(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】急速な結晶化速度を有する超低密度ポリエチレン
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20240220BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20240220BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
C08L23/08
C08F210/02
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554819
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 IB2022051762
(87)【国際公開番号】W WO2022189888
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505382548
【氏名又は名称】ノバ ケミカルズ(インターナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コナガンティ、ヴィノード
(72)【発明者】
【氏名】ゴヤール、シヴェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】カゼミ、ニオウシャ
(72)【発明者】
【氏名】ピレス フォーテス フェレイラ、マルシア
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒミ、マルズィエ
(72)【発明者】
【氏名】ラヒーミー、メフルナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、スティーブン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J002BB05W
4J002BB05X
4J002BB05Y
4J002BB05Z
4J002GG02
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4J128EB02
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4J128ED01
4J128ED04
4J128ED09
4J128EE01
4J128EE04
4J128EE09
4J128GA01
4J128GA06
4J128GA08
4J128GA18
4J128GA21
(57)【要約】
密度が0.860~0.910g/cm3であるエチレンコポリマー組成物は、急速な結晶化挙動を示す。エチレンコポリマー組成物は、第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー及び第3のエチレンコポリマーを含み、第1のエチレンコポリマーの数平均分子量は、第2のエチレンコポリマー及び第3のエチレンコポリマーの数平均分子量よりも大きい。エチレンコポリマー組成物は、単層フィルム及び多層フィルムの形成に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンコポリマー組成物であって、
(i)密度が0.855~0.913g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
前記エチレンコポリマー組成物が、密度が0.860~0.910g/cm
3であり、メルトインデックス(I
2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
前記第1のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
1)が、前記第2のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
2)と前記第3のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
3)の両方よりも大きく、
前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの前記重量パーセントが、(i)前記第1のエチレンコポリマー、(ii)前記第2のエチレンコポリマー及び(iii)前記第3のエチレンコポリマーの合計の重量で前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、エチレンコポリマー組成物。
【請求項2】
前記第1のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB1)の数及び前記第2のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB2)の数が、以下の条件:SCB1/SCB2>0.8を満たす、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項3】
前記第2のエチレンコポリマーの前記密度が、前記第1のエチレンコポリマーの前記密度以上である、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項4】
前記第3のエチレンコポリマーの前記密度が、前記第2のエチレンコポリマーの前記密度以上である、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項5】
0.910g/cm
3未満の密度を有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項6】
前記第3のエチレンコポリマーの10~40重量パーセントを含む、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項7】
前記第3のエチレンコポリマーの15~40重量パーセントを含む、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項8】
前記第1のエチレンコポリマー及び前記第2のエチレンコポリマーの分子量分布(M
w/M
n)がそれぞれ、2.3以下である、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項9】
前記第3のエチレンコポリマーの分子量分布(M
w/M
n)が、2.3超である、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項10】
前記第1のエチレンコポリマー及び前記第2のエチレンコポリマーが、式(I):
【化1】
であって、式中、Gが、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ又は鉛から選択された第14族元素であり、R
1が水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルであり、R
2及びR
3が、水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、R
4及びR
5が、水素原子、非置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、Qが、独立して、活性化可能な脱離基配位子である、式(I)を有するメタロセン触媒を含むシングルサイト触媒系を用いてそれぞれ作製される、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項11】
前記第1のエチレンコポリマー及び前記第2のエチレンコポリマーの組成分布幅指数(CDBI
50)がそれぞれ、少なくとも75重量パーセントである、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項12】
前記第3のエチレンコポリマーの組成分布幅指数(CDBI
50)が、75重量パーセント未満である、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項13】
1つ以上のアルファ-オレフィンの少なくとも3モルパーセントを有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項14】
1つ以上のアルファ-オレフィンの3~12モルパーセントを有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項15】
1-オクテンの3~12モルパーセントを有する、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項16】
ハフニウムのppmが0.050~3.5である、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項17】
分子量分布Mw/Mnが2.0~4.0である、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項18】
結晶化速度定数1/t
1/2,0が、5・s
-1超である、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項19】
前記第1のエチレンコポリマーの前記密度d1と、前記第2のエチレンコポリマーの前記密度d2との差が、0.030g/cm
3未満である、請求項1に記載のエチレンコポリマー組成物。
【請求項20】
エチレンコポリマー組成物を含むフィルム又はフィルム層であって、前記エチレンコポリマー組成物が、
(i)密度が0.855~0.913g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
前記エチレンコポリマー組成物の密度が0.860~0.910g/cm
3であり、メルトインデックス(I
2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
前記第1のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
1)が、前記第2のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
2)と前記第3のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
3)の両方よりも大きく、
前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの前記重量パーセントが、(i)前記第1のエチレンコポリマー、(ii)前記第2のエチレンコポリマー及び(iii)前記第3のエチレンコポリマーの合計の重量で前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、エチレンコポリマー組成物を含むフィルム又はフィルム層。
【請求項21】
エチレンコポリマー組成物を含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であって、前記エチレンコポリマー組成物が、
(i)密度が0.855~0.913g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
前記エチレンコポリマー組成物の密度が0.860~0.910g/cm
3であり、メルトインデックス(I
2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
前記第1のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
1)が、前記第2のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
2)と前記第3のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
3)の両方よりも大きく、
前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの重量パーセントが、(i)前記第1のエチレンコポリマー、(ii)前記第2のエチレンコポリマー及び(iii)前記第3のエチレンコポリマーの合計の重量で前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、エチレンコポリマー組成物を含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体。
【請求項22】
ポリマーブレンドを含むフィルム又はフィルム層であって、前記ポリマーブレンドが、
(a)5~50重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、
(b)95~50重量パーセントの線状低密度ポリエチレンと、を含み、
前記エチレンコポリマー組成物が、
(i)密度が0.855~0.913g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
前記エチレンコポリマー組成物の密度が0.860~0.910g/cm
3であり、メルトインデックス(I
2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
前記第1のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
1)が、前記第2のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
2)と前記第3のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
3)の両方よりも大きく、
前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの重量パーセントが、(i)前記第1のエチレンコポリマー、(ii)前記第2のエチレンコポリマー及び(iii)前記第3のエチレンコポリマーの合計の重量で前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、ポリマーブレンドを含むフィルム又はフィルム層。
【請求項23】
ポリマーブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であって、前記ポリマーブレンドが、
(a)5~50重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、
(b)95~50重量パーセントの線状低密度ポリエチレンと、を含み、
前記エチレンコポリマー組成物が、
(i)密度が0.855~0.913g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm
3であり、分子量分布(M
w/M
n)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I
2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
前記エチレンコポリマー組成物の密度が0.860~0.910g/cm
3であり、メルトインデックス(I
2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
前記第1のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
1)が、前記第2のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
2)と前記第3のエチレンコポリマーの前記数平均分子量(Mn
3)の両方よりも大きく、
前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの重量パーセントが、(i)前記第1のエチレンコポリマー、(ii)前記第2のエチレンコポリマー及び(iii)前記第3のエチレンコポリマーの合計の重量で前記第1のエチレンコポリマー、前記第2のエチレンコポリマー又は前記第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、ポリマーブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
密度が0.860~0.910g/cm3であるエチレンコポリマー組成物は、第1のエチレンコポリマーと、第2のエチレンコポリマーと、第3のエチレンコポリマーを含む。エチレンコポリマー組成物は、結晶化速度が高く、フィルムへとインフレーションしたときに密封性が良好で、かつ靱性と剛性の均衡がとれている。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において、多成分ポリエチレン組成物が周知である。多成分ポリエチレン組成物を作製する方法の1つは、2つ以上の別個の重合反応槽で重合触媒を使用することである。例えば、少なくとも2つの異なる溶液重合反応槽でのシングルサイトの使用が知られている。かかる反応槽は、直列型で、又は並列型で構成されてもよい。
【0003】
溶液重合プロセスは一般に、作製されたエチレンホモポリマー又はコポリマー生成物の融点より高い温度で実施される。典型的な溶液重合プロセスでは、触媒成分、溶媒、モノマー及び水素は、1つ以上の反応槽に圧力を加えた状態で供給される。
【0004】
液相エチレン重合、又はエチレン共重合については、反応槽の圧力の範囲は一般には約3MPaG~約45MPaGである一方、その温度の範囲は約80℃~約300℃であってもよい。生成されたエチレンホモポリマー又はコポリマーは、反応槽条件下で溶媒中に溶解された状態のままである。反応槽中での溶媒の滞留時間は相対的に短く、例えば約1秒~約20分である。溶液プロセスは、多種多様なエチレンポリマーの生成を可能とする広範なプロセス条件下で操作され得る。反応槽の後、更なる重合を防ぐために触媒失活剤を加えることで重合反応が停止され、任意には、酸捕捉剤を加えることで反応停止処理される。失活(及び任意には反応停止)されると、ポリマー溶液はポリマー回収操作に移され(液化系)、ここで、エチレンホモポリマー又はコポリマーはプロセス溶媒、未反応の残留エチレン及び未反応の任意のα-オレフィンと分けられる。
【0005】
生成様式に関係なく、フィルム用途での多成分ポリエチレン組成物の性能を改善する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態は、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含む、エチレンコポリマー組成物であり、
エチレンコポリマー組成物は、密度が0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている。
【0007】
一実施形態は、エチレンコポリマー組成物を含むフィルム又はフィルム層であり、エチレンコポリマー組成物は、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
エチレンコポリマー組成物は、密度が0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている。
【0008】
一実施形態は、エチレンコポリマー組成物を含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であり、エチレンコポリマー組成物は、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
エチレンコポリマー組成物は、密度が0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている。
【0009】
一実施形態は、ポリマーブレンドを含むフィルム又はフィルム層であり、ポリマーブレンドは、
(a)5~50重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、
(b)95~50重量パーセントの線状低密度ポリエチレンと、を含み、
エチレンコポリマー組成物は、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
エチレンコポリマー組成物は、密度が0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている。
【0010】
一実施形態は、ポリマーブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であり、ポリマーブレンドは、
(a)5~50重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、
(b)95~50重量パーセントの線状低密度ポリエチレンと、を含み、
エチレンコポリマー組成物は、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
エチレンコポリマー組成物は、密度が0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】異なる結晶化温度での本開示のエチレンコポリマー組成物の等温結晶化データ(相対結晶化度)を示す。
【
図2】異なる結晶化温度での本開示のエチレンコポリマー組成物の等温結晶化データのAvrami解析を示す。
【
図3】10℃/分の冷却速度での本開示のエチレンコポリマー組成物及び比較樹脂の非等温結晶化プロファイルを示す。
【
図4】本開示のエチレンコポリマー組成物及び比較樹脂の冷却速度(β)の対数の関数として変化する際の、最大結晶化温度(T
max)の線形変化を示す。
【
図5】本発明例2の非等温結晶化プロセスを説明する、Kissinger法に基づいた活性化エネルギーの計算方法の代表的なプロットを示す。
【
図6】シーラント層が100重量パーセントの本開示のエチレンコポリマー組成物又は比較樹脂を用いて作製されている多層フィルム構造体のホットタックプロファイルを示す。
【
図7】シーラント層が100重量パーセントの本開示のエチレンコポリマー組成物又は比較樹脂を用いて作製されている多層フィルム構造体のコールドシールプロファイルを示す。
【
図8】本開示のエチレンコポリマー組成物又は比較樹脂を用いて作製された単層インフレーションフィルムの、ダート衝撃(グラムパーミル)と縦方向における1%セカント弾性係数との関係を示す。
【
図9】本開示のエチレンコポリマー組成物とLLDPE樹脂、又は比較樹脂とLLDPE樹脂のいずれかを含むブレンドを用いて作製された単層インフレーションフィルムの、ダート衝撃(グラムパーミル)と縦方向における1%セカント弾性係数との関係を示す。
【0012】
定義
本開示のより完全な理解を形成するため、以下の用語が定義される。これらは全体を通し、添付の図面及び様々な実施形態の説明とともに使用されなければならない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「モノマー」といった用語は、化学的に反応し、かつそれ自体又は他のモノマーと化学的に結合した状態になってポリマーを形成し得る小分子を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、「α-オレフィン」又は「直鎖アルファ-オレフィン」といった用語は、鎖の一方の末端に二重結合を有し、3~20個の炭素原子を含有する線状炭化水素鎖を有するモノマーを記載するために使用される。本明細書で使用される場合、「ポリエチレン」又は「エチレンポリマー」といった用語は、エチレンポリマーを作製するために使用される特定の触媒又は特定のプロセスに関係なく、エチレンモノマー及び任意には1つ以上の追加のモノマーから作製された高分子を指す。ポリエチレン分野では、1つ以上の追加のモノマーは「コモノマー」と呼ばれ、多くの場合、α-オレフィンを含む。「ホモポリマー」といった用語は、1種類のみのモノマーを含有するポリマーを指す。「エチレンホモポリマー」は、重合性モノマーとしてエチレンのみを使用して作製される。「コポリマー」といった用語は、2種類以上のモノマーを含有するポリマーを指す。「エチレンコポリマー」は、エチレンと1つ以上の他の種類の重合性モノマーを使用して作製される(例えば、アルファ-オレフィン)。
【0015】
一般的なポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、中密度ポリエチレン(medium density polyethylene、MDPE)、線状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)、超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene、VLDPE)、超低密度ポリエチレン(ultralow density polyethylene、ULDPE)、プラストマー及びエラストマーが挙げられる。ポリエチレンといった用語はまた、エチレンに加え、2つ以上のコモノマー(例えば、アルファ-オレフィン)を含み得るポリエチレンターポリマーも含む。ポリエチレンといった用語はまた、上記ポリエチレンの組合せ又はブレンドも含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「線状低密度ポリエチレン」及び「LLDPE」といった用語は、ポリエチレンホモポリマー、又はより好ましくは密度が約0.910g/cm3~約0.945g/cm3であるエチレンコポリマーを指す。
【0017】
「不均一に分岐したポリエチレン」といった用語は、不均一な触媒系を使用して作製されるエチレンポリマー群中のポリマーのサブセットを指す。不均一な触媒系の非限定的な例としては、チーグラー・ナッタ触媒又はクロム触媒が挙げられる。これらは両方とも当該技術分野で周知である。
【0018】
「均一に分岐したポリエチレン」といった用語は、シングルサイト触媒を使用して作製されるエチレンポリマー群中のポリマーのサブセットを指す。シングルサイト触媒の非限定的な例としては、メタロセン触媒、ホスフィンイミン触媒及び束縛構造触媒が挙げられる。これらは全て、当該技術分野で周知である。
【0019】
典型的には、均一に分岐したポリエチレンの分子量分布は狭い。例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)のMw/Mn値は、例外が発生することがあるが、約2.8未満、特に約2.3未満であり、Mw及びMn値は、それぞれ重量平均分子量及び数平均分子量を指す。対照的に、不均一に分岐したエチレンポリマーのMw/Mnは、均一に分岐したポリエチレンのMw/Mnよりも典型的には大きい。一般には、均一に分岐したエチレンポリマーはまた、狭い組成分布も有する。つまり、分子量分布内の各高分子は同様のコモノマー含量を有する。しばしば、組成分布幅指数(「CDBI」)は、コモノマーがどのようにエチレンポリマー内に分布されているかを定量化し、かつ異なる触媒又はプロセスを用いて作製されたエチレンポリマーを識別するために使用される。「CDBI50」は、その組成が50重量パーセント(wt%)の中央コモノマー組成であるエチレンポリマーのパーセントとして定義される。この定義は、Exxon Chemical Patents Incに与えられた国際公開第93/03093号に記載されたものと一致する。エチレンコポリマーのCDBI50は、TREF(Temperature Rising Elution Fractionation、昇温溶離分別)曲線から計算することができる。TREF法は、Wild,et al.,J.Polym.Sci.,Part B,Polym.Phys.,Vol.20(3),pages 441-455に記載される。典型的には、均一に分岐したエチレンポリマーのCDBI50は、約70%よりも高い、又は約75%よりも高い。対照的には、不均一に分岐したエチレンポリマーを含有するα-オレフィンのCDBI50は、均一なエチレンポリマーのCDBI50よりも一般には低い。例えば、不均一に分岐したエチレンポリマーのCDBI50は、約75%未満、又は約70%未満であってもよい。
【0020】
均一に分岐したエチレンポリマーは、しばしば、「均一な線状エチレンポリマー」及び「均一な実質的に線状エチレンポリマー」に更に分けられることが当業者に周知である。これらの2つのサブグループは、長鎖分岐の量が異なっており、より詳細には、均一な線状エチレンポリマーは、1000個の炭素原子につき約0.01個未満の長鎖分岐を有する。一方で均一な実質的に線状エチレンポリマーは、1000個の炭素原子につき約0.01個よりも大きく、約3.0個までの長鎖分岐を有する。長鎖分岐は、本質的には高分子である。すなわち、長鎖分岐が結合されている高分子と長さが類似している。以下、本開示では、「均一に分岐したポリエチレン」又は「均一に分岐したエチレンポリマー」といった用語は、均一な線状エチレンポリマー及び均一な実質的に線状エチレンポリマーの両方を指す。
【0021】
「熱可塑性物質」といった用語は、加熱時に液体になり、圧力を加えた状態で流れ、冷却時に固化するポリマーを指す。熱可塑性ポリマーとしては、プラスチック産業で使用されているエチレンポリマー及び他のポリマーが挙げられる。フィルム用途で一般に使用されている他のポリマーの非限定的な例としては、バリア樹脂(EVOH)、結合樹脂、ポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリアミドなどが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「単層フィルム」といった用語は、1つ以上の熱可塑性物質の単一層を含有するフィルムを指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「多層フィルム」又は「多層フィルム構造体」といった用語は、2つ以上の熱可塑性層、又は任意には非熱可塑性層から構成されたフィルムを指す。非熱可塑性材料の非限定的な例としては、金属(箔)又はセルロース(紙)製品が挙げられる。多層フィルム(又はフィルム構造体)内の熱可塑性層の1つ以上は、2つ以上の熱可塑性物質から構成され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「結合樹脂」といった用語は、多層フィルム構造体内の中間層、すなわち「結合層」へと形成されるとき、化学組成上異なっている隣接フィルム層間の接着を促進する熱可塑性物質を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「シーラント層」といった用語は、第2の基材に接着されることが可能であり、漏れ止めシールを形成する、熱可塑性フィルムの層を指す。「シーラント層」は、多層フィルム構造体内のスキン層又は最も内側の層であってもよい。
【0026】
本明細書で使用される場合、「接着積層」といった用語及び「押出積層」といった用語は、2つ以上の基材又は材料のウェブが組み合わせられて多層製品又はシートを形成する連続プロセスを説明する。2つ以上のウェブは、それぞれ接着剤又は溶融熱可塑性フィルムを使用して接合される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「押出コーティング」といった用語は、溶融熱可塑性層が、動く固体ウェブ又は基材と組み合わせられる、又はその上に付着される連続プロセスを説明する。基材の非限定的な例としては、紙、厚紙、箔、単層プラスチックフィルム、多層プラスチックフィルム又は布地が挙げられる。溶融熱可塑性層は、単層又は多層であり得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビルラジカル」又は「ヒドロカルビル基」といった用語は、水素及び水素が1つ欠けている炭素を含む、直鎖又は環状の脂肪族ラジカル、オレフィンラジカル、アセチレンラジカル及びアリール(芳香族)ラジカルを指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アルキルラジカル」は、水素ラジカルが1つ欠けている直鎖、分岐及び環状パラフィンラジカルを含む。非限定的な例としては、メチル(-CH3)及びエチル(-CH2CH3)ラジカルが挙げられる。「アルケニルラジカル」といった用語は、水素ラジカルが1つ欠けている炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ含有する直鎖、分岐及び環状炭化水素を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「アリール」基といった用語は、フェニルラジカル、ナフチルラジカル、ピリジルラジカル及び他のラジカルを含むが、これらのラジカルの分子は、芳香族環構造を有する。非限定的な例としては、ナフチレン、フェナントレン及びアントラセンが挙げられる。「アリールアルキル」基は、そこからぶら下がっているアリール基を有するアルキル基である。非限定的な例としては、ベンジル、フェネチル及びトリルメチルが挙げられる。「アルキルアリール」は、そこからぶら下がっている1つ以上のアルキル基を有するアリール基である。非限定的な例としては、トリル、キシリル、メシチル及びクミルが挙げられる。
【0031】
「アルコキシ」基は、そこからぶら下がっているアルキル基を有するオキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などが挙げられる。
【0032】
「アリールオキシ」基又は「アリールオキシド」基は、そこからぶら下がっているアリール基を有するオキシ基であり、例えばフェノキシ基などが挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」といった語句は、炭素及び炭素に結合し得る水素以外の任意の原子を含む。「ヘテロ原子含有基」は、ヘテロ原子を含有する炭化水素ラジカルであり、1つ以上の同一又は異なるヘテロ原子を含有してもよい。一実施形態では、ヘテロ原子含有基は、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群から選択される1~3個の原子を含有するヒドロカルビル基である。ヘテロ原子含有基の非限定的な例としては、イミン、アミン、オキシド、ホスフィン、エーテル、ケトン、オキソアゾリン複素環、オキサゾリン、チオエーテルなどのラジカルが挙げられる。「複素環」といった用語は、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群から選択される1~3個の原子を含む炭素主鎖を有する環系を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「非置換」といった用語は、水素ラジカルが非置換といった言葉に続く分子基に結合されていることを意味する。「置換」といった用語は、この用語に続く基が、基内の任意の位置で1つ以上の水素ラジカルと置換される1つ以上の部分(非水素ラジカル)を有することを意味する。部分の非限定的な例としては、ハロゲンラジカル(F、Cl、Br)、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、シリル基、アミン基、ホスフィン基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、C1-C30アルキル基、C2-C30アルケニル基及びそれらの組合せが挙げられる。置換アルキル及び置換アリールの非限定的な例としては、アシルラジカル、アルキルシリルラジカル、アルキルアミノラジカル、アルコキシラジカル、アリールオキシラジカル、アルキルチオラジカル、ジアルキルアミノラジカル、アルコキシカルボニルラジカル、アリールオキシカルボニルラジカル、カルボモイルラジカル、アルキルカルバモイルラジカル及びジアルキルカルバモイルラジカル、アシルオキシラジカル、アシルアミノラジカル、アリールアミノラジカル並びにそれらの組合せが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示では、エチレンコポリマー組成物の密度は0.860~0.910g/cm3であり、第1のエチレンコポリマーと、第2のエチレンコポリマーと、第3のエチレンコポリマーを含む。これらのエチレンコポリマー成分及びそれらの成分がその一部であるエチレンコポリマー組成物は、以下に更に説明される。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、(a)5~50重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、(b)95~50重量パーセントの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、を含むポリマーブレンドに使用される。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、(a)5~35重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、(b)95~65重量パーセントの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、を含むポリマーブレンドに使用される。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、(a)5~30重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、(b)95~70重量パーセントの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、を含むポリマーブレンドに使用される。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、(a)10~30重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、(b)90~70重量パーセントの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、を含むポリマーブレンドに使用される。
【0040】
本開示のいくつかの実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、(a)15~25重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、(b)85~75重量パーセントの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)と、を含むポリマーブレンドに使用される。
【0041】
第1のエチレンコポリマー
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、シングルサイト触媒(その非限定的な例としてホスフィンイミン触媒が挙げられる)、メタロセン触媒及び束縛構造触媒(その全てが当該技術分野で周知である)を用いて作製される。
【0042】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、活性金属中心としてハフニウム(Hf)を有するシングルサイト触媒を用いて作製される。
【0043】
本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーを作製するためにエチレンを用いて共重合され得るアルファ-オレフィンは、1-プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテン並びにそれらの混合物を含む群から選択されてもよい。
【0044】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、均一に分岐したエチレンコポリマーである。
【0045】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、エチレン/1-オクテンコポリマーである。
【0046】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、メタロセン触媒を用いて作製される。
【0047】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、架橋メタロセン触媒を用いて作製される。
【0048】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、式I:
【化1】
であって、式中、Gは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ又は鉛から選択された第14族元素であり、R
1は水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルであり、R
2及びR
3は、水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、R
4及びR
5は、水素原子、非置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、Qは、独立して、活性化可能な脱離基配位子である、式(I)を有する架橋メタロセン触媒を用いて作製される。
【0049】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してアリール基である。
【0050】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してフェニル基又は置換フェニル基である。
【0051】
一実施形態では、R4及びR5はフェニル基である。
【0052】
一実施形態では、R4及びR5は、独立して置換フェニル基である。
【0053】
一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基は置換シリル基で置換される。
【0054】
一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリアルキルシリル基で置換される。
【0055】
一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリアルキルシリル基で、パラ位にて置換される。一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリメチルシリル基で、パラ位にて置換される。一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリエチルシリル基で、パラ位にて置換される。
【0056】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してアルキル基である。
【0057】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してアルケニル基である。
【0058】
一実施形態では、R1は水素である。
【0059】
一実施形態では、R1はアルキル基である。
【0060】
一実施形態では、R1はアリール基である。
【0061】
一実施形態では、R1はアルケニル基である。
【0062】
一実施形態では、R2及びR3は、独立して、1~30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0063】
一実施形態では、R2及びR3は、独立してアリール基である。
【0064】
一実施形態では、R2及びR3は、独立してアルキル基である。
【0065】
一実施形態では、R2及びR3は、独立して、1~20個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0066】
一実施形態では、R2及びR3は、独立してフェニル基又は置換フェニル基である。
【0067】
一実施形態では、R2及びR3はtert-ブチル基である。
【0068】
一実施形態では、R2及びR3は水素である。
【0069】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、式II:
【化2】
を有する架橋メタロセン触媒を用いて作製され、Qは、独立して活性化可能な脱離基配位子である。
【0070】
本開示では、「活性化可能」といった用語は、配位子Qがそれぞれ、プロトン化反応を介して金属中心Mから切断され得る、又は好適な酸性若しくは求電子性触媒活性化剤化合物(「共触媒」化合物としても知られている)で金属中心Mから引き抜かれ得ることを意味し、その例は以下に説明される。活性化可能配位子Qはまた、金属中心Mから切断される、又は金属中心Mから引き抜かれる別の配位子に変換されてもよい(例えば、ハライドはアルキル基に転換されてもよい)。いかなる単一の理論にも束縛されることを望むものではないが、プロトン化反応又は引き抜き反応は、オレフィンを重合し得る活性「カチオン性」金属中心を生成する。
【0071】
本開示の実施形態では、活性化可能配位子であるQは、水素原子、ハロゲン原子、C1-20ヒドロカルビルラジカル、C1-20アルコキシラジカル及びC6-10アリール又はアリールオキシラジカルからなる群から独立して選択され、ヒドロカルビル、アルコキシ、アリール又はアリールオキシドラジカルのそれぞれは、非置換又は1つ以上のハロゲン若しくは他の基(C1-8アルキル、C1-8アルコキシ、C6-10アリール若しくはアリールオキシ、アミド若しくはホスフィドラジカル)で更に置換されてもよい。ただしこの場合、Qはシクロペンタジエニルではない。2つのQ配位子はまた、互いに接合され、例えば置換若しくは非置換ジエン配位子(例えば、1,3-ブタジエン)又はアセタート若しくはアセトアミジナート基などの非局在化ヘテロ原子含有基を形成してもよい。
【0072】
本開示の一実施形態では、それぞれのQは、ハライド原子、C1-4アルキルラジカル及びベンジルラジカルからなる群から独立して選択される。
【0073】
一実施形態では、好適な活性化可能配位子であるQは、ハライド(例えば、クロリド)又はヒドロカルビル(例えば、メチル、ベンジル)など、モノアニオン性である。
【0074】
一実施形態では、それぞれの活性化可能配位子であるQは、メチル基である。
【0075】
一実施形態では、それぞれの活性化可能配位子であるQは、ベンジル基である。
【0076】
一実施形態では、それぞれの活性化可能配位子であるQは、クロリド基である。
【0077】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーを作製するために使用されているシングルサイト触媒は、分子式:
[(2,7-tBu2Flu)Ph2C(Cp)HfCl2]を有する、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリドである。
【0078】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーを作製するために使用されているシングルサイト触媒は、分子式:
[(2,7-tBu2Flu)Ph2C(Cp)HfMe2]を有する、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジメチルである。
【0079】
シングルサイト触媒分子それ自体に加え、活性シングルサイト触媒系は、典型的には触媒活性化剤を更に含む。
【0080】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤はアルキルアルミンオキサン及び/又はイオン活性剤を含む。
【0081】
触媒活性化剤はまた、任意にはヒンダードフェノール化合物を含んでもよい。
【0082】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤はアルキルアルミニウム、イオン活性剤及びヒンダードフェノール化合物を含む。
【0083】
アルキルアルミンオキサンの正確な構造は明らかではないものの、内容領域専門家は、一般式:
(R)2AlO-(Al(R)-O)n-Al(R)2
であって、式中、R基は、1~20個の炭素原子を含有する同一又は異なる直鎖、分岐又は環状ヒドロカルビルラジカルであり、nは0~約50であり得る、一般式の繰り返し単位を含有するオリゴマー種であることに概ね合意している。アルキルアルミンオキサンの非限定的な例は、メチルアルミンオキサン(又はMAO)であり、それぞれのR基はメチルラジカルである。
【0084】
本開示の一実施形態では、アルキルアルミンオキサンのRは、メチルラジカルであり、mは10~40である。
【0085】
本開示の一実施形態では、アルキルアルミンオキサンは修飾メチルアルミンオキサン(modified methylaluminoxane、MMAO)である。
【0086】
アルキルアルミンオキサンがアルキル化剤及び活性化剤の両方として二重の役割を果たし得るということは、当該技術分野では周知である。したがって、アルキルアルミンオキサン触媒活性化剤は多くの場合、ハロゲンなどの活性化可能配位子と組み合わせて使用される。
【0087】
一般には、イオン活性剤はカチオンと嵩高いアニオンから構成されるが、後者は実質的には非配位性である。イオン活性化剤の非限定的な例は、ホウ素原子に結合されている4つの配位子と4配位するホウ素イオン活性剤である。ホウ素イオン活性剤の非限定的な例としては、以下に示される式:
[R5]+[B(R7)4]-
であって、式中、Bはホウ素原子を表し、R5は、芳香族ヒドロカルビル(例えば、トリフェニルメチルカチオン)であり、各R7は、非置換であるフェニルラジカル、又はフッ素原子、非置換であるC1-4アルキル若しくはアルコキシラジカル、若しくはフッ素原子で置換されているC1-4アルキル若しくはアルコキシラジカルから選択される3~5個の置換基で置換されたフェニルラジカル、及び式-Si(R9)3であって、式中、各R9は、水素原子及びC1-4アルキルラジカルから独立して選択される式のシリルラジカルから独立して選択される、式、並びに
[(R8)]tZH]+[B(R7)4]-
であって、式中、Bはホウ素原子であり、Hは水素原子であり、Zは窒素原子又はリン原子であり、tは2~3であり、R8は、C1-8アルキルラジカル、非置換フェニルラジカル若しくは最大で3個のC1-4アルキルラジカルで置換されているフェニルラジカルから選択され、又は窒素原子とともにまとめられた1つのR8がアニリニウムラジカルを形成してもよく、R7は上に定義される通りである、式が挙げられる。
【0088】
両方の式では、R7の非限定的な例はペンタフルオロフェニルラジカルである。一般には、ホウ素イオン活性剤は、テトラ(ペルフルオロフェニル)ボロンの塩として記載されてもよく、非限定的な例としては、アニリニウム及びトリチル(又はトリフェニルメチリウム)とのテトラ(ペルフルオロフェニル)ボロンのアニリニウム塩、カルボニウム塩、オキソニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩が挙げられる。イオン活性剤の追加の非限定的な例としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ボロン、N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)n-ブチルボロン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、ジ-(イソプロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリピリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トロピリウムテトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラート及びベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(2,3,4,5テトラフルオロフェニル)ボラートが挙げられる。容易に入手可能な市販のイオン活性剤としては、N,N-ジメチルアニリニウムN,N-ジメチルアニリニウム及びトリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラートが挙げられる。
【0089】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤は、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(「[Me2NHPh][B(C6F5)4])、トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(「[Ph3C][B(C6F5)4]」、「トリチルボラート」としても知られている)及びトリスペンタフルオロフェニルボロンからなる群から選択されるイオン活性剤を含む。
【0090】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤はトリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、すなわち「トリチルボラート」を含む。
【0091】
本開示の実施形態では、触媒活性化剤は、ブチル化フェノール酸化防止剤、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,6-ジ-tertブチル-4-エチルフェノール(BHEB)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-tris(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びオクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナートからなる群から選択されるヒンダードフェノール化合物を含む。
【0092】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤は、ヒンダードフェノール化合物である2,6-ジ-tertブチル-4-エチルフェノール(BHEB)を含む。
【0093】
任意には、本開示の実施形態では、アルキルアルミンオキサンとイオン活性剤との混合物は、任意にはヒンダードフェノール化合物とともに触媒活性化剤として使用され得る。
【0094】
活性シングルサイト触媒系を生成するため、上記成分であるシングルサイト触媒、アルキルアルミンオキサン、イオン活性剤及び任意のヒンダードフェノールの量及びモル比が最適化される。
【0095】
本開示の実施形態では、イオン活性剤化合物は、1:1~1:10、又は1:1~1;6、又は1:1~1:2になる、ホウ素に対する(シングルサイト触媒分子の)ハフニウム(Hf)のモル比を提供する量で使用されてもよい。
【0096】
本開示の実施形態では、(シングルサイト触媒分子の)ハフニウム(Hf)に対する、アルキルアルミンオキサン中に含有されたアルミニウムのモル比は5:1~1000:1であり、これはこの範囲内でのより狭い範囲を含む。
【0097】
本開示の実施形態では、ヒンダードフェノール(例えば、BHEB)に対する、アルキルアルミンオキサン中に含有されたアルミニウムのモル比は1:1~1:0.1であり、これはこの範囲内でのより狭い範囲を含む。
【0098】
活性シングルサイト触媒系を生成するため、シングルサイト触媒、アルキルアルミンオキサン、イオン活性剤及び任意のヒンダードフェノールといった3つ又は4つの成分の量及びモル比が最適化される。
【0099】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーを作製するために使用されるシングルサイト触媒は長鎖分岐を生成し、第1のエチレンコポリマーは長鎖分岐(以下、「LCB」)を含有する。LCBは、エチレンコポリマーにおける周知の構造的現象であり、当業者に周知である。従来、LCB解析には3つの方法がある。すなわち、核磁気共鳴分光法(nuclear magnetic resonance spectroscopy、NMR)(例えばJ.C.Randall,J Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys.1989,29,201を参照)、DRI、粘度計及び低角度光散乱検出器を搭載した三重検出SEC(例えば、W.W.Yau and D.R.Hill,Int.J.Polym.Anal.Charact.1996;2:151を参照)並びにレオロジー(例えば、W.W.Graessley,Acc.Chem.Res.1977,10,332-339を参照)である。本開示では、長鎖分岐は本質的には高分子である。すなわち、NMRスペクトル、三重検出器SEC実験又はレオロジー実験で見るには十分長い。
【0100】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは本明細書に開示されたLCBFを特徴とする長鎖分岐を含有する。本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーのLCBFの上限は、約0.5、他の場合では約0.4、更に他の場合では約0.3であってもよい(無次元)。本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーのLCBFの下限は、約0.001、他の場合では約0.0015、更に他の場合では約0.002であってもよい(無次元)。
【0101】
第1のエチレンコポリマーは、作製するために使用される触媒配合物の化学組成を反映する触媒残基を含有してもよい。当業者は、触媒残基は、例えば第1のエチレンコポリマー(又はエチレンコポリマー組成物、以下を参照)における金属の百万分率で典型的には定量化され、存在する金属は、作製するために使用される触媒配合物中の金属を起源とすることを理解するであろう。存在し得る金属残渣の非限定的な例としては、第4族の金属、チタン、ジルコニウム及びハフニウムが挙げられる。本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーにおける金属のppmの上限は、約3.0ppm、他の場合では約2.0ppm、更に他の場合では約1.5ppmであってもよい。本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーにおける金属のppmの下限は、約0.03ppm、他の場合では約0.09ppm、更に他の場合では約0.15ppmであってもよい。
【0102】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度は0.855~0.913g/cm3、分子量分布(Mw/Mn)は1.7~2.7、メルトインデックス(I2)は0.1~10g/10分である。
【0103】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度は0.855~0.913g/cm3、分子量分布(Mw/Mn)は1.7~2.3、メルトインデックス(I2)は0.1~10g/10分である。
【0104】
本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)の上限は、約2.8、又は約2.6、又は約2.5、又は約2.4、又は約2.3、又は約2.2であってもよい。本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)の下限は、約1.6、又は約1.7、又は約1.8、又は約1.9であってもよい。
【0105】
本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、2.6未満、又は2.3未満、又は2.3以下、又は2.1未満、又は2.1以下、又は2.0未満、又は2.0以下、又は約2.0である。本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、約1.7~約2.3、又は約1.8~約2.3、又は約1.8~約2.2である。
【0106】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、1000個の炭素原子につき、10~150個の短鎖分岐(SCB1)を有する。更なる実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、1000個の炭素原子につき、10~100個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、15~100個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~100個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、10~75個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、10~75個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、15~75個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~75個の短鎖分岐(SCB1)を有する。より更なる実施形態では、第1のエチレンコポリマーは、1000個の炭素原子につき、15~70個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~70個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~60個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、15~60個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、15~55個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~55個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、15~50個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~50個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、15~45個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、15~40個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~45個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~40個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~35個の短鎖分岐(SCB1)、又は1000個の炭素原子につき、20~30個の短鎖分岐(SCB1)を有する。
【0107】
短鎖分岐(すなわち、1000個の主鎖炭素原子あたりの短鎖分岐、SCB1)は、エチレンコポリマー中にアルファ-オレフィンコモノマーの存在を理由とする分岐であり、例えば1-ブテンコモノマーについては2個の炭素原子、又は1-ヘキセンコモノマーについては4個の炭素原子、又は1-オクテンコモノマーについては6個の炭素原子などを有する。
【0108】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB1)の数及び第2のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB2)の数は、以下の条件:SCB1/SCB2>0.8を満たす。
【0109】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB1)の数は、第2のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB2)の数よりも大きい。
【0110】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB1)の数は、第3のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB3)の数よりも大きい。
【0111】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB1)の数は、第2のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB2)の数及び第3のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB3)の数のそれぞれよりも大きい。
【0112】
本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度d1の上限は、約0.915g/cm3、いくつかの場合では約0.912g/cm3、他の場合では約0.910g/cm3、他の場合では約0.906g/cm3、更に他の場合では約0.902g/cm3、より更に他の場合では約0.900g/cm3であってもよい。本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度d1の下限は、約0.855g/cm3、いくつかの場合では約0.865g/cm3、他の場合では約0.875g/cm3であってもよい。
【0113】
本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度d1は、約0.855g/cm3~約0.915g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.912g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.910g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.906g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.902g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.900g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.915g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.912g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.910g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.906g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.902g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.900g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.915g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.912g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.910g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.906g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.902g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.900g/cm3であってもよい。
【0114】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度d1は、第2のエチレンコポリマーの密度d2以下である。
【0115】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度d1は、第2のエチレンコポリマーの密度d2未満である。
【0116】
本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーのCDBI50の上限は、約98重量%、他の場合では約95重量%、更に他の場合では約90重量%であってもよい。本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーのCDBI50の下限は、約70重量%、他の場合では約75重量%、更に他の場合では約80重量%であってもよい。
【0117】
本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーのメルトインデックスI2
1は、約0.01g/10分~約100g/10分、又は約0.01g/10分~約75g/10分、又は約0.1g/10分~約100g/10分、又は約0.1g/10分~約70g/10分、又は約0.01g/10分~約50g/10分、又は約0.1g/10分~約50g/10分、又は約0.1g/10分~約25g/10分、又は約0.1g/10分~約20g/10分、又は約0.1g/10分~約15g/10分、又は約0.1~約10g/10分、又は約0.1~約5g/10分、又は約0.1~2.5g/10分、又は約5g/10分未満、又は約3g/10分未満、又は約1.0g/10分未満、又は約0.75g/10分未満であってもよい。
【0118】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの重量平均分子量Mwは、約50,000~約300,000g/mol、又は約50,000~約250,000g/mol、又は約60,000~約250,000g/mol、又は約70,000~約250,000g/mol、又は約75,000~約200,000g/mol、又は約75,000~約175,000g/mol、又は約70,000~約175,000g/mol、又は約100,000~約200,000g/mol、又は約100,000~約175,000g/molである。
【0119】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの重量平均分子量Mwは、第2のエチレンコポリマーの重量平均分子量Mwよりも大きい。
【0120】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの数平均分子量Mnは、約25,000~約100,000g/mol、又は約30,000~約90,000g/mol、又は約40,000~約80,000g/molである。
【0121】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの数平均分子量Mnは、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量Mnよりも大きい。
【0122】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物中の第1のエチレンコポリマーの重量パーセント(wt%)(すなわち、第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー及び第3のエチレンコポリマーの総重量に基づく第1のエチレンコポリマーの重量パーセント)の上限は、約80wt%、又は約75wt%、又は約70wt%、又は約65wt%、又は約60wt%、又は約55wt%、又は約50wt%、又は約45wt%、又は約40wt%であってもよい。本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物中の第1のエチレンコポリマーのwt%の下限は、約5wt%、又は約10wt%、又は約15wt%、又は約20wt%、又は約25wt%、又は約30wt%、又は他の場合では約35wt%であってもよい。
【0123】
第2のエチレンコポリマー
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、シングルサイト触媒(その非限定的な例としてホスフィンイミン触媒が挙げられる)、メタロセン触媒及び束縛構造触媒(その全てが当該技術分野で周知である)を用いて作製される。
【0124】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、活性金属中心としてハフニウム(Hf)を有するシングルサイト触媒を用いて作製される。
【0125】
本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーを作製するためにエチレンを用いて共重合され得るアルファ-オレフィンは、1-プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテン並びにそれらの混合物を含む群から選択されてもよい。
【0126】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、均一に分岐したエチレンコポリマーである。
【0127】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、エチレン/1-オクテンコポリマーである。
【0128】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、メタロセン触媒を用いて作製される。
【0129】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、架橋メタロセン触媒を用いて作製される。
【0130】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、式I:
【化3】
であって、式中、Gは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ又は鉛から選択された第14族元素であり、R
1は水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルであり、R
2及びR
3は、水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、R
4及びR
5は、水素原子、非置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、Qは、独立して、活性化可能な脱離基配位子である、式(I)を有する架橋メタロセン触媒を用いて作製される。
【0131】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してアリール基である。
【0132】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してフェニル基又は置換フェニル基である。
【0133】
一実施形態では、R4及びR5はフェニル基である。
【0134】
一実施形態では、R4及びR5は、独立して置換フェニル基である。
【0135】
一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基は置換シリル基で置換される。
【0136】
一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリアルキルシリル基で置換される。
【0137】
一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリアルキルシリル基で、パラ位にて置換される。一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリメチルシリル基で、パラ位にて置換される。一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリエチルシリル基で、パラ位にて置換される。
【0138】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してアルキル基である。
【0139】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してアルケニル基である。
【0140】
一実施形態では、R1は水素である。
【0141】
一実施形態では、R1はアルキル基である。
【0142】
一実施形態では、R1はアリール基である。
【0143】
一実施形態では、R1はアルケニル基である。
【0144】
一実施形態では、R2及びR3は、独立して、1~30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0145】
一実施形態では、R2及びR3は、独立してアリール基である。
【0146】
一実施形態では、R2及びR3は、独立してアルキル基である。
【0147】
一実施形態では、R2及びR3は、独立して、1~20個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0148】
一実施形態では、R2及びR3は、独立してフェニル基又は置換フェニル基である。
【0149】
一実施形態では、R2及びR3はtert-ブチル基である。
【0150】
一実施形態では、R2及びR3は水素である。
【0151】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、式II:
【化4】
を有する架橋メタロセン触媒を用いて作製され、Qは、独立して活性化可能な脱離基配位子である。
【0152】
本開示では、「活性化可能」といった用語は、配位子Qがそれぞれ、プロトン化反応を介して金属中心Mから切断され得る、又は好適な酸性若しくは求電子性触媒活性化剤化合物(「共触媒」化合物としても知られている)で金属中心Mから引き抜かれ得ることを意味し、その例は以下に説明される。活性化可能配位子Qはまた、金属中心Mから切断される、又は金属中心Mから引き抜かれる別の配位子に変換されてもよい(例えば、ハライドはアルキル基に転換されてもよい)。いかなる単一の理論にも束縛されることを望むものではないが、プロトン化反応又は引き抜き反応は、オレフィンを重合し得る活性「カチオン性」金属中心を生成する。
【0153】
本開示の実施形態では、活性化可能配位子であるQは、水素原子、ハロゲン原子、C1-20ヒドロカルビルラジカル、C1-20アルコキシラジカル及びC6-10アリール又はアリールオキシラジカルからなる群から独立して選択され、ヒドロカルビル、アルコキシ、アリール又はアリールオキシドラジカルのそれぞれは、非置換又は1つ以上のハロゲン若しくは他の基(C1-8アルキル、C1-8アルコキシ、C6-10アリール若しくはアリールオキシ、アミド若しくはホスフィドラジカル)で更に置換されてもよい。ただしこの場合、Qはシクロペンタジエニルではない。2つのQ配位子はまた、互いに接合され、例えば置換若しくは非置換ジエン配位子(例えば、1,3-ブタジエン)又はアセタート若しくはアセトアミジナート基などの非局在化ヘテロ原子含有基を形成してもよい。
【0154】
本開示の一実施形態では、それぞれのQは、ハライド原子、C1-4アルキルラジカル及びベンジルラジカルからなる群から独立して選択される。
【0155】
一実施形態では、好適な活性化可能配位子であるQは、ハライド(例えば、クロリド)又はヒドロカルビル(例えば、メチル、ベンジル)など、モノアニオン性である。
【0156】
一実施形態では、それぞれの活性化可能配位子であるQは、メチル基である。
【0157】
一実施形態では、それぞれの活性化可能配位子であるQは、ベンジル基である。
【0158】
一実施形態では、それぞれの活性化可能配位子であるQは、クロリド基である。
【0159】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーを作製するために使用されているシングルサイト触媒は、分子式:
[(2,7-tBu2Flu)Ph2C(Cp)HfCl2]を有する、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリドである。
【0160】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーを作製するために使用されているシングルサイト触媒は、分子式:
[(2,7-tBu2Flu)Ph2C(Cp)HfMe2]を有する、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジメチルである。
【0161】
シングルサイト触媒分子それ自体に加え、活性シングルサイト触媒系は、典型的には触媒活性化剤を更に含む。
【0162】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤はアルキルアルミンオキサン及び/又はイオン活性剤を含む。
【0163】
触媒活性化剤はまた、任意にはヒンダードフェノール化合物を含んでもよい。
【0164】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤はアルキルアルミニウム、イオン活性剤及びヒンダードフェノール化合物を含む。
【0165】
アルキルアルミンオキサンの正確な構造は明らかではないものの、内容領域専門家は、一般式:
(R)2AlO-(Al(R)-O)n-Al(R)2
であって、式中、R基は、1~20個の炭素原子を含有する同一又は異なる直鎖、分岐又は環状ヒドロカルビルラジカルであり、nは0~約50であり得る、一般式の繰り返し単位を含有するオリゴマー種であることに概ね合意している。アルキルアルミンオキサンの非限定的な例は、メチルアルミンオキサン(又はMAO)であり、それぞれのR基はメチルラジカルである。
【0166】
本開示の一実施形態では、アルキルアルミンオキサンのRは、メチルラジカルであり、mは10~40である。
【0167】
本開示の一実施形態では、アルキルアルミンオキサンは修飾メチルアルミンオキサン(modified methylaluminoxane、MMAO)である。
【0168】
アルキルアルミンオキサンがアルキル化剤及び活性化剤の両方として二重の役割を果たし得るということは、当該技術分野では周知である。したがって、アルキルアルミンオキサン触媒活性化剤は多くの場合、ハロゲンなどの活性化可能配位子と組み合わせて使用される。
【0169】
一般には、イオン活性剤はカチオンと嵩高いアニオンから構成されるが、後者は実質的には非配位性である。イオン活性化剤の非限定的な例は、ホウ素原子に結合されている4つの配位子と4配位するホウ素イオン活性剤である。ホウ素イオン活性剤の非限定的な例としては、以下に示される式:
[R5]+[B(R7)4]-
であって、式中、Bはホウ素原子を表し、R5は、芳香族ヒドロカルビル(例えば、トリフェニルメチルカチオン)であり、各R7は、非置換であるフェニルラジカル、又はフッ素原子、非置換であるC1-4アルキル若しくはアルコキシラジカル、若しくはフッ素原子で置換されているC1-4アルキル若しくはアルコキシラジカルから選択される3~5個の置換基で置換されたフェニルラジカル、及び式-Si(R9)3であって、式中、各R9は、水素原子及びC1-4アルキルラジカルから独立して選択される式のシリルラジカルから独立して選択される、式、並びに
[(R8)]tZH]+[B(R7)4]-
であって、式中、Bはホウ素原子であり、Hは水素原子であり、Zは窒素原子又はリン原子であり、tは2~3であり、R8は、C1-8アルキルラジカル、非置換フェニルラジカル若しくは最大で3個のC1-4アルキルラジカルで置換されているフェニルラジカルから選択され、又は窒素原子とともにまとめられた1つのR8がアニリニウムラジカルを形成してもよく、R7は上に定義される通りである、式が挙げられる。
【0170】
両方の式では、R7の非限定的な例はペンタフルオロフェニルラジカルである。一般には、ホウ素イオン活性剤は、テトラ(ペルフルオロフェニル)ボロンの塩として記載されてもよく、非限定的な例としては、アニリニウム及びトリチル(又はトリフェニルメチリウム)とのテトラ(ペルフルオロフェニル)ボロンのアニリニウム塩、カルボニウム塩、オキソニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩が挙げられる。イオン活性剤の追加の非限定的な例としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ボロン、N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)n-ブチルボロン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、ジ-(イソプロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリピリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トロピリウムテトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラート及びベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(2,3,4,5テトラフルオロフェニル)ボラートが挙げられる。容易に入手可能な市販のイオン活性剤としては、N,N-ジメチルアニリニウムN,N-ジメチルアニリニウム及びトリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラートが挙げられる。
【0171】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤は、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(「[Me2NHPh][B(C6F5)4])、トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(「[Ph3C][B(C6F5)4]」、「トリチルボラート」としても知られている)及びトリスペンタフルオロフェニルボロンからなる群から選択されるイオン活性剤を含む。
【0172】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤はトリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、すなわち「トリチルボラート」を含む。
【0173】
本開示の実施形態では、触媒活性化剤は、ブチル化フェノール酸化防止剤、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,6-ジ-tertブチル-4-エチルフェノール(BHEB)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-tris(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びオクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナートからなる群から選択されるヒンダードフェノール化合物を含む。
【0174】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤は、ヒンダードフェノール化合物である2,6-ジ-tertブチル-4-エチルフェノール(BHEB)を含む。
【0175】
任意には、本開示の実施形態では、アルキルアルミンオキサンとイオン活性剤との混合物は、任意にはヒンダードフェノール化合物とともに触媒活性化剤として使用され得る。
【0176】
活性シングルサイト触媒系を生成するため、上記成分であるシングルサイト触媒、アルキルアルミンオキサン、イオン活性剤及び任意のヒンダードフェノールの量及びモル比が最適化される。
【0177】
本開示の実施形態では、イオン活性剤化合物は、1:1~1:10、又は1:1~1;6、又は1:1~1:2になる、ホウ素に対する(シングルサイト触媒分子の)ハフニウム(Hf)のモル比を提供する量で使用されてもよい。
【0178】
本開示の実施形態では、(シングルサイト触媒分子の)ハフニウム(Hf)に対する、アルキルアルミンオキサン中に含有されたアルミニウムのモル比は5:1~1000:1であり、これはこの範囲内でのより狭い範囲を含む。
【0179】
本開示の実施形態では、ヒンダードフェノール(例えば、BHEB)に対する、アルキルアルミンオキサン中に含有されたアルミニウムのモル比は1:1~1:0.1であり、これはこの範囲内でのより狭い範囲を含む。
【0180】
活性シングルサイト触媒系を生成するため、シングルサイト触媒、アルキルアルミンオキサン、イオン活性剤及び任意のヒンダードフェノールといった3つ又は4つの成分の量及びモル比が最適化される。
【0181】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーを作製するために使用されるシングルサイト触媒は長鎖分岐を生成し、第2のエチレンコポリマーは長鎖分岐(以下、「LCB」)を含有する。LCBは、エチレンコポリマーにおける周知の構造的現象であり、当業者に周知である。従来、LCB解析には3つの方法がある。すなわち、核磁気共鳴分光法(nuclear magnetic resonance spectroscopy、NMR)(例えばJ.C.Randall,J Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys.1989,29,201を参照)、DRI、粘度計及び低角度光散乱検出器を搭載した三重検出SEC(例えば、W.W.Yau and D.R.Hill,Int.J.Polym.Anal.Charact.1996;2:151を参照)並びにレオロジー(例えば、W.W.Graessley,Acc.Chem.Res.1977,10,332-339を参照)である。本開示では、長鎖分岐は本質的には高分子である。すなわち、NMRスペクトル、三重検出器SEC実験又はレオロジー実験で見るには十分長い。
【0182】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは本明細書に開示されたLCBFを特徴とする長鎖分岐を含有する。本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーのLCBFの上限は、約0.5、他の場合では約0.4、更に他の場合では約0.3であってもよい(無次元)。本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーのLCBFの下限は、約0.001、他の場合では約0.0015、更に他の場合では約0.002であってもよい(無次元)。
【0183】
第2のエチレンコポリマーは、作製するために使用される触媒配合物の化学組成を反映する触媒残基を含有してもよい。当業者は、触媒残基は、例えば第2のエチレンコポリマー(又はエチレンコポリマー組成物、以下を参照)における金属の百万分率で典型的には定量化され、存在する金属は、作製するために使用される触媒配合物中の金属を起源とすることを理解するであろう。存在し得る金属残渣の非限定的な例としては、第4族の金属、チタン、ジルコニウム及びハフニウムが挙げられる。本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーにおける金属のppmの上限は、約3.0ppm、他の場合では約2.0ppm、更に他の場合では約1.5ppmであってもよい。本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーにおける金属のppmの下限は、約0.03ppm、他の場合では約0.09ppm、更に他の場合では約0.15ppmであってもよい。
【0184】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーの密度は0.865~0.9306g/cm3、分子量分布(Mw/Mn)は1.7~2.7、メルトインデックス(I2)は0.1~10g/10分である。
【0185】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度は0.865~0.930g/cm3、分子量分布(Mw/Mn)は1.7~2.3、メルトインデックス(I2)は0.1~10g/10分である。
【0186】
本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)の上限は、約2.8、又は約2.6、又は約2.5、又は約2.4、又は約2.3、又は約2.2であってもよい。本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)の下限は、約1.6、又は約1.7、又は約1.8、又は約1.9であってもよい。
【0187】
本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、2.6未満、又は2.3未満、又は2.3以下、又は2.1未満、又は2.1以下、又は2.0未満、又は2.0以下、又は約2.0である。本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、約1.7~約2.3、又は約1.8~約2.3、又は約1.8~約2.2である。
【0188】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、1000個の炭素原子につき、10~150個の短鎖分岐(SCB2)を有する。更なる実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、1000個の炭素原子につき、5~100個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、10~100個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、15~100個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、5~75個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、10~75個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、15~75個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、5~60個の短鎖分岐(SCB2)を有する。より更なる実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、1000個の炭素原子につき、5~50個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、10~50個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、5~45個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、10~45個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、15~45個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、5~40個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、10~40個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、5~35個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、5~30個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、10~35個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、10~30個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、15~30個の短鎖分岐(SCB2)、又は1000個の炭素原子につき、15~35個の短鎖分岐(SCB2)を有する。
【0189】
短鎖分岐(すなわち、1000個の主鎖炭素原子あたりの短鎖分岐、SCB2)は、エチレンコポリマー中にアルファ-オレフィンコモノマーの存在を理由とする分岐であり、例えば1-ブテンコモノマーについては2個の炭素原子、又は1-ヘキセンコモノマーについては4個の炭素原子、又は1-オクテンコモノマーについては6個の炭素原子などを有する。
【0190】
本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーの密度d2の上限は、約0.930g/cm3、いくつかの場合では約0.926g/cm3、他の場合では約0.921g/cm3、他の場合では約0.916g/cm3、他の場合では約0.912g/cm3、更に他の場合では約0.910g/cm3であってもよい。本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーの密度d2の下限は、約0.855g/cm3、いくつかの場合では約0.865g/cm3、他の場合では約0.875g/cm3又は約0.885g/cm3であってもよい。
【0191】
本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーの密度d2は、約0.855g/cm3~約0.930g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.926g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.921g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.916g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.912g/cm3、又は約0.855g/cm3~約0.910、又は約0.865g/cm3~約0.930g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.926g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.921g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.916g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.912g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.910g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.930g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.926g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.921g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.916g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.912g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.910g/cm3,約0.885g/cm3~約0.930g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.926g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.921g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.916g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.912g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.910g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.914g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.913g/cm3であってもよい。
【0192】
本開示の一実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度d1と、第2のエチレンコポリマーの密度d2との差は、0.030g/cm3未満である。本開示の別の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度d1と、第2のエチレンコポリマーの密度d2との差は、0.020g/cm3未満である。本開示の更に別の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度d1と、第2のエチレンコポリマーの密度d2との差は、0.015g/cm3未満である。本開示のより更に別の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの密度d1と、第2のエチレンコポリマーの密度d2との差は、0.010g/cm3未満である。
【0193】
一実施形態では、第2のエチレンコポリマーの密度は、第1のエチレンコポリマーの密度以上である。
【0194】
一実施形態では、第2のエチレンコポリマーの密度は、第1のエチレンコポリマーの密度よりも高い。
【0195】
本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーのCDBI50の上限は、約98重量%、他の場合では約95重量%、更に他の場合では約90重量%であってもよい。本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーのCDBI50の下限は、約70重量%、他の場合では約75重量%、更に他の場合では約80重量%であってもよい。
【0196】
本開示の実施形態では、第2のエチレンコポリマーのメルトインデックスI2
2は、約0.01g/10分~約100g/10分、又は約0.01g/10分~約75g/10分、又は約0.1g/10分~約100g/10分、又は約0.1g/10分~約70g/10分、又は約0.01g/10分~約50g/10分、又は約0.1g/10分~約50g/10分、又は約0.1g/10分~約25g/10分、又は約0.1g/10分~約20g/10分、又は約0.1g/10分~約15g/10分、又は約0.1~約10g/10分、又は約0.1~約5g/10分、又は約0.1~2.5g/10分、又は約5g/10分未満、又は約3g/10分未満、又は約1.0g/10分未満、又は約0.75g/10分未満であってもよい。
【0197】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーの重量平均分子量Mwは、約15,000~約175,000g/mol、又は約25,000~約150,000g/mol、又は約25,000~約100,000g/mol、又は約25,000~約75,000g/mol、又は約30,000~約75,000g/mol、又は約20,000~約75,000g/mol、又は約25,000~約80,000g/mol、又は約20,000~約80,000g/molである。
【0198】
本開示の一実施形態では、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量Mnは、約5,000~約75,000g/mol、又は約10,000~約50,000g/mol、又は約10,000~約40,000g/molである。
【0199】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物中の第2のエチレンコポリマーの重量パーセント(wt%)(すなわち、第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー及び第3のエチレンコポリマーの総重量に基づく第2のエチレンコポリマーの重量パーセント)の上限は、約85wt%、又は約80wt%、又は約75wt%、又は約70wt%、又は約65wt%、又は約60wt%、又は約55wt%、又は約50wt%、又は約45wt%、又は約40wt%であってもよい。本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物中の第2のエチレンコポリマーのwt%の下限は、約5wt%、又は約10wt%、又は約15wt%、又は約20wt%、又は約25wt%、又は約30wt%、又は他の場合では約35wt%であってもよい。
【0200】
第3のエチレンコポリマー
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、シングルサイト触媒(その非限定的な例としてホスフィンイミン触媒が挙げられる)、メタロセン触媒及び束縛構造触媒(その全てが当該技術分野で周知である)を用いて作製される。
【0201】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、マルチサイト触媒系(その非限定的な例としてチーグラー・ナッタ触媒及びクロム触媒が挙げられる)を用いて作製され、それら両方が当該技術分野で周知である。
【0202】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーを作製するためにエチレンを用いて共重合され得るアルファ-オレフィンは、1-プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテン並びにそれらの混合物を含む群から選択されてもよい。
【0203】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、均一に分岐したエチレンコポリマーである。
【0204】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、エチレン/1-オクテンコポリマーである。
【0205】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、メタロセン触媒を用いて作製される。
【0206】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒を用いて作製される。
【0207】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、不均一に分岐したエチレンコポリマーである。
【0208】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、メタロセン触媒を用いて作製される。
【0209】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、架橋メタロセン触媒を用いて作製される。
【0210】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、式I:
【化5】
であって、式中、Gは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ又は鉛から選択された第14族元素であり、R
1は水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルであり、R
2及びR
3は、水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、R
4及びR
5は、水素原子、非置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、Qは、独立して、活性化可能な脱離基配位子である、式(I)を有する架橋メタロセン触媒を用いて作製される。
【0211】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してアリール基である。
【0212】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してフェニル基又は置換フェニル基である。
【0213】
一実施形態では、R4及びR5はフェニル基である。
【0214】
一実施形態では、R4及びR5は、独立して置換フェニル基である。
【0215】
一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基は置換シリル基で置換される。
【0216】
一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリアルキルシリル基で置換される。
【0217】
一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリアルキルシリル基で、パラ位にて置換される。一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリメチルシリル基で、パラ位にて置換される。一実施形態では、R4及びR5は置換フェニル基であり、フェニル基はトリエチルシリル基で、パラ位にて置換される。
【0218】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してアルキル基である。
【0219】
一実施形態では、R4及びR5は、独立してアルケニル基である。
【0220】
一実施形態では、R1は水素である。
【0221】
一実施形態では、R1はアルキル基である。
【0222】
一実施形態では、R1はアリール基である。
【0223】
一実施形態では、R1はアルケニル基である。
【0224】
一実施形態では、R2及びR3は、独立して、1~30個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0225】
一実施形態では、R2及びR3は、独立してアリール基である。
【0226】
一実施形態では、R2及びR3は、独立してアルキル基である。
【0227】
一実施形態では、R2及びR3は、独立して、1~20個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0228】
一実施形態では、R2及びR3は、独立してフェニル基又は置換フェニル基である。
【0229】
一実施形態では、R2及びR3はtert-ブチル基である。
【0230】
一実施形態では、R2及びR3は水素である。
【0231】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、式II:
【化6】
を有する架橋メタロセン触媒を用いて作製され、Qは、独立して活性化可能な脱離基配位子である。
【0232】
本開示では、「活性化可能」といった用語は、配位子Qがそれぞれ、プロトン化反応を介して金属中心Mから切断され得る、又は好適な酸性若しくは求電子性触媒活性化剤化合物(「共触媒」化合物としても知られている)で金属中心Mから引き抜かれ得ることを意味し、その例は以下に説明される。活性化可能配位子Qはまた、金属中心Mから切断される、又は金属中心Mから引き抜かれる別の配位子に変換されてもよい(例えば、ハライドはアルキル基に転換されてもよい)。いかなる単一の理論にも束縛されることを望むものではないが、プロトン化反応又は引き抜き反応は、オレフィンを重合し得る活性「カチオン性」金属中心を生成する。
【0233】
本開示の実施形態では、活性化可能配位子であるQは、水素原子、ハロゲン原子、C1-20ヒドロカルビルラジカル、C1-20アルコキシラジカル及びC6-10アリール又はアリールオキシラジカルからなる群から独立して選択され、ヒドロカルビル、アルコキシ、アリール又はアリールオキシドラジカルのそれぞれは、非置換又は1つ以上のハロゲン若しくは他の基(C1-8アルキル、C1-8アルコキシ、C6-10アリール若しくはアリールオキシ、アミド若しくはホスフィドラジカル)で更に置換されてもよい。ただしこの場合、Qはシクロペンタジエニルではない。2つのQ配位子はまた、互いに接合され、例えば置換若しくは非置換ジエン配位子(例えば、1,3-ブタジエン)又はアセタート若しくはアセトアミジナート基などの非局在化ヘテロ原子含有基を形成してもよい。
【0234】
本開示の一実施形態では、それぞれのQは、ハライド原子、C1-4アルキルラジカル及びベンジルラジカルからなる群から独立して選択される。
【0235】
一実施形態では、好適な活性化可能配位子であるQは、ハライド(例えば、クロリド)又はヒドロカルビル(例えば、メチル、ベンジル)など、モノアニオン性である。
【0236】
一実施形態では、それぞれの活性化可能配位子であるQは、メチル基である。
【0237】
一実施形態では、それぞれの活性化可能配位子であるQは、ベンジル基である。
【0238】
一実施形態では、それぞれの活性化可能配位子であるQは、クロリド基である。
【0239】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーを作製するために使用されているシングルサイト触媒は、分子式:
[(2,7-tBu2Flu)Ph2C(Cp)HfCl2]を有する、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリドである。
【0240】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーを作製するために使用されているシングルサイト触媒は、分子式:
[(2,7-tBu2Flu)Ph2C(Cp)HfMe2]を有する、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジメチルである。
【0241】
シングルサイト触媒分子それ自体に加え、活性シングルサイト触媒系は、典型的には触媒活性化剤を更に含む。
【0242】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤はアルキルアルミンオキサン及び/又はイオン活性剤を含む。
【0243】
触媒活性化剤はまた、任意にはヒンダードフェノール化合物を含んでもよい。
【0244】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤はアルキルアルミニウム、イオン活性剤及びヒンダードフェノール化合物を含む。
【0245】
アルキルアルミンオキサンの正確な構造は明らかではないものの、内容領域専門家は、一般式:
(R)2AlO-(Al(R)-O)n-Al(R)2
であって、式中、R基は、1~20個の炭素原子を含有する同一又は異なる直鎖、分岐又は環状ヒドロカルビルラジカルであり、nは0~約50であり得る、一般式の繰り返し単位を含有するオリゴマー種であることに概ね合意している。アルキルアルミンオキサンの非限定的な例は、メチルアルミンオキサン(又はMAO)であり、それぞれのR基はメチルラジカルである。
【0246】
本開示の一実施形態では、アルキルアルミンオキサンのRは、メチルラジカルであり、mは10~40である。
【0247】
本開示の一実施形態では、アルキルアルミンオキサンは修飾メチルアルミンオキサン(modified methylaluminoxane、MMAO)である。
【0248】
アルキルアルミンオキサンがアルキル化剤及び活性化剤の両方として二重の役割を果たし得るということは、当該技術分野では周知である。したがって、アルキルアルミンオキサン触媒活性化剤は多くの場合、ハロゲンなどの活性化可能配位子と組み合わせて使用される。
【0249】
一般には、イオン活性剤はカチオンと嵩高いアニオンから構成されるが、後者は実質的には非配位性である。イオン活性化剤の非限定的な例は、ホウ素原子に結合されている4つの配位子と4配位するホウ素イオン活性剤である。ホウ素イオン活性剤の非限定的な例としては、以下に示される式:
[R5]+[B(R7)4]-
であって、式中、Bはホウ素原子を表し、R5は、芳香族ヒドロカルビル(例えば、トリフェニルメチルカチオン)であり、各R7は、非置換であるフェニルラジカル、又はフッ素原子、非置換であるC1-4アルキル若しくはアルコキシラジカル、若しくはフッ素原子で置換されているC1-4アルキル若しくはアルコキシラジカルから選択される3~5個の置換基で置換されたフェニルラジカル、及び式-Si(R9)3であって、式中、各R9は、水素原子及びC1-4アルキルラジカルから独立して選択される式のシリルラジカルから独立して選択される、式、並びに
[(R8)]tZH]+[B(R7)4]-
であって、式中、Bはホウ素原子であり、Hは水素原子であり、Zは窒素原子又はリン原子であり、tは2~3であり、R8は、C1-8アルキルラジカル、非置換フェニルラジカル若しくは最大で3個のC1-4アルキルラジカルで置換されているフェニルラジカルから選択され、又は窒素原子とともにまとめられた1つのR8がアニリニウムラジカルを形成してもよく、R7は上に定義される通りである、式が挙げられる。
【0250】
両方の式では、R7の非限定的な例はペンタフルオロフェニルラジカルである。一般には、ホウ素イオン活性剤は、テトラ(ペルフルオロフェニル)ボロンの塩として記載されてもよく、非限定的な例としては、アニリニウム及びトリチル(又はトリフェニルメチリウム)とのテトラ(ペルフルオロフェニル)ボロンのアニリニウム塩、カルボニウム塩、オキソニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩が挙げられる。イオン活性剤の追加の非限定的な例としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ボロン、N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)n-ブチルボロン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、ジ-(イソプロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリピリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキスペンタフルオロフェニルボラート、トロピリウムテトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(1,2,2-トリフルオロエテニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラート及びベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(2,3,4,5テトラフルオロフェニル)ボラートが挙げられる。容易に入手可能な市販のイオン活性剤としては、N,N-ジメチルアニリニウムN,N-ジメチルアニリニウム及びトリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラートが挙げられる。
【0251】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤は、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(「[Me2NHPh][B(C6F5)4])、トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート(「[Ph3C][B(C6F5)4]」、「トリチルボラート」としても知られている)及びトリスペンタフルオロフェニルボロンからなる群から選択されるイオン活性剤を含む。
【0252】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤はトリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボラート、すなわち「トリチルボラート」を含む。
【0253】
本開示の実施形態では、触媒活性化剤は、ブチル化フェノール酸化防止剤、ブチル化ヒドロキシトルエン、2,6-ジ-tertブチル-4-エチルフェノール(BHEB)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-tris(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びオクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナートからなる群から選択されるヒンダードフェノール化合物を含む。
【0254】
本開示の一実施形態では、触媒活性化剤は、ヒンダードフェノール化合物である2,6-ジ-tertブチル-4-エチルフェノール(BHEB)を含む。
【0255】
任意には、本開示の実施形態では、アルキルアルミンオキサンとイオン活性剤との混合物は、任意にはヒンダードフェノール化合物とともに触媒活性化剤として使用され得る。
【0256】
活性シングルサイト触媒系を生成するため、上記成分であるシングルサイト触媒、アルキルアルミンオキサン、イオン活性剤及び任意のヒンダードフェノールの量及びモル比が最適化される。
【0257】
本開示の実施形態では、イオン活性剤化合物は、1:1~1:10、又は1:1~1;6、又は1:1~1:2になる、ホウ素に対する(シングルサイト触媒分子の)ハフニウム(Hf)のモル比を提供する量で使用されてもよい。
【0258】
本開示の実施形態では、(シングルサイト触媒分子の)ハフニウム(Hf)に対する、アルキルアルミンオキサン中に含有されたアルミニウムのモル比は5:1~1000:1であり、これはこの範囲内でのより狭い範囲を含む。
【0259】
本開示の実施形態では、ヒンダードフェノール(例えば、BHEB)に対する、アルキルアルミンオキサン中に含有されたアルミニウムのモル比は1:1~1:0.1であり、これはこの範囲内でのより狭い範囲を含む。
【0260】
活性シングルサイト触媒系を生成するため、シングルサイト触媒、アルキルアルミンオキサン、イオン活性剤及び任意のヒンダードフェノールといった3つ又は4つの成分の量及びモル比が最適化される。
【0261】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーには長鎖分岐が存在せず、又は任意の検出可能なレベルの長鎖分岐がない。
【0262】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは長鎖分岐(以下、「LCB」)を含有する。LCBは、ポリエチレンにおける周知の構造的現象であり、当業者に周知である。従来、LCB解析には3つの方法がある。すなわち、核磁気共鳴分光法(nuclear magnetic resonance spectroscopy、NMR)(例えばJ.C.Randall,J Macromol.Sci.,Rev.Macromol.Chem.Phys.1989,29,201を参照)、DRI、粘度計及び低角度光散乱検出器を搭載した三重検出SEC(例えば、W.W.Yau and D.R.Hill,Int.J.Polym.Anal.Charact.1996;2:151を参照)並びにレオロジー(例えば、W.W.Graessley,Acc.Chem.Res.1977,10,332-339を参照)である。本開示では、長鎖分岐は本質的には高分子である。すなわち、NMRスペクトル、三重検出器SEC実験又はレオロジー実験で見るには十分長い。
【0263】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーは本明細書に開示されたLCBFを特徴とする長鎖分岐を含有する。本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーのLCBFの上限は、約0.5、他の場合では約0.4、更に他の場合では約0.3であってもよい(無次元)。本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーのLCBFの下限は、約0.001、他の場合では約0.0015、更に他の場合では約0.002であってもよい(無次元)。
【0264】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)の上限は、約2.8、又は約2.6、又は約2.5、又は約2.4、又は約2.3、又は約2.2であってもよい。本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)の下限は、約1.4、又は約1.6、又は約1.7、又は約1.8、又は約1.9であってもよい。
【0265】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、2.6未満、又は2.3未満、又は2.3以下、又は2.1未満、又は2.1以下、又は2.0未満、又は2.0以下、又は約2.0である。本開示の実施形態では、第1のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、約1.7~約2.3、又は約1.8~約2.3、又は約1.8~2.2である。
【0266】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、2.3以上、又は2.3超、又は2.5以上、又は2.5超、又は2.7以上、又は2.7超、又は2.9以上、又は2.9超、又は3.0以上、又は約3.0である。本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、2.3~6.5、又は2.3~6.0、又は2.3~5.5、又は2.3~5.0、又は2.3~4.5、又は2.3~4.0、又は2.3~3.5、又は2.3~3.0、又は2.5~5.0、又は2.5~4.5、又は2.5~4.0、又は2.5~3.5、又は2.7~5.0、又は2.7~4.5、又は2.7~4.0、又は2.7~3.5、又は2.9~5.0、又は2.9~4.5、又は2.9~4.0、又は2.9~3.5である。
【0267】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、2.0~6.5、又は2.3~6.5、又は2.3~6.0、又は2.0~6.0、又は2.0~5.5、又は2.0~5.0、又は2.0~4.5、又は2.0~4.0、又は2.0~3.5、又は2.0~3.0である。
【0268】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーは、1000個の炭素原子につき、1~75個の短鎖分岐(SCB3)を有する。更なる実施形態では、第2のエチレンコポリマーは、1000個の炭素原子につき、2~50個の短鎖分岐(SCB3)、又は1000個の炭素原子につき、2~40個の短鎖分岐(SCB3)、又は1000個の炭素原子につき、2~30個の短鎖分岐(SCB3)、又は1000個の炭素原子につき、5~40個の短鎖分岐(SCB3)、又は1000個の炭素原子につき、5~30個の短鎖分岐(SCB3)、又は1000個の炭素原子につき、7.5~30個の短鎖分岐(SCB3)、又は1000個の炭素原子につき、7.5~25個の短鎖分岐(SCB3)、又は1000個の炭素原子につき、10~30個の短鎖分岐(SCB3)、又は1000個の炭素原子につき、10~25個の短鎖分岐(SCB3)を有する。
【0269】
短鎖分岐(すなわち、1000個の主鎖炭素原子あたりの短鎖分岐、SCB3)は、エチレンコポリマー中にアルファ-オレフィンコモノマーの存在を理由とする分岐であり、例えば1-ブテンコモノマーについては2個の炭素原子、又は1-ヘキセンコモノマーについては4個の炭素原子、又は1-オクテンコモノマーについては6個の炭素原子などを有する。
【0270】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーの密度d3の上限は、約0.975g/cm3、いくつかの場合では約0.965g/cm3、他の場合では約0.955g/cm3、更に他の場合では約0.945g/cm3であってもよい。本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーの密度d3の下限は、約0.855g/cm3、いくつかの場合では約0.865g/cm3、他の場合では約0.875g/cm3であってもよい。
【0271】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーの密度d3は、約0.875g/cm3~約0.965g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.960g/cm3、又は約0.875g/cm3~0.950g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.945g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.940g/cm3、又は約0.875g/cm3~約0.936g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.936g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.940g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.945g/cm3、又は約0.865g/cm3~約0.950g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.960g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.950g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.945g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.940g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.936g/cm3、又は約0.895g/cm3~約0.960g/cm3、又は約0.895g/cm3~約0.950g/cm3、又は約0.895g/cm3~約0.945g/cm3,約0.895g/cm3~約0.940g/cm3、又は約0.895g/cm3~約0.936g/cm3、又は約0.895g/cm3~約0.930g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.930g/cm3、又は約0.895g/cm3~約0.926g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.926g/cm3、又は約0.895g/cm3~約0.924g/cm3、又は約0.885g/cm3~約0.924g/cm3であってもよい。
【0272】
一実施形態では、第3のエチレンコポリマーの密度は、第1のエチレンコポリマーの密度よりも高い。
【0273】
本開示の実施形態では、シングルサイト触媒が第3のエチレンコポリマーを作製するために使用されるとき、第3のエチレンコポリマーのCDBI50の上限は、約98重量%、他の場合では約95重量%、更に他の場合では約90重量%であってもよい。本開示の実施形態では、シングルサイト触媒が第3のエチレンコポリマーを作製するために使用されるとき、第3のエチレンコポリマーのCDBI50の下限は、約70wt%、他の場合では約75重量%、更に他の場合では約80wt%であってもよい。
【0274】
本開示の実施形態では、マルチサイト触媒が第3のエチレンコポリマーを作製するために使用されるとき、第3のエチレンコポリマーは、組成分布幅指数であるCDBI50が75wt%未満、又は70wt%以下であるエチレンコポリマーである。本開示の更なる実施形態では、マルチサイト触媒が第3のエチレンコポリマーを作製するために使用されるとき、第3のエチレンコポリマーのCDBI50が65wt%以下、又は60wt%以下、又は55wt%以下、又は50wt%以下、又は45wt%以下であるエチレンコポリマーである。
【0275】
本開示の実施形態では、第3のエチレンコポリマーのメルトインデックスI2
3は、約0.01g/10分~約100g/10分、又は約0.01g/10分~約75g/10分、又は約0.1g/10分~約100g/10分、又は約0.1g/10分~約70g/10分、又は約0.01g/10分~約50g/10分、又は約0.1g/10分~約50g/10分、又は約0.1g/10分~約25g/10分、又は約0.1g/10分~約20g/10分、又は約0.1g/10分~約15g/10分、又は約0.1~約10g/10分、又は約0.1~約5g/10分、又は約0.1~2.5g/10分、又は約5g/10分未満、又は約3g/10分未満、又は約1.0g/10分未満、又は約0.75g/10分未満であってもよい。
【0276】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーの重量平均分子量Mwは、約15,000~約175,000g/mol、又は約25,000~約150,000g/mol、又は約35,000~約100,000g/mol、又は約45,000~約100,000g/molである。
【0277】
本開示の一実施形態では、第3のエチレンコポリマーの数平均分子量Mnは、約5,000~約75,000g/mol、又は約10,000~約50,000g/mol、又は約10,000~約40,000g/molである。
【0278】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物中の第3のエチレンコポリマーの重量パーセント(wt%)(すなわち、第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー及び第3のエチレンコポリマーの総重量に基づく第3のエチレンコポリマーの重量パーセント)の上限は、約60wt%、又は約55wt%、又は50wt%、他の場合では約45wt%、他の場合では約40wt%、又は約35wt%、又は約30wt%、又は約25wt%であってもよい。本開示の実施形態では、最終エチレンコポリマー組成物中の第3のエチレンコポリマーのwt%の下限は、約1wt%、又は約3wt%、又は約5wt%、又は約10wt%、又は約15wt%、又は約20wt%であってもよい。
【0279】
エチレンコポリマー組成物
本明細書に開示されたポリエチレン組成物は、当該技術分野で周知の任意の技術を使用して作製され得る。この技術は、第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー及び第3のエチレンコポリマーを接合するための溶融ブレンド、溶液ブレンド、又は反応槽中でのブレンドを含むが、これらに限定されない。
【0280】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、第1のエチレンコポリマーを得るために第1の反応槽でシングルサイト触媒を使用して作製され、シングルサイト触媒は、第2のエチレンコポリマーを得るために第2の反応槽で使用され、かつシングルサイト触媒は、第3のエチレンコポリマーを得るために第3の反応槽で使用される。
【0281】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、第1のエチレンコポリマーを得るために第1の反応槽でシングルサイト触媒を使用して作製され、シングルサイト触媒は、第2のエチレンコポリマーを得るために第2の反応槽で使用され、かつマルチサイト触媒は、第3のエチレンコポリマーを得るために第3の反応槽で使用される。
【0282】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びシングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。
【0283】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びマルチサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。
【0284】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の液相重合反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の液相重合反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びシングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の液相重合反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。
【0285】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の液相重合反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の液相重合反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びマルチサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の液相重合反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。
【0286】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の液相重合反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の液相重合反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びシングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の液相重合反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。第1の液相重合反応槽、第2の液相重合反応槽及び第3の液相重合反応槽は、互いに直列で構成されている。
【0287】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の液相重合反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の液相重合反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びシングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の液相重合反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。第1の液相重合反応槽、第2の液相重合反応槽及び第3の液相重合反応槽は、互いに並列で構成されている。
【0288】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の液相重合反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の液相重合反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びシングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の液相重合反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。第1の液相反応槽及び第2の液相反応槽は、互いに対して直列で構成され、第3の液相反応槽は、第1の反応槽及び第2の反応槽に対して並列で構成されている。
【0289】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の液相重合反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の液相重合反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びマルチサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の液相重合反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。第1の液相重合反応槽、第2の液相重合反応槽及び第3の液相重合反応槽は、互いに直列で構成されている。
【0290】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の液相重合反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の液相重合反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びマルチサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の液相重合反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。第1の液相重合反応槽、第2の液相重合反応槽及び第3の液相重合反応槽は、互いに並列で構成されている。
【0291】
一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物は、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第1の液相重合反応槽で第1のエチレンコポリマーを形成すること、シングルサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第2の液相重合反応槽で第2のエチレンコポリマーを形成すること、及びマルチサイト触媒を用いてエチレンとアルファオレフィンを重合することで、第3の液相重合反応槽で第3のエチレンコポリマーを形成することによって、作製される。第1の液相反応槽及び第2の液相反応槽は、互いに対して直列で構成され、第3の液相反応槽は、第1の反応槽及び第2の反応槽に対して並列で構成されている。
【0292】
一実施形態では、第1の液相反応槽、第2の液相反応槽又は第3の液相反応槽として使用されている液相重合反応槽は、連続撹拌タンク反応槽又は管状反応槽である。
【0293】
一実施形態では、第1の液相反応槽、第2の液相反応槽又は第3の液相反応槽として使用されている液相重合反応槽は、連続撹拌タンク反応槽である。
【0294】
一実施形態では、第1の液相反応槽、第2の液相反応槽又は第3の液相反応槽として使用されている液相重合反応槽は、管状反応槽である。
【0295】
一実施形態では、第1の液相反応槽及び第2の液相反応槽として使用されている液相重合反応槽は、連続撹拌タンク反応槽であり、第3の液相反応槽として使用されている液相重合反応槽は、管状反応槽である。
【0296】
溶液重合では、モノマーは、反応槽に供給される前に溶媒に溶解/分散される(又はガス状のモノマーについては、モノマーは反応混合物に溶解されるように、反応槽に供給されてもよい)。混合前に、溶媒及びモノマーは、水、酸素又は金属不純物などの潜在的な触媒毒を除去するために一般には精製される。供給原料の精製は、当該技術分野の標準的技法に従う。例えば、モレキュラーシーブ、アルミナ床及び酸素除去触媒がモノマーを精製するために使用される。溶媒(例えば、メチルペンタン、シクロヘキサン、ヘキサン又はトルエン)自体もまた、同様の様式で処理されることが好ましい。
【0297】
供給原料は、反応槽に供給する前に加熱又は冷却されてもよい。
【0298】
一般には、触媒成分は反応のために溶媒に予め混合されてもよく、又は反応槽に別個の流れとして供給されてもよい。いくつかの例では、触媒成分の予備混合については、反応に入る前に触媒成分に反応時間を与えることが望ましい。かかる「インライン混合」技術は、DuPont Canada Incの名義の多くの特許(例えば、1996年12月31日に発行された米国特許第5,589,555号)に記載されている。
【0299】
エチレンの重合又は共重合の溶液重合プロセスは、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,372,864号及び同6,777,509号を参照)。これらのプロセスは、不活性炭化水素溶媒の存在下で実施される。液相重合反応槽では、様々な溶媒がプロセス溶媒として使用されてもよい。非限定的な例としては、直鎖C5~C12アルカン、分岐C5~C12アルカン又は環状C5~C12アルカンが挙げられる。α-オレフィンの非限定的な例としては、1-プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテンが挙げられる。好適な触媒成分溶媒としては、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素が挙げられる。脂肪族触媒成分溶媒の非限定的な例としては、直鎖C5-12脂肪族炭化水素、分岐C5-12脂肪族炭化水素、又は環状C5-12脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、水素添加ナフサ若しくはそれらの組合せ)が挙げられる。芳香族触媒成分溶媒の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン(メチルベンゼン)、エチルベンゼン、o-キシレン(1,2-ジメチルベンゼン)、m-キシレン(1,3-ジメチルベンゼン)、p-キシレン(1,4-ジメチルベンゼン)、キシレン異性体の混合物、ヘメリテン(1,2,3-トリメチルベンゼン)、プソイドクメン(1,2,4-トリメチルベンゼン)、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、トリメチルベンゼン異性体の混合物、プレヘニテン(1,2,3,4-テトラメチルベンゼン)、デュレン(1,2,3,5-テトラメチルベンゼン)、テトラメチルベンゼン異性体の混合物、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン及びそれらの組合せが挙げられる。
【0300】
従来の溶液プロセスにおける重合温度は、約80℃~約300℃であってもよい。本開示の一実施形態では、溶液プロセスにおける重合温度は、約120℃~約250℃である。溶液プロセスにおける重合圧力は、「中間圧力プロセス」であってもよい。これは、反応槽における圧力が約6,000psi(約42,000キロパスカル又はkPa)未満であることを意味する。本開示の一実施形態では、溶液プロセスにおける重合圧力は、約10,000~約40,000kPa、又は約14,000~約22,000kPa(すなわち、約2,000psi~約3,000psiであってもよい。
【0301】
エチレンとの共重合に好適なモノマーとしては、C3-20モノオレフィン及びジオレフィンが挙げられる。好ましいコモノマーとしては、非置換である、又は最大で2つのC1-6アルキルラジカルで置換されているC3-12アルファオレフィン、非置換である、又はC1-4アルキルラジカルからなる群から選択される最大で2個の置換基で置換されているC8-12ビニル芳香族モノマー、非置換である、又はC1-4アルキルラジカルで置換されているC4-12直鎖若しくは環状ジオレフィンが挙げられる。かかるアルファ-オレフィンの例示的な非限定的な例は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセン、スチレン、アルファメチルスチレン並びにシクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエンノルボルネン、アルキル置換ノルボルネン、アルケニル置換ノルボルネン及び同様のもの(例えば、5-メチレン-2-ノルボルネン及び5-エチリデン-2-ノルボルネン、ビシクロ-(2,2,1)-ヘプタ-2,5-ジエン)などの束縛環状オレフィンのうちの1つ以上である。
【0302】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、1つ以上のアルファオレフィンの少なくとも1モルパーセントを有する。
【0303】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、1つ以上のアルファオレフィンの少なくとも3モルパーセントを有する。
【0304】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、1つ以上のアルファ-オレフィンの約3~約12モルパーセントを有する。
【0305】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、1つ以上のアルファ-オレフィンの約3~約10モルパーセントを有する。
【0306】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、1つ以上のアルファオレフィンの約3.5~約10モルパーセントを有する。
【0307】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、エチレンと、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及びそれらの混合物を含む群から選択される1つ以上のアルファオレフィンと、を含む。
【0308】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、エチレンと、1-ヘキセン、1-オクテン及びそれらの混合物を含む群から選択される1つ以上のアルファオレフィンと、を含む。
【0309】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、エチレン及び1-オクテンを含む。
【0310】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、エチレン及び少なくとも1モルパーセントの1-オクテンを含む。
【0311】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、エチレン及び少なくとも3モルパーセントの1-オクテンを含む。
【0312】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、エチレン及び3~12モルパーセントの1-オクテンを含む。
【0313】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、エチレン及び3~10モルパーセントの1-オクテンを含む。
【0314】
本開示の一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物の密度は、0.860g/cm3~0.912g/cm3である。本開示の一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物の密度は、0.912g/cm3未満である。本開示の一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物の密度は、0.860g/cm3~0.910g/cm3である。本開示の一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物の密度は、0.910g/cm3未満である。本開示の一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物の密度は、0.860g/cm3~0.910g/cm3未満である。
【0315】
本開示の一実施形態では、本開示のエチレンコポリマー組成物の密度は、0.870g/cm3~0.912g/cm3、又は0.880g/cm3~0.912g/cm3、又は0.890g/cm3~0.912g/cm3、又は0.870g/cm3~0.910g/cm3、又は0.880g/cm3~0.910g/cm3、又は0.890g/cm3~0.910g/cm3、又は0.860g/cm3~0.908g/cm3、又は0.870g/cm3~0.908g/cm3、又は0.880g/cm3~0.908g/cm3、又は0.890g/cm3~0.908g/cm3、又は0.860g/cm3~0.906g/cm3、又は0.870g/cm3~0.906g/cm3、又は0.880g/cm3~0.906g/cm3、又は0.890g/cm3~0.906g/cm3、又は0.901g/cm3~0.912g/cm3、又は0.901g/cm3~0.910g/cm3、又は0.901g/cm3~0.908g/cm3、又は0.901g/cm3~0.906g/cm3、又は0.901g/cm3~912g/cm3未満、又は0.901g/cm3~0.910g/cm3未満である。
【0316】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物のメルトインデックス(I2)は、約0.01g/10分~100g/10分、又は約0.01g/10分~50g/10分、又は約0.01g/10分~25g/10分、又は約0.01g/10分~10g/10分、又は約0.01g/10分~5g/10分、又は約0.01g/10分~3g/10分、又は約0.01g/10分~1g/10分、又は約0.1g/10分~10g/10分、又は約0.1g/10分~5g/10分、又は約0.1g/10分~3g/10分、又は約0.1g/10分~2g/10分、又は約0.1g/10分~1.5g/10分、又は約0.1g/10分~1g/10分、又は約0.5g/10分~100g/10分、又は約0.5g/10分~50g/10分、又は約0.5g/10分~25g/10分、又は約0.5g/10分~10g/10分、又は約0.5g/10分~5g/10分、又は約5g/10分未満、又は約3g/10分未満、又は約1.0g/10分未満であってもよい。
【0317】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物の高負荷メルトインデックス(I21)は、約10dg/分~約10,000dg/分、又は約10dg/分~約1000dg/分、又は約10dg/分~約500dg/分、又は約10dg/分~約250dg/分、又は約10dg/分~約150dg/分、又は約10dg/分~約100dg/分であってもよい。
【0318】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物のメルトフロー比I21/I2は、約15~約1,000、又は約15~約100、又は約15~約75、又は約15~約60、又は約15~約50、又は約18~約60、又は約20~約75、又は約20~約60、又は約20~約55、又は約25~約75、又は約25~約60、又は約25~約55であってもよい。
【0319】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物の重量平均分子量Mwは、約20,000~約300,000g/mol、又は約30,000~約300,000g/mol、又は約40,000~約300,000g/mol、又は約40,000~約250,000g/mol、又は約50,000~約250,000g/mol、又は約50,000~約225,000g/mol、又は約50,000~約200,000g/mol、又は約50,000~約175,000g/mol、又は約50,000~約150,000g/mol、又は約50,000~約125,000g/molである。
【0320】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物の下限分子量分布(Mw/Mn)は、1.8、又は2.0、又は2.1、又は2.2、又は2.3である。本開示の実施形態では、ポリエチレン組成物の上限分子量分布(Mw/Mn)は、6.0、又は5.5、又は5.0、又は4.5、又は4.0、又は3.75、又は3.5、又は3.0、又は2.5である。
【0321】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物の分子量分布(Mw/Mn)は、1.8~6.0、又は1.8~5.5、又は1.8~5.0、又は1.8~4.5、又は1.8~4.0、又は1.8~3.5、又は1.8~3.0、又は1.9~5.5、又は1.9~5.0、又は1.9~4.5、又は1.9~4.0、又は1.9~3.5、又は1.9~3.0である。
【0322】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物のZ平均分子量分布(MzMw)は、4.0以下、又は4.0未満、又は3.5以下、又は3.5未満、又は3.0以下、又は3.0未満、又は2.75以下、又は2.75未満、又は2.50以下、又は2.50未満、又は2.25以下、又は2.25未満、又は2.00以下、又は2.00未満である。本開示の実施形態では、ポリエチレン組成物のZ平均分子量分布(MzMw)は、1.5~4.0、又は1.5~3.5、又は1.5~3.0、又は1.5~2.5、又は1.7~3.5、又は1.7~3.0、又は1.7~2.5である。
【0323】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、ASTM D6474-99の方法に従って生成されたゲル浸透クロマトグラフの単峰性プロファイルを有する。「単峰性」といった用語は、GPC曲線において1つのみ有意なピークが存在する、又は最大級に明確であることを意味するように本明細書では定義される。単峰性プロファイルは、幅広い単峰性プロファイルを含む。対照的に、「二峰性」といった用語の使用は、第1のピークに加えて、より高い分子量成分又はより低い分子量成分を表す二次ピーク又は肩部が存在すると表すことを意味している(すなわち、分子量分布は、分子量分布曲線中に2つの最大値を有すると言うことができる)。代替的には、「二峰性」といった用語は、ASTM D6474-99の方法に従って生成された分子量分布曲線において2つの最大値が存在することを意味する。「多峰性」といった用語は、代替的には、「二峰性」といった用語は、ASTM D6474-99の方法に従って生成された分子量分布曲線において、2つ以上、典型的には3つ以上最大値が存在することを示す。
【0324】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、GPC-FTIRを使用して測定された逆コモノマー分布又は部分的な逆コモノマー分布のプロファイルを有する。GPC-FTIRを使用して測定されるように、コモノマーの組み込みによって分子量が減少する場合、分布は「正規」であると記載される。GPC-FTIRを使用して測定されるように、分子量についてコモノマーの組み込みがほぼ一定である場合、分布は「平坦」又は「一様」であると記載される。「逆コモノマー分布」及び「部分的な逆コモノマー分布」といった用語は、コポリマーについて得られたGPC-FTIRデータにおいて、1つ以上のより低い分子量成分にあるものよりも、より高いコモノマー組み込みを有する1つ以上のより高い分子量成分が存在することを意味する。「逆(逆転)コモノマー分布」といった用語は、エチレンコポリマーの分子量範囲にわたって、様々なポリマー部分のコモノマー含量は実質的に一様ではなく、より高いその分子量部分は、比例してより高いコモノマー含量を有する(すなわち、コモノマーの組み込みが分子量に伴って上昇する場合、その分布は「逆」又は「逆転」と記載される)ことを意味するように本明細書で使用される。コモノマーの組み込みが分子量の増加に伴って上昇し、その後低下する場合、コモノマー分布は依然として「逆」であると考えられる。ただし、これは「部分的に逆」であるとも記載されてもよい。部分的な逆コモノマー分布は、ピーク又は最大値を示す。
【0325】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、GPC-FTIRを使用して測定された逆コモノマー分布のプロファイルを有する。
【0326】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、GPC-FTIRを使用して測定された部分的な逆コモノマー分布のプロファイルを有する。
【0327】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物のCDBI50は70重量%超、又は75重量%超、又は80重量%超、又は85重量%超、又は90重量%超である。
【0328】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物のCDBI50は約60~99wt%、又は約70~約99wt%、又は約80~約99wt%、又は約85~約99wt%、又は約90~約99wt%である。
【0329】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物中のハフニウムの百万分率(ppm)の上限は、約3.0ppm、又は約2.5ppm、又は約2.0ppm、又は約1.5ppm、又は約1.0ppm、又は約0.75ppm、又は約0.5ppmであってもよい。本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物中のハフニウムの百万分率(ppm)の下限は、約0.0015ppm、又は約0.0050ppm、又は約0.0075ppm、又は約0.010ppm、又は約0.015ppm、又は約0.030ppm、又は約0.050ppm、又は約0.075ppm、又は約0.100ppm、又は0.150ppm、又は約0.175ppm、又は約0.200ppmであってもよい。
【0330】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、0.0015~2.5ppmのハフニウム、0.0050~2.5ppmのハフニウム、又は0.0075~2.5ppmのハフニウム、又は0.010~2.5ppmのハフニウム、又は0.015~2.5ppmのハフニウム、又は0.050~3.5ppmのハフニウム、又は0.050~3.0ppmのハフニウム、又は0.050~2.5ppm、又は0.075~2.5ppmのハフニウム、又は0.075~2.0ppmのハフニウム、又は0.075~1.5ppmのハフニウム、又は0.075~1.0ppmのハフニウム、又は0.075~0.5ppmのハフニウム、又は0.100~2.0ppmのハフニウム、又は0.100~1.5ppmのハフニウム、又は0.100~1.0ppmのハフニウム、又は0.200~1.5ppmのハフニウム、又は0.300~1.5ppmのハフニウム、又は0.100~0.75ppmのハフニウム、又は0.10~0.5ppmのハフニウム、又は0.15~0.5ppmのハフニウム、又は0.20~0.5ppmのハフニウムを有する。
【0331】
本開示の実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、少なくとも0.0015ppmのハフニウム、又は少なくとも0.005ppmのハフニウム、又は少なくとも0.0075ppmのハフニウム、又は少なくとも0.015ppmのハフニウム、又は少なくとも0.030ppmのハフニウム、又は少なくとも0.050ppmのハフニウム、又は少なくとも0.075ppmのハフニウム、又は少なくとも0.100ppmのハフニウム、又は少なくとも0.125ppmのハフニウム、又は少なくとも0.150ppmのハフニウム、又は少なくとも0.175ppmのハフニウム、又は少なくとも0.200ppmのハフニウムを有する。
【0332】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物は、Log10[I6/I2]/Log10[6.48/2.16]として定義される応力指数を有する。これは少なくとも1.30、又は少なくとも1.35である。
【0333】
本開示の更なる実施形態では、エチレンコポリマー組成物の応力指数Log10[I6/I2]/Log10[6.48/2.16]は、1.35~1.70、又は1.38~1.70、又は1.40~1.70、又は1.38~1.65、又は1.40~1.65、又は1.38~1.60、又は1.40~1.60である。
【0334】
本開示の一実施形態では、エチレンコポリマー組成物の無次元長鎖分岐係数LCBFは、0.001以上である。
【0335】
一実施形態では、エチレンコポリマー組成物の結晶化速度定数1/t1/2,0は、5・s-1超である。
【0336】
線状低密度ポリエチレン(LLDPE)
本開示の実施形態における線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、60重量%以上、又は75重量%以上のエチレンと、残りが1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択される1つ以上のアルファオレフィンを含む。
【0337】
本開示のいくつかの実施形態で使用されている線状低密度ポリエチレンの密度は、約0.910~0.940g/cm3、又は約0.910~約0.935g/cm3である。
【0338】
本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンの密度の範囲は、約0.910g/cm3、又は約0.912g/cm3、又は約0.915g/cm3、又は約0.916g/cm3、又は約0.917g/cm3の低さから、約0.927g/cm3、又は約0.930g/cm3、又は約0.935g/cm3、又は約0.940g/cm3の高さである。本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンの密度は、0.912g/cm3~0.940g/cm3、又は0.915g/cm3~0.935g/cm3、又は0.915~0.930g/cm3、又は0.916~0.930g/cm3、又は0.915~0.925g/cm3、又は0.916~0.924g/cm3、又は0.917~0.923g/cm3、又は0.918~約0.922g/cm3である。
【0339】
本開示の一実施形態では、線状低密度ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、約1.5~約6.0となりうる。本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンは、約1.5又は約1.7、又は約2.0、又は約2.5、又は約3.0、又は約3.5、又は約3.7、又は約4.0の低さから、約5、又は約5.25、又は約5.5、又は約6.0の高さの範囲の分子量分布(Mw/Mn)を有する。本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、1.7~5.0、又は1.5~4.0、又は1.8~3.5、又は2.0~3.0である。代替的には、本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、3.6~5.4、又は3.8~5.1、又は3.9~4.9である。
【0340】
本開示の一実施形態では、線状低密度ポリエチレンのメルトインデックス(I2)は、0.1g/10分~20g/10分である。本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンは、0.75g/10分~15g/10分、又は0.85g/10分~10g/10分、又は0.9g/10分~8g/10分の範囲のメルトインデックス(I2)を有する。本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンは、約0.20g/10分、又は0.25g/10分、又は約0.5g/10分、又は約0.75g/10分、又は約1g/10分、又は約2g/10分の低さから、約3g/10分、又は約4g/10分、又は約5g/10分の高さの範囲のメルトインデックス(I2)を有する。
【0341】
本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンのメルトインデックス(I2)は、約0.75g/10分~約6g/10分、又は約1g/10分~約8g/10分、又は0.8g/10分~約6g/10分、又は約1g/10分~約4.5g/10分、又は0.20g/10分~5.0g/10分、又は0.30g/10分~5.0g/10分、又は0.40g/10分~5.0g/10分、又は0.50g/10分~5.0g/10分である。
【0342】
本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンのメルトフロー比(I21/I2)は、約120未満、又は約100未満、又は約60未満、又は約50未満、又は約36未満、又は35未満、又は32未満、又は30未満である。
【0343】
本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンのメルトフロー比(I21/I2)は、10~50、又は15~50、又は16~40、又は10~36、又は10~35、又は10~32、又は10~30、又は12~35、又は12~32、又は12~30、又は14~27、又は14~25、又は14~22、又は15~20である。
【0344】
本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンのCBDI50は、TREF解析で決定される際には、50重量パーセント以上、又は50重量パーセント以下である。
【0345】
本開示の実施形態では、線状低密度ポリエチレンの組成分布幅指数(CDBI50)は、昇温溶離分別(TREF)で決定される場合、25重量%~95重量%、又は35重量%~90重量%、又は40重量%~85重量%、又は40重量%~80重量%である。
【0346】
製造物品
本明細書に開示されたエチレンコポリマー組成物又はそのポリマーブレンドは、単層又は多層フィルムなどの可撓性製造物品に変えられてもよい。かかるフィルムを調製するためのプロセスの非限定的な例としては、インフレーションフィルムプロセス、ダブルバブルプロセス、トリプルバブルプロセス、キャストフィルムプロセス、テンターフレームプロセス及び縦方向延伸(machine direction orientation、MDO)プロセスが挙げられる。
【0347】
インフレーションフィルムの押出プロセスでは、押出機は熱可塑性物質又は熱可塑性ブレンドを加熱し、溶融し、混合し、かつ搬送する。溶融すると、熱可塑性物質は環状ダイに通されて熱可塑性チューブを製造する。共押出の場合には、多層熱可塑性チューブを製造するために、複数の押出機が使用される。押出プロセスの温度は、例えば、熱可塑性物質の溶融温度又はガラス転移温度及び溶融物の所望の粘度など、加工される熱可塑性物質又は熱可塑性ブレンドによって主に決定される。ポリオレフィンの場合には、典型的な押出温度は330°F~550°F(166℃~288℃)である。環状ダイから出た際に、熱可塑性チューブは空気によって膨張し、冷却されて固化し、一対のニップローラに通して引っ張られる。空気膨張により、チューブの径は増大し、所望のサイズの気泡を形成する。ニップローラの引張作用により、気泡は縦方向に引き伸ばされる。したがって、気泡は、膨張空気が気泡の径を増大させる横方向(transverse direction、TD)と、ニップローラが気泡を引き延ばす縦方向(MD)の2方向に引き伸ばされる。結果として、インフレーションフィルムの物理的特性は、典型的には異方性である。すなわち、物理的特性はMDとTDで異なっている。例えば、フィルムの引裂強度及び引張特性は、MDとTDでは典型的には異なる。いくつかの先行技術文献においては、「交差方向」又は「CD」といった用語が使用される。これらの用語は、本開示で使用される「横方向」又は「TD」といった用語と同等である。インフレーションフィルムプロセスでは、空気はまた、環状ダイを出る際に外部気泡周囲に吹き付けられ、熱可塑性物質を冷却する。フィルムの最終幅は、膨張空気又は内部気泡圧を制御することで、換言すれば気泡径を増大又は減少させることで決定される。フィルム厚さは、ドローダウン速度を制御するため、主にニップローラの速度を増大又は減少させることで主に制御される。ニップローラを出た後に、気泡又はチューブは圧潰され、縦方向に切れ目を入れ、それによってシートを形成してもよい。各シートはフィルムのロールに巻かれてもよい。各ロールは更に切れ目が入れられ、所望の幅のフィルムを形成してもよい。フィルムの各ロールは、様々な消費者製品に更に加工されてもよい。
【0348】
キャストフィルムプロセスは、単一又は複数の押出機を使用してもよいという点で類似しているが、種々の熱可塑性材料は、計量されてフラットダイに入れられ、チューブではなく単層又は多層シートに押し出される。キャストフィルムプロセスでは、押し出されたシートはチルロール上で固化される。
【0349】
ダブルバブルプロセスでは、第1のインフレーションフィルムの気泡が形成されて冷却され、続いて第1の気泡が加熱されて再度膨張して第2のインフレーションフィルムの気泡を形成し、その後冷却される。本明細書に開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのブレンド)はまた、トリプルバブルインフレーションプロセスにも好適である。開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのブレンド)に好適である、更なるフィルム変換プロセスとしては、例えば、フィルムをインフレーション又はキャストし、フィルムを冷却し、続いてフィルムチューブ又はフィルムシートを任意の引張比で縦方向延伸(MDO)プロセスに供する、MDO工程を含むプロセスが挙げられる。追加的には、本明細書に開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのブレンド)のフィルムは、テンターフレームプロセス及び二軸延伸を導入する他のプロセスでの使用に好適であり得る。
【0350】
最終利用用途に応じて、開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのポリマーブレンド)は、広範な厚さに及ぶフィルムへと転換されてもよい。非限定的な例としては、厚さが0.5ミル(13μm)~4ミル(102μm)の範囲であり得、重包装用途フィルムでは厚さは2ミル(51μm)~10ミル(254μm)の範囲であり得る、食品包装フィルムが挙げられる。
【0351】
単層フィルムにおいては、単層は2つ以上のエチレンコポリマー組成物及び/又は1つ以上の更なるポリマーを含有してもよく、更なるポリマーの非限定的な例としては、エチレンポリマーとプロピレンポリマーが挙げられる。単層フィルムにおけるエチレンコポリマー組成物の重量パーセントの下限は3wt%、他の場合では10wt%、更に他の場合では30wt%であってもよい。単層フィルムにおけるエチレンコポリマー組成物の重量パーセントの上限は100wt%、他の場合では90wt%、更に他の場合では70wt%であってもよい。
【0352】
本明細書に開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのポリマーブレンド)はまた、多層フィルムの1つ以上の層でも使用されてもよく、多層フィルムの非限定的な例としては、3層、5層、7層、9層、11層以上が挙げられる。開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのポリマーブレンド)はまた、マイクロ積層ダイ及び/又はフィードブロックを利用するプロセスでの使用に好適であってもよく、かかるプロセスは、多層を有するフィルムを製造することができ、非限定的な例としては10~10,000層が挙げられる。
【0353】
多層フィルム内の特定の層(エチレンコポリマー組成物又はそのポリマーブレンドを含有する)の厚さは、全多層フィルムの厚さの5%、他の場合では15%、更に他の場合では30%であってもよい。他の実施形態では、多層フィルム内の特定の層(エチレンコポリマー組成物又はそのポリマーブレンドを含有する)の厚さは、全多層フィルムの厚さの95%、他の場合では80%、更に他の場合では65%であってもよい。多層フィルムの個々の各層は、2つ以上のエチレンコポリマー組成物並びに/又は更なる熱可塑性物質及びそのブレンドを含有してもよい。
【0354】
多層フィルム構造体におけるフィルム層は、単層は2つ以上のエチレンコポリマー組成物及び/又は1つ以上の更なるポリマーを含有してもよく、更なるポリマーの非限定的な例としては、エチレンポリマーとプロピレンポリマーが挙げられる。多層フィルム構造体のフィルム層におけるエチレンコポリマー組成物の重量パーセントの下限は3wt%、他の場合では10wt%、更に他の場合では30wt%であってもよい。多層フィルム構造体のフィルム層におけるエチレンコポリマー組成物の重量パーセントの上限は100wt%、他の場合では90wt%、更に他の場合では70wt%であってもよい。
【0355】
更なる実施形態は、積層及びコーティングを含む。開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのポリマーブレンド)を含有する単層又は多層フィルムは、押出積層又は接着積層又は押出コーティングされる。押出積層又は接着積層では、2つ以上の基材は、熱可塑性物質又は接着剤のそれぞれとともに結合される。押出コーティングでは、熱可塑性物質は基材の表面に塗布される。これらのプロセスは、当業者に周知である。しばしば、接着積層又は押出積層は、異なる材料を結合するために使用される。非限定的な例としては、熱可塑性ウェブへの紙ウェブの結合、又は熱可塑性ウェブへのアルミニウム箔含有ウェブの結合、又は化学的に非相溶性である2つの熱可塑性ウェブの結合(例えば、ポリエステル又はポリアミドウェブへのエチレンインターポリマー生成物含有ウェブの結合)が挙げられる。積層前に、開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのポリマーブレンド)を含有するウェブは、単層又は多層であってもよい。積層前に、個々のウェブは結合を改善するために処理された表面であってもよい。非限定的な例の表面処理はコロナ処理である。一次ウェブ又はフィルムは、その上面、その下面又はその上面と下面の両方に、二次ウェブで積層されてもよい。二次ウェブ及び三次ウェブは一次ウェブに積層され得る。二次ウェブ及び三次ウェブは化学組成が異なっている。非限定的な例として、二次ウェブ又は三次ウェブは、ポリアミド、ポリエステル及びポリプロピレン、又はEVOHなどのバリア樹脂層を含有するウェブを含んでもよい。かかるウェブはまた、例えば酸化ケイ素(SiOx)又は酸化アルミニウム(AlOx)薄層など、蒸着バリア層も含有してもよい。多層ウェブ(又はフィルム)は、3層、5層、7層、9層、11層以上を含有してもよい。
【0356】
本明細書に開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのポリマーブレンド)は、1つ以上のフィルム(単層又は多層フィルム構造体)を含む広範な製造物品に使用され得る。かかる製造物品の非限定的な例としては、食品包装フィルム(生鮮食品又は冷凍食品、液体及び顆粒食品)、レトルトパウチ、レトルト包装及びバッグインボックス包装;バリアフィルム(酸素、水分、芳香、油など)及び調整気相包装;軽量及び重量シュリンクフィルム及びラップ、照合シュリンクフィルム、パレットシュリンクフィルム、シュリンクバッグ、シュリンクバンドル及びシュリンクシュラウド;軽量及び重量ストレッチフィルム、手動ストレッチラップ、機械ストレッチラップ及びストレッチフードフィルム:高品質フィルム;重袋;家庭用ラップ、オーバーラップフィルム及びサンドイッチバッグ;産業用及び規格フィルム、ゴミ袋、ゴミ箱用ゴミ袋、雑誌用オーバーラップ、新聞紙用バッグ、郵便物用バッグ、袋及び包装材料、気泡緩衝シート、カーペット用フィルム、家具用バッグ、洋服用カバー、小銭用バッグ、オートパネルフィルム;例えばガウン、ドレープ及び手術着などの医療用途;建築用フィルム及びシート、アスファルトフィルム、断熱バッグ、マスキング用フィルム、造園用フィルム及びバッグ;都市の廃棄物処理及び採鉱用途のためのジオメンブレンライナー;バッチ包含バッグ;農業用フィルム、マルチフィルム及びビニールハウス用フィルム;店内使用包装、エコバッグ、ショップバッグ、食料品用バッグ、運搬用袋及びレジ袋;延伸フィルム、縦方向延伸(MDO)フィルム、二軸延伸フィルム及び延伸ポリプロピレン(oriented polypropylene、OPP)フィルムの機能性フィルム層(例えば、シーラント層及び/又は靱性層)が挙げられる。少なくとも1つのエチレンコポリマー組成物(又はそのポリマーブレンド)を含有する1つ以上のフィルムを含む更なる製造物品としては、積層体及び/又は多層フィルム;多層フィルム及び複合材のシーラント及び結合層;紙を用いた積層体;アルミニウム箔積層体又は蒸着アルミニウムを含有する積層体;ポリアミド積層体;ポリエステル積層体;押出コーティング積層体;並びにホットメルト接着剤配合物が挙げられる。この段落に要約されている製造物品は、開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのポリマーブレンド)の少なくとも一実施形態を含む少なくとも1つのフィルム(単層又は多層)を含有する。代替的には、この段落に要約されている製造物品は、本明細書に開示されたエチレンコポリマー組成物のうちの少なくとも1つと、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含有する。
【0357】
所望のフィルムの物理的特性(単層又は多層)は、典型的には目的とする用途に依存する。望ましいフィルム特性の非限定的な例としては、光学特性(光沢、ヘイズ及び透明度)、ダート衝撃、エルメンドルフ引裂、弾性率(1%及び2%のセカント弾性係数)、引張特性(降伏強度、破断強度、破断時の伸び率、靱性など)、熱溶着特性(熱溶着開始温度(SIT)及びホットタック)が挙げられる。特定のホットタック及び熱溶着特性は、パウチ状包装の内部に市販品(液体、固体、ペースト、部品など)を充填及び封入する高速垂直及び水平フォームフィルシールプロセスで望ましい。
【0358】
所望のフィルム物理的特性に加え、開示されたエチレンコポリマー組成物(又はそのポリマーブレンド)は、フィルムライン上で加工しやすいことが望ましい。当業者はしばしば、加工性に劣るポリマーに対し、加工性が向上したポリマーを識別するために、「加工性」といった用語を使用する。加工性を定量化するために一般的に使用されている尺度は、押出圧力である。より詳細には、加工性が向上したポリマーは、加工性に劣るポリマーに対して(インフレーションフィルム又はキャストフィルムの押出ライン上では)押出圧力が低い。代替的には、本エチレンコポリマー組成物については、これらの結晶化キネティクスは良好であることが望ましい。フォームフィルシール(例えば、VFFS及びHFFS)包装用途用のフィルムでの使用については、関連するVFFS装置での加工速度及び包装速度を向上させるために、フィルムで使用されているエチレンコポリマー組成物が高い結晶化速度を有するかどうかということが特に望ましい。緩慢な結晶化速度によって、包装速度は遅くなることがあり、かつ包装に商品を入れるときにシーラント材料が依然として溶融状態で存在することがあり、同様に包装に入れられる商品の耐力を維持するだけの十分なシール強度を有さないことから、VFFS包装時にシーラント層の破損を引き起こし得る。この問題は、ポリエチレンシーラント層は典型的には非ポリエチレンシーラント層よりも冷却に長い時間を要することから、全てのポリチレンフィルム構造体から作製された包装ではより更に深刻なものであり得る。
【0359】
このセクションに記載の製造物品で使用されるフィルムは、任意には、意図される使用に応じて添加剤及び補助剤を含んでもよい。添加剤及び補助剤の非限定的な例としては、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、スリップ剤、加工助剤、帯電防止剤、着色料、染料、フィラー材料、光安定剤、光吸収剤、滑剤、顔料、可塑剤、造核剤及びそれらの組合せが挙げられる。
【0360】
本開示の一実施形態では、フィルム又はフィルム層は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含む。
【0361】
本開示の一実施形態では、フィルム又はフィルム層は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含む。
【0362】
本開示の一実施形態では、フィルム又はフィルム層は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含む、ポリマーブレンドを含む。
【0363】
本開示の一実施形態では、フィルム又はフィルム層は単層フィルムであり、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含む。
【0364】
本開示の一実施形態では、フィルム又はフィルム層は単層フィルムであり、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含む。
【0365】
本開示の一実施形態では、フィルム又はフィルム層は単層フィルムであり、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含む、ポリマーブレンドを含む。
【0366】
一実施形態では、フィルム又はフィルム層はインフレーションフィルムである。
【0367】
一実施形態では、フィルム又はフィルム層はキャストフィルムである。
【0368】
本開示の実施形態では、フィルム又はフィルム層は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含み、厚さは0.5~10ミルである。
【0369】
本開示の実施形態では、フィルム又はフィルム層は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含み、厚さは0.5~10ミルである。
【0370】
本開示の実施形態では、フィルム又はフィルム層は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含む、ポリマーブレンドを含み、厚さは0.5~10ミルである。
【0371】
本開示の実施形態では、フィルム又はフィルム層の厚さは0.5~10ミルである。
【0372】
本開示の実施形態では、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0373】
本開示の一実施形態では、多層フィルム構造体は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含み、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0374】
本開示の一実施形態では、多層フィルム構造体は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含む少なくとも1つの層を含み、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0375】
本開示の一実施形態では、多層フィルム構造体は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含む、ポリマーブレンドを含む少なくとも1つの層を含み、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0376】
本開示の一実施形態は、多層共押出インフレーションフィルム構造体である。
【0377】
本開示の一実施形態は、0.5~10ミルの厚さを有する多層共押出インフレーションフィルム構造体である。
【0378】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むフィルム層を含む多層共押出インフレーションフィルム構造体である。
【0379】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むフィルム層を含む、多層共押出インフレーションフィルム構造体である。
【0380】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含むフィルム層を含む、多層共押出インフレーションフィルム構造体である。
【0381】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むフィルム層を含む多層共押出インフレーションフィルム構造体であり、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0382】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むフィルム層を含む、多層共押出インフレーションフィルム構造体であり、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0383】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含む、ポリマーブレンドを含むフィルム層を含む、多層共押出インフレーションフィルム構造体であり、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0384】
本開示の一実施形態は、多層共押出キャストフィルム構造体である。
【0385】
本開示の一実施形態は、0.5~10ミルの厚さを有する多層共押出キャストフィルム構造体である。
【0386】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むフィルム層を含む多層共押出キャストフィルム構造体である。
【0387】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むフィルム層を含む、多層共押出キャストフィルム構造体である。
【0388】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含むフィルム層を含む、多層共押出キャストフィルム構造体である。
【0389】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むフィルム層を含む多層共押出キャストフィルム構造体であり、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0390】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むフィルム層を含む、多層共押出キャストフィルム構造体であり、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0391】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含む、ポリマーブレンドを含むフィルム層を含む、多層共押出キャストフィルム構造体であり、多層フィルム構造体の厚さは0.5~10ミルである。
【0392】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含む少なくとも1つのフィルム層を含む、多層フィルム構造体である。
【0393】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含む、少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は、少なくとも3層、又は少なくとも5層、又は少なくとも7層、又は少なくとも9層を有する。
【0394】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含む少なくとも1つのフィルム層を含む、多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は9層を有する。
【0395】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含む少なくとも1つのシーラント層を含む多層フィルム構造体である。
【0396】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むシーラント層を含む多層フィルム構造体である。
【0397】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも3層を有する。
【0398】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも5層を有する。
【0399】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも7層を有する。
【0400】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも9層を有する。
【0401】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物を含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は9層を有する。
【0402】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含む、多層フィルム構造体である。
【0403】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含む、少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は、少なくとも3層、又は少なくとも5層、又は少なくとも7層、又は少なくとも9層を有する。
【0404】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含む、多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は9層を有する。
【0405】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含む少なくとも1つのシーラント層を含む、多層フィルム構造体である。
【0406】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むシーラント層を含む、多層フィルム構造体である。
【0407】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも3層を有する。
【0408】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも5層を有する。
【0409】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも7層を有する。
【0410】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも9層を有する。
【0411】
本開示の一実施形態は、本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、少なくとも1つの他の熱可塑性物質とのブレンドを含むシーラント層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は9層を有する。
【0412】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含む、多層フィルム構造体である。
【0413】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含む、ポリマーブレンドを含む、少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は、少なくとも3層、又は少なくとも5層、又は少なくとも7層、又は少なくとも9層を有する。
【0414】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含む、ポリマーブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は9層を有する。
【0415】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含む少なくとも1つのシーラント層を含む、多層フィルム構造体である。
【0416】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含むシーラント層を含む、多層フィルム構造体である。
【0417】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含むシーラント層を含む、多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも3層を有する。
【0418】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含むシーラント層を含む、多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも5層を有する。
【0419】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含むシーラント層を含む、多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも7層を有する。
【0420】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含むシーラント層を含む、多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は少なくとも9層を有する。
【0421】
本開示の一実施形態は、(a)本明細書に記載のエチレンコポリマー組成物と、(b)線状低密度ポリエチレンと、を含むポリマーブレンドを含むシーラント層を含む、多層フィルム構造体であり、多層フィルム構造体は9層を有する。
【0422】
以下の例は、本開示の選択された実施形態を例示する目的のために提示されており、提示されている例は例示されているクレームを制限するものではないことを理解されたい。
【0423】
例
一般的な試験手順
試験前に、各ポリマー試料を、23±2℃及び50±10%の相対湿度で少なくとも24時間にわたりコンディショニングし、それに続く試験を23±2℃及び50±10%の相対湿度で実施した。本明細書では、「ASTM条件」といった用語は、23±2℃及び50±10%の相対湿度で維持している実験室を指す。試験前に、試験する試料をこの実験室で少なくとも24時間コンディショニングした。ASTMは、米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials)を指す。
【0424】
密度
エチレンコポリマー組成物の密度を、ASTM D792-13(2013年11月1日)を使用して決定した。
【0425】
メルトインデックス
エチレンコポリマー組成物のメルトインデックスを、ASTM D1238(2013年8月1日)を使用して決定した。メルトインデックスI2、I6、I10及びI21を、2.16kg、6.48kg、10kg及び21.6kgの重量をそれぞれ使用し、190℃で測定した。本明細書では、「応力指数」といった用語又はその頭字語である「S.Ex」を、以下の関係:S.Ex=log(I6/I2)/log(6480/2160)であって、式中、I6及びI2は、6.48kg及び2.16kgの負荷をそれぞれ使用し、190℃で測定されたメルトフローレートである、関係で定義する。
【0426】
従来のサイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography、SEC)
エチレンコポリマー組成物のサンプル(ポリマー)溶液(1~3mg/mL)を、1,2,4-トリクロロベンゼン(trichlorobenzene、TCB)中でポリマーを加熱し、150℃のオーブンで4時間、ホイール上で回転させることで調製した。酸化劣化に対してポリマーを安定化させるために、酸化防止剤(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT))を混合物に加えた。BHT濃度は250ppmであった。ポリマー溶液を、濃度検出器として示差屈折率(differential refractive index、DRI)検出器を備えた、TCBを移動相として1.0mL/分の流量で使用する4つのShodexカラム(HT803、HT804、HT805及びHT806)を搭載したPL 220高温クロマトグラフィーユニットにて、140℃でクロマトグラフィーにかけた。酸化劣化からGPCカラムを保護するため、BHTを、250ppmの濃度で移動相に加えた。サンプル注入量は200μLであった。狭い分布のポリスチレン標準でGPCカラムを較正した。ASTM標準試験法D6474-12(2012年12月)に記載されるように、Mark-Houwinkの式を使用し、ポリスチレン分子量をポリエチレン分子量に転換した。CIRRUS GPCソフトウェアを用いてGPC生データを加工し、モル質量平均(Mn、Mw、Mz)及びモル質量分布(例えば、多分散性、Mw/Mn)を得た。ポリエチレン分野では、一般に使用され、SECと同等である用語はGPC、すなわちゲル浸透クロマトグラフィーである。
【0427】
GPC-FTIR
エチレンコポリマー組成物の(ポリマー)溶液(2~4mg/mL)を、1,2,4-トリクロロベンゼン(trichlorobenzene、TCB)中でポリマーを加熱し、150℃のオーブンで4時間、ホイール上で回転させることで調製した。酸化劣化に対してポリマーを安定化させるために、酸化防止剤(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT))を混合物に加えた。BHT濃度は250ppmであった。サンプル溶液を、検出系として、FTIR分光計及び加熱移送ラインを通りクロマトグラフィーユニットと連結された加熱FTIRフロースルーセルを使用し、TCBを移動相として1.0mL/分の流量で使用する4つのShodexカラム(HT803、HT804、HT805及びHT806)を搭載したWaters GPC 150Cクロマトグラフィーユニットにて、140℃でクロマトグラフィーにかけた。酸化劣化からSECカラムを保護するため、BHTを、250ppmの濃度で移動相に加えた。サンプル注入量は300μLであった。OPUS FTIRを使用して生のFTIRスペクトルを加工し、OPUSと関連づけたChemometric Software(PLS technique)を用いてリアルタイムで、ポリマー濃度及びメチル含量を計算した。続いてポリマー濃度及びメチル含量を得て、CIRRUS GPCソフトウェアを用いてベースライン補正した。狭い分布のポリスチレン標準でSECカラムを較正した。ASTM標準試験法D6474に記載されるように、Mark-Houwinkの式を使用し、ポリスチレン分子量をポリエチレン分子量に転換した。参照により本明細書の一部として援用される、Paul J.DesLauriers,Polymer 43,pages 159-170(2002)に記載されるPLS技術により予測されたポリマー濃度及びメチル含量に基づき、コモノマー含量を計算した。
【0428】
GPC-FTIR法は、各高分子鎖の端部に位置するメチル基(すなわち、メチル末端基)を含む、メチルの総含量を測定する。したがって、生GPC-FTIRデータは、メチル末端基による寄与を差し引くことで補正されなければならない。より明確にするため、生GPC-FTIRデータは短鎖分岐(SCB)の量を過大評価する。この過大評価は、分子量(M)が減少するにつれて増加する。本開示では、生GPC-FTIRデータを、2-メチル補正を使用して補正した。所与の分子量(M)では、メチル末端基(NE)の数を、以下の式:NE=28000/Mを使用して計算した。NE(M依存性)を、生GPC-FTIRデータから差し引き、SCB/1000C(2-メチル補正されたもの)GPC-FTIRデータを生成した。
【0429】
CYTSAF/TREF(CTREF)
エチレンコポリマー組成物(及び比較例)の「組成分布幅指数」(以下、CDBI)を、IR検出器を搭載したCRYSTAF/TREF 200+ユニット(以下、CTREF)を使用して測定した。「TREF」といった頭字語は、昇温溶離分別を指す。PolymerChar S.A.(Valencia Technology Park,Gustave Eiffel,8,Paterna,E-46980 Valencia,Spain)により、CTREFを供給した。CTREFをTREFモードで操作し、溶出温度、Co/Ho比(コポリマー/ホモポリマー比)及びCDBI(組成分布幅指数)、すなわちCDBI50及びCDBI25の関数としてポリマーサンプルの化学組成を生成する。ポリマーサンプル(80~100mg)を、CTREFの反応槽容器に入れた。反応槽容器を35mlの1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)で満たし、溶液を2時間にわたり150℃に加熱することでポリマーを溶解させた。続いて溶液のアリコート(1.5mL)を、ステンレス鋼製ビーズを詰めたCTREFカラムに充填した。サンプルを充填したカラムを、110℃で45分間安定化させた。続いて0.09℃/分の冷却速度で30℃に温度を下げることで、カラム内部でポリマーを溶液から結晶化させた。続いてカラムを30℃で30分間平衡化した。続いて、0.25℃/分の加熱速度でカラムを30℃から120℃にゆっくりと加熱しながら、TCBを0.75mL/分でカラムに流しながら結晶化ポリマーをカラムから溶出した。Polymer Charソフトウェア、Excelのスプレッドシート及び社内で開発されたCTREFソフトウェアを使用して生CTREFデータを加工した。CDBI50を、その組成が中央コモノマー組成の50%以内であるポリマーのパーセントとして定義した。米国特許第5,376,439号に記載されるように、CDBI50を、組成分布硬化及び組成分布曲線の正規化累積積分から計算した。当業者は、CTREF溶出温度をコモノマー含量、すなわち、特定の温度で溶出するエチレン/α-オレフィンポリマーの部分中のコモノマーの量に変換するために較正曲線が必要とされることを理解するであろう。かかる較正曲線の生成は、例えば、参照により本明細書の一部としてその全体が援用されるWild,et al.,J.Polym.Sci.,Part B,Polym.Phys.,Vol.20(3),pages 441-455といった先行技術に記載されている。同様の様式で計算されたCDBI25として、CDBI25を、その組成が中央コモノマー組成の25%であるポリマーのパーセントとして定義した。各サンプルの実験の最後に、CTREFカラムを30分間にわたり洗浄した。具体的には、160℃のCTREFカラム温度にて、TCBをカラムに30分間流した(0.5mL/分)。
【0430】
中性子放射化(元素解析)
中性子放射化分析(以下、N.A.A)を使用し、以下のようにエチレンコポリマー組成物中の触媒金属残渣を決定した。放射線バイアル(超高純度ポリエチレンから構成、内容積7mL)をエチレンコポリマー組成物のサンプルで満たし、サンプル重量を記録した。空気圧搬送システムを使用し、サンプルをSLOWPOKE(商標)原子炉(Atomic Energy of Canada Limited,Ottawa,Ontario,Canada)内部に入れ、半減期が短い元素(例えば、Ti、V、Al、Mg及びCl)については30~600秒間、又は半減期が長い元素(例えば、Zr、Hf、Cr、Fe及びNi)については3~5時間照射した。原子炉内の平均熱中性子束は、5×1011/cm2/sであった。照射後、サンプルを原子炉から取り出して熟成させ、放射能を崩壊させた。半減期が短い元素は300秒間熟成させ、又は半減期が長い元素は数日間熟成させた。熟成後、サンプルのガンマ線スペクトルを、ゲルマニウム半導体ガンマ線検出器(Ortec model GEM55185,Advanced Measurement Technology Inc.,Oak Ridge,TN,USA)及びマルチチャンネルアナライザ(Ortec model DSPEC Pro)を使用し、記録した。サンプル中の各元素の量を、ガンマ線スペクトルから計算し、エチレンコポリマー組成物のサンプルの総重量に対し、百万分率で記録した。Specpure標準(所望の元素の1000ppm溶液(純度99%超))を用いて、N.A.Aシステムを較正した。1mLの溶液(目的の元素)を、15mm×800mmの長方形の紙製フィルタ上にピペットで移し、風乾した。続いてろ紙を、1.4mLのポリエチレン放射性バイアルに入れ、N.A.Aシステムで分析した。標準を使用し、N.A.A手順の感度を決定した(カウント/μg)。
【0431】
不飽和
エチレンコポリマー組成物中の不飽和基、すなわち二重結合の量を、ASTM D3124-98(ビニリデン不飽和、2011年3月に公開)及びASTM D6248-98(ビニル及びトランス不飽和、2012年7月に公開)に従って決定した。エチレンコポリマー組成物のサンプルを、a)解析に干渉する可能性がある添加剤を取り除くため、最初に二硫化炭素抽出に供し、b)サンプル(ペレット、フィルム又は顆粒形態)をプレスし、一様な厚さ(0.5mm)のプラークとし、c)プラークをFTIRで解析した。
【0432】
コモノマー含量:フーリエ変換赤外(Fourier Transform Infrared、FTIR)分光分析
エチレンコポリマー組成物のコモノマーの量をFTIRで決定し、CH3#/1000Cの寸法(1000個の炭素原子あたりのメチル分岐の数)を有する短鎖分岐(Short Chain Branching、SCB)含量として報告した。この試験を、圧縮成形ポリマープラーク及びThermo-Nicolet 750 Magna-IR分光光度計を使用し、ASTM D6645-01(2001)に従って完了した。ASTM D4703-16(2016年4月)に従い、圧縮成形装置(Wabash-Genesis Series press)を使用してポリマープラークを調製した。
【0433】
13C 核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)
0.21~0.30gのポリマーサンプルを秤量し、10mmのNMR管に入れた。続いてサンプルを重水素化オルトジクロロベンゼン(deuterated ortho-dichlorobenzene、ODCB-d4)で溶解し、125℃に加熱した。ヒートガンを使用し、混合プロセスを支援した。125℃に維持した10mmのPABBOプローブヘッドを取り付けたBruker AVANCE III HD 400 MHz NMR分光計で、13C NMRスペクトル(スペクトルあたり24000回スキャン)を回収した。化学シフトは、30.0ppmの値を割り当てられたポリマー骨格共鳴を基準とした。13Cスペクトルを、1.0Hzの線幅拡大(line broadening、LB)係数との指数関数的な乗算を使用し、処理した。これらをまた、解像度を上昇させるため、LB=-0.5Hz及びGB=0.2とのガウス乗算を使用し、処理した。
【0434】
示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)
以下のように、示差走査熱量測定(DSC)を使用し、一次融解ピーク(℃)、融解ピーク温度(℃)、融解熱(J/g)及び結晶化度(%)を決定した:インジウムを用いて最初に機器を較正し、較正後、ポリマー試料を0℃で平衡化し、続いて温度を10℃/分の加熱速度で200℃に上昇させた。続いて溶融物を200℃で5分間、等温で維持し、続いて溶融物を10℃/分の冷却速度で0℃に冷却し、0℃で5分間これを維持した。続いて試料を10℃/分の加熱速度で200℃に加熱した。DSCのTm、融解熱及び結晶化度は、2回目の加熱サイクルから報告した。
【0435】
動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis、DMA)
190℃、N2雰囲気下で線形粘弾性関数を得るため、10%の歪み振幅、ディケードあたり5点で0.02~126rad/sの周波数範囲にわたり、小さな歪み振幅下で振動せん断測定を実行した。5°の円錐角、137μmに切断及び25mmの径であるコーンプレート形状を使用した、TA Instruments製のDHR3応力制御レオメータを用いて、周波数掃引実験を実施した。この実験では、歪み正弦波を加え、線形粘弾性関数に関する応力応答を分析した。DMA周波数掃引結果に基づいたゼロせん断速度粘度(η0)を、Ellisモデル(R.B.Bird et al.「Dynamics of Polymer Liquids.Volume 1:Fluid Mechanics」 Wiley-Interscience Publications(1987 p.228)を参照)又はCarreau-Yasudaモデル(K.Yasuda(1979)PhD Thesis,IT Cambridgeを参照)で予測した。本開示では、LCBF(長鎖分岐係数、Long Chain Branching Factor)を、DMAで決定したη0を使用して決定した。
【0436】
溶融強度
溶融強度を、2mm径、L/D比が10:1のフラットダイを備えたRosand RH-7キャピラリレオメータ(バレル径=15mm)で、190℃で測定する。圧力トランデューサ:10,000psi(68.95MPa)。ピストン速度:5.33mm/分、引取角度:52°。引取増分速度:50~80m/分2又は65±15m/分2。一定速度でキャピラリダイを通してポリマー溶融物を押し出し、続いて破断するまでポリマー繊維を増大引取速度で引き出す。力対時間曲線のプラトー領域における力の最大定常値を、ポリマーの溶融強度として定義する。
【0437】
フィルムのダート衝撃
ASTM D1709-09方法A(2009年5月1日)を使用し、フィルムのダート衝撃強度を決定した。本開示では、ダート衝撃試験は、1.5インチ(38mm)径の半球形頭部ダートを使用した。
【0438】
フィルム穿孔
ASTM D5748-95(1995年に最初に採択、2012年に再認可)を使用し、フィルムの「穿孔」、つまりフィルムを破断させるのに必要とされるエネルギー(J/mm)を決定した。
【0439】
フィルムの潤滑穿孔
「潤滑穿孔」試験を以下のように実施した:1分あたり10インチ(25.4cm/分)移動する、のフルオロカーボンでコーティングされた、0.75インチ(1.9cm)径の洋ナシ形状のプローブを使用し、フィルムサンプルを穿孔するためのエネルギー(J/mm)を決定した。ASTM条件を使用した。試料を試験する前に、摩擦を低減するために、Muko潤滑ゼリーを用いてプローブヘッドを手動で潤滑させた。Muko潤滑ゼリーは、Cardinal Health Inc.,1000 Tesma Way,Vaughan,ON L4K 5R8 Canadaから入手可能である水溶性パーソナル潤滑剤である。使用時に、Instron Model 5 SL Universal Testing Machine及び1000Nのロードセルにプローブを取り付けた。フィルムサンプル(厚さ1.0ミル(25μm)、幅5.5インチ(14cm)及び長さ6インチ(15cm))をInstronに取り付け、穿孔した。
【0440】
フィルム引張
ASTM D882-12(2012年8月1日)を使用し、引張破断強度(MPa)、破断時の伸び率(%)、引張降伏強度(MPa)、降伏時の引張伸び率(%)及びフィルム靱性又は破断するための総エネルギー(ft lb/in3)といったフィルム引張特性を決定した。インフレーションフィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)の両方で、引張特性を測定した。
【0441】
フィルムのセカント弾性係数
セカント弾性係数は、フィルム剛性の尺度である。セカント弾性係数は、応力歪み曲線において2点間に引かれた線の傾き(すなわち、セカント線)である。応力歪み曲線における第1の点は原点、すなわち原点に対応する点(ゼロパーセントの歪み及びゼロ応力の点)であり、応力歪み曲線における第2の点は、1%の歪みに対応する点であり、これらの2点を考慮した上で、1%のセカント弾性係数を計算し、単位面積あたりの力(MPa)といった点でこれを表現する。2%のセカント弾性係数を同様に計算する。ポリエチレンの応力歪み関係はフックの法則に準じないため、この方法を使用してフィルム弾性率を計算する。すなわち、ポリエチレンの応力歪み挙動は、その粘弾性性質により非線形である。200lbfロードセルを搭載した従来のInstron引張試験機を使用し、セカント弾性係数を測定した。単層のフィルムサンプルのストリップを、長さ14インチ、幅1インチ及び厚さ1ミルといった寸法に試験のため切断し、サンプルの縁に切り傷や切れ目がないことを確認した。フィルムサンプルを縦方向(MD)及び横方向(TD)の両方に切断し、試験した。ASTM条件を使用し、サンプルをコンディショニングした。各フィルムの厚さを手持ち式のマイクロメータを用いて正確に測定し、サンプル名とともにInstronソフトウェアに入力した。サンプルを10インチのグリップ間隔でInstronに装填し、1インチ/分の速度で引っ張り、歪み-歪み曲線を生成した。Instronソフトウェアを使用し、1%のセカント弾性係数及び2%のセカント弾性係数を計算した。
【0442】
フィルム穿孔-伝播引裂
ASTM D2582-09(2009年5月1日)を使用し、インフレーションフィルムの穿孔-伝播引裂抵抗を決定した。この試験は、縺れ、又はより正確には、引裂をもたらす動的穿孔及びその穿孔の伝播に対するインフレーションフィルム抵抗を測定する。インフレーションフィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)で穿孔伝播引裂抵抗を測定した。
【0443】
フィルムのエルメンドルフ引裂
ASTM D1922-09(2009年5月1日)でフィルム引裂性能を決定した。引裂と同等の用語は、「エルメンドルフ引裂」である。インフレーションフィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)の両方でフィルム引裂を測定した。
【0444】
フィルム光学性
ヘイズ(ASTM D1003-13、2013年11月15日)及び光沢(ASTM D2457-13、2013年4月1日)といったフィルム光学特性を測定した。
【0445】
フィルムDynatup衝撃
Illinois Test Works Inc.,Santa Barbara,CA,USAから購入したDynatup Impact Testerと呼ばれる機械にて計装衝撃試験を実施した。当業者はしばしば、この試験をDynatup衝撃試験と呼ぶ。以下の手順に従って試験を完了した。インフレーションフィルムのロールから幅約5インチ(12.7cm)及び長さ約6インチ(15.2cm)のストリップに切断することで、試験サンプルを調製した。フィルムの厚さは約1ミルであった。試験前に、各サンプルの厚さを手持ち式マイクロメータで正確に測定し、これを記録した。ASTM条件を使用した。空気圧クランプを使用し、試験サンプルを9250 Dynatup衝撃ドロップタワー/試験機に取り付けた。0.5インチ(1.3cm)径のDynatup重り#1を、供給された六角穴付きボルトを使用し、クロスヘッドに取り付けた。試験前に、フィルム衝撃速度が10.9±0.1ft/sとなるような高さにクロスヘッドを上げる。1)クロスヘッドの減速、又は重りの減速は、試験開始からピーク負荷の点まで20%以下であり、2)重りが試料を確実に穿孔するように、クロスヘッドに重量を加えた。重りがフィルムを貫通しない場合には、更なる重量をクロスヘッドに加え、打撃速度を増加させた。各試験中、Dynatupインパルスデータ取得システムソフトウェアは、実験データ(時間に対する負荷(lb))を収集した。少なくとも5つのフィルムサンプルを試験し、ソフトウェアは、衝撃試験中に測定された最大負荷である「Dynatup最大(Max)負荷(lb)」、試験開始から試験終了(サンプルの穿孔)までの負荷曲線下の面積である「Dynatup総エネルギー(ft lb)」、及び試験開始から最大負荷点までの負荷曲線下の面積である、「最大負荷におけるDynatup総エネルギー(ft lb)」といった平均値を報告する。
【0446】
フィルムのヘキサン抽出物
ヘキサン抽出物を、連邦規則集(CFR)第21巻§177.1520 条項(c)3.1及び3.2に従って決定した。フィルム中のヘキサン抽出物の量を重量測定法で決定した。詳細には、3.5ミル(89μm)の単層フィルム2.5グラムをステンレス鋼製のバスケットに入れ、フィルム及びバスケットを秤量(wi)し、バスケット中で、49.5℃で2時間、n-ヘキサンで抽出し、80℃の真空オーブンで2時間乾燥させ、デシケータ中で30分冷却し、秤量した(wf)。重量損失パーセントは、ヘキサン抽出物パーセント(wC6)であり、wC6=100×(wi-wf)/wiである。
【0447】
フィルムのホットタック
本開示では、ASTM条件を使用して「ホットタック試験」を以下のように実施した。Jbi Hot Tack,Geloeslaan 30,B-3630 Maamechelen,Belgiumから市販されているJ&B Hot Tack Testerを使用し、ホットタックデータを生成した。ホットタック試験では、2枚のフィルムサンプル(2.0ミル(51μm)厚さのフィルムの同一ロールから、2枚のフィルムサンプルを切断する)を共に熱溶着した直後、すなわち、フィルムを構成するポリオレフィン高分子が半溶融状態であるときに、ポリオレフィンシールに対するポリオレフィンの強度を測定する。この試験は、高速自動包装機器(例えば、垂直又は水平形態での充填及びシール機器)でのポリエチレンフィルムの熱溶着をシミュレートする。フィルム試料の幅:1インチ(25.4mm);フィルムシール時間:0.5秒;フィルムシール圧力:0.27N/mm2;待ち時間:0.5秒;フィルム剥離速度:7.9インチ/秒(200mm/秒);試験温度範囲:131°F~293°F(55℃~145℃);温度増分:9°F(5℃)といったパラメータをJ&Bホットタック試験で使用した。5枚のフィルムサンプルを各温度増分で試験し、各温度での平均値を計算した。このようにして、シール温度に対する引張力のホットタックプロファイルを生成する。「ホットタック開始温度@1.0N(℃)」又は「HTOT」は、1Nのホットタック力が観察される温度(5枚のフィルムサンプルの平均)であり;「最大ホットタック強度(N)」は、試験温度範囲にわたって観察された最大ホットタック力(5枚のフィルムサンプル)であり;「温度-最大ホットタック(℃)」は、最大ホットタック力が観察された温度である、といったデータをこのホットタックプロファイルから計算することができる。最後に、ホットタック(強度)窓(「ホットタック窓」又は「HTW」)を、所与のシール強度(例えば、5ニュートン)でのホットタック曲線に広がる温度範囲(℃)として定義する。当業者は、ホットタック窓を別に定義されたシール強度について決定することができることを理解するであろう。一般的に言えば、所与のシール強度については、ホットタック窓は大きくなるほど、高いシール力を維持又は達成することができる温度窓が大きくなる。
【0448】
フィルムの熱溶着強度
本開示では、「熱溶着強度試験」(「コールドシール試験」としても知られる)を、以下のように実施した。ASTM条件を使用した。従来のInstron Tensile Testerを使用し、熱溶着データを生成した。この試験では、ある温度範囲にわたり2枚のフィルムサンプルを密封する(2枚のフィルムサンプルを、2.0ミル(51μm)厚さのフィルムの同一ロールから切断した)。熱溶着強度(又はコールドシール強度)試験では、フィルム試料幅:1インチ(25.4mm);フィルムシール時間:0.5秒;フィルムシール圧力:40psi(0.28N/mm2);温度範囲:212°F~302°F(100℃~150℃)及び温度増分:9°F(5℃)のパラメータを使用した。ASTM条件にて少なくとも24時間にわたり熟成した後、引張(クロスヘッド)速度(12インチ/分(2.54cm/分))、引張方向(シールに対して90°)といった引張パラメータを使用してシール強度を決定し、5つのフィルムサンプルをそれぞれの温度増分で試験した。シール開始温度(以下、「SIT」)を、商業的に採算のとれるシールを形成するのに必要とされる温度として定義する。商業的に採算のとれるシールは、シールのインチあたり2.0lbのシール強度(25.4mmのシールあたり8.8N)を有する。
【0449】
エチレンコポリマー組成物
「直列」二重連続撹拌タンク反応槽、つまり「CSTR」反応槽溶液重合プロセスでシングルサイト触媒系を使用し、エチレンコポリマー組成物をそれぞれ作製した。この溶液重合プロセスでは、第1のCSTR反応槽及び第2のCSTR反応槽は互いに直列に構成され、各反応槽は触媒系成分の供給を受ける。ただし、二重CSTR反応槽系はまた下流の管状反応槽に続き、これもまた直列に構成される。これは、第2のCSTR反応槽の出口流を受けるが、追加の触媒系成分は供給されない。結果として、作製されたエチレンコポリマー組成物は、追加の重合モノマーを第3の反応槽に直接加えたかどうかに応じて、それぞれシングルサイト触媒で作製された第1のエチレンコポリマー及び第2のエチレンコポリマー及び任意の第3のエチレンコポリマー(第2の反応槽から第3の反応槽への活性シングルサイト触媒の流れにより、シングルサイト触媒でも作製されたもの)を含んでいた。「直列」、「二重CSTR反応槽」、液相重合プロセスは、米国特許出願公開第2019/0135958号に記載されている。
【0450】
基本的には、第1の重合反応槽(R1)からの「直列」反応槽系の出口流は、第2の重合反応槽(R2)に直接流れる。R1圧力は、約14MPa~約18MPaであるが、一方で、R1からR2への連続流を促進させるために、R2をより低圧で操作した。R1及びR2の両方は連続撹拌反応槽(CSTRのもの)であり、反応槽の内容物を良好に混合させる状態を得るためにかき混ぜた。第3の反応槽は、R3もまた使用した。第3の反応槽であるR3は、第2の反応槽であるR2と直列に構成された管状反応槽であった(すなわち、反応槽2の内容物は反応槽3に流れた)。新しいプロセス溶媒、エチレン、1-オクテン及び水素を少なくとも第1の反応槽及び第2の反応槽に供給し、生成物を取り除きながら連続的に操作した。メチルペンタンをプロセス溶媒(メチルペンタン異性体の市販のブレンド)として使用した。第1のCSTR反応槽(R1)の量は3.2ガロン(12L)であり、第2のCSTR反応槽(R2)の量は5.8ガロン(22L)であった。管状反応槽(R3)の量は0.58ガロン(2.2L)であった。従来の供給調製システム(水、酸素及び極性汚染物質などの不純物を取り除くために様々な吸収媒体との接触)を使用し、反応槽への添加前に、モノマー(エチレン)及びコモノマー(1-オクテン)を精製した。表1に示される比率で、反応槽供給材料を反応槽にポンプで注入した。反応槽の体積で平均流量を割ることにより反応槽の平均滞留時間を計算する。この平均滞留時間は、各反応槽を流れる溶媒の量及び溶液プロセスを流れる溶媒の総量に主に影響を受ける。例えば、平均反応槽滞留時間は、R1では61秒間、R2では73秒間、0.58ガロン(2.2L)のR3体積では7.3秒間であった。
【0451】
以下のシングルサイト触媒(single site catalyst、SSC)成分を使用し、第2のCSTR反応槽(R2)と直列に構成された第1のCSTR反応槽(R1)中で第1のエチレンコポリマー及び第2のエチレンコポリマーを調製した:ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフオレニル(fuorenyl))ハフニウムジメチド[(2,7-tBu2Flu)Ph2C(Cp)HfMe2];メチルアルミンオキサン(MMAO-07);トリチルテトラキス(ペンタフルオロ-フェニル)ボラート(トリチルボラート)及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール(BHEB)。メチルアルミンオキサン(MMAO-07)及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノールをインラインで予め混合し、続いて重合反応槽(例えば、R1及びR2)に入れる直前に、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフオレニル)ハフニウムジメチド及びトリチルテトラキス(ペンタフルオロ-フェニル)ボラートと組み合わせた。R1及びR2に供給される触媒成分のモル比及びR1及びR2触媒成分の入口温度を調節することで、シングルサイト触媒配合物の有効性を最適化した。エチレンを第3の反応槽であるR3に直接供給する場合(すなわち、分割エチレン「ESR3」がR3に対して0ではなかった場合)、活性重合触媒が第2のCSTR反応槽であるR2から第3の管状反応槽であるR3に流れることから、第3のエチレンコポリマーも形成された。代替的には、エチレンが第3の反応槽であるR3に全く直接供給されない場合(すなわち、分割エチレン「ESR3」がR3に対して0である場合)、有意な量の第3のエチレンコポリマーは形成されなかった。
【0452】
溶液重合プロセスに供給されるエチレンの総量は、3つの反応槽であるR1、R2及びR3で分配又は分割され得る。この操作変数は、分割エチレン(ES)と呼ばれる。これはすなわち、「ESR1」、「ESR2」及び「ESR3」は、R1、R2及びR3のそれぞれに注入されたエチレンの重量パーセントを指す。ただし、ESR1+ESR2+ESR3=100%である。同様に、溶液重合プロセスに供給される1-オクテンの総量は、3つの反応槽であるR1、R2及びR3で分配又は分割され得る。この操作変数は、分割オクテン(OS)と呼ばれる。これはすなわち、「OSR1」、「OSR2」及び「OSR3」は、R1、R2及びR3のそれぞれに注入されたエチレンの重量パーセントを指す。ただし、OSR1+OSR2+OSR3=100%である。「QR1」といった用語は、触媒配合物によりエチレンコポリマーに変換される、R1に添加されたエチレンのパーセントを指す。同様に、QR2及びQR3は、それぞれの反応槽でエチレンコポリマーに変換された、R2及びR3に添加されたエチレンのパーセントを表す。「QT」といった用語は、連続溶液重合プラント全体にわたる総エチレン転化率又は全エチレン転化率を表す。すなわち、QT=100×[コポリマー生成物中のエチレンの重量]/([コポリマー生成物中のエチレンの重量]+[未反応エチレンの重量])である。
【0453】
連続溶液重合プロセスの重合は、管状反応槽(R3)を出る第3の出口流に触媒失活剤を加えることで終了させた。使用される触媒失活剤は、P&G Chemicals,Cincinnati,OH,U.S.A.から市販されているオクタン酸(カプリル酸)であった。加えられた脂肪酸のモルが重合プロセスに加えられた触媒金属及びアルミニウムの総モル量の50%であるように、触媒失活剤を加えた。明確にするために、加えられたオクタン酸のモル=0.5×(ハフニウムのモル+アルミニウムのモル)であった。
【0454】
2段階液化プロセスを利用し、プロセス溶媒からエチレンコポリマー組成物を回収した。すなわち、2つの蒸気/液体セパレータを使用し、第2の底流(第2のV/Lセパレータ)をギアポンプ/ペレタイザの組合せに通した。
【0455】
連続溶液プロセスにおいては、Kyowa Chemical Industry Co.LTD(Tokyo,Japan)により供給されたDHT-4V(ハイドロタルサイト)を不動態化剤又は酸捕捉剤として使用してもよい。プロセス溶媒中のDHT-4Vのスラリーを、第1のV/Lセパレータの前に加えてもよい。
【0456】
ペレット化前に、エチレンコポリマー組成物の重量に基づき、500ppmのIRGANOX(登録商標)1076(一次酸化防止剤)及び500ppmのIRGAFOS(登録商標)168を加えることで、エチレンコポリマー組成物を安定化させた。プロセス溶媒に酸化防止剤を溶解させ、第1のV/Lセパレータと第2のV/Lセパレータ間に加えた。
【0457】
表1は、本発明のエチレンコポリマー組成物のそれぞれを作製するために使用される反応槽条件を示す。表1は、反応槽(R1、R2及びR3)間の分割エチレン及び分割1-オクテン、反応槽温度、エチレン転化率、水素の量などのプロセスパラメータを含む。
【0458】
本発明のエチレンコポリマー組成物の特性(本発明例2、3、4、5、9、10及び11)及び比較樹脂の特性(比較例1及び2)を、表2に示す。比較例1は、Borealis AGから販売されているプラストマーエチレン/1-オクテン樹脂であるQueo(登録商標)0201である。Queo 0201の密度は約0.90g/cm3であり、メルトインデックスは約1.2g/10分である。比較例2は、Dow Chemical Companyから販売されているプラストマーエチレン/1-オクテン樹脂であるAFFINITY(登録商標)PL 1880Gである。AFFINITY PL 1880Gの密度は約0.90g/cm3であり、メルトインデックスは約1g/10分である。
【0459】
本発明のエチレンコポリマー組成物成分である第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー及び第3のエチレンコポリマーの詳細を表3に示す。ポリマープロセスモデルの式(以下に更に記載)を使用し、表3に示されているエチレンコポリマー組成物成分を決定した。
【0460】
重合プロセスモデル
多成分(又は二峰性樹脂)ポリエチレンポリマーについては、実際のパイロットスケールでの実行条件に用いられた入力条件を使用する反応槽モデルシミュレーションを使用することで、成分のMw、Mn、Mw/Mn、重量パーセント、分岐頻度(すなわち、BrF=ポリマー骨格中の1000個の炭素あたりのSCB)、密度及びメルトインデックス(I2)を計算した(関連する反応槽モデリング法の参照については、A.Hamielec,J.MacGregor,and A.Penlidis in Comprehensive Polymer Science and Supplements,volume 3,Chapter 2,page 17,Elsevier,1996による「Copolymerization」及びJ.B.P Soares and A.E Hamielec in Polymer Reaction Engineering,4(2&3),p153,1996による「Copolymerization of Olefins in a Series of Continuous Stirred-Tank Slurry-Reactors using Heterogeneous Ziegler-Natta and Metallocene Catalysts.I.General Dynamic Mathematical Model」を参照)。
【0461】
このモデルは、各反応槽に向かういくつかの反応種(例えば、触媒、エチレンなどのモノマー、1-オクテンなどのコモノマー、水素及び溶媒)の流れ、温度(各反応槽における)及びモノマーの転化率(核反応槽における)を入力し、直列に接続された連続撹拌タンク反応槽(CSTR)の末端キネティックモデルを使用し、(各反応槽で作製されたポリマー、すなわち第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー及び第3のエチレンコポリマーの)ポリマー特性を計算する。「末端キネティックモデル」は、活性触媒サイトが配置されているポリマー鎖内部のモノマー単位にキネティックスが依存すると仮定している(A.Hamielec,J.MacGregor,and A.Penlidis in Comprehensive Polymer Science and Supplements,Volume 3,Chapter 2,page 17,Elsevier,1996による「Copolymerization」を参照)。このモデルでは、コポリマー鎖は、活性触媒中心のモノマー/コモノマー単位挿入の統計データが有効であり、生長以外の経路で消費されたモノマー/コモノマーが無視できることを確実なものとするため、適度に大きな分子量のコポリマー鎖であると仮定される。これは、「長鎖」近似値として知られている。
【0462】
重合の末端キネティックモデルは、活性化、開始、生長、連鎖移動及び不活性化経路についての反応速度式を含む。このモデルによって、上で確認された反応種を含む反応性流体についての定常状態の転化式(例えば、総質量バランス及び熱バランス)が説明される。
【0463】
所与の数の入口及び出口を有する一般的なCSTRの総重量バランスは、
(1)
【数1】
で示され、
式中、
【数2】
は、個々の流れの質量流量を表し、添字iは入口流及び出口流を示す。
【0464】
式(1)は、個々の種及び反応を示すように更に拡張され得る
(2)
【数3】
であって、式中、Miは、流体入口又は出口(i)の平均モル重量であり、x
ijは、流れiにおける種jの質量分率であり、ρ
mixは、反応槽混合物のモル密度であり、Vは反応槽の体積であり、R
jは、種jの反応速度であり、これはkmol/m
3sの単位を有する。
【0465】
総熱バランスは、断熱反応槽について解かれ、
(3)
【数4】
で示され、
式中、
【数5】
は、流れi(入口又は出口)の質量流量であり、ΔH
iは、基準状態に対する流れiのエンタルピーの差であり、q
Rxは、反応により放出された熱であり、Vは反応槽の体積であり、
【数6】
は仕事の入力(すなわち、アジテータ)であり、
【数7】
は、熱注入/損失である。
【0466】
各反応槽に入力された触媒濃度は、キネティックモデルの式(例えば、生長速度、熱平衡及び質量平衡)を解くために、実験で決定されたエチレン転化率及び反応槽温度の値と一致するように調節される。
【0467】
各反応槽に入力されたH2濃度は、全ての反応槽で作製されたポリマーの計算された分子量分布(及びしたがって、各反応槽で作製されたポリマーの分子量)は、実験で観察される分子量分布と一致するように、同様に調節されてもよい。
【0468】
各反応槽R1、R2及びR3で作製された材料の重量分率であるwt1、wt2及びwt3は、速度論的反応に基づき計算された各反応槽におけるモノマー及びコモノマーの転化率を知ることとともに、各反応槽へのモノマー及びコモノマーの質量流れを知ることから決定される。
【0469】
重合反応の重合度(dp
n)は、連鎖移動/停止反応に関する鎖生長反応速度の比率によって示され:
(4)
【数8】
であって、式中、k
p12は、モノマー1(エチレン)で終了する成長中のポリマー鎖にモノマー2(1-オクテン)を加えるための生長速度定数であり、[m
1]は、反応槽中のモノマー1のモル濃度であり、[m
2]は、反応槽中のモノマー2のモル濃度であり、k
tm12は、モノマー1で停止する成長中の鎖についてのモノマー2に対する連鎖移動の停止速度定数であり、k
ts1は、モノマー1で停止する鎖の自然発生的な鎖の停止についての速度定数であり、k
tH1は、モノマー1で停止する鎖の水素による鎖停止の速度定数であり、φ
1及びφ
2並びにモノマー1又はモノマー2のそれぞれで停止する鎖で占められている触媒サイトの分率である。
【0470】
ポリマーの数平均分子量(Mn)は、モノマー単位の重合度及び分子量から生じる。所与の反応槽におけるポリマーの数平均分子量及びシングルサイト触媒のFlory-Schulz分布を仮定することから、以下の関係を使用してポリマーについて分子量分布を決定する。
【0471】
(5)w(n)=nτ
2e
-τnであって、
式中、nはポリマー鎖のモノマー単位の数であり、w(n)は、鎖長nを有するポリマー鎖の重量分率であり、τは、以下の式:
【数9】
であって、dp
nは重合度であり、R
pは生長速度であり、R
tは停止速度である、式を使用して計算される。
【0472】
Flory-Schulz分布は
(6)
【数10】
であって、式中、
【数11】
は、鎖長n(n=MW/28であり、式中、28はC
2H
4単位に対応するポリマーセグメントの分子量である)を有するポリマーの示差重量分率であり、dp
nは重合度である、式を適用することで、一般的な対数スケーリングされたゲル浸透クロマトグラフィーであるGPCトレースに変換され得る。
【0473】
Flory-Schultzモデルを仮定することで、分子量分布の異なるモーメントを、以下:
【数12】
を使用して計算することができ、したがって、
μ
0=1、
μ
1=dp
n、かつ
μ
2=2dp
n
2であって
そのため、
【数13】
であり、
式中、Mw
monomerは、モノマーのC
2H
4単位に対応するポリマーセグメントの分子量である。
【0474】
最後に、シングルサイト触媒が長鎖分岐を生成するときには、分子量分布を、以下の関係式を使用してポリマーについて決定する(J.B.P Soares in Macromolecular Materials and Engineering,volume 289,Issue 1,Pages 70-87,Wiley-VCH,2004による「Polyolefins with Long Chain Branches Made with Single-Site Coordination Catalysts:A Review of Mathematical Modeling Techniques for Polymer Microstructure」及びJ.B.P Soares and T.F.L.McKenna Wiley-VCH,2012による「Polyolefin Reaction Engineering」を参照)。
【0475】
【数14】
であって、
式中、nはポリマー鎖のモノマー単位の数であり、w(n)は、鎖長nを有するポリマー鎖の重量分率であり、τ
B及びαは以下の式:
【数15】
であって、式中、
【数16】
は重合度であり、R
pは生長速度であり、R
tは停止速度であり、R
LCBは、以下の式:
R
LCB=k
p13φ
1[m
3]であって、
式中、k
p13は、モノマー1で停止する成長中のポリマー鎖にモノマー3(反応槽で形成されたマクロモノマー)を加えるための生長速度定数であり、[m
3]は、反応槽中のマクロモノマーのモル濃度である、式を使用して計算された長鎖分岐生成速度である、式を使用して計算される。
【0476】
重量分布は
(7)
【数17】
であって、式中、
【数18】
は、鎖長n(n=MW/28であり、式中、28はC
2H
4単位に対応するポリマーセグメントの分子量である)を有するポリマーの示差重量分率である、式を適用することで、一般的な対数スケーリングされたGPCトレースに変換され得る。
【0477】
重量分布から、分子量分布の異なるモーメントを、以下:
【数19】
式中、
【数20】
は重合度であり、αは説明されるように計算される、式を使用して計算することができる。
【0478】
オクテン末端単位で停止する鎖へのモノマー2(1-オクテン)の添加がわずかであると仮定すると、エチレン工程後のオクテンの数は、オクテン工程後のエチレンの数と同等となる。1000個の主鎖炭素原子あたりの得られたポリマーの分岐含量(500個のモノマー単位)であるBrFは、モノマー2(1-オクテン)の添加速度に対するモノマー1(エチレン)の添加速度の比率である。
【0479】
【数21】
であって、
式中、k
p12は、モノマー1(エチレン)で停止する成長中のポリマー鎖にモノマー2(1-オクテン)を加えるための生長速度定数であり、k
p11は、モノマー1で停止する成長中のポリマー鎖にモノマー1(エチレン)を加えるための生長速度定数であり、[m
1]は、反応槽中のモノマー1のモル濃度であり、[m
2]は、反応槽中のモノマー2のモル濃度である。
【0480】
各反応槽で作製されたポリマーの密度を、以下の式:
【数22】
であって、式中、a=1.061、b=-5.434e
-03、c=6.5268e
-01、d=1.246e
-09、e=1.453、f=-7.7458e
-01、g=2.032e
-02、h=8.434e
-01及びk=1.565e
-02である、式を使用して、分岐頻度、数平均分子量、重量平均分子量及び数平均分子量に対する重量平均分子量の比率(上記のように決定される、各反応槽で作製されたポリマーのもの)に基づき計算する。
【0481】
各反応槽で作製されたポリマーのメルトインデックス(I
2、g/10分)を、以下の式:
【数23】
を使用し、数平均分子量及び重量平均分子量(上記のように決定される、各反応槽で作製されたポリマーのもの)に基づき計算する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表2-1】
【表2-2】
【表3-1】
【表3-2】
【0482】
示差走査熱量測定(DSC)
以下のように、示差走査熱量測定(DSC)を使用し、表2に列挙されている一次融解ピーク(℃)、融解ピーク温度(℃)、融解熱(J/g)及び結晶化度(%)を決定した:インジウムを用いて最初に機器を較正し、較正後、ポリマー試料を0℃で平衡化し、続いて温度を10℃/分の加熱速度で200℃に上昇させた。続いて溶融物を200℃で5分間、等温に維持し、続いて溶融物を10℃/分の冷却速度で0℃に冷却し、0℃で5分間これを維持した。続いて試料を10℃/分の加熱速度で200℃に加熱した。DSCの一次融点/ピーク、二次融点/ピーク、融解熱及び結晶化度は、2回目の加熱サイクルから報告した。
【0483】
示差走査熱量測定(DSC)を使用した等温結晶化
本発明の例及び比較例の等温結晶化挙動を、以下のように示差走査熱量測定(DSC)を使用することで試験した。インジウムを用いて最初に機器を較正し、較正後、ポリマー試料を0℃で平衡化し、続いて温度を20℃/分の加熱速度で150℃に上昇させた。続いて溶融物を150℃で10分間、等温に維持し、続いて溶融物を70℃/分の冷却速度で特定の温度に下げ、特定の温度で少なくとも30分間、これを維持した。本発明のサンプル及び比較例のサンプルのそれぞれの等温結晶化を、対応するサンプルの一次融解ピーク近くの、又は一次融解ピーク未満の5つの選択された温度にて試験した。特定の温度で得られた吸熱プロファイルを使用し、以下に更に記載されるNakamuraモデルで記載される結晶化率プロファイルを計算する。
【0484】
Nakamura(the Journal of Applied Polymer Science vol 17,no.4(1973):pages 1031-1041のNakamura,K.,K.Katayama,及びT.Amano.「Some Aspects of Non-isothermal Crystallization of Polymers.II.Consideration of the Isokinetic Condition」を参照);Tanner(the Journal of Non-Newtonian Fluid Mechanics vol 102,no.2(2002):pages,397-408のTanner,Roger I.「A Suspension Model for Low Shear Rate Polymer Solidification」及びthe Journal of Non-Newtonian Fluid Mechanics vol.112,no.2-3(2003):pages 251-268におけるTanner,Roger I.「On the Flow of Crystallizing Polymers:I in Linear Regime」を参照);並びにQi(the Journal of Non-Newtonian Fluid Mechanics vol.127,no.2-3(2005):pages 131-141のTanner,Roger I.,及びFuzhong Qi.「A Comparison of Some Models for Describing Polymer Crystallization at Low Deformation Rates」を参照)により確立された方法を使用し、以下の式:
【数24】
であって、式中、mは等温結晶化実験から決定されるAvrami指数であり、K
Nは、静止結晶化速度に関連した結晶化キネティクスパラメータであり、温度の関数である、式で示されるような静止変数温度条件下での「相対結晶化率」である「α」を計算した。プロセスモデリングについては、Nakamuraの関係式の微分形式が一般に使用される。これは以下:
【数25】
であって、式中、K
N(T)は、温度依存性結晶化速度パラメータであり、
【数26】
は、結晶化速度である、と読み取る。
【0485】
Avramiの式は、二次結晶化プロセスを考慮しておらず、20~80%の相対結晶化度に対応する一次成長領域内でのみ有効である(例えば、Derakhshandeh,Maziar,Golnar Mozaffari,Antonios K.Doufas,and Savvas G.Hatzikiriakos.「Quiescent Crystallization of Polypropylene:Experiments and Modeling」 in the Journal of Polymer Science Part B:Polymer Physics vol.52,no.19(2014):pages 1259-1275を参照)。時間(異なる温度で測定される)による代表的な相対結晶化率及び対応する本発明例2のAvramiプロットを、それぞれ
図1及び
図2に示す。本発明のエチレンコポリマー組成物である本発明例3、4、5、10及び11並びにいくつかの比較例サンプルである比較例1及び2において、同様のAvrami解析を実施した。
図1から分かるように、結晶化ハーフタイム(t
1/2、秒、結晶化速度の尺度である)は、結晶化の半分の成長に要する時間(すなわち、α=50%)である。これは、結晶化温度の有力な関数である。適切な結晶化温度での結晶化ハーフタイム及びAvrami指数(m)を表4に示す。
【表4-1】
【表4-2】
【0486】
Avrami指数は、核形成プロセスの結晶次元及び結晶成長形状を示す。本発明の組成物及び比較例の全てのAvrami指数は、ほぼ2に近似している。これは、結晶成長プロセスが2次元ディスクの形成を経由することを意味している。
【0487】
Hoffman-Lauritzenモデルは、表4に列挙されている等温結晶化データを当てはめるために使用され、対応するモデル定数は、表5に列挙される。Hoffman-Lauritzenモデルの式は:
【数27】
であって、式中、U*はポリマーの部分ジャンプ速度の活性化エネルギー(すなわち、6280J/mol)であり、Rは一般的な気体定数(すなわち、8.314J/mol℃)であり、
【数28】
であり、T
∞=T
g-30℃であり、f(=2T/(T+T
m
0)は、温度が減少するにつれて潜在的な融解熱(ΔH
f)の低下を考慮するための補正係数であり、T
m
0は、本発明者らが106℃の一定値であると見なしたポリマーの平衡融点であり、T
gは、-40℃の一定値であると仮定されたガラス転移温度である、というものである。
【表5】
【0488】
表5のデータに示されるように、本発明のエチレンコポリマー組成物(本発明例2、3、4、5、10及び11)は、密度が類似する比較例の超低密度ポリエチレン(比較例1及び2)と比較して増加した結晶化速度定数を有する。
【0489】
示差走査熱量測定(DSC)を使用した非等温結晶化
本発明の例及び比較例の非等温結晶化挙動を、以下のように示差走査熱量測定(DSC)を使用することで試験した。インジウムを用いて最初に機器を較正し、較正後、ポリマー試料を0℃で平衡化し、続いて温度を1℃/分、又は5℃/分、又は10℃/分、又は20℃/分、又は40℃/分の所望の加熱速度で200℃に上昇させた。続いて溶融物を200℃で5分間、等温に維持し、続いて溶融物を1℃/分、又は5℃/分、又は10℃/分、又は20℃/分、又は40℃/分の所望の冷却速度で0℃に冷却し、0℃で5分間、これを維持した。続いて試料を、1℃/分、又は5℃/分、又は10℃/分、又は20℃/分、又は40℃/分の特定の加熱速度で200℃に加熱した。結晶化の開始温度(Tonset)及びピーク結晶化温度(Tmax)を、対応する冷却速度で実施された冷却サイクルから報告した。Seoの方法(Seo Y;「Non-isothermal Crystallization Kinetics of Polytetrafluoroethylene」in Polym.Eng.&Sci.2000;v.40,pages:1293-7を参照)に従い、非等温結晶化キネティクスを解析した。
【0490】
表6は、本発明例及び比較例について、1℃/分、5℃/分、10℃/分、20℃/分及び40℃/分の冷却速度で決定された、結晶化の開始温度(T
onset)及び最大結晶化温度(T
max)などのパラメータを提供する。
【表6】
【0491】
(
図3とともに)表6で示されるデータは、本発明例と比較例との主な差が、関連するエンタルピーの値に関する結晶化の開始温度(T
onset)及びピーク結晶化温度(T
max)で、並びにピークの広がり効果にて見られることを示す。いずれかの所与の冷却速度における本発明例2、3、4及び5のエチレンコポリマー組成物全ての開始温度は、比較樹脂である比較例1及び2の開始温度よりも高い。このことは、本発明例については、結晶化が生じるために必要とされる過冷却が、類似の密度を有する比較樹脂に必要とされる過冷却よりも少なかったことを示す。同様に、このデータは、本発明例については、類似の密度を有する比較樹脂と比べ、結晶化がより速い速度で生じたことを示す(結晶化の開始が、実験した各冷却速度についてはより高い温度で生じたため)。
【0492】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、これらの差は、本発明のエチレンコポリマー組成物中により高密度の成分が存在することで生じる核形成効果に起因する可能性がある。このより高密度の成分は、本発明例に存在する第2のエチレンコポリマー成分又は場合によっては第3のエチレンコポリマー成分、単一成分で超低密度の樹脂である比較例1及び2に存在しない成分に関連する可能性がある。
【0493】
図3は、それぞれ10℃/分の冷却速度での本発明例2、3及び4の発熱プロファイル並びに比較例1及び2の発熱プロファイルを示す。本発明例のエチレンコポリマー組成物は比較樹脂が結晶化するよりも速い速度にて、10℃/分の所与の冷却速度で結晶化することが、
図3から明らかである(これらの結晶化の開始温度及びピーク結晶化温度は、比較樹脂の結晶化の開始温度及びピーク結晶化温度よりも高いため)。
【0494】
図4は、冷却速度(β)の対数の関数として変化する際の、最大結晶化温度(T
max)の線形変化を示す。全ての場合で予測された挙動を観察したが、これは上記Seoの方法が十分満足できるものであることを示している。
図4は、より高い冷却速度での結晶化に利用可能である時間が少ないため、T
maxは予測したように減少した(すなわち、T
maxは冷却温度(β)が上昇するにつれて減少した)ことを示す。
図4はまた、本開示のエチレンコポリマー組成物(本発明例2、3及び4)のT
max値は、同一の冷却速度にて(本発明例に関連してより速い結晶化速度に起因する)類似の密度を有する比較樹脂(比較例1及び2)のT
max値よりも高いことを示す。
【0495】
非等温結晶化プロセスについては、結晶化の活性化エネルギーは、以下の形態:
【数29】
であって、式中、Rは理想気体定数(8.3145Jmol
-1・K
-1)であり、E
aは活性化エネルギー(結晶化のエンタルピー変化)であり、T
maxは上記のものであり、βは上記冷却速度である、Kissingerの式から導出された(Kissinger,Homer E.「Variation of Peak Temperature with Heating Rate in Differentiated Thermal Analysis」in Journal of Research of the National Bureau of Standards,vol.57(1956),page 217;及びKim,Jihun et.al.「Nonisothermal Crystallization Behaviors of Nanocomposites Prepared by In Situ Polymerization of High-Density Polyethylene on Multiwalled Carbon Nanotubes」in Macromolecules vol.43(2010),page 10545を参照)。非等温結晶化プロセスについては、結晶化の活性化エネルギーは、d(1/T
max)に対して
【数30】
をプロットすることで、かつ線の傾きと理想気体定数とを乗算することで、上記Kissingerの式から導出された。本発明例2の非等温結晶化プロセスを説明する、Kissinger法に基づいた活性化エネルギーを計算するための代表的なプロットを
図5に示す。
【0496】
表7のデータは、本開示の様々なエチレンコポリマー(本発明例2、3及び4)並びに類似の密度を有する比較樹脂(比較例1及び2)についての計算された活性化エネルギー値(E
a)を表す。当業者は、本発明例2、3及び4の活性化エネルギー値が比較例1及び2の活性化エネルギー値よりも低いことを理解するであろう。
【表7】
【0497】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明例で見られる低い活性化エネルギーは、第1のエチレンコポリマー成分、第2のエチレンコポリマー成分及び第3のエチレンコポリマー成分(第2のエチレンコポリマー成分及び第3のエチレンコポリマー成分は、第1のエチレンコポリマー成分に比べて同等又はより高密度の成分を提供する)を含む本開示のエチレンコポリマー組成物が、単一成分の比較樹脂に比べて結晶化速度/キネティクスを大幅に増大させることを示す。増大した結晶化速度は、これらの第2のエチレンコポリマー成分及び/又は第3のエチレンコポリマー成分が、結晶化のための核形成部位として作用し得るという事実に起因し得る。
【0498】
原子間力顕微鏡法(Atomic Force Microscopy、AFM)ホットステージ
代表的な本発明例及び比較例の結晶化キネティクス及び形態を、位相イメージング機能を有し、タッピングモードで操作する原子間力顕微鏡法(AFM)を使用して試験した。温度を設定点の±0.25℃以内に制御する高温ヒータを搭載したBruker Multi-Modeの原子間力顕微鏡を使用し、この技術を実施した。シリコン製プローブを使用し、タッピングモードでAFMを操作した(力定数 21~98N/m)。走査速度は1Hzであり、走査領域は512×512ラインを含有した。各ポリマーサンプルについて、圧縮成形プラークを調製し、一辺が約5mmの寸法を有する小さな正方形を切り出し、続いてこれを、接着剤なしで1cm径のステンレス鋼製のサンプルパック上に直接取り付けた。パックをAFMのステージに取り付けた後(磁気作用によって定位置に保持)、ステージ温度を急速に200℃に上昇させ、熱履歴を消去するために5分間これを維持した。続いて溶融物を105℃に急冷した。25分時点、45分時点及び75分時点で本発明例2並びに比較例1及び2の2D高さ及び3Dトポグラフィー画像を得た。これらの画像(注:AFM手順は、256×256ピクセルの解像度の、いわゆる「ワイヤ高さ」モードで増強される3Dトポグラフィー形式向けのサイズである40μm×40μmの画像を提供する、図示せず)を使用し、以下の表面粗さパラメータ:表面積差(%);平均表面粗さ(Ra);及び二乗平均平方根表面粗さ(Rq)を使用し、表面粗さの定量的評価を示した。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、結晶成長(例えば、表面形態)は、表面積差(%)(すなわち、解析する領域の3次元表面積及びその2次元フットプリント領域との差)、平均表面粗さ(Ra)及び二乗平均平方根表面粗さ(Rq)を含む、上述の表面粗さパラメータで定量化されてもよい。「Nanoscope」ソフトウェアで表面粗さパラメータを解析した。得られたデータを表8に示す。
【表8】
【0499】
表8のデータは、比較例1及び2と比較したときにより高い表面積差(%)、より高い平均表面粗さ(Ra)及びより高い二乗平均平方根表面粗さ(Rq)で示されるように、本発明例2は一般に、より大量の結晶成長を有することを示す。表8で示されるデータはまた、本開示のエチレンコポリマー組成物について、結晶成長速度(結晶化速度の指標)が、類似の密度を有する比較プラストマー樹脂で観察されたものよりも高いことを実証している。
【0500】
インフレーションフィルム(多層)
Brampton Engineering(Brampton ON,Canada)から市販されている9層ラインにて多層インフレーションフィルムを製造した。製造した9層フィルムの構造を表9に示す。シーラント層である層1は、本開示に従って作製した本発明のエチレンコポリマー組成物、本発明のエチレンコポリマー組成物とLLDPE材料とのブレンド、比較プラストマー樹脂又は比較プラストマー樹脂とLLDPE材料とのブレンドのいずれかを含有していた。層1は、一般的に以下の様式で配合された:91.5wt%の試験対象のシーラント樹脂、2.5wt%の粘着防止剤マスターバッチ、3wt%のスリップマスターバッチ及び3wt%の加工助剤マスターバッチであり、シーラント層1は、6250ppmの粘着防止剤(シリカ(珪藻土))、1500ppmのスリップ(エルカ酸アミド(eurcamide))及び1500ppmの加工助剤(フルオロポリマー化合物)を含有していた;添加剤マスターバッチの担体樹脂はLLDPEであり、メルトインデックス(I2)は約2g/10分、密度は約0.918g/cm3であった。前述の詳細については、91.5wt%の層1は、試験対象のシーラント樹脂として以下の樹脂のうちの1つを含有する:
a)100wt%の本発明例2;
b)100wt%の本発明例3;
c)20%:80%のブレンド重量比である、本発明例2とSCLAIR(登録商標)FP120-Cとのブレンド;
d)20%:80%のブレンド重量比である、本発明例3とSCLAIR FP120-Cとのブレンド;
e)本発明例1及び2と類似の密度を有する比較樹脂(比較例1)である、100wt%のQueo 0201;
f)本発明例1及び2と類似の密度を有する比較樹脂(比較例2)である、100wt%のAFFINITY PL 1880;
g)20%:80%のブレンド重量比であるQueo 0201とSCLAIR FP120-Cとのブレンド;
h)20%:80%のブレンド重量比であるAffinity PL 1880とSCLAIR FP120-Cとのブレンド。
【0501】
SCLAIR FP120-Cは、密度が約0.920g/ccであり、メルトインデックス(I2)が約1dg/分である、NOVA Chemicals Corporationから入手可能なエチレン/1-オクテンコポリマー樹脂である。
【0502】
多層フィルムをインフレーションフィルムラインで製造したため、層1は内部層、すなわち気泡の内側であった、9層フィルムの総厚さは、3.5ミルで一定に維持した。層1の厚さは0.385ミル(9.8μm)、すなわち3.5ミルの11%であった(表9を参照)。層2、3及び7は、密度が約0.916g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が約0.65g/10分である、NOVA Chemicals Corporationから入手可能なLLDPE樹脂であるSURPASS(登録商標)FPs016-Cを含有していた。層4、5、8は、80wt%のFPs016-C及び密度が0.912g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が2.7g/10分である、DuPont Packaging&Industrial Polymersから入手可能である無水マレイン酸グラフト化LLDPEである、20wt%のBYNEL(登録商標)41E710を含有する結合樹脂を含有していた。層5及び9は、メルトインデックス(I2)が1.1g/10分であるBASF Corporationから入手可能である、ナイロン樹脂であるULTRAMID(登録商標)C40L(ポリアミド6/66)を含有していた。
【0503】
注:目的の重量パーセンテージの各成分をバッチ混合機に入れ、少なくとも15分間にわたって回転混合することで、樹脂ブレンドを調製した。例えば、No.1(シーラント層)形成のため、フィルム層形成用の乾燥ブレンドとして最終ブレンドを押出機ホッパーに直接供給した。
【0504】
多層ダイ技術は、パンケーキダイ、プレートの両側上に流路が機械加工されているFLEX-STACK共押出ダイ(SCD)からなり、ダイ金型の直径は6.3インチであった。本開示では、85ミルのダイギャップを一貫して使用し、2.5の膨脹比(Blow-Up-Ratio、BUR)でフィルムを製造し、ラインの出力速度を250lb/時間で一定に保持した。9台の押出機の仕様は、スクリュー径:1.5、直径に対する長さの比率:30/1、単独フライトを備えた7-ポリエチレンスクリュー及び2-ナイロンスクリューを備えたMaddockミキサ、であった。全ての押出機を空冷し、20-H.Pモータを搭載させた。全ての押出機に重量式混合機を搭載した。ニップ及び圧潰フレームは、Decatex水平型線形引取及びニップの真下にPearl冷却スラットを含んでいた。ラインには、タレットワインダ及び振動スリッタナイフが搭載されていた。表10には、使用した設定温度をまとめている。全てのダイ温度を一定の480°Fに維持した。すなわち、層部分、マンドレル底部、マンドレル、内部リップ及び外側リップも一定の480°Fに維持した。
【0505】
上記のように作製された9層インフレーションフィルム(3.5ミルの厚さを有する)のシール特性を、表11A及び11Bに示す。9層インフレーションフィルムのホットタック試験及びコールドタック試験(ホットトラック及びコールドシールプロファイル)を
図6及び
図7に示す。
【表9】
【表10】
【表11-A】
【0506】
上の表11A並びに
図6及び
図7にて提供されたデータは、多層フィルム構造体のシーラント層に使用される場合、本発明例2及び3が類似の密度及びメルトインデックス(I
2)を有する樹脂である比較例1及び2と比べ、これに匹敵するシール特性(例えば、シール開始温度、コールドシール強度、ホットタック窓及び最大ホットタック強度)を有することを示すために機能する。この傾向は、シーラントがブレンドされていない超低密度材料又はLLDPEとブレンドされた超低密度材料のいずれかからなる場合には、多層フィルム構造体に該当する。
【0507】
垂直型充填及びシール(Vertical Form Fill and Seal)試験
本手順は、ROVEMA垂直型充填及びシール(VFFS)機器で作製されたバッグの開始シール温度を決定する方法を記載する。この試験は、シーラント樹脂を評価するための比較ツールとして機能する。9層ラインで製造された多層インフレーションフィルム(上記及び表8)を使用し、本評価に必要とされるバッグを作製した。低シール時間及び低圧;低シール時間及び高圧;高シール時間及び低圧;並びに高シール時間及び高圧といった4つの一般的条件を使用し、寸法が200mm×150mmであり、Haug真空圧力試験用のヘッドスペースを作る上で十分な水(約100ミル)を充填したバッグを、固定のシールバー温度で製造した(以下の表11Bを参照)。Haug真空漏れ試験のために、特定の温度にて4つの条件それぞれにて、合計で20個のバッグを製造した。各条件で製造されたバッグを、15mmHgの圧力で30秒間、漏れについて試験した(水浴中で気泡が発生したかどうかを試験することによる)。本試験の手順で成功と見なされるためには、特定のシールバー温度にて4つの条件全てについて、試験された20個のバッグのうち最低で18個のバッグがHaug漏れ試験(すなわち、観察できる漏れが見られない)に合格しなければならない。このようにして、Haug試験は、VFFS機器におけるいわゆるシール温度の開始(表11AにおけるVFFS開始温度)を決定する。この手順では、初期目標シール温度(100℃)を使用し、4つの条件のそれぞれにおける成功/失敗を評価する。続いてシール温度を5℃ずつ上昇させ、試験を再び実施して、4つの条件のそれぞれにおけるバッグの成功/失敗を評価する。試験された20個のバッグのうちの18個が4つの条件下全てでシールを維持した、調査された最低シール温度は、表11Aに報告されたVFFS開始温度である。
【表11-B】
【0508】
インフレーションフィルム(単層)
本開示の選択された本発明のエチレンコポリマー組成物である本発明例4及び5、並びに比較樹脂である比較例1を、バリアスクリュー、35ミル(0.089cm)のダイギャップを備えた低圧の4インチ(10.16cm)径のダイ、及びWestern Polymer製の空気リングを搭載し、バレル径が2.5インチ(6.45cm)、24/1L/D(バレル長/バレル径)を有する単一スクリュー押出機を備えたGloucesterインフレーションフィルムラインを使用し、吹き込み、単層フィルムを作製した。異なる量のLLDPE材料(SCLAIR FP120-C)とのブレンド中に本発明例3又は比較例1のいずれかを使用して作製されたブレンドから同様に吹き込み、フィルムを作製した。目的の重量パーセンテージの各成分をバッチ混合機に入れ、少なくとも15分間にわたって回転混合することで、樹脂ブレンドを調製した。最終ブレンドを、乾燥ブレンドとして押出機ホッパーに直接供給した。メルトフラクチャーを防止するため、高濃度のポリマー加工助剤(PPA)マスターバッチをラインに加えることにより、PPAでダイをコーティングした。押出機に、以下のスクリーンパック:20メッシュ/40メッシュ/60メッシュ/80メッシュ/20メッシュを搭載した。2.5:1の膨脹比(BUR)で、厚さ約1.0ミル(25.4μm)及び厚さ2.0ミル(50.8μm)のインフレーションフィルムを、押出機のスクリュー速度を調節することで、一定の出力速度(100lb/時間、45.4kg/時間)で製造した。冷却空気を調節することで、フロストラインの高さを16~18インチ(40.64~45.72cm)に維持した。フィルムの物理的特性を得るため、膨脹比(BUR)2.5で製造した1ミルの単層フィルムを使用した。コールドシール及びホットタックプロファイルを得るため、2ミルの単層フィルム(BUR=2.5)を使用した。上記の通り作製した単層インフレーションフィルムのシール特性を表12に提供する。上記の通り作製した単層インフレーションフィルムの物理的特性を表13A及び表13Bに提供する。
【表12】
【0509】
上の表12にて提供されたデータは、単層フィルムに使用される場合、本発明例4及び5が類似の密度及びメルトインデックス(I
2)を有する樹脂である比較例2と比べ、これに匹敵するシール特性(例えば、シール開始温度、コールドシール強度、ホットタック窓及び最大ホットタック強度)を有することを示すために機能する。上の表12にて提供されたデータはまた、(LLDPE材料とともに)単層フィルムのブレンド成分に使用される場合、本発明例3が類似の密度及びメルトインデックス(I
2)を有する樹脂である比較例2と比べ、これに匹敵するシール特性(例えば、シール開始温度、コールドシール強度、ホットタック窓及び最大ホットタック強度)を有することを示すために機能する。
【表13-A】
【表13-B】
【0510】
表13A及び表13Bにて提供されたデータは、
図8及び
図9とともに、本開示の代表的なエチレンコポリマー組成物である本発明例3、4及び5が、LLDPE樹脂とブレンドしたときであっても、剛性(例えば、MDにおける1%のセカント弾性係数)及び靱性(例えば、ダート衝撃)特性の卓越したバランスを提供することを実証している。
【0511】
ともに考慮すると、上記データの全ては、本開示のエチレンコポリマー組成物が、急速結晶化速度及び剛性特性と靱性特性の卓越したバランスもまた提供しながらも、市販の超低密度ポリエチレン(VLDPE)に匹敵するシール特性を有することを実証している。
【0512】
本開示の非限定的な実施形態としては、以下が挙げられる:
実施形態A.エチレンコポリマー組成物であって、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
エチレンコポリマー組成物は、密度が0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、エチレンコポリマー組成物。
【0513】
実施形態B.第1のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB1)の数及び第2のエチレンコポリマーにおける1000個の炭素原子あたりの短鎖分岐(SCB2)の数は、以下の条件:SCB1/SCB2>0.8を満たす、実施形態Aに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0514】
実施形態C.第2のエチレンコポリマーの密度は、第1のエチレンコポリマーの密度以上である、実施形態A又はBに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0515】
実施形態D.第3のエチレンコポリマーの密度は、第2のエチレンコポリマーの密度以上である、実施形態A、B又はCに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0516】
実施形態E.0.910g/cm3未満の密度を有する、実施形態A、B、C又はDに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0517】
実施形態F.第3のエチレンコポリマーの10~40重量パーセントを含む、実施形態A、B、C、D又はEに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0518】
実施形態G.第3のエチレンコポリマーの15~40重量パーセントを含む、実施形態A、B、C、D又はEに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0519】
実施形態H.第1のエチレンコポリマー及び第2のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)はそれぞれ、2.3以下である、実施形態A、B、C、D、E、F又はGに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0520】
実施形態I.第3のエチレンコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、2.3超である、実施形態A、B、C、D、E、F、G又はHに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0521】
実施形態J.第1のエチレンコポリマー及び第2のエチレンコポリマーは、式(I):
【化7】
であって、式中、Gは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ又は鉛から選択された第14族元素であり、R
1は水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルであり、R
2及びR
3は、水素原子、C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、R
4及びR
5は、水素原子、非置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、置換C
1-20ヒドロカルビルラジカル、C
1-20アルコキシラジカル又はC
6-10アリールオキシドラジカルから独立して選択され、Qは、独立して、活性化可能な脱離基配位子である、式(I)を有するメタロセン触媒を含むシングルサイト触媒系を用いてそれぞれ作製される、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H又はIに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0522】
実施形態K.第1のエチレンコポリマー及び第2のエチレンコポリマーの組成分布幅指数(CDBI50)はそれぞれ、少なくとも75重量パーセントである、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H、I又はJに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0523】
実施形態L.第3のエチレンコポリマーの組成分布幅指数(CDBI50)は、75重量パーセント未満である、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H、I、J又はKに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0524】
実施形態M.1つ以上のアルファ-オレフィンの少なくとも3モルパーセントを有する、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K又はLに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0525】
実施形態N.1つ以上のアルファ-オレフィンの3~12モルパーセントを有する、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K又はLに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0526】
実施形態O.1-オクテンの3~12モルパーセントを有する、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K又はLに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0527】
実施形態P.ハフニウムのppmは0.050~3.5である、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N又はOに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0528】
実施形態Q.分子量分布Mw/Mnは2.0~4.0である、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O又はPに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0529】
実施形態R.結晶化速度定数1/t1/2,0は、5・s-1超である、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P又はQに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0530】
実施形態S.第1のエチレンコポリマーの密度d1と、第2のエチレンコポリマーの密度d2との差は、0.030g/cm3未満である、実施形態A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q又はRに記載のエチレンコポリマー組成物。
【0531】
実施形態T.エチレンコポリマー組成物を含むフィルム又はフィルム層であって、エチレンコポリエチレンコポリマー組成物は、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
エチレンコポリマー組成物の密度は0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、エチレンコポリマー組成物を含むフィルム又はフィルム層。
【0532】
実施形態U.エチレンコポリマー組成物を含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であって、エチレンコポリマー組成物は、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
エチレンコポリマー組成物の密度は0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、エチレンコポリマー組成物を含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体。
【0533】
実施形態V.ポリマーブレンドを含むフィルム又はフィルム層であって、ポリマーブレンドは、
(a)5~50重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、
(b)95~50重量パーセントの線状低密度ポリエチレンと、を含み、
エチレンコポリマー組成物は、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
エチレンコポリマー組成物の密度は0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、ポリマーブレンドを含むフィルム又はフィルム層。
【0534】
実施形態W.ポリマーブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体であって、ポリマーブレンドは、
(a)5~50重量パーセントのエチレンコポリマー組成物と、
(b)95~50重量パーセントの線状低密度ポリエチレンと、を含み、
エチレンコポリマー組成物は、
(i)密度が0.855~0.913g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、15~75重量パーセントの第1のエチレンコポリマーと、
(ii)密度が0.865~0.930g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~2.7であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分である、80~20重量パーセントの第2のエチレンコポリマーと、
(iii)密度が0.855~0.936g/cm3であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.7~6.0であり、かつメルトインデックス(I2)が0.1~100g/10分である、5~40重量パーセントの第3のエチレンコポリマーと、を含み、
エチレンコポリマー組成物の密度は0.860~0.910g/cm3であり、メルトインデックス(I2)が0.5~10g/10分であり、ハフニウムの百万分率(ppm)が少なくとも0.0015であり、
第1のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn1)は、第2のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn2)と第3のエチレンコポリマーの数平均分子量(Mn3)の両方よりも大きく、
第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量パーセントは、(i)第1のエチレンコポリマー、(ii)第2のエチレンコポリマー及び(iii)第3のエチレンコポリマーの合計の重量で第1のエチレンコポリマー、第2のエチレンコポリマー又は第3のエチレンコポリマーの重量を割り、100%を掛けたものとして定義されている、ポリマーブレンドを含む少なくとも1つのフィルム層を含む多層フィルム構造体。
【産業上の利用可能性】
【0535】
密度が0.860~0.910g/cm3であり、第1のエチレンコポリマーと、第2のエチレンコポリマーと、第3のエチレンコポリマーを含む、エチレンコポリマー組成物を提供する。エチレンコポリマー組成物は、結晶化速度が高く、密封性が良好で、かつ靱性と剛性の均衡がとれているインフレーションフィルムへと転換され得る。
【国際調査報告】