(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】電極を製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240221BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553723
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2022054495
(87)【国際公開番号】W WO2022189144
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021105458.3
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ドンホ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA22
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】高いエネルギー密度をもって電極を製造するための改善された方法を提供する。
【解決手段】バッテリセル用の電極150を製造するための方法であって、電極が少なくとも部分的にコーティングを有しており、以下のステップ:
-コーティングを圧縮するための第1の圧縮装置110を用いて、電極150が第1の圧縮された状態になるように電極150の第1の機械的な圧縮を行うステップと、
-電極における機械的な応力を低減するために、熱エネルギー源を有する設備210を用いて、少なくともコーティングされた部分において電極150に熱エネルギーを供給するステップであって、熱エネルギーの供給が第1の機械的な圧縮の前及び/又は後に行われるステップとを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセル用の電極(150)を製造するための方法であって、電極が少なくとも部分的にコーティングを有しており、以下のステップ:
-コーティングを圧縮するための第1の圧縮装置(110)を用いて、電極(150)が第1の圧縮された状態になるように前記電極(150)の第1の機械的な圧縮を行うステップと、
-前記電極における機械的な応力を低減するために、熱エネルギー源を有する少なくとも1つの設備(210,210a,210b,210c)を用いて、少なくともコーティングされた部分において電極(150)に熱エネルギーを供給するステップであって、熱エネルギーの供給が前記第1の機械的な圧縮の前及び/又は後に行われるステップと
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
熱エネルギーの供給時点で、当該時点での最大のコーティング厚さよりも小さなコーティング厚さを有する電極の1つ又は複数の領域に選択的に熱エネルギーが供給されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電極のコーティングされていない部分に熱エネルギーが追加で供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも部分的にコーティングを有する電極(150)を製造するための装置(200)であって、該装置は、
-前記電極(150)の第1の機械的な圧縮のための第1の圧縮装置(110)と、
-前記電極(150)に熱エネルギーを供給するための熱エネルギー源(250)を有する設備(210,210a,210b,210c)であって、前記第1の圧縮装置(110)の前方又は後方に配置されている当該設備(210,210a,210b,210c)と
を備えていることを特徴とする装置。
【請求項5】
前記熱エネルギー源(250)は、前記電極(150)の所定の範囲に熱エネルギーを供給するように構成された制限要素を備えていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記熱エネルギー源(250)は赤外線ランプヒータ又は誘導性機器を備えていることを特徴とする請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記設備(210,210a,210b,210c)は、当該装置の動作中に電極(150)を搬送可能な少なくとも1つのガイドローラ(130)を備えていることを特徴とする請求項4~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのガイドローラは、熱源に熱的に結合されており、これにより、前記少なくとも1つのガイドローラに熱エネルギーを供給可能であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガイドローラは少なくとも1つの断熱要素(260)を備えていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記設備(210,210a,210b,210c)は複数のガイドローラ(130)を備えており、複数のガイドローラ(130)のうち少なくとも2つが、前記電極(150)の移動方向を基準にして異なる平面に配置されていることを特徴とする請求項5~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記複数のガイドローラ(130)は、前記設備(210,210a,210b,210c)内に蛇行状に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
-前記電極(150)を第2の圧縮された状態にするため、当該電極(150)の第2の機械的な圧縮のための第2の圧縮装置(120)を備えており、
-前記電極(150)は、第2の圧縮された状態において、第1の圧縮された状態よりも大きな圧縮率を有し、
-前記熱エネルギー源を有する設備(210,210a,210b,210c)は、第1の圧縮装置(110)の後方、かつ、第2の圧縮装置(120)の前方に配置されている
ことを特徴とする請求項4~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の圧縮装置及び/又は前記第2の圧縮装置は、シリンダ装置(110,120)を備えていることを特徴とする請求項4~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法により得られる電極。
【請求項15】
請求項14による電極を有するバッテリセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリセル、特にリチウムイオンセル用の電極を製造するための方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に機械的に圧縮された活性物質を有する電極である電極は、例えば電動車両用のバッテリセルにおいて用いられる。
【0003】
電極の製造において、いわゆるカレンダが知られている。ここで、通例は金属から成る導電性のキャリア基板と、当該キャリア基板に載置され、ガルバニック要素における電極の使用に関して電気化学的に重要な活性物質とを備えた電極が、特に活性物質における高い質量密度を達成するために、その製造中に大きな機械的な負荷にさらされる。このとき、電極は、電極に機械的な圧力を加える2つのロールの間を通過するようガイドされるため、電極は、通過時に圧縮を受け、これにより電極の質量密度が高められる。このとき、電極の質量密度が高められていることにより、通常、当該電極が使用されるバッテリセルのより高いエネルギー密度が可能となる。
【0004】
圧縮過程時に電極へ高い機械的圧力が掛かるため、しばしば電極内の機械的な応力が増大する。電極の圧縮後、スプリングバック効果が生じ、その際、電極内の応力が解放され、電極の圧縮が再び復元する。これにより、ロールによる最後の圧縮が完全に復元され、電極が再び以前の厚さを有することとなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎となる課題は、高いエネルギー密度をもって電極を製造するための改善された方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該課題の解決手段は、独立請求項の教唆により達成される。本発明の様々な実施形態及び発展形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
本発明の第1の態様は、バッテリセル用の電極を製造するための方法に関するものであり、ここでは、電極が少なくとも部分的にコーティングを有しており、以下のステップ:
-コーティングを圧縮するための第1の圧縮装置を用いて、電極が第1の圧縮された状態になるように電極の第1の機械的な圧縮を行うステップと、
-電極における機械的な応力を低減するために、熱エネルギー源を有する少なくとも1つの装置を用いて、少なくともコーティングされた部分において電極に熱エネルギーを供給するステップであって、熱エネルギーの供給が第1の機械的な圧縮の前及び/又は後に行われるステップと
を有する。
【0008】
電極の第1の機械的な圧縮によって、電極内に機械的な応力が生じる。電極における当該応力又は残留応力は、主にその結合剤の構造において増大する。当該機械的な応力が制御されずに解放されると、電極が拡張し、その結果、電極が第1の機械的な圧縮直後よりも大きな厚さを有する、いわゆるスプリングバック効果につながることがある。そのため、応力を制御して解放するか、又は生じさせないようにすることが必要である。応力は、高温では低温の場合よりも迅速に解放され得る。好ましくは、これに関して、高温は、100~160℃、好ましくは120~150℃の温度範囲を有している。したがって、第1の機械的な圧縮の前及び/又は後に熱エネルギーを電極に供給することが有利である。第1の圧縮前に熱エネルギーを供給することは、第1の機械的な圧縮中に電極内でよりわずかな応力しか増大しないという利点を有する。第1の圧縮後に熱エネルギーを供給することは、第1の機械的な圧縮中に電極内で応力が増大するが、このとき、電極が、熱エネルギーの供給なしの場合での拡張に比べて拡張しないか、又はわずかにしか拡張しないないという利点を有する。
【0009】
以下に、本方法の好ましい実施形態を説明するが、当該実施形態は、それぞれ、明確に除外されていないか、又は技術的に不可能でない限り、互いに適宜組み合わせ、また更に説明する本発明の他の態様と組み合わせ、あるいは後者の適当な実施形態として用いられることが可能である。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、熱エネルギーの供給時点で、当該時点での最大のコーティング厚さよりも小さなコーティング厚さを有する電極の1つ又は複数の領域に選択的に熱エネルギーが供給される。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、電極のコーティングされていない部分に熱エネルギーが追加で供給される。
【0012】
各電極への高い機械的な圧力及びこれにより生じる電極内の応力により、コーティングされた領域とコーティングされていない領域との間に拡張の差異が生じる。当該拡張の差異により、電極の変形が引き起こされる。当該拡張の差異は、低減されたコーティング厚さを有する領域及び/又はコーティングされていない領域へ熱エネルギーを供給することにより低減することが可能である。
【0013】
本発明の第2の態様は電極を製造するための装置に関するものであり、当該装置は、第1の態様による方法を実行するように構成されている。
【0014】
以下に、本装置の好ましい実施形態を説明するが、当該実施形態は、それぞれ、明確に除外されていないか、又は技術的に不可能でない限り、互いに適宜組み合わせ、また更に説明する本発明の他の態様と組み合わせ、あるいは後者の適当な実施形態として用いられることが可能である。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、電極は少なくとも部分的にコーティングを備えており、装置は、
-電極の第1の機械的な圧縮のための第1の圧縮装置と、
-電極に熱エネルギーを供給するための熱エネルギー源を有する設備であって、第1の圧縮装置の前方又は後方に配置されている設備と
を備えている。
【0016】
したがって、設備は、第1の機械的な圧縮前又は圧縮後に電極に熱エネルギーを供給することができるように配置されている。同様に、第1の機械的な圧縮前及び圧縮後に熱エネルギーを電極に供給可能であるように配置された熱エネルギー源を有する別の設備を装置が備えることも考えられる。
【0017】
第1の圧縮前に熱エネルギーを供給することは、第1の機械的な圧縮中に電極内でよりわずかな応力しか増大しないという利点を有する。第1の圧縮後に熱エネルギーを供給することは、第1の機械的な圧縮中に電極内で応力が増大するが、このとき、電極が、熱エネルギーの供給なしの場合での拡張に比べて拡張しないか、又はわずかにしか拡張しないという利点を有する。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、熱エネルギー源は、電極の所定の領域に熱エネルギーを供給するように構成された制限要素を備えている。これにより、電極全体ではなく、所定の領域にのみ、例えば電極のコーティングされていない領域にのみ熱エネルギーが供給されることが達成される。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、熱エネルギー源は赤外線ランプヒータ又は誘導性機器を備えている。赤外線ランプヒータを用いる場合には、制限要素は、例えば、赤外線ランプヒータと、熱エネルギーあるいは熱が供給されるべき領域との間に設けられた機械的な絞りを備えることができる。赤外線ランプヒータは周囲の空気を加熱し、これにより、加熱された空気流が生じ、当該空気流が電極の所望の領域へ供給される。赤外線ランプヒータは、当該赤外線ランプヒータが電極の材料とは無関係であり、分離して、すなわち電極への直接的な接触なしに用いられることが可能であるという利点を有している。
【0020】
誘導性機器を使用する場合には、熱エネルギーは、熱エネルギー源によって、電極の電磁気的な相互作用を介して電極に供給される。このとき、誘導性調理器の場合と同様の原理が応用される。誘導による熱エネルギーの供給は、このとき高い効率が得られるという利点を有している。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、設備は、装置の動作中に電極を搬送可能な少なくとも1つのガイドローラを備えている。このとき、電極は、その移動方向からガイドローラの上方又は下方へ動くことが可能である。ガイドローラは、好ましくは圧縮装置の前方又は後方に配置されているとともに、第1の圧縮装置に電極を供給するか、又は更なる搬送のために圧縮装置から電極を引き受ける。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのガイドローラは、電極がまず巻き取られ、第1の圧縮装置への供給中に連続的に繰り出される繰り出しロールとして構成されている。しかし、電極が圧縮につづいて再び巻き取られる巻取りロールとしてガイドローラを構成することも考えられる。同様に、装置は、巻取りロール及び繰り出しロールを備えることが可能である。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのガイドローラが熱源に熱的に結合されており、これにより、少なくとも1つのガイドローラに熱エネルギーを供給可能である。これにより、ガイドローラは、電極の搬送時に電極に熱エネルギーを供給する。熱エネルギーの供給は機械的な接触を介して行われ、したがって、空気を介した場合よりも効果的である。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのガイドローラは少なくとも1つの断熱要素を備えている。好ましくは、少なくとも1つの断熱要素は、搬送時にガイドローラを電極から断熱する、ガイドローラにある凹部を備えている。この場合、既にガイドローラによる搬送前に電極に熱エネルギーが供給されているので、電極がガイドローラとの機械的な接触によって熱エネルギーをガイドローラへ伝達することを回避すべきである。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、設備は複数のガイドローラを備えており、複数のガイドローラのうち少なくとも2つが、電極の移動方向を基準にして異なる平面に配置されている。これにより、第1の圧縮装置から第2の圧縮装置への電極の経路区間及びこれに必要な時間が延長される。これに対応して、機械的な応力を低減するために電極に熱エネルギーが供給される時間が延長される。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、複数のガイドローラが設備内に蛇行状に配置されている。これにより、電極のできる限り長い経路区間が設備内で得られる。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、装置は、
-電極を第2の圧縮された状態にするため、電極の第2の機械的な圧縮のための第2の圧縮装置を備えており、
-電極は、第2の圧縮された状態において、第1の圧縮された状態よりも大きな圧縮率を有し、
-熱エネルギー源を有する設備は、第1の圧縮装置の後方、かつ、第2の圧縮装置の前方に配置されている。
【0028】
この場合、熱エネルギー源を有する設備は、第1の機械的な圧縮後、かつ、第2の機械的な圧縮前に電極への熱エネルギーの供給を行うことができるように配置されている。
【0029】
第2の機械的な圧縮により生じた機械的な応力を低減するために、第2の機械的な圧縮につづいて電極に熱エネルギーが再度供給されるように別の設備が配置されることも考えられる。
【0030】
第2の機械的な圧縮は、生じ得るスプリングバック効果を補整(補償)するという利点を有している。さらに、第2の機械的な圧縮によって、電極のよりわずかな厚さ、ひいてはより大きなエネルギー密度を達成することが可能である。第1の機械的な圧縮の前及び/又は後の熱エネルギーの供給は、第2の機械的な圧縮後のスプリングバック効果が回避されるか、又は少なくとも大幅に低減されるという利点を有している。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、第1の圧縮装置及び/又は第2の圧縮装置はシリンダ装置を備えている。この場合、シリンダ装置は、2つのシリンダ、特に、主軸が略平行に延びる円筒状の形状を有する2つのシリンダを備えている。このとき、両シリンダは互いに間隔を有しており、電極は当該間隔を通って搬送される。当該間隔は、電極が圧縮あるいはプレスされるべき厚さに略対応している。
【0032】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様による方法で得られる電極に関するものである。
【0033】
本発明の第4の態様は、第3の態様による電極を有するバッテリセルに関するものである。
【0034】
本発明の別の利点、特徴及び適用可能性は、図面に関連した以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1a】電極を加工するための弛緩モジュールを有する装置を概略的に示す図である。
【
図1b】電極を加工するための弛緩モジュールを有する装置を概略的に示す図である。
【
図2】弛緩モジュールの構成を概略的に示す図である。
【
図3】異なる厚さでコーティングされた領域を有する電極を概略的に示す図である。
【
図4】第2の圧縮ユニットを有する装置を概略的に示す図である。
【
図5】装置による加工に基づく電極厚さ変化を概略的に示す図である。
【
図6a】不均等なコーティングが存在する場合にガイドローラを用いた熱間加工のための方法ステップを概略的に示す図である。
【
図6b】不均等なコーティングが存在する場合にガイドローラを用いた熱間加工のための方法ステップを概略的に示す図である。
【
図6c】不均等なコーティングが存在する場合にガイドローラを用いた熱間加工のための方法ステップを概略的に示す図である。
【
図6d】不均等なコーティングが存在する場合にガイドローラを用いた熱間加工のための方法ステップを概略的に示す図である。
【
図7】凹部を有するガイドローラ及び電極を概略的に示す図である。
【
図8】ガイドローラにおける凹部の様々な幾何形状を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
各図では、同一又は互いに対応する本発明の要素には一貫して同一の符号が用いられる。
【0037】
図1a及び
図1bには、電極150を加工するための圧縮装置100が概略的に示されている。圧縮装置100は、繰り出しロール130と、弛緩モジュール210と、第1の圧縮ユニット110と、巻取りロール140とを備えている。第1の圧縮ユニット110及び第2の圧縮ユニット120(
図4参照)はそれぞれシリンダ対(ここでは不図示)を備えており、円筒状の形状を有するシリンダの主軸は、互いに略平行に延びている。シリンダ対はそれぞれ互いに間隔をあけて配置されており、当該間隔は、供給される電極の厚さよりも小さいとともに、電極が各シリンダ対による圧縮によって得るべき厚さに対応している。
【0038】
電極150は繰り出しロール130に配置されており、電極150は、当該繰り出しロールから適当に繰り出され、弛緩モジュール210に供給される。弛緩モジュール210では、そこに配置された熱エネルギー源250による熱エネルギーが電極に供給される。当該熱エネルギーによって、圧縮ユニット110での圧縮によって機械的な応力が増大することが回避されるようになっている。これにつづいて、電極150が第1の圧縮ユニット110に供給され、当該第1の圧縮ユニットで電極が圧縮される。第1の圧縮ユニット110につづいて、電極150は、巻取りロール140において巻き取られる。
【0039】
図1bによれば、
図1aとは異なり、弛緩モジュール210は、第1の圧縮ユニット110の前方ではなく、圧縮ユニット110の後方かつ巻取りロール140の前方に配置されている。これにより、圧縮ユニット110における圧縮によって電極150において増大した圧縮を再び低減することが達成される。他の構成要素は、
図1aにおける図示と同様に配置されている。
【0040】
図2には、弛緩モジュール(I)210a、弛緩モジュール(II)210b及び弛緩モジュール(III)210cと呼ばれる、弛緩モジュール210の可能な3つの構成が概略的に示されている。上記弛緩モジュール210a,210b,210cは、それぞれ2つ以上のガイドローラ130を備えており、当該ガイドローラによって電極150が搬送される。このとき、ガイドローラ130は、方向転換ローラとしても構成することができるため、電極150は、その搬送中にその当初の移動方向から所定の角度だけ偏向される。追加の経路区間を介した電極150の搬送によって、電極150が弛緩モジュール内の経路区間のために必要な時間が延長される。電極150には、当該時間において熱エネルギー源250によって熱エネルギーが供給される。この点に関して、経路区間の延長によって、電極150に熱エネルギーが供給される時間が延長される。上述のように、これにより、局所的な配置に依存して、電極150内での応力増大が防止されるか、又は既に存在する応力が再び低減される。熱エネルギー源250は、例えば赤外線ランプヒータ又は誘導性機器である。熱エネルギーは、100~160℃の温度を有している。120~150℃の温度、特に150℃が有利であることが分かった。温度は、電極150の材料組成及び用いられる熱エネルギー源に合わせて最適化することが可能である。
【0041】
弛緩モジュール(I)210aによれば、電極150は、離間して配置された2つのガイドローラ130を用いて搬送される。ガイドローラ130は、それぞれ移動方向からずらして配置されているため、電極150は、その当初の方向から偏向を受ける。これにより、一方では、電極150の経路区間が延長される。他方では、両ガイドローラ130の偏向角度を介して、電極150が弛緩モジュール(I)210aに供給される角度、及び電極150が弛緩モジュール(I)210aから出るようにガイドされ、例えば圧縮ユニット110,120に供給される角度を制御することが可能である。
【0042】
弛緩モジュール(II)210bによれば、電極150は、それぞれ離間して配置された7つのガイドローラ130を介して搬送される。このとき、電極150は、弛緩モジュール(II)210bにおいて、入口側では、略90°の角度でガイドローラ130によって偏向される。つづいて、電極150は、互いに連続する3つのガイドローラによってそれぞれ180°偏向される。これには、電極150を再び90°偏向する別のガイドローラ130がつづくため、電極150は、再びその当初の方向に達する。経路区間が更なる180°の偏向によって更に延長されることも考えられる。電極150が再び到達したその当初の方向において、つづくガイドローラ130の上方又は下方で搬送されるべきかどうかに依存して、180°の偏向の数が適合される。
【0043】
弛緩モジュール(III)210cによれば、電極150は、それぞれ離間して配置された11個のガイドローラ130を用いて搬送される。ガイドローラ130は、複数回その方向が変化する、湾曲された経路に配置されている。
【0044】
図3には、異なる厚さでコーティングされた領域を有する電極が概略的に示されている。電極150は電極フィルム170を有しており、当該電極フィルムは、第1の電極コーディング160と第2の電極コーティング180の間に配置されている。電極コーティング160,180は導電性である。さらに、電極は5つの領域に分割されており、これらの領域は、それぞれ図示の領域境界x1~x6の間に配置されている。これによれば、領域境界x1とx2の間に領域1が配置され、領域境界x2とx3の間に領域2が配置され、領域境界x3とx4の間の領域3が配置され、領域境界x4とx5の間に領域4が配置され、領域境界x5とx6の間に領域5が配置されている。
【0045】
領域1では、第1の電極コーティング160及び第2の電極コーティング180は、領域全体にわたって同一の一定の厚さを有している。
【0046】
領域2では、第1の電極コーティング160が領域全体にわたって一定の厚さを有しており、当該厚さは、領域1のコーティングの厚さと同一である。第2の電極コーティング180は、領域1から離れる方向に減少する厚さを有している。
【0047】
領域3では、第1の電極コーティング160が領域2から離れる方向に減少する厚さを有しており、第2の電極コーティング180についても同様である。第1の電極コーティング160及び第2の電極コーティング180の厚さ及び厚さの減少は異なっている。第2の電極コーティング180の厚さはゼロまで低減されるため、領域4への境界では、フィルムが一方の側ではコーティングされていない。
【0048】
領域4では、フィルムの一方の側がコーティングされていない一方、他方の側では、第2の電極コーティング180が当該領域にわたって、少なくともほぼゼロであり、領域5への境界に位置する値まで減少する。
【0049】
領域5では、電極150のフィルム170が完全にコーティングされていない。
【0050】
フィルムが少なくとも一方の側でよりわずかな厚さでコーティングされているか、又はコーディングされていない、電極150の領域2~5では、圧縮時に凹凸が生じ得る。当該凹凸は、電極150のなめらかな搬送を阻害することがある。そのため、凹凸を回避するために、特に上記領域に熱エネルギーを供給することが有利である。少なくとも一方の側でよりわずかな厚さでコーティングされているフィルム部分領域190では、熱エネルギー源によってフィルム170に相応に熱エネルギーが供給される。
【0051】
図4には、第1の圧縮ユニット110と、第2の圧縮ユニット120と、弛緩モジュール210とを有する圧縮装置100が概略的に示されており、弛緩モジュールは、電極150の搬送に関して第1の圧縮ユニット110と第2の圧縮ユニット120の間に配置されているため、電極150は、第1の圧縮ユニット110の後方かつ第2の圧縮ユニット120の前方で弛緩モジュール210を通過する。弛緩モジュール210は、熱エネルギー源250を備えている。さらに、圧縮装置100は、電極150を第1の圧縮ユニット110に供給するガイドローラ130を備えている。第1の圧縮ユニット110では、電極150は第1の厚さへ圧縮される。これにより、電極150には機械的な応力が発生する。当該応力は、弛緩モジュール210において熱エネルギー源250による熱エネルギーの供給によって低減される。これにつづき、電極150は第2の圧縮ユニット120に供給され、当該第2の圧縮ユニットでは、電極150は、第1の厚さよりも薄い第2の厚さへ圧縮される。熱エネルギーの事前の供給によって、第1の圧縮後及び第2の圧縮後に機械的な応力が制御されずに低減し、電極150が再び延びることが回避される。
【0052】
図5には、
図4による圧縮装置100による加工に基づく電極150の厚さ変化が概略的に示されている。電極150は電極フィルム170を有しており、当該電極フィルムは、第1の電極コーディング160と第2の電極コーティング180の間に配置されている。電極150は、第1の圧縮ユニット110によって、電極150が第1の圧縮ユニット110に供給される当初の厚さd1から第2の厚さd2へ圧縮される。これにつづき、電極150は、熱エネルギー源250によって当該電極150に熱エネルギーが供給される弛緩モジュール210を通過する。これにより、電極150内の応力が低減される。ただし、応力が完全に低減されない場合があり、電極の厚さが、上述のスプリングバック効果によって、第1の厚さd2から電極の当初の厚さd1よりも薄い中間厚さd12へ増大する。電極150は、中間厚さd12をもって第2の圧縮ユニット120に供給され、第2の厚さd3へ圧縮される。電極150の厚さは、弛緩モジュール210において応力が低減されているので、目標厚さdsに相当する第2の厚さd3において一定にとどまる。
【0053】
図6a~
図6dには、不均等なコーティングが存在する場合にガイドローラを用いた熱間加工のための方法ステップが概略的に示されている。
【0054】
図6aには、一方の側にのみ第1の電極コーディング160がコーティングされた電極フィルムと、コーティングされていない領域165とを有する電極150が図示されている。例えば第1の圧縮ユニット110での圧縮中には、電極150のコーティングされた領域のみが圧縮され、これに対応して電極150の長手軸線に沿って延伸される。電極150の一方の側の機械的な負荷により、電極150の変形が生じ得る。これにより、電極150が当該電極150のコーティングされていない側へ湾曲することがあり、当該湾曲により、湾曲された領域に高さの差hが生じ得る。
【0055】
図6bには、図示されたコーティングされていない領域165を有する電極150が概略的に図示されている。湾曲を緩和するために、コーティングされていない領域165には熱エネルギーが供給される。熱エネルギーは、例えば誘導によって、コーディングされていない領域165に供給することが可能である。
【0056】
図6cには、誘導によって追加の熱エネルギーが供給された電極150が図示されている。熱エネルギーが供給された領域は変形している。当該変形は、一方では加熱された領域165の拡張によって生じ、他方では誘導による電磁力の作用によって生じる。
【0057】
図6dには、電極150をガイドし、その間に熱エネルギーを電極150に供給するガイドローラ130が図示されている。コーティングされていない領域165が温度差によって変形しないように、コーティングされていない領域165に均等に熱エネルギーを供給して、コーティングされていない領域165がその全面にわたって一定の温度を有するようにすることが必要である。このために、熱エネルギー源とコーティングされていない領域165の間の間隔が熱エネルギーの供給中に一定に維持されることが必要である。これには、熱エネルギーが供給される間、ガイドローラ130が電極150に対して一定の間隔を有することが必要である。このことは、例えば、特に熱エネルギーが誘導によって電極に供給され、ガイドローラが強磁性材料を有している場合に生じる電磁気的な力の相互作用が、電極150とガイドローラ130の間に存在しないことによって達成され得る。ガイドローラが非導電性の材料、例えば合成樹脂を有していれば、当該電磁気的な力の相互作用を回避することができ、ガイドローラ130と電極150の間の間隔を一定に維持することが可能である。
【0058】
図7には、ガイドローラ130及び電極150が概略的に示されている。また、ガイドローラは、接触面135及び凹部260を有する転動面を有している。凹部260は、ガイドローラの軸線を基準にして転動面から径方向内方へ延在している。電極150は電極フィルム170を有しており、当該電極フィルムは、第1の電極コーディング160と第2の電極コーティング180の間に配置されている。電極コーティング160,180は導電性である。圧縮前に電極150に熱エネルギーが供給され、電極150が圧縮時に所定の温度を有していれば有利である。これにより、圧縮中に電極150内では機械的な応力があまり増大しない。ガイドローラ130による電極150の搬送時には、電極150とガイドローラ130の間の機械的な接触によって、電極150からガイドローラ130へ熱エネルギーを伝達することが可能である。このとき、凹部260は断熱されているため、ガイドローラ130への熱の伝達が少なくとも低減される。電極150への熱エネルギーの供給は、電気的な誘導によって行われることが可能である(ここでは不図示)。ローラでの転動中に電気的な誘導によって熱エネルギーが電極150に供給され、ガイドローラ130あるいはその表面が導電性であれば、電極150からローラへ力が作用する。これを回避するために、ガイドローラが非導電性の材料で構成されていれば有利である。非導電性の材料あるいは絶縁材料は、例えば、合成樹脂又はセラミックを有することが可能である。
【0059】
図8には、転動面から内方へ延在する、ガイドローラ130にある凹部260の様々な幾何形状が概略的に示されている。
【0060】
a)では、長方形状の断面を有する凹部260が示されている。凹部260は、溝、円筒又は直方体の形状を有することが可能である。
【0061】
b)では、三角形状の断面を有する凹部260が示されている。凹部260は、溝又は円すいの形状を有することが可能である。
【0062】
c)では、半円状の断面を有する凹部260が示されている。凹部260は、溝又は半球の形状を有することが可能である。
【0063】
d)では、台形状の断面を有する凹部が示されている。凹部は、溝又は角すい(ピラミッド)、特に切頭角すい(切頭ピラミッド)の形状を有することが可能である。
【0064】
本発明は、バッテリセル、特に原動機付き車両バッテリ用のバッテリセルのための電極の製造に適している。
【符号の説明】
【0065】
100 圧縮装置
110 第1の圧縮ユニット
120 第2の圧縮ユニット
130 ガイドローラ
135 接触面
140 巻取りロール
150 電極
160 第1の電極コーディング
165 コーティングされていない領域
170 電極フィルム
180 第2の電極コーディング
190 フィルム部分領域
d1,d2,d12,d3,ds 電極の厚さ
x1,x2,x3,x4,x5,x6 領域境界
210 弛緩モジュール
210a 弛緩モジュール(I)
210b 弛緩モジュール(II)
210c 弛緩モジュール(III)
250 熱エネルギー源
260 凹部
【国際調査報告】