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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】SGLT-1阻害剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240221BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240221BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20240221BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P43/00 111
A61P43/00 105
A61P1/16
A61K31/7088
A61K31/713
A61K38/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P3/00
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
A61K31/351
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553556
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 US2022018958
(87)【国際公開番号】W WO2022187658
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/157,435
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(71)【出願人】
【識別番号】515252189
【氏名又は名称】ウェイン ステイト ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ジエ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ケジョン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,シウビン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユチン ユージーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084BA03
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC411
4C084ZC412
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZC02
4C086ZC21
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、医薬薬理学の分野におけるものである。特に、本発明は、ナトリウム-グルコース共輸送体1(SGLT-1)活性の阻害剤として機能する医薬剤に関する。本発明はさらに、嚢胞性線維症関連肝疾患ならびにSGLT-1活性の上昇、小胞体(ER)ストレス応答の増加、および/または肝炎の増加を特徴とする疾患に関連する症候を処置および/または改善する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物。
【請求項2】
上記医薬剤が低分子、抗体、核酸分子(例えば、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー)、または模倣ペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記医薬剤が、フロリジン、カナグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-{3-[5-[4-フルオロ-フェニル]-チオフェン-2-イルメチル]-4-メチル-フェニル}-6-ヒドロキシメチル-テトラヒドロ-ピラン-3,4,5-トリオール)、ダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)-テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール)、エムパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-[[4-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシフェニル]メチル]フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3,4,5-トリオール)、レモグリフロジン(5-メチル-4-[4-(1-メチルエトキシ)ベンジル]-1-(1-メチルエチル)-1H-ピラゾール-3-イル 6-O-(エトキシカルボニル)-β-D-グルコピラノシド)、セルグリフロジン(2-(4-メトキシベンジル)フェニル 6-O-(エトキシカルボニル)-β-D-グルコピラノシド)、およびトホグリフロジン((1S,3’R,4’S,5’S,6’R)-6-(4-エチルベンジル)-6’-(ヒドロキシメチル)-3’,4’,5’,6’-テトラヒドロ-3H-スピロ[2-ベンゾフラン-1,2’-ピラン]-3’,4’,5’-トリオール水和物(1:1))、およびソタグリフロジン(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル)-6-(メチルチオ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール(LX4211)、またはその薬学的に許容される塩から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、被験体におけるSGLT-1の活性を阻害する方法。
【請求項5】
上記被験体が、以下のうちの1つ以上を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状に罹患しているかまたは罹患するリスクがある、請求項4に記載の方法:
SGLT-1活性の上昇;
小胞体(ER)ストレス応答の増加;および
肝炎の増加。
【請求項6】
SGLT-1活性の上昇、ERストレスの増加、および/または肝炎の増加のうちの1つ以上を特徴とする上記1つ以上の肝臓の疾患および/または症状が、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎、胆汁うっ滞性肝疾患、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害、薬剤誘発性肝障害、ならびに肝細胞癌(HCC)から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記医薬剤の投与が、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、被験体における以下のうちの1つ以上に関連する肝臓の疾患および/または症状に関連する1つ以上の症候を処置、改善および/または予防する方法:
SGLT-1活性の上昇;
小胞体(ER)ストレス応答の増加;および
肝炎の増加。
【請求項9】
上記被験体が、SGLT-1活性の上昇、ERストレスの増加、および/または肝炎の増加(例えば、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎、胆汁うっ滞性肝疾患、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害、薬剤誘発性肝障害、ならびにHCC)を特徴とする、1つ以上の肝臓の疾患および/または症状に罹患しているかまたは罹患するリスクがあるまたは罹患するリスクがある、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記医薬剤の投与が、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
上記1つ以上の症候が、肝機能の低下、肝および代謝調節障害、ならびに肝ERストレスおよび関連炎症反応から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、被験体におけるCFLDを処置、改善および/または予防する方法。
【請求項13】
上記被験体がCFLDに罹患しているかまたは罹患するリスクがあるまたは罹患するリスクがある、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記医薬剤の投与が、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、被験体における自然発生的肝胆道系病変を処置、改善および/または予防する方法。
【請求項16】
上記被験体が自然発生的肝胆道系病変に罹患しているかまたは罹患するリスクがあるまたは罹患するリスクがある、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記医薬剤の投与が、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、被験体における肝障害を処置、改善および/または予防する方法。
【請求項19】
上記被験体が肝障害に罹患しているかまたは罹患するリスクがあるまたは罹患するリスクがあるまたは罹患するリスクがある、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記医薬剤の投与が、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、被験体におけるNASHを処置、改善および/または予防する方法。
【請求項22】
上記被験体がNASHに罹患しているかまたは罹患するリスクがあるまたは罹患するリスクがある、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記医薬剤の投与が、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、被験体における脂質およびグルコースの恒常性の変化を処置、改善および/または予防する方法。
【請求項25】
上記被験体が、脂質およびグルコースの恒常性の変化に罹患しているかまたは罹患するリスクがあるまたは罹患するリスクがある、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
上記医薬剤の投与が、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、被験体における肝ERストレスおよび関連する炎症反応を処置、改善および/または予防する方法。
【請求項28】
上記被験体が、肝ERストレスおよび関連する炎症反応に罹患しているかまたは罹患するリスクがあるまたは罹患するリスクがある、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
上記医薬剤の投与が、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載の組成物を被験体に投与することを含む、被験体における肝および代謝調節障害の処置、改善および/または予防する方法。
【請求項31】
上記被験体が、肝および代謝調節障害に罹患しているかまたは罹患するリスクがあるまたは罹患するリスクがある、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
上記医薬剤の投与が、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
(1)請求項1に記載の組成物、
(2)容器、パックまたはディスペンサー、および
(3)投与のための説明書、
を含む、キット。
【請求項34】
請求項1に記載の組成物を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2021年3月5日出願の米国仮出願第63/157,435号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔連邦政府の支援を受けた研究または開発に関する記載〕
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたHL133162の政府支援を受けて成されたものである。政府は本発明について一定の権利を有する。
【0003】
〔発明の分野〕
本発明は、医薬薬理学の分野におけるものである。特に、本発明は、ナトリウム-グルコース共輸送体1(SGLT-1)活性の阻害剤として機能する医薬剤に関する。本発明はさらに、嚢胞性線維症関連肝疾患ならびにSGLT-1活性の上昇、小胞体(ER)ストレス応答の増加、および/または肝炎の増加を特徴とする疾患に関連する症候を処置および/または改善する方法に関する。
【0004】
〔緒言〕
嚢胞性線維症(CF)は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子の変異によって引き起こされる常染色体遺伝性疾患である(1)。CF関連肝疾患(CFLD)は、CFにおける死亡原因の第3位を占めている(2)。この疾患は、呼吸器、外分泌膵臓、腸、肝胆道系および汗腺の上皮を含む複数の臓器に影響を及ぼすため複雑であり、これらはCFTRが発現し、重要な機能を担っている。1989年にCFTR遺伝子がクローニング以来、CFの病態解明は大きく進展している。2019年10月、FDAは、CFTR増強剤VX-770ならびにCFTRコレクターVX-445およびVX-661の組合せであるトリカフタ(Trikafta)を承認し、90%超のCF患者に効果をもたらしている(3)。しかしながら、多くの臓器における病態および臓器レベルの治療に対する応答性に関する多くの重要な問題が残されている。
【0005】
CF関連肝疾患(CFLD)は、CF患者の約3分の1が罹患しており、CFにおける肺が関連しない主要な死亡原因である(2)。CFLDの臨床兆候は、胆汁うっ滞、巣状胆汁性肝硬変、肝脂肪症、線維化、微小胆嚢の存在等、多様である。CFLDのピークは小児であるが、CF患者の寿命が延びたことに伴い、過去10年間にCF成人における肝疾患の第二波が報告されている。トリカフタ後の時代において、CFLD等の肺が関連しないCF疾患は、新規で有効な治療法を必要とする優先順位リストに上がっている。
【0006】
今日まで、ウルソデオキシコール酸(UDCA)は、CFLDの処置としてFDAの承認を得ている唯一の薬剤である。しかし、少なくとも一部の臨床医および研究者によれば、肝組織の改善、死亡率、無肝移植生存率等のハードエンドポイントを評価したランダム化比較試験による説得力のあるデータがないため、CFLDに対するUDCAの有効性については、依然として議論の余地がある(4)。トリカフタは、肺機能に顕著な効果があるにもかかわらず、主要な肝機能酵素であるALT、AST等の値を上昇させる。実際、肝機能への悪影響はこの薬の主な副作用であり、CFLDを悪化させる懸念がある。
【0007】
したがって、CFLDおよび関連する臨床症候を処置および/または改善するための、方法および技術の改善が必要とされている。
【0008】
本発明はこの必要性に応えるものである。
【0009】
〔要約〕
選択的SGLT2阻害剤およびSGLT1/2二重阻害剤(dual inhibitor)を含む、ナトリウム-グルコース共輸送体(SGLT)阻害剤は、糖尿病治療の主流になりつつある。今日のところ、肝疾患におけるSGLT阻害剤の効果は体系的に検証されていない。本発明の実施形態を開発する過程で行われた実験では、嚢胞性線維症肝疾患(CFLD)のウサギモデルを利用して、肝疾患に対するSGLT阻害剤の効果を検討した。CFウサギにおけるCFLD様表現型には、自然発生的肝胆道系病変、肝障害および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)活性の上昇、脂質およびグルコースの恒常性の変化が含まれる。実験では、CFウサギの肝臓において、加齢に伴う小胞体(ER)ストレス応答またはUPRトランスデューサーであるIRE1αとその下流の転写因子スプライシング型(spliced)XBP1(XBP1s)を介した不良タンパク質応答(UPR、unfolded protein response)の活性化、ならびにNF-kB炎症経路の活性化が確認された。CFウサギおよびWTウサギのSGLT1およびSGLT2の発現量を決定したところ、SGLT2の発現は、ヒトで報告されているように、大部分が腎臓に限局しており、CFウサギおよびWTウサギで差がないことが明らかになった。一方、SGLT1の発現はCFウサギの肝臓および他の臓器において上昇していた。次に、CFウサギにSGLT1/2二重阻害剤であるソタグリフロジン(Sota、15mg/kg/日)を4週間毎日経口投与する実験を行った。Sota処置は、体重および寿命を増加させ、血糖恒常性を回復させ、肝機能を改善させるという驚くべき有益な効果をCFウサギに及ぼした。重要なことは、Sota処置は、CFウサギにおいて、肝ERストレスおよび炎症反応を緩和し、肝および代謝調節障害を減衰させたことである。このような結果は、Sota等のSGLT阻害剤が、グルコース輸送を抑制することにより、肝炎ストレス応答を減衰させ、NASH状態を改善し、肝疾患の表現型を改善することで、CFLD等の肝疾患に有益な効果をもたらすことを示している。
【0010】
したがって、本発明は、ナトリウム-グルコース共輸送体1(SGLT-1)活性の阻害剤として機能する医薬剤に関する。本発明はさらに、嚢胞性線維症関連肝疾患およびSGLT-1活性の上昇、小胞体(ER)ストレス応答の増加、および/または肝炎の増加を特徴とする疾患に関連する症候を処置および/または改善する方法に関する。
【0011】
特定の実施形態において、本発明は、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を提供する。
【0012】
特定の実施形態において、本発明は、被験体におけるSGLT-1の活性を阻害する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、SGLT-1活性の上昇、小胞体(ER)ストレス応答の増加、および/または肝炎の増加(例えば、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、慢性C型肝炎およびB型肝炎)、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、遺伝性肝疾患および胆道閉塞等)、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害(例えば、肝虚血/再灌流(I/R)障害は、全身性低血圧、血管閉塞、および肝移植を含む手術中に起こり得る)、薬剤誘発性肝障害、ならびに肝細胞癌(HCC))を特徴とする、1つ以上の肝臓の疾患および/または症状に罹患しているかまたは罹患するリスクがある、ヒト被験体である。
【0013】
特定の実施形態において、本発明は、SGLT-1活性の上昇、小胞体(ER)ストレス応答の増加、および/または肝炎の増加を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状を被験体において処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、SGLT-1活性の上昇を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状(例えば、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、慢性C型肝炎およびB型肝炎)、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、遺伝性肝疾患および胆道閉塞等)、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害(例えば、肝虚血/再灌流(I/R)障害は、全身性低血圧、血管閉塞、および肝移植を含む手術中に起こり得る)、薬剤誘発性肝障害、ならびにHCC)を罹患しているかまたは罹患するリスクがある、ヒト被験体である。
【0014】
特定の実施形態において、本発明は、SGLT-1活性の上昇、小胞体(ER)ストレス応答の増加、および/または肝炎の増加に関連する肝臓の疾患および/または症状に関連する1つ以上の症候を被験体において処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、SGLT-1活性の上昇を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状(例えば、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、慢性C型肝炎およびB型肝炎)、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、遺伝性肝疾患および胆道閉塞等)、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害(例えば、肝虚血/再灌流(I/R)障害は、全身性低血圧、血管閉塞、および肝移植を含む手術中に起こり得る)、薬剤誘発性肝障害、ならびにHCC)を罹患しているかまたは罹患するリスクがある、ヒト被験体である。
【0015】
このような方法は、SGLT-1活性の上昇、ERストレスの増加、および/または肝炎の増加に関連する肝臓の疾患および/または症状に関連する特定の症候の処置、改善、および/または予防に限定されない。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0016】
特定の実施形態において、本発明は、被験体におけるCFLDを処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、CFLDに罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0017】
特定の実施形態において、本発明は、被験体における自然発生的肝胆道系病変を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、自然発生的肝胆道系病変に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0018】
特定の実施形態において、本発明は、被験体における肝障害を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、肝障害に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0019】
特定の実施形態において、本発明は、被験体においてNASHを処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、NASHに罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0020】
特定の実施形態において、本発明は、対象における脂質およびグルコースの恒常性の変化を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、脂質およびグルコースの恒常性の変化に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0021】
特定の実施形態において、本発明は、被験体における肝ERストレスおよび関連する炎症反応を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、肝ERストレスおよび関連する炎症反応に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0022】
特定の実施形態において、本発明は、被験体における肝および代謝調節障害を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、肝および代謝調節障害に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0023】
特定の実施形態において、本発明は、(1)SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物、(2)容器、パック、またはディスペンサー、および(3)投与のための説明書を含むキットを提供する。
【0024】
このような組成物、方法、およびキットは、SGLT-1活性を阻害することができる特定のタイプまたは種類の医薬剤に限定されない。いくつかの実施形態において、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤は、低分子、抗体、核酸分子(例えば、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー)、または模倣ペプチドである。
【0025】
いくつかの実施形態において、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤は、例えば、フロリジン、カナグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-{3-[5-[4-フルオロ-フェニル]-チオフェン-2-イルメチル]-4-メチル-フェニル}-6-ヒドロキシメチル-テトラヒドロ-ピラン-3,4,5-トリオール)、ダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)-テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール)、エムパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-[[4-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシフェニル]メチル]フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3,4,5-トリオール)、レモグリフロジン(5-メチル-4-[4-(1-メチルエトキシ)ベンジル]-1-(1-メチルエチル)-1H-ピラゾール-3-イル 6-O-(エトキシカルボニル)-β-D-グルコピラノシド)、セルグリフロジン(2-(4-メトキシベンジル)フェニル 6-O-(エトキシカルボニル)-β-D-グルコピラノシド)、およびトホグリフロジン((1S,3’R,4’S,5’S,6’R)-6-(4-エチルベンジル)-6’-(ヒドロキシメチル)-3’,4’,5’,6’-テトラヒドロ-3H-スピロ[2-ベンゾフラン-1,2’-ピラン]-3’,4’,5’-トリオール水和物(1:1))、およびソタグリフロジン(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル)-6-(メチルチオ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール(LX4211)、またはその薬学的に許容される塩から選択されるが、これらに限定されない。
【0026】
〔図面の簡単な説明〕
図1
CFウサギの選択された典型的なCF表現型。(A)WT(黒色の点)と比較した、GI下剤あり(オレンジの点)またはなし(青色の点)のCFウサギの生存率。(B)CFウサギ腸上皮細胞の典型的な欠陥短絡反応(グレーのバー)とWTウサギの正常反応(白のバー)。WT(左)のウサギでは観察されなかったが、グルコースとフロリジン(糞便ペレットのSGLT1/2非存在)後に上昇したグレーのバー(CF)に注目。矢印:閉塞点。
【0027】
図2
CFウサギは肝胆道系病変および胆汁分泌異常を示す。CFウサギの典型的な胆汁性肝硬変(矢印)および粘液栓を示す約60日齢のCFウサギおよびWTウサギの肝臓切片のHE(A)およびシリウスレッドコラーゲン(B)の染色。(C)CFウサギおよびWTウサギの胆嚢からの胆汁のカバースライド上の顕微鏡像。CFウサギの胆汁には粘液および色素結石(矢印)が認められた。(D~F)胆汁pH値、血清総胆汁酸の量、相対的血清胆汁タンパク質存在量(CF対WTの倍数変化)。平均値±SEM(n=5 WTまたは10 CF)。*p≦0.05、**p≦0.01。
【0028】
図3
CFウサギは微小胆嚢および肝障害を示す。(A)約60日齢のCFウサギおよびWTウサギの微小嚢の比較。(B)CFウサギの胆道門脈三管(矢印)に肝硬変を示す肝臓切片のHE染色。(C)WTウサギおよびCFウサギのALTおよびASTの血清中の量。(D)WTウサギおよびCFウサギの相対肝重量(%肝重量/体重)。Cはn=7、Dはn=4。*p≦0.05、**p≦0.01。
【0029】
図4
CFウサギはNASH表現型を示す。(A)WTウサギおよびCFウサギ由来の肝臓組織切片における肝細胞構造(HE染色)、脂質蓄積(オイルレッドO染色)、コラーゲン線維(ゴモリのトリクローム染色)の組織学的解析。矢印は肝炎または線維化の部位を示す。(B)改変Bruntスコアリングシステム(17)に基づくCFおよびWTウサギ肝臓のNASH活性のスコアリング。
【0030】
図5
CFウサギは、脂質プロファイルの上昇および肝代謝調節因子の上方制御(up-regulation)を示した。(A)約60日齢のWTウサギおよびCFウサギの血漿コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、高密度リポタンパク質(HDL)および低密度リポタンパク質(LDL)の量。平均値±SEM(n=9)。(B)LDLとHDLとの比。(C)異なる年齢(生後日数)のWTおよびCFにおけるCREBH、PPARα、FGF21タンパク質の量のウェスタンブロット分析および定量化。*p≦0.05、**p≦0.01。
【0031】
図6
CFウサギは耐糖能異常およびグリコーゲン貯蔵の減少を示す。(A~C)約60日齢のWTウサギおよびCFウサギの血糖値、インスリン量、体重。(D~E)CF、CFLD様、WT対照ウサギのIVGTT分析。(F~G)WTウサギおよびCFウサギ(n=7)のPAS染色および肝グリコーゲンの酵素アッセイ。*p≦0.05、**p≦0.01。
【0032】
図7
CFウサギ肝臓では、JNKとNFκBを介した炎症反応が活性化されている。異なる年齢(生後日数)のWTとCFにおけるリン酸化JNK(P-JNK)、総JNK、リン酸化IκB(P-IκB)、総IκBタンパク質のウェスタンブロット解析と定量化。グラフは、ウェスタンブロットのデンシトメトリーによって決定されたタンパク質シグナルの強度に基づくタンパク質の量の倍数変化を示す。平均値±SD(n=6 WT および 9 CF)。*p≦0.05、**p≦0.01。
【0033】
図8
CFウサギ肝臓ではERストレスシグナルが活性化されている。(A)異なる年齢のWTおよびCFにおけるIRE1αタンパク質の量のウェスタンブロット分析。(B)約60日のWTウサギおよびCFウサギ由来の肝臓切片を使用したIRE1αおよびXBP1のIHC染色。(C~D)WTウサギおよびCFウサギの肝臓におけるERストレス応答またはERAD経路におけるERストレスセンサーまたはメディエーターをコードするmRNAのqPCR解析(n=4)。*p≦0.05、**p≦0.01。
【0034】
図9
CFウサギにおけるSGLT1。Int:腸。Pan:膵臓。
【0035】
図10
ヒトCF細胞におけるSGLT1。(A)CFBE-WT細胞およびCFBE-dF細胞におけるSGLT1およびCFTR。CFTR-dFをレスキューするためにVX809および低温(27℃)を使用した。(B)WT、dF/dFまたはdF/G551D遺伝子型のiPSC由来肺オルガノイドにおけるSGLT1およびCFTR。(C)CF患者の分泌気道細胞からの単一細胞RNAシークエンシング。
【0036】
図11
Sota処置前後のCFウサギのIVGTT分析。*p≦0.05。
【0037】
図12
Sota処置あり(緑色の点)または処置なし(赤色の点)のCFウサギの選択された血液化学検査結果。灰色の枠:正常範囲。X軸はSota処置後の週数を示す。
【0038】
図13
SotaはCFウサギの食欲(左)および体重増加(右)を促進する。
【0039】
図14
SotaはCFウサギの寿命を延ばす。
【0040】
図15
Sotaは、CFウサギ肝臓において、SGLT1ならびに主要なERストレスおよび炎症メディエーターを減少させた。ウェスタンブロット分析によって決定された、4週間のSota処置(15mg/kg/日)後のCFまたはWTウサギの肝臓におけるSGLT1(A)、HRD1、XBP1s、およびリン酸化NF-κB P65(B)タンパク質のレバー(lever)。(C~D)Xbp1s、GRP78、TNFα、IL6のmRNA量のqPCR解析。*p≦0.05。
【0041】
図16
SGLT1はCFウサギ肝臓のアルブミン陽性細胞に発現している。
【0042】
図17
ウサギ肝臓のHE、シリウスレッド、PAS染色。
【0043】
図18
Sota処置ありまたは処置なしのWTウサギおよびCFウサギ由来の肝臓(B)サンプルにおけるBA種。*P≦0.05。**P≦0.01。
【0044】
図19
SotaはCFウサギ肝臓において、SGLT1ならびに主要なERストレスおよび炎症メディエーターを減少させた。Sota処置後のCFまたはWTウサギの肝臓における、(A)SGLT1、HRD1、XBP1s、リン酸化NFκB P65のタンパク質の量、(B)SLC5A1とIRE1aの転写量。(C)Sota処置ありまたは処置なしのCFウサギの肝臓のHEおよびIHC染色。
【0045】
図20
XBP1sはSLC5A1の転写因子である。(A)AdvによるXBP1sの過剰発現はSGLT1のタンパク質の量の上昇をもたらした。(B)XBP1sの過剰発現はSLC5A1の転写を増加させた。(C)ChiPアッセイにより、XBP1sがSLC5A1のプロモーターに結合することが確認された。(D)SLC5A1のプロモーター上の推定結合モチーフ(青色)。(E)SGLT1-ルシフェラーゼアッセイにより、変異モチーフ配列はXBP1sによって誘導される転写活性を消失させることが示された。
【0046】
図21
Sota(5μg/ml)はHuh7細胞においてPA(10μg/mL)誘発性脂肪症を減衰させた。左:ビヒクル。PA:パルミチン酸塩。
【0047】
図22
SGLT1阻害が炎症性肝疾患を改善する作用機序の仮説。
【0048】
〔発明の詳細な説明〕
このように、本発明は、ナトリウム-グルコース共輸送体1(SGLT-1)活性の阻害剤として機能する医薬剤に関する。本発明はさらに、嚢胞性線維症関連肝疾患、ならびに、SGLT-1活性の上昇、小胞体(ER)ストレス応答の増加、および/または肝炎の増加を特徴とする疾患に関連する症候を処置および/または改善する方法に関する。
【0049】
特定の実施形態において、本発明は、被験体におけるSGLT-1の活性を阻害する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、SGLT-1活性の上昇(例えば、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、慢性C型肝炎およびB型肝炎)、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、遺伝性肝疾患および胆道閉塞等)、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害(例えば、肝虚血/再灌流(I/R)障害は、全身性低血圧、血管閉塞、および肝移植を含む手術中に起こり得る)、薬剤誘発性肝障害、ならびにHCC)を特徴とする、1つ以上の肝臓の疾患および/または症状に罹患しているかまたは罹患するリスクがある、ヒト被験体である。
【0050】
特定の実施形態において、本発明は、SGLT-1活性の上昇、小胞体(ER)ストレス応答の増加、および/または肝炎の増加を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状を被験体において処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、SGLT-1活性の上昇を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状(例えば、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、慢性C型肝炎およびB型肝炎)、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、遺伝性肝疾患および胆道閉塞等)、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害(例えば、肝虚血/再灌流(I/R)障害は、全身性低血圧、血管閉塞、および肝移植を含む手術中に起こり得る)、薬剤誘発性肝障害、ならびにHCC)を罹患しているかまたは罹患するリスクがある、ヒト被験体である。
【0051】
特定の実施形態において、本発明は、被験体におけるSGLT-1の活性を阻害する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、SGLT-1活性の上昇(例えば、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、慢性C型肝炎およびB型肝炎)、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、遺伝性肝疾患および胆道閉塞等)、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害(例えば、肝虚血/再灌流(I/R)障害は、全身性低血圧、血管閉塞、および肝移植を含む手術中に起こり得る)、薬剤誘発性肝障害、ならびにHCC)を特徴とする、1つ以上の肝臓の疾患および/または症状に罹患しているかまたは罹患するリスクがある、ヒト被験体である。
【0052】
特定の実施形態において、本発明は、SGLT-1活性の上昇を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状を被験体において処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、SGLT-1活性の上昇を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状(例えば、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、慢性C型肝炎およびB型肝炎)、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、遺伝性肝疾患および胆道閉塞等)、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害(例えば、肝虚血/再灌流(I/R)障害は、全身性低血圧、血管閉塞、および肝移植を含む手術中に起こり得る)、薬剤誘発性肝障害、ならびにHCC)を罹患しているかまたは罹患するリスクがある、ヒト被験体である。
【0053】
特定の実施形態において、本発明は、被験体におけるSGLT-1活性の上昇に関連する肝臓の疾患および/または症状に関連する1つ以上の症状を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、SGLT-1活性の上昇を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状(例えば、CFLD、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)、慢性ウイルス性肝炎(例えば、慢性C型肝炎およびB型肝炎)、胆汁うっ滞性肝疾患(例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、遺伝性肝疾患および胆道閉塞等)、アルコール誘発性肝障害またはアルコール性脂肪肝疾患、高ホモシステイン血症、肝虚血/再灌流障害(例えば、肝虚血/再灌流(I/R)障害は、全身性低血圧、血管閉塞、および肝移植を含む手術中に起こり得る)、薬剤誘発性肝障害、ならびにHCC)を罹患しているかまたは罹患するリスクがある、ヒト被験体である。このような方法は、SGLT-1活性の上昇に関連する肝臓の疾患および/または症状に関連する特定の症候を処置、改善および/または予防することに限定されない。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0054】
特定の実施形態において、本発明は、被験体におけるCFLDを処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、CFLDに罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0055】
特定の実施形態において、本発明は、被験体における自然発生的肝胆道系病変を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、自然発生的肝胆道系病変に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0056】
特定の実施形態において、本発明は、被験体における肝障害を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、肝障害に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0057】
特定の実施形態において、本発明は、被験体においてNASHを処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、NASHに罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0058】
特定の実施形態において、本発明は、対象における脂質およびグルコースの恒常性の変化を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、脂質およびグルコースの恒常性の変化に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0059】
特定の実施形態において、本発明は、被験体における肝ERストレスおよび関連する炎症反応を処置、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、肝ERストレスおよび関連する炎症反応に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0060】
特定の実施形態において、本発明は、被験体における肝および代謝調節障害の治療、改善および/または予防する方法であって、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤を含む組成物を被験体に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、被験体はヒト被験体である。いくつかの実施形態において、被験体は、肝および代謝調節障害に罹患しているヒト被験体である。いくつかの実施形態において、医薬剤の投与は、肝および代謝調節障害の減衰、肝ERストレスおよび炎症反応の緩和、肝機能の改善、血糖恒常性の回復、体重の増加、ならびに寿命の延長のうちの1つ以上をもたらす。
【0061】
本発明は、SGLT-1活性を阻害することができる特定のタイプまたは種類の医薬剤に限定されない。いくつかの実施形態において、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤は、低分子、抗体、核酸分子(例えば、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー)、または模倣ペプチドである。
【0062】
いくつかの実施形態において、SGLT-1活性を阻害することができる医薬剤は、例えば、フロリジン、カナグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-{3-[5-[4-フルオロ-フェニル]-チオフェン-2-イルメチル]-4-メチル-フェニル}-6-ヒドロキシメチル-テトラヒドロ-ピラン-3,4,5-トリオール)、ダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-(4-エトキシベンジル)フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)-テトラヒドロ-2H-ピラン-3,4,5-トリオール)、エムパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)-2-[4-クロロ-3-[[4-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシフェニル]メチル]フェニル]-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3,4,5-トリオール)、レモグリフロジン(5-メチル-4-[4-(1-メチルエトキシ)ベンジル]-1-(1-メチルエチル)-1H-ピラゾール-3-イル 6-O-(エトキシカルボニル)-β-D-グルコピラノシド)、セルグリフロジン(2-(4-メトキシベンジル)フェニル 6-O-(エトキシカルボニル)-β-D-グルコピラノシド)、およびトホグリフロジン((1S,3’R,4’S,5’S,6’R)-6-(4-エチルベンジル)-6’-(ヒドロキシメチル)-3’,4’,5’,6’-テトラヒドロ-3H-スピロ[2-ベンゾフラン-1,2’-ピラン]-3’,4’,5’-トリオール水和物(1:1))、およびソタグリフロジン(LX4211)、またはその薬学的に許容される塩から選択されるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明の重要な態様は、本発明の組成物(例えば、SGLT-1活性の阻害剤として機能する医薬剤を含む組成物)が、SGLT-1活性の上昇を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状(例えば、CFLD)(例えば、CFLD様表現型(例えば、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化))の処置に有用であることである。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態は、SGLT-1活性の阻害剤として機能する本発明の医薬剤と、少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、SGLT-1活性の上昇を特徴とする1つ以上の肝臓の疾患および/または症状(例えば、CFLD)(例えば、CFLD様表現型(例えば、自然発生的肝胆道系病変、肝障害の増加、NASH活性、脂質およびグルコースの恒常性の変化)の処置に有用である任意の医薬剤を含むが、これらに限定されない)と、を含む組成物の有効量を投与する方法を提供する。
【0065】
本発明の範囲内の組成物には、SGLT-1活性の阻害剤として機能する医薬剤が、その意図する目的を達成するのに有効な量で含有されるすべての組成物が含まれる。個々の必要性は様々であるが、各成分の有効量の最適範囲の決定は当業者の技術範囲内である。典型的には、SGLT-1活性の阻害剤として機能する医薬剤(例えば、低分子、抗体、模倣ペプチド)は、SGLT-1活性の阻害に応答する障害に対して処置される哺乳動物の体重の1日あたり0.0025~50mg/kgの用量で、哺乳動物(例えば、ヒト)に経口投与してもよく、またはその薬学的に許容される塩の等価量を経口投与してもよい。一実施形態において、約0.01~約25mg/kgは、このような障害を処置、改善、または予防するために経口投与される。筋肉内注射の場合、用量は一般に経口用量の約2分の1である。例えば、好適な筋肉内投与量は、約0.0025~約25mg/kg、または約0.01~約5mg/kgである。
【0066】
単位経口投与量は、約0.01~約3000mg、例えば約0.1~約100mgのSGLT-1活性阻害剤を含んでいてもよい。単位用量は、それぞれ約0.1~約10mg、好都合には約0.25~約50mgのSGLT-1活性阻害剤(例えば、模倣ペプチド、低分子)またはその溶媒和物を含む1つ以上の錠剤もしくはカプセル、または液体もしくは気化/吸入形態として、1日1回以上投与してもよい。
【0067】
製剤(例えば、静脈内製剤、腹腔内製剤、筋肉内製剤、皮下製剤、注射製剤、局所製剤、経口製剤等)において、SGLT-1活性阻害剤(例えば、模倣ペプチド、低分子)は、担体1gあたり約0.01~100mgの濃度で存在していてもよい。一実施形態において、SGLT-1活性阻害剤(例えば、模倣ペプチド、低分子)は、約0.07~1.0mg/ml、例えば、約0.1~0.5mg/ml、一実施形態においては、約0.4mg/mlの濃度で存在する。
【0068】
SGLT-1活性阻害剤(例えば、模倣ペプチド、低分子)を原薬として投与することに加えて、本発明のSGLT-1活性阻害剤(例えば、模倣ペプチド、低分子)は、SGLT-1活性阻害剤を薬学的に使用できる製剤に処理することを容易にする賦形剤および補助剤を含む好適な薬学的に許容される担体を含む医薬製剤の一部として投与してもよい。当該製剤は、特に、任意の所望の方法(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、局所、経口、吸入等)で投与することができ、錠剤、糖衣錠、徐放性トローチ剤およびカプセル、口内リンスおよび口腔洗浄剤、ゲル、液体懸濁液、ヘアリンス、ヘアゲル、シャンプー等の、投与の一種について使用することができる製剤、ならびに座薬等の直腸投与することができる製剤、ならびに、静脈内注入、注射、局所または経口投与による投与に好適な溶液は、賦形剤と共に、約0.01~99パーセント、一実施形態においては約0.25~75パーセントの活性模倣ペプチドを含む。
【0069】
本発明の医薬組成物は、本発明のSGLT-1活性阻害剤(例えば、模倣ペプチド、低分子)の有益な効果を経験する可能性がある任意の患者に投与してもよい。このような患者の中で最も重要なのは哺乳動物(例えば、ヒト)であるが、本発明はそのように限定することを意図するものではない。その他の患者としては、家畜動物(ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ等)が含まれる。
【0070】
SGLT-1活性阻害剤(例えば、模倣ペプチド、低分子)および医薬組成物は、それらの意図される目的を達成する任意の手段によって投与されてもよい。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、経皮、口腔内(buccal)、くも膜下腔内、頭蓋内、鼻腔内または局所経路で行われてもよい。代わりにまたは並行して、投与は経口経路によるものであってもよい。投与される用量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、並行する処置の種類、必要に応じて、処置の頻度、および所望の効果の性質に依存する。
【0071】
本発明の医薬製剤は、例えば、従来の混合、顆粒化、糖衣錠製造、溶解、または凍結乾燥処理により周知の方法で製造される。したがって、経口使用のための医薬製剤は、活性模倣ペプチドを固体賦形剤と組み合わせ、任意で、得られた混合物を粉砕し、所望または必要であれば、好適な助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理することによって、錠剤または糖衣錠コアを得ることができる。
【0072】
好適な賦形剤は特に、充填剤、例えば、糖類(例えば、ラクトースまたはスクロース)、マンニトールまたはソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム(例えば、リン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム)、ならびに結合剤、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドンを使用するデンプンペーストである。所望ならば、上記デンプンおよびカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)等の崩壊剤を添加してもよい。助剤はとりわけ、流量調節剤および滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコールである。糖衣錠コアは、所望であれば、胃液に対して耐性のある任意の好適なコーティングが施される。この目的のために、濃縮糖質溶液が使用してもよく、この溶液は任意で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでいてもよい。胃液に対して耐性のあるコーティングを製造するために、好適なセルロース調製物(例えば、アセチルセルロースフタレートまたはヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタレート)の溶液が使用される。顔料または色素は、例えば、識別のために、または活性模倣ペプチドの用量の組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加されてもよい。
【0073】
経口で使用できるその他の医薬製剤には、ゼラチン製の押し込み型カプセル(push-fit capsules)ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはソルビトール等の可塑剤で製造された軟質密閉カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは粒状の活性模倣ペプチドを含むことができ、当該粒状の活性模倣ペプチドはラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウム等の滑剤、ならびに任意で安定剤と混合してもよい。軟質カプセルでは、活性模倣ペプチドが一実施形態では脂肪油、または流動パラフィン等の好適な液体に溶解または懸濁される。さらに、安定剤を添加してもよい。
【0074】
直腸に使用することができる可能な医薬製剤として、例えば、1つ以上の活性模倣ペプチドと坐剤基剤との組合せからなる坐剤が挙げられる。好適な坐剤基剤は、例えば、天然または合成トリグリセリド、またはパラフィン炭化水素である。さらに、活性模倣ペプチドと基剤との組合せからなるゼラチン直腸カプセルを使用することも可能である。可能な基剤材料としては、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素が挙げられる。
【0075】
非経口投与に好適な製剤として、水溶性形態の活性模倣ペプチドの水溶液、例えば、水溶性塩およびアルカリ性溶液が挙げられる。さらに、適切な油性注射懸濁液として活性模倣ペプチドの懸濁液が投与されてもよい。好適な親油性溶媒または媒体として、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドまたはポリエチレングリコール-400が挙げられる。水性注射懸濁液は懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、および/またはデキストランを含んでいてもよい。任意で、懸濁液は安定剤を含んでいてもよい。
【0076】
本発明の局所用組成物は、一実施形態において、適切な担体の選択により、オイル、クリーム、ローション、軟膏等として製剤化される。好適な担体には、植物油または鉱油、白色ワセリン(白色軟パラフィン)、分枝鎖脂肪または油、動物性脂肪および高分子量アルコール(C12より大きい)が挙げられる。担体は、活性成分が可溶性であるものであってもよい。所望であれば、乳化剤、安定剤、保湿剤および酸化防止剤、ならびに着色または芳香を付与する薬剤が含まれてもよい。さらに、経皮浸透増強剤をこれらの局所製剤に使用することができる。このような増強剤の例は、米国特許第3,989,816号および4,444,762号に見出すことができる。
【0077】
軟膏は、アーモンド油等の植物油中の活性成分の溶液を温かい軟質パラフィンと混合し、この混合物を冷却させることによって製剤化してもよい。そのような軟膏の典型的な例は、約30重量%のアーモンド油および約70重量%の白色軟パラフィンを含むものである。ローションは、活性成分を、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等の好適な高分子量アルコールに溶解することによって都合よく調製してもよい。
【0078】
当業者であれば、上記が本発明の特定の好ましい実施形態を詳細に説明したに過ぎないことを容易に認識するであろう。上記の組成物および方法の種々の改変および変更を、当該分野で利用可能な専門知識を使用して容易に行うことができ、そうした種々の改変および変更は本発明の範囲内である。
【0079】
これまでに本発明を十分に説明したが、当業者であれば、本発明またはその任意の実施形態の範囲に影響を及ぼすことなく、条件、配合、および他のパラメータの広範かつ同等な範囲内で同じことを実施できることが理解されよう。本明細書で引用したすべての特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照により本明細書に完全に援用される。
【0080】
〔実験〕
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態および態様を示し、さらに説明するために提供されるものであり、その範囲を限定するものとして解釈されるものではない。以下の実験セクションを通じて使用される場合、用語「我々は」または「我々の」または「我々に」または同様の用語は、1人以上の本発明者を指す。
【0081】
<実施例1>
次の実験には2つのデータ系統が存在する:(1)CFウサギおよびそれらの肝臓の表現型の開発;および(2)CFウサギに対するSotaの有益な効果。CFウサギモデルおよびそれらの肝臓の表現型。
【0082】
(CFウサギモデルの開発)
過去数年間、我々(本発明者ら)は、CRISPR/Cas9を使用してCFTR変異ウサギのいくつかの系統を作製してきた(13、14)。本研究に関連するCFTRΔ9変異は、ヌクレオチド結合ドメイン1(NBD1)の3つのアミノ酸(P477、S478、E479)の欠失を導く9bp欠失であり、本企画ではΔPSEと示す。CFTR-ΔF508ウサギ(14)は、ヒトCF患者に見られる最も一般的な変異を持っている。
【0083】
(CFウサギの一般的特徴)
我々が作製したCFウサギは、最近報告したように、最も典型的なCF表現型を示す(13)。簡単に述べると、非CF同腹子と比較して、CFウサギは成長が遅く、体重が軽く、ほとんどのCFウサギは腸閉塞で死亡するが、この状態は下剤の使用により改善される(図1)。CFウサギは、鼻および気管上皮の生体電気特性において気道異常を示した。ごく一部ではあるが、自然発生的に肺感染症を発症する動物もいた。
【0084】
(CFウサギは自然発生的肝胆道系病変および胆汁分泌異常を起こす)
ΔPSEウサギの肝胆道系を調べたところ、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色およびコラーゲンのシリウスレッド染色で示されるように、粘液栓を伴う胆管周囲に、典型的なCFに伴う局所的な胆道線維化および肝硬変が確認された(図2A~B)。さらに、CFウサギは胆汁分泌に異常を示した。WTウサギの胆嚢から採取された胆汁は流れ易かったが、CFウサギの胆嚢から採取された胆汁は、濃く粘り気があり、結晶様色素を示した(図2C)。CFウサギの胆汁pHはWTウサギより有意に低かった(図2D)。しかしながら、CFウサギの血清総胆汁酸の量は、WTウサギのそれよりもはるかに高かった(図2E)。さらに、CFウサギの血清胆汁タンパク質の量は、WTウサギのそれと比べて、約3倍増加していた(図2F)。これらの結果から、CFウサギの肝胆道系の主要な表現型は、ヒトCFLDを内包していることが明らかになった。
【0085】
(CFウサギは微小胆嚢関連病理および肝障害を示す)
CF患者で観察される肝症状では、胆嚢の異常、すなわち、微小胆嚢が頻繁に見られる(15)。CFウサギは、微小胆嚢(図3A)および門脈三管の肝硬変(図3B)を示した。CFウサギでは、門脈三管を覆う上皮細胞は定位障害を起こし(disoriented)、管は狭窄していたが、WTウサギでは見られなかった(図3B)。これらのデータから、CFウサギは肝内胆管閉塞を有し、限局性の胆汁性肝硬変を引き起こし、図2に示すように、おそらく粘稠な粘液の過剰分泌による炎症を起こしていることが示された。さらに、肝臓の酵素であるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清中の量を調べた。CFウサギのALTおよびASTの量は、WTウサギと比較して上昇しており(図3C)、CFウサギの肝障害が増加していることを示している。同様に、CFウサギの相対肝重量(肝重量/体重)は、WTウサギに比べて減少していた(図3D)。
【0086】
(CFウサギはNASH様表現型を示す)
CF患者の多くは、多因子性病因に関連した肝脂肪症および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を呈している(15、16)。CFウサギのNASH関連活性を評価するために、我々は、60日以下のWTウサギおよびCFウサギの肝臓組織切片を使用して組織学的解析を行った。肝細胞構造のH&E染色、肝脂質のオイルレッドO染色、および肝コラーゲン沈着のゴモリのトリクローム染色に基づき、CFウサギの肝臓では、WT対照ウサギと比較して、肝脂肪症、小葉および門脈の炎症、ならびに類洞周囲線維症および門脈線維症の増加が確認された(図4A)。NAFLD活動性および線維化スコアシステム(NAFLD grading and staging score system;17、18)を使用すると(図4B)、60日未満のCFウサギの約36%が、脂肪症、肝炎、類洞周囲/門脈線維症を特徴とする典型的なNASH表現型を発症していることが確認された。
【0087】
(CFウサギは脂質プロファイルの上昇および肝代謝調節因子の上方制御を示す)
成人のCF患者は、特に年齢が高くなるにつれて、糖尿病または耐糖能異常、高トリグリセリド血症を含むNASHに典型的に関連する代謝リスク因子を発症する(15)。WT対照ウサギと比較して、CFウサギは、血漿中トリグリセリド(TG)、総コレステロール(TC)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)の量が有意に増加していたが、高密度リポタンパク質(HDL)は増加せず(図5A~B)、高脂血症の表現型を包含していた。
【0088】
CFウサギの脂質表現型に関する機序的知見を得るため、我々は、ウサギの肝臓におけるいくつかの主要な代謝調節因子の発現を調べた。サイクリックAMP応答性エレメント結合タンパク質H(CREBH)およびベルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα)は、肝臓に濃縮されたストレス誘導性である2つのバイナリー転写制御因子であり、肝脂質およびグルコース代謝の制御に重要な役割を果たしている(19~22)。CREBH前駆体(CREBH-P)、活性化CREBHタンパク質(CREBH-A)、PPARαの発現量は、WT対照ウサギと比較して、CFウサギの肝臓では、高年齢になるにつれて増加していた(図5C)。CREBH-PPARα転写複合体によって発現が制御されている線維芽細胞増殖因子21(FGF21)は、ストレス負荷に応答して脂質およびグルコースの動員を促進する主要なヘパトカインである(20)。同様に、CFウサギ肝臓におけるFGF21の発現量は、年齢依存的に増加した(図5C)。CREBH/PPARα/FGF21制御軸の上方制御は、CFLD症状から肝臓を回復させようとするCFウサギ肝臓のフィードバック制御を表している可能性がある。
【0089】
(CFウサギは耐糖能異常およびグリコーゲン貯蔵の減少を示す)
グルコース恒常性におけるCFLDの症状を評価するために、我々は、60日齢以下のWTウサギおよびCFウサギの空腹時血糖値およびインスリンの量を調べた。CFウサギの血中グルコースの量は、WT対照ウサギに比べて上昇した一方、血中インスリンの量は低下した(図6A~B)。さらに、WTウサギおよびCFウサギを使用して静脈内グルコース負荷試験(IVGTT)を行った。グルコースを投与したところ、検査した11匹のCFウサギの血糖値は、すべてWT対照ウサギよりも高い値であった(図6D)。これらの動物のうち、肝胆道病変、微小胆嚢、NASH様表現型から決定された、4匹のCFLD様ウサギは、WT対照と比較して、グルコースクリアランスの能力が有意に低下しており、有意な耐糖能異常を示した(図6E)。さらに、CFウサギの体重は、WTウサギと比較して減少していた(図6C)。次に、WTウサギおよびCFウサギの肝グリコーゲン貯蔵を、過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色および定量的酵素アッセイの両方で調べた。両アプローチとも、WTウサギ肝臓と比較して、CFウサギ肝臓の肝グリコーゲン量が有意に減少していることを特定した(図6F~G)。調査した16匹のCFウサギのうち、10匹(62.5%)のCFウサギでは、PAS染色によって示されるように、肝グリコーゲンの貯蔵が枯渇している。グルコース恒常性における肝グリコーゲン貯蔵の中心的役割を考慮すると、肝グリコーゲンの枯渇は、CFウサギで観察された耐糖能異常の少なくとも部分的な原因である可能性がある。
【0090】
(CFウサギ肝臓におけるERストレスおよび炎症反応の優勢)
CFウサギのCFLD表現型の根底にあるメカニズムの基礎を理解するため、CFウサギの肝臓において、JNKおよびNFκBによって媒介される主要な炎症経路の活性化を調べた。WTと比較して、JNKおよびNFκBによって媒介される炎症経路の指標であるリン酸化JNK(P-JNK)およびリン酸化NFκB阻害剤(P-IκB)の量は、年齢依存的にウサギの肝臓で増加していた(図7)。次に、WTウサギおよびCFウサギの肝臓において、炎症を促進し、代謝恒常性を再構築する細胞内ストレスシグナルであるERストレス応答または不良タンパク質応答の活性化を調べた(23、24)。ウェスタンブロット分析により、CFウサギの肝臓では、一次ERストレスセンサーIRE1αおよびその下流の転写活性化因子XBP1によって媒介されるERストレス応答の年齢依存的な活性化が明らかになった(図8A)。ウサギ肝組織切片の免疫組織化学(IHC)染色により、約60日齢のWTウサギではなく、CFウサギの肝胆管周辺にIRE1αおよびXBP1の強い誘導が検出された(図8B)。IRE1αおよびXBP1によるERストレス応答の活性化は、定量的リアルタイムPCR(qPCR)解析によって確認され、IRE1α、スプライシング型Xbp1(Xbp1s)、ERシャペロンBiP/GRP78(図8C)、さらにHRD1、Sal1L、EDEM1、ERdj4を含むER関連分解(ERAD)経路におけるIRE1α/XBP1標的のmRNA発現量が示された(図8D)。これらの結果から、CFウサギの肝臓、特に50日齢超の肝臓において、ERストレスおよび炎症反応が強く活性化されていることが明らかになった。
【0091】
(SGLT1はCFウサギ組織およびヒトCF細胞で上方制御されている)
まず、CFウサギおよびWTウサギにおけるSGLT1およびSGLT2の発現量を測定した。SGLT2の発現は、ヒトで報告されているように、大部分が腎臓に限られており、CFウサギとWTウサギとの間に差はない。一方、SGLT1の発現は、CFウサギの肺、膵臓および腸(図9)ならびに肝臓(図15A)を含むいくつかのCF関連組織で上昇しており、SGLT1が肝臓を含む多くのCF罹患臓器の標的であることを示唆している。このような上方制御は、CFΔ1(X変異)およびΔ9(つまりΔPSE)の両系統で観察されることに注目する。
【0092】
ヒトCF細胞におけるSGLT1の発現量も調べた。CFBE細胞のCFTRバンディング(CFTR banding)は、遺伝子型と一致している。CFウサギにおける所見と同様に、CFBEにおけるSGLT1シグナルは、CFTRのシグナルと逆相関していた:dF細胞では高いが、WT細胞では低い(図10A)。さらに、VX809によるCFTRの薬理学的レスキュー、またはCFBE-dF細胞における27℃でのCFTRの低温レスキューは、いずれもSGLT1の量の低下と関連していた(図10A)。一貫して、患者iPSC由来のdF/dFおよびdF/G551D肺オルガノイドの両方において(図10B)、SGLT1の量は、WT/WTよりも高かった。このパターンは、CF患者気道細胞の単一細胞RNAシークエンシングが行われた最近のプロジェクトでも明らかになった。SGLT1は、CF患者(混合遺伝子型)の分泌気道細胞において、非CF患者の分泌気道細胞よりも発現量が高いだけではなく、高い割合で発現していた。一方、SGLT2は、微量しか発現していない(図10C)。
【0093】
(SotaはCFウサギの耐糖能を改善する)
ΔPSEウサギにSota(15mg/kg/日)を4週間毎日経口処置した。予想どおり、尿中グルコース量はSota処置時に急上昇し、薬剤を回収すると正常値に戻った。薬剤処置2週間後にIVGTT試験を実施した。Sota処置動物は非処置群よりも血糖排泄率が高く(図11)、CFウサギの糖代謝に対するSotaの有益な効果が実証された。
【0094】
(SotaはCFウサギの肝機能パラメータを改善する)
我々は、ΔPSE CFウサギの血液化学を調べたところ、CFウサギは、代謝パラメータ、血清ALP、CPK等に多くの異常を示すことが分かった。SotaがCFウサギの血液化学パラメータに何らかの影響を及ぼすかどうかを評価するため、5匹のCFΔ9ウサギにSotaを10週間処置した。対照群のCFΔ9ウサギ(n=5)には、Sota処置を実施しなかった。驚くべきことに、Sota処置は、K+、ALP、CPK(図12)、トリグリセリド(TG)、グルコース、総コレステロール等の平衡異常/異常パラメータを有意に改善した。対照群の動物では、これらのパラメータは徐々に悪化したが、Sota群では、これらのパラメータは正常範囲に戻った(図12のグレーの枠)。これらの所見は、Sota処置がCFウサギにとって、電解質不均衡、脂質代謝、肝機能等、糖代謝以外にも有益であることを示唆している。
【0095】
(Sota処置によりCFウサギの寿命が延びる)
最も予期せぬ重要な初見は、Sota処置がΔPSE CFウサギの寿命を延ばしたことである。Sota処置したΔPSEウサギ(n=6)は、処置しなかったウサギ(n=11)よりも有意に長生きした(図14)。この結果は、SGLT阻害剤がCF個体に全身的な利益をもたらすことを示している。
【0096】
(SotaはCFウサギ肝臓のERストレス応答および炎症マーカーを緩和する)
Sota処置したΔPSE CFウサギの生活機能パラメータが改善したことから、肝臓のSGLT1を調べた。他の組織での所見と一致し、SGLT1はCFウサギの肝臓で上方制御されたが、Sota処置した肝臓では上昇しなかった(図15A)。注目すべきは、Sota処置により、主要なERストレスマーカーであるスプライシング型Xbp1 mRNA(XBP1s)および主要な炎症反応マーカーであるリン酸化NFκB p65タンパク質の量が低下したことである(図15B)。qPCR解析により、Sota処置なしのCFウサギと比較して(図15D)、Sota処置ありのCFウサギにおいて、XBP1s、主要UPR制御因子BiP/GRP78(図15C)、ならびに炎症誘発性サイトカインTNFαおよびIL6をコードするmRNAの量が減少した。また、興味深いことに、IRE1α/XBP1 UPR経路(25)の標的であるERAD関連E3リガーゼHRD1の量が、Sota処置により減少することも見出され(図15B)、CFLDにおけるERADの潜在的な役割が示唆された。
【0097】
(SGLT1は病態下で肝細胞に高発現する)
SGLT1は上皮細胞では発現しているが、肝細胞では発現していないことが知られている。予期せぬことに、SGLT1はWTウサギ肝細胞では発現していないが、CFウサギ肝細胞では高発現しているという実験結果が得られた(図16)。図16に示すように、SGLT1のシグナルは肝細胞マーカーであるアルブミンのシグナルと共局在していた。
【0098】
(SotaはCFウサギ肝臓のNASH様表現型を緩和する)
Sota処置がCFウサギ肝臓のNASH様表現型に何らかの影響を及ぼすかどうかを調べる実験を行った。組織学的分析によると、Sota処置したCFウサギの肝臓は、Sota処置していないCFウサギと比較して、コラージュ(collage)のシリウスレッド染色によって明らかにされる線維化の程度ははるかに少ないが(図17中央段)、PAS染色によって明らかにされるグリコーゲン貯蔵能は増強されていた(図17下段)。
【0099】
小葉炎症、門脈炎症、小葉壊死炎症、マロリー小体、認定病理医による線維化ステージを含むNASH関連パラメータは、Sota処置したCFウサギ肝臓ですべて有意に改善した(表1)。これらのデータは、SotaがCFウサギ肝臓のNASH様表現型を緩和することを示している。
【0100】
【表1】
【0101】
(SotaはCFウサギの肝臓における胆汁酸(BA)プロファイルを正常化する)
胆汁酸の調節異常がCFLDの一因であることが知られている。WTウサギおよびCFウサギ(Sotaの有無にかかわらず)からサンプルを採取し、ミシガン大学メタボロミクスコアで解析する実験を行った。胆汁酸ターゲットメタボロミクス解析の結果、CFウサギの肝臓サンプルでは、一次および二次を含むBA種の80%以上が変化していた(図18)。重要なことは、CFウサギへのSota処置により、肝臓のBAプロファイルが正常化したことである(図18)。
【0102】
(SotaはCFウサギの肝臓および他の臓器におけるERストレス応答を緩和する)
肝臓では、SGLT1がCFウサギの肝臓で上方制御されたが、Sota処置したウサギでは上方制御されなかった(図19A)。注目すべきは、Sota処置により、ERストレスマーカーXBP1sおよび炎症マーカーリン酸化NFκBp65タンパク質の量が低下したことである(図19A)。qPCRおよびIHC分析により、これらの所見が確認された(図19BおよびC)。これらのデータは、CFLD発症におけるERストレスおよび炎症の潜在的な役割を示しており、CFLDに対するSotaの有益な効果の作用機序は、ERストレス応答および肝炎の抑制によるものである。
【0103】
(XBP1sはSLC5A1の転写因子である)
ERストレストランスアクチベーターであるXBP1sは、SGLT1をコードするSLC5A1遺伝子の転写因子であるという仮説を立てた。これを検証するために、dF(CFBE-dF)またはWT CFTR(CFBE-WT)を所有する気管支上皮細胞を使用して実験を行った。XBP1sの過剰発現は、WTおよびdF細胞の両方において、SLC5A1の転写量およびSGLT1のタンパク質の量の上方制御をもたらしたことが示された(図20AおよびB)。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイにより、XBP1sがSLC5A1遺伝子プロモーターに結合することが示された(図20C)。さらに、推定結合モチーフが-590bpの位置にあることを突き止めた(図20D)。このモチーフを変異させると、ルシフェラーゼアッセイで示されるように、XBP1sの結合が消失した(図20E)。
【0104】
(SotaはインビトロNASHモデルにおいてERストレスによる脂肪症を抑制する)
ERストレストランスデューサーであるXBP1sがSGLT1の転写因子であること、Sota阻害がCFウサギ肝臓におけるERストレスを減衰させるという観察結果から、CFに限らず病的な条件下では、肝細胞においてSGLT1が活性化され、グルコースの高吸収、細胞内グルコース量の上昇に続き、ERストレスの活性化および炎症反応につながるという仮説を立てた。そのため、SGLT1の阻害は、ERストレスの減衰メカニズムを通じて、種々の肝疾患に効果をもたらす可能性がある。
【0105】
これを検証するため、ヒト肝細胞株Huh7を使用して、パルミチン酸(PA)誘導NASHモデルを確立する実験を行った。飽和脂肪酸であるPAは、ERストレスに関連したハプチック脂肪症(haptic steatosis)を誘発することが知られている(26)。Sota(5μg/ml)を添加した培地および添加しなかった培地において、Huh7細胞を10ug/mlのPAで36時間処理した。オイルレッド染色を使用して、脂肪症の程度を評価した。その結果、シリウスレッド染色で示されるように、Sota処理によって脂肪症の程度が有意に減少することが示された(図21)。
【0106】
(SGLT1阻害が炎症性肝疾患を改善する作用機序の仮説)
ERストレスは多くの肝疾患の主要な原因である。ERストレス/炎症→SGLT1の上方制御→ERストレス/炎症の悪化という悪循環が一般的な肝疾患で形成され、このサイクルを薬理学的に破壊することが肝疾患の治療戦略であるという仮説を立てた(図22)。
【0107】
[均等物]
本発明は、その思想または本質的特性から逸脱することなく、他の特定の形態で実施されてもよい。したがって、上述の実施形態は、本明細書に記載された本発明を限定するのではなく、すべての点で例示的であると見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は上述の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の均等性の意味および範囲内に入るすべての変更はその中に包含されることが意図される。
【0108】
[参照による援用]
本明細書で参照される特許文献および科学論文のそれぞれの開示内容全体が、あらゆる目的のために参照により援用される。本出願の全体を通して符号で示される以下の文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0109】
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【図面の簡単な説明】
【0110】
図1】CFウサギの選択された典型的なCF表現型を示す図である。
図2】CFウサギは肝胆道系病変および胆汁分泌異常を示す図である。
図3】CFウサギは微小胆嚢および肝障害を示す図である。
図4】CFウサギはNASH表現型を示す図である。
図5】CFウサギは、脂質プロファイルの上昇および肝代謝調節因子の上方制御を示した図である。
図6】CFウサギは耐糖能異常およびグリコーゲン貯蔵の減少を示す図である。
図7】CFウサギ肝臓では、JNKとNFκBを介した炎症反応が活性化されていることを示す図である。
図8】CFウサギ肝臓ではERストレスシグナルが活性化されていることを示す図である。
図9】CFウサギにおけるSGLT1を示す図である。
図10】ヒトCF細胞におけるSGLT1を示す図である。
図11】Sota処置前後のCFウサギのIVGTT分析を示す図である。
図12】CFウサギの選択された血液化学検査結果を示す図である。
図13】SotaはCFウサギの食欲および体重増加を促進することを示す図である。
図14】SotaはCFウサギの寿命を延ばすことを示す図である。
図15】Sotaは、CFウサギ肝臓において、SGLT1ならびに主要なERストレスおよび炎症メディエーターを減少させたことを示す図である。
図16】SGLT1はCFウサギ肝臓のアルブミン陽性細胞に発現していることを示す図である。
図17】ウサギ肝臓のHE、シリウスレッド、PAS染色を示す図である。
図18】Sota処置ありまたは処置なしのWTウサギおよびCFウサギ由来の肝臓サンプルにおけるBA種を示す図である。
図19】SotaはCFウサギ肝臓において、SGLT1ならびに主要なERストレスおよび炎症メディエーターを減少させたことを示す図である。
図20】XBP1sはSLC5A1の転写因子であることを示す図である。
図21】Sota(5μg/ml)はHuh7細胞においてPA(10μg/mL)誘発性脂肪症を減衰させたことを示す図である。
図22】SGLT1阻害が炎症性肝疾患を改善する作用機序の仮説を示す図である。
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【配列表】
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【国際調査報告】