(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】酸化的脱水素化触媒の大規模合成
(51)【国際特許分類】
B01J 27/057 20060101AFI20240221BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20240221BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20240221BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240221BHJP
B01J 27/24 20060101ALI20240221BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
B01J27/057 Z
B01J37/10
B01J37/06
B01J37/08
B01J27/24 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551719
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 IB2022051207
(87)【国際公開番号】W WO2022180475
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505382548
【氏名又は名称】ノバ ケミカルズ(インターナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、シャオリャン
(72)【発明者】
【氏名】シマンゼーンコフ、ヴァシリー
(72)【発明者】
【氏名】サリバン、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】デ ウィット、ペリー
(72)【発明者】
【氏名】ドラッグ、ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユンヒ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA21C
4G169BB01C
4G169BB04A
4G169BB05C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BB10C
4G169BB11A
4G169BB11B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC55A
4G169BC55B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BD01C
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD06C
4G169BD08A
4G169BD10A
4G169BD10B
4G169BE08C
4G169BE11C
4G169CB07
4G169DA06
4G169FB10
4G169FB27
4G169FB29
4G169FB30
4G169FB57
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC09
4H039CA21
4H039CC10
(57)【要約】
触媒及び触媒を大規模生産する方法が提供される。例示的な触媒組成物には、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素が含まれる。触媒組成物において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.40である。酸素は、少なくとも存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、組成物には、1.0重量%未満の硫黄が含まれる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素を含む触媒組成物であって、
モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、
モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、
モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.40であり、
酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、組成物は、1.0重量%未満の硫黄を含む、
触媒組成物。
【請求項2】
組成物が、0.50重量%未満の硫黄を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
組成物が、0.001重量%~0.90重量%の硫黄を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、0.5重量%~3.0重量%の窒素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、0.8重量%~2.0重量%の窒素を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物が、0.8重量%~1.2重量%の窒素を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物が、5.0重量%未満の水を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、0.01重量%~2重量%の水を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
モリブデンとバナジウムのモル比が、1:0.12から1:0.49であり、
モリブデンとテルルのモル比が、1:0.01から1:0.30であり、
モリブデンとニオブのモル比が、1:0.01から1:0.30である。
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物であって、
組成物は、
モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された組成物を提供すること、並びに、
予備洗浄された組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、0.25重量%未満の硫黄を含む組成物を提供すること、
を含む方法によって調製される、組成物。
【請求項11】
極性溶媒が水である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が少なくとも200gの規模で調製される、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が少なくともキログラム規模で調製される、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が約1~約5トンの規模で調製される、請求項10~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び硫黄を含む、予備焼成された触媒組成物であって、
モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、
モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、
モリブデンとニオブのモル比は、1:0.05から1:0.40であり、
酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、組成物の0.001重量%~0.25重量%を構成し、
該組成物は、
モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄されたODH触媒前駆体を提供すること、並びに、
予備洗浄されたODH触媒前駆体を、水を含む溶液で洗浄して、1.0重量%未満の硫黄を含むODH触媒前駆体を提供すること、
を含む方法によって調製される、組成物。
【請求項16】
モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び、任意選択で、硫黄、を含む触媒組成物を調製する方法であって、
モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、
モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、
モリブデンとニオブのモル比は、1:0.05から1:0.40であり、
酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、組成物の0.25重量%未満を構成し、
該方法は、
モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された触媒組成物を提供すること、並びに、
予備洗浄された触媒組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、0.25重量%未満の硫黄を含む触媒組成物を提供すること、
を含む、方法。
【請求項17】
極性溶媒が水を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組成物が、0.01重量%~0.1重量%の硫黄を含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
組成物が、0.8重量%~2.0重量%の窒素を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
組成物が、0.8重量%~1.2重量%の窒素を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも200グラムの組成物を調製する、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1キログラムの組成物を調製する、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
バッチあたり約1トン~約5トンの組成物を調製する、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を提供することをさらに含む、請求項16~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を提供することが、
モリブデンを含む水性混合物を提供すること;
テルルを含む水性混合物を提供すること;
バナジウムを含む水性混合物を提供する;
ニオブを含む水性混合物を提供すること;並びに
モリブデンを含む水性混合物、テルルを含む水性混合物、バナジウムを含む水性混合物、及びニオブを含む水性混合物を組み合わせて、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を提供すること;
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
バナジウムを含む水性混合物を提供することが、バナジウム化合物と水から水性混合物を調製することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
バナジウム化合物が、バナジウムアセチルアセトナート、バナジルアセチルアセトナート、ステアリン酸バナジル、ナフテン酸バナジウム、バナジウムベンゾイルアセトナート、硫酸バナジル、又はそれらの組合せから選択されるバナジウム化合物を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
バナジウム化合物が、硫酸バナジルを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
硫酸バナジルが、硫酸バナジル水和物を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
ニオブを含む水性混合物を提供することが、少なくとも五酸化ニオブ、酸、及び水から水性混合物を調製することを含む、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ニオブを含む水性混合物を提供することが、少なくとも五酸化ニオブ水和物、シュウ酸、及び水から水性混合物を調製することを含む、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
テルルを含む水性混合物を提供することが、少なくともテルル酸(Te(OH)
6)及び水から水性混合物を調製することを含む、請求項25~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
モリブデンを含む混合物を提供することが、少なくともモリブデン酸アンモニウム四水和物及び水から水性混合物を調製することを含む、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
請求項25~33のいずれか一項に記載の方法であって、
該方法は、
モリブデンを含む水性混合物と、テルルを含む水性混合物とを組み合わせて、モリブデン及びテルルを含む水性混合物を提供すること;
モリブデン及びテルルを含む水性混合物と、バナジウムを含む水性混合物とを組み合わせて、モリブデン、テルル、及びバナジウムを含む水性混合物を提供すること;並びに
モリブデン、テルル、及びバナジウムを含む水性混合物と、ニオブを含む水性混合物とを組み合わせて、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を提供すること;を含む、方法。
【請求項35】
モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約60℃~約100℃の温度で加熱することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約80℃の温度で加熱することをさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約7.0~約8.5に上昇させることをさらに含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約7.25~約7.75に上昇させることをさらに含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
水性混合物のpHを、上昇させることが、水性水酸化物溶液と、モリブデン及びテルルを含む水性混合物と組み合わせることを含む、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを上昇させることが、水酸化アンモニウムと、モリブデン及びテルルを含む水性混合物とを組み合わせることを含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約4.0~約6.0のpHに低下させることをさらに含む、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記pHを、約4.75~約5.25のpHに低下させることをさらに含む、請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを低下させることが、硫酸と、モリブデン及びテルルを含む水性混合物とを組み合わせることを含む、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
請求項34に記載の方法であって、
該方法が、
モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約70℃~約90℃の温度に加熱すること;
モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約7.25~約7.75のpHに上昇させること;並びに
バナジウムを含む水性混合物と、モリブデン及びテルルを含む水性混合物とを組み合わせる前に、モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約4.75~約5.25のpHに低下させること;
をさらに含む、方法。
【請求項45】
請求項34に記載の方法であって、
該方法が、
モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約70℃~約90℃の温度に加熱すること;
モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約7.25~約7.75のpHに上昇させること;
モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約0.5時間~約24時間撹拌すること;並びに
バナジウムを含む水性混合物を、モリブデン及びテルルを含む水性混合物に添加する前に、モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約4.75~約5.25のpHに低下させて、モリブデン、テルル、及びバナジウムを含む水性混合物を提供すること;
をさらに含む方法。
【請求項46】
水熱反応条件が、約145℃~約185℃の温度を含む、請求項16~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
水熱反応条件が、約160℃~約165℃の温度を含む、請求項16~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
水熱反応条件が、約75psig~約125psigの圧力を含む、請求項16~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
水熱反応条件が、約95~約105psigの圧力を含む、請求項16~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
水熱反応条件が、約145℃~約185℃の温度、及び約75psig~約125psigの圧力を含む、請求項16~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
水熱反応条件が、約160℃~約165℃の温度、及び約95psig~約105psigの圧力を含む、請求項16~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
水熱反応時間が、約12時間~約60時間である、請求項16~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
水熱反応時間が、約24時間~約48時間である、請求項16~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
水熱反応条件が、約145℃~約185℃の温度、及び約75psig~約125psigの圧力、約12時間~約60時間の時間を含む、請求項16~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
水熱反応条件が、約160℃~約165℃の温度、及び約95psig~約105psigの圧力、約24時間~約48時間の時間を含む、請求項16~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
水熱反応混合物を、濾過して、予備洗浄された触媒組成物にすることをさらに含む、請求項16~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
予備洗浄された触媒組成物を洗浄することが、予備洗浄された触媒組成物を、予備洗浄された触媒組成物1kgあたり約11リットル~約46リットルの水で洗浄することを含む、請求項16~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
予備洗浄された触媒組成物を洗浄することが、予備洗浄された触媒組成物を、予備洗浄された触媒組成物1kgあたり約24リットル~約34リットルの水で洗浄することを含む、請求項16~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
予備洗浄された触媒組成物を洗浄することが、予備洗浄された触媒組成物を、予備洗浄された触媒組成物1kgあたり約29リットルの水で洗浄することを含む、請求項16~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
洗浄された触媒組成物を乾燥することをさらに含む、請求項16~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
洗浄された触媒組成物を乾燥することが、触媒組成物中の水の量を組成物中の5重量%未満の水に減少させることを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
洗浄された触媒組成物を乾燥することが、触媒組成物中の水の量を組成物中の2重量%未満の水に減少させることを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
洗浄された触媒組成物を乾燥することが、触媒組成物中の水の量を組成物中の0.01重量%~2重量%の水に減少させることを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
洗浄された触媒組成物を、約60℃~約330℃の温度で乾燥する、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
洗浄された触媒組成物を、約200℃~約300℃の温度で乾燥する、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
洗浄された触媒組成物を、約250℃の温度で乾燥する、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
洗浄された触媒組成物を、約70℃~約110℃の温度で乾燥する、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
洗浄された触媒組成物を、約90℃の温度で乾燥する、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
洗浄された触媒組成物を、約60℃~約330℃の温度で約1時間~約240時間乾燥する、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
触媒組成物を提供するための空気処理をさらに含む、請求項16~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
触媒組成物を粉砕することをさらに含む、請求項16~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
粉砕された触媒組成物の平均粒子サイズが、約50μm~約1,000μmである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
粉砕された触媒組成物の平均粒子サイズが、約125μm~約500μmである、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、及び酸素を含む触媒材料であって、
モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.12から1:0.49であり、
モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、
モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、
酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、触媒材料の0.01重量%未満を構成する、
触媒材料。
【請求項75】
モリブデンとバナジウムのモル比が、1:0.20から1:0.45であり、
モリブデンとテルルのモル比が、1:0.05から1:0.25であり、
モリブデンとニオブのモル比が、1:0.05から1:0.25である、
請求項74に記載の触媒材料。
【請求項76】
モリブデンとバナジウムのモル比が、1:0.25から1:0.40であり、
モリブデンとテルルのモル比が、1:0.10から1:0.20であり、
モリブデンとニオブのモル比が、1:0.10から1:0.20である、
請求項74に記載の触媒材料。
【請求項77】
モリブデンとバナジウムのモル比が、1:0.30から1:0.35であり、
モリブデンとテルルのモル比が、1:0.13から1:0.17であり、
モリブデンとニオブのモル比が、1:0.12から1:0.14である、
請求項74に記載の触媒材料。
【請求項78】
触媒材料が、0.005重量%未満の硫黄を含む、請求項74~77のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項79】
触媒材料が、0.003重量%未満の硫黄を含む、請求項74~77のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項80】
触媒材料が、0.01重量%~1.0重量%の窒素をさらに含む、請求項74~79のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項81】
触媒材料が、0.5重量%~0.3重量%の窒素をさらに含む、請求項74~79のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項82】
触媒材料が、25重量%~35重量%の酸素を含む、請求項74~81のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項83】
触媒材料が、27重量%~33重量%の酸素を含む、請求項74~81のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項84】
触媒材料が、約350℃~約425℃の35%転化温度を有する、請求項74~83のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項85】
触媒材料が、約360℃~約390℃の35%転化温度を有する、請求項74~83のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項86】
触媒材料が、約370℃~約380℃の35%転化温度を有する、請求項74~83のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項87】
触媒材料が、約75%~約95%のエチレンに対する選択率を有する、請求項74~86のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項88】
触媒材料が、約80%~約90%のエチレンに対する選択率を有する、請求項74~86のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項89】
触媒材料が、実験式Mo
1.0V
0.12-0.49Te
0.01-0.30Nb
0.01-0.30O
dを有する混合金属酸化物を含み、dが酸化物の原子価を満たす数である、請求項74~88のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項90】
触媒材料が、実験式Mo
1.0V
0.20-0.45Te
0.05-0.25Nb
0.05-0.25O
dを有する混合金属酸化物を含み、dが酸化物の原子価を満たす数である、請求項74~89のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項91】
触媒材料が、実験式Mo
1.0V
0.25-0.40Te
0.10-0.20Nb
0.10-0.20O
dを有する混合金属酸化物を含み、dが酸化物の原子価を満たす数である、請求項74~90のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項92】
触媒材料が、実験式Mo
1.0V
0.30-0.35Te
0.13-0.17Nb
0.12-0.14O
dを有する混合金属酸化物を含み、dが酸化物の原子価を満たす数である、請求項74~91のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項93】
請求項74~92のいずれか一項に記載の触媒材料であって、
触媒材料は、
モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び硫黄を含む触媒組成物を提供すること、並びに、該触媒組成物を焼成して触媒材料を提供すること
を含む方法によって調製され、
モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、
モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、
モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.40であり、
酸素は、少なくとも、金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、組成物の0.25重量%未満を構成する、
触媒材料。
【請求項94】
触媒組成物を焼成することが、触媒組成物を約500℃~約650℃の温度で加熱することを含む、請求項93に記載の触媒材料。
【請求項95】
触媒組成物を焼成することが、触媒組成物を約600℃の温度で加熱することを含む、請求項93に記載の触媒材料。
【請求項96】
予備焼成された触媒組成物を焼成することが、予備焼成された触媒組成物を約500℃~約650℃の温度で約2時間~約24時間加熱することを含む、請求項93に記載の触媒材料。
【請求項97】
予備焼成された触媒組成物を焼成することが、予備焼成された触媒組成物を約600℃の温度で約6時間加熱することを含む、請求項93に記載の触媒材料。
【請求項98】
予備焼成された触媒組成物を提供することが、
モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された組成物を提供すること、並びに、
予備洗浄された組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、0.25重量%未満の硫黄を含む予備焼成された触媒組成物を提供すること、
を含む、請求項93~97のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項99】
予備焼成された触媒組成物が、0.1重量%未満の硫黄を含む、請求項98に記載の触媒材料。
【請求項100】
予備焼成された触媒組成物が、1.2重量%未満の窒素を含む、請求項98又は99に記載の触媒材料。
【請求項101】
予備焼成された触媒組成物が、5重量%未満の水を含む、請求項98~100のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項102】
触媒材料が、少なくとも200gの規模で調製される、請求項93~101のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項103】
触媒材料が、少なくともキログラム規模で調製される、請求項93~101のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項104】
モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び、任意選択で、硫黄、を含む触媒材料を調製する方法であって、
該方法は、
モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された組成物を提供すること、並びに
予備洗浄された組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び任意で硫黄を含む触媒組成物を提供すること、
を含み、
モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、
モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、
モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.40であり、
酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、組成物の0.25重量%未満を構成し、
該方法は、
触媒組成物を焼成して触媒材料を提供することを含み、
モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.12から1:0.49であり、
モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、
モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、
酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、組成物の0.01重量%未満を構成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、酸化的脱水素化(ODH)触媒及びシステムに関する。より具体的には、ODH触媒の大規模合成に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンは、商業的に価値のあるさまざまなポリマーの基本的な構成要素である。天然に存在するオレフィンの供給源は、商業的な量では存在しないため、ポリマー製造業者は、より豊富にある低級アルカンをオレフィンに変換する方法に依存している。今日の商業規模の生産者が選択する方法は、蒸気分解であり、蒸気で希釈したアルカンを少なくとも800℃の温度に短時間さらす、吸熱性の高いプロセスである。必要な温度を生成するための燃料需要と、その温度に耐えることができる装置の必要性により、全体のコストが大幅に増加する。さらに、高温によりコークスの形成が促進され、コークスがシステム内に蓄積するため、メンテナンスとコークスの除去のために、コストのかかる定期的な反応器の停止が必要となる。
【0003】
酸化的脱水素化プロセス(ODH)は、発熱性のプロセスであり、コークスをほとんど、又はまったく生成しない、蒸気分解の代替手段である。ODHでは、エタンなどの低級アルカンを、触媒及び任意選択で不活性希釈剤(二酸化炭素、窒素、蒸気など)の存在下で酸素と混合し、これを300℃程度の低い温度で行うことにより、対応するアルケンを生成する。このプロセスでは、二酸化炭素や酢酸など、さまざまな他の酸化生成物が生成される可能性がある。ODHプロセスの商業化が進むにつれ、商業規模の触媒の生産をスケールアップするための研究が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書の実施例に記載される例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素を含む触媒組成物を提供する。触媒組成物において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.40である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、組成物は、1.0重量%未満の硫黄を含む。
【0005】
本明細書の実施例に記載される別の例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び硫黄を含む予備焼成された触媒組成物を提供する。触媒組成物において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.05から1:0.40である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、組成物の0.001重量%~0.25重量%を占める。この組成物は、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄されたODH触媒前駆体を提供すること、並びに、予備洗浄されたODH触媒前駆体を、水を含む溶液で洗浄して、1.0重量%未満の硫黄を含むODH触媒前駆体を提供すること、を含む方法によって調製される。
【0006】
本明細書の実施例に記載される別の例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び、任意選択で、硫黄、を含む触媒組成物の調製方法を提供する。触媒組成物において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.05から1:0.40である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、組成物の0.25重量%未満を占める。本方法は、モリブデン、バナジウム、テルル及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された触媒組成物を提供すること、並びに、予備洗浄された触媒組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、0.25重量%未満の硫黄を含む触媒組成物を提供すること、を含む。
【0007】
本明細書の実施例に記載される別の例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、及び酸素を含む触媒材料を提供する。触媒材料において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.12から1:0.49であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.30である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、触媒材料の0.01重量%未満含まれる。
【0008】
本明細書の実施例に記載される別の例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び硫黄を含む触媒材料の調製方法を提供する。本方法は、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された組成物を提供することを含む。本方法は、予備洗浄された組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び硫黄を含む触媒組成物を提供することを含む。触媒組成物において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.40である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で触媒組成物中に存在する。硫黄は、組成物の0.25重量%未満を占める。本方法は、触媒組成物を焼成して触媒材料を提供することを含み、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.12から1:0.49であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、触媒材料の0.01重量%未満含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、実施例による、軽質炭化水素の酸化的脱水素化のための酸化的脱水素化システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、いくつかの実施形態による化学コンプレックスの図である。
【
図3】
図3は、いくつかの実施形態による化学コンプレックスの図である。
【
図4】
図4は、実施例に記載されるマイクロ反応器ユニット(MRU)の概略図である。
【
図5】
図5は、マイクロ反応器ユニット(MRU)の熱電対の製造図であり、6つの熱電対測定点の位置を示す。
【
図6】
図6は、不十分に洗浄された触媒組成物の赤外スペクトルを、十分に洗浄された触媒組成物の赤外スペクトルに重ねて示したプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
酸化的脱水素化反応(ODH)は、一般に、エタンから、エチレン、又は他のα-オレフィンを形成するために使用される。本明細書に記載される実施形態は、酸化的脱水素化反応のための触媒系の大量、例えば2kg以上のバッチの調製プロセスを提供する。触媒にはモリブデン(Mo)、バナジウム(V)、テルル(Te)、ニオブ(Nb)、及び酸素(O)が含まれる。アルカンの酸化的脱水素化反応のためのMoVTeNbOxなどの多成分金属酸化物触媒が知られている。このような触媒は、典型的には、金属の溶液を混合し、次いで母液から金属酸化物前駆体を沈殿させ、次いで乾燥した前駆体を焼成して触媒を形成することによって製造される。焼成された触媒は、未焼成の前駆体と比較して、例えば、所望のオレフィン生成物に対する選択率の向上やプロセスの安定性の向上など、改善された触媒特性を示す。その結果、多成分金属酸化物触媒は、典型的には、プロセス用途で使用される前に焼成される。しかし、未焼成の触媒は「多能性」の状態で存在する。使用される焼成誘導手順に応じて、さまざまな潜在的な固定化学状態に区別される可能性がある。したがって、触媒の焼成工程が正しい条件下で行われなかったり、前段階のワークアップ工程が欠けていたりすると、触媒の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
スケールアップに伴う大きな問題の1つは、触媒の濾過である。濾過工程では、固体触媒を水溶液から分離し、硫黄化合物や窒素化合物などの汚染副生成物塩を洗い流す。触媒中に塩が残留すると、焼成中に塩が触媒を分解し、触媒の性能が低下するおそれがある。したがって、塩を洗い流すために、一般に、大量の水、触媒1kgあたり約29Lの水が使用される。しかし、濾過中に、固体触媒粒子の一部が無駄に流出するのを防ぎながら塩を除去するのは、しばしば困難である。本明細書の実施例で提供されるプロセスは、触媒1kgあたり従来のプロセスほど多くの水(例えば、約12L)の水を使用することなく、大規模(例えば、約2Kgを超える)でのMoVTeNbOxODH触媒の製造を可能にする。これにより、固体触媒粒子の一部を無駄にすることなく、汚染塩を効果的に除去することができる。
【0012】
本明細書に記載の技術には、焼成前に、滞留した空気を使用する、空気処理工程が含まれており、これによって濾過と洗浄に使用される水の量を減らすことができる。流動空気処理工程は、高温(550~650℃)の不活性ガス(窒素)焼成の一部として使用されてきた。しかし、本明細書に記載の空気処理は、焼成ユニット内の触媒床上に空気を流すのではなく、オーブン内で250℃の滞留した空気で処理することを含む。触媒床の深さは、空気処理中に大きな装填量を可能にするため、5~12cmとすることができる。本明細書で使用される場合、大きな装填量では約980cm2の表面積を有し、小さな装填量では約104cm2未満の表面積を有する。大きな装填量での材料の量は、実施例に基づいている(例えば表3.6を参照)。これらの結果を触媒材料3.X(表4.3)及び触媒材料4.X(表5.4)と比較することで、規模(スケール)の例によって生じる違いやS仕様を満たすための要件を確認することができる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「触媒材料」という用語は、例えば担体上でエタンのエチレンへの酸化的脱水素化反応を促進することができる活性触媒を含む材料を指す。触媒材料は、複数の粒子又は形成された触媒材料とすることができる。形成された触媒材料の非限定的な例としては、押出成形触媒材料、プレス触媒材料、及び鋳造触媒材料が挙げられる。プレス触媒材料及び鋳造触媒材料の非限定的な例としては、錠剤、楕円形、球状粒子などのペレットが挙げられる。
【0014】
本明細書で使用される場合、「触媒組成物」という用語は、一般に、触媒材料の活性触媒部分を指す。触媒組成物は、一般に、さらなる工程で処理されて触媒材料を形成する。
【0015】
本開示の広範な範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体例に記載された数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、どのような数値も、それぞれの試験測定に見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含んでいる。本明細書に記載される数値範囲は、そこに包含されるすべての部分範囲を含むことを意図していることを理解されたい。例えば、「1~10」の範囲は、記載されている最小値1と記載されている最大値10とを含むそれらの間のすべての部分範囲を含むことを意図しており、すなわち、最小値が1以上で、最大値が10以下である。開示されている数値範囲は連続的であるため、最小値と最大値との間のあらゆる値が含まれる。特に明記されていない限り、本出願で指定されている様々な数値範囲は近似値である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アルカン」という用語は、非環式飽和炭化水素を指す。多くの場合、アルカンは、すべての炭素-炭素結合が単結合である直鎖状構造中に配置された水素原子と炭素原子で構成されている。アルカンの一般化学式はCnH2n+2である。いくつかの実施形態では、アルカンは、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、及びドデカンのうちの1つ以上を指す。特定の実施形態では、アルカンは、エタン及びプロパンを指し、いくつかの実施形態では、エタンを指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アルケン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む不飽和炭化水素を指す。多くの実施形態では、アルケンは、アルファオレフィンを指す。いくつかの実施形態では、アルケンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、ブタジエン、ペンテン、ペンタジエン、ヘキセン、オクテン、デセン、及びドデセンのうちの1つ以上を指す。特定の実施形態では、アルケンは、エチレン及びプロピレンを指し、いくつかの実施形態では、エチレンを指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アルファオレフィン」又は「α-オレフィン」という用語は、化学式CxH2xのアルケン(オレフィンとしても知られる)である有機化合物のファミリーを指し、一次又アルファ(α)位に二重結合があることで区別される。いくつかの実施形態では、アルファオレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、及び1-ドデセンのうちの1つ以上を指す。特定の実施形態では、アルファオレフィンは、エチレン及びプロピレンを指し、いくつかの実施形態では、エチレンを指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「本質的に酸素を含まない」という用語は、1つ以上のODH反応器の後、及び多くの実施形態では本明細書に記載の第2の反応器の後に、プロセス流中に残存する酸素が存在する場合、その量が、下流のプロセス流又は装置に可燃性又は爆発性の危険性を示さないほど十分に少ないことを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「固定床反応器」という用語は、直列又は並列の1つ以上の反応器であって、多くの場合、触媒ペレットで充填された円筒形の管を含む反応器を指し、反応物が固定床を通って流れて生成物に変換される。反応器内の触媒は、1つの大きな床、いくつかの水平床、いくつかの平行な充填管、及び複数の床を、それら自身のシェル内に含むが、これらに限定されない複数の構成を有することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「流動床反応器」という用語は、直列又は並列の1つ以上の反応器であって、多くの場合、流体(気体又は液体)を含む反応器を指し、この流体は、固体を懸濁させて流体であるかのように挙動させるのに十分な速度で、微小な球状にすることができる固体粒状触媒を通過する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「モノマー」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む小分子を指し、これは、フリーラジカル重合開始剤の存在下で反応し、他のモノマーと化学的に結合してポリマーを形成する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「移動床反応器」という用語は、触媒物質が反応物と共に流れ、その後、出口流から分離されてリサイクルされる反応器を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「MoVOx触媒」という用語は、実験式Mo6.5-7.0V3Odを有する混合金属酸化物(式中、dは、少なくとも酸化物の原子価を満たす数である)、実験式Mo6.25-7.25V3Odを有する混合金属酸化物(式中、dは、酸化物の原子価を満たす数である)、又はそれらの組合せを指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「オレフィン性モノマー」という用語は、限定されないが、α-オレフィン、及び特定の実施形態では、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及びそれらの組合せを含む。
【0026】
本開示において、「活性酸素」とは、酸化的脱水素化触媒に取り込まれた酸素を意味し、酸化的脱水素化反応に利用可能であり、触媒から除去される。
【0027】
本開示において、前反応器内の触媒に言及する場合の「活性酸素が枯渇した」という用語は、絶対的な酸素枯渇を意味するものではない。むしろ、触媒中に残留する活性酸素のレベルが十分に低く、触媒に取り込まれた酸素の最大量の25%未満、好ましくは15%未満、最も好ましくは10%未満であることを意味する。活性酸素を放出した後の触媒は、酸素を放出しない金属酸化物で構成される。
【0028】
活性酸素が実質的に飽和しているとは、活性酸素の60%以上、好ましくは70%超、最も好ましくは85%超が酸化的脱水素化触媒と錯体を形成していることを意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「実質的にアセチレンを含まない」という用語は、1つ以上のODH反応器の後、及び多くの実施形態では本明細書に記載の第2の反応器の後に、プロセス流中に残存するアセチレンが存在する場合、その量が、本明細書に記載の分析技術を使用して検出されないか、又はゼロvppmであることを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「スイング床型反応器配置」という用語は、第1の容器が反応器として効果的に作動し、第2の容器が触媒系を再生するための再生器として効果的に作動する気相反応器システムである。この配置は、固定床ODH反応器及び流動床ODH反応器で使用することができる。
【0031】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、ODHプロセス中に一酸化炭素が生成される程度は、それを二酸化炭素に変換することによって緩和することができ、二酸化炭素は酸化剤として作用することができる。プロセスを操作して、プロセスからの二酸化炭素の排出量を所望のレベルに制御することができる。本明細書に記載の方法を使用して、ユーザーは、余剰の二酸化炭素を大気中で燃焼処理し、又は放出する必要がないように、二酸化炭素ニュートラル条件で操作することを選択することができる。
【0032】
図1A及び
図1Bは、実施例による、軽質炭化水素の酸化的脱水素化のための酸化的脱水素化システム100のブロック図である。このプロセスで一般に使用される酸化剤は空気102であるが、一般に希釈剤と混合した酸素を使用することもできる。空気102は空気分離ユニット(ASU)104に流入する。ASU104において、酸素106が、とりわけ窒素や二酸化炭素などの他のガスから分離される。その後、酸素106は、例えば、蒸気希釈システム108内で希釈剤と混合されてもよい。
【0033】
プロセスの混乱を回避するため、多くの実施形態では、1種以上のアルカンと酸素の可燃性エンベロープの範囲外の比率を用いて、1種以上のアルカンと酸素の混合物が使用される。いくつかの実施形態では、酸素に対するアルカンの比率は、可燃性エンベロープの上限の外にあってもよい。これらの実施形態では、混合物中の酸素の割合は、ゼロより大きいが、30重量%未満、場合によっては25重量%未満、又は他の場合には20重量%未満とすることができる。
【0034】
酸素の割合が高い実施形態では、アルカンの割合を調整して、混合物を可燃性エンベロープの範囲外に保つことができる。当業者であれば適切な比率レベルを決定することができるが、多くの場合、アルカンの割合はゼロより大きく約40体積%未満である。非限定的な例として、ODH前の混合ガスが20体積%の酸素と40体積%のアルカンを含む場合、残りを不活性希釈剤で補うことができる。この実施形態において有用な不活性希釈剤の非限定的な例としては、蒸気、窒素、二酸化炭素などの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、不活性希釈剤は、反応器内の条件において気体状態で存在すべきであって、反応器に添加される炭化水素の可燃性を増加させるべきではなく、どの不活性希釈剤を使用するかを決定する際に、その特性を当業者が理解するであろう。不活性希釈剤は、ODH反応器に入る前にアルカン含有ガス又は酸素含有ガスに添加することができ、又はODH反応器に直接添加することができる。
【0035】
多くの異なる炭化水素を使用することができるが、酸化的脱水素化プロセスでは、一般にエタンが酸素と共に反応器に供給される。いくつかの実施形態では、1つ以上のODH反応器に供給されるエタンに対する酸素の体積供給比(O2/C2H6)は、少なくとも約0.3、場合によっては少なくとも約0.4、他の場合には少なくとも約0.5とすることができ、最大約1、場合によっては最大約0.9、他の場合には最大約0.8、場合によっては最大約0.7、他の場合には最大約0.6とすることができる。エタンに対する酸素の体積供給比は、上記の任意の値、又は任意の値の間の範囲とすることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、可燃性エンベロープ内に入る混合物は、例えば、混合物が爆発事象の伝播を防止する条件で存在する場合に使用され得る。これらの非限定的な例では、可燃性混合物は、点火がすぐに消火される媒体内で生成される。さらなる非限定的な例として、ユーザーは、酸素と1種以上のアルカンが、火炎抑制材料によって囲まれるポイントで混合される反応器を設計することができる。発火しても周囲の物質によって消火される。火炎抑制材料には、ステンレス鋼の壁やセラミック支持体などの金属製又はセラミック製の部品が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、酸素とアルカンを、発火事象が爆発につながらないような低温で混合することができ、その後、温度が上昇する前に反応器に導入する。可燃性条件は、混合物が反応器内部の火炎抑制材料によって囲まれるまで、存在しない。
【0037】
蒸気希釈システム108内においてODHプロセスに加える蒸気の量は、二酸化炭素が酸化剤として作用する程度に影響を与える。いくつかの実施形態では、蒸気を、ODH反応器110に直接加えてもよいし、蒸気を個々の反応成分(低級アルカン、酸素、若しくは不活性希釈剤)又はそれらの組合せに加え、その後、1つ以上の反応成分と共にODH反応器110内に導入してもよい。あるいは、蒸気を、低級アルカン、酸素、若しくは不活性希釈剤のいずれか、又はそれらの組合せと混合した水として間接的に加えてもよく、得られた混合物を反応器に入る前に予熱してもよい。蒸気を水として間接的に加える場合、ヒーター112を使用して温度を上昇させ、水が反応器に入る前に完全に蒸気に変換されるようにする。
【0038】
ODH反応器110に加える蒸気の量を増やすと、二酸化炭素が酸化剤として作用する程度が増加する。ODH反応器110に加える蒸気の量を減らすと、二酸化炭素が酸化剤として作用する程度が減少する。いくつかの実施形態では、ユーザーは二酸化炭素排出量をモニターし、それを所定の目標二酸化炭素排出量と比較する。二酸化炭素排出量が目標を上回った場合、ユーザーはODHプロセスに加える蒸気の量を増やすことができる。二酸化炭素排出量が目標値を下回った場合、蒸気が加えられている場合は、ユーザーはODHプロセスに加える蒸気の量を減らすことができる。目標二酸化炭素排出量レベルの設定は、ユーザーの要件に依存する。いくつかの実施形態では、加える蒸気の量を増やすと、プロセス中に生成される酢酸及び他の副生成物の量が増えるという追加の効果が得られる。ODHから生成される酢酸の量は、蒸気レベルが高いほど多くなるため、蒸気レベルを下げると生成される量が減少する。逆に、蒸気レベルが高ければ、消費される二酸化炭素の量は増加する。
【0039】
いくつかの実施形態では、ODH反応器110に加える蒸気の量は、ODH反応器110に流入する流れの最大約50体積%、状況によっては最大約40体積%、場合によっては最大約35体積%、他の場合には最大約30体積%、場合によっては最大約25体積%とすることができ、ゼロ、場合によっては少なくとも0.5体積%、他の場合には少なくとも1体積%、他の場合には少なくとも5体積%、場合によっては少なくとも10体積%、他の場合には少なくとも15体積%とすることができる。ODH反応器110に流入する流れ中の蒸気の量は、上記の任意の値又は任意の値の間の範囲とすることができる。本明細書で使用される場合、ODH反応器110は、単一の反応器、又は複数の反応器を含んでもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、2つ以上のODH反応器を使用する場合、ユーザーは、1つの反応器だけで、又は反応器の全体よりも少ない数の反応器で、二酸化炭素排出量を制御することを選択することができる。例えば、ユーザーは、上流の反応器の二酸化炭素排出量を最大化することで、より高いレベルの二酸化炭素を後続の反応器のための不活性希釈剤の一部にすることができる。その場合、上流で二酸化炭素排出量を最大化することで、次の反応器の前に流れに加える必要のある不活性希釈剤の量を最小限に抑えることができる。
【0041】
蒸気を加えることは、不活性希釈剤のための多くの選択肢の一つであるため、ODHプロセスに蒸気を加えることが必須であるというわけではない。蒸気を加えないプロセスでは、エタン、酸素、不活性希釈剤の投入に関して使用される条件下で二酸化炭素排出量が最大化される。二酸化炭素排出量の低減は、二酸化炭素排出量が所望のレベルに下がるまで反応に蒸気を加えることによって行うことができる。酸化的脱水素化、又は酸化的脱水素化の条件が蒸気を加えることを含まず、二酸化炭素排出量が所望の二酸化炭素目標レベルより高い実施形態では、反応器に添加される主な反応物及び不活性希釈剤(低級アルカン、酸素及び不活性希釈剤)の相対量を一定に保ちながら、蒸気を反応器に導入し、二酸化炭素排出量をモニターし、二酸化炭素が目標レベルまで減少するまで蒸気の量を増加させることができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、酸化的脱水素化プロセスで生成された二酸化炭素が酸化剤として使用され、二酸化炭素の正味の生成がないように、加える蒸気を増加させることによって、二酸化炭素ニュートラルプロセスを達成することができる。逆に、ユーザーが正味の二酸化炭素排出量を望む場合は、二酸化炭素の生成を最大化するために、プロセスに加える蒸気の量を減らすか、あるいはなくすことができる。二酸化炭素レベルが増加すると、二酸化炭素が酸化剤として競合するため、酸素消費量が減少する可能性がある。当業者であれば、蒸気を使用して二酸化炭素が酸化剤として作用する程度を高めると、酸素消費量に影響を与える可能性があることを理解するだろう。その意味するところは、ユーザーは酸素の寄与を抑えて反応条件を最適化することができ、混合物を可燃性限界の範囲内に保つことができるということである。
【0043】
ヒーター112から、供給物がODH反応器110に導入される。ODH反応器110は、アルカンのODHなどの選択的酸化プロセスに適用可能な既知の反応器タイプのいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、ODH反応器110は従来の固定床反応器である。典型的な固定床反応器では、反応物は反応器の一端から導入され、固定化触媒を通過して流れ、その間に生成物が形成される。生成物は、供給物が導入されたのとは反対側の端で、ODH反応器110を出る。本明細書に開示した方法に適した固定床反応器の設計は、このタイプの反応器について知られている技術に従うことができる。当業者であれば、形状や寸法、反応物の投入、生成物の産出、温度や圧力の制御、触媒を固定化する手段などに関して、どのような特徴が必要かを知っているだろう。
【0044】
いくつかの実施形態では、不活性非触媒熱放散粒子を、1つ以上のODH反応器内で使用することができる。様々な実施形態において、熱放散粒子は、床内に存在し、1つ以上の非触媒不活性微粒子を含む。当該非触媒不活性粒子は、反応の温度上限制御限界よりも少なくとも30℃、いくつかの実施形態では少なくとも250℃、さらなる実施形態では少なくとも500℃高い融点を有し、0.5~75mmの範囲、いくつかの実施形態では0.5~15mm、さらなる実施形態では0.5~8mm、さらなる実施形態では0.5~5mmの範囲の粒子サイズを有し、及び、反応温度制御限界内で30W/mK(ワット/メートルケルビン)を超える熱伝導率を有する。いくつかの実施形態では、微粒子は、反応温度制御限界内で50W/mK(ワット/メートルケルビン)を超える熱伝導率を有する金属合金及び化合物である。いくつかの実施形態では、粒子は鉱物又は金属酸化物である。これらの実施形態で使用できる適切な金属の非限定的な例としては、銀、銅、金、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、モリブデン、タングステン、及びケイ砂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
熱放散粒子は、約1mm~約15mmの粒子サイズを有することができる。いくつかの実施形態では、粒子サイズは約1mm~約8mmとすることができる。熱放散粒子は、固定床の全重量に基づいて、5~95重量%、いくつかの実施形態では30~70重量%、他の実施形態では45~60重量%の量で、固定床に添加することができる。この粒子は、潜在的に、熱を反応器の壁に直接伝達することによって、冷却の均一性を改善し、固定床内のホットスポットを減少させるために使用される。本明細書に記載されるように、実施形態では、ODH反応器110は、例えば、ODH反応器110の周囲のジャケット又はODH反応器110内のコイルにおいて、高圧蒸気114を生成することによって冷却されてもよい。
【0046】
追加の実施形態には、流動床反応器の使用が含まれ、この場合、触媒床は、反応器の下端付近に配置された多孔質構造、又は分配板によって支持することができ、反応物は、流動床を流動化させるのに十分な速度で流れる(例えば、触媒は上昇し、流動化して旋回し始める)。反応物は流動化された触媒と接触すると生成物に変換され、その後、反応物は反応器の上端から除去される。当業者が修正及び最適化できる設計上の考慮事項には、反応器の形状、分配板の形状及びサイズ、入口温度、出口温度、並びに反応器の温度及び圧力制御が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態は、固定床反応器と流動床反応器の両方を組み合わせて使用することを含み、各反応器は同じ又は異なるODH触媒を備える。複数の反応器は、直列又は並列構成で配列することができ、その設計は、当業者の知識の範囲内である。
【0048】
いくつかの実施形態では、1つ以上のODH反応器から出る流れを処理して、1つ以上のODH反応器を出る流れから水及び水溶性炭化水素を除去又は分離することができる。いくつかの実施形態では、この流れは第二反応器に供給される。
【0049】
いくつかの実施形態では、ODH反応器110を出た流れは、急冷塔118に導かれ、冷却され、凝縮される。これにより、酢酸分離器124に供給する底部出口を介して、水120や酢酸122などの酸素化物の除去が促進される。酢酸分離器124は、酢酸流122を水120から分離すると共に、酢酸スクラバー126に戻されるガス流を分離する。水120は、バイオ酸化ユニット128で処理されて、とりわけ微量の酢酸などの残留炭素化合物を除去することができる。バイオ酸化ユニット128から、水120を、冷却塔130に補給流として供給することができる。
【0050】
急冷塔118からの残りのガスは、酢酸分離器124からの分離ガスと共に酢酸スクラバー126に供給される。酢酸スクラバー126は、酸化又は吸着により、これらのガス流から微量の酢酸及び他の炭素化合物を除去することができる。
【0051】
未転化の低級アルカン(エタンなど)、対応するアルケン(エチレンなど)、未反応の酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、任意にアセチレン及び不活性希釈剤を含む流れ132は、酢酸スクラバー126を出て、酸素除去システム134(
図1B)、又は第2の反応器(
図2及び
図3に関して説明した)に供給される。いくつかの実施形態では、流れ132の一部133は、例えば、反応器110への供給流と混合するために蒸気希釈システム108に戻されることによって、反応にリサイクルされる。
【0052】
急冷塔118及び/又は酢酸スクラバー126を介して除去される酸素化物は、カルボン酸(例えば酢酸)、アルデヒド(例えばアセトアルデヒド)及びケトン(例えばアセトン)を含むことができる。スクラバーを出て酸素除去システム134に供給される流れ132中に残留する含酸素化合物の量は、多くの場合ゼロであり、例えば、そのような化合物を検出するために典型的に使用される分析試験法の検出限界以下である。酸素化物が検出される場合、それらは体積で最大約1/100万(1ppmv)、場合によっては最大約5ppmv、他の場合には約10ppmv未満、場合によっては最大約50ppmv、他の場合には最大約100ppmvのレベルで存在することができ、最大約2体積%、場合によっては最大約1体積%、他の場合には最大約1,000ppmv存在することができる。スクラバーを出て酸素除去システム134に供給される流れ中の酸素化物又は酢酸の量は、上記の任意の値又は任意の値の間の範囲とすることができる。
【0053】
酸素除去システム134では、本明細書に記載されるように、高温膜を使用して、酢酸スクラバー126を出た流れ132から酸素を除去してもよい。高温膜は、流れ132中のアクセス炭化水素を燃焼させることによって、又は酸素除去システム134に添加された燃料を燃焼させることによって、あるいはその両方によって加熱してもよい。酢酸スクラバー126を出た流れ101は、蒸気希釈システム108にリサイクルすることができる。
【0054】
酸素除去システムからの流れ132は、例えば、第1の圧縮機システム136で圧縮してもよい。第1の圧縮機システム136は、単一の圧縮機、又は流れ132の圧力を連続的に高める一連の圧縮機を含んでもよい。圧縮された流れは、次いで、本明細書でさらに詳細に説明するように、アミンスクラバー138に供給され、圧縮された流れからCO2140を除去してもよい。アミンスクラバー138から、圧縮された流れを苛性洗浄塔142に供給してもよい。苛性洗浄塔142では、圧縮ガス流中のCO2の濃度をさらに低減し、そのCO2を豊富な(rich)苛性流144中に送る。豊富な苛性流144は、次いで、処理されて希薄な(lean)苛性流を形成し、これを苛性洗浄塔142に戻すことができる。
【0055】
苛性洗浄塔142からの精製ガス流は、未転化の低級アルカン(エタンなど)及び対応するアルケン(エチレンなど)、並びに過剰の不活性希釈剤(窒素など)を含み得る。精製ガス流は、第2の圧縮機システム146で圧縮されてもよい。第2の圧縮機システム146は、単一の圧縮機、又は精製ガスの圧力を連続的に高める一連の圧縮機を含んでもよい。圧縮された精製ガスは、次いで、乾燥機148に送られ、アミンスクラバー138及び苛性洗浄塔142から余分な水蒸気を除去してもよい。乾燥機148は、水を吸収するためのモレキュラーシーブを含んでもよく、又は水を物理的に凝縮させるための一連の熱交換器及び冷却器を含んでもよく、あるいはその両方を含んでもよい。
【0056】
乾燥した流れは、次いで、冷却器150に送られる。冷却器150は、プロパン冷却熱交換器、圧縮窒素冷却熱交換器、及びプロセスの他の部分からの流体によって冷却される熱交換器などの一連の熱交換器を含んでもよい。冷却器150は、脱プロパン装置(C3R)152、脱エタン装置(C2R)154、又はその両方と一体化されてもよく、又はそれらに供給してもよい。
【0057】
図1Aに戻ると、冷却されたガス流は、脱メタン装置156に供給される。脱メタン装置156から、オフガス流158が廃棄物又は下流プロセスに送られる。オフガス流158には、不活性希釈剤の残りと、冷却されたガス流から除去されたメタンが含まれる。さらに、脱メタン装置156は、エチレン及びエタンなどのC
2化合物の一部を、第1の圧縮機システム136の上流のプロセスに戻す。脱メタン装置156からのC
2流は、C
2スプリッター160に供給される。
【0058】
C2スプリッター160は、C2流をエチレン生成物流162とエタン供給流164に分割する。エタン供給流164は熱交換器166内で気化され、エタンガス供給流を形成する。別のエタン供給源からのエタン供給物168は、熱交換器170内で気化され、エタンガス供給流に混合されてもよい。
【0059】
エタンガス供給流は、次いで、高温熱交換器172を通過し、過熱される。過熱されたエタンガス供給流は、次いで、プロセスで使用するために蒸気希釈システム108に供給される。酸素化物の分離、アミン洗浄、及び苛性洗浄を含むコア反応プロセスについては、以下の
図2及び
図3を参照してさらに説明する。
【0060】
図2は、いくつかの実施形態による化学コンプレックス200の図である。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付している。いくつかの実施形態では、
図2に一実施形態を概略的に示す化学コンプレックスは、協働配置で、ODH反応器202、急冷塔及び/又は酢酸スクラバー204、第2の反応器206(本明細書に記載)、アミン洗浄塔208、乾燥機210、蒸留塔212、及び酸素分離モジュール214を含む。ODH反応器202は、酸素ライン216を介して導入され得る酸素の存在下で、アルカンライン218を介して導入されるアルカンの酸化的脱水素化反応を触媒することができるODH触媒を含む。第2の反応器206は、急冷塔又は酢酸スクラバー204の直後に示されているが、さらに下流に配置することもできる。多くの場合、第2の反応器206を、投入流(input stream)が圧縮された後に配置すると、プロセス構成はよりエネルギー効率的になる。
【0061】
ODH反応は、酸素と炭化水素の混合物が可燃性限界の範囲外にあることを確実にするために加えられる二酸化炭素、窒素、蒸気などの不活性希釈剤の存在下においても生じることがある。本明細書に記載されるように、不活性希釈剤は、ODH反応に関与してもよいし(例えば、二酸化炭素又は蒸気)、関与しなくてもよい(例えば、窒素)。混合物が、所定の温度及び圧力において、可燃性限界の範囲外であるかどうかの判断は、当業者の知識の範囲内である。ODH反応器202内で生じるODH反応は、触媒及びODH反応器202内の一般的な条件に応じて、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素化物、及び水を含む様々な他の生成物を生成することもある。これらの生成物は、未反応のアルカン、対応するアルケン、残留酸素、一酸化炭素、及び不活性希釈剤(添加されている場合)と共に、ODH反応器生成物ライン220を介して、ODH反応器202を出る。
【0062】
ODH反応器生成物ライン220は、急冷塔又は酢酸スクラバー204に導かれ、ここで、ODH反応器生成物ライン220からの生成物を急冷し、急冷塔底部出口222を介して酸素化物及び水の除去を促進する。急冷塔又は酢酸スクラバー204に添加される未転化の低級アルカン、対応するアルケン、未反応の酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、及び不活性希釈剤は、急冷塔オーバーヘッドライン224を通って出て、第2の反応器206に送られる。
【0063】
第2の反応器206は、上述のように、任意の促進剤及び任意の支持体を有する11族金属を含み、これにより、未反応の酸素を一酸化炭素と反応させて二酸化炭素を形成させるか、又は、任意選択で、アセチレンを一酸化炭素と反応させて一酸化炭素を低減又は除去する。第2の反応器206では、未反応の酸素及びアセチレンの大部分又は全部が消費される。第2の反応器206内の二酸化炭素の全部又は一部は、上述のように酸化剤として作用するように、リサイクルライン226及び227を介してODH反応器202にリサイクルして戻すことができる。残りの未転化の低級アルカン、対応するアルケン、未反応の酸素(存在する場合)、二酸化炭素の全部又は一部、一酸化炭素(存在する場合)、及び不活性希釈剤は、ライン228を介してアミン洗浄塔208に運ばれる。
【0064】
ライン228内に存在する二酸化炭素は、アミン洗浄塔208によって分離され、二酸化炭素底部出口230を介して捕捉され、販売してもよく、あるいは、上述のようにODH反応器202にリサイクルして戻してもよい。ライン228を介してアミン洗浄塔208に導入された二酸化炭素以外の成分は、アミン洗浄塔オーバーヘッドライン232を通ってアミン洗浄塔208を出て、乾燥機210を通過した後、ライン234を通って蒸留塔212に送られる。蒸留塔212では、C2/C2+炭化水素が分離され、C2/C2+炭化水素底部出口236を介して除去される。残りは、主にC1炭化水素(残留不活性希釈剤及び一酸化炭素(存在する場合)を含む)を含み、これらはオーバーヘッド流238を介して蒸留塔212を出て、酸素分離モジュール214に送られる。
【0065】
酸素分離モジュール214は、酸素輸送膜244によって分離された、保持側240及び透過側242を備えた密閉容器を含む。オーバーヘッド流238は、保持側240又は透過側242のいずれかに導くことができる。任意選択で、本明細書で説明するように、様々なレベルで両側への流入を可能にする流れ制御手段を含めることができる。その場合、操作者は、オーバーヘッド流238からの流れのどの部分が保持側240に入り、どの部分が透過側242に入るかを選択することができる。条件に応じて、操作者は、保持側か透過側かいずれかの側に切り替えたり、同等の量を両側に入れたり、いずれかの側に偏った量を入れたりすることができる。酸素分離モジュール214は、大気又は他の酸素含有ガスを保持側240に導入するための空気入口246も備える。酸素の導入による、保持側240に導入された生成物の燃焼は、酸素輸送膜244の温度を少なくとも約850℃まで上昇させることに寄与し、酸素が保持側240から透過側242に通過できるようにすることができる。大気中の成分、又は酸素以外の他の酸素含有ガスは、保持側240から透過側242に通過することができず、排気口248を介して酸素分離モジュール214から出ることしかできない。
【0066】
保持側240から透過側242への酸素の通過は、保持側240に導入された大気又は他の酸素含有ガスからの酸素の分離に影響を与える。その結果、透過側242で酸素富化(oxygen-enriched)ガスが生成され、この酸素富化ガスは、(
図1に示すように)酸素富化ボトムライン227を介して、直接又は酸素ライン216と組み合わせて、ODH反応器202に送られる。オーバーヘッド流238が保持側240に向けて送られると、酸素富化ボトムライン220中の酸素の純度は99体積%に近づく可能性がある。逆に、オーバーヘッド流238が透過側242に向けて送られると、酸素富化ボトムライン220中の酸素の純度は低くなり、上限は酸素80体積%~90体積%の範囲であって、残りは二酸化炭素、水、及び残留する不活性希釈剤の形態であり、これらはすべて、本開示によって想定されるODH反応に影響を与えず、ODH反応器202への富化酸素に同伴することができる。水と二酸化炭素は、それぞれ急冷塔204とアミン洗浄塔208によって除去することができる。本開示のいくつかの実施形態では、二酸化炭素の一部又は全部を、温室効果ガス排出の原因となる焼却とは対照的に、販売するために捕捉することができる。他の実施形態では、二酸化炭素がODHプロセスで使用される場合、アミン洗浄で捕捉された二酸化炭素を、ODH反応器202にリサイクルすることができる。
【0067】
酸素輸送膜244には温度依存性があり、温度が少なくとも約850℃に達したときにのみ酸素の輸送を可能にする。いくつかの実施形態では、オーバーヘッド流238中の成分は、それ自体、酸素の存在下での燃焼時に、酸素輸送膜244の温度を必要なレベルまで上昇させることができない。本実施形態において、本開示の化学コンプレックスは、酸素分離モジュール214の上流に、燃料増強ライン250も備えており、そこでは、非限定的な例としてメタンなどの可燃性燃料を添加して、オーバーヘッド流238からの可燃性生成物を補うことができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、ODHプロセスで懸念されるのは、炭化水素を酸素と混合することである。特定の条件下では、混合物が不安定になり、爆発事故を引き起こす可能性がある。混合器は、開口した混合容器(flooded mixing vessel)内で、炭化水素含有ガスを酸素含有ガスと混合するために使用することができる。このように混合することにより、不安定な組成物のポケットが不燃性の液体で囲まれるため、たとえ発火事象が発生してもすぐに消火される。ODH反応へのガスの添加が制御され、温度と圧力に関する所定の条件下で、均一混合物が可燃性エンベロープの範囲外にあるようになれば、炭化水素と酸素の安全な均一混合物が得られる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ODH反応器202の上流に、開口したガス混合器(flooded gas mixer)302(
図3)がある。この例では、酸素ライン216及びアルカンライン218は、開口したガス混合器302に直接供給される。炭化水素及び酸素、並びに任意に不活性希釈剤を含む均一混合物を、混合ライン304(
図3)を介して、開口したガス混合器302からODH反応器202に導入することができる。酸素富化ボトムライン227を、開口したガス混合器302に直接供給してもよいし、又は酸素ライン216と組み合わせて、開口したガス混合器302に供給してもよい。
【0070】
典型的なODHプロセスにおける製品ライン220内の内容物の温度は、約450℃に達することがある。上述したように、急冷塔又は酢酸スクラバー204に導入する前に、流れの温度を下げることが望ましい場合がある。その場合、本開示は、各ODH反応器202のすぐ下流で、かつ酢酸スクラバー204のすぐ上流で、熱交換器を使用することを想定する。このように温度を下げるために熱交換器を使用することは、当技術分野でよく知られている。
【0071】
図3は、いくつかの実施形態による化学コンプレックス300の図である。
図2を参照して上述したように、
図3に示すODHプロセス構成では、第2の反応器206は、急冷塔又は酢酸スクラバー204の直後に示されているが、さらに下流に配置することもできる。多くの場合、第2の反応器206を、投入流が圧縮された後に配置すると、そのプロセス構成は、よりエネルギー効率的になる。
【0072】
いくつかの実施形態では、1つ以上のODH反応器、又は本明細書に記載のプロセス若しくはコンプレックスのいずれかを使用して生成されたオレフィンを使用して、様々なオレフィン誘導体を製造することができる。オレフィン誘導体には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル)、熱可塑性エラストマー、熱可塑性オレフィン、並びにこれらのブレンド及び組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
いくつかの実施形態では、エチレン及び任意選択でα-オレフィンは、1つ以上のODH反応器、又は本明細書に記載のプロセス若しくはコンプレックスのいずれかで生成され、ポリエチレンを製造するために使用される。本明細書に記載のエチレン及び任意選択でα-オレフィンから製造されるポリエチレンは、エチレンのホモポリマー、エチレンとα-オレフィンのコポリマーを含むことができ、結果として、HDPE、MDPE、LDPE、LLDPE、及びVLDPEが得られる。
【0074】
本明細書に記載のエチレン及び任意のα-オレフィンを使用して製造されるポリエチレンは、任意の適切な重合プロセス及び装置を使用して製造することができる。適切なエチレン重合プロセスには、気相ポリエチレンプロセス、高圧ポリエチレンプロセス、低圧ポリエチレンプロセス、溶液ポリエチレンプロセス、スラリーポリエチレンプロセス、及び並列又は直列に配置された上記の適切な組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
本開示はまた、化学反応器に一般的に使用される様々なツールの使用も想定しており、これらには、流量計、圧縮機、バルブ、並びに温度、圧力及び流量などのパラメータを測定するためのセンサーが含まれる。当業者であれば、安全な操作に必要と思われるこれらの構成要素を含めることが期待される。
【実施例】
【0076】
<一般手順>
【0077】
<試薬>
製造業者から購入した試薬を、さらに精製することなく、受け取ったまま使用した。酸化ニオブ(V)水和物と水酸化アンモニウムを除くすべての試薬は、Sigma Aldrichから購入した。モリブデン酸アンモニウム((NH4)6Mo7O24・4H2O)、酸化硫酸バナジウム(IV)水和物(VOSO4・3.41H2O)、テルル酸(Te(OH)6)、シュウ酸、及び95~98%硫酸は、Sigma Aldrichから購入した。提供された分析証明書は、異なるバッチの水和物含有量を確立するために使用された。酸化ニオブ(V)水和物(Nb2O5・xH2O)は、Companhia Brasileira de Metalurgia e Mineracao(CBMM)から、20重量%の水を含む製品Niobia HY-340として購入した。水酸化アンモニウム28~30%は、VWR社のAnachemiaから購入した。蒸留水は、蒸留装置として、Corning Mega Pure 12A System ACSを使用して、社内で調製した。
【0078】
【0079】
<MRU>
図4は、実施例に記載されるマイクロ反応器ユニット(MRU)400の概略図である。本明細書に記載の触媒及び触媒材料が、エタンの酸化的脱水素化反応に関与する能力を、MRU400で試験した。MRU400は、2ゾーン電気ヒーター404によって囲まれた固定床管反応器402で構成されている。固定床管反応器402は、SWAGELOK(登録商標)316Lステンレス鋼管であり、外径0.5インチ(約1.27cm)、内径0.4インチ(約1cm)、長さ14.96インチ(約38cm)である。反応器402には、2本の主供給ガスラインが接続されている。一方のライン406はバルク窒素パージガス専用であり、他方のライン408はデュアルソレノイドバルブに接続されており、触媒床を再生する際にODHプロセス供給ガス(エタン/酸素/窒素のモル比が約36/18/46のガス混合物)から圧縮空気に切り替えることができる。
【0080】
6点式のWIKA Instruments Ltd.のK型熱電対410(外径0.125インチを有する)を、反応器402に挿入し、触媒層412内の温度を測定し、制御するために使用した。熱電対410の詳細を
図5に示す。室温のガラス製密閉凝縮器を反応器の後に配置して、水/酸性の凝縮物を収集した。ガス生成物の流れは、排出されるか、サンプリングループを介してガスクロマトグラフ(Agilent 6890N ガスクロマトグラフ、データ評価用にChrom Perfect-Analysis、バージョン6.1.10を使用)に送られた。
【0081】
MRU400での試験用に触媒及び触媒材料を調製するために、触媒又は触媒材料を1インチの丸い金型に装填し、8トンの圧縮力で10秒~15秒の滞留時間でプレスした。次いで、プレスした触媒又は触媒材料を、乳鉢と乳棒を用いて小片に粉砕した。粉砕した触媒又は触媒材料をふるい分けし、425μm~1000μmの粒子サイズのものを収集して、MRUで試験するために装填した。
【0082】
安全上の理由から、ユニットは、空気が供給ガスと混合しないようにプログラムされている。これは、安全インターロック、及び、ライン408を通して供給される供給ガスとライン406を通して供給される空気414とを切り替えるときに、反応器の15分間の窒素パージが義務付けられていること、によって達成される。ガスの流量はマスフローコントローラーによって制御される。触媒は反応器402の中間ゾーンに装填され、触媒床412を形成する。反応器402の残りの部分(触媒床416の下と上)には100%ケイ砂が充填され、反応器402の上部と底部には負荷がグラスウールで固定されている。ガラス製密閉凝縮器418は、水/酸を収集するために室温で反応器402の後に配置され、ガス生成物は、三方電磁弁によってベント420又はサンプリングループ/ベント422のいずれかに流れることができる。
【0083】
反応器管内に配置される触媒床412は、触媒又は触媒材料と充填剤とを含むことができる。本明細書に記載のMRU実験では、触媒床412を、1.96gの触媒をケイ砂と物理的に混合することによって調製し、触媒床412の総体積が約3mLとなるようにした。ケイ砂は、充填剤又はヒートシンクとして機能する。本明細書に記載されるように、充填剤とは、エタンの酸化的脱水素化に関与しない、又はMRU試験条件下での非選択的酸化などの他の触媒活性を持たない材料を指す。触媒又は触媒材料と充填剤の比率は1:1(体積比)である。触媒床412を、反応器の中間ゾーン(例えば、熱電対測定点の点2と点5の間に位置する)に装填し、反応器の残りの体積にはケイ砂を充填した。その後、反応器の上部と底部にグラスウールで負荷を固定した。
【0084】
図5は、MRU熱電対の図であり、6つの熱電対測定点の位置を示している。本明細書に記載されるように、触媒床は、熱電対測定点の点2と点5の間に位置するように反応器に装填される。
【0085】
MRU試験では、予備混合(事前に混合した)供給ガスを反応器に供給した。反応器に入る予備混合供給ガスは、エタン35モル%、酸素17.5モル%、窒素47.5モル%であった。さらに、予備混合供給ガスの流量を、校正済みマスフローコントローラーによって調整し、触媒床内の触媒重量に基づいて、2.90h-1の一定の重量時空間速度(WHSV)を得た。供給ガスの流量は、マスフローコントローラーを介して、74.6標準立方センチメートル/分(sccm)の設定値に制御した。
【0086】
35%転化温度(本明細書では、35モル%エタン転化温度又は35%転化温度とも呼ばれる)は、重量毎時空間速度(WHSV)2.90h-1、及びガス毎時空間速度(GHSV)約3,000h-1で測定され、WHSVは触媒の量又は触媒材料を調製するために使用した触媒の量に基づく。ここで、WHSVは、反応器への供給ガスの質量流量を触媒床内の触媒の重量で割ったものとして定義され、GHSVは、反応器供給ガスの体積流量を触媒床の体積で割ったものとして定義される。
【0087】
典型的には、入口圧力は、約1ポンド/平方インチゲージ(psig)~約2.5psigの範囲であり、出口圧力は、約0psig~約0.5psigの範囲であった。触媒床から出たガス供給物を、ガスクロマトグラフィーによって分析し、さまざまな炭化水素(例えば、エタン及びエチレン)、並びに、任意でO2、CO2、COなどの他のガスの割合を測定することができる。
【0088】
反応器から出たガスを、ガスクロマトグラフィー(Agilent 6890N ガスクロマトグラフ、データ評価にはChrom Perfect-Analysis,バージョン6.1.10を使用)によって分析し、さまざまな炭化水素(例えば、エタン及びエチレン)、並びに、任意でO2、CO2、CO、アセチレンなどの他のガスの割合を測定した。
【0089】
触媒又は触媒材料の35%転化温度を、以下のように決定した。
供給ガスの転化率は、供給エタン質量流量に対する生成物中のエタン質量流量の変化として、以下の式を用いて計算した:
【0090】
上式において、Cは、エタンから別の生成物に変換された供給ガスの割合(すなわち、エタン転化率)であり、Xは、対応する温度で反応器を出るガス状流出物中の対応する化合物のモル濃度である。次に、エタン転化率を温度の関数としてプロットし、線形代数方程式を得た。エタン転化率の一次方程式を解いて、エタン転化率が35%になる温度、すなわち35%転化温度を決定した。
【0091】
さらに、反応器を出たガスをガスクロマトグラフィーによって分析し、触媒又は触媒材料のエチレンに対する選択率(すなわち、エチレンを形成するエタンのモル基準での割合)を測定した。エチレンに対する選択率を、以下の式を用いて決定した:
【0092】
上式において、Sエチレンは、エチレンに対する選択率であり、Xは、対応する温度で反応器から出るガス状流出物中の対応する化合物のモル濃度である。エチレンに対する選択率は、特に明記しない限り、35%転化温度で測定した。このように、35%転化温度を決定した後、35%転化温度におけるXエチレン、XCO2、XCOの対応する値を用いて、選択率に関する上記の方程式を解いた。
【0093】
<ICP-MS>
誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)は、ppb濃度範囲の元素を検出するのに十分な感度を有し、触媒又は触媒材料の元素組成を測定するために使用される分析技術であった。ICP-MS分析は、Agilent 7700X ICP-MSシステムで行った。液体試料は、ネブライザーとスプレーチャンバーを通してエアロゾルとし、ICPに導入した。アルゴンプラズマにより、エアロゾルを乾燥し、試料の分子が原子イオンに解離した。このイオンは、MS検出器に向けられ、質量電荷比に基づいて分離され、検出器によって測定され、イオンの濃度に比例したシグナルが生成した。元の試料中の原子濃度の定量は、外部標準校正を用いて決定した。検量線は、試薬ブランクを差し引いた後に作成した。この分析では、原子濃度を、ng/mg(重量ppm)又はμg/g(重量ppm)の単位で示した。
【0094】
モリブデン、バナジウム、ニオブ、テルルを含む触媒の一般的なICP-MS手順。
【0095】
試料は、約10~20mgの触媒材料と3.5~4.0gのシュウ酸をバイアル瓶に入れることによって調製した。次いで、15~20mLの蒸留水を加えて懸濁液を作製した。懸濁液を、油浴中90℃で、激しく混合しながら加熱した。触媒の溶解には、通常24~72時間かかり、均一な青色の溶液が生成した。溶解が完了した後、得られた青色の溶液を最終容量60~80mLに希釈する。希釈した溶液を、次いで、5%硝酸を用いてさらに10~100倍に希釈し、ICP-MSで分析する。
【0096】
典型的なICP-MS多元素スキャンでは、50種類以上の元素の微量(ppb)レベルをスキャンするために、装置パラメータを最適化している。しかし、この多元素に含まれる50以上の元素にはNbは含まれておらず、また、より高い濃度(例えば、約10重量%を超える濃度)用には校正されていない。そのため、触媒試料に存在する4種類の元素をスキャンする場合、より高い濃度の校正用標準試料を使用し、対象元素がパーセントレベルで検出されるため、装置の感度が低下した。これは、4種類の元素それぞれについて校正用標準試料を準備することによって行われた。これらの校正用標準試料は、Mo、V、Nb、及びTeのパーセントレベル(高ppm濃度)で調製した。ICP-MSのプログラムは、4種類の元素のみが高精度で検出されるように開発され、そのため、検出器は対象の4種類の元素について高ppm濃度に合わせて校正されており、通常ppmレベルの濃度に校正される50種類以上の元素は除外された。
【0097】
<CHH+S分析>
CHN+S分析は、選択された試料について、硫黄アドオンモジュールを備えたLECO CHN628シリーズ測定器を使用して行い、試料の燃焼と生成ガス分析技術を用いて、炭素、水素、窒素及び硫黄の含有量を決定した。事前に秤量してカプセル化した試料を測定機器のローダーに置き、そこで、試料は炉の真上にある機器のパージチャンバーに移送され、移送プロセスから大気ガスが除去される。次いで、試料は純粋な酸素のみを含む一次燃焼炉に導入される。これにより、急速かつ完全な酸化が生じる。試料中に存在する炭素、水素、窒素、及び硫黄は、酸化されて、それぞれCO2、H2O、NOx、SOxガスを形成し、酸素キャリアによって二次炉を通って掃引され、さらなる酸化と微粒子除去が行われる。
【0098】
次いで、混合ガスは平衡化のためにバラストと呼ばれる容器に集められる。バラストからの均質化されたガスは、10cm2のアリコート・ループを通り、超高純度ヘリウム・キャリア・ガスを用いて検出器へと掃引される。CO2、SO2、及びH2Oの検出には、別々に最適化された非分散赤外線(NDIR)セルを使用する。NOxガスは、NOxガスをN2に還元するために、銅が充填された還元管を通過し、過剰な酸素が燃焼プロセスから除去される。その後、取り出されたガスは、CO2とH2Oを除去するために、スクラバーを通過し、N2の検出に用いられる熱伝導率セル(TC)に送られる。試料の各セットの前に、機器は認定された標準を用いて校正される。
【0099】
<FTIR>
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)は、単色光を試料に照射し、ある波長範囲にわたって吸光度を測定することによって、固体試料又は液体試料の赤外スペクトル(IR)を得るために使用される技術である。FTIR技術は、未知の試料のIRスペクトルを既知の試料のIRスペクトルと重ね合わせるフィンガープリンティング技術として使用することもできるし、又は特定の種類の分子結合(例えば、C=O、O-H、N-H、C-H、C-O、S-O、S=Oなど)を表す特徴的な吸収を識別するために使用することもできる。FTIRスキャン用の固体試料は、プレスKBrペレット法で調製した。FTIRスキャン用の液体試料は、最初のKBrセルの上に少量の液体試料を垂らし、次いで、2番目のKBrセルを最初のKBrセルの上に押し付けることで調製した。現場での装置は、Bruker Tensor27 FTIR分光光度計で、動作波長633nmのレーザーを使用している。
【0100】
FTIRは、焼成前のLEEP触媒をスクリーニングするのに有用な方法である。なぜなら、硫酸アニオンは、赤外スペクトルの中で明確な発光周波数を有しており、触媒に残留硫酸アニオン(重量%)が含まれているか否かを定性的にスクリーニングするのに使用できるからである。S-O/S=Oの発光ピークの詳細については、結果セクションに記載されている。
【0101】
<収率計算>
理論収率の計算は、調製に使用される金属塩のモルに基づいて行った。最終生成物の理論モルは、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブが水熱反応後の生成物中で最も高い酸化状態に達すると仮定することにより予測した。したがって、モリブデン、バナジウム、ニオブ、及びテルルは、それぞれMoO3、V2O5、Nb2O5、及びTeO3を形成した。出発物質のモルに、それぞれの酸化種のそれぞれのモル当量を乗じた。次いで、このモルに、完全に酸化された最終生成物の予測理論重量を乗じて、触媒の最終理論重量を求めた。
【0102】
例えば、以下の重量及びモルの塩を使用した:
(NH4)6Mo7O24・4H2O=4865.0g;3.94モル;
VOSO4・3.41H2O=4023.5g;18.01モル;
Nb2O5・3.69H2O=656.3g;1.98モル;及び
Te(OH)6=1054.6g;4.59モル
したがって、対応する酸化物の理論収量、重量、モルは次のようになる:
MoO3=4628.4g;32.16モル;
V2O5=1638.0g;9.01モル;
Nb2O5=525.1g;1.98モル;
TeO3=806.6g;4.59モル;及び
総理論質量=7598.07g。
例えば、回収された生成物の質量が6300gである場合、調製物の収率は約83%となる。収率(%)は、実際に測定された収量を理論収量で割って100をかけることによって決定した。
【0103】
<触媒組成物1.1~1.8の合成(未焼成試料)>
未焼成触媒組成物1.1~1.7の一般的な合成手順
容器に10Lの蒸留水を加え、65℃に加熱した。1102.0グラムのシュウ酸(C2H2O4(固体);12.240モル;SIGMA-ALDRICH(登録商標))を、65℃の蒸留水に添加し、撹拌しながら速やかに溶解し、無色透明の溶液を形成した。65℃のシュウ酸水溶液に、656.3グラムの五酸化二ニオブ水和物(Nb2O5・3.69H2O(固体):1.975モル当量のNb2O5CBMM)を添加し、白色の懸濁液を形成した。容器の開口部を1Lの蒸留水ですすぎ、粉末を溶液中に洗い流し、総体積11Lを生成した。11Lの水性白色懸濁液を65℃で少なくとも24時間(最大72時間)加熱撹拌した。65℃で24時間加熱した後、溶液を周囲条件まで冷却し、静置(撹拌なし)すると、少量の白色不溶物が見えるのみで、無色透明に見えた。得られたほぼ無色透明の溶液は、シュウ酸ニオブ水溶液H3[NbO(C2O4)3](水性)であった。
【0104】
容器に11Lの蒸留水を加え、60℃に加熱した。4023.5グラムの硫酸バナジル水和物(VOSO4・3.41H2O(固体):18.10モル;;SIGMA-ALDRICH)を60℃の蒸留水に添加し、激しく撹拌しながら時間をかけてゆっくりと溶解し、透明な青色の溶液を形成した。容器の開口部を1Lの蒸留水ですすぎ、粉末を溶液中に洗い流し、総体積12Lの60℃、VOSO4(水性)溶液を生成した。
【0105】
容器に6Lの蒸留水を加え、60℃に加熱した。1054.6グラムのテルル酸(TeOH6(固体);4.593モル;SIGMA-ALDRICH)を60℃の蒸留水に添加し、撹拌しながら速やかに溶解し、無色透明の溶液を形成した。容器の開口部を1Lの蒸留水ですすぎ、粉末を溶液中に洗い流し、総体積7Lを生成した。60℃、7LのTeOH6(水性)溶液を、次の工程で使用するために室温まで冷却した。
【0106】
ジャケット付きガラス製反応器に16Lの蒸留水を加え、浴及びシリコーン油の循環を介して加熱した。16Lの蒸留水を30~35℃に加熱し、4865.0グラムのモリブデン酸アンモニウム四水和物((NH4)6Mo7O24・4H2O(固体);3.934モル)を添加し、撹拌しながら溶解し、白色のやや濁った溶液を形成した。容器の開口部を1Lの蒸留水ですすぎ、粉末を溶液中に洗い流し、総体積17Lを生成した。7LのTeOH6(水性)溶液全体を、周囲温度で、撹拌された30~35℃の(NH4)6Mo7O24・4H2O(水性)の混濁溶液に412mL/分で移し、(NH4)6Mo6TeO24(水性)の無色透明の溶液を形成した。テルル酸容器を1Lの蒸留水ですすぎ、すすぎ液をガラス製反応器に移した。得られた(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液を、目標温度の80℃まで加熱した(調製のこの部分全体の温度範囲は75~85℃)。(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液を約75℃に加熱した後、(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液のpHを、1680~2000グラム(密度0.91g/cm3で計算すると1.85~2.20L)の28~30%水酸化アンモニウム水溶液を用いて、7.50±0.1に調整した。pH7.50の(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液を80℃で1時間撹拌した。1時間後、(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液の温度を70~75℃に下げ、かなりの量の熱を発生する次の工程に備えた。70~75℃の(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液のpHを、1270~1550グラム(密度1.85g/cm3で計算すると0.69~0.84L)の95~98%の硫酸を用いて7.50~5.00±0.1に調整し、積極的に冷却しても80~85℃の最終溶液温度が得られる。酸(H2SO4)の添加工程と塩基(NH4OH)添加工程では、両工程ともかなりの熱が発生し、循環されたシリコーン浴を加熱・冷却できる温度制御浴を介して制御した。(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液をpH5.00±0.1に調整した後、得られた(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液を予熱した60℃高圧反応器に移した。ジャケット付きガラス製反応容器を2Lの蒸留水ですすぎ、これらの洗浄液を水熱反応用の特殊ガラススリーブインサートを含む316ステンレス鋼製高圧反応器に移した。60~80℃の(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液を、高圧反応器内で撹拌機を介して撹拌する。
【0107】
高圧反応器内の撹拌された60~80℃の(NH4)6Mo6TeO24(水性)溶液に、60℃の硫酸バナジル溶液の全量を、367mL/分の速度で移した。硫酸バナジル容器を2Lの蒸留水で洗浄し、これらのすすぎ液を速やかに高圧反応器に移した。得られた溶液を60~80℃で30分間撹拌する。
【0108】
30分後、室温のシュウ酸ニオブ溶液の全量を、約60℃の高圧反応器に183mL/分で移し、Mo、Te、V、及びNb金属酸化物/塩溶液の固体と溶液とを含む複合混合物を形成した(混合物はスラリーと呼ばれる)。シュウ酸ニオブ容器を2Lの蒸留水で洗浄し、これらのすすぎ液を高圧反応器に移した。すべての化学物質を添加した後、高圧反応器内の最終スラリー体積は62~66Lと測定された。
【0109】
高圧反応器を160~165℃に加熱して、水熱反応を開始した。
反応器を外部から185℃以下に加熱して、160~165℃(目標163℃)のスラリー温度を得た。使用した高圧反応器は約1000kgで、60℃から163℃までの昇温時間は、典型的には5時間であった。高圧反応器の圧力は、反応器ヘッドに組み込まれた背圧調整器を使用して、95~105psigの圧力に維持した。163℃における水の飽和蒸気圧は84psigであることに留意されたい。背圧調整器により、シュウ酸塩/シュウ酸の分解生成物である過剰なCOxの圧力を排出した。反応中の過剰な水の損失を防ぐために、背圧調整器の前に凝縮器を使用した。チューブ(管)・イン・チューブ(管)交換器を凝縮器として使用し、シェル側を水で冷却し、11℃に制御された冷却浴に再循環させた。高圧/高温反応中、スラリーをパドル型撹拌機を用いて撹拌し、この撹拌機を、固体を懸濁させるのに十分な速度(150rpm)に設定し、固体が底に沈むのを防いだ。実施例で生成した複数のバッチに基づいて、測定された反応器の収量は、使用した(NH)46Mo7O24・4H2O(固体)1kgに対し、触媒組成物(乾燥、未焼成)約1.43kgであり、したがって、スラリー濃度は約0.11kg固体/Lスラリーである。
【0110】
水熱反応からのスラリー中の固体を、濾過して回収する。水熱反応時間に達した後、反応器を30~60℃に自然冷却してから濾過を行った。冷却時間は17~20時間の範囲である。冷却中は、水熱反応中に用いたのと同じ速度で撹拌を続けた。母液から分離された固体は、未洗浄の触媒組成物又は触媒組成物(例えば、洗浄された触媒組成物)と呼ばれる。スラリー材料を、カニュレーション法によって、高圧反応器からフィルターユニットに移した。スラリーの移送は、15psig未満の正の空気圧を用いて行った。未洗浄の触媒組成物を蒸留水で洗浄して、バナジウム、アンモニウム、及び硫酸塩の化合物を含む水溶性の副生成物の塩を除去した。濾液は、最初は青色であり、洗浄が完了に向けて進むにつれて最終的には透明になった。深さ30~35cmの予備触媒フィルターケーキを、各触媒組成物1.1~1.8のそれぞれについて規定される比率で、蒸留水を用いて洗浄した。
【0111】
上述した一般的手順を、この時点まで生成された触媒組成物1.1~1.8に共通に適用した。ただし、ワークアップ(洗浄、処理、及び焼成)においてはその手順を逸脱し、異なる触媒組成物2.1~2.13及び触媒材料(例1~例22)を生成した。
【0112】
未洗浄の触媒組成物フィルターケーキを、20~40Lの増分で、合計100~200L(各触媒組成物1.1~1.8について規定された総体積)になるまで、蒸留水で洗浄した。前述したように、(NH4)6Mo7O24・4H2O(固体)を1kg使用するごとに、約1.43kgの予備触媒物質が生成されると仮定し(典型的な乾燥重量収量及び収率は、5.9~6.3kg、及び85~91%)、この重量を用いて、洗浄に必要な水の目標量、例えば予備触媒(kg)あたりの水(L)の洗浄比、を計算した。例えば、理論上、6.96kgの予備触媒を生成し、100Lの蒸留水を固体の洗浄に使用した場合、洗浄比は14.37L/kgとなる。
【0113】
いくつかの触媒組成物については、硫酸塩残留物(及びN)の定性的測定と定量的測定が、それぞれ、FTIR分析とCHNS分析によって行われた。FTIR分析とCHNS分析のために、触媒組成物のサブ試料(約5g)を採取した。触媒組成物を、乾燥固体として分析した。固体を、乾燥オーブン内で90℃、約12時間乾燥させた。乾燥試料は、100℃でのTGA-FTIR分析で測定した場合、2%未満の水分を有する。
【0114】
図6は、十分に洗浄された触媒組成物と不十分に洗浄された触媒組成物の赤外スペクトルのプロット600である。
図2のスペクトルを比較するとわかるように、アンモニウムと硫酸のピークが診断用のフィンガープリントを生成するため、FTIR分析を、洗浄技術の検証に使用できることがわかった。FTIRにより、触媒組成物は、十分に洗浄されておらず、たとえ小規模の焼成(例えば、100g未満)であっても、高活性触媒を生成しないことが明らかになった。
【0115】
驚くべきことに、大規模焼成(例えば、約500gを超える)により高活性触媒が得られた触媒組成物では、測定される硫黄(重量%)(硫酸塩種に起因する)が低いことが判明した。これらの硫黄(重量%)の値は、硫酸塩のFTIRの検出限界以下であった。測定された硫黄(重量%)は、小規模焼成だけでなく、大規模焼成においても極めて重要な高活性触媒材料をもたらす触媒組成物の仕様目標として使用された。一般に、本発明例では、乾燥触媒組成物中の窒素及び硫黄の重量割合は、Nが約0.90~1.75重量%であったのに対し、S値は0.02重量%未満である必要があった。これらの仕様は、1)触媒組成物の多量の水洗浄(蒸留水対触媒比:73.4L/kg(例えば、触媒組成物1.6及び対応する触媒材料4.4;例21))、又は2)空気処理工程(提供された例のいくつかに記載されているとおり)のいずれかによって達成された。これらのワークアップの詳細は、以下の例に記載されており、これらのワークアップを受けなかった比較例と対比されている。
【0116】
<触媒組成物1.1の合成>
一般的な合成手順において上述した水熱反応が終了した後、触媒組成物スラリーを、高圧反応器(水熱反応に使用)からカニュレーション(陽圧)を介して、容量約130Lの濾過ユニット(Nutsche Pressure Filterに類似)に移した。固体触媒組成物の触媒ケーキ(直径35cm×高さ30~35cmの円筒状ケーキ)を、ポリプロピレン(PP)濾材の2枚のシート(各1枚)の上に、陽圧濾過(最大15psigの空気圧を使用)によって形成した。2枚のシートは、具体的には、1)1層は、Clear Edge、織布PP濾布、10.7オンスMO/MU 7/1SAT HS/K 37CFM、及び、2)1層は、Pope Scientific Inc、10ミクロンポリプロピレン濾布、部品番号:7PPVCLO10MICRON、である。
【0117】
触媒ケーキを120Lの蒸留水で40L×3回に分けて洗浄し、アンモニウムや硫酸塩などの可溶性の副生成物スラットを除去した。暗紫色の触媒ケーキをフィルターユニットから取り出し、2つの長方形の乾燥パン(体積約16.75L、寸法48.26×39.05×8.89cm)に均等に広げ、触媒組成物が乾燥すると、所望の寸法の個別の直方体が得られるように、ケーキに切出工具を押し込んだ。触媒ケーキを、オーブン内90℃で5日間乾燥させ、余分な水分を除去した。触媒ケーキが乾燥した後、得られた紫色の固形キューブを、ブレード(切断)グラインダーを使用して粉砕した。得られた粉砕粉末が触媒組成物1.1であり、秤量すると6308.3gであり、重量収率は83%であった(理論収量を7598.07gと仮定)。
【0118】
<触媒組成物1.2の合成>
触媒組成物1.2は、以下の点を除いて、触媒組成物1.1と同じ手順で製造した:1)触媒ケーキを80Lの蒸留水で40L×1回と20L×2回に分けて洗浄した、2)触媒ケーキが乾燥した後、得られた紫色の固形キューブをジョークラッシャー粉砕機(Retsch BB50)のホッパーに供給し、粉砕機のジョーギャップ幅を0.5mmに設定することにより、触媒組成物を125~500ミクロンのサイズ分布に粉砕した、3)触媒組成物の収量は6323.6gとわずかに異なり、重量収率は83%であった。触媒材料1.2をCHNSによって分析し、得られた結果を表1.1に示す。触媒組成物1.2はMRU性能試験に供され、その結果を表2.3に示す。
【0119】
<触媒組成物1.3の合成>
触媒組成物1.3は、以下の点を除いて、触媒組成物1.1と同じ手順で製造した:1)触媒ケーキを100Lの蒸留水で40L×1回と20L×3回に分けて洗浄した、2)触媒組成物を、大きなポット内90℃で7日間乾燥させた(乾燥パン又は切断工具を使用せず、より時間がかかった)、3)触媒組成物の収量は6233.0gとわずかに異なり、重量収率は82%であった。
【0120】
<触媒組成物1.4の合成>
触媒組成物1.4は、以下の点を除いて、触媒組成物1.1と同じ手順で製造した:1)触媒ケーキを120Lの蒸留水で40L×3回に分けて洗浄した、2)触媒組成物の収量は6092.0gとわずかに異なり、重量収率は80%であった。
【0121】
<触媒組成物1.5の合成>
触媒組成物1.5は、触媒組成物1.2と同じ手順で製造した。触媒組成物1.5と触媒組成物1.6は、同じ調製物から得られたが、蒸留水洗浄の量が異なっていた。これは、触媒組成物1.5を80Lの蒸留水で40L×1回と20L×2回に分けて洗浄することによって達成され、80L体積の蒸留水洗浄後、湿った固体の触媒組成物の約67%をフィルターユニットから取り出し、乾燥と粉砕を行って仕上げた。取り出された部分が触媒組成物1.5であり、残りの約33%は蒸留水でさらに洗浄されて触媒組成物1.6となる。
【0122】
湿った触媒組成物1.5を、触媒組成物1.1の調製について前述したように、オーブン及び乾燥パン/切断工具を使用して、オーブン内90℃で約5日間乾燥させた。触媒組成物が乾燥した後、得られた紫色の固形キューブをジョークラッシャー粉砕機(Retsch BB50)のホッパーに供給し、粉砕機のジョーギャップ幅を0.5mmに設定することにより、触媒組成物を125~500ミクロンのサイズ分布に粉砕した。触媒組成1.5の収量は約4kgであった。
【0123】
触媒組成物1.5と触媒組成物1.6の合計質量は5970.2gであり、重量収率は79%であった。この秤量収量に基づいて、洗浄比は、回収された固体1kgあたり約13.4Lの蒸留水であった。触媒材料1.5をCHNSによって分析し、得られた結果を表1.1に示す。
【0124】
<触媒組成物1.6の合成(二重洗浄済み)>
触媒組成物1.5の残りの部分を、フィルターユニットに戻し、追加の120Lの蒸留水(40Lずつ)で洗浄し、触媒組成物1.6を製造した。蒸留水で洗浄した後、湿った触媒組成物1.6を組成物1.5と同様の方法で乾燥及び粉砕し、例えば、乾燥パン/切断工具を使用してオーブン内で乾燥し、ジョークラッシャーを使用してジョーギャップ幅0.5mmで粉砕した。触媒組成物1.6の収量は約2kgであった。この秤量収量と前回の洗浄13.4L/kgに基づいて、約2kgの触媒組成物1.6の洗浄比は、回収された固体1kgあたり約73.4Lの蒸留水であった(120L/2=60L;60L+13.4L=73.4L)。触媒組成物1.5と1.6の合計質量は5970.2gであり、重量収率は79%であった。触媒材料1.6をCHNSによって分析し、得られた結果を表1.1に示す。
【0125】
<触媒組成物1.7の合成>
触媒組成物1.7は、以下の点を除いて、触媒組成物1.1と同じ手順で製造した:1)触媒ケーキを100Lの蒸留水で40L×1回と20L×3回に分けて洗浄した、2)触媒ケーキが乾燥した後、得られた紫色の固形キューブをジョークラッシャー粉砕機(Retsch BB50)のホッパーに供給し、粉砕機のジョーギャップ幅を0.5mmに設定することにより、触媒組成物を125~500ミクロンのサイズ分布に粉砕した、3)触媒組成物の収量は5877gとわずかに異なり、重量収率は77%であった。
触媒組成物1.7は、水熱反応工程中に18.01モル(4043g)のVOSO4塩を使用したことに留意されたい。触媒材料1.7をCHNSによって分析し、得られた結果を表1.1に示す。
【0126】
<触媒組成物1.8の合成(V担持量低減)>
触媒組成物1.8は、VOSO4・3.41H2O塩の量を18.01モル(4043g)から15.08モル(3369g)に減らしたこと、すなわちバナジウム担持量を約16%減らしたこと以外は、触媒組成物1.7と同じ手順で製造した。残りのワークアップ(洗浄、乾燥、及び粉砕)は、触媒組成物1.8と同じであった。
【0127】
バナジウムの担持量を減らしたことにより、触媒の理論収量は3369gのVOSO4・3.41H2O(15.08モル)となり、対応する理論重量収量はV2O5=1371.4gのV2O5(7.54モル)となった。したがって、触媒組成物1.8では、触媒組成物1.7と比較して、V2O5の質量が約267g減少すると予想される(1638-1371)。この質量減少は、混合金属酸化物7331.07gの酸化物の理論収量に相当する。
【0128】
触媒組成物1.8の重量収量は、乾燥及び粉砕後6062gであり、理論収量を7331.07gと仮定すると、重量収率は83%であった。触媒組成物l.8をCHNSによって分析し、得られた結果を表1.1に示す。
【0129】
触媒組成物1.1~1.8のCHNSによるC、N、S(重量%)の分析。
【表2】
【0130】
<処理済み触媒組成物2.1~2.13(330℃及び250℃で空気処理した試料)>
【0131】
[例1]触媒組成物2.1の合成(AT330℃、1時間)(ATは空気処理である)
触媒組成物1.1の総質量の一部を、3つの石英ボート(直径約13cm、深さ約6.4cm、長さ約32.3cmの半円筒形)に装填した。各石英ボートには、ほぼ同じ体積(約1224cm3)の触媒組成物が装填され、3つすべてのボートの合計装填質量は、触媒組成物1.1の3288.8gであった(すなわち、触媒組成物2.1を形成するための処理前)。触媒組成物を含む石英ボートを、高温空気処理とその後の高温窒素焼成を行うために、石英管に装填した。石英管の長さは180cm、内径は14cmであった。管状炉は、Carbolite Gero GHA12/1200で、銘板の最大ワット数は7.02kWで、熱電対を内蔵し、温度制御プログラミング機能も備えていた。
石英管をフランジで密閉し、その管を2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満)で1000sccm(標準立方cm)の流量でパージした。管の出口側を、水バブラーを通して排気した。この水バブラーは、空気の逆流を防いで管を嫌気性雰囲気に保つために使用した。
窒素パージを8時間続け、その後、管を1.6℃/分の速度で330℃まで加熱し、その後330℃で約30分間保持した。330℃で30分後、加熱炉の電源を切り、すぐに(管を冷やし過ぎないように)入口フランジを取り外して管全体を大気雰囲気にさらし、自然通風によって管内に空気を拡散させた。330℃での大気処理は1時間と推定された。焼成装置全体を一晩かけて室温まで冷却し、触媒組成物2.1を製造した。
触媒組成物2.1は、秤量又は特性評価のために石英管から取り出さなかったが、例1Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料2.1を製造した。
【0132】
[例2]触媒組成物2.2の合成(AT330℃、2時間)
約17gの触媒組成物1.2を、8ドラムのガラスバイアルに充填し、マッフル炉内330℃で2時間空気処理して、触媒組成物2.2を形成した。マッフル炉は、空気中、45分間で目標温度330℃まで加熱した。
触媒組成物2.2を、例2Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料1.1を製造した。触媒組成物2.2をCHNによって分析し、その結果を表2.1に示す。触媒組成物2.2はMRU性能試験に供され、その結果を表2.3に示す。
【0133】
[例3]触媒組成物2.3の合成(AT330℃、6時間)
約17gの触媒組成物1.2を、8ドラムのガラスバイアルに充填し、マッフル炉内330℃で6時間空気処理して、触媒組成物2.3を形成した。マッフル炉は、空気中、45分間で目標温度330℃まで加熱した。
触媒組成物2.3を、例3Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料1.2を製造した。触媒組成物2.3をCHNによって分析し、その結果を表2.1に示す。触媒組成物2.3はMRU性能試験に供され、その結果を表2.3に示す。
【0134】
[例4]触媒組成物2.4の合成(AT330℃、12時間)
触媒組成物1.2の907.9g部分を、単一の石英ボート(直径約13cm、深さ約6.4cm、長さ約32.3cmの半円筒形)に装填した。触媒組成物を含む石英ボートをマッフル炉に装填し、空気中、45分間で目標温度330℃まで加熱した。炉を、大気下、330℃で12時間保持し、その後、炉を一晩かけて室温まで冷却した。得られた330℃で空気処理した材料が、触媒組成物2.4である。
触媒組成物2.4を、例4Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料2.2を製造した。触媒組成物2.4をCHNによって分析し、その結果を表2.1に示す。触媒組成物2.4はMRU性能試験に供され、その結果を表2.3に示す。
【0135】
[例5]触媒組成物2.5の合成(AT330℃、12時間)
触媒組成物2.5は、1381.25gの触媒組成物2.4の17gのサブ試料から形成される。触媒組成物2.5を、例5Bで論じる手順に従って、小規模の焼成に使用し、触媒材料1.3を製造した。
【0136】
[例6]触媒組成物2.6の合成(AT330℃、3時間)
触媒組成物1.3の総質量の一部を、2つの石英ボート(直径約13cm、深さ約6.4cm、長さ約32.3cmの半円筒形)に装填した。各石英ボートには、ほぼ同じ体積(約1224cm3)の触媒が装填され、3つすべてのボートの合計装填質量は、触媒組成物1.3の2905.0gであった。触媒組成物1.3を、対流式オーブン内90℃で一晩さらに乾燥させた。触媒組成物1.3の乾燥重量は2873.5g(乾燥質量)であった。
触媒組成物を含む石英ボートを、高温空気処理とその後の高温窒素焼成を行うために、石英管に装填した。石英管の長さは180cm、内径は14cmであった。管状炉は、Carbolite Gero GHA12/1200で、銘板の最大ワット数は7.02kWで、熱電対を内蔵し、温度制御プログラミング機能も備えていた。
石英管をフランジで密閉し、滞留した空気雰囲気下に放置した。管の出口側を、水バブラーを通して排気し、管の入口側は、焼成工程のための窒素源となった。滞留した空気下、炉を1.6℃/分の速度で330℃まで加熱した。温度が330℃に達した後(約3時間以内)、石英管の入口側から2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満)で1000sccm(標準立方cm)の流量でパージした。触媒組成物1.3の空気処理工程により、触媒組成物2.6が形成された。触媒組成物2.6を、単離も秤量もせず、その代わりに、例6Bで論じる手順に従って、直ちに窒素焼成工程により処理して触媒材料2.3を製造した。
【0137】
[例7]触媒組成物2.7の合成(AT250℃、1時間未満)
触媒組成物1.3の2356.9g部分を、石英ボート(直径約13cm、深さ約6.4cm、長さ約32.3cmの半円筒形)に装填した。触媒組成物を含む石英ボートを対流式オーブンに装填し、90℃で一晩さらに乾燥させた。触媒組成物1.3を冷却した後、乾燥重量は2322.9gを記録した。
次いで、乾燥した触媒組成物1.3を対流式オーブンに戻し、空気中、1時間未満で目標温度250℃まで加熱した。オーブン内の温度が250℃に達した後、オーブンの電源を切り、一晩かけて室温まで冷却した。得られた空気処理した材料(250℃で1時間未満)が、触媒組成物2.7である。触媒組成物2.7を、例7Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料2.4を製造した。
【0138】
[例8]触媒組成物2.8の合成(AT250℃、5時間)
触媒組成物1.3の966.9g部分を、単一の石英ボート(直径約13cm、深さ約6.4cm、長さ約32.3cmの半円筒形)に装填した。触媒組成物を含む石英ボートを対流式オーブンに装填し、90℃で一晩さらに乾燥させた。触媒組成物1.3を周囲温度、例えば約21℃まで冷却した後、乾燥重量は940.0gを記録した。
次いで、乾燥した触媒組成物1.3を対流式オーブンに戻し、空気中、1時間未満で目標温度250℃まで加熱した。オーブン内の温度が250℃に達した後、オーブンを250℃で5時間放置し、その後オーブンの電源を切り、一晩かけて室温まで冷却した。得られた空気処理した材料(250℃で約5時間)が、触媒組成物2.8である。触媒組成物2.8を、例8Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料2.5を製造した。
【0139】
[例9]触媒組成物2.9の合成(AT250℃、6時間)
触媒組成物1.4の3075.6g部分を、3つの石英ボート(直径約13cm、深さ約6.4cm、長さ約32.3cmの半円筒形)に充填した。各石英ボートには、ほぼ同じ体積(約1224cm3)の触媒組成物が装填された。触媒組成物を含む石英ボートを対流式オーブンに装填し、90℃で一晩さらに乾燥させた。
次いで、乾燥した触媒組成物1.4を対流式オーブンに戻し、空気中、1時間未満で目標温度250℃まで加熱した。オーブン内の温度が250℃に達した後、オーブンをこの目標温度250℃で6時間放置し、その後オーブンの電源を切り、一晩かけて室温まで冷却した。得られた空気処理した材料(250℃で約6時間)が、触媒組成物2.9であり、その重量は3043.9gであり、250℃の空気処理での質量減少はわずか1%であった。触媒組成物2.9を、例9Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料2.6を製造した。
【0140】
[例10]触媒組成物2.10の合成(AT250℃、6時間)
残りの1641.7gの触媒組成物1.4を、2つの石英ボートに装填し、触媒組成物2.9について概説したのと同じ装置と手順で空気処理した(すなわち、この手順を用いた結果の再現性を実証するために手順を複製した)。
得られた材料を250℃で約6時間空気処理して、触媒組成物2.10を製造し、その重量は1611.2gであり、250℃空気処理での質量減少はわずか2%であった。触媒組成物2.10を、例10Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料2.7を製造した。
【0141】
[例11]触媒組成物2.11の合成(二重洗浄済み、AT250℃、6時間)
1138gの触媒組成物1.6を、単一の石英ボートに装填し、触媒組成物2.9について概説したのと同じ装置と手順で空気処理した。得られた空気処理した材料(250℃で約6時間)は、触媒組成物2.11である。触媒組成物2.11を、例11Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料2.8を製造した。触媒組成物2.11をCHNによって分析し、その結果を表2.2に示す。
【0142】
[例12]触媒組成物2.12の合成(AT250℃、6時間)
5877gの触媒組成物1.7の全体を、等量の部分(それぞれ約2939g)の2回の焼成で焼成した。両方の焼成を3つの石英ボートで行い、触媒組成物1.7のバッチ全体を処理した。窒素焼成工程の前に、触媒組成物1.7を、触媒組成物2.9について概説したのと同じ装置と手順で空気処理した。得られた空気処理した材料(250℃で約6時間)が、触媒組成物2.12であった。
触媒組成物2.12を、例12Bで論じる手順に従って、焼成により処理して触媒材料2.9を製造した。触媒組成物2.12をCHNによって分析し、その結果を表2.2に示す。
【0143】
[例13]触媒組成物2.13の合成(AT250℃、6時間)
合計6062g(83%)の触媒組成物1.8のうち5022gを、2回の焼成で焼成した。窒素焼成工程の前に、触媒組成物1.8を、触媒組成物2.9について概説したのと同じ装置と手順で空気処理した。得られた空気処理した材料(250℃で約6時間)が、触媒組成物2.13であった。
触媒組成物2.13を、例13Bで論じる手順に従って焼成処理し、触媒材料2.10を製造した。
【0144】
触媒組成物1.2、及び2.2~2.4のCHNSによるN(重量%)の分析。
【表3】
各触媒組成物のサブ試料を採取してMRU試験を実施した後、600℃の窒素焼成で試料の残りを触媒材料にワークアップした。触媒組成物1.2、及び2.2~2.4はすべて、触媒組成物1.2から調製した。
【0145】
触媒組成物2.11~2.12のCHNSによるN(重量%)の分析。
【表4】
各触媒組成物のサブ試料を採取してMRU試験を実施した後、600℃の窒素焼成で試料の残りを触媒材料にワークアップした。
【0146】
触媒材料1.2及び2.2~2.4のエタンからエチレンへの活性度及び選択率の分析。
【表5】
各触媒組成物のサブ試料を採取してMRU試験を実施した後、600℃の窒素焼成で試料の残りを触媒材料にワークアップした。触媒組成物1.2、及び2.2~2.4はすべて、同じ触媒組成物1.2から調製した。
【0147】
触媒材料1.1~1.3の焼成(小規模窒素焼成前に330℃で空気処理)
【0148】
[例2B]触媒材料1.1の合成(AT330℃、2時間)
7.34gの触媒組成物2.2を、石英ボート(約直径1.4cm、深さ1.3cm、長さ69cmの半円筒形;体積約10~11cm3)に装填し、内径約2.5cmで長さが約2フィートの石英管に装填した。石英管は、すりガラス継手を介して窒素パージシステムに接続され、入口側は窒素ガス源であり、出口側は水バブラー(石英管を嫌気性雰囲気下に保つために使用)に通気される。バルク窒素(酸素10ppm未満)を、85sccm(標準立方cm)で8時間、石英管に流した。8時間後、バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclear(商標)ガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて85sccmで一晩パージした。流量を85sccmから30sccmに減らし、管状炉ヒーターをオンにした。管状炉加熱は以下のプログラムで適用した:1)室温から600℃まで6時間かけて昇温する(昇温速度は1.6℃/分);2)コントローラーは温度を600℃で2時間保持する;3)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。
焼成後、得られた触媒材料1.1は黒色であり、重量は7.00gであり、これは焼成重量収率95%に相当する。触媒材料1.1はMRU性能試験に供され、その結果を表2.1に示す。
【0149】
[例3B(続き)]触媒材料1.2の合成(AT330℃、6時間)
7.45gの触媒組成物2.3を、触媒材料1.1について記載したのと同じ手順及び装置に従って焼成した。焼成後、得られた触媒材料1.2は黒色であり、重量は7.19gであり、これは焼成重量収率97%に相当する。触媒材料1.2はMRU性能試験に供され、その結果を表2.1に示す。
【0150】
[例5B(続き)]触媒材料1.3の合成(AT330℃、12時間)
6.86gの触媒組成物2.5(触媒組成物2.4と同じベース材料)を、触媒材料1.1について記載したのと同じ手順及び装置に従って焼成した。焼成後、得られた触媒材料1.3は黒色であり、重量は6.68gであり、これは焼成重量収率97%に相当する。触媒材料1.3はMRU性能試験に供され、その結果を表2.1に示す。
【0151】
触媒材料1.1~1.3のエタンからエチレンへの活性度及び選択率の分析。
【表6】
触媒材料3.2は、600℃の窒素処理のみ、すなわち330℃での空気処理なしで調製した。触媒材料1.1~1.3及び3.3はすべて、同じベース触媒組成物1.2から調製した。
【0152】
触媒材料2.1~2.13の焼成(大規模窒素焼成前に330℃又は250℃で空気処理)
【0153】
[例1B]触媒材料2.1の合成(AT330℃、1時間)
石英管をフランジ接続で再密閉し、触媒組成物2.1を2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満)で1000sccm(標準立方cm)の流量でパージした。管の出口側を、水バブラーを通して排気して、管を嫌気性雰囲気下に保ち、空気の逆流を防ぐ。石英管をバルク窒素で約3.5時間パージした後、入口バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて1000sccmで一晩パージした。
管状炉は、以下の加熱プログラムを使用して、触媒組成物2.1を触媒材料2.1に焼成した:1)1.6℃/分で250℃まで昇温し、この温度で1時間保持する;2)1.6℃/分で300℃まで昇温し、この温度で1時間保持する;3)1.6℃/分で最終温度600℃まで昇温し、10時間保持する;4)1.6℃/分で100℃まで冷却する;5)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。得られた黒色の触媒材料2.1を焼成装置から取り出したところ、合計重量は3072.2gであり、焼成重量収率は93.4%であった(最初に装填した触媒組成物2.1の重量と比較して)。
触媒材料2.1をICP-MSによって分析し、その結果を表3.4及び表3.5に示す。触媒材料2.1はMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0154】
[例4B]触媒材料2.2の合成(AT330℃、12時間)
触媒組成物2.4を、マッフル炉で330℃の空気処理に使用したのと同じ石英ボートに入れたまま、石英管の中間に装填した。石英管の長さは180cm、内径は14cmであった。管状炉は、Carbolite Gero GHA12/1200で、銘板の最大ワット数は7.02kWで、熱電対を内蔵し、温度制御プログラミング機能も備えていた。石英管をフランジで密閉し、その管を2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満)で1000sccm(標準立方cm)の流量でパージした。管の出口側を、水バブラーを通して排気した。この水バブラーは、管を嫌気性雰囲気に保つ(すなわち、空気の逆流を防ぐことによって保つ)ために使用した。石英管をバルク窒素で約1時間パージした後、入口バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて1000sccmで一晩パージした。管状炉は、以下の加熱プログラムを使用して、触媒組成物2.4を触媒材料2.2に焼成した:1)1.6℃/分の昇温速度で600℃まで昇温する;2)600℃で6時間保持する;3)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。得られた885.9gの黒色粉末は触媒材料2.2であり、使用した触媒組成物1.2の907.9gに基づいて、98%の質量収率であった。触媒材料2.2はMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0155】
[例6B]触媒材料2.3の合成(AT330℃、3時間)
石英管に入れた触媒組成物2.6を、温度330℃で、2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満、流量1000sccm)で約4時間パージした。次いで、触媒組成物2.6を、330℃、1000sccmの流量で20時間、精製窒素でパージした。入口バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管のパージに使用される精製窒素(酸素1ppm未満)を生成した。触媒組成物2.6を、以下の加熱プログラムを用いて焼成し、触媒材料2.3を形成した:1)1.6℃/分の昇温速度で330℃から600℃まで昇温する;2)600℃で4時間保持する;3)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。得られた黒色粉末は触媒材料2.3であり、収量は2669.4g、焼成質量収率は93%(触媒組成物1.3の初期乾燥質量に基づく)であった。触媒材料2.3はMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0156】
[例7B]触媒材料2.4の合成(AT250℃、1時間未満)
処理された触媒組成物2.7を含む石英ボートを、高温空気処理とその後の高温窒素焼成を行うために、石英管に装填した。石英管の長さは180cm、内径は14cmであった。管状炉は、Carbolite Gero GHA12/1200で、銘板の最大ワット数は7.02kWで、熱電対を内蔵し、温度制御プログラミング機能も備えていた。石英管をフランジで密閉し、その管を2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満)で1000sccm(標準立方cm)の流量でパージした。管の出口側を、水バブラーを通して排気した。この水バブラーは、空気の逆流を防いで管を嫌気性雰囲気に保つために使用した。石英管を、入口側からバルク窒素で約5時間パージした後、入口バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて1000sccmで一晩パージした。管状炉は、以下の加熱プログラムを使用して、触媒組成物2.7を触媒材料2.4に焼成した:1)1.6℃/分の昇温速度で室温から600℃まで昇温する;2)600℃で6時間保持する;3)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。得られた黒色粉末は触媒材料2.4であり、その重量は2141.2gであり、焼成質量収率は92%(触媒組成物1.3の初期乾燥質量に基づく)であった。触媒材料2.4はMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0157】
[例9B]触媒材料2.6の合成(AT250℃、6時間)
処理された触媒組成物2.9を含む石英ボートを、高温空気処理とその後の高温窒素焼成を行うために、石英管に装填した。石英管の長さは180cm、内径は14cmであった。管状炉は、Carbolite Gero GHA12/1200で、銘板の最大ワット数は7.02kWで、熱電対を内蔵し、温度制御プログラミング機能も備えていた。石英管をフランジで密閉し、その管を2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満)で1000sccm(標準立方cm)の流量でパージした。管の出口側を、水バブラーを通して排気した。この水バブラーは、空気の逆流を防いで管を嫌気性雰囲気に保つために使用した。石英管を、入口側からバルク窒素で約1時間パージした後、入口バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて1000sccmで6時間パージした。触媒組成物2.9を、以下の加熱プログラムを用いて管状炉内で焼成し、触媒材料2.3とした:1)1.6℃/分の昇温速度で600℃まで昇温する;2)600℃で6時間保持する;3)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。得られた黒色粉末は触媒材料2.6であり、その重量は2874.4gであり、焼成質量収率は94%(空気処理した触媒組成物2.9質量に基づく)であった。触媒材料2.6はMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0158】
[例8B]触媒材料2.5の合成(AT250℃、5時間)
触媒組成物2.8を含む石英ボートを、高温空気処理とその後の高温窒素焼成を行うために、石英管に装填した。触媒組成物2.8を触媒材料2.5に変換するために続く窒素パージ工程及び焼成工程は、触媒組成物2.7を触媒材料2.4に焼成するために適用した工程と同じであった。窒素下、600℃で6時間焼成した後、得られた黒色粉末は触媒材料2.5であり、その重量は875.2gであり、焼成質量収率は94%(触媒組成物1.3の初期乾燥質量に基づく)であった。触媒材料2.5はMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0159】
[例10B]触媒材料2.7の合成(AT250℃、6時間)
触媒組成物2.10を含む石英ボートを、高温空気処理とその後の高温窒素焼成を行うために、石英管に装填した。触媒組成物2.10を触媒材料2.7に変換するために続く窒素パージ工程及び焼成工程は、触媒組成物2.6を触媒材料2.6に焼成するために適用した工程と同じであった。これは、結果の再現性を確認するための手順を再現したものである。窒素下、600℃で6時間焼成した後、得られた黒色粉末は触媒材料2.7であり、その重量は1542.6gであり、焼成質量収率は96%(空気処理した触媒組成物2.10質量に基づく)であった。触媒材料2.7はMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0160】
[例11B]触媒材料2.8の合成(二重洗浄済み、AT250℃、6時間)
触媒組成物2.11を含む石英ボートを、高温空気処理とその後の高温窒素焼成を行うために、石英管に装填した。触媒組成物2.11を触媒材料2.8に変換するために続く窒素パージ工程及び焼成工程は、触媒組成物2.6を触媒材料2.6に焼成するために適用した工程と同じであった。窒素下、600℃で6時間焼成した後、得られた黒色粉末は触媒材料2.8であり、その重量は1063gであり、この手順で使用した触媒組成物1.6の1138gに基づいて、焼成質量収率は93%であった。触媒材料2.8をCHNによって分析し、その結果を表3.1に示す。触媒材料2.8もMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0161】
[例12B]触媒材料2.9の合成(通常洗浄済み、AT250℃、6時間)
250℃で約6時間処理した触媒組成物2.12の2つのほぼ等しい部分を2回に分けて焼成し、約6kgの固形物をワークアップした。各焼成において、高温窒素焼成を行うために、触媒組成物2.12を含む3つの石英ボートを石英管に装填した。触媒組成物2.12を触媒材料2.9に変換するために続く窒素パージ工程及び焼成工程は、触媒組成物2.6を触媒材料2.6に焼成するために適用した工程と同じであった。窒素下、600℃で2回焼成した後、得られた黒色粉末の総質量は触媒材料2.9の5481gであり、この手順で使用した触媒組成物1.7の5877gに基づいて、焼成質量収率は93%であった。5481gの生成物が回収され、触媒材料2.9の全重量収率は72%であった(触媒組成物1.7のために使用した化学物質の質量に基づいて、理論収量が7598.07gであると仮定)。触媒材料2.9をCHNによって分析し、その結果を表3.1に示す。触媒材料2.9もICP-MSによって分析し、その結果を表3.2と表3.3に示す。さらに、触媒材料2.9はMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0162】
[例13B]触媒材料2.10の合成(V低減、通常洗浄、AT250℃、6時間)
触媒組成物2.13の2つの部分を2回に分けて焼成して、約5kgの固形物をワークアップした。各焼成において、高温窒素焼成を行うために、触媒組成物2.13を含む石英ボートを石英管に装填した。触媒組成物2.13を触媒材料2.10に変換するために続く窒素パージ工程及び焼成工程は、触媒組成物2.6を触媒材料2.6に焼成するために適用した工程と同じであった。窒素下、600℃で2回焼成した後、得られた黒色粉末の総質量は触媒材料2.10の4601gであり、この手順で使用した触媒組成物1.8の5022gに基づいて、焼成質量収率は92%であった。5022gの生成物が回収され、触媒材料2.9の全重量収率は80%と推定された(理論収率7598.07に83%を乗じた値が6306.40gに等しく;触媒組成物1.8のために使用した化学物質の質量から、触媒材料4.5の生成に使用した回収された固形生成物の17%部分を差し引いたと仮定)。例12と比較して、例13の質量収率が約8%向上した(推定80%対72%)のは、触媒組成物1.8に使用したVOSO4出発物質の量が減少したためと考えられる。触媒材料2.10をICP-MSによって分析し、その結果を表3.2と表3.3に示す。触媒材料2.10もMRU性能試験に供され、その結果を表3.6に示す。
【0163】
触媒材料2.8及び2.9のCHNによるN(重量%)の分析。
【表7】
【0164】
触媒材料2.1及び2.9~2.10のICP-MSによるMo、V、Nb、及びTeの濃度とモル比の分析。
【表8】
【0165】
【0166】
【表10】
触媒材料2.1、3.1及び4.1はすべて、共通の触媒組成物1.1から生成されたが、最終的な触媒材料を製造するために異なる方法でワークアップした。
【0167】
【表11】
触媒材料2.1、3.1及び4.1はすべて、共通の触媒組成物1.1から生成されたが、最終的な触媒材料を製造するために異なる方法でワークアップした。モル比は、表3.4に示すICP-MSの結果に基づいて計算した。モル比は、Moのモルに対するものである。
【0168】
触媒材料2.1~2.10のエタンからエチレンへの活性度及び選択率の分析。
【表12】
触媒材料2.1~2.10は、900gを超える量で調製した。この表の結果は、触媒材料3.X(表4.3)及び4.X(表5.4)と比較することで、約0.02重量%未満というS(重量%)の仕様を満たすことの重要性を示している。本明細書に記載されるように、これは、例えば約1kgを超えるような大規模の焼成された材料の場合、空気処理を通じて、又は濾過中の十分な洗浄を通じて、達成することができる。さらに、この結果は、触媒組成物が空気処理工程に使用される温度と時間の両方に敏感であることを示している。
【0169】
触媒材料の焼成3.1~3.4(小規模窒素焼成前の空気処理なし)
【0170】
[例14]触媒材料3.1の合成(ATなし)
触媒材料3.1の代表的な小規模焼成(100g未満)を、触媒組成物1.1の一部(20~30g)を石英ボート(直径約4cm、深さ約2.0cm、長さ約9.5cmの半円筒形、体積約52cm3)に装填することによって行った。石英ボートを、長さ約144cm、内径約5.1cmの石英管に装填した。石英管は、すりガラス継手を介して窒素パージシステムに接続され、入口側は窒素ガス源であり、出口側は実験室の換気ヘッダーに通気される。バルク窒素(酸素10ppm未満)を、400sccm(標準立方cm)で8時間、石英管に流した。8時間後、バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて400sccmでさらに約12時間パージした。この規模で焼成に使用された管状炉は、ネームプレート炉の最大ワット数が15.65KWで、カスタム温度加熱プロファイルをプログラムする機能を備えていた。管状炉加熱は以下のプログラムで適用した:1)室温から600℃まで6時間かけて昇温する(昇温速度は1.6℃/分);2)温度を600℃で2時間保持する;3)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。焼成後、得られた黒色粉末は触媒材料3.1であった。典型的な焼成質量収率は約85重量%を超えた。触媒材料3.1をICP-MSによって分析し、その結果を表4.1と表4.2に示す。触媒材料3.1もMRU性能試験に供され、その結果を4.3に示す。
【0171】
[例15]触媒材料3.2の合成(ATなし)
以下の小規模焼成(20g未満)は、典型的な焼成を代表するものであった。6.78gの触媒組成物1.2を、石英ボート(直径約1.4cm、深さ1.3cm、長さ6.9cmの半円筒形;体積約10~11cm3)に装填し、内径約2.5cmで長さ約2フィートの石英管に装填した。石英管は、すりガラス継手を介して窒素パージシステムに接続され、入口側は窒素ガス源であり、出口側は水バブラー(石英管を嫌気性雰囲気下に保つために使用)に通気される。バルク窒素(酸素10ppm未満)を、85sccm(標準立方cm)で8時間、石英管に流した。8時間後、バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて85sccmで一晩パージした。流量を85sccmから30sccmに減らし、管状炉ヒーターをオンにした。管状炉加熱は以下のプログラムで適用した:1)室温から600℃まで6時間かけて昇温する(昇温速度は1.6℃/分);2)温度を600℃で2時間保持する;3)炉の電源を切り、試料を室温まで冷却する。焼成後、得られた触媒材料3.2は黒色であり、重量は6.07gであり、これは焼成重量収率90%に相当する。触媒材料3.2はMRU性能試験に供され、その結果を4.3に示す。
【0172】
[例16]触媒材料3.3の合成(ATなし)
触媒組成物1.3を、触媒材料3.2について記載したのと同じ一般的手順で焼成して触媒材料3.3とした。触媒材料3.3はMRU性能試験に供され、その結果を4.3に示す。
【0173】
[例17]触媒材料3.4の合成(ATなし)
触媒組成物1.4を、触媒材料3.1について記載したのと同じ一般的手順で焼成して触媒材料3.4とした。触媒材料3.4をICP-MSによって分析し、その結果を表4.1と表4.2に示す。触媒材料3.4はMRU性能試験に供され、その結果を4.3に示す。
【0174】
触媒材料3.1及び3.4のICP-MSによるMo、V、Nb、及びTeの濃度とモル比の分析。
【表13】
【0175】
【0176】
触媒材料3.1~3.4のエタンからエチレンへの活性度及び選択率の分析。
【表15】
触媒材料3.1~3.4は、100g未満の量で調製した。この表の結果は、触媒材料2.X(表3.6)及び4.X(表5.4)と比較することで、約0.02重量%未満というS(重量%)の仕様を満たすことの重要性を示している。本明細書に記載されるように、これは、例えば約1kgを超えるような大規模の焼成された材料の場合、空気処理を通じて、又は濾過中の十分な洗浄を通じて、達成することができる。
【0177】
触媒材料の焼成4.1~4.5(大規模窒素焼成前の空気処理なし)
【0178】
[例18]触媒材料4.1の合成(ATなし)
2764.9gの触媒組成物1.1を、3つの石英ボート(直径約13cm、深さ約6.4cm、長さ約32.3cmの半円筒形)の間にほぼ等しい部分に装填した。触媒組成物を入れた石英ボートを対流式オーブンに装填し、さらに90℃で一晩乾燥させた。触媒組成物1.3を冷却した後、乾燥重量は2669.9gと記録された。石英ボートを石英管の真ん中に装填した。石英管は、長さ約180cm、内径14cmであった。管状炉は、Carbolite Gero GHA12/1200で、銘板の最大ワット数は7.02kWで、熱電対を内蔵し、温度制御プログラミング機能も備えていた。石英管をフランジで密閉し、その管を2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満)で1000sccm(標準立方cm)の流量でパージした。管の出口側は、水バブラーを通して排気される。この水バブラーは、管を嫌気性雰囲気に保つ(すなわち、空気の逆流を防ぐ)ために使用される。石英管をバルク窒素で約4時間パージした後、入口バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて1000sccmで一晩パージした。管状炉は、以下の加熱プログラムを使用して、触媒組成物1.1を触媒材料4.1に焼成した:1)1.6℃/分の昇温速度で600℃まで昇温する;2)600℃で6時間保持する;3)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。得られた2495.1gの黒色粉末は、触媒材料4.1であり、焼成、質量収率は93.4%であった。触媒材料4.1をICP-MSによって分析し、その結果を表5.2と表5.3に示す。触媒材料4.1はMRU性能試験に供され、その結果を5.4に示す。
【0179】
[例19]触媒材料4.2の合成(ATなし)
926gの触媒組成物1.2を、単一の石英ボート(直径約13cm、深さ約6.4cm、長さ約32.3cmの半円筒形)に装填した。石英ボートを石英管の真ん中に装填した。石英管は、長さ約180cm、内径約14cmであった。管状炉は、Carbolite Gero GHA12/1200で、銘板の最大ワット数は7.02kWで、熱電対を内蔵し、温度制御プログラミング機能も備えていた。石英管をフランジで密閉し、その管を2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満)で1000sccm(標準立方cm)の流量でパージした。管の出口側を、水バブラーを通して排気した。この水バブラーは、空気の逆流を防いで管を嫌気性雰囲気に保つために使用した。石英管をバルク窒素で約1時間パージした後、入口バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて1000sccmで一晩パージした。管状炉は、以下の加熱プログラムを使用して、触媒組成物1.2を触媒材料4.2に焼成した:1)1.6℃/分の昇温速度で600℃まで昇温する;2)600℃で6時間保持する;3)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。得られた861gの黒色粉末は、触媒材料4.2であり、焼成、質量収率は93%であった。触媒材料4.2はMRU性能試験に供され、その結果を5.4に示す。
【0180】
[例20]触媒材料4.3の合成(通常洗浄済み、ATなし)
2006gの触媒組成物1.5を、2つのほぼ等しい等分に分けて装填し、2つの石英ボート(直径約13cm、深さ約6.4cm、長さ約32.3cmの半円筒形)に装填した。触媒組成物を入れた石英ボートを対流式オーブンに装填し、さらに90℃で一晩乾燥させた。乾燥した触媒組成物1.5を冷却した後、石英ボートを石英管の中央に装填した。石英管は、長さ約180cm、内径14cmであった。管状炉は、Carbolite Gero GHA12/1200で、銘板の最大ワット数は7.02kWで、熱電対を内蔵し、温度制御プログラミング機能も備えていた。石英管をフランジで密閉し、その管を2psigのバルク窒素(酸素10ppm未満)で1000sccm(標準立方cm)の流量でパージした。管の出口側は、水バブラーを通して排気される。この水バブラーは、管を嫌気性雰囲気に保つ(すなわち、空気の逆流を防ぐ)ために使用される。石英管をバルク窒素で約4時間パージした後、入口バルク窒素を酸素トラップ(LabClear Oxiclearガス精製器)に通して方向転換し、石英管を、精製窒素(酸素1ppm未満)を用いて1000sccmで一晩パージした。管状炉は、以下の加熱プログラムを使用して、触媒組成物1.5を触媒材料4.3に焼成した:1)1.6℃/分の昇温速度で600℃まで昇温する;2)600℃で6時間保持する;3)炉の電源を切り、装置を室温まで冷却する。得られた1945gの黒色粉末は、触媒材料4.3であり、焼成、質量収率は97%であった。触媒材料4.3をCHNによって分析し、その結果を表5.1に示す。触媒材料4.3はMRU性能試験に供され、その結果を5.4に示す。
【0181】
[例21]触媒材料4.4の合成(二重洗浄済み;ATなし)
945gの触媒組成物1.6を、触媒材料4.3について概説したのと同じ手順で焼成して触媒材料4.4とした。ただし、唯一の例外は、焼成される材料が少なかったため、2つの石英ボートの代わりに1つの石英ボートのみを使用したことである。窒素下、600℃で6時間焼成した後、得られた黒色粉末は触媒材料4.4であり、重量は892gであり、これは94%の焼成質量収率(触媒組成物1.6の初期質量、すなわち90℃での粉砕触媒の追加乾燥工程前の質量に基づく)に相当した。触媒材料4.4をCHNによって分析し、その結果を表5.1に示す。触媒材料4.4はMRU性能試験にも供され、その結果を5.4に示す。
【0182】
[例22]触媒材料4.5の合成(V低減、通常洗浄、ATなし)
触媒組成物1.8の合計6062gのうち1040g(17%)を、触媒材料4.3について概説したのと同じ手順で焼成して触媒材料4.5とした。ただし、唯一の例外は、焼成される材料が少なかったため、2つの石英ボートの代わりに1つの石英ボートのみを使用したことである。窒素下、600℃で6時間焼成した後、得られた黒色粉末は触媒材料4.5であり、重量は982gであり、これは94%の焼成質量収率(触媒組成物1.8の初期質量、90℃での粉砕触媒の追加乾燥工程前の質量に基づく)に相当した。触媒材料4.5はMRU性能試験に供され、その結果を5.4に示す。
【0183】
触媒材料4.3及び4.4のCHNによるN(重量%)の分析。
【表16】
【0184】
触媒材料4.1のICP-MSによるMo、V、Nb、及びTeの濃度とモル比の分析。
【表17】
【0185】
触媒材料2.1、3.1及び4.1はすべて、共通の触媒組成物1.1から生成されたが、最終的な触媒材料を製造するために異なる方法でワークアップした。
【表18】
触媒材料2.1、3.1及び4.1はすべて、共通の触媒組成物1.1から生成されたが、最終的な触媒材料を製造するために異なる方法でワークアップした。モル比は、表5.2に示すICP-MSの結果に基づいて計算した。モル比は、Moのモルに対するものである。
【0186】
触媒材料4.1~4.5のエタンからエチレンへの活性度及び選択率の分析。
【表19】
【0187】
触媒材料2.1~2.10は、約900g未満の量で調製した。この表の結果は、触媒材料2.X(表3.6)及び3.X(表4.3)と比較することで、約0.02重量%未満のS(重量%)仕様を満たすことの重要性を示している。本明細書に記載されるように、これは、例えば約1kgを超えるような大規模の焼成された材料の場合、空気処理を通じて、又は濾過中の十分な洗浄を通じて、達成することができる。
【0188】
<例示的な実施形態>
本明細書の実施例に記載される例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素を含む触媒組成物を提供する。触媒組成物において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.40である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、組成物は、1.0重量%未満の硫黄を含む。
【0189】
一態様において、組成物は、0.50重量%未満の硫黄を含む。一態様において、組成物は、0.001重量%~0.90重量%の硫黄を含む。
【0190】
一態様において、組成物は、0.5重量%~3.0重量%の窒素を含む。一態様において、組成物は、0.8重量%~2.0重量%の窒素を含む。一態様において、組成物は、0.8重量%~1.2重量%の窒素を含む。
【0191】
一態様において、組成物は、5.0重量%未満の水を含む。一態様において、組成物は、0.01重量%~2重量%の水を含む。
【0192】
一態様において、触媒組成物は、モリブデンとバナジウムのモル比が、1:0.12から1:0.49であり、モリブデンとテルルのモル比が、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比が、1:0.01から1:0.30である。
【0193】
一態様において、組成物は、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された組成物を提供すること、並びに、予備洗浄された組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、0.25重量%未満の硫黄を含む組成物を提供すること、を含む方法によって調製される。
【0194】
一態様において、極性溶媒は水である。
【0195】
一態様において、組成物は、少なくとも200gの規模で調製される。一態様において、組成物は、少なくともキログラム規模で調製される。一態様において、組成物は、約1トン~約5トンの規模で調製される。
【0196】
本明細書の実施例に記載される別の例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び硫黄を含む予備焼成された触媒組成物を提供する。触媒組成物において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.05から1:0.40である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、組成物の0.001重量%~0.25重量%を占める。この組成物は、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄されたODH触媒前駆体を提供すること、並びに、予備洗浄されたODH触媒前駆体を、水を含む溶液で洗浄して、1.0重量%未満の硫黄を含むODH触媒前駆体を提供すること、を含む方法によって調製される。
【0197】
本明細書の実施例に記載される別の例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び、任意選択で、硫黄、を含む触媒組成物の調製方法を提供する。触媒組成物において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.05から1:0.40である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、組成物の0.25重量%未満を占める。本方法は、モリブデン、バナジウム、テルル及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された触媒組成物を提供すること、並びに、予備洗浄された触媒組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、0.25重量%未満の硫黄を含む触媒組成物を提供すること、を含む。
【0198】
一態様において、極性溶媒は、水を含む。
【0199】
一態様において、組成物は、0.01重量%~0.1重量%の硫黄を含む。一態様において、組成物は、0.8重量%~2.0重量%の窒素を含む。一態様において、組成物は、0.8重量%~1.2重量%の窒素を含む。
【0200】
一態様において、本方法は、少なくとも200グラムの組成物を調製する。一態様において、本方法は、少なくとも1キログラムの組成物を調製する。一態様において、本方法は、バッチあたり約1トン~約5トンの組成物を調製する。
【0201】
一態様において、本方法は、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を提供することをさらに含む。一態様において、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を提供することは、モリブデンを含む水性混合物を提供すること;テルルを含む水性混合物を提供すること;バナジウムを含む水性混合物を提供すること;ニオブを含む水性混合物を提供すること;並びに、モリブデンを含む水性混合物、テルルを含む水性混合物、バナジウムを含む水性混合物、及びニオブを含む水性混合物を組み合わせて、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を提供すること;を含む。
【0202】
一態様において、バナジウムを含む水性混合物を提供することは、バナジウム化合物と水から水性混合物を調製することを含む。一態様において、バナジウム化合物は、バナジウムアセチルアセトナート、バナジルアセチルアセトナート、ステアリン酸バナジル、ナフテン酸バナジウム、バナジウムベンゾイルアセトナート、硫酸バナジル、又はそれらの組合せから選択されるバナジウム化合物を含む。一態様において、バナジウム化合物は、硫酸バナジルを含む。一態様において、硫酸バナジルは、硫酸バナジル水和物を含む。
【0203】
一態様において、ニオブを含む水性混合物を提供することは、少なくとも五酸化ニオブ、酸、及び水から水性混合物を調製することを含む。一態様において、ニオブを含む水性混合物を提供することは、少なくとも五酸化ニオブ水和物、シュウ酸、及び水から水性混合物を調製することを含む。一態様において、テルルを含む水性混合物を提供することは、少なくともテルル酸(Te(OH)6)及び水から水性混合物を調製することを含む。
【0204】
一態様において、モリブデンを含む混合物を提供することは、少なくともモリブデン酸アンモニウム四水和物及び水から水性混合物を調製することを含む。
【0205】
一態様において、本方法は、モリブデンを含む水性混合物と、テルルを含む水性混合物とを組み合わせて、モリブデン及びテルルを含む水性混合物を提供すること;モリブデン及びテルルを含む水性混合物と、バナジウムを含む水性混合物とを組み合わせて、モリブデン、テルル、及びバナジウムを含む水性混合物を提供すること;並びにモリブデン、テルル、及びバナジウムを含む水性混合物と、ニオブを含む水性混合物とを組み合わせて、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を提供すること;を含む。
【0206】
一態様において、本方法は、モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約60℃~約100℃の温度で加熱することを含む。一態様において、本方法は、モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約80℃の温度で加熱することを含む。一態様において、本方法は、モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約7.0~約8.5に上昇させることを含む。一態様において、本方法は、モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約7.25~約7.75に上昇させることをさらに含む。一態様において、水性混合物のpHを、上昇させることは、水性水酸化物溶液と、モリブデン及びテルルを含む水性混合物とを組み合わせることを含む。一態様において、モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを上昇させることは、水酸化アンモニウムと、モリブデン及びテルルを含む水性混合物とを組み合わせることを含む。
【0207】
一態様において、本方法は、モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約4.0~約6.0のpHに低下させることをさらに含む。一態様において、前記pHを、約4.75~約5.25のpHに低下させることをさらに含む。一態様において、モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを低下させることは、硫酸と、モリブデン及びテルルを含む水性混合物とを組み合わせることを含む。
【0208】
一態様において、本方法は、モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約70℃~約90℃の温度に加熱すること;モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約7.25~約7.75のpHに上昇させること;バナジウムを含む水性混合物と、モリブデン及びテルルを含む水性混合物とを組み合わせる前に、モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約4.75~約5.25に低下させること;をさらに含む。
【0209】
一態様において、本方法は、モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約70℃~約90℃の温度に加熱すること;モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約7.25~約7.75のpHに上昇させること;モリブデン及びテルルを含む水性混合物を、約0.5時間~約24時間撹拌すること;並びにバナジウムを含む水性混合物を、モリブデン及びテルルを含む水性混合物に添加する前に、モリブデン及びテルルを含む水性混合物のpHを、約4.75~約5.25に低下させて、モリブデン、テルル、及びバナジウムを含む水性混合物を提供すること;をさらに含む。
【0210】
一態様において、水熱反応条件は、約145℃~約185℃の温度を含む。一態様において、水熱反応条件は、約160℃~約165℃の温度を含む。
【0211】
一態様において、水熱反応条件は、約75psig~約125psigの圧力を含む。一態様において、水熱反応条件は、約95~約105psigの圧力を含む。
【0212】
一態様において、水熱反応条件は、約145℃~約185℃の温度、及び約75psig~約125psigの圧力を含む。一態様において、水熱反応条件は、約160℃~約165℃の温度、及び約95psig~約105psigの圧力を含む。
【0213】
一態様において、水熱反応時間は、約12時間~約60時間である。一態様において、水熱反応時間は、約24時間~約48時間である。一態様において、水熱反応条件は、約145℃~約185℃の温度、及び約75psig~約125psigの圧力、約12時間~約60時間の時間を含む。一態様において、水熱反応条件は、約160℃~約165℃の温度、及び約95psig~約105psigの圧力、約24時間~約48時間の時間を含む。
【0214】
一態様において、本方法は、水熱反応混合物を、濾過して、予備洗浄された触媒組成物にすることをさらに含む。一態様において、予備洗浄された触媒組成物を洗浄することは、予備洗浄された触媒組成物を、予備洗浄された触媒組成物1kgあたり約11リットル~約46リットルの水で洗浄することを含む。一態様において、予備洗浄された触媒組成物を洗浄することは、予備洗浄された触媒組成物を、予備洗浄された触媒組成物1kgあたり約24リットル~約34リットルの水で洗浄することを含む。一態様において、予備洗浄された触媒組成物を洗浄することは、予備洗浄された触媒組成物を、予備洗浄された触媒組成物1kgあたり約29リットルの水で洗浄することを含む。
【0215】
一態様において、本方法は、洗浄された触媒組成物を乾燥することをさらに含む。一態様において、洗浄された触媒組成物を乾燥することは、触媒組成物中の水の量を組成物中の5重量%未満の水に減少させることを含む。一態様において、洗浄された触媒組成物を乾燥することは、触媒組成物中の水の量を組成物中の2重量%未満の水に減少させることを含む。一態様において、洗浄された触媒組成物を乾燥することは、触媒組成物中の水の量を組成物中の0.01重量%~2重量%の水に減少させることを含む。
【0216】
一態様では、洗浄された触媒組成物を、約60℃~約330℃の温度で乾燥する。一態様では、洗浄された触媒組成物を、約200℃~約300℃の温度で乾燥する。一態様では、洗浄された触媒組成物を、約250℃の温度で乾燥する。一態様では、洗浄された触媒組成物を、約70℃~約110℃の温度で乾燥する。一態様では、洗浄された触媒組成物を、約90℃の温度で乾燥する。一態様では、洗浄された触媒組成物を、約60℃~約330℃の温度で約1時間~約240時間乾燥する。一態様において、本方法は、触媒組成物を提供するための空気処理をさらに含む。
【0217】
一態様において、本方法は、触媒組成物を粉砕することをさらに含む。一態様において、粉砕された触媒組成物の平均粒子サイズは、約50μm~約1,000μmである。一態様において、粉砕された触媒組成物の平均粒子サイズは、約125μm~約500μmである。
【0218】
本明細書の実施例に記載される別の例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、及び酸素を含む触媒材料を提供する。触媒材料において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.12から1:0.49であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.30である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、触媒材料の0.01重量%未満含まれる。
【0219】
一態様において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.20から1:0.45であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.05から1:0.25であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.05から1:0.25である。一態様において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.25から1:0.40、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.10から1:0.20、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.10から1:0.20である。一態様において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.30から1:0.35であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.13から1:0.17であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.12から1:0.14である。
【0220】
一態様において、触媒材料は、0.005重量%未満の硫黄を含む。一態様において、触媒材料は、0.003重量%未満の硫黄を含む。
【0221】
一態様において、触媒材料は、0.01重量%~1.0重量%の窒素をさらに含む。一態様において、触媒材料は、0.5重量%~0.3重量%の窒素をさらに含む。
【0222】
一態様において、触媒材料は、25重量%~35重量%の酸素を含む。一態様において、触媒材料は、27重量%~33重量%の酸素を含む。
【0223】
一態様において、触媒材料は、約350℃~約425℃の35%転化温度を有する。一態様において、触媒材料は、約360℃~約390℃の35%転化温度を有する。一態様において、触媒材料は、約370℃~約380℃の35%転化温度を有する。一態様において、触媒材料は、約75%~約95%のエチレンに対する選択率を有する。一態様において、触媒材料は、約80%~約90%のエチレンに対する選択率を有する。
【0224】
一態様において、触媒材料は、実験式Mo1.0V0.12-0.49Te0.01-0.30Nb0.01-0.30Odを有する混合金属酸化物を含み、dは酸化物の原子価を満たす数である。一態様において、触媒材料は、実験式Mo1.0V0.20-0.45Te0.05-0.25Nb0.05-0.25Odを有する混合金属酸化物を含み、dは酸化物の原子価を満たす数である。一態様において、触媒材料は、実験式Mo1.0V0.25-0.40Te0.10-0.20Nb0.10-0.20Odを有する混合金属酸化物を含み、dは酸化物の原子価を満たす数である。一態様において、触媒材料は、実験式Mo1.0V0.30-0.35Te0.13-0.17Nb0.12-0.14Odを有する混合金属酸化物を含み、dは酸化物の原子価を満たす数である。
【0225】
一態様において、触媒材料は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び硫黄を含む触媒組成物を提供することを含む方法によって調製され、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.40である。酸素は、少なくとも、金属酸化物の原子価を満たす量で存在する。硫黄は、組成物の0.25重量%未満を占める。この態様の方法では、触媒組成物を焼成して触媒材料を提供する。
【0226】
一態様において、触媒組成物を焼成することは、触媒組成物を約500℃~約650℃の温度で加熱することを含む。一態様において、触媒組成物を焼成することは、触媒組成物を約600℃の温度で加熱することを含む。
【0227】
一態様において、予備焼成された触媒組成物を焼成することは、予備焼成された触媒組成物を約500℃~約650℃の温度で約2時間~約24時間加熱することを含む。一態様において、予備焼成された触媒組成物を焼成することは、予備焼成された触媒組成物を約600℃の温度で約6時間加熱することを含む。
【0228】
一態様において、予備焼成された触媒組成物を提供することは、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された組成物を提供すること、並びに、予備洗浄された組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、0.25重量%未満の硫黄を含む予備焼成された触媒組成物を提供すること、を含む。
【0229】
一態様において、予備焼成された触媒組成物は、0.1重量%未満の硫黄を含む。一態様において、予備焼成された触媒組成物は、1.2重量%未満の窒素を含む。一態様において、予備焼成された触媒組成物は、5重量%未満の水を含む。
【0230】
一態様において、触媒材料は、少なくとも200gの規模で調製される。一態様において、触媒材料は、少なくともキログラムの規模で調製される。
【0231】
本明細書の実施例に記載される別の例示的な実施形態は、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び硫黄を含む触媒材料の調製方法を提供する。本方法は、モリブデン、バナジウム、テルル、及びニオブを含む水性混合物を水熱反応させて、0.5重量%を超える硫黄を含む予備洗浄された組成物を提供することを含む。本方法は、予備洗浄された組成物を、極性溶媒を含む溶液で洗浄して、モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブ、酸素、及び硫黄を含む触媒組成物を提供することを含む。触媒組成物において、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.05から1:0.60であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.40である。酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で触媒組成物中に存在する。硫黄は、組成物の0.25重量%未満を占める。本方法は、触媒組成物を焼成して触媒材料を提供することを含み、モリブデンとバナジウムのモル比は、1:0.12から1:0.49であり、モリブデンとテルルのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は、1:0.01から1:0.30であり、酸素は、少なくとも、存在する金属酸化物の原子価を満たす量で存在し、硫黄は、存在する場合、触媒材料の0.01重量%未満含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0232】
酸化的脱水素化のための触媒。
【国際調査報告】