の不適切なエナンチオマーの構築の増加をもたらさない(表10の実施例3-1、実施例3-4及び実施例3-5)。
【0152】
これは、活性成分(I)は非晶質形態で存在しなければならないこと、活性成分(I)の結晶化は防止されなければならないこと、及び、活性成分(I)を含んでいる錠剤(医薬剤形)の製造中及び保存中にエナンチオマー純度は保護されなければならないこと、を示している。
【0153】
これらのデータは、ポリビニルピロリドン(PVP)及びクロスカルメロースナトリウムによって安定化され、流動床造粒によって製造された非晶質活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体(ASD)が、30分後には活性成分(I)の少なくとも85%を放出することを特徴とする優れた溶解挙動を示すことを支持する。さらに、エナンチオマー純度は保護されており、活性成分(I)を含んでいる非晶質固体分散体は、40℃、相対湿度75%での屋外保存(過酷な条件)でも(長期)安定性を示し、及び、これらの過酷な条件で保存されていた錠剤(医薬剤形)の場合でも、生物学的利用能は良好である。結果は、表3に示されている。
【0154】
8. 崩壊法
欧州薬局方第10版、モノグラフ01/2020の最終改訂版に従い、当該経口固形剤形について、堅いバスケット-ラック装置で試験する。6つの被検体を個別にバスケットの管に入れ、ディスクを加える。この装置は、水を媒体として37+/-2℃で使用して操作する。結果は、表1及び表3に示されている。
【0155】
9. PXRD法
粉末X線回折(PXRD)データは、単色化Cu-Kα1放射線、位置有感検出器を使用し、発生器設定40kV及び40mAで、STOE STADI P 回折計で記録した。サンプルは、移行モードで収集し、2枚のフォイル間の薄層として準備した。走査範囲は、10°2θ~26°2θであり、60秒/ステップで0.1°ステップであった。
【0156】
10. 溶解性
結晶形態の活性成分(I)の溶解度を、種々の溶媒中で測定した。結果は、表11に示されている。
【表13】
【図面の簡単な説明】
【0157】
図1】結晶変態Iの活性成分(I)の使用の影響を明らかにする、実施例2-1、実施例2-2及び実施例2-3の溶解プロファイルの比較。
図1
【国際調査報告】