(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】損傷治療のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
A61N1/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578871
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 US2022018708
(87)【国際公開番号】W WO2022187486
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521544687
【氏名又は名称】トゥルーリリーフ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】クロッソン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】レバット、エルミーニョ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ04
4C053JJ13
4C053JJ27
(57)【要約】
【要約】
電気的刺激装置(10)は、電極(16)を患者の身体に接触させる電極キャリア(12)に含まれる電極(16)のセット(14)のうちのそれぞれのサブセット(32)を順次作動させることに基づいて、電気的刺激信号(22)を10kHzと50kHzとの間の周波数でDCパルス列として提供し、然器電気的刺激信号(22)を損傷部位において患者の身体に印加する。対応する方法(2200)は、患者の身体上の損傷部位において、患者の身体に接触する電極(16)のセットのうちの電極(16)のそれぞれのサブセット(32)を順次作動させる。1若しくはそれ以上の実施形態において、逐次的活性化は、前記電気的刺激信号の発信元および受信側を前記損傷部位の周囲に「移動」させる活性化順序に従い、それにより、前記損傷部位を通るまたは横切る空間的に分散した信号経路を時間と共に形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の治療用電気的刺激のために構成された装置(10)であって、
電極(16)のセット(14)を患者の身体上の損傷部位で前記患者の身体と接触するように配置するように構成された電極キャリア(12)と、
刺激モジュールであって、
電気的刺激信号(22)を直流(DC)パルス列として10kHzから50kHzの間の周波数で発生するように構成されている信号発生回路(20)と、
電極(16)の前記セット(14)内の電極(16)の個々のサブセット(32)を順次活性化するように構成されている制御回路(30)であって、各サブセット(32)は、前記電気刺激信号(22)の信号発信元として活性化された1若しくはそれ以上の電極(16)と、前記電気的刺激信号(22)の信号受信側として活性化された1若しくはそれ以上の電極(16)とを含んでいる、制御回路(30)と
を有する刺激モジュールと
を有する、装置(10)。
【請求項2】
請求項1記載の装置(10)において、前記制御回路(30)は、定義された活性化サイクル(84)にわたって、前記個々のサブセット(32)を一度に1つずつ活性化する定義された活性化順序(82)に従って、前記個々のサブセット(32)を順次活性化するように構成されている、装置(10)。
【請求項3】
請求項2記載の装置(10)において、前記定義された活性化順序(82)は、予め定義され、前記損傷部位における前記患者の身体上の電極(16)の前記セット(14)の空間的配置に対応し、前記損傷部位に対する前記電極キャリア(12)の指定された配置に起因する、装置(10)。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれか1つに記載の装置(10)において、前記制御回路(30)は、前記制御回路(30)によって受信された信号伝達に従って、前記定義された活性化順序(82)を決定するように構成され、前記信号伝達は、前記電極キャリア(12)によって提供されるかまたは前記電極キャリア(12)から読み取られる信号(26)、刺激モジュール(18)によって提供される制御入力のユーザ制御から生じる入力信号(50)、または前記刺激モジュール(18)に通信可能に結合される構成装置(110)から無線で受信される入力信号(52)のうちのいずれか1つを有するものである、装置(10)。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1つに記載の装置(10)において、前記個々のサブセット(32)は、複数の電極ペア(80)を有し、各電極ペア(80)は、電極(16)の前記セット(14)からの2つの電極(16)の固有のペアであり、前記2つの電極(16)のうちの一方が前記信号発信元として動作し、前記2つの電極(16)のうちの他方が前記信号受信側として動作する、装置(10)。
【請求項6】
請求項2から請求項4のいずれか1つに記載の装置(10)において、前記複数の電極ペア(80)のうちの少なくとも1つは、前記2つの電極(16)が、前記損傷部位における損傷の少なくとも一部が前記患者の身体上の前記2つの電極(16)のそれぞれの接触点の間に介在する対向関係を有する、少なくとも推定的に対向電極ペアである、装置(10)。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の装置(10)において、前記電極キャリア(12)は、前記損傷部位の前記患者の身体に適合可能に配置されるように構成された可撓性シートまたは膜(60)を有し、前記可撓性シートまたは膜(60)は、前記可撓性シートまたは膜(60)の患者に面する表面(64)に電極(16)の前記セット(14)を担持する、装置(10)。
【請求項8】
請求項7記載の装置(10)において、前記可撓性シートまたは膜(60)は、前記損傷部位の損傷を露出させたままにするための中央切り抜きまたは開口部(66)を含み、電極(16)の前記セット(14)は、前記切り抜きまたは開口部(66)を画定する縁部(68)に沿って間隔を隔てた位置に配列される、装置(10)。
【請求項9】
請求項8記載の装置(10)において、前記電極キャリア(12)は、さらに、
前記中央切り抜きまたは開口部を覆い、前記損傷に陰圧を印加するポート付きの密封可能な被覆(150)を有するものである、装置(10)。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか1つに記載の装置(10)において、前記電極キャリア(12)は、前記患者の患肢の少なくとも一部を包囲するように構成されたスリーブ(170)を有し、前記スリーブ(170)は前記可撓性シートまたは膜(60)を含むものである、装置(10)。
【請求項11】
請求項10記載の装置(10)において、前記スリーブ(170)は、電極(16)の前記セット(14)を前記損傷部位の前記患者の身体に接触するように付勢力をかける圧縮スリーブを有し、前記付勢力は、前記圧縮スリーブに組み込まれた弾性材料、前記スリーブに組み込まれた膨張可能なブラダー、または前記スリーブに組み込まれた1若しくはそれ以上の締め付けストラップのうちの少なくとも1つを介して得られるものである、装置(10)。
【請求項12】
請求項7から請求項11のいずれか1つに記載の装置(10)において、前記可撓性シートまたは膜(60)は、前記損傷部位の患者の身体に一時的に接着するための接着膜を有する、装置(10)。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1つに記載の装置(10)において、電極(16)の前記セット(14)は、前記電気的刺激信号(22)の点発信または受信のための接触点の対応するセットを定義する、装置(10)。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1つに記載の装置(10)において、前記信号発生回路(20)は、前記制御回路(30)による制御に応答して前記電気的刺激信号(22)の前記周波数を制御するように構成され、前記制御は、予め定義された周波数のセットの中から特定の周波数を選択すること、前記周波数を連続的に調整すること、または前記周波数を段階的に調整することのうちのいずれか1つである、装置(10)。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1つに記載の装置(10)において、前記信号発生回路(20)は、前記制御回路(30)による制御に応答して前記電気的刺激信号(22)の強度を制御するように構成され、前記制御は、前記電気的刺激信号(22)の電圧の調整、または前記電気的刺激信号(22)の電流の調整のいずれか1つである、装置(10)。
【請求項16】
請求項1から請求項13のいずれか1つに記載の装置(10)において、前記電極キャリア(12)は、前記損傷部位の患者の身体に前記電極キャリア(12)を密着させた状態で密閉可能に閉じられたポート付きチャンバー(164)を内蔵している、装置(10)。
【請求項17】
請求項16記載の装置(10)において、前記制御回路(30)は、前記電気的刺激信号(22)の印加を制御するのと連動して、前記電極キャリア(12)を介した陰圧の印加を制御するように構成されている、装置(10)。
【請求項18】
請求項16または請求項17のいずれかに記載の装置(10)において、前記装置(10)は陰圧ポンプサブアセンブリ(156)を含む、装置(10)。
【請求項19】
患者の治療用電気的刺激のために構成された装置(10)によって実行される方法(2200)であって、
電気的刺激信号(22)を直流(DC)パルス列として10kHzから50kHzの間の周波数で供給する工程と、
前記電気刺激信号(22)を介して、患者の身体上の損傷部位において前記患者の身体に接触する電極(16)のセット(14)の内の電極(16)のそれぞれのサブセット(32)を順次活性化する工程(2204)と
を有する、方法(2200)。
【請求項20】
請求項19記載の方法(2200)において、電極(16)の前記それぞれのサブセット(32)を順次活性化する工程は、定義された活性化サイクル(84)にわたって、前記個々のサブセット(32)を一度に1つずつ活性化する定義された活性化順序(82)に従って、前記個々のサブセット(32)を活性化する工程を有するものである、方法(2200)。
【請求項21】
請求項19または請求項20のいずれかに記載の方法(2200)において、さらに、
前記装置(10)のユーザーインターフェース(112)を介して、または前記装置(10)の通信回路(44)を介して受信されたユーザー入力に応答して、前記定義された活性化順序(82)または前記定義された活性化サイクル(84)を変化させる工程を有するものである、方法(2200)。
【請求項22】
請求項19から請求項21のいずれか1つに記載の方法(2200)において、さらに、
前記装置(10)のユーザインターフェース(112)を介して、または前記装置(10)の通信回路(44)を介して受信されたユーザ入力に応答して1若しくはそれ以上のパラメータを変化させる工程であって、当該1若しくはそれ以上のパラメータは、前記電気的刺激信号(22)の周波数、前記電気的刺激信号(22)の電圧、前記電気的刺激信号(22)の電流、または前記電気的刺激信号(22)の負荷サイクルのうちのいずれか1つまたは複数である、変化させる工程を有するものである、方法(2200)。
【請求項23】
請求項19から請求項22のいずれか1つに記載の方法(2200)において、電極(16)の前記それぞれのサブセット(32)を順次活性化させる工程は、治療プログラム(96)に従って電極(16)の前記それぞれのサブセット(32)を活性化させる工程を有する、方法(2200)。
【請求項24】
請求項23記載の方法(2200)において、さらに、
前記治療プログラム(96)を前記装置(10)内に構成データ(40)として記憶された予め定義された治療プログラムとして取得する工程を有するものである、方法(2200)。
【請求項25】
請求項23または請求項24のいずれかに記載の方法(2200)において、さらに、
ユーザー入力に応答して前記治療プログラム(96)を作成する工程または調整する工程を有するものである、方法(2200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
患者の身体の損傷部位に電気的刺激信号を印加するための電気的刺激装置および方法である。
【背景技術】
【0002】
「電気的刺激」または「電気的刺激療法」と呼ばれることもある、人体への電気的信号の治療への応用には長い歴史がある。現代の日常的な電気刺激の使用法としては、経皮的電気的神経刺激(TENS)装置が最もよく知られているが、これは慢性または急性の痛みを和らげるために、皮膚を通して電気的刺激を発生させるものである。
【0003】
TENS信号は、10Hz以下から400Hzまであり、前記信号の強度は、関係する周波数範囲と意図する効果に依存する。例えば、10Hz以下のTENS信号は、運動収縮を誘発するために強度が高く、50Hz以上のTENS信号は一般に強度が低い。しかし、他の公知の電気的刺激装置は、より高い周波数で作動するか、少なくともより高い周波数で作動する能力を提供している。一例として、2018年10月2日登録の米国特許第10、085、670B2号明細書を参照されたい。
【0004】
創傷治癒は、電気刺的激のもう一つの応用例であり、2009年4月21日登録の米国特許第7、520、849B1がその一例である。それ以前の例としては、1989年7月11日登録の米国特許第4、846、186A号を参照されたい。米国特許公開第2010/020475A1号は、創傷治癒の文脈で、陰圧治療と組み合わせて電気刺激を適用した別の例を提示している。
【0005】
電気的刺激の分野で見られる電気的刺激装置の構成や操作パラメータのばらつきの大きさは、疼痛緩和から神経筋刺激まで、意図される用途が幅広いだけでなく、特定の用途における有効性の鍵となるパラメータが不明確なままであることを反映している。疼痛緩和と損傷治癒の分野で高い効果が得られる電気的刺激装置と電気的刺激法に対する切実なニーズが残っている。
【発明の概要】
【0006】
電気的刺激装置は、電極を患者の身体に接触させる電極キャリアに含まれる一連の電極のうちのそれぞれのサブセットを順次活性化させることに基づいて、電気的刺激信号を10kHzと50kHzとの間の周波数で直流パルス列として供給し、前記電気的刺激信号を損傷部位の前記患者の身体に印加する。電気的刺激方法は、電気的刺激信号を介して、患者の身体上の損傷部位において前記患者の身体に接触する一連の電極の中の電極のそれぞれのサブセットを順次活性化する。有利なことに、1若しくはそれ以上の実施形態において、前記順次活性化は、前記電気的刺激信号の発信元および受信側を前記損傷部位の周囲に走査パターンまたは循環パターンで「移動」させる活性化順序に従う。本明細書で使用される「損傷部位」には、疼痛または機能障害が識別可能な損傷として現れるかどうかにかかわらず、前記疼痛または機能障害が示される部位が含まれる。しかし、創傷のような目に見える傷は、「損傷部位」という用語に包含される。
【0007】
患者の治療的電気的刺激用に構成された装置の一実施形態は、電極キャリアと刺激モジュールとを含む。前記電極キャリアは、一連の電極を患者の身体上の損傷部位において前記患者の身体に接触するように配置するように構成される。前記刺激モジュール内の信号発生回路は、電気的刺激信号を直流(DC)パルス列として10kHzから50kHの間の周波数で発生するように構成されている。前記刺激モジュール内の制御回路は、前記一連の電極内の電極の個々のサブセットを順次活性化するように構成され、各サブセットは、前記電気的刺激信号の信号発信元として活性化された1若しくはそれ以上の電極と、前記電気的刺激信号の信号受信側として活性化された1若しくはそれ以上の電極とを含む。
【0008】
有利なことに、本装置の少なくとも1つの実施形態では、前記順次活性化は、前記損傷部位の周囲で前記電気的刺激信号の前記発進元と受信側を「移動」させる活性化順序に従う。ここで、前記信号発進元と受信側を「移動させる」とは、物理的な移動を意味するのではなく、むしろ、前記電気的刺激信号が前記損傷部位の前記損傷周囲の複数の位置から発進元/受信側とされるように、空間的パターンまたは順序に従って、どの電極が活性化されるかを時間と共に変化させることを意味する。前記信号発信元と受信側を移動させることで、前記傷害部位を通る、あるいは前記傷害部位を横切る、空間的に分散した信号経路が時間とともに形成される。
【0009】
本装置の少なくとも1つの実施形態で使用されるさらに有利な配置では、前記電極キャリアは、前記損傷部位で前記患者の身体に前記電極キャリアを密着させて密封可能に閉鎖されるポート付きチャンバを内蔵する。このような実施形態では、前記制御回路は、前記電気的刺激信号の印加を制御するのと連動して、前記電極キャリアを介して陰圧の印加を制御するように構成される。前記逐次的な電極活性化を介して提供される前記発信元と受信側の移動は、陰圧治療と組み合わされ、傷害治癒療法の相乗的な適用を可能にする。
【0010】
別の実施形態では、患者の治療的電気的刺激のために構成された装置によって実行される方法は、10kHzから50kHの間の周波数でDCパルス列として電気的刺激信号を供給する工程または動作を含む。さらに、本方法は、電気的刺激信号を介して、患者の身体上の損傷部位において前記患者の身体に接触する一連の電極のうち、電極のそれぞれのサブセットを順次活性化することを含む。例えば、前記順次活性化は、定義された活性化順序および活性化サイクルに従う。
【0011】
もちろん、本発明は上記の特徴および利点に限定されるものではない。当業者であれば、以下の詳細な説明を読み、添付の図面を見れば、さらなる特徴および利点を認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、患者の治療的電気的刺激のために構成された装置の一実施形態のブロック図であり、この装置は電気的刺激装置とも呼ばれる。
【
図2】
図2A~2Fは、電極キャリアの例示的な実施形態の図である。
【
図3】
図3は、電極キャリア内の電極の例示的な活性化パターンおよび活性化サブセットの図である。
【
図4】
図4A~4Cは、電極キャリアのさらなる例示的な実施形態の図である。
図4D~4Gは、自己施行電極キャリアおよびケーブルシステムのさらに例示的な実施形態の図である。
【
図5】
図5は、電極キャリアの電極の活性化パターンおよび活性化サブセットのさらなる例の図である。
【
図6】
図6は、1若しくはそれ以上の実施形態による、例示的な電極活性化順序および活性化サイクルの図である。
【
図7】
図7は、1若しくはそれ以上の実施形態による、例示的な電極活性化順序および活性化サイクルの図である。
【
図8】
図8は、1若しくはそれ以上の実施形態による、電気的刺激装置によって使用される例示的な構成データの図である。
【
図9】
図9Aおよび9Bは、1若しくはそれ以上の実施形態による、治療プログラムまたは治療計画選択のために電気的刺激装置によって使用される機能ロジックの図である。
【
図10】
図10は、1若しくはそれ以上の実施形態による、治療プログラム作成または調整のために電気的刺激装置によって使用される機能ロジックの図である。
【
図11】
図11は、別の実施形態による電気的刺激装置のブロック図である。
【
図12】
図12は、別の実施形態による電気的刺激装置のブロック図である。
【
図13】
図13A~
図13Cは、別の実施形態による、陰圧治療を提供する要素を統合した電気的刺激装置の図である。
【
図14】
図14A~14Dは、さらなる例示的な実施形態による電極キャリアの図である。
【
図15】
図15は、電極キャリアのさらなる例示的な実施形態の図である。
【
図16】
図16は、電極キャリアのさらなる例示的な実施形態の図である。
【
図17】
図17は、種々の実施形態による、電極キャリアと刺激モジュールとの間の例示的なインターフェースを示すブロック図である。
【
図18】
図18は、種々の実施形態による、電極キャリアと刺激モジュールとの間の例示的なインターフェースを示すブロック図である。
【
図19】
図19は、種々の実施形態による、電極キャリアと刺激モジュールとの間の例示的なインターフェースを示すブロック図である。
【
図20】
図20は、種々の実施形態による、電極キャリアと刺激モジュールとの間の例示的なインターフェースを示すブロック図である。
【
図21】
図21は、電気的刺激装置の別の実施形態のブロック図であり、装置の電極キャリアが装置の刺激モジュールを一体化している。
【
図22】
図22は、一実施形態による電気的刺激装置によって実行される方法の論理フロー図である。
【
図23】
図23A~23Dは、患者の身体上の損傷部位の損傷を横切ってまたは損傷を通して電気的刺激信号を分配または掃引するための例示的な「移動」パターンを示す。
【
図24】
図24は、電気的刺激信号を生成するための、一実施形態による例示的な信号生成回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、疼痛、不快感、または機能不全を伴う身体の部位において患者を治療的に電気的に刺激するように構成された電気的刺激装置10(以下、「装置10」という)の一実施形態の詳細例を示しており、このような部位は本明細書において広く「損傷部位」と称される。図には人間の患者が描かれているが、用語「患者」は、あらゆる生きている動物を包含する。
【0014】
前記装置10の電極キャリア12は、電極16のセット14を含み、前記装置10の刺激モジュール18は、有線または無線の接続24を介して前記電極キャリア12内のそれぞれの電極16に供給される電気的刺激信号22を生成するように構成された信号生成回路20を含む。少なくともいくつかの実施形態では、前記電極キャリア12と前記刺激モジュール18との間には、前記電極キャリア12の型式、モデル、または構成を検知または読み取る際に前記刺激モジュール18が使用するため、または電気的刺激療法中にどの電極16が所定の時間に活性化するかを制御するために、1若しくはそれ以上の追加信号26が送られる。
【0015】
前記刺激モジュール18内の制御回路30は、刺激信号発生が前記電極キャリア12上で起こる実施形態のように、前記信号26を介して直接的に、または前記信号発生回路20の制御を介して間接的に、電極活性化を制御する。例えば、一実施形態の前記接続24は、各電極16の電気的接続を担い、前記信号発生回路20は、前記制御回路30による制御信号に応答して、前記電極16のそれぞれのサブセット32を「活性化」する。
【0016】
図にはサブセット32-1、32-2、32-3が示されているが、この例は非限定的なものである。サブセット32の数はより少なくても多くてもよく、任意のサブセット32は2つ以上の電極16を含んでもよく、2若しくはそれ以上のサブセット32は共通して1若しくはそれ以上の電極16を有してもよい。さらに、前記サブセット32は同じ数の部材を有する必要はなく、例えば、1つのサブセット32は2つの電極16を含み、別のサブセット32は3つの電極16を含むなどであってもよい。
【0017】
したがって、前記サブセット32-1、32-2、32-3は、電極ペア[A|B]、[C|D]、[E|F]として示されているが、他のサブセットの例は、[A|B、C]、[C|D、B、F]などである。ここで、「|」の文字の左側に記載されているサブセットの電極16は、前記電気的刺激信号22の信号発信元として動作し、「|」の文字の右側に記載されているサブセットの電極16は、前記電気的刺激信号22の信号受信側として動作する。そのように理解すると、[A|B]として形成される前記サブセット32は、[B|A]として形成される前記サブセット32とは区別される。
【0018】
前記制御回路30にサブセット形成または活性化の制御を提供するための、上述の1つのアプローチは、前記電極キャリア12によって運ばれる各電極16のための電気的接続を含む前記接続24に依存する。一実施例では、前記信号発生回路20は、1若しくはそれ以上の電極16を信号発信元として、1若しくはそれ以上の電極16を信号受信側として選択的に接続するマルチプレクサを含み、前記選択的な接続は前記制御回路30によって制御される。他の実施形態では、前記信号発生回路20は、予め定義されたサブセット32を活性化するように固定回路を介してプログラムまたは配置される。
【0019】
例えば、1若しくはそれ以上の実施形態における前記信号発生回路20は、前記電極16の個々のものを活性化/非活性化し、所定の電極16が信号発信元として活性化されるか信号受信側として活性化されるかを制御するように構成される。この配置により、前記電極キャリア12の電極16の全体セット14の中から任意のサブセット32を形成することができる。
【0020】
さらに他の実施形態では、前記電極キャリア12上の回路は、前記刺激モジュール18から受信された信号伝達に依存して、サブセットの形成または活性化を制御し、そのような配置は、前記接続24の有線バージョンで必要とされる配線の数を低減または排除する。例えば、例示的な実施形態における前記接続部24は、前記電極キャリア12上のサブセット形成または活性化を制御するための、前記信号伝達26に関連する1若しくはそれ以上の追加配線とともに、前記電気的刺激信号22の発信元および受信側に関連するプラスおよびマイナス(または「アース」)配線を含む。さらに他の実施形態では、前記信号伝達26は、前記電気的刺激信号22に印可される高周波信号伝達を含むことができる。そのような実施形態では、前記電極キャリア12は、高周波信号伝達を検出するか、さもなければ高周波信号伝達に応答するように構成された回路を含む。前記電極16に向かう異なる配線セットを様々に通過し得る高周波信号、およびエネルギーが前記電極キャリア12を急速に移動する際の干渉の機会のため、電磁クロストークを緩和するために、隣接する電極16間に追加の誘電絶縁および/または電磁抑制材料を提供することができる。
【0021】
図1に示される前記装置10の実施形態における他の例示的な詳細には、1若しくはそれ以上のコンピュータプログラム38または構成データ40の記憶用に使用されるような、処理回路34および記憶装置36を含む前記制御回路30の要素が含まれる。本明細書および本開示の他の箇所において、「または」という語は、特に断りのない限り、または文脈から明らかな場合を除き、接続的な場合を包含する。すなわち、「AまたはB」という語句は、文脈上の用法によって指摘または除外されない限り、A単独、B単独、またはAおよびBの両方を意味する。
【0022】
前記処理回路34は、例えば、1若しくはそれ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、Field Programmable Gate Arrays(FPGAs)、Complex Programmable Logie Devices(CPLDs)、Digital Signal Processors(DSPs)、Application Specific Integrated Circuits(ASICs)、または、System-on-Chip(SoC)モジュールのうちのいずれかの1若しくはそれ以上からなる。大まかには、前記処理回路34は、固定回路またはプログラム的に構成された回路、あるいはその両方の混合回路で構成される。
【0023】
前記処理回路34がマイクロプロセッサ(「μP」)で構成される例では、前記マイクロプロセッサは、例えば、記憶装置36に保持された1若しくはそれ以上のコンピュータプログラム(「CP」)38からのコンピュータプログラム命令の実行に少なくとも部分的に基づいて、前記装置10について本明細書に記載された動作を実行するように特別に適合された汎用マイクロプロセッサである。すなわち、前記装置10の1若しくはそれ以上のマイクロプロセッサに基づく実施形態において、前記マイクロプロセッサによる前記コンピュータプログラム命令の実行は、前記装置10を本明細書に記載されるように機能させる。
【0024】
これに対応して、前記記憶装置36は、1若しくはそれ以上の型式の記憶回路または記憶装置などの1若しくはそれ以上の型式のコンピュータ読取可能媒体から構成され、全体的または部分的に前記処理回路34と一体化されているか、または前記処理回路34にアクセス可能であってもよい。メモリ回路の非限定的な例としては、前記装置10の「ライブ」動作のためのワーキングメモリとしての揮発性メモリと、構成データ(「CFG.DATA」)40と呼ばれる、プログラム命令および様々なパラメータまたは設定値の長期保存のための不揮発性メモリとがある。揮発性メモリの例には、SRAMまたはDRAMが含まれ、不揮発性メモリの例には、EEPROM、FLASH、およびSolid State Disk(SSD)が含まれる。
【0025】
前記装置10の他の例示的要素には、電源42が含まれ、この電源42は、前記装置10の携帯操作のためのリチウムイオン電池などの電池を含むことができる。実施例では、前記電源42は、主電源接続用に構成され、例えば、AC110VからAC250Vの50/60Hzの電力で、安全でない電圧または電流レベルで前記電極16に通電する可能性を排除するために、1若しくはそれ以上の絶縁変圧器を含む。一般的な動作では、前記電源42は、前記装置10内の様々な回路が使用するために、1若しくはそれ以上の制御された供給信号、例えば、1若しくはそれ以上の電圧レベルのDC供給電圧を出力する。
【0026】
このような他の回路の例には、通信回路44、ユーザインタフェース回路46、および入出力(I/O)回路48が含まれる。通信回路、ユーザインタフェース回路、およびI/O回路44、46、48は、前記装置10の1若しくはそれ以上の実施形態にオプションで含まれることを示すために破線のボックスで示されている。同様に、前記処理回路34および記憶装置36は、CP38およびCFG.DATA40は、前記制御回路30がその実装のためにもっぱら固定回路に依存している場合など、前記装置10の1若しくはそれ以上の実施形態がそれらを含まない場合があることを示すために破線のボックスで示されている。
【0027】
1若しくはそれ以上の実施形態において、通前記信回路44は、1若しくはそれ以上の実施形態における前記電極キャリア12との無線通信のため、または前記装置10をWI-FIアクセスポイントまたは他の型式の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)に無線結合するためなどの無線通信を提供する。さらに、または代替的に、前記通信回路44は、近接場通信(NFC)またはパーソナルエリアネットワーク(PAN)接続性を実装し、例えば、任意の時点で使用される前記電極キャリア12の特定の型式、モデル、または構成を登録または読み取るためのものであり、前記電極キャリア12はこれに対応して相補的な通信回路を内蔵している。PAN接続は、例えばBLUETOOTH通信に依存する。
【0028】
1若しくはそれ以上の実施形態において、前記通信回路44によって提供されるBLUETOOTH、WI-FI、または他の無線接続は、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、または他のコンピュータデバイスを介して前記装置10に無線接続を有するローカルユーザを介して、またはインターネットを介して接続されたリモートユーザを介して、前記装置10のユーザ制御または監視の実施を提供する。
【0029】
さらに、前記通信回路44が含まれる前記装置10の少なくとも1つの実施形態では、前記通信回路44は、前記装置10のデータネットワー形成をサポートするイーサネット接続などの1若しくはそれ以上の有線インターフェースを含む。もちろん、WLAN接続を介したデータネットワークや、シリアル・ペリフェラル・インターフェース(Serial Peripheral Interface:SPI)や他のシリアルインターフェースなどの他のデータインターフェースを使用することもできる。このような接続性により、前記装置10は、例えば、患者の治療を特定の患者にまたは特定の患者のための特定の治療セッションに合わせるための設定データを受信することができ、治療確認記録を出力することができる。このような記録は、時間/日付スタンプ、患者名、またはIDを、前記制御回路30によって生成された一意のノンス(nonce)などの治療証明とともに含むことができる。このようなデータはすべて、静止時または通信時に暗号化されてもよい。
【0030】
スマートフォンまたは他の外部コンピュータデバイスを介して提供されるユーザ制御に加えて、またはそのような組み合わせの追加または代替として、1若しくはそれ以上の実施形態における前記装置10は、ユーザ入力、すなわちユーザインタフェース要素または制御のユーザ作動を示す信号またはデータを前記制御回路30に提供するように動作可能なユーザインタフェース回路46を含む。例示的なユーザー入力には、オン/オフ制御、刺激信号発生の活性化/非活性化、治療タイミング制御、または、前記電気的刺激信号22の1若しくはそれ以上の電気パラメータの調整入力、前記(電極)サブセット32の構成、または前記それぞれのサブセット32を活性化するために使用される前記活性化順序またはサイクルの構成などの動作パラメータの調整が含まれる。参照番号「50」は、前記制御回路30へのこのようなあらゆるユーザ入力信号を示す。
【0031】
前記装置10の少なくとも1つの実施形態に含まれるような前記I/O回路48は、例えば、前記装置10を介した電気的刺激治療に関する患者情報を読み書きするための大容量記憶インターフェースを提供する。さらに、または代替的に、前記I/O回路48は、例えば、前記装置10を介した治療の開始または完了を示す信号表示機器とインターフェースするための1若しくはそれ以上の個別の入力または出力ラインを提供する。
【0032】
上記の例示的な詳細および実施変形例を念頭に置いて、1若しくはそれ以上の実施形態による前記装置10は、電極16のセット14を患者の身体上の損傷部位において患者の身体と接触するように配置するように構成された電極キャリア12を含む。さらに前記装置10に含まれる刺激モジュール18は、電気的刺激信号2.2.を10kHzから50kHzの間の周波数で直流(DC)パルス列として生成するように構成された信号生成回路20を含む。特定の信号周波数は、固定であっても調節可能であってもよい。
【0033】
前記刺激モジュール18に含まれる制御回路30は、電極16の前記セット14内の電極16の個々のサブセット32を順次活性化するように構成される。各サブセット32は、前記電気的刺激信号22の信号発信元として活性化された1若しくはそれ以上の電極16と、前記電気的刺激信号22の信号受信側として活性化された1若しくはそれ以上の電極16とを含む。
【0034】
図2Aは、前記電極キャリア12の例示的な実施形態を示しており、前記電極キャリア12は、前記損傷部位の患者の身体上に適合可能に配置されるように構成された可撓性シートまたは膜60からなる。前記可撓性シートまたは膜60(以下、「シート60」)は、患者の身体から離れる方向に面する上面62を有し、前記可撓性シート60の患者に面する面64上に電極16の前記セット14を担持する。1若しくはそれ以上の実施形態では、前記シート60は2若しくはそれ以上の層から構成され、前記電極16と関連する電極配線は耐久性と保護のためにその中に埋め込まれる。もちろん、前記電極16の患者に接触する部分は、底部層、すなわち、前記シート60の患者に面する表面64に露出している。1若しくはそれ以上の実施形態における前記シート60の別の特徴は酸素透過性であり、これは前記シート60によって覆われる患者の皮膚が自由に「呼吸」できるままであることを意味する。
【0035】
図2Aは前記電極キャリア12の上面透視図であるため、前記電極16は隠れた点線で示されているが、これは、前記電極16(およびそれらに関連する配線)が上述のように前記可撓性シート60内に埋め込まれ、
図2Bに見られるように前記患者に面する表面64でのみ露出している可能性を示しており、そこでは、個々の電極16は半球状の「ボタン形状」または「突起」であり、患者の皮膚に局所的だが快適な接触点を提供する。
【0036】
1若しくはそれ以上の実施形態において、前記可撓性シート60は、患者の身体上の損傷部位において損傷を露出させたままにするための中央切り抜きまたは開口部66を含む。これに対応して、電極16の前記セット14は、前記切り抜きまたは開口部66を画定する縁部または周囲68に沿って間隔を隔てた位置に配列される。
【0037】
図2Bは、前記電極キャリア12の1若しくはそれ以上の実施形態に含まれる別の特徴を示している。すなわち、前記電極キャリア12は、各電極16に電気的に接続するための印刷または可撓性の埋込コネクタ70を含んでもよく、前記刺激モジュール18に向かうケーブル配線に迅速かつ便利に接続するための電気コネクタ72を含んでもよい。すなわち、前記電極キャリア12と前記刺激モジュール18との間の前記接続24が有線接続である実施形態では、前記電極キャリア12を前記刺激モジュール18に電気的に接続するために、相補的なコネクタを有するケーブルを使用することができる。
【0038】
図2Cは、前記電極キャリア12の同じ実施形態を示す図であり、患者の身体上の損傷に対して周囲に配置された状態で描かれている。特に、前記例示の傷は開放創である。これに対応して、
図2Dおよび
図2Eは、創傷の周囲の配置に配置される前および配置された後の前記電極キャリア12の同じ実施形態を図示する。
図2Dおよび
図2Eに提供された側面図に見られるように、前記電極16は、接触点で患者の皮膚をわずかに押し下げるが、皮膚を壊すことなく、不当な圧力をかけることはない。いくつかの実施形態では、前記電極16によって印加され得る例示的な圧力は、0.05~10ポンド、または1平方インチあたり0.5ポンド~150ポンドの間である。他の実施形態では、前記電極16によって印加され得る例示的な圧力は、本明細書に記載されるような接着材料によって印加される表面張力、または約0.0055ポンドに対応する。また、
図2Dおよび
図2Eには、
図1に導入された「接続部24」として前記刺激モジュール18に戻る有線結合のための例示的なケーブル74が示されている。
【0039】
「適合性」は、前記電極キャリア12の基礎として前記可撓性シート60を使用するいくつかの利点のうちの1つである。
図2Fは、褥瘡やその他の傷害の治療のために、前記電極キャリア12を患者の胴体下部の臀部付近に貼付した状態を示しており、適合性の利点を強調している。
【0040】
前記電極キャリア12の様々な実施形態は、前記シート60の患者に面する前記表面64に予め貼付されるか、または前記シート60を貼る前に患者の皮膚に貼付される、何らかの形態の接着剤を使用する。前記電極キャリア12の他の実施形態では、前記電極キャリア12を患者の身体に固定するために、ファスナー、ストラップ、または弾性材料を使用する。
【0041】
「前記可撓性シートまたは膜60」という語句は、前記電極16および関連する配線/コネクタが成形されたまたは埋め込まれたラテックスまたは他のゴムまたはポリマーシートとしての前記電極キャリア12の可能な実施だけでなく、織布シートまたは織物としての前記電極キャリア12の可能な実施も示す。もちろん、前記電極キャリア12は、布とゴムまたはポリマー要素の混合物から構成することもできる。前記電極キャリア12の少なくとも患者の皮膚に接触する部分は、多孔質であっても非多孔質であってもよい。
【0042】
さらに、
図2A-2Fは、前記可撓性シート60と前記切り抜き66の矩形形状の例を示しているが、その例は非限定的なものである。前記シート60は、前記電極キャリア12を傷害の様々な形状またはサイズ、および傷害の様々な身体的位置に適合させるために、楕円形、円形、円弧形、または不規則な形状であってもよい。考えられる配置では、複数の形状/タイプの前記電極キャリア12が提供され、すべてが前記刺激モジュール18に適合する。このアプローチでは、傷害の治療には、傷害の性質と場所、または望まれる治療の性質に最も適した前記電極キャリア12の形状、サイズ、または型式を選択する最初の工程が含まれる。例えば、腱炎の痛みを和らげるための電気的刺激は、痛みの緩和と組織再生のために開放創の電気的刺激に使用されるものとは対照的に、特定の型式またはスタイルの電極キャリア12が有利である。
【0043】
治療上の利点は、火傷、潰瘍、外科的切除、切開など、患者の皮膚に開口部や切り傷を伴う侵襲的損傷に関して特に顕著である。このような利点としては、痛みの緩和、治癒の迅速化、瘢痕の減少などが挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、前記装置10の使用は、侵襲性の損傷の処置に限定されない。例えば、1若しくはそれ以上の実施形態において、前記装置10は、筋肉の断裂または炎症状態のような閉鎖的な損傷の治療のために構成される。したがって、「損傷」という語は、本明細書において広い意味を有する。これに対応して、前記電極キャリア12のすべての実施形態が切り抜き66を含むわけではなく、1若しくはそれ以上の実施形態は、前記電極16のセットを、患者の身体上の皮膚の対応する領域にわたって電極接触点の均一なまたは非形成的な間隔のセットを提供する長方形格子または他の配列パターンとして運ぶ。
【0044】
図3の例では、前記電極16のセット14は、電極A~Lとしてラベル付けされた電極16を含み、これらの電極16は、前記電極キャリア12の基本要素として機能するシート60の中央の切り抜き66に対して、周囲の配置で間隔をあけた位置に配列されている。特に、前記電極16が前記切り抜き66の前記周囲または縁部68に沿ってアレイを形成している間、前記切り抜き66は、ある種の傷害のための快適さと治癒を助けるかもしれない、関係する損傷を露出したままにする。前記損傷のサイズまたは形状に関する前記電極キャリア12の適切なサイズ決定または選択により、このような配置は、前記電極16の1若しくはそれ以上のサブセット32が前記損傷に対して橋渡しするように、前記電極16がセット14を配置する。
【0045】
任意の数のサブセット32を形成することができ、
図3には具体的な部分集合32-1、32-2、32-7が示されている。一例として、前記サブセット32-1は[K|L]または[L|K]からなり、前記サブセット32-2は[I|J]または[J|I]などからなる。
図3に描かれた例示的な電極サブセットに関する患者の「治療」は、例えば、1若しくはそれ以上の活性化サイクルにわたって、定義された活性化順序に従って2若しくはそれ以上のサブセット32を順次活性化することからなる。前記活性化順序は、前記電極キャリア12によって提供される前記電極16のセット14を介して利用可能な発信元/受信側電極のすべての可能な順列を行使することができるが、より少ないサブセット32が前記活性化順序によって使用/定義されることがあり、異なる治療計画は、異なるサブセット32および異なる活性化タイミングまたは全体的な治療時間を使用することができる。
【0046】
図4Aは前記電極キャリア12の別の実施形態を示し、前記シート60は2つの片または部分に分割され、これらは相互に連結されていてもいなくてもよい。図示の例では、前記シート60は2つのストリップ76Aおよび76Bからなり、それぞれが電極16の数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)を担持する。前記ストリップ76Aは、損傷の一方の「側」に配置され、前記ストリップ76Bは、損傷の反対側/他方の側に配置されてもよく、前記それぞれのストリップ76Aおよび76Bは、ケーブル74Aおよび74Bを介して前記刺激モジュール18に結合されてもよく、それにもかかわらず、前記ストリップ76Aおよび76Bにおいて「Y」配置を有する単一のケーブルに統合されてもよい。
図4Aでは3つの例示的な電極16で示されているが、1つのシート60は、例えば、受信側として作用する1つの電極16を含むことができ、一方、別のシート60は、例えば、発信元として作用する3つまたは5つの電極16を含むことができる。
【0047】
注目すべきことに、前記ストリップ76Aおよび76Bは、損傷のサイズに適合させることに関して最大限の柔軟性を得るために、任意の長さであってよく、直線状、円弧状、または不規則な形状であってよい。いくつかの実施形態では、前記ストリップ76Aおよび76Bは、長さに合わせて切断されてよく、他の実施形態では、所定の長さで提供される。さらに、少なくとも1つの実施形態では、前記刺激モジュール18は、最大N個(N>1)の個々の電極ストリップ76を集合的に前記電極キャリア12として動作させるように構成されており、これは、多数の電極ストリップ76が、損傷に関して概ね取り囲む配置で患者の身体上の損傷部位に配置され得ることを意味する。
【0048】
いくつかの実施形態において、またはいくつかの治療プロトコールに従って、前記電極16は、損傷自体からちょうど外れた皮膚、例えば、開放創に接する創周囲皮膚、に接触し、他の実施形態または治療プロトコールにおいて、前記電極16の1若しくはそれ以上が創傷の表面に接触し、これは、特に深い潰瘍性の創傷で有用であり得る。少なくとも1つの実施形態では、前記電極16の1若しくはそれ以上は、「フライング」電極として構成され、例えば、リード延長部を介して前記電極キャリア12から延び、創傷上または創傷内に戦略的に配置することを可能にし、一方、前記電極16の他のものは、前記創傷の1若しくはそれ以上の「側面」の皮膚に接触する。
【0049】
図4Bは、前記電極キャリア12のストリップベに基づく実施形態の使用例を示しており、2つのストリップ76Aおよび76Bが、患者の膝における外科的切開の両側に沿って(ヒトの)患者の皮膚に取り付けられている。前記ストリップ76Aおよび76Bは、例えば接着剤を用いて皮膚に貼付/固定してもよいし、弾性ラップ等を介して所定位置に保持してもよい。
【0050】
ここでの「側面」を有する損傷への言及は、特定の損傷の形状を意味するものではない。さらに、前記電極キャリア12のストリップに基づく実施形態の別の利点は、前記ストリップ76Aおよび76Bが、関係する損傷に関して橋渡し配置に配置され得ることである。
図4Cは、全体的なシート60が第1および第2のストリップ76Aおよび76Bに分割され、前記ストリップ76Aおよび76Bが、細長い損傷、ここでは別の閉鎖外科切開の長軸を横切って橋渡し配置で配置される、例示的な橋渡し実施形態を示す。少なくとも1つのこのような実施形態では、前記ストリップ76Aおよび76Bは、前記患者に面する表面64上に接着され、創傷閉鎖ストリップとして使用するように構成され、橋渡しされた創傷に電気的刺激療法を提供するという付加的な利点を有する。
【0051】
大まかに言えば、損傷が前記電極16のセット14のそれぞれの電極16によって「橋渡し」されることは、前記損傷の少なくとも一部が、前記電極16の1若しくはそれ以上の皮膚接触点(複数可)に対する1つの電極16の皮膚接触点の間に介在するか、またはその間にあることを意味する。所定の第1の電極16を信号源として作動させ、同時に、前記所定の第1の電極16に対して橋渡ししている所定の第2の電極16を作動させることにより、前記電気的刺激信号22は、前記損傷の橋渡し部分を横切るか、または橋渡し部分を通過する。もちろん、皮膚の導電性および皮下インピーダンスに依存して、発信元電極16と受信側電極16との間に複数の回路経路が存在する可能性がある。しかし、一般的な命題として、前記損傷に対して橋渡ししている電極16を作動させると、前記損傷組織を前記電気的刺激信号22が通過することになる。
【0052】
図4Dは、前記電極キャリア12のウェアラブルストリップに基づく実施形態の別の使用例を示しており、ここでは、2つのストリップ76Aおよび76Bを患者の皮膚に自己接着することができる。この例では、患者が、例えば、前記患者の携帯型コンピュータ装置またはモバイル装置によって操作されるアプリと連動して、痛みまたは損傷の部位を自己治療することができ、さらに、治療を受けながら、前記部位に応じて患者が目立たないように装着することもできる。前記ストリップ76Bは、単一の電極16を有するので、単一突起ストリップと呼ぶことができ、前記ストリップ76Aは、前記ストリップ76Aに沿って並んで配置された5つの電極16を有するので、5突起ストリップと呼ぶことができる。
図4Dの上部では、前記ストリップ76A、76Bの裏面が示されており、これは患者の皮膚から背を向けることになる。
図4Dの下側では、前記ストリップ76A、76Bの前側が示されており、前記突起または電極16が接触するように患者の皮膚に接着される。前記単一突起ストリップ76Bの分解図が
図4Eに示されており、可撓性裏打ち基材86に対する3M 467 MP転写粘着テープなどの粘着層85から始まっている。ステンレス鋼突起(例えば、316ステンレス鋼製)が前記電極16を形成し、この電極16は、Autoflex EB 130ポリエステル透明フィルムなどの透明フィルム88上に配置された可撓性プリント回路87に電気的に結合されている。前記可撓性プリント回路87はコネクタ83で終端している。前記透明フィルム88は、剥離ライナー付き粘着テープ91、例えばAvery Dennison MED 3044剥離ライナー付きアクリル系粘着テープに接着されている。パッド81にはQRコードを印刷することができ、このQRコードは、前記電極キャリア12を制御するために使用できるアプリにリンクさせることができる。
【0053】
図4Fは、
図4Dに示す前記5個の突起ストリップ76Aの分解図を示す。前記1つの突起ストリップ76Bと同様に、前記5個の突起ストリップ76Aは、可撓性裏打ち基材95に対して、3M 467 MP転写粘着テープのような粘着層93を有する。5つのステンレス鋼突起(例えば、316ステンレス鋼製)が前記電極16を形成し、その各々は、Autoflex EB 130ポリエステル透明フィルムのような透明フィルム上に配置された可撓性プリント回路97に電気的に結合されている。前記可撓性プリント回路97は、コネクタ83で終端し、Avery Dennison MED 3044剥離ライナー付きアクリル系粘着テープ99などの剥離ライナー付き粘着テープに接着され、皮膚に接触する前面基板101に接着される。パッド81にはQRコードを印刷することができ、このQRコードは、前記電極キャリア12を制御するために使用できるアプリにリンクさせることができる。
【0054】
図4Gは、前記ストリップ76A、76B共に使用するためのケーブルセットの例を示しており、前記ストリップ76Aの前記コネクタ83は、9方向Molexコネクタ039532094のような、雄型コネクタ83を受ける対応する雌型コネクタを有するドングル1044に挿入される。対応して、前記ストリップ76Bの前記コネクタ83は、前記ストリップ76Bの前記雄コネクタ83を受ける対応する雌コネクタを有するドングル103に挿入される。ドングル103、104のいずれか一方または両方は、前記アプリから前記電極16への前記治療計画の強度、持続時間、および/または頻度を設定するために、Bluetoothまたは同様の無線接続を介してなど、前記アプリによって制御されるように構成されたスイッチ制御装置105を含むことができる。例えば、前記アプリは、前記治療計画の種類、例えば、テニス肘7を示す入力を受信し、前記電極16に供給される電力の電気パラメータ、ならびに前記5つの突起ストリップ76Aに供給される通電パターンおよびタイミングを制御するように前記スイッチ制御装置105を自動的にプログラムすることができる(この例では、未使用の電力は、前記単一の突起ストリップ76Bを介して電源に戻される)。
【0055】
図4D~4Gに示される前記ストリップ76A、76Bを使用するために、患者または臨床医は、本明細書に記載されるように、前記ストリップ76A、76Bを損傷または痛みの部位に近接して貼り付ける。前記患者の損傷や痛みの性質や部位を示すために、前記アプリに治療タイプを入力する。前記アプリは、前記入力された治療タイプをスイッチ制御装置または他の制御装置(例えば、前記刺激モジュール18)に伝達して、前記ストリップ76A、76Bに供給される前記電力の電気パラメータ、ならびに前記ストリップ76A上の前記電極16のタイミングおよび通電パターンを制御する。前記ストリップ76A、76Bは、電力が供給される間、患者の皮膚に接着されたままであり、治療セッションの間、患者によるさらなる相互作用は必要なく、また、患者は、前記電極16を介した治療の貼付の間、前記ストリップ76A、76Bを保持する必要も、必ずしも電気的パラメータを調整する必要もない。
図4D~4Gに示される前記ストリップ76A、76Bに関連して、本明細書に開示されるいかなる通電戦略も使用することができる。有利には、前記ストリップ76A、76B、ケーブル、および制御ユニットは、キットとして患者に直接送付することができ、患者は、前記アプリをダウンロードして(例えば、QRコード107をスキャンして)、前記アプリを介して自己治療を開始することができる。あるいは、医師または臨床医は、通信回線を介して利用可能な遠隔医療技術を利用して、前記ストリップ76A、76Bを制御する前記刺激モジュール18に治療計画を通信することによって、前記ストリップ76A、76Bに供給される電気パラメータを、例えば、患者のモバイルまたはポータブルコンピュータ装置に対して調節することができる。
【0056】
図5は、前記電極16のセット14内の電極16のユニークなペア80が損傷の電気的刺激のために使用される、前記電極キャリア12の別の例を示す。前記ペア80は、先に述べたサブセット32の特定の場合または例に過ぎない。すなわち、サブセット32は、2つの電極16を含んでいてもよいし、2つ以上の電極16を含んでいてもよいが、
図5は、電極のペア80-1~80-7の特定の場合を示している。任意の所与の時間において、所与のペア80内の前記電極16の第1の1つは、前記電気的刺激信号22のための信号発信元として活性化しており、前記ペア80内の前記電極16の第2の1つは、前記電気的刺激信号22のための信号純真側として活性化している。
【0057】
少なくともいくつかの実施形態では、前記ペア80は、少なくとも名目上、電極16の橋渡しペアである。すなわち、前記刺激モジュール18は、前記電極キャリア12のどの電極16がペア80として操作されるかを、それらの電極16が関係する損傷に関して「橋渡し」されるという基礎的な仮定(損傷の特定のタイプまたは形状および前記損傷に関する前記電極キャリア12の適切な配向を仮定する)に基づいて、予め定義することができる。他の実施形態では、患者または患者を治療する人は、どの電極16をペア80として動作させるか、またはサブセット32として動作させるかを指定することができる。このような指定は、1若しくはそれ以上の実施形態において、前記刺激モジュール18の前記ユーザーインターフェース46を介して入力することができる。
【0058】
図6は、前記信号発生回路20によって、あるいは前記制御回路30によって制御または選択される活性化順序82の例を示している。前記図示された活性化順序82は、
図5に図示された固有の電極ペア80を指すが、一般的に、前記活性化順序82は、電極16のサブセット32の活性化順序を指定し、前記サブセット32は、2つ以上の電極16を含み、前記サブセット32は、同数の要素を有しても有さなくてもよいことが理解されるべきである。説明されるように、活性化順序82は、予め定義されていてもよいし、ユーザが定義してもよいが、
図6に描かれている前記活性化順序82は、
図5に見られる電極ペア80の有利な損傷橋渡し配置を利用している。
【0059】
有利なことに、1若しくはそれ以上の実施形態において、前記活性化順序82は、前記電気的刺激信号22の発信元および受信側を損傷部位の周囲に「移動」させ、それにより、損傷を通してまたは損傷全体にわたって空間的に分散された信号経路を経時的に形成する。前記活性化順序82は、例えば、記憶された設定データ40から選択されるなど、予め定義されることもあれば、例えば、ユーザ入力によって決定されるなど、ユーザ定義されることもあり、あるいは、前記制御回路30によって無作為化されることもある。所与の活性化順序82は、ランダム化されているかどうかにかかわらず、前記活性化順序82に含まれるすべてのサブセット32が、前記損傷に関して橋渡し関係にある電極16を含むことを必ずしも保証しない。
【0060】
図7は、
図6に示された例示的な活性化順序82に基づく例示的な活性化サイクル84を示す。具体的には、
図7は、1若しくはそれ以上の活性化サイクル84(H-1)、84(H)、84(n+1)等の一連の1つとして理解され得る活性化サイクル84(n)を図示する。一般的に、「治療プログラム」は、前記装置10が患者に治療的治療を提供する全体的な時間からなり、治療プログラムは「セッション」を構成するものとして理解され、前記損傷の種類および所望の全体的な治療プロトコルに依存して、患者が1日に1セッション、1週間に1セッション、または1日に複数セッションなどを受けることができることを理解することができる。セッションの全体的な集まり、例えば、患者が受ける治療プログラムの数や治療プログラム間の間隔は、「治療計画」または「治療プロトコル」とみなすことができる。
【0061】
少なくとも1つの実施形態では、前記装置10は、使用する電極キャリア12の型式/サイズ、刺激信号強度、周波数、活性化順序または活性化サイクルの定義などのようなオプションのさらなる詳細とともに、セッションの数および長さ、セッションの発生頻度などを定義する所望の治療計画用にプログラムすることができる。このように、医師または他の知識のある人は、特定の治療計画用に前記装置10をプログラムし、所望の治療計画がプログラムされた状態で患者を帰宅させることができる。例えば、瘢痕の最小化が切実な関心事である顔面手術または他の手術を受けた患者には、瘢痕の減少のために特別に調整されて使用される治療計画用に予めプログラムされた前記装置10を提供することができる。
【0062】
プログラム可能性または調整可能性の1つの領域は、前記装置10によって使用される治療プログラムに関係する。治療プログラムは、制御された滞留時間およびステップ時間を使用して、定義された活性化順序82をステップスルーする1つの活性化サイクル84から構成されてもよい。前記滞留時間とは、所定のサブセット32が前記活性化順序82内で活性化される時間を指し、前記ステップ時間とは、前記活性化順序82内の1つのサブセット32を非活性化してから前記活性化順序82内の次のサブセット32を活性化するまでの遅延を指す。前記滞留時間およびステップ時間は、順序全体にわたって均一であってもよいし、均一でなくてもよい。滞留時間およびステップ時間の非限定的な例は、それぞれ、30秒および1秒であり、別の柔軟性の点として、治療プログラムが複数の活性化順序を使用する範囲において、本質的に任意の操作パラメータが、順序間または順序内で変化されてもよい。例えば、前記サブセットの選択またはサブセットの順序は、活性化サイクル84から次の活性化サイクル84まで変えることができる、すなわち、異なる活性化順序82を複数の活性化サイクル84にわたって使用することができる。このようにして、1若しくはそれ以上の活性化サイクル84が治療プログラムまたはセッションを構成する。
【0063】
上記の順序/サイクルの例を念頭に置いて、1若しくはそれ以上の実施形態では、前記制御回路30は、定義された活性化サイクル84にわたって、前記個々のサブセット32を一度に1つずつ活性化する定義された活性化順序82に従って、前記個々のサブセット32を順次活性化するように構成される。前記装置10の1若しくはそれ以上の他の実施形態は、一度に複数のサブセット32を活性化することを提供する。
【0064】
少なくとも1つの実施形態では、前記定義された活性化順序82は、予め定義され、損傷部位における患者の身体上の前記電極16のセット14の空間的配置に対応し、前記それは損傷部位に対する前記電極キャリア12の指定された配置から生じる。すなわち、前記空間的配置は、前記電極キャリア12が患者の身体上に正しく配置されているかどうか、または前記電極キャリア12の適切な型式、サイズ、またはモデルが選択されているかどうかに依存して、存在することも存在しないこともある。しかしながら、予め定義された活性化順序82の一例として、
図6は、前記電極キャリア12が、前記損傷部位において、前記損傷が前記切り抜き66によって露出された皮膚領域内にあるように、前記患者の身体上に配置されると仮定して、
図5において前記電極キャリア12として機能する前記可撓性シート60の前記切り抜き66の対向する側の電極16に対応するサブセット32、具体的には、ペア80を図示している。
【0065】
他の実施形態において、または他のモードで動作するとき、前記制御回路30は、前記制御回路30によって受信された信号伝達に従って、前記定義された活性化順序82を決定するように構成される。前記信号伝達は、例えば、前記電極キャリア12によって提供されるか、または前記電極キャリア12から読み取られる信号26、前記刺激モジュール18によって提供される制御入力のユーザ制御(例えば、前記ユーザインターフェース回路46を介して)から生じる入力信号50、またはI/O回路48を介して受信される入力信号52、または前記通信回路44を介して受信される信号伝達54のいずれか1つからなる。例えば、前記制御回路30は、前記刺激モジュール18に通信可能に結合された外部構成装置から、前記通信回路44を介して無線通信信号を受信する。
【0066】
前記個々のサブセット32は、
図5の例のように、複数の電極ペア80からなり、各電極対80は、前記電極キャリア12によって提供される前記電極16のセット14からの2つの電極16の固有のペアである。各ペア80の2つの電極16の一方は前記信号発信元として動作し、2つの電極16の他方は前記信号受信側として動作する。前記複数の電極ペア80のうちの少なくとも1つは、前記2つの電極16が、前記損傷部位における損傷の少なくとも一部が患者の身体上の前記2つの電極16のそれぞれの接触点の間に介在する対向関係を有する、少なくとも仮に「対向」電極ペア80である。言い換えると、前記電極ペア80の少なくとも一方は、少なくとも仮に、治療される前記損傷に対して橋渡し関係にある。「少なくとも仮に」とは、前記電極16のサブセット32/電極ペア80が固定されている(予め定義されている)前記装置10の実施形態を指し、治療すべき損傷を橋渡しするかどうかは、少なくとも前記損傷部位における前記電極キャリア12の適切な配置に依存する。
【0067】
図8は、前記構成データ40が、異なるキャリア/損傷タイプエントリ92を治療プログラムライブラリ94内の異なる治療プログラム96に対応付けるキャリア/損傷タイプライブラリ90として機能する記憶されたテーブルなどの記憶された情報を含む例示的な実施形態を示す。例えば、前記異なるキャリア/損傷タイプエントリ92は、前記電極16のセット14の異なるサイズ、または前記セット14内の前記電極16の異なる空間配置に対応する。あるいは、前記異なるキャリア/損傷タイプエントリ92は、断裂した筋肉対炎症性状態のような異なるタイプの損傷、または、処置される侵襲的傷害のサイズ、形状、タイプ、または深さに対応する。
【0068】
これに対応して、前記治療プログラムライブラリ94内の前記異なる治療プログラム96は、前記電気的刺激信号22の1若しくはそれ以上のパラメータ、前記サブセット32の異なる定義、前記活性化順序82の異なる定義、前記活性化サイクル84の異なる定義、前記全体的な治療プログラム96を構成する活性化サイクル反復の異なる数、等のいずれか1若しくはそれ以上のパラメータにおいて互いに区別される。
【0069】
少なくとも1つの実施形態では、ユーザが前記刺激モジュール18のユーザインタフェースを介して選択入力を行い、前記キャリアタイプまたは損傷タイプ92を指示し、前記制御回路30がそれに対応して、指示されたキャリア/損傷タイプ92に対応するそれぞれの前記治療プログラム96を選択する。別の実施形態では、ユーザが特定の治療プログラム96を直接選択する。この実施形態は、例えば、前記治療プログラム96が「テニス肘」のような特定の種類の病気に対して予め定義され最適化されている場合に有利であり、この場合、経験的データに基づいて、治療の持続時間、患部の周囲または患部上の前記発信元/受信側電極16の「動き」の最も有利なパターンおよびタイミングが、前記装置10に予めプログラムされていてもよい。
【0070】
図9Aは、選択配置の例を示しており、前記制御回路30は、1若しくはそれ以上の選択入力に応答して、前記治療プログラムライブラリ94から特定の治療プログラム96を選択する選択制御機能100を実行する。このような入力は、損傷の種類および/または電極キャリアの種類を(直接的または間接的に)示すことができる。ここでも、「損傷」は広い意味を有し、「損傷タイプ」は、治療されるべき損傷または病気のタイプを指すと広く理解され得るようなものである。
【0071】
図9Bは、全体的な治療計画98の選択、例えば、定義された治療計画98-1、98-2などの間の選択のために、追加的に、または代替的に、同じロジックが使用され得ることを示している。ここで、治療計画98は、治療の全体的なコースを表し、そのようなものとして、例えば、前記装置10によって使用される特定の治療プログラム96、各治療セッションの長さまたはタイミング、および治療セッションの全体的な数または頻度を定義する。一例として、所定の治療計画98は、使用される特定の治療プログラム96に基づいており、その特定の治療プログラム96を使用する5分間の治療セッションを、1日当たり3回の治療セッションで、合計5日間にわたって指定する。この場合も、少なくとも1つの実施形態では、前記装置10は、患者が前記電極キャリア12を前記刺激モジュール18に「接続」し、それを装着する(または、前記電極キャリア12の「ウェアラブル」実施形態では、装着したままにする)だけでよいように、特定の治療計画98を使用するように構成することができる。
【0072】
図10は、前記処理回路30において実現される別の機能回路、すなわち、治療プログラム調整/作成機能102を示す。この機能により、前記処理回路30は、例えば、ユーザ入力に応答して、または受信した制御信号伝達に応答して、治療プログラム96を作成するか、または既存の治療プログラム96を修正(「調整」)するように動作可能である。作成/調整パラメータは、(a)前記活性化サイクル84のサイクル時間または全体的な治療時間、例えば、何回のサイクル反復を使用するか、(b)順序選択、(c)滞留/工程制御、(d)刺激信号強度または強度データ、例えば、1つの活性化サイクル84の経過にわたって、または全体的な治療セッションの経過にわたって、(e)刺激信号周波数または周波数データ、および(f)刺激信号負荷サイクル、すなわち、前記DCパルス列の負荷サイクルのうちの1若しくはそれ以上の項目を含む。ここで、「強度」とは、刺激信号電流または電圧の一方または両方を指す。
【0073】
少なくとも1つの実施形態において、前記制御回路30の前記機能102または他の動作機能は、前記電極16の全体的なセット14内の電極16のペアが、以前に使用された電極16を含むことができる新しいペアが、追加の特定の時間の間、前記発信元電極16および受信側電極16となるように同様の方法で選択される前に、特定の時間の間、前記発信元電極16および受信側電極16となるように選択される方法を提供する。これは順番に続けられ、このプロセスは、前記刺激モジュール18のプログラミングまたは構成によって定義された前記治療プロトコルによって事前に決定された通りに繰り返される。
【0074】
さらに、少なくとも1つのこのような実施形態では、前記装置10によって提供される治療は、ユーザが患者の治療に利用可能であると示す時間量、すなわち、現在予定されている治療セッションに利用可能である時間量に合わせて調整される。ユーザは、治療に利用可能な時間量を指示するだけでよく、前記制御回路30は、利用可能にされた指示された時間量に対して、活性化された発信元電極および受信側電極16の選択およびパターンを最適化する。前記制御モジュール30は、治療活動を開始するのに必要な最小治療時間を強制するなど、境界を課すことができる。
【0075】
例えば、
図3に図示された前記電極キャリア12に戻って参照すると、例示的な実施形態では、最小治療時間は6分であってもよい。最小(6分)の時間設定において、前記制御回路30は、電極L(発進元)とD(受信側)を1分間活性化し、次に、L|Dのペアを非活性化し、ただちに電極K(発進元)とE(受信側)を1分間活性化し、次に、K|Eのペアを非活性化し、ただちに電極I(発進元)とK(受信側)を1分間活性化し、次にI| Kのペアを非活性化し、ただちに電極A(発進元)とI(受信側)を1分間活性化し、次にA|Iのペアを非活性化し、ただちに電極B(発進元)とH(受信側)を1分間活性化し、次にB|Hのペアを非活性化し、最後にC(発進元)とG(受信側)を1分間活性化する。
【0076】
例を続けると、前記制御回路30が、前記治療セッションに20分が利用可能であるというユーザ入力指示を受信した場合、前記制御回路30は、前記電極16を活性化する異なるパターンを使用する。例えば、前記制御回路30は直接(または前記信号発生回路20を介して間接的に)電極L(発信元)とD(受信側)を2分間活性化し、次にL|Dのペアを非活性化し、ただちに電極K(発信元)とE(受信側)を2分間活性化し、次に、K|Eのペアを非活性化し、ただちに電極I(発信元)とK(受信側)を2分間活性化し、次に、I|Kのペアを非活性化し、ただちに電極A(発信元)とI(受信側)を2分間活性化し、次に、A|Iのペアを非活性化し、ただちに電極B(発信元)とH(受信側)を2分間活性化し、次にB|Hのペアを非活性化し、ただちに電極C(発信元)とG(受信側)を2分間活性化し、次にC|Gのペアを非活性化し、ただちに電極I(発信元)とF(受信側)を1分間活性化し、次にI|Fのペアを非活性化し、ただちに電極J(発信元)とD(受信側)を1分間活性化し、次にJ|Dのペアを非活性化し、ただちに電極A(発信元)とG(受信側)を1分間活性化し、次にA|Gのペアを非活性化し、最後に電極C(発信元)とI(受信側)を1分間活性化する。
【0077】
治療のために利用可能な時間が拡大するにつれて、前記制御回路30または信号発生回路20は、各電極のペアに対してより長い活性化時間を使用し、より多くの異なるペアを使用するように構成され、できるだけ多くの異なる方法で損傷部位を通して電流を流すようにする。したがって、再び
図3を参照すると、利用可能な時間が20分より長くなるにつれて、活性化には、活性化電極L(発信元)とD(受信側)を3分間使用し、その後、電極Lを発信元として残し、D(受信側)を非活性化してE(受信側)に置き換えてさらに3分間使用し、その後、Lを発信元として残し、E(受信側)を非活性化してF(受信側)に置き換えてさらに3分間使用することも含まれる。他の電極グループも同様に、「ストロボ」効果を生み出すために交互に配置することができる。
【0078】
図11は、前記装置10の別の実施形態を示しており、前記装置10は、少なくとも部分的に筐体110に収容されており、この筐体110は、1若しくはそれ以上の物理的制御ノブまたはスイッチ114などのユーザーインターフェース112を含んでいる。さらに、または代替的に、前記ユーザーインターフェース112は、タッチスクリーン118上に表示される1若しくはそれ以上数の「ソフト」コントロール116を提供する。1若しくはそれ以上の実施形態における前記タッチスクリーン118は、損傷/キャリア可視化120をスクリーン上に提供するビデオ対応スクリーンである。少なくとも1つのこのような実施形態では、前記装置10は、患者の身体上の損傷部位を撮像し、前記損傷部位における前記電極キャリア12の配置または向きを決定するためのカメラ124を含むか、またはそのためのインターフェースを提供する。
【0079】
さらに、少なくとも1つのそのような実施形態において、前記損傷/キャリア可視化120は、前記電極16のオンスクリーン描写、例えば、前記電極のビデオ描写またはそれらの位置の重畳表示、を含み、前記制御回路30は、前記タッチスクリーン118を介してユーザからタッチ入力を受信することに基づいて、前記電極16のサブセット32を定義するように構成される。すなわち、ユーザーインターフェース回路46を介して前記制御回路30に供給される信号は、タッチスクリーンデータを含むことができ、前記制御回路30は、ユーザーが前記電極16のオンスクリーン表示へのタッチ入力を指示することに基づいて、ユーザーがどの電極16をサブセット32に属するものとして指定したいかを決定することができる。さらに、または代替的に、前記装置10の1若しくはそれ以上の実施形態において、前記制御回路30は、サブセット32内のどの電極16が発信元電極または受信側電極であるかを示すタッチ入力を受け取るように構成される。
【0080】
前記カメラ124は、前記装置10と共に使用するための専用であってもよく、1若しくはそれ以上の実施形態では、ケーブル126で前記装置10に結合される。他の実施形態では、前記カメラ124は、前記刺激モジュール18に含まれる前記通信回路44を介して前記装置10に無線で結合される。同様に、
図11は、前記電極キャリア12と前記筐体110との間の物理的なケーブル接続を示唆しているが、接続24は、1若しくはそれ以上の実施形態において無線であってもよい。
【0081】
図12は、前記ユーザインタフェース112の全部または少なくとも一部が、タッチインタフェースまたは他のユーザ入力能力を有するスマートフォン、タブレット、ラップトップ、または他のコンピュータデバイスなどの外部デバイスまたはシステム130の前記スクリーン132上で実現される、さらに別の実施形態を示す。機器130が1若しくはそれ以上のカメラ134を含む限りにおいて、前述の身体/損傷の視覚化は前記機器130内で実施されてもよい。前記装置10をサポートし、前記装置10と相互作用するための前記機器130の全体的な操作は、例えば、アプリストアからインストールされるか、前記機器130にサイドロードされるソフトウェアアプリ140の実行を介して提供される。
【0082】
前記装置10の前記通信回路44は、前記電極キャリア12と前記刺激モジュール18との間の前記接続24を確立するために、無線リンク142を介して前記機器130と通信可能に結合するための、ブルートゥース接続または他の無線リンクを提供する。公開鍵基盤(PKI)証明書、共有秘密、ランダムノンス、または他のセキュリティ手段が、例えば前記アプリ140を介して、前記装置10と前記機器130との間で使用され、接続性および制御が許可された機器130にのみ提供されることを保証することができる。
【0083】
図13Aは、前記装置10のさらに別の実施形態を示しており、前記電極キャリア12は、前記可撓性シート60の前記中央切り抜き66を覆う、密封可能/密封された被覆150をさらに含んでいる。前記被覆150は、例えば、空気圧チューブ144を介して前記装置10に結合するポート152を介して、または関連する真空装置に結合するポート152を介して、損傷に陰圧を印加するためのポートが設けられている。少なくとも一つの実施形態では、前記装置10は、
図13に陰圧ポンプアセンブリ156として示されている前記真空装置を組み込んでいる。
【0084】
陰圧療法と電気的刺激療法を同時または協調的に適用することにより、重要な治療上の相乗効果が生じる。一実施形態では、前記装置10は、前記密閉被覆150を介して損傷の上に形成された「チャンバー」内に発生する陰圧の持続時間または程度を含む陰圧の適用を調整する。前記密閉被覆150は、前記電極キャリア12を構成する下層の可撓性シート60に接着結合する別個の膜またはシートであってもよいことに留意されたい。このような配置は、前記シート60を損傷部位の皮膚に密封し、前記陰圧配置を前記シート60上に「構築」または他の方法で適用できるという意味で、柔軟性を提供する。
【0085】
陰圧治療を含む前記装置10の少なくとも1つの実施形態において、前記制御回路30によって実施される前記治療プログラム96は、例えば、陰圧印加の持続時間、印加される陰圧のピークまたは平均レベル、および治療セッション中に使用される陰圧レベルのデータまたは変動のうちのいずれか1若しくはそれ以上を定義する、陰圧治療プロトコルを含む。もちろん、前記装置10が陰圧治療能力を有する実施形態では、電気的刺激は、陰圧治療の同時使用の有無にかかわらず使用することができる。
【0086】
図13Bは、
図13Aに示された配置の別の、より詳細な図を提供し、
図13Cは、患者の身体上の傷害に適用された同じ配置を示す。
図13Cに示される追加の詳細には、前記シート60の患者に面する表面64に予め塗布されるか、または前記シート60が損傷部位の皮膚に配置される前に塗布され得る前記接着剤160(例えば、剥離粘着性カバー)が含まれる。さらに詳しくは、無菌スポンジ162または他の充填剤を使用して、前記可撓性被覆150の支持を確立し、損傷部位に陰圧チャンバー164を形成することが含まれる。
【0087】
図14Aは、前記電極キャリア12が、患者の患肢の少なくとも一部を包囲するように構成された可撓性スリーブ170として形成されている実施形態を示す。前記スリーブは、少なくとも任意に、治療中の傷害を覆わないようにするための切り抜き66を含む。前記スリーブは、前記患肢への装着や前記患肢からの取り外しを容易にするために、縦方向の割れ目や縫い目172を含むことがある。前記スリーブ170は、布またはプラスチックのメッシュまたは織物であってもよく、また、前記電極16のセット14を損傷部位の患者の皮膚に接触する配置に押し付けるために、伸縮性であってもよく、ストラップまたは面ファスナーを使用してもよい。
【0088】
図14Bは前記可撓性スリーブ170の別の変形例を示しており、前記スリーブ170は前記切り抜き66を省略し、前記電極16のセット14が前記スリーブ170全体に配列されている。このような配列は、前記スリーブ170の内表面全体に電極サブセット32を形成/作動させることを可能にし、したがって、1つのスリーブ170を前記患肢の異なる種類および位置の損傷の治療に使用することを可能にする。
【0089】
図14Cは前記スリーブ170の類似の実施形態を示すが、前記スリーブ170が四肢の関節で使用するために形成または輪郭付けされている場合であり、(人間の)肘スリーブが例として示されている。
図14Dは前記スリーブ170が人間の脚の足首に使用されるように構成された他の例を示しており、この特定の例では切り抜き66が使用されている。他のスリーブ構成も考えられる。例えば、前記スリーブ170は、犬や猫の脚の損傷を治療するための獣医師用など、ヒト以外の四肢や関節用に構成することもできる。獣医師が使用する特に説得力のある例では、1若しくはそれ以上の実施形態における前記スリーブ170は、競走馬に一般的に関連する水腫、関節滲出液、または他の病気を治療するためなど、馬の脚に使用するように構成される。
【0090】
図15は、前記電極キャリア12の別の実施形態を示し、前記スリーブ170は、前記患肢の周囲、または少なくともいくつかの構成では患者の胴体の周囲にラップ状に前記スリーブ170を締め付けることができるように、例えば面ファスナー173Aおよび173Bを含む包囲ラップとして示されている。もちろん、前記面ファスナー173A/B以外の留め金、バックル、その他の付属品を用いて前記スリーブ170を固定してもよい。
【0091】
大まかには、前記スリーブ170は一体に形成されていてもよいし、異なる材質の可能性のある異なる部分から構成されていてもよい。例えば、前記損傷部位の周囲に接触させるためのラテックスまたはポリマー部分と、四肢または胴体の周囲を締め付けるための布部分とを含むことができる。
【0092】
前記スリーブ170を所定の位置に締め付けるための面ファスナー173A/B(または代わりのファスナー)を使用することに加えて、前記スリーブ170は、血圧計に使用されるものと同様の膨張式ブラダー174のための内部スリーブまたは区画を含むことができる。前記スリーブ170を所定の位置に締め付けた状態で、前記ブラダー174を膨張させると、前記締め付けられたスリーブ170が患者の体に対してさらに締め付けられ、それによって前記電極16が患者の皮膚によりよく接触するように(そしてそれに対応してより大きな圧力が)患者の皮膚に加えられるように促される。もちろん、前記ブラダ174は、過膨張を防止するための過圧弁または他の機構を備えていてもよく、それによって、血液循環の問題または不快感が生じないようにすることができる。
【0093】
図16は、前記電極キャリア12のさらなる変形例を示しており、前記スリーブ170は、前記スリーブ170を患者の四肢または胴体の周囲にスリーブまたは包囲ラップとして固定するための、バックルまたは面ファスナーを有することができるストラップ176A/Bを含んでいる。
【0094】
したがって、1若しくはそれ以上の実施形態では、前記電極キャリア12は、前記電極16のセット14を損傷部位の患者の身体に接触するように促す付勢力を発揮する何らかの形態の圧縮スリーブで構成される。
図14A-D、
図15、および
図16の配置は、圧縮スリーブに組み込まれた弾性材料、前記スリーブに組み込まれた膨張可能なブラダー、または前記スリーブに組み込まれた1若しくはそれ以上の締め付けストラップまたはファスナーの少なくとも1つを介して得られる付勢力を提供する、成形または形成可能なスリーブの例である。
【0095】
図17~20は、前記電極キャリア12と前記刺激モジュール18との間の前記接続24が物理的(有線)接続である場合の接続オプションの例を示している。
図17から始めて、1若しくはそれ以上の実施形態における前記接続24は、前記電極キャリア12に運ばれた各電極16のための導体70を含む。この配置は、信号発信元または受信側として個々の電極16を活性化することに関して、単純さと直接的な制御を提供するが、そのような利点は、潜在的にかさばる接続ケーブルとより多くの配線を犠牲にする。
【0096】
図18は、前記電極キャリア12上のマルチプレクサ回路180が前記接続24のワイヤカウントを減らす別の実施形態を示す。例えば、前記マルチプレクサ回路180の実装によっては、前記接続部24は、クロック/制御信号(「CLK/CNTL」)と共に、信号発信元線(+)および信号受信側線(-)または「接地」接続を含むことができる。前記CLK/CNTL信号のDCバイアスは、前記マルチプレクサ回路180に動作電力を供給するために使用することができ、したがって、前記電極キャリア12が前記マルチプレクサ回路180を動作させるための独自の電源を有する必要性を除去する。
【0097】
図19は、前記電極キャリア12が「負荷」回路182をさらに含むことを除いて、
図18に描かれているのと実質的に同じ配置を示している。前記負荷回路182は、前記刺激モジュール18内のプルアップ抵抗に分圧方式で接続するプルダウン抵抗のような単純なものでよい。異なる値のプルダウン抵抗を異なる型式またはモデルの前記電極キャリア12に取り付けることができ、それによって、前記制御回路30に、取り付けられている前記電極キャリア12の型式またはモデルを「読み取る」ための簡単な機構を提供する。このような情報は、例えば、前記活性化順序82または活性化サイクル84を選択/定義する際に、あるいは、前記全体的な治療プログラム96/治療計画98を選択/定義する際に、あるいは、どの治療プログラム96または治療計画98をユーザによる選択のために提供するかを決定する際に使用される。
【0098】
他の変形例では、前記負荷回路182は、複素インピーダンス、例えば、ノッチまたはバンドパスフィルタまたは共振回路で構成される。これに対応して、前記刺激モジュール18の前記信号発生回路20は、前記電極キャリア12の異なる型式またはモデルに対応する異なる周波数で励起信号を発生し、前記キャリアの型式またはモデルを識別するために、異なる周波数での前記負荷回路182の応答を検出するように構成される。
【0099】
図20は、前記電極キャリア12上のより複雑な回路実装を含むさらに別の配置を示す。ここで、前記接続部24は有線または無線であってよく、前記電極キャリア12は、前記刺激モジュール18に有線または無線でインターフェースする通信回路186に電力を供給するための独自の電源/電池184を有する。前記電極キャリア12はさらに、前記通信回路186を介して受信された前記刺激モジュール18からの信号伝達(開始/停止制御など)に応答する制御回路188を含む。
【0100】
さらに、前記電極キャリア12の図示された実施形態は、信号発生回路190を含む。したがって、少なくとも1つの実施形態では、前記電気的刺激信号22の生成は前記電極キャリア12上で行われる。その点で、前記信号発生回路190は、前記先に図示した信号発生回路20のバージョンとみなすことができるが、前記刺激モジュール18から前記電極キャリア12に移動している。別の見方をすれば、前記刺激モジュール18について
図1に描かれた回路は、少なくとも部分的に、前記電極キャリア12と、ユーザーインターフェース112などを含む別個の筐体110との間に分散されていてもよい。
【0101】
図21は、前記電極キャリア12上に前記刺激モジュール18の全体を取り付けることによって、前記電極キャリア12上で前記電気的刺激信号22を局所的に生成するという考えを基礎としている。ここで、前記刺激モジュール18の電源/バッテリ42は、前記刺激モジュール18のバッテリ駆動動作のために、例えば、リチウムイオン電池および関連する充電および電圧調整回路から構成される。さらに、前記通信回路44は、前記装置10を制御するための外部装置130上のユーザインターフェース112を実現するために、前記外部装置130への無線接続性を提供することができる。
【0102】
前記刺激モジュール18が前記電極キャリア12上にあるか別体であるかにかかわらず、1若しくはそれ以上の実施形態では、前記電極キャリア12は可撓性シート60またはスリーブ1700からなる。少なくとも1つのそのような実施形態では、前記シート60またはスリーブ170の患者に面する表面64の少なくとも一部は、損傷部位の患者の皮膚に一時的に接着するための接着膜である。この接着は、例えば、少なくとも治療中、または、前記装置10が複数回の治療、例えば、4時間毎の治療を自動的に提供する数日間のようなより長い期間、前記損傷部位の患者の身体上に前記電極キャリア12を保持するために提供される。少なくとも1つの実施形態では、スリーブ170は、ベース電極キャリア12として機能するシート60を含むものとして理解される。すなわち、前記スリーブ170は前記電極16を直接一体化する必要はなく、その代わりに、患者に面する内面内にシート60を一体化するための2部品アセンブリを提供するものとして理解することができる。
【0103】
いずれにしても、前記電極16を担持するための粘着性可撓性膜の使用はまた、患者の身体に対する密封係合を提供し、その密封係合は、例えば、
図13A-Cに示されるような電気的刺激と組み合わせた陰圧療法の使用を提供する。
【0104】
図5に示すような更なる詳細な例では、前記電極16のセット14の各電極16は、前記電極16のセット14を患者の身体に接触させることにより、前記電気的刺激信号22の点発信または受信のための鈍的接触点の対応するセットを画定するような、鈍的接触点電極であると考えることができる。分散型領域電極または「パッチ」電極と比較したその様々な利点の中で、鈍的接触点電極は、前記電極16と患者の皮膚との間の接触点におけるインピーダンスを減少させることができ、これは、損傷部位の患者の身体への前記電気的刺激信号22の「注入」に関して信号損失を減少させる。さらに、離散的な接触点の使用により、損傷部位の周囲および損傷部位を通る前記電気的刺激信号のパターン化または移動が可能になる。
【0105】
前記装置10の他の動作上の利点には、1若しくはそれ以上の実施形態において、前記信号発生回路20が、前記制御回路30による制御に応答して前記電気的刺激信号22の周波数を制御するように構成されていることが含まれる。一例として、問題となる制御は、予め定義された周波数のセットの中から特定の周波数を選択すること、前記周波数を連続的に調整すること、または前記周波数を段階的に調整することのいずれかである。さらに、または代替的に、前記信号発生回路20は、前記制御回路30による制御に応答して前記電気的刺激信号22の強度を制御するように構成される。ここで、前記制御は、前記電気的刺激信号22の電圧の調整、または前記電気的刺激信号22の電流の調整の少なくとも1つである。
【0106】
図22は、患者の治療的電気的刺激のための方法2200の一実施形態を示しており、
図1に導入された前記装置10によって、または他の適切に構成された装置によって実行されてもよい。描かれている操作は、論理フローによって示唆される順序以外の順序で実行されてもよく、繰り返し実行されてもよく、他の操作と組み合わせて実行されてもよい。
【0107】
方法2200は、10kHzと50kHzとの間の周波数で直流(DC)パルス列としての電気的刺激信号22を提供すること(ブロック2202)と、前記電気的刺激信号22を介して、患者の身体上の損傷部位で患者の身体に接触する電極16のセット14のうちの電極16のそれぞれのサブセット32を順次活性化すること(ブロック2204)とを含む。
【0108】
電極16の前記それぞれのサブセット32を順次活性化することは、例えば、定義された活性化サイクル84にわたって、前記個々のサブセット32を一度に1つずつ活性化する定義された活性化順序82に従って前記個々のサブセット32を活性化することからなる。したがって、1若しくはそれ以上の実施形態において、前記方法2200は、前記電気的刺激信号22を印加するために使用する前記活性化順序82および/または活性化サイクル84を決定すること(ブロック2206)も含む。
【0109】
少なくとも1つの実施形態において、前記方法2200は、さらに、前記装置10のユーザインターフェース112を介して、または前記装置10の前記通信回路44を介して受信されたユーザ入力に応答して、定義された活性化順序82または定義された活性化サイクル84を変化させることを含む。
【0110】
前記方法2200はまた、前記装置10のユーザインターフェース112を介して、または前記装置10の通信回路44を介して受信されたユーザ入力に応答して、1若しくはそれ以上のパラメータを変化させることを含む。前記1若しくはそれ以上のパラメータは、例えば、前記電気的刺激信号22の周波数、前記電気的刺激信号22の電圧、前記電気的刺激信号22の電流、または前記電気的刺激信号の負荷サイクルのいずれか1若しくはそれ以上である。
【0111】
前記方法2200の少なくとも1つの実施形態において、電極15のそれぞれのサブセット32を順次活性化することは、治療プログラム96に従って電極16のそれぞれのサブセット32を活性化することからなる。前記方法2200は、前記治療プログラム96を、前記装置10内の構成データ40として記憶された予め定義された治療プログラムとして取得すること、または、ユーザー入力に応答して前記治療プログラム96を作成または調整することを含んでもよい。前述したように、前記治療プログラム96は、どの電極16をどの時間、どれだけの間、どの電気的およびタイミングパラメータに従って活性化するかを指示し、治療の全体的な持続時間および電極活性化の順序/反復を定義することができる。
【0112】
有利なことに、本明細書で意図されるような電極サブセット32の前記順次活性化は、損傷部位を横切ってまたは損傷部位を通して前記電気的刺激信号22を走査または分布させることにより、損傷治癒のための電気的刺激の有効性を増大させる。前記走査は、定義された活性化順序に従って、どの電極16が前記電気的刺激信号22の発信元および受信側として活性化されるかを順次変更することによって、前記損傷の周囲で活性接触点を効果的に「循環」または「移動」させる。
図23A~23Dは、損傷の周囲で前記信号発信元と受信側を移動させるそのような一例を示している。
【0113】
図23A電気的刺激信号23Dにおいて、黒い塗りつぶしは、どの電極16が信号発信元として活性化しているかを示し、黒い網掛けは、どの電極16が信号受信側として活性化しているかを示す。図では一度に1つの信号発信元と1つの信号受信側しか示していないが、前記サブセット32が関係する活性化順序82によってどのように定義されるかに応じて、一度に複数の信号発信元または受信側が活性化することがある。
【0114】
図23Aから
図23Dに進むと、前記信号源は電極16の描かれた方向に対して左から右に「移動」し、信号受信側も同様に左から右に「移動」する。事実上、この順序は、前記電気的刺激信号22の接触点を、左から右へ、傷害の範囲を横切って、または損傷の範囲にわたって移動させる。そのため、前記電気的刺激信号22は損傷部位の多くに到達し、別の言い方をすれば、前記電気的刺激信号22は前記損傷部位によりよく分散される。
【0115】
前記電気的刺激信号22の生成に関しては、複数の配置が考えられ、
図24は、前記電気的刺激信号を生成するための前記信号生成回路20の1つの配置の非限定的な例を示している。
【0116】
前記信号発生回路20はパルス形成回路として動作し、前記電極16の高電圧を低電圧制御回路から分離して、共鳴のないより良いパルス形状の刺激信号波形を生成する。その結果、単極性波形出力が単一指向性のイオン流を促進し、より効果的な電気的刺激を提供することが経験的に示唆されている。
【0117】
図示された回路は、高電圧発生器2402、高電圧出力回路2404および低電圧出力制御回路2406を含み、前記制御回路30による一定の刺激信号調整を提供する。
【0118】
前記高電圧発生器2402は、昇圧トランス2410、MOSFET2412および2414のセット、ならびにDフリップフロップ2416を含む。中心タップ入力2418は、
図1に示す電源バッテリ42のような直流電圧源に結合される制御MOSFET2420に結合される。変圧器2410の二次コイルは整流ブリッジ2422の入力に結合される。前記整流ブリッジ2422の出力はコンデンサ2424に結合される。本体に印加される高電圧は前記変圧器2410で生成され、前記ブリッジ2422で整流されて前記コンデンサ2424に蓄えられる。この実施例の前記トランス2410は比較的小型であり、前記トランス2410の一次コイル、前記MOSFET2412および2414、ならびにクロック入力、例えば40kHzで駆動されるDフリップフロップ2416で構成されるプッシュプル回路構成によって駆動される。クロック周波数が高いほど、小型のトランスを使用できる。
【0119】
前記高電圧発生器2402からの出力電圧は、前記制御MOSFET2420に結合された前記中心タップ電圧と変圧器巻線の巻数比(一次巻数と二次巻数)の関数であり、図示された配置例では、出力電気的刺激信号22は、光遮断器2430、2432、2434、2436の使用を介して得られる。前記光遮断器2430と2436の組み合わせのいずれかが電極16にそれぞれ電圧を出力するために使用されるか、極性を逆にするために、光遮断器2432と2434が前記電極16に電圧を出力するために使用される。前記高電圧発生器2402の出力は、前記光遮断器2430、2432、2434、2436の高電圧端によって制御される正の高電圧レール2438に結合される。
【0120】
前記刺激信号の極性の選択は、低電圧出力制御回路2406を介して行われる。前記低電圧出力制御回路2406は極性選択入力2440とパルス幅変調制御入力2442とを含み、これらは前記制御回路30によって駆動/電子制御される。
【0121】
前記低電圧出力制御回路は、インバータ2444、ANDゲート2446および2448、出力MOSFET2450および2452を含む。前記出力MOSFET2450は、前記光遮断器2430および2434の前記低電圧端の活性化を制御し、前記出力MOSFET2452は、前記光遮断器2430および2436の前記低電圧端の活性化を制御する。前記極性選択信号は、前記選択入力2440を介して受信され、前記ANDゲート2446の一方の入力に直接結合され、前記インバータ2444を介して前記ANDゲート2448の一方の入力に結合される。前記ANDゲート2446および2448の出力は、それぞれ前記MOSFET2450および2452を駆動する。前記ANDゲート2446および2448の他方の入力は、前記制御入力2442からのパルス幅変調制御信号によって駆動される。前記パルス幅制御信号は、前記出力パルスがどの程度の長さで、どの程度の周波数で印加されるかを計時することになり、前記制御回路30は、1若しくはそれ以上の実施形態において、前記電気的刺激信号22の周波数を10kHz~50kHzの範囲内の周波数に設定する(または動的に変化させる)ように構成される。
【0122】
前記極性選択信号が前記ANDゲート2446に反転されるので、前記電極16への高電圧出力を制御するために、1セットの光遮断器2430と2436、2432と2434のみが作動する。高電圧からの低電圧制御の光遮断器は、よりきれいなパルス形状の出力を提供する。変圧器パラメータは、図示の回路構成では、前記電気的刺激信号22の刺激周波数またはパルス幅を制限しない。
【0123】
前記電気的刺激信号22の動作電気パラメータ例としては、190ボルトのピークパルス振幅(無負荷電極16)、50~60ボルトのパルス振幅(負荷電極16)、10kHz~50kHzのパルス周波数、前記パルス列内のパルスの固定または可変負荷サイクル、約8.9ミリアンペアの出力電流、および7マイクロクーロンのパルスあたりの最大電荷が挙げられる。
【0124】
もちろん、これらの例示的な信号パラメータの1若しくはそれ以上は、前記電気的刺激信号22を生成するために使用される特定の電気回路に依存して、異なっていてもよいし、可変であってもよい。前記電気的刺激信号22を生成するために使用される回路に関係なく、また、図示されたもの以外の他の配置は、本明細書における動作説明に鑑みて当業者には理解されるであろうが、前記電気的刺激信号22をそれぞれの電極16に選択的に接続して電極16の活性化されたサブセット32を形成するために利用可能な1つの機構は、多重化またはクロスバースイッチ回路2460である。このようなスイッチは、前記個々の電極16に結合する前記導体70のうちのいずれか1若しくはそれ以上への前記電気的刺激信号22の前記正の接続22+の選択的接続と、前記導体70の残りのうちのいずれか1若しくはそれ以上への前記電気的刺激信号22の負の接続22-の選択的接続とを提供する。
【0125】
注目すべきことに、開示された発明の修正および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する当業者に思い浮かぶであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内に修正および他の実施形態が含まれることが意図されることを理解されたい。本明細書において特定の用語が使用されることがあるが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定を目的とするものではない。
【国際調査報告】