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特表2024-509020アンテナアッセンブリーおよび通信システム
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  • 特表-アンテナアッセンブリーおよび通信システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】アンテナアッセンブリーおよび通信システム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/50 20060101AFI20240221BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20240221BHJP
   H01P 1/20 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H01Q1/50
H01Q7/00
H01P1/20 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518258
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2023-03-20
(86)【国際出願番号】 CN2022110650
(87)【国際公開番号】W WO2023138034
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202210056152.8
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518385648
【氏名又は名称】安徽安努奇科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ANHUI ANUKI TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】2800 Chuangxin Ave, Rm 602 Flr 6 Block C Bldg J1, Hefei Innovation Industrial Park Phase II, High-Tech Industrial Development Zone, Hefei, Anhui 230088, China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】秦 坤
(72)【発明者】
【氏名】牛 建
(72)【発明者】
【氏名】左 成傑
(72)【発明者】
【氏名】何 軍
【テーマコード(参考)】
5J006
5J046
【Fターム(参考)】
5J006HD06
5J006LA07
5J006LA21
5J046AA03
5J046AA07
5J046AB11
5J046TA03
(57)【要約】
本出願は、アンテナアッセンブリーおよび通信システムを提供し、アンテナの技術分野に属する。アンテナアッセンブリーは、フィルタモジュールとアンテナモジュールとを備え、アンテナモジュールとフィルタモジュールとが接続されるとともに一体として集積され、フィルタモジュールの出力インピーダンスとアンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合している。本出願に係るアンテナアッセンブリーおよび通信システムは、システムの小型化を実現するとともにシステムの挿入損失を低減することができる利点を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタモジュールとアンテナモジュールとを備え、前記アンテナモジュールと前記フィルタモジュールとが接続されるとともに一体として集積され、
前記フィルタモジュールの出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合している
ことを特徴とするアンテナアッセンブリー。
【請求項2】
前記フィルタモジュールは、複数段のLCフィルタ構造を含み、複数段のLCフィルタ構造が順次に接続され、前記アンテナモジュールは、3Dスパイラルインダクタを含み、前記3Dスパイラルインダクタと前記LCフィルタ構造とが接続され、
前記3DスパイラルインダクタがLCフィルタ構造としても構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項3】
前記アンテナアッセンブリーが連結柱をさらに備え、前記フィルタモジュールが基板を備え、前記3Dスパイラルインダクタが前記フィルタモジュールの上に設置され、前記3Dスパイラルインダクタが前記連結柱を介して前記フィルタモジュールと接続され、
前記3Dスパイラルインダクタと前記基板との間隔が200μm超である
ことを特徴とする請求項2に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項4】
前記連結柱は、銅製柱を採用し、前記銅製柱の高さを調整することにより、前記アンテナモジュールの動作周波数を微調整する
ことを特徴とする請求項3に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項5】
前記3Dスパイラルインダクタと前記フィルタモジュールとの間に支持柱が設置される
ことを特徴とする請求項2項に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項6】
前記3Dスパイラルインダクタは、折れ線状に設置される
ことを特徴とする請求項2に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項7】
前記アンテナアッセンブリーは、LCネットワークをさらに備え、前記LCネットワークが前記アンテナモジュールと前記フィルタモジュールとの間に接続され、前記フィルタモジュールと前記アンテナモジュールとが前記LCネットワークによりインピーダンス整合を実現する
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項8】
前記LCネットワークは、T型ネットワーク、Pi型ネットワークおよびL型ネットワークを含む
ことを特徴とする請求項7に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項9】
前記LCネットワークがインダクタとコンデンサとを含み、前記コンデンサおよび前記インダクタの構成パラメータを調整することにより、前記フィルタモジュールの出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとの整合を実現する
ことを特徴とする請求項7に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項10】
前記コンデンサは、静電容量がpFオーダーであり、極板間の距離が10~30μmであり、極板の厚さが10μmであり、前記インダクタは、インダクタンスがnHオーダーであり、前記インダクタの幅が5~20μmであり、前記インダクタの厚さが10μmである
ことを特徴とする請求項9に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項11】
前記LCネットワークにおける前記コンデンサは、プレーナコンデンサ構造または積層コンデンサ構造を採用する
ことを特徴とする請求項9に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項12】
前記フィルタモジュールは、複数段のフィルタ構造を含み、前記複数段のフィルタ構造が順次に接続され、最終段フィルタ構造がアンテナモジュールと接続され、
前記最終段フィルタ構造の出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合している
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項13】
前記フィルタモジュールは、複数段のLCフィルタ構造を含み、最終段LCフィルタ構造の出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとを整合させるように、前記最終段LCフィルタ構造の容量性リアクタンスおよび誘導性リアクタンスの少なくとも一方が調整可能である
ことを特徴とする請求項12に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項14】
前記最終段LCフィルタ構造の前記容量性リアクタンスのみまたは前記誘導性リアクタンスのみを調整する方式、あるいは、前記最終段LCフィルタ構造の前記容量性リアクタンスと前記誘導性リアクタンスとをともに調整する調整方式で、前記最終段LCフィルタ構造の出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとを整合させ、
前記容量性リアクタンスを調整するとき、コンデンサの極板間距離、極板の厚さを調整し、前記誘導性リアクタンスを調整するとき、インダクタの幅、厚さ、らせん半径、らせん高さ、らせん角度、巻き数を調整する
ことを特徴とする請求項13に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項15】
前記アンテナモジュールは、直接給電構造または電磁界結合給電構造を備え、前記フィルタモジュールと前記アンテナモジュールとのインピーダンスを整合させるように、前記直接給電構造または前記電磁界結合給電構造の位置およびサイズが調整可能である
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項16】
前記アンテナモジュールは、直接給電構造または電磁界結合給電構造を含み、前記直接給電構造または前記電磁界結合給電構造の位置およびサイズが調整可能であり、前記フィルタモジュールは、複数段のLCフィルタ構造を含み、前記フィルタモジュールと前記アンテナモジュールとのインピーダンスを整合させるように、最終段LCフィルタ構造の容量性リアクタンスおよび誘導性リアクタンスの少なくとも一方が調整可能である
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナアッセンブリー。
【請求項17】
請求項1~9のいずれか1項に記載のアンテナアッセンブリーを備える
ことを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、アンテナの技術分野に属し、具体的に、アンテナアッセンブリーおよび通信システムに関する。
【0002】
関係出願の相互参照
本出願は、2022年01月18日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202210056152.8であり、名称が「アンテナアッセンブリーおよび通信システム」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本出願に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
従来の通信システムにおいて、フィルタチップおよびアンテナチップは、信号を送受信するための重要なデバイスとして、一般的にそれぞれ独立して設計される。縦続接続するときの両者間のインピーダンス不整合を防止するため、フィルタとアンテナとの間に整合回路を設ける必要がある。
【0004】
しかし、整合回路を設けると、システム全体のサイズおよび挿入損失が大きくなってしまう。
【0005】
上記のように、従来技術には通信システムのサイズおよび挿入損失が比較的大きい問題がある。
【発明の概要】
【0006】
本出願は、従来技術における通信システムのサイズおよび挿入損失が比較的大きい問題を解決できるアンテナアッセンブリーおよび通信システムを提供することを目的とする。
【0007】
上記の目的を実現するため、本出願の実施例は、下記の技術案を採用する。
【0008】
本出願の実施例は、アンテナアッセンブリーを提供し、前記アンテナアッセンブリーは、フィルタモジュールとアンテナモジュールとを備え、前記アンテナモジュールと前記フィルタモジュールとが接続されるとともに一体として集積され、前記フィルタモジュールの出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合している。
【0009】
任意で、前記フィルタモジュールは、複数段のLCフィルタ構造を含み、複数段のLCフィルタ構造が順次に接続され、前記アンテナモジュールは、3Dスパイラルインダクタを含み、前記3Dスパイラルインダクタと前記LCフィルタ構造とが接続され、前記3DスパイラルインダクタがLCフィルタ構造としても構成される。
【0010】
任意で、前記アンテナアッセンブリーが連結柱をさらに備え、前記フィルタモジュールが基板を備え、前記3Dスパイラルインダクタが前記フィルタモジュールの上に設置され、前記3Dスパイラルインダクタが前記連結柱を介して前記フィルタモジュールと接続され、前記3Dスパイラルインダクタと前記基板との間隔が200μm超である。
【0011】
任意で、前記連結柱は、銅製柱を採用し、前記銅製柱の高さを調整することにより、前記アンテナモジュールの動作周波数を微調整する。
【0012】
任意で、前記3Dスパイラルインダクタと前記フィルタモジュールとの間に支持柱が設置される。
【0013】
任意で、前記3Dスパイラルインダクタは、折れ線状に設置される。
【0014】
任意で、前記アンテナアッセンブリーは、LCネットワークをさらに備え、前記LCネットワークが前記アンテナモジュールと前記フィルタモジュールとの間に接続され、前記フィルタモジュールと前記アンテナモジュールとが前記LCネットワークによりインピーダンス整合を実現する。
【0015】
任意で、前記LCネットワークは、T型ネットワーク、Pi型ネットワークおよびL型ネットワークを含む。
【0016】
任意で、前記LCネットワークがインダクタとコンデンサとを含み、前記コンデンサおよび前記インダクタの構成パラメータを調整することにより、前記フィルタモジュールの出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとの整合を実現する。
【0017】
任意で、前記コンデンサは、静電容量がpFオーダーであり、極板間の距離が10~30μmであり、極板の厚さが10μmであり、前記インダクタは、インダクタンスがnHオーダーであり、前記インダクタの幅が5~20μmであり、前記インダクタの厚さが10μmである。
【0018】
任意で、前記LCネットワークにおける前記コンデンサは、プレーナコンデンサ構造または積層コンデンサ構造を採用する。
【0019】
任意で、前記フィルタモジュールは、複数段のフィルタ構造を含み、前記複数段のフィルタ構造が順次に接続され、最終段フィルタ構造がアンテナモジュールと接続され、前記最終段フィルタ構造の出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合している。
【0020】
任意で、前記フィルタモジュールは、複数段のLCフィルタ構造を含み、最終段LCフィルタ構造の出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとを整合させるように、前記最終段LCフィルタ構造の容量性リアクタンスおよび誘導性リアクタンスの少なくとも一方が調整可能である。
【0021】
任意で、前記最終段LCフィルタ構造の前記容量性リアクタンスのみまたは前記誘導性リアクタンスのみを調整する方式、あるいは、前記最終段LCフィルタ構造の前記容量性リアクタンスと前記誘導性リアクタンスとをともに調整する調整方式で、前記最終段LCフィルタ構造の出力インピーダンスと前記アンテナモジュールの入力インピーダンスとを整合させ、
【0022】
前記容量性リアクタンスを調整するとき、コンデンサの極板間距離、極板の厚さを調整し、前記誘導性リアクタンスを調整するとき、インダクタの幅、厚さ、らせん半径、らせん高さ、らせん角度、巻き数を調整する。
【0023】
任意で、前記アンテナモジュールは、直接給電構造または電磁界結合給電構造を備え、前記フィルタモジュールと前記アンテナモジュールとのインピーダンスを整合させるように、前記直接給電構造または電磁界結合給電構造の位置およびサイズが調整可能である。
【0024】
任意で、前記アンテナモジュールは、直接給電構造または電磁界結合給電構造を含み、前記直接給電構造または電磁界結合給電構造の位置およびサイズが調整可能であり、前記フィルタモジュールは、複数段のLCフィルタ構造を含み、前記フィルタモジュールと前記アンテナモジュールとのインピーダンスを整合させるように、最終段LCフィルタ構造の容量性リアクタンスおよび誘導性リアクタンスの少なくとも一方が調整可能である。
【0025】
本出願の実施例は、上記のアンテナアッセンブリーを備える通信システムをさらに提供する。
【0026】
従来技術に比べて、本出願は、下記の有益な効果を有する。
【0027】
本出願の実施例は、アンテナアッセンブリーおよび通信システムを提供し、該アンテナアッセンブリーは、フィルタモジュールとアンテナモジュールとを備え、アンテナモジュールとフィルタモジュールとが接続されるとともに一体集積され、フィルタモジュールの出力インピーダンスとアンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合している。一方、従来技術に比べて、本出願ではインピーダンス整合回路をなしにすることにより、通信システムの小型化に寄与するとともにシステムの挿入損失を低減することができる。他方、アンテナモジュールとフィルタモジュールとが一体として集積されるため、更なる小型化を実現することができる。また、フィルタモジュールの出力インピーダンスとアンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合しているため、インピーダンス整合の要求を満たすことができる。
【0028】
本出願の上記の目的、特徴および利点をより明瞭にするため、以下、好ましい実施例を挙げ、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本出願の実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。なお、説明する図面は、本出願のいくつかの実施例を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面をもとに他の関連図面を得ることも可能である。
図1】従来技術における通信システムの模式図である。
図2】本出願の実施例によるアンテナアッセンブリーの模式図である。
図3】本出願の実施例によるアンテナアッセンブリーの模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願の実施例の目的、技術案および利点をより明瞭にするため、以下、本出願の実施例に用いられる図面を参照しながら、本出願の実施例における技術案を明瞭かつ完全に説明し、説明される実施例が本出願の一部の実施例にすぎず、すべての実施例ではないことは無論である。ここで図面を用いて示した本出願の実施例における部品は、さまざまな配置方法で配置、設計することが可能である。
【0031】
このため、図面に示された本出願の実施例に対する以下の詳細な説明は、本出願の選択された実施例にすぎず、保護しようとする本出願の範囲を限定するものではない。本出願の実施例をもとに、当業者が発明能力を用いることなく得たすべての他の実施例も、本出願の保護範囲に属する。
【0032】
なお、同様な符号は、図面において同様なものを示すので、1つの図面で定義された場合、その他の図面でさらに定義、解釈することが不要になる。また、本出願の説明において、「第1」、「第2」などの用語は、区別して説明するためのものにすぎず、相対的重要性を明示または暗示するものではない。
【0033】
なお、本明細書において、「第1」および「第2」のような関係用語は、1つのエンティティ若しくはアクションを別のエンティティ若しくはアクションから区別するだけに用いられ、必ずしもそのようなエンティティ若しくはアクション間に如何なる事実上の関係または順序を要求または暗示していない。
【0034】
以下、図面を参照しながら、本出願のいくつかの実施例を詳細に説明する。矛盾がない限り、下記の実施例および実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。
【0035】
図1を参照し、背景技術に記載されたように、従来の通信システムにおいて、フィルタとアンテナとの間に整合回路を設ける必要があるが、整合回路を設けると、システム全体のサイズおよび挿入損失が大きくなってしまう。
【0036】
これに鑑みて、上記の問題を解決するため、本出願は、整合回路をなしにする方式でシステムの小型化および挿入損失の低減を実現できるアンテナアッセンブリーを提供する。
【0037】
以下、本出願に係るアンテナアッセンブリーを例示的に説明する。
【0038】
選択可能な一実現方式として、図2に示すように、該アンテナアッセンブリー100は、フィルタモジュール110とアンテナモジュール120とを備え、アンテナモジュール120とフィルタモジュール110とが接続されるとともに一体として集積され、フィルタモジュール110の出力インピーダンスとアンテナモジュール120の入力インピーダンスとが整合している。
【0039】
上記の実現方式によれば、一方、従来技術に比べて、本出願ではインピーダンス整合回路をなしにすることにより、通信システムの小型化に寄与するとともにシステムの挿入損失を低減することができ、他方、アンテナモジュール120とフィルタモジュール110とが一体として集積されるため、更なる小型化を実現することができる。また、フィルタモジュール110の出力インピーダンスとアンテナモジュール120の入力インピーダンスとが整合しているため、インピーダンス整合の要求を満たすことができる。
【0040】
なお、従来の設計において、フィルタとアンテナとがそれぞれ独立して常用の基準インピーダンス(50ohmまたは75ohm)とインピーダンス整合をするように設計されていた。これに対して、整合回路をなしにしてフィルタチップとアンテナチップとを直接縦続接続させる場合、フィルタチップおよびアンテナチップは、それぞれの構造で寄生パラメータが生じ、この寄生パラメータがチップ間のインピーダンス整合に影響を与える。そして、縦続接続される場合にフィルタチップとアンテナチップとの距離が比較的近く、結合効果が生じることがあるため、製品の性能が低下する。
【0041】
これに鑑みて、フィルタの出力インピーダンスとアンテナの入力インピーダンスとの整合を実現するため、両者間のインピーダンス整合設計を調整することにより、両者間の寄生パラメータの干渉を除去し、結合効果による影響を抑えることができる。本出願に記載される整合は、フィルタの出力インピーダンスとアンテナの入力インピーダンスとの整合を意味する。インピーダンス整合構造は、さまざまな形式で実現することができ、以下、例示的に説明する。
【0042】
選択可能な一実現方式として、アンテナアッセンブリーは、LCネットワークをさらに備え、LCネットワークがアンテナモジュール120とフィルタモジュール110との間に接続され、フィルタモジュール110とアンテナモジュール120とがLCネットワークによりインピーダンス整合を実現する。
【0043】
LCネットワークがインダクタおよびコンデンサなどのデバイスを含み、コンデンサおよびインダクタのそれぞれの構成パラメータ、例えばLCネットワークにおけるコンデンサおよびインダクタの厚さ、大きさなどを調整することにより、フィルタモジュール110の出力インピーダンスとアンテナモジュール120の入力インピーダンスとの整合を実現する。任意で、コンデンサは、静電容量がpFオーダーであり、極板間の距離が10~30μmであり、極板の厚さが10μmである。インダクタは、インダクタンスがnHオーダーであり、インダクタの幅が5~20μmであり、インダクタの厚さが10μmであることができる。
【0044】
選択可能な一実現方式として、LCネットワークは、T型ネットワーク、Pi型ネットワークおよびL型ネットワークを含み、その具体的な構造が限定されなく、例えば、コンデンサを直列接続しかつインダクタを並列接続するように設計し、直列接続構造には個別のグランドポートが不要で、並列接続構造には個別のグランドポートを設ける必要がある。任意で、LCネットワークにおけるコンデンサは、プレーナコンデンサ構造または積層コンデンサ構造を採用することができ、ここで限定されない。
【0045】
無論、LCネットワークを追加する方式以外の方式でフィルタモジュール110とアンテナモジュール120とのインピーダンス整合を実現してもよく、この場合、フィルタモジュール110およびアンテナモジュール120の少なくとも一方の関連パラメータを調整する方式でインピーダンス整合を実現することができる。
【0046】
選択可能な他の一実現方式として、フィルタモジュール110の関連パラメータを調整する方式でインピーダンス整合を実現する。フィルタモジュール110は、複数段のフィルタ構造を含み、複数段のフィルタ構造が順次に接続され、最終段フィルタ構造がアンテナモジュール120と接続され、最終段フィルタ構造の出力インピーダンスとアンテナモジュール120の入力インピーダンスとが整合している。
【0047】
フィルタモジュール110は、複数段のフィルタ構造を含み、本出願ではフィルタ構造が具体的に限定されなく、例えば、該複数段のフィルタ構造がLCフィルタ構造であってもよく、キャビティフィルタなどの他の形式のフィルタであってもよい。
【0048】
説明を簡単にするため、本出願は、複数段のLCフィルタ構造を含むフィルタモジュール110を例として説明する。ここで、最終段LCフィルタ構造の出力インピーダンスとアンテナモジュール120の入力インピーダンスとを整合させるように、最終段LCフィルタ構造の容量性リアクタンスおよび誘導性リアクタンスの少なくとも一方が調整可能である。
【0049】
例えば、フィルタモジュール110が4段のLCフィルタ構造を含む場合、1段目のLCフィルタ構造が2段目のLCフィルタ構造と接続され、2段目のLCフィルタ構造が3段目のLCフィルタ構造と接続され、3段目のLCフィルタ構造が4段目のLCフィルタ構造と接続され、4段目のLCフィルタ構造が、最終段LCフィルタ構造であり、アンテナモジュール120と接続される。
【0050】
従来の通信システムにおいて、フィルタチップの最終段フィルタ構造の出力インピーダンスを50ohmに整合させるとともに、アンテナモジュール120の入力インピーダンスも50ohmに整合させるようにすることにより整合を実現する。これに対して、本出願において、アンテナモジュール120の入力インピーダンスに応じてフィルタモジュールの出力インピーダンスを調整することにより整合を実現することができる。なお、本出願に記載される、フィルタモジュール110とアンテナモジュール120とのインピーダンス整合は、アンテナモジュール120の入力インピーダンスとフィルタモジュール110における最終段LCフィルタ構造の出力インピーダンスとの整合を意味する。
【0051】
なお、具体的な調整過程において、実際に、最終段LCフィルタ構造をアンテナの入力インピーダンスに直接整合させるように最終段フィルタ構造におけるLC値を調整し、この場合、最終段LCフィルタ構造におけるコンデンサの容量性リアクタンスのみを調整しあるいは最終段LCフィルタ構造におけるインダクタの誘導性リアクタンスのみを調整してもよく、例えば、インダクタ構造のらせん半径、らせん高さ、らせん角度、巻き数などの物理的パラメータを調整することによりスパイラルインダクタがフィルタ構造とのインピーダンス整合を実現でき、または、最終段LCフィルタ構造におけるコンデンサの容量性リアクタンスとインダクタの誘導性リアクタンスの両方を調整してもよい。
【0052】
コンデンサの容量性リアクタンスおよびインダクタの誘導性リアクタンスを調整する場合、コンデンサおよびインダクタの構成パラメータを調整することによりインピーダンス整合を実現することができる。例えば、コンデンサの容量性リアクタンスを調整するとき、コンデンサの極板間距離、極板の厚さなどを調整することができ、インダクタの誘導性リアクタンスを調整するとき、インダクタの幅、厚さ、らせん半径、らせん高さ、らせん角度、巻き数などを調整することができる。
【0053】
選択可能な他の一実現方式として、アンテナモジュール120の関連パラメータを調整する方式でインピーダンス整合を実現する。これに応じて、アンテナモジュール120は、給電構造を備え、該給電構造が、直接給電構造であってもよく、結合孔、結合スロット、結合ラインなどの形式の電磁界結合給電構造であってもよく、ここで限定されない。フィルタモジュール110とアンテナモジュール120とのインピーダンスを整合させるように、給電構造の位置およびサイズが調整可能である。つまり、本出願において、フィルタモジュール110の出力インピーダンスを一定にするとともにアンテナモジュール120における給電構造の位置およびサイズを調整し、直接給電構造または結合給電構造の物理的パラメータを調整することにより、アンテナモジュールとフィルタとの結合係数を変えることができ、これによってアンテナモジュール120とフィルタモジュール110とのインピーダンス整合を実現する。
【0054】
任意で、アンテナモジュールとフィルタとの結合係数を調整することにより、アンテナモジュールが1次共振構造として機能でき、フィルタ性能をさらに最適化することができる。
【0055】
なお、従来の通信システムにおいて、アンテナチップの入力インピーダンスが50ohmである。これに対して、本出願において、アンテナモジュール120の給電構造を調整することにより、アンテナの入力インピーダンスとフィルタリングチップとを整合させる。この場合、結合効果の影響のため、フィルタモジュール110の出力インピーダンスが50ohmでなくなる可能性があり、このとき、フィルタモジュール110の入力インピーダンスではなく、アンテナモジュール120における給電構造の相対位置、物理的サイズなどのパラメータを調整することにより、インピーダンス整合を実現する。
【0056】
選択可能な他の一実現方式として、アンテナモジュール120およびフィルタモジュール110の関連パラメータをともに調整することにより、インピーダンス整合を実現する。調整過程での極値の発生および加工プロセスが制限されることを防止するため、フィルタモジュール110とアンテナモジュール120とをともに調整する方式によれば、両者のインピーダンス整合をより柔軟に実現することができる。例えば、インピーダンス整合が取れているとき、アンテナモジュール120の入力インピーダンスおよびフィルタモジュール110の出力インピーダンスは、いずれも50ohmまたは他の値である。
【0057】
そして、通信システムの更なる小型化を実現するため、本出願に係るアンテナモジュール120とフィルタモジュール110とはさらに集積することができる。
【0058】
選択可能な一実現方式として、図3に示すように、フィルタモジュール110は、複数段のLCフィルタ構造を含み、複数段のLCフィルタ構造が順次に接続される。任意で、本出願に係るアンテナモジュールは、平面スパイラルインダクタまたは3Dスパイラルインダクタを含む。アンテナモジュール120が3Dスパイラルインダクタを含む場合、3DスパイラルインダクタとLCフィルタ構造とが接続され、3DスパイラルインダクタがLCフィルタ構造としても構成される。
【0059】
本出願において、アンテナモジュール120も1つのLCフィルタ構造として使用され、これによってインピーダンス整合およびアンテナ放射の特性をともに実現することができる。スパイラルインダクタそれ自体がインダクタンス特性を有し、その誘導性リアクタンスが構造に関わる。インダクタの線幅、らせんピッチなどを調整することにより、寄生容量を発生することができ、これによってLCフィルタ構造として構成され、一定のフィルタリング機能が実現される。
【0060】
本出願において、スパイラルインダクタの構造を調整することによりアンテナの入力インピーダンスに対する調整を実現し、これによってフィルタ構造とアンテナとの整合を直接実現する。そして、一方、3Dスパイラルインダクタにより構成されるLCフィルタ構造は、フィルタモジュール110の最終段LCフィルタ構造とみなすことができ、したがってインピーダンス整合をより容易に実現することができる。他方、3Dスパイラルインダクタにより構成されるLCフィルタ構造は、フィルタリング効果を有し、これによってフィルタモジュール110におけるLCフィルタ構造を小さくすることができる。例えば、通信システムにおいて、4段のLCフィルタ構造を必要とする場合、実際の製造において、フィルタモジュール110におけるLCフィルタ構造を3次のものに製造すればよく、3Dスパイラルインダクタが最終段LCフィルタ構造として機能することができ、このようにして、フィルタモジュール110におけるLCフィルタ構造を減らすとともに、アンテナモジュール120を利用して同様なフィルタリング効果を実現することができる。
【0061】
また、本実施例において、フィルタリングアンテナがUWBの周波数帯域で仕事し、スパイラルインダクタがフィルタモジュール110の上面に設置され、アンテナモジュール120がグランドに対して規定の間隔で離間して構成される。これに応じて、アンテナモジュール120が連結柱140をさらに備え、フィルタモジュール110が基板111を備え、3Dスパイラルインダクタがフィルタモジュール110の上に設置され、3Dスパイラルインダクタが連結柱140を介してフィルタモジュールと電気的に接続される。3Dスパイラルインダクタと基板111との間隔が200μm超であり、3Dスパイラルインダクタとフィルタモジュールとの間に支持柱がさらに設置され得る。
【0062】
任意で、本出願に係る連結柱140は、銅製柱を採用する。銅製柱の高さを調整することにより、アンテナモジュール120の動作周波数を微調整することができる。スパイラルインダクタは、全体の高さが300μmであり、らせん巻き数が5回であり、らせん角度が12度であり、線幅が90μmであり、線長が650μmである。
【0063】
そして、3Dスパイラルインダクタにより寄生容量をよりよく発生するため、3Dスパイラルインダクタは、折れ線状に設置され、これによって、インダクタを構成するとともに、接続される2つのコイルが平行に設置され、容量特性がより顕著である。
【0064】
上記の実現方式に基づいて、本出願は、上記のアンテナアッセンブリーを備える通信システムをさらに提供する。
【0065】
上記のように、本出願の実施例はアンテナアッセンブリーおよび通信システムを提供し、該アンテナアッセンブリーは、フィルタモジュールとアンテナモジュールとを備え、アンテナモジュールとフィルタモジュールとが接続されるとともに一体として集積され、フィルタモジュールの出力インピーダンスとアンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合している。一方、従来技術に比べて、本出願ではインピーダンス整合回路をなしにすることにより、通信システムの小型化に寄与するとともにシステムの挿入損失を低減することができる。他方、アンテナモジュールとフィルタモジュールとが一体として集積されるため、更なる小型化を実現することができる。また、フィルタモジュールの出力インピーダンスとアンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合しているため、インピーダンス整合の要求を満たすことができる。
【0066】
上記は、本出願の好ましい実施例にすぎず、本出願を限定するものではない。当業者にとって、本出願に各種の変更や変化を有してもよい。本出願の精神および原理から逸脱しない限り、行った如何なる変更、均等置換、改良なども、本出願の保護範囲に属する。
【0067】
当業者にとって、本出願は、上記の例示的な実施例における事項に限定されず、本出願の精神または基本的な特徴から逸脱しない限り、他の具体的な形態で本出願を実施してもよい。このため、実施例は、例示的なものであり、本出願の範囲は、上記の説明ではなく特許請求の範囲により決められるため、請求の範囲内でのすべての変更および請求の範囲と均等の範囲を含む。請求の範囲における符号を、関連の請求項を限定するものとみなすべきではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本出願は、アンテナアッセンブリーおよび通信システムを提供し、該アンテナアッセンブリーは、フィルタモジュールとアンテナモジュールとを備え、アンテナモジュールとフィルタモジュールとが接続されるとともに一体として集積される。フィルタモジュールの出力インピーダンスとアンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合している。一方、従来技術に比べて、本出願ではインピーダンス整合回路をなしにすることにより、通信システムの小型化に寄与するとともにシステムの挿入損失を低減することができる。他方、アンテナモジュールとフィルタモジュールとが一体として集積されるため、更なる小型化を実現することができる。また、フィルタモジュールの出力インピーダンスとアンテナモジュールの入力インピーダンスとが整合しているため、インピーダンス整合の要求を満たすことができる。
【0069】
なお、本出願に係るアンテナアッセンブリーおよび通信システムは、実施可能なものであり、さまざまな産業用途に適用することができる。例えば、本出願に係るアンテナアッセンブリーおよび通信システムは、アンテナの技術分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 アンテナアッセンブリー
110 フィルタモジュール
120 アンテナモジュール
111 基板
140 連結柱
図1
図2
図3
【国際調査報告】