(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】一酸化窒素供与プロスタグランジン類似体の調製のための方法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/14 20060101AFI20240221BHJP
C07C 235/34 20060101ALI20240221BHJP
C07C 231/18 20060101ALI20240221BHJP
C07C 231/24 20060101ALI20240221BHJP
C07C 201/02 20060101ALI20240221BHJP
C07C 203/04 20060101ALI20240221BHJP
A61K 31/5575 20060101ALN20240221BHJP
A61P 27/06 20060101ALN20240221BHJP
A61P 27/02 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
C07C231/14
C07C235/34 CSP
C07C231/18
C07C231/24
C07C201/02
C07C203/04
A61K31/5575
A61P27/06
A61P27/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023546459
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2021052553
(87)【国際公開番号】W WO2022167070
(87)【国際公開日】2022-08-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516217239
【氏名又は名称】ニコックス エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アルミランテ,ニコレッタ
(72)【発明者】
【氏名】ロンサン,ガエル
(72)【発明者】
【氏名】ディッカー,カリード
(72)【発明者】
【氏名】ゴリン,ジル
(72)【発明者】
【氏名】クザン,ジョナタン
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノー,オードリー
【テーマコード(参考)】
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA04
4C086DA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4H006AA02
4H006AB20
4H006AC41
4H006AC51
4H006AC80
4H006AC81
4H006AD17
4H006BB14
4H006BB15
4H006BD70
4H006BE02
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BN20
4H006BT12
4H006BV22
(57)【要約】
本発明は、式(I):
の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルを調製するための方法に関する。
本発明によれば、ボロナートで保護された形態にあるビマトプロストを6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドとカップリングさせ、次いでボロナート保護基を除去することにより、化合物(I)を高純度で効率的に調製することができる。
また、本発明は、99%以上のHPLC純度を有し、且つ0.2%以下の量の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(化合物(IXa))を含有する、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸の調製のための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化24】
の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルの調製のための方法であって、以下の工程A)及びB):
工程A)以下の工程1a)~6a):
1a)ε-カプロラクトン:
【化25】
を、メタノール、エタノール又はイソプロパノールから選択される溶媒中で、20℃と前記溶媒の還流温度との間の温度で、KOH、NaOH及びLiOHから選択される無機塩基と反応させて、式(X):
【化26】
(式中、Mは、K、Na又はLiである)
の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を得る工程;
2a)工程1a)で得られた式(X)の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を精製する工程であって、以下のi~iv:
i.メチル-tert-ブチルエーテルを、工程1a)の反応混合物に、メチル-tert-ブチルエーテル/反応混合物の体積比2:1で加えること
ii.固体を濾過すること
iii.前記固体を、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール(3:1~5:1の比で)及び水(ε-カプロラクトン1モルに対して0.3~1モルの水)の混合物を用いてスラリー化すること
iv.式(X)の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を、固体として単離すること
を含む工程;
3a)6-ヒドロキシヘキサン酸塩を、ジクロロメタン中、0℃~10℃の範囲の温度で、発煙HNO
3と濃H
2SO
4の混合物と反応させる工程;
4a)工程3a)のニトロ化混合物に、温度を0℃と5℃の間に保持しつつ水を加える工程;
5a)有機相を分離し、前記有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで溶媒を留去して、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa):
【化27】
を得る工程;
6a)粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)を、ジクロロメタン中で塩素化剤と反応させて、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)を得る工程
による、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)の調製:
工程B)以下の工程1b)~4b):
1b)ビマトプロストを、メチル-tert-ブチルエ-テル中、約40℃の温度でブチルボロン酸と反応させて、化合物(II):
【化28】
を得る工程;
2b)化合物(II)を、非プロトン性有機溶媒中、遊離型の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で、工程6a)の粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)と反応させて、化合物(XI):
【化29】
を得る工程;
3b)ボロナート保護基を除去して、式(I)の粗化合物を得る工程;
4b)粗化合物(I)をカラムクロマトグラフィーにより精製する工程
を含む、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)の調製
を含む方法。
【請求項2】
工程1a)において、無機塩基がKOHであり、溶媒がメタノールであり、反応がメタノールの還流温度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程3a)において、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、ジクロロメタン中の発煙HNO
3及び濃H
2SO
4の混合物に、約0℃~10℃の温度で加え、反応混合物を、0℃から5℃の温度で、60±15分間激しく攪拌する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程6a)において、塩素化剤がオキサリルクロリドである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程2b)において、非プロトン性溶媒が、0℃から20±3℃の温度範囲のメチル-tert-ブチルエーテルである、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程2b)において、化合物(II)の4-ジメチルアミノピリジンに対するモル比が、1:2.0~1:2.4である、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程3b)において、反応で使用される溶媒がメタノールであり、反応が室温で実施される、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程4b)において、粗化合物(I)が、高性能シリカゲルクロマトグラフィーを用い、移動相として塩化メチレン/メタノールを用いて精製される、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
99%以上の化学純度、及びビマトプロストの、二量体不純物6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸とのエステル(化合物(VII))の含有量0.05%未満を特徴とする、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル。
【請求項10】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸の合成のための方法であって、以下:
1a)ε-カプロラクトン:
【化30】
を、メタノ-ル中、溶媒の還流温度で、KOHと反応させる工程;
2a)-i.メチル-tert-ブチルエーテルを、工程1a)の反応混合物に、メチル-tert-ブチルエーテル/反応混合物の体積比2:1で加える工程;
2a)-ii.固体の6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を濾過する工程;
2a)-iii.前記固体を、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール(3:1~5:1の比で)及び水(ε-カプロラクトン1モルに対して0.3~1モルの水)の混合物を用いてスラリー化する工程;
2a)-iv.6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、固体として単離する工程;
3a)工程2a)の6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、ジクロロメタン中、0℃~10℃の範囲の温度で、発煙HNO
3と濃H
2SO
4の混合物に加え、反応混合物を0℃~5℃の温度で激しく攪拌する工程;
4a)工程3a)のニトロ化混合物に、温度を0℃と5℃の間に保持しつつ水を加える工程;
5a)有機相を分離し、前記有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、次いで溶媒を留去して、99%以上の化学純度、及び6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸の含有量0.2%以下を特徴とする6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を得る工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルの大規模調製に適した方法であって、高い化学純度を有する前記生成物を得ることを可能にする方法に関する。また、本発明は、高純度の、前記合成の重要な中間体である6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)の調製も記載する。
【背景技術】
【0002】
式(I):
【化1】
の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルは、IOP低下剤として有効であると判明しているプロスタグランジン類似体である(Impagnatiello F, Toris CB, Batugo M, Prasanna G, Borghi V, Bastia E, Ongini E, Krauss AHP; Invest Ophthalmol Vis Sci. 2015; 56:6558-64)。
【0003】
2020年6月に開始された最初のフェーズ3の臨床試験において、開放隅角緑内障又は高眼圧症を有する患者における眼圧(IOP)の低下について、有効医薬成分として化合物(I)を含有する(0.065%及び0.1%)2種類の点眼液が評価されている。
【0004】
過去数年間、様々な規制当局が、純度要件及び有効医薬成分(API)中の不純物の特定を強調している。現在、不純物とはいずれも、医薬成分以外の有機物質であって、医薬品の有効性及び安全性に影響を及ぼし得るものとされている。したがって、各不純物、特に変異原性についての構造アラートを有するものの特定及び定量は、必須の規制要件となっている。加えて、有効医薬成分は、医薬用途が意図されているため、有効成分の合成に使用することができる試薬、溶媒、触媒等は、製薬産業上許容され得るものに限定されている。
【0005】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)は油状物であり、その大規模な精製は、化合物(I)が結晶化できないために困難である。したがって、不純物の存在は、大規模な製造にとって重要な問題である。
【0006】
化合物(I)の先行技術の調製方法から、主な不純物は、式(V):
【化2】
の、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステルである(国際公開公報第2009/136281号に開示されているように、合成の最後でニトロ化工程が行われる場合)か、又は、中間体である6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)の調製におけるニトロ化工程の副生成物(ビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(VII):
【化3】
の形成をもたらす)であることが知られている。
【0007】
したがって、試薬の純度及び反応条件の制御は、薬学的に許容され得る純度を有する化合物(I)を得るための重要な要件である。
【0008】
式(I)の化合物を調製するための方法は、国際公開公報第2009/136281号に開示されている。
【0009】
国際公開公報第2009/136281号は、化合物(I)の合成、及び一般的に、ビマトプロストの15-アルキルニトラートエステルの調製を開示している。
【0010】
国際公開公報第2009/136281号は、ボロナートで保護された形態にあるビマトプロスト(II):
【化4】
を、6-ブロモヘキサノイルクロリドと反応させて、式(III):
【化5】
の、ボロナートで保護された形態にあるビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステル(これが、アセトニトリル中の硝酸銀によりニトラート誘導体に変換され、脱保護され、逆相クロマトグラフィーで精製されて、式(I)の化合物を生成する)を与えることによる、式(I)の化合物の合成(実施例B-1)を開示している。
【0011】
上記合成の主要な欠点は、エステル化反応における、等モル量以上の6-ブロモヘキサノイルクロリド(これは、変異原性の可能性についての構造アラートを示す)の使用、及び最終の工程における、廃水中に大量の銀塩を生成する硝酸銀の使用である。この方法の別の主要な欠点は、不純物及び副生成物、例えば、式(IV):
【化6】
の、ビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステル、及び式(V):
【化7】
の、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステルなどの形成である。これらは、そのクロマトグラフィーにおける極性、親油性及び/又は溶解性が、化合物(I)のそれらと類似しているため、複数回の精製の後であっても除去することは困難である。
【0012】
さらに、化合物(V)は、規制当局が定めるところの、統計に基づく方法及び専門的な規則に基づく方法の両方に基づいて、インビトロ細菌変異原性について陽性であると予測される。また、化合物(IV)は、遺伝毒性の可能性についての構造アラートとして認識されているハロゲン化鎖を有する。これらの不純物の除去には繰り返しの精製が必要であり、これはさらに収率を低下させ、商業的規模での化合物(I)の調製のコストを増加させる。
【0013】
国際公開公報第2009/136281号に開示された手法によれば、ビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステル(IV)は、化合物(III)の硝酸銀との反応が完結していなかったことに由来する不純物(ボロナート保護の除去後)である。
【0014】
ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(V)は、エステル化反応中に、ボロナートで保護された形態にあるビマトプロストの15-(6-ブロモヘキサノイル)エステル(III)の臭素原子と、4-ジメチルアミノピリジン塩酸塩の遊離塩素アニオンとの間のハロゲン交換反応によって形成される副生成物である。ボロナートで保護された形態にあるビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(VI):
【化8】
は、硝酸銀と反応せず、保護基の除去の後、化合物(V)を生成する。
【0015】
また、国際公開公報第2009/136281号は、15-アシルアルキルニトラート(15-acylalkynitrate)であるビマトプロスト誘導体の調製のための代替的な方法も開示している(実施例N-1及びO-1)。前記合成は、樹脂に担持された4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(PS-DMAP)の存在下、ボロナートで保護された形態にあるビマトプロスト(II)を、硝酸エステル-アルキルカルボン酸クロリドと反応させることと、これに続くボロナート保護基の除去及びシリカゲルクロマトグラフィーを用いる精製を含む。
【0016】
上記の方法は、6-ブロモヘキサノイルクロリドの使用及び最終生成物からの銀塩の除去を回避している。しかし、この方法は、前記方法を商業的スケールアップに不適当且つ高価にする、樹脂に担持された4-ジメチルアミノピリジンの使用という、別の主要な欠点を提起している。さらに、硝酸エステル-アルキルカルボン酸クロリドが、2つの連続した工程で、式(II)の化合物に対して大過剰に加えられており、実際、アルキルカルボン酸クロリドは、約2~4当量加えられる。
【0017】
また、国際公開公報第2009/136281号は、15-アシルアルキルニトラートであるビマトプロスト誘導体の調製のための別の方法(実施例Q1)を開示している。この方法では、前記化合物は、過剰の硝酸エステル-アルキル-(p-ニトロフェニル)-カルボキシラートを用いた、ボロナートで保護された形態にあるビマトプロスト(II)の、4-ジメチルアミノピリジンの存在下でのエステル化により得られた。
【0018】
未反応の硝酸エステル-アルキル-(p-ニトロフェニル)-カルボキシラート、及び副生成物のp-ニトロフェノ-ル(式(I)の化合物と等モル量で形成される)のクロマトグラフ法を用いる除去は、この方法の主要な欠点である。
【0019】
国際公開公報第2016/155906号は、フルプロステノールの15-ニトロオキシ誘導体を開示しており、フルプロステノールイソプロピルエステルの15-ニトロオキシ-ヘキシルエステルの合成を報告している。前記化合物は、過剰の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で、ボロナートで保護された形態にあるフルプロステノールイソプロピルエステルを、(4-ニトロフェニル)-6-ニトロオキシヘキサノアートと反応させることにより調製された。
【0020】
上記で報告されたように、未反応硝酸エステル-アルキル-(p-ニトロフェニル)-カルボキシラートの除去と、特に、クロマトグラフィー法によるp-ニトロフェノール副生成物の除去が、この方法の主要な欠点である。
【0021】
国際公開公報第2019/162149号は、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)の調製のための方法を開示している。化合物(I)は、ボロナートで保護された形態にあるビマトプロストを、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドとカップリングさせ、次いでボロナート保護基を除去することにより調製される。粗化合物(I)は、カラムクロマトグラフィーにより精製される。
【0022】
6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドは、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸から合成され、これはε-カプロラクトンの開環反応、及びそれに続くジクロロメタン中のHNO3とH2SO4の混合物を用いた6-ヒドロキシヘキサン酸のアルカリ塩のニトロ化により調製される。6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸は、精製なしで、対応するアシルクロリドの調製のために使用され、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドも、精製なしで使用される。
【0023】
本発明者らにより実施された実験は、国際公開公報第2019/162149号の方法を用いて調製された化合物(I)が、約0.1%~0.4%の、不純物である式(VII):
【化9】
のビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステルを含有することを示した。
【0024】
化合物(I)と(VII)は、類似の極性を有しており、したがって2つの化合物の分離は、前記不純物(VII)を除去するための厄介なカラム精製を必要とするので、最終生成物の収率が減少する。
【0025】
したがって、高純度の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)の高収率での調製のための、工業的に実行可能な方法を開発する必要がある。
【0026】
国際公開公報第2019/162149号の方法では、式(VIIIb):
【化10】
の粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリドが、二量体不純物である、式(IXb):
【化11】
の6-[6-ニトロオキシヘキサノイル]オキシ}ヘキサノイルクロリド(これもボロナートで保護された形態のビマトプロスト(II)と反応し、このことが、ボロナート保護除去の後、ビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(VII)を伴う、化合物(I)の形成をもたらす)を含有するため、カップリング工程中に式(VII)の不純物が形成されることが観察された。
【0027】
式(IXb)の6-[6-ニトロオキシヘキサノイル]オキシ}ヘキサノイルクロリドは、ニトロ化工程の粗混合物に由来する副生成物であり;実際、硝酸と硫酸の混合物を用いた6-ヒドロキシヘキサン酸アルカリ金属塩のニトロ化は、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa):
【化12】
及び二量体不純物6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(IXa):
【化13】
の形成をもたらす。
【0028】
実験は、ニトロ化混合物が、80%より多い量の化合物(VIIIa)及び約5%~約9%の量の化合物(IXa)を含有することを示した。
【0029】
化合物(VIIIa)及び(IXa)は、いずれも塩素化剤と反応して、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)及び二量体不純物6-[6-ニトロオキシヘキサノイル]オキシ}ヘキサノイルクロリド(IXb)を含有する混合物をもたらす。国際公開公報第2019/162149号の方法によれば、この粗混合物を、さらなる精製なしに化合物(II)と反応させる。
【0030】
不純物(VII)の形成を制御するために、驚くべきことに、6-ヒドロキシヘキサン酸アルカリ塩のニトロ化反応をクエンチする間に、国際公開公報第2019/162149号に記載されたNaCl飽和水溶液(ブライン)の代わりに水を添加することが、含有する二量体不純物6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(IXa)の量が減少した粗ニトロ化混合物をもたらすことが見出された。具体的には、ニトロ化工程の後処理におけるこの改良は、99.2%(a/a%)の量の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)及び0.15%(a/a%)の量の二量体不純物6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(IXa)を含有する粗ニトロ化混合物を生成した。化合物(VIIIa)及び(IXa)は、適切なUHPLC分析により特定及び定量された。
【0031】
ニトロ化反応の最後での水の添加が、一般的に使用されるNaCl飽和水溶液(ブライン)の添加に対して、より迅速な無機塩の溶解、及び未反応HNO3/H2SO4を含有する酸性水相からの、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)を含有する有機相のより良好な分離を可能にすると考えられる。このニトロ化反応の改良された後処理は、副生成物6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(IXa)の形成をもたらす副反応の減少/阻害をもたらす。
【0032】
さらに、ニトロ化工程のこの変更の別の利点は、この工程を少なくとも3倍にスケールアップすることを可能にする、反応の後処理に使用される有機溶媒の体積の減少である。
【0033】
したがって、本発明は、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イル エステル(I)(0.05%未満(HPLCによりa/a%として測定される)の、不純物であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(VII):
【化14】
を含有する)の大規模な製造に適した、改良された方法を提供する。
【0034】
本発明の方法の重要な利点は、この方法が、不純物(VII)のレベルの減少に非常に効率的であると同時に、化合物(I)を良好な収率で提供することである。この方法は、他の方法(理論的には不純物(VII)の同じ減少レベルに達しうるが、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸中間体の更なる精製工程を含む必要があるもの)に対して有利な別の方法である。
【0035】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸は液体であり、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)及び6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(IXa)はいずれも極性化合物であるため、工業規模での調製のために、大量の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)の精製を実施することは、容易にはできない。
【0036】
さらに、本発明は、純度が99%以上であり、6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(IXa):
【化15】
の含有量が0.2%以下である、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa):
【化16】
の工業的合成のための方法に関する。
発明の説明
【0037】
本発明は、式(I):
【化17】
の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルの調製のための方法であって、以下の工程A)及びB):
工程A)以下の工程1a)~6a):
1a)ε-カプロラクトン:
【化18】
を、メタノール、エタノール又はイソプロパノールから選択される溶媒中で、20℃と溶媒の還流温度との間の温度で、KOH、NaOH及びLiOHから選択される無機塩基と反応させて、式(X):
【化19】
(式中、Mは、K、Na又はLiである)
の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を得る工程;
2a)工程1a)で得られた式(X)の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を精製する工程であって、以下のi~iv:
i.メチル-tert-ブチルエーテルを、工程1a)の反応混合物に、メチル-tert-ブチルエーテル/反応混合物の体積比2:1で加えること;
ii.固体を濾過すること;
iii.前記固体を、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール(3:1~5:1の比で)及び水(ε-カプロラクトン1モルに対して0.3~1モルの水)の混合物を用いてスラリー化すること;
iv.式(X)の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を、固体として単離すること
を含む工程;
3a)6-ヒドロキシヘキサン酸塩を、ジクロロメタン中、0℃~10℃の範囲の温度で、発煙HNO
3と濃H
2SO
4の混合物と反応させる工程;
4a)工程3a)のニトロ化混合物に、温度を0℃と5℃の間に保持しつつ水を加えることによる、工程3a)の反応の後処理;
5a)有機相を分離し、前記有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで溶媒を留去して、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa):
【化20】
を得る工程;
6a)粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)を、ジクロロメタン中で塩素化剤と反応させて、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)を得る工程
による、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)の調製;
工程B)以下の工程1b)~4b):
1b)ビマトプロストを、メチル-tert-ブチルエーテル中、約40℃の温度でブチルボロン酸と反応させて、化合物(II):
【化21】
を得る工程;
2b)化合物(II)を、非プロトン性有機溶媒中、遊離型の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で、工程6a)の粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)と反応させて、化合物(XI):
【化22】
を得る工程;
3b)ボロナート保護基を除去して、式(I)の粗化合物を得る工程;
4b)カラムクロマトグラフィーにより粗化合物(I)を精製する工程
による、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルの調製
を含み、
工程5a)の粗ニトロ化混合物が、99%以上の量の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)及び0.2%以下の量の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ]ヘキサン酸(IXa)を含有することを特徴とする方法に関する。
【0038】
本発明の方法に従って調製された6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)は、99%以上の化学純度を有し、且つ0.05%未満の、不純物であるビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(VII)を含有する。前記化合物は、約0.11%の、不純物であるビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(V)を含有する。前記化合物は、HPLC分析により特定及び定量され、前記化合物の量は面積百分率(a/a%)で表され、0.05%は、HPLCの検出限界である。
【0039】
工程1a)において、ε-カプロラクトンの開環反応は、好ましくは、メタノール中、水酸化カリウムの存在下で、20℃と還流温度の間の温度で実施される。工程1a)の反応混合物の後処理の間に、工程2a)-iiの固体を、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール(3:1~5:1の比で)及び水(ε-カプロラクトン1モルに対して0.3~1モルの水)を含有する混合物中でスラリー化する(工程2a)-iii)ことにより、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩が精製される。6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩は、固体として得られる。
【0040】
工程5a)の粗ニトロ化混合物は、99%以上の量の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)及び0.2%以下の量の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(IXa)を含有する。6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)の化学収率は、80~85%である。化学純度は、分析UHPLC法により評価された。
【0041】
工程6a)で使用される好ましい塩素化剤は、オキサリルクロリドである。
【0042】
工程2b)は、0℃から25℃の範囲の温度で実施され、好ましくは、メチル-tert-ブチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド又はジクロロメタンから選択される非プロトン性有機溶媒中で実施される。最も好ましくは、有機溶媒は、メチル-tert-ブチルエーテルである。「遊離型」の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)は、DMAPが樹脂に結合していないことを意味する。化合物(II)の6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)に対するモル比は、好ましくは、1:1.4~1:1.6の範囲である。
【0043】
化合物(II)の4-ジメチルアミノピリジンに対するモル比は、好ましくは、1:2.0~1:2.4の範囲である。
【0044】
工程3b)において、ボロナート保護基の除去は、好ましくは、17℃~25℃の温度で、メタノールを用いて実施される。
【0045】
式(I)の化合物を調製するための好ましい工程は、スキーム1に示される以下の工程A及びB:
工程A
1a)ε-カプロラクトンを、メタノール中で、20℃とメタノールの還流温度との間の温度で、好ましくはメタノールの還流温度で、水酸化カリウムと反応させる工程;及び
2a)工程1a)で得られた6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を精製する工程であって、以下のi~iv:
i.メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)を、工程1a)の反応混合物に、MTBE/メタノール比2:1で加えること
ii.固体を濾過すること
iii.前記固体を、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール(3:1~5:1の比で)及び水(ε-カプロラクトン1モルに対して0.3~1モルの水)の混合物中でスラリー化すること
iv.6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、固体として単離すること
を含む工程;
3a)6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(式(X)、M=K)を、ジクロロメタン中、約0℃~10℃の温度で、発煙HNO3と濃H2SO4の混合物に加え、反応混合物を、0℃から5℃の温度で激しく攪拌し、反応の進行をモニターする(転化率99.9%となるまで)工程;
4a)ニトロ化混合物に、温度を0℃~5℃に保持しつつ慎重に水を加える工程;
5a)有機相を分離し、前記有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで溶媒を留去して、99%以上の量の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)及び0.2%以下(equal to less than)の量の副生成物6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(IXa)を含有する粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)を得る工程;
6a)粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を塩化オキサリルと反応させて、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)(この方法の工程Bにおいて、更なる精製なしで使用される)を得る工程
工程B
1b)ビマトプロストを、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)中、約40℃の温度でブチルボロン酸(1.1~1.8当量)と反応させ、その後共沸蒸留により水を除去して、ビマトプロストボロナート(II)を得る工程;
2b)ビマトプロストボロナート(II)を、メチル-tert-ブチルエーテル中、4-ジメチルアミノピリジン(2.0~2.4当量)の存在下、0℃~20±3℃の範囲の温度で、工程6a)で得られた粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)(1.4~1.6当量)と反応させて、(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(XI)を得る工程;
3b)(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(XI)を、室温でメタノールと反応させて保護基を除去し、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)を得る工程;
4b)粗化合物(I)を、塩化メチレン/メタノールを移動相として用いる高性能シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)を得る工程
を含む。
【0046】
クロマトグラフィー精製後の単離された化合物(I)のHPLC定量分析は、99%よりも高い化学純度を有し、約0.11%の量の、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(V)、及びHPLCの検出限界である0.05%未満の量の、ビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(VII)を含有していた。
【化23】
【0047】
本発明の別の目的は、式Iの6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル及び少なくとも1種の薬学的に許容され得る賦形剤を含有する医薬製剤であって、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルが、99%の化学純度を有し、且つ、約0.11%の量の、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(V))、及び0.05%未満の量の、ビマトプロストの、二量体不純物である6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸とのエステル(化合物(VII))を含有する。
【0048】
本出願では、百分率%として表される化合物の定量は、HPLC分析により決定される(a/a%)。
【実施例】
【0049】
以下に記載される全ての合成工程は、窒素雰囲気下で行われた。
【0050】
実施例1
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))の合成
【0051】
6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(化合物(VIIIb))の合成
工程1a)及び工程2a):6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(化合物(X))の合成
水酸化カリウム(141.12g(純粋な物質として122.8gに相当))のメタノール(1250mL)の溶液を、15℃~20℃での冷却下で調製し、ε-カプロラクトン 250.0gのメタノール(675mL)溶液に、5℃~37℃で、0.25時間以内に加えた。混合物を、20℃~63℃で18時間撹拌した。次いで、この溶液(solvent)を約675mLの容量に濃縮し、メチル-tert-ブチルエーテル(1250mL)を約57℃で加えた。反応物を室温で48時間撹拌し、固体を濾過により単離して、粗6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩 380.9gを与えた。粗物質を、MTBE(1475mL)及びメタノール(375mL)及び水(19.7mL)中、22±3℃の温度で8時間再スラリー化し、濾過した。固体をメチル-tert-ブチルエーテル(500mL)中で再スラリー化し、再び濾過し、次いで50℃で12時間、真空下に乾燥して、純度98%を有する、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩 354.7g(収率93.2%)を得た。融点:208℃。
【0052】
工程3a)~工程5a):6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(化合物(VIIIa))の合成
発煙HNO3(485.5g、4.6当量)を、濃H2SO4(553.0g、3.1当量)に、0℃~5℃の温度で、30分で加え、次いでジクロロメタン(5820mL)を、0℃~5℃の温度で、23分で加えた。6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(306.09g、1当量)を、5℃以下の温度で、少量ずつ35分で加えた。混合物を0℃~5℃で2時間撹拌し、反応を1H-NMRによりモニターして、99.9%の転化率を示した。0℃~5℃の間の温度を維持しつつ、水(2.9L)を20分以内に加えた。有機層をデカントして、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下に濃縮して、99.2%のHPLC純度、及び6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(化合物(IXa))の含有量0.15%を有する、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸 318.4g(収率94.8%)を与えた。
【0053】
工程6a):6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(化合物(VIIIb))の合成
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(270.8g、l当量)をジクロロメタン(1220mL)に溶解し、窒素下で0℃~5℃に冷却した。次いで、N,N-ジメチルホルムアミド(1.6mL)及び塩化オキサリル(198.2g)を、0℃~5℃で30分以内に加えた。反応混合物を0℃~5℃で1時間攪拌し、次いで15℃~20℃で4時間攪拌した。次いで、反応混合物を、40℃以下の温度で、真空下に濃縮し、ジクロロメタンと共蒸発させて、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(323.9g、収率99.6%、滴定AgNO3=92.0%)を与えた。
【0054】
工程1b):(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))の合成
ビマトプロスト(249.0g、1当量)をメチル-tert-ブチルエーテル(4L)中に懸濁し、ブチルボロン酸(69.0g、1.13当量)を加えた。混合物を40℃に1時間加熱した。転化率>97%となるまで、反応を1H-NMRによりモニターした。
【0055】
反応混合物を約20℃に冷却し、濾過し、メチル-tert-ブチルエーテル(250mL)ですすいだ。混合物を共沸蒸留により、真空下に、約40℃の温度で濃縮した。メチル-tert-ブチルエーテルを用いてすすぎ、(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))の含水量が0.25%以下になるまで、共沸蒸留を続けた。
【0056】
(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミドを、定量的収率で(313.1g(純物質298.6gに相当))、粗物質として単離した。
【0057】
工程2b):(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(XI))の合成
(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))(313.1g、1当量)を、窒素下でメチル-tert-ブチルエーテル(4.27L)に溶解し、0℃~5℃に冷却した。4-ジメチルアミノピリジン(162.7g、2.27当量)を一度に加えた。6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(化合物(VIIIb))(172.1g、1.5当量)のメチル-tert-ブチルエーテル(600mL)溶液を、0℃~5℃で、40分以内に滴下した。0℃~5℃で2時間30分、次いで15℃~20℃で16.5時間攪拌した後、反応混合物を0℃~5℃で冷却し、10℃の最高温度で20分以内に脱イオン水を加えた。
【0058】
混合物を5分間攪拌した。水層を分離し、廃棄した。有機層を1N 塩酸溶液、次いで脱イオン水、最後にブラインで洗浄した。
有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下に濃縮して、(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(XI))(402.9g、収率94.9%)を与えた。
【0059】
工程3b)及び工程4b):6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))の合成
(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(XI))(396g、粗、1当量)を、メタノール(4.20L)に溶解し、得られた溶液を室温で24時間攪拌し、反応を1H-NMRでモニターした。次いで、35℃~40℃で、減圧下でメタノールを除去した。残留物をメタノールに溶解し、14時間攪拌し、35℃~40℃で、減圧下で蒸発させた。残留物をメチル-tert-ブチルエーテルに溶解し、脱イオン水、次いでブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、40℃未満の温度で、減圧下で濃縮して、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(352.3g,収率96.5%)を与えた。
【0060】
残留物を等量(各約107g)で3分割し、Biotage Isolera LS system上で、溶離液としてジクロロメタン/メタノール(100:0~95:5v/vのグラジエントで)を用い、高性能シリカゲルを用いたカラム(SNAP Ultraカラム、1500gのシリカ)上でのクロマトグラフィーにより精製した。画分をTLC及びUHPLCによりモニターした。画分を50℃以下の温度で、真空下に濃縮して、化合物(I)を油状物(242.5g、収率90.3%)として与えた。
【0061】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))をエタノールに溶解し、活性炭で30分間処理して、濾過し、溶媒を50℃以下の温度で、真空下に蒸発させた。化合物(I)を油状物(212.7g、収率92.4%)として単離した。6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))の純度は、99.89%(UHPLCにより評価した)であり、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(V))の含有量は、0.11%であり、ビマトプロストの、二量体不純物である6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸とのエステル(化合物(VII))の含有量は、0.05%未満であった。
【0062】
実施例2(比較例)
以下に報告される合成は、国際公開公報第2019/162149号に開示された方法に従って行われた。
【0063】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)の合成
【0064】
6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)の合成
6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(化合物(X))の合成
90%水酸化カリウム(89.7g)のメタノール(830mL)溶液を、10℃~20℃の冷却下で調製した。ε-カプロラクトン 165.2g(1当量)とメタノール(415mL)を、4Lの三口丸底フラスコに導入した。混合物を溶解するまで撹拌した。次に、水酸化カリウムのメタノール溶液を、0℃~30℃で、25分以内に加えた。混合物を15℃~20℃で20時間撹拌した。反応混合物を真空下に(40℃以下の温度で)濃縮して、粗6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を与えた。粗固形物を、メチル-tert-ブチルエーテル(830mL)中に15℃~20℃で2時間懸濁し、pore 3のフィルターを通して濾過し、メチル-tert-ブチルエーテルで洗浄し(2×165mL)、35℃、真空下に乾燥して、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(228.1g、98.3% HClアッセイ)を収率92.7%で白色粉末として与えた。
【0065】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)の合成
反応温度を制御し、ニトロ化混合物の添加時間を短縮するために、ニトロ化反応は、約100gのスケールで行った。反応は二回行った。ニトロ化混合物を、飽和塩化ナトリウム水溶液(ブライン)を加えることによりクエンチした。2つの別々のニトロ化反応の結果を表1に報告する。
【0066】
ニトロ化1:
6Lガラス反応器に、窒素下で濃硫酸(200.9g)を入れ、0~5℃に冷却した。発煙HNO3(187.9g)を、0℃~10℃で、20分間で慎重に滴下した。次に、ジクロロメタン(2.23L)を加え、反応混合物を45分間撹拌した。6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩(110.1g、1当量)を、-5℃~5℃の間の温度で、30分間で少量ずつ加えた。混合物を、-5℃~5℃の間の温度で2.5時間、次いで20℃で一晩撹拌し、反応を1H-NMRでモニターして、99.6%の転化率を示した。飽和塩化ナトリウム水溶液(1.0L中315.3g)を10℃以下の温度で、25分以内に慎重に加えた。大量の無機塩の沈殿が観察された。無機塩を移さないように注意して、反応混合物を分離漏斗に移した。有機層をデカントし、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下(40℃以下の温度で)に濃縮して、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(105.4g、85.2%)を与えた。HPLC純度=83.7%(8.8%の量の6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ]ヘキサン酸(化合物(IXa))を伴う)。
【0067】
ニトロ化2:
前記反応を、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩 109.97gを用いて行い、HPLC純度が89.7%、6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(化合物(IXa)の量が5.8%である、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa) 101.6g(82%)を得た。
【0068】
2つのバッチを合わせて、さらなる精製なしで以下の工程に供した。
【0069】
6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)の合成
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(193g)をジクロロメタン(870mL)に溶解した。得られた濁った溶液を、ジクロロメタン(l30mL)で洗浄したガラス繊維上で濾過し、透明な溶液をカールフィッシャー法により分析した(含水率=0.018%)。溶液を窒素下で0℃~5℃に冷却した。その後、N,N-ジメチルホルムアミド(l.2mL)及びオキサリルクロリド(141.4g)を、0~5℃で、30分以内に加えた。反応混合物を0℃~5℃で1時間、15℃~20℃で14時間撹拌した。TLCモニタリングは完全な反応を示した。混合物を真空下(温度は40℃以下)に濃縮し、ジクロロメタンと共蒸発(4×870mL)させて、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(212.4g)を91.9%の収率で与えた。
【0070】
(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))の調製
メチル-tert-ブチルエーテル(3900mL,14容量)をフラスコに入れた。ビマトプロスト(249.1g、1当量)を加え、装置をメチル-tert-ブチルエーテル(250mL,1容量)ですすいだ。得られた懸濁液にブチルボロン酸(70.66g、純材料で69.2g、1.13当量)を一度に加え、装置をメチル-tert-ブチルエーテル(250mL、1容量)ですすいだ。混合物を40℃に2時間加熱した。この反応を転化率>97%となるまで1H-NMRでモニターした。
【0071】
反応混合物を20℃~25℃に冷却し、ガラスフィルターで透明化し、メチル-tert-ブチルエーテル(250mL、1容量)で洗浄した。濾液を、共沸蒸留により約40℃の温度で、真空下に濃縮した。メチル-tert-ブチルエーテルですすぎ、(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))の含水量が0.2%になるまで、共沸蒸留を続けた。式(II)の化合物を1H-NMRにより分析して、残留MTBEを測定した。
【0072】
(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))を定量的収率(386.7gの粗物質(無修正))で得た。
【0073】
(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(XI)の調製
メチル-tert-ブチルエーテル(4100mL、11.6容量)を、窒素下で4Lの三口丸底フラスコに入れた。(Z)-7-[(1S,5R,6R,7R)-3-ブチル-6-[((E,3S)-3-ヒドロキシ-5-フェニル-ペンタ-1-エニル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタン-7-イル]-N-エチル-ヘプタ-5-エナミド(化合物(II))(378g、粗、1当量)を加え、装置をメチル-tert-ブチルエーテル(510mL、1.44容量)ですすいだ。得られた溶液を0℃~5℃に冷却した。
【0074】
4-ジメチルアミノピリジン(177.5g、2.27当量)を一度に加えた。6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(204.4g、純粋な188gに相当する、1.5当量)のメチル-tert-ブチルエーテル(650mL、1.84容量)溶液を、0℃~5℃で45分以内に滴下した。滴下漏斗をメチル-tert-ブチルエーテル(40mL、0.12容量)ですすいだ。0℃~5℃で2時間攪拌した後、混合物を15℃~20℃で17.5時間攪拌した。HPLCモニタリングは99.0%の転化率を示した。脱イオン水(1730mL、4.89容量)を、25℃の最高温度で9分以内に加えた。
【0075】
混合物をデカントした。水層を分析し、廃棄した。有機層を1M 塩酸水溶液で洗浄した。水層を分析し、廃棄した。有機層をまず脱イオン水(1351mL、5容量)、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(3×1177mL、3×4.25容量)で洗浄した。
水層(最終洗浄後でpH=4)を分析し、廃棄した。有機層を硫酸ナトリウム(240g、86.8% w/w)上で乾燥し、メチル-tert-ブチルエーテル(616mL、2容量)で洗浄し、真空下に濃縮して、(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(XI))を定量的収率(417.4g、322.1gの純粋な生成物に相当、純粋な生成物として収率85.8%)で与えた。
【0076】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)(粗化合物)の合成
(1S,2E)-3-{(6R,7R)-3-ブチル-7-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソヘプタ-2-エン-1-イル]-2,4-ジオキサ-3-ボラビシクロ[3.2.1]-オクタ-6-イル}-1-(2-フェニルエチル)-プロパ-2-エン-1-イル-6-(ニトロオキシ)ヘキサノアート(化合物(XI))(407.3g、粗、1当量)をメタノール(3550mL、8.9容量)に溶解した。得られた溶液をフラスコに入れ、装置をメタノール(1140mL、2.8容量)ですすいだ。混合物を15℃~25℃で15時間撹拌し、反応を1H-NMRでモニターした。次いで、メタノールを35℃~40℃で、真空下に除去した。メタノール(3550mL、8.8容量)を加え、溶液を反応器に移した。反応物を20~22℃で16時間撹拌した。IPCをNMRにより行い、反応の完了を示した。反応混合物を40℃未満の温度で、真空下に濃縮した。残留物をメチル-tert-ブチルエーテル(4350mL、10.85容量)に溶解した。得られた溶液を脱イオン水(2190mL)で洗浄した。水層(pH=7)を廃棄した。有機層を塩化ナトリウム溶液(2×1930mL、2×4.8容量)で洗浄した。水層を廃棄した。有機層を硫酸ナトリウム(395g、1当量 w/w)上で乾燥させ、メチル-tert-ブチルエーテル(790mL、2容量)で洗浄し、40℃未満の温度で、真空下に濃縮して、80.4%のHPLC純度を有する、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I))(367.1g,収率98.3%)を与えた。
【0077】
混合物を、Combiflash上で、シリカゲルカラム(750g×6、10.34容量)及び溶離液としてのジクロロメタン/メタノール(100:0~95:5のグラジエントで)を用いて精製した。画分をTLCによりモニターし、HPLC(%面積)により分析した。画分を50℃以下の温度で、真空下に濃縮して、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(化合物(I)) 206gを与え、これを4Lの三口丸底フラスコに入れて、無水エタノール(2100mL、10容量)に溶解し、活性炭(21g、10%/w)を加え、混合物を20℃~25℃で0.5時間撹拌した。活性炭を濾過し、無水エタノール(210mL、1容量)で洗浄した。濾液を45℃~50℃で、工業的な真空下に4時間、次いで45℃~50℃で、高真空下に8時間濃縮した。DMSO-d6中での1H-NMRによるモニタリングは、残留溶媒を示さなかった。
【0078】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(192.9g)を、化合物(II)からの全体収率62%で得た。HPLC純度は99.13%であった。
【表1】
【表2】
【0079】
表1は、本発明及び国際公開公報第2019/162149号に開示された方法のニトロ化反応に従って調製された6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)の、定量分析の結果及び化学収率を報告する。結果は、6-ヒドロキシヘキサン酸アルカリ塩のニトロ化反応の後処理の間に、国際公開公報第2019/162149号に記載されたNaCl飽和水溶液(ブライン)の代わりに水を添加することが、ほぼ純粋な化合物(VIIIa)(99.2%(a/a%)の純度)を含有し、且つ含有する二量体不純物6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸(IXa)の量が減少した(0.15% a/a%)、粗ニトロ化混合物をもたらしたことを示す。化合物(VIIIa)もまた、99%のような高い化学収率で得られた。工程5aの粗ニトロ化混合物の使用は、0.05%未満の量の、不純物である、ビマトプロストの6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸エステル(VII)を含有する、最終生成物の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)を得ることを可能にする。実際、本発明の方法(実施例1)及び国際公開公報第2019/162149号に開示される方法(実施例2-比較)に従って調製された化合物(I)及び主要な不純物の定量分析を報告する表2の結果は、本発明の方法が、ビマトプロストの、「二量体不純物」である6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸とのエステル(化合物(VII))の含有量が、検出限界の0.05%未満であり、且つ、ビマトプロストの15-(6-クロロヘキサノイル)エステル(化合物(V))の含有量が0.11%である、化合物(I)を提供することを示す。従来技術に開示された方法は、化学純度がより低く、化合物(VII)の含有量が0.1%~0.4%である化合物(I)をもたらす。
結果は、本発明の方法が、工業規模に容易に移行可能な、改良された方法を提示することを実証している。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化24】
の6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルの調製のための方法であって、以下の工程A)及びB):
工程A)以下の工程1a)~6a):
1a)ε-カプロラクトン:
【化25】
を、メタノール、エタノール又はイソプロパノールから選択される溶媒中で、20℃と前記溶媒の還流温度との間の温度で、KOH、NaOH及びLiOHから選択される無機塩基と反応させて、式(X):
【化26】
(式中、Mは、K、Na又はLiである)
の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を得る工程;
2a)工程1a)で得られた式(X)の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を精製する工程であって、以下のi~iv:
i.メチル-tert-ブチルエーテルを、工程1a)の反応混合物に、メチル-tert-ブチルエーテル/反応混合物の体積比2:1で加えること
ii.固体を濾過すること
iii.前記固体を、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール(3:1~5:1の比で)及び水(ε-カプロラクトン1モルに対して0.3~1モルの水)の混合物を用いてスラリー化すること
iv.式(X)の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を、固体として単離すること
を含む工程;
3a)6-ヒドロキシヘキサン酸塩を、ジクロロメタン中、0℃~10℃の範囲の温度で、発煙HNO
3と濃H
2SO
4の混合物と反応させる工程;
4a)工程3a)のニトロ化混合物に、温度を0℃と5℃の間に保持しつつ水を加える工程;
5a)有機相を分離し、前記有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで溶媒を留去して、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa):
【化27】
を得る工程;
6a)粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)を、ジクロロメタン中で塩素化剤と反応させて、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)を得る工程
による、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)の調製:
工程B)以下の工程1b)~4b):
1b)ビマトプロストを、メチル-tert-ブチルエ-テル中、約40℃の温度でブチルボロン酸と反応させて、化合物(II):
【化28】
を得る工程;
2b)化合物(II)を、非プロトン性有機溶媒中、遊離型の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で、工程6a)の粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)と反応させて、化合物(XI):
【化29】
を得る工程;
3b)ボロナート保護基を除去して、式(I)の粗化合物を得る工程;
4b)粗化合物(I)をカラムクロマトグラフィーにより精製する工程
を含む、6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸-(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)の調製
を含む方法。
【請求項2】
工程1a)において、無機塩基がKOHであり、溶媒がメタノールであり、反応がメタノールの還流温度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程3a)において、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、ジクロロメタン中の発煙HNO
3及び濃H
2SO
4の混合物に、約0℃~10℃の温度で加え、反応混合物を、0℃から5℃の温度で、60±15分間激しく攪拌する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程6a)において、塩素化剤がオキサリルクロリドである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程2b)において、非プロトン性溶媒が、0℃から20±3℃の温度範囲のメチル-tert-ブチルエーテルである、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程2b)において、化合物(II)の4-ジメチルアミノピリジンに対するモル比が、1:2.0~1:2.4である、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程3b)において、反応で使用される溶媒がメタノールであり、反応が室温で実施される、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程4b)において、粗化合物(I)が、高性能シリカゲルクロマトグラフィーを用い、移動相として塩化メチレン/メタノールを用いて精製される、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸の合成のための方法であって、以下:
1a)ε-カプロラクトン:
【化30】
を、メタノ-ル中、溶媒の還流温度で、KOHと反応させる工程;
2a)-i.メチル-tert-ブチルエーテルを、工程1a)の反応混合物に、メチル-tert-ブチルエーテル/反応混合物の体積比2:1で加える工程;
2a)-ii.固体の6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を濾過する工程;
2a)-iii.前記固体を、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール(3:1~5:1の比で)及び水(ε-カプロラクトン1モルに対して0.3~1モルの水)の混合物を用いてスラリー化する工程;
2a)-iv.6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、固体として単離する工程;
3a)工程2a)の6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、ジクロロメタン中、0℃~10℃の範囲の温度で、発煙HNO
3と濃H
2SO
4の混合物に加え、反応混合物を0℃~5℃の温度で激しく攪拌する工程;
4a)工程3a)のニトロ化混合物に、温度を0℃と5℃の間に保持しつつ水を加える工程;
5a)有機相を分離し、前記有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、次いで溶媒を留去して、99%以上の化学純度、及び6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸の含有量0.2%以下を特徴とする6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を得る工程
を含む方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の6-(ニトロオキシ)ヘキサン
酸(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステルの調製のための方法であって、以下の工程A)及びB):
工程A)以下の工程1a)~6a):
1a)ε-カプロラクトン:
【化2】
を、メタノール、エタノール又はイソプロパノールから選択される溶媒中で、20℃と前記溶媒の還流温度との間の温度で、KOH、NaOH及びLiOHから選択される無機塩基と反応させて、式(X):
【化3】
(式中、Mは、K、Na又はLiである)
の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を得る工程;
2a)工程1a)で得られた式(X)の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を精製する工程であって、以下のi~iv:
i.メチ
ルtert-ブチルエーテルを、工程1a)の反応混合物に、メチ
ルtert-ブチルエーテル/反応混合物の体積比2:1で加えること
ii.固体を濾過すること
iii.前記固体を、
3:1~5:1の比のメチ
ルtert-ブチルエーテル
及びメタノール
並びにε-カプロラクトン1モルに対して0.3~1モルの水
の量の水の混合物を用いてスラリー化すること
iv.式(X)の6-ヒドロキシヘキサン酸塩を、固体として単離すること
を含む工程;
3a)6-ヒドロキシヘキサン酸塩を、ジクロロメタン中、0℃~10℃の範囲の温度で、発煙HNO
3と濃H
2SO
4の混合物と反応させる工程;
4a)工程3a)のニトロ化混合物に、温度を0℃と5℃
との間に保持しつつ水を加える工程;
5a)有機相を分離し、前記有機相を硫酸ナトリウム
により乾燥
し、
そして、溶媒を留去して、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa):
【化4】
を得る工程;
6a)粗6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸(VIIIa)を、ジクロロメタン中で塩素化剤と反応させて、粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)を得る工程
による、6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)の調製:
工程B)以下の工程1b)~4b):
1b)ビマトプロストを、メチ
ルtert-ブチルエ-テル中、約40℃の温度でブチルボロン酸と反応させて、化合物(II):
【化5】
を得る工程;
2b)化合物(II)を、非プロトン性有機溶媒中、遊離型の4-ジメチルアミノピリジンの存在下で、工程6a)の粗6-(ニトロオキシ)ヘキサノイルクロリド(VIIIb)と反応させて、化合物(XI):
【化6】
を得る工程;
3b)ボロナート保護基を除去して、式(I)の粗化合物を得る工程;
4b)
式(I)の粗化合
物をカラムクロマトグラフィーにより精製する工程
を含む、6-(ニトロオキシ)ヘキサン
酸(1S,2E)-3-[(1R,2R,3S,5R)-2-[(2Z)-7-(エチルアミノ)-7-オキソ-2-ヘプテン-1-イル]-3,5-ジヒドロキシシクロペンチル]-1-(2-フェニルエチル)-2-プロペン-1-イルエステル(I)の調製
を含む
、方法。
【請求項2】
工程1a)において、無機塩基がKOHであり、溶媒がメタノールであり、反応がメタノールの還流温度で実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程3a)において、6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、ジクロロメタン中の発煙HNO
3及び濃H
2SO
4の混合物に、約0℃~10℃の温度で加え、反応混合物を、0℃から5℃の温度で、60±15分間激しく攪拌する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
工程6a)において、塩素化剤がオキサリルクロリドである、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程2b)において、非プロトン性溶媒が、0℃から20±3℃
の範囲の
温度のメチ
ルtert-ブチルエーテルである、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程2b)において、化合物(II)
と4-ジメチルアミノピリジン
とのモル比が、1:2.0~1:2.4である、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程3b)において、反応で使用される溶媒がメタノールであり、反応が室温で実施される、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程4b)において、
式(I)の粗化合
物が、高性能シリカゲルクロマトグラフィー
及び移動相として塩化メチレン/メタノールを用いて精製される、請求項1
~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸の合成のための方法であって、以下:
1a)ε-カプロラクトン:
【化7】
を、メタノ-ル中、
メタノールの還流温度で、KOHと反応させる工程;
2a)-i.メチ
ルtert-ブチルエーテルを、工程1a)の反応混合物に、メチ
ルtert-ブチルエーテル/反応混合物の体積比2:1で加える工程;
2a)-ii.固体の6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を濾過する工程;
2a)-iii.前記固体を、
3:1~5:1の比のメチ
ルtert-ブチルエーテル
及びメタノール
並びにε-カプロラクトン1モルに対して0.3~1モルの水
の量の水の混合物を用いてスラリー化する工程;
2a)-iv.6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、固体として単離する工程;
3a)工程2a)の6-ヒドロキシヘキサン酸カリウム塩を、ジクロロメタン中、0℃~10℃の範囲の温度で、発煙HNO
3と濃H
2SO
4の混合物に加え、反応混合物を0℃~5℃の温度で激しく攪拌する工程;
4a)工程3a)のニトロ化混合物に、温度を0℃と5℃
との間に保持しつつ水を加える工程;
5a)有機相を分離し、前記有機相を硫酸ナトリウム
により乾燥し、
そして、溶媒を留去して
、化学純度
99%以上及び6-{[6-(ニトロオキシ)ヘキサノイル]オキシ}ヘキサン酸の含有量0.2%以下を特徴とする6-(ニトロオキシ)ヘキサン酸を得る工程
を含む
、方法。
【国際調査報告】