(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】高スループットスクリーニング装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
G01N35/04 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023547722
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 AU2021051209
(87)【国際公開番号】W WO2022077074
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523141541
【氏名又は名称】アヴィセナ・システムズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ポール・オステルゴー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ワット
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB09
2G058CB15
2G058CC02
2G058CC08
2G058GA01
(57)【要約】
本開示は、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置を提供する。この分析装置は、分析容器を受容するとともに、分析容器に保持されたサンプルに対する1つ以上の処理または分析ステップを実行するように構成された複数のサンプルプロセスステーションを備える。複数の分析容器を受容するように構成された少なくとも1つのインキュベーションステーションを備えたプロセスステーションは、インキュベーションフィールドにおいて各分析容器の各サンプルを照射するとともに、複数の分析容器を所定のインキュベーション温度に維持する。この分析装置は、プロセスステーションそれぞれの間で分析容器を移送するように構成された分析容器移送システムと、インキュベーションフィールドに保持された分析容器中の照射されたサンプルを撮像するように構成された撮像システムと、リソースコントローラと、をさらに備える。リソースコントローラは、分析容器移送システムを制御することと、撮像システムを制御することと、撮像システムから光学的画像情報を受信することと、画像プロセッサに画像情報の処理を指示することと、を行うように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置であって、
サンプル容器の受容および任意選択としてのサンプルの熱不活化、分析容器への移送、ならびに前記分析容器に保持された前記サンプルに対する1つ以上の処理もしくは分析ステップの実行を行うように構成された複数のサンプルプロセスステーションであり、
複数の分析容器を受容することと、
インキュベーションフィールドにおいて前記分析容器を照射することと、
前記複数の分析容器を所定のインキュベーション温度または温度範囲に維持することと、
を行うように構成された少なくとも1つのインキュベーションステーションを備えた、プロセスステーションと、
前記プロセスステーションそれぞれの間で分析容器を移送するように構成された分析容器移送システムと、
前記インキュベーションフィールドに保持された前記分析容器中の照射された前記サンプルを撮像するように構成された撮像システムと、
リソースコントローラであり、
所定の分析プロセススケジュールに従って、前記複数の分析容器を各プロセスステーションに移送し、前記生物学的物質または生化学物質の作成および分析を行うように、前記分析容器移送システムを制御することと、
所定のインキュベーション期間および走査頻度に従って、前記インキュベーションフィールドに保持された前記分析容器を光学的に走査するように、前記撮像システムを制御することと、
前記撮像システムから、前記走査された分析容器の光学的画像情報を受信することと、
画像プロセッサに前記画像情報の処理を指示することと、
を行うように構成された、リソースコントローラと、
を備えた、分析装置。
【請求項2】
各分析容器が、マイクロプレートアッセイである、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記撮像システムが、前記インキュベーションフィールド内に配置された前記分析容器中の照射された前記サンプルから生じた比色信号または蛍光信号を含む画像を記録するように構成された、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記撮像システムが、走査中に移動する構成要素を備えた走査型撮像システムであり、前記コントローラが、前記インキュベーションフィールドに対して分析容器を移送する際の前記分析容器移送システム動作の運動を前記走査型撮像システムの運動に対して調整することにより、前記分析容器移送システムと前記撮像システムとの間の衝突を回避するように構成された、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項5】
動作時に、連続分析動作を可能にしつつ、新たなサンプルを含む分析容器を受け入れるように構成された、請求項1から4のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記生物学的物質または生化学物質の有無に関するサンプルの光学的撮像および分析と同時に、前記サンプルのインキュベーションが実行される、請求項1から5のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項7】
当該分析装置内のサンプルを含む前記分析容器の処理に対する当該分析装置内のリソースの利用を最大化する待ち行列システムとして動作可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記コントローラが、複数のロボットエンティティの移動の調整により前記ロボットエンティティ間の衝突を回避するための予測法に従って動作するように構成された、請求項1から7のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項9】
前記予測法が、システムスループットを最大化するとともにシステムを通じた全体的な分析容器処理遅延を最小化しつつ、共有時空間環境において動作する複数のロボットエンティティの移動の調整(「調整機能」)によって、サブシステム間の衝突を回避する、請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記予測法が、すべてが同じ3D空間連続体において動的に動作する複数のロボット制御エンティティの将来位置を同時に予測するアルゴリズムを実装する、請求項9に記載の分析装置。
【請求項11】
前記分析容器移送システムが、マイクロプレートクレーンシステムである、請求項1から10のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項12】
前記リソースコントローラが、画像プロセッサを用いて前記画像情報を処理することにより、試験中の前記生物学的物質または生化学物質の陽性判定を行うように構成された、請求項1から11のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項13】
前記コントローラが、所定のインキュベーション期間および走査頻度に従って、前記インキュベーションフィールドに保持された前記分析容器を光学的に走査するように、前記撮像システムを制御するように構成された、請求項1から12のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項14】
複数の分析容器を受容するためのサンプルキャリアトレイを備えた、請求項1から13のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項15】
前記インキュベーションステーションが、均一な後方照射を与えるように構成された、請求項1から14のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項16】
各分析容器が、各マイクロプレートアッセイにおける異なる生物学的物質または生化学物質の有無に関するアッセイ試験のため、唯一の分析プロセススケジュールに従って処理される、請求項1から15のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項17】
前記インキュベーションフィールドの各マイクロプレートスロットとそれぞれ関連付けられた複数の光ファイババンドルを備えた、請求項1から14のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項18】
各光ファイババンドルが、それぞれが分析容器キャリアの開口部と一致する位置に案内され、前記分析容器キャリアに保持された分析容器の各サンプルウェルに後方または側方照射を与えるように構成された複数の光ファイバをそれぞれ備えた複数の光ファイバサブバンドルを備えた、請求項1から13のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項19】
前記撮像システムが、前記インキュベーションフィールドに配置された分析容器を撮像するように構成された少なくとも1つの光学カメラを備えた走査型撮像システムである、請求項1から18のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項20】
前記撮像システムが、少なくとも1分当たり1回の速度で前記インキュベーションフィールドの全エリアを撮像するように構成された、請求項1から19のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項21】
前記撮像システムが、2次元走査パスにおいて前記インキュベーションフィールドを走査するように構成された、請求項1から20のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項22】
前記撮像システムが、前記インキュベーションフィールドの全幅にわたる合成視野を与えるように構成された複数の撮像カメラを備え、1次元走査パスにおいて前記インキュベーションフィールドを走査するように構成された、請求項1から21のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項23】
前記撮像システムが、前記インキュベーションフィールドの上方に配置され、前記インキュベーションフィールドに配置された分析容器中のサンプルを撮像するための複数の固定された光学撮像カメラを備えた、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項24】
同時に動作するように構成された請求項1から23のいずれか一項に記載の分析装置を複数備えた分析システムであって、各分析装置の前記リソースコントローラが、利用率に応じて、1つの分析装置内の処理ステーションへの分析容器の移送または分析装置間の分析容器の移送がなされるよう前記分析容器移送システムを制御することによって、当該分析システムの効率を最適化するとともに待ち時間を最小化するように構成された、分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験のための分析装置に関する。
【0002】
本発明は、RNAまたはDNA内のヌクレオチド配列に関する分子試験および分析ならびにスクリーニング試験のためのリアルタイムまたは略リアルタイムのシステムおよび方法のために、方法およびシステムにおいて主に使用するために開発され、以下では、この応用を参照して説明される。しかし、当然のことながら、本発明はこの特定の使用分野に限定されない。
【背景技術】
【0003】
本明細書全体を通じて、背景技術のすべての説明は、そのような背景技術が従来技術であるということの承認であると決して見なされるべきではなく、そのような背景技術が広く知られているか、またはオーストラリアもしくは世界中での本分野における一般的な知識の一部を形成しているということの承認であると決して見なされるべきではない。
【0004】
本明細書において引用されるすべての特許または特許出願を含む、すべての参照は、本明細書に援用されている。いずれかの参照が従来技術を構成するということの承認は、行われない。参照の説明は、それらの作成者が何を主張しているかを述べており、出願者は、引用された文書の正確さおよび適切性に異議を申し立てる権利を保有する。本明細書では複数の従来技術の公開文献が参照されるが、この参照は、これらの文書のいずれかが、オーストラリアまたは任意の他の国での当技術分野における一般的な知識の一部を形成するということの承認を構成しないということが、明確に理解されるであろう。
【0005】
RNAサンプルおよびDNAサンプルは、一般に、米国の生化学者Kary Mullisによって1984年に発明された技術であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR: Polymerase Chain Reaction)などの、DNA増幅技術を使用して分析される。PCR試験のよく知られている最新の形態は、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR: quantitative Real-Time PCR)である。
【0006】
qRT-PCR試験の実行は、分析対象のサンプルの正確な温度サイクルを実行する必要があることに起因して、従来、操作するためにかなりのスキルおよび正確さを必要とする大きく複雑な機器を使用して行われていた。これまで、qRT-PCR機器は、通常、分析プロセスへの入力として、96ウェル形式または384ウェル形式のいずれかの単一のマイクロプレートを使用しており、これが、実行されている試験ワークフローのスループットを制限していた。
【0007】
さらに、qRT-PCRプロセスは、通常、一連の温度サイクルをすべて完了するのに3~8時間を要し、システムの試験スループットに対する別の制約をやはりもたらす。
【0008】
2000年にEikon Corporationによって発明されたループ介在等温増幅と呼ばれる(「LAMP」として知られている)代替のRNA/DNA増幅(診断)技術が、過去20年間にわたって出現した。LAMPは、RNA/DNAサンプルを分析するために、等温(一定温度)環境のみを必要とする。LAMPプロセスの特有の単純さ(すなわち、PCRに必要とされる温度サイクルではなく、等温条件)は、従来のqRT-PCR試験と比較してスループットが改善された診断インフラストラクチャを可能にする。
【0009】
LAMPに基づくDNA増幅プロセスは、高スループットの応用に理想的にする次の利点を有する。第1に、プロセス自体は、ほんの20~30分程度であり得、これは、サンプルの収集および結果の解釈のための時間と組み合わさって、RNA/DNA試験プロセス全体が1時間未満で実行され得るということを意味する。第2に、等温条件を使用するということは、LAMPを使用する分析システムが、分析システムの動作中に、いつでもサンプルを到着させ、離れさせることができるということを意味する。LAMP分析のスループットまたは待ち時間を不必要に妨げることがあるバッチ処理制約は、存在しない。
【0010】
LAMP試験システムの現在の実装は、これまで、LAMP RNA/DNA増幅の大きさを変更する可能性を通常は最大限に利用しなかった。特に、既存のLAMP試験またはアッセイシステムは、手動での操作に依存するか、またはカートリッジに基づく分析アーキテクチャに依存し、これらは両方とも、サンプルの分析速度全体のスループットを実質的に制約する。
【0011】
RNAまたはDNA内のヌクレオチド配列に関する高スループット分子スクリーニング試験(「分子アッセイ」)は、従来、複数の「ウェル」を有する平坦な「SBS形式」のプレートを備えているマルチアッセイコンテナ(multi-assay container)上のマルチサンプルアッセイ(multi-sample assay)を使用しており、各ウェルは、1951年にハンガリーのGyula Takatsy博士によって発明された、小さいサンプルおよび試薬容器(「マイクロプレート」または「マイクロタイタープレート」)として機能する。それ以来、マイクロプレートは、分析研究および臨床診断試験研究所における標準的なツールになった。
【0012】
大規模なアッセイを実施するための研究ワークフローは、従来、「チェーンワークフロー」内で動作し、線形な逐次的方法でマイクロプレート上のアッセイを一度に1段階ずつ処理する、一連の独立した機械を備えていた。
【0013】
マイクロプレートは、特定のマイクロプレートに含まれている多数の個別のアッセイの並列分析を可能にする。しかし、ワークフロー全体の全体的スループットは、通常、チェーン内の最も遅いリンクによって依然として制約され、したがって、システムを通るマイクロプレートの全体的スループットおよび多数のサンプルの試験速度を制約する。しばしばボトルネックは、反応がインキュベートされ、その後(または同時に)分析される、チェーン内の最後または最後から2番目のステップである。例えば、研究所内でDNAを増幅してDNAサンプル内の特定のヌクレオチド配列を検出またはスクリーニングするためにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析を実施する場合、最後の処理ステップは、通常、1つのマイクロプレートにつき3~8時間を要する可能性がある。
【0014】
このボトルネックのステップは、通常、複雑で高価な機械(例えば、2020年中期の時点で現在市販されている大きい「高スループット」のPCR計器のいずれか)によって実行され、コスト、技術者の可用性、または機械の可用性(供給)のいずれかの観点から、研究所が、並列機械を使用してチェーン内のこの制約されたステップの大きさを変更するのを困難にする。
【0015】
通常、中程度のスループットの分子アッセイ計器(molecular assay instruments)でさえ、一度に制限されたサンプルのセットのみに対して、インキュベーションステップが行われ、かつ/または例えば、比色分析が行われる、個別のステーションを含んでいる。そのような構成に従って、そのようなステップが行われるために、マイクロタイタープレートは、通常、ロボット制御でこれらのステーションに移動される。これらの制約は、現在使用できる手法の柔軟性を制限し、したがって、すべてのサンプルのインキュベーションのすべての段階での結果を、原位置で同時にリアルタイムに報告する機会を制限する。
【0016】
RNA試験の標準的な方法である逆転写(RT)後の定量的PCR(qPCR)は、非常に敏感であるが、高価な計測を必要とする。ループ介在等温増幅(LAMP)は、より高速であり、より少ないリソースを必要とする、qPCRの代替手段である。逆転写ループ介在等温増幅(RT-LAMP)は、RNAウイルスによって引き起こされた感染病を診断するために使用され得る、RNAの特定の配列を増やすための1ステップの核酸増幅方法である。RT-LAMPは、LAMP DNA検出を逆転写と組み合わせて、反応を実行する前にRNAからcDNAを作成する。RT-LAMPは、(PCRとは異なって)熱サイクルを必要とせず、RT-LAMP試験方法では一般的である60~70℃の一定温度で実行される。RT-LAMP技術は、ジカウイルス、インフルエンザ、SARS、MERS、およびSARS-coV-2などの病原体に感染しているおそれがある人の早期診断のための、RT-PCRのより安価で容易な代替手段として、サポートされている。
【0017】
特定の管轄区域内の重大な特許侵害の異議申し立て(freedom-to-operate challenges)を伴わない試験を生み出すことを合法的に可能にする、オープンアクセスのLAMP試験設計(LAMP test designs)(遺伝子組み換えタンパク質を含む)が存在する。側方流動による古典的な簡易試験とは対照的に、RT-LAMPは、ウイルスのRNAを試験することによって、病気の早期診断を可能にする。事前のRNA分離なしで試験が行われることが可能であり、したがって、綿棒または唾液から直接ウイルスを検出することを可能にする。RT-LAMPは、インフルエンザ、SARSおよびMERSウイルス、ならびにエボラウイルスなどのRNAウイルス(ボルチモアウイルス分類システム(Baltimore Virus Classification system)でのグループII、IV、およびV)の検出において使用され、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)コロナウイルスによって引き起こされたコロナウイルス感染症2019(COVID-19)に感染した個人を検出することにおいて効果的であるということが示されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0018】
また、より重大なこととして、ほぼすべての現在の比色LAMPプロトコル(colorimetric LAMP protocols)(RT-LAMPを含む)は、十分なLAMP反応時間を前提として、ほとんどまたはすべての陰性サンプルが最終的に陽性に変わるという重大な欠点を有する。したがって、RT-LAMPの主要な信号対ノイズ比は、LAMPアッセイの感度および特定性を最終的に制限する。
【0019】
当業者は、本明細書において開示された計測が、非特許文献2に記載された技術を含むが、これに限定されない、一連の核酸増幅技術に適用可能であるということを認識するであろう。
【0020】
例えば、本明細書において開示された方法は、古典的なLAMPに加えて、RAMP、QUASR-LAMP、DARQ-LAMP、MD-LAMP(非特許文献3)などのLAMP自体の変形、および以下を含む他の等温増幅方法などの、一連の他の迅速な等温核酸検出方法に適用され得る。
・ローリングサークル増幅(RCA: Rolling Circle Amplification) NASBA(核酸配列に基づく増幅: Nucleic acid sequence-based amplification)は、RNAを増幅するために使用される方法である。
・一定温度での試験管内のDNA増幅のために、ヘリカーゼの二本鎖DNAの巻き戻し活性を使用してらせん構造を分離する、HAD(ヘリカーゼ依存性増幅: Helicase-dependent amplification)。
・RCAローリングサークル増幅は、円形のDNAテンプレートおよび短いDNAまたはRNAプライマから開始して、一本鎖分子に沿って形成する。
・RTF-EXPAR
・LAMP CRISPR、または
・MDA(多重置換増幅: Multiple displacement amplification)は、複数のランダムなプライマがDNAテンプレートにアニールされ、一定温度でポリメラーゼがDNAを増幅するときに開始する技術である。
【0021】
当業者は、本明細書において開示された計測が、LAMPseq(非特許文献4を参照)またはLamPOREを含むが、これらに限定されない、次世代のシーケンシングおよびLAMP技術を組み合わせる技術にも同様に適用され得るということを認識するであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Viet Loan Dao Thi他、Science Translational Medicine 12 Aug 2020: Vol. 12、Issue 556、eabc7075、DOI: 10.1126/scitranslmed.abc7075
【非特許文献2】Fakruddin、MD他、「Nucleic acid amplification: Alternative methods of polymerase chain reaction」、Journal of pharmacy and bioallied sciences、Vol. 5,4 (2013): 245-52. doi:10.4103/0975-7406.120066
【非特許文献3】Becherer他(2018) Anal. Chem、90、4741~4748頁
【非特許文献4】chmid-Burgk, J. L他、LAMP-Seq: Population-Scale COVID-19 Diagnostics Using a Compressed Barcode Space. Biorxiv 2020.04.06.025635 (2020) doi:10.1101/2020.04.06.025635
【非特許文献5】Australroads Ltd (2015), Guide to Traffic Management Part 2, 第2章、第4.3章、および表3.1
【非特許文献6】Al Ajarmeh, Stochastic Modeling and Time-to-event Analysis of VoIP Traffic(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、特に、2020年のコロナウイルスCOVID-19のパンデミックなどのパンデミックの際の集団の高速、正確、かつ包括的な試験のために、多数の分子/DNA/RNAサンプルのリアルタイムまたは略リアルタイムの試験および分析のための高スループットの試験装置における大幅な改良に対する必要性が存在する。
【0024】
統合サンプル調製および不活化能力、時間の経過に伴う信号発生の継続的監視の能力、ならびに定常状態のワークフローにおいて新しいサンプルが追加され、完了したサンプルが除去されて、連続的に稼働できる機器などの、試験機器における改良に対する必要性も存在する。また、計器が稼働しているときにサンプルプレートの除去または追加を可能にする能力は、相補的スクリーニング技術を使用するサンプルの再試験または推定陽性サンプルの妥当性確認を可能にするため、そのような計器をよりいっそう柔軟にする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
現在利用可能なシステムのスループットの制約を克服し、リアルタイムまたはそれに近いサンプル分析に近づくため、メカニズムおよび方法を展開することができる。本明細書に記載のシステムおよび方法は、エンドツーエンドの分子アッセイシステムおよび分子分析ワークフローのスループットを1桁以上、少なくとも2桁まで大幅にコスト効率よく改善することにより、機械による1時間当たり数千のアッセイの実行および1日当たり数十万のアッセイの完了を可能にする。重要なこととして、本明細書に開示の装置構成では、定常状態または準定常状態のワークフローの作成を唯一可能とするため、新たなマイクロタイタープレート(例えば、96ウェルまたは384ウェル)をランダムな間隔で連続または半連続的に供給可能である。また、後述の通りワークフローの中断を最小限に抑えつつ、稼働中のシステムから個々のプレートを一時的または永久的に取り外すことも可能である。
【0026】
本明細書に記載のシステムをLAMPseqプロトコルに適応させるには、LAMP反応中にバーコード付きプライマ(個別またはプール)をアンプリコンに組み込むだけでよいため、システムから出る反応生成物は、後続の次世代シーケンシング用のテンプレートをすでに含んでいることになる。当業者は、このような用途の場合、後続のシーケンシングステップの数(および、コスト)を制限するため、本明細書に記載のような初めての比色または蛍光アッセイを組み込み可能である(ただし、必ずしも必要ではない)ことを認識している。
【0027】
第1の態様において、本発明は、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置であって、
サンプル容器の受容および任意選択としてのサンプルの熱不活化、分析容器への移送、ならびに分析容器に保持されたサンプルに対する1つ以上の処理もしくは分析ステップの実行を行うように構成された複数のサンプルプロセスステーションであり、
複数の分析容器を受容することと、
インキュベーションフィールドにおいて分析容器を照射することと、
複数の分析容器を所定のインキュベーション温度または温度範囲に維持することと、
を行うように構成された少なくとも1つのインキュベーションステーションを備えた、プロセスステーションと、
プロセスステーションそれぞれの間で分析容器を移送するように構成された分析容器移送システムと、
インキュベーションフィールドに保持された分析容器中の照射されたサンプルを撮像するように構成された撮像システムと、
リソースコントローラであり、
所定の分析プロセススケジュールに従って、複数の分析容器を各プロセスステーションに移送し、生物学的物質または生化学物質の作成および分析を行うように、分析容器移送システムを制御することと、
所定のインキュベーション期間および走査頻度に従って、インキュベーションフィールドに保持された分析容器を光学的に走査するように、撮像システムを制御することと、
撮像システムから、走査された分析容器の光学的画像情報を受信することと、
画像プロセッサに画像情報の処理を指示することと、
を行うように構成された、リソースコントローラと、
を備えた、分析装置を提供する。
【0028】
特定の一実施形態において、各分析容器は、マイクロプレートアッセイである。
【0029】
撮像システムは、インキュベーションフィールド内に配置された分析容器中の照射されたサンプルから生じた比色信号または蛍光信号を含む画像を記録するように構成されていてもよい。
【0030】
一実施形態において、撮像システムは、走査中に移動する構成要素を備えた走査型撮像システムであり、コントローラは、インキュベーションフィールドに対して分析容器を移送する際の分析容器移送システム動作の運動を走査型撮像システムの運動に対して調整することにより、分析容器移送システムと撮像システムとの間の衝突を回避するとともに、新たな分析容器がインキュベーションフィールド中の空スロットにアクセスする待ち時間を最小化するように構成されている。
【0031】
この分析装置は、動作時に、連続分析動作を可能にしつつ、新たなサンプルを含む分析容器を受け入れるように構成されていてもよい。
【0032】
生物学的物質または生化学物質の有無に関するサンプルの光学的撮像および分析と同時に、分析容器のウェルにおけるサンプルのインキュベーションが実行されるようになっていてもよい。
【0033】
この分析装置は、当該分析装置内のサンプルを含む分析容器の処理に対する当該分析装置内のリソースの利用を最大化する待ち行列システムとして動作可能であってもよい。さらに、コントローラは、複数のロボットエンティティの移動の調整によるロボットエンティティ間の衝突の回避または希少なリソース(利用可能なインキュベーションスロット等)にアクセスする待ち時間の最小化のための予測法に従って動作するように構成されていてもよい。予測法は、分析装置のスループットを最大化するとともに分析装置を通じた全体的な分析容器処理遅延を最小化しつつ、共有時空間環境において動作する複数のロボットエンティティの移動の調整(「調整機能」)によって、サブシステム間の衝突を回避するようにしてもよい。予測法は、
・すべてが同じ3D空間連続体において動的に動作する複数のロボット制御エンティティの将来位置を同時に予測するアルゴリズムを実装する方法、
・前記複数のロボット制御エンティティと関連付けられた将来の3D軌道の集合体(「事前集合体」)をさらに計算する上述のような方法、
・他のエンティティの状態を使用して、将来の計画された3D軌道のタイミングを決定する上述のような方法、
・上記タイミングを使用して、将来の潜在的な衝突の4D時空間集合体を作成する上述のような方法、
・将来の潜在的な衝突の集合体を使用して、前記複数のロボット制御エンティティと関連付けられた将来の3D軌道の最適な代替集合体を計算する上述のような方法(計画されたすべての衝突が排除される(「事後集合体」))、
・スケジューリングされた将来の3D軌道の事後集合体で事前集合体を置き換えることにより将来の衝突を防止する上述のような方法、
のうちの1つであってもよい。
【0034】
分析容器移送システムは、マイクロプレートクレーンシステムであってもよい。さらに、リソースコントローラは、画像プロセッサを用いて画像情報を処理することにより、試験中の生物学的物質または生化学物質の陽性判定を行うように構成されていてもよい。
【0035】
コントローラは、所定のインキュベーション期間および走査頻度に従って、インキュベーションフィールドに保持された分析容器を光学的に走査するように、撮像システムを制御するように構成されていてもよい。この分析装置は、複数の分析容器を受容するためのサンプルキャリアトレイを備えていてもよい。インキュベーションステーションは、均一な後方照射または側方照射を与えるように構成されていてもよい。各分析容器は、各マイクロプレートアッセイにおける異なる生物学的物質または生化学物質の有無に関するアッセイ試験のため、唯一の分析プロセススケジュールに従って処理されるようになっていてもよい。
【0036】
この分析装置は、インキュベーションフィールドの各マイクロプレートスロットとそれぞれ関連付けられた複数の光ファイババンドルを備えていてもよい。各光ファイババンドルは、それぞれが分析容器キャリアの開口部と一致する位置に案内され、分析容器キャリアに保持された分析容器の各サンプルウェルに後方または側方照射を与えるように構成された複数の光ファイバをそれぞれ備えた複数の光ファイバサブバンドルを備えていてもよい。
【0037】
撮像システムは、インキュベーションフィールドに配置された分析容器を撮像するように構成された少なくとも1つの光学カメラを備えた走査型撮像システムであってもよい。撮像システムは、少なくとも1分当たり1回の速度でインキュベーションフィールドの全エリアを撮像するように構成されていてもよい。
【0038】
また、撮像システムは、2次元走査パスにおいてインキュベーションフィールドを走査するように構成されていてもよい。
【0039】
さらに、撮像システムは、インキュベーションフィールドの全幅にわたる合成視野を与えるように構成された複数の撮像カメラを備え、1次元走査パスにおいてインキュベーションフィールドを走査するように構成されていてもよい。
【0040】
あるいは、撮像システムは、インキュベーションフィールドの上方に配置され、インキュベーションフィールドに配置された分析容器中のサンプルを撮像するための複数の固定された光学撮像カメラを備えていてもよい。
【0041】
第2の態様において、本発明は、同時に動作するように構成された本発明の第1の態様に記載の分析装置を複数備えた分析システムであって、各分析装置のリソースコントローラが、利用率に応じて、1つの分析装置内の処理ステーションへの分析容器の移送または分析装置間の分析容器の移送がなされるよう分析容器移送システムを制御することによって、当該分析システムの効率を最適化するとともに待ち時間を最小化するように構成された、分析システムを提供する。
【0042】
また、本開示は、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置であって、
マイクロプレートアッセイに適合した形式で配置された複数のサンプルを受容するためのサンプルキャリアトレイと、
サンプルのアリコートをマイクロプレートアッセイの個々のウェルに移送し、(プレートが予め充填されていない場合)所定量のLAMP試薬をマイクロプレートアッセイの個々のウェルに移送するように構成された液体処理手段を備えたサンプル調製ステーションと、
サンプル調製ステーションから調製されたマイクロプレートアッセイを受容するように構成された任意選択としてのサンプル待ち行列ステーションと、
待ち行列ステーションからマイクロプレートアッセイを受容し、マイクロプレートアッセイのサンプル含有ウェルを封止するように構成された任意選択としてのマイクロプレート封止ステーションと、
インキュベーションステーションであり、
マイクロプレートアッセイを受容するように構成された複数のマイクロプレートスロットの規則的アレイを備えたインキュベーションフィールドと、
マイクロプレートのサンプルウェルにおける酵素の活性化のための所定の温度にインキュベーションフィールドを維持するように構成されたインキュベーションコントローラと、
インキュベーションフィールドの直下に配置され、インキュベーションフィールドのマイクロプレートスロットに配置されたマイクロプレートの個々のサンプルウェルに均一な後方照射を与えるように構成された光源と、
インキュベーションフィールドの直下に配置可能な温度調節手段と、
インキュベーションフィールドのマイクロプレートスロットに配置されたマイクロプレートの後方照射または側方照射されたサンプルウェルを撮像するように構成された撮像システムと、
インキュベーションフィールドから使用済みマイクロプレートを受容して、使用済みマイクロプレートのウェル中のサンプルを廃棄するように構成されたマイクロプレート廃棄ステーションと、
所定の分析プロセススケジュールに従って、サンプル調製ステーション、サンプル待ち行列ステーション、(任意選択としての)マイクロプレート封止ステーション、インキュベーションステーション、およびマイクロプレート廃棄ステーション間でマイクロプレートアッセイを移送するように構成されたマイクロプレートクレーンシステムと、
を備えた、インキュベーションステーションと、
リソースコントローラであり、
所定の分析プロセススケジュールに従って、複数のマイクロプレートアッセイを各ステーションに移送し、生物学的物質または生化学物質の作成および分析を行うように、マイクロプレートクレーンシステムを制御することと、
所定のインキュベーション期間および走査頻度に従って、インキュベーションフィールドに配置されたマイクロプレートを光学的に走査するように、撮像システムを制御することと、
撮像システムから、走査されたマイクロプレートの光学的画像情報を受信することと、
画像プロセッサを用いて画像情報を処理することにより、インキュベーションフィールドにおける各マイクロプレート中の後方照射された各サンプルウェルの最適化画像を生成することと、
インキュベーション時間に蓄積されたマイクロプレートの集合画像を解析することにより、試験中の生物学的物質または生化学物質の陽性判定を行うことと、
を行うように構成された、リソースコントローラと、
を備えた、分析装置を提供する。
【0043】
サンプルキャリアトレイは、サンプルの複数のマイクロプレートアッセイへの移送に適合した形式であってもよい。
【0044】
マイクロプレートキャリアは、マイクロプレートの個々のサンプルウェルを受容するように構成された複数の開口部を備えていてもよい。複数の開口部はそれぞれ、マイクロプレートキャリアの全厚にわたって延びることにより、開口部に配置されたサンプルウェルの後方照射を可能にし得る。
【0045】
インキュベーションステーションの温度調節手段は、インキュベーションフィールドの直下に配置された流体槽を備えていてもよい。槽中の流体は油性または水性であるのが好ましいものの、本開示の目的のため、使用する流体に関わらず、本明細書においては「水槽」と称するものとする。水槽の温度は、インキュベーションコントローラによる制御によって、インキュベーションフィールドのスロットにおけるマイクロプレートのウェル中のサンプルを所定のインキュベーション温度に維持し得る。上記実施形態の変形例において、インキュベーションステーションの温度調節手段は、固体ヒータまたは空気ヒータを備えていてもよい。
【0046】
光源は、均一な照明をインキュベーションフィールドに与えるように構成されたライトパネルを備えていてもよい。均一な照明は、均一な後方照射、上方照射、または側方照射であってもよい。
【0047】
あるいは、光源は、インキュベーションフィールドの各マイクロプレートスロットとそれぞれ関連付けられた複数の光ファイババンドルを備えていてもよい。各光ファイババンドルは、それぞれが複数の光ファイバを備えた複数の光ファイバサブバンドルを備えていてもよい。各光ファイバは、マイクロプレートキャリアの開口部と一致する位置に案内され、マイクロプレートキャリアに保持されたマイクロプレートの各サンプルウェルに下方または側方照射を与えるように構成されていてもよい。
【0048】
このような実施形態においては、マイクロプレートキャリアにおいて個々のウェルに案内される光の波長をフィルタ、回折格子、プリズム、またはファイバの他端の特定の光源の変更によって変更または制限することにより、例えば、反応中の特定のフルオロフォアを励起可能となり得る。また、上記実施形態の一変形例においては、異なる波長のLEDの取り付けおよび選択的な制御によって所望の色の照射光を実現する照射パネルを使用することにより、波長の変化を実現することも可能である。
【0049】
撮像システムは、インキュベーションフィールドに配置されたマイクロプレートを撮像するように構成された少なくとも1つ以上の光学カメラ、光電子増倍管、またはフォトダイオードを備えた走査型撮像システムを備えていてもよい。撮像システムは、所定のスケジュールに従ってインキュベーションフィールドを走査するように構成されていてもよい。撮像システムは、少なくとも1分当たり1回の速度でインキュベーションフィールドの全エリアを光学的に撮像するように構成されていてもよい。撮像システムは、2次元走査パスにおいてインキュベーションフィールドを走査するように構成されていてもよい。
【0050】
あるいは、撮像システムは、インキュベーションフィールドの全幅にわたる合成視野を与えるように構成された複数の撮像カメラを備え、1次元走査パスにおいてインキュベーションフィールドを走査するように構成されていてもよい。
【0051】
あるいは、撮像システムは、インキュベーションフィールドの上方に配置され、インキュベーションフィールドに配置されたマイクロプレートを撮像するための複数の固定された光学撮像カメラならびに/またはフォトダイオードもしくは光電子増倍管を備えていてもよい。
【0052】
撮像システムは、インキュベーションフィールド内に配置されたマイクロプレートにおける複数のウェル中の後方照射、側方照射、または上方照射されたサンプルから生じた比色信号または蛍光信号を含む画像を記録するように構成されていてもよい。
【0053】
リソースコントローラは、インキュベーションフィールドに対してマイクロプレートを移送する際のマイクロプレートクレーン動作の運動を走査型撮像システムの運動に対して調整することにより、衝突を回避して、インキュベーションスロット等の希少なリソースへのアクセスの待ち時間の最小化またはマイクロプレートクレーンと撮像システムとの間の撮像ワークフローの最適化を図るように構成されていてもよい。
【0054】
この分析装置は、動作時に、連続分析動作を可能にしつつ、新たなマイクレプレートサンプルを受け入れるように構成されていてもよい。
【0055】
マイクロプレートの集合画像の解析には、サンプルが生物学的物質または生化学物質の有無の陽性表示を示す時間の関連付けによって、サンプルに存在する生物学的物質または生化学物質の濃度の表示を決定することを含む。
【0056】
生物学的物質または生化学物質の有無に関するサンプルの光学的撮像および分析と同時に、マイクロプレートのウェルにおけるサンプルのインキュベーションが実行されるようになっていてもよい。
【0057】
各マイクロプレートは、各マイクロプレートアッセイにおける異なる生物学的物質または生化学物質の有無に関するアッセイ試験のため、唯一の分析プロセススケジュールに従って処理されるようになっていてもよい。
【0058】
本開示は、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験を提供するための方法であって、
複数のマイクロプレートアッセイへの移送に適合した形式のサンプルキャリアトレイを用意するステップと、
所定の分析プロセススケジュールに従って、分析装置のサンプル調製ステーションと分析ステーションとの間でマイクロプレートアッセイを移送するように構成されたマイクロプレートクレーンシステムを用意するステップと、
マイクロプレートクレーンを使用して、受容したマイクロプレートアッセイを、液体処理手段を備えたサンプル調製ステーションに移送するとともに、サンプルのアリコートをマイクロプレートアッセイの個々のウェルに移送し、所定量のLAMP試薬をマイクロプレートアッセイの個々のウェルに移送するステップと、
マイクロプレートクレーンを使用して、調製したマイクロプレートアッセイをサンプル待ち行列ステーションに移送するステップと、
マイクロプレートクレーンを使用して、待ち行列に入れたマイクロプレートアッセイをマイクロプレート封止ステーションに移送し、マイクロプレートアッセイのサンプル含有ウェルを封止するステップと、
インキュベーションステーションを用意するステップであり、インキュベーションステーションが、
封止可能なマイクロプレートアッセイを受容するように構成された複数のマイクロプレートスロットの規則的アレイを備えたインキュベーションフィールドと、
マイクロプレートのサンプルウェルにおける酵素の活性化のための所定の温度にインキュベーションフィールドを維持するように構成されたインキュベーションコントローラと、
インキュベーションフィールドの直下もしくは隣に配置可能な直接光源または光ファイバを介して案内される間接光源で、インキュベーションフィールドのマイクロプレートスロットに配置されたマイクロプレートの個々のサンプルウェルに均一な後方照射または側方照射を与えるように構成された、直接光源または間接光源と、
インキュベーションフィールドの直下に配置された温度調節手段と、
を備えた、ステップと、
インキュベーションフィールドのマイクロプレートスロットに配置されたマイクロプレートの後方照射または側方照射されたサンプルウェルを撮像するように構成された撮像システムを用意するステップと、
インキュベーションフィールドにおいて後方照射されたサンプルの画像を受信するステップと、
受信した画像を処理して、1つ以上のマイクロプレートサンプルウェルにおける生物学的物質または生化学物質の有無を示す比色および/または蛍光画像データを決定するステップと、
マイクロプレートクレーンを使用して、分析済みのマイクロプレートをマイクロプレート廃棄ステーションに移送し、使用済みマイクロプレートのウェル中のサンプルを廃棄するステップと、
リソースコントローラを用意するステップであり、リソースコントローラが、
所定の分析プロセススケジュールに従って、複数のマイクロプレートアッセイを各ステーションに移送し、生物学的物質または生化学物質の作成および分析を行うように、マイクロプレートクレーンシステムを制御することと、
所定のインキュベーション期間および走査頻度に従って、インキュベーションフィールドに配置されたマイクロプレートを光学的に走査するように、撮像システムを制御することと、
撮像システムから、走査されたマイクロプレートの光学的画像情報を受信することと、
画像プロセッサを用いて画像情報を処理することにより、インキュベーションフィールドにおける各マイクロプレート中の後方照射または側方照射された各サンプルウェルの集合画像または最適化画像を生成することと、
マイクロプレートの集合画像を解析することにより、試験中の生物学的物質または生化学物質の陽性判定を行うことと、
を行うように構成された、ステップと、
を含む、方法をさらに提供する。
【0059】
また、本開示は、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置であって、
唯一のウェルに複数のサンプルがそれぞれ保持される複数のマイクロプレートアッセイにサンプルを移送するための形式のサンプルキャリアトレイと、
マイクロプレートアッセイを受容するとともに、マイクロプレートアッセイに保持されたサンプルに対する1つ以上の処理または分析ステップを実行するように構成された複数のサンプルプロセスステーションであり、
複数のマイクロプレートアッセイを受容することと、
インキュベーションフィールドにおける各マイクロプレートアッセイの各サンプルウェルに均一な後方照射または側方照射を与えることと、
複数のマイクロプレートアッセイを所定のインキュベーション温度または温度範囲に維持することと、
を行うように構成された少なくとも1つのインキュベーションステーションを備えた、複数のプロセスステーションと、
プロセスステーションそれぞれの間でマイクロプレートアッセイを移送するように構成されたマイクロプレートクレーンシステムと、
インキュベーションフィールドに保持されたマイクロプレートの後方照射または側方照射されたサンプルウェルを撮像するように構成された撮像システムと、
リソースコントローラであり、
所定の分析プロセススケジュールに従って、複数のマイクロプレートアッセイを各プロセスステーションに移送し、生物学的物質または生化学物質の作成および分析を行うように、マイクロプレートクレーンシステムを制御することと、
所定のインキュベーション期間および走査頻度に従って、インキュベーションフィールドに保持されたマイクロプレートを光学的に走査するように、撮像システムを制御することと、
撮像システムから、走査されたマイクロプレートの光学的画像情報を受信することと、
画像プロセッサを用いて画像情報を処理することにより、試験中の生物学的物質または生化学物質の陽性判定を行うことと、
を行うように構成された、リソースコントローラと、
を備えた、分析装置を提供する。
【0060】
リソースコントローラは、二重鎖融解曲線を決定するための蛍光アニーリングキネティクスまたは(LAMPseqの場合の)次世代シーケンシング等の後続の分析に対して、推定陽性サンプルを含むプレートを案内するようにさらに構成されていてもよい。
【0061】
リソースコントローラはさらに、分析の異なる段階のプレートを生物学的アッセイの異なる段階に対応する異なる温度で動作するインキュベーションステーションに案内するように構成されていてもよい。
【0062】
本発明の範囲に含まれ得るその他任意の形態にも関わらず、以下では、添付の図面を参照しつつ、本発明の1つ/複数の好適な実施形態を説明するが、これらはほんの一例に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明の実施形態に従って、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置10を使用する方法のフローチャートである。
【
図2A】本発明の実施形態に従って、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置20の透視図である。
【
図2B】本発明の実施形態に従って、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置20の上面図である。
【
図3】本発明のさらなる実施形態に従って、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置100の透視図である。
【
図4】
図3に示された自動化された分析装置の側面図である。
【
図5】
図2~
図4に示された分析装置において使用される試験用のサンプルのマイクロプレートアレイを受容するためのブロックの斜視透視図および側断面図を示す図である。
【
図6】
図2~
図4に示された分析装置において使用される構成要素を示す図である。
【
図7A】
図2~
図4に示された分析装置を使用するサンプルの後方照射を示す図である。
【
図7B】
図2~
図4に示された分析装置を使用するサンプルの後方照射を示す図である。
【
図8】
図2~
図4に示された分析装置の変形を使用するサンプルの後方照射を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に従って、分析装置を使用して、複数のカメラによって撮像され、ストリップに直線的にセグメント化され、完全なマイクロプレート画像に再び組み立てられている、個別のマイクロプレートウェルの直線ストリップ画像分析(linear strip image analysis)を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に従って、分析装置を使用して、複数のカメラによって撮像され、グリッドレイアウトに従って、より小さいセグメントに分割され、完全なマイクロプレート画像に再び組み立てられている、個別のマイクロプレートウェルの行列セグメント化画像分析(matrix segmented image analysis)の表現である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
定義
以下の定義は、一般的な定義として提供するものであり、本発明の範囲をこれらの用語のみに限定すべきではないが、以下の説明をより深く理解できるように提示する。
【0065】
別途の定義のない限り、本明細書に使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者による通常の理解と同じ意味を有する。本明細書に使用する用語は、本明細書および関連する技術の背景におけるそれぞれの意味と矛盾しない意味を有するものと解釈すべきであり、本明細書における明示的な定義のない限り、理想的または過度に形式的な意味では解釈されないことがさらに了解される。本発明の目的のため、追加の用語を以下に定義する。さらに、本書において規定および使用するすべての定義は、特定の用語の意味について疑義がある場合(この場合は、当該用語の一般的な辞書の定義および/または一般的用法が優先される)を除き、辞書の定義、援用する文献における定義、および/または定義された用語の通常の意味に優先されることが了解されるものとする。
【0066】
本発明の目的のため、以下の用語を定義する。
【0067】
本明細書において、冠詞「a」および「an」は、当該冠詞の文法的目的語のうちの1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を表すために使用する。一例として、「要素(an element)」は、1つ以上の要素を表す。
【0068】
本明細書において、用語「およそ(about)」は、基準量に対して30%程度、好ましくは20%程度、より好ましくは10%程度まで変化する量を表すために使用する。数字を修飾するための単語「およそ(about)」の使用は、当該数字が正確な値として解釈されないことを明示しているに過ぎない。
【0069】
本明細書の全体を通して、文脈上の別段の必要性のない限り、単語「備える(comprise、comprises、およびcomprising)」は、記載のステップもしくは要素またはステップ群もしくは要素群を含むことを暗示する一方、その他任意のステップもしくは要素またはステップ群もしくは要素群の除外を暗示するものではないことが了解される。
【0070】
また、本明細書において使用する用語「含む(including)」または「~を含む(which includesもしくはthat includes)」のいずれか1つについても、当該用語に続く要素/特徴を少なくとも含むことを意味する一方、その他を除外するものではないオープンターム(open term)である。したがって、「含む(including)」は、「備える(comprising)」と同義であり、これを意味する。
【0071】
特許請求の範囲の他、上記概要および以下の説明において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「持つ(carrying)」、「有する(having)」、「包含する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「~で構成される(composed of)」等のすべての移行句は、オープンエンドすなわち「~を含むが、これらに限定されない」を意味するものと了解される。移行句「~から成る(consisting of)」および「~から本質的に成る(consisting essentially of)」だけはそれぞれ、閉じた移行句または半分閉じた移行句であるものとする。
【0072】
本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用可能であるが、好ましい方法および材料について説明する。当然のことながら、本明細書に記載の方法、装置、およびシステムは、多様な目的で多様な方法にて実現可能である。ここに記載するものは、ほんの一例に過ぎない。
【0073】
用語「リアルタイム(real-time)」(例えば、「リアルタイムデータを表示する」)は、システムの処理限界およびデータの正確な測定に要する時間を所与として、意図的な遅延のないデータの表示を表す。同様に、「リアルタイム」で発生するプロセスは、意図的な遅延のないプロセスの動作、または、何らかの動作が発生するタイミングと同時(または、ほぼ同時)に生じることを表す。
【0074】
用語「略リアルタイム(near-real-time)」(例えば、「リアルタイムまたは略リアルタイムデータを取得する」)は、意図的な遅延のないデータの取得(「リアルタイム」)または現実的に可能な限りリアルタイムに近い(すなわち、データの取得ならびに記録もしくは送信のためのシステムの制約および処理限界内で意図的であるか否かに関わらず、わずかな(ただし、最小限の)遅延での)データの取得を表す。
【0075】
用語「開放定常状態(open steady state)」プロセスは、システムに対するバランスの良い出力および入力によって、時間が変化してもある装置のすべての点が一定である状況を表す。このようなシステムは、関心期間にわたるシステム内の材料の蓄積を回避するため、当該システムの各要素を通る流路における質量流量を一定に保つことができる。
【0076】
本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用可能であるが、好ましい方法および材料について説明する。当然のことながら、本明細書に記載の方法、装置、およびシステムは、多様な目的で多様な方法にて実現可能である。ここに記載するものは、ほんの一例に過ぎない。
【0077】
本明細書において、用語「例示的(exemplary)」は、本質を示すのではなく、例を与える意味で使用する。すなわち、「例示的な実施形態」は必ずしも、例えば、望ましいモデルとしての機能またはその種の最良の表現を果たす例示的な本質の一実施形態ではなく、一例として提供される一実施形態である。
【0078】
また、さまざまな発明概念を1つ以上の方法として具現化可能であり、その一例を提供している。この方法の一部として実行される動作は、任意好適な方法で順序付け可能である。したがって、図示と異なる順序で動作が実行される実施形態を構成可能であり、例示的な実施形態においては連続した動作として示すいくつかの動作を同時に実行することを含み得る。
【0079】
本明細書および特許請求の範囲において使用する表現「および/または(and/or)」は、そのように結合された要素の「一方または両方」、すなわち、ある場合には結合されて存在し、他の場合には分離されて存在する要素を意味することが了解されるものとする。「および/または」で列挙する複数の要素は、同じように(すなわち、このように結合された要素のうちの「1つ以上」として)解釈すべきである。「および/または」表現により具体的に識別される要素以外に、これらの具体的に識別される要素と関連するか否かに関わらず、他の要素が任意選択として存在していてもよい。このため、非限定的な一例として、「Aおよび/またはB」の言及は、「備える(comprising)」等のオープンエンド表現と併用する場合、例えば、一実施形態においてはAのみ(任意選択として、B以外の要素を含む)を表し、別の実施形態においてはBのみ(任意選択として、A以外の要素を含む)を表し、さらに別の実施形態においてはAおよびBの両者(任意選択として、他の要素を含む)を表し得る。
【0080】
本明細書および特許請求の範囲において、「または(or)」は、上記定義の「および/または(and/or)」と同じ意味を有することが了解されるものとする。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または(or)」あるいは「および/または(and/or)」は、包括的であること、すなわち、多くの要素もしくはそのリスト、ならびに任意選択として、付加的なリスト以外の項目のうちの少なくとも1つ(ただし、2つ以上も含む)を含むものとして解釈されるものとする。「~のうちの1つのみ(only one of)」または「~のうちの厳密に1つ(exactly one of)」等、反対を明確に示すのみの用語または特許請求の範囲における使用の場合、「~から成る(consisting of)」は、多くの要素またはそのリストのうちの厳密に1つの要素を含むことを表す。一般的に、本明細書において使用する用語「または(or)」は、「いずれか(either)」、「~のうちの1つ(one of)」、「~のうちの1つのみ(only one of)」、または「~のうちの厳密に1つ(exactly one of)」等の排他性の用語が先行する場合にのみ、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であって、両方ではない(one or the other but not both)」)を示すものとして解釈されるものとする。「~から本質的に成る(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲における使用の場合、特許法の分野において使用するような通常の意味を有するものとする。
【0081】
本明細書および特許請求の範囲において、1つ以上の要素のリストに言及する表現「少なくとも1つ(at least one)」は、要素のリスト中の要素のうちの任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味することが了解されるものとする。ただし、必ずしも要素のリスト内に具体的に記されたありとあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むものではなく、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを除外しない。この定義によれば、表現「少なくとも1つ(at least one)」が表す要素のリスト内で具体的に識別される要素以外に、これらの具体的に識別される要素と関連するか否かに関わらず、他の要素が任意選択として存在していてもよいことになる。このため、非限定的な一例として、「AおよびBの少なくとも一方(at least one of A and B)」(あるいは等価的に「AまたはBの少なくとも一方(at least one of A or B)」もしくは「Aおよび/またはBの少なくとも一方(at least one of A and/or B)」)は、例えば、一実施形態においてはBが存在しない(および任意選択として、B以外の要素を含む)少なくとも1つの(任意選択として、2つ以上の)Aを表し、別の実施形態においてはAが存在しない(および任意選択として、A以外の要素を含む)少なくとも1つの(任意選択として、2つ以上の)Bを表し、さらに別の実施形態においては少なくとも1つの(任意選択として、2つ以上の)Aおよび少なくとも1つの(任意選択として、2つ以上の)B(ならびに任意選択として、他の要素を含む)を表し得る。
【0082】
本明細書の目的として、方法ステップを順番に記載している場合、順序を解釈する他の論理的方法がない限り、その順序は必ずしも、ステップが当該順序で時系列に実行されるべきことを意味しない。
【0083】
さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループの観点で記載されている場合、当業者であれば、本発明がマーカッシュグループの任意個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点からも記載されることが認識されよう。
【0084】
以下の説明において、異なる実施形態における同様または同一の参照数字は、同一または同様の特徴を示すことに留意されたい。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態に係る高スループット試験装置は、所与の期間内に可能な限り多くのマイクロプレートアッセイを処理することを課題とする単一の機械または一組の関連する機械に含まれる複数の分析容器、マイクロプレートアッセイ容器、分析・反応ステーション(本明細書においては、それぞれを「インキュベーションスロット」と称する)を効率的に管理およびスケジューリングする問題に対して、電気通信ネットワークのエンジニアリング管理および寸法規定の当業者が精通しているロボット操作、制御システム、リソース管理のためのトラフィックフロー管理技術を適用する。
【0086】
本明細書に記載の装置および方法は主として、分子スクリーニングまたは試験のスループットを向上させる。処理ステーション間の分析容器の移送の管理およびスケジューリングの結果としてのヘッドウェイ分布は、いくつかの例において、ミラーの進行待ち行列モデル、ボレル・タナーおよびアーランヘッドウェイ分布等の既知のヘッドウェイ分布を用いて近似され得る。本発明のいくつかの実施形態では、道路交通管理に関して知られる技術に基づく技術を使用して、処理ステーション間の分析容器の移送を管理およびスケジューリングする。関連する交通管理技術およびヘッドウェイ分布の詳細については、非特許文献5を参照されたい。
【0087】
電気通信およびデータネットワーク管理により知られる他のトラフィックエンジニアリングソリューションとしては、例えば、非特許文献6に記載のものがある。本明細書に援用するこの参考文献では、電気通信用途のさまざまなモデリング手法の利点および欠点が79頁の表5に記載されており、これらのモデルには、ポアソン、非均質ポアソン、アーランjk、BCMP、パケットレベル到着、対数分布、位相型分布、パレート分布、ワイブル、区分的ワイブル分布を含む。
【0088】
一例においては「トランキング(trunking)」の原理が適用され、これを以下により詳しく説明するが、当業者には当然のことながら、代替実施形態においては他のトラフィック管理最適化アプローチも使用可能である。
【0089】
「トランキング(trunking)」の原理は、リソースに制約のある分子アッセイサブシステムのスループットを向上させるため、1920年代にデンマークの統計学者A.K.Erlangによって開発されたものである。トランキングは、本明細書に記載のシステムにおいて、複数のインキュベーションスロットの効率的な利用を管理するために使用され、そのようなリソースを単一のリソーススケジューリングおよびモニタリングエンティティの制御下に置くことにより、マルチチャネルシステムとしてそのリソースを管理し、分析対象のマイクロプレートの到着および出発を選択したインキュベーションスロットに対して効率的にスケジュールすることを課題としている。これにより、人為的なエラーまたは時間の浪費の可能性が大幅に減少し、多忙なシステムにおけるインキュベーションスロットの利用率(または、占有率)は、理論上の最大値である1.0アーランに近く最大化され、システムに到着する新しいマイクロプレートの実際の確率分布とは関係なく、システムを通じてマイクロプレートの全体的なフローが最大化される。
【0090】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、上記言及した「シングルステーションチェーンワークフロー」を使用する際の制約を緩和し、高スループット分子分析ワークフローのシステムスループットを大幅にコスト効率よく改善可能である。
【0091】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、複数の高スループットサンプル処理・試験装置にも同等に適用可能である。例えば、2つのシステムが同時に動作している場合は、利用率に応じて、制御システムによりサンプルローディングトレイがいずれか一方に案内されることで、効率が最適化されるとともに待ち時間が最小限に抑えられ得る。
【0092】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、他の複数の利点をもたらしつつ、上述の問題を解決する。
【0093】
以下、本発明の一実施形態に係る高スループットアッセイ試験用の分析装置およびサンプルプロセッサの動作の概要を説明する。この概要は、ウイルスの有無に関して唾液サンプルを走査する方法の背景において説明する。
【0094】
図1は、分析装置20を使用してウイルスの有無に関してサンプルを試験する方法10を示しており、分析装置20の構成要素が
図2Aおよび
図2Bに示されている。方法10のステップ1は、個人から唾液サンプルを収集する。次に、収集された唾液サンプルが、ラックに配置されている試験管に挿入され、ラック内の試験管は、ウイルスを不活化するために、オーブン内で約10分間加熱されている(ステップ2)。その後、試験管は、自動的に蓋を外され(ステップ3)、分析装置20の装着ベッド22に配置される。ラック内のサンプルは、分析装置20のQRスキャナを使用して装着ベッド22上でQR走査される。分析装置20は、自動ピペット操作ステーション24を備えており、自動ピペット操作ステーション24内に、サンプルウェルを含むマイクロプレートも配置される。説明された実施形態では、各マイクロプレートは、96個のサンプルウェルを有する。試薬が、マイクロプレートのサンプルウェル内にある。ラックおよび試験管を含む装着ベッド22がピペット操作ステーション24にシフトされた後に、サンプルが試験管からマイクロプレートのウェルに移送される。ウェル内に試薬を含むマイクロプレートのウェルは、封止フィルムによって最初に封止されるが、封止フィルムには、自動ピペット操作システムの針状の部分が貫通することができ、これによって、唾液サンプルを試験管から試薬を含むウェルに移送する(ステップ5)。次に、分析装置20のロボットサンプル移送システム26が、マイクロプレートを分析装置20のインキュベーションステーション28に移送する。インキュベーションステーション28は、この実施形態では、それぞれ最大で96個までのサンプルを持つ、最大で32個までのマイクロプレートを受容することができる。インキュベーションステーションは、温度コントローラによって制御される個体ヒータ要素を使用して、一定温度に加熱される。サンプルは、LAMPアッセイの反応を完了するために、通常、30分間インキュベートされる。
【0095】
分析装置20は、蛍光モードおよび比色モードでの同時の試験または逐次的な試験のために配置され、両方のモード用の光源を備える。この実施形態では、フィルタを含むLED光源などの適切な光源を使用して、比色測定のための照射がサンプルを透過する。フィルタを含む適切なLED光源を使用して、蛍光を励起するための光も生成される。熱量測定のための放射された蛍光放射線および透過光が、走査カメラシステム30を使用して検出される。走査カメラシステム30は、この実施形態では、1つ以上のデジタルカメラを備え、これらのデジタルカメラは、LAMPアッセイの反応の進行に関連する変化を検出するために、サンプルを撮像する。走査カメラシステム30の1つ以上のカメラは、コンピュータ制御される。次に、写真結果が分析され(ステップ8)、この分析が、サンプルの特定のグループ(マイクロプレート内のサンプルなど)についてLAMPアッセイの反応が完了したことを示す場合、ロボットシステム26は、自動的に情報が提供され、空の位置を残して特定のマイクロプレートを除去し、この空の位置は、インキュベーションステーション内のランダムな位置にあってよく、処理がまだ完了していないサンプルを含んでいるマイクロプレートに囲まれてよい。その後、ロボットシステム26は、新しいサンプルを含んでいるマイクロプレートをサンプル装着ステーション22から取得し、新しいサンプルを含んでいるそのマイクロプレートをインキュベーションステーション24内の空の位置に移動する。このようにして、分析装置20は、サンプルの連続的スループットに適しており、バッチ処理技術では不可能な極めて高いスループットの動作を容易にする。
【0096】
1つのさらなる実施形態では、分析装置20は、分析装置システム(
図1)を形成する1つ以上のサンプルプロセッサを含んでいる2つ以上の分析装置アセンブリのうちの1つである。例えば、分析装置システムは、同時動作のために配置された分析装置20のうちの2つを備えてよい。この例では、各分析装置20のロボットシステムは、効率を最適化し、分析装置システムの待ち時間を最小化するために、制御システムによって、マイクロプレートが利用率に応じて他の分析装置20ではなく1つの分析装置20に向けられるように、配置されてよい。
【0097】
ここで
図3および
図4を参照し、本発明のさらなる実施形態に従って、生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の分析装置が説明される。
図3は、分析装置100の透視図を示しており、
図4は、
図3の分析装置100の側面図を示している。
【0098】
分析装置100は、マルチカメラ走査サブシステム(multi-camera scanning subsystem)101aを備えており、マルチカメラ走査サブシステム101aは、マルチサーバ(マルチステーションまたはマルチスロット)のインキュベーションフィールド102と交差するサブシステム101aに取り付けられたカメラ101を操作するための直交座標x-yレールシステム(cartesian x-y rail system)を備えている。インキュベーションフィールド102は、任意選択的にインキュベーションコントローラ103によって監視および制御され、インキュベーションコントローラ103は、例えば、市販のsous vide温度コントローラまたは代替としてヒータブロックであってよい。インキュベーションフィールド102は、熱制御システム(インキュベーションコントローラ103)に結合され、複数のマイクロプレートの内容の温度を一定の「等温」に、または任意選択的に、時間変調された温度に維持することができる。SARS COV 2ウイルスの高スループットアッセイ分析に適応された実施形態では、インキュベーションコントローラ103は、マルチウェルプレート110のウェル111内のサンプルが65℃の一定の反応温度に保たれることを保証するように構成される。
【0099】
分析装置100は、分析装置100を通過する個別のマイクロプレートの各々が互いに完全に独立しているため、分析装置100内の固有のマイクロプレートごとの試験パラメータにおけるより大きい柔軟性を可能にする。したがって、例えば、個別に割り当てられた反応試薬、固有のプログラム可能なインキュベーション時間、および/または固有の分析時間枠を有するシステム内の他のマイクロプレートとは別に、個々のマイクロプレートを処理することが容易に可能である。これによって、分析装置100が、例えば、異なる反応化学または対象の生物学的物質もしくは生化学物質に対応するように、システム内の各マイクロプレートを独自に独立して処理および分析することを可能にする。特に、マイクロプレートごとのインキュベーション時間は、マイクロプレートごとに「プログラム可能」であり、その特定のマイクロプレートに使用されている特定の反応化学の影響を受ける。分析装置100のインキュベーションフィールド102は、マイクロプレートごとに1つの、複数の同時で独立して監視される化学的性質をサポートすることができる。特定のマイクロプレートのフィールド内の占有時間が、他のマイクロプレートから独立しているということを前提として、インキュベーションフィールド102にわたって複数の不均一なインキュベーション時間をサポートし、(マイクロプレートごとに1つのバッチという制限内で)複数の反応バッチを実行することにおいて動作の大きい柔軟性をもたらすことが可能であり、反応バッチの各々は、すべて1つのプラットフォーム上で同時に、互いに並列である。
【0100】
分析装置100の特定の実施形態では、走査サブシステム101は、1つ以上の光学検知デバイスまたはカメラを含む2次元(2D: two-dimensional)直交座標(x-y水平面範囲用)ロボットサブアセンブリを備える。光学検知デバイスは、インキュベーションフィールド102内に位置する複数のマイクロプレートに含まれる複数のサンプルウェル上の進行中のインキュベーション測定を捕捉するために使用される。
【0101】
本発明の特定の実施形態では、インキュベーションフィールド102は、試験用の複数のサンプルを備えているマイクロプレート110を受容するように適応された1Dアレイまたは2Dアレイのいずれかの熱インキュベーション位置またはスロット106を備える。他の特定の構成では、スロット106は、
図5に見られるブロック300などのホルダーを受容するように適応されてよく、ブロック300は、マイクロプレート110のサンプルウェル111を受容するように適応される。
【0102】
分析装置100は、マイクロプレート110を取得した後に、分析装置100のワークフローを通って移動するために、マイクロプレート保持サブシステム104(「プレートクレーン」)を含んでいる3次元(3D: three-dimensional)直交座標(x-y-z3次元体積範囲)ロボットサブアセンブリ104aをさらに備える。
【0103】
プロセスワークフローの間に、新しいマルチウェルマイクロプレート110(サンプルウェル111内に分析用のサンプルを含んでいる試験管の複数のラック(
図6を参照))が、サンプルキャリアトレイ120に装着される。サンプルキャリアトレイ120は、液体処理およびピペット操作ガントリーならびに液体処理ヘッド105の到達範囲内にあるような位置に移動される。液体処理ヘッドは、ピペット操作機能を使用して、一定分量のサンプルをキャリアトレイ120上のラック内の試験管から新しいマイクロプレート110の個別のウェル111に移送し、次に、ピペットチップの異なるセットを使用して、ある量のLAMP試薬をマイクロプレート110上の各ウェル111に移送する。この処理が完了した後に、マイクロプレート110は、プレートクレーン104によってマイクロプレート封止ステーション106に移送され、マイクロプレート封止ステーション106で、マイクロプレート110のサンプル含有ウェルが、マイクロプレート待機(保持)フィールド107を介してインキュベーションフィールド102に移送される前に、密封される。待機フィールド107は、任意選択的な封止機ユニット106によって封止され、インキュベーションフィールド102内で処理される順番を待っている保留中のマイクロプレートを保持するために利用される。
【0104】
分析装置100は、システムリソースコントローラ108をさらに備えており、システムリソースコントローラ108は、例えば、各マイクロプレート110がインキュベーションフィールド102内で保持される時間が、マルチウェルマイクロプレート110のウェル内のサンプルごとに陽性または陰性の試験結果を決定するために、マイクロプレート110のサンプルウェル内で発生する比色反応または蛍光反応を促進するのに十分であることを保証するような最適化された方法で、分析装置100を通るマイクロプレート110の移動をスケジューリングするように適応されたプログラミングを含むソフトウェアアプリケーションを含んでいるコンピュータマシンであってよい。インキュベーションフィールド102内の複数のインキュベーションスロット(マイクロプレートを受容するスロット)の各々の占有状態(「使用中」/「空き」)を監視するための機能を有するシステムリソースコントローラ108は、インキュベーションフィールド102内の使用可能なスロットへのマイクロプレート110の配置を効率的にスケジューリングし、マイクロプレート110の処理が完了した後に、分析されたマイクロプレート110を使用されるカルーセル130に移送し、それによって、処理される新しいマイクロプレートのためにスロットを解放する、インキュベーションフィールド102からのマイクロプレート110の除去を効率的にスケジューリングする。
【0105】
マイクロプレート110は、走査サブシステム101aによって分析された後に、プレートクレーン104によってインキュベーションフィールド102から除去され、分析装置100から手動で除去するために任意選択的に使用されるマイクロプレートカルーセル130に配置される。
【0106】
分析装置100の特定の実施形態は、SARS COV 2ウイルスなどのウイルスの溶菌および不活化ならびに/またはサンプルに存在するRNA分解酵素の不活化のために、95℃~100℃の範囲内に温度を保つことができる加熱槽またはブロック(図示略)を含み得るサンプル調製/精製/不活化モジュールをさらに備えてよい。
【0107】
分析装置システム100の特定の実施形態は、熱不活化ステーションおよび試験管蓋除去ステーション(test tube de-capping station)(
図1に示されている)をさらに備えてよく、試験管蓋除去ステーションは、新しいマイクロプレートサンプルキャリアトレイ120への移送のために、24個、96個、または384個のサンプル管のラックの蓋を一度に効率的に除去することができる。プレートクレーン104は、分析される蓋を除去されたサンプル管の到着するラックから、サンプルを含んでいるマイクロプレートを移送するように適応されてよい。
【0108】
システムのサンプル調製モジュールの他の実施形態は、サンプル内の核酸に選択的に結合し、生物学的サンプルからの酵素阻害剤の除去を可能にし、システムの主要モジュールによるその後の増幅のために核酸の精製および/または濃縮を可能にするための、セルロースまたはシリカの使用を含むが、これに限定されない、サンプル濃縮または精製ステーションを含んでよい。
【0109】
既存の高スループットのシステムを上回る分析装置100の重要な利点は、各サンプルプレートがスクリーニングプロセス内のどの段階にあるかに関わらず、サンプルのインキュベーションが走査/光学的検出段階と同時に実行されるということである。他の高スループットのアッセイシステムは、千鳥状ではあるが異なるアッセイのスケジューリングにおいてより制約され、したがって、真のランダムアクセスの応用をサポートしない。走査副分析装置(scanning subanalyser)1001aおよびカメラ100による熱量測定によってサンプルが調べられている間に、各マルチウェルマイクロプレート110内の複数のサンプルが、インキュベーションフィールド102内でインキュベートされる。代替の実施形態では、2D走査サブシステムおよびカメラ102aは、インキュベーションフィールド102の上に位置し、インキュベーションフィールド(102)内のマイクロプレート110内で保持されている各マルチウェルサンプルを監視するように適応された、単一の固定されたカメラまたは複数の固定されたカメラのどちらかに置き換えられてよい。インキュベーションフィールド102内の多くのサンプル(例えば、サンプルが等温条件でインキュベートされる、サンプルを含んでいる複数のマイクロプレートの1Dまたは2Dアレイ)の同時インキュベーションの管理は、分析されるサンプルの分析装置100のスループットにおける大幅な改善を効率的に可能にする。
【0110】
図5および
図6は、前述したようにマイクロプレート110を受容するように適応された、マイクロチャネルマイクロプレートキャリア(microchannel microplate carrier)またはヒートブロック300の例示的な構成を示している。ヒートブロック300は、マイクロプレート110の個別のサンプルウェル111を受容するように適応された複数の開口部301を備えている。開口部301は、ヒートブロック300の厚さ全体を通って伸びており、ヒートブロック300の背面303からの光照射が、ヒートブロック300にあるマイクロプレート110の各ウェル111を照射することを可能にする。
【0111】
特定の構成では、マイクロプレートキャリア300は、例えば、ナイロン、TCPoly Ice9(商標)、またはアルミニウムを含む材料から形成される。動作中に、マイクロプレートキャリア300は、マイクロプレート110の各ウェル111内のサンプルを加熱して、ウェル111内で試験されるサンプルを素早く最適な反応温度にするために、一定温度に維持されるヒートブロックとして動作する。
【0112】
図7Aおよび
図7Bは、同時インキュベーションのためのインキュベーションフィールド102、およびインキュベーションフィールド102の各マイクロプレートスロット106内のマルチウェルマイクロプレート110のウェル111に含まれているサンプルを走査するためにカメラサブアセンブリ101a上のカメラ101からのマシンビジョンを使用する走査の詳細図を示している。コンピュータビジョンアルゴリズムは、走査カメラヘッド101がインキュベーションフィールド102内のマイクロプレート110の上を通過するときに、各マイクロプレートウェル111の中心を検出し、カメラ101のライブ映像からマイクロプレート110およびサンプルウェル111内のサンプルの各々の静止画像を生成する。
【0113】
インキュベーションコントローラ103は、サンプル分析において使用される酵素の活性化のために、インキュベーションフィールド102を正しい温度(熱安定性逆転写および/またはLAMP反応において使用されるDNAポリメラーゼ酵素の場合、65℃)に維持する。
【0114】
光パネル501は、インキュベーションフィールド102の下に位置し、均一な後方照射光503をインキュベーションフィールド102のスロット106内にあるマイクロプレート110の背面に提供するように適応される。光パネル501は、多くの場合、既存の広い高スループットの機械によって発生して、ウェル111内のサンプルの比色分析の信号対ノイズ比を制限する、すべてのエッジ照射またはビネット効果を取り除くために、例えば、均一な照射をインキュベーションフィールド102全体に提供するLEDパネルであってよい。
【0115】
分析装置100のインキュベーションフィールド102の下のパネル501によって生成された光は、光学的に透明な水槽503を最初に通過する。水槽503は、効率的な熱伝達をヒートブロック300に提供し、ヒートブロック300内に保持されているマイクロプレート110のウェル111内のサンプルの安定した温度を(水の固有の熱容量によって)維持する。説明された実施形態の変形では、水槽加熱システムは、固体ヒータに置き換えられてよい。次に、光501は、ヒートブロック300の背面303を通って開口部301に入り、それによって、インキュベーションフィールド102内のマイクロプレート110のウェル111に含まれているサンプルを照射し、その後、ウェル111内のサンプルの色を記録する走査サブアセンブリ101aのカメラ101に入る。例えば、SARS-CoV-2ウイルスのRT-LAMP試験では、陽性結果が、通常、ピンク色から黄色へのサンプルの色の変化によって示される。この反応が発生するには、通常、約15~30分を要し、特定のサンプルのウイルス量を示す変化に対する反応の時間には変動があり、ウイルス量が多いほど、より短いインキュベーション時間でサンプルが変化して陽性結果を示す。
【0116】
ブロック300の開口部301を通る側面形状は、開口部301内のウェル111から放射された光反応信号間のクロストークの可能性を減らすのに役立ち、検出された比色信号または蛍光信号の信号対ノイズ比を改善することができ、したがって、システムを試験中に環境光または環境光の変化により影響されないようにする。
【0117】
走査サブシステム101aは、特定の構成では、1分当たり少なくとも1回の速度でインキュベーションフィールド全体にわたってカメラ101を走査するように構成される。この速度で、インキュベーションフィールド102において4x8アレイ内の96チャネルマイクロプレート110を利用して、1分当たり3072個のサンプルの読み取りという、サンプル試験速度を実現する。RT-LAMP方法の反応時間は約15~30分であるため、サンプルプレートは、少なくともこの時間以上(例えば、最大で30~60分まで)の間、インキュベーションフィールド102内に保持され、1分当たり少なくとも1回、マイクロチャネルウェル(microchannel well)111ごとにサンプルが測定される。したがって、標準的な反応時間にわたる個々のウェルのサンプル測定の分析は、各陽性サンプルが陽性色変化の反応信号に加えて、各陽性サンプルのウイルス量の指示を返すために要する時間の正確な測定を実現する。
【0118】
代替の実施形態では、走査サブシステムは、マイクロプレート110の個別のウェル111内のサンプルからの光反応信号の継続的監視のためにインキュベーションフィールド102の上に位置する複数の固定されたカメラ(図示されていない)に置き換えられてよい。この実施形態では、当業者である対象者によって理解されるであろうように、複数の固定されたカメラの位置の合成視野の周辺にあるサンプルから生じる見通し線または視点のアーチファクトを修正するために、記録された光学的比色信号または蛍光信号の追加の画像処理が必要になる可能性が高い。
【0119】
主に、分析装置100のインキュベーションフィールド内のサンプルの結合されたインキュベーションおよび走査の使用によって、分析装置100の迅速なスループットが達成され、したがって、
図1および
図2に示されたような特定の構成では、32個の96マイクロチャネルマイクロプレート(96-mirochannel microplate)110を並列に処理することを可能にする。分析装置100は、マイクロプレートクレーン(microplate crane)104および3次元体積x-y-zロボットサブアセンブリ104aによって可能にされる自動化されたサンプルのスケジューリングおよび移送と相まって、1時間当たり約5,500個のサンプル(制御を含む)というサンプルスループット速度および1日当たり100,000個を超える持続的サンプルスループットを実現するために、30分ごとに32個の充填済みマイクロプレートを同時に処理することができる。これは、Roche Cobas 6800、Holologic Panther、およびAbbott Molecular Alinity Instrumentsなどの最先端のPCR試験プラットフォームと比較して2桁大きい(100倍の)スループットの改善であり、これらのPCR試験プラットフォームは、1日当たり数千のSARS-CoV-2試験を分析することしかできず、一度に装着され得るマイクロプレートの数において制限がある。他の高スループットの分子診断システムは、サンプルウェルに対する検出器の比率がより低いため、かなり高額になる。実行するのに数分ではなく数時間を要する現在使用できる分析装置上で、試験が実施される。
【0120】
1日当たり100,000個を超えることができるそのようなスループット速度によって、1時間未満(通常は40分未満)で、収集されているサンプルのサンプル結果を利害関係者に供給することができる。その結果、この技術は、2020年のSARS COV 2ウイルスのパンデミックなどのパンデミックレベルの感染の場合に必要になるような、郊外、都市、および町全体、空港の出発および到着などの人通りの多い環境、学校、スポーツ競技場、祝祭、ショッピングモール、および船舶などの混雑した場所の、大規模なセンチネル試験の略リアルタイムの試験および分析を可能にし、パンデミックレベルの感染では、関連性が不明な市中感染の可能性を制限するために、症状を示している人だけでなく、無症状の人を試験するのが望ましい。
【0121】
特定の実施形態では、許可された試験者が、被験者にバーコード付き唾液サンプルバイアル(saliva sample vial)を提供する。被験者がバイアルを満たしたときに、試験者は、バイアルのバーコードを走査して、バーコードに関連付けられた個人IDを作成する。空港または大規模なスポーツイベントもしくはコンサートイベントの環境などの、特定の使用事例では、追加情報が被験者の個人ID(例えば、搭乗券またはイベントチケット)に関連付けられてよい。分析装置100が個々のバイアルのバーコードを走査し、バイアルをバイアルラック内の固有の位置に関連付け得るように、複数のサンプルバイアルが、バーコードによって識別されるバイアルラックに装着される。下で説明される任意選択的な熱不活化/精製ステップに続いて、バイアルラック内のサンプルが、バーコードによって識別されるマイクロプレート110に移送され、マイクロプレート110は、マイクロプレート110の特定のサンプルウェル111内の各サンプルの位置を記録し、サンプルのウェルの位置を被験者の個人IDに関連付ける。次に、マイクロプレート110は、前述したような分析装置100による分析のために、分析装置100のマイクロプレートサンプルキャリアトレイ120に装着される。マイクロプレートがインキュベーション面102内でインキュベートされているときに、カメラ101は、マイクロプレート110内の各サンプルの比色状態の遷移を捕捉し、画像結果を、陽性試験結果ごとのウイルス量(ログ値)の推定値を含めて、最終的なテスト結果と共に、有利にはクラウドサーバシステムであってよい集中型サーバシステム(図示されていない)に記録し、その後、テスト結果が、被験者の個人IDを介して、リアルタイムまたは略リアルタイムに被験者に、または代わりに、もしくは同時に、必要に応じて管理職、政府機関の職員、もしくは保健当局などの許可された利害関係者に報告され得る。記録された試験結果は、必要に応じて外国の保健機関または国際保健機関への報告の各々のために、共通の形式(CDCによって承認された形式)で有利に格納される。
【0122】
さらなる実施形態では、分析装置100は、マルチウェル蛍光透視分析システム(multi-well fluoroscopy analysis system)に容易に変換され得る。システムは、マイクロプレート110の各ウェル111内のサンプルを下から照射する均一な光パネル501ではなく、任意選択的に、インキュベーションフィールド102内の各マイクロプレートスロット106に接続された光ファイババンドルを含んでよい。図に示されているように、例えば、
図8では、構成600は、8本の光ファイバサブバンドル603に(12*8)96本の光ファイバを含んでいる光ファイババンドル610を備えており、各サブバンドル603は、8本の光ファイバ605を含んでいる。各ウェル111内のサンプルを背面から(すなわち、マイクロプレート110を含んでいるヒートブロック300の開口部301の背面を通って)、または代替として、開口部301の側面から照射し、したがって、サンプル内の蛍光信号を励起し、その後、蛍光がカメラ走査サブシステム110aに取り付けられたカメラまたは光電子増倍管101によって検出されるように、各光ファイバ605がマイクロプレート110のウェル111に揃えられる。システム100の蛍光透視分析システムの変形は、複数の遺伝子の試験を同時に対象にするために、多重化された蛍光体に容易に適応され得る。そのような多重化されたシステムは、多数のサンプルの「ワンポット」の高感度/特定性試験を同時に実現するために、制御蛍光体と共に、サンプル内の2つの異なる遺伝子を対象にするように容易に適応され得る。
【0123】
蛍光イメージングを採用する蛍光透視分析システムのさらなる進歩では、二重アニーリングキネティクス(duplex annealing kinetics)を監視する核酸ハイブリッド形成アッセイを可能にすることによってアンプリコンの特定性を確認するために、インキュベーション中に陽性として識別されたサンプルを含んでいるマイクロプレート110が、アレイから除去され、(分析装置100の内側または外側に組み込まれた)アニーリングアッセイを受けることができる。
【0124】
高スループットの特性を有するシステムは、例えば、分析装置100を介して複数のサンプルの移動およびそれらの複数のインキュベーション状態を追跡するために、多くの場合、重要な情報の管理要求も有する。このシステムは、サンプルのインキュベーション結果を、分析されているサンプルに関連付けられた1人以上のユーザを匿名で表す既知のユーザ識別情報または難読化された(ハッシュされた)トークンのいずれかに関連付けることができなければならない。
【0125】
この目的で、スループット速度が損なわれないことを保証しながら、サンプルがシステムを横断する際にサンプルの迅速な追跡および識別をサポートする方法が展開される。
【0126】
前述したように、大規模でのインキュベーションと比色サンプル指示または蛍光サンプル指示の走査の組み合わせは、単一の96ウェルプレートの規模を大幅に超え、または本明細書に記載されたシステムを使用して、384ウェルプレートでさえ処理されることが可能である。特に、複数の低コストのカメラが、マイクロプレート内のウェルの内容を高忠実度で撮像することができ、高価な光電子増倍管デバイスを使用せずに、正確な比色または蛍光が実行されることを可能にすることができる。
【0127】
上記の分析装置100は、本明細書ではSARS Cov-2ウイルスの大規模な簡易試験への特定の応用を使用して説明されたが、分析装置100が、多種多様な特定の応用の大規模なウイルス、ゲノム、または微生物の簡易アッセイ試験に使用されてもよいということが、当業者である読者によって容易に理解されるであろう。本明細書に記載されたスクリーニングシステムおよび方法の超高スループットの性質およびコスト効率は、例えば、集団内の自然突然変異または他の低頻度のアレルに関する、大規模な調査の遺伝子スクリーニングにおける実施も可能にする。そのような調査は、癌、糖尿病、心臓病、高血圧などの病気の危険因子に関連付けられることがある、まれなアレル、または代替として、有害な薬物相互作用に関連付けられた特定のアレルの識別を可能にすることができる。本明細書に記載された技術が、同時に複数のアレルのスクリーニングとの互換性もあり、多重遺伝子疾患の特徴の調査を可能にするということに注意する。
【0128】
1つの特定の実施形態では、化学的サンプルまたは生化学的サンプルを分析するためのシステムは、本明細書に記載されたアルゴリズムなどのアルゴリズムを使用して、そのようなサンプルを含んでいるマイクロプレートが分析装置100を通過するときに、マイクロプレートの到着、処理、および出発の処理段階を効率的に調整およびスケジューリングする。このシステムは、複数の処理下位段階を有利に含む。このシステムは、サンプルの効率的な処理を管理し、マイクロプレート110が分析装置100を通って移動され、マイクロプレート保持サブシステム104によって移送されるときに、マイクロプレート110をスケジューリングする役割を担う、システムコントローラ108を含む。システムコントローラ108は、システムを通るマイクロプレートおよびそれらのサンプルを処理するために必要とされる分析装置100内の少ないリソースの利用を最大化するためのトランクされた待ち行列システムとして、分析装置100全体を管理する。
【0129】
さらに、システムコントローラ108は、前述のアルゴリズムまたは当業者である対象者にとって容易に明らかなアルゴリズムなどのアルゴリズムをさらに使用して、トランクされた一連のリソース(すなわち、インキュベーションスロット106)を通るマイクロプレート110のスループットを最適化するのと同時に、ときどき移動する複数のロボット機器が、そのようなスループットをサポートするためにシステムのさまざまな機能を実行することができ、互いに衝突せず、互いの機能を妨げないことを保証する。
【0130】
さらなる実施形態では、マイクロプレート110に含まれているサンプルにおける化学反応の進行を監視するために、ロボット制御された走査システム101aが使用される。この走査システムは、反応が発生しているサンプルを含んでいるマイクロプレート110の上を繰り返し通るように構成される。例えば、走査システム101aは、現在使用できる低コストのデジタルカメラなどのカメラを使用してよいが、他の走査技術が、当業者にとって明らかであろう。適応型画像走査技術(Adaptive image scanning technique)は、そのようなカメラ対応の走査サブシステムが、完全に満たされておらず、空間的に分離され、マイクロプレート上の物理的2Dアレイとして配置されたマイクロプレートウェルの内容を撮像するときに、視誤差を軽減することを可能にする。この軽減は、
図8および
図9に示されているように、画像を細い画像ストリップにセグメント化することによって実現される。
【0131】
各ストリップ画像は、マイクロプレートウェル111の単一の行を含み、ウェル701および801の撮像された行が、撮像サブシステムの下に垂直に位置付けられており、そのような画像ストリップは、走査されているマイクロプレートをカメラが横切るときに、連続的に捕捉される。その後、システムは、画像ストリップを、マイクロプレート全体を表す集約された画像703および803に再び組み立て、ウェルの各行がカメラ撮像サブシステムの下に同時にあったという効果を作り出し、それによって、走査撮像サブシステムの主要な垂直焦線から外れてウェルを撮像しようとすることによって発生することがある視覚的変形を最小限に抑える。
【0132】
さらなる実施形態では、ウェルごとに1つのカメラという制限内で(必ずしもこれに限定されない)、各カメラがマイクロプレート上のウェルの行のセグメントまたは一部を捕捉できるような方法で、走査撮像サブシステムの移動方向に対して直角に、撮像サブシステム101a内の複数のカメラが、1Dアレイに配置され得る。そのようなカメラを使用し、走査サブシステム101aの固有の動きを利用して、走査されているマイクロプレートの上に位置する撮像サブシステムに対する「垂線から外れた」ウェルを撮像しようとすることから生じる撮像の欠陥を大幅に軽減し、それによって、マイクロプレートアレイのすべてのウェルが内部で標準化され、連続して動的に測定される画像を再作成することができる。
【0133】
さらなる実施形態では、直交介入(orthogonal intervention)または直交分析を可能にするために、現在撮像されていないインキュベーションフィールド102内のアレイにおけるすべてのマイクロプレートの独立したアクセス性を利用することができる。そのような手法は、固定された撮像位置によって課される物理的制約のため、従来の計測では不可能である。
【0134】
従来の核酸増幅および検出機器の柔軟性のない構成は、継続的な定常状態または準定常状態の動作を妨げる制約を課す。対照的に、前述の構成は、計器が稼働している間にリアルタイムに、マイクロプレート110が、ランダムに、スケジューリングされて、または待ち行列に入れられて、ワークフローに追加され、ワークフローから除去されることを独自に可能にし、継続的な定常状態または準定常状態の動作を可能にする。
【0135】
従来の計器とは対照的に、上で開示された分析装置100は、試薬が追加または除去されるインキュベーションサイクルの半ばで、個別のプレートが原位置で操作されることを可能にするか、あるいは代替として、プレートがアレイから除去され、そのような介入または追加の分析が分析装置100の外部で発生することさえ可能にする。計器が故障した場合、上で開示された分析装置100は、余分な遅延なしで、ワークフローの障害を引き起こしているプレートがリアルタイムに除去されることを可能にし、新しいプレート110によって占有されるように、プレートインキュベーションスロット(plate incubation slot)106を解放する。対照的に、従来の計器では、そのようなプレートの除去はワークフロー全体の障害を引き起こし、スループットを大きく減らす。
【0136】
上記の分析装置100の計器構成のモジュール性は、計器の特定のゾーンが活発な使用中でない間に、(例えば、UV照射を使用して)それらのゾーンの動的汚染除去も可能にする。
【0137】
そのようなUV照射は、チミジンダイマーを誘導し、その後の酵素増幅に役立たなくすることによって、潜在的な核酸の汚染を不活化するために使用され得る。
【0138】
計器の自己完結型の性質は、デバイスの外周の統合された窓パネルの組み込みを可能にする。これらのパネルは、病原体またはUV光への暴露からユーザを保護することにおいて、安全上の目的に役立つことができる。
【0139】
1つの実施形態では、計器の保護パネルは、必要な場合に、保護パネルを不透明にする電流の通過によって、電子的に曇らせることができる。これを実現できるガラス窓は、次の材料を含む:PDLC(Polymer Dispersive Liquid Crystal:高分子分散型液晶)、EC(Electrochromic:エレクトロクロミック)、およびSPD(Suspended Particle:懸濁粒子)。
【0140】
さらなる実施形態では、追加のスループット最大化制御、および単一のリソーススロット(例えば、分析装置100内のインキュベーションフィールド102のスロット106)または複数のリソーススロットをそれぞれ含んでいる複数のステーションを含むシステムの監視を提供する方法(「マルチマシンスループット最適化法(Multi-machine Throughput Optimisation Method)」)がさらに利用される。
【0141】
さらなる一連の方法は、必要に応じて、最適化されたワークフロー全体への手動処理ステップ(可能性のある例として、自動化を受け入れないステップ)の組み込みを許可し、支援するために、視覚的合図または電気機械的合図を、本明細書において説明されたような研究所のワークフローの人間オペレータに提供してよく、一方、本明細書に記載されたシステムは、それらのステップが(システムの直接制御の下で)手動であるか自動であるかに関わらず、スループット全体を最適化するために、制御全体ならびに必要なすべてのステップのスケジューリングおよび順序付けに対する責任を維持する。
【0142】
本明細書に記載された分析装置100の特定の実施形態では、インキュベーションスロットトランキングコントローラ(Incubation Slot Trunking Controller)108が、例えば前述したようなアルゴリズムなどの独自の新しいスケジューリングアルゴリズムを使用して中央オーケストレーションエンティティとして機能し、最初に、システムを通るマイクロプレートの物理的移動のタイミングの順序付けを調整することによって、具体的には、走査アセンブリ、プレートクレーン、およびサンプル移送ステーションによって処理されるアクションの順序付けを調整することによって、システムを通るマイクロプレートのスループットを最大化し、次に、待ち行列遅延および処理遅延を含む、個別のマイクロプレートを処理することに要するエンドツーエンドの時間を最小限に抑える。
【0143】
これらの目標を支援する以下の方法が開示される。
【0144】
サンプルがシステムを通過する際に、個別のサンプルの追跡、検証、および識別のためにバーコードを使用する、複雑な多段階のワークフローを通るマイクロプレートの移動を追跡するための一連の方法(「追跡機能」)。特定のワークフローの効率を改善し、追跡機能をサポートするための以下の2つの方法および装置が開示される。
【0145】
以下を備える、サンプルが多段階のサンプル調製および分析ワークフローを通過する際に個別のサンプルの位置および状態を追跡するためのシステム。
【0146】
第一に、システムのサンプル調製段階における2つの目的を兼ねた「追跡およびサンプル移送ステーション」。このステーションは、試験管の内容に対して他の動作が実行されている間にバーコード化された情報の走査を可能にする、試験管ラックの下に開口部を有する試験管のラックを優先的に保持することができるステーションの下の走査カメラで構成される。このステーションは、各試験管の基部にあるバーコードの高忠実度の走査を保証するために、サンプルラックの下に位置する1つ以上の任意選択的な照明光源を有利に有する。サンプルの下の走査機能と同時に操作され得るサンプル移送メカニズムがサポートされ、さらなる処理のために内容を保持する別の媒体(優先的に、複数のサンプルウェルを含むマイクロプレート)への試験管の各々の内容の移送を同時に実行しながら、ラック内の試験管の基部にある複数のバーコードの下からの同時走査を可能にし、逐次的な走査およびサンプル処理のワークフローと比較して運転時間を節約する。
【0147】
さらに、分析装置100は、システムを通過するマイクロプレート上のコード化された情報を走査し、マイクロプレートの側面のバーコード化された情報を捕捉することができる、追加のバーコードスキャナを有利に含んでよい。このスキャナは、マイクロプレートのウェル内の反応の変化を検出するためにマイクロプレートの内容を上から走査するサブシステムと並列に動作するように設計されるのが好ましく、運転時間を節約し、エラーを減らす。
【0148】
さらに、インキュベーションフィールド102へのマイクロプレートの配置および除去をスケジューリングするための予測方法(「トランキング機能」)が提供されており、この予測方法の目標は、システムのスループットを最大化し、システムを通るプレートの処理遅延全体を最小限に抑えながら、インキュベーションフィールド内の限られたインキュベーションリソースをできるだけ効率的に使用することである。トランキング機能をサポートするための複数の方法および装置が開示される。
【0149】
特定の実施形態では、処理および分析のためにマイクロプレート110を操作することに使用されるアルゴリズムは、多段階のエンドツーエンドのシステムを通る待ち行列に入れられたエンティティの移動を順序正しく処理するために、単一の物理的エンティティ(例えば、プレートクレーン104a)によってサービスを提供される、システム110の複数の待ち行列の複数の適応的に設定された優先度を実装するための方法の形態をとってよい。1つの実施形態例では、4つのそのような優先度待ち行列が実装され、1つの待ち行列の内容を処理することの優先度は、その待ち行列に関連付けられたリソース(例えば、インキュベーションフィールド102のマイクロプレートスロット106)の占有状態に基づいて、最高の優先度または最低の優先度のどちらかになるように設定される。この実施形態では、複数のエンティティにサービスを提供できる特定のリソースが完全に占有された場合、例えば、タイムアウトの期限切れまたは処理期間が達成されたことに起因するエンティティの除去を管理するための待ち行列の優先度が、最大(最上位)の優先度に設定され、一方、追加のエンティティのための容量がリソース内にまだ存在する場合、この待ち行列の優先度が、最低の優先度に設定される。この方式は、重要である可能性のあるボトルネックを次の最上位の優先度として処理するために、システムがどの程度使用されているかに基づいて、優先度を適応的に変更することをサポートする。
【0150】
さらなる実施形態では、特定の最適化基準(例えば、特定の動作を実行するために、すべての優先度待ち行列から生じるステップを処理する役割を担うプレートクレーン104aによって必要とされる移動の長さ)に基づいて、処理待ち行列全体に含まれる要素を交換する方法が提供されてよい。1つの実施形態例では、分析装置100は、インキュベーションフィールド102内のマイクロプレートの除去がスケジューリングされ、その直後に、インキュベーションフィールド102への新しいマイクロプレート110のスケジューリングされた挿入が続くということを検出することがある。次に、分析装置100が、システムポリシーに基づいて、これらの動作の時間的順序を交換することによって全体的処理時間またはオーバーヘッド処理時間のどちらかが減らされ得るということを決定した場合、分析装置100は、そのような交換を実行するために必要とされるステップを実行することができる。
【0151】
さらに、システムのスループットを最大化し、システムを通るプレートの処理遅延全体を最小限に抑えながら、サブシステム間の衝突を防ぐために、共有された時間および空間の環境内で動作している複数のロボットエンティティの移動を調整するための予測方法が提供されている(「調整機能」)。以下を含む調整機能をサポートするための複数の方法が開示される。
・すべて同じ3D空間連続体内で動的に動作している複数のロボット制御されたエンティティの未来位置を同時に予測するためのアルゴリズムを実装する方法。
・前述の複数のロボット制御されたエンティティに関連付けられた未来の3D軌道の集合(「事前の集合」)をさらに計算する、前述したような方法。
・他のエンティティの状態を使用して、未来の予定された3D軌道のタイミングを決定する、前述したような方法。
・上記のタイミングを使用して可能性のある未来の衝突の4D時空間集合を作成する、前述したような方法。
・可能性のある未来の衝突の集合を使用して、前述の複数のロボット制御されたエンティティに関連付けられた、未来の3D軌道の最適な代替の集合(「事後の集合」)を計算し、すべての予測された衝突が取り除かれる、前述したような方法。
・未来の衝突を防ぐために、スケジューリングされた未来の3D軌道の事前の集合を事後の集合に置き換える、前述したような方法。
【0152】
さらに、行ごとおよびウェルごとにマイクロプレートのアレイの内容を走査して、インキュベーション結果に関するリアルタイムの情報を配信し、視誤差からの情報損失の可能性を克服するための方法が提供されており(「走査機能」)、この方法は、システムのスループットを最大化し、システムを通るプレートの処理遅延全体を最小限に抑えるように、走査プロセスを管理し、他のロボット要素と連携する。以下を含む走査機能をサポートするための複数の方法が開示される。
・本明細書に記載された本発明によってインキュベートされている複数のマイクロプレートの画像または写真(「画像」)のうちの1つ以上を捕捉するための方法。
・ロボット撮像デバイス(「撮像サブシステム」)を、撮像サブシステムに渡された(x-y)座標に従ってさらに制御して、前述の撮像サブシステムを2D平面内に配置する、前述したような方法。
・アルゴリズムを使用して、異なる(x-y)座標位置で撮影された複数の画像のうちの1つの画像を分析する、前述したような方法。
・コンピュータビジョンアルゴリズムを使用して、事前に定義された複数の品質基準に従って画像の品質を特徴付ける(例えば、撮像されているマイクロプレート上のウェルの行の内容がどの程度良く検出されているかを特徴付ける)、前述したような方法。
・画像の検出された品質に基づいて、複数の画像から好ましい画像を選択し、次に、選択された画像を使用して、マイクロプレート上の行のウェルごとに部分画像(「部分画像」)を抽出する、前述したような方法。
・画像から抽出された各部分画像の特定の特性および属性(「部分画像属性」)を導出するか、計算するか、または帰属させる、前述したような方法。
・報告および監査の目的で、捕捉されて導出された部分画像属性を順に並べて中央ロギングエンティティ(「ロギングエンティティ」)に記録する、前述したような方法。
【0153】
さらに、システム内のサンプルの連続的または半連続的入力および出力を可能にすることによって、定常状態または準定常状態の動作を可能にする、統合されたスクリーニングシステムが提供されている。例えば、統合されたスクリーニングシステムは、過度の遅延なしで、検査、操作、またはアッセイの目的でワークフロー内の個別のプレートの除去または置換を可能にすることによって、ダウンタイムを最小限に抑える。
【0154】
統合されたスクリーニングシステムは、光ファイバの網状のシステムを介してアレイブロックの各ウェルに供給される励起光源を組み込むことによって、蛍光撮像と互換性があってよく、光ファイバは、光退色の可能性を最小限に抑え、必要に応じて、光の個別の励起波長が異なるウェルに向けられることを可能にするために、独立して作動され得る。
【0155】
下でさらに詳細に説明されるように、分析装置100は、コンピュータビジョン技術、直交座標ロボット、および液体処理自動化技術を組み合わせる、スループットが改善された分子試験および分析システムおよび方法のためのシステムを提供する。前述のそのような組み合わせおよび装置は、相乗的に連携して、制約された作業空間または小型の作業空間内で動作しながら、LAMPアッセイをリアルタイムに処理および分析する高性能、高スループットのシステムを実現する。
【0156】
解釈
に従って(In accordance with)
本明細書に記載されるとき、「に従って(in accordance with)」は、「に応じて(as a function of)」を意味してもよく、それに関して指定された整数に必ずしも限定されない。
【0157】
複合的項目
本明細書に記載されるとき、「コンピュータ実装方法(computer implemented method)」は、2つ以上の連携しているコンピューティングデバイスによって方法のステップが実行され得るように、単一のコンピューティングデバイスによって実行されていると必ずしも推測されるべきではない。
【0158】
同様に、本明細書において使用されるとき、「ウェブサーバ(web server)」、「サーバ (server)」、「クライアントコンピューティングデバイス(client computing device)」、「コンピュータ可読媒体(computer readable medium)」などの物体は、単一の物体であると必ずしも解釈されなくてよく、例えば、所望の目的を達成するために連携しているサーバファーム内の2つ以上のウェブサーバと解釈されるウェブサーバ、またはコンピュータネットワークからダウンロードできるライセンスキーによって有効化できるコンパクトディスク上で提供されているプログラムコードなどの複合的方法で配布されているコンピュータ可読媒体などの、連携している2つ以上の物体として実装されてよい。
【0159】
に従って(In accordance with)
本明細書に記載されるとき、「に従って(in accordance with)」は、「に応じて(as a function of)」を意味してもよく、それに関して指定された整数に必ずしも限定されない。
【0160】
実施形態
本明細書全体を通じて、「1つの実施形態(one embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」、「1つの構成(one arrangement)」、または「構成(an arrangement)」への参照は、実施形態/構成に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態/構成に含まれているということを意味する。したがって、本明細書全体を通じてさまざまな場所に現れる「1つの実施形態/構成では(in one embodiment/arrangement)」または「実施形態/構成では(in an embodiment/arrangement)」という語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態/構成を参照していないが、同じ実施形態/構成を参照していることもある。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1以上の実施形態/構成において、本開示から当業者にとって明らかであろうように、任意の適切な方法で組み合わせられてよい。
【0161】
同様に、本発明の例示的な実施形態/構成の前述の説明では、当然ながら、本開示を簡素化して、さまざまな発明の態様のうちの1つ以上の理解を助ける目的で、本発明のさまざまな特徴が単一の実施形態/構成、図、またはその説明において一緒にグループ化されていることがある。しかし、本開示の方法は、主張される発明が各請求項において明示的に列挙されている特徴より多い特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映しているように、発明の態様は、単一の前述の開示された実施形態/構成のすべての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、「発明を実施するための形態」に続く特許請求の範囲は、本明細書によってこの「発明を実施するための形態」に明示的に組み込まれており、各請求項は、本発明の別々の実施形態/構成として、それ自体に基づく。
【0162】
さらに、本明細書に記載された一部の実施形態/構成は、他の実施形態/構成に含まれている一部の特徴を含むが他の特徴は含まないが、当業者によって理解されるであろうように、異なる実施形態/構成の特徴の組み合わせが、本発明の範囲内にあり、異なる実施形態/構成を形成するよう意図されている。例えば、以下の特許請求の範囲では、主張された実施形態/構成のいずれかが、任意の組み合わせで使用され得る。
【0163】
特定の詳細
本明細書において提供された説明では、多数の特定の詳細が示されている。しかし、これらの特定の詳細がなくても、本発明の実施形態が実践され得るということが理解される。他の例では、本説明の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造、および技術は詳細に示されていない。
【0164】
用語
図面に示された本発明の好ましい実施形態を説明することにおいて、明確にするために、特定の用語が用いられる。しかし、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されるよう意図されておらず、各特定の用語が、同様の技術的目的を達成するために類似する方法で動作するすべての技術的な同等のものを含むということが理解されるべきである。「前方(forward)」、「後方(rearward)」、「半径方向(radially)」、「周辺(peripherally)」、「上方(upward)」、「下方(downwardly)」などの用語は、基準点を提供するための便宜上の単語として使用されており、制限する用語と解釈されるべきではない。
【0165】
対象の異なる事例
本明細書において使用されるとき、特に指定されない限り、共通の対象を説明するための「第1の」、「第2の」、「第3の」などの順序を表す形容詞の使用は、類似する対象の異なる事例が参照されていることを単に示しており、そのように説明された対象が、時間的、空間的、順位付け、または他の任意の方法で、特定の順序でなければならないということを意味するよう意図されていない。
【0166】
発明の範囲
したがって、本発明の好ましい構成であると考えられているものが説明されているが、当業者は、本発明の思想から逸脱することなく他のさらなる修正がそれらに構成に対して行われてよく、すべてのそのような変更および修正が本発明の範囲に含まれると主張することが意図されているということを認識するであろう。機能がブロック図に追加されるか、またはブロック図から削除されてよく、機能ブロック間で動作が交換されてよい。ステップが、本発明の範囲内で説明され方法に追加されるか、または方法から削除されてよい。
【0167】
本発明は、特定の例を参照して説明されているが、本発明が多くの他の形態で具現化されてよいということが当業者によって理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0168】
上で説明された/示されたシステム、方法、および装置が、少なくとも実質的に、リアルタイムまたは略リアルタイムの大規模なウイルスまたは微生物試験プロトコルのためのLAMP試験手順のスループットにおける大幅な改善をもたらす改良された分子アッセイプラットフォームを提供するということが理解されるであろう。
【0169】
本明細書に記載された、および/または図面に示された、システム、装置、および方法は、単に例として提示されており、本発明の範囲に関して制限していない。特に具体的に述べられない限り、システム、装置、および方法の個別の態様および構成要素は変更されてよく、したがって、既知の同等のもの、あるいは将来開発されることがある代用品など、または将来許容できる代用品であることが判明することがある代用品などの、まだ知られていない代用品に置き換えられてよい。可能性のある応用の範囲が大きいため、かつ本システム、装置、および方法が多くのそのような変形に適応できるということが意図されるため、システム、装置、および方法は、主張された発明の範囲内および思想内にとどまりながら、さまざまな応用のために変更されてもよい。
【符号の説明】
【0170】
1 ステップ
2 ステップ
3 ステップ
4 ステップ
5 ステップ
6 ステップ
7 ステップ
8 ステップ
10 方法
20 分析装置
22 装着ベッド
24 自動ピペット操作ステーション
26 ロボットサンプル移送システム
28 インキュベーションステーション
30 走査カメラシステム
100 分析装置
101 カメラ
101a マルチカメラ走査サブシステム
102 インキュベーションフィールド
103 インキュベーションコントローラ
104 マイクロプレート保持サブシステム
104a 直交座標ロボットサブアセンブリ
105 液体処理およびピペット操作ガントリーならびに液体処理ヘッド
106 マイクロプレート密封ステーション
107 マイクロプレート待機フィールド
108 システムリソースコントローラ
110 マイクロプレート
111 サンプルウェル
120 マイクロプレートサンプルキャリアトレイ
130 カルーセル
300 ヒートブロック
301 開口部
303 背面
501 光パネル
503 後方照射光
510 光パネル
600 構成
603 光ファイバサブバンドル
605 光ファイバ
610 光ファイババンドル
701 ウェル
703 集約された画像
801 ウェル
803 集約された画像
【手続補正書】
【提出日】2022-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的物質または生化学物質の有無に関する高スループットアッセイ試験用の自動化された分析装置であって、
サンプル容器の受容および任意選択としてのサンプルの熱不活化、分析容器への移送、ならびに前記分析容器に保持された前記サンプルに対する1つ以上の処理もしくは分析ステップの実行を行うように構成された複数のサンプルプロセスステーションであり、
複数の分析容器を受容することと、
インキュベーションフィールドにおいて前記分析容器を照射することと、
前記複数の分析容器を所定のインキュベーション温度または温度範囲に維持することと、
を行うように構成された少なくとも1つのインキュベーションステーションを備えた、プロセスステーションと、
前記プロセスステーションそれぞれの間で分析容器を移送するように構成された分析容器移送システムと、
前記インキュベーションフィールドに保持された前記分析容器中の照射された前記サンプルを撮像するように構成された撮像システムと、
リソースコントローラであり、
所定の分析プロセススケジュールに従って、前記複数の分析容器を各プロセスステーションに移送し、前記生物学的物質または生化学物質の作成および分析を行うように、前記分析容器移送システムを制御することと、
所定のインキュベーション期間および走査頻度に従って、前記インキュベーションフィールドに保持された前記分析容器を光学的に走査するように、前記撮像システムを制御することと、
前記撮像システムから、前記走査された分析容器の光学的画像情報を受信することと、
画像プロセッサに前記画像情報の処理を指示することと、
を行うように構成された、リソースコントローラと、
を備え、
前記生物学的物質または生化学物質の有無に関するサンプルの光学的撮像および分析と同時に、前記サンプルのインキュベーションが実行される、分析装置。
【請求項2】
各分析容器が、マイクロプレートアッセイである、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記撮像システムが、前記インキュベーションフィールド内に配置された前記分析容器中の照射された前記サンプルから生じた比色信号または蛍光信号を含む画像を記録するように構成された、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記撮像システムが、走査中に移動する構成要素を備えた走査型撮像システムであり、前記コントローラが、前記インキュベーションフィールドに対して分析容器を移送する際の前記分析容器移送システム動作の運動を前記走査型撮像システムの運動に対して調整することにより、前記分析容器移送システムと前記撮像システムとの間の衝突を回避するように構成された、請求項1から3のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項5】
動作時に、連続分析動作を可能にしつつ、新たなサンプルを含む分析容器を受け入れるように構成された、請求項1から4のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項6】
当該分析装置内のサンプルを含む前記分析容器の処理に対する当該分析装置内のリソースの利用を最大化する待ち行列システムとして動作可能である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記コントローラが、複数のロボットエンティティの移動の調整により前記ロボットエンティティ間の衝突を回避するための予測法に従って動作するように構成された、請求項1から
6のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記予測法が、システムスループットを最大化するとともにシステムを通じた全体的な分析容器処理遅延を最小化しつつ、共有時空間環境において動作する複数のロボットエンティティの移動の調整(「調整機能」)によって、サブシステム間の衝突を回避する、請求項
7に記載の分析装置。
【請求項9】
前記予測法が、すべてが同じ3D空間連続体において動的に動作する複数のロボット制御エンティティの将来位置を同時に予測するアルゴリズムを実装する、請求項
8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記分析容器移送システムが、マイクロプレートクレーンシステムである、請求項1から
9のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項11】
前記リソースコントローラが、画像プロセッサを用いて前記画像情報を処理することにより、試験中の前記生物学的物質または生化学物質の陽性判定を行うように構成された、請求項1から
10のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項12】
前記コントローラが、所定のインキュベーション期間および走査頻度に従って、前記インキュベーションフィールドに保持された前記分析容器を光学的に走査するように、前記撮像システムを制御するように構成された、請求項1から
11のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項13】
複数の分析容器を受容するためのサンプルキャリアトレイを備えた、請求項1から
12のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項14】
前記インキュベーションステーションが、均一な後方照射を与えるように構成された、請求項1から
13のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項15】
各分析容器が、各マイクロプレートアッセイにおける異なる生物学的物質または生化学物質の有無に関するアッセイ試験のため、唯一の分析プロセススケジュールに従って処理される、請求項1から
14のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項16】
前記インキュベーションフィールドの各マイクロプレートスロットとそれぞれ関連付けられた複数の光ファイババンドルを備えた、請求項1から
13のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項17】
各光ファイババンドルが、それぞれが分析容器キャリアの開口部と一致する位置に案内され、前記分析容器キャリアに保持された分析容器の各サンプルウェルに後方または側方照射を与えるように構成された複数の光ファイバをそれぞれ備えた複数の光ファイバサブバンドルを備えた、請求項1から
12のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項18】
前記撮像システムが、前記インキュベーションフィールドに配置された分析容器を撮像するように構成された少なくとも1つの光学カメラを備えた走査型撮像システムである、請求項1から
17のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項19】
前記撮像システムが、少なくとも1分当たり1回の速度で前記インキュベーションフィールドの全エリアを撮像するように構成された、請求項1から
18のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項20】
前記撮像システムが、2次元走査パスにおいて前記インキュベーションフィールドを走査するように構成された、請求項1から
19のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項21】
前記撮像システムが、前記インキュベーションフィールドの全幅にわたる合成視野を与えるように構成された複数の撮像カメラを備え、1次元走査パスにおいて前記インキュベーションフィールドを走査するように構成された、請求項1から
20のいずれか一項に記載の分析装置。
【請求項22】
前記撮像システムが、前記インキュベーションフィールドの上方に配置され、前記インキュベーションフィールドに配置された分析容器中のサンプルを撮像するための複数の固定された光学撮像カメラを備えた、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項23】
同時に動作するように構成された請求項1から
22のいずれか一項に記載の分析装置を複数備えた分析システムであって、各分析装置の前記リソースコントローラが、利用率に応じて、1つの分析装置内の処理ステーションへの分析容器の移送または分析装置間の分析容器の移送がなされるよう前記分析容器移送システムを制御することによって、当該分析システムの効率を最適化するとともに待ち時間を最小化するように構成された、分析システム。
【国際調査報告】