(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】船舶用の分割係留システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B63B 21/00 20060101AFI20240221BHJP
B63B 27/34 20060101ALI20240221BHJP
B63B 59/02 20060101ALI20240221BHJP
B63B 35/38 20060101ALI20240221BHJP
B63B 21/22 20060101ALI20240221BHJP
B63B 21/27 20060101ALI20240221BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20240221BHJP
B63B 1/14 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
B63B21/00 B
B63B27/34
B63B59/02 Z
B63B35/38 B
B63B21/22 A
B63B21/27
B63B35/44 B
B63B1/14
B63B35/44 C
B63B35/44 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553598
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 US2022018471
(87)【国際公開番号】W WO2022187328
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523304962
【氏名又は名称】エクスマー オフショア カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ダシルヴァ, オットー
(72)【発明者】
【氏名】ティアン, ジーガン
(72)【発明者】
【氏名】ラダノヴィック, ブランカ
(57)【要約】
分割係留システムは、水域にある少なくとも2つの船舶と、複数の係留索とを有していてもよい。上記複数の係留索は、上記少なくとも2つの船舶に取り付けられ、かつ上記水域における上記少なくとも2つの船舶同士の相対的な位置を固定及び保持するよう構成されていてもよい。上記少なくとも2つの船舶のうちの第1の船舶は、上記少なくとも2つの船舶のうちの第2の船舶と隣接していてもよい。上記複数の係留索は、上記第1の船舶及び上記第2の船舶の舷側に取り付けられていてもよい。係留索が取り付けられた上記第1の船舶及び上記第2の船舶の上記舷側は、上記水域の開水域に面していてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域にある少なくとも2つの船舶、及び
上記少なくとも2つの船舶に取り付けられており、かつ上記水域における上記少なくとも2つの船舶同士の相対的な位置を固定及び保持するよう構成された複数の係留索
を有する分割係留システムであって、
上記少なくとも2つの船舶のうちの第1の船舶は、上記少なくとも2つの船舶のうちの第2の船舶と隣接しており、
上記複数の係留索は、上記第1の船舶及び上記第2の船舶の舷側に取り付けられており、
係留索が取り付けられた上記第1の船舶及び上記第2の船舶の上記舷側は、上記水域の開水域に面している、
分割係留システム。
【請求項2】
上記第1の船舶は生産船であり、上記第2の船舶は貯蔵船又は浮体式貯蔵設備である、請求項1に記載の分割係留システム。
【請求項3】
上記第1の船舶に取り付けられた第1端と、上記第2の船舶に取り付けられた第2端とを有する1本以上のスプリングラインを更に有し、上記1本以上のスプリングラインは、上記第1及び第2の船舶同士の相対位置を保持するよう構成されている、請求項1に記載の分割係留システム。
【請求項4】
上記第1の船舶及び/又は上記第2の船舶に取り付けられた防舷材を更に有し、上記防舷材は、上記第1の船舶の本体と上記第2の船舶の本体とが衝突するのを防止するよう構成されている、請求項1に記載の分割係留システム。
【請求項5】
上記複数の係留索の各係留索は、少なくとも1本のチェーンラインとポリエステルラインとを含む、請求項1に記載の分割係留システム。
【請求項6】
上記係留索の一端は対応する船舶に接続されており、上記係留索の遠位端は錨に接続されている、請求項5に記載の分割係留システム。
【請求項7】
上記錨は、上記水域の海底に設置されたサクションパイルアンカー、又は上記水域の水面にあるブイである、請求項6に記載の分割係留システム。
【請求項8】
上記第1の船舶と上記第2の船舶とは互いに30メートル未満離れている、請求項1に記載の分割係留システム。
【請求項9】
上記第1の船舶と上記第2の船舶との間に取り付けられた移送ホースを更に有し、上記移送ホースは、低温材料を移送するよう構成されている、請求項8に記載の分割係留システム。
【請求項10】
水域にある少なくとも2つの船舶を分割係留する方法であって、
上記少なくとも2つの船舶のうちの第1の船舶を、上記少なくとも2つの船舶のうちの第2の船舶と隣接させる工程、
上記第1の船舶及び上記第2の船舶の舷側であって、上記水域の開水域に面している舷側に係留索を取り付ける工程、
上記係留索によって、上記水域における上記第1の船舶及び上記第2の船舶の位置を固定する工程、及び
上記係留索によって、上記第1の船舶及び上記第2の船舶の固定された位置を保持する工程
を有する方法。
【請求項11】
上記第1の船舶に1本以上のスプリングラインの第1端を取り付ける工程、
上記第2の船舶に上記1本以上のスプリングラインの第2端を取り付ける工程、及び
上記1本以上のスプリングラインによって、上記第1及び第2の船舶同士の相対位置を保持する工程
を更に有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記第1の船舶及び/又は上記第2の船舶に防舷材を設置する工程、及び
上記防舷材を介して、上記第1の船舶の本体と上記第2の船舶の本体とが衝突するのを防止する工程
を更に有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
上記第1の船舶及び上記第2の船舶の位置を固定する工程は、各係留索の遠位端を錨に取り付ける工程を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
上記水域の海底に上記錨を下ろす工程を更に有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記第1の船舶と上記第2の船舶とを互いに30メートル未満離れた距離で保持する工程を更に有する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
移送ホースを介して上記第1の船舶と上記第2の船舶との間で低温材料を移送する工程を更に有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
水域にある浮体式貯蔵設備から離れた距離で配置されている生産船、
上記生産船及び上記浮体式貯蔵設備に取り付けられた複数の係留索であって、上記水域における上記生産船と上記浮体式貯蔵設備との相対的な位置を固定及び保持するよう構成された複数の係留索、及び
上記生産船の第1の隣接舷側及び上記浮体式貯蔵設備の第2の隣接舷側に取り付けられた移送ホースであって、上記生産船から上記浮体式貯蔵設備へ低温材料を移送するよう構成された移送ホース
を有するシステムであって、
上記第1の隣接舷側と上記第2の隣接舷側とは対向しており、
上記複数の係留索は、上記生産船の第1の反対舷側及び上記浮体式貯蔵設備の第2の反対舷側に取り付けられており、
上記第1の反対舷側は上記第1の隣接舷側と反対側にあり、上記第2の反対舷側は上記第2の隣接舷側と反対側にある、
システム。
【請求項18】
上記生産船の上記第1の隣接舷側に取り付けられた第1端と、上記浮体式貯蔵設備の上記第2の隣接舷側に取り付けられた第2端とを有する1本以上のスプリングラインを更に有し、上記1本以上のスプリングラインは、上記生産船と上記浮体式貯蔵設備との相対位置を保持するよう構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
上記生産船の上記第1の隣接舷側及び/又は上記浮体式貯蔵設備の上記第2の隣接舷側に取り付けられた防舷材を更に有し、上記防舷材は、上記生産船と上記浮体式貯蔵設備とが衝突するのを防止するよう構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
上記生産船と上記浮体式貯蔵設備とは5~25メートルの距離で離れている、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中で開示した実施形態は、概して係留システムに関する。より具体的には、本明細書中で開示した実施形態は、オフショア操業において船舶に取り付けて他の船舶の近くに保持するための分割係留システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油田操業では、プラットフォーム補給船(PSV)、オフショアバージ、アンカーハンドリング船、建設支援船(CSV)、掘削船、坑井介入船、砕氷船、クレーン船、ケーブル敷設船、地震探査船、及び消防船等のオフショア船が、例えば、以下に限定されないが、炭化水素の探査、炭化水素の掘削及び生産、炭化水素の保持及び輸送、安全プラットフォーム、並びに重量物吊り上げクレーン等の様々な作業で一般的に使用されている。操業前、操業中及び操業後、追加の支援及び/又は追加の設備の使用が、船舶を安定化させるための操作の成功に有益となり得る。歴史的に、オフショア船では係留システムを用いて水域における位置を保持することができる。従来の係留システムでは、係留索でオフショア船を所定の位置に錨止めしている。従来の係留システムとしては、カテナリー係留システム、トートレグ(taut leg)係留システム、テンションレグ係留システム、シングルポイント(ブイ、タワー、又はタレット)係留システム、又はスプレッド係留システム等の様々な構成が挙げられるが、これらに限定されない。
【0003】
更に、油田操業では、オフショア船が水域にとどまりつつ製品を瀬取りすることもある。炭化水素生産用の浮体式設備や他の処理施設を用いれば、生産スケジュールを早めることができる。だが、処理施設には、積み出される輸送荷物に必要な貯蔵場所がないことがあるため、他の運搬業者が積荷を適切な荷物サイズで受け取ることができる貯蔵船や浮体式貯蔵設備(「FSU」)を用いる必要がある。従来の方法はその目的を果たしたが、2つのオフショア船同士が近接する際にどのようにしてこれらの距離を安全に保つかという問題が生じる。従来の係留システムを用いた場合、2つのオフショア船間の距離を大きくする必要がある。例えば、以下に限定されないが、液化天然ガス(「LNG」)等の低温材料を移送する場合、移送ホースの長さが30メートル未満に制限されることがあるため、2つの船舶による従来の係留システムは困難であり、時間がかかり、資源を浪費することから、実現不可能な場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本概要は、以下の詳細な説明において更に記載する概念の一部を紹介するために提供される。本概要は、請求される主題の主要な又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、請求される主題の範囲を限定しやすくするために用いられることを意図したものでもない。
【0005】
一態様において、本明細書中で開示した実施形態は分割係留システムに関する。上記分割係留システムは、水域にある少なくとも2つの船舶と、複数の係留索とを有していてもよい。上記複数の係留索は、上記少なくとも2つの船舶に取り付けられ、かつ上記水域における上記少なくとも2つの船舶同士の相対的な位置を固定及び保持するよう構成されていてもよい。上記少なくとも2つの船舶のうちの第1の船舶は、上記少なくとも2つの船舶のうちの第2の船舶と隣接していてもよい。上記複数の係留索は、上記第1の船舶及び上記第2の船舶の舷側に取り付けられていてもよい。係留索が取り付けられた上記第1の船舶及び上記第2の船舶の上記舷側は、上記水域の開水域に面していてもよい。
【0006】
他の一態様において、本明細書中で開示した実施形態は方法に関する。上記方法は、上記少なくとも2つの船舶のうちの第1の船舶を、上記少なくとも2つの船舶のうちの第2の船舶と隣接させる工程、上記第1の船舶及び上記第2の船舶の舷側であって、上記水域の開水域に面している舷側に係留索を取り付ける工程、上記係留索によって、上記水域における上記第1の船舶及び上記第2の船舶の位置を固定する工程、及び上記係留索によって、上記第1の船舶及び上記第2の船舶の固定された位置を保持する工程を有していてもよい。
【0007】
更に他の一態様において、本明細書中で開示した実施形態は、水域にある浮体式貯蔵設備から離れた距離で配置されている生産船を有していてもよいシステムに関する。また、上記システムは、上記生産船及び上記浮体式貯蔵設備に取り付けられた複数の係留索であって、上記水域における上記生産船と上記浮体式貯蔵設備との相対的な位置を固定及び保持するよう構成されていてもよい複数の係留索を有していてもよい。上記システムは、上記生産船の第1の隣接舷側及び上記浮体式貯蔵設備の第2の隣接舷側に取り付けられた移送ホースであって、上記生産船から上記浮体式貯蔵設備へ低温材料を移送するよう構成されていてもよい移送ホースを更に有していてもよい。上記第1の隣接舷側と上記第2の隣接舷側とは対向していてもよい。上記複数の係留索は、上記生産船の第1の反対舷側及び上記浮体式貯蔵設備の第2の反対舷側に取り付けられていてもよい。上記第1の反対舷側は上記第1の隣接舷側と反対側にあってもよく、上記第2の反対舷側は上記第2の隣接舷側と反対側にある。
【0008】
本開示の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付した特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一つ以上の実施形態に係るオフショア船用の分割係留システムのフローチャートを示す。
【
図2A】本開示の一つ以上の実施形態に係るオフショア船と使用するための分割係留システムの例を示す。
【
図2B】本開示の一つ以上の実施形態に係るオフショア船と使用するための分割係留システムの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本開示の具体的な実施形態を詳細に説明する。一貫性を保つため、各図面において同様の要素は同様の参照番号で表示している場合がある。更に、本開示の実施形態の以下の詳細な説明では、本発明をより十分に理解できるように多くの具体的な詳細を記載している。しかしながら、これらの具体的な詳細がなくても、本明細書中で開示した実施形態を実施できることが当業者には明らかであろう。他の例示では、説明が不必要に複雑化しないように、よく知られている特徴は詳しく説明していない。
【0011】
更に、当業者であれば、第1の要素が第2の要素に対してその上に配置されていると記載した場合、「配置」とは、該第1の要素を該第2の要素上に直接的に配置することであってもよいし、該第1の要素を該第2の要素上に間接的に配置することであってもよいと理解できるであろう。例えば、第1の要素と第2の要素とを互いに直接接触させるなどして、該第1の要素を該第2の要素上へ直接的に配置してもよいし、第1の要素と第2の要素との間に第3の要素及び/又は追加の要素を配置するなどして、該第1の要素を該第2の要素上へ間接的に配置してもよい。本明細書中、「に取り付け」、「結合」、「に結合」、「接続」、又は「に接続」という語は、直接的又は間接的な接続を構築することを指していてもよく、そのように明示的に言及されていない限り、いずれかに限定されることはない。可能な限り、図面では同様又は同一の参照番号を使用して共通又は同じ要素を特定する。図面は必ずしも縮尺通りではなく、分かりやすくするために、図面のある特徴及びある図の縮尺が誇張されて示される場合がある。
【0012】
一態様において、本明細書中で開示した実施形態は概して分割係留システムに関する。1つ以上の実施形態において、上記分割係留システムは、船舶、特にオフショア船又はオフショア構造物と使用するために設計されていてもよい。また、本明細書中で開示した実施形態は、浮体式船舶に関連してオフショア船を示す用語で記載されているが、オフショア構造物(すなわち、プラットフォーム又はセミサブマーシブル)を示すいかなる用語も、本開示の範囲を限定するとみなされるべきではない。本明細書中で記載した様々な実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、リグ現場の準備、掘削、完成、放棄等といったオフショア石油・ガス操業の様々な段階や、改修リグ、水圧破砕設備、坑井試験設備、石油・ガス生産設備等の他の環境においても使用できることを更に理解されたい。実施形態は単に有用な適用例として記載されるに過ぎず、本明細書中における実施形態の具体的な詳細に限定されない。他の実施形態において、上記分割係留システムは、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の海洋環境で使用するために設計されていてもよい。
【0013】
本明細書中の実施形態に係る分割係留システムは、水域において互いに近接する少なくとも2つの船舶を係留するための複数の係留索を有するシステムである。例えば、以下に限定されないが、上記複数の係留索のうちの第1群を第1の船舶に取り付け、上記複数の係留索のうちの第2群を第2の船舶に取り付ける。加えて、上記第1の船舶と上記第2の船舶との間にスプリングラインを接続して、上記第1及び第2の船舶の相対位置をさらに保持しやすくしてもよい。更に、上記第1及び第2の船舶の本体上に防舷材を設置して、両船舶が衝突するのを防止してもよい。上記第1及び第2の船舶間で複数の係留索を分割することで、両船舶に対して完全な係留システムが必要でなくなるため、HSEリスク、設備損傷の可能性、望ましくないダウンタイムを大幅に低減し、かつ瀬取りを向上させつつ、両船舶を近接した状態に保持できる。米国特許第8,561,563号明細書及び米国特許第9,272,755号明細書(参照によりその全文を本明細書に援用する)等の背景技術に記載の通り、従来の方法では、2つの船舶を横並びで係留するのに大掛かりな係留構成が必要である。このような従来の方法は、時間がかかり得るものであるとともに、HSEリスクを上昇させ得るものであった。従って、本開示を読んだ当業者には明らかである通り、本開示における1つ以上の実施形態を採用すれば、上述のような課題を克服できるとともに、2つの船舶を横並びで係留する従来の方法に対して別の利点も得られる。
【0014】
図1~
図2Bを参照して、本開示では、船舶を横並びで係留するための分割係留システム(「SMS」)100のシステム及び方法を説明する。いくつかの実施形態では、SMS100をオフショア現場(水域)で用いて、互いに近接している2つの船舶の位置を保持する。SMS100では、多様な係留索を用いて船舶を所定の位置で安定化させることで、船舶を横並びとして、製品の瀬取り(すなわち、一方の船舶から他方の船舶への設備の移動、炭化水素又は低温材料の移送、定期補修、設備交換等)を完了させてもよい。当業者であれば、いかにしてSMS100が性能の向上、非生産時間(NPT)の低減、並びに設備の寿命及び保全の向上を達成できるかを理解できるであろう。
【0015】
図1を参照すると、1つ以上の実施形態において、オフショア現場に配備されたSMS100のシステムフローチャートが示される。SMS100は、船舶に結合される複数の係留索101を有する。更に、船舶の大きさ、形状、及び構成(とその用途)に応じて、異なる大きさ、数、及び/又は種類の係留索を使用してもよいことも理解できる。例えば、複数の係留索101の各係留索は、ロープ、ワイヤ、ケーブル、チェーン、又はこれらの組み合わせであってもよい。例えば、以下に限定されないが、複数の係留索101の各係留索は、繊維状材料、サイザル麻、麻、亜麻、綿、鋼線、金属鎖、ポリエチレン(DYNEEMA及びSPECTRA等)、ポリプロピレン、ポリエステル(PET、LCP、VECTRAN等)、ナイロン、アラミド(TWARON(登録商標)、TECHNORA、及びKEVLAR(登録商標)等)、アクリル(DRALON等)、又はこれらの任意の組み合わせから作製されていてもよい。いくつかの実施形態において、複数の係留索101は、第1群の係留索102と第2群の係留索103とに分割されてもよい。第1群の係留索102は、第1の船舶104に取り付けることで、係留索102の第1端を第1の船舶104に結合し、係留索102の第2端を錨止めして、第1の船舶104の位置を保持してもよい。加えて、第2群の係留索103は、第2の船舶105に取り付けることで、係留索103の第1端を第2の船舶105に結合し、係留索103の第2端を錨止めして、第2の船舶104の位置を保持してもよい。更に、第1及び第2の船舶は任意のオフショア構造物であってもよいことも考えられる。例えば、以下に限定されないが、第1の船舶104は、浮体式設備上で処理施設を使用する生産船であってもよく、第2の船舶105は貯蔵船又は浮体式貯蔵設備(「FSU」)であってもよい。
【0016】
SMS100を用いて、第1の船舶104及び第2の船舶105は、複数の係留索101を使用して水域において係留させることで、船舶104、105を互いに近接させてもよい。船舶104、105を互いに近接させることによって、船舶104、105が隣接舷側及び開放舷側を有してもよい。第1の船舶104の隣接舷側は、第2の船舶105の隣接舷側に面していてもよい。船舶104、105の開放舷側は、船舶104、105の隣接舷側と反対側にあってもよい。船舶104、105の開放舷側は、開水域に面する舷側であってもよい。加えて、船舶104、105の隣接舷側は係留索を有さず、複数の係留索101が船舶104、105の開放舷側のみにあってもよい。例えば、以下に限定されないが、第1の船舶104と第2の船舶105とは互いに30メートル未満、例えば2~25メートルまたは5~15メートル等の距離で係留されている。更に、第1の船舶104と第2の船舶105との間に1本以上の移送ホースを相互接続して、第1の船舶104から第2の船舶105へあるいはその逆へ低温材料(液化天然ガス等)の移送を行ってもよいことも考えられる。
【0017】
引き続き
図1を参照すると、1つ以上の実施形態において、1本以上のスプリングライン106を第1の船舶104及び第2の船舶105に接続してもよい。スプリングライン106が、第1の船舶104に取り付けられた第1端及び第2の船舶105に取り付けられた第2端を有することで、第1及び第2の船舶104、105がそれぞれの相対位置を保持してもよい。スプリングライン106は、複数の係留索101と同じ材料から作製されていてもよい。更に、スプリングライン106は、第1の船舶104及び第2の船舶105がそれぞれに対して船首船尾方向へ動くのを制限してもよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1の船舶104及び/又は第2の船舶105には、1つ以上の防舷材107が取り付けられていてもよい。防舷材107を船舶104、105の外面に取り付けることで、第1の船舶104の本体と第2の船舶105の本体とが衝突するのを防止し、それにより船舶104、105が損傷するのを防止してもよい。防舷材107はゴム材料で作製されていてもよい。
【0019】
図1には図示していないが、1つ以上の実施形態において、SMS100内に1つ以上のセンサが含まれていてもよい。例えば、以下に限定されないが、センサとしては、マイクロフォン、超音波、音響航法・測距(SONAR)、電波探知・測距(RADAR)、音響、圧電、加速度計、温度、圧力、重量、又は位置センサ、あるいは船舶104、105及び複数の係留索101の位置又は状態に対する変化を検知するものとして当該分野で知られている任意のセンサ等が挙げられる。例えば、1つ以上のセンサは、船舶104、105及び/又は複数の係留索101のうちいずれかの係留索において、データを収集でき、何らかの損傷/摩耗を検出でき、当該船舶又は係留索の位置又は移動を決定できる位置に配置される。更に、全地球測位システム(「GPS」)機器を用いて、船舶104、105の位置をモニタリングすることもできる。加えて、当業者であれば、いかにしてSMS100とともに自動船位保持システム(すなわち、ボートモーター)を用いて、水域における船舶104、105の位置を保持しやすくできるかを理解できるであろう。更に、既存の制御システム(すなわち、一方又は両方の船舶にあるコンピュータ/制御パネル)から船舶104、105の位置に関する情報にアクセスして実行してもよく、制御システムへのリモートアクセスを可能にするとともにディスプレイを有していてもよいことが考えられる。
【0020】
次に
図2Aを参照すると、1つ以上の実施形態に係る、水域200に配備されたSMS100の透視図が示される。第1の船舶104及び第2の船舶105は、ある浮力で水域200内に浮かんでいる。上述の通り、第1の船舶104及び第2の船舶105は、互いに30メートル未満の距離となるように複数の係留索101で係留されていてもよい。
図2Aで更に示す通り、第1の船舶104で使用される第1群の係留索102は、第2の船舶105とは反対側の舷側(左舷又は右舷)において、第1の船舶104の船首201に係留索101Aを、第1の船舶104の船尾202に係留索101Bを有していてもよい。加えて、第2の船舶105で使用される第2群の係留索103は、第1の船舶104とは反対側の舷側(左舷又は右舷)において、第2の船舶105の船首203に係留索101Cを、第2の船舶105の船尾204に係留索101Dを有していてもよい。更に、係留索101A~Dの一端が船舶104、105に接続されており、係留索101A~Dの遠位端が錨止めされていることも考えられる。例えば、以下に限定されないが、船舶104、105の船体にあるアンカーポイント(クリート又はフェアリード等)に係留索101A~Dを結合させてもよい。更に、係留索101A~Dは係留索の対として図示されているが、これがいかに例示を目的として示されたものに過ぎず、使用できる係留索の数は限定されないことが当業者には理解できるであろう。更に、係留索101A~Dは、船舶104、105の船首及び船尾に取り付けられた状態で図示されているが、係留索101A~Dを船舶104、105に取り付けることができる位置は限定されないことも考えられる。
【0021】
1つ以上の実施形態において、スプリングライン106は、船舶104、105の隣接舷側同士を接続する船首スプリング106A及び船尾スプリング106Bを有していてもよい。スプリングライン106A、106Bは、第1の船舶104から第2の船舶105へ斜め前又は斜め後ろに、当該船舶の相対的な船首船尾方向への動きを制限するような角度で走っていてもよい。例えば、以下に限定されないが、船舶104、105の一方が船尾スプリング106Bに逆らって後進しようとすると、船尾スプリング106Bは当該船舶104、105の船尾202、204を内側へ、当該船舶104、105の船首201、203を外側へ(又は船首スプリング106Aを用いる場合は逆へ)付勢して、船舶104、105の相対的な位置を保持することとなる。更に、スプリングライン106A、106は、船首201、203、船尾202、204、又は船舶104、105の中央、船体中央部又はスプリングクリートにおいて船舶104、105に取り付けてもよいことも考えられる。いくつかの実施形態において、スプリングライン106A、106Bは、複数の係留索101と同じ材料で作製されていてもよい。更に、スプリングライン106A、106Bは、船舶104、105をドックに入れる際に使用されるスプリングラインと同じであってもよい。
【0022】
図2Bでは、1つ以上の実施形態に係る、水域200に配備されたSMS100の正面図を示す。第1の船舶104及び第2の船舶105はある浮力で水域200内に浮かんでいるので、当該船舶104、105の船体は一部が水面下にあってもよい。更に、複数の係留索101は、水域200の水面200Aより下側で当該船舶104、105の船体の一部上のフェアリードに取り付けてもよいことも考えられる。
図2Bで更に図示される通り、複数の係留索101の各係留索は3つの部分を有していてもよい。例えば、以下に限定されないが、各係留索は、船舶104、105に接続された上部205、海底200Bにある錨208(サクションパイルアンカー等)に接続された底部206、及び上部205と底部206との間に相互接続された中間部207を有していてもよい。いくつかの実施形態において、上部205はチェーンラインであり、中間部207はポリエステルラインであり、底部206はチェーンラインである。水域200における船舶104、105の位置を保持するために、複数の係留索101の各係留索は張力がかかった状態である。例えば、以下に限定されないが、水域200における船舶104、105の位置を保持するために、係留索(101)が船舶(104、105)に結合された地点における垂直方向の張力Tv及び水平方向の張力Thは、係留索(101)が錨(208)に結合された地点における垂直方向の張力Tv及び水平方向の張力Thと等しく、かつ反対方向である。当業者であれば、係留索(101)の一端が船舶(104、105)に結合され、係留索(101)の遠位端が錨(208)に結合されていることで、いかにしてSMS100が水域200における船舶(104、105)の位置を20年以上も保持できるかを理解できるであろう。
【0023】
1つ以上の実施形態において、1つ以上の防舷材107は、船舶(104、105)の船体から延在している。加えて、1つ以上の防舷材107は、船舶(104、105)の船体に着脱可能に又は恒久的に固定されていてもよい。更に、1つ以上の防舷材107は、水域200にあるフローティングフェンダーであってもよい。1つ以上の防舷材を用いて、船舶(104、105)の船体に対して停泊するエネルギーを吸収することで、船舶(104、105)の船体が損傷するのを防止してもよい。エネルギーを吸収するために、1つ以上の防舷材107は、ゴム、発泡エラストマー、プラスチック、又はこれらの任意の組み合わせから作製されていてもよい。更に、船舶(104、105)の寸法及び排水量、最大許容スタンドオフ、停泊構造、干満差、及びその他の停泊に特有の条件を含む多くの変数によって決定される用途に最も好適なものに基づいて、1つ以上の防舷材107を選択してもよいことが考えられる。例えば、以下に限定されないが、1つ以上の防舷材107は、円筒形防舷材、アーチ防舷材、セル防舷材、コーン防舷材、空気圧防舷材、潜水艦用ハイドロニューマチック防舷材(「SHPF」)、発泡エラストマー防舷材、D型防舷材、スクエア防舷材、ウイング防舷材、鍵穴防舷材、タグボート用防舷材、ソリッドゴム防舷材、浮体式ゴム防舷材、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。更に、当業者であれば、いかにしてPIANC“Guidelines for the design of fender systems”、日本産業規格(「JIS」)、及び英国規格BS6349-4:2014で規定された規格を満たすように1つ以上の防舷材107を設計できるかを理解できるであろう。
【0024】
更に、本開示の方法は、
図1~
図2B等の分割係留システム及び他のシステムの使用を含んでいてもよい。該方法は実施形態のいずれにも適用され得ることから、異なる実施形態間での番号付けの混同を避けるために、参照番号には言及しない。
【0025】
まず、第1の船舶及び第2の船舶を水域に配置し、船舶を互いに隣接させる。次いで、複数の係留索を用いて、水域における船舶の相対位置を固定及び保持する。例えば、以下に限定されないが、係留索を第1の船舶及び第2の船舶に取り付ける。例えば、係留索は、第1の船舶及び第2の船舶の開水域に面する舷側のみに取り付けてもよい。開水域側にのみ係留索を取り付けることで、第2の船舶の舷側に面する第1の船舶の舷側は係留索を有していなくてもよい。更に、係留索の遠位端を、海底に下ろした対応する錨に取り付ける。係留索が第1及び第2の船舶に取り付けられた一端と、対応する錨に取り付けられた遠位端とを有していれば、第1及び第2の船舶の相対位置が水域において固定及び保持される。また、第1の船舶をまず水域に配置及び係留した後、第2の船舶を第1の船舶と隣接させて、その後、当該位置で係留することも考えられる。当業者であれば、いかにして係留索を第1の船舶と第2の船舶とで分割して、各船舶が完全な係留システムを必要としなくてすむかを理解できるであろう。
【0026】
次いで、1本以上のスプリングラインの第1端を第1の船舶に取り付けてもよく、1本以上のスプリングラインの第2端を第2の船舶に取り付けてもよい。1本以上のスプリングラインにより、第1及び第2の船舶の相対的な位置を保持しやすくなる。更に、1本以上のスプリングラインを第1の船舶から第2の船舶へと角度をつけることで、当該船舶がそれぞれに対して船首船尾方向へ動くのを制限してもよい。更に、第1の船舶及び/又は第2の船舶の船体に1つ以上の防舷材を設置することで、第1及び第2の船舶の船体同士が衝突するのを防止しやすくすることも考えられる。更に、当業者であれば、第1の船舶及び第2の船舶が水域に分割係留される場合、いかにして第1の船舶と第2の船舶とを水域において互いに30メートル未満離れた距離で離して保持できるかを理解できるであろう。第1及び第2の船舶が互いに30メートル未満離れた距離、例えば2~25メートル又は5~15メートル離れた距離である場合、第1の船舶から第2の船舶へ1本以上の移送ホースを接続することで、低温流体等の材料を第1の船舶と第2の船舶との間で移送してもよい。
【0027】
限られた数の実施形態に関して本開示を説明したが、本開示の恩恵を受ける当業者であれば、本明細書に記載されるような本開示の範囲を逸脱することなく他の実施形態を考案し得ることを理解できるであろう。したがって、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】