(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】電極触媒を製造するための方法、電極触媒、電気化学セル用の電極、イオン交換膜、イオン交換膜を製造するための方法、水電解装置及び水電解装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 27/22 20060101AFI20240221BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20240221BHJP
C25B 11/077 20210101ALI20240221BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240221BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20240221BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20240221BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240221BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20240221BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20240221BHJP
B01J 35/56 20240101ALI20240221BHJP
B01J 35/45 20240101ALI20240221BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B01J27/22 M
C25B11/052
C25B11/077
C25B9/00 A
C25B13/04 301
B01J37/06
B01J37/08
B01J37/16
B01J37/34
B01J35/56 Z
B01J35/45
B01J23/755 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553486
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2022055091
(87)【国際公開番号】W WO2022184684
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】102021104784.6
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523333537
【氏名又は名称】カッティング-エッジ ナノマテリアルズ (シーイーエヌマット) ウーゲー (ハフトゥングスベシュレンクト)
【氏名又は名称原語表記】Cutting-Edge Nanomaterials (CENmat) UG (haftungsbeschraenkt)
【住所又は居所原語表記】St.-Hubertus-Strasse 8, 75181 Pforzheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム ゴル
(72)【発明者】
【氏名】サンバル シャシャンク アンブ
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA08A
4G169BA17
4G169BA21C
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB08C
4G169BB09A
4G169BB15A
4G169BB15B
4G169BB20C
4G169BC31A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC59C
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC66C
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC68C
4G169BD01C
4G169BD04C
4G169BD06C
4G169BD12C
4G169BE16C
4G169CB81
4G169CC32
4G169DA06
4G169EA06
4G169EA09
4G169EB19
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB27
4G169FB30
4G169FB45
4G169FB57
4G169FB58
4G169FC02
4G169FC04
4G169FC07
4K011AA69
4K011BA12
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB10
4K021DB18
4K021DB36
(57)【要約】
本発明は、水電解装置用のHER触媒の形態の電極触媒を製造するための方法であって、HER触媒が、芳香族アミン及び酸を添加してモリブデン塩の水溶液から合成される、方法に関する。本発明は、さらに、水電解装置用のOER触媒の形態の電極触媒を製造するための方法、HER触媒及びOER触媒の形態の電極触媒、電気化学セル用の電極、電気化学反応装置用のイオン交換膜、電気化学反応装置用のイオン交換膜を製造するための方法、水電解装置、触媒活性触媒層を製造するための方法及び水電解装置を製造するための方法に関する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解装置(10)用のHER触媒(36)の形態の電極触媒(34)を製造するための方法であって、前記HER触媒(36)が、芳香族アミン及び酸を添加してモリブデン塩の水溶液から合成されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
モリブデン酸アンモニウムが前記モリブデン塩として使用され、アニリンが前記芳香族アミンとして使用され、塩酸が前記酸として使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成されたHER触媒(36)を洗浄及び乾燥することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記乾燥されたHER触媒(36)が、特に約600℃から約800℃の範囲の温度、より詳細には約725℃で焼成されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水電解装置(10)用のOER触媒(40)の形態の電極触媒(38)を製造するための方法であって、前記OER触媒(40)が、ニッケル塩の水溶液と鉄塩の水溶液との混合物を添加することによって水素化ホウ素ナトリウム水溶液から合成されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
塩化ニッケル(II)が前記ニッケル塩として使用され、塩化鉄(II)が前記鉄塩として使用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記混合物が添加されるとき、前記水素化ホウ素ナトリウム水溶液が超音波、熱及び/又はUV照射に曝されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物が添加されるとき、保護ガスが前記水素化ホウ素ナトリウム水溶液に適用されることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記合成されたOER触媒(40)を分離し、洗浄し、乾燥させることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水電解装置(10)用のHER触媒(36)の形態の電極触媒(34)であって、前記HER触媒(36)が、第1の遷移金属と、炭素、酸素、硫黄及びリンの元素のうちの少なくとも1つとから形成される少なくとも1つの化合物を含み、前記第1の遷移金属がモリブデン又はタングステンであり、
特に、前記化合物が、炭化モリブデン(MoC
x)、酸化モリブデン(MoO
x)又は硫化モリブデン(MoS
x)であることを特徴とする、電極触媒。
【請求項11】
前記化合物が少なくとも1つの第2の遷移金属を含み、前記第1の遷移金属と前記少なくとも1つの第2の遷移金属とが互いに異なり、前記第1の遷移金属が前記化合物の第1の金属含有量を規定し、前記少なくとも1つの第2の遷移金属が第2の金属含有量を規定し、前記第1の金属含有量が前記第2の金属含有量よりも多いことを特徴とする、請求項10に記載の電極触媒。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第2の遷移金属が、モリブデン、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、銅又はチタンであることを特徴とする、請求項11に記載の電極触媒。
【請求項13】
前記化合物が、W
2yMo
2(1-y)C、Ni
2yMo
2(1-y)C又はFe
yMo
1-yO
3であり、
特に、前記yの値が約0.25以下であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の電極触媒。
【請求項14】
前記化合物の総金属含有量が100モル%であり、モル%の前記第1の金属含有量とモル%の前記第2の金属含有量との合計として定義され、前記第2の金属含有量が0から約25モル%の範囲の値を有することを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項15】
前記HER触媒(36)中の前記化合物の含有量が、約67重量パーセントから約85重量パーセントの範囲、特に約76重量パーセントであることを特徴とする、請求項10から14のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項16】
前記HER触媒(36)が、特に約5重量パーセントから約13重量パーセントの範囲、特に約9重量パーセントの含有量の酸化モリブデンを含むことを特徴とする、請求項10から15のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項17】
前記HER触媒(36)が、特に約10重量パーセントから約20重量パーセントの範囲、特に約15重量パーセントの含有量でモリブデンを含むことを特徴とする、請求項10から16のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項18】
前記HER触媒(36)が、針状又は実質的に針状の構造を有することを特徴とする、請求項10から17のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項19】
前記HER触媒(36)が、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法によって製造されることを特徴とする、請求項10から18のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項20】
水電解装置(10)用のOER触媒(40)の形態の電極触媒(38)であって、前記OER触媒(40)が、酸素及び/又はリンと組み合わせてニッケル及び鉄を含み、前記OER触媒(40)中の前記ニッケルのニッケル含有量が、前記OER触媒(40)中の前記鉄の鉄含有量よりも多く、前記ニッケル含有量と前記鉄含有量との合計値が、前記OER触媒(40)の総金属含有量の少なくとも約50モル%であることを特徴とする、電極触媒。
【請求項21】
前記OER触媒(40)が、コバルト、銅及び/又はマンガンを含み、前記OER触媒(40)のコバルト含有量、銅含有量、及びマンガン含有量の合計が、鉄含有量よりも小さい値を有することを特徴とする、請求項20に記載の電極触媒。
【請求項22】
前記総金属含有量における前記コバルト含有量、前記銅含有量、及び前記マンガン含有量の合計が、0から約20モル%の範囲の値を有することを特徴とする、請求項21に記載の電極触媒。
【請求項23】
前記電極触媒(38)が、Ni
xFe
yCu
zO
4又はNi
xFe
yMn
zO
4であり、x>y>zであることを特徴とする、請求項20から22のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項24】
前記OER触媒(40)が、ニッケル、鉄及び酸素を含み、ニッケルの含有量が約40重量パーセントから約85重量パーセントの範囲にあり、鉄の含有量が約1重量パーセントから約30重量パーセントの範囲にあり、酸素の含有量が約10重量パーセントから約35重量パーセントの範囲にあることを特徴とする、請求項20から23のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項25】
前記OER触媒(40)が、小さなナノ粒子によって覆われた比較的大きなクラスタの形態の構造を有することを特徴とする、請求項16から24のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項26】
前記OER触媒(40)が、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法によって製造されることを特徴とする、請求項16から25のいずれか一項に記載の電極触媒。
【請求項27】
電気化学セル(48)用の電極(62、64)であって、前記電極(62、64)に適用されるものが、電極触媒(34、38)を含むか、又は電極触媒(34、38)によって形成された触媒活性触媒層(30、32)であり、前記電極触媒(34、38)が、請求項10から26のいずれか一項に記載の電極触媒(34、38)であることを特徴とする、電極。
【請求項28】
前記電極(62、64)がガス拡散層(52、54)を備え、前記触媒層(30、32)が前記ガス拡散層(52、54)に適用されることを特徴とする、請求項27に記載の電極。
【請求項29】
前記電極(64)がアノード(28)の形態で構成され、前記電極触媒(38)がOER触媒(40)、特に請求項20から26のいずれか一項に記載のOER触媒(40)であることを特徴とする、請求項27又は28に記載の電極。
【請求項30】
前記電極(62)がカソード(26)の形態で構成され、前記電極触媒(34)がHER触媒(36)、特に請求項10から19のいずれか一項に記載のHER触媒(36)であることを特徴とする、請求項から27から29のいずれか一項に記載の電極。
【請求項31】
電気化学反応装置(100)用のイオン交換膜(16)であって、前記イオン交換膜(16)が、第1の膜側(50)及び第2の膜側(52)を有し、前記第1及び/又は前記第2の膜側(50、52)に適用されているものが、電極触媒(34、38)を含む、又は電極触媒(34、38)によって形成された触媒活性触媒層(30、32)であり、前記電極触媒(34、38)が、請求項10から26のいずれか一項に記載の電極触媒(34、38)であることを特徴とする、イオン交換膜。
【請求項32】
前記イオン交換膜(16)が陰イオン交換膜(20)の形態で構成されることを特徴とする、請求項31に記載のイオン交換膜。
【請求項33】
第1の触媒層(32)が前記第1の膜側(50)に適用され、前記第1の触媒層(32)が第1の電極触媒(38)を含むか、又は第1の電極触媒(38)によって形成され、前記第1の電極触媒(38)がOER触媒(40)、特に請求項20から26のいずれか一項に記載のOER触媒(40)であることを特徴とする、請求項31又は32に記載のイオン交換膜。
【請求項34】
第2の触媒層(30)が前記第2の膜側(50)に適用され、前記第2の触媒層(30)が第2の電極触媒(34)を含むか、又は第2の電極触媒(34)によって形成され、前記第2の電極触媒(34)がHER触媒(36)、特に請求項10から19のいずれか一項に記載のHER触媒(36)であることを特徴とする、請求項31から33のいずれか一項に記載のイオン交換膜。
【請求項35】
電気化学反応装置(100)用のイオン交換膜(16)を製造するための方法であって、前記イオン交換膜(16)が、第1の膜側(50)及び第2の膜側(52)を有し、電極触媒(34、38)を含む、又は電極触媒(34、38)によって形成される触媒活性触媒層(30、32)が、前記第1及び/又は前記第2の膜側(50、52)に適用され、前記電極触媒(34、38)として、請求項10から26のいずれか一項に記載の電極触媒(34、38)が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項36】
前記第1の触媒層(32)を前記第1の膜側(50)に適用し、前記第2の触媒層(30)を前記第2の膜側(52)に適用するために、第1の転写キャリア(94)に適用された前記第1の触媒層(32)が前記第1の膜側(50)に面接触され、第2の転写キャリア(94)に適用された前記第2の触媒層(30)が前記第2の膜側(52)に面接触され、それらが互いにプレスされることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記触媒層(30、32)及び前記イオン交換膜(16)が、前記プレス中に、特に約40℃から約130℃の範囲、より具体的には約65℃の温度に加熱されることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記プレスが、約5バールから約130バールの領域の圧力で実行されることを特徴とする、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項39】
前記プレスが、約1分から約15分の領域、特に約4分の期間にわたって行われることを特徴とする、請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記プレスの後、前記転写キャリア(94)が前記触媒層(30、32)から引き離されることを特徴とする、請求項36から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
第1の電極(64)と、第2の電極(62)と、前記第1の電極(64)と前記第2の電極(62)との間に配置されたイオン交換膜(16)とを有する水電解装置(10)であって、前記第1の電極(64)と前記イオン交換膜(16)との間に配置されるものが、第1の電極触媒(38)を含むか、又は第1の電極触媒(38)によって形成された第1の触媒活性触媒層(32)であり、前記第2の電極(62)と前記イオン交換膜(16)との間に配置されるものが、第2の電極触媒(34)を含むか、又は第2の電極触媒(34)によって形成された第2の触媒活性触媒層(30)であり、前記第1の電極触媒(34、38)及び/又は前記第2の電極触媒(34、38)が、請求項10から26のいずれか一項に記載の電極触媒(34、38)であることを特徴とする、水電解装置。
【請求項42】
前記第1の電極(62、64)及び/又は前記第2の電極(62、64)が、請求項27から30のいずれか一項に記載の電極(62、64)の形態で構成されることを特徴とする、請求項41に記載の水電解装置。
【請求項43】
前記第1の電極(64)がアノード(28)の形態で構成されること、前記第2の電極(62)がカソード(26)の形態で構成されること、及び前記イオン交換膜(16)が陰イオン交換膜(20)の形態で構成されることを特徴とする、請求項41又は42に記載の水電解装置。
【請求項44】
前記第1の電極触媒(38)が、OER触媒(40)、特に請求項20から26のいずれか一項に記載のOER触媒(40)であり、前記第2の電極触媒(34)が、HER触媒(36)、特に請求項10から19のいずれか一項に記載のHER触媒(36)であることを特徴とする、請求項41から43のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項45】
前記第1の触媒層(32)が前記第1の電極(64)又は前記イオン交換膜(16)に適用され、前記第2の触媒層(30)が前記第2の電極(62)又は前記イオン交換膜(16)に適用されることを特徴とする、請求項41から44のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項46】
前記第1の触媒層(32)を有する前記第1の電極(64)、前記イオン交換膜(16)、及び前記第2の触媒層(30)を有する前記第2の電極(62)が互いにプレスされることを特徴とする、請求項45に記載の水電解装置。
【請求項47】
前記水電解装置(10)が、約7から約13の範囲、特に約7から約11の範囲のpH値を有する電解質(18)を含むことを特徴とする、請求項41から46のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項48】
前記電解質(18)が、溶媒に溶解した中性からアルカリ性の塩によって形成されることを特徴とする、請求項47に記載の水電解装置。
【請求項49】
前記中性からアルカリ性の塩が、
a)0から約0.4モルの範囲、特に0から0.1モルの範囲の値を有する濃度を有し、
及び/又は
b)水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム又は炭酸水素ナトリウム若しくは炭酸水素カリウム(Na
2CO
3、K
2CO
3、NaHCO
3、KHCO
3)であることを特徴とする、請求項48に記載の水電解装置。
【請求項50】
前記溶媒が水又はアルコールであるか、水又はアルコールを含むことを特徴とする、請求項48又は49に記載の水電解装置。
【請求項51】
電極触媒(34、38)を含むか、又は電気化学反応装置(100)用の電極触媒(34、38)によって形成された触媒活性触媒層(30、32)を製造するための方法であって、前記触媒層(30、32)が基材(70、72、94)に適用され、前記電極触媒(34、38)として請求項10から26のいずれか一項に記載の電極触媒(34、38)が使用されることを特徴とする、方法。
【請求項52】
前記基材(70、72)として、電極(62、64)、前記電気化学反応装置(100)の電極(62、64)若しくはイオン交換膜(16)上に配置されたガス拡散層(54、56)、又は転写キャリア(94)が使用されることを特徴とする、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記基材(70、72)として、炭素繊維マット、金属繊維マット、特にチタン繊維マット、ニッケル繊維マット若しくはステンレス鋼繊維マット、又はステンレス鋼ワイヤ織物スタックが使用されることを特徴とする、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記転写キャリア(94)に適用された前記触媒層(30、32)が、前記電極(62、64)、前記電気化学反応装置(100)の電極(62、64)又は前記イオン交換膜(16)上に配置された前記ガス拡散層(54、56)に適用され、前記転写キャリア(94)が引き離されることを特徴とする、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
前記転写キャリア(94)として、特にプラスチック、さらに特にポリテトラフルオロエチレン、又は金属製のフィルムが使用されることを特徴とする、請求項51から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記触媒層(30、32)が、前記電極触媒(34、38)を含む触媒溶液(92)を前記基材(70、72)上に適用することによって形成されることを特徴とする、請求項51から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記基材(70、72)が、前記触媒溶液(92)の適用中に、特に約50℃から約90℃の範囲、より具体的には約65℃の温度に加熱されることを特徴とする、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記触媒溶液(92)が、噴霧、スクリーン印刷、フィルム拡散又はブレードコーティングによって前記基材(70、72)上に適用されることを特徴とする、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
前記触媒溶液(92)が、不活性ガス流、特に約1l/分から約5l/分の範囲、特に2l/分の体積流量を有する窒素流及び/又はアルゴン流によって、約3cmから約10cm、特に約5cmの距離から噴霧ピストル(90)を用いて複数の層に噴霧することによって適用されることを特徴とする、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記基材(70、72)に適用された前記触媒溶液(92)が乾燥されることを特徴とする、請求項56から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記触媒溶液(92)が、前記電極触媒(34、38)を溶媒、特に水及び/又はアルコールに溶解することによって形成されることを特徴とする、請求項56から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
プロパノール、特に2-プロパノールが前記アルコールとして使用されることを特徴とする、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
イオン交換イオノマーが、前記溶媒中の前記電極触媒(34、38)の溶液に添加されることを特徴とする、請求項61又は62に記載の方法。
【請求項64】
Nafion、Aquivion、Sustainion XB-7及び/又はFumionが前記イオン交換イオノマーとして使用されることを特徴とする、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記触媒溶液(92)が、超音波の作用下で、特に約5分から約25分の領域、さらに特に約15分の混合時間中に、前記基材(70、72)上に適用する前に混合されることを特徴とする、請求項56から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
第1の電極(64)と、第2の電極(62)と、前記第1の電極(64)と前記第2の電極(62)との間に配置されたイオン交換膜(16)とを有する水電解装置(10)を製造するための方法であって、前記第1の電極(62)と前記イオン交換膜(16)との間に配置されるものが、第1の電極触媒(34)を含むか、又は第1の電極触媒(34)によって形成された第1の触媒活性触媒層(30)であり、前記第2の電極(64)と前記イオン交換膜(16)との間に配置されるものが、第2の電極触媒(38)を含むか、又は第2の電極触媒(38)によって形成された第2の触媒活性触媒層(32)であり、前記第1の触媒層(30)が前記第1の電極(64)に適用され、及び/又は前記第2の触媒層(32)が前記第2の電極(62)に適用され、前記第1の電極(64)及び前記第2の電極(62)が、それらの間に配置された前記イオン交換膜(16)にプレスされることを特徴とする、方法。
【請求項67】
請求項10から26のいずれか一項に記載の電極触媒(34、38)が、前記第1の電極触媒(34)及び/又は前記第2の電極触媒(38)として使用されることを特徴とする、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
請求項27から30のいずれか一項に記載の電極(62、64)が、前記第1の電極(64)及び前記第2の電極(62)として使用されることを特徴とする、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記第1の触媒層(30)及び/又は前記第2の触媒層(32)が、請求項51から65のいずれか一項に記載の方法によって形成されることを特徴とする、請求項66から68のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解装置用のHER触媒の形態の電極触媒を製造するための方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、水電解装置用のOER触媒の形態の電極触媒を製造するための方法に関する。
【0003】
本発明は、さらに、水電解装置用のHER触媒の形態の電極触媒に関する。
【0004】
本発明は、さらに、水電解装置用のOER触媒の形態の電極触媒に関する。
【0005】
本発明は、さらに、電極触媒を含むか、又は電極触媒によって形成される触媒活性触媒層が電極に適用される、電気化学セル用の電極に関する。
【0006】
本発明は、さらに、電気化学反応装置用のイオン交換膜であって、イオン交換膜が、第1の膜側及び第2の膜側を有し、第1及び/又は第2の膜側に適用されるものが、電極触媒を含むか、又は電極触媒によって形成される触媒活性触媒層である、イオン交換膜に関する。
【0007】
本発明は、さらに、電気化学反応装置用のイオン交換膜を製造するための方法であって、イオン交換膜が、第1の膜側及び第2の膜側を有し、第1及び/又は第2の膜側に適用されるものが、電極触媒を含むか、又は電極触媒によって形成される触媒活性触媒層である、方法に関する。
【0008】
本発明は、さらに、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置されたイオン交換膜とを有する水電解装置であって、第1の電極とイオン交換膜との間に配置されるものが、第1の電極触媒を含むか、又は第1の電極触媒によって形成された第1の触媒活性触媒層であり、第2の電極とイオン交換膜との間に配置されるものが、第2の電極触媒を含むか、又は第2の電極触媒によって形成された第2の触媒活性触媒層である、水電解装置に関する。
【0009】
本発明は、さらに、電気化学反応装置用の、電極触媒を含むか、又は電極触媒によって形成された触媒活性触媒層を製造するための方法であって、触媒層が基材に適用される、方法に関する。
【0010】
本発明は、さらに、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置されたイオン交換膜とを有する水電解装置を製造するための方法であって、第1の電極とイオン交換膜との間に配置されるものが、第1の電極触媒を含むか、又は第1の電極触媒によって形成された第1の触媒活性触媒層であり、第2の電極とイオン交換膜との間に配置されるものが、第2の電極触媒を含むか、又は第2の電極触媒によって形成された第2の触媒活性触媒層である、方法に関する。
【背景技術】
【0011】
特に、エネルギー供給、化学工業、輸送などの幅広い分野において使用可能な水素の製造が重要性を増している。水素は、水の電気分解によって容易に製造されることができる。水分子の分解には水電解装置が利用される。特に、水電解装置の2つのハーフセルを互いに分離するイオン交換膜を用いて水電解装置を構成することが知られている。イオン交換膜は、例えば、陰イオン交換膜の形態で利用される。これらは、カソードハーフセルからアノードハーフセルへの陰イオンの移動を可能にするように構成される。例えば、アルカリ性媒体中では、OH-イオンは、水電解装置の作動中にカソードハーフセルからアノードハーフセルに移動し、そこで電子を放出しながら水及び酸素と反応する。カソードハーフセルでは、水分子は、電子を受け取りながら水素及びOH-イオンに変換される。
【0012】
可能な限り低いセル電圧において水の分解を可能にするために、触媒が利用される。特に白金及びイリジウムなどの貴金属触媒は、高い効率を有し、通常、長期的に安定である。しかしながら、それらは、非常に高価であり、制限なく入手可能ではない。さらに、アルカリ電解質によって作動される陰イオン交換膜を含む既知の水電解装置は、長期の作動中に、電極及び例えばシールなどの他の構成要素が、その凝集性のために電解質によって損傷を受ける可能性があるという問題を抱えている。これは、これらの水電解装置の長期安定性に悪影響を及ぼす。
【0013】
したがって、水素発生反応に適した電極触媒、いわゆるHER触媒、及び最適な水素発生反応及び/又は最適な酸素発生反応を可能にするが、経済的であり、大量に利用可能であり、製造において持続可能な酸素発生反応に適した電極触媒、いわゆるOER触媒を提供することが課題である。さらにまた、このタイプの触媒は、低いセル電圧とともに、低いアルカリ度で可能な限り高い効率も有するべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、特に効率的且つ経済的な水電解を可能にする、水電解装置用のHER触媒の形態の電極触媒を製造するための方法、水電解装置用のOER触媒の形態の電極触媒を製造するための方法、HER触媒及びOER触媒の形態の電極触媒、電気化学セル用の電極、電気化学反応装置用のイオン交換膜、電気化学反応装置用のイオン交換膜を製造するための方法、水電解装置、触媒活性触媒層を製造するための方法及び水電解装置を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、本発明によれば、芳香族アミン及び酸を添加してモリブデン塩の水溶液からHER触媒が合成されるという点で、水電解装置用の前記HER触媒の形態の電極触媒を製造するための方法によって達成される。
【0016】
提案された製造方法は、炭化モリブデンであるか又は炭化モリブデンを含むHER触媒の簡単な方法での形成を可能にする。
【0017】
前記HER触媒は、前記モリブデン塩としてヘプタモリブデン酸アンモニウムを使用する場合、前記芳香族アミンとしてアニリンを使用する場合、及び前記酸として塩酸を使用する場合、簡単な方法で合成されることができる。したがって、例えば、モリブデン塩が水に溶解され、芳香族アミンが添加されることができる。前記HER触媒を合成するために、例えば、次いで前記酸が、特に滴下により添加されることができる。アニリンの代わりに、別の有機アミン、例えばメラミンが使用されることもできる。
【0018】
HER触媒を可能な限り純粋に、触媒層の形成のために良好な品質で合成することができるようにするために、前記合成されたHER触媒が洗浄及び乾燥される場合が有利である。例えば、アルコール、特にエタノールによって洗浄され、次いで特定の時間、例えば40℃から80℃の範囲の温度で乾燥されることができる。
【0019】
前記乾燥されたHER触媒が焼成されると、HER触媒の特に良好な品質が達成されることができる。これは、約600℃から約800℃の範囲の温度で行うことができる。焼成は、好ましくは、空気中での触媒の望ましくない酸化を防止するために、保護ガス下で行われる。
【0020】
導入部に記載した目的は、本発明によれば、ニッケル塩の水溶液と鉄塩の水溶液との混合物を添加することによってOER触媒が水素化ホウ素ナトリウム水溶液から合成されるという点で、水電解装置用の前記OER触媒の形態の電極触媒を製造するための方法によってさらに達成される。
【0021】
提案された方法では、特に酸素と結合したニッケル及び鉄を含むOER触媒を簡単な方法で合成することが可能である。
【0022】
特に、前記ニッケル塩として塩化ニッケル(II)が使用され、前記鉄塩として塩化鉄(II)が使用される場合、製造方法が単純化されることができる。
【0023】
混合物が添加されるときに超音波、熱及び/又はUV照射が前記水素化ホウ素ナトリウム水溶液に適用されると、前記OER触媒の特に良好な反応性及び非常に効率的な微細構造が開発されることができる。換言すれば、前記混合物が添加されるときに前記水素化ホウ素ナトリウム溶液にエネルギーが入力される。
【0024】
前記水素化ホウ素ナトリウム水溶液の酸化を防止するために、前記混合物が添加されるときに保護ガスが適用されることが好ましい。
【0025】
前記合成されたOER触媒をさらに処理することができるようにするために、分離され、洗浄され、乾燥されることが好ましい。
【0026】
導入部に記載した目的は、本発明によれば、HER触媒が、第1の遷移金属と、炭素、酸素、硫黄及びリンの元素の少なくとも1つとから形成される少なくとも1つの化合物を含み、前記第1の遷移金属がモリブデン又はタングステンであるという点で、導入部に記載したタイプの水電解装置用の前記HER触媒の形態の電極触媒によってさらに達成される。
【0027】
このタイプのHER触媒は、特に優れた水素発生活性を有する。さらに、特に空気中におけるそのような触媒の酸化は、活性の損失をもたらさない。
【0028】
前記化合物は、炭化モリブデン(MoCx)、酸化モリブデン(MoOx)又は硫化モリブデン(MoSx)であることが好ましい。言及した化合物の触媒活性は非常に良好であり、特に水電解装置中の電解質のより低いアルカリ度も有する。
【0029】
前記化合物が前記少なくとも1つの第2の遷移金属を含む場合、前記第1の遷移金属と前記少なくとも1つの第2の遷移金属とが互いに異なる場合、前記第1の遷移金属が前記化合物の第1の金属含有量を規定する場合、前記少なくとも1つの第2の遷移金属が第2の金属含有量を規定する場合、及び前記第1の金属含有量が前記第2の金属含有量よりも多い場合が有利である。そのような電極触媒は、第2の遷移金属によって効果的に「ドープ」される。第2の遷移金属の添加により、触媒の効果がさらに向上されることができる。
【0030】
特に、前記少なくとも1つの第2の遷移金属がモリブデン、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、銅又はチタンである場合、良好な効果を有するHER触媒が提供されることができる。
【0031】
好適には、前記化合物は、W2yMo2(1-y)C、Ni2yMo2(1-y)C又はFeyMo1-yO3である。特に、前記yの値が約0.25以下である場合が有利である。換言すれば、このようにして、モリブデン含有量は、常に第2の遷移金属の含有量よりも著しく高い。したがって、HER触媒の特性は、第2の遷移金属の含有量によって好ましい方法で調整されることができる。
【0032】
前記化合物の総金属含有量が100モル%であり、モル%の前記第1の金属含有量とモル%の前記第2の金属含有量との合計として定義され、前記第2の金属含有量が0から約25モル%の範囲の値を有する場合が有利である。このようにして、第1の遷移金属が化合物中の金属含有量の大部分を占め、HER触媒の重要な特性を決定することが確実にされることができる。
【0033】
前記HER触媒中の前記化合物の含有量が約67重量パーセントから約85重量パーセントの範囲である場合、特に効率的なHER触媒が形成されることができる。特に、それは約76重量パーセントとすることができる。
【0034】
良好な触媒効果のために、HER触媒が酸化モリブデンを含む場合が有利である。特に、前記酸化モリブデンの含有量は、約5重量パーセントから約13重量パーセントの範囲とすることができる。特に、それは約9重量パーセントとすることができる。
【0035】
有利には、前記HER触媒は、特に約10重量パーセントから約20重量パーセントの範囲の含有量のモリブデンを含む。特に、前記HER触媒は、約15重量パーセントのモリブデンを含むことができる。
【0036】
前記HER触媒が針状又は実質的に針状の構造を有する場合、電極触媒の特に高い効率が達成されることができる。したがって、特に、HER触媒の大きな表面積が実現されることができ、それによって高い触媒活性が実現されることができる。
【0037】
有利には、前記電極触媒は、水電解装置用のHER触媒の形態の電極触媒を製造するための上述した有利な方法の1つによって製造される。このようにして、特に、針状又は実質的に針状の構造を有するHER触媒が形成されることができる。
【0038】
導入部に記載した目的はまた、本発明によれば、OER触媒中のニッケルのニッケル含有量が前記OER触媒中の鉄の鉄含有量よりも多い場合、及び前記ニッケル含有量と前記鉄含有量との合計の値が前記OER触媒の総金属含有量の少なくとも約50モル%である場合に、前記OER触媒が酸素及び/又はリンと組み合わせてニッケル及び鉄を含むという点で、水電解装置用の前記OER触媒の形態の電極触媒によって達成される。
【0039】
このタイプの電極触媒は、水電解装置のアノードハーフセルにおける酸素発生反応を支持するための非常に良好な特性を有する。OER触媒の金属主成分は、ニッケル及び鉄である。必要に応じて、その効率を最適化するために、さらなる金属がOER触媒に含められることができる。
【0040】
前記OER触媒がコバルト、銅及び/又はマンガンを含む場合、前記OER触媒中のコバルト含有量、銅含有量及びマンガン含有量の合計が、鉄含有量よりも小さい値を有する場合も有利である。OER触媒の鉄含有量は、ニッケル含有量よりも少ないため、したがって、OER触媒中のコバルト、銅及び/又はマンガンの含有量は、比例して重要性が低いが、OER触媒の特性にプラスの効果を有する。
【0041】
前記総金属含有量における前記コバルト含有量、前記銅含有量、及び前記マンガン含有量の合計が、0から約20モル%の範囲の値を有する場合が有利である。値を適切に選択することにより、OER触媒の特性が最適化されることができる。
【0042】
さらに、前記電極触媒が、NixFeyCuzO4又はNixFeyMnzO4であり、x>y>zである場合が好ましい。言及された電極触媒は、酸素発生反応に対して良好な触媒効果を有する。
【0043】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、OER触媒がニッケル、鉄及び酸素を含み、前記ニッケルの含有量が約40重量パーセントから約85重量パーセントの範囲にあり、前記鉄の含有量が約1重量パーセントから約30重量パーセントの範囲にあり、前記酸素の含有量が約10重量パーセントから約35重量パーセントの範囲にあることが提供されることができる。このようなOER触媒は、酸素発生反応に対して良好な触媒効果を有する。
【0044】
前記OER触媒が、小さなナノ粒子によって覆われた比較的大きなクラスタの形態の構造を有する場合、さらに有利である。このようにして、電極触媒の効果をさらに改善するのに役立つ大きな表面積が実現されることができる。
【0045】
さらにまた、前記OER触媒が、水電解装置用の前記OER触媒の形態の上述した電極触媒を製造するための有利な方法の1つによって製造されることが好ましい。特に、記載の製造方法によって、ナノ粒子によって覆われた比較的大きなクラスタを有する構造を有するOER触媒が実現されることができる。
【0046】
導入部に記載した目的は、本発明によれば、電極触媒が上述した電極触媒のうちの1つであるという点で、導入部に記載したタイプの電気化学セル用の電極によってさらに達成される。
【0047】
したがって、電気化学セル用の電極は、例えば、HER触媒が一方の電極に適用され、OER触媒が他方の電極に適用され、電極がそれらの触媒層を陰イオン交換膜と面接触させる場合、簡単な方法で構成されることができる。
【0048】
形成された反応ガスを安全に取り出せるようにするために、前記電極がガス拡散層を含む場合、及び前記触媒層がガス拡散層上に適用される場合が有利である。
【0049】
前記電極がアノードの形態で構成され、前記電極触媒がOER触媒である場合が好ましい。特に、これは、上述した有利なOER触媒のうちの1つとすることができる。このようにして、水電解装置のアノードハーフセルが構成されることができる。
【0050】
前記電極がカソードの形態で構成され、前記電極触媒がHER触媒である場合が有利である。特に、HER触媒は、上述した有利なHER触媒のうちの1つとすることができる。これにより、高効率な水電解装置のカソードハーフセルが形成されることができる。
【0051】
導入部に記載した目的は、本発明によれば、電極触媒が上述した有利な電極触媒のうちの1つであるという点で、導入部に記載したタイプの電気化学反応装置用のイオン交換膜によってさらに達成される。したがって、イオン交換膜は、特に、水電解装置の製造を単純化する上述した電極触媒を有する独立したユニットとして構成されることができる。前記イオン交換膜は、例えば、触媒層、必要に応じて、HER触媒及び/又はOER触媒によって片面又は両面がコーティングされることができる。
【0052】
アルカリ性環境において作動する水電解装置を形成するために、前記イオン交換膜が陰イオン交換膜の形態で構成される場合が有利である。これは、特に、カソードハーフセルからのOH-イオンが水電解装置のアノードハーフセルに入ることができることを可能にする。
【0053】
前記第1の触媒層が前記第1の膜側に適用される場合、前記第1の触媒層が第1の電極触媒を含むか、又は第1の電極触媒によって形成される場合、及び前記第1の電極触媒がOER触媒である場合が好ましい。特に、OER触媒は、上述した有利なOER触媒のうちの1つとすることができる。したがって、イオン交換膜は、経済的であるがそれにもかかわらず高活性なOER触媒で簡単な方法でコーティングされることができる。
【0054】
前記第2の触媒層が前記第2の膜側に適用される場合、前記第2の触媒層が第2の電極触媒を含むか、又は第2の電極触媒によって形成される場合、及び前記第2の電極触媒がHER触媒である場合が有利である。特に、HER触媒は、上述した有利なHER触媒のうちの1つとすることができる。したがって、イオン交換膜は、水電解装置のカソードハーフセルを画定する簡単な方法で機能することができる。
【0055】
導入部に記載した目的は、本発明によれば、上述した有利な電極触媒のうちの1つが電極触媒として使用される電気化学反応装置用のイオン交換膜を製造するための方法によってさらに達成される。したがって、イオン交換膜は、水電解装置を形成するために使用されることができる独立したユニットとして簡単な方法で構成されることができる。
【0056】
前記第1の触媒層を前記第1の膜側に、前記第2の触媒層を前記第2の膜側に適用するためには、第1の転写キャリアに適用された前記第1の触媒層が前記第1の膜側に面接触され、第2の転写キャリアに適用された前記第2の触媒層が前記第2の膜側に面接触され、それらが互いにプレスされることが好ましい。したがって、触媒層は、イオン交換膜上に直接適用されるのではなく、むしろ最初にそれぞれ転写キャリア上に適用される。転写基材の形態で構成されることができる転写キャリアから、次いで、触媒層は、それぞれの触媒層とともに膜側の一方に面するように置かれ、次いでイオン交換膜にプレスされるように転写される。さらなるステップでは、次いで、転写キャリアが取り外される、例えば引き離されることができる。
【0057】
触媒層とイオン交換膜との良好な接続を達成するために、前記プレス中に前記触媒層と前記イオン交換膜が加熱される場合が有利である。特に、それらは、約40℃から約130℃の範囲の温度に加熱されることができる。特に、前記プレス中の温度は、約65℃とすることができる。
【0058】
触媒層とイオン交換膜との良好な接続を達成するために、前記プレスは、約5バールから約130バールの範囲の圧力で行われることが好ましい。
【0059】
特に、前記プレスが約1分から約15分の期間にわたって行われるという点で、触媒層とイオン交換膜との良好な接続が達成されることができる。特に、前記期間は、約4分とすることができる。
【0060】
好ましくは、前記転写キャリアは、前記プレス後に前記触媒層から引き離される。触媒層が設けられたイオン交換膜が独立したユニットとして使用される場合、転写キャリアもまた、最初は残ることができる。したがって、それらは、保護層として使用されることができる。次いで、水電解装置の製造のために、触媒層が水電解装置の電極と接触される前に、転写キャリアが引き離される。
【0061】
導入部に記載した目的は、本発明によれば、第1の電極触媒及び/又は第2の電極触媒が上述した有利な電極触媒のうちの1つであるという点で、導入部に記載したタイプの水電解装置によってさらに達成される。
【0062】
したがって、既知の水電解装置の提案された開発は、特に、炭化モリブデンの形態のHER触媒及び酸化ニッケル鉄の形態のOER触媒の提供を可能にする。
【0063】
前記第1の電極及び/又は前記第2の電極が上述した有利な電極のうちの1つの形態で構成されることが好ましい。このようにして、特に電極が既にコーティングされて挿入されている場合、水電解装置の製造が単純化されることができる。
【0064】
前記第1の電極がアノードの形態で構成される場合、前記第2の電極がカソードの形態で構成される場合、及び前記イオン交換膜が陰イオン交換膜の形態で構成される場合が有利である。このようにして、陰イオン交換膜水電解装置が簡単な方法で構成されることができる。
【0065】
好適には、前記第1の電極触媒は、OER触媒であり、前記第2の電極触媒は、HER触媒である。特に、前記OER触媒は、上述したOER触媒のうちの1つである。さらにまた、前記HER触媒は、上述した有利なHER触媒のうちの1つである。これにより、簡単且つ経済的に、高効率な水電解装置が形成されることができる。
【0066】
水電解装置の製造のために、前記第1の触媒層が前記第1の電極又は前記イオン交換膜に適用される場合、及び前記第2の触媒層が前記第2の電極又は前記イオン交換膜に適用される場合が有利である。したがって、特に、それぞれの触媒層を既に担持しているサブユニット、必要に応じて、イオン交換膜又は電極が形成されることができる。
【0067】
水電解装置は、前記第1の触媒層を有する前記第1の電極、前記イオン交換膜、及び前記第2の触媒層を有する前記第2の電極が互いにプレスされる場合、特に簡単な方法で形成されることができる。したがって、この構成では、電極触媒によって既にコーティングされた電極が利用され、次いで、電極は、コーティングされていないイオン交換膜に対してプレスされる。これは、特に、イオン交換膜が陰イオン交換膜の形態で構成される場合が有利である。陰イオン交換膜は、典型的には機械的にあまり安定ではない。したがって、これらの膜上に触媒層を適用することは技術的に極めて困難である。記載の手順は、水電解装置の製造を著しく単純化する。
【0068】
前記水電解装置が約7から約13の範囲のpH値を有する電解質を含む場合が有利である。好ましくは、前記電解質のpH値は、約7から約11の範囲である。特に、7に近いpH値を有する電解質、すなわち、弱アルカリ性のみである電解質が利用されることができる。このようにして、特に、強アルカリ電解質は非常に攻撃的であり、したがって電解質と接触する水電解装置の構成要素、例えば電極及びシールが損傷を受ける危険性が存在するため、水電解装置の長期安定性が高められることができる。
【0069】
水電解装置は、前記電解質が溶媒に溶解した中性からアルカリ性の塩によって形成される場合、簡単な方法で構成されることができる。
【0070】
前記中性からアルカリ性の塩が0から約0.4モルの範囲の値を有する濃度を有することが好ましく、特に、0から0.1モルの範囲とすることができる。したがって、特に、弱アルカリ性電解質が形成されることができる。
【0071】
前記中性からアルカリ性の塩は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム又は炭酸水素ナトリウム若しくは炭酸水素カリウム(Na2CO3、K2CO3、NaHCO3、KHCO3)であるか、それらを含む場合が有利である。
【0072】
好ましくは、前記溶媒は、水若しくはアルコールであるか、又は水若しくはアルコールを含む。これにより、特に環境に優しい水電解装置が形成されることができる。
【0073】
導入部に記載した目的は、本発明によれば、上述した有利な電極触媒のうちの1つが電極触媒として使用されるという点で、導入部に記載したタイプの触媒活性触媒層を製造するための方法によってさらに達成される。上述した電極触媒の使用により、触媒的に非常に効果的な触媒層が形成されることができる。
【0074】
前記基材としては、電極、前記電気化学反応装置の電極又はイオン交換膜上に配置されたガス拡散層又は転写キャリアが使用されることが好ましい。どの触媒層及びどのタイプの電気化学セルが関与するかに応じて、触媒層は、電極、ガス拡散層、イオン交換膜又は転写キャリア上に必要に応じて形成されることができる。
【0075】
触媒層は、炭素繊維マット、金属繊維マット又はステンレス鋼ワイヤ織物スタックの形態で基材上に簡単な方法で構成されることができる。特に、金属繊維マットは、チタン繊維マット、ニッケル繊維マット又はステンレス鋼繊維マットの形態で構成されることができる。
【0076】
電気化学反応装置の製造中の取り扱いのためには、前記転写キャリアに適用された前記触媒層が前記電極に適用され、前記電気化学反応装置の電極又は前記イオン交換膜上に配置されたガス拡散層が適用され、前記転写キャリアが引き離されることが好ましい。触媒層の適用は、特に、基材と転写キャリアとが、特に室温よりも高い温度で互いにプレスされる場合に最適化されることができる。すなわち、触媒層の転写時に、転写キャリアと基材とを加熱することが有利である。
【0077】
フィルムが前記転写キャリアとして使用される場合、触媒層は、簡単な方法で取り扱われることができる。特に、それは、プラスチック又は金属から作製されることができる。プラスチックは、例えば、ポリテトラフルオロエチレンとすることができる。このタイプのプラスチックフィルムは、例えばイオン交換膜又は電極上に適用されている場合、簡単な方法で触媒層から引き離されることができる。
【0078】
前記触媒層は、前記電極触媒を含む触媒溶液を前記基材上に適用することによって形成される場合、簡単な方法で形成されることができる。触媒溶液は、簡単な方法で取り扱われることができ、異なる方法によって基材に適用されることができる。
【0079】
基材上に触媒層を形成するための触媒の付着を最適化するために、前記触媒溶液の適用中に前記基材が加熱されることが好ましい。特に、それは、約50℃から約90℃の範囲の温度に加熱されることができる。特に、前記温度は、約65℃とすることができる。
【0080】
前記触媒層は、前記触媒溶液が、噴霧、スクリーン印刷、フィルム拡散又はブレードコーティングによって前記基材上に適用されるという簡単な方法で構成されることができる。
【0081】
特に効率的な触媒層は、前記触媒溶液が、約1l/分から約5l/分の範囲の体積流量を有する不活性ガス流によって約3cmから約10cmの距離から噴霧ピストルを用いて複数の層に噴霧することによって適用される場合に形成されることができる。噴霧中の基材からの噴霧ピストルの距離は、約5cmとすることができる。不活性ガスの体積流は、特に窒素流及び/又はアルゴン流によって形成されることができる。不活性ガスの体積流は、特に2l/分とすることができる。
【0082】
触媒層の取り扱いのために、前記基材上に適用された前記触媒溶液が乾燥されることが好ましい。これにより、特に、長期安定な触媒層が簡単な方法で形成されることができる。
【0083】
好ましくは、前記触媒溶液は、前記電極触媒を溶媒に溶解することによって形成されることができる。前記溶媒が水及び/又はアルコールである場合、特に環境に優しい。
【0084】
好適には、プロパノールが前記アルコールとして使用される。それは、特に、2-プロパノールとすることができる。
【0085】
触媒層、特にイオン交換膜上の良好な接着を達成するために、イオン交換イオノマーが前記溶媒中の前記電極触媒の溶液に添加される場合が有利である。好ましくは、それはイオン交換膜が作製されるイオノマーである。
【0086】
使用されるイオン交換膜に応じて、Nafion、Aquivion、Sustainion XB-7及び/又はFumionが前記イオン交換イオノマーとして使用される場合が有利である。
【0087】
可能な限り均一な触媒溶液を形成し、それによって基材上に均一な触媒層を形成するために、超音波の作用下で前記基材上に適用する前に前記触媒層が混合される場合が有利である。混合時間は、特に、約5分から約25分の範囲とすることができる。特に、それは約15分とすることができる。
【0088】
導入部に記載した目的は、本発明によれば、第1の触媒層が第1の電極に適用され、第1の電極及び第2の電極がそれらの間に配置されたイオン交換膜にプレスされる点で、導入部に記載したタイプの水電解装置を製造するための方法によって達成される。
【0089】
特に、機械的に不安定なイオン交換膜を用いて、水電解装置が簡単な方法で形成されることができる。したがって、イオン交換膜と第1の触媒層との間の接触が簡単な方法で作製されることができる。特に、電極がそれらの間に配置されたイオン交換膜にプレスされる前に、第2の触媒層が第2の電極に適用されることもできる。
【0090】
好ましくは、上述した有利な電極触媒のうちの1つが、前記第1の電極触媒及び/又は前記第2の電極触媒として使用される。したがって、特に、前記第1の電極触媒は、上述したHER触媒のうちの1つとすることができ、前記第2の電極触媒は、上述したOER触媒のうちの1つとすることができる。
【0091】
水電解装置は、前記第1の電極及び前記第2の電極として、上述した有利な例示的な実施形態の電極が使用される場合、簡単な方法で形成されることができる。
【0092】
さらにまた、水電解装置は、特に前記第1の触媒層及び/又は前記第2の触媒層が上述した有利な方法の1つによって形成されるという点で、簡単な方法で形成されることができる。
【0093】
本発明の好ましい実施形態の以下の説明は、図面とともにさらなる説明を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図2】OER触媒の例示的な実施形態の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【
図3】HER触媒を製造するための方法の例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図4a】噴霧による基材上への触媒溶液の適用の概略図を示している。
【
図4b】噴霧によって調製された触媒層の写真再生を示している。
【
図5a】スクリーン印刷による基材上への触媒溶液の適用の概略図を示している。
【
図5b】スクリーン印刷によって調製された触媒層の例示的な実施形態の写真図を示している。
【
図6a】フィルム拡散及び/又はブレードコーティングによる基材上の触媒層の形成の概略図を示している。
【
図6b】フィルム拡散によって形成された触媒層の写真再生を示している。
【
図7】電解セルの例示的な実施形態の概略分解図を示している。
【
図8】電気分解装置の例示的な実施形態の概略断面図を示している。
【
図9】電気分解装置のさらなる例示的な実施形態の概略分解図を示している。
【
図10】異なる電解セルの作動パラメータの比較表示を示している。
【
図11】さらなる電解セルのセルパラメータの比較表示を示している。
【
図12】HER触媒の例示的な実施形態の走査型電子顕微鏡写真を示している。
【
図13】アルカリ水電解装置の例示的な実施形態の構造及びその作動原理の概略図を示している。
【
図14】アルカリ環境における水電解の反応式を示している。
【
図15】触媒層によって両面がコーティングされたイオン交換膜の例示的な実施形態の構造の概略図を示している。
【
図16】それぞれが一方の側に触媒活性層を担持する2つの基材がイオン交換膜にプレスされる前のイオン交換膜の例示的な実施形態の概略図を示している。
【
図17】第2から第12の例示的な実施形態のHER触媒の(可逆水素電極RHEに対する)それぞれのカソード電位に対する電流密度の依存性を示している。
【
図18】第13から第20の例示的な実施形態のOER触媒及びイリジウムブラックの(可逆水素電極RHEに対する)それぞれのアノード電位に対する電流密度の依存性を示している。
【
図19】上述したように異なる膜を有する開放セルを用いたセル試験の電流密度に対するセル電位の依存性を示している。
【
図20】異なる膜を有する開放セル及び閉鎖セルを用いたセル試験の電流密度に対するセル電位の依存性を示している。
【
図21】触媒としてNiFeO
x/Mo
2C及びIr/Pt、並びに得られた対応する酸素量(電解質:0.1M KOH;セル温度:50℃)を用いた閉鎖セルにおける長期セル試験の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0095】
まず、本発明の紹介と理解のため、
図13を参照しながら水電解装置の構成について説明する。
【0096】
図13は、アノードハーフセル12及びカソードハーフセル14を有する水電解装置10の例示的な実施形態を概略的に示している。2つのハーフセル12、14は、イオン交換膜16によって互いに分離されている。
【0097】
水電解装置10の例示的な実施形態は、アルカリ電解質18によって作動するいわゆるアルカリ水電解装置10である。したがって、電解質18は、7よりも大きいpH値を有する。
【0098】
イオン交換膜16は、水酸化物イオン24の形態の陰イオン22が2つのハーフセル12及び/又は14のうちの一方から他方のハーフセル12及び/又は14に通過することを可能にする陰イオン交換膜20の形態のアルカリ水電解装置10内に構成される。
【0099】
カソードハーフセル14では、カソード26が電解質18に浸漬され、アノードハーフセル12では、アノード28が浸漬される。カソード26は、少なくとも部分的にカソード触媒層30によって覆われており、アノード28は、部分的にアノード触媒層32によって覆われている。
【0100】
カソード触媒層30は、水素発生反応(HER)、すなわち、電子の取り込みを伴う水の水素及び水酸化物イオンへの変換を支持するHER触媒36の形態の電極触媒34からなるか、又はそれを含む。アノード触媒層30は、OER触媒40の形態の電極触媒38によって形成され、これは、アノードハーフセル12内の酸素発生反応(OER)、したがって電子の供与による水酸化物イオンの酸素及び水への変換を支持する。水電解装置10は、正極44がアノード28に接続され、負極46がカソード26に接続された電流源42によって電力供給される。
【0101】
2つのハーフセル12及び14において起こるアルカリ水電解の反応が
図14に要約されている。
【0102】
水電解装置10を作動させるためには、第1に、アノードハーフセル12における酸素発生反応、第2に、カソードハーフセル14における水素発生反応がとにかく起こることを可能にするために、最低セル電圧が必要である。
【0103】
前述のように、可能な限り低いセル電圧によって水電解装置10を作動させることができるように、HER触媒36及びOER触媒40の形態の電極触媒34及び38が使用される。酸素発生反応及び水素発生反応の両方のための電極触媒として、原則として、白金及びイリジウムが使用されることができる。しかしながら、これらの貴金属は非常に高価であるため、より経済的であるが白金及びイリジウムと同様の効率を有する触媒を使用することに大きな関心が寄せられている。ここで、アルカリ水電解装置10中の白金及びイリジウムを置換することができる異なる電極触媒34及び38の例示的な実施形態を説明する。
【0104】
第1の例示的な実施形態のHER触媒-製造
【0105】
七モリブデン酸アンモニウム六水和物(49.6g)を水(18.2MΩ、800ml)に溶解し、アニリン(64g)を添加した。塩酸(1M)をこのエマルジョンに、約4のpH値で白色沈殿が得られるまで滴加した(560ml)。反応溶液を50℃で5時間撹拌した。次いで、沈殿物を分離し、エタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は59gであった。
【0106】
得られた原料生成物41gを石英管中でテンパリングし、これにより、最初にアルゴン流(0.4l/分)を用いて反応チャンバから空気を4時間排除した。原料生成物をアルゴン流中で2℃/分の速度で300℃に加熱し、次いでこの温度で5時間保持し、続いて冷却した。自然発火Mo2Cの不動態化のために、生成物を湿潤アルゴンによって1時間洗い流した後、窒素中約10%の酸素によって2時間洗い流し、続いて合成空気によって0.5時間洗い流した後、空気に曝露した。最終重量:24.3g。
【0107】
第2の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB2)
【0108】
七モリブデン酸アンモニウム六水和物(33.03g)を水(18.2MΩ、533ml)に溶解し、アニリン(42.7g)を添加した。塩酸(1M)をこのエマルジョンに、約4のpH値で白色沈殿が得られるまで滴加した(350ml)。反応溶液を50℃で5時間撹拌した。次いで、沈殿物を分離し、エタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は36.4gであった。
【0109】
原料生成物をアルゴン流中で2℃/分の速度で725℃に加熱し、次いでこの温度で5時間保持し、続いて冷却した。自然発火Mo2Cの不動態化のために、生成物を窒素中2%酸素によって2時間洗い流した後、空気に曝露した。最終重量は11.4gであった。
【0110】
第3の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB3)
【0111】
製造は、第2の例示的な実施形態にしたがって行われたが、原料生成物は、アルゴン流中で600℃のみまで石英管において加熱された。
【0112】
第4の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB4)
【0113】
製造は、第2の例示的な実施形態にしたがって行われたが、原料生成物は、アルゴン流中で900℃まで石英管において加熱された。
【0114】
第5の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB5)
【0115】
七モリブデン酸アンモニウム六水和物(2.48g)を水(18.2MΩ、40ml)に溶解し、アニリン(3.14g)を添加した。塩酸(1M)をこのエマルジョンに、約4のpH値で白色沈殿が得られるまで滴加した(30ml)。反応溶液を50℃で5時間撹拌した。次いで、沈殿物を分離し、エタノールによって洗浄した。湿った沈殿物を塩化ニッケル六水和物のエタノール溶液(100ml中0.33g)で懸濁し、エタノールを50℃で撹拌しながらガラス皿で蒸発させた。最終重量は2.7gであった。
【0116】
得られた原料生成物1.4gを石英管中でテンパリングし、これにより、最初にアルゴン流(0.4l/分)を用いて反応チャンバから空気を4時間排除した。原料生成物をアルゴン流中で2℃/分の速度で600℃に加熱し、次いでこの温度で5時間保持し、続いて冷却した。最終重量は0.67gであった。過剰のニッケルを除去するために、生成物を0.1M HCl溶液によって洗浄し、次いでエタノールによって洗浄し、乾燥させた。最終重量は0.61gであった。
【0117】
第6の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB6)
【0118】
七モリブデン酸アンモニウム六水和物(2.48g)を水(18.2MΩ、40ml)に溶解し、アニリン(3.14g)を添加した。塩酸(1M)をこのエマルジョンに、約4のpH値で白色沈殿が得られるまで滴加した(30ml)。反応溶液を50℃で5時間撹拌した。次いで、沈殿物を分離し、エタノールによって洗浄した。湿った沈殿物を塩化鉄(III)四水和物のエタノール溶液(100ml中0.23g)で懸濁し、エタノールを50℃で撹拌しながらガラス皿で蒸発させた。最終重量は2.75gであった。
【0119】
得られた原料生成物1.4gを石英管中でテンパリングし、これにより、最初にアルゴン流(0.4l/分)を用いて反応チャンバから空気を4時間排除した。原料生成物をアルゴン流中で2℃/分の速度で900℃に加熱し、次いでこの温度で5時間保持し、続いて冷却した。最終重量は0.7gであった。過剰の鉄を除去するために、生成物を0.1M HCl溶液によって洗浄し、次いでエタノールによって洗浄し、乾燥させた。最終重量は0.62gであった。
【0120】
第7の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB7)
【0121】
製造は、第2の例示的な実施形態にしたがって行われた。
【0122】
生成物500mgを塩化ニッケル六水和物のエタノール溶液(2ml中0.05g)に懸濁させ、エタノールを蒸発させた。原料生成物を石英管中でテンパリングし、これにより、最初にアルゴン流(0.4l/分)中で反応チャンバから空気を4時間排除した。原料生成物をアルゴン流中で2℃/分の速度で700℃に加熱し、次いでこの温度で5時間保持し、続いて冷却した。最終重量は0.25gであった。
【0123】
過剰のニッケルを除去するために、生成物を0.1M HCl溶液によって洗浄し、次いでエタノールによって洗浄し、乾燥させた。最終重量は0.24gであった。
【0124】
第8の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB8)
【0125】
製造は、第2の例示的な実施形態にしたがって行われた。
【0126】
生成物500mgを塩化鉄(III)四水和物のエタノール溶液(2ml中0.04g)に懸濁させ、エタノールを蒸発させた。原料生成物を石英管中でテンパリングし、これにより、最初にアルゴン流(0.4l/分)を用いて4時間反応チャンバから空気を排除した。原料生成物をアルゴン流中で2℃/分の速度で500℃に加熱し、次いでこの温度で5時間保持し、続いて冷却した。最終重量は0.27gであった。
【0127】
過剰の鉄を除去するために、生成物を0.1M HCl溶液によって洗浄し、次いでエタノールによって洗浄し、乾燥させた。最終重量は0.26gであった。
【0128】
第9の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB9)
【0129】
製造は、第2の例示的な実施形態にしたがって行われ、前駆体の合成中にモリブデン(Mo)の15%がニッケル(Ni)によって置き換えられた。
【0130】
七モリブデン酸アンモニウム六水和物(2.1g)及び塩化ニッケル六水和物(0.5g)を水(18.2MΩ、40ml)に溶解し、アニリン(3.2g)を添加した。塩酸(1M)をこのエマルジョンに、約4のpH値で白色沈殿が得られるまで滴加した(30ml)。反応溶液を50℃で5時間撹拌した。次いで、沈殿物を分離し、エタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は2.36gであった。
【0131】
得られた原料生成物1gを石英管中でテンパリングし、これにより、最初にアルゴン流(0.4l/分)を用いて反応チャンバから空気を4時間排除した。原料生成物をアルゴン流中で2℃/分の速度で1200℃に加熱し、次いでこの温度で5時間保持し、続いて冷却した。最終重量は0.48gであった。
【0132】
第10の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB10)
【0133】
この例示的な実施形態では、合成においてアニリンの代わりに異なる有機アミンを使用した。
【0134】
メラミン(2.52g)を水(18.2MΩ、60ml)に溶解し、75℃に加熱した。ヘプタモリブデン酸アンモニウム六水和物(2.48g)を水(18.2MΩ、10ml)に溶解し、上記溶液に添加すると、微細な白色沈殿が形成された。その上で、4のpH値が達成されるまで1M HCl水溶液を加えた(約15ml)。反応溶液を75℃で5時間撹拌した。次いで、沈殿物を分離し、エタノールによって洗浄し、60℃で12時間乾燥させた。最終重量は3.48gであった。
【0135】
得られた原料生成物3.1gを乳鉢で粉砕し、石英管中でテンパリングし、これにより、最初に窒素流(2l/分)を用いて4時間反応チャンバから空気を排除した。原料生成物を窒素気流中で10℃/分の速度で900℃に加熱し、次いで、この温度で2時間保持し、続いて冷却した。最終重量は1.14gであった。
【0136】
第11の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB11)
【0137】
この例示的な実施形態では、合成においてアニリンの代わりに異なる有機アミンを使用した。
【0138】
七モリブデン酸アンモニウム六水和物(2.48g)及びシュウ酸二水和物(5.04g)を水(18.2MΩ、70ml)に溶解し、75℃に加熱した。メラミン(2.52g)を加えた。反応溶液を75℃で5時間撹拌した。次いで、沈殿物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、60℃で12時間乾燥させた。最終重量は4.81gであった。
【0139】
得られた原料生成物2.8gを乳鉢で粉砕し、石英管中でテンパリングし、これにより、最初に窒素流(2l/分)を用いて4時間反応チャンバから空気を排除した。原料生成物を窒素気流中で10℃/分の速度で900℃に加熱し、次いで、この温度で2時間保持し、続いて冷却した。最終重量は0.64gであった。
【0140】
第12の例示的な実施形態のHER触媒-製造(AB12)
【0141】
シュウ酸二水和物(25.2g)を水(18.2MΩ、400ml)に溶解し、七モリブデン酸アンモニウム六水和物(2.7g)及びメラミン(12.6g)を添加し、6時間撹拌しながら60℃に加熱した。その後、塩化ニッケル六水和物(水に溶解した24g(18.2MΩ、100ml))を添加し、室温(RT)で16時間撹拌した。沈殿を分離し、水によって洗浄し、70℃で12時間乾燥させた。最終重量は38gであった。
【0142】
得られた原料生成物37gを乳鉢で粉砕し、石英管中でテンパリングし、これにより、最初に窒素流(2l/分)を用いて4時間反応チャンバから空気を排除した。原料生成物を窒素気流中で10℃/分の速度で900℃に加熱し、次いで、この温度で2時間保持し、続いて冷却した。最終重量は8.35gであった。
【0143】
上述したHER触媒の第2の例示的な実施形態の触媒効果は、HER触媒の第1の例示的な実施形態と比較してより良好である。記載のHER触媒の2つの例示的な実施形態の重要な成分は、炭化モリブデンである。
【0144】
図3は、炭化モリブデン(Mo
2C)の形態のHER触媒36の2つの例示的な実施形態について記載の合成の順序を概略的に示している。記載の合成の特異性は、特に
図12、炭化モリブデンの例示的な実施形態の走査型電子顕微鏡写真において明らかなように、材料の針状又は管状構造である。
【0145】
図17に、第2から第12の例示的な実施形態のHER触媒の(可逆水素電極RHEに対する)それぞれのカソード電位に対する電流密度の依存性を示している。測定は、それぞれ回転ディスク電極を用いて行われた。最低電位における最大電流密度は、第2の例示的な実施形態にかかるHER触媒について達成された。
【0146】
これ以降、OER触媒40の形態の電極触媒38の例示的な実施形態について説明する。
【0147】
第13の例示的な実施形態のOER触媒-製造(AB13)
【0148】
塩化ニッケル(II)六水和物(303mg)を水(18.2MΩ、50ml)に溶解し、同様に塩化鉄(II)四水和物(89mg)を水(18.2MΩ、50ml)に溶解した。2つの溶液を混合した。
【0149】
反応フラスコを窒素下に置き、水素化ホウ素ナトリウム(326mg)をその中の水(18.2MΩ、200ml)に溶解した。ニッケル/鉄溶液をこの溶液に4分以内に滴下した。その後、反応溶液を30分間撹拌した。次いで、反応生成物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は116mgであった。
【0150】
第14の例示的な実施形態のOER触媒-製造(AB14)
【0151】
塩化ニッケル(II)六水和物(9.745mg)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解し、同様に塩化鉄(II)四水和物(2.823mg)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解した。2つの溶液を混合した。
【0152】
反応フラスコを窒素下に置き、水素化ホウ素ナトリウム(10.44mg)を水(18.2MΩ、533ml)に溶解した。この溶液を超音波(160W、35kHz)に供し、ニッケル/鉄溶液を10分以内に滴下した。その後、反応溶液を30分間撹拌した。次いで、反応生成物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は5.45gであった。
【0153】
第15の例示的な実施形態のOER触媒-製造(AB15)
【0154】
製造は、第13の例示的な実施形態にしたがって行われ、合成中、Niの10%が銅(Cu)によって置き換えられた。
【0155】
塩化ニッケル(II)六水和物(8.528g)及び塩化鉄(II)四水和物(2.744g)を水(18.2MΩ、各89ml)に溶解した。同様に、塩化銅(II)二水和物(0.940g)を水(18.2MΩ、89ml)に溶解した。2つの溶液を混合した。
【0156】
反応フラスコを窒素下に置き、水素化ホウ素ナトリウム(10.44mg)を水(18.2MΩ、533ml)に溶解した。ニッケル/鉄/銅溶液を10分以内に滴下した。その後、反応溶液を30分間撹拌した。次いで、反応生成物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は5.31gであった。
【0157】
第16の例示的な実施形態のOER触媒-製造(AB16)
【0158】
製造は、第13の例示的な実施形態にしたがって行われ、合成中、Niの10%がマンガン(Mn)によって置き換えられた。
【0159】
塩化ニッケル(II)六水和物(8.528g)及び塩化鉄(II)四水和物(2.744g)を水(18.2MΩ、各89ml)に溶解した。塩化マンガン(II)四水和物(1.092g)を水(18.2MΩ、89ml)に溶解した。2つの溶液を混合した。
【0160】
反応フラスコを窒素下に置き、水素化ホウ素ナトリウム(10.44mg)を水(18.2MΩ、533ml)に溶解した。ニッケル/鉄/マンガン溶液を10分以内に滴下した。その後、反応溶液を30分間撹拌した。次いで、反応生成物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は4.6gであった。
【0161】
第17の例示的な実施形態のOER触媒-製造(AB17)
【0162】
製造は、第13の例示的な実施形態にしたがって行われ、合成中、Niと鉄(Fe)との比を変化させた。
【0163】
塩化ニッケル(II)六水和物(11.694g)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解し、同様に塩化鉄(II)四水和物(1.133g)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解した。2つの溶液を混合した。
【0164】
反応フラスコを窒素下に置き、水素化ホウ素ナトリウム(10.44mg)を水(18.2MΩ、533ml)に溶解した。この溶液を50℃に加熱し、ニッケル/鉄溶液を10分以内に滴下した。その後、反応溶液を30分間撹拌した。次いで、反応生成物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は4.5gであった。
【0165】
第18の例示的な実施形態のOER触媒-製造(AB18)
【0166】
製造は、第13の例示的な実施形態にしたがって行われ、合成中、NiとFeとの比を変化させた。
【0167】
塩化ニッケル(II)六水和物(10.72g)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解し、同様に塩化鉄(II)四水和物(1.976g)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解した。2つの溶液を混合した。
【0168】
反応フラスコを窒素下に置き、水素化ホウ素ナトリウム(10.44mg)を水(18.2MΩ、533ml)に溶解した。この溶液に波長360nmのUVを照射し、ニッケル/鉄溶液を10分以内に滴下した。その後、反応溶液を30分間撹拌した。反応生成物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は6.2gであった。
【0169】
第19の例示的な実施形態のOER触媒-製造(AB19)
【0170】
製造は、第13の例示的な実施形態にしたがって行われ、合成中、NiとFeとの比を変化させた。
【0171】
塩化ニッケル(II)六水和物(8.77g)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解し、同様に塩化鉄(II)四水和物(3.670g)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解した。2つの溶液を混合した。
【0172】
反応フラスコを窒素下に置き、水素化ホウ素ナトリウム(10.44mg)を水(18.2MΩ、533ml)に溶解した。この溶液を波長360nmのUV照射に曝露し、ニッケル/鉄溶液を10分以内に滴下した。その後、反応溶液を30分間撹拌した。反応生成物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は6.3gであった。
【0173】
第20の例示的な実施形態のOER触媒-製造(AB20)
【0174】
製造は、例示的な実施形態13にしたがって行われ、合成後に生成物が250℃でテンパリングされた。
【0175】
塩化ニッケル(II)六水和物(9.745mg)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解し、同様に塩化鉄(II)四水和物(2.823g)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解した。2つの溶液を混合した。
【0176】
反応フラスコを窒素下に置き、水素化ホウ素ナトリウム(10.44mg)を水(18.2MΩ、533ml)に溶解した。この溶液を超音波(160W、35kHz)に曝露し、ニッケル/鉄溶液を10分以内に滴下した。その後、反応溶液を30分間撹拌した。反応生成物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は5.45gであった。
【0177】
200mgの反応生成物を管状炉内で空気雰囲気下、250℃の磁器燃焼ボート中で1時間テンパリングした。
【0178】
第21の例示的な実施形態のOER触媒-製造(AB21)
【0179】
製造は、例示的な実施形態13にしたがって行われ、合成後に生成物が300℃でテンパリングされた。
【0180】
塩化ニッケル(II)六水和物(9.745mg)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解し、同様に塩化鉄(II)四水和物(2.823g)を水(18.2MΩ、133ml)に溶解した。2つの溶液を混合した。
【0181】
反応フラスコを窒素下に置き、水素化ホウ素ナトリウム(10.44mg)を水(18.2MΩ、533ml)に溶解した。この溶液を超音波(160W、35kHz)に曝露し、ニッケル/鉄溶液を10分以内に滴下した。その後、反応溶液を30分間撹拌した。反応生成物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、50℃で12時間乾燥させた。最終重量は5.45gであった。
【0182】
200mgの反応生成物を管状炉内で空気雰囲気下、300℃の磁器燃焼ボート中で1時間テンパリングした。
【0183】
図18は、例示的な実施形態13から21のOER触媒の(可逆水素電極RHEに対する)それぞれのアノード電位に対する電流密度の依存性を示している。測定は、それぞれ回転ディスク電極を用いて行われた。最低電位における最大電流密度は、例示的な実施形態13、20及び21にかかるOER触媒について達成された。参考として、イリジウムブラックのアノード電位に対する電流密度の依存性もプロットしている。
【0184】
図1は、OER触媒40の形態の電極触媒38の上述した例示的な実施形態にしたがって説明された合成を概略的に示している。
【0185】
図2は、OER触媒であるニッケル酸化鉄(NiFeO
x)の走査型電子顕微鏡写真を示している。試験したサンプルは非晶質である。
【0186】
例示的な実施形態1から4は、純粋に例示的なものである。記載の合成経路は、原則として、周期表の第4周期からの酸化物、硫化物、炭化物及びリン化物、並びに金属、特に亜鉛、マンガン、銅、鉄、ニッケル、クロム及びコバルト、並びに周期表の第5周期からの金属、特にモリブデン及び銀の混合物の合成に適用可能である。
【0187】
図7及び
図8は、水電解装置の電解セル48の概略構成を示している。
【0188】
板状アノード28と板状カソード26との間には、陰イオン交換膜20の形態のイオン交換膜16が配置されている。面状イオン交換膜16は、アノード28の方向に面する第1の膜側50と、カソード26の方向に面する反対方向に面する第2の膜側52とを有する。
【0189】
第1の膜側は、OER触媒40を含むか又はそれからなるアノード触媒層32と面接触している。第2の膜側52は、HER触媒36からなるか又はHER触媒を含むカソード触媒層30と面接触している。アノード28とアノード触媒層32との間には、アノード28と片側で面接触し、アノード触媒層32と反対側で面接触するアノードガス拡散層54が配置されている。
【0190】
カソード触媒層30とカソード26との間には、カソード触媒層30と片側で面接触し、アノード26と反対側で面接触するカソードガス拡散層56が配置されている。
【0191】
アノードガス拡散層54及びカソードガス拡散層54は、
図8では模式的に2つの領域58、60に分けられており、一方側がカソード26、他方側がアノード28である電極62、64のうちの一方に接する領域60は、領域60とそれぞれの触媒層30、32との間に位置する領域58よりも大きい多孔度を有する。
【0192】
ガス拡散層54及び56のこの構成により、カソードハーフセル14からの水素及びアノードハーフセル12からの酸素の反応ガスが最適に導かれることができる。
【0193】
図7及び
図8に関連して説明した構成のOER触媒は、特に、ニッケル酸化鉄又はイリジウムを含むことができる。HER触媒は、ステンレス鋼から作製されたカソード26上の炭化モリブデン又は白金であるか、それらを含む。
【0194】
電極62、64は、ステンレスから作製された集電体端板状に構成される。
【0195】
例示的な実施形態では、より低い多孔度を有する領域58は、繊維マットの形態、特に炭素繊維マット又はチタン繊維マットの形態で構成される。それらは、約250μmの厚さを有する。これらの繊維マットが使用される場合、領域60は、約4mmの厚さを有するステンレス鋼ワイヤ織物スタックから形成される。
【0196】
図8に概略的に示すスタックは、
図8に概略的に示すボア66を貫通するねじによって接続され、恒久的に一緒に保持される。
【0197】
図9は、電解セル48の概略構造のさらなる例示的な実施形態を示している。ここでも、上記で使用された参照符号は、電解セル48の説明において再び使用される。
【0198】
イオン交換膜16は、シール68によって取り囲まれており、膜側52及び50が一方側ではカソード触媒層30と面接触し、他方側ではアノード触媒層32と面接触している。触媒層30及び32は、それぞれ、繊維マットの形態で構成された基材70及び/又は72に適用される。本明細書では、炭素繊維マット及びチタン繊維マットが使用されることができる。基材70及び72は、上述した領域58を形成する。
【0199】
ステンレス鋼ワイヤ織物スタックから形成された集電体74及び76とともに、基材70及び72は、ともにカソードガス拡散層56及び/又はアノードガス拡散層54を形成する。集電体74及び76もまた、シール78によって取り囲まれている。電流源に接続するために、接続接点80及び/又は82が集電体74及び76に設けられる。
【0200】
集電体74及び76は、それぞれ、シール88によって端板84及び/又は86に接続される。端板84及び86は、図示しない方法で互いにねじ止めされ、それらの間に配置された要素を互いにプレスする。
【0201】
図8の配置における領域58は、それぞれ、カソード触媒層30及び/又はアノード触媒層32のための基材70及び/又は72を形成する。
【0202】
電解セル48を形成するために、触媒層30及び32は、
図15に概略的に示すように、イオン交換膜16の膜側50及び/又は52に適用されることができる。さらに、ガス拡散層56及び/又は54は、ステンレス鋼ワイヤ織物スタックの形態で触媒層30及び32に適用される。
【0203】
あるいは、
図16に概略的に示すように、触媒層30及び32が基材70及び72に適用される。これらは、上述したように、繊維マット、特に炭素繊維マット、ステンレス鋼繊維マット、チタン繊維マット又はニッケル繊維マットの形態で構成される。
【0204】
図16にかかる変形例では、薄い基材70及び72に起因して、ステンレス鋼ワイヤ織物スタックの形態のガス拡散層54及び/又は56が、電解ガスの最適な輸送を可能にするために、触媒層30及び32から外方に面する基材70及び72の側面にさらに配置される。
【0205】
さらに、
図15及び
図16にかかる変形形態の混合形態も可能である。例えば、
図15に示すようなアノード触媒層32がイオン交換膜16に適用されることができ、一方、カソード触媒層は、対照的に、基材70に適用されることができ、又はその逆も可能であり、カソード触媒層は、第2の膜側52に適用されることができ、アノード触媒層32は、基材72に適用されることができる。
【0206】
触媒層30及び32は、必要に応じて、イオン交換膜16を形成するイオノマーも含む。したがって、特に、
図16に概略的に示されるように、触媒層30及び32が最初に基材70及び72に適用され、次いで、コーティングされていないイオン交換膜16と面接触させられ、プレスされるときにも、触媒層30及び32のイオン交換膜16への最適な接続が形成されることができ、同時に触媒層の高いイオン伝導性が保証されることができる。
【0207】
図11は、各場合において電解質として0.1M水酸化カリウム水溶液を使用したセル試験の結果を例として示している。「CCS」という表示は、それぞれの触媒層30及び/又は32が基材70及び/又は72に適用されたことを意味する。「CCM」の表示は、触媒層30及び/又は32がイオン交換膜16に直接適用されたこと、又は転写キャリアから転写されたことを意味する。セルを開放構造(開放セル)において電解質に直接浸漬したか、あるいはセルの閉鎖構造(閉鎖セル)において、電解質を2つの分離したテンパリングされたリザーバからセルのアノード側及びカソード側を通して、具体的には約10から100ml/分でポンプ輸送した。閉鎖セルでは、発生したガスの量も決定されることができた。
【0208】
図11では、基材70及び72として、触媒層30及び/又は32が適用される炭素繊維材料が利用される場合、最良のセル特性が達成されることができることは明らかである。
【0209】
図10から、開放セルの場合、特に、触媒層30及び32が基材70及び/又は72に適用された試験されたセル構成は、良好な機能を示すが、イオン交換膜16上への触媒層30及び/又は32の適用は、より悪い結果をもたらすことも明らかである。ここで注目すべきは、チタン繊維マットの形態の基材70及び72のずれであり、イオン交換膜16ではなくそのコーティングにもかかわらず、より悪い結果が得られた。
【0210】
図10は、例として、
図10に示す触媒を用いた開放セルを用いたさらなるセル試験の結果を示している。0.1モルの水酸化カリウム溶液が電解質として使用される場合、結果は、白金がHER触媒として使用され、イリジウムがOER触媒として使用される場合に最も良好である。上述した触媒である炭化モリブデン(HER触媒)及び酸化ニッケル鉄(OER触媒)のみが僅かに劣る。
【0211】
また、0.01モルの水酸化カリウム溶液の形態の電解質では、白金及びイリジウムが触媒として使用される場合と同様に、上述したように合成された触媒である炭化モリブデン及びニッケル酸化鉄でほぼ同等の値が達成される。
【0212】
純水が電解質として使用される場合、試験された電解セル48は、使用される触媒にかかわらず、比較的悪い結果を示す。
【0213】
炭化モリブデン及び酸化鉄ニッケルを含むアノード及びカソード(CCS)を同じように使用した開放セルでは、異なる膜が使用された(
図19)。その中で、市販のSustainion X37-50グレード60が最も高い性能を有する。以下も試験した:市販のFumatech FAA-3-30、リチウム修飾Sustainion X37-50(1M KOHにおける活性化ではなく1M LiOH中でのSustainion膜の活性化、その後の0.1M KOHではなく0.1M LiOH中での測定)、リチウム修飾Nafion 117膜(50℃において10%LiOH中での2時間活性化、その後の0.1M KOHではなく0.1M LiOH中において、通常の50℃ではなく80℃で測定)、及び自己作製PVA-LDH膜。
図19にセル電位の電流密度の依存性を示している。
【0214】
閉鎖セルは、1.85Vにおいて開放セルと同じ成分を使用した場合に、白金族元素を含まない触媒を使用すると、2A/cm
2で約150mVの電解出力の向上が確認された。
図20は、0.1M KOH及び50℃での酸化ニッケル鉄/炭化モリブデン及びイリジウム/白金被覆基材(CCS)並びにSustainion膜の使用における開放セルと閉鎖セルとの比較を示している。
【0215】
閉鎖セルでも安定性を調べた(
図21)。これらの長期セル試験により、1A/cm
2の電流密度で連続して150時間から230時間の期間にわたって、水を分解し、必要なセル電位及びそれによって発生する酸素を測定した。電気分解の効率(100%ファラデー効率を有する反応から予想される酸素量に対して得られた酸素量から計算)は、炭化モリブデン及び酸化鉄ニッケルについて72%であった。200時間後の分解は0.4mV/hであった。
【0216】
以下の例示的な実施形態にしたがって膜を製造した。
【0217】
第22の例示的な実施形態の膜-製造(AB22)
【0218】
50μmのPVA-LDH膜を製造するために、517mgのLDH(合成については以下を参照)を4.5gのエタノールに超音波下で1時間懸濁した。36.5gのPVA水溶液(5%重量)を添加し、溶液を40℃で1.5時間撹拌した。この溶液に架橋試薬として25%グルタルアルデヒド水溶液1.04gを滴下し、さらに触媒として1M NaOH溶液20滴を加えた。溶液を40℃で1時間撹拌し、次いで2時間静置した。5.9gの上記溶液を直径9cmのホウケイ酸ペトリ皿に入れ、60℃のオーブンにおいて覆い乾燥させた。
【0219】
PVA-LDH膜を製造するためのLDH(「層状複水酸化物」)を以下のように合成した。
【0220】
硝酸マグネシウム六水和物(7.62g)及び硝酸アルミニウム九水和物(3.72g)を水160mlに溶解した。炭酸ナトリウム溶液(水540ml中17.16g)を激しく撹拌しながら30分以内に滴下した。添加中、1M NaOH溶液の添加によってpH値を11に維持した。次いで、反応溶液を60℃で6時間撹拌した。沈殿物を分離し、水及びエタノールによって洗浄し、エタノールに懸濁し、55℃のオーブンにおいて乾燥させた。最終重量は3.13gであった。
【0221】
触媒層30及び32の形成のために、
図15及び
図16に関連して説明したように、イオン交換膜16の基材70及び/若しくは72上、又は膜側52及び/若しくは54上のいずれかに、以下に説明するような異なる適用方法によって適用されることができる、いわゆるインクの形態の触媒溶液が製造される。
【0222】
参照電極による電気化学的特性評価に役立つ触媒溶液を製造するための第23及び第24の例示的な実施形態が以下に説明される。
【0223】
第23の例示的な実施形態の触媒溶液-製造
【0224】
5mgのMo2C又はNiFeOxを1474μlの水(18.2MΩ)、484μlの2-プロパノール及び22μlのNafion D-520(水と2-プロパノールの混合物中で重量で5%)と超音波下で15分以内に混合した。
【0225】
第24の例示的な実施形態の触媒溶液-製造
【0226】
4mgのMo2C及び2mgの炭素粉末(VXC72R)を600μlの水(18.2MΩ)、150μlのエタノール及び64.5μlのNafion D-520(水と2-プロパノールとの混合物中に重量で5%)と超音波下で15分間混合した。
【0227】
4mgのNiFeOxを400μlの水、413μlの2-プロパノール及び10.24μlのAquivion D98(水中6%重量)と超音波下で15分以内に混合した。
【0228】
第25の例示的な実施形態の触媒溶液-製造
【0229】
150mgのMo2C又はNiFeOxを1500μlの水及び1500μlの2-プロパノールと混合し、530mgのFAA-3(エタノール中5%)又はSustainion XB-7(エタノール中5%)を添加し、超音波下で15分以内に混合した。4.4×4.4cmの面積をこのインクによってコーティングすることができる。
【0230】
第26の例示的な実施形態の触媒溶液-製造
【0231】
50mgのNiFeOxを200μlの水と混合し、175mgのFAA-3(エタノール中5%)を添加し、超音波下で15分以内に混合した。2×2cmの面積をこのインクによってコーティングすることができる。
【0232】
第23の例示的な実施形態の触媒溶液は、第24の例示的な実施形態の触媒溶液よりも測定値が良好であった。
【0233】
触媒溶液を形成するための第25の例示的な実施形態を使用して、基材70及び/又は72を触媒コーティング30及び/又は32によってコーティングした。
【0234】
イオン交換膜16をコーティングするために、第26の例示的な実施形態にしたがって触媒溶液を製造し、セル測定を行った。スクリーン印刷によって触媒層32を形成するために、第26の例示的な実施形態にかかる触媒溶液を使用した。
【0235】
基材70及び72をコーティングするために、例示的な実施形態24、25及び26にかかる、
図4aに概略的に示されている触媒溶液を、エアブラシピストル90の形態の噴霧ピストルを用いて基材70及び/又は72上に噴霧した。炭素繊維マット、ニッケル繊維マット、チタン繊維マット及びステンレス鋼マットは、基材70及び/又は72として機能した。
【0236】
基材70及び72は、触媒溶液92の噴霧中に、例えば60℃に加熱され、触媒溶液92は、約2l/分の不活性ガス流、例えば窒素によって約5cmの距離から数層に均一に適用された。
【0237】
基材70及び/又は72上の触媒のより良好な接着のために、代替の例示的な実施形態では、基材70、72をホットプレスにおいて125℃にて5分間、10から50バールの圧力でプレスした。
【0238】
図4bは、このようにして噴霧された触媒層の結果を示している。
【0239】
イオン交換膜16を触媒層30及び/又は32のうちの一方によってコーティングするために、第26の例示的な実施形態にかかる触媒溶液は、スクリーン印刷機96を用いて、0.1M KOH溶液によってコンディショニングされた湿ったFAA-3-30膜上に印刷される。印刷面積は、2.1×2.1cmであった。このスクリーン印刷に使用されるスクリーンは、FL-190、16.7μmで規定されている。空気中で触媒層30及び/又は32を乾燥させた後、イオン交換膜16を0.1M KOH溶液に入れた。
【0240】
触媒溶液92及び/又はインクのスクリーン印刷は、
図5aに概略的に示されている。
図5bは、印刷された触媒層30及び/又は32を示している。
【0241】
代替方法として、
図6aは、第26の例示的な実施形態にかかる触媒溶液が、基材70及び/又は72上に触媒層30及び/又は32を形成するために、コーティングブレード98によってどのようにブレードコーティングされるかを概略的に示している。
【0242】
電解セル48を形成するために直接使用される基材70及び/又は72上への第23、第24又は第25の例示的な実施形態にかかる触媒溶液92の噴霧の代わりに、転写基材94が使用されることもできる。このいわゆるデカールトランス法でも、触媒溶液92にエアブラシピストル90が適用される。転写基材94はまた、約65℃に加熱され、触媒溶液92は、約2l/分の窒素流によって約5cmの距離から数層に均一に適用される。テフロンフィルムが転写基材94として機能した。
【0243】
イオン交換膜16を触媒層30及び32によってコーティングするために、それぞれ2.1×2.1cmの面積にコーティングされた2つの転写基材94の間に乾燥状態で配置される。転写基材94は、一方の面がHER触媒によってコーティングされ、他方の面がOER触媒によってコーティングされる。これらは、特に、上述した触媒である炭化モリブデン及び酸化ニッケル鉄の形態で構成される。
【0244】
触媒層30及び/又は32は、一緒になって、一方では第1の膜側50に、他方では第2の膜側52に当接すると、イオン交換膜16の方に面する。次いで、転写基材94上に配置された触媒層30及び/又は32の間に配置されたイオン交換膜16の配置をホットプレスに入れる。触媒層30及び32は、約65℃の温度及び約90バールの圧力で10分以内にイオン交換膜16に転写される。その後、転写基材94が引き離されることができる。このようにして、イオン交換膜16の両面が触媒層30及び32によってコーティングされる。
【0245】
電解セルを製造するための記載の例示的な実施形態は、上述したように、広範囲の触媒と組み合わせられることができる。触媒層30及び32を形成するための記載の方法の実質的な利点は、特に、それらが最終的にそれぞれの電極62及び/又は64の一部として基材70及び/又は72上に直接適用されることができることである。このようにして、記載の構成要素をクランプするだけで電解セルを組み立てることが可能である。膜の直接コーティング、又は説明したデカールトランス法及び転写基材94を介したイオン交換膜16上への触媒層30及び/又は32の複雑な転写は、それによって不要になる。
【0246】
さらに、上述したセル試験は、電極62及び64の一部としての基材70及び72のコーティングが、イオン交換膜16が1つ以上の触媒層30及び/又は32によってコーティングされた電解セル48よりも良好な出力データを有する電解セル48をもたらすことを示した。
【0247】
特に炭化モリブデン及び酸化ニッケル鉄の形態の記載のHER触媒及びOER触媒は、高価な貴金属白金及びイリジウムの優れた代替物を形成する。それらは、著しくより経済的であり、ほぼ同等に効率的である。これは、水電解装置10の大規模な製造及び経済的運用を可能にする。これは、特に今後のエネルギー革命、したがって化石エネルギー源から回生エネルギー源への転換に関して重要なステップである。
【符号の説明】
【0248】
10…水電解装置
12…アノードハーフセル
14…カソードハーフセル
16…イオン交換膜
18…電解質
20…陰イオン交換膜
22…陰イオン
24…水酸化物イオン
26…カソード
28…アノード
30…カソード触媒層
32…アノード触媒層
34…電極触媒
36…HER触媒
34…電極触媒
40…OER触媒
42…電流源
44…正極
46…負極
48…電解セル
50…第1の膜側
52…第2の膜側
54…アノードガス拡散層
56…カソードガス拡散層
58…領域
58…領域
62…電極
62…電極
66…ボア
68…シール
70…基材
70…基材
74…集電体
74…集電体
68…シール
80…接続接点
80…接続接点
84…端板
84…端板
68…シール
90…エアブラシピストル
92…触媒溶液
94…転写基材
96…スクリーン印刷機
98…コーティングブレード
100…電気化学反応装置
【国際調査報告】