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特表2024-508994包装済み物品を消毒、特に滅菌するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】包装済み物品を消毒、特に滅菌するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20240220BHJP
   A61L 2/14 20060101ALI20240220BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20240220BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20240220BHJP
【FI】
A61L2/20
A61L2/14
A61L101:22
A61L101:10
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023557300
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022057030
(87)【国際公開番号】W WO2022195029
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102021106664.6
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500321346
【氏名又は名称】プラズマトリート ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PLASMATREAT GMBH
【住所又は居所原語表記】Queller Str. 76-80,D-33803 Steinhagen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ブスケ
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA05
4C058AA12
4C058BB06
4C058BB07
4C058DD03
4C058JJ14
4C058KK06
(57)【要約】
本発明は、容器(202)内の物品(210)を消毒、特に滅菌するための方法であって、細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性であるとともにガス透過性部分(204)を有する容器(202)内に包装された物品(210)が提供され、プラズマ源(2、32、118、318、618)によって反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)が生成され、この反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)に容器(202)のガス透過性部分(204)が暴露される、方法に関する。本発明は更に、容器(202)内の物品(210)を消毒、特に滅菌するための方法であって、細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性である容器(202)内に包装された物品(210)が提供され、放電領域(406、506)内に放電(412、413、512)が生成され、中に物品(410)の包装された容器(202)が放電領域(406、506)を通して搬送される、方法に関する。本発明は更に、適切な装置(100、300、400、450、500、550)およびこれらの方法を実行するための装置の使用に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(202)内の物品(210)を、特に請求項18~22の何れか一項に記載の装置(100、300、600)を使用して消毒、特に滅菌するための方法であって、
- 細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性であるとともにガス透過性部分(204)を有する容器(202)内に包装された物品(210)が提供され、
- プラズマ源(2、32、118、318、618)によって反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)が生成され、
- 前記反応性ガス、特に前記反応性ガス流(26、38、120、620)が前記容器(202)の前記ガス透過性部分(204)に衝突させられる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記反応性ガスとして、大気反応性ガス、特に大気反応性ガス流(26、38、120、620)が生成されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記反応性ガス、特に前記反応性ガス流(26、38、120、620)は、ガス中、特にガス流中での電極間の高周波アーク状放電によって、または、ガス中、特にガス流中での誘電体バリア放電によって生成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の方法であって、前記反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)に水蒸気が付加されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記容器(202)の前記ガス透過性部分(204)に衝突させられる際、前記反応性ガスの、特に反応性ガス流(26、38、120、620)の相対湿度は、100%RH未満であり、好ましくは60~80%RHの範囲内であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の方法であって、前記反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)に、反応物が、特に有機反応物または過酸化水素が付加されることを特徴とする方法。
【請求項7】
容器(202)内の物品(210)を、特に請求項23~29の何れか一項に記載の装置(400、450、500、550)を使用して消毒、特に滅菌するための方法であって、
- 細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性である容器(202)内に包装された物品(210)が提供され、
- 放電領域(406、506)内に放電(412、413、512)が生成され、
- 中に前記物品(410)の包装された前記容器(202)が前記放電領域(406、506)を通して搬送される、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記容器(202)がガス透過性部分(204)を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法であって、前記放電領域(406、506)内に誘電体バリア放電(412、413、512)が生成されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7~9の何れか一項に記載の方法であって、前記放電(412、413、512)は、少なくとも1つの電極(402、502)と少なくとも1つの対向電極(404、452)との間に生成され、中に前記物品(210)の包装された前記容器(202)は、前記少なくとも1つの電極(402、502)と前記少なくとも1つの対向電極(404、452)との間を通して搬送されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7~10の何れか一項に記載の方法であって、前記放電領域(406、506)内へ窒素および/または希ガスが導入されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)の前記ガス透過性部分(204)は、少なくとも部分的に不織布から、特にプラスチック不織布から形成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)は、液体水に対して少なくとも外側からほとんど透過性ではない、あるいは不透過性であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)は、前記物品(210)を収容するための、特にプラスチックの成形体(206)と、ガス透過性材料の、特に不織布の蓋(212)とを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)は、中に前記物品(210)の配置される、ガス雰囲気(213)を有する収容空間(208)を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)内に包装された前記物品(210)は事前に湿潤される、および/または、中に前記物品(210)の配置される前記容器(202)の収容空間(208)内の前記ガス雰囲気(213)は、20℃にて計測して少なくとも60%RHの、好ましくは少なくとも70%RHの相対湿度を有することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載の方法であって、前記物品(210)は、医薬品、医療製品、特に医療デバイス、または保護具であることを特徴とする方法。
【請求項18】
包装済み物品(200)を消毒、特に滅菌するための、特に請求項1~6または12~17の何れか一項に記載の方法を実行するための装置(100、300、600)であって、
- 処理領域(103、303、603)を有し、
- 包装済み物品(200)を前記処理領域(103、303、603)を通して搬送するように構成される搬送システム(114、314、614)を有し、および、
- 反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)を生成するように構成されるプラズマ源(2、32、118、318、618)を有し、
- 前記プラズマ源(2、32、118、318、618)と前記処理領域(103、303、603)とは、動作中に前記プラズマ源(2、32、118、318、618)により生成される前記反応性ガス(26、38、120、620)、特に、動作中に前記プラズマ源(2、32、118、318、618)により生成される前記反応性ガス流(26、38、120、620)が前記処理領域(103、303、603)に達するように、互いに関連して配置される、装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置であって、前記装置(100、300、600)が、入口(106、306、644)および出口(108、308、646)を備えた前記処理領域(103、303、603)を含む処理室(104、304、642)を含み、前記搬送システム(114、314、614)が、包装済み物品(200)を前記入口(106、306、644)から前記出口(108、308、646)へ前記処理室(104、304、604)を通して搬送するようになっていることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置であって、前記処理室(104、304、604)および前記搬送システム(114、314、614)は、前記搬送システム(114、314、614)により前記処理室(104、304、642)を通して搬送される包装済み物品(200)の前記処理室(104、304、642)内での滞留時間が、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、特に少なくとも30分になるように適合されることを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項19または20に記載の装置であって、前記処理室(104、304、642)の前記入口(106、306、644)の上流に、および/または前記処理室(104、304、642)の前記出口(108、308、646)の下流にエアロック室(110、310;112、312)が配置され、前記エアロック室(110、310;112、312)は、好ましくは、前記エアロック室(110、310;112、312)からガスを吸引するように構成される吸引デバイス(130)を有することを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項18~21の何れか一項に記載の装置であって、前記装置(100、300、600)は、前記搬送システム(114、314、614)の区域(617)に対向して配置されるガス案内面(632)を含み、前記ガス案内面(632)と、前記搬送システム(114、314、614)の前記区域(617)を通して搬送される包装済み物品(200)との間の領域(636)に、動作中に生成される前記反応性ガス(26、38、120、620)、特に前記生成される反応性ガス流(26、38、120、620)が入り込むように前記プラズマ源(2、32、118、318、618)が配置されることを特徴とする装置。
【請求項23】
包装済み物品(200)を消毒、特に滅菌するための、特に請求項7~17の何れか一項に記載の工程を実行するための装置(400、450、500、550)であって、
- 電極(402、502)および対向電極(404、452)を有し、
- 前記電極(402、502)と前記対向電極(404、452)との間に配置される放電領域(406、506)を有し、および、
- 前記電極(402、502)と前記対向電極(404、452)との間に配置される誘電体(410、510)を有し、
- 前記放電領域(406、506)内に放電(412、413、512)を生成するために前記電極(402、502)と前記対向電極(404、452)との間に高周波数電圧を印加することができる、装置であって、
- 前記装置(400、450、500、550)が、包装済み物品(200)を前記放電領域(406、506)を通して搬送するように構成される搬送システム(414)を含むことを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置であって、前記電極(402、502)、前記対向電極(404、452)、および前記誘電体(410、510)は、前記放電領域(406、506)内に誘電体バリア放電(412、413、512)を生成するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項23または24に記載の装置であって、前記電極(402)および/または前記対向電極(404)は平板電極として形成されることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項23~25の何れか一項に記載の装置であって、前記装置(500、550)は、複数の、好ましくは棒形の電極(502)を含むことを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項23~26の何れか一項に記載の装置であって、前記搬送システム(414)は、包装済み物品(200)を前記放電領域(406、506)を通して搬送するように構成される可動コンベヤベルト(416、452)を含むことを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項27に記載の装置であって、前記コンベヤベルト(416、452)は、前記電極、前記対向電極または前記誘電体を形成することを特徴とする装置。
【請求項29】
請求項23~28の何れか一項に記載の装置であって、前記装置(400、500)は、中に前記放電領域(406、506)の配置されるトンネル(420)を備えたハウジング(418)を含む、あるいは、前記装置(450、550)は、前記放電領域(406、506)に配置される吸引フード(454)を含むことを特徴とする装置。
【請求項30】
包装済み物品(200)を消毒、特に滅菌するための、請求項18~29の何れか一項に記載の装置(100、300、400、450、500、550)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の物品を消毒、特に滅菌するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、医療デバイスおよび同等のもの等、無菌物品の包装容器は通常、当該物品を滅菌し、その後それらを無菌環境条件下で包装することにより実施される。包装時に必要となる無菌環境条件は、包装工程の労力および費用を増加させることがある。
【0003】
無菌物品を包装容器内での酸化エチレンガス滅菌によって滅菌することも知られている。この工程中、ガス透過性容器内に包装された無菌物品が酸化エチレン雰囲気に数時間暴露される。その後、有毒な酸化エチレンは容器から完全に除去されねばならないが、このことには通常数時間かかる。したがって、酸化エチレンガス滅菌は、非常に時間のかかる複雑な工程であり、酸化エチレンを使用する故に、専門企業により大規模施設においてのみ実行される危険な工程でもある。
【0004】
この背景に対して、本発明は、例えば小規模なシステム内でも、より容易に、および/またはより短時間で、包装済み滅菌物品を準備することのできる方法および装置を提供するという目的に基づく。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本開示の第1の態様によれば、容器内の物品を消毒、特に滅菌するための方法であって、細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性であるとともにガス透過性部分を有する容器内に包装された物品が提供され、このガス透過性部分においてプラズマ源によって反応性ガス、好ましくは反応性ガス流が生成され、この反応性ガス、特に反応性ガス流が容器のガス透過性部分に衝突させられる、方法により解決される。
【0006】
プラズマ源により生成される反応性ガスが容器のガス透過性部分に衝突させられると容器に反応種が入り込み、そこに包装された物品、例えば医薬品または医療デバイスを消毒、特に滅菌できるということが判った。これにより、容器内の物品を滅菌することができるため、包装中の無菌取扱いはさほど重要でなくなり、あるいは場合によって不要にさえなり、それにより包装工程が簡素化される。
【0007】
本方法では、細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性である容器内に包装された物品が提供される。この目的のために、容器は、包装済み物品を特に完全に封入する。容器は、バクテリアに対して不透過性であるようなものであってもよい。加えて、容器は、ウイルスに対しても不透過性であるようなものであってもよい。これにより、バクテリアおよび/またはウイルスの侵入の故に物品が無菌でなくなることなく、物品を容器内に長期間保管することができる。
【0008】
容器はガス透過性部分を有する。特に、容器の一部がガス透過性であってもよく、あるいは、容器は完全にガス透過性であってもよい。例えば、ガス透過性部分は、ガスが通過できるのに十分大きな、ただしバクテリアおよび/またはウイルスが容器に入り込むのを防止するには十分小さな孔を有してもよい。
【0009】
本方法では、プラズマ源によって反応性ガス、特に反応性ガス流が生成される。反応性ガス、特に反応性ガス流は、特に以下の種、つまり、完全にまたは部分的にイオン化された原子および/または分子、励起された原子および/または分子、反応性原子および/または分子、例えばオゾンまたは窒素酸化物、のうちの1つ以上を含んでもよい。反応性ガス、特に反応性ガス流は、特にプラズマにより生成される有機過酸化物およびラジカルをも含有してもよい。特に、反応性ガスは、反応性ガス流として生成することができる。これにより、ガス流は容器上へ直接向けることができる。
【0010】
本方法では、反応性ガス、特に反応性ガス流が、容器のガス透過性部分に衝突させられる。この目的のために、反応性ガス流を容器上へ、特に容器のガス透過性部分上へ直接向けることができる。更に、反応性ガス流は、容器の置かれている処理領域内へ導入することができる。
【0011】
上記の目的は、本開示の第1の態様によれば、包装済み物品を消毒、特に滅菌するための、特に、前述した方法またはその実施形態を実行するための装置であって、処理領域を有し、包装済み物品をこの処理領域を通して搬送するように構成される搬送システムを有し、および、反応性ガス、特に反応性ガス流を生成するように構成されるプラズマ源を有し、プラズマ源と処理領域とは、動作中にプラズマ源により生成される反応性ガス、特に、動作中にプラズマ源により生成される反応性ガス流が処理領域に達するように、特に処理領域内へ導入されるように、互いに関連して配置される、装置により更に解決される。
【0012】
本開示の第1の態様による上記の方法は、本開示の第1の態様による上記の装置を使用すれば、連続工程において効果的に実施できることが判った。
【0013】
処理領域は、特に、処理室により封入されてもよい。処理領域は、処理室の空間の全部または一部を占有してもよい。好ましくは、装置は、処理領域を含むとともに入口および出口を有する処理室を含む。更に、搬送システムは、好ましくは、包装済み物品を入口から出口へ処理室を通して搬送するようになっている。処理室は、例えば、入口と出口との間に延在する処理トンネルであってもよい。
【0014】
搬送システムは、例えば、包装済み物品を搬送することのできる1つ以上のコンベヤベルトを有してもよい。更に、搬送システムは、物品の包装容器およびその後の容器内の物品の消毒、特に滅菌をインラインで行うことができるよう、包装ラインに一体化することができる。
【0015】
プラズマ源は、特に、ノズル開口部を備えたプラズマノズルであってもよい。このノズル開口部から、動作中に反応性ガス、特に反応性ガス流が、例えばプラズマジェットが出現する。
【0016】
プラズマ源と処理領域とは、動作中にプラズマ源により生成される反応性ガス、特に、動作中にプラズマ源により生成される反応性ガス流が処理領域に到達するような仕方で、互いに関連して配置される。この目的のために、装置が処理室を含む場合には、プラズマ源と処理室とは互いに、特に、動作中にプラズマ源により生成される反応性ガス、特に、動作中にプラズマ源により生成される反応性ガス流が処理室に達するような仕方で、連結されてもよい。この目的のために、プラズマ源は、特に、処理室内に配置することができる、あるいは、導管を介して処理室に接続することができる。
【0017】
本開示の第1の態様による上記の方法は、好ましくは、本開示の第1の態様による上記の装置を使用して実行される。
【0018】
以下で、本開示の第1の態様による種々の実施形態が説明される。個々の実施形態は、仮開示の第1の態様による装置および方法の両方に、互いとは無関係に適用される。更に、これらの実施形態は、所望するように互いに組み合わせてもよい。
【0019】
一実施形態において、反応性ガス、特に反応性ガス流として、周囲大気圧を基に±500mbarの範囲内の、好ましくは周囲大気圧を基に±300mbarの範囲内の圧力のガス、特にガス流が生成される。反応性ガス、特に反応性ガス流として、特に、大気反応性ガス、特に大気反応性ガス流が、特に大気プラズマジェットが生成されてもよい。これにより真空環境を省くことができるのであり、装置をより安価に製造できるようになる、あるいは、工程をより経済的に実行できるようになる。加えて、反応性ガス、特に反応性ガス流が大気圧範囲付近の圧力であれば、容器の内部との過度の圧力差が防止され、このことにより容器の損傷を防止することができる。
【0020】
更なる実施形態において、反応性ガス、特に反応性ガス流は、ガス中、特にガス流中での電極間の高周波アーク状放電によって、および/または、ガス中、特にガス流中での誘電体バリア放電によって生成される。これにより、良好な消毒または滅菌効果をその反応種が提供する反応性ガス、特に反応性ガス流を生成できることが判った。対応の実施形態では、プラズマ源は反応性ガス、特に反応性ガス流を、ガス中、特にガス流中での電極間の高周波アーク状放電によって、および/または、ガス中、特にガス流中での誘電体バリア放電によって生成するように構成される。
【0021】
アーク状放電を生成するために、特に少なくとも2つの電極、ならびに、これらの電極に高周波高電圧を印加する電圧源が提供される。高周波アーク状放電を生成するための高周波高電圧は、特に、1~100kVの、好ましくは1~50kVの、より好ましくは1~10kVの範囲内の電圧振幅、および、1~300kHzの、特に1~100kHzの、好ましくは10~100kHzの、より好ましくは10~50kHzの周波数を有する。
【0022】
誘電体バリア放電を生成するために、特に、少なくとも2つの電極、および、これらの電極間に配置される誘電体を提供することができる。好ましくは、電極のうちの一方は接地される。更に、特に例えば1~15kVの範囲内の電圧振幅、および7.5~25kHzの、特に13~14kHzの範囲内の電圧周波数の高周波高電圧を電極に印加するために電圧源が提供される。
【0023】
一実施形態において、例えば、プラズマ源は、反応性ガス、特に反応性ガス流をガス中、特にガス流中での電極間の高周波アーク状放電によって生成するように構成される第1の生成ユニット、特に第1のプラズマノズルと、或る反応性ガスまたは前記反応性ガス、特に或る反応性ガス流または前記反応性ガス流をガス中、特にガス流中での誘電体バリア放電によって生成するように構成される第2の生成ユニット、特に第2のプラズマノズルとを含んでもよい。第1の生成ユニットと第2の生成ユニットとは、同時に動作してもよく、あるいは交互に動作してもよい。第1の生成ユニットおよび第2の生成ユニットを動作させることにより、異なる型の反応種を生成することができる。特に、反応性ガス中、特にガス流中の反応種の組成をこれにより選択的に調整することができる。更に、環境のオゾン汚染を低減するために、第2の生成ユニットの動作中に第1の生成ユニットを動作させることにより、生成されるオゾンが低減されてもよい。第1の生成ユニットと第2の生成ユニットとは、互いに隣接して配置されてもよく、あるいは、互いから離れたところに配置されてもよい。特に、第1の生成ユニットおよび第2の生成ユニットから、それぞれの反応性ガス、特にそれぞれの反応性ガス流が処理室に達することが実現されてもよい。この代わりに、共通の反応性ガス、特に反応性ガス流が処理室に達することができる。
【0024】
更なる実施形態において、反応性ガス、特に反応性ガス流に水蒸気が付加される。水を付加することにより、消毒または滅菌効果が大幅に高まる。水蒸気の形態の、即ちガス状の水を付加することにより、水が、容器のガス透過性部分を通って容器に侵入できるようになる。対応の実施形態において、装置は、反応性ガス、特に反応性ガス流に水蒸気を付加するようになっている水蒸気供給デバイスを含む。
【0025】
更なる実施形態において、反応性ガス、特に反応性ガス流に、反応物が、特に有機反応物または過酸化水素が付加される。反応物を付加することにより、消毒または滅菌効果が大幅に高まる。特に、反応物は、容器のガス透過性部分を通って容器内へ達する。対応の実施形態において、装置は、反応性ガス、特に反応性ガス流に、反応性物質、特に有機反応性物質または過酸化水素を付加するように構成される反応性物質供給デバイスを含む。
【0026】
好ましくは、反応性ガス、特に反応性ガス流に、水蒸気および反応物が、特に水蒸気と反応物との混合物が付加される。この目的のために、装置は、好ましくは、反応性ガス、特に反応性ガス流に水蒸気および反応物を付加するように構成される水蒸気供給デバイスを有する。有機反応物は、特に、酸素含有有機化合物、特にアルコール、カルボン酸、過酢酸、エーテルもしくは有機過酸化物、および/または、窒素含有有機化合物であってもよい。
【0027】
水蒸気および/または反応物は、反応性ガスの生成中または生成後にその反応性ガス中へ水蒸気および/または反応物を導入することにより、反応性ガス、特に反応性ガス流に付加されてもよい。ただし、水蒸気および/または反応物は、反応性ガス、特に反応性ガス流を生成するための作動ガス中に既に存在し、特にこの作動ガスに付加されるため、水蒸気および/または反応物が、反応性ガスを生成する際に使用される作動ガスにより反応性ガスに付加されるということも可能である。
【0028】
水蒸気および/または反応物は、例えば水蒸気および/または反応物を作動ガス中および/または反応性ガス中に導入することにより、作動ガスおよび/または反応性ガスに能動的に付加することができる。水蒸気および/または反応性物質は、例えば作動ガスおよび/または反応性ガスを、水および/または反応性物質で湿った表面上、例えば水および/または反応性物質で湿ったスポンジ上、例えばセラミックスポンジ上で通過させることにより、作動ガスおよび/または反応性ガスに受動的に付加することもできる。
【0029】
更なる実施形態において、特に水蒸気および/または反応物を付加する前に作動ガスおよび/または反応性ガスを加熱する加熱デバイスが提供される。これにより、特に、多めの蒸発による受動的付加の場合に、作動ガスおよび/または反応性ガスによる水蒸気および/または反応物の吸収を改善することができる。
【0030】
更なる実施形態において、容器のガス透過性部分に衝突させられる際、反応性ガスの、特に反応性ガス流の相対湿度は、100%RH未満であり、好ましくは60~95%RHの範囲内である。これにより、容器上での水蒸気の凝縮を低減または完全に回避することができる。対応の実施形態において、装置は、好ましく制御された水蒸気供給デバイスを有し、この水蒸気供給デバイスは、処理領域内の反応性ガスの、特に反応性ガス流の相対湿度が、100%RH未満、好ましくは60~95%RHの範囲内になるような量の水蒸気を反応性ガス、特に反応性ガス流に付加するように構成される。
【0031】
更なる実施形態において、処理領域および搬送システムは、搬送システムにより処理領域を通して搬送される包装済み物品の処理領域内での滞留時間が、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、特に少なくとも30分になるように適合される。
【0032】
更なる実施形態において、処理室および搬送システムは、搬送システムにより処理室を通して搬送される包装済み物品の処理室内での滞留時間が、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、特に少なくとも30分になるように適合される。
【0033】
処理領域および/または処理室内での滞留時間は、例えば大型の容器を処理する際は少なくとも60分にもなってもよい。
【0034】
処理領域および/または処理室、ならびに搬送システムを前述のように適合することにより、包装済み物品の、安全な消毒または滅菌を確実にすることができる。このような滞留時間は、例えば相応に低速の搬送システムにより達成することができる。ただし、好ましくは、少なくとも、処理領域および/または処理室の大きさ、および/または搬送システムの長さも、例えば搬送速度が少なくとも10mm/秒であっても、このような滞留時間を達成できるようなものである。これにより、インライン工程内への装置の一体化が簡素化される。搬送システムは、例えば、包装済み物品を、蛇行のやり方で、および/または幾つかのレベル上で、処理領域および/または処理室を通して搬送するように構成することができる。
【0035】
更なる実施形態において、処理室への入口の上流に、および/または処理室からの出口の下流にエアロック室が配置され、エアロック室は、好ましくは、エアロック室からガスを吸引するように構成される吸引デバイスを有する。特に、入口の上流および出口の下流にそれぞれのエアロック室が配置されてもよい。これにより、装置から外側に到達する反応種、例えばオゾンまたは窒素酸化物の量を低減することができる。
【0036】
搬送システムは、好ましくは、1つ以上のエアロック室を通過する。
【0037】
1つ以上のエアロック室は、可動エアロックゲートを有してもよい。これらのエアロックゲートの各々は、包装済み物品がエアロックに入り込む前、および/またはエアロックを退出する前に開放し、その後閉鎖する。
【0038】
更なる実施形態において、装置は、搬送システムの区域に対向して配置されるガス案内面を有し、ガス案内面と、搬送システムの区域を通して搬送される包装済み物品との間の領域に、動作中に生成される反応性ガス、特に生成される反応性ガス流が入り込むようにプラズマ源が配置される。これにより、容器の領域内で、特にガス透過性部分の領域内で、反応性ガス流の動圧の増加を達成することができ、これによって、ガス流の反応種を、より効果的に包装容器内へ導入することができる。
【0039】
前述の目的は、本開示の第2の態様によれば、容器内の物品を消毒、特に滅菌するための方法であって、細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性である容器内に包装された物品が提供され、放電領域内に放電が生成され、中に物品の包装された容器がこの放電領域を通して搬送される、方法により、更に解決される。
【0040】
包装済み物品に放電領域を通過させることにより、容器内の物品の消毒、特に滅菌を達成できることが判った。これにより、容器内の物品を消毒または滅菌することができるため、このことにより、包装中の無菌取り扱いがさほど重要でなくなり、あるいは不必要にさえなり、その結果、包装工程が簡素化される。
【0041】
特に、これにより包装容器内で放電を生成することができ、このことによりそこに反応雰囲気が引き起こされ、これによって、包装済み物品は消毒または滅菌される。
【0042】
放電領域を通過した後でも、容器内の雰囲気を長期間、反応性であるように留めておくことができ、これによって、放電領域内での容器への暴露時間がかなり短くても、効果的な消毒、特に滅菌をもたらすことができるということが認識された。
【0043】
工程中、細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性である容器内に包装された物品が提供される。この目的のために、容器は包装済み物品を、特に完全に封入する。容器は、バクテリアに対して不透過性であるようなものであってもよい。加えて、容器は、ウイルスに対しても同様に不透過性であるようなものであってもよい。これにより、物品は、バクテリアおよび/またはウイルスが容器に侵入する故に物品が無菌でなくなることなしに、容器内に特に長期間にわたって保管することができる。
【0044】
工程中、放電領域内に放電が生成される。放電は、好ましくは高周波放電である。
【0045】
中に物品の包装された容器は、特に搬送システム、例えばコンベヤベルトにより、放電領域を通して搬送することができる。
【0046】
前述の目的は、本開示の第2の態様によれば、包装済み物品を消毒、特に滅菌するための、特に本開示の第2の態様による上記の方法を実行するための装置であって、電極および対向電極を有し、電極と対向電極との間に配置される放電領域を有し、および、電極と対向電極との間に配置される誘電体を有し、放電領域内に放電を生成するために電極と対向電極との間に高周波電圧を印加することができる装置であって、この装置が、包装済み物品を放電領域を通して搬送するように構成される搬送システムを含む装置により更に解決される。
【0047】
本開示の第2の態様による上記の方法は、本開示の第2の態様による上記の装置を使用して、連続工程中に効果的に実施できることが判った。
【0048】
誘電体は、電極と対向電極との間に配置される。これにより、放電領域を通して搬送される容器の、電極と対向電極との間の強力な直接放電による損傷を防止することができる。特に、誘電体は、電極上および/または対向電極上に直接配置されてもよい。例えば、電極および/または対向電極は、誘電体の層でコーティングされてもよい。
【0049】
対向電極は、好ましくは接地される。この代わりに、電極を接地することもできる。
【0050】
放電領域は、好ましくは、最大5cmの、更に好ましくは最大3cmの、特に最大1cmの高さを有する。それ故に、電極と対向電極との間の距離は、好ましくは、最大5cm、より好ましくは最大3cm、特に最大1cmである。これにより、放電領域内での包装済み物品の集中的な処理を達成することができる。
【0051】
好ましくは、本開示の第2の態様による上記の方法は、本開示の第2の態様による上記の装置を使用して実行される。
【0052】
以下で、本開示の第2の態様による種々の実施形態が説明される。個々の実施形態は、仮開示の第2の態様による方法および装置の両方に、互いとは無関係に適用される。更に、これらの実施形態は、所望するように互いに組み合わせてもよい。
【0053】
一実施形態において、容器はガス透過性部分を有する。特に、容器の一部がガス透過性であってもよく、あるいは、容器が完全にガス透過性であってもよい。例えば、ガス透過性部分は、ガスが通過できるのに十分大きな、ただしバクテリアおよび/またはウイルスが容器に入り込むのを防止するには十分小さな孔を有してもよい。ガス透過性部分によって、放電により容器の外側で生成される反応性ガスが、容器に入り込み、中に包装された物品を消毒することができる。これにより、例えば、放電により容器の内側と外側の両方で生成される反応種が、消毒効果を有することができる。更に、容器内に含有される水蒸気、特に消毒用に容器内へ導入された水からの水蒸気が、ガス透過性部分を通して逃散することができる。
【0054】
本方法の一実施形態において、放電は、少なくとも1つの電極と少なくとも1つの対向電極との間に生成され、中に物品の包装された容器は、少なくとも1つの電極と少なくとも1つの対向電極との間を通して搬送される。
【0055】
本方法の更なる実施形態において、放電領域内に誘電体バリア放電が生成される。装置の、対応の実施形態において、電極、対向電極、および誘電体は、放電領域内に誘電体バリア放電を生成するように構成される。
【0056】
誘電体バリア放電を生成するには、特に電極および対向電極に高周波高電圧を印加するために、例えば1~15kV、特に2~15kVの範囲内の電圧の、および7.5~25kHz、特に13~14kHzの範囲内の周波数の電圧源を提供することができる。
【0057】
誘電体バリア放電を生成するために、電極および対向電極は、特に、互いに対向して、好ましくは互いに平行に配置される電極表面を有してもよい。
【0058】
電極および/または対向電極は、好ましくは、特に、小さい曲率半径のエッジまたは曲面を有してもよい。このことにより、エッジまたは曲面での電界強度が増加し、したがって誘電体バリア放電が生じる。他方の電極および/または対向電極は、例えば平坦な電極表面を有することができる。
【0059】
更なる実施形態において、電極および/または対向電極は平板電極として構成される。これにより、より大きく、より均一な放電領域を提供することができる。
【0060】
更なる実施形態において、装置は、幾つかの、好ましくは棒形の電極を有する。電極は特に、誘電体により包囲することができ、例えば誘電体でコーティングすることができる。特に、放電領域内に放電を、特に誘電体バリア放電を生成するために、複数の電極および対向電極の各々間に高周波電圧を印加することができる。複数の電極は、例えば、対向電極に対向して並んで配置されてもよい。これにより、特に、誘電体バリア放電の生成のために放電領域を拡張することができる。
【0061】
更なる実施形態において、搬送システムは、包装済み物品を放電領域を通して搬送するように構成される可動コンベヤベルトを含む。コンベヤベルトは、例えば電極または対向電極上に直接延びてもよい。
【0062】
更なる実施形態において、コンベヤベルトは、電極、対向電極または誘電体を形成する。これにより、構成要素の数を低減することができる。
【0063】
コンベヤベルトが電極または対向電極を形成する場合、コンベヤベルトは特に導電性であり、コンベヤベルトと電極または対向電極との間に高周波電圧を印加して放電領域内に放電を生成することができる。コンベヤベルトは、好ましくは接地される。
【0064】
コンベヤベルトは、誘電体からも形成され、電極と対向電極との間の直接放電を防止するような仕方で電極と対向電極との間に延びてもよい。これにより、更なる誘電体が省かれてもよい。ただし、この代わりに、更なる誘電体、例えば電極および/または対向電極の誘電体コーティングが提供されてもよい。
【0065】
更なる実施形態において、放電領域内へ窒素および/または希ガスが導入される。好ましくは、放電領域内に、窒素および/または1つ以上の希ガス、例えばヘリウムおよび/またはアルゴンを少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも90体積%含有する雰囲気が生成される。窒素、特に希ガスは空気よりも容易にイオン化することができるため、これにより、より良好な放電を達成することができる。更に、これにより、少なくとも1つの電極と少なくとも1つの対向電極との間に長めの距離を提供することが可能であるため、より大型の容器を放電領域を通して搬送することができる。
【0066】
対応の実施形態において、特に、放電領域内に窒素および/または希ガス雰囲気を生成するために、装置は、窒素および/または希ガス源、例えば窒素および/または希ガスボトルを有するのであり、この窒素および/または希ガス源から窒素および/または希ガスを放電領域内へ導入するように構成される。
【0067】
更なる実施形態において、装置は、中に放電領域の配置されるトンネルを備えたハウジングを有する、あるいは、装置は、放電領域に配置される吸引フードを有する。これにより、放電により形成される反応種、特にオゾンへの環境の暴露が低減される。放電領域から逃散するオゾンを抽出するために、ハウジング上に吸引フードを提供することもできる。
【0068】
以下で、本開示の第1の態様および第2の態様による種々の実施形態が説明される。個々の実施形態は、第1の態様による方法および第2の態様による方法と、第1の態様による装置および第2の態様による装置、の両方に、互いとは無関係に適用される。更に、これらの実施形態は、所望するように、互いにおよび上記の実施形態と組み合わせてもよい。
【0069】
一実施形態において、容器は、無菌物品用の、例えば医薬品または医療デバイス用の無菌容器である。
【0070】
一実施形態において、容器のガス透過性部分は、少なくとも部分的に不織布から、特に例えばポリエチレンのプラスチック不織布から形成される。このような不織布は、一方で容器内への細菌の侵入を防止し、他方で容器内の物品の信頼できる消毒、特に滅菌をもたらすほど充分にガス透過性であることが判った。適切な不織布として、例えばアメリカ合衆国デラウェア州ウィルミントンのデュポン・ド・ヌムール社(DuPont de Nemours社)から市販されているタイベック(登録商標)がある。
【0071】
更なる実施形態において、容器は、液体水または液体一般に対して少なくとも外側からほとんど透過性ではない、あるいは不透過性である。特に、容器は液体に対して完全に不透過性または半透過性であってもよく、液体が容器から外へ通過することはできるが、容器内へ通過することはできない。これにより、物品の、外側からの不用な湿気の侵入を防止することができる。
【0072】
包装容器内に水を提供するために、このことにより消毒または滅菌効果が大幅に高まるのであるが、特に水蒸気の形態の水、即ちガス状の水を外側から容器内へ導入することができる。この代わりに、包装済み物品に、既に容器内に水が提供されてもよい。容器内の水中に反応性物質が溶解されてもよい。特に、容器内の水中に有機分子を溶解させることができる。この有機分子は、プラズマ放電により反応性有機過酸化物になって滅菌工程を加速させることができる。
【0073】
更なる実施形態において、容器は、物品を収容するための、特にプラスチック製の成形体と、ガス透過性材料の、特に不織布の蓋とを含む。例えば、容器はブリスターパックであってもよい。このような容器は、医薬品および医療製品に良好に適しており、実用的である。加えて、このような容器内に包装された物品は、前述した方法および装置を使用して良好に消毒または滅菌できることが示された。
【0074】
更なる実施形態において、容器は、中に物品の配置される、ガス雰囲気である収容空間を有する。これにより、消毒または滅菌効果が改善される。特に、前述した方法および装置を使用して容器内に反応雰囲気を生成することができる。この反応雰囲気は、反応性ガス、特にガス流との衝突が終了した後でも、あるいは放電領域を離れた後でも反応性のままであり、これによって物品を消毒および/または滅菌することができる。
【0075】
特に、容器が放電領域を通して搬送される際、収容空間のガス雰囲気中に、したがって容器内に放電を生成することができ、反応種は直接容器内に形成される。
【0076】
更なる実施形態において、容器内に包装された物品は事前に湿潤される、および/または、中に物品の配置される容器の収容空間内のガス雰囲気は、20℃にて計測して少なくとも60%RHの、好ましくは少なくとも70%RHの相対湿度を有する。特に、湿気は、反応雰囲気の消毒または滅菌効果を大幅に改善するのであるが、この湿気を包装中に容器内へ既に導入できるため、その後の水の導入はもはや不要である。反応性ガス、特にガス流が使用される場合、ガス流は、特に<60%RHの相対湿度を有することができる。
【0077】
更なる実施形態において、物品は、医薬品、医療デバイス、特に医療装置、または保護具である。医療デバイスは、例えば、内視鏡、手術道具もしくは手術器具、または手術用トレイであってもよい。保護具は、例えばフェイスマスクまたは手袋であってもよい。
【0078】
物品は、事前消毒、特に事前滅菌されてもよい。特に、アクセスの困難な物品の表面、例えば内視鏡等の医療デバイスの、例えば管、パイプまたは同等のものの内面を、事前消毒、特に事前滅菌することができる。これにより、本明細書において説明される消毒、特に滅菌において、アクセスの困難な物品の表面を消毒または滅菌することはもはや不要である。むしろ、汚染された、または無菌でなくなった容易にアクセス可能な製品の表面を、例えば包装工程中の、例えば事前消毒または事前滅菌後に、再度消毒または滅菌することで充分なことがある。
【0079】
上掲の目的は、本開示の第1の態様によれば、包装済み物品を消毒、特に滅菌するための、本開示の第1の態様またはその実施形態による装置を使用することにより、更に解決される。
【0080】
上の目的は、本開示の第2の態様によれば、包装済み物品を消毒、特に滅菌するための、本開示の第2の態様またはその実施形態による装置を使用することにより、更に解決される。
【0081】
装置および方法の更なる利点および特徴は、添付の図面を参照しながら、以下の例示的な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】反応性ガス流を生成するためのプラズマ源を示す。
図2】反応性ガス流を生成するための更なるプラズマ源を示す。
図3】本開示の第1の態様による装置の例示的実施形態を示す。
図4】容器内に包装された物品を示す。
図5図4の包装済み物品の、図3の装置による処理を示す。
図6】本開示の第1の態様による装置の更なる例示的実施形態。
図7】本開示の第1の態様による装置の更なる例示的実施形態。
図8】本開示の第2の態様による装置の例示的実施形態。
図9図4の包装済み物品の、図8の装置による処理。
図10】本開示の第2の態様による装置の更なる例示的実施形態。
図11】本開示の第2の態様による装置の更なる例示的実施形態。
図12】本開示の第2の態様による装置の更なる実施形態。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1は、大気プラズマジェットの形態の反応性ガス流26をアーク状放電によって生成するための、プラズマノズルの形態のプラズマ源2の概略断面図を示す。
【0084】
プラズマノズル2は、ノズル開口部6に向かって円錐状に先細になっている金属製のノズル管4を有する。ノズル管4は、ノズル開口部6に対向する端部に、ガス流、特に作動ガス、例えば空気または窒素のための入口10を備えた渦巻きデバイス8を有する。
【0085】
渦巻きデバイス8の中間壁12が、周方向において斜めに設置されたリング状の穴14を有し、ガス流はこれらの穴を通って捻れる。したがって、下流にある、円錐状に先細になっているノズル管の一部を、渦16の形態のガス流が流通する。この渦の中心は、ノズル管の長手方向軸に沿って延びる。中間壁12の下面には中央に内部電極18が配置され、この内部電極は、同軸上で先細区域の方向にノズル管内へと突出する。電極18は、中間壁12および渦巻きデバイス8のその他の部分に電気的に接続される。渦巻きデバイス8は、セラミックまたは石英ガラス管20によりノズル管4から電気的に絶縁される。変圧器22により生成される高周波高電圧が、渦巻きデバイス8を介して電極18に印加される。入口10に、図示しない線を介してガス流23が供給される。ノズル管4は接地される。印加された電圧は、電極18とノズル管4との間に、アーク24の形態の高周波放電を生成する。
【0086】
放電がアークの形態で発生することから、用語「アーク」、「アーク放電」または「アーク状放電」は、ここでは、放電の現象論的記述として使用される。用語「アーク」は、本質的に一定の電圧値を持つDC放電の放電の形態として他の場所でも使用される。ただし、この場合は、アークの形態の高周波放電、即ち高周波のアーク状放電を意味する。
【0087】
ただし、このアークは、作動ガスの渦巻き流の故に、ノズル管4の軸上の渦中心において運ばれ、ノズル開口部6のエリア内でようやくノズル管4の壁へと分岐する。渦中心の領域内で、したがってアーク24のすぐ近傍において高流速にて回転する作動ガスは、アークと密接に接触し、これによって部分的にプラズマ状態に変換されるのであり、プラズマノズル2から大気プラズマジェット26がノズル開口部6を通って出現する。
【0088】
図2は、誘電体バリア放電によって反応性ガス流を生成するための、ノズルの形態の更なるプラズマ源32の斜視概略断面図を示す。
【0089】
ノズル32は金属製のノズル管34を有し、このノズル管の上流端35には、ガス流38用、例えば空気用の入口37と、環状分配チャネル40とを備えた分配ヘッド36が配置される。ノズル管34の、対向する下流端42には、ノズル開口部46を備えた出口ノズル44が配置され、動作中にこのノズル開口部から、反応種が混入された反応性ガス流38が出現する。
【0090】
セラミック管48は、環状放電チャネル50がノズル管34とこのセラミック管48との間を分配チャネル40から出口ノズル44へと延在するような仕方で、分配ヘッド36からノズル管34を通って出口ノズル44内へ延在する。セラミック管の代わりに、例えば石英ガラス製の管も考慮されてもよい。
【0091】
セラミック管48の内側に管状の金属製高電圧電極52が配置され、この高電圧電極が高電圧ケーブル54を介して変圧器56に接続され、この変圧器を用いて、高電圧電極52と、対向電極として作用する接地されたノズル管34との間に高周波高電圧を印加することができる。管状の高電圧電極52の代わりに、例えば、異なる形状の、例えば丸味のあるシートの形態の、高電圧電極も考慮されてもよい。
【0092】
高電圧電極52を封入するために、セラミック管48内に絶縁プラグ58が配設され、これらの絶縁プラグにより、作動ガスが高電圧電極52のエリア内へ流入することが、あるいはセラミック管48を通ってノズル32から流出することが、更に防止される。更に、分配ヘッド36上の環状溝62内へ封止リング60が挿入され、分配ヘッド36がセラミック管48に対して封止される。
【0093】
ノズル管34を冷却するために動作中に冷却材がそれを通して向けられてもよい冷却材線64が、ノズル管34の周りに提供されてもよい。冷却材線64は、例えば、ノズル管34の周りで、図示するように螺旋状に延びることができる。
【0094】
動作中、ガス流38が、入口37を通して分配ヘッド36内へ導入され、環状放電チャネル50を流通する。
【0095】
変圧器56を使用して高電圧電極52とノズル管34との間に高周波高電圧が印加され、放電チャネル50内で高電圧電極52の領域内に誘電体バリア放電が発生し、この誘電体バリア放電が、そこを流れるガス流38中に反応種、特にオゾンを生成する。
【0096】
反応種が混入された反応性ガス流38は、ノズル開口部46を退出する。
【0097】
図3は、本開示の第1の態様による装置の例示的実施形態を、側面からの概略断面図において示す。
【0098】
包装済み物品200を消毒、特に滅菌するための装置100は、入口106および出口108を有する処理室104を含む。処理室104は処理領域103を含む。この処理領域は、処理室104の全体空間を占有してもよく、あるいは、その一部のみを占有してもよい。入口106の上流および出口108の下流に、それぞれのエアロック室110、112が配設される。
【0099】
装置100は搬送システム114を更に含み、搬送システムは、複数の駆動可能なコンベヤベルト116a~116eを有する。これにより、搬送システム114は、包装済み物品200を、まず第1のロック室110を通して搬送し、その後、入口106から出口108まで処理室104およびこの処理室により包含される処理領域103を通して搬送し、最終的に第2のロック室112を通して搬送するように構成される。多数のコンベヤベルト116a~116eの代わりに、例えば、連続するコンベヤベルトも提供されてもよい。
【0100】
更に、装置100は、反応性ガス流120を生成するように構成されるプラズマ源118を含む。例えば、プラズマ源118は、図1のプラズマ源2のように構成されてもよく、あるいは図2のプラズマ源32のように構成されてもよい。
【0101】
プラズマ源118は供給線122を介して処理室104に接続され、反応性ガス流120は、処理室104へ、したがって処理領域103へ達し、そこで分配される。特に、反応性ガス流120は、このやり方で、動作中に搬送システム114により処理領域103を通して搬送される包装済み物品200に達する。
【0102】
図4は、このような包装済み物品200の例を示す。包装済み物品200の容器202は、細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性である。更に、容器202は、ガス透過性部分204を有する、または、このガス透過性部分が容器202全体に対応するように完全にガス透過性である。
【0103】
例えば、容器202は、実際の物品210用の収容空間208を有するプラスチック製の成形体206と、不織布プラスチック等、ガス透過性材料製の蓋212とを有するブリスター型容器であってもよい。蓋212は例えばタイベック製であってもよい。特に、収容空間208はガス雰囲気213を有する。
【0104】
物品210は、例えば、錠剤等の医薬品、または、医薬品の充填された注射器、内視鏡、手術道具もしくは手術器具、または手術用トレイ等の医療デバイス、あるいは、フェイスマスク、手袋または防護服等の保護具であってもよい。
【0105】
図5は、図4の包装済み物品200の、図3の装置100による処理を、概略図において示す。処理室104内へ反応性ガス流120を導入する結果として、この反応性ガス流120は、処理室104と、この処理室により封入される処理領域103とを通してコンベヤベルト116cにより搬送される包装済み物品200にも、特に、容器202のガス透過性部分204にも達するのであり、反応種が中に含有される反応性ガス流120の一部が、中に物品210の置かれている収容室208内のガス雰囲気213中へ達する。その際、反応種は、物品210に、そして容器202の内側にも作用し、これによって消毒、特に滅菌効果が引き起こされる。
【0106】
この消毒、特に滅菌効果は、ガス雰囲気213が水を含有する場合に著しく増加する。ガス雰囲気213中へ水を導入するために、装置100は、例えば、反応性ガス流120に水蒸気を混入させる水蒸発器124を含んでもよい。水蒸発器124からの水蒸気は、例えば図3に示すようにフィード線122内へ導入されてもよく、あるいは、処理室104内へ直接導入されてもよい。水蒸発器124をフィード線122内へ直接一体化して、プラズマ源118により生成される反応性ガス流が、水蒸発器を通過してこれにより水蒸気が混入されるようにすることも考えられる。
【0107】
好ましくは、水蒸発器124は、処理室104内および/または処理領域103内の、特に包装済み物品200のエリア内の空気湿度が100%RH未満、好ましくは60~80%RHの間になるように、例えば処理室104内に配置される空気湿度センサ126を介して制御される。これにより、一方で、消毒、特に滅菌効果を改善するのに充分な水が利用可能になり、他方で、容器202上への凝縮物の沈殿が回避される。
【0108】
ガス状水蒸気は、反応性ガス流120と共にガス透過性区域204を通って容器202に入り込み、反応性ガス流の反応種と一緒に、物品210および容器202の内側を効果的に消毒または滅菌する。
【0109】
外側から容器202内へ水を導入する代わりに、包装済み物品200に、既に容器202内に水を提供することもできる。この目的のために、例えば、物品210は包装前または包装中に湿潤されてもよく、あるいは、水蒸気が混入された雰囲気が包装中に容器202に付加されてもよい。この場合、水蒸発器124は不要とされてもよく、包装済み物品200は、比較的乾燥した反応性ガス流、例えば60%RH未満の、あるいは40%RH未満でさえある湿度を有する反応性ガス流に暴露されてもよい。
【0110】
処理室104内に反応性ガス流120を保持し、反応種、例えばオゾンまたは窒素酸化物による環境の汚染を低減または可能であれば完全に回避するために、図3における装置100は、好ましくは、エアロック室110、112を含み、これらのエアロック室の各々は、制御可能な可動エアロックゲート128を有する。動作中、エアロックゲート128は交互に開閉し、装置100から反応種を大量に逃散させることなく、包装済み物品200を、エアロック室110、112および処理室104を通して移動させることができる。反応種への周囲暴露を更に低減するために、エアロック室110、112は、処理室104からエアロック室110、112内へと通過する反応種を吸引するためのそれぞれの吸引デバイス130をも包含してもよい。好ましくは、吸引デバイス130は、外側から異種ガスが処理室104内へ引き込まれないよう、処理室104内に負圧が創成されないように動作する。
【0111】
搬送システム114の故に、エアロック室110、112があるにもかかわらず、少なくとも準連続動作が可能であるため、装置100は、インライン工程に、例えば物品210が容器202内へ包装される包装ステーションの後方に、良好に一体化することができる。
【0112】
図6は、本開示の第1の態様による装置の更なる例示的実施形態を概略上面図において示す。
【0113】
原則として、装置300は、図3の装置100と非常に類似した構造を有する。加えて、その説明が参照される。特に、装置300は、処理領域303を含む処理室304、ならびに、それぞれの吸引デバイス(図示せず)を備えたエアロック室310、312を有する。処理室内へは、プラズマ源318により生成される反応性ガス流、および、必要ならば水蒸気が導入される。更に、包装済み物品200を、エアロック室310、312を通して、および、入口306から出口308まで処理室304を通して搬送するための搬送システム314が提供される。
【0114】
装置300内では、搬送システム314は蛇行のやり方で処理室304を通って延びる。これにより、包装済み物品200の、処理室304内または処理領域303内での、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、特に少なくとも30分である充分に長い滞留時間が、効果的なインライン工程にとって充分な運搬速度で確実になる。
【0115】
図7は、本開示の第1の態様による装置の更なる例示的実施形態を概略断面図において示す。
【0116】
包装済み物品200を消毒、特に滅菌するための装置600は、駆動可能なコンベヤベルト616を備えた搬送システム614を有する。更に、装置600は、反応性ガス流620を生成するように構成されるプラズマ源618を有する。反応性ガス流は、動作中にプラズマ源618のノズル開口部619から出現する。プラズマ源618は、例えば図1のプラズマ源2のように構成されてもよく、あるいは図2のプラズマ源32のように構成されてもよい。ノズル開口部619は、コンベヤベルト616の区域617に対向して配置される。更に、ノズル開口部619のエリア内に、ガス案内面632を備えた平板630が配置される。平板630は中央開口部634を有し、この中央開口部に、プラズマ源618のノズル開口部619が接続される。このやり方において、動作中、反応性ガス流620は、ガス案内面632とコンベヤベルト616との間の処理領域603に入り込む。付加的に、反応性ガス流に水蒸気を付加する水蒸発器が提供されてもよい。例えば、プラズマ源618に、水蒸気が混入された作動ガスが供給されてもよい。
【0117】
好ましくは、平板630は、ガス案内面632がコンベヤベルト616と平行に位置合わせされるように配置される。
【0118】
動作中、搬送システム614は、包装済み物品200を処理領域603を通して搬送する。プラズマ源618を退出する反応性ガス流620は、ガス案内面632により、ガス案内面632と包装済み物品200との間のエリア636を通して案内される。これにより、ガス流620と容器202、特にそのガス透過性部分204との激しい相互作用が達成され、反応種が容器202に侵入できるようになる。特に、ガス案内面632と包装容器202との間のエリア636を制限することによりガス流620の動圧を増加させることができ、このことにより、包装容器202内への反応種の侵入が促進される。
【0119】
装置600は任意で、ハウジング640により封入されるとともに入口644および出口646を有して処理領域603を包含する処理室642を包含してもよい。この実施形態において、処理領域603は処理室642の或る部分のみを形成する。
【0120】
好ましくは、本開示の第1の態様による上記の装置100、300、600は、容器内の包装済み物品を消毒、特に滅菌するために使用される。特に、上記の装置100、300、600は、本開示の第1の態様による方法であって、細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性であるとともにガス透過性部分204を有する容器202内に包装された物品210が提供され、プラズマ源118、318、618それぞれによって反応性ガス流120が生成され、この反応性ガス流120が容器202のガス透過性部分204に衝突させられる、方法を実行するために使用することができる。
【0121】
これにより、無菌である包装済み物品を、より容易に、かつ費用効果的に提供することができる。
【0122】
図8は、本開示の第2の態様による装置の例示的実施形態を概略断面図において示す。
【0123】
装置400は、電極402、対向電極404、および、電極402と対向電極404との間に配設される放電領域406を包含する。本例において、電極402と対向電極404とは、互いに平行に向き合う平面的な平板電極として形成される。
【0124】
更に、装置400は、電極402と対向電極404との間に高周波高電圧を生成するための電圧源408を包含し、この目的のために、これらの電極および対向電極は電圧源408に電気的に接続される。対向電極404は接地される。
【0125】
電極402と対向電極404との間には電極402上に誘電体コーティングの形態の誘電体410が更に配設され、この誘電体が、電極402と対向電極404との間の直接放電を妨げる。このやり方において、電圧源408により電極402と対向電極404との間に高周波高電圧が印加されると、放電領域406内に誘電体バリア放電412が生成される。
【0126】
装置は更に、搬送システム414を含む。この搬送システムは図8ではコンベヤベルト416を含み、この搬送システムを使用して、包装済み物品200を放電領域406を通して搬送することができる。このために、コンベヤベルト416は、放電領域を通って延在するのであり、例えば図8に示すように対向電極404上で摺動してもよい。
【0127】
誘電体バリア放電412中に生成される反応種、例えばオゾンまたは窒素酸化物への環境暴露を低減するために、装置400はハウジング418を更に含み、このハウジングは、コンベヤベルト416がそこを通過するとともに中に放電領域406の配設されるトンネル420を形成する。ハウジング上に吸引デバイス422が提供されてもよく、これによって余分な反応種が吸引されて、環境汚染が更に低減されてもよい。
【0128】
図9は、図8の装置400内での、図4の包装済み物品200の処理の概略図を示す。放電領域406内の放電412により反応種、例えばオゾンの生成が引き起こされ、この反応種が容器202のガス透過性部分204を容器202内へと通過し、これにより、物品210に消毒、特に滅菌効果が及ぼされる。容器202自体の収容空間208内のガス雰囲気213中でも放電413が発生することができ、反応種が容器202内に直接生成されることが判った。これによっても、物品210および容器202の内側の集中的な消毒、特に滅菌処理を達成することができる。
【0129】
この消毒、特に滅菌効果は、ガス雰囲気213が水を含有すれば著しく高まる。例えば、ガス雰囲気213中へ水を導入するために、装置400は、放電領域406内の雰囲気に水蒸気を混入させる水蒸発器424を包含してもよい。
【0130】
好ましくは、水蒸発器424は、放電領域406内の空気湿度が100%RH未満、好ましくは60~80%RHの間になるように、例えばハウジング418内に配置される空気湿度センサ426を介して制御される。これにより、一方で、消毒、特に滅菌効果を改善するのに充分な水が利用可能になり、他方で、容器202上への凝縮物の沈殿が回避される。
【0131】
ガス状水蒸気は、ガス透過性部分204を通って容器202に入り込み、放電412または413により生成される反応種と一緒に、物品210および容器202の内側を効果的に消毒または滅菌する。
【0132】
外側から容器202内へ水を導入する代わりに、包装済み物品200に、既に容器202内に水を提供することもできる。この目的のために、例えば、包装前または包装中に物品210を湿潤することができ、あるいは、包装中に、水蒸気が混入された雰囲気を容器202に付加することができる。この場合、水蒸発器424も省略されてもよく、放電領域406内の雰囲気は、比較的乾燥しており、例えば60%RH未満の湿度を、あるいは、40%RH未満の湿度でさえも、有してもよい。
【0133】
図10は、本開示の第2の態様による装置の更なる例示的実施形態を示す。装置450は、図9の装置400に非常に類似した構造を有する。加えて、その説明が参照される。対応の構成要素が、同じ参照符号で示される。
【0134】
装置450は、搬送システム414が、導電性材料製である搬送ベルト452を包含し、この搬送ベルト452が電極402の対向電極を形成するという点で、装置400と相違する。この目的のために、コンベヤベルト452は接地される。これにより、別個の対向電極を省くことができる。
【0135】
更に、装置450は、放電領域406に、つまり放電領域の上方に配設される吸引フード454がハウジングの代わりに提供され、放電領域から逃散する反応種が吸引されるという点で、装置400と相違する。
【0136】
図11は、本開示の第2の態様による装置の更なる例示的実施形態を示す。装置500は、図9の装置400に非常に類似した構造を有する。加えて、その説明が参照される。対応の構成要素が、同じ参照符号で示される。
【0137】
装置500は、平板形の電極402およびコーティングとして形成される誘電体410の代わりに、小径の、したがって曲率半径の小さい複数の棒形電極502が提供され、これらの電極が対向電極404に対向して並んで配置されるという点で、装置400と相違する。更に、電極502上の誘電体コーティングの形態であるそれぞれの誘電体510が提供される。電極502と対向電極404との間に高周波高電圧が印加されると電極502にて電界上昇が発生し、これによって、電極502と対向電極404との間に配置される放電領域506内に誘電体バリア放電512が生成される。放電領域506内でこのようにして生成される反応種は、放電領域506を通して搬送される包装済み物品200のガス透過性部分204を容器内へと通過し、これによって、容器内の物品210の消毒、特に滅菌が引き起こされる。
【0138】
更に、図11におけるような電極-対向電極配置内でも、ガス雰囲気213中に放電を発生することができ、このことにより、反応種を容器202内に直接生成できることが判った。
【0139】
図12は、本開示の第2の態様による装置の更なる例示的実施形態を示す。装置550は、図9の装置400に非常に類似した構造を有する。加えて、その説明が参照される。対応の構成要素が、同じ参照符号で示される。
【0140】
装置550は、搬送システム414が図10の装置450のように、導電性材料である搬送ベルト452を含み、この搬送ベルト452が電極502の対向電極を形成するという点で、装置500と相違する。この目的のために、コンベヤベルト452は接地される。これにより、別個の対向電極を省くことができる。
【0141】
更に、装置550は、図10の装置450のように、放電領域506の上方に配設される吸引フード454がハウジングの代わりに提供され、放電領域から逃散する反応種が吸引されるという点で、装置500と相違する。
【0142】
好ましくは、本開示の第2の態様による上記の装置400、450、500、550は、容器内の包装済み物品を消毒、特に滅菌するために使用される。特に、上記の装置400、450、500、550は、本開示の第2の態様による方法であって、細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性であるとともにガス透過性部分204を含む容器202内に包装された物品210が提供され、放電領域406および/または506内に放電412、413、512がそれぞれ生成され、中に物品410の包装された容器202が放電領域406、506それぞれを通して搬送される、方法を実行するために使用されてもよい。
【0143】
これにより、無菌である包装済み物品を、より容易に、かつ費用効果的に提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(202)内の物品(210)を、特に請求項1721の何れか一項に記載の装置(100、300、600)を使用して消毒、特に滅菌するための方法であって、
- 細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性であるとともにガス透過性部分(204)を有する容器(202)内に包装された物品(210)が提供され、
- プラズマ源(2、32、118、318、618)によって、周囲大気圧を基に±500mbarの範囲内の圧力の反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)が生成され、
- 前記反応性ガス、特に前記反応性ガス流(26、38、120、620)が前記容器(202)の前記ガス透過性部分(204)に衝突させられる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記反応性ガスとして、大気反応性ガス、特に大気反応性ガス流(26、38、120、620)が生成されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記反応性ガス、特に前記反応性ガス流(26、38、120、620)は、ガス中、特にガス流中での電極間の高周波アーク状放電によって、または、ガス中、特にガス流中での誘電体バリア放電によって生成されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の方法であって、前記反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)に水蒸気が付加されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記容器(202)の前記ガス透過性部分(204)に衝突させられる際、前記反応性ガスの、特に反応性ガス流(26、38、120、620)の相対湿度は、100%RH未満であり、好ましくは60~80%RHの範囲内であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の方法であって、前記反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)に、反応物が、特に有機反応物または過酸化水素が付加されることを特徴とする方法。
【請求項7】
容器(202)内の物品(210)を、請求項2227の何れか一項に記載の装置(400、450、500、550)を使用して消毒、特に滅菌するための方法であって、
- 細菌、特にバクテリアおよび/またはウイルスに対して不透過性であるとともにガス透過性部分(204)を含む容器(202)内に包装された物品(210)が提供され、
- 放電領域(406、506)内に放電(412、413、512)が生成され、
- 中に前記物品(410)の包装された前記容器(202)が前記放電領域(406、506)を通して搬送される、方法。
【請求項8】
請求項またはに記載の方法であって、前記放電領域(406、506)内に誘電体バリア放電(412、413、512)が生成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項の何れか一項に記載の方法であって、前記放電(412、413、512)は、少なくとも1つの電極(402、502)と少なくとも1つの対向電極(404、452)との間に生成され、中に前記物品(210)の包装された前記容器(202)は、前記少なくとも1つの電極(402、502)と前記少なくとも1つの対向電極(404、452)との間を通して搬送されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項の何れか一項に記載の方法であって、前記放電領域(406、506)内へ窒素および/または希ガスが導入されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)の前記ガス透過性部分(204)は、少なくとも部分的に不織布から、特にプラスチック不織布から形成されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)は、液体水に対して少なくとも外側からほとんど透過性ではない、あるいは不透過性であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)は、前記物品(210)を収容するための、特にプラスチックの成形体(206)と、ガス透過性材料の、特に不織布の蓋(212)とを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1~13の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)は、中に前記物品(210)の配置される、ガス雰囲気(213)を有する収容空間(208)を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載の方法であって、前記容器(202)内に包装された前記物品(210)は事前に湿潤される、および/または、中に前記物品(210)の配置される前記容器(202)の収容空間(208)内の前記ガス雰囲気(213)は、20℃にて計測して少なくとも60%RHの、好ましくは少なくとも70%RHの相対湿度を有することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載の方法であって、前記物品(210)は、医薬品、医療製品、特に医療デバイス、または保護具であることを特徴とする方法。
【請求項17】
包装済み物品(200)を消毒、特に滅菌するための、特に請求項1~6または1116の何れか一項に記載の方法を実行するための装置(100、300、600)であって、
- 処理領域(103、303、603)を有し、
- 包装済み物品(200)を前記処理領域(103、303、603)を通して搬送するように構成される搬送システム(114、314、614)を有し、および、
周囲大気圧を基に±500mbarの範囲内の圧力の反応性ガス、特に反応性ガス流(26、38、120、620)を生成するように構成されるプラズマ源(2、32、118、318、618)を有し、
- 前記プラズマ源(2、32、118、318、618)と前記処理領域(103、303、603)とは、動作中に前記プラズマ源(2、32、118、318、618)により生成される前記反応性ガス(26、38、120、620)、特に、動作中に前記プラズマ源(2、32、118、318、618)により生成される前記反応性ガス流(26、38、120、620)が前記処理領域(103、303、603)に達するように、互いに関連して配置される、装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置であって、前記装置(100、300、600)が、入口(106、306、644)および出口(108、308、646)を備えた前記処理領域(103、303、603)を含む処理室(104、304、642)を含み、前記搬送システム(114、314、614)が、包装済み物品(200)を前記入口(106、306、644)から前記出口(108、308、646)へ前記処理室(104、304、604)を通して搬送するようになっていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置であって、前記処理室(104、304、604)および前記搬送システム(114、314、614)は、前記搬送システム(114、314、614)により前記処理室(104、304、642)を通して搬送される包装済み物品(200)の前記処理室(104、304、642)内での滞留時間が、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、特に少なくとも30分になるように適合されることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項18または19に記載の装置であって、前記処理室(104、304、642)の前記入口(106、306、644)の上流に、および/または前記処理室(104、304、642)の前記出口(108、308、646)の下流にエアロック室(110、310;112、312)が配置され、前記エアロック室(110、310;112、312)は、好ましくは、前記エアロック室(110、310;112、312)からガスを吸引するように構成される吸引デバイス(130)を有することを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項1720の何れか一項に記載の装置であって、前記装置(100、300、600)は、前記搬送システム(114、314、614)の区域(617)に対向して配置されるガス案内面(632)を含み、前記ガス案内面(632)と、前記搬送システム(114、314、614)の前記区域(617)を通して搬送される包装済み物品(200)との間の領域(636)に、動作中に生成される前記反応性ガス(26、38、120、620)、特に前記生成される反応性ガス流(26、38、120、620)が入り込むように前記プラズマ源(2、32、118、318、618)が配置されることを特徴とする装置。
【請求項22】
包装済み物品(200)を消毒、特に滅菌するための、特に請求項7~16の何れか一項に記載の工程を実行するための装置(400、450、500、550)であって、
- 電極(402、502)および対向電極(404、452)を有し、
- 前記電極(402、502)と前記対向電極(404、452)との間に配置される放電領域(406、506)を有し、および、
- 前記電極(402、502)と前記対向電極(404、452)との間に配置される誘電体(410、510)を有し、
- 前記放電領域(406、506)内に放電(412、413、512)を生成するために前記電極(402、502)と前記対向電極(404、452)との間に高周波数電圧を印加することができる、装置であって、
- 前記装置(400、450、500、550)が、包装済み物品(200)を前記放電領域(406、506)を通して搬送するように構成される搬送システム(414)を含み、
- 前記装置(500、550)が、複数の、好ましくは棒形の電極(502)を含むことを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置であって、前記電極(402、502)、前記対向電極(404、452)、および前記誘電体(410、510)は、前記放電領域(406、506)内に誘電体バリア放電(412、413、512)を生成するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項22または23に記載の装置であって、前記電極(402)および/または前記対向電極(404)は平板電極として形成されることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項2224の何れか一項に記載の装置であって、前記搬送システム(414)は、包装済み物品(200)を前記放電領域(406、506)を通して搬送するように構成される可動コンベヤベルト(416、452)を含むことを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項25に記載の装置であって、前記コンベヤベルト(416、452)は、前記電極、前記対向電極または前記誘電体を形成することを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項2226の何れか一項に記載の装置であって、前記装置(400、500)は、中に前記放電領域(406、506)の配置されるトンネル(420)を備えたハウジング(418)を含む、あるいは、前記装置(450、550)は、前記放電領域(406、506)に配置される吸引フード(454)を含むことを特徴とする装置。
【請求項28】
包装済み物品(200)を消毒、特に滅菌するための、請求項1727の何れか一項に記載の装置(100、300、400、450、500、550)の使用。
【国際調査報告】