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特表2024-509041粒子分離装置システム、材料、および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】粒子分離装置システム、材料、および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20240221BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20240221BHJP
   C12M 1/42 20060101ALN20240221BHJP
   G01N 1/40 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N1/10 C
C12M1/42
G01N1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543302
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 US2022013018
(87)【国際公開番号】W WO2022159521
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】63/139,301
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521242749
【氏名又は名称】レヴィタスバイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEVITASBIO, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ブロディー,セス
(72)【発明者】
【氏名】フェイサー,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェット,スサナ
(72)【発明者】
【氏名】トラバース,ケビン
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB16
2G052AD09
2G052AD29
2G052DA05
2G052ED01
2G052GA11
2G052HC28
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC01
4B029DG06
4B029FA15
4B029GA08
4B029HA05
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QS12
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、磁気浮上を使用して、細胞破片、核破片、および死細胞から、細胞核および/または生細胞を分離し、および/または濃縮するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞核を単離する方法であって、
細胞核を含むサンプルと、常磁性化合物または磁性流体を含むサンプル媒体とを、分離チャネルに装填することと、
少なくとも1つの磁石を用いて前記サンプルに磁力をかけて、分離に影響を与えることと、
さらなる遠心分離なしで、細胞核を含む、前記分離されたサンプルの少なくとも1つの画分を収集することと、
前記分離前、前記分離中、および/または前記分離後に、前記サンプル中の前記細胞核を適宜撮像することと
を含む方法。
【請求項2】
前記サンプルが約50~約10,000,000の細胞核を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルが、生細胞、死細胞、または細胞破片をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
画分における細胞核の濃度が、元のサンプルから、少なくとも1.1倍に増加される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
元のサンプルにおける非細胞核粒子の濃度が、前記画分において少なくとも約1%減少される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
サンプルからの画分における単離された細胞核の完全性が、遠心分離を含む方法によるサンプルからの画分における単離された細胞核の完全性よりも、少なくとも約30%高い、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞核が、ヒト細胞、ヒト以外の動物細胞、または植物細胞から単離される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞核が、正常細胞、異常細胞、感染細胞、トランスフェクト細胞、または遺伝子組換え細胞から単離される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
生細胞および/または細胞核、死細胞および核破片を含む混合物から、前記生細胞および/または細胞核を分離するための方法であって、
A)流体サンプル処理装置であって、
(i)処理チャネルと、
(ii)入口チャネルと、
(iii)前記入口チャネルを前記処理チャネルに接続する入口接続領域と、
(iv)前記処理チャネルのX軸に沿って前記処理チャネルの上側および下側に整列した複数の磁性部品と、
(v)複数の出口チャネルと、
(vi)前記処理チャネルを前記出口チャネルに接続する出口接続領域と、
(vii)出口接続領域において前記処理チャネルの上部の領域と流体連通する第1の出口チャネルと、
(viii)出口接続領域において前記処理チャネルの下部の領域と流体連通する第2の出口チャネルと、
(ix)前記第1の出口チャネルに関連する第1の流れ調整器および前記第2の出口チャネルに関連する第2の流れ調整器と
を備える、流体サンプル処理装置を用意することと、
B)前記混合物を、前記流体サンプル処理装置を通して流すことにより、前記生細胞および/または細胞核を富化した第1の回収サンプル、ならびに前記生細胞および/または細胞核を枯渇させた第2の回収サンプルをもたらすことと
を含む方法。
【請求項10】
前記第1の回収サンプルが細胞核を富化されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の回収サンプルが生細胞を富化されている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
a)前記第1の回収サンプルにおける生細胞の収率が、前記混合物の全体の生細胞組成の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、もしくは少なくとも約75%であり、および/または
b)前記第1の回収サンプルにおける細胞核の収率が、前記混合物の前記生細胞組成からの全体の細胞核の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、もしくは少なくとも約75%である、
請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記出口接続領域が、流れスプリッタ部分をさらに備える、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記流れスプリッタ部分が、前記処理チャネルの中に突出し、流れを前記出口チャネルにおける別の流れへと分離するように構成および配置される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の出口チャネルに関連する第1の流量センサおよび前記第2の出口チャネルに関連する第2の流量センサをさらに備える、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
流量センサが、流れ調整器に動作可能に連結される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
光センサと、前記光センサと相対する側に、または角度的に隣接して構成された照明光源とをさらに備え、前記照明光源が紫外線を放射してもよい、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
光検出器、マルチ画素撮像検出器、磁界検出器、電気化学検出器、光学的位相検出器、散乱検出器、ホールセンサ、磁気抵抗センサ、電磁放射測定センサ、表面弾性波センサ、バイオセンサ、容量性センサ、導電性センサ、熱センサ、流量センサ、超音波センサ、重力センサ、磁界センサまたはこれらの組み合せであるセンサと、
複数の流れ調整器に動作可能に連結されたコントローラと
を備える、請求項9から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記流体サンプル処理装置が、平面基板を備えるフローセルカートリッジを備え、前記平面基板が、
(i)上面および下面と、
(ii)撮像面を形成する第1の長手方向の面と、
(iii)照明面を形成する第2の長手方向の面と、
(iv)第1および第2の横面と、
(v)上面における入口ウェルと、
(vi)入口チャネルと、
(vii)前記入口チャネルと流体連通し、長手方向の面に対して実質的に平行に配置されるサンプル処理チャネルと、
(viii)前記処理チャネル内のサンプルスプリッタと、
(ix)前記処理チャネルと流体連通する複数の出口チャネルと、
(x)前記複数の出口チャネルの各々と流体連通する複数の収集ウェルと
を備え、
前記基板が、光学的に透明な材料を適宜含み、前記処理チャネルが、前記撮像面に対して空間的に片寄るように前記基板の前記平面内でオフセットされる、
請求項9から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記流体サンプル処理装置が、平面基板を備えるフローセルカートリッジを備え、前記平面基板が、
(i)上面における入口ウェルと、
(ii)入口チャネルと、
(iii)サンプル処理チャネルと、
(iv)前記処理チャネル内のサンプルスプリッタと、
(v)前記処理チャネルと流体連通する複数の出口チャネルと、
(vi)前記複数の出口チャネルの各々と流体連通する複数の収集ウェルと
を備え、
前記基板が、光学的に透明な材料を含み、前記複数の出口チャネルの各々を合わせた容量が前記処理チャネルの容量よりも大きい、
請求項9から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記フローセルカートリッジの前記出口チャネルが、コンパクトな経路を辿り、たとえば前記出口チャネルが蛇行形状のチャネルである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
生細胞および/または細胞核、死細胞および核破片を含む混合物から、前記生細胞および/または細胞核を分離する方法であって、
処理チャネルおよび複数の出口チャネルを備えるフローセルカートリッジを用意することであって、前記フローセルカートリッジの前記出口チャネルが、前記処理チャネルよりも大きい容量を有する、フローセルカートリッジを用意することと、
前記処理チャネルに、生細胞および死細胞を含むサンプル溶液と、常磁性化合物とを流すことと、
前記処理チャネルに対して実質的に平行に整列された磁界の中に前記フローセルカートリッジを配置することと、
前記処理チャネルおよびその中に含まれるサンプル全体を、前記処理チャネルの内部で、生細胞と死細胞とを垂直方向の距離によって分離するのに十分な期間にわたって、前記磁界の中に、流れ停止状態に保つことと、
生細胞および/または細胞核を富化したサンプル画分と、死細胞および核破片を富化したサンプル画分とを、前記出口チャネルに同時に回収することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2021年1月19日出願の米国特許仮出願第63/139,301号の優先権の利益を主張するものであり、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、細胞または生体分子などの微粒子含有サンプルの濃縮に関し、濃縮は、媒体中のそのような粒子を単離する、また粒子枯渇媒体を単離する目的である。本発明は、いくつかの実施形態では、一般に、核破片および死細胞からの細胞核の分離および/または濃縮に関する。
【背景技術】
【0003】
媒体に含有される粒子の単離は、多くの化学的プロセスや生物学的プロセスにおいて重要なステップである。いくつかのプロセスでは、粒子の使用または操作を容易にするために、粒子を単純に単離する必要があり得る一方で、他のプロセスでは、粒子を、媒体の中に存在する他の粒子から分離する必要もあり得る。そのような粒子の単離や分離を容易にするために、様々な装置が開発されている。加えて、不均一な粒子の集団から関心のある粒子を分離するために、粒子およびその周囲の媒体の磁気特性に頼る装置の開発が試みられている。
【0004】
細胞を扱うときのよくある必要性は、細胞が懸濁される容量を低減して細胞を濃縮することである。細胞濃縮のための最も一般的な手順は、細胞を遠心分離して、ペレットを形成し、媒体の大部分を除去するものである。遠心分離は、遠心力を利用して、粒子のサイズ、形状、密度、媒体の粘度、およびローターの速度に応じて、溶液から粒子を分離することを含む。しかしながら、遠心分離には、細胞に損傷を与え得る、または細胞を活性化し得る、遠心分離が望ましくない場合がある。たとえば、T細胞は、遠心分離すると活性化する可能性がある。加えて、遠心分離などのバルク分離技術は、希少なサンプルまたは小容量のサンプルを扱うとき非常に浪費的になるかまたは面倒になることがあり、サンプルの分画が簡単ではないこともある。また、生物学的存在を扱うときなど、分離するべき粒子が脆弱であるかまたは不安定であると、粒子の安定性を良くするための正確な条件の難易度が高くなる可能性がある。
【0005】
処理が困難である組織およびサンプルを扱う場合、細胞核は、単一細胞の研究開発に関する主要な目標のうちの1つに、急速になってきた。細胞は、細胞核よりも、扱うのがはるかに簡単でより直接的なはずであるが、組織の処理は、実際には、大抵の場合、思ったよりもはるかに複雑かつ困難である。
【0006】
細胞組織は、処理されるとき、それらの細胞の組成、細胞外基質、および解離挙動が変化する。そのため、研究者は、高信頼度かつ高品質の単一細胞懸濁を生成し、十分に検証され、かつ均一に動作する解離および精製のプロトコルを確立するのは、ますます困難になることを見出した。あるいは、細胞核作業の流れは、単一細胞分析のためのはるかに均一で標準化された出発材料を用意するばかりでなく、細胞組織の解離および処理に関連した遺伝子発現変化の可能性のうちいくつかを解消することによって、これらの課題の多くを克服するものである。
【0007】
残念ながら、細胞核の調製はそれ自体に課題がある。具体的には、死細胞および破片から取り出した細胞核を精製する方法に課題がある。伝統的方法は、使用するのが困難で時間がかかり、細胞核の収率が悪く、純度も低い状態が続いている。LeviCellは、細胞核を精製するための、高速、簡単、かつ高効率の方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書で説明される装置および方法は、粒子(たとえば細胞、細胞核)を濃縮するための代替方法を提供して、遠心分離中に必要とされる大きい機械力に依存せず粒子枯渇媒体を生成することにより、これらの問題に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の概要において提供される本発明の実施形態は、例示的なものにすぎず、本明細書で開示される選択された実施形態の概要を提供することを意図している。この発明の概要は、例示的かつ選択的なものであり、いかなる請求項の範囲も限定せず、本明細書で開示されるかまたは企図される本発明の進歩性のある実施形態の全体の範囲を提供するものではなく、この開示またはあらゆる特許請求される本発明の進歩性のある実施形態の範囲を限定または制約するものと解釈されるべきではない。
【0010】
本明細書で提供される流体濃縮装置は、入口チャネルと、処理チャネルと、少なくとも2つの出力チャネルと、流体濃縮装置を通して粒子含有サンプルを移動するためのポンプとを含む。濃縮装置は、粒子濃縮流れまたは粒子枯渇流れのすべてまたは画分を収集するように、弁または機能的に類似の分流技術によって制御され得る別個の分流チャネルを有し得る。濃縮装置は、自動制御された動作が可能であり、粒子の有無もしくは量、または粒子もしくはサンプル流の他の物理的性質または化学的性質を検出するために、処理チャネルまたは入口チャネルの一部の内部に、またはこれに隣接して、1つまたは複数のセンサをさらに備える。検出器の出力は、濃縮および分画の条件を最適化するように、濃縮器の制御装置(concentrator controls)に対して操作可能に連結され得る。粒子の濃縮/枯渇は、重力沈降、磁気浮上/磁力反発(magnetic levitation/repulsion)、およびこれらの組み合せによる装置によって物理的に達成され得る。入口チャネルの処理チャネルへの境界面は、好ましくは、幾何学的に、処理チャネルの乱流を低減するかまたは解消するように構成される。処理チャネルと出力チャネルとの間の境界面は、好ましくは、幾何学的に、層状流れ、粒子富化流れおよび粒子枯渇流れの、それぞれの出口チャネルへの収集を容易にするように構成される。
【0011】
また、本明細書が提供する流体濃縮装置は、磁性部品(magnetic component)が、処理チャネル(X軸)に沿って実質的に直線状に配置されており、その常磁性に基づき、処理チャネルの粒子の磁気的な反発または引力をもたらす。磁性部品は、処理チャネル内の粒子の沈降を誘起するかまたは増大するように機能し得る。処理チャネルに沿った磁性部品(magnet component)を備える流体濃縮装置を付加的に適用すると、そのような装置は、小さい重力または微小重力の環境でも動作することができる。あるいは、場合によっては、サンプル流体が不均質な粒子混合物であるとき、磁性部品が、サンプル流体の中のある特定の粒子の沈降を選択的に抑止し得る。いくつかの実施形態では、入口チャネルの内部に磁界を供給すると、入口チャネルから処理チャネルへの粒子流れの克服可能な阻害を提供することができるので、前濃縮の効果が得られる。入口チャネルの磁界は、磁石を、処理チャネルに沿って入口チャネルへと実質的に直線状に行き渡らせることによって誘起され得る。あるいは、磁性部品は、処理チャネルから独立して、入口チャネルと磁気伝達するように配置されてよい。これは、一実施形態では棒磁石であり、別の実施形態では、入口チャネルの一部またはすべてを取り囲む円環状磁石またはトロイダル磁石である。入口チャネルの磁石は、永久磁石でよく、または磁気コントローラによって制御される電磁石でもよい。以下に例示されるさらなる実施形態では、複数の磁性部品が、処理チャネルに対して実質的に直線状に配置され得る。そのような実施形態の1つでは、異なる磁界強度を供給する磁石が、処理チャネルに対して、互いに相対する側(たとえば最上部と最下部)に、平行かつ実質的に直線状に配置される。この実施形態は、前濃縮工程または装置構成と組み合わせたとき、不均質な粒子構成を含有しているサンプルの所定の粒子成分を選択的に濃縮するように作用することができる。処理チャネルの外部における粒子の蓄積は、サンプル流量と入口チャネル内のサンプル液媒体の中の粒子移動度とに依拠するパッシブプロセスであり得る。処理チャネルの外部における粒子の蓄積は、入口チャネル内の磁界を利用して磁界内の粒子を妨げるアクティブプロセスであり得る。入口チャネルから処理チャネルへの粒子移動の妨害は、流量または流れパターンを操作することによって克服され得る。たとえば、流量を増加させるか、またはチャネル圧力を増加させる、1つまたは複数のパルスを導入すると、入口チャネルの粒子移動度が向上する。入口チャネルに電磁界を誘導することによって粒子が阻止されたとき、入口チャネルの磁界の低減、入口チャネルの流量もしくは圧力の加減、または磁界とサンプルの流動性との組み合せによって、入口チャネルから処理チャネルへの粒子移動度が向上され得る。
【0012】
本明細書でさらに提供される粒子濃縮装置は、流体処理チャネル構造、少なくとも1つの磁性部品、および少なくとも2つの出力ポートを備え、流体処理チャネルが含む実質的に直線状の部分は、入力ポートと流体連通する先端と、出力ポートと流体連通する後端とを有する。少なくとも2つの出力ポートが実質的に平行に構成される。この実施形態によれば、出力ポートの各々が、少なくとも1つの収集経路を備え、収集経路は、後続の処理工程に必要な、所定の量の材料を含有する収集チャンバに通じる。流体チャネル構造は、一般的にはマイクロキャピラリーチャネルであり、粒子は、これを通って、自由に、または所望の速度で流れることができる。この装置は、流体を、入力ポートから流体チャネル構造を通して駆動するように構成された1つまたは複数のポンプをさらに備え得る。いくつかの実施形態では、この装置は、粒子の経路および/または流量を制御するための1つまたは複数の弁をさらに備える。
【0013】
サンプル濃縮の実施形態
本発明の方法の実施形態が、以下の番号付けされた実施形態においてさらに説明される。番号付けされた実施形態は、本発明を限定するものではなく、本明細書で説明されたさらなる要素および代替形態を組み込み得る。
【0014】
第1の実施形態(1)は、サンプルを濃縮する方法であって、(i)処理チャネル、入口チャネル、および複数の出口チャネルを有する小容量の流体装置を用意することと、(ii)少なくとも粒子富化層および粒子枯渇層を有するサンプル流を生成する条件の下で、粒子含有サンプルを、入口チャネルを通して処理チャネルに流し込むことと、(iii)第1の出口チャネルを通して粒子富化層を流し、粒子富化流を生成することと、(iv)第2の出口チャネルを通して粒子枯渇層を流し、粒子枯渇流を生成することと、(v)1つまたは複数の出口チャネルからの流れのうち1つまたは複数を収集することとを含む、方法である。
【0015】
第2の実施形態(2)は、粒子含有サンプルを、サンプル粒子の粒子富化流の中への沈降を誘起するのに十分な流れ状態にすることをさらに含む、第1の実施形態に記載の方法である。第3の実施形態(3)は、処理チャネルの最上部から、処理チャネルのX軸に整列した(aligned)磁界を供給して、サンプル中の粒子を粒子富化流の中へ反発させることをさらに含む、第1の実施形態(1)に記載の方法である。第4の実施形態(4)は、(i)入口チャネルの内部に磁界を誘起して、粒子が入口チャネルから処理チャネルへ移動するのを妨げ、入口チャネル内にサンプル流の粒子濃縮部分を形成することと、(ii)サンプル流の粒子濃縮部分を処理チャネルに移動することと、(iii)粒子富化流を生成することと、(iv)出口チャネルを通して粒子富化流を流すことと、(v)粒子富化流を捕捉することとをさらに含む、実施形態2または3に記載の方法である。
【0016】
第5の実施形態(5)は、(i)入口チャネルの内部に磁界を誘起して、粒子が入口チャネルから処理チャネルへ移動するのを妨げ、入口チャネル内にサンプル流の粒子濃縮区間を形成することと、(ii)サンプル流の妨げられない部分を処理チャネルに移動することと、(iii)粒子枯渇流を生成することと、(iv)出口チャネルを通して粒子枯渇流を流すことと、(v)粒子枯渇流を捕捉することとをさらに含む、実施形態2または3(2~3)に記載の方法である。
【0017】
第6の実施形態(6)は、処理チャネル内の粒子富化層における粒子を測定して、相対的な粒子の濃度または位置を判定することと、処理チャネル内の相対的に高い粒子の濃度または粒子の位置に基づき、粒子富化層の画分を収集することとをさらに含む、実施形態1から4(1~4)のいずれか1つに記載の方法である。第7の実施形態(7)は、処理チャネル内の粒子枯渇層における粒子を測定して、相対的な粒子の濃度を判定することと、相対的に低い粒子の濃度に基づき、粒子枯渇層の画分を収集することとをさらに含む、実施形態1から3(1~3)または実施形態5(5)に記載の方法である。
【0018】
第8の実施形態(8)は、処理チャネルの最上部から生成された磁界と連続している、処理チャネルのX軸に沿って整列された(aligned)入口チャネルの内部に、磁界を供給することをさらに含む、実施形態5(5)に記載の方法である。第9の実施形態(9)は、入口チャネルを取り囲むトロイダル磁界を生成することをさらに含む、実施形態5(5)に記載の方法である。第10の実施形態(10)は、入口チャネル内の磁界を調整して、入口チャネル内の粒子富化区間の処理チャネルへの移動を促進することをさらに含む、実施形態9(9)に記載の方法である。
【0019】
第11の実施形態(11)は、処理チャネル内の粒子特性を検出することと、サンプル流量を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態1から10(1~10)のいずれか1つに記載の方法である。実施形態12(12)は、粒子富化流の中の粒子特性を検出することと、サンプル流量を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態11(11)に記載の方法である。実施形態13(13)は、処理チャネル内の粒子特性を検出することと、入口チャネル内の磁界を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態10または12(10または12)に記載の方法である。
【0020】
第14の実施形態(14)は、粒子富化流の中の粒子特性を検出することと、入口チャネル内の磁界を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態13(13)に記載の方法である。
【0021】
第15の実施形態(15)は、入口チャネル内の粒子特性を検出することと、サンプル流量を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態1から10(1~10)のいずれか1つに記載の方法である。第16の実施形態(16)は、入口チャネル内の粒子特性を検出することと、入口チャネル内の磁界を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態10(10)に記載の方法である。第17の実施形態(17)は、相対的な粒子濃度または粒子密度を検出することをさらに含む、実施形態11から16(11~16)のいずれか1つに記載の方法である。実施形態18(18)は、処理チャネル内の化学的性質を検出することと、サンプル流量を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態10から17(10~17)のいずれか1つに記載の方法である。第19の実施形態(19)は、粒子富化流の中の化学的性質を検出することと、サンプル流量を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態10から17(10~17)のいずれか1つに記載の方法である。
【0022】
第20の実施形態(20)は、処理チャネル内の化学的性質を検出することと、入口チャネル内の磁界を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態10から17(10~17)のいずれか1つに記載の方法である。第21の実施形態(21)は、粒子富化流の中の化学的性質を検出することと、入口チャネル内の磁界を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態20(20)に記載の方法である。第22の実施形態(22)は、入口チャネル内の化学的性質を検出することと、サンプル流量を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態1から21(1~21)のいずれか1つに記載の方法である。
【0023】
実施形態23(23)は、入口チャネル内の化学的性質を検出することと、入口チャネル内の磁界を調整して、粒子富化流の中の粒子の濃度を操作することとをさらに含む、実施形態10から22(10~22)のいずれか1つに記載の方法である。
【0024】
実施形態24(24)は、特性が、電気化学特性、フォトニック特性、分光学的特性、または結合特性である、実施形態18から23(18~23)のいずれか1つに記載の方法である。実施形態25(25)は、収集チャネルに粒子枯渇流を分流することと、粒子枯渇流の画分を捕捉することとをさらに含む、実施形態1から24(1~24)のいずれか1つに記載の方法である。
【0025】
実施形態26(26)は、収集チャネルに粒子富化流を分流することと、粒子富化流の画分を捕捉することとをさらに含む、実施形態1から25(1~25)のいずれか1つに記載の方法である。
【0026】
実施形態27(27)は、粒子枯渇流を分流することとそれぞれの収集チャネルに粒子富化流を分流することと、各流れの画分を捕捉することとをさらに含む、実施形態1から26(1~26)のいずれか1つに記載の方法である。実施形態28(28)は、流れの複数の個別の画分を捕捉することをさらに含む、実施形態27(27)に記載の方法である。実施形態29(29)は、粒子枯渇流および粒子富化流から非同時の画分を捕捉することをさらに含む、実施形態27または28(27または28)に記載の方法である。
【0027】
実施形態30(30)は、サンプルに、入口チャネルに入る前に常磁性化合物を追加することをさらに含む、実施形態1から29(1~29)のいずれか1つに記載の方法である。実施形態31(31)は、単離された画分に対して後続の反応を実行することをさらに含む、実施形態1から30(1~30)のいずれか1つに記載の方法である。実施形態32(32)は、後続の反応が、結合反応、PCR反応、シーケンシングサンプル調製反応、酵素分解反応、または酵素合成反応である、実施形態31(31)に記載の方法である。実施形態33(33)は、収集されたサンプルが、細胞培養、蛍光活性化細胞選別、または磁気浮上細胞選別を受ける、実施形態31(31)に記載の方法である。
【0028】
実施形態34(34)は、サンプル流体が、最初に、処理チャネルに対して、実質的に直線状には整列されない角度で流され、次いで、処理チャネルに対して実質的に直線状の角度で流される、実施形態1から33(1~33)のいずれか1つに記載の方法である。
【0029】
実施形態35(35)は、血液サンプルを分画する方法であって、(i)全血サンプルまたは希釈血液サンプルを用意することと、(ii)全血サンプルまたは希釈血液サンプルに、実施形態1から34(1~34)のいずれか1つに記載のサンプル濃縮方法を施し、全血サンプルまたは希釈血液サンプルから血漿および/または血液細胞を単離することとを含む、血液サンプルを分画する方法である。第36の実施形態(36)は、血液サンプルの容量が約50μL~約10mLである、実施形態35(35)に記載の方法である。第37の実施形態(37)は、血漿画分が、血液サンプル中の血液細胞の約1%未満を含有している、実施形態36(36)に記載の方法である。第38の実施形態(38)は、血漿画分が、血液サンプル中の血液細胞の約0.01%未満を含有している、実施形態37(37)に記載の方法である。第39の実施形態(39)は、血漿画分には血液サンプル中の血液細胞が実質的にない、実施形態38(38)に記載の方法である。第40の実施形態(40)は、血液サンプルが、末梢血サンプル、臍帯血サンプル、胎児血サンプル、または動脈血サンプルである、実施形態35から39(35~39)のいずれか1つに記載の方法である。第41の実施形態(41)は、単離された画分に対して診断分析を実行することをさらに含む、実施形態35から40(35~40)のいずれか1つに記載の方法である。第42の実施形態(42)は、分析が、酵素免疫アッセイ、化学発光の免疫アッセイ、赤血球凝集/粒子凝集アッセイ、核酸増幅技術アッセイ、薬物アッセイ、法医学アッセイ、または遺伝形質アッセイである、実施形態41(41)に記載の方法である。実施形態43(43)は、反応が、入口チャネルおよび/または処理チャネルの内部で、粒子または粒子枯渇層の成分に対して実行され、また、粒子の単離/濃縮と同時に実行されてもよい、実施形態1から41(1~41)のいずれか1つに記載の方法である。実施形態44(44)は、反応が結合反応または染色反応である、実施形態43(43)に記載の方法である。
【0030】
実施形態45(45)は、粒子が細胞または細胞核である、実施形態1(1)から44(44)のいずれか1つに記載の方法である。
【0031】
実施形態46(46)は、細胞核を含むサンプルと、常磁性化合物または磁性流体を含むサンプル媒体とを、分離チャネルに装填することと、少なくとも1つの磁石を用いてサンプルに磁力をかけて、分離に影響を与えることと、さらなる遠心分離なしで、細胞核を含む、分離されたサンプルの少なくとも1つの画分を収集することと、分離前、分離中、および/または分離後に、サンプル中の細胞核を適宜撮像することとを含む、細胞核を単離する方法である。
【0032】
実施形態47(47)は、サンプルが約50~約10,000,000の細胞核を含む、実施形態46(46)に記載の方法である。
【0033】
実施形態48(48)は、サンプルが、生細胞、死細胞、または細胞破片をさらに含む、実施形態46(46)または47(47)に記載の方法である。
【0034】
実施形態49(49)は、画分における細胞核の濃度が、元のサンプルから、少なくとも1.1倍に増加される、実施形態46(46)から48(48)のいずれか1つに記載の方法である。
【0035】
実施形態50(50)は、元のサンプルにおける非細胞核粒子の濃度が、画分において少なくとも約1%減少される、実施形態46(46)から49(49)のいずれか1つに記載の方法である。
【0036】
実施形態51(51)は、サンプルからの画分における単離された細胞核の完全性が、遠心分離を含む方法によるサンプルからの画分における単離された細胞核の完全性よりも、少なくとも約30%高い、実施形態46(46)から50(50)のいずれか1つに記載の方法である。
【0037】
実施形態52(52)は、細胞核が、ヒト細胞、ヒト以外の動物細胞、または植物細胞から単離される、実施形態46(46)から51(51)のいずれか1つに記載の方法である。
【0038】
実施形態53(53)は、細胞核が、正常細胞、異常細胞、感染細胞、トランスフェクト細胞、または遺伝子組換え細胞から単離される、実施形態46(46)から52(52)のいずれか1つに記載の方法である。
【0039】
実施形態54は、生細胞および/または細胞核、死細胞および核破片を含む混合物から、前記生細胞および/または細胞核を分離するための方法であって、
A)流体サンプル処理装置であって、
(i)処理チャネルと、
(ii)入口チャネルと、
(iii)入口チャネルを処理チャネルに接続する入口接続領域と、
(iv)処理チャネルのX軸に沿って処理チャネルの上側および下側に整列した複数の磁性部品と、
(v)複数の出口チャネルと、
(vi)処理チャネルを出口チャネルに接続する出口接続領域と、
(vii)出口接続領域において処理チャネルの上部の領域と流体連通する第1の出口チャネルと、
(viii)出口接続領域において処理チャネルの下部の領域と流体連通する第2の出口チャネルと、
(ix)第1の出口チャネルに関連する第1の流れ調整器(flow modulator)および第2の出口チャネルに関連する第2の流れ調整器と
を備える、流体サンプル処理装置を用意することと、
B)混合物を、流体サンプル処理装置を通して流すことにより、前記生細胞および/または細胞核を富化した第1の回収サンプル、ならびに前記生細胞および/または細胞核を枯渇させた第2の回収サンプルをもたらすことと
を含む方法である。
【0040】
実施形態55(55)は、第1の回収サンプルが細胞核を富化されている、実施形態54(54)に記載の方法である。
【0041】
実施形態56(56)は、第1の回収サンプルが生細胞を富化されている、実施形態54(54)に記載の方法である。
【0042】
実施形態57(57)は、a)第1の回収サンプルにおける生細胞の収率が、混合物の全体の生細胞組成の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、もしくは少なくとも約75%であり、および/またはb)第1の回収サンプルにおける細胞核の収率が、混合物の生細胞組成からの全体の細胞核の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、もしくは少なくとも約75%である、実施形態54(54)(454)から56(56)のいずれか1つに記載の方法である。
【0043】
実施形態58(58)は、出口接続領域が、流れスプリッタ部分をさらに備える、実施形態54(54)から57(57)のいずれか1つに記載の方法である。
【0044】
実施形態59(59)は、流れスプリッタ部分が、処理チャネルの中に突出し、流れを出口チャネルにおける別の流れへと分離するように構成および配置される、実施形態58(58)に記載の方法である。
【0045】
実施形態60(60)は、流体サンプル処理装置が、第1の出口チャネルに関連する第1の流量センサおよび第2の出口チャネルに関連する第2の流量センサをさらに備える、実施形態54(54)(46)から59(59)のいずれか1つに記載の方法である。
【0046】
実施形態61(61)は、流量センサが、流れ調整器に動作可能に連結される、実施形態60(60)に記載の方法である。
【0047】
実施形態62(62)は、流体サンプル処理装置が、光センサと、光センサと相対する側に、または角度的に隣接して、構成された照明光源とをさらに備え、照明光源が紫外線を放射してもよい、実施形態54(54)から61(61)のいずれか1つに記載の方法である。
【0048】
実施形態63(63)は、流体サンプル処理装置が、光検出器、マルチ画素撮像検出器、磁界検出器、電気化学検出器、光学的位相検出器、散乱検出器、ホールセンサ、磁気抵抗センサ、電磁放射測定センサ、表面弾性波センサ、バイオセンサ、容量性センサ、導電性センサ、熱センサ、流量センサ、超音波センサ、重力センサ、磁界センサまたはこれらの組み合せであるセンサと、複数の流れ調整器に動作可能に連結されたコントローラとをさらに備える、実施形態54(54)から62(62)のいずれか1つに記載の方法である。
【0049】
実施形態64(64)は、流体サンプル処理装置が、平面基板を備えるフローセルカートリッジをさらに備え、前記平面基板が、
(i)上面および下面と、
(ii)撮像面を形成する第1の長手方向の面と、
(iii)照明面を形成する第2の長手方向の面と、
(iv)第1および第2の横面と、
(v)上面における入口ウェルと、
(vi)入口チャネルと、
(vii)入口チャネルと流体連通し、長手方向の面に対して実質的に平行に配置されるサンプル処理チャネルと、
(viii)処理チャネル内のサンプルスプリッタと、
(ix)処理チャネルと流体連通する複数の出口チャネルと、
(x)複数の出口チャネルの各々と流体連通する複数の収集ウェルとを備え、
基板が、光学的に透明な材料を適宜含み、処理チャネルが、撮像面に対して空間的に片寄るように基板の平面内でオフセットされる、実施形態54(54)から63(63)のいずれか1つに記載の方法である。
【0050】
実施形態65(65)は、流体サンプル処理装置が、平面基板を備えるフローセルカートリッジをさらに備え、前記平面基板が、
(i)上面における入口ウェルと、
(ii)入口チャネルと、
(iii)サンプル処理チャネルと、
(iv)処理チャネル内のサンプルスプリッタと、
(v)処理チャネルと流体連通する複数の出口チャネルと、
(vi)複数の出口チャネルの各々と流体連通する複数の収集ウェルとを備え、
基板が、光学的に透明な材料を含み、複数の出口チャネルの各々を合わせた容量(combined volume)が処理チャネルの容量よりも大きい、実施形態54(54)から64(64)のいずれか1つに記載の方法である。
【0051】
実施形態66(66)は、フローセルカートリッジの出口チャネルがコンパクトな経路を辿り、たとえば出口チャネルが蛇行形状のチャネルである、実施形態から64(64)または65(65)に記載の方法である。
【0052】
実施形態67(67)は、生細胞および/または細胞核、死細胞および核破片を含む混合物から、前記生細胞および/または細胞核を分離するための方法であって、
処理チャネルおよび複数の出口チャネルを備えるフローセルカートリッジを用意することであって、フローセルカートリッジの出口チャネルが、処理チャネルよりも大きい容量を有する、フローセルカートリッジを用意することと、
処理チャネルに、生細胞および死細胞を含むサンプル溶液と、常磁性化合物とを流すことと、
処理チャネルに対して実質的に平行に整列された磁界の中にフローセルカートリッジを配置することと、
処理チャネルおよびその中に含まれるサンプル全体を、処理チャネルの内部で、生細胞と死細胞とを垂直方向の距離によって分離するのに十分な期間にわたって、磁界の中に、流れ停止状態に保つことと、
生細胞および/または細胞核を富化したサンプル画分と、死細胞および核破片を富化したサンプル画分とを、出口チャネルに同時に回収することと
を含む、方法である。
【0053】
濃縮装置の実施形態
本発明の装置の実施形態が、以下の番号付けされた実施形態においてさらに説明される。番号付けされた実施形態は、本発明を限定するものではなく、本明細書で説明されたさらなる要素および代替形態を組み込み得る。
【0054】
第1の実施形態(1)は、(i)処理チャネルと、(ii)入口チャネルと、(iii)入口チャネルを処理チャネルに接続する入口接続領域と、(iv)複数の出口チャネルと、(v)処理チャネルを出口チャネルに接続する出口接続領域と、(vi)出口接続領域において処理チャネルの上部の領域と流体連通する第1の出口チャネルと、(vii)出口接続領域において処理チャネルの下部の領域と流体連通する第2の出口チャネルと、(viii)処理チャネルのX軸に沿って処理チャネルの上側または下側のいずれかに整列した磁石とを備える、磁気流体サンプル処理装置である。
【0055】
第2の実施形態(2)は、(i)処理チャネルと、(ii)入口チャネルと、(iii)入口チャネルを処理チャネルに接続する入口接続領域と、(iv)複数の出口チャネルと、(v)処理チャネルを出口チャネルに接続する出口接続領域と、(vi)出口接続領域において処理チャネルの上部の領域と流体連通する第1の出口チャネルと、(vii)出口接続領域において処理チャネルの下部の領域と流体連通する第2の出口チャネルと、(viii)処理チャネルのX軸に沿って処理チャネルの上側および下側に整列した複数の磁性部品とを備える、磁気流体サンプル処理装置であって、粒子を、処理チャネルの中へ導入する前に前濃縮するように構成して配置される、磁気流体サンプル処理装置である。
【0056】
第3の実施形態(3)は、(i)処理チャネルと、(ii)入口チャネルと、(iii)入口チャネルを処理チャネルに接続する入口接続領域と、(iv)複数の出口チャネルと、(v)処理チャネルを出口チャネルに接続する出口接続領域と、(vi)出口接続領域において処理チャネルの上部の領域と流体連通する第1の出口チャネルと、(vii)出口接続領域において処理チャネルの下部の領域と流体連通する第2の出口チャネルと、(viii)入口チャネル流れコントローラとを備える、流体サンプル処理装置である。
【0057】
第4の実施形態(4)は、処理チャネルの上側の磁性部品と下側の磁性部品とが、処理チャネル内に、異なる強度の磁界を供給するように構成して配置される、実施形態2に記載の装置である。
【0058】
第5の実施形態(5)は、入口チャネルが第1の断面積を含み、処理チャネルが第2の断面積を含み、第1の断面積が第2の断面積よりも小さい、実施形態1から4(1~4)のいずれか1つに記載の装置である。第6の実施形態(6)は、チャネルが、マイクロフルイディックまたはキャピラリである、実施形態5(5)に記載の装置である。
【0059】
第7の実施形態(7)は、入口接続領域が90度未満の角度で先細りになる、実施形態1から6(1~6)のいずれか1つに記載の装置である。第8の実施形態(8)では、角度が60度以下である、実施形態7(7)に記載の装置が提供される。実施形態9(9)では、実施形態8(8)に記載の装置が45度以下の接続角度を有する。
【0060】
第10の実施形態(10)は、出口接続領域が、流れスプリッタ部分をさらに備える、実施形態1から9(1~9)のいずれか1つに記載の装置を提供する。実施形態11(11)は、流れスプリッタ部分が、それぞれの流れをそれらの出口チャネルへと分離するように構成して配置され、処理チャネルの中に突出する、実施形態10(10)に記載の装置である。
【0061】
実施形態12(12)は、第1の出口チャネルが第1の出口収集チャネルおよび第1の出口分流チャネルを備える、実施形態1から11(1~11)のいずれか1つに記載の装置である。実施形態13(13)は、第1の出口チャネルの流れを、第1の出口収集チャネルまたは第1の出口分流チャネルに対して選択可能に流体連通させるように構成して配置された弁が、第1の出口チャネルにさらに備わっている、実施形態12(12)に記載の装置を提供するものである。
【0062】
実施形態14(14)は、第2の出口チャネルが第2の出口収集チャネルおよび第2の出口分流チャネルを備える、実施形態1から13(1~13)のいずれか1つに記載の装置である。
【0063】
実施形態15(15)は、第2の出口チャネルの流れを、第2の出口収集チャネルまたは第2の出口分流チャネルに対して選択可能に流体連通させるように構成して配置された弁が、第2の出口チャネルにさらに備わっている、実施形態14(14)に記載の装置である。実施形態16(16)は、流体装置が入口チャネルまたは入口領域にゲート磁界(gating magnetic field)を生成する磁石をさらに備える、実施形態1から15(1~15)のいずれか1つに記載の装置を提供するものである。実施形態17(17)は、ゲート磁界を生成する磁石が、入口チャネルまたは入口領域を取り囲む円環状磁石またはトロイダル磁石である、実施形態16(16)に記載の装置である。実施形態18(18)では、ゲート磁界を生成する磁石が、処理チャネルに隣接して整列され、入口チャネルのチャネル入口領域まで、またはチャネル入口領域を越えて延在する、実施形態16(16)に記載の装置が提供される。
【0064】
第19の実施形態(19)は、光学的に透明な処理チャネルを備える、実施形態1から18(1~18)のいずれか1つに記載の装置である。実施形態20では、実施形態1から18(1~18)のいずれか1つに記載の装置が、光学的に透明な入口チャネルを備える。実施形態21は、入口チャネル流れコントローラ、第1の出口チャネルコントローラ、第2の出口チャネルコントローラ、またはこれらの組み合せをさらに備える、実施形態1から20(1~20)のいずれか1つに記載の装置を提供するものである。実施形態22(22)は、磁界コントローラ(円環状磁石またはトロイダル磁石に対して動作可能に連結されている)をさらに備える、実施形態15から18のいずれか1つに記載の装置である。
【0065】
実施形態23(23)は、流体装置が1つまたは複数のセンサを備える、実施形態1から22(1~22)のいずれか1つに記載の装置を提供するものである。実施形態24(24)は、センサが、光センサ、容量性センサ、導電性センサ、熱センサ、流量センサ、超音波センサ、重力センサ、磁界センサ、またはこれらの組み合せから選択される、実施形態23(23)に記載の装置である。実施形態25(25)は、センサが、光検出器、マルチ画素撮像検出器、磁界検出器、電気化学検出器、光学的位相検出器、散乱検出器、ホールセンサ、磁気抵抗センサ、電磁放射測定センサ、表面弾性波センサ、バイオセンサ、またはこれらの組み合せである、実施形態24(24)に記載の装置である。
【0066】
第26(26)の実施形態は、センサが、処理チャネルに組み込まれるか、または処理チャネルに隣接している、実施形態23から25(23~25)のいずれか1つに記載の装置を提供するものである。第27の実施形態(27)は、センサが、入口チャネルに組み込まれるか、または入口チャネルに隣接している、実施形態23から25(23~25)のいずれか1つに記載の装置を提供するものである。第28の実施形態(28)は、センサが、1つまたは複数の出口チャネルに組み込まれるか、または同出口チャネルに隣接している、実施形態23から25(23~25)のいずれか1つに記載の装置を提供するものである。実施形態29(29)は、流体装置が、処理チャネル内にあるかまたは処理チャネルに隣接する1つまたは複数のセンサ、入口チャネル内にあるかまたは入口チャネルに隣接する1つまたは複数のセンサ、少なくとも1つの出口チャネルにあるかまたは少なくとも1つの出口チャネルに隣接する1つまたは複数のセンサ、あるいはこれらの組み合せを備える、実施形態23から25(23~25)のいずれか1つに記載の装置である。
【0067】
実施形態30(30)は、入口チャネル流れコントローラをさらに備える装置であって、少なくとも1つのセンサが、入口流れコントローラに動作可能に連結される、実施形態25から27(25~27)のいずれか1つに記載の装置である。実施形態31(31)は、出口チャネル流れコントローラをさらに備える装置であって、少なくとも1つのセンサが、出口チャネル流れコントローラに動作可能に連結される、実施形態25から28(25~28)のいずれか1つに記載の装置である。実施形態32は、入口チャネルまたは入口領域を取り囲む円環状磁石またはトロイダル磁石と、磁界コントローラとをさらに備える装置であって、円環状磁石またはトロイダル磁石の磁界を制御するために、センサが、磁界コントローラに対して動作可能に連結される、実施形態23から29(23~29)のいずれか1つに記載の装置である。
【0068】
実施形態32(32)は、入口チャネルが、処理チャネルに対して実質的に直線状の部分と、処理チャネルに対して角度Θだけ傾斜した部分において接続する、実質的に直線状には整列されていない部分からさらになり、Θが、Y軸もしくはZ軸に対して、またはY軸とZ軸とに対して別個に、Θ≠180°であって、Θ≧90°、Θ≧100°、Θ≧135°、Θ≧140°、Θ≧165°、Θ>180°、Θ≧205°、Θ≧225°、Θ≧250°、もしくはΘ≦270°である、実施形態1から31(1~31)のいずれか1つに記載の装置である。
【0069】
フローセルカートリッジの実施形態
本発明のフローセルカートリッジの第1の実施形態(1)は、平面基板を備え、この平面基板は、上面および下面と、撮像面を形成する第1の長手方向の面と、照明面を形成する第2の長手方向の面と、第1および第2の横面と、上面における入口ウェルと、入口チャネルと、入口チャネルと流体連通し、長手方向の面に対して実質的に平行に配置されるサンプル処理チャネルと、処理チャネル内のサンプルスプリッタと、処理チャネルと流体連通する複数の出口チャネルと、複数の出口チャネルの各々と流体連通する複数の収集ウェルとを備え、基板が、光学的に透明な材料を適宜含み、処理チャネルが、撮像面に対して空間的に片寄るように基板の平面内でオフセットされる。
【0070】
本発明のフローセルカートリッジの第2の実施形態(2)は、平面基板を備え、この平面基板は、上面における入口ウェルと、入口チャネルと、サンプル処理チャネルと、処理チャネル内のサンプルスプリッタと、処理チャネルと流体連通する複数の出口チャネルと、複数の出口チャネルの各々と流体連通する複数の収集ウェルとを備え、基板が、光学的に透明な材料を含み、複数の出口チャネルの各々を合わせた容量が処理チャネルの容量よりも大きい。
【0071】
第3の実施形態(3)は、出口チャネルがコンパクトな経路を辿り、例示的な構成の1つが蛇行形状のチャネルである、実施形態1または2に記載のフローセルカートリッジである。
【0072】
第4の実施形態(4)は、フローセルカートリッジの出口チャネルが平面基板内の凹部として形成され、第1の出口チャネルが平面基板の表面に凹部を備え、第2の出口チャネルが平面基板の反対側の面に凹部を備える、実施形態1から3のいずれか1つに記載のフローセルカートリッジである。実施形態1から4において、チャネルは、平面基板をエッチング、機械加工、3Dプリント、または成型することによって形成される。
【0073】
第5の実施形態(5)は、実施形態4のフローセルカートリッジが、平面基板の凹部の上に配置された1つまたは複数の追加の平坦な層を備えて、密封したチャネルを形成するものである。
【0074】
第6の実施形態(6)は、実施形態1から5のいずれか1つに記載のフローセルカートリッジを備え、基板が、非鉄金属、セラミック、ガラス、ポリマー、またはプラスチックからなり、基板と1つまたは複数の層とを有する実施形態の場合には、基板の材料と平坦な層の材料とは、同一でも異なってもよい。
【0075】
フローセルカートリッジの第7の実施形態(7)は、実施形態5または6に記載のフローセルカートリッジを備え、1つまたは複数の平坦な層が、平面基板に、圧縮、接着接合、好ましくは生体適合性のある接着剤、より好ましくはシリコーンまたはシリコーンベースの接着剤、溶剤結合、超音波接合、熱接着、溶接、または3Dプリントによって取り付けられる。
【0076】
フローセルカートリッジの第8の実施形態(8)は、実施形態5から7のいずれか1つに記載のフローセルカートリッジを備え、平面基板と1つまたは複数の平坦な層とが、同一の材料からなる。
【0077】
フローセルカートリッジの第9の実施形態(9)は、実施形態1から8のいずれか1つに記載のフローセルカートリッジを備え、平面基板がポリマー材料を含む。
【0078】
フローセルカートリッジの第10の実施形態(10)は、実施形態9に記載のフローセルカートリッジを備え、実施形態9のポリマー材料が、サイクリックオレフィンポリマーまたはサイクリックオレフィンコポリマーを含む。
【0079】
フローセルカートリッジの第11の実施形態(11)は、実施形態1から10いずれか1つに記載のフローセルカートリッジを備え、平面基板上に形成されて出口チャネルの端部と流体連通する収集ウェルをさらに備える。
【0080】
実施形態1から11のいずれか1つに記載のフローセルカートリッジの第12の実施形態(12)は、収集ウェルが、第1のウェル高さにおける内部チャネル入口および第2のウェル高さにおける内部出口をさらに備え、内部チャネル入口が、フローセルカートリッジの出口チャネルと流体連通し、第2のウェル高さは第1のウェル高さよりも高い。
【0081】
フローセルカートリッジの第13の実施形態(13)は、実施形態11または12に記載のフローセルカートリッジを備え、収集ウェルは、入口の末端開口から、収集ウェルへ、収集ウェルの床へと傾斜した移行をもたらすステップをさらに備える。
【0082】
フローセルカートリッジの第14の実施形態(14)は、実施形態11から13のいずれか1つに記載のフローセルカートリッジを備え、1つまたは複数の収集ウェルの最上部を覆う密封フィルムをさらに備える。
【0083】
フローセルカートリッジの第15の実施形態(15)は、実施形態11から14のいずれか1つに記載のフローセルカートリッジを備え、このフローセルカートリッジは、平面基板に、収集ウェルと流体連通する収集ウェル出口チャネルをさらに備える。
【0084】
細胞または細胞核の分離システムの実施形態
本発明の第1の細胞分離システムの実施形態(1)は、フローセルカートリッジを保持するための収容ブロックと、光センサ、レンズ、および照明光源を備える光学システムと、複数の流れ調整部品とを備え、収容ブロックによって、フローセルカートリッジが、光学システムに対して光学的に位置合わせして、取外し可能に配置され、磁性部品が、フローセルの処理チャネルに隣接して、取外し可能に係合し、フローセルカートリッジの複数の出口チャネルが、複数の流れ調整部品と流体連通して取外し可能に配置される。
【0085】
実施形態1は、第2の実施形態(2)において、平面基板内の処理チャネルを通る光伝送をもたらすように構成して配置された可視光の照明光源をさらに備える。
【0086】
実施形態1または2に記載のシステムは、第3の実施形態(3)において、紫外線の照明を当てるように構成して配置された1つまたは複数の紫外線照明光源をさらに備え、この光源は、約474nmおよび/または560nmの波長でよく、収容ブロックに保持された平面基板内の処理チャネルに対して角度のある配向でよい。
【0087】
実施形態3に記載のシステムを備える細胞分離システムの第4の実施形態(4)では、光学システムは、好ましくは約524nmの波長と628nmの波長とに中心がある帯域の放射を通す二重帯域通過フィルタを備える。
【0088】
生細胞-死細胞および/または細胞核の分離法の実施形態
生細胞と死細胞との混合物の分離のため、ならびに/あるいは核破片および/または死細胞からの細胞核の分離のための方法の第1の実施形態(1)は、処理チャネルおよび複数の出口チャネルを備えるフローセルカートリッジを用意することであって、フローセルカートリッジの出口チャネルが、処理チャネルよりも大きい容量を有する、フローセルカートリッジを用意することと、処理チャネルに、生細胞および死細胞、および/または細胞核と常磁性化合物とを含むサンプル溶液を流すことと、処理チャネルに対して実質的に平行に整列された磁界の中にフローセルカートリッジを配置することと、処理チャネルおよびその中に含まれるサンプル全体を、処理チャネルの内部で、生細胞と死細胞とを垂直方向の距離によって分離するのに十分な期間にわたって、磁界の中に、流れ停止状態に保つことと、生細胞を富化したサンプル画分、および/または細胞核、ならびに死細胞を富化したサンプル画分、および/または無傷細胞および核破片を、出口チャネルに同時に回収することとを含む。
【0089】
実施形態1に記載の方法を含む第2の実施形態(2)は、サンプル溶液を導入するまではいかなる液体または常磁性化合物も実質的に含んでいないフローセルカートリッジを用意することをさらに含む。
【0090】
実施形態1または2に記載の方法を含む分離方法の第3の実施形態(3)は、フローセルカートリッジを用意することであって、処理チャネルの断面積よりも小さい断面積を有する出口チャネルが、蛇行形状のチャネルの構成を一例とするコンパクトな経路を辿って配置される、フローセルカートリッジを用意することをさらに含む。
【0091】
実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法を含む第4の実施形態(4)は、処理チャネルの最上部垂直面の近接および最下部垂直面の近接に磁界を供給することであって、それぞれの磁界が類似の強度を有し、表面磁界の強度が約0.8テスラ~約2.0テスラの間であり、約0.9テスラ~約1.4テスラの間でもよい、磁界を供給することをさらに含む。
【0092】
実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法を含む第5の実施形態(5)の分離方法は、約50mM~約200mMの濃度のサンプル溶液の中に常磁性化合物を供給することであって、サンプル溶液中の濃度が、約65mM~約175mMでよく、さらには約70mM~約150mMでもよい、常磁性化合物を供給することをさらに含む。
【0093】
実施形態1から5のいずれか1つに記載の分離方法を含む第6の実施形態(6)の分離方法は、サンプル画分を、約75μL/分~約150μL/分の流量で出口チャネルに回収する工程であって、流量が、約75μL/分、約90μL/分、約100μL/分、約110μL/分、約120μL/分、または約150μL/分でもよい、回収する工程をさらに含む。
【0094】
分離方法の第7の実施形態(7)は、実施形態1から6のいずれか1つに記載の分離方法を含み、富化して回収されるサンプル画分には、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%。または少なくとも約90%の生細胞が含まれる。
【0095】
分離方法の第8の実施形態は、実施形態1から7のいずれか1つに記載の分離方法を含み、富化して回収されるサンプル画分における生細胞の収率は、サンプルの全体の生細胞組成の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約75%である。
【0096】
分離方法の第9の実施形態は、実施形態1から7のいずれか1つに記載の分離方法を含み、富化して回収されるサンプル画分における細胞核の収率は、サンプルの生細胞組成からの全体の細胞核の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約75%である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】本明細書で説明される、粒子を濃縮して単離する装置の単一の磁性部品の各実施形態の断面図である。
図2】本明細書で説明される、傾斜した入口チャネルを有する、粒子を濃縮して単離する装置の単一の磁性部品の各実施形態の断面図である。
図3】本明細書で説明される、傾斜した入口チャネルおよび入口磁界部品を有する、粒子を濃縮して単離する装置の単一の磁性部品の各実施形態の断面図である。
図4】本明細書で説明される、入口チャネルの一部を磁性部品が取り囲む、粒子を濃縮して単離する装置の各実施形態の断面図である。
図5】本明細書で説明される、傾斜した入口チャネルおよび入口磁界部品を有する、粒子を濃縮して単離する装置の単一の磁性部品の各実施形態の断面図である。
図6】本明細書で説明される一実施形態による、単一の磁性部品構成の処理チャネルの内部にかかる磁界を表す。
図7】本明細書で説明される、傾斜した入口チャネルおよび入口磁界部品を有する、粒子を濃縮して単離する装置の複数の磁性部品の各実施形態の断面図である。
図8】本明細書で説明される、傾斜した入口チャネルおよび入口磁界部品を有する、粒子を濃縮して単離する装置の各実施形態の断面図である。
図9】説明される、選択可能な弁および入口チャネルポンプ部品を有する、粒子を濃縮して単離する装置の一実施形態の断面図である。
図10】本明細書で説明される様々な実施形態による統合システムの模式図である。
図11】本明細書で説明される、粒子を濃縮して単離する装置の、単一磁性部品の実施形態の動作を表す。
図12】本明細書で説明される、粒子を濃縮して単離する装置の、傾斜した入口チャネルの実施形態の動作を表す。
図13】本明細書で説明される、粒子を濃縮して単離する装置の作動状態の実施形態による、粒子含有サンプルの流れにより可能になった分画を表す。
図14】本明細書で説明される、粒子を濃縮して単離する装置の実施形態による、入口チャネル磁界で支援されたサンプルの濃縮を表す。
図15】本明細書で説明される、粒子を濃縮して単離する装置の実施形態による、入口チャネル磁界で支援されたサンプルの濃縮を表す。
図16】本明細書で説明される、粒子を濃縮して単離する装置の作動状態の実施形態による、粒子含有サンプルの、メニスカスによって容易となった濃縮を表す。
図17】本明細書で説明される、粒子を濃縮して単離する装置の一実施形態によって実行された、血液サンプルからの血液細胞の単離の顕微鏡写真である。
図18】本明細書で説明される、粒子を濃縮して単離する装置の一実施形態の斜視図である。
図19】例示のフローセルカートリッジの、長手方向の面における撮像面および第2の長手方向の面における照明面を示す図である。
図20】例示のフローセルカートリッジの平面基板の上面および下面を示す詳細図である。
図21】収集ウェルの例示の構成を示す。
図22】例示のシステム収容ブロックと、複数の磁性部品に対する例示のフローセルの配向とを示す。
図23】例示の収容ブロックを用いて配向された光学システムの一例を示す。
図24】例示の粒子分離の画像と、出口チャネル圧力の安定性とを示す。
図25】収集された細胞の生存率および生細胞の収率の例を示す。
図26】様々な細胞タイプに関して収集された生細胞の純度および収率の例を示す。
図27】肺組織から導出された、選別されていない細胞核の顕微鏡画像(A)および選別された細胞核の顕微鏡画像(B)と、脳組織から導出された、選別されていない細胞核の顕微鏡画像(C)および選別された細胞核の顕微鏡画像(D)とを示す。
図28】Jurkat細胞から導出された、選別されていない細胞核のフローサイトメトリー分析(A)および選別された細胞核のフローサイトメトリー分析(B)を示す。
図29】LeviCellシステムによって分離されたサンプルにおける核に特異的なターゲット(SCARNA5)および混入している細胞質のターゲット(SNHG6)のレベルを、入力細胞核と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0098】
I.定義/用語法
以下の定義は、本発明の理解を助けるために提供されるものである。本明細書で使用されるすべての技術用語、記号および他の科学用語もしくは工学用語または専門用語は、別様に定義されなければ、当業者によって一般に理解される意味を有するように意図される。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語が、本明細書において、明瞭さおよび/または参照の容易さのために定義されることもあるが、本明細書がそのような定義を含有することは、当技術における一般的な理解との実質的な相違を表すものと想定されるべきではなく、そのような一般的な理解を補完するように意図されている。本明細書の定義が当技術における一般の理解と一致しない範囲において、明確に別様に明示されなければ、本明細書で与えられる定義と、当技術における一般的な理解との両方が、代替実施形態として本発明の範囲内にあると見なされるものとする。
【0099】
本明細書で使用される、「含有する」、「含有している」、「含む」、「含んでいる」などのオープンエンドの用語は、別段の指示がない限り、「備える」ことを意味する。
【0100】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、数的範囲を企図する。数的範囲が与えられたとき、範囲は、別段の指示がない限り範囲の両端を含む。別段の指示がない限り、数的範囲は、あたかも明示的に書き出されたかのように、すべての値およびサブレンジを含む。
【0101】
本明細書で使用される、「1つの(a)」という冠詞は、別様に明示的に明言されなければ、1つまたは複数を意味する。
【0102】
本明細書では、いくつかの値が「約」という用語によって修飾される。いくつかの事例では、「約」という用語は、参照数値に関連して、その値から±10%の範囲の値を含み得る。たとえば、「約10」という数は、9~11の数を含むことができる。他の実施形態では、「約」という用語は、参照数値に関連して、その値から、プラスマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の範囲にある値を含み得る。一連の値に対して前置きされた「約」という用語は、その一連に含まれるそれぞれの値を修飾するように意図される。
【0103】
本明細書で磁界について使用される「非対称」という用語は、関連する流体チャネルの領域における磁界が、流体チャネルの中心を通過する1つまたは複数の平面のまわりで対称ではないことを意味し、好ましい実施形態によれば、水平面のまわりで対称ではないことを意味する。
【0104】
本明細書で使用さる「キャピラリ」または「キャピラリチューブ」という用語は、以下で定義されるチャネルを有するチューブを指す。
【0105】
本明細書で使用される、「チャネル」、「流路」、「流体チャネル」および「フルイディックチャネル」という用語は、区別なく使用され、流体装置において流体を流すことができる経路を指す。チャネルが含む経路の最大高さ寸法は、約100mm、約50mm、約30mm、約25mm、約20mm、約15mm、約10mm、約5mm、約5mm、約3mm、約2mm、約1mm、または約0.5mmである。磁石の間のチャネルの寸法は、約30mm×0.5mm、約25mm×1mm、約20mm×2mm、約15mm×3mm、約10mm×5mm、約5mm×3mm、約3mm×2mm、約2mm×1mm、または約1mm×0.5mmである。たとえば、磁石の間のチャネルの寸法は約2mm×1mmである。チャネルの内部高さは、その断面にわたって均一でなくてよく、断面は、幾何学的に、円形、正方形、楕円形、長方形、または六角形を含む任意の形状でよい。「チャネル」という用語は、それだけではないが、マイクロチャネルおよびナノチャネルを含み、本明細書におけるチャネルに対するあらゆる参照に関して、そのようなチャネルはマイクロチャネルまたはナノチャネルを備え得る。
【0106】
本明細書で使用される「濃度」という用語は、第2の成分の中に含有される第1の成分の量を意味し、単位体積当たりの粒子数、単位体積当たりのモル量、単位体積当たりの重量に基づき得、あるいは組み合わされた成分の体積当たりの第1の成分の体積に基づき得る。
【0107】
本明細書で使用される「流体結合された」または「流体連通」という用語は、流体が、そのように結合された、または連通する、2つの部品の間を流れることができることを意味する。
【0108】
本明細書で使用される、「単離する」、「単離している」、「分離する」、「分離している」、「分画する」、または「分画している」という用語は区別なく使用され、成分に関連すると、そのような成分を他の成分から分離することを意味し、溶液の中のある成分の濃度を高めること、溶液の中のある成分を他の成分から分離すること、または、その両方の組み合せを含む。溶液中の粒子は、溶液の中で他の粒子から分画されている場合、および/または溶液の画定された部分の範囲内にある場合には、「単離されている」と見なされる。溶液中の粒子または成分は、溶液を処理した後に、そのような粒子または成分の濃度が、少なくとも約100倍、90倍、80倍、70倍、60倍、50倍、40倍、30倍、20倍、10倍、5倍、3倍または2倍に高まった場合にも「単離された」と見なされる。他の粒子を含有している溶液中の関心のある粒子は、そのような溶液を処理した後に、そのような関心のある粒子の濃度とそのような他の粒子の濃度との比が向上した場合、またはそのような関心のある粒子の濃度とそのような他の粒子の濃度との比が、少なくとも約100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、または1000%だけ向上した場合、または、そのような他の成分の濃度が、約20%未満、15%未満、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、または0.5%未満に低下した場合には、「単離された」と見なされる。
【0109】
本明細書で使用される「流体の」という用語は、流体サンプルを、扱うため、処理するため、排出するため、および/または分析するための、上記で定義された少なくとも1つの「チャネル」を含む、システム、装置または要素を指す。「流体の」という用語は、それだけではないが、「微少流体の」および「超微少流体の」を含む。
【0110】
本明細書で使用される「流体の機能」という用語は、流体システムにおいて、流体またはサンプルに対して実行または表現される、濾過、ポンピング、流体の流量調節、流体の流れ制御などを含むがこれらに限定されない、何らかの動作、機能またはプロセスを指す。
【0111】
本明細書で使用される「粒子」という用語は、それだけではないが、原子、化学元素、分子、化合物、生体分子、細胞、壊死細胞、アポトーシスを起こした細胞、癌細胞、癌または腫瘍の循環細胞、細胞核、血液、血漿、タンパク質、脂質、体液、核酸、ヌクレオチド、アミノ酸、ペプチド、抗体、抗原、炭水化物、微生物、細菌、ウイルス、菌類、精子、配偶子、卵、胚、または、いかなる方向における最大寸法も、約3mm未満、2mm未満、1mm未満、0.5mm未満、0.25mm未満、100ミクロン未満、75ミクロン未満、50ミクロン未満、40ミクロン未満、30ミクロン未満、20ミクロン未満、10ミクロン未満、5ミクロン未満、2ミクロン未満、1ミクロン未満、または0.1ミクロン未満である何らかの物理的実体を含む、あらゆるものを指す。粒子は、いかなる方向の最大寸法も、約0.001ミクロン~約3mm、約0.1ミクロン~約2mm、約0.5ミクロン~約1.5mm、約10ミクロン~約1mm、または約20ミクロン~約100ミクロンであり得る。
【0112】
本明細書で使用される「ポート」という用語は、たとえば流体チャネルを使用して2つの要素の間を流体連通させるための構造体を指す。「入口ポート」、「入口開口」、「入力開口」、または「入力チャネル」という用語は区別なく使用され、本明細書で説明した装置にサンプル流体を注入する開口を指す。
【0113】
本明細書で使用される「濃縮する」または「濃縮」という用語は、水、水性もしくは非水性の媒体、または他の物質を除去することによって、媒体中の材料の個体群密度または純度を高めること(を指す。材料は、本明細書で説明された粒子のタイプまたは粒子の混合物である。本明細書で説明される濃縮は、一般的には、媒体中の粒子または粒子の混合物の沈降を促進することにより、特定の領域に粒子または粒子の混合物をもたらすことを包含する。あるいは、濃縮することは、粒子の混合物から特定のタイプの粒子を分離することと、一般的には液体媒体の所定の容量を有する収集チャネルに、特定のタイプの粒子を収集することとを包含し得る。この濃縮は、粒子を濃縮するために大量のサンプルを回したり回転させたりすることを包含する必要はない。本発明によって実行される濃縮により、粒子の深刻な損傷、溶解、または剪断なく、粒子を分離することが可能になる。加えて、本発明は、ある特定の動作条件の下で、動作中に、サンプルにおける凝集または結晶化と、凝集または結晶化したサンプルの粒子の単離とをもたらすものである。
【0114】
本明細書で説明される方法および工程が、ある特定の順序で生じるある特定のイベントを指示する場合には、当業者なら、ある特定の工程の順序付けが変更され得、そのような変更は、本発明の変形形態によるものであることを認識するであろう。加えて、ある特定の工程は、あるプロセスにおいて、可能であれば並行して同時に実行されてよく、順次に実行されてもよい。
【0115】
II.磁界
本開示は、処理チャネルまたは入口チャネルの内部の磁界を使用して濃縮するための方法および装置を提供する。磁界の、サンプル流体中の粒子の常磁性に対する相互作用は、分離または濃縮を促進するために、粒子に対する斥力効果または引力効果をもたらすことができる。
【0116】
一実施形態によれば、磁石は永久磁石または電磁石である。一実施形態によれば、磁石の最大エネルギー積は、約1メガガウスエルステッド~約1000メガガウスエルステッドの範囲であり、より好ましくは約10メガガウスエルステッド~約100メガガウスエルステッドの範囲である。一実施形態によれば、磁石の表面磁界の強度は、約0.1テスラ~約100テスラの範囲であり、より好ましくは約1テスラ~約10テスラの範囲である。一実施形態によれば、磁石の残留磁気は、約0.5テスラ~約5テスラの範囲であり、より好ましくは約1テスラ~約3テスラの範囲である。
【0117】
好ましい実施形態によれば、磁石は、鉄およびホウ素を含むネオジム合金、ネオジム、ニッケルを含むアルミニウムの合金、鉄を含むネオジム合金、アルミニウムおよびコバルトの鉄との合金、サマリウムコバルト、鉄とその他の希土類の合金、ニッケルと希土類合金の合金、フェライト、またはこれらの組み合せを含む材料から作製される。複数の磁石を備える一実施形態によれば、磁石は同一の材料から作製されるかまたは異なる材料から作製される。
【0118】
一実施形態によれば、流体チャネルの一方の側に強い磁性材料を使用して、相対する側には弱い磁性材料を使用することにより、非対称の磁界が実現される。好ましい実施形態によれば、流体チャネルの一方の側に磁性材料を使用して、相対する側には実質的に類似の磁性材料を使用することにより、非対称の磁界が実現される。そのような実施形態によれば、上部磁石と下部磁石とは実質的に同一のサイズであってもよい。そのような実施形態によれば、上部磁石がネオジムを含み得、下部磁石がサマリウムコバルトを含み得、両方の磁石が実質的に同一のサイズである。あるいは、上部磁石がサマリウムコバルトを含み得、下部磁石がネオジムを含み得、両方の磁石が実質的に同一のサイズである。
【0119】
一実施形態によれば、代替の磁石構成が使用され得る。本発明による装置は、流体チャネルのまわりに配置された複数の上部磁石および複数の下部磁石を含み得る。上部磁石は、前方の上部磁石、中央の上部磁石、および後方の上部磁石を含み得る。下部磁石は、前方の下部磁石、中央の下部磁石、および後方の下部磁石を含み得る。
【0120】
別の磁石構成によれば、装置は、前方の上部磁石、後方の上部磁石、前方の下部磁石、および後方の下部磁石を含み得、これらの磁石は流体チャネルのまわりに配置される。前方の上部磁石と後方の下部磁石とは、磁力が反発しあう配向に配置される。例示的なNdFeB磁性部品の寸法は、最下部の磁性部品については約50×15×2mm(15mmの軸を通じて磁化された)、最上部の磁性部品については50×5×2mm(5mmの軸を通じて磁化された)を含む。他の磁性部品の実施形態は、60×15×2mm、60×5×2mm、75×20×3mm、および25×15×2mmを含む。図6は、長方形の磁石が、処理チャネル104の最下部において実質的にX軸に沿って整列した一実施形態を示しており、処理チャネルの内部の磁力線および磁力を示す。追加の好ましい磁性部品の実施形態は、約75×20×3.2mmの寸法を有する上部磁石および下部磁石を含み、上部磁石と下部磁石との間隔は、約2.5mm、約3.0mm、約3.5mm、約2.9mm、約3.0mm、約3.1mm、約3.2mm、約3.3mm、約2.72mm、約2.88mm、約2.98mm、約3.18mm、約3.20mm、または約3.37mmを含む。
【0121】
好ましい実施形態では、装置は上部磁石および下部磁石を有し、下部(flower)磁石は入口チャネルへと延在する。下部磁石(bottom magnet)の寸法は、約50mm~約100mm×約10mm~約30mm×約2mm~約4mmである。好ましい実施形態は、約75mm、約80mm、約85mm、約90mm、約93mm、または約95mm×約15mm、約18mm、約20mm、約23mm、または(and)約25mm×約2mm、約2.3mm、約2.5mm、約2.7mm、約3mm、約3.18mm、または(and)約3.5mmを含む。上部磁石と下部磁石との磁石間隔は、好ましくは2~4.3mmの間、約2.5mm、約4.0mm、約3.5mm、約2.9mm、約3.0mm、約3.1mm、約3.2mm、約3.3mm、または約2.72mm、約2.88mm、約2.98mm、約3.18mm、約3.20mm、約3.37mm、約3.5mm、約3.7mm、または約4mmである。
【0122】
図7A~Dに示される流体濃縮装置の実施形態では、磁性部品が、最上部と最下部とに平行に組み込まれ、処理チャネルのX軸に沿って実質的に整列している。
【0123】
III.常磁性媒体
本発明による磁気促進濃縮によって処理されるサンプルには、通常は、常磁性成分または反磁性成分が追加される。本発明の方法によれば、関心のある粒子含有材料が常磁性媒体と組み合わされて処理溶液を生成する。常磁性媒体は常磁性体および溶媒を含む。好ましい実施形態によれば、常磁性媒体には生体適合性があり、すなわち、細胞の生存率に影響を与えることなく、または、たとえば遺伝子発現といった細胞の挙動に影響を与えることなく、生細胞と混合され得る。常磁性体は、ガドリニウム、チタン、バナジウム、ジスプロシウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、ガリウム、そのイオンおよびこれらの組み合せを含むグループから選択され得る。一実施形態によれば、常磁性体は、3価チタンイオン、3価ガドリニウムイオン、1価バナジウムイオン、2価ニッケルイオン、3価クロムイオン、3価バナジウムイオン、3価ジスプロシウムイオン、2価コバルトイオン、および3価ガリウムイオンを含むグループから選択される。好ましい実施形態によれば、常磁性体はキレート化合物を含む。好ましい実施形態によれば、常磁性体は、ガドリニウムキレート化合物、ジスプロシウムキレート化合物、またはマンガンキレート化合物を含む。一実施形態によれば、常磁性媒体は、細胞の完全性を維持するように機能する常磁性体、塩類、および他の添加物を含む。本発明の一実施形態では、常磁性体は、参照によって本明細書に組み込まれている米国特許出願第14/407,736号に記述されているように、[Aliq][MnCl]、[Aliq][GdCl]、[Aliq][HoCl]、[Aliq][HoBr]、[BMIM][HoCl]、[BMIM][FeCl]、[BMIM][MnCl]、[BMIM][DyCl]、[BDMIM][DyCl]、[BDMIM][DyCl6]、[AlaCl][FeCl]、[AlaCl][MnCl]、[AlaCl][GdCl]、[AlaCl][HoCl]、[AlaCl][DyCl]、[GlyC][FeCl]でもよい。
【0124】
一実施形態によれば、常磁性媒体中の常磁性体の濃度は、少なくとも約10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、120mM、150mM、200mM、250mM、300mM、500mM、または1Mでもよい。一実施形態によれば、常磁性媒体中の常磁性体の濃度は、約10mM~約50mM、約25mM~約75mM、約50mM~約100mM、約100mM~約150mM、約150mM~約200mM、約200mM~約250mM、約250mM~約300mM、約300mM~約500mM、または約500mM~約1Mでもよい。
【0125】
一実施形態によれば、常磁性体はガドリニウムを含み、常磁性媒体中の濃度は、少なくとも約10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、または100mMである。一実施形態によれば、常磁性体はガドリニウムを含み、常磁性媒体中の濃度は、約10mM~約50mM、約25mM~約75mM、または約50mM~約100mMである。
【0126】
IV.装置構成
図1~5および図7~10を参照して、粒子の濃縮および単離のための本発明の粒子濃縮装置の様々な実施形態が示されており、装置の入口チャネル部分、処理チャネル部分、および出口チャネル部分は、分離して相互接続された個々の部品を備える。処理チャネルは、処理チャネル内の流れの層(この意味における「層」は、位置の、y軸に沿った小さな範囲を指示する)の内部で粒子の濃縮に必要な滞留時間と、システムからの所望のスループットとに基づき、関心のある粒子含有流体を処理するための十分な時間を見込んで、好ましくは、x軸に沿って十分な長さを有する細長い流体チャネルである。いくつかの実施形態では、処理チャネルは流体チャネルであり、高さは、約200ミクロン~約30mm、約200ミクロン~約20mm、約200ミクロン~約15mm、約200ミクロン~約10mm、約200ミクロン~約5mm、約200ミクロン~約2mm、約200ミクロン~約1mm、約0.5mm~約1mm、約0.5mm~約2mm、約0.5mm~約3mm、約1mm~約2mm、約1mm~約3mm、または約1.5mm~約2mmである。一実施形態によれば、処理チャネルの長さは、約20mm~約200mm、約20mm~約150mm、約20mm~約100mm、約20mm~約50mm、約40mm~約100mm、約40mm~約90mm、または約40mm~約80mmである。いくつかの実施形態については、チャネルの奥行き(Z方向)は、約100ミクロン~約5mm、約500ミクロン~約3mm、約1mm~約2.5mm、または約1.5~約2mmである。チャネル長の実施形態は、長さにおいて40、45、50、60、70mmでよい。例示的な処理チャネルの寸法は、1mmおよび1.9mmの高さ(画像において垂直なY軸)×0.8または1.0または1.5または2.0mmの奥行き(Z軸)を含み、長さ(X軸)は40~70mmである。処理チャネルの好ましい実施形態では、例示的な処理チャネルの寸法は、約2mmの高さ(画像において垂直なY軸)×約2.0mmの奥行き(Z軸)を含み、長さ(X軸)は約50~70mmである。処理チャネルのさらに好ましい実施形態の長さは、約55mm、約56mm、約57mm、約58mm、約59mm、約60mm、約61mm、約62mm、約63mm、約64mm、約65mm、または約66mmである。
【0127】
処理チャネルは、任意の断面の幾何学的形状を有し得、断面の幾何学的形状は、正方形、長方形、円形または楕円形を含み得る。本明細書で説明された処理チャネルの幾何学的特性は、本発明の部品の形状に関して上記で説明された入口、出口、および他の流体チャネルに等しく適用可能である。
【0128】
入口チャネルの断面積(チャネルが円形のとき、rがチャネルの内径の半径であればπrになる)は、処理チャネルの断面積よりも実質的に小さい。この状況では、特性的な断面寸法を記述するために「直径」が使用され、チャネルの断面が円形ではないこともある。様々な実施形態において、入口チャネルの断面積は、処理チャネルの断面積よりも小さく、せいぜい1/100、1/80、1/50、1/40、1/20、1/10、1/8、1/6、1/4、または1/2である。いくつかの実施形態では、入口チャネルの断面積は、処理チャネルの断面積よりも小さく、せいぜい1/10である。いくつかの実施形態では、入口チャネルの断面積は、処理チャネルの断面積よりも小さく、せいぜい1/5である。いくつかの実施形態では、入口チャネルの断面積は、高々0.2mm、高々0.8mm、高々3.1mm、高々7.1mm、高々12.6mm、高々19.6mm、高々28.3mm、高々38.5mm、高々50.3mm、高々78.5mm、高々176.7mm、または高々314.2mmである。出口チャネルは、通常は入口チャネルと類似の寸法特性を有するが、断面積は、以下で説明されるように変化し得る。
【0129】
粒子濃縮装置の実施形態は、処理チャネル(103)の方へ先細りになる入口部分を含み、本発明の粒子単離装置は、渦流によって生じる乱流を低減することによって、異なる断面積の流体チャネルの接続に関連した、関連剪断力を低減するための、先細りになる進入ポートも含む。これらの渦流により、細胞または他の粒子が装置を通って流れることなく捕捉されてしまう場所が循環経路内に生じることにより、サンプルを処理する効率または速度が低下する可能性がある。渦流によって、細胞などの粒子に対する剪断応力が誘起されることもある。先細りの角度は、約10°~約70°の間、好ましくは約20°~約60°の間、または約30°~約45°の間であってもよく、いくつかの実施形態では約30°であってもよい。
【0130】
装置の出口部分は、処理チャネルの中のサンプル流れの各部分を、単離またはさらなる処理のために、個別の流れへと分流するのを支援するスプリッタを備え得る。スプリッタは、好ましくは処理チャネルの内部に、ただし処理チャネルの終端の近くに配置され、そのため、流体が装置を出るとき、流体を処理チャネルに通すことによって実現されるあらゆる粒子単離が維持される。スプリッタは、出口チャネルから処理チャネルの終端まで延在する1つまたは複数の水平隔壁を備え得る。スプリッタは、処理チャネルの中へ、磁石が処理チャネルの相対する側に実質的にX軸に沿って整列する実施形態における磁石間距離の、0.5~3.5倍の間、1~3倍の間、1.5~2.5倍の間、1~2倍の間、または2倍の長さだけ延在し得る。粒子濃縮装置の単一磁石の実施形態に関して、スプリッタは、処理チャネルの中へ、Z軸方向に、単一磁性部品の厚さの1~5倍、1.5~5倍、1.5~4倍、2~4倍、3~4倍、または4倍だけ延在し得る。処理チャネルのX軸に沿って整列した磁性部品がない実施形態については、スプリッタは、処理チャネル長さの、5~40%の間、5~30%の間、5~25%の間、10~30%の間、10~20%の間、または10~15%の間だけ、好ましくは5%を超えて好ましくは35%未満だけ、延在し得る。スプリッタは、処理チャネルの内部の末端のポイントまで先細りになる。先細りの角度は、約5°~約45°の間、好ましくは約10°~約30の間°、約15°~約25°の間でよく、または、いくつかの実施形態では約20°であってもよい。処理チャネルは、スプリッタを使用して水平に分割されてよい。加えて、スプリッタは、1つまたは複数の垂直隔壁を含み得、それによって、流出する流体の、複数の出口チャネルに通じる流体連通する出口開口の水平垂直グリッドをもたらす。この実施形態では、処理チャネルの終端近くの複数の出口チャネルが、出口ポートを通じて、収集チューブまたはエッペンドルフチューブのなどの複数の収集チャンバに達する。スプリッタ(複数可)は、複数の出口チャネルを画定する。一実施形態によれば、本発明の粒子濃縮装置が含むスプリッタは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10の出口チャネルを画定する。一実施形態によれば、本発明の粒子濃縮装置が含むスプリッタは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10の出口チャネルを画定する。一実施形態によれば、本発明の粒子濃縮装置が含むスプリッタは、2~4、5~7、または8~10の出口チャネルを画定する。本明細書で説明されたスプリッタと、これがもたらす様々な出口チャネルとは、本発明の部品の構成を参照して上記で説明された処理チャネルに組み込まれてもよい。
【0131】
複数の出口チャネルは、処理チャネルから、対応する複数の出口ポートまで延在する。複数の出口チャネルは、処理チャネルからそれぞれの流出液チャネルを通ってそれぞれの出口ポートへ流れる量を制御する、ポンプまたは出力弁などの流体の流れ調整器を含み得る。サンプル溶液の、それぞれの流出画分への分割は、個々の出口に向かう流れを、分割比を変更することができるように増減することによって実現され得る。一実施形態によれば、分割比は50%まで加減され得る。たとえば、スプリッタが、断面が等しい2つのチャネルを含むなら、分割の幾何学的な比(geometric ratio)は1:1である。分割の比は、1つの画分に他の画分よりも大きい(または小さい)ポンピング率を適用して、より大量の(またはより小量の)流体を回収することにより、たとえば約3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または10:1に変更され得る。好ましい実施形態では、そのような比に関する分割は、約2:1~約1:2の範囲になる。さらに好ましい実施形態では、そのような比に関する分割は、約10:1~約1:10の範囲になる。分割は、上部の出口チャネル流量と下部のチャネル流量との比を、それぞれ約1:10、約1:9.5、約1:9、約1:8.5、約1:8、約1:7.5、約1:7、約1:6.5、約1:6、約1:5.5、約1:5、約1:4.5、約1:4、約1:3.5、約1:3、約1:2.5、約1:2、約1:1.5、約1:1、約1.5:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約3.5:1、約4:1、約4.5:1、約5:1、約5:5、約5.5:1、約6:1、約6.5:1、約7:1、約7.5:1、約8:1、約8.5:1、約9:1、約9.5:1、約10:1、とすることができる。
【0132】
図1Aが示す装置は、処理チャネル(104)の最上部のX軸に沿って実質的に整列した単一磁性部品(101)と、入口チャネル(102)および入口接続領域(103)と、複数の出口チャネル(106)および流れスプリッタ部分(105)とを有する。図1Bは、処理チャネルの最下部に沿って整列した単一の磁性部品(101)を有する類似の構成を示す。図1Cは、図1Aの構成から、追加の磁性部品または部分(107)が、処理チャネルを越えて入口部分に延在する様子を示す。図1Dは、磁性部品が、処理チャネルの最下部のX軸に沿って実質的に整列し、入口部分に延在する、この種の構成を示す。一実施形態によれば、上部磁石と下部磁石との一方または両方を、システムの内部で移動可能に実装して、流体チャネルに対する磁石の垂直方向の位置調節を制御することにより、チャネルの中の磁界の強度を調節することが可能になる。本発明のある特定の実施形態では、処理チャネル内の粒子濃縮を調整するために、入口チャネルのジオメトリおよび入口チャネルの磁界が使用される。ある特定の実施形態は、処理チャネルの入口またはその近くに粒子を蓄積することによって粒子の相対的富化を変化させる流れの部分を生成する能力を提供する。たとえば、処理チャネルの入口またはその近くに粒子が蓄積すると、処理チャネル内の流れの中の粒子の量が即座に枯渇する可能性がある。粒子拘束力、沈降力、磁力またはこれらの組み合せを解放するかまたは克服することにより、処理チャネル内の流れの中の粒子濃縮が向上する。これによって、処理チャネル内の流れの粒子富化層の中の粒子富化のレベルが一時的に変化し得る。一態様において、この選択的な処理は、特に強化された(富化された)流れ画分または特に枯渇された流れ画分を識別して利用することができる本発明の装置および方法のユーザにとって、特に関心のある流れの画分を生成する際に有効である。
【0133】
図2A~Dは、処理チャネルに対して実質的に直線状に整列した部分と、処理チャネルに対して角度Θだけ傾斜した部分に接続する、直線状に整列しない部分とを有する入口チャネル部分(203)をさらに備える単一磁性部品の構成を示す。非直線状の入口部分は1つまたは複数の交差チャネル(201)を含有し得、直線状の入口部分は1つまたは複数の交差チャネル(202)を備え得る。入口チャネルに対する交差チャネルは、液体、懸濁液、またはガスの導入または除去をもたらす。交差チャネルは、常磁性媒体、緩衝剤、凝集剤、サンプル前処理試薬または反応物などの試薬をサンプル流に導入することができる。交差チャネルは、入口チャネルまたは処理チャネルの中の粒子またはサンプル媒体の他の成分と反応させるための反応試薬をサンプル媒体に導入するためにも使用され得る。たとえば、細胞染色反応またはリガンド結合反応は、分離前に入口チャネルにおいて実行され得る。加えて、いくつかの実施形態では、沈降、凝集、または結晶化反応の場合には、反応は、必要に応じて、処理チャネルの中で実行または継続され得る。交差チャネルのうち1つまたは複数は、分離チャネルに入るのを退けられたかまたは妨げられた粒子を収集するための出力端としても使用され得る。図2Aが示す流体濃縮装置では、処理チャネルの最上部において、磁性部品がX軸に沿って実質的に整列している。入口チャネルの非直線状の部分は、入口チャネルの実質的に直線状の部分に対して約90°である。図2Bが示す類似の実施形態では、処理チャネルの最下部において、磁性部品が実質的に直線状に整列しており、入口チャネルの非直線状に整列した部分は、入口チャネルの実質的に直線状の部分に対して約270°である。図2Cは、図2Aのような、磁性部品が処理チャネルの最下部に沿って整列した実施形態を示す。図2Dは、図2Bに類似の、磁性部品が処理チャネルの最下部に沿って整列した実施形態を示す。図2A~Dの実施形態では、非直線状に整列した入口チャネル部分は、入口チャネルの実質的に直線状の部分に対して約90°(図2B、2D)または約270°(図2A、2C)のいずれかであり、角度Θは、装置要件によって決定され、X軸に対して、Θ≠0°、Θ≠180°、Θ≧30°、Θ≧45°、Θ≧70°、Θ≧90°、Θ≧100°、Θ≧135°、Θ≧140°、Θ≧165°Θ>180°、Θ≧205°、Θ≧225°、Θ≧250°、Θ≧280°、Θ≧300°、もしくはΘ≦330°であり得、および/またはY軸やZ軸に対して、独立して、任意の角度Θであり得る。たとえば、図2Eは、Θ(x)=90°、Θ(y)=180°、Θ(z)=0°である平面図を示す。図2Fは、Θ(x)=90°、Θ(y)=225°、Θ(z)=0°である平面図を示す。
【0134】
図3A~Dは、図2A~Dのものに類似の実施形態を示し、磁性部品107が入口領域へと延在する。
【0135】
図4A~Dが示す流体濃縮装置の実施形態は、入口チャネルを取り囲む円環状磁石またはトロイダル磁石部品(環状磁石)であるさらなる部品(401)を有する。環状磁石が備え得る1つまたは複数の磁石は、それらの磁極に対して反発しあう配向で配置されており、それによって、入口チャネルのX軸に沿って対称な磁力をもたらす。一実施形態では、環状磁石が備える複数の長方形の磁石は、個々の反発しあう磁界が入口チャネルの内部で整列するように、入口のまわりに構成される。環状磁石からの力によって、粒子の常磁性に対する反発力が与えられ、粒子の流速が低下する。環状磁石は、入口チャネルの実質的に直線状の部分に構成され得、磁性部品は、図4Aに示されるように、処理チャネルの最上部のX軸に沿って実質的に整列し、また、磁性部品は、図4Bに示されるように、処理チャネルの最下部のX軸に沿って実質的に整列する。図4Cは、図4Aの構成から、追加の磁性部品または部分(107)が、処理チャネルを越えて入口部分に延在する様子を示す。図4Dは、処理チャネルの軸に沿って整列する磁性部品がなく、環状磁石が流体濃縮装置の入口部分を取り囲むように構成されている様子を示す。環状磁石は、図4A~Dでは入口チャネルの直線状の部分を取り囲む環状磁石401として示されているが、これらの実施形態に限定されることなく、他の実施形態では、入口チャネルに沿って、入口チャネルの非直線状に整列した部分も含めて、どこにでも配置され得る。
【0136】
図5A~Dが示す実施形態では、処理チャネルのX軸の最上部または最下部に沿って実質的に整列した単一磁性部品が、環状磁石401と、非直線状に整列した入口チャネル部分および交差チャネルとをさらに備える。交差チャネルのうち1つまたは複数は、分離チャネルに入るのを退けられたかまたは妨げられた粒子を収集するための出力端としても使用され得る。
【0137】
粒子濃縮装置の実施形態の多くは、処理チャネルのX軸の最上部または最下部のいずれかに沿って実質的に整列した単一磁性部品を備える。本明細書で説明される他の実施形態には、処理チャネルのかなりの部分に沿って整列した磁性部品はない。他の実施形態では、粒子濃縮装置は、処理チャネルのX軸の最上部および最下部に沿って実質的に整列した複数の磁性部品を備え得る。そのような実施形態により、チャネル内の常磁性粒子が磁気浮上することによって、処理チャネル内の不均質な粒子が分離される。一実施形態によれば、この磁気浮上装置が含む上部磁石または下部磁石は、連結された複数の磁石を制御する(すなわち、流体チャネルの処理区間にわたって積極的に磁界を生成させる)ことによって、磁界の大きさおよび勾配プロファイルを制御するように、移動可能に実装された複数の磁石を備える。時間の関数として磁界を制御することにより、試験中またはアッセイ中にいつでも変更され得る、より複雑なプロトコルが可能になる。これによって、静的システムに対する他の利益の中でも、特に、より融通性のあるサンプルの分割と、粒子の分離における、より高い分解能と、より融通性のある、流体経路のパージ、プライム、および処置のための方法と、試験またはアッセイを実行するとき、分離パラメータを最適化または変化させるフィードバックとが可能になる。
【0138】
一実施形態によれば、上部磁石および下部磁石は細長い長方形の磁石(好ましくは棒磁石)を備え、その寸法は、高さ[y軸(縦軸)方向]が約2mm~約25mm、幅(x軸方向)が約30mm~約80mmまたは約95mm、奥行き(z軸方向)が約0.5mm~約7mmの範囲である。好ましくは、上部磁石および下部磁石の寸法は、高さ(y軸方向)が約4mm~約20mm、幅(x軸方向)が約40mm~約60mm、奥行き(z軸方向)が約1mm~約3mmの範囲である。本明細書で説明された好ましい磁石サイズは、1つの磁石によって、または複数の磁石を組み合わせることによって、実現され得る。一実施形態によれば、上部磁石と下部磁石との奥行きおよび幅は実質的に同一である。一実施形態によれば、上部磁石の高さは、下部磁石の高さよりも、少なくとも約25%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、225%、250%、275%、300%、325%、350%、375%、400%、425%、450%、475%、または500%高い。一実施形態によれば、上部磁石の高さは、下部磁石の高さよりも、約25%~約100%、約100%~約200%、約200%~約300%、約300%~約400%、約400%~約500%、または約500%~約600%高い。一実施形態によれば、下部磁石の高さは、上部磁石の高さよりも、少なくとも約25%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、225%、250%、275%、300%、325%、350%、375%、400%、425%、450%、475%、または500%高い。一実施形態によれば、下部磁石の高さは、上部磁石の高さよりも、約25%~約100%、約100%~約200%、約200%~約300%、約300%~約400%、約400%~約500%、または約500%~約600%高い。
【0139】
一実施形態によれば、上部磁石および下部磁石と、流体チャネル、キャピラリまたは中央処理区間との間の縦軸に沿った距離は、少なくとも約1ミクロン、10ミクロン、50ミクロン、または100ミクロンであり、および/または、せいぜい約500ミクロン、1mm、2mm、3mm、4mm、または5mmである。一実施形態によれば、磁石のうちどちらかと流体処理チャネルとの間の縦軸に沿った距離は、約1ミクロン~約5mmの間であり、好ましく約10ミクロン~約2mmである。
【0140】
一実施形態によれば、上部磁石と流体処理チャネルとの間の垂直距離は、下部磁石と流体処理チャネルとの間の垂直距離よりも、少なくとも約25%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、225%、250%、275%、300%、325%、350%、375%、400%、425%、450%、475%、または500%大きい。一実施形態によれば、上部磁石と流体処理チャネルとの間の垂直距離は、下部磁石と流体処理チャネルとの間の垂直距離よりも、少なくとも約25%~約100%、約100%~約200%、約200%~約300%、約300%~約400%、約400%~約500%、または約500%~約600%大きい。
【0141】
一実施形態によれば、下部磁石と流体処理チャネルとの間の垂直距離は、上部磁石と流体処理チャネルとの間の垂直距離よりも、少なくとも約25%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、225%、250%、275%、300%、325%、350%、375%、400%、425%、450%、475%、または500%大きい。一実施形態によれば、下部磁石と流体処理チャネルとの間の垂直距離は、上部磁石と流体処理チャネルとの間の垂直距離よりも、少なくとも約25%~約100%、約100%~約200%、約200%~約300%、約300%~約400%、約400%~約500%、または約500%~約600%大きい。
【0142】
一実施形態によれば、上部磁石および下部磁石は永久磁石または電磁石である。一実施形態によれば、上部磁石および下部磁石の最大エネルギー積は、約1メガガウスエルステッド~約1000メガガウスエルステッドの範囲であり、より好ましくは約10メガガウスエルステッド~約100メガガウスエルステッドの範囲である。一実施形態によれば、上部磁石および下部磁石の表面磁界の強度は、約0.1テスラ~約100テスラの範囲であり、より好ましくは約1テスラ~約10テスラの範囲である。一実施形態によれば、上部磁石および下部磁石の残留磁気は、約0.5テスラ~約5テスラの範囲であり、より好ましくは約1テスラ~約3テスラの範囲である。
【0143】
好ましい実施形態によれば、処理チャネルの一方の側に強い磁性材料を使用して、相対する側には弱い磁性材料を使用することにより、非対称の磁界が実現される。好ましい実施形態によれば、流体チャネルの一方の側に磁性材料を使用して、相対する側には実質的に類似の磁性材料を使用することにより、非対称の磁界が実現される。そのような実施形態によれば、上部磁石と下部磁石とは実質的に同一のサイズでよい。そのような実施形態によれば、上部磁石がネオジムと鉄の合金を含み得、下部磁石がサマリウムコバルトを含み得、両方の磁石が実質的に同一のサイズである。あるいは、上部磁石がサマリウムコバルトを含み得、下部磁石がネオジムを含み得、両方の磁石が実質的に同一のサイズである。
【0144】
一実施形態によれば、代替の磁石構成が使用され得る。本発明による装置は、流体チャネルのまわりに配置された複数の上部磁石および複数の下部磁石を含み得る。上部磁石は、前方の上部磁石、中央の上部磁石、および後方の上部磁石を含み得る。下部磁石は、前方の下部磁石、中央の下部磁石、および後方の下部磁石を含み得る。
【0145】
別の磁石構成によれば、装置は、前方の上部磁石、後方の上部磁石、前方の下部磁石、および後方の下部磁石を含み得、これらの磁石は流体チャネルのまわりに配置される。前方の上部磁石と後方の下部磁石とは、磁力が反発しあう配向に配置される。非対称の磁気浮上装置は、参照によって本明細書に組み込まれている国際特許出願PCT/US19/24138においてさらに説明されている。
【0146】
図7A~Dは、オプションの環状磁石401、および例示的な配向におけるオプションの入口チャネル部分201、202、および203を有する二重磁性部品の粒子濃縮装置の実施形態を示す。
【0147】
本明細書で説明される粒子濃縮装置のある特定の実施形態には、処理チャネルのかなりの部分に沿って整列した磁性部品はない。粒子濃縮は、沈降と、入口チャネル内の粒子の、克服可能な磁力反発や入口チャネルのジオメトリによって適宜強化され得る、流れによる前濃縮によって、入口チャネルにおける粒子を適宜前濃縮することとの組み合せによって実現される。図8A~Dは、装置構成の実施形態を示す。図8E~Hは、オプションの交差チャネル(複数可)への流体の移動を制御する、入口チャネル弁(801、802、803)の組込みを示す。ポンプ(804)は、入口チャネル、入口交差チャネル、出口チャネル、分流チャネルなどの任意のチャネルに関連付けられてよい。ポンプは、本明細書でさらに説明されるように、様々な実施形態において、流体連通したチャネルに関連する複数のポンプで動作したとき、対応するチャネル内の流体および累積流れを駆動するのに必要な陽圧または陰圧を与えるように構成され得る。図8Hは、入口交差チャネル805および806を有する粒子濃縮装置を示す。図8Hに示されるように、入口交差チャネルは、環状磁石の上流、下流、または両方にあってよい。一実施形態では、入口交差チャネル(806)は、環状磁石の上流にある処理チャネルに対して実質的に直線状の入口チャネルの部分にのみ設けられる。
【0148】
図9は、単一磁性部品の粒子濃縮装置の一実施形態を示す。図9Aは、流れを入口チャネルから処理チャネルへと駆動するポンプ(804)を有する粒子濃縮装置を示す。図9Bは、出口チャネルの流量を個々に制御する複数のポンプ(804)を有する粒子濃縮装置を示す。組み合わせた流量は、処理チャネルの流れと入口チャネルの流れとを加算したものである。流量は、粘度、粒子の濃度などのサンプル流体特性と、入口チャネル、処理チャネル、および出口チャネルの寸法および構成とに依拠して、0.1μL/分~1mL/分の範囲になり得る。好ましい実施形態では、処理チャネルおよび出口チャネルの流量は、約0.2μL/分~約200μL/分、または約0.5μL/分~約40μL/分になり得る。濃縮は、流れ停止または断続的な流れ動作の下でも実行され得る。出口チャネルを出口ポート(903)または(904)へと分流するために弁(902)が作動され得る。いくつかの実施形態では、入口チャネルポンプ(複数可)および出口チャネルポンプ(複数可)は、それぞれ処理チャネルに関連して、陽圧構成または陰圧構成のいずれかにおいて採用される。流れ停止状態の下でサンプルの分離が実行され、サンプルは、処理チャネル内の流れを再開することにより、別個の出口チャネルに取り出される。
【0149】
本発明によれば、粒子濃縮装置は、装置を通して流体を駆動するための1つまたは複数のポンプを含み得る。「ポンプ」は、装置における別々の位置の間に圧力差を印加するあらゆる装置を指すように使用される。ポンプは、システムの入口側[流体を出口(複数可)の方へ押す]、もしくは出口側[液体を入口(複数可)から引く]のいずれか、または両方の組み合せに配置されてよい。圧力差は陽圧または陰圧であり得る。圧力差は、複数の出口または入口にわたって共通に印加されてよく、または、それぞれの出口または入口が圧力差を直接印加されるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、入口チャネル内の、粒子の前濃縮力、磁力、沈降力、または力の組み合せを克服するために圧力差が印加され得る。ポンプは、印加する圧力差を制御できるように可変でよい。ポンプのタイプは、それだけではないが、シリンジポンプなどの容積型ポンプ(positive displacement pumps)と、蠕動ポンプと、ダイヤフラムポンプと、調整された静圧源と、液体の量の増減などの重力で制御される圧力源と、プラスチックブリスターまたはフォイルブリスターなどの手動の圧力源とを含む。
【0150】
いくつかの実施形態では、ポンプは、チャネル構造を通して流体を全体的に駆動するように入口ラインに含まれてよく、流体を、導かれた出口ラインを通して駆動するように、ある特定の出口チャネルまたは出口ポートに含まれてもよい。たとえば、ポンプは、関心のある1つまたは複数の粒子の粒子富化層または粒子枯渇層の高さ(複数可)に関連した1つまたは複数の出口ラインに含まれてよい。加えて、すべての出口ラインが、関心のある1つまたは複数の粒子の予期される流れの高さ(複数可)に基づいて活性化または非活性化され得る可変ポンプを含み得る。同様に、外部ポンプは可変圧力差を与えるよう制御され得る。実施形態は、1つまたは複数の出口収集チューブを保持するための受け口、1つまたは複数の入力チューブを保持するための受け口、たとえば、1つまたは複数の出口チューブをほぼ摂氏4℃の温度で保管する冷却板といった、1つまたは複数のチューブ用の温度制御される受け口を備える部品、あるいは入口または出口をマイクロプレートのウェルに結合するための位置決め手段を含み得るマイクロプレート保持具を含む、追加の部品をさらに備え得る。一実施形態では、出口チャネルまたは出口ポートはピペット操作ロボットに流体結合される。ピペット操作ロボットは、処理チャネルからの濃縮された粒子集団のアリコートまたは画分を選択的に分配し、代わりに、またはそれに加えて、処理チャネルからの粒子枯渇流出液のアリコートまたは画分を分配するように、粒子濃縮装置と統合され得る。粒子濃縮装置は、この装置による流体および/または粒子の流れおよび分離を記録し、分析し、および/または制御するようにプログラムされたマイクロプロセッサまたはコンピュータと統合されてもよい。
【0151】
図10は、例示的な粒子濃縮装置を備える粒子濃縮システムを示す。粒子濃縮装置は、1つまたは複数のセンサをさらに備え得る。たとえば、粒子濃縮システムには処理チャネルセンサ(1001)および入口チャネルセンサ(1002)が実装され得る。システムインテグレータ(1003)は、センサ(1001)および(1002)から信号を受け取るために信号プロセッサを備えることができ、事前にプログラムされた命令またはプログラマブル命令によって、入口ポンプ(複数可)(804)または出口チャネルポンプ、環状磁石(201)または他の電磁部品の磁界、弁または他のインターフェース装置もしくはインターフェース部品などの他の部品を制御する。センサは、光センサ、容量性センサ、導電性センサ、熱センサ、流量センサ、超音波センサ、重力センサ、磁界センサ、またはこれらの組み合せから選択される。実施形態では、センサは、光検出器、マルチ画素撮像検出器、磁界検出器、電気化学検出器、光学的位相検出器、散乱検出器、ホールセンサ、磁気抵抗センサ、電磁放射測定センサ、表面弾性波センサ、バイオセンサ、またはこれらの組み合せである。センサは、粒子の存否もしくは量、または粒子もしくはサンプル流の他の物理的性質または化学的性質を検出するために、処理チャネルまたは入口チャネルの一部の内部に、またはこれに隣接して、1つまたは複数のセンサをさらに備え得る。
【0152】
図18の粒子濃縮装置の平面図に示されるように、粒子濃縮装置は、可視化部品または撮像センサ、センサ照明器、およびセンサ光学系をさらに備え得る。可視化部品は、粒子が処理チャネルを通過するときにリアルタイムで観察する能力および/または記録する能力を可能にするかまたは強化する任意の装置を備え得ることにより、粒子単離の程度および/または粒子単離の速度を含む、粒子単離の観測および/または測定を可能にする。可視化は、粒子および/またはサンプルの他の成分のサイズ、形状、または他の特性の分析も含み得る。一実施形態によれば、処理チャネルを取り囲むことによってこれを画定するために使用される材料は、少なくとも処理チャネルの一区間に沿って、ここを通る粒子の観測を容易にするために、澄んでいるかまたは透明である。可視化システムは、サンプル成分の明視野照明、暗視野照明、および/または蛍光検出を可能にするための光学系を採用し得る。
【0153】
一実施形態では、粒子濃縮装置は、チャネルの相対する側に、2つの光学的に澄んでいるかまたは透明なチャネル区間をそれぞれ備える。この実施形態によれば、前記澄んでいるかまたは透明な区間の一方の側に配置された可視化部品が、この区間を通して合焦され、また、相対する側に照明部品が配置され、前記澄んでいるかまたは透明な第2の区間を通して合焦される。照明部品は、可視化部品による処理チャネル内の粒子の可視化を容易にするのに十分な光を供給するように構成される。別の実施形態では、粒子濃縮装置は、チャネルの一方の側に、1つの澄んでいるかまたは透明な区間を含む。この実施形態によれば、前記澄んでいるかまたは透明な区間の一方の側に配置された可視化部品が、この区間を通して合焦され、また、同じ側に照明部品が配置され、前記澄んでいるかまたは透明な区間を通して合焦される。照明部品は、可視化部品による処理チャネル内の粒子の可視化を容易にするのに十分な光を供給するように構成される。
【0154】
好ましい実施形態では、照明システムは可視光または紫外線の光源である。照明光源は、処理チャネルを含む光学的に透明な流路においてサンプルを照光するように構成され得、光は、流路を通って、照明光源の反対側の光センサまで伝送される。一実施形態では、照明光源は、光センサに対して角度的に隣接し、そのため、光源からの光は、流路内のサンプルから光センサへと反射される。一実施形態では、光源は、紫外線の光源であって、サンプルに関連する人工蛍光または自然蛍光からの可視光が光センサによって検出されるように、流路内のサンプルを照光するように構成して配置される。
【0155】
V.粒子の単離および濃縮の方法
本発明の方法によって有機粒子または無機粒子が濃縮され得る。粒子は、細胞、細胞片、細胞器官(たとえば細胞核)、クラスタ、組織、組織成分、細菌、菌類(酵母および糸状菌)、ウイルス、原生動物、藻類を含む微生物、およびその断片、細胞器官、クラスタ、およびその他の成分などの生物学的存在でもよい。粒子は、高分子、合成物、キレート、コンジュゲート、結晶、非晶質固体、ゲル、凝固物などであり得る。DNA、RNA、タンパク質は、本発明の方法の下で濃縮され得る。ビーズ、シェル、ナノ粒子、積層物、ならびに沈澱物および共沈物は、同様に濃縮され得る。粒子の単離を必要とする多くの用途には、他の粒子から類似の粒子を分離する必要がある用途と、粒子の識別と、粒子の取扱いまたは操作とが含まれる。そのような用途は、それだけではないが、生細胞と死細胞とを分離すること、生細胞、死細胞および核破片から細胞核を分離すること、循環腫瘍細胞の単離および/または処置、エマルションPCR富化、多血小板血漿などの血漿の生産、性別選択などの特定の形質のために精子を単離すること、細菌負荷検査、抗生物質耐性検査、敗血症または血液汚染の識別、免疫細胞単離、化合物スクリーニング、エクソソーム分離、または細胞外小胞の分離を含む。本発明の粒子単離方法は、これらの用途のうち任意のものにおいて利用され得る。
【0156】
サンプル媒体の中に存在する粒子は、粒子の濃度を実質的に富化してサンプル媒体の層を実質的に枯渇させる条件の下で、粒子濃縮装置において濃縮される。不均質な粒子集団を有するサンプル媒体は、サイズと、密度と、常磁性の不均質性および磁力の選択的配向と、処理チャネルの流量とに基づいて選択的に富化され得る。粒子の不均質な集団は生体サンプルから導出され得る。場合によっては、生体サンプルには、説明する例として、血液、唾液、尿、精液、血漿、血清、および便を含む体液と、肌スワブ、肛門スワブ、鼻スワブ、および膣スワブ、またはドアの取手からの環境スワブを含むスワブと、涙、肺からの洗浄液、または胸からの間質組織液を含む近位体液とがある。場合によっては、生体サンプルには、説明する例として、生細胞および死細胞、溶解細胞、循環腫瘍細胞、核酸、ヌクレオチド、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗原、抗体、または免疫細胞(たとえば白血球、T細胞、食細胞)がある。場合によっては、生体サンプルには、説明する例として、生体分子、細胞、タンパク質、脂質、炭水化物、微生物、ウイルス、バイロン(viron)、または細菌がある。
【0157】
サンプル媒体における粒子濃縮に関する粒子富化画分の濃度のレベルは、少なくとも30%、好ましくは40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%である。一実施形態では、粒子枯渇画分には実質的に粒子がない。
【0158】
試薬流体またはガスは、処理チャネルへの導入に先立って、サンプル媒体が、交差チャネルを含有している位置に沿って通過する前に、通過するのと同時に、または通過した後に、流れの中に導入されてよい。一実施形態では、処理チャネルにおける濃縮、単離または分析のための準備として、常磁性媒体、緩衝剤、凝集剤、サンプル前処理試薬または反応物が、サンプル媒体の中に導入して混合され得る。
【0159】
粒子は、ある流量で処理チャネルの中に導入され、そこで沈降し、および/または磁力反発および/または磁力吸引によって、流れの内部に粒子富化層および粒子枯渇層を形成する。様々な実施形態において、流れの中で、連続流れ状態、流れ停止状態、または断続的な流れ状態の下で、粒子富化層および粒子枯渇層が形成される。粒子富化層および/または粒子枯渇層は、処理チャネルにおいて流れに分割されるとき、収集される。粒子枯渇流れおよび/または粒子富化流れは、処理チャネルから流出すると、小分けまたは分画へと選択的に向けられる。関心のある粒子は、処理チャネルの内部で、流れ層におけるそれらの平衡高さ(またはほぼ平衡高さ)に一旦到達すると、処理溶液を複数の画分に分割するスプリッタを通過する。関心のある粒子は、処理溶液の内部で、幾何学的に単離されているので、実質的にすべてが、ある特定の幾何学的画分の流出液の中に保たれる。次いで、関心のある粒子を含有して流出する幾何学的画分(複数可)が収集され、関心のある粒子が複数の画分に存在する場合には再結合され、それによって、関心のある粒子を単離させる。いくつかの実施形態では、常磁性媒体から細胞を分離しなければならないことがある。常磁性媒体から細胞を分離することが望まれる場合、これは希釈によって行われ得る。
【0160】
あるいは、サンプル溶液の、それぞれの流出画分への分割は、個々の出口に向かう流体流れを、分割比を変更することができるように増減することによって実現され得る。一実施形態によれば、分割比は50%まで加減され得る。たとえば、スプリッタが、断面が等しい2つのチャネルを含むなら、分割の比は1:1である。分割の比は、1つの画分に他の画分よりも大きい(または小さい)ポンピング率を適用して、より大量の(またはより小量の)流体を回収することにより、たとえば約3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または10:1に変更され得る。好ましい実施形態では、そのような比に関する分割は、約2:1~約1:2の範囲になる。さらに好ましい実施形態では、そのような比に関する分割は、約10:1~約1:10の範囲になる。分割は、上部の出口チャネル流量と下部のチャネル流量との比を、それぞれ約1:10、約1:9.5、約1:9、約1:8.5、約1:8、約1:7.5、約1:7、約1:6.5、約1:6、約1:5.5、約1:5、約1:4.5、約1:4、約1:3.5、約1:3、約1:2.5、約1:2、約1:1.5、約1:1、約1.5:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約3.5:1、約4:1、約4.5:1、約5:1、約5:5、約5.5:1、約6:1、約6.5:1、約7:1、約7.5:1、約8:1、約8.5:1、約9:1、約9.5:1、約10:1、とすることができる。
【0161】
一実施形態では、濃縮された粒子を含むサンプル流体は、処理区間の最後尾に到達するまでは比較的遅い流速で流体チャネルを通過してから、そこで、流速が少なくとも2倍になる。好ましい実施形態では、サンプル流体の流速は、処理区間の最後尾において少なくとも4倍に増加する。場合によっては、サンプル流体は、本明細書で説明されたように、磁石環または対の上部磁石と下部磁石とによって生成された磁界にさらされる。場合によっては、サンプル流体は磁界にさらされない。
【0162】
アリコートまたは画分は、チューブまたはプレートなどのチャンバまたは容器へと分流され得る。画分またはアリコートは、さらなる処理、分析、または反応の対象になり得る(maybe subjected to)。一実施形態では、チャンバ、プレート、ウェル、および/またはチューブは、後続の処理工程のために必要な材料の所定量を含み、ユーザは、細胞を濃縮するばかりでなく、細胞をある媒体から別の媒体へと移すこと、または試薬を追加することもできる。例示的な試薬は、それだけではないが、RNA単離、DNA単離、mRNA単離、タンパク質単離、培養基、培地、および定着剤に関する試薬を含む。単離されたアリコートおよび/または画分は、磁気浮上および磁気分離、化学分析または生化学分析、分画、誘導体化、シークエンスサンプル調製、マススペクトル分析、NMR分析、顕微鏡分析、FACS選別および分析、およびX線回折分析を含むさらなる処理の対象になり得る。生体細胞は、収集された自然な状態において、または遺伝子組換えもしくは生化学的修飾を受けて、診断手順または治療手順に使用され得る。
【0163】
粒子は、入口チャネル、処理チャネル、または出口チャネルにある間に、速度、密度、生物学的、化学的、遺伝学的、分類学的、構成上の、生存率、濃度、または配向を含む特性をデータ収集し得る。データ収集は、入口チャネル、処理チャネル、出口チャネル、またはこれらの組み合せ、およびチャンバ、ウェル、プレートまたはチューブの内部にある、隣接した、または呼掛け信号を送信するように連結された、1つまたは複数のセンサまたはセンサの配列を用いて実行され得る。検出された特性は、独立した分析のために使用され得、システムの動作を制御するかまたは自動化するためにシステムコントローラ部品によって利用され得る。制御下のシステム部品およびパラメータは、サンプル媒体の流量と、磁界強度と、分流、収集、分画のための弁作動と、後続の反応条件とを含む。入口チャネル内のセンサは、一実施形態では、入口チャネル内のサンプル流れの中に試薬流体または試薬ガスを自動的に導入するために、システムコントローラに動作可能に連結されて統合される。
【0164】
図11は、本発明の装置を利用する、粒子の濃縮を示す。粒子は、入口チャネルを通るサンプル媒体の流れによって処理チャネルに導入される。沈降力および/または磁気反発力が、流れの下部層において粒子を濃縮し、濃縮された粒子は、下部の出口チャネルを通って収集される。粒子枯渇層は上部の出口チャネルを通って収集される。この方法は、(i)処理チャネル、入口チャネル、および複数の出口チャネルを有する小容量の流体装置を用意する工程と、(ii)少なくとも粒子富化層および粒子枯渇層を有するサンプル流を生成する条件の下で、粒子含有サンプルを、入口チャネルを通して処理チャネルに流し込む工程と、(iii)第1の出口チャネルを通して粒子富化層を流し、粒子富化流を生成する工程と、(iv) 第2の出口チャネルを通して粒子枯渇層を流し、粒子枯渇流を生成する工程と、(v)1つまたは複数の出口チャネルからの流れのうち1つまたは複数を収集する工程と、を含む。
【0165】
図12に示される流れ支援の粒子濃縮方法では、入口チャネルは、処理チャネルに対して実質的に直線状の部分と、角度Θだけ傾斜した部分に接続する、処理チャネルに対して非直線状に整列する部分とからさらになる。入口チャネル内の粒子を濃縮するために、粒子含有サンプル媒体が、入口チャネルの非直線状に整列した部分の内部での沈降を可能にするのに十分な流量で、入口チャネルを通して流される。流れの粒子富化層および粒子枯渇層を形成するために、連続した沈降またはさらなる沈降をもたらすように、適宜、粒子の磁力反発を用いて、処理チャネルへの粒子含有サンプルの流れが維持される。流れのそれぞれの層が、それぞれの出口チャネルに収集される。いかなる理論にも束縛されることなく、懸濁されている液体(たとえば水、溶媒)よりも密度が高い粒子の、重力がある状態において沈降する傾向と、磁界からの反発作用との組み合せによる、粒子の濃縮が考えられる。粒子は、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも30分、または少なくとも60分にわたって沈降し得る。粒子は、少なくとも10秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも40秒、少なくとも50秒、少なくとも60秒、少なくとも100秒、または少なくとも200秒にわたって沈降し得る。いくつかの実施形態では、濃縮された粒子が流体チャネルを通過する流量は、高々50μl/分(マイクロリットル/分)、高々40μl/分、高々30μl/分、高々20μl/分、高々10μl/分、高々5μl/分または高々2μl/分である。いくつかの実施形態では、濃縮された粒子が約20μl/分の流量で流体チャネルを通過することにより、液体は流れ装置を通過するが、粒子は磁界の外部に蓄積することが可能になる。いくつかの実施形態では、濃縮された粒子が約10μl/分の流量で流体チャネルを通過することにより、液体は流れ装置を通過するが、粒子は磁界の外部に蓄積することが可能になる。フローセルを通過する液体は、収集チャンバに通じる出口チャネルのうち1つを通って沈殿することになる。一旦、液体の大部分が装置を通過して、粒子がフローセルに入るのが見届けられたら、懸濁した粒子(たとえば懸濁した細胞)を有する液体は、関心のある粒子を収集するための特定の収集チャンバに通じる第2の出力チャネルへ、より大きい流量で通される。
【0166】
図13は、処理チャネル内の、粒子濃縮画分の流れ支援の形成を示す。濃縮(粒子富化)画分が、下部の出口チャネルを通って収集され、粒子の高度に富化されたアリコートをもたらす。流れの粒子富化部分は、処理チャネル内の粒子を観測する撮像センサなどのセンサによって、または処理チャネル内の分画パターンが特徴付けられるサンプルの画分を、タイミングを計って収集することにより、識別され得る。
【0167】
図14は、処理チャネルに入る前の粒子に磁気反発力を印加することによる、入口チャネル内の粒子の前濃縮を示す。処理チャネルへの粒子の流入は、チャネル内の磁気反発力を中止もしくは低減すること、流れを、磁気反発力を克服するように調整すること、または磁力低減と流れ調整との組み合せによって達成される。流れの調整は、サンプル媒体の流れの流量を増加すること、または入口チャネル圧力を脈動させるなど、流れを変動させることによって、処理チャネルに粒子を導入することを含み得る。
【0168】
図15に示す粒子濃縮の方法では、処理チャネルのX軸に沿って整列した磁性部品が、入口チャネル内に磁気反発力を及ぼして、処理チャネルの中に粒子が流入するのを抑止する。流量は、入口チャネル内の粒子を濃縮するように維持される。粒子が十分に前濃縮されると、磁気反発力が克服されて、粒子は処理チャネルに導入される。前濃縮の度合いはサンプル媒体の流量によって調整される。処理チャネルに入る粒子は、沈降する/磁気的に反発されるか、または処理チャネルの流れの粒子富化層の中に吸引され、出口チャネルにおいて収集される。
【0169】
図16による方法の一実施形態では、サンプル媒体が処理チャネルに流入するのに続いて、気泡または非混合性小滴(1601)が導入される。気泡または小滴は、処理チャネルにおいてサンプル媒体の後に流され、残っている粒子富化層および粒子枯渇層を、処理チャネルから出口チャネルへ実質的に洗い流す。こうすると、サンプル画分の実質的な完全単離が可能になり、離散サンプルまたはサンプル画分が処理される。空気を導入する頻度は、より効率的な処理のために、大きな初期のサンプル容量をより小さい単位に分解するように調節され得る。
【0170】
本発明の方法の一実施形態には、全血サンプルまたは希釈血液サンプルを用意することと、サンプルに、本明細書で説明されたサンプル濃縮方法を施すことと、全血サンプルまたは希釈血液サンプルから血漿および/または血液細胞を単離させることとを含む、血液サンプルを分画する方法がある。血液サンプルは、末梢血サンプル、臍帯血サンプルもしくは胎児血サンプル、または動脈血サンプルからの全血サンプルもしくは希釈血液サンプルでよく、容量は、約50μL~約50mL、50μL~約20mL、50μL~約10mL、または約50μL~約5mLでよい。この方法によれば、分離される血漿画分は、血液サンプル中の血液細胞の約1%未満~約0.01%未満を含有してよく、または血液細胞を実質的に含有しなくてもよい。単離された血液サンプル画分は、酵素免疫アッセイ、化学発光の免疫アッセイ、赤血球凝集/粒子凝集アッセイ、核酸増幅技術アッセイ、薬品アッセイ、法医学アッセイ、または遺伝形質アッセイなどの診断アッセイにおいて使用され得る。
【0171】
血液細胞濃縮/血漿分離の一例として、本発明の粒子濃縮装置および方法において、臍帯血サンプルが血漿と細胞の画分とに分画された。(10mLの)血液サンプルが得られ、100nMの終濃度を得るためにガドブトロールの常磁性媒体が追加された。処理チャネル(寸法は、X×Y×Zが50×1.9×1mm)の最上部のX軸に沿って実質的に整列した単一磁性部品を伴って構成された処理チャネルの入口チャネルを通して、合計500マイクロリットルのサンプル量が、平衡のために約5分を見越して導入され、次いで、20マイクロリットル/分の開始流量で流された。組み合わされた20マイクロリットル/分の流量は、最下部の収集チャネルに流れる10マイクロリットル/分および最上部の収集チャネルに流れる10マイクロリットル/分を含むものであった。ライブ撮像を使用して分離をモニタリングした後に、流量が50マイクロリットル/分に増加され、次いで100マイクロリットル/分に増加された。最下部収集チャネルへの流量と最上部収集チャネルへの流量との比は、それぞれ1:1から4:1へと調節され、次いで、10:1(10が最下部収集チャネル側、1が最上部収集チャネル側である)を超過するほど非対称に調節され、最下部チャネルに、より大きい割合の流体を取り出すことによって高純度が維持された。流れの最下層に血液細胞富化層の濃縮が生じ、最下部出口チャネルを通じて収集された。図17は、前方の領域における処理チャネルの顕微鏡写真(スケールは流路高さが1.9mmである)であり、サンプルスプリッタは、下部の血液細胞層と上部の血漿層との実質的な濃縮および単離を示している。
【0172】
VI.フローセルカートリッジ
精密さ、正確さ、および再現性は科学装置の要件である。さらなる検討は、使用の容易さおよび製造可能性を含む。本発明のフローセルは、不可能であった、あるいは、ときとして長期にわたり、および/または複雑な、高費用の手順でなければ達成できなかった、科学的な実験作業および開発を可能にする有効な装置に必要な特徴をすべて有するものである。
【0173】
本発明のフローセルカートリッジは平面基板を備え、この平面基板は、上面および下面と、撮像面を形成する第1の長手方向の面と、照明面を形成する第2の長手方向の面と、第1および第2の横面と、上面における入口ウェルと、入口チャネルと、入口チャネルと流体連通し、長手方向の面に対して実質的に平行に配置されるサンプル処理チャネルと、処理チャネル内のサンプルスプリッタと、処理チャネルと流体連通する複数の出口チャネルと、複数の出口チャネルの各々と流体連通する複数の収集ウェルとを備え、基板が、光学的に透明な材料を適宜含み、処理チャネルが、撮像面に対して空間的に片寄るように基板の平面内でオフセットされる。平坦な構成によって、カートリッジに組み込まれるのに必要なすべてのフローセル機能が可能になり、研究所または臨床のセッティングにおける性能および再現性が向上する。動作において、性能向上のためには、処理チャネルを通る出口チャネルへの流れに、乱れができるだけないことが重要である。空気と液体との圧縮率の差や、流れを制限する可能性があるチャネル構成の影響が、サンプル溶液のメニスカスと相互作用するかまたは乱流を誘起することがあり、粒子分離の性能が低下する恐れがある。処理チャネルに入る前のサンプルの流れ条件を最小化すると、サンプル損失が減少し、サンプル付着の可能性および/またはフローセルのチャネルの内部に粒子が凝集する可能性も低下し、サンプル細胞または組織の生存率に対する、サンプル処理の影響も緩和する。本発明の機能によって、これらおよび他の影響が最小化され、性能および再現性が改善される。フローセルの内部の撮像が望まれる場合には、平面基板は光学的に透明な材料を含む。ガラス、プラスチック、またはサイクリックオレフィンポリマー(COP)もしくはサイクリックオレフィンコポリマー(COC)を含むポリマー材料は、この用途の要件に適合する。COPまたはCOCは、精密射出成形によって利用され得る。射出成形、エッチング、レーザオブレーション、機械加工、または3Dプリントによってカートリッジを形成することができる他の材料も利用され得る。平面基板の一般的な寸法は、長さが少なくとも50mmであり、幅が20mmであって、厚さが少なくとも1.5mmである。オプションの範囲は、長さが少なくとも100mmであり、幅が35mmであって、厚さは約2~約6mmである。カートリッジの長手方向の面は、照明および撮像のための導波路として働く。従って、処理チャネルは、基板の平面においてオフセットされ、基板の長手方向の撮像面に対して平行に隣接する。撮像側壁からの距離は、約0.5mm~約10mm、好ましくは約0.5mm~約5mmであり得、適宜約1mm~約3.5mmであり得る。一実施形態では、撮像壁からの処理チャネルの間隔は約2mmである。処理チャネルのチャネル寸法は、本明細書で以前に説明した実施形態のうち任意のものでよい。処理チャネルの容量は、約10μL~約800μLに、好ましくは約50μL~約600μLに構成され得、また、100μL~約400μLまたは約150μL~約300μLに構成されてもよい。いくつかの実施形態では、この容量は、少なくとも約150μL、少なくとも約200μL、少なくとも約250μL、または少なくとも約300μLである。出口チャネルの合わせた容量は、処理チャネルの容量よりも大きくなければならない。システムの実施形態において動作しているとき、2つの出口チャネルの間で分割される流量は、均等に分割され得、または約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、もしくは約2:1~約1:2の範囲で分割され得、または1:1から、約50%以内、約40%以内、約30%以内、もしくは約15%以内で変化し得る。
【0174】
本発明のフローセルは、平面基板上の収集ウェルを含んでよい。収集ウェルは、出口チャネルと流体連通する入口を特徴とし、入口は第1のウェル高さにあり、入口ポートの開口からウェルの床に移行するステップを伴って構成される。これは、サンプル画分がウェルへと流れるための移行面をもたらし、サンプル画分の出口チャネルへの逆サイホン作用と、収集ウェル内の気泡形成とを抑止することができる。収集ウェル内の出口チャネルの開口は、収集ウェルの床から、入口チャネルの開口よりも高いところにある。内部出口は、流れ調整器と連通して配置され得、場合によっては、流れ調整器は、フローセルを通して流れを供給する個々のポンプである。動作において、収集ウェルは、材料の層またはフィルムで密封され、サンプルおよびサンプルの画分の、フローセルを通る流れまたはこれらのポンピングを可能にするための、密封されたシステムをもたらす。フローセル層を組み立てるとき、接着剤を使用するなら、生体適合性のある接着剤を用意することが重要である。接着剤の成分が溶液に浸出して、細胞に付着するか、または溶液からの分子を結合したり、自家蛍光性になったり、表面積を増加させる組織を有することによって細胞に影響を与えて過度に親水性または疎水性にしたりするのを、最小限にするかまたは防止するために、接着剤を正しく選択する必要がある。好ましい接着剤は、シリコーンまたはシリコーンベースの接着剤である。
【0175】
VII.細胞分離システム
本発明の細胞分離システムは、フローセルカートリッジを保持するための収容ブロックと、光センサ、レンズ、および照明光源を備える光学システムと、複数の流れ調整部品とを備え、収容ブロックによって、フローセルカートリッジが、光学システムに対して光学的に位置合わせして、取外し可能に配置され、磁性部品が、フローセルの処理チャネルに隣接して、取外し可能に係合し、フローセルカートリッジの複数の出口チャネルが、複数の流れ調整部品と流体連通して取外し可能に配置される。光学系は、前述のフローセルカートリッジの処理チャネルの微視的な撮像をもたらすように構成される。光学系は、オプションの紫外線励振器モジュールを用いて蛍光発光に関する撮像をもたらすように構成して配置されてもよい。光学系は、平面基板内の処理チャネルを通る光伝送をもたらすように構成して配置された可視光の照明光源を備え得る。収容ブロックは、平坦なフローセルカートリッジを、光学系に対して、撮像光学系が平坦なカートリッジの撮像面と整列し、しかも可視光放射源が平坦なフローセルカートリッジの照明面を照光するような配向に保持するように構成して配置される。光学系は、適宜、約474nmおよび/または560nmの波長の紫外線の照明を、カートリッジの処理チャネル内のフルオロフォアを励起するような、平坦なカートリッジの撮像面角度方向に当てるように構成して配置された1つまたは複数の紫外線照明光源をさらに備えてもよい。
【0176】
処理チャネル内の蛍光性エンティティを撮像するために、光学系は、好ましくは約524nmの波長と628nmの波長とに中心がある帯域の放射を通す二重帯域通過フィルタを備えてよい。
【0177】
収容ブロックのオプション機能には、フローセルカートリッジの最上部または最下部における出口とインターフェースする一連の流れ調整器アダプタがある。流れ調整器アダプタは、システムにおけるポンプなどの流れ調整器と、収集ウェル出口チャネルなどのフローセル出口チャネルとの流体連通を促進する。収容ブロックは、フローセルカートリッジを一旦挿入されると、カートリッジを支持し、平坦なカートリッジの照明および撮像の面を、光学撮像システムと整列させ、磁性部品をフローセル処理チャネルの上方および下方に整列させて、望ましい場合には、流れ調整器アダプタをフローセルカートリッジの対応する出口チャネルと流体連通させて配置するように、機械的に作動する。
【0178】
システムの流れ調整器は、フローセルカートリッジ内のサンプルおよびサンプル画分に対して流れを供給する。流れ調整器によって供給される流量は、分離中、1μL/分~1mL/分の範囲になり得る。流量は、少なくとも約25μL/分、少なくとも約50μL/分、少なくとも約100μL/分、少なくとも約200μL/分、少なくとも約250μL/分、少なくとも約300μL/分、または約300μL/分~約1mL/分であり得る。合計のサンプル流量は、約50μL/分、約75μL/分、約100μL/分、約150μL/分、約200μL/分または約300μl/分であり得る。システムの実施形態において動作しているとき、2つの出口チャネルの間で分割される流量は、均等に分割され得、または約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、もしくは約2:1~約1:2で分割され得、または1:1から、約50%以内、約40%以内、約30%以内、もしくは約15%以内で変化し得る。
【0179】
システムの磁性部品は、上記で説明されたような材料、サイズ、および強度であり得、上記および下記で説明されるような構成の中に配置され得る。
【0180】
VIII.細胞および細胞核の分離および単離
生細胞と死細胞との混合物を分離するための方法は、処理チャネルおよび複数の出口チャネルを備える、上記実施形態のフローセルカートリッジなどのフローセルカートリッジを用意することであって、フローセルカートリッジの出口チャネルの合わせた容量が、処理チャネルよりも大きい容量を有する、フローセルカートリッジを用意することと、処理チャネルに、生細胞および死細胞を含むサンプル溶液と、常磁性化合物とを流すことと、処理チャネルに対して実質的に平行に整列された磁界の中にフローセルカートリッジを配置することと、処理チャネルおよびその中に含まれるサンプル全体を、処理チャネルの内部で、生細胞と死細胞とを垂直方向の距離によって分離するのに十分な期間にわたって、磁界の中に、流れ停止状態に保って、生細胞を富化したサンプル画分と死細胞を富化したサンプル画分とを、出口チャネルに同時に回収することとを含む。この方法は、サンプル溶液を導入するまではいかなる液体または常磁性化合物も実質的に含んでいないフローセルカートリッジを用意することをさらに含んでよい。
【0181】
本発明の方法において使用されるフローセルカートリッジは、処理チャネルの断面積よりも小さい断面積を有する出口チャネルであって、蛇行形状のチャネルの構成を一例とするコンパクトな経路を辿って配置される出口チャネルを備え得る。磁界は、処理チャネルの最上部垂直面の近接および最下部垂直面の近接に配置され、各磁界が、約0.5テスラ~約2.0テスラの間、適宜約0.9テスラ~約1テスラの間の類似の強度および表面磁界の強度を有する。表面磁界の強度は、約0.5テスラ、約0.6テスラ、約0.7テスラ、約0.8テスラ、約0.9テスラ、または約1.0テスラでよい。
【0182】
この方法は、サンプル溶液中に、常磁性化合物を、約50mM~約200mMの濃度で、適宜約65mM~約175mMの濃度で、さらには適宜約70mM~約150mMの濃度で提供することをさらに含み得る。濃度は、約70mM、約75mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、約140mM、約150mM、約160mM、約170mM、約180mM、約190mM、または約200mMであってもよい。
【0183】
この方法は、サンプル画分を、出口チャネルへと、約75μL/分~約150μL/分の流量で、適宜約75μL/分、約90μL/分、約100μL/分、約110μL/分、約120μL/分、または約150μL/分の流量で、回収する工程をさらに含み得る。
【0184】
この方法は、生細胞画分の並外れた回収率および純度をもたらす。富化して回収されるサンプル画分には、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%。または少なくとも約90%の生細胞が含まれ、富化して回収されるサンプル画分における生細胞の収率は、サンプルの全体の生細胞組成の、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または少なくとも約75%である。
【0185】
生Jurkat細胞と死Jurkat細胞とを分離するための試験が、別々のフローセル構成を有する別々の機器において実行された。新鮮なJurkat細胞を70%エタノールで処理することにより、死Jurkat細胞の集団が生成された。エタノールを除去し、媒体の中で死細胞を洗浄した後に、死細胞を元の生細胞集団に戻して混合することにより、混合集団が生成された。この最終的な混合物における死細胞の濃度は約20%であった。本明細書で説明したフローセルおよびシステムを使用し、各機器構成に最適化された利用条件を使用して、細胞混合物のアリコートが分離された。図25Aおよび25Bは、本明細書で説明した方法によって得られた、生細胞画分の生存率および生細胞の収率を示す。本明細書で説明された方法による、様々な細胞タイプに対して効率的な生細胞分離をもたらす能力が、図26Aおよび26Bに実証されている。初代細胞、ヒトおよび動物の組織から単離された初代細胞、腫瘍から分離された細胞、培養細胞、および本明細書で説明された他の細胞に対して、生細胞分離および富化が実行された。
【0186】
細胞核または粒子の単離は、細胞核を、FACSまたは洗浄/遠心分離などの他の洗浄技術および/または分離技術に関連するストレスにさらす(subjecting)ことなく、迅速に達成される。細胞核の迅速な単離は、細胞核を含むサンプルと、常磁性化合物または磁性流体を含むサンプル媒体とを、分離チャネルに装填することと、少なくとも1つの磁石を用いてサンプルに磁力をかけて、分離に影響を与えることと、さらなる遠心分離なしで、細胞核を含む、分離されたサンプルの少なくとも1つの画分を収集することと、分離前、分離中、および/または分離後に、サンプル中の粒子を適宜撮像することとを含む方法によって実行される。この方法では、サンプルは約50~約10,000,000の細胞核を含むことができる。分離のための総時間は約1分~約20分の範囲であり得る。この迅速な分離方法では、溶液の中または溶液の一部の中で、関心のある細胞核の濃度が、少なくとも100倍、90倍、80倍、70倍、60倍、50倍、40倍、30倍、20倍、10倍、5倍、3倍、2倍、1.5倍、または1.1倍に高められる。複数のタイプの粒子を含有している溶液中の細胞核は、溶液を処理した後に、他のタイプの粒子の濃度に対して、関心のある細胞核の比が高まった場合、またはこの細胞核の濃度と他のタイプの粒子の濃度との比が、少なくとも約10%、50%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、または1000%向上した場合、または、溶液中の細胞核以外の粒子の濃度が、少なくとも約20%、15%、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0.5%低下した場合には、「分離された」と見なされ得る。細胞核富化方法の好ましい実施形態では、サンプルの富化して収集された部分の中の単離された細胞核の完全性は、遠心分離を含む方法によって単離された類似の細胞核の完全性の30%よりも大きい。好ましくは、サンプルの富化して収集された部分における単離された細胞核の完全性は、遠心分離を含む方法によって単離された類似の細胞核の完全性の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、または99%である。完全性は、単離された細胞核の中へのかなりの割合のDNAおよびRNAの封じ込めをもたらす核膜の完全性であると定義される。開始サンプルは、約50~約10,000,000の細胞核と、約500~約10,000,000、約2,000~約10,000,000、約10,000~約10,000,000、約25,000~約10,000,000、約50,000~約10,000,000、約75,000~約10,000,000、約100,000~約10,000,000、約150,000~約10,000,000、約200,000~約100,000,000、または約500,000~約10,000,000の粒子とを含み得る。分離した粒子の画分を分離して収集する時間は、20分以下、18分以下、15分以下、12分以下、10分以下、8分以下、5分以下、3分以下、または1分未満であり得る。上記の方法によって分離される細胞核のタイプは、ヒト細胞、ヒト以外の動物細胞、植物細胞、真核細胞(たとえば、それだけではないが、免疫細胞、内皮細胞、酵母およびT細胞)を含み得る。単離細胞核は、除核した細胞の単一核、二核、多核からえられる。複数の細胞タイプは、死細胞、生細胞、正常細胞、病的細胞、感染細胞、トランスフェクト細胞、または遺伝子組換え細胞を含み得る。本開示の方法によって単離される細胞核は、生体または増殖細胞もしくは培養細胞から直接得ることができる。迅速かつ大容量の分離方法の特定の実施形態では、生細胞が死細胞から分離される。単離方法の別の実施形態では、細胞核は、生存トランスフェクト細胞および/またはCRISPR改変細胞もしくは遺伝子編集細胞から単離される。この方法の別の実施形態では、細胞核は、細胞、細胞片、および/またはサンプル破片から分離される。様々な実施形態において、これらの方法は、本明細書で説明したカートリッジおよびシステムを利用して実行される。
【0187】
実施例1 瞬間冷凍された肺組織および脳組織からの細胞核の単離
細胞核は、瞬間冷凍された肺組織および脳組織から、Nuclei Lysis Buffer(ThermoFisher)を用いて氷上で30分間インキュベートすることによって、単離された。次いで、細胞核は、0.1%のBSA含有PBSを用いて2回洗浄されてから、Nuclei Storage Buffer(1Mのスクロースを含む)の中に再懸濁された。本発明によれば、Nuclei Storage Bufferの中にスクロースを使用すると、細胞核の保管を促進するのに有利であることが発見されている。細胞核は、100mMのLevitation Agentを含有するLevitation Bufferの中に3×10の細胞核を再懸濁することによって、分離用に調製された。サンプルは、分離後の比較のために取っておいた。細胞核は、30分の平衡期間を使用して、本明細書で説明された分離装置(カリフォルニア州Menlo ParkのLevitasBio社から入手可能なLeviCell)の中で分離された。出力はPIを用いて染色され、Echo顕微鏡を使用して撮像された。
【0188】
細胞核はPIを用いて明るく染色され、細胞破片は染色されていない。LeviCellからの染色された入力の画像と出力の画像とが、両方の組織サンプルに関して、染色されていない破片の量の大幅な減少を示す。肺組織は脳組織(図27AおよびC)よりも多くの破片を生成したが、どちらのサンプルも、LeviCellを用いて選別した後には、破片の著しい減少を示す(図27BおよびD)。
【0189】
Jurkat細胞から導出された、選別されていない細胞核のフローサイトメトリー分析(図28A)および選別された細胞核のフローサイトメトリー分析(図28B)。サンプルは、PIおよびCellBrite Fix Greenを用いて室温で15分間染色してから、Sony SH800S選別機で分析された。選別後に、破片の集団と死細胞の集団との両方が低減され、細胞核集団が富化されている(50.81%から63.57%)。加えて、シングレット細胞核集団が、28.28%から43.98%に富化されている。
【0190】
実施例2 Jurkat細胞からの細胞核の単離
Jurkat細胞(ATCC# TIB-152)は、細胞老化およびアポトーシスを誘起するために、培地を変更せずに数日間老化された。これらの細胞を収集し、Nexcelom Spectrum CellometerにおいてAO/PIを使用してカウントした。これらの細胞の一部は、総RNAの入力コントロールのために保存された。RNAse Out RNAse阻害剤(Thermo)を含有している細胞核EZ溶解緩衝剤(sigma)を使用して、800万の細胞から、約50%の生存率において細胞核が抽出された。細胞核は、ペレットにされ、100mMのガドリニウム、1X PBS、1%のBSA、および0.2U/μlまでのRNAse Outを含有している浮上緩衝剤に再懸濁された。このサンプルはここで入力と称される。抽出された100万の細胞核が、LeviCellシステムにおいて30分浮上された。細胞核はLeviCellカートリッジの最下部チャネルから収集され、早期の工程(入力)において抽出された細胞核と並行して、初期サンプルから保存された全細胞が、RNEasy調整ミニキット(Qiagen)を使用して総RNAを得るために処理された。総RNAが正規化され、10ngの総RNAがgDNAイレーサキット(Takara)を用いるPrimescript RTを使用して、cDNAが作製された。18S、SCARNA5およびSNHG6を対象とする、事前に設計して検証されたPrimeTime qPCRプローブ分析(IDT)が、5μlの2x PrimeTime遺伝子発現マスター混合物(IDT)およびcDNAの200pg等価物を含有する10μlの反応量の中で多重分析された。3回の反応がQuantstudio5(Thermo)機器において増幅された。増幅データは、ΔΔCT方法を使用して分析され、18Sの内在性コントロールで正規化された相対量として報告され、全細胞RNAと比較された。
【0191】
結果:図29に示されるように、LeviCellシステムにおいて処理された細胞核は、核に特異的なターゲット(SCARNA5)に関してより高度に富化され、入力細胞核と比較して、より少ない混入した細胞質ターゲット(SNHG6)を有した。LeviCellシステムにおいて処理された細胞核は、全細胞と比較して、核に特異的なシグナルに関してほぼ3倍の富化を示す一方で、細胞質ターゲットの富化は示していない。浮上されたサンプルはまた、入力細胞核と比較して、核に特異的なシグナルの、50%を上回る富化を示した。比較すると、入力細胞核は、全細胞RNAと比較して、細胞核依存のターゲットシグナルの富化はより少ないものであり、大量の混入細胞質RNAを示した。これらのデータは、LeviCellシステムにおける細胞核の浮上が、通常の方法によって抽出される細胞核と比較して、細胞核および核に特有のRNAの富化を可能にすることを示す。
【0192】
IX.開示された実施形態は非限定的である
本明細書では、本発明の様々な実施形態が示され、説明されてきたが、そのような実施形態は例としてのみ提供されたものであることが強調される。本明細書において、本発明から逸脱することなく、その様々な実施形態において多くの変形、変更および置換を行うことができる。具体的には、本明細書で何らかの範囲が記述されたとき、別段の明確な規定がない限り、その範囲は、その中のすべての値およびすべてのサブレンジを含む。
【0193】
また、より一般的には、本明細書の開示、議論、例および実施形態によれば、当業者の技術の範囲内の、従来の流体工学、分子生物学、細胞生物学、微生物学、および組換えDNA技術が採用され得る。参照によって本明細書に組み込まれた資料は、そこに見出されるそれぞれの内容および教示に関するものである。そのような組み込みは、最低でも、その参考文献を本明細書に引用するとき指示され得る特定の教示および/または他の目的に関するものである。特定の教示および/または他の目的がそのように指示されない場合には、公表された資料は、参考文献の名称、要約、および/または概要のうち1つまたは複数によって指示される教示に関して具体的に組み込まれる。そのような具体的に識別される教示および/または他の目的が関連しない場合には、公表された資料は、本発明が属する現況技術をより十分に説明するため、および/または適用可能なものとして当業者に一般的に知られている教示を提供するために組み込まれる。しかしながら、本明細書における、公表された資料の引用が、本発明に対する従来技術であることの承認として解釈されないものと特に明示される。また、組み込まれる公開資料のうち1つまたは複数が、それだけではないが、定義された用語、用語の用法、説明された技術などを含めて、この出願と異なるかまたは矛盾する場合には、この出願が好ましい実施形態として制御し、いかなる矛盾も代替実施形態と見なされ得る。
【0194】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態が示され、説明されてきたが、当業者には、そのような実施形態は例としてのみ提供されたものであることが明白であろう。当業者には、本発明から逸脱することなく、多くの変形、変更、および置換が思い浮かぶはずである。本発明を実施するのに、本明細書で説明された本発明の実施形態の様々な代替形態が採用され得ることを理解されたい。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
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図8-2】
図9-1】
図9-2】
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【国際調査報告】