(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】片頭痛の治療及び/又は発生の低減
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240221BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20240221BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20240221BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20240221BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P25/06
A61K31/4545
A61K31/497
A61K31/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553485
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 IB2022051820
(87)【国際公開番号】W WO2022185224
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523333515
【氏名又は名称】シージーアールピー ダイアグノスティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハスルトン,マーク
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA081
4C084ZA082
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA08
(57)【要約】
片頭痛に罹患している特定の対象へのゲパントの投与によって、その対象における片頭痛を治療する方法が記載されている。また、片頭痛に罹患している特定の対象へのゲパントの投与によって、その対象における片頭痛の発生率を低減させる方法も記載されている。特定の対象を識別するための方法も記載されている。他の実施形態も開示されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
片頭痛に罹患している対象における片頭痛の治療に使用するためのゲパントであって、前記ゲパントの投与前に、前記対象が、前記片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示さないことが既知である、ゲパント。
【請求項2】
前記対象が、偶発性片頭痛に罹患している、請求項1に記載の使用のためのゲパント。
【請求項3】
前記対象が、慢性片頭痛に罹患している、請求項1に記載の使用のためのゲパント。
【請求項4】
前記対象が、前記片頭痛の急性期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すことが既知である、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のためのゲパント。
【請求項5】
前記対象が、前記片頭痛の発作間欠期間中に、較正されたフォンフライ毛を用いた皮膚押込みに対して、41℃超の熱痛閾値及び/又は30g超の機械的痛閾値を有することが判定された、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のためのゲパント。
【請求項6】
前記片頭痛の発作間欠期間中での異痛及び/又は痛覚過敏の不在が、定量的感覚試験(QST)によって判定された、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のためのゲパント。
【請求項7】
前記片頭痛の発作間欠期間中での異痛及び/又は痛覚過敏の不在が、アンケートによって判定された、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のためのゲパント。
【請求項8】
前記ゲパントが、リメゲパント、ウブロゲパント、バゼゲパント、アトゲパント、オルセゲパント、テルカゲパント、BI44370、及びMK-3207からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のためのゲパント。
【請求項9】
前記ゲパントが、前記患者が片頭痛を有していない間に投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のためのゲパント。
【請求項10】
前記異痛が、皮膚異痛である、先行請求項のいずれか一項に記載の使用のためのゲパント。
【請求項11】
前記ゲパントが、前記片頭痛の発作期の開始から3時間以内に投与される、請求項1に記載の使用のためのゲパント。
【請求項12】
前記ゲパントが、前記片頭痛の発作期の開始から60分以内に投与される、請求項11に記載の使用のためのゲパント。
【請求項13】
対象における片頭痛を治療するための薬剤の製造におけるゲパントの使用であって、前記ゲパントの投与前に、前記対象が、前記片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示さないことが既知である、使用。
【請求項14】
対象における片頭痛を治療する方法であって、
a)前記対象が片頭痛の発作期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すかどうかを判定すること、又は判定したことと、
b)前記片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない前記対象に、ゲパントを投与することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記対象が、偶発性片頭痛に罹患している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、慢性片頭痛に罹患している、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、前記片頭痛の急性期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すことが既知である、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、前記片頭痛の発作間欠期間中に、較正されたフォンフライ毛を用いた皮膚押込みに対して、41℃超の熱痛閾値及び/又は30g超の機械的痛閾値を有することが判定された、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記片頭痛の発作間欠期間中での異痛及び/又は痛覚過敏の不在が、定量的感覚試験(QST)によって判定された、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記片頭痛の発作間欠期間中での異痛及び/又は痛覚過敏の不在が、アンケートによって判定された、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ゲパントが、リメゲパント、ウブロゲパント、バゼゲパント、アトゲパント、オルセゲパント、テルカゲパント、BI44370、及びMK-3207からなる群から選択される、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ゲパントが、前記患者が片頭痛を有していない間に投与される、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記異痛が、皮膚異痛である、請求項14~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
片頭痛に罹患している対象における片頭痛の頻度を低減させるための方法であって、前記対象が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すか、又は示さないかを判定すること、又は判定したことと、前記片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏の徴候を示さない前記対象に、ゲパントを投与することと、を含む、方法。
【請求項25】
片頭痛に罹患している対象における片頭痛の頻度を低減させるための方法であって、a)前記対象が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すかどうかを判定すること、又は判定したことと、b)前記片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏の徴候を示さない前記対象に、ゲパントを投与することと、を含む、方法。
【請求項26】
対象における片頭痛を治療する方法であって、a)前記対象が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すかどうかを判定すること、又は判定したことと、b)前記片頭痛の発作期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏徴候を示さない前記対象に、ゲパントを投与することと、を含む、方法。
【請求項27】
対象における片頭痛を治療する方法であって、a)前記対象が、片頭痛の発作期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すかどうかを判定すること、又は判定したことと、b)前記片頭痛の発作期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏の徴候を示さない前記対象に、ゲパントを投与することと、を含む、方法。
【請求項28】
前記ゲパントが、前記片頭痛の発作期の開始から3時間以内に投与される、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記ゲパントが、前記片頭痛の発作期の開始の60分以内に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記治療が、急性期治療である、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、「Treatment of Migraine」と題された2021年8月30日に出願された米国仮特許出願第63/238448号、及び「Method of Treating Migraine」と題された2021年3月2日に出願された米国仮特許出願第63/155310号からのパリ条約の優先権及び米国の利益を主張する。これら2つの仮出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ゲパントのクラスに属する小分子は、慢性片頭痛の頻度を低減するのに有効であることが見出されている(Lipton RB et al Cephalgia 38:2S 18-9、Dodick DW et al N Engl J Med,381(23)(2019),pp.2230-2241、Goadsby PJ Neurology 92(15 Supplement)(2019),Article S17.001)。しかしながら、ゲパントは特定の頭痛の治療において有効であることが見出されている一方、患者は様々に応答し得る。例えば、ゲパントは、頭痛の治療又は頭痛発生の予防において完全に有効であることも、部分的に有効であることも、全く有効でないこともある。ゲパントによる治療の前に、その抗体の使用が、頭痛を治療し及び/又は頭痛の発症を予防するために有効であるかどうかを判定することができれば、これは患者ケアのためになり、医師の時間を節約し、特定の治療過程の不必要な使用を防止し得る。
【0003】
したがって、ゲパントを含む治療が、頭痛を有する又は頭痛に罹りやすい患者の治療において有効であるかどうかを判定するための方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、対象における片頭痛を治療する方法であって、対象が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すかどうかを判定すること、又は判定したことと、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏の徴候を示さない対象に、ゲパントを投与することと、を含む、方法に関する。
【0005】
本発明はまた、対象の片頭痛を治療する方法であって、対象が片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すかどうかを判定すること、又は判定したことと、片頭痛の発作期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示さない対象に、ゲパントを投与することと、を含む、方法に関する。
【0006】
本発明はまた、対象の片頭痛を治療する方法であって、対象が片頭痛の発作期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すかどうかを判定すること、又は判定したことと、片頭痛の発作期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示さない対象に、ゲパントを投与することと、を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
対象における片頭痛を治療する方法であって、対象が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すかどうかを判定するか、又は判定したことと、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/若しくは痛覚過敏の徴候を示さない対象に、ゲパントを投与することと、を含む、方法が、本明細書で提供される。
【0008】
証拠の大部分は、片頭痛の病態生理学におけるCGRPについての重要な役割を支持する。この証拠により、片頭痛患者におけるCGRPの利用可能性を低減させる新世代の治療薬を開発する国際的な取り組みが生じた。近年、ヒト化モノクローナル抗CGRP抗体及びゲパントが、慢性片頭痛又は偶発性片頭痛の頻度の低減において有効であることが見出された。
【0009】
単一ユニット細胞外記録技術を使用して麻酔した雄ラット及び雌ラットにおける延髄及び上位頸部後角におけるナイーブ中枢三叉神経血管ニューロン及びCSD感作中枢三叉神経血管ニューロンにおける自発活性及び誘発活性に対するモノクローナル抗CGRP抗体フレメネズマブ(fremenezumab)(30mg/kg IV)及びそのアイソタイプ(対照)の効果を判定した(例えば、実施例1を参照のこと)。
【0010】
本明細書に記載の試験は、フレマネズマブがナイーブ高閾値作動性(HT)ニューロンを阻害するが、ワイドダイナミックレンジ(WDR)三叉神経血管ニューロンを阻害しないこと、その阻害効果が顔面皮膚でも角膜でもなく頭蓋内硬膜からのそれらの活性化に限定されること、及び十分な時間与えられた場合、この薬物が皮質拡延性抑制によるHTニューロンの活性化及び感作を予防するが、WDRニューロンの活性化及び感作を予防しないことを実証する。この阻害は、雄ラット及び雌ラットにおいて同様であった。慢性片頭痛及び偶発性片頭痛が抗CGRP活性剤、例えば、フレマネズマブにより緩和される患者について、その知見は、HTニューロンが頭痛の知覚の開始及び慢性化におけるこれまで認識されていない重要な役割を担う一方、WDRニューロンが関連異痛及び中枢感作に寄与する可能性を生じさせる(実施例1を参照のこと)。臨床的には、この知見は、頭蓋内起源の頭痛、例えば、片頭痛、並びに髄膜炎、硬膜外出血、硬膜下出血、くも膜下出血、及びある脳腫瘍に起因する頭痛の低減におけるそのような薬剤の治療効果を説明するのに役立ち得る。この知見は、なぜ抗CGRP活性剤に対するこの治療アプローチが全ての頭痛患者に有効でない場合があることも説明する。
【0011】
本明細書において使用される「約」は、数値範囲に関して使用される場合、カットオフ、又は規定値は、引用値が列記値から最大10%ほど高く変動し得ることを示すために使用される。したがって、「約」という用語は、規定値からの±10%以下の変動、±5%以下の変動、±1%以下の変動、±0.5%以下の変動、又は±0.1%以下の変動を包含するために使用される。
【0012】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域中に局在する少なくとも1つの抗原認識部位を介して標的、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどに特異的に結合し得る免疫グロブリン分子である。本明細書において使用されるこの用語は、インタクトなポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、それらの断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、単鎖(ScFv)、その変異体、抗体部分(例えば、ドメイン抗体)を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変立体構造も包含する。抗体は、任意のクラスの抗体、例えば、IgG、IgA、又はIgM(又はそのサブクラス)を含み、抗体は、任意の特定のクラスのものである必要はない。抗体の重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、それらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、及びIgA2に更に分類することができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元立体構造は周知である。
【0013】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団をなす個々の抗体は、微量で存在し得る考えられる天然発生変異を除き同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原性部位を指向する。更に、典型的には異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を指向する。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られるものとしての抗体の特徴を示し、いかなる特定の方法による抗体の産生も要求することとしても解釈すべきでない。例えば、本発明により使用されるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,1975,Nature,256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製することができ、又は組換えDNA法、例えば、米国特許第4,816,567号に記載のものにより作製することができる。モノクローナル抗体は、例えば、McCafferty et al.,1990,Nature,348:552-554に記載の技術を使用して生成されたファージライブラリから単離することもできる。
【0014】
本明細書において使用される「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する小配列を含有する特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合下位配列)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。ヒト化抗体は大部分、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、及び生物学的活性を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、又はウサギのCDRからの残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもインポートCDR又はフレームワーク配列中にも見出されないが、抗体性能を更に改良及び最適化するために含められる残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものも含む。抗体は、WO99/58572パンフレットに記載のとおり改変されているFc領域を有し得る。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体に対して変更されている1つ以上のCDR(1、2、3、4、5、6つ)を有し、それらは、元の抗体からの1つ以上のCDR「に由来する」1つ以上のCDRとも称される。
【0015】
本明細書において使用される「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体のものに対応するアミノ酸配列を有し、及び/又は当該技術分野において公知の若しくは本明細書に開示のヒト抗体の作製技術のいずれかを使用して作製された抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチド又は少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含む。1つのこのような例は、マウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の種々の技術を使用して産生することができる。一実施形態において、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリから選択される(Vaughan et al.,1996,Nat.BiotechnoL.,14:309-314、Sheets et al.,1998,PNAS,(USA)95:6157-6162、Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.,227:381、Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581)。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたトランスジェニック動物、例えば、マウス中に導入することにより作製することもできる。このアプローチは、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625, 126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号に記載されている。代替的に、ヒト抗体は、標的抗原を指向する抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化させることにより調製することができる(このようなBリンパ球は個体から回収され得るか、又はインビトロで免疫化されている場合がある)。例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,1991,J.Immunol.,147(l):86-95、及び米国特許第5,750,373号を参照のこと。
【0016】
本明細書において使用される、「カルシトニン遺伝子関連ペプチド」及び「CGRP」という用語は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド及びCGRPの活性の少なくとも一部を保持するそのバリアントの任意の形態を指すために互換的に使用される。例えば、CGRPは、α-CGRP又はβ-CGRPであり得る。本明細書において使用されるCGRPとしては、全ての哺乳動物種、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、及びウシの天然配列CGRPが挙げられる。
【0017】
本明細書において使用される「抗CGRP抗体」は、CGRP生物学的活性、又はCGRP経路(CGRPシグナリングにより媒介される下流経路を含む)、例えば、受容体結合及び/又はCGRPに対する細胞応答の誘発をモジュレートする抗体を指す。例えば、抗CGRP抗体は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)経路を遮断、阻害、抑制、又は低減し得る。抗CGRP抗体という用語は、「抗CGRPアンタゴニスト抗体」及び「抗CGRP受容体抗体」の両方を包含する。いくつかの実施形態において、抗CGRP抗体は、モノクローナル抗体(すなわち、抗CGRPモノクローナル抗体)である。
【0018】
「抗CGRPアンタゴニスト抗体」は、CGRPに結合し、それにより、CGRP生物学的活性及び/又はCGRPシグナリングにより媒介される下流経路を阻害し得る抗体を指す。抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRP生物学的活性をモジュレートし、遮断し、アンタゴナイズし、抑制し、若しくは低減させ、又はそうでなければCGRP経路(CGRPシグナリングにより媒介される下流経路を含む)、例えば、受容体結合及び/若しくはCGRPに対する細胞応答の誘発をアンタゴナイズする抗体を包含する。いくつかの実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRPに結合し、CGRP受容体へのCGRP結合を予防する。他の実施形態において、抗CGRPアンタゴニスト抗体は、CGRPに結合し、CGRP受容体の活性化を予防する。抗CGRPアンタゴニスト抗体の例は、本明細書に提供される。
【0019】
「抗CGRP受容体抗体」は、CGRP受容体に結合し、それにより、CGRP経路をモジュレートし得る抗体を指す。抗CGRP受容体抗体の例は、本明細書に提供される(例えば、エレヌマブ)。
【0020】
「ゲパント」は、小分子CGRPアンタゴニストを指す。ゲパントの例としては、本明細書に提供され、リメゲパント、ウブロゲパント、バゼゲパント、アトゲパント、オルセゲパント、テルカゲパント、BI44370、及びMK-3207、並びにそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0021】
「抗CGRP活性剤」は、抗CGRP抗体及びゲパントからなる群から選択される活性剤を指す。
【0022】
本明細書において使用される場合、「Gl」、「抗体Gl」、「TEV-48125」、及び「フレマネズマブ」という用語は、ATCC PTA-6867及びATCC PTA-6866の寄託番号を有する発現ベクターにより産生される抗CGRPアンタゴニスト抗体を指すために互換的に使用される。抗体Gl(及びそのバリアント)の特徴付け及びその作製方法は、参照によりその全体として本明細書に組み込まれるPCT公開第2007/054809号及びWHO Drug Information 30(2):280-1(2016)に記載されている。
【0023】
「ALD403」及び「エプチネズマブ」という用語は、ウサギ前駆体からのヒト化IgGlモノクローナル抗体である抗CGRPアンタゴニスト抗体を指す。エプチネズマブの特徴付け及びその作製方法は、参照によりその全体として組み込まれる米国公開第2012/0294797号及びWHO Drug Information 30(2):274-5(2016)に見出すことができる。
【0024】
「LY2951742」、及び「ガルカネズマブ」という用語は、マウス前駆体からのヒト化IgG4モノクローナル抗体である抗CGRPアンタゴニスト抗体を指す。ガルカネズマブの特徴付け及びその作製方法は、参照によりその全体として組み込まれる米国公開第2011/030571 1号及びWHO Drug Information 29(4):526-7(2015)に見出すことができる。ガルカネズマブに関連する投薬及び製剤化は、同様に参照によりその全体として組み込まれるPCT公開第2016/205037号パンフレットに見出すことができる。
【0025】
「AMG334」及び「エレヌマブ」という用語は、完全ヒト化IgG2抗体である抗CGRP受容体抗体を指す。エレヌマブの特徴付け及びその作製方法は、それぞれが参照によりそれらの全体として組み込まれる米国公開第2010/0172895号、米国特許第9,102,731号、及びWHO Drug Information 30(2):275-6(2016)に見出すことができる。エレヌマブに関連する投薬及び製剤化は、同様に参照により全体として組み込まれるPCT公開第2016/171742号に見出すことができる。
【0026】
「リメゲパント」という用語は、特定の小分子CGRPアンタゴニスト及びその薬学的に許容される塩を指し、その特徴付け及びその作製方法は、それぞれが参照によりそれらの全体として組み込まれる、米国特許第8,314,117号及び同第8,759,372号に見出すことができる。
【0027】
「ウブロゲパント」という用語は、特定の小分子CGRPアンタゴニスト及びその薬学的に許容される塩を指し、その特徴付け及びその作製方法は、それぞれが参照によりそれらの全体として組み込まれる、米国特許第8,754,096号、同第8,912,210号、及び同第9,499,545号に見出すことができる。
【0028】
「バゼゲパント」という用語は、特定の小分子CGRPアンタゴニスト及びその薬学的に許容される塩を指し、その特徴付け及びその作製方法は、参照によりその全体として組み込まれる、PCT公開第2011/123232号に見出すことができる。
【0029】
「アトゲパント」という用語は、特定の小分子CGRPアンタゴニスト及びその薬学的に許容される塩を指し、その特徴付け及びその作製方法は、参照によりその全体として組み込まれる、米国特許第8,754,096号に見出すことができる。
【0030】
「オルセゲパント」という用語は、特定の小分子CGRPアンタゴニスト及びその薬学的に許容される塩を指し、その特徴付け及びその作製方法は、参照によりその全体として組み込まれる、米国特許第6,344,449号に見出すことができる。
【0031】
「テルカゲパント」という用語は、特定の小分子CGRPアンタゴニスト及びその薬学的に許容される塩を指し、その特徴付け及びその作製方法は、参照によりその全体として組み込まれる、米国特許第6,953,790号に見出すことができる。
【0032】
「BI44370」という用語は、特定の小分子CGRPアンタゴニスト及びその薬学的に許容される塩を指し、その特性及び製造プロセスは、参照によりその全体が組み込まれる、PCT公開第2005/092880号に見出すことができる。
【0033】
「MK-3207」という用語は、特定の小分子CGRPアンタゴニスト及びその薬学的に許容される塩を指し、その特性及び製造プロセスは、参照によりその全体が組み込まれる、米国特許公開第2007/0265225号に見出すことができる。
【0034】
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。ポリマーは、直鎖又は分枝鎖であり得、それは修飾アミノ酸を含み得、それは非アミノ酸により中断されている場合がある。この用語は、天然に又は介入;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識構成成分とのコンジュゲーションにより修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。この定義内には、例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の1つ以上のアナログ、及び当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。本発明のポリペプチドは抗体をベースとするため、ポリペプチドは単一鎖又は会合鎖として生じ得ることが理解される。
【0035】
「ポリヌクレオチド」、又は「核酸」は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、それとしては、DNA及びRNAが挙げられる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくは塩基、及び/又はそれらのアナログ、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによりポリマー中に取り込むことができる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びそのアナログを含み得る。ヌクレオチド構造の修飾は、存在する場合、ポリマーの集合前又は後に付与することができる。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分により中断させることができる。ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば、標識構成成分とのコンジュゲーションにより更に修飾することができる。他のタイプの修飾としては、例えば、「キャップ」、アナログによる天然発生ヌクレオチドの1つ以上の置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)及び荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を有するものなど、ペンダント部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、プリ(ply)-L-リジンなど)などを含有するものなど、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を有するもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾結合(例えば、アルファアノマー核酸など)を有するもの、並びにポリヌクレオチドの非修飾形態が挙げられる。更に、糖中に通常存在するヒドロキシル基のいずれかを、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基により置き換え、標準的な保護基により保護し、又は追加のヌクレオチドへの追加の結合を調製するために活性化することができ、又は固体担体にコンジュゲートさせることができる。5’及び3’末端OHは、リン酸化され、又はアミン若しくは1~20個の炭素原子の有機キャッピング基部分により置換させることができる。他のヒドロキシルも、標準的な保護基に誘導体化することができる。ポリヌクレオチドは、当該技術分野において一般に公知のリボース又はデオキシリボース糖の類似形態、例として、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-又は2’-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、α-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース又はリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ及び非塩基ヌクレオシドアナログ、例えば、メチルリボシドも含有し得る。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替結合基により置き換えることができる。これらの代替結合基としては、限定されるものではないが、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)により置き換えられている実施形態が挙げられ、それぞれのR又はR’は、独立して、H又は任意選択的にエーテル(-O-)結合を含有する置換若しくは非置換アルキル(1~20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル若しくはアラルジル(araldyl)である。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。上記記載は、本明細書において称される全てのポリヌクレオチド、例として、RNA及びDNAに当てはまる。
【0036】
頭痛の診断又は評価は、当該技術分野において十分に確立されている。参照文献、例えば、International Classification of Headache Disorders,3rd edition(ICHD-III beta version;Cephalalgia(2013)33(9):629-808)を当該分野の医師が使用して患者により認められる頭痛のタイプを評価することができる。本発明の範囲内の頭痛としては、頭蓋内起源の頭痛が挙げられる。頭蓋内起源の頭痛の非限定的な例としては、片頭痛(例えば、慢性及び偶発性)並びに髄膜炎、硬膜外出血、硬膜下出血、くも膜下出血、及びある脳腫瘍に起因する頭痛(頭痛は、頭蓋骨中の圧力増加から生じる)が挙げられる。
【0037】
例えば、「慢性片頭痛」は、3カ月超にわたり1カ月当たり15日以上生じる頭痛を指し、1カ月当たり少なくとも8日間で片頭痛の特性を有するが、一方、「偶発性片頭痛」は、1カ月当たり15日未満生じる頭痛を指し、「高頻度の偶発性片頭痛」は、1カ月当たり8~14日生じる頭痛を指す。ICHD-III beta version,2013による慢性片頭痛についての診断基準は、以下のとおりである:A.3カ月超にわたり1カ月当たり15日以上の、基準B及びC(下記)を満たす頭痛(緊張型様及び/又は片頭痛様)。B.前兆を伴わない片頭痛についてのある基準及び/又は前兆を伴う片頭痛についてのある基準を満たす少なくとも5回の発病を有した患者において生じること。C.3カ月超にわたり1カ月当たり8日以上、以下のいずれかを満たすこと:1.前兆のない片頭痛の特定の基準;2.前兆のある片頭痛の特定の基準;3.患者が発症時に片頭痛であり、トリプタン又は麦角誘導体によって緩和されると信じている、D.別の頭痛診断によってよりよく説明されていない。
【0038】
当該分野の医師は、本明細書に記載の片頭痛のタイプのいずれかを有する対象を容易に認識することができる。評価は、主観的尺度、例えば、患者の症状の特徴付けに基づき実施することができる。例えば、片頭痛は、以下の基準に基づき診断することができる:1)4~72時間継続する頭痛の偶発性発病;2)以下の症状の2つを有すること:片側性疼痛、拍動、動作時の増悪、及び中程度又は重度の強度の疼痛;並びに3)以下の症状の1つを有すること:悪心又は嘔吐、及び羞明又は音過敏(Goadsby et al,N.Engl.J.Med.346:257-270 2002)。いくつかの実施形態において、頭痛(例えば、片頭痛)の評価は、本明細書の他箇所に記載の頭痛時間を介するものであり得る。例えば、頭痛(例えば、片頭痛)の評価は、日間頭痛時間、週間頭痛時間、月間頭痛時間及び/又は年間頭痛時間の単位であり得る。一部の場合において、頭痛時間は、対象により報告されるものであり得る。
【0039】
本明細書において使用される場合、「治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のため、有益な又は所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、以下の1つが挙げられる:頭痛の任意の態様の改善、例として、重症度の軽減、疼痛強度、及び他の関連症状の緩和、再発の頻度の低減、頭痛の頻度の低減、頭痛を罹患する者の生活の質の増加、並びに頭痛を治療するために要求される他の医薬の用量の減少。一例として片頭痛を使用する場合、他の関連症状としては、限定されるものではないが、悪心、嘔吐、並びに光、音、及び/又は動作過敏症が挙げられる。「患者」及び「対象」という用語は、本明細書において互換的に使用される。いくつかの実施形態において、患者は、ヒトである。
【0040】
本明細書において使用される場合、「急性期治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、即時の有益な又は所望の臨床結果は、以下のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない:投与後2時間での疼痛の解放及び最も煩わしい症状(MBS)の解放の増加(疼痛の解放は、頭痛のない中等度又は重度の頭痛の疼痛の減少として定義することができ、MBSの解放は、光恐怖症、音恐怖症又は悪心などの自己識別されたMBSの不在として定義することができる)、2時間での疼痛緩和の増加(疼痛緩和は、中等度又は重度から軽度又は無痛に片頭痛の疼痛の減少として定義することができる)、2~48時間での持続的な疼痛の解放の増加、24時間以内のレスキュー薬の使用の減少、及び投与後2時間での正常な機能を報告する患者の割合の増加。
【0041】
本明細書において使用される場合、「予防的治療」は、経時的に有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果は、以下のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない:頭痛の態様の改善、例として、再発の頻度の低減、頭痛の頻度の低減、頭痛を罹患している者の生活の質の増加、並びに頭痛を治療するために要求される他の医薬の用量の減少。
【0042】
本明細書において使用される場合、「予防すること」は、頭痛を発症しやすい対象における頭痛の発生又は存在を停止させるためのアプローチである。例えば、患者は、慢性片頭痛又は偶発性片頭痛と事前に診断されている場合がある。他の例において、患者は、髄膜炎、硬膜外出血、硬膜下出血、くも膜下出血、又は脳腫瘍と診断されている場合がある。
【0043】
「頭痛発生を低減させること」又は「頭痛頻度を低減させること」は、重症度の低減(この頭痛病態に一般に使用される他の薬物及び/又は治療の必要及び/又は量(例えば、それらへの曝露)の低減を含み得る)、持続時間、及び/又は頻度の低減(例として、例えば、個体における次の頭痛発病までの時間の遅延又は増加)のいずれかを意味する。当業者により理解されるように、個体は、治療に対するそれらの応答に関して変動し得、したがって、例えば、「個体における頭痛の頻度を低減させる方法」は、抗CGRP活性剤の投与がその特定の個体における頭痛発生のそのような低減を引き起こし得る可能性が高いという合理的な予想に基づき抗CGRP活性剤を投与することを反映する。
【0044】
頭痛又は頭痛の1つ以上の症状を「改善すること」は、抗CGRP活性剤を投与しない場合と比較した頭痛の1つ以上の症状の軽減又は改善を意味する。「改善すること」は、症状の持続時間の短縮又は低減も含む。
【0045】
本明細書において使用される「頭痛を管理すること」は、個体における頭痛の1つ以上の症状の重症度又は持続時間又は頭痛(例えば、片頭痛)発病の頻度を維持し、又は低減させること(治療前のレベルと比較)を指す。例えば、頭部疼痛の持続時間若しくは重症度、又は発病の頻度は、治療前の頭部疼痛の持続時間若しくは重症度、又は発病の頻度と比較して個体において少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上のいずれかだけ低減される。
【0046】
本明細書において使用される場合、「頭痛時間」は、対象が頭痛を認める時間を指す。頭痛時間は、整数時間(例えば、1頭痛時間、2頭痛時間、3頭痛時間など)の単位で、又は整数及び端数の時間(例えば、0.5頭痛時間、1.2頭痛時間、2.67頭痛時間など)の単位で表現することができる。1時間以上の頭痛時間は、特定の時間間隔に関して説明することができる。例えば、「日間頭痛時間」は、1日の間隔(例えば、24時間の期間)内で対象が認める頭痛時間数を指し得る。別の例において、「週間頭痛時間」は、1週間の間隔(例えば、7日間の期間)内で対象が認める頭痛時間数を指し得る。認識され得るように、1週間の間隔は、暦週に対応する場合又はしない場合がある。別の例において、「月間頭痛時間」は、1カ月間の間隔内で対象が認める頭痛時間数を指し得る。認識され得るように、1カ月間の間隔(例えば、28、29、30、又は31日間の期間)は、特定の月に応じて日数に関して変動し得、暦月に対応する場合又はしない場合がある。更に別の例において、「年間頭痛時間」は、1年間の間隔内で対象が認める頭痛時間数を指し得る。認識され得るように、1年間の間隔(例えば、365又は366日間の期間)は、特定の年に応じて日数に関して変動し得、暦年に対応する場合又はしない場合がある。
【0047】
本明細書において使用される場合、「頭痛日」は、対象が頭痛を認める日を指す。頭痛日は、整数日(例えば、1頭痛日、2頭痛日、3頭痛日など)の単位で、又は整数及び端数の日(例えば、0.5頭痛日、1.2頭痛日、2.67頭痛日など)の単位で表現することができる。1日以上の頭痛日は、特定の時間間隔に関して説明することができる。例えば、「週間頭痛日」は、1週間の間隔(例えば、7日間の期間)内で対象が認める頭痛日数を指し得る。認識され得るように、1週間の間隔は、暦週に対応する場合又はしない場合がある。別の例において、「月間頭痛日」は、1カ月間の間隔内で対象が認める頭痛日数を指し得る。認識され得るように、1カ月間の間隔(例えば、28、29、30、又は31日間の期間)は、特定の月に応じて日数に関して変動し得、暦月に対応する場合又はしない場合がある。更に別の例において、「年間頭痛日」は、1年間の間隔内で対象が認める頭痛日数を指し得る。認識され得るように、1年間の間隔(例えば、365又は366日間の期間)は、特定の年に応じて日数に関して変動し得、暦年に対応する場合又はしない場合がある。
【0048】
本明細書において使用される場合、頭痛の発症を「遅延させること」は、疾患の進行を先延ばし、妨げ、減速させ、遅滞させ、安定化させ、及び/又は延期させることを意味する。この遅延は、疾患の病歴及び/又は治療される個体に応じて種々の時間の長さであり得る。当業者に明らかであるように、十分又は有意な遅延は、事実上、個体が頭痛を発症しないという点で予防を包含し得る。症状の発症を「遅延させる」方法は、その方法を使用しない場合と比較して所与の時間枠で症状を発症する確率を低減させ、及び/又は所与の時間枠で症状の程度を低減させる方法である。このような比較は、典型的には、統計的に有意な対象数を使用する臨床試験に基づく。
【0049】
頭痛の「発症」又は「進行」は、障害の初回発現及び/又は後続の進行を意味する。頭痛の発症は、当該技術分野において周知の標準的な臨床技術を使用して検出可能であり得、評価することができる。しかしながら、発症は、検出不可能であり得る進行も指す。本開示の目的のため、発症又は進行は、症状の生物学的過程を指す。「発症」は、発生、再発、及び出現を含む。本明細書において使用される場合、頭痛の「出現」又は「発生」は、初回出現及び/又は再発を含む。
【0050】
片頭痛は、その周期性及びその特定の段階の両方によって定義され得る。本明細書において使用される場合、片頭痛の「発作間欠期」は、2つの片頭痛発作の間の間隔を指し、「発作期前」は、頭痛が始まる前の時間を指し、患者は、食欲の変化、渇き、あくびなどを含む前駆兆候を発症し得るが、「発作期」は、患者が頭痛を経験し、4~72時間持続する期間を指し、「発作期後」は、頭痛の停止後の発作間欠期内の時間を指し、典型的には、認知障害、疲労などの非頭痛症状を特徴とする。
【0051】
「レスポンダー率」は、所定の治療期間中に月間平均片頭痛日数が少なくとも50%減少する患者の割合を意味する。本発明の一実施形態において、所定の治療期間は、3カ月である。本発明の別の実施形態において、所定の治療期間は、6カ月である。本発明の更に別の実施形態において、所定の治療期間は、12カ月である。
【0052】
片頭痛は、その周期性及びその特定の段階の両方によって定義され得る。本明細書において使用される場合、片頭痛の「発作間欠期」は、2つの片頭痛発作の間の間隔を指し、「発作期前」は、頭痛が始まる前の時間を指し、患者は、食欲の変化、渇き、あくびなどを含む前駆兆候を発症し得るが、「発作期」は、患者が頭痛を経験し、4~72時間持続する期間を指し、「発作期後」は、頭痛の停止後の発作間欠期内の時間を指し、典型的には、認知障害、疲労などの非頭痛症状を特徴とする。
【0053】
本明細書において使用される場合、薬物、化合物、又は薬学的組成物の「有効投与量」又は「有効量」は、有益な又は所望の結果をもたらすために十分な量である。予防的使用については、有益な又は所望の結果としては、リスクの排除若しくは低減、重症度の軽減、又は疾患の生化学的、組織学的及び/若しくは行動学的症状、疾患の発症の間に現れるその合併症及び中間的な病理学的表現型を含む、疾患の出現の遅延のような結果が挙げられる。治療的使用については、有益な又は所望の結果としては、頭痛発病の疼痛強度、持続時間、又は頻度の低減、並びに疾患の発症の間に現れるその合併症及び中間的な病理学的表現型を含む、頭痛から生じる1つ以上の症状(生化学的、組織学的及び/若しくは行動学的)の減少、疾患を罹患する者の生活の質の増加、疾患を治療するために要求される他の医薬の用量の減少、別の医薬の効果の向上、並びに/又は患者の疾患の進行の遅延のような臨床結果が挙げられる。有効投与量は、1回以上の投与で投与することができる。本開示の目的のために、薬物、化合物、又は薬学的組成物の有効投与量は、直接的又は間接的のいずれかで予防的又は治療的治療を達成するために十分な量である。臨床背景において理解されるように、薬物、化合物、又は薬学的組成物の有効投与量は、別の薬物、化合物、又は薬学的組成物と併用して達成する場合又はしない場合がある。したがって、「有効投与量」は、1つ以上の治療剤の投与に関して考慮することができ、単一薬剤は、1つ以上の他の薬剤と併用して所望の結果が達成され得、又は達成される場合に有効量で与えられるとみなすことができる。
【0054】
本明細書において使用される場合、「異痛」は、患者により認められ、通常は疼痛を誘発しない刺激に起因する疼痛を指す(International Association for the Study of Pain,2014-2015,“Allodynia and Hyperalgesia in Neuropathic Pain”)。
【0055】
本明細書において使用される場合、「痛覚過敏」は、通常、疼痛を誘発する刺激からの患者により認められる疼痛の増加を指す(International Association for the Study of Pain,2014-2015,“Allodynia and Hyperalgesia in Neuropathic Pain”)。
【0056】
異痛及び痛覚過敏は両方とも、例えば、定量的感覚試験(QST)(Rolke(2006)et al.Pain 123:231-243)などの方法により当業者により区別し、定量することができる。Rolkeらは、相対及び絶対的観点の両方における患者の完全な体性感覚表現型を得るためのQST参照データを教示している。例えば、Rolkeらは、針刺激の痛覚過敏を検出する手段としての機械疼痛感度(MPS)についての試験を記載している。このような試験において、MPSは、針刺激誘発疼痛についての刺激応答機能を得るための針刺激のセットを使用して評価することができる(最も強力な針刺激力は、平均的な機械疼痛閾値の約8倍である)。対象は、それぞれの刺激について疼痛に格付けを「0~100」スケールで与えるように依頼され得、「0」は無疼痛を示し、「100」は最大疼痛を示す。ある数の針刺激を、ある時間間隔において対象に送達して、ワインドアップを回避する。それぞれの針刺激後、対象は数値による疼痛の格付けを提供する。次いで、針刺激についての全ての数値による格付けの幾何平均(複合尺度)としてMPSを計算する(Rolke et al.p.233における)。
【0057】
本明細書において使用される場合、「感作」は、応答を生成するために必要とされる刺激の強度が経時的に減少する一方、応答の大きさが増加するプロセスである。
【0058】
「主に頭部の一部において認められる頭痛」という語句は、頭部の特定部分における頭痛を有する(例えば、疼痛として認められる)という患者による説明を指す。「頭部の一部」の例としては、片側眼窩周囲、片側側頭部、片眼、後頭部中の小区域(例えば、正中線のすぐ傍ら)、頭頂部上の小区域、前頭部中央の小区域、眼窩上神経が頭蓋骨を出る(すなわち、眉の内側端中の)「ドット」(例えば、10×10mm)及び前頭部にわたる小区域が挙げられる。当業者は、患者の説明に基づき患者が頭部の一部において頭痛を認めるかどうかを評価することができ得る(Noseda,R.et al.(2016)Brain.139(7):1971-1986)。
【0059】
二次又は三次医療を求める大多数の偶発性片頭痛患者は、片頭痛の発作期に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示すが、発作間欠期の間には示さない(Burstein et al.2000b、Lipton et al.2008、Bigal et al.2008、Burstein et al.2000a)。対照的に、慢性片頭痛患者は、一般に、急性片頭痛発病の間及び発作間欠期の間の両方で異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示す。機序的には、異痛は、三叉脊髄核中の中枢三叉神経血管ニューロンの感作により媒介されることが考えられる(Burstein et al.1998)。更に、発作性異痛及び/又は痛覚過敏の存在は、感作状態が髄膜からの入ってくる疼痛シグナルに依存しない中枢性三叉血管ニューロンによって媒介されるのに対し、片頭痛患者における発作性異痛及び/又は痛覚過敏の不在は、感作状態が末梢から来る疼痛シグナルに依存する中枢性三叉血管ニューロンの存在によって説明される。
【0060】
ゲパントは、血液脳関門を通過し、中央の三叉血管ニューロンを直接阻害する可能性は低い。本出願の発明者らは、ゲパントの治療能力は、一部の偶発性片頭痛患者、おそらく高頻度片頭痛患者、及び慢性片頭痛患者において、中枢性感作並びに異痛及び/又は痛覚過敏は、髄膜に由来する疼痛シグナルに依存したままであり、これらの薬剤に応答する患者は、中枢性感作を維持するために継続的な末梢入力が必要な患者であり、一方、非レスポンダーは、中枢性感作を維持するために継続的な末梢入力が必要でない者であると判定すると判断した。したがって、ゲパントの末梢作用部位は、これらの薬剤が、中枢性感作の状態が髄膜から到達する疼痛シグナルに依存する偶発性片頭痛患者及び慢性片頭痛患者の両方に急性期治療及び予防的治療を提供することを可能にするが、中枢性感作の状態が髄膜から到達する疼痛シグナルに依存しない患者には適用されない。そのような患者は、片頭痛の発作期及び/又は発作間欠期のいずれにおいても、異痛及び/又は痛覚過敏を示さないとして提示され得る。
【0061】
患者における頭痛(例えば、片頭痛)頻度を低減させる方法が本明細書に提供される。この方法は、患者が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかを判定することと、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない患者に、ゲパントを投与することと、を含む。本発明の一実施形態において、治療は、予防的である。本発明の別の実施形態において、治療は、急性である。
【0062】
患者における片頭痛を治療する方法もまた、本明細書に提供される。この方法は、患者が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかを判定することと、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない患者に、ゲパントを投与することと、を含む。本発明の一実施形態において、治療は、予防的である。本発明の別の実施形態において、治療は、急性である。
【0063】
片頭痛に罹患している患者における頭痛(例えば、片頭痛)頻度を低減させる方法もまた、本明細書に提供される。この方法は、患者が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すか、又は示さないかを判定することと、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない患者に、ゲパントを投与することと、を含むことができる。この方法はまた、患者が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すか、又は示さないかを判定することと、片頭痛の発作期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない患者に、ゲパントを投与することと、を含むこともできる。この方法はまた、患者が、片頭痛の発作期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すか、又は示さないかを判定することと、片頭痛の発作期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない患者に、ゲパントを投与することと、を含むこともできる。
【0064】
患者における頭痛(例えば、片頭痛)頻度を低減させる方法もまた、本明細書に提供される。この方法は、患者が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかを判定することと、片頭痛の発作期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない患者に、ゲパントを投与することと、を含む。本発明の一実施形態において、治療は、予防的である。本発明の別の実施形態において、治療は、急性である。
【0065】
患者における片頭痛を治療する方法もまた、本明細書に提供される。この方法は、患者が、片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかを判定することと、片頭痛の発作期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない患者に、ゲパントを投与することと、を含む。本発明の一実施形態において、治療は、予防的である。本発明の別の実施形態において、治療は、急性である。
【0066】
患者における頭痛(例えば、片頭痛)頻度を低減させる方法もまた、本明細書に提供される。この方法は、患者が、片頭痛の発作期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかを判定することと、片頭痛の発作期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない患者に、ゲパントを投与することと、を含む。本発明の一実施形態において、治療は、予防的である。本発明の別の実施形態において、治療は、急性である。
【0067】
患者における片頭痛を治療する方法もまた、本明細書に提供される。この方法は、患者が、片頭痛の発作期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかを判定することと、片頭痛の発作期間中に異痛及び/又は痛覚過敏の徴候を示さない患者に、ゲパントを投与することと、を含む。本発明の一実施形態において、治療は、予防的である。本発明の別の実施形態において、治療は、急性である。
【0068】
本発明の一実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から3時間以内に投与される。本発明の別の実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から150分以内に投与される。本発明の別の実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から120分以内に投与される。本発明の別の実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から105分以内に投与される。本発明の別の実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から90分以内に投与される。本発明の別の実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から75分以内に投与される。本発明の別の実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から60分以内に投与される。本発明の別の実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から45分以内に投与される。本発明の別の実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から30分以内に投与される。本発明の更に別の実施形態において、ゲパントは、片頭痛の発作期の開始から15分以内に投与される。
【0069】
本発明の一実施形態において、ゲパントは、患者が中枢感作される前に、発作的に投与される。本発明の別の実施形態において、ゲパントは、患者が発作性異痛及び/又は痛覚過敏を発症する前に、発作的に投与される。
【0070】
本発明の一実施形態において、対象は、偶発性片頭痛に罹患している。本発明の一実施形態において、対象は、高頻度の偶発性片頭痛に罹患している。本発明の別の実施形態において、対象は、慢性片頭痛に罹患している。
【0071】
本発明の一実施形態において、対象が異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかの判定は、定量的感覚試験(QST)によるものである。本発明の別の実施形態において、対象が異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかの判定は、アンケートによるものである。本発明の別の実施形態において、対象が異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかの判定は、定量的感覚試験(QST)及びアンケートの両方によるものである。本発明の一実施形態において、QST及び/又はアンケートは、医療施設において判定される。本発明の別の実施形態において、QST及び/又はアンケートは、対象の居住地で判定される。
【0072】
定量的感覚試験(QST)は、騒音及び注意をそらすものがない静音室内で行うことが望ましい。ここで、患者は、感覚試験の間、患者の最も快適な位置(椅子に座る又はベッドに横たわる)を選択することができる。各々の試験セッションにおいて、高温刺激及び機械刺激に対する疼痛閾値を、眼窩周囲及び側頭部位が最も一般的な試験される部位である、疼痛が言及される部位上の皮膚において判定する。熱皮膚刺激は、皮膚に装着した30×30mm2サーモード(Q-Sense 2016,Medoc)を介して定圧において送達され得、Method of Limit分析を使用して患者の疼痛閾値を判定する。
【0073】
異痛試験は、疼痛閾値を判定するため、皮膚を32℃の温度に5分間順応させ得、次いで疼痛感覚が知覚されるまで低速(1℃/秒)において加温させ、その瞬間において、対象は患者応答ユニット上のボタンを押圧することにより刺激を停止させることができる。熱刺激をそれぞれ3回繰り返し得、記録された温度の平均を閾値とみなす。機械刺激に対する疼痛閾値は、20本の較正されたフォンフライ刺激毛(VFH、Stoelting)のセットを使用することにより判定し得る。各VFHモノフィラメントには、昇順にスカラー番号が割り当てられ、各モノフィラメントを皮膚に3回(2秒間)適用し得る。3回の試験のうち2回において疼痛を誘導することができる最小のVFH数を閾値とみなす。皮膚感受性も、静的な機械刺激であるVFHから区別される動的な機械刺激であるソフトな皮膚ブラッシングの対象の知覚を記録することにより判定し得る。
【0074】
痛覚過敏試験は、有痛刺激が通常よりも大きな疼痛として知覚される場合に、実施し得る。3回の閾値上熱及び機械刺激を皮膚に印加し得る。閾値上刺激の値は、対象が既に実施している異痛試験中に判定することができる。この試験において、皮膚を3回の閾値上刺激(1閾値上)に曝露し、それぞれ10秒間継続し、10秒間だけ間を空け得る(すなわち、刺激間の間隔は10秒間)。それぞれの刺激の終了時、患者は、0~10(o=疼痛なし、10=想定可能な最大の疼痛)のビジュアルアナログスケール(VAS)を使用して疼痛の強度を識別するための10秒間を有し得る。閾値上機械刺激を使用して同様の試験を施し得る。
【0075】
本発明の一実施形態において、対象が異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかの判定は、対象が、較正されたフォンフライ毛を用いた皮膚押込みに対して、41℃未満の熱痛閾値及び/又は21℃超の冷痛閾値及び/又は30g未満の機械的痛み閾値を有するかどうかの判定によるものである。
【0076】
本発明の一実施形態において、対象が、較正されたフォンフライ毛を用いた皮膚押込みに対して、41℃未満の熱痛閾値及び/又は21℃超の冷痛閾値及び/又は30g未満の機械的痛閾値を示すことによって、異痛及び/若しくは痛覚過敏を示すと判定される。
【0077】
本発明の一実施形態において、対象は、較正されたフォンフライ毛を用いた皮膚押込みに対して、40℃超の熱痛閾値及び/又は20℃超の冷痛閾値及び/又は30g超の機械的痛閾値を示すことによって、異痛及び/又は痛覚過敏を示さないと判定される。
【0078】
本発明の一実施形態において、アンケートは、特に、発作間欠異痛及び/又は痛覚過敏の有無を捕捉するように設計される。本発明の別の実施形態において、アンケートは、特に、異痛症チェックリスト(ASC-12)(Lipton RB et al 2008)などの発作性異痛及び/又は痛覚過敏の有無を捕捉するように設計される。本発明の一実施形態において、アンケートは、電子日記の一部として組み込まれる。本発明の一実施形態において、電子日記は、片頭痛の発作期後の少なくとも24時間から始まる少なくとも7日間の期間にわたって、対象によって毎日記録される。
【0079】
発作間性異痛及び/又は痛覚過敏を識別するために特別に設計されたアンケートは、ASC-12が典型的に使用される発作期のためとしてよりむしろ、片頭痛の発作間欠期のために修正された異痛症候群チェックリスト(ASC-12)(Lipton RB et al 2008)のバリエーションであり得る。そのような修正は、ネックレス又はコンタクトレンズの着用に関する質問の削除をもたらす可能性があり、スケーリングは、ASC-12と同様にランク付けされ得るか、又は、決してない/まれにしかない(スコア=0)、少なくとも一部の時間(スコア=0)のより簡単なランク付けになり得る。そのような修正では、異痛がないという所見は、0、1、2、3、4、又は5のスコアに関連し得る。
【0080】
本発明の一実施形態において、異痛及び/又は痛覚過敏の不在の判定は、適切に資格のある医療従事者によるアンケートのレビューによるものである。本発明の一実施形態において、異痛及び/又は痛覚過敏の不在の判定は、5以下のアンケートスコアによるものである。本発明の一実施形態において、異痛及び/又は痛覚過敏の不在の判定は、5以下、4以下、3以下、2以下、1以下のアンケートスコア、又は0のアンケートスコアによるものである。
【0081】
本発明の一実施形態において、予防的治療は、レスポンダー率の低下、すなわち、治療期間中に月間平均片頭痛日数が少なくとも50%減少する患者の割合の低下を含む。本発明の別の実施形態において、予防的治療は、少なくとも3カ月の治療期間にわたる月間平均片頭痛日数の減少を含む。本発明の別の実施形態において、予防的治療は、急性頭痛薬の使用の減少を含む。本発明の別の実施形態において、予防的治療は、対象の機能の改善を含む。本発明の別の実施形態において、予防的治療が、対象の生活の質(QoL)の改善を含む。本発明の別の実施形態において、予防的治療は、対象の頭痛の重症度の改善を含む。本発明の別の実施形態において、予防的治療は、少なくとも3カ月の治療期間にわたる月間平均非片頭痛日数の減少を含む。本発明の更に別の実施形態において、予防的治療は、対象の光恐怖症、音恐怖症、及び/又は悪心の低減を含む。
【0082】
本発明の一実施形態において、急性期治療は、疼痛の解放の増加を含む。本発明の別の実施形態において、急性期治療は、最も煩わしい症状の解放の増加を含む。本発明の別の実施形態において、急性期治療は、疼痛の解放及び最も煩わしい症状の解放の増加を含む。本発明の別の実施形態において、急性期治療は、疼痛緩和の増加を含む。本発明の別の実施形態において、急性期治療は、持続的な疼痛の解放の増加を含む。本発明の別の実施形態において、急性期治療は、レスキュー薬の使用の減少を含む。本発明の更に別の実施形態において、急性期治療は、正常な機能の増加を含む。本発明の一実施形態において、ゲパントを投与された対象は、治療の開始後少なくとも3カ月の間、異痛及び/又は痛覚過敏を有しないままである。本発明の一実施形態において、ゲパントを投与された対象は、治療の開始後少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、又は少なくとも12カ月の間、異痛及び/又は痛覚過敏を有しないままである。
【0083】
本発明の一実施形態において、ゲパントは、対象が片頭痛を有していない間に投与される。
【0084】
患者を選択することは、患者の頭痛がHTニューロンにより媒介されるかどうかを判定することを含む。当分野の医師は、そのような判定は、本明細書に記載の任意数の手法で、例えば、HTニューロン活性の観察並びに/又はCGRP経路をモジュレートするモノクローナル抗体の患者への投与及びその抗体が痛覚過敏を低減させるかどうかの判定(例えば、QSTにより計測)並びに/又は患者の頭痛疼痛が頭部の一部に局在する(例えば、も集中的に又は主に認められる)かどうかの判定により行うことができることを認識する。
【0085】
実施例1は、ラットにおいてニューロンを識別し、選択する(HT対WDRニューロン)ことができる手段を説明する。この実施例は、CSD誘導後のそれらのタイプのニューロンのそれぞれの活性化及び感作と関連してなされた観察を更に説明する。
【0086】
痛覚過敏を認める患者(CGRP経路をモジュレートする(例えば、遮断し、阻害し、抑制し、又は低減させる)モノクローナル抗体の投与時に痛覚過敏が低減される(例えば、回復される、又は消失する))は、CGRP経路をモジュレートする(例えば、遮断し、阻害し、抑制し、又は低減させる)抗CGRP活性剤を含む治療過程、例えば、抗CGRP活性剤による治療のより長い過程及び/又はより高用量の過程に応答する可能性が高い。抗CGRP活性剤が痛覚過敏患者における頭痛を低減させる場合、それは、その頭痛がHTニューロンにより媒介されたことを裏付ける。それというのも、実施例1に示されるように、抗CGRP活性剤は他のクラスの侵害受容ニューロン、WDRを阻害しないためである。実施例2は、患者が異痛及び/又は痛覚過敏を認めるかどうか、及びそれがゲパントによる処理時に低減されるかどうかの判定において有用なQSTの実験設計を説明する。
【0087】
同様に、異痛を認める患者(CGRP経路をアンタゴナイズするゲパントの投与時に異痛が低減される(例えば、回復される、又は消失する))は、CGRP経路をアンタゴナイズするゲパントを含む治療過程、例えば、抗CGRP活性剤による治療のより長い過程及び/又はより高用量の過程に応答する可能性が高い。
【0088】
したがって、ゲパントによる治療に応答する患者は、初回の治療過程後に痛覚過敏及び異痛の両方の低減、回復、又は消失を認め得る。
【0089】
更に、頭痛がないとき、すなわち片頭痛の発作間欠期間中に、異痛及び/又は痛覚過敏を経験しない患者は、CGRP経路をアンタゴナイズするゲパントの投与によって治療され得る。この患者集団の識別は、ゲパント及び他の抗CGRP活性剤療法に対する応答率の改善を可能にし得る。
【0090】
更に、高閾値作動性ニューロンは小さな受容野を呈する一方、ダイナミックレンジニューロンは大きな受容野を呈することが公知である。したがって、頭部の一部において局在する(又は主に認められる)頭痛疼痛は、CGRP経路をアンタゴナイズするゲパントによる治療に好ましく応答する患者を識別し得る。
【0091】
別の実施形態において、患者は、偶発性片頭痛又は慢性片頭痛を有すると診断され、又は事前に診断されている。このような患者において、患者が片頭痛を有せず、又は早期片頭痛若しくは軽度片頭痛を認めている間に抗CGRP活性剤を投与することができる。
【0092】
別の実施形態において、患者は、髄膜炎、硬膜外出血、硬膜下出血、くも膜下出血、又は脳腫瘍を有すると診断され、又は事前に診断されている。これらの例において、頭痛は、髄膜炎、硬膜外出血、硬膜下出血、くも膜下出血、又は脳腫瘍に起因し得る。
【0093】
したがって、本明細書に記載のある特定の方法において、本明細書に記載の方法に使用されるべきゲパントは、リメゲパント、ウブロゲパント、バゼゲパント、アトゲパント、オルセゲパント、テルカゲパント、BI44370、MK-3207、及びそれらの生物学的同等物からなる群から選択され得、約10mg~約250mgの用量、例えば、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約150mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約205mg、約210mg、約215mg、約220mg、約225mg、約230mg、約235mg、約240mg、約245mg、又は約250mgの用量で投与することができる。用量の投与は、1日1回、1日2回以上、又は1週間以内に又はそれ以上で断続的に行うことができる。
【0094】
ゲパントの投与は、当該技術分野において公知の任意の手段:例として、経口、静脈内、皮下、動脈内、筋肉内、鼻腔内(例えば、吸入を用いて又は用いずに)、心臓内、脊髄内、胸郭内、腹腔内、脳室内、舌下、経皮によるもの、及び/又は吸入を介するものであり得る。
【0095】
投与は、全身的、例えば、静脈内投与、又は局所的投与であり得る。いくつかの実施形態において、初回用量及び1つ以上の追加用量は、同一経路を介して、すなわち、皮下又は静脈内投与する。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加用量は、初回用量と異なる経路を介して投与し、すなわち、初回用量を静脈内投与することができ、1つ以上の追加用量を皮下投与することができる。
【0096】
一部の例において、本明細書に記載の方法は、第2の薬剤を患者にゲパントと同時に又はそれに続いて投与することを更に含み得る。第2の薬剤は、非ステロイド非炎症薬(NSAID)及び/又はトリプタン及び/又は5ヒドロキシトリプタミンIF受容体アゴニスト(すなわち、セロトニン受容体アゴニスト)であり得る。一部の例において、第2の薬剤は、患者に予防的に投与される薬剤である。
【0097】
抗CGRP抗体との組み合わせで使用することができるNSAIDの非限定的な例としては、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルシナル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルフェニサール、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン又はゾメピラク、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、JTE-522、L-745,337、NS398、又は薬学的に許容可能なその塩が挙げられる。抗CGRP抗体との組み合わせで使用することができるトリプタンの非限定的な例としては、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタン、リザトリプタン、エレトリプタン、アルモトリプタン、及びアフロバトリプタン(afrovatriptan)が挙げられる。5ヒドロキシトリプタミンIF受容体アゴニストの非限定的な例は、ラスミディタンである。
【0098】
本明細書に提供される方法の予防すること、治療すること、又は低減させることは、任意の重症度の頭痛時間数を低減させること、任意の重症度の片頭痛時間数を低減させること、任意の重症度の月間頭痛日数を低減させること、任意の重症度の月間片頭痛日数を低減させること、任意の急性頭痛医薬の使用を低減させること、6項目の頭痛インパクト試験(6-item Headache Impact Test)(HIT-6)不能性スコアを低減させること、12項目のショートフォーム健康調査(12-Item Short Form Health Survey)(SF-12)スコア(Ware et al.,Med.Care 4:220-233,1996)を改善すること、変化に対する患者の全般的印象(Patient Global Impression of Change)(PGIC)スコア(Hurst et al.,J.Manipulative Physiol.Ther.27:26-35,2004)を低減させること、スポーツ脳震盪評価ツール第3版(Sport Concussion Assessment tool 3)(SCAT-3)スコア(McCrory et al.British J.Sport.Med.47:263-266,2013)を改善すること、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、月間頭痛又は片頭痛日数は、単一投与後に少なくとも7日間低減させることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、当該投与後に対象により認められる月間頭痛又は片頭痛時間は、対象における投与前レベルから40時間以上(例えば、45、50、55、60、65、70、75、80以上)だけ低減される。月間頭痛又は片頭痛時間は、60時間超だけ低減させることができる。いくつかの実施形態において、当該投与後に対象により認められる月間頭痛又は片頭痛時間は、対象における投与前レベルに対して25%以上(例えば、30%、35%、40%、45%、50%以上)だけ低減される。月間頭痛又は片頭痛時間は、40%以上だけ低減させることができる。いくつかの実施形態において、当該投与後に対象により認められる月間頭痛又は片頭痛日は、対象における投与前レベルから3日以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日、又はそれ以上)だけ低減される。いくつかの実施形態において、月間頭痛又は片頭痛日数は、対象における投与前レベルから少なくとも約50%だけ低減させることができる。したがって、いくつかの態様において、月間頭痛又は片頭痛日数は、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%だけ低減させることができる。
【0100】
本明細書に提供されるゲパント及びその組成物は、抗体の有効性を向上させ、及び/又は補うように機能する他の薬剤とともに使用することもできる。
【0101】
本方法における使用のためのキットも本明細書に提供される。キットは、本明細書に記載の抗体(例えば、ゲパントを含む1つ以上の容器、及び本明細書に記載の方法のいずれかによる使用のための説明書を含み得る。一般に、これらの説明書は、本明細書に記載の方法のいずれかにより患者を選択し、治療するための抗体の投与の説明を含む。例えば、キットは、患者が片頭痛の発作間欠期間中に異痛及び/又は痛覚過敏を示すかどうかを識別することに基づいて、治療に適した患者をどのように選択するかの説明を含み得る。更に他の実施形態において、説明書は、どのようにゲパントを患者に投与して頭痛の頻度を低減させるかの説明を含む。
【0102】
したがって、キットは、例えば、ある用量のゲパントを含む、プレフィルドシリンジ、注射針安全装置を有するプレフィルドシリンジ、ペン型注射器、又はオートインジェクター;並びに患者の異痛及び/又は痛覚過敏が患者の片頭痛の発作間欠期間中に生じるかどうかを判定するための説明書を含み得る。代替的に、又は追加的に、説明書は、患者が、ゲパントを投与することにより低減可能な異痛及び/若しくは痛覚過敏を生じるかどうかを判定すること、並びに/又は患者の頭痛が主に頭部の一部(例えば、片側眼窩周囲、片側側頭部、又は片眼)において認められるかどうかを判定することを説明し得る。
【0103】
別の例示的キットは、CGRP経路をアンタゴナイズするゲパント、及びどのようにQSTを患者に行うかに関する詳細な説明書、又は患者の患者の異痛及び/又は痛覚過敏が片頭痛の発作間欠期間中に生じるかどうかを判定するために患者アンケートを実施し、それに対する応答を分析することに関する説明書を含み得る。
【0104】
レスポンダーの識別に関する説明書に加え、キットは、ゲパントによる更なる治療についての説明書、例として、目的の治療についての投与量、投薬スケジュール、及び投与経路に関する情報(例えば、患者をキットの説明書に従ってレスポンダーと識別してから頭痛頻度の低減を達成するための説明書)を更に含み得る。
【0105】
本明細書に提供されるキットでは、キットに提供されるゲパントは、リメゲパント、ウブロゲパント、バゼゲパント、アトゲパント、オルセゲパント、テルカゲパント、BI44370、及びMK-3207、又はそれらの薬学的に許容される塩を含むことができる。
【0106】
本発明のキットは、好適なパッケージングにおいて提供することができる。好適なパッケージングとしては、限定されるものではないが、バイアル、ボトル、瓶、フレキシブルなパッケージング(例えば、密封Mylar又はプラスチックバッグ)などが挙げられる。規定の装置、例えば、吸入器、鼻腔投与装置(例えば、アトマイザー)又は注入装置、例えば、ミニポンプとの組み合わせにおける使用のためのパッケージも企図される。キットは、無菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針により穿通可能な栓を有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)を有し得る。容器も無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、ゲパントである。容器は、第2の薬学的に活性な薬剤を更に含み得る。キットは、任意選択的に、追加の構成成分、例えば、緩衝剤及び説明用情報を提供し得る。通常、キットは、容器及び容器上の又はそれに伴うラベル又は添付文書を含む。
【0107】
以下の実施例は、本発明を限定するためではなく、本発明を説明するために提供される。本明細書に記載の実施例及び実施形態は、説明目的のためのものにすぎないこと、並びにそれに照らした種々の改変又は変更が当業者に提案され、本出願の主旨及び目的内に含められるべきことが理解される。本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により全体として本明細書に組み込まれることが具体的及び個別的に示されるのと同程度に全ての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0108】
実施例1:ヒト化モノクローナル抗CGRP抗体(フレマネズマブ、TEV-48125)による三叉神経血管ニューロンの選択的阻害。
本試験の目的は、どのようにCGRP-mAbのフレマネズマブ(TEV-48125)が髄膜感覚経路をモジュレートするかをより良好に理解することであった。この疑問に回答するため、単一ユニット記録を使用して麻酔した雄ラット及び雌ラットの三叉脊髄核中のナイーブ三叉神経血管ニューロン及びCSD感作三叉神経血管ニューロンにおける自発活性及び誘発活性に対するフレマネズマブ(30mg/kg IV)及びIgG2アイソタイプ対照抗体(アイソタイプ対照Ab)の効果を判定した。この試験は、両方の性においてフレマネズマブがナイーブ高閾値作動性(HT)ニューロンを阻害したが、ワイドダイナミックレンジ三叉神経血管ニューロンを阻害しなかったこと、及びニューロンに対する阻害効果が顔面皮膚でも角膜でもなく頭蓋内硬膜からのそれらの活性化に限定されたことを実証する。追加的に、フレマネズマブは、十分な時間を与えた場合、皮質拡延性抑制によるHTニューロンの活性化及び感作を予防する。
【0109】
A.材料及び方法
外科的調製
実験は、Beth Israel Deaconess Medical Center and Harvard Medical School常任動物管理委員会により承認され、U.S.National Institutes of Health Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従った。雄Sprague-Dawleyラット及び雌Sprague-Dawleyラット(250~350g)をウレタン(0.9~1.2g/kg i.p.)により麻酔した。これらに人工呼吸を可能とするための気管内チューブ(0.1L/分のO2)、及び後の薬物注入用の大腿静脈内カニューレを装着した。ラットを定位固定装置中で配置し、加熱ブランケットを使用して中核温を37℃において保持した。呼気終末CCを持続的にモニタリングし、生理学的範囲(3.5~4.5pCC)内で保持した。ラットを安定化させたら、臭化ロクロニウム(10mg/ml、1ml/時間の持続静脈内注入)により麻痺させ、人工呼吸させた。実験における後の脳硬膜の刺激のため、5×5mm開口部を頭頂骨及び後頭骨中でラムダ縫合の前後で左横静脈洞真上で慎重に切開した。改変合成間質液(135mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgCh、5mMのCaCh、10mMのグルコース及び10mMのHepes、pH7.2)を使用して露出硬膜の湿分を保持した。三叉脊髄核中の単一ユニット記録のため、閂及びC2間の脊髄の分節を下層組織から取り出し、硬膜から剥がし、鉱油により湿分を保持した。
【0110】
ニューロン識別及び選択
ニューロン活性を記録するため、硬膜及び顔面皮膚からの収束性入力を受容する中枢三叉神経血管ニューロンを求めて、タングステン微小電極(インピーダンス3~4MΩ)を三叉脊髄核(STN)中に繰り返し下げた。最初に、三叉神経血管ニューロンを、硬膜の電気刺激に対するそれらの応答に基づき識別した。これらが露出頭蓋硬膜の同側電気(0.1~3.0mA、0.5msec、0.5Hzパルス)及び機械(較正フォンフライモノフィラメントによる)刺激に、並びに顔面皮膚及び角膜の機械刺激に応答する区別される発火発作を呈する場合、これらを試験のために選択した。硬膜を中外側及び前後側で1mmだけ離隔した地点において(4.19gのVFHモノフィラメントにより)押込むことにより硬膜受容野をマッピングした。硬膜押込みが試験の>50%における応答を産生した地点を、ニューロン受容野内側とみなした。非侵害機械刺激及び侵害機械刺激を全ての顔面皮膚区域及び角膜に印加することにより、皮膚受容野をマッピングした。刺激が試験の>50%における応答を産生しなかった場合、区域を受容野外側とみなした。皮膚の機械刺激に対する応答は、短い(10秒)非侵害刺激及び侵害刺激を皮膚受容野のも高感度の部分に印加することにより判定した。非侵害刺激は、毛先の柔らかいブラシを皮膚受容野にわたり低速で通過させること(尾側から吻側までの1回の5秒間のブラシのストローク、及び吻側から尾側までの1回の5秒間のブラシのストローク)、並びに緩い動脈クリップにより印加される圧力からなるものであった。侵害刺激は、強力な動脈クリップによるピンチからなるものであった(Palecek et al,1992,J.Neurophysiol.67:1562-1573、Dado et al,1994,J.Neurophysiol.71:981-1002、Burstein et al.,1998,J.Neurophysiol.79:964-982)。自発ニューロン放電又は応答特性の長時間の変化の誘導を回避するためにより強い又は長時間の刺激は使用しなかった。角膜の機械刺激に対する応答は、薄型ペイントブラシ(約10個の毛包)による穏やかで低速のブラッシングストロークからなるものであった。したがって、2つのクラスのニューロンを識別した:ワイドダイナミックレンジ(WDR)ニューロン(ブラシ、圧力及びピンチに漸増的に応答性)、及び高閾値作動性(HT)ニューロン(ブラシに不応性)。リアルタイム波形識別器を使用して硬膜上の電気パルスにより試験下でニューロン中で誘発される作用潜在性についてのテンプレートを作出し、保存し;テンプレート波形に合致する活性のスパイクを取得し、Spike2ソフトウェア(CED,Cambridge,UK)を使用してオンライン及びオフラインで分析した。皮質拡延性抑制の誘導及び記録。
【0111】
ガラスマイクロピペット(チップ直径25μm)を視覚野中に約1mm、10秒間挿入することにより、皮質拡延性抑制(CSD)を機械的に誘導した。3~5mm/分の伝搬速度において、CSDの単一波が皮質刺激の1~2分以内にニューロン受容野に流入することが予想された。CSDの確認のため、皮質活性を、大脳皮質の表面真下(約100μm)に配置されたガラスマイクロピペット(0.9%の生理食塩水、約1メグオーム、7umチップ)により記録した(皮質脳波)。皮質脳波電極を、視覚野の約6mm前方に位置させた。モノクローナル抗CGRP抗体フレマネズマブ(TEV-48125)による処理。フレマネズマブ(TEV-48125/LBR-101/RN-307としても公知)(TEVA Pharmaceutical Industries Ltd.,Israel)は、ヒト化モノクローナル抗CGRP抗体(CGRP-mAb)である。これを生理食塩水中で30mg/kgの最終用量に希釈し、静脈内投与した(ボーラス注射、全体積0.6~0.7ml)。対応するヒトIgG2アイソタイプ対照抗体(アイソタイプ対照Ab)も生理食塩水中で30mg/kgの最終用量に希釈し、静脈内投与した(ボーラス注射、全体積1.6~2.0ml)。
【0112】
実験プロトコル
実験プロトコルは、2つのパートを含んだ。第1のパートは、ナイーブ三叉神経血管ニューロンの自発活性及び誘導活性に対するCGRP-mAb対アイソタイプ対照Abの効果を比較するように設計し、第2のパートは、CSDによる三叉神経血管ニューロンの活性化及び感作に対するCGRP-mAb対アイソタイプ対照Abの効果を試験するように設計した。両方のパートは、雄ラット及び雌ラットにおけるWDR及びHTニューロンのサンプリングを含んだ。第1のパートにおいて、ベースラインニューロンプロファイルを、(a)硬膜、皮膚、及び角膜受容野をマッピングすること;(b)硬膜(固定力による)、皮膚(ブラシ、圧力、ピンチ)及び角膜(ブラシ)の機械刺激に対する応答(平均スパイク数/秒)を計測すること、並びに(c)自発発火頻度(処理の30分前にわたり記録)を計測することにより確立した。ベースラインを確立したら、CGRP-mAb又はアイソタイプ対照Abを投与し、受容野を再マッピングし、硬膜、皮膚及び角膜の刺激に対するニューロン応答を再試験し、自発活性頻度を処理の1、2、3、及び4時間後に再サンプリングした。次いで、それぞれの計測について得られた値を、処理前に得られたそれぞれのベースライン値と比較した。第2のパートにおいて、CSDをCGRP-mAb又はアイソタイプ対照Abの投与の4時間後に誘導し、2時間後(すなわち、処理の6時間後)、受容野サイズ、自発活性頻度、並びに硬膜、皮膚及び角膜の刺激に対する応答規模を再度計測した。次いで、それぞれの計測について得られたCSD後の値を、処理時間の4時間後に得られたそれぞれのCSD前の値と比較した。このパートは、ラットの生理学的条件(心拍数、血圧、呼吸、呼気終末C02)及びニューロン分離シグナル(シグナル-ノイズ比>1:3)が処理時点の4時間後に安定である場合にのみ開始した。
【0113】
各々の実験の終了時、小さな損傷を記録部位において産生し(15秒間の15μAの陽極DC)、他の箇所に記載の組織学的分析を使用して後角中のその局在を死後に判定した(Zhang et al.(201 1)Ann.Neurol.69:855-865)。1つのみのニューロンをそれぞれの動物において試験した。
【0114】
データ分析
刺激に対する応答規模を計算するため、第1の刺激の発生前に生じた平均発火頻度(自発活性について30分間、硬膜、皮膚及び角膜の機械刺激について10秒間)を、それぞれの刺激の持続時間全体にわたり生じた平均発火頻度から減算した。試験の第1のパートにおいて、それぞれの計測についての対応値(処理の1、2、3、4時間後に判定)を、フレマネズマブ又はアイソタイプ対照Ab投与前に得られたそれぞれのベースライン値と比較した。試験の第2のパートにおいて、それぞれの計測について得られた値(CSD誘導の2時間後に判定)を、2つの処理群(フレマネズマブ及びアイソタイプ対照Ab)においてCSD誘導前に得られたそれぞれの値と比較した。CSD後のニューロンの平均発火頻度がその平均ベースライン活性を>10分間の期間にわたりその平均の2標準偏差だけ超過した場合(活性の>33%の増加を指す)にニューロンは活性化したとみなした。CSDの発生の2時間後にニューロンが以下の5つの刺激の少なくとも3つに対する向上した応答を呈した場合、ニューロンは感作されたとみなした:硬膜押込み、皮膚のブラッシング、加圧又はピンチング、及び角膜のブラッシング。ノンパラメトリック統計(ウィルコクソンの符号順位検定)を使用してそれぞれの値の平均発火頻度を比較した。両側有意水準を0.05に設定した。
【0115】
B.結果
ナイーブ三叉神経血管ニューロンの自発活性及び誘導活性に対するCGRP-mAb対アイソタイプ対照Abの効果を試験するためのデータベースは、63個のニューロンからなるものであった。これらのうち、31個をWDRと分類し、32個をHTと分類した。31個のWDRニューロンのうち、18個(雄における11個、雌における7つ)をCGRP-mAbの投与前及び後に試験し、13個(雄における7つ、雌における6つ)をアイソタイプ対照Abの投与前及び後に試験した。32個のHTニューロンのうち、18個(雄における11個、雌における7つ)をCGRP-mAbの投与前及び後に試験し、14個(雄における8つ、雌における6つ)をアイソタイプ対照Abの投与前及び後に試験した。
【0116】
CSDによるニューロンの活性化及び感作に対するCGRP-mAb対アイソタイプ対照Abの効果を試験するためのデータベースは、50個のニューロンからなるものであった。これらのうち、23個をWDRと分類し、27個をHTと分類した。23個のWDRニューロンのうち、13個(雄における7つ、雌における6つ)をCGRP-mAb処理動物において試験し、10個(雄における5つ、雌における5つ)をアイソタイプ対照Ab処理動物において試験した。27個のHTニューロンのうち、14個(雄における8つ、雌における6つ)をCGRP-mAb処理動物において試験し、13個(雄における7つ、雌における6つ)をアイソタイプ対照Ab処理動物において試験した。記録部位、受容野、及びニューロンクラス。
【0117】
記録部位、硬膜及び皮膚受容野のマップ、並びに細胞タイプは、CGRP-mAbについて試験されたニューロン及びアイソタイプ対照Abについて試験されたニューロン間で異なることはなかった。全ての識別された記録部位は、脊髄の第1頸部のI~II層及びIV~V層並びに尾側核の下方部中に局在した。全ての例において、硬膜受容野の最も高感度の区域は横静脈洞に沿っており、皮膚受容野の最も高感度の区域は眼周囲であり、その例の90%超において角膜が関与した。ナイーブ中枢三叉神経血管ニューロンの自発活性。
【0118】
雄ラットにおいて、CGRP-mAbの静脈内投与は、HTの自発活性を低減させたが、WDRニューロンの自発活性を低減させなかった。HT群において、ニューロン発火は3~4時間以内に90%だけ減少した(p=0.040)。場合により、一部のHTニューロンの発火頻度はCGRP-mAbの静脈内投与後の1~2時間以内に減少した。対照的に、アイソタイプ対照Abの静脈内投与は、いずれのニューロン群の自発活性も変えなかった。
【0119】
雌においては、雄と異なり、CGRP-mAbの静脈内投与は、HTニューロンの自発活性もWDRニューロンの自発活性も低減させなかった。同様に、アイソタイプ対照Abの静脈内投与は、いずれのニューロン群の自発活性も変えなかった。重要なことに、HT及びWDRニューロンのベースライン(すなわち、任意の処理前)の自発発火頻度は、雄ラット及び雌ラット間で異なることはなかった(p=0.14)。
【0120】
HTニューロンについて、任意の処理前の平均スパイク数/秒は、雄において1.7±1.1であったのに対して雌において1.9±1.0であった(p=0.55)。WDRニューロンについて、任意の処理前の平均スパイク数/秒は、雄において0.3±0.6であったのに対して雌において2.2±1.1であった(p=0.16)。
【0121】
硬膜押込みに対するナイーブ中枢三叉神経血管ニューロンの感受性
雄ラット及び雌ラットの両方において、CGRP-mAbの静脈内投与は、HTニューロンにおける硬膜の機械刺激に対する感受性を低減させたが、WDRニューロンにおいては低減させなかった。雄において、HTニューロンの発火は75%だけ減少した(p=0.047)一方、雌において、それは61%だけ減少した(p=0.017)。性別にかかわらず、アイソタイプ対照Abの静脈内投与は、いずれのニューロン群においても硬膜刺激に対する感受性を変えなかった。眼窩周囲皮膚及び角膜の機械刺激に対するナイーブ中枢三叉神経血管ニューロンの感受性。CGRP-mAb又はアイソタイプ対照Abの静脈内投与は、雄ラット又は雌ラットにおいて皮膚又は角膜の非侵害(ブラシ、圧力)機械刺激又は侵害(ピンチ)機械刺激に対するHTニューロンの応答もWDRニューロンの応答も変えなかった。
【0122】
皮質拡延性抑制
CSDによる中枢三叉神経血管ニューロンの活性化に対するCGRP-mAb(n=27)又はアイソタイプ対照Ab(n=23)の効果を、ベースライン発火頻度(すなわち、CSDの誘導前の平均スパイク数/秒)が信頼可能であり、数時間にわたり持続的な50個のニューロンにおいて試験した。ベースライン(すなわち、CSD前)において、HT及びWDRニューロンの自発発火頻度は、雄ラット及び雌ラット間で異なることはなかった(p=0.14)。HTニューロンについて、CSDの誘導前の平均スパイク数/秒は雄において1.2±0.6であったのに対して雌において3.3±1.7であった(p=0.29)。WDRニューロンについて、CSDの誘導前の平均スパイク数/秒は雄において1.5±0.6であったのに対して雌において3.5±2.2であった(p=0.37)。
【0123】
中枢三叉神経血管ニューロンにおけるCSD誘導活性
雄ラットにおいて、CSDの誘導の2時間後及びアイソタイプ対照Ab投与の6時間後、7つのHTニューロンの平均発火頻度は、CSD前の1.1±0.8スパイク/秒からCSD後の10.2±2.1に増加した(p=0.019)一方、5つのWDRニューロンの平均発火頻度は、増加しなかった(CSD前の0.5±0.3スパイク/秒に対してCSD後の1.6±0.5;p=0.14)。対照的に、CGRP-mAb処理ラットにおいて、8つのHTニューロンの応答規模は、CSDの誘導の2時間後及びCGRP-mAb投与の6時間後に不変のままであった(CSD前の1.2±0.6スパイク/秒に対してCSD後の1.9±1.5、p=0.29)。換言すると、HTニューロンの予想されたCSD誘導活性化は、CGRP-mAb処理により予防された。
【0124】
雌ラットにおいて、CSDの誘導の2時間後及びアイソタイプ対照Ab投与の6時間後、6つのHTニューロンの平均発火頻度は、CSD前の1.9±1.0スパイク/秒からCSD後の10.0±4.5に増加した(p=0.027)一方、5つのWDRニューロンの平均発火頻度は、不変のままであった(CSD前の2.6±1.2スパイク/秒に対してCSD後の2.2±0.9 p=0.73)。対照的に、CGRP-mAb処理ラットにおいて、6つのHTニューロンの応答規模は、CSDの誘導の2時間後及びCGRP-mAb投与の6時間後に不変のままであった(CSD前の3.3±1.7スパイク/秒に対してCSD後の5.0±3.4、p=0.45)。雄と同様、HTニューロンの予想されたCSD誘導活性化は、CGRP-mAb処理により予防された。CSDによるWDR及びHTニューロンの活性化に対するCGRP-mAb効果を更に試験するため、ケースバイケース分析も実施した。全てのCGRP-mAb及びアイソタイプ対照処理WDRニューロンのうち、5つ/13個及び4つ/10個がCSDにより活性化され、差異は2%にすぎなかった。対照的に、全てのCGRP-mAb及びアイソタイプ対照Ab処理HTニューロンのうち、2つ/14個及び13個/13個がCSDにより活性化され、差異は86%であった。
【0125】
CSD誘導感作
CSDによる活性化にかかわらず、11個/13個のHTニューロン及び0個のWDRニューロンが感作の発生についての基準(データ分析セクションにおいて定義)を満たした。したがって、CSD後の感作の発生を妨げるCGRP-mAbの能力はHTについて提示されるが、WDRニューロンについては提示されない。CSD後の硬膜受容野の拡大及び硬膜の機械刺激に対する応答の向上。アイソタイプ対照Ab処理群において、硬膜受容野は、雄における5つ/7つのHTニューロン及び雌における6つ/6つのHTニューロンにおいて拡大した。CSDの誘導の2時間後(アイソタイプ対照Ab投与の6時間後)、VFHによる硬膜押込みに対するニューロン応答は雄における7つ全てのHTニューロン(CSD前の12.8±3.9スパイク/秒に対してCSD後の22.0±3.7;p=0.026)、及び雌における6つ全てのHTニューロン(CSD前の8.5±1.7に対してCSD後の21.6±5.1、p=0.047)において増加した。
【0126】
対照的に、CGRP-mAb処理群において、硬膜受容野の拡大は、それが生じた場合により小さく、雄における2つ/8つのHTニューロンのみ及び雌における0個/6つにおいて記録された。CSDの誘導の2時間後(CGRP-mAb投与の6時間後)、VFHによる硬膜押込みに対するニューロン応答は雄(CSD前の1.8±0.6に対してCSD後の1.9±1.5、p=0.83)及び雌(CSD前の10.5±1.6に対してCSD後の8.1±6.4、p=0.72)の両方で全てのHTニューロンにおいて不変のままであり、感作の予防を示した。したがって、CGRP-mAbは、雄ラット及び雌ラットの両方においてHTニューロンにおける頭蓋内機械過敏症の発症を予防した。CSD(すなわち、中枢感作)後の皮膚受容野の拡大及び眼窩周囲皮膚の機械刺激に対する応答の向上。
【0127】
アイソタイプ対照Ab処理群において、顔面受容野は、雄における5つ/7つのHTニューロン及び雌における6つ/6つのHTニューロンにおいて拡大した。CSDの誘導の2時間後(アイソタイプ対照Ab投与の6時間後)、ブラシ及び圧力に対する応答は、13個全てのHTニューロン(雄における7つ及び雌における6つ)において有意に増加した。雄において、ブラシ及び圧力に対する応答は、それぞれ、0.0から18.2±9.1スパイク/秒(p=0.046)に、及び16.6±4.2から35.8±9.1スパイク/秒(p=0.045)に増加した。雌において、ブラシ及び圧力に対する応答は、それぞれ、0.0から8±6.5スパイク/秒(p=0.027)に、及び9.3±2.7から31.8±13.6スパイク/秒(p=0.016)に増加した。対照的に、ピンチに対する応答は、雌における全てのHTニューロンにおいて有意に増加した(CSD前の19.3±5.0スパイク/秒に対してCSD後の45.8±12.4スパイク/秒、n=6、p=0.027)が、雄においては増加しなかった(CSD前の33.8±7.1スパイク/秒に対してCSD後の52.4±10.3スパイク/秒、n=6、p=0.068)。
【0128】
CGRP-mAb処理ラットにおいて、顔面受容野は、雄における2つ/8つのHTニューロンのみ及び雌における0個/6つのHTニューロンにおいて拡大した。CSDの誘導の2時間後(CGRP-mAb投与の6投与後)、ブラシ(p=0.35)、圧力(p=0.63)及びピンチ(p=0.78)に対するニューロン応答は雄及び雌の両方における全てのHTニューロンにおいて不変のままであり、CGRP-mAbが感作の誘導を予防することを示唆した。
【0129】
CSD後の角膜刺激に対する応答の向上
アイソタイプ対照Ab処理ラットにおいて、CSD後の角膜刺激に対する応答は、HTニューロンで雌において有意に増加した(CSD前の7.6±1.9スパイク/秒に対してCSD後の21.0±6.4スパイク/秒、n=6、p=0.044)が、雄において増加しなかった(CSD前の1 1.0±2.6スパイク/秒に対してCSD後の21.6±8.7スパイク/秒、n=7、p=0.19)。CGRP-mAb処理雌ラットにおいて、角膜のブラッシングに対する応答は、6つのHTニューロンにおいて不変のままであり(p=0.51)、感作の予防を示唆し;予想されるように、雄における8つのHTニューロンにおいても不変のままであった(CSDS前の10.8±3.3スパイク/秒に対してCSD後の9.±1.8(スパイク/秒、p=0.60)。したがって、CGRP-mAbは、雌ラットにおけるHTニューロンにおける角膜過敏症の発症を予防したが、雄ラットにおいては予防しなかった。
【0130】
C.考察
本試験は、ヒト化モノクローナル抗CGRP抗体フレマネズマブがHT三叉神経血管ニューロンの活性化及び感作を阻害するが、WDR三叉神経血管ニューロンの活性化及び感作を阻害しないことを実証する。雄において、CGRP-mAbは、ナイーブHTニューロンの自発活性及び頭蓋内硬膜の刺激に対するそれらの応答を阻害したが、顔面皮膚の刺激に対するそれらの応答も角膜の刺激に対するそれらを応答も阻害しなかった一方、雌においては、それは頭蓋内硬膜の刺激に対するそれらの応答のみを阻害した。しかしながら、CGRP-mAbは、十分な時間を与えた場合、両方の性においてCSDによるHTニューロンの活性化及び結果としての感作を予防したが、WDRニューロンの部分活性化を予防しなかった。機序的には、それらの知見は、HTニューロンが頭痛の知覚の開始並びに異痛及び中枢感作の発症における(以前は認識されなかった)重要な役割を担うことを示唆する。臨床的には、本知見は、頭蓋内起源の頭痛、例えば、片頭痛の予防におけるCGRP-mAbの治療有効性及びなぜこの治療アプローチが全ての片頭痛患者に有効でないことがあるかを説明するのに役立ち得る。
【0131】
本試験は、異なるクラスの中枢三叉神経血管ニューロンの応答性に対するCGRP-mAbに対する効果を試験した。既に、Storerらは、CGRP-RアンタゴニストBIBN4096BSが上矢状静脈洞の電気刺激及びL-グルタミン酸のマイクロイオントフォレシス投与に対するナイーブ中枢三叉神経血管ニューロン応答を阻害することを示した(Storer et al.,2004,Br.J.Pharmacol.142:1171-1 181)。
【0132】
HTに対するフレマネズマブ効果対WDRに対するフレマネズマブ効果
CGRP-mAbは、静脈内で与えた場合、HTにおけるベースライン自発活性を低減させたが、WDRニューロンにおいては低減させなかった。WDR三叉血管ニューロンが、片頭痛の病態生理学を研究するために使用される様々な硬膜刺激によって活性化されるという現在及び以前の証拠を考慮すると(Davis and Dostrovsky,1988,J.Neurophysiol.59:648-666、Burstein et al,1998,J.Neurophysiol.79:964-982、Storer et al,2004,Brit.J.Pharmacol.142:1 171-1181、Zhang et al,201 1,Ann.Neurol.69:855-865)、WDR単独の活性化は、頭痛がCGRP-mAb療法により完全又はほぼ完全に予防される偶発性片頭痛患者における頭痛知覚を誘導するために不十分であることを結論付けることが妥当である(Bigal et al,2015,Lancet Neurol.14:1081-1090)。逆に、WDR三叉神経血管ニューロン単独の活性化がCGRP-mAb療法から利益を受けないそれらの偶発性片頭痛患者における頭痛知覚を誘導するために十分であり得ることを想定することも妥当である。それというのも、頭痛がHT三叉神経血管ニューロンから視床に送られるシグナルの排除により影響を受け得なかったためである。片頭痛及び三叉神経血管ニューロン系の外側で、HT及びWDRニューロンは、侵害刺激のプロセシング及び疼痛の知覚において異なる役割を担うと考えられている(Craig AD,2002,Nat.Rev.Neurosci.3:655-666、Craig AD,2003,Trends Neurosci.26:303-307、Craig AD,2003,Annu.Rev.Neurosci.26:1-30)。ほとんどのHTニューロンは小さな受容野を呈し、もっぱら侵害機械刺激に応答する一方、ほとんどのWDRニューロンは大きな受容野を呈し、機械侵害刺激及び熱侵害刺激の両方に応答する(Price et al,1976,J.Neurophysiol.39:936-953、Price et al,1978,J.Neurophysiol.41:933- 947、Hoffman et al,1981,Neurophysiology 46:409-427、Dubner and Bennett,1983,Annu.Rev.Neurosci.6:381-418、Bushnell et al,1984,J.Neurophysiol.52:170-187、Surmeier et al,1986,J.Neurophysiol.56:328-350、Ferrington et al,1987,J.Physiol.(Lond)388:681-703、Dubner et al,1989,J.Neurophysiol.62:450-457、Maixner et al,1989,J.Neurophysiol.62:437-449、Laird and Cervero,1991,J.Physiol.434:561-575)。これらの差異に基づき、HTニューロンは疼痛の空間符号化(サイズ、局在)に大いに寄与し、疼痛性質の符号化にそれほど寄与しない一方、WDRニューロンは疼痛の質の放射に大いに寄与することが一般に考えられる。これに合致して、フレマネズマブに不応性の患者は、頭痛が頭部の大きな区域(すなわち、前頭部、側頭部、後頭部、両側)を冒す患者である一方、頭痛が小さな区別される区域に十分に局在している患者はレスポンダーの中の患者であることも妥当である。
【0133】
頭痛における有効性
フレマネズマブは、硬膜の機械刺激に対する応答性を低減させた(雄及び雌の両方)が、皮膚又は角膜の非侵害刺激及び侵害刺激に対する応答性を低減させなかった。この知見は、CGRP-mAbがCSDによるHT三叉神経血管ニューロンの活性化も予防したという事実と一緒になって、頭蓋内起源の頭痛の予防におけるフレマネズマブの有効性についての科学的根拠を提供する。逆に、顔面皮膚及び角膜中で生じる感覚及び侵害受容シグナルのプロセシングのモジュレーションに対する効果の欠落は、このクラスの薬物が、長時間の三叉神経疼痛病態、例えば、ドライアイ及びヘルペス誘導三叉神経痛の治療に対する治療効果をほとんど有しないことを予測する。フレマネズマブが硬膜(機械、CSD)からの中枢三叉神経血管ニューロンの活性化を阻害したが、皮膚からの活性化も角膜からの活性化も阻害しなかったこと、及びこの分子のサイズが大きすぎて血液脳関門を容易に浸透しないことを考慮すると、上記の阻害効果は硬膜押込み及び末梢三叉神経血管ニューロンにおけるCSDに対する応答の(一次)阻害に続くものであったことを示唆することが妥当である。CGRP線維の全身にわたる広い分布(Kruger et al.,1988,J.Comp.Neurol.273:149-162、Kruger et al.,1989,J.Comp.Neurol.280:291-302、Silverman and Kruger,1989,J.Comp.Neurol.280:303-330)、複数の脊髄分節(Hansen et al.,2016,Pain 157:666-676、Nees et al.,2016,Pain 157:687-697)、及び複数の感覚後根神経節(Edvinsson et al.,1998,J.Auton.Nerv.Syst.70:15-22、Edvinsson et al.,2001,Microsc.Res.Techniq.53:221-228、Cho et al.,2015,J.Korean Med.Sci.30:1902-1910、Kestell et al.,2015,J.Comp.Neurol.523:2555-2569、Spencer et al.,2016,J.Comp.Neurol.524:3064-3083)におけるそれらの存在を考慮すると、CGRP-mAbが皮膚及び角膜の侵害刺激に対する中枢ニューロンの応答に対する効果をほとんど、又は全く有しないことは驚くべきことである。CGRP-mAbが主に末梢において作用するという概念を受け入れる場合、髄膜の感覚神経支配の末梢態様及びこの神経支配が後角における感覚伝達に影響する形式が、皮膚、角膜又は他の(体細胞)疼痛の生成に関与するものと異なることを提案することも妥当である。他の疼痛病態の動物モデルにおけるフレマネズマブの効果に関する研究は、硬膜と、片頭痛における区別される開始役割を有しないと考えられる頭蓋外組織とにおけるCGRP-mAbの効果間の差異のより正確な解釈を可能とすべきである。
【0134】
CSD誘導活性化及び感作の阻害
本試験は、CSDによる中枢三叉神経血管ニューロンの感作を実証する。この感作は、雄及び雌の両方においてHTにおいて観察されるがWDRニューロンにおいては観察されず、CGRP-mAb投与により予防された。これらの知見は、前兆が先行する発病における皮膚異痛(Burstein et al.,2000,Ann.Neurol.47:614-624)が、ベースライン(患者における発作間欠時及び動物におけるCSDの誘導前)における皮膚の非侵害機械刺激に対して不応性であるが、CSD後にブラシに対して機械応答性になるHTニューロンにより媒介されることを示す。このシナリオによれば、片頭痛前兆患者のうち、CGRP-mAbによる予防的治療に対するレスポンダーは、皮膚異痛の徴候を示さない。
【0135】
雄対雌
本試験は、雄ラット及び雌ラットの両方におけるCGRP-mAbの効果も試験した。全体的性別分析はこのクラスの薬物の治療的利益が男性及び女性の片頭痛患者において類似であるはずであることを示唆する一方、ナイーブ状態においてCGRP-mAbが雄HTニューロンにおける自発活性を低減させるが、雌HTニューロンにおいて低減させないこと、及びCSDによる感作の誘導後、雌において記録されたHTニューロンのみが皮膚及び角膜の侵害刺激に対する感作の徴候を呈したことも示す。片頭痛が男性よりも女性においてよく見られることを考慮すると、この差異は、痛覚過敏(異痛ではなく)が前兆を伴う片頭痛の間に男性よりも女性において発症する可能性がより高いこと、及び発作間欠状態におけるCGRP-mAbによるニューロン興奮性を低減させるための試行(すなわち、予防として)は、男性よりも女性において困難であり得ることも示唆し得る。機序的には、3つの観察された差異は、雌HTニューロンの内部特性又はそれらが末梢侵害受容体から受容する入力の強度の差異のいずれかに起因する雌HTニューロンのより大きな興奮性に起因し得た。第1の選択肢を支持するデータが存在しない一方、雄と比較した雌における硬膜免疫細胞及び炎症分子の活性化の差異(McIlvried et al.(2015)Headache 55:943-957)は、第2の選択肢を支持し得ることが考えられる。雄ラットにおける自発活性を低減させるが雌ラットにおいて低減させないフレマネズマブの能力に関して、雌ラットが三叉神経節及び三叉脊髄核中でより少ないCGRP受容体を、及び後角中でより高レベルのCGRPコードmRNAを発現することを示すデータを考慮することができる(Stucky et al.(2011)Headache 51:674-692)。
【0136】
後に、CGRP-mAbの阻害効果は、有意性を達成するために数時間のみを要求した。この相対的に短い時間(数日間ではなく数時間)は、静脈内投与を使用して達成された。
【0137】
実施例2.行動学的及び心理物理学的ツールを使用する抗CGRP抗体(TEV-48125)レスポンダーの評価
二次又は三次医療ケアを求める大多数の偶発性片頭痛患者は、片頭痛の急性期の間に皮膚異痛及び痛覚過敏の徴候を呈するが、無痛の場合には示さない(Burstein R et al.(2000)Ann.Neurol.47:614-624)。対照的に、慢性片頭痛患者は、一般に、急性片頭痛発病の間及び発作間欠期の間の両方で皮膚異痛及び痛覚過敏の徴候を呈する。機序的には、異痛及び痛覚過敏は、三叉脊髄核中の中枢三叉神経血管ニューロンの感作により媒介されることが考えられている(Burstein R et al.(1998)J.Neurophysiol.79(2):964-982、Burstein R et al.(2000)Ann.Neurol.47:614-624、及びLipton et al.(2008)Ann.Neurol.63(2):148-58)。対照的に、慢性片頭痛患者は、一般に、急性片頭痛発病の間及び発作間欠期の間の両方で皮膚異痛及び痛覚過敏の徴候を呈する。機序的には、異痛及び痛覚過敏は、三叉脊髄核中の中枢三叉神経血管ニューロンの感作により媒介されることが考えられる(Burstein(1998)を参照のこと)。実施例5は、TEV-48125が、末梢髄膜侵害受容体におけるその阻害作用を介して、三叉脊髄核における高閾値作動性(HT)ニューロンの活性化及び感作を、ワイドダイナミックレンジ(WDR)ニューロンを阻害するその能力よりもかなり優れた程度で予防し得ることを実証する(Melo-Carrillo et al.(2017)J.Neurosci.37(30):7149-63も参照のこと)。HTニューロンがもっぱら侵害(有痛)刺激に対して応答する一方、WDRニューロンは侵害刺激に対して優先的に応答する(すなわち、侵害刺激に対するそれらの応答は、非侵害刺激に対するそれらの応答よりも大きい)ことを考慮すると、HTの遮断は痛覚過敏を異痛よりも有効に予防すると仮定することが妥当である。
【0138】
これまで、三叉脊髄核におけるこれらの2つのクラスの侵害受容ニューロンの一方のみの活性化及び感作を低減させる薬物の例の文献において例も手掛かりも存在しない。フレマネズマブが髄膜Aδ線維を阻害するがC線維を阻害しないことを考慮すると、Aδ線維の選択的阻害は、HTニューロンの抗体の選択的阻害を潜在的に説明する(Melo-Carillo et al.(2017)J.Neurosci.37(44):10587-96を参照)。また、C線維はHTニューロンの活性に影響を与えない場合があるため、結果的に、フレマネズマブは、上行性侵害受容体三叉神経血管経路(活性が末梢中のCGRP放出に依存するもの)に対する極めて選択的な効果を達成し得る。
【0139】
いかなる特定の理論によっても拘束されるものではないが、レスポンダーは、WDR及びHTニューロンにおける中枢感作を維持するために継続的な末梢入力が要求される対象である一方、非レスポンダーは、WDR及びHTニューロンにおける中枢感作を維持するために継続的な末梢入力が要求されない対象であることが考えられる。フレマネズマブはAδ線維の活性化を遮断するため、レスポンダーにおいて、この遮断はHTニューロンを完全に休止させる(すなわち、それらの感作を終結させる)ために十分であり得る。フレマネズマブは、WDRニューロンの感作状態をドライブする全体入力も、ニューロンが未遮断C線維から受容する入力が興奮性シナプス後電位(EPSP)のみを誘導するが、実際の活動電位を誘導しない程度で減少させ得る。WDR及びHTニューロンの両方の感作状態は、レスポンダーにおいてフレマネズマブにより回復され得、結果的に、異痛/痛覚過敏が回復される。逆に、非レスポンダーにおいては、HT又はWDRニューロンのいずれか、又はその両方の感作は、それがAδ又はC線維に由来するかどうかにかかわらず、末梢入力に完全に非依存的である。したがって、非レスポンダーは、治療後に異痛及び/又は痛覚過敏を示す。他の抗CGRP活性剤(例えば、本明細書に記載のゲパント)は、フレマネズマブと同一の挙動を呈することが予想される。
【0140】
試験設計:
全体的な方針:4つの異なる条件下で慢性片頭痛患者における皮膚疼痛閾値(異痛について試験する)、及び反復される閾上の機械刺激及び熱刺激に応答する疼痛格付け(痛覚過敏について試験する)を判定する:(a)片頭痛を有していない間の処理前、(b)片頭痛を有していない間の処理後、並びに可能な場合、(c)急性片頭痛発病の最中である間の処理前及び処理後。注:パート(c)は、CM集団のうちのレスポンダーを識別するために必要でない。これは、高頻度偶発性患者のうちのレスポンダーの識別に関連し得る。
【0141】
参加者の選択及びリクルートメント:慢性片頭痛を有する個体を本試験における参加について検討する。主な包含基準は、(1)年齢18~64歳、(2)International Classification of Headache Disorders(3rd edition)に基づく少なくとも3年間の前兆を伴う又は伴わない慢性片頭痛の病歴、及び(3)英語でコミュニケーションを取る能力(試験の指示を理解し、それに従うため)である。排除基準としては、(1)1カ月当たり15頭痛日未満;(2)妊娠;(3)冠動脈バイパス手術、心発作、狭心症、脳卒中、重度の胃腸管出血、消化性潰瘍疾患;又は慢性腎疾患の病歴;(5)利尿薬又は毎日の抗凝固薬の使用を要求する医学的病態を有することが挙げられる。
【0142】
オープンラベル設計:事前予約日(1回目の来院)に実施されるスクリーニング後、アンケートを使用して試験参加者の片頭痛病歴を確認し、異痛及び痛覚過敏についての定量的感覚試験を実施する。1回目の来院は参加者が頭痛を有しないときに2回目の来院の少なくとも30日前に行う。参加者は、この期間中の日間頭痛記録を維持するように指示される。
【0143】
2回目の来院は、試験参加者が片頭痛を有するときに行い、異痛及び痛覚過敏の評価についての3つの疼痛格付け及びQSTのサイクルを含む。1回目の疼痛格付けサイクルは、処理前及び発病出現の少なくとも2時間後に行う。患者をランダム化して、プラセボ又は75mgのリメゲパントのいずれかを経口で受容させる。2回目の疼痛格付けサイクルは、処理の2時間後に行う。3回目の疼痛格付けサイクルは、処理の4時間後に行う。
【0144】
参加者は、この試験全体にわたり日間頭痛記録を維持するように指示される。
【0145】
3回目の来院は、処理の1週間後に行い、頭痛記録のレビュー、頭痛強度の格付け、並びに異痛及び痛覚過敏についてのQST試験を含む。
【0146】
3回目の来院は、処理の4週間後に行い、頭痛記録のレビュー、頭痛強度の格付け、並びに異痛及び痛覚過敏についてのQST試験を含む。それぞれの来院において、ベースライン頭痛強度、定量的な機械刺激及び熱刺激に対する疼痛閾値、並びに閾上の機械刺激及び熱刺激に応答する頭痛強度スコアを記録する。
【0147】
定量的感覚試験(QST):試験は、騒音及び注意をそらすものがない静音室内で行う。患者は、感覚試験の間、患者の最も快適な位置(椅子に座る又はベッドに横たわる)を選択することができる。それぞれの試験セッションにおいて、高温刺激及び機械刺激に対する疼痛閾値を、疼痛が言及される部位上の皮膚において判定する。この部位は、最も一般に、眼窩周囲及び側頭領域を含む。熱皮膚刺激は、皮膚に装着した30×30mm2サーモード(Q-Sense 2016,Medoc)を介して定圧において送達し、Method of Limitを使用して患者の疼痛閾値を判定する。
【0148】
異痛試験:疼痛閾値を判定するため、皮膚を32℃の温度に5分間順応させ、次いで疼痛感覚が知覚されるまで低速(1℃/秒)において加温させ、その瞬間において、対象は患者応答ユニット上のボタンを押圧することにより刺激を停止させる。熱刺激をそれぞれ3回繰り返し、記録温度の平均を閾値とみなす。機械刺激に対する疼痛閾値は、20本の較正フォンフライ刺激毛(VFH、Stoelting)のセットを使用することにより判定する。それぞれのVFHモノフィラメントに昇順でスカラー数を割り当てる(1=0.0045g、2=0.023g、3=0.027g、4=0.07g、5=0.16g、6=0.4g、7=0.7g、8=1.2g、9=1.5g、10=2.0g、11=3.6g、12=5.4g、13=8.5g、14=11.7g、15=15.1g、16=28.8g、17=75g、18=125g、19=28 lg)。力の対数及び格付け数の間に線形関係が存在するため、機械疼痛閾値をそれらの力(g)ではなくVFH数(#)として表現する。それぞれのモノフィラメントを皮膚に3回(2秒間)印加し、3回の試験のうち2回において疼痛を誘導し得る最小のVFH数を閾値とみなす。皮膚感受性も、静的な機械刺激であるVFHから区別される静的な機械刺激であるVFHから区別される動的な機械刺激であるソフトな皮膚ブラッシングの対象の知覚を記録することにより判定する。
【0149】
痛覚過敏試験:有痛刺激が通常よりも大きな疼痛として知覚される場合、その対象を痛覚過敏とみなす。対象が痛覚過敏であるかどうかを判定するため、3回の閾上熱及び機械刺激を皮膚に印加する。閾上刺激の値は、上記の異痛試験の間に判定する。例えば、熱疼痛閾値が45℃である場合、痛覚過敏試験において46℃である。この試験において、皮膚を3回の閾上刺激(1閾上)に曝露し、それぞれ10秒間継続し、10秒間だけ間を空ける(すなわち、刺激間の間隔は10秒間)。それぞれの刺激の終了時、患者は、0~10(o=疼痛なし、10=想定可能な最大の疼痛)のビジュアルアナログスケール(VAS)を使用して疼痛の強度を識別するための10秒間を有する。閾上機械刺激を使用して同様の試験を施す。
【0150】
定量的感覚試験に使用される装置は、FDA承認を有する。これは、全国で神経学者、看護師、及び疼痛専門家により定型的に使用される。これは、リスクも不快感も与えず、患者により制御されるため、刺激をいつでも停止することができる。
【0151】
QSTの解釈:
異痛:疼痛閾値の検出は主観的データ入力に依存するため、主観的変動を最小化し、可能な限り客観的な結果を作製するためのいくつかのアルゴリズムが開発されている。これらのアルゴリズムは、熱及び機械感覚検査器(Q-Sense 2016)を制御するソフトウェアプログラムに組み込まれる。健常対象において、熱及び機械皮膚刺激についての疼痛閾値は、それぞれ42~47℃及び75~281gの範囲である(Lindblom(1994)Analysis of abnormal touch,pain,and temperature sensation in patients.In:Boivie J,Hansson P,Lindblom U,eds.Touch,temperature and pain in health and disease:mechanism and assessments.Vol,3.Progress in brain research and management.Seattle:IASP press,p63-84;及びStrigo et al.(2000)Anesthesiology 92(3):699-707を参照のこと。より厳密な基準を使用して、対象の痛覚閾値が熱について41℃未満であり、較正されたフォンフライ毛による皮膚押込みについて30g未満である場合に対象を異痛とみなす。いずれか1つの性質についての基準の合致は、対象が異痛性を呈することを判定するために十分である(Burstein et al.(2004)Ann.Neurol.47(5):614-24、及びBurstein et al.(2004)Ann.Neurol.55(1):19-26。(
【0152】
痛覚過敏:30%よりも大きい疼痛格付けの任意の変化を、痛覚過敏についての証拠とみなす(例えば、閾上刺激#1がVASに基づき6/10で格付けされる場合、閾上刺激#3は8/10以上において格付けされなければならない)。
【0153】
データ分析は、処理前及び処理後の機械疼痛閾値及び熱疼痛閾値の値を考慮する。
【0154】
データ分析:
データ分析は、4回全ての来院及び6つの試験セッションを完了する対象を含む。
【0155】
主要アウトカム評価項目は、レスポンダー対非レスポンダーにおける介入(1カ月)後の異痛の存在又は不存在である。レスポンダーは、主に月間頭痛日の50%の最小の低減を認めると定義され;非レスポンダーは、月間頭痛日の50%未満の最大の低減を認めると定義される。副次定義は、レスポンダーを月間頭痛日の60%の最小の低減を認めると指定し;非レスポンダーは、月間頭痛日の40%未満の最大の低減を認めると定義される。追加の副次定義は、レスポンダーを月間頭痛日の75%の最小の低減を認めると指定し;非レスポンダーは、月間頭痛日の25%未満の最大の低減を認めると定義される。参加者が頭痛を伴わないとき(片頭痛の発作間欠期)に異痛及び/又は痛覚過敏がないことが判明したレスポンダーの割合は、頭痛を伴わないときに異痛及び/又は痛覚過敏が判明したレスポンダーの集団において有意に高い。
【0156】
カイ二乗(χ2)検定を使用して主要アウトカム評価項目を検定して異痛の存在(あり/なし)と対象の応答性(あり/なし)との間のカテゴリー関連を評価する。副次アウトカム評価項目は、介入(1カ月)前及び後の片頭痛の持続期間(時間)並びに介入の2及び4時間後の頭痛強度の変化である。
【0157】
連続的な副次アウトカム評価項目のデータを、最初に正規性について検定してパラメトリックが適切であるかノンパラメトリック分析が適切であるかを判定する。
【0158】
したがって、中枢分布(平均値/中央値)のパラメータを使用してレスポンダーと非レスポンダーとの間のそれらの変数の差異を評価する。
【0159】
分析は、主要及び副次アウトカム評価項目に対する以下の因子の効果も検定する:片頭痛の年数、CMの年数、家族歴、関連症状(例えば、悪心、嘔吐、羞明、音過敏、臭気過敏、前兆、筋圧痛)、一般的なトリガー(例えば、ストレス、長時間覚醒食物欠乏、生理)、並びに急性期治療歴及び予防的治療歴。
【0160】
検定力分析:
検定力分析は、カイ二乗(χ2)適合度検定及び比率の比較のZ検定をベースとする。5%のa(有意性レベル)、90%のl-βエラー確率(検定力)、0.36のw(エフェクトサイズ;χ2適合度検定)、及び1:1の配分率(比率の比較のZ検定)を組み込んだ。層別分析は、変数群(プラセボ対処理)、応答性(レスポンダー対非レスポンダー;上記定義参照)、及び異痛(存在対不存在)を含んだ。主要仮説は、処理及びプラセボ群におけるレスポンダー(月間頭痛日の50%の低減閾値の上記定義による)の介入後比率は、それぞれ55%及び25%であることであった(Bigal et al.(2015)Lancet Neurol.14(1 1):1091-100による公開データに基づく)。このコンピュータ処理は、プラセボ及び処理群のそれぞれにおける64人の対象の要求数をもたらした(df=5;臨界χ<2>=11.07;非心パラメータλ=16.51。追加の20%は、潜在的脱落者が占めた。したがって、合計77人の患者をそれぞれの群において登録すべきであり、試験全体において合計144人の患者をもたらす。
【0161】
実施例3:抗CGRP薬剤レスポンダー率の臨床研究
29人の高頻度の偶発性片頭痛、抗CGRP剤ナイーブな患者は、片頭痛の発作期間から少なくとも24時間後にQST試験を受け、抗CGRP剤による治療を開始する前に30日間の電子日記アンケートを完了した。抗CGRP剤による3カ月の治療後、患者をレビューして、患者が薬剤に応答したかどうかを判定した。効果的な治療は、頭痛強度、及び頭痛の頻度、ズキズキ感、光恐怖症、音恐怖症、及び悪心の低減を含む多くの要因によって判定された。レスポンダーは、3カ月の治療期間中に月間平均片頭痛日数が少なくとも50%減少する患者として定義された。処置に対する応答の判定後、所見を、以前に盲検化された異痛/痛覚過敏の評価とともに比較した。片頭痛の発作期から少なくとも24時間後にQST試験で異痛及び/又は痛覚過敏を示した患者について、患者が少なくとも72時間片頭痛がなかったときに、電子日記のアンケートの回答に基づいて、異痛及び/又は痛覚過敏の判定が完了した。
【0162】
研究の結果を表1に示し、異痛及び/又は痛覚過敏を呈しなかった患者は、異痛及び/又は痛覚過敏を呈した患者よりも抗CGRP剤療法に応答する可能性が有意に高かったことを実証する。
【表1】
【0163】
本文書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、それぞれの個々の刊行物が参照により具体的及び個別的に示されるのと同程度に参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】