(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】血栓除去装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
A61B17/22 528
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553524
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 IB2022051441
(87)【国際公開番号】W WO2022185141
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523334464
【氏名又は名称】インビントリック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】クイ ンゴ, ドン
(72)【発明者】
【氏名】ミン, ソングウ
(72)【発明者】
【氏名】ミン, ジヨング
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160MM36
4C160MM37
4C160NN14
(57)【要約】
血栓除去装置は、支持ワイヤ上に独立して取り付けられた複数の血栓捕捉器を含む。これらの血栓捕捉器は、前記支持ワイヤに偏心して支持される拡張フレームを有し、前記拡張フレームに血栓が通過して捕捉されるように配置される。さらに、前記血栓捕捉器は、各々独立して変形可能になっているため、蛇行血管を通して血栓除去装置を後退させるときに、一の前記血栓捕捉器を伸張させることなく、他の前記血栓捕捉器を伸張させることができる。これにより、伸張していない血栓捕捉器で血栓を保持することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的な血栓除去装置であって、
支持ワイヤと、
この支持ワイヤに独立して取り付けられた複数の血栓捕捉器と、を備え、
前記血栓捕捉器の各々は、前記支持ワイヤに偏心して支持される拡張フレームを有しており、
前記複数の血栓捕捉器が血管内に展開されるとき、前記拡張フレームが前記血管の血管壁に当接する状態となり、かつ、前記支持ワイヤが前記血管の中心軸からオフセットされた位置で前記拡張フレームの一つまたは複数を通って延びるように構成される、血栓除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の血栓除去装置であって、
前記拡張フレームは、前記支持ワイヤに互いに非同心状に支持されており、
前記複数の血栓捕捉器が血管内に展開されるとき、前記拡張フレームがそれぞれ異なる横断方向で同血管壁を押圧する、血栓除去装置。
【請求項3】
請求項1に記載の血栓除去装置であって、
前記拡張フレームが前記血管壁に当接しているとき、前記支持ワイヤが前記血管壁に沿って螺旋状に延びる、血栓除去装置。
【請求項4】
請求項1に記載の血栓除去装置であって、
前記血栓捕捉器の各々は、前記拡張フレームをジョイントで前記支持ワイヤに結合するステムを含み、かつ、
前記ジョイントは、一の前記拡張フレームに加えられる変形荷重が他の前記拡張フレームに伝達されないように、前記支持ワイヤに沿って長手方向に間隔をあけて配置されている、血栓除去装置。
【請求項5】
請求項4に記載の血栓除去装置であって、
前記変形荷重は、前記血管を通して前記支持ワイヤを後退させることによって引き起こされ、かつ、
前記複数の血栓捕捉器は、前記変形荷重によって、一の前記拡張フレームが伸張し、または前記血管壁と当接していないときに、他の前記拡張フレームが伸張せず、または前記血管壁に当接するように、前記支持ワイヤにそれぞれ独立して取り付けられている、血栓除去装置。
【請求項6】
請求項4に記載の血栓除去装置であって、
前記複数の血栓捕捉器は、
第1拡張フレームおよび第1ステムを有する第1血栓捕捉器と、
第2拡張フレームおよび第2ステムを有する第2血栓捕捉器と、を含み、
前記第2拡張フレームが前記第1拡張フレームよりも遠位にあり、第2ステムが第1拡張フレームに向けて近位のそれぞれのジョイントにおいて前記支持ワイヤに結合されている、血栓除去装置。
【請求項7】
請求項4に記載の血栓除去装置であって、さらに、
前記ジョイントに放射線不透過性マーカーを備えている、血栓除去装置。
【請求項8】
請求項4に記載の血栓除去装置であって、
前記血栓捕捉器の各々は、各捕捉器軸および前記支持ワイヤのワイヤ軸を含む各々の半径方向平面を有し、かつ、これらの半径方向平面が前記支持ワイヤを中心として互いに角度的にオフセットしている、血栓除去装置。
【請求項9】
請求項8に記載の血栓除去装置であって、
前記半径方向平面は、前記支持ワイヤを中心として角度的に均等に分布している、血栓除去装置。
【請求項10】
請求項4に記載の血栓除去装置であって、
前記拡張フレームの各々は、前記ステムに結合されたフレームセルリングを含む、血栓除去装置。
【請求項11】
請求項10に記載の血栓除去装置であって、
前記ステムは、複数の分岐枝を含み、これらの複数の分岐枝が前記ジョイントと前記フレームセルリングの近位リング端との間に延びて、前記拡張フレームの内部チャネルへの通り口を形成する、血栓除去装置。
【請求項12】
請求項11に記載の血栓除去装置であって、
前記通り口は、前記支持ワイヤに対して斜め方向に延びる口平面を有する、血栓除去装置。
【請求項13】
請求項10に記載の血栓除去装置であって、
1つまたは複数の前記拡張フレームは、前記フレームセルリングよりも遠位に向かって延び、遠位先端で収束する複数のストラットを含む、血栓除去装置。
【請求項14】
請求項10に記載の血栓除去装置であって、さらに、
前記フレームセルリングに結合されたフィルタを備える、血栓除去装置。
【請求項15】
請求項10に記載の血栓除去装置であって、
前記支持ワイヤは、
前記複数の血栓捕捉器よりも近位にある近位セグメントと、
前記複数の血栓捕捉器の1つまたは複数を通って延びる遠位セグメントと、を含み、
前記近位セグメントが直線状であり、前記遠位セグメントが非直線状である、血栓除去装置。
【請求項16】
請求項15に記載の血栓除去装置であって、
前記遠位セグメントは、1つまたは複数の屈曲部を含む、血栓除去装置。
【請求項17】
請求項16に記載の血栓除去装置であって、
前記1つまたは複数の屈曲部は、前記複数の血栓捕捉器が前記支持ワイヤに取り付けられる位置に一致する、血栓除去装置。
【請求項18】
請求項15に記載の血栓除去装置であって、
前記支持ワイヤの前記近位セグメントは、前記支持ワイヤの前記遠位セグメントよりも大きな直径を有する、血栓除去装置。
【請求項19】
以下のステップaおよびbを備える方法。
a.支持ワイヤに第1血栓捕捉器を取り付ける。ここで、前記第1血栓捕捉器は、第1の位置で前記支持ワイヤに偏心して支持された第1拡張フレームを含む。
b.前記支持ワイヤに第2血栓捕捉器を取り付ける。ここで、前記第2血栓捕捉器は、前記支持ワイヤに偏心して支持された第2拡張フレームを含み、かつ、前記第1拡張フレームと前記第2拡張フレームとは、前記支持ワイヤに対して互いに相対的に非同心状に支持される。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、さらに、下記ステップを備える方法。
前記支持ワイヤを研削して、前記第1の位置で近位セグメントに移行する遠位セグメントを形成する。ここで、前記遠位セグメントは、前記近位セグメントより小さい直径を有する。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、さらに、下記ステップを備える方法。
前記支持ワイヤの前記第1の位置に放射線不透過性マーカーを取り付ける。
【請求項22】
血管から血栓を除去する方法であって、以下のステップa~cを備える方法。
a.血栓を含む血管に機械的な血栓除去装置を導入する。ここで、前記血栓除去装置は、支持ワイヤと、この支持ワイヤに独立して取り付けられた複数の血栓捕捉器と、を含み、前記血栓捕捉器の各々は、未拡張状態で血管に導入される拡張フレームを含む。
b.前記複数の血栓捕捉器を展開し、前記拡張フレームを前記血管の血管壁に当接する拡張状態に移行させる。ここで、前記拡張フレームは、同拡張フレームが前記血管壁に当接するときに、前記支持ワイヤが前記血管の中心軸からオフセットして前記血管を通って延びるように、前記支持ワイヤに偏心して支持される。
c.前記血栓除去装置を後退させ、前記拡張フレームに前記血栓を取り込む。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記拡張フレームは、前記複数の血栓捕捉器が展開されるとき、前記拡張フレームがそれぞれ異なる横断方向で前記血管壁を押圧するように、前記支持ワイヤに対して互いに相対的に非同心状に支持される、方法。
【請求項24】
機械的な血栓除去装置であって、
支持ワイヤと、
この支持ワイヤに独立して取り付けられ、それぞれ拡張フレームを有する複数の血栓捕捉器と、を備え、
前記血栓除去装置が自由空間に展開されるとき、前記拡張フレームが互いに非同心状になる一方、前記血栓除去装置が血管内に展開されて前記拡張フレームが前記血管の血管壁に当接した状態にあるとき、前記拡張フレームが互いに同心状になるように付勢される、血栓除去装置。
【請求項25】
請求項24に記載の血栓除去装置であって、
前記複数の血栓捕捉器は、第2血栓捕捉器の近位に第1血栓捕捉器を含み、
前記第1血栓捕捉器が遠位フレーム端を有し、かつ、前記第2血栓捕捉器が近位フレーム端を有しており、しかも、前記遠位フレーム端が前記近位フレーム端に一致して整列可能になっている、血栓除去装置。
【請求項26】
請求項25に記載の血栓除去装置であって、
前記整列時における前記遠位フレーム端と前記近位フレーム端との間の隙間が10mm未満である、血栓除去装置。
【請求項27】
請求項24に記載の血栓除去装置であって、さらに、
最も遠位の前記血栓捕捉器は、フレームセルリングと、このフレームセルリングに結合されたフィルタと、を含む、血栓除去装置。
【請求項28】
請求項24に記載の血栓除去装置であって、
前記支持ワイヤは、
前記複数の血栓捕捉器の近位に位置する近位セグメントと、
前記複数の血栓捕捉器の1つまたは複数を通って延びる遠位セグメントと、を含み、
前記近位セグメントおよび前記遠位セグメントが、前記支持ワイヤに取り付けられた放射線不透過性コイルに連結されている、血栓除去装置。
【請求項29】
請求項28に記載の血栓除去装置であって、
前記支持ワイヤの前記近位セグメントは、前記支持ワイヤの前記遠位セグメントよりも大きな直径を有する、血栓除去装置。
【請求項30】
請求項24に記載の血栓除去装置であって、さらに、
前記拡張フレームの1つまたは複数に取り付けられた複数のフレームマーカーを備え、前記複数のフレームマーカーが放射線不透過性である、血栓除去装置。
【請求項31】
請求項24に記載の血栓除去装置であって、
前記血栓除去装置が前記血管内に展開されて前記血管壁に前記拡張フレームを当接するとき、前記支持ワイヤは、前記血管の中心軸からオフセットされた状態で前記血管壁に沿ってうねるように付勢される、血栓除去装置。
【請求項32】
機械的な血栓除去装置であって、
支持ワイヤと、
前記支持ワイヤに取り付けられ、第1拡張フレームを有する第1血栓捕捉器と、
前記支持ワイヤに取り付けられ、第2拡張フレームを有する第2血栓捕捉器と、を備え、
前記第2血栓捕捉器の前記第2拡張フレームは、ヒンジによって遠位フレームセグメントに連結された近位フレームセグメントを有する、セグメント化された本体を含み、しかも、
前記血栓除去装置が自由空間に展開されるとき、前記第1拡張フレームおよび前記第2拡張フレームが互いに非同心状になる一方、前記血栓除去装置が血管内に展開されて前記第1拡張フレームおよび前記第2拡張フレームが前記血管の血管壁に当接するとき、前記第1拡張フレームおよび前記第2拡張フレームが互いに同心状に付勢される、血栓除去装置。
【請求項33】
請求項32に記載の血栓除去装置であって、
前記近位フレームセグメントは、遠位セグメント端を有し、かつ、前記遠位フレームセグメントは近位セグメント端を有しており、
前記遠位セグメント端は、周方向隙間によって前記近位セグメント端から分離され、前記ヒンジのみによって前記遠位フレームセグメントが前記近位フレームセグメントに連結される、血栓除去装置。
【請求項34】
請求項33に記載の血栓除去装置であって、
前記支持ワイヤに、血管を通して前記支持ワイヤを後退させるための変形荷重が加えられるとき、前記セグメント化された本体の前記遠位フレームセグメントおよび前記近位フレームセグメントが、前記変形荷重によって前記ヒンジを中心に、これらのフレームセグメント間の前記周方向隙間を拡大するように傾く、血栓除去装置。
【請求項35】
請求項32に記載の血栓除去装置であって、
前記第1血栓捕捉器は、前記第2血栓捕捉器よりも近位に位置し、
前記第1血栓捕捉器が遠位フレーム端を有し、かつ、前記第2血栓捕捉器が近位フレーム端を有しており、しかも、前記遠位フレーム端が前記近位フレーム端に一致して整列可能になっている、血栓除去装置。
【請求項36】
請求項35に記載の血栓除去装置であって、
前記整列時における前記遠位フレーム端と前記近位フレーム端との間の隙間が10mm未満である、血栓除去装置。
【請求項37】
請求項32に記載の血栓除去装置であって、
前記第2血栓捕捉器は、フレームセルリングを含み、さらに、このフレームセルリングに結合されたフィルタを備える、血栓除去装置。
【請求項38】
請求項32に記載の血栓除去装置であって、
前記血栓除去装置が前記血管内に展開されて前記血管壁に前記拡張フレームを当接するとき、前記支持ワイヤは、前記血管の中心軸からオフセットされた状態で前記血管壁に沿ってうねるように付勢される、血栓除去装置。
【請求項39】
血管から血栓を除去する方法であって、以下のステップa~cを備える方法。
a.機械的な血栓除去装置を、前記血栓を含む前記血管に導入する。ここで、前記血栓除去装置は、支持ワイヤと、それぞれ拡張フレームを含む複数の血栓捕捉器と、を含み、前記複数の血栓捕捉器は、前記支持ワイヤに独立して取り付けられ、前記血栓除去装置が自由空間に展開されるときには、前記拡張フレームが互いに非同心状になる。
b.前記血管内で前記複数の血栓捕捉器を展開し、前記血管の血管壁に前記拡張フレームが当接する状態にする。ここで、前記拡張フレームは、互いに同心状になるように付勢される。
c.前記血栓除去装置を後退させ、前記血栓を前記拡張フレームに取り込む。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、
前記複数の血栓捕捉器は、第2血栓捕捉器の近位に第1血栓捕捉器を含み、前記第1血栓捕捉器が遠位フレーム端を有し、かつ、第2血栓捕捉器が近位フレーム端を有しており、しかも、前記遠位フレーム端が前記近位フレーム端に一致して整列可能になっている、方法。
【請求項41】
請求項39に記載の方法であって、
最も遠位の前記血栓捕捉器は、フレームセルリングを含み、さらに、このフレームセルリングに結合されたフィルタを備える、方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法であって、
前記複数の血栓捕捉器は、
前記支持ワイヤに取り付けられ、第1拡張フレームを有する第1血栓捕捉器と、
前記支持ワイヤに取り付けられ、第2拡張フレームを有する第2血栓捕捉器と、を含み、
前記第2拡張フレームは、ヒンジによって遠位フレームセグメントに連結された近位フレームセグメントを有する、セグメント化された本体を含む、方法。
【請求項43】
請求項39に記載の方法であって、
前記血栓除去装置が前記血管内に展開されて前記血管の血管壁に前記拡張フレームが当接する状態にあるとき、前記支持ワイヤは、前記血管の中心軸からオフセットされた状態で前記血管壁に沿ってうねるように付勢される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月4日に出願された米国特許出願第17/192,786号および2021年11月22日に出願された米国特許出願第17/532,891号の優先権を主張するものであり、それらの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示による発明は、虚血性脳卒中治療のために使用される機械的血栓除去装置(血栓除去デバイス:以下、血栓除去装置と称する場合がある。)に関し、詳しくは、神経血管系の血栓摘出処置に使用される血栓除去装置に関する。
【0003】
急性虚血性脳卒中患者の脳を救済するために各種の装置が存在する。これらのうち、初期段階で、閉塞した動脈の灌流を回復させるために、神経血管系から血栓を取り除くために使用される血栓除去装置がある。この種の血栓除去装置としては、コイルリトリーバー装置、吸引装置、最近ではステントリトリーバー装置が知られている。
【0004】
既存のステントリトリーバー装置は、基本的に自己拡張型ステントであり、血栓内に留置して血栓を押しのけたり、ステントのストラット(柱材)の内側に血栓を絡め取ったりすることができる。ステントと血栓は機械的に一体化した後、デリバリーカテーテル内に引き抜かれ、患者から取り除かれる。
ステントリトリーバー装置の使いやすさと性能における重要な要因には、透視下での視認性、血栓を捕捉または係合する能力、蛇行血管を通ってステントが引き込まれる際に捕捉または係合した血栓を保持する能力などがある。これらの要因に対する欠陥は、処置の時間を延長し、臨床的成功率を低下させることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存のステントリトリーバー装置は、視認性、血栓の係合、および/または血栓の保持において最適とはいえない。現状のほとんどのステントリトリーバー装置は、その構造が放射線不透過性であるため、処置中に透視下で容易に可視化されない。
さらに、現状のほとんどのステントリトリーバー装置は、血栓の捕捉および係合を妨げる一体型ステント本体が採用されている。例えば、一体型ステント本体は、硬い血栓の上を転がるように通過し、これにより血栓を捕捉または係合することなく、血栓から跳ね返されることがある。さらに、ステント本体が血管の屈曲部で引っ張られると、ステント本体がその全長にわたって伸びることがあるため、ステント本体が屈曲部で引っ張られる際に、捕捉された血栓が外れて失われることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、前述した既存のステントリトリーバー装置の問題を解決するための本発明による血栓除去装置について説明する。
本発明の一形態において、血栓除去装置は、支持ワイヤ上に独立して支持された複数の血栓捕捉器を含む。例えば、前記支持ワイヤは、近位セグメントと、この近位セグメントよりも小さい直径を有するか、若しくは剛性の低い遠位セグメントとを有することができ、この遠位セグメントに前記血栓捕捉器を取り付けることができる。
より詳細には、前記血栓捕捉器の各々は、拡張可能なフレーム(以下、拡張フレームと称する。)とステムとを含むことができ、このステムは、前記拡張フレームをジョイントで前記支持ワイヤに結合することができる。このジョイントは、前記支持ワイヤと前記ステムの周囲に圧着される放射線不透過性マーカーバンドのような機械的ジョイントとすることができる。これにより、前記ジョイントを透視下で視認することができる。
さらに、前記血栓捕捉器は、前記支持ワイヤに沿って長手方向に間隔をあけて配置された前記ジョイントの各々によって、前記支持ワイヤに独立して支持される。このため、前記拡張フレームの1つに変形荷重が加わっても、その変形荷重は他の前記拡張フレームに伝達されない。これにより、例えば、本装置が血管の屈曲部付近で引っ張られたときに、一の前記拡張フレームが伸張して血管壁との当接を失っても、他の前記拡張フレームが伸張して血管壁との当接を失うことはない。従って、本発明による血栓除去装置は、蛇行する解剖学的構造から血栓をより効果的に捕捉し、回収することができる。
【0007】
前記複数の血栓捕捉器おける前記拡張フレームは、前記支持ワイヤに偏心して支持される。例えば、前記拡張フレームは、前記血栓捕捉器が自由空間に展開されるときは、前記拡張フレームの捕捉器軸が前記支持ワイヤのワイヤ軸に沿って整列しないように配置される一方、前記血栓捕捉器が血管内に展開されるときには、前記拡張フレームが血管壁に当接し、同心状になるように血管壁に付勢(押圧)される。これにより、前記捕捉器軸が血管の中心軸と揃うことになり、前記支持ワイヤを血管壁に向かって半径方向外向きに付勢(押圧)することができる。そして、前記支持ワイヤは、血管の中心軸からオフセットされた状態、例えば、血管壁に沿って螺旋状になって前記拡張フレームを通って延び、血管のルーメン(内腔)および前記拡張フレームの内部チャネルを、血栓を受け入れるために開放した状態にすることができる。
従って、本発明の血栓除去装置によれば、硬い血栓が本装置と血管壁との間を転がって下流で失われるようなことがなく、前記内部チャネルに転がり込んで捕捉される。この結果、このような硬い血栓をより効果的に捕捉することができる。
【0008】
また、前記複数の血栓捕捉器における前記拡張フレームは、前記支持ワイヤに非同心状に支持される。例えば、前記拡張フレームは、前記血栓捕捉器が自由空間に展開されるときには、前記拡張フレームの捕捉器軸が互いに整列されないように配置される一方、前記血栓捕捉器が血管内に展開されるときには、前記拡張フレームが血管壁に当接し、互いに同心状に付勢(押圧)される。前記拡張フレームは、変形していない自由な状態に戻ろうとするため、その弾性力によって外向きの押圧力を得ることができる。この外向きの押圧力は、前記拡張フレームが自由状態では非同心状であることから、それぞれ異なる横断方向(放射方向)で血管壁に作用することができる。
従って、このような非同心状の拡張フレームによれば、血管壁の周囲に分散した横断方向(放射方向)の力を増加させることができ、これにより、本発明による血栓除去装置が血管を通って引き抜かれる際に血栓の捕捉を効果的に補助することができる。
【0009】
血栓の捕捉作用については、本発明の血栓除去装置の他の特徴、例えば、本装置の遠位端に配置されたフィルタ、または独立して支持された血栓捕捉器の隣接する開口部などによってさらに増強することができる。
前記フィルタは、血液を遠位側に通過させつつ、血栓を捕捉する自己拡張可能なウェブまたはメッシュから形成することができる。前記開口部は、前記ジョイントの間隔、前記拡張フレームの形状、または他の変数を変更することによって調整され得る。このような調整により、血栓除去装置の内部チャネル内に捕捉される硬いまたは軟らかい血栓が通過するポートを提供することができる。
本発明による血栓除去装置の製造方法、および血管から血栓を除去するために血栓除去装置を使用する方法についてはさらに後述する。
【0010】
前記血栓除去装置は、セグメント化された構造を有する血栓捕捉器を含むことができる。例えば、最も遠位の前記血栓捕捉器は、近位フレームセグメントおよび遠位フレームセグメントを含むセグメント化された本体を有することができる。フレームセグメントは、フレーム間のコネクタのようなヒンジで連結され得る。
血栓除去装置に軸方向荷重が加えられると(例:本装置の血管内での後退時)、前記フレームセグメントは、ヒンジを中心に傾くことができる。より詳細には、血栓を回収する間、前記フレームセグメントは同心状に付勢されながら、互いに傾くことができる。そして、この傾きの動作により、前記フレームセグメントが血管壁を覆って付着する柔らかい血栓を外向きに押圧することができ、また、フレームセグメント間の隙間を通じて硬い血栓がフレームセグメントのルーメンに入りやすくなるように、フレームセグメントを分離させることができる。
【0011】
前述した本発明の概要は、本発明のすべての態様について網羅的に列記したものではない。本発明は、前述の概要に記載した様々な態様、以下の詳細な説明(発明を実施するための形態)に開示される態様、ならびに本出願とともに提出された特許請求の範囲において特に指摘された態様の全ての好適な組み合わせから実施可能なすべての装置および方法を含む。このような組み合わせには、前述の概要に特に記載されていない特有の利点がある。
【0012】
本発明の新規な特徴は、特に、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の特徴および利点をより良く理解するためには、本発明の原理が適用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明(発明を実施するための形態)、および添付の図面を参照することが有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による血栓除去装置を示す平面図である。
【0014】
【
図2】本発明の実施形態による、複数の血栓捕捉器を有する血栓除去装置の遠位部分を示す平面図である。
【0015】
【
図3】本発明の実施形態による、複数の血栓捕捉器を有する血栓除去装置の遠位部分を示す斜視図である。
【0016】
【
図4】本発明の実施形態による、自由空間に展開された複数の血栓捕捉器を示す端面図である。
【0017】
【
図5】本発明の実施形態による、血管内に展開された複数の血栓捕捉器を示す端面図である。
【0018】
【
図6】本発明の実施形態による、自由空間に展開された複数の血栓捕捉器を示す側面図である。
【0019】
【
図7】本発明の実施形態による、直線状の血管内に展開された複数の血栓捕捉器を示す側面図である。
【0020】
【
図8】本発明の実施形態による血栓捕捉器を示す斜視図である。
【0021】
【
図9】本発明の実施形態による血栓捕捉器を示す側面図である。
【0022】
【
図10】本発明の実施形態による血栓捕捉器を示す斜視図である。
【0023】
【
図11】本発明の実施形態による、血栓捕捉器に取り付けられたフィルタを示す斜視図である。
【0024】
【
図12】本発明の実施形態による、湾曲した血管内に展開された血栓除去装置を示す模式図である。
【0025】
【
図13】本発明の実施形態による、蛇行血管の屈曲部に血栓除去装置が引き込まれる様子を示す模式図である。
【0026】
【
図14】本発明の実施形態による、血栓除去装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0027】
【
図15】本発明の実施形態による、血栓除去装置を使用して血管から血栓を除去する方法を示すフローチャートである。
【0028】
【
図16】本発明の他の実施形態による、複数の血栓捕捉器を有する血栓除去装置の遠位部分を示す平面図である。
【0029】
【
図17】本発明の他の実施形態による、1つまたは複数の屈曲部を備えた支持ワイヤを含む血栓除去装置を示す斜視図である。
【0030】
【
図18】本発明の他の実施形態による、自由空間に展開された複数の血栓捕捉器を有する血栓除去装置の遠位部分を示す平面図である。
【0031】
【
図19】本発明の他の実施形態による、血管内に展開された複数の血栓捕捉器を有する血栓除去装置の遠位部分を示す平面図である。
【0032】
【
図20】本発明の他の実施形態による、血栓除去装置の最も遠位の血栓捕捉器を示す斜視図である。
【0033】
【
図21】本発明の他の実施形態による、血管内に展開された複数の血栓捕捉器を示す側面図である。
【0034】
【
図22】本発明の他の実施形態による、血管内に展開された複数の血栓捕捉器を示す側面図である。
【0035】
【
図23】本実施形態の実施形態によるフレームマーカーを示す斜視図である。
【0036】
【
図24】本発明の実施形態による、血栓除去装置の支持ワイヤに取り付けられた放射線不透過性コイルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態による血栓除去装置、すなわち、支持ワイヤに独立して、かつ偏心して取り付けられた血栓捕捉器を有する血栓除去装置について説明する。 実施形態による血栓除去装置は、急性虚血性脳卒中の治療に用いるのに適しているが、これに限定されることなく、他の血管からの血栓除去のような他の用途にも使用することができる。
【0038】
各種の実施形態は、図を参照して説明されているが、特定の実施形態は、これらの具体的な細部のうちの1つまたは複数がなくても、または他の公知の方法および構成と組み合わせて実施することができる。 以下の説明では、実施形態を理解しやすくするために、具体的な構成、寸法、工程など、多数の具体的な細部が示されている。 他方、周知の工程や製造技術については、説明を不明瞭にしないために、特に詳細には記載されていない。
本明細書において、「一実施形態」、「実施形態」等への言及は、記載された特定の特徴、構造、構成、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて各箇所で「一実施形態」、「実施形態」等の語句が現れる場合、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、構成、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0039】
本明細書において、相対的な用語の使用は、相対的な位置または方向を示すものである。例えば、「遠位」は、支持ワイヤまたは血栓捕捉器の長手方向軸に沿った第1の方向を示し得る。同様に、「近位」は、第1の方向とは反対の第2の方向を示し得る。しかしながら、このような用語は、相対的な参照フレームを確立するために提供されるものであり、血栓除去装置の使用または手順を、以下の各種の実施形態に記載される特定の構成に限定することを意図するものではない。
【0040】
実施形態の一態様において、血栓除去装置は、支持ワイヤに取り付けられた複数の血栓捕捉器を含む。 各血栓捕捉器は独立して取り付けられる。より詳細には、各血栓捕捉器は、他の血栓捕捉器の拡張フレームとは独立して支持ワイヤに取り付けられる拡張フレームを含む。
従来の競合する装置は、蛇行血管の屈曲部で引っ張られると大きく伸びるのに対し、血栓除去装置のセグメント化された構成は、血栓捕捉器が互いに独立して動作することを可能にする。従って、一の血栓捕捉器を伸張させても、他の血栓捕捉器が大きく伸張することはない。
その結果、血栓除去装置が屈曲部の周囲に引き込まれるとき、屈曲部の血栓捕捉器が伸張して血管壁との当接を失うことがあっても、屈曲部よりも遠位および近位の血栓止血材は伸張せずに血管壁との当接を維持する。従って、屈曲部の血栓捕捉器が血栓との係合を失った場合でも、血栓は、血管壁に当接する他の血栓捕捉器に移動し、捕捉され、保持されることになる。
【0041】
実施形態の一態様において、血栓除去装置の血栓捕捉器は、支持ワイヤ上に偏心して支持される。血栓捕捉器が血管内に展開されて同血管内で同心状の位置関係になると、支持ワイヤは中心から押し出され、これにより、血管の中心軸からオフセットされて、血栓捕捉器の拡張フレームを通って延びることができる。そして、このような拡張フレームの偏心の配置、および支持ワイヤの中心軸から外れた配置によって、血栓が拡張フレーム内を通過しやすくなり、この拡張フレームによって捕捉されることが可能になる。
既存のステントリトリーバー装置の単位ステント本体は、血栓の捕捉を許容しない場合がある(その代わりに、同装置が引き込まれる間、血栓がステント本体と血管壁との間で転がることを許容する。)。これに対して、実施形態による血栓除去装置のセグメント化された血栓捕捉器は、血栓が血栓捕捉器間の隙間に入り、その結果、同血栓捕捉器によって捕捉されることを許容する。
【0042】
実施形態の一態様において、血栓除去装置の血栓捕捉器は、透視下で高い可視性をもつジョイントによって支持ワイヤに取り付けられる。 例えば、血栓捕捉器を支持ワイヤに連結する各ジョイントは、放射線不透過性マーカーを含むことができる。このような放射線不透過性マーカーは、血栓捕捉器に対して支持ワイヤに沿った特定の位置を示すものとなる。従って、放射線不透過性マーカーは、血栓除去装置の視認性を向上させ、血栓除去装置の操作者に血栓が血栓捕捉器に対してどこに位置するかを理解するための手がかりを提供する。
【0043】
図1に、実施形態に係る血栓除去装置の平面図を示す。
血栓除去装置100は、急性虚血性脳卒中を治療するために使用することができる血管内ツールである。血栓除去装置100は、操作者が同装置の遠位作動領域104を前進、後退、および回転させるために使用する近位作動領域102を含む。より詳細には、血栓除去装置100は、操作者が遠位作動領域104を前進させるために押し、遠位作動領域104を後退させるために引っ張る、または遠位作動領域104を回転させるためにねじるための支持ワイヤ106を含む。
また、血栓除去装置100は、マイクロカテーテルを通して前進させ、標的解剖学的構造内にマイクロカテーテルから展開させることができる複数の血栓捕捉器108を含む。血栓捕捉器108は、標的解剖学的構造内に展開されると、血栓を捕捉し、取り込み、係合し、または血栓と機械的に一体化することができる。このように捕捉された血栓は、支持ワイヤ106を引いて血栓捕捉器108および血栓を血管系から後退させることで患者から回収される。
【0044】
一実施形態において、支持ワイヤ106は、近位ワイヤ端110および遠位ワイヤ端112を含み、ワイヤ軸に沿って近位ワイヤ端110から遠位ワイヤ端112まで長手方向に延びる。支持ワイヤ106は、ステンレス鋼または超弾性ニッケルチタン合金などの弾力性のある材料から形成された可撓性の細長いワイヤであり得る。これにより、支持ワイヤ106のワイヤ軸は、近位ワイヤ端110と遠位ワイヤ端112との間に1つまたは複数の直線セグメントまたは曲線セグメントを有することができる。
支持ワイヤ106の長さは、血栓除去装置100の全長よりも短くてもよい。例えば、遠位ワイヤ端112は、血栓捕捉器108の少なくとも1つに対して遠位に位置し、かつ血栓捕捉器108の少なくとも1つの遠位端に対して近位に位置し得る。従って、近位ワイヤ端110(近位装置端114)から遠位ワイヤ端112までの距離は、近位ワイヤ端110から遠位装置端116までの距離よりも短くなることがある。
【0045】
図2に、実施形態に係る、複数の血栓捕捉器を有する血栓除去装置の遠位部分の平面図を示す。これらの血栓捕捉器は、支持ワイヤ106に独立して取り付けられている。より詳細には、各血栓捕捉器108は、それぞれの拡張フレームを含み、血栓捕捉器108のそれぞれの拡張フレームは、それぞれの位置で支持ワイヤ106に接続される。
例えば、第1血栓捕捉器202は、第1拡張フレーム204と、第1ジョイント208で第1拡張フレーム204を支持ワイヤ106に接続する第1ステム206とを有する。 第1ジョイント208は、支持ワイヤ106に沿った第1の位置209にある。第2血栓捕捉器210は、第2拡張フレーム212と、第2ジョイント216で第2拡張フレーム212を支持ワイヤ106に接続する第2ステム214とを有する。第2ジョイント216は、支持ワイヤ106に沿った第2の位置217にある。
血栓除去装置100は、2個よりも多い血栓捕捉器108を有することができる。例えば、第3血栓捕捉器218は、第3拡張フレーム220と、第3ジョイント224で第3拡張フレーム220を支持ワイヤ106に連結する第3ステム222とを有する。第3ジョイント224は、支持ワイヤ106に沿った第3の位置225にある。
それぞれの血栓捕捉器108の取り付け位置は、支持ワイヤ106に沿って長手方向に離間させることができる。例えば、第1の位置209、第2の位置217、および第3の位置225は、支持ワイヤ106上の長手方向の異なる位置にある。これにより、血栓捕捉器108は、拡張フレームを長手方向に直列に配置することができ、各拡張フレームを他の拡張フレームに対して支持ワイヤ106上に独立して支持することができる。
【0046】
順次並んだ血栓捕捉器108は、同一または異なる構造を有することができる。例えば、
図2に示す実施形態では、最も近位の血栓捕捉器、すなわち、第1血栓捕捉器202と、中間の血栓捕捉器、すなわち、第2血栓捕捉器210とは、それらの拡張フレームのステムおよびジョイントが同一の形状を有するという点で同一である。対照的に、最も遠位の血栓捕捉器108、すなわち第3血栓捕捉器218は、第1血栓捕捉器202および第2血栓捕捉器210とは異なる形状を有し得る。
これらの形状的な違いの一部を以下に説明すると、1つの違いは、遠位装置端116でフィルタ232を支持するための、拡張フレームから遠位方向に延びる1つまたは複数のストラット230の存在である。このように、独立して支持された血栓捕捉器108は、それぞれの血栓の係合、血栓の捕捉、可撓性、または任意の他の性能属性を提供するようにサイズおよび形状を決定することができる。
【0047】
図3に、実施形態に係る、複数の血栓捕捉器を有する血栓除去装置の遠位部分の斜視図を示す。
血栓捕捉器108を支持する支持ワイヤ106は、近位セグメント302および遠位セグメント304を有している。近位セグメント302は、血栓捕捉器108の近位で、近位作動領域102上に延びており、遠位セグメント304は、血栓捕捉器108の1つまたは複数を通って、遠位作動領域104内に延びている。
【0048】
支持ワイヤ106の各セグメントは、その目的に適応させることができる。例えば、近位セグメント302は、主として、操作者から軸方向および回転方向の荷重を遠位作動領域104に伝達するように機能し得る。従って、支持ワイヤ106の近位セグメント302は、それらの機能に適した近位直径306を有すことができる。一例として、近位直径306は、0.010インチから0.020インチの範囲(例:0.018インチ)に設定することができる。
対照的に、遠位セグメント304は、作動力を伝達するために主に機能するのではなく、血栓捕捉器108のための支持体として主に機能し得る。そのために遠位セグメント304は、近位直径306よりも小さい遠位直径308を有し得る。例えば、遠位直径308は、0.004インチ~0.010インチ(例:0.0045インチ)に設定することができる。従って、支持ワイヤ106の近位セグメント302は、支持ワイヤ106の遠位セグメント304よりも大きな直径を有し得る。
遠位セグメント304の小さい直径は、他の目的のためにも有効である。第1に、より小さい直径は、支持ワイヤ106の遠位セグメント304に可撓性を与えることができ、後述するように、標的解剖学的構造および血栓捕捉器108の内部寸法に沿ってうねり、螺旋状に延びることを可能にする。第2に、遠位セグメント304は、血栓捕捉器108を通って延びることから、より小さい直径は、マイクロカテーテルを通って血栓除去装置100を前進させるときに、より小さいパッキング比(充填率)を可能にする。このようにパッキング比が小さくなると、同装置を、マイクロカテーテルを通して標的解剖学的構造により容易に供給することが可能になる。
【0049】
前述した支持ワイヤ106の構造は、単一のワイヤによって実現することができる。 例えば、単一のワイヤを、近位ワイヤ端110と遠位ワイヤ端112との間の不連続な位置で研削するか、または他の方法で同ワイヤにテーパを付けることで、近位セグメント302および遠位セグメント304を形成することができる。一例として、単一のワイヤは、近位ワイヤ端110において0.018インチであり、その長さに沿って遠位側にテーパを有し、ワイヤ長さに沿った異なる位置において0.010インチ、0.006インチ、および0.0045インチの直径を有することができる。テーパは均一であることも、それぞれの直径を有する複数のワイヤセグメントを形成するために不連続な位置に導入されることもできる。
【0050】
一実施形態において、支持ワイヤ106は、複数のワイヤセグメントを結合することで形成される。例えば、近位セグメント302は、第1の位置209に遠位端を有する第1のワイヤであり得る。同様に、支持ワイヤ106は、第1の位置209に近位端を有する第2のワイヤを含み得る。第1のワイヤは、前述したように、第2のワイヤよりも大きな直径を有することができる。
このようなワイヤセグメントは、ジョイントによって結合され得る。例えば、第1血栓捕捉器202を支持ワイヤ106に取り付ける第1ジョイント208は、複数のワイヤセグメントの端部を結合し、一体の支持ワイヤ106を形成することもできる。
【0051】
血栓除去装置100の各ジョイントは、機械的手段、熱的手段、または接着手段(接着剤)を用いて形成することができる。例えば、第1ジョイント208は、支持ワイヤ106および第1血栓捕捉器202の第1ステム206の周りに機械的に圧着されて同血栓捕捉器を支持ワイヤ106に取り付けるマーカーバンドを含むことができる。マーカーバンドは、白金イリジウム、ステンレス鋼、金、タングステン、または他の放射線不透過性材料から形成された管状スリーブとすることができる。このようなマーカーバンドにより放射線不透過性マーカー310を提供することができる。
第1ステム206は、支持ワイヤ106に隣接してマーカーバンドの内側に配置されるテール部分を含むことができる。マーカーバンドを圧着するとき、支持ワイヤ106およびステムをかしめて第1血栓捕捉器202を支持ワイヤ106に固定することができる。
一実施形態では、マーカーバンド、血栓捕捉器、および支持ワイヤ106を接着剤で互いに固定し、第1ジョイント208を形成してもよい。
【0052】
前述したジョイントは別の方法で形成してもよい。例えば、血栓捕捉器と支持ワイヤ106との間のいずれかのジョイントは、レーザー溶接、はんだ、またはろう付けによるジョイントを用いて形成することができる。
機械的手段、熱的手段、または接着手段によるジョイントは、適度な放射線不透過性を提供しながら放射線不透過性マーカー310を支持ワイヤ106に固定することができる。例えば、タングステンロッドを第1の位置209で支持ワイヤ106に接着してもよい。このような血栓除去装置100は、支持ワイヤ106に沿ったジョイントに放射線不透過性マーカーを含む。
【0053】
放射線不透過性マーカーは、放射線透視下での前記血栓除去装置の可視化を容易にする。前述のジョイントおよび放射線不透過性マーカー310の位置は、標的解剖学的構造内の血栓捕捉器と血栓との間の相対的配置を理解するための操作者への手がかりとして使用することができる。
例えば、第1ジョイント208の放射線不透過性マーカー310は、第1拡張フレーム204の近位にある場合、操作者は、血栓除去装置100を後退させて、血栓を通り過ぎるように第1ジョイント208を後退させ、同血栓が第1拡張フレーム204の内部に入るようにすることができる。
同様に、別の放射線不透過性マーカー310を、支持ワイヤ106に沿った第2の位置217の第2ジョイント216に配置することができる。これにより、操作者は、血栓除去装置100を後退させて、血栓を通り過ぎるように第2ジョイント216を後退させ、同血栓が第2拡張フレーム212の内部に入るようにすることができる。
同様に、別の放射線不透過性マーカー310を、支持ワイヤ106に沿った第3の位置225の第3ジョイント224に配置することができる。これにより、操作者は、血栓除去装置100を後退させて、血栓を通り過ぎるように第3ジョイント224を後退させ、血栓が第3拡張フレーム220の内部に入るようにすることができる。
【0054】
前記各拡張フレームの内部よりも近位に放射線不透過性マーカー310を配置することにより、種々の利点が得られる。
第1に、前述したように、これらの位置は、同マーカーと、長手方向に並んだ血栓と、各拡張フレームの内部との間の相対的な位置について明確なフィードバックを操作者に提供する。
第2に、マーカーバンドを拡張フレームと長手方向の同じ位置に配置するのではなく、拡張フレームよりも近位に配置することによって、同拡張フレームが放射線不透過性マーカー310よりも遠位の位置で、同マーカーを囲むことなく、非拡張状態に収縮することができる。より詳細には、放射線不透過性マーカー310は、ジョイントが拡張フレームの近位にあるため、拡張フレームの収縮直径に寄与しない。つまり、ジョイントにより収縮直径が大きくならない。この結果、このようなマーカーと拡張フレームとの相対的な位置関係は、血栓除去装置100のパンキング比(非拡張状態の輪郭が小さくなる)に有利であり、マイクロカテーテルを介した血栓除去装置の供給の改善に寄与する。
【0055】
図4に、実施形態に係る、自由空間に展開された複数の血栓捕捉器の端面図を示す。
各血栓捕捉器108は、支持ワイヤ106に独立して取り付けられ、この支持ワイヤに偏心して支持される拡張フレームを有する。支持ワイヤ106は、ワイヤ本体を通って長手方向に延びるワイヤ軸402を含む。前述したように、支持ワイヤ106は可撓性であるため、ワイヤ軸402は直線セグメントおよび曲線セグメントを有することができる。しかしながら、モデル化の目的のために、ワイヤ軸402は直線状(
図3)として示されることがあり、
図4の端面図では単一の点として表されている。
【0056】
各血栓捕捉器108は、ワイヤ軸402から半径方向にオフセットされた捕捉器軸404を有する。以下に説明するように、血栓捕捉器108は、円筒管から三次元拡張可能構造をレーザー切断することによって形成することができ、これにより、血栓捕捉器108の拡張フレームは、
図4に示すように、円形の断面形状(輪郭)を有することができる。
これらの断面形状の中心は、血栓捕捉器108を通って長手方向に延びるそれぞれの捕捉器軸404を定めるものとなる。捕捉器軸404がワイヤ軸402から半径方向に間隔を保っているため、血栓捕捉器108は、支持ワイヤ106上に偏心して支持されることになる。より詳細には、血栓捕捉器108のステムは、ワイヤ軸402において支持ワイヤ106に取り付けられるが、血栓捕捉器108の拡張フレームは、支持ワイヤ106に対して偏心して支持される。
【0057】
一実施形態において、偏心して支持された拡張フレームは、ワイヤ軸402を中心として半径方向に配向される。各血栓捕捉器108は、ワイヤ軸402およびそれぞれの捕捉器軸404を含むそれぞれの半径方向平面を有し得る。例えば、第1の半径方向平面406は、ワイヤ軸402から第1血栓捕捉器202の第1捕捉器軸408を通って半径方向に延びる。同様に、第2の半径方向平面410は、ワイヤ軸402から第2血栓捕捉器210の第2捕捉器軸412を通って半径方向に延び、第3の半径方向平面414は、ワイヤ軸402から第3血栓捕捉器218の第3捕捉器軸416を通って半径方向に延びる。
各半径方向平面は、支持ワイヤ106の周囲で互いに角度的にオフセットされ得る。 例えば、各半径方向平面は、拡張フレームが互いに相対的に支持ワイヤ106上で非同心状に支持されるように、ワイヤ軸402から異なる方向に放射状に配置される。拡張フレームの非同心状の分布は、遠位方向に見たときに非同軸になる捕捉器軸から明らかである。
【0058】
血栓捕捉器108の半径方向平面は、支持ワイヤ106の周りに均一に分布してもよいし、不均一に分布してもよい。
図4に示す実施形態では、半径方向平面は、支持ワイヤ106の周囲に不均一に分布している。より詳細には、反時計回り方向における第1の半径方向平面406と第2の半径方向平面410との間の角度は約60°であり、反時計回り方向における第2の半径方向平面410と第3の半径方向平面414との間の角度は約60°であり、反時計回り方向における第3の半径方向平面414と第1の半径方向平面406との間の角度は約240°である。つまり、周方向に隣接する血栓捕捉器108間の角度は等しくなく、血栓捕捉器108は支持ワイヤ106に対して均一に配向されていない。
対照的に、半径方向平面は、周方向に隣接する全ての血栓捕捉器108間の角度が等しい場合、均一に分布し得る。 一般的なケースでは、半径方向平面間の角度は、360°を血栓捕捉器108の数で割ったものである。例えば、血栓捕捉器108が3個ある場合、第1の平面、第2の平面および第3の平面の間の角度が120°であると、拡張フレームは、支持ワイヤ106に対して均一に分布する。つまり、不均一な分布は例示であり、半径方向平面間の角度が等しい場合には、半径方向平面は支持ワイヤ106の周囲に均一に分布し得ることが判る。
【0059】
図5に、実施形態に係る、血管内に展開された複数の血栓捕捉器の端面図を示す。
図4では、前述したように、偏心して支持された拡張フレームを説明しているが、この
図4は、遠位作動領域104が自由空間、例えば、拡張フレームに外力が加えられていない空間で自然に拡張されたときに、血栓捕捉器108の捕捉器軸が一致しない状態を示したものである。
これに対し、
図5は、独立して偏心して支持された血栓捕捉器108を血管502に展開したときの作用を示している。
【0060】
非同心状に支持された拡張フレームが血管502の血管壁504によって拘束されると、血管壁504は、拡張フレームを半径方向内側に押圧し、血栓捕捉器108を同心状に支持される方向に移動させる。より詳細には、血管壁504の半径方向の強度が支持ワイヤ106の遠位セグメント304の剛性よりも大きいことを考慮すると、支持ワイヤ106は、偏心して支持された拡張フレームが同心状の配置に向かうように撓む。
ただし、図示の例では、拡張フレームは完全に同心状ではない。これは、支持ワイヤ106の弾力性が、独立して支持された構造の結果として、各血栓捕捉器108に個々に作用して、血栓捕捉器108をワイヤ軸402に対して異なる方向に押圧するため、実際にはそうなり得る。従って、
図5の強調された図示のように、複数の血栓捕捉器108が血管502内に展開されるとき、拡張フレームは、力ベクトル506によって示されるように、異なる斜め方向で血管壁504に押し付けられる。
【0061】
ここで注目すべき点は、
図5に示された第1血栓捕捉器202、第2血栓捕捉器210、および第3血栓捕捉器218の断面は、実際には、長手方向にそれぞれ異なる位置で重ね合わされている。従って、
図5に示す支持ワイヤ106の断面は、互いに異なる長手方向位置にある。
この認識は、血管502のような閉塞空間に血栓捕捉器108を展開することで、支持ワイヤ106が同空間の中心(中心軸)に位置しない非線形の形状に強制的に付勢されることを示している。より詳細には、血栓捕捉器108が拡張フレームを血管壁504に当接させた状態で血管502内に展開されると、支持ワイヤ106は、血管502の中心軸510からオフセットした位置で、1つまたは複数の拡張フレームを通って延びることなる。このような独立して偏心支持された血栓捕捉器108の構成による効果については、以下にさらに説明する。
【0062】
図6に、実施形態に係る、自由空間に展開された複数の血栓捕捉器の側面図を示す。前述したように、各血栓捕捉器108は、それぞれのジョイント606により支持ワイヤ106に各拡張フレーム604を結合する各ステム602を含む。ステム602、拡張フレーム604、およびジョイント606は、前述したように、例えば、第1、第2、および第3のように、個別にラベル付けすることができるが、
図6~
図7では、これらの特徴的な符号は、一律にラベル付けされており、これらの特徴を一般化するものとして付されている。
負荷(外力)のかからない自然な状態では、支持ワイヤ106は、拡張フレーム604の1つまたは複数を通って延び、線形(直線状)に配置され得る。例えば、支持ワイヤ106は、
図6で近位および中間の拡張フレーム604を完全に通過し、遠位の拡張フレーム604の近位端で終端する。
ジョイント606は、支持ワイヤ106に沿って長手方向に間隔を空けて配置されており、ステム602は互いに分離されている。これにより、拡張フレーム604は、支持ワイヤ106に独立して支持される。
さらに、拡張フレーム604は、支持ワイヤ106に偏心して支持される。これは、捕捉器軸404がワイヤ軸402から半径方向にオフセット(側面図では垂直方向にオフセット)されていることから明らかである。
【0063】
図7に、実施形態に係る、線形(直線状)の血管内に展開された複数の血栓捕捉器の側面図を示す。
遠位作動領域104が血管502内に展開されると、血管壁504が変形荷重702を血栓捕捉器108に加える。この場合、変形荷重702は半径方向荷重であり、捕捉器軸を半径方向に整列するように移動させる。
変形荷重702はまた、1つまたは複数の拡張フレーム604の伸張を引き起こす軸方向荷重(
図13)であってもよい。いずれにしても、血栓捕捉器108が長手方向に間隔をあけたジョイント606で独立して支持されている結果、一の拡張フレーム604に加えられた変形荷重702は、他の拡張フレーム604に伝達されない。むしろ、拡張フレーム604は互いに独立して撓む。
図7では、これに関して、近位および遠位の拡張フレーム604が下方に移動する一方、中間の拡張フレーム604が上方に移動するように示されている。このような拡張フレーム604の独立した動作によって捕捉器軸404が直線的に整列する。
【0064】
拡張フレーム604が血管内で整列するのに伴い、支持ワイヤ106は非直線的な形状に撓む。より詳細には、支持ワイヤ106の近位セグメント302は、直線的、例えば、直線のままであってもよいが、捕捉器軸404がワイヤ軸402に対して偏心して配置されていることを考慮すると、捕捉器軸404がより中心に近づく、例えば、血管502の中心軸510と一致するようになるにつれて、拡張フレーム604を支持する支持ワイヤ106の遠位セグメント304は、非直線的、例えば湾曲した形状になり得る。より詳細には、ワイヤ軸402は、中心(中心軸)から外れる向き(例:血管壁504に向かって半径方向外向き)に押圧された状態になり、これに伴い支持ワイヤ106は、近位セグメント302の直線形状とは異なる曲線形状を取り得る。
【0065】
一実施形態では、支持ワイヤ106は、それぞれの拡張フレーム604の内壁に沿って各血栓捕捉器108を通って延びる。例えば
図5に示すように、各拡張フレーム604内の支持ワイヤ106は、拡張フレーム604の内壁に沿って配置されており、主要な力ベクトル506が血管壁504に作用する位置から周方向にオフセットされる。
支持ワイヤ106は、血管壁504に沿ってうねりながら延びることができる。
図7の側面図では、支持ワイヤ106の長手方向に向けて上下に湾曲する経路がこれを示している。このようなうねりのある経路は、支持ワイヤ106が変形荷重702によって血管壁504に押し付けられる山部と谷部を有する。これらの山部と谷部は、拡張フレーム604の内部チャネルと一致することがあり、例えば、支持ワイヤ106は、拡張フレーム604の内壁に山部または谷部を有することができる。一実施形態では、支持ワイヤ106は、血管502の中心軸510から離れる方向に付勢される際に、拡張フレーム604の内壁に押し付けられる。
【0066】
三次的には、支持ワイヤ106のうねりのある経路は、螺旋状の経路になることがある。より詳細には、血栓捕捉器108がワイヤ軸402の周囲で非同心状に配列されると、変形荷重702が拡張フレーム604を異なる方向に独立して移動させ、それらを互いに整列させ、かつ、血管ルーメンに揃うように付勢する。そして、支持ワイヤ106への接続部、例えば、それぞれのジョイント606も異なる方向に付勢されることになる。これにより、一のジョイント606における支持ワイヤ106は、第1の半径方向位置、例えば、0度の位置で血管502に付勢され、他のジョイント606は、第2の半径方向位置、例えば、120度の位置で血管502に付勢され、さらに他のジョイント606は、第3の半径方向位置、例えば、240度の位置で血管502に付勢され得る。そして、支持ワイヤ106がこれらの半径方向位置の各ジョイント606を通って長手方向に延びるにつれて、螺旋状の構造をとることができる。具体的には、支持ワイヤ106は、拡張フレーム604およびそれぞれのジョイント606が血管壁504に接触しているときに、血管壁504に沿って螺旋を描くことができる。このように支持ワイヤ106は、1つまたは複数の山部または谷部で血管壁504と接触しながら遠位側にうねり、また、支持ワイヤ106の遠位セグメント304の長さにわたって連続的に血管壁504と接触しながら遠位側に螺旋状になり得る。
【0067】
うねり状または螺旋状の支持ワイヤ106は、いくつかの性能上の利点をもたらす。
第1に、支持ワイヤ106の血管壁504からのオフセットにより、各拡張フレーム604が異なる方向の力ベクトル506で同血管に押し付けられる。支持ワイヤ106は、血管壁504から拡張フレーム604に加えられる変形荷重702に対する反作用荷重を発生させ、この反作用荷重は、力ベクトル506として血管壁504に作用する。
血栓捕捉器108が血管502内に展開されると、支持ワイヤ106は、血管502の中心軸510から遠ざけられるように異なる方向に付勢される。これに伴いその反作用荷重は、これらの付勢力と反対の方向に向けられる。従って、拡張フレーム604には、支持ワイヤ106が血管壁504を押し付ける力ベクトル506が作用するため、拡張フレーム604が血管内に展開されたときに血管壁504により高い半径方向の力を与えることができる。
【0068】
うねり伏または螺旋状の支持ワイヤ106の第2の利点は、血栓の捕捉のために有効なクリアランス(隙間)である。
血栓捕捉器108が血管502内に展開されるとき、支持ワイヤ106は、拡張フレーム604および血管502の周縁にオフセットされ、これにより、中央ルーメン、例えば、拡張フレーム604の内部チャネルを、血栓の通過に対して完全に開放された状態に保つことができる。
さらに
図7を参照すると、拡張フレーム604が拡張されて血管壁504に当接するとき、支持ワイヤ106は、各拡張フレーム604の異なる周方向位置で血管壁504に沿って走行する。隣接する拡張フレーム604の間には隙間704が存在し、その隙間は、血栓が血栓除去装置100の中央ルーメンに侵入し得る開口部となることができる。そして、この中央ルーメンは、血管壁504および拡張フレーム604の内壁から半径方向内側に形成される空間の容積を提供するものとなり得る。
中心に位置する支持ワイヤ106(例:血管502の中心軸510と一致する支持ワイヤ106)は、中央ルーメンに血栓が進入するのを妨げる可能性があり、血栓を半径方向外側に逸らすことがある。外側に逸れた血栓は、その後、拡張フレーム604の外表面と血管壁504との間を転がり、捕捉されない可能性がある。
対照的に、周方向にオフセットされた支持ワイヤ106は、中央ルーメンを塞ぐことなく、血栓を受容する中央ルーメンの容積を最大にする。そして、血栓は、外側に逸れるよりもむしろ、血管502を通して引っ張られる過程で拡張フレーム604によって捕捉されるように中央ルーメンに完全に移動することができる。
【0069】
血栓を受け入れる本装置の中央ルーメンを開放するために、周方向にオフセットされた支持ワイヤ106を使用することに加え、拡張フレーム604間の隙間704を調整することで、血栓の捕捉性能を向上させることもできる。
より詳細には、一の拡張フレーム604の遠位フレーム端706と、隣接する拡張フレーム604の近位フレーム端708との間の開口部は、血栓を本装置の中央ルーメンに取り込むチャネルまたはポートとして機能する。隙間704は、血栓、例えば、拡張フレーム604と血管壁504との間を転がる硬い血栓が隙間704に対して長手方向に並んだときに隙間704に確実に入る大きさに設定することができる。一の拡張フレーム604の遠位フレーム端706と、隣接する拡張フレーム604の近位フレーム端708との間の距離は、ほとんどの硬い血栓を収容するために10~20mm、特に15mm程度の範囲とすることができるが、捕捉する血栓サイズの範囲に応じて、長手方向に異なる距離に設定することももちろん可能である。
【0070】
一実施形態では、一対の拡張フレーム604間の隙間704は、サイズまたは形状において、他の一対の拡張フレーム604間の隙間704と異なってもよい。例えば、
図7の最も近位と中間の拡張フレーム604との間の隙間704の長さは、
図7の中間の拡張フレーム604と最も遠位の拡張フレーム604との間の隙間704の長さとは異なってもよい(例:
図7の隙間704の長さよりも短くすることができる。)
同様に、拡張フレーム604の構造は、
図7の最も近位の拡張フレーム604と中間の拡張フレーム604との間の隙間704が、
図7の中間の拡張フレーム604と最も遠位の拡張フレーム604との間の隙間704とは異なる形状であるように、異なる形状を有することができる。
このような隙間の長さおよび/または形状のバリエーションは、異なる血栓タイプに対して、より多くまたはより少なく受け入れるように適応可能な開口部を提供し得る。例えば、より短くてより広い近位の開口部は硬い血栓を捕捉するために適しており、より長くてより狭い遠位の開口部は軟らかい血栓を捕捉するために適している場合がある。
【0071】
図8に、一実施形態に係る血栓捕捉器の斜視図が示されている。
前述したように、各血栓捕捉器108は、拡張フレーム604およびステム602としての構成部分を有する。拡張フレーム604は、遠位フレーム端706および近位フレーム端708を含む。これらのフレーム端は、拡張フレーム604の内部チャネル812への開口部、例えば、拡張フレーム604の円筒形内部への近位開口部、および円筒形内部への遠位開口部を規定するものとなる。
拡張フレーム604は、少なくとも1つのフレームセルリング802を含むことができる。フレームセルリング802は、拡張および収縮するように構成することができる。形状的には拡張フレーム604はステントに類似し得る。例えば、フレームセルリング802は、円周方向に互いに連結された2つ以上のセルを含み、“開いた”または“閉じた”セルパターンを有する円筒形の拡張可能な構造に形成される。
このようなセルパターンは、血栓を捕捉止するための近位および/または遠位の開口部を有する拡張可能な構造を形成するために、1つまたは複数のスロット、ストラット、またはリンク820を含む。ステントと同様に、血栓捕捉器108は、金属チューブからセルパターンをレーザー切断することによって形成することができる。一例として拡張フレーム604は、形状記憶合金、例えばニッケルチタン管から形成された自己拡張構造であり得る。しかしながら、ステントとは異なり、拡張フレーム604の半径方向の力は、動脈硬化性病変を開くための支持体として作用するよりもむしろ血栓の捕捉に対応すべき二次的な構造形状を保つために作用することが求められる。
【0072】
また、血栓捕捉器108は、ステント支持体とは異なり、拡張フレーム604から近位に延びるステム602を含むことができる。より詳細には、ステム602は、フレームセルリング802の近位リング端803(近位フレーム端708)から近位ステム端804まで近位に延びることができる。遠位フレーム端706が血栓捕捉器108の遠位位置または遠位端を規定し得るのと同様に、近位ステム端804が血栓捕捉器108の近位位置を規定し得る。血栓捕捉器108の遠位端および近位端はいずれも隣接する血栓捕捉器に直接接続されていない。つまり、血栓捕捉器108は、支持ワイヤ106に自由に吊り下げられた独立体となっている。
【0073】
一実施形態では、ステム602は、近位ステム端804から近位フレーム端708まで延びる1つまたは複数の分岐枝を含む。ステム602は、
図6および
図7にモデル化されているように、拡張フレーム604から支持ワイヤ106のジョイント606まで近位に延びる単一の真っ直ぐなワイヤセグメントであり得る。しかしながら、一実施形態では、ステム602は、近位ステム端804のジョイント606と、フレームセルリング802の近位リング端803との間に延びる複数の分岐枝を含む。これらの分岐枝は、拡張フレーム604を引っ張りながらフレームセルリング802を支持ワイヤ106に接続する尾のように作用することができる。同分岐枝の形状は、操作中に力(例:引っ張り力)を拡張フレーム604に伝達し、血栓の捕捉に寄与することができる。
【0074】
前述の分岐枝は、引っ張り力を伝達するために、近位ステム端804と近位フレーム端708との間で1回以上分岐して、近位リング端803のそれぞれに接続する構造を有することができる。より詳細には、ステム602は、拡張可能なリング構造の各近位頂点から近位に延びることができる。これにより、支持ワイヤ106から各ステムの分岐枝を介して拡張フレーム604に伝達される引っ張り力は、近位フレーム端708の周囲に均一に分散する。このような引っ張り力の均一な分散は、装置の回収中に拡張フレーム604の傾きを減少させることができ、したがって、血管の損傷およびまたは血栓の損失を減少させることができる。
【0075】
ステム602の分岐枝の一部は、拡張フレーム604の内部チャネル812への通り口810を規定し得る。例えば、一対の分岐枝は、近位ステム端804の近くで分岐し、近位リング端803に向かって遠位に延びる。これらの一対の分岐枝は、近位リング端803でフレームセルリング802の近位端に沿って続き、2つの隣接するフレームセル間のリンク820に収束する。
このように分岐および収束する枝は、内部チャネル812への近位開口部を提供する “目”の形の通り口810を形成することができる。より詳細には、2つの円弧状枝の間で閉じたネガディブな空間が通り口810を提供することができる。
同様に、他の通り口を捕捉器構造の反対側のステム602の枝の間に規定することができる。この他の通り口は、枝によって図示された通り口810から分離されるが、同じ内部チャネル812に開口し得る。このように血栓捕捉器108の通り口は、血栓が拡張フレーム604に入って捕捉され得るポートを提供する。
【0076】
図9に、実施形態に係る血栓捕捉器の側面図を示す。この側面図では、近位リング端803よりも遠位にある拡張フレーム604と、近位リング端803よりも近位にあるステム602との区分(境界部)を確認することができる。
内部チャネル812は、拡張フレーム604内の容積を提供するものである。ステム602は、拡張フレーム604から近位ステム端804のジョイント606まで近位に延びており、このジョイント606は、血栓捕捉器108を支持ワイヤ106に結合している。
ステム602の枝は、異なる近位リング端803に接続するように分岐することができる。また、ステム602の枝は、通り口810を形成し、この通り口810は、
図9の側面図に示す口平面902を有する。口平面902は、前述したように、通り口810を規定する枝の間に閉じたネガディブな空間を含む平面である。
一実施形態では、口平面902は、支持ワイヤ106に対して斜め方向に延びている。例えば、支持ワイヤ106が長手方向に延びるワイヤ軸を含む一方、口平面902は、同ワイヤ軸に対して平行でも垂直でもない斜め方向に配置されてもよい。
【0077】
ワイヤ軸402に対する口平面902の角度(例:前述した斜め方向の角度)は、血栓の捕捉を促進することができる。例えば、口平面902に角度を付けることによって、血栓がより容易に通過することができる横向きの開口部を提供することができる。
このような斜め方向の角度は、隣接する拡張フレーム604間の隙間704(
図7参照)のサイズに影響を与える1つの要因となる。前述したように、隙間704のサイズは、捕捉される血栓のタイプおよび血栓がいかに容易に捕捉されるかに影響し得る。例えば、角度の付いた口平面902は、硬い血栓が内部チャネル812内へより容易に転がるための十分な大きさの導入部を提供することができる。
【0078】
図10に、実施形態に係る血栓捕捉器の斜視図を示す。
前述したように、血栓除去装置100における血栓捕捉器108は、様々な形状を有し得る。一実施形態において、拡張フレーム604の1つまたは複数は、フレームセルリング802の遠位側に延びる複数のストラット230を含む。
ストラット230は、フレームセルリング802の遠位端から遠位側に延びることができる。例えば、ストラット230は、遠位端のセルパターンの山部1004または谷部1006から延びることができる。
ストラット230は、図示されているように、遠位フレーム端706で複数の末端に延びるように分岐することができる。また、ストラット230は、一体のセグメント、例えば、フレームセルリング802における単一の近位端と、遠位フレーム端706における単一の遠位端とを有する直線状の柱状突起であってもよい。
【0079】
図11に、実施形態に係る、血栓捕捉器に取り付けるフィルタの斜視図を示す。
血栓除去装置100は、拡張フレーム604の遠位側を通過する血栓を捕捉するためのフィルタ232を含むことができる。一実施形態において、フィルタ232は、フレームセルリング802に結合される。例えば、フィルタ232は、フレームセルリング802から遠位方向に延びるストラット230に取り付けられる。
フィルタ232は、遠位方向に収束する形状を有し得る。より詳細には、フィルタ232は、近位フィルタ端1102から遠位フィルタ端1104まで遠位方向に延びることができ、近位フィルタ端1102は、遠位フィルタ端1104よりも大きい横断寸法を有することができる。フィルタ232の収束形状は、血管502のルーメンを横断し、拡張フレーム604の遠位側を通過する血栓または血栓の一部を捕捉するための閉鎖構造を形成し得る。
【0080】
一実施形態において、フィルタ232は、ウェブまたはメッシュ構造を含む。例えば、フィルタ232は、ウェブ状に織られるか、または円錐形のような遠位方向に収束する構造をもつメッシュ状に編まれたポリマーまたは金属フィラメントから形成される。
フィルタ232のウェブまたはメッシュ構造は、血液を通過させつつ、拡張フレーム604の遠位に流れる血栓または血栓の一部を捕捉する多孔性(間隙率)を有し得る。一実施形態において、ウェブまたはメッシュ構造は、ニッケルチタン合金のような形状記憶材料から形成されるが、フィルタ232は、これに代えて、ステンレス鋼のような他の材料または金属から形成されてもよい。
【0081】
フィルタ232は、所定の多孔性(孔密度)を有する薄いシート材料から形成されてもよい。例えば、フィルタ232は、血流を可能にするためにフィルムを貫通して形成された1つまたは複数の孔を有するポリマーフィルムから形成することができる。
このようなフィルタ232は、近位フィルタ端1102に自由に吊り下げることができる。より詳細には、フィルタ232を支持するための内部フレームは存在しなくてもよい。また、同フィルタ232を、拡張フレーム604から遠位方向に延びる1つまたは複数のストラット230によって支持してもよい。
一実施形態では、ストラット230は一点に収束する(
図16参照)。自由に吊り下げられた、および/または内部で支持されたフィルタ232は、デバイス(血栓除去装置)の送達中に収縮し、標的解剖学内で拡張して血栓の遠位移動を防ぐことができる。
【0082】
血栓捕捉器108にはコイルチップ1108が含まれる。コイルチップ1108は、フィルタ232から遠位方向に延び、柔軟で血管壁504に対して非外傷性となるように形成されている。
また、コイルチップ1108は、放射線不透過性であり、血栓捕捉器108の遠位端の視認性を向上させることができる。例えば、コイルチップ1108は、ステンレス鋼、白金イリジウム、または透視下で視認可能な他の放射線不透過性の金属または材料から形成される。
一実施形態では、コイルチップ1108は、機械的手段、熱的手段、または接着手段による接合部によって拡張フレーム604のフィルタ232および/またはストラット230に接合される。このような接合部には、例えば接着剤を採用することができ、これによりフィルタ232がコイルチップ1108に接着される。
【0083】
フィルタ232は、最も遠位の血栓捕捉器108(例:
図2参照)の一部であるように示されているが、血栓除去装置100における任意の血栓捕捉器108が、それぞれのフィルタ232を含み得ることが判る。さらに、血栓捕捉器108のいずれか(最も近位、中間、最も遠位など)は、それぞれの遠位端1106に収束する遠位端を有することができる。より詳細には、拡張フレーム604のいずれかおよびすべては、遠位に移動する血栓を捕捉するケージ状またはフィルタ状の構造を採用することで、それらの遠位端を閉じることができる。
ここで述べられている血栓捕捉器の構造のいずれについても、各血栓捕捉器の遠位の形状は、他の血栓捕捉器に対して同じであっても異なっていてもよい。
【0084】
図12に、実施形態に係る、湾曲した血管内に展開された血栓除去装置の模式図を示す。この図は、前述したように、偏心して支持された拡張フレーム604、およびうねりのある支持ワイヤ106の利点を視覚的に示している。
血栓除去装置100が血管502内に展開されるとき、各血栓捕捉器108は、ジョイント606から延びるステムにより支持ワイヤ106に取り付けられて、血管502の中心軸510に対して異なるクロッキング(角度)をもつようになる。
例えば、図示の実施形態において、血栓除去装置100は、4つの血栓捕捉器108を有し、各々のジョイント606およびステムは、隣接するステムに対して反時計回りに90度異なるクロッキングをもつ。具体的には、最も近位の血栓捕捉器108は、中心軸510に対して0度の位置(血管壁504の底部位置)にステムを有し、最も近位の血栓捕捉器108に隣接する第2血栓捕捉器210は、90度の位置(中心軸510を中心に対して反時計回りに90゜の位置)にステムを有し、第2血栓捕捉器210に隣接する第3血栓捕捉器218は、180度の位置にあるステムを有し、第3血栓捕捉器218に隣接する最も遠位の血栓捕捉器108は、270度の位置にステムを有している。
前述したように、支持ワイヤ106の遠位セグメント304は、中心軸510に沿って、および/または中心軸510を中心にうねりまたは螺旋を描くように、ジョイント606により血栓捕捉器108に接続される。より詳細には、支持ワイヤ106は、中心軸510に対して交互にクロッキングされた各ジョイントの位置で血管壁504に押し付けられる。これにより、支持ワイヤ106は、血管502の中心軸510からオフセットして、拡張フレーム604を通って延びることができる。このオフセット位置によって、血管502の中央ルーメンおよび拡張フレーム604の内部チャネル812が開放され、捕捉される血栓が血栓捕捉器108間の隙間704(
図7参照)を通って内部チャネル812に効果的に移動することができる。
【0085】
図13は、実施形態に係る血栓除去装置が蛇行血管の屈曲部に引き込まれる様子を示す模式図である。この図は、前述したように、独立して取り付けられた血栓捕捉器108の利点を視覚的に描写している。
拡張フレーム604は、支持ワイヤ106に連結されているが、互いに直接連結されてはいない。従って、独立して支持された血栓捕捉器108は、互いに自由度をもっているため、個々の拡張フレーム604の局所的な変形が、他の1つまたは複数の拡張フレーム604の全体的な変形なしに生じる。すなわち、1つの拡張フレーム604の変形は、他の拡張フレーム604に必ずしも影響を与えない。
【0086】
一実施形態では、血栓除去装置100が蛇行する血管502に展開されるとき、1つまたは複数の血栓捕捉器108が同血管の屈曲部を越えて引き込まれることがある。
より詳細には、支持ワイヤ106は、血栓捕捉器108(および血栓捕捉器によって捕捉された血栓)を回収するために血管502を通って引き込まれ、このような支持ワイヤ106の後退は、拡張フレーム604の1つに変形荷重702を加える原因となり得る。
前述したように、変形荷重702は、半径方向成分を有することがあるが、屈曲部を越えて血栓捕捉器を引き込む場合には、この屈曲部に位置する拡張フレーム604を伸張させる軸方向成分を有することがある。より詳細には、
図13に示されるように、変形した血栓捕捉器108のジョイント606に加えられる近位荷重と、血管壁504に対する抗力によって加えられる遠位荷重とによって引き起こされる張力は、血栓捕捉器108を伸張させることができる。
このような変形荷重702は、伸張された拡張フレーム604の長さを拡大させ、同時に、直径を縮小させ得る。直径が縮小する結果、拡張フレーム604は血管壁504との当接を失うことがある。しかしながら、他の血栓捕捉器108は、支持ワイヤ106に独立して取り付けられているため、屈曲部における血栓捕捉器108の伸張にもかかわらず、伸張されないままの状態に保たれる。このため、他の血栓捕捉器108は、血管壁504との当接を失うことはない。つまり、血栓捕捉器108の変形は、屈曲部における血栓捕捉器108に局在化され(最小限化され)、一方で、この屈曲部の近位および遠位の血管502は、隣接する血栓捕捉器108によって保護される格好になる。
その結果、伸張した血栓捕捉器108から押し出された血栓1302、または血管ルーメンで離脱して下流に流れる血栓1302は、隣接する血栓捕捉器108によって捕捉されることができる。従って、このような独立して取り付けられた血栓捕捉器108によって、血栓1302の全体を効率よく捕捉し、かつ、標的解剖学的構造から血栓を効率よく回収することが可能になる。
【0087】
図14に、実施形態に係る血栓除去装置の製造方法のフローチャートを示す。
ここに記載される方法は例示として提供されるものであり、当業者であれば、前述の血栓除去装置100を提供するために、代替的および/または追加の製造工程を行ってこのような方法を実施することもできる。
【0088】
工程(ステップ)1402において、支持ワイヤ106を形成する。一実施形態では、支持ワイヤ106は、ワイヤ(例:形状記憶合金ワイヤ)を研削して、第1の位置209で近位セグメント302に移行する遠位セグメント304を形成することによって製造される。前述したように、支持ワイヤ106は、近位ワイヤ端110から遠位ワイヤ端112まで連続的または段階的に先細になるワイヤを提供するために複数の移行部を含むことができる。例えば、遠位セグメント304は、近位セグメント302よりも小さい直径を有することができる。従って、支持ワイヤ106は、遠位方向に減少する剛性形状を有し得る。
【0089】
一実施形態では、支持ワイヤ106を研削する代わりに(または研削に加えて)、支持ワイヤ106を、個別の位置で接合される複数のワイヤセグメントから形成することができる。ワイヤセグメントは、機械的手段、熱的手段、または接着手段によるジョイント606を使用して接合することができる。遠位ワイヤセグメントは、遠位方向に減少する剛性形状を提供するために、近位ワイヤセグメントよりも小さい直径を有するとよい。
【0090】
工程(ステップ)1404において、支持ワイヤ106の第1の位置209に第1血栓捕捉器202を取り付ける。第1血栓捕捉器202は、前述したように、接着剤に埋め込まれた圧着マーカーバンドのような、機械的手段、熱的手段、または接着手段によるジョイント606によって支持ワイヤ106に取り付けることができる。
第1血栓捕捉器202を取り付ける場合、血栓捕捉器108は、ワイヤ軸402に対して第1の周方向位置(例:第1のクロッキング)に、支持ワイヤ106から延びる第1血栓捕捉器202のステム602を有するように向けられる。このクロッキングにすることで、第1血栓捕捉器202は、ワイヤ軸402および捕捉器軸416を通って第1の半径方向に延びる半径方向平面を有することになる。
【0091】
工程1406において、支持ワイヤ106の第2の位置217に第2血栓捕捉器210を取り付ける。第2血栓捕捉器210は、前述したように、接着剤に埋め込まれた圧着マーカーバンドのような、機械的手段、熱的手段、または接着手段によるジョイント606によって支持ワイヤ106に取り付けることができる。第2の位置217は、第1の位置209から長手方向にオフセットすることができ、第1血栓捕捉器202の拡張フレーム604の遠位または近位に配置され得る。
第2血栓捕捉器210を取り付ける場合、血栓捕捉器108は、第1の周方向位置とは異なる第2の周方向位置(例:第2のクロッキング)に、支持ワイヤ106から延びる第2血栓捕捉器210のステム602を有するように向けられる。このクロッキングによって、第2血栓捕捉器210は、ワイヤ軸402および捕捉器軸416を通って、第1の半径方向から周方向にオフセットされた第2の半径方向に延びる半径方向平面を有することができる。
従って、第1血栓捕捉器202および第2血栓捕捉器210は、支持ワイヤ106に独立して、かつ偏心して取り付けられることができる。さらに、拡張フレーム604は、互いに相対的に支持ワイヤ106上で非同心状に支持されることができる。
【0092】
工程1408において、支持ワイヤ106の第1の位置209および/または第2の位置217に放射線不透過性マーカー310を取り付ける。放射線不透過性マーカー310は、拡張フレーム604のステム602を支持ワイヤ106に機械的に結合することができる。例えば、放射線不透過性マーカー310は、ステム602と支持ワイヤ106の周囲に圧着されるマーカーバンドとすることができる。また、放射線不透過性マーカー310は、ジョイント606の位置のフィードバックを操作者に提供するために、接着剤で支持ワイヤ106に接着される放射線不透過性粒子、インク、または他の構造とすることができる。
【0093】
図15に、実施形態に係る血栓除去装置を用いて血管から血栓を除去する方法のフローチャートを示す。
工程1502において、血栓1302を含む血管502に血栓除去装置100を導入する。最初に、ガイドワイヤが血管502を通って、血栓1302によって少なくとも部分的に閉塞された狭い血管内の標的領域を通過する。マイクロカテーテルは、マイクロカテーテルの遠位端が血栓1302の遠位に位置するように、ガイドワイヤ上を追跡することができる。マイクロカテーテルが所定位置に到達したらガイドワイヤを引き込んでマイクロカテーテルから取り外す。
次いで、血栓除去装置100の遠位端1106がマイクロカテーテルの遠位端の近傍または遠位に位置するまで、血栓除去装置100をマイクロカテーテルのルーメンを通して前進させる。血栓除去装置100を血管502に導入するときには、マイクロカテーテルは血栓捕捉器108を拘束された形態に保持することができる。すなわち、マイクロカテーテルのルーメンは、拡張状態の血栓捕捉器108よりも小さい直径を有し、したがって、拡張フレーム604は、拡張していない状態でマイクロカテーテルを通して血管502に導入され得る。
【0094】
工程1504において、前述した複数の血栓捕捉器108を展開する。マイクロカテーテルを後退させながら、血栓除去装置100の支持ワイヤ106に前方への圧力をかけると、血栓捕捉器108がマイクロカテーテルの遠位端から血管502の血管壁504に当接するように展開される。具体的には、血栓捕捉器108の拡張フレーム604が拡張状態(
図1)に移行することができる。この拡張状態では、拡張フレーム604が血管壁504に密着する。
拡張フレーム604は、支持ワイヤ106に偏心して支持されているため、拡張フレーム604が血管内で同心状の配置に変形すると(
図12)、各拡張フレーム604は異なる横断方向で血管壁504に押し付けられる。非同心状に支持された拡張フレーム604が偏った配置になると、支持ワイヤ106が中心から外れて血管壁504の方に偏る。具体的には、支持ワイヤ106は、血管502の中心軸510からオフセットした状態で血管502を通って延びることになる。
【0095】
血栓捕捉器108を拡張させた後、血栓除去装置100は、拡張フレーム604に血栓1302が係合するように数分間そのままに放置するとよい。
次いで、工程1506において、支持ワイヤ106を引いて血栓除去装置100を後退させ、拡張フレーム604に血栓1302をさらに係合させ、捕捉させ、または取り込む。支持ワイヤ106は、血栓捕捉器108と、取り込まれた血栓1302とが標的血管系から除去されるまで引き抜かれることになる。
【0096】
図16に、他の実施形態に係る、複数の血栓捕捉器を備えた血栓除去装置の遠位部分の平面図を示す。血栓除去装置100の遠位作動領域104は、前述の実施形態と代替可能ないくつかの特徴を備えている。このような特徴は、
図16に関して説明を簡略化するために繰り返して記載されない。
【0097】
一実施形態において、遠位作動領域104は、長手方向に順次配置された拡張フレーム604(204,212,220)を有する複数の血栓捕捉器108を含む。例えば、第2拡張フレーム212は、第1拡張フレーム204の遠位にある。同様に、第3拡張フレーム220は、第2拡張フレーム212に対して遠位にある。
図2に示す実施形態では、血栓捕捉器108は、長手方向に重ならないように配置され、血栓捕捉器108の各ジョイント606は、すぐ近位の血栓捕捉器108の遠位に配置される。しかしながら、
図16に示すように、血栓捕捉器108は、長手方向に少なくとも部分的に重なるように配置することができる。例えば、第2血栓捕捉器210は、第1拡張フレーム204の遠位フレーム端706よりも近位にある位置で、第2ステム214により支持ワイヤ106に結合される。具体的には、第2ステム214は、第1拡張フレーム204よりも近位にある第2ジョイント216で支持ワイヤ106に取り付けられる。
【0098】
血栓捕捉器108の重なりは、より遠位の拡張フレーム604(220)から近位に延びて、より近位の拡張フレーム604(212)よりも近位の位置で支持ワイヤ106に接続される長尺のステム602によって容易になる。この長尺のステム602は、支持ワイヤ106に対して拡張フレーム604(212)の可撓性および移動性を向上させることができる。つまり、拡張フレーム604(212)は、支持ワイヤ106に沿って同心状に配置されているように示されているが、ジョイント606(216)で外向き(半径方向)にヒンジ付けされて、支持ワイヤ106に対して非同心状に(かつ偏心して)支持されている(
図17参照)。
【0099】
ここで、隣接する拡張フレーム604の内部チャネル812の外側にあるジョイント606で拡張フレーム604を接続することは(
図6参照)、支持ワイヤ106に対して拡張フレーム604の弾力性および可撓性を良好にすることに加え、血栓除去装置100の最適なパッキング比に寄与することができる。
前述したように、フレームセルリング802の半径方向内側に存在しない支持ワイヤ106にジョイント606を配置すると、送達中にフレームセルリング802をより小さな寸法に収縮させることができる。つまり、拡張フレーム604(220)の近位にジョイント606を配置することで、血栓除去装置の送達性能を向上させることができる。
【0100】
さらに
図16を参照すると、血栓除去装置100の血栓捕捉器108の1つまたは複数は、閉じた遠位端を有することができる。例えば、第3血栓捕捉器218(最も遠位の血栓捕捉器)は、フレームセルリング802から遠位に突出する複数のストラット230を含む。ストラット230は、遠位端1106で収束して閉じたケージ状構造を形成することができる。より詳細には、ストラット230により形成されるケージ状構造は、漏斗または円錐形の外形となって血流を許容する一方、血管502を通る血栓1302(
図13参照)の遠位への流れに対してある程度の抵抗を及ぼすものとなる。
【0101】
図17に、実施形態に係る、1つまたは複数の屈曲部を備えた支持ワイヤを含む血栓除去装置の模式図が示されている。
支持ワイヤ106のうねり状および/または螺旋状の遠位セグメント304(
図3参照)は、1つまたは複数の屈曲部1702を含むことができる。各屈曲部1702は、遠位方向のワイヤ軸402に沿った支持ワイヤ106の曲率の変化により生じる。
屈曲部1702は、血栓捕捉器108が支持ワイヤ106に取り付けられる位置と一致し得る。例えば、第1の位置209の山部にうねりが存在している。第1の位置209は、第1ジョイント208により第1血栓捕捉器202が支持ワイヤ106に取り付けられる位置である。同様に、この山部からすぐ遠位の谷部である第2の位置217にもうねりが存在している。第2の位置217は、第2ジョイント216により第2血栓捕捉器210が支持ワイヤ106に取り付けられる位置である。
【0102】
支持ワイヤ106に沿った屈曲部1702は、血栓捕捉器108と血管壁504との間の相互作用によって生じ得る。例えば、前述した支持ワイヤ106の螺旋状の経路は、ジョイント606(208)を通過することができ、従って、屈曲部1702は、支持ワイヤ106が一方のジョイント606(208)から他方のジョイント216に延びるために特定の形状をとることによって生じる。
また、屈曲部1702は、血栓捕捉器108自体の直接的な作用によって生じることもある。例えば、血栓捕捉器108は、ステム602(例:近位ステム端804)の近傍を通るステム孔1704(
図8参照)を有することができる。支持ワイヤ106は、ステム孔1704(
図8)に通されてもよく、その際、ステム孔1704におけるステム602と支持ワイヤ106との間に角度が自然に生じることがある。
さらに、ジョイント606が支持ワイヤ106およびステム602の周りにマーカーバンドを圧着することによって形成される場合、ジョイント606は、ステム孔1704において支持ワイヤ106に局所的な曲げモーメントを生じさせる場合がある。この曲げモーメントによって支持ワイヤ106が曲がると、このジョイント606の位置に屈曲部1702が生じる。
このように血栓除去装置100は、自由空間または血管502内に展開されたときに、遠位セグメント304に取り付けられた血栓捕捉器108の各々に対して屈曲部1702を備えた支持ワイヤ106を有することができる。
【0103】
図18に、実施形態に係る、複数の血栓捕捉器を有する血栓除去装置であって、自由空間に展開された同装置の遠位部分の平面図を示す。
血栓除去装置100は、支持ワイヤ106に取り付けられ、それぞれの拡張フレーム604(204,212)を有する複数の血栓捕捉器108を含む。例えば、血栓捕捉器108は、支持ワイヤ106に独立して取り付けられた第1血栓捕捉器202および第2血栓捕捉器210を含む。血栓除去装置100は、自由空間1800(例:周囲の表面によって拘束されない状態)に展開されているため、各血栓捕捉器108の拡張フレーム604(204,212)は、互いに非同心状の関係にある。
【0104】
一実施形態では、第2血栓捕捉器210は、最も遠位の血栓捕捉器1802である。最も遠位の血栓捕捉器1802は、第2拡張フレーム212を有し、前述したように、同拡張フレームのフレームセルリングを含むことができる。前述の
図11で説明したように、フレームセルリングは、血塊等のデブリを捕捉するためのフィルタ(図示せず)を支持することができる。このようなフィルタは、遠位端の血栓捕捉器1802の遠位端に取り付けられ、メッシュまたはウェブ構造を含むことができる。このようなウェブ構造は、第2拡張フレーム212よりも高密度の表面積を有することで、血管502内で下流に流れるデブリをフィルタに捕捉することができる。
【0105】
血栓除去装置100における1つまたは複数の血栓捕捉器108は、セグメント化された拡張フレーム604(212)を有することができる。一実施形態において、最も遠位の血栓捕捉器1802は、セグメント化(分割化)された本体1804を有する。より詳細には、拡張フレームは、複数のセグメントに分割されており、セグメント化された本体1804は、近位フレームセグメント1806と、遠位フレームセグメント1808とを有する。各フレームセグメントは、ヒンジ1810で連結されており、ヒンジ1810以外のすべての位置でセグメント間の隙間1812によって互いに分離され得る。このようにセグメント化された拡張フレーム604(212)の構造および機能については、以下でさらに説明する。
【0106】
図19に、実施形態に係る複数の血栓捕捉器を有する血栓除去装置であって、血管内に展開された同装置の遠位部分の平面図を示す。
血栓除去装置100が血管502内に拡張フレーム604(204,212)を血管壁504(
図19において血管壁は図示せず)に対向させた状態で展開されると、拡張フレーム604(204,212)は互いに同心状になるように付勢(押圧)される。前述の実施形態と同様に、拡張フレーム604(204,212)が血管壁504に付勢された状態で血栓除去装置100が血管502内に展開されると、支持ワイヤ106は、血管502の中心軸からオフセットされた位置で血管壁504に沿って強制的にうねりを生じて延びることになる。このように拡張フレーム604(204,212)が強制的に同心状に付勢される場合、支持ワイヤ106の軸方向長さの単位当たりの平均的な湾曲量は、拡張フレーム604(204,212)が自由空間1800で非同心状の関係にあるときよりも大きくなり得る。
【0107】
一実施形態において、血栓捕捉器108は、血管壁504に沿って互いに同心状に整列する。血栓捕捉器108の拡張フレーム604(204,212)は、互いに密接し合うことができる。より詳細には、隣接する拡張フレーム604(204,212)間の距離(または同じ拡張フレーム604(212)のフレームセグメント)間の距離を最小限にすることができる。
前述したように、第1血栓捕捉器202は遠位フレーム端706を有し、第2血栓捕捉器210は近位フレーム端708を有する。これらのフレーム端は隙間704によって分離され得る。遠位フレーム端706は、隙間704が最小化されるように近位フレーム端708に一致することができる。具体的には、近位フレーム端708と遠位フレーム端706と間の隙間704は、血管壁504の周囲の1つまたは複数の位置において10mm未満であり得る。例えば、遠位フレーム端706におけるフレーム先端と、近位フレーム端708における口部との間の隙間704は、1~10mm(例:1~5mm)の範囲内にすることができる。
【0108】
遠位フレーム端706の外形は、近位フレーム端708の輪郭と同じ形状を有し、同フレーム端と平行に延び、および/または同フレーム端と合致することができる。ここで、これらのフレーム端の外形は、それぞれの端部において拡張フレーム604(204,212)を通過する仮想スプラインの輪郭または形状によって決定される。例えば、遠位フレーム端706の外形は、第1血栓捕捉器202を構成する遠位セル(例:セル先端部)の各々の最遠位点を通って延びる仮想スプラインによって決定することができる。同様に、近位フレーム端708の外形は、第2血栓捕捉器210の口部を規定するストラットを通って延びる仮想スプラインによって決定することができる。これらの外形は、その輪郭で示されるように、互いに密接に一致または合致することができる。より詳細には、第1血栓捕捉器202は、血栓捕捉器が実際に接触することなく、第2血栓捕捉器210に隣接することができる。従って、各血栓捕捉器108は、本体のセグメントを分離する隙間704が存在し得るにもかかわらず、連続的な円筒形の本体を近似するように、互いに一致または合致することができる。
【0109】
血栓捕捉器108および/または血栓捕捉器108のセグメントは、これらを接近させて配置することで、血管壁504に沿って血栓と係合可能なフレーム表面積を最大にすることができる。
しかしながら、前述した通り、硬い血栓が血管壁504から血栓捕捉器のルーメンに向かって移動するための経路を確保することが有益である。一実施形態では、第1血栓捕捉器202の遠位フレーム端706でセルを構成するストラットが半径方向内側に撓むようになっている。より詳細には、フレームセルが十分な可撓性を有しており、硬い血栓が遠位フレーム端706に押し付けられると、同フレームセルを半径方向内側に変形させることができる。つまり、血栓捕捉器108の遠位端が内向きに折り畳まれることで、硬い血栓が血栓捕捉器108のルーメンを通過することが可能になる。
従って、このように隣接する血栓捕捉器108間の軸方向距離を最小にすることにより、硬い血栓を血栓捕捉器108内に捕捉可能にしつつ、柔らかい血栓を効果的に捕捉可能な全体的な構造が提供される。
【0110】
図20に、実施形態に係る血栓除去装置の最も遠位の血栓捕捉器の斜視図を示す。
最も遠位の血栓捕捉器1802において、セグメント化された本体1804は、互いに接近して合致するフレームセグメントを含むことができる。例えば、近位フレームセグメント1806は、遠位フレームセグメント1808の近位セグメント端2004に接近して合致する遠位セグメント端2002を有する。
隣接するフレームセグメントの用語および機能は、前述の隣接する血栓捕捉器108の説明と実質的に同様である。より詳細には、遠位セグメント端2002は、セグメント間の隙間1812によって近位セグメント端2004から分離することができ、この隙間1812は、実質的に、前述の遠位フレーム端706と近位フレーム端708との間の隙間704と同様である。セグメント間の隙間1812は、ヒンジ1810が遠位フレームセグメント1808を近位フレームセグメント1806に連結する位置を除いて、セグメント化された本体1804の周方向のすべての位置でフレームセグメントを分離することができる。
【0111】
斜視図から明らかなように、ヒンジ1810は、遠位フレームセグメント1808のテール部2008と近位フレームセグメント1806の遠位端のフレームセルリングとの間の接続点に設けられる。フレームセグメントは、一体的に形成(例:単一の金属チューブから切断)することができ、これにより、ヒンジ1810は、近位フレームセグメント1806と遠位フレームセグメント1808との間のコネクタ、リンク、または他の接続要素として機能することができる。
【0112】
図21に、実施形態に係る、血管内に展開された複数の血栓捕捉器の側面図を示す。
血栓除去装置100が血管内に展開されると、拡張フレーム204およびフレームセグメント1806,1808は、血管壁504(
図5参照)から与えられる内向きの圧力の下で互いに同心状に整列することができる。支持ワイヤ106を介して拡張フレーム604(204)に軸方向荷重が加えられていない状態では、隣接する血栓捕捉器108間の隙間704およびフレームセグメント間の隙間1812は最小限になり得る。例えば、拡張フレームおよびフレームセグメントの隣接する輪郭は互いに合致し、1~10mm(例:1~5mm)の間の隙間704、1812によって分離され得る。これにより、血栓捕捉器108は、血管壁504に均一に当接して血栓を係止する連続的な円筒状の構造体として機能することができる。
【0113】
図22に、実施形態に係る、血管内に展開された複数の血栓捕捉器の他の側面図を示す。
支持ワイヤ106に変形荷重(例:血管502を通って支持ワイヤ106および血栓捕捉器108を後退させるための軸方向荷重)が加えられると、この変形荷重によって、セグメントの本体1804(
図20参照)のフレームセグメントおよび/または独立した血栓捕捉器108が互いに対して傾いた状態になる。より詳細には、隣接する血栓捕捉器108間の隙間704および/または隣接するフレームセグメント間のセグメント隙間1812が拡大することになる。このような独立に取り付けられた構造、および/またはヒンジ付き構造による傾きは、支持ワイヤ106に沿ったジョイント、および/またはフレームセグメント間のヒンジ1810による可撓性によって生じ得る。
【0114】
前述の支持ワイヤ106を後退させる軸方向荷重は、フレームおよびフレームセグメントの個々が伸びて直径が小さくなるのではなく、フレームおよびフレームセグメントの個々が円筒形状を保ったままで、互いに外向きに揺動するように、フレーム構造を通して分散して作用する。より詳細には、これらのセグメントは傾くが、その輪郭が崩れることはない。これらの構成セグメントは、血管502内で血栓を押し付けるように外側に拡がることができる。
このような傾きを伴う動作は、蛇行血管の屈曲部の周囲で特に有益である。血栓除去装置100が蛇行血管の屈曲部の周囲で展開されるとき、前述の構成セグメントの軸方向の伸張を制限することにより、血管壁504と各構成セグメント間の接触を維持することができる。従って、これらの構成セグメントは、血管壁504に沿って血栓との接触を維持し、血栓をより良好に係合することができる。
【0115】
ヒンジ付きのフレームセグメントによる傾き動作は、血管の屈曲部の周囲で血栓を係合させることに加えて、硬い血栓が血栓捕捉器108のルーメンに入るための開口部を提供することができる。より詳細には、構成セグメント間の拡がる間隙は、硬い血栓が半径方向内側に向けてルーメンを通過すること許容する。
このように前述の説明と併せて、血栓除去装置100は、セグメント化された本体1804を有する1つまたは複数の血栓捕捉器108を組み込むことで、血管502を通して各フレームセグメントを最小限の伸張で引き抜く(後退させる)ことができ、かつ、同フレームセグメントで軟らかい血栓を外側に押圧しつつ、硬い血栓を捕捉するためにフレームセグメントを開口することが可能になる。
【0116】
再び
図20を参照すると、この図に示すように、拡張フレーム604の1つまたは複数には、複数のフレームマーカー2010を取り付けることができる。フレームマーカー2010は、これらの取り付けられた拡張フレーム604の視認性を向上させることができる。より詳細には、フレームマーカー2010は、透視下で使用者に視覚的なフィードバックを提供し、標的解剖学的構造内の血栓捕捉器108の位置を確認できるようにすることができる。
このようなフレームマーカー2010は、白金イリジウムのような放射線不透過性材料から作製することができる。フレームマーカー2010は、血栓除去装置100の最も遠位のフレームセルリング802(
図8参照)に沿って配置してもよい。一実施形態では、フレームマーカー2010は、血栓除去装置100の各血栓捕捉器108の遠位端のストラットの1つまたは複数に取り付けられる。
【0117】
図23に、実施形態に係る、フレームマーカーの斜視図を示す。
フレームマーカー2010は、拡張フレーム604上に放射線不透過性材料をメッキ(電着)することにより形成することができる。また、フレームマーカー2010は、拡張フレーム604に圧着されるバンド(帯体)として形成することもできる。
一実施形態では、フレームマーカー2010はマーカーコイル 2300を含む。マーカーコイル 2300は、コイル状に巻かれるか、または、拡張フレーム604のストラットの周りにコイル状に巻き付けられる放射線不透過性のワイヤから形成することができる。このようなワイヤは、例えば遠位端の血栓捕捉器1802のストラットに対して5~10ターンで巻き付けられる。マーカーコイル 2300の周囲にはんだを塗布して、血栓捕捉器1802のストラットにコイルを固定してもよい。さらに、図示のように、使用時に血管壁504を損傷しない非外傷性表面を形成するために、コイルの両端にはんだによって球根形状を設けてもよい。
【0118】
図24に、実施形態に係る、血栓除去装置の支持ワイヤに取り付けた放射線不透過性コイルの平面図を示す。
血栓除去装置100は、最も遠位の血栓捕捉器1802上のフレームマーカー2010(
図20参照)に加えて、血栓捕捉器108の近位の支持ワイヤ106上に取り付けられた放射線不透過性コイル2400を含むことができる。放射線不透過性コイル2400は、透視下で使用者に視覚的フィードバックを提供し、血栓除去装置100の近位領域の位置を確認するのに役立つ。
前述したように、支持ワイヤ106は、血栓捕捉器108を支持する遠位セグメント304と、遠位セグメント304の近位に位置する近位セグメント302とを含むことができる。より詳細には、近位セグメント302は、血栓捕捉器108よりも近位に位置し、遠位セグメント304は、血栓捕捉器108を通って延びる(そして、血栓捕捉器108の少なくとも1つは、遠位セグメント304上に取り付けられる。)。
【0119】
一実施形態では、近位セグメント302および遠位セグメント304は、放射線不透過性コイル2400に連結される(
図24参照)。一例として、近位セグメント302は、コイルジョイント2402で放射線不透過性コイル2400に連結される遠位端を有することができる。
遠位セグメント304もまた、コイルジョイント2402で放射線不透過性コイル2400に連結されることができる。例えば、放射線不透過性コイル2400と、近位セグメント302と、遠位セグメント304との間にはんだ接合を施すことで、コイルジョイント2402を形成してもよい。
遠位セグメント304は、遠位方向に放射線不透過性コイル2400を貫通するように延びていてもよい。一実施形態では、血栓捕捉器108は、第1ジョイント208において遠位セグメント304に接続され、この遠位セグメント304は、第1ジョイント208よりも遠位のジョイントにより、1つまたは複数の付加的な血栓捕捉器108との接続点まで遠位方向に延びる。
【0120】
放射線不透過性コイル2400は、血栓除去装置100の視認性を高め、かつ、近位セグメント302と遠位セグメント304との間のジョイントをより強固にすることができる。
放射線不透過性コイル2400に沿って追加のジョイントを形成してもよい。例えば、放射線不透過性コイル2400の中間部および/または遠位端部において、放射線不透過性コイル2400と、近位セグメント302または遠位セグメント304とを接続するはんだジョイントを形成してもよい。このような支持ワイヤ106の近位セグメント302は、前述したように、支持ワイヤ106の遠位セグメント304よりも大きな直径を有することができる。
【0121】
図18~
図24に示した血栓除去装置100を用いて血栓を取り込む方法は、前述の
図15で説明した方法と同一か、またはそれと類似した手順で行うことができる。
具体的には、まず、血栓を含む血管502に血栓除去装置100を導入する。自由状態では、血栓捕捉器108は、その形状を保つために互いに非同心状の関係にずれることがあるが、血管502内に血栓捕捉器108を展開すると、血栓捕捉器108の拡張フレーム604(204,212)を血管壁504に当接させることができ、この血管壁がその拘束力により拡張フレーム604(204,212)を互いに同心状になるように付勢する。
次いで、拡張フレーム604(204,212)に血栓を取り込むために、例えば支持ワイヤ106を引っ張ることにより、血栓除去装置100を後退させる。血栓除去装置100が後退すると、独立した血栓捕捉器、および/またはセグメント化された本体1804のフレームセグメントは、互いに傾いた状態になることができる。そして、このような傾きの動作に伴い、個々の本体の軸方向の伸張が制限され、各構成セグメントが血栓を外側に押圧し、血栓捕捉器108のルーメンに硬い血栓を受け入れる幅広い隙間が開口するようになる。
この結果、このような血栓の取り込み方法によれば、フレーム構造の伸張を最小限に抑え、かつ、血栓の取り込みを効果的に行えるようにした優れた血栓除去装置100を提供することができる。
【0122】
以下、特許請求の範囲に従って実施形態を記載する。
一実施形態による血栓除去装置は、
支持ワイヤと、
この支持ワイヤに独立して取り付けられた複数の血栓捕捉器と、を備え、
前記血栓捕捉器の各々は、前記支持ワイヤに偏心して支持される拡張フレームを有しており、
前記複数の血栓捕捉器が血管内に展開されるとき、前記拡張フレームが前記血管の血管壁に当接する状態となり、かつ、前記支持ワイヤが前記血管の中心軸からオフセットされた位置で前記拡張フレームの一つまたは複数を通って延びるように構成される。
【0123】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記拡張フレームは、前記支持ワイヤに互いに非同心状に支持されており、
前記複数の血栓捕捉器が血管内に展開されるとき、前記拡張フレームがそれぞれ異なる横断方向で同血管壁を押圧する。
【0124】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記拡張フレームが前記血管壁に当接しているとき、前記支持ワイヤが前記血管壁に沿って螺旋状に延びる。
【0125】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記血栓捕捉器の各々は、前記拡張フレームをジョイントで前記支持ワイヤに結合するステムを含み、かつ、
前記ジョイントは、一の前記拡張フレームに加えられる変形荷重が他の前記拡張フレームに伝達されないように、前記支持ワイヤに沿って長手方向に間隔をあけて配置されている。
【0126】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記変形荷重は、前記血管を通して前記支持ワイヤを後退させることによって引き起こされ、かつ、
前記複数の血栓捕捉器は、前記変形荷重によって、一の前記拡張フレームが伸張し、または前記血管壁と当接していないときに、他の前記拡張フレームが伸張せず、または前記血管壁に当接するように、前記支持ワイヤにそれぞれ独立して取り付けられている。
【0127】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記複数の血栓捕捉器は、
第1拡張フレームおよび第1ステムを有する第1血栓捕捉器と、
第2拡張フレームおよび第2ステムを有する第2血栓捕捉器と、を含み、
前記第2拡張フレームが前記第1拡張フレームよりも遠位にあり、第2ステムが第1拡張フレームに向けて近位のそれぞれのジョイントにおいて前記支持ワイヤに結合されている。
【0128】
一実施形態による血栓除去装置において、
さらに、前記ジョイントに放射線不透過性マーカーを備えている。
【0129】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記血栓捕捉器の各々は、各捕捉器軸および前記支持ワイヤのワイヤ軸を含む各々の半径方向平面を有し、かつ、これらの半径方向平面が前記支持ワイヤを中心として互いに角度的にオフセットしている。
【0130】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記半径方向平面は、前記支持ワイヤを中心として角度的に均等に分布している。
【0131】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記拡張フレームの各々は、前記ステムに結合されたフレームセルリングを含む。
【0132】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記ステムは、複数の分岐枝を含み、これらの複数の分岐枝が前記ジョイントと前記フレームセルリングの近位リング端との間に延びて、前記拡張フレームの内部チャネルへの通り口を形成する。
【0133】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記通り口は、前記支持ワイヤに対して斜め方向に延びる口平面を有する。
【0134】
一実施形態による血栓除去装置において、
1つまたは複数の前記拡張フレームは、前記フレームセルリングよりも遠位に向かって延び、遠位先端で収束する複数のストラットを含む。
【0135】
一実施形態による血栓除去装置において、
さらに、前記フレームセルリングに結合されたフィルタを備える。
【0136】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記支持ワイヤは、
前記複数の血栓捕捉器よりも近位にある近位セグメントと、
前記複数の血栓捕捉器の1つまたは複数を通って延びる遠位セグメントと、を含み、
前記近位セグメントが直線状であり、前記遠位セグメントが非直線状である。
【0137】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記遠位セグメントは、1つまたは複数の屈曲部を含む。
【0138】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記1つまたは複数の屈曲部は、前記複数の血栓捕捉器が前記支持ワイヤに取り付けられる位置に一致する。
【0139】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記支持ワイヤの前記近位セグメントは、前記支持ワイヤの前記遠位セグメントよりも大きな直径を有する。
【0140】
一実施形態による方法は、以下のステップaおよびbを備える。
a.支持ワイヤに第1血栓捕捉器を取り付ける。ここで、前記第1血栓捕捉器は、第1の位置で前記支持ワイヤに偏心して支持された第1拡張フレームを含む。
b.前記支持ワイヤに第2血栓捕捉器を取り付ける。ここで、前記第2血栓捕捉器は、前記支持ワイヤに偏心して支持された第2拡張フレームを含み、かつ、前記第1拡張フレームと前記第2拡張フレームとは、前記支持ワイヤに対して互いに相対的に非同心状に支持される。
【0141】
一実施形態による方法は、さらに下記ステップを備える。
前記支持ワイヤを研削して、前記第1の位置で近位セグメントに移行する遠位セグメントを形成する。ここで、前記遠位セグメントは、前記近位セグメントより小さい直径を有する。
【0142】
一実施形態による方法は、さらに下記ステップを備える。
前記支持ワイヤの前記第1の位置に放射線不透過性マーカーを取り付ける。
【0143】
一実施形態による、血管から血栓を除去する方法は、以下のステップa~cを備える。
a.血栓を含む血管に機械的な血栓除去装置を導入する。ここで、前記血栓除去装置は、支持ワイヤと、この支持ワイヤに独立して取り付けられた複数の血栓捕捉器とを含み、前記血栓捕捉器の各々は、未拡張状態で血管に導入される拡張フレームを含む。
b.前記複数の血栓捕捉器を展開し、前記拡張フレームを前記血管の血管壁に当接する拡張状態に移行させる。ここで、前記拡張フレームは、同拡張フレームが前記血管壁に当接するときに、前記支持ワイヤが前記血管の中心軸からオフセットして前記血管を通って延びるように、前記支持ワイヤに偏心して支持される。
c.前記血栓除去装置を後退させ、前記拡張フレームに前記血栓を取り込む。
【0144】
一実施形態による、血管から血栓を除去する方法において、
前記拡張フレームは、前記複数の血栓捕捉器が展開されるとき、前記拡張フレームがそれぞれ異なる横断方向で前記血管壁を押圧するように、前記支持ワイヤに対して互いに相対的に非同心状に支持される。
【0145】
一実施形態による血栓除去装置は、
支持ワイヤと、
この支持ワイヤに独立して取り付けられ、それぞれ拡張フレームを有する複数の血栓捕捉器と、を備え、
前記血栓除去装置が自由空間に展開されるとき、前記拡張フレームが互いに非同心状になる一方、前記血栓除去装置が血管内に展開されて前記拡張フレームが前記血管の血管壁に当接した状態にあるとき、前記拡張フレームが互いに同心状になるように付勢される。
【0146】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記複数の血栓捕捉器は、第2血栓捕捉器の近位に第1血栓捕捉器を含み、
前記第1血栓捕捉器が遠位フレーム端を有し、かつ、前記第2血栓捕捉器が近位フレーム端を有しており、しかも、前記遠位フレーム端が前記近位フレーム端に一致して整列可能になっている。
【0147】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記整列時における前記遠位フレーム端と前記近位フレーム端との間の隙間が10mm未満である。
【0148】
一実施形態による血栓除去装置において、
最も遠位の前記血栓捕捉器は、フレームセルリングと、このフレームセルリングに結合されたフィルタと、を含む。
【0149】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記支持ワイヤは、
前記複数の血栓捕捉器の近位に位置する近位セグメントと、
前記複数の血栓捕捉器の1つまたは複数を通って延びる遠位セグメントと、を含み、
前記近位セグメントおよび前記遠位セグメントが、前記支持ワイヤに取り付けられた放射線不透過性コイルに連結されている。
【0150】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記支持ワイヤの前記近位セグメントは、前記支持ワイヤの前記遠位セグメントよりも大きな直径を有する。
【0151】
一実施形態による血栓除去装置において、さらに、
前記拡張フレームの1つまたは複数に取り付けられた複数のフレームマーカーを備え、前記複数のフレームマーカーが放射線不透過性である。
【0152】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記血栓除去装置が前記血管内に展開されて前記血管壁に前記拡張フレームを当接するとき、前記支持ワイヤは、前記血管の中心軸からオフセットされた状態で前記血管壁に沿ってうねるように付勢される。
【0153】
一実施形態による血栓除去装置は、
支持ワイヤと、
前記支持ワイヤに取り付けられ、第1拡張フレームを有する第1血栓捕捉器と、
前記支持ワイヤに取り付けられ、第2拡張フレームを有する第2血栓捕捉器と、を備え、
前記第2血栓捕捉器の前記第2拡張フレームは、ヒンジによって遠位フレームセグメントに連結された近位フレームセグメントを有する、セグメント化された本体を含み、しかも、
前記血栓除去装置が自由空間に展開されるとき、前記第1拡張フレームおよび前記第2拡張フレームが互いに非同心状になる一方、前記血栓除去装置が血管内に展開されて前記第1拡張フレームおよび前記第2拡張フレームが前記血管の血管壁に当接するとき、前記第1拡張フレームおよび前記第2拡張フレームが互いに同心状に付勢される。
【0154】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記近位フレームセグメントは、遠位セグメント端を有し、かつ、前記遠位フレームセグメントは近位セグメント端を有しており、
前記遠位セグメント端は、周方向隙間によって前記近位セグメント端から分離され、前記ヒンジのみによって前記遠位フレームセグメントが前記近位フレームセグメントに連結される。
【0155】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記支持ワイヤに、血管を通して前記支持ワイヤを後退させるための変形荷重が加えられるとき、前記セグメント化された本体の前記遠位フレームセグメントおよび前記近位フレームセグメントが、前記変形荷重によって前記ヒンジを中心に、これらのフレームセグメント間の前記周方向隙間を拡大するように傾く。
【0156】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記第1血栓捕捉器は、前記第2血栓捕捉器よりも近位に位置し、
前記第1血栓捕捉器が遠位フレーム端を有し、かつ、前記第2血栓捕捉器が近位フレーム端を有しており、しかも、前記遠位フレーム端が前記近位フレーム端に一致して整列可能になっている。
【0157】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記整列時における前記遠位フレーム端と前記近位フレーム端との間の隙間が10mm未満である。
【0158】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記第2血栓捕捉器は、フレームセルリングを含み、さらに、このフレームセルリングに結合されたフィルタを備える。
【0159】
一実施形態による血栓除去装置において、
前記血栓除去装置が前記血管内に展開されて前記血管壁に前記拡張フレームを当接するとき、前記支持ワイヤは、前記血管の中心軸からオフセットされた状態で前記血管壁に沿ってうねるように付勢される。
【0160】
一実施形態による血管から血栓を除去する方法は、以下のステップa~cを備える。
a.機械的な血栓除去装置を、前記血栓を含む前記血管に導入する。ここで、前記血栓除去装置は、支持ワイヤと、それぞれ拡張フレームを含む複数の血栓捕捉器と、を含み、前記複数の血栓捕捉器は、前記支持ワイヤに独立して取り付けられ、前記血栓除去装置が自由空間に展開されるときには、前記拡張フレームが互いに非同心状になる。
b.前記血管内で前記複数の血栓捕捉器を展開し、前記血管の血管壁に前記拡張フレームが当接する状態にする。ここで、前記拡張フレームは、互いに同心状になるように付勢される。
c.前記血栓除去装置を後退させ、前記血栓を前記拡張フレームに取り込む。
【0161】
一実施形態による血管から血栓を除去する方法において、
前記複数の血栓捕捉器は、第2血栓捕捉器の近位に第1血栓捕捉器を含み、前記第1血栓捕捉器が遠位フレーム端を有し、かつ、第2血栓捕捉器が近位フレーム端を有しており、しかも、前記遠位フレーム端が前記近位フレーム端に一致して整列可能になっている。
【0162】
一実施形態による血管から血栓を除去する方法において、
最も遠位の前記血栓捕捉器は、フレームセルリングを含み、さらに、このフレームセルリングに結合されたフィルタを備える。
【0163】
一実施形態による血管から血栓を除去する方法において、
前記複数の血栓捕捉器は、
前記支持ワイヤに取り付けられ、第1拡張フレームを有する第1血栓捕捉器と、
前記支持ワイヤに取り付けられ、第2拡張フレームを有する第2血栓捕捉器と、を含み、
前記第2拡張フレームは、ヒンジによって遠位フレームセグメントに連結された近位フレームセグメントを有する、セグメント化された本体を含む。
【0164】
一実施形態による血管から血栓を除去する方法において、
前記血栓除去装置が前記血管内に展開されて前記血管壁に前記拡張フレームが当接する状態にあるとき、前記支持ワイヤは、前記血管の中心軸からオフセットされた状態で前記血管の血管壁に沿ってうねるように付勢される。
【0165】
本明細書の記載の各発明は、これらの具体的な実施形態に基づいて説明されている。各実施形態は、特許請求の範囲に記載される本発明の概念および範囲から逸脱することなく、種々の変更を伴うことができる。従って、本明細書および図面は、本発明を限定的に理解するためのものではなく、本発明を例示的に理解するためのものである。
【国際調査報告】