(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】被覆ファイバおよび関連するファイバにおける熱アニールされたグレーティングシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C03C 25/104 20180101AFI20240221BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240221BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C03C25/104
G02B6/44 301
G02B6/02 416
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547041
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 US2022014982
(87)【国際公開番号】W WO2022169902
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】ダイアー,ロバート,エス
(72)【発明者】
【氏名】ホカンソン,アダム
(72)【発明者】
【氏名】ポペルカ,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】サヴラン,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェストブルック,ポール,エス.
(72)【発明者】
【氏名】サウンダラ,ウィーサイ,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ストロフ,アンドレイ,エー.
【テーマコード(参考)】
2H250
4G060
【Fターム(参考)】
2H250AA07
2H250AA09
2H250AG02
2H250AG67
2H250AG72
2H250AG80
2H250BA03
2H250BB04
2H250BB06
2H250BB07
2H250BB26
2H250BB32
2H250BB33
4G060AC15
4G060AC17
4G060AD42
4G060AD43
4G060CA20
4G060CA21
4G060CB09
4G060CB12
(57)【要約】
本明細書に記載されるのは、後方散乱を増加させるために化学線によって改質された被覆ファイバのためのシステム、方法、および製造物品であって、コーティングを顕著に劣化させ、および/またはコーティングからの水素の脱ガスに起因して光ファイバを顕著に劣化させるのに充分な、曝露の温度および時間において、非常にわずかな後方散乱減衰しか生じず、光ファイバは、ファイバ長と、処理されたコーティング重量を有するコーティングとを含み、処理されたコーティング重量は、アニール処理前の元のコーティング重量の少なくとも25%小さく、ファイバ長に沿った光後方散乱は、ファイバ長にわたるレイリー後方散乱よりも大きく、光後方散乱は、アニール処理への曝露後、ファイバ長に沿って3dBを超えて減少しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバ長と、
処理されたコーティング重量を有するコーティングであって、前記処理されたコーティング重量は、アニール処理前の元のコーティング重量よりも少なくとも25%少ないコーティングと、
前記ファイバ長に沿った光後方散乱であって、前記ファイバ長にわたるレイリー後方散乱よりも大きく、前記アニール処理後に前記ファイバ長に沿って3dBを超えて減少しない光後方散乱とを有する光ファイバ。
【請求項2】
前記光ファイバのコア誘導モードの前記光後方散乱は、前記アニール処理前のレイリー後方散乱よりも少なくとも25dB大きく、前記アニール処理後に測定された反射率向上は少なくとも15dBであったことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記コーティングおよび前記光ファイバの一方または両方は、前記アニール処理後に水素分子のガス放出を示すことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記コーティングは、前記光後方散乱を適用するために使用される化学線の波長で透明であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記コーティングは、アクリレート、シリコーン、ポリイミド、炭素、セラミック、および金属のうちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記コーティングは完全に硬化され、前記光後方散乱は熱硬化後に安定化されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項7】
少なくとも1つの熱源の入口で光ファイバを受け入れる工程であって、前記光ファイバは、元のコーティング重量を有するコーティングと、ファイバ長に沿った光後方散乱とを含む工程と、
所定の時間t
aの間、所定の温度T
aで前記少なくとも1つの熱源によって前記光ファイバにアニール処理を施す工程とを有し、
前記元のコーティング重量は、前記アニール処理中に処理されたコーティング重量の少なくとも25%減少し、
前記光後方散乱は、前記アニール処理後、前記ファイバ長に沿って3dBを超えて減少しない方法。
【請求項8】
前記アニール処理後に前記コーティングを回復および再硬化させる冷却システムを使用する工程をさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングは、前記アニール処理の前に化学線によって前記光ファイバに塗布されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記光後方散乱は、前記アニール処理の前に前記光ファイバ上に刻まれることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの熱源は、様々な所定の温度T
aおよび所定の持続時間t
aを使用する複数の炉を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングおよび前記光ファイバの一方または両方は、前記アニール処理後に水素分子のガス放出を生じさせることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの熱源は、入口および出口を有する管状炉であり、水素は、前記管状炉の前記入口および出口を介して脱ガスされることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記光ファイバのコア誘導モードの前記光後方散乱は、前記アニール処理前のレイリー後方散乱よりも少なくとも25dB大きく、前記アニール後に測定された反射率向上は少なくとも15dBであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティングは、前記光後方散乱を適用するために使用される化学線の波長で透明であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティングは、アクリレート、シリコーン、ポリイミド、炭素、セラミック、および金属うちの1つ以上を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティングは完全に硬化され、前記光後方散乱は熱硬化後に安定化されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記熱硬化は、UV硬化ランプ、低温炉、ファイバ冷却装置、前記ファイバコーティング上に修復ガスを流すシステム、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つによって行われることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、米国仮出願63/144,598(2021年2月2日)の利益を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載されるのは、後方散乱を増加させるために化学線によって被覆された被覆ファイバのためのシステム、方法、および製造品に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの化学線、例えばUV放射又はフェムト秒IR放射を使用して、光ファイバの屈折率を変更し、それによって光ファイバにおける後方散乱を増大させるか、又は更にはファイバの光ガイドコアに沿って1つ以上の準周期的ファイバグレーティングを刻むことができることが知られている。光ファイバの屈折率のそのような修正は、経時的に強度が減衰し、それによって、反射パワーを低減させることができることが知られている。
【0003】
屈折率摂動(index perturbation)を安定させるために、後方散乱またはブラッググレーティング(Bragg grating)反射の増強を生じさせ、そのようなグレーティングは、しばしば、それらの適用において動作する温度を超える温度で安定化アニールを受ける。これらの高温は、典型的には、ファイバのガラス部分を囲む保護コーティングの許容温度を超える。例えば、典型的なゲルマノシリケート光ファイバグレーティングは、150°Cの温度で2日間アニールされ、80°C未満の温度で長年にわたって動作させるためのファイバグレーティング反射率を安定化させる。しかしながら、ファイバを取り囲む典型的なデュアルアクリレートコーティングは、2日間150°Cに暴露した後に実質的に劣化し、それによってファイバに刻まれたファイバグレーティングの有用性を制限する。アニール温度を、デュアルアクリレートコーティングに適合する温度、典型的には100°C未満に低下させることが可能である。しかしながら、そのようなアニールは、80°Cの期間にわたるグレーティング反射率の最小限の減衰を確実にするために、非常に長い時間にわたって行われなければならない。
【0004】
したがって、比較的短時間で、かつ光学コーティングを劣化させることなく、光ファイバの屈折率の化学線変化を安定化させる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、当技術分野における必要性に対処し、後方散乱を増加させるために化学線によって被覆されたコーティングファイバにおいて、コーティングを顕著に劣化させ、および/またはコーティングからの水素の脱ガスに起因して光ファイバを顕著に劣化させるのに充分な、曝露の温度および時間において非常にわずかな後方散乱減衰しか生じさせないコーティングファイバを対象とする。
【0006】
本発明の例示的な実施形態は、ファイバ長と、処理されたコーティング重量を有するコーティングとを含む光ファイバを提供するように構成された製造品の形態を有し、処理されたコーティング重量は、アニール処理前の元のコーティング重量の少なくとも25%小さく、ファイバ長に沿った光後方散乱は、ファイバ長にわたるレイリー後方散乱よりも大きく、光後方散乱は、アニール処理への暴露後、ファイバ長に沿って3dBを超えて減少しない。
【0007】
本発明のさらなる例示的な実施形態は、ファイバコーティングを除去または劣化させることなくファイバグレーティングを熱的に安定させるように構成され、水素の放出を可能にする方法の形態を有する。より具体的には、そのような方法は、少なくとも1つの熱源の入口に光ファイバを受容するステップであって、光ファイバは、元のコーティング重量およびファイバ長に沿った光後方散乱を有するコーティングを含むステップと、所定の時間taの間、所定の温度Taで少なくとも1つの熱源によって光ファイバにアニール処理を適用するステップとを含み、元のコーティング重量は、アニール処理中に処理されたコーティング重量に少なくとも25%減少し、光後方散乱は、アニール処理後にファイバ長に沿って3dBを超えて減少しない。
【0008】
本発明の他のさらなる実施形態および態様は、以下の議論の過程で、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による、コーティングが残存する時間および温度の値を含む例示的なアニール条件を示すグラフである。
【
図2】本発明の一実施形態による、ファイバが炉を通って移動し、炉を出た後に硬化した非粘着状態に戻る、ファイバアニールのための例示的なシステムを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、化学線による屈折率摂動を導入し、化学線屈折率摂動をアニールし、コーティングを硬化および非粘着状態に回復させる例示的なシステムを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、屈折率摂動のために化学線を導入し、コーティングを適用し、ファイバをアニールし、アニール後にファイバを冷却および再硬化させるための例示的なシステムを示す図である。
【
図5】複数の炉または熱源を有する例示的なシステムを示し、それぞれは、本発明の一実施形態に従って、それ自体の温度を有する。
【
図6】対応する劣化を伴う様々なコーティング画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で詳細に説明するように、本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態に関し、後方散乱を増加させるために化学線によって被覆された被覆ファイバに関し、コーティングを顕著に劣化させ、および/またはコーティングからの水素の脱ガスに起因して光ファイバを顕著に劣化させるのに充分な、曝露の温度および時間において、ほとんど後方散乱減衰を生じさせない。本明細書では、ファイバコーティングを除去または劣化させることなく、水素の放出を可能にする、ファイバグレーティングを熱的に安定化させる方法がさらに説明される。
【0011】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、コーティングが残存することを可能にする時間および温度のレジームで安定化アニールを実行することによって、上述の制限に対処する。高温でのファイバ劣化を特徴付けるいくつかの要因がある。要因の1つは、コーティングの熱的および熱酸化的劣化であり、これはコーティングの半径方向および軸方向の収縮ならびにコーティングの機械的特性の変化をもたらす。加えて、コーティング収縮は、ファイバに機械的応力を生じさせ、これは、微小屈曲および追加の光学損失につながる。第2に、ファイバがスプールに巻き付けられ、隣接するコイルが互いに接触している場合、高温では、未反応コーティング成分の拡散は、隣接するファイバストランドの接着をもたらし得る。接着は、次に、潜在的なファイバ破断を含めて、巻回されたファイバをさらに解くときに困難をもたらし得る。さらに、別の故障モードは、分子水素を含み得るコーティング分解生成物に関連する。発生した水素は、ファイバクラッドおよびコアに拡散する可能性があり、これはさらなる光損失を引き起こすことが知られている。ファイバが強く巻き取られる場合、ファイバ中の水素の侵入ははるかに強くなり、これは発生水素の大気中への放出を妨げ、それをスプール内に捕捉する。
【0012】
本発明の1つの例示的な実施形態は、「リールツーリール」形式でのファイバのアニールに関するが、ファイバは、高温の空間、例えば熱オーブンまたは炉を通過する。ファイバの各セクションは、非常に高い温度に、ただし短時間曝露される。高温領域を通過した後、ファイバは、巻き取りスプールに到達する前に室温まで冷却され、このようにして、隣接するファイバコイルの粘着性が実質的に防止される。次に、アニールされるファイバ片がスプール巻きファイバの残りの部分から隔離されると、発生した水素は主に周囲の雰囲気中に放出され、ファイバ内にはるかに少なく侵入する。
【0013】
上述のように、ファイバを高温に曝すことは、コーティングの熱劣化につながる。上述のように、コーティングの劣化は、異なるパラメータによって特徴付けられ得る。簡単にするために、コーティングの単一の特性を考慮することができる。しかしながら、本明細書に記載される分析は、コーティング品質パラメータのいずれかに適用され得る。例えば、コーティングの劣化は、熱重量分析または「TGA」を用いて特徴付けることができる。コーティング試料を様々な温度に加熱し、試料の質量を記録する。次いで、コーティング寿命は、重量損失の量によって特徴付けられる。例えば、所与の温度T
maxにおける耐用寿命の典型的な基準は、25%の重量損失である。低温の場合、寿命は、高温の場合よりも指数関数的に長くなり得る。例えば、所与のアクリレート系ファイバコーティングについて、25%の重量損失を与える値のセットt
lifeおよびT
maxは、
図1のプロット100の青色(実線)線および矢印によって示されるものである。したがって、このプロットでは、コーティングは、青色(実線)線110より下の全てのタフおよびT
maxについて生じる。
【0014】
図1のプロット100に示すように、青色(実線)線110および矢印は、コーティングが生存する時間および温度の値を示す。オレンジ(破線)線120および矢印は、指標摂動が安定している時間および温度を示す。緑色(影付き)領域130は、コーティングが残り、屈折率摂動が熱的に安定化された所望の安定化アニール領域である。
【0015】
他方では、グレーティングがより低い温度で安定するために必要なアニール時間taおよびアニール温度Taは、境界エネルギーによって特徴付けることができる。
Ed=kBTaln(vota) [式1]
【0016】
ここで、kBはボルツマン定数であり、voは特定のシステムの周波数特性である。式1によると、Edの所望の値を与えるtaおよびTaの任意の値は、より低い動作温度での屈折率摂動の所望の安定性を保証する。これは、屈折率摂動から生じる、後方伝搬するコア導波光へのコア導波光の後方散乱の減衰が、所望の減少、例えば、最大3dBに制限されることを意味する。時間および温度に対するグレーティング減衰の依存性を関連付ける他の手段、例えば伸長指数曲線または完全実験曲線さえも使用され得ることに留意されたい。屈折率摂動は、使用中、より低い温度で減少することが許容可能であり得、したがって、絶対安定性は必ずしも必要とされないことに留意されたい。しかしながら、Edの特定の値は、屈折率摂動の任意のさらなる低下が許容可能な値に維持されることを保証する。
【0017】
1.45eVの境界エネルギーおよびv
o=1011.5Hzの値に対するt
aおよびT
aのセットは、
図1のプロット100のオレンジ(破線)線によって示される。屈折率摂動および後方散乱の安定性を確実にするために、t
aおよびT
aの値は、この橙色(破線)線120より上であるべきである。その場合、緑色(影付き)領域130は、青色(実線)線110より下かつオレンジ色(破線)線120より上にあるので、安定化アニールのための所望のレジームである。したがって、例えば、300°Cで100秒間のアニールは、コーティングを無傷のままにしながらグレーティングを安定させるであろう。
【0018】
動作温度ははるかに低くてもよいことに留意されたい。例えば、であって、要件は、温度が10
6秒間にわたって100°Cであることであり得る。この例では、コーティング摂動と屈折率摂動の両方が生存する。本発明の1つの顕著な態様は、コーティング劣化とアニールとの間の相対的な相互作用であり、したがって、
図1のプロット100は、コーティング劣化および境界マップの特定の説明を示すが、化学線への曝露から生じる欠陥のコーティング劣化またはアニールを特徴付ける他のパラメータは、使用のファイバ用途、組成、設計などの詳細および要件に基づいて使用され得る。
【0019】
例示的な実施形態は、屈折率摂動を有する所与のファイバにおいて検出可能であることに留意されたい。このファイバをオーブン中に設定された時間置き、コーティングおよびファイバの劣化を認める。測定は、より高い温度に対して繰り返される。本発明の例示的な実施形態は、所与の温度に対して、コーティングが破損を示すが、屈折率摂動が依然として安定している場合に明らかであろう。例えば、コーティングは25%を超えるTGA重量損失を示すが、屈折率摂動からの後方散乱は3dB未満減少する。例えば、300°Cで100秒間アニールされたファイバを150°Cで10
5.5秒間配置した場合、この点は
図1の青色(実線)線110より上にあるのでコーティングは失敗する。他方、屈折率摂動は、この点がオレンジ色(破線)の線120より下にあるため、安定したままである。
【0020】
アニールが非常に高い温度で実施される場合、非常に短い時間にわたってのみ実施され得ることにさらに留意されたい。したがって、ファイバは、コーティングまたはファイバからの任意の望ましくないガス放出の除去を可能にする容器内でアニールされてもよい。特に、コーティングがアニール中に水素を脱ガスする場合、別のガスまたはガス混合物をファイバを通過させて流すことによって、水素をファイバの近傍から除去することができる。さらに、アニール時間は充分に短いので、コーティングから発生する水素は、ガラスファイバを貫通し、ファイバ内で光を導くために使用されるコア材料と反応するのに充分な時間を有する。シリカ中の水素の拡散係数および飽和レベル、ならびに水素とコアとの反応速度は、温度依存性であり、したがって、アニールステップ後の局所ファイバ温度を変化させることによって制御され得ることに留意されたい。
【0021】
さらに別の実施形態では、
図2に示すシステム200などのように、ファイバ220は、密閉されていない炉230の内部のアニール温度でアニールされる。
図2のシステム200の実施形態によれば、ファイバ220は、炉230を通って移動し、炉230を出た後に硬化した非粘着性状態に戻る。ファイバ220から発生した水素または他の揮発性物質は、炉230の入口232および出口234において、またはファイバ220が炉230を出た後すぐに、かつファイバ220が巻き取り装置240によってのみ巻き取られる前に放出される。したがって、ファイバ220は、送出スプール210から管状炉230内にスプールされ、次いで管状炉230の出口234から巻取りスプール240上にスプールされ得る。この実施形態では、ファイバ220からガス放出される水素は、炉230内で、またはファイバ220が炉230を出た後すぐに放出され、炉230の入口232および/または出口234の開口部から放出される。
【0022】
図3は、化学線による屈折率摂動を導入し、化学線屈折率摂動をアニールし、コーティングを硬化および非粘着状態に戻すための代替システム300を示す。
図3に示すように、屈折率摂動は、炉340の前の送出スプール310(例えば、入口開口部342)からのファイバ320のセクションにおいてシステム300に導入することができる。さらに、炉340の後の領域(例えば、出口開口部344)は、巻き取りスプール360の前にコーティングを再硬化および修復するためのシステム350を有し得る。そのようなシステム350は、単に、周囲空気への暴露を通して冷却してもよい。しかしながら、UV硬化ランプ、第2の低温炉、ファイバ冷却装置、又はファイバコーティング上に修復ガスを流すシステムであってもよい。このシステム350の目的は、コーティングを再硬化させ、ファイバ320に指定された用途によって要求される仕様内にある品質に回復させることである。
【0023】
別の実施形態では、
図4に示すシステム400のように、アニールは、ファイバ460がプリフォーム炉420内でプリフォーム410から延伸されるときに、ファイバ製造中に延伸塔上で直接実行される。システム400は、屈折率摂動のための化学線をファイバ460に導入し、ファイバ460にコーティングを適用すること、ファイバ460をアニールし、およびファイバ460が巻取りスプール470に移動するにつれて、アニール後にファイバ460を冷却および再硬化させることを可能にする。具体的には、例示的なシステム400は、屈折率摂動を導入するための化学線システム430と、コーティングを適用するためのコーティングシステム440と、アニールを可能にするための(入口開口部452を有する)アニール炉450とを有する。炉450の出口開口部454の後、ファイバ460は、高温アニールによってもはや粘着性または損なわれないように、より低い温度になり、再硬化させられるであろう。
図4は、焼鈍炉がコーティング塗布後450であることを示すが、炉450がコーティング塗布システム440の前に設けられてもよいことに留意されたい。
【0024】
図4のシステム400の実施形態では、熱源がファイバ460上のコーティング材料を硬化させることも可能である。例えば、いくつかのアクリレートコーティングは、完全に硬化するためにUV露光を必要とする。コーティングおよびファイバ460は、この硬化プロセス中に温度が上昇し得る。次いで、コーティングが完全に硬化され、屈折率摂動が安定化されるように、そのような硬化ランプにおけるUV照射のパワーを調整することが可能であり得る。
【0025】
別の例では、コーティングは熱硬化を必要とし得る。例えば、ポリイミドはしばしば熱硬化を必要とする。そのようなプロセスは、ポリイミドが完全に硬化し、屈折率摂動が熱的に安定化されるように調整することもできる。本明細書に記載される本発明の例示的な実施形態は、多くの異なるタイプのファイバコーティングに適用され得る。これらは、アクリレート、シリコーン、ポリイミド、炭素、セラミック、金属、及びこれらの任意の組み合わせを含む。これらの材料のいずれも、化学線の波長で透明であり得る。炉は、同じまたは異なる温度のいずれかで動作する任意の熱源または複数の熱源であり得ることに留意されたい。例えば、それは、1つ以上の従来のオーブン、マイクロ波、レーザエネルギー源、および/またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0026】
図5は、それぞれがそれ自体の温度を有する、複数の炉または熱源(例えば、炉530、540、550である)を有するシステム500の追加の実施形態を示す。ライン速度は、ファイバ520が繰り出しスプール510から炉(530、540、550)を通って巻取りスプール560に移動する速度を示す。炉(530、540、550)は両端が開放されており、窒素、アルゴン、またはヘリウムなどのガスでパージされてもよい。
【0027】
別の実施形態では、化学線曝露による屈折率摂動を有するファイバは、
図5に示すように、一連の熱炉(530、540、550)を通過しながらアニールされる。このアプローチの能力は、以下の特許に記載されているものと同様のコーティングで延伸されたファイバを使用して試験された2015年7月28日に出願され、US特許10,655,034として発行された「UV硬化性シルセスキオキサン含有ライトスルー光ファイバコーティング」(「UV硬化性シルセスキオキサン含有ライトスルー光ファイバコーティング」は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
第1の実施例では、屈折率摂動は、コア導波モードの後方散乱が、化学線暴露直後に測定されたレイリー散乱よりも25.88dB大きいように、ファイバに刻まれた。この後方散乱測定は、市販のOBR OFDR測定システムを用いた光周波数-時間領域反射率測定(OFDR)を用いて行った。このコアモード後方反射の増加は、レイリー散乱を超える後方散乱の増強、または同等に反射率増強とも呼ばれ得る。この実施例の化学線露光は、パルス248nmエキシマレーザーであった。アニールセットアップは、窒素でパージされた長さ65cmの7つの熱炉を使用した。温度Ta,1~Ta,7は350°Cに設定され、アニールのために試行されたライン速度は5,10,20および40m/分であった。全てのライン速度において、熱暴露はコーティングに有意な損傷を引き起こさなかったが、1550nm反射率増強は、それぞれ、5,10,20および40m/分のライン速度に対して、21.87,23.15,23.61および25.84dBの大きさまで減少することが見出された。ライン速度は、ファイバが炉を通って移動する速度である。
【0029】
第2の実施例では、ファイバを同じコーティングで線引きし、FBGを26.26dBの増強された反射率で刻んだ。FBGが刻まれたファイバを、
図5に示すシステム500を用いて、450°Cに設定された7つの窒素パージされた熱炉を用いてアニールした。アニールに使用したライン速度は、7.5,10,15および20m/分であった。これらの条件において、熱暴露はコーティングに有意な損傷を引き起こさなかったが、アニール後に測定された反射率増強は、それぞれ15.66,16.34,18.47および20.37dBであった。
【0030】
第3の実施例では、ファイバは同じコーティングで延伸され、屈折率摂動は27.24dBの増強された反射率を与えた。ファイバは、450°Cに設定された温度T
a,1~T
a,7および10m/分のライン速度で、先の実施例に記載したのと同様にアニールされた。アニール後に観察された反射率増強は16.30dBであった。次いで、アニールされたものを、160°Cで89時間、空気中の熱炉内で高温アニールに供した。
図5のシステム500においてアニールされていない、同じ化学線曝露および反射率増強を有するある長さのファイバを、同じアニール条件に供した。このアニールの後、反射率の増強は、アニールされたファイバ及びアニールされていないファイバについて、それぞれ15.92dB及び17.81dBであることが分かった。アニールされたファイバのエージング後に観察された著しい反射率減衰の欠如(16.30-15.92=0.38dB)は、刻まれたFBGが、この実施例のパラメータを用いて
図5のシステム500の使用を通して得られたアニール処理によって充分に安定化されたことを確認した。
【0031】
この実施例では、コーティング劣化は、2つの異なるアニールの後に測定された。劣化は、以下に論じる顕微鏡画像におけるコーティングの変色において明らかである。コーティングの外観が黄色であるほど、コーティングは、可視スペクトルにおいて明瞭であるその初期状態から劣化している。
図6の(A)~(C)は以下のコーティング画像を示す。
図6の(A)は、第3の実施例のパラメータ(アニールした450°C、ライン速度=10メートル/分)を有する
図5のシステム500におけるアニール後の画像を示す。
図6の(B)は、第3の実施例のパラメータ(アニールした450°C、ライン速度=10メートル/分)を用いて
図5のシステム500においてアニールした後、160°Cで89時間アニールする画像を示す。
図6の(C)は、160°Cで89時間のアニールのみを有する同じファイバの画像を示す。
図6Aは、コーティングが、
図5のシステム500におけるアニール後の最小限の劣化を示すことを示す。
図6Bおよび6Cは、コーティングが160°Cで89時間アニールした後に顕著な劣化を有することを示す。
【0032】
本開示は、その例示的な実施形態を参照して説明されている。本開示に開示される全ての例示的な実施形態及び条件付き説明は、本開示が属する技術分野の当業者による本開示の原理及び概念の理解を助けることを意図して説明された。したがって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を変形して実施できることを理解できるであろう。種々の特徴を有する多数の実施形態が本明細書に説明されているが、本明細書に議論されない他の組み合わせにおけるそのような種々の特徴の組み合わせは、本開示の実施形態の範囲内であると想定される。
【国際調査報告】