(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】ブレーキ操縦システム
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20240221BHJP
B25J 19/06 20060101ALI20240221BHJP
A61B 34/35 20160101ALI20240221BHJP
【FI】
B25J19/00 C
B25J19/06
A61B34/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547387
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022052662
(87)【国際公開番号】W WO2022167558
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523215978
【氏名又は名称】ガニメッド ロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カーメント,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーンヴェン,ブレイズ
(72)【発明者】
【氏名】クロース,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】カーヘン,ソフィー
【テーマコード(参考)】
3C707
4C130
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS10
3C707HT40
3C707KS16
3C707KS20
3C707KS22
3C707MS27
4C130AA05
4C130AA13
4C130AA23
4C130AB02
4C130AD02
4C130CA01
4C130CA11
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの可動要素(14)を有するロボット装置(12)と、開放構成から作動構成に作動させた場合に少なくとも1つの可動要素(14)の減速または固定を可能にする少なくとも1つのブレーキ(16)と、少なくとも1つの可動要素(14)のリアルタイム位置を測定することを目的とした少なくとも1つの位置センサ(18)と、少なくとも1つのブレーキ(16)をリアルタイムで決定された構成に作動させるように構成されている少なくとも1つマイクロコントローラ(22、24)とを備えるブレーキ操縦システム(10)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操縦システム(10)であって、前記システム(10)は、
・少なくとも1つの可動要素(14)を備えたロボット装置(12)と、
・開放構成から作動構成に作動させた場合に、前記少なくとも1つの可動要素(14)の減速または固定を可能にする少なくとも1つのブレーキ(16)と、
・内部参照(R)内で前記少なくとも1つの可動要素(14)のリアルタイム位置を測定するように構成された少なくとも1つの位置センサ(18)と、
・前記可動要素(14)の少なくとも1つの所与の目標位置を含む命令を記憶している少なくとも1つのマイクロコントローラ(22、24)を備えた少なくとも1つの制御ユニット(20)であって、前記少なくとも1つのマイクロコントローラ(22、24)は前記少なくとも1つの位置センサ(18)および前記少なくとも1つのブレーキ(16)に接続されており、前記マイクロコントローラ(22、24)は、
・前記位置センサ(18)から前記可動要素(14)の前記リアルタイム位置を受信し、
・前記可動要素(14)の各リアルタイム位置のために、前記可動要素(14)の前記リアルタイム位置、所定の作動位置および前記目標位置を用いて前記少なくとも1つのブレーキ(16)の対応する構成をリアルタイムで決定し、
・前記少なくとも1つのブレーキ(16)をリアルタイムで前記決定された構成に作動させる
ように構成されている、制御ユニット(20)と、
を備え、
前記可動要素(14)が前記所定の作動位置を突破した場合には常に、前記少なくとも1つのブレーキ(16)の前記決定される構成は作動構成であり、かつ前記可動要素(14)が前記目標位置にある場合には常に、前記少なくとも1つのブレーキ(16)の前記決定される構成は前記可動要素(14)が固定される特定の作動構成である、ブレーキ操縦システム(10)。
【請求項2】
前記制御ユニットが前記命令が記憶されている少なくとも1つマザーマイクロコントローラ(22)を備え、かつ少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ(24)は前記少なくとも1つの位置センサ(18)および前記少なくとも1つのブレーキ(16)に接続されており、前記少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ(24)は、
・前記マザーマイクロコントローラ(22)から前記命令を受信し、かつ前記位置センサ(18)から前記可動要素(14)の前記リアルタイム位置を受信し、
・前記可動要素(14)の各リアルタイム位置のために、前記可動要素(14)の前記リアルタイム位置、前記所定の作動位置および前記目標位置を用いて前記少なくとも1つのブレーキ(16)の対応する構成をリアルタイムで決定し(前記可動要素(14)が前記目標位置にある場合には常に、前記決定される構成は作動構成である)、
・前記少なくとも1つのブレーキ(16)をリアルタイムで前記決定された構成に作動させる
ように構成されている、請求項1に記載のブレーキ操縦システム(10)。
【請求項3】
前記ブレーキマイクロコントローラ(24)はさらに、前記可動要素(14)のリアルタイム速度を監視し、かつさらに前記可動要素(14)の前記速度を所定の最大速度値に制限するために前記可動要素(14)の前記リアルタイム速度を使用して前記少なくとも1つのブレーキ(16)の前記構成を決定するように構成されている、請求項1に記載のブレーキ操縦システム(10)。
【請求項4】
前記可動要素(14)が前記所定の作動位置を突破した場合には常に、前記所定の最大速度値は前記可動要素の前記リアルタイム位置と前記可動要素の前記目標位置との間の距離の関数である、請求項2に記載のブレーキ操縦システム(10)。
【請求項5】
前記ブレーキマイクロコントローラ(24)はさらに前記少なくとも1つのブレーキ(16)に印加された電流の測定値を電流センサ(26)からリアルタイムで受信し、かつ前記リアルタイム電流を使用して前記少なくとも1つのブレーキ(16)の前記構成を決定するように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載のブレーキ操縦システム(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのブレーキ(16)は電磁ブレーキである、先行する請求項のいずれか1項に記載のブレーキ操縦システム(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのブレーキ(16)は無励磁作動型ブレーキである、先行する請求項に記載のブレーキ操縦システム(10)。
【請求項8】
前記位置センサ(18)はエンコーダである、先行する請求項のいずれか1項に記載のブレーキ操縦システム(10)。
【請求項9】
前記ロボット装置(12)は医療装置である、先行する請求項のいずれか1項に記載のブレーキ操縦システム(10)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの可動要素(14)、前記少なくとも1つのブレーキ(16)、前記少なくとも1つの位置センサ(18)は機能モジュールを形成している、ブレーキ操縦システム(10)。
【請求項11】
ブレーキ操縦方法であって、前記方法は、請求項1~10のいずれかに1項に記載のシステム(10)によって実行され、前記方法は、前記制御ユニットの少なくとも1つのマイクロコントローラ(22、24)内に、
・前記少なくとも1つの位置センサ(18)から得られた前記少なくとも1つの可動要素(14)のリアルタイム位置を受信することにより始動された前記可動要素(14)の移動を監視することと、
・前記可動要素(14)の各リアルタイム位置のために、前記可動要素(14)の前記リアルタイム位置、所定の作動位置および前記目標位置を用いて前記少なくとも1つのブレーキ(16)の対応する構成をリアルタイムで決定すること(前記可動要素(14)が前記目標位置にある場合には常に、前記決定される構成は作動構成である)と、
を含み、
前記マイクロコントローラ(22、24)は前記少なくとも1つのブレーキ(16)をリアルタイムで前記決定された構成に作動させる、方法。
【請求項12】
前記制御ユニットは、請求項2~10のいずれか1項に記載の少なくとも1つのマザーマイクロコントローラ(22)および少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ(24)を備え、
・前記マザーマイクロコントローラ(22)によって、前記可動要素(14)の少なくとも1つの目標位置を前記少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ(24)に送信すること
をさらに含み、
前記可動要素(14)の移動を監視することおよび前記少なくとも1つのブレーキ(16)の対応する構成を決定することは、前記少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ(24)によって行われ、かつ
前記少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ(24)は前記少なくとも1つのブレーキ(16)を前記作動構成に作動させる、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのブレーキ(16)の作動は2つの段階:
・前記可動要素(14)の減速を得るために、前記少なくとも1つのブレーキ(16)を作動させる前記少なくとも1つのブレーキ(16)の一連のリアルタイムで決定される作動構成に関連づけられた遷移段階、
・その作動構成により、前記目標位置において前記可動要素(14)をロックするように前記少なくとも1つのブレーキ(16)を作動させる前記所定の目標位置に関連づけられたロック段階
を含み、
前記遷移段階は前記可動要素(14)が前記所定の作動位置を突破した際に開始し、前記ロック段階は前記可動要素(14)が前記所定の目標位置に到達した際に開始し、従って前記ロック段階は時系列的に前記遷移段階の後に続き、かつ前記ロック段階は前記遷移段階が終了した際に開始する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記可動要素(14)が前記所定の作動位置の前にある場合には常に第3の段階を含み、前記第3の段階は、前記少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ(24)が前記可動要素(14)の速度を一定の最大速度値に制限する一定の速度制限段階であり、前記速度制限段階は時系列的に前記遷移段階の前に起こる、先行する請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのブレーキカード(24)は、前記少なくとも1つのブレーキ(16)によって放出された熱を監視する、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの可動要素または一連の可動要素を示すロボット装置のためのブレーキ操縦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
可動要素を備えたロボット装置、特に医療装置は、目標位置に到達した際の可動要素からの望ましくない移動を防止するために、前記可動要素が決定された目標位置に到達した際の位置ロックシステムを備えていなければならないことは最先端技術において周知である。
【0003】
通常は、可動要素の位置制御および目標位置での保持はモータによって行われる。しかしモータは必ずしも可動要素を正確かつ安定であって繰り返し可能な位置にロックするのに最適なアクチュエータであるというわけではない。またモータは目標位置を維持するための難しさを示す場合がある。
【0004】
可動要素の目標位置を様々な外部制動力またはその自重下に維持するために、モータの位置制御は、電力消費の突然の上昇ならびに複雑なアルゴリズムの必要性を生じさせる短くかつ高い加速を必要とする。
【0005】
さらにギアモータは静的もしくは動的バックラッシュを与え、これは、可動要素の実際の位置、より詳細には可動要素の目標位置における回避不可能かつ多くの場合に予測不可能な誤差が存在することを意味しており、これにより目標位置への到達およびその保持に関する信頼性の問題が生じる。
【0006】
ギアモータは機械的摩耗が起こりやすい多くの壊れやすい移動部品を備えるため、それらを用いる場合には老化も問題であり、摩耗の組み合わせにより精度の低下も生じる。
【0007】
強い制動力を維持するように寸法決めされたギアモータの別の欠点は、それらの重要な寸法および重量である。
【0008】
従ってギアモータの負担を取り除くために、ブレーキを使用することが最先端技術から知られている。従って最先端技術では、特に遷移段階の間ならびに目標位置に到達した場合に精度および正確性を伴って可動要素の位置を制御することなく可動要素を特定の位置にロックするために、ブレーキが一般に使用されている。例えば文献US 8870141 B2(米国特許第8870141号公報)では、到達させることを決定した目標位置を有さずにブレーキを使用して、ユーザがロックすることを決定した位置にロボットアームをロックする。
【0009】
本発明は、モータの代わりにブレーキを使用してロボットの可動要素を決定された目標位置にロックし、かつ遷移段階の間にブレーキを制御することにより上で述べた問題を解決することを目的とする。
【発明の概要】
【0010】
従って本発明は、
・少なくとも1つの可動要素を備えたロボット装置と、
・開放構成から作動構成に作動させた場合に、少なくとも1つの可動要素の減速または固定を可能にする少なくとも1つのブレーキと、
・内部参照内で少なくとも1つの可動要素のリアルタイム位置を測定するように構成された少なくとも1つの位置センサと、
・可動要素の少なくとも1つの所与の目標位置を含む命令を記憶している少なくとも1つのマイクロコントローラを備えた少なくとも1つの制御ユニットであって、前記少なくとも1つのマイクロコントローラは少なくとも1つの位置センサおよび少なくとも1つのブレーキに接続されており、マイクロコントローラは、
・位置センサから可動要素のリアルタイム位置を受信し、
・可動要素の各リアルタイム位置のために、可動要素の前記リアルタイム位置、所定の作動位置および目標位置を用いて少なくとも1つのブレーキの対応する構成をリアルタイムで決定し(可動要素が目標位置にある場合には常に、決定される構成は作動構成である)、
・少なくとも1つのブレーキをリアルタイムで前記決定された構成に作動させる
ように構成されている制御ユニットと、
を備えるブレーキ操縦システムに関する。
【0011】
一実施形態によれば、マイクロコントローラは、可動要素が所定の作動位置を突破した場合には常に、少なくとも1つのブレーキの決定される構成が作動構成であるように構成されている。有利には本実施形態は、可動要素が所定の作動位置と目標位置との間に位置している場合にブレーキを作動させる(すなわち、ブレーキは可動要素の速度を制御および/または減少させるために可動要素に力を印加する)際に、目標位置を通る可動要素の滑らかな収束を保証するのを可能にする。このようにしてロボットアーム、ひいては可動要素の操作において外科医によってかけられる力および注意とは独立して、手術道具(例えば鋸)が制限された制御速度で目標位置に近づくことが保証される。
【0012】
一実施形態によれば、マイクロコントローラは、可動要素が目標位置にある場合には常に、少なくとも1つのブレーキの決定される構成が可動要素が固定される特定の作動構成であるように構成されている。外科医は目標位置の方向を通してロボットアームに力を印加してロボットアームを外科手術の工程の少なくとも1つのために計画された構成で停止させる(例えばロボットアームを、計画された外科的措置の1つを行うために使用するための鋸が骨に対して位置決めされる目標位置にロックする)だけであるため、本実施形態はロボットアームの容易な操作を可能にする。
【0013】
好ましい一実施形態によれば、マイクロコントローラは、
・可動要素が所定の作動位置を突破した場合には常に、少なくとも1つのブレーキの決定される構成は作動構成であり、かつ
・可動要素が目標位置にある場合には常に、少なくとも1つのブレーキの決定される構成は可動要素が固定される特定の作動構成である
ように構成されている。
【0014】
本実施形態は、可動要素が安全にロックされる目標位置までロボットアームをガイドすることを可能にするだけでなく、可動要素が所定の作動位置と目標位置との間に位置している場合のブレーキの作動のおかげで、本システムはロボットアームを操作している外科医にどんな種類の制御または注意も要求することなく、標的ロック位置への可動要素(すなわち手術道具)の滑らかな制御されたアプローチも保証するため(別々に用いられる2つの特徴に関して)特に有利である。ロボットアームの速度制限および減速/ロックの制御として外科医の経験および現在の注意状態に任せずに、何であろうとも外科手術中に高い程度の安全性が得られることが本発明のシステムによって保証される。
【0015】
本発明に係るブレーキ制御システムは、互いに別個または組み合わせて用いられる以下の特徴の1つまたはいくつかを備えていてもよい。
【0016】
制御ユニットが命令が記憶されている少なくとも1つマザーマイクロコントローラを備え、かつ少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラが少なくとも1つの位置センサおよび少なくとも1つのブレーキに接続されている一実施形態によれば、前記少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラは、
・マザーマイクロコントローラから命令を受信し、かつ位置センサから可動要素のリアルタイム位置を受信し、
・可動要素の各リアルタイム位置のために、可動要素の前記リアルタイム位置、所定の作動位置および目標位置を用いて少なくとも1つのブレーキの対応する構成をリアルタイムで決定し(可動要素が目標位置にある場合には常に、決定される構成は作動構成である)、
・少なくとも1つのブレーキ(16)をリアルタイムで前記決定された構成に作動させる
ように構成されている。
【0017】
一実施形態によれば、ブレーキマイクロコントローラはさらに、可動要素のリアルタイム速度を監視し、かつさらに可動要素のリアルタイム速度を使用して、可動要素の速度を所定の最大速度値に制限するために少なくとも1つのブレーキの構成を決定するように構成されている。
【0018】
一実施形態によれば、可動要素が所定の作動位置を突破した場合には常に、所定の最大速度値は可動要素のリアルタイム位置と可動要素の目標位置との間の距離の関数である。
【0019】
一実施形態によれば、ブレーキマイクロコントローラはさらに少なくとも1つのブレーキに印加された電流の測定値を電流センサからリアルタイムで受信し、かつさらに前記リアルタイム電流を使用して少なくとも1つのブレーキの構成を決定するように構成されている。
【0020】
一実施形態によれば、少なくとも1つのブレーキは電磁ブレーキである。
【0021】
一実施形態によれば、少なくとも1つのブレーキは無励磁作動型ブレーキである。
【0022】
一実施形態によれば、位置センサはエンコーダである。
【0023】
一実施形態によれば、ロボット装置は医療装置である。
【0024】
一実施形態によれば、少なくとも1つのブレーキ、少なくとも1つの位置センサは独立した機能モジュールを形成している。
【0025】
本発明の別の目的は、上記実施形態のいずれか1つに係るシステムによって実行されるブレーキ操縦方法であって、制御ユニットの少なくとも1つのマイクロコントローラ内に、
・少なくとも1つの位置センサから得られた少なくとも1つの可動要素のリアルタイム位置を受信することにより始動された可動要素の移動を監視することと、
・可動要素の各リアルタイム位置のために、可動要素の前記リアルタイム位置、所定の作動位置および目標位置を用いて少なくとも1つのブレーキの対応する構成をリアルタイムで決定すること(可動要素が目標位置にある場合には常に、決定される構成は作動構成である)と、
含み、
マイクロコントローラは少なくとも1つのブレーキをリアルタイムで前記決定された構成に作動させる方法である。
【0026】
一実施形態によれば、制御ユニットは上記実施形態のいずれか1つに係る少なくとも1つのマザーマイクロコントローラおよび少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラを備え、
・マザーマイクロコントローラによって、可動要素の少なくとも1つの目標位置を少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラに送信すること
をさらに含み、
可動要素の移動を監視することおよび少なくとも1つのブレーキの対応する構成を決定することは、少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラによって行われ、かつ
少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラは少なくとも1つのブレーキを作動構成に作動させる。
【0027】
一実施形態によれば、少なくとも1つのブレーキの作動は2つの段階:
・可動要素の減速を得るために少なくとも1つのブレーキを作動させる、少なくとも1つのブレーキの一連のリアルタイムで決定される作動構成に関連づけられた遷移段階、
・その作動構成により、目標位置において可動要素をロックするように少なくとも1つのブレーキを作動させる、所定の目標位置に関連づけられたロック段階
を含み、
・遷移段階は可動要素が所定の作動位置を突破した際に開始し、ロック段階は可動要素が所定の目標位置に到達した際に開始し、従ってロック段階は時系列的に遷移段階の後に続き、ロック段階は遷移段階が終了した際に開始する。
【0028】
一実施形態によれば、本方法は可動要素が所定の作動位置の前にある場合には常に第3の段階を含み、第3の段階は、少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラが可動要素の速度を一定の最大速度値に制限する一定の速度制限段階であり、前記速度制限段階は時系列的に遷移段階の前に起こる。
【0029】
一実施形態によれば、少なくとも1つのブレーキカードは、少なくとも1つのブレーキによって放出された熱を監視する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】可動要素がロボットアームの一部である本発明に係る図式化されたシステムである。
【
図2】第1の実施形態に係る本発明の電気的アーキテクチャの概略図である。
【
図3】第2の実施形態に係る本発明の電気的アーキテクチャの概略図である。
【
図4】関連づけられているブレーキカード内でのブレーキの操縦を示すブロック図の一例である。
【
図5】作動位置に到達する前に最大速度制限は課せられず、かつ作動位置後の減速が一定である実施形態に係る、その位置の関数としての可動要素の速度のグラフである。
【
図6】作動位置に到達する前に最大速度制限が課せられる実施形態に係る、その位置の関数としての可動要素の速度のグラフである。
【
図7】作動位置に到達する前に最大速度制限は課せられず、かつ作動位置後の減速が一定でない実施形態に係る、その位置の関数としての可動要素の速度のグラフである。
【
図8】情報がどのように状態機械を備えたマザーマイクロコントローラ、ブレーキマイクロコントローラおよびブレーキ間で伝達されるかの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1上で分かるように、本発明に係るブレーキ操縦システム10は、
・少なくとも1つの可動要素14を備えたロボット装置12と、
・可動要素14に接続された少なくとも1つのブレーキ16と、
・内部参照R内で各可動要素14のリアルタイム位置を測定するように構成された少なくとも1つの位置センサ18と
を備える。
【0032】
図1に示されている実施形態では、ロボット装置12は連鎖的に接続された4つの可動要素14を備えたロボットアームである。各可動要素14はさらに、少なくとも1つのブレーキ16および少なくとも1つの位置センサ18に接続されている。可動要素14は例えば手動で、あるいは操作者がそれら引くか押すことにより始動させることができる。それらは別のロボット装置または任意の外部システムによって始動させることもできる。可動要素14は全て一緒にまたは要素ごとに始動させることができる。
【0033】
本発明では、「ロボット」という用語は、例えば共有空間内での人間とロボットとの直接的なインタラクションを目的としたロボットであるコボティック装置を含む最も広い方法で理解される。
【0034】
各ブレーキ16は開放構成から作動構成に作動させることができる。本明細書では、ブレーキに関する「構成」という用語はブレーキの「状態」を表し、
・その開放構成では、ブレーキ16は目立つほどに可動要素14との物理的干渉を有さず、従ってそれが接続されている可動要素14の移動に影響を与えず、
・その作動構成では、ブレーキ16は可動要素14に制約を与え、速度を制限し、こうして一定の速度値への速度制限または減速あるいはブレーキが接続されている可動要素14の固定を可能にする。
【0035】
なお、各ブレーキ16は1つの開放構成しか示さないが、幅広い作動構成を示すことができる。各作動構成は対応する可動要素14に印加される決定された制動力を示す。ブレーキが可動要素14を特定の位置に固定する特定のアクティブ構成をロック構成と呼ぶ。
【0036】
一実施形態では、ブレーキ16は電磁ブレーキ、より詳細には無励磁作動型ブレーキであってもよく、これは、電流がそれらを通って流れていない場合にブレーキがそれらのロック構成になることを意味している。有利には各ブレーキ16内の永久磁石は、電流がそれを通って流れていない場合にはそのロック構成のままであることを保証する。
【0037】
各ブレーキ16および可動要素14に接続された位置センサ18は例えばエンコーダ、すなわち磁気式もしくは光学式エンコーダ、インクリメンタルもしくはアブソリュートエンコーダであってもよい。
【0038】
可動要素14の位置は、1つの可動要素14の別の可動要素に対する相対位置、例えば相対角度位置、または1つの可動要素14の別の可動要素に対する相対線形位置、あるいは内部参照R内の可動要素14の絶対位置であってもよい。
【0039】
システム10は、可動要素14の少なくとも1つの所与の目標位置を含む命令を記憶するように構成された少なくとも1つのマイクロコントローラ(22、24)を備えた少なくとも1つの制御ユニット20をさらに備える。マイクロコントローラは、メモリおよびプログラム可能な入力/出力周辺装置と共に1つ以上のCPU(プロセッサコア)を含む。従って上記命令はマイクロコントローラのメモリに記憶されている。
【0040】
可動要素14の前記所定の目標位置は、その対応するブレーキ16の特定の作動構成に関連づけられている。この特定の作動構成は好ましくは、可動要素14がマイクロコントローラ(22、24)に記憶されている所定の目標位置に固定されるロック構成である。各可動要素のための所定の目標位置は準備段階中に決定される。この準備段階では、行為の計画はロボット装置によって行われ、所望の行為を達成するためにロボット装置を配置しなければならない対応する目標位置に変換される。
【0041】
本システムの医療分野への適用の場合、より詳細には外科手術のために、術前段階の間に所定の目標位置を決定する。実際には各外科手術のために、異なる手術段階の間に行われる行為のリストを含む術前計画を決定する。例えば、その行為は骨の一部の切断を含む場合があり、前記術前計画は、内部参照Rに記録することができる1つの参照の中に切断面の方程式を含む。次いで1つの切断面を使用して、内部参照Rにおいて骨を切断するために使用される鋸の対応する位置を決定し、かつこの決定から前記切断面に到達するためのシステム10の各可動要素14の目標位置を決定してもよい。
【0042】
一実施形態では、所定の作動位置はマイクロコントローラメモリの中に記憶されていてもよく、あるいは例えば目標位置の関数としてマイクロコントローラ内で計算してもよい。
【0043】
前記少なくとも1つのマイクロコントローラ(22、24)は、少なくとも1つの位置センサ18および少なくとも1つのブレーキ16に接続されている。
【0044】
特に少なくとも1つのマイクロコントローラ(22、24)は、位置センサ18から可動要素14のリアルタイム位置を受信する。次いでマイクロコントローラは、内部参照R内で可動要素14の前記リアルタイム位置、所定の作動位置および少なくとも1つの所与の目標位置を使用して、少なくとも1つのブレーキ16のための構成をリアルタイムで決定する。その構成を決定する工程は、位置センサによって送信される可動要素14の各位置のために行ってもよい(例えば、センサのサンプリング周波数)。各繰り返しのためにマイクロコントローラは、可動要素14の位置を内部参照R内で所定の作動位置と比較する。特に可動要素14が目標位置にある場合には常に、それは決定される構成を作動構成に設定する。これは参照R内の各可動要素14の各位置のために、マイクロコントローラが対応するブレーキ16の決定されるブレーキ構成を決定することを意味している。
【0045】
最後に、マイクロコントローラは少なくとも1つのブレーキ16をリアルタイムで前記決定された構成に作動させ、これは開放構成または作動構成であってもよく、特に可動要素14が目標位置に到達している場合にはロック構成であってもよい。
【0046】
一例では、記憶されている所定の作動位置および目標位置は目標位置に対応する1つの固有値である。この場合、ブレーキは常に開放構成(目標位置を除く)に関連づけられ、可動要素14が目標位置に到達した場合にのみロック構成に作動される。
【0047】
一実施形態によれば、制御ユニット20は、例えばブレーキ16および位置センサ18に電線によって接続された固有のマイクロコントローラを備える(図示せず)。
【0048】
図1、
図2および
図3に示されている他の一実施形態では、制御ユニット20は、命令が記憶されている少なくとも1つのマザーマイクロコントローラ22および少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ24を備え、各ブレーキ16は1つのブレーキマイクロコントローラ24に関連づけられている。ブレーキマイクロコントローラ24はマザーマイクロコントローラ22およびその対応する可動要素14の位置センサ18に接続されている。従って各可動要素14、その関連づけられているブレーキ16、その関連づけられているブレーキマイクロコントローラ24および関連づけられている位置センサ18は独立した機能モジュールを形成している。これは有利には、実行が容易な構成を提供し、従って本システムは、修正して異なる状況に適応させるのが容易であり得る機械的アーキテクチャを有する。
【0049】
ブレーキマイクロコントローラ24は、マザーマイクロコントローラ22から命令を受信し、かつ位置センサ18からリアルタイム情報を受信するように構成されている。各ブレーキマイクロコントローラ24は、マザーマイクロコントローラ22にフィードバックおよび情報をリアルタイムで送信することもできる。
【0050】
各ブレーキマイクロコントローラ24はさらに、可動要素14の各受信されたリアルタイム位置のために、可動要素14の前記リアルタイム位置、所定の作動位置および目標位置を用いて少なくとも1つのブレーキ16の対応する構成をリアルタイムで決定するように構成されており、ここでは可動要素14が目標位置にある場合には常に、決定される構成は作動構成である。
【0051】
従って本実施形態では、各対応するブレーキ16を決定された構成に作動させるように構成されているのは、各ブレーキマイクロコントローラ24である。
【0052】
各ブレーキマイクロコントローラ24はその対応するブレーキ16を操縦するように構成されており、マザーマイクロコントローラ22はシステム10の大域制御のために構成されている。
【0053】
一実施形態では、マザーマイクロコントローラ22はさらに、本システムの実際の状態および他の入力に基づいて出力を提供する数学的計算モデルである状態機械を実行するように構成されている。この状態機械の出力は、術前計画のワークフローおよび外科手術の進行の状態に従って各ブレーキマイクロコントローラ24に送信されてもよい。状態機械のこれらの出力は、命令としてマザーマイクロコントローラ22に記憶されていてもよく、ロボット装置12の可動要素14の所定の目標位置を含んでいてもよい。ブレーキマイクロコントローラ24は、特に1つの目標位置に到達した場合の可動要素14の位置およびその関連づけられているブレーキ16の対応する構成に関してマザーマイクロコントローラ22にフィードバックを送信する。
【0054】
図5および
図6に示すように、可動要素14のリアルタイム速度も考慮に入れてその関連づけられているブレーキ16のリアルタイム構成を決定してもよい。実際には、ブレーキマイクロコントローラ24はさらに、例えばエンコーダおよび/または加速度計を用いて可動要素14のリアルタイム速度を監視するように構成されていてもよい。次いで、測定された速度が所定の最大速度値を超えている場合には、ブレーキマイクロコントローラ24は可動要素14の測定されたリアルタイム速度を使用して、可動要素14の速度を所定の最大速度値に制限するために少なくとも1つのブレーキ16のアクティブ構成を決定する。測定された速度が所定の最大速度値を超えていない場合には、ブレーキは開放構成となる。
【0055】
図5および
図6の直線42によって示されているように、可動要素が所定の作動位置(P
A)を突破した場合、所定の最大速度値は可動要素14のリアルタイム位置と可動要素の目標位置(ここではP
Tで表されている)との間の距離の関数であってもよい。
【0056】
より詳細には
図5は、各可動要素14の速度がロボット装置12に与えられる外力よって自由に決まるように、可動要素が作動位置(P
A)に到達する前に速度変調が行われない場合を示す。
【0057】
図6は、ブレーキマイクロコントローラ24が可動要素14の任意の位置のために速度をリアルタイムで監視して制限するように構成されている第2の実施形態を示す。本実施形態では、作動位置(P
A)に到達する前に、速度は一定の最大速度値(直線44)に制限され、これは曲線40によって示されているように、各可動要素14が一定の速度値を超えることができないことを意味している。この速度制限は有利には、目標位置に到達するにはほど遠い場合であってもロボット装置12を常に制御下に維持するのを可能にする。可動要素が作動位置(P
A)を突破したら、目標位置に近づくために速度は目標位置(P
T)からの距離の関数として制限され、目標位置では速度はゼロまで低下する。曲線40は、ブレーキマイクロコントローラ24がブレーキを対応する作動構成に作動させるが、より低い速度値ではブレーキを作動させないことにより、所与の位置において所定の値の速度を超えるのを防止するようにのみ構成されていることを視覚的に示す。
【0058】
図7に示すように、所定の最大速度値は可動要素の位置と目標位置との間の距離の非線形関数であってもよい。
【0059】
一実施形態によれば、ブレーキマイクロコントローラ24は、可動要素14が第2の予め定められた作動位置よりも遠い場合には常に、リアルタイムで速度の監視および制限を行うようにも構成されている。本実施形態は有利には、外科医がロボットアームを通常の使用限界から遠くに置いた場合に可動要素に許容される移動速度を制限するのを可能にする(すなわち、手術計画に従って手術道具が1つ以上の目標位置から遠すぎる場合にはロボットアームの移動を減速させる)。またブレーキマイクロコントローラ24は、可動要素がそれを超えると可動要素を移動させることができない予め定められた制限位置(すなわち、本システムの物理的限界)を超えた場合にブレーキをロックするように構成されていてもよい。
【0060】
一実施形態によれば、ブレーキマイクロコントローラ24はさらに、その対応するブレーキ16に印加された電流の測定値を電流センサ26からリアルタイムで受信し、かつさらに可動要素14のこの測定されたリアルタイム電流を使用して少なくとも1つのブレーキ16の構成を決定するように構成されている。これは有利にはブレーキのより細かい制御を可能にする。
【0061】
図8は、マイクロコントローラ(22、24)と、センサ(位置18、速度および電流)と、ブレーキ16との間で共有される情報の全体図を示す。より詳細には、状態機械を実行するマザーマイクロコントローラ22は、ブレーキマイクロコントローラ24に命令50を送信し、ブレーキマイクロコントローラ24は、ブレーキ16に操縦電圧51を送信して決定された構成でブレーキを作動させる。センサ18は、ブレーキマイクロコントローラ24に可動要素53の位置の測定値をリアルタイムで送信し、電流センサは、ブレーキマイクロコントローラ24にブレーキ内を流れている電流54の測定値をリアルタイムで送信する。ブレーキマイクロコントローラ24は、特に目標位置に到達した場合にマザーマイクロコントローラ22に位置53に関する情報を送信する。ブレーキマイクロコントローラ24によって他の各種情報52がマザーマイクロコントローラ22に送信されてもよい。
【0062】
各可動要素14の位置のほとんどに対して、ブレーキ16の対応する構成は開放構成である。但し、可動要素14の少なくとも1つの第1のリアルタイムで決定された作動位置に対しては、関連づけられているブレーキの対応する構成は作動構成である。従って可動要素14を始動させ、かつ前記第1のリアルタイムで決定された作動位置に到達した場合に、関連づけられているブレーキ16はその対応するブレーキマイクロコントローラ24によって作動される。このブレーキの作動によりブレーキ16は、その前の構成すなわち開放構成から第1の決定された作動構成に変わる。可動要素14がさらに第2の決定された作動位置に到達した場合に、関連づけられているブレーキ16はその対応するブレーキマイクロコントローラ24によって作動され、その前の構成すなわち第1のリアルタイムで決定された作動構成から第2の決定された作動構成に変わる。可動要素14に課せられる移動に応じて無限数の作動位置が存在してもよい。ブレーキ16の作動レベルは可動要素14のリアルタイム位置によって決まる。いくつかの実施形態では、ブレーキ16の作動レベルは可動要素14のリアルタイム速度によっても決まる。実施形態に応じて可動要素の第1の決定される作動位置は、速度誘導または位置誘導のいずれか、あるいはその両方によるものである。
【0063】
言い換えると、ブレーキ16構成の操縦は主に位置駆動され、すなわち可動要素14を始動させ、それが内部参照R内で所定の目標位置に到達した場合に、その対応するブレーキ16が対応するブレーキマイクロコントローラ24によって作動され、ブレーキ16構成はそのロック構成に変わり、かつ可動要素14は固定される。
【0064】
いくつかの実施形態では、ブレーキ16の操縦はまた速度駆動され、すなわち可動要素14を最大速度値に対して高過ぎる速度で始動させた場合(これは所定の目標位置に依存していても依存してなくてもよい)、ブレーキカード24が対応するブレーキ16構成における変化を誘導してもよく、こうして可動要素14の減速または可動要素14の速度の一定の速度値への制限のいずれかを誘導する。従っていくつかの種類の作動位置、すなわち
・ブレーキ16のロック構成に関連づけられているマイクロコントローラの1つの所定の目標位置
・ロック構成ではないアクティブなブレーキ構成に関連づけられている多くのリアルタイムで決定される作動位置
を定めることができる。
【0065】
どんな速度制限からも独立して、リアルタイムで決定される作動位置は一般に、所定の目標位置を取り囲む内部参照R内に空間的に定められている。これにより各ブレーキ16をそのロック構成まで漸進的、段階的または徐々に作動させる。言い換えると、これにより可動要素14を1つのリアルタイムで決定された作動位置から次の位置に移動させる際に、各ブレーキ16をロック構成に到達するまで漸進的に作動させることを意味している。より多くブレーキ16を作動させる程、減速がさらに激しくなる。ブレーキ16のこの漸進的作動は遷移段階を定め、つまりこのようにして可動要素14がその特定の予め定められた目標位置に近づく程、前記可動要素14を始動させることがさらに難しくなる。この遷移段階は、ユーザに可動要素14の特定の予め定められた目標位置にまもなく到着することを知らせてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、各ブレーキマイクロコントローラ24は、特にブレーキ16が作動構成に維持されている場合に、その対応するブレーキ16によって放出される熱を監視することができる。これは有利には、ブレーキのあらゆる劣化およびユーザに火傷を負わせるあらゆるリスクを回避するのを可能にする。
【0067】
図2および
図3は、システム10の全体的な電子的アーキテクチャの2つの概略実施形態を示す。各ブレーキマイクロコントローラ24は、
・少なくとも1つのブレーキ16、
・可動要素14のリアルタイム位置を提供するエンコーダ18、および
・ブレーキ16を通って流れている電流のリアルタイム量を与える電流センサ26
に接続されていることがはっきりと分かる。
【0068】
データバス28は、マザーボード22とブレーキマイクロコントローラ24のそれぞれとの通信を可能にする。
図2および
図3は前記データバス28接続の2つの実施形態を示す。
【0069】
可動要素14の位置を監視し、かつブレーキ16のリアルタイム構成を監視および操縦するために、各ブレーキマイクロコントローラ24は3つの情報、すなわち
・可動要素14の目標位置、
・可動要素14のリアルタイム位置、および
・ブレーキ16を通って流れている電流
を使用する。
【0070】
図4の実施形態に示されているように、それらの情報は各ブレーキマイクロコントローラ24が、
・少なくとも1つのブレーキ16の電流制御ループ30、
・可動要素14の速度制限ループ32、
・可動要素14の位置制御ループ34
を絶えず適用するのを可能にする。
【0071】
より詳細には、ブレーキマイクロコントローラ24は位置制御ループ、速度制限ループおよび電流制御ループを含むカスケード制御ループを絶えず適用し、ここでは電流制御ループは内部ループである。有利にはカスケード制御ループは位置、速度および/または電流妨害に迅速に応答し、従って単一のループ制御システムを用いた場合に生じる変動をかなり減少させることができる。
【0072】
一実施形態では、各制御ループ30、32、34は比例/積分/微分(PID)コレクタ38によって維持される。PIDコレクタは自動化において一般に公知であり、工業用制御システムにおいて広く使用されている。PIDコレクタは所望の設定値と実際の物理値との差に基づいて補正を連続的に適用する。
【0073】
電流制御ループ30は、その端子に印加するための電圧を計算することによりブレーキマイクロコントローラ24がその対応するブレーキ16の構成を細かく制御するのを可能にする。
【0074】
電流制御ループはブレーキの応答時間を短縮することにより速度制御を最適化する。電流制御ループは、ブレーキ16によって加えられる制動力に関するフィードバックも可能にする。
【0075】
本発明はさらに、上記実施形態のいずれか1つに係るシステム10によって実行されるブレーキ操縦方法に関する。
【0076】
本方法は、制御ユニット20のマイクロコントローラ(22、24)を使用して、以下の工程:
1.少なくとも1つの位置センサ18から得られた少なくとも1つの可動要素14のリアルタイム位置を受信することにより始動された可動要素14の移動を監視することと、
2.可動要素14の各リアルタイム位置のために、可動要素14の前記リアルタイム位置ならびにマイクロコントローラ(24、26)に記憶されている所定の作動位置および目標位置を用いて少なくとも1つのブレーキ16の対応する構成をリアルタイムで決定すること(可動要素14が目標位置にある場合には常に、決定される構成は作動構成である)と、
を行う。
【0077】
マイクロコントローラ(22、24)は少なくとも1つのブレーキ16をリアルタイムで前記決定された構成に作動させる。
【0078】
制御ユニット20が少なくとも1つのマザーマイクロコントローラ22および少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ24を備える実施形態によれば、本方法は、マザーマイクロコントローラ22によって可動要素の少なくとも1つの目標位置14を少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ24に送信することをさらに含む。本実施形態では、上に挙げられている方法1および2の工程(すなわち可動要素の移動を監視することおよび少なくとも1つのブレーキの対応する構成を決定すること)は、少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ24によって行われる。最後に、少なくとも1つのブレーキ16を作動構成に作動させるのは少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ24である。
【0079】
先に述べたように、ブレーキ16の作動は以下の2つの段階:
・その構成によりその対応する可動要素14を減速させるように各ブレーキ16を作動させる遷移段階、
・その構成により対応する可動要素14をロックするように各ブレーキ16を作動させるロック段階
を含む。
【0080】
遷移段階は可動要素14が所定の作動位置を突破した際に開始し、ロック段階は可動要素14がその所定の目標位置に到達した際に開始する。ロック段階の開始は遷移段階の終了に対応している。
【0081】
既に述べたようにいくつかの実施形態では、ブレーキマイクロコントローラ24は可動要素14のリアルタイム速度を監視し、それらの実施形態では、可動要素14が対応するリアルタイムで決定された作動位置にある場合、各ブレーキ16をその対応する可動要素14の速度に比例して作動させる。これは装置10のユーザに所定の目標位置にまもなく到達することを感じさせることを可能にし、こうして可動要素14をより迅速かつより正確に位置決めする。
【0082】
装置10が最大許容速度制限を含む実施形態では、各ブレーキマイクロコントローラ24は可動要素14の位置とは独立して可動要素14の速度を制限する。それらの実施形態ではブレーキの作動は、可動要素14が所定の作動位置の前にある場合にはいつでも第3の段階を含み、第3の段階は、少なくとも1つのブレーキマイクロコントローラ24が可動要素14の速度を一定の最大速度値に制限する一定の速度制限段階であり、前記速度制限段階は時系列的に遷移段階の前に起こる。これは有利には、ユーザが厳しい速度制限に決して驚かないような滑らかな動きを保証し、この特徴はロボット装置の操作の快適性を高めることを可能にし、これは特に手術中の手術ロボット装置の場合に興味深い。
【0083】
従って本発明は、可動要素に接続された1つまたはいくつかのブレーキの位置制御に関するものであり、前記可動要素は内部参照内で精度および正確性を伴って位置決めされる。可動要素は人間の制動力などの1つまたはいくつかの外力によって置き換えられるため、位置が制御されるブレーキは、最終標的構成に到達し、かつ可動要素をこの位置に維持することを目指す。それは減速の細かい制御および目標位置における強力なロックを可能にする。
【国際調査報告】