(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】逸脱率に基づく車線維持支援
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240221BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
B62D6/00 ZYW
B62D101:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552191
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 US2022014868
(87)【国際公開番号】W WO2022182486
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506335204
【氏名又は名称】アール.エイチ.シェパード カンパニー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】スリバサン、スリマティ
(72)【発明者】
【氏名】ジャマイヤー、アプルバ
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA22
3D232DA23
3D232DA24
3D232DA33
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3D232DC01
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3D232EB04
3D232EB11
3D232EC23
3D232GG01
3D232GG02
(57)【要約】
車両用車線維持支援システムは、車両の点から車両の走行車線に対する車線マーカーの端までの第1の時点及び第2の時点での距離の値を含む第1の信号及び第2の信号を受信するコントローラを含む。コントローラは、第1の信号と第2の信号とに応じて距離の変化率を決定し、変化率に応じてパワーステアリングシステム制御信号を生成する。制御信号は、車両の1つ以上のステアリング可能なホイールに結合された車両のステアリングギアに加わる力を生成して変化率に応じた力の量で走行車線に対する車両の位置を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用車線維持支援システムであって、
前記車両の第1の点から前記車両に対する走行車線の第1の側の第1の車線マーカーの端までの第1の時点での距離の値を含む第1の信号を受信し、
前記車両の前記第1の点から前記第1の車線マーカーの前記端までの前記第1の時点後の第2の時点での前記距離の値を含む第2の信号を受信し、
前記第1の信号と前記第2の信号に応じて前記車両の前記第1の点から前記第1の車線マーカーの前記端までの前記距離の変化率を決定し、
第1のパワーステアリングシステム制御信号であって、前記第1のパワーステアリングシステム制御信号は、前記車両の1つ以上のステアリング可能なホイールに結合された前記車両のステアリングギアに加わる力を生成して前記走行車線に対する前記車両の位置を制御するように構成され、前記力の量は前記変化率に応じた量である、前記第1のパワーステアリングシステム制御信号を前記変化率に応じて生成するように構成された、
車線維持支援コントローラを含む、車線維持支援システム。
【請求項2】
前記車線維持支援コントローラは更に、前記第2の信号に応じて、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記端の内側又は前記第1の車線マーカーの前記端の外側に配置されているかどうかを判定するように構成され、前記力の量は、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記内側に配置されている場合、前記変化率に応じた第1の値に設定され、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記外側に配置されている場合、前記変化率に応じた、前記第1の値よりも大きな、第2の値に設定される、請求項1に記載の車線維持支援システム。
【請求項3】
前記車線維持支援コントローラは更に、前記第2の信号に応じて、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記外側の前記第1の車線マーカーの前記端からの所定距離に到達しているかどうかを判定し、前記車両の前記第1の点が前記所定距離に到達しているときに前記第1のパワーステアリングシステム制御信号の生成を防止するように構成される、請求項2に記載の車線維持支援システム。
【請求項4】
前記車線維持支援コントローラは更に、前記第2の信号に応じて、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記外側の前記第1の車線マーカーの前記端からの所定距離に到達しているかどうかを判定し、前記車両の前記第1の点が前記所定距離に到達しているときに第2のパワーステアリングシステム制御信号を生成するように構成され、前記第2のパワーステアリングシステム制御信号は、前記車両を前記走行車線から隣接する走行車線に付勢する前記ステアリングギアに加わる力を生成するように構成され、前記力の量は、前記変化率に応じて前記第2のパワーステアリングシステム制御信号により生成される、請求項2に記載の車線維持支援システム。
【請求項5】
前記車線維持支援コントローラは更に、車両動作条件の存在又は不在を示す抑制信号を受信し、前記抑制信号が前記車両動作条件の存在を示す場合に前記第1のパワーステアリングシステム制御信号の生成を防止するように構成される、請求項1に記載の車線維持支援システム。
【請求項6】
前記車両動作条件は、車両方向指示器の起動、非常ブレーキシステムの起動、安定性制御システムの起動、及び転倒防止システムの起動のうちの1つを含む、請求項5に記載の車線維持支援システム。
【請求項7】
前記第1の信号は、前記車両の第2の点から前記走行車線の第2の側の第2の車線マーカーの端までの前記第1の時点での距離の値を更に含み、前記第2の信号は、前記車両の前記第2の点から前記第2の車線マーカーの前記端までの前記第2の時点での前記距離の値を更に含み、前記車線維持支援コントローラは更に、前記第1の信号及び前記第2の信号のうちの少なくとも一方に応じて前記走行車線の幅を決定し、前記走行車線の前記幅が所定の車線幅に対する所定の条件を満たす場合に前記第1のパワーステアリングシステム制御信号の生成を防止するように構成される、請求項1に記載の車線維持支援システム。
【請求項8】
前記車線維持支援コントローラは、自動車技術者協会J1939伝送プロトコルに従ってデータを伝送するように構成された通信バスを介して通信する、請求項1に記載の車線維持支援システム。
【請求項9】
車両を走行車線内に維持する支援を提供するための方法であって、該方法は、
前記車両の第1の点から前記車両に対する走行車線の第1の側の第1の車線マーカーの端までの第1の時点での距離の値を含む第1の信号を受信するステップと、
前記車両の前記第1の点から前記第1の車線マーカーの前記端までの前記第1の時点後の第2の時点での前記距離の値を含む第2の信号を受信するステップと、
前記第1の信号と前記第2の信号とに応じて前記車両の前記第1の点から前記第1の車線マーカーの前記端までの前記距離の変化率を決定するステップと、
第1のパワーステアリングシステム制御信号であって、前記第1のパワーステアリングシステム制御信号は、前記車両の1つ以上のステアリング可能なホイールに結合された前記車両のステアリングギアに加わる力を生成して前記走行車線に対する前記車両の位置を制御するように構成され、前記力の量は前記変化率に応じた量である、前記第1のパワーステアリングシステム制御信号を前記変化率に応じて生成するステップと
を含む、方法。
【請求項10】
前記第2の信号に応じて、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記端の内側又は前記第1の車線マーカーの前記端の外側に配置されているかどうかを判定するステップを更に含み、前記力の量は、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記内側に配置されている場合、前記変化率に応じた第1の値に設定され、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記外側に配置されている場合、前記変化率に応じた、前記第1の値よりも大きな、第2の値に設定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の信号に応じて、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記外側の前記第1の車線マーカーの前記端からの所定距離に到達しているかどうかを判定するステップと、
前記車両の前記第1の点が前記所定距離に到達しているときに前記第1のパワーステアリングシステム制御信号の生成を防止するステップと
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の信号に応じて、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記外側の前記第1の車線マーカーの前記端からの所定距離に到達しているかどうかを判定するステップと、
前記車両の前記第1の点が前記所定距離に到達しているときに第2のパワーステアリングシステム制御信号を生成するステップであって、前記第2のパワーステアリングシステム制御信号は、前記車両を前記走行車線から隣接する走行車線に付勢する前記ステアリングギアに加わる力を生成するように構成され、前記力の量は、前記変化率に応じて前記第2のパワーステアリングシステム制御信号により生成される、生成するステップと
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
車両動作条件の存在又は不在を示す抑制信号を受信するステップと、
前記抑制信号が前記車両動作条件の存在を示す場合に前記第1のパワーステアリングシステム制御信号の生成を防止するステップとを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記車両動作条件は、車両方向指示器の起動、非常ブレーキシステムの起動、安定性制御システムの起動、及び転倒防止システムの起動のうちの1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の信号は、前記車両の第2の点から前記走行車線の第2の側の第2の車線マーカーの端までの前記第1の時点での距離の値を更に含み、前記第2の信号は、前記車両の前記第2の点から前記第2の車線マーカーの前記端までの前記第2の時点での前記距離の値を更に含み、
前記第1の信号及び前記第2の信号のうちの少なくとも一方に応じて前記走行車線の幅を決定するステップと、
前記走行車線の前記幅が所定の車線幅に対する所定の条件を満たす場合に前記第1のパワーステアリングシステム制御信号の生成を防止するステップとを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の信号及び前記第2の信号並びに前記第1のパワーステアリングシステム制御信号は、自動車技術者協会J1939伝送プロトコルに従ってデータを伝送するように構成された通信バスを介して伝送される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
コントローラにより実行されると車両を走行車線内に維持する支援を提供するコンピュータプログラムがエンコードされた固定コンピュータ記憶メディアであって、前記コンピュータプログラムは、
第1の時点での、前記車両の第1の点から第1の車線マーカーの端までの距離の値を含む第1の信号と、前記第1の時点後の第2の時点での、前記車両の前記第1の点から前記第1の車線マーカーの前記端までの前記距離の値を含む第2の信号とに応じて、前記車両の前記第1の点から前記車両に対する走行車線の第1の側の前記第1の車線マーカーの前記端までの前記距離の変化率を決定するためのコードと、
第1のパワーステアリングシステム制御信号であって、前記第1のパワーステアリングシステム制御信号は、前記車両の1つ以上のステアリング可能なホイールに結合された前記車両のステアリングギアに加わる力を生成して前記走行車線に対する前記車両の位置を制御するように構成され、前記力の量は前記変化率に応じた量である、前記第1のパワーステアリングシステム制御信号を前記変化率に応じて生成するためのコードを含む、
前記固定コンピュータ記憶メディアを含む、製品。
【請求項18】
前記コンピュータプログラムは、前記第2の信号に応じて、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記端の内側又は前記第1の車線マーカーの前記端の外側に配置されているかどうかを判定するためのコードを更に含み、前記力の量は、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記内側に配置されている場合、前記変化率に応じた第1の値に設定され、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記外側に配置されている場合、前記変化率に応じた、前記第1の値よりも大きな、第2の値に設定される、請求項17に記載の製品。
【請求項19】
前記コンピュータプログラムは、
前記第2の信号に応じて、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記外側の前記第1の車線マーカーの前記端からの所定距離に到達しているかどうかを判定し、
前記車両の前記第1の点が前記所定距離に到達しているときに前記第1のパワーステアリングシステム制御信号の生成を防止する
ためのコードを更に含む、請求項18に記載の製品。
【請求項20】
前記コンピュータプログラムは、
前記第2の信号に応じて、前記車両の前記第1の点が前記第1の車線マーカーの前記外側の前記第1の車線マーカーの前記端からの所定距離に到達しているかどうかを判定するためのコードと、
前記車両の前記第1の点が前記所定距離に到達しているときに第2のパワーステアリングシステム制御信号を生成するためのコードであって、前記第2のパワーステアリングシステム制御信号は、前記車両を前記走行車線から隣接する走行車線に付勢する前記ステアリングギアに加わる力を生成するように構成され、前記力の量は、前記変化率に応じて前記第2のパワーステアリングシステム制御信号により生成される、生成するためのコードと
を更に含む、請求項18に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を走行車線内に維持する支援を提供するためのシステム及び方法に関する。特に、本開示は、車両と走行車線の片側の車線マーカーとの間の距離の変化率に応じて支援量を制御するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両は、ステアリングホイールを転舵させるときに運転者が加える力を増大させることにより車両運転者が車両を操舵するのを支援するパワーステアリングシステムを含む。最新の車両はまた、同じパワーステアリングシステムの要素を使用して、走行車線に対して車両運転者の位置を維持する支援を車両運転者に提供する、車線維持支援システムを含むことが多い。例えば、システムは、例えば運転者のミス、眠気、又は注意散漫などに起因して車両が走行車線から逸脱するか又は意図しない車線変更を行う状況において、運転者が加える力に対する抵抗を提供し得る。
【0003】
車線維持支援システムは、車両運転者に、並びに周囲の車両の運転者、歩行者、及び道路作業員にも大きな安全上の利点をもたらす。車線維持支援システムは、道路インフラを保護するのにも役立つ。しかしながら、従来の車線維持支援システムは、多くの場合、複雑であり、独自の若しくはさもなければ車両固有の車両内のハードウェア及び/又は通信プロトコルに依存する。その結果、システムを異なる車両間での使用に容易に適合させることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上で特定した欠陥の1つ以上を最小限に抑え且つ/又は排除する、車両を走行車線内に維持する支援を提供するためのシステム及び方法の必要性を認識している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、車両を走行車線内に維持する支援を提供するためのシステム及び方法に関する。特に、本開示は、車両と走行車線の片側の車線マーカーとの間の距離の変化率に応じて支援量を制御するシステム及び方法に関する。
【0006】
車両用車線維持支援システムの一実施形態は、車両の点から車両に対する走行車線の片側の車線マーカーの端までの第1の時点での距離の値を含む第1の信号を受信し、車両の点から車線マーカーの端までの第1の時点後の第2の時点での距離の値を含む第2の信号を受信するように構成された車線維持支援コントローラ。コントローラは更に、第1の信号と第2の信号とに応じて車両の点から車線マーカーの縁までの距離の変化率を決定するように構成される。車線維持支援コントローラは更に、変化率に応じてパワーステアリングシステム制御信号を生成するように構成される。パワーステアリングシステム制御信号は、車両の1つ以上のステアリング可能なホイールに結合された車両のステアリングギアに加わる力を生成して走行車線に対する車両の位置を制御するように構成される。力の量は、変化率に応じた量である。
【0007】
車両を走行車線内に維持する支援を提供するための方法の一実施形態は、車両の点から車両に対する走行車線の片側の車線マーカーの端までの第1の時点での距離の値を含む第1の信号を受信するステップを含む。方法は、車両の点から車線マーカーの端までの第1の時点後の第2の時点での距離の値を含む第2の信号を受信するステップを更に含む。方法は、第1の信号と第2の信号とに応じて車両の点から車線マーカーの端までの距離の変化率を決定するステップを更に含む。方法は、変化率に応じてパワーステアリングシステム制御信号を生成するステップを更に含む。パワーステアリングシステム制御信号は、車両の1つ以上のステアリング可能なホイールに結合された車両のステアリングギアに加わる力を生成して走行車線に対する車両の位置を制御するように構成される。力の量は、変化率に応じた量である。
【0008】
製品の一実施形態は、コントローラによって実行されると車両を走行車線内に維持する支援を提供する、コンピュータプログラムがエンコードされた固定コンピュータ記憶メディアを含む。コンピュータプログラムは、車両の点から車線マーカーの端までの第1の時点での距離の値を含む第1の信号と、第1の時点後の第2の時点での、車両の点から車線マーカーの端までの距離の値を含む第2の信号とに応じて、車両の点から車両に対する走行車線の片側の車線マーカーの端までの距離の変化率を決定するためのコードを含む。プログラムは、変化率に応じてパワーステアリングシステム制御信号を生成するためのコードを更に含む。パワーステアリングシステム制御信号は、車両の1つ以上のステアリング可能なホイールに結合された車両のステアリングギアに加わる力を生成して走行車線に対する車両の位置を制御するように構成される。力の量は、変化率に応じた量である。
【0009】
本教示による、車両を走行車線内に維持する支援を提供するためのシステム及び方法は、従来のシステム及び方法に比べて有利である。開示のシステム及び方法は、信頼性が高く且つ動的車両挙動を考慮した、車両の位置を走行車線内に維持する支援を提供する。システム及び方法は、従来のシステム及び方法よりも複雑度が低く、独自の若しくはさもなければ車両固有のハードウェア及び/又は通信プロトコルに依存せずに、この機能を達成する。その結果、システム及び方法は、異なる車両間での使用に容易に適合させることができる。
【0010】
開示のシステム及び方法の前述及び他の態様、特徴、詳細、有用性、並びに利点は、以下の説明及び特許請求の範囲を読むこと、並びに添付の図面を検討することで明らかになるであろう。
【0011】
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本教示による車線維持支援システムの一実施形態を組み込んだ車両の概略図である。
【
図2】本教示による、車両を走行車線内に維持する支援を提供するための方法の一実施形態のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、様々な図中の同一の構成要素を特定するために類似の参照符号が使用されている、図面を参照すると、
図1は、本教示による車線維持支援システムを組み込んだ車両10を示している。図示の実施形態では、車両10は、商用車両、特に、牽引車12又は動力ユニットと、より多くのトレーラー14又は被牽引ユニットのうちの1つとを有する牽引車・トレーラーを含む。しかしながら、本明細書で説明する車線維持支援システムが、多種多様な他の商用車両(例えば、バス)及び非商用車両(例えば、自動車)での用途を見出し得ることを理解すべきである。車両10は、1つ以上のステアリング可能なホイール16と、ステアリングリンケージ18と、パワーステアリングシステム20とを含む。車両10は、限定されるものではないが、方向指示システム22と、非常ブレーキシステム24と、安定性制御システム26と、転倒防止システム28とを含む、様々な所要又は任意選択の安全システムを更に含み得る。車両10は、本教示による車線維持支援システム30を更に含む。システム20、22、24、26、28、及び30は、従来の車両通信バス32、特にコントローラエリアネットワーク(CAN)により相互接続され、これを介して通信し得る。本教示の一態様によれば、バス32は、自動車技術者協会J1939伝送プロトコルに従ってデータを伝送するように構成される。
【0014】
ホイール16は、車両10を支持し、路面に沿って車両10を推進させるために設けられる。図示の実施形態では、ホイール16は、車両の両側のステアリング可能なホイールであり、一緒になって操舵軸の一部を形成する。車両10がまた、車両の両側に1つ以上の従動ホイール(図示せず)を含み、従動ホイールが、一緒になって駆動軸の一部を形成し、車両10に搭載された動力ユニット(例えば、内燃機関)により駆動されることを理解すべきである。車両10は、(例えば、トレーラー14のトレーラー車軸の一部として)車両の両側に1組以上の非駆動、非操舵ホイール(図示せず)を更に含み得る。
【0015】
ステアリングリンケージ18は、ホイール16を車両10用のステアリング機構に、特に、(例えば、ステアリングホイール及びステアリングコラム(図示せず)を通じて)車両運転者のステアリング入力をリンケージ18に、最終的にホイール16に伝達するパワーステアリングシステム20内のステアリングギアに結合する。リンケージ18は、ステアリングギアにより横方向に移動させてホイール16を転舵させる、ロッドとレバーとの組み合わせを含む。リンケージ18は、例えば、ステアリングナックルと、タイロッドと、リンクと、アイドラアームと、ステアリングギアにより駆動されるピットマンアームとを含み得る。
【0016】
パワーステアリングシステム20は、ホイール16を転舵させるために車両運転者が(例えばステアリングホイール(図示せず)を通じて)入力した力をステアリングリンケージ18に伝達し増大させるために設けられる。本教示によれば、システム20はまた、車線維持支援システム30により生成された信号に応答して、車両運転者が走行車線に対して車両10の位置を維持するのを支援するために提供される。システム20は、車両運転者によるステアリング入力をステアリングリンケージ18に伝達するステアリングギアを含む。ステアリングギアは、ラックアンドピニオンギア又は再循環ボール式ギアを含み得る。システム20は、電気モータとモータコントローラとを更に含み得、そのモータコントローラは、ステアリングコラムに取り付けられた操舵角センサ及びトルクセンサから入力信号を受信して、ステアリングコラム又はステアリングギアの他の構成要素の動きを支援するようにモータを制御する出力信号を生成する。モータコントローラはまた、本教示によれば、車線維持支援システム30を含む他の車両システムから入力信号を受信し得る。
【0017】
方向指示システム22は、方向転換する又は複数車線の道路で車線変更する車両運転者の意図の表示を生成するために設けられる。システム22は、車両運転者が方向転換又は車線変更の意図を入力するレバーなどの運転者インターフェース(図示せず)を含む。システム22はまた、車両運転者の意図を他の車両運転者及び歩行者に知らせるための運転者の入力に応答して起動させ得る車両の外部のインジケータ(例えば、点滅光などの視覚的インジケータ)や、運転者の入力が認識されたことを車両運転者に知らせるための車両の内部のインジケータ(例えば、点滅光などの視覚的インジケータ又は繰り返しのノイズなどの聴覚的インジケータ)(図示せず)を含む。
【0018】
非常ブレーキシステム24は、所定の条件(例えば、別の車両、歩行者、又は道路インフラとの差し迫った衝突)に応答して、車両10のホイールブレーキ(図示せず)を起動する。システム24は、車両の外部(例えば、他の車両、歩行者、若しくは道路インフラの存在及び/又はそれとの距離、環境条件など)及び車両の内部(例えば、運転者の無能力状態)の様々な条件を感知するように構成されたセンサを含み得る。センサは、カメラ、RADAR又はLIDARシステム、湿度センサ、又はその他の形態のセンサを含み得る。システム24は、センサにより生成された信号を受信するように且つ車両のブレーキシステムの構成要素(例えば、流体制御弁)を制御して車両の制動を調整するための制御信号を生成するように構成されたコントローラを更に含み得る。
【0019】
安定性制御システム26は、運転者のステアリング入力により示される運転者が意図した方向と一致する車両10の走行方向を維持するために設けられる。システム26は、ヨーレートセンサ、ホイール速度センサ、及び操舵角センサを含む、様々な条件を感知するように構成されたセンサを含み得る。システム26は、センサにより生成された信号を受信するように並びに車両のブレーキシステムの構成要素(例えば、流体制御弁)を制御して車両の制動を調整するための及び/又は車両の動力システムの構成要素(例えば、内燃機関用の空気及び流体取入口)を制御して実際の走行方向が意図した走行方向と一致するように車両10を正常な位置に戻すための制御信号を生成するように構成されたコントローラを更に含み得る。特に、システム26は、操舵角センサからの信号により決定される車両10の意図した方向と車両10の上下(ヨー)軸周りの車両10の角速度を測定するヨーレートセンサにより決定される車両10の実際の方向とを継続的に比較し得る。車両10の意図した方向と実際の方向とが異なる場合、コントローラは、車両10の実際の方向が意図した方向と一致するように車両10の1つ以上のホイールにおけるトルクを制御するために、エンジン及びホイールブレーキの一方又は両方のための制御信号を生成する。
【0020】
転倒防止システム28は、車両10の転倒を阻止するために設けられる。システム28は、ここでも、ヨー角センサ、操舵角センサ、及び/又は慣性測定ユニット(IMU)を含む、様々な条件を感知するように構成されたセンサを更に含み得る。システム28は、センサにより生成された信号を受信するように、並びに車両のブレーキシステムの構成要素(例えば、流体制御弁)、車両の動力システムの構成要素(例えば、内燃機関用の空気及び流体取入口)、及び/又は車両10の転倒をもたらし得る力に抗する車両のサスペンションシステムの構成要素を制御するための制御信号を生成するように構成されたコントローラを更に含み得る。
【0021】
車線維持支援システム30は、車両を走行車線内に維持する支援を提供する。本教示によれば、システム30は、車両の点(ホイール16又はホイール16のタイヤの外端など)と走行車線の車線マーカーとの間の距離の変化率(「逸脱率」としても知られる)を決定し、変化率に応じて(例えば、変化率が増加するにつれて支援量を増加させることにより)車両運転者に提供される支援のレベルを調整する。このように、システム30は、システムを多種多様な車両での使用に適合させることができるように既存のハードウェア及び通信プロトコルを使用して支援を提供する一方で、信頼性が高く且つ動的車両挙動を考慮した、車両の位置を走行車線内に維持する支援を車両運転者に提供することができる。システム30は、1つ以上のカメラ34と、カメラコントローラ36と、車線維持支援コントローラ38とを含み得る。
【0022】
カメラ34は、車両10に対する走行車線40の画像を撮影するように構成される。画像は、走行車線40の両側の車線マーカー42、44を含む。図示の実施形態では、車両10に対する走行車線40は、同じ方向に走る複数の車線を有する道路の最も右側の車線である。それゆえ、車線マーカー42は、車両10に対する走行車線40と隣接する走行車線46との間の境界にマークを付す破線の車線マーカーである。車線マーカー44は、走行車線40と道路外領域48との間の境界にマークを付す切れ目のないすなわち連続した車線マーカーである。カメラ34は、デジタルカメラを含み得、車両のフロントガラスに取り付けられ得る。カメラは、例えば、Bendix Commercial Vehicle Systems LLCにより販売されているAutoVue(登録商標)車線逸脱警報システムの一部を形成するカメラを含み得る。開示のシステム及び方法の1つの利点は、追加のセンサを使用せずにカメラ34のみを使用して、信頼性が高く且つ動的な車線維持支援システム30を実装できることである。
【0023】
カメラコントローラ36は、カメラ34により生成された画像を処理し、画像に応じて、画像から得られた情報を含む信号を生成するように構成される。本教示によれば、信号は、車両10の両側(例えば、ホイール16の外側)の点から車両10の両側の車線マーカー42、44のそれぞれの内側端50、52までの距離dL及びdRの値を含む。信号は、左ホイール逸脱距離信号(J1939 SPN8139)及び右ホイール車線逸脱距離信号(J1939 SPN 8140)を含み得る。コントローラ36は、プログラム可能なマイクロプロセッサ若しくはマイクロコントローラを含み得、又は特定用途向け集積回路(ASIC)を含み得る。コントローラ36は、中央処理装置(CPU)と、メモリと、コントローラ36がバス32を介して複数の入力信号を受信して複数の出力信号を伝送し得る入出力(I/O)インターフェースと、を含み得る。入力信号は、カメラ34からの画像情報を含み得る。出力信号は、上記のようにカメラ34により撮影された画像から得られた情報を含み得る。コントローラ36は、例えば、Bendix Commercial Vehicle Systems LLCにより販売されているAutoVue(登録商標)車線逸脱警報システムの一部を形成する車線逸脱警報プロセッサを含み得る。
【0024】
車線維持支援コントローラ38は、必要に応じて、パワーステアリングシステム20内のステアリングギアに、最終的に、ステアリングリンケージ18に加わる力を生成して走行車線40に対する車両10の位置を制御するために、カメラコントローラ36から受信した信号に応じて、パワーステアリングシステム20用の制御信号を生成するように構成される。コントローラ38は、プログラム可能なマイクロプロセッサ若しくはマイクロコントローラを含み得、又は特定用途向け集積回路(ASIC)を含み得る。
図1を参照すると、図示の実施形態では、コントローラ38は、中央処理装置(CPU)54と、メモリ56と、コントローラ38がバス32を介して複数の入力信号を受信し複数の出力信号を伝送し得る入出力(I/O)インターフェース58と、を含み得る。入力信号は、カメラコントローラ36からの信号に加えて、方向指示システム22と非常ブレーキシステム24と安定性制御システム26と転倒保護システム28とから受信した信号を含み得る。出力信号は、パワーステアリングシステム20用の制御信号を含むが、車両運転者への情報及び/又は警告を生成するために使用される信号も含み得る。図示の実施形態では、カメラコントローラ36と車線維持支援コントローラ38とは、別個のコントローラである。しかしながら、単一のコントローラにおいてコントローラ36、38の機能を組み合わせることができることを理解すべきである。
【0025】
本発明の教示によれば、コントローラ38は、以下で説明するように、車両10を走行車線40内に維持する支援を提供するための方法を実施するために適切なプログラミング命令(すなわち、ソフトウェア又はコンピュータプログラム)を用いて構成され得る。プログラミング命令の一部又は全ては、メモリ56などの固定コンピュータ記憶メディアでエンコードされ、コントローラ38により実行され得る。ここで
図2を参照すると、車両10を走行車線40内に維持する支援を提供するための方法の一実施形態は、時点t
1での車両10に対する走行車線40の画像をカメラ34で撮影するステップ60から開始し得る。カメラの視野は、画像が走行車線40の両側の車線マーカー42、44を捉えるに十分に広くなければならない。
【0026】
方法は、時点t
1で撮像された画像に応じて、画像から得られた情報を含む1つ以上の信号を生成するステップ62へと続き得る。信号は、ホイール16の外側端又はホイール16のタイヤなどの、車両10の両側の点から対応する車線マーカー40、42の端50、52までの時点t
1での距離の値を含む。
図1を参照すると、信号は、車両10の左側のホイール16の外側端から車線マーカー40の内側端50までの時点t
1での距離d
Lの値と、車両10の右側のホイール16の外側端から車線マーカー42の内側端52までの時点t
1での距離d
Rの値とを含み得る。
【0027】
方法は、2つ以上の画像がカメラ34により撮影されてコントローラ36により処理されたかどうかを判定するステップ64へと続き得る。単一の画像だけが撮影され処理されていた場合、方法は、カメラ34が時点t1後の時点t2で走行車線40の別の画像を撮影するようにステップ60及び62を繰り返し、カメラコントローラ36は、時点t2で撮像された画像に応じて、時点t2での距離dL及びdRの値を含む画像からの情報を含む1つ以上の信号を生成する。複数の画像がカメラ34により撮影されてコントローラ36により処理された時点で、方法はステップ66に進む。
【0028】
ステップ66において、車線維持支援コントローラは、車両10の所定の点から車線マーカー42、44の対応する端50、52までの時点t2での距離dL又はdRが所定距離に対する所定の条件(例えば、所定距離未満である)を満たしているかどうかを判定し得る。車両10が時点t2で走行車線40内の横方向中央にあるか又は走行車線40の中央に比較的近接している(車両が各車線マーカー42、44からの所定距離を超えている)場合、システム30は支援が不要であると判定し得、方法が終了し得る。車両10が車線マーカー42、44の一方に比較的近接していることを距離dL又はdRが示す場合、方法は、ステップ68に進み得る。
【0029】
ステップ68では、車線維持支援コントローラ38は、カメラコントローラ36から信号を受信した後に、信号の少なくとも1つに応じて走行車線40の幅を決定する。幅の決定は、車両10が、例えば道路外領域48にあるのとは対照的に、車線維持支援機能を使用するのに適切な走行車線にあるかどうかを判定するために使用される。コントローラ38は、距離dL及びdRと、メモリ56に記憶され得る車両10の幅などの、他の情報とを使用して、走行車線の幅を決定し得る。次いで、コントローラ38は、走行車線の幅が所定の車線幅に対する所定の条件を満たすかどうかを判定する。所定の条件は、例えば、走行車線の幅が所定の車線幅未満の値を有することであり得る。走行車線の幅がヌル値を有する(判定できない)か又は所定の車線幅より大きいとコントローラ38が判定した場合、方法が終了し、それにより、パワーステアリングシステム20用のパワーステアリング制御信号の生成を防止し得る。上で説明した所定の条件が単なる例示的なものであることを理解すべきである。他の実施形態では、所定の条件は、走行車線40の車線幅が所定の車線幅を超えていること、又は走行車線40の車線幅が所定の車線幅の片側若しくは両側の一定の範囲内にあることであり得る。また、走行車線40について決定された車線幅が、複数の所定の車線幅に関する所定の条件(例えば、所定の最大車線幅よりも小さく且つ所定の最小車線幅よりも大きいこと)を満たすことをコントローラ38が要求し得ることも理解すべきである。
【0030】
走行車線40の幅が所定の車線幅に対する所定の条件を満たしているとコントローラ38が判定した場合、方法は、車線維持支援システム30がアクティブであるべきでない何らかの動作条件が車両10に対して存在するかどうかをコントローラ38が判定するステップ70へと続き得る。コントローラ38は、車線維持支援システム30がアクティブであるべきでない車両動作条件の存在又は不在を示す、車両10内の様々なシステムからの抑制信号を受信するように構成され得る。例えば、コントローラ38は、方向指示器が起動されているか否かを示す、方向指示システム22からの抑制信号を受信するように構成され得る。方向指示器の起動は、車両運転者が走行車線40から(例えば、隣接する走行車線42に)移動する意図を示し得るため、車線維持支援システム30は、車両10を走行車線40内に維持するように意図されたパワーステアリングシステム制御信号を生成すべきではない。方向指示システム22からの抑制信号は、例えば、運転者の方向指示器スイッチの位置を示す方向指示器スイッチコード(J1939 SPN 2876)を含む運転者の外部光制御信号を含み得る。コントローラ38はまた、対応するシステムが起動されているかどうかを示す、非常ブレーキシステム24、安定性制御システム26、及び転倒防止システム28のいずれか又は全てからの抑制信号を受信するように構成され得る。システム24、26、28は、危険な条件(例えば、差し迫った衝突又は車両10の制御の喪失)の検出に応答して起動され、危険な条件を緩和するために、ブレーキ、ステアリング、動力及び/又はサスペンションシステムなどの車両システムの少なくとも部分的な制御を担うので、車線維持支援システム30は、システム24、26、28のアクションを無効にし得るパワーステアリングシステム制御信号の生成を防止するために、システム24、26、28のいずれかがアクティブであるときには非アクティブのままでなければならない。非常ブレーキシステム24からの抑制信号は、例えば、前方衝突被害軽減非常ブレーキシステムの動作段階を示す前方衝突被害軽減非常ブレーキシステム段階コード(J1939 SPN 5676)を含み得る。転倒防止システム28からの抑制信号は、例えば、システム28が車両10内のエンジンの制御を実行しようと試みたかどうかを示すROPエンジン制御コード(J1939 SPN 1816)を含み得る。本明細書ではシステム22、24、26、28について具体的に述べてきたが、抑制信号は、システムと車線維持支援システム30との同時に起こる動作が意図しない又は望ましくない結果を引き起こし得る他の車両システムから得られる場合があることを理解すべきである。コントローラ38が、所定の動作条件の存在を示す、システム22、24、26、28のいずれかからの抑制信号を受信した場合、方法がここでも終了し、それにより、パワーステアリングシステム20用のパワーステアリング制御信号の生成を防止し得る。
【0031】
車線維持支援システム30が非アクティブであるべきである動作条件の存在を示す抑制信号をコントローラ38がシステム22、24、26、28のいずれからも受信していない場合、方法は、カメラコントローラ36から受信した信号に応じて、車両の対応する点から対応する車線マーカー42、44の端50、52までの距離d
L及び/又はd
Rの変化率(「逸脱率」又はRODとしても知られる)を決定する次のステップ72へと続き得る。コントローラ38は、画像の各々から得られたd
Lの値(及び/又は画像の各々から得られたd
Rの値)間の差Δdを決定し、時点t
1とt
2との差Δtを決定し、ΔdをΔtで割ることにより、車両10の両側における距離の変化率(又は逸脱率)を決定し得る。距離d
Lの変化率(ROD
L)と距離d
Rの変化率(ROD
R)とが逆の関係にある(すなわち、一方の値が増加すると、他方の値が減少する)ことを理解すべきである。また、
図2に示し本明細書で説明する方法が本発明の一実施形態を示すことと、例えば、他の実施形態では、ステップ72がステップ66、68、及び70に先立って行われ得ることも理解すべきである。
【0032】
本教示によれば、コントローラ38は、最終的に距離dL及び/又はdRの変化率(すなわち、RODL及び/又はRODR)を使用して、システム20内のステアリングギアに加わる力であって、最終的にステアリングリンケージ18に加わる力を生成するように構成された、パワーステアリングシステム20用のパワーステアリングシステム制御信号を生成して、変化率に応じた力の量で走行車線40に対する車両10の位置を制御する(後述するステップ80を参照)。しかしながら、パワーステアリングシステム制御信号の生成に先立って、コントローラ38は、様々な実施形態において、パワーステアリングシステム制御信号が生成されるかどうかに及び/又はその信号の構成に影響を及ぼすいくつかの追加のアクションを行うように構成され得る。
【0033】
ステップ74において、コントローラ38は、時点t2で撮像された画像からカメラコントローラ36により生成された信号に応じて、距離dL又はdRが測定されている車両10の点(例えば、ホイール16又はホイール16のタイヤの外端)が車線マーカー42、44の対応する端50、52の内側又は外側に配置されているかどうかを判定し得る。車両10の点が車線マーカー42又は44の端50又は52を横切ると値の符号が変化するため、測定した距離dL若しくはdR及び/又は対応する逸脱率RODL若しくはRODRが正又は負であるかどうかに基づいて、コントローラ38は、車両のこの点が、対応する車線マーカー42又は44の端50又は52の内側又は外側にあるかどうかを判定する。特に、dL及びRODLの符号は、車両10の左側の特定した点が車線マーカー42の端50を横切ったときには常に負から正に変化し、その一方で、dR及びRODRの符号は、車両10の右側の特定した点が車線マーカー44の端52を横切ったときには常に負から正に変化する。コントローラ38は、車両10の点が端50又は52の外側に配置されていると判定した場合、車両10の点が端50又は52の内側に配置されている場合に生成される力に比べて力を増大させるために、後述するようにパワーステアリング制御信号を修正するように構成され得る。特に、端50又は52に対する車両10の点の外側位置は、車両10が走行車線40から離れて隣接する走行車線46内へ徐々に移動し始めていることを示す。この状況は、車両10に走行車線40に対する所定の位置に戻るよう促すために、より強いレベルの支援が必要であることを示し得る。この状況では、コントローラ38は、車両10の同じ点が端50又は52の内側に配置されたときに生成される力に比べてパワーステアリングシステム20内のステアリングギアに加わる力を増大させるパワーステアリングシステム制御信号を生成するように構成され得る。
【0034】
ステップ76において、コントローラ38は、時点t
2で撮像された画像からカメラコントローラ36により生成された信号に応じて、車両10の点が車線マーカー42又は44の外側の対応する車線マーカー42又は44の端50又は52から所定距離d
xに到達しているかどうかを更に判定し得る。車両10が隣接する走行車線46内に一定の距離だけ移動した時点で、システム30は、(システム22による方向指示器の起動なしでも)車両10の位置を意図的な走行車線の変更として解釈するように構成され得る。この解釈の下では、車両10を走行車線40内に維持する支援を提供することは不適切である。それゆえ、方法がここでも終了し、それにより、パワーステアリングシステム20用のパワーステアリング制御信号の生成を防止し得る。代替実施形態(
図2に破線ボックスで表す)では、方法は、ステアリングリンケージ18に力を加えるパワーステアリング制御信号を生成するステップ78に進み得るが、この力は、走行車線40内の所定の横位置への復帰を支援するのではなく、隣接する走行車線46内への車両10の移動を支援する。更に別の代替実施形態では、車両10の点が、車線マーカー42又は44の外側の対応する車線マーカー42又は44の端50又は52から、d
xよりも大きな、所定距離d
yに到達しない限り、隣接する走行車線46内への車両10の移動を支援するパワーステアリングシステム制御信号の生成は起こらない。
【0035】
車両10が走行車線40内に留まっているか又は所定距離dxを超えて隣接する走行車線46に移動していないことを距離dL又はdRが示す限り、方法は、変化率RODL又はRODRに応じて1つ以上のパワーステアリングシステム制御信号S1又はS2を生成するステップ80へと続き得る。コントローラ38は、ホイール16を操舵して走行車線40に対する車両10の位置を制御するために、システム20内のステアリングギアに力を加え、次いで、この力がステアリングリンケージ18に加わるように構成された、システム20用のパワーステアリングシステム制御信号を生成する。本発明の教示によれば、力の量は、変化率RODL又はRODRに応じた量である。特に、変化率RODL又はRODRが増加するにつれて、コントローラ38により生成された制御信号S1又はS2によって、パワーステアリングシステム20が、より大きな力をステアリングリンケージ18に加える。このように、システム30は、信頼性が高く且つ動的車両挙動を考慮した、車両10の位置を走行車線40内に維持する支援を車両運転者に提供し、システム30を多種多様な車両での使用に適合させることができるように既存のハードウェア(すなわち、カメラ34)及び通信プロトコル(すなわち、SAE J1939)を使用して支援を提供する。増加する変化率RODL又はRODRとステアリングリンケージ18に加わる増加する力との関係は、線形又は対数的であり得る。上述のように、特定の実施形態では、コントローラ38は、距離dL又はdRが測定されている車両10の点が車線マーカー42、44の対応する端50、52の内側又は外側に配置されているかどうかを判定することにより、隣接する走行車線46に車両10が移動し始めているかどうかを判定し得る。いくつかの実施形態では、コントローラ38は、車両10の点が端50又は52の外側に配置されているとコントローラ38が判定した時点で(逸脱率RODL又はRODRのみに基づいてパワーステアリングシステム制御信号S1から生成される力に比べて)パワーシステム20内のステアリングギアに加わる力を増大させるパワーステアリングシステム制御信号S2を生成するように構成され得る。この状況においてコントローラ38により生成されたパワーステアリングシステム制御信号S2は、逸脱率RODL又はRODRのみに基づく力に比べて所定量だけ力を増大させ得るか、逸脱率RODL若しくはRODRのみに基づいた力に、乗数、定数、又は重みを適用し得るか、又は別の式を用いて力を増大させ得る。
【0036】
本教示による、車両10を走行車線40内に維持する支援を提供するためのシステム30及び方法は、従来のシステム及び方法に比べて有利である。開示のシステム30及び方法は、信頼性が高く且つ動的車両挙動を考慮した、車両10の位置を走行車線40内に維持する支援を車両運転者に提供する。システム30及び方法は、従来のシステム及び方法よりも複雑度が低く、独自の又はさもなければ車両固有のハードウェア及び/又は通信プロトコルに依存せずに、この機能を達成する。その結果、システム30及び方法は、異なる車両間での使用に容易に適合させることができる。
【0037】
本発明の1つ以上の特定の実施形態を参照しながら本発明を図示し説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を加えることができることが当業者によって理解されるであろう。例えば、本明細書に開示するオーバーモールド及びクランプ技術は、ホイール速度センサに限定されるものではなく、変速機センサ及びクランク軸センサを含む同様の取り付け構成を有する他のセンサにも使用され得る。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
車両用車線維持支援システムの一実施形態は、車両の点から車両に対する走行車線の片側の車線マーカーの端までの第1の時点での距離の値を含む第1の信号を受信し、車両の点から車線マーカーの端までの第1の時点後の第2の時点での距離の値を含む第2の信号を受信するように構成された車線維持支援コントローラを含む。コントローラは更に、第1の信号と第2の信号とに応じて車両の点から車線マーカーの縁までの距離の変化率を決定するように構成される。車線維持支援コントローラは更に、変化率に応じてパワーステアリングシステム制御信号を生成するように構成される。パワーステアリングシステム制御信号は、車両の1つ以上のステアリング可能なホイールに結合された車両のステアリングギアに加わる力を生成して走行車線に対する車両の位置を制御するように構成される。力の量は、変化率に応じた量である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
本発明の1つ以上の特定の実施形態を参照しながら本発明を図示し説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を加えることができることが当業者によって理解されるであろう。
【国際調査報告】