(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】補強ワイヤ
(51)【国際特許分類】
D07B 5/00 20060101AFI20240221BHJP
D07B 1/06 20060101ALI20240221BHJP
D07B 1/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
D07B5/00 Z
D07B1/06 A
D07B1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553152
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022055621
(87)【国際公開番号】W WO2022184917
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523328762
【氏名又は名称】ソチエタ インドゥストリアーレ クレモネーゼ エッセ.ピ.ア.
【氏名又は名称原語表記】Societa Industriale Cremonese S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via G. B. Pirelli, 56, 26026 Pizzighettone, Cremona, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ ボルジャーギ
(72)【発明者】
【氏名】エンリケ エレロ アセロ
【テーマコード(参考)】
3B153
【Fターム(参考)】
3B153AA10
3B153AA27
3B153AA32
3B153AA46
3B153CC02
3B153CC13
3B153CC17
3B153CC18
3B153CC21
3B153CC22
3B153CC23
3B153CC42
3B153CC43
3B153CC52
3B153FF16
(57)【要約】
本願は、熱可塑性コア部材とシースとを含む複合ワイヤに関する。シースは、コア部材に巻き付けられた補強スレッドの少なくとも2つの群を含む。補強スレッドの少なくとも2つの群は、全ての角度の総和が実質的にゼロとなるようにコア部材と角度をなす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部材(1)としての熱可塑性モノフィラメントと、前記コア部材に巻き付けられた補強スレッド(2)の少なくとも2つの群を含むシースとを含む複合ワイヤであって、
前記補強スレッド(2)の少なくとも2つの群が、全ての角度の総和が実質的にゼロとなるように前記コア部材と角度をなすことを特徴とする、複合ワイヤ。
【請求項2】
前記コア部材(1)が少なくとも0.3かつ最大でも1.2mm、好ましくは少なくとも0.4かつ最大でも0.9mmの太さを有する、請求項1記載の複合ワイヤ。
【請求項3】
前記コア部材が核剤を含み、前記核剤がタルクもしくは類似の無機フィラー、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ナトリウムイオンアイオノマー、スルホンアミド化合物金属塩もしくはスルホンイミド化合物金属塩、ジカルボン酸のモノナトリウム塩、またはそれらの任意の混合物である、請求項1または2記載の複合ワイヤ。
【請求項4】
補強スレッド(2)の少なくとも2つの群が前記コア部材(1)に巻き付けられる、請求項1から3までのいずれか1項記載の複合ワイヤ。
【請求項5】
補強スレッド(2)の少なくとも2つの群が前記コア部材(1)の周りに巻回され、かつ/または補強スレッド(2)の少なくとも2つの群が前記コア部材(1)の周りに編組される、請求項1から4までのいずれか1項記載の複合ワイヤ。
【請求項6】
前記コア部材(1)が、補強スレッド(2)の全ての群と少なくとも±15度の角度をなす、請求項1から5までのいずれか1項記載の複合ワイヤ。
【請求項7】
前記コア部材(1)が補強繊維(3)を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の複合ワイヤ。
【請求項8】
補強繊維が少なくとも1つの繊維束、ヤーンまたはコードとして前記コア部材に含まれる、請求項1から7までのいずれか1項記載の複合ワイヤ。
【請求項9】
前記コア部材中の前記補強繊維がモノフィラメントである、請求項7または8記載の複合ワイヤ。
【請求項10】
前記補強繊維がガラス、炭素繊維、スチールワイヤ、アルミニウムワイヤ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、セルロースフィラメント、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド-5、ポリアミド-6、ポリアミド-5,6、ポリアミド-5,10、ポリアミド-6,6、ポリアミド-4,10、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,8、ポリアミド-10もしくはポリアミド-11、タンパク質繊維、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)もしくは芳香族ポリエステル、または前記材料のモノマーを含むコポリマー、または前記材料の混合物を含む、請求項7から9までのいずれか1項記載の複合ワイヤ。
【請求項11】
前記補強繊維に含まれる前記材料が、部分的または全体的に生物学的供給源および/またはリサイクル供給源からのものである、請求項10記載の複合ワイヤ。
【請求項12】
前記コア部材(1)がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、芳香族ポリエステル、パラポリフェニレンテレフタルアミドもしくはメタポリフェニレンイソフタルアミド等の芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリアミド-5、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-5,6、ポリアミド-4,10、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,8、ポリアミド-10もしくはポリアミド-11、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリウレタン(PUR)もしくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、前記材料のモノマーを含むコポリマー、または前記材料の混合物を含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の複合ワイヤ。
【請求項13】
前記コア部材に含まれる前記材料が、部分的または全体的に生物学的供給源および/またはリサイクル供給源からのものである、請求項12記載の複合ワイヤ。
【請求項14】
前記補強スレッド(2)がガラス、炭素繊維、スチールワイヤ、アルミニウムワイヤ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、セルロースフィラメント、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド-5、ポリアミド-6、ポリアミド-5,6、ポリアミド-5,10、ポリアミド-6,6、ポリアミド-4,10、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,8、ポリアミド-10もしくはポリアミド-11、タンパク質繊維、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)もしくは芳香族ポリエステル、または前記材料のモノマーを含むコポリマー、または前記材料の混合物を含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の複合ワイヤ。
【請求項15】
前記補強スレッドに含まれる前記材料が、部分的または全体的に生物学的供給源および/またはリサイクル供給源からのものである、請求項14記載の複合ワイヤ。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載の少なくとも1つの複合ワイヤを含む、空気入り車両用タイヤ用の補強ベルト。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項記載の少なくとも1つの複合ワイヤを含む、空気入り自動車用タイヤ用のビード補強材。
【請求項18】
請求項1から15までのいずれか1項記載の少なくとも1つの複合ワイヤを含む、空気入り車両用タイヤ用の補強カーカス。
【請求項19】
請求項1から15までのいずれか1項記載の少なくとも1つの複合ワイヤを含む、空気入り車両用タイヤ用のキャッププライ。
【請求項20】
請求項1から15までのいずれか1項記載の少なくとも1つの複合ワイヤを含む、空気入り車両用タイヤ。
【請求項21】
補強繊維が埋め込まれた少なくとも1つのストリングを含むビードチェーファーまたはビードフリッパー補強要素を含む、請求項20記載のタイヤ。
【請求項22】
補強繊維が埋め込まれた熱可塑性モノフィラメントを含む、熱可塑性ストリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、例えばタイヤにおけるエラストマー材料の補強を目的とした複合ワイヤに関する。
【0002】
エラストマー材料から作られたタイヤは、ほぼ全ての路上走行車および航空機に不可欠な構成要素であり、半世紀以上にわたって、かかるタイヤは、ゴムのインフレータブルバルーンの域をはるかに超えている。タイヤは、高度に複雑なゴムブレンドおよび様々な材料の繊維補強材の幾つかの要素を含む複雑な構造体である。
【0003】
典型的なタイヤは、少なくとも5種類の異なる補強材を含む。ビード部は、通常、スチールワイヤまたはスチールコードで作られたビード補強材によって補強される。トレッドの真下には、いわゆるキャッププライが位置する。キャッププライの下には、タイヤベルトが位置する。通例、ベルトはスチールコードの構造体であり、タイヤの骨格構造は、通常、テキスタイルコードの織物構造である、いわゆるカーカスによって形成される。
【0004】
第5の構成要素は、ビードおよびビードフィラーが埋め込まれる補強織物であり、当業者にはフリッパー(テキスタイル製の場合)またはチェーファー(スチールコード製の場合)として知られている。
【0005】
タイヤの安定性のために、スチールコードおよびワイヤをタイヤに使用するのが一般的である。スチールコードおよびワイヤは、これまでタイヤ用途のテキスタイルコード構造では達成されていない高い圧縮抵抗および曲げ剛性を示す。スチールコードおよびワイヤは、さらに、多くの高強力テキスタイル材料と比較して安価であるため、経済的理由から使用される。
【0006】
しかしながら、スチールコードおよびワイヤをタイヤに多用することの大きな欠点は、これらの構造の高い重量である。テキスタイル材料をより広く使用することで、重量の大幅な削減および転がり抵抗の改善がもたらされ、結果として、対応する車両の燃料消費量が大幅に削減される。
【0007】
したがって、本願の目的は、タイヤ中のスチールの量を減少させることができ、同時に技術的要件を満たす程度の圧縮抵抗および曲げ剛性をもたらす、空気入り車両用タイヤへの使用に適した補強材を提供することである。
【0008】
この目的は、コア部材としての熱可塑性モノフィラメントと、コア部材に巻き付けられた補強スレッドの少なくとも2つの群を含むシースとを含む複合ワイヤであって、補強スレッドの少なくとも2つの群が、全ての角度の総和が実質的にゼロとなるようにコア部材と角度をなすことを特徴とする、複合ワイヤによって解決される。
【0009】
本願全体を通して、「生物学的供給源」および「生物学的起源」という用語は、同義的に使用される。どちらの用語も、材料が植物、真菌、細菌または動物等の生物から得られることを意味する。生物学的起源の材料の典型的な特徴は、その炭素含有量が自然の炭素循環の一部であり、岩石圏において結合した化石炭素に由来しないことである。通例、生物学的起源の材料は、廃棄時に大気の二酸化炭素含有量の増加に寄与しないため、全地球的気候に影響を及ぼさない。
【0010】
本願全体を通して、「リサイクル供給源」および「リサイクルされた」という用語は、同義的に使用される。どちらの用語も、材料が廃棄材料から化学的および/または物理的処理によって得られることを意味する。物理的処理は、廃棄材料を異なる形態にすることを意味し、これは例えば、物理的に処理された廃棄物と同じ材料から新たな物品を得るために、廃棄物の熱可塑性プラスチック、ガラスまたは金属を溶融し、例えば押出加工、鋳造、または当該技術分野で既知の任意の他のプロセスによって異なる形態にすることを意味する。
【0011】
化学的処理は、化学的分解を誘導し、後に処理して最初の材料と同じ材料または別の材料にすることができる原料を得るために、廃棄材料を処理することを意味する。
【0012】
一般に、リサイクルから得られる材料は、生物学的起源の材料のように生物から得られるものでも、鉱物または化石燃料のように岩石圏から採取される原料から得られるものでもない。
【0013】
本願による複合ワイヤは、直径の少なくとも100倍の長さを有し、少なくとも2つの異なる材料を含む物体である。
【0014】
コア部材は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)等)、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド(ポリアミド-5、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-5,6、ポリアミド-4,10、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,8、ポリアミド-10またはポリアミド-11等)、アラミド(パラポリフェニレンテレフタルアミド、メタポリフェニレンイソフタルアミド)等の芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリウレタン(PUR)、または上記材料のモノマーを含むコポリマー、または上記材料の混合物もしくはブレンド等の任意の熱可塑性材料のものであり得るが、この選択に限定されない。
【0015】
コア部材の材料は、部分的または完全に生物学的起源のものであってもよい。コア部材の材料は、部分的または完全にリサイクルプラスチックから作られていてもよい。生物学的供給源およびリサイクル供給源の材料を組み合わせてもよい。
【0016】
一実施形態では、コア部材は、核剤を含んでいてもよい。上記核剤は、当該技術分野で既知のように、タルクまたは類似の無機フィラー、安息香酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ナトリウムイオンアイオノマー、スルホンアミド化合物金属塩またはスルホンイミド化合物金属塩、ジカルボン酸のモノナトリウム塩、およびそれらの混合物であり得る。
【0017】
コア部材はモノフィラメントである。
【0018】
コア部材の直径は、少なくとも0.3mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも0.4mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも0.6mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも0.8mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも1.0mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも1.2mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも1.4mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも1.6mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも1.8mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも2.0mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、少なくとも2.3mmである。
【0019】
コア部材の直径は、最大でも2.5mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、最大でも2.3mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、最大でも2.1mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、最大でも1.9mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、最大でも1.7mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、最大でも1.5mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、最大でも0.9mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、最大でも0.7mmである。一実施形態では、コア部材の直径は、最大でも0.5mmである。
【0020】
補強スレッドの群は、実質的に平行な1つ以上の補強スレッドを含み得る。「群」という表現は、同じ群の補強スレッドが同じまたは類似の特性を有し、異なる群の補強スレッドが異なる特性を有することを必ずしも意味するわけではない。したがって、「群」という表現は、むしろ、本発明による複合ワイヤに含まれる補強スレッドの完全なセットのサブセットとして解釈する必要がある。1つの群の補強スレッドは、一緒に処理される。
【0021】
補強スレッドは繊維を含み得る。
【0022】
本願によると、「繊維」という用語は、直径の少なくとも100倍の長さを有する任意の物体を意味し得る。本願によると、「繊維」という用語が非常に広く解釈されることに留意するのが重要である。すなわち、フィラメントまたはストリングも本願で理解される繊維である。さらに、「繊維」という用語は、金属ワイヤも包含する。
【0023】
本願による繊維は、任意の断面形状を有し得る。金属ワイヤおよびフィラメントを包含する繊維の断面は、円形、楕円形、長楕円形、三角形、正方形、長方形、または五角形、六角形、七角形もしくは八角形等の任意の多角形とすることができる。星形の断面も可能である。
【0024】
補強スレッドはモノフィラメント、ヤーンまたはコードであり得る。
【0025】
補強スレッドがヤーンである場合、ヤーンは加撚または非加撚であり得る。加撚ヤーンは通例、実質的に円形の断面を有する。加撚ヤーンは、S方向またはZ方向に加撚され得る。加撚されていないヤーンは、長方形、長楕円形もしくは楕円形等の他の断面形状を有していてもよく、またはリボン状の形状を有していてもよい。リボン状の形状のヤーンは、「フラットヤーン」または「リボンヤーン」としても当業者に知られている。補強スレッドがコードである場合、コードは、撚り合わせた2本以上のヤーンから形成され得る。本願によるコードでは、ヤーンはそれ自体が加撚され得る。加撚ヤーンのコードでは、通例、ヤーンがS撚りを有し、Z撚りで撚り合わされるか、またはヤーンがZ撚りを有し、S撚りで撚り合わされる。コードは例えば、一方がS撚りを有し、一方がZ撚りを有する2本のヤーンから撚られてもよい。
【0026】
コードは、撚り合わせた非加撚ヤーンから作られていてもよい。コードは、加撚ヤーンおよび非加撚ヤーンの両方、または加撚ヤーン、非加撚ヤーンおよびモノフィラメントの任意の組合せを含んでいてもよい。
【0027】
補強スレッドに含まれる繊維は、当該技術分野で既知の任意の有機ポリマーまたは無機材料のものであり得る。考え得る無機材料は、アルミニウム、スチール、ガラス、炭素またはバサルトである。考え得る有機ポリマーは、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)等)、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド(ポリアミド-5、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-5,6、ポリアミド-4,10、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,8、ポリアミド-10またはポリアミド-11等)、パラポリフェニレンテレフタルアミドもしくはメタポリフェニレンイソフタルアミド等の芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリウレタン(PUR)、または上記材料のモノマーを含むコポリマー、または上記材料の混合物もしくはブレンド等の熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーであるが、この選択に限定されない。
【0028】
補強繊維は、フィラメントの形態で補強スレッドに含まれていてもよい。補強繊維の材料は、完全または部分的に生物学的起源のものであっても、および/またはリサイクル供給源からのものであってもよい。
【0029】
本願によるフィラメントは、実質的に無限の長さの繊維である。典型的なフィラメントの長さは、1メートル超であるが、フィラメントは、容易に数百メートル、あるいは数キロメートルの長さを有することができる。
【0030】
単一のフィラメントを他のフィラメントとともにではなく、単独で取り扱い、輸送し、かつ/または処理する場合、これはモノフィラメントと呼ばれる。
【0031】
本願によるフィラメントは、必ずしも一体構造の物体である必要はない。フィラメントは、中空であってもよく、または粒状または繊維状のフィラー、繊維、ヤーン、コードまたはそれらの任意の組合せ等の包囲体を含んでいてもよい。このため、フィラメントは、外側が均質な表面を有するようにディッピング、コーティング、共押出またはサイジングされた加撚ヤーンまたはコードであってもよい。
【0032】
本願によるフィラメントは、円形、長楕円形、正方形、長方形、三角形、または多角形、例えば五角形、六角形、七角形もしくは八角形等の当該技術分野で既知の任意の断面形状を有し得る。星形または腎臓形の断面も可能である。金属ワイヤも本願によるフィラメントとすることができる。
【0033】
ここに開示したフィラメントの全ての特性が、本願に関連するあらゆる種類のフィラメントに当てはまることが理解される。
【0034】
フィラメントを結合し、組み立て、かつ/またはまとめてヤーンを形成することができる。ヤーンは加撚、溶接、接着結合、および/または当該技術分野で既知の任意の他の結合技術によって繊維を結合した、実質的に一次元の繊維体である。
【0035】
ヤーンは、幾つかのヤーンを加撚、溶接、接着結合、または当該技術分野で既知の任意の他の結合技術によって結合することで形成してもよい。ヤーンを撚り合わせることによって形成されたヤーンは、通例、その太さおよび用途に応じてコードまたはトワインとして知られる。
【0036】
ヤーンは円形、楕円形、三角形、四角形または実質的に線形等のあらゆる種類の断面形状を有し得る。実質的に線形とは、ヤーンの断面が楕円形または長方形であり、幅が太さの少なくとも10倍の大きさであることを意味する。実質的に線形の断面を有するヤーンは、「フラットヤーン」、「リボン」、ロービングまたは「テープヤーン」として当業者に知られている。
【0037】
フラットヤーンは通例、実質的に円形の断面をもたらす、ヤーンおよび/または繊維の撚合せによっては形成されない。しかしながら、幾つかの加撚ヤーンをフラットヤーンに結合してもよい。典型的なフラットヤーンでは、繊維を接着剤によって結合するか、またはマトリックス材料に埋め込む。
【0038】
本発明による複合ワイヤでは、2つ、4つ、6つ、8つまたはそれ以上の群の補強スレッドがコア部材に巻き付けられる。補強スレッドの群の数は、任意の偶数であり得る。
【0039】
本願によると、「巻付け」とは、補強スレッドの群をコア部材の周りに配置することを意味する。補強スレッドの群は、コア部材に垂直な線と角度をなす。この角度は、「巻付け角」と呼ばれる。本願によると、巻付け角は、補強スレッドの群からコア部材への時計回りの回転を表す場合は正であり、補強スレッドの群からコア部材への反時計回りの回転を表す場合は負である。
【0040】
補強スレッドの全ての群が少なくとも±15度の巻付け角をなす。一実施形態では、巻付け角は、少なくとも±23度である。一実施形態では、巻付け角は、少なくとも±30度である。一実施形態では、巻付け角は、少なくとも±40度である。
【0041】
補強スレッドの全ての群が最大でも±85度の巻付け角をなす。一実施形態では、巻付け角は、最大でも±70度である。一実施形態では、巻付け角は、最大でも±60度である。一実施形態では、巻付け角は、最大でも±50度である。
【0042】
補強スレッドの全ての群の巻付け角の総和は、実質的にゼロである。実質的にゼロとは、本明細書で使用される場合、補強スレッドの全ての群の巻付け角の総和が最大でも±9度であることを意味する。一実施形態では、補強スレッドの全ての群の巻付け角の総和は、最大でも±5または±1度である。
【0043】
一実施形態では、補強スレッドの群は、少なくとも70巻き数毎メートル(tpm)でコア部材に巻き付けられる。一実施形態では、補強スレッドの群は、少なくとも270tpmでコア部材に巻き付けられる。一実施形態では、補強スレッドの群は、少なくとも1000tpmでコア部材に巻き付けられる。一実施形態では、補強スレッドの群は、少なくとも5000tpmでコア部材に巻き付けられる。一実施形態では、補強スレッドの群は、少なくとも7000tpmでコアに巻き付けられる。一実施形態では、補強スレッドの群は、少なくとも10000tpmでコアに巻き付けられる。
【0044】
一実施形態では、補強スレッドの群は、最大でも1000tpmでコア部材に巻き付けられる。一実施形態では、補強スレッドの群は、最大でも5000tpmでコア部材に巻き付けられる。一実施形態では、補強スレッドの群は、最大でも7000tpmでコア部材に巻き付けられる。一実施形態では、補強スレッドの群は、最大でも9000tpmでコア部材に巻き付けられる。一実施形態では、補強スレッドの群は、最大でも13000tpmでコアに巻き付けられる。
【0045】
巻付けにおける巻き数nは、以下の式:
n=|1/(d×tanα)|
によって巻付け角αおよびコア部材のメートル単位の直径dの両方と直接関連付けられる。
【0046】
一実施形態では、コア部材の周りへの補強スレッドの群の巻付けは、コード撚りによって行われる。一実施形態では、コア部材の周りへの補強スレッドの群の巻付けは、ケーブリングによって行われる。
【0047】
一実施形態では、補強スレッドの少なくとも2つの群をコア部材の周りに巻回する。本願によると、巻回とは、補強スレッドの各群がコア部材の周りに自律らせんを形成することを意味する。
【0048】
一実施形態では、補強スレッドの少なくとも2つの群をコア部材の周りに編組してもよい。編組とは、補強スレッドの少なくとも2つの群がコア部材の周りに交錯したらせんを形成することを意味する。
【0049】
本願によると、「巻付け」という用語は、スレッドの群をコア部材の周りに巻回または編組することを意味し得る。「巻付け」という用語はさらに、巻回および編組の任意の組合せを包含する。
【0050】
一実施形態では、補強スレッドの少なくとも2つの群をコア部材の周りに巻回し、補強スレッドの少なくとも2つの群をコア部材の周りに編組する。
【0051】
一実施形態では、補強スレッドの群の巻回および編組を組み合わせてもよい。
【0052】
一実施形態では、本発明による複合ワイヤのコア部材は、補強繊維を含んでいてもよい。補強繊維は、単一のフィラメント、複数の平行なフィラメントの形態、または撚り合わされた繊維もしくはヤーンで作られた加撚ヤーンとしてコア部材に含まれ得る。コア部材に含まれる補強繊維は、複合ワイヤのシースに含まれる補強スレッドと同じであっても、または異なっていてもよい。補強繊維は、当該技術分野で既知の任意の有機ポリマーまたは無機材料のものであり得る。考え得る無機材料はガラス、炭素、バサルト、スチールまたはアルミニウムであり得る。考え得る有機ポリマーは、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)等)、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド(ポリアミド-5、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-5,6、ポリアミド-4,10、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,8、ポリアミド-10またはポリアミド-11等)、パラポリフェニレンテレフタルアミドもしくはメタポリフェニレンイソフタルアミド等の芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリウレタン(PUR)、または上記材料のモノマーを含むコポリマー、または上記材料の混合物もしくはブレンド等のあらゆる熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーであるが、この選択に限定されない。補強繊維の材料は、全体的または部分的に生物学的供給源および/またはリサイクル供給源からのものであり得る。
【0053】
一実施形態では、共押出技術を用いて補強繊維を熱可塑性材料に埋め込む。コア部材が補強繊維を含む場合、コア部材は、コア部材の総体積をベースとして少なくとも23体積%の補強繊維を含む。一実施形態では、コア部材は、コア部材の総体積をベースとして少なくとも29体積%の補強繊維を含む。
【0054】
コア部材は、コア部材の総体積をベースとして最大でも50体積%の補強繊維を含む。一実施形態では、コア部材は、コア部材の総体積をベースとして最大でも45体積%の補強繊維を含む。
【0055】
一実施形態では、補強繊維は、単一のフィラメントもしくは金属ワイヤとして、または繊維束、ヤーンもしくはコードを形成する複数の繊維、フィラメントもしくは金属ワイヤとしてコア部材の中心に位置する。補強繊維は、バインダーまたは結合剤等の当業者に既知のあらゆる種類のサイジング剤で処理することができる。重要な結合剤は、例えばレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス-(RFL)-ディップとして当業者に知られている。他の化学物質をベースとした他の結合剤も知られている。
【0056】
本願による複合ワイヤは、例えばタイヤ等のエラストマー物品の補強のための多種多様な製品に含まれ得る。このため、本発明による複合ワイヤは、エラストマー材料に埋め込むことができる。
【0057】
本発明による複合ワイヤを、さらに他の複合ワイヤまたはヤーンと撚り合わせて、エラストマー材料に埋め込まれる補強ヤーンまたはコードを形成することができる。本発明による複合ワイヤ、またはかかる複合ワイヤを含む任意のヤーンもしくはコードは、エラストマー材料に埋め込まれる一次元または二次元の補強構造体に製織、編成または編組することができる。
【0058】
複合ワイヤ、またはそれで作られた任意の一次元もしくは二次元の構造体は、ゴムとの接着性を改善するために表面処理してもよい。この目的での表面処理は、「ディッピング」として当業者に既知であり、通例、レゾルシノール、ホルムアルデヒドおよびラテックスの混合物(いわゆるRFL-ディップ)またはアクリレートポリマーを用いて行われる。当業者に既知のレゾルシノールおよびホルムアルデヒドを含まない他のディッピングも可能である。
【0059】
ディッピングは、複合ワイヤの剛性に影響を与える可能性がある。
【0060】
エラストマー材料は、架橋したポリマー鎖を含み、顕著な弾性を示す任意のポリマー材料である。エラストマー材料は天然ゴム、合成ゴム、クロロプレンゴム、スチレン-ブタジエン-ゴム、ニトリルゴムまたはブチルゴム、さらにはシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フルオロエラストマーもしくはホスファゼンエラストマー、またはそれらの混合物を含み得る。
【0061】
補強エラストマー材料で作られる製品は、タイヤ、ホース、駆動ベルト、コンベヤーベルト、または強い機械的応力下のシーリングであるが、これらに限定されない。
【0062】
本願による複合ワイヤは、多種多様な補強構造体に含まれ得る。
【0063】
本願は、本願による少なくとも1つの複合ワイヤを含む、空気入りまたは非空気入りの車両または航空機用タイヤ用の補強ベルトにも関する。補強ベルトは通例、一体にゴム引きされたコードの構造であり、タイヤのキャッププライと補強カーカスとの間に位置する。複合ワイヤは、単一の複合ワイヤとして、または本願による更なる複合ワイヤ、もしくは異なる材料の繊維、ヤーンもしくはコードとともにヤーンもしくはコードの一部としてベルトに含まれ得る。ベルトにおいては、複合ワイヤは製織、編成または編組された補強材料の一部であってもよい。本願による複合ヤーンは、タイヤのビード補強材、キャッププライまたはカーカスにさらに含まれていてもよい。
【0064】
本願は、本願による少なくとも1つの複合ワイヤを含む、空気入りまたは非空気入りの車両または航空機用タイヤ用のビード補強材にも関する。ビード補強材は、タイヤのビード部に位置する。ビード補強材は、本願による複合ワイヤを単一の複合ワイヤまたは複合ワイヤの束として含むことができ、この束は、本願による複合ワイヤのみを含んでいても、または本願による複合ワイヤを他の材料から作られたヤーンもしくはコードとともに含んでいてもよい。ビード補強材は、「チェーファー」または「フリッパー」という表現でも当業者に知られている。
【0065】
本願は、本願による少なくとも1つの複合ワイヤを含む、空気入りまたは非空気入りの車両または航空機用タイヤ用の補強カーカスにも関する。補強カーカスは通例、コードで作られた1つ以上の織物層を含む。カーカスの層は、放射状に配置されていてもよく(いわゆる「ラジアルタイヤ」)、または対向する角度でクロスプライされていてもよい(いわゆる「バイアスタイヤ」)。複合ワイヤは、単一の複合ワイヤとして、または本願による更なる複合ワイヤ、もしくは異なる材料の繊維、ヤーンもしくはコードとともにヤーンもしくはコードの一部としてカーカスに含まれ得る。カーカスにおいては、複合ワイヤは製織、編成または編組された補強材料の一部であってもよい。
【0066】
本願は、本願による少なくとも1つの複合ワイヤを含む、空気入りまたは非空気入りの車両または航空機用タイヤ用のキャッププライにも関する。キャッププライは通例、タイヤのトレッドの下に位置し、通例、タイヤの回転方向に配向したコードを含む。複合ワイヤは、単一の複合ワイヤとして、または本願による更なる複合ワイヤ、もしくは異なる材料の繊維、ヤーンもしくはコードとともにヤーンもしくはコードの一部としてキャッププライに含まれ得る。キャッププライにおいては、複合ワイヤは製織、編成または編組された補強材料の一部であってもよい。
【0067】
本願は、本願による少なくとも1つの複合ワイヤを含む空気入りまたは非空気入りの車両または航空機用タイヤにも関する。
【0068】
一実施形態では、タイヤは、本願によるビード補強材を備えていてもよい。一実施形態では、本願のビード補強材はフリッパーである。一実施形態では、本願のビード補強材はチェーファーである。
【0069】
一実施形態では、タイヤは本願による補強カーカスを備える。
【0070】
一実施形態では、タイヤは本願によるキャッププライを備える。
【0071】
一実施形態では、タイヤは本願によるベルトを備える。
【0072】
驚くべきことに、ビード補強材に埋め込まれた補強繊維を含む少なくとも1つの熱可塑性ストリングをさらに含む場合、本願によるタイヤ中のスチールの量をさらに減少させることができることが見出された。
【0073】
タイヤまたはその他の任意の用途において、本願による熱可塑性ストリングで本願による複合ワイヤを置き換えることもできる。
【0074】
本願によると、ストリングは円形、楕円形、長楕円形、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形、七角形、八角形または他の多角形の断面を有する円筒状または角柱状の細長い物体である。本願によるストリングの最大直径は、最大でもストリングの長さの10分の1である。典型的な場合、本願によるストリングの長さは、最大直径の少なくとも数千倍である。本願によるストリングは、均質な物体であり、すなわち、ストリングは、少なくとも外側に関して一体構造である。しかしながら、これは、本願によるストリングが繊維、フィラメントまたは粒子等のより小さな部分または断片を含んではならないことを意味するものではなく、上記のより小さなまたは断片は、ストリングが外側まで一体となるように実質的に完全に覆われている。
【0075】
一実施形態では、熱可塑性ストリングは、フィラメントの形状を有する。熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも0.3mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも0.4mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも0.6mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも0.8mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも1.0mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも1.2mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも1.4mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも1.6mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも1.8mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも2.0mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、少なくとも2.3mmである。
【0076】
熱可塑性ストリングの直径は、最大でも2.5mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、最大でも2.3mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、最大でも2.1mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、最大でも1.9mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、最大でも1.7mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、最大でも1.5mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、最大でも1.2mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、最大でも0.9mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、最大でも0.7mmである。一実施形態では、熱可塑性ストリングの直径は、最大でも0.5mmである。
【0077】
熱可塑性ストリングは、任意の熱可塑性または熱硬化性材料のものであり得る。考え得る有機ポリマーは、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンフラノエート(PEF)等)、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド(ポリアミド-5、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-5,6、ポリアミド-4,10、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,8、ポリアミド-10またはポリアミド-11等)、パラポリフェニレンテレフタルアミドもしくはメタポリフェニレンイソフタルアミド等の芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリウレタン(PUR)、または上記材料のモノマーを含むコポリマー、または上記材料の混合物もしくはそのブレンド等のあらゆる熱可塑性および/または熱硬化性ポリマーであるが、この選択に限定されない。熱可塑性ストリングの材料は、全体的または部分的に生物学的供給源および/またはリサイクル供給源からのものであり得る。
【0078】
補強繊維は、当該技術分野で既知のあらゆる種類の有機ポリマーまたは無機材料であり得る。考え得る無機材料はガラス、炭素、バサルト、スチールまたはアルミニウムである。考え得る有機ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、レーヨンもしくはリヨセル等のセルロース系フィラメント、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド-5、ポリアミド-6、ポリアミド-6,6、ポリアミド-5,6、ポリアミド-5,10、ポリアミド-4,10、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,8、ポリアミド-10もしくはポリアミド-11等の脂肪族ポリアミド、パラポリフェニレンテレフタルアミドもしくはメタポリフェニレンイソフタルアミド等の芳香族ポリアミド、絹のようなタンパク質繊維、ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)もしくは芳香族ポリエステル、またはそれらの混合物である。補強繊維の材料は、全体的または部分的に生物学的供給源および/またはリサイクル供給源からのものであり得る。
【0079】
熱可塑性ストリングは、本願による複合ワイヤのシースと同じまたは異なる補強繊維を含み得る。熱可塑性ストリングは、本願による複合ワイヤのコア部材と同じまたは異なる補強繊維を含み得る。
【0080】
補強繊維は、単一のフィラメント、複数の平行なフィラメントの形態、または加撚ヤーンもしくはコードとして熱可塑性ストリングに含まれ得る。
【0081】
一実施形態では、共押出技術を用いて補強繊維を熱可塑性材料に埋め込む。熱可塑性ストリングは、熱可塑性ストリングの総質量をベースとして少なくとも23体積%の補強繊維を含む。一実施形態では、熱可塑性ストリングは、熱可塑性ストリングの総質量をベースとして少なくとも29体積%の補強繊維を含む。
【0082】
熱可塑性ストリングは、熱可塑性ストリングの総質量をベースとして最大でも50体積%の補強繊維を含む。一実施形態では、熱可塑性ストリングは、熱可塑性ストリングの総質量をベースとして最大でも45体積%の補強繊維を含む。補強繊維は、バインダーまたは結合剤等の当業者に既知のあらゆる種類のサイジング剤で処理することができる。重要な結合剤は、例えばレゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス-(RFL)-ディップとして当業者に知られている。他の化学物質をベースとした他の結合剤も知られている。
【0083】
一実施形態では、補強繊維は、熱可塑性ストリングの中心に位置する。
【0084】
熱可塑性ストリングは単独で、または本願による複合ワイヤ、および/もしくは同じもしくは異なる材料のコード、スレッドもしくはヤーンとともにビード補強材に含まれ得る。熱可塑性ストリングは、他の熱可塑性ストリングとともに加撚もしくはケーブリングされ、かつ/または本願による複合ワイヤとともに加撚もしくはケーブリングされ、かつ/または同じもしくは異なる材料のコード、スレッドもしくはヤーンとともに加撚もしくはケーブリングされてビード補強材に含まれ得る。
【0085】
実施例
全ての実施例において、剛性測定は、ASTM D885の第38節に準拠して行ったが、10本のコードで作られたサンプルの代わりに1本のコードのみを試験するように変更した。
【0086】
全ての変形例について示した剛性結果は、3回の測定の平均結果である。
【0087】
比較例
本願による複合ワイヤの剛性の指標を与えるために、タイヤ補強材に使用される典型的なスチールワイヤおよびコードを表1に参照として示す。
【0088】
表1:略語:NT-通常張力、炭素含有量が0.7%までのスチール、HT-高張力、炭素含有量が0.8%までのスチール;ST-超高張力、炭素含有量が0.9%までのスチール;UT-極超高張力、炭素含有量が0.96%までのスチール。「2×0.28ST」は、0.28mmおよびSTグレードの2本のスチールワイヤを撚り合わせたことを意味する。「2+1×0.22HT」は、初めに太さ0.22mmおよびHTグレードの2本のワイヤを撚り合わせ、得られたコードをさらに太さ0.22mmおよびHTグレードの1本のワイヤと加撚することを意味する。
【0089】
【0090】
表1から、典型的なスチールコードで最大1800cN近くの剛性が容易に達成されることが容易に認められる。
【0091】
実施例
一連の試験において、本願による幾つかの複合ワイヤの剛性データを試験した。表2に18個のサンプルの値を示す。
【0092】
表2:様々な線密度(3番目の数字)のナイロン(NY)またはPETヤーンの2つの群を巻回したコア部材としての様々な太さ(斜線の前の数字)のPETモノフィラメントに埋め込まれた様々な太さ(mm単位、斜線の後の数字)の指定のグレードのスチールワイヤから得られた複合ワイヤ。全てのコア部材に、記載の線密度の2本のヤーンを巻回する。940および1400dtexのナイロンヤーンは、それぞれ140または210本のフィラメントからなる。1100および1670dtexのPETヤーンは、それぞれ300または446本のフィラメントからなる。1と表示されるものを除く全ての複合ワイヤを、十分に確立されたRFL-ディッピング手順を用いてディッピングした。
【0093】
【0094】
表2から、スチールワイヤでは必要でも可能でもないRFLディップが、複合ワイヤの剛性に大きな影響を与えることがわかる。
【0095】
表3は、様々な太さ(mm単位、斜線の後の数字)の記載のグレードのスチールモノフィラメントが、様々な太さ(斜線の前の数字)のPETモノフィラメントに埋め込まれた、本願による熱可塑性ストリングの4つの例を示す。
【0096】
【0097】
表4-dtex単位の線密度(斜線の後の数字)の2本のアラミドフィラメントを巻回した、ミリメートル単位の様々な太さ(斜線の前の数字)のPETコア(コア内に補強繊維を含まない)からなる複合ワイヤ。1と表示されるものを除く全ての複合ワイヤを、十分に確立されたRFL-ディッピング手順を用いてディッピングした。アラミドヤーンは、それぞれ500および1000本のフィラメントからなるものであった。
【0098】
【0099】
また、表4に示す結果から、巻回数が複合ワイヤについて測定される剛性に影響を与えることが示される。さらに、35番および37番の例の比較によって、得られる剛性に対するディッピングの影響も示される。
【0100】
図面に、本願による複合ワイヤの2つの実施形態および巻付け角を示す。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】コア部材1と、コア部材の周りに巻き付けられたかまたは編組された補強スレッド2の2つの群とを有する、本願による複合ワイヤの一部を示す図である。図には、巻付け角αについての0°および90°の定義、ならびにコア部材の直径dが示してある。2つの巻回間の距離、いわゆる巻付けピッチをaと呼ぶ。
【
図2】コア部材1と、コア部材に巻き付けられた補強スレッド2の2つの群とを有する、本願による複合ワイヤの実施形態を示す図である。コア部材は補強繊維3を含む。
【
図3】コア部材1と、コア部材の周りに編組された補強スレッド2の2つの群とを有する、本願による複合ワイヤの実施形態を示す図である。コア部材は補強繊維3を含む。
【国際調査報告】