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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】新規法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/20 20060101AFI20240220BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240220BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240220BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240220BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
A61K38/20
C12N15/09 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/26
A61P11/00
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K35/76
A61K48/00
A61K31/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554822
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 GB2022050626
(87)【国際公開番号】W WO2022189797
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2103327.9
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507404514
【氏名又は名称】バブラハム・インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】BABRAHAM INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン リストン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ドゥーリー
(72)【発明者】
【氏名】オリバー バートン
(72)【発明者】
【氏名】ルブナ コウセル
(72)【発明者】
【氏名】ヌトムビゾドワ マクヤナ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー リエナルト
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA14
4C084MA02
4C084MA59
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA591
4C084ZB111
4C084ZC751
4C086AA01
4C086DA29
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA59
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZA59
4C087ZB11
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、対象の組織又は器官における調節性T細胞の集団を増殖させる方法であって、IL-2及び前記組織又は器官に特異的なターゲティング部分の投与を含み、前記組織又は器官が肺である前記方法に関する。本発明はさらに、本方法に従って生成される調節性T細胞の集団及び生体内での前記集団の生成に関する。また、IL-2及び本明細書で定義されるターゲティング部分を含む医薬組成物、並びに炎症によって媒介される疾患もしくは障害を治療する方法、又は本明細書で定義される方法もしくは本明細書で定義される医薬組成物の投与を含む炎症の軽減のための方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象の組織又は器官における調節性T細胞の集団を増殖させる方法であって、IL-2及び前記組織又は器官に特異的なターゲティング部分の投与を含み、該組織又は器官が肺である前記方法。
【請求項2】
IL-2の投与が、前記対象の前記組織又は器官におけるIL-2の組織又は器官特異的発現を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
IL-2の組織又は器官特異的発現が肺内である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
IL-2の組織又は器官特異的発現が組織又は器官特異的プロモーターによって促進される、請求項2又は請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記組織又は器官特異的プロモーターが、界面活性剤タンパク質B(SFTPB)のプロモーター又はクラブ細胞特異的タンパク質(CC10)のプロモーターなどの肺特異的プロモーターである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
IL-2の組織又は器官特異的発現が、外因性化合物の存在下でIL-2の発現を促進又は誘導する誘導性エレメントを含む、請求項2~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記誘導性エレメントが、テトラサイクリン依存性又はテトラサイクリン誘導性エレメント、例えば、テトラサイクリン応答エレメント(TRE)である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
IL-2の組織又は器官特異的発現が、テトラサイクリン又はテトラサイクリンの誘導体/類似体、例えば、ドキシサイクリンの投与を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記肺におけるIL-2の投与又はIL-2の組織もしくは器官特異的発現が外因性IL-2コード配列を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記外因性IL-2コード配列が、逆テトラサイクリン制御トランスアクチベーター(rtTA)をコードする配列をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記肺に特異的な前記ターゲティング部分がウイルスベクターを含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記ウイルスベクターが、AAV6及びその変異体及び誘導体、特にAAV6.2及びAAV6.2FFから選択されるアデノ随伴ウイルスである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ウイルスベクターが、AAV6.2又はAAV6.2FFである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
IL-2及び対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分を含む医薬組成物であって、前記ターゲティング部分が前記肺に特異的である、前記医薬組成物。
【請求項15】
前記肺に特異的な前記ターゲティング部分がウイルスベクターを含む、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ウイルスベクターが、AAV6及びその変異体及び誘導体、特にAAV6.2及びAAV6.2FFから選択されるアデノ随伴ウイルスである、請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
炎症によって媒介される疾患もしくは障害の治療で、及び/又は炎症の軽減に使用するための、請求項14~16のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項18】
炎症によって媒介される疾患もしくは障害の治療方法及び/又は炎症の軽減のための方法であって、いずれかが請求項1~13のいずれか一項記載の方法又は請求項14~16のいずれか一項記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
前記炎症が肺の炎症である、請求項17記載の使用のための医薬組成物又は請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記疾患又は障害が呼吸器疾患又は障害である、請求項17記載の使用のための医薬組成物又は請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記炎症又は呼吸器の疾患もしくは障害が1型炎症を含む、請求項19又は請求項20記載の使用のための医薬組成物又は方法。
【請求項22】
前記炎症が呼吸器感染によって引き起こされるか、又は前記呼吸器疾患もしくは障害が、インフルエンザ、コロナウイルス感染又は新興ウイルスなどの呼吸器感染症である、請求項19~21のいずれか一項記載の使用のための医薬組成物又は方法。
【請求項23】
前記炎症が非感染性疾患もしくは障害によって引き起こされるか、又は前記呼吸器疾患もしくは障害が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの非感染性である、請求項19~21のいずれか一項記載の使用のための医薬組成物又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、対象の組織又は器官における調節性T細胞の集団を増殖させる方法であって、IL-2及び前記組織又は器官に特異的なターゲティング部分の投与を含み、前記組織又は器官が肺である前記方法に関する。本発明はさらに、本方法に従って生成される調節性T細胞の集団及び生体内での前記集団の生成に関する。また、IL-2及び本明細書で定義されるターゲティング部分を含む医薬組成物、並びに炎症によって媒介される疾患もしくは障害を治療する方法、又は本明細書で定義される方法もしくは本明細書で定義される医薬組成物の投与を含む炎症の軽減のための方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、多様な感染刺激によって誘発され得る。要因となり得るものは多数あるにもかかわらず、それぞれの場合において、病態の過程は、不適切な炎症へとつながるいくつかの保存された炎症経路に収束する。例えば、肺における重度の1型炎症は、肺機能の喪失を引き起こす可能性があり、潜在的に致死的である。1型炎症は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの複数の非感染性の様相を伴う。しかし、重度の呼吸器感染症は、1型炎症によって促進される免疫病態でもある。そのような感染症には、季節性インフルエンザ、H5N1(トリインフルエンザ)、H1N1(豚インフルエンザ)、SARS(重症急性呼吸器症候群) MERS(中東呼吸器症候群)及びCOVID-19が含まれる。新規呼吸器ウイルスが関与するパンデミックへの対応には、典型的には、感染を予防するための新たなワクチンの開発、又は患者における免疫病態を予防するための免疫抑制の使用が含まれる。ワクチンは、非常に効果的かつ特異的であるが、その開発時間により、かなりの遅れを伴う。対照的に、免疫抑制療法は、ジェネリック/既知の治療薬、例えば、デキサメタゾンを使用するため、早く使用できるようになるが、汎用性のレベルが高いことにより、全身性免疫抑制が感染ウイルスに対する健康な免疫応答の発達を阻止するため、最適な治療を達成することが困難である。
【0003】
したがって、依然として抗体の生成を可能にしながら、迅速な展開を可能にし、病態を防ぐウイルスアグノスティックな手法を提供する治療法が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
(発明の概要)
本発明の第1の態様によれば、それを必要とする対象の組織又は器官における調節性T細胞の集団を増殖させる方法であって、IL-2及び前記組織又は器官に特異的なターゲティング部分の投与を含み、前記組織又は器官が肺である前記方法が提供される。
【0005】
本発明のさらなる態様によれば、IL-2及び対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分を含む医薬組成物であって、前記ターゲティング部分が肺に特異的である前記医薬組成物が提供される。
【0006】
本発明のさらなる態様によれば、炎症によって媒介される疾患又は障害を治療する方法及び/又は炎症の軽減のための方法であって、いずれかが本明細書で定義される方法又は本明細書で定義される医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む前記方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
(図面の簡単な説明)
図1図1: 肺の調節性T細胞動態の並体結合分析。A) 並体結合手術をFoxp3Thy1.1CD45.1及びFoxp3Thy1.1CD45.2マウスにおいて行い、1、2、4、8及び12週(n=12、12、18、16、14)の時点で脳及び血液のCD4 T細胞を分析した。B)CD69-集団及びCD69+集団を示す肺Tregのベストフィット曲線。
図2図2: IL-2の局所発現は調節性T細胞の肺特異的増殖を促進する。A)野生型同腹子及びScgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスを、-14日にタモキシフェンで処置し、細気管支の非線毛クラブ細胞によるIL-2生成を誘導した。フローサイトメトリーを用いて、血液、肺、脾臓、リンパ節及び肺流入領域縦隔リンパ節におけるCD4 T細胞内のFoxp3+細胞の頻度を評価した。n=5匹のマウス/グループ。B)19~21週齢の雄のScgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスに、強制経口投与により0.2mg/グラムのタモキシフェンを3回投与した。0日目及び12日目以降に、フロー解析のために器官を摘出した。Tregのパーセンテージの定量的データを、FlowJoでゲーティングし、GraphPad prismを用いてプロットした。全てのデータを、二元配置Anovaを用いて分析した。P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001を有意と考えた。n=5匹の動物/グループ。C)19~21週齢の雄のScgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスに、強制経口投与により0.2mg/グラムのタモキシフェンを3回投与した。0、1、4、7、15、21、29及び35日目以降に、IL-2のqPCR Taqman分析のために肺を処理した。最初に、Thermofisher ProQuantumソフトウェアを用いて標準曲線を作成することによって値を推定し、GraphPad prismを用いてプロットした。全てのデータを、7日目に二元配置Anova及びT検定を用いて分析した。P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001を有意と考えた。n=5匹の動物/グループ。D)Cの動物からのリンパ節も、IL-2のqPCR Taqman分析のために処理した。全てのデータを、二元配置Anovaを用いて分析した。P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001を有意と考えた。n=5匹の動物/グループ。E)19~21週齢の雄のScgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスに、強制経口投与により0.2mg/グラムのタモキシフェンを3回投与した。0、1、4、7、15、21、29及び35日目以降に、フローサイトメトリー解析のために肺を処理した。FlowJo用いてデータを解析し、Foxp3+、CD4+、CD3+細胞についてゲーティングした後にパーセンテージの値を得て、GraphPad prismを用いてプロットした。全てのデータを、二元配置Anovaを用いて分析した。P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001を有意と考えた。n=5匹の動物/グループ。F)Eの動物からのリンパ節もフローサイトメトリー解析のために処理して、同様に解析した。
図3図3: IL-2の局所発現はインフルエンザ誘発性好中球浸潤を防ぐ。野生型同腹子及びScgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスを、-14日にタモキシフェンで処置し、細気管支の非線毛クラブ細胞によるIL-2生成を誘導した。次いで、マウスにマウスインフルエンザを鼻腔内感染させ、感染後0、12及び21日目にコホートを解剖した。フローサイトメトリーを用いて、感染マウスの肺内の好中球の頻度を評価した。n=5~6匹のマウス/グループ。
図4図4: AAV6.2-mCC10-IL2の鼻腔内投与により、肺内で調節性T細胞(Treg)が局所的に増殖する。12週齢の雄マウスに1011 (vg/ml)のAAV6.2-mCC10-IL2又はPBSを投与し、14日目に、フローサイトメトリー解析のために器官を摘出した。FlowJoを用いてデータを解析し、パーセンテージの値を得て、GraphPad prismを用いてプロットした。全てのデータをグループ間で二元配置Anovaを用いて解析した。P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001を有意と考えた。n=5匹の動物/グループ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明の第1の態様によれば、それを必要とする対象の組織又は器官における調節性T細胞の集団を増殖させる方法であって、IL-2及び前記組織又は器官に特異的なターゲティング部分の投与を含み、前記組織又は器官が肺である前記方法が提供される。
【0009】
一実施態様では、本明細書で定義される方法は、調節性T細胞の集団などの細胞の集団を増殖させることを含む。さらなる実施態様では、調節性T細胞の集団などの細胞の集団の前記増殖は、目的の特定の組織又は器官などのそれを必要とする対象の組織又は器官内である。
【0010】
本明細書において用語「増殖すること」、「増殖」及び「増殖した」又は語句「調節性T細胞集団の増殖」及び「調節性T細胞の増殖した集団」への言及は、非増殖集団よりも大きいか、又は非増殖集団よりも多くの細胞を含む細胞の集団への言及を含む。そのため、本明細書で定義される方法に従って生成されるそのような「増殖した」集団は、IL-2に供されていない集団よりも多くの細胞を含むことが理解されるであろう。そのため、ある実施態様では、調節性T細胞の増殖集団などの、本明細書で定義される方法に従って生成される細胞の増殖集団は、細胞の参照集団と比較してより多くの細胞を含む。一実施態様では、細胞の参照集団は、IL-2に供されないか、又はIL-2を投与されない細胞の集団であり得る。一実施態様では、該細胞の増殖集団は、IL-2の投与前の集団よりも多くの細胞を含む。さらなる実施態様では、細胞の参照集団は、本明細書で定義される方法に従って生成される細胞の増殖集団とは異なる組織又は器官に位置し得る。さらなる実施態様では、該細胞の増殖集団は、対象の組織又は器官内の増殖集団であり、目的の前記組織又は器官に位置しない細胞の集団と比較してより多くの細胞を含む。例えば、該細胞の増殖集団、特に調節性T細胞の増殖集団は、血液、脾臓、肝臓及び/又はリンパ節における細胞、特に調節性T細胞の集団に対して、肺内で増殖する。
【0011】
一実施態様では、調節性T細胞の増殖集団などの、本明細書で定義される方法に従って生成される細胞の増殖集団は、IL-2に供されていないか、又はIL-2を投与されていない細胞の集団よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍又はそれより多い集団を含む。さらなる実施態様では、該細胞の増殖集団は、目的の組織又は器官内に位置しない細胞の集団よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍又はそれより多い集団を含む。特定の実施態様では、該細胞の増殖集団は、IL-2に供されていないか、もしくはIL-2を投与されていない目的の組織もしくは器官内の細胞の集団又は目的の組織もしくは器官内に位置しない細胞の集団などの参照集団よりも少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍又は少なくとも14倍大きい。いくつかの実施態様では、該細胞の増殖集団は、集団のサブセットを構成するより大きな割合の細胞(例えば、組織又は器官のT細胞の総集団内でより大きな割合の調節性T細胞)を含む。さらなる実施態様では、該細胞の増殖集団は、投与後21日目に最大である、すなわち、該細胞の集団は、投与後21日目で最大限に増殖する。いくつかの実施態様では、該細胞の増殖集団は、投与後4~35日に検出され得る、すなわち、該細胞の集団の増殖は、投与後4~35日に検出され得る。そのため、一実施態様では、該細胞の増殖集団/該細胞の集団の増殖は、投与後4日目に検出され得る。さらなる実施態様では、該細胞の増殖集団/該細胞の集団の増殖は、投与後35日間検出され得る。さらなる実施態様では、該細胞集団の最大増殖は、投与後21日目に検出され得る。
【0012】
したがって、本明細書で定義される調節性T細胞の増殖集団は、投与されるIL-2の用量に依存して増殖され得ることが理解されるであろう。そのため、ある実施態様では、本明細書で定義される調節性T細胞の増殖集団は、IL-2用量依存的な倍数で参照集団よりも大きい集団を含む。
【0013】
さらなる実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される調節性T細胞の増殖集団は、生存率が増加した細胞の集団を含む。そのため、一実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される調節性T細胞の増殖集団は、生存率の増加を含む。さらなる実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、細胞死の減少又は低下を含む。さらなる実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は増殖の増加を含む。そのため、一実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、調節性T細胞の増殖集団の生存率の増加により、参照集団(例えば、IL-2に供されていないか、もしくはIL-2を投与されていない調節性T細胞の集団又は目的の組織もしくは器官内に位置しない細胞の集団)よりも大きい。さらなる実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、調節性T細胞の増殖集団における細胞死の減少、又は低下により参照集団よりも大きい。さらなる実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、増殖の増加により参照集団よりも大きい。さらなる実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、生存率の増加、細胞死の減少/低下及び増殖の増加のうちの1以上の組み合わせにより参照集団よりも大きい。
【0014】
本明細書において「調節性T細胞の増殖集団」などの、本明細書で定義される方法に従って生成される「増殖集団」への言及は、活性化された細胞の集団も含み得ることが理解されるであろう。本明細書において「増殖」への言及は、調節性T細胞の集団などの、本明細書で定義される方法に従って生成される細胞の集団の活性化を含み得る。同様に、「増殖」はまた、調節性T細胞の活性化集団の増殖、例えば、IL-2の投与前に既に活性化された集団を含む。調節性T細胞の集団などの、本明細書で定義される方法に従って生成される細胞の集団のそのような活性化は、増殖から独立していてもよいし、又は前記集団の増殖に付随してもよい。そのため、一実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、活性化された調節性T細胞を含む。さらなる実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、調節性T細胞の活性化集団である。
【0015】
代替実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される「増殖」又は「増殖集団」への言及は、前記集団の活性化又は細胞の活性化集団を含まない。そのため、この実施態様によれば、調節性T細胞の増殖集団などの、本明細書で定義される方法に従って生成される細胞の増殖集団は、活性化表現型を含まない。さらなる実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、活性化された調節性T細胞を含まない。そのため、さらなる実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、IL-2に供されていないか、又はIL-2を投与されていない調節性T細胞の集団の表面表現型などの表現型を含む。
【0016】
調節性T細胞(Tregとも呼ばれる)は、免疫系を調節し、耐性を維持し、かつ自己免疫疾患を予防するT細胞の亜集団である。それらは、一般に、エフェクターT細胞の活性化及び/もしくは増殖を抑制又は下方制御し、免疫抑制に有用性を有することが示されている。したがって、調節性T細胞は、複数の免疫抑制能力と再生能力を組み合わせた非常に有望な細胞であり、内因性調節性T細胞を刺激、活性化もしくは増殖させる細胞療法又は外因性因子として外因性調節性T細胞を使用することに大きな関心がある。肺の調節性T細胞がほぼ6週ごとに再循環し(図1)、そのため、この組織のホメオスタシスの動態の変更により、抗炎症治療などの免疫抑制治療のためのこれらの細胞集団を肺内で増殖させるための窓が提供されることを本発明者らは実証した。
【0017】
そのため、一実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される調節性T細胞の増殖集団は、抗炎症ポテンシャルの増大を含む。そのような抗炎症ポテンシャルの増大は、組織もしくは器官に存在する調節性T細胞の非増殖集団などの調節性T細胞の非増殖集団、又は目的の組織もしくは器官以外の別の場所に存在する調節性T細胞の集団と比較され得る。一実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、目的の組織もしくは器官内の非増殖調節性T細胞、又は目的の組織もしくは器官以外の場所からの調節性T細胞に類似した表現型を含む。そのような表現型は、表面マーカー表現型、トランスクリプトーム表現型/特性(例えば遺伝子発現特性)、遺伝子及び/又はタンパク質の発現プロファイル及びサイトカイン発現プロファイルを含み得る。そのため、特定の実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、調節性T細胞の非増殖集団もしくは増殖前の調節性T細胞の増殖集団の抗炎症ポテンシャルを含むか、又は保持する。さらなる実施態様では、調節性T細胞の増殖集団は、目的の組織又は器官以外の別の場所からの調節性T細胞の集団の抗炎症ポテンシャルを含むか、又は保持する。
【0018】
本明細書において語句「組織もしくは器官における」への言及は、特定の組織又は器官内などの対象における別々の場所を指す。そのような用語は、効果が、全身的又は目的の組織もしくは器官の外側で生じるか、又は目的の組織もしくは器官に位置しない細胞型もしくは細胞集団が影響を受ける(例えば、増殖するか又は活性化される)場合には関係しないことが理解されるであろう。そのため、一実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される調節性T細胞の集団は、特定の組織もしくは器官で、すなわち局所的に影響を受ける(例えば増殖する)。さらなる実施態様では、調節性T細胞の集団は、特定の組織もしくは器官のみで影響を受ける(例えば増殖する)。さらなる実施態様では、目的の組織もしくは器官の外側に位置する、すなわち組織もしくは器官内に位置しない調節性T細胞の集団は影響を受けない(例えば増殖しない)。そのため、特定の実施態様では、調節性T細胞の全身集団又は末梢集団は影響を受けない(例えば増殖しない)。さらなる実施態様では、リンパ節及び/又は脾臓における調節性T細胞の集団は影響を受けない。さらなる実施態様では、血液中の調節性T細胞の集団は影響を受けない。さらなる実施態様では、肝臓中の調節性T細胞の集団は影響を受けない。
【0019】
本明細書で定義される組織又は器官は、身体又は生物の別々の場所を含む。例えば、組織又は器官は肺を含み得る。そのため、特定の実施態様では、組織又は器官は肺である。
【0020】
IL-2は、調節性T細胞の重要な集団制御因子である。調節性T細胞は、急速な増殖率及び高いアポトーシス率で他のT細胞と比較して自然に高い回転頻度を有する。IL-2は、抗アポトーシスタンパク質Mcl1の誘導によって調節性T細胞の頻度を増加させることができ、これがBim依存性アポトーシス率を低下させる(Piersonらの文献(2013), doi: https://doi.org/10.1038/ni.2649))。したがって、IL-2レベルの増加は、調節性T細胞集団のサイズを拡大することができる(Liston及びGrayらの文献(2014), doi: https://doi.org/10.1038/nri3605)。IL-2送達は、複数の前臨床試験においてこの調節性T細胞集団の増殖を介して有望な抗炎症手段であることが示されており、IL-2送達の最適化が臨床的に検討されている。したがって、肺のコンテキストでは、IL-2の局所送達は、全身性免疫抑制の有害な影響を受けずに、肺特異的増殖又は調節性T細胞数の増加によって炎症に対する非常に有望な治療法を提供するであろう。呼吸器感染症を治療するコンテキストでは、全身的免疫抑制が身体の抗体作製能を阻害し、ウイルスが拡散するのを可能にするので、この能力は重要であることが理解されるであろう。したがって、本発明は、全身的な抗体生成を可能にしながら、肺における有害な炎症を阻止する能力を提供する。
【0021】
そのため、本発明のある実施態様によれば、それを必要とする対象の組織又は器官内で調節性T細胞の集団を増殖させ、その結果、例えば、肺免疫病態の感染要因に対する抗体の生成の低下又は二次感染のリスクの増加による、患者にとって耐えられない広範な末梢又は全身の免疫抑制が回避される方法が提供される。
【0022】
本明細書において「投与」への言及は、特定の組織又は器官などの生物の別々の場所又は部位にIL-2を供給するか又はそこで利用可能にすることを指すことが理解されるであろう。したがって、そのような投与は、本明細書で前に記載した「組織又は器官における」の定義と同様である。そのため、一実施態様では、IL-2の投与は、特定の組織もしくは器官への又は特定の組織もしくは器官内での投与を含む。特定の実施態様では、IL-2の投与は、特定の組織又は器官(例えば肺)におけるIL-2の発現を含む、すなわち、前記対象の前記組織又は器官におけるIL-2の組織又は器官特異的発現を含む。一実施態様では、投与は、特定の組織又は器官(例えば肺)におけるIL-2をコードする遺伝子の発現を含む。そのため、一実施態様では、IL-2の投与は、前記対象の前記組織又は器官におけるIL-2の組織又は器官特異的発現を含む。特定の実施態様では、IL-2の組織又は器官特異的発現は肺である。いくつかの実施態様では、IL-2の組織又は器官特異的発現は、投与後15日で最大である。いくつかの実施態様では、IL-2の組織又は器官特異的発現は、投与後4~35日で検出され得る。そのため、一実施態様では、IL-2の組織又は器官特異的発現は、投与後4日で検出され得る。さらなる実施態様では、IL-2の組織又は器官特異的発現は、投与後35日間検出され得る。さらなる実施態様では、IL-2の最大の組織又は器官特異的発現は、投与後15日で検出され得る。さらなる実施態様では、IL-2の発現は、末梢(例えば、血液中)などの、目的の組織又は器官の外側で検出可能ではない。さらなる実施態様では、IL-2の発現は、リンパ節及び/又は脾臓で検出されない。さらなる実施態様では、IL-2の発現は、目的の特定の組織又は器官に制限される発現である。さらなる実施態様では、IL-2の発現は、組織又は器官特異的発現である。そのため、特定の実施態様では、IL-2の組織又は器官特異的発現は、組織又は器官特異的プロモーターによって促進される。ある実施態様では、IL-2の投与又は発現は、目的の2以上の組織又は器官内であり得る。一実施態様では、IL-2の投与又は発現は、1、2、又はより多くの関連する組織又は器官(例えば、肺及び気道の組織)内である。別の実施態様では、IL-2の投与又は発現は、関連していないと考えられる1、2、又はより多くの組織又は器官内である。
【0023】
さらに、本明細書における「投与」及び「発現」への言及はまた、IL-2が組織又は器官の細胞の集団に供給される場合を指す。IL-2のそのような供給は、一実施態様では、目的の組織又は器官への又は目的の組織又は器官内での、すなわち局所的なタンパク質又はペプチド形態でのIL-2の投与を含む。さらなる実施態様では、IL-2の供給は、目的の組織又は器官の細胞におけるIL-2の発現を含む。そのため、特定の実施態様では、IL-2の発現は、前記組織又は器官を構成する細胞などのIL-2を発現する目的の組織又は器官の細胞を含む。いくつかの実施態様では、IL-2の発現は、上皮細胞;気道上皮細胞(例えば、杯細胞、線毛細胞、クラブ細胞、神経内分泌細胞(神経内分泌体)、基底細胞、中間(傍基底)細胞、漿液性細胞、刷毛細胞、多数の細胞質内膜結合封入体を有する特殊型細胞、非線毛円柱細胞及び化生細胞);並びに肺胞細胞(例えば、1型及び2型の肺細胞、移行期の1型及び2型の肺細胞、及び立方体の非線毛細胞)を含む。一実施態様では、IL-2の発現は、気道上皮細胞、例えば、クラブ細胞、及び/又は肺胞細胞、例えば、2型の肺胞細胞を含む。特定の実施態様では、IL-2の発現はクラブ細胞を含む。さらなる実施態様では、IL-2の発現は、本明細書で定義される方法に従って生成される調節性T細胞の増殖集団を構成する調節性T細胞以外の細胞内での発現を含む。そのため、さらなる実施態様では、IL-2の発現は、本明細書で定義される方法に従って生成される調節性T細胞集団内ではない。
【0024】
代替実施態様では、IL-2の投与又は発現は、IL-2をコードする外因性配列を組織又は器官の細胞に導入することを含む。そのため、一実施態様では、IL-2の投与又は発現は、外因性配列からの発現を含む。さらなる実施態様では、IL-2の投与又は発現は、導入遺伝子からの発現を含む。さらなる実施態様では、導入遺伝子は、IL-2をコードする遺伝子又はエレメントを含む。特定の実施態様では、外因性配列はIL-2コード配列である。さらなる実施態様では、導入遺伝子は、IL-2コード配列又は遺伝子を含む。
【0025】
一実施態様では、IL-2をコードする外因性配列は、組織又は器官特異的プロモーターを含む導入遺伝子の形態である。そのような組織特異的又は器官特異的プロモーターは、当技術分野で知られており、組織特異的又は器官特異的遺伝子の発現を促進するプロモーターを含む。一実施態様では、導入遺伝子は、目的の組織又は器官内で特異的に発現を促進する組織又は器官特異的プロモーターを含む。さらなる実施態様では、導入遺伝子は、目的の組織又は器官以外の組織又は器官内での発現をもたらさない組織又は器官特異的プロモーターを含む。そのため、一実施態様では、組織又は器官特異的プロモーターは、肺特異的プロモーターである。さらなる実施態様では、導入遺伝子は、肺の細胞内で特異的に発現を促進するプロモーターを含む。さらなる実施態様では、導入遺伝子は、本明細書上記で定義される上皮細胞、気道上皮細胞及び/又は肺胞細胞内で特異的に発現を促進するプロモーターを含む。一実施態様では、導入遺伝子は、肺内で特異的に発現を促進するプロモーターを含む。特定の実施態様では、導入遺伝子は、気道上皮細胞、例えば、クラブ細胞、及び/又は肺胞細胞、例えば、2型肺胞細胞内で特異的に発現を促進するプロモーターを含む。さらなる実施態様では、導入遺伝子は、クラブ細胞内で特異的に発現を促進するプロモーターを含む。さらなる実施態様では、導入遺伝子は、界面活性剤タンパク質B(SFTPB)のプロモーターを含む。別の実施態様では、導入遺伝子は、クラブ細胞特異的タンパク質(CC10)のプロモーターを含む。
【0026】
そのため、一実施態様では、組織又は器官特異的プロモーターは、界面活性剤タンパク質B(SFTPB)のプロモーターである。別の実施態様では、組織又は器官特異的プロモーターは、クラブ細胞特異的タンパク質(CC10)のプロモーターである。特定の実施態様では、組織又は器官特異的プロモーターはSFTPBプロモーターであり、クラブ細胞及び/又は2型肺胞細胞において特異的に発現を促進する。さらなる実施態様では、組織又は器官特異的プロモーターは、CC10プロモーターであり、クラブ細胞において特異的に発現を促進する。
【0027】
さらなる実施態様では、IL-2の投与又は発現は、外因性化合物の存在下でIL-2の発現を促進又は誘導するエレメントを含む導入遺伝子を含む。発現を促進又は誘導するそのようなエレメントは、当技術分野において公知であり、例えば、テトラサイクリン(Tet)誘導システムを含む。Tet誘導システムは、転写の可逆的な制御を提供し、目的の遺伝子/コード領域(及び組織特異的プロモーターなどのそのプロモーター)の上流に配置されるテトラサイクリン応答エレメント(TRE)に含まれるテトラサイクリンオペレーター(TetO)配列と結合するテトラサイクリン制御トランスアクチベーター(tTA)を利用する。これらは、TetOff又はTetOnシステムのいずれかであり得る。誘導発現のTetOffシステム(tTA依存システムとも呼ばれる)は、大腸菌に見られるテトラサイクリンリプレッサー(TetR)を、ヘルペス単純ウイルスに見られる別のタンパク質VP16の活性化ドメインに融合させることによって作成されたtTAタンパク質を使用する。生じたtTAは、テトラサイクリンの不在下でTRE内のTetO配列に結合し、下流の遺伝子/コード領域の発現を促進することができる。テトラサイクリンの存在下では、TetO配列へのtTA結合が防止され、その結果、遺伝子発現が低下する。逆に、TetOnシステム(rtTA依存システムとも呼ばれる)は、逆Tetリプレッサー(rTetR)を使用して、逆テトラサイクリン制御トランスアクチベーター(rtTA)タンパク質を作り、これは発現を促進するのにテトラサイクリンの存在に依存する。したがって、rtTAは、TRE内のTetO配列にのみ結合し、テトラサイクリンの存在下で発現を促進する。TetOnシステムの具体例としては、Life Technologies社のTetOnアドバンスト、TetOn3G及びT-RExシステムが挙げられるが、これらに限定されない。テトラサイクリンの誘導体及び類似体は、TetOff又はTetOnシステムのいずれかと共に使用され、限定されないが、ドキシサイクリンを含み得る。そのような誘導体/類似体は、ドキシサイクリンの場合の安定性の増加などの、テトラサイクリンと比較して顕著な利点を提供することが理解されるであろう。そのため、ある実施態様では、組織又は器官特異的プロモーターを含む導入遺伝子などの、IL-2をコードする外因性配列は、さらにテトラサイクリン応答エレメント(TRE)を含む。このように、一実施態様では、IL-2の投与又は発現は、テトラサイクリン依存性又はテトラサイクリン誘導性である。さらなる実施態様では、IL-2の投与又は発現は、逆テトラサイクリン制御トランスアクチベーター(rtTA)をコードする外因性配列を組織又は器官の細胞に導入することを含む。一実施態様では、rtTAをコードする外因性配列は、組織又は器官特異的プロモーターを含み、すなわち、rtTAコード配列の発現は、本明細書に開示される組織又は器官特異的プロモーターの制御下にある。そのため、さらなる実施態様では、rtTAをコードする外因性配列は、肺に特異的なプロモーターを含む。さらなる実施態様では、rtTAコード配列の発現は、肺に特異的なプロモーターの制御下にある。特定の実施態様では、rtTAをコードする外因性配列は、気道上皮細胞、例えば、クラブ細胞、及び/又は肺胞細胞、例えば、2型肺胞細胞内で特異的に発現を促進するプロモーターを含む。さらなる実施態様では、rtTAをコードする外因性配列は、界面活性剤タンパク質B(SFTPB)のプロモーターを含む。さらなる実施態様では、rtTAをコードする外因性配列は、クラブ細胞特異的タンパク質(CC10)のプロモーターを含む。そのようなrtTAコード外因性配列は、IL-2をコードする外因性配列とは別の配列であってよく、例えば、組織特異的又は器官特異的プロモーターを含むIL-2導入遺伝子とは別であり得る。あるいは、そのようなrtTAコード外因性配列は、IL-2コード配列と共に含まれてよく、例えば、同じ導入遺伝子内に含まれ得る。そのため、いくつかの実施態様では、IL-2の投与又は発現はTetOnシステムを含む。したがって、一実施態様では、IL-2の投与又は発現は、テトラサイクリン、又はドキシサイクリンなどのテトラサイクリンの誘導体/類似体の投与を含むことが理解されるであろう。
【0028】
テトラサイクリン依存的もしくはテトラサイクリン誘導性のIL-2の投与又は発現を使用すると、別のレベルの制御が提供され、IL-2の投与又は発現を「スイッチ」オン又はオフにできる。そのようなスイッチングは、組織又は器官内での調節性T細胞集団の増殖を時間的に制御できるようにすることによって、本明細書に記載の方法において有利であると理解されるであろう。例えば、IL-2の発現は、1型炎症などの肺の炎症が検出/診断されたときに、テトラサイクリン又はその誘導体/類似体を投与することによってスイッチ「オン」にされ得る。あるいは、IL-2の発現は、呼吸器ウイルスによる感染などの感染の後にスイッチ「オン」にされ得る。次いで、IL-2の発現は、1型炎症などの炎症が検出されなくなるか、又は減少したときに、テトラサイクリン又はその誘導体/類似体を除去することによってスイッチ「オフ」にされ得る。発現はまた、呼吸器ウイルスによる感染などの感染の対象のリスクがなくなったとみなされた後に、スイッチ「オフ」にされ得る。テトラサイクリン依存的又はテトラサイクリン誘導性のIL-2の投与又は発現の前記使用は、さらに用量依存的なIL-2の投与又は発現を提供する。例えば、IL-2投与もしくは発現のレベル及び/又は量は、組織又は器官における炎症、例えば、1型炎症のレベル及び/又は量に依存するように、組織もしくは器官で変更及び/又は滴定され得る。したがって、IL-2の発現は、1型炎症などの肺の炎症が検出/診断されたときに、特定用量のテトラサイクリン又はその誘導体/類似体を投与することによってスイッチ「オン」され、炎症が持続する場合には、前記用量を増加させてよい。同様に、テトラサイクリン又はその誘導体/類似体の初期投与後に炎症が減少する場合には、前記用量を減少させてよい。
【0029】
IL-2の投与又は発現がTetOnシステムを含む実施態様によれば、IL-2の発現を制御するための組織又は器官特異的プロモーターの存在は必要とされない可能性があることが理解されるであろう。例えば、rtTA-コード配列の発現は、組織又は器官特異的プロモーターの制御下にあり得るが、IL-2の発現は、組織又は器官特異的プロモーターではなく、テトラサイクリン応答エレメント(TRE)の制御下にある。そのため、一実施態様では、IL-2の投与又は発現は、テトラサイクリン依存性又はテトラサイクリン誘導性であり、rtTAをコードする外因性配列は、肺に特異的なプロモーター(例えば、SFTPBプロモーター又はCC10プロモーター)に特異的なプロモーターを含むが、IL-2をコードする外因性配列は、肺に特異的なプロモーターを含まない。さらなる実施態様では、IL-2の投与又は発現は、テトラサイクリン依存性又はテトラサイクリン誘導性であり、rtTA-コード配列の発現は、肺に特異的なプロモーター(例えば、SFTPBプロモーター又はCC10プロモーター)の制御下にあるが、IL-2をコードする外因性配列の発現は、肺に特異的なプロモーターの制御下にはない。
【0030】
別の実施態様では、IL-2の投与又は発現は、テトラサイクリン依存性又はテトラサイクリン誘導性であり、rtTAをコードする外因性配列とIL-2をコードする外因性配列の両方が、肺に特異的なプロモーター(例えば、SFTPBプロモーター又はCC10プロモーター)を含む。さらなる実施態様では、IL-2の投与又は発現は、テトラサイクリン依存性又はテトラサイクリン誘導性であり、rtTA-コード配列とIL-2をコードする外因性配列の両方の発現は、肺に特異的なプロモーター(例えば、SFTPBプロモーター又はCC10プロモーター)の制御下にある。そのような実施態様では、IL-2の発現は、組織もしくは器官特異的な投与又は発現をさらに確実にするためのさらなるレベルの制御を受ける。
【0031】
一実施態様では、本明細書で定義される導入遺伝子は、ウイルス又はウイルスベクターを用いる形質導入などの形質導入によって目的の組織又は器官の細胞に導入される。特定の実施態様では、形質導入はアデノ随伴ウイルスを使用する。そのため、一実施態様では、IL-2の投与は、ウイルス形質導入などの形質導入を含む。さらなる実施態様では、IL-2の投与は、アデノ随伴ウイルス形質導入を含む。
【0032】
一実施態様では、本明細書で定義される導入遺伝子の形質導入は、目的の組織又は器官の細胞を特異的に標的にするか又はそれに感染するウイルスベクターを利用する。そのため、一実施態様では、本明細書で定義される導入遺伝子の形質導入は、目的の組織又は器官の細胞を特異的に標的にするか又はそれに感染させる。この実施態様によれば、本明細書で定義される導入遺伝子のウイルスベクターを用いる形質導入は、調節性T細胞の集団を標的にしないか又はそれに感染しないことが理解されるであろう。さらなる実施態様では、本明細書で定義される導入遺伝子の形質導入は、目的の組織又は器官にアクセス可能であり、生物の目的の組織又は器官を他の組織、器官又は残りから分離する障壁を通過することができるウイルスベクターを含む。そのため、一実施態様では、形質導入は、肺を特異的に標的にするか又はそれに感染することができるウイルスベクターを含む。さらなる実施態様では、形質導入は、肺の細胞を標的にするか又はそれに感染することができるウイルスベクターを含む。
【0033】
一実施態様では、形質導入は、肺ターゲティングウイルスもしくはウイルスベクター又は肺に感染するウイルスもしくはウイルスベクターを含む。肺ターゲティングウイルス/ウイルスベクターの例としては、限定されないが、AAV6並びにその変異体及び誘導体(例えば、AAV6.2及びAAV6.2FF)が挙げられる。ある実施態様では、本明細書で定義される導入遺伝子は、アデノ随伴ウイルスベクター(例えば、AAV6.2)などのウイルスベクターに含まれる。さらなる実施態様では、形質導入は、アデノ随伴ウイルス変異体AAV6及びその誘導体、例えば、AAV6.2及びAAV6.2FFを含む。さらなる実施態様では、形質導入は、AAV6.2ウイルスベクターを含む。さらなる実施態様では、形質導入は、AAV6.2FFウイルスベクターを含む。別の実施態様では、本明細書で定義される導入遺伝子は、AAV6.2ウイルスベクターに含まれる。さらなる実施態様では、本明細書で定義される導入遺伝子は、AAV6.2FFウイルスベクターに含まれる。そのため、一実施態様では、形質導入及び/又はウイルスベクターは、IL-2コード配列及び肺特異的プロモーターのSFTPBを含む導入遺伝子を含むAAV6のAAV6.2誘導体であるAAV6.2-SFTPB-IL2を含む。別の実施態様では、形質導入及び/又はウイルスベクターは、IL-2コード配列及び肺特異的プロモーターのSFTPBを含む導入遺伝子を含むAAV6のAAV6.2FF誘導体であるAAV6.2FF-SFTPB-IL2を含む。さらなる実施態様では、形質導入及び/又はウイルスベクターは、IL-2コード配列及び肺特異的プロモーターのCC10を含む導入遺伝子を含むAAV6のAAV6.2誘導体であるAAV6.2-CC10-IL2を含む。さらなる実施態様では、形質導入及び/又はウイルスベクターは、IL-2コード配列及び肺特異的プロモーターのCC10を含む導入遺伝子を含むAAV6のAAV6.2FF誘導体であるAAV6.2FF-CC10-IL2を含む。ウイルスベクターは、目的の組織又は器官の細胞のゲノムなどの宿主細胞ゲノムに、導入遺伝子などの標的配列を組み込むために使用され得る。そのため、ある実施態様では、形質導入は、組織又は器官における導入遺伝子の長期発現が達成されるように、目的の組織又は器官の細胞のゲノムへの本明細書で定義される導入遺伝子の組み込みを含む。アデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターは、標的配列を宿主細胞ゲノムに組み込むことなく、安定的又は長期発現を可能にするためにも使用され得る。そのため、一実施態様では、導入遺伝子及び/又は標的配列は、宿主細胞ゲノムの外側で安定的に維持される。
【0034】
本明細書において「ウイルス」及び/又は「ウイルスベクター」への言及は、非溶解性又は溶原性であるウイルスを含む。そのようなウイルスは、目的の組織もしくは器官の細胞などの細胞の感染、又は前記細胞の死もしくは破壊を伴わずに、細胞への導入遺伝子の導入を達成することが理解されるであろう。
【0035】
目的の組織又は器官の細胞を特異的に標的にするか又はそれに感染するウイルス又はウイルスベクター(例えば、肺特異的ウイルス又はウイルスベクター)と、目的の組織又は器官の細胞において特異的に発現を促進するプロモーターとの組み合わせが例外的な特異性を提供することが本明細書に提示される開示から理解されるであろう。そのような特異性は、導入遺伝子が標的にするか又は感染する細胞と、導入遺伝子が発現する細胞の両方を制限するいわゆる「二重ロック」を提供する。そのため、一実施態様では、本明細書で定義される組織又は器官特異的ウイルスベクターと組織又は器官特異的プロモーターとの組み合わせは、目的の組織又は器官の細胞のみが本明細書で定義されるような導入遺伝子を含み、目的の組織又は器官の細胞のみが前記導入遺伝子を発現することができることを提供する。さらなる実施態様では、本明細書で定義される組織又は器官特異的ウイルスベクターと組織又は器官特異的プロモーターの組み合わせは、目的の組織又は器官の細胞のみがIL-2コード遺伝子を含み、目的の組織又は器官の細胞のみが前記遺伝子を発現することができることを提供する。
【0036】
さらなる実施態様では、テトラサイクリン誘導性エレメントなどの誘導性エレメントと共に、本明細書で定義される組織又は器官特異的ウイルスベクターと組織又は器官特異的プロモーターの組み合わせは、目的の組織又は器官の細胞のみが本明細書で定義される導入遺伝子を含み、誘導性エレメントのアクチベーターが投与されたときに(例えば、テトラサイクリン又はドキシサイクリン)、目的の組織又は器官の細胞のみが前記導入遺伝子を発現することができることを提供する。一実施態様では、テトラサイクリン誘導性エレメントなどの誘導性エレメントと共に、本明細書で定義される組織又は器官特異的ウイルスベクターと組織又は器官特異的プロモーターとの組み合わせは、目的の組織又は器官の細胞のみがIL-2コード遺伝子を含み、誘導性エレメントのアクチベーターが投与されたときに(例えば、テトラサイクリン又はドキシサイクリン)、目的の組織又は器官の細胞のみが前記遺伝子を発現することができることを提供する。さらなる実施態様では、前記組み合わせは、目的の組織又は器官の細胞のみが誘導性IL-2コード遺伝子を含み、目的の組織又は器官の細胞のみが、誘導性エレメントのアクチベーターが投与されたときに(例えば、テトラサイクリン又はドキシサイクリン)、IL-2の発現をもたらす逆テトラサイクリン制御トランスアクチベーター(rtTA)を発現することができることを提供する。
【0037】
本明細書で定義されるIL-2の投与は、目的の組織又は器官へのIL-2の直接投与をさらに含んでよい。直接投与の例は、目的の組織又は器官への直接注射を含むか、又は適切な送達装置を利用する。そのような送達装置は、当技術分野において知られており、本開示によれば、治療期間(例えば、慢性的に、又は急性炎症性疾患もしくは障害の治療期間)に、IL-2の制御された及び/又は持続的な投与を可能にする。肺への投与/送達の場合、吸入及び/又は鼻腔内送達が、例えば、吸入器もしくはネブライザを用いて、又は本明細書に記載のIL-2及び/もしくはウイルスベクターを含む霧化された溶液を噴霧することによって利用され得る。
【0038】
本明細書で定義されるIL-2投与の期間は、本明細書に記載の方法によって治療される特定の炎症性状態又は疾患の治療及び特性に依存するように変更することができる。例えば、IL-2の投与は慢性であり得る。あるいは、IL-2の投与は、急性炎症性状態又は感染の治療などにおいて、疾患又は障害の治療期間内であり得る。そのため、ある実施態様では、IL-2の投与又は発現の持続期間は、治療される疾患もしくは障害又は治療期間に依存する。一実施態様では、IL-2の投与又は発現は急性である。別の実施態様では、IL-2の投与又は発現は慢性である。
【0039】
IL-2と組織又は器官に特異的なターゲティング部分とを組み合わせるか、又は共投与してよいことが理解されるであろう。したがって、IL-2の投与は、本明細書で定義される目的の組織又は器官におけるIL-2の発現(例えば、組織特異的又は器官特異的発現)を含んでよく、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分と組み合わせることができる。さらに、IL-2の投与は、タンパク質又はペプチド形態でのIL-2の投与を含んでよく、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分と組み合わせることができる。
【0040】
本明細書において用語「ターゲティング部分」への言及は、本明細書で定義されるIL-2の組織もしくは器官特異的な投与又は発現を提供する任意の部分を指す。さらに、前記ターゲティング部分は、本明細書で定義されるIL-2の局所的な投与又は発現を提供することが認識されるであろう。
【0041】
そのため、本発明の一実施態様では、本明細書で定義される方法は、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分の投与を含む。さらなる実施態様では、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分は、目的の組織もしくは器官に又はそこへIL-2を局在化させる。そのため、一実施態様では、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分は、目的の組織もしくは器官に又はそこへIL-2のみを局在化させる。さらなる実施態様では、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分は、目的の組織又は器官以外の他の組織もしくは器官へのIL-2の局在化を防止するか、又は目的の組織もしくは器官以外の組織又は器官から離れてIL-2を局在化させる。別の実施態様では、ターゲティング部分は、目的の組織又は器官におけるIL-2の発現を提供する。そのため、一実施態様では、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分は、目的の組織又は器官においてIL-2のみの発現を提供する。本明細書における「目的の組織又は器官における」へのそのような言及は、前記効果が前記組織又は器官を構成する細胞(例えば、上皮細胞、気道上皮細胞及び/又は肺胞細胞)内である場合をさらに含む。
【0042】
一実施態様では、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分は、本明細書で定義されるウイルス又はウイルスベクターである。さらなる実施態様では、前記ウイルス又はウイルスベクターは、目的の組織もしくは器官を特異的に標的にするか又はそれに感染するか、又は目的の組織もしくは器官の細胞を特異的に標的にするか又はそれに感染する。そのため、この実施態様によれば、目的の組織もしくは器官に特異的な前記ターゲティング部分は、目的の組織もしくは器官以外の他の組織もしくは器官の細胞を標的にしないか又はそれに感染しない、又は目的の組織もしくは器官以外の組織もしくは器官を構成する細胞を標的にしないか又はそれに感染しないウイルス又はウイルスベクターである。またこの実施態様によれば、本明細書で定義される組織もしくは器官に特異的な前記ターゲティング部分は、調節性T細胞の集団を標的にしないか又はそれに感染しないことが理解されるであろう。さらなる実施態様では、本明細書で定義される対象の組織もしくは器官に特異的なターゲティング部分は、目的の組織もしくは器官にアクセス可能であり、対象の目的の組織又は器官を他の組織、器官又は残りから分離する障壁を通過することができるウイルス又はウイルスベクターを含む。そのため、一実施態様では、組織もしくは器官に特異的なターゲティング部分は、肺を特異的に標的にするか又はそれに感染することができるウイルス又はウイルスベクターを含む。さらなる実施態様では、組織もしくは器官に特異的なターゲティング部分は、上皮細胞、気道上皮細胞及び/又は肺胞細胞を標的にするか若しくはそれに感染することができるウイルス又はウイルスベクターを含む。特定の実施態様では、組織もしくは器官に特異的なターゲティング部分は、クラブ細胞を標的にするか又はそれに感染することができるウイルス又はウイルスベクターを含む。別の実施態様では、組織もしくは器官に特異的なターゲティング部分は、2型肺胞細胞を標的にするか又はそれに感染することができるウイルス又はウイルスベクターを含む。
【0043】
一実施態様では、組織もしくは器官に特異的なターゲティング部分は、アデノ随伴ウイルスを含む。さらなる実施態様では、ターゲティング部分は、AAV6及びその変異体/誘導体、例えば、AAV6.2及びAAV6.2FFから選択されるアデノ随伴ウイルスである。特定の実施態様では、組織又は器官に特異的なターゲティング部分は、アデノ随伴ウイルス変異体AAV6.2を含む。別の実施態様では、組織又は器官に特異的なターゲティング部分は、アデノ随伴ウイルス変異体AAV6.2FFを含む。ある実施態様では、本明細書で定義される導入遺伝子は、本明細書で定義されるアデノ随伴ウイルス内に含まれるアデノ随伴ウイルスベクターなどの、組織又は器官に特異的なターゲティング部分に含まれる。一実施態様では、本明細書で定義される導入遺伝子は、AAV6及びその変異体/誘導体、例えば、AAV6.2及びAAV6.2FFから選択されるアデノ随伴ウイルスに含まれる。そのため、一実施態様では、IL-2コード配列及び肺特異的プロモーターのSFTPBを含む導入遺伝子は、AAV6誘導体のAAV6.2ウイルス/ウイルスベクター内に含まれ、ウイルス/ウイルスベクターは、AAV6.2-SFTPB-IL2である。別の実施態様では、IL-2コード配列及び肺特異的プロモーターのCC10を含む導入遺伝子は、AAV6.2ウイルス/ウイルスベクター内に含まれ、ウイルス/ウイルスベクターは、AAV6.2-CC10-IL2である。さらなる実施態様では、IL-2コード配列及び肺特異的プロモーターのSFTPBを含む導入遺伝子は、AAV6誘導体のAAV6.2FFウイルス/ウイルスベクター内に含まれ、ウイルス/ウイルスベクターは、AAV6.2FF-SFTPB-IL2である。さらなる実施態様では、IL-2コード配列及び肺特異的プロモーターのCC10を含む導入遺伝子は、AAV6.2FFウイルス/ウイルスベクター内に含まれ、ウイルス/ウイルスベクターはAAV6.2FF-CC10-IL2である。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、組織又は器官における調節性T細胞集団を生体内で増殖させる方法が提供される。本態様の実施態様は、本明細書に前に記載した全ての実施態様と同等であり、相当すると理解されるであろう。そのため、ある実施態様では、本明細書に記載の用語「対象の」は、「生体内」と同義である。
【0045】
一実施態様では、組織又は器官における調節性T細胞集団を生体内で増殖させる方法は、本明細書に記載のIL-2の投与を含む。さらなる実施態様では、組織又は器官における調節性T細胞集団を生体内で増殖させる方法は、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分の生体内投与を含む。一実施態様では、IL-2の発現を含み得るIL-2の投与は、組織又は器官に特異的なターゲティング部分と生体内で組み合わされる。さらなる実施態様では、組織又は器官における調節性T細胞集団を生体内で増殖させる方法は、IL-2コード遺伝子を含むウイルス又はウイルスベクターを含む。一実施態様では、前記ウイルス又はウイルスベクターは、目的の組織もしくは器官を標的にするか又はそれに感染することができる。特定の実施態様では、目的の組織もしくは器官を標的にするか又はそれに感染することができる前記ウイルス又はウイルスベクターは、目的の組織もしくは器官の細胞を特異的に標的にするか、又はそれに感染する。さらなる実施態様では、組織又は器官における調節性T細胞集団を生体内で増殖させる方法は、組織又は器官特異的プロモーターを含むウイルス又はウイルスベクターを含む。そのため、特定の実施態様では、組織又は器官における調節性T細胞集団を生体内で増殖させる方法は、目的の組織又は器官に特異的なターゲティング部分の投与を含み、前記ターゲティング部分は、肺を特異的に標的にするか、又はそれに感染するウイルス又はウイルスベクターである。さらなる実施態様では、組織又は器官における調節性T細胞集団を生体内で増殖させる方法は、目的の組織又は器官に特異的なターゲティング部分の投与を含み、前記ターゲティング部分は、上皮細胞、気道上皮細胞、及び/又は肺胞細胞に特異的である。さらなる実施態様では、目的の組織又は器官に特異的なターゲティング部分は、クラブ細胞及び/又は2型肺胞細胞に特異的である。別の実施態様では、組織又は器官における調節性T細胞集団を生体内で増殖させる方法は、本明細書で定義される導入遺伝子を含む肺特異的ウイルス又はウイルスベクターの投与、例えば、本明細書で定義されるAAV6.2-SFTPB-IL2、AAV6.2FF-SFTPB-IL2、AAV6.2-CC10-IL2又はAAV6.2FF-CC10-IL2の投与を含む。
【0046】
本発明の一態様によれば、本明細書に記載の方法に従って増殖されるか、又は本明細書に記載の方法によって得られる調節性T細胞集団が提供される。そのため、一実施態様では、IL-2の投与によって対象の組織もしくは器官で増殖させた調節性T細胞の増殖集団と、前記組織又は器官に特異的なターゲティング部分が提供される。
【0047】
医薬組成物
本発明の一態様によれば、IL-2と対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分を含む医薬組成物であって、前記ターゲティング部分が肺に特異的である前記医薬組成物が提供される。
【0048】
一実施態様では、該医薬組成物は、調節性T細胞の集団の増殖を促進するIL-2を含む。さらなる実施態様では、該医薬組成物は、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分を含む。一実施態様では、対象の組織又は器官に特異的なターゲティング部分は、組織又は器官の細胞を特異的に標的にするか又はそれに感染し、本明細書に記載のIL-2の組織又は器官特異的発現を促進するウイルス又はウイルスベクターである。そのため、本発明のこの態様によれば、対象の前記組織又は器官において調節性T細胞の集団を増殖させる組織又は器官特異的ウイルスベクターを含む医薬組成物が提供される。特定の実施態様では、該医薬組成物は、対象の目的の組織もしくは器官において特異的に又は局所的に調節性T細胞の集団を増殖させる。
【0049】
一実施態様では、本明細書で定義される医薬組成物は、生物の目的の組織もしくは器官を他の組織もしくは器官又は残りから分離する障壁を通過することができるターゲティング部分を含む。そのため、一実施態様では、本明細書で定義される医薬組成物は、AAV6及びその変異体/誘導体、例えば、AAV6.2及びAAV6.2FFから選択されるアデノ随伴ウイルスを含む。さらなる実施態様では、本明細書で定義される医薬組成物は、アデノ随伴ウイルス変異体AAV6.2を含む。さらなる実施態様では、本明細書で定義される医薬組成物は、アデノ随伴ウイルス変異体AAV6.2FFを含む。さらなる実施態様では、本明細書で定義される医薬組成物に含まれるウイルスベクターは、IL-2をコードする導入遺伝子などの遺伝子を含む。さらなる実施態様では、該医薬組成物のウイルスベクターに含まれる導入遺伝子は、本明細書で定義される組織又は器官特異的プロモーターをさらに含む。
【0050】
そのため、ある実施態様では、本明細書で定義される医薬組成物は、発現が組織もしくは器官特異的プロモーターによって促進されるIL-2コード遺伝子を含み、目的の組織もしくは器官の細胞を標的にするか又はそれに感染することができる組織もしくは器官特異的ウイルス又はウイルスベクターを含む。特定の一実施態様では、本明細書で定義される医薬組成物は、肺の細胞(例えば、上皮細胞、気道上皮細胞及び/又は肺胞細胞)などの肺を特異的に標的にするか、又はそれに感染し、発現が組織又は器官特異的プロモーターによって促進されるIL-2コード遺伝子を含むアデノ随伴ウイルス(例えば、AAV6及びその変異体/誘導体、例えば、AAV6.2及びAAV6.2FF)などのウイルスベクターを含む。さらなる実施態様では、本明細書で定義される医薬組成物は、発現がSFTPBプロモーターによって肺又は肺の細胞において局所的に促進されるIL-2コード遺伝子を含むアデノ随伴ウイルスAAV6.2を含む。別の実施態様では、該医薬組成物は、発現がSFTPBプロモーターによって肺又は肺の細胞において局所的に促進されるIL-2コード遺伝子を含むアデノ随伴ウイルスAAV6.2FFを含む。さらなる実施態様では、該医薬組成物は、発現がCC10プロモーターによって肺又は肺の細胞において局所的に促進されるIL-2コード遺伝子を含むアデノ随伴ウイルスAAV6.2を含む。さらなる実施態様では、該医薬組成物は、発現がCC10プロモーターによって肺又は肺の細胞において局所的に促進されるIL-2コード遺伝子を含むアデノ随伴ウイルスAAV6.2FFを含む。そのため、一実施態様では、該医薬組成物は、AAV6.2-SFTPB-IL2を含む。別の実施態様では、該医薬組成物は、AAV6.2FF-SFTPB-IL2を含む。さらなる実施態様では、該医薬組成物は、AAV6.2-CC10-IL2を含む。さらなる実施態様では、該医薬組成物は、AAV6.2FF-CC10-IL2を含む。
【0051】
いくつかの実施態様によれば、該医薬組成物は、本明細書で定義される組織もしくは器官特異的ウイルス又はウイルスベクターに加えて、さらに1以上の医薬として許容し得る賦形剤を含む。
【0052】
一般的に、本医薬組成物は、薬理学的に適切な賦形剤又は担体と共に利用される。典型的には、これらの賦形剤又は担体は、生理食塩水及び/又は緩衝媒体を含む水性溶液又はアルコール/水性溶液、エマルジョン又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム及び乳酸リンゲル液が含まれる。適切な生理学的に許容し得るアジュバントは、必要であれば、別々の場所(例えば、目的の組織もしくは器官内)で、本明細書で定義される組織又は器官に特異的なターゲティング部分を含む組成物を保持するために、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン及びアルギン酸塩などの増粘剤から選択され得る。静脈用ビヒクルには、リンゲルデキストロースに基づくものなどの流体及び栄養補充剤及び電解質補充剤が含まれる。鼻腔内投与、吸入、又はネブライザの使用による医薬組成物の送達に適する賦形剤、担体及びビヒクルも知られており、本明細書で定義される医薬組成物を用いることが特に有用であると理解されるであろう。防腐剤並びに抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤及び不活性ガスなどの他の添加剤も存在してよい(Mackの文献(1982) レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences),第16版)。
【0053】
治療用途及び方法
調節性T細胞の集団を増殖させる方法、本発明の医薬組成物及び治療方法が、炎症によって媒介される疾患もしくは障害の治療及び/又は寛解に、並びに/又は炎症の軽減に特に有用であることが本明細書に提示される開示から理解されるであろう。本明細書に提示される方法及び開示に従って増殖させた調節性T細胞の集団は、炎症によって媒介される疾患もしくは障害の治療及び/又は寛解に、並びに/又は炎症の軽減にも有用であることがさらに理解されるであろう。
【0054】
そのため、本発明の一態様によれば、炎症によって媒介される疾患もしくは障害の治療及び/又は寛解に使用するための、対象の組織もしくは器官における調節性T細胞の集団を増殖させる方法であって、前記組織又は器官が肺である前記方法が提供される。本発明の別の態様では、炎症の軽減に使用するための、対象の組織もしくは器官における調節性T細胞の集団を増殖させる方法であって、前記組織又は器官が肺である前記方法が提供される。本発明のさらなる態様では、自己免疫疾患の治療及び/又は寛解に使用するための、対象の組織又は器官における調節性T細胞の集団を増殖させる方法であって、前記組織又は器官が肺である前記方法が提供される。
【0055】
本発明の別の態様では、炎症によって媒介される疾患もしくは障害の治療及び/又は寛解に使用するための、又は炎症の軽減に使用するための、本明細書で定義される方法に従って生成される、対象の組織又は器官において増殖させた調節性T細胞集団が提供される。そのような疾患又は障害は、炎症状態、自己免疫疾患及び/又は移植拒絶もしくは移植片対宿主病などの移植に関連付けられる疾患を含み得る。一実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される対象の組織又は器官において増殖させた調節性T細胞集団は、IL-2及び前記組織もしくは器官に特異的なターゲティング部分の投与によって増殖されている。さらなる実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される対象の組織又は器官において増殖させた調節性T細胞集団は、本明細書で定義されるIL-2の組織又は器官特異的発現によって増殖されている。別の実施態様では、対象の組織又は器官において増殖させた調節性T細胞集団は、テトラサイクリン誘導性エレメントなどの誘導性エレメントによって促進もしくは誘導されるIL-2の組織又は器官特異的発現によって増殖されている。さらなる実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される対象の組織又は器官において増殖させた調節性T細胞集団は、肺の疾患もしくは障害の治療及び/又は寛解に使用するためのものである。一実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される対象の組織又は器官において増殖させた調節性T細胞集団は、肺の治療並びに/又は寛解に使用するためのものである。さらなる実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される対象の組織又は器官において増殖させた調節性T細胞集団は、1型炎症の治療及び/又は寛解に使用するためのものである。ある実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される対象の組織又は器官において増殖させた調節性T細胞集団は、肺内の炎症の治療及び/又は寛解に使用するためのものである。そのため、一実施態様によれば、本明細書で定義される炎症は、肺の炎症である。さらなる実施態様では、肺の炎症は、呼吸器疾患又は障害によるものである。そのため、一実施態様によれば、肺における炎症は、呼吸器疾患又は障害によるものである。さらなる実施態様では、本明細書で定義される方法に従って生成される対象の組織又は器官において増殖させた調節性T細胞集団は、肺の炎症の治療及び/又は寛解に使用するためのものであり、炎症は、呼吸器感染によって引き起こされるか、又は呼吸器疾患もしくは障害は、インフルエンザ、コロナウイルス又は新興ウイルスによる感染などの呼吸器感染症である。代替実施態様では、炎症は、非感染性疾患もしくは障害によって引き起こされるか、又は呼吸器疾患もしくは障害は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの非感染性である。別の例は自己免疫疾患又は障害であり、かつ/又は炎症は自己免疫疾患又は障害によるものである。
【0056】
本発明のさらなる態様によれば、炎症によって媒介される疾患もしくは障害を治療する方法及び/又は炎症の軽減のための方法であって、いずれかは本明細書で定義される方法又はIL-2並びに本明細書で定義される対象の組織もしくは器官に特異的なターゲティング部分を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む前記方法が提供される。一実施態様では、前記治療方法は、本明細書で定義されるIL-2をコードする遺伝子を含むウイルス又はウイルスベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む。一実施態様では、本明細書で定義される治療方法は、炎症によって媒介される疾患もしくは障害の影響を受けたか又は炎症の影響を受けた組織又は器官を特異的に標的にするか、又はそれに感染するウイルス又はウイルスベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む。ある実施態様では、本明細書で定義される治療方法は、発現が組織もしくは器官特異的プロモーターによって促進されるIL-2をコードする遺伝子を含むウイルス又はウイルスベクターを、それを必要とする対象に投与することをさらに含む。さらなる実施態様では、本明細書で定義される治療方法は、発現が組織もしくは器官特異的プロモーター及びテトラサイクリン誘導性エレメントなどの誘導性エレメントによって促進されるIL-2をコードする遺伝子を含むウイルス又はウイルスベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む。代替実施態様では、治療方法は、発現が組織又は器官特異的プロモーターの制御下でテトラサイクリン誘導性エレメントなどの誘導性エレメントによって促進されるIL-2をコードする遺伝子を含むウイルス又はウイルスベクターを対象に投与することを含む。さらなる実施態様では、本明細書で定義される治療方法は、発現がAAV6.2-SFTPB-IL2、AAV6.2FF-SFTPB-IL2、AAV6.2-CC10-IL2又はAAV6.2FF-CC10-IL2の投与などの、組織又は器官特異的プロモーターによって促進されるIL-2をコードする遺伝子を含むウイルス又はウイルスベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0057】
ある実施態様では、それを必要とする前記対象は、炎症によって媒介される疾患又は障害に罹患している。さらなる実施態様では、それを必要とする対象は炎症に罹患している。さらなる実施態様では、それを必要とする対象は1型炎症に罹患している。他の実施態様では、それを必要とする対象は、自己免疫疾患又は障害に罹患している。一実施態様では、前記疾患又は障害は、肺の疾患又は障害である。さらなる実施態様では、前記疾患又は障害は、呼吸器疾患又は障害である。さらなる実施態様では、前記炎症又は呼吸器疾患もしくは障害は、1型炎症を含む。別の実施態様では、前記炎症は、呼吸器感染によって引き起こされるか、又は呼吸器疾患もしくは障害は、インフルエンザもしくはコロナウイルス感染、又は新興呼吸器ウイルスなどの呼吸器感染症である。代替実施態様では、前記炎症は、非感染性疾患もしくは障害によって引き起こされるか、又は呼吸器疾患もしくは障害は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの非感染性である。
【実施例
【0058】
(実施例)
実施例1: 定常状態の集団交換を計算するための並体結合研究
並体結合研究は、定常状態の集団交換の計算を可能にする。Foxp3Thy1.1CD45.1マウスとFoxp3Thy1.1CD45.2マウスの並体結合及び5つの連続する時点での高次元フローサイトメトリー解析(図1A)により、血液及び肺組織のTregについての正常化の動態を監視することができる。正常化が数日内に生じる血液とは異なり、交換速度計算により、CD69- CD4 T細胞の肺滞留時間中央値は約2~3週である一方で、CD69+の対応物の肺滞留時間中央値は約7週であると決定した(図1B)。
【0059】
実施例2: 原理実証の肺特異的調節性T細胞増殖についてのトランスジェニックマウスモデル
約7週の肺滞留時間に基づいて、肺に存在する調節性T細胞集団を、IL-2の局所提供によって増殖させることができると推論された。この可能性を試験するために、IL-2が肺組織においてのみスイッチがオンになり得るIL-2発現用の遺伝子スイッチを開発した。構成的Rosa26プロモーター及びfloxed-stop発現系を用いて、Cre発現が細胞系列特異的IL-2発現を誘導するシステムを作製した。弱い内因性Rosa26プロモーターを用いて、IL-2発現が生理学的レベルのままであることを確実にした。実際、このシステムにおけるトランスジェニックIL-2発現は、従来のCD4 T細胞による天然IL-2生成の発現レベルのわずか約5%である(データ示さず)。肺特異的発現を誘導するために、この導入遺伝子をScgb1a1-ERT2Creトランスジェニックマウス系統と交差させ、細気管支非線毛クラブ細胞においてタモキシフェン誘導組み換えを可能にした。Scgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスをタモキシフェンで処置し、調節性T細胞数について評価し、該集団の肺特異的増殖を観察した(図2A及び2B)。血液、二次リンパ器官又は他の非肺組織内の調節性T細胞集団に主な変化は観察されなかった(図2A及び2B)。
【0060】
肺内のIL-2発現の動態を決定するために、タモキシフェンで処置したScgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスから、投与の0、1、4、7、15、21、29及び35日後にリンパ節組織を採取し、定量PCR(qPCR)によって分析した。データは、図2C及び2Dに示されており、同腹仔対照と比較して、Scgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスにおいてIL-2の肺特異的発現を示す(図2C)。投与後4日目から発現が検出され、分析の最終日の35日目に依然として検出可能である。発現ピークは、タモキシフェン投与後15日目である。同腹仔対照と比較して、Scgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスのリンパ節においてIL-2発現に有意差はない(図2D)。
【0061】
図2Eは、肺特異的IL-2発現後21日目に、肺内で調節性T細胞の最大増加が見られることを示す。肺内のTregの増殖の割合は、タモキシフェン投与後4日目から検出され、分析の最終日の35日目に同腹仔対照と比較して上昇したままである。これは、細胞数のわずかな遅延が予想される図2Cに見られるIL-2発現の動態と相関する。タモキシフェンを投与したマウスのリンパ節内のTregのパーセンテージには、経時的に有意な変化は見られなかった(図2F)。
【0062】
このデータは、IL-2の局所的な提供が、末梢で数を増やすことなく、肺の調節性T細胞集団を特異的に増殖させることができ、IL-2を、リンパ節などの末梢組織で発現させずに、肺で局所的に発現させることができることを示す。
【0063】
実施例3: 肺調節性T細胞の増殖はインフルエンザ感染中に炎症性浸潤を低下させる
肺特異的調節性T細胞増殖の呼吸器感染に対する防御効果を評価するために、Scgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスに、鼻腔内経路を介してマウスインフルエンザを感染させた。感染後に肺で炎症性好中球浸潤の慢性的な増加を示した野生型マウスとは異なり、Scgb1a1-ERT2Cre RosaIL2マウスは、疾患の規模と持続時間の両方の低下を示した(図3)。
【0064】
これらの結果は、肺標的化IL-2投与/送達が、呼吸器感染症の免疫病態を低下させる可能性を有することを示唆する。これは、調節性T細胞の肺特異的増殖を示す上記のデータと共に、全身性調節性T細胞負荷を高めることなく、免疫病態を軽減する可能性が達成されることを示す。
【0065】
実施例4: AAV6.2-mCC10-IL2の鼻腔内投与は肺内で調節性T細胞の局所増殖をもたらす
ウイルスベクターを用いてIL-2の特異的かつ局所的な送達能/発現能を試験するために、マウスに、本明細書上記のAAV6.2-mCC10-IL2又は対照PBSを鼻腔内投与し、投与後14日目に肺内の免疫細胞を分析した。対照PBSを投与したマウスと比較して、AAV6.2-mCC10-IL2を鼻腔内投与したマウスは、肺内でTregの割合の大幅な増加を示した(図4)。この増加は、リンパ節などの他の組織、又は末梢/血液では見られなかった。
【0066】
したがって、このデータは、IL-2が、AAV6.2などのウイルスベクターを用いて肺に局所的に送達され、肺内で特異的にTreg集団を増殖させ得ることを示す。このような肺特異的増殖は、肺ターゲティング部分と肺特異的プロモーターCC10の両方の使用と一致する。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
【国際調査報告】