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▶ グラファイト エナジー(アセッツ)プロプライエタリー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵デバイス
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20240221BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20240221BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
F28D20/00 A
F28D9/02
F28F3/00 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023546188
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 AU2022050031
(87)【国際公開番号】W WO2022160004
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】2021900197
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287562
【氏名又は名称】グラファイト エナジー(アセッツ)プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GRAPHITE ENERGY(ASSETS)PTY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】レミッチ、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】クー、ポール スー-ホック
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ロス、バイロン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ、ケーシー
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
(57)【要約】
本発明は、熱交換器チャネル、及び取り外し可能な加熱素子を受け入れるように適合された加熱素子チャネルを有する顕熱貯蔵体と、入口及び出口を有する熱交換器と、を含み、熱交換器の少なくとも一部分は、チャネルに沿って設けられる、エネルギー貯蔵装置を提供する。また、本明細書に記載の、エネルギーを可逆的に貯蔵及び/又は抽出する方法、加熱素子、並びに複数のエネルギー貯蔵装置を含むエネルギー貯蔵アレイが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを可逆的に貯蔵及び抽出する、若しくは貯蔵する又は抽出する方法であって、
-取り外し可能な加熱素子を使用して顕熱貯蔵体の内側領域を加熱し、それによりエネルギーを貯蔵することと、
-前記顕熱貯蔵体から熱伝達媒体にエネルギーが伝達されるように、前記顕熱貯蔵体の温度よりも低い温度を有する前記熱伝達媒体を流すことによってエネルギーを抽出することと、
それにより可逆的なエネルギー貯蔵及び抽出を提供することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記加熱素子の一部分は、前記顕熱貯蔵体の前記内側領域と接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱素子の加熱部分は、前記顕熱貯蔵体の前記内側領域と接触する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記顕熱貯蔵体は、筐体内に密閉される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱素子は、前記筐体と密封係合される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱素子は、電気抵抗器である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱素子は、前記顕熱貯蔵体の前記内側領域を加熱するために、電気抵抗性の材料製の少なくとも1つの管状ループを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記顕熱貯蔵体の前記内側領域は、複数の加熱要素によって加熱される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記筐体は、前記筐体を不活性ガスで実質的に満たすためのガス入口と、不活性ガスを通気させるためのガス出口と、を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
加熱素子であって、
-一方の端部における長尺状の加熱部分と、
-反対側の端部における断熱部分と、を含み、
前記断熱部分は、電気端子と電気的に接続されるように適合された導電体をさらに含む、加熱素子。
【請求項11】
前記加熱素子は、電気抵抗器である、請求項10に記載の加熱素子。
【請求項12】
前記加熱素子は、電気抵抗性の材料製の少なくとも1つの管状ループを含む、請求項10又は11に記載の加熱素子。
【請求項13】
前記電気端子は、前記加熱素子の断熱部分に位置する、請求項12に記載の加熱素子。
【請求項14】
前記加熱素子の前記断熱部分は、テーパ状である、請求項10~13のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項15】
前記加熱素子の前記断熱部分は、段差状である、請求項10~14のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項16】
前記加熱素子の前記断熱部分は、複数の段差を含む、請求項15に記載の加熱素子。
【請求項17】
エネルギー貯蔵装置であって、
-熱交換器チャネル、及び取り外し可能な加熱素子を受け入れるように適合された加熱素子チャネルを有する顕熱貯蔵体と、
-入口及び出口を有する熱交換器と、を含み、前記熱交換器の少なくとも一部分は、前記チャネルに沿って設けられる、エネルギー貯蔵装置。
【請求項18】
前記顕熱貯蔵体は、前記顕熱貯蔵体内に少なくとも2つの開放端を有する熱交換器チャネルを含む、請求項17に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項19】
前記顕熱貯蔵体は、構成部品によって組み立てられる、請求項17又は18に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項20】
前記熱交換器は、蛇行コイル又は螺旋コイルの形状である、請求項17~19のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項21】
請求項10~16のいずれか一項に記載の加熱素子をさらに含む、請求項17~20のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項22】
前記エネルギー貯蔵装置は、断熱材をさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項23】
前記エネルギー貯蔵装置は、筐体をさらに含む、請求項17~22のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項24】
前記筐体は、加熱素子及び熱交換器の少なくとも一方を受け入れるように適合された少なくとも1つの開口部を含む、請求項23に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項25】
前記少なくとも1つの開口部は、密封フランジをさらに含む、請求項24に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項26】
密封ガスケットをさらに含む、請求項24又は25に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項27】
前記加熱素子は、前記密封フランジと密封係合する、請求項25又は26に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項28】
前記熱交換器は、前記密封フランジと密封係合する、請求項25又は26に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項29】
請求項17~28のいずれか一項に記載の複数のエネルギー貯蔵装置を含む、エネルギー貯蔵アレイ。
【請求項30】
請求項17~28のいずれか一項に記載の前記エネルギー貯蔵装置は、熱的及び電気的に、若しくは熱的に又は電気的に接続される、請求項29に記載のエネルギー貯蔵アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機などの高温用途に使用され得るエネルギー貯蔵装置に関する。特に、本発明は、ブレイトンサイクル(Brayton cycle)発電機を使用して、超臨界流体が効率的な発電に使用され得るような温度で動作され得るエネルギー貯蔵装置に関する。
【0002】
特に、本発明は、エンドユーザにとって安全であり且つメンテナンスが容易であり、ブレイトンサイクル発電機とともに使用するのに適したグラファイト系の熱エネルギー貯蔵装置及び熱エネルギーを貯蔵する方法に関する。しかしながら、本発明は、これらの特定の使用分野に限定されないことが理解されるであろう。
【背景技術】
【0003】
本発明を適切な技術的背景に置き、本発明の利点をより詳細に理解することを可能にするために、以下の先行技術の議論が提供される。しかしながら、本明細書全体にわたる先行技術のいかなる議論も、このような先行技術が広く知られているか又はその分野における一般的な知識の一部を形成するという明示的又は黙示的な承認と見なされるべきではないことを理解されたい。
【0004】
需要を満たすために、世界のエネルギー消費は、年々増加の一途を辿っている。石炭、天然ガス、原子力及び石油などの多くのエネルギー源があるが、石炭は、依然として電気エネルギーをもたらすための主要な発生源の1つである。しかしながら、石炭火力発電所の使用は、汚染度が高く、有害な温室効果ガスを放出する。再生エネルギー技術の開発は、環境問題(石炭及び他の化石燃料からの汚染の低減及び二酸化炭素排出の削減など)に起因して特別な関心事になっている。これらの再生可能エネルギー技術には、水力、風力、太陽光、潮汐及び地熱が含まれる。
【0005】
再生可能エネルギー源からのエネルギー生産の特定の問題は、それらが断続的な供給源であることである。例えば、風力タービンは、強風を必要とし、夜間には太陽光発電ができず、干ばつ時には水力発電が大幅に減少し、天候及び海の状態に応じて波力が制限される。そのため、再生可能技術は、理想的には、後に使用するためにエネルギーを貯蔵する方法を必要とする。
【0006】
エネルギーを貯蔵するためのこのような手法の1つは、リチウムイオン電池などの電池技術を使用することであり、それにより再生可能エネルギー源からの電力のオンデマンド生産が利用できないときにエネルギー需要を容易に満たすことができる。しかし、電池技術は、大規模な配置では依然として高価であり得、蓄積されるエネルギー容量は、限られており、再生可能エネルギーの生産が長期間遅れるとき(太陽エネルギーの生産に関して曇りの日が続く場合など)、エネルギー需要を満たせない可能性がある。
【0007】
電池技術に代わるものとして、熱エネルギーを貯蔵するために顕熱貯蔵媒体が使用されている。例えば、グラファイトエネルギー貯蔵媒体は、再生可能エネルギーなどの発生源から発生する電気エネルギーを熱の形態で貯蔵するために使用されている。上記の手法の一変形形態は、渦電流によって誘導されたグラファイトの本体を加熱することである。次に、グラファイトのブロックに貯蔵された熱エネルギーは、後に使用するために回収し、蒸気などの流体を使用して電気エネルギーに変換することができる。
【0008】
特許文献1のエネルギー貯蔵装置は、グラファイトの本体に熱エネルギーを貯蔵する方法及び貯蔵するための装置について記載している。この方法は、熱エネルギーを貯蔵することが必要であるときにグラファイトの本体の内側領域を加熱し、エネルギーを使用することが必要であるときに熱交換器を経由して熱を回収することを含む。特許文献1では、グラファイトの本体の内側領域の加熱は、グラファイトの本体内に取り外し不可能な抵抗器を埋め込むことによって実現される。抵抗器は、セラミック顆粒の有無にかかわらず、粒状のグラファイト又は炭素の混合物を構成する。抵抗器は、電極に接続され、電極も少なくとも部分的に各穿孔又は窪みに埋め込まれ、取り外し不可能である。電極が電源及び抵抗器と電気的に接続されるとき、電気抵抗のため、埋め込まれた抵抗器がグラファイトの本体の内側領域を加熱する。記載される抵抗器は、開抵抗器であり、動作寿命を短縮する過熱問題を起こし易い可能性がある。
【0009】
グラファイト太陽光貯蔵技術のさらなる例は、特許文献2に記載されるような、間隔をあけて配置された複数の熱エネルギー貯蔵パネルを含む熱エネルギー貯蔵モジュールに関し、この例では、各パネルは、ヒータ組立体によって隔てられる。各熱エネルギー貯蔵パネルは、グラファイト芯と、グラファイト芯を封入する実質的に気密のハウジングと、熱交換器管類を含む熱交換器とを含む。ヒータ組立体は、間隔をあけて配置された熱エネルギー貯蔵パネルの外側にあり、ヒータ組立体と電力供給源との間で電気接続が確立されると、熱エネルギー貯蔵パネルを外側から加熱する。記載されるヒータ組立体は、熱伝導率が低く、周囲ガスの比熱が低いことにより、低いワット密度(約0.465~0.775W/cm(約3~5W/in))を有する。ヒータ組立体の過熱を防止又は低減して過度に早い故障を回避するために、ヒータ組立体は、ワット密度が低いことが求められる。さらに、ヒータからの熱伝達の仕組みは、実質的に気密のハウジングへの放射、次にハウジングからグラファイト芯への伝導を介して行われるものである。ハウジング材料は、高い放射率を有し、熱は、ハウジングから遠ざかるように再放射される。熱損失は、T(ここで、Tは、温度である)に比例し、表面温度(skin temperature)が上昇すると、問題が増幅される。熱損失が大きい別の原因は、ヒータの空洞からの熱風漏れ経路を避けるのが難しいことである。そのため、特許文献2に記載されるような熱エネルギー貯蔵モジュールには、加熱面積の大きいヒータ組立体が必要であり、動作させるのに高い費用がかかる可能性がある。
【0010】
したがって、上記で論じたようなグラファイト貯蔵技術の制限を考えると、sCOブレイトンサイクル発電機などの発電のために高温用途で使用するための、エンドユーザ又はオペレータにとってより効率的であり且つメンテナンスがより容易であり得る代替的なエネルギー貯蔵装置及びエネルギーを貯蔵する方法を開発することが望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2005/088218号
【特許文献2】国際公開第2015/085357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、先行技術の不利な点の少なくとも1つを克服若しくは改善すること、又は有用な代替物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
文脈が明らかに他のことを要求しない限り、説明及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」、「含んでいる」などの単語は、排他的又は網羅的な意味とは反対に包括的な意味で、すなわち「含むが、限定されない」という意味で解釈される。
【0014】
本発明は、特定の例を参照して説明されるが、本発明が他の多くの形態で具体化され得ることが当業者によって理解されるであろう。
エネルギー貯蔵システムの継続的な開発により、特にブレイトンサイクル発電機などの高温用途で使用される代替エネルギー貯蔵システムの開発が望まれるようになった。特に、熱エネルギーの貯蔵及び/又は抽出に効率的であるだけでなく、エネルギー貯蔵装置が故障又は損傷した場合に長期間使用するためのメンテナンスも容易な代替エネルギー貯蔵システムを開発することが望まれている。
【0015】
エネルギーを可逆的に貯蔵/抽出する方法
一態様によれば、本発明は、エネルギーを可逆的に貯蔵及び/又は抽出する方法であって、
-取り外し可能な加熱素子を使用して顕熱貯蔵体の内側領域を加熱し、それによりエネルギーを貯蔵することと、
-顕熱貯蔵体から熱伝達媒体にエネルギーが伝達されるように、前記顕熱貯蔵体の温度よりも低い温度を有する熱伝達媒体を流すことによってエネルギーを抽出することと、
それにより可逆的なエネルギー貯蔵及び抽出を提供することと、を含む方法を提供する。
【0016】
有利には、本発明者らは、取り外し可能な加熱素子を使用してエネルギーを貯蔵及び/又は抽出するための、本明細書に記載の方法及び装置を開発した。取り外し可能な加熱素子により、メンテナンスを容易にすることができる。なぜなら、加熱素子が寿命末期に達するか又は損傷したとき、加熱素子を取り外して修理するか又は新たな加熱素子と取り替えることができるためである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「内側領域」という文言は、顕熱貯蔵体の内部の加熱、例えば顕熱貯蔵体の内部に位置する加熱素子チャネルの表面を加熱することを指す。顕熱貯蔵体の内側領域を加熱することにより、取り外し可能な加熱素子から顕熱貯蔵体への熱の伝導を効率的にすることができ、したがって所与の貯蔵温度に必要な加熱素子の数を減らし、全体的なコストを削減することができる。
【0018】
特定の実施形態では、加熱素子の一部分は、顕熱貯蔵体の内側領域と接触する。好ましくは、加熱素子の加熱部分は、顕熱貯蔵体の内側領域と接触する。これらの実施形態では、加熱素子の加熱部分は、顕熱貯蔵体の内側領域と、電気接触ではなく、熱接触する。有利には、加熱中、加熱素子が顕熱貯蔵体の内側領域の表面と直接接触するとき、前記加熱素子の加熱部分は、周囲大気を介した熱対流又は放射に依存するのではなく、伝導によって顕熱貯蔵体を効率的に加熱することができる。典型的には、対流又は放射に比べて、伝導による加熱は、熱エネルギーの伝達にとってより効率的である。
【0019】
顕熱貯蔵体に適した材料には、炭化ケイ素、砂、コンクリート、グラファイト、強化ポリマー、粘土、磁器、セラミック、カーボンナノチューブ、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、鋼、銅、ムライト、酸化ジルコニウム、ダクタイル鉄、鋳鉄、ステンレス鋼、真ちゅう、コロンビアの合金(alloys of columbian)、タンタル、モリブデン、タングステン及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。顕熱貯蔵体の材料は、上記で網羅的に列記されておらず、選択された動作パラメータに応じて使用され得る材料のタイプを単に例示することを理解されたい。
【0020】
有利には、顕熱貯蔵体は、約350℃~約1500℃、約400℃~約1000℃、さらにより好ましくは約850℃など、より高い動作温度を提供することができる。したがって、典型的には、この温度範囲内で最大の動作効率を有するブレイトンサイクル発電機の効率を利用することができる。
【0021】
約400℃~約1000℃の温度では、CO(sCO)などの超臨界流体を使用することができる(この範囲内で加熱されると、熱伝達媒体の相変化が起こらない)。これにより、エネルギー貯蔵装置をブレイトンサイクル発電機などの発電機と組み合わせて使用するときに効率が向上する。しかしながら、理解されるように、本発明のエネルギー貯蔵装置は、従来のタービン、ターボエキスパンダ発電機及び/又は同様のものとともに使用することができる。
【0022】
好適な実施形態では、顕熱貯蔵体は、グラファイトで形成される。いくつかの実施形態では、グラファイトは、結晶性、アモルファス又はそれらの組み合わせである。グラファイトは、高い熱安定性並びに電気伝導性及び熱伝導性も有し、これにより高温用途における耐火物としての使用に適したものになる。好適な実施形態では、グラファイトは、周囲温度~最大で1000℃で使用され、好適な実施形態では、動作温度は、約400~850℃である。有利には、顕熱貯蔵体材料としてグラファイトを使用すると、顕熱貯蔵体が自己潤滑性となり、乾燥潤滑特性も有することができる。これにより、様々な材料の熱交換器との適合性が向上し、モジュール構造によって汎用性が向上し得る。
【0023】
一実施形態では、顕熱貯蔵体は、炭化ケイ素で形成される。炭化ケイ素は、炭素原子とケイ素原子との結晶格子で構成され、顕熱貯蔵体に構造的完全性を提供することができる。炭化ケイ素は、最大で800℃の温度で酸、アルカリ物質又は溶融塩と反応しない点で比較的不活性である。さらに、炭化ケイ素は、1200℃で酸化ケイ素コーティングを形成し、これは、最大で1600℃の温度に耐えることができる。したがって、顕熱貯蔵体材料は、一実施形態では、酸化ケイ素を含む。炭化ケイ素は、高い熱伝導性、低い熱膨張特性及び高い機械的強度も有するため、顕熱貯蔵体に比較的高い耐熱衝撃性を提供する。炭化ケイ素で作られた顕熱貯蔵体が化学反応に対する耐性を有し、適切な強度があり、相変化材料の加熱を促進する優れた熱伝導性を有することは、明らかである。
【0024】
いくつかの実施形態では、顕熱貯蔵体は、約1g/cm~約4g/cm、約1.5g/cm~約3.5g/cm、約2.0g/cm~約3.5g/cm、約2.5g/cm~約3.5g/cm、好ましくは約1.5~2.0g/cmの密度を有する。
【0025】
一実施形態では、熱伝達媒体は、熱伝達流体である。熱伝達流体は、別の媒体へのエネルギー、典型的には熱エネルギーの受動的な伝達又は機械的エネルギーへのさらなる変換を可能にする媒体(気体、液体又は超臨界気体など)である。この実施形態では、熱伝達流体は、顕熱貯蔵体から熱を抽出又は伝達するために使用され、且つ発電機を使用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換するために使用され得る。熱伝達流体は、伝導及び対流の両方によって熱エネルギーを伝達するように適合された任意の流体を含むことができ、任意の流体には、水、蒸気及び超臨界二酸化炭素(sCO)が含まれるが、これらに限定されない。好適な一実施形態では、熱伝達流体は、顕熱貯蔵体の熱交換器チャネルに沿って設けられた入口及び出口を有する熱交換器を通して流され、それにより、熱伝達流体は、顕熱貯蔵体とエネルギー/熱的に接続される。
【0026】
熱交換器チャネルに沿って設けられるとき、エネルギー排出(抽出)中、熱伝達流体は、熱交換器を通して流れて、より温度が高い顕熱貯蔵体によって加熱される。熱伝達は、通常、顕エネルギー貯蔵体から熱交換器を介した熱伝達流体(HTF:heat transfer fluid)への伝導によって生じる。前記熱伝達流体の流れにより、制御された方法で顕熱貯蔵体から熱エネルギー(熱)の形態でエネルギーが抽出される。熱伝達流体によるエネルギーの抽出は、任意の数の要因、例えば顕エネルギー貯蔵体とHTFとの間の相対温度差、HTFの流量及び使用されるHTFの型によって生じ得る。
【0027】
一実施形態では、熱伝達媒体は、空気又は超臨界二酸化炭素などの超臨界流体、好ましくは超臨界二酸化炭素である。好適な実施形態では、熱伝達媒体は、エネルギーを貯蔵又は抽出するときに相変化しない。これらの実施形態では、熱伝達媒体は、約400℃~約1000℃の範囲の動作温度を有するブレイトンサイクル発電機などの高温用途に使用することができる。
【0028】
超臨界流体を使用するとき、熱伝達媒体の相変化が起こらないため、より高いエネルギー伝達効率及びより高温の用途での使用が適切である。
いくつかの実施形態では、熱伝達流体は、液体ナトリウム(Na)、液体カリウム(K)、液体NaK、液体スズ(Sn)、液体鉛(Pb)、液体鉛ビスマス(PbBi)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、熱伝達流体は、液体ナトリウム(Na)、液体カリウム(K)、液体NaK(77.8%K)、液体スズ(Sn)、液体鉛(Pb)、液体鉛ビスマス(PbBi)(45%/55%)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
特定の実施形態では、熱伝達媒体は、水、超臨界二酸化炭素、圧縮空気、圧縮窒素、有機流体(ダウサムAを含むサーマルオイルなど)、塩水和物、液体金属(水銀及びカリウムなど)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0030】
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ベタイン、ヘキサミン、フェニレンジアメン(phenylenediamene)、ジメチルエタノールアミン、ヘキサフルオリド硫黄、ベンゾトリアゾール、亜鉛ジチオホスフェート、ナノ粒子、ポリアルキレングリコール及びそれらの組み合わせなどの添加剤を熱伝達媒体に添加又は混合して、腐食を抑制し、粘度を変化させ、熱容量を高めることができる。
【0031】
特定の実施形態では、1つの顕熱貯蔵体(例えば、グラファイトパネル)当たりの熱伝達媒体の流量は、約2.5~約250kg/分、約2.5~約150kg/分、約2.5~約100kg/分、約15~約120kg/分、約100~約150kg/分、約50~約250kg/分、約100~約250kg/分、約150~約250kg/分、2.5~約50kg/分、約2.5~約40kg/分、約5~約40kg/分、約10~約30kg/分、約10~約20kg/分、約25~約35kg/分及び約15~約30kg/分である。好適な実施形態では、熱伝達媒体の流量は、約15~約120kg/分である。
【0032】
1つの顕熱貯蔵体(例えば、グラファイトパネル)当たりの熱伝達媒体の流量は、熱交換器と顕熱貯蔵体との間でエネルギーを伝達するのに十分な任意の適切な流量であり得る。特定の実施形態では、熱伝達媒体の流量は、約2.5~約250L/分、約2.5~約150L/分、約2.5~約100L/分、約50~約250L/分、約100~約250L/分、約150~約250L/分、2.5~約50L/分、約2.5~約40L/分、約5~約40L/分、約10~約30L/分及び約10~約25L/分である。好適な実施形態では、熱伝達媒体の流量は、約10~約30L/分である。
【0033】
流量及び使用される熱伝達媒体に応じて、エネルギーを貯蔵又は抽出する(例えば、顕熱貯蔵体又は熱伝達媒体へのエネルギー伝達)ための温度変化率は、必要に応じて調節することができる。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置のエネルギー貯蔵及び/又は排出中の平均温度変化は、約5~約100℃/分、約5~約80℃/分、約5~約60℃/分、約5~約50℃/分、より好ましくは約5~約30℃/分である。
【0034】
いくつかの実施形態では、熱伝達流体は、作動流体である。好適な実施形態では、作動流体は、超臨界COである。当業者であれば理解するように、熱伝達流体は、エネルギー、典型的には熱エネルギーの受動的な伝達を可能にする(気体又は液体などの)媒体である。当業者であれば理解するように、作動流体は、主に力、運動又は機械的エネルギーを伝達する(気体又は液体などの)媒体である。典型的には、作動流体は、熱エネルギーを超臨界COなどの機械的エネルギーに変換して、ブレイトンサイクル発電機又はタービンに動力を供給して発電する。
【0035】
特定の実施形態では、作動流体は、約400℃~約1000℃、約400℃~約850℃、約500℃~約800℃、約400℃~約775℃及び約400℃~約675℃の範囲の動作温度を有する。
【0036】
特定の実施形態では、作動流体は、約20バール~約350バール(約2MPa~約35MPa)、約20バール~約300バール(約2MPa~約30MPa)、約20バール~約250バール(約2MPa~約25MPa)、約50バール~約350バール(約5MPa~約35MPa)、約50バール~約300バール(約5MPa~約30MPa)、約50バール~約250バール(約5MPa~約25MPa)、約70バール~約250バール(約7MPa~約25MPa)、約80バール~約250バール(約8MPa~約25MPa)、より好ましくは約100バール~約250バール(約10MPa~約25MPa)の範囲の動作圧力を有する。特定の実施形態では、作動流体は、250バール(約25MPa)において約400℃~約775℃、より好ましくは250バール(約25MPa)において約400℃~約675℃の範囲の動作温度を有する。
【0037】
エネルギー貯蔵装置
別の態様によれば、本発明は、エネルギー貯蔵装置であって、
-熱交換器チャネル、及び取り外し可能な加熱素子を受け入れるように適合された加熱素子チャネルを有する顕熱貯蔵体と、
-入口及び出口を有する熱交換器と、を含み、熱交換器の少なくとも一部分は、チャネルに沿って設けられる、エネルギー貯蔵装置を提供する。
【0038】
好適な実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、熱エネルギー貯蔵装置である。
本発明のエネルギー貯蔵装置は、先行技術と比較した利点として、取り外し可能な加熱素子が必要に応じて交換及び/又は修理可能であり、メンテナンスが容易になること、取り外し可能な加熱素子がエネルギー貯蔵装置の内部に位置するため、エネルギー貯蔵効率が向上すること、及び必要な加熱素子の数が少なくてすむことにより、動作のコストを削減できることのうちの少なくとも1つを提供する。
【0039】
当業者であれば理解するように、顕熱貯蔵体は、単一の材料(単体)から構成することができるが、必ずしもそうである必要はない。いくつかの実施形態では、顕熱貯蔵体は、単体である一方、他の実施形態では、顕熱貯蔵体は、構成部品によって組み立てられる。
【0040】
構成部品から顕熱貯蔵体を構成すると、製作及び組み立てが容易になる可能性がある。顕熱貯蔵体の各構成部品は、加熱素子及び/又は熱交換器を収容するのに必須の加熱素子チャネル及び/又は熱交換器チャネルを含むように製作することができる。有利には、顕熱貯蔵体が構成部品から組み立てられるとき、複雑性が増す単体からのチャネル製作を行う必要がないため、コストを削減することができ、且つ損傷したエネルギー貯蔵装置又はエネルギー貯蔵装置の構成部品を交換するときの柔軟性及び修理可能性を向上させることができる。
【0041】
加熱素子
特定の実施形態では、加熱素子は、一方の端部における長尺状の加熱部分、反対側の端部における断熱部分を含み、この断熱部分は、電気端子と電気的に接続されるように適合された導電体をさらに含む。好適な実施形態では、電気端子は、加熱素子の断熱部分に位置する。この実施形態では、断熱部分には、加熱のための(抵抗線のような)抵抗部分がなく、(導電ワイヤ又は導電ピンのような)導電部分があるのみである。有利には、断熱部分(「コールドレッグ」)は、温度障壁を提供して、加熱部分(「ホットレッグ」)からの熱エネルギーの量が電気端子に達することを防止又は低減して、電気端子に達する高温ガスの量を減らすことにより、加熱素子の動作寿命を延ばすことができる。開示される加熱素子での問題点は、加熱素子の電気端子が過熱し、その結果、過度に早い故障する可能性があることである。
【0042】
いくつかの実施形態では、加熱素子の断熱部分は、テーパ状である。いくつかの実施形態では、加熱素子の断熱部分は、段差状である。特定の実施形態では、断熱部分は、複数の段差を含む。特定の実施形態では、加熱素子の断熱部分は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個の段差を含む。特定の実施形態では、加熱素子の断熱部分は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の段差を含む。好適な実施形態では、加熱素子の断熱部分の各段差は、独立している。
【0043】
当業者であれば理解するように、任意の適切な断熱材料を加熱素子の断熱部分に使用することができる。一実施形態では、加熱素子の断熱部分は、セラミック絶縁体である。適切なセラミック絶縁体材料の例には、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化オスミウム、三酸化ランタン、三酸化イットリウム、三酸化スカンジウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化ハフニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、アルミナ、シリカ、酸化ニッケルなどの金属酸化物及び窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、窒化アルミニウム、ホウ化ジルコニウム、スピネル、ムライト、フォルステライト、耐火粘土、ドロマイト、マグネサイト、高アルミナ磁器、高マグネシア磁器、珪線石、藍晶石、ケイ酸塩ジルコニウムなどの他の無機材料並びにそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、断熱部分は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、炭化ケイ素、ジルコン、雲母、繊維ガラス、ムライト、磁器、溶化磁器、ステアタイト、菫青石、シリマナイト及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である。好適な実施形態では、断熱部分は、シリカ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料である。
【0044】
特定の実施形態では、加熱素子の加熱部分は、電気絶縁体に取り囲まれ、金属又は合金ケーシングによって密閉された高い電気抵抗率及び温度抵抗を有する金属の合金を含むが、これらに限定されない材料から選択される抵抗線を含む。顕熱貯蔵体がグラファイトであるとき、加熱素子を封入することにより、加熱素子と接触するときにグラファイト粉末の進入を防ぐか又は最小限に抑える。抵抗線は、ニッケル、クロム、銅及びマンガンのいずれか1つを含む合金から選択される材料から選択することができる。好適な実施形態では、抵抗線は、ニクロム(NiChrome)(80%ニッケル、20%クロム)、カンタル(FeCrAl)、白銅(CuNi)合金及びエッチング箔(典型的には抵抗線と同じ材料から作られた)からなる群から選択される材料である。いくつかの実施形態では、電気絶縁体は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、炭化ケイ素、ジルコン、雲母、繊維ガラス、ムライト、磁器、溶化磁器、ステアタイト、菫青石、シリマナイトからなる群から選択される材料である。
【0045】
金属又は合金ケーシングは、高温、腐食及び圧力に対して耐性を有するニッケル、クロム、鉄及びコバルトの合金などの頑丈な材料で作ることができる。好適な一実施形態では、金属又は合金ケーシングは、合金600、合金601、合金625、合金602CA、合金617、合金718、合金740H、合金230、合金X、HR214、HR224、IN600、IN740、ヘインズ(Haynes)282、ヘインズ230、347SS、316L、AFA-OC6、C-276、P91/T122、316SS、IN601、IN800H/H、ハステロイ(Hastelloy)X、CF8C+、HR230、IN61、IN62、253MA、800H、800HT、RA330、353MA、HR120、RA333及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。より好適な一実施形態では、金属又は合金ケーシングは、インコネル(Inconel)又はインコロイ(Incoloy)(ニッケル-クロム系合金)である。
【0046】
さらなる実施形態では、加熱素子は、電気抵抗器であり得る。これは、電気エネルギーを熱エネルギーに変換して、顕熱貯蔵体を直接加熱するために使用され、有用な熱エネルギーに直接変換し、それを顕熱貯蔵体に送達することを表す。加熱素子は、顕熱貯蔵体の内側領域を加熱するために、電気抵抗性の材料製の少なくとも1つの管状ループを含むことができる。管状ループは、U字型又はトロンボーン型であり得る。
【0047】
一実施形態では、少なくとも1つの管状ループは、電気端子と電気的に接続されるときに熱を供給する。事実上、電気端子から供給される電気は、少なくとも1つの管状ループを通して導電される。
【0048】
特定の実施形態では、各加熱素子は、約1個~12個の管状ループ、約1個~10個の管状ループ、約1個~8個の管状ループ、約2個~6個の管状ループ、好ましくは約3個~6個の管状ループを含む。特定の実施形態では、各加熱素子は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個又は少なくとも5個の管状ループを含む。いくつかの実施形態では、各加熱素子は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個又は12個の管状ループを含む。いくつかの実施形態では、加熱素子は、3個のトロンボーン型管状ループを含む。いくつかの実施形態では、加熱素子は、6個のU字型管状ループを含む。
【0049】
好適な実施形態では、加熱素子は、エネルギー貯蔵装置と密封係合される。特定の実施形態では、加熱素子は、顕熱貯蔵体と密封係合される。好適な実施形態では、加熱素子は、顕熱貯蔵体を密閉する筐体(enclosure)と密封係合される。筐体は、周囲大気と顕熱貯蔵体との間に障壁を提供することができ、この障壁を使用して、顕熱貯蔵体からの熱の損失だけでなく、使用される材料及びその動作温度によって顕熱貯蔵体を酸化させる可能性がある空気の進入も実質的に防ぐことができる。この好適な実施形態では、筐体は、加熱素子を受け入れるための少なくとも1つの開口部を有する。加熱素子を受け入れるための少なくとも1つの開口部は、密封フランジを含むことができる。次に、加熱素子を密封フランジに締結して、密封することができる。加熱素子は、任意の適切な方法を使用して、例えばナット及びボルト、ねじ、締め具、テーパ状ねじ継手又はラッチを使用して筐体の密封フランジに締結することができる。いくつかの実施形態では、加熱素子は、テーパ状ねじ継手又はボルト締めフランジによって筐体に密封係合して密封することができる。さらなる実施形態では、密封フランジは、気密封止を提供するための密封ガスケットをさらに含む。
【0050】
より好適な実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、断熱材を含む。断熱材は、典型的には、顕熱貯蔵体と筐体との間に設けられる。この実施形態では、加熱素子の断熱部分は、断熱材に当接して圧縮し、高温ガス封止を提供し、高温ガスが電気端子に排気されることを遮断又は低減する。有利には、上記で論じたような加熱素子とエネルギー貯蔵装置との間の密封係合は、加熱素子の電気端子に十分な冷却を提供して、過熱及び過度に早い故障を最小限に抑える。好適な実施形態では、加熱素子は、断熱部分と、エネルギー貯蔵装置の筐体の外部に位置する電気端子との間に設けられた空冷部分を有する。
【0051】
特定の実施形態では、断熱部分を受け入れるように適合された加熱素子チャネルの一方の端部は、テーパ状である。この実施形態では、テーパ状加熱素子チャネルは、加熱素子と、任意選択的に断熱材との間の密封係合を向上させることができる。
【0052】
断熱材は、外部環境に失われる熱エネルギーの量を最小限に抑えるように顕熱貯蔵体の表面に適切に配置することができる。断熱材は、エネルギー貯蔵装置の動作中にオペレータが火傷するリスクを低減することができる。いくつかの実施形態では、断熱材は、様々な材料を使用した複数の断熱層を含むことができる。
【0053】
断熱材に適した材料は、断熱ボード、アルカリアースシリケートウール、断熱ブランク、ガラス繊維、無機酸化物、石英系ウール、ミネラルウール、ポリマー及び発泡体からなる群から選択することができる。例えば、様々な仕様の断熱材料製の複数の層を使用して、エネルギー損失を防ぐことができる。高温に対応できる任意の断熱材をエネルギー貯蔵装置で使用できることも理解されたい。
【0054】
当業者であれば理解するように、エネルギー貯蔵は、所望の動作温度、熱エネルギー貯蔵加熱速度、加熱素子のサイズ及び加熱素子の電力効率などの要因の数に応じて任意の適切な数の加熱素子を含むことができる。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも20個又は少なくとも30個の加熱素子を含む。特定の実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個又は35個の加熱素子を含む。好適な実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、32個の加熱素子を含む。複数の加熱素子は、より均一で急速な熱伝達を顕熱貯蔵体に提供することができ、それにより、より効率的に顕熱貯蔵体を動作温度に加熱することができる。
【0055】
本発明で使用される取り外し可能な加熱素子は、任意の適切な電力密度であり得る。特定の実施形態では、1つの加熱素子当たりの電力密度は、約0.775W/cm~約7.75W/cm(約5W/in~約50Win)、約0.775W/cm~約6.2W/cm(約5W/in~約40W/in)、約0.775W/cm~約4.65W/cm(約5W/in~約30W/in)、約0.775W/cm~約4.65W/cm(約5W/in~約30W/in)、約1.55W/cm~約4.65W/cm(約10W/in~約30W/in)、約2.325W/cm~約4.65W/cm(約15W/in~約30W/in)である。好適な実施形態では、1つの加熱素子当たりの電力密度は、約0.775W/cm~約2.325W/cm(約5W/in~約15W/in)である。
【0056】
本発明で使用される取り外し可能な加熱素子は、任意の適切な出力であり得る。特定の実施形態では、1つの加熱素子当たりの出力は、約1~50kW、約5~50kW、約5~40kW、約5~30kW、約5~20kW、約10~20kWにあり、より好ましくは約15.4kWである。
【0057】
特定の実施形態では、顕熱貯蔵体の加熱素子チャネルは、穿孔をさらに含む。穿孔は、通常、使用中の加熱素子の加熱部分の近傍の先端部に設けられる(すなわち、穿孔は、通常、取り外し可能な加熱素子を受け入れる加熱素子チャネルの開口の反対側に位置する)。これらの実施形態では、穿孔は、使用中に顕熱貯蔵体の内側領域を加熱するとき、ガス圧力の増大を回避することにより、加熱素子チャネル内に存在するガスを排気できるようにする。これにより、加熱素子がエネルギー貯蔵装置に密封係合されるとき、超過圧力による気密封止の低下を回避することができる。穿孔は、加熱素子チャネルが高温であるときに膨張したガス(不活性ガスなど)を吐き出し、冷却時にガスを吸い込むようにすることもできる。加熱素子チャネルにより、加熱時に加熱素子の長手方向の膨張も可能になる。
【0058】
エネルギー貯蔵装置は、複数の穿孔を含むことができる。好適な実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、加熱要素チャネルごとに1つの穿孔を含む。
使用中、加熱素子の一部分は、顕熱貯蔵体の内側領域と接触する。好適な実施形態では、加熱素子の加熱部分は、顕熱貯蔵体の内側領域と接触する。好適な実施形態では、加熱素子の少なくとも1つの管状ループは、加熱素子が加熱素子チャネル内に挿入されると、顕熱貯蔵体と接触する。これにより、加熱素子から顕熱貯蔵体への効率的な熱伝導が提供される。有利には、加熱中、加熱素子の加熱部分は、膨張することができるため、使用中の加熱素子の加熱部分と、顕熱貯蔵体の内側領域の表面との間の接触を向上させることができる。
【0059】
顕熱貯蔵体がグラファイトであるとき、本発明の加熱素子は、(約0.775W/cm~約7.75W/cm(約5W/in~約50W/in)などの)高ワット密度となり、これにより必要な加熱素子の表面積及び加熱素子の数を減らし、コストを削減することができる。これは、グラファイトが低い放射率、高い熱伝導率及び高い比熱を有するためである。
【0060】
熱交換器
本発明のいくつかの実施形態では、顕熱貯蔵体は、顕熱貯蔵体の外側表面に沿って1つ又は複数の熱交換器チャネルを含み、熱交換器の一部分は、1つ又は複数の熱交換器チャネルの少なくとも1つに沿って設けられる。いくつかの実施形態では、顕熱貯蔵体は、(パネルなどの)構成部品で構成され、少なくとも1つの構成部品は、構成部品の外側表面に沿って1つ又は複数の熱交換器チャネルを含み、熱交換器の一部分は、1つ又は複数の熱交換器チャネルの少なくとも1つに沿って設けられる。この点に関して、熱交換器チャネルは、熱交換器を顕熱貯蔵体と直接接触させることができる。熱交換器が顕熱貯蔵体と直接接触するとき、伝導によって熱交換器と貯蔵体との間で熱又は熱エネルギーを伝達することができ、これは、加熱されたガスを2つの材料間で対流又は循環させるよりも本質的に効率的である。エネルギー排出中、直接接触により、顕熱貯蔵体から熱伝達媒体に熱を伝達することが可能になる。
【0061】
好ましくは、顕熱貯蔵体は、顕熱貯蔵体内に少なくとも2つの開放端を有する熱交換器チャネルを含む。この実施形態では、2つの開放端は、顕熱貯蔵体の内部に設けられた熱交換器チャネルのオリフィスである。この実施形態では、前記チャネルに沿って設けられるとき、熱交換器の少なくとも一部分は、顕熱貯蔵体中又はその内部に埋め込まれる。有利には、これにより、顕熱貯蔵体と接触する熱交換器の表面積を大きくすることができる。熱交換器と顕熱貯蔵体との間の接触面積を大きくすると、排出中の熱伝達媒体と顕熱貯蔵体との間のエネルギー伝達の効率を高めることができる。
【0062】
本発明の熱交換器は、熱伝達流体の流量、顕熱貯蔵体のサイズ、材料及び伝導性に対する要件並びに動作圧力及び動作温度における動作要件に応じて、多くの形状及びサイズを取ることができる。
【0063】
一実施形態では、熱交換器は、蛇行コイル又は螺旋コイルの形状である。熱交換器チャネルに沿って設けられる間に熱交換器が作るパスの数を最大化するために、密閉導管のコイル構造は、熱交換器を含む。好適な実施形態では、熱交換器は、蛇行コイルの形状である。有利には、蛇行コイル熱交換器は、エネルギー/熱抽出中、顕熱貯蔵体全体にわたってより均一な温度プロファイルを提供し、これは、熱伝達流体が熱交換器を通して流れるとき、顕熱貯蔵体内の熱が顕熱貯蔵体全体にわたって伝達するためである。熱伝達を可能な限り均一にするために、熱交換器の各パスは、通常、熱交換器が熱的に接続される貯蔵体材料のかさ容積を最大化するために適切にずらして配置される。いくつかの実施形態では、密閉導管の複数の平行パスは、熱伝達媒体の流れの全体的な方向に対して垂直の方向に設けられる。例えば、平行パスは、約180度方向変換されて互いに流体接続され、それらの長さにわたって一定の距離だけ上昇し、そうでなければ重なり合うパスをずらす。蛇行コイルのこの上昇により、パスを互いにずらすことが可能になり、熱交換器は、顕熱貯蔵体のより大きいかさ容積と熱的に接続されるようになる。
【0064】
特定の実施形態では、蛇行コイルの旋回部は、それぞれ同じ平面内にあるか又は交互の平面内にあり得る。同じ平面内にある場合、埋め込み型熱交換器の平行パスは、単一の平面に沿って配置されることになる一方、交互の平面内にある場合、平行パスを少なくとも2つの平面、好ましくは少なくとも2つの平行な平面に配置することができ、埋め込み型熱交換器は、これらの平行な平面間を階段吹き抜けのように交互に上昇することになる。この上昇の結果、後者の設計の連続する交互の平行パスは、それぞれ2つの軸に沿ってずれる。
【0065】
意外にも、本発明者らは、上昇型蛇行コイル熱交換器が、熱交換器と顕熱貯蔵体との接触面積の調節におけるより大きい柔軟性を提供することを発見した。例えば、熱交換器のそれぞれの上昇が50mmであり、厚さ50mmの顕熱貯蔵体構成部品に対応する場合、160mmの曲げ半径は、高さ2mの本体に対して熱交換器の約40個の水平パスを埋め込んだ、顕熱貯蔵体と接触する熱交換器により実現することができる。これは、より多くのパスを提供することができるため、上昇型蛇行コイルによる熱エネルギーの抽出率が、垂直コイル設計(同一平面内に交互のパス)を有する熱交換器コイルと比較して3倍大きくなるため、重要となる場合がある。
【0066】
蛇行コイル熱交換器の別の利点は、密閉導管の平行パスを一定の距離だけずらして、顕熱貯蔵体からの所望の最大及び最小エネルギー排出量によって指定された旋回直径及び全体的な熱伝達容量を含む特定の設計要件に対応し得ることである。一実施形態では、蛇行コイルの各旋回部は、約20mm~約150mm、約20mm~約140mm、約20mm~約120mm、約20mm~約110mm、約20mm~約100mm、約20mm~約80mm、約50mm~約100mm、約50mm~約80mm、約60mm~約80mm、約70mm~約80mm、約20mm~約70mm、約20mm~約60mm、約30mm~約60mm、好ましくは約75mmの上昇を有する。好適な実施形態では、蛇行コイルの各旋回部は、顕熱貯蔵装置の構成部品と実質的に同じ厚さの上昇を有する。
【0067】
上記で開示されるように、顕熱貯蔵体は、複数の構成部品から構成することができるが、これらは、熱交換器を収容する間に差し込み式で組み立てることが好ましい。構成部品の構造は、蛇行コイルの各旋回部が顕熱貯蔵体の構成部品と実質的に同じ厚さの上昇を有する実施形態でさらに使用可能になる。事実上、各構成部品は、それぞれの熱交換器チャネルがパスと上下両方で直接接触するように、密閉導管のずらしたパス間に差し込まれる。熱伝導のための接触面積を最大化しながら、単位ブロック構造によって構造の複雑さが最小限に抑えられるため、この設計は、効率的であり、効果的でもある。
【0068】
いくつかの実施形態では、熱交換器は、顕熱貯蔵体内の1つの熱交換器当たり約10個~約80個のパス、約20個~約60個のパス、約30個~約50個のパス、約20個~約40個のパス、約20個~約30個のパス、約20個~約25個のパス、約40個のパス又は好ましくは約23個のパスを含む。
【0069】
理解されるように、熱交換器は、使用される熱交換器の材料及び動作条件によって決まり得る任意の適切な曲げ半径を有することができる。いくつかの実施形態では、熱交換器の各旋回部は、約1D~約5D、約2D~約4D、好ましくは約3Dの曲げ半径を有し、ここで、Dは、パイプの外径である。各熱交換器の曲げ半径が約3Dである好適な実施形態は、高圧及び高温で動作させるときに3Dの曲げ半径を推奨する米国機械学会(American Society of Mechanical Engineers)規格ASME B31.3に基づく。
【0070】
好適な実施形態では、熱交換器は、エネルギー貯蔵装置と密封係合される。特定の実施形態では、熱交換器は、顕熱貯蔵体と密封係合される。好適な実施形態では、熱交換器は、顕熱貯蔵体を密閉する筐体と密封係合される。この好適な実施形態では、筐体は、熱交換器を受け入れるための少なくとも1つの開口部を有する。熱交換器を受け入れるための少なくとも1つの開口部は、絶縁ブッシュ、密封ガスケットなどの密封フランジを含むことができる。いくつかの実施形態では、加熱素子は、熱交換器と接触する絶縁ブッシュ及び気密封止を提供する断熱材によってだけでなく、高温の熱交換器を(使用中の顕熱貯蔵体に比べて)低温の筐体に対して断熱することによっても筐体に密封係合させることができる。さらなる実施形態では、密封フランジは、気密封止を提供するための密封ガスケットをさらに含む。
【0071】
有利には、熱交換器がエネルギー貯蔵装置に密封係合されるとき、好ましくは筐体と密封係合されるとき、顕熱貯蔵体内に熱を保持し、使用中の筐体と接触する高温の熱交換器を介して「漏れない」ようにすることができる。これは、気密封止によって且つエネルギー貯蔵体が断熱材をさらに含むときにも提供することができる。
【0072】
熱交換器チャネルは、熱交換器を通過する必要な流量に応じて、任意の幾何学的形状又はサイズを取り得ることが当業者によって理解されるべきである。一実施形態では、熱交換器チャネルは、窪みである。他の実施形態では、チャネルは、管状である。特定の実施形態では、管状チャネルは、円形、正方形、矩形、楕円形、三角形、四辺形、五角形、六角形、九角形、六角形、七角形、八角形又は不規則な形状からなる群から選択される断面形状を有する。好適な実施形態では、管状チャネルは、円形又は半円形のチャネルである。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、複数のチャネルを含む。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又はそれを超えるチャネルを含む。いくつかの実施形態では、複数のチャネルは、独立した回路として構成される。
【0073】
当業者であれば理解するように、熱交換器は、必要とされる用途及び温度に応じて、任意の幾何学的形状又は材料のものであり得る。好適な実施形態では、熱交換器の形状は、顕熱貯蔵体のチャネルに相補的であり、それにより、熱交換器は、熱交換器チャネルに嵌合し、顕熱貯蔵体に且つ/又は顕熱貯蔵体からエネルギーを伝達することができる。
【0074】
エネルギー貯蔵装置は、複数の熱交換器を含み得ることを理解されたい。特定の実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれを超える熱交換器を含む。いくつかの実施形態では、各熱交換器は、別個の独立した回路であり、それにより、各熱交換器は、必要に応じてエネルギーの入力又はエネルギーの抽出のいずれかのために使用され得る。熱交換器を使用してエネルギーを入力することが可能な特定の実施形態では、これは、取り外し可能な加熱素子によって貯蔵中に提供される加熱に追加することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、熱交換器は、管状である。特定の実施形態では、管状熱交換器は、円形、正方形、矩形、楕円形、三角形、四辺形、五角形、六角形、九角形、六角形、七角形、八角形又は不規則な形状からなる群から選択される断面形状を有する。好適な実施形態では、管状熱交換器は、円形熱交換器である。いくつかの実施形態では、熱交換器は、熱交換器の表面に設けられたフィン(波状フィン、ピンフィン、直線状フィン、クロスカットフィン、楕円形フィン又はハニカム状フィンなど)、ワイヤメッシュ又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、フィンは、ピンフィンである。特定の実施形態では、フィンは、インライン、千鳥状又はそれらの組み合わせであり得る。
【0076】
一実施形態では、熱交換器の材料は、合金、チタン又はセラミックである。いくつかの実施形態では、熱交換器の材料は、超合金又は耐火セラミックなどの高温セラミックである。好ましくは、熱交換器の材料は、動作温度において酸化又は劣化に対して耐性を有する。一実施形態では、熱交換器の材料は、遷移金属のホウ化物、炭化物、窒化物、酸化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、遷移金属の酸化物は、二ホウ化ハフニウム、二ホウ化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、炭化チタン、窒化チタン、二酸化トリウム、炭化タンタル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0077】
特定の実施形態では、熱交換器の材料は、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、鉄系超合金、クロム系超合金及びそれらの組み合わせからなる群から選択される超合金である。
【0078】
特定の実施形態では、超合金は、チタングレード2の合金、TP439、Al29-4C、Al2003、Al2205、Al2507、TP304、TP316、TP317、254SMO、AL6XN、合金309S、合金310H、合金321H、合金600、合金601、合金625、合金602CA、合金617、合金718、合金740H、合金230、合金X、HR214、HR224、IN600、IN740、ヘインズ282、ヘインズ230、347SS、316L、AFA-OC6、C-276、P91/T122、316SS、IN601、IN800H/H、ハステロイX、CF8C+、HR230、IN61、IN62、253MA、800H、800HT、RA330、353MA、HR120、RA333及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好適な実施形態では、熱交換器の材料は、合金625、合金740H、合金230、合金617、800HT及びそれらの組み合わせである。熱交換器及び加熱素子ケーシングに適した非限定的な合金材料を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
いくつかの実施形態では、熱交換器の材料は、炭化ケイ素、グラファイト、強化ポリマー、粘土、磁器、カーボンナノチューブ、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、鋼、ムライト、酸化ジルコニウム、ダクタイル鉄、鋳鉄、ステンレス鋼、コロンビアの合金、タンタル、モリブデン、タングステン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0081】
温度調整
温度調整は、含水率、温度及び相を含むが、これらに限定されない流体特性を調節するために、2つ以上の類似した流体又は同じ流体の流れを混合させるプロセスである。例えば、温度が低い方の熱伝達流体を温度が高い方の熱伝達流体と混合して、最高動作温度よりも低い動作温度でエネルギー貯蔵装置のエネルギー排出を延長することができる。この実施形態では、顕熱貯蔵抽出により、排出熱伝達流体の温度は、最高貯蔵温度から始まって、顕熱貯蔵体から熱が抽出されるにつれて低温又は最低温度まで低下する。
【0082】
本発明では、温度調整は、熱伝達流体が異なる温度を有する追加の熱伝達流体と混合される一実施形態において実行される。一実施形態では、追加の熱伝達流体は、熱伝達流体よりも高い温度を有する。他の実施形態では、追加の熱伝達流体は、熱伝達流体よりも低い温度を有する。
【0083】
特定の実施形態では、熱交換器の入口熱伝達流体(低温)の一部分は、出口熱伝達流体(高温)と混合され、排出中のより長い継続時間にわたって一定の動作温度を維持する。
好ましくは、熱伝達流体は、熱伝達流体の温度よりも高い温度を有する追加の熱伝達流体と混合される。追加の熱伝達流体は、エネルギー貯蔵装置の熱伝達流体と混合されるとき、別々の流れである場合がある。好適な実施形態では、エネルギー貯蔵装置の追加の熱伝達流体及び熱伝達流体は、同じ流れである。追加の熱伝達流体及び熱伝達流体は、再循環による同じ流れ又は2つ以上のエネルギー貯蔵装置が直列に接続されるときの同じ流れであり得る。例えば、2つ以上のエネルギー貯蔵装置が直列に接続されるとき、追加の熱伝達流体及び熱伝達流体は、同じ流れであり得る。この実施形態では、追加の熱伝達流体は、温度が高い方の一方のエネルギー貯蔵装置の熱交換器の出口からの排出流体であり得、温度が低い方のもう一方のエネルギー貯蔵装置の熱交換器の入口の熱伝達流体と流体接続され、混合される。
【0084】
一実施形態では、熱交換器は、流体接続するための導管にさらに接続される。一実施形態では、導管は、熱交換器の入口及び/又は出口に接続される。一実施形態では、導管は、マニホールドに接続される。好適な実施形態では、マニホールドは、バルブを含む。いくつかの実施形態では、熱伝達流体及び追加の熱伝達流体は、バルブを使用して混合することができる。好適な実施形態では、2つ以上のエネルギー貯蔵装置が直列に接続されるとき、バルブは、熱交換器の入口マニホールドと出口マニホールドとの間に設けられる。顕熱貯蔵体から熱を抽出する間にバルブが開くとき、熱交換器の入口マニホールドの熱伝達流体は、熱交換器の出口マニホールドの、比較的高温の追加の熱伝達流体と混合することになる。これは、エネルギー貯蔵装置からの熱エネルギーの抽出又は排出を延長することができる。
【0085】
特定の実施形態では、バルブは、制御システムによって制御される。制御システムは、動作パラメータ又は液体パラメータ取得データ入力に応答して、直接又は遠隔でバルブを開放、閉鎖又は部分的に開放若しくは閉鎖することができる。制御システムは、例えば、マニホールド又はエネルギー貯蔵装置などに位置するセンサ及び/又は熱電対からのデータに反応するか、又はデータを先取りするフィードバックループ及びフィードフォワードループなどのセンサ及び/又は手動入力から取得したデータを使用してコンピュータに実装されたシステムを含み得るが、これに限定されない。好ましくは、制御システムは、顕熱貯蔵体に設けられた温度センサ、熱交換器及び/又はマニホールドの出入口に設けられた温度センサの少なくとも1つから導き出される温度と接続され、且つ/又は当該温度に応答する比例積分微分(PID:proportional integral derivative)コントローラを使用して実装される。PIDコントローラを使用してセンサからの温度値を監視し、温度値に反応することにより、顕熱貯蔵体からの熱の抽出だけでなく、熱伝達流体の温度調整も自動化し、より正確に制御することができる。制御を改善することで、顕熱貯蔵体の加熱及び顕熱貯蔵体からの熱の抽出がより効率的になるだけでなく、貯蔵された熱エネルギーの抽出を延長して抽出時間を最大化することもできる。
【0086】
特定の実施形態では、エネルギー貯蔵装置の排出は、温度調整なしの場合と比較して、少なくとも約20分、少なくとも30分、少なくとも60分、少なくとも90分、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間だけ延長される。
【0087】
特定の実施形態では、熱伝達流体と追加の熱伝達流体との間の温度差は、約50℃~約600℃、約50℃~約500℃、約80℃~約600℃、約100℃~約500℃、約50℃~約400℃、約50℃~約300℃、約50℃~約200℃又は約100℃~約600℃である。当業者であれば理解するように、温度差は、絶対温度差であり、熱伝達流体温度が追加の熱伝達流体温度よりも高い実施形態又はその反対の実施形態を含む。
【0088】
ガスブランケット
いくつかの実施形態では、顕熱貯蔵体を取り囲む筐体は、筐体を不活性ガスで実質的に満たすためのガス入口と、不活性ガスを通気させるためのガス出口とを含む。筐体内部の空気を不活性ガスと置換することにより、エネルギー貯蔵装置を取り囲む不活性ガス「ブランケット」が提供される。有利には、不活性ガスの使用により、グラファイトの酸化などの顕熱貯蔵体の高温環境に起因する酸化のような不要な反応を防止又は改善することができ、動作寿命を延ばすことができる。さらに、不活性ガス「ブランケット」は、エネルギー貯蔵装置の動作中、膨張するときに高温の不活性ガスを通気し、冷却するときに低温の不活性ガスを「吸気する」ことにより、「吸排気する」ための気密な筐体を提供し、本発明のエネルギー貯蔵装置の筐体内に密閉された一定の圧力を維持することができる。
【0089】
これにより、高圧の膨張ガスを閉じ込めた結果として生じる構造的な膨脹により、筐体及び貯蔵体の両方が損傷する可能性を防ぐことができる。
当業者であれば理解するように、本発明では、任意の適切な不活性ガスを使用することができる。いくつかの実施形態では、不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、クリプトン、キセノン、ラドン、二酸化炭素、一酸化炭素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好適な実施形態では、不活性ガスは、アルゴン、窒素及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0090】
有利には、不活性ガス「ブランケット」を使用すると、顕熱貯蔵体材料がグラファイトであるとき、グラファイト火災を防止又は改善することも可能である。
1000℃を超える温度を使用する場合、窒素は、これらの温度を超えると、場合によりシアン化合物を形成する可能性があるため、アルゴン、ヘリウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される不活性ガスが好ましい。
【0091】
いくつかの実施形態では、不活性ガスの充填及び通気は、単一の双方向のガス栓によって制御される。別の実施形態では、不活性ガスの充填及び通気は、独立した単方向のガス栓によって制御される。
【0092】
特定の実施形態では、不活性ガスの充填及び通気は、不活性ガス管理システムによって制御される。この不活性ガス管理システムは、例えば、筐体又はバルブの内部に位置する圧力センサを利用して、ガス貯蔵器からの不活性ガスを充填し、且つ/又は通気するために開放することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置の筐体内の不活性ガスの圧力は、約1~100hPa(約1~100mbar)、約1~80hPa(約1~80mbar)、約1~70hPa(約1~70mbar)、約1~600hPa(約1~600mbar)、約1~50hPa(約1~50mbar)、約1~40hPa(約1~40mbar)、約1~30hPa(約1~30mbar)、約1~20hPa(約1~20mbar)、好ましくは約1~10hPa(約1~10mbar)である。
【0094】
いくつかの実施形態では、筐体は、筐体の構造的完全性を高めて、本発明のエネルギー貯蔵装置の内部圧力を高めることができるように、リブなどの構造補強材を含む。
相変化材料
さらなる一実施形態では、顕熱貯蔵体は、相変化材料を受け入れるための空洞をさらに含む。相変化材料は、熱交換器と、取り外し可能な加熱素子との間に設けられるとき、潜在エネルギーの貯蔵を含めた、熱障壁としての複数の動作上の利点を提供するために空洞の内部に貯蔵することができる。空洞は、貯蔵される相変化材料の量に応じて任意の幾何学的形状又はサイズを取ることができる。空洞は、任意の適切な形状を取ることができ、例えば球、立方体、円柱、円錐、直方体、角柱、四面体又は不規則な形状であり得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、顕熱貯蔵体は、開放空洞を含む。有利には、開放空洞を有する顕熱貯蔵体により、相変化材料は、加熱されると体積が膨張し、冷却されると体積が収縮することが可能になる。
【0096】
いくつかの実施形態では、顕熱貯蔵体は、密封された閉鎖空洞を含む。この構成では、相変化材料は、空洞内に密閉され、気密封止される。他の実施形態では、顕熱貯蔵体は、気体透過性の閉鎖空洞を含む。この構成では、空洞は、閉鎖されるが、外部環境とのガス交換が可能である。これにより、ガス放出を行う一方、相変化材料を貯蔵する顕熱貯蔵体の空洞内に不活性ガスを入れることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、顕熱貯蔵体は、複数の空洞を含む。いくつかの実施形態では、顕熱貯蔵体は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個(以上)の空洞を含む。特定の実施形態では、空洞は、少なくとも1個の開放空洞及び少なくとも1個の閉鎖空洞を含む。他の実施形態では、すべての空洞が閉鎖される場合もあれば、すべての空洞が開放される場合もある。
【0098】
上記実施形態において存在する相変化材料は、エネルギーを貯蔵又は抽出するときに相(すなわち固体、液体、気体又はプラズマ)を変化させる任意の適切な材料であり得る。相変化材料は、エネルギーを貯蔵又は抽出して、材料が相変化を起こすときにほぼ一定の温度で材料の状態を変化させることが可能な潜在エネルギー貯蔵材料である。例えば、水は、凝固及び融解中に相変化を起こすときの潜在エネルギー貯蔵材料である。
【0099】
好適な相変化材料には、アルミニウム、亜鉛、鉛、スズ、マグネシウム又はこれらの金属のいずれか1つ又は複数を含有する合金など、任意の金属が含まれる。最も好ましくは、相変化材料は、アルミニウム若しくはアルミニウムを含む合金又はその塩水和物である。
【0100】
一実施形態では、相変化材料は、最大で約1500℃、最大で約1300℃、最大で約1200℃又は最大で約1000℃の相変化温度を有する。一実施形態では、相変化材料は、約80~約1500℃、約200~約1500℃、好ましくは約350~約1200℃、好ましくは約500~約1500℃、好ましくは約800~約1200℃、好ましくは約400~約1000℃、より好ましくは約400~約850℃、より好ましくは約400~約800℃、より好ましくは約550~約1000℃、最も好ましくは約600~約800℃の相変化温度を有する。相変化材料を使用すると、エネルギー貯蔵の費用効果を高めることができる。
【0101】
上記で論じたように、特定の実施形態では、相変化材料は、取り外し可能な加熱素子と熱交換器との間に熱障壁を有利に提供して、熱交換器を過熱させず、且つ熱交換器材料の動作温度限界を超えないようにする。熱交換器材料の最高動作温度に近い融解温度を有する適切な相変化材料が選択される場合、熱交換器の温度上昇速度を最高動作温度限界付近で遅くすることができ、熱交換器の温度上昇速度を制御し易くし、熱交換器の最高動作温度を決して超えないようにすることができる。
【0102】
エネルギー貯蔵アレイ
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の複数のエネルギー貯蔵装置を含むエネルギー貯蔵アレイを提供する。好適な実施形態では、本明細書に記載のエネルギー貯蔵装置は、熱的に及び/又は電気的に接続される。特定の実施形態では、エネルギー貯蔵アレイは、ある1つのエネルギー貯蔵アレイの熱交換器の出口と、別のエネルギー貯蔵アレイの熱交換器の入口との間に設けられた導管をさらに含む。
【0103】
好適な実施形態では、導管は、入口及び出口を有するマニホールドに接続され、好ましくは、このマニホールドは、入口マニホールドと出口マニホールドとの間にバルブを含む。特定の実施形態では、エネルギー貯蔵アレイは、ユニットの形態であり、この場合、ユニットは、区分的に組み立てられることが好ましい。好ましくは、ユニットは、ハウジング内に含まれる。一実施形態では、ハウジングは、輸送コンテナなどである。別の実施形態では、輸送コンテナの内部は、本明細書に記載されるように、複数のエネルギー貯蔵装置(すなわち各エネルギー貯蔵装置が典型的には1つのグラファイトパネルである複数のグラファイトパネル)を受け入れるように適合される。一実施形態では、複数の装置は、直列又は並列に配置される。特定の実施形態では、エネルギー貯蔵アレイは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のエネルギー貯蔵装置を含む。特定の実施形態では、エネルギー貯蔵アレイは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個又は少なくとも10個のエネルギー貯蔵装置を含む。好適な一実施形態では、6.096メートル(20フィート)の輸送コンテナは、2個又は3個のグラファイトパネルを収容する。
【0104】
本発明は、特定の実施形態では、以下の利点の少なくとも1つを提供することができる。(a)取り外し可能な加熱素子が顕熱貯蔵体と直接接触する結果として、熱損失が低減し、熱効率が向上する。(b)電気端子が十分に冷却及び/又は断熱され、顕熱貯蔵体との接触時にグラファイト粉末の進入を防ぐため、取り外し可能な加熱素子の寿命が延びる。(c)各加熱素子が使用できるワット密度が高くなるため、目標動作温度に必要な加熱素子の数が減る。(d)熱エネルギーの貯蔵中により均一な温度プロファイルを提供する。(e)必要に応じて取り外し可能な加熱素子を交換又は修理することにより、より容易なメンテナンスが可能になる。(f)十分な断熱材を提供することにより、熱損失が低減する。(g)エネルギー貯蔵装置の密閉時に不活性ガス及び内部圧力管理システムを提供することにより、酸素を遮断する。(h)温度調整があるとき、エネルギーの排出を延長する。(i)グラファイト火災に必要な条件を除去又は最小限に抑えることができる。(j)動作及びメンテナンスのコストを削減する。
【0105】
定義
本発明を説明及び特許請求する際、以下の専門用語は、以下に記載される定義に従って使用される。本明細書で使用される専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図しないことも理解されたい。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0106】
文脈が明らかに他のことを要求しない限り、説明及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」、「含んでいる」などの単語は、排他的又は網羅的な意味とは反対に包括的な意味で、すなわち「含むが、限定されない」という意味で解釈される。
【0107】
本明細書で使用される場合、「からなる」という文言は、特許請求の範囲で指定されない任意の要素、ステップ又は成分を除外する。前文の直後ではなく、特許請求の範囲の本文の節に「からなる」という文言(又はその変形)が現れるとき、その節に記載される要素のみを限定する。他の要素は、全体として特許請求の範囲から除外されない。本明細書で使用される場合、「本質的に~からなる」という文言は、指定される要素又は方法ステップに加えて、特許請求される主題の基礎及び新規な特性に実質的に影響を及ぼさないものに特許請求の範囲を限定する。
【0108】
「含む」、「からなる」及び「本質的に~からなる」という用語に関して、これらの3つの用語の1つが本明細書で使用される場合、現在開示され、特許請求される主題は、他の2つの用語のいずれかの使用を含み得る。したがって、他のことが明示的に記載されないいくつかの実施形態では、いずれの場合の「含む」も、「からなる」又は代替的に「本質的に~からなる」によって置き換えることができる。
【0109】
実施例以外又は他のことが示される場合以外に本明細書で使用される成分の量又は反応条件を表すすべての数字は、すべての場合に「約」という用語によって修飾されると理解されるものとする。実施例は、本発明の範囲を限定することを意図しない。以下において又は他のことが示されない限り、「%」は、「重量%」を意味し、「比率」は、「重量比」を意味し、「部」は、「重量部」を意味する。
【0110】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、他のことが示されない限り、適宜、50重量%を超えるものを含むことを意味するものとする。
端点を使用した数値範囲の記載には、その範囲内に包含されるすべての数が包含される(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0111】
「好適な」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利益をもたらす可能性のある本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下で他の実施形態も好適である場合がある。さらに、1つ又は複数の好適な実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを暗示するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図しない。
【0112】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈が明らかに他のことを規定しない限り、複数の指示対象を含むことにも留意されなければならない。
【0113】
本明細書で言及される先行技術は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
開示される技術の例示的な実施形態が本明細書で詳細に説明されるが、他の実施形態が企図されると理解されるものとする。したがって、開示される技術は、その範囲において、以下の説明に記載されるか又は図面に図示される構成要素の構造及び配置の詳細に限定されることを意図しない。開示される技術は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践又は実行することができる。
【0114】
ここで、本発明の好適な実施形態は、例としてのみ添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1a】本発明のエネルギー貯蔵装置の一実施形態を示す、側面斜視図である。
図1b】本発明のエネルギー貯蔵装置の一実施形態を示す、図1aの線A-Aに沿って得られた断面斜視図である。
図1c】本発明のエネルギー貯蔵装置の一実施形態を示す、図1aの線B-Bに沿って得られた、熱交換器管類及び加熱素子が存在しない状態の断面斜視図である。
図2a】筐体内に入れられた本発明のエネルギー貯蔵装置の一実施形態を示す、前方側面斜視図である。
図2b】筐体内に入れられた本発明のエネルギー貯蔵装置の一実施形態を示す、後方側面斜視図である。
図3a】本発明の加熱素子の一実施形態を示す図である。
図3b】加熱素子チャネル内に挿入されたときの、使用中の図3aの加熱素子の端面図である。
図4a】エネルギー貯蔵装置の一実施形態に挿入されたときの、使用中の本発明の加熱素子の一実施形態を示す図である。
図4b図4aの加熱素子の反対側の端部を示す図である。
図5】本発明の加熱素子取り付けパッドの一実施形態を示す図である。
図6a】蛇行コイルの形態の熱交換器の設計の一実施形態を示す、側面斜視図である。
図6b】蛇行コイルの形態の熱交換器の設計の一実施形態を示す、図6aの線A-Aに沿って得られた断面斜視図である。
図7a】熱交換器を受け入れるための開口部を有する筐体の構成部品の一実施形態を示す図である。
図7b】先行技術の超過圧力通気パネルの一実施形態の組立体を示す図である。
図8】熱交換器と筐体との間を密封係合するためのベローズ密封構成の一実施形態を示す図である。
図9】流体出口温度の温度調整を示す図である。
図10a】温度調整のためのマニホールド組立体の一実施形態を示す図である。
図10b】6.096メートル(20フィート)のHC協同一貫輸送コンテナを含むエネルギー貯蔵ユニットの一実施形態を示す図である。
図11a】圧力調整器を使用する、不活性ガスブランケットシステムの異なる実施形態の概略図である。
図11b】圧力調整器を使用する、不活性ガスブランケットシステムの異なる実施形態の概略図である。
図11c】圧力調整器を使用する、不活性ガスブランケットシステムの異なる実施形態の概略図である。
図11d】圧力調整器を使用する、不活性ガスブランケットシステムの異なる実施形態の概略図である。
図11e】水柱を使用する代替的な圧力調整器を示す図である。
図12】不活性ガスブランケットシステムの一実施形態(試験装置1)のプロセスのフロー図である。
図13図12に対する不活性ガスブランケットシステムの一実施形態(試験装置2)のプロセスのフロー図である。この実施形態では、パイロット作動式背圧調整器が試験装置1の組立背圧デバイスに置き換わっている。
図14】本発明の不活性ガスブランケットシステムの一実施形態の代替的なプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
当業者は、本発明が、本明細書に開示される実施形態及び特徴並びに開示される実施形態及び特徴のすべての組み合わせ及び/又は順列を含むことを理解するであろう。
【実施例
【0117】
実施例1-エネルギー貯蔵装置
図1aを参照すると、エネルギー装置100として使用するための顕熱貯蔵体102が示されている。顕熱貯蔵体102は、取り外し可能な加熱素子106(図示せず)を受け入れるための加熱素子チャネル104を有する。顕熱貯蔵体102は、熱交換器110を受け入れるための熱交換器チャネル108も有する。顕熱貯蔵体102は、構成部品によって組み立てられ、研磨機にかけ、機械加工されるなどして、加熱素子チャネル104と、顕熱貯蔵体内に少なくとも2つの開放端を有する熱交換器チャネル108とを提供することができる。顕熱貯蔵体102は、熱交換器110だけでなく、加熱素子106もぴったりと受け入れるように機械加工された、グラファイトの構成部品「スラブ」で構成されたグラファイトパネルの形態である。
【0118】
図1b~図1cを参照すると、エネルギー貯蔵装置100は、断熱材112の4つの層を含む一実施形態を示す。断熱材の一片は、エネルギー貯蔵装置からの熱の量及び高温ガスの漏出量を最小限にするように、それぞれ一部を重なり合わせて互い違いに配列された層状である。高温グラファイト本体102から続く各断熱材の層112の温度が下がるにつれて、より低温の断熱材料112を使用することができ、性能/コスト比が最適化される。次に、エネルギー貯蔵装置は、筐体114(図示せず)によって密閉される。
【0119】
使用中、取り外し可能な加熱素子106は、顕熱貯蔵体102の内側領域を加熱し、熱交換器110は、熱伝達媒体が熱交換器110の入口から本体102を通して出口に流れることができるように、顕熱貯蔵体102の熱交換器チャネル108内に入れられる。
【0120】
図2a~図2bは、結果として得られる入れられたエネルギー貯蔵装置100の前面図及び背面図を示し、図では、筐体は、筐体の構造的完全性を高めて内部圧力をより大きくできるようにするために、リブ又はケース補剛材などの形態で構造補強材116を含む。
【0121】
実施例2-加熱素子
図3aを参照すると、一方の端部に長尺状の加熱部分106aと、反対側の端部に断熱部分106bとを有する加熱素子106が示されている。断熱部分は、電気端子107と電気的に接続されるように適合された導電体(図示せず)を有する。加熱素子106の断熱部分106bは、2つの段差を有する。加熱素子は、加熱部分106aが管状ループの形態である電気抵抗器である。
【0122】
図3bは、加熱素子チャネル104内に挿入されたときの、使用中の加熱素子106の端面図を示す。使用中、加熱素子106は、膨張し、加熱素子チャネル104の内側領域の表面と接触する。これにより、加熱素子からグラファイト本体への効率的な熱の伝導が可能になる。
【0123】
加熱素子106は、熱伝導性であるが、電気絶縁性の圧縮酸化マグネシウム粉末に取り囲まれた抵抗線106a、典型的にはニクロムを含む。これは、次に、加熱素子ケーシング内に入れられ、このケーシングは、インコネル又はインコロイなどの高温合金材料から作られた密封された管状の金属シースの形態である。グラファイトは、低い放射率、高い熱伝導率及び高い比熱を有する顕熱貯蔵体102の好適な材料であるため、加熱素子106は、高ワット密度であり得、必要な加熱素子表面積を減らし、必要な加熱素子の数を減らし、したがってコストを削減することができる。
【0124】
加熱素子により、エネルギー貯蔵装置からの各ヒータの取り外し及びエネルギー貯蔵装置への交換が容易になる。
図4aは、エネルギー貯蔵装置102内への加熱素子106の挿入を示す。加熱素子106は、締め付け板115を使用して筐体114に溶接され、ボルト留めされた加熱素子取り付けパッド105に固定された加熱素子フランジ106cを有する。加熱素子106は、抵抗線がなく、導電ワイヤ/ピンのみを有する「コールドレッグ」(断熱部分106b)の長さを有し、この「コールドレッグ」区域は、断熱される。「コールドレッグ」の長さの一部分は、電気端子107を低温に保つために周囲温度にさらされるように筐体114の外側にある。
【0125】
代替的な構成では、加熱素子は、例えば、テーパ状ねじ継手によってエネルギー貯蔵装置100に固定することができる。
締め付け板115と加熱素子取り付けパッド105との間に密封ガスケット118を提供して、気密封止を提供することができる。断熱材112は、実施例1と同様に、顕熱貯蔵体102と筐体114との間に提供される。この特徴を組み合わせることで、周囲の空気により電気端子107が確実に十分冷却され、断熱されるようにして、電気端子107の過熱及び高温ガスの電気端子への移動を低減又は防止することにより、加熱素子106の寿命を長くすることができる。
【0126】
図4bは、顕熱貯蔵体の加熱素子チャネル104が穿孔120をさらに含む、エネルギー貯蔵装置100の反対側の端部を示す。穿孔120は、取り外し可能な加熱素子106を受け入れる加熱素子チャネルの開口の反対側に位置する。穿孔120は、使用中に顕熱貯蔵体の内側領域を加熱するとき、ガス圧力の増大を回避することにより、加熱素子チャネル104内に存在するガスを排気できるようにする。これにより、超過圧力に起因する気密封止の低下を回避することができる。穿孔120により、加熱素子チャネル104が高温であるときに膨張したガス(不活性ガスなど)を吐き出し、冷却されたときにガスを吸い込むようにすることも可能になる。加熱素子チャネル104により、加熱時の加熱素子の長手方向の膨張も可能になる。
【0127】
図5は、加熱素子取り付けパッド105の一実施形態を示す。加熱素子取り付けパッドは、個々の加熱素子106をそれぞれ受け入れるための複数の開口部を有する単一部品である。加熱素子取り付けパッド105の開口部、加熱素子106を受け入れるための筐体の開口部、及び加熱素子チャネル104の直径は、構造上/組み立て上の公差からのいかなる位置合せ不良にも対応することができるように、加熱素子の断熱部分106bの直径よりも大きい。ガスケット穿孔も加熱素子の断熱部分106bの面取りされた段差より大きく、締め付け板並びにボルト及び座金を使用して組立体を密封するように圧縮される。この構成では、ボルトを取り外すことにより、座金及び締め付け板115は、各ヒータを個々に取り外し、交換できるようにする。
【0128】
実施例3-熱交換器
図6a~図6bは、蛇行コイルの形態の熱交換器110の設計の一実施形態を示す。高温の動作温度における熱交換器110に適した引っ張り強さの高い材料は、延性が低下し、曲げ半径は、典型的な蒸気用高延性鋼管(HTF)よりも大きいことが必要である。
【0129】
ASME B31.3規格は、3Dの曲げ半径を推奨しており、ここで、Dは、パイプの外径である。例えば、DN20 Sch 80熱交換器パイプの場合、曲げ半径は、160mmである必要がある。顕熱貯蔵体として高さ2mのグラファイト本体の場合、垂直コイル設計(交互のパスが同一平面内にある)は、グラファイト内に入れられた1つの熱交換器パイプ当たり約12の水平方向の走路が提供され、グラファイト本体内の熱交換器パイプの接触表面積が制限される。
【0130】
対照的に、図6a~図6bに示されるような上昇型蛇行熱交換器コイルの設計は、熱交換器パイプとグラファイト本体との接触域を個別に調整する際の柔軟性が向上する。例えば、上昇が約50mmである(厚さ約50mmのグラファイトスラブ構成部品に対応すると仮定する)場合、曲げ半径160mmは、高さ2mのグラファイト本体に約40の水平方向のパイプの走路を有しながら実現することができる。これは、熱交換器による熱エネルギーの抽出率が垂直コイル設計の抽出率の3倍であるため、特に重要である。
【0131】
蛇行コイル熱交換器の設計に対するさらなる利点は、熱交換器導管/パイプを通して熱伝達流体及び/又は作動流体の流れとして熱を抽出する際、グラファイト本体中の熱が左から右に及び底部から上部に伝達し、グラファイト本体全体にわたってより均一な温度プロファイルをもたらすことである。
【0132】
図7aは、ベローズ密封構成を使用して密封係合されるように、熱交換器110を受け入れるための開口部を有する筐体114の構成部品を示す。筐体114の開口部は、熱交換器110と密封係合するためのベローズ密封パッド122を有する。動作中に筐体114内に不活性ガスの超過圧力が生じた場合、さらなる超過圧力通気パネル開口124が筐体114に提供される。図7bは、超過圧力通気パネル126の一実施形態の組立体を示す。
【0133】
図8は、熱交換器110と筐体114との間を密封係合するためのベローズ密封構成を示す。この構成では、M10×50mmのSSグラブスクリュー全体は、筐体114に溶接されたベローズ密封パッド122の密封面のねじ穴内にねじ留めされる。密封ガスケット118aがM10グラブスクリューを通して挿入され、断熱ディスク112aが各熱交換器パイプ110に通される。ベローズ半組立体127は、管コネクタを通して断熱ディスク112a及び熱交換器パイプ110上に配置される。ベローズ半組立体127は、密封ガスケット118aと、圧縮取り付け具128と、SSベローズフェルール又は圧縮オリーブ130と、ベローズフランジ132とを含む。圧縮オリーブ又はフェルール132は、熱交換器パイプ110上に取り付けられ、圧縮取り付け具128を用いて圧縮される。
【0134】
熱交換器110がエネルギー貯蔵装置100の筐体114と密封係合されるとき、熱は、グラファイト本体102内に保持することができ、気密封止及び断熱材が提供されるため、筐体114と接触する高温の熱交換器パイプ110を介して漏れない。
【0135】
実施例4-温度調整
顕熱貯蔵抽出の場合、排出熱伝達流体及び/又は作動流体温度は、最高貯蔵温度から始まって、熱がグラファイト本体から抽出されるにつれて最低動作温度まで低下する。この構成では、図9に示されるように、低温の入口作動流体の一部分が高温の出口流体と混合され、より長い継続時間にわたって一定の温度を維持する。
【0136】
温度調整は、図10aに示されるようなマニホールド組立体133を使用する一実施形態によって提供することができる。流量制御バルブ134は、入口マニホールド136と出口マニホールド138との間に設けられる。グラファイト本体102の温度センサ(図示せず)、入口マニホールド136及び出口マニホールド138は、熱伝達流体の出口マニホールドの流れと混合される入口マニホールドの流れの割合を決定することができる。
【0137】
図10bは、6.096メートル(20フィート)のHC協同一貫輸送コンテナを含むユニットの一実施形態を示す。ハウジング140へのアクセスにより、管状加熱素子106の挿入、取り外し及び交換が可能になる。ハウジングへのアクセスにより、マニホールド組立体の設置及び2つのエネルギー貯蔵装置100間に設けられた流量制御バルブ134の保守を行うことも可能になる。グラファイトパネル102の形態のエネルギー貯蔵装置は、コンテナ内に固定され、現場外でユニット全体を組み立て及び試験し、現場まで輸送することができる。
【0138】
2個、3個又は複数のグラファイトパネル102のユニット構成は、積み重ねて、高フットプリント貯蔵密度を提供することができる。これらの複数のグラファイトパネル102は、まとめてマニホールド133と接続され、且つ加熱素子106及び制御バルブ134にアクセスするための標準的な開口を有する協同一貫輸送コンテナに収容される。この設計により、中量生産が可能になり、現場外での製造及び組み立てが容易になり、輸送が容易になる。
【0139】
実施例5-不活性ガスブランケット
本発明のエネルギー貯蔵装置は、不活性ガス環境で筐体内に密閉することができる。グラファイトパネルは、「気密」封止されるため、作動/動作温度が上昇し、内部のガス圧力が高くなる。パネル筐体の膨脹及び収縮によって生じる応力を最小限にするために、この圧力を解放しなければならない。逆に、グラファイトパネルが冷却されると、不活性ガス又は周囲ガスが収縮し、真空が生じる可能性が高まり、体積を補償することが必要になる。
【0140】
不活性ガスブランケットシステムの目的は、図11aに示されるように、アルゴンなどの不活性ガス供給をグラファイトパネルに提供し、圧力を最低値で維持し、且つ圧力の上昇が事前に設定された最低値を上回った場合、アルゴンをさらに解放することである。
【0141】
圧力調整器は、グラファイトパネル内の圧力を維持することができる。必要な圧力は、低圧であり、単に空気の進入を防止しさえすればよい。ブランケット調整器は、通常、数インチの水柱に設定される。このシステムでは、水柱25.4~50.8mm(1~2’’WC)(約2.5~5.0hPa(約2.5~5.0mbar))で十分である。
【0142】
加熱/貯蔵段階中、グラファイトパネルの内部圧力が上昇する。背圧調整器は、内部圧力を所定の値まで解放する。背圧設定値に影響を及ぼす要因には、
●不活性ガスの消費を最小限に抑えること、
●グラファイトパネル筐体に対する循環応力を減らすこと、及び
●グラファイトパネルの正常な動作圧力と破壊圧力との間に十分な余裕をもたせること
が含まれる。
【0143】
水柱254mm(10’’WC)(約25hPa(約25mbar))の値を一実施形態において使用することができる。この値は、グラファイトパネルの破壊圧力が大幅に高くなった場合(206.84~275.79hPa(3~4psi)/200~300hPa(200~300mbar))、大きくなる可能性がある。
【0144】
不活性ガスブランケットシステムは、グラファイトパネルの材料劣化を防ぐことを要求されるが、このシステムが故障すると、システム損傷又はグラファイトパネルの突発故障が結果として生じる可能性がある。
【0145】
圧力調整器の少なくとも2つの構成部品が障害を起こす可能性があり、それらは、振動板及びばねである。ばねが故障すると、圧力調整器が閉じ、すなわち圧力が低下し、不活性ガスの流れを妨げるという結果となる。このモードが準最適である限り、エネルギー貯蔵装置に重大な損傷をもたらす危険はない。損傷及び故障は、調整された不活性ガスの供給を引き継ぐ別の圧力調整器を並行して有することによって軽減することができる。
【0146】
振動板が故障すると、調整器が開かなくなるという結果となる。この故障モードは、下流の圧力を上昇させ、軽減されなければ、本発明の動作に極端な影響を与える可能性がある。
【0147】
第1のレベルの軽減は、グラファイトパネルへの損傷を引き起こさない圧力設定値にセットされた不活性ガスマニホールドにリリーフバルブを設置することで可能である。第2のレベルの軽減は、背圧調整器の全開CV(デバイスの流量係数であり、流体の流れを可能にする効率の相対的な尺度である)が必ず圧力調整器の全開CVよりも大きくなるようにすることで可能である。これにより、グラファイトパネル内の圧力の蓄積が防止されることになる。適切な圧力調整器は、最小オリフィスCVが1であるものであり得る。下記の表2は、全開(故障)状態において調整器を通る流量を示す。
【0148】
【表2】
【0149】
背圧調整器が(グラファイトパネルの安全圧力を基準とする最大流量及び差動圧の計算に基づいて)1を超えるCVを有する場合、パネルに圧力が蓄積しない。このシステムは、例えば、図11b及び図11cに示されている。
【0150】
背圧調整器の故障モードは、圧力調整器と同じである。しかしながら、結果が異なる。振動板の故障は、調整器を全開させ、調整器に圧力を維持させないようにする。この結果、不活性ガスの損失が生じるが、圧力の蓄積は、生じない。しかしながら、ばねが故障すると、故障した調整器が閉じ、調整器が圧力を解放することができなくなる。この状態の軽減は、主要調整器と並行して予備の背圧調整器を有することである。予備の調整器は、図11dに示されるように、主要調整器が故障した場合に制御を引き継ぐことになる。
【0151】
貯蔵パネルへの背圧を実現する代替的な選択肢は、図11eに示されるように、グラファイトパネルの出力ラインを水柱に接続することである。
この動作原理は、水の重量の圧力効果に基づく。水柱の基部への圧力は、基部の上方の水の高さに等しい。水の高さが例えば25.4mm(10’’)である場合、水柱を通してそれを解放するには、水柱25.4mm(10’’WC)(約25hPa(約25mbar))を超えるアルゴン圧力が必要となる。この構成では、システムに生じるのは、低圧のみであるため、このタイプのシステムに必要とされる材料は、低価格である。例えば、水柱タイプのバルブは、薄肉の鋼管又はPVC配管から構成することができる。
【0152】
ユニットは、水柱の上方にサージ室を有する。このサージ室の目的は、急速な減圧の場合に水がグラファイトパネルに入り込むのを防ぐことである。サージ室は、名目上、水柱内の液体の体積の2倍のサイズである。
【0153】
また、使用される液体は、水である必要はない。水柱の高さが比重の変化を考慮して調節される場合、エチレングリコールなどの他の流体を使用することが可能である。水を使用することの短所は、生体材料が蓄積され、ユニットが故障する原因となる可能性があることである。バイオマスの発育を助長しない他の液体がこの問題に対処することができる。また、これらの液体は、着色され得、覗きガラスを水柱に設置する場合に検査を促進する。
【0154】
(a)試験装置1
試験装置を図12に示す。この実施形態では、グラファイトパネルで不活性ガスのブランケットを維持するのに必要な圧力は、低圧であり、およそ水柱(wcWC)25.4~50.8ミリメートル(1~2インチWC)(約2.5~5.0hPa(約2.5~5.0mbar))程度である。
【0155】
グラファイトパネルは、加熱される密封コンテナである。密封コンテナであるため、加熱されると、コンテナ内部のガスの圧力が上昇する。グラファイトパネル内部の超過圧力を防ぐために、圧力が所定の圧力レベルを超過した場合、ガスを解放する背圧調整器が設置される。この設備の場合、組立圧力維持デバイスが背圧調整器に代わってその機能を行うために使用される。調整器の解放圧力は、不活性ガスを不必要に解放しないように十分に高圧であるが、加熱及び冷却サイクル中にグラファイトパネル筐体に応力がかからない点に設定しなければならない。この構成では、背圧は、水柱254mm(10’’WC)(約25hPa(約25mbar))であると仮定される。
【0156】
アルゴンは、圧力を低下させるための圧力調整器(1)が一体化された高圧ボトル内で供給される。アルゴンのボトルは、フレキシブルホース接続(2)によってアルゴン母管路に接続される。パイロット調整器には、1MPag(10barg)の最大上流圧力が必要である。ボトル調整器がこの圧力を供給できない場合、別個の調整器(3)をパイロット調整器の上流に設置して、1MPag(10barg)(以下)に圧力を低下させなければならない。この調整器の正確性は、上流圧力に関係なくパイロット調整器が正確な下流圧力を維持することになるため、重要ではない。
【0157】
グラファイトパネルへの圧力は、水柱50.8mm(2’’WC)(約5.0hPa(約5.0mbar))に設定された低圧パイロット作動式調整器(4)によって維持される。調整器パイロットは、12.7mm(1/2’’)SST管類(5)を用いて下流地点に接続される。接続の位置は、重要ではないが、パイロット調整器の出力からの乱流による影響を受けないように十分に下流でなければならず、また圧力調整がグラファイトパネル内の不活性ガスの圧力を確実に反映するように不活性ガス入口に十分に近くなければならない。
【0158】
超過圧力(調整器の故障が原因で起こる可能性が最も高い)の場合、グラファイトパネルへの不活性ガスの供給を遮断するために、圧力スイッチ及びソレノイド(6)がパイロット調整器の下流に設置される。圧力スイッチの設定値は、背圧の設定値を上回り、且つグラファイトパネルの安全限界(圧力)を下回らなければならない。この事例では、それは、水柱381mm(15’’WC)(約37hPa(約37mbar))であると仮定される。ソレノイドを通電して開き、高圧信号によってソレノイドバルブの通電を解除する。背圧デバイスの容量(CV)は、パイロット圧力調整器のCVよりもはるかに大きいため、パイロット調整器の故障が原因でグラファイトパネル内の圧力が上昇する尤度は低い。
【0159】
不活性ガス母管からグラファイトパネルへの及びグラファイトパネルから背圧デバイスへの不活性ガスの接続は、6.35mm(1/4’’)SST管(7)(8)(9)による。テーブルのサイズは、必要容量の不活性ガスを通すのに十分なサイズである。
【0160】
(b)試験装置2
図13に示されるように、このシステムは、組立背圧デバイスがパイロット作動式背圧調整器に置き換わっている。調整器が閉じられて故障すると、圧力が上昇する。圧力がPS 2の値を上回って上昇すると、バルブV2が開いて、不活性ガスを大気中に通気することになる。
【0161】
(c)動作原理 - 処理フロー図(PFD:Process flow diagram)
図14に示されるPFDは、単純化されたPFDであり、逆流防止バルブ及び手動隔離バルブが省略され、圧力スイッチを除いてマニホールド解放又は不活性ガス隔離に関連した器具類も省略されている。グラファイトパネルは、ユニットに組み立てられる。PFDは、1つのユニットが4つのパネル(動作を説明するのに数は重要ではない)を含むと仮定し、エネルギー貯蔵アレイは、4つのユニットを有して示されている。
【0162】
グラファイトパネルへのアルゴンなどの不活性ガスは、ガスボトルによって供給されるか、又はグラファイトパネルから回収され、圧縮されたガスである。不活性ガスが再圧縮によって供給される間にグラファイトパネルから漏出があれば、ガスボトルからの不活性ガスは、再圧縮された不活性ガスと融合されて、失われた不活性ガスに置き換わることになる。不活性ガス損失を検出し、ボトルに入った不活性ガスを組み合わせる方法は、図示又は説明しないが、当業者には分かるであろう。
【0163】
各ユニットは、非稼働にする場合、不活性ガスシステムから隔離することができる。隔離する場合、入口バルブ及び出口バルブの両方を閉じなければならない。ユニット1の場合、これは、V5及びV9である。
【0164】
2つの圧力低下調整器は、制御された圧力で不活性ガスをグラファイトパネルに並行して供給する。R1は、主要調整器であり、水柱50.8mm(2’’WC)に設定され、R2は、補助調整器であり、水柱25.4mm(1’’WC)に設定される。
【0165】
R1が閉構成で故障すると、出口圧力が下落する。出口圧力が水柱25.4mm(1’’WC)まで下がると、R2が制御を引き継ぐ。
R1又はR2が開構成で故障すると、圧力が上昇する。圧力が所定の値(PS 1)を上回って上昇した場合、ソレノイドバルブV3が閉じ、グラファイトパネルへの不活性ガスの流れが停止する。
【0166】
圧力は、背圧調整器R3(水柱254mm(10’’WC)に設定された主要調整器)及びR4(水柱304.8mm(12’’WC)に設定された補助調整器)によってグラファイトパネル内で維持される。R3が閉構成で故障すると、圧力が上昇する。圧力が水柱304.8mm(12’’WC)まで上昇すると、R4が制御を引き継ぐ。
【0167】
R3及びR4の両方が閉構成で故障すると、圧力が上昇する。圧力が所定の値(PS 2)まで上昇すると、V4が開き、不活性ガスを大気中に通気することになる。
正常動作中、R3(又はR4)からの不活性ガス出口は、T1に蓄積される。不活性ガスは、次に、圧縮、ろ過及び乾燥され、タンクT2内で緩衝される。
【0168】
(d)グラファイト酸化及び火災
不活性ガスブランケットシステムを使用すると、450℃を超える温度で酸素が存在する状態で生じるグラファイトの酸化を回避することができる。さらに、不活性ガスブランケットシステムを使用すると、グラファイト火災を防ぐことができる。グラファイト火災には、4つの条件、
●1100℃を上回る高温、
●大量のグラファイト、
●十分な供給量の酸素にさらされること、及び
●熱源が未検査であること
のすべてが揃う必要がある。
【0169】
本発明のエネルギー貯蔵装置は、グラファイト火災を引き起こすか又は火災を被ることがあり得ず、これらの条件は、それぞれ危険を排除又は低減するように設計される。
各加熱素子は、管状素子のシースに溶接された熱電対を有する。この温度は、ヒータの電力入力を制御するために使用される。さらに、加熱素子は、シース温度が1000℃に達すると故障するように設計される。
【0170】
本発明のユニットは、最大総重量が30トンであり、各グラファイトパネルが12トンのグラファイトに制限される。
各ユニットは、不活性ガスを注入してグラファイトパネル内の酸素レベルを監視する不活性ガス管理システムを有する。グラファイト本体は、気密筐体内に入れられ、高温不活性ガスを吐き出し、低温不活性ガスを吸い込むことが可能になる。
【0171】
エネルギー貯蔵装置の動作温度範囲は、好ましくは、500~800℃(ただし、用途に応じてこの範囲外の動作温度の変動もあり得る)であり、最高設定温度に達すると、加熱素子への電力が遮断される。ヒータの制御は、制御システムの故障が電力を加熱素子から遮断させる点でフェイルセーフ制御である。
【0172】
さらに、熱交換器を通して熱伝達流体及び/又は作動流体を流すことにより、グラファイトパネルから熱を抽出することができる。
実施例6-sCO熱交換器配管の材料選択
本出願人は、以下の動作基準に基づいて、超臨界CO2に適した20個の実現可能な熱交換器材料を評価した。
●500~800℃の温度。
●10~25MPa(100~250バール)(及びそれを上回る)の圧力。
●熱伝達流体としてのsCO及び空気。
●固体グラファイトのるつぼに埋め込まれた熱交換器配管。
【0173】
適合性を決定するために、各熱交換器材料を評価し、それらの温度/圧力性能、耐浸炭性、溶接性、曲げ性、利用可能性、コスト、sCOとの適合性及び溶融アルミニウムとの適合性に関してランク付けした。上記の基準に基づいて最終候補に挙げられ、ランク付けされた材料は、(降順で)合金625、740H、230、617及び800HTである。しかしながら、エネルギー貯蔵装置の用途に応じて、他の熱交換器材料も本発明のエネルギー貯蔵装置での使用に適する場合がある。
【0174】
以下の合金材料が好適である。
●625は、ほとんどのカテゴリで上位にランクされることに起因して、好適な熱交換器材料である。
●740Hは、動作温度での許容応力が高いことに起因して、別の好適な熱交換器材料である。
●740Hの代替として230も検討対象に残る。
●617。
●800HTは、比較的低コストであり、容易に利用可能であることに起因して、低温及び低圧の用途の場合に検討対象に残る。この材料は、用途の温度及び圧力が低くなり、浸炭の程度を定量化できる場合、適している。
【0175】
当業者であれば理解するように、熱交換器材料の選択は、エネルギー貯蔵装置の動作パラメータによって決まり得る。好適な熱交換器材料は、動作条件、プロジェクト要件及び製造環境などの要因に起因して、用途によって左右され得る。しかしながら、本発明のエネルギー貯蔵装置にとって、熱交換器の材料の選択は、ほとんど重要ではない(すなわち様々な配管材料に対してわずかに設計変更しさえすればよい)。
【0176】
エネルギー貯蔵装置がsCOなどの超臨界流体に使用されるとき、エネルギー変換効率を最大化するために、エネルギー貯蔵装置は、500~800℃(及び場合によりそれを上回る)及び10~250MPa(100~250バール)(及び場合によりそれを上回る)で動作させることができる。
【0177】
熱交換器配管は、(構成部品によって組み立てられた)固体グラファイトに埋め込まれ、熱抽出のための導管として使用され、これらの高温及び高圧条件での熱伝達流体(HTF)にはsCO及び空気が考えられる。
【0178】
本発明のエネルギー貯蔵装置は、以下の規格、ASME BPVC(該当するセクション)、ASME B31.3及びEU圧力装置指令PED 2014/68/EUに準拠するように設計することができる。
【0179】
熱交換器配管は、高温でグラファイトと接触するため、材料は、好ましくは、耐浸炭性である。
当業者は、本明細書に記載される本発明が、具体的に記載されるもの以外の変形形態及び修正形態を許容することを理解するであろう。本発明は、本発明の趣旨及び範囲内にあるすべてのこのような変形形態及び修正形態を含むことが理解される。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを可逆的に貯蔵及び抽出する、若しくは貯蔵する又は抽出する方法であって、
-取り外し可能な加熱素子を使用して顕熱貯蔵体の内側領域を加熱し、それによりエネルギーを貯蔵することと、
-前記顕熱貯蔵体から熱伝達媒体にエネルギーが伝達されるように、前記顕熱貯蔵体の温度よりも低い温度を有する前記熱伝達媒体を流すことによってエネルギーを抽出することと、
それにより可逆的なエネルギー貯蔵及び抽出を提供することと、を含み、
前記加熱素子の一部分は、前記顕熱貯蔵体の前記内側領域と接触する、方法。
【請求項2】
前記加熱素子の加熱部分は、前記顕熱貯蔵体の前記内側領域と接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記顕熱貯蔵体は、筐体内に密閉される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱素子は、前記筐体と密封係合される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱素子は、電気抵抗器である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱素子は、前記顕熱貯蔵体の前記内側領域を加熱するために、電気抵抗性の材料製の少なくとも1つの管状ループを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記顕熱貯蔵体の前記内側領域は、複数の加熱要素によって加熱される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記筐体は、前記筐体を不活性ガスで実質的に満たすためのガス入口と、不活性ガスを通気させるためのガス出口と、を含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
加熱素子であって、
-一方の端部における長尺状の加熱部分と、
-反対側の端部における断熱部分と、を含み、
前記断熱部分は、電気端子と電気的に接続されるように適合された導電体をさらに含み、
前記長尺状の加熱部分は、少なくとも1つの管状ループを含む、加熱素子。
【請求項10】
前記加熱素子は、電気抵抗器である、請求項に記載の加熱素子。
【請求項11】
前記電気端子は、前記加熱素子の断熱部分に位置する、請求項9又は10に記載の加熱素子。
【請求項12】
前記加熱素子の前記断熱部分は、テーパ状である、請求項11のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項13】
前記加熱素子の前記断熱部分は、段差状である、請求項12のいずれか一項に記載の加熱素子。
【請求項14】
前記加熱素子の前記断熱部分は、複数の段差を含む、請求項13に記載の加熱素子。
【請求項15】
エネルギー貯蔵装置であって、
-熱交換器チャネル、及び取り外し可能な加熱素子を受け入れるように適合された加熱素子チャネルを有する顕熱貯蔵体と、
-入口及び出口を有する熱交換器と、を含み、前記熱交換器の少なくとも一部分は、前記チャネルに沿って設けられ
前記加熱素子チャネルは、前記顕熱貯蔵体の内部に位置する、エネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
前記顕熱貯蔵体は、前記顕熱貯蔵体内に少なくとも2つの開放端を有する熱交換器チャネルを含む、請求項15に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項17】
前記顕熱貯蔵体は、構成部品によって組み立てられる、請求項15又は16に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項18】
前記熱交換器は、蛇行コイル又は螺旋コイルの形状である、請求項1517のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項19】
請求項10~16のいずれか一項に記載の加熱素子をさらに含む、請求項1518のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項20】
前記エネルギー貯蔵装置は、断熱材をさらに含む、請求項1519のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項21】
前記エネルギー貯蔵装置は、筐体をさらに含む、請求項1520のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項22】
前記筐体は、加熱素子及び熱交換器の少なくとも一方を受け入れるように適合された少なくとも1つの開口部を含む、請求項21に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項23】
前記少なくとも1つの開口部は、密封フランジをさらに含む、請求項22に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項24】
密封ガスケットをさらに含む、請求項22又は23に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項25】
前記加熱素子は、前記密封フランジと密封係合する、請求項23又は24に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項26】
前記熱交換器は、前記密封フランジと密封係合する、請求項23又は24に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項27】
請求項1526のいずれか一項に記載の複数のエネルギー貯蔵装置を含む、エネルギー貯蔵アレイ。
【請求項28】
請求項1526のいずれか一項に記載の前記エネルギー貯蔵装置は、熱的及び電気的に、若しくは熱的に又は電気的に接続される、請求項27に記載のエネルギー貯蔵アレイ。
【国際調査報告】