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特表2024-508971(4S)-24-クロロ-4-エチル-73-フルオロ-35-メトキシ-32,5-ジオキソ-14-(トリフルオロメチル)-32H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-5 ジベンゼナヘプタファン-74-カルボキサミドの結晶形態
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】(4S)-24-クロロ-4-エチル-73-フルオロ-35-メトキシ-32,5-ジオキソ-14-(トリフルオロメチル)-32H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-5 ジベンゼナヘプタファン-74-カルボキサミドの結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/10 20060101AFI20240220BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C07D401/10 CSP
A61K31/4439
A61P7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554815
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022055521
(87)【国際公開番号】W WO2022189279
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161489.6
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ルヴィラン,ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプス,ティア
(72)【発明者】
【氏名】オレニク,ブリッタ
(72)【発明者】
【氏名】ルビノ,フランコ
(72)【発明者】
【氏名】ツィーム,クリシャン
(72)【発明者】
【氏名】ゾワ,ミハル
(72)【発明者】
【氏名】レーリッヒ,ズザンネ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB06
4C063CC42
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC60
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA54
(57)【要約】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミドの結晶形態(これらは、結晶変態I及び結晶変態IIである)、それらを調製する方法、それらを含んでいる医薬組成物及び疾患の制御におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶変態I又は結晶変態IIである、式(I)
【化1】
で表される(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミドの結晶形態。
【請求項2】
2Θ値±0.2°として示されている少なくとも以下の反射:17.8、19.1、25.5を示す、20±5℃で放射線としてCu-Kα1を使用して測定されたX線粉末ディフラクトグラムを特徴とする、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の結晶変態I。
【請求項3】
2Θ値±0.2°として示されている少なくとも以下の反射:11.0、16.8、23.6を示す、20±5℃で放射線としてCu-Kα1を使用して測定されたX線粉末ディフラクトグラムを特徴とする、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の結晶変態II。
【請求項4】
バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1625、1239、991を示すラマン分光法を特徴とする、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の結晶変態I。
【請求項5】
バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1623、1604、1336を示すラマン分光法を特徴とする、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の結晶変態II。
【請求項6】
血栓性若しくは血栓塞栓性の疾患及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性の合併症の治療及び/又は予防において使用するための、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の結晶変態I。
【請求項7】
血栓性若しくは血栓塞栓性の疾患及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性の合併症の治療及び/又は予防において使用するための、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の結晶変態II。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物の結晶変態Iを調製する方法であって、非晶質形態の式(I)で表される化合物を不活性溶媒に溶解させ、及び、下記式(II)
【化2】
で表される結晶変態Aの4-({(2S)-2-[4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]-プロパノイル}アミノ)-2-フルオロベンズアミドの種結晶を用いて、結晶変態Iの式(I)で表される化合物を結晶化させることを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
前記不活性溶媒が、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ブタン-2-オン、1,4-ジオキサン、2-メチルピリジン、4-メチルペンタン-2-オン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2-(プロパン-2-イルオキシ)プロパン及び2-メトキシ-2-メチルプロパン、並びに、アルコール類(例えば、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、プロパン-2-オール、プロパン-1-オール、2-メチルプロパン-1-オール、エタノール及びメタノール)、並びに、それらの混合物、並びに、それらの溶媒と水の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記不活性溶媒が、エタノールと水の混合物であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物の結晶変態IIを調製する方法であって、下記式(III)
【化3】
で表される4-({(2S)-2-[4-{5-クロロ-2-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]ブタノイル}-アミノ)-2-フルオロベンズアミド アセトンをオーブンの中で、減圧下、好ましくは、50℃及び10ミリバールで1日間、乾燥させることを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
式(II)
【化4】
で表される、4-({(2S)-2-[4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]プロパノイル}アミノ)-2-フルオロベンズアミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミドの結晶形態(これらは、結晶変態I及び結晶変態IIである)、それらを調製する方法、それらを含んでいる医薬組成物及び疾患の制御におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)で表される化合物、即ち、(4S)-2-クロロ-4-エチル-7-フルオロ-3-メトキシ-3,5-ジオキソ-1-(トリフルオロメチル)-3H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7-カルボキサミド〔4-({(2S)-2-[4-{5-クロロ-2-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]ブタノイル}アミノ)-2-フルオロベンズアミドとも称される〕は、WO2017/005725から知られており、そして以下の式で表される:
【化1】
式(I)で表される化合物は、第XIa因子阻害薬として作用し、そして、この特異的な作用機序により、経口投与後、疾患の治療及び/又は予防において、好ましくは、血栓性若しくは血栓塞栓性の疾患及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性の合併症、特に、心血管疾患(これは、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞又はステント血栓症を包含する)、並びに、脳血管動脈における疾患、及び、一過性虚血発作(TIA)をもたらす他の疾患、虚血性脳卒中(これは、心塞栓性脳卒中及び非心塞栓性脳卒中を包含する)、並びに/又は、末梢動脈疾患(これは、末梢動脈閉塞、急性四肢虚血、切断、インターベンション(例えば、血管形成術、ステント移植又は外科手術及びバイパス形成手術)の後の再閉塞及び再狭窄、及び/又は、ステント血栓症を包含する)をもたらす末梢動脈の疾患の治療及び/又は予防において、有用である。
【0003】
式(I)で表される化合物は、WO2017/005725の実施例234及び実施例235に記載されているようにして調製することができる。記載されている方法を使用して、式(I)で表される化合物は、非晶質形態で得られる。得られた非晶質形態の式(I)で表される化合物は、例えば、(1)式(I)で表される化合物を溶媒に溶解させること及び典型的な結晶化実験(これは、例えば、溶媒の蒸発及び溶液の冷却を包含する)を実施すること又は(2)非晶質形態の式(I)で表される化合物の飽和溶液をスラリー化することなどの、多くの実験を行ったとしても、溶媒を含まない結晶形態に変換させることはできなかった。さまざまな種類の溶媒及び溶媒の混合物が試みられてきた。
【0004】
WO2019/175043には、式(I)で表される化合物を溶媒を含まない結晶形態で単離することはできないが、ラセミ混合物中に含まれる式(I)で表される化合物は結晶化することが記載されている。ラセミ混合物中に含まれる式(I)で表される化合物の結晶化に関するこの挙動は、非晶質固体状態の形態にある式(I)で表される化合物(エナンチオマー的に純粋)を容易で拡張可能な方法で製造するために使用される。式(I)で表される化合物を含んでいるラセミ物質は、結晶質であり、有機溶媒に対する溶解度ははるかに低い。非晶質形態にある式(I)で表される所望の化合物(エナンチオマー的に純粋)と、結晶形態にある式(I)で表される化合物を含んでいるラセミ物質の、異なる動力学的溶解度のこの原理に基づいて、式(I)で表される化合物(エナンチオマー的に純粋)が、高いee値で得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2017/005725
【特許文献1】WO2019/175043
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、開発の目的は、溶媒を含まない結晶形態にある式(I)で表される化合物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、非晶質形態の式(I)で表される化合物は溶媒中に溶解させることが可能であり、そして、結晶変態Aの式(II)で表される化合物を用いて種結晶を入れた後では、式(I)で表される化合物は結晶変態Iで結晶化することが見いだされた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
該非晶質形態は、特徴的な反射を示さないX線粉末ディフラクトグラム及び溶融イベントを示さないDSCサーモグラムによって特徴付けることができます(図17及び図16)。該非晶質形態は、結晶変態Iと比較して、吸湿性があり、安定性が低いことが分かった。
【0009】
式(I)で表される化合物の以下の結晶形態は、結晶変態I及び結晶変態IIであることが確認されている。本発明に関連して、変態、多形形態及び多形は同じ意味を有する。これらの結晶形態は、非晶質形態に加えて存在する。結晶形態と非晶質形態は、全てまとめて、式(I)で表される化合物の異なる固体形態である。
【0010】
式(I)で表される化合物の結晶変態Iは、吸湿性及び熱安定性に関して、式(I)で表される化合物の非晶質形態よりも有利な特性を示す。非晶質形態、結晶変態I及び結晶変態IIの動的蒸気吸着等温線は、相対湿度80%で、サンプルが、それぞれ、3.2%、0.04%及び2.13%質量の水分を獲得したことを示している。熱安定性は、サンプルを密閉容器に入れて90℃で1週間保存し、その後、HPLCで全ての有機不純物の合計を測定することによって調査した(方法3)。非晶質形態では4.4%の有機不純物が測定されたが、保存後、結晶変態Iでは有機不純物は検出されなかった。
【0011】
式(I)で表される化合物の結晶変態Iは、融点未満で熱力学的に安定な形態である。
【0012】
従って、式(I)で表される化合物の結晶変態Iは、製薬分野での使用に適しており、特に、医薬組成物に適している。
【0013】
本発明による医薬組成物は、式(I)で表される化合物の結晶変態Iを含んでおり、及び、場合によりさらなる薬学的に許容される賦形剤を含んでいる。
【0014】
式(I)で表される化合物の異なる形態は、X線粉末回折、示差走査熱量測定(DSC)、IR及びラマン分光法によって、区別することができる。
【0015】
式(I)で表される化合物の結晶変態Iは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1705、1641、1429を示す赤外分光法によって特徴付けることができ、好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1705、1641、1503、1429、791を示す赤外分光法によって特徴付けることができ、さらに好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1705、1641、1503、1429、1383、1039、791を示す赤外分光法によって特徴付けることができ、最も好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:3401、1705、1613、1641、1503、1429、1383、1205、1039及び791を示す赤外分光法によって特徴付けることができる。結晶変態Iの式(I)で表される化合物は、図7に示されているIRスペクトルによっても特徴付けることができる。
【0016】
式(I)で表される化合物の結晶変態IIは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1664、1571、1134を示す赤外分光法によって特徴付けることができ、好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1664、1571、1525、1373、1134を示す赤外分光法によって特徴付けることができ、さらに好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1664、1571、1525、1417、1373、1134、1032を示す赤外分光法によって特徴付けることができ、最も好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1664、1571、1525、1417、1373、1134、1032、870、825及び775を示す赤外分光法によって特徴付けることができる。結晶変態IIの式(I)で表される化合物は、図8に示されているIRスペクトルによっても特徴付けることができる。
【0017】
式(I)で表される化合物の結晶変態Iは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1625、1239、991を示すラマン分光法によって特徴付けることができ、好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1625、1572、1528、1239、991を示すラマン分光法によって特徴付けることができ、さらに好ましくは、;バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1625、1572、1528、1359、1329、1239、991を示すラマン分光法によって特徴付けることができ、最も好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:3059、1694、1625、1572、1528、1431、1359、1329、1239及び991を示すラマン分光法によって特徴付けることができる。結晶変態Iの式(I)で表される化合物は、図9に示されているラマンスペクトルによっても特徴付けることができる。
【0018】
式(I)で表される化合物の結晶変態IIは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1623、1604、1336を示すラマン分光法によって特徴付けることができ、好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1623、1604、1527、1336、981を示すラマン分光法によって特徴付けることができ、さらに好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1663、1623、1604、1527、1247、1336、981を示すラマン分光法によって特徴付けることができ、最も好ましくは、バンド最大値(cm-1)の少なくとも以下の値:1710、1663、1623、1604、1527、1374、1247、1336、981及び709を示すラマン分光法によって特徴付けることができる。結晶変態IIの式(I)で表される化合物は、図10に示されているラマンスペクトルによっても特徴付けることができる。
【0019】
式(I)で表される化合物の結晶変態Iは、少なくとも以下の反射:17.8、19.1、25.5(それぞれ、2Θ値±0.2°として示されている)を示すX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によって特徴付けることができ、好ましくは、少なくとも以下の反射:10.6、17.8、19.1、19.4、25.5(それぞれ、2Θ値±0.2°として示されている)を示すX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によって特徴付けることができ、さらに好ましくは、少なくとも以下の反射:10.6、13.9、17.8、19.1、19.4、23.4、25.5(それぞれ、2Θ値±0.2°として示されている)を示すX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によって特徴付けることができ、最も好ましくは、少なくとも以下の反射:10.6、13.9、17.8、19.1、19.4、20.8、22.0、22.6、23.4及び25.5(それぞれ、2Θ値±0.2°として示されている)を示すX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によって特徴付けることができる。結晶変態Iの式(I)で表される化合物は、図11に示されているX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によっても特徴付けることができる。
【0020】
式(I)で表される化合物の結晶変態IIは、少なくとも以下の反射:11.0、16.8、23.6(それぞれ、2Θ値±0.2°として示されている)を示すX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によって特徴付けることができ、好ましくは、少なくとも以下の反射:8.9、11.0、16.8、20.2、23.6(それぞれ、2Θ値±0.2°として示されている)を示すX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によって特徴付けることができ、さらに好ましくは、少なくとも以下の反射:7.9、8.9、11.0、16.8、18.3、20.2、23.6(それぞれ、2Θ値±0.2°として示されている)を示すX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によって特徴付けることができ、最も好ましくは、少なくとも以下の反射:7.9、8.9、11.0、16.8、17.3、18.3、20.2、21.9、23.6及び26.5(それぞれ、2Θ値±0.2°として示されている)を示すX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によって特徴付けることができる。結晶変態Iの式(I)で表される化合物は、図12に示されているX線粉末ディフラクトグラム(20±5℃、放射線としてCu-Kα1を使用)によっても特徴付けることができる。
【0021】
調製方法
本発明は、さらに、結晶変態Iの式(I)で表される化合物を調製する方法にも関し、ここで、該方法は、非晶質形態の式(I)で表される化合物を不活性溶媒に溶解させ、及び、結晶変態Aの式(II)で表される化合物の種結晶を用いて、結晶変態Iの式(I)で表される化合物を結晶化させることによる。
【0022】
本発明による不活性溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ブタン-2-オン、1,4-ジオキサン、2-メチルピリジン、4-メチルペンタン-2-オン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2-(プロパン-2-イルオキシ)プロパン若しくは2-メトキシ-2-メチルプロパン、又は、アルコール類(例えば、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、プロパン-2-オール、プロパン-1-オール、2-メチルプロパン-1-オール、エタノール又はメタノール)、及び/又は、それらの混合物、並びに、それらの溶媒と水の混合物である。溶媒として好ましいのは、エタノールと水の混合物である。
【0023】
本発明は、さらに、結晶変態Iの式(I)で表される化合物を調製する方法にも関し、ここで、該方法は、非晶質形態の式(I)で表される化合物をエタノールに溶解させ、水を添加し、及び、結晶変態Aの式(II)で表される化合物の種結晶を用いて、結晶変態Iの式(I)で表される化合物を結晶化させることによる。
【0024】
式(II)で表される化合物、即ち、4-({(2S)-2-[4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]プロパノイル}アミノ)-2-フルオロベンズアミドは、下記式で表される:
【化2】
本発明は、さらに、結晶変態IIの式(I)で表される化合物を調製する方法にも関し、ここで、該方法は、式(III)で表される化合物を、オーブンの中で、減圧下、好ましくは、50℃及び10ミリバールで1日間、乾燥させることによる。温度と圧力の他の組み合わせも、アセトンの脱溶媒和を引き起こすことができ、それにより、脱溶媒和プロセスの進行及び/又は終了は、TGA及びXRPD測定によって検証可能である。
【0025】
式(III)で表される化合物、即ち、4-({(2S)-2-[4-{5-クロロ-2-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]ブタノイル}-アミノ)-2-フルオロベンズアミド アセトンは、下記式で表される:
【化3】
治療方法
本発明は、さらに、疾患を治療及び/又は予防するための、好ましくは、血栓性若しくは血栓塞栓性の疾患及び/又は血栓性若しくは血栓塞栓性の合併症を治療及び/又は予防するための、結晶変態I及び/又は結晶変態IIの式(I)で表される化合物の使用にも関する。
【0026】
本発明は、さらに、心血管疾患(これは、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞又はステント血栓症を包含する)、並びに、脳血管動脈における疾患、及び、一過性虚血発作(TIA)をもたらす他の疾患、虚血性脳卒中(これは、心塞栓性脳卒中及び非心塞栓性脳卒中を包含する)、並びに/又は、末梢動脈疾患(これは、末梢動脈閉塞、急性四肢虚血、切断、インターベンション(例えば、血管形成術、ステント移植又は外科手術及びバイパス形成手術)の後の再閉塞及び再狭窄、及び/又は、ステント血栓症を包含する)をもたらす末梢動脈の疾患を治療及び/又は予防するための、結晶変態I及び/又は結晶変態IIの式(I)で表される化合物の使用にも関する。
【0027】
医薬組成物
本発明による式(I)で表される化合物の結晶変態I及び結晶変態IIは、全身的活性及び/又は局所的活性を有することが可能である。この目的のために、それは、適切な方法で、例えば、経口経路、非経口経路、経肺経路、経鼻経路、舌下経路、経舌経路、口腔経路、経直腸経路、経膣経路、皮膚経路、経皮経路、結膜経路、経耳経路を介して、又は、インプラント若しくはステントとして、投与することができる。
【0028】
これらの投与経路に関して、本発明による式(I)で表される化合物の結晶変態I及び結晶変態IIを、適切な投与形態で投与することが可能である。
【0029】
経口投与に関しては、本発明による式(I)で表される化合物の結晶変態I及び結晶変態IIを、例えば、錠剤(非被覆錠剤、又は、例えば、遅延して溶解するか若しくは不溶性である腸溶性コーティング若しくは制御放出性コーティングを有する、被覆錠剤)、口腔内崩壊錠剤、フィルム/ウェハ剤、フィルム/凍結乾燥物剤、カプセル剤(例えば、硬ゼラチンカプセル剤又は軟ゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、散剤、エマルション剤、懸濁液剤、エアロゾル剤又は溶液剤などの、本発明の化合物を急速に及び/又は改変された方法で送達する当技術分野で既知の投与形態に製剤することが可能である。結晶形態及び/又は非晶質形態及び/又は溶解されている形態にある本発明化合物を、前記投与形態に組み込むことが可能である。
【0030】
非経口投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内又は腰椎内)、又は、吸収段階を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮又は腹腔内)、実施することができる。非経口投与に適している投与形態は、特に、溶液、懸濁液、エマルション、凍結乾燥物又は無菌粉末の形態にある注射用及び注入用の調製物である。
【0031】
別の投与経路に適している例は、以下のものである:吸入用の医薬形態[特に、粉末吸入装置、噴霧器]、点鼻剤、点鼻液、鼻内噴霧剤;舌投与、舌下投与又は口腔投与用の錠剤/フィルム/ウェハ/カプセル剤;坐剤;点眼液、眼軟膏、洗眼器、眼球インサート、点耳薬、耳噴霧剤、耳粉剤、耳洗浄液、耳タンポン;膣カプセル、水性懸濁液(ローション、振盪水剤(mixturae agitandae))、親油性懸濁液、エマルション、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、貼付剤)、乳液、ペースト、泡剤、散粉剤、インプラント又はステント。
【0032】
式(I)で表される化合物の結晶変態I及び結晶変態IIは、示されている投与形態の中に組み入れることができる。それは、自体既知の方法で、製薬上適切な賦形剤と混合させることによって実施することができる。製薬上適切な賦形剤としては、特に、以下のものなどがある:
・ 充填剤及び担体(例えば、セルロース、微結晶性セルロース(例えば、Avicel(登録商標))、乳糖、マンニトール、デンプン、リン酸カルシウム(例えば、Di-Cafos(登録商標)));
・ 軟膏基剤(例えば、ワセリン、パラフィン、トリグリセリド、ワックス、ウールワックス、ウールワックスアルコール、ラノリン、親水軟膏、ポリエチレングリコール);
・ 坐剤用の基剤(例えば、ポリエチレングリコール、カカオバター、硬脂肪(hard fat));
・ 溶媒(例えば、水、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロピレングリコール、中鎖長トリグリセリド脂肪油、液体ポリエチレングリコール、パラフィン);
・ 界面活性剤、乳化剤、分散剤又は湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、レシチン、リン脂質、脂肪アルコール(例えば、Lanette(登録商標))、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Span(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween(登録商標))、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド(例えば、Cremophor(登録商標))、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(polyoxethylene fatty acid ester)、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、グリセロール脂肪酸エステル、ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標));
・ 緩衝剤、酸及び塩基(例えば、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸、酢酸、塩酸、水酸化ナトリウム溶液、炭酸アンモニウム、トロメタモール、トリエタノールアミン);
・ 等張剤(例えば、グルコース、塩化ナトリウム);
・ 吸着剤(例えば、高分散シリカ);
・ 粘度上昇剤、ゲル形成剤、増粘剤及び/又は結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース-ナトリウム、デンプン、カルボマー、ポリアクリル酸(例えば、Carbopol(登録商標))、アルギネート、ゼラチン);
・ 崩壊剤(例えば、改質デンプン、カルボキシメチルセルロース-ナトリウム、グリコール酸デンプンナトリウム(例えば、Explotab(登録商標))、架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロース-ナトリウム(例えば、AcDiSol(登録商標)));
・ 流動調節剤、滑沢剤、流動促進剤及び離型剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、高分散シリカ(例えば、Aerosil(登録商標)));
・ 急速に又は改変された方法で溶解する、コーティング材料(例えば、糖、シェラック)及びフィルム又は拡散膜のためのフィルム形成剤(例えば、ポリビニルピロリドン(例えば、Kollidon(登録商標))、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit(登録商標)));
・ カプセル材料(例えば、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);
・ 合成ポリマー(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit(登録商標))、ポリビニルピロリドン(例えば、Kollidon(登録商標))、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、並びに、それらのコポリマー及びブロックコポリマー);
・ 可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、トリアセチン、クエン酸トリアセチル、フタル酸ジブチル);
・ 浸透促進剤;
・ 安定化剤(例えば、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、アスコルビン酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル);
・ 防腐剤(例えば、パラベン、ソルビン酸、チオメルサール、塩化ベンザルコニウム、酢酸クロルヘキシジン、安息香酸ナトリウム);
・ 着色料(例えば、無機顔料、例えば、酸化鉄、二酸化チタン);
・ 香味料、甘味料、香味及び/又は臭気のマスキング剤。
【0033】
本発明は、さらに、少なくとも本発明による式(I)で表される化合物の結晶変態I及び/又は結晶変態IIを慣習的に1種類以上の製薬上適切な賦形剤と一緒に含んでいる医薬組成物、及び、本発明によるそれらの使用にも関する。
【0034】
本発明の医薬組成物の投与量:
疾患の治療に有用な化合物を評価するために知られている実験技術に基づいて、哺乳動物における上記で特定された状態の治療を決定するための薬理学的アッセイによって、及び、これらの結果をこれらの状態の治療に使用される既知の薬剤の結果と比較することによって、それぞれの所望の適応症に関して、本発明の化合物の有効な投与量を容易に決定することができる。これらの症状のうちの1つの治療において投与される活性成分の量は、使用される特定の化合物及び投与量単位、投与方法、治療期間、治療対象の患者の年齢及び性別、並びに、治療対象の状態の性質及び程度などの考慮事項に応じて大きく変わり得る。
【0035】
投与される活性成分の総量は、一般に、有効な結果を達成するための非経口投与の場合には、24時間ごとに約5~250mgの範囲であり、有効な結果を達成するための経口投与の場合には、24時間ごとに約5~500mgの範囲である。
【0036】
それにもかかわらず、特に、体重、投与経路、活性成分に対する個人の反応、製剤の種類及び投与の時間又は間隔に応じて、適切な場合には、指定された量から逸脱すること必要であり得る。
【0037】
以下の試験及び実施例における重量データは、別途示されていない限り、重量パーセントであり;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈率及び濃度データは、別途示されていない限り、それぞれの場合に、体積に基づいている。
【実施例
【0038】
実施例
【表1】
HPLC法、LC-MS法、及び、GC法:
方法1: 機器:Waters ACQUITY SQD UPLC システム; カラム:Waters Acquity UPLC HSS T3 C18 1.8μm、50mm×1.0mm; 溶離液A:水+0.025%ギ酸、溶離液B:アセトニトリル+0.025%ギ酸; 勾配:0.0分 10%B → 1.2分 95%B → 2.0分 95%B; オーブン:50℃; 流量:0.40mL/分; UV検出:210-400nm。
【0039】
方法2: 機器:Thermo Scientific FT-MS; UHPLC:Thermo Scientific UltiMate 3000; カラム:Waters HSS T3 C18 1.8μm、75mm×2.1mm; 溶離液A:水+0.01%ギ酸; 溶離液B:アセトニトリル+0.01%ギ酸; 勾配:0.0分 10%B → 2.5分 95%B → 3.5分 95%B; オーブン:50℃; 流量:0.90mL/分; UV検出:210-400nm。
【0040】
方法3: Agilent 1290 システム; カラム:YMC Triart C18 ExRS 1.9μm、50mm×2mm; 溶離液A:水性酢酸アンモニウム(0.77g/L)/アンモニア性緩衝液 pH9; 溶離液B:アセトニトリル; 勾配:0.0分 5%B → 10分 65%B → 10.01分 5%B → 11分 5%B; オーブン:40℃; 流量:1mL/分; UV検出:220nm。
【0041】
H-NMR法: H-NMRスペクトルは、重水素化溶媒(d-DMSO)の中で、室温で、Bruker分光計(示されているように、400MHz、500MHz、又は、600MHz)で取得した。化学シフトδに関する情報は、照射周波数に対して、ppmで与えられている。該重水素化溶媒のシグナルは、内部標準として使用される。
【0042】
実施例1: (4S)-2 -クロロ-4-エチル-7 -フルオロ-3 -メトキシ-3 ,5-ジオキソ-1 4- (トリフルオロメチル)-3 H-6-アザ-3(4,1)-ピリジナ-1(1)-[1,2,3]トリアゾラ-2(1,2),7(1)-ジベンゼナヘプタファン-7 -カルボキサミド〔4-({(2S)-2-[4-{5-クロロ-2-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]ブタノイル}アミノ)-2-フルオロベンズアミドとも称される〕(式(I)で表される化合物)の調製
式(I)で表される化合物は、WO2017/005725の実施例234及び実施例235に記載されているようにして調製することができる。記載されている方法を使用して、式(I)で表される化合物は、非晶質形態で得られる。
【0043】
ラセミ化合物としての式(I)で表される化合物のH-NMRは、WO2017/005725の実施例234に示されている。
【0044】
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ [ppm] = 10.76 (br s, 1H), 9.13 (s, 1H), 7.86-7.80 (m, 2H), 7.79-7.77 (m, 1H), 7.69 (t, 1H), 7.66-7.61 (m, 1H), 7.56-7.49 (m, 2H), 7.37 (dd, 1H), 7.13 (s, 1H), 6.53 (s, 1H), 5.55-5.49 (m, 1H), 3.26 (s, 3H), 2.14-2.02 (m, 2H), 0.79 (t, 3H).
実施例2: 4-({(2S)-2-[4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]プロパノイル}アミノ)-2-フルオロ-ベンズアミド(式(II)で表される化合物)の調製
実施例2.1: 1-(2-ブロモ-4-クロロ-3-フルオロフェニル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール
【化4】
1-(2-ブロモ-4-クロロ-3-フルオロフェニル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾールは、2-ブロモ-4-クロロ-3-フルオロアニリン(WO2016/168098、頁59-60)から出発して、最初に、アジド誘導体を生成させ(亜硝酸tert-ブチル及びトリメチルシリルアジドの存在下; WO2017/005725、頁92-93の実施例2.18Aの合成と同様)、及び、2番目に、トリフルオロプロピンを用いて前記アジド誘導体の付加環化を実施する(酸化銅(I)の存在下; WO2017/005725、頁102の実施例2.26Aの合成と同様)ことによって、合成した。
【0045】
実施例2.2: 4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-2,5-ジメトキシピリジン
【化5】
1-(2-ブロモ-4-クロロ-3-フルオロフェニル)-4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール(982mg、2.85mmol)と(2,5-ジメトキシピリジン-4-イル)ボロン酸(WO2019/175043、頁23-24)(626mg、3.42mmol、1.2eq.)と炭酸カリウム(1.18g、8.55mmol、3.0eq.)の混合物を1,4-ジオキサン(50mL)に溶解させ、アルゴンを10分間流した後、[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド モノジクロロメタン付加体(233mg、0.29mmol、0.1eq.)を添加した。その反応混合物を100℃で(既に100℃に予熱しておいた油浴)一晩加熱した。追加の(2,5-ジメトキシピリジン-4-イル)ボロン酸(209mg、1.14mmol、0.4eq.)及び[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロリド モノジクロロメタン付加体(116mg、0.14mmol、0.05eq.)を添加した。その反応混合物を100℃でさらに5時間撹拌し、週末の間室温で放置し、Celite(登録商標)を通して濾過し、それを1,4-ジオキサンで洗浄した。その濾液を合して、減圧下で濃縮した。その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル 勾配)で精製した。収量:432mg(理論値の38%)。
【0046】
LC-MS (方法 2): Rt = 2.13 分; MS (ESIpos): m/z = 403 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ [ppm] = 9.17 / 9.16 (2x s, 1H), 8.03 / 8.01 (2x d, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.75 / 7.75 (2x d, 1H), 6.82 (s, 1H), 3.79 (s, 3H), 3.54 (s, 3H).
実施例2.3: 4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシピリジン-2(1H)-オン
【化6】
ピリジンヒドロブロミド(429mg、2.68mmol、2.5eq.)を、4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-2,5-ジメトキシピリジン(432mg、1.07mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解させた溶液に添加した。その混合物を100℃で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。その残渣を水に溶解させた。酢酸エチルを添加し、相を分離させた後、その水相を酢酸エチルで2回抽出した。その有機相を合して、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/メタノール 勾配)で精製した。収量:285mg(理論値の68%)。
【0047】
LC-MS (方法 2): Rt = 1.46 分; MS (ESIpos): m/z = 389 [M+H]+
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ [ppm] = 11.3 (br s, 1H), 9.23 (s, 1H), 8.10-7.99 (m, 1H), 7.77 (m, 1H), 7.15 (s, 1H), 6.41 (s, 1H), 3.45 (s, 3H).
実施例2.4: 4-({(2S)-2-[4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]プロパノイル}アミノ)-2-フルオロベンズアミド(式(II)で表される化合物)
【化7】
1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(420μL、3.35mmol、3.0eq.)を、アルゴン雰囲気下、室温で、4-{3-クロロ-2-フルオロ-6-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシピリジン-2(1H)-オン(438mg、1.12mmol)を2-プロパノール/アセトン(4:1、7.5mL)に溶解させた溶液に添加した。その混合物を室温で15分間撹拌し、続いて、4-{[(2R)-2-ブロモプロパノイル]アミノ}-2-フルオロベンズアミド(WO2020/127504、実施例1.19A、頁76)(355mg、1.23mmol、1.1eq.)及びさらなる2-プロパノール/アセトン(4:1、7.5mL)を添加した。その反応混合物を室温で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。その残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/メタノール 勾配)及び分取HPLC(逆相、溶離液: アセトニトリル/水 勾配)で精製した。収量: 539mg(理論値の81%)。
【0048】
LC-MS (方法 2): Rt = 1.65 分; MS (ESIpos): m/z = 597 [M+H]+
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ [ppm] = 10.72 / 10.63 (2x s, 1H), 9.24 / 9.13 (2x s, 1H), 8.06-7.99 (m, 1H), 7.79-7.74 (m, 1H), 7.72-7.60 (m, 2H), 7.56-7.48 (m, 2H), 7.38-7.32 (m, 1H), 7.27 / 7.25 (2x s, 1H), 6.48 / 6.47 (2x s, 1H), 5.51-5.44 (m, 1H), 3.47 / 3.45 (2x s, 3H), 1.65 / 1.64 (2x s, 3H).
実施例3: 4-({(2S)-2-[4-{5-クロロ-2-[4-(トリフルオロメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]フェニル}-5-メトキシ-2-オキソピリジン-1(2H)-イル]ブタノイル}-アミノ)-2-フルオロベンズアミド アセトン(式(III)で表される化合物)の調製
式(III)で表される化合物は、WO2019/175043の式(IIc)で表される化合物に記載されているようにして調製することができる。記載されている方法を使用して、式(III)で表される化合物が結晶形態で得られる。
【0049】
実施例4: 式(II)で表される結晶変態Aの化合物の調製
306mgの式(II)で表される非晶質形態の化合物を、50体積%のエタノールと50体積%の水の混合物20mLに室温で溶解させた。その溶液を室温で24時間撹拌して、白色固体が沈澱した。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させた。得られた固体を、真空オーブン中で、40℃で16時間乾燥させた。273mgの式(II)で表される結晶変態Aの化合物が得られた。H-NMRスペクトル(DMSO-d中)は、図19に示されている。
【0050】
実施例5: 式(I)で表される結晶変態の化合物を調製する試み
約10mgの式(I)で表される非晶質形態の化合物を、1mLの熱エタノールに溶解させた。室温まで冷却した後、溶媒が完全に蒸発するまで、その溶液を蓋のないバイアルの中で撹拌した。得られた固体は、非晶質であった。
【0051】
実施例6: 式(I)で表される結晶変態の化合物を調製する試み
100mgの式(I)で表される非晶質形態の化合物を、50体積%のエタノールと50体積%の水の混合物2.5mLの中に、室温で懸濁させた。その懸濁液を4週間撹拌し、次いで、濾過し、乾燥させた。得られた固体は、非晶質であった。
【0052】
実施例7: 式(I)で表される結晶変態Iの化合物の調製
30mgの式(I)で表される非晶質形態の化合物を、室温で、2mLのエタノールに溶解させた。その溶液に、濁った溶液が観察されるまで、660μLの水を滴下して加えた。次いで、その溶液に、1mgの式(II)で表される化合物の結晶変態Aを種結晶として加えた。種結晶を加えた直後に、さらに小さな粒子の沈澱が観察されたが、その粒子は撹拌すると急速に消失し、外見的には透明な溶液が得られた。室温で48時間撹拌した後、懸濁液が得られた。その固体を真空下で濾過し、周囲条件下で一晩乾燥させた。得られた固体のXRPDパターンは、式(I)で表される化合物の結晶変態Iに対応する。得られた固体のH-NMR分析は、その固体が約5重量%の式(II)で表される化合物を含んでいることを示した。式(I)で表される化合物のピークは、δ[ppm]=6.53(s,1H),3.26(s,3H)及び0.79(t,3H)にあり、式(II)で表される化合物のピークは、δ[ppm]=6.48/6.47(2x s,1H),3.47/3.45(2x s,3H)及び1.65/1.64(2x s,3H)にある。これらのピークは、式(II)で表される化合物の5重量%を決定するために、積分に使用した。H-NMRスペクトルは、図1に示されている。
【0053】
実施例8: 純粋な式(I)で表される化合物としての式(I)で表される結晶変態Iの化合物の調製
300mgの式(I)で表される非晶質形態の化合物を、室温で、3.8mLのエタノールに溶解させた。その溶液に、濁った溶液が観察されるまで、3.5mLの水を滴下して加えた。2滴のエタノールを加えて、透明な溶液が得られた。この透明な溶液に、実施例7で得られた1.5mgの固体を種結晶として加え、次いで、室温で2日間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、周囲条件で一晩乾燥させた。146mgの式(I)で表される化合物の結晶変態Iが得られた。得られた固体のH-NMR分析は、式(II)で表される化合物の量が検出限界未満であることを示した。H-NMRスペクトルは、図2に示されている。
【0054】
実施例9: 純粋な式(I)で表される化合物としての式(I)で表される結晶変態Iの化合物の調製
20.0gの式(I)で表される非晶質形態の化合物を、室温で、40.0gのプロパン-2-オールと10.0gのアセトンの混合物に溶解させた。その混合物を60℃まで加熱し、得られた溶液に、126.0gの水を60分間かけて加えた。得られた混合物に、100.0mgの式(I)で表される化合物の結晶変態Iを種結晶として加え、60℃で3時間撹拌した。次いで、追加の4.8gの式(I)で表される非晶質形態の化合物を添加し、その混合物を60℃で一晩撹拌した。得られた懸濁液を60分間で20℃まで冷却し、20℃で90分間撹拌した。こうして得られた懸濁液を、真空下で濾過し、42.5gのプロパン-2-オール:アセトン:水混合物(質量比4:1:12)で2回洗浄し、真空下、40℃で乾燥させた。収量:22.4g(理論収量の90.3%)の結晶変態Iの淡白色固体。
【0055】
実施例10: 式(I)で表される結晶変態IIの化合物の調製
40mgの式(III)で表される化合物を、減圧下、50℃で乾燥させて、結晶変態IIの固体が得られた。
【0056】
実施例11: 式(I)で表される化合物の非晶質形態、結晶変態I及び結晶変態IIの物理的特徴付け
実施例11.1: 熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)は、Perkin Elmer Pyris6又はMettler Toledo TGA/DSC1のいずれかを使用して実行した。その機器を流量20~50mL.分-1の窒素ガスでパージした。約5~15mgの各サンプルを、アルミニウム製又は酸化アルミニウム製のるつぼに入れた。加熱速度は、全ての測定で10℃.分-1であり、温度範囲は、変態I及び変態IIに対しては、25~300℃であり、非晶質の場合は、25~280℃であった。サンプルの前処理は実施しなかった。TGAサーモグラムは、図3図4及び図15に示されている。
【0057】
実施例11.2: 示差走査熱量測定(DSC)
図16: 式(I)で表される化合物(非晶質形態)のDSC曲線
示差走査熱量測定(DSC)は、Mettler Toledo DSC822eを使用して実施した。その熱量計を、流量50mL.分-1の窒素ガスでパージした。約3~10mgのサンプルを、サンプルの前処理なしで、アルミニウム製るつぼに入れた。温度範囲は、20℃.分-1の加熱速度で、-10~280℃であった。DSCサーモグラムは、図16に示されている。
【0058】
図5: 式(I)で表される化合物(結晶変態I)のDSC曲線
示差走査熱量測定(DSC)は、Mettler Toledo DSC3を使用して実施した。その熱量計を、流量50mL.分-1の窒素ガスでパージした。約3~10mgのサンプルを、サンプルの前処理なしで、アルミニウム製るつぼに入れた。温度範囲は、20℃.分-1の加熱速度で、-10~300℃であった。DSCサーモグラムは、図5に示されている。
【0059】
図6: 式(I)で表される化合物(結晶変態II)のDSC曲線
示差走査熱量測定(DSC)は、Netzsch Phoenix DSC 204 F1を使用して実施した。その熱量計を、流量20mL.分-1の窒素ガスでパージした。約3~10mgのサンプルを、サンプルの前処理なしで、アルミニウム製るつぼに入れた。温度範囲は、10℃.分-1の加熱速度で、25~300℃であった。DSCサーモグラムは、図6に示されている。
【表2】
実施例11.3: 赤外分光法
IR測定は、Thermo Scientific Nicolet iS10 分光計及びBruker alpha 分光計を使用して、減衰全反射(ATR)ジオメトリで実施した。サンプルの前処理は実施せず、個々の測定は、32回又は64回の走査で構成された。IRスペクトルは、図7及び図8に示されている。
【表3】
実施例11.4: 式(I)で表される化合物のラマン分光法
ラマン測定は、Bruker MultiRAM 分光計を使用して実施した。サンプルの前処理は実施せず、個々の測定は、300mW又は600mWのレーザー出力を使用して、64回又は128回の走査で構成された。ラマンスペクトルは、図9及び図10に示されている。
【表4】
実施例11.5: 式(I)で表される化合物に関するX線粉末回折(XRPD)
X線粉末回折(XRPD)データは、単色化Cu-Kα1放射線、位置有感検出器を使用し、発生器設定40kV及び40mAで、STOE STADI P 回折計又はD8 Bruker Advance 回折計で記録した。サンプルは、移行モードで収集し、標準的なガラス毛細管内に準備したか、又は、2枚のフォイル間の薄層として準備した。走査範囲は、2°2θ~40°2θであり、STOE STADI Pの場合は、15秒/ステップで0.5°ステップ、D8 Bruker Advanceの場合は、1.28秒/ステップで0.009194171°ステップであった。X線粉末ディフラクトグラムは、図11図12及び図17に示されている。
【表5】
実施例11.6: 式(I)で表される化合物(非晶質形態、結晶変態I、及び、結晶変態II)の動的蒸気吸着
結晶変態I及び結晶変態IIの水吸着等温線は、DVS Resolution 重量収着分析装置(London、UK)を使用して決定した。非晶質形態の水吸着等温線は、DVS Intrinsic 機器(Surface Measurement Systems SMS)を使用して決定した。サンプルを、0%相対湿度(rH)で、1000分間(非晶質形態の場合は、1340分間)乾燥させた。その後、乾燥重量を記録した。湿度を、10%rHから90%rH(非晶質の場合は、95%rH)まで段階的に増加させ、次いで、再度、0%rHまで減少させた。各相対湿度設定値の平衡判定基準は、時間の関数としての相対質量変化が1分あたり0.002%であった。動的蒸気吸着等温線は、図13図14及び図20に示されている。
【表6】
実施例12: 式(II)で表される化合物(結晶変態A)に関するX線粉末回折(XRPD)
X線粉末回折(XRPD)データは、Cu-Kα放射線、位置有感検出器を使用し、発生器設定40kV及び40mAで、PANalytical X’Pert PRO 回折計で記録した。サンプルは、移行モードで収集し、2枚のフォイル間の薄層として準備した。走査範囲は、2°2θ~40°2θであり、25秒/ステップで0.013°ステップであった。X線粉末ディフラクトグラムは、図18に示されている。
【表7】
実施例13: 式(II)で表される化合物(実施例2.4)の生理学的有効性の評価
血栓塞栓性疾患を治療するための本発明による化合物の適合性は、以下のアッセイ系において実証することができる。
【0060】
(a) 試験の記載(インビトロ)
(a.1) FXIa阻害の測定
本発明による物質の第XIa因子阻害は、ペプチド性第XIa因子基質の反応を利用してヒト第XIa因子の酵素活性を測定する生化学試験系を用いて測定される。ここで、第XIa因子は、ペプチド性第XIa因子基質からC末端アミノメチルクマリン(AMC)を切断し、その蛍光が測定される。測定は、マイクロタイタープレート内で行う。
【0061】
被験物質をジメチルスルホキシドに溶解させ、ジメチルスルホキシドで連続希釈する(3000μM~0.0078μM; これにより、試験における以下の最終濃度が得られる:50μM~0.00013μM)。それぞれの場合において、1μLの希釈物質溶液を、Greiner製の白色マイクロタイタープレート(384ウェル)のウェルに入れる。次いで、20μLのアッセイ緩衝液(50mMのTris/HCl pH7.4;100mMの塩化ナトリウム;5mMの塩化カルシウム;0.1%のウシ血清アルブミン)及び20μLのKordia製の第XIa因子(アッセイ緩衝液中0.45nM)を連続的に添加する。15分間のインキュベーション後、その酵素反応を、Bachem製のアッセイ緩衝液(アッセイ緩衝液中10μM)に溶解させた20μLのXIa因子基質Boc-Glu(OBzl)-Ala-Arg-AMCを添加することによって開始させ、その混合物を室温(22℃)で30分間インキュベートし、次いで、蛍光を測定する(励起:360nm、発光:460nm)。被験物質を含んでいる試験バッチの測定された発光を、被験物質を含んでいない対照バッチ(ジメチルスルホキシド中の被験物質の代わりにジメチルスルホキシドのみ)の発光と比較し、濃度/活性の関係からIC50値を計算する。この試験からの活性データは、以下の表Aに記載されている(複数の独立した個々の測定からの平均値として):
【表8】
(a.2) 選択性の決定
FXIa阻害に関する物質の選択性を実証するために、被験物質を、Xa因子、トリプシン及びプラスミンなどの他のヒトセリンプロテアーゼを阻害する可能性について調べる。第Xa因子(Kordia製の1.3nmol/L)、トリプシン(Sigma製の83mU/mL)及びプラスミン(Kordia製の0.1μg/mL)の酵素活性を測定するために、これらの酵素を溶解させ(50mmol/LのTris緩衝液[C,C,C-トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、100mmol/LのNaCl、0.1%BSA[ウシ血清アルブミン]、5mmol/Lの塩化カルシウム、pH7.4)、ジメチルスルホキシド中のさまざまな濃度の被験物質と一緒に、及び、同様に、被験物質なしでジメチルスルホキシドと一緒に、15分間インキュベートする。次いで、その酵素反応を、適切な基質(第Xa因子及びトリプシンについては、5μmol/LのBachem製のBoc-Ile-Glu-Gly-Arg-AMC、及び、プラスミンについては、50μmol/LのBachem製のMeOSuc-Ala-Phe-Lys-AMC)を添加することによって開始させる。22℃で30分間のインキュベーション時間の後、蛍光を測定する(励起:360nm、発光:460nm)。被験物質を含んでいる被験混合物の測定された発光を、被験物質を含んでいない対照混合物(ジメチルスルホキシド中の被験物質の代わりにジメチルスルホキシドのみ)と比較し、濃度/活性の関係からIC50値を計算する。
【0062】
(a.3) トロンビン生成アッセイ(トロンボグラム)
Hemkerによるトロンビン生成アッセイにおける被験物質の効果を、ヒト血漿(Octapharma製のOctaplas(登録商標))の中でインビトロで測定する。
【0063】
Hemkerによるトロンビン生成アッセイにおいて、トロンビン血漿の活性は、基質I-1140(Z-Gly-Gly-Arg-AMC、Bachem)の蛍光切断産物を測定することによって決定される。その反応は、さまざまな濃度の被験物質又は対応する溶媒の存在下で行わせる。その反応を開始させるために、Thrombinoscope製の試薬(30pM~0.1pMの組換え組織因子、HEPES中の24μMリン脂質)を使用する。さらに、Thrombinoscope製のトロンビンキャリブレーターを使用し、そのアミド分解活性は、未知量のトロンビンを含んでいるサンプル中のトロンビン活性を計算するために必要とされる。該試験は、製造業者の説明書(Thrombinoscope BV)に従って実施する: 4μLの被験物質又は溶媒、76μLの血漿及び20μLのPPP試薬又はトロンビンキャリブレーターを37℃で5分間インキュベートする。20μLの2.5mMトロンビン基質(20mM Hepes中)、60mg/mLのBSA、102mMの塩化カルシウムを添加した後、120分間にわたって20秒毎にトロンビン生成を測定する。測定は、390/460nmフィルター対及びディスペンサーを備えたThermo Electron製の蛍光光度計(Fluoroskan Ascent)を用いて行う。
【0064】
Thrombinoscopeソフトウェアを使用して、トロンボグラムを計算し、グラフで表す。以下のパラメータを計算する:遅れ時間、ピークまでの時間、ピーク、ETP(内因性トロンビン電位)及び開始尾部。
【0065】
(a.4) 抗凝固活性の測定
被験物質の抗凝固活性を、ヒト血漿及びラット血漿の中でインビトロで測定する。レシーバーとして0.11モル濃度のクエン酸ナトリウム溶液を使用して、新鮮な全血を直接抜き取って、1:9のクエン酸ナトリウム/血液の混合比にする。血液を採取した直後に、それ充分に混合させ、約4000gで15分間遠心分離する。その上清を(血小板不足)血漿として収集する。
【0066】
プロトロンビン時間(PT、同義語:トロンボプラスチン時間、迅速試験)は、市販の試験キット(Boehringer Mannheim製のNeoplastin(登録商標)、又は、Instrumentation Laboratory製のHemoliance(登録商標)RecombiPlastin)を使用して、さまざまな濃度の被験物質又は対応する溶媒の存在下で測定する。被験化合物を、血漿と一緒に37℃で3分間インキュベートする。次いで、トロンボプラスチンを添加することによって凝固を開始させ、サンプルの凝固が起こる時点を決定する。プロトロンビン時間を2倍にする被験物質の濃度を測定する。
【0067】
活性化部分的トロンボプラスチン時間(APTT)は、市販の試験キット(Roche製のPTT試薬)を使用して、さまざまな濃度の被験物質又は対応する溶媒の存在下で測定する。被験化合物を、血漿及びPTT試薬(セファリン、カオリン)と一緒に、37℃で3分間インキュベートする。次いで、25mM 塩化カルシウムを添加することによって凝固を開始させ、凝固が起こる時間を決定する。APTTの50%の延長又は倍増をもたらす被験物質の濃度を測定する。
【0068】
(a.5) 血漿カリクレイン活性の測定
本発明による物質の血漿カリクレイン阻害を測定するために、ペプチド性血漿カリクレイン基質の反応を利用してヒト血漿カリクレインの酵素活性を測定する生化学試験系を使用する。ここで、血漿カリクレインは、ペプチド性血漿カリクレイン基質からC末端アミノメチルクマリン(AMC)を切断し、その蛍光が測定される。測定は、マイクロタイタープレート内で行う。
【0069】
被験物質をジメチルスルホキシドに溶解させ、ジメチルスルホキシドで連続希釈する(3000μM~0.0078μM; これにより、試験における以下の最終濃度が得られる:50μM~0.00013μM)。それぞれの場合において、1μLの希釈物質溶液を、Greiner製の白色マイクロタイタープレート(384ウェル)のウェルに入れる。次いで、20μLのアッセイ緩衝液(50mMのTris/HCl pH7.4;100mMの塩化ナトリウム溶液;5mMの塩化カルシウム溶液;0.1%のウシ血清アルブミン)及び20μLのKordia製の血漿カリクレイン(アッセイ緩衝液中0.6nM)を連続的に添加する。15分間のインキュベーション後、その酵素反応を、Bachem製のアッセイ緩衝液(アッセイ緩衝液中10μM)に溶解させた20μLの基質H-Pro-Phe-Arg-AMCを添加することによって開始させ、その混合物を室温(22℃)で30分間インキュベートし、次いで、蛍光を測定する(励起:360nm、発光:460nm)。被験物質を含んでいる試験バッチの測定された発光を、被験物質を含んでいない対照バッチ(ジメチルスルホキシド中の被験物質の代わりにジメチルスルホキシドのみ)の発光と比較し、濃度/活性の関係からIC50値を計算する。この試験からの活性データは、以下の表Bに記載されている(複数の独立した個々の測定からの平均値として):
【表9】
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】実施例7で得られた固体のH NMR
図2】実施例8で得られた固体のH NMR
図3】式(I)で表される化合物(結晶変態I)のTGA曲線
図4】式(I)で表される化合物(結晶変態II)のTGA曲線
図5】式(I)で表される化合物(結晶変態I)のDSC曲線
図6】式(I)で表される化合物(結晶変態II)のDSC曲線
図7】式(I)で表される化合物(結晶変態I)のIRスペクトル
図8】式(I)で表される化合物(結晶変態II)のIRスペクトル
図9】式(I)で表される化合物(結晶変態I)のラマンスペクトル
図10】式(I)で表される化合物(結晶変態II)のラマンスペクトル
図11】式(I)で表される化合物(結晶変態I)のX線粉末回折(XRPD)
図12】式(I)で表される化合物(結晶変態II)のX線粉末回折(XRPD)
図13】式(I)で表される化合物(結晶変態I)の動的蒸気吸着
図14】式(I)で表される化合物(結晶変態II)の動的蒸気吸着
図15】式(I)で表される化合物(非晶質形態)のTGA曲線
図16】式(I)で表される化合物(非晶質形態)のDSC曲線
図17】式(I)で表される化合物(非晶質形態)のX線粉末回折(XRPD)
図18】式(II)で表される化合物(結晶変態A)のX線粉末回折(XRPD)
図19】式(II)で表される化合物(結晶変態A)のH NMR
図20】式(I)で表される化合物(非晶質形態)の動的蒸気吸着
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】