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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】酵素の安定的保存
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/78 20060101AFI20240221BHJP
   C12M 1/40 20060101ALI20240221BHJP
   C12N 11/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C12N9/78
C12M1/40 Z
C12N11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553503
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2022055502
(87)【国際公開番号】W WO2022184880
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21161048.0
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523333892
【氏名又は名称】ネクストキドニー エス.アー.
【氏名又は名称原語表記】NEXTKIDNEY S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】523333906
【氏名又は名称】ディアリス ピーティーイー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DIALYSS PTE LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】デ ヨング, ハーメン ヘンリ ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】ジョング, ヤコブス アドリアヌス ヴィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーチェル, クリスチャン ゲルト
【テーマコード(参考)】
4B029
4B033
【Fターム(参考)】
4B029BB16
4B029CC03
4B033NA26
4B033ND12
4B033NE05
4B033NF04
4B033NF05
4B033NG09
4B033NH05
(57)【要約】
本発明は、例えば保存中の酵素の安定性を改善するのに有用な方法及び組成物に関する。本発明の方法及び組成物を使用することにより、酵素活性が長期に渡って保持され、より長い保存が可能になる。本発明は、酵素の安定性を改善する方法であって、i)酵素を用意するステップ、ii)前記酵素を、オリゴ糖を含む保存溶液と接触させて保存組成物を得るステップ、及びiii)任意選択で前記保存組成物を乾燥させるステップを含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素の安定性を改善する方法であって、
i)酵素を用意するステップ、
ii)前記酵素を、オリゴ糖を含む保存溶液と接触させて保存組成物を得るステップ、及び
iii)任意選択で前記保存組成物を乾燥させるステップを含む、方法。
【請求項2】
前記酵素がヒドロラーゼ、好ましくはアミドヒドロラーゼ、より好ましくはウレアーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素が、ニッケルセンター、好ましくは2つのニッケルセンター、より好ましくはビス-μ-リガンド二量体ニッケルセンターを含む活性部位を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記保存溶液が、緩衝塩、抗酸化剤、静菌剤、キレート剤、凍結保護剤、又は血清アルブミンをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記保存溶液が5.5~8.2の範囲のpHで緩衝化されている、及び/又は前記保存溶液が薬学的に許容される溶液である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保存溶液が5~40重量%、好ましくは10~35重量%、より好ましくは15~30重量%、最も好ましくは約25重量%のオリゴ糖を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記保存溶液が約25重量%のオリゴ糖及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記オリゴ糖がオリゴヘキソース、好ましくはオリゴケトヘキソース又はオリゴアルドヘキソース、より好ましくはオリゴケトヘキソースである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記オリゴ糖が2~75、好ましくは2~20の重合度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素が固定化酵素である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記保存組成物が少なくとも25日間保存され、前記酵素が保存後にその元の活性の少なくとも75%を維持する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の酵素と請求項1に記載のオリゴ糖とを含む、組成物。
【請求項13】
前記酵素がアミドヒドロラーゼ、好ましくはウレアーゼであり、又は前記オリゴ糖がオリゴヘキソース、好ましくはオリゴケトヘキソース又はオリゴアルドヘキソース、より好ましくはオリゴケトヘキソースである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の組成物を含む、透析装置で使用するためのカートリッジ。
【請求項15】
酵素を保存する方法であって:
I)請求項12若しくは13に記載の組成物、又は請求項14に記載のカートリッジを用意するステップ、及び
II)前記組成物又はカートリッジを少なくとも2日間保存するステップを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、例えば保存中の酵素の安定性を改善するのに有用な方法及び組成物に関する。本発明の方法及び組成物を使用することにより、酵素活性が長期に渡って保持され、より長い保存が可能になる。
【背景技術】
【0002】
末期腎臓病(ESKD)又は重度の急性腎不全の患者は、腎機能を代替するために透析(血液透析、又はHD、又は腹膜透析、又はPDのいずれか)を受けることができる。従来の透析は時間がかかり、老廃物分子及び余分な水分の除去が不十分であるため、生活の質の低下、深刻な健康問題、及び高い死亡率(年間15~20%)に顕著に影響している。治療費は非常に高い。
【0003】
従来の透析では、患者の体液は一般的に透析流体(透析液と称する)に対して透析され、これは次いで廃棄される。このプロセスの間に、患者の体液中の老廃物溶質は、多くの場合、半透膜などの膜を通過して、拡散及び/又は対流によって透析液に移動する。このような透析液の「シングルパス」使用は、インフラ要件及び治療費用並びに透析機器のサイズ及び携帯性に重大な影響を及ぼす。従って、透析流体の量を減少させることが望ましい。小型化の取組みでは、患者の体液は比較的少量の透析流体に対して透析され、これは繰り返し再生され、使用済みの透析液から老廃物溶質を除去して再利用される。透析液の効率的な再生は、大量の透析流体の必要性を減少させ、透析をより実用的なものにし、資源依存を少なくし、廃棄物の流れを減少させる。
【0004】
小型の人工腎臓装置は、腎代替療法における大きなブレークスルーとなるだろう。世界の透析患者数は、2025年までに490万人に達すると予測されている。現在、透析患者の約85%が、センター(96%超)又は自宅(4%未満)でHD技術を使用している。センターでのHDは長期の頻繁な通院(約週3回、1回あたり4時間)が必要であるのに対し、自宅でのHDはより柔軟で自律的である。しかし、今日の自宅でのHDには、依然としてかさばる透析装置が必要であり、大量の透析流体(少なくとも週100L)供給を必要とするか、又はかさばる移動不能な浄水システムに接続していなければならない。固定された給水装置又は大量の透析流体供給装置に依存しない、使い勝手のよい軽量のHD装置は、患者の機動性を高め、それによって社会生活での活動及び自由な旅行が可能になる。さらに、患者が自宅でより頻繁に透析を行えるようになるであろう。
【0005】
標準的な週3回のHDにおける、透析治療間の水分バランス及び尿毒症毒素レベルの大きい変動は、連続的又はより頻繁なHDによって減少する可能性があり、それによって患者の予後が改善する可能性がある。より自由な食事療法が可能になるであろう。透析従事者及び関連インフラの必要性の低下、投薬の減少、及び合併症の減少による入院回数の減少によって、大幅な費用削減が達成される。
【0006】
現在、透析患者の約15%がPDを利用している。この技術も、透析液を連続的に再生する小型化されたPD装置から大きな恩恵を受け、それによってPDの効果が大幅に向上する。従来のPDにおける技術の失敗の2つの主な原因(再発性感染及び腹膜の機能喪失)を防止することによって、小型化されたPD装置はさらに技術の生存期間を大幅に延ばすことができる。
【0007】
使い勝手のよい装着型又は携帯型の透析装置は、病院の外で透析を行うことができるため、透析患者にとって大きな飛躍となり、患者の生活の質を著しく向上させる。この装置によって、連続的又はより頻繁な透析が可能になり、老廃物溶質及び余分な体液の除去を改善し、それによって患者の健康を改善する。固定された給水装置に依存しない小型化設計は、患者に自由及び自律性を提供する。
【0008】
近年、いくつかの有機老廃物溶質及び廃イオンを十分に除去する小型のプロトタイプの透析装置が構築されている。しかし、尿素を除去するための適切な戦略は今のところ存在せず、尿素は小型人工腎臓装置の実現を成功させるための主な障害の1つである。尿素は(窒素代謝の主要な老廃物として)1日の産生量が最も多い老廃物溶質であり、高血漿濃度で毒性作用を発揮する。しかし、尿素は結合しにくく、且つ反応性が低い。
【0009】
欧州特許出願公開第121275号/米国特許公開第4897200号は、6段階の合成順序で重合スチレン組成物から形成されるニンヒドリン型吸着剤を開示している。臨床的に関連する尿素濃度で、8時間で1.2mmol/g乾燥吸着剤の尿素結合能が示された。しかし、効果的な小型化のためには、より高い尿素結合能が必要である。
【0010】
国際公開第2017116515号は、透析流体からの尿素分離を改善するための帯電膜の使用を開示し、分離された尿素の電気酸化の使用を示唆している。この方法の欠点は、副産物として活性酸素が生成されることである。
【0011】
国際公開第2011102807号は、エポキシドで覆われた基質を開示している。このエポキシドは、溶液から溶質を回収するために用いることができる。これらは、ウレアーゼ酵素の固定化にも使用され、尿素の廃棄を助ける。国際公開第2016126596号はまた、非常に異なる基質、すなわち還元グラフェン酸化物も使用している。高い尿素結合能が示されたが、捕捉された尿素は初期尿素濃度の15%未満であった。
【0012】
酵素の産生及びその後の使用において重要な要素は、長期保存中の特異的活性を保証することである。酵素活性の保持は、酵素保存の構造安定性、保存温度(変性による酵素構造の変化)、pH(極端なpH値は酵素を変性させる可能性があり、酵素上の触媒部位は酸性又は塩基性基のプロトン化の程度に感受性があり得る)によって影響を受ける可能性がある。酵素の安定性は、不可逆的である可能性があり、多くのアミノ酸側鎖基の化学状態に影響を与え得る酸化によっても影響を受ける可能性があるが、酸化による影響は酵素活性の低下につながり得る。
【0013】
酵素に最も多く含まれる20種類のアミノ酸のうち、いくつかは酸化され得る。最も影響を受けやすいアミノ酸は、スルフヒドリル基を有するもの(システイン、メチオニン)及び芳香族側鎖基を有するもの(トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン)である。さらに、ヒスチジン残基は2-オキソヒスチジン及び4-OH-グルタミン酸に酸化される可能性があり、チロシン残基はジヒドロキシ誘導体、ドーパミン(DOPA)、ニトロチロシン、クロロチロシン、及びジチロシン誘導体に変換される。最後に、カルボニル基はさらにリジン残基のアミノ基と反応することができ、これは分子内又は分子間架橋促進性タンパク質凝集の形成につながる(V.Cecariniら,DOI:10.1016/j.bbamcr.2006.08.039)。
【0014】
塩、アミノ酸、炭水化物などの共溶質とタンパク質の構造又は安定性との関係はよく説明されているが、完全には理解されていない。特に炭水化物又はポリオールの使用は、分子の熱力学的状態に影響を与えることにより、温度、pH、又は濃度のような広い範囲の外部条件にわたってタンパク質の構造的完全性を保持するために推進されている(Van Teeffelenら,Prot.Sci.14,2005;2187-1294)。
【0015】
酵素は、冷凍保存又は乾燥時に機能特性を保持するためにグルコースの存在下で保存されることが多い。酸化を制御するために、酵素の望ましい還元状態を保持するための広範なツールボックスが利用可能である(例えば、不活性雰囲気下での保存、又は抗酸化剤の存在)。ウレアーゼなどの透析に関連する酵素の場合、公知の条件下での長期保存は適切ではないことが判明した(例えば図1参照)。ウレアーゼの保存については、低温保存が推奨される(DOI: 10.34049/bcc.51.2.4536)。
【0016】
改善された人工腎臓装置の開発を可能にするために、尿素除去手段の改良、又はより堅牢で、保存寿命が長い、又は室温など、より異なる条件下で保存できる手段が引き続き必要とされている。滅菌条件下で安定な保存可能な酵素組成物が必要とされている。
【0017】
[発明の概要]
本発明は、酵素、特にウレアーゼなどのヒドロラーゼの保存寿命を延長する方法及び組成物を提供する。オリゴ糖が保存寿命安定性を高めるのに役立つことが見出された。従って本発明は、酵素の安定性を改善する方法であって:i)酵素を用意するステップ、ii)酵素をオリゴ糖を含む保存溶液と接触させて保存組成物を得るステップ、及びiii)任意選択で保存組成物を乾燥させるステップを含む、方法を提供する。酵素はヒドロラーゼ、好ましくはアミドヒドロラーゼ、より好ましくはウレアーゼであり得る。好ましくは、酵素はニッケルセンター、より好ましくは2つのニッケルセンター、さらに好ましくはビス-μ-リガンド二量体ニッケルセンターを含む活性部位を有する。保存溶液は、好ましくは、緩衝塩、抗酸化剤、静菌剤、キレート剤、凍結保護剤、又は血清アルブミンをさらに含む。好ましくは、保存溶液は5.5~8.2の範囲のpHで緩衝化されている、及び/又は保存溶液は薬学的に許容される溶液である。好ましくは、保存溶液は5~40重量%、より好ましくは10~35重量%、さらに好ましくは15~30重量%のオリゴ糖を含む。保存溶液は約25重量%のオリゴ糖と、任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩とを含む場合もある。好ましくは、オリゴ糖はオリゴヘキソース、より好ましくはオリゴケトヘキソース又はオリゴアルドヘキソース、さらに好ましくはオリゴケトヘキソースである。好ましくは、オリゴ糖は2~75、より好ましくは2~20の重合度を有する。好ましくは、酵素は固定化酵素である。好ましくは、保存組成物は少なくとも25日間保存され、ここで、酵素は保存後にその元の活性の少なくとも75%を維持する。
【0018】
上記で定義した酵素及び上記で定義したオリゴ糖を含む組成物も提供される。好ましくは、酵素はアミドヒドロラーゼ、より好ましくはウレアーゼである、及び/又はオリゴ糖はオリゴヘキソース、好ましくはオリゴケトヘキソース若しくはオリゴアルドヘキソース、より好ましくはオリゴケトヘキソースである。また、このような組成物を含む、透析装置で使用するためのカートリッジも提供される。
【0019】
酵素を保存するための方法であって:I)本発明による組成物、又は本発明によるカートリッジを用意するステップ、及びII)組成物又はカートリッジを少なくとも2日間保存するステップを含む、方法も提供される。
【実施形態の説明】
【0020】
本発明は、酵素、特にウレアーゼなどのヒドロラーゼの保存寿命を延長する方法及び組成物を提供する。第1の局面において、本発明は、酵素の安定性を改善するための方法であって:
i)酵素を用意するステップ;
ii)酵素をオリゴ糖を含む保存溶液と接触させて保存組成物を得るステップ、及び
iii)任意選択で保存組成物を乾燥させるステップを含む、方法を提供する。
【0021】
以下、このような方法を本発明による安定化方法と称する。好ましくは、ステップは番号順に行われる。好ましくは、乾燥した保存組成物は、均一混合物、不均一混合物、又は酵素粒子上の保存溶液の表面コーティングである。
【0022】
ステップi)-酵素の提供
酵素は、市販の供給業者、発酵、又は単離など、任意の供給源から得ることができる。酵素は乾燥粉末、溶液、又は懸濁液として提供し得る。好ましくは、酵素は実質的に純粋であるか、又はタンパク質性物質の少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又はさらには99%が酵素からなる。他の実施形態では、より純度の低い酵素が使用され、これは例えば製造コストを低減するのに好都合であり得る。ここで、純度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10重量%、例えば約10重量%と低くすることができる。例えば、純度は実質的に1~99重量%、好ましくは10~90重量%であり得る。溶液の場合、溶媒は好ましくは水又は酢酸であり、最も好ましくは水である。公知の酵素の場合、緩衝塩を使用するのが好都合かどうかは、当業者であれば判断できる。酵素は、樹脂、バイオポリマーなどのポリマー、又はビーズなどの固体支持体に固定化することもできる。好ましい酵素は、酸化に感受性を示す酵素である。好ましい実施形態において、酵素は、本明細書において後述するように固定化される。いくつかの実施形態において、酵素は、好ましくは乾燥しているか、又は少なくとも実質的に乾燥しており、これは、本明細書において、多くとも20重量%の含水率を有すると理解されるべきであり、約10~15重量%の含水率が、取り扱いの便宜のために特に好ましい。酵素が固定化されている実施形態において、酵素は湿潤又は乾燥のいずれかであり得る。湿潤固定化酵素は、乾燥を省略し得るので、必要となる処理工程が少なくなるため、好ましい場合がある。
【0023】
本発明による安定化方法は、特に活性部位に特定の酸化感受性部位を特徴とする酵素に対して魅力的な結果をもたらすことが見出された。驚くべきことに、これらの酵素は抗酸化剤の存在を必要とすることなく安定化し得る。このような酵素は、好ましくはニッケルセンター、好ましくは2つのニッケルセンター、より好ましくはビス-μ-リガンド二量体ニッケルセンターを含む活性部位を有する。μ-リガンドは架橋リガンドである。このような活性部位は、約3~4Åの距離を有する2つのニッケルセンターを含むのが好ましい。例えば、ウレアーゼの活性部位はα(アルファ)サブユニットに位置し、原子間距離が約3.5Åのビス-μ-ヒドロキソ二量体ニッケルセンターである。好ましくは、ニッケルはNi(II)である。好ましくは、2つのニッケル原子は弱く反強磁性結合している。様々な供給源(カンナバリア・エンシフォルミス(Canavalia ensiformis)(タチナタマメ)、クレブシエラ・アエロゲネス(Klebsiella aerogenes)、及びスポロサルシナ・パストゥリ(Sporosarcina pasteurii)由来のウレアーゼのX線吸収分光法(XAS)試験により、ニッケルあたり2つのイミダゾールリガンドを含む、O/Nライゲーションを排他的に有する5~6配位ニッケルイオンが確認されている。
【0024】
本発明による安定化方法は、ヒドロラーゼ酵素の安定化に特に有用であることが見出された。ヒドロラーゼはEC3に分類される酵素のクラスであり、一般的に水を用いて化学結合を切断する。適切なヒドロラーゼは、エステラーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、ペプチダーゼ、ヌクレオシダーゼ、ウレオヒドロラーゼ、及びアミドヒドロラーゼである。
【0025】
ヒドロラーゼは本質的に分解特性を有するので、その安定化は特に有用である。好ましいヒドロラーゼは、非ペプチド炭素-窒素結合を切断するヒドロラーゼである(EC 3.5に分類される)。これらのうち、アミドヒドロラーゼ(直鎖アミドについてはEC 3.5.1、及び環状アミドについてはEC 3.5.2)及びウレオヒドロラーゼ(EC 3.5.3)が特に興味深く、直鎖アミドについてはアミドヒドロラーゼが最も好ましい。直鎖アミドに対するアミドヒドロラーゼの例は、アスパラギナーゼ、グルタミナーゼ、ウレアーゼ、ビオチニダーゼ、アスパルトアシラーゼ、セラミダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、脂肪酸アミドヒドロラーゼ、及びヒストンデアセチラーゼである。好ましい例は、ウレアーゼ及びヒストンデアセチラーゼであり、ウレアーゼが最も好ましい。従って、好ましい実施形態において、酵素はヒドロラーゼ、好ましくはアミドヒドロラーゼ、より好ましくはウレアーゼである。
【0026】
ウレアーゼは、尿素アミドヒドロラーゼとしても知られ、尿素の二酸化炭素とアンモニアへの加水分解を触媒する。ウレアーゼは、多くの細菌、真菌、藻類、植物、及び一部の無脊椎動物、並びに土壌酵素として土壌中で見出される酵素である。ウレアーゼは一般的に分子量が大きいニッケル含有金属酵素である。酵素は、分子量約90kDaのサブユニットの三量体及び六量体として集合しているのが最も一般的である。好ましいウレアーゼは、カンナバリア・エンシフォルミス(タチナタマメ)、グリシン・マックス(Glycine max)、オリザ・サティヴァ(Oryza sativa)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アラビドプシス・サリアーナ(Arabidopsis thaliana)、エルシニア・シュードチュベルキュロシス(Yersinia pseudotuberculosis)、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、リゾビウム・メリローチ(Rhizobium meliloti)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans)、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、クレブシエラ・アエロゲネス、スポロサルシナ・パストゥリ、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、又はマイコバクテリウム・チュベルキュロシス(Mycobacterium tuberculosis)由来のウレアーゼである。栽培植物からの単離が容易なことから、植物源由来のウレアーゼが好まれることもある。タチナタマメ(カンナバリア・エンシフォルミス)ウレアーゼが非常に好ましい。一般的に、ウレアーゼは市販の供給業者から広く入手可能である。
【0027】
タチナタマメウレアーゼは、2つの構造サブユニット及び1つの触媒サブユニットを有する。単量体あたり840アミノ酸から構成され、活性酵素である六量体に集合する。活性酵素には90個のシステイン残基がある。分子質量(Ni(II)イオンを含まない)は約90.8kDaである。合計12個の配位ニッケルイオン(活性部位あたり2個)を含む六量体の質量は約545kDaである。従って、本発明による安定化方法において使用のための好ましい酵素は、少なくとも0.5%のシステイン残基を含む、少なくとも50個のアミノ酸を有するポリペプチドを含む;より好ましくは、少なくとも100個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも200個のアミノ酸、なおより好ましくは少なくとも500個のアミノ酸を有するポリペプチドを含む、酵素である。構成されるシステイン残基は、より好ましくは少なくとも1%、さらにより好ましくは少なくとも1.5%、最も好ましくは少なくとも2%である。これらのパーセンテージはアミノ酸残基のパーセンテージを指す。最も好ましくは、酵素は多量体である。好ましくは、このような多量体活性酵素は、その活性酵素中に少なくとも1000個、より好ましくは少なくとも2000個、さらにより好ましくは少なくとも3000個、最も好ましくは少なくとも4000個、例えば少なくとも5000個のアミノ酸を有する。
【0028】
酵素は、任意の他の部分又は担体と結合していない遊離酵素の状態で安定化させることができる。また、固定化酵素であってもよい。好ましい実施形態において、酵素は遊離酵素であり、これは完全に溶解した媒体中、又は均一系触媒反応におけるその後の適用に好都合である。好ましい実施形態において、酵素は固定化酵素であり、これは例えば固定床反応器、カートリッジ、又はカセット若しくはカラム、又は不均一系触媒反応におけるその後の適用に好都合である。酵素の固定化は当該技術分野において周知であり、このステップで提供される酵素は、例えばv.Gelderら,2020、Biomaterials 234,119735、又は国際公開第2011102807号、又は米国特許第8561811号、又は国際公開第2016126596号、又はZhangら,DOI:10.1021/acsomega.8b03287によって記載される公知の方法を用いて固定化することができる。本発明に好ましいのは、固定化酵素、特に固定化ウレアーゼであり、ここで酵素は、例えば国際公開第2011102807号に記載されているように、セルロース担体に固定化されている。酵素は、好ましくは共有結合、例えばアミン結合、アミド結合又はエーテル結合を介して、最も好ましくはアミン結合又はエーテル結合を介して固定化される。セルロース担体に固定化されたこのような酵素は、例えばカートリッジ中の不均一系触媒反応に適している。好ましくは、提供される酵素が既に固定化酵素であるという点で、固定化はステップi)の前に既に実施されている。好ましい実施形態において、提供される酵素は、異なる酵素の混合物ではないという意味で、単一の種類である。
【0029】
ステップii)-保存溶液
ステップii)では、ステップi)で提供された酵素をオリゴ糖を含む保存溶液と接触させ、保存組成物を得る。接触はどのような手段で達成されてもよい。提供された酵素が乾燥状態であれば、保存溶液に溶解又は懸濁させることができる。提供された酵素が溶液又は懸濁液の状態であれば、保存溶液と混合することができ、その結果、また、溶解又は懸濁した酵素が得られる。酵素が固体支持体上にある場合、保存溶液中に沈めるか、又は懸濁させるか、又は保存溶液で湿潤することができる。酵素が固体支持体上にある特定の実施形態において、酵素は保存溶液で湿潤される。好ましくは、酵素は保存溶液に溶解又は懸濁される。当業者は、酵素が溶解状態から保存溶液と混合される場合、保存溶液中の溶質の濃度は、好ましくは、酵素が混和された後に本明細書に記載されるような濃度を達成するために、体積の増加に適合されることを理解するであろう。
【0030】
好都合には、保存溶液の乾燥成分を、提供された酵素に添加することができ、その後、保存組成物をその所望の体積にするために水を添加する。好ましい実施形態において、保存溶液はin situで形成される、又は換言すれば、保存溶液は酵素の存在下で形成される。ここで、ステップii)は、ステップii-a):提供された酵素を保存溶液の乾燥成分と混和するステップ、及びii-b):水をii-a)の混合物に添加して保存組成物を得るステップを含む。
【0031】
保存溶液の2つの最も重要な成分は水及びオリゴ糖である。水は好ましくは脱イオン水、パイロジェンフリー水、注射用水、又は超純水である。好ましくは、保存溶液中の酵素量は1~150mg/mLの範囲、より好ましくは約5~100、さらにより好ましくは約10~50、なおさらに好ましくは約15~45、最も好ましくは約20~40、例えば約30である。
【0032】
オリゴ糖は周知されており、市販の供給源から広く入手可能である。オリゴ糖はまた、植物、例えばイヌリンの有用な供給源であるチコリなどの天然の供給源から単離することもできる。好ましくは、オリゴ糖はそのまま使用され、脂質又はペプチドのようなさらなる部分と結合していない。
【0033】
多糖は重合度が3000までであり得る、すなわち3000以下の単量体を含み得ることが知られている。オリゴ糖は一般的に多糖より短い。本明細書で使用される場合、オリゴ糖は最大で約100の重合度を有するが、より短いオリゴ糖が好ましい。好ましい実施形態では、オリゴ糖は2~75、好ましくは10~60、より好ましくは2~20の重合度を有する。他の好ましい重合度は5~18、より好ましくは10~15である。非常に好ましい実施形態では、重合度は2~9、最も好ましくは4~7の範囲である。単分散化合物は、単一の重合度のみを有し(その多数の単量体単位を有する化合物のみを含む)、従って、様々な長さの鎖の混合物ではない。多分散化合物は、様々な長さの鎖を含む。いくつかの好ましい実施形態では、オリゴ糖は単分散ではないか、又は完全には単分散でない。重合度が4~7の範囲の値を含む場合、これは特に魅力的である。多分散性は酵素との良好な結合を達成するのに有用であり得ると考えられている。いくつかの特定の実施形態では重合度は2である。これらの実施形態ではオリゴ糖は単分散である。このような実施形態はオリゴ糖のより正確な定義を得るために魅力的であり得る。
【0034】
オリゴ糖はヘキソース若しくはペントース、又は他の糖をベースとすることができる。好ましくはオリゴ糖は、オリゴヘキソース、より好ましくはオリゴケトヘキソース又はオリゴアルドヘキソース、さらにより好ましくはオリゴケトヘキソースである。ヘキソースの例は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、及びグルコサミンである。ケトヘキソースの例は、プシコース、フルクトース、ソルボース及びタガトースであり、中でもフルクトースが最も好ましい。非常に好ましいオリゴ糖は主にβ(2→1)結合で結合され、より好ましくは全ての非末端残基がβ(2→1)結合で結合され、最も好ましくは全ての非末端残基と1つの末端残基がβ(2→1)結合で結合される。特定の実施形態において、末端残基は、1,1-グリコシド結合によって結合される。これは、重合度が2である場合に特に好ましい。
【0035】
オリゴ糖がオリゴ糖の残部と異なる末端残基を有する場合、この末端残基は命名の目的で無視されることがあることを理解されたい。例えば、5個のフルクトース残基と末端グルコース残基を有するオリゴ糖は、末端グルコース残基がアルドヘキソースであり、フルクトースではないにもかかわらず、一般的にオリゴフルクトース、又はオリゴケトヘキソース、又はフラクトオリゴ糖と呼ばれる。
【0036】
オリゴ糖の例は、フルクトースのオリゴマー(フルクタン又はイヌリンとしても知られている)、グルコースのオリゴマー(グルカン又はグリコーゲンとしても知られている)、ガラクトースのオリゴマー(ガラクタンとしても知られている)、又はデキストリン、デキストラン、マンナン、ペクチン、デンプン、キサンタンガム、イソマルトース、又はグルコサミン(キトサンとしても知られている)のオリゴマーである。保存溶液に使用するための好ましいオリゴ糖は、イヌリン、イソマルトース、又はガラクタンから得られるが、中でもイヌリンが最も好ましい。イソマルトースから得られる好ましいオリゴ糖はイソマルトオリゴ糖(IMO)であり、重合度は3~9の範囲であり、平均は5付近である。ガラクタンから得られる好ましいオリゴ糖はガラクトオリゴ糖(GOS、オリゴガラクトシルラクトースとしても知られ、プレバイオティクスとして知られている)であり、重合度は2~8の範囲で平均は5付近である。イヌリンから得られる好ましいオリゴ糖はフラクトオリゴ糖(FOS、オリゴフルクタンとしても知られ、プレバイオティクスとして知られている)であり、重合度は2~8の範囲で平均は5付近である。
【0037】
FOSの特性は、末端のグルコース残基を含むことである。FOSは、末端α(1→2)結合D-グルコースを有するβ(2→1)結合で結合されたD-フルクトース残基のポリマーであるイヌリンの分解によって生成される。多くの天然の供給源では、イヌリンの重合度は10~60の範囲である。イヌリンは酵素的又は化学的に分解され、一般構造Glu-Fru(GF)及びFru(F)を有するオリゴ糖の混合物になるが、nは1~7の範囲であり、mは2~8の範囲である。良好な結果がFOSで得られ、従って、好ましい実施形態では、本発明による安定化方法において使用するオリゴ糖は、末端アルドヘキソース残基、より好ましくは末端グルコース残基を含む。好ましくは、オリゴ糖はその末端の1つにアルドヘキソース残基を含む。好ましくは、末端アルドヘキソース残基はα(1→2)結合している。重合度が2である場合、好ましくは両方の末端残基が末端アルドヘキソースであり、さらにより好ましくは2つのα-グルコース単位間に1,1-グリコシド結合を形成する。
【0038】
イヌリンは一般的に2~75、又は時には10~60の範囲の重合度を有する。フラクトオリゴ糖(FOS)は一般的に2~20、又は時には2~8の範囲の重合度を有する。精製イヌリン(市販の供給業者によりCLRと表示されることもある)は一般的に2~18、又は時には5~18の範囲の重合度を有する。分画精製イヌリン(市販の供給業者によりOFPと表示されることもある)は一般に2~9の範囲の重合度を有する。所望の特性を有するオリゴ糖は、市販の供給源から入手し得るか、又は任意の公知の方法で分画し得るか、若しくはさらに精製し得る。FOSの重合度の範囲は、精製イヌリン及び分画精製イヌリンの範囲を包含するため、FOSへの言及は、文脈から意図されていないことが明らかでない限り、これら3種の各々への言及として理解され得る。同様に、精製イヌリンは、精製イヌリンそれ自体と分画精製イヌリンの両方を指すことができる。
【0039】
本発明者らは、末端アルドヘキソース残基の還元電位が酵素を酸化的活性損失から保護することが可能であると考える。末端アルドヘキソースと約5の優先的重合度を有するオリゴマーとの組合せは、オリゴ糖と酵素との最適な相互作用に寄与し、両者は一致した空間寸法を有する。六量体ウレアーゼ複合体の流体力学的半径は約14~18nmである(C.Follmerら,Biophys.Chem.,111 (2004),79ページ)。グルコースは約0.8~0.9nmである。単糖は相互作用が少ないため、酵素からより多く解離する。多糖は会合に要するエントロピー的コストがより高いため、酵素からより多く解離する。重合度と末端アルドヘキソースの組合せは、酵素における高い還元部分の有効局所モル比に寄与する。特に酵素がヒドロラーゼ、又は特にウレアーゼである場合、オリゴ糖の重合度と一致する空間寸法を有する。従って、好ましいオリゴ糖は以下の特徴の少なくとも1つを有する:
1)2~9の範囲の重合度;
2)少なくとも50%のオリゴ糖が4~8の範囲にあること;
3)5残基のモード量;
4)全ての非末端残基がケトヘキソース残基であること
5)少なくとも1つの末端残基がアルドヘキソース残基であること
6)少なくとも1つの末端残基がケトヘキソース残基であること
7)一方の末端残基がアルドヘキソース残基であり、他方がケトヘキソース残基であること
8)全ての末端アルドヘキソース部分がα(1→2)結合を介して結合していること
9)全てのケトヘキソースがβ(2→1)結合で互いに結合していること
10)全てのケトヘキソース残基がフルクトース残基であること
11)全てのアルドヘキソース残基がグルコース残基であること。
【0040】
以下の表は、オリゴ糖の好ましい実施形態の概要を、上記のような特性を参照しながら示している。
【0041】
【表1】
【0042】
好ましい実施形態では、保存溶液はオリゴ糖を1~80、2~70、3~60、4~50、又は5~40重量%、好ましくは10~35重量%、より好ましくは15~30重量%含む。保存溶液は少なくとも5、10、好ましくは15、より好ましくは20、なおより好ましくは25、より好ましくは30、最も好ましくは35重量%のオリゴ糖を含むことができる。保存溶液は多くとも90、80、70、60、50、好ましくは45、より好ましくは40、さらにより好ましくは35重量%のオリゴ糖を含むことができる。特に良好な結果は20~30重量%の範囲で得られた。言及したパーセンテージは全ての含まれるオリゴ糖についてである。当業者は、オリゴ糖は単一型であっても、例えば多分散性のため、又はその形成プロセスのため、本質的に化合物の混合物であることを理解している。好ましくは、単一型のオリゴ糖のみが構成されるか、又は少なくとも実質的に単一型である。
【0043】
保存溶液は種々のさらなる成分を含むことができる。これらのさらなる成分は任意であり、当業者は保存溶液の意図する使用に依存して成分を選択することができる。いくつかの実施形態において、保存溶液は、緩衝塩、抗酸化剤、静菌剤、キレート剤、凍結保護剤、又は血清アルブミンをさらに含む。
【0044】
抗酸化剤は広く知られている。抗酸化剤の例は、グルタチオン又はシステインのようなスルフヒドリル抗酸化剤;アスコルビン酸;没食子酸プロピル;第三級ブチルヒドロキノン;ブチル化ヒドロキシアニソール;及びブチル化ヒドロキシトルエンである。本発明はさらなる抗酸化剤の必要性を減少させるため、好ましい実施形態では、抗酸化剤をさらなる成分として添加しない。存在する場合、好ましくは0.1~10重量%、0.5~5重量%、又は1~2重量%、例えば約1重量%である。好ましい実施形態において、特に酵素が固定化されている場合、抗酸化剤はさらなる成分として、好ましくは約0.1~5重量%、好ましくはグルタチオン又はシステインのようなスルフヒドリル抗酸化剤として添加される。抗酸化剤、好ましくはグルタチオン又はシステインのようなスルフヒドリル抗酸化剤の添加は、オリゴ糖の重合度が2である場合に好ましい効果を有することが見出された。
【0045】
静菌剤は広く知られている。静菌剤の例は、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、エタンブトール、リンコサミド、マクロライド、ニトロフラントイン、ノボビオシン、オキサゾリジノン、スペクチノマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリン、チゲサイクリン、及びトリメトプリムである。保存溶液、特にpHが7未満、特に6未満である保存溶液が、都合よく微生物的に安定であることが見出された。従って、好ましい実施形態では、静菌剤はさらなる成分として添加されない。存在する場合、好ましくは0.01~1重量%、例えば約0.1重量%である。
【0046】
キレート剤は広く知られている。キレート剤は、金属イオンが安定化される酵素に及ぼし得る有害な影響に関して、金属イオンを不活性化することができる。好適なキレート剤の例は、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、2,3-ジメルカプトプロパンスルホン酸(DMPS)、α-リポ酸(ALA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、2,3-ジメルカプトプロパンスルホン酸(DMPS)、及びチアミンテトラヒドロフルフリルジスルフィド(TTFD)である。少量のキレート剤、例えば0.01~0.1重量%で酵素を安定化できるため、そのような範囲が好ましい。
【0047】
凍結防止剤とも呼ばれる凍結保護剤は広く知られている。例は、アミノ酸、メチルアミン、ポリエチレングリコール、ポリオール、界面活性剤及び単糖又は二糖である。好ましい実施形態では、オリゴ糖が既にこの点で作用しているため、追加の凍結保護剤は使用されない。
【0048】
血清アルブミンは、安定化溶液中に存在する他の酵素を安定化する役割を果たし得る。血清アルブミンの例はウシ血清アルブミン及びヒト血清アルブミンである。好ましくは、血清アルブミンは保存溶液中に存在しない。
【0049】
保存溶液は好ましくは緩衝化されており、従って緩衝塩を含むことができる。好ましくは、保存溶液は、5.5~8.2の範囲のpHで緩衝化されている、及び/又は保存溶液は薬学的に許容される溶液である。pHは、好ましくは少なくとも3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、又は7.5である。pHは好ましくは多くとも10、9.5、9、8.5、8、7.5、又は7である。好ましいpH範囲は、4.5~8.5、5.5~8.5、5.5~8.0、5.5~7.5、5.5~7、5.5~6.5及び5.5~6である。最も好ましくは、pHは5.5~7の範囲であり、特に好ましくは5.5~6.5の範囲、例えば約6のpHである。
【0050】
当業者であれば、溶液のpH、特に保存溶液のようにエレガントな溶液のpHを制御及び調整する方法を知っている。好ましくは、緩衝塩が使用される。好ましい実施形態では、緩衝塩は5~500mM、より好ましくは20~350mM、さらに好ましくは50~250mM、なおより好ましくは50~200mM、最も好ましくは50~150mMの範囲で存在する。例示的な保存溶液は100mMの緩衝塩を含むが、200mMの使用も想定される。実施形態において、保存溶液は、少なくとも5、10、20、25、30、40、50、60、70、75、80、90、又は100mMの緩衝塩を含む。実施形態において、保存溶液は、多くとも500、400、300、250、200、150、140、130、120、110、又は100mMの緩衝塩を含む。
【0051】
適切な緩衝塩は、適切な塩を選択することができる当業者に知られているように、所望のpHに依存する。有用な緩衝塩の例は、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムのようなリン酸塩(好ましくは、NaHPO又はKHPO)、クエン酸塩、ホウ酸、([トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸)、(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、及び(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)である。好ましい緩衝塩は、無機緩衝塩、例えばリン酸塩、より好ましくはリン酸カリウム又はリン酸ナトリウム、最も好ましくはリン酸カリウムである。
【0052】
いくつかの実施形態において、保存溶液は、無酸素であるか、実質的に無酸素であるか、又は酸素含量が減少している。これは、分子状窒素、二酸化炭素、又はアルゴンのような希ガスなどの不活性ガスでスパージすることによって達成することができる。
【0053】
保存溶液は、保存溶液の総重量に基づいて、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも25重量%、又は少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、又はさらには90重量%の乾燥物含量を有することができる。保存溶液は、保存溶液の総重量に基づいて、多くとも95重量%、好ましくは多くとも60重量%、又は多くとも90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、又は30重量%の乾燥物含量を有することができる。いくつかの実施形態において、混合物は、組成物の総重量に基づいて、10~50重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~25重量%の乾燥物含量を有する。実施形態において、混合物は、組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、好ましくは7重量%未満、5重量%未満又は3重量%未満の乾燥物含量を有する。乾燥物含量を測定する好ましい方法は、ICUMSA GS2/1/3/9-15(2007)に従う。
【0054】
保存溶液は任意のイオン強度を有することができるが、一般的には1~500mM、又は5~400mM、又は100~350mMの範囲である。好ましくは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10mM、例えば少なくとも10mMである。好ましくは、多くとも500、400、300、200、150、100、90、80、70、60、又は50mM、例えば50mMである。
【0055】
これらのさらなる成分の任意の組合せが可能である。好ましいのは、例えばオリゴ糖と緩衝剤及び抗酸化剤である。
【0056】
ステップiii)-任意の乾燥
様々な好ましい実施形態において、保存組成物は乾燥される。酵素の乾燥は、その保存寿命を延ばすことができるが、これは多くの劣化プロセスが溶液中で促進された速度で生じることが知られているためである。任意の公知の乾燥方法を使用することができる。乾燥方法は、例えば、噴霧乾燥、空気乾燥、コーティング、発泡乾燥、デシケーション、真空乾燥、真空/凍結乾燥、又は凍結乾燥であってもよく、これらは全て当業者に公知である。好ましい実施形態において、乾燥方法は真空乾燥又は凍結乾燥であり、中でも凍結乾燥が最も好ましい。凍結乾燥は凍結乾燥(lyophilisation)としても知られている。
【0057】
凍結乾燥プロセスの一実施形態において、乾燥させる保存組成物(溶液、懸濁液、又は湿潤固体)は、好ましくは、最初に、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、又は-10℃以下の温度の冷凍庫内又は棚上で初期凍結乾燥温度まで凍結される。好ましい初期棚温度は、-50℃又は-40℃以下である。乾燥させる保存組成物は、溶液(を含む容器/バイアル)を、上記の初期棚温度を有する棚に直ちに置くことによって、急速凍結に供し得る。或いは、乾燥させる保存組成物は、0℃を超える温度、例えば2、4又は6℃を有する棚に保存組成物(を含む容器/バイアルを)置き、次いで、好ましくは1分あたり約0.5、1又は2℃の速度で温度を低下させることによって、保存組成物を上記に示されるような初期凍結乾燥温度まで緩慢凍結させることによって、緩慢凍結に供し得る。乾燥させる保存組成物は、100マイクロバール以下の圧力にされてもよい。設定圧力に達したら、棚温度をより高温まで上昇させてもよい。棚温度は、例えば、1分あたり0.05、0.1又は0.2℃の速度で、初期凍結乾燥温度より5、10又は15℃高い温度まで上昇させてもよい。一次乾燥工程は、好ましくは、チャンバー内の圧力上昇が測定されなくなった時点で終了する。好ましくは、その時点で、棚温度は、例えば1分あたり0.01、0.02又は0.05℃の速度で、例えば5、10、15、20又は25℃まで、任意選択で1つ又は複数のステップで上昇させることができる。二次乾燥段階において、温度は好ましくは圧力上昇が検出されなくなるまでこの値に維持される。
【0058】
真空乾燥プロセスの一実施形態では、乾燥させる保存組成物(溶液、懸濁液、又は湿潤固体)は、好ましくは約5~25℃の範囲の温度、例えば室温、又はより好ましくは約10~20℃の範囲の温度、例えば約15℃の温度にある。その後、例えば1、0.5、0.2、0.1、0.05mbar未満の圧力まで減圧する。一旦減圧下に置かれると、乾燥している保存組成物の温度は、凍結を防止するために、0℃未満であり得るが保存組成物の共晶温度より(ちょうど)高い温度まで低下させることができる。圧力上昇がチャンバー内で測定されない場合、保存組成物の温度を、例えば1分あたり0.01、0.02又は0.05℃の速度で、任意選択で1つ又は複数のステップで、例えば5、10、15、20又は25℃まで上昇させることができる。温度は、好ましくは、圧力上昇が検出されなくなるまでこの値に維持される。
【0059】
乾燥物は、その水分活性によって表すことができる。好ましくは、本発明による乾燥組成物は、1未満、より好ましくは0.9未満、さらに好ましくは0.8未満、なおより好ましくは0.7未満、なおさらに好ましくは0.6未満、より好ましくは0.5未満、なおより好ましくは0.4未満、最も好ましくは0.3未満の水分活性を有する。水分活性は、湿度計を使用するなど、当技術分野で知られている任意の方法を用いて測定することができる。乾燥物は、乾燥時の重量喪失(LOD)によっても表すことができる。LODが低い物質は、乾燥していると考えることができる。乾燥物含量を測定する好ましい方法は、ICUMSA GS2/1/3/9-15(2007)に従う。
【0060】
乾燥組成物は、流動性粉末、粘性粉末、又はペーストであってもよい。乾燥組成物は、例えば規制要件に適合させるためにさらに加工することができる。好ましい乾燥組成物は、バイオセーフである。いくつかの実施形態において、保存組成物は乾燥されない。いくつかの実施形態では、保存組成物は乾燥される。
【0061】
ステップiv)-保存組成物の任意選択の保存
好ましい実施形態において、保存組成物は、得られた後に保存される。保存組成物は、好都合には、保存された酵素の活性の低い損失のみで何日間も保存され得る。いくつかの実施形態において、保存組成物は少なくとも2日間保存される。他の実施形態において、保存組成物は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、又は120日間保存される。好ましくは、保存は少なくとも2年間であり得る。いくつかの実施形態において、保存組成物は、多くとも3年間、好ましくは多くとも2年間、好ましくは多くとも365日間保存され、他の実施形態において、保存組成物は、多くとも350日、300日、250日、200日、150日、125日、120日、115日、110日、105日、又は100日間保存される。
【0062】
本発明の利点は、保存組成物の保存が標準条件下であってもよいことである。保存は、20℃、又は少なくとも0、5、10、15若しくは20℃、好ましくは少なくとも15℃であってもよい。保存は、好ましくは多くとも50℃、又は多くとも40℃、又は多くとも30℃、より好ましくは多くとも25℃である。保存は、好ましくは標準大気圧下である。
【0063】
本発明は、酵素の安定性、特に保存中の安定性を改善する。このことは、酵素を保存溶液と接触させた後に保存した場合に観察され得る酵素活性の維持から明らかである。この文脈では、安定化は好ましくは維持された酵素活性を指す。保存後の活性が、保存溶液と接触させなかったこと以外は同一条件下で保存した酵素と比較して、より大きい程度で維持されている場合、安定性が改善されているという。
【0064】
酵素活性は、当業者が選択した酵素に適することを知っている任意の方法を用いてアッセイすることができる。維持された活性を評価するためには、酵素試料を他の酵素試料とは分離して保存することが好ましく、この場合、一方の酵素試料は本発明による安定化方法に従って保存され、他方の酵素試料は保存溶液と接触させない以外は同一の条件下で保存される。酵素活性をアッセイするための好ましい方法は、例えば実施例に記載されているような発色基質を使用する場合、分光法を介するものである。
【0065】
好ましい実施形態において、保存された酵素は、参照期間後、その元の活性の少なくとも10%を維持する。より好ましくは、酵素はその元の活性の少なくとも15%、又はその元の活性の20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%を維持する。好ましくは、元の活性の少なくとも75%が維持される。当業者であれば、多少の活性の損失は許容され、活性の損失を低減することに利点があることを理解する。参照期間は、好ましくは少なくとも2日間、又は3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、又は120日間である。良好な指標としては、参照期間は25日間であり得る。
【0066】
他の実施形態において、参照活性は、本発明による安定化方法が実施された後の活性であり、同じ日(T=0)における初期活性をアッセイする。ここで、活性の損失は、好ましくは多くとも60%、より好ましくは多くとも50%、さらにより好ましくは多くとも40%、又はさらに好ましくは35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、又は1%である。好ましい実施形態において、保存組成物は少なくとも25日間保存され、ここで酵素は保存後にその元の活性の少なくとも75%を維持する。好ましい実施形態において、保存組成物は少なくとも40日間保存され、ここで酵素は保存後にその元の活性の少なくとも50%を維持する。好ましい実施形態において、保存組成物は、少なくとも60日間保存され、ここで、酵素は、保存後にその元の活性の少なくとも50%を維持する。
【0067】
本発明はまた、滅菌中の酵素の安定性を改善する。滅菌は、試料中の全ての生命、特に微生物の生命を除去、不活性化、又は死滅させ、無菌状態にする手順である。この目的のため、滅菌条件は一般的に厳しく、しばしば物質の劣化を促進する。滅菌は、熱、化学物質、照射、高圧、及び濾過を含む様々な手段で達成できる。本発明の文脈では、滅菌化学物質の使用は、酵素の意図された(医学的)使用とは適合しない。同様に、濾過は、例えば酵素のサイズの観点から、特に固定化酵素の場合には問題がある。特に有用な滅菌手段は、電離放射線による照射である。照射滅菌の好ましい方法は、ガンマ線照射及び電子ビーム滅菌である。ガンマ線照射が最も好ましい。
【0068】
医学的用途に使用される単回使用システムは、一般的に、使用前に滅菌することが要求される。従って、本発明による好ましい組成物は滅菌組成物である。また、任意選択の保存ステップは、好ましくは滅菌ステップ、好ましくは照射滅菌ステップによって開始される。
【0069】
ガンマ線は電磁放射線の一形態であり、滅菌におけるガンマ線の使用は当技術分野で知られている(例えば国際公開第2020097711号参照)。ガンマ線の主な工業的供給源は、60Coなどの放射性核種元素である。ガンマ線は物質を容易に透過し、細菌のDNAの共有結合を切断することにより細菌を死滅させ、これは典型的にはラジカル酸化プロセスを伴う。吸収された放射線量はキログレイ(kGy)で測定される。
【0070】
電子ビーム照射は電離放射線の一形態であり、低い透過性及び高線量率を特徴とする。電子ビーム滅菌は当技術分野で知られている(例えば国際公開第2020241758号参照)。このビームは、集中させた高電荷の電子流であり、連続ビーム又はパルスビームを生成できる加速器によって生成される。滅菌される物質がビームを通過すると、電子からのエネルギーが吸収され、様々な化学結合を変化させ、DNAを損傷し、微生物の繁殖能力を破壊する。
【0071】
照射滅菌は生体材料にダメージを与えるため、本発明者らは、本発明による方法及び組成物を、例えばガンマ線滅菌と併用した場合、酵素活性が予想よりもはるかに高い程度まで保持されることを発見して驚いた。
【0072】
[特定の実施形態]
本発明は、酵素を保存する方法であって:
I)本明細書の他の箇所で定義される組成物、又は本明細書の他の箇所で記載されるカートリッジを用意するステップ、及び
II)組成物又はカートリッジを少なくとも2日間保存するステップを含む、方法を提供する。組成物又はカートリッジは、好ましくは少なくとも7日間、さらにより好ましくは少なくとも15日間保存する。特徴及び定義は、本明細書の他の箇所で提供される通りである。
【0073】
好ましい実施形態において、安定化方法は、ステップi)及びii)を含む。
【0074】
好ましい実施形態において、安定化方法は、ステップi)、ii)及びiv)を含む。
【0075】
好ましい実施形態において、安定化方法は、ステップi)、ii)、及びiii)を含む。
【0076】
好ましい実施形態において、安定化方法は、ステップi)、ii)、iii)、及びiv)を含む。
【0077】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約25重量%のオリゴ糖;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0078】
好ましい実施形態では、保存溶液は水及び約20~35重量%のオリゴ糖;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び任意選択で抗酸化剤を含むか、又はそれらからなる。
【0079】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のオリゴ糖;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0080】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のオリゴ糖;及び緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0081】
好ましい実施形態では、保存溶液は水及び約25重量%のオリゴ糖;及び50~250mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び任意選択で抗酸化剤を含むか、又はそれらからなる。
【0082】
好ましい実施形態では、保存溶液は水及び約20~35重量%のオリゴ糖;及び50~200mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0083】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のオリゴ糖;及び75~200mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0084】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のオリゴ糖;及び75~150mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0085】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のオリゴ糖;及び75~125mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0086】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のオリゴ糖;及び約100mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び任意選択で抗酸化剤を含むか、又はそれらからなる。
【0087】
好ましい実施形態では、保存溶液は水及び約25重量%のFOS;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0088】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~35重量%のFOS;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び任意選択で抗酸化剤を含むか、又はそれらからなる。
【0089】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0090】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS;及び緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0091】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約25重量%のFOS;及び50~250mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び任意選択で抗酸化剤を含むか、又はそれらからなる。
【0092】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~35重量%のFOS;及び50~200mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0093】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS;及び75~200mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0094】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS;及び75~150mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0095】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS;及び75~125mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0096】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS;及び約100mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0097】
好ましい実施形態では、保存溶液は、水及び約25重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び任意選択で抗酸化剤を含むか、又はそれらからなる。
【0098】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約20~35重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0099】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0100】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水、及び約20~30重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0101】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水、及び約25重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び50~250mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び任意選択で抗酸化剤を含むか、又はそれらからなる。
【0102】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約20~35重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び50~200mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0103】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び75~200mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0104】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び75~150mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0105】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び75~125mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0106】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び約100mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0107】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約20~30重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び約100mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び抗酸化剤を含むか、又はそれらからなる。
【0108】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水、及び約20~30重量%のFOS又は分画精製イヌリン、好ましくは分画精製イヌリン;及び約100mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;を含むか、又はそれらからなるが、抗酸化剤は追加しない。
【0109】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約23~30重量%のトレハロース;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0110】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約23~30重量%の重合度2を有するオリゴ糖;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~3重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0111】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水と、約23~30重量%の重合度2を有し、末端グルコース残基を含むオリゴ糖;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~3重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0112】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約23~30重量%のトレハロース;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~3重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0113】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約23~30重量%のトレハロース;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~2重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0114】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約23~30重量%のトレハロース;及び50~250mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~2重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0115】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約25~30重量%のトレハロース;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩を含むか、又はそれらからなる。
【0116】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約25~30重量%の重合度2を有するオリゴ糖;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~3重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0117】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約25~30重量%の重合度2を有し、末端グルコース残基を含むオリゴ糖;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~3重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0118】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約25~30重量%のトレハロース;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~3重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0119】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約25~30重量%のトレハロース;及び任意選択で緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~2重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0120】
好ましい実施形態において、保存溶液は、水及び約25~30重量%のトレハロース;及び50~250mMの緩衝塩、好ましくはリン酸緩衝塩;及び1~2重量%の抗酸化剤、好ましくはスルフヒドリル抗酸化剤、より好ましくはグルタチオンを含むか、又はそれらからなる。
【0121】
組成物及び他の製品
本発明は、上記で定義した酵素及び上記で定義したオリゴ糖を含む組成物を提供する。以下、このような組成物を本発明による組成物と称する。このような組成物は、好ましくは医薬組成物である。このような組成物は、好ましくは乾燥組成物である。
【0122】
酵素の乾燥製剤を産生するための本発明の方法は、好ましくは、製剤の乾燥時の酵素の活性の損失を最小にすることを目的とする。好ましくは、本発明の方法並びに組成物それ自体もまた、本発明の方法で得られる組成物のその後の保存時の酵素の活性の損失を最小にすることを目的とする。従って、本発明の方法は、好ましくは、冷蔵条件下(例えば、2~10℃)、室温(例えば、18~25℃)、又は熱帯地域で起こり得るような高温(例えば、32~45℃)でさえも、酵素の安定な製剤、すなわち、長い又は延長された保存寿命を有する製剤である、本発明による組成物を産生するための方法である。室温が好ましい。
【0123】
本発明による組成物及び医薬組成物は、当技術分野で周知のプロセス;例えば、従来の混合、溶解、造粒、ドラジェ作製、浮遊化、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥プロセスによって製造することができ、これによってリポソーム製剤、コアセルベート、水中油型エマルジョン、ナノ粒子/マイクロ粒子粉末、又は任意の他の形状若しくは形態をもたらし得る。従って、本発明に従って使用するための組成物は、薬学的に使用できる製剤への活性化合物の加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含む1つ又は複数の生理学的に許容される担体を用いて、従来の方法で製剤化することができる。
【0124】
或いは、組成物の1つ又は複数の成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水とともに構成するための粉末形態であってもよい。組成物の成分は、別々に供給されてもよい。
【0125】
本発明による組成物又は医薬組成物はまた、適切な固相又はゲル相担体又は賦形剤を含んでもよい。このような担体又は賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。尿素吸着剤などの吸着剤を担体として想定することができる。
【0126】
本発明による医薬組成物はまた、さらなる薬学的活性物質、好ましくは、急性腎不全又は末期腎臓病(ESKD)のような、尿素の蓄積又は尿素の不適切なクリアランスに関連する疾患又は状態の治療のためのさらなる薬学的活性物質を含むことができる。
【0127】
本発明による組成物は、さらなる成分を含むことができる。組成物の好ましい実施形態において、酵素は固定化されている。組成物の好ましい実施形態において、酵素はウレアーゼである。さらなる成分のさらなる例は、ジルコニウム塩(例えばリン酸ジルコニウム)のようなイオン交換体、及び好ましくは大気から酸素分子を捕捉することができる無機物質である無機抗酸化剤のような抗酸化剤、又はグルタチオン、システイン若しくはアスコルビン酸のような有機抗酸化剤である。
【0128】
組成物の好ましい実施形態において、酵素はアミドヒドロラーゼ、好ましくはウレアーゼであり、又はオリゴ糖はオリゴヘキソース、好ましくはオリゴケトヘキソース又はオリゴアルドヘキソース、より好ましくはオリゴケトヘキソースである。より好ましくは、酵素はアミドヒドロラーゼ、好ましくはウレアーゼであり、オリゴ糖はオリゴヘキソース、好ましくはオリゴケトヘキソース又はオリゴアルドヘキソース、より好ましくはオリゴケトヘキソースであり、最も好ましくはFOSである。
【0129】
好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも約99%の乾燥物含量を有するか、又は粉末であり得る乾燥組成物である。いくつかの実施形態において、組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、粉末、又はペーストの形態であってもよい。本明細書で使用される場合、ペーストは、高粘度の半液体を指し、これは、凝集材料のコロイド懸濁液、エマルジョン、及び/又は分散液であり得る。組成物がペーストの形態を有する乾燥物含量の範囲は、特に、組成物中に存在する他の成分の量及び種類に依存することが当業者には理解されよう。ペーストを得るために乾燥物含量を調整することは、当業者の能力の範囲内である。実施形態において、組成物はペーストの形態であり、ペーストは、組成物の総重量に基づいて、10~50重量%、好ましくは10~30重量%又は15~25重量%の乾燥物含量を有する。
【0130】
好ましい実施形態において、組成物は包装され、好ましくは無菌的に包装される。好ましくは、包装は、透析用途における組成物の使用に関する説明書を含む。
【0131】
本発明による組成物は、好都合には、腹膜透析又は血液透析のような腎代替療法において使用することができる。このような使用の間、組成物は一般的にカートリッジ又は膜中に存在し、これは(血液)透析装置に交換可能に挿入することができる。従って、本発明は、本発明による組成物を含む、透析装置で使用するためのカートリッジを提供する。このような透析装置は、血液透析装置又は腹膜透析における腹膜透析液の再生用装置であり得る。従って、本発明は、本発明による組成物を含む、透析装置で使用するための膜を提供する。このような透析装置は、血液透析装置又は腹膜透析における腹膜透析液の再生のための装置であり得る。従って、本発明は、本発明による組成物を含む透析装置、又は本発明によるカートリッジを提供する。このような透析装置は、血液透析装置又は腹膜透析における腹膜透析液の再生のための装置であり得る。
【0132】
本発明による組成物(カートリッジ、膜、又は透析装置に含まれる)の他に、このようなカートリッジ、膜、及び透析装置は当技術分野で公知である。特定の実施形態において、カートリッジは使い捨てカートリッジである。特定の実施形態では、カートリッジは再生可能カートリッジである。カートリッジは、カセットとも呼ばれ得る。カートリッジは、好ましくは、様々な異なる種類の構成要素と共に使用され、様々な方法で配置されるように適合可能である。カートリッジは、尿素吸着剤のような吸着剤のようなさらなる構成要素を含んでもよい。尿素を老廃物溶質として除去することにより、カートリッジは、透析中に使用される透析液及び/又は濾液を少なくとも部分的に再生する。カートリッジは、好ましくは、流体入口及び流体出口を有する本体を含む。カートリッジの内部は、好ましくは、入口から内部に入る流体が組成物を通って流れ、続いて出口を通るように構成及び配置される。ここで、組成物は、好ましくは、固定化ウレアーゼのような固定化酵素を含む。
【0133】
透析装置は、閉鎖された滅菌システムである。これは1つ又は2つの流体回路を含む。これは通常2つの回路:血液又は腹膜透析液のような対象の体液が通って流れるように配置された流体回路であるいわゆる患者ループと、透析液のような透析流体及び/又は濾液が上記のようなカートリッジを通して循環される、いわゆる再生ループを含む。この2つの回路は、(半透性)膜によって互いに隔てられており、この膜を通して老廃物溶質が対象の体液から透析流体に拡散又は通過することができる。透析装置周辺の環境からの空気、水分、病原体、及び流体は、流体回路に入ることができない。透析システムは、管理された状況下、好ましくは厳密に管理された状況下においてのみ、流体(限外濾過液など)及び空気がこれらの流体回路から出たり入ったりすることを許容する。
【0134】
医学的使用
多くの酵素は、公知の医学的治療に使用することができる。本発明の組成物は、そのような治療において使用するためのより安定な代替物を提供する。従って本発明は、本発明による組成物の医学的使用を提供する。この使用は、好ましくは、尿素の蓄積又は尿素の不適切なクリアランスに関連する疾患又は状態の治療における使用のためのものである。このような組成物は、本明細書において、本発明による使用のための製品と称される。
【0135】
この局面の特定の実施形態において、本発明は、尿素の蓄積、又は尿素の不適切なクリアランスに関連する疾患又は状態の治療において使用するための医薬として使用するための、本発明による組成物を提供する。この局面のさらなる特定の実施形態において、本発明は、医薬として使用するための、本発明による組成物を提供し、ここで、組成物は、対象から尿素を除去するためのものである。
【0136】
疾患又は状態の治療は、疾患又は状態若しくはその症状の改善、抑制、予防、遅延、治癒、又は防止であり得るが、好ましくは、疾患又は状態の症状の抑制とする。腎不全の場合、尿素が蓄積するか、又は尿素が十分にクリアランスされないことがある。尿素の蓄積又は尿素の不適切なクリアランスに関連する疾患又は状態の例は、末期腎臓病(ESKD);重篤な急性腎不全;重篤な急性腎障害(AKI);例えば胃腸出血による尿素の肝産生の増加;例えば大手術などの外傷又は筋肉の分解を伴う極度の飢餓によるタンパク質の異化の増加;例えば、うっ血性心不全、ショック、重度の下痢などの腎灌流低下の任意の原因による尿素の腎再吸収の亢進;テトラサイクリン又はコルチコステロイドによる治療などの尿素産生の増加をもたらす薬物療法による、その利尿作用のための尿素注入に起因する医原性状態、;慢性腎不全;及び尿流出閉塞である。
【0137】
本発明による使用のための製品は、それを必要とする対象に投与することができ、本発明による使用のための製品が対象の求核性老廃物溶質と結合することを可能にする。このような投与は、好ましくは有効量の投与である。このような方法における例えば吸着剤の使用は、当該分野で公知である(Gardnerら,Appl Biochem Biotechnol.1984;10:27-40)。
【0138】
投与は、当技術分野で公知の方法、好ましくは、カプセル、錠剤、ロゼンジ、ゲルカプセル、プッシュフィットカプセル、放出制御製剤などの当技術分野で公知の任意の製剤での経口摂取を介して、又はクライスター若しくは座剤としての直腸投与を介していてもよい。投与は、週1回、週に6、5、4、3、2、1回、毎日、1日2回、又は1日3回、又は1日4回とすることができる。
【0139】
本発明による使用のための製品は、治療方法における使用に適している。そのような治療方法は、対象、好ましくはそれを必要とする対象に、本発明による使用のための製品を一定量、好ましくは有効量投与するステップを含む方法であり得る。
【0140】
透析療法に関して、本発明は、腎不全を治療するための種々の異なる透析療法において使用することができる。本明細書を通して使用される、用語としての透析療法又は類似の用語は、疾患又は状態に罹患している対象から老廃物、毒素及び余分な水分を除去するための任意の全ての形態の療法を含み、包含することを意味する。また、ホメオスタシスも提供する。血液透析、血液濾過、及び血液濾過透析などの血液療法には、間欠的療法と持続的腎代替療法(CRRT)に用いられる持続的療法の両方が含まれる。持続的療法には、例えば、緩徐持続限外濾過(SCUF)、持続静静脈血液濾過(CVVH)、持続静静脈血液透析(CVVHD)、持続静静脈血液濾過透析(CVVHDF)、持続動静脈血液濾過(CAVH)、持続動静脈血液透析(CAVHD)、持続動静脈血液濾過透析(CAVHDF)、持続限外濾過定期間欠血液透析等が挙げられる。また、本発明は、例えば、持続外来腹膜透析(CAPD)、自動腹膜透析(APD)、持続流腹膜透析等を含む腹膜透析中にも使用することができる。さらに、一実施形態において、本発明は、急性又は慢性の腎不全又は疾患を有する対象に透析療法を提供する方法において利用され得るが、本発明はまた、例えば、救急治療室設定において、急性の透析の必要性に使用され得ることは理解されるべきである。このような用途には、本明細書に記載のカートリッジが好ましい。しかしながら、本発明の組成物は、透析に加えて、生理学的及び非生理学的な様々な異なる用途で効果的に利用され得ることは理解されるべきである。
【0141】
一般的な定義
本明細書及びその特許請求の範囲において、動詞「含む(comprise)」及びその活用は、その語に続く項目が含まれるが、具体的に言及されていない項目が除外されないことを意味する非限定的な意味で使用される。さらに、不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、文脈上明らかに要素が1つだけであることが要求されない限り、その要素が2つ以上存在する可能性を排除するものではない。従って、不定冠詞「a」又は「an」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0142】
数値と関連して使用される場合の「約」又は「およそ」という語(例えば、約10)は、好ましくは、その値が所与の値の10%超又は未満、任意選択で1%超又は未満であり得ることを意味する。
【0143】
本発明の文脈で物質のパラメータが議論される場合は常に、特に指定がない限り、パラメータは生理学的条件下で決定、測定、又は発現されるものと仮定する。生理学的条件は、当技術分野の当業者には公知であり、水性溶媒系、大気圧、6~8のpH値、室温から約37℃(約20℃~約40℃)の範囲の温度、及び緩衝塩又は他の成分の適切な濃度を含む。電荷はしばしば平衡と関連していることが理解される。電荷を運搬する、又は保有すると言われる部分は、そのような電荷を運搬又は保有しないよりも、そのような電荷を運搬、又は保有する状態が見出される部分である。従って、当業者には理解されるように、本開示において帯電していると示されている原子は、特定の条件下では帯電していない可能性があり、中性の部分は特定の条件下では帯電している可能性がある。
【0144】
本発明の文脈において、評価するパラメータの減少又は増加は、そのパラメータに対応する値の少なくとも5%の変化を意味する。より好ましくは、値の減少又は増加は、少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、又は100%の変化を意味する。この後者の場合、パラメータに関連する検出可能な値がもはや存在しない場合もあり得る。
【0145】
本文書に記載されている物質を医薬として使用することは、前記物質を医薬の製造に使用することとも解釈できる。同様に、物質が治療のため、又は医薬として使用される場合は常に、治療用医薬の製造にも使用することができる。使用のための製品は、治療方法における使用に適している。
【0146】
本出願を通じて、(血液)透析は、血液透析及び透析の両方を指す。一般的に、透析装置は、本明細書に記載されるような任意の種類の透析装置を指すことができる。
【0147】
以上、本発明を多数の例示的な実施形態を参照して説明した。いくつかの部分又は要素の変更、組合せ、及び代替的な実施態様は可能であり、特許請求の範囲に定義される保護範囲に含まれる。文献及び特許文献の引用は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
図1】異なる濃度のグルコース存在下、長期保存にわたってモニターされたウレアーゼ活性。ウレアーゼをpH6~7の指示した緩衝液に懸濁し、濾過し、乾燥させた後、20℃で保存し、示した時点でアッセイした。酵素活性は、試験した全ての条件下で、わずか数日後に半減した。
図2】25%グルコースを含むか、又は含まない、5%グルタチオン存在下でのウレアーゼ活性。両添加物を使用した場合でも、30日後には活性が約60%低下した。
図3】グルコースと比較したオリゴ糖(ここでは重合度2~9の範囲のオリゴフルクトース、分画精製イヌリン)存在下での長期に渡るウレアーゼ活性。オリゴ糖は約2U/mgで安定化し、長期間その状態を維持するが、グルコースは20日以内に1U/mg以下に低下する。
図4】25重量%の異なる炭水化物から乾燥した後の保存後のウレアーゼ活性。保存は20℃で行った。オリゴ糖は単糖と二糖より優れている。
図5】20℃で9日又は10日間保存した後のウレアーゼ活性。ウレアーゼはオリゴ糖の重量%を変えて保存した(図3と同じ)。40%超又は20%未満を使用した場合は、安定性が悪影響を受ける。
図6】グルコースの代わりにオリゴ糖を用いた場合、追加の還元剤の添加はウレアーゼの安定性を上昇させない。
図7】固定化ウレアーゼをpH6の100mMリン酸緩衝液(二糖類にはリン酸ナトリウム、フラクトオリゴ糖にはリン酸カリウム)に懸濁するために、25重量%の安定化剤の異なる組成を用いた。ウレアーゼは濾過後乾燥され、経時的に活性を試験した。トレハロースはラクトースよりも安定性を提供した。フラクトオリゴ糖が最も効果的であった。
図8】他の実験に記載したように、固定化ウレアーゼを乾燥させる前に、25重量%又は26重量%の安定化剤の異なる組成を使用した。フラクトオリゴ糖は長期間持続する安定化を提供した。トレハロースはあまり安定化を提供しなかったが、GSH(5重量%)も存在する場合、フラクトオリゴ糖のレベルまでではないが、改善できた。
【実施例
【0149】
実施例1-実験方法
ウレアーゼの提供-ウレアーゼは市販の供給源から調達しても、又は公知の方法でタチナタマメ(カンナバリア・エンシフォルミス)などの生物から単離してもよい。ウレアーゼは、遊離酵素として使用しても、公知の方法、例えば、国際公開第2011102807号又は米国特許第8561811号又は国際公開第2016126596号又はZhangら,DOI:10.1021/acsomega.8b03287又はv.Gelderら,2020,Biomaterials 234,119735の方法を用いて固定化してもよい。
【0150】
オリゴ糖の提供-オリゴ糖は市販されているか、又は公知の方法でチコリなどの生物から単離することができる。ここで、チコリの根からイヌリンを単離するには、まず脱イオン水を用いて高温で抽出し、次いで炭酸化(0.1M Ca(OH)とCOガス)した。これを濾過して、いくつかの低分子量成分を除去し、陰イオン及び陽イオン交換床で洗浄して、タンニン及び色素などの他の成分をさらに除いた。イヌリンを高温(70~90℃)で30~90分間、酸性条件(pH2~3)にさらすことで、重合度の分布が異なるFOSへのイヌリンの部分加水分解が達成された。得られた混合物は、ゲル濾過クロマトグラフィー(Biogel P2又はSephadex G50カラムを使用するp.e.)を用いて分画した。精製イヌリンは約5~18の単量体を有し、10~15の範囲のオリゴマーが大半を占める。分画精製イヌリンの単量体は約2~9であり、オリゴマーの大部分は4~7の範囲にある。
【0151】
ウレアーゼ活性-ウレアーゼの活性は、室温(20℃)で15mMの尿素の存在下、pH7.5の100mMリン酸カリウム緩衝液にウレアーゼを入れた場合に、時間内に形成されるアンモニアの量を定量化することにより決定することができる。この混合物から試料を採取し、96ウェルプレートにピペッティングする。試薬Aと試薬Bの1:1(v/v)の冷却した(0℃)新しい混合液を試料に添加し、これによって、アンモニアがベルテロー反応を起こし、緑色の色素を生成することが可能になる。溶液の620nmにおける吸光度を用いてアンモニア濃度を定量化し、ウレアーゼ活性と相関させる。
【0152】
試薬A:500mLの脱イオン水中のサリチル酸ナトリウム(4.80g、30mmol)、ニトロプルシドナトリウム二水和物(0.54g、1.8mmol)、EDTA(0.373g、1.28mmol)。
試薬B:500mLの脱イオン水中の水酸化ナトリウム(3.0g、75mmol)及び次亜塩素酸ナトリウム5~15%(10.2g、8.4mL)。
緩衝化15mM尿素溶液:500mLの脱イオン水中のリン酸二カリウム(7.26g、41.7mmol)、リン酸一カリウム(1.13g、8.3mmol)及び尿素(0.45g、7.5mmol)
【0153】
手順I:ウレアーゼを脱イオン水に溶解(又は固定化酵素の場合は懸濁)する(10mg/mL)。この溶液40μL(0.4mgウレアーゼ)を50mLの使い捨てチューブにピペッティングする。緩衝化15mM尿素溶液(10mL)をチューブに添加し(t=0)、試料を200rpmのシェーカーにかけた。いくつかの時点(4分、8分、12分、及び16分)で、チューブ内の溶液のアンモニア濃度を、96ウェルプレートに溶液5μLをピペッティングすることによって決定した。各ウェルに試薬Aと試薬Bの1:1(v/v)混合物(混合物は氷上に保存)300μLを添加し、混合物をRTで20~40分間インキュベートした後、620nmの吸光度を測定した。チューブ内のアンモニア濃度を時間に対してプロットし、4時点の傾きを線形回帰で計算した。ウレアーゼの比活性は以下の式で求めた: 活性=(体積*傾き)/((1-LOD)*重量)
【0154】
ここで、活性はウレアーゼの酵素活性(U/mg)である。体積は、緩衝化15mM尿素溶液の量であり、典型的には10mLである。傾きは、アンモニア濃度(mM)対時間(分)のプロットにおける傾きである。LODは乾燥時の重量損失である。典型的には、固定化ウレアーゼは0.55(55%)、ウレアーゼは0が使用される。重量は、チューブ中の(固定化)ウレアーゼの量(mg)である。
【0155】
手順II:固定化ウレアーゼ活性の決定。50mL使い捨てチューブに30~40mgの乾燥固定化ウレアーゼを装入した(手順Vを参照)。緩衝化15mM尿素溶液に塩化アンモニウムを3.5~4.0mMの濃度になるように添加し(500mLあたり100mg)、この溶液10mLをチューブに添加する(t=0分)。手順は手順Iの記載したのと同様に続ける。
【0156】
保存寿命アッセイ-手順III:ウレアーゼ試料の保存寿命;タチナタマメウレアーゼ(Sigma Aldrich、約8U/mg)を5~10の異なる1.5mL使い捨てチューブに秤量し、各チューブの重量を記録した(5~10mg)。試料は空気下で密閉し、20℃の暗室キャビネットに入れた。示された時点で、1本のチューブを取り出し、チューブ内に存在するウレアーゼを脱イオン水に溶解して10mg/mL溶液とし、手順Iに従って活性を二重で測定した。
【0157】
手順IV:凍結乾燥ウレアーゼ及びウレアーゼ:オリゴ糖混合物の保存寿命。50mLの使い捨てチューブに150mgのタチナタマメウレアーゼ(Sigma Aldrich、約8U/mg)を入れ、5mLの脱イオン水に溶解した。同様に、150mgのウレアーゼをチューブに入れ、300mgの重合度が2~9の範囲の分画精製イヌリンを添加し、混合物を5mLの脱イオン水に溶解した。両方のチューブの内容物を一晩凍結乾燥した。両方のチューブの乾燥した内容物を1.5mLの使い捨てチューブに分配し、試料の保存寿命を手順IIIに記載したのと同様にモニターした。試料の活性は手順Iで測定した。
【0158】
手順V:様々な安定剤を添加した固定化ウレアーゼの保存寿命、安定化溶液は、緩衝液と添加剤を混合して合計20gになるように調製する(表1.1参照)。固定化ウレアーゼ(米国特許第8561811号に記載されているように調製、1.0g)を20℃で安定化溶液(20g)に懸濁し、200rpmでシェーカーにかけた。15分後、懸濁液を濾紙(Whattman)上で真空濾過し、湿潤固定化ウレアーゼの白色残渣を得、これは典型的には約55%の含水率を有していた。含水率を約10~15%に低下させるため、湿潤残渣の一部(500mg)を50mLの使い捨てチューブに入れ、乾燥させた。最終混合物(含水率低下)を5~10本の別々の1.5mL使い捨てチューブに分け、空気下で密閉し、20℃で暗所に保存した。時間間隔でチューブを保管庫から取り出し、そのチューブに保存されている物質の活性を、手順IIに従って二重で測定した。
【0159】
各バッチの試料について、安定化溶液の内容物及び保存条件を表1.1に示す。
【0160】
【表2】
【0161】
実施例2-従来の保存溶液はヒドロラーゼ活性を保持しない
酵素はしばしばグルコース又はグルタチオン(GSH)のような抗酸化剤の存在下で保存される。図1は、ここではヒドロラーゼ酵素の活性があまり保持されないことを示している。ここでは、モデル酵素であるウレアーゼを固定化し、保存溶液に懸濁した後、濾過し、乾燥させて保存した。保存溶液は、pH6~7で、重量で示した量のグルコースを含んでいた。保存は20℃であり、酵素活性は示す時点でアッセイした。図2に示すように、溶液中に還元剤が存在しても、この活性の損失を有益に緩和することはできなかった。グルタチオン(GSH)をグルコース保存緩衝液に添加したが、30日以内に酵素活性のほぼ60%の損失が生じた。
【0162】
タチナタマメウレアーゼの保存に関する現在のゴールデンスタンダードは、25~85重量%のグルコース又はラクトースの存在下、pH5のリン酸ナトリウム緩衝液中で保存することである。グルコースの代わりに同等の量のオリゴ糖を使用した本発明による使用では、最大80%のウレアーゼ活性が保持され、120日後でもグルコース保存で観察されたレベルをはるかに上回る活性が依然として残っていた。約1.5U/mgの持続残存活性が観察された。pH5のリン酸カリウム緩衝液を代わりに用いても、同様の結果が得られた。結果を図3に示す。
【0163】
結論として、従来の保存溶液はヒドロラーゼ酵素には有効でないが、本発明によるオリゴ糖の使用は保存寿命を高める。
【0164】
実施例3-炭水化物の量及び種類
ウレアーゼ安定化に対する効果について様々な糖をスクリーニングした。図4に示すように、単糖(グルコース、フルクトース)、二糖(トレハロース、フルクトース)、及びオリゴ糖(重合度が2~9の範囲の分画精製イヌリン)を試験した。フルクトースとオリゴフルクトースを比較した場合、決定的な違いがある。単糖の存在下では、酵素活性の継続的な低下が観察され、保存後30日以内に初期活性の半分未満となり、これらのフルクトース部分がオリゴ糖の主に5~8単位の直鎖に結合している場合、長期に渡る活性損失は最大80%まで安定化される。フルクトースは結局、単糖のグルコースを上回ることはない。ラクトース(結合したガラクトースとグルコース単位)又はトレハロース(2グルコース単位)のような二糖は単糖を上回るが、重合度が2~9の範囲にある分画精製イヌリンのような酵素活性保持への同様の影響は有していない。
【0165】
図5は、2~60重量%の範囲の様々な量のオリゴ糖の存在下、20℃で保存した場合のタチナタマメウレアーゼの酵素活性を示している。酵素活性を安定化させる陽性の効果は、重合度が2~9の範囲にある分画精製イヌリン約20%まで増加させ、20~30重量%の間のレベルになり、30%を超えると徐々に減少する。このことは、オリゴ糖の存在による安定化効果が最大となる最適範囲が存在することを示している。
【0166】
実施例4-オリゴ糖の効果は支配的である
図2に示したように、5%のグルタチオン(GSH)の存在は、25%グルコース溶液中で保存した場合の酵素活性の安定性を改善し、40日間の保存後に約30%高い活性をもたらした。しかしながら、この活性は、還元剤を添加せずにオリゴ糖を使用した場合よりもまだ低かった。図6は、オリゴ糖と組み合わせた場合、追加の還元剤が保持酵素活性に明確な影響を及ぼさないことを示している。
【0167】
実施例5-末端グルコース残基は酵素安定性を改善する
固定化ウレアーゼを4つの異なる溶液に懸濁した後、懸濁液を濾過し、残渣を凍結乾燥してウレアーゼ活性をアッセイした。本実施例の全ての溶液は、重合度2の単分散性の糖を含む23重量%溶液であった。ウレアーゼ活性は2つの末端グルコース残基を含む化合物(トレハロース)で最も高かった。結果を表5に示す。
【0168】
【表3】
【0169】
この安定性は長期に渡って持続することがわかった。追加の実験では、固定化ウレアーゼを懸濁するために、pH6の100mMリン酸緩衝液と25重量%の安定化剤の組成物を使用した。その後、濾過して乾燥させた。トレハロースはラクトースよりも高い安定性を示した。フラクトオリゴ糖が最も効果的であった。結果を図7に示す。
【0170】
実施例6-フラクトオリゴ糖は二糖を上回る
固定化ウレアーゼを3つの異なる溶液に懸濁した後、懸濁液を濾過し、残渣を乾燥してウレアーゼ活性をアッセイした。溶液は二糖を含む場合は26重量%溶液、フラクトオリゴ糖の場合は25重量%溶液であった。ウレアーゼ活性はフラクトオリゴ糖で最も高かった。トレハロースの安定化効果は、抗酸化剤(ここではグルタチオン)の添加によってさらに改善されたが、これはGSHがより長鎖の化合物に対して効果を示さないことを考えると驚くべきことである(実施例4参照)。結果を図8に示す。フラクトオリゴ糖は約80日後でも酵素活性を約80%に維持した。GSHを添加したトレハロースは約60日後に約60%を維持したが、GSHを添加しないトレハロースは約30日以内に60%を大きく下回った。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】