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特表2024-509142HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体
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  • 特表-HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体 図1A
  • 特表-HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体 図1B
  • 特表-HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体 図2
  • 特表-HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体 図3
  • 特表-HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体 図4
  • 特表-HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体 図5
  • 特表-HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体 図6
  • 特表-HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体 図7
  • 特表-HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】HCN2調節剤として有用なピリミジン又はピリジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/14 20060101AFI20240221BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20240221BHJP
   C07D 498/04 20060101ALI20240221BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C07D413/14
C07D471/04 106C
C07D498/04 101
C07D401/14 CSP
C07D471/04 106
A61K31/444
A61K31/506
A61P25/02
A61P25/06
A61P27/16
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553153
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 GB2022050554
(87)【国際公開番号】W WO2022185057
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】2103012.7
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513200313
【氏名又は名称】キングス・カレッジ・ロンドン
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】マクノートン ピーター エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ カレン
(72)【発明者】
【氏名】クランプ スー
(72)【発明者】
【氏名】ネイラー アラン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C065
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB01
4C063CC22
4C063CC51
4C063DD12
4C063EE01
4C065AA04
4C065AA05
4C065BB05
4C065CC01
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL01
4C065PP03
4C065PP12
4C072AA01
4C072BB02
4C072CC02
4C072CC11
4C072EE02
4C072FF07
4C072GG01
4C072HH07
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC37
4C086BC68
4C086CB05
4C086CB22
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZA34
4C086ZC41
(57)【要約】
式(I)
【化1】
(式中、置換基は、本明細書において定義される)
の化合物及びその薬学的に許容される塩。この化合物は、過分極活性化環状ヌクレオチド調整イオンチャネル2(HCN2)阻害剤である。この化合物を含む医薬組成物及び神経因性疼痛を含む、HCN2によって媒介される病状の治療又は予防のためのこの化合物の使用も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
は、N又はCRであり;
は、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-ORB1、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~6シクロアルキル及びC3~6シクロアルキル-C1~6アルキル-から選択され、R中の任意のアルキル、アルケニル、アルキニル又はシクロアルキル基は、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-ORB2から独立して選択される1~4つの置換基で任意選択的に置換され;
は、N又はCR20であり;
20は、H、ハロ、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され;
は、独立して、出現するごとに、ハロ、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され;
Aは、O又はNRであり;
は、H、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル及びC3~6シクロアルキル-C1~6アルキル-から選択され;
は、N又はCR32であり、Xは、N又はCR33であり、Xは、N又はCR34であり、Xは、N又はCR35であり、ただし、X、X、X及びXの2つ以下は、Nであり;
32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立して、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-NRA3A3及び-ORB3から選択され;
、R及びRは、それぞれ独立して、H及びC1~4アルキルから選択されるか、又は
及びRは、それらが結合される炭素原子と一緒に、C3~6シクロアルキルを形成し;
は、N又はCRであり;
は、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、-C(O)NRA4A4、-N(RA4)C(O)RB4、-C(O)RB4及び-S(O)B4から選択され;
は、独立して、出現するごとに、H、ハロ、-CN、ニトロ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、-OR10、-NR1011、-S(O)10、-C(O)R10、-OC(O)R10、-C(O)OR10A、-C(O)NR1011、-N(R11)C(O)R10、-N(R11)C(O)NR1011、-N(R11)C(O)OR10、-N(R11)SO10、-SONR1011、C3~6シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、フェニル及び5又は6員ヘテロアリールから選択され;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基は、1~4つのR12基で任意選択的に置換され、及び前記フェニル又はヘテロアリール基は、1~4つのR13基で任意選択的に置換され;
81及びR82は、それぞれ独立して、H、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OH及び-OC1~4アルキルから選択され;
10は、独立して、出現するごとに、H、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル及びC3~6シクロアルキルから選択され;前記アルキル又はシクロアルキル基は、1~4つのR14基で任意選択的に置換され;
10Aは、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル及びC3~6シクロアルキルから選択され;前記アルキル又はシクロアルキル基は、1~4つのR14基で任意選択的に置換され;
11は、独立して、出現するごとに、H及びC1~6アルキルから選択されるか;又は
10及びR11は、それらが結合される窒素と一緒に、4~7員ヘテロシクリルを形成し、前記ヘテロシクリルは、ハロ、=O、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-ORB7から選択される1又は2つの置換基で任意選択的に置換され;
12及びR14は、それぞれ独立して、出現するごとに、ハロ、=O、-CN、ニトロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、-ORB5、-NRA5A5、-S(O)B5、-C(O)RB5、-NRA5C(O)RB5、-C(O)NRA5A5、-NRA5SOB5及び-SONRA5A5から選択され;
13は、独立して、出現するごとに、ハロ、-CN、ニトロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、-ORB6、-NRA6A6、-S(O)B6、-C(O)RA6、-NRA6C(O)RB6、-C(O)NRA6A6、-NRA6SOB6、-SONRA6A6から選択され;
B1及びRB3は、独立して、出現するごとに、H、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され;
B2、RB4、RB5、RB6及びRB7は、独立して、出現するごとに、H、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択され;
A3、RA4、RA5及びRA6は、独立して、出現するごとに、H及びC1~4アルキルから選択され;
mは、0、1及び2から選択される整数であり;及び
xは、独立して、出現するごとに、0、1、2及び3から選択される整数であり;
ただし、X、X、X、X、X、Xの少なくとも1つは、Nである)
の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
は、CRであり、及びRは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は、CRであり、及びRは、H、ハロ及びC1~4アルキルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は、CRであり、及びRは、ハロ及びC1~4アルキルから選択される(任意選択的に、Rは、F又はメチルである)、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
は、CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
は、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、-OR10、-NR1011、-S(O)10(ここで、xは、0、1又は2、好ましくは1又は2である)、-C(O)R10、-C(O)NR1011、-N(R11)C(O)R10、-N(R11)C(O)NR1011、-N(R11)C(O)OR10、-N(R11)SO10、-SONR1011、C3~6シクロアルキル、O、S及びNから選択される1又は2つの環ヘテロ原子を含有する4~6員ヘテロシクリル、フェニル並びに5又は6員ヘテロアリールから選択され;
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基は、1~4つのR12基で任意選択的に置換され、及び前記フェニル又はヘテロアリール基は、1~4つのR13基で任意選択的に置換される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
は、H、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)、-CN、C1~3アルキル、-S(O)1~3アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-C1~3アルキル-OH、-C1~3アルキル-OMe、-O-C1~3アルキル、-O-C2~3アルキル-OH、-O-C2~3アルキル-OMe、-C1~3アルキル-S(O)1~3アルキル、-C1~3アルキル-C(O)NH、-C1~3アルキル-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C1~3アルキル-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
は、H、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)、-CN、C1~3アルキル、-S(O)1~3アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-O-C2~3アルキル-OH及び-O-C2~3アルキル-OMeから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
は、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)及び-CNから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
は、-S(O)1~4アルキル(例えば、-S(O)Me)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
は、Hである、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
81及びR82は、独立して、H、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OC1~4アルキル及び-OC1~4ハロアルキルから選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
81及びR82は、Hである、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
基:
【化2】
は、
【化3】
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
基:
【化4】
は、
【化5】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
は、Nである、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
は、Nであり、Xは、CR33であり、且つX及びXは、CHである、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
は、Nである、請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
は、CHである、請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
は、CRであり、及びRは、H、-CN、C1~4アルキル、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C3~5シクロアルキルから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル又はシクロアルキル基は、C1~4アルキル及び-ORB2から独立して選択される1~4つの置換基で任意選択的に置換される、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
は、CRであり、及びRは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択される(任意選択的に、Rは、H、-CN及びC1~4アルキルから選択される)、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
は、CHである、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
は、Nである、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
は、CR32であり、Xは、CR33であり、Xは、CR34であり、Xは、CR35であり、且つX及びXの一方は、Nである(任意選択的に、X、X、X及びXは、CHである)、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
Aは、Oである、請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
Aは、NRであり、及びRは、H及びC1~4アルキルから選択される(任意選択的に、Aは、NH又はN(Me)である)、請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
mは、0である、請求項1~26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
及びRは、Hであり、及びRは、H又はC1~3アルキルである(任意選択的に、R、R及びRは、Hである)、請求項1~27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】

【化6】
は、式
【化7】
のものであり;任意選択的に、前記基
【化8】
は、
【化9】
である、請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
本明細書における表1に示される化合物から選択される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項32】
薬剤として使用するための、請求項1~30のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項33】
過分極活性化環状ヌクレオチド調整イオンチャネル2(HCN2)によって媒介される疾患又は病状の治療に使用するための、請求項1~30のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項34】
HCN2によって媒介される疾患又は病状の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、有効量の、請求項1~30のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項35】
HCN2によって媒介される前記疾患又は病状は、疼痛、例えば神経因性疼痛又は炎症性疼痛であり、例えば、前記疼痛は、末梢神経因性疼痛である、請求項33に記載の使用のための化合物又は請求項34に記載の治療方法。
【請求項36】
耳鳴り又は関連する疾患の治療に使用するための、請求項1~30のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項37】
片頭痛の治療に使用するためのHCN2阻害剤。
【請求項38】
請求項1~30のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩である、請求項37に記載の使用のためのHCN2阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アザベンズイソオキサゾール及びアザインダゾール化合物、この化合物を含む医薬組成物並びに過分極活性化環状ヌクレオチド調整イオンチャネル2(HCN2)によって媒介される病状の治療、例えば疼痛の治療、特に炎症性及び/又は神経因性疼痛の治療のためのこの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
痛覚は、極端な温度又は組織損傷など、内部又は外部刺激による身体に対する潜在的に有害な刺激を検出する能力であり、侵害受容器の活性化によって生じる。侵害受容器は、情報を脳に伝達し、ここで、急性疼痛の知覚が生じる。痛覚は、急性疼痛信号をもたらす、存在する又は差し迫った損傷に対して個体に警告する重要な感覚である。しかしながら、慢性疼痛を有する患者において、この警告信号は、真の脅威がなくても持続し、生活様式及び労働形態に大きい制限を課すことがある。疼痛は、年間約4000万回の医師の診察、約40億日の労働損失日数及び多くの患者にとってのクオリティオブライフの大幅な低下をもたらす。
【0003】
炎症性疼痛(IP)は、損傷した、炎症を起こした又はストレスを受けた組織から侵害受容(疼痛感知)神経終末上に放出される炎症性メディエータの作用によって生成される末梢侵害受容知覚線維の興奮性の増加に起因する。IPは、慢性又は急性であり得る。急性IPは、組織損傷又は傷害後の即時炎症反応に関連し、例えば術後疼痛、歯痛及び捻挫又は筋断裂などの傷害を含む。一般に、急性IPは、傷害が治癒するにつれて解消する。しかしながら、IPは、慢性でもあり得る。慢性IPは、多くの病状、例えば感染症、傷害、変形性関節症及び関節リウマチの特徴である。
【0004】
IPは、典型的には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)又はさらに深刻な症例ではオピオイドで処置され、これらは、両方とも有効であるが、大きい副作用を有する。NSAIDsに関連する望ましくない副作用としては、心筋梗塞の発生の増加とともに、胃及び腎臓の合併症が挙げられる。オピオイドに関連する副作用としては、便秘及び中枢神経系副作用、例えば認識機能障害、鎮静及び嗜癖が挙げられる。さらに、通常の用量でも、鎮静剤は、呼吸抑制を促進し、多くの早死にの原因である。
【0005】
神経因性疼痛(NP)は、末梢又は交感神経系の知覚神経の損傷及び/又は機能障害、例えば末梢線維(Aβ、Aδ及びC線維)及び中枢ニューロンを含む体性感覚系の病変又は疾患によって引き起こされる慢性疼痛の一形態である。体性感覚系への損傷は、脳への感覚信号の伝達の混乱をもたらし、疼痛を生じさせる。神経因性疼痛の症状としては、感覚異常(例えば、知覚過敏、痛覚過敏、異痛症(非侵害刺激による疼痛)及び痛感過敏)として知られている疼痛刺激及び他の刺激の知覚異常並びに/又は典型的には深部痛及びうずく痛みとして感知される持続する疼痛が挙げられる。NPは、長期にわたることが多く、典型的には主要な原因の見掛け上の解消後に持続する。
【0006】
世界で推定5000万人の患者は、癌に関連しない、3か月を超える期間の疼痛として定義される慢性の非悪性疼痛を患っている。神経因性疼痛は、生涯のある時点で西欧の人々の約8%を侵す。
【0007】
2型糖尿病によって引き起こされる神経損傷に起因する疼痛である疼痛糖尿病性神経障害(PDN)は、肥満の発生の増加とともに急速に成長し、この段階で非常に有効な治療選択肢を有さない大きい患者負担である。帯状疱疹(Herpes zoster)(帯状疱疹(shingle))発生後の長期にわたる疼痛であるヘルペス後神経痛(PHN)も特に高齢者の間で深刻な問題である。癌又はそれを治療するのに使用される化学療法剤(化学療法誘発性末梢神経障害、CIPN)のいずれかによって引き起こされる疼痛は、さらなる患者負担を課し、化学療法によって誘発される神経因性疼痛に耐える患者の能力は、治療における制限要因であることが多い。術後神経因性疼痛は、外科手術後に発生することがあり、患者の慢性疼痛を引き起こし、これは、手術創傷が治癒した後に長く持続し得る。これらの主要な患者群に加えて、三叉神経痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)及び陰部神経痛など、多くのより希少であるが、激しい神経因性疼痛病態がある。さらに、多くの臨床医は、神経因性疼痛を治療するのに使用される薬物がこれらの病態にいくらかの有効性を有することに基づいて、神経損傷又は神経圧迫、例えば腰痛、外傷後の神経損傷(例えば、自動車衝突事故による頸椎捻挫)、線維筋痛及び手根管症候群を含む多くの一般的な病態における神経因性疼痛の要素が存在すると考えている。
【0008】
ガバペンチノイド、セロトニン、ノルアドレナリン選択的再取り込み阻害剤(SNRIs)及び三環式抗うつ剤など、NPのための既存療法は、低い有効性を有し、70%もの患者は、限定的な緩和を報告するか又は緩和を報告せず、単一の患者における50%の緩和を得るために治療する必要がある数(NNT)は、典型的には、7~10の範囲である(Finnerup,N.B.et al.,2015,Lancet Neurol.14,162-173)。NPのための既存療法に関連する多くの副作用もある。例えば、ガバペンチン、NPのための現行の第一選択療法は、鎮静を引き起こす一方、アミトリプチリン(三環式抗うつ剤)は、多くの薬物間相互作用とともに、鎮静、悪夢、性的不能及び精神錯乱などの精神作用を有する。
【0009】
疼痛、特にIP及びNPのための新たな治療が依然として必要とされている。
【0010】
過分極活性化、環状ヌクレオチド調整(HCN)イオンチャネルは、4つのアイソフォーム、HCN1、2、3及び4を含み、これは、-60~-90mVの膜電位の範囲内の過分極によって活性化されたIと呼ばれる(I又はIとしても知られている)内向き電流を有する(Kaupp&Seifert(2001)“Molecular diversity of pacemaker ion channels.”Annu.Rev.Physiol.63:235-257;Biel et al.,(2002)“Cardiac HCN channels:structure、function、and modulation.”Trends Cardiovasc.Med.12(5):206-212)。
【0011】
HCNアイソフォームは、心臓組織及び神経組織の両方において重要なペースメーカー機能を果たす。
【0012】
HCN4は、心調律の主要な調節因子である。心臓HCN4の誘導性検出は、数日後にマウスにおいて致命的となる心拍数の漸進的な減少を引き起こす(Baruscotti et al.,“Deep bradycardia and heart block caused by inducible cardiac-specific knockout of the pacemaker channel gene HCN4”;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 108,2011,1705-1710)。HCN2は、心房性及び心室性心臓組織内で発現されるが、動物及びヒトの両方においてペースメーカー領域、洞房結節から大部分が排除されるようである(Herrmann S,Layh B&Ludwig A.“Novel insights into the distribution of cardiac HCN channels:an expression study in the mouse heart”.J.Mol.Cell.Cardiol.51“997-1006“2011;Herrmann S“Hofmann F“Stieber J&Ludwig A.“HCN channels in the heart:lessons from mouse mutants”.Br.J.Pharmacol.166“501-509“2012;Chandler“N.J.,et al.“Molecular architecture of the human sinus node:insights into the function of the cardiac pacemaker.”Circulation 119(12):1562-1575,2009)。HCN2の役割は、HCN4より重大ではないとも考えられ、これは、HCN2全身的ノックアウトマウス及びヒトHCN2欠失変異体の両方の心機能が比較的正常であるためであり、これは、HCN2選択的遮断剤が徐脈を引き起こさないことを示唆している(Ludwig et al.“Absence epilepsy and sinus dysrhythmia in mice lacking the pacemaker channel HCN2”EMBO J 22,2003,216-224;及びDiFrancesco et al.,“Recessive loss-of-function mutation in the pacemaker HCN2 channel causing increased neuronal excitability in a patient with idiopathic generalized epilepsy”;J Neurosci.31,2011,17327-17337)。
【0013】
HCN1及びHCN2は、脳及び体性感覚ニューロンの両方で発現される主要なアイソフォームである(Ludwig et al 2003、前掲)。
【0014】
NPは、従来、中枢神経系の感作及び/又はリモデリングに起因するとされてきた。しかしながら、より最近の研究では、疼痛が、初期の損傷が見掛け上解消された後にさらに長く末梢侵害受容器の反復性発火に由来し続けることは、HCNイオンチャネルの末梢制限遮断剤の使用によって及び単一の侵害受容器(疼痛を感知する神経線維)における活性の記録によって示された。これらの知見は、HCNイオンチャネルの末梢制限遮断剤が新たな種類の鎮痛剤を提供するであろうことを示唆する。(Young et al.,“Inflammatory and neuropathic pain are rapidly suppressed by peripheral block of hyperpolarisation-activated cyclic nucleotide-gated ion channels”;Pain.155;2014,1708-19;Noh,S.,et al.(2014).“The heart-rate-reducing agent,ivabradine,reduces mechanical allodynia in a rodent model of neuropathic pain.”Eur.J.Pain 18(8):1139-1147;Serra,J.,et al.(2012),“Microneurographic identification of spontaneous activity in C-nociceptors in neuropathic pain states in humans and rats.”Pain 153(1):42-55;Tsantoulas,C.,et al.(2016).“HCN2 ion channels:basic science opens up possibilities for therapeutic intervention in neuropathic pain.”Biochem.J.473(18):2717-2736において概説されている)。
【0015】
HCNイオンチャネルの活性化の負の範囲は、それらが、-60mVをめったに超えない神経線維の静止膜電位においてほとんど活性化されないことを意味する。しかしながら、多くの炎症性メディエータ、とりわけ強力な炎症誘発物質PGE2及びブラジキニンは、Gs共役GPCRに結合し、これは、したがって、アデニル酸シクラーゼを活性化し、それによりcAMP(環状アデノシン一リン酸)の増加を引き起こし、これは、したがって、HCNイオンチャネルのC末端ドメインにおける部位に直接結合する。HCN1及びHCN3ではなく、HCN2及びHCN4アイソフォームの活性化の電圧範囲は、増加した細胞内cAMPによって正の方向にシフトされる。したがって、侵害受容神経線維における活性化HCN2イオンチャネルを通過する内向き電流は、反復性発火を引き起こし、生体内で疼痛の感知をもたらす(Emery et al.,“HCN2 ion channels play a central role in inflammatory and neuropathic pain”;Science 333,2011,1462-1466)。
【0016】
いくつかの研究は、神経損傷又は炎症後、侵害受容器における増加したHCN2チャネル発現及び/又はI電流を示したが、他の研究は、発現の変化を見出すことができないか又は減少さえ見出した(Tsantoulas,C.,et al.(2016)、前掲において概説される)。増加した内向きI電流は、膜電位をより脱分極した値にシフトさせ、それにより活性化閾値を低下させることが予想される。HCN2の上方制御は、ニューロンのI電流及び過剰興奮性の増加と一致して、炎症性疼痛の前臨床モデルにおいて侵害受容ニューロンの細胞体及び末端において実証された。同じことは、HCNイオンチャネル発現の変化を示さないか又はHCNイオンチャネル発現の減少を示す報告がある神経因性疼痛モデルには当てはまらない(Chaplan SR,Guo HQ,Lee DH,Luo L,Liu C,Kuei C,Velumian AA,Butler MP,Brown SM&Dubin AE.,2003,Neuronal hyperpolarization-activated pacemaker channels drive neuropathic pain.J.Neurosci 23,1169-1178;Tsantoulas et al.,2017、前掲)。しかしながら、上記に概説されるように(Tsantoulas et al.,2016、前掲において概説される)、細胞内cAMPの増加など、チャネル過剰発現より強化されたI電流への別の経路がある。
【0017】
HCN2は、侵害受容(疼痛感知)ニューロンにおいて発現され、PGE2などの炎症性メディエータによるHCN2の電圧依存性の調節は、IPの主要な要因であることが示されている。炎症性疼痛(PGE2、カラギーナン及びホルマリンの注入によって引き起こされる疼痛を含む)についてのマウスモデルにおいて、HCN2の遮断及び/又は標的化された遺伝子欠失が無痛覚をもたらすことも示されている(Emery et al.2011、前掲)。
【0018】
HCN2が侵害受容器から遺伝的に欠失したNPの慢性絞扼損傷(CCI)マウスモデルにおける研究では、マウスは、神経病変後にNPの兆候を示さなかった(Emery et al.,2011 前掲)。その後の研究は、HCNイオンチャネルの非選択的遮断剤であるイバブラジンが、神経損傷、癌化学療法及び糖尿病性神経障害モデルを含む、神経因性疼痛の様々なマウスモデルにおいて有効な鎮痛剤であることを示した(Young et al.,2014、前掲;Tsantoulas et al., 2017、前掲)。動物疼痛モデルにおけるHCN2イオンチャネルの中心的役割についてのさらなる証拠は、Emery et al.,“HCN2 ion channels:an emerging role as the pacemakers of pain”Trends Pharmacol.Sci.33(8):2012,456-463;及びTsantoulas et al.,Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated 2(HCN2)ion channels drive pain in mouse models of diabetic neuropathy.Sci Transl.Med 9,2017,eaam6072に記載されている。この研究は、HCN2選択的遮断剤がNP及びIPのための有効な治療を提供するであろうことを示唆する。
【0019】
これらのマウスモデルで観察される無痛覚は、末梢侵害受容ニューロン単独においてHCN2イオンチャネルを遮断するか又は遺伝的に欠失させることによって得られ、これは、使用されるCN2 HCN2遮断剤が末梢に制限され、標的化された遺伝子欠失が末梢侵害受容ニューロンに制限されていたためである。マウスモデルにおいて、全てのHCN2の全体的な遺伝子欠失は、対照的に、てんかんを引き起こし、体重増加及び早期死亡を引き起こさなかった(Ludwig et al.Int.J.Mol.Sci.2015 Jan;16(1):1429-1447)。したがって、末梢制限HCN2遮断剤が脳におけるHCN2チャネルを遮断することに関連し得る中枢神経系媒介性の副作用も回避しながら、NP及びIPのための有効な鎮痛剤を提供することが予想される。中枢神経系副作用の回避又は最小化は、オピオイド及びガバペンチノイドなどの他の鎮痛剤に関する主要な問題にも対処するであろう。選択的HCN2遮断剤は、NSAIDsに関連する望ましくない胃、腎臓及び心臓の副作用又は鎮静剤によって引き起こされる便秘の一部又は全ても回避し得る。
【0020】
実験(Tsantoulas C et al.2017 前掲)は、イバブラジン及びHCN2の侵害受容器に標的化された遺伝子欠失の両方が、ヒトの病態を非常によく模倣する糖尿病性神経障害のマウスモデルにおいて完全な無痛覚をもたらしたことを示した。これらの実験は、神経因性疼痛が主に末梢に由来することを実証し、これは、いずれの場合にも介入が末梢であり、イバブラジンが末梢に制限され、HCN2遺伝子欠失が末梢侵害受容器に標的化されていたためである。末梢HCN2遮断が有効な無痛覚をもたらすであろうという考えは、NPが、特にNPを治療するのに中枢神経系浸透剤療法を必要とするであろう中枢神経系現象であるという一般的な考え方と対照的である。
【0021】
ZD7288、ザテブラジン、シロブラジン、KW-3407、YM758及びイバブラジンを含む、いくつかの非選択的なHCNイオンチャネル遮断剤が公知である。これらの化合物は、主に徐脈剤として開発された(Romanelli et al.Current Topics in Medicinal Chemistry,16:1764-1791及びPostea et al.Nature Reviews Drug Discovery 10,2011,903-914)。
【0022】
非選択的な及び末梢制限HCN遮断剤であるイバブラジンは、安定狭心症及び心不全に関連する症状を治療するためにFDAによって承認された。HCN4及びHCN1チャネル、これらの病態におけるイバブラジンの標的は、心拍数の調節のために重要であり、イバブラジンの作用様式は、HCN4及びHCN1を遮断することによって徐脈を引き起こし、それにより心臓の酸素必要量を減少させることである。したがって、上述される研究は、イバブラジンがNPに対する鎮痛効果を提供することを示したが、この化合物は、HCN4及び/又はHCN1阻害に関連する心臓ペースメーキングに対するその影響のため、臨床において鎮痛剤として好適ではない。したがって、例えば疼痛の治療のための、HCN2イオンチャネルを標的とする好ましい鎮痛剤は、徐脈などの心臓の副作用を回避するか又は最小限に抑えるために、かなりの程度までHCN4及び/又はHCN1と相互作用すべきではない。
【0023】
国際公開第02/100408号パンフレットは、感覚細胞内のHCNペースメーカーチャネルによって媒介される電流を減少させる化合物を用いて神経因性疼痛を治療するための方法を開示している。この文献は、HCN1及びHCN3の調節に焦点を合わせ、可能な鎮痛剤としてZD7288、ZM-227189、ザテブラジン、DK-AH268、アリニジン及びイバブラジンを開示している。
【0024】
国際公開第97/40027号パンフレットは、様々な精神病性障害の治療において有用であることが記載される特定のベンズイソオキサゾール及びベンズイミダゾール化合物を開示している。
【0025】
国際公開第99/18941号パンフレットは、精神疾患の治療のためのI調節剤の使用を特許請求している。
【0026】
国際公開第2011/003895号パンフレットは、ベンズイソオキサゾール環上の5、6又は7位においてカルボキサミド基によって置換される特定のベンズイソオキサゾール化合物を開示している。この化合物は、神経因性疼痛又は炎症性疼痛の治療において有用であり得るIチャネル遮断剤であることが記載されている。この参考文献は、先に出願された国際公開第97/40027号パンフレット及び国際公開第99/18941号パンフレットに開示される化合物が、国際公開第2011/003895号パンフレットにおいて特許請求されるカルボキサミド置換化合物と比較して高い中枢神経系浸透を有し、望ましくない副作用をもたらすことを記載している。
【0027】
国際公開第2011/000915号パンフレットは、1つ以上のHCNアイソフォームを選択的に阻害することが記載される特定のザテブラジン誘導体を開示している。
【0028】
国際公開第2011/019747号パンフレットは、慢性疼痛の治療のためのHCNチャネル調節剤として有用であることが記載される特定のプロポフォール誘導体を開示している。
【0029】
HCNチャネル阻害剤、特にHCN2チャネルを選択的に阻害する化合物が依然として必要とされている。
【0030】
耳鳴りは、身体の外部の物理的音源の非存在下で聞こえる音の意識的知覚である。耳鳴りは、耳の中で鳴り響く音、ブーンという音、ヒューヒューという音又はシューシューという音としてそれ自体が一般的に現れる。耳鳴りは、成人のアメリカ人の25.3%に発生すると推定され、7.9%は、それを高頻度で経験する(Shargorodsky et al.,Prevalence and characteristics of tinnitus among US adults.Am.J.Med.2010 Aug;123(8):711-8)。耳鳴りは、例えば、睡眠並びに集中力及び知的作業を遂行する能力に影響を与えることにより、クオリティオブライフに深刻な影響を与え得る。耳鳴りは、不安、うつ病及び極端な場合には自殺にもつながり得る。
【0031】
耳鳴りは、大きい音への曝露、老人性難聴、耳又は頭部損傷、耳感染、聴神経に影響を与える腫瘍及び耳の特定の疾患(例えば、メニエール病)を含む多くの要因によって引き起こされ得る。耳鳴りは、特定の薬物、例えばサリチレート(例えば、メサラミン又はアスピリン、特に高用量で摂取される場合)、キニーネ抗マラリア剤、アミノグリコシド系抗生物質、特定の化学療法、特に白金細胞毒性薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン)及びループ利尿剤(例えば、フロセミド、エタクリン酸及びトルセミド)の公知の副作用でもある。耳鳴りは、聴覚過敏、音の歪み、音嫌悪症候群、音恐怖症及び中枢性聴覚情報処理障害などの聴覚機能障害にも関連する。
【0032】
耳鳴りの治療のためにFDAによって現在承認されている薬物療法は、存在せず、したがってこの病態の有効な治療に対する満たされていない医療上の必要性がある。
【0033】
本発明者らは、本明細書に開示される新規な化合物を含むHCN2阻害剤が、この病態の動物モデルを用いた耳鳴りの治療において有効であることを初めて実証した。耳鳴りは、脳に由来し、耳の中の関連する騒音をもたらす中枢神経系現象であると一般に考えられる(Henry et al.Underlying Mechanisms of Tinnitus:Review and Clinical Implications;J.Am.Acad.Audiol.2014January;25(1):5-126)。したがって、中枢神経系浸透剤療法が耳鳴りを治療するのに必要とされるであろうことが予想された。この予想に反して、本明細書における実施例は、末梢制限HCN遮断剤、イバブラジン及び本発明の末梢制限HCN2阻害剤がこの病態のインビボモデルにおいて耳鳴りのための有効な治療を提供することを示す。これらの結果は、末梢制限HCN2阻害剤が、脳内のHCN2阻害に起因する中枢神経系関連の副作用のリスクの低下というさらなる利益とともに、耳鳴り及びメニエール病などの関連する病態の有効な治療を提供し得ることを示唆する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明によれば、式(I):
【化1】
(式中、
は、N又はCRであり;
は、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-ORB1、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~6シクロアルキル及びC3~6シクロアルキル-C1~6アルキル-から選択され、R中の任意のアルキル、アルケニル、アルキニル又はシクロアルキル基は、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-ORB2から独立して選択される1~4つの置換基で任意選択的に置換され;
は、N又はCR20であり;
20は、H、ハロ、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され;
は、独立して、出現するごとに、ハロ、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され;
Aは、O又はNRであり;
は、H、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル及びC3~6シクロアルキル-C1~6アルキル-から選択され;
は、N又はCR32であり、Xは、N又はCR33であり、Xは、N又はCR34であり、Xは、N又はCR35であり、ただし、X、X、X及びXの2つ以下は、Nであり;
32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立して、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-NRA3A3及び-ORB3から選択され;
、R及びRは、それぞれ独立して、H及びC1~4アルキルから選択されるか、又は
及びRは、それらが結合される炭素原子と一緒に、C3~6シクロアルキルを形成し;
は、N又はCRであり;
は、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、-C(O)NRA4A4、-N(RA4)C(O)RB4、-C(O)RB4及び-S(O)B4から選択され;
は、独立して、出現するごとに、H、ハロ、-CN、ニトロ、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、-OR10、-NR1011、-S(O)10、-C(O)R10、-OC(O)R10、-C(O)OR10A、-C(O)NR1011、-N(R11)C(O)R10、-N(R11)C(O)NR1011、-N(R11)C(O)OR10、-N(R11)SO10、-SONR1011、C3~6シクロアルキル、3~7員ヘテロシクリル、フェニル及び5又は6員ヘテロアリールから選択され;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基は、1~4つのR12基で任意選択的に置換され、及び前記フェニル又はヘテロアリール基は、1~4つのR13基で任意選択的に置換され;
81及びR82は、それぞれ独立して、H、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OH及び-OC1~4アルキルから選択され;
10は、独立して、出現するごとに、H、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル及びC3~6シクロアルキルから選択され;前記アルキル又はシクロアルキル基は、1~4つのR14基で任意選択的に置換され;
10Aは、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル及びC3~6シクロアルキルから選択され;前記アルキル又はシクロアルキル基は、1~4つのR14基で任意選択的に置換され;
11は、独立して、出現するごとに、H及びC1~6アルキルから選択されるか;又は
10及びR11は、それらが結合される窒素と一緒に、4~7員ヘテロシクリルを形成し、前記ヘテロシクリルは、ハロ、=O、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-ORB7から選択される1又は2つの置換基で任意選択的に置換され;
12及びR14は、それぞれ独立して、出現するごとに、ハロ、=O、-CN、ニトロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、-ORB5、-NRA5A5、-S(O)B5、-C(O)RB5、-NRA5C(O)RB5、-C(O)NRA5A5、-NRA5SOB5及び-SONRA5A5から選択され;
13は、独立して、出現するごとに、ハロ、-CN、ニトロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~6シクロアルキル、-ORB6、-NRA6A6、-S(O)B6、-C(O)RA6、-NRA6C(O)RB6、-C(O)NRA6A6、-NRA6SOB6、-SONRA6A6から選択され;
B1及びRB3は、独立して、出現するごとに、H、C1~6アルキル及びC1~6ハロアルキルから選択され;
B2、RB4、RB5、RB6及びRB7は、独立して、出現するごとに、H、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択され;
A3、RA4、RA5及びRA6は、独立して、出現するごとに、H及びC1~4アルキルから選択され;
mは、0、1及び2から選択される整数であり;及び
xは、独立して、出現するごとに、0、1、2及び3から選択される整数であり;
ただし、X、X、X、X、X、Xの少なくとも1つは、Nである)
の化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0035】
本発明の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供される。
【0036】
薬剤として使用するための、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩又は本発明の医薬組成物も提供される。ある実施形態において、HCN2によって媒介される疾患又は病状の治療に使用するための本発明の化合物が提供される。
【0037】
対象におけるHCN2によって媒介される疾患又は病状を治療する方法であって、有効量の本発明の化合物又は本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む方法も提供される。
【0038】
ある実施形態において、本発明の化合物は、神経因性疼痛及び/又は炎症性疼痛を含む疼痛の治療に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明の化合物は、神経因性疼痛、特に慢性神経因性疼痛の治療に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明の化合物は、末梢神経因性疼痛、特に慢性末梢神経因性疼痛の治療に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明の化合物は、炎症性疼痛、特に慢性炎症性疼痛の治療に使用するためのものである。
【0039】
さらなる態様は、耳鳴り又は関連する疾患の治療に使用するためのHCN2阻害剤を提供する。この態様のある実施形態において、HCN2阻害剤は、末梢制限HCN2阻害剤、例えばイバブラジンである。ある実施形態において、この態様のHCN2阻害剤は、本発明の化合物である。好ましくは、HCN2阻害剤は、本発明の末梢制限化合物である。したがって、耳鳴り又は関連する疾患(例えば、メニエール病又は聴覚過敏)の治療又は予防に使用するための本発明の化合物も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A】実施例25において使用されるHCN1及びHCN2電圧ステッププロトコルを示す。
図1B】実施例25において使用されるHCN4電圧ステッププロトコルを示す。
図2】実施例26に係るhERGシグナルの測定に使用される電圧プロトコルを示す。
図3】実施例27に係るhNa1.5シグナルの測定に使用される電圧プロトコルを示す。
図4】実施例29の音響驚愕(GPIAS)試験のギャップ誘導阻害を用いたHCN2イオンチャネルの薬理学的遮断による耳鳴りに対する効果を示す。
図5】実施例29に係る短期(サリチレート)モデルにおける耳鳴りの行動兆候に対するHCNイオンチャネル遮断の効果及び耳鳴りに対するイバブラジンの効果を示す。
図6】実施例29に係る騒音曝露モデルにおける耳鳴りの行動兆候に対するHCNイオンチャネル遮断の効果を示す。
図7】実施例30に係るパルス音に対する聴性脳幹反応(ABR)閾値に対するHCN2の遺伝子欠失の影響を示す。図7における白丸データ点は、聴覚標的化HCN2欠失マウスからのものである。陰影付きのデータ点は、WTマウスからのものである。
図8】フォンフライフィラメントを用いて試験されるマウス神経因性疼痛モデルにおける0.5mg/kg(黒丸)及び1mg/g(陰影付きの丸)で腹腔内(i.p.)投与される実施例4の化合物の機械的鎮痛効果を示す。効果は、ビヒクル(「Veh」、白丸)と比べて示される。図に示されるビヒクル注入に対する有意性(、p<0.05)。y軸上の機械的疼痛閾値は、このモデルにおいて化合物を試験する5日前に行われた坐骨神経部分損傷(PSNL)前のベースラインに対して正規化された荷重として示される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
特に記載しない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される以下の用語は、以下に記載される以下の意味を有する。
【0042】
本明細書において使用される際、「HCN2」は、「過分極活性化環状ヌクレオチド依存性カリウム及びナトリウムチャネル2」を表す。完全長ヒトHCN2 mRNA転写産物の参照配列は、受託番号NM_001194、version NM_001194.3でGenBankデータベースから入手可能である。
【0043】
「本発明の化合物」、「本発明のHCN2阻害剤」、「本発明のHCN2遮断剤」などの用語は、本明細書に列挙される実施例のいずれかを含む、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)若しくは(VIII)の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物若しくは溶媒和物の塩を指す。
【0044】
「治療すること」又は「治療」という用語は、何らかの客観的又は主観的パラメータ、例えば軽減;寛解;症状の減少又は病状若しくは病態を患者にとってより耐えられるものにすること;変性若しくは衰弱の速度を遅らせること;変性の最終点をより衰弱させないものにすること;患者の身体的若しくは精神的健康状態を改善することを含む、疾患、病状若しくは病態の治療又は改善の成功の何らかの兆候を指す。例えば、本明細書における特定の方法は、疼痛の症状を減少させることにより、疼痛、特に炎症性疼痛及び/又は神経因性疼痛を治療する。「治療すること」という用語及びその活用形は、病状、病態又は疾患の防止(例えば、炎症性疼痛又は神経因性疼痛の1つ以上の症状の発生を防止することを含む。
【0045】
疾患又は病態に関連する物質又は物質の活性若しくは機能の文脈における「関連する」又は「と関連する」という用語は、疾患若しくは病態が物質又は物質の活性若しくは機能によって(全体的に若しくは部分的に)引き起こされるか、又は疾患若しくは病態の症状がそれにより(全体的に若しくは部分的に)引き起こされることを意味する。例えば、HCN2チャネル活性に関連する疾患又は病態の症状は、HCN2チャネルの活性のレベルの増加又はチャネルの発現の増加に(全体的に又は部分的に)起因する症状であり得る。本明細書において使用される際、疾患に関連していると記載されるものは、原因物質である場合、疾患の治療のための標的であり得る。例えば、HCN2チャネルの活性のレベルの増加に関連する疾患は、HCN2チャネルの活性のレベルを低下させるのに有効な薬剤(例えば、本明細書に記載される化合物)で治療され得る。
【0046】
本明細書において定義される際、HCN2の阻害剤に関連する「阻害」、「阻害する」、「阻害すること」、「遮断する」又は「遮断すること」などの用語は、HCN2チャネルの活性又は機能のレベル(例えば、阻害剤の非存在下におけるチャネルの活性又は機能のレベルと比べたHCN2チャネルの構成要素)にマイナスの影響を与える(例えば、低下させる)ことを意味する。ある実施形態において、阻害は、疾患又は疾患の症状(例えば、HCN2の増加したレベルの活性に関連する疼痛)の減少を指す。ある実施形態において、阻害は、チャネル電流のレベルの減少を指す。例えば、本発明の化合物は、チャネルを介して電流流れを遮断若しくは防止するか、又はチャネルの作用を阻害するように作用するアロステリック効果を生じさせるために、HCN2チャネルに結合し得る。したがって、阻害は、少なくとも一部、部分的に又は全体的に刺激を遮断すること、活性化を低下、防止若しくは遅らせること又はチャネル活性若しくはチャネルタンパク質の量を不活性化、脱感作若しくは下方制御することを含み得る。
【0047】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」及び「含有する」という用語及びそれらの変化形は、「限定はされないが、含む」を意味し、それらは、他の部分、添加剤、構成要素、整数又は工程を除外することが意図されない(除外しない)。本明細書の説明及び特許請求の範囲全体を通して、単数は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、複数形並びに単数形を想定するものと理解されるべきである。
【0048】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、周期表の第17族のハロゲンの1つを指す。特に、この用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。好ましくは、この用語は、フッ素、塩素又は臭素を指す。
【0049】
m~nという用語は、m~n個の炭素原子を有する基を指す。
【0050】
「C1~6アルキル」という用語は、1、2、3、4、5又は6つの炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状炭化水素鎖、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル及びn-ヘキシルを指す。「C1~4アルキル」は、同様に、4つ以下の炭素原子を含有するこのような基を指す。アルキレン基は、2価アルキル基であり、同様に直鎖状又は分枝状であり得、分子の残りの部分への2つの結合点を有し得る。さらに、アルキレン基は、例えば、この段落において列挙されるアルキル基の1つに対応し得る。アルキル及びアルキレン基は、非置換であるか又は1つ以上の置換基で置換され得る。可能な置換基は、以下に記載される。アルキル基の置換基は、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素、OH、C~Cアルコキシであり得る。アルキル基の他の置換基が代わりに使用され得る。
【0051】
「C1~6ハロアルキル」、例えば「C1~4ハロアルキル」という用語は、出現するごとに独立して選択される少なくとも1つのハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素で置換される炭化水素鎖を指す。ハロゲン原子は、炭化水素鎖における任意の位置に存在し得る。例えば、C1~6ハロアルキルは、クロロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロエチル、例えば1-クロロメチル及び2-クロロエチル、トリクロロエチル、例えば1,2,2-トリクロロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、フルオロエチル、例えば1-フルオロエチル及び2-フルオロエチル、トリフルオロエチル、例えば1,2,2-トリフルオロエチル及び2,2,2-トリフルオロエチル、クロロプロピル、トリクロロプロピル、フルオロプロピル、トリフルオロプロピルを指し得る。ハロアルキル基は、フルオロアルキル基、すなわち少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭化水素鎖であり得る。
【0052】
「C2~6アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含み、2、3、4、5又は6つの炭素原子を有する分枝状又は直鎖状炭化水素鎖を含む。二重結合は、E又はZ異性体として存在し得る。二重結合は、炭化水素鎖の任意の可能な位置にあり得る。例えば、「C2~6アルケニル」は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、ペンタジエニル、ヘキセニル及びヘキサジエニルであり得る。
【0053】
「C2~6アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含み、2、3、4、5又は6つの炭素原子を有する分枝状又は直鎖状炭化水素鎖を含む。三重結合は、炭化水素鎖の任意の可能な位置にあり得る。例えば、「C2~6アルキニル」は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル及びヘキシニルであり得る。
【0054】
「C3~6シクロアルキル」という用語は、3、4、5又は6つの炭素原子を含有する飽和炭化水素環系を含む。例えば、「C~Cシクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン又はビシクロ[1.1.1]ペンタンであり得る。
【0055】
「ヘテロシクリル」、「複素環式」又は「複素環」という用語は、環系中にO、S及びNから独立して選択される1、2又は3つのヘテロ原子を含む(換言すると、環系を形成する原子の1、2又は3つは、O、S及びNから選択される)3員~7員非芳香族単環式又は二環式の飽和又は部分飽和基を含む。部分飽和とは、環が1つ又は2つの二重結合を含み得ることを意味する。これは、特に5~7員を有する単環式環に当てはまる。二重結合は、典型的には、2つの炭素原子間にあるであろうが、炭素原子及び窒素原子間にあり得る。二環系は、スピロ縮合され得、すなわち、その場合、環は、単一の炭素原子を介して互いに連結され;近接して縮合され得、すなわち、その場合、環は、2つの隣接する炭素又は窒素原子を介して互いに連結されるか;又はそれらは、橋頭を共有し得、すなわち、環は、2つの非隣接炭素又は窒素原子を介して互いに連結される。複素環式基の例としては、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、ジオキサニル及び置換環状エーテルなどの環状エーテルが挙げられる。環位置に少なくとも1つの窒素を含む複素環としては、例えば、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロトリアジニル、テトラヒドロピリジニル、ホモピペリジニル、ホモピペラジニル、2,5-ジアザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルなどが挙げられる。典型的な硫黄含有複素環としては、テトラヒドロチエニル、ジヒドロ-1,3-ジチオラン、テトラヒドロ-2H-チオピラン及びヘキサヒドロチエピンが挙げられる。他の複素環としては、ジヒドロオキサチオリル、テトラヒドロオキサゾリル、テトラヒドロ-オキサジアゾリル、テトラヒドロジオキサゾリル、テトラヒドロオキサチアゾリル、ヘキサヒドロトリアジニル、テトラヒドロオキサジニル、テトラヒドロピリミジニル、ジオキソリニル、オクタヒドロベンゾフラニル、オクタヒドロベンズイミダゾリル及びオクタヒドロベンゾチアゾリルが挙げられる。硫黄を含有する複素環について、SO又はSO基を含有する酸化硫黄複素環も含まれる。例としては、テトラヒドロチエン1,1-ジオキシド及びチオモルホリニル1,1-ジオキシドなど、テトラヒドロチエニル及びチオモルホリニルのスルホキシド及びスルホン形態が挙げられる。1又は2つのオキソ(=O)を有するヘテロシクリル基についての好適な値であり、例えば2オキソピロリジニル、2-オキソイミダゾリジニル、2-オキソピペリジニル、2,5-ジオキソピロリジニル、2,5-ジオキソイミダゾリジニル又は2,6-ジオキソピペリジニルである。特定のヘテロシクリル基は、窒素、酸素又は硫黄から選択される1、2又は3つのヘテロ原子を含有する飽和単環式3~7員ヘテロシクリル、例えばアゼチジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、モルホリニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチエニル1,1-ジオキシド、チオモルホリニル、チオモルホリニル1,1-ジオキシド、ピペリジニル、ホモピペリジニル、ピペラジニル又はホモピペラジニルである。当業者が理解するであろうように、任意の複素環が炭素又は窒素原子などの任意の好適な原子を介して別の基に連結され得る。例えば、「ピペリジニル」又は「モルホリニル」という用語は、環窒素を介して連結されるピペリジン-1-イル又はモルホリン-4-イル環(すなわちピペリジノ又はモルホリノ環)を含み、この用語は、炭素が連結された環(例えば、ピペリジン-4-イル又はモルホリン-3-イル)も含む。
【0056】
「架橋環系」という用語は、2つの環が3つ以上の原子を共有する環系を含み、例えばAdvanced Organic Chemistry,Jerry March,4th Edition,Wiley Interscience,pages 131-133,1992を参照されたい。
【0057】
「スピロ二環式環系」という用語は、2つの環系が1つの共通のスピロ炭素原子を共有する環系を含み、すなわち、複素環は、単一の共通のスピロ炭素原子を介してさらなる炭素環式又は複素環に連結される。
【0058】
「ヘテロシクリル-Cm~nアルキル」は、Cm~nアルキレン基に共有結合されたヘテロシクリル基を含み、これらの両方が本明細書に定義され;ヘテロシクリル-Cm~nアルキル基は、アルキレン基中の炭素原子を介して分子の残りの部分に連結される。基「アリール-Cm~nアルキル」、「ヘテロアリール-Cm~nアルキル」は、同じように定義される。
【0059】
「-NRRで置換された-Cm~nアルキル」及び「-ORで置換されたCm~nアルキル」は、同様に、Cm~nアルキレン基に共有結合された-NRR又は-OR基を指し、基は、アルキレン基中の炭素原子を介して分子の残りの部分に連結される。
【0060】
「R10及びR11は、それらが結合される窒素と一緒に、4~7員ヘテロシクリルを形成する」への言及は、R10及びR11が同じ窒素原子に結合され、窒素が連結されたヘテロシクリルを形成することを指す。例として、基-NR1011は、例えばピロリジン-1-イル、ピペリジン-1イル、ピペラジン-1イル又はモルホリン-4イル基を形成し得る。
【0061】
「芳香族」という用語は、全体として置換基に適用されるとき、環又は環系内の共役π系中に4n+2個の電子を有する単環又は多環式環系を含み、共役π系に寄与する全ての原子は、同じ面内にある。
【0062】
「アリール」という用語は、芳香族炭化水素環系を含む。環系は、環内の共役π系中に4n+2個の電子を有し、共役π系に寄与する全ての原子は、同じ面内にある。例えば、「アリール」は、フェニル及びナフチルであり得る。アリール系自体が他の基で置換され得る。
【0063】
「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素又は硫黄から選択される1つ以上(例えば、1~4つ、特に1、2又は3つの)ヘテロ原子を組み込む芳香族単環式又は二環式環を含む。環又は環系は、共役π系中に4n+2個の電子を有し、共役π系に寄与する全ての原子は、同じ面内にある。
【0064】
ヘテロアリール基は、例えば、5員又は6員単環式環であり得る。環は、窒素、硫黄及び酸素から典型的に選択される約4つ以下のヘテロ原子を含有し得る。典型的には、ヘテロアリール環は、3つ以下ヘテロ原子、より通常には、2つ以下、例えば単一のヘテロ原子を含有するであろう。一実施形態において、ヘテロアリール環は、少なくとも1つの環窒素原子を含有する。ヘテロアリール環中の窒素原子は、イミダゾール若しくはピリジンの場合のように塩基性であり得るか、又はインドール又はピロール窒素の場合のように本質的に非塩基性であり得る。一般に、環の任意のアミノ基置換基を含む、ヘテロアリール基中に存在する塩基性窒素原子の数は、5未満であろう。
【0065】
5員ヘテロアリール基の例としては、限定はされないが、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、フラザニル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサトリアゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル及びテトラゾリル基が挙げられる。
【0066】
6員ヘテロアリール基の例としては、限定はされないが、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル及びトリアジニルが挙げられる。
【0067】
「任意選択的に置換される」という用語は、置換される基、構造又は分子のいずれか及び置換されないものを含む。
【0068】
任意の置換基が「1つ以上」基から選択される場合、この定義は、規定の基の1つから選択される全ての置換基又は規定の基の2つ以上から選択される置換基を含むことが理解されるべきである。
【0069】
部分が置換される場合、それは、化学的に可能であり、且つ原子価要件と合致する、部分における任意の点で置換され得る。部分は、1つ以上の置換基、例えば1、2、3又は4つの置換基で置換され得;任意選択的に基上に1又は2つの置換基がある。2つ以上の置換基がある場合、置換基は、同じであるか又は異なり得る。
【0070】
置換基は、それらが化学的に可能である位置でのみ存在し、当業者は、その置換が化学的に可能であるか及び可能ではないかを過度の労力なしに(実験的又は理論的のいずれかで)決定することができる。
【0071】
オルト、メタ及びパラ置換は、当技術分野において十分に理解される用語である。誤解を避けるために、「オルト」置換は、
【化2】
で終端する結合によって示されるように、例えば以下の例におけるフルオロ基のように単一の基であるか又は分子の他の部分であるかにかかわらず、隣接する炭素が置換基を有する置換パターンである。
【化3】
【0072】
「メタ」置換は、2つの置換基が互いに1つの炭素を隔てた炭素上にある置換パターンであり、すなわち置換される炭素間に単一の炭素原子を有する。換言すると、別の置換基を有する原子から離れた2番目の原子上に置換基がある。例えば、以下の基は、メタ置換されている。
【化4】
【0073】
「パラ」置換は、2つの置換基が互いに2つの炭素を隔てた炭素上にある置換パターンであり、すなわち置換される炭素間に2つの炭素原子を有する。換言すると、別の置換基を有する原子から離れた3番目の原子上に置換基がある。例えば、以下の基は、パラ置換されている。
【化5】
【0074】
【化6】
又は「」で終端する結合は、結合が、構造中に示されない別の原子に結合されることを表す。環状構造内で終端し、環構造の原子で終端しない結合は、結合が原子価によって許容される場合、環構造中の原子のいずれかに結合され得ることを表す。
【0075】
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例とともに記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分又は基は、それらと不適合でない限り、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態又は実施例に適用可能であることが理解されるべきである。本明細書(いずれかの添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される特徴の全て及び/又はそのように開示されるいずれかの方法又はプロセスの工程の全ては、このような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが互いに矛盾する組合せを除いて、任意の組合せで組み合わされ得る。本発明は、いずれかの上記の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(いずれかの添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される特徴のいずれかの新規な1つ若しくはいずれかの新規な組合せ又はそのように開示されるいずれかの方法又はプロセスの工程のいずれかの新規な1つ若しくはいずれかの新規な組合せに及ぶ。
【0076】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時に又は本明細書の前に出願され、且つ本明細書で公開された全ての論文及び文献に向けられ、全てのこのような論文及び文献の内容が参照により本明細書に援用される。
【0077】
本発明の化合物を構成する様々な官能基及び置換基は、典型的には、化合物の分子量が1000を超えないように選択される。より通常には、化合物の分子量は、750未満、例えば700未満、又は650未満、又は600未満、又は550未満であろう。より好ましくは、分子量は、525未満、例えば500以下である。
【0078】
本発明の任意の化合物の好適な又は好ましい特徴は、任意の他の態様の好適な特徴でもあり得る。
【0079】
本発明は、本発明の化合物の薬学的に許容される塩を想定している。これらは、化合物の酸付加及び塩基塩を含み得る。これらは、化合物の酸付加及び塩基塩であり得る。
【0080】
好適な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。例としては、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、1,5-ナフタレンジスルホネート、2-ナプシレート、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素/リン酸二水素、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩及びトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。
【0081】
好適な塩基塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン及び亜鉛塩が挙げられる。酸及び塩基の半塩、例えば半硫酸塩及び半カルシウム塩も形成され得る。好適な塩についての概説について、“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use”by Stahl and Wermuth(Wiley-VCH,Weinheim,Germany,2002)を参照されたい。
【0082】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、以下の方法の1つ以上によって調製され得る:
(i)本発明の化合物を所望の酸又は塩基と反応させることによる;
(ii)酸又は塩基不安定性保護基を、本発明の化合物の好適な前駆体から除去することによるか、又は所望の酸又は塩基を用いて、好適な環状前駆体、例えばラクトン又はラクタムを開環させることによる;又は
(iii)本発明の化合物の1つの塩を、適切な酸又は塩基との反応によって又は好適なイオン交換カラムを用いて別の塩に転化することによる。
【0083】
これらの方法は、典型的には、溶液中で行われる。得られた塩は、沈殿し、ろ過によって回収され得るか又は溶媒の蒸発によって回収され得る。得られた塩のイオン化の程度は、完全イオン化からほぼ非イオン化まで様々であり得る。
【0084】
同じ分子式を有するが、それらの原子の結合の性質若しくは配列又は空間におけるそれらの原子の配置が異なる化合物は、「異性体」と呼ばれる。空間におけるそれらの原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。互いに鏡像でない立体異性体は、「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ね合わされない鏡像であるものは、「鏡像異性体」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、それは、4つの異なる基に結合され、一対の鏡像異性体が可能である。鏡像異性体は、その不斉中心の絶対配置によって特徴付けられ得、Cahn及びPrelogのR及びS順位則又はその分子が偏光面を回転させる様式によって記載され、右旋性又は左旋性として(すなわちそれぞれ(+)又は(-)異性体として)表される。キラル化合物は、個々の鏡像異性体又はそれらの混合物のいずれかとして存在し得る。同じ割合の鏡像異性体を含有する混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。本発明の化合物が2つ以上の立体中心を有する場合、(R)及び(S)立体異性体の任意の組合せが考えられる。(R)及び(S)立体異性体の組合せがジアステレオマー混合物又は単一のジアステレオ異性体をもたらし得る。本発明の化合物は、単一の立体異性体として存在し得るか、又は立体異性体の混合物、例えばラセミ混合物及び他の鏡像異性体混合物及びジアステレオマー混合物であり得る。混合物が鏡像異性体の混合物である場合、鏡像体過剰率は、上記に開示されるもののいずれかであり得る。化合物が単一の立体異性体である場合、化合物は、不純物として他のジアステレオ異性体又は鏡像異性体をさらに含有し得る。したがって、単一の立体異性体は、必ずしも100%の鏡像体過剰率(e.e.)又はジアステレオマー過剰率(d.e.)を有するとは限らず、約少なくとも85%のe.e.又はd.e.を有し得る。
【0085】
本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心を有し得;したがって、このような化合物は、個々の(R)若しくは(S)立体異性体又はそれらの混合物として生成され得る。特に示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲における特定の化合物の説明又は命名は、個々の鏡像異性体及び混合物、それらのラセミ体又はその他の両方を含むことが意図される。立体化学の決定及び立体異性体の分離のための方法は、例えば、光学活性出発材料からの合成又はラセミ形態の分割により、当技術分野において周知である(Chapter 4 of “Advanced Organic Chemistry”,4th edition J.March,John Wiley and Sons,New York,2001における説明を参照されたい)。本発明の化合物のいくつかは、幾何異性体中心を有し得る(E及びZ異性体)。本発明は、HCN2阻害活性を有する全ての光学、ジアステレオ異性体及び幾何異性体及びそれらの混合物を包含することが理解されるべきである。
【0086】
Z/E(例えば、シス/トランス)異性体は、当業者に周知の従来の技術、例えばクロマトグラフィー及び分別結晶によって分離され得る。
【0087】
必要に応じて、個々の鏡像異性体の調製/単離のための従来の技術は、例えば、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又はキラル超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を用いた、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成又はラセミ体(又は塩又は誘導体のラセミ体)の分割を含む。したがって、本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、0~50体積%のイソプロパノール、典型的には2%~20%及び特定の例では0~5体積%のアルキルアミン、例えば0.1%のジエチルアミンを含有する、炭化水素、典型的にはヘプタン又はヘキサンからなる移動相を有する非対称樹脂において、クロマトグラフィー、典型的にはHPLCを用いて、鏡像異性的に富化された形態で得られ得る。代わりに、キラルSFCが超臨界流体中で用いられる場合、一般にCOが移動相として使用される。超臨界流体の特性は、1つ以上の共溶媒、例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノール、アセトニトリル又は酢酸エチルなどのアルコールを含めることによって変性され得る。溶出液の濃縮により、富化された混合物が得られる。
【0088】
代わりに、ラセミ体(又はラセミ体前駆体)は、好適な光学活性化合物、例えばアルコール又は本発明の化合物が酸性又は塩基性部分を含有する場合、塩基又は酸、例えば1-フェニルエチルアミン又は酒石酸と反応され得る。得られたジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィー及び/又は分別晶析によって分離され得、ジアステレオ異性体の一方又は両方は、当業者に周知の手段により、対応する純粋な鏡像異性体に転化され得る。化合物の鏡像異性体は、化合物の合成中にキラル補助基を用いても調製され得、好適なキラル中間体が化合物の中間体と反応され、その後、1つ以上のジアステレオ選択的な変換が行われる。次に、得られたジアステレオマーは、上述されるものなどの従来の方法を用いて分離され、その後、キラル補助基が除去されて所望の鏡像異性体が得られる。
【0089】
任意のラセミ体が結晶化するとき、2つの異なるタイプの結晶が可能である。第1のタイプは、両方の鏡像異性体を含有する1つの均質な形態の結晶が等モル量で生成される、上記で言及したラセミ体化合物(真のラセミ体)である。第2のタイプは、それぞれ単一の鏡像異性体を含む2つの形態の結晶が等モル量で生成される、ラセミ混合物又は集塊である。
【0090】
ラセミ混合物中に存在する結晶形態の両方が同一の物理的特性を有する一方、それらは、真のラセミ体と比較して、異なる物理的特性を有し得る。ラセミ混合物は、当業者に公知の従来の技術によって分離され得る -例えば、“Stereochemistry of Organic Compounds”by E.L.Eliel and S.H.Wilen(Wiley,1994)を参照されたい。
【0091】
本明細書に記載される化合物及び塩は、同位体標識され得る(又は「放射性標識される」)。したがって、1つ以上の原子は、自然界に典型的に見られる原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子で置換される。組み込まれ得る放射性核種の例としては、H(重水素の場合「D」とも記載される)、H(三重水素の場合「T」とも記載される)、11C、13C、14C、15O、17O、18O、13N、15N、18F、36Cl、123I、25I、32P、35Sなどが挙げられる。使用される放射性核種は、その放射性標識誘導体の具体的な用途に依存するであろう。例えば、インビトロ競合アッセイでは、H又は14Cが有用であることが多い。放射性イメージング用途では、11C又は18Fが有用であることが多い。ある実施形態において、放射性核種は、Hである。ある実施形態において、放射性核種は、14Cである。ある実施形態において、放射性核種は、11Cである。さらに、ある実施形態において、放射性核種は、18Fである。
【0092】
同位体標識化合物は、一般に、当業者に公知の従来の技術又は以前に用いられていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いる、記載されるものと類似の方法によって調製され得る。
【0093】
化合物中の重水素による水素の選択的置換は、化合物の代謝、化合物のPK/PD特性及び/又は化合物の毒性を調節し得る。例えば、重水素化は、半減期を増加させるか又は生体内での化合物のクリアランスを減少させ得る。重水素化は、毒性代謝産物の形成も阻害し、それにより安全性及び忍容性を改善し得る。本発明は、式(I)の化合物の重水素化誘導体を包含することが理解されるべきである。本明細書において使用される際、重水素化誘導体という用語は、特定の位置において少なくとも1つの水素原子が重水素で置換された本発明の化合物を指す。例えば、C1~4-アルキル基中の1つ以上の水素原子は、重水素で置換されて、重水素化C1~4-アルキル基、例えばCDが形成され得る。
【0094】
本発明の特定の化合物は、例えば、水和形態などの溶媒和並びに非溶媒和形態で存在し得る。本発明は、HCN2阻害活性を有する全てのこのような溶媒和形態又はその薬学的に許容される塩を包含することが理解されるべきである。
【0095】
本発明の特定の化合物は、多形を示し得、本発明は、HCN2阻害活性を有する全てのこのような形態を包含することも理解されるべきである。
【0096】
本発明の化合物は、いくつかの異なる互変異性体で存在し得、本発明の化合物への言及は、全てのこのような形態を含む。誤解を避けるために、化合物は、いくつかの互変異性体の1つで存在し得、1つのみが特に記載されるか又は示される場合、それにもかかわらず、全ての他のものが本発明の化合物によって包含される。互変異性体の例としては、例えば、以下の互変異性体対:ケト/エノール(以下に示される)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール及びニトロ/aci-ニトロにあるように、ケト、エノール及びエノラート形態が挙げられる。
【化7】
【0097】
本発明の化合物のインビボ効果は、本発明の化合物の投与後にヒト又は動物身体内で形成される1つ以上の代謝産物によって部分的に発揮され得る。
【0098】
式(I)の化合物の好適な薬学的に許容されるプロドラッグも本発明の一態様を形成することがさらに理解されるべきである。したがって、本発明の化合物は、化合物のプロドラッグ形態を包含し、本発明の化合物は、プロドラッグの形態で投与され得、すなわち本発明の化合物を放出するためにヒト又は動物身体内で分解される化合物である。プロドラッグは、本発明の化合物の物理的特性及び/又は薬物動態特性を変化させるために使用され得る。プロドラッグは、本発明の化合物が、特性変性基が結合され得る好適な基又は置換基を含む場合、形成され得る。プロドラッグの例としては、本発明の化合物中のカルボキシ基又はヒドロキシ基において形成され得る生体内で切断可能なエステル誘導体及び本発明の化合物中のカルボキシ基又はアミノ基において形成され得る生体内で切断可能なアミド誘導体が挙げられる。
【0099】
したがって、本発明は、有機合成によって利用可能にされる場合及びそのプロドラッグの切断によってヒト又は動物身体内で利用可能にされる場合、本明細書において定義される本発明の化合物を含む。したがって、本発明は、有機合成手段によって生成される式(I)の化合物及びさらに前駆体化合物の代謝によってヒト又は動物身体内で生成されるこのような化合物を含み、すなわち、式(I)の化合物は、合成的に生成された化合物又は代謝的に生成された化合物であり得る。
【0100】
本発明の化合物の好適な薬学的に許容されるプロドラッグは、合理的な医学的判断に基づいて、望ましくない薬理学的活性及び過度の毒性を伴わずに、ヒト又は動物身体への投与に好適であるとされるものである。
【0101】
様々な形態のプロドラッグは、例えば、以下の文献に記載されている:
a)Methods in Enzymology,Vol.42,p.309-396,edited by K.Widder,et al.(Academic Press,1985);
b)Design of Pro-drugs,edited by H.Bundgaard,(Elsevier,1985);
c)A Textbook of Drug Design and Development,edited by Krogsgaard-Larsen and H.Bundgaard,Chapter 5 “Design and Application of Pro-drugs”,by H.Bundgaard p.113-191(1991);
d)H.Bundgaard,Advanced Drug Delivery Reviews,8,1-38(1992);
e)H.Bundgaard,et al.,Journal of Pharmaceutical Sciences,77,285(1988);
f)N.Kakeya,et al.,Chem.Pharm.Bull.,32,692(1984);
g)T.Higuchi and V.Stella,“Pro-Drugs as Novel Delivery Systems”,A.C.S.Symposium Series,Volume 14;及び
h)E.Roche(editor),“Bioreversible Carriers in Drug Design”,Pergamon Press,1987。
【0102】
化合物
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(II):
【化8】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0103】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(III):
【化9】
(式中、X及びXの少なくとも1つは、Nである)
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0104】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(IV):
【化10】
(式中、Rは、Hではない)
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0105】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(V):
【化11】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0106】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(VI):
【化12】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0107】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(VII):
【化13】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0108】
ある実施形態において、式(I)の化合物は、式(VIII):
【化14】
(式中、R10は、Hではない)
の化合物又はその薬学的に許容される塩である。
【0109】
本発明の特定の化合物は、例えば、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)若しくは(VIII)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、式中、特に記載しない限り、R、R、R、R、R、R81、R82、R10、R33、A、X、X、X、X、X、X、X及びmのそれぞれは、上記又はこれ以降の段落(1)~(144)のいずれか1つ以上に定義される意味のいずれかを有する。
【0110】
1.Xは、CRであり、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C3~6シクロアルキル及びC3~6シクロアルキル-C1~6アルキル-から選択され、R中の前記アルキル、アルケニル、アルキニル又はシクロアルキル基は、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-ORB2から独立して選択される1~4つの置換基で任意選択的に置換される。
【0111】
2.Xは、CRであり、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C3~5シクロアルキルから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル又はシクロアルキル基は、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-ORB2から独立して選択される1~4つの置換基で任意選択的に置換される。
【0112】
3.Xは、CRであり、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C2~4アルケニル及びC2~4アルキニルから選択され、前記アルキル、アルケニル又はアルキニル基は、ハロ及び-ORB2から独立して選択される1又は2つの置換基で任意選択的に置換される。
【0113】
4.Xは、CRであり、Rは、H、-CN、C1~4アルキル、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル、C3~5シクロアルキルから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル又はシクロアルキル基は、C1~4アルキル及び-ORB2から独立して選択される1~4つの置換基で任意選択的に置換される。
【0114】
5.Xは、CRであり、Rは、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C2~4アルケニル、C2~4アルキニル及びC3~6シクロアルキルから選択され、R中の前記アルキル、アルケニル、アルキニル又はシクロアルキル基は、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-ORB2から独立して選択される1又は2つの置換基で任意選択的に置換される。
【0115】
6.Xは、CRであり、Rは、-CN、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~6シクロアルキル、C3~6シクロアルキル-C1~6アルキル及び-C1~6アルキル-ORB2から選択され、前記アルケニル及びアルキニル基は、ハロ、C1~4ハロアルキル及び-ORB2から選択される1又は2つの置換基で置換され;前記シクロアルキル又はシクロアルキル-アルキル基は、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-ORB2から独立して選択される1~4つの置換基で任意選択的に置換される。
【0116】
7.Xは、CRであり、Rは、-CN、C3~6シクロアルキル、-C1~4アルキル-ORB2、C2~4アルケニル、C2~4アルキニルから選択され、前記C2~4アルケニル又はC2~4アルキニルは、ハロ及び-ORB2から選択される置換基で任意選択的に置換される。
【0117】
8.Xは、CRであり、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択される。
【0118】
9.Xは、CRであり、Rは、H、-CN及びC1~3アルキルから選択される。
【0119】
10.Xは、CRであり、Rは、H、F、Cl、Br、-CN、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、メトキシ、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシエチル、メトキシメチル、1-メトキシエチル、2-メトキシエチル、エチニル、プロピニル及び3-ヒドロキシプロピニルから選択される。
【0120】
11.Xは、CRであり、Rは、H、-CN、ハロ(例えば、F、Cl又はBr、特に、Br)及びメチルから選択される。
【0121】
12.Xは、CRであり、Rは、H、-CN及びメチルから選択される。
【0122】
13.Xは、CRであり、Rは、-CN及びC1~3アルキル(例えば、メチル)から選択される。
【0123】
14.Xは、CRであり、Rは、-CNである。
【0124】
15.Xは、CRであり、Rは、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)である。
【0125】
16.Xは、CRであり、Rは、C1~3アルキル(例えば、メチル)である。
【0126】
17.Xは、CRであり、Rは、Hである。
【0127】
18.Xは、Nである。
【0128】
19.Xは、N又はCRであり、Rは、(1)~(17)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0129】
20.Xは、CR20であり、R20は、H、ハロ及びC1~4アルキルから選択される。
【0130】
21.Xは、CR20であり、R20は、H及びC1~3アルキルから選択される。
【0131】
22.Xは、CR20であり、R20は、Hである。
【0132】
23.Xは、Nである。
【0133】
24.Xは、N又はCR20であり、R20は、(20)~(22)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0134】
25.Xは、Nであり、Xは、CR20である。
【0135】
26.Xは、Nであり、Xは、CHである。
【0136】
27.Xは、CRであり、Xは、Nである。
【0137】
28.Xは、CRであり、Xは、Nであり、Rは、(1)~(17)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0138】
29.Xは、CHであり、Xは、Nである。
【0139】
30.X及びXは、Nである。
【0140】
31.Xは、CRであり、Xは、CR20である。
【0141】
32.Xは、CRであり、Xは、CR20であり、Rは、(1)~(17)のいずれか1つに定義されるとおりであり、R20は、(20)~(22)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0142】
33.Xは、CRであり、Xは、CHであり、Rは、(1)~(17)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0143】
34.X及びXは、CHである。
【0144】
35.Rは、独立して、出現するごとに、ハロ、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択される。
【0145】
36.Rは、ハロ及びC1~3アルキルから選択される。
【0146】
37.Rは、F、Cl、Br及びメチルから選択される。
【0147】
38.mは、0である。
【0148】
39.mは、1である。
【0149】
40.mは、1であり、Rは、(35)~(37)のいずれかに定義されるとおりである。
【0150】
41.Xは、N又はCHであり、Xは、N又はCHであり、mは、0である。
【0151】
42.Xは、CHであり、Xは、CHであり、mは、0である。
【0152】
43.Aは、Oである。
【0153】
44.Aは、NRである。
【0154】
45.Aは、NRであり、Rは、H及びC1~4アルキルから選択される。
【0155】
46.Aは、NRであり、Rは、Hである。
【0156】
47.Aは、NRであり、Rは、C1~3アルキルである。
【0157】
48.Aは、O又はNRであり、Rは、(45)~(47)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0158】
49.X、X、X及びXの1つのみは、Nである。
【0159】
50.Xは、Nであり、Xは、CR33であり、Xは、CR34であり、Xは、CR35である。
【0160】
51.Xは、Nであり、Xは、CR33であり、Xは、CHであり、Xは、CHである。
【0161】
52.Xは、Nであり、Xは、CR33であり、Xは、CHであり、Xは、CHであり、R33は、ハロ及び1~3アルキルから選択される。
【0162】
53.Xは、CR32であり、Xは、Nであり、Xは、CR34であり、Xは、CR35である。
【0163】
54.X、X及びXは、CHであり、Xは、Nである。
【0164】
55.Xは、CR32であり、Xは、CR33であり、Xは、Nであり、Xは、CR35である。
【0165】
56.X、X及びXは、CHであり、Xは、Nである。
【0166】
57.Xは、CR32であり、Xは、CR33であり、Xは、CR34であり、Xは、Nである。
【0167】
58.X、X及びXは、CHであり、Xは、Nである。
【0168】
59.X、X、X及びXは、CHである。
【0169】
60.R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立して、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択される。
【0170】
61.R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立して、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択される。
【0171】
62.R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、メチル、エチル及びイソプロピルから選択される。
【0172】
63.R33は、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択され;R32、R34及びR35は、Hである。
【0173】
64.R、R及びRは、それぞれ独立して、H及びC1~3アルキルから選択されるか、又は
及びRは、それらが結合される炭素原子と一緒に、シクロプロピルを形成する。
【0174】
65.Rは、H又はメチルである。
【0175】
66.Rは、Hである。
【0176】
67.R及びRは、それぞれ独立して、H及びC1~3アルキルから選択される。
【0177】
68.Rは、Hであり、Rは、H及びC1~3アルキルから選択される。
【0178】
69.Rは、Hであり、Rは、C1~3アルキル(例えば、メチル)である。
【0179】
70.R及びRは、Hである。
【0180】
71.R及びRは、Hであり、Rは、C1~3アルキル(例えば、メチル又はエチル)である。
【0181】
72.R、R及びRは、Hである。
【0182】
73.R、R及びRの1つは、C1~3アルキル(例えば、メチル)であり、他の2つの基は、Hである。
【0183】
74.Xは、Nである。
【0184】
75.Xは、CRである。
【0185】
76.Xは、CRであり、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~5シクロアルキル、-N(RA4)C(O)RB4及び-C(O)RB4から選択される。
【0186】
77.Xは、CRであり、Rは、-CN、-N(RA4)C(O)RB4及び-C(O)RB4から選択される。
【0187】
78.Xは、CRであり、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、C3~5シクロアルキル及び-C(O)RB4から選択される。
【0188】
79.Xは、CRであり、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択される。
【0189】
80.Xは、CRであり、Rは、ハロ、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択される。
【0190】
81.Xは、CRであり、Rは、ハロ及びC1~4アルキルから選択される。
【0191】
82.Xは、CRであり、Rは、H、F、Cl、Br、-CN、メチル、エチル及び-CFから選択される。
【0192】
83.Xは、CRであり、Rは、F及びメチルから選択される。
【0193】
84.Xは、CRであり、Rは、Hではない。
【0194】
85.Xは、CRであり、Rは、Hである。
【0195】
86.Xは、CRであり、Rは、(76)~(85)のいずれかに定義されるとおりである。
【0196】
87.Rは、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、-OR10、-NR1011、-S(O)10(ここで、xは、0、1又は2、好ましくは1又は2である)、-C(O)R10、-C(O)NR1011、-N(R11)C(O)R10、-N(R11)C(O)NR1011、-N(R11)C(O)OR10、-N(R11)SO10、-SONR1011、C3~6シクロアルキル、O、S及びNから選択される1又は2つの環ヘテロ原子を含有する4~6員ヘテロシクリル、フェニル並びに5又は6員ヘテロアリールから選択され;
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基は、1~4つのR12基で任意選択的に置換され、及び前記フェニル又はヘテロアリール基は、1~4つのR13基で任意選択的に置換される。
【0197】
88.Rは、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-OR10、-NR1011、-S(O)10(ここで、xは、0、1又は2、好ましくは1又は2である)、-C(O)NR1011、-N(R11)C(O)R10、-N(R11)C(O)NR1011、-N(R11)C(O)OR10、-N(R11)SO10、C3~6シクロアルキル、O、S及びNから選択される1又は2つの環ヘテロ原子を含有する4~6員ヘテロシクリル及び1又は2つの環窒素原子を含有する5又は6員ヘテロアリールから選択され;
前記アルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基は、1~4つのR12基で任意選択的に置換され、及び前記ヘテロアリール基は、1~4つのR13基で任意選択的に置換される。
【0198】
89.Rは、H、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-OR10、-NR1011、-S(O)10(ここで、xは、0、1又は2、好ましくは1又は2である)、-C(O)NR1011、-N(R11)C(O)R10、-N(R11)C(O)NR1011、-N(R11)C(O)OR10、-N(R11)SO10、C3~5シクロアルキル、1つの環窒素原子及び任意選択的にO、S及びNから選択される1つのさらなる環ヘテロ原子を含有する4~6員ヘテロシクリル及びヘテロアリールから選択され、前記ヘテロアリールは、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル及びイソチアゾリルから選択され;
前記アルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基は、1~4つのR12基で任意選択的に置換され、及び前記ヘテロアリール基は、1~4つのR13基で任意選択的に置換される。
【0199】
90.Rは、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-OR10、-NR1011、-S(O)10(ここで、xは、0、1又は2、好ましくは1又は2である)、-C(O)NR1011、-N(R11)C(O)R10、-N(R11)C(O)NR1011、-N(R11)C(O)OR10、-N(R11)SO10、C3~5シクロアルキル、4~6員ヘテロシクリル及びヘテロアリールから選択され、前記ヘテロアリールは、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル及びイソオキサゾリルから選択され、前記4~6員ヘテロシクリルは、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルから選択され;
前記アルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリル基は、1~4つのR12基で任意選択的に置換され、及び前記ヘテロアリール基は、1~4つのR13基で任意選択的に置換される。
【0200】
91.Rは、ハロ、-CN、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、-OR10、-NR1011、-S(O)10(ここで、xは、0、1又は2、好ましくは1又は2である)、-C(O)NR1011、-N(R11)C(O)R10、-N(R11)C(O)NR1011、-N(R11)C(O)OR10、-SONR1011及び-N(R11)SO10から選択され;
前記アルキル基は、ハロ、-CN、-ORB5、-NRA5A5、-S(O)B5、-C(O)RB5、-NRA5C(O)RB5、-C(O)NRA5A5、-NRA5SOB5及び-SONRA5A5から選択される1又は2つの置換基で任意選択的に置換される。
【0201】
92.Rは、4~6員ヘテロシクリル及びヘテロアリールから選択され、前記ヘテロアリールは、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル及びイソオキサゾリルから選択され;前記ヘテロシクリルは、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルから選択され;
前記4~6員ヘテロシクリル基は、ハロ、C1~4アルキル、-OH及び=Oから独立して選択される1~4つの基で任意選択的に置換され;
前記ヘテロアリール基は、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-ORB6及び-NRA6A6から独立して選択される1~4つの基で任意選択的に置換される。
【0202】
93.Rは、-CN、-OR10、-NR1011、-S(O)10、-S(O)R10、-C(O)NR1011、-N(R11)C(O)R10、-N(R11)C(O)NR1011、-N(R11)C(O)OR10、-SONR1011、-N(R11)SO10、-C1~4アルキル-CN、-C1~4アルキル-ORB5、-C1~4アルキル-NRA5A5、-C1~4アルキル-S(O)B5、-C1~4アルキル-NRA5C(O)RB5、-C1~4アルキル-C(O)NRA5A5、-C1~4アルキル-NRA5SOB5、-C1~4アルキル-SONRA5A5から選択される。
【0203】
94.Rは、-CN、-OH、-OC1~4アルキル、-OC2~4アルキル-ORB5、-OC2~4アルキル-NRA5A5、-NH、-N(R11)C1~4アルキル、-N(R11)C2~4アルキル-ORB5、-N(R11)C2~4アルキル-NRA5A5、-S(O)1~4アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(R11)C1~4アルキル、-C(O)N(R11)C1~4アルキル-C3-6シクロアルキル、-C(O)N(R11)C2~4アルキル-ORB5、-C(O)N(R11)C2~4アルキル-NRA5A5、アゼチジン-1-イル-C(O)-、ピロリジン-1-イル-C(O)-、ピペリジン-1-イル-C(O)-、ピペラジン-1-イル-C(O)-、モルホリン-1-イル-C(O)-、-N(R11)C(O)-C1~4アルキル、-N(R11)C(O)NH、-N(R11)C(O)NH(C1~4アルキル)、-N(R11)C(O)N(C1~4アルキル)、-N(R11)C(O)O(C1~4アルキル)、-SONH、-SON(R11)C1~4アルキル、-N(R11)SO(C1~4アルキル)、-C1~4アルキル-CN、-C1~4アルキル-ORB5、-C1~4アルキル-NRA5A5、-C1~4アルキル-S(O)B5、-C1~4アルキル-NRA5C(O)RB5、-C1~4アルキル-C(O)NRA5A5、-C1~4アルキル-NRA5SOB5及び-C1~4アルキル-SONRA5A5から選択される。
【0204】
95.Rは、-CN、-C1~4アルキル-OH、-C1~4アルキル-OMe、-C1~4アルキル-NH、-C1~4アルキル-NH(C1~4アルキル)、-C1~4アルキル-N(C1~4アルキル)、-NH、-NH(C1~4アルキル)、-N(C1~4アルキル)、-OH、-OC1~4アルキル、-OC2~4アルキル-OH、-OC2~4アルキル-OMe、-S(O)1~4アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される。
【0205】
96.Rは、-C(O)NH、-C(O)N(R11)C1~4アルキル、-C(O)N(R11)C1~4アルキル-C3-6シクロアルキル、-C(O)N(R11)C2~4アルキル-ORB5、-C(O)N(R11)C2~4アルキル-NRA5A5、アゼチジン-1-イル-C(O)-、ピロリジン-1-イル-C(O)-、ピペリジン-1-イル-C(O)-、ピペラジン-1-イル-C(O)-及びモルホリン-1-イル-C(O)-から選択される。
【0206】
97.Rは、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~3アルキル及び-C(O)N(C1~3アルキル)から選択される。
【0207】
98.Rは、-S(O)10、例えば-S(O)1~4アルキル又は-S(O)3~6シクロアルキルから選択される。
【0208】
99.Rは、-S(O)1~4アルキル、好ましくは-S(O)Meから選択される。
【0209】
100.Rは、-C1~4アルキル-ORB5及び-O-C1~4アルキル-ORB5、例えば-C1~4アルキル-OH、-C1~4アルキル-OMe、-OC1~4アルキル-OH又は-OC1~4アルキル-OMeから選択される。
【0210】
101.Rは、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-C1~4アルキル-ORB5、-C1~4アルキル-C3~6シクロアルキル、-C1~4アルキル-NRA5C(O)RB5、-C1~4アルキル-C(O)NRA5A5、-C1~4アルキル-NRA5SOB5、-C1~4アルキル-SONRA5A5、-OH、-OC1~4アルキル、-OC2~4アルキル-ORB5、-OC2~4アルキル-NRA5A5、-NH、-N(R11)C1~4アルキル、-N(R11)C2~4アルキル-ORB5、-N(R11)C2~4アルキル-NRA5A5、-S(O)1~4アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(R11)C1~4アルキル、-C(O)N(R11)C1~4アルキル-C3-6シクロアルキル、-C(O)N(R11)C2~4アルキル-ORB5、-C(O)N(R11)C2~4アルキル-NRA5A5、アゼチジン-1-イル-C(O)-、ピロリジン-1-イル-C(O)-、ピペリジン-1-イル-C(O)-、ピペラジン-1-イル-C(O)-、モルホリン-1-イル-C(O)-、-N(R11)C(O)-C1~4アルキル、-N(R11)C(O)NH、-N(R11)C(O)NH(C1~4アルキル)、-N(R11)C(O)N(C1~4アルキル)、-N(R11)C(O)O(C1~4アルキル)、-N(R11)SO(C1~4アルキル)、C3~6シクロアルキル、4~6員ヘテロシクリル及びヘテロアリールから選択され、前記ヘテロアリールは、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル及びイソオキサゾリルから選択され、前記ヘテロシクリルは、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルから選択され;
前記C3~6シクロアルキル又は4~6員ヘテロシクリル基は、ハロ、C1~4アルキル、-OH及び=Oから独立して選択される1~4つの基で任意選択的に置換され;
前記ヘテロアリール基は、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-ORB6及び-NRA6A6から独立して選択される1~4つの基で任意選択的に置換される。
【0211】
102.Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル、-C1~4アルキル-OH、-C1~4アルキル-OMe、-C1~4アルキル-C(O)NH、-C1~4アルキル-C(O)N(H)Me、-C1~4アルキル-C(O)N(Me)、-CF、メトキシ、エトキシ、2-ヒドロキシエトキシ、2-メトキシエトキシ、-NH、-NH(C1~4アルキル)、-N(C1~4アルキル)、-NH((CH-OH)、-NH((CH-OH)、-NH((CH-OMe)、-NH((CH-OMe)、-SO1~4アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-C(O)NH((CH-OH)、-C(O)NH((CH-OH)、-C(O)NH((CH-OMe)、-C(O)NH((CH-OMe)、-C(O)NH(CH-シクロプロピル)、アゼチジン-1-イル-C(O)-、ピロリジン-1-イル-C(O)-、ピペリジン-1-イル-C(O)-、ピペラジン-1-イル-C(O)-、モルホリン-1-イル-C(O)-、-N(H)C(O)C1~4アルキル、-NHC(O)NH、-NHC(O)NH(C1~4アルキル)、-NHC(O)N(C1~4アルキル)、-N(H)C(O)O(C1~4アルキル)及び-NHSO(C1~4アルキル)から選択される。
【0212】
103.Rは、H、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)、-CN、メチル、エチル、メトキシ、2-ヒドロキシエチル、-CF、-NH、-N(H)Me、-N(Me)、-S(O)Me、-C(O)NH、-C(O)N(H)Me、-C(O)N(Me)、-NHC(O)OMe、-CHC(O)NH、-CHC(O)N(H)Me、-(CHC(O)N(Me)、-(CHC(O)NH、-(CHC(O)N(H)Me及び-(CHC(O)N(Me)から選択される。
【0213】
104.Rは、H、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)、-CN、C1~3アルキル、-S(O)1~3アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-C1~3アルキル-OH、-C1~3アルキル-OMe、-O-C1~3アルキル、-O-C2~3アルキル-OH、-O-C2~3アルキル-OMe、-C1~3アルキル-S(O)1~3アルキル、-C1~3アルキル-C(O)NH、-C1~3アルキル-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C1~3アルキル-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される。
【0214】
105.Rは、H、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)、-CN、C1~3アルキル、-S(O)1~3アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-O-C2~3アルキル-OH及び-O-C2~3アルキル-OMeから選択される。
【0215】
106.Rは、H、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)、-CN及びC1~3アルキルから選択される。
【0216】
107.Rは、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)、-CN、メチル、エチル、-S(O)Me、-C(O)NH、-C(O)NHMe及び-C(O)N(Me)から選択される。
【0217】
108.Rは、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)及び-CNから選択される。
【0218】
109.Rは、-CN、メチル、エチル及び-S(O)Meから選択される。
【0219】
110.Rは、ハロ(例えば、F、Cl又はBr)から選択される。
【0220】
111.Rは、(87)~(110)のいずれか1つに定義されるとおりであり;Xは、CRであり、Rは、(76)~(85)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0221】
112.Rは、(87)~(110)のいずれか1つに定義されるとおりであり;Xは、CRであり、Rは、ハロ及びC1~3アルキルから選択される。
【0222】
113.Rは、-CN、ハロ、C1~3アルキルから選択され;Xは、CRであり、Rは、ハロ及びC1~3アルキルから選択される。
【0223】
114.R81及びR82は、独立して、H、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OC1~4アルキル及び-OC1~4ハロアルキルから選択される。
【0224】
115.R81及びR82は、独立して、H、ハロ、C1~4アルキル、-CF及び-OC1~4アルキルから選択される。
【0225】
116.R81及びR82は、独立して、H、ハロ、C1~3アルキル、-CF及び-OCHから選択される。
【0226】
117.R81は、Hであり、R82は、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OC1~4アルキル及び-OC1~4ハロアルキルから選択される。
【0227】
118.R81は、Hであり、R82は、ハロ、C1~4アルキル、-CF及び-OC1~4アルキルから選択される。
【0228】
119.R81は、Hであり、R82は、ハロである。
【0229】
120.R81は、Hであり、R82は、C1~4アルキルである。
【0230】
121.R82は、Hであり、R81は、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-OC1~4アルキル及び-OC1~4ハロアルキルから選択される。
【0231】
122.R82は、Hであり、R81は、ハロ、C1~4アルキル、-CF及び-OC1~4アルキルから選択される。
【0232】
123.R82は、Hであり、R81は、ハロ(例えば、F)、メチル、-CF及び-OMeから選択される。
【0233】
124.R82は、Hであり、R81は、ハロである。
【0234】
125.R82は、Hであり、R81は、C1~4アルキルである。
【0235】
126.R81は、Hである。
【0236】
127.R82は、Hである。
【0237】
128.R82及びR81は、Hである。
【0238】
129.R81は、ハロ、C1~4アルキル、-CF及び-OC1~4アルキルから選択され;R82は、Hであり;Rは、H、ハロ、-CF又はC1~3アルキルであり;Rは、(87)~(110)のいずれかに定義されるとおりである。
【0239】
130.R81は、ハロであり;R82は、Hであり;Rは、H又はC1~3アルキルであり;Rは、(87)~(110)のいずれかに定義されるとおりである。
【0240】
131.R82及びR81は、Hであり;Rは、(87)~(110)のいずれか1つに定義されるとおりであり;Xは、CRであり、Rは、(76)~(85)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0241】
132.R10は、独立して、出現するごとに、H及びC1~4アルキルから選択され、前記アルキルは、ハロ、-CN、-ORB5及び-NRA5A5で任意選択的に置換され;
11は、独立して、出現するごとに、H及びC1~4アルキルから選択されるか;又は
10及びR11は、それらが結合される窒素と一緒に、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルから選択される4~6員ヘテロシクリルを形成し、前記ヘテロシクリルは、ハロ、=O、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-ORB7から選択される1又は2つの置換基で任意選択的に置換される。
【0242】
133.R10は、独立して、出現するごとに、H及びC1~4アルキルから選択され、前記アルキルは、ハロ、-CN、-ORB5及び-NRA5A5で任意選択的に置換される。
【0243】
134.R10は、独立して、出現するごとに、C1~4アルキルである。
【0244】
135.R10は、独立して、出現するごとに、H及びC1~4アルキルから選択される。
【0245】
136.R10及びR11は、それぞれ独立して、出現するごとに、H及びC1~4アルキルから選択される。
【0246】
137.R、R及びRの少なくとも1つ(例えば、1つ又は2つ、好ましくは1つ)は、-CNである。
【0247】
138.Aは、Oであり、Xは、CRであり、R、R及びRは、Hであり、Xは、CR22であり、Xは、CRである場合;R、R及びR22は、ハロではない(例えば、R、R及びR22はBrではない)。
【0248】
139.R、R及びR22は、ハロではない(例えば、R、R及びR22は、Brではない)。
【0249】
140.化合物中の1つ以上の水素原子は、重水素である。
【0250】
141.基
【化15】
は、
【化16】
から選択され、式中、は、分子の残りの部分への結合点を示す。
【0251】
142.基
【化17】
は、
【化18】
から選択され、式中、は、分子の残りの部分への結合点を示す。
【0252】
143.
【0253】
144.基
【化19】
は、式
【化20】
のものである。
【0254】
ある実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩(式中、
は、CHであり;
は、N又はCRであり;
は、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択され;
mは、0又は1であり;
は、ハロ、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択され;
Aは、O又はNRであり;Rは、H及びC1~3アルキルから選択され;
及びRは、Hであり;
は、H及びメチルから選択され;
は、CH又はNであり;
は、CR33であり、R33は、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択され;
及びXは、両方ともCHであり;
は、CRであり、Rは、(76)~(85)のいずれか1つに定義されるとおりであり;
81及びR82は、それぞれ独立して、H、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-OC1~4アルキル(例えば、H、ハロ又はC1~3アルキル)から選択され;
は、(87)~(110)のいずれか1つに定義されるとおりである)
が提供される。
【0255】
この実施形態において、Xは、CRであり、Rは、H、-CN及びC1~3アルキルから選択される場合がある。
【0256】
この実施形態において、Xは、CRであり、Rは、ハロである場合がある。
【0257】
この実施形態において、Xは、Nであり、Xは、CHである場合がある。
【0258】
この実施形態において、Xは、CRであり、Xは、Nである場合がある。
【0259】
この実施形態において、Xは、CHである場合がある。
【0260】
この実施形態において、Xは、CRであり;Rは、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択される場合がある。
【0261】
この実施形態において、Xは、CRであり;Rは、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択され;R81及びR82は、Hである場合がある。
【0262】
この実施形態において、Xは、CRであり;Rは、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択され;R81及びR82は、Hであり;Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-S(O)1~4アルキル、-S(O)3~6シクロアルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-C1~3アルキル-OH、-C1~3アルキル-OMe、-O-C1~3アルキル、-O-C2~3アルキル-OH、-O-C2~3アルキル-OMe、-C1~3アルキル-S(O)1~3アルキル、-C1~3アルキル-C(O)NH、-C1~3アルキル-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C1~3アルキル-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される場合がある。
【0263】
この実施形態において、Xは、CRであり;Rは、ハロであり;R81及びR82は、Hであり;Rは、H、-CN、C1~4アルキル、-S(O)1~4アルキル、-S(O)3~6シクロアルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-C1~3アルキル-OH、-C1~3アルキル-OMe、-O-C1~3アルキル、-O-C2~3アルキル-OH、-O-C2~3アルキル-OMe、-C1~3アルキル-S(O)1~3アルキル、-C1~3アルキル-C(O)NH、-C1~3アルキル-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C1~3アルキル-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される場合がある。
【0264】
この実施形態において、Xは、CRであり;Rは、C1~3アルキルであり;R81及びR82は、Hであり;Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-S(O)1~4アルキル、-S(O)3~6シクロアルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-C1~3アルキル-OH、-C1~3アルキル-OMe、-O-C1~3アルキル、-O-C2~3アルキル-OH、-O-C2~3アルキル-OMe、-C1~3アルキル-S(O)1~3アルキル、-C1~3アルキル-C(O)NH、-C1~3アルキル-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C1~3アルキル-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される場合がある。
【0265】
この実施形態において、Xは、CRであり;Rは、C1~3アルキルであり;R81及びR82は、Hであり;Rは、ハロ、-CN、C1~4アルキル及び-S(O)1~4アルキルから選択される場合がある。
【0266】
この実施形態において、Aは、Oである場合がある。
【0267】
この実施形態において、Aは、NH又はN(Me)である場合がある。
【0268】
この実施形態において、mは、0である場合がある。
【0269】
ある実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩(式中、
は、CH又はNであり;
は、N又はCRであり;
は、(1)~(17)のいずれか1つに定義されるとおりに選択され;
mは、0又は1であり;
は、ハロ、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択され;
Aは、O又はNRであり;Rは、H及びC1~3アルキルから選択され;
及びRは、Hであり;
は、H及びメチルから選択され;
は、CH又はNであり;
は、CR33であり、R33は、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択され;
及びXは、両方ともCHであり;
基:
【化21】
は、
【化22】
から選択される)
が提供される。
【0270】
この実施形態において、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル及びC1~4ハロアルキルから選択される場合がある。
【0271】
別の実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩(式中、基:
【化23】
は、
【化24】
から選択される)
が提供される。
【0272】
この実施形態において、Aは、Oである場合がある。
【0273】
この実施形態において、Aは、N(Me)である場合がある。
【0274】
この実施形態において、X及びXは、CHであり;X、X、X及びXの1つは、Nである場合がある。
【0275】
この実施形態において、X及びXは、CHであり;X、X、X及びXの1つは、Nであり;mは、0である場合がある。
【0276】
別の実施形態において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩(式中、基:
【化25】
は、
【化26】
である)
が提供される。
【0277】
特定の実施形態
式(II)の化合物
ある実施形態において、式(I)の化合物は、上記に定義される式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。式(II)の化合物において、R、R、R、R、R、R33、R81、R82、A、X、X、X及びmは、式(I)の化合物に関して定義されるとおりであるか、又は特に記載されない限り、(1)~(144)の1つ以上を含む、本明細書において定義される値のいずれかを有する(それらの段落が式(II)の化合物に適用可能である限り)。以下の実施形態は、式(II)の化合物に関する。
【0278】
式(II)の化合物におけるある実施形態において、R33は、Hである。
【0279】
式(II)の化合物におけるある実施形態において、R33は、C1~4アルキル及びハロから選択される。
【0280】
式(II)の化合物におけるある実施形態において、R33は、メチル、F、Cl及びBrから選択される。
【0281】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CRであり、Rは、(76)~(85)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0282】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CRであり、Rは、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択される。
【0283】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CHであり;Xは、CRであり、Rは、(1)~(17)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0284】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CHであり;Xは、CRであり、Rは、H、ハロ、-CN及びC1~4アルキルから選択される。
【0285】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、X及びXは、CHである。
【0286】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、X及びXの一方は、Nである。
【0287】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、X及びXの一方は、Nであり、他方は、CHである。
【0288】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、mは、0又は1であり、Rは、(35)~(37)のいずれかに定義されるとおりである。
【0289】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、mは、0である。
【0290】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、基:
【化27】
は、
【化28】
から選択される。
【0291】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、基:
【化29】
は、
【化30】
である。
【0292】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、Aは、Oである。
【0293】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、Aは、NH又はN(C1~3アルキル)である。例えば、Aは、N(C1~3アルキル)である。例えば、Aは、N(Me)である。
【0294】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)の化合物におけるある実施形態において、基:
【化31】
は、
【化32】
であり;
Aは、O.NH又はN(メチル)から選択され;
及びXは、CHであり;
は、ハロ及びC1~3アルキルから選択され;
33は、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択され;
mは、0又は1である。
【0295】
この実施形態において、Aは、Oであり;mは、0であり;R及びRは、Hであり;Rは、H又はメチルであり;R33は、H又はメチルである場合がある。
【0296】
式(III)の化合物
ある実施形態において、式(I)の化合物は、上記に定義される式(III)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。式(III)の化合物において、R、R、R、R、R、R81、R82、A、X、X、X及びmは、式(I)の化合物に関して定義されるとおりであるか、又は特に記載されない限り、(1)~(144)の1つ以上を含む、本明細書において定義される値のいずれかを有する(それらの段落が式(III)の化合物に適用可能である限り)。以下の実施形態は、式(III)の化合物に関する。
【0297】
式(III)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CHであり、Xは、Nである。
【0298】
式(III)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CRであり;Xは、Nであり;Rは、(1)~(17)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0299】
式(III)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CRであり;Xは、Nであり;Rは、H、ハロ、-CN及びC1~4アルキルから選択される。
【0300】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(III)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CRであり、Rは、(76)~(85)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0301】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(III)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CRであり、Rは、H、ハロ及びC1~3アルキルから選択される。
【0302】
式(IV)の化合物
ある実施形態において、式(I)の化合物は、上記に定義される式(IV)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。式(IV)の化合物において、R、R、R、R、R、R、R81、R82、A、X、X、X、X、X、X及びmは、式(I)の化合物に関して定義されるとおりであるか、又は特に記載されない限り、(1)~(144)の1つ以上を含む、本明細書において定義される値のいずれかを有する(それらの段落が式(IV)の化合物に適用可能である限り)。以下の実施形態は、式(IV)の化合物に関する。
【0303】
式(IV)の化合物におけるある実施形態において、Rは、(76)~(84)のいずれか1つに定義されるとおりであり、ただし、Rは、Hではない。
【0304】
式(IV)の化合物におけるある実施形態において、Rは、ハロ及びC1~3アルキルから選択される。
【0305】
式(IV)の化合物におけるある実施形態において、Rは、ハロ(例えば、F)である。
【0306】
式(IV)の化合物におけるある実施形態において、Rは、C1~3アルキル(例えば、メチル)である。
【0307】
式(V)の化合物
ある実施形態において、式(I)の化合物は、上記に定義される式(V)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。式(V)の化合物において、R、R、R、R、R、R81、R82、A、X、X、X、X、X、X及びmは、式(I)の化合物に関して定義されるとおりであるか、又は特に記載されない限り、(1)~(144)の1つ以上を含む、本明細書において定義される値のいずれかを有する(それらの段落が式(V)の化合物に適用可能である限り)。以下の実施形態は、式(V)の化合物に関する。
【0308】
式(V)の化合物におけるある実施形態において、Rは、(76)~(85)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0309】
式(V)の化合物におけるある実施形態において、Rは、ハロ及びC1~3アルキルから選択される。
【0310】
式(V)の化合物におけるある実施形態において、Rは、ハロ(例えば、F)である。
【0311】
式(V)の化合物におけるある実施形態において、Rは、C1~3アルキル(例えば、メチル)である。
【0312】
式(VI)の化合物
ある実施形態において、式(I)の化合物は、上記に定義される式(VI)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。式(VI)の化合物において、R、R、R、R、R、R81、R82、A、X、X、X、X、X、X及びmは、式(I)の化合物に関して定義されるとおりであるか、又は特に記載されない限り、(1)~(144)の1つ以上を含む、本明細書において定義される値のいずれかを有する(それらの段落が式(VI)の化合物に適用可能である限り)。以下の実施形態は、式(VI)の化合物に関する。
【0313】
式(VI)の化合物におけるある実施形態において、Rは、(87)~(110)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0314】
式(VI)の化合物におけるある実施形態において、Rは、H、-CN、C1~4アルキル、-S(O)1~4アルキル、-S(O)3~6シクロアルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-C1~3アルキル-OH、-C1~3アルキル-OMe、-O-C1~3アルキル、-O-C2~3アルキル-OH、-O-C2~3アルキル-OMe、-C1~3アルキル-S(O)1~3アルキル、-C1~3アルキル-C(O)NH、-C1~3アルキル-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C1~3アルキル-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される。
【0315】
式(VI)の化合物におけるある実施形態において、Rは、-CN、C1~4アルキル、-S(O)1~4アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される。
【0316】
式(VI)の化合物におけるある実施形態において、Rは、C1~3アルキルである(例えば、Rは、メチルである)。
【0317】
式(VI)の化合物におけるある実施形態において、Rは、Hである。
【0318】
式(VII)の化合物
ある実施形態において、式(I)の化合物は、上記に定義される式(VII)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。式(VII)の化合物において、R、R、R、R、R、R81、R82、A、X、X、X、X、X、X及びmは、式(I)の化合物に関して定義されるとおりであるか、又は特に記載されない限り、(1)~(144)の1つ以上を含む、本明細書において定義される値のいずれかを有する(それらの段落が式(VII)の化合物に適用可能である限り)。以下の実施形態は、式(VII)の化合物に関する。
【0319】
式(VII)の化合物におけるある実施形態において、Rは、(87)~(110)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0320】
式(VII)の化合物におけるある実施形態において、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル、-S(O)1~4アルキル、-S(O)3~6シクロアルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル、-C(O)N(C1~4アルキル)、-C1~3アルキル-OH、-C1~3アルキル-OMe、-O-C1~3アルキル、-O-C2~3アルキル-OH、-O-C2~3アルキル-OMe、-C1~3アルキル-S(O)1~3アルキル、-C1~3アルキル-C(O)NH、-C1~3アルキル-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C1~3アルキル-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される。
【0321】
式(VII)の化合物におけるある実施形態において、Rは、H、ハロ、-CN、C1~4ハロアルキル、-S(O)1~4アルキル、-C(O)NH、-C(O)N(H)C1~4アルキル及び-C(O)N(C1~4アルキル)から選択される。
【0322】
式(VII)の化合物におけるある実施形態において、Rは、ハロ及び-CNから選択される。
【0323】
式(VII)の化合物におけるある実施形態において、Rは、Hである。
【0324】
式(VIII)の化合物
ある実施形態において、式(I)の化合物は、上記に定義される式(VIII)の化合物又はその薬学的に許容される塩である。式(VIII)の化合物において、R、R、R、R、R、R10、R81、R82、A、X、X、X、X、X、X及びmは、式(I)の化合物に関して定義されるとおりであるか、又は特に記載されない限り、(1)~(144)の1つ以上を含む、本明細書において定義される値のいずれかを有する(それらの段落が式(VIII)の化合物に適用可能である限り)。以下の実施形態は、式(VIII)の化合物に関する。
【0325】
式(VIII)の化合物におけるある実施形態において、R10は、C1~4アルキル及びC3~6シクロアルキルから選択される。
【0326】
式(VIII)の化合物におけるある実施形態において、R10は、メチル及びエチルから選択される(例えば、R10は、メチルである)。
【0327】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CHであり;Xは、CRであり、Rは、(1)~(17)のいずれか1つに定義されるとおりである。
【0328】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CHであり;Xは、CRであり、Rは、H、ハロ、-CN及びC1~4アルキルから選択される。
【0329】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、X及びXは、CHである。
【0330】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、X及びXの一方は、Nである。
【0331】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、Xは、Nであり、Xは、CR33であり、Xは、CR34であり、Xは、CR35である。
【0332】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、Xは、Nであり、Xは、CR33であり、X及びXは、CHである。
【0333】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、Xは、Nであり、X、X及びXは、CHである。
【0334】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、Xは、CR32であり、Xは、CR33であり、Xは、CR34であり、Xは、CR35である。
【0335】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、X、X、X及びXは、CHである。
【0336】
式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、mは、0である。
【0337】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、R81及びR82の一方は、Hであり、他方は、ハロ、C1~4アルキル、C1~4ハロアルキル及び-OC1~4アルキルから選択される。
【0338】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、R81及びR82は、両方ともHである。
【0339】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、Aは、Oである。
【0340】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、Aは、NH又はN(C1~4アルキル)である(例えば、Aは、NHである。例えば、Aは、N(Me)である)。
【0341】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、R及びRは、Hであり;Rは、H及びメチルから選択される。
【0342】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、基
【化33】
は、式
【化34】
のものである。
【0343】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、基
【化35】
は、式
【化36】
のものである。
【0344】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、基
【化37】
は、式
【化38】
のものである。
【0345】
上記の実施形態のいずれかを含む、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)の化合物におけるある実施形態において、基
【化39】
は、
【化40】
である場合がある。
【0346】
別の実施形態において、本明細書における実施例のいずれか1つから選択される化合物又はその薬学的に許容される塩又はプロドラッグが提供される。
【0347】
別の実施形態において、表1から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグが提供される。特に、表1から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0348】
【表1】
【0349】
【表2】
【0350】
医薬組成物
別の態様によれば、本発明は、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0351】
好適な医薬組成物の選択及び調製のための従来の手順は、例えば、“Pharmaceuticals-The Science of Dosage Form Designs”,M.E.Aulton,Churchill Livingstone,1988に記載されている。
【0352】
本発明の組成物は、経口使用のため(例えば、錠剤、トローチ剤、硬若しくは軟カプセル剤、水性若しくは油性懸濁液、乳剤、分散性粉剤若しくは粒剤、シロップ又はエリキシル剤として)、局所使用のため(例えば、クリーム、軟膏、ゲル又は水性若しくは油性液剤又は懸濁液として)、吸入による投与のため(例えば、微粉化された粉末又は液体エアロゾルとして)、吹送による投与のため(例えば、微粉化された粉末として)又は非経口投与のため(例えば、静脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内投与のための滅菌水性若しくは油性溶液又は直腸投与のための坐薬として)に好適な形態であり得る。
【0353】
本発明の組成物は、当技術分野において周知の従来の医薬品賦形剤を用いて、従来の手順によって得られる。したがって、経口使用を意図された組成物は、例えば、1つ以上の着色剤、甘味料、香味料及び/又は防腐剤を含有し得る。
【0354】
疾患の治療に使用するための有効量の本発明の化合物は、温血動物の症状、特にヒトの疾患の症状を軽減するか又は疾患の進行を遅らせるのに十分な量である。
【0355】
単一の剤形を製造するために1つ以上の賦形剤と組み合わされる有効成分の量は、必然的に、治療される宿主及び具体的な投与経路に応じて変化するであろう。例えば、ヒトへの経口投与を意図された製剤は、一般に、組成物全体の約5~約98重量パーセントで変化し得る適切な及び好都合な量の賦形剤と配合された、例えば0.1mg~0.5gの活性薬剤(より好適には0.5~100mg、例えば1~30mg)を含有するであろう。
【0356】
本発明の化合物の治療又は予防目的のための用量のサイズは、当然のことながら、医薬の周知の原則に従い、動物又は患者の病態の性質及び重症度、年齢及び性別並びに投与経路に応じて変化するであろう。
【0357】
治療又は予防目的のために本発明の化合物を使用する際、それは、一般に、必要に応じて分割投与を前提として、該当する範囲内の1日用量、例えば0.05mg/kg~100mg/kg、0.1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~75mg/kg、1mg/kg~50mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.1mg/kg~2mg/kg又は0.1mg/kg~1mg/kg体重から選択される1日用量が与えられるように投与されるであろう。一般に、非経口経路が用いられる場合、より低い用量が投与されるであろう。したがって、例えば静脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内投与の場合、該当する範囲内の用量、例えば0.05mg/kg~30mg/kg、0.1mg/kg~30mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kg、0.1mg/kg~2mg/kg又は0.1mg/kg~1mg/kg体重が一般に使用されるであろう。同様に、吸入による投与の場合、該当する範囲内の用量、例えば0.05mg/kg~25mg/kg体重が使用されるであろう。好適には、本発明の化合物は、経口で、例えば錠剤又はカプセル剤形の形態で投与される。経口で投与される1日用量は、例えば、1mg~1000mg、5mg~1000mg、10mg~750mg、25mg~500mg、1mg~100mg、5mg~75mg又は10mg~50mgから選択される総1日用量であり得る。典型的には、単位剤形は、約0.5mg~0.5gの本発明の化合物を含有するであろう。特定の実施形態において、本発明の化合物は、非経口的に、例えば静脈内投与によって投与される。別の特定の実施形態において、本発明の化合物は、経口で投与される。
【0358】
本発明の化合物は、例えば、1時間に1回、2時間に1回、4時間に1回、6時間に1回、8時間に1回又は12時間に1回の投与間隔で投与され得る。ある実施形態において、化合物は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、2日に1回又は週1回投与される。好適には、本発明の化合物は、1日1回又は2回投与される。
【0359】
本発明の化合物の定期的な投与は、累積的且つ持続的な鎮痛効果を提供し得る。本明細書における実施例は、本発明の化合物の単回注入が無痛覚をもたらすが、鎮痛効果が投与の数時間以内にベースラインレベルまで低下することを示す。本発明の化合物の定期的な反復投与は、累積的な及び持続的な鎮痛効果を提供し得る。本発明の化合物によって提供される無痛覚に対する累積的効果は、単回ボーラス投与として投与される完全な鎮痛効果を得るのに必要とされる用量より少ない用量で化合物が投与されるのを可能にし得る。したがって、低用量の本発明の化合物の定期的な投与は、無痛覚と、より高い用量に関連し得る望ましくない副作用、例えば徐脈又は振戦との間のより大きい治療域を提供し得る。
【0360】
特定の実施形態において、本発明の化合物は、化合物の鎮痛ED50の10%~120%の血漿濃度を提供するように定期的に投与される。例えば、化合物は、化合物の鎮痛ED50の10%~100%、10%~80%、10%~60%、15%~50%、20%~50%、25%~50%又は25%~45%を提供する用量で投与され得る。定期的な投与間隔は、例えば、上記に記載される投与間隔のいずれかであり得る。
【0361】
治療的使用及び用途
別の態様によれば、本発明は、薬剤として使用するための、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩又は本発明の医薬組成物を提供する。
【0362】
本発明のさらなる態様は、過分極活性化環状ヌクレオチド調整イオンチャネル2(HCN2)によって媒介される疾患又は病状の治療に使用するための、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩又は本発明の医薬組成物を提供する。
【0363】
HCN2によって媒介される疾患又は病状の治療のための薬剤の製造における、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩又は本発明の医薬組成物の使用も提供される。
【0364】
HCN2によって媒介される疾患又は病状の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、有効量の、(i)本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩;又は(ii)本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む方法も提供される。
【0365】
HCN2によって媒介される疾患は、例えば、本明細書に開示される疾患のいずれかであり得る。
【0366】
本発明の化合物は、HCN2イオンチャネルの阻害が有益である疾患の治療において有用なHCN2阻害剤である。開示内容が主要な説明に組み込まれる本発明の背景に記載されるように、HCN4は、心臓組織において高度に発現され、心臓ペースメーキングの主要な調節因子である。HCN4の阻害は、マウスにおける徐脈及びHCN4の欠失を全身的に又は心臓において局所的に誘導し、致死的である。したがって、HCN2に加えてHCN4を著しく阻害する化合物は、長期治療として、例えば疼痛の長期治療に使用される鎮痛剤として好適ではないであろう。本発明の好ましい化合物は、HCN4よりHCN2を選択的に阻害する。HCN2選択的化合物は、HCN2によって媒介される疾患の治療のための薬剤としての本発明の化合物の使用に関連する望ましくない心臓の副作用のリスクを低下させるか又はなくすことが予想される。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、本明細書に記載されるHCN4アッセイ(実施例25を参照されたい)において測定される同じ化合物のIC50より少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、少なくとも10倍又は少なくとも15倍低い、本明細書に記載されるHCN2アッセイ(実施例25を参照されたい)におけるIC50を示す。
【0367】
HCN1チャネルも心臓組織において発現され、心機能に関連する。したがって、本発明の好ましい化合物は、HCN1よりHCN2を選択的に阻害する。ある実施形態において、本発明の化合物は、本明細書に記載されるHCN1アッセイ(実施例25を参照されたい)において測定される同じ化合物のIC50より少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、少なくとも10倍又は少なくとも15倍低い、本明細書に記載されるHCN2アッセイ(実施例25を参照されたい)におけるIC50を示す。
【0368】
電位依存性NaチャネルNa1.5は、主に心筋において見られる。それは、心臓中の心筋活動電位を開始させ、電気インパルスの伝導並びに活動電位持続にとって不可欠である。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、Na1.5よりHCN2を選択的に阻害する。ある実施形態において、本発明の化合物は、本明細書に記載されるNa1.5アッセイ(実施例27を参照されたい)において測定される同じ化合物のIC50より少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、少なくとも10倍又は少なくとも15倍低い、本明細書に記載されるHCN2アッセイ(実施例25を参照されたい)におけるIC50を示す。
【0369】
心臓においてhERGカリウムチャネルを阻害する薬物は、遅延した心室再分極(QT間隔延長)をもたらし得ることが周知である。本発明の好ましい化合物は、低いhERG負荷を有するものである。ある実施形態において、本発明の化合物は、本明細書に記載されるhERGアッセイ(実施例26を参照されたい)において測定される同じ化合物のIC50より少なくとも2倍、例えば少なくとも5倍、少なくとも10倍又は少なくとも20倍低い、本明細書に記載されるHCN2アッセイ(実施例25を参照されたい)におけるIC50を示す。
【0370】
したがって、好ましい実施形態において、本発明の化合物は、心機能に関連するHCN2及びイオンチャネルの阻害に必要な濃度間に高い治療域を有する。ある実施形態において、本発明の化合物は、HCN4、HCN1、Na1.5又はhERGの1つ以上よりHCN2に対して選択的である。特定の実施形態において、本発明の好ましい化合物は、HCN4及び/又はHNC1よりHCN2を選択的に阻害する。より具体的には、本発明の好ましい化合物は、HCN4よりHCN2を選択的に阻害する。
【0371】
HCN2チャネルは、脳において広く発現され、脳におけるHCN2の著しい阻害は、振戦又は運動失調などの望ましくない中枢神経系副作用を誘導し得る。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、末梢組織において治療的に有効な濃度で存在する場合、低いレベルの化合物のみが、望ましくない中枢神経系関連副作用を誘導するのに必要である濃度未満の濃度で脳内に存在するような、末梢制限HCN2阻害剤である。ある実施形態において、本発明の化合物は、輸送体P-糖タンパク質(P-gp)のための基質である。P-gp基質は、一般に、脳内皮において排出される。したがって、P-gp基質である化合物は、脳組織において低い濃度を示すことが予想される。ある実施形態において、本発明の化合物は、本明細書に記載されるMDCK-MDR1透過性アッセイ(実施例28を参照されたい)において測定されるとき、高い排出比を有する。P-gp阻害剤の非存在下及び存在下で実施される実施例28に記載されるMDCK-MDR1アッセイは、末梢に制限された電位を有する化合物を同定するのに使用され得る。正味の排出値>5(すなわち阻害剤なしの排出比を、阻害剤を伴う排出比で除算した値)は、輸送体P-gpのための基質である化合物を示し、したがって中枢神経系から制限されるより高い可能性を有するであろう(すなわち低い中枢神経系浸透を有する化合物)。ある実施形態において、低い中枢神経系浸透を有する本発明の化合物は、本明細書に記載されるMDCK-MDR1透過性アッセイにおいて測定されるとき、5以上、例えば10以上、15以上又は20以上の正味の排出を有する。投与後に低い中枢神経系浸透を示す本発明の化合物は、本明細書において「末梢制限化合物」又は「末梢制限HCN2阻害剤」と呼ばれる。
【0372】
本出願の以下の節において、特定の疾患又は病態の治療に使用するための、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩が言及される。特定の使用のための化合物への本明細書における任意の言及は、(i)その疾患又は病態の治療のための薬剤の製造における、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩の使用;及び(ii)対象における疾患又は病態を治療する方法であって、治療有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む方法への言及であることも意図されることが理解されるべきである。
【0373】
HCN2によって媒介される疾患又は病状は、本出願において列挙される疾患又は病状のいずれかであり得る。
【0374】
疼痛
ある実施形態において、本発明の化合物は、限定はされないが、NP及びIPを一般に含む疼痛の治療又は予防に使用するためのものである。
【0375】
神経因性疼痛
ある実施形態において、本発明の化合物は、神経因性疼痛の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、本発明の化合物は、末梢神経因性疼痛の治療又は予防に使用するためのものである。NPの例としては、限定はされないが、疼痛糖尿病性神経障害(PDN)、ヘルペス後神経痛(PHN)、癌に関連する疼痛、化学療法誘発性末梢神経障害を含む化学療法誘発性疼痛、術後疼痛(例えば、乳房切除後症候群、開胸後症候群又は幻肢痛)、三叉神経痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、オピオイド抵抗性の疼痛、陰部神経痛及び腰痛に関連する神経因性疼痛、外傷後の神経損傷(例えば、自動車衝突事故による頸椎捻挫)及び手根管症候群から選択される神経因性疼痛が挙げられる。
【0376】
ある実施形態において、本発明の化合物は、以下に関連するか又は起因する神経因性疼痛:神経障害、脊椎及び末梢神経手術、脊髄損傷、慢性疼痛症候群、線維筋痛、慢性疲労症候群、神経痛(例えば、三叉神経痛、舌咽神経痛、ヘルペス後神経痛及び灼熱痛)、狼瘡、HIV感染、サルコイドーシス、末梢神経障害、両側性末梢神経障害、糖尿病性神経障害、座骨神経炎、顎関節神経痛、末梢神経炎、多発性神経炎、断端痛、幻肢痛、骨折、口腔神経因性疼痛、シャルコー疼痛、複合性局所疼痛症候群I及びII(CRPS VIT)、神経根障害、ギラン・バレー症候群、知覚異常性大腿神経痛、口腔内灼熱症候群、視神経炎、発熱後神経炎、遊走性神経炎、分節性神経炎、ゴンボール神経炎、ニューロン炎、頸腕神経痛、頭蓋神経痛、膝神経痛、舌咽神経痛、特発性神経痛、肋間神経痛、乳房神経痛、モートン神経痛、鼻毛様体神経痛、後頭神経痛、紅神経痛、スルーダー神経痛、スプレノパラチン神経痛、眼窩上神経痛、外陰部痛又はヴィディアン神経痛の治療又は予防に使用するためのものである。一実施形態において、本発明の化合物は、ヘルペス後神経痛の治療に使用するためのものである。
【0377】
ある実施形態において、本発明の化合物は、NPの症状、例えば感覚異常(重ね合わされた電撃痛の要素を伴うことが多い、自発性又は誘発された灼熱痛)、深部痛、うずく痛み、知覚過敏、痛覚過敏、異痛症及び痛感過敏の1つ以上の予防又は軽減に使用するためのものである。
【0378】
好ましい化合物は、急性疼痛の知覚を維持しながら、神経因性疼痛(特に末梢神経因性疼痛)を治療するものである。
【0379】
炎症性疼痛
ある実施形態において、本発明の化合物は、炎症性疼痛の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、疼痛は、慢性炎症性疼痛である。ある実施形態において、疼痛は、急性炎症性疼痛である。ある実施形態において、本発明の化合物は、以下の1つ以上に起因するか又は関連する炎症性疼痛、特に慢性炎症性疼痛:炎症性腸疾患、内臓痛、術後疼痛、変形性関節症、関節リウマチ、背痛、腰痛、関節痛、腹痛、胸痛、陣痛、筋骨格疾患、皮膚疾患、歯痛、発熱、熱傷、日焼け、動物若しくは昆虫の咬傷若しくは刺傷、神経因性膀胱、間質性膀胱炎、尿路感染症、鼻炎、接触皮膚炎及びアトピー性皮膚炎を含む皮膚炎、咽頭炎、粘膜炎、腸炎、過敏性腸症候群、胆嚢炎、膵炎、乳房切除後疼痛症候群、生理痛、子宮内膜症、副鼻腔炎による頭痛、緊張性頭痛又はくも膜炎の治療又は予防に使用するためのものである。
【0380】
ある実施形態において、本発明の化合物は、炎症性体性痛覚過敏又は炎症性内臓痛覚過敏を含む炎症性痛覚過敏の治療に使用するためのものである。炎症性体性痛覚過敏は、熱的、機械的及び/又は化学的刺激に対する過敏性が存在する炎症性痛覚過敏状態の存在によって特徴付けられ得る。炎症性内臓痛覚過敏は、内臓易刺激性の亢進が存在する炎症性痛覚過敏状態の存在によっても特徴付けられ得る。
【0381】
Emery et al 2011、2012、前掲は、マウスのNaV1.8発現感覚ニューロンにおけるHCN2の選択的欠失が、炎症性刺激に起因する疼痛の知覚が喪失されたことを示したが、炎症性刺激の非存在下での急性疼痛に対する反応が維持されたことを示した。したがって、好ましい化合物は、急性疼痛の知覚を維持しながら、炎症性疼痛を治療するものである。
【0382】
耳鳴り
発明の背景に記載されるように且つ実施例に示されるように、本発明者らは、耳鳴りが動物モデルにおいてHCN2阻害剤を用いて治療され得ることを初めて示した。実施例は、観察される効果が任意のHCN2阻害剤に適用可能であり、本発明の化合物に限定されないことを示唆する。
【0383】
本発明の一実施形態において、耳鳴り又は関連する疾患の治療に使用するためのHCN2阻害剤が提供される。好ましい実施形態において、HCN2阻害剤は、本発明の化合物である。したがって、耳鳴り又は関連する疾患の予防又は治療に使用するための、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0384】
イバブラジンは、汎HCN阻害作用を有する末梢制限化合物である。本明細書における実施例は、末梢制限されているにもかかわらず、化合物が耳鳴りを治療するのに成功したことを示す。同様の結果が末梢制限及び選択的HCN2阻害剤化合物(図6の化合物476)を用いて得られた。したがって、実験は、耳鳴りが中枢神経系浸透の必要なく治療され得、それにより振戦又は運動失調などの中枢神経系におけるHCN2阻害に関連し得る望ましくない副作用を回避することを示唆する。
【0385】
したがって、耳鳴り又は関連する疾患の治療に使用するための末梢制限HCN2阻害剤も提供される。ある実施形態において、末梢制限HCN2阻害剤は、末梢制限HCN2阻害剤、例えばイバブラジンである。好ましい実施形態において、末梢制限HCN2阻害剤は、本発明の末梢制限化合物である。
【0386】
耳鳴りは、他覚的耳鳴り又は自覚的耳鳴りとして発生し得る。自覚的耳鳴りは、最も一般的なタイプの耳鳴りである。感音耳鳴りとしても知られている自覚的耳鳴りは、罹患した人によってのみ聞こえる。一方、他覚的耳鳴りは、他の人によって感知され得、通常、ミオクローヌス又は血管疾患によって引き起こされるが、ある場合には、耳鳴りは、耳内の自続発振によって発生される。好ましい実施形態において、HCN2阻害剤(好ましくは本発明の化合物)は、自覚的耳鳴りの治療に使用するためのものである。耳鳴りは、急性耳鳴りであり得るが、好ましい実施形態において、耳鳴りは、慢性耳鳴り、例えば2週間超、1か月超又は6か月超にわたって持続する耳鳴りである。
【0387】
ある実施形態において、HCN2阻害剤(好ましくは本発明の化合物)は、大きい音への曝露;老人性難聴(聴力低下);耳又は頭部損傷、耳感染;聴神経に影響を与える腫瘍;メニエール病;心血管疾患、脳血管疾患;甲状腺機能亢進症;甲状腺機能低下症;薬物治療(例えば、サリチレート(メサラミン又はアスピリンを含む)の副作用、特に高用量で摂取される場合)、キニーネ抗マラリア剤、アミノグリコシド系抗生物質、化学療法(限定はされないが、白金細胞毒性薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン)を含む)又はループ利尿剤(例えば、フロセミド、エタクリン酸及びトルセミド);又は聴覚機能障害(例えば、聴覚過敏、音の歪み、音嫌悪症候群、音恐怖症及び中枢性聴覚情報処理障害)の1つ以上によって引き起こされるか又はそれに関連する耳鳴りの治療又は予防に使用するためのものである。
【0388】
ある実施形態において、HCN2阻害剤(好ましくは本発明の化合物)は、耳鳴り、メニエール病又は聴覚過敏の治療又は予防に使用するためのものである。ある実施形態において、HCN2阻害剤は、耳鳴り又はメニエール病の治療又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態において、耳鳴りの治療又は予防に使用するための本発明の化合物が提供される。
【0389】
片頭痛
片頭痛の衰弱性疼痛は、かなりの個人的及び経済的負担を課す。片頭痛における治療薬としての実際の又は潜在的な有望性は、とりわけ、トリプタンファミリーにより、CGRP受容体に対するアンタゴニストの「ゲパント」ファミリー及びCGRPに対するモノクローナル抗体によって示される。全ては、トリプタンによる薬物乱用頭痛の促進、ゲパントにおける肝毒性及びモノクローナルの定期的な注入の必要性を含むかなりの欠点を有する。しかしながら、片頭痛患者のかなりの割合がこれらの治療により軽減を達成しない。これらは、片頭痛のための新たな治療を依然として必要としている。
【0390】
トリプタンは、Gi/oに結合し、したがってcAMP5の生成を阻害する、5HT1B/D受容体におけるアゴニストである(Alexander et al.,Br.J.Pharmacol.174 Suppl.1,S17-S129,(2017))。片頭痛の重大なメディエータとして浮上している、CGRPの受容体は、Gsに結合し、したがってcAMPを増加させる(Alexander et al.上掲)。これらの検討は、髄膜及び硬膜を刺激する三叉神経侵害受容求心性神経におけるcAMPが片頭痛の重大な下流メディエータであり得ることを示唆する(Schytz et al.,Curr.Opin.Neurol.23,259-265,(2010))。
【0391】
本明細書に記載されるように、活性化がcAMPによって増強されるHCN2イオンチャネルアイソフォームが侵害受容求心性神経における発火を促進し、結果として神経損傷疼痛、化学療法誘発性疼痛及び疼痛糖尿病性神経障害の動物モデルにおける疼痛の重要な最終的なエフェクターであることが示された((Tsantoulas,et al.,Sci Transl Med 9,eaam6072,(2017);Tsantoulas et al.,Biochem J 473,2717-2736、2016);Young et al.,Pain 155,1708-1719,(2014);及びEmery et al.,Science 333,1462-1466,(2011))。したがって、HCN2イオンチャネルは、片頭痛による疼痛の重大な下流メディエータであり得る。HCN2阻害剤は、片頭痛の治療又は予防、特に片頭痛による疼痛の治療又は予防において有用であり得る。
【0392】
特定の実施形態において、片頭痛の予防又は治療に使用するためのHCN2阻害剤が提供される。特定の実施形態において、片頭痛による疼痛の治療又は予防に使用するためのHCN2阻害剤が提供される。好ましい実施形態において、HCN2阻害剤は、本発明の化合物である。したがって、片頭痛の予防又は治療に使用するための本発明の化合物が提供される。片頭痛による疼痛の予防又は治療に使用するための本発明の化合物も提供される。
【0393】
特定の疼痛症候群及び状態の治療
特定の実施形態において、本発明の化合物は、疼痛糖尿病性神経障害;片頭痛、関節リウマチ(RA)、変形性関節症(OA)、オピオイドの長期使用に関連する疼痛(オピオイド誘発性痛覚過敏、OIH)、癌に関連する骨痛及び線維筋痛(FMS、線維筋痛症候群)から選択される状態の治療に使用するためのものである。
【0394】
対象
本発明の化合物は、本明細書に開示される病状のいずれかに罹患したヒト又は動物対象の治療に使用するためのものであり得る。対象は、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ又はブタ)又はコンパニオンアニマル若しくはペット(例えば、イヌ、ネコ又はウマ)などの温血哺乳動物であり得る。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0395】
組合せ療法
本明細書において定義されるようにHCN2によって媒介される疾患の治療に使用するための、本発明に係る治療方法又は本発明の化合物が単独療法として適用されるか又はさらなる活性薬剤との組合せ療法であり得る。
【0396】
例えば、病態が疼痛(例えば、NP又はIP)である場合、本発明の化合物は、別の鎮痛剤と組み合わせて使用され得る。鎮痛剤の例としては、限定はされないが、オピオイド(例えば、モルヒネ及び他のアヘン剤受容体アゴニスト;ナルブフィン若しくは他の混合オピオイドアゴニスト/アンタゴニスト;又はトラマドール);非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン若しくはセレコキシブなどの選択的COX2阻害剤);パラセタモール;バクロフェン、プレガバリン、ガバペンチン、三環式抗うつ剤(例えば、クロミプラミン又はアミトリプチリン)若しくは局部麻酔薬(例えば、リドカイン)又はそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。
【0397】
本明細書において定義される組合せ療法は、治療の個々の成分の同時、連続又は別々の投与によって達成され得る。このような組合せ生成物は、本明細書に記載される治療的に有効な投与量範囲内の本発明の化合物及びその承認された投与量範囲内の他の薬学的に活性な薬剤を用いる。
【0398】
本明細書において、「組合せ」という用語が使用される場合、これは、同時の、別個の又は連続投与を指すことが理解されるべきである。本発明の一態様において、「組合せ」は、同時投与を指す。本発明の別の態様において、「組合せ」は、別々の投与を指す。本発明のさらなる態様において、「組合せ」は、連続投与を指す。投与が連続又は別個である場合、第2の成分を投与する際の遅れは、組合せの有益な効果を損なうようなものであるべきではない。
【0399】
組合せ治療が使用されるある実施形態において、本発明の化合物の量及び他の薬学的に活性な薬剤の量は、組み合わされる場合、患者における標的とされる障害を治療するのに治療的に有効である。これに関連して、組み合わされた量は、それらが組み合わされる場合、障害の症状又は他の有害作用を軽減するか若しくは完全に緩和するか;障害を治癒するか;障害の進行を食い止めるか、完全に停止させるか若しくは遅らせるか;又は障害が悪化するリスクを低下させるのに十分である場合に「治療有効量」である。典型的には、このような量は、例えば、本発明の化合物について本明細書に記載される投与量範囲及び他の薬学的に活性な化合物の承認又は他に公開された投与量範囲から開始することにより、当業者によって決定され得る。
【0400】
本発明のさらなる態様によれば、疼痛(例えば、NP又はIP)を治療するための、本明細書において定義される本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩及びさらなる活性薬剤を含む医薬品が提供される。さらなる活性薬剤は、本明細書において定義される鎮痛剤であり得る。
【0401】
一実施形態において、HCN2によって調節される疾患の治療のための、本明細書において定義される本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩及びさらなる活性薬剤を含む医薬品が提供される。さらなる活性薬剤は、本明細書において定義される鎮痛剤であり得る。
【0402】
本発明のさらなる態様によれば、疼痛(例えば、NP又はIP)の治療において、本明細書において定義される鎮痛剤と同時に、連続して又は別々に使用するための本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0403】
合成
以下に記載される合成方法の説明及び出発材料を調製するのに使用される言及される合成方法において、溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験及び後処理手順の期間を含む全ての提案された反応条件が当業者によって選択され得ることが理解されるべきである。
【0404】
分子の様々な部分に存在する官能基は、用いられる反応剤及び反応条件と相溶性でなければならないことが有機合成の当業者によって理解される。
【0405】
必要な出発材料は、有機化学の標準的な手順によって得られる。このような出発材料の調製は、以下の代表的なプロセス形態とともに且つ添付の実施例中に記載される。代わりに、必要な出発材料は、有機化学の当業者の技能の範囲内である示されるものと類似の手順によって得られる。
【0406】
以下に定義されるプロセスにおける本発明の化合物の合成中、特定の出発材料の合成中、望ましくない反応を防止するために特定の置換基を保護することが望ましいことがあることが理解されるであろう。化学の当業者は、このような保護が必要とされるとき及びどのようにこのような保護基が設置され得、後に除去され得るかを理解するであろう。
【0407】
保護基の例については、その主題に関する多くの一般的なテキストの1つ、例えば‘Protective Groups in Organic Synthesis’by Theodora Green(publisher:John Wiley&Sons)を参照されたい。保護基は、該当する保護基の除去に適切であると文献に記載されるか又は化学の当業者に公知である任意の好都合な方法によって除去され得、このような方法は、分子における他の箇所の基の最小のかく乱で保護基の除去を行うように選択される。
【0408】
したがって、反応剤が例えばアミノ、カルボキシ又はヒドロキシなどの基を含む場合、本明細書に言及される反応のいくつかにおいて基を保護することが望ましいことがある。
【0409】
例として、アミノ又はアルキルアミノ基の好適な保護基は、例えば、アシル基、例えばアルカノイル基、例えばアセチル又はトリフルオロアセチル、アルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル又はt-ブトキシカルボニル基、アリールメトキシカルボニル基、例えばベンジルオキシカルボニル又はアロイル基、例えばベンゾイルである。上記の保護基の脱保護条件は、必然的に保護基の選択によって変化する。したがって、例えばアシル基、例えばアルカノイル又はアルコキシカルボニル基又はアロイル基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、例えばリチウム又は水酸化ナトリウムなどの好適な塩基による加水分解によって除去され得る。代わりに、tert-ブトキシカルボニル基などのアシル基は、例えば、塩酸、硫酸又はリン酸又はトリフルオロ酢酸などの好適な酸による処理によって除去され得、ベンジルオキシカルボニル基などのアリールメトキシカルボニル基は、例えば、パラジウム炭素などの触媒における水素化又はルイス酸、例えばBF.OEtによる処理によって除去され得る。第一級アミノ基の好適な代替的な保護基は、例えば、アルキルアミン、例えばジメチルアミノプロピルアミン又はヒドラジンによる処理によって除去され得るフタロイル基である。
【0410】
ヒドロキシ基の好適な保護基は、例えば、アシル基、例えばアルカノイル基、例えばアセチル、アロイル基、例えばベンゾイル又はアリールメチル基、例えばベンジルである。上記の保護基の脱保護条件は、必然的に保護基の選択によって変化するであろう。したがって、例えばアシル基、例えばアルカノイル又はアロイル基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、例えばリチウム、水酸化ナトリウム又はアンモニアなどの好適な塩基による加水分解によって除去され得る。代わりに、アリールメチル基、例えばベンジル基は、例えば、パラジウム炭素などの触媒における水素化によって除去され得る。
【0411】
カルボキシ基の好適な保護基は、例えば、エステル化基、例えば水酸化ナトリウムなどの塩基による加水分解によって除去され得る、例えばメチル又はエチル基又は例えば酸、例えばトリフルオロ酢酸などの有機酸による処理によって除去され得る、例えばt-ブチル基又は例えばパラジウム炭素などの触媒における水素化によって除去され得る、例えばベンジル基である。
【0412】
樹脂も保護基として使用され得る。
【0413】
一般的な合成経路
式(I)の化合物は、以下の一般的な方法に従って調製され得る。
【0414】
(7)などの式(I)の化合物(式中、AがN-Rであり、X又はXがNであり、X~Xが炭素である)は、スキーム1又は2に従って調製され得る。
【化41】
【0415】
中間体3-アミノアザインダゾール(2)は、室温~溶媒の還流温度の温度でDMF又はN-メチルピロリジノンなどの極性溶媒中、炭酸カリウム又は炭酸セシウムなどの塩基、ヨウ化銅及び1,10-フェナントロリンなどの触媒の存在下で適切なクロロピリジンカルボニトリル(1)及びアルキルヒドラジンの反応によって調製され得る。例えば、酢酸、塩酸又は硫酸などの酸中の亜硝酸ナトリウムを用いるなどの当業者に公知の条件下でのアミノ基のジアゾ化、続いてヨウ化カリウムによる処理により、ヨード類似体(3)が得られる。室温~溶媒の還流温度の温度で混合物又は水及びジオキサン、THF又はDMEなどの適切な溶媒中、炭酸ナトリウム又は炭酸セシウムなどの塩基の存在下において、テトラキス-トリフェニルホスフィンパラジウム、塩化ビス-トリフェニルホスフィンパラジウム又は塩化パラジウムdppfなどのパラジウム触媒を用いた、ヨウ化物(3)と、適切な2-ホルミルフェニルボロン酸又はボロネートとのカップリングにより、所望のアルデヒド(4)が得られるであろう。アルデヒド(4)からイミン(5)への転化は、溶媒の還流温度でDCMなどの塩素化溶媒中、炭酸セシウムなどの塩基の存在下で(S)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの適切なキラル単一鏡像異性体による処理によって達成された。代わりに、アルデヒド(4)と、(S)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドとの反応は、室温~溶媒の還流温度の温度でエタノール又はTHFなどの適切な溶媒中、例えばチタンエトキシドの存在下で行われ得る。-78℃~0℃の温度において、THFなどの溶媒中でのスルフィンアミド(5)の生成された単一鏡像異性体と、適切に置換された2-アルキルピリジン又はピリミジン及びn-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド又はリチウムヘキサメチルジシラジドなどの有機リチウム試薬から生成されるアニオンとの反応により、中間体(6)の所望のジアステレオマー異性体が優先的に得られ、これは、クロマトグラフィーによって精製されて、望ましくない副次的なジアステレオマーを除去し得る。次に、ジクロロメタン、酢酸エチル、メタノール又はジオキサンなどの溶媒中、例えばHCl又はトリフルオロ酢酸を用いた酸性条件下での脱保護により、標的化合物(7)が単一鏡像異性体として得られる。
【0416】
当業者は、R、R又はRなどの様々な基の相互変換が合成の様々な段階で行われ得ること及び様々な官能基の保護が、必要な合成を完了させるために必要とされ得ることを認識するであろう。
【0417】
(13)などの式1の化合物(式中、AがN-Rであり、X及びXが両方とも炭素であり、X~Xの1つがNである)は、スキーム2に従って調製され得る。
【化42】
【0418】
中間体アルコール(9)は、-78℃~0℃の温度において、ジエチルエーテル又はTHFなどの溶媒中でアルキルリチウム(n-ブチルリチウムなど)を用いて、適切に置換された保護されたベンズアルデヒド(8)から生成されるアニオンと、適切に置換されたベンズアルデヒドとの反応によって調製され得る。得られたアルコール(9)は、当業者に公知の標準条件下で酸化されて、ケトン(10)が得られる。例えば、酸化は、室温~80℃の温度において、炭酸水素ナトリウムなどの塩基の存在下、tert-ブタノール及び水の混合物中でTEMPO及び1,3-ジブロモ-4,4-ジメチルヒダントインを用いて行われ得る。代わりに、ケトン(10)は、アルデヒドとの反応に用いられるものと同様の条件を用いて、保護されたベンズアルデヒド(8)及び適切に置換されたワインレブアミド(対応する安息香酸から当業者に公知の標準条件に従って調製される)から生成される同じアニオンの反応によって調製され得る。インダゾール(11)への転化は、室温~溶媒の還流温度の温度でトルエンなどの溶媒中、例えばDMAPの存在下において、適切に置換されたヒドラジンによる中間体ケトン(10)の処理によって達成され得る。主要なアルデヒド中間体(12)を提供する脱保護は、室温~溶媒の還流温度の温度において、アルコール溶媒、例えばメタノール又はエタノールなどの極性溶媒中で塩化水素などの酸による処理によって達成され得る。アルデヒドが得られたら、(13)などの式1の標的化合物への転化は、スキーム1に記載されるのと同じ方法で達成され得る。
【0419】
(19)などの式1の化合物(式中、Aが酸素であり、X又はXのいずれかが窒素であり、X~Xが全て炭素であるか、又はX及びXが炭素であり、X~Xの1つが窒素である)は、スキーム3に従って調製され得る。
【化43】
【0420】
中間体アルコール(15)は、-78℃~0℃の温度において、ジエチルエーテル又はTHFなどの溶媒中でアルキルリチウム(n-ブチルリチウムなど)を用いて、適切に置換された保護ブロモベンズアルデヒド(14)から生成されたアニオンと、適切に置換されたベンズアルデヒドとの反応により、スキーム2に示されるものと同様の方法で調製され得る。得られたアルコール(15)は、当業者に公知の標準条件下で酸化されてケトン(16)が得られる。例えば、酸化は、室温~80℃の温度で炭酸水素ナトリウムなどの塩基の存在下、tert-ブタノール及び水の混合物中でTEMPO及び1,3-ジブロモ-4,4-ジメチルヒダントインを用いて行われ得る。代わりに、ケトン(16)は、アルデヒドとの反応に用いられるものと同様の条件を用いた、保護ブロモベンズアルデヒド(14)から生成された同じアニオンと、適切に置換されたワインレブアミド(対応する安息香酸から当業者に公知の標準条件に従って調製される)との反応によって調製され得る。オキシム(17)は、0℃~溶媒の還流温度の温度において、エーテル溶媒(乾燥ジエチルエーテル又はTHFなど)中、強塩基(水素化ナトリウム又はカリウムt-ブトキシドなど)の存在下でアセトンオキシムとの反応によってフルオロケトン(16)から生成され得る。溶媒の還流温度において、エタノール又はイソプロパノールなどの溶媒中での鉱酸、例えば塩酸などの酸によるオキシム(17)の処理により、環化ベンズイソオキサゾール(18)が得られる。代わりに、環化は、室温において塩酸などの鉱酸中でトリフルオロ酢酸を用いて達成され得る。アルデヒドが得られたら、(19)などの式1の標的化合物への転化は、スキーム1に記載されるのと同じ方法で達成され得る。
【0421】
代わりに、(19)などの式1の化合物(式中、Aが酸素であり、X又はXのいずれかが窒素であり、X~Xが全て炭素であるか、又はX及びXが炭素であり、X~Xの1つが窒素である)は、スキーム4に従って調製され得る。
【化44】
【0422】
中間体アルコール(22)は、-78℃~0℃の温度において、ジエチルエーテル又はTHFなどの溶媒中でアルキルリチウム(n-ブチルリチウムなど)を用いて、適切なフルオロブロモ中間体(20)から生成されたアニオンと、適切に置換されたブロモアルデヒド(22)との反応によって調製され得る。得られたアルコール(22)は、当業者に公知の標準条件下で酸化されて、ケトン(23)が得られる。例えば、酸化は、室温~80℃の温度で炭酸水素ナトリウムなどの塩基の存在下、tert-ブタノール及び水の混合物中でTEMPO及び1,3-ジブロモ-4,4-ジメチルヒダントインを用いて行われ得る。代わりに、ケトン(23)は、アルデヒドとの反応に用いられるものと同様の条件を用いて、フルオロブロモ中間体(20)から生成された同じアニオンと、適切に置換されたワインレブアミド(対応する安息香酸から当業者に公知の標準条件に従って調製される)との反応によって調製され得る。
【0423】
中間体ブロモケトン(23)は、当業者に公知のいくつかの可能な手法の1つにより、ケトンアルデヒド(25)に転化され得る。例えば、60℃~溶媒の還流温度の温度において、密閉したバイアル又は圧力容器中、酢酸パラジウムなどのパラジウム触媒及びキサントホス又は関連するリガンドなどのリガンド及びトリメチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基の存在下、メタノールなどの適切なアルコール溶媒中において、一酸化炭素の雰囲気を用いたブロモケトン(23)のカルボニル化により、エステル(24)が得られるであろう。次に、生成されたエステル(24)は、0℃~溶媒の還流温度の温度において、DCM、トルエン又はTHFなどの様々な溶媒中でDIBALなどの還元剤を用いて、アルデヒド(25)に直接還元され得る。代わりに、アルデヒドの生成は、0℃~室温の温度において、ジエチルエーテル又はTHFなどのエーテル溶媒中で例えば水素化アルミニウムリチウムを用いて、エステル(24)をアルコール(26)に還元した後、例えばTEMPO(スキーム3に記載されるように)を用いて又はジクロロメタンなどの塩素化溶媒中で活性化酸化マンガンを用いて、アルコールからアルデヒドへの酸化を行うことによる2工程プロセスで達成され得る。代わりに、ブロモケトン(23)は、室温~溶媒の還流温度の温度で混合物又は水及びジオキサン、THF又はDMEなどの適切な溶媒中、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は炭酸セシウムなどの塩基の存在下において、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化ビス-トリフェニルホスフィンパラジウム又は塩化パラジウムdppfなどのパラジウム触媒の存在下でビニルボロネート又はボロン酸との反応によってアルケン(27)に転化され得る。次に、アルケン(27)は、当業者に公知の条件下でオゾン分解などによる酸化によってアルデヒド(25)に転化され得る。これは、例えば、-78℃~0℃の温度でDCM中のアルケンの溶液に通してオゾンをバブリングし、続いて例えばジメチルスルフィド及び炭酸水素ナトリウムなどの塩基との反応によってクエンチすることによって達成され得る。室温においてTHF及び水などの溶媒中での四酸化オスミウム及び過ヨウ素酸ナトリウムの使用など、アルケンからアルデヒドへの代替的な酸化が当業者に公知である。
【0424】
中間体(25)のアルデヒド官能基は、任意選択的に、分子篩などの乾燥材料を含めることによる又はディーン・スターク装置を用いて水を除去しながら、p-TSAなどの酸触媒の存在下、トルエンなどの溶媒中での適切なアルコールによる処理により、アセタール(28)として保護され得る。次に、ベンズイソオキサゾール中間体(30)への転化は、オキシム(29)を介して、スキーム3において上述されるように2工程で達成され得る。最後に、アルデヒド(30)が得られたら、次に、これは、前述される条件を用いて式1の標的化合物(19)に転化され得る。
【0425】
当業者は、様々な基R、R、R又はRの相互変換が合成の様々な段階で行われ得ること及び様々な官能基の保護が、必要な合成を完了させるために必要とされ得ることを認識するであろう。
【実施例
【0426】
特許3(アザ類似体)のための実験手順
この節において使用される略語
DCM:ジクロロメタン
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DME:ジメトキシエタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
FCC:フラッシュカラムクロマトグラフィー
LDA:リチウムジイソプロピルアミド
MDAP:質量分析を組み合わせた自動精製
Min:分
RT:保持時間
TEMPO:2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシダニル
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
p-TSA:4-トルエンスルホン酸
【0427】
以下の手順において、各出発材料の後の中間体/実施例番号への言及が通常与えられる。これは、化学の当業者への補助として与えられるに過ぎない。「同様の」又は「類似の」手順の使用が言及される場合、当業者によって理解されるであろうように、このような手順は、軽微な変更、例えば反応温度、試薬/溶媒の量、反応時間、後処理条件又はクロマトグラフィー精製条件を含み得る。NMRスペクトルは、400MHzで動作する5mm逆検出三重共鳴プローブを備えたVarian Unity Inova 400分光計、又は400MHzで動作する5mm逆検出三重共鳴TXIプローブを備えたBruker Avance DRX 400分光計、又は300MHzで動作する標準的な5mm二重周波数プローブを備えたBruker Avance DPX 300分光計、又は300MHzで動作する5mm二重周波数プローブを備えたBruker Fourier 300分光計において得られた。テトラメチルシラン(δ=0ppm)に対するシフトがppm単位で示される。J値は、全体を通してHz単位で示される。NMRスペクトルは、CMC-Assist Version 2.3又はSpinWorks version 3を用いて割り当てられた。使用される液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)は、以下のとおりである。
【0428】
【表3】
【0429】
【表4】
【0430】
【表5】
【0431】
【表6】
【0432】
【表7】
【0433】
使用されるMDAP方法は、以下のとおりであった。
【0434】
MDAP方法(標準-酸性)
室温に維持されたXSELECT CSH Prep C18カラム(19×250mm、5μmのOBD)を備えたAgilent Technologies 1260 Infinity精製システム
移動相A:0.1%のギ酸水溶液
移動相B:アセトニトリル中0.1%のギ酸
流量:20ml/min
勾配プログラム:10%~95%、22min、特定の焦点を合わせた勾配を中心とする
試料:DMSO(+任意のギ酸及び水)中の20~60mg/mLの溶液の注入
【0435】
MDAP方法(塩基性)
室温に維持されたXBridge Prep C18 OBDカラム(19×250mm、5μmのOBD)を備えたAgilent Technologies 1260 Infinity精製システム
移動相A:0.1%のアンモニア水
移動相B:アセトニトリル中0.1%のアンモニア
流量:20ml/min
勾配プログラム:10%~95%、22min、特定の焦点を合わせた勾配を中心とする
試料:DMSO+任意のギ酸及び水)中の20~60mg/mlの溶液の注入
【0436】
実施例1:(S)-1-[2-(1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル)フェニル]-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-アミン塩酸塩
【化45】
中間体1A:1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-アミン
【化46】
メチルヒドラジン(3.3mL)をDMF(35mL)中の2-クロロピリジン-3-カルボニトリル(1.38g)、炭酸セシウム(4.9g)、ヨウ化銅(0.095g)及び1,10-フェナントロリン(0.18g)の混合物に加えた。得られた混合物を60℃で撹拌した。冷却した後、混合物を水で希釈し、DCMで抽出し、水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチルに再度溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、DCM中0~5%のメタノールで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を黄色の固体(0.443g)として得た。H NMR(300MHz、CDCl)8.49-8.46(1H、m)、7.88(1H、dd、J=1.5、8.0Hz)、6.99-6.94(1H、m)、4.09(2H、br s)、3.95(3H、s)。
【0437】
中間体1B:2-ヨード-1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン
【化47】
水(3mL)中の亜硝酸ナトリウム(0.213g)の溶液を、温度を5℃未満に維持しながら、濃硫酸(9mL)中の1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-アミン(中間体1A、0.443g)の冷却溶液にゆっくりと加えた。添加の完了時、混合物を0℃で1時間撹拌し、次に水(10mL)中のヨウ化カリウム(1.99g)の溶液を加えた。温度を室温に上昇させ、混合物を1時間撹拌し、次に固体炭酸ナトリウム(約15g)を慎重に加えた。得られた混合物をDCMで抽出し、チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を乾燥させ(MgSO、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣を、シクロヘキサン中0~60%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を黄色の固体(0.447g)として得た。LCMS(方法4)RT 3.21分 m/z 260[MH
【0438】
中間体1C:2-(1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル)ベンズアルデヒド
【化48】
水(1.5mL)中の炭酸ナトリウム(0.08g)の溶液をDME(3mL)中の2-ヨード-1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(中間体1B、0.1g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.021g)及び2-ホルミルフェニルボロン酸(0.062g)の溶液に加えた。得られた混合物を撹拌し、75℃で1時間加熱した。冷却した後、混合物を、2-ヨード-1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン(中間体1B、0.343g)及び2-ホルミルフェニルボロン酸(0.218g)から出発して、第2の実験と組み合わせた。組み合わされた混合物を水に加え、DCMで抽出し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、シクロヘキサン中0~60%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を淡黄色の油(0.277g)として得た。LCMS(方法4)RT 3.37分 m/z 238[MH
【0439】
中間体1D:(S,E)-2-メチル-N-[2-(1-メチル-1H-ピラゾロ[3.4-b]ピリジン-3-イル)ベンジリデン]プロパン-2-スルフィンアミド
【化49】
DCM(18mL)中の2-(1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル)ベンズアルデヒド(中間体1C、0.277g)、(S)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(0.181g)及び炭酸セシウム(0.51g)の混合物を撹拌し、1時間にわたって穏やかに還流しながら加熱した。さらなる(S)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(0.07g)及び炭酸セシウム(0.19g)を加え、混合物を8時間にわたって穏やかに還流しながら撹拌した。冷却した後、混合物を水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、シクロヘキサン中0~100%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を黄色の油(0.321g)として得た。LCMS(方法4)RT 3.90分 m/z 341[MH
【0440】
中間体1E:(S)-2-メチル-N-{(S)-1-[2-(1-メチル-1H-ピラゾロ[3.4-b]ピリジン-3-イル)フェニル]-2-(ピリジン-2-イル)エチル}プロパン-2-スルフィンアミド
【化50】
n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M、1.2mL)を、温度を-70℃未満に維持しながら、THF(15mL)中の2-メチルピリジン(0.185mL)の冷却溶液に加えた。得られた混合物を-78℃で30分間撹拌し、次にTHF(5.5mL)中の(S,E)-2-メチル-N-[2-(1-メチル-1H-ピラゾロ[3.4-b]ピリジン-3-イル)ベンジリデン]プロパン-2-スルフィンアミド(中間体1D、0.321g)の溶液及び得られた混合物を-78℃で3時間撹拌した。次に、水中の塩化アンモニウムの溶液を加え、混合物を室温にした。炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、混合物をDCMで抽出し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、DCM中0~5%のメタノールで溶離するFCCによって精製し、得られた材料をMDAP(塩基性)によって精製して、表題化合物(0.138g)を得た。H NMR(300MHz、CDCl)8.61(1H、dd、J=1.5、4.5Hz)、8.45-8.41(1H、m)、8.09-8.05(1H、m)、7.65-7.60(1H、m)、7.53-7.33(4H、m)、7.17(1H、dd、J=4.5、8.1Hz)、7.08-7.02(1H、m)、6.93-6.88(1H、m)、5.60-5.52(1H、m)、5.21-5.12(1H、m)、4.26-4.25(3H、m)、3.28(1H、dd、J=5.5、13.5Hz)、3.15(1H、dd、J=8.6、13.8Hz)、1.02(9H、s)。
【0441】
実施例1:(S)-1-[2-(1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル)フェニル]-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-アミン塩酸塩
【化51】
塩化水素(ジオキサン中4M溶液、0.69mL)をメタノール(6mL)中の(S)-2-メチル-N-{(S)-1-[2-(1-メチル-1H-ピラゾロ[3.4-b]ピリジン-3-イル)フェニル]-2-(ピリジン-2-イル)エチル}プロパン-2-スルフィンアミド(中間体1E、0.13g)の溶液に加えた。得られた混合物を45分間撹拌し、次にそれを炭酸水素ナトリウム水溶液に注いだ。混合物をDCMで抽出し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、DCM中0~10%の2Mアンモニア/メタノールで溶離するFCCによって精製した。精製された材料をアセトニトリル及び水に溶解させ、0.1Mの塩酸で処理し、次に凍結乾燥させて、表題化合物を白色の固体(0.068g)として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d)8.64-8.56(4H、m)、8.20-8.16(1H、m)、8.05(1H、dd、J=1.6、8.1Hz)、7.95-7.90(1H、m)、7.62-7.49(4H、m)、7.25(1H、dd、J=4.4、8.0Hz)、7.09-7.03(2H、m)、5.40-5.33(1H、m)、4.08(3H、s)、プラス水ピークの下に隠された2つのプロトン。LCMS(方法1)RT 2.39分 m/z 330[MH
【0442】
実施例2:(S)-1-[2-(イソオキサゾロ[5,4-b]ピリジン-3-イル)フェニル]-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-アミン
【化52】
中間体2A:2-フルオロ-N-メトキシ-N-メチルピリジン-3-カルボキサミド
【化53】
塩化オキサリル(1.98mL)を、温度を5℃未満に維持しながら、3~4滴のDMFを含有するDCM(100mL)中の2-フルオロピリジン-3-カルボン酸(3.0g)の冷却懸濁液にゆっくりと加えた。添加の完了時、混合物を室温に温め、ガス発生が完了するまで撹拌した。混合物を0℃に再度冷却し、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(2.27g)及びピリジン(3.78mL)を加えた。得られた混合物を室温に温め、一晩撹拌した。混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、層を分離した。水性相をDCMでさらに抽出し、組み合わされた有機層を乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、石油エーテル中0~50%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を無色油(3.46g)として得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.30(1H、dd、J=1.4、3.4Hz)、7.95-7.87(1H、m)、7.29-7.23(1H、m)、3.62(3H、s)、3.38(3H、s)。
【0443】
中間体2B:[2-(ジエトキシメチル)フェニル](2-フルオロピリジン-3-イル)メタノン
【化54】
n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M、12.9mL)を、温度を-70℃未満に維持しながら、ジエチルエーテル(30mL)中の1-ブロモ-2-(ジエトキシメチル)ベンゼン(4.17mL)の冷却溶液にゆっくりと加えた。得られた混合物を-78℃で1時間撹拌し、次にジエチルエーテル(20mL)中の2-フルオロ-N-メトキシ-N-メチルピリジン-3-カルボキサミド(中間体2A、3.46g)の溶液を、温度を-70℃未満に維持しながらゆっくりと加えた。混合物を室温に温め、一晩撹拌した。塩化アンモニウム水溶液を加え、混合物を酢酸エチルと水とに分けた。層を分離し、水性層を酢酸エチルでさらに抽出した。組み合わされた有機層を乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、石油エーテル中0~50%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を無色油として得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.40-8.37(1H、m)、8.19-8.13(1H、m)、7.72-7.69(1H、m)、7.54-7.49(1H、m)、7.42-7.37(1H、m)、7.33-7.27(2H、m)、5.72(1H、s)、3.61-3.53(2H、m)、3.49-3.40(2H、m)、1.09(6H、t、J=7.1Hz).
【0444】
中間体2C:[2-(ジエトキシメチル)フェニル]{2-[(プロパン-2-イリデンアミノ)オキシ]ピリジン-3-イル}メタノン
【化55】
カリウムtert-ブトキシド(THF中の1M溶液、16.2mL)を、温度を5℃未満に維持しながら、THF(50mL)中のアセトンオキシム(1.1g)の冷却溶液にゆっくりと加えた。混合物を0℃で30分間撹拌し、次にTHF(30mL)中の[2-(ジエトキシメチル)フェニル](2-フルオロピリジン-3-イル)メタノン(中間体2B、4.3g)の溶液を、温度を-5℃未満に維持しながらゆっくりと加えた。添加の完了時、混合物を室温に温め、一晩撹拌した。混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して、表題化合物を薄茶色の固体(4.8g)として得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.47(1H、dd、J=1.8、4.8Hz)、8.05(1H、dd、J=1.8、7.6Hz)、7.73(1H、d、J=7.6Hz)、7.50-7.44(1H、m)、7.36-7.33(2H、m)、7.11(1H、dd、J=4.9、7.5Hz)、5.81(1H、s)、3.70-3.60(2H、m)、3.51-3.42(2H、m)、1.97(3H、s)、1.48(3H、s)、1.13(6H、t、J=7.1Hz)。
【0445】
中間体2D:2-(イソオキサゾール[5,4-b]ピリジン-3-イル)ベンズアルデヒド
【化56】
TFA(86mL)を塩酸(1M、22mL)中の[2-(ジエトキシメチル)フェニル]{2-[(プロパン-2-イリデンアミノ)オキシ]ピリジン-3-イル}メタノン(中間体2C、4.5g)の懸濁液に加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、シクロヘキサン中0~100%のDCMで溶離するFCCによって精製して、表題化合物(1.59g)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)10.26(1H、s)、8.75-8.72(1H、m)、8.21-8.17(1H、m)、8.07-8.04(1H、m)、7.84-7.73(3H、m)、7.43(1H、dd、J=4.7、7.9Hz).
【0446】
中間体2E:(S,E)-N-[2(イソオキサゾール[5,4-b]ピリジン-3-イル)ベンジリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド
【化57】
DCM(50mL)中の2-(イソオキサゾール[5,4-b]ピリジン-3-イル)ベンズアルデヒド(中間体2D、1.59g)、(S)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(1.03g)及び炭酸セシウム(2.78g)の混合物を撹拌し、穏やかに還流しながら一晩加熱した。冷却した後、混合物を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチルと水とに分けた。水性層を酢酸エチルでさらに抽出し、組み合わされた有機層を乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して、表題化合物を油(2.12g)として得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.76(1H、s)、8.71-8.68(1H、m)、8.23-8.19(1H、m)、7.98-7.94(1H、m)、7.72-7.69(3H、m)、7.38(1H、dd、J=4.8、7.8Hz)、1.15(9H、s).
【0447】
中間体2F:(S)-N-{(S)-1-[2-(イソオキサゾール[5,4-b]ピリジン-3-イル)フェニル]-2-(ピリジン-2-イル)エチル}-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド
【化58】
(S,E)-N-[2(イソオキサゾール[5,4-b]ピリジン-3-イル)ベンジリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(中間体2E)及び2-メチルピリジンから出発して、中間体1Eと同様に進行することによって調製される。H NMR(400MHz、CDCl)8.72-8.69(1H、m)、8.48-8.45(1H、m)、8.13(1H、dd、J=1.5、7.8Hz)、7.73-7.70(1H、m)、7.56-7.51(3H、m)、7.47-7.39(2H、m)、7.13-7.08(2H、m)、5.35(1H、d、J=6.8Hz)、5.12-5.06(1H、m)、3.41(1H、dd、J=4.5、13.6Hz)、3.22(1H、dd、J=8.8、13.6Hz)、0.97(9H、s).
【0448】
実施例2:(S)-1-[2-(イソオキサゾロ[5,4-b]ピリジン-3-イル)フェニル]-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-アミン
【化59】
(S)-N-{(S)-1-[2-(イソオキサゾール[5,4-b]ピリジン-3-イル)フェニル]-2-(ピリジン-2-イル)エチル}-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(中間体2F)から出発して、実施例1と同様に進行することによって調製され、化合物を遊離塩基として単離した。H NMR(400MHz、DMSO-d)8.66-8.63(1H、m)、8.11-8.08(1H、m)、8.01(1H、dd、J=1.6、7.9Hz)、7.89(1H、d、J=7.9Hz)、7.66-7.61(1H、m)、7.51-7.43(4H、m)、7.04-6.99(1H、m)、6.93-6.89(1H、m)、4.76-4.70(1H、m)、3.15-3.11(2H、m).LCMS(方法1)RT 2.24分 m/z 317[MH
【0449】
実施例3:(S)-1-[3-(1-メチル-1H-インダゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-アミン塩酸塩
【化60】
中間体3A:3-ブロモ-2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン
【化61】
トルエン(150mL)中の3-ブロモピリジン-2-カルボキシアルデヒド(7.95g)、エチレングリコール(4.7mL)及びp-TSA(0.812g)の混合物を撹拌し、還流状態で一晩加熱した。冷却した後、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、ペンタン中0~50%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を黄色の油(8.0g)として得た。H NMR(300MHz、CDCl)8.61-8.58(1H、m)、7.89(1H、dd、J=1.5、8.3Hz)、7.18(1H、dd、J=4.8、8.5Hz)、6.31(1H、s)、4.34-4.28(2H、m)、4.14-4.09(2H、m).
【0450】
中間体3B:[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル](2-フルオロフェニル)メタノール
【化62】
イソプロピルマグネシウムクロリド/塩化リチウム溶液(THF中1.3M、2.3mL)を、温度を5℃未満に維持しながら、THF(6mL)中の3-ブロモ-2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン(中間体3A、0.46g)の冷却溶液にゆっくりと加えた。得られた混合物を0℃で1時間撹拌し、次にTHF(4mL)中の2-フルオロベンズアルデヒド(0.298g)の溶液をゆっくりと加えた。撹拌を0℃で1時間にわたって続け、次に水を加え、混合物を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、ペンタン中0~100%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物(0.22g)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.54(1H、dd、J=1.6、4.8Hz)、7.68-7.63(1H、m)、7.45(1H、dd、J=1.6、7.9Hz)、7.35-7.28(1H、m)、7.26-7.20(2H、m)、7.05-6.99(1H、m)、6.58(1H、s)、6.07(1H、s)、4.33-4.20(2H、m)、4.16-4.07(2H、m)、3.68(1H、s).
【0451】
中間体3C:[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル](2-フルオロフェニル)メタノン
【化63】
水(8mL)中の炭酸水素ナトリウム(0.144g)の溶液をtert-ブタノール(4mL)中の[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル](2-フルオロフェニル)メタノール(中間体3B、0.22g)の懸濁液に加えた。次に、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(0.129g)及びTEMPO(0.002g)を加え、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えた後、炭酸水素ナトリウム及び塩化ナトリウムを加え、混合物を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、ペンタン中0~50%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物(0.175g)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.74(1H、dd、J=1.7、4.8Hz)、7.84-7.80(1H、m)、7.65(1H、dd、J=1.7、7.8Hz)、7.59-7.53(1H、m)、7.37(1H、dd、J=4.8、7.8Hz)、7.29-7.24(1H、m)、7.12-7.06(1H、m)、6.07-6.06(1H、m)、3.93-3.81(4H、m).
【0452】
中間体3D:3-[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル]-1-メチル-1H-インダゾール
【化64】
トルエン(6mL)中の[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル](2-フルオロフェニル)メタノン(0.175g)及びメチルヒドラジン(0.073mL)の混合物を撹拌し、100℃で一晩加熱した。混合物をわずかに冷却し、さらなるメチルヒドラジン(0.15mL)及びDMAP(0.078g)を加えた。撹拌及び100℃での加熱を一晩続けた。さらなるメチルヒドラジン(0.15mL)を加え、100℃での加熱を4日間にわたって続けた。冷却した後、混合物を1Mの塩酸水溶液に加え、酢酸エチルで抽出した。水性層を固体炭酸水素ナトリウムの慎重な添加によって塩基性化し、次に酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、ペンタン中0~100%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物(0.044g)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.79-8.77(1H、m)、7.91(1H、dd、J=1.7、7.9Hz)、7.76-7.72(1H、m)、7.46-7.44(2H、m)、7.41(1H、dd、J=4.8、7.9Hz)、7.23-7.18(1H、m)、6.24(1H、s)、4.33-4.30(2H、m)、4.16(3H、s)、4.00-3.96(2H、m).
【0453】
中間体3E:3-(1-メチル-1H-インダゾール-3-イル)ピリジン-2-カルボキシアルデヒド
【化65】
メタノール(3mL)中の3-[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル]-1-メチル-1H-インダゾール(0.216g)及び1Mの塩酸(3mL)の混合物を撹拌し、70℃で4時間加熱した。冷却した後、混合物を水に注ぎ、炭酸水素ナトリウム水溶液の添加によって塩基性化し、次に酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、ペンタン中0~100%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物(0.085g)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)10.28(1H、s)、8.89(1H、dd、J=1.6、4.6Hz)、8.18(1H、dd、J=1.6、7.9Hz)、7.69-7.65(1H、m)、7.62(1H、dd、J=4.6、7.9Hz)、7.50-7.48(2H、m)、7.28-7.24(1H、m)、4.18(3H、s).
【0454】
中間体3F:(S,E)-2-メチル-N-{[3-(1-メチル-1H-インダゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]メチレン}プロパン-2-スルフィンアミド
【化66】
3-(1-メチル-1H-インダゾール-3-イル)ピリジン-2-カルボキシアルデヒド(中間体3F)及び(S)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドから出発して、中間体2Eと同様に進行することによって調製される。H NMR(400MHz、CDCl)8.93(1H、s)、8.88(1H、dd、J=1.7、4.6Hz)、8.12(1H、dd、J=1.7、7.8Hz)、7.67-7.65(1H、m)、7.54(1H、dd、J=4.6、7.8Hz)、7.48-7.46(2H、m)、7.25-7.21(1H、m)、4.16-4.15(3H、s)、1.28(9H、s).
【0455】
中間体3F:(S)-2-メチル-N-{(S)-1-[3-(1-メチル-1H-インダゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]-2-(ピリジン-2-イル)エチル}プロパン-2-スルフィンアミド
【化67】
LDA(THF及びヘキサン中1M、1.9mL)を、温度を-70℃未満に維持しながら、THF(3mL)中の2-メチルピリジン(0.176mL)の冷却溶液にゆっくりと加えた。添加の完了時、混合物を-78℃で1時間撹拌し、次にTHF(94mL)中の(S,E)-2-メチル-N-{[3-(1-メチル-1H-インダゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]メチレン}プロパン-2-スルフィンアミド(中間体3E、0.271g)の溶液を加えた。混合物を-78℃で2.5時間撹拌し、次に温度を室温に上昇させながら、水を慎重に加えた。混合物を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、酢酸エチル中0~7.5%の2Mアンモニア/メタノールで溶離するFCCによって精製して、表題化合物(0.12g)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.66(1H、dd、J=1.8、4.8Hz)、8.34(1H、dd、J=0.9、4.0Hz)、7.89(1H、dd、J=1.7、7.8Hz)、7.78-7.76(1H、m)、7.46-7.43(3H、m)、7.32(1H、dd、J=4.7、7.7Hz)、7.24-7.20(1H、m)、7.01-6.96(2H、m)、5.56-5.50(1H、m)、5.37-5.30(1H、m)、4.16(3H、s)、3.49-3.43(1H、m)、3.12-3.05(1H、m)、1.01(9H、s).
【0456】
実施例3:(S)-1-[3-(1-メチル-1H-インダゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]-2-(ピリジン-2-イル)エタン-1-アミン塩酸塩
【化68】
(S)-2-メチル-N-{(S)-1-[3-(1-メチル-1H-インダゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]-2-(ピリジン-2-イル)エチル}プロパン-2-スルフィンアミド(中間体3F)から出発するが、ジオキサン中の塩化水素の代わりに、メタノール(1.25M)中の塩化水素を使用して、実施例1と同様に進行することによって調製される。単離の後、生成物を、遊離塩基をアセトニトリルに溶解させ、1Mの塩酸水溶液を加え、次に凍結乾燥させることによってHCl塩に転化した。
H NMR(400MHz、DMSO-d)8.86(3H、br s)、8.80(1H、dd、J=1.5、4.8Hz)、8.48-8.44(1H、m)、8.10(1H、dd、J=1.5、7.7Hz)、8.07-8.00(1H、m)、7.73-7.70(1H、m)、7.67-7.60(2H、m)、7.51-7.47(1H、m)、7.46-7.40(1H、m)、7.36-7.31(1H、m)、7.22-7.19(1H、m)、5.71-5.68(1H、m)、4.12-4.11(3H、s)、3.80-3.72(1H、m)、3.57-3.48(1H、m).LCMS(方法1)RT 2.57分 m/z 330[MH]。
【0457】
実施例4:(S)-6-{2-アミノ-2-[3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]エチル}-5-メチルピリジン-2-カルボニトリル塩酸塩
【化69】
中間体4A:(2-ブロモピリジン-3-イル)(2-フルオロフェニル)メタノール
【化70】
n-ブチルリチウム(ヘキサン中1.6M、9.4mL)を、温度を-70℃未満に維持しながら、THF(20mL)中の1-ブロモ-2-フルオロベンゼン(2.63g)の冷却溶液にゆっくりと加えた。混合物を-78℃で20分間撹拌し、次にTHF(12mL)中の2-ブロモピリジン-3-カルボキシアルデヒド(2.64g)の溶液を加え、混合物を-78℃で1.5時間撹拌した。温度を-30℃に上昇させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。それを水で希釈し、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、シクロヘキサン中0~65%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を黄色のガム(3.38g)として得た。LCMS(方法4)RT 3.22分 m/z 282/284[MH
【0458】
中間体4B:(2-ブロモピリジン-3-イル)(2-フルオロフェニル)メタノン
【化71】
(2-ブロモピリジン-2-イル)(2-フルオロフェニル)メタノール(中間体4A)から出発して、中間体3Cと同様に進行することによって調製される。LCMS(方法4)RT 3.58分 m/z 279/281[MH]。
【0459】
中間体4C:(2-フルオロフェニル)(2-ビニルピリジン-3-イル)メタノン
【化72】
テトラキス-(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.8g)をDME(120mL)及び水(25mL)中の(2-ブロモピリジン-3-イル)(2-フルオロフェニル)メタノン(中間体4B、8.48g)、4,4,5,5-テトラメチル-2-ビニル-1,3,2-ジオキサボロラン(13.98g)及び炭酸カリウム(12.55g)の混合物に加えた。混合物を脱気し、次に撹拌し、還流状態で一晩加熱した。冷却した後、層を分離し、有機層を酢酸エチルで希釈し、塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、シクロヘキサン中0~40%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を琥珀色の固体(6.55g)として得た。LCMS(方法3)RT 1.34 m/z 228[MH
【0460】
中間体4D:3-(2-フルオロベンゾイル)ピリジン-2-カルボキシアルデヒド
【化73】
空気、次にオゾンを5.5時間にわたって-78℃でDCM(120mL)中の(2-フルオロフェニル)(2-ビニルピリジン-3-イル)メタノン(中間体4C、6.56g)及びTFA(3.3mL)の冷却溶液に通してバブリングした。次に、空気、続いて窒素を混合物に通してバブリングして、全てのオゾンを除去した。次に、ジメチルスルフィド(15mL)を混合物に加え、温度を室温に上昇させ、一晩撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を混合物に加え、層を分離した。水性層をDCMで抽出し、組み合わされた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、シクロヘキサン中0~40%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を白色の固体(4.11g)として得た。H NMR(400MHz、CDCl)10.05(1H、s)、8.89(1H、dd、J=1.5、4.8Hz)、8.04-7.99(1H、m)、7.79-7.77(1H、m)、7.62(1H、dd、J=4.8、7.7Hz)、7.60-7.54(1H、m)、7.33-7.28(1H、m)、7.06-7.00(1H、m).
【0461】
中間体4E:[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル](2-フルオロフェニル)メタノン
【化74】
トルエン(200mL)中の3-(2-フルオロベンゾイル)ピリジン-2-カルボキシアルデヒド(中間体4D、4.11g)、エチレングリコール(1.05mL)及びp-TSA(1.02g)の混合物を撹拌し、ディーン・スターク装置によって水を除去しながら、還流状態で一晩加熱した。冷却した後、混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。水性層を酢酸エチルでさらに抽出し、組み合わされた有機層を塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、シクロヘキサン中0~50%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を淡黄色の油(4.42g)として得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.75-8.73(1H、m)、7.84-7.79(1H、m)、7.66(1H、dd、J=1.6、7.7Hz)、7.60-7.53(1H、m)、7.37(1H、dd、J=4.8、7.8Hz)、7.29-7.25(1H、m)、7.12-7.07(1H、m)、6.06(1H、s)、3.93-3.81(4H、m).
【0462】
中間体4F:[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル]{2-[(プロパン-2-イリデンアミノ)オキシフェニル}メタノン
【化75】
[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル](2-フルオロフェニル)メタノン(中間体4E)及びアセトンオキシムから出発して、中間体2Cと類似の方法で調製される。H NMR(400MHz、CDCl)8.71-8.69(1H、m)、7.77-7.74(1H、m)、7.69-7.66(1H、m)、7.52-7.50(2H、m)、7.32(1H、dd、J=4.9、7.9Hz)、7.12-7.08(1H、m)、6.14(1H、s)、4.03-3.92(4H、m)、1.88(3H、s)、1.38(3H、s).
【0463】
中間体4G:3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-カルボキシアルデヒド
【化76】
イソプロパノール(25mL)中の[2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-3-イル]{2-[(プロパン-2-イリデンアミノ)オキシフェニル}メタノン(中間体4F、4.53g)及び塩酸(2M、8.33mL)の混合物を撹拌し、70℃で5時間加熱した。冷却した後、混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液及び塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、イソヘキサン中0~80%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製して、表題化合物をオフホワイトの固体(2.3g)として得た。H NMR(400MHz、CDCl)10.21(1H、s)、9.02(1H、dd、J=1.6、4.7Hz)、8.09-8.06(1H、m)、7.73-7.69(2H、m)、7.66-7.61(1H、m)、7.45-7.42(1H、m)、7.38-7.33(1H、m).
【0464】
中間体4H:(S,E)-N-{[3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]メチレン}-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド
【化77】
3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-カルボキシアルデヒド(中間体4G)及び(S)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドから出発して、中間体2Eと同様に進行することによって調製される。H NMR(400MHz、CDCl)8.98(1H、dd、J=1.6、4.8Hz)、8.78(1H、s)、8.00(1H、dd、J=1.7、7.8Hz)、7.69-7.66(1H、m)、7.63-7.58(2H、m)、7.48-7.44(1H、m)、7.37-7.32(1H、m)、1.01(9H、s).
【0465】
中間体4I:(S)-N-{(S)-1-[3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]-2-(6-ブロモ-3-メチルピリジン-2-イル)エチル}-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド
【化78】
LDA(THF中2M、3.74mL)を、温度を-70℃未満に維持しながら、THF(30mL)中の6-ブロモ-2,3-ジメチルピリジン(1.5g)の冷却溶液にゆっくりと加えた。添加の完了時、混合物を-78℃で1時間撹拌し、次に温度を-70℃未満に維持しながら、THF(25mL)中の(S,E)-N-{[3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]メチレン}-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(中間体4H、0.943g)の冷却溶液に、カニューレによって加えた。混合物を18時間の期間にわたって10℃にゆっくりと温め、次に水を加えた。混合物を酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、イソヘキサン中0~100%の酢酸エチルで溶離するFCCによって精製した。生成物を、イソヘキサン中0~80%の酢酸エチルで溶離するFCCによって再度精製して、表題化合物を無色のガラス(0.45g)として得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.79(1H、dd、J=1.5、4.8Hz)、7.87-7.80(2H、m)、7.70-7.62(2H、m)、7.45-7.37(2H、m)、7.08(2H、d、J=1.3Hz)、5.37-5.34(1H、m)、5.26-5.19(1H、m)、3.25-3.10(2H、m)、1.86(3H、s)、1.11(9H、s).
【0466】
中間体4J:(S)-N-{(S)-1-[3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]-2-(6-シアノ-3-メチルピリジン-2-イル)エチル}-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド
【化79】
DMF(9mL)中の(S)-N-{(S)-1-[3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]-2-(6-ブロモ-3-メチルピリジン-2-イル)エチル}-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(中間体4I、0.45g)、シアン化亜鉛(0.309g)及びテトラキス-(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.203g)の混合物を脱気し、次に3時間にわたって90℃で、アルゴン下で加熱した。冷却した後、混合物を酢酸エチルで希釈し、塩水で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、DCM中0~2.5%のメタノールで溶離するFCCによって精製して、表題化合物を黄色のガム(0.251g)として得た。H NMR(400MHz、CDCl)8.80(1H、dd、J=1.7、4.8Hz)、7.87-7.82(2H、m)、7.73-7.64(2H、m)、7.47-7.43(1H、m)、7.43-7.37(2H、m)、7.32(1H、d、J=7.8Hz)、5.35-5.26(2H、m)、3.32(1H、m)、3.23(1H、m)、2.08(3H、s)、1.09(9H、s).
【0467】
実施例4:(S)-6-{2-アミノ-2-[3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]エチル}-5-メチルピリジン-2-カルボニトリル塩酸塩
【化80】
塩化水素(ジオキサン中4M、1.37mL)をジオキサン(15mL)中の(S)-N-{(S)-1-[3-(ベンゾ[d]イソオキサゾール-3-イル)ピリジン-2-イル]-2-(6-シアノ-3-メチルピリジン-2-イル)エチル}-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(中間体4J、0.251g)の溶液に加え、混合物を1.5時間撹拌し、次に減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液とに分け、有機層を乾燥させ(NaSO)、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、残渣を、DCM中0~10%の2Mアンモニア/メタノールで溶離するFCCによって精製した。得られた生成物をジオキサンに溶解させ、塩化水素(ジオキサン中4M)で処理した。懸濁液を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチル中で懸濁させ、穏やかに温め、固体をろ過によって収集し、酢酸エチルで洗浄し、減圧下で乾燥させて、表題化合物を白色の固体(0.146g)として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d)8.96(1H、dd、J=1.6、4.8Hz)、8.82(3H、br s)、8.17(1H、dd、J=1.7、7.9Hz)、7.87-7.84(1H、m)、7.79-7.71(2H、m)、7.68-7.65(1H、m)、7.49-7.43(2H、m)、7.34-7.31(1H、m)、5.48-5.43(1H、m)、3.42-3.35(1H、m)、3.31-3.24(1H、m)、1.95(3H、s).LCMS(方法1)RT 2.79 m/z 356[MH]。
【0468】
表2に示される化合物を、実施例1~4について記載されるものと同様の方法を用いて調製した。
【0469】
【表8】
【0470】
【表9】
【0471】
【表10】
【0472】
【表11】
【0473】
【表12】
【0474】
生物学的アッセイ
化合物の生物学的効果は、本明細書に記載されるアッセイの1つ以上を用いて評価され得る。
【0475】
実施例25:PatchXpress 7000Aを用いたHCN1 HCN2及びHCN4についてのアッセイ
HCN電流を記録するための溶液は、以下のとおりであった。
【0476】
【表13】
【0477】
HCN1及びHCN2について、パルスプロトコルは、電流を誘発するために2秒間にわたる-30mVの保持電位から-110mVへのステッピング(図1Aを参照されたい)を含んでいた。次に、膜電圧をさらに8秒間にわたって-30mVに再びステッピングした。このシーケンスを、実験を通して10秒おきに繰り返し誘発し、薬物の前(対照A)に開始し、5つの増加する化合物濃度の累積的な添加中、次に最後に100%の阻害濃度の塩化セシウム(CsCl、3mM)であった。
【0478】
HCN4について、パルスプロトコルは、電流を誘発するために4秒間にわたる-30mVの保持電位から-130mVへのステッピング(図1Bを参照されたい)を含んでいた。次に、膜電圧を-30mVに再びステッピングし、電圧プロトコルは、14秒の開始間の間隔を有し、薬物の前(対照A)に開始し、増加する化合物濃度の累積的な添加中、次に最後に100%の阻害濃度の塩化セシウム(CsCl、3mM)であった。
【0479】
-110mV(HCN1及びHCN2)又は-130mV(HCN4)へのパルスの最後に測定されたピーク内向き電流を測定し、漏れ電流を差し引いて、HCN電流を計算した。HCN電流振幅を各対照又は化合物添加後に測定し、対照振幅(対照A)に対して正規化した。
【0480】
全ての実験を室温(約22℃)で行った。
【0481】
各試験化合物濃度を7分間にわたって細胞に適用し、その時点で次の累積濃度を適用した。3mMのCsClを各実験(対照B)の最後に2分間にわたって各細胞に適用して、HCN電流の100%の阻害レベルを決定した。
【0482】
実施例26:IonWorks Quattroを用いたhERGについてのアッセイ
化合物のhERG活性は、以下に記載されるアッセイを用いて測定され得る。
【0483】
hERG電流を記録するための溶液は、以下のとおりであった。
【0484】
【表14】
【0485】
電気生理学的記録を、完全長hERGチャネルを安定的に発現するヒト胎児腎臓(HEK)細胞株から行った。単一細胞イオン電流を、Molecular Devices製のIonWorks Quattroを用いて、室温(約22℃)で穿孔パッチクランプ構成(100μg ml-1のアムホテリシン)において測定した。
【0486】
細胞を30秒間にわたって-70mVの保持電位に固定し、次に1秒間にわたって+40mVにステッピングした。この後、hERGテール電流を誘発するために-30mVへの1秒の過分極工程を行った。このシーケンスを0.25Hzの周波数で5回繰り返した(図2を参照されたい)。電流を第5のパルスにおけるテールステップから測定し、保持電流を参照した。次に、化合物を、同一のパルス列を用いたhERGシグナルの第2の測定前に6~7分間にわたってインキュベートした。
【0487】
hERGチャネルを阻害する試験化合物の効力(IC50)を、1つの濃度につき最大で4つのレプリケートとともに、最大で8つの試験化合物濃度から生成された濃度反応曲線から決定した。
【0488】
実施例27:IonWorks Quattroを用いたhNa1.5についてのアッセイ
hNa1.5チャネルを阻害する化合物の能力は、以下に記載されるアッセイを用いて決定され得る。
【0489】
Na1.5電流を記録するための溶液は、以下のとおりであった。
【0490】
【表15】
【0491】
電気生理学的記録を、完全長hNa1.5を安定的に発現するヒト胎児腎臓(HEK)細胞株から行った。集団パッチクランプ測定を、Molecular Devices製のIonWorks Quattroを用いて、室温(約22℃)で穿孔パッチクランプ構成(100μg ml-1のアムホテリシン)において行った。電圧プロトコルが図3に示される。電流をまず対照(化合物添加前)条件下で測定する。次に、化合物を、同一のパルス列を用いたhNa1.5シグナルの第2の測定前に5~7分間にわたってインキュベートし得る。電流を第15のパルスにおいて脱分極工程から測定し、保持電流を参照する。
【0492】
実施例28:MDCKアッセイ
MDCK-MDR1細胞における双方向MDCK透過性アッセイを、1ウェル当たり2.35×105個の細胞で24ウェルTranswellプレートに播種されたMDCK-MDR1細胞(Solvo Biotechnology)を用いて行い、5%のCO下において37℃で3日間の培養後、コンフルエントな単層において使用することができる。試験化合物(10μM、0.1%のDMSO最終、n=2)を、頂端側から側底側(A>B)及び側底側から頂端側(B>A)の測定の両方のために、アッセイ緩衝液(pH7.4に調整された、25mMのHEPESが補充されたハンクス平衡塩溶液)中でtranswellプレートアセンブリのドナー区画に加え得る。並行する一連のインキュベーションをtranswellプレートにおける両方の区画に加えられた輸送体阻害剤エラクリダール(5μM)の存在下で行う。インキュベーションを37℃で行い、試料を回収評価のためにT=0及び1時間の時点でドナー及びアクセプタチャンバの両方から取り出し、化合物を、分析的内部標準を含めて質量分析法(LC-MS/MS)によって分析する。
【0493】
見掛けの透過性(Papp)値を関係式から決定した:
Papp=[化合物アクセプタT=終了]×Vアクセプタ/([化合物ドナーT=0]×Vドナー)/インキュベーション時間×Vドナー/面積×60×10-6cm/s
式中、Vは、各Transwell区画の体積(頂端側125μL、側底側600μL)であり、濃度は、インキュベーション前のドナーチャンバ及びインキュベーションの終了時のアクセプタチャンバにおける化合物に対する相対MS反応(内部標準に対して正規化された)である。
面積=薬物移動のために曝される細胞の面積(0.33cm2)。
【0494】
排出比(PappB>A/PappA>B)を各方向における平均Papp値から各化合物について計算することができる。MDCK-MDR1細胞株は、排出輸送体、MDR1(P-糖タンパク質)を過剰発現するように操作されており、良好な透過性B>Aであるが、低い透過性A>Bであるという知見は、化合物がこの輸送体のための基質であることを示唆する。排出比も、阻害剤の存在下で行われた実施と同じように計算した。正味の排出は、阻害剤の存在下における排出に対する、阻害剤の非存在下における排出の比率である。正味の排出値>5(すなわち阻害剤なしの排出比を、阻害剤を伴う排出比で除算した値)は、輸送体P-gpのための基質である化合物を示し、したがって中枢神経系から制限されるより高い可能性を有するであろう(すなわち末梢に制限された)。
【0495】
ルシファーイエロー(LY)を、細胞層の生存を評価するために、全てのウェルにおける頂端側緩衝液に加えた。LYは、脂溶性バリアを自由に透過できないため、高度のLY輸送は、LY Papp>10×10-6cm/sを有する細胞層及びウェルの低い完全性が拒絶されたことを示す。1つのウェルにおける完全性の障害は、プレートにおける他のウェルの有効性に影響を与えないことに留意されたい。
【0496】
ウェルからの化合物回収を、インキュベーション前のドナーチャンバにおける反応と比較した、インキュベーションの終了時のドナー及びアクセプタチャンバにおけるMS反応(内部標準に対して正規化された)から決定することができる。回収率<50%は、アッセイにおける、化合物の溶解度、安定性又は結合の問題を示唆し、これらは、結果の信頼性を低下させ得る。
【0497】
生物学的データ
以下の表3は、試験される化合物について実施例25に記載されるPatchXpress(PX)プロトコルを用いて、HCN2及びHCN4のIC50値をμM単位で示す。
【0498】
【表16】
【0499】
実施例29:HCN2イオンチャネルの薬理学的遮断による耳鳴りに対する効果
モルモットにおける耳鳴りを、音響驚愕(GPIAS)試験のギャップ誘導阻害を用いてモニターした(図4を参照されたい)。耳鳴りが存在していた場合、GPIASが減少され;Berger,J.I.et al.Effects of the cannabinoid CB1 agonist ACEA on salicylate ototoxicity,hyperacusis and tinnitus in guinea pigs.Hearing research,(2017)及びCoomber,B.et al.Neural changes accompanying tinnitus following unilateral acoustic trauma in the guinea pig.Eur J Neurosci 40,2427-2441,(2014)を参照されたい。
【0500】
図4において、音刺激(上記)及び対応する耳介反射(下記)が自由行動モルモットにおいて示される。ギャップなし及びギャップありの刺激がランダムな順序で示される。移動によって汚染されたトレース(「ギャップなし」における上側のトレース)を分析前に除去した。
【0501】
耳鳴りを高用量のサリチレートによってヒトにおいて1~2時間以内に誘発した。同様の短期耳鳴りモデルをサリチレートの腹腔内(i.p.)注入によってモルモットにおいて実施した。全ての動物において、サリチレートは、GPIASの行動阻害を引き起こした(図5中のバー2を参照されたい)。非選択的阻害剤イバブラジンによるHCNイオンチャネルの遮断(HCN1~4を同等に遮断する)は、GPIASを改善した(図5中のバー3を参照されたい)。したがって、HCNイオンチャネル遮断がこの短期(サリチレート)モデルにおいて耳鳴りの行動兆候を改善することが分かった。
【0502】
サリチレート(350mg/kg、腹腔内(i.p.))は、サリチレート投与の2時間後に行動ギャップ検出を損なう(図5中のバー2を参照されたい)。ギャップ検出は、イバブラジン(5mg/kg、皮下(s.c.))でHCNチャネルを遮断することによって回復された。
【0503】
軽度の片側騒音曝露は、モルモットの約40%においてGPIASを軽減することが分かり、これは、騒音曝露が全てではないが一部の対象において耳鳴りを引き起こす、ヒトにおける雑音の影響に似た観察である。騒音曝露モデルは、ヒトにおける耳鳴りの一般的な原因と似ているため、サリチレートモデルより臨床的に意義がある。第2の重要な点は、それが長期であることである一方、サリチレートによって誘発される耳鳴りは、サリチレート曝露後に急速に改善される。
【0504】
騒音曝露後に見られたGPIASの軽減(図6中のバーBを参照されたい)は、イバブラジンによるHCNイオンチャネル遮断によって急速に及び完全に改善されたことが分かり、イバブラジンは、全ての4つのHCNイオンチャネルアイソフォームを同等に遮断する(図6中のバーCを参照されたい)。GPIASは、薬物ウォッシュアウト後に戻る(図6中のバーDを参照されたい)。したがって、HCNイオンチャネルの遮断が耳鳴りの行動兆候をなくすことが分かった。
【0505】
イバブラジンに化学的に関連せず、本特許出願の特許請求の範囲内ではない、末梢制限HCN2選択的化合物である例示的な化合物(図6中の「化合物476」)は、「耳鳴り」行動の完全な改善も引き起こした(図6中のバーEを参照されたい)。耳鳴りの行動証拠を示さない騒音曝露モルモットにおける対照実験において、イバブラジンは、GPIASに対する効果を有さなかった(n=3、結果は示されない)。短期サリチレートモデル及び長期騒音曝露モデルにおいて得られた同様の結果は、耳鳴りは、HCN2イオンチャネルの活性によって開始及び維持されることを示唆する。
・バーA:未処置のモルモットは、連続性騒音の短いギャップ後、音響驚愕反応の大幅な減少を示した。
・バーB:片側騒音曝露(NE、110dB、1h、試験前の8週間)後、モルモットの約40%は、低下されたGPIASを生じた。
・バーC:非選択的HCN阻害剤イバブラジン(5mg/kg、皮下(s.c.))は、GPIASを完全に回復させる。濃い灰色のバー:軽減されたGPIASは、薬物ウォッシュアウト後に戻る(1~2d)。
・バーE:HCN1(28倍)及びHCN4(63倍)よりHCN2に対して高い選択性を有する化合物は、神経因性疼痛の完全遮断を達成する同じ用量(0.5mg/kg、皮下(s.c.))でGPIASを完全に回復させた。
【0506】
行動耳鳴りを示さない騒音曝露モルモットにおける対照実験において、イバブラジンは、ギャップ検出に対する効果を有さなかった(図示せず)。
【0507】
実施例30:HCN遮断剤イバブラジンの中枢神経系浸透の評価
モルモット血漿、脳(体性感覚皮質)及び聴覚神経におけるイバブラジンを注入の30分後の時点(実施例30において使用される時間)でアッセイした。
【0508】
血漿についての予備実験における総濃度の比率:
脳:聴覚神経は、1:0.12:0.57(n=2)であった。脳内で検出された少量(血漿濃度の12%)は、脳の血管供給内のイバブラジンの存在によって主に説明される。したがって、他の種と同様に、イバブラジンは、その親水性及びPgp基質活性のため、モルモットの脳から強力に除外され;Young,G.T.,Emery,E.C.,Mooney,E.R.,Tsantoulas,C.&McNaughton,P.A.Inflammatory and neuropathic pain are rapidly suppressed by peripheral block of hyperpolarisation-activated cyclic nucleotide-gated ion channels.Pain 155,1708-1719,(2014)を参照されたい。
【0509】
聴覚神経と血漿総濃度との間の0.57の比率は、イバブラジンが聴覚神経から排除されず、したがってこれがイバブラジンの血漿濃度に利用されることを示す。1の値との差は、血漿及び聴覚神経中のタンパク質への結合の差によって説明され得る。したがって、HCN遮断剤イバブラジンは、聴覚神経に浸透するが、中枢神経系に浸透しないことが分かった。
【0510】
実施例31:聴覚閾値に対するHCN2の遺伝子欠失又は薬理学的遮断の影響
この実施例では、HCN2の遺伝子欠失又は薬理学的遮断の、3kHz~42kHzの周波数のパルス音に対する聴性脳幹反応(ABR)閾値に対する影響を評価した。結果が図7に示され、WTマウス及びsox10-Cre+/-/fHCN2同腹子(聴覚標的化HCN2欠失)は、ABR閾値又は潜時の有意差を示さない。同様の結果は、非選択的HCN遮断剤イバブラジン及び化学的に関連しないHCN2選択的遮断剤(20mg/kg腹腔内(ip))で処置された成体マウスにおいて得られた。HCN2の全体的な遺伝子欠失を有するマウスにおける聴力の有意差は見られなかったが、この場合、HCN2-/-マウスが3~4週までに死亡するため、聴力を2週齢のWT同腹子と比較した。
【0511】
聴覚標的化HCN2欠失を有するマウス(図7中の白丸の上側線)及びWT同腹子(図7中の黒丸の下側線)は、閾値(図7)又は反応潜時のいずれの有意差も示さない(データは示されない、クリック及び12KHz及び18kHzで測定されたP1及びN1波の潜時)。したがって、らせん状神経節ニューロンにおいて発現されるHCN2の欠失は、正常聴力閾値又は反応潜時に影響を与えない。バーは、SD(n=6)を示す。
【0512】
これらの結果は、HCN2が正常聴力に関与せず、騒音曝露後などの病理学的状況でのみ活性化されることを示す。
【0513】
実施例32:フォンフライフィラメントを用いて試験されるマウス神経因性疼痛モデルにおける実施例4の化合物の機械的鎮痛効果
実施例4の化合物を、WT Black6系統マウスを用いて、マウス神経因性疼痛モデルにおいて試験した。使用されるモデルは、Seltzer Z,Dubner R,&Shir Y(1990),A novel behavioural model of neuropathic pain disorders produced in rats by partial sciatic nerve injury,Pain 43:205-218)に記載されるモデルと類似していた。実験手順のさらなる詳細は、Young GT et al.(2014),Inflammatory and neuropathic pain are rapidly suppressed by peripheral block of hyperpolarisation-activated cyclic nucleotide-gated ion channels;Pain 155:1708-1719;及びTsantoulas C et al.,(2017),Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated 2(HCN2)ion channels drive pain in mouse models of diabetic neuropathy.Sci Transl Med 9:eaam6072に記載されている。
【0514】
実施例4の化合物を坐骨神経部分損傷手術の5日後にマウスに0.5mg/kg及び1mg/kgの用量で腹腔内(i.p.)投与し、3~8匹のマウスからのデータを平均する。機械的疼痛閾値を、「アップ-ダウン」法を用いて、手術された側の後肢に適用された手動フォンフライフィラメントによって測定した。実施例4の化合物の効果をビヒクルの注入と比較した。
【0515】
実施例4の化合物は、1mg/kg腹腔内(i.p.)で完全無痛覚を提供した(図8(ビヒクル注入を超える有意差が示される(、p<0.05))を参照されたい)。マウスの反対側(手術されていない)後肢において痛覚過敏は観察されない。
【0516】
実施例4の化合物は、実施例25に記載されるPatchXpress(PX)プロトコルにおいて、HCN2に対して選択的であり、0.26μMのIc50を示す。化合物は、HCN4及びHCN1より20倍選択的であり、Na1.5より92倍選択的である。実施例4は、hERGの76倍の選択性も有する。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】