IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タウ モーターズ,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-509201AC及びDCロータコイルを備えた電気機械内での無線電力伝送
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】AC及びDCロータコイルを備えた電気機械内での無線電力伝送
(51)【国際特許分類】
   H02K 19/36 20060101AFI20240221BHJP
   H02K 19/26 20060101ALI20240221BHJP
   H02P 25/02 20160101ALI20240221BHJP
【FI】
H02K19/36 A
H02K19/26
H02P25/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553609
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022019041
(87)【国際公開番号】W WO2022187715
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/157,563
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520456860
【氏名又は名称】タウ モーターズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ペニントン ウォルター ウェズリー サード
(72)【発明者】
【氏名】スウィント イーサン バジェット
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンソン グレゴリー ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ダ コスタ アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン マイケル パーカー
(72)【発明者】
【氏名】ルビン マシュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】プラインドル マティアス
【テーマコード(参考)】
5H505
5H619
【Fターム(参考)】
5H505DD05
5H505EE30
5H505HA05
5H505HA16
5H505HB01
5H619BB06
5H619BB08
5H619PP02
5H619PP12
5H619PP32
5H619PP33
5H619PP35
5H619PP36
(57)【要約】
ステータは、関連するステータ巻線を備えた複数のステータ極を画定する。ロータは、強磁性材料を備えた関連する歯を備えた複数の固定ロータ極を画定する。固定ロータ極は、実質的にステータによってエネルギーを与えられるように構成された関連するロータ巻線を有する。ロータ巻線のそれぞれが歯に関連付けられている。ロータ巻線のそれぞれは、ステータに流れるAC電流によって誘導されるAC電流を流すように構成された交流(AC)コイル(又は補助コイル)を含む。直流(DC)コイル(又は一次コイル)は、ステータ巻線によって生成される磁界によって励磁可能なロータ磁界を画定し、ロータとステータの間に相対力を生成する。DCコイルは、ACコイルによって少なくとも部分的に電力供給又は制御される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電されてステータ極を画定するように構成されたステータ巻線を含むステータと、
強磁性材料を含む関連する複数の歯を有する固定ロータ極を画定するように通電されるように構成されたロータ巻線を含むロータであって、前記固定ロータ極は前記ステータ極と相互作用して、前記ロータと前記ステータとの間に相対力を生成し、前記ロータ巻線のそれぞれは、前記複数の歯のうちのそれぞれの少なくとも1つの歯と関連付けられ、前記ロータ巻線のそれぞれは、前記ステータに流れるAC電流によって誘導される第1の電流を流すように構成された補助コイルと、前記固定ロータ極のそれぞれを画定する第2の電流を流すように構成された一次コイルとを含む、ロータと、
前記ロータ巻線の第1のロータ巻線の前記補助コイル及び前記一次コイルに電気的に結合され、前記第1のロータ巻線の前記補助コイルに誘導される前記第1の電流を受け取り、前記補助コイルに誘導される前記第1の電流から前記第1のロータ巻線の前記一次コイルに前記第2の電流を生成するように構成される整流器と、
を備えることを特徴とする界磁巻線同期電気機械。
【請求項2】
前記ロータのスタック長は、前記ステータのスタック長と実質的に同様であることを特徴とする請求項1に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項3】
前記ステータ巻線を駆動して、前記ロータ巻線に前記第1の電流を誘導し、
前記ステータ巻線を駆動して、前記ロータの前記固定ロータ極と相互作用する起磁力を提供する磁場を生成し、前記ロータを前記ステータに対して移動させるように構成されたコントローラを更に備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項4】
前記整流器はパッシブ整流器を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項5】
前記パッシブ整流器は、ブリッジ整流器を含むことを特徴とする請求項4に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項6】
前記整流器は、アクティブ整流器を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項7】
前記アクティブ整流器は、1つ又は複数のゲートを備えることを特徴とする請求項6に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項8】
前記整流器は、共振キャパシタを備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項9】
前記共振キャパシタの両端の電圧を調整するように構成されている電圧レギュレータを更に備えることを特徴とする請求項8に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項10】
前記整流器は、前記整流器のDC側に二次インダクタを備えることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項11】
同期座標系内の前記第1のロータ巻線の前記一次コイルのD軸は、ロータシャフトから前記ロータ巻線の前記ロータ極を通って半径方向外側に延びることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項12】
同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記補助コイルのD軸は、前記同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記一次コイルのD軸と実質的に一致することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項13】
同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記補助コイルのD軸は、前記同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記一次コイルのD軸に対して実質的に垂直であることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項14】
前記第1のロータ巻線の前記補助コイルは、前記ロータの胴部(トランク)に最大20%延在することを特徴とする請求項13に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項15】
前記第1のロータ巻線の前記補助コイルは、前記一次コイルのD軸磁路の一部のみをカバーすることを特徴とする請求項13に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項16】
同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記補助コイルのD軸は、前記同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記一次コイルのD軸に対して斜めであることを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項17】
前記ロータ巻線のそれぞれの前記補助コイルは第1の補助コイルであり、前記ロータ巻線のそれぞれは第2の補助コイルを更に含むことを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項18】
前記ロータ巻線の前記第1の補助コイルと前記第2の補助コイルは、同期座標系において異なるD軸配列を有することを特徴とする請求項17に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項19】
前記ロータ巻線のそれぞれの前記第1の補助コイル及び前記第2の補助コイルは、それぞれ、同期座標系内の前記ロータ巻線のそれぞれの一次コイルのD軸とは異なる、前記同期座標系内のD軸を有することを特徴とする請求項17又は18に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項20】
前記ロータ巻線のそれぞれについて、前記一次コイルのD軸は、前記第1の補助コイルのD軸と前記第2の補助コイルのD軸を二等分することを特徴とする請求項19に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項21】
前記ロータ巻線のそれぞれは、更に第3の補助コイルを備えることを特徴とする請求項17~20のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項22】
前記補助コイルと前記一次コイルとの間にスペーサを更に備えることを特徴とする請求項1~21のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項23】
前記ロータに回転的に固定されたプリント回路基板を更に備え、前記プリント回路基板は前記整流器を含むことを特徴とする請求項1~22のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項24】
前記ロータ巻線のそれぞれの前記補助コイル内のAC電圧は、前記ロータ巻線の前記一次コイル内の電圧の5倍、10倍、又は100倍の群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1~23のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項25】
前記ロータ巻線のそれぞれの前記一次コイル内のDC電流は、前記ロータ巻線の前記補助コイル内の電流の5倍、10倍、又は100倍の郡から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1~24のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項26】
複数の整流器を更に備え、前記整流器は前記複数の整流器のうちの第1の整流器であり、
前記複数の整流器の各整流器は、
前記ロータ巻線のそれぞれのロータ巻線に関連付けられ、
前記ロータに回転的に固定されており、
前記ロータ巻線のそれぞれの前記補助コイル及び前記一次コイルに電気的に結合され、
前記ロータ巻線のそれぞれについて、前記補助コイルに誘導される前記第1の電流を受け取り、前記補助コイルに誘導される前記第1の電流から前記一次コイルに前記第2の電流を生成するように構成される
ことを特徴とする請求項1~25のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項27】
前記一次コイルは同期座標系の長(major)D軸上に配置され、
前記補助コイルは前記同期座標系の短(minor)D軸上に配置される
ことを特徴とする請求項1~26のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項28】
前記補助コイルは、前記一次コイルのインピーダンスより少なくとも10倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍低いインピーダンスを有することを特徴とする請求項1~27のいずれか1項に記載の界磁巻線同期電気機械。
【請求項29】
界磁巻線同期電気機械を作動させる方法であって、
前記界磁巻線同期電気機械のロータの複数のロータ巻線の第1のロータ巻線の補助コイルによって、前記界磁巻線同期電気機械のステータに流れるAC電流によって誘導される第1の電流を流し、前記ステータは、通電されてステータ極を画定するように構成されたステータ巻線を含み、前記ロータ巻線は、強磁性材料を含む関連する複数の歯を有する固定ロータ極を画定するように通電されるように構成されており、
整流器によって、前記補助コイルに誘導された前記第1の電流を受け取り、前記整流器は、前記ロータに回転的に固定されており、前記第1のロータ巻線の前記補助コイル及び一次コイルに電気的に結合され、
前記整流器によって、前記補助コイルに誘導された前記第1の電流から第2の電流を生成し、
前記一次コイルによって、前記整流器から前記第2の電流を流し、前記第2の電流は、前記ステータ極と相互作用する前記固定ロータ極のうちの1つの固定ロータ極を画定し、前記ロータと前記ステータとの間に相対力を生成する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
コントローラによって、前記ステータ巻線を駆動して、前記ロータ巻線に前記第1の電流を誘導し、
前記コントローラによって、前記ステータ巻線を駆動して磁場を生成し、前記磁場は、前記ロータの固定ロータ極と相互作用する起磁力を提供して前記ロータを前記ステータに対して移動させる
ことを更に含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記整流器はパッシブ整流器を備えることを特徴とする請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記整流器は、アクティブ整流器を含むことを特徴とする請求項29又は30に記載の方法。
【請求項33】
前記アクティブ整流器の1つ又は複数のゲートを制御して、前記ロータ巻線に誘導される前記第1の電流を整流する
ことを更に含むことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
電圧レギュレータによって、前記整流器の共振キャパシタの両端の電圧を調整する
ことを更に含むことを特徴とする請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記整流器は、前記整流器のDC側に二次インダクタを備える
ことを特徴とする請求項29~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
同期座標系内の前記第1のロータ巻線の前記一次コイルのD軸は、ロータシャフトから前記ロータ巻線の前記ロータ極を通って半径方向外側に延びる
ことを特徴とする請求項29~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記補助コイルのD軸は、前記同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記一次コイルのD軸と実質的に一致する
ことを特徴とする請求項29~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記補助コイルのD軸は、前記同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記一次コイルのD軸に対して実質的に垂直である
ことを特徴とする請求項29~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のロータ巻線の前記補助コイルは、前記ロータの胴部(トランク)に最大20%延在する
ことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1のロータ巻線の前記補助コイルは、前記一次コイルのD軸磁路の一部のみをカバーする
ことを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記補助コイルのD軸は、前記同期座標系における前記第1のロータ巻線の前記一次コイルのD軸に対して斜めである
ことを特徴とする請求項29~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ロータ巻線のそれぞれの前記補助コイルは第1の補助コイルであり、前記ロータ巻線のそれぞれは第2の補助コイルを更に含む
ことを特徴とする請求項29~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ロータ巻線の前記第1の補助コイルと前記第2の補助コイルは、同期座標系において異なるD軸配列を有する
ことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ロータ巻線のそれぞれの前記第1の補助コイル及び前記第2の補助コイルは、それぞれ、同期座標系内の前記ロータ巻線のそれぞれの前記一次コイルのD軸とは異なる、前記同期座標系内のD軸を有する
ことを特徴とする請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記ロータ巻線のそれぞれについて、前記一次コイルのD軸は、前記第1の補助コイルのD軸と前記第2の補助コイルのD軸を二等分する
ことを特徴とする請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
前記ロータ巻線のそれぞれは、更に第3の補助コイルを備える
ことを特徴とする請求項42~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記整流器は、前記ロータに回転的に固定されたプリント回路基板に配設される
ことを特徴とする請求項29~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ロータ巻線のそれぞれの前記補助コイル内のAC電圧は、前記ロータ巻線の前記一次コイル内の電圧の5倍、10倍、又は100倍の群から選択される少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項29~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記ロータ巻線のそれぞれの前記一次コイル内の前記第2の電流は、前記ロータ巻線の前記補助コイル内の電流の5倍、10倍、又は100倍の郡から選択される少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項29~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
複数の整流器を更に備え、前記整流器は前記複数の整流器のうちの第1の整流器であり、
前記複数の整流器の各整流器は、
前記ロータ巻線のそれぞれのロータ巻線に関連付けられ、
前記ロータに回転的に固定されており、
前記ロータ巻線のそれぞれの前記補助コイル及び前記一次コイルに電気的に結合され、
前記ロータ巻線のそれぞれについて、前記補助コイルに誘導される前記第1の電流を受け取り、前記補助コイルに誘導される前記第1の電流から前記一次コイルに前記第2の電流を生成するように構成される
ことを特徴とする請求項29~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記一次コイルは同期座標系の長(major)D軸上に配置され、
前記補助コイルは前記同期座標系の短(minor)D軸上に配置される
ことを特徴とする請求項29~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記補助コイルは、前記一次コイルのインピーダンスより少なくとも10倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍低いインピーダンスを有する
ことを特徴とする請求項29~51のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2021年3月5日に出願された、「AC及びDCロータコイルを備えた電気機械内での無線電力伝送」というタイトルの米国仮特許出願第63/157,563号を参照し、その全文を本明細書に組み込む。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
該当なし。
【0003】
本発明は、電気モータ及び発電機に関する。
【背景技術】
【0004】
電気モータは、一般に、ステータと呼ばれることが多い固定コンポーネントと、ロータと呼ばれることが多い回転コンポーネントを備える。電流は電磁場に変換され、ステータとロータの間に機械的な力又はトルクを及ぼし、仕事を行うために使用される。発電機も同様の原理で動作し、機械的な力が電流に変換される。主に回転力又はトルクの観点から説明するが、ここで説明する原理はリニアモータにも適用できる。リニアモータの場合、幾つかの実装では、ロータが固定コンポーネントとして機能し、ステータが平行移動コンポーネントとして機能する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、交流及び直流ロータコイルを有する電気機械内で電力を無線で伝送することに関する。
【0006】
本開示内で説明される主題の実装は、以下の特徴を備えた界磁巻線同期電気機械である。ステータは、通電されてステータ極を画定するように構成されたステータ巻線を含む。ロータは、強磁性材料を含む関連する歯を有する固定ロータ極を画定するように通電されるように構成されたロータ巻線を含む。前記固定ロータ極は前記ステータ極と相互作用して、前記ロータと前記ステータとの間に相対力を生成し、前記ロータ巻線のそれぞれは、複数の歯のうちのそれぞれの少なくとも1つの歯と関連付けられる。前記ロータ巻線のそれぞれは、前記ステータに流れるAC電流によって誘導されるAC電流を流すように構成された補助コイルと、前記固定ロータ極のそれぞれを画定するDC電流を流すように構成された一次コイルとを含む。この機械は、更に、前記ロータ巻線の第1のロータ巻線の前記補助コイル及び前記一次コイルに電気的に結合された整流器を含む。前記整流器は、前記第1のロータ巻線の前記補助コイルに誘導されるAC電流を受け取り、前記補助コイルに誘導されるAC電流から前記第1のロータ巻線の前記一次コイルにDC電流を生成するように構成される。
【0007】
本開示内で説明される主題の別の実装は、界磁巻線同期電気機械のための方法である。前記方法は、前記界磁巻線同期電気機械のロータの複数のロータ巻線の第1のロータ巻線の補助コイルによって、前記界磁巻線同期電気機械のステータに流れるAC電流によって誘導されるAC電流を流し、前記ステータは、通電されてステータ極を画定するように構成されたステータ巻線を含み、前記ロータ巻線は、強磁性材料を含む関連する複数の歯を有する固定ロータ極を画定するように通電されるように構成されており、
整流器によって、前記補助コイルに誘導された前記AC電流を受け取り、前記整流器は、前記ロータに回転的に固定されており、前記第1のロータ巻線の前記補助コイル及び一次コイルに電気的に結合され、
前記整流器によって、前記補助コイルに誘導された前記AC電流からDC電流を生成し、
前記一次コイルによって、前記整流器から前記DC電流を流し、前記DC電流は、前記ステータ極と相互作用する前記固定ロータ極のうちの1つの固定ロータ極を画定し、前記ロータと前記ステータとの間に相対力を生成する、ことを含む。
【0008】
本開示内で説明される主題の別の実装は、以下の特徴を備えた界磁巻線同期電気機械である。ステータは、関連するステータ巻線を備えた複数のステータ極を画定する。ロータは、強磁性材料を備えた関連する歯を備えた複数の固定ロータ極を画定する。固定ロータ極は、実質的にステータによってエネルギーを与えられるように構成された関連するロータ巻線を有する。ロータ巻線のそれぞれが歯に関連付けられている。ロータ巻線のそれぞれは、ステータに流れるAC電流によって誘導されるAC電流を流すように構成された交流(AC)コイルを含む。直流(DC)コイルは、ステータ巻線によって生成される磁界によって励磁可能なロータ磁界を画定し、ロータとステータの間に相対力を生成する。DCコイルは、ACコイルによって少なくとも部分的に電力供給又は制御される。
【0009】
幾つか実装では、前記ロータのスタック長は、前記ステータのスタック長と実質的に同様である。
【0010】
幾つか実装では、前記界磁巻線同期電気機械は、前記ステータ巻線に通電するように構成されたコントローラを含む。前記コントローラは、前記ステータ巻線に電流を流すことによって前記ステータ巻線に駆動信号を送ることによって、前記ステータ内にステータ磁界を生成するように構成されている。前記ステータ磁界により、前記ACコイル内に電流が誘導される。前記コントローラは、前記DCコイルと相互作用する起磁力を生成して、前記ステータに対して前記ロータを移動させるように構成されている。
【0011】
幾つか実装では、前記ACコイルは、整流器によって前記DCコイルに電気的に接続される。
【0012】
幾つか実装では、前記整流器はパッシブ(passive)整流器を備える。
【0013】
幾つか実装では、前記パッシブ整流器は、ブリッジ整流器を含む。
【0014】
幾つか実装では、前記整流器は、アクティブ(active)整流器を含む。
【0015】
幾つか実装では、前記アクティブ整流器は、1つ又は複数のゲートを備える。
【0016】
幾つか実装では、前記整流器は、共振キャパシタを備える。
【0017】
幾つか実装では、電圧レギュレータは、前記共振キャパシタの両端の電圧を調整するように構成されている。
【0018】
幾つか実装では、前記整流器は、前記整流器のDC側に二次インダクタを備える。
【0019】
幾つか実装では、DCコイルのD軸は、ロータ極の移動平面に対して垂直である。
【0020】
幾つか実装では、ACコイルのD軸は、DCコイルのD軸と実質的に一致する。
【0021】
幾つか実装では、ACコイルのD軸は、DCコイルのD軸に対して実質的に垂直である。
【0022】
幾つか実装では、前記ACコイルは前記ロータの胴部(トランク)に最大20%延在する。
【0023】
幾つか実装では、前記ACコイルは、前記DCコイルのD軸磁路の一部のみをカバーする。
【0024】
幾つか実装では、前記ACコイルは第1のACコイルであり、前記ロータは更に第2のACコイルを含む。
【0025】
幾つか実装では、前記第1のACコイルと前記第2のACコイルは、D軸の配置が異なる。
【0026】
幾つか実装では、前記第1のACコイル及び前記第2のACコイルは、それぞれ、DCコイルのD軸とは異なるD軸を有する。
【0027】
幾つか実装では、スペーサはACコイルとDCコイルの間にある。
【0028】
幾つか実装では、プリント回路基板はロータの端にある。
【0029】
幾つか実装では、前記ACコイル内のAC電圧は、DCコイル内の電圧の5倍、より好ましくは10倍、より好ましくは100倍である。
【0030】
幾つか実装では、DCコイル内のDC電流は、ACコイル内の電流の5倍、より好ましくは10倍、より好ましくは100倍である。
【0031】
本開示内で説明される主題の実装は、以下の特徴を有する方法である。電力信号は、関連するステータからロータによって受信される。制御信号はステータからロータによって受信される。制御信号は、電力信号の振幅よりも小さい振幅を有する。電力信号と制御信号に応じてステータとロータによって起磁力が発生する。
【0032】
幾つか実装では、電力信号を受信することは、ステータからロータACコイルによってAC信号を受信することを含む。
【0033】
幾つか実装では、起磁力を生成することは、受信したAC信号をDC電流に整流することを含む。DC電流は、DCロータコイルを通過し、DC電流がDCコイルを通過することに応答して磁界が生成される。
【0034】
幾つか実装では、制御信号を受信することは、ロータACコイルによってAC信号を受信することを含む。
【0035】
幾つか実装では、前記AC信号は、周波数変調された制御信号を含む。
【0036】
幾つか実装では、前記AC信号は、振幅変調信号を含む。
【0037】
幾つか実装では、前記AC信号は、電流角度変調信号を含む。
【0038】
幾つか実装では、前記AC信号は、歯の通過周波数信号を含む。
【0039】
この開示から、本明細書に記載の主題が以下の利点を与えることは明らかである。ここで説明する概念により、標準的な巻線界磁同期機と比較して、電気機械内のより効率的な電力伝達機構、及び、場合によっては熱能力が可能になる。或いは、又は、これに加えて、本明細書に記載の概念は、巻線界磁同期機内で、半導体デバイスにかかるストレスを軽減し、電流/トルクリップルを減少させ、回路のサイズを制限する。
【0040】
本開示で説明される主題の1つ又は複数の実装の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載される。主題の他の特徴、態様、及び利点は、説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、電気駆動システムの一例の概略図である。
図2A図2Aは、電気巻線用の例示的な電源スイッチの概略図である。
図2B図2Bは、本開示の態様で使用できるインバータ回路トポロジの概略図である。
図2C図2Cは、本開示の態様で使用できるインバータ回路トポロジの概略図である。
図3A図3Aは、ACロータコイル及びDCロータコイルの配置例の回路図である。
図3B-3C】図3B-3Cは、本開示の態様とともに使用できる例示的なアクティブ整流器回路の回路図である。
図4A-4C】図4A-4Cは、例示的なロータ極及び関連する巻線の平面断面図である。
図5A図5Aは、例示的なロータの平面図である。
図5B図5Bは、図5Aの例示的なロータの側断面斜視図である。
図6A図6Aは、例示的なロータの平面図である。
図6B図6Bは、図6Aの例示的なロータの側断面斜視図である。
図7A図7Aは、例示的なロータの平面図である。
図7B図7Bは、図7Aの例示的なロータの側断面斜視図である。
図8A図8Aは、例示的なロータの斜視図である。
図8B図8Bは、図8Aの例示的なロータの平面図である。
図8C図8Cは、図8Aの例示的なロータの平面断面図である。
図8D図8Dは、図8Aの例示的なロータの側断面斜視図である。
図9A図9Aは、例示的なロータの平面断面図である。
図9B図9Bは、図9Aの例示的なロータの側断面斜視図である。
図10A図10Aは、例示的なロータの平面図である。
図10B図10Bは、図10Aの例示的なロータの平面断面図である。
図10C図10Cは、図10Aの例示的なロータの斜視図である。
図10D図10Dは、図10Aの例示的なロータの側断面斜視図である。
図11A図11Aは、例示的なロータの平面図である。
図11B図11Bは、図11Aの例示的なロータの平面断面図である。
図11C図11Cは、DCコイルの端部をすぐ過ぎた部分における、図11Aの例示的なロータの極の平面断面図である。
図11D図11Dは、図11Aの例示的なロータの斜視図である。
図12図12は、2つのACコイルを含む例示的なACロータコイル及びDCロータコイル配置の回路図である。
図13A図13Aは、例示的なロータの斜視図である。
図13B図13Bは、ロータのバックアイアン(back-iron)を示していない、図13Aの例示的なロータの斜視図である。
図13C図13Cは、図13Aの例示的なロータの平面断面図である。
図13D図13Dは、図13Aの例示的なロータの極の平面断面図である。
図14A図14Aは、例示的なロータの平面図である。
図14B図14Bは、図14Aの例示的なロータの平面断面図である。
図14C図14Cは、図14Aの例示的なロータの斜視図である。
図14D図14Dは、図14Aの例示的なロータの極の平面断面図である。
図15図15は、例示的なロータの平面断面図である。
図16図16は、振幅変調及び電流角度変調に応答するAC及びDCコイルの三次元応答プロットを含む。Y軸は電流を示し、X軸は電流フェーザ角度を示し、Z軸は時間を示す。
図17図17は、本開示の態様とともに使用できるコントローラのブロック図である。
図18図18は、本開示の態様とともに使用できる例示的な方法のフローチャートである。
図19図19は、本開示の態様による界磁巻線同期モータを制御する例示的な方法のフローチャートである。
図20図20は、本開示の態様による界磁巻線同期モータを制御するハイブリッド制御方式の例示的な方法のフローチャートである。
図21図21は、例示的なモータの平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
様々な図面における同様の参照番号及び指定は、同様の要素を示す。
【0043】
本開示による実装では、モータのロータ巻線は、ステータ巻線の振動電流(例えば、振動、摂動、変調、及び/又は脈動を伴う電流)によって充電される。充電されると、ロータ巻線にはロータ電流が流れ、この電流がステータ巻線の電流によって生成される磁界と結合し、ロータに起電力を生成する。
【0044】
巻線界磁同期機は、ステータの巻線を励起して可変磁束起磁力源を提供することによってトルクを生成する。従来の巻線型界磁同期機の界磁巻線(つまり、ロータ巻線又はコイル)は、界磁巻線を流れる電流に応じてエアギャップに磁界を生成する。界磁電流は通常、外部電源によって供給され、ブラシやスリップリングなどによってロータに伝達される。励磁された同期機の巻線はステータアセンブリの一部であり、三相(通常、単相又は多相)のステータ巻線とステータ上の磁路が含まれる。巻線電流は、フィールドアセンブリによって確立される磁界との相互作用によってトルクを生成する。従来の巻線界磁同期機の欠点には、ロータ界磁を生成する補助電源が必要であることが含まれる。更に、カーボンブラシを備えた機械式スリップリングには寿命があり、メンテナンスが必要である。更に、巻線フィールド同期機械に関連する動的シールとブラシは液体冷却の選択肢を妨げるため、機械の出力密度が制限される。
【0045】
本開示は、パワーエレクトロニクスと制御戦略を使用し、界磁巻線の起磁力が機械のステータ巻線とロータの巻線上に作成された回路との間の無線電力伝送を通じて生成されるようにする巻線界磁同期機について説明する。このような配置は、ステータ巻線が変圧器の一次巻線として機能し、ロータ巻線が変圧器の二次巻線として機能する、一種の変圧器として考えられ、モデル化することができる。
【0046】
ロータ上に確立される回路は、短絡コイル又は整流コイルの場合があり、後者の回路の電流は、巻線の回路自体内で交流(AC)が直流(DC)に変換されるように半導体デバイスによって整流される。このような整流には、パッシブ(例えば、ダイオード)回路、アクティブ(例えば、ゲート、MOSFET、又はIGBT)回路、又はそれらの組み合わせが含まれてもよい。パッシブ整流回路とアクティブ整流回路の両方が、本開示を通じて説明される。
【0047】
いずれの場合も、より効率的な電力伝達メカニズムを作成し、半導体デバイスへのストレスを軽減し、電流/トルクリップルを減少させ、回路のサイズ(たとえば、回路コンポーネントのボルトアンペア定格)を制限するために、ロータ回路の電力伝達コンポーネントを起磁力コンポーネントから分離するのに有利である。これらのコンポーネントを分離するために、ロータには、電力伝達用の少なくとも1つのAC巻線又はコイルと、起磁力用のDC界磁巻線又はコイルが含まれる場合があり、AC巻線に伝達された電力が整流されてDC界磁巻線又はコイルに電力が供給され、起磁力コンポーネントが生成される。このようなAC巻線又はコイルは、(電力伝送及び/又は通信用の)補助巻線(auxiliary winding)又は副巻線(minor winding)とも呼ばれ、DC巻線又はコイルは、(起磁力コンポーネントを生成するための)一次巻線(primary winding)又は主巻線(major winding)と呼ばれることがある。従って、本開示全体にわたる様々な実施形態において、ACコイル、補助コイル(auxiliary coil)、及び副コイル(minor coil)という用語は交換可能に使用され、DCコイル、一次コイル(primary coil)、及び主コイル(major coil)という用語は交換可能に使用されてもよい。更に、ACコイルは通常又は実質的にAC電流のみを流し、DCコイルは通常又は実質的にDC電流のみを流すことができるが、少なくとも幾つかの場合には、特に断りのない限り、ACコイルは、ある程度のDC電流を流してもよく(例えば、ACコイル内の電流は、ACコンポーネント、DCコンポーネント、又はACコンポーネントとDCコンポーネントの両方を含む可能性がある)、また、DCコイルは、ある程度のAC電流を流してもよく(例えば、DCコイル内の電流は、ACコンポーネント、DCコンポーネント、又はACコンポーネントとDCコンポーネントの両方を含む可能性がある)。幾つかの実施形態では、DCコイル内の電流のDCコンポーネントは、DCコイル内の電流のACコンポーネントよりも大きい。幾つかの実施形態では、ACコイル内の電流のACコンポーネントは、DCコイル内の電流のDCコンポーネントよりも大きい。更に、本明細書で更に説明するように、AC巻線又はコイル(又は補助巻線)は、短軸を有する、又は短軸上にあると呼ばれてもよく、一方、DC巻線又はコイル(又は一次巻線)は、長軸を有する、又は長軸上にあると呼ばれてもよい。
【0048】
この開示は、電力伝送及び起磁力生成のためにロータ極自体に様々な軸を作成することによって、それぞれ電力伝送及び起磁力のためにロータ巻線内のACコンポーネントとDCコンポーネントを分離することについて説明する。これは、ACコイル(受電コイル)とDCコイル(起磁力コイル)を含むロータ巻線によって実現される。特定の実装では、ACコイルとDCコイルの両方の軸は同じであってもよいし(例えば、両方のコイルの中心が互いに揃っている、及び/又は、ロータ極と揃っている)、又は、異なっていてもよい。
【0049】
これらのAC軸とDC軸は、同期座標系のロータ極の一次D軸上にあるDC巻線(又はコイル)と組み合わせて使用するロータの上に置かれている少なくとも1つのAC界磁巻線(又はコイル)を利用して作成できる。両方の巻線は同じ回路の一部であり、ACコイルからの電流が整流されてDCコイルにDC電流が生成されるように動作する。
【0050】
図1は、電気モータ102と、電気モータ102に結合されたモータコントローラ104とを含む電気駆動システム100を示す。モータコントローラ104は、電気モータ102を動作させて負荷110を駆動するように構成されている。負荷110は、ギアセット、車輪、ポンプ、コンプレッサ、又は複数のモータをリンクして並列運転できる別のモータなどの、追加の歯車列であってもよい。
【0051】
電気モータ102は、モータハウジング105に対して回転可能な出力シャフト107を有し、出力シャフト107は、モータコンポーネントの回転及び他の運動に関する基準であると考えられる。使用時、出力シャフト107は、適切な電力及びモータコントローラ104からの信号によって電気的に作動されると、電気モータ102が回転動力を与えることができる負荷110に結合することができる。出力シャフト107は、モータを通って延びることができ、モータの両端が露出しているため、モータの両端で回転力を伝達できる。モータハウジング105は、出力シャフト107の回転軸に関して回転対称であることができるが、任意の外形であってもよく、一般に、モータ動作中のハウジングの回転を防止するためにモータハウジング105を他の構造に固定するための手段を含むことができる。
【0052】
電気モータ102は、ステータなどのアクティブ(active)磁気コンポーネント106と、ロータなどのパッシブ(passive)磁気コンポーネント108とを含む。説明のため、以下では、アクティブ磁気コンポーネントの代表例として「ステータ」を使用し、パッシブ磁気コンポーネントの代表例として「ロータ」を使用する。
【0053】
ロータ108はステータ106に関連付けられており、ロータ108は、例えば、インターナルロータラジアルギャップモータ(internal rotor radial-gap motor)では、ステータ106内に配置されることができ、例えば、アキシャルギャップモータ(axial-gap motor)やリニアモータ(linear motor)では、ステータに平行に配置されることができ、例えば、アウタロータラジアルギャップモータ(outer rotor radial-gap motor)では、ステータの周囲に配置されることができる。以下により詳細に説明するように、適切に制御されたステータ106内の電気的活動は、ロータ108の運動を駆動する。ロータ108は、出力シャフト107に回転的に固定又は結合されており、結果として生じるロータ運動の回転コンポーネントが出力シャフト107に伝達され、これにより、出力シャフト107が回転する。ステータ106はハウジング105に固定されており、これにより、動作中に、ロータ108は、ステータ106の周りを移動する、又はステータ106と平行に移動する。
【0054】
電線のループを通って流れる電流により、実質的に均一な起磁力(magnetomotive force (MMF))が生じ、その結果、巻かれた領域又は囲まれた領域内にモータ極が生じる。一般的なモータでは、このようなループは、必要な電流負荷を運ぶのに十分な直径を持っているが、駆動周波数の表皮深さがループを完全に貫通するのに十分なほど薄い。極の磁場の強度を高めるために、ワイヤを多く巻いたり、ループを重ねたりすることができる。このトポロジは、通常、巻線界極と呼ばれる。このような重なったループのセットはコイルと呼ばれる。この開示の目的上、ステータ又はロータ内で一緒に動作する1つ又は複数のコイルを巻線と呼ぶ。場合によっては、コイルは、ロータ又はステータの複数の歯に重なって取り囲むことができる。このように重なったコイルは、アーマチュア又は分布巻線と呼ばれる。極はこの分布巻線の磁気中心であり、そのため、極は、巻線を流れる駆動電流に応じて、このような分布巻線内の個々のコイルに対して移動することができる。
【0055】
ステータ106は、関連する電気巻線を有する複数のステータ極を画定し、ロータ108は、本開示を通じてさらに詳細に示される例のように、複数のロータ極を含む。ロータ108は、ステータ106とともに、この開示を通じてさらに詳細に説明される例などのように、ステータ極とロータ極との間に公称エアギャップを画定する。ロータ108は、運動方向に沿ってステータ106に対して移動可能である。
【0056】
図2Aは、個々の電気巻線132に対する例示的な電源スイッチ200を示す。電源スイッチ200は、H形のような構成において、電気巻線132を中心として、4つのスイッチング素子202a、202b、202c、及び202dを含むHブリッジ回路を有することができる。スイッチング素子202a、202b、202c、及び202dは、バイポーラ又はFETトランジスタとすることができる。各スイッチング素子202a、202b、202c、及び202dは、それぞれのダイオードD1、D2、D3、及びD4と結合することができる。ダイオードはキャッチダイオードと呼ばれ、ショットキータイプであってよい。ブリッジの上端は電源、例えばバッテリVbatに接続され、下端は接地される。スイッチング素子202a、202b、202c、及び202dのゲートは、それぞれの制御電圧信号を各スイッチング素子202a、202b、202c、及び202dに送信するように動作可能なモータコントローラ104(図1)に結合することができる。制御電圧信号は、直流(DC)電圧信号又は交流(AC)電圧信号とすることができる。
【0057】
スイッチング素子202a、202b、202c、及び202dは、モータコントローラ104(図1)によって個別に制御することができ、独立してオン及びオフにすることができる。場合によっては、スイッチング素子202a及び202dがオンになると、ステータの左側のリードが電源に接続され、右側のリードがグランドに接続される。電流がステータを通って流れ始め、電気巻線132を順方向に通電する。場合によっては、スイッチング素子202b、202cがオンになると、ステータの右側のリードが電源に接続され、左側のリードがグランドに接続される。電流がステータを通って流れ始め、電気巻線132を逆方向、逆方向に通電する。すなわち、スイッチング素子を制御することによって、電気巻線132は2つの方向のいずれかに通電/作動することができる。主に単相Hブリッジ構成を使用するものとして図示及び説明されているが、本開示から逸脱することなく、典型的な6スイッチインバータシステムを多相機械に使用することもできる。
【0058】
モータコントローラ104は、本開示を通じて更に詳細に説明されるように、それぞれの極通電デューティサイクルでスイッチ200を連続的に動作させて、ステータ極とロータ極との間のエアギャップを横切る磁束を生成するように構成することができる。スイッチを制御してステータ極に順次通電し、ロータを引っ張る局所的な引力を生成できる。このような連続的な通電(又は作動)により、ロータ108、出力シャフト107、及び負荷110の回転を引き起こすことができる。
【0059】
図2B~2Cは、電力スイッチングを実施するように構成された例示的なインバータ250、270を示す。インバータ250、270は、本開示を通して説明されるように、例えば、モータコントローラ104、(図17に関して以下に説明される)モータコントローラ1700の一部として、及び/又はステータ又はロータの一部として実装されてもよい。
【0060】
図2Bの例では、インバータ250は三相2レベルインバータである。図示しないステータ巻線A、B、及びC(ノード252a、252b、252cで導電的に結合される)は、スイッチ254によって、正の電圧レール256に切り替え可能に導電的に結合され、また、スイッチ258によって、負の電圧レール260に切り替え可能に導電結合される。ステータ巻線自体は、例えば、Y字構成又はデルタ構成で構成されうる。レール256、260は、キャパシタ262によって導電的に結合される。幾つか実装では、レール256、260は、電圧源ではなく電流源に対応する。
【0061】
スイッチコントローラ264は、スイッチ254、258をアクティブに(能動的に)制御して、ステータ巻線に三相電力を導入し(例えば、ロータを移動させる)、及び/又は、ステータ巻線に適切な電圧/電流を使用して信号をロータに伝える。幾つかの実施形態では、スイッチコントローラ264は、コントローラ104又はモータコントローラ1700に組み込まれてもよい。
【0062】
図2Cは、3レベル中性点クランプ(neutral point clamp (NPC))インバータ270の一例を示し、これは、別段の指示がない限り、インバータ250について説明したように動作する。図示しないステータ巻線A、B、及びC(ノード272a、272b、272cで導電的に結合される)は、一対のスイッチ274によって、正の電圧レール276に切り替え可能に導電的に結合され、また、一対のスイッチ278によって、負の電圧レール280に切り替え可能に導電結合される。一対のダイオード286は、一対のスイッチ274、278のそれぞれのセットの間に導電的に結合される。スイッチ274、278は、スイッチコントローラ284によって制御される。幾つかの実施形態では、スイッチコントローラ284は、コントローラ104又はモータコントローラ1700に組み込まれてもよい。
【0063】
例示的なインバータ270では、ステータ巻線A、B、及びCは、(例えば、星型構成で)中性点Nに導電的に結合され、中性点Nへの導電結合は、直接であってもよいし、1つ又は複数の電気素子を介在させてもよい。中性点Nもまた、ダイオード286の各一対内で導電的に結合される。2つのキャパシタ282は、中性点Nを正及び負の電圧レール276、280に導電的に結合する。インバータ250で述べたように、幾つか実装では、レール276、280は、電圧源ではなく電流源を表す。
【0064】
電気機械の動作は、静止座標系、同期座標系、又は磁気座標系に関連して説明することができる。静止座標系はステータの視点から観察され、ステータは静止しているように見えるが、ロータは回転中心軸の周りを回転しているように見える。同期座標系はロータの視点から観察され、ロータは静止しているように見えるが、ステータは回転しているように見える。これは、ロータと直接機械的に通信しているエンコーダーによって観察される位置と一致する。磁気座標系は、ステータによって形成される磁場の観点から観察される。この観点から見ると、同期分散巻線モータのロータは比較的静止しているように見えるが、トルクリップルが存在する場合はわずかな振動が含まれる可能性がある。更に、ロータの極は磁場の「後」又は「前」に見える場合がある。
【0065】
モータのコンポーネント及び制御は、モータロータ及び/又はステータのD軸406(図4A図4Cに示される例)及びQ軸を参照して議論されることがある。モータの直軸又はD軸406は、エアギャップ418に垂直な極408の中心線として定義されてよく、ステータ極411(図4A~4C参照)又はロータ極408のいずれかに適用されてよい。ロータは、同期座標系で見られるように、各極のD軸406によって特徴付けられてもよい。巻線ロータでは、界磁巻線が単一の大きなスロットに集中しているか、複数の小さなスロットに広がっているかに関係なく、D軸406は、コイル又は界磁巻線の合成磁気中心の中心点である。ステータ極も同様に特徴付けることができる。
【0066】
Q軸は、磁気座標系内でD軸に垂直である(つまり、ロータ極が4つある機械では電気的に90°、又は、幾つか実装では、n個の極を備えた機械の場合360°/n)。幾つか実装では、Q軸は電気的にD軸に対して垂直であり、両方ともロータが回転する平面内にある。一般に、Q軸に沿った力はトルクなどの起電力を生成する。トポロジ的には、ロータ又はステータのQ軸は通常、2つの極の間に直接配置される。Q軸407が図4A~4Cに示されている。Q軸は、電気座標系ではD軸から90°オフセットしているが、図4A~4Cの機械座標系では、Q軸407はD軸から45°オフセットしている(機械サイクルごとに極数/2電気サイクルがあり、図示の機械は4つの極を有するため)。
【0067】
軸は、ロータの歯との関係に関して「長」(major)又は「短」(minor)と表現されることもある。長D軸は、同期座標系におけるステータに対するロータ歯のD軸であり、長Q軸は、このロータ歯のQ軸である。例えば、DC巻線が1つのロータの歯の周りに集中して巻かれたコイルである場合、DC巻線(及びコイル)のD軸は、ロータ極の長D軸と一致してもよく、長Q軸は電気座標系のこのD軸に垂直であってもよい(図4A~Cに示す機械的座標系では45度オフセット)。長軸の主な機能はトルクの生成であるが、他の目的にも使用される場合がある(例えば、ロータのフラックスやバルク電力伝送)。短D軸は、本明細書で説明される様々なACコイルなどの補助コイルに特有のサブ座標系として説明されてもよい。短D軸(すなわち、本明細書で説明されるACコイルのD軸)は、ステータとロータとの間の無線電力伝送、及び/又はステータとロータとの間のデータ通信(双方向又は一方向)に使用されてもよい。短D軸は、長D軸の磁路に対して本質的に「差動」の磁路を提供する。従って、この短軸のチャネル上の鎖交磁束の変動は長D軸には結合せず、むしろ、それらの磁束ループは長D軸の磁束ループよりも小さい経路で閉じる。幾つかの例では、短D軸のループは、その磁路の一部を長D軸と共有することができる。以下の様々な実施形態に関して説明及び図示されるように、補助コイル又はACコイルの短D軸は、関連するロータ極の長D軸と位置合わせされてもよく(例えば、図4A~Cを参照)、長D軸に対して垂直であってもよく(例えば、図8A~Dを参照)、又は長D軸に対して斜めであってもよい(例えば、図10A~Dを参照)。短Q軸は、補助コイル又はACコイルに関連するQ軸である。
【0068】
長軸(例えば、長D軸)は電力伝送及び/又はデータ信号伝達に使用されてもよいが、ステータとロータとの間の電力伝送及び/又はデータ通信にACコイルに関連する短D軸などの短軸を使用することは、幾つかの理由から有益であってもよい。例えば、短D軸を使用すると、長D軸を介した電力伝送と比較して、小さな体積での鎖交磁束の変化を使用する電力伝送により、電力伝送のコア損失を小さくできるかもしれない。更に、短D軸を使用すると、高トルク条件下でもモータの形状の一部の磁気飽和が低くなり、ステータからロータ回路への結合が向上するため、より高い電力伝達限界が得られる可能性がある。更に、短D軸を使用すると、追加のステータ制御信号を必要とせずに、関連するACコイルが(結果的に小さなD軸磁束変動をもたらす)スロット通過効果からのエネルギーを利用することを可能にてもよい。更に、短D軸を使用すると、スロット通過効果によるトルクリップルが低減される可能性がある。つまり、スロット通過効果からのエネルギー伝達は、長D軸上のスロット通過効果によって生成されるトルクリップルに対してバランスをとることができる。更に、短D軸磁路上の電力伝達には実質的にDCコンポーネントがないため、短D軸を使用すると、実質的に純粋なAC MMFが可能になる可能性がある。その結果、短D軸上の電子機器の電流及び電圧要件は、長D軸に必要な電流及び電圧要件よりも低くてもよい。
【0069】
制御信号をD軸とQ軸に変換できるシステムでは、3番目の軸(Z軸)は、QコンポーネントとDコンポーネントが見られる平面に直交するように存在する。Z軸コンポーネントは、D軸又はQ軸に直接マッピングされない信号量(例えば、制御信号及び/又は電力信号)を有するものとして説明されてもよい。幾つか実装では、本明細書で説明される制御信号及び/又は電力信号のZ軸コンポーネントは実質的にゼロである。この開示内では主に、D軸及びQ軸に沿った信号/電力注入を使用してロータを制御/電力供給するものとして説明されているが、本開示から逸脱することなく、Z軸に沿って制御信号及び/又は電力信号を注入することが可能である。例えば、補助コイル(例えば、ACコイル)は、中性電圧が存在する場合、例えばステータとロータとの間にある形態の容量結合がある場合、z軸と通信することができる。
【0070】
電流フェーザ角度417は、ステータの磁気中心に対するロータのD軸406の相対角度である(図4A~4Cに示される例)。正の電流フェーザ角度は、ステータの磁気中心がロータの極よりも運動方向の前方にあることを示す。このような状況により、ステータの磁気中心がロータ極をステータの磁気中心に向かって「引っ張る」ことになる。同様に、負の電流角度は、ステータの磁気中心がロータ極の後ろにあることを示す。このような状況では、ロータ極が反対方向に「引っ張られる」。このような負の電流フェーザ角度417は、制動状況で使用することができる。幾つか実装では、90°を超える電流フェーザ角度417を使用することができる。このような大きなフェーザ電流角417は、隣接する極を運動方向に「押す」ことができる。同様に、90°未満の電流フェーザ角度417を使用して、ブレーキ動作中などに隣接する極を反対方向に「押す」ことができる。静止座標系と同期座標系の間の電流フェーザ角度417の変換は、次の方程式を使用して行うことができる。
θe=(P/2)θm, (1)
但し、θは、同期座標系内の電流フェーザ角度であり、Pは、ステータ極の数であり、θは、静止座標系における電流フェーザ角度である。電流フェーザ角度に関係なく、D軸コンポーネントとQ軸コンポーネントに分解できる。一般に、本明細書に記載のモータ及び発電機では、D軸コンポーネントはロータ極内の磁界を「充電」又は変調するように作用し、一方、Q軸コンポーネントはロータ極に力又はトルクを与えるように作用する。D軸はまた、本開示を通じて詳細に説明されるように、ステータ巻線からロータ巻線へ制御信号を直接、並列送信するために使用することもできる。この開示全体を通して、「電流角度」及び「電流フェーザ角度」という用語が使用される。尚、ステータによって生成された合成信号の合計により、「電流フェーザ角度」に沿った信号が得られ、一方、個々の信号、例えば、D軸のみに沿った信号は、「電流角度」で注入されるものとして説明できる。特定の例として、短軸のd/q軸システムは、D軸の短軸のピークがD軸の長軸の両側に位置するように、追加の周期を持つ正弦波にすることができる。2つの波形の相関がゼロになる可能性があるため、D軸の短軸は長軸のD/Qシステムのヌル軸にマッピングされるか、ヌル軸の部分空間と見なすことができる。このタイプのフィールド分布の実施形態は、以下に更に詳細に説明される、図8A~8Dに示される。ただし、D軸の短軸は共通の正弦波である必要はない。例えば、D軸の短軸は、D軸の長軸の磁界の両側に正/負のピークがあり、広いゼロ応答セクションを持つ「ウェーブレット」である可能性がある。以下に更に詳細に説明される、図13~15は、このパターンを生成する可能性のあるコイルの配置及び接続を示す。
【0071】
各ロータ極に関連する巻線には、強磁性材料の歯に関連するACコイルとDCコイルが含まれる。図3Aは、そのような例示的なACロータコイル302及びDCロータコイル304の配置の回路300である。ACロータコイル302は、ステータによって生成されるAC電流によって誘導されるAC電流/電圧を流すように構成されている。図示されたACロータコイル302は、ACロータコイル302に関連する固有抵抗306及び固有インダクタンス308を含む。DCコイル304は、動作中、ステータ巻線によって生成される磁場によって(すなわち、全体を通じて説明される無線電力伝送を介して)通電可能なロータ界磁巻線を画定する。通電されたロータ界磁巻線は磁界を生成し、この磁界がステータ巻線によって生成される磁界と相互作用して、ロータとステータの間に相対力を生成する。図示のDCコイル304は、任意のワイヤコイルに関連する固有抵抗310及び固有インダクタンス312を含む。
【0072】
DCコイル304は、ACコイル302によって少なくとも部分的に影響を受ける。つまり、ACコイル302内の電流及び電圧は「浮動」することができ、又は、独立変数として機能することができる。一方、DCコイル304内の電流及び電圧はACコイル302の状態に依存する。例えば、図示の実装では、ACロータコイル302は、パッシブ整流器314によってDCロータコイル304に電力を供給する。換言すれば、DCコイル304は整流コイルであり、ACコイル302は非整流コイルである。すなわち、巻線(ACコイル302とDCコイル304の両方を含む)に通電するには、ステータ磁界はACコイル302内に電流を誘導し、その後整流されてDC電流としてDCコイル304に流れる。DCコイル304を通るこのDC電流は、DCコイル304とステータとの間に起磁力を生成し、ステータに対してロータを移動させる。
【0073】
幾つか実装では、動作中、ACコイル302内の電圧は、DCコイル304内の電圧よりも大きい(例えば、5倍、10倍、又は100倍)。幾つか実装では、DCコイル304内の電流は、ACコイル302内の電流より大きい(例えば、5倍、10倍、又は100倍)。これは、部分的には、DCコイル304が、ロータ内で運動を引き起こす起磁力に関して支配的なコイルであるためであり、このような起磁力は、通常、ロータコイル内の大電流によって実現される。
【0074】
図示のように、回路はパッシブ整流器314、より具体的には4つのダイオードを含むブリッジ整流器を含む。ブリッジ整流器を使用するものとして示されているが、本開示から逸脱することなく、ハーフブリッジ整流器又はアクティブ整流器を含む他の整流器を使用することができる。
【0075】
図3B~3Cは、前述のパッシブ整流器364の代わりに使用することができる例示的なアクティブ整流器回路350a及び350bの回路図である。図3Bのアクティブ整流器回路350aは、非対称ブリッジ回路350aとも呼ばれ、2つのダイオード352a、352b及び2つのスイッチ354a、354bを含む。ダイオード352a及びスイッチ354aはそれぞれ、DCコイル304(図3A)の第1のノード356aに結合され、ダイオード352b及びスイッチ354bはそれぞれ、DCコイル304の第2のノード356bに結合される。それぞれのダイオード/スイッチ対間のノード356は、DCコイル304の両端に対応する。ダイオード352a及びスイッチ354bはそれぞれACコイルの第1のノード360aに結合され、ダイオード352b及びスイッチ354aはそれぞれACコイルの第2のノード360bに結合される。すなわち、それぞれ別個のそれぞれのダイオードスイッチ対間のノード360は、ACコイル302(図3A)の2つの端にそれぞれ結合される。幾つか実装では、キャパシタ358は、ダイオード/スイッチ/ロータ巻線アセンブリと並列に配線される。幾つか実装では、キャパシタ358は、所望の共振周波数に合わせてサイズを決めることができる。このようなキャパシタは、ブリッジ整流器364などのパッシブ的整流システムに同様に含めることができる。
【0076】
例えば、p-n接合ダイオード、ガスダイオード、ツェナーダイオード、又はショットキーダイオードなどの、幾つかのタイプのダイオードが図3A~3Bの回路で使用することができる。幾つか実装では、ショットキーダイオードが使用される場合、ショットキーダイオードは炭化ケイ素ダイオードであってもよい。ダイオードの選択は、電圧降下、逆電圧降伏、回復時間などの様々な要因に応じて決まる。所望の動作条件に応じて、異なるダイオードを使用できる。幾つかのタイプのダイオードを列挙したが、本開示から逸脱することなく他のダイオードを使用することもできる。
【0077】
幾つか実装では、各スイッチ354a、354bは、1つ又は複数のトランジスタを含む。例えば、バイポーラ接合トランジスタ、FET(例えば、MOSFET)、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ、及び絶縁ゲートバイポーラ接合トランジスタなど、幾つかのタイプのトランジスタを使用することができる。幾つか実装では、スイッチ354a、354bはリレーを含むことができる。ロータ巻線電流がスイッチ354a、354bを通過するため、スイッチ354a、354bに含まれるトランジスタは、例えば、数アンペア(multiple amps)など、大電流用の定格であってよい。
【0078】
図3Cは、例示的なフルブリッジアクティブ整流回路350bを示す。フルブリッジアクティブ整流回路350bは、ダイオード352a、352bがスイッチ354c、354dに置き換えられることを除いて、非対称ブリッジ回路350aと同様に動作する。幾つか実装では、この置換により、少なくとも各スイッチが対応するダイオードよりも低い実効オン抵抗を有することができるため、非対称ブリッジ回路350aに比べてフルブリッジ回路360における導通損失を低減することができる。スイッチ354c、354dに加えて、フルブリッジ回路は、図3Bを参照して説明したように、スイッチ354a、354b及びキャパシタ358も含む。
【0079】
ロータ上の各アクティブ整流器回路(例えば、各回路350a及び/又は350b)は、対応する制御回路によって駆動されてもよい。すなわち、対応する制御回路は、アクティブ整流器のスイッチング素子を(例えば、それぞれのPWM信号で)駆動して、入力AC電流をアクティブに整流し、DC電流を生成して出力する。例えば、制御回路は、アクティブ整流器の各スイッチング素子(例えば、354a、354b、354c、及び/又は354d)に結合されたロータマイクロプロセッサ又はゲート駆動ユニットを含んでもよい。制御回路は、本明細書で説明するように、ステータから無線で受信したデータ信号に基づいて、又は「自己同期」制御方式に基づいてスイッチング素子を駆動してもよい。例えば、自己同期から受信又は検出されたデータ信号制御情報は、アクティブ整流器の有効化/無効化、閾値の設定、及び/又はスイッチングレートの設定を制御回路に指示してもよい。AC電流をDC電流に整流するために制御回路がスイッチング素子に提供する特定の制御信号(例えば、PWM信号)は、フルブリッジ回路又は非対称ブリッジ回路を使用するアクティブ整流のための既知の技術に従って生成されてもよい。
【0080】
アクティブ整流回路350a及び/又は350bの幾つか実装では、共振キャパシタ358の両端の電圧を調整するように構成された電圧レギュレータ370は、本明細書で説明される整流回路のいずれに含まれてもよい。電圧レギュレータ370は、電圧フィードバック信号を監視し、その信号を指令された電圧値又は基準電圧値と比較し、フィードバック信号と基準電圧値との間の誤差を制御(一般に、低減又は最小化)するように回路を制御する回路であってもよい。或いは、又は、これに加えて、幾つか実装は、整流器のDC側に、ロータDCコイルから磁気的に絶縁された二次インダクタ372を含むことができる。しかしながら、幾つかの実施形態では、電圧レギュレータ370及び二次インダクタ372の一方又は両方がアクティブ整流回路350a及び/又は350bに含まれない。
【0081】
使用される特定の整流器回路、及び整流器回路を組み込む本明細書に記載の特定の電気機械の実施形態に関係なく、(付随する電圧調整器、二次インダクタ、及び/又は制御回路を含む)整流器回路は、特定のモータのロータに回転的に固定されてもよい。換言すれば、本明細書で説明される電気機械の実施形態のそれぞれは、ロータ及びロータシャフトとともにステータに対して回転する、ロータ巻線の1つ又は複数のACコイルをそのロータ巻線のDCコイルと接続する、整流器回路を含んでもよい。例えば、整流器回路は、ロータ又はロータシャフトに固定された(例えば、PCBに埋め込まれたトレースによって相互接続されたPCB上の表面又はスルーマウント回路要素の組み合わせ、又はその他のPCB設計手法によって定義される)プリント回路基板(PCB)上に含まれていてもよい。例えば、幾つかの実施形態では、PCBはロータの軸方向側に取り付けられてもよい(例えば、図5A~5BのPCB550、及び、図6A、7A、10A、及び11Aの同様のPCB(ラベルなし)を参照)。他の実施形態では、整流器回路を組み込んだPCBは、ロータシャフト又はロータの別の部分に固定されるか、又はその中に含まれる。PCB550などのPCBは、図示される1つ又は複数の実施形態には示されていない場合があるが、そのようなPCBは存在し、PCB550と同様の方法でロータとともに回転するようにロータに固定されてもよい。
【0082】
アクティブ又はパッシブ整流回路の制御には、様々な制御方式を使用できる。一部の制御方式は、ステータからロータへの特別な制御信号の送信を必要としない「自己同期型」であり、むしろ、ロータ側の回路は、ロータ巻線に通電してロータの動きを駆動する同じD軸及び/又はQ軸電流によってロータ巻線に誘導される電流に基づいてアクティブ整流回路を制御する。他の制御方式は「信号駆動型」であり、ステータ巻線からロータ巻線へのD軸電流及び/又はQ軸電流に埋め込まれるエンコードされた信号(つまりデータ信号)が含まれ、モーターステータスデータをステータからロータに渡す。一部の制御方式には、自己同期機能と信号駆動機能の両方が含まれている。
【0083】
ステータ側の電流はステータ側の電圧に対応する可能性があるため、電流に埋め込まれた信号を含むスキームは、電圧に埋め込まれた信号を含む等価なスキームに対応してもよい。ステータ側電圧の信号に関して本開示で説明される実装は、ステータ側電流の信号と等価であり、また、ステータ側電流の信号を説明することもでき、またその逆も同様である。
【0084】
これらの方式では、追加のステータとロータの結合要素は必要なく、むしろ、信号は、ロータ巻線の通電と動作にすでに使用されているステータ巻線とロータ巻線を使用して送信される。この技術は、特別な検出器、センサ、又は有線結合を組み込む方式と比較して、コストを削減し、パフォーマンスと柔軟性を向上させるのに役立つ。
【0085】
このような制御方式の例は、2021年3月5日に出願された米国仮特許出願第63/157,560号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
図4A~4Cは、ステータ402及びロータ404(404a、404b、404c)を備えた例示的な電気機械400a、400b、及び400cの平面断面図である。以前は、D軸406はロータの極408と位置合わせされるものとして定義されていた。「モータ極」は、特定の時点でエアギャップ全体に単一極性の磁束を放出するステータ又はロータのトポロジカルセクションとして説明できる。電気モータの極番号や位置を決定する際には、ステータ又はロータのバックアイアンに流れる磁束が考慮される。極は通常、5,000ガウスを超える可能性のある高磁場領域によって特徴付けられる。極は永久磁石又は電磁場から生じうる。ステータ又はロータの極の数は製造中に固定されることが多いが、本明細書で説明する幾つか実装では、ロータ、ステータ、又は両方の極の数は動作中に変更することができる。
【0087】
ステータ402は巻線410を含む。巻線410は、本開示から逸脱することなく、突出、集中ステータ巻線、分散巻線、及び/又は非重なりステータ巻線を含むことができる。単一の極を有する断面として示されているが、ロータ404(404a、404b、404c)はそれぞれ、関連するロータコイル412(412a、412b、412c)を有する複数のロータ極408を画定する。幾つか実装では、ロータ404のスタック長は、ステータ402のスタック長と実質的に(例えば、±5%~10%)同様である。
【0088】
前述したように、ロータ極408は、ロータ極の磁気中心にD軸を有する。D軸406を有するロータ極408に加えて、ACコイル414とDCコイル416は両方ともそれぞれACコイルのD軸とDCコイルのD軸を有する。極のD軸と同様に、ACコイルのD軸とDCコイルのD軸は、それぞれのコイルの合成磁気中心の中心点に位置合わせされる。図4A~4Cでは、ロータ極のD軸、ACコイルのD軸、及びDCコイルのD軸はすべて互いに位置合わせされている(すなわち、図示のD軸406は、ロータ極、ACコイル、及びDCコイルのそれぞれのD軸を表す)。図4Aでは、DCコイル416aがACコイル414aを取り囲んでいる。図4Bでは、ACコイル414bはDCコイル416bを取り囲んでいる。図4Cでは、ACコイル414cはDCコイル416c上に放射状に積層される。同様に、本開示から逸脱することなく、ACコイル414cとDCコイル416cの位置を切り替えることができる。
【0089】
ロータ極408は、ロータ表面上にトポロジ的に且つ電気的に固定される。ステータロータは、極がモータの同期座標系に対してトポロジ的に且つ電磁的に固定又は静的に保持されるロータであり、例えば、ロータ404は固定極ロータである。すなわち、(固有のレベルのトルクリップルを考慮して)ロータ404は常に、ステータによって提供される駆動周波数と実質的に同じ速度で、又は同期して回転する。したがって、本明細書で説明するような固定極ロータを含むモータでは、同期座標系は磁気座標系と同じである。このため、固定極モータは「同期」モータと呼ばれることがよくある。界磁巻線ロータ、表面PMロータ、リラクタンスモータ、内部PMロータはすべて固定極ロータの例である。固定極ロータの設計は、ロータのD軸406領域(ロータ極の中心)における強磁性材料の利用を最大化し、巻線界磁ロータの場合には、有効な磁気中心がD軸406と一致することを保証する。その結果、特定のサイズと出力定格では、固定ポールロータの方がシフトポールロータよりも効率的であると考えられる。ただし、固定極ロータは、動的負荷条件及び動的運転速度下で固定極ロータを一定の電流フェーザ角度に維持することが困難であるため、制御が困難である。例えば、負荷の変化中にモータを加速したり速度を維持したりするには、位置センサからの入力に基づいて電流フェーザ角度417、電流の大きさ、及び/又は駆動周波数をアクティブに調整することが必要となる。本明細書で説明される概念は、ステータ磁界とロータ、例えばロータ404が動作中に相互の同期性を維持するため、主に同期機械に適用できる。
【0090】
対照的に、シフトポールロータのポールは、地形的又は電磁的に固定されておらず、動作中に静止した座標系に対して移動する。つまり、ロータは常に「スリップ」し、ステータによって提供される駆動周波数に遅れるか、同期が取れなくなる。そのため、これらのモータは「非同期」モータと呼ばれることがよくある。シフトポールロータの例には、巻線及びかご形誘導ロータ、電機子巻線ロータ、ブラシモータ、及び他の同様のモータが含まれる。シフト極ロータは動作中に電流フェーザ角度417を自己調整できるが、極がロータ表面全体で均一に移動できるようにするために、D軸強磁性材料とQ軸界磁巻線の間で設計上の譲歩を行う必要がある。その結果、このようなモータの電気抵抗は高くなり、より多くの始動電流が必要となり、所定のサイズと出力定格のシフトポールロータでは磁界強度が低くなる。
【0091】
ロータ404の磁界は、最終的に、ステータ巻線410によって生成される磁界によって付勢されるように構成されている。これは、磁界がロータ磁界に誘導的に電力を伝達し、その電力が捕捉されて付勢源として使用されるためである。ロータ404及びステータ巻線410は、励起されたロータ磁界に応じて相互に移動するように構成されている。ロータ404は、ステータ巻線410を除くステータ402のコンポーネントから実質的にエネルギー的に絶縁されている。更に、ロータ404及びステータ巻線410は、一方向(例えば、ステータからロータへ、又はロータからステータへ)又は双方向(ステータからロータへ、及び、ロータからステータへ)に信号(例えば、データ信号)を通信することができる。更に、ロータ404は、例えばスロット効果によりシステムエネルギーを収集する(harvest)ように構成されてもよい。ステータとロータの電力伝送、ステータとロータの通信、及びシステムエネルギーの収集(harvesting)についてはそれぞれ、本明細書で更に詳細に説明する。
【0092】
電気機械内では、ステータとロータを結合して、動作中の電力伝送、信号伝送、及び/又は界磁変調を可能にすることができる。結合は、直接結合又は間接結合として分類できる。直接結合は、エアギャップ418などの主動作エアギャップに沿ってステータとロータとの間で発生する。間接結合は、主動作エアギャップ418から離れた二次界面に沿って発生する。
【0093】
直接結合は通常、誘導結合として特徴付けられる。例えば、かご形誘導ロータはステータに直接結合されていると見なされる。直接結合は一般的であり、非同期マシンでは容易に制御されるが、同期マシンとの直接結合は、本開示全体にわたって説明される理由により、制御が困難である。例えば、電流の大きさ及び/又は周波数が適切に維持されていることを確認するために、ロータの位置を知る必要があることがよくある。
【0094】
間接結合は二次結合に沿って動作し、半径方向又は軸方向に配置でき、電気接点、別個のエアギャップに沿った誘導結合、容量結合、又は光学結合を介して通信してもよい。二次カップリングは電気機械の効率や全体的な制御性を向上させるために様々な機能に使用できるが、多くの場合、追加のコンポーネントが必要になるため、そのようなシステムを利用する機械の重量、複雑さ、故障頻度、コスト(運用コストと資本コストの両方)が増加する可能性がある。
【0095】
結合は更に、電力結合又は信号結合のいずれかに分類できる。パワーカップリングはステータからロータに電力を伝達し、主動作エアギャップに沿って起磁力を直接駆動するために使用され、それによってトルクが生成される。信号結合は、ステータとロータの間で信号を送信し、ロータ内の電気回路を個別に調整したり、温度や固定座標系に対する位置などのロータの状態を監視したりするために使用できる。信号結合は、モータの定格電力に比べて非常に低い電力レベル(例えば、モーターの定格電力の5%未満)で送信する。
【0096】
本開示を通じて説明されるような、エネルギー的に絶縁されたモータ及び発電機は、主に(標準的な電磁シールド許容範囲内で)直接結合を使用して、間接結合又は二次結合を使用せずに、ステータとロータとの間で電力及び信号を伝送する。本明細書で説明される電気機械は、電力結合と信号結合の両方のために、ロータ404とステータ402との間の直接結合を含む。直接信号結合は、例えばアクティブな整流器の状態を制御するために使用できる。直接電力結合は、例えば、ロータのACコイルに電力を供給して整流し、DC電流としてDCコイルに供給するために使用できる(例えば、直接信号結合によって制御されてもよい)。
【0097】
或いは、又は、これに加えて、直接結合を使用して、例えばACコイル414に電力を伝達することができる。同様に、直接結合を使用して、トルクを生成し、機械の磁束を制御し、及び/又は、ロータの回転速度を制御することができる。直接結合アプリケーションで使用される信号には、ロータ404への信号全体、ベクトル合計コンポーネント(D軸又はQ軸など)、又は、特定のベクトルに重ね合わせることができる特定の制御チャネルのコンポーネント(トルク、動力伝達、データなど)が含まれてもよい。幾つか実装では、直接結合は、ロータからのフィードバックを受信するために、例えばロータの位置を決定するために使用できる。
【0098】
幾つか実装では、ロータ400は、ロータ400内に埋め込まれた永久磁性材料を含む。このような実装では、ロータ400は、例えば各ロータ極の間に実質的にスポーク状の配置で配置された永久磁性材料のチャネルを含むことができるが、本開示から逸脱することなく、永久磁性材料の他の配置を使用することもできる。永久磁性材料は、フェライト、SmFeN、N35、又はN45などの様々な材料を含むことができる。(使用される場合には)より低出力の永久磁性材料が通常使用されるが、本開示から逸脱することなく、より少量のより高出力の磁性材料を使用することができる。永久磁性材料が使用される実装では、永久磁性材料は、各ロータ極408の長手方向の長さ全体にわたって、又は各ロータ極408を部分的に横切って延在することができる。幾つか実装では、永久磁性材料は、複数の層、積層、又はセグメントで構成できる。
【0099】
幾つか実装では、永久磁性材料は、実質的に各ロータ極408の間に正味の磁力を生じさせうる。幾つか実装では、永久磁性材料は、永久磁性材料からの正味の磁力がロータ極408と整列するように配置することができる。一般に、永久磁性材料の配置は、ロータ内の磁性材料の所望の断面磁束密度に依存する。永久磁性材料がロータ巻線内に配置される実装では、周囲のロータ巻線の電荷を調整することによって、永久磁性材料の各セットの磁束を個別に調整及び/又は変調することができる。このような実装は、強力なステータ磁界によって引き起こされる可能性のある減磁からも磁石を保護する。永久磁性材料がロータ巻線によって囲まれていない実装では、ステータ磁界によって引き起こされる磁束の調整が、ロータ404内の複数のセットの永久磁性材料に影響を与える可能性がある。本開示の主題は、永久磁性材料を含むものとして時々説明されるが、永久磁性材料を含まないロータにも依然として適用可能である。
【0100】
ロータ極内に永久磁性材料が使用される幾つか実装では、関連する巻線と極性は、コンストラクティブな整流(constructive rectification)、磁気書き込み(磁束充電)、及び/又は非コンストラクティブな整流(deconstructive rectification)を提供するように配置できる。コンストラクティブな整流に関しては、巻線に通電して永久磁性材料の磁界を増加又は増大させることができる(例えば、材料の極性又はMMFに対してコンストラクティブに)。このようなコンストラクティブな整流は、不要な磁場や高調波に対する磁気シールドを提供したり、ロータ極の残留磁場(B)が動作中の残留値から増加するロータの磁場を増強するために使用できる。言い換えれば、巻線を介したコンストラクティブな整流により、永久磁石材料の磁界が増幅される。磁気書き込みに関しては、巻線を介したコンストラクティブな整流によって永久磁性材料が残留磁場に磁化され、材料の磁化とも呼ばれる。非コンストラクティブな整流に関しては、巻線に通電して永久磁性材料の磁界を減少又は減少させる(例えば、磁界を弱める)ことができる。ロータ巻線に関連する整流器がアクティブ整流器(例えば、図3B~Cに示されるような制御可能なスイッチング素子を含む)である場合、整流器は双方向整流を可能にし、整流器を制御するコントローラ(例えば、コントローラ104又は1700)は、整流器を選択的に制御することができ、スイッチング素子の制御を通じて、必要に応じてコンストラクティブ又は非コンストラクティブな整流を提供する。
【0101】
図5Aは、例示的なロータ500の平面図である。図5Bは、例示的なロータ500の側断面斜視図である。ロータ500は、本明細書で説明する相違点を除いて、ロータ400(400a、400b、及び400c)と実質的に同様である。ロータ500は4つの極508を有する。各極508は、巻線部分510及びキャップ511を含む強磁性材料の中央歯509と関連付けられ、歯509を取り囲むAC巻線若しくはコイル514及びDC巻線若しくはコイル516を有する。より具体的には、DCコイル514及びACコイルは両方とも各歯509の巻線部分510の周りに巻き付けられ、巻線部分510及びキャップ511(端フランジとも呼ばれる)によって画定されるチャネル512を通って延在する。ロータの一端又は両端には、プリント回路基板(PCB)550がある。巻線は、例えば、はんだ付け、クランプ、又はプラグによってPCB550に導電接続される。PCB550は、本開示全体にわたって説明される整流器などの、個別回路コンポーネント及び/又は集積回路コンポーネントを含むことができる。シャフト552は、ロータを通って延び、ロータがステータ又はハウジング内で回転できるように支持する。この実装では、ACコイル516は、DCコイル514と径方向に平行であり、DCコイル514を取り囲んでいる。DCコイル514は、ACコイル516の径方向長さ554よりも長い径方向長さ552を有する。ACコイル516及びDCコイル514は両方とも、ロータ極のD軸と位置合わせされたそれぞれのD軸を有する。すなわち、ロータ極508、ACコイル516、及びDCコイル514のD軸はすべて、半径方向外側に延在し、運動方向に対して垂直である。
【0102】
図6Aは、例示的なロータ600の平面図である。図6Bは、例示的なロータ600の側断面斜視図である。ロータ600は、本明細書で説明する相違点を除いて、例示的なロータ500と実質的に同様である。図6A~6Bにおいて、図5A~6Bの番号に100を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される(例えば、図6Aでは、ロータ極には「608」の番号が付されているが、図5Aでは、ロータ極には「508」の番号が付されている)。ACコイル616及びDCコイル614は、互いに半径方向に積み重ねられる。より具体的には、DCコイル614及びACコイル616は両方とも、各歯609の巻線部分610の周りに巻き付けられ、巻線部分610及びキャップ611によって画定されるチャネル612を通って延びる。DCコイル614はACコイル616よりもシャフト652から半径方向に遠いものとして示されているが、この開示から逸脱することなく2つを逆にしてもよい。実質的に同じサイズとして示されているが、ACコイル616及びDCコイル614は、本開示から逸脱することなく、互いに異なるサイズ(例えば、異なる巻数、巻線面積、又は異なるワイヤ体積)であってもよい。例えば、幾つか実装では、ACコイルの面積、ワイヤ直径、及び/又は巻数616は、DCコイル614よりも大きい。幾つか実装では、DCコイルの面積、ワイヤ直径、及び/又は巻数614は、ACコイル616よりも大きい。
【0103】
図7Aは、例示的なロータ700の平面図である。図7Bは、例示的なロータ700の側断面斜視図である。ロータ700は、本明細書に記載される相違点を除いて、例示的なロータ600と実質的に同様である。図7A~7Bにおいて、図6A~6Bの番号に100を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される。例示的なロータ700は、それぞれの歯709のACコイル716とDCコイル714との間にスペーサ754を含む。それぞれの歯709のACコイル716及びDCコイル714は、歯709の巻線部分710の周りに巻き付けられる。従って、スペーサ754、ACコイル716、及びDCコイル714は、それぞれ、巻線部分710及びキャップ711によって画定されるチャネル712を通って延びる。スペーサは、非磁性材料で構成される。幾つか実装では、スペーサ754は、プラスチック、ガラス繊維、又は他の絶縁材料などの非金属材料で作られている。他の実施形態では、それはフェライトから構成されてもよい。この分離により、ACコイル716とDCコイル714が互いに分離される(例えば、高周波ACシールド)。スペーサ754は、組み立て中及び/又は動作中に巻線を機械的に保持及び/又は編成するために使用することもできる。幾つか実装では、スペーサ754は、巻線の温度を調節するために冷却流体を運ぶことができる冷却チャネルを画定する。
【0104】
図8Aは、例示的なロータ800の斜視図である。図8Bは、例示的なロータ800の平面図である。図8Cは、例示的なロータ800の平面断面図である。図8Dは、例示的なロータ800の側面断面斜視図である。例示的なロータ800は、本明細書に記載される相違点を除いて、例示的なロータ500と実質的に同様である。図8A~8Bにおいて、図5A~5Bの番号に300を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される。
【0105】
ロータ800の各歯809は、特定の歯809の巻線部分の周りに巻き付けられ、巻線部分810とキャップ811によって画定されるチャネル812を通って延びるDCコイル814を含む。各歯809はさらに、キャップ811に沿って延びる第1のチャネル813aと、ロータの幹856内の第2のチャネル813bとを含み、ACコイル816は、チャネル813a~bを通って延在し、チャネル813a~bを介して歯809の周りに巻かれる。従って、ロータ800は、DCコイル814を含み、各DCコイルのD軸は、関連するロータ極808のD軸と位置合わせされる。すなわち、DCコイル814のD軸は、ロータ800の移動方向に対して垂直である。しかしながら、ACコイル816は、それぞれのDCコイル814に対して垂直である。すなわち、ACコイルのD軸は、(標準的な製造公差の範囲内で)それぞれのDCコイルのD軸に対して実質的に垂直であり、ACコイルのD軸をDCのD軸及びロータ極のD軸からオフセットさせると、ロータを回転させる電流フェーザ角度からオフセットされたロータ極にAC信号を送信できるようになる。つまり、この配置では2つの異なるチャネルが存在する。そのため、コイルの物理的角度が異なるため、電力、信号、及びMMF信号が、異なるチャネル間でロータと同時に交換される可能性がある。幾つか実装では、ACコイルは、ロータの胴部(トランク)856内に最大20%延在する。この文脈における「胴部(トランク)」とは、ロータ極の歯がロータから伸びる仮想的な円筒のことである。
【0106】
最大トルクは、その直交角(例えば、電気座標系で90°)又はDCコイルのQ軸上で(理論上)発生するが、スロッティング効果、リラクタンストルク、その他の効果により、このピークトルクモーメントが純粋な直角位相から遠ざかることがよくある。例えば、巻線界磁同期機では、電気座標系の45~90°の間でピークトルクが発生しうる。幾つか実装では、ピークトルクは電気座標系内で60~80°の間で発生する。ピークトルクの正確な電流フェーザ角度は、負荷と飽和に基づいて変化しうる。ACコイルとDCコイルはそれぞれD軸とQ軸を持っているため、充電及び/又は電力伝送は、ACコイルを独自のD軸に接続することによって行われ、これは機械の長D軸とは異なるかもしれない。この開示全体を通して議論されるように、動作電流角度は、信号のQ軸及びD軸ベクトルコンポーネントによって定義される。D軸に信号を注入すると、電流フェーザ角度が目的のトルク負荷(例えば、アンペアあたりの最大トルク、MTPAなど)よりも小さくなり、トルクが奪われる。そのため、Q軸に信号(変調や摂動など)をインジェクトすると、純粋なD軸インジェクションで経験できる条件よりも高いトルク条件下での電力伝達が可能になる。Q軸に沿った電力注入はD軸と直交するため、より滑らかな磁場がD軸上に生成され、トルクリップルが減少する。更に、この配置により、電力伝達磁束がD軸磁束(例えば、トルク生成用のDCコイルからの磁束)から分離され、ACコイルの回路コンポーネントを小さくすることができる(例えば、電圧及び/又は電流定格が低くなる)。幾つか実装では、例えば、D軸とQ軸の両方に電力ACコイルを使用すると、両方の軸で電力を変調して伝送できるため、必要な制御に関係なく一定の電力伝送が可能になる。
【0107】
図9Aは、例示的なロータ900の平面断面図である。図9Bは、例示的なロータ900の側断面斜視図である。ロータ900は、本明細書で説明する相違点を除いて、ロータ800と実質的に同様である。図9A~9Bにおいて、図8A~8Bの番号に100を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される。ロータ900のACコイル916はDCコイル914に対して垂直であるが、ACコイル916はロータ極908を完全に貫通しておらず、代わりに、ACコイル916は、それぞれのDCコイル磁路の一部を通って延びるだけである。すなわち、ロータ900の第2チャネル913bは、ロータ800の第2チャネル813bよりもロータ中心から径方向外側に位置している。
【0108】
この配置により、ACコイルがQ軸磁束に関与できるようになるが、(文字通りDC巻線とD軸に直交する)ロータ800のように電気座標系内で純粋に90°ではない。ACコイル全体を磁極面全体に(そして磁極の表面近くに)広げることで、磁束を磁極面自体全体に分散させて固定することができる。或いは、又は、これに加えて、このような配置は、スロッティングやその他の現象から発生する高次高調波や、電力伝送信号を含む高周波注入から磁極面の鉄の積層をシールドするのに役立つ(つまり、コア損失を低減できる)。
【0109】
図10Aは、例示的なロータ1000の平面図である。図10Bは、例示的なロータ1000の平面断面図である。図10Cは、例示的なロータ1000の斜視図である。図10Dは、例示的なロータ1000の側断面斜視図である。ロータ1000は、本明細書で説明する相違点を除いて、ロータ800と実質的に同様である。図10A~10Dにおいて、図8A~8Dの番号に200を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される。
【0110】
ロータ1000の各歯1009は、特定の歯1009の巻線部分1010の周囲に巻き付けられ、巻線部分1010とキャップ1011によって画定されるチャネル1012を通って延びるDCコイル1014を含む。各歯1009はさらに、キャップ1011に沿って延びる第1のチャネル1013を含み、ACコイル1016は、チャネル1012及びチャネル1013を通って延在し、チャネル1012及び1013を介して歯1009の周りに巻かれる。従って、ロータ1000のACコイル1016は、それぞれのロータ極D軸又はそれぞれのDCコイルD軸のいずれかと整列するACコイルD軸を有さない。代わりに、ACコイル1016は、運動方向に向かって、又は運動方向から離れる方向に角度が付けられている。DCコイル1014に対するACコイル1016の角度は、機械的に0°より大きく90°より小さい。例えば、D軸(又は長軸)上で更に変調又は通信したい場合、この範囲は0~60°、0~45°、10~20°、又は10~20°になる。別の例として、Q軸上でより多くの変調又は通信が必要な場合(例えば、長軸と短軸の分離)、この範囲は30~90°、45~90°、70~90°、又は80~90°になる。更に、幾つかの例では、ACコイルとDCコイルは、90°を超えて、例えば110°、又は90~110°の間で結合することができる。
【0111】
同期座標系からは、他の角度も可能である。例えば、ACコイルのD軸がロータ極のQ軸と一致する場合がある。すなわち、ACコイル1016は、同期座標系においてDCコイル1014から90°にあってもよい。この配置により、ACコイルによって一時的に制限されない磁束経路が提供される。すなわち、この配置は、ACコイルが全ての磁束を遮断する代わりに、ACコイルが磁束をより広い表面に拡散させるように作用する、少なくとも1つの磁束経路を提供する。このような配置では、2つの時間ステップ、つまり、コイルによって囲われていないコーナー(t1)と、コイルの下の領域(t2)と、が提供される。従って、コーナーはすぐに帯電し、時間が経つと帯電はより広い領域に拡散する可能性がある。或いは、又は、これに加えて、この配置により、シリコン回路と充電段階の間の直接結合が除去又は低減される。例えば、コーナーの磁束は0.5テスラから1.5テスラの間で振動する可能性があるが、その後、より長い時間スケールで極領域全体に拡散し、実質的に磁束を平均して実質的に1テスラにする。従って、この構成により、より速く充電でき、ロータが時間の経過とともに磁束を整理できるようになる。この結果、充電はステータ磁界によって個別に制御されるものではなく、制御に依存しない注入となる。
【0112】
図11Aは、例示的なロータ1100の平面図である。図11Bは、例示的なロータ1100の平面断面図である。図11Cは、DCコイルの端部をすぐ過ぎた部分における、例示的なロータ1100の極の平面断面図である。図11Dは、例示的なロータ1100の斜視図である。ロータ1100は、本明細書で説明する相違点を除いて、ロータ500と実質的に同様である。図11A~11Dにおいて、図5A~5Bの番号に600を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される。各ロータ極1108は、強磁性材料の歯1109と関連付けられ、DCコイル1114と第1及び第2のACコイル1116a及び1116bを含む。DCコイル1114は、各歯1109の巻線部分1110の周囲に巻き付けられ、巻線部分1110及びキャップ1111(端フランジとも呼ばれる)によって画定されるチャネル1112を通って延在する。ロータ1100のACコイル1116a~bは、ロータ極1108のキノコ型キャップ1111の軸方向長さに沿って延びるそれぞれの溝又はチャネル1113a及び1113bに沿って延びる。ACコイル1116a及び1116bのD軸は、主コイル(DCコイル1114)のD軸に対して直交するように平行であってもよい。他の例では、ACコイル1116a及び1116bは、ACコイル1116a及び1116bのD軸がDCコイル1114のD軸に対して斜め又は鋭角となるように角度を付けられてもよい(例えば、V字形)。ACコイル1116a~bは、直列に配線されてもよいし(例えば、共有整流回路を用いて)、あるいはPCB550に独立して(直接)接続されてもよい(例えば、それぞれの整流回路を用いて)。幾つかの例では、ACコイル1116a及び1116bを流れる電流は、互いに実質的に同位相であり、一方のACコイルの電流が他方のACコイルの電流を打ち消してしまうのを防止又は制限する。以下に説明する図12は、2つのACコイルを有するロータの例示的な回路図を提供し、ロータ1100の少なくとも幾つかの実施形態のDCコイル及びACコイルの回路を説明する。しかしながら、アクティブに制御される整流器回路など、他の回路をACコイル1116a~b及びDCコイル1114とともに使用することもできる。ACコイル1116a~bは、DCコイル1114と同じ程度までロータの長さを延長しない。例えば、図11Dは、ACコイル1116a~bが、DCコイル1114の長さ(長さDC)よりも短い長さ(長さAC)を有することを示す。代わりに、ACコイルの終端は、キャップからDCコイル1114の端の下のPCB550まで延びている。一方向に集中するACコイル1016を有するロータ1000とは異なり、ロータ1100は方向的に独立している。すなわち、ロータ1000は、極上のACコイル1016の非対称性により、トルク生成及びタイミングに関してトルクを優先する。つまり、ロータ1000は単一方向に回転するのがより理想的であるが、ロータ1100は性能特性に違いなくどちらの方向に回転してもよい。
【0113】
図12は、第1のACコイル1202a及び第2のACコイル1202bを含む例示的なACロータコイル及びDCロータコイル回路1200の回路図である。回路1200は、本明細書で説明する相違点を除いて、回路300と実質的に同様とすることができる。図示の実施形態では、各ACコイル1202a、1202bは、それぞれ別個の整流器1214a及び1214bによってDCコイル1204に結合される。DCコイル1204及びACコイル1202a及び1202bの両方は、全て、同じロータ上のロータ極、典型的には同じロータ極又はロータ歯、又は他の実施形態では、同じロータ上の隣接する又は対称的に対向するロータ極に関連付けられる。各整流器は、単一のDCコイル1204にDC電流を供給する。ACコイル1202a及び1202bは、ステータによって生成されるAC電流によって誘導されるAC電流/電圧を流すように構成されている。図示のACコイル1202a及び1202bは、ワイヤの任意のコイルに関連する固有の抵抗1206及びインダクタンス1208を含む。DCコイル1204は、ステータ巻線によって生成される磁界によって(すなわち、全体を通じて説明される無線電力伝送を介して)通電可能なロータ界磁巻線を画定するように構成されている。通電されたDCコイル1204、又はロータ界磁巻線は、ステータ巻線によって生成される磁場と相互作用する磁場を生成し、ロータとステータとの間に相対力を生成する。図示のDCコイル1204は、任意のワイヤコイルに関連する固有の抵抗1210及びインダクタンス1212を含む。DCコイル1204は、ACコイル1202a及び1202bのそれぞれによって少なくとも部分的に影響を受ける。例えば、図示の実装形態では、ACコイル1202a及び1202bは、それぞれのパッシブ整流器1214a及び1214bによってDCコイル1204に電力を供給する。すなわち、巻線(ACコイル1214a及び1214bとDCコイル1204との両方を含む)に通電するために、ステータ磁界はACコイル1214a及び1214b内に電流を誘導し、その後、整流器1214a及び1214bによって整流され、電流としてDCコイル1204に流れる。これにより、DCコイル1204とステータとの間に起磁力が発生し、ロータをステータに対して移動させる。
【0114】
図示のように、回路はパッシブ整流器1214a及び1214b、より具体的には4つのダイオードを含むブリッジ整流器を含む。ブリッジ整流器を使用するものとして示されているが、本開示から逸脱することなく、ハーフブリッジ(整流器350aを参照)又はアクティブ整流器(整流器350bを参照)を含む他の整流器を使用することができる。同様に、整流器の一方又は両方を、本明細書で説明するアクティブ整流器実装のいずれかと置き換えることができる。主に別個の整流器1214a及び1214bを有するように示されているが、ACコイル1202a及び1202bは、本開示から逸脱することなく単一の整流器によってDCコイル1204に結合することができる。回路1200及びその注目される変形(例えば、他の注目される整流器の1つを含む)は、上述した図11A~11Dのロータ1100の少なくとも幾つかの実施形態、また、図13A~13D及び14A~14Dに示されるロータ1300及び1400の少なくとも幾つかの実施形態に適用可能であるかもしれない。
【0115】
図13Aは、例示的なロータ1300の斜視図である。図13Bは、ロータのバックアイアン(back-iron)を示していない、例示的なロータ1300の斜視図である。図13Cは、例示的なロータ1300の平面断面図である。図13Dは、例示的なロータ1300の極の平面断面図である。ロータ1300は、本明細書で説明する相違点を除いて、ロータ1000と実質的に同様である。図13A~13Dにおいて、図11A~11Dの番号に200を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される。
【0116】
各ロータ極1308は、強磁性材料の歯1309と関連付けられ、DCコイル1314と第1及び第2のACコイル1316a及び1316bを含む。DCコイル1314は、各歯1309の巻線部分1310の周囲に巻き付けられ、巻線部分1310及びキャップ1311(端フランジとも呼ばれる)によって画定されるチャネル1312を通って延在する。第1のACコイル1316a及び第2のACコイル1316bは、各ロータ極1308のキャップ1311内にある。より具体的には、ロータ1300のACコイル1316a~bは、キャップ1311の軸方向長さに沿って延びるそれぞれのチャネル1313a及び1313bに沿って延びる。図示のように、第1のACコイル1316aは第1のACコイルD軸1362aを有し、第2のACコイル1316bは二等分バタフライ配置で配置された第2のAC D軸1362bを有する。第1のAC D軸1362aも第2のAC D軸1362bも、DCコイルのD軸1360と位置合わせされていない。DCコイル軸1360は、ロータ極D軸と(標準的な製造公差及び動作公差内で)実質的に位置合わせされている。第1のAC D軸1362aと第2のAC D軸1362bも同様に互いに位置がずれている。しかしながら、幾つか実装では、第1のAC D軸1362a及び第2のAC D軸1362bは、ロータ極D軸1360から、ロータの運動方向に向かって及び遠ざかる対称的なオフセットを有する。DCコイル1314に対するACコイル1316a、1316bの角度は、機械的に0°より大きく90°より小さい。例えば、D軸(又は長軸)上で更に変調又は通信したい場合、この範囲は0~60°、0~45°、10~20°、又は10~20°になる。別の例として、Q軸上でより多くの変調又は通信が必要な場合(例えば、長軸と短軸の分離)、この範囲は30~90°、45~90°、70~90°、又は80~90°になる。更に、幾つかの例では、ACコイルとDCコイルは、90°を超えて、例えば110°、又は90~110°の間で結合することができる。同期座標系からは、他の角度も可能であり、例えば、ACコイルのD軸1362a、1362bは、ステータ極のQ軸と正又は負の方向に整列してもよい(例えば、ACコイル1316a~bがDCコイル1314に対して垂直に配置される例)。このような構成は、第1のACコイル1316aと第2のACコイル1316bとの間の鎖交磁束の不均衡によって引き起こされる固有のAC摂動を利用する。磁束も磁極面全体に広がる。長軸座標系(例えば、DCコイル1314に対して)における0°(純粋なD軸アライメント)と90°(純粋なQ軸アライメント)との間の介在角又は斜角において、ACコイル1316a及び1316bは、長軸座標系のD軸とQ軸の両方に結合することができる。幾つかの例では、長軸における最大結合角度は、副コイル(ACコイル)のD軸を構成することができる。
【0117】
幾つか実装では、二等分されたバタフライ配置で2つの別個のACコイル1316a、1316bを動作させる代わりに、単一の導体又はワイヤを8の字状に巻いたり、バタフライ状に接続したりして、2つのACコイルを効果的に提供し、最終的には同様の最終効果を得ることができる。この配置により、整流器に接続する必要があるワイヤの数が減る(ひいては、整流器の数も減る)。更に、導体又はワイヤが共有されているため、一方のACコイルの制御はもう一方のACコイルの制御から独立できなくなる可能性がある。(例えば、コイルは1つの連続した導電性要素から形成されているため、コイルの1つだけを介して電流を流すことはできない)。
【0118】
図14Aは、例示的なロータ1400の平面図である。図14Bは、例示的なロータ1400の平面断面図である。図14Cは、例示的なロータ1400の斜視図である。図14Dは、例示的なロータ1400の極の平面断面図である。ロータ1400は、本明細書で説明する相違点を除いて、ロータ1300と実質的に同様である。図14A~14Dにおいて、図13A~13Dの番号に100を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される。
【0119】
各ロータ極1408は、強磁性材料の歯1409と関連付けられ、DCコイル1414と第1及び第2のACコイル1416a及び1416bを含む。DCコイル1414は、各歯1409の巻線部分1410の周りに巻き付けられ、巻線部分1410及びキャップ1411(端フランジとも呼ばれる)によって画定されるチャネル1412を通って延びる。図14A~14Dのバタフライ(二等分又は接続)配置は、ロータ極1408のキノコ型キャップ1411の下に延びる第1のACコイル1416a及び第2のACコイル1416bを含む。より具体的には、ロータ1400のACコイル1416a~bは、キャップ1411の軸方向長さに沿って延びる共有チャネル1413にそれぞれ沿って延びる。キノコ形のキャップ1411の下にあるACコイル1416a、1416bの部分は、DCコイル1414の一部分によって覆われている。このような配置は、ACコイルを保持するのに役立つ。
【0120】
図15は、例示的なロータ1500の平面断面図である。例示的なロータ1500は、本明細書に記載される相違点を除いて、ロータ1300と実質的に同様である。図15において、図14A~14Dの番号に100を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される。
【0121】
各ロータ極1508は、強磁性材料の歯1509と関連付けられ、DCコイル1514と、第1、第2、及び第3のACコイル1516a~cを含む。DCコイル1514及びACコイル1516aは、各歯1509の巻線部分1510の周りに巻き付けられ、巻線部分1510及びキャップ1511(端フランジとも呼ばれる)によって画定されるチャネル1512を通って延びる。DCコイル1514は、第1のACコイル1516aに隣接し、第1のACコイル1516aと平行である。DCコイル1514のD軸は、第1のACコイル1516aのAC D軸とほぼ位置合わせされてもよい。キノコ形のキャップ1518内には、第2のACコイル1516bと第3のACコイル1516cがある。より具体的には、ACコイル1516bは、キャップ1511の軸方向の長さに沿って延びるチャネル1513a及び1513bに沿って延びる。そして、ACコイル1516cは、キャップ1511の軸方向の長さに沿って延びるチャネル1513b及び1513cに沿って延びる。従って、チャネル1513bは、ACコイル1516bとACコイル1516cの両方を案内する共有チャネルである。
【0122】
第2のACコイル1516b及び第3のACコイル1516cは、8の字配置で巻かれた単一の導体又はワイヤによって、又は、ロータ1300のACコイル1516a~cをDCコイル1514と接続する整流器に別々に結合された2つの導体又はワイヤによって、形成することができる。ACコイル1516a~bは、(例えば、共有整流回路と)直列に配線されてもよく、又は、それぞれの整流回路を用いてPCB550に独立して(直接)接続されてもよい。DCコイル1514のD軸は、第2のACコイル1516b及び第3のACコイル1516cのそれぞれのAC D軸に対してほぼ傾斜していてもよい。更に、第2のACコイル1516bのAC D軸と第3のACコイル1516cのAC D軸は異なっていてもよい(すなわち、整列していなくてもよい)。図示された例では、これらのAC D軸は互いに斜めであってもよい。しかし、他の例では、ACコイル1516a及び1516bは、それぞれのD軸が互いに垂直になるようにロータ1500上に配置されてもよい。この3つのACコイル配置により、複数のACコイルを異なる角度で配置することで、より柔軟な制御及び/又は電力伝送スキームが可能になり、より幅広い角度での電力伝送も可能になる。別の整流器回路が3番目のACコイルに提供されることになる(つまり、別個のACコイルごとに1つの整流器)以外は、図12に示すのと同様を使用することもできる。第3の整流回路は、2つの整流回路1214aと1214bの間に(ダイオード間のそれぞれの中点ノードを介して)結合され、また(上部及び下部電圧レールを介して)第3のACコイルにも結合されてよい。
【0123】
本開示は幾つか実装を説明したが、本開示の主題は、ACコイル及びDCコイルを備えた任意の界磁巻線同期ロータに適用することができる。ステータ及びロータのトポロジ及び駆動機構に関する更なる例及び詳細は、米国特許出願第17/151,978号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
モータの動作及び制御に関する以下の説明は、本明細書に記載される電気機械の実施形態のそれぞれに適用可能であり、実施される可能性がある。動作中、電力伝達のための特定の摂動(例えば、信号、電界及び/又は磁束の変化、磁束の磁界の変化など)を伴う磁界指向制御又はベクトル制御を使用して、ロータ磁界の様々な側面を制御することができる。これらの摂動により、ACコイルと結合するAC励起が生成される。従って、ロータ電流、つまりDCコイルに整流できるAC巻線に誘導される電流の直接の相関関係が、ステータとインバータから効果的に誘導される。言い換えれば、高周波信号は、システムのACコンポーネントに加えて、D軸及びQ軸フィールド(コントローラによって制御される)の電流の関数である機械の動的な動作を生み出すことができる。このような周波数は、その周波数が所定の回路のステータからACコイルに電力を伝達する範囲内になるように選択されてもよい。周波数は、ロータの回転速度及び/又はコントローラのスイッチング速度によって調整することもできる。幾つか実装では、これは100~300Hz、他の場合は300~1000、他の場合は1~5kHz、5khz~10kHz、10kHz以上である。幾つか実装では、キャパシタを使用すると、より高い周波数で共振回路が有効になる可能性がある。或いは、又は、これに加えて、インピーダンス整合を非共振回路で使用することができる。周波数は、機械の速度(ロータの毎分回転数(RPM)など)に依存する。幾つか実装では、場合によっては、トルクリップルを引き起こすトルク発生との相互作用を防ぐために、基本周波数より少なくとも5~10倍高い周波数の固定摂動(信号)を選択できる(例えば、回転を維持するために必要な周波数)。数ある戦略の中でも、ベクトル変調を使用して摂動を定義することができる。
【0125】
ベクトル制御変調は、D軸又はQ軸のいずれかに結合するために直接使用でき、振幅変調(AM)、電流角度変調(CAM)、又はその両方で実現できる。AMとCAMの相対的な有効性は、変調の大きさと変化率の両方に比例する(後者は周波数変調、FMと呼ばれてもよい)。FMは、回路トポロジやデバイスと組み合わせて、共振やインピーダンス整合を確立するためにさらに使用できる。幾つか実装では、非共振又はインピーダンスネットワーク回路は、本開示から逸脱することなく使用することができる。
【0126】
例示的なベクトル制御は、i、i、及びiを、D-Q座標系(例えば、主制御コンポーネント)で表される基本周波数における電流とすることによって説明されてもよい。次に、D/Q軸のいずれかに独立した励磁を追加し、基本電流に重畳して合計ステータ電流を生成することができる。
【数1】
【0127】
ここで、独立した摂動信号は、モータコントローラ(例えば、図1のモータコントローラ104、スイッチコントローラ264又は284(図2B~C)、又は図17のモータコントローラ1700)によって選択されてもよい。通常、解析を簡素化するために摂動は正弦波になるように選択できる。例えば、そのような摂動は次のようにさらに説明できる。
【数2】
摂動の大きさと周波数はコンポーネントごとに独立して選択できる。幾つか実装では、摂動は1つの軸に適用される。つまり、他の2つの軸には摂動は適用されず、電力伝達のための場励起を生成するために使用される。例えば、電力伝送及び/又は制御の目的でACコイルのD軸にのみ摂動を適用することで、MMFステータ信号との干渉を低減し、トルクリップルを低減できる。或いは、又は、これに加えて、D軸の摂動はトルクリップルに対抗する試みに使用でき、D軸の摂動が不十分な場合はQ軸の摂動を使用でき、基本的には複数の軸の噴射を使用して正味の効果を生み出すことができる。幾つか実装では、Q軸の摂動をD軸の摂動と組み合わせて使用して、回転ベクトル注入を形成できる。Z軸の摂動はトルクリップルに影響を与えず、D-Q座標系の知識を必要としない。しかしながら、幾つか実装では、Z軸は摂動に使用されず、Z軸の摂動は実質的に0である。
【0128】
ベクトル注入には、一定の大きさと一定の角速度を持つベクトルの動きを記述し、D-Q座標系内の円を記述するという利点がある。従って、この概念は、一定の全体的な摂動をもたらす回転磁場の生成として実現できる。
【0129】
前述したように、ロータ磁界の制御は、コントローラ(例えば、コントローラ104、264、284、又は1700)によって、振幅変調(AM)、電流角度変調(CAM)、及び/又は周波数変調(FM)を使用してステータ巻線を介して、操作できる。特定の電流角度での振幅変調(AM)を使用して、ACコイルに電力を伝送でき、最大の電力は、ACコイルへの最大結合の電流角度(D-Q座標系内)で伝達される。例えば、同期座標系軸に対してQ軸と位置合わせされたACコイルの場合(つまり、AC D軸がロータ極のQ軸と位置合わせされている場合)、最大の電力伝達はフェーザ電流角度が電気角90°のときに発生する(ここで、電気的0°は同期座標系のD軸として定義される)。別の例では、ACコイルがロータ極のD軸と位置合わせされている場合、ACコイルは同期座標系の電気的0°で最大の結合を持つ。AMは、振幅と周波数によって定義できる。
【0130】
電流角度変調(CAM)を使用して、ACコイルに電力を伝送でき、電流角度の振動は、D-Q座標系で定義された電流角度の設定動作点の周りで定義される(例えば、電流角度を調整して、アンプあたりの目標トルク(MTPA)を達成できる)。CAMの摂動は、振動、大きさ、周波数によって定義できる。幾つか実装では、CAM戦略を使用して、AC摂動を意図的に作成することができる。例えば、電流角度は、実質的に300Hzの振動周波数で、電場内の最大トルク出力角度点70°を中心に+/-5deg振動する可能性がある(標準周波数制御誤差内)。このような電流角度制御により、300Hzの電気領域で65~75°の振動が提供され、合計10°の振れが生じる。他の実施形態では、発振は多かれ少なかれ、及び/又は異なる公称設定値又は周波数付近で発生する可能性がある。
【0131】
ステータの起磁力の大きさの変調(FM)の周波数を変えると、システムの応答や電力伝送の効率に影響を与える可能性がある。更に、制御装置と回路は、システムをACコイルの共振点の近くに置くように調整したり、ACコイルとステータコイル-インダクタシステムのネットワーク整合インピーダンスを作成したりすることができる。このような共振周波数には、効率的な結合が形成され、ACコイルのサイズを縮小できるという利点があり、これはインピーダンス整合システムでも同様である。幾つか実装では、AC結合は、非共振周波数又はインピーダンス整合周波数で実現できる。使用する結合方法に関係なく、転送される電力量を調整できる。同様に、異なる結合ストラテジーを使用して異なる目標を達成することもできる。例えば、迅速な応答が必要な場合には、より大量のAM又はFM結合を使用することができる。より高い周波数ではFMを使用し、より低い周波数ではAMを使用する方が、トルクリップルを簡単に軽減できるかもしれない。
【0132】
局所的な磁束変動は、スロット効果により機械が回転すると自然に発生し、鎖交磁束の変化によりAC応答を生成することで電力を伝達するために使用することもできる。つまり、AC応答は、ステータの歯を通過するロータ極の歯通過周波数によって生成される(ステータ巻線が突極性及び/又は集中していると仮定する)。このような固有の変動に依存する実装では、磁場全体の高周波変動/摂動が低減されるか、不必要になる可能性がある。有利なことに、このアプローチでは、発生する損失(スイッチング損失やコア損失など)が少なくなる。ただし、歯の通過周波数はロータの回転速度の関数であるため、これらの変動は完全に制御可能ではない。回転速度が高くなると、局所的なスロット効果と磁束変動の関数として、より効果的なAC応答が得られる傾向がある。
【0133】
幾つか実装では、ハイブリッド方式は、制御方式が局所磁束変動に加えてACインポーズを利用するように適合させることができる。これにより、AC信号を介した明示的な制御方法と、局所的な磁束変動の効率の利点が提供される。例えば、低速、高トルク条件、又は大きなトルクステップが必要な場合に、AC信号を利用できる。回転速度が高く、トルク要件が低い場合は、磁束要求がそれほど高くないため、局所的な磁束変動が使用される。以下で説明する図20は、ハイブリッド制御方式を実装するための例示的な方法2000を提供する。
【0134】
図16は、D軸及びQ軸の両方における振幅変調及び電流角度変調に応答するACコイルの三次元応答プロットを含む。Y軸は電流を示し、X軸は電流フェーザ角度を示し、Z軸は時間を示す。プロットは、一定の摂動振幅と周波数での電流角度の掃引にわたる巻線内の誘導AC電流を示している。AMは、純粋に相対結合の関数として動作し、Q軸コイルは、同期座標系において電気的に90°において最大結合を持ち、同期座標系において電気的に0°と180°の両方において最小結合を持つ。D軸コイルは逆応答を示す。
【0135】
逆に、CAMは位相が90°ずれた応答を引き出す。つまり、Q軸コイルは、同期座標系において電気的に0°及び180°で完全に結合し、電気的に90°でほとんど結合しない(例えば、全く又はほぼゼロ)。D軸コイルは逆応答を示す。
【0136】
図17は、本開示の態様とともに使用することができる例示的なコントローラ1700のブロック図である。コントローラ1700は、前述したモータコントローラ104に加えて、又はその代わりに使用することができる。前者の例では、コントローラ1700及びモータコントローラ104を単一の統合コントローラに組み合わせることができ、又はコントローラ1700及びモータコントローラ104を別々で個別の(separate, discrete)コントローラとすることができる。同様に、コントローラ1700は、スイッチコントローラ264又は284(図2B~2Cを参照)、或いはその機能を組み込むことができる。コントローラ1700は、とりわけ、電気機械400のパラメータを監視し、電気機械400の様々な動作パラメータを作動及び/又は調整するための信号を送信することができる。更に、主に電気機械400に関して説明したが、コントローラ1700(及び本明細書に記載の他のコントローラ)は、電気機械400と同様の方法で、本明細書に記載の任意の電気機械(例えば、電気モータ102を含む)と同様に使用することができる。換言すれば、コントローラは、とりわけ、電気機械のパラメータを監視し、電気機械の様々な動作パラメータを作動及び/又は調整することができる(例えば、とりわけ、これらの電気機械のアクティブ整流器を制御することによって)。これらの電気機械のロータは、図5A~15に関して図示及び説明したものを含め、本明細書で説明するロータのいずれかの形態をとることができる。
【0137】
図17に示すように、コントローラ1700は、特定の例では、(例えば、1つのプロセッサ又は複数のプロセッサとして実装される)プロセッサ1750と、プロセッサ1750に本明細書に記載の動作を実行させる命令を含む(例えば、1つのメモリ又は複数のメモリとして実装される)メモリ1752と、を含む。プロセッサ1750は、例えばロータ位置センサ又は電流センサを含む電気機械400内のコンポーネントと通信を送受信するための入出力(I/O)インターフェース1754に結合される。特定の例では、コントローラ1700は更に、電気機械400の様々な電気機械コンポーネント(ステータへの電力信号又は駆動信号を含む)のうちの1つ又は複数、並びに、電気機械400に設けられる他のセンサ(例えば、温度センサ、振動センサ、及び他のタイプのセンサ)と、ステータスを通信し、作動信号及び/又は制御信号を送信することができる。通信は、有線、無線、又は有線と無線の組み合わせで行うことができる。幾つか実装では、コントローラ1700は、異なる場所、例えば車両の異なる部分内に配置された異なる部分を備えた分散型コントローラであってもよい。本開示から逸脱することなく、追加のコントローラを、スタンドアロンコントローラ又はネットワーク化されたコントローラとしてコントローラ1700と組み合わせて使用することができる。
【0138】
コントローラ1700は、電気機械400を制御するために様々なレベルの自律性を有することができる。例えば、コントローラ1700は、負荷及び/又は速度の変化の感知を開始することができ、オペレータは、電力周波数、制御周波数、電流の大きさ、及び/又は電流角度を調整することができる。或いは、コントローラ1700は、負荷及び/又は速度の変化の感知を開始し、オペレータから追加の入力を受け取り、オペレータからの他の入力なしで電力周波数、制御周波数、電流の大きさ、及び/又は電流角度を調整することができる。或いは、コントローラ1700は、負荷及び/又は速度の変化の感知を開始し、オペレータからの入力なしで電力周波数、制御周波数、電流の大きさ、及び/又は電流角度を調整することができる。同様に、本明細書で説明するすべての制御方式では、さまざまな結合方法を異なるチャネル又は制御軸で使用できる。例えば、AM結合を1つのチャネルで使用し、FM結合を別のチャネルで使用できる。
【0139】
例えば、動作中、コントローラ1700は、制御信号をステータ巻線410に送信することによって、ステータ巻線に通電し、ステータ内にステータ磁場を生成するように構成されたコントローラであってもよい。例えば、コントローラ1700は、電源からステータ巻線への電流の印加を制御するスイッチング素子用の制御信号(例えば、それぞれのパルス幅変調(PWM)制御信号)を生成することができる(例えば、図2B~2Cのスイッチコントローラ及びスイッチング素子に関して以下で更に説明するように)。
【0140】
コントローラ1700は、電流角度及び大きさでステータに電流を送り、電気機械400の動作条件に応じて電流の角度及び大きさをアクティブに調整することによって、ステータ磁場を生成するように構成されることができる。幾つか実装では、電流の角度と大きさを調整して、望ましい結果やロータコイルの結合を達成することができる。或いは、又は、これに加えて、コントローラ1700は、位置センサから位置ストリームを受信することができる。位置ストリームはロータの位置を表す。位置ストリームは、アナログ又はデジタルの電気信号又は電磁信号とすることができる。位置ストリームの受信に応答して、コントローラ1700は、存在するトルクリップルの有無、又は重大度を決定することができる。次いで、コントローラ1700は、トルクリップルが存在するという決定に応答して電流角度及び/又は電流の大きさを調整することができる。
【0141】
幾つか実装では、電流フェーザ角度417は、高トルク状態の間、移動方向においてロータ極408より前に増加する。つまり、トルク単位当たりのより大きな電流が必要な場合、電流フェーザ角度417が増加する可能性がある。一般に、電流フェーザ角度417が増加すると、D軸コンポーネントが減少するため、ロータコイル400はよりアクティブになる(コイルを流れる電流が増加する)。換言すれば、各ロータ巻線の磁界は、電流フェーザ角度417が増加するにつれてより速く減衰する。コイル内の活動が大きくなると、軽減することなくトルクリップルが増加する可能性があるが、電流振幅は、各極が経験するD軸コンポーネントの増加中に増加することができ、増加した電流フェーザ角度417によって生成される潜在的な負のトルクに対抗することができる。
【0142】
或いは、又は、これに加えて、電流フェーザ角度417は、高速、低トルク動作中に減少する。或いは、又は、これに加えて、ブレーキ操作中に電流角度が負になる可能性がある。使用される動作モードに関係なく、コントローラ1700は、所与の状況における電気機械400の現在の要求を満たすように電流角度及び/又は電流振幅を調整することができる。コントローラは、例えば50~1000ヘルツ(Hz)などの幅広い周波数で、ステータを介してロータと通信することができる。幾つか実装では、通信は、100~1000Hzで行われる。いずれにせよ、このシステムは従来のシステムよりも速く変更を伝達できる。例えば、従来のかご型誘導機は、実質的に7Hzで通信する。より高い周波数の伝送能力により、コントローラ1700は、動作条件に関係なく、トルクリップルをアクティブに低減し、動作条件の変化に迅速に適応することができる。
【0143】
或いは、又は、これに加えて、コントローラ1700は、低速及び/又は高トルク条件中にAC信号の大きさ及び/又は周波数を増加させることができる。或いは、又は、これに加えて、コントローラ1700は、より高い回転速度及び/又はより低いトルク条件において、AC信号の大きさ及び/又は周波数を減少させることができる。
【0144】
或いは、又は、これに加えて、コントローラは、ロータ上のアクティブ整流器(図3B~3C)と通信し、制御することができる。従って、ロータ巻線を流れる電流は、フェーザ電流の角度及び/又は大きさに代えて、又は、それに加えて、アクティブに調整することができる。
【0145】
図18は、本開示の態様とともに使用できる例示的な方法1800のフローチャートである。1802で、関連するステータからロータによって電力信号が受信される。電力信号を受信することは、ロータACコイルによって、関連するステータからAC信号を受信することを含む。
【0146】
1804で、制御信号がステータからロータによって受信される。制御信号の振幅は電力信号より小さく、例えば、電気機械の電力定格の最大5%の振幅である。制御信号を受信することは、ロータACコイルによって、関連するステータからAC信号を受信することを含む。このような信号には、周波数変調や振幅変調などで電力信号上に変調された制御信号が含まれる場合がある。幾つか実装では、制御信号は、電力信号とは別々で別個の(separate and distinct)信号であってもよい。
【0147】
1806において、電力信号及び制御信号に応答してステータ及びロータによって起磁力が生成される。起磁力の生成には、受信したAC信号をDCロータコイルを通過するDC電流に整流することが含まれる。DC電流がDCコイルに流れると、磁界が発生する。
【0148】
図19は、本開示の態様とともに使用できる方法1900のフローチャートである。方法1900のすべて又は一部は、本開示と一致する、コントローラ1700、モータコントローラ104、及び/又はアクティブ整流器によって実行されうる。方法1700は、他のコントローラ及びシステムによって実装することもできる。
【0149】
ブロック1905では、界磁巻線同期電気機械のロータの複数のロータ巻線のうちの第1のロータ巻線の補助(例えば、交流(AC))コイルが、界磁巻線同期電気機械のステータに流れるAC電流によって誘導される第1の電流(例えば、AC電流)を流す。ステータは、通電されてステータ極を画定するように構成されたステータ巻線を含み、ロータ巻線は、通電されて、強磁性材料を含む関連する複数の歯を備えた固定ロータ極を画定するように構成されている。ステータは、例えば、ステータ108、ステータ402、又は本明細書で説明される別のステータであってもよい。同様に、ロータは、ロータ106、404a、404b、404c、500、600、700、800、900、1000、1100、1300、1400、1500、又は本明細書に記載の別のロータであってもよい。ステータ巻線は、本明細書に記載されるように、コントローラ(例えば、コントローラ104又は1700)によって生成される電流を介して通電されて、ステータ極を画定することができる。例えば、コントローラは、インバータブリッジのスイッチング素子を駆動して、ステータの各相のステータ巻線にそれぞれのAC電流信号を印加するスイッチコントローラ(例えば、スイッチコントローラ264又は284)を組み込んでもよい(例えば、図2B~Cを参照)。AC電流信号は、本開示を通じて説明される1つ又は複数の制御技術を使用して、モータの1つ又は複数の制御チャネル又は軸(例えば、同期座標系のD軸又はQ軸)に沿って生成できる。例えば、コントローラは、制御チャネル又は軸(例えば、D軸又はQ軸)に沿って電流信号を注入してもよく、その結果、制御チャネル又は軸に沿ってステータ巻線を介して、(振幅、周波数、又は位相が変調された)変調信号が生成され、これにより、ロータの1つ又は複数のロータ巻線に電流が誘導される。
【0150】
ブロック1910において、整流器は、第1の電流(例えば、補助コイル(例えば、ACコイル)に誘導されるAC電流)を受け取る。整流器は、ロータに回転的に固定され、ACコイル及び第1のロータ巻線の一次コイル(例えば、DCコイル)に電気的に結合される。整流器は、整流器300、350a、350b、1200、又は別のアクティブ整流器であってもよい。整流器はプリント回路基板(PCB550又は別のPCBなど)に統合することができ、これは、ロータに回転的に固定される(例えば、ロータ又はロータシャフトとともに回転するように固定される)。整流器は、ACコイルとの導電接続を介してACコイルに誘導される第1の電流を受け取ることができる。例えば、ACコイルは、整流器を組み込んだPCBの端子に接続された導電性リード線を備えている場合がある。
【0151】
ブロック1915において、整流器は、ACコイルに誘導された第1の電流から第2の電流(例えば、DC電流)を生成する。例えば、パッシブ整流器(整流器300又は1200など)の場合、整流器は、AC電流をパッシブ的に整流して、そのダイオード及び/又は他のディスクリート回路コンポーネント及びそれらの相互接続を介してDC電流を生成する。別の例として、アクティブ整流器(例えば、整流器350a及び350b)の場合、対応する制御回路がアクティブ整流器のスイッチング素子を(例えば、それぞれのPWM信号で)駆動し、AC電流をアクティブに整流し、DC電流を生成する。整流器と同様に、制御回路はロータに回転的に固定される場合がある。例えば、制御回路は、整流器と同じPCB上に、又はロータに回転的に固定された別のPCB上に、ロータマイクロプロセッサ又はゲート駆動ユニットを含むことができる。制御回路は、上述したように、ステータから無線で受信したデータ信号に基づいて、又は「自己同期」制御方式に基づいてスイッチング素子を駆動することができる。整流器は、第2の電流を1次コイルに出力する(例えば、DCコイルへのDC電流)。
【0152】
ブロック1920において、一次コイルは、整流器から第2の電流を流し、第2の電流は、ステータ極と相互作用してロータとステータとの間に相対力を生成する(固定ロータ極のうちの)1つの固定ロータ極を画定する。例えば、2番目の電流により固定ロータ極とそれに対応する磁場が発生し、ステータ巻線の電流によって生成される磁場と相互作用する(例えば、押されたり引かれたりする)。この相互作用により、(例えば、所望の方向、所望の速度、及び/又は所望のトルクで)ロータを回転させる起磁力が発生する。
【0153】
方法1900は、AC又は補助コイル、DC又は一次コイル、及び第1のロータ巻線に関連する整流器に関して説明されているが、ロータの各ロータ巻線も同様に、1つ又は複数のACコイル、DCコイル、及び整流器を含むことができ、同様の原理で動作することができる。
【0154】
上で述べたように、方法1900は、本明細書に開示されるロータの実施形態のそれぞれで使用することができる。幾つかの実施形態では、方法1900は、複数のACコイルの使用など(例えば、図11A、12、13A、14A、及び15を参照)、特定のロータ設計の特定の特徴に対応するための追加のステップを含む。例えば、第1のロータ巻線の各ACコイルは、ステータによって誘導されたAC電流を流し、整流器に電流を供給することができる。整流器は、2つ以上のACコイルから受け取ったAC電流の和をさらに整流し、DC電流をDCコイルに出力してもよい。
【0155】
更に、上で説明したように、幾つかの例では、ACコイル(場合によっては複数のACコイル)は、ステータによって無線送信されたデータ信号を受信するように構成されてもよい。整流器に関連する制御回路又は別個の制御回路は、データを符号化する周波数、大きさ、及び/又は位相変調について誘導AC電流を監視し、そのような変調をデータに復号することによってデータ信号を検出するように構成されてもよい。前述したように、これらのデータ信号は、アクティブ整流器を制御する制御回路に制御情報を提供することができる。特定の実施形態では、ロータ上のACコイルを介して信号を送信してステータと通信することができ、これらのデータ信号は、ロータ速度、電流レベル、温度、又は他の状態情報などの機械の制御情報を提供することができる。
【0156】
図20は、本開示の態様で使用できる局所的な磁束変動に加えてAC印加を使用して電気機械を制御するためのハイブリッド制御方式の方法2000のフローチャートである。方法2000の全て又は一部は、本開示に従って、コントローラ1700、モータコントローラ104、及び/又はアクティブ整流器によって実行されてもよい。方法2000は、他のコントローラ及びシステムによって実装することもできる。
【0157】
ブロック2005において、ロータのDCコイルは、ロータのACコイルによって捕捉されたステータから無線で伝送された電力に基づいて駆動される。例えば、ブロック2005を実装するには、コントローラ(例えば、コントローラ1700、モータコントローラ104など)は、図19の方法1900を実行して、ここで説明する電気機械の1つを制御してもよい。
【0158】
ブロック2010において、コントローラは、ロータの回転速度を示すモータ特性を決定する。例えば、モータ特性は、コントローラによって決定されるロータの回転速度であってもよい。回転速度は、例えば、ロータ位置センサ(例えば、1つ又は複数のホールセンサ)の出力を使用して、或いはステータコイルのゼロクロスを検出する電流又は電圧センサによって決定されてもよい。他の例では、モータ特性は、スロット効果によりロータ(例えば、ACコイル)が受ける磁束変化量であってもよく、これはロータの回転速度に応じて変化し、従って回転速度を示してもよい。
【0159】
ブロック2015では、コントローラはモータ特性に基づいてACコイルによって捕捉される電力の比率を調整し、ここで、捕捉された電力の比率は、(b)捕捉されるシステム磁束の変動により誘導される電力の量に対する、(a)捕捉されたステータから無線で転送された電力の量である。一例として、コントローラはモータ特性を速度閾値と比較する場合があり、これは、特定のロータ速度を示す閾値であり、モータ特性を考慮した適切な単位で表される(例えば、1分あたりの回転数、1分あたりのゼロクロス数、1分あたりの磁束変化など)。コントローラがモータ特性が速度閾値を超えていると判断した場合(つまり、ロータの回転速度が速度閾値を超えていることを示す)、コントローラは比率を調整して、捕捉されるステータからの無線伝送電力の量を減らしたり、捕捉されるシステム磁束の変動によって誘導される電力の量を増やしたりする。例えば、この調整を行うために、コントローラは、ロータへの無線電力伝送を提供することを目的とした固定子巻線への変調又は注入を低減してもよい。この減少により、システム磁束の変動が自然に又は本質的にロータのACコイルに追加の電流を誘導し、ステータ巻線から受け取って取り込まれる電力の減少を補ってもよい。
【0160】
ブロック2020では、DCコイルは、(前のブロック2015で)調整された比率でACコイルによって捕捉された電力に基づいて駆動される。例えば、ブロック2020を実装するために、コントローラは図19の方法1900を実行し続けてステータからのワイヤレス電力伝送を提供してもよく、ACコイルはステータとシステム磁束変化の両方から電力を取得してもよく、DCコイルは、AC電源又は入力として、ACコイルによって捕捉された電力の新しい比率を使用するロータ上の整流器によって駆動される。
【0161】
ブロック2020の後、方法2000(又はコントローラ)は、ブロック2015及び2020を通過する前に、ブロック2010に戻ってモータ特性(すなわち、更新されたモータ特性)を再度決定することができ、これにより、モータ特性に基づいて取り込まれる電力の比率が継続的に調整される。従って、ブロック2010をさらに通過すると、コントローラは、モータ特性がもはや速度閾値を超えないと判断することができる(つまり、ロータの回転速度が速度閾値を下回っていることを示す)、コントローラは比率を調整して、捕捉されるステータからの無線伝送電力の量を増加させたり、捕捉されるシステム磁束の変動によって誘導される電力の量を減少させたりする。例えば、この調整を行うために、コントローラは、ロータへの無線電力伝送を提供することを目的とした固定子巻線への変調又は注入を増加させることができる。モータ速度の低下を考慮すると、システム磁束の変動はすでに減少している可能性があり、及び/又は、この変調若しくは注入の減少が、システム磁束の変動が自然に若しくは本質的にロータのACコイルに誘導する電流を、減少させる可能性がある。
【0162】
幾つかの例では、比率は次のように調整される。ロータ速度が速度閾値を超えていると判断されると、ACコイルはシステム磁束の変化によって実質的に完全に電力供給され、ロータ速度が速度閾値を下回っていると判定されると、ACコイルは、変調又はステータ巻線への注入によって実質的に完全に電力供給される。
【0163】
インダクタンスが一致しないロータコイル
本明細書に開示される電気機械の幾つかの実施形態では、ACコイル及びDCコイルを備えたロータを有し、ロータの歯又は極(又は各ロータの歯又は極)のACコイルとDCコイルには、実質的に異なるインダクタンスが与えられる。これらの「インダクタンスが不整合」の実施形態では、DCコイルにはACコイルよりも高いインダクタンスが与えられてもよい。ACコイル、DCコイルとも呼ばれるが、ここで説明する他のAC及びDCコイルと同様、ACコイルは、補助(auxiliary)コイル又は副(minor)コイルと呼ばれることもあり、DCコイルは、一次(primary)コイル又は主(major)コイルと呼ばれることもある。更に、ACコイルは、電力及び/又はデータ信号を無線で(例えば固定子巻線から)受信することができるため、アンテナ又はアンテナコイルと呼ばれることがある。
【0164】
これらの不整合なインダクタンスの実施形態では、電気機械の動作中に、ステータからロータへワイヤレス電力を伝送し、他の実施形態について上述したのと同様の技術を使用して、高周波信号変調を生成し、1つ又は複数のステータコイルを介して駆動される低周波搬送信号に課すことができる。ここで、変調周波数は、例えば、キャリア信号周波数の10倍以上、キャリア信号周波数の100倍以上、又はキャリア信号周波数の1000倍以上である。幾つかの実施形態では、変調周波数は、500Hzを超え、1,000Hzを超え、5,000Hzを超え、又は10,000Hzを超えてもよい。変調信号は電磁波を生成し、ステータからロータに電力を伝達し、電磁波は、ロータ極に巻かれた異なるインダクタンスの2つのコイル(ACコイルとDCコイル)と相互作用する。第1の(AC)コイルは、第2のインダクタンス(DC)が高いコイルよりもインダクタンスが低く(例えば、少なくとも10分の1、少なくとも50分の1、又は少なくとも100分の1)、整流回路(例えば、ハーフブリッジ又はフルブリッジダイオード整流器などの部分整流又は完全整流回路)へのAC入力と電気的に接続されている。整流回路は、最初のコイルからエネルギーを受け取り、そのエネルギーを整流電源に変換(つまり、整流)する。信号は高インダクタンスのコイルとも相互作用するが、このコイルのインダクタンスが高いため、大幅な電力伝送をブロックする仮想インピーダンスが生成され、これは、第2(DC)コイルでは望ましくないことである。換言すれば、ステータは、第2(DC)コイルにおける誘導変調を通じて第2(DC)コイルに影響を与えることなく、第1(AC)コイルに電力を無線伝送してもよい。例えば、ACコイルはD軸注入に比較的よく結合する可能性があり、一方、DCコイルは同じD軸注入との結合が比較的弱く、理想的には、ロータに磁束を与えるための純粋な抵抗負荷として機能する。その結果、異なるインダクタンス(不整合なインダクタンス)の2つのコイルを使用して、二次電力伝送ステップを使用せずに、ロータ極に正味DC電流を生成できる。
【0165】
幾つかの実施形態では、異なるインダクタンスレベルのコイルを提供するには、異なる巻き数を使用できる。例えば、より高いインダクタンスのコイルは、より低いインダクタンスのコイルよりも多くの巻数を有する場合がある。幾つかの例では、これらのコイルは、巻き数を除けば、構造がほぼ同様であってもよい。
【0166】
更なる幾つかの実施形態では、効果を更に高めるために、二次誘導材料(漏れインダクタ)を高インダクタンスコイルと磁気的に連通させて配置し、高インダクタンスコイルのインダクタンスを、ターン数に比例せずに、更に高めてもよい。この漏れインダクタは、高インダクタンスコイルの端巻線の周りに、閉じた又は部分的に閉じたリングとして配置でき、ロータと同様の特性の磁性鉄、或いは他の誘導性材料で作ることができる。
【0167】
幾つかの実施形態では、高インダクタンスコイルのインダクタンスを更に高めるため、ACコイルではなく、高インダクタンス(DC)コイルの端巻線は、強磁性材料に埋め込まれたり、包まれたりしてもよい。これには、ターンごとに界磁巻線上で線形スナバとして機能するという追加の利点もあり、回転子巻線に誘導される可能性があるロータ回路コンポーネント(ダイオードやキャパシタなど)を高電圧から保護し、及び/又は、他の方法で使用できるものよりも低い電圧定格の回転子回路コンポーネントの使用を可能にするかもしれない。1つの例示的な実装形態では、フェライト「キャップ」を、ロータの一端又は両端におけるDCコイルのエンドターンの周囲に射出成形することができる。
【0168】
幾つかの実施形態では、高インダクタンス(DC)コイルと低インダクタンス(AC)コイル間のインダクタンス分離を更に強化するため、DCコイルに対する上記の変更の代わりに又はそれに加えて、ACコイルのエンドターンは、追加の漏れを最小限に抑えるために、ロータの歯の角で「ヘアピン」ターンで製造される(それにより、インダクタンスが減少する)。
【0169】
図21は、ステータ2102と、不整合なインダクタンスを有するコイルを有するロータ2104とを含む例示的なモータ2100の平面断面図である。例示的なモータ2100は、本明細書で説明する相違点を除いて、ロータ600と実質的に同様である。図21において、図6A~6Bの番号に1500を加えた同様の番号は、同様のコンポーネントを示すために使用される。
【0170】
各ロータ極2108は、強磁性材料の歯2109と関連付けられ、DCコイル2114及びACコイル2116を含む。DCコイル2114及びACコイル2116は、各歯2109の巻線部分2110の周りに巻き付けられ、巻線部分2110及びキャップ2111(端フランジとも呼ばれる)によって画定されるチャネル2112を通って延びる。DCコイル2114は、ACコイル2116に隣接し、平行である。DCコイル2114のD軸は、ACコイル2116のAC D軸とほぼ位置合わせされてもよい。ACコイル2116は、同じ半径方向位置で巻線部分2110の周囲に複数回巻き付けられACコイル2116が巻線部分2110に沿って半径方向に大きく延在しないようにする「パンケーキ」コイル、又はほぼ平坦なコイルである(例えば、コイルを形成する巻線導体の直径の1倍又は数倍以上)。この例におけるロータ極2108当たり単一のACコイル2116を考慮すると、図3A、3B、及び3Cの回路図は、この実施形態に適用可能である。しかしながら、幾つかの例では、図3Aの回路図は、図3B図3Cのキャパシタ358及び370と同様に、整流器の出力の両端間に接続される(モータ2100内の個別のキャパシタ又は暗黙的な静電容量の形で)静電容量を更に含んでもよい。
【0171】
更に、モータ2100は、上述のように、不整合なインダクタンスのロータコイルを備えた電気機械の一例であってもよい。すなわち、そのような例では、ACコイル2116は、DCコイル2114よりも著しく高いインダクタンスを有する。
【0172】
したがって、主題の特定の実装について説明した。他の実装及び変形例は、以下の特許請求の範囲内にあり、本開示の利益を享受する。そのようなすべての実装及び変化例を包含することが意図されており、従って、上記の説明は、限定的な意味ではなく例示としてみなされるべきである。他の実装は、以下の特許請求の範囲内に含まれる。場合によっては、特許請求の範囲に記載されているアクションを異なる順序で実行しても、望ましい結果を達成することができる。更に、添付の図に示されるプロセスは、望ましい結果を達成するために、必ずしも示される特定の順序又は一連の順序を必要とするわけではなく、さまざまな要素が追加、並べ替え、結合、省略、又は変更されてもよい。更に、幾つかの非限定的な例では、専用の並列処理デバイス、又は大規模システムの一部として相互運用するように構成された別個のコンピューティングデバイスによって、特定の操作を並列に実行することができる。
【0173】
1つ又は複数の実施形態が、以下の説明及び添付の図面において説明及び図示される。これらの実施形態は、本明細書で提供される特定の詳細に限定されず、様々な方法で修正することができる。更に、本明細書に記載されていない他の実施形態が存在する可能性がある。また、複数のコンポーネントによって実行される機能を統合して、単一のコンポーネントによって実行することもできる。同様に、1つのコンポーネントによって実行されるものとして本明細書で説明される機能は、複数のコンポーネントによって分散方式で実行されてもよい。更に、特定の機能を実行すると説明されているコンポーネントは、ここで説明されていない追加の機能も実行する場合がある。例えば、特定の方法で「構成」されているデバイス又は構造は、少なくともその方法で構成されているが、記載されていない方法で構成されていることもある。
【0174】
幾つかの非限定的な例では、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせを使用して方法のコンピュータ化された実装を含む本開示の態様は、標準的なプログラミング又はエンジニアリング技術を使用するシステム、方法、装置、又は製品として実装されることができ、プロセッサ装置、コンピュータ(例えば、メモリに動作可能に結合されたプロセッサ装置)、又は、本明細書で詳述する態様を実装するための別の電子的に動作するコントローラを制御する。従って、例えば、本発明の非限定的な例は、非一時的なコンピュータ可読媒体上に具体的に具体化された一連の命令として実装することができ、これにより、プロセッサ装置は、コンピュータ可読媒体からの命令の読み取りに基づいて命令を実装できるようになる。本発明の幾つかの非限定的な例は、以下の説明と一致する様々なコンピュータハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアなどが含め、自動化装置、専用コンピュータ、又は(特別にプログラム及び構成された)汎用コンピュータなどの装置が含む(又は利用する)ことができる。
【0175】
本明細書で使用される「製品」(article of manufacture)という用語は、任意のコンピュータ読み取り可能なデバイス、キャリア(例えば、非一時的信号)、又は媒体(例えば、非一時的媒体)からアクセス可能なコンピュータプログラムを包含することを意図している。例えば、コンピュータ可読媒体には、磁気記憶装置(ハードディスク、フロッピーディスク、磁気ストリップなど)、光ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)など)、スマートカード及びフラッシュメモリデバイス(カード、スティックなど)が含まれるが、これらに限定されない。更に、搬送波は、電子メールの送受信や、インターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)などのネットワークへのアクセスに使用されるような、コンピュータ読み取り可能な電子データを搬送するために使用できることを理解されたい。当業者であれば、特許請求される主題の範囲又は精神から逸脱することなく、これらの構成に対して多くの修正を加えることができることを認識するであろう。
【0176】
本発明による方法、又はそれらの方法を実行するシステムの特定の動作は、図に概略的に表されるか又は本明細書で説明される場合がある。別段の指定又は制限がない限り、特定の空間的順序での特定の操作の図での表現は、それらの操作が特定の空間的順序に対応する特定の順序で実行されることを必ずしも必要としない場合がある。同様に、図に表される、又は本明細書に開示される特定の動作は、本発明の特定の非限定的な例に応じて、明示的に図示又は説明されるのとは異なる順序で実行することができる。更に、幾つかの非限定的な例では、専用の並列処理デバイス、又は大規模システムの一部として相互運用するように構成された別個のコンピューティングデバイスによって、特定の操作を並列に実行することができる。
【0177】
本明細書でコンピュータ実装の文脈で使用される場合、別段の指定又は制限がない限り、「コンポーネント」、「システム」、「モジュール」などの用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、又は実行中のソフトウェアが含む、コンピュータ関連システムの一部又はすべてを包含することを意図している。例えば、コンポーネントは、プロセッサデバイス、プロセッサデバイスによって実行される(又は実行可能な)プロセス、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、コンピュータプログラム、又はコンピュータであってもよいが、これらに限定されない。例として、コンピュータ上で実行されるアプリケーションとコンピュータの両方をコンポーネントにすることができる。1つ又は複数のコンポーネント(又はシステム、モジュールなど)が実行のプロセス又はスレッド内に存在してもよく、1台のコンピュータ上にローカライズされてもよく、2つ又は複数のコンピュータ又は他のプロセッサデバイス間で分散されてもよく、又は、別のコンポーネント(又はシステム、モジュールなど)内に含まれてもよい。
【0178】
本明細書で使用される「コントローラ」、「プロセッサ」、及び「コンピュータ」という用語には、コンピュータプログラムを実行できる任意のデバイス、又は記載された機能を実行するように構成された論理ゲートを含む任意のデバイスが含まれる。例えば、これにはプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルロジックコントローラなどが含まれる場合がある。別の例として、これらの用語には、1つ又は複数のプロセッサ及びメモリ、及び/又は任意の種類のプロセッサ、CPU、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、又はソフトウェア命令を実行できる他のデバイスなどの1つ又は複数のプログラム可能なハードウェア要素が含まれてもよい。
【0179】
更に、本明細書で使用される表現及び用語は説明を目的としたものであり、限定するものとしてみなされるべきではない。例えば、本明細書における「備える」(comprising)、「含む」(including)、「包含する」(containing)、「有する」(having)、及びそれらの変形の使用は、その後に列挙されるアイテム及びその等価物、並びに追加の項目を包含することを意味する。更に、「接続された」及び「結合された」という用語は広範に使用され、直接的及び間接的な接続及び結合の両方を包含し、物理的又は電気的な接続又は結合を指してもよい。「実質的に」(substantially)という修飾語は、特定の動作、状態、又は他の用語(例えば、実質的に閉じた)を修飾するために使用される場合、当業者にとってその使用の文脈内で明らかな量を指しうるものであり、そして、少なくとも幾つかの実施形態では、これは、修飾された用語の90%、95%、99%、又は99.5%を指す。更に、2つ以上の項目で使用される「及び/又は」という表現は、項目を個別にカバーすることと、両方の項目を一緒にカバーすることを意図する。例えば、「a及び/又はb」は、a、b、及びaとbをカバーすることを意図する。別段の指定又は制限がない限り、「A、B、及びCの少なくとも1つ」、「A、B、及びCの1つ以上」などに類似した語句は、「A又はB又はC」、又は、A、B、及び/又はCのうち複数又は1つの組み合わせも含めて、「A、B、及び/又はCの任意の組み合わせ」を意味することが意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】