(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】呼吸訓練および検査のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20240221BHJP
A61B 5/22 20060101ALI20240221BHJP
A61B 5/087 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/22 200
A61B5/087
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553494
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 EP2022055595
(87)【国際公開番号】W WO2022184908
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523333722
【氏名又は名称】エアロフィット アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン, クリスチャン トゥルベリ
(72)【発明者】
【氏名】マコーネル, アリソン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS01
4C038SS04
4C038SU06
4C038SX02
4C038SX09
(57)【要約】
本開示は、事前定義された呼吸抵抗と、呼気抵抗とを有する、別個の吸入気道および吐出気道を通した対象の気息を表す、データセット内の呼吸訓練強度の計算のためのコンピュータ実装方法に関し、本方法は、対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間を計算するステップ、および/または対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量を計算するステップを含む。一実施形態では、呼吸訓練強度の計算は、持続的に受信されたデータのストリームを使用して行われるリアルタイムプロセスである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸訓練または検査デバイスの吸入気道および吐出気道のうちの少なくとも一方と関連して入手された圧力データを含むデータセット内の呼吸訓練強度の計算のためのコンピュータ実装方法であって、前記データセットは、事前定義された呼吸抵抗を有する前記気道を通した対象の気息を表し、前記方法は、
前記対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間を計算するステップ、および/または
前記対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量を計算するステップ
を含み、
前記呼吸訓練強度の計算は、持続的に受信されたデータのストリームを使用して行われるリアルタイムプロセスである、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記対象の複数回の気息の平均ピーク呼吸筋力を計算するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項3】
前記対象の少なくとも1回の気息の圧力対時間の呼吸性変化率および/または前記対象の少なくとも1回の気息の圧力の最大変化率を計算するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
ピーク呼吸筋力の割合等の前記対象の標的呼吸筋力に対する前記呼吸筋力対時間に基づいて、少なくとも1回の気息にわたる対象固有の呼吸筋力標的を計算するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
呼吸圧力定数と前記対象の最大呼吸において取得された流量とを乗算し、その後、前記最大呼吸において測定された圧力値を加算することによって、前記対象の最大呼吸圧力を計算するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記対象の最大呼吸において測定された圧力を呼吸流量定数で除算し、その後、前記最大呼吸において測定された流量値を加算することによって、前記対象の最大呼吸流量を計算するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
2つの異なる呼吸抵抗における最大呼吸流量および前記圧力を測定し、その後、勾配を計算することによって、前記対象の最大呼吸流量と前記圧力との間の関係を記述する傾きの勾配を計算するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ピーク呼吸筋力の半分と最大呼吸流量の半分とを乗算することによって、前記対象のピーク呼吸筋力を推定するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記対象のピーク呼吸筋力に対する前記対象の複数回の気息の平均ピーク呼吸筋力に基づいて、対象固有の力係数を計算するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記対象の少なくとも1回の気息にわたる累積呼吸筋作業量対時間を計算するステップを含む、および/または前記対象の複数回の気息にわたる平均呼吸筋作業量を計算するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記対象の1回の気息にわたる最大呼吸筋作業量容量に対する前記累積呼吸筋作業量対時間に基づいて、少なくとも1回の気息の対象固有の作業量フィードバックを計算するステップを含む、および/または前記複数回の気息の最大呼吸筋作業量容量に対する前記対象の複数回の気息の累積呼吸筋作業量に基づいて、対象固有の作業量フィードバックを計算するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
吸気気道および/または呼気気道を有する呼吸訓練または検査デバイスのための呼吸感知システムであって、前記感知システムは、
電子センサユニットであって、
前記呼吸訓練および検査デバイスの前記吸気気道および/または前記呼気気道内の空気圧を測定するための少なくとも1つの圧力センサと、
圧力データを伝送するための処理ユニットと
を備える、電子センサユニットと、
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、命令を有し、前記命令は、スマートフォン等の遠隔処理デバイスによって実行されると、前記処理デバイスに、
i.前記遠隔処理デバイス上の受信機を介して前記圧力データを持続的に取得することと、
ii.前記請求項のいずれかに記載の方法を実行することと
を行わせる、コンピュータプログラムと
を備える、感知システム。
【請求項13】
前記コンピュータプログラムは、命令を有し、前記命令は、前記遠隔処理デバイスによって実行されると、前記処理デバイスに、前記遠隔処理デバイスの画面上に瞬間的なおよび/または累積的な計算された力および/または作業量データを表示させる、請求項12に記載の呼吸感知システム。
【請求項14】
対象の呼吸を運動させ、分析するための呼吸訓練および検査システムであって、
気息ユニットであって、
マウスピースであって、
調節可能な吸入空気流抵抗を有する少なくとも1つの吸入気道と、
調節可能な吐出空気流抵抗を有する少なくとも1つの吐出気道と
に接続される、マウスピースと、
電子センサユニットであって、
前記マウスピース内の空気圧を測定するための少なくとも1つの圧力センサと、
圧力データを伝送するための処理ユニットと
を備える、電子センサユニットと
を備える、気息ユニットと、
コンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、命令を有し、前記命令は、スマートフォン等の遠隔処理デバイスによって実行されると、前記処理デバイスに、
前記遠隔処理デバイス上の受信機を介して前記圧力データを持続的に取得することと、
前記請求項のいずれかに記載の方法を実行することと
を行わせる、コンピュータプログラムと
を備える、呼吸訓練および検査システム。
【請求項15】
前記コンピュータプログラムは、命令を有し、前記命令は、前記遠隔処理デバイスによって実行されると、前記処理デバイスに、前記遠隔処理デバイスの画面上に瞬間的なおよび/または累積的な計算された力および/または作業量データを表示させる、請求項14に記載の呼吸訓練および検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、呼吸訓練および検査のためのシステムおよびコンピュータ実装方法に関する。システムが、マウスピース内の対象の呼吸圧力を測定し、圧力データを遠隔処理デバイスに伝送し、呼吸訓練強度および呼吸筋のパフォーマンスの計算のために該圧力データを持続的に処理するために構成される。
【背景技術】
【0002】
呼吸訓練は、呼吸筋、すなわち、能動的吸気および/または能動的呼気に関与する筋肉の機能を改善することを目的とする、具体的な運動を実施するステップとして定義されることができる。呼吸訓練は、吸気訓練および呼気訓練の両方を網羅し、広い範囲の有益な効果をもたらすことが示されている。例えば、吸気訓練は、強さ、力、持久力、および効率の観点から呼吸筋機能を改善することが示されており、労作時の呼吸困難を低減させるために重要であることが証明されている。
【0003】
呼吸運動器は、当技術分野において公知であり、典型的には、吸入および吐出のためのマウスピースと、開口を伴う呼吸経路とを備える。開口は、対象が、呼吸の間に圧力負荷、それによって、呼吸筋訓練刺激を被ることを確実にする。開口は、圧力負荷が、対象の呼吸の強さおよび所望される訓練恩恵のタイプに応じて設定され得るように調節可能であってもよい。
【0004】
米国特許第US 4,221,381号(特許文献1)では、調節構造が、大気へのアクセス開口部のサイズを制御するためにその中の開口部のうちの少なくとも1つのサイズを調整している。空気抵抗は、吸入および吐出の両方に関して同一である。
【0005】
米国特許第US 4,739,987号(特許文献2)では、2つの開口部が、開口部を整合状態に、および整合から外れた状態に被覆する、2つのパーティションのそれぞれの中の開口の使用によって、吸入抵抗および吐出抵抗を調整する。
【0006】
第DE 10 2019 001926号は、訓練の間にユーザの呼吸筋組織から入手された筋電図(EMG)信号に基づいて、ヒトの呼吸を測定および分析するためのシステムを開示する。
【0007】
第US 2009/229611号(特許文献3)は、人工呼吸支援を受ける患者における吸気筋強さ訓練のシステムおよび方法を開示する。
【0008】
これらの先行技術デバイスおよびシステムは、本開示される方法およびシステムによって克服され得る、いくつかの不都合および問題と関連付けられる。特に、公知のデバイスは、ユーザに与えられるフィードバックに関連して、抵抗の制御に関連して、本デバイスの機械的実装に関連して、および圧力等の重要な訓練関連変数の測定に関して限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,221,381号明細書
【特許文献2】米国特許第4,739,987号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/229611号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、圧力負荷、すなわち、所与の開口によって生成される訓練刺激規模が、表面上は、開口を通した空気流のレートに比例し、したがって、所与の流量において、より小さい表面積が、より大きい圧力負荷を生成することを識別している。それによって、同一の圧力負荷が、空気流のレートを変動させることにより、異なる表面積を伴う開口によって生成されることができる。これは、空気流量への変化が、圧力/訓練負荷の変化をもたらすため、先行技術の呼吸訓練ユニットの限界である。
【0011】
先行技術の呼吸訓練ユニットの欠点に直面して、本発明者らは、呼吸訓練ユニットがより正確な呼吸訓練情報を取得するために構成され得る方法と、対象に該訓練情報を提供し、それによって、対象が、瞬間的に、および/または訓練セッション間に、訓練刺激を最適化することを可能にする方法とを認識している。さらに、上記に述べられる流量および圧力負荷等の先行技術の呼吸訓練を査定するためのパラメータとは異なり、本発明者らはまた、呼吸訓練刺激の決定を、呼吸筋力および/または呼吸筋作業量に基づかせることが、これらのパラメータが両方とも多次元的であり、訓練刺激の最も正確な定量化を提供するため、はるかに優れていることも認識している。
【0012】
本開示は、したがって、第1の側面において、事前定義された呼吸抵抗を有する別個の吸入気道および吐出気道を通した対象の気息を表す、データセット内の呼吸訓練強度の計算のためのコンピュータ実装方法であって、方法は、
対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間を計算するステップ、および/または
対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量を計算するステップ
を含む、コンピュータ実装方法に関する。
【0013】
本開示の好ましい実施形態では、個々の対象の呼吸訓練強度の計算は、呼吸訓練ユニットのマウスピースの中に位置する圧力センサ等から持続的に受信されたデータのストリームを使用して行われる、リアルタイムプロセスである。本方法は、訓練の所望のタイプに応じて、吸気筋訓練強度および/または呼気筋訓練強度の計算に適用され得る。
【0014】
持続的に受信されたデータのリアルタイム計算が、訓練刺激の持続的および瞬間的最適化、それによって、訓練セッションの生理学的効果の最適化を可能にする。データは、吸入気道および吐出気道のうちの少なくとも一方と関連して入手される圧力データ対時間を含む、データセットであってもよい。データセットは、例えば、マウスピース内の空気圧を測定するための圧力センサによって取得されている場合がある。
【0015】
訓練刺激は、訓練持続時間、強度、および/または頻度の観点から呼吸筋に過負荷を課すことの結果、さらに、訓練の特異性、例えば、強さ訓練刺激または持久力訓練刺激の結果であると考えられ得る。
【0016】
好ましい実施形態では、本開示される方法は、呼吸筋のピーク呼吸筋力出力を計算するように構成される。呼吸筋のピーク呼吸筋力出力を引き出す圧力負荷が、適合の最も大きく、最も広い範囲(最も汎用性のある刺激)を誘発することが識別されている。各個人が、ユニークなピーク呼吸筋力出力、例えば、その呼吸筋の強さおよび空気流を発生させるためのその能力、具体的には、それぞれ、その最大呼吸圧力(吸気および呼気)および最大呼吸流量(吸気および呼気)によって定義される、最大吸気力出力および/または呼気力出力を有することに留意されたい。
【0017】
さらなる側面では、本開示は、典型的には、吸気気道と、呼気気道とを有する、呼吸訓練または検査デバイスに接続されるために配列される/好適である、呼吸感知システムに関する。本感知システムは、
a.電子センサユニットであって、
i.呼吸訓練および検査デバイスの吸気気道および/または呼気気道内の空気圧を測定するための、少なくとも1つの圧力センサと、
ii.圧力データを伝送するための、処理ユニットと、
を備える、電子センサユニットと、
b.コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、命令を有し、命令は、スマートフォン等の遠隔処理デバイスによって実行されると、処理デバイスに、
i.遠隔処理デバイス上の受信機を介して該圧力データを持続的に取得することと、
ii.本明細書の他所において開示されるような、対象の気息を表す、データセット内の呼吸訓練強度の計算のための方法を実行することと
を行わせる、コンピュータプログラムと、
を備える。
【0018】
呼吸感知システムは、好ましくは、既存の呼吸訓練および/または検査デバイス、すなわち、典型的には、吸気気道と、呼気気道とを有する、デバイス上での改造/配設のために配列され、本開示される電子センサは、吸気および/または呼気圧力データが、本明細書に説明されるアプローチに従って、分析のために取得され得るように配設されることができる。例えば、呼吸感知システムは、呼吸圧力感知、対象の気息を表すデータセット内の呼吸訓練強度の計算、および対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間および/または対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量の計算を可能にし得る。
【0019】
電子センサユニットは、例えば、呼吸訓練および検査デバイスの吸気気道および/または呼気気道内に位置付けられるように適合されてもよい。しかしながら、具体的な実施例では、呼吸感知システムは、呼吸訓練および検査デバイスの吸気気道および/または呼気気道に接続されるために配列される、管状コネクタを備えてもよい。管状コネクタは、好ましくは、該センサユニットがコネクタ部分内の圧力を測定するように、電子センサユニットを含有するように配列される。管状コネクタは、好ましくは、吸気経路および/または呼気経路の端部に接続するように構成される。管状コネクタはさらに、マウスピースを備えてもよい。
【0020】
さらに、さらなる側面では、本開示は、対象の呼吸を運動させ、分析するための呼吸訓練および検査システムであって、
気息ユニットであって、
マウスピースであって、
調節可能な吸入空気流抵抗を有する、少なくとも1つの吸入気道と、
調節可能な吐出空気流抵抗を有する、少なくとも1つの吐出気道と、
に接続される、マウスピースと、
電子センサユニットであって、
マウスピース内の空気圧を測定するための、少なくとも1つの圧力センサと、
圧力データを伝送するための、処理ユニットと、
を備える、電子センサユニットと、
を備える、気息ユニットと、
コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、命令を有し、命令は、スマートフォン等の遠隔処理デバイスによって実行されると、処理デバイスに、
遠隔処理デバイス上の受信機を介して該圧力データを取得すること、好ましくは、該圧力データを持続的に取得することと、
本明細書の他所において開示されるような対象の気息を表すデータセット内の呼吸訓練強度の計算のための方法を実行することと
を行わせる、コンピュータプログラムと
を備える、呼吸訓練および検査システムに関する。
【0021】
マウスピースと、電子機器センサユニットとを伴う、気息ユニットは、好ましくは、
図4-6にも図示されるように、持ち運び可能であり、それによって、実践では、能動的トレーニングの間に使用され得る、個人用呼吸訓練および検査デバイスとして機能する。
【0022】
一実施形態では、電子センサユニットは、圧力データが、例えば、スマートフォンが必ずしもユーザによって携行されていない、例えば、訓練セッションの間に、ある期間、例えば、30分または1~5時間にわたって遠隔処理デバイスへの接続が存在しない場合に、気息ユニット上に記憶され得るように、少なくとも一時的に圧力データを記憶するための、記憶媒体、すなわち、メモリ(RAM)または他の類似のデジタル記憶媒体の形態にあるものを備える。遠隔処理デバイスへの接続が、再確立されると、記憶された圧力データが、気息ユニットから遠隔処理デバイスに伝送されることができる。
【0023】
本開示の好ましい実施形態では、コンピュータプログラムは、命令を有し、命令は、遠隔処理デバイスによって実行されると、処理デバイスに、遠隔処理デバイスの画面上に瞬間的なおよび/または累積的な計算された力および/または作業量データを表示させる。本開示される呼吸訓練および検査システムの使用によって、対象は、データセット内に呼吸訓練強度に関連する正確な情報を取得し得る。
【0024】
本開示される方法に加えて、および/または本開示される呼吸訓練および検査システムの一部として、使用のために好適である、デバイスのある実施例が、2017年7月13日に出願された、第WO 2018/011358号として係属中である、「Respiratory device and system for exercising and analysing respiration of a subject」に開示されている。第WO 2018/011358号は、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本開示の具体的実施形態による、呼吸圧力-流量-力計算のある実施例を示す。
【0026】
【
図2】
図2は、本開示の具体的実施形態による、対象の肺容量に対する対象の最大呼吸圧力のある実施例を示す。
【0027】
【
図3】
図3は、本開示の具体的実施形態による、呼吸訓練および検査システムの概観を示す。
【0028】
【
図4】
図4A-Bは、本開示の具体的実施形態による、2つの個々に調節可能な空気流抵抗を有する、呼吸訓練および検査デバイスを示す。
【0029】
【
図5】
図5A-Dは、本開示のいくつかの実施形態による、呼吸訓練および検査デバイスのある実施形態の異なる外観図を示す。
【0030】
【
図6】
図6A-Cは、本開示のいくつかの実施形態による、呼吸訓練および検査デバイスのある実施形態の異なる外観図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
本明細書で使用されるように、用語「気息」は、吸気および/または呼気から成る、またはそれを含む、気息サイクルの一部を指す。本明細書で使用されるような「気息」は、それによって、潜在的に、例えば、吸気と呼気との間の呼吸休止と組み合わせられる、吸気、呼気、吸気とそれに続く呼気、または呼気とそれに続く吸気から成り得る。
【0032】
本明細書で使用されるように、用語「呼吸筋訓練」(RMT)は、具体的な運動を通して呼吸筋の機能を改善することを目的とする、技法を指す。RMTは、喘息、気管支炎、肺気腫、およびCOPD等の呼吸病状を被る対象を含む、多種多様な対象にとって有益である。しかしながら、RMTはまた、呼吸筋の持久力および/または強さおよび/または力を向上させること等のために、対象のスポーツ訓練の一部でもあり得る。呼吸筋訓練の恩恵は、RMTの実装のための方法およびシステムとともに、McConnell, A.のRespiratory Muscle Training: Theory and Practice. Elsevier, 2013にさらに詳細に説明されている。
【0033】
本明細書で使用されるように、用語「遠隔処理デバイス」は、広義には、物理デバイスとしてだけではなく、例えば、遠隔サーバ、クラウド、またはウェブベースのコンテンツ管理システムを含むものとしても解釈されるべきである。これが、正当なユーザのデバイスであること、すなわち、オンラインサービスのサーバが、含まれないことに留意されたい。好ましくは、遠隔処理デバイスは、電子センサユニットから遠隔にある。しかしながら、対象は、遠隔処理デバイスを保有してもよく、代替として、これは、訓練者または医療専門家が遠隔処理デバイスを保有している場合のように、対象から遠隔に位置してもよい。遠隔処理デバイスの実施例は、上記に述べられる実施例と、また、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、スマートウォッチ、スマートグラス、またはウェアラブルデバイス等のモバイルデバイスとを含む。
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「圧力センサ」は、気体または液体の圧力測定のためのデバイスを指す。圧力センサは、例えば、ゲージ圧センサ、差圧センサ、真空圧力センサ、またはシール型圧力センサ、またはそれらの組み合わせであってもよい。本明細書で使用されるように、圧力センサが、複数の感知ユニットを含み得ること、およびセンサまたは処理ユニットが、複数の感知ユニットからの圧力データに基づいて圧力を計算するように構成されることに留意されたい。
【0035】
詳細な説明
本開示は、正確な呼吸訓練強度情報、すなわち、吸気訓練強度情報および/または呼気訓練強度情報を取得するための方法およびシステムに関する。
【0036】
第1の側面では、本開示は、吸気訓練強度および/または呼気訓練強度等の呼吸訓練強度の計算のためのコンピュータ実装方法に関する。計算は、典型的には、呼吸訓練ユニットを通した対象の気息を表すデータセットに基づき、該デバイスは、好ましくは、事前定義された呼吸抵抗を有する、別個の吸入気道と、吐出気道とを有する。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の少なくとも1回の完全な気息等の、対象の1回の気息の少なくとも一部の呼吸筋力を計算するステップを含む。呼吸筋力は、典型的には、複数の時点にわたって計算され、それによって、呼吸筋力は、対象の少なくとも1回の気息の間または訓練セッションの間等の時間に対して計算され得る。呼吸筋力は、典型的には、瞬間的流量および瞬間的圧力等の瞬間的測定値に基づいて計算される。そのような場合には、呼吸筋力は、力の瞬時の値を表し得るが、しかしながら、呼吸筋力は、代替として、または加えて、平均流量および/または平均圧力等の平均測定値に基づき得る。そのような場合には、呼吸筋力は、所定の時間間隔および/または気息の数にわたる平均圧力を表し得る。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の1回の気息の少なくとも一部、より好ましくは、対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量を計算するステップを含む。呼吸筋作業量はさらに、所定の時間量、気息の数等にわたる、他の長さにわたって、または訓練セッション全体またはその一部にわたって計算されてもよい。
【0039】
本開示の好ましい実施形態では、対象の呼吸訓練強度(力および/または作業量)の計算は、持続的に受信されたデータのストリームを使用して行われる、リアルタイムプロセスである。データは、例えば、該呼吸訓練ユニットの気道内の吸気圧力および/または呼気圧力を測定するために構成される、呼吸訓練ユニットのマウスピースの中に位置する、圧力センサによって取得されてもよい。本方法は、それによって、例えば、所望される訓練恩恵のタイプに応じて、吸気筋訓練強度および/または呼気筋訓練強度の持続的計算に適用可能である。
【0040】
本開示される方法は、ある実施例では、それを通して対象が、吸気筋の訓練、呼気筋の訓練、または両方のタイプの筋肉の訓練が所望されるかどうかを選択し得る、呼吸訓練システムの使用によって実装され得る。該選択に応答して、本システムは、関連のある圧力および/または流量データ、すなわち、吸気および/または呼気に関連するものを取得し、これらの値に基づいて計算を実施してもよい。一般に、取得されたデータは、吸入気道および/または吐出気道を通した対象の気息を表し、好ましくは、気道はそれぞれ、事前定義された呼吸抵抗を有する。
【0041】
本開示のある実施形態では、データセットは、吸入気道および吐出気道のうちの少なくとも一方と関連して入手される、圧力データ対時間を含む。圧力センサが、該圧力センサが吸入気道および吐出気道のうちの少なくとも一方に接続されるように、呼吸訓練ユニットのマウスピースの中に位置してもよい。本開示のさらなる実施形態では、呼吸訓練システムは、異なる圧力範囲を測定するために構成される、複数の圧力センサを備える。呼吸訓練システムは、典型的には、圧力測定によって流量を導出するように構成される。しかしながら、本開示のある実施形態では、呼吸訓練システムは、圧力センサと、流量センサとを備える。したがって、本開示のある実施形態では、データセットは、吸入気道および吐出気道のうちの少なくとも一方と関連して入手された流量対時間を含む。
【0042】
本開示される方法のいくつかの実施形態では、該方法は、呼吸訓練強度の計算に関する。呼吸訓練強度は、いくつかの方法において定量的および/または定性的に決定され、いくつかのパラメータ値によって特徴付けられ得る。例えば、呼吸訓練強度は、気息あたりの平均および/またはピーク呼吸筋力等の呼吸筋力によって、または気息あたりの呼吸筋作業量等の呼吸筋作業量によって説明され得る。
【0043】
力
本開示のさらなる実施形態では、コンピュータ実装方法は、少なくとも1回の気息、事前定義された時間間隔、訓練セッション、および/またはそれらの一部の平均呼吸筋力を計算するステップを含む。コンピュータ実装方法は、例えば、吸気、呼気、または気息(吸気および/または呼気)の間の平均呼吸筋力を計算するように構成されてもよい。
【0044】
本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、少なくとも1回の気息、事前定義された時間間隔、訓練セッション、および/またはそれらの一部のピーク呼吸筋力を計算するステップを含む。コンピュータ実装方法は、例えば、吸気、呼気、または気息(吸気および/または呼気)の間のピーク呼吸筋力を計算するように構成されてもよい。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の複数回の気息の平均ピーク呼吸筋力を計算するステップを含む。コンピュータ実装方法は、例えば、気息毎に、ピーク呼吸筋力を計算するように構成されてもよい。コンピュータ実装方法はさらに、例えば、所定の時間量にわたる訓練セッションの間に、それぞれ、単回の気息から取得された複数のピーク呼吸筋力値に基づいて、それらの平均を計算するように構成されてもよい。
【0046】
本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の少なくとも1回の気息の圧力対時間の呼吸性変化率、および/または対象の少なくとも1回の気息の圧力の最大変化率を計算するステップを含む。圧力の呼吸性変化率は、圧力の吸気性変化率および/または圧力の呼気性変化率であり得る。圧力の呼吸性変化率は、例えば、筋肉が、負荷が課された筋肉収縮の間に強制力(圧力)を提供することが可能である速さに関連する情報を提供し得、すなわち、これは、圧力発生の速度と見なされ得る。
【0047】
MRP
呼吸筋の(最大)圧力発生容量は、流量に依存する。
図1の線A-Bは、圧力負荷と空気流を発生させるための容量との間の線形回帰のある実施例を示す。圧力および流量発生容量は、例えば、対象に、固定された圧力負荷または流動抵抗の範囲に対する最大吸気労力において一連の吸気を行うように要求することによって、測定され得る。
【0048】
典型的には、線形に減少する流量(例えば、L・s
-1において測定される)が、圧力負荷(例えば、cmH
2Oにおいて測定される)の増加とともに認められる。数学的および生理学的に、圧力および流量の積は、力である。故に、吸気筋および/または呼気筋の呼吸筋力は、上記に説明されるように推定されることができる。ピーク呼吸筋力(
図1のC)は、典型的には、圧力-流量関係の中間点において生じる。したがって、最大力の生産のための最適な流量(
図1のD)および圧力(
図1のE)は、それぞれ、AおよびBにおける値の50%である。
【0049】
吸気筋および/または呼気筋等の呼吸筋の流量発生容量と最大圧力発生容量との間の依存性が、上記に説明されるように決定され得るが、それを推定する代替的方法は、吸気筋および/または呼気筋の最大圧力発生容量対流量の勾配が、健康な人間では比較的に均一であり、典型的には、約17.5単位であるという事実に基づく。故に、
図1に示されるように、最大流量発生容量と圧力との間の関係を記述する線、すなわち、線A-B上の任意の点における圧力が、単一の圧力負荷における吸気および/または呼気の間にユーザによって発生される、流量を測定することによって推定されることができる。対象は、任意の呼吸抵抗設定、すなわち、任意の圧力負荷に設定される呼吸訓練ユニット等を使用してもよい。例えば、最大吸気圧力または最大呼気圧力等の最大呼吸圧力(MRP)が、呼吸訓練ユニットの具体的な呼吸圧力設定(圧力負荷)における流量および呼吸圧力を測定し、その後、以下、すなわち、
【化1】
によってMRPを導出することによって推定され得、式中、MRPは、最大(静的)呼吸圧力であり、
【化2】
であり、
【化3】
であり、R
Pは、呼吸圧力定数であり、典型的には、17.5である。
【0050】
本開示のある実施形態では、呼吸圧力定数は、13~22、より好ましくは、16~19、最も好ましくは、17.5等の、10~25である。
【0051】
その結果、最大吸気圧力(MIP)が、最大吸気労力において、かつ設定圧力負荷において、流量および吸気圧力を測定し、その後、上記に述べられる公式を通してMIPを計算することによって、推定され得る。同様に、最大呼気圧力(MEP)も、最大呼気労力において、かつ設定圧力負荷において、流量および呼気圧力を測定し、その後、上記に述べられる公式によってMEPを計算することによって、推定され得る。
【0052】
それによって、本開示のいくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、呼吸圧力定数と、設定圧力負荷等における、対象の最大呼吸労力において取得された流量とを乗算し、その後、該最大呼吸において測定された圧力値を加算することによって、対象の最大呼吸圧力を計算するステップを含む。
【0053】
本開示の別の実施形態では、コンピュータ実装方法は、呼吸圧力定数と、設定圧力負荷等における、対象の最大吸気労力において取得された流量とを乗算し、その後、該最大吸気において測定された圧力値を加算することによって、対象の最大吸気圧力を計算するステップを含む。
【0054】
本開示の別の実施形態では、コンピュータ実装方法は、呼吸圧力定数と、設定圧力負荷等における、対象の最大呼気労力において取得された流量とを乗算し、その後、該最大吸気において測定された圧力値を加算することによって、対象の最大呼気圧力を計算するステップを含む。
【0055】
17.5の呼吸定数が、典型的には、平均的な健康な対象の呼吸値を計算するための使用のためには正確であるが、他の値の呼吸定数が、例えば、対象の呼吸の強さ、年齢、体重、身長、性別、体力、および/または喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の任意の既存の医学的病状に応じて、より好適であり得ることに留意されたい。しかしながら、呼吸定数RPが、10~25、より好ましくは、12.5~22.5、さらにより好ましくは、15~20、またさらにより好ましくは、16~19、なおもまたさらにより好ましくは、17~18、最も好ましくは、17.5であることが著しく好ましい。
【0056】
本開示の具体的実施形態では、呼吸定数RPは、対象の年齢、体重、身長、性別、体力、および/または既存の医学的病状、または少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間および/または少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量対時間等の対象の呼吸測定値を含む、対象の呼吸能力に影響を及ぼし得る、任意の性質等の対象の1つまたはそれを上回る呼吸性質に基づいて推定される。本開示の方法は、例えば、回帰モデルまたは機械学習モデルに基づいて対象の呼吸定数を推定するステップを含んでもよく、該モデルは、例えば、各訓練データセットが、測定された呼吸定数、個人の呼吸性質、および/または少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間および/または少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量対時間等の個人の呼吸測定値を含む、いくつかの訓練データセットに基づいて訓練されている場合がある。
【0057】
例えば、呼吸訓練ユニットの所与の抵抗設定(設定圧力負荷)において測定された圧力および流量が、それぞれ、100cmH2Oおよび0.5l・sec-1である場合、最大吸気圧力は、以下、すなわち、
MIP=(0.5・17.5)+100=109cmH2O
によって求められ得、式中、17.5は、呼吸圧力定数として使用される。
【0058】
MRF
最大呼吸圧力を決定するための類似の原理がさらに、最大吸気流量(MIF)および/または最大呼気流量(MEF)等の最大呼吸流量(MRF)を決定するために使用され得る。最大呼吸流量の直接測定値(すなわち、ゼロの圧力負荷におけるもの)が、典型的には、有意な正確度問題と関連付けられ、代わりに、より高い圧力負荷における最大呼吸流量を決定するステップが、一般に、より高い正確度を提供する。最大呼吸流量は、具体的な圧力負荷(例えば、呼吸訓練ユニットの呼吸抵抗設定)における、最大呼吸労力における流量および圧力を決定し、その後、以下の公式、すなわち、
【化4】
を通してMRFを導出することによって、推定され得、式中、
【化5】
であり、
【化6】
である。同様に、最大吸気流量(MIF)および/または最大呼気流量(MEF)は、それぞれ、設定圧力負荷における、最大吸気労力または呼気労力における流量および圧力を測定することによって、同一の公式によって推定され得る。
【0059】
本開示のある実施形態では、コンピュータ実装方法は、設定圧力負荷における、対象の最大呼吸労力において測定された圧力を呼吸流量定数で除算し、その後、該最大呼吸において測定された流量値を加算することによって、対象の最大呼吸流量を計算するステップを含む。同様に、本開示のさらなる実施形態では、コンピュータ実装方法は、設定圧力負荷における、対象の最大吸気労力において測定された圧力を呼吸流量定数で除算し、その後、該最大吸気において測定された流量値を加算することによって、対象の最大吸気流量を計算するステップを含む。さらに、本開示の別の実施形態では、コンピュータ実装方法は、設定圧力負荷における、対象の最大呼気労力において測定された圧力を呼吸流量定数で除算し、その後、該最大呼気労力において測定された流量値を加算することによって、対象の最大呼気流量を計算するステップを含む。
【0060】
例えば、呼吸訓練システムの所与の設定(設定圧力負荷)において測定された圧力および流量が、それぞれ、15cmH2Oおよび7.5l・sec-1である場合、最大吸気圧力は、以下、すなわち、
PIF=7.5+(15/17.5)=8.35l・sec-1
によって求められ得、式中、17.5は、呼吸圧力定数として使用される。
【0061】
勾配
本開示のいくつかの実施形態では、コンピュータ実装方法は、2つの異なる呼吸抵抗(圧力負荷)において該最大呼吸流量および圧力を測定し、その後、該勾配を計算することによって、対象の最大呼吸流量と圧力との間の関係を記述する、傾きの勾配を計算するステップを含む。
【0062】
呼吸筋の最大圧力発生容量を説明する線(例えば、
図1の線A-B)の勾配(傾き)は、2つの別個の圧力負荷、例えば、呼吸訓練システムの2つの異なる呼吸抵抗設定における圧力および流量を測定し、その後、以下の公式、すなわち、
【化7】
を通して勾配を導出することによって、決定され得、式中、
【化8】
であり、
【化9】
であり、P
F=圧力負荷Fにおいて測定された圧力であり、P
A=圧力負荷Aにおいて測定された圧力であり、FおよびAは、例えば、呼吸訓練システムの2つの異なる呼吸抵抗設定において取得された、2つの別個の圧力負荷である。勾配は、好ましくは、対象の最大吸気労力または呼気労力の間に取得された圧力値および流量値に基づいて計算され、例えば、勾配は、対象の最大呼気労力の間の圧力と流量との間の関係または対象の最大吸気の間の圧力と流量との間の関係のいずれかを説明することができる。
【0063】
例えば、呼吸訓練システムが、第1の圧力負荷に対応する、呼吸抵抗設定Aに設定されてもよい。該圧力負荷における対象の最大吸気(または呼気)労力において、圧力および流量が、それぞれ、15cmH2Oおよび7.5l・sec-1に対して測定される。その後、呼吸訓練システムは、第2の圧力負荷に対応する、呼吸抵抗設定Fに設定されてもよい。該圧力負荷における対象の最大吸気(または呼気)労力において、圧力および流量が、それぞれ、100cmH2Oおよび0.5l・sec-1に対して測定される。勾配は、その結果、勾配=(100-15)/(7.5-0.5)=12.14によって求められる。
【0064】
本開示の好ましい実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間を計算するステップを含む。呼吸筋力対時間は、ひいては、1つまたはそれを上回る訓練強度インジケータを導出するために使用されてもよい。例えば、その時間間隔の間の(瞬間的)呼吸筋力の最高値である、気息あたりまたは任意の他の間隔あたりのピーク呼吸筋力である。(瞬間的)呼吸筋力は、(瞬間的)流量および圧力の積である。さらに、平均呼吸筋力は、気息あたりまたは任意の他の間隔あたりで計算されてもよい。平均呼吸筋力は、例えば、気息または任意の他の間隔の全体を通した(瞬間的)力の平均値として計算されてもよい。本開示のある実施形態では、コンピュータ実装方法は、気息または該他の間隔あたりの最高(瞬間的)呼吸筋力値を計算することによって、気息、または事前定義された時間間隔、呼吸訓練セッション、またはそれらの一部等の任意の他の間隔あたりのピーク呼吸筋力(PRP)を計算するように構成される。本開示の別の実施形態では、コンピュータ実装方法は、気息または該他の間隔あたりの(瞬間的)呼吸筋力の平均値を計算することによって、気息、または事前定義された時間間隔、呼吸訓練セッション、またはそれらの一部等の任意の他の間隔あたりの平均呼吸筋力を計算するように構成される。
【0065】
本開示のさらなる実施形態では、コンピュータ実装方法は、気息あたりのピーク呼吸筋力(PRP)および/または気息あたりの平均呼吸筋作業量のセッション平均を計算するように構成される。セッションの長さは、事前定義された時間量、事前定義された数の運動、事前定義された気息の数、および/または疲労が識別されるまでの時間であり得る。
【0066】
本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、最大呼吸圧力の半分と最大呼吸流量の半分とを乗算することによって、対象のピーク呼吸筋力を推定するステップを含む。対象の理論的ピーク呼吸筋力が、最大呼吸圧力のほぼ半分および最大呼吸流量のほぼ半分において生じ、したがって、これらの値が、理論的ピーク呼吸筋力の良好な近似を可能にすることが識別されている。本開示の好ましい実施形態では、コンピュータ実装方法は、それぞれ、最大吸気圧力および/または最大呼気圧力等の最大呼吸圧力を、それぞれ、最大吸気流量および/または最大呼気流量等の最大呼吸流量と、ピーク呼吸筋力係数とで乗算することによって、最大吸気力および/または最大呼気力等のピーク呼吸筋力を計算するように構成され、ピーク呼吸筋力係数は、0.1~0.4、より好ましくは、0.15~0.35、さらにより好ましくは、0.2~0.3、最も好ましくは、0.25である。それによって、ピーク呼吸筋力は、以下、すなわち、
PRP=MRF・MRP・FP(4)
によって計算され得、式中、PRPは、ピーク呼吸筋力であり、MRFは、最大呼吸流量であり、MRPは、最大呼吸圧力であり、FPは、ピーク呼吸筋力係数であり、典型的には、0.25である。
【0067】
対象固有の力標的
本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、少なくとも1回の気息、所定の時間量、訓練セッション、またはそれらの一部にわたる、対象固有の呼吸筋力標的を計算するステップを含む。該計算は、ピーク呼吸筋力の割合等の、対象の標的呼吸筋力に対する呼吸筋力対時間に基づき得る。対象固有の力標的は、例えば、50%、60%、または80%等のピーク呼吸筋力の所定の割合であり得る。呼吸訓練システムは、例えば、本システムを使用して、(持続的に更新される)気息あたりのピーク呼吸筋力または訓練セッションの間の気息あたりの平均呼吸筋力とともに、対象固有の力標的を対象に表示するように構成されてもよい。
【0068】
対象固有の力係数
本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象のピーク呼吸筋力に対する対象の複数回の気息の平均ピーク呼吸筋力に基づいて、対象固有の呼吸筋力係数を計算するステップを含む。対象固有の力係数は、それによって、対象が対象固有の最大、すなわち、ピーク呼吸筋力に達することに接近している程度のインジケーションを与える。
【0069】
対象固有の呼吸筋力係数は、対象固有の吸気力係数および/または対象固有の呼気力係数であり得る。例えば、対象固有の吸気力係数は、対象の最大吸気力に対する対象の複数回の気息の平均最大吸気力に基づいて計算され得る。加えて、または代替として、対象固有の呼吸筋力係数は、対象の最大呼気力に対する対象の複数回の気息の平均最大呼気力に基づいて計算される、対象固有の呼気力係数であり得る。
【0070】
作業量
呼吸筋(吸気筋および呼気筋)の最大圧力発生容量が、肺容量を横断して変動する(
図2)。所与の肺容量において、呼吸圧力(P)が、以下の方程式、すなわち、
P=MRP-MRP・(V
2+2・V)/(V
INMAX
2+2・V
INMAX)(5)
を使用して計算されることができ、MRPは、最大[静的]呼吸圧力(または、例えば、負荷が課された呼吸労力の間に測定された最大呼吸流量および/または流量からの推論値)であり、
Vは、一般的肺容量であり、
V
INMAXは、最大吸入容積(すなわち、肺活量)である。
【0071】
理論的最大作業量容量の推定
単回の気息にわたる最大達成可能作業量は、容積に対する最大圧力の積分(
図2に描写される曲線下の面積)であり、W
MAX、すなわち、
W
MAX=∫
VCPdV(6)
W
MAX=MRP・[(2/3・V
INMAX
2+V
INMAX)/(V
INMAX+2)](7)
によって求められる。
【0072】
MRP=160cmH2Oであり、VINMAX=4.6Lである場合、気息にわたる最大達成可能作業量は、WMAX=453cmH2O・Lである。
【0073】
例えば、30回の気息訓練セッションにわたって、総最大理論的予測作業量は、以下、すなわち、
WMAXTOT=30・453=13,590cmH2O・L
WMAXTOT=0.090665cmH2O・L/ジュール・13,590cmH2O・L=1,232ジュール
の通りである。
注記:0.090665は、cmH2O・Lをジュールに転換する定数である。
【0074】
典型的状況では、最大達成可能呼吸筋作業量は、(理論的)WMAXより低い。この1つの理由は、上記において求められるようなWMAXを計算するための方程式が、静的吸気筋強さに基づくことである。圧力発生容量(動的強さ)は、典型的には、大幅により低い。別の理由は、疲労の影響に起因して、訓練セッション全体にわたってWMAXの100%において作業することは、典型的には、可能ではないことである。故に、リアルタイム訓練強度標的を設定し、かつ訓練セッション品質を遡及的に評価するために、理論的WMAXの係数が、生理学的最大作業量容量(WMAXphys)を近似するために使用され得る。言い換えると、動的に気息する人間の作業量容量は、その理論的最大作業量容量のある割合であると仮定される。0.5のWMAXが、30等の所与のセッション内で完了される、いくつかの気息にわたるWMAXphysの良好な近似値であることが示されている。該割合は、0.1~0.9、より好ましくは、0.2~0.8、さらにより好ましくは、0.3~0.7、またさらにより好ましくは、0.4~0.6、最も好ましくは、0.5であり得る。
【0075】
ある気息にわたる生理学的最大作業量容量は、以下、すなわち、
WMAXphys=0.5・MRP・[(2/3・VINMAX
2+VINMAX)/(VINMAX+2)](8)
によって計算され得、ある訓練セッションにわたる生理学的最大作業量容量は、以下、すなわち、
WMAXphysTOT=0.5・n・MRP・[(2/3・VINMAX
2+VINMAX)/(VINMAX+2)](9)
によって求められ、式中、nは、訓練セッション内の気息の数である。本明細書の他所においても説明されるように、生理学的最大作業量容量は、典型的には、気息、すなわち、吸気、呼気、または吸気および呼気、または複数の気息、すなわち、複数の吸気、複数の呼気、または複数の吸気および呼気にわたって計算される。
【0076】
ARW
本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の少なくとも1回の気息にわたる累積呼吸筋作業量を計算するステップを含む。本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の少なくとも1回の気息にわたる累積呼吸筋作業量対時間を計算するステップを含む。累積呼吸筋作業量が、累積吸気作業量および/または累積呼気作業量のいずれかであり得ることに留意されたい。累積呼吸筋作業量は、典型的には、0.5である、生理学的最大作業量容量を計算するための0~1の係数を含んでもよい。
【0077】
気息あたりの呼吸筋作業量(W
B)が、時間に対する測定された呼吸筋力(圧力・流量)を積分する、すなわち、サンプル毎に圧力および流量の積を合算し、次いで、総和とサンプル間隔とを乗算することによって、計算され得る。代替として、W
Bは、容積に対する圧力の積分(
図2の曲線下の面積)として計算されることができる。気息あたりの呼吸筋作業量は、気息あたりの吸気作業量および/または気息あたりの呼気作業量であってもよく、本方法はさらに、訓練セッションの気息毎の作業量を合算することによる気息あたりの作業量に基づいて、訓練セッションにわたる累積作業量を計算するステップを含んでもよい。
【0078】
本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の複数回の気息の平均呼吸筋作業量を計算するステップを含む。平均呼吸筋作業量が、平均吸気作業量および/または平均呼気作業量のいずれかであり得ることに留意されたい。本明細書の他所において説明されるように、気息あたりの平均呼吸筋作業量は、サンプル毎の圧力および流量の積を合算し、次いで、総和とサンプリング間隔とを乗算することによって導出され得る。代替として、WBは、容積に対する圧力の積分として計算され得る。
【0079】
本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の1回の気息にわたる最大呼吸筋作業量容量に基づいて、少なくとも1回の気息の対象固有の作業量標的を計算するステップを含む。最大呼吸筋作業量容量は、例えば、典型的には、0.5である、係数と乗算された最大呼吸筋作業量容量等の、生理学的呼吸筋作業量容量に基づき得る。対象固有の作業量標的は、好ましくは、生理学的呼吸筋作業量容量の対象固有の作業量係数である。作業量係数は、対象固有の作業量標的が、対象の訓練強度標的を反映するように、例えば、50%、70%、または90%であり得る。対象固有の作業量標的(TW)は、以下の公式、すなわち、
TW=F×0.5×MRP×[(2/3・VINMAX
2+VINMAX)/(VINMAX+2)](10)
で計算され得、式中、Fは、対象固有の作業量係数であり、0.5は、生理学的呼吸筋作業量容量を計算するための係数として使用されている。訓練のタイプ(吸気訓練、呼気訓練、または吸気および呼気訓練)に応じて、対象固有の作業量標的は、吸気データ、呼気データ、または両方に基づき得る。
【0080】
対象固有の作業量フィードバック
本開示の具体的実施形態では、コンピュータ実装方法は、対象の少なくとも1回の気息にわたる最大呼吸筋作業量容量に対する累積呼吸筋作業量対時間に基づいて、少なくとも1回の気息の対象固有の作業量フィードバックを計算するステップを含む。最大呼吸筋作業量容量は、例えば、生理学的呼吸筋作業量容量、すなわち、典型的には、0.5である、補償係数と乗算された、最大呼吸筋作業量容量であり得る。対象固有の作業量フィードバック(FW)は、FW=100×WA/WMAXphysTOT(11)によって計算され得、式中、WAは、典型的には、訓練セッションの累積呼吸筋作業量であり、WMAXphysは、該訓練セッションの生理学的呼吸筋作業量容量、すなわち、生理学的呼吸筋作業量容量×訓練セッションの気息の数である。
【0081】
本開示の具体的実施形態では、対象固有の作業量フィードバックを計算するステップは、複数回の気息の最大呼吸筋作業量容量に対する対象の該複数回の気息の累積呼吸筋作業量に基づく。対象固有の作業量フィードバックは、公式FW=100×WTOT/WMAXphysTOTによって計算され得、例えば、所望の訓練タイプに応じて、吸気作業量、呼気作業量、またはそれらの組み合わせに基づき得る。
【0082】
本方法はさらに、対象固有の作業量フィードバックを、低、中、および高等の強度評価に分類するように構成されてもよい。例えば、35未満のFWは、評価=「低」をもたらし、35~65のFWは、評価=「中」をもたらし、65を上回るFWは、評価=「高」をもたらす。
【0083】
呼吸感知システム
さらなる側面では、本開示は、呼吸感知システムに関する。呼吸感知システムは、呼吸訓練および検査デバイスの改造のために構成されてもよい。呼吸感知システムは、電子センサユニットおよび/またはソフトウェアアプリケーション、すなわち、コンピュータプログラム(製品)を備えてもよい。本開示のある実施形態では、電子センサは、少なくとも1つの圧力センサと、処理ユニットとを備える。呼吸感知システムは、単一の圧力センサまたは異なる測定範囲および/または分解能を有する、複数の圧力センサを備えてもよい。少なくとも圧力センサは、好ましくは、呼吸訓練および検査デバイスの吸気気道および/または呼気気道内の空気圧を測定するために適合される。したがって、圧力センサのサイズは、好ましくは、圧力センサが、空気流を妨害することなく呼吸訓練および検査デバイスの吸気気道および/または呼気気道によって収容され得るように十分に小さい。電子センサユニットはさらに、圧力データを無線で伝送すること等のための圧力データを伝送するための処理ユニットを備えてもよい。
【0084】
本開示の好ましい実施形態では、電子センサユニットは、気息ユニットの筐体に取外可能に搭載される。好ましくは、気息ユニットと電子センサユニットとの間の取付接続は、気密性である。取外可能な電子センサユニットは、例えば、気息ユニットのメインユニットにスナップ嵌合するための手段を備えてもよい。それによって、取外可能な電子センサユニットは、オス型部等のスナップ接続の1つの部分を備えてもよく、メインユニットは、メス型部分等のスナップ接続の別の部分を備えてもよい。
【0085】
本開示の好ましい実施形態では、呼吸感知システムは、スマートフォン等の遠隔処理デバイス上で実行可能なソフトウェアアプリケーションを備える。すなわち、スマートフォン等の遠隔処理デバイスによって実行可能な命令を有する、コンピュータプログラム(製品)に類似する。ソフトウェアアプリケーション/コンピュータプログラムは、好ましくは、遠隔処理デバイス上の受信機を介して圧力データを持続的に取得するため、および/または本明細書の他所において開示されるような、対象の気息を表すデータセット内の呼吸訓練強度の計算のための方法を実行するために構成される。
【0086】
呼吸感知システムは、好ましくは、呼吸訓練およびデバイスの改造のために配列される。例えば、呼吸感知システムは、呼吸圧力感知、対象の気息を表すデータセット内の呼吸訓練強度の計算、および対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間および/または対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量の計算を可能にし得る。
【0087】
電子センサユニットは、例えば、呼吸訓練および検査デバイスの吸気気道および/または呼気気道内に位置付けられるように適合されてもよい。しかしながら、具体的実施例では、呼吸感知システムは、呼吸訓練および検査デバイスの吸気気道および/または呼気気道に接続されるために配列される、管状コネクタを備えてもよい。管状コネクタは、好ましくは、該センサユニットがコネクタ部分内の圧力を測定するように、電子センサユニットを含有するように配列される。管状コネクタは、好ましくは、吸気経路および/または呼気経路の端部に接続するように構成される。管状コネクタはさらに、マウスピースを備えてもよい。
【0088】
呼吸訓練および検査システム
さらに、さらなる側面では、本開示は、対象の呼吸筋に運動させ、分析するための呼吸訓練および検査システムに関する。呼吸筋訓練および検査システムは、典型的には、吸気、呼気、または両方を実施すること等、それを通して対象が気息し得る、気息ユニットを備える。気息ユニットは、マウスピース、電子センサ、および/またはソフトウェアアプリケーションを備えてもよい。マウスピースが、少なくとも1つの気道、より好ましくは、少なくとも1つの吸気(吸入)気道と、呼気(吐出)とに接続されることが好ましい。気道が、調節可能な吸入空気流抵抗を有する、少なくとも1つの吸入気道および調節可能な吐出空気流抵抗を有する、少なくとも1つの吐出気道等の調節可能な空気流抵抗を有し、すなわち、したがって、吸入空気流抵抗が、吐出気道抵抗から独立して調節され得、逆もまた同様であることがさらに好ましい。電子センサユニットは、空気圧を測定するための少なくとも1つの圧力センサを備えてもよく、センサユニットは、例えば、マウスピース内の空気圧を測定するように構成されてもよく、加えて、または代替として、電子センサは、吸入気道および/または吐出気道等の気道内の空気圧を測定するように構成されてもよい。
【0089】
図1は、対象の呼吸を運動させ、分析するための本開示される呼吸訓練および検査システムの一般的概念を示す。示されるように、本システムは、好ましくは、吸入された空気および吐出された空気上に個々に調節可能な空気流抵抗を伴う、気息ユニット(2)を備えてもよい。気息ユニットは、好ましくは、マウスピース内に、空気圧および/または時間および/または持続時間および/または空気流抵抗設定等の運動セッションデータを測定する、電子センサユニットを保持する。電子センサユニットは、一実施形態では、ローカルで測定されたデータを記憶してもよい。ユニット(2)はまた、事前定義された呼吸抵抗を有する別個の吸入気道および吐出気道を通した気息等の対象の気息を表す、データセットを含む、いくつかのローカル計算を実施してもよい。データおよび/または計算は、流量と、圧力と、力と、作業量と、呼吸容積逸脱と、呼吸筋強さとを含み得る。同一の計算が、代替として、または加えて、携帯電話等の遠隔処理デバイス(3)上で実施されてもよい。本システムは、好ましくは、遠隔処理デバイス(3)のディスプレイ上にテキストまたはグラフィックスを表示することによって、遠隔処理デバイスおよび/または触知可能なインジケータまたは遠隔処理デバイスのオーディオによって、そのスピーカによって等、対象(1)に呼吸運動フィードバックを提供するように構成される。運動データ記憶装置、データ分析、セッション推奨、および設定が、気息ユニットまたは遠隔処理デバイス等の本システム自体の上、および/または接続されるプラットフォーム(4)上の両方に位置することができる。
【0090】
図4A-Bは、口への気密性接続を生成し、本デバイスを通した気息を可能にするマウスピース5を備える、気息ユニットのある実施例の実施形態を開示する。
図4の気息ユニットは、スマートフォン3と、気息ユニット2と、ユーザの頭部1との間の
図3のサイズ比較から分かるように、明確に持ち運び可能である。気息ユニットは、
図4Aの矢印によっても示されるように、吸入された空気が1つの調節可能な抵抗8を通して通過し、吐出された空気が別の調節可能な抵抗9を通して通過するように空気流を制御する、2つの一方向弁8、9を備える、弁筐体6を備える。2つの調節可能な抵抗インターフェース8、9は、厳密な通気道浄化に対応する、事前定義された設定を含んでもよい。ユーザは、これらの設定を調節し、本デバイス上の設置値を読み取ってもよい。弁筐体6の内側に接続される圧力計を備え得る、電子ユニット7が、本デバイス上に搭載される。
図4Bは、電子ユニット7が弁筐体7から搭載解除される状況を示す。それによって、弁筐体は、完全に洗浄されることができる。これは、同一の電子ユニット7とともに別の弁筐体を併用することも可能にする。
【0091】
本開示の好ましい実施形態では、呼吸訓練および検査システムは、圧力データを伝送するために構成される、処理ユニットを備える。圧力データは、本明細書の他所において開示されているように、例えば、マウスピースおよび/または少なくとも1つの気道内に位置する、少なくとも1つの電子センサによって取得されている場合がある。処理ユニットは、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-FiTM、またはモバイルブロードバンド等の無線通信規格を経由して通信するように構成されてもよい。本開示の具体的実施形態では、呼吸訓練および検査システムは、スマートフォン等の遠隔処理デバイス上で実行可能なソフトウェアアプリケーションを備える。ソフトウェアアプリケーションは、遠隔処理デバイス上の受信機を介して圧力データを持続的に取得するステップと、事前定義された呼吸抵抗を有する別個の吸入気道および吐出気道を通した対象の気息を表すデータセット等のデータセット内の呼吸訓練強度の計算のためのコンピュータ実装方法を実行するステップとを実行するために構成されてもよい。
【0092】
本開示の具体的実施形態では、ソフトウェアアプリケーションは、遠隔処理デバイスの画面上に瞬間的なおよび/または累積的な計算された力および/または作業量データを表示するために構成される。ソフトウェアアプリケーションは、加えて、または代替として、本明細書の他所において開示されるように、呼吸圧力および/または呼吸筋作業量および/または力に基づいて、呼吸訓練強度、対象固有の呼吸能力、対象固有の標的レベル、対象固有のフィードバックの任意のタイプのインジケータを表示するように構成されてもよい。例えば、ソフトウェアアプリケーションは、対象固有の作業量フィードバック、対象固有の呼吸筋力標的、平均呼吸筋作業量、累積呼吸筋作業量、平均ピーク呼吸筋力、計算された(測定された、または理論的)ピーク呼吸筋力、計算された(測定された、または理論的)最大呼吸流量、計算された(測定された、または理論的)最大呼吸圧力、および/または圧力の呼吸性変化率を表示するために構成されてもよく、該パラメータは、リアルタイム値、平均化された値、または累積値のいずれかであってもよく、さらに、1回またはそれを上回る吸気、1回またはそれを上回る呼気、および/または1回またはそれを上回る吸気および呼気の測定値またはそれを反映するように計算された値に基づき得る。
【0093】
本開示のさらなる実施形態では、遠隔処理デバイスは、電気通信等によって遠隔サーバと通信するための処理ユニットおよび/またはアンテナを備える。ソフトウェアアプリケーションは、好ましくは、遠隔サーバへの呼吸訓練データの伝送を実行するために構成される。呼吸訓練情報は、好ましくは、例えば、呼吸筋力および/または呼吸筋作業量に関連する、完了された呼吸訓練セッションの計算されたパラメータを含む。呼吸訓練情報は、好ましくは、平均呼吸筋力、ピーク呼吸筋力、圧力の最大変化率、平均ピーク呼吸筋力、対象固有の呼吸筋力標的、最大呼吸圧力、最大呼吸流量、対象固有の力係数、累積呼吸筋作業量、平均呼吸筋作業量、対象固有の作業量フィードバック、および/または対象固有の作業量標的を含む。
【0094】
遠隔サーバは、好ましくは、複数の対象から受信された呼吸訓練情報をリーダボードの中に配列するように構成される。遠隔サーバはさらに、呼吸訓練情報のパラメータの組み合わせに基づいて、受信された呼吸訓練情報毎にスコアを計算するように構成されてもよい。
【0095】
本開示の好ましい実施形態では、ソフトウェアアプリケーションは、リーダボードと、遠隔サーバによって各呼吸訓練情報に提供されるスコアおよび/または呼吸訓練情報の1つまたはそれを上回るパラメータ等の関連付けられるデータとを読み出すように構成される。
【0096】
本開示のさらなる実施形態では、ソフトウェアアプリケーションは、年齢、体重、身長、性別、体力、および/または喘息または慢性閉塞性肺疾患等の対象の既存の医学的病状、または少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間および/または少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量対時間等の対象の呼吸測定値を含む、対象の呼吸能力に影響を及ぼし得る、任意の性質等の対象の呼吸性質に基づいて、具体的な訓練ルーチンを提案するように構成される。本開示の方法は、例えば、回帰モデルまたは機械学習モデルに基づいて最高訓練刺激を提供する、訓練ルーチンを予測するステップを含んでもよく、該モデルは、例えば、各訓練データセットが、測定された呼吸定数、個人の呼吸性質、および/または個人の呼吸測定値を含む、いくつかの訓練データセットに基づいて訓練されている場合がある。
【0097】
2つの個々に/独立して制御可能な抵抗ユニットを伴う気息デバイスの別の実施形態が、
図5に示される。
図5は、異なる視認角からの外観図のみを示し、
図5Aは、斜視図であり、
図5Bは、抵抗ユニット8のうちの1つを直接見ている、側面図であり、
図5Cは、マウスピース18およびマウスピース気道1の中を見ている、図であり、
図5Dは、取外可能な電子ユニット13が見え得る、上面図であり、
図5Dは、取外可能な電子ユニット13を直接見ている、正面図である。取外可能な電子ユニット13は、電子ユニット13が使用の間に筐体26にしっかりと取り付けられるが、洗浄目的のために取り外され得るように、スナップ嵌合配列を用いてデバイス筐体26に取り付けられる。
【0098】
本開示の別の実施形態による気息デバイスが、
図6に示される。
図6Aは、取外可能な電子ユニット13が見え得る、上面図である。
図6Bは、抵抗ユニット8のうちの1つを直接見ている、側面図であり、
図6Aは、斜視図である。
図5および6の気息デバイスはまた、マウスピース18がヒトの口と嵌合するため、明確に持ち運び可能である。
【0099】
項目
1.事前定義された呼吸抵抗を有する吸入気道および/または吐出気道を通した対象の気息を表す、データセット内の呼吸訓練強度の計算のためのコンピュータ実装方法であって、
対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋力対時間を計算するステップ、および/または
対象の少なくとも1回の気息の呼吸筋作業量を計算するステップ
を含む、コンピュータ実装方法。
2.データセットは、事前定義された呼吸抵抗を有する吸入気道および/または吐出気道を通した対象の気息を表す、前記項目のいずれかに記載の方法。
3.呼吸訓練強度の計算は、持続的に受信されたデータのストリームを使用して行われる、リアルタイムプロセスである、前記項目のいずれかに記載の方法。
4.データセットは、吸入気道および吐出気道のうちの少なくとも一方と関連して入手される、圧力データ対時間を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
5.対象の少なくとも1回の気息の平均呼吸筋力を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
6.対象の少なくとも1回の気息のピーク呼吸筋力を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
7.対象の少なくとも1回の気息の圧力対時間の呼吸性変化率および/または対象の少なくとも1回の気息の圧力の最大変化率を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
8.対象の複数回の気息の平均ピーク呼吸筋力を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
9.ピーク呼吸筋力の割合等の対象の標的呼吸筋力に対する呼吸筋力対時間に基づいて、少なくとも1回の気息にわたる対象固有の呼吸筋力標的を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
10.呼吸圧力定数と対象の最大呼吸において取得された流量とを乗算し、その後、該最大呼吸において測定された圧力値を加算することによって、対象の最大呼吸圧力を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
11.対象の最大呼吸において測定された圧力を呼吸流量定数で除算し、その後、該最大呼吸において測定された流量値を加算することによって、対象の最大呼吸流量を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
12.2つの異なる呼吸抵抗における該最大呼吸流量および圧力を測定し、その後、該勾配を計算することによって、対象の最大呼吸流量と圧力との間の関係を記述する、傾きの勾配を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
13.ピーク呼吸筋力の半分と最大呼吸流量の半分とを乗算することによって、対象のピーク呼吸筋力を推定するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
14.対象のピーク呼吸筋力に対する対象の複数回の気息の平均ピーク呼吸筋力に基づいて、対象固有の力係数を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
15.対象の少なくとも1回の気息にわたる累積呼吸筋作業量対時間を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
16.対象の複数回の気息にわたる平均呼吸筋作業量を計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
17.対象の1回の気息にわたる最大呼吸筋作業量容量に対する、累積呼吸筋作業量対時間に基づいて、少なくとも1回の気息の対象固有の作業量フィードバックを計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
18.該複数回の気息の最大呼吸筋作業量容量に対する、対象の複数回の気息の累積呼吸筋作業量に基づいて、対象固有の作業量フィードバックを計算するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
19.対象の気息を表すデータセット内の呼吸訓練強度の計算のためのシステムであって、システムは、命令を記憶するための非遷移的なコンピュータ可読記憶デバイスを備え、前記命令は、プロセッサによって実行されると、項目1-18のいずれかに従って対象の気息を表すデータセット内の呼吸訓練強度の計算のための方法を実施する、システム。
20.モバイルデバイスであって、プロセッサと、メモリとを備え、項目1-18のいずれかに従って対象の気息を表すデータセット内の呼吸訓練強度の計算のための方法を実施するように適合される、モバイルデバイス。
21.コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、命令を有し、命令は、コンピューティングデバイスまたはシステムによって実行されると、コンピューティングデバイスまたはシステムに、項目1-18のいずれかに従って対象の気息を表すデータセット内の呼吸訓練強度を計算させる、コンピュータプログラム。
22.呼吸訓練または検査デバイスを改造するために配列される、呼吸感知システムであって、
a.電子センサユニットであって、
i.呼吸訓練および検査デバイスの吸気気道および/または呼気気道内の空気圧を測定するための、少なくとも1つの圧力センサと、
ii.圧力データを伝送するための処理ユニットと
を備える、電子センサユニットと、
b.コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、命令を有し、命令は、スマートフォン等の遠隔処理デバイスによって実行されると、処理デバイスに、
i.遠隔処理デバイス上の受信機を介して該圧力データを持続的に取得することと、
ii.前記項目のいずれかに記載の方法を実行することと
を行わせる、コンピュータプログラムと
を備える、感知システム。
23.該システムはさらに、該吸気気道および/または呼気気道の端部に接続されるために配列される管状コネクタを備え、圧力センサは、管状コネクタによって含有される、項目22に記載の呼吸感知システム。
24.コンピュータプログラムは、命令を有し、命令は、遠隔処理デバイスによって実行されると、処理デバイスに、遠隔処理デバイスの画面上に瞬間的なおよび/または累積的な計算された力および/または作業量データを表示させる、項目22-23のいずれか1項に記載の呼吸感知システム。
25.対象の呼吸を運動させ、分析するための呼吸訓練および検査システムであって、
気息ユニットであって、
マウスピースであって、
調節可能な吸入空気流抵抗を有する少なくとも1つの吸入気道と、
調節可能な吐出空気流抵抗を有する少なくとも1つの吐出気道と
に接続される、マウスピースと、
電子センサユニットであって、
マウスピース内の空気圧を測定するための少なくとも1つの圧力センサと、
圧力データを伝送するための処理ユニットと
を備える、電子センサユニットと
を備える、気息ユニットと、
コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムは、命令を有し、命令は、スマートフォン等の遠隔処理デバイスによって実行されると、処理デバイスに、
遠隔処理デバイス上の受信機を介して該圧力データを持続的に取得することと、
前記項目のいずれかに記載の方法を実行することと
を行う、コンピュータプログラムと
を備える、呼吸訓練および検査システム。
26.コンピュータプログラムは、遠隔処理デバイスによって実行されると、処理デバイスに、遠隔処理デバイスの画面上に瞬間的なおよび/または累積的な計算された力および/または作業量データを表示させる、命令を有している、項目25に記載の呼吸訓練および検査システム。
【国際調査報告】