(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】歯科インプラントシステムのための締結システム、係止要素、及び上部構造を形成するプロセス
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551100
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 SE2022050190
(87)【国際公開番号】W WO2022182280
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523317489
【氏名又は名称】トーシア アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エケストロム,ボ
(72)【発明者】
【氏名】ラウリデセン,イェンス クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA04
4C159AA42
4C159AA43
4C159AA44
(57)【要約】
歯科インプラントのための締結システムであって、中央貫通開口部を含む係止要素であって、開口部が第1の遠位部分と第2の近位部分とを有し、第2の近位部分が第1の遠位部分に対して減少した内径を有する、係止要素と、係止要素を収容するための空洞を備えた歯科上部構造5であって、空洞が、肩部によって分離された遠位部分及び近位部分を含む、歯科上部構造と、空洞及び開口部内に収容可能な締結要素であって、締結要素が、空洞の肩部によって遠位方向の変位が実質的に制限される、締結要素とを備える、締結システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科インプラントのための締結システム(1)であって、
中央貫通開口部(101)を含む係止要素(100)であって、前記開口部(101)が第1の遠位部分(110)と第2の近位部分(120)とを有し、該第2の近位部分(120)が前記第1の遠位部分(110)に対して減少した内径を有する、係止要素と、
該係止要素(100)を収容するための空洞(210)を備えた歯科上部構造(200)であって、前記空洞(210)が、肩部(213)によって分離された遠位部分(211)及び近位部分(212)を含む、歯科上部構造と、
前記空洞(210)及び前記開口部(101)内に収容可能な締結要素(300)であって、該締結要素(300)が、前記空洞(210)の前記肩部(213)によって遠位変位が実質的に制限される、締結要素とを備える、締結システム(1)。
【請求項2】
前記締結要素(300)が、前記係止要素(100)の前記開口部(101)内に収容可能で、それに対して回転可能であり、前記締結要素(300)の遠位端(301)が前記係止要素(100)の前記第2の近位部分(120)の内径よりも大きい外径を有する、請求項1に記載の締結システム(1)。
【請求項3】
前記締結要素(300)が、歯科インプラント(400)に固定可能な近位端(302)を有する、請求項1又は2に記載の締結システム(1)。
【請求項4】
前記空洞(210)が、その少なくとも一部が前記係止要素(100)の外径よりも小さい直径を有する遠位部分(211)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の締結システム(1)。
【請求項5】
前記空洞(210)の前記遠位部分(211)のアクセスホール(214)が、前記締結要素(300)の前記遠位部分(301)の外径よりも小さい直径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の締結システム(1)。
【請求項6】
前記空洞(210)の近位部分(212)が、そこを通る前記係止要素(100)を収容するためのものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の締結システム(1)。
【請求項7】
前記係止要素(100)が、挿入後に近位方向に抽出することができないように前記上部構造(200)内に固定される、請求項6に記載の締結システム(1)。
【請求項8】
前記係止要素(100)が、前記空洞(210)から近位に延在しないように、前記空洞(210)内に完全かつ完璧に収容される、請求項1~7のいずれか一項に記載の締結システム(1)。
【請求項9】
前記締結システム(1)が、ボール部(431)を収容するための座部(412)を備える歯科インプラント(400)を備え、前記座部(412)が、前記締結要素(300)の挿入を介して前記ボール部(431)に固定可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載の締結システム(1)。
【請求項10】
歯科インプラントの上部構造(200)を製造するための方法であって、
前記上部構造(200)に空洞(210)を設けることであって、該空洞が、肩部分(213)によって分離された遠位部分(211)及び近位部分(212)を含み、前記遠位部分(211)が、前記近位部分(212)に対して縮径していることと、
係止要素(100)を設けることであって、該係止要素が貫通開口部(101)を備え、該開口部(101)が第1の遠位部分(110)及び第2の近位部分(120)を備え、前記第1の遠位部分(110)の内径が前記第2の近位部分(120)の内径よりも小さいことと、
前記係止要素(100)の開口部(101)に締結要素(300)を設けることと、
前記上部構造(200)の前記空洞(210)の前記近位部分(212)を介して前記係止要素(100)を挿入し、それによって前記締結要素(300)が前記空洞(210)の前記肩部(213)によって遠位変位から実質的に制限されるように、前記係止要素(100)及び前記締結要素(300)を前記上部構造(200)内に固定することとを含む、方法。
【請求項11】
前記係止要素(100)が、前記空洞(210)内に完全に収容され、前記空洞(210)から近位に延在していない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
歯科インプラントのための締結システム(1)で使用するための係止要素(100)であって、該係止要素が、貫通開口部(101)を備え、該開口部が、第1の遠位部分(110)及び第2の近位部分(120)を備え、前記第1の遠位部分(110)の内径が、前記第2の近位部分(120)の内径よりも小さい、係止要素(100)。
【請求項13】
請求項12に記載の係止要素(100)を収容するための空洞(210)を備える歯科インプラントのための上部構造(200)であって、前記空洞(210)が、遠位部分(211)及び近位部分(211)を有し、該近位部分(212)が、前記係止要素(100)を収容し、前記遠位部分(211)が、前記近位部分(212)の内径よりも小さい内径を有する、上部構造(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科インプラントシステムのための締結システム、係止要素、及び上部構造を形成するプロセスに関する。特に、本開示は、上部構造内に固定可能に収容された係止要素を有する締結システムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科インプラントは、患者の歯科状態の審美性、快適性、発話及び一般的性能を改善又は回復するために使用される。インプラントは、概して、完全なインプラントシステムを提供するために互いに固定されたいくつかの構成要素を含む。
【0003】
インプラントシステムは、概して、患者の顎骨内に固定された歯科インプラントを含む。歯科インプラントは、患者の骨に螺合されてもよいし、別様に固定されてもよい。次いで、歯科インプラントは、締結システムを介してクラウン又はブリッジとしても知られる上部構造に接続される。上部構造は、システムの外部の歯の補綴要素を形成する。
【0004】
上部構造を歯科インプラントに接続する締結システムは、様々な構成要素を含むことができる。理想的には、締結システムにより、上部構造を顎骨に対して意図された位置に適切に角度付けできる。締結システムはまた、構造全体に実質的な追加の高さを追加するべきではない。
【0005】
明らかなように、締結システムは、概して、いくつかの小さな構成要素を備え、そのような小さな構成要素は取り扱いが困難であり、小さな構成要素が患者の気管又は食道に落下し、偶発的な摂取又は吸引をもたらすリスクがあり、したがって、患者は、内部損傷又はさらには窒息に起因する重篤な合併症の両方の危険がある。(非特許文献1)これは、歯科インプラントシステムの設置中、調整中、及び取り外し中の両方のリスクである。患者へのリスクを低減するために、歯科用糸/フロスを様々な構成要素に取り付けて、処置中に患者の喉に落下した場合にそれらを収容することができるようにしてもよい。(非特許文献2)糸は構成要素に取り付けられる必要があり、手順の複雑さを増大させるので、これは明らかに理想的ではない。
【0006】
さらに、患者の顎骨に固定された各追加の新しい構成要素は、広範な規制試験を必要とする。したがって、既存の承認済み製品を顎骨に挿入するために使用することには、患者の顎骨に挿入されずに上部構造を位置決めする改善された構成要素と組み合わせて利点がある。
【0007】
歯科インプラントへの確実な接続を可能にし、調整可能な位置決めを可能にし、リスクを低減し、それによって処置中の患者の安全性を高める改善された締結システムが必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cosselluらによる「Accidental aspiration of foreign bodies in dental practice:clinical management and prevention」、Gerodontology、2013年
【非特許文献2】Ratnadityaらによる「A simplified method of preventing implant hex drive from aspiration or accidental swallowing during stage two implant recovery」、J Int Soc Prev Community Dent.、2014年
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明は、好ましくは、歯科インプラントのための締結システムを提供することによって、当技術分野における上述の欠点及び不利益の1つ以上を単独で又は任意の組み合わせで軽減、緩和又は排除しようとし、少なくとも上述の問題を解決しようとし、締結システムは、中央貫通開口部を含む係止要素であって、開口部が第1の遠位部分と第2の近位部分とを有し、第2の近位部分が第1の遠位部分に対して減少した内径を有する、係止要素と、係止要素を収容するための空洞を備えた歯科上部構造であって、空洞が、肩部によって分離された遠位部分及び近位部分を含む、歯科上部構造と、空洞及び開口部内に収容可能な締結要素であって、締結要素が、空洞の肩部によって遠位変位が実質的に制限される、締結要素とを備える。
【0010】
締結システムのための係止要素が更に提供される。
上部構造も提供される。
締結システムを提供する方法も提供される。
【0011】
締結システムは、より容易にシステムをインプラント及び/又は抽出することを可能にする。締結システムは、既存のシステムよりも角度依存性を低減することを可能にする。さらに、システムは、アクセスホールの直径の縮小を可能にし、患者の快適性及びインプラントの外観を改善する。さらに、締結システムは、歯科処置中に上部構造からの小さな構成要素が緩むリスクなしに歯科インプラントシステムを提供することを可能にする。締結システムは、患者の顎骨内に提供するための既存の承認された構成要素の使用を更に提供し、それにより、規制上の要求が低減された改善された締結システムを可能にする。
【0012】
更なる有利な実施形態は、添付の特許請求の範囲及び従属する特許請求の範囲に開示されている。
本発明が可能なこれら及び他の態様、特徴並びに利点は、添付の図面を参照して、本発明の実施形態の以下の説明から明らかになり、解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一態様に係る歯科インプラントのための締結システムの断面概略図である。歯科インプラントは、顎骨内に固定されて示されている。
【
図2】一態様に係る歯科インプラントのための締結システムの分解部分断面図である。
【
図3】一態様に係る歯科インプラントのための締結システムの断面概略図である。
【
図4】歯科インプラントのための締結システムの断面概略図である。上部構造に設けられた空洞は、2つの非軸方向に整列した部分を有する。
【
図5A】歯科インプラントのための締結システムの断面概略図である。
【
図5B】歯科インプラントのための締結システムの断面概略図である。歯科インプラントには、顎骨(顎骨は図示せず)において歯科インプラントに接続される追加の締結要素が設けられている。
図5Aでは、上部構造は締結要素の上方にある。
図5Bでは、締結システムは追加の締結要素に固着されている。
【
図6】歯科インプラントのための締結システムの断面概略図である。歯科インプラントには、追加の締結システムが設けられている。締結システムの係止要素は、歯科インプラントの遠位部分の形状に一致する近位領域とともに示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、歯科インプラントのための締結システム1を示し、締結システム1は、歯科上部構造200内に固定可能に収容されるための係止要素100を備える。係止要素100は、開口部101を備える。開口部101は、第1の部分110と、第2の部分120とを有する。第2の部分120は、第1の部分110に対して縮径している。第1の部分110及び第2の部分120は、肩部分130によって分離されている。
【0015】
係止要素100の開口部101は、係止要素100を通って設けられる。開口部101は、それが係止要素100を通って延在するという点で、貫通として説明することができる。係止要素100は、係止リング100と呼ぶことができる。係止要素100は、ほぼ円筒形の形態である。開口部101に起因して、係止要素100は、ほぼ中空の円筒として説明され得る。しかしながら、係止要素100は、円筒である必要はなく、上部構造200への挿入後に上部構造200に対して回転することができないように、典型的なナット等の角度を有する外形を有してもよい。開口部の第1の部分110は、開口部110の第2の部分120よりも大きい直径を有する。開口部101の第1の部分110と第2の部分120との間に肩部分130が形成されている。肩部分130は、開口部101の第1の部分110及び第2の部分120の二つの異なる直径によって形成される。肩部分130は、段階的な直径の変化が開口部101の第1の部分110と第2の部分120との間にもたらされるように平坦であってもよい。肩部分130は、段階的な直径の変化が開口部101の第1の部分110と第2の部分120との間で達成されるように角度付けされてもよいし、湾曲されてもよいし、別様に形成されてもよい。
【0016】
係止要素100は、歯科上部構造200内に固定可能である。係止要素100は、例えば接着剤又はセメントを介して歯科構造200内に固定されてもよい。係止要素100は、係止要素100に設けられたカラー、フランジ、又は他の方法で突出する部材140を設けることによって固定されてもよい。突出部材140は、上部構造200に対する係止要素100の一方向への移動を阻止し、上部構造に対する係止部材100の反対方向への移動を可能にする。例えば、突出部材140は、上部構造200への挿入を可能にし、一旦挿入されると上部構造200からの係止部材100の取り外しを阻止する傾斜した遠位面を有する突出傾斜部であってもよい。突出部材140は、係止要素100の周りに周方向カラーを形成するように、係止要素100の外周の周りに設けられてもよい。突出部材140は、周囲の一部のみに設けられてもよい。複数の突出部材140は、係止要素100の外周の周りの点に設けられてもよい。複数の突出部材140は、係止要素100の外周の周りの異なる点及び係止要素100上の異なる近位位置及び遠位位置に設けられてもよく、すなわち、突出要素は、単一の周方向構成を形成する必要はなく、係止要素100の外面103上の上面104から異なる距離に構成されてもよい。突出要素は、係止要素100の外面103から突出する複数のキー部材140であってもよい。これは、係止要素100と上部構造200との間の接続がいくつかの突出部材140を設けることによって改善され得るため、上部構造200がポリマーから製造される場合に特に有利である。
【0017】
係止要素100の外面103は、上部構造200の開口部210に螺合することができるようにねじを切られてもよい。このような構成では、開口部210には、係止要素100の雄ねじと一致する雌ねじが設けられている。
【0018】
図に示すように、上部構造200には、係止要素100を収容するための空洞210が設けられている。係止要素100は、上部構造200の空洞210内にほぼ完全かつ完璧に収容される。開口部101の第1の遠位部分110は、空洞210内に完全に収容される。開口部101の第2の近位部分120は、空洞210内に完全に収容される。係止要素100は、空洞210から近位に延在していない。空洞210は、遠位部分211及び近位部分212を有する。係止要素100は、上部構造200の近位部分212を介して収容される。空洞210の近位部分212は、空洞210の遠位部分211の直径よりも大きい直径を有する。空洞210の遠位部分211は、係止要素100の外径よりも小さい直径を有する。そのような構成では、係止要素100は、空洞210の遠位部分211を介して挿入又は除去することができない。これにより、係止要素100は、空洞210の幾何学的形状、及び任意の突出部材140及び/又は接着剤を介して空洞210内に保持される。空洞210の遠位211及び近位212の部分は、空洞210の遠位211及び近位212の部分の間の幾何学的形状を画定する肩部分213によって分離されてもよい。遠位211及び近位212の部分は、軸方向に共に整列していてもよい。すなわち、遠位部分211は、近位部分212の中心軸と一致する中心軸を有することができる。そのような構成を
図2~
図4に示す。
図1に示すように、遠位部分211は、近位部分212と軸方向に位置合わせされる必要はなく、各部分211、212は、非同軸である中心軸を有することができる。
図1~
図4に示すシステム1では、空洞210の遠位211及び近位212の部分の軸方向位置合わせは、概して、歯科インプラントが患者の顎骨内に固定される角度によって決定される。肩部213は、空洞210の遠位部分211及び/又は近位部分の角度に対して或る範囲の角度であってもよい。
図3、
図5A及び
図5B、並びに
図6に示すように、肩部213は、空洞210の遠位部分211及び/又は近位部分212の壁に対して垂直であってもよい。
【0019】
空洞210は、上部構造200に設けられた貫通開口部によって形成されると考えることができる。すなわち、空洞210は、両端が開いている。空洞210では、駆動装置4の頭部を収容するために遠位部分211が開いている。空洞210では、係止要素100を収容するために近位部分212が開いている。
【0020】
係止要素100の外面103は、上部構造200の空洞210にほぼ当接する。外面103の遠位部分104は、上部構造200の空洞210に当接することができる。係止要素100の遠位部分104は、空洞210の肩部213に当接することができる。
図1に示すように、係止要素100は、肩部213の部分に当接することができ、これは、非軸方向に整列した遠位211及び近位212の空洞210の部分を設けた上部構造200において有利である。
【0021】
締結システム1は、締結要素300を備える。締結要素300は、係止要素100、ひいては上部構造200を歯科インプラント400に固定する。締結要素300は、第1の遠位端301及び第2の近位端302を有する。締結要素300の第1の遠位端301は、空洞210の遠位部分211の内径よりも大きい外径を有する。これにより、締結要素100は、上部構造200内の係止要素100によって保持され、特に、上部構造200の空洞210内に保持される。締結要素300は、係止要素100に対して回転可能である。
図1~
図5に示すように、締結要素300は、その遠位部分301にねじ頭部320を有し、その近位部分302にねじ山310を有するねじであってもよい。締結要素300の近位部分302は、歯科インプラント400内に収容可能である。締結要素300がねじである場合、ねじ山310は、歯科インプラントに設けられた雌ねじ内に収容可能である。
【0022】
締結要素300は、上部構造200に挿入される前に係止要素100に設けられる。組み立て中、締結要素300及び係止要素100は、上部構造の空洞210に挿入される。空洞210への挿入後、締結要素300及び係止要素100の両方は、上部構造の空洞210内にほぼ固定される。
【0023】
締結要素300は、係止要素100に対して回転可能である。これにより、駆動部材4によって回転するネジ式の締結要素300を使用することができる。係止要素100が上部構造200内に固定されると、締結要素300も上部構造200に対して回転可能である。回転可能という用語は、ここでは、締結要素が、締結要素の延長軸に一致して延在する中心長手方向軸の周りで回転可能であることを意味するために使用される。
【0024】
係止要素100及び締結要素300は、挿入前に上部構造200に設けられ、その中に固定され得るため、締結要素300が緩んだり、患者の口の中に落下したりするリスクはない。係止要素100、締結要素300、及び上部構造200は、歯科医/歯科技術者が取り扱いやすい単一の要素として設けられる。
【0025】
上述したように、締結要素300の遠位端301は、空洞210の部分の内径よりも大きい外径を有する。したがって、締結要素300は、遠位部分211を通って取り外すことも、空洞210の開放遠位端を通って取り外すこともできない。
【0026】
図1~
図6に示すように、空洞210の一部のみが、締結部材300の遠位端301の外径よりも小さい内径を有する必要がある。遠位部分211の少なくとも一領域が、締結要素が空洞の遠位部分211を通って除去され得ないような内径を有する場合、遠位部分211全体は、締結要素300の遠位部分301の外径よりも小さい内径を有する必要はない。
図1に示す構成では、空洞210の遠位部分211は、肩部分213における締結要素300の遠位(図に示すように上方)移動を妨げる。空洞210の遠位部分211には、アクセスホール(操作孔)214が設けられている。空洞210の遠位部分211のアクセスホール214は、締結要素300の遠位端301の外径よりも小さい直径を有する。アクセスホール214は、係止要素100の外径よりも小さい直径を有する。締結要素300及び係止要素100は、空洞210の近位部分212を通って挿入可能であるため、アクセスホール214は、締結要素300を駆動するために使用される駆動部材の直径よりも大きくする必要はない。これは、孔が小さいほど感染のリスクが低減され、患者に改善された外観及び快適性を提供するので有利である。
【0027】
締結要素300は、上部構造200の空洞210の遠位部分211を介して遠位に所定の位置で保持される。締結要素300は、係止要素100の開口部101の近位部分120によって近位に所定の位置で保持される。締結要素300が係止要素100及び上部構造200に設けられると、遠位及び近位への移動が実質的に制限される。締結要素300は、長手方向に、すなわち締結要素300の長さ軸の方向に、係止要素100及び上部構造200に対する移動が制限される。締結要素300は、係止要素100及び上部構造200に対して回転可能である。
【0028】
締結要素300の遠位端301の遠位面303は、締結要素300がほぼ長手方向に固定されるように、上部構造200の空洞210の肩部分213に設けられてもよい。締結要素300の遠位端301の近位面304は、係止要素100の開口部101の近位部分120に当接する。
【0029】
図から分かるように、締結要素300の遠位端301は、遠位変位が実質的に制限されていれば、空洞210の肩部分213に連続的に当接する必要はない。例えば、係止要素100及び上部構造200に対する締結要素300の回転を可能にするために、肩部213と締結要素300の遠位端301の遠位面303との間に公差を設けることができる。
【0030】
係止要素100及び締結要素300が上部構造200内に固定されて設けられるので、締結要素300は、患者からの挿入又は抽出中に係止要素100又は上部構造200に対して長手方向に移動しない。この利点は、上部構造200、係止要素100、及び締結要素300を備える締結システム1が、患者からの挿入又は抽出時に全体として変位され、固定されることである。そのような構成の更なる利点は、
図5及び
図6に関連して以下に説明される。
【0031】
空洞210は、締結要素300の遠位部分301よりも狭くなるように、遠位部分211において先細になっていてもよい。空洞210の遠位部分211の最遠位開口部は、そこを通る駆動部材5を収容するのに十分な直径を有するだけでよい。
【0032】
空洞210の遠位部分211の長さ、すなわち深さは、特定の設置及び上部構造200の設計に依存し得る。
図3に示すように、遠位部分211は、近位部分212と比較して相対的に短い長さを有することができ、これにより、遠位端301の締結要素300が上部構造200の遠位端により近くなる。駆動部材5が空洞210の遠位部分211のより長い長さを横切る必要がないような構成では、締結要素300へのアクセスがより容易になる。さらに、駆動部材5を遠位部分211に挿入可能な角度範囲が大きくなる。
図4は、空洞の遠位部分211が近位部分212よりも長く、係止要素100を患者の顎部に近づける構成を示す。そのような構成では、駆動部材5は、空洞210の遠位部分211の軸方向角度によって画定される角度で遠位部分を横断する。
【0033】
締結要素300は、係止要素100及び締結部材300を上部構造に挿入した後に、係止要素100と上部構造200との間に保持される。
【0034】
締結要素300は、係止要素100が締結部材300を所定の位置に保持するので、空洞210の近位部分212を通る近位(図に示すように下方)抽出を介して取り外すことができない。特に、係止要素100の肩部130は、締結要素300の遠位部分301に当接する。締結要素300の遠位部分301は、肩部分130及び係止要素100の第2の部分120の内径よりも大きい直径を有する。
【0035】
背景技術のセクションで説明したように、歯科インプラント400は、患者の顎骨内に固定される。上部構造200を歯科インプラント400に取り付け、それによって上部構造200を口腔内の適所に固定するために、締結要素300が歯科インプラント400に固定される。本明細書で使用される歯科インプラント400という用語は、患者の顎骨に固定された要素、又は患者の顎骨に固定された要素に取り付けられ得る要素のいずれかを指す。明確にするために、
図1及び
図5を調べて比較することができる。
図1に示す構成では、歯科インプラントは、患者の顎骨内に固定されるように明示的に示されたねじ付部材である。歯科インプラント400は、固定要素300を収容するための雌ねじ401を有する。
図5は、国際公開第2015/152815号(Simply Dental AB)に記載されている締結システムに関する。
図5では、患者の顎骨内に固定された要素は示されていないが、顎骨内に固定された要素にほぼ固定された追加の構造が示されており、この場合は歯科インプラント400を形成すると考えられる。この要素が顎骨にどのように固定されるかに関する追加の情報は、国際公開第2015/152815号(
図3~
図7参照)に見出すことができる。歯科インプラント400は、患者の顎骨にほぼ固定されている。したがって、本開示において意味される歯科インプラント400は、患者の顎部に固定された歯科インプラントであってもよく、又は
図5に示すように、歯科インプラント400は、歯科インプラントにほぼ固定された締結システムであってもよい。
【0036】
図5A、
図5B及び
図6に示すように、締結要素300は、国際公開第2015/152815号に記載されている締結システムの本体412に固定されてもよい。本体412は、ボール部431が本体412内に係止されるように、国際公開第2015/152815号の締結システムのボール部431と係合する。本締結システム1を国際公開第2015/152815号に記載されているものと組み合わせると、締結要素300は、上部構造200及び係止要素100を本体412に対して固定する。締結要素300は、締結要素300の挿入後に本体412がボール部431に固定されるように、本体412をボール部431に固定することができる。締結要素300の挿入は、本体412の上部を拡張し、これにより、本体412の下部をボール部431の周りに押し付けて固定する。
【0037】
上述の組み合わせの利点は、本締結システム1が、締結要素300の実質的な遠位変位なしに、上部構造200、係止要素100、締結要素300の挿入及び/又は抽出を可能にすることである。ボール431により、上部構造200は、広範囲の角度でのアクセスが可能であるように回転してもよいし角度付けしてもよい。これは、いくつかの歯科インプラントが患者の顎部に固定され、従来の締結ねじ又は上部構造の抽出角度が隣接するインプラントによって妨げられる場合に特に有利である。
図5に示すように、上部構造200は、締結要素300を本体412から解放した後に患者の顎部に対して調整することができる。
【0038】
図5及び
図6のシステム1では、インプラントが患者の骨内に固定される角度に対して、ボール431が空洞210を含む上部構造200の調整を可能にするので、空洞210の遠位部分211及び近位部分212はほぼ軸方向に整列している。
図5及び
図6に示すように、ボール431を備えるシステム1では、空洞210の遠位部分211は、締結要素300の遠位端301が上部構造200の遠位面の近傍に設けられ、駆動部材5によるアクセスの改善を可能にするようなものであってもよい。
【0039】
歯科インプラント400は、固定要素300の近位部分302を収容し固定するための部分410を含む。固定要素300の近位部分302を収容するための部分410は、概して、固定要素が歯科インプラント400に螺合され得るような雌ねじ付き空洞410である。固定要素300が、例えばねじ山を介して歯科インプラント400に固定されると、固定要素300、上部構造200及び係止部材100はそれぞれ、患者の顎骨の所定の位置に固定される。
【0040】
上述したように、固定要素300の遠位部分301は、概して、ねじ頭部320を含む。ねじ頭部は、上部構造200の空洞210の遠位部分211を通って挿入される駆動部材5を収容する。具体的には、駆動部材5は、アクセスホール214を通って挿入される。ねじ部材は、固定要素300を回転させて、固定要素300を歯科インプラント400に固定するためのものである。
【0041】
駆動部材のためのソケット321、すなわち駆動部材5を収容する部品は、従来の六角形/六角ソケットであってもよいが、歯科分野内で使用される他のソケットタイプ及びそれらのそれぞれの駆動部材が適している。概して、駆動部材5は、締結要素300を斜めに駆動するためのボール型六角頭部を有する。
【0042】
係止要素100の近位基部150は、歯科インプラント400の遠位部分401に当接してほぼ一致するように形作られてもよい。すなわち、係止要素100は、歯科インプラント400の遠位部分401の形状に一致するように形作られた基部を有することができる。このような構成により、固定システム1内の隙間が最小限に抑えられ、緩むリスク、特にインプラント部位での感染の可能性が低減される。係止要素100のそのような形状の基部150が
図2に示されており、係止要素100の基部150は、歯科インプラント400の遠位部分401の外面と一致するように示されている。係止要素100の基部は、歯科インプラント400の遠位部分401の表面を収容し完全に当接することができる。
【0043】
係止要素100の別の形作られた基部150が
図6に示されており、係止要素は、係止要素100の第2の近位部分120に対して歯科インプラント400の近位に追加の突起を含む。係止要素100の形作られた基部150は、歯科インプラント400の締結要素部分の周りに形成され、ほぼ当接する。これは、歯科インプラント400の表面により良好に嵌合する係止要素100を提供し、したがって係止要素100が上部構造200を通して歯科インプラント400により完全に印加される力を分散させることができるので、その部位での感染のリスクを低減し、より広い範囲の材料で上部構造200を提供することを可能にし得る。
【0044】
次に、上部構造を準備する手順を説明する。
上部構造200は、最初に設けられてもよい。概して、上部構造200は、既存の歯の外観に適合する患者の要件に従って製造され、患者のニーズに従って形成される。本方法は、上部構造200に空洞210を設けることを含む。上述したように、空洞210は、遠位部分211と近位部分212とを含み、遠位部分211は、近位部分212に対して縮径している。締結要素300は、係止要素100の開口部101に対して設けられる。係止要素100は、空洞の近位部分212を介して上部構造200に挿入される。したがって、係止要素100及び締結要素300は、上部構造200内で固定される。上述のように、係止要素100は、歯科用セメント等の接着剤を介して上部構造内に固定されてもよいし、上部構造200の空洞210に対して係止要素100の外側形状を介して固定されてもよい。
【0045】
本開示を通して使用される近位及び遠位という用語は、患者の顎骨に対する要素の相対的な位置に関する。理解されるように、歯科インプラント400は、上顎、上顎骨、又は下顎、下顎骨に設けられてもよい。別の要素又は特徴の遠位の要素又は特徴は、骨から遠い。別の要素又は特徴の遠位の要素又は特徴は、骨に近い。
【0046】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、本明細書に記載の特定の形態に限定されるものではない。むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0047】
特許請求の範囲において、「含む(comprises/comprising)」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除しない。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれてもよいが、これらはおそらく有利に組み合わされてもよく、異なる請求項に含まれることは、特徴の組み合わせが実現可能及び/又は有利ではないことを意味しない。加えて、単数の参照は複数を除外しない。「1つの(a)」、「1つの(an)」、「第1の(first)」、「第2の(second)」等の用語は、複数を排除するものではない。特許請求の範囲における参照符号は、単に明確な例として提供されており、決して特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】