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特表2024-509005航空エンジンロータを試験するための振動励起システムおよび装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】航空エンジンロータを試験するための振動励起システムおよび装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20240221BHJP
   G01M 15/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G01M7/02 C
G01M15/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540475
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 CN2021113505
(87)【国際公開番号】W WO2022179065
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】202110205818.7
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519383452
【氏名又は名称】中国航発商用航空発動機有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】AECC COMMERCIAL AIRCRAFT ENGINE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.3998, South Lianhua Road, Minhang District, Shanghai 200241, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羅 莉
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】侯 乃 先
【テーマコード(参考)】
2G087
【Fターム(参考)】
2G087AA07
2G087BB04
2G087DD01
2G087DD04
(57)【要約】
本開示は、振動励起システムの汎用性を改善するために、航空エンジンの分野に関する、航空エンジンロータを試験するための振動励起システムおよび装置を提供する。振動励起システムは、取付リングと、固定部と、ホルダと、ガイドレールと、ノズルアセンブリとを備える。取付リングは、環状であるよう構成され;固定部の一端は、取付リングに固定的に接続され;ホルダは、固定部の他端に摺動可能に取り付けられ、複数のホルダは、取付リングの周方向に配置され;各ガイドレールは、2つの隣接するホルダを接続し、ガイドレールとホルダとの接続位置は調整可能であり、ノズルアセンブリは、ホルダに取り付けられる。上記の技術的解決策の振動励起システムでは、ノズルアセンブリによって囲まれる噴霧領域の半径サイズは、異なる航空エンジンの試験要件に適合するように、固定部上のホルダの位置を調整することによって、調整される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動励起システムであって、
環状であるよう構成された取付リング(1)と、
各々一端が前記取付リング(1)に固定的に接続される複数の固定部と、
前記取付リング(1)の周方向に配置され、各々が、前記固定部(2)の各々の他端に摺動可能に取り付けられる複数のホルダ(3)と、
2つの隣接するホルダ(3)を各々が接続する複数のガイドレールとを備え、前記ガイドレール(4)の各々と前記2つの隣接するホルダ(3)との接続位置は調整可能であり、前記振動励起システムはさらに、
前記ホルダ(3)にそれぞれ取り付けられる複数のノズルアセンブリ(5)を備える、振動励起システム。
【請求項2】
前記ガイドレール(4)は、各々円弧状スロット(41)を設けられ、前記2つの隣接するホルダ(3)の一方は、接続位置調整可能に前記円弧状スロット(41)の一端に接続され、前記2つの隣接するホルダ(3)の他方は、接続位置調整可能に前記円弧状スロット(41)の他端に接続される、請求項1に記載の振動励起システム。
【請求項3】
前記ノズルアセンブリ(5)は、
前記ホルダ(3)に取り付けられる取付座(51)と、
油噴霧角度が調整されるよう、前記取付座(51)に回転可能に取り付けられるノズル(52)とを含む、請求項1または2に記載の振動励起システム。
【請求項4】
各取付座(51)には、複数のノズルアセンブリ(52)が回転可能に取り付けられる、請求項3に記載の振動励起システム。
【請求項5】
前記取付座(51)は、給油空洞(511)を含み、前記ノズルアセンブリ(5)は、さらに、
前記ノズル(52)と前記取付座(51)の前記給油空洞(511)との間に設けられ、前記ノズル(52)と前記給油空洞(511)との間の油路のオンオフを制御する切換弁(53)を含む、請求項3または4に記載の振動励起システム。
【請求項6】
前記給油空洞(511)と流体連通している給油分岐(6)をさらに備える、請求項5に記載の振動励起システム。
【請求項7】
前記切換弁(53)は、前記ノズル(52)と前記給油空洞(511)との間の前記油路に設けられる、請求項5または6に記載の振動励起システム。
【請求項8】
前記ホルダ(3)は、前記取付リング(1)の周方向に一様に配置される、請求項1~7のいずれか1項に記載の振動励起システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の振動励起システムを備える、航空エンジンロータを試験するための装置。
【請求項10】
前記航空エンジンロータを試験するための装置はさらに、
前記振動励起システムが中に設置される試験空洞(7)と、
前記試験空洞(7)内に取り付けられるロータシステム(8)とを備え、前記振動励起システムは前記ロータシステム(8)の外側に配置され、航空エンジンロータを試験するための装置はさらに、
前記ロータシステム(8)を回転駆動するために前記ロータシステム(8)に駆動可能に接続される駆動構成要素(9)を備える、請求項9に記載の航空エンジンロータを試験するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年2月24日に提出された中国出願第202110205818.7号に基づき、およびそれに対する優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、航空エンジンの分野に関し、特に、航空エンジンロータを試験するための振動励起システムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
航空エンジンのタービン動翼の使用環境では、不安定な流れ場による翼振動は避けられない。過大な振動負荷は、タービン翼部の疲労破壊を引き起こし、エンジンに深刻な損傷をもたらす。タービン動翼の振動応力を許容範囲に制御することは困難である。タービン動翼の振動特性および振動レベルの実験的研究ならびにシミュレーション予測が中国および他の国の両方で行われており、動翼の振動応力を低減し、動翼の高サイクル疲労破壊を防止するために、動翼に対してエッジプレートダンパが設計される。高サイクル疲労とは、10,000~100,000サイクルを超えるサイクル後における、材料の降伏強度よりも低い周期的応力の作用下での、当該材料の疲労を指す。
【0004】
高圧タービン動翼の翼部振動数は非常に高く、翼部はロータとさねはぎ接続される。エンジン運転時の遠心負荷条件により近い高速回転状態で試験を行って、翼部の共振周波数およびダンパの振動低減効果を試験し、翼部の非線形接続を実現する。より信頼性の高い試験データは、ダンパと翼部との間の摩擦運動により得られる。
【0005】
関連技術では、ある試験システムは、研究対象としてロータシステムを用い、励起源として霧状の油滴を用いて、高速回転試験床上で動翼の非接触励起を実現して、ロータシステムの翼部振動特性とダンパの振動低減効果とを得る。
【0006】
本発明者らは、関連技術において、少なくとも以下の課題を見出した:関連技術では、この試験システムは、特定のタイプおよび特定のサイズの航空エンジンのロータシステムにのみ使用され、したがって、この試験システムは、汎用性が低く、試験コストが高く、そして、異なるモデルの航空エンジンに対して別々に設計される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本開示は、振動励起システムの汎用性を向上させるために、航空エンジンロータを試験するための振動励起システムおよび装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態は、振動励起システムであって、
環状であるよう構成された取付リングと、
各々一端が取付リングに固定的に接続される複数の固定部と、
取付リングの周方向に配置され、各々が、固定部の各々の他端に摺動可能に取り付けられる複数のホルダと、
2つの隣接するホルダを各々が接続する複数のガイドレールとを備え、各ガイドレールと隣接するホルダとの接続位置は調整可能であり、さらに、
ホルダにそれぞれ取り付けられる複数のノズルアセンブリを備える、振動励起システムを提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、ガイドレールは、各々円弧状スロットを設けられ、2つの隣接するホルダの一方は、接続位置調整可能に円弧状スロットの一端に接続され、2つの隣接するホルダの他方は、接続位置調整可能に円弧状スロットの他端に接続される。
【0010】
いくつかの実施形態では、接続アセンブリは、
ホルダに取り付けられる取付座と、
取付座に回転可能に取り付けられるノズルとを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数のノズルアセンブリが、各取付座に回転可能に取り付けられる。
【0012】
いくつかの実施形態では、取付座は、給油空洞を含み、ノズルアセンブリは、さらに、
ノズルと取付座の給油空洞との間に設けられ、ノズルと給油空洞との間の油路のオンオフを制御する切換弁を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、振動励起システムは、さらに、
給油空洞と流体連通している給油分岐を備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、切換弁は、各ノズルと給油空洞との間の油路に設けられる。
いくつかの実施形態では、ホルダは、取付リングの周方向に一様に配置される。
【0015】
本開示のいくつかの実施形態は、本開示の任意の技術的解決策において提供される振動励起システムを備える、航空エンジンロータを試験するための装置をさらに提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、航空エンジンロータを試験するための装置は、さらに、
振動励起システムが中に設置される試験空洞と、
試験空洞内に取り付けられるロータシステムとを備え、振動励起システムはロータシステムの外側に配置され、本装置はさらに、
ロータシステムを回転駆動するためにロータシステムに駆動可能に接続される駆動構成要素を備える。
【0017】
上記の技術的解決策の振動励起システムでは、ノズルアセンブリによって囲まれる噴霧領域の半径サイズは、異なる航空エンジンの試験要件に適合するように、固定部上のホルダの位置を調整することによって、調整される。ホルダが取付リングの縁部に近いほど、2つの隣接するホルダ間の距離は大きくなる。円弧状スロットにおけるホルダの取付位置が円弧状スロットの縁に近いほど、ノズルアセンブリに対応する噴霧領域の半径は大きくなる。ホルダが取付リングの円中心に近いほど、2つの隣接するホルダ間の距離は小さくなる。円弧状スロットにおけるホルダの取付位置が円弧状スロットの中央に近いほど、ノズルアセンブリに対応する噴霧領域の半径は小さくなる。
【0018】
図面の簡単な説明
ここで説明される図面は、本開示のさらなる理解を提供するために使用され、本出願の一部を形成する。本開示の例示的な実施形態およびその説明は、本開示を説明するために使用されるが、本開示を不適切に限定するものではない。図において:
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示のいくつかの実施形態において提供される振動励起システムを、航空エンジンロータを試験するための装置に適用する構造図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態において提供される振動励起システムの構造図である。
図3】本開示のいくつかの実施形態において提供される振動励起システムのホルダにおける部分構造図である。
図4】本開示のいくつかの実施形態において提供される振動励起システムの切換弁における油路の原理図である。
図5】本開示のいくつかの実施形態において提供される振動励起システムが動作するロータシステムの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本開示において提供される技術的解決策は、図1図5に関連して以下でより詳細に説明される。
【0021】
図1および図2を参照すると、本開示のいくつかの実施形態は、取付リング1と、複数の固定部2と、複数のホルダ3と、複数のガイドレール4と、複数のノズルアセンブリ5とを含む振動励起システムを提供する。
【0022】
取付リング1は、環状に構成される。取付リング1は、中央に穴101を有する。固定部2、ホルダ3、ガイドレール4、およびノズルアセンブリ5はすべて、穴101内において、取付リング1の中央に位置する。取付リング1の直径サイズは不変である。異なるモデルの航空エンジンに対しては、ノズルアセンブリ5によって囲まれる領域の直径サイズは、固定部2上のホルダ3の位置を調整することによって変更され、それによって、異なるモデルの航空エンジンの試験要件に適合する。
【0023】
各固定部2の一端は、取付リング1に固定的に接続される。固定部2は、例えばロッドである。固定部2の一端は、着脱自在接続、着脱不能接続(例えば溶接)等のように、取付リング1に固定的に接続される。複数の固定部2は、取付リング1の周方向に取り付けられ、各固定部2は、1つ以上のノズルアセンブリ5を取り付けるよう構成される。以下の実施形態では、1つのノズルアセンブリ5が各固定部2に取り付けられる。各固定部2の長さ方向は、取付リング1の径方向に沿う。
【0024】
ホルダ3は、固定部2の他端に摺動可能に取り付けられており、具体的には例えばボルト接続により取り付けられる。複数のホルダ3は、取付リング1の周方向に配置される。ホルダ3が取付リング1の円中心から離れるほど、ホルダ3によって囲まれる領域の半径が大きくなり、対応する航空エンジンのサイズが大きくなる。逆に、ホルダ3が取付リング1の円中心に近いほど、ホルダ3によって囲まれる領域の半径は小さくなり、対応する航空エンジンのサイズが小さくなる。ホルダ3によって囲まれる領域の半径サイズは、固定部2上のホルダ3の位置を調整することによって調整され、それによって、異なるモデルおよびサイズのエンジンロータシステム8の振動特性およびダンパ振動低減効果の試験要件に適合するように、異なるサイズの航空エンジンのロータシステム8の試験要件に適合し、調整プロセスは便利かつ迅速である。
【0025】
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、ホルダ3は、取付リング1の周方向に一様に配置される。各ホルダ3は円弧セグメントである。複数のホルダ3は、取付リング1の周方向に一様に離間している。これにより、試験の必要性に応じて、取付リング1の周方向に均一な油噴霧が達成される。他の実施形態では、いくつかのホルダ3上のノズルアセンブリ5は油を分注し、残りのホルダ3上のノズルアセンブリ5は油を分注しない。
【0026】
図2を参照して、ガイドレール4は2つの隣接するホルダ3を接続し、ガイドレール4と2つの隣接するホルダ3との接続位置は調整可能である。ガイドレール4は、ボルトによってホルダ3に接続される。ガイドレール4によって、振動励起システムの構造的安定性を向上させるよう、円を形成するホルダ3が互いに固定的に接続され、それにより、ノズルアセンブリ5がしっかりと取り付けられる。ガイドレール4は、図3に示すようにホルダ3の上面、または図3に示すようにホルダ3の底面に配置される。図3は、隣接する2本のガイドレール4の一方がホルダ3の上面に配置され、他方がホルダ3の底面に配置された例を示している。この構成では、ガイドレール4はより少ない空間を占め、ホルダ3の寸法も可能な限り小さく設計される。
【0027】
図2および図3を参照すると、いくつかの実施形態では、ガイドレール4は、円弧状のスロット41を設けられ、2つの隣接するホルダ3の一方は、円弧状のスロット41の一端に位置調節可能に接続され、2つの隣接するホルダ3の他方は、円弧状スロット41の他端に取付位置調整可能に接続される。ホルダ3が取付リング1の縁部に近いほど、2つの隣接するホルダ3間の距離は大きくなる。円弧状スロット41におけるホルダ3の取付位置は、円弧状スロット41の縁部に、より近い。ホルダ3が取付リング1の円中心に近づくほど、2つの隣接するホルダ3間の距離は小さくなり、円弧状スロット41上におけるホルダ3の取付位置は円弧状スロット41の中央に近づく。
【0028】
図2を参照すると、ノズルアセンブリ5はホルダ3に取り付けられる。ノズルアセンブリ5は、潤滑油を噴霧するよう構成される。各ノズルアセンブリ5は、1つ以上のノズル52を含む。ノズルアセンブリ5に含まれるノズル52は、公知の霧化構造を用いる。
【0029】
図2を参照すると、ノズルアセンブリ5は、取付座51およびノズル52を含む。取付座51は、ホルダ3に取り付けられる。ノズル52は、取付座51に回転可能に取り付けられる。取付座51の構造は、例えば、立体的または直方体状である。ノズル52を担持するための基部としての取付基部51は、構造設計において可撓性である。
【0030】
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、複数の取付座51があり、複数の取付座51は取付リング1の内側円の周囲に配置される。複数の取付座51は円を囲み、噴霧される動翼の少なくとも一部の領域は、取付座51によって囲まれる円内に位置する。各取付座51には、複数のノズルアセンブリ52が回転可能に取り付けられる。具体的には、例えば、各ノズル52が、各ノズル52の調整可能な油噴霧角度を達成する角度で柔軟に回転するように、玉継手11を用いて、回転可能な接続を達成する。さらに、各ノズル52の油噴霧角度は個別に調整され、同じ取付座51に位置する各ノズル52の油噴霧方向は同一または異なる。ノズル52の油噴霧方向は、ノズル52が動翼に油を噴霧する限り、取付リング1の円中心を指すか、または取付リング1の円中心を指さない。したがって、翼部本体の屈曲表面およびねじり表面を有するタービン動翼に対しても、翼部本体に対して振動励起が効果的に達成される。さらに、ノズル52の油分注角度を調整することにより、翼部共振の励起に、より好ましい角度が得られ、翼部本体に励起される霧化油の範囲の調整も可能となる。
【0031】
図2および図4を参照すると、いくつかの実施形態では、取付座51は給油空洞511を含む。給油空洞511は、図2に示すように配置される。1つの取付座51に対応するすべてのノズル52が給油空洞511を共有するか、各ノズル52にそれぞれ給油空洞511が設けられるか、または1つの取付座51に対応するすべてのノズル52のうちの一部が給油空洞511を共有する。ノズルアセンブリ5は、切換弁53をさらに含む。切換弁53は、ノズル52と取付座51の給油空洞511との間に設けられて、ノズル52と給油空洞511との間の油路のオンオフを制御する。切換弁53は、例えば電磁弁であり、切換弁53は2つの弁位置、すなわちオン弁位置およびオフ弁位置を有する。切換弁53がオン弁位置にあるとき、ノズル52と給油空洞511との間の油路はオンになり、油が、給油空洞511からノズル52に流れ、次いで、ノズル52を介して噴霧される。切換弁53がオフ弁位置にあるとき、ノズル52と給油空洞511との間の油路はオフにされ、油は給油空洞511からノズル52に流れない。給油空洞511の容積は、給油空洞511に連通するノズル52の流域の合計よりも大きい。
【0032】
図1図2および図4を参照すると、いくつかの実施形態では、振動励起システムは、給油分岐6をさらに含む。給油分岐6は、給油空洞511と流体連通しており、給油分岐6は、外部油が、給油空洞511と流体連通しているノズル52によって噴霧されるように、外部油を給油空洞511に搬送するよう構成される。具体的には、給油分岐6の一端は外部油回路10と流体連通しており、給油分岐6の他端はノズル52と流体連通している。給油分岐6の配置を容易にするために、ホルダ3には取付孔31が設けられ、給油分岐6のパイプラインが取付孔31を通過する。
【0033】
外部油回路は、複数の油管101と、油給還系統102とを含む。油は、油給還系統102からいくつかの油管101を通って給油分岐6に搬送され、使用済み油は回収され、その後、他の油管101を介して油給還系統102に戻される。油給還系統102は、油の再利用を達成する。
【0034】
図4を参照すると、いくつかの実施形態では、切換弁53は、各ノズル52と給油空洞511との間の油路に設けられる。これにより、各ノズル52を別々に制御することができる。試験中、振動励起システムの、円を形成するノズル52のうち、いくつかのノズルは油を噴霧し、他のノズルは油を噴霧しない。これらの油噴霧ノズル52は、互いに隣接しているかもしくは互いに離間しているか、またはいくつかは隣接しており、いくつかは離間している。もちろん、いくつかの実施形態では、円を形成するノズル52はすべて油を噴霧する。
【0035】
油噴霧ノズル52の数は、ロータシステム8の回転速度および動翼の振動数に関連させられるので、さらに、ロータシステム8の動作速度および翼部の振動数範囲に従って、ノズルアセンブリ5は、対応する数のノズル52が油を噴霧することを可能にし、給油ノズル52は、各翼部が同じ量の励起された油および圧力を得ることを保証するために同じ距離だけ離間され、油噴霧励起の量は、異なる回転速度での同じロータシステム8の振動試験に適合するように、装置上で調整されることができる。高速回転の条件下では、エンジンの動翼を励起する励起周波数は、次式を満たす必要がある:
F=N×n/60
式中、Fは、Hz単位の励起周波数であり、Nはノズルの数であり、nはr/mでの回転速度である。
【0036】
上記の技術的解決策では、試験中、油分注ノズル52の数は、異なるエンジン回転速度に従って、具体的には、例えば、いくつかの取付座51上のすべてのノズル52が油を分注するか、すべての取付座51上のすべてのノズル52が油を分注するか、もしくは各取付座51上のノズル52のいくつかのみが油を分注するように、または、円を形成するノズル52の場合には、ノズル52は、間隔を空けて油を分注し、すなわち、油を分注しない1つのノズル52が、2つの油分注ノズル52の間に挟まれるように、調整される。これらの油分注ノズル52は、各ノズル52の油分注角度が個別に非常に簡便に調整される。さらに、試験される同じ動翼について、試験が数回繰り返され、油分注ノズル52の数および位置も、試験結果に従って最適に調整されて、最良の試験結果が達成される。異なるモデルの動翼の場合、油を分注する必要があるノズル52の数および位置も別々に調整される。上記の技術的解決策は、試験再現性および試験精度を達成するが、試験条件の柔軟な設定も達成することが分かる。
【0037】
図1を参照すると、本開示のいくつかの実施形態は、本開示の任意の技術的解決策において提供される振動励起システムを備える、航空エンジンロータを試験するための装置をさらに提供する。
【0038】
航空エンジンは、航空機の飛行のために動力を提供する非常に複雑で高度な熱力学的機械である。ロータは、軸受によって支持される回転体である。振動は、往復運動を指し、振動は、それ自体の周波数、励起周波数、および励起の大きさに密接に関連する。航空エンジンロータを試験するための装置は、高速回転状態でのロータシステム8の振動およびダンパ振動低減効果を試験するために用いられる。
【0039】
図1および図5を参照すると、いくつかの実施形態では、航空エンジンロータを試験するための装置は、試験空洞7と、ロータシステム8と、駆動構成要素9とをさらに備える。振動励起システムは、試験空洞7内に設置される。ロータシステム8も試験空洞7内に取り付けられ、振動励起システムはロータシステム8の周方向外側に配置される。駆動構成要素9は、ロータシステム8を回転駆動するよう、ロータシステム8に駆動可能に接続される。駆動構成要素9は、例えばモータである。モータは、試験空洞7の外側に配置され、伝動シャフトを介してロータシステム8に動力を伝達する。
【0040】
高圧タービンのロータシステム8は、動翼81およびディスク82を含む。動翼81の振動数は非常に高く、動翼81は、さねはぎ非線形接続構造によってホイールディスク82に接続される。動翼81の共振周波数およびダンパの振動低減効果は、実高速回転状態で試験され、これは、エンジン運転中の遠心負荷条件により近いものであり、動翼81の非線形接続構造と、ダンパおよび動翼81の摩擦運動とを実現し、より信頼性の高い試験データが得られる。高速回転状態での励起モード、すなわち、高速回転試験床上で動翼81の霧化油励起を実現することは、高振動数翼部から有効な応答を励起する実用的かつ実現可能な方法である。
【0041】
本開示の説明において、「中央」、「縦」、「横」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「内側」、「外側」といった文言によって示される向きまたは位置関係は、図面に基づいて示される向きまたは位置関係であり、単に本開示の説明および説明の簡素化の便宜上のものであり、示される装置もしくは要素が特定の向きを有さなければならないかもしくは特定の向きで構築および動作されなければならないことを示唆または暗示するのではなく、したがって、これらの文言は、本開示の保護範囲を限定するものと解釈されないことが理解されるべきである。
【0042】
最後に、上記の実施形態は、本開示の技術的解決策を限定するのではなく、説明するためだけに使用されることに留意されたい。本開示は、好ましい実施形態を参照して詳細に説明されるが、当業者は、それらが依然として、本開示における具体的実現例に変更を行うかまたはその技術的特徴の一部に対する等価な置換を行うことができ、そのような変更および等価な置換は、本発明の技術的解決策の精神から逸脱しない限り、本発明において保護を求める技術的解決策の範囲内に包含されるべきであることを理解するはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】