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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】アロマ含浸コーヒー豆
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/04 20060101AFI20240221BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240221BHJP
   B65D 85/50 20060101ALN20240221BHJP
【FI】
A23F5/04
A23L5/00 Z
B65D85/50 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552549
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2022055676
(87)【国際公開番号】W WO2022189325
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,972
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21163616.2
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】モーラ, フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ダビデック, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ポルスター, ヨハネス
【テーマコード(参考)】
3E035
4B027
4B035
【Fターム(参考)】
3E035AA02
3E035AB01
3E035AB10
3E035BA08
3E035BA10
4B027FB30
4B027FC01
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4B027FK20
4B027FQ01
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4B035LC01
4B035LE01
4B035LG04
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4B035LG31
4B035LG49
4B035LP02
4B035LP24
4B035LP25
(57)【要約】
本発明は、アロマ含浸コーヒー豆の調製方法に関する。本発明のさらなる態様は、低レベルのカルバミン酸エチルを有する香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆、ならびにコーヒー豆に含浸させるための、アルコール分低減香気性アルコール飲料の使用である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロマ含浸焙煎コーヒー豆の調製方法であって、
a.香気性アルコール飲料のエタノール含有量を1重量%未満に低減させて、アルコール分低減香気性アルコール飲料を形成することと、
b.前記アルコール分低減香気性アルコール飲料をコーヒー豆と接触させることと、
c.前記アルコール分低減香気性アルコール飲料を前記コーヒー豆に含浸させて含浸コーヒー豆を得ることと、
d.前記含浸コーヒー豆を焙煎して、アロマ含浸焙煎コーヒー豆を得ることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記香気性アルコール飲料が、ワイン、ビール、ウイスキー、ブランデー、ラム、テキーラ及びジンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記含浸コーヒー豆が、焙煎される前に乾燥される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコール分低減香気性アルコール飲料が、99:1~4:1のコーヒー豆対アルコール分低減香気性アルコール飲料の重量比で前記コーヒー豆とブレンドされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコール分低減香気性アルコール飲料が、10分~80時間の間、前記コーヒー豆に含浸される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記含浸コーヒー豆が焙煎され、浅く焙煎された又は中暗色に焙煎されたコーヒー豆が得られる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アロマ含浸焙煎コーヒー豆が粉砕される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記粉砕されたアロマ含浸焙煎コーヒー豆が容器に充填され、前記容器が、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記香気性アルコール飲料のエタノール含有量が、蒸発によって低減される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記香気性アルコール飲料のエタノール含有量が、膜を使用して低減される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アロマ含浸焙煎コーヒー豆のカルバミン酸エチルのレベルが0.3mg/kg未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
0.3mg/kg未満のカルバミン酸エチルのレベルを有する、香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆。
【請求項13】
前記香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆が、さらなる焙煎に使用するための部分的に焙煎された豆である、請求項12に記載の香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆。
【請求項14】
請求項12に記載の香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆を収容する容器であって、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのものである、容器。
【請求項15】
コーヒー豆に含浸させるための、アルコール分低減香気性アルコール飲料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロマ含浸コーヒー豆の調製方法に関する。本発明のさらなる態様は、低レベルのカルバミン酸エチルを有する、香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆(aromatic alcoholic beverage-infused coffee beans)、ならびにコーヒー豆に含浸させるための、アルコール分低減アルコール飲料の使用である。
【0002】
[背景技術]
コーヒーは、典型的には挽いたコーヒー豆を熱水に浸すことによって調製される抽出飲料である。コーヒーは、望ましい風味及びアロマを有するものとして広く認識されているが、消費者は、追加の補充的な風味及びアロマを有するコーヒー飲料を楽しむことが多い。
【0003】
アルコール飲料、特にエージングさせた蒸留酒に関連する風味及びアロマは、消費者によってより高級な製品とみなされる傾向があり、したがってコーヒー豆への含浸に望ましい。特に、ブランデー、ウイスキー、ダークラム等のブラウンスピリッツの、ダークで、アロマが豊かで、ウッディなノートは、コーヒーのビタースウィートノートと良いペアになることが見出されている。
【0004】
消費者は、風味化合物の複雑な混合物(そのうちのいくつかは人工的であり得る)の添加によるのではなく、周知の本物の原材料を使用して調製されたアロマ含浸焙煎コーヒー豆を提供されることを望む。
【0005】
したがって、当該技術分野では、アロマ含浸焙煎コーヒー豆を調製するためのより良好な解決策を見出すことが明らかに必要とされている。
【0006】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「含む/備える(comprises)」、「含んでいる/備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを意図している。
【0007】
[発明の概要]
本発明の目的は、現在の技術水準を改良し、改良された解決策を提供して上記の不都合の少なくともいくつかを克服することである。本発明の目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の着想を更に展開させるものである。
【0008】
したがって、本発明は、第1の態様では、アロマ含浸焙煎コーヒー豆を調製するための方法を提供し、該方法は、
a.香気性アルコール飲料のエタノール含有量を1重量%未満に低減して、アルコール分低減香気性アルコール飲料を形成することと、
b.アルコール分低減香気性アルコール飲料をコーヒー豆と接触させることと、
c.アルコール分低減香気性アルコール飲料をコーヒー豆に含浸させて含浸コーヒー豆を得ることと、
d.含浸コーヒー豆を焙煎して、アロマ含浸焙煎コーヒー豆を得ることと、を含む。
【0009】
第2の態様において、本発明は、0.3mg/kg未満のカルバミン酸エチルのレベルを有する香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆に関する。本発明の第3の態様は、コーヒー豆に含浸させるための、アルコール分低減香気性アルコール飲料の使用に関する。
【0010】
驚くべきことに、本発明者らは、コーヒー豆にアルコール分低減ウイスキーなどのアルコール分低減香気性アルコール飲料を含浸させることにより、ウイスキーの望ましいアロマ(香気)は有するがカルバミン酸エチルなどの望ましくない汚染物質は含まない焙煎コーヒー豆の調製が可能になることを見出した。
【0011】
[発明を実施するための形態]
したがって、本発明は、一部には、アロマ含浸焙煎コーヒー豆を調製するための方法を提供し、該方法は、
a.香気性アルコール飲料(例えば、香気性蒸留酒)のエタノール含有量を1重量%未満(例えば、0.75重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%、0.4重量%、0.3重量%)に低減させて、アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えばアルコール分低減香気性蒸留酒)を形成することと、
b.アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)をコーヒー豆と接触させることと、
c.アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)をコーヒー豆に含浸させて含浸コーヒー豆を得ることと、
d.含浸コーヒー豆を焙煎して、アロマ含浸焙煎コーヒー豆を得ることと、を含む。
【0012】
香気性アルコール飲料は、ワイン、ビール、ウイスキー、ブランデー、ラム、テキーラ及びジンからなる群から選択され得る。香気性アルコール飲料は、香気性蒸留酒であり得る。香気性蒸留酒は、ウイスキー、ブランデー、ラム、テキーラ及びジンからなる群から選択され得る。香気性蒸留酒はウイスキーであり得る。
【0013】
本発明の文脈において、ウイスキーという用語は、穀物のマッシュから作られた蒸留アルコール飲料を指す。トウモロコシ、ライムギ、オオムギ及びコムギなどのさまざまな穀物が発酵プロセスに使用され得る。次いで、蒸留された飲料は、典型的には焦がしたホワイトオーク製木樽の中で熟成される。アイルランド及び米国では、ウイスキー(whisky)は一般に「whiskey」とも綴られるが、本明細書では2つの綴りは同等であると考えられる。
【0014】
本発明の文脈において、ブランデーという用語は、果実から蒸留された蒸留酒を指す。ブランデーは、ワインから蒸留されたブドウベースの蒸留酒であってもよいが、発酵リンゴ果汁から蒸留されたカルヴァドスなどのアップルブランデー、又は発酵チェリー果汁から蒸留されたチェリーブランデー、であってもよい。
【0015】
ラムは、発酵糖、例えば発酵サトウキビ汁又は発酵糖蜜から蒸留される。テキーラは、竜舌蘭の発酵果汁から蒸留される。ジンは、オオムギ又はライムギなどの発酵穀物マッシュから蒸留され、ジュニパーベリー及び場合によってはアンゼリカ、カンゾウ、乾燥柑橘類果皮、キャラウェイ種子及びコリアンダー種子などのその他の植物原材料で風味付けされる。
【0016】
アルコール分低減香気性アルコール飲料という用語は、少なくともある割合のエタノールが除去された本物(genuine)のワイン又はウイスキーなどの香気性アルコール飲料を指す。アルコール分低減香気性蒸留酒という用語は、少なくともある割合のエタノールが除去された本物のウイスキーなどの香気性蒸留酒を指す。アルコール分低減香気性蒸留酒は、純粋な蒸留酒の味覚に近似するように組み合わされた成分の混合物である代用としてのアルコール分低減又は無アルコール香気性蒸留酒とは異なる。
【0017】
アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)は、いくつかの手段によってコーヒー豆と接触(例えば、ブレンド)させることができる。接触は、混合の形態でなされ得る。例えば、回転ドラム中でコーヒー豆を穏やかに回転させ、アルコール分低減香気性アルコール飲料を添加することによって、アルコール分低減香気性アルコール飲料をコーヒー豆と接触させることができる。さらなる例として、アルコール分低減香気性アルコール飲料は、コニカル型スクリューミキサー中でコーヒー豆をアルコール分低減香気性アルコール飲料と混合することによって、コーヒー豆と接触させることができる。さらなる例として、アルコール分低減香気性アルコール飲料は、コーヒー豆にアルコール分低減香気性アルコール飲料を噴霧することによってコーヒー豆と接触させることができ、例えば、コーヒー豆がベルトコンベアで輸送されている間にコーヒー豆に噴霧され得る。さらなる例として、コーヒー豆をメッシュケージに入れ、それらをアルコール分低減香気性アルコール飲料のタンクに浸すことによって、アルコール分低減香気性アルコール飲料をコーヒー豆と接触させてもよい。さらに別の例として、アルコール分低減香気性アルコール飲料は、アルコール分低減香気性アルコール飲料を加熱して蒸気を形成させ、この蒸気をコーヒー豆の上に通すことによってコーヒー豆と接触させることができ、コーヒー豆は、例えば、アルコール分低減香気性アルコール飲料が豆の上に凝縮するように、蒸気よりも低い温度にしてもよい。
【0018】
コーヒー豆は生豆であってもよく、又は部分的に焙煎された豆、例えばコーヒー生豆を加熱して、「1ハゼ」の段階の終了前に該加熱プロセスを停止することによって得られる豆であってもよい。「1ハゼ」は、コーヒー焙煎の当業者に周知であり、焙煎中にコーヒー豆が膨張することによって生じる破裂音を指す。部分的に焙煎された豆は、例えば、製造センターで製造された後、消費者に、又は最終的な焙煎が該部分的に焙煎された豆に適用される小売店に、分配されてもよい。
【0019】
コーヒー生豆(グリーンコーヒーグレインと呼ばれることもある)は、焙煎に供されていないコーヒー豆であり、例えば、かかるコーヒー豆は110℃を超える温度に曝露されていないものであり得る。
【0020】
コーヒーの生産は、完熟したレッドチェリーの採取から始まる。次いで、外層又は果皮を、乾式プロセス又は湿式プロセスのいずれかを使用して除去することができる。乾式プロセスは、1)コーヒーチェリーの選別(classification)及び洗浄、2)選別(grading)後のコーヒーチェリーの乾燥(空気乾燥又は機械乾燥のいずれか)、及び3)乾燥させたコーヒーチェリーを脱穀(dehusking)して乾燥果皮を除去すること、を含む。湿式プロセスは、1)コーヒーチェリーの選別、2)コーヒーチェリーのパルプ化、このステップは収穫直後に行われ、一般的に成熟コーヒーチェリーの「パルプ」又は果皮の機械的除去を含む、3)「発酵」、パルプ化後にコーヒーチェリーの豆に付着したままである粘液質は、バッチプロセスを使用して、付着粘液質を有するコーヒー豆をタンク内で水とインキュベートすることによって除去され、「発酵」プロセスは80時間まで続けられるが、多くの場合、許容可能な発酵をさせてpHを約6.8~6.9から4.2~4.6に低下させるのには概して24時間で十分であり、このpH低下は、さまざまな酵素活性及び発酵中に増殖する微生物の代謝作用によるものである、4)乾燥、このステップは、発酵コーヒー豆の空気乾燥又は機械的熱風乾燥のいずれかを含む、及び5)「脱殻(hulling)」、このステップは、乾燥コーヒー豆(乾燥パーチメントコーヒー)の「パーチ」の機械的除去を含み、多くの場合、シルバースキンもこの段階で除去される、から構成される。湿式プロセス又は乾式プロセスの後、得られたコーヒー生豆は多くの場合選別され(sorted)、ほとんどの選別手順はコーヒー豆のサイズ及び/又は形状に基づく。
【0021】
コーヒー豆は、コーヒーノキ(Coffea)の種子である。コーヒー生豆は、アラビカ又はロブスタ又はこれらの組み合わせであってもよい。アラビカコーヒー豆はアラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)のコーヒー豆であり、ロブスタコーヒー豆はロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)のコーヒー豆である。
【0022】
含浸中、アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)は、コーヒー豆に浸透する。コーヒー豆がアルコール分低減香気性アルコール飲料と接触している間に、飲料(例えば蒸留酒)の望ましい風味化合物及びアロマ化合物がコーヒー豆に含浸される。
【0023】
一実施形態では、アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えばアルコール分低減香気性蒸留酒)は、99:1~4:1のコーヒー豆対アルコール分低減香気性アルコール飲料の重量比、例えば50:1~5:1の重量比、例えば20:1~5:1の重量比、例えば15:1~7:1の重量比、さらに例えば10:1~8:1の重量比で、コーヒー豆とブレンドされる。アルコール分低減香気性アルコール飲料は、コーヒー豆とブレンドする前に濃縮してもよい。
【0024】
アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)は、所望の含浸度に達するのに十分な期間、コーヒー豆に含浸させることもできる。一実施形態では、アルコール分低減香気性アルコール飲料は、10分~80時間の期間にわたってコーヒー豆に含浸される。例えば30分~48時間、例えば1時間~36時間、例えば4時間~24時間、さらに例えば8時間~16時間である。
【0025】
アルコール分低減香気性アルコール飲料をコーヒー豆に含浸させた後、コーヒー豆をアルコール分低減香気性アルコール飲料から分離してもよい。一実施形態では、コーヒー豆は、アルコール分低減香気性アルコール飲料から濾過又はふるい分けされてもよい。一実施形態では、アルコール分低減香気性アルコール飲料は、コーヒー豆から分けられ(drained away)、さらなる含浸のために保管されてもよい。
【0026】
一実施形態では、含浸コーヒー豆は、焙煎する前に乾燥させる。例えば、含浸コーヒー豆は熱風中で、例えば50℃~90℃の温度で乾燥させてもよい。さらなる例として、ヒーターを備えたコニカル型スクリューミキサー中で混合及び含浸を行うことによって、コーヒー豆をアルコール分低減香気性アルコール飲料と接触させてもよい。コーヒー豆に含浸させた後、加熱してこのコーヒー豆を乾燥させてもよい。
【0027】
含浸コーヒー豆を、本発明の方法において焙煎する。有利なことに、豆に含浸させた風味及びアロマは、焙煎プロセス中にさらに展開する。焙煎プロセスは、含浸させた豆の風味プロファイルを角のないものにし、出来上がった飲料にさらなる複雑さ及び香りを与える。含浸コーヒー豆は、約150℃~約300℃の温度で焙煎され得る。コーヒー豆の温度は、典型的には、焙煎中に約170℃~約260℃に達する。焙煎時間は、典型的には、約1分~約30分の間でさまざまである。
【0028】
焙煎豆の色はCTN単位で表すことができる。CTNの焙煎色は0~200の間の値をとり、Neuhaus NeotecのColorTest II(登録商標)などの分光光度計で測定したときにサンプルによって後方散乱される赤外(IR)光(904nm)の強度を測定することによって求められる。分光光度計は、挽いたサンプルの表面に、半導体光源からの904nmの波長の単色IR光を照射する。予め較正しておいた受光器により、サンプルによって反射された光の量を測定する。一連の測定について平均値が計算され、電子回路によって表示される。コーヒー豆の色は、その焙煎レベルに直接関連する。例えば、コーヒー生豆は、典型的には、200を超えるCTNを有し、極浅く焙煎した(extremely lightly roasted)コーヒー豆のCTNは、典型的には約150であり、浅く焙煎した(lightly roasted)コーヒー豆のCTNは、典型的には、約100であり、中暗色の(medium-dark)コーヒー豆のCTNは、典型的には約70である。極暗色まで焙煎した(very dark roasted)コーヒー豆は、典型的には約45のCTNを有する。一実施形態では、含浸コーヒー豆を焙煎して、浅く焙煎された又は中暗色に焙煎されたコーヒー豆を得る。
【0029】
焙煎後、コーヒー豆を冷却し、寝かせて、任意の最終的な風味を発生させてもよい。
【0030】
アロマを含浸させた焙煎コーヒー豆の調製方法の一実施形態では、該方法は、
a.香気性アルコール飲料(例えば、香気性蒸留酒)のエタノール含有量を1重量%未満(例えば、0.75重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%、0.4重量%、0.3重量%)に低減させて、アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えばアルコール分低減香気性蒸留酒)を形成することと、
b.アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)をコーヒー生豆と接触させることと、
c.アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)をコーヒー豆に含浸させて含浸コーヒー豆を得ることと、
d.含浸コーヒー豆を焙煎して、アロマ含浸焙煎コーヒー豆を得ることと、を含む。
【0031】
一実施形態では、アロマ含浸焙煎コーヒー豆は粉砕される。任意のタイプの粉砕装置を使用して、アロマ含浸焙煎コーヒー豆を粉砕し、それらの大きさを減少させて粒子にしてもよい。粉砕装置の非限定的な例としては、ケージミル、ハンマーミル、一段ローラーグラインダー、及び多段ローラーグラインダーなどを挙げることができる。いくつかの実施形態では、アロマ含浸焙煎コーヒー豆の望ましい風味プロファイルの保存を助けるために、冷却媒体を介して機器が低温(例えば、約0℃~15℃)に維持されることを確保することが望ましい場合がある。しかしながら、一実施形態では、粉砕は、コーヒーショップでの調製を容易にするために室温(すなわち、約20℃)で行われてもよい。一実施形態では、アロマ含浸焙煎コーヒー豆は、1000μm未満、例えば600μm未満、さらに例えば400μm未満の粒度分布d50に粉砕される。粒径d50は、体積による粒径分布について従来の意味で使用される。d50は、この直径以上及び以下で体積分布を2分割するサイズである。粒度分布は、レーザー光散乱法によって測定することもできる。
【0032】
アロマ含浸焙煎コーヒー豆は水で抽出してもよい。アロマ含浸焙煎コーヒー豆は、好ましくは、水で抽出される前に粉砕される。水による抽出とは、コーヒー豆が精製水、水道水、及び/又は例えば水性コーヒー抽出物などの別の水性液体で抽出されることを意味する。抽出は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法によって行うことができる。コーヒー豆を抽出する方法は、可溶性コーヒーの製造の技術分野において、例えば欧州特許第0826308号から周知であり、通常、高い温度下でのいくつかの抽出ステップを伴う。好ましい実施形態では、焙煎コーヒー豆の抽出は、140℃~300℃の温度で実施される。これは、抽出温度が抽出中に少なくとも140℃の温度に達するものの、抽出の一部はより低温で実施されてもよいこと、及び抽出中の温度はいかなる時点でも300℃を超えないことを意味する。所望の抽出度に達すると、抽出済みの焙煎コーヒー豆は抽出物から分離される。分離は、あらゆる好適な手段、例えば、濾過、遠心分離、及び/又はデカントによって達成され得る。可溶性コーヒーの製造のための従来のコーヒー抽出では、分離は通常、抽出セル内で抽出を行うことによって達成される。コーヒー粉は、コーヒー抽出物は通過することができるフィルタープレート又は保持プレートによって保持される。抽出中に、抽出物から揮発性アロマ化合物を回収してもよい。回収した揮発性化合物を、抽出後に、抽出物に添加して戻してもよい。アロマの回収及び添加の方法は、可溶性コーヒーの製造の技術分野において周知である。
【0033】
水性コーヒー抽出物は、例えば抽出物を噴霧乾燥又は凍結乾燥することによって、純粋な可溶性コーヒー粉末にさらに加工してもよい。
【0034】
水性コーヒー抽出物は、例えば、抽出物の濃度を調整し、ボトル若しくは缶などの適切な容器に詰めることによって、レディ・トゥ・ドリンクコーヒーへとさらに加工してもよく、又は水性抽出物を可溶性コーヒー粉末に加工し、次いでこれを再溶解させ、ボトル又は缶などの適切な容器に充填してもよい。
【0035】
アロマ含浸焙煎コーヒー豆は、部分的に焙煎された豆であってもよく、例えば、含浸コーヒー豆(例えば含浸コーヒー生豆)は、「1ハゼ」の段階の終わりまでのみ焙煎されてもよい。
【0036】
アロマ含浸焙煎コーヒー豆の調製方法の一実施形態では、該方法は、
a.香気性アルコール飲料(例えば、香気性蒸留酒)のエタノール含有量を1重量%未満(例えば、0.75重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%、0.4重量%、0.3重量%)に低減させて、アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えばアルコール分低減香気性蒸留酒)を形成することと、
b.アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)をコーヒー生豆と接触させることと、
c.アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)をコーヒー豆に含浸させて含浸コーヒー豆を得ることと、
d.含浸コーヒー豆を焙煎して、アロマ含浸焙煎コーヒー豆を得ることと、を含む。
【0037】
抽出可能な小分けされた原材料を収容する飲料調製装置(例えば、飲料調製マシン)は、飲料を調製する便利な方法を提供する。このような小分けされた原材料は、概して、例えばポッド、パッド、小袋、パウチ、又はカプセルなどとして構成された容器にパッケージングされる。一実施形態では、挽いたアロマ含浸焙煎コーヒー豆は容器に充填され、該容器は、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのものである。容器は、他の構成の中でも特に、例えば飲料カプセルであってもよい。
【0038】
一実施形態では、香気性アルコール飲料(例えば香気性蒸留酒)のエタノール含有量は、蒸発によって低減される。例えば、香気性アルコール飲料は、20℃~60℃の温度で、大気圧未満、例えば20mbar未満の圧力に曝露され得る。エタノールを蒸発させた後、香気性アルコール飲料を水で元の体積に希釈してもよい。蒸発は、例えば、流下液膜式蒸発器(falling-film evaporator)又は遠心蒸発器で実施してもよい。一実施形態では、香気性アルコール飲料は蒸発前に水で希釈されるが、これは、望ましい香りの減少を低減することが分かっているためである。
【0039】
一実施形態では、冷凍させた香気性アルコール飲料を真空蒸発に供してエタノール含有量を低減させる前に、水分は固体の状態であるがエタノールは液体のままであるように、香気性アルコール飲料を例えば-10℃の温度で冷凍してもよい。
【0040】
一実施形態では、香気性アルコール飲料のエタノール含有量は、膜を使用して低減される。例えば、香気性アルコール飲料は、1つ以上の膜分離器に供給されてもよく、膜分離器では、水及びエタノールは透過物として膜を通過し、濃縮された非透過物(retentate)が残る。非透過物は、所望の体積が残るまで何回も膜分離器に供給してもよい。例えば、香気性アルコール飲料は、その体積が5分の1に減少するまで膜分離器の通過サイクルを繰り返されてもよい。一実施形態では、香気性アルコール飲料のエタノール含有量は、膜分離及びダイアフィルトレーション技術の組み合わせを使用して低減される。例えば、膜分離器を使用して香気性アルコール飲料を濃縮した後、膜分離器を再び通過させてエタノール含有量をさらに低減させる前に非透過物に追加の水を添加してもよい。一実施形態では、香気性アルコール飲料のエタノール含有量は、逆浸透又はナノ濾過を使用して低減される。
【0041】
一実施形態では、香気性アルコール飲料抽出のエタノール含有量を低減するステップの前及び/又は間に、揮発性アロマ化合物を香気性アルコール飲料から回収し(例えば、蒸気ストリッピング又は真空の使用によって)、次いで、そのエタノール含有量が低減された後に香気性アルコール飲料に添加して戻してもよい。
【0042】
一実施形態では、エタノール含有量を低減するステップに供されていない香気性アルコール飲料が、アルコール分低減香気性飲料の一部を形成し得る。これは、エタノール含有量を減少させるステップの間に失われ得る高揮発性成分を増強するという利点を有する。例えば、アルコールが低減された香気性アルコール飲料は、エタノール含有量を低減するステップにかけられていない香気性アルコール飲料を0.01~10重量%、例えば、エタノール含有量を低減するステップにかけられていない香気性アルコール飲料を0.02~5重量%、例えば、エタノール含有量を低減するステップにかけられていない香気性アルコール飲料を0.03~2重量%、さらに例えば、エタノール含有量を低減するステップにかけられていない香気性アルコール飲料を0.05~1重量%、含み得る。
【0043】
驚くべきことに、香気性アルコール飲料をコーヒー豆に含浸させて、このコーヒー豆を焙煎する前に、香気性アルコール飲料のエタノール含有量を低減することにより、カルバミン酸エチルのレベルが低いアロマ含浸焙煎コーヒー豆が得られることが見出された。ほとんどの酵母発酵アルコール飲料中には微量のカルバミン酸エチルが見られる。カルバミン酸エチルは、「ヒトに対して発がん性である可能性がある」と指定されており、消費を減らすための軽減手段(mitigation measures)が推奨されている。一実施形態では、アロマ含浸焙煎コーヒー豆のカルバミン酸エチルのレベルは、0.3mg/kg未満である。例えば、アロマ含浸焙煎コーヒー豆のカルバミン酸エチルのレベルは、0.2mg/kg未満、例えば0.1mg/kg未満、更に例えば0.05mg/kg未満のカルバミン酸エチルである。
【0044】
本発明の一態様は、0.3mg/kg未満のカルバミン酸エチルのレベルを有する香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆、例えば、0.3mg/kg未満のカルバミン酸エチルのレベルを有する香気性蒸留酒含浸焙煎コーヒー豆、更に例えば、0.3mg/kg未満のカルバミン酸エチルのレベルを有する焙煎ウイスキー含浸コーヒー豆、を提供する。先の段落から明らかなように、飲料含浸焙煎コーヒー豆を提供するためにコーヒー豆に含浸させる飲料は、ウイスキーなどの香気性アルコール飲料であるが、飲料は、コーヒー豆に含浸させる前にアルコール含有量が低減されていてもよい。一実施形態では、香気性アルコール飲料を含浸させた焙煎コーヒー豆は粉砕される。本発明の一態様は、本発明の香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆を収容する容器であって、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するための容器を提供する。
【0045】
0.3mg/kg未満のカルバミン酸エチルのレベルを有する香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆は、部分的に焙煎されていてもよい。本発明の一実施形態は、0.3mg/kg未満のカルバミン酸エチルのレベルを有する部分的に焙煎された香気性アルコール飲料含浸コーヒー豆を提供し、部分的に焙煎された香気性アルコール飲料含浸コーヒー豆は、さらなる焙煎に使用するためのものである。本発明の一実施形態は、1重量%未満のエタノールレベルを有する部分的に焙煎された香気性アルコール飲料含浸コーヒー豆を提供し、部分的に焙煎された香気性アルコール飲料含浸コーヒー豆は、さらなる焙煎に使用するためのものである。部分的に焙煎された香気性アルコール飲料含浸コーヒー豆は、0.3mg/kg未満のカルバミン酸エチルのレベル及び1重量%未満のエタノールレベルを有してもよく、部分的に焙煎された香気性アルコール飲料含浸コーヒー豆は、更なる焙煎に使用するためのものである。
【0046】
本発明の一態様は、本発明の方法によって得られ得る(例えば、得られる)、香気性アルコール飲料含浸焙煎コーヒー豆を提供する。例えば、本発明の方法によって得ることができる(例えば、得られる)香気性蒸留酒含浸焙煎コーヒー豆である。
【0047】
本発明のさらなる態様は、コーヒー豆に含浸させるための、アルコール分低減香気性アルコール飲料の使用、例えば、コーヒー豆に含浸させるための、アルコール分低減香気性蒸留酒の使用である。アルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)は、1重量%未満、例えば0.75重量%未満、例えば0.6重量%未満、例えば0.5重量%未満、例えば0.4重量%未満、さらに例えば0.3重量%未満のエタノール含有量を有し得る。コーヒー豆は、生豆であってもよく、その後さらに焙煎されることが意図される、部分的に焙煎された豆であってもよく、又は十分に焙煎された豆、例えばコーヒー飲料の調製のために粉砕され、水で抽出される準備ができている焙煎コーヒー豆であってもよい。
【0048】
一実施形態では、焙煎コーヒー豆に含浸させるための、アルコール分低減香気性アルコール飲料の使用は、コーヒー豆をアルコール分低減香気性アルコール飲料で急冷することによるものであってもよい。急冷は、所望のレベルの焙煎が達成されたら、熱い焙煎コーヒーを急速に冷却するプロセスである。有利なことに、焙煎コーヒー豆をアルコール分低減香気性アルコール飲料で急冷すると、アルコールが低減されていない香気性飲料でコーヒー豆を急冷した場合に得られるものよりもカルバミン酸エチルのレベルが低いコーヒーが得られる。
【0049】
一実施形態では、焙煎コーヒー豆に含浸させるための、アルコール分低減香気性アルコール飲料の使用は、コーヒー豆が包装されていることでアルコール分低減香気性アルコール飲料がコーヒー豆に添加されることによるものであってもよい。例えば、容器に充填された焙煎挽き豆にアルコール分低減香気性アルコール飲料を添加することによるものであり、この容器は、飲料調製装置に挿入されたときに飲料を調製するためのものである。焙煎コーヒー豆に含浸させるための、アルコール分低減香気性アルコール飲料の使用の一実施形態では、エタノール含有量を低減するステップに供されていない香気性アルコール飲料を焙煎挽き豆に添加してもよく、例えば容器に充填してもよい。例えば、エタノール含有量が低減されていない香気性アルコール飲料が、密封前に容器内に噴霧されてもよい。この噴霧は、高揮発性成分を増強するという利点を有する。例えば、容器に充填される香気性アルコール飲料の全量は、エタノール含有量が低減されていない香気性アルコール飲料0.01~10重量%、例えばエタノール含有量が低減されていない香気性アルコール飲料0.02~5重量%、例えばエタノール含有量が低減されていない香気性アルコール飲料0.03~2重量%、さらに例えばエタノール含有量が低減されていない香気性アルコール飲料0.05~1重量%、を含み得る。
【0050】
本発明のさらなる態様は、レディ・トゥ・ドリンクコーヒー飲料に風味を付けるためのアルコール分低減香気性アルコール飲料(例えば、アルコール分低減香気性蒸留酒)の使用である。
【0051】
当業者は、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の方法のために記載された特徴を本発明の製品と組み合わせてよく、逆もまた同様であってよい。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。周知の均等物が特定の特徴について存在する場合、このような均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのごとく組み込まれる。
【0052】
本発明の更なる利点及び特徴は、非限定例から明らかである。
【0053】
[実施例]
実施例1:遠心真空蒸発を用いたウイスキーの脱アルコール
約40%の初期アルコール含量を有する100グラムのジャックダニエルウイスキーを、2つのガラス製遠心分離フラスコに秤量した。バランス用フラスコを2つ準備し、全てのフラスコをGeneVac Rocketベンチトップ遠心分離機に入れた。装置を40℃に設定し、低沸点法で、60分の実行時間で実行した。装置により真空を自動的に設定し、<20ミリバールとした。
【0054】
蒸発の終了時に、両方のフラスコのウイスキー濃縮液は元の体積の10%であった。この濃縮液を取り出し、蒸留水で希釈して元の質量(200g)に戻した。エタノール含有量は約31重量%から4.7重量%に減少した。
【0055】
実施例2:膜分離を用いたウイスキーの脱アルコール
ジャックダニエルウイスキー中のアルコール分を、ナノ濾過装置(MMS Membrane Systems-Triple System)を使用して減少させた。約31重量%の初期アルコール含量を有する500グラムのジャックダニエルウイスキーを第1の濃縮ステップに供し、供給物を直列の3つのナノ濾過膜(Torayタイプ-TNF)に通過させた。約400gの透過物が除去され、約100gの非透過物が保持された。次いで、非透過物を4回の連続したダイアフィルトレーションステップに通した。各ステップにおいて、約100gの水を非透過物に添加した後、3重のナノ濾過膜に通過させた。膜を7℃及び35バールの圧力で操作した。各透析濾過ステップにおいて、約100gの透過物を除去し、約100gの非透過物を次の透析濾過ステップに通した。約100gの最終非透過物を水で希釈して元の質量を500gとした。エタノール含有量は0.6重量%に減少した。コーヒー豆は、焙煎後に約0.04mg/kgのカルバミン酸エチルのレベルを有する。
【0056】
実施例3:アルコール分低減ウイスキーによるコーヒー豆の含浸、その後の焙煎。
実施例1からのアルコール分低減ウイスキーを使用して、コーヒー生豆に20℃で240分間含浸させた。コーヒー生豆をジップバッグに入れ、含浸液の重量が最終含浸混合物の重量の10%になるように、アルコール分低減ウイスキーをバッグに添加した。バッグの内容物を5分間激しく混合し、20℃で4時間保持してコーヒー生豆に含浸させた。次いで、含浸コーヒー豆を実験室用コーヒー焙煎機(Neuhaus Neotec)で73のCTNまで焙煎した。対照として、アルコールが低減されていないジャックダニエルウイスキーを用いてこのプロセスを繰り返した。カルバミン酸エチルのレベルは、対照では4.1mg/kgであったが、アルコール分低減ウイスキーを含浸させた焙煎豆ではわずか0.29mg/kgであった。焙煎コーヒー豆を挽き、焙煎して挽いたコーヒー40gをフィルター式コーヒーメーカーに入れて、1Lの水でコーヒー飲料を調製した。抽出されたコーヒー中のカルバミン酸エチルのレベルは、対照では164ppbであったが、アルコール分低減ウイスキーを含浸させた焙煎コーヒー豆ではわずか11.6ppbであった。いずれの焙煎コーヒー豆サンプルも、心地よいウイスキーのアロマ及び味覚を有するコーヒーを提供した。
【国際調査報告】