(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】電磁鋼板およびその積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240221BHJP
B32B 15/095 20060101ALI20240221BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20240221BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20240221BHJP
H01F 27/245 20060101ALI20240221BHJP
H01F 3/02 20060101ALI20240221BHJP
C23C 22/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B32B15/08 E
B32B15/095
C21D8/12 A
H01F1/147 183
H01F27/245
H01F3/02
C23C22/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537526
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 KR2021019319
(87)【国際公開番号】W WO2022139351
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0180151
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ, ドンギュ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ハ, ボンウ
(72)【発明者】
【氏名】ノ, テヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ギョンリョル
【テーマコード(参考)】
4F100
4K026
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4F100AB06A
4F100AH06B
4F100AH06H
4F100AK51B
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4K033RA04
4K033TA03
5E041AA02
5E041BC05
5E041BC08
5E041BD09
5E041CA01
5E041HB14
5E041NN05
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、電磁鋼板の間に形成される融着層の界面特性を制御して、接着力が向上した電磁鋼板を提供することである。
【解決手段】本発明のボンディング用電磁鋼板は、電磁鋼板と、前記電磁鋼板上に位置するボンディングコーティング層と、を含み、前記電磁鋼板内に位置し、前記ボンディングコーティング層と接触する第1界面層と、前記ボンディングコーティング層内に位置し、第1界面層と接触する第2界面層とをさらに含み、前記第2界面層を含むボンディングコーティング層中のSiの総含有量の70モル%以上が第2界面層内に存在することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板と、
前記電磁鋼板上に位置するボンディングコーティング層と、を含み、
前記電磁鋼板内に位置し、前記ボンディングコーティング層と接触する第1界面層と、
前記ボンディングコーティング層内に位置し、第1界面層と接触する第2界面層とをさらに含み、
前記第2界面層を含むボンディングコーティング層中のSiの総含有量の70モル%以上が第2界面層内に存在することを特徴とする電磁鋼板。
【請求項2】
前記第1界面層は、
90~97重量%のFe酸化物、
2~6重量%のSi酸化物、および
1~4重量%の偏析元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板。
【請求項3】
前記第1界面層中のFe酸化物の含有量は、ボンディングコーティング層が形成される前の含有量対比1~3重量%減少したものであり、
前記第1界面層中のSi酸化物の含有量は、ボンディングコーティング層が形成される前の含有量対比0.5~1重量%減少したものであり、
前記第1界面層中の偏析元素の含有量は、ボンディングコーティング層が形成される前の含有量対比0.5~1重量%減少したものであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板。
【請求項4】
前記第2界面層を含むボンディングコーティング層中のSi-N結合の総含有量中の70モル%以上が前記第2界面層内に存在することを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板。
【請求項5】
前記ボンディングコーティング層は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含み、
前記接着樹脂は、ジイソシアネートモノマーおよびポリオールが反応して形成されるポリウレタンであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板。
【請求項6】
前記ボンディング添加剤は、カップリング剤、湿潤剤、硬化剤、および硬化触媒からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の電磁鋼板。
【請求項7】
前記カップリング剤は、ボンディングコーティング層中の接着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上および5重量部以下含まれることを特徴とする請求項6に記載の電磁鋼板。
【請求項8】
前記カップリング剤は、下記の化学式1で表されるアミノシランを含むカップリング剤であることを特徴とする請求項6に記載の電磁鋼板。
【化1】
前記化学式1において、R1~R5は、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、L1~L4は、互いに独立して、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基、置換もしくは非置換のC2~C10アルキニレン基、置換もしくは非置換のC6~C20アリーレン基、または置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリーレン基であり、n1~n4は、それぞれ独立して、0~10のいずれか1つの整数である。
【請求項9】
前記ジイソシアネートモノマーは、芳香族イソシアネートモノマーおよび脂肪族イソシアネートモノマーからなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の電磁鋼板。
【請求項10】
前記芳香族イソシアネートモノマーは、下記の化学式2、化学式3、またはその組み合わせであることを特徴とする請求項9に記載の電磁鋼板。
【化2】
【化3】
前記化学式2において、
R
1~R
10は、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、
R
1~R
5のいずれか1つは、イソシアネートであり、R
6~R
10のいずれか1つは、イソシアネートであり、
R
3およびR
8が同時にイソシアネートである場合は除外され、
Lは、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基、置換もしくは非置換のC2~C10アルキニレン基、置換もしくは非置換のC6~C20アリーレン基、または置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリーレン基であり、
nは、1~10のいずれか1つの整数であり、
前記化学式3において、
R
11~R
16は、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリール基、イソシアネート基、または置換もしくは非置換のC1~C10アルキルイソシアネート基であり、R
11~R
16の少なくとも2つは、イソシアネート、または置換もしくは非置換のC1~C10アルキルイソシアネートである。
【請求項11】
前記脂肪族イソシアネートモノマーは、下記の化学式4であることを特徴とする請求項9に記載の電磁鋼板。
【化4】
前記化学式4において、
Rは、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、または置換もしくは非置換のC3~C12シクロアルキル基である。
【請求項12】
複数の電磁鋼板と、
前記複数の電磁鋼板の間に位置するボンディング層と、を含み、
前記電磁鋼板内に位置し、前記ボンディング層と接触する第1界面層と、前記ボンディング層内に位置し、第1界面層と接触する第2界面層とをさらに含み、
前記第2界面層を含むボンディング層中のSiの総含有量の70モル%以上が第2界面層内に存在するものであることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁鋼板およびその積層体に係り、より詳細には、本発明は、ボンディング用電磁鋼板およびその積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は、圧延板上のすべての方向に磁気的特性が均一な鋼板で、モータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器などに幅広く用いられている。
電磁鋼板は、打抜加工後、磁気的特性の向上のために応力除去焼鈍(SRA)を実施しなければならないものと、応力除去焼鈍による磁気的特性効果より熱処理による費用損失が大きい場合に応力除去焼鈍を省略するものとの2つの形態に区分される。
【0003】
絶縁被膜は、モータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧器など積層体の仕上げ製造工程でコーティングされる被膜であって、通常、渦電流の発生を抑制させる電気的特性が要求される。その他にも、連続打抜加工性、耐粘着性および表面密着性などが要求される。連続打抜加工性とは、所定の形状に打抜加工後、多数を積層して鉄心に作る時、金型の摩耗を抑制する能力を意味する。耐粘着性とは、鋼板の加工応力を除去して磁気的特性を回復させる応力除去焼鈍過程後、鉄心鋼板間の密着しない能力を意味する。
このような基本的な特性のほか、コーティング溶液の優れた塗布作業性と配合後に長時間使用可能な溶液安定性なども要求される。このような絶縁被膜は、溶接、クランピング、インターロッキングなど別途の締結方法を用いて、電磁鋼板積層体の製造を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いずに、電磁鋼板を接着(締結)できる融着層を形成した電磁鋼板積層体およびその製造方法を提供することである。具体的には、電磁鋼板の間に形成される融着層の界面特性を制御して、接着力が向上した電磁鋼板を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電磁鋼板は、電磁鋼板と、前記電磁鋼板上に位置するボンディングコーティング層と、を含み、前記電磁鋼板内に位置し、前記ボンディングコーティング層と接触する第1界面層と、前記ボンディングコーティング層内に位置し、第1界面層と接触する第2界面層とをさらに含み、前記第2界面層を含むボンディングコーティング層中のSiの総含有量の70モル%以上が第2界面層内に存在することを特徴とする。
また、本発明の積層体は、複数の電磁鋼板と、前記複数の電磁鋼板の間に位置するボンディング層と、を含み、前記電磁鋼板内に位置し、前記ボンディング層と接触する第1界面層と、前記ボンディング層内に位置し、第1界面層と接触する第2界面層とをさらに含み、前記第2界面層を含むボンディング層中のSiの総含有量の70モル%以上が第2界面層内に存在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いずに、電磁鋼板を接着することができる。
本発明によれば、騒音特性、振動特性、引張強度、塗膜密着性、剥離特性などに優れた電磁鋼板接着コーティング組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のボンディング層が形成された電磁鋼板の模式図である。
【
図3】本発明の電磁鋼板積層体の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0009】
本発明の一実施形態による
図1の電磁鋼板10は、電磁鋼板100と、前記電磁鋼板上に位置するボンディングコーティング層200と、を含む。
本発明のボンディングコーティング層は、2つ以上の鋼板の面を接着させることができるコーティング層で、その用途について特に制限しないが、例えば、電磁鋼板のセルフボンディングを提供するための電磁鋼板用セルフボンディングコーティング層であってもよい。また、本発明の電磁鋼板は、セルフボンディング用電磁鋼板であってもよい。
【0010】
電磁鋼板の一面に備えられるボンディングコーティング層は、電磁鋼板に塗布されてコーティング層に形成される場合、特別な界面特性を有する。より具体的には、前記界面は、電磁鋼板側の界面とボンディングコーティング層の界面とに分けて説明することができる。つまり、界面は、前記電磁鋼板内に位置し、前記ボンディングコーティング層と接触する第1界面層101と、前記ボンディングコーティング層内に位置し、第1界面層と接触する第2界面層201とに分けて説明することができる。
【0011】
前記第2界面層を含むボンディングコーティング層200中のSiの総含有量の70モル%以上が第2界面層内に存在する。具体的には、70モル%以上~100モル%以下、または80モル%以上~95モル%以下、または85モル%以上~90モル%以下で存在することができる。つまり、ボンディングコーティング層200において大部分のSiを含有する部分を第2界面層201とすることができる。また、第2界面層中のSi含有量が高いことから、ボンディングコーティング層中のSi-N結合の大部分は第2界面層に含まれる。ボンディングコーティング層中のSi-N結合は、電磁鋼板の第1界面層のSi成分とボンディングコーティング層との反応で発生する。つまり、電磁鋼板のSiがボンディングコーティング層に一部移動してNと結合するのである。このSi-N結合が第2界面層に主に存在すれば、ボンディングコーティング層と電磁鋼板の接着力に優れる。
【0012】
また、第2界面層201中のSiの含有量は、第1界面層と第2界面層のSiの総含有量の10モル%以上であってもよい。具体的には、第1界面層と第2界面層のSiの総含有量の20モル%以上~55モル%以下、または40モル%以上~53モル%以下であってもよい。つまり、第1界面層のSi成分とボンディングコーティング層とが反応して第1界面層、電磁鋼板内のSiが第2界面層に移動する。
【0013】
前記電磁鋼板100に存在する第1界面層101は、90~97重量%のFe酸化物、3~6重量%のSi酸化物、および1~4重量%の偏析元素を含むことができる。
これは、前記第1界面層中のFe酸化物の含有量は、ボンディングコーティング層が形成される前の含有量対比1~3重量%減少したものであってもよい。また、前記第1界面層中のSi酸化物の含有量は、ボンディングコーティング層が形成される前の含有量対比0.5~1重量%減少したものであってもよい。前記第1界面層中の偏析元素の含有量は、ボンディングコーティング層が形成される前の含有量対比0.5~1重量%減少したものであってもよい。このような偏析元素の適切な範囲の減少を制御してボンディングコーティング層と素地鋼板との締結力を強化させることができる。
【0014】
このようなボンディングコーティング層200は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含むことができる。
前記接着樹脂は、ジイソシアネートモノマーとポリオールとが反応して形成されたポリウレタンである。
【0015】
前記ボンディング添加剤は、カップリング剤、湿潤剤、硬化剤、および硬化触媒からなる群より選択された1種以上である。
【0016】
前記カップリング剤は、ボンディングコーティング層中の接着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上および5重量部以下含まれる。具体的には、ボンディングコーティング層は、接着樹脂100重量部に対して、カップリング剤を0.5重量部以上~3重量部以下含むことができる。ボンディング用コーティング層の形成時、アミノシランが添加されなかったり、過度に少なく添加される場合、素地鉄とボンディングコーティング層との間の界面で密着性を改善する効果を期待できず、剥離接着力および耐ATF特性に劣る問題がありうる。これに対し、アミノシランがあまりにも過剰に添加される場合には、ボンディング層内でかたまり現象を生じて引張強度および延伸率のような機械的特性を劣らせ、これによって素地鉄とボンディング層との間の密着性が改善されない問題がありうる。このため、好ましくは、電磁鋼板用ボンディングコーティング層におけるアミノシランの含有量は、前記範囲に制御されるのが良い。
【0017】
前記カップリング剤は、下記の化学式1で表されるアミノシランを含むカップリング剤であってもよい。
【0018】
【化1】
前記化学式1において、R
1~R
5は、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、L
1~L
4は、互いに独立して、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基、置換もしくは非置換のC2~C10アルキニレン基、置換もしくは非置換のC6~C20アリーレン基、または置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリーレン基であり、n1~n4は、それぞれ独立して、0~10のいずれか1つの整数である。
【0019】
より具体的には、前記カップリング剤は、下記の化学式1-2で表されるアミノシランを含むカップリング剤であってもよい。
【0020】
【化1-2】
前記化学式1-2において、R
1~R
5は、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、L
4は、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基、置換もしくは非置換のC2~C10アルキニレン基、置換もしくは非置換のC6~C20アリーレン基、または置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリーレン基であり、nは、1~10のいずれか1つの整数である。
具体的には、アミノシランカップリング剤は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyl trimethoxysilane)であってもよい。
【0021】
前記ジイソシアネートモノマーは、芳香族ジイソシアネートモノマー、脂肪族ジイソシアネートモノマー、またはこれらの混合を含むことができる。つまり、本発明の一実施形態のボンディングコーティング層200に含まれるポリウレタン樹脂は、芳香族ジイソシアネートモノマー、脂肪族ジイソシアネートモノマー、またはこれらの混合モノマーが重合された接着樹脂を含むことができる。
【0022】
前記芳香族イソシアネートモノマーは、下記の化学式2、化学式3、またはその組み合わせである、電磁鋼板。
【0023】
【0024】
【0025】
前記化学式2において、
R1~R10は、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、
R1~R5のいずれか1つは、イソシアネートであり、R6~R10のいずれか1つは、イソシアネートであり、
R3およびR8が同時にイソシアネートである場合は除外され、
Lは、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基、置換もしくは非置換のC2~C10アルキニレン基、置換もしくは非置換のC6~C20アリーレン基、または置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリーレン基であり、
nは、1~10のいずれか1つの整数であり、
【0026】
前記化学式3において、
R11~R16は、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリール基、イソシアネート基、または置換もしくは非置換のC1~C10アルキルイソシアネート基であり、R11~R16の少なくとも2つは、イソシアネート、または置換もしくは非置換のC1~C10アルキルイソシアネートである。
【0027】
前記化学式1で表されるモノマーは、R1~R5のいずれか1つは、イソシアネートであり、R6~R10のいずれか1つは、イソシアネートであり、R3およびR8が同時にイソシアネートである場合は除外され、R1およびR10が同時にイソシアネートである場合がさらに除外される。
前記化学式1で表されるモノマーは、R1~R5のいずれか1つは、イソシアネートであり、R6~R10のいずれか1つは、イソシアネートであり、R1~R5のいずれか1つおよびR6~R10のいずれか1つがLを中心として対称に同時にイソシアネートであることをさらに除外することができる。
【0028】
具体的には、前記芳香族ジイソシアネートモノマーは、下記の化学式2-1、3-1、またはこれらの組み合わせのモノマーであってもよい。
【0029】
【化2-1】
前記化学式2-1において、
Lは、置換もしくは非置換のC1~C10アルキレン基、置換もしくは非置換のC2~C10アルキニレン基、置換もしくは非置換のC6~C20アリーレン基、または置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリーレン基である。
【0030】
【化3-1】
前記化学式3-1において、
R
11は、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリール基であってもよい。
【0031】
より具体的には、芳香族イソシアネートモノマーとしては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,2’-メチレンジフェニルジイソシアネート、2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネートからなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0032】
前記脂肪族イソシアネートモノマーは、下記の化学式4である。
【0033】
【化4】
前記化学式4において、Rは、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、または置換もしくは非置換のC3~C12シクロアルキル基である。
【0034】
前記脂肪族イソシアネートモノマーは、ヘキサメチレンジイソシアネート(Hexamethylene Diisocyanate、HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび水素化キシレンジイソシアネート(Hydrogenated Xylene Diisocyanate)からなる群より選択された1種以上を含む。
前記ポリウレタンは、重合時に使用されるジイソシアネートモノマー全100重量部に対して、脂肪族ジイソシアネートモノマーを50重量部以下含むことができる。
【0035】
前記ポリオールは、化学式6で表されるポリオールであってもよい。
【0036】
【化6】
前記化学式6において、R’は、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、置換もしくは非置換のC5~C20ヘテロアリール基であってもよい。
【0037】
前記ポリオールは、数平均分子量が400~1000g/molであってもよい。また、前記ポリオールは、ポリ(プロピレングリコール)であってもよい。
【0038】
前記ボンディングコーティング層は、ポリウレタン樹脂を90重量%以上含むことができる。つまり、本発明のボンディングコーティング層は、接着樹脂成分としてポリウレタンのみを含むことができる。
前記ボンディングコーティング層は、ポリウレタンを含む高分子樹脂とアミノシランのほか、ボンディング組成物に使用可能なその他のボンディング添加剤成分をさらに含むことができる。
【0039】
前記その他のボンディング添加剤成分は、一般的なボンディングコーティング層に使用されるものであれば制限がないが、例えば、湿潤剤、硬化剤、硬化触媒などが含まれる。
【0040】
具体的には、湿潤剤としては、シリコーン系湿潤剤が含まれる。シリコーン系湿潤(Wetting)添加剤の例としては、ポリエーテル改質されたポリジメチルシロキサン(Polyether-modified polydimethylsiloxane)になってもよい。湿潤剤は、電磁鋼板とボンディング層との界面接着力を強化させるためにボンディングコーティング層に添加される。
【0041】
具体的には、硬化剤としては、脂肪族アミン系、芳香族アミン系、アミノアミン系、またはイミダゾール系を含むことができる。より具体的には、ジシアンジアミド系硬化剤が含まれる。
具体的には、硬化触媒としては、イミダゾール系硬化触媒が含まれる。
【0042】
前記ボンディングコーティング層200は、接着樹脂100重量部に対して、硬化剤を0.50~2.50重量部さらに含むことができる。具体的には、硬化剤を0.90~1.10重量部さらに含むことができる。硬化剤は、ボンディングコーティング層表面の反応性を調節する役割を果たす。硬化剤が過度に少なく含まれる場合には、ボンディング層の硬化反応が低下して、ボンディング層表面のスティッキー(sticky)性に劣る問題が発生しうる。逆に、硬化剤が過度に多く添加される場合には、低温融着後に締結力が低下しうる。
【0043】
前記ボンディングコーティング層は、接着樹脂100重量部に対して、湿潤剤を0.05~0.50重量部さらに含むことができる。具体的には、湿潤剤を0.09~0.11重量部さらに含むことができる。
前記ボンディングコーティング層は、接着樹脂100重量部に対して、硬化触媒を0.10~1.00重量部さらに含むことができる。具体的には、硬化触媒を0.40~0.60重量部さらに含むことができる。
【0044】
本発明の一実施形態によるボンディング用電磁鋼板10の電磁鋼板100は、一般的な無方向性または方向性電磁鋼板を制限なく使用可能である。本発明の一実施例では、複数の電磁鋼板100の間にボンディングコーティング層200を形成して、電磁鋼板積層体20を製造することが主な構成であるので、電磁鋼板100に関する具体的な説明は省略する。
【0045】
本開示の一実施形態の
図2による積層体20は、複数の電磁鋼板100と、前記複数の電磁鋼板の間に位置するボンディング層210と、を含む。積層体20のボンディング層210は、ボンディング用電磁鋼板10上に塗布されていたボンディングコーティング層200が熱融着されたものである。
電磁鋼板10と同様に、積層体20の電磁鋼板100の一面に備えられるボンディング層210は、電磁鋼板に塗布されてコーティング層に形成される場合、特別な界面特性を有する。界面は、前記電磁鋼板内に位置し、前記ボンディング層と接触する第1界面層101と、前記ボンディング層内に位置し、第1界面層と接触する第2界面層201とを含む。
【0046】
前記第2界面層を含むボンディング層210中のSiの総含有量の70モル%以上が第2界面層内に存在し、これに関する具体的な説明は、電磁鋼板10に説明された通りである。
前記ボンディング層210は、接着樹脂およびボンディング添加剤を含むことができ、前記接着樹脂は、ジイソシアネートモノマーとポリマーとが反応して形成されたポリウレタンである。ボンディング層210に関する具体的な説明は、電磁鋼板10のボンディングコーティング層200で説明した通りである。
前記電磁鋼板積層体20のボンディング層210の厚さは0.1~10μmであってもよい。ボンディング層の厚さが過度に薄ければ、接着力が急激に低下し、過度に厚ければ、コーティング巻取後にスティッキー性による問題が発生しうる。さらに具体的には、ボンディング層の厚さは2~5μmであってもよい。
【0047】
前記電磁鋼板積層体のボンディング層210内にカップリング剤、湿潤剤、硬化触媒、硬化剤などは残存できる。
前記電磁鋼板積層体20は、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の方法を用いずに、単純に前述した接着コーティング組成物を用いてボンディングコーティング層を形成し、ボンディングコーティング層を含む互いに異なる電磁鋼板を熱融着させた積層体であってもよい。
接着コーティング組成物を電磁鋼板100の表面にコーティングし、硬化して接着コーティング層200を形成し、これを積層して熱融着してボンディング層210を形成する。
【0048】
ボンディングコーティング層200が形成された複数の電磁鋼板100を積層して熱融着すれば、ボンディングコーティング層200中の樹脂成分が熱融着して、高分子接着層であるボンディング層210を形成する。
このようなボンディング層210は、有機物の主成分に無機金属化合物が含まれている。ボンディング層中で有機物内に無機物成分が均一に分散して微細相を形成することができる。
【0049】
このような要素を満足できるように積層体20を構成すれば、現在、EV市場で要求される多様な特性をすべて満足できる積層体(コア)を得ることができる。
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
ポリウレタン樹脂の用意
接着コーティング溶液としては、ジイソシアネートモノマーは、脂肪族ジイソシアネートモノマー1種、芳香族ジイソシアネートモノマー1種の計2種で構成して、ポリオールと反応させて得られたポリウレタンを含む。ポリオールとしては、PPG(Poly(Propylene Glycol))で水分子量が425g/molのものを使用した。
前記得られたポリウレタン樹脂以外の接着コーティング溶液の組成は、ポリウレタン樹脂100重量部を基準として、添加剤としてシランカップリング剤の種類と含有量を表1のように多様化した。その他、シリコーン系湿潤剤(wetting agent)0.1重量部、ジシアンジアミド系硬化剤1重量部、およびイミダゾール系硬化触媒0.5重量部を含む。
【0051】
電磁鋼板の表面にボンディング層形成
無方向性電磁鋼板(50×50mm、0.35mmt)を供試片として用意した。接着コーティング溶液をバー コーター(Bar Coater)およびロール コーター(Roll Coater)を用いて各用意された供試片に上部と下部に一定の厚さに塗布して、板温基準150~200℃で20秒間硬化した後、空気中でゆっくり冷却させて、ボンディングコーティング層を形成した。
【0052】
電磁鋼板の界面特性分析
実施例1~6は、Si-N結合を含むアミノシランカップリング剤として3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyl trimethoxysilane)を用いて界面層の成分比および密着性を確認し、比較例1~6は、他の種類のカップリング剤を使用したり、使用しない場合の界面層の成分比および密着性を確認した。コーティングの厚さは2~5μmにした。
【0053】
剥離接着力(T-peel、N/mm)は、次のように測定した。
剥離法(T-Peeloff)測定のための試験片の規格はISO11339に基づいて作製した。25×200mmの試験片2枚を25×150mm2の面積で接着した後、未接着部位を90にbendingしてTタイプの引張試験片を作製した。剥離法(T-Peeloff)で作製された試験片を上下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引きながら積層されたサンプルの引張力を測定する装置を用いて測定した。この時、剪断法の場合、測定された値は、積層されたサンプルの界面のうち最小接着力を有する界面が脱落する地点を測定した。加熱装置により試験片の温度を60℃に維持した後、接着力を測定した。
【0054】
Si元素は、それぞれの位置でランダムに10個の地点を選択して含有量を測定して平均した値である。
本実験例において、第1界面層の厚さは0.1μmであり、第2界面層の厚さは0.1μmであった。
【0055】
【0056】
前記表1の結果から分かるように、Si-N結合を含むアミノシランカップリング剤である3-アミノプロピルトリメトキシシランを用いる実施例1~6の場合、T-Peel密着性が比較例1~6に比べて優れていることを確認することができた。これは3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyl trimethoxysilane)のアミノ-シラン成分と電磁鋼板である電磁鋼板内のSiと硬い結合をなすことができ、これによって電磁鋼板内のSiが第2界面層に一部移動するからである。これによって第2界面層中のSi濃度が高くなる。
【0057】
また、実施例1~6と比較例1~6との間の第1界面層と第2界面層中に含まれているSiの含有量を比較すれば、実施例1~6の場合は、第1界面層内に存在していたSiが第2界面層に移動したことを確認することができた。
しかし、シランカップリング剤を過度に多く含むと、製造段階でボンディング組成物の溶液安定性が低下して一部沈殿が発生することがあり、これによってコーティング層の形成時、シランカップリング剤の架橋反応の開始を妨げる要素として作用しうる。
【0058】
本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はすべての面で例示的であり、限定的ではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0059】
10電磁鋼板
20積層体
100電磁鋼板
101第1界面
200ボンディングコーティング層
201第2界面
210ボンディング層
【国際調査報告】