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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】心室補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/178 20210101AFI20240221BHJP
   A61M 60/139 20210101ALI20240221BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20240221BHJP
   A61M 60/419 20210101ALI20240221BHJP
   A61M 60/414 20210101ALI20240221BHJP
   A61M 60/804 20210101ALI20240221BHJP
   A61M 60/81 20210101ALI20240221BHJP
【FI】
A61M60/178
A61M60/139
A61M60/237
A61M60/419
A61M60/414
A61M60/804
A61M60/81
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547155
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2022051990
(87)【国際公開番号】W WO2022189932
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,708
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/254,321
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515250945
【氏名又は名称】マジェンタ・メディカル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】トゥヴァル,ヨシ
(72)【発明者】
【氏名】ルビンスキー,ガッド
(72)【発明者】
【氏名】ゼマー ハレル,ハジット
(72)【発明者】
【氏名】フリードランド,オリ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンブルム,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンフェルド,アヴィ
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077BB10
4C077CC03
4C077DD10
4C077EE01
4C077FF04
(57)【要約】
【課題】 心室補助装置及びその使用方法である。
【解決手段】 インペラ(50)及びこのインペラ(50)の周りに配置されたフレーム(34)を含む左心室補助装置を含む装置及び方法が記載される。フレーム(34)は、フレームの近位端にストラット接合部(33)を含む。ストラット接合部(33)は、左心室補助装置の組み立て中、フレーム(34)内へのインペラ(50)の挿入を容易にするため、開いた状態に維持されるよう構成されている。フレーム(34)内へのインペラ(50)の挿入の後、固定要素(117)は、ストラット接合部を閉じた状態に保つ。ポンプ出口管(24)は、フレーム(34)の遠位端まで延出し、対象の左心室からポンプ出口管(24)内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口(108)を規定する。他の用途も記載される。
【選択図】 図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左心室補助装置であって、
対象の左心室内に配置され、回転によって前記対象の前記左心室から大動脈へ血液を送り込むように構成されたインペラと、
前記インペラの周りに配置され、近位端に複数のストラット接合部を含むフレームであって、前記ストラット接合部は、前記左心室補助装置の組み立て中、前記フレーム内への前記インペラの挿入を容易にするため、開いた状態に維持されるよう構成されている、フレームと、
前記フレーム内への前記インペラの前記挿入の後、前記ストラット接合部を閉じた状態に保つように構成された固定要素と、
前記対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管であって、前記ポンプ出口管の近位部が前記対象の大動脈内に配置されると共に前記ポンプ出口管の遠位部が前記対象の左心室内に配置されるようになっており、前記ポンプ出口管の前記遠位部は、前記フレームの遠位端まで延出すると共に、前記対象の左心室から前記ポンプ出口管内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口を規定する、ポンプ出口管と、
を含む左心室補助装置を備える装置。
【請求項2】
前記固定要素はリングを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記左心室補助装置は前記フレームに対して遠位の部分を含み、前記ポンプ出口管は更に結合部を含み、前記結合部は、前記フレームから遠位に延出し、前記フレームに対して遠位の前記左心室補助装置の前記部分に結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は、10より多い血液流入口を規定し、前記血液流入口は、(a)前記対象の左心室から前記管内への血流を可能とするような、かつ(b)前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するような大きさを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は、50より多い血液流入口を規定し、前記血液流入口は、(a)前記対象の左心室から前記管内への血流を可能とするような、かつ(b)前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するような大きさを有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記左心室補助装置は更に、
前記フレームの近位端で近位軸受部筐体内に配置された近位半径方向軸受部と、
前記フレームの遠位端で遠位軸受部筐体内に配置された遠位半径方向軸受部と、
軸方向シャフトであって、前記インペラは前記軸方向シャフトの上に配置されており、前記近位半径方向軸受部及び前記遠位半径方向軸受部を貫通する軸方向シャフトと、
を含み、前記固定要素は、前記近位軸受部筐体の外面の周りで前記ストラット接合部を閉じた状態に保持するよう構成されている、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記ポンプ出口管は更に結合部を含み、前記結合部は、前記フレームから遠位に延出し、前記遠位軸受部筐体に結合されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記フレームの遠位端は前記遠位軸受部筐体の外面に結合されている、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記左心室補助装置は遠位先端要素を更に含み、前記遠位先端要素は前記遠位軸受部筐体に結合されている、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記近位軸受部筐体の前記外面は、前記ストラット接合部を受容するような形状の溝を規定する、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記ストラット接合部は幅広ヘッドを規定し、前記溝は前記ストラット接合部の前記幅広ヘッドと一致するような形状を有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記近位及び遠位半径方向軸受部はセラミック材料で作製され、前記近位及び遠位軸受部筐体は所望の形状に成形することができる第2の材料で作製される、請求項6に記載の装置。
【請求項13】
前記近位及び遠位軸受部筐体は金属及び/又は合金で作製される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記軸方向シャフトは金属及び/又は合金を含み、前記軸方向シャフトは、前記左心室補助装置の動作中に前記近位及び遠位軸受部のいずれかと接触する前記軸方向シャフトの領域に沿ってセラミックスリーブで覆われている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
左心室補助装置を製造する方法であって、
フレームを形成することであって、前記フレームが遠位端で閉じるように、かつ、前記フレームの近位端における複数のストラット接合部が開いた状態に維持されるように、フレームを形成することと、
前記フレームにポンプ出口管を結合して、前記ポンプ出口管の遠位部が前記フレームの遠位端まで延出すると共に、前記対象の左心室から前記ポンプ出口管内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口を規定することであって、前記ポンプ出口管は対象の大動脈弁を横断するように構成され、前記ポンプ出口管の近位部が前記対象の大動脈内に配置されると共に前記ポンプ出口管の前記遠位部が前記対象の左心室内に配置されるようになっている、前記フレームにポンプ出口管を結合することと、
前記ポンプ出口管を通して回転によって血液を送り込むように構成されたインペラを、前記フレームの前記近位端を介して前記フレーム内に挿入することと、
次いで、前記フレームの前記近位端で前記ストラット接合部を閉じ、固定要素を用いて前記ストラット接合部を閉じた状態に維持することと、
を含む方法。
【請求項16】
前記固定要素はリングを含み、前記固定要素を用いて前記ストラット接合部を閉じた状態に維持することは、前記リングを用いて前記ストラット接合部を閉じた状態に維持することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポンプ出口管は、前記フレームから遠位に延出するように構成された結合部を更に含み、前記方法は更に、前記フレームに対して遠位の前記左心室補助装置の部分に前記結合部を結合することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記左心室補助装置は更に、
前記フレームの近位端で近位軸受部筐体内に配置された近位半径方向軸受部と、
前記フレームの遠位端で遠位軸受部筐体内に配置された遠位半径方向軸受部と、
軸方向シャフトであって、前記インペラは前記軸方向シャフトの上に配置されており、前記近位半径方向軸受部及び前記遠位半径方向軸受部を貫通する軸方向シャフトと、
を含み、前記固定要素を用いて前記ストラット接合部を閉じた状態に維持することは、前記近位軸受部筐体の外面の周りで前記ストラット接合部を閉じた状態に保持することによって前記ストラット接合部を閉じた状態に維持することを含む、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ポンプ出口管は、前記フレームから遠位に延出するように構成された結合部を更に含み、前記方法は更に、前記結合部を前記遠位軸受部筐体に結合することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フレームの遠位端を前記遠位軸受部筐体の外面に結合することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記遠位軸受部筐体に遠位先端要素を結合することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記近位軸受部筐体の前記外面は、前記ストラット接合部を受容するような形状の溝を規定し、前記近位軸受部筐体の前記外面の周りで前記ストラット接合部を閉じた状態に保持することは、前記近位軸受部筐体の前記外面によって規定された前記溝内に前記ストラット接合部を保持することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記ストラット接合部は幅広ヘッドを規定し、前記近位軸受部筐体の前記外面によって規定された前記溝内に前記ストラット接合部を保持することは、前記ストラット接合部の前記幅広ヘッドと一致するような形状の溝内に前記ストラット接合部を保持することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記近位及び遠位半径方向軸受部はセラミック材料で作製され、前記近位及び遠位軸受部筐体は所望の形状に成形することができる第2の材料で作製される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記近位及び遠位軸受部筐体は金属及び/又は合金で作製される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記軸方向シャフトは金属及び/又は合金を含み、前記方法は、前記左心室補助装置の動作中に前記近位及び遠位軸受部のいずれかと接触する前記軸方向シャフトの領域に沿って前記軸方向シャフトをセラミックスリーブで覆うことを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
左心室補助装置であって、
対象の左心室内に配置され、回転によって前記対象の前記左心室から大動脈へ血液を送り込むように構成されたインペラと、
前記インペラの周りに配置されたフレームと、
前記対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管であって、前記ポンプ出口管の近位部が前記対象の大動脈内に配置されると共に前記ポンプ出口管の遠位部が前記対象の左心室内に配置されるようになっている、ポンプ出口管と、
を含む左心室補助装置を備える装置であって、前記ポンプ出口管の前記遠位部は、前記フレームの遠位端まで延出すると共に、(a)前記対象の左心室から前記管内への血流を可能とするような、かつ(b)前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するような大きさを有する10より多い血液流入口を規定し、
前記血液流入口を規定する前記ポンプ出口管の前記遠位部の多孔度は、前記ポンプ出口管の前記遠位部の近位領域内では、前記近位領域に対して遠位の前記ポンプ出口管の前記遠位部の遠位領域内よりも低い、装置。
【請求項28】
前記血液流入口の各々は、少なくとも1つの方向における前記血液流入口の幅が1mm未満であるような形状を有する、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記遠位領域内の前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記多孔度と前記近位領域内の前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記多孔度との比は4:3より大きい、請求項27に記載の装置。
【請求項30】
前記ポンプ出口管の前記遠位部の異なる領域における様々な血流ダイナミクスに対応するように、前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記多孔度は前記近位領域と前記遠位領域とで変動する、請求項27に記載の装置。
【請求項31】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は円錐形であり、前記遠位円錐部の長さに沿った形状の変化に対応するように、前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記多孔度は前記近位領域と前記遠位領域とで変動する、請求項27に記載の装置。
【請求項32】
前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記遠位領域に沿って、前記ポンプ出口管は大きい血液流入口を規定し、前記大きい血液流入口は、前記ポンプ出口管の前記遠位円錐部の前記遠位領域に沿った前記血液流入口がより小さい場合に比べて血栓のリスクを軽減するように構成されている、請求項27に記載の装置。
【請求項33】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は、(a)前記対象の左心室から前記管内への血流を可能とするような、かつ(b)前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するような大きさを有する50より多い血液流入口を規定する、請求項27に記載の装置。
【請求項34】
前記血液流入口は矩形であり、前記血液流入口の各々の長さと幅の比が1.1:1~4:1であるような形状を有する、請求項27に記載の装置。
【請求項35】
前記血液流入口は矩形であり、前記血液流入口の各々の長さと幅の比が3:2~5:2であるような形状を有する、請求項27に記載の装置。
【請求項36】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は40パーセント超の多孔度を有する、請求項27から35のいずれか1項に記載の装置。
【請求項37】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は50パーセント超の多孔度を有する、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記ポンプ出口管の前記遠位部は60パーセント超の多孔度を有する、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記フレームは中央円筒部及び遠位円錐部を規定し、前記血液流入口を規定する前記ポンプ出口管の前記遠位部は円錐形であると共に前記フレームの前記遠位円錐部の上に配置され、前記ポンプ出口管の前記遠位部に対して近位の前記ポンプ出口管の部分は前記フレームの前記中央円筒部に結合されている、請求項27から35のいずれか1項に記載の装置。
【請求項40】
前記ポンプ出口管の前記遠位部に対して近位の前記ポンプ出口管の前記部分は加熱によって前記フレームの前記中央円筒部に結合されており、前記多孔度は前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記近位領域内の方が低いので、前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記近位領域内の前記多孔度の方が高い場合に比べ、前記加熱中に前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記近位領域内の前記血液流入孔を規定する材料において生じ得る損傷が軽減されるようになっている、請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記フレームの前記中央円筒部の内面に結合された内張りを更に備え、前記内張りは前記フレームの前記中央円筒部に滑らかな内面を提供するようになっている、請求項39に記載の装置。
【請求項42】
前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記近位領域は0.5~2mmの長さに沿って延出する、請求項39に記載の装置。
【請求項43】
前記血液流入口は多角形の形状を有する、請求項27から35のいずれか1項に記載の装置。
【請求項44】
前記血液流入口は六角形の形状を有する、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記近位領域内で、前記血液流入口の各々が取り囲む円の直径は0.1~0.6mmである、請求項43に記載の装置。
【請求項46】
前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記近位領域内で、隣接する血液流入口の間の間隙の幅は0.05~0.2mmである、請求項43に記載の装置。
【請求項47】
前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記遠位領域内で、前記血液流入口の各々が取り囲む円の直径は0.2~0.8mmである、請求項43に記載の装置。
【請求項48】
前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記遠位領域内で、隣接する血液流入口の間の間隙の幅は0.01mm~0.1mmである、請求項43に記載の装置。
【請求項49】
前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記遠位領域内における前記血液流入口の各々で取り囲まれた円の直径と前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記近位領域内における前記血液流入口の各々で取り囲まれた円の直径との比は7:6より大きい、請求項43に記載の装置。
【請求項50】
前記ポンプ出口管の前記近位部の前記近位領域内における隣接する血液流入口の間の間隙の幅と前記ポンプ出口管の前記遠位部の前記遠位領域内における隣接する血液流入口の間の間隙の幅との比は3:2より大きい、請求項43に記載の装置。
【請求項51】
血液ポンプのインペラのための筐体を製造することであって、
フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理し、
次いで、前記フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合し、前記フレームの前記中央円筒部は概ね円筒形の形状を規定するストラットを含み、
前記フレームの前記中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合した後、
前記内張りの内側にマンドレルを配置し、
前記フレームの少なくとも一部の周りに、少なくとも1つの血液流出口を規定する近位部を含む細長い管の一部を配置し、
前記フレームの前記少なくとも一部の周りに前記細長い管の前記一部が配置されている間に、前記マンドレルを介して、前記内張り、前記フレーム、及び前記細長い管の前記一部を加熱し、
前記内張り、前記フレーム、及び前記細長い管の前記一部を加熱している間に、前記細長い管の前記一部を前記フレームと結合させるように、前記細長い管の前記一部の外側から圧力を加える、
ことによって、血液ポンプのインペラのための筐体を製造することを含む方法。
【請求項52】
前記フレームの前記中央円筒部のストラットはセルを規定し、前記セルは、前記フレームの半径方向に拘束されない構成において、前記フレームの前記中央円筒部の円周に沿って測定された前記フレームの前記中央円筒部内の前記セルの各々の幅が2mm未満であるように構成されている、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記内張り、前記フレーム、及び前記細長い管の前記一部を加熱している間に、前記細長い管の前記一部の外側から圧力を加えることは、前記細長い管の前記一部を前記フレームの前記ストラットの構造と一致させることを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することは、前記内張りが実質的に円形の断面を有するように、前記フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することは、前記内張りが、前記内張りを結合する前記フレームの前記中央円筒部の前記一部に滑らかな内面を提供するように、前記フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することは、気泡、折り目、及びその他の、前記内張りによって与えられる表面の滑らかさの中断を回避することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記フレームの前記内面と前記内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理することは、前記フレームにプラズマ処理を行うことを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
前記フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することは、
マンドレル上に前記内張りを配置することと、
前記内張り上に前記フレームを配置することと、
熱収縮プロセスによって圧力を加えることと、
を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記フレームの前記内面と前記内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理することは、前記内張りが作製される前記材料を含有する溶液に前記フレームを浸すことを含む、請求項51から58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記内張りはポリウレタンを含み、前記フレームを前記溶液に浸すことは前記フレームをポリウレタン溶液に浸すことを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記フレームの前記内面と前記内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理することは、前記フレームの前記中央円筒部の前記一部の前記内面に、前記内張りが作製される前記材料を含有する溶液をスプレーすることを含む、請求項51から58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記内張りはポリウレタンを含み、前記フレームの前記中央円筒部の前記一部の前記内面にスプレーすることは、前記フレームの前記中央円筒部の前記一部の前記内面にポリウレタン溶液をスプレーすることを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記フレームの前記中央円筒部の前記少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合した後、前記内張りの内側に前記マンドレルを配置することは、前記内張りの内側に前記内張りの長さよりも短いマンドレルを配置することを含む、請求項51から58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記フレームの前記中央円筒部の前記少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合した後、前記内張りの内側に前記マンドレルを配置することは、前記内張りの各端部で前記マンドレルの外側にマージンが残るように前記内張り内に前記マンドレルを配置することを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記内張りの各端部で前記マンドレルの外側にマージンが残るように前記内張り内に前記マンドレルを配置することは、前記マンドレルが前記フレーム又は前記ポンプ出口管と直接接触するのを防ぎ、これにより、前記マンドレルの前記加熱によって前記ポンプ出口管が過熱して損傷を受けることから保護することを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記フレームの前記内面と前記内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理することは、前記フレーム及び前記内張りが作製される材料のそれぞれに結合するよう構成された少なくとも2つの官能基を有する結合剤に前記フレームを浸すことを含む、請求項51から58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記内張りはポリウレタンを含み、前記フレームを前記結合剤に浸すことは前記フレームを前記結合剤に浸すことを含み、前記フレームをシラン溶液に浸すことを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
血液ポンプのインペラのための筐体を製造することであって、
内張りの周りにフレームの中央円筒部が配置された状態で、前記内張りの内側にマンドレルを配置し、前記フレームの前記中央円筒部は概ね円筒形の形状を規定するストラットを含み、
前記マンドレルは前記内張りの長さより短く、
前記フレームの少なくとも一部の周りに、少なくとも1つの血液流出口を規定する近位部を含む細長い管の一部を配置し、
前記フレームの前記少なくとも一部の周りに前記細長い管の前記一部が配置されている間に、前記マンドレルを介して、前記内張り、前記フレーム、及び前記細長い管の前記一部を加熱し、
前記内張り、前記フレーム、及び前記細長い管の前記一部を加熱している間に、前記細長い管の前記一部を前記フレームと結合させるように、前記細長い管の前記一部の外側から圧力を加える、
ことによって、血液ポンプのインペラのための筐体を製造することを含む方法。
【請求項69】
前記フレームの前記中央円筒部のストラットはセルを規定し、前記セルは、前記フレームの半径方向に拘束されない構成において、前記フレームの前記中央円筒部の円周に沿って測定された前記フレームの前記中央円筒部内の前記セルの各々の幅が2mm未満であるように構成されている、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記内張り、前記フレーム、及び前記細長い管の前記一部を加熱している間に、前記細長い管の前記一部の外側から圧力を加えることは、前記細長い管の前記一部を前記フレームの前記ストラットの構造と一致させることを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記内張りの内側に前記マンドレルを配置することは、前記内張りの各端部で前記マンドレルの外側にマージンが残るように前記内張り内に前記マンドレルを配置することを含む、請求項68から70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記内張りの各端部で前記マンドレルの外側にマージンが残るように前記内張り内に前記マンドレルを配置することは、前記マンドレルが前記フレーム又は前記ポンプ出口管と直接接触するのを防ぎ、これにより、前記マンドレルの前記加熱によって前記ポンプ出口管が過熱して損傷を受けることから保護することを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記内張りの内側に前記マンドレルを配置するよりも前に、
前記フレームの内面と前記内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理することと、
前記フレームの前記中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することと、
を更に含む、請求項68から70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記フレームの前記中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することは、前記内張りが実質的に円形の断面を有するように、前記フレームの前記中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記フレームの前記中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することは、前記内張りが、前記内張りを結合する前記フレームの前記中央円筒部の前記一部に滑らかな内面を提供するように、前記フレームの前記中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記フレームの前記中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することは、気泡、折り目、及びその他の、前記内張りによって与えられる表面の滑らかさの中断を回避することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記フレームの前記内面と前記内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理することは、前記フレームにプラズマ処理を行うことを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿って前記フレームの前記内面に前記内張りを結合することは、
マンドレル上に前記内張りを配置することと、
前記内張り上に前記フレームを配置することと、
熱収縮プロセスによって圧力を加えることと、
を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
前記フレームの前記内面と前記内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理することは、前記内張りが作製される前記材料を含有する溶液に前記フレームを浸すことを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項80】
前記内張りはポリウレタンを含み、前記フレームを前記溶液に浸すことは前記フレームをポリウレタン溶液に浸すことを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記フレームの前記内面と前記内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理することは、前記フレームの前記中央円筒部の前記一部の前記内面に、前記内張りが作製される前記材料を含有する溶液をスプレーすることを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
前記内張りはポリウレタンを含み、前記フレームの前記中央円筒部の前記一部の前記内面にスプレーすることは、前記フレームの前記中央円筒部の前記一部の前記内面にポリウレタン溶液をスプレーすることを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記フレームの前記内面と前記内張りとの間の結合を強化するために前記フレームを処理することは、前記フレーム及び前記内張りが作製される材料のそれぞれに結合するよう構成された少なくとも2つの官能基を有する結合剤に前記フレームを浸すことを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項84】
前記内張りはポリウレタンを含み、前記フレームを前記結合剤に浸すことは前記フレームを前記結合剤に浸すことを含み、前記フレームをシラン溶液に浸すことを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
左心室補助装置であって、
対象の左心室内に配置され、回転によって前記対象の前記左心室から大動脈へ血液を送り込むように構成されたインペラと、
前記インペラの周りに配置され、遠位円錐部を規定するフレームと、
前記フレームに対して遠位に配置された表面と、
前記フレームの前記遠位円錐部上に配置された入口防護部であって、
(a)前記対象の左心室から前記管内への血流を可能とするような、及び(b)前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの血液流入口を規定する入口防護部と、
前記フレームに対して遠位に配置された前記表面に結合されるよう構成された遠位結合部であって、前記遠位結合部と前記フレームに対して遠位に配置された前記表面との間の接着剤の塗布を容易にするよう構成された孔を規定する遠位結合部と、
を含む左心室補助装置を備える装置。
【請求項86】
前記入口防護部はポンプ出口管の遠位部を含み、前記ポンプ出口管は、前記対象の大動脈弁を横断するように構成されて、前記ポンプ出口管の近位部が前記対象の大動脈内に配置されると共に前記ポンプ出口管の前記遠位部が前記対象の左心室内に配置されるようになっている、請求項85に記載の装置。
【請求項87】
前記フレームに対して遠位に配置された前記表面は、前記表面と前記結合部との間の結合を強化するように細長い隆起が形成されている、請求項85に記載の装置。
【請求項88】
前記フレームに対して遠位に配置された前記表面は、前記結合部と前記表面との間で前記接着剤を徐々に均一に広げることができるように、ねじ山が形成されている、請求項85に記載の装置。
【請求項89】
前記結合部は管状である、請求項85に記載の装置。
【請求項90】
前記結合部と前記表面との間の接着剤の広がりが見えるように前記結合部は透明である、請求項85に記載の装置。
【請求項91】
前記左心室補助装置は更に、
前記フレームの近位端で近位軸受部筐体内に配置された近位半径方向軸受部と、
前記フレームの遠位端で遠位軸受部筐体内に配置された遠位半径方向軸受部と、
軸方向シャフトであって、前記インペラは前記軸方向シャフトの上に配置されており、前記近位半径方向軸受部及び前記遠位半径方向軸受部を貫通する軸方向シャフトと、
を含み、前記遠位結合部が結合される前記表面は、前記遠位軸受部筐体の外面の少なくとも一部を含む、請求項85から90のいずれか1項に記載の装置。
【請求項92】
前記フレームの遠位端は前記遠位軸受部筐体の前記外面の別の部分に結合されている、請求項91に記載の装置。
【請求項93】
前記左心室補助装置は遠位先端要素を更に含み、前記遠位先端要素は前記遠位軸受部筐体の前記外面の別の部分に結合されている、請求項91に記載の装置。
【請求項94】
前記フレームの近位端は前記近位軸受部筐体の外面に結合されている、請求項91に記載の装置。
【請求項95】
前記フレームは、前記フレームの近位端に複数のストラット接合部を含み、前記ストラット接合部は、前記左心室補助装置の組み立て中、前記フレーム内への前記インペラの挿入を容易にするため、開いた状態に維持されるよう構成され、前記フレームの前記近位端は、前記近位軸受部筐体の前記外面の周りで前記ストラット接合部を閉じた状態に保持する固定要素によって前記近位軸受部筐体の前記外面に結合されている、請求項94に記載の装置。
【請求項96】
前記近位及び遠位半径方向軸受部はセラミック材料で作製され、前記近位及び遠位軸受部筐体は所望の形状に成形することができる第2の材料で作製される、請求項91に記載の装置。
【請求項97】
前記近位及び遠位軸受部筐体は金属及び/又は合金で作製される、請求項96に記載の装置。
【請求項98】
前記軸方向シャフトは金属及び/又は合金を含み、前記軸方向シャフトは、前記左心室補助装置の動作中に前記近位及び遠位軸受部のいずれかと接触する前記軸方向シャフトの領域に沿ってセラミックスリーブで覆われている、請求項97に記載の装置。
【請求項99】
心室補助装置であって、
複数のセルを規定するストラットを含むフレームであって、前記フレームの半径方向に拘束されない構成において概ね円筒形の中央部を含むように構成されたフレームと、
1つ以上の血液流出口を規定するポンプ出口管であって、前記ポンプ出口管の一部は前記フレームの外側に配置されると共に前記フレームの前記概ね円筒形の中央部に結合されて、前記ポンプ出口管の前記一部が前記フレームのストラットの構造と一致するようになっている、ポンプ出口管と、
前記フレームの前記概ね円筒形の部分に滑らかな内面を提供するように、前記フレームの前記概ね円筒形の中央部の内側に結合された内張りと、
少なくとも部分的に前記フレームの前記概ね円筒形の中央部の内側に配置され、前記管を通して、前記1つ以上の血液流出口から血液を送り出すように構成されたインペラと、
前記フレームの遠位部上に配置され、前記対象の左心室からの構造が前記フレーム内へ進入するのを阻止するように構成された保護編組と、
を含む心室補助装置を備える装置であって、前記保護編組の近位端は前記ポンプ出口管と前記内張りとの間に埋め込まれて、前記フレームの圧着中に、前記編組が前記ポンプ出口管及び前記内張りで圧着されることにより、前記編組が前記ポンプ出口管又は前記内張りに対して動くことを防止するようになっている、装置。
【請求項100】
前記編組は前記フレームの前記遠位部のストラット内に織り込まれている、請求項99に記載の装置。
【請求項101】
前記フレームの前記遠位部は円錐形であり、前記保護編組は前記フレームの前記遠位円錐部の前記端部まで延出する、請求項99又は請求項100に記載の装置。
【請求項102】
前記フレームの前記遠位円錐部の遠位部分内の前記編組上に血栓が形成されるのを防止するため、前記編組は前記フレームの前記遠位円錐部の前記遠位部分に沿って覆われている、請求項101に記載の装置。
【請求項103】
前記フレームの前記遠位円錐部の遠位部分内で、前記フレームの前記遠位円錐部の前記遠位部分内の前記編組上に血栓が形成されるのを防止するため、前記編組は大きい開口を規定するように開いている、請求項101に記載の装置。
【請求項104】
前記フレームの前記遠位円錐部の遠位部分内で、前記フレームの前記遠位円錐部の前記遠位部分内の前記編組上に血栓が形成されるのを防止するため、前記編組は大きい開口を規定するように切断されている、請求項101に記載の装置。
【請求項105】
前記フレームの前記遠位円錐部の遠位部分内の前記編組上に血栓が形成されるのを防止するため、前記編組は前記フレームの前記遠位円錐部の前記遠位部分に沿って覆われ、前記覆われた編組は1つ以上の大きい開口を規定するように切断されている、請求項101に記載の装置。
【請求項106】
前記覆われた編組から前記フレームの全周にわたって開口が切断されて、前記覆われた編組が、前記フレームの前記遠位円錐部の前記遠位部分の全周にわたって延出する開口を規定するようになっている、請求項105に記載の装置。
【請求項107】
前記開口は、前記フレームの前記遠位円錐部の遠位端まで延出するように切断されて、単一の開口が前記フレームの全周にわたって前記フレームの前記遠位円錐部の前記遠位端まで延出するようになっている、請求項106に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、
2021年3月9日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/158,708号、及び
2021年10月11日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/254,321号に優先権を主張する。
上記で参照した米国仮出願のそれぞれは、援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明のいくつかの用途は、一般に、医療機器に関する。具体的には、本発明のいくつかの用途は、心室補助装置及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心室補助装置は、心拍出量を維持又は増強するため心室を補助及び除荷するように設計された循環補助機械装置である。これらの装置は、心不全に苦しむ患者、及び経皮的冠動脈形成術の際に心臓機能の低下のリスクがある患者に使用される。最も一般的に、左心室補助装置は、左心室機能を補助するために欠陥のある心臓に適用される。場合によっては、右心室機能を補助するために右心室補助装置が使用される。このような心室補助装置は、カテーテルに恒久的に埋め込まれるか、又は一時的に配置するため取り付けられるように設計される。
【発明の概要】
【0004】
本発明のいくつかの用途によれば、左心室補助装置は、インペラ及びこのインペラの周りに配置されたフレームを含む。フレームは、フレームの近位端にストラット接合部(strut junction)を含む。ストラット接合部は、左心室補助装置の組み立て中、フレーム内へのインペラの挿入を容易にするため、開いた状態に維持されるよう構成されている。フレーム内へのインペラの挿入の後、固定要素がストラット接合部を閉じた状態に保つ。ポンプ出口管は、フレームの遠位端まで延出し、対象の左心室からポンプ出口管内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口を規定する。
【0005】
いくつかの用途(図示せず)では、ポンプ出口管は2つ~4つの横方向血液流入口を規定する。典型的に、そのような用途では、血液流入口の各々は、20平方ミリメートル超(例えば30平方ミリメートル超)、及び/又は60平方ミリメートル未満(例えば50平方ミリメートル未満)の面積、例えば、20~60平方ミリメートル又は30~50平方ミリメートルの面積を規定する。代替的に又は追加的に、出口管は、より多くの、より小さい血液流入口108を規定する。例えば、10超の血液流入口、50超の血液流入口、100超の血液流入口、又は150超の血液流入口、例えば、50~100の血液流入口、100~150の血液流入口、又は150~200の血液流入口を規定する。いくつかのこのような用途において、血液流入口は、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさを有する。通常、そのような用途では、ポンプ出口管の遠位円錐部(血液流入口を規定する)は、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)がフレーム内へ進入してインペラ及び/又は軸方向シャフトによって損傷を受けるリスク及び/又は左心室補助装置に損傷を与えるリスクを低減するように構成されている。
【0006】
通常、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分(例えばポンプ出口管の遠位円錐部)は、40パーセント超の多孔度を有し、例えば50パーセント超、又は60パーセント超の多孔度を有する(多孔度は、血流に対して浸透性である(porous)この部分の面積の百分率として定義される)。従って、一方では、血液流入口は比較的小さい(左心室からの構造がフレームに侵入するのを防ぐため)が、他方では、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分の多孔度は比較的高く、ポンプ出口管内への充分な血流を可能とするようになっている。
【0007】
いくつかの用途において、各血液流入口は円形又は多角形の形状を有する。いくつかの用途において、各血液流入口は六角形の形状を有する。通常、六角形の形状を有する開口部を用いると、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分が、(例えば上述のような)比較的高い多孔度を有すると同時に、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分で、血液流入口間に充分な材料を与えて、材料の引き裂き及び/又は伸長を防止することができる。
【0008】
いくつかの用途では、ポンプ出口管(通常、血液流入口を規定する)の遠位円錐部の近位領域内の六角形(又は他の多角形)の孔間の間隙の幅は、ポンプ出口管の遠位円錐部の遠位領域内の六角形(又は他の多角形)の孔間の間隙の幅よりも大きい。典型的に、そのような用途では、ポンプ出口管の遠位円錐部の近位領域内の六角形(又は他の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離は、ポンプ出口管の遠位円錐部の遠位領域内の六角形(又は他の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離よりも小さい。(通常、そのような距離は、それぞれの大きさの多角形で取り囲まれた円の直径も表す。)更に典型的には、ポンプ出口管の遠位円錐部は、ポンプ出口管の遠位円錐部の遠位領域内では、ポンプ出口管の遠位円錐部の近位領域内よりも高い多孔度を有する。
【0009】
通常、ポンプ出口管は加熱によってフレームに結合される。いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位円錐部の近位領域内では、遠位領域内に比べて、血液流入孔間の間隙は広く、及び/又は血液流入孔は小さく、及び/又は多孔度は低い。これは、上述の加熱プロセスの間に、血液流入孔を規定する材料に生じ得る損傷(例えば引き裂き、菲薄化(thinning)、及び/又は伸長)を防止及び/又は軽減するためである。
【0010】
いくつかの用途において、左心室補助装置は、インペラを収容するフレームの内側を裏打ちする内張りを含む。いくつかの用途では、インペラによって血液が送り出される際に通過する滑らかな内面(例えば、実質的に円形の断面形状を有する滑らかな内面)を提供するため、フレームの内側に内張りが配置されている。通常、滑らかな表面を提供することにより、インペラとフレームのストラットとの間に血液が送り出される場合に比べ、被覆材料は、インペラによる血液の送り出しによって引き起こされる溶血を低減させる。いくつかの用途において、内張りは、ポリウレタン、ポリエステル、及び/又はシリコーンを含む。代替的に又は追加的に、内張りは、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び/又はポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標))を含む。
【0011】
典型的に、内張りとポンプ出口管との重なりエリアでは、内張りは滑らかな表面を形成するような形状を有し(例えば、上述のように溶血を低減するため)、ポンプ出口管はフレームのストラットと一致するような形状を有する。更に典型的には、内張りは実質的に円形の断面を有する。いくつかの用途では、内張りとポンプ出口管との重なりエリアでは、ポンプ出口管及び内張りは、例えば真空によって、接着剤によって、及び/又は、例えば以下で説明するような熱成形手順を用いて、相互に結合される。
【0012】
いくつかの用途において、ポンプ出口管と内張りは以下のように相互に及び/又はフレームに結合される。いくつかの用途では、内張りをフレームの内面に直接結合し、その後、ポンプ出口管をフレームの外側に結合する。なお、(単に内張りをポンプ出口管に結合し、これによって内張りとポンプ出口管との間にフレームを挟むのではなく)内張りをフレームの内面に直接結合することにより、通常、気泡、折り目、及びその他の、内張りによって与えられる表面の滑らかさの中断が回避される。いくつかの用途では、最初に、内張りとフレームの内面との結合を強化するようにフレームを処理する。いくつかの用途では、フレームの処理は、フレームに(例えばフレームの内面に)プラズマ処理を行うこと、フレーム及び内張りが作製される材料のそれぞれに結合するよう構成された少なくとも2つの官能基を有する結合剤(例えばシラン溶液)にフレームを浸すこと、及び/又は、内張りが作製される材料を含有する溶液(例えばポリウレタン溶液)にフレームを浸すことを含む。いくつかの用途では、この後、ケージの中央円筒部に、内張りが作製される材料を含有する溶液(例えばポリウレタン溶液)をスプレーする。一度フレームの内面が処理されたら、フレームの中央円筒部の内面に(例えばフレームの中央円筒部の内面に)内張りを結合する。典型的に、マンドレル上に内張り(管の形状を有する)を配置し、内張り上にフレームを配置し、熱収縮プロセスによって圧力を加える。更に典型的には、内張りとフレームのアセンブリをオーブンで加熱する。
【0013】
内張りをフレームに結合した後、フレームの外側の周りにポンプ出口管の一部を配置する。通常、フレームは、マンドレルを用いてフレームの内側から加熱される。通常、フレームを加熱している間、ポンプ出口管をフレームのストラットの形状と一致させるため、外側管(典型的にはシリコーンで作製される)が、ポンプ出口管を半径方向内側へ押す圧力をポンプ出口管に加える。いくつかの用途では、この段階において、内張り内部に配置されて内張りを加熱するマンドレルは、内張りの長さよりも短い。マンドレルは通常、内張りの各端部でマンドレルの外側にマージンが残るように内張り内に配置される。通常、内張りは、マンドレルの加熱によってポンプ出口管が過熱して損傷を受けることから保護するための遮蔽物として作用する。上述のようにマンドレル上に内張りを配置することで、マンドレルがフレーム及び/又はポンプ出口管と直接接触するのを防ぐ。いくつかの用途では、この後、フレーム、内張り、及びフレームの周りに配置されたポンプ出口管の部分の組み合わせは、当技術分野において既知の形状設定技法を用いて、所望の形状及び寸法に形状設定される。
【0014】
通常、ポンプ出口管(又は異なるタイプのポンプ入口防護部)は、ポンプ出口管から遠位に延出する結合部(例えば図示のような管状結合部)を含む。いくつかの用途において、結合部は、ポンプ出口管の遠位端を固定するため、フレームに対して遠位の表面に結合される。いくつかの用途において、結合部は、(例えば結合部の遠位端の近くに)孔を規定する。いくつかの用途では、この孔を介して、結合部と表面との間に接着剤を塗布する。いくつかの用途では、表面にねじ山が形成されている。通常、ねじ山が形成された表面によって、結合部と表面との間で接着剤を徐々に均一に広げることができる。更に典型的には、結合部を通して接着剤の広がりが見えるように、結合部は透明である。従って、いくつかの用途では、一度、結合部と表面との間に接着剤が充分に広がったら(一度、表面が接着剤で覆われたら)、接着剤の塗布を終了する。
【0015】
いくつかの用途では、左心室補助装置は遠位端に保護編組を含む。いくつかの用途では、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)がフレーム内へ進入してインペラ及び/又は軸方向シャフトによって損傷を受けるリスク及び/又は左心室補助装置に損傷を与えるリスクを低減するため、フレームの遠位円錐部は(内側又は外側が)保護編組で覆われている。通常、フレームの円筒部の少なくとも一部内で、編組はポンプ出口管と内張りとの間に埋め込まれ、フレームの圧着(crimping)中にポンプ出口管と内張りによって圧着されることで、ポンプ出口管及び/又は内張りに対する動きが防止されるようになっている。
【0016】
一般に、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「近位」及びそれに関連する用語は、装置又はその一部に関して使用される場合、装置又はその一部の端部であって、通常、対象体に装置が挿入されたときの対象体に挿入される位置に近い端部を意味すると解釈される。「遠位」及びそれに関連する用語は、装置又はその一部に関して使用される場合、装置又はその一部の端部であって、通常、対象体に装置が挿入されたときの対象体に挿入される位置から遠い端部を意味すると解釈される。
【0017】
本発明の範囲は、左心室及び大動脈以外の解剖学的位置で本明細書に記載の装置及び方法を使用することを含む。従って、心室補助装置及び/又はその一部は、本明細書において(明細書及び特許請求の範囲において)、血液ポンプと呼ばれることがある。
【0018】
従って、本発明のいくつかの用途によれば、装置が提供される。この装置は、
左心室補助装置であって、
対象の左心室内に配置され、回転によって対象の左心室から大動脈へ血液を送り込むように構成されたインペラと、
インペラの周りに配置され、近位端に複数のストラット接合部を含むフレームであって、ストラット接合部は、左心室補助装置の組み立て中、フレーム内へのインペラの挿入を容易にするため、開いた状態に維持されるよう構成されている、フレームと、
フレーム内へのインペラの挿入の後、ストラット接合部を閉じた状態に保つように構成された固定要素と、
対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管であって、ポンプ出口管の近位部が対象の大動脈内に配置されると共にポンプ出口管の遠位部が対象の左心室内に配置されるようになっており、ポンプ出口管の遠位部は、フレームの遠位端まで延出すると共に、対象の左心室からポンプ出口管内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口を規定する、ポンプ出口管と、
を含む左心室補助装置を備える。
【0019】
いくつかの用途において、固定要素はリングを含む。
【0020】
いくつかの用途において、左心室補助装置はフレームに対して遠位の部分を含み、ポンプ出口管は更に結合部を含み、結合部は、フレームから遠位に延出し、フレームに対して遠位の左心室補助装置の部分に結合されている。
【0021】
いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさを有する、10より多い血液流入口を規定する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさを有する、50より多い血液流入口を規定する。
【0022】
いくつかの用途において、左心室補助装置は更に、
フレームの近位端で近位軸受部筐体内に配置された近位半径方向軸受部と、
フレームの遠位端で遠位軸受部筐体内に配置された遠位半径方向軸受部と、
軸方向シャフトであって、インペラは軸方向シャフトの上に配置されており、近位半径方向軸受部及び遠位半径方向軸受部を貫通する軸方向シャフトと、
を含み、固定要素は、近位軸受部筐体の外面の周りでストラット接合部を閉じた状態に保持するよう構成されている。
【0023】
いくつかの用途において、ポンプ出口管は更に結合部を含み、結合部は、フレームから遠位に延出し、遠位軸受部筐体に結合されている。いくつかの用途において、フレームの遠位端は遠位軸受部筐体の外面に結合されている。いくつかの用途において、左心室補助装置は遠位先端要素を更に含み、遠位先端要素は遠位軸受部筐体に結合されている。
【0024】
いくつかの用途において、近位軸受部筐体の外面は、ストラット接合部を受容するような形状の溝を規定する。いくつかの用途において、ストラット接合部は幅広ヘッドを規定し、溝はストラット接合部の幅広ヘッドと一致するような形状を有する。
【0025】
いくつかの用途において、近位及び遠位半径方向軸受部はセラミック材料で作製され、近位及び遠位軸受部筐体は、所望の形状に成形することができる第2の材料で作製される。いくつかの用途において、近位及び遠位軸受部筐体は金属及び/又は合金で作製される。いくつかの用途において、軸方向シャフトは金属及び/又は合金を含み、軸方向シャフトは、左心室補助装置の動作中に近位及び遠位軸受部のいずれかと接触する軸方向シャフトの領域に沿ってセラミックスリーブで覆われている。
【0026】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、左心室補助装置を製造する方法が提供される。この方法は、
フレームを形成することであって、フレームが遠位端で閉じるように、かつ、フレームの近位端における複数のストラット接合部が開いた状態に維持されるように、フレームを形成することと、
フレームにポンプ出口管を結合して、ポンプ出口管の遠位部が、フレームの遠位端まで延出すると共に、対象の左心室からポンプ出口管内への血流を可能とするように構成された1つ以上の横方向血液流入口を規定することであって、ポンプ出口管は対象の大動脈弁を横断するように構成され、ポンプ出口管の近位部が対象の大動脈内に配置されると共にポンプ出口管の遠位部が対象の左心室内に配置されるようになっている、フレームにポンプ出口管を結合することと、
ポンプ出口管を通して回転によって血液を送り込むように構成されたインペラを、フレームの近位端を介してフレーム内に挿入することと、
次いで、フレームの近位端でストラット接合部を閉じ、固定要素を用いてストラット接合部を閉じた状態に維持することと、
を含む。
【0027】
いくつかの用途において、ポンプ出口管は、フレームから遠位に延出するように構成された結合部を更に含み、方法は更に、フレームに対して遠位の左心室補助装置の部分に結合部を結合することを含む。
【0028】
いくつかの用途において、固定要素はリングを含み、固定要素を用いてストラット接合部を閉じた状態に維持することは、リングを用いてストラット接合部を閉じた状態に維持することを含む。
【0029】
いくつかの用途において、左心室補助装置は更に、
フレームの近位端で近位軸受部筐体内に配置された近位半径方向軸受部と、
フレームの遠位端で遠位軸受部筐体内に配置された遠位半径方向軸受部と、
軸方向シャフトであって、インペラは軸方向シャフトの上に配置されており、近位半径方向軸受部及び遠位半径方向軸受部を貫通する軸方向シャフトと、
を含み、固定要素を用いてストラット接合部を閉じた状態に維持することは、近位軸受部筐体の外面の周りでストラット接合部を閉じた状態に保持することによってストラット接合部を閉じた状態に維持することを含む。
【0030】
いくつかの用途において、ポンプ出口管は、フレームから遠位に延出するように構成された結合部を更に含み、方法は更に、結合部を遠位軸受部筐体に結合することを含む。いくつかの用途において、方法は、フレームの遠位端を遠位軸受部筐体の外面に結合することを更に含む。いくつかの用途において、方法は、遠位軸受部筐体に遠位先端要素を結合することを更に含む。
【0031】
いくつかの用途において、近位軸受部筐体の外面は、ストラット接合部を受容するような形状の溝を規定し、近位軸受部筐体の外面の周りでストラット接合部を閉じた状態に保持することは、近位軸受部筐体の外面によって規定された溝内にストラット接合部を保持することを含む。いくつかの用途において、ストラット接合部は幅広ヘッドを規定し、近位軸受部筐体の外面によって規定された溝内にストラット接合部を保持することは、ストラット接合部の幅広ヘッドと一致するような形状の溝内にストラット接合部を保持することを含む。
【0032】
いくつかの用途において、近位及び遠位半径方向軸受部はセラミック材料で作製され、近位及び遠位軸受部筐体は、所望の形状に成形することができる第2の材料で作製される。いくつかの用途において、近位及び遠位軸受部筐体は金属及び/又は合金で作製される。いくつかの用途において、軸方向シャフトは金属及び/又は合金を含み、方法は、左心室補助装置の動作中に近位及び遠位軸受部のいずれかと接触する軸方向シャフトの領域に沿って軸方向シャフトをセラミックスリーブで覆うことを更に含む。
【0033】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、装置が提供される。この装置は、
左心室補助装置であって、
対象の左心室内に配置され、回転によって対象の左心室から大動脈へ血液を送り込むように構成されたインペラと、
インペラの周りに配置されたフレームと、
対象の大動脈弁を横断するように構成されたポンプ出口管であって、ポンプ出口管の近位部が対象の大動脈内に配置されると共にポンプ出口管の遠位部が対象の左心室内に配置されるようになっている、ポンプ出口管と、
を含む左心室補助装置を備え、ポンプ出口管の遠位部は、フレームの遠位端まで延出すると共に、a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさを有する10より多い血液流入口を規定し、
血液流入口を規定するポンプ出口管の遠位部の多孔度は、ポンプ出口管の遠位部の近位領域内では、近位領域に対して遠位のポンプ出口管の遠位部の遠位領域内よりも低い。
【0034】
いくつかの用途において、血液流入口の各々は、少なくとも1つの方向における血液流入口の幅が1mm未満であるような形状を有する。
【0035】
いくつかの用途において、遠位領域内のポンプ出口管の遠位部の多孔度と近位領域内のポンプ出口管の遠位部の多孔度との比は4:3より大きい。
【0036】
いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位部の異なる領域における様々な血流ダイナミクスに対応するように、ポンプ出口管の遠位部の多孔度は近位領域と遠位領域とで変動する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は円錐形であり、遠位円錐部の長さに沿った形状の変化に対応するように、ポンプ出口管の遠位部の多孔度は近位領域と遠位領域とで変動する。
【0037】
いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位部の遠位領域に沿って、ポンプ出口管は大きい血液流入口を規定し、これらの大きい血液流入口は、ポンプ出口管の遠位円錐部の遠位領域に沿った血液流入口がより小さい場合に比べて血栓のリスクを軽減するように構成されている。
【0038】
いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさを有する50より多い血液流入口を規定する。
【0039】
いくつかの用途において、血液流入口は矩形であり、血液流入口の各々の長さと幅の比が1.1:1~4:1であるような形状を有する。いくつかの用途において、血液流入口は矩形であり、血液流入口の各々の長さと幅の比が3:2~5:2であるような形状を有する。
【0040】
いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は40パーセント超の多孔度を有する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は50パーセント超の多孔度を有する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部は60パーセント超の多孔度を有する。
【0041】
いくつかの用途において、フレームは中央円筒部及び遠位円錐部を規定し、血液流入口を規定するポンプ出口管の遠位部は円錐形であると共にフレームの遠位円錐部の上に配置され、ポンプ出口管の遠位部に対して近位のポンプ出口管の部分はフレームの中央円筒部に結合されている。
【0042】
いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部に対して近位のポンプ出口管の部分は加熱によってフレームの中央円筒部に結合されており、多孔度はポンプ出口管の遠位部の近位領域内の方が低いので、ポンプ出口管の遠位部の近位領域内の多孔度の方が高い場合に比べ、加熱中にポンプ出口管の遠位部の近位領域内の血液流入孔を規定する材料において生じ得る損傷が軽減されるようになっている。
【0043】
いくつかの用途において、装置は、フレームの中央円筒部の内面に結合された内張りを更に含み、内張りはフレームの中央円筒部に滑らかな内面を提供するようになっている。
【0044】
いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部の近位領域は0.5~2mmの長さに沿って延出する。
【0045】
いくつかの用途において、血液流入口は多角形の形状を有する。いくつかの用途において、血液流入口は六角形の形状を有する。
【0046】
いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部の近位領域内で、血液流入口の各々が取り囲む円の直径は0.1~0.6mmである。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部の近位領域内で、隣接する血液流入口の間の間隙の幅は0.05~0.2mmである。
【0047】
いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部の遠位領域内で、血液流入口の各々が取り囲む円の直径は0.2~0.8mmである。いくつかの用途において、ポンプ出口管の遠位部の遠位領域内で、隣接する血液流入口の間の間隙の幅は0.01mm~0.1mmである。
【0048】
いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位部の遠位領域内における血液流入口の各々で取り囲まれた円の直径とポンプ出口管の遠位部の近位領域内における血液流入口の各々で取り囲まれた円の直径との比は7:6より大きい。いくつかの用途では、ポンプ出口管の近位部の近位領域内における隣接する血液流入口の間の間隙の幅とポンプ出口管の遠位部の遠位領域内における隣接する血液流入口の間の間隙の幅との比は3:2より大きい。
【0049】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、方法が提供される。この方法は、
血液ポンプのインペラのための筐体を製造することであって、
フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理し、
次いで、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合し、フレームの中央円筒部は概ね円筒形の形状を規定するストラットを含み、
フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合した後、
内張りの内側にマンドレルを配置し、
フレームの少なくとも一部の周りに、少なくとも1つの血液流出口を規定する近位部を含む細長い管の一部を配置し、
フレームの少なくとも一部の周りに細長い管の一部が配置されている間に、マンドレルを介して、内張り、フレーム、及び細長い管の一部を加熱し、
内張り、フレーム、及び細長い管の一部を加熱している間に、細長い管の一部をフレームと結合させるように、細長い管の一部の外側から圧力を加える、
ことによって、血液ポンプのインペラのための筐体を製造することを含む。
【0050】
いくつかの用途において、フレームの中央円筒部のストラットはセルを規定し、セルは、フレームの半径方向に拘束されない構成において、フレームの中央円筒部の円周に沿って測定されたフレームの中央円筒部内のセルの各々の幅が2mm未満であるように構成されている。
【0051】
いくつかの用途において、内張り、フレーム、及び細長い管の一部を加熱している間に、細長い管の一部の外側から圧力を加えることは、細長い管の一部をフレームのストラットの構造と一致させることを含む。
【0052】
いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することは、内張りが実質的に円形の断面を有するように、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することを含む。いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することは、内張りが、内張りを結合するフレームの中央円筒部の一部に滑らかな内面を提供するように、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することを含む。
【0053】
いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することは、気泡、折り目、及びその他の、内張りによって与えられる表面の滑らかさの中断を回避することを含む。
【0054】
いくつかの用途において、フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理することは、フレームにプラズマ処理を行うことを含む。
【0055】
いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することは、
マンドレル上に内張りを配置することと、
内張り上にフレームを配置することと、
熱収縮プロセスによって圧力を加えることと、
を含む。
【0056】
いくつかの用途において、フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理することは、内張りが作製される材料を含有する溶液にフレームを浸すことを含む。いくつかの用途において、内張りはポリウレタンを含み、フレームを溶液に浸すことはフレームをポリウレタン溶液に浸すことを含む。
【0057】
いくつかの用途において、フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理することは、フレームの中央円筒部の一部の内面に、内張りが作製される材料を含有する溶液をスプレーすることを含む。いくつかの用途において、内張りはポリウレタンを含み、フレームの中央円筒部の一部の内面にスプレーすることは、フレームの中央円筒部の一部の内面にポリウレタン溶液をスプレーすることを含む。
【0058】
いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合した後、内張りの内側にマンドレルを配置することは、内張りの内側に内張りの長さよりも短いマンドレルを配置することを含む。いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合した後、内張りの内側にマンドレルを配置することは、内張りの各端部でマンドレルの外側にマージンが残るように内張り内にマンドレルを配置することを含む。いくつかの用途において、内張りの各端部でマンドレルの外側にマージンが残るように内張り内にマンドレルを配置することは、マンドレルがフレーム又はポンプ出口管と直接接触するのを防ぎ、これにより、マンドレルの加熱によってポンプ出口管が過熱して損傷を受けることから保護することを含む。
【0059】
いくつかの用途において、フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理することは、フレーム及び内張りが作製される材料のそれぞれに結合するよう構成された少なくとも2つの官能基を有する結合剤にフレームを浸すことを含む。いくつかの用途において、内張りはポリウレタンを含み、フレームを結合剤に浸すことはフレームを結合剤に浸すことを含み、フレームをシラン溶液に浸すことを含む。
【0060】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、方法が提供される。この方法は、
血液ポンプのインペラのための筐体を製造することであって、
内張りの周りにフレームの中央円筒部が配置された状態で、内張りの内側にマンドレルを配置し、フレームの中央円筒部は概ね円筒形の形状を規定するストラットを含み、
マンドレルは内張りの長さより短く、
フレームの少なくとも一部の周りに、少なくとも1つの血液流出口を規定する近位部を含む細長い管の一部を配置し、
フレームの少なくとも一部の周りに細長い管の一部が配置されている間に、マンドレルを介して、内張り、フレーム、及び細長い管の一部を加熱し、
内張り、フレーム、及び細長い管の一部を加熱している間に、細長い管の一部をフレームと結合させるように、細長い管の一部の外側から圧力を加える、
ことによって、血液ポンプのインペラのための筐体を製造することを含む。
【0061】
いくつかの用途において、フレームの中央円筒部のストラットはセルを規定し、セルは、フレームの半径方向に拘束されない構成において、フレームの中央円筒部の円周に沿って測定されたフレームの中央円筒部内のセルの各々の幅が2mm未満であるように構成されている。
【0062】
いくつかの用途において、内張り、フレーム、及び細長い管の一部を加熱している間に、細長い管の一部の外側から圧力を加えることは、細長い管の一部をフレームのストラットの構造と一致させることを含む。
【0063】
いくつかの用途において、内張りの内側にマンドレルを配置することは、内張りの各端部でマンドレルの外側にマージンが残るように内張り内にマンドレルを配置することを含む。いくつかの用途において、内張りの各端部でマンドレルの外側にマージンが残るように内張り内にマンドレルを配置することは、マンドレルがフレーム又はポンプ出口管と直接接触するのを防ぎ、これにより、マンドレルの加熱によってポンプ出口管が過熱して損傷を受けることから保護することを含む。
【0064】
いくつかの用途において、方法は、内張りの内側にマンドレルを配置するよりも前に、
フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理することと、
フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することと、
を更に含む。
【0065】
いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することは、内張りが実質的に円形の断面を有するように、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することを含む。いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することは、内張りが、内張りを結合するフレームの中央円筒部の一部に滑らかな内面を提供するように、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することを含む。
【0066】
いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することは、気泡、折り目、及びその他の、内張りによって与えられる表面の滑らかさの中断を回避することを含む。
【0067】
いくつかの用途において、フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理することは、フレームにプラズマ処理を行うことを含む。
【0068】
いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の少なくとも一部に沿ってフレームの内面に内張りを結合することは、
マンドレル上に内張りを配置することと、
内張り上にフレームを配置することと、
熱収縮プロセスによって圧力を加えることと、
を含む。
【0069】
いくつかの用途において、フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理することは、内張りが作製される材料を含有する溶液にフレームを浸すことを含む。いくつかの用途において、内張りはポリウレタンを含み、フレームを溶液に浸すことはフレームをポリウレタン溶液に浸すことを含む。
【0070】
いくつかの用途において、フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理することは、フレームの中央円筒部の一部の内面に、内張りが作製される材料を含有する溶液をスプレーすることを含む。いくつかの用途において、内張りはポリウレタンを含み、フレームの中央円筒部の一部の内面にスプレーすることは、フレームの中央円筒部の一部の内面にポリウレタン溶液をスプレーすることを含む。
【0071】
いくつかの用途において、フレームの内面と内張りとの間の結合を強化するためにフレームを処理することは、フレーム及び内張りが作製される材料のそれぞれに結合するよう構成された少なくとも2つの官能基を有する結合剤にフレームを浸すことを含む。いくつかの用途において、内張りはポリウレタンを含み、フレームを結合剤に浸すことはフレームを結合剤に浸すことを含み、フレームをシラン溶液に浸すことを含む。
【0072】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、装置が提供される。この装置は、
左心室補助装置であって、
対象の左心室内に配置され、回転によって対象の左心室から大動脈へ血液を送り込むように構成されたインペラと、
インペラの周りに配置され、遠位円錐部を規定するフレームと、
フレームに対して遠位に配置された表面と、
フレームの遠位円錐部上に配置された入口防護部であって、
(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの血液流入口を規定する入口防護部と、
フレームに対して遠位に配置された表面に結合されるよう構成された遠位結合部であって、遠位結合部とフレームに対して遠位に配置された表面との間の接着剤の塗布を容易にするよう構成された孔を規定する遠位結合部と、
を含む左心室補助装置を含む。
【0073】
いくつかの用途において、入口防護部はポンプ出口管の遠位部を含み、ポンプ出口管は、対象の大動脈弁を横断するように構成されて、ポンプ出口管の近位部が対象の大動脈内に配置されると共にポンプ出口管の遠位部が対象の左心室内に配置されるようになっている。
【0074】
いくつかの用途において、フレームに対して遠位に配置された表面は、表面と結合部との間の結合を強化するように細長い隆起が形成されている。いくつかの用途において、フレームに対して遠位に配置された表面は、結合部と表面との間で接着剤を徐々に均一に広げることができるように、ねじ山が形成されている。
【0075】
いくつかの用途において、結合部は管状である。いくつかの用途において、結合部と表面との間の接着剤の広がりが見えるように結合部は透明である。
【0076】
いくつかの用途において、左心室補助装置は更に、
フレームの近位端で近位軸受部筐体内に配置された近位半径方向軸受部と、
フレームの遠位端で遠位軸受部筐体内に配置された遠位半径方向軸受部と、
軸方向シャフトであって、インペラは軸方向シャフトの上に配置されており、近位半径方向軸受部及び遠位半径方向軸受部を貫通する軸方向シャフトと、
を含み、遠位結合部が結合される表面は、遠位軸受部筐体の外面の少なくとも一部を含む。
【0077】
いくつかの用途において、フレームの遠位端は遠位軸受部筐体の外面の別の部分に結合されている。いくつかの用途において、左心室補助装置は遠位先端要素を更に含み、遠位先端要素は遠位軸受部筐体の外面の別の部分に結合されている。
【0078】
いくつかの用途において、フレームの近位端は近位軸受部筐体の外面に結合されている。いくつかの用途において、フレームは、フレームの近位端に複数のストラット接合部を含み、ストラット接合部は、左心室補助装置の組み立て中、フレーム内へのインペラの挿入を容易にするため、開いた状態に維持されるよう構成され、フレームの近位端は、近位軸受部筐体の外面の周りでストラット接合部を閉じた状態に保持する固定要素によって近位軸受部筐体の外面に結合されている。
【0079】
いくつかの用途において、近位及び遠位半径方向軸受部はセラミック材料で作製され、近位及び遠位軸受部筐体は、所望の形状に成形することができる第2の材料で作製される。いくつかの用途において、近位及び遠位軸受部筐体は金属及び/又は合金で作製される。いくつかの用途において、軸方向シャフトは金属及び/又は合金を含み、軸方向シャフトは、左心室補助装置の動作中に近位及び遠位軸受部のいずれかと接触する軸方向シャフトの領域に沿ってセラミックスリーブで覆われている。
【0080】
更に、本発明のいくつかの用途によれば、装置が提供される。この装置は、
左心室補助装置であって、
複数のセルを規定するストラットを含むフレームであって、フレームの半径方向に拘束されない構成において概ね円筒形の中央部を含むように構成されたフレームと、
1つ以上の血液流出口を規定するポンプ出口管であって、ポンプ出口管の一部はフレームの外側に配置されると共にフレームの概ね円筒形の中央部に結合されて、ポンプ出口管の一部がフレームのストラットの構造と一致するようになっている、ポンプ出口管と、
フレームの概ね円筒形の部分に滑らかな内面を提供するように、フレームの概ね円筒形の中央部の内側に結合された内張りと、
少なくとも部分的にフレームの概ね円筒形の中央部の内側に配置され、管を通して、1つ以上の血液流出口から血液を送り出すように構成されたインペラと、
フレームの遠位部上に配置され、対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するように構成された保護編組と、
を含む左心室補助装置を含み、保護編組の近位端はポンプ出口管と内張りとの間に埋め込まれて、フレームの圧着中に、編組がポンプ出口管及び内張りで圧着されることにより、編組がポンプ出口管又は内張りに対して動くことを防止するようになっている。
【0081】
いくつかの用途において、編組はフレームの遠位部のストラット内に織り込まれている。
【0082】
いくつかの用途において、フレームの遠位部は円錐形であり、保護編組はフレームの遠位円錐部の端部まで延出する。
【0083】
いくつかの用途では、フレームの遠位円錐部の遠位部分内の編組上に血栓が形成されるのを防止するため、編組はフレームの遠位円錐部の遠位部分に沿って覆われている。
【0084】
いくつかの用途では、フレームの遠位円錐部の遠位部分内で、フレームの遠位円錐部の遠位部分内の編組上に血栓が形成されるのを防止するため、編組は大きい開口を規定するように開いている。いくつかの用途では、フレームの遠位円錐部の遠位部分内で、フレームの遠位円錐部の遠位部分内の編組上に血栓が形成されるのを防止するため、編組は大きい開口を規定するように切断されている。
【0085】
いくつかの用途では、フレームの遠位円錐部の遠位部分内の編組上に血栓が形成されるのを防止するため、編組はフレームの遠位円錐部の遠位部分に沿って覆われ、覆われた編組は1つ以上の大きい開口を規定するように切断されている。いくつかの用途では、覆われた編組からフレームの全周にわたって開口が切断されて、覆われた編組が、フレームの遠位円錐部の遠位部分の全周にわたって延出する開口を規定するようになっている。いくつかの用途において、開口は、フレームの遠位円錐部の遠位端まで延出するように切断されて、単一の開口がフレームの全周にわたってフレームの遠位円錐部の遠位端まで延出するようになっている。
【0086】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明と共に図面を参照して、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0087】
図1A】本発明のいくつかの用途による、遠位端が対象の左心室に配置されるように構成された心室補助装置の概略図である。
図1B】本発明のいくつかの用途による、遠位端が対象の左心室に配置されるように構成された心室補助装置の概略図である。
図1C】本発明のいくつかの用途による、遠位端が対象の左心室に配置されるように構成された心室補助装置の概略図である。
図2】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラを収容するフレームの概略図である。
図3A】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
図3B】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
図3C】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
図3D】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
図3E】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のインペラ又はその一部の概略図である。
図4】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のフレーム内に配置されたインペラの概略図である。
図5A】本発明のいくつかの用途による、半径方向に拘束されない状態における心室補助装置のインペラ及びフレームの概略図である。
図5B】本発明のいくつかの用途による、半径方向に拘束される状態における心室補助装置のインペラ及びフレームの概略図である。
図6A】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のフレームに対する心室補助装置のインペラの運動周期の各段階における心室補助装置の概略図である。
図6B】本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のフレームに対する心室補助装置のインペラの運動周期の各段階における心室補助装置の概略図である。
図7】本発明のいくつかの用途による心室補助装置のモータユニットの概略図である。
図8A】本発明のいくつかの用途による心室補助装置のモータユニットの概略図である。
図8B】本発明のいくつかの用途による心室補助装置のモータユニットの概略図である。
図9A】本発明のいくつかの用途による、インペラを収容するフレームの内側に内張りを含む心室補助装置の概略図である。
図9B】本発明のいくつかの用途による、インペラを収容するフレームの内側に内張りを含む心室補助装置の概略図である。
図10A】本発明のいくつかの用途による、遠位端に保護編組を含む心室補助装置のフレームの概略図である。
図10B】本発明のいくつかの用途による、遠位端に保護編組を含む心室補助装置のフレームの概略図である。
図10C】本発明のいくつかの用途による、遠位端に保護編組を含む心室補助装置のフレームの概略図である。
図11A】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
図11B】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
図11C】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
図11D】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
図12A】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
図12B】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
図13A】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
図13B】本発明のいくつかの用途による、遠位端に血液流入口を規定するポンプ出口管の概略図である。
図14A】本発明のいくつかの用途による、近位端に保護編組を含む心室補助装置のフレームの概略図である。
図14B】本発明のいくつかの用途による、近位端に保護編組を含む心室補助装置のフレームの概略図である。
図15】本発明のいくつかの用途による、近位端に血液流出口を規定するポンプ出口管の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
図1A図1B、及び図1Cに示される、本発明のいくつかの用途による、遠位端が対象の左心室22に配置されるように構成された心室補助装置20の概略図をここで参照する。図1Aは、制御コンソール21及びモータユニット23を含む心室補助装置システムの概要を示す。図1Bは、対象の左心室に挿入される心室補助装置を示し、図1Cは、心室補助装置のポンプヘッド部27をより詳細に示す。心室補助装置は、対象の大動脈弁26を横断するポンプ出口管24を含み、ポンプ出口管の近位端28が対象の大動脈30に配置されると共に、ポンプ出口管の遠位端32が左心室22内に配置されるようになっている。通常、ポンプ出口管24(本明細書では「血液ポンプ管」と呼ぶこともある)は細長い管であり、ポンプ出口管の軸方向長さは直径に比べて相当長い。本発明の範囲は、左心室及び大動脈以外の解剖学的位置で本明細書に記載の装置及び方法を使用することを含む。従って、心室補助装置及び/又はその一部は、本明細書において(明細書及び特許請求の範囲において)、血液ポンプと呼ばれることがある。
【0089】
いくつかの用途において、心室補助装置は、経皮的冠動脈形成術中に対象の左心室の機能を補助するために使用される。このような場合、心室補助装置は、通常、血流力学的不安定性を発症するリスクがある期間(例えば、経皮的冠動脈形成術中又はその直後)に、最大6時間(例えば最大10時間)使用される。代替的に又は追加的に、心室補助装置は、心原性ショックに苦しんでいる患者に対して、より長期間(例えば2~20日、例えば4~14日)、対象の左心室の機能を補助するために使用され、低心拍出量状態(例えば、急性心筋梗塞、心筋炎、心筋症、分娩後等)において使用される場合もある。いくつかの用途において、心室補助装置は、例えば「自己心機能回復までの橋渡し(bridge to recovery)」治療において、更に長期間(例えば、数週間又は数ヶ月)にわたって対象の左心室の機能を補助するために使用される。そのようないくつかの用途において、心室補助装置は、永久的又は半永久的に埋め込まれ、心室補助装置のインペラには、例えば、このインペラに磁気的に結合される外部アンテナを使用して経皮的に電力を供給する。
【0090】
左心室内での心室補助装置の展開のステップを示す図1Bに示されているように、通常、心室補助装置の遠位端は、ガイドワイヤ10を通して左心室にガイドされる。装置の遠位端を左心室に挿入する際に、送達カテーテル143が装置の遠位端の上に配置される。装置の遠位端が左心室に配置されると、通常、送達カテーテルは大動脈に引っ込められ、ガイドワイヤは対象体から引っ込められる。送達カテーテルを引き込むことによって、通常、以下で更に詳細に説明するように、装置の遠位端の自己拡張可能な構成要素が、半径方向に拘束されない構成をとる。通常、心室補助装置は、対象に急性治療を提供するために対象体内に挿入される。いくつかの用途では、治療が終わると、対象体から左心室装置を引き抜くために、送達カテーテルを装置の遠位端上へ前進させることにより、装置の遠位端の自己拡張可能な構成要素は半径方向に拘束される構成をとる。代替的に又は追加的に、装置の遠位端が送達カテーテル内に引っ込められることにより、装置の遠位端の自己拡張可能な構成要素は半径方向に拘束される構成をとる。
【0091】
いくつかの用途(図示せず)において、心室補助装置及び/又は送達カテーテル143は、その遠位端に超音波変換器を含み、心室補助装置は、超音波ガイダンスに基づいて対象の心室に向かって前進する。
【0092】
ここで、本発明のいくつかの用途による心室補助装置20のポンプヘッド部27をより詳細に示す図1Cを参照する。通常、インペラ50は、ポンプ出口管24の遠位部102内に配置され、回転して左心室から大動脈に血液を送り込むように構成される。通常、ポンプ出口管は、ポンプ出口管の遠位端に1つ以上の血液流入口108を規定し、これを介して、インペラの動作中に、血液が左心室からポンプ出口管へ流入する。図1Cで示されているように、いくつかの用途において、ポンプ出口管は軸方向に向かう単一の血液流入口を規定する。あるいはポンプ出口管は、以下で更に詳細に説明するように、複数の横方向血液流入口(例えば図1Bに示されている)を規定する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の近位部106は、1つ以上の血液流出口109を規定し、これを介して、インペラの動作中に、血液がポンプ出口管から上行大動脈内へ流れる。
【0093】
いくつかの用途において、通常、コンピュータプロセッサ25を含む制御コンソール21(図1Aに示される)は、インペラを回転するように駆動する。例えば、コンピュータプロセッサは、モータユニット23(図1Aに示されている)内に配置され、駆動ケーブル130(図7に示されている)を通してインペラを回転するように駆動するモータ74(図7に示されている)を制御することができる。いくつかの用途において、コンピュータプロセッサは、以下で更に詳細に説明するように、対象の生理学的パラメータ(左心室圧、心後負荷、左心室圧の変化率等)を検出し、それに応じてインペラの回転を制御するように構成される。通常、ここで説明される、コンピュータプロセッサによって行われる動作は、コンピュータプロセッサと通信する実際の物理的物品であるメモリの物理的状態を、使用するメモリの技術に応じて異なる磁気極性や電荷等を有するように変換する。コンピュータプロセッサ25は、通常、特殊目的のコンピュータを生成するためコンピュータプログラム命令でプログラムされたハードウェア装置である。例えば、ここで説明する技法を実行するようにプログラムされた場合、コンピュータプロセッサ25は、通常、特殊目的の心室補助コンピュータプロセッサ及び/又は特殊目的の血液ポンプコンピュータプロセッサとして機能する。
【0094】
いくつかの用途において、パージシステム29(図1Aに示されている)は、例えば、装置の一部を冷却するため、回転部分と固定の軸受との界面の潤滑のため、及び/又は装置の一部から破片を洗い流すために、流体(例えばグルコース溶液)が心室補助装置20の一部を通過するように駆動する。
【0095】
通常、ポンプ出口管24の遠位部102に沿って、ポンプ出口管内のインペラ50の周りにフレーム34が配置されている。フレームは典型的に、ニチノール等の形状記憶合金で作製される。いくつかの用途において、フレームの形状記憶合金は、管24の遠位部102にいかなる力も加えられていない状態で、フレーム(従って管24の遠位部102)の少なくとも一部が、略円形、楕円形、又は多角形の断面形状を有するように設定された形状を有する。略円形、楕円形、又は多角形の断面形状を有することにより、フレームは、ポンプ出口管の遠位部を開いた状態に保持するように構成される。通常、心室補助装置の動作中、ポンプ出口管の遠位部は、少なくとも部分的に左心室内に配置されるように、対象体内に配置されるよう構成されている。
【0096】
いくつかの用途において、フレームは、ポンプ出口管24の近位部106に沿って、ポンプ出口管内に配置されておらず、従って、ポンプ出口管はフレーム34によって開いた状態に支持されていない。ポンプ出口管24は、通常、血液不透過性の圧潰可能な材料で作製される。例えばポンプ出口管24は、ポリウレタン、ポリエステル、及び/又はシリコーンを含み得る。代替的に又は追加的に、ポンプ出口管は、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び/又はポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標))で作製される。いくつかの用途(図示せず)において、ポンプ出口管は、補強構造、例えば、編組ニチノール管等の編組補強構造で補強される。通常、ポンプ出口管の近位部は、その少なくとも一部が対象の上行大動脈内に置かれるように配置される構成を有する。いくつかの用途では、図1Bに示すように、ポンプ出口管の近位部は対象の大動脈弁を横断し、対象の左心室から対象の上行大動脈に到達する。
【0097】
上述の通り、ポンプ出口管は、通常、ポンプ出口管の遠位端に1つ以上の血液流入口108を規定し、これを介して、インペラの動作中に、血液が左心室からポンプ出口管へ流入する。いくつかの用途において、ポンプ出口管の近位部は、1つ以上の血液流出口109を規定し、これを介して、インペラの動作中に、血液がポンプ出口管から上行大動脈内へ流れる。通常、ポンプ出口管は、複数の血液流出口109、例えば、2つ~8つの血液流出口(例えば、2つ~4つの血液流出口)を規定する。インペラの動作中、ポンプ出口管を通る血流の圧力によって、通常、ポンプ出口管の近位部は開いた状態に維持される。いくつかの用途では、例えばインペラが誤動作した場合、ポンプ出口管の近位部の外側の圧力がポンプ出口管の近位部の内側の圧力を超えたことに応じて、ポンプ出口管の近位部は内側に潰れるように構成されている。このように、ポンプ出口管の近位部は安全弁として機能し、大動脈から左心室への逆行性血流を防止する。
【0098】
図1Cを再び参照すると、いくつかの用途において、フレーム34は、近位円錐部36、中央円筒部38、及び遠位円錐部40を規定するような形状を有する。典型的に、近位円錐部は近位に面している、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して近位に位置するような向きである。更に典型的には、遠位円錐部は遠位に面している、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して遠位に位置するような向きである。いくつかの用途では、図1Cに示されるように、ポンプ出口管24は、円筒部38の遠位端まで(又はそのわずかに近位又は遠位まで)延出し、ポンプ出口管の遠位端が軸方向に向かう単一の血液流入口108を規定するようになっている。いくつかの用途では、フレーム34の少なくとも一部内で(例えば、フレームの中央円筒部の全体又は一部に沿って)、内張り39がフレームを裏打ちする。図1Cは内張り39を含まないポンプヘッド部の実施形態を示すが、いくつかの図(例えば図4図5A図6Aから図6B図9Aから図9B図10Aから図10C図11A図11C図13A、及び図14Aから図14C)は、内張り39を含むポンプヘッド部の実施形態を示す。それぞれの用途によると、内張りは、内張りが裏打ちするフレームの一部において、ポンプ出口管24と部分的に重なるか又は完全に重なる。これについては以下で図9Aから図9Bを参照して更に詳しく説明する。
【0099】
通常、ポンプ出口管24は、円錐近位部42及び円筒中央部44を含む。典型的に、近位円錐部は近位に面している、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して近位に位置するような向きである。典型的に、血液流出口109は、少なくとも部分的に管24の近位円錐セクションに沿って延出するように、ポンプ出口管24によって規定される。そのようないくつかの用途では、図1Cに示すように、血液流出口は涙滴形である。通常、血液流出口の涙滴形の特徴と、この血液流出口が少なくとも部分的に管24の近位円錐セクションに沿って延出することが組み合わされることで、血液は、血液流出口の位置で管24の縦方向軸に実質的に平行な流線に沿って血液流出口から流出する。
【0100】
いくつかの用途(図示せず)において、ポンプ出口管24の直径は、ポンプ出口管の中央部が円錐台形状を有するように、ポンプ出口管の中央部の長さに沿って変化する。例えば、ポンプ出口管の中央部は、その近位端から遠位端まで広がってもよく、又はその近位端からその遠位端まで狭くなってもよい。いくつかの用途において、ポンプ出口管の中央部は、近位端で5~7mmの直径を有し、遠位端で8~12mmの直径を有する。
【0101】
図1Cを再度参照すると、心室補助装置は、通常、フレーム34に対して遠位に配置され、軸方向シャフト受容管126及び遠位先端部120を含む遠位先端要素107を含む。典型的に、軸方向シャフト受容管は、(以下で更に詳しく説明するように)ポンプヘッド部の軸方向シャフト92の前後運動中に、及び/又は心室補助装置の送達の際に、この軸方向シャフトの遠位部を受容するように構成されている。(通常、心室補助装置の送達の際、フレームは半径方向に拘束された構成に維持されるので、フレームに対する軸方向シャフトの配置は、心室補助装置の動作中のフレームに対する配置とは異なる位置にある。)通常、例えば図1Cで示されているように、遠位先端部120は、対象の左心室内に展開される際に湾曲形状をとるように構成されている。いくつかの用途において、遠位先端部の曲率は、心室補助装置20に非外傷性先端を提供するように構成される。代替的に又は追加的に、遠位先端要素は、左心室の壁から心室補助装置の血液流入口108を離隔するように構成される。
【0102】
図1Bの拡大部に示されているように、いくつかの用途において、ポンプ出口管24はフレームの遠位円錐部40の端部まで延出し、ポンプ出口管は複数の横方向血液流入口108を規定する。これについては以下で更に詳しく説明する。このような用途において、ポンプ出口管は典型的に、遠位に面している遠位円錐部、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して遠位に位置するような向きの遠位円錐部を規定する。いくつかのこのような用途(図示せず)では、ポンプ出口管は2つ~4つの横方向血液流入口を規定する(例えば、図示されているように4つの横方向血液流入口)。典型的に、このような用途では、血液流入口の各々は、20平方ミリメートル超(例えば30平方ミリメートル超)、及び/又は60平方ミリメートル未満(例えば50平方ミリメートル未満)の面積、例えば、20~60平方ミリメートル又は30~50平方ミリメートルの面積を規定する。代替的に又は追加的に、出口管は、より多くの、より小さい血液流入口を規定する。例えば、10超の血液流入口、50超の血液流入口、200超の血液流入口、又は400超の血液流入口、例えば、50~100の血液流入口、100~400の血液流入口、又は400~600の血液流入口を規定する。いくつかのこのような用途において、血液流入口の各々は、0.05平方ミリメートル超(例えば0.1ミリメートル超)及び/又は3平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.05~3平方ミリメートル、又は0.1~1平方ミリメートルの面積を規定する。あるいは、血液流入口の各々は、0.1平方ミリメートル超(例えば0.3ミリメートル超)及び/又は5平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.1~5平方ミリメートル、又は0.3~1平方ミリメートルの面積を規定する。
【0103】
ここで、本発明のいくつかの用途による、心室補助装置20のインペラを収容するフレーム34の概略図である図2を参照する。フレーム34は典型的に、ニチノール等の形状記憶合金で作製され、フレームの形状記憶合金は、ポンプ出口管24にいかなる力も加えられていない状態で、フレーム(従って管24)の中央部が略円形、楕円形、又は多角形の断面形状を有するように設定された形状を有する。略円形、楕円形、又は多角形の断面形状を有することにより、フレームは、管の遠位部を開いた状態に保持するように構成される。
【0104】
典型的に、フレームはストラットを含むステント状のフレームであり、これらのストラットがセルを規定する。更に典型的には、フレームはポンプ出口管24で覆われ、及び/又は図9Aから図9Bを参照して以下に説明する内張り39で覆われる。以下に説明するように、いくつかの用途において、インペラ50は、フレーム34に対して軸方向に前後運動する。通常、フレームに対するインペラの運動の過程で、インペラの最大スパンを規定するインペラの一部の位置は、フレーム34の中央円筒部38内に配置される。場合によっては、フレーム34の中央円筒部38のセルが大きすぎる場合、ポンプ出口管24及び/又は内張り39がセルの縁の間で引き伸ばされることにより、ポンプ出口管24及び/又は内張り39は円形断面を規定しなくなる。いくつかの用途において、これが、インペラの最大スパンを規定するインペラの一部が配置される領域で発生する場合、その結果として、インペラの回転周期の過程で、インペラブレードの縁と管24(及び/又は内張り)との間に一定でない間隙が上記の位置で生じる。いくつかの用途において、これは、インペラの回転周期の過程でインペラブレードの縁と管24(及び/又は内張り)との間に一定の間隙が上記の位置で生じた場合に比べ、溶血の増加につながる可能性がある。
【0105】
図2を参照すると、上の段落で説明した問題を少なくとも部分的に考慮して、フレーム34の中央円筒部38内で、フレームは多数の比較的小さなセルを規定する。通常、フレームが半径方向に拘束されない構成に配置されている場合、フレームの円筒部内の各セルの最大セル幅CW(すなわち、セルの一方側の中央接合部におけるストラットの内側の縁からセルの他方側の中央接合部におけるストラットの内側の縁までの、円筒部38の円周に沿って測定された距離)は、2mm未満、例えば1.4mm~1.6mm又は1.6~1.8mmである。セルは比較的小さいので、内張り39は、フレームの円筒部内で実質的に円形の断面を規定する。
【0106】
引き続き図2を参照し、フレームの遠位端(図の右側にある)から始めると、通常、フレームは、(a)フレームが心室補助装置の遠位軸受部筐体118H(図5Aに示されている)に結合される結合部31、(b)遠位円錐部40、(c)中央円筒部38、(d)近位円錐部36、及び(e)近位ストラット接合部33を規定する。図示のように、フレームがフレームの近位端からフレームの中心に向かって変遷する際(例えば、フレームが近位ストラット接合部33から近位円錐部36を経て中央円筒部38に変遷する際)、フレームのストラット37は、単一のストラットが2本のストラットにY字型に分岐する接合部35を通る。以下で更に詳細に説明するように、通常、フレーム34は、軸方向に伸びることによって、送達カテーテル143内で半径方向に拘束される(すなわち圧着される)構成で配置される。更に、通常、フレームが半径方向に狭まることがインペラに伝達され、インペラは、フレーム内で軸方向に伸びることによって半径方向に拘束される。いくつかの用途において、上記のように構成されたフレームのストラットは、送達カテーテル(又はフレームを圧着するように構成された他の装置)からフレームへ、軸方向に伸びることを容易に伝達し、次いで、軸方向に伸びることをインペラへ容易に伝達する。これは、各接合部35から分岐するストラットのペアが、接合部を軸として動いて(pivot)、相互に近付いて閉じるような構成になっているからである。
【0107】
引き続き図2を参照すると、心室補助装置の組み立ての際、最初に遠位結合部31が、例えばスナップフィット機構を介して遠位軸受部筐体118H(図5Aに示されている)に結合される。いくつかの用途では、フレームの近位端を介してフレーム内にインペラを配置するため、この段階では近位ストラット接合部33は依然として開いた状態に維持されている。通常、図2に示されているフレーム34のストラットは、ポンプ出口管がフレーム34の遠位端まで延出する用途で用いられる(例えば図1Bに示されている)。このような場合、フフレームの遠位端はポンプ出口管24で覆われているので、フレームの遠位端を介してインペラを挿入することはできない。心室補助装置の組み立ての際、フレームの近位端を介してインペラを挿入した後、近位ストラット接合部を閉じる。いくつかの用途では、以下で図5Aから図5Bを参照して更に詳しく説明するように、近位ストラット接合部は近位軸受部筐体116H(図5Aに示されている)の外側の周りで閉じられる。典型的に、固定要素117(例えば図5Aに示されているリング)が、近位軸受部筐体116Hの外側の周りでストラット接合部を閉じた構成に保持する。
【0108】
通常、半径方向に拘束されない構成で配置された場合、フレーム34は、全長が25mm超(例えば30mm超)、及び/又は50mm未満(例えば45mm未満)、例えば25~50mm又は30~45mmである。通常、半径方向に拘束される構成(送達カテーテル143内)で配置される場合、フレームの長さは2~5mm増加する。通常、半径方向に拘束されない構成で配置された場合、フレーム34の中央円筒部の長さは、10mm超(例えば12mm超)、及び/又は25mm未満(例えば20mm未満)、例えば10~25mm又は12~20mmである。いくつかの用途において、フレームの中央円筒部の長さとフレームの全長との比率は、1:4超、及び/又は1:2未満であり、例えば1:4~1:2である。
【0109】
ここで、本発明のいくつかの用途による、インペラ50又はその一部の概略図である図3Aから図3Eを参照する。典型的に、インペラは少なくとも1つの外側の螺旋状の細長い要素52を含み、これらは中心軸方向ばね54の周りで、これら螺旋状の細長い要素によって規定される螺旋が中心軸方向ばねと同軸になるように巻かれている。通常、インペラは、2つ以上の螺旋状の細長い要素を含む(例えば、図3Aから図3Cに示されるように3つの螺旋状の細長い要素)。いくつかの用途において、螺旋状の細長い要素及び中心軸方向ばねは、形状記憶材料、例えばニチノール等の形状記憶合金で作製されている。通常、螺旋状の細長い要素及び中心軸方向ばねのそれぞれは、それらの間に材料(例えば、ポリウレタン等のエラストマー及び/又はシリコーン)の膜56を支持する。いくつかの用途において、材料の膜は、例えばこの材料の膜を強化するため、内部に埋め込まれたニチノールの断片を含む。説明のため、図3Aにおいてインペラは材料の膜がない状態で示されている。図3B及び図3Cは、螺旋状の細長い要素とばねとの間に支持された材料を備えるインペラをそれぞれ示す図である。図3D及び図3Eは、図3B及び図3Cに示すものと同様のインペラの図であるが、以下で詳しく述べるように、図3B及び図3Cに示すものとは異なるインペラのいくつかの機構(features)を備えている。
【0110】
螺旋状の細長い要素のそれぞれは、螺旋状の細長い要素からばねに延びる膜と共に、各インペラブレードを規定する。螺旋状の細長い要素はブレードの外縁を規定し、軸方向ばねはインペラの軸を規定する。通常、材料の膜は、ばねに沿って延出すると共にばねを覆っている。いくつかの用途では、螺旋状の細長い要素の周りに、縫合糸53(例えば、図3Aから図3Cに示されるポリエステル縫合糸)が巻かれている。通常、縫合糸は、材料(典型的にはポリウレタン等のエラストマー又はシリコーンである)の膜と螺旋状の細長い要素(典型的にはニチノール等の形状記憶合金である)との間の結合を容易にするように構成される。いくつかの用途では、ばね54の周りに、縫合糸(例えばポリエステル縫合糸、図示せず)が巻かれている。通常、縫合糸は、材料(典型的にはポリウレタン等のエラストマー又はシリコーンである)の膜とばね(典型的にはニチノール等の形状記憶合金である)との間の結合を容易にするように構成される。
【0111】
通常、ばね54及び螺旋状の細長い要素52の近位端は、インペラの近位ブッシング(すなわちスリーブ軸受部)64から延出し、ばね54及び螺旋状の細長い要素52の近位端がインペラの縦方向軸から同様の半径方向距離に配置されるようになっている。同様に、通常、ばね54及び螺旋状の細長い要素52の遠位端は、インペラの遠位ブッシング58から延出し、ばね54及び螺旋状の細長い要素52の遠位端がインペラの縦方向軸から同様の半径方向距離に配置されるようになっている。螺旋状の細長い要素は通常、近位ブッシングから徐々に上昇した後、最大スパンに達し、次いで遠位ブッシングに向かって徐々に降下する。通常、螺旋状の細長い要素は長さに沿って対称的であるので、それらの長さの上昇部分はそれらの長さの下降部分に対して対称的である。通常、インペラは、内部を貫通する管腔62を規定する(図3Cに示されている)。この管腔は典型的に、ばね54、並びにインペラの近位ブッシング64及び遠位ブッシング58を貫通すると共に、これらによって規定される。
【0112】
次に、本発明のいくつかの用途による、心室補助装置20のフレーム34の内側に配置されたインペラ50の概略図である図4を参照する。いくつかの用途では、フレーム34の少なくとも一部内で(例えばフレームの中央円筒部38の全体又は一部に沿って)、内張り39がフレームを裏打ちする。それぞれの用途によると、内張りは、内張りが裏打ちするフレームの一部において、ポンプ出口管24と部分的に重なるか又は完全に重なる。これについては以下で図9Aから図9Bを参照して更に詳しく説明する。
【0113】
図4に示されるように、通常、インペラのスパンが最大である位置であっても、インペラ50の外縁と内張り39との間には間隙Gが存在する。いくつかの用途において、インペラが対象の左心室から対象の大動脈へ血液を効率的に送るためには、インペラのブレードの外縁と内張り39との間の間隙が比較的小さいことが望ましい。(なお、インペラのスパンが最大である位置であってもインペラ50の外縁と内張り39との間に比較的小さい間隙があること、及びインペラの形状によって、インペラは軸流インペラとして機能し、ポンプ出口管24の遠位端からポンプ出口管の近位端へ軸方向に血液を送り込む。)また、例えば溶血のリスクを低減するためには、インペラのブレードの外縁とフレーム34の内面との間の間隙が、フレーム34内でのインペラの回転全体にわたって維持されることが望ましい。
【0114】
いくつかの用途において、インペラ50及びフレーム34の双方が半径方向に拘束されない構成で配置されている場合、かつインペラの動作前は、インペラのスパンが最大である位置でのインペラの外縁と内張り39との間の間隙Gは、0.05mmよりも大きく(例えば0.1mmよりも大きく)、及び/又は1mm未満(例えば0.4mm未満)であり、例えば0.05~1mm、又は0.1~0.4mmである。いくつかの用途において、インペラが半径方向に拘束されない構成で配置されている場合、かつインペラの動作前は、インペラの外径が最大である位置でのインペラの外径は、7mm超(例えば8mm超)、及び/又は10mm未満(例えば9mm未満)であり、例えば7~10mm、又は8~9mmである。いくつかの用途において、フレーム34が半径方向に拘束されない構成で配置されている場合、フレーム34の内径(フレームの一方側の内張り39の内側からフレームの反対側の内張りの内側まで測定した場合)は、7.5mmよりも大きく(例えば8.5mmよりも大きく)、及び/又は10.5mm未満(例えば9.5mm未満)であり、例えば7.5~10.5mm、又は8.5~9.5mmである。いくつかの用途において、フレームが半径方向に拘束されない構成で配置されている場合、フレーム34の外径は、8mmよりも大きく(例えば9mmよりも大きく)、及び/又は13mm未満(例えば12mm未満)であり、例えば8~13mm、又は9~12mmである。
【0115】
典型的に、軸方向シャフト92は、インペラの管腔62を介してインペラ50の軸を通過する。更に典型的には、軸方向シャフトは剛性であり、例えば剛性管である。いくつかの用途において、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対する近位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにシャフトに結合され、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対してスライド可能である。例えば近位ブッシングは、例えばスナップフィット機構を介して、軸方向シャフト上に配置された結合要素65(図4に示されている)に結合することができる。(あるいは、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対する遠位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにシャフトに結合され、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対してスライド可能である。)軸方向シャフト自体は、近位半径方向軸受部116及び遠位半径方向軸受部118を介して半径方向に安定化される。次に、軸方向シャフトは、インペラによって規定される管腔62を通過することで、フレーム34の内面に対してインペラを半径方向に安定化させ、インペラの回転中に、インペラのブレードの外縁とフレーム34の内面との間の比較的小さい間隙(例えば上記のような間隙)であっても維持されるようにする。
【0116】
再び図3Aから図3Cを参照すると、いくつかの用途において、インペラは、中心軸方向ばね54から外側の螺旋状の細長い要素52へ半径方向に延出している複数の細長い要素67を含む。細長い要素は典型的には可撓性であるが、細長い要素が規定する軸に沿って実質的に伸長不可能である。更に典型的には、螺旋状の細長い要素を半径方向外側に移動させる力がインペラに作用している場合を除いて、細長い要素の各々は螺旋状の細長い要素に力を加えないように構成されており、(細長い要素がない状態では)螺旋状の細長い要素と中心軸方向ばねとの間の分離間隔は細長い要素の長さよりも大きくなる。例えば細長い要素67は、ストリング(ポリエステル、及び/又は別のポリマー、又は繊維を含む天然材料等)及び/又はワイヤ(ニチノールワイヤ、及び/又は別の合金もしくは金属で作製されたワイヤ)を含み得る。
【0117】
いくつかの用途において、細長い要素67は、螺旋状の細長い要素52(インペラブレードの外縁を規定する)を、中心軸方向ばねに対して所与の距離内に維持する。このように、細長い要素は、インペラの回転中にインペラに加わる力に起因してインペラの外縁が半径方向外側へ押しやられるのを防ぐように構成されている。細長い要素はこれによって、インペラの回転中、インペラのブレードの外縁とフレーム34の内面との間隙を維持するように構成されている。典型的には、2つ以上(例えば3つ以上)及び/又は7つ以下(例えば3つ以下)の細長い要素67がインペラで使用され、通常、細長い要素の各々は二重になっている(すなわち、中心軸方向ばね54から外側の螺旋状の細長い要素52へ半径方向に延出し、次いで螺旋状の細長い要素から中心軸方向ばねに戻ってくる)。いくつかの用途において、複数の細長い要素は1本のストリング又は1本のワイヤから形成される。細長い要素の各々は、ばねから各螺旋状の細長い要素へ延出し、次いでばねに戻ってくる。
【0118】
次に、本発明のいくつかの用途に従った、複数の細長い要素67を規定する単一の統合インペラ過拡張防止要素72を含むインペラ50の概略図である図3D及び図3Eを参照する。いくつかの用途において、インペラ過拡張防止要素72(複数の細長い要素67を規定する)は、図3Aから図3Cに示されている細長い要素67の代替案として用いられる。いくつかの用途において、要素72は、リング73と、このリングから半径方向に延出している複数の細長い要素67とを規定する。いくつかの用途では、ばね54の周りにストリング及び/又はワイヤを巻き付けるのではなく、例えば、典型的にばねの縦方向中央位置に配置されている管70の周りに置くことで、ばねの周りに要素72のリング73を配置する。次いで、螺旋状の細長い要素52の各々に、細長い要素67の各々の端部を結合する。上述のように、細長い要素67は典型的には可撓性であるが、細長い要素が規定する軸に沿って実質的に伸長可能でない。更に典型的には、細長い要素67の各々は圧縮に対して実質的に抵抗しないよう構成されている。各細長い要素67は、螺旋状の細長い要素52が半径方向外側に移動するのを防ぐ張力を螺旋状の細長い要素52に加えるよう構成されているので、(細長い要素67がない状態では)螺旋状の細長い要素52と中心軸方向ばね54との間の分離間隔は細長い要素67の長さよりも大きくなる。(細長い要素67がない状態で)螺旋状の細長い要素52を半径方向外側に移動させる力がインペラに作用している場合、インペラ過拡張防止要素はインペラの半径方向の拡張を防止するように構成されている。通常、各細長い要素67はインペラブレードの各々内に配置され、インペラブレードが半径方向に拡張するのを防止するように構成されている。いくつかの用途において、要素72は、ポリエステル、及び/又は別のポリマー、又は繊維を含む天然材料、及び/又はニチノール(又は同様の形状記憶合金)で作製される。
【0119】
なお、本発明の範囲は、図3Dから図3Eに示されているものとは異なる構成を有するインペラと共に単一の統合インペラ過拡張防止要素72を使用することを含む。例えば、単一の過拡張防止要素72は、ばね54とは異なる構成の軸方向構造を有するインペラと共に使用され得る。通常、軸方向構造が内部を貫通する管腔を規定することで、インペラは内部を貫通する管腔62を規定するようになっている。
【0120】
いくつかの用途では、以下の組み立て技法を用いてインペラを製造すると同時に、膜56の形成に用いられるエラストマー材料の、少なくとも1つの螺旋状の細長い要素に対する結合を強化する。典型的には、インペラブレードの有効エッジからの突起を生じないように、少なくとも1つの螺旋状の細長い要素に対するエラストマー材料の結合を実行する。更に典型的には、エラストマー材料が螺旋状の細長い要素の縁を丸くすることで、インペラブレードに丸い外縁を形成するように、少なくとも1つの螺旋状の細長い要素に対するエラストマー材料の結合を実行する。ニチノール等の形状記憶材料の管から、近位ブッシング64、遠位ブッシング58、及び螺旋状の細長い要素52を切断する。管の切断及び形状記憶材料の形状設定は通常、切断及び形状設定された形状記憶材料の管によって螺旋状の細長い要素及びブッシングが規定されるように行われる。いくつかの用途では、ばね54に結合する前、螺旋状の細長い要素にプラズマ処理が行われる。代替的に又は追加的に、ばね54に結合する前、螺旋状の細長い要素を結合剤でコーティングする。通常、螺旋状の細長い要素及びエラストマー材料にそれぞれ結合するよう構成された少なくとも2つの官能基を有する結合剤が選択される。例えば、n-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物であって、螺旋状の細長い要素(通常はニチノール等の合金で作製される)と結合するよう構成された第1の官能基(例えば(OH))を含有し、更に、エラストマー材料と結合するよう構成された第2の官能基(例えば(NH2))を含有するものを用いればよい。通常、結合剤中の官能基は所与の時間期間(例えば約1時間以下)だけ活性を有する。従って、この時間期間中に、螺旋状の細長い要素の周りにエラストマー材料のコーティングを塗布する。通常、このエラストマー材料のコーティングは、膜56に用いられるものと同一のエラストマー材料であるか又は同様のエラストマー材料である。例えば、膜56には、Aromatic Carbothane(商標)(例えば、Aromatic Carbothane(商標)75A)等のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンを用いることができ、コーティングは、同一のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン、又は、Pellethane(登録商標)(例えば、Pellethane(登録商標)90A)のような同様のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンとすればよい。
【0121】
上述したように、通常、ニチノール等の形状記憶材料の管から、近位ブッシング64、遠位ブッシング58、及び螺旋状の細長い要素52を切断する。いくつかの用途では、螺旋状の細長い要素52にコーティングを塗布した後、螺旋状の細長い要素にばね54を結合する。通常、ばね54は、切断及び形状設定された管に挿入されることで、少なくとも近位ブッシングから遠位ブッシングまで管の長さに沿って延出する。いくつかの用途において、ばねは、軸方向に圧縮された状態で、切断及び形状設定された管に挿入され、近位及び遠位のブッシングに半径方向の力を加えることによって、管に対して所定の位置に保持されるように構成される。代替的に又は追加的に、ばねの一部は、近位及び遠位のブッシングに溶接される。いくつかの用途において、ばねは、ニチノール等の形状記憶材料の管から切り取られる。そのようないくつかの用途において、ばねは、半径方向に拘束されない構成(通常、インペラの動作中にばねが配置される構成)に配置された場合、ばねの隣接する巻線の間に実質的に間隙がないように構成されている。
【0122】
通常、この段階で、上述したようにばねと螺旋状の細長い要素との間に過拡張防止要素72を配置して、コーティングされた螺旋状の細長い要素52、ばね54、及び過拡張防止要素72を含むアセンブリが形成されるようになっている。
【0123】
いくつかの用途では、この段階で、コーティングされた螺旋状の細長い要素52、ばね54、及び過拡張防止要素72のアセンブリに、エラストマー材料の別の層をスプレーする。通常、スプレーされるエラストマー材料は、膜56として用いられるものと同一のエラストマー材料であるか又は同様のエラストマー材料である。例えば、膜56として、Aromatic Carbothane(商標)(例えば、Aromatic Carbothane(商標)75A)等のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンを用いることができ、スプレーされる材料は、同一のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン、又は、Pellethane(登録商標)(例えば、Pellethane(登録商標)90A)のような同様のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンとすればよい。いくつかの用途では、螺旋状の細長い要素にスプレーを塗布すると、螺旋状の細長い要素の角が丸くなる。通常、螺旋状の細長い要素が角の丸い断面を有する場合、エラストマー材料は、螺旋状の細長い要素との界面において実質的に均一な厚さを有する層を形成する。いくつかの用途では、上記のような螺旋状の細長い要素にエラストマー材料のコーティングを塗布するステップによって、螺旋状の細長い要素の角が少なくとも部分的に丸くなる。
【0124】
いくつかの用途では、スプレーを塗布した後、コーティングされた螺旋状の細長い要素52、ばね54、及び過拡張防止要素72のアセンブリを、膜56を作製するエラストマーに浸す。いくつかの用途において、膜を作製する材料は、極限伸びが300パーセント超であり、例えば400パーセント超であるエラストマーである。通常、材料は比較的小さい分子量を有する。いくつかの用途において、材料のメルトフローインデックス(分子量の間接的な指標である)は少なくとも4であり、例えば少なくとも4.3である。いくつかの用途において、材料の最大抗張力は6000psi超であり、例えば7000psi超、又は7500psi超である。いくつかの用途において、材料は、例えばCarbothane(商標)等のポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンである。いくつかの用途では、Aromatic Coarbothane(商標)(例えばAromatic Coarbothane(商標)75A)が用いられる。通常、このような材料では、浸漬プロセス中に外径損失が生じないこと、耐疲労性、圧着による奇形に対する耐性、圧着中の外形損失が小さいこと、という特性のうち1つ以上が組み合わされる。続いて、材料は、例えば乾燥させることで、固化するよう硬化される。通常、この段階においてインペラは、ブッシング及びばねで規定された管腔62を通過するマンドレル上に配置され、これによって乾燥中に管腔を維持する。いくつかの用途では、膜を作製する材料が乾燥している間に、インペラを回転させる。通常、これによって、各インペラブレード内で実質的に均一な厚さを有する材料の膜の形成が容易になる。材料が乾燥した後、マンドレルは通常、管腔62から除去される。
【0125】
螺旋状の細長い要素に膜56を塗布する上記の説明によると、本発明の範囲は、膜56を作製するエラストマー材料に螺旋状の細長い要素を浸す前に、同一のエラストマー材料、異なるエラストマー材料、及び/又は介在材料の追加層を、スプレー、浸漬、又は別のコーティング方法によって螺旋状の細長い要素に塗布する任意の技法を含む。いくつかの用途において、エラストマー材料の追加層は、螺旋状の細長い要素の角を丸くするように、及び/又は螺旋状の細長い要素と材料の膜56との結合を強化するメディエータとして作用するように構成されている。いくつかの用途において、介在材料(シラン等)は、螺旋状の細長い要素と材料の膜56との結合を強化するメディエータとして作用するように構成されている。
【0126】
通常、インペラ50は、半径方向に拘束される構成で、経カテーテル的に左心室に挿入される。半径方向に拘束される構成において、螺旋状の細長い要素52と中心軸方向ばね54の双方は軸方向に伸び、半径方向に拘束される。通常、材料(例えばシリコーン及び/又はポリウレタン)の膜56は、この材料の膜を支持する螺旋状の細長い要素及び軸方向支持ばねの形状変化に一致するように形状を変化させる。通常、ばねを使用して膜の内縁を支持すると、膜の内縁が結合する大きな表面積がばねによって提供されるので、膜が壊れたり崩壊したりすることなく膜の形状を変えることができる。いくつかの用途では、例えば、剛性のシャフトを使用して膜の内縁を支持する場合に比べ、ばねを使用して膜の内縁を支持すると、ばねを軸方向に伸ばすことによってばね自体の直径を縮小できるので、インペラが半径方向に拘束され得る直径が小さくなる。
【0127】
上述の通り、いくつかの用途において、インペラ50の近位ブッシング64は、シャフトに対する近位ブッシングの軸方向位置が固定されるように軸方向シャフト92に結合され、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対してスライド可能である。いくつかの用途において、近位ブッシングは、例えばスナップフィット機構を介して、軸方向シャフト上に配置された結合要素65(図4に示されている)に結合することができる。いくつかの用途では、インペラを心室に挿入する目的で又は対象体からインペラを引き抜く目的でインペラが半径方向に拘束されると、遠位ブッシングが軸方向シャフトに沿って遠位方向にスライドすることにより、インペラは軸方向に伸びる。代替的に(図示せず)、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対する遠位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにシャフトに結合され、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対してスライド可能である。いくつかのそのような用途では、インペラを心室に挿入する目的で又は対象体からインペラを引き抜く目的でインペラが半径方向に拘束されると、近位ブッシングが軸方向シャフトに沿って近位方向にスライドすることにより、インペラは軸方向に伸びる。インペラは、対象体内で解放された後、図3Aから図3Eに示されるように、半径方向に拘束されない構成(インペラの動作中に通常インペラが配置される構成)をとる。
【0128】
ここで、本発明のいくつかの用途による、半径方向に拘束されない状態及び半径方向に拘束される状態のそれぞれにおける心室補助装置20のインペラ50及びフレーム34の概略図である図5A及び図5Bを参照する。インペラ及びフレームは、通常、インペラ及びフレームを対象体に経カテーテル挿入する際に、半径方向に拘束される状態で配置され、対象の左心室内でインペラが動作する際には、半径方向に拘束されない状態で配置される。
【0129】
図5Bに示されるように、フレーム及びインペラは、通常、送達カテーテル143によって半径方向に拘束される構成に維持される。典型的に、インペラの半径方向に拘束される構成において、インペラの全長は、15mm超(例えば20mm超)、及び/又は30mm未満(例えば25mm未満)、例えば15~30mm又は20~25mmである。更に典型的には、インペラの半径方向に拘束されない構成において、インペラの長さは、8mm超(例えば10mm超)、及び/又は18mm未満(例えば15mm未満)、例えば8~18mm又は10~15mmである。更に典型的には、(図5Bに示されるように)インペラ及びフレーム34が半径方向に拘束される構成で配置される場合、インペラの外径は2mm未満(例えば1.6mm未満)であり、フレームの外径は2.5mm未満(例えば2.1mm未満)である。
【0130】
上述の通り、通常、軸方向シャフト92は、インペラの管腔62を介して、インペラ50の軸を通過する。通常、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対する近位ブッシングの軸方向位置が固定されるように結合要素65を介してシャフトに結合され、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対してスライド可能である。(あるいは、インペラの遠位ブッシング58は、シャフトに対する遠位ブッシングの軸方向位置が固定されるようにシャフトに結合され、インペラの近位ブッシング64は、シャフトに対してスライド可能である。)軸方向シャフト自体は、近位半径方向軸受部116及び遠位半径方向軸受部118を介して半径方向に安定化される。典型的に、近位軸受部筐体116Hが近位軸受部の周りに配置されてこれを収容し、遠位軸受部筐体118Hが遠位軸受部の周りに配置されてこれを収容している。いくつかのそのような用途では、半径方向軸受部と軸受部筐体はそれぞれ異なる材料で作製される。例えば、半径方向軸受部は、セラミック等の比較的高い硬度を有する第1の材料(例えばジルコニア)で作製され、軸受部筐体は、金属又は合金等、所望の形状に成形することができる第2の材料(例えばステンレス鋼、コバルトクロム、及び/又はニチノール)で作製され得る。
【0131】
いくつかの用途において、軸方向シャフト92は、金属又はステンレス鋼のような合金で作製される。いくつかのそのような用途において、軸方向シャフトは、心室補助装置の動作中に近位及び遠位の軸受部116、118のいずれかと接触する軸方向シャフトの領域に沿って、セラミックスリーブ240(例えばジルコニアスリーブ)で覆われている。このように、軸方向シャフトと近位及び遠位の軸受部との半径方向界面は、セラミック-セラミック界面である。本明細書で更に詳しく説明されるように、通常、インペラ及び軸方向シャフトは、心室補助装置の動作中に軸方向の前後運動を行うように構成されている。従って、いくつかの用途では、近位及び遠位の各軸受部に対応する軸方向シャフトに沿った位置において、軸方向シャフトは、5mm超の長さ、例えば7mm超の長さに沿って、セラミックスリーブで覆われている。このように、軸方向シャフトの軸方向の前後運動の過程で半径方向軸受部と接触する軸方向シャフトの領域は、セラミックスリーブで覆われている。
【0132】
いくつかの用途において、近位軸受部筐体116H及び遠位軸受部筐体118Hは追加の機能を実行する。まず近位軸受部筐体を参照すると、上述したように、いくつかの用途では、近位軸受部筐体の外側の周りでフレーム34の近位ストラット接合部33が閉じている。いくつかの用途において、近位軸受部筐体の外面は、近位ストラット接合部を受容するような形状の溝を規定する。例えば図示のように、近位ストラット接合部は幅広ヘッドを有し、近位軸受部筐体の外面は、近位ストラット接合部の幅広ヘッドと一致する形状の溝を規定する。通常、固定要素117(典型的にリングを含む)が、近位軸受部筐体116Hの外側の周りでストラット接合部を閉じた構成に保持する。いくつかの用途では、心室補助装置の追加部分が近位軸受部筐体に結合されている。いくつかの用途では、駆動ケーブル130が対象体の外部から軸方向シャフト92へ延出し、軸方向シャフトに結合される。通常、駆動ケーブルは第1の外側管140内で回転する。第1の外側管140は、駆動ケーブル軸受管として機能し、対象体の外部から近位軸受部筐体へ延出する。いくつかの用途では、第1の外側管は第2の外側管142内に配置されている。第2の外側管142も、対象体の外部から近位軸受部筐体へ延出する。いくつかの用途では、第1の外側管140及び/又は第2の外側管142は、(例えば接着剤を用いて)近位軸受部筐体に結合されている。例えば、第1の外側管140は近位軸受部筐体の内面に結合し、第2の外側管142は近位軸受部筐体の外面に結合することができる。
【0133】
ここで遠位軸受部筐体118Hを参照すると、いくつかの用途において、フレーム34の遠位結合部31は、例えばスナップフィット機構を介して遠位軸受部筐体118Hの外面に結合されている。例えば、遠位軸受部筐体の最も近位の部分119の外面は、フレーム34の遠位結合部31が結合されるスナップフィット機構を含むことができる。いくつかの用途では、図5Aで示されているように、遠位軸受部118は遠位軸受部筐体の最も近位の部分119内に配置されている。上述したように、いくつかの用途において、ポンプ出口管24はフレーム34の遠位端まで延出し、横方向血液流入口108を規定する。いくつかのそのような用途では、結合部41(例えば管状結合部)がポンプ出口管から遠位に延出し、ポンプ出口管の遠位端を固定するため、遠位軸受部筐体に結合されている。いくつかの用途において、遠位軸受部筐体の中間部123は、細長い隆起又はねじ山が形成された外面を規定し、これに対してポンプ出口管の結合部41が(例えば接着剤により)結合される。いくつかの用途において、この外面は、遠位軸受部筐体とポンプ出口管の結合部41との結合を強化するために細長い隆起が形成されている。いくつかの用途では、この外面は、遠位軸受部筐体とポンプ出口管の結合部41との結合を強化するため、更に、この外面とポンプ出口管の結合部41との間の接着剤の塗布を容易にするため、ねじ山が形成されている。これについては以下で図12Bを参照して更に詳しく説明する。いくつかの用途において、遠位軸受部筐体の遠位部121は、シャフト92の遠位端が挿入される遠位先端要素107の領域(例えば軸方向シャフト受容管126又はその一部)を補強するように構成される。典型的に、遠位先端要素107は、遠位軸受部筐体の遠位部121の外面に(例えば接着剤により)結合されている。いくつかの用途では、遠位軸受部筐体の遠位部121の外面の少なくとも一部は、遠位先端要素107と遠位軸受部筐体との結合を強化するために細長い隆起及び/又はねじ山が形成されている。
【0134】
上述の通り、軸方向シャフト92は、近位半径方向軸受部116及び遠位半径方向軸受部118を介して半径方向に安定化される。次に、上述の通り、軸方向シャフトは、インペラによって規定される管腔62を通過することで、フレーム34の内面及び内張り39に対してインペラを半径方向に安定化させるので、インペラの回転中、インペラのブレードの外縁と内張り39との間の比較的小さい間隙(例えば上記のような間隙)であっても維持される。通常、インペラ自体は、半径方向軸受部やスラスト軸受部のいずれかの内部に直接配置されていない。むしろ、軸受部116及び118は、軸方向シャフトに対する半径方向軸受部として機能する。通常、ポンプヘッド部27(より一般的には心室補助装置20)は、対象体内に配置されるように構成されると共にインペラの回転によって生成されるスラストに対抗するように構成されるスラスト軸受部を含まない。いくつかの用途では、1つ以上のスラスト軸受部が対象体の外側(例えば、図1A図7、及び図8Aから図8Bに示されるモータユニット23内)に配置され、インペラの回転によって生成されるスラストに対する対抗は、対象体の外側に配置されたこの1つ以上のスラスト軸受部によってのみ提供される。いくつかの用途では、機械要素及び/又は磁気要素が、インペラを軸方向位置の所与の範囲内に維持するように構成される。例えば、駆動ケーブルの近位端(例えば対象体の外側)に配置される磁石(例えば図7を参照して以下に説明する磁石82)は、インペラに軸方向運動を与えるように、及び/又はインペラを軸方向位置の所与の範囲内に維持するように構成することができる。
【0135】
ここで、本発明のいくつかの用途による、心室補助装置のフレーム34に対する心室補助装置のインペラ50の運動周期の各段階における心室補助装置20の概略図である図6A及び図6Bを参照する。いくつかの用途では、インペラが回転することにより管24を通して血液を送り出している間、軸方向シャフト92(インペラが固定されている)は、軸方向の前後運動で移動することによって、フレーム34内でインペラを軸方向に前後移動させるように駆動される。これについては以下で図7を参照して更に詳しく説明する。代替的に又は追加的に、インペラ及び軸方向シャフトは、軸方向シャフトを軸方向の前後運動で移動するように能動的に駆動する必要なく、インペラに作用する力に応じて、フレーム34内で軸方向に前後移動するように構成される。通常、対象の心周期の過程で、左心室と大動脈との間の圧力差は、心室収縮期(以下「収縮期」)のほぼゼロから、心室拡張期(以下「拡張期」)の比較的大きな圧力差(例えば50~70mmHg)まで変化する。いくつかの用途では、拡張期にインペラの送り出しに対する圧力差が大きくなるため(また、駆動ケーブル130が伸縮可能であるため)、収縮期のフレーム34に対するインペラの位置に比べ、拡張期のインペラは、フレーム34に対して遠位方向に押される。インペラは軸方向シャフトに接続されているので、次いで軸方向シャフトは前方に移動する。収縮期には、インペラ(及び軸方向シャフト)は収縮期位置に戻る。このように、インペラ及び軸方向シャフトの軸方向の前後運動は受動的に生成される、すなわち、軸方向シャフト及びインペラのこの運動を生じるためにそれらの能動的な駆動を必要とせずに生成される。図6A及び図6Bは、上述した軸方向の前後運動周期中のフレーム34内の各位置に配置されたインペラ及び軸方向シャフトを示す。
【0136】
いくつかの用途では、軸方向の前後運動で移動することにより、近位軸受部116及び遠位軸受部118と接触している軸方向シャフトの部分は常に変化する。そのようないくつかの用途では、他の条件が等しければ、このようにして軸受部によって軸方向シャフトに加えられる摩擦力は、軸方向シャフトが軸受部に対して移動しない場合よりも軸方向シャフトのより広い領域に広がり、これにより軸方向シャフトの摩耗が低減する。代替的に又は追加的に、軸受部に対して前後運動で移動することにより、軸方向シャフトは、軸方向シャフトと軸受部との界面の血液残留物等の残留物を除去する。
【0137】
いくつかの用途において、運動周期中のインペラの最も近位の位置では、インペラの近位端はフレーム34の近位円錐セクション内にある。いくつかの用途において、運動周期中のインペラの最も遠位の位置では、インペラの遠位端はフレーム34の円筒セクションの遠位端に配置される。あるいは、運動周期中のインペラの最も遠位の位置であっても、インペラの遠位端はフレーム34の円筒セクションの遠位端に対して近位に配置される。通常、心周期全体の過程の間に、インペラのスパンが最大であるインペラのセクションは、フレーム34の円筒部内に配置される。しかしながら、インペラの近位部は通常、心周期の少なくとも一部の間にフレームの近位円錐セクション内に配置される。
【0138】
図6A及び図6Bを再度参照する。通常、遠位先端要素107は、軸方向シャフト受容管126及び遠位先端部120の双方を含む単一統合要素である。典型的に、軸方向シャフト受容管は、軸方向シャフトの軸方向の前後運動中(以下で更に詳しく説明する)、及び/又は心室補助装置の送達の際に、ポンプヘッド部の軸方向シャフト92の遠位部を受容するように構成されている。(通常、心室補助装置の送達の際、フレームは半径方向に拘束される構成に維持されるので、フレームに対する軸方向シャフトの配置は、心室補助装置の動作中のフレームに対する配置とは異なる位置にある。)いくつかの用途において、遠位先端部120は柔らかく構成されるので、対象の組織(例えば左心室の組織)に接触した場合でも、その組織を傷つけないように構成される。例えば、遠位先端部120又は遠位先端要素全体は、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び/又はポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標))で作製することができる。いくつかの用途において、遠位先端部は、内部を貫通する管腔122を規定する。そのようないくつかの用途では、心室補助装置が左心室に挿入される際、例えば既知の技法に従って、ガイドワイヤ10(図1B)が最初に左心室に挿入される。次に、ガイドワイヤを管腔122の内部に配置した状態で、ガイドワイヤ上で心室補助装置の遠位先端部を前進させることによって、遠位先端部は左心室へガイドされる。いくつかの用途では、遠位先端部120の管腔122の遠位端にダックビル弁390(又は異なるタイプの止血弁)が配置される。
【0139】
通常、心室補助装置を対象の心室に挿入する際、送達カテーテル143がインペラ50及びフレーム34の上に配置され、インペラ及びフレームを半径方向に拘束される構成に維持する。いくつかの用途では、図1Bで示されているように、送達カテーテルを対象の心室に挿入する際、遠位先端要素107は送達カテーテルから遠位に延出する。いくつかの用途では、遠位先端要素の近位端の近くに、遠位先端要素は突起110を有する。図5B(送達カテーテル143の内部に配置されたポンプヘッド部を示す)を参照すると、いくつかの用途において、心室補助装置を対象の心室に挿入する際、送達カテーテルは突起の近位側まで延出して、送達カテーテル及び突起が滑らかな連続面を形成するようになっている。突起110の遠位側はテーパ状であるので、血管系はテーパ状の直径変化に露呈されるが、送達カテーテルと遠位先端要素との界面における直径の急激な変化によって生じるエッジに露呈されないようになっている。
【0140】
いくつかの用途において、遠位先端要素107は、クエスチョンマーク又はテニスラケットの曲率と同様の全体曲率を規定し、直線近位部と、この直線近位部の縦方向軸の一方側のバルジと、を規定する。通常、上述したように、心室補助装置はガイドワイヤ上で対象の心室内へ導入される。遠位先端部120は、心室補助装置を対象の心室内へ導入する際に遠位先端部が直線状の構成に保持されるように管腔122を規定する(例えば図1Bの左側のフレームに示されている)。いくつかの用途では、ガイドワイヤが取り外されると、遠位先端部は湾曲形状をとるように構成されている。なお、図6Aから図6B(及び、他のいくつかの図)における遠位先端部の外形は、遠位先端部の遠位端(この中にダックビル弁390が配置されている)が遠位先端部のより近位の部分と交差して完全なループを規定するものとして図示されている。通常、遠位先端部は、(心室補助装置を左心室に挿入する際に)ガイドワイヤが挿入された結果、遠位先端部からガイドワイヤを取り外した後でも、部分的に直線状にされたままである。通常、遠位先端部を部分的に直線状にすることにより、遠位先端部が左心室内に配置された場合、遠位先端部に作用する外力がない状態で、遠位先端部は完全なループを規定しない。
【0141】
再び図6Aから図6Bを参照すると、いくつかの用途において、軸方向シャフト受容管126は、遠位先端要素107の遠位先端部120から近位に延出する。上述したように、通常、インペラ50の動作中に軸方向シャフトは軸方向の前後運動を行う。軸方向シャフト受容管126は、軸方向シャフトが遠位軸受部118を超えて延出した場合に軸方向シャフトを受容するように構成された管腔127を規定する。いくつかの用途では、軸方向シャフト受容管は遠位端にストッパ128を規定し、これは、軸方向シャフトがストッパを超えて前進するのを防ぐように構成されている。いくつかの用途において、ストッパは、シャフト受容管の遠位端に挿入されている(例えば埋め込まれている)剛性構成要素を含む。代替的に(図示せず)、ストッパは、軸方向シャフト受容管の管腔127と遠位先端部120の管腔122との間のショルダを含む。
【0142】
通常、インペラの正常動作中、駆動ケーブル130(図5Aに示されている)が(例えば拡張期に)最大限に伸びた場合であっても、軸方向シャフトはストッパ128と接触しない。しかしながら、心室補助装置20を対象の心室から引っ込める際に、送達カテーテルをインペラ50及びフレーム34の上で前進させる場合、ストッパ128は、軸方向シャフトが先端部内へ突き出るのを防ぐように構成されている。場合によっては、送達カテーテルをフレーム及びインペラの上で前進させる際、駆動ケーブルが切れる危険がある。そのような場合、ストッパ128が存在しなければ、軸方向シャフトは先端部内へ突き出る可能性がある。駆動ケーブルが切れた場合であっても、ストッパ128はこれが起こるのを防止する。
【0143】
なお、フレーム34の近位端において、近位半径方向軸受部116は、結合要素65の、従ってインペラ50の近位ブッシング64の、近位半径方向軸受部を超えた移動を防ぐことによって、これもストッパとして機能する。通常、インペラの正常動作中、結合要素65は近位半径方向軸受部116と接触しない。しかしながら、例えばインペラ及びフレームが送達カテーテル143の内部で半径方向に拘束される(すなわち圧着される)構成に保持される場合、近位半径方向軸受部116は、結合要素65、従ってインペラ50の近位ブッシング64が、フレーム内部から近位に移動するのを防止するように構成されている。
【0144】
通常、心室補助装置の動作中及びインペラの軸方向の前後運動周期全体を通して、インペラは遠位先端部に比較的近接して配置される。例えば、インペラの軸方向の前後運動周期全体を通して、遠位先端部までのインペラの距離は、管24の最も遠位の50パーセント内とすることができ、例えば、最も遠位の30パーセント(又は最も遠位の20パーセント)内である。
【0145】
次に、本発明のいくつかの用途による、心室補助装置20のモータユニット23の分解図の概略図である図7を参照する。いくつかの用途では、インペラ50の回転を制御する制御コンソール21(図1A)のコンピュータプロセッサ25は、軸方向シャフトの前後運動も制御するように構成される。通常、双方のタイプの運動は、モータユニット23を使用して生成される。本発明の範囲は、任意の周波数で前後運動を制御することを含む。いくつかの用途では、対象の心周期の指標を検出し(例えば対象のECGを検出することによって)、軸方向シャフトの前後運動を対象の心周期に同期させる。
【0146】
通常、モータユニット23は、駆動ケーブル130を介してインペラ50に回転運動を与えるように構成されたモータ74を含む。以下で更に詳細に説明するように、通常、モータは駆動ケーブルに磁気的に結合されている。いくつかの用途において、軸方向運動ドライバ76は、両方向矢印79で示されるように、モータを駆動して軸方向の前後運動で移動させるように構成されている。通常、モータを駆動ケーブルに磁気結合することにより、モータは駆動ケーブルに前後運動を与え、次いで駆動ケーブルはこの運動をインペラに与える。上記及び下記に説明するように、いくつかの用途では、例えば、インペラが血液を送り出すことに対する圧較差の周期的変化のため、駆動ケーブル、インペラ、及び/又は軸方向シャフトは、受動的に軸方向の前後運動を行う。通常、そのような用途では、モータユニット23は軸方向運動ドライバ76を含まない。
【0147】
いくつかの用途において、駆動ケーブルに対するモータの磁気的結合は図7に示されているようなものである。図7で示されているように、駆動磁石セット77が、駆動磁石筐体78を介してモータに結合されている。いくつかの用途において、駆動磁石筐体はリング81(例えばスチールリング)を含み、駆動磁石はリングの内面に接着されている。いくつかの用途では、図示のように、2つの駆動磁石の間でリング81の内面にスペーサ85が接着されている。駆動磁石の間に被駆動磁石82が配置され、駆動磁石と被駆動磁石とが軸方向に重なるようになっている。被駆動磁石はピン131に結合され、ピン131は被駆動磁石82の遠位端を超えて延出して、駆動ケーブル130の近位端に結合されている。例えば、被駆動磁石は円筒形であり、内部を貫通する孔を規定することができ、孔を規定する被駆動磁石の内面にピン131を接着することができる。いくつかの用途において、被駆動磁石は円筒形であり、北極と南極を含み、これらの極は、図示のように円筒形を二等分するライン83に沿って円筒形の長さに沿って相互に分割されている。いくつかの用途において、被駆動磁石は円筒形筐体87の内部に収容されている。通常、ピン131はガイドワイヤ管腔133を規定する。
【0148】
なお、図7に示す用途において、駆動磁石は被駆動磁石の外側に配置されている。しかしながら、本願の範囲は、必要な変更を加え、駆動磁石及び被駆動磁石の構成を逆にすることを含む。例えば、駆動磁石と被駆動磁石とが軸方向に重なるように駆動磁石の周囲に配置された2つ以上の被駆動磁石に、駆動ケーブルの近位端を結合してもよい。
【0149】
上述の通り、通常、パージシステム29(図1Aに示されている)が、心室補助装置20と共に使用される。通常、モータユニット23は、パージシステムと共に使用するための入口86及び出口88を含む。いくつかの用途において、パージ流体は連続的又は定期的に、入口86を介して心室補助装置内へ送り出されると共に、出口88を介して心室補助装置から排出される。
【0150】
通常、磁石82及びピン131は、モータユニット23内で軸方向に固定された位置に保持される。通常、駆動ケーブルの近位端は、ピン131に結合されることにより、ピンによって軸方向に固定された位置に保持される。通常、駆動ケーブル130はピン131から軸方向シャフト92へ延出し、これによって軸方向シャフトの、更にはインペラ50の軸方向位置を少なくとも部分的に固定する。いくつかの用途において、駆動ケーブルは多少、伸縮可能である。例えば駆動ケーブルは、伸縮可能なコイル状ワイヤで作製することができる。駆動ケーブルは通常、(駆動ケーブルが多少伸長することによって)軸方向シャフト(更にはインペラ)がある範囲の軸方向位置をとることを可能とするが、(駆動ケーブルの近位端が軸方向に固定された位置に保持されることと、駆動ケーブルの伸縮性が限定されていることによって)軸方向シャフト及びインペラの軸方向運動を特定の運動範囲内に制限する。
【0151】
上述の通り、いくつかの用途において、インペラ50及び軸方向シャフト92は、軸方向シャフトを軸方向の前後運動で移動するように能動的に駆動する必要なく、インペラに作用する力に応じて、フレーム34内で軸方向に前後移動するように構成される。通常、対象の心周期の過程で、左心室と大動脈との間の圧力差は、収縮期のほぼゼロから、拡張期の比較的大きな圧力差(例えば、50~70mmHg)まで変化する。いくつかの用途では、拡張期にインペラの送り出しに対する圧力差が大きくなるため(また、駆動ケーブルが伸縮可能であるため)、収縮期のフレーム34に対するインペラの位置に比べ、拡張期のインペラは、フレーム34に対して遠位方向に押される。次に、インペラが軸方向シャフトに接続されていることにより、軸方向シャフトは前方に移動する。収縮期には、インペラ(及び軸方向シャフト)は収縮期位置に戻る。このように、インペラ及び軸方向シャフトの軸方向の前後運動は受動的に生成される、すなわち、軸方向シャフト及びインペラのこの運動を生じるためにそれらの能動的な駆動を必要とせずに生成される。
【0152】
次に、本発明のいくつかの用途による、モータユニット23の概略図である図8A及び図8Bを参照する。一般に、図8A及び図8Bに示されているモータユニット23は図7に示されているものと同様であり、特に記載のない限り、図8A及び図8Bに示されているモータユニット23は、図7に示されているモータユニット23と同様の構成要素を含む。いくつかの用途において、モータユニットは、モータによって生成される熱を放散するように構成されたヒートシンク90を含む。代替的に又は追加的に、モータユニットは、モータによって生じる熱の放散を容易にするように構成された換気口93を含む。いくつかの用途において、モータユニットは、心室補助装置の構成要素の回転運動及び/又は軸方向の前後運動によって引き起こされるモータユニットの振動を減衰させるように構成された振動減衰部94及び96を含む。
【0153】
次に、本発明のいくつかの用途による、インペラ50を収容するフレーム34の内側を裏打ちする内張り39を含む心室補助装置20の概略図である図9A及び図9Bを参照する。いくつかの用途では、インペラによって血液が送り出される際に通過する滑らかな内面(例えば、実質的に円形の断面形状を有する滑らかな内面)を提供するため、フレーム34の内側に内張り39が配置されている。通常、滑らかな表面を提供することにより、インペラとフレーム34のストラットとの間に血液が送り出される場合に比べ、被覆材料は、インペラによる血液の送り出しによって引き起こされる溶血を低減させる。いくつかの用途において、内張りは、ポリウレタン、ポリエステル、及び/又はシリコーンを含む。代替的に又は追加的に、内張りは、ポリエチレンテレフタレート(PET)及び/又はポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標))を含む。
【0154】
通常、内張りは、フレーム34の中央円筒部38の少なくとも一部の内面上に配置される。いくつかの用途では、ポンプ出口管24もフレームの外側でフレーム34の中央円筒部38を覆っており、例えば、ポンプ出口管24及び内張り39は、内張りの長さの少なくとも50パーセントにわたって、例えば図9Aで示されているようにフレーム34の円筒部の全長にわたって、重なるようになっている。いくつかの用途では、例えば図9Bで示されているように、ポンプ出口管24と内張り39とは一部分のみが重なっている。例えば、ポンプ出口管24は、内張りの長さの50パーセント未満(例えば25パーセント未満)にわたって内張りと重なる。いくつかのそのような用途では、心室補助装置20を対象体に挿入する際、インペラをフレーム34内で遠位方向に前進させて、ポンプ出口管と内張りとの重なりエリア内にインペラが配置されないように、インペラ、ポンプ出口管24、フレーム34、及び内張り39が全て相互に重なる縦方向位置が存在しないようにする。図9A及び図9Bで示されているように、いくつかの用途では、ポンプ出口管及び/又は内張りの遠位端に、軸方向に向かう単一の血液流入口108が規定される。あるいは、内張りはフレーム34の中央円筒部38の少なくとも一部の内面上に配置され、ポンプ出口管はフレームの遠位端まで延出して複数の横方向血液流入口108を規定する。このような用途については、以下で例えば図11Aから図13Bを参照して更に詳しく説明する。
【0155】
典型的に、内張り39とポンプ出口管24との重なりエリアでは、内張りは滑らかな表面を形成するような形状を有し(例えば、上述のように溶血を低減するため)、ポンプ出口管24はフレーム34のストラットと一致するような形状を有する(例えば、図9Aの断面に示されているように)。更に典型的には、内張りは実質的に円形の断面を有する(例えば、図2を参照して上述したように、フレームの中央円筒部内のセルが比較的小さいため)。いくつかの用途では、内張り39とポンプ出口管24との重なりエリアでは、ポンプ出口管及び内張りは、例えば真空によって、接着剤によって、及び/又は、例えば以下で説明するような熱成形手順を用いて、相互に結合される。
【0156】
いくつかの用途において、内張り39及びポンプ出口管24は異なる材料で作製される。例えば、内張りをポリウレタンで作製し、ポンプ出口管をポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標))で作製することができる。通常、そのような用途では、内張りを作製する材料は、ポンプ出口管を作製する材料よりも高い熱成形温度を有する。あるいは、内張り39及びポンプ出口管24は同じ材料で作製される。例えば、内張り及びポンプ出口管の双方を、ポリウレタン又はポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標))で作製することができる。
【0157】
いくつかの用途において、ポンプ出口管と内張りは以下のように相互に及び/又はフレームに結合される。いくつかの用途では、内張りをフレームの内面に直接結合し、その後、ポンプ出口管をフレームの外側に結合する。なお、(単に内張りをポンプ出口管に結合し、これによって内張りとポンプ出口管との間にフレームを挟むのではなく)内張りをフレームの内面に直接結合することにより、通常、気泡、折り目、及びその他の、内張りによって与えられる表面の滑らかさの中断が回避される。いくつかの用途では、インペラのエラストマー膜と螺旋状の細長い要素との結合を強化するための上述したものと同様の技法を用いて、内張りとフレームの内面との結合を強化する。いくつかの用途では、最初に、内張りとフレームの内面との結合を強化するようにフレームを処理する。いくつかの用途では、フレームの処理は、フレームに(例えばフレームの内面に)プラズマ処理を行うこと、フレーム及び内張りが作製される材料のそれぞれに結合するよう構成された少なくとも2つの官能基を有する結合剤(例えばシラン溶液)にフレームを浸すこと、及び/又は、内張りが作製される材料を含有する溶液(例えばポリウレタン溶液)にフレームを浸すことを含む。いくつかの用途では、内張りはエラストマー材料(例えばポリウレタン)で作製され、結合剤はシラン溶液である。シラン溶液は例えば、n-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランの溶液であり、シランは、フレーム(典型的に、ニチノール等の合金で作製される)と結合するよう構成された第1の官能基(例えば(OH))を含有し、更に、エラストマー材料と結合するよう構成された第2の官能基(例えば(NH2))を含有する。
【0158】
いくつかの用途では、この後、ケージの中央円筒部に、内張りが作製される材料を含有する溶液(例えばポリウレタン溶液)をスプレーする。一度フレームの内面が処理されたら、フレームの中央円筒部の内面に(例えばフレームの中央円筒部の内面に)内張りを結合する。典型的には、マンドレル上に内張り(管の形状を有する)を配置し、内張り上にフレームを配置し、熱収縮プロセスによって圧力を加える。更に典型的には、内張りとフレームのアセンブリをオーブンで加熱する。
【0159】
フレームに内張りを結合した後、フレームの外側の周りにポンプ出口管24の一部を配置する。上述のように、いくつかの用途では、内張り39及びポンプ出口管24は異なる材料で作製される。例えば、内張りはポリウレタンで作製され、ポンプ出口管はポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標))で作製され得る。通常、そのような用途では、内張りを作製する材料は、ポンプ出口管を作製する材料よりも高い熱成形温度を有する。いくつかの用途では、内張りを変形させることなく、フレーム34のストラットと一致するようポンプ出口管24を成形するため、ポンプ出口管24の熱形成温度より高いが内張り39の熱形成温度より低い温度にフレームを加熱する。
【0160】
通常、フレームは、マンドレルを用いてフレームの内側から加熱される。通常、フレームを上述の温度に加熱している間、図9Aの断面図で示されるように、ポンプ出口管をフレームのストラットの形状と一致させるため、外側管(典型的にはシリコーンで作製される)が、ポンプ出口管24を半径方向内側へ押す圧力をポンプ出口管24に加える。いくつかの用途では、この段階において、内張りの内側に配置されて内張りを加熱するマンドレルは、内張りの長さよりも短い。マンドレルは通常、内張りの各端部でマンドレルの外側にマージンが残るように内張り内に配置される。通常、内張りは、マンドレルの加熱によってポンプ出口管が過熱して損傷を受けることから保護するための遮蔽物として作用する。上述のようにマンドレル上に内張りを配置することで、マンドレルがフレーム及び/又はポンプ出口管と直接接触するのを防ぐ。いくつかの用途では、この後、フレーム、内張り、及びフレームの周りに配置されたポンプ出口管24の部分の組み合わせは、当技術分野において既知の形状設定技法を用いて、所望の形状及び寸法に形状設定される。
【0161】
次に、本発明のいくつかの用途による、遠位端に保護編組150を含む心室補助装置20の一部の概略図である図10A図10B、及び図10Cを参照する。いくつかの用途では、図10Aから図10Cで示されているように、ポンプ出口管24及び内張り39はフレーム34の円筒部38の端部まで延出する。いくつかの用途では、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)がフレーム34内へ進入して、インペラ及び/又は軸方向シャフトによって損傷を受けるリスク、及び/又は左心室補助装置に損傷を与えるリスクを低減するため、フレームの遠位円錐部40は(内側又は外側が)保護編組150で覆われている。通常、フレームの円筒部の少なくとも一部内で、編組はポンプ出口管と内張りとの間に埋め込まれ、フレームの圧着中にポンプ出口管と内張りによって圧着されることで、ポンプ出口管及び/又は内張りに対する動きが防止されるようになっている。(図10Aから図10Cでは、保護編組がポンプ出口管と内張りとの間に埋め込まれている領域はポンプ出口管で覆われているので見えない。)
【0162】
いくつかの用途では、図10Aで示されているように、保護編組150は実質的にフレームの遠位円錐部の遠位端まで延出する。いくつかのそのような用途では、図10Aで示されているように、フレームの遠位円錐部の遠位部分152に沿って、編組は、血液不透過性材料154(例えばポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び/又はポリエーテルブロックアミド(例えばPEBAX(登録商標))で覆われている。通常、ポンプ出口管によって規定された血液流入口108内への血流のほとんどは、フレームの遠位円錐部の側面からのものであり、フレームの遠位円錐部の遠位端を介した軸流は比較的少ない。従って、場合によっては、この領域で停滞のリスクがある。更に、フレームが狭まっていることから、編組によって規定される孔は通常、フレームの遠位円錐部の遠位部分152内の方が小さくなる。これら双方のファクタにより、フレームの遠位円錐部の遠位部分152内で編組上に血栓が形成される可能性がある。従って、いくつかの用途では、フレームの遠位円錐部の遠位部分152内で編組上に血栓が形成されるのを防ぐため、この部分に沿って編組は覆われている。典型的に、編組は、(例えばポリウレタン等の血液不透過性エラストマー材料で)覆われている。あるいは、編組のパターンはフレームの遠位円錐部の遠位端まで延出しない。図10Bで示されているように、フレームの遠位円錐部の遠位部分152内で、編組は、大きい開口156を規定するように開口又は切断されている。
【0163】
いくつかの用途(図示せず)では、フレームの遠位円錐部の遠位部分152内で、編組は、(例えばポリウレタン等の血液不透過性エラストマー材料で)覆われ、次いで、覆われた編組から大きい開口が切断される。代替的に又は追加的に(これも図示せず)、フレームの遠位円錐部の遠位部分152内で、編組は、例えばポリウレタン等の血液不透過性エラストマー材料で)覆われ、次いで、覆われた編組からフレームの全周にわたる開口が切断されて、覆われた編組が、フレームの遠位円錐部の遠位部分152の全周に延出する開口を規定するようになっている。いくつかのそのような用途では、上述の開口は、フレームの遠位円錐部の遠位端まで延出するように、すなわち、単一の開口がフレームの全周にわたってフレームの遠位円錐部の遠位端まで延出するように、切断される。
【0164】
いくつかの用途では、図10Cで示されているように、編組は、実質的にフレームの遠位円錐部の遠位端まで延出し、フレームの遠位円錐部の遠位部分152内でも覆われていない。いくつかの用途では、図10Cの拡大図で示されているように、編組はフレーム34の遠位円錐部のストラット内に織り込まれている。
【0165】
次に、本発明のいくつかの用途による、遠位端に横方向血液流入口108を規定するように構成されたポンプ出口管24又はその一部の概略図である図11Aから図11Cを参照する。いくつかの用途では、ポンプ出口管は実質的にフレーム34の遠位円錐部40の遠位端まで延出する。そのような用途では、ポンプ出口管は通常、遠位に面している遠位円錐部46、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して遠位に位置するような向きの遠位円錐部46を規定する。通常、ポンプ出口管は、ポンプ出口管から遠位に延出する結合部41(例えば図示のような管状結合部)を含む。上述のように、結合部は、ポンプ出口管の遠位端を固定するため、遠位軸受部筐体に結合されている。
【0166】
いくつかの用途(図示せず)では、ポンプ出口管は2つから4つの横方向血液流入口を規定する。典型的に、このような用途では、血液流入口の各々は、20平方ミリメートル超(例えば30平方ミリメートル超)、及び/又は60平方ミリメートル未満(例えば50平方ミリメートル未満)の面積、例えば、20~60平方ミリメートル又は30~50平方ミリメートルの面積を規定する。代替的に又は追加的に、出口管は、より多くの、より小さい血液流入口108を規定する。例えば、10超の血液流入口、50超の血液流入口、100超の血液流入口、又は150超の血液流入口、例えば、50~100の血液流入口、100~150の血液流入口、又は150~200の血液流入口を規定する。いくつかの用途において、血液流入口の大きさは、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するようなものである。通常、そのような用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46は、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)がフレーム34内へ進入して、インペラ及び/又は軸方向シャフトによって損傷を受けるリスク、及び/又は左心室補助装置に損傷を与えるリスクを低減するように構成されている。従って、いくつかの用途において、血液流入口は、少なくとも1つの方向における流入口の幅(又はスパン)が1mm未満であり、例えば0.1~1mm又は0.3~0.8mmであるような形状を有する。このような小さい幅(又はスパン)を規定することにより、通常、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)はフレーム34内への進入が阻止される。いくつかのそのような用途では、血液流入口の各々は、0.05平方ミリメートル超(例えば0.1平方ミリメートル超)、及び/又は3平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.05~3平方ミリメートル又は0.1~1平方ミリメートルの面積を規定する。代替的に、血液流入口の各々は、0.1平方ミリメートル超(例えば0.3平方ミリメートル超)、及び/又は5平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.1~5平方ミリメートル又は0.3~1平方ミリメートルの面積を規定する。
【0167】
通常、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分は、40パーセント超の多孔度を有し、例えば50パーセント超、又は60パーセント超の多孔度を有する(多孔度は、血流に対して浸透性であるこの部分の面積の百分率として定義される)。従って、一方では、血液流入口は比較的小さい(左心室からの構造がフレームに侵入するのを防ぐため)が、他方では、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分の多孔度は比較的高く、ポンプ出口管内への充分な血流を可能とするようになっている。
【0168】
いくつかの用途では、各血液流入口は円形又は多角形の形状を有する。いくつかの用途では、図11Aから図11Dで示されているように、各血液流入口は六角形の形状を有する。通常、六角形の形状を有する開口を用いると、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分が、(例えば上述のような)比較的高い多孔度を有すると同時に、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分で、血液流入口間に充分な材料を与えて、材料の引き裂き及び/又は伸長を防止することができる。図11Bで示されているように、いくつかの用途では、隣接する六角形(又は他の多角形)の孔間の間隙の幅Wは、0.01mm超(例えば0.04mm超)、及び/又は0.1mm未満(例えば0.08mm未満)、例えば0.01~0.1mm又は0.04~0.08mmである。いくつかの用途では、六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離Dは、0.2mm超(例えば0.4mm超)、及び/又は0.8mm未満(例えば0.6mm未満)、例えば0.2~0.8mm又は0.4~0.6mmである。図11Bで示されているように、通常、各多角形は円を取り囲む(このような円を通過できない構造は多角形を通過することができない)。通常、多角形で取り囲まれた円の直径は距離Dと同等であり、例えば0.2mm超(例えば0.4mm超)、及び/又は0.8mm未満(例えば0.6mm未満)、例えば0.2~0.8mm又は0.4~0.6mmである。
【0169】
図11Dは、本発明のいくつかの用途によるポンプ出口管24の遠位円錐部46の一部を示す。図11Dに示されている図では、説明の目的のため、この部分は平らに広げられている。図11Dで示されているように、いくつかの用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内において、六角形(又は他の種類の多角形)の孔間の間隙の幅W1は、ポンプ出口管の遠位円錐部46の遠位領域46D内における六角形(又は他の種類の多角形)の孔間の間隙の幅Wよりも大きい。いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位部の近位領域内における隣接する血液流入口間の間隙の幅とポンプ出口管の遠位部の遠位領域内における隣接する血液流入口間の間隙の幅との比は、3:2より大きく、例えば3:2~5:2である。通常、そのような用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内において、六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離D1は、ポンプ出口管の遠位円錐部46の遠位領域46D内における六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離Dよりも小さい。(上述のように、通常、距離D及びD1は、それぞれの大きさの多角形で取り囲まれた円の直径も表す。)いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位部の遠位領域内における各血液流入口で取り囲まれた円の直径とポンプ出口管の遠位部の近位領域内における各血液流入口で取り囲まれた円の直径との比は、7:6より大きく、例えば7:6~4:3である。更に典型的には、遠位領域46D内で、ポンプ出口管24の遠位円錐部は、ポンプ出口管の遠位円錐部46の近位領域46P内よりも高い多孔度を有する。例えば、遠位領域46D内の多孔度と近位領域46P内の多孔度との比は、4:3より大きく、又は3:2より大きい。いくつかの用途において、近位領域が延出する長さは、0.5mm超、及び/又は2mm未満(例えば1.5mm未満)、例えば0.5~2mm又は0.5~1.5mmである。いくつかの用途において、遠位円錐部の全長は、6mm超及び/又は12mm未満(例えば10mm未満)、例えば6~12mm又は6~10mmである。
【0170】
図9Aから図9Bを参照して上述したように、通常、ポンプ出口管は加熱によってフレーム34に結合される。いくつかの用途において、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内では、遠位領域46D内に比べ、血液流入口孔の間隙は広く、及び/又は血液流入孔は小さく、及び/又は多孔度は低い。これは、上述の加熱プロセスの間に、血液流入孔を規定する材料に生じ得る損傷(例えば引き裂き、菲薄化、及び/又は伸長)を防止及び/又は軽減するためである。
【0171】
通常、ポンプ出口管の遠位円錐部46の遠位領域46D内における六角形(又は他の種類の多角形)の孔間の間隙の幅W、及び六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離Dは、上述のようなものである。いくつかの用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内における隣接する六角形(又は他の多角形)の孔間の間隙の幅W1は、0.05mm超(例えば0.07mm超)、及び/又は0.2mm未満(例えば0.15mm未満)、例えば0.05~0.2mm又は0.07~0.15mmである。いくつかの用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の近位領域46P内における六角形(又は他の種類の多角形)の各々の向かい合う辺の間の距離D1は、0.1mm超(例えば0.3mm超)、及び/又は0.6mm未満(例えば0.5mm未満)、例えば0.1~0.6mm又は0.3~0.5mmである。
【0172】
本開示の範囲は、ポンプ出口管の遠位円錐部46に沿って任意の配列に配置された、不均一な大きさ及び/又は形状の横方向血液流入口(例えば円形、矩形、多角形、及び/又は六角形の横方向血液流入口)を有することを含む。同様に、本開示の範囲は、横方向血液流入口を規定するポンプ出口管の遠位円錐部46を含み、この遠位円錐部の異なる領域で変動する不均一な多孔度を有するように横方向血液流入口が配列されている。いくつかの用途では、横方向血液流入口の形状及び/又は大きさ、及び/又は遠位円錐部の多孔度は、遠位円錐部の異なる領域における様々な血流ダイナミクスに対応するように変動する。代替的に又は追加的に、横方向血液流入口の形状及び/又は大きさ、及び/又は遠位円錐部の多孔度は、遠位円錐部の長さに沿った形状の変化に対応するように変動する。
【0173】
次に、本発明のいくつかの用途による、遠位端に横方向血液流入口108を規定するように構成されたポンプ出口管24又はその一部の概略図である図12Aから図12Bを参照する。図11Aから図11Dを参照して説明したように、いくつかの用途では、ポンプ出口管は実質的にフレーム34の遠位円錐部40の遠位端まで延出する。そのような用途では、ポンプ出口管は通常、遠位に面している遠位円錐部46、すなわち、円錐の狭端が円錐の広端に対して遠位に位置するような向きの遠位円錐部46を規定する。いくつかの用途では、ポンプ出口管は、10超の血液流入口、50超の血液流入口、100超の血液流入口、又は150超の血液流入口、例えば、50~100の血液流入口、100~150の血液流入口、又は150~200の血液流入口を規定する。いくつかの用途において、血液流入口の大きさは、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するようなものである。通常、そのような用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46は、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)がフレーム34内へ進入して、インペラ及び/又は軸方向シャフトによって損傷を受けるリスク、及び/又は左心室補助装置に損傷を与えるリスクを低減するように構成されている。従って、いくつかの用途において、血液流入口は、少なくとも1つの方向における各流入口の幅(又はスパン)が1mm未満であり、例えば0.1~1mm又は0.3~0.8mmであるような形状を有する。このような小さい幅(又はスパン)を規定することにより、通常、左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)はフレーム34内への進入が阻止される。いくつかのそのような用途では、血液流入口の各々は、0.05平方ミリメートル超(例えば0.1平方ミリメートル超)、及び/又は3平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.05~3平方ミリメートル又は0.1~1平方ミリメートルの面積を規定する。代替的に、血液流入口の各々は、0.1平方ミリメートル超(例えば0.3平方ミリメートル超)、及び/又は5平方ミリメートル未満(例えば1平方ミリメートル未満)の面積、例えば、0.1~5平方ミリメートル又は0.3~1平方ミリメートルの面積を規定する。
【0174】
いくつかの用途では、図12Aから図12Bで示されているように、血液流入口は概ね矩形の形状を規定する。いくつかのそのような用途では、血液流入口の長さと幅の比は1.1:1~4:1であり、例えば3:2~5:2である。いくつかの用途では、そのような形状を有することによって、血液流入口は、(a)左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)がフレーム34内へ進入するのを阻止するが、(b)比較的高い多孔度で血液流入口を規定するポンプ出口管の部分を提供する、ように構成されている。通常、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分は、40パーセント超の多孔度を有し、例えば50パーセント超、又は60パーセント超の多孔度を有する(多孔度は、血流に対して浸透性であるこの部分の面積の百分率として定義される)。従って、一方では、血液流入口は比較的小さい(左心室からの構造がフレームに侵入するのを防ぐため)が、他方では、血液流入口を規定するポンプ出口管の部分の多孔度は比較的高く、ポンプ出口管内への充分な血流を可能とするようになっている。
【0175】
通常、ポンプ出口管は、ポンプ出口管から遠位に延出する結合部41(例えば図示のような管状結合部)を含む。上述したように、結合部は、ポンプ出口管の遠位端を固定するため遠位軸受部筐体118Hに結合される。更に上述したように、通常、ポンプ出口管はフレームの中央円筒部の外側に結合される。いくつかの用途では、ポンプ出口管の遠位円錐部46自体はフレームの遠位円錐部40に結合されない。結合部41を遠位軸受部筐体118Hに結合すると共にポンプ出口管をフレームの中央円筒部の外側に結合することにより、ポンプ出口管の遠位円錐部46はフレームの遠位円錐部40に対して所定の位置に保持される。あるいは、ポンプ出口管の遠位円錐部46は、(例えば熱収縮によって)フレームの遠位円錐部40に直接結合される。
【0176】
上述したように、いくつかの用途において、結合部41は遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面に結合される。いくつかの用途では、図12Bで示されているように、結合部41は(結合部の遠位端の近くに)孔111を規定する。いくつかの用途では、この孔を介して、結合部41と遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面との間に接着剤を塗布する。上述したように、いくつかの用途では、遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面にねじ山が形成されている。典型的に、ねじ山が形成された外面によって、結合部41と遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面との間で接着剤を徐々に均一に広げることができる。更に典型的には、結合部を通して接着剤の広がりが見えるように、結合部は透明である。従って、いくつかの用途では、一度、結合部41と遠位軸受部筐体118Hの部分123の外面との間に接着剤が充分に広がったら(一度、部分123の外面が接着剤で覆われたら)、接着剤の塗布を終了する。
【0177】
なお、心室補助装置の他の部分に対してポンプ出口管の遠位円錐部46を結合するための方法及び装置の上記の説明は、図11Aから図13Bを参照して説明されている実施形態のうちいずれか1つを含めて、本明細書に記載されているポンプ出口管の遠位円錐部46の任意の実施形態に適用可能である。いくつかの用途では、同様の技法を用いて、遠位軸受部筐体に保護編組150(図10Aから図10Cに示されている)を結合する。
【0178】
なお、結合部を表面に結合するための方法及び装置の上記の説明は、ポンプ出口管の遠位部と遠位軸受部筐体の外面とを参照して記載したが、同様の方法及び装置を、任意のタイプの入口防護部(すなわち、フレームの遠位円錐部上に配置され、(a)対象の左心室から管内への血流を可能とするような、かつ(b)対象の左心室からの構造がフレーム内へ進入するのを阻止するような大きさの血液流入口を規定する任意の要素)及びフレームの遠位に配置された任意の表面に適用可能である。
【0179】
次に、本発明のいくつかの用途による、遠位端に横方向血液流入口108を規定するように構成されたポンプ出口管24又はその一部の概略図である図13Aから図13Bを参照する。図13Aから図13Bのポンプ出口管24は、以下に説明する相違点を除いて、図12Aから図12Bに示されているものと概ね同様である。図10Aを参照して説明したように、通常、血液流入口108内への血流のほとんどは、フレームの遠位円錐部の側面からのものであり、フレームの遠位円錐部の遠位端を介した軸流は比較的少ない。従って、場合によっては、この領域で停滞のリスクがあり、フレームの遠位円錐部の遠位端内で血栓が形成される可能性が生じる。更に、血流が少ないので、この領域を介して左心室からの構造(腱索、肉柱、及び/又は乳頭筋等)がフレーム34内へ進入するリスクは低い。従って、いくつかの用途では、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の遠位部分158に沿って(典型的にはフレームの遠位円錐部の遠位部分をカバーする)、ポンプ出口管24は大きい血液流入口108Lを規定する。これは、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の遠位部分158に沿った血液流入口がより小さい場合に比べ、血栓のリスクを軽減する。(場合によっては、遠位部分158は図11Dに示されている遠位領域46Dに相当する。)通常、大きい血液流入口108Lは台形又は三角形の形状を有する。いくつかの用途では、大きい血液流入口の形状は、フレームの遠位部分内のフレームのストラットの形状と一致する。すなわち、大きい血液流入口の境界159は、フレームの遠位部のストラットに沿って延出し、流入口自体は、ストラットが規定した開口部の上にある。いくつかの用途では、4~12(例えば6~10)の大きい血液流入口が存在する。通常、大きい血液流入口の各々の面積は1~7平方ミリメートルであり、例えば2~5平方ミリメートル又は3~4平方ミリメートルである。いくつかの用途では、大きい血液流入口108Lのうち最も小さいものと、小さい方の血液流入口108のうち最も大きいものとの面積の比は、3:1超であり、例えば4:1超である。通常、ポンプ出口管24の遠位円錐部46の遠位部分158内で、管24の多孔度は55パーセント超であり、例えば65パーセント超である。
【0180】
次に、本発明のいくつかの用途による、近位端に保護編組155を含む心室補助装置20のフレーム34の概略図である図14A及び図14Bを参照する。いくつかの用途において、保護編組は、フレーム34の近位円錐部の上に(又は内部に)配置されている。いくつかの用途において、保護編組は、図10Cを参照して説明したものと同様の手法で、フレームのストラット内に織り込むことができる。通常、保護編組は、例えば、所与のサイズよりも大きい要素(例えば血栓)がポンプ出口管24に沿って近位に移動するのを防ぐことによって、フィルタとして機能するよう構成されている。保護編組は、本明細書に記載されている実施形態のいずれか1つと組み合わせて用いられる。例えば、保護編組は、軸方向に向かう単一の血液流入口108を規定するポンプ出口管と共に使用され得る(図14Aに示されている)か、又は、横方向血液流入口108を規定するポンプ出口管と共に使用され得る(図14Bに示されている)。
【0181】
次に、本発明のいくつかの用途による、近位端に血液流出口109を規定するポンプ出口管24の概略図である図15を参照する。いくつかの用途において、血液流出口の大きさ及び形状は、本明細書に記載されている横方向血液流入口108の実施形態のいずれか1つと同様の形状及び大きさに設定されている。いくつかの用途では、そのような形状を有することによって、血液流出口を規定するポンプ出口管の領域は、(a)例えば、所与のサイズよりも大きい要素(例えば血栓)がポンプ出口管24から近位に移動するのを防ぐことによって、フィルタとして機能し、かつ、(b)比較的高い多孔度で血液流出口を規定するポンプ出口管の部分を提供する、ように構成されている。通常、血液流出口を規定するポンプ出口管の部分は、40パーセント超の多孔度を有し、例えば50パーセント超、又は60パーセント超の多孔度を有する(多孔度は、血流に対して浸透性であるこの部分の面積の百分率として定義される)。従って、一方では、血液流出口は比較的小さい(所与のサイズよりも大きい要素(例えば血栓)がポンプ出口管24から近位に移動するのを防ぐため)が、他方では、血液流出口を規定するポンプ出口管の部分の多孔度は比較的高く、ポンプ出口管からの充分な血流を可能とするようになっている。図15に示されている血液流出口は、本明細書に記載されている実施形態のいずれか1つと組み合わせて使用され得る。例えば、図15に示されている血液流出口は、軸方向に向かう単一の血液流入口108を規定するポンプ出口管の一部として使用され得る(図15に示されている)か、又は、横方向血液流入口108を規定するポンプ出口管の一部として使用され得る(組み合わせは図示されていない)。
【0182】
図1Aから図15を参照して説明した心室補助装置20の全ての態様に関して、図1A及び図1Bは対象の左心室内の心室補助装置20を示すが、いくつかの用途では、心室補助装置20は対象の右心室内部に配置されて対象の肺動脈弁を横切り、必要な変更を加えた上で、本明細書に記載されている技法が用いられることに留意するべきである。いくつかの用途において、装置20の構成要素は異なるタイプの血液ポンプに適用可能である。例えば本発明の態様は、大静脈及び/又は右心房から右心室へ、大静脈及び/又は右心房から肺動脈へ、及び/又は腎静脈から大静脈へ、血液を送り出すため用いられるポンプに適用可能であり得る。このような態様は、管24の特徴(例えば管の曲率)、インペラ50、ポンプヘッド部27の特徴、駆動ケーブル130等を含み得る。代替的に又は追加的に、装置20及び/又はその一部(例えば、管24がない状態のインペラ50)は、対象体の異なる部分からの血液の送り出しを支援するため、この部分内に配置される。例えば、装置20及び/又はその一部(例えば、管24がない状態のインペラ50)は、血管内に配置され、この血管を介して血液を送り出すために用いることができる。いくつかの用途において、装置20及び/又はその一部(例えば、管24がない状態のインペラ50)は、静脈とリンパ管との接合部で鎖骨下静脈又は頸静脈内に配置されるように構成され、必要な変更を加えて、リンパ管から静脈へのリンパ液の流れを増大するために用いられる。本発明の範囲は、左心室及び大動脈以外の解剖学的位置で本明細書に記載されている装置及び方法を用いることを含むので、本願(明細書及び特許請求の範囲)では、心室補助装置及び/又はその一部を血液ポンプと呼ぶことがある。
【0183】
本発明の範囲は、本明細書に記載されている装置及び方法のうち任意のものを、以下の適用例(全て援用により本明細書に組み込まれる)のうち1つ以上に記載されている装置及び方法のうち任意のものと組み合わせることを含む。
【0184】
以下に優先権を主張する、2021年4月6日に出願されたPCT出願PCT/IB2021/052857号(WO21/205346号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalの「心室補助装置」と題される米国特許出願公開第17/609,589号:
2020年4月7日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/006,122号;
2020年11月16日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/114,136号;及び
2020年12月23日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第63/129,983号。
【0185】
以下に優先権を主張する、2020年1月23日に出願されたTuvalの「心室補助装置のための遠位先端要素」と題される米国特許出願公開第2020/0237981号:
2019年1月24日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/796,138号;
2019年5月23日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/851,716号;
2019年7月5日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/870,821号;及び
2019年9月5日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/896,026号。
【0186】
以下に優先権を主張する、2019年1月10日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される国際特許出願PCT/IB2019/050186号(WO19/138350号として公開されている)の継続出願である、Tuvalの米国特許出願公開第2019/0209758号:
2018年1月10日に出願されたSohnの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/615,538号;
2018年5月2日に出願されたSohnの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/665,718号;
2018年6月7日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/681,868号;及び
2018年9月6日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される米国仮特許出願第62/727,605号;
2016年11月23日に出願されたTuvalの米国仮特許出願第62/425,814号に優先権を主張する、2017年11月21日に出願されたTuvalの「血液ポンプ」と題される国際特許出願PCT/IL2017/051273号(WO18/096531号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalの米国特許出願公開第2019/0269840号;
2016年10月25日に出願されたTuvalの米国特許出願公開第62/412,631号、及び2017年8月10日に出願されたTuvalの米国特許出願公開第62/543,540号に優先権を主張する、2017年10月23日に出願されたTuvalの「心室補助装置」と題される国際特許出願PCT/IL2017/051158号(WO18/078615号として公開されている)の継続出願である、Tuvalの米国特許出願公開第2019/0175806号;
2016年9月29日に出願されたTuvalの米国仮特許出願62/401,403号に優先権を主張する、2017年9月28日に出願されたTuvalの「血管チューブ」と題される国際特許出願PCT/IL2017/051092号(WO18/061002号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalの米国特許出願公開第2019/0239998号;
2015年5月18日に出願されたSchwammenthalの「血液ポンプ」と題される米国仮特許出願第62/162,881号に優先権を主張する、2016年5月18日に出願されたSchwammenthalの「血液ポンプ」と題される国際特許出願PCT/IL2016/050525号(WO16/185473号として公開されている)の米国国内段階である、Schwammenthalの米国特許出願公開第2018/0169313号;
2014年5月19日に出願されたSchwammenthalの「血液ポンプ」と題される米国仮特許出願第62/000,192号に優先権を主張する、2015年5月19日に出願されたSchwammenthalの「血液ポンプ」と題される国際特許出願PCT/IL2015/050532号(WO15/177793号として公開されている)の米国国内段階である、Schwammenthalの米国特許出願公開第2017/0100527号;
(a)2013年3月13日に出願されたSchwammenthalの「腎臓ポンプ」と題される米国仮特許出願第61/779,803号、及び(b)2013年12月11日に出願されたSchwammenthalの「腎臓ポンプ」と題される米国仮特許出願第61/914,475号に優先権を主張する、2014年3月13日に出願されたSchwammenthalの「腎臓ポンプ」と題される国際特許出願PCT/IL2014/050289号(WO14/141284号として公開されている)の米国国内段階である、Schwammenthalの米国特許第10,039,874号;
2013年12月11日に出願されたTuvalの「湾曲カテーテル」と題される米国仮特許出願第61/914,470号に優先権を主張する、2017年9月19日に発行されたTuvalの「湾曲カテーテル」と題される米国特許第9,764,113号;及び、
2012年6月6日に出願されたTuvalの「人工腎臓弁」と題される米国仮特許出願第61/656,244号に優先権を主張する、2013年6月6日に出願されたTuvalの「人工腎臓弁」と題される国際特許出願PCT/IL2013/050495号(WO13/183060号として公開されている)の米国国内段階である、Tuvalの米国特許第9,597,205号。
【0187】
本発明が上記で具体的に図示し記載したものに限定されないことは、当業者には認められよう。本発明の範囲は、当業者が前述の記載を読む際に想起する、上述の様々な特徴の結合(combination)及び小結合(subcombination)の双方、並びに従来技術に存在しないそれらの変形及び変更を含む。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
【国際調査報告】