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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】脊椎固定術のためのケージ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A61F2/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555215
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 IB2022051933
(87)【国際公開番号】W WO2022189921
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021000005372
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523341897
【氏名又は名称】クラウディオ ラマルティーナ
【氏名又は名称原語表記】LAMARTINA, Claudio
(71)【出願人】
【識別番号】523341901
【氏名又は名称】ペドロ ルイス ベルジャノ コキーラ
【氏名又は名称原語表記】BERJANO COQUILLAT, Pedro Luis
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ ラマルティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペドロ ルイス ベルジャノ コキーラ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA10
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC12
(57)【要約】
第1の椎体終板(1)に接触するための第1の表面(10a)および第2の椎体終板(2)に接触するための第2の表面(10b)であって、ケージの冠状断の高さ方向において互いに対向して配置されている第1の表面および第2の表面と、椎間板腔に入れるためのエントリーサイド(LI)と、椎間板腔への挿入方向においてエントリーサイドとは反対側のプッシングサイド(LS)とを備える本体(10)を有する脊椎固定術のためのケージであって、椎体終板に接触するための2つの対向する表面に、連続した方向ガイドリリーフ(11;111、211;311)を有し、方向ガイドリリーフは、ケージを第1の椎体終板と第2の椎体終板との間に挿入するのに適した移動軌跡に沿って、エントリーポイントから第1の椎体終板と第2の椎体終板との間の正確な終端位置まで、エントリーサイドから椎体終板間へのケージの挿入を受けて、ケージをガイドする、ケージ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の椎体終板(1)に接触するための第1の表面(10a)および第2の椎体終板(2)に接触するための第2の表面(10b)であって、ケージの冠状断の高さ方向(Z-Z)において互いに対向して配置されている第1の表面および第2の表面と、椎間板腔に入れるためのエントリーサイド(LI)と、前記椎間板腔への挿入方向において前記第1のサイドとは反対側のプッシングサイド(LS)とを備える本体(10)を有する脊椎固定術のためのケージであって、
前記ケージは、椎体終板に接触するための前記2つの対向する面(10a、10b)の少なくとも1つに形成された少なくとも1つの方向ガイドリリーフ(11;111;311)を有し、
前記少なくとも1つの方向ガイドリリーフ(11;111;311)は、前記ケージを前記第1の椎体終板(1)と前記第2の椎体終板(2)との間に挿入するために予め定義された移動軌跡に沿って、エントリーポイントから前記第1の椎体終板と前記第2の椎体終板との間の予め定義された正確な終端位置まで、前記プッシングサイドに対する作用によって前記エントリーサイドから前記椎体終板間への前記ケージの挿入を受けて、前記ケージをガイドするように構成され、配置されており、
前記少なくとも1つの方向ガイドリリーフ(11;111;311)は、傾斜した直線の展開部または少なくとも1つの傾斜した直線の部分を備えた混合展開部を有する連続したリリーフを備え、
前記少なくとも1つの方向ガイドリリーフ(11;111;311)は、前記ケージの接触面から、垂直の冠状方向(Z-Z)に0.5~4mmの高さで突出している、ケージ。
【請求項2】
ケージの冠状断の高さ方向(Z-Z)において互いに対向して配置された第1の接触面(10a)と第2の接触面(10b)と、椎間板腔に入れるためのエントリーサイド(LI)と、前記椎間板腔への挿入方向において前記エントリーサイドとは反対のプッシングサイド(LS)とを備える本体(10)を有する脊椎固定術のためのケージ用のアダプタープレート(110)であって、
前記アダプタープレート(110)は、椎体終板(1)に接触するための第1の表面(110a)および前記ケージの接触面(12a、12b)に接触するための第2の表面(110b)であって、前記プレート(110)の垂直の冠状断の高さ方向(Z-Z)において互いに対向している前記プレートの第1の接触面および第2の接触面と、前記椎間板腔に入れるためのエントリーサイド(LI)と、前記椎間板腔への挿入方向において前記エントリーサイドとは反対側のプッシングサイド(LS)とを有するプレート本体を備え、
前記アダプタープレート(110)は、傾斜した直線の展開部または少なくとも1つの傾斜した直線の部分を備えた混合展開部を有する、前記第1の接触面(110a)に形成された少なくとも1つの連続した方向ガイドリリーフ(211)を有し、前記少なくとも1つの方向ガイドリリーフ(211)は、前記プレートの前記第1の接触面から、垂直の冠状方向(Z-Z)に0.5~4mmの高さで突出しており、
前記プレートは、前記ケージ(12)と安定的に連結して、前記椎間板への挿入前に前記ケージと単一のモノリシック体を形成するように構成され、前記アダプタープレート(110)の前記少なくとも1つの方向ガイドリリーフ(211)は、前記ケージを前記第1の椎体終板(1)と第2の椎体終板(2)との間に挿入するのに適した予め定義された移動軌跡に沿って、エントリーポイントから前記第1の椎体終板と前記第2の椎体終板との間の予め定義された正確な終端位置まで、前記プッシングサイドに対する作用によって前記エントリーサイドから前記椎体終板間への前記ケージの挿入を受けて、前記ケージをガイドするように構成され、配置されている、アダプタープレート。
【請求項3】
前記少なくとも1つの方向ガイドリリーフ(11;111;311)は、前記ケージの前記接触面から、垂直の冠状方向(Z-Z)に2mm以下、好ましくは1~2mmの高さで突出している、請求項1に記載のケージまたは請求項2に記載のアダプタープレート。
【請求項4】
少なくとも1つ直線の部分と少なくとも1つの曲線の部分とを備えた混合展開部を有する方向ガイドリリーフ(311)を備える、請求項1もしくは3に記載のケージ、または請求項2もしくは3に記載のアダプタープレート。
【請求項5】
前記混合展開部を備えたリリーフ(311)は、好ましくは前記エントリーサイド(LI)の近位にある、第1の直線の部分(311a)と、前記直線の部分に接続した第2の曲線の部分(311b)とを備える、請求項4に記載のケージまたはアダプタープレート。
【請求項6】
前記方向ガイドリリーフは、前記エントリーサイド(LI)から前記プッシングサイド(LS)まで、前記表面(10a;10b)全体にわたって途切れなく延びる;または前記方向ガイドリリーフは、前記エントリーサイド(LI)から前記プッシングサイド(LS)まで、一部分にわたって延びる、請求項1および3~5のいずれか一項に記載のケージ、または請求項2~5のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項7】
前記対抗している接触面の少なくとも1つは、前記エントリーサイド(LI)から前記プッシングサイド(LS)へと傾きが大きくなる、請求項1および3~6のいずれか一項に記載のケージ、または請求項2~6のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項8】
互いに平行な複数の方向リリーフを備える、および/または少なくとも1つの前記方向リリーフは、概して三角形、好ましくは正三角形もしくは正方形、または四角形、長方形もしくは台形状の冠状面に沿った断面形状を有する、請求項1および3~7のいずれか一項に記載のケージ、または請求項2~7のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項9】
前記少なくとも1つの方向リリーフは、前記ケージへの連結ポイントにおいて1~4mmの幅を有し、前記椎体終板との接触ポイントにおいて0.5~4mmの幅を有する、請求項1および3~8のいずれか一項に記載のケージ、または請求項2~8のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項10】
前記方向ガイドリリーフの傾きの角度(α)は、5°~45°である、請求項1および3~9のいずれか一項に記載のケージ、または請求項2~9のいずれか一項に記載のプレート。
【請求項11】
前記ケージの冠状断の高さ方向(Z-Z)において互いに対向して配置された第1の接触面(10a)および第2の接触面(12b)と、前記椎間板腔に入れるためのエントリーサイド(LI)と、前記椎間板腔への挿入方向において前記エントリーサイドとは反対側のプッシングサイド(LS)とを備えるケージ本体(12)により形成され、
前記ケージ本体(12)の前記第1の接触面および第2の接触面(12a、12b)の少なくとも1つは、請求項2~10のいずれか一項に記載のアダプタープレートの前記第2の接触面(110b)と安定的に連結して、前記椎間板腔に挿入するための単一のモノリシック体を形成する、請求項1および3~10のいずれか一項に記載のケージ。
【請求項12】
前記アダプタープレートは、前記ケージ(12)の本体に機械的に連結する手段を備え、好ましくは以下の1つまたは複数を備える、請求項2~10のいずれか一項に記載のアダプタープレート、または請求項11に記載のケージ:
- 前記プレート本体の終端エッジから冠状方向に延びる1つまたは複数のエッジ110c、
- 特にネジまたはクリップタイプの、1つまたは複数の締結システム。
【請求項13】
前記アダプタープレートは、接触している前記ケージの表面全体を覆う、または前記アダプタープレートは、前記ケージの表面の一部のみを覆い;好ましくは、前記プレート本体は、前記ケージ本体の対応する幅よりも狭い幅を有する帯状である、請求項11または12に記載のケージ。
【請求項14】
側方(latero-lateral)から挿入するために、矢状寸法より大きい横断寸法を有する、請求項1および3~13のいずれか一項に記載のケージ。
【請求項15】
前後方向から挿入するために、矢状寸法と一致する横断寸法を有する、請求項1および3~13のいずれか一項に記載のケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎固定術のためのケージと、固定術のためのケージ用のアダプタープレートとに関する。
【0002】
脊柱のプロファイルは椎間板の形態によって決まり、このプロファイルは、とりわけ、関節症の形態、脊椎の変形、外傷、その他の要因の存在により変化し、その結果、椎間板はその正常な形態を失うことが脊椎病理学の技術分野で知られている。
【0003】
椎間板から生じる痛み、関節症、不安定性、骨折、仮関節、腫瘍などのさまざまな脊椎の病態を処置するため、隣接する椎骨間の融合(骨橋の形成)が外科的に誘発される脊椎固定と呼ばれる技術が存在すること、これらの変形が前記のかつ必要なプロファイルの変化を誘発することも知られている。
【0004】
脊椎固定は、椎骨間の融合を促進するのに適した骨統合材料から成る、または骨統合材料で満たされた、いわゆるケージを隣接する椎骨間に挿入することにより促進される。
【0005】
挿入が完了した時点でのケージにより仮定された、隣接する椎骨の椎体終板と接触する最終位置は、特に柱の適切な生体力学の回復およびインプラントの安定性に関して、患者の結果に大きな影響をもたらすことも知られている。
【0006】
これに関連して、椎間板内へのケージの挿入は、概してタッピング動作によって実施され、ケージの挿入軌跡は、挿入の開始ポイント、装入軸の方向、および抵抗が少ない軌跡を含む、複数の要因によって決まることが指摘される。
【0007】
しかしながら、正しく装入するために根本的に重要な要素は、椎間板内にケージが入るポイントである。
【0008】
これに関連して、操作者の挿入軌跡を指示する能力、従ってケージの最終的な位置決めは、上述した要素を管理する困難さ、ならびに、特に、理想的なエントリーポイントと、椎体間の異なる挿入ポイントを強いる構造のために操作者が採用せざるを得ないエントリーポイントとの間に位置している動脈、静脈、および神経などの解剖構造の存在により条件付けられるため、ケージが入るポイントはその理想的な位置とは異なる可能性があるという事実のために制限されることも知られている。
【0009】
従って、ケージが不正確な挿入ポイントから挿入されるため、操作の成果は、初めから困難なものになる。
【0010】
同様に、挿入ポイントが正確でも、位置が修正できない解剖構造の存在により条件付けられた挿入方向により、不適切な最終位置での挿入になる場合もある。
【0011】
挿入は、概して、インプラントのプッシングサイドと強固に連結するように構成された第1の端部と、操作者がタッピング/ハンマリング動作を実施する反対側の端部との間を延びる、縦に細長い形のガイドツールによって実施され、実質的に直線の方向の「プッシング」力および挿入軌跡によりインプラントが直線的に挿入され、ケージはタッピング軸に沿ってずれる。
【0012】
ケージ「G」が不正確なエントリーポイントから挿入され、非最適な終端位置に達する、先行技術に係る例が、図1に示されている。
【0013】
WO2011056172には、挿入端部と、挿入端部と反対側の、挿入ツールと係合するための端部と、互いに対向して位置し、それぞれが隣接する椎体終板と接触するように構成された第1の表面および第2の表面とを備える椎間インプラントが記載されている。
【0014】
スロットは、係合端部に形成され、前壁と後壁との間をそれらに沿って少なくとも部分的に連続的に延びる。回転ピンは、スロット内に位置決めされ、挿入中、インプラントを回転させるように設計された挿入器具と回転結合するように構成されている。
【0015】
複数の歯を形成するように断続的な、複数の不連続の曲線のリリーフが、インプラントの上面および底面に配列されている。
【0016】
上部および底部のリリーフの歯が椎体の終板と接触することにより、ガイドツールの回転によりインプラントが回転し、挿入端部が椎間板腔内を進行している間、インプラントの挿入軌跡がガイドされる。断続的なリリーフにより形成された歯は、溝を形成し、インプラントの安定化に有利に働くように、椎体を掴むように設計されている。
【0017】
このインプラントおよび挿入ツールにより、挿入中にインプラントがある程度回転することが可能になるが、これらは、回転可能に接続できるツールを必要とし、挿入ポイントが理想的なポイントに対してずれているときは不十分となる。さらに、歯は、安定化作用を増加させるために椎体終板に食い込むため、損傷を与えるリスクがある。
【0018】
例えば、US2014-364917により知られる、椎間インプラントを挿入する技術の更なる例には、インプラントの位置決めに続いて、インプラントに安定して結合され、インプラントを椎体に固定する別々の安定化要素を挿入するために、椎体終板に深い溝を形成することが含まれる。
【0019】
これらの既知の技術では、不正確な挿入軌跡または好ましくないエントリーポイントの問題は解決されず、それに加えて、椎体終板に深く切り込みを入れる必要があり、椎体が破損することもある。
【0020】
そのため、課されている技術的な問題は、より簡単でより正確な挿入を可能にし、特に、挿入中、不正確なエントリーポイントの場合、または理想的なエントリーポイントとは異なる場合、または非最適な挿入角度の場合でも、椎体と椎間板の内部との間の正確な位置に単独で配置されるのに適したケージを設計することである。
【0021】
この問題に関連して、ケージは、ケージがその間に挿入される椎体の骨への損傷および骨の破損を避けることが可能であるべきことも求められる。
【0022】
特に、インプラントは、骨に事前に溝を形成する必要がなく、製造が容易で安価であり、通常の標準化された挿入手段を使用して椎間板に容易に挿入できることが望ましい。
【0023】
これらの結果は、本発明によれば、請求項1の特性に従った脊椎固定処置のためのケージにより得られる。
【0024】
このようなケージは、第1の椎体終板に接触するための第1の表面および第2の椎体終板に接触するための第2の表面であって、ケージの冠状断の高さ方向において互いに対向して配置されている第1の表面および第2の表面と、椎間板腔に入れるためのエントリーサイドと、椎体終板間への挿入方向においてエントリーサイドとは反対側のプッシングサイドとを備える本体を有する。ケージは、椎体終板に接触するための2つの対向する表面の少なくとも1つに、少なくとも1つの連続した方向ガイドリリーフ(またはキール(keel))も有する。ガイドリリーフまたはキールは、ケージを第1の椎体終板と第2の椎体終板との間に挿入するのに適した予め定義された移動軌跡に沿って、エントリーポイントから第1の椎体終板と第2の椎体終板との間の予め定義された正確な終端位置まで、プッシングサイドに対する作用によってエントリーサイドから椎体終板間へのケージの挿入を受けて、ケージをガイドするために構成され、配置されている。
【0025】
本発明によれば、ケージは、傾斜した直線の展開部または少なくとも1つの傾斜した直線の部分を備えた混合展開部を有する連続したリリーフを備える。少なくとも1つの方向ガイドリリーフは、ケージの接触面から、垂直の冠状方向に0.5~4mm、好ましくは2mm以下、特に1~2mmの高さで突出していることによっても特徴付けられている。
【0026】
ガイドリリーフまたはキールの設計および開発により、少なくとも2つの構成要素にプッシング力が分配され、その結果、直線の軌跡からケージ全体が徐々に逸脱するような、挿入の直線方向の変化が判明し、エントリーポイントから正確な終端位置への修正された挿入軌跡が定義される。
【0027】
特に、キールの設計および傾斜したまたは傾斜した直線の部分を有する直線の展開部により、直線の挿入軌跡からケージが徐々に逸脱し、タッピング軸に沿ったケージの変位のための構成要素に、タッピング軸に対して直角の変位要素が追加される。
【0028】
この少なくとも1つのガイドリリーフの構成、および高さの減少のため、実質的に骨の海綿状部分に侵入することなく、椎体終板の骨の表面部分のみに、できるだけ少なく影響を与え、所望の挿入軌跡を得ることができる。その結果、損傷のリスクが低減し、椎体の骨折が回避される。リリーフの傾きにより、その層状構造に平行な方向において骨の海綿状部分にストレスを与えることも避けられ、損傷のリスクが更に低減される。
【0029】
これらの効果は、ガイドツールとケージとの間の自由度(回転)をもたらす必要なく、有利に得られる。
【0030】
本発明に係るケージは、そのため、理想的ではないエントリーポイントまたは直線の挿入軌跡の場合も、椎体に損傷を与えたり、椎体を破損させたりすることなく、正確な位置決めを保証することができる。
【0031】
好適な実施形態においては、方向ガイドリリーフは、直線の展開部または少なくとも1つの直線の部分と少なくとも1つの曲線の部分とを備えた混合展開部を有してよく、各解決策は、椎間腔へのケージのエントリー軌跡の、対応する適切な修正を判断するように設計されている。
【0032】
好ましくは、混合されたプロファイルリリーフは、エントリーサイドの近位にある第1の傾斜した直線の部分と、直線の部分に接続された第2の曲線の部分とを備える。曲線の部分の機能は、挿入軌跡に沿ってケージを回転させることである。
【0033】
本発明に係るケージの更なる好適な実施形態によれば、方向ガイドリリーフは、エントリーサイドからプッシングサイドまで接触面の表面全体にわたって途切れなく延びる、あるいは、方向ガイドリリーフは、エントリーサイドからプッシングサイドまで一部分にわたって延びる。長さおよび傾きの角度が異なるリリーフを構成することにより、エントリー軌跡のさまざまな修正が可能になる。
【0034】
本発明に係るケージの対向する面の傾きが、エントリーサイドからプッシングサイドへと大きくなることも想定される。
【0035】
好適な実施形態によれば、ケージは、側方(latero-lateral)から挿入するためには、冠状寸法より大きい横断寸法を、または前後方向から挿入するためには、冠状寸法と一致する横断寸法を有すると想定される。
【0036】
本発明に係るケージは、前方、斜め前方、側方、斜め側方、後方、斜め後方からの挿入のため、および/または直線のガイド軌跡もしくは曲線のガイド軌跡またはその組み合わせにより、有利に設計され、構成されてよい。
【0037】
本発明の更なる態様は、脊椎固定術のためのケージ用のアダプタープレートに関する。これにより、ガイドリリーフを有さない従来のケージに、本発明に係るケージに関連して記載されている有利な特徴に従った少なくとも1つの方向ガイドリリーフを備える、椎体終板と接触するための表面をもたらすことにより、従来のケージを適応させることができる。
【0038】
更なる詳細は、添付の図面を参照して提供される本発明の主題の実施形態の非限定的な例についての以下の記載から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】先行技術に係るインプラントの平面図である。
図2】先行技術に係る椎骨を方向付けする面および軸の斜視図である。
図3図3a~図3cは、先行技術に係る、矢状面に対して隣接する椎骨が取りうる位置付けの平面図である。
図4図4a~図4bは、先行技術に係る、冠状面に対して隣接する椎骨が取りうる位置付けの平面図である。
図5】本発明に係るケージの実施形態の第1の例のモデルの平面図である。
図6図5に記載のケージモデルの斜視図である。
図7】本発明に係るケージの実施形態の第2の例のモデルの平面図である。
図8】本発明に係る部分的な傾斜したキールを備えたケージの第1の例の平面図である。
図9】本発明に係るケージの第2の例のモデルの斜視図である。
図10】側方から挿入する場合の本発明に係るケージの実施形態の一例の平面図である。
図11】前後方向から挿入する場合の本発明に係るケージの実施形態の第1の例の平面図である。
図12】前後方向から挿入する場合の本発明に係るケージの実施形態の第2の例の平面図である。
図13】混合プロファイルキールを備えて、側方から挿入する場合の本発明に係るケージの実施形態の更なる例の上から見た図である。
図14】本発明に係る第1のアダプタープレートと第2のアダプタープレートとを備える本発明に係るケージの実施形態の一例の分解斜視図である。
図15】アダプタープレートを備えた組立構成における、図14に記載のケージの中間線Tに沿って走る冠状-矢状面に沿った断面図である。
図16】本発明に係るケージの左手側方からの挿入の場合の連続図である。
【0040】
図2に示すように、単に本発明に係るケージの実施形態の例の記載を理解しやすくするため、椎体1および椎間板(図示せず)に関係する以下の平面および軸を以下に定義する:
- 横断面PT:椎間板の上に位置している椎骨の底部の椎体終板、および椎間板の下に位置している椎骨の上部の椎体終板に平行;
- 矢状面PS:横断面PTに対して直角であり、椎骨の前後方向に沿った向き;
- 冠状面PC:横断面に対して直角であり、椎骨の横(latero-lateral)方向に沿った向き;
- 垂直軸Z-Z:横断面に対して直角;
- 矢状軸Y-Y:横断面に含まれ、椎骨の前後方向軸に平行;
- 横断軸X-X:横断面に含まれ、椎骨の横(latero-lateral)方向に沿った向き、かつ矢状軸に垂直。
【0041】
以下の図3a~図4bは、矢状面(中立、前弯、または後弯の冠状アライメント)または冠状面(中立または側弯の冠状アライメント)に関して、2つの隣接する椎骨1、2が、とりわけ、それらの間に位置している椎間板の状態の悪化の結果として、有しうるさまざまな状態も示す。
【0042】
図5および図6を参照すると、椎間腔へのケージのエントリーサイドLI、および椎骨間にケージを挿入させるためのケージの反対側のプッシングサイドLSが定義された、本発明に係る脊椎固定処置用のケージモデルの第1の例は、冠状の高さ方向Z-Zにおいて適切な厚さを有する本体10を備える。本体10は、冠状方向Z-Zにおいて対向する表面、すなわち上部の表面10aおよび底部の表面10bを有する。上部の表面10aおよび底部の表面10bの各々は、底部の椎体1および上部の椎体(図示せず)の各椎体終板と接触するのに適しており、ケージは、底部の椎体1および上部の椎体間に挿入される。
【0043】
図示された第1の例においては、2つの表面10a、10bは、実質的に平らである。冠状方向Z-Zのケージの厚さは、他の2つの寸法より小さく、インプラントによりもたらされる必要がある椎間腔のプロファイルの補正の程度に比例する。
【0044】
好適な実施形態によれば、ケージの2つの対向する面10a、10bは、互いに平行であってよく、特に、中立の矢状アライメント状態(図3a)および/または中立の冠状アライメント状態(図4a)において椎骨間に挿入されることに適していることが想定される。
【0045】
更なる好適な実施形態によれば、椎体終板と接触する、対向する面10a、10bは、2つのうち少なくとも1つの傾きが、エントリーサイドLIからプッシングサイドLSまで、もう一方に対して5~30度の角度に等しくなってよい。この傾きは、隣接する椎骨のさまざまな状態に対応するように構成されてよく、矢状面を参照すると、前弯の状態(図3b)または後弯の状態(図3c)を有し、冠状面を参照すると、側弯の状態を有しており、これらは、適切に処置され、補正されなければならない。
【0046】
本発明によれば、隣接する椎骨と接触するための2つの表面10aまたは10bの少なくとも1つは、その表面の少なくとも一部に沿って延び、ケージがプッシングサイドにおけるプッシング動作、特にタッピングによってエントリーサイドから挿入されたとき、エントリーポイントから第1の椎体終板と第2の椎体終板との間の予め定義された正確な終端位置まで、椎間板内への挿入中、予め定義された移動軌跡に沿ってケージをガイドするための方向ガイド機能を有する、少なくとも1つの連続したリリーフ11(以下「キール」とも呼ばれる)を備えると想定される。
【0047】
より詳細には、キールの設計および開発は、プッシング力が2つの構成要素に分配されるように意図され、その結果、挿入方向が変化するように設計されることで、挿入軌跡が修正され、エントリーポイントが理想的でない場合でも、エントリーポイントと正確な終端位置との間で、挿入/タッピング軸からケージ全体を徐々に逸脱させる。
【0048】
本発明に係る第1の実施形態においては、キール11は、エントリーサイドLIからプッシングサイドLSまで、鋭角αの傾きを有する、直線の展開部を有する。
【0049】
図9図11に示すように、傾きの角度αは、接触面の平面において、挿入サイドからプッシングサイドをつなぐケージの側面または軸に対して測定されてよい。
【0050】
ケージの好適な実施形態によれば、以下のことが想定される:
- キール11は、ケージの横断方向X-Xの長さの一部、好ましくは半分~3分の2に沿ってのみ延び(図5図6図7図8)(部分的なキール)、この場合、接触面のキールがない部分は、エントリーサイドの近位にある終端、すなわち、椎間腔にまず初めに挿入される終端に対応することになり、この構成は、挿入軌跡を少なくおよび/または部分的に逸脱させるのに適している;
- ケージは、1つまたは複数の方向キールにより占有されていないゾーンに形成された、隣接する椎体の椎体融合に有利に働くように設計されている1つまたは複数の孔を有する;
- キール111は、ケージの全長にわたって延び(図9図10図11図12)(完全なケール);この解決策によれば、同一の角度αの場合、挿入軌跡のより大きな補正が可能になる。
【0051】
好適な実施形態によれば、キールは、混合展開部(図13)、すなわち、少なくとも第1の部分にわたり、好ましくはエントリーサイドLIの近位にある、直線の展開部311aと、第1の部分に接続された第2の部分にわたる曲線の展開部311bとを有してよい。
【0052】
曲線のプロファイルを備えた部分の機能は、挿入軌跡に沿ってケージを回転させ、不正確な初期挿入状態または直線の挿入軌跡を許容しない解剖構造による、不正確な挿入アライメントを補正することである。
【0053】
更なる好適な実施形態によれば、ケージは、互いに平行な複数の方向キールを有することが想定される。複数のキールの使用は、椎体終板への損傷のリスクの低減に役立つ。
【0054】
本発明によれば、ガイドキールは、ケージの表面から、垂直/冠状方向Z-Zに0.5~4mm、好ましくは2mm以下、特に1~2mmの高さで突出することが想定される。1つまたは複数の方向キールの高さが小さいことにより、椎体の骨に大きく影響を与えることなく、ガイド動作が保証される。特に、椎体におけるキールのいかなる動作も、非常に脆弱な層状構造を有する椎体の海綿状部分に接触することなく、椎体終板の表面、または何れの場合にもその冠状部分に限定される。この効果は、薄層の向きに平行な方向において海綿状部分にストレスを与えないようにする、キールの傾斜した直線のプロファイルにより相乗的に支援される。
【0055】
更なる好適な実施形態によれば、以下のことが想定される:
- ガイドキールは、概して三角形、好ましくは正三角形もしくは直角三角形、または四角形、長方形、もしくは台形状の冠状面に沿った断面を有する;および/または
- ケージへの連結ポイントの幅が1~4mmであり、椎骨との接触ポイントの幅が0.5~4mmである;および/または
- 側方から挿入するケージの場合(図1図6)、角度αは5°~45°であり;挿入軌跡の補正が大きくなるのに対応して、角度が広くなる;および/または
- 前後方向から挿入するケージの場合(図11図12)、ガイドキールと装入軸との間の角度αは5°~45°である。
【0056】
本発明によれば、ケージは、前方、斜め前方、側方、斜め側方、後方、斜め後方からの挿入に適したように、ずれた直線のガイド軌跡または直線と曲線との混合のガイド軌跡を有して提供されてよい。
【0057】
より詳細には、図面を参照すると、以下のものがある:
- 左から右へ(図5図7図9)または右から左へ(図8図10図13)、側方から挿入するための部分的なキールまたは完全なキールを備えたケージの例;
- 前後方向から挿入するための(図11図12)それぞれ部分的なキールまたは完全なキールを備えたケージの例;
- 脊柱の周囲の解剖学的な状態によって課される実際のエントリーポイントによって決まる実施形態のいずれか1つの使用。
【0058】
本発明の更なる態様は、脊椎固定術のためのケージ用のアダプタープレートに関する。
【0059】
図14および図15を参照すると、ケージは、ケージの冠状の高さ方向Z-Zにおいて互いに対向して位置している第1の表面12aおよび第2の表面12bと、椎間板に入れるためのエントリーサイドLIと、概して、タッピング軸に沿ったタッピングによる、挿入の押し込む力を受け止めるためのガイドツールと係合するのに適した、椎間板の空間への挿入方向においてエントリーサイドと反対側のプッシングサイドLSとを備える本体12を備えた従来のケージであってよい。
【0060】
図14および図15に示すように、本発明に係るアダプタープレート110の一例は、第1の椎体終板と接触するための第1の表面110aおよびケージ12と接触するための第2の表面110bであって、プレートの垂直の冠状の高さ方向Z-Zにおいて互いに対向して配置されている第1の表面および第2の表面と、椎間板腔に入れるためのエントリーサイドLIと、椎間板腔への挿入方向においてエントリーサイドと反対側のプッシングサイドLSとを備えたケージ本体を備える。
【0061】
プレート本体110の形態は、好ましくは、その幅より大きい長さを有して平坦であるが、垂直方向Z-Zにおいて1つまたは複数の傾きの変化部を有し、対応する傾きの変化部を備えたケージの表面に適応するようにしてよい。
【0062】
プレートの第1の表面110aは、本明細書に記載の有利な特性の1つまたは複数に従った、表面から突出する少なくとも1つの方向ガイドリリーフまたはキール211を有する。
【0063】
方向キール211は、特に、第1の表面11aにおいてプレート本体と同一の材料からなり、同一のプレート本体と単一の本体を形成する。キール211は、好ましくは三角形、長方形、または台形の断面を有してよい。
【0064】
使用中、ケージ12と接触するのに適した、プレートの第2の表面110bは、プレートの第1の表面12aまたは第2の表面12bに結合される。そのため、ケージ12およびプレート100は、一緒に連結され、椎間板に挿入する前に単一のモノリシック体を形成する。連結操作は、例えば、溶接もしくは接合もしくは機械的に、またはそれらの組み合わせによって実施されてよい。
【0065】
図14および図15に示すように、ケージ12に連結させる手段は、プレート本体の終端エッジから、冠状方向に延びる1つまたは複数のエッジ110cを備え、プレート110をケージ12に機械的に固定するようにしてよい。
【0066】
代替的にまたは加えて、プレート110をケージに連結する手段は、ケージへのまたはケージ12の反対側の表面に結合された反対側のプレート110への機械的な結合を行うための任意のシステムを備えてよい。好適な固定システムは以下のとおりである:
・プレートを通過し、ケージと係合する固定ネジをそれぞれ備えた1つまたは複数の孔;
・プレートおよびケージを通過し、反対側の第2のアダプタープレートと係合する固定ネジをそれぞれ備えた1つまたは複数の孔;
・ケージまたは反対の側面のプレートに固定するためのネジ用の孔を備えたリリーフ;
・プレートおよび/またはケージの表面に取り付けられたクリップ。
【0067】
一旦連結がなされると、プレートの第1の表面は、第1の椎体終板と接触するためのケージの第1の表面を形成し、本発明に係るケージの実施形態の好適な例に関連して上述したものと同一の方向ガイドの利点をもたらす。
【0068】
プレートは、骨と接触することを意図したケージの全面を覆ってもよいし、その一部のみを覆ってもよい。好適な実施形態においては、プレート本体は、特に、ケージ12の対応する幅よりも小さい幅を有する帯の形態であり、傾斜した方向ガイドリリーフ、または少なくとも帯の第1の表面に形成された傾斜した部分を有する。
【0069】
プレートは、滑らかな表面または粗い表面を有してよく、好ましくは骨伝導性材料および/または骨統合材料からなる。
【0070】
図16(a)および図16(b)は、左から右へ側方から入れる場合の本発明に係るケージをはめ込む順序を示す。挿入のとき、ケージは、上部の接触面から突出するキール111と単一のモノリシック体を形成する。ケージは、単一の本体として形成されてもよいし、ベースのケージ12を、方向ガイドリリーフ211を有する1つまたは2つのアダプタープレートと連結させ、単一のモノリシック体の形態のケージが得られるようにしてもよい。
【0071】
図に示すように、ケージは不正確な位置から入れられ(図16(a))、椎骨間に入ると(説明を簡単にするため、底部の椎骨のみを示す)、ケージはキールにガイドされて、正確な終端位置(図16(b))、すなわち椎間腔内の中央位置に到達するまで椎骨間を滑らかに移動する。これは、脊柱の正確な生体力学を回復させるのに有効である。
【0072】
従って、操作者が理想的なエントリーポイントで正確な位置決めを行うのを妨げるような骨、神経、もしくは血管構造および/または他の解剖学的な要素の存在により邪魔されてしまい、挿入ポイントが非最適である場合に、前後方向、側方、および斜めから、本発明に係るケージが、的確で正確な椎間挿入を達成するという技術的な問題を解決可能な方法は明らかであり、これにより、椎体を損傷させたり、破損させたりすることなく、複雑な係合システムを備えたガイドツールまたはケージを必要とすることなく、ケージおよびツールの相対的な動きに自由度がもたらされる。
【0073】
本発明に係るケージは、椎間プロテーゼ、および人工股関節、人工肩関節、人工膝関節を対象とした使用、ならびに/または前捻を調節することにも適している。
【0074】
本発明を実施するための多数の実施形態および多数の好適な例に関して説明してきたが、本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ判断されることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16a)】
図16b)】
【国際調査報告】