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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
H02K9/19 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552082
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 DE2022100168
(87)【国際公開番号】W WO2022184211
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102021105338.2
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ナハトマン
(72)【発明者】
【氏名】ローラン イネシェン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス バウアー
(72)【発明者】
【氏名】カイ ユッケラント
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP02
5H609PP07
5H609QQ05
5H609QQ18
5H609RR01
5H609RR26
5H609RR37
5H609RR43
(57)【要約】
本発明は、ステータ(2)と、ステータ(2)に対して回転可能に取り付けられたロータ(3)と、を備える、電気機械(1)に関する。ロータ(3)は、ロータシャフト(4)と、ロータシャフト(4)に回転可能に固定されたロータ本体(5)と、を含む。ロータシャフト(4)は、作動液流路(6)を有し、作動液流路(6)は、軸方向に延在し、かつ作動流体(16)で満たすことができ、第1の径方向流体流路(7)は、作動液流路(6)から径方向外向きに延在している。少なくとも1つの環状ディスク形状カバー要素(10)は、ロータ本体(5)に、ロータ本体(5)の軸方向端面(9)上で回転可能に固定され、カバー要素(10)は、ロータ本体(5)の軸方向端面(9)とともに、両側が開口した少なくとも1つの第1の冷却流路(18)を形成し、第1の冷却流路(18)は、第1の径方向流体流路(7)に液圧的に結合し得るため、作動流体(16)は、遠心力で補助される様式で、ロータシャフトの作動液流路(6)から外へ、径方向流体流路(7)および第1の冷却流路(18)を通って径方向に搬送され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ(2)と、前記ステータ(2)に対して回転可能に取り付けられたロータ(3)と、を備える、電気機械(1)であって、前記ロータ(3)は、ロータシャフト(4)と、前記ロータシャフト(4)に回転可能に固定される様式で接続されたロータ本体(5)と、を含み、前記ロータシャフト(4)は、作動液流路(6)を有し、前記作動液流路(6)は、軸方向に延在し、かつ作動流体(16)で満たすことができ、第1の径方向流体流路(7)は、前記作動液流路(6)から径方向外向きに延在しており、少なくとも1つの環状ディスク形状カバー要素(10)は、前記ロータ本体(5)の軸方向端面(9)上で回転可能に固定される様式で前記ロータ本体(5)に接続されており、かつ前記カバー要素(10)は、前記ロータ本体(5)の前記軸方向端面(9)とともに、両側が開口した少なくとも1つの第1の冷却流路(18)を形成し、前記第1の冷却流路(18)は、前記第1の径方向流体流路(7)に液圧的に結合することができ、そのため、前記作動流体(16)を、遠心力で補助される様式で、前記ロータシャフトの前記作動液流路(6)から外へ、かつ前記径方向流体流路(7)および前記第1の冷却流路(18)を通って前記径方向に搬送することができる、電気機械(1)において、
前記第1の径方向流体流路(7)は、第1の流れ断面(12)と、前記第1の流れ断面(12)の上方に前記径方向に形成された第2の流れ断面(13)と、を有し、前記第1の流れ断面(12)と前記第2の流れ断面(13)とは、1:1.5~1:25の比を有し、前記第1の径方向流体流路(7)の前記第2の流れ断面(13)の5%~75%、好ましくは15~25%は、前記ロータ本体(5)によって前記軸方向に部分的に覆われており、前記第2の流れ断面(13)は、前記ロータシャフト(4)と前記第1の冷却流路(18)との間に前記径方向に配置された第1の貯蔵室(17)内に開口しており、前記第1の径方向流体流路7の容積は、前記第1の貯蔵室17の容積に対して0.5:1~3:1の比を有することを特徴とする、電気機械(1)。
【請求項2】
前記ロータシャフト(4)は、作動液流路(6)を有し、前記作動液流路(6)は、前記軸方向に延在し、かつ作動流体(16)で満たすことができ、第1の径方向流体流路(7)と前記第1の径方向流体流路(7)から前記軸方向に離間した第2の径方向流体流路(8)とは、前記作動液流路(6)から前記径方向外向きに延在しており、少なくとも1つの環状ディスク形状カバー要素(10)は、前記ロータ本体(5)の前記軸方向端面(9)上で回転可能に固定される様式で前記ロータ本体(5)に接続されており、かつ前記カバー要素(10)は、前記ロータ本体(5)の前記軸方向端面(9)のうちの1つに接続されて、両側が開口した少なくとも1つの冷却流路(19)を形成し、前記冷却流路(19)は、前記径方向流体流路(7、8)のうちの1つに液圧的に結合することができ、そのため、前記ロータ(3)は、少なくとも1つの対応する第1の冷却流路(18)および少なくとも1つの第2の冷却流路(19)を有し、そのため前記作動流体(16)を、遠心力によって前記ロータシャフトの前記作動液流路(6)から外へ、かつ前記径方向流体流路(7、8)および前記冷却流路(18、19)を通って前記径方向に搬送することができ、前記第2の径方向流体流路(8)は、第3の流れ断面(14)と、前記第3の流れ断面(14)の上方に前記径方向に形成された第4の流れ断面(15)と、を有し、前記第3の流れ断面(14)と前記第4の流れ断面(15)とは、1:1.5~1:25の比を有し、前記第2の径方向流体流路(8)の前記第4の流れ断面(15)の5%~75%、好ましくは15~25%は、前記ロータ本体(5)によって前記軸方向に部分的に覆われており、かつ前記第4の流れ断面(12)は、前記ロータシャフト(4)と前記第2の冷却流路(19)との間に前記径方向に配置された第2の貯蔵室(24)内に開口しており、前記第2の径方向流体流路8の容積が、前記第2の貯蔵室24の容積に対して0.5:1~3:1の比を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気機械(1)。
【請求項3】
前記第2の冷却流路(19)が、前記第2の径方向流体流路(8)の前記第3の流れ断面(14)の0.5~1.5に相当する流れ断面を有することを特徴する、請求項2に記載の電気機械(1)。
【請求項4】
前記第1の冷却流路(18)は、前記第1の径方向流体流路(7)の前記第1の流れ断面(12)の0.5~1.5に相当する流れ断面を有することを特徴する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機械(1)。
【請求項5】
前記カバー要素(10)のうちの少なくとも1つは、前記軸方向に延びる出口流路(20)を有することを特徴する、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気機械(1)。
【請求項6】
前記出口流路(20)は、前記第1の径方向流体流路(7)または第2の径方向流体流路(8)の前記第1の流れ断面(12、14)の50~300%に相当する流れ断面(21)を有することを特徴する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気機械(1)。
【請求項7】
前記カバー要素(10)の少なくとも1つは、前記冷却流路(18、19)のうちの1つとそれに対応する貯蔵室(17、24)との間に漏斗状の移行部が存在するように、前記カバー要素(10)の径方向内側側面(22)に面取り(23)を有することを特徴する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気機械(1)。
【請求項8】
前記ロータ(3)は、最大12,000~18,000rpmの速度で動作することを特徴する、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気機械(1)。
【請求項9】
前記ロータシャフト(4)の前記作動液流路(6)は、第3の径方向流体流路(25)を有し、前記第3の径方向流体流路(25)は、径方向外向きに延在し、かつ前記ロータ本体(5)の外側で前記軸方向に前記ロータシャフト(4)内に配置されていることを特徴する、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気機械(1)。
【請求項10】
前記貯蔵室(17、24)のうちの少なくとも1つは、径方向外側輪郭(26)を有し、前記径方向外側輪郭(26)は、断面が凸状であり、かつ径方向外向きに湾曲することを特徴する、請求項1から9のいずれか一項に記載の電気機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータと、ステータに対して回転可能に取り付けられたロータと、を備える、電気機械であって、ロータは、ロータシャフトと、ロータシャフトに回転可能に固定される様式で接続されたロータ本体と、を含み、ロータシャフトは、作動液流路を有し、作動液流路は、軸方向に延在し、かつ作動流体で満たすことができ、第1の径方向流体流路は、作動液流路から径方向外向きに延在しており、少なくとも1つの環状ディスク状カバー要素は、ロータ本体の軸方向端面上で回転可能に固定される様式でロータ本体に接続されており、かつカバー要素は、ロータ本体の軸方向端面とともに、両側が開口した少なくとも1つの第1の冷却流路を形成し、第1の冷却流路は、第1の径方向流体流路に液圧的に結合することができ、そのため、作動流体を、遠心力で補助される様式で、ロータシャフトの作動液流路から外へ、かつ径方向流体流路および第1の冷却流路を通って径方向に搬送することができる、電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、自動車を駆動するのにますます使用されており、化石燃料を必要とする内燃機関の代替手段を生み出している。電気駆動装置の日常使用への適合性を向上させ、ユーザに慣れた運転の快適さを提供できるようにするために、すでに多大な努力が払われてきた。
【0003】
永久励磁同期機(permanently excited synchronous machines)は、このようなエレクトロモビリティのアプリケーションの多くで使用されている。このような永久励磁同期機は通常、通電されるステータと永久励磁ロータとを備える。ロータは通常、シャフト、バランスプレート、積層ロータコア、および磁石で構成されている。磁石は一般には、積層ロータコア内に固定される。
【0004】
回転電気機械の性能は、とりわけ、動作中に発生する熱に依存するが、これは、熱が増加すると機械の効率が低下するためである。
いわゆるホットスポットが回転電気機械で発生する可能性があることも知られている。ホットスポットは、電気機械の動作中にロータおよび/またはステータ内で最も発熱する領域である。
【0005】
電気機械のロータおよびステータを冷却するために一般に使用される方法としては、遠心力を利用した冷却剤を使用してロータを内側から径方向に冷却する方法(冷却剤は、ロータの端面に沿って流れる)と、冷却剤を使用するとともに、冷却剤の消散、したがって冷却剤によって吸収される熱の消散を使用して、ステータを外側から径方向に冷却する方法と、がある。
【0006】
エレクトロモビリティの分野では電気機械がますます高速化する傾向にあるため、一般にロータスタックには横方向の締まりばめが必要であり、そのため通常はスタックに冷却剤を供給することができない。車両分野における最新の電気ドライブの高速化は、遠心力に関連した吸引効果が径方向冷却剤流路で発生することも意味しており、その結果、対応する電気機械の冷却システム内で作動流体が制御されずに分配されてしまう可能性がある。このような吸引効果の結果として生じる作動流体の制御されないかつ望ましくない分配により、結果として、電気機械の熱的臨界領域における冷却能力が不十分になる可能性がある。これは、電気機械の効率の低下、さらには電気機械の熱損傷や故障につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、これらの欠点を軽減または完全に除去し、高速であってもロータの制御された信頼性の高い冷却を提供できる電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、独立請求項に記載の手段によって達成される。従属請求項には、有利な更なる実施形態が特定される。
一態様によれば、電気機械は、ステータと、ステータに対して回転可能に取り付けられたロータと、を含み、ロータは、ロータシャフトと、ロータシャフトに回転可能に固定される様式で接続されたロータ本体と、を含み、ロータシャフトは、作動液流路を有し、作動液流路は、軸方向に延在し、かつ作動流体で満たすことができ、第1の径方向流体流路は、作動液流路から径方向外向きに延在しており、少なくとも1つの環状ディスク状カバー要素は、ロータ本体の軸方向端面上で回転可能に固定される様式でロータ本体に接続されており、かつカバー要素は、ロータ本体の軸方向端面とともに、両側が開口した少なくとも1つの第1の冷却流路を形成し、第1の冷却流路は、第1の径方向流体流路に液圧的に結合することができ、そのため、作動流体を、遠心力で補助される様式で、ロータシャフトの作動液流路から外へ、かつ径方向流体流路および第1の冷却流路を通って径方向に搬送することができ、第1の径方向流体流路は、第1の流れ断面と、第1の流れ断面の上方に径方向に形成された第2の流れ断面と、を有し、第1の流れ断面と第2の流れ断面とは、1:1.5~1:25の比を有し、第1の径方向流体流路の第2の流れ断面の5%~75%、好ましくは15~25%は、ロータ本体によって軸方向に部分的に覆われており、第2の流れ断面は、ロータシャフトと第1の冷却流路との間に径方向に配置された第1の貯蔵室内に開口しており、第1の径方向流体流路の容積は、第1の貯蔵室の容積に対して0.5:1~3:1の比を有する。
【0009】
本発明による電気機械のロータ上の液圧冷却経路のこの構成は、高速での吸引効果の発生を確実に防止することができる。
【0010】
ロータ本体による第1の径方向流体流路の第2の流れ断面の軸方向の部分的重なりにより、特に高速でのロータ本体の濡れを改善することができる。
【0011】
本発明に関連して、「軸方向」および「径方向」という用語は、常に、ロータの回転軸を指す。
【0012】
まず、本発明の特許請求された主題の各要素を請求項に記載の順序に従って説明し、本発明の主題の特に好ましい実施形態について以下に説明する。
【0013】
電気機械は、電気エネルギーを機械エネルギーに、および/またはその逆に変換するために使用され、一般に、ステータまたはアーマチュアと呼ばれる固定部分と、ロータと呼ばれ、固定部分に対して移動可能に配置された部分と、を備える。この電気機械は、特にハイブリッド車両または完全電気自動車のドライブトレイン内での使用を目的としている。特に、電気機械は、50km/hを超える、好ましくは80km/hを超える、特に100km/hを超える車両速度を達成できるような寸法にされる。電気モータは、特に好ましくは、30kWを超える、好ましくは50kWを超える、特に70kWを超える出力を有する。さらに、電気機械は、5,000rpmを超える速度、特に好ましくは10,000rpmを超える速度、特に非常に好ましくは12,500rpmを超える速度を提供することが好ましい。
【0014】
本発明による電気機械は、特に自動車のドライブトレイン内で使用するために、特に径方向磁束機械として構成される。本出願の文脈において、自動車のドライブトレインは、自動車内で自動車を駆動するための動力を生成し、その動力を車輪を介して道路に伝達するすべての構成要素を意味すると理解される。
【0015】
電気機械のステータは、円筒状に構成されることが好ましく、互いに電気的に絶縁され、層状に構成され、積層コアを形成するようにパッケージ化された電気積層体からなることが好ましい。
【0016】
ロータは、電気機械の回転(スピン)部分である。ロータは、ロータシャフトと、ロータシャフト上に回転的に固定される様式で配置された1つ以上のロータ本体と、を備える。ロータシャフトは、中空にすることができ、これにより重量が軽減される一方で、潤滑剤または冷却剤をロータ本体に供給できるようになる。
【0017】
本発明の文脈におけるロータ本体は、ロータシャフトのないロータを意味すると理解される。したがって、ロータ本体は、特に、積層ロータコアと、積層ロータコアのポケットに導入されるか積層ロータコアに周方向に固定される磁性要素と、ポケットを閉じるために存在する任意の軸方向カバー部分と、から構成される。
【0018】
ロータ本体は、1つ以上の積層ロータコアを備えることができ、これらはスタックとも呼ばれる。積層ロータコアは、複数の積層された個別の層またはロータ層を意味すると理解され、これらは一般に電気金属薄板から作られ、一方が他方の上に積み重ねられ、パッケージされてスタックを形成し、これを積層ロータコアと呼ぶ。個別の層は、接着、溶接、またはねじ止めによって、積層コアとして、一体に保持されたままにすることができる。
【0019】
電気機械はさらに、冷却システムを備えることができる。冷却システムは、電気機械内の電気損失によって発生する熱を消散するために使用される。このような冷却システムは、ロータ(ロータ冷却流路)および/またはステータ(ステータ冷却流路)内に冷却流路を有することができ、熱を消散する目的で、対応する冷却媒体または作動流体がその冷却流路を通って導かれる。この目的のために、冷却システムは、特に、冷却媒体を冷却システムを通して、好ましくは閉回路で移動させる1つ以上のポンプを有することができる。
【0020】
電気機械において、作動流体は、電気機械の加熱している領域から可能な限り効率的に熱を消散し、これらの領域の望ましくない過熱を回避する機能を有する。この主な目的に加えて、作動流体は、電気機械の可動部品および冷却システムの金属表面に潤滑および腐食保護を提供することもできる。さらに、特に不純物(例えば摩耗による)、水、空気を消散させることもできる。
【0021】
作動流体は、好ましくは液体である。作動流体は、特に油とすることができる。しかしながら、原理的には、水性作動流体、例えばエマルションを使用することも考えられる。
【0022】
さらに、電気機械は、自動車用のハイブリッドモジュール内で使用するために設けることができることが好ましい。ハイブリッドモジュールでは、特に簡単な方法でハイブリッドモジュールを自動車のドライブトレインに統合できるように、ハイブリッド化されたドライブトレインの構造要素および機能要素を空間的および/または構造的に組み合わせて事前構成することができる。特に、電気機械およびクラッチシステム、特に電気機械をドライブトレインに係合させ、および/または電気機械をドライブトレインから切り離すための分離クラッチを備えたクラッチシステムが、ハイブリッドモジュール内に存在することができる。
【0023】
特に、電気機械は、好ましくは、自動車のドライブトレイン内の電気アクスルドライブトレインに使用するために提供することもできる。自動車の電気アクスルドライブトレインは、電気機械およびトランスミッションを備え、電気機械およびトランスミッションは、構造ユニットを形成する。この構造単位は、Eアクスルとも呼ばれる。
【0024】
本発明の有利な実施形態によれば、ロータシャフトは、作動液流路を有し、作動液流路は、軸方向に延在し、かつ作動流体で満たすことができ、第1の径方向流体流路と軸方向に離間した第2の径方向流体流路とが、作動液流路から径方向外向きに延在しており、ロータ本体の軸方向端面上で、少なくとも1つの環状ディスク状カバー要素は、回転可能に固定される様式でロータ本体に接続されており、かつカバー要素は、ロータ本体の軸方向端面のうちの1つとともに、両側が開口した少なくとも1つの冷却流路を形成し、冷却流路は、径方向流体流路のうちの1つに液圧的に結合することができ、そのため、ロータは、少なくとも1つの対応する第1の冷却流路および少なくとも1つの第2の冷却流路を有し、そのため作動流体を、遠心力によってロータシャフトの作動液流路から、かつ径方向流体流路および冷却流路を通って径方向に搬送することができ、第2の径方向流体流路は、第3の流れ断面と、第3の流れ断面の上方に径方向に形成された第4の流れ断面と、を有し、第3の流れ断面と第4の流れ断面とは、1:1.5~1:25の比を有し、第2の径方向流体流路の第4の流れ断面の5%~75%、好ましくは15~25%は、ロータ本体によって軸方向に部分的に覆われており、かつ第4の流れ断面は、ロータシャフトと第2の冷却流路との間に径方向に配置された第2の貯蔵室内に開口しており、第1の径方向流体流路の容積は、第1の貯蔵室の容積に対して0.5:1~3:1の比を有することもできる。
【0025】
この構成の利点は、液圧システムの構成によって吸引効果を確実に防止できるため、ロータ本体を冷却するために作動流体を2つの液圧経路間で均等に分配できることである。
【0026】
カバー要素とロータ本体との間の冷却流路の数は、ステータ本体の円周にわたって最も対称的な可能な冷却能力を達成するために、特に好ましくは極対(pole pair)の数に対応し、非常に特に好ましくは極対の数の2倍に相当する。冷却流路は、同一の設計であり、放射状の直線に沿って延びていることが好ましい。さらに、冷却流路は、ロータ本体の円周にわたって等距離となるように配置されることが好ましい。
【0027】
カバー要素は、十分な強度を得ることができるように、高強度アルミニウムで作製されることが好ましい。
【0028】
本発明のさらに好ましい発展形態によれば、第1の冷却流路は、第1の径方向流体流路の第1の流れ断面の0.5~1.5に相当する流れ断面を有するようにすることもできる。さらに、本発明の同様に有利な実施形態によれば、第2の冷却流路は、第2の径方向流体流路の第3の流れ断面の0.5~1.5に相当する流れ断面を有するようにすることができる。これらの対策は、望ましくない吸引効果の発生の抑制にも役立つ。
【0029】
1つ以上の冷却流路は、特にロータ本体に面する環状ディスク状カバー要素の端面に形成することができ、特に好ましくはエンボス加工によってカバー要素に導入される。ロータ本体とは反対側を向いている環状のディスク形状のカバー要素の端面は、特に平面設計とすることができ、その結果、例えば、平面センサのターゲット設計(planar sensor target design)が必要とされるセンサ機能の発展をなすことができる。例えば、カバー要素は、アルミニウム製であってよく、これは、円周方向に等距離に配置されたポケット状の凹部を有し、ロータが回転すると、この凹部がインクリメンタルセンサによって検出され、ロータ位置信号として処理される。
【0030】
本発明のさらに特に好ましい実施形態によれば、カバー要素のうちの少なくとも1つが軸方向に延びる出口流路を有するようにすることができる。このようにして、特に、軸方向に流出する作動流体を、出口流路の径方向上方に配置され、かつ通常は高い熱負荷を受ける可能性があるステータの巻線オーバーハングに導くことができ、電気機械全体の冷却を改善できるという効果を達成することができる。
出口流路は、ロータ本体内に存在する磁気ポケットの本質的に中央に配置されることが特に好ましい。
【0031】
さらに、本発明は、出口流路が、第1の径方向流体流路または第2の径方向流体流路の第1の流れ断面の50~300%に相当する流れ断面を有するようにさらに発展させることもでき、これにより、望ましくない吸引効果をさらに抑制することができる。
【0032】
本発明の同様に好ましい実施形態の変形例では、カバー要素のうちの少なくとも1つがその径方向内側側面に面取りを有して、冷却流路のうちの1つとそれに対応する貯蔵室との間に漏斗状の移行部が存在するようにすることもできる。これによっても、望ましくない吸引効果が漏斗状の移行部によってさらに低減されることが示されていることから、ロータの液圧冷却経路への作動流体の均一な供給をサポートできる。また、面取りは、作動流体をロータ本体の方向に導き、冷却に有利な効果をもたらす。本発明の取り得る一実施形態では、面取りは、貯蔵室を完全に貫通して径方向に延在し、したがってリング状の貯蔵室壁を形成することができる。
【0033】
また、ロータが最大12,000~18,000rpmの速度で動作するように本発明をさらに発展させ、液圧システムがこれらの速度範囲で特に効率的かつ安全に動作して、望ましくない吸引効果を低減または回避することも有利となり得る。
【0034】
本発明の主題のさらに好ましい実施形態によれば、ロータシャフトの作動液流路は、第3の径方向流体流路を有し、第3の径方向流体流路は、径方向外向きに延在し、かつロータ本体の外側で軸方向にロータシャフト内に配置されるようにすることができ、これにより、特にロータ本体の外側のさらなるコンポーネントの冷却が電気機械内で行われることが可能になる。
【0035】
最後に、本発明は、貯蔵室のうちの少なくとも1つは、断面が凸状でかつ径方向外向きに湾曲する径方向外側輪郭を有するように有利に実施することもでき、これは、望ましくない吸引効果を低減または回避するための効果的な対策であることが判明している。
【0036】
本発明は、本発明の一般的な概念を制限することなく、図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】電気機械を軸方向断面図で示す。
図2】電気機械のロータを軸方向断面図で示す。
図3】ロータの貯蔵室周囲の領域の軸方向断面の詳細図を示す。
図4】ロータの断面図を示す。
図5】ハイブリッドおよび完全電気のドライブトレインを備えた自動車を概略ブロック図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、ステータ2と、ステータ2に対して回転可能に取り付けられたロータ3と、を備える電気機械1を示す。ロータ3は、ロータシャフト4と、回転可能に固定される様式でロータシャフト4に接続されたロータ本体5と、を有する。
【0039】
図2から明らかなように、ロータシャフト4は、作動液流路6を有し、作動液流路6は、軸方向に延在し、かつ作動流体16で満たすことができ、第1の径方向流体流路7は、作動液流路6から径方向外向きに延在している。ロータ本体5の軸方向の両端面9には、環状ディスク状のカバー要素10が回転可能に固定される様式でロータ本体5に接続されている。作動流体16は、図示しない液圧ポンプによって、以下に説明する液圧システムを通して搬送することができる。
【0040】
ロータ本体5の軸方向端面9とともに、カバー要素10は、両側が開口した少なくとも1つの第1の冷却流路18を形成し、冷却流路18は、第1の径方向流体流路7に液圧的に結合することができ、そのため、作動流体16を、遠心力で補助される様式で、ロータシャフトの作動液流路6から外へ、かつ径方向流体流路7および第1の冷却流路18を通って径方向に搬送することができる。
【0041】
図3の詳細図に示すように、第1の径方向流体流路7は、第1の流れ断面12と、第1の流れ断面12の上方に径方向に形成された第2の流れ断面13と、を有する。第1の流れ断面12と第2の流れ断面13とは、1:1.5~1:25の比を有し、第1の径方向流体流路7の第2の流れ断面13の15~25%は、ロータ本体5によって軸方向に部分的に覆われている。第2の流れ断面13は、ロータシャフト4と第1の冷却流路18との間に径方向に配置された第1の貯蔵室17内に開口しており、第1の径方向流体流路7の容積は、第1の貯蔵室17の容積に対して0.5:1~3:1の比を有する。
【0042】
また、図2から分かるように、作動液流路6から始まり、第1の径方向流体流路7と、第1の径方向流体流路7から軸方向に離間した第2の径方向流体流路8とが、径方向外向きに延在している。ここでも、カバー要素10は、ロータ本体5の対応する軸方向端面9とともに、両側が開口した少なくとも1つの冷却流路を形成し、冷却流路は、径方向流体流路8に液圧的に結合することができ、そのため、ロータ3は、少なくとも1つの対応する第1の冷却流路18と少なくとも1つの第2の冷却流路19と、を有する。
【0043】
したがって、作動流体16を、遠心力によってロータシャフト4の作動液流路6から外へ、径方向流体流路7、8および冷却流路18、19を通って径方向に搬送することができる。第1の径方向流体流路と同様に、第2の径方向流体流路8も、第3の流れ断面14と、第3の流れ断面14の上方に径方向に形成された第4の流れ断面15と、を有し、第3の流れ断面14と第4の流れ断面15とは、1:1.5~1:25の比を有し、第2の径方向流体流路8の第4の流れ断面15の15~25%が、ロータ本体5によって軸方向に部分的に覆われている。第4の流れ断面12は、ロータシャフト4と第2の冷却流路19との間に径方向に配置された第2の貯蔵室24内に開口しており、第2の径方向流体流路8の容積は、第2の貯蔵室24の容積に対して0.5:1~3:1の比を有する。
【0044】
カバー要素10はそれぞれ、軸方向に延びる出口流路20を有し、出口流路20は、第1または第2の径方向流体流路7、8の第1の流れ断面12、14の50~300%に相当する流れ断面21を有する。これにより、作動流体16がロータ2から外へ、ステータ2の端部巻線上に放出され、それに応じて後者を冷却することが可能となり、これは図1から明確に理解できる。冷却流路18、19は、特に、機械加工を省略できるようにカバー要素10内にエンボス加工することができる。
【0045】
図2から明らかなように、第1の流れ断面12および第3の流れ断面14から始まり、それぞれの出口流路20に至る2つの液圧経路は、本質的に同一の設計である。
【0046】
また、図3から、第1の冷却流路18が、第1の径方向流体流路7の第1の流れ断面12の0.5~1.5の流れ断面を有し、第2の冷却流路19が、第2の径方向流体流路8の第3の流れ断面14の0.5~1.5に相当する流れ断面を有するということも容易にわかる。
【0047】
カバー要素10はそれぞれ、冷却流路18、19のうちの1つとそれに対応する貯蔵室17、24との間に漏斗状の移行部が存在するように、カバー要素10の径方向内側側面22に面取り23を有する。
【0048】
ロータシャフト4の作動液流路6は、径方向外向きに延在し、かつロータ本体5の外側で軸方向にロータシャフト4内に配置された第3の径方向流体流路25も有する。第3の径方向流体流路25は、特に電気機械1の他のコンポーネントを冷却するために設けられる。
【0049】
図4は、図2からわかるロータ3の断面図である。円周方向に互いに90°オフセットされ、かつロータシャフト4から径方向外向きに延びる4つの冷却流路18、19を確認することができ、それぞれは出口流路20内に開口している。この断面図は、貯蔵室17、24のそれぞれが、断面が凸状でかつ径方向外向きに湾曲した径方向外側輪郭26を有することを明確に示している。
【0050】
電気機械1は、図5に例として示されるように、自動車27のハイブリッドまたは完全電気ドライブトレイン28での使用を特に意図されている。図5の上側の図では、電気機械1を備えたハイブリッドモジュール30がドライブトレイン28に組み込まれており、下側の図では、電気機械1を備えた電気アクスルドライブトレイン29が対応する自動車27のドライブトレイン28に組み込まれている。
【0051】
本発明は、図示された実施形態に限定されない。したがって、上記の説明は限定的なものとみなされるべきではなく、むしろ例示的なものとしてみなされるべきである。以下の特許請求の範囲は、指定された特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に存在することを意味するものとして理解されるべきである。これは、さらなる特徴の存在を排除するものではない。特許請求の範囲および上記の説明が「第1」および「第2」の特徴を定義する場合、この指定は、優先順位を定義することなく、同じタイプの2つの特徴を区別する機能を果たす。
【符号の説明】
【0052】
1 電気機械
2 ステータ
3 ロータ
4 ロータシャフト
5 ロータ本体
6 作動液流路
7 第1の径方向流体流路
8 第2の径方向流体流路
9 端面
10 カバー要素
12 第1の流れ断面
13 第2の流れ断面
14 第3の流れ断面
15 第4の流れ断面
16 作動流体
17 第1の貯蔵室
18 第1の冷却流路
19 第2の冷却流路
20 出口流路
21 流れ断面
22 側面
23 面取り
24 第2の貯蔵室
25 第3の径方向流体流路
26 径方向輪郭
27 自動車
28 ドライブトレイン
29 電気アクスルドライブトレイン
30 ハイブリッドモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】