(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】カロテノイド製剤、調製方法、及びその応用
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240221BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20240221BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240221BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240221BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20240221BHJP
A23L 29/206 20160101ALI20240221BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20240221BHJP
A61K 31/01 20060101ALI20240221BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20240221BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240221BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240221BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240221BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240221BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23G3/36
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L33/10
A23L33/15
A23L29/206
A61K31/047
A61K31/01
A61K31/122
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K9/48
A61P3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554278
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 CN2022142679
(87)【国際公開番号】W WO2023125626
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111633948.7
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111682238.3
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210083689.3
(32)【優先日】2022-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512003294
【氏名又は名称】大▲連▼医▲諾▼生物股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】INNOBIO Corporation Limited
【住所又は居所原語表記】No.49,DDA Dalian,Liaoning,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リ チェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ホン ヨンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】レン シャン
(72)【発明者】
【氏名】ウ ウェンゾン
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B035
4B041
4B117
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4B014GB07
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4B014GP01
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4B014GQ05
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4C206MA57
4C206MA72
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4C206ZC21
(57)【要約】
本開示は、カロテノイド製剤、その調製方法及び応用を提供する。この方法は、カロテノイドとエタノール水溶液を混合し、撹拌し、高速剪断により分散させ、抗酸化剤を添加し、エタノール溶液残留物が10ppm未満となるまで溶媒を除去することにより、前処理されたカロテノイドを得るステップであって、前処理されたカロテノイドの水分含有量が10%~30%の範囲内であるステップと、壁材と炭水化物を混合し、撹拌し、分散させることを通じて第1固形分を有する水溶液を調製することによって、前処理されたゲル化壁材を得るスッテプと、前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材を混合し、乳化し、顆粒化することによってカロテノイド製剤を得るステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイド製剤であって、前記カロテノイド製剤は、前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材とを混合し、乳化し、顆粒化することによって取得され、前記前処理されたゲル化壁材の量は、前記カロテノイド製剤の重量の40%~80%であり、
前記前処理されたゲル化壁材の原料は、壁材と炭水化物を含み、
前記壁材は、変性デンプン又はデンプンとセルロース誘導体の混合物を含み、
前記炭水化物は、スクロース、グルコース、グルコースシロップ、キシロース、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、及び固形コーンシロップのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とするカロテノイド製剤。
【請求項2】
前記カロテノイドは、ルテイン、ルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、リコピン、α-カロチン、β-カロチン、カンタキサンチン、及びアスタキサンチンのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項3】
前記前処理されたカロテノイドの原料は、ルテイン又はルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを(1~3):(1~3):(1~3)の重量比で混合することにより取得される、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項4】
前記前処理されたカロテノイドの色素含有量は70%より大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項5】
前記デンプンと前記セルロース誘導体は、1:(1~2)の重量比で混合される、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項6】
前記変性デンプンは、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項7】
前記壁材と前記炭水化物は、1:(1~5)の重量比で混合される、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項8】
前記壁材と前記炭水化物は、(1~5):1の重量比で混合される、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項9】
前記カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は1%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項10】
前記カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は5%未満であり、前記カロテノイド製剤の胃腸液中への0.5時間の放出率は35%未満であり、前記カロテノイド製剤の胃腸液中への4時間の放出率は90%より大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項11】
カロテノイド製剤の調製方法であって、
カロテノイドとエタノール水溶液を混合し、撹拌し、高速剪断により分散させ、抗酸化剤を添加し、エタノール溶液残留物が10ppm未満となるまで溶媒を除去することにより、前処理されたカロテノイドを得るステップであって、前記前処理されたカロテノイドの水分含有量が10%~30%の範囲内であるステップと、
壁材と炭水化物を混合し、撹拌し、分散させることを通じて第1固形分を有する水溶液を調製することによって、前処理されたゲル化壁材を得るスッテプと、
前記前処理されたカロテノイドと前記前処理されたゲル化壁材を混合し、乳化し、顆粒化することによって、カロテノイド製剤を得るステップとを含む、ことを特徴とする調製方法。
【請求項12】
前記抗酸化剤は、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ショ糖脂肪酸エステル、トコフェロール、脂肪酸アスコルベート、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、プロピル没食子酸、及びtert-ブチルヒドロキシキノリンのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
前記壁材と前記炭水化物は、1:(1~5)又は(1~5):1の重量比で混合される、ことを特徴とする請求項11に記載の調製方法。
【請求項14】
前記カロテノイドはルテイン結晶を含み、前記ルテイン結晶は、
第1パイプライン、第2パイプライン、及び第3パイプラインをそれぞれ「Y」型接続弁に接続するステップと、
マリゴールド抽出物と低級アルコールを混合し、マリゴールド抽出物と低級アルコールの混合物を第1流量で前記第1パイプラインに投入して、予熱することによってマリゴールド抽出物溶液を得るステップと、
アルコール混合溶液を第2流量で前記第2パイプラインに投入ステップであって、前記マリゴールド抽出物溶液と前記アルコール混合溶液の流量の比が第1流量比であるステップと、
前記マリゴールド抽出物溶液と前記アルコール混合溶液を前記第3パイプライン内で混合し、前記第3パイプラインを第1温度及び第1圧力に維持してケン化反応を行うことによって、ケン化された反応溶液を得るステップと、
前記ケン化された反応溶液に酸を添加して第1pHまで中和し、複合化剤を添加し、室温で撹拌してルテイン結晶を沈殿させ、濾過することによって第1濾過ケークを得るステップと、
アルカリ-アルコール溶液を第1濾過ケークに添加し、室温で撹拌し、濾過することによって第2濾過ケークを得、第2濾過ケークに水を添加し、撹拌し、濾過し、乾燥することによって、前記ルテイン結晶を得るステップと、を含むステップにより調製される、ことを特徴とする請求項11に記載の調製方法。
【請求項15】
前記低級アルコールはC1~C4低級アルコールを含む、ことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
前記アルコール混合溶液は、ナトリウムエトキシドエタノール溶液、ナトリウムメトキシドメタノール溶液、カリウムメトキシドメタノール溶液、カリウムエトキシドエタノール溶液、水酸化ナトリウムアルコール溶液、及び水酸化カリウムアルコール溶液のうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【請求項17】
前記第1流量比は、1:(1~5)の範囲内である、ことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【請求項18】
前記複合化剤と前記マリゴールド抽出物の質量比は、(0.0005~0.01):1の範囲内である、ことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【請求項19】
食品、飲料、ヘルスケア製品、医薬品の分野での応用を含む、1~10のいずれか一項に記載のカロテノイド製剤の応用。
【請求項20】
前記カロテノイド製剤は、栄養素の視覚化を必要とする製品、ソフトキャンディ、固形飲料、液体飲料、錠剤、固形製剤、アイジェル、又は点眼薬の調製に応用される、ことを特徴とする請求項19に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2021年12月28日に出願された中国特許出願第202111633948.7号、2021年12月28日に出願された中国特許出願第202111682238.3号、及び2022年1月23日に出願された中国特許出願第202210083689.3号の優先権を主張し、それらの出願の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、マイクロ微粒子製剤の技術分野に関し、特にカロテノイド製剤、調製方法、及びその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
人体内の主なビタミンA源として、カロテノイドは免疫調節、抗酸化、抗がん、老化防止などの機能を有し、人間の健康に有益な影響を与えることができる。しかしながら、カロテノイドは、水に不溶で、油への溶解度が低く、光、酸素、熱環境では不安定であるため、カロテノイド関連製剤の応用は限られている。また、ルテインなどのカロテノイドについては、大量のアルカリを必要とし、ケン化に長時間を要するケン化によりルテインを調製する場合があり、その結果、アルカリ性の廃水が生じ、環境に優しくない。
【0004】
従って、カロテノイドの調製プロセスを最適化し、カロテノイド製剤のの安定性及び応用を改善するために、カロテノイド製剤、調製方法、及び応用を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の1つ又は複数の実施形態は、カロテノイド製剤を提供する。このカロテノイド製剤は、前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材を混合し、乳化し、顆粒化することによって得られる。前処理されたゲル化壁材の量は、カロテノイド製剤の重量40%~80%である。前処理されたゲル化壁材の原料は、壁材と炭水化物を含む。壁材は、変性デンプン又はデンプンとセルロース誘導体の混合物を含む。炭水化物は、スクロース、グルコース、グルコースシロップ、キシロース、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、及び固形コーンシロップのうちの少なくとも1つを含む。
【0006】
本開示の1つ又は複数の実施形態は、カロテノイド製剤を調製するための方法を提供する。この方法は、カロテノイドとエタノール水溶液を混合し、撹拌し、高速剪断により分散させ、抗酸化剤を添加し、エタノール溶液残留物が10ppm未満となるまで溶媒を除去することにより、前処理されたカロテノイドを得るステップであって、前処理されたカロテノイドの水分含有量が10%~30%の範囲内であるステップと、壁材と炭水化物を混合し、撹拌し、分散させることを通じて第1固形分を有する水溶液を調製することによって、前処理されたゲル化壁材を得るスッテプと、前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材を混合し、乳化し、顆粒化することによってカロテノイド製剤を得るステップと、を含む。
【0007】
本開示の1つ又は複数の実施形態は、カロテノイド製剤の応用を提供する。この応用は、食品、飲料、ヘルスケア製品、及び医薬品の分野での応用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示は、例示的な実施形態についてさらに説明される。これらの例示的な実施形態は、図面を参照して詳細に説明する。これらの実施形態は限定されない。これらの実施形態において、同じ番号は同じ構造を表示する。
【
図1】本開示の幾つかの実施形態によるカロテノイド製剤を調製するための方法のプロセスを示す例示的なフローチャートである。
【
図2A】本開示の幾つかの実施形態によるルテイン製品Aのソフトキャンディの例示的な外観図である。
【
図2B】本開示の幾つかの実施形態によるゼアキサンチン製品Bのソフトキャンディ例示的な外観図である。
【
図3】本開示の幾つかの実施形態によるカロテノイド製剤を調製するための方法のプロセスを示す例示的なフローチャートである。
【
図4A】本開示の幾つかの実施形態によるルテイン製品Aのソフトキャンディの例示的な外観図である。
【
図4B】本開示の幾つかの実施形態によるβ-カロチン製品Bの例示的な外観図である。
【
図5】本開示の幾つかの実施形態による、異なる濃度のルテイン標準溶液の吸光度を示す例示的な曲線である。
【
図6】本開示の幾つかの実施形態による、ルテイン結晶及びルテイン製品Aの細胞取り込み率の例示的な棒グラフである。
【
図7】本開示の幾つかの実施形態による、異なる濃度のゼアキサンス(zeaxanth)標準溶液の吸光度を示す例示的な曲線である。
【
図8】本開示の幾つかの実施形態による、ゼアキサンチン結晶及びゼアキサンチン製品Aの細胞取り込み率の例示的な棒グラフである。
【
図9】本開示の幾つかの実施形態によるゼアキサンチンのキラル構造の検出結果の例示的な図である。
【
図10】本開示の幾つかの実施形態によるルテインを調製するための方法のプロセスを示す例示的なフローチャートである。
【
図11】本開示の幾つかの実施形態による、パイプラインを接続する「Y」型接続弁の例示的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の実施形態の技術スキームをより明確に説明するために、実施形態の説明に必要な添付図面の簡単な説明を以下に示す。明らかに、以下の添付図面は、本明細書の幾つかの例又は実施形態にすぎず、当業者であれば、創造的な努力なしに、これらの添付図面に従って本明細書を他の同様のシナリオに適用することが可能である。文脈から明らかに得られない限り、又は文脈が別段の説明をしない限り、図面中の同じ符号は同じ構造又は動作を指す。
【0010】
本開示で使用される「システム」、「デバイス」、「ユニット」及び/又は「モジュール」は、異なるレベルの異なるコンポーネント、要素、部品、部分又はアセンブリを区別するために使用される方法であることを理解されたい。ただし、他の言葉でも同様の目的を達成できる場合には、他の表現に置き換えることができる。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲に示すように、「1つ(one)」、「一(a)」、「一種(a kind)」及び/又は「前記(the)」という単語は、特別な単数形ではないが、文脈が明示的にそうでないことを示唆しない限り、複数形を含む場合がある。一般的に言えば、「備える」及び「含む」という用語は、明確に識別されたステップ及び要素が含まれていることを意味するだけであり、これらのステップ及び要素は排他的なリストを構成するものではなく、方法又は装置は他のステップ又は要素も含み得る。
【0012】
カロテノイドは、脂質過酸化を妨げ、健康に有益な効果をもたらすことができる生理学的抗酸化剤である。しかしながら、カロテノイドは水に溶解せず、油脂への溶解度が非常に低い。同時に、カロテノイドは安定性が低く、光、酸素、熱に対して不安定である。従来の方法では、包埋物はカロテノイドのマイクロカプセル化により形成される。これにより、それらの生物学的利用能を向上させ、同時に、それらの着色性も向上させることができ、その結果、カロテノイド製品の使用中に衣服や手などが汚れやすくなり、美観に影響を与え、消費者に不快な体験をもたらす。
【0013】
カロテノイドには抗酸化剤作用を有するルテインが含まれ、視力を保護し、早期の動脈硬化を遅らせる可能性がある。現在、伝統的なプロセスは、一般的に、ルテインエステルのケン化を用いてルテインを調製するが、このプロセスでは大量のアルカリが使用されるため、アルカリ性の廃水が発生し、同時に大量の有機溶剤も使用されるため、環境に優しくなく、ケン化時間は比較的長く、調製された製品中のルテインの純度は低い。
【0014】
本開示の幾つかの実施形態は、カロテノイド製剤、調製方法、及び応用を提供する。幾つかの実施形態では、カロテノイドは前処理されてもよく、前処理されたゲル化壁材は、異なる重量比の異なる材料及び炭水化物の壁材を使用して調製されてもよく、カロテノイド製剤は、前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材に従って調製されてもよい。これにより、塩酸溶液中のカロテノイドの放出率を低下させ、胃酸による破壊を回避し、カロテノイドの生物学的活性を維持するだけでなく、色素溶解率を効果的に低下させ、カロテノイド製品の使用中に衣服、舌、手などを汚すのを回避することもできる。幾つかの実施形態では、ルテイン結晶を調製するとき、ルテインは、アルコーリシスと組み合わせた管式反応により調製され、ルテインは複合化剤(complexing agent)により精製される。これにより、製造時間が短縮され、アルカリ量が削減され、環境に優しく、ルテイン結晶の生産効率が向上する。
【0015】
幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤は、食品、飲料、健康製品、医薬品、又は他の分野などの様々な分野に応用され得る。幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤はまた、栄養素の視覚化を必要とする製品、ソフトキャンディ、固形飲料、液体飲料、錠剤、固形製剤、アイジェル、又は点眼薬の調製に応用され得る。
【0016】
カロテノイドは、脂質過酸化を妨げ、健康に有益な効果をもたらすことができる生理学的抗酸化剤である。しかしながら、カロテノイドは水に溶解せず、油脂への溶解度が非常に低い。同時に、カロテノイドは安定性が低く、光、酸素、熱に対して不安定である。従来の方法では、包埋物は、カロテノイドをマイクロカプセル化することにより形成される。これにより、生物学的利用能を向上させ、同時に染色性も向上させることができ、その結果、カロテノイド製品の使用中に衣服や手などが汚れやすくなる。本開示の幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤は、カロテノイドを前処理し、抗酸化剤を添加し、ゲル化壁材を使用して前処理されたカロテノイドを包埋することによて得られる。これにより、カロテノイドの生物学的活性を維持するだけでなく、色素溶解率を効果的に低下させることもできる。
【0017】
幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤は、前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材を混合し、乳化し、顆粒化することによって得ることができる。カロテノイド製剤の調製方法の詳細については、ここでは繰り返さない
図1及び関連説明を参照されたい。
【0018】
幾つかの実施形態では、前処理されたゲル化壁材の量は、カロテノイド製剤の重量の40%~80%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、前処理されたゲル化壁材の量は、カロテノイド製剤の重量の60%~80%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、前処理されたゲル化壁材の量は、カロテノイド製剤の重量の65%~70%の範囲内であってもよい。
【0019】
幾つかの実施形態では、前処理されたゲル化壁材の原料は、壁材と炭水化物を含んでもよい。幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物の重量比は、1:(1~5)の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物の重量比は、1:(2~4)の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物の重量比は、1:(3~4)の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、壁材は、デンプンとセルロース誘導体の混合物を含んでもよい。デンプンは、グルコース分子から重合された多糖物質の天然巨大分子化合物の一種である。例えば、デンプンは、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、ジャガイモデンプンなどを含んでもよいが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、壁材はまた、アラビアゴムノキを含んでもよい。幾つかの実施形態では、炭水化物は、スクロース、グルコース、グルコースシロップ、キシロース、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、及び固形コーンシロップのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、カロテノイドは、ルテイン、ルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、リコピン、α-カロチン、β-カロチン、カンタキサンチン、及びアスタキサンチンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの合計色素含有量は、70%より大きくてもよい。幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの合計色素含有量は、80%より大きくてもよい。幾つかの例では、前処理されたカロテノイドの合計色素含有量は、90%より大きくてもよい。
【0022】
幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの原料は、ルテイン又はルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを、(1~3):(1~3):(1~3)の重量比で混合することによって得ることができる。幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの原料は、ルテイン又はルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを、(2~3):(1~2):(1~2)の重量比で混合することによって得ることができる。幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの原料は、ルテイン又はルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを(1~2):(1~2):(1~2)の重量比で混合することによって得ることができる。
【0023】
幾つかの実施形態では、前処理されたゼアキサンチン結晶は、(3R、3'R)-ゼアキサンチン及び(3R、3’S)-ゼアキサンチンの2つの異性体を含んでもよく、2つの異性体は、ゼアキサンチン結晶の重量の80%超を占めてもよい。幾つかの実施形態では、(3R、3’R)-ゼアキサンチンと(3R、3’S)-ゼアキサンチンの2つの異性体の重量比は、(5~15%):(95~85%)の範囲内であってもよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、壁材は、1:(1~2)の重量比のデンプンとセルロース誘導体の混合物であってもよい。幾つかの実施形態では、壁材は、1:(1~1.8)の重量比のデンプンとセルロース誘導体の混合物であってもよい。幾つかの実施形態では、壁材は、1:(1.2~1.5)の重量比のデンプンとセルロース誘導体の混合物であってもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は1%未満であってもよい。幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は0.5%未満であってもよい。幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は0.3%未満であってもよい。
【0026】
図1は、本開示の幾つかの実施形態によるカロテノイド製剤を調製するための方法のプロセスを示す例示的なフローチャートである。プロセス100は、以下のステップを含んでもよい。
【0027】
ステップS110: カロテノイドとエタノール水溶液を混合し、撹拌し、高速剪断により分散させ、抗酸化剤を添加し、エタノール溶液残留物が10ppm未満になるまで溶媒を除去することによって、前処理されたカロテノイドを得る。
【0028】
幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの水分含有量は、10%~30%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの水分含有量は、10%~25%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの水分含有量は、20%~30%の範囲内であってもよい。
【0029】
幾つかの実施形態では、カロテノイドの原料は、ルテイン又はルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを、(1~3):(1~3):(1~3)の重量比で混合することによって得ることができる。カロテノイドの原料についての詳細は、前述の説明を参照されたいため、ここでは繰り返さない。
【0030】
幾つかの実施形態では、カロテノイドは、3~5倍のエタノール水溶液と混合されてもよい。幾つかの実施形態では、カロテノイドは、3~3.8倍のエタノール水溶液と混合されてもよい。幾つかの実施形態では、カロテノイドは、4~5倍のエタノール水溶液と混合されてもよい。
【0031】
幾つかの実施形態では、エタノール水溶液の質量分率は、50%~70%の範囲であってもよい。幾つかの実施形態では、エタノール水溶液の質量分率は、50%~60%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、エタノール水溶液の質量分率は、55%~70%の範囲内であってもよい。
【0032】
幾つかの実施形態では、混合溶液は、40℃~50℃の温度で少なくとも20分間撹拌され、高速剪断により分散してもよい。幾つかの実施形態では、混合溶液は、40℃~45℃で少なくとも20分間撹拌され、高速剪断により分散してもよい。
【0033】
幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドは、抗酸化剤を混合溶液に添加し、エタノール溶液残留物が10ppm未満になるまで70℃~80℃の温度で溶媒を除去することによって得ることができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、添加される抗酸化剤の量は、カロテノイドの重量の5%~30%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、添加される抗酸化剤の量は、カロテノイドの重量の5%~20%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、添加される抗酸化剤の量は、カロテノイドの重量の15%~30%の範囲内であってもよい。
【0035】
幾つかの実施形態では、抗酸化剤は、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ショ糖脂肪酸エステル、トコフェロール、脂肪酸アスコルベート、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピル没食子酸、及びtert-ブチルヒドロキシキノンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態では、抗酸化剤は、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、及びショ糖脂肪酸エステルの混合物であってもよい。
【0036】
幾つかの実施形態では、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、及びショ糖脂肪酸エステルの重量比は、(2~5):(0.1~3):(0.1~3)の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、及びショ糖脂肪酸エステルの重量比は、(2~4):(0.1~2):(0.1~2)の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、及びショ糖脂肪酸エステルの重量比は、(2~4):(2~3):(2~3)の範囲内であってもよい。
【0037】
ステップS120: 壁材と炭水化物を1:(1~5)の重量比で混合して第1固形分を有する水溶液を調製し、次にこの水溶液を撹拌して分散させることにより、前処理されたゲル化壁材を得る。
【0038】
幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物はまた、1:(1~4)の重量比で混合されてもよい。幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物は、1:(3~5)の重量比で混合されてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態では、第1固形分を有する水溶液は、50%~70%の固形分を有する水溶液であってもよい。幾つかの実施形態では、第1固形分を有する水溶液は、50%~60%の固形分を有する水溶液であってもよい。幾つかの実施形態では、第1固形分を有する水溶液は、55%~70%の固形分を有する水溶液であってもよい。
【0040】
幾つかの実施形態では、水溶液は、50℃~70℃で撹拌されて分散し、80℃~90℃で15分間~45分間撹拌されてもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、壁材は、デンプンとセルロース誘導体の混合物であってもよい。幾つかの実施形態では、デンプンとセルロース誘導体は、1:(1~2)の重量比で混合されてもよい。幾つかの実施形態では、デンプンとセルロース誘導体は、1:(1.2~1.5)の重量比で混合されてもよい。
【0042】
幾つかの実施形態では、セルロース誘導体は、ヒプロメロース、メチルセルロース、エチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態では、セルロース誘導体の粘度は、2cP~15cPの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、セルロース誘導体の粘度は、5cP~12cPの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、セルロース誘導体の粘度は、7cP~10cPの範囲内であってもよい。
【0043】
ステップS130: 前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材を混合し、乳化し、顆粒化することによって、カロテノイド製剤を得る。
【0044】
上記のプロセスによれば、カロテノイド製剤は、カロテノイドを前処理し、抗酸化剤を添加し、前処理されたカロテノイドをゲル化壁材で包埋することによって、調製される。これにより、製品の色素溶解率を効果的に低下させ、カロテノイドの安定性を向上させ、生物学的活性を維持することができる。また、調製プロセスには有機溶媒が使用されていないため、調製プロセス全体はより環境に優しいものになる。
【0045】
カロテノイド製剤の調製方法は、以下の実施形態A1~A4、比較実施形態A5~A7、及び効果実施形態A8~A9を通じて詳細に説明される。実施形態A1~A4における反応条件、反応材料、及び反応材料の量は、カロテノイド製剤の調製方法を例示するためだけのものであり、本開示の保護範囲を限定するものではないことに留意されたい。実施形態A1~A4は、それぞれ異なる反応条件及び材料重量比を使用する実施形態である。比較実施形態A5~A7は、実施形態A2~A4の対照群である。効果実施形態A8~A9は、実施形態A2に従って調製された製品と従来技術に従って調製された製品の実際の効果の比較である。
【0046】
本開示において、特に明記しない限り、百分率及び含有量は質量により計算される。特に断りのない限り、使用される実験方法は従来の方法であり、使用される材料及び試薬は商業源から購入することができる。
【0047】
I本開示におけるカロテノイド製剤の調製プロセスでは、この分野における従来の用量に従って、以下の成分のうちの1つ又は複数を選択的に添加することもできる。
【0048】
(1)水溶性成分。水溶性成分は、グルコース、ラクトース、マルトオリゴ糖、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び固体グルコースシロップのうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。
【0049】
(2)界面活性剤。界面活性剤は、水不溶性脂肪又はワックス状物質からなる製品が通常水面に浮くという問題を解決し、製品の水分散性を高めるために使用することができる。界面活性剤は、Tween 60、Tween 80、又はショ糖脂肪酸エステルのうちの1つ又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0050】
(3)結合剤。結合剤は、ポビドン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、可溶性大豆多糖類、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムのうちの1つ又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0051】
(4)懸濁化剤。懸濁化剤は、グアーガム、ザンサンガ、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ジェランガム、及びカラゲナンのうちの1つ又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0052】
(5)希釈剤。希釈剤は、デンプン、マルトデキストリン、及びリン酸水素カルシウムのうちの1つ又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0053】
(6)安定剤。安定剤は、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、及び微結晶セルロースのうちの1つ又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0054】
(7)滑剤。滑剤は、二酸化ケイ素、トウモロコシデンプン、及びケイ酸カルシウムのうちの1つ又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0055】
(8)抗酸化剤。抗酸化剤は、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンE誘導体、及びビタミンC誘導体のうちの1つ又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0056】
(9)pH調整剤。pH調整剤は、クエン酸、乳酸、及びリンゴ酸のうちの1つ又は複数を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0057】
本開示では、以下の方法を使用して、製品を測定して評価する。
【0058】
本開示で記載される色素溶解率を測定するための方法は、1gの製品をとり、50mLの水を加え、90℃の温度及び100rpmの回転速度下で30分間撹拌して溶解した後、濾過し、濾液をメスフラスコに移し、30mLの水を使用して濾液を1回洗浄し、濾液を合わせ、一定体積後の最大吸収波長で光学密度(OD)を測定する。色素溶解率は、(OD/製品の質量)×100%である。
【0059】
本開示における製品の加速安定性の評価方法は、中国薬局方によって提供される以下の方法である。40℃の温度及び75%の相対湿度の条件下で、異なる時間で色素含有量を測定して安定性を決定し、色素保持率を使用して製品の安定性を指示する。色素保持率は、初期含有量に対する異なる時間での製品含有量の比率であり、パーセントで表すことができる。
【0060】
実施形態A1: 結晶の安定性に対する結晶の加工方法の影響
【0061】
(1)ゼアキサンチン結晶Aは、160gのゼアキサンチン結晶を4倍の60%エタノール水溶液を混合し、45℃で30分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、28gのアスコルビン酸、10gのパルミチン酸アスコルビル、及び10gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、75℃で溶媒を除去することによって得ることができる。ゼアキサンチン結晶Aにおけるエタノール可溶性残留物は8ppmであり、ゼアキサンチン結晶の水分含有量12.3%である。
【0062】
(2)ゼアキサンチン結晶Bは、160gのゼアキサンチン結晶を4倍の60%エタノール水溶液と混合し、45℃で30分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、28gのアスコルビン酸及び10gのパルミチン酸アスコルビルを添加し、75℃で溶媒を除去することによって得ることができる。ゼアキサンチン結晶Bにおけるエタノール可溶性残留物は55ppmであり、ゼアキサンチン結晶の水分含有量は25%である。
【0063】
(3)ゼアキサンチン結晶Cは、160gのゼアキサンチン結晶を8倍の80%エタノール水溶液と混合し、45℃で30分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、28gのアスコルビン酸、10gのパルミチン酸アスコルビル、及び10gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、75℃で溶媒を除去することによって得ることができる。ゼアキサンチン結晶Cにおけるエタノール可溶性残留物は155ppmであり、ゼアキサンチン結晶の水分含有量は32%である。
【0064】
(4)ゼアキサンチン結晶Dは、160gのゼアキサンチン結晶、28gのアスコルビン酸、10gのパルミチン酸アスコルビル、及び10gのショ糖脂肪酸エステルを混合することによって得ることができる。
【0065】
(5)異なる時間での色素保持率は、上記のゼアキサンチン結晶A~Dを60℃で加熱することによって測定することができる。測定結果は、表1に示される。
表1 異なる時間での色素保持率
【0066】
ゼアキサンチン結晶A~Dの色素保持率の比較を通じて、溶媒除去後のエタノール可溶性残留物が10ppmを超えるゼアキサンチン結晶B、カロテノイドを5倍超のエタノール水溶液と混合することによって得られたゼアキサンチン結晶C、及び前処理なしで得られたゼアキサンチン結晶Dと比較すると、ゼアキサンチン結晶Aの色素保持率は大幅に大きくなることがわかる。12.3%の水分含有量(10%~30%の範囲内)を有するゼアキサンチン結晶Aは、カロテノイドを4倍(3~5倍の範囲内)のエタノール水溶液と混合し、撹拌し、高速剪断分散し、抗酸化剤を添加し、エタノール可溶性残留物が8ppm(10ppm未満)になるまで溶媒を除去することによって得られる。
【0067】
幾つかの実施形態では、異なる異性体比を含むゼアキサンチン結晶も、実施形態A1による比較実験を行うために選択される。即ち、ゼアキサンチン結晶は、ゼアキサンチン(3R、3’R)-ゼアキサンチン及び(3R、3’S)-ゼアキサンチンの2つの異性体を含有し、2つの異性体は、ゼアキサンチン結晶の重量の80%超を占める。幾つかの実施形態では、2つの異性体(3R、3’R)-ゼアキサンチンと(3R、3’S)-ゼアキサンチンとの間の重量比は、(5%~15%):(95%~85%)の範囲内であってもよく、これは、実施形態A1のステップ(1)に従って調製されたゼアキサンチン結晶Aの色素保持率の結果に影響を及ぼさない。
【0068】
実施形態A2
【0069】
処理されたルテイン結晶は、178gのルテイン結晶を3倍の60%エタノール水溶液と混合し、45℃で30分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、20gのアスコルビン酸、1gのパルミチン酸アスコルビル、及び1gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、75℃で溶媒を除去することによって得ることができる。処理されたルテイン結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理されたルテイン結晶のエタノール可溶性残留物は7ppmであり、ルテイン結晶の水分含有量は10%である。50%の固形分を有する水溶液は、160gのトウモロコシデンプン、480gのスクロース、及び160gのヒドロキシプロピルメチルセルロース(15cPの粘度)を混合することによって得られる。60℃で撹拌及び分散後、水溶液は、90℃まで加熱され、一定の速度で45分間撹拌され、室温で置かれる。ゲル化壁材と処理されたルテイン結晶は混合され、撹拌され、乳化され、噴霧乾燥される。ルテイン製品Aが得られ、その色素溶解率が0.2%であrる。
【0070】
実施形態A3
【0071】
処理されたβ-カロチン結晶は、212gのβ-カロチン結晶を5倍の50%エタノール水溶液と混合し、40℃で40分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、17gのアスコルビン酸、25.5gのパルミチン酸アスコルビル、及び25.5gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、70℃で溶媒を除去することによって得られる。処理されたβ-カロチン結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理されたβ-カロチン結晶のエタノール可溶性残留物は5ppmであり、β-カロチン結晶の水分含有量は15%である。50%の固形分を有する水溶液は、160gのタピオカデンプン、480gのスクロース、及び160gのヒドロキシプロピルメチルセルロース(2.5cPの粘度)を混合することによって得られる。50℃で撹拌及び分散後、水溶液は、80℃まで加熱され、一定の速度で15分間撹拌され、室温で置かれる。ゲル化壁材と処理されたβ-カロチン結晶は混合され、撹拌され、乳化され、噴霧乾燥される。β-カロチン結晶製品Aが得られ、その色素溶解率が0.4%である。
【0072】
実施形態A4
【0073】
処理された複合結晶は、81gのβ-カロチン結晶、162gのルテインエステル結晶、81gのゼアキサンチン結晶、及び4倍の70%エタノール水溶液と混合し、50℃で55分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、73gのアスコルビン酸、1.5gのパルミチン酸アスコルビル、及び1.5gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、80℃で溶媒を除去することによって得られる。処理された複合結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理された複合結晶におけるエタノール可溶性残留物は3ppmであり、複合結晶の水分含有量は30%である。50%の固形分を有する水溶液は、100gのジャガイモデンプン、300gのスクロース、及び200gのヒドロキシプロピルメチルセルロース(粘度 of 5cP)を使用して調製される。70℃で撹拌及び分散後、溶液は、82℃まで加熱され、一定の速度で30分間撹拌され、室温で置かれる。ゲル化壁材と処理された複合結晶は混合され、撹拌され、乳化され、噴霧乾燥される。ルテインエステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンの比率が2:1:1である製品Aが得られ、その色素溶解率が0.26%である。
【0074】
実施形態A2~A4から、カロテノイドを3~5倍の50%~70%エタノール水溶液を混合し、撹拌し、高速剪断分散し、抗酸化剤を添加し、溶媒を除去することによって、エタノール可溶性残留物が10ppm未満で水分含有量が10%~30%のカロテノイド結晶を得ることがわかる。少なくともデンプンとセルロース誘導体を壁材として使用し、壁材と炭水化物を、1:(1~5)の重量比で混合し、50~70%の固形分を有する水溶液とする。前処理されたゲル化壁材は、水溶液を撹拌し、分散させることによって得られる。カロテノイド製剤は、処理されたカロテノイド結晶とゲル化壁材を混合することによって調製される。カロテノイド製剤の色素溶解率は1%未満であり、これは、カロテノイド製剤の使用中に衣服や舌などの汚れを引き起こしにくい。
【0075】
比較実施形態A5
【0076】
処理されたゼアキサンチン結晶は、178gのゼアキサンチン結晶を3倍の60%エタノール水溶液と混合し、45℃で30分間撹拌し、10,000rpmで分散させ、20gのアスコルビン酸、1gのパルミチン酸アスコルビル、及び1gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、75℃で溶媒を除去することによって得られる。処理されたゼアキサンチン結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理されたゼアキサンチン結晶におけるエタノール可溶性残留物は7ppmであり、処理されたゼアキサンチン結晶の水分含有量は12.8%である。50%の固形分を有する水溶液は、160gのタピオカデンプン、480gのスクロース、及び160gのヒドロキシプロピルメチルセルロース(10cPの粘度)を使用して調製される。処理されたゼアキサンチン結晶は、水溶液に添加される。ゼアキサンチン製品Bは、撹拌、乳化、及び噴霧乾燥後に得られる。ゼアキサンチン製品Bの色素溶解率は67.7%である。
【0077】
実施形態A2~A4と比較すると、比較実施形態A5の壁材は、ゲル化処理を行っていない(壁材をゲル化させるための加熱、撹拌、及び静止処理を行っていない)ため、調製された製品の色素溶解率が増大し、使用効果が低下することが分かる。
【0078】
比較実施形態A6
【0079】
200gのルテイン結晶、20gのアスコルビン酸、1gのパルミチン酸アスコルビル、及び1gのショ糖脂肪酸エステルを混合する。50%の固形分を有する水溶液は、160gのタピオカデンプン、480gのスクロース、及び160gのヒドロキシプロピルメチルセルロース(10cPの粘度)を使用して調製される。50℃で撹拌及び分散後、水溶液は、80℃まで加熱され、一定の速度で15分間撹拌され、室温で置かれる。ルテイン製品Bは、ゲル化壁材とルテイン結晶を混合し、撹拌し、乳化し、噴霧乾燥することによって得られ、その色素溶解率が30.2%である。
【0080】
実施形態A2~A4と比較すると、比較実施形態A6におけるルテイン結晶は、前処理されていない(ルテイン結晶がエタノール溶液と混合及び撹拌されておらず、高速剪断分散及び溶媒除去により前処理されていない)ため、調製された製品の色素溶解率が増大し、使用効果が低下することが分かる。
【0081】
比較実施形態A7
【0082】
処理されたルテインエステル結晶は、200gのルテインエステル結晶を3倍の60%エタノール水溶液と混合し、45℃で30分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、20gのアスコルビン酸、1gのパルミチン酸アスコルビル、及び1gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、75℃で溶媒を除去することによって得られる。処理されたルテインエステル結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理されたルテインエステル結晶におけるエタノール可溶性残留物は7ppmであり、処理されたルテインエステル結晶の水分含有量は10%である。処理されたルテインエステル結晶は、表2のゲル化壁材組成物にそれぞれ添加され、実施形態A2のゲル化方法に従って処理される。製品の効果は、以下の表2に示される。
表2 異なるゲル化壁材を使用した場合の溶解効果の比較
【0083】
実施形態A2~A4と比較すると、比較実施形態A7におけるルテインエステル製品A及びルテインエステル製品Bについては、1つのみの壁材(トウモロコシデンプン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)と炭水化物(スクロース)が組み合わせられ、ルテインエステル製品A及びルテインエステル製品Bの色素溶解率が増加し、使用効果が低下することが分かる。比較実施形態A7におけるルテインエステル製品Cの調製処方は炭水化物を有せず、ルテインエステル製品Cの色素溶解率が増加し、使用効果が低下する。比較実施形態A7におけるルテインエステル製品Dは、トウモロコシデンプン及びアラビアゴムノキを壁材として使用し、スクロースでゼラチン化するが、壁材と炭水化物の重量比が1:(1~5)の範囲内でなく、ルテインエステル製品Dの色素溶解率が増加し、使用効果が低下する。比較実施形態A7におけるルテインエステル製品Eは、粘度の高いヒドロキシプロピルメチルセルロースを壁材として使用し、ルテインエステル製品Eの色素溶解率が増加し、使用効果が低下する。実施形態A2~A4の製品は本開示の調製方法によって調製され、製品の色素溶解率は、比較実施形態A7の各製品の色素溶解率よりも低く、使用効果はより良好である。
【0084】
効果実施形態A8
【0085】
複合製品1は、特許CN108185424B(特許出願第CN201711456450.1号)の方法に従って調製されたルテイン、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを1:1:1の重量比で使用して得られる。複合製品2は、実施形態A2の方法に従って調製されたルテイン、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを1:1:1の重量比で使用して得られる。2つの製品の比較パラメータは以下の表3に示される。
表3 2つの製品の比較パラメータ
【0086】
複合製品1と複合製品2との比較を通じて、本開示(実施形態A2)の調製プロセスにより調製された複合製品2の色素溶解率は、特許CN108185424Bの調製方法に従って調製された複合製品1の色素溶解率よりも低いことがわかる。これにより、複合製品1に比べて、複合製品2は、手、舌及びその他の部分の汚れを引き起こしにくく、より良好な応用価値を有するため、実施形態A2を使用して調製された複合製品2の効果はより良好であることが示されている。
【0087】
効果実施形態A9: ソフトキャンディの応用評価
【0088】
溶液Iは、8gのゼラチン、44gの白砂糖、及び55gのグルコースシロップを量り、20%の固形分で水を加え、撹拌して溶解し、固形分が約85%になるまで砂糖を120℃で沸騰させ、pH=3~4に調整することによって得られる。
【0089】
実施形態A2の方法に従って調製された20gのルテイン製品A、又は比較実施形態A5の方法に従って調製された20gのゼアキサンチン製品Bを溶液Iに添加し、溶液を均一に撹拌し、90℃で40分間維持する。射出成形、乾燥後、ルテイン製品Aのソフトキャンディ及びゼアキサンチン製品Bのソフトキャンディを得、それらの外観をそれぞれ
図2A及び
図2Bに示す。ルテイン製品Aは、ソフトキャンディにおいて汚れ現象を有せず、ソフトキャンディ内に完全に保存され、栄養可視化効果を実現していることがわかる。しかしながら、ゼアキサンチン製品Bは、ソフトキャンディを赤く染め、ソフトキャンディの透明性が低下する。
【0090】
上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されない。本開示の範囲内で当業者が容易に想到できる変更又は置換は、本開示の保護範囲内に含まれるものとする。従って、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲によって定められるべきである。
【0091】
幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤は、前処理されたカロテノイドと、異なる組成又は異なる組成比を有する前処理されたゲル化壁材とを混合することによって調製されもよい。カロテノイド製剤の調製方法の詳細については、ここでは繰り返さない
図3及び関連説明を参照されたい。本開示の幾つかの実施形態では、カロテノイドが前処理され、デンプンが壁材の原料として使用され、前処理されたゲル化壁材が、壁材と炭水化物を(1~5):1の重量比で使用して調製され、そして、カロテノイド製剤が、前処理されたカロテノイドとゲル化壁材に従って調製される。これは、塩酸溶液中へのカロテノイドの放出率を低下させ、胃酸による破壊を回避し、同時に、カロテノイドの生物学的活性を維持することができるだけでなく、リン酸塩緩衝液中への放出率も比較的大きいため、腸での吸収を促す。また、カロテノイド製剤は、色素溶解率を効果的に低下させ、カロテノイド製品の使用中に衣服、舌、手などの汚れを回避することもできる。
【0092】
幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの原料は、ルテイン又はルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを重量比(1~3):(1~3):(1~3)で混合することによって得ることができる。幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの原料は、ルテイン又はルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを重量比(2~3):(1~2):(1~2)で混合することによって得ることができる。幾つかの実施形態では、前処理されたカロテノイドの原料は、ルテイン又はルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを重量比(1~2):(1~2):(1~2)で混合することによって得ることができる。
【0093】
幾つかの実施形態では、前処理されたゼアキサンチン結晶は、(3R、3’R)-ゼアキサンチン及び(3R、3’S)-ゼアキサンチンの2つの異性体を含み、2つの異性体は、ゼアキサンチン結晶の重量の80%を越えて占める。幾つかの実施形態では、(3R、3’R)-ゼアキサンチンと(3R、3’S)-ゼアキサンチンの2つの異性体の重量比は、(5~15%):(95~85%)の範囲内であってもよい。
【0094】
幾つかの実施形態では、前処理されたゲル化壁材の量は、カロテノイド製剤の重量の40%~70%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、前処理されたゲル化壁材の量は、カロテノイド製剤の重量の45%~60%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、前処理されたゲル化壁材の量は、カロテノイド製剤の重量の50%~70%の範囲内であってもよい。
【0095】
幾つかの実施形態では、前処理されたゲル化壁材の原料は、壁材と炭水化物を含んでもよい。幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物の重量比は、(1~5):1の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物の重量比は、(2~4):1の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物の重量比は、(3~3.5):1の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、壁材は、変性デンプンを含んでもよい。変性デンプンとは、デンプンを基に、物理的方法、化学的方法、又は酵素的方法を用いて、デンプン分子に新たな官能基を導入するか、又はデンプン分子のサイズ若しくはデンプン粒の性質を変化させることによって得られる高分子化合物を指す。幾つかの実施形態では、変性デンプンは、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを含んでもよいが、これに限定されない。幾つかの実施形態では、壁材はまた、アラビアゴムノキを含んでもよい。幾つかの実施形態では、壁材はまた、セルロース誘導体を含んでもよい。
【0096】
炭水化物に含まれる可能性のある成分、カロテノイドに含まれる可能性のある成分、及び前処理されたカロテノイド中の色素の合計含有量に関する詳細については、上記の関連する説明を参照されたい。
【0097】
幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は5%未満であってもよい。幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は4%未満であってもよい。幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は3%未満であってもよい。
【0098】
幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の胃腸液中への0.5時間の放出率は35%未満である。幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の胃腸液中への0.5時間の放出率は30%未満である。幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の胃腸液中への0.5時間の放出率は25%未満である。
【0099】
幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の胃腸液中への4時間の放出率は90%より大きい。幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の胃腸液中への4時間の放出率は95%より大きい。幾つかの実施形態では、カロテノイド製剤の胃腸液中への4時間の放出率は98%より大きい。
【0100】
図3は、本開示の幾つかの他の実施形態によるカロテノイド製剤を調製するための方法のプロセスを示す例示的なフローチャートである。プロセス300は、以下のステップを含んでもよい。
【0101】
ステップS310: カロテノイドとエタノール水溶液を混合し、撹拌し、高速剪断によって分散させ、抗酸化剤を添加し、エタノール溶液残留物が10ppm未満になるまで溶媒を除去することによって、前処理されたカロテノイドを取得する。
【0102】
ステップS310のより多くの詳細については、上記のステップS110の関連説明を参照されたい。
【0103】
ステップS320では、壁材と炭水化物を重量比(1~5):1で混合して第1固形分を有する水溶液を調製し、撹拌して分散させることにより、前処理されたゲル化壁材を得る。
【0104】
幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物はまた、(1~3):1の重量比で混合されてもよい。幾つかの実施形態では、壁材と炭水化物はまた、(4-5):1の重量比で混合されてもよい。
【0105】
第1固形分を有する水溶液のより多くの詳細については、
図1の関連説明を参照されたいが、ここでは繰り返さない。
【0106】
幾つかの実施形態では、水溶液は、50℃~70℃で撹拌されて分散し、80℃~90℃で15分間~45分間撹拌され、そして60℃~65℃に100分間~150分間冷却されてもよい。
【0107】
幾つかの実施形態では、壁材は、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを含んでもよい。幾つかの実施形態では、炭水化物は、グルコース又はグルコースシロップ及びそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0108】
ステップS330では、前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材を混合し、乳化し、及び顆粒化することによってカロテノイド製剤を得る。
【0109】
カロテノイド製剤の調製方法は、実施形態B1~B4、比較実施形態B5~B8、及び効果実施形態B9~B13を通じて以下に詳細に説明されてもよい。実施形態B1~B4における反応条件、反応材料、及び反応材料の量は、カロテノイド製剤の調製方法を例示するためだけのものであり、本説明の保護範囲を限定するものではないことに留意されたい。実施形態B1~B4は、それぞれ異なる反応条件及び材料の重量比を使用する実施形態である。比較実施形態B5~B8は、実施形態B2~B4の対照群である。効果実施形態B9~B13は、実施形態B2に従って調製された製品と他の製品の実際の効果の比較である。
【0110】
本開示において、特に明記しない限り、百分率及び含有量は質量により計算される。特に断りのない限り、使用される実験方法は従来の方法であり、材料及び使用される試薬は商業源から購入することができる。
【0111】
本開示におけるカロテノイド製剤の調製プロセスでは、この分野における従来の用量に従って、幾つかの成分のうちの1つ又は複数を選択的に添加することができる。幾つかの成分のうちの1つ又は複数の選択的添加のより多くの詳細については、説明を参照されたいが、ここでは繰り返さない。
【0112】
本開示では、以下の方法を使用して、製品を測定して評価する。
【0113】
本開示における色素溶解率を測定するための方法のより多くの詳細については、前述の説明を参照されたいが、ここでは繰り返さない。
【0114】
本開示の製品の加速安定性の評価方法のより多くの詳細については、前述の説明を参照されたいが、ここでは繰り返さない。
【0115】
本開示における放出率の決定については、USP<711>DISSOLUTIOを参照し、装置(Apparatus)2が使用され、回転速度が50rpmであり、放出率実験が、DELAYED-RELEASEDOSAGEFORMS方法Bに従って行われる。0.1N塩酸溶液が2時間以内に放出媒体として選択され、pH=6.8リン酸緩衝溶液が2時間~8時間以内に放出媒体として選択される。
【0116】
本開示における製品の細胞内での吸収及び利用率の評価方法は、以下の通りであるこの研究にはCaco2細胞株が使用される。対数増殖期内の細胞は、その後の細胞取り込み実験のために100mm細胞培養皿に均一に播種される。すべての実験は、第20世代のCaco2細胞を使用して実行される。試験するサンプルを滅菌ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解してボルテックス混合し、細胞培養培地を使用して20μMまで勾配希釈し、その後薬剤を添加して細胞を培養する。ブランク対照群では、細胞を通常の細胞培養培地で培養する。薬剤で処理された後、細胞をCO2インキュベーター内で24時間培養する。細胞を収集し、3mLのライセートを使用して細胞を溶解する。3mLのテトラヒドロフラン及び3mLの無水エタノールで色素を抽出する。紫外分光光度計により446nm(ルテイン)/453nm(ゼアキサンチン)/455nm(β-カロチン)の波長で吸光度を検出し、その吸光度を標準曲線に代入して細胞内のカロテノイド含有量を算出する。
【0117】
本開示におけるゼアキサンチンのキラル異性の決定:USP43に従って、メソーゼアキサンチン立体異性体組成物を検出する。
【0118】
実施形態B1: 結晶の安定性に対する結晶の加工方法の影響
【0119】
実施形態B1の具体的な内容は、実施形態A1の具体的な内容と同じであるため、詳細については前述の説明を参照されたい。
【0120】
実施形態B2
【0121】
処理されたルテイン結晶は、200gのルテイン結晶を3倍の60%エタノール水溶液と混合し、45℃で30分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、20gのアスコルビン酸、1gのパルミチン酸アスコルビル、及び1gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、75℃で溶媒を除去することによって得られる。処理されたルテイン結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理されたルテイン結晶のエタノール可溶性残留物は7ppmであり、処理されたルテイン結晶の水分含有量は10%である。50%の固形分を有する水溶液は、583gのオクテニルコハク酸デンプンナトリウムと195gのグルコースを使用して調製される。60℃で撹拌及び分散後、水溶液は、90℃まで加熱され、一定の速度で35分間撹拌される。水溶液は、60℃まで冷却され、100分間撹拌される。ルテイン製品Aは、ゲル化壁材と処理されたルテイン結晶を混合し、撹拌し、乳化し、噴霧乾燥することによって得られ、その色素溶解率が3.1%、30分間の放出率が30.5%であり、4時間の放出率が103.3%である。異なる時間でのルテイン製品Aの放出率は、以下の表4に示される。
表4 異なる時間での放出率
【0122】
実施形態B3
【0123】
処理されたβ-カロチン結晶は、233gのβ-カロチン結晶を5倍の50%エタノール水溶液と混合し、40℃で40分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、17gのアスコルビン酸、25.5gのパルミチン酸アスコルビル、及び25.5gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、70℃で溶媒を除去することによって得られる。処理されたβ-カロチン結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。β-カロチン結晶のエタノール可溶性残留物は5ppmであり、β-カロチン結晶の水分含有量は15%である。70%の固形分を有する水溶液は、560gのオクテニルコハク酸デンプンナトリウムと140gのグルコースを使用して調製される。50℃で撹拌及び分散後、水溶液は、80℃まで加熱され、一定の速度で50分間撹拌され、65℃まで冷却され、120分間撹拌される。β-カロチン製品Aは、ゲル化壁材と処理されたβ-カロチン結晶を混合し、撹拌し、乳化し、及び噴霧乾燥することによって得られ、その色素溶解率が2.3%であり、30分間の放出率が28.3%であり、4時間の放出率が100.2%である。異なる時間でのβ-カロチン製品の放出率Aは、以下の表5に示される。
表5 異なる時間での放出率
【0124】
実施形態B4
【0125】
処理された複合結晶は、106gのβ-カロチン結晶、212gのルテインエステル結晶、106gのゼアキサンチン結晶、及び4倍の70%エタノール水溶液と混合し、50℃で55分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、73gのアスコルビン酸、1.5gのパルミチン酸アスコルビル、及び1.5gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、80℃で溶媒を除去することによって得られる。処理された複合結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理された複合結晶におけるエタノール可溶性残留物は3ppmであり、処理された複合結晶の水分含有量は30%である。60%の固形分を有する水溶液は、416.7gのオクテニルコハク酸デンプンナトリウムと83.3gのグルコースシロップを使用して調製される。70℃で撹拌及び分散後、水溶液は、85℃まで加熱され、一定の速度で45分間撹拌され、63℃まで冷却され、130分間撹拌される。ルテインエステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンの比率が2:1:1である製品Aは、ゲル化壁材と処理された複合結晶を混合し、撹拌し、乳化し、噴霧乾燥することによって得られ、その色素溶解率が3.5%であり、30分間の放出率が22.4%であり、4時間の放出率が99.7%である。ルテインエステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンの比率が2:1:1である製品Aの異なる時間での放出率は、以下の表6に示される。
表6 異なる時間の放出率
【0126】
実施形態B2~B4から、カロテノイド結晶は、3~5倍の50%~70%エタノール水溶液を使用してカロテノイドを混合し、撹拌し、高速剪断分散させ、抗酸化剤を添加し、溶媒を除去することによって得られる。カロテノイド結晶のエタノール可溶性残留物は10ppm未満であり、カロテノイド結晶の水分含有量は、10%~30%の範囲内である。50~70%の固形分を有する水溶液は、少なくともデンプンを壁材として使用し、壁材と炭水化物を(1~5):1の重量比で混合して調製され、前処理されたゲル化壁材は、撹拌及び分散により得られる。カロテノイド製剤は、処理されたカロテノイド結晶とゲル化壁材を混合することによって調製される。カロテノイド製剤の色素溶解率は5%未満であり、カロテノイド製剤の使用中に衣服や舌などの汚れを引き起こしにくい。さらに、カロテノイド製剤の塩酸溶液中への0.5時間の放出率は35%未満であり、これは、カロテノイドが胃内で破壊されるのを効果的に保護する可能性がある。カロテノイドのリン酸塩緩衝溶液中への4時間の放出率は90%より大きく、これは、その後の腸内吸収を促す。
【0127】
比較実施形態B5
【0128】
処理されたβ-カロチン結晶は、200gのβ-カロチン結晶を3倍の60%エタノール水溶液と混合し、45℃で30分間撹拌し、及び10,000rpmでの高速剪断により分散させ、20gのアスコルビン酸、1gのパルミチン酸アスコルビル、及び1gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、溶媒を75℃で除去することによって得られる。処理されたβ-カロチン結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理されたβ-カロチン結晶中のエタノール可溶性残留物は7ppmであり、処理されたβ-カロチン結晶の水分含有量は12.8%である。β-カロチン製品Bは、583gのオクテニルコハク酸デンプンナトリウムと195gのグルコースを使用し、60℃で撹拌及び溶解して50%固形分を有する水溶液を調製し、β-カロチン結晶を添加し、撹拌し、乳化し、噴霧乾燥することによって得られる。その色素溶解率が65.8%であり、30分間の放出率が99.1%であり、4時間の放出率が98.9%である。
【0129】
実施形態B2~B4と比較すると、比較実施形態B5の壁材は、ゲル化処理を行っていない(壁材をゲル化させるための加熱、撹拌、及び冷却処理を行っていない)ため、比較実施形態B5により調製された製品の色素溶解率が増加し、製品の塩酸溶液中への放出率が増加する。これにより、胃液中のカロテノイドが破壊されて腸管にうまく吸収されなくなり、効果が悪化する可能性がある。
【0130】
比較実施形態B6
【0131】
処理されたルテインエステル結晶は、200gのルテインエステル結晶を3倍の60%エタノール水溶液と混合し、45℃で30分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、20gのアスコルビン酸、1gのパルミチン酸アスコルビル、及び1gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、75℃で溶媒を除去することによって得られる。処理されたルテインエステル結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理されたルテインエステル結晶におけるエタノール可溶性残留物は5.3ppmであり、処理されたルテインエステル結晶の水分含有量は25%である。50%の固形分を有する水溶液は、583gのオクテニルコハク酸デンプンナトリウムと195gのグルコースを使用して調製される。この水溶液は、60℃で撹拌及び分散後に、100℃まで加熱され、一定の速度で60分間撹拌される。ルテインエステル製品Aは、ゲル化壁材と処理されたルテインエステル結晶を混合し、撹拌し、乳化し、噴霧乾燥することによって得られる。その色素溶解率が85.2%であり、30分間の放出率が97.7%であり、4時間30分間の放出率が102.3%である。
【0132】
実施形態B2~B4と比較すると、比較実施形態B6の場合、壁材は、本開示に記載の調製方法においてゲル化方法以外の条件下(60℃で撹拌及び分散後、100℃まで加熱し、60分間均一に撹拌すること)で処理され、比較実施形態B6により調製された製品の色素溶解率が増加し、製品の塩酸溶液中への放出率が増加する。これにより、液中のカロテノイドが破壊されて腸管にうまく吸収されなくなり、効果が悪化する可能性がある。
【0133】
比較実施形態B7
【0134】
混合ルテイン結晶は、200gのルテイン結晶、20gのアスコルビン酸、1gのパルミチン酸アスコルビル、及び1gのショ糖脂肪酸エステルを混合することによって得られる。50%の固形分を有する水溶液は、583gのオクテニルコハク酸デンプンナトリウム及び195gのグルコースシロップを使用して調製される。60℃で撹拌及び分散後、水溶液は、90℃まで加熱され、一定の速度で35分間撹拌され、60℃まで冷却され、100分間撹拌される。ルテイン製品Bは、ゲル化壁材と混合ルテイン結晶を混合し、撹拌し、乳化し、噴霧乾燥することによって得られる。その色素溶解率が33.2%であり、30分間の放出率が90.1%であり、4時間の放出率が95.5%である。実施形態B2~B4と比較すると、比較実施形態B7のルテイン結晶は、前処理されていない(ルテイン結晶は、エタノール溶液と混合及び撹拌されておらず、高速剪断分散及び溶媒除去で前処理されていない)ため、比較実施形態B7により調製された製品の色素溶解率が増加し、製品の塩酸溶液中への放出率が増加する。これにより、胃液中のカロテノイドが破壊されて腸管にうまく吸収されなくなり、その効果が悪化する可能性がある。
【0135】
比較実施形態B8
【0136】
処理されたルテイン結晶は、200gのルテイン結晶を3倍の60%エタノール水溶液と混合し、45℃で30分間撹拌し、10,000rpmでの高速剪断により分散させ、20gのアスコルビン酸、1gのパルミチン酸アスコルビル、及び1gのショ糖脂肪酸エステルを添加し、75℃で溶媒を除去することによって得られる。処理されたルテイン結晶は、スタンバイ用に-20℃で冷凍される。処理されたルテイン結晶のエタノール可溶性残留物は7ppmであり、処理されたルテイン結晶の水分含有量は10%である。50%の固形分を有する水溶液は、583gのトウモロコシデンプン及び195gのグルコースを使用して調製される。60℃で撹拌及び分散後、この水溶液は、90℃まで加熱され、一定の速度で35分間撹拌され、60℃まで冷却され、100分間撹拌される。ルテイン製品Cは、ゲル化壁材と処理されたルテイン結晶を混合し、撹拌し、乳化し、噴霧乾燥することによって得られ、その色素溶解率が73.5%であり、30分間の放出率が99.5%であり、4時間の放出率が101.3%である。
【0137】
実施形態B2~B4と比較すると、比較実施形態B8の場合、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムはトウモロコシデンプンに置き換えられ、比較実施形態B8により調製された製品の色素溶解率が増加し、製品の塩酸溶液中への放出率が増加する。これにより、胃液中のカロテノイドが破壊されて腸管にうまく吸収されなくなり、製品の効果が悪化する可能性があり、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを壁材として使用する実施形態B2~B4によって調製された製品の効果がより良好であることが示されている。
【0138】
効果実施形態B9
【0139】
複合製品3は、ルテイン、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンの重量比が1:1:1となることによって得られる。ルテインは、特許CN108185424B(特許出願第CN201711456450.1号)の方法を使用して調製される。複合製品4は、ルテイン、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンの重量比が1:1:1となることによって得られる。ルテインは、実施形態B2の方法を使用して調製される。2つの製品の比較パラメータは以下の表7に示される。
表7 2つの製品の比較パラメータ
【0140】
複合製品3と複合製品4の比較を通じて、本開示の調製プロセス(実施形態B2)により調製された複合製品4の色素溶解率は、特許CN108185424Bの調製方法に従って調製された複合製品3の色素溶解率よりも低く、本開示の調製プロセス(実施形態B2)により調製された複合製品4の放出率は、特許CN108185424Bの調製方法に従って調製された複合製品3の放出率よりも低いことがわかる。塩酸溶液中への複合製品4の放出率(30分間内)は、複合製品3の放出率よりも著しく低く、複合製品4が胃内の胃液による破壊からカロテノイドを効果的に保護できることを示している。しかしながら、リン酸塩緩衝溶液中への複合製品4の放出率(4時間内)は98.2%であり、複合製品4が腸管に入った後にうまく吸収され、複合製品4の応用効果がより良好であることを示している。
【0141】
効果実施形態B10: ソフトキャンディの応用評価
【0142】
溶液IIは、8gのゼラチン、44gの白砂糖、及び55gのグルコースシロップを量り、20%の固形分で水を加え、撹拌して溶解し、固形分が約85%になるまで砂糖を120℃で沸騰させ、pH=3~4に調整することによって得られる。
【0143】
実施形態B2の方法に従って調製された20gのルテイン製品A、又は比較実施形態B5の方法に従って調製された20gのβ-カロチン製品Bを溶液IIに加え、得られた溶液を均一に撹拌し、90℃で40分間維持する。射出成形、乾燥によって、ルテイン製品Aのソフトキャンディ及びβ-カロチン製品Bのソフトキャンディを得、それらの外観をそれぞれ
図4A及び
図4Bに示す。ルテイン製品Aは、ソフトキャンディにおいて汚れ現象を有せず、ソフトキャンディ内に完全に保存され、栄養可視化効果を実現していることがわかる。しかしながら、β-カロチン製品Bは、ソフトキャンディを赤く染め、ソフトキャンディの透明性が低下する。
【0144】
効果実施形態B11: 固形飲料の応用評価
【0145】
実施形態B2の方法により調製されたルテイン製品Aと比較実施形態B5の方法により調製されたβ-カロチン製品Bをそれぞれ適量の0.03%のクエン酸、20%のマルトデキストリン、0.6%のザンサンガなどと混合して、固形飲料とし、醸造後に評価を行う。2つの製品の評価は表8のとおりである。
表8 2つの製品の比較パラメータ
【0146】
(実施形態B2の方法により調製された)ルテイン製品Aと(比較実施形態B5の方法により調製された)β-カロチン製品Bによって作れられた固形飲料の比較を通じて、ルテイン製品Aによって作れられた固形飲料は、舌を染めず、その応用効果がより良好である。
【0147】
効果実施形態B12: ルテインの生物学的利用能の比較
【0148】
0.5、1、2、4、6、8、及び10μMのルテイン標準溶液を調製し、紫外分光光度計により波長446nmでのルテイン標準溶液の吸光度を検出する。
図5に示すように、濃度(μM)を横座標として、吸光度を縦座標として用いて標準曲線を描く。実施形態B2の方法により調製されたルテイン製品A(XanGuardR ルテイン微粒子10% GF)と、ルテイン結晶を使用して、20μMの溶液を調製し、Caco2細胞を24時間処理し、
図6に示すように、細胞取り込み率を比較する(n=3、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。結果は、ルテイン結晶グループと比較して、ルテイン製品グループAが細胞取り込み率を著しく増加させ、その細胞取り込み率がルテイン結晶グループの細胞取り込み率の2.1倍であることを示している。本開示によって調製された製品は、ルテインの生物学的利用能を改善することが証明される。
【0149】
効果実施形態B13: ゼアキサンチンの生物学的利用能の比較
【0150】
ゼアキサンチンを使用して0.2、0.5、1、2、5、8、及び10μMの標準溶液を調製し、紫外分光光度計により波長453nmでの標準溶液の吸光度を検出する。
図7に示すように、濃度(μM)を横座標として、吸光度を縦座標として用いて標準曲線を描く。実施形態B2の方法により調製されたゼアキサンチン製品A(XanGuardR ゼアキサンチン微粒子5%GF)と、ゼアキサンチン結晶を使用して、20μMの溶液を調製し、Caco2細胞を24時間処理し、
図8に示すように、それらの細胞取り込み率を比較する(n=3、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。結果は、ゼアキサンチン結晶グループと比較して、ゼアキサンチン製品グループAが細胞取り込み率を著しく増加させ、その細胞取り込み率がゼアキサンチン結晶グループの細胞取り込み率の2.2倍であることを示している。本開示によって調製された製品は、ゼアキサンチンの生物学的利用能を改善することが証明される。
【0151】
この実施形態で使用されるゼアキサンチンは、(3R、3’R)-ゼアキサンチン及び(3R、3’S)-ゼアキサンチンの2つの異性体を含み、2つの異性体は、ゼアキサンチンの重量の80%超を占める。(3R、3’R)-ゼアキサンチン及び(3R、3’S)-ゼアキサンチンの2つの異性体の間の重量比が、(5-15%):(95-85%)の範囲内である場合、ゼアキサンチンは、ゼアキサンチンの細胞吸収に影響を与えない。細胞に吸収されたサンプル中のゼアキサンチンのキラル構造の検出結果は、
図9に示される。その結果は、ゼアキサンチンがCaco2細胞によって吸収された後も細胞内にメソソームの形態で存在し、他の形態に変換されないことを示す。これは、細胞吸収のための(3R、3’R)-ゼアキサンチン又は(3R,3’S)-ゼアキサンチンの特定の選択がないことを示す。
【0152】
上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されない。本開示で開示されている技術範囲内で当業者が容易に想到できる変更又は置換は、本開示の保護範囲内に含まれるものとする。従って、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲によって定められるべきである。
【0153】
幾つかの実施形態では、カロテノイドは、ルテインを含んでもよい。現在、伝統的なプロセスは一般的にケン化を採用してルテインを調製するが、調製プロセスで大量のアルカリが使用され、その結果、環境に優しくないアルカリ性廃水が発生し、調製された製品中のルテインの純度が低い。
【0154】
本開示の幾つかの実施形態では、マリゴールド抽出物と低級アルコールを混合することによってマリゴールド抽出物溶液を得、次に、マリゴールド抽出物溶液とアルコール混合溶液をそれぞれ予熱パイプラインに投入し、反応流量比を制御する。ケン化反応は、一定の温度と圧力で行われる。中和のためにケン化された反応溶液に酸を添加し、ルテインを抽出するためにケン化された反応溶液に複合化剤を添加し、その後の処理後にルテイン結晶が得られる。このプロセスでは、管式反応を使用して反応原料及び混合された反応原料を事前に予熱する。これは、ルテイン調製の連続反応を実現し、反応時間を大きく短縮することができる。同時に、加アルコール分解法を使用して、ほんの少量のアルカリでルテインエステルをルテインに変換する。さらに、複合体化法を使用してルテインを直接分離する。分離されたルテインの含有量と収率が高く、反応時間が短い。
【0155】
図10は、本開示の幾つかの実施形態によるルテインを調製するための方法のプロセスを示すフローチャートである。プロセス1000は、以下のステップを含んでもよい。
【0156】
ステップS1010: 第1パイプライン、第2パイプライン、及び第3パイプラインをそれぞれ「Y」型接続弁に接続する。
【0157】
幾つかの実施形態では、第1パイプライン及び第2パイプラインは、反応原料を輸送するための予熱パイプラインであってもよい。
図11に示すように、第1パイプラインは、マリゴールド抽出物溶液を輸送するために使用されてもよく、第2パイプラインは、アルコール混合溶液を輸送するために使用されてもよい。幾つかの実施形態では、第3パイプラインは、反応原料を混合し、ケン化反応を行うために使用される。幾つかの実施形態では、第1パイプライン及び第2パイプラインは、直管又はコイル管であってもよい。幾つかの実施形態では、第1パイプラインの直径及び第2パイプラインの直径は、0.2cm~2cmの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1パイプラインの直径及び第2パイプラインの直径は、0.5cm~1.6cmの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1パイプラインの直径及び第2パイプラインの直径は、1.0cm~1.5cmの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1パイプラインの長さ及び第2パイプラインの長さは、0.5m~3mの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1パイプラインの長さ及び第2パイプラインの長さは、1.5m~2.5mの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1パイプラインの長さ及び第2パイプラインの長さは、2m~2.5mの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第3パイプラインは、直管又はコイル管であってもよい。幾つかの実施形態では、第3パイプラインの直径は、1.2cm~1.6cmの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第3パイプラインの直径は、1.0cm~1.5cmの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第3パイプラインの直径は、0.7cm~0.9cmの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第3パイプラインの長さは、30m~100mの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第3パイプラインの長さは、3m~60mの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第3パイプラインの長さは、9m~20mの範囲内であってもよい。
【0158】
ステップS1020: マリゴールド抽出物と低級アルコールを混合し、マリゴールド抽出物と低級アルコールの混合物を第1流量で第1パイプラインに投入して、予熱することによって、マリゴールド抽出物溶液を得る。
【0159】
幾つかの実施形態では、低級アルコールは、C1~C4の低級アルコールであってもよい。幾つかの実施形態では、低級アルコールは、無水メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びn-ブタノールのうちの少なくとも1つであってもよい。幾つかの実施形態では、マリゴールド抽出物と低級アルコールの質量比は、1:(2~10)の範囲内である。幾つかの実施形態では、マリゴールド抽出物と低級アルコールの質量比は、1:(3~8)の範囲内である。幾つかの実施形態では、マリゴールド抽出物と低級アルコールの質量比は、1:(5-7)の範囲内である。
【0160】
第1流量は、マリゴールド抽出物と低級アルコールとの混合溶液(即ち、マリゴールド抽出物溶液)の流量である。幾つかの実施形態では、第1流量は、2mL/min~800mL/minの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1流量は、50mL/min~600mL/minの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1流量は、100mL/min~500mL/minの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1流量は、200mL/min~400mL/minの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1流量は、250mL/min~300mL/minの範囲内であってもよい。
【0161】
予熱温度は、予熱パイプライン(即ち、第1パイプラインと第2パイプライン)内の反応原料が過熱される温度を指し得る。幾つかの実施形態では、予熱温度は、60℃~100℃の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、予熱温度は、70℃~90℃の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、予熱温度は、80℃~85℃の範囲内であってもよい。
【0162】
ステップS1030: アルコール混合溶に投入し、マリゴールド抽出物溶液の流量とアルコール混合溶液の流量の比が第1流量比である。
【0163】
第2流量は、第2パイプラインに入るアルコール混合溶液の流量である。幾つかの実施形態では、第2流量は、2mL/min~1200mL/minの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第2流量は、50mL/min~1000mL/minの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第2流量は、100mL/min~800mL/minの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第2流量は、300mL/min~600mL/minの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第2流量は、400mL/min~500mL/minの範囲内であってもよい。
【0164】
幾つかの実施形態では、アルコール混合溶液の質量濃度は、0.01%~8%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、アルコール混合溶液の質量濃度は、0.1%~0.7%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、アルコール混合溶液の質量濃度は、0.3%~0.5%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、アルコール混合溶液は、ナトリウムエトキシドエタノール溶液、ナトリウムメトキシドメタノール溶液、カリウムメトキシドメタノール溶液、カリウムエトキシドエタノール溶液、水酸化ナトリウムアルコール溶液、及び水酸化カリウムアルコール溶液のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0165】
第1流量比は、反応原料が第3パイプラインに入るときに、マリゴールド抽出物溶液の流量とアルコール混合溶液の流量の比を指す。幾つかの実施形態では、第1流量比は、1:(1~5)の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1流量比は、1:(2~4)の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1流量比は、1:(3~4)の範囲内であってもよい。例えば、マリゴールド抽出物溶液の流量が150mL/minである場合、アルコール混合溶液の流量は250mL/minとなる。
【0166】
ステップS1040: マリゴールド抽出物溶液とアルコール混合溶液を第3パイプライン内で混合し、第3パイプラインを第1温度及び第1圧力に維持してケン化反応を行うことによって、ケン化された反応溶液を得る。
【0167】
図11は、本開示の幾つかの実施形態における、パイプラインを接続する「Y」型接続弁の模式図である。幾つかの実施形態では、
図11に示すように、第1パイプライン内のマリゴールド抽出物溶液と第2パイプライン内のアルコール混合溶液は、「Y」型接続弁を通過した後に、第3パイプライン内で混合される。混合されたマリゴールド抽出物溶液とアルコール混合溶液は、第3パイプライン内において第1温度及び第1圧力でケン化されてケン化されて、反応溶液が得られる。
【0168】
幾つかの実施形態では、第1温度は、60℃~120℃の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1温度は、80℃~110℃の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1温度は、90℃~100℃の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1圧力は、0~5MPaの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1圧力は、0.5MPa~4MPaの範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1圧力は、1MPa~3MPaの範囲内であってもよい。
【0169】
マリゴールド抽出物溶液とアルコール混合溶液の反応原料は、それぞれ第1パイプラインと第2パイプラインを通じて予熱された後、第3パイプラインに入り混合されてケン化反応が行われる。マリゴールド抽出物溶液とアルコール混合溶液を高温下で迅速にケン化してルテインを得ることで、ルテインを調製するために連続反応を実現することができる。さらに、「Y」型接続弁を使用して、混合反応のために3つのパイプラインを接続する。これは、ケン化時間を効果的に短縮し、手作業を減らし、人件費を削減することができる。
【0170】
ステップS1050: 前記ケン化された反応溶液に酸を添加して第1pHまで中和し、複合化剤を添加し、室温で撹拌してルテイン結晶を沈殿させ、濾過することによって第1濾過ケークを得る。
【0171】
幾つかの実施形態では、中和するために使用される酸は、氷酢酸、硫酸、リン酸、クエン酸、塩酸、リン酸二水素ナトリウム、及びリン酸二水素カリウムのうちのの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態では、酸とマリゴールド抽出物の質量比は、(5~10):1の範囲内である。幾つかの実施形態では、酸とマリゴールド抽出物の質量比は、(6~9):1の範囲内である。幾つかの実施形態では、酸とマリゴールド抽出物の質量比は、(7~8):1の範囲内である。幾つかの実施形態では、第1pHは、4~8の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1pHは、6~8の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、第1pHは、5~7の範囲内であってもよい。
【0172】
幾つかの実施形態では、複合化剤は、リン酸トリブチル又はトリオクチルアミンであってもよい。幾つかの実施形態では、複合化剤とマリゴールド抽出物の質量比は、(0.0005~0.01):1の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、複合化剤とマリゴールド抽出物の質量比は、(0.0005~0.005):1の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、複合化剤とマリゴールド抽出物の質量比は、(0.001~0.0025):1の範囲内であってもよい。
【0173】
高純度のルテイン結晶は、ケン化反応後に複合化剤で精製することによって得ることができる。これにより、ルテイン結晶の収率が向上し、精製に他の有機溶媒を使用しないため、環境に優しい方法で高純度のルテイン結晶のを調製することができる。
【0174】
ステップS1060: アルカリ-アルコール溶液を第1濾過ケークに加え、室温で撹拌し、濾過することによって第2濾過ケークを得、水を第2濾過ケークに加え、撹拌し、濾過し、乾燥することによってルテイン結晶を得る。
【0175】
幾つかの実施形態では、アルカリアルコール溶液中のアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カリウムのうちの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態では、アルカリアルコール溶液中のアルコールは、メタノール又はエタノールの少なくとも1つを含んでもよい。幾つかの実施形態では、アルカリアルコール溶液の質量濃度は、0.1%~2.0%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、アルカリアルコール溶液の質量濃度は、0.1%~1.0%の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、アルカリ-アルコール溶液の質量は、マリゴールド抽出物の質量の0.5倍~5倍である。幾つかの実施形態では、アルカリアルコール溶液の質量は、マリゴールド抽出物の質量の1倍~4倍である。幾つかの実施形態では、アルカリ-アルコール溶液の量は、マリゴールド抽出物の質量の2倍~3倍である。幾つかの実施形態では、第2濾過ケークに加えられる水の質量は、マリゴールド抽出物の質量の0.5倍~5倍であってもよい。幾つかの実施形態では、第2濾過ケークに加えられる水の質量は、マリゴールド抽出物の質量の1倍~4倍であってもよい。幾つかの実施形態では、第2濾過ケークに加えられる水の質量は、マリゴールド抽出物の質量の2倍~3倍であってもよい。幾つかの実施形態では、撹拌時間は、20分~60分の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、撹拌時間は、30分~50分の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、撹拌時間は、40分~45分の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、乾燥温度は、30℃~60℃の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、乾燥温度は、40℃~50℃の範囲内であってもよい。幾つかの実施形態では、乾燥温度は、40℃~45℃の範囲内であってもよい。
【0176】
ルテインの調製方法は、実施形態C1~C8及び比較実施形態C1~C5を通じて以下に詳細に説明され得る。実施形態C1~C8における反応条件、反応材料、及び反応材料の量は、ルテイン調製方法を例示するためだけのものであり、本説明の保護範囲を限定するものではないことに留意されたい。実施形態C1~C8は、異なる反応条件及び材料重量比を使用する実施形態であり、比較実施形態C1は、管式反応(「Y」型接続弁により接続された3つのパイプライン)を使用しない実施形態であり、比較実施形態C2は、加アルコール分解方法又は複合化剤を使用せずに、「Y」型接続弁により接続された3つのパイプラインを使用しない管式反応を行う実施形態である。比較実施形態C3~C5は、他の特許出願の方法によりルテインを調製するための実施形態である。比較実施形態C1~C5は、実施形態C1~C8の対照群である。
【0177】
実施形態C1
【0178】
(1)第1パイプライン及び第2パイプラインとして、長さ2m、直径0.8cmの2つのパイプラインを使用する。第1パイプラインと第2パイプラインは、「Y」型コネクタ(又は、「Y」型接続弁と呼ばれる)の両端に接続され、「Y」型コネクタの他端は、第3パイプラインに接続される。第3パイプラインは、長さ9m、直径0.8cmのパイプラインである。
【0179】
(2) 200kgのマリゴールド抽出物を取り、800kgの無水エタノールを添加し、マリゴールド抽出物と無水エタノールを、撹拌しながら150mL/minの流量で第1パイプラインにポンプで注入する。0.375kgのナトリウムエチラートを取って、800kgの無水エタノールに溶解し、得られた溶液を250mL/minの流量で第2パイプラインにポンプで注入する。
【0180】
(3)第3パイプライン内の反応温度を85℃に設定し、第3パイプライン内の圧力を0.2MPaに設定して、ケン化反応を行い、反応溶液を第3パイプラインの末端で受け取る。
【0181】
実験結果: 反応溶液の液相組成を測定し、反応物質のマリゴールド抽出物中のルテインエステルのエステル交換率は99.4%に達し、ルテインエステルの残存率は0.6%であり、ケン化時間は13分である。
【0182】
実施形態C2
【0183】
(1)第1パイプライン及び第2パイプラインとして、長さ2m、直径0.8cmの2つのパイプラインを選択する。第1パイプラインと第2パイプラインは、「Y」型コネクタ(又は、「Y」型接続弁と呼ばれる)の両端に接続され、「Y」型コネクタの他端は、第3パイプラインに接続される。第3パイプラインは、長さ54m、直径1.4cmのパイプラインである。
【0184】
(2) 20kgのマリゴールド抽出物を取り、60kgの無水エタノールを添加する。得られた溶液を、撹拌しながら200mL/minの流量で第1パイプラインにポンプで注入する。0.75kgのカリウムエチラートを取って、80kgの無水エタノールに溶解し、溶液を300mL/minの流量で第2パイプラインにポンプで注入する。
【0185】
(3)第3パイプライン内の反応温度を85℃に設定し、第3パイプライン内の圧力を0.2MPaに設定して、ケン化反応を行い、反応溶液を第3パイプラインの末端で受け取る。
【0186】
実験結果: 反応溶液の液相組成を測定し、反応物質のマリゴールド抽出物中のルテインエステルのエステル交換率は99.73%に達し、ルテインエステルの残存率は0.3%であり、ケン化時間は8分である。
【0187】
実施形態C3
【0188】
(1)第1パイプライン及び第2パイプラインとして、長さ3m、直径0.6cmの2つのパイプラインを選択する。第1パイプラインと第2パイプラインは、「Y」型コネクタ(又は、「Y」型接続弁と呼ばれる)の両端に接続され、「Y」型コネクタの他端は、第3パイプラインに接続される。第3パイプラインは、長さ48m、直径1.6cmのパイプラインである。
【0189】
(2)20,000kgのマリゴールド抽出物を取り、80,000kgの無水メタノールを添加する。得られた溶液を、撹拌しながら300mL/minの流量で第1パイプラインにポンプで注入する。50kgのナトリウムメトキシドを取って、80,000kgの無水メタノールに溶解し、溶液を500mL/minの流量で第2パイプラインにポンプで注入する。
【0190】
(3)第3パイプラインの反応温度を110℃に設定し、第3パイプライン内の圧力を1MPaに設定して、ケン化反応を行い、反応溶液を第3パイプラインの末端で受け取る。
【0191】
実験結果: 反応溶液の液相組成を測定し、反応物質のマリゴールド抽出物中のルテインエステルのエステル交換率は98.15%に達し、ルテインエステルの残存率は0.2%であり、ケン化時間は7分である。
【0192】
実施形態C4
【0193】
(1)第1パイプライン及び第2パイプラインとして、長さ3m、直径0.8cmの2つのパイプラインを選択する。第1パイプラインと第2パイプラインは、「Y」型コネクタ(又は、「Y」型接続弁と呼ばれる)の両端に接続され、「Y」型コネクタの他端は、第3パイプラインに接続される。第3パイプラインは、長さ96m、直径1.6cmのパイプラインである。
【0194】
(2) 200kgのマリゴールド抽出物を取り、800kgの無水エタノールを添加する。得られた溶液を、撹拌しながら600mL/minの流量で第1パイプラインにポンプで注入する。0.2kgの水酸化ナトリウムを取って、800kgの無水エタノールに溶解し、溶液を1000mL/minの流量で第2パイプラインにポンプで注入する。
【0195】
(3)第3パイプラインの反応温度を90℃に設定し、第3パイプライン内の圧力を2MPaに設定して、ケン化反応を行い、反応溶液を第3パイプラインの末端で受け取る。
【0196】
実験結果: 反応液の液相組成を測定し、反応物質のマリゴールド抽出物中のルテインエステルのエステル交換率は99.73%に達し、ルテインエステルの残存率は0.2%であり、ケン化時間は7分である。
【0197】
実施形態C1~C4を比較すると、ケン化反応を行うための管式反応により得られたルテインエステルのエステル交換率は98%を超え、ケン化時間は13分未満であることが分かり、管式反応が採用された場合、予熱パイプライン(即ち、第1パイプライン及び第2パイプライン)が一定の長さ(例えば、2 m)を有し、且つ予熱パイプラインが予熱温度(例えば、85℃)に維持されるため、反応原料が予熱パイプラインを通過するときに事前に予熱でき、後続のルテインエステルが高温条件下で急速なケン化を行ってルテインを得るのに便利であり、加アルコール分解方法により少量のアルカリのみでルテインエステルをルテインに変換することができることを示している。加アルコール分解方法では、ルテインエステルをアルコールで分解してルテインを得る。このプロセスでは、無水短鎖アルコールは、ルテインエステルを分解するための主反応物質として使用され、アルカリは触媒として使用される。即ち、このプロセスは、少量のアルカリのみを使用する必要があるため、ケン化時間を短縮するだけでなく、人件費や原材料費も削減する。
【0198】
実施形態C5
【0199】
(1)実施形態C1の反応溶液を回収し、氷酢酸を反応溶液に滴下し、反応溶液のpHを8に調整し、0.1kgのリン酸トリブチルを反応溶液に添加し、反応溶液を室温で撹拌して、ルテイン結晶複合体を析出させる。
【0200】
(2)0.5%水酸化ナトリウム溶液を調製する。0.5%水酸化ナトリウム溶液をルテイン複合体に添加し、室温で30分間撹拌した後に濾過し、ルテイン結晶を浄水で洗浄し、濾過ケークを40℃で乾燥する。得られた製品中のルテイン結晶の含有量は97.3%であり、ルテイン結晶の収率は94%に達する。
【0201】
実施形態C6
【0202】
(1)実施形態C2の反応溶液を回収し、氷酢酸を反応溶液に滴下し、反応溶液のpHを8に調整し、0.1kgのリン酸トリブチルを反応溶液に添加し、反応溶液を室温で撹拌して、ルテイン結晶複合体を析出させる。
【0203】
(2)1%水酸化ナトリウム溶液を調製する。1%水酸化ナトリウム溶液をルテイン複合体に添加し、この溶液を室温で30分間撹拌した後に濾過し、ルテイン結晶を浄水で洗浄し、濾過ケークを40℃で乾燥する。得られた製品中のルテイン結晶の含有量は92.3%であり、ルテイン結晶の収率は88%に達する。
【0204】
実施形態C7
【0205】
(1)実施形態C3の反応溶液を回収し、塩酸を反応溶液に滴下し、反応溶液のpHを7に調整し、10kgのリン酸トリブチルを添加し、反応溶液を室温で撹拌して、ルテイン結晶複合体を析出させる。
【0206】
(2)1.3%水酸化カリウム溶液を調製する。1.3%水酸化カリウム溶液をルテイン複合体に添加し、この溶液を室温で30分間撹拌した後に濾過し、ルテイン結晶を浄水で洗浄し、濾過ケークを40℃で乾燥する。得られた製品中のルテイン結晶の含有量は94.67%であり、ルテイン結晶の収率は92%である。
【0207】
実施形態C8
【0208】
(1)実施形態C4の反応溶液を回収し、濃硫酸を反応溶液に滴下し、反応溶液のpHを6に調整し、0.5kgのトリオクチルアミンを反応溶液に添加し、反応を室温で撹拌して、ルテイン結晶複合体を析出させる。
【0209】
(2)1.8%水酸化ナトリウム溶液を調製する。1.8%水酸化ナトリウム溶液をルテイン複合体に添加し、室温で30分間撹拌した後に濾過し、ルテイン結晶を浄水で洗浄し、濾過ケークを40℃で乾燥する。得られた製品中のルテイン結晶の含有量は95.57%であり、ルテイン結晶の収率は90%に達する。
【0210】
実施形態C5~C8を比較すると、ルテイン結晶を複合化剤により直接分離することができ、分離されたルテイン結晶の含有量は92%を超え、分離されたルテイン結晶の収率は88%を超えたことが分かる。複合体化によりルテインを抽出する方法は、抽出に有機溶媒を使用する必要がないため、環境に優しく、後処理プロセスを効果的に削減し、製造時間を短縮し、ルテイン結晶の生産効率を向上させることができる。
【0211】
比較実施形態C1
【0212】
(1)200kgのマリゴールド抽出物を反応釜に入れ、4kgの水酸化ナトリウム及び1200kgの無水エタノールを反応釜に加え、反応釜内の溶液を撹拌し、60℃で3時間反応させる。反応後に反応溶液を得り、反応溶液の液相組成を測定する。反応物質であるマリゴールド抽出物中のルテインエステルのエステル交換率は99.73%に達し、ルテインエステルの残存率は0.27%である。
【0213】
(2)得られた反応溶液に氷酢酸を滴下して、反応溶液のpHを8に調整し、0.1kgのリン酸トリブチルを反応溶液に添加し、反応溶液を室温で撹拌し、濾過し、析出したルテイン結晶複合体を得る。
【0214】
(3)1.3%水酸化カリウム溶液を調製する。1.3%水酸化カリウム溶液をルテイン複合体に添加し、室温で30分間撹拌した後に濾過し、ルテイン結晶を浄水で洗浄し、濾過ケークを40℃で乾燥する。得られた製品中のルテイン結晶の含有量は93.11%であり、ルテイン結晶の収率は88.02%である。
表9 異なる反応時間後のルテインエステルのエステル交換率及びルテインエステルの残存率
【0215】
比較実施形態C1では、表9に示すように、マリゴールド抽出物を反応釜に入れて反応させる。1時間の反応後、ルテインエステルのエステル交換率は84.72%であり、ルテインエステルの残存率は15.28%である。2時間の反応後、ルテインエステルのエステル交換率は90.94%であり、ルテインエステルの残存率は9.06%である。ケン化時間が3時間までの場合、ルテインエステルのエステル交換率は99.73%に達し、ルテインエステルの残存率は0.27%である。実施形態C4と比較すると、比較実施形態C1では、ルテインエステルのエステル交換率は3時間の反応後に99.73%に達するが、実施形態C4では、反応のために管式反応を使用したとき、ケン化時間がわずか7分の場合にルテインエステルのエステル交換率は99.73%に達し、「Y」型接続弁により接続されたパイプラインを使用する管式反応が高温で急速に反応してルテインを得ることができることを示し、ルテイン調製の連続反応を実現し、反応時間を大幅に低減し、同時に、管式反応が手作業を減らし、人件費を削減する。
【0216】
比較実施形態C2
【0217】
(1) 200kgのマリゴールド抽出物を反応釜に入れ、50kgの水酸化ナトリウム及び1200kgの95%エタノールを反応釜に加え、反応釜内の溶液を撹拌し、60℃で3時間反応させる。反応後に反応溶液を得、反応溶液の液相組成を測定する。ルテインエステルのエステル交換率は99.61%に達し、ルテインエステルの残存率は0.39%である。
【0218】
(2)得られた反応溶液に氷酢酸を滴下し、反応溶液のpHを6~7に調整し、1000kgの水を反応溶液に添加し、反応溶液を30分間撹拌し、濾過後に粗製ルテイン結晶を得る。800kgの95%エタノールを粗製ルテイン結晶に加え、反応釜の温度を45℃~50℃の範囲に維持し、反応溶液を30分間撹拌し、濾過後に濾過ケークを得る。濾過ケークを40℃で乾燥し、得られたルテイン結晶の含有量は88.52%であり、得られたルテイン結晶の収率は83.74%である。
表10 異なる反応時間のルテインエステルのエステル交換率及びルテインエステルの残存率
【0219】
比較実施形態C2では、表10に示すように、マリゴールド抽出物を反応釜に入れて反応させる。1時間の反応後、ルテインエステルのエステル交換率は77.22%であり、ルテインエステルの残存率は22.78%である。2時間の反応後、ルテインエステルのエステル交換率は94.27%であり、ルテインエステルの残存率は5.73%である。ケン化時間が3時間までの場合、ルテインエステルのエステル交換率は99.61%に達し、ルテインエステルの残存率は0.39%である。比較実施形態C1と比較すると、比較実施形態C2では、50kgの水酸化ナトリウムを使用するが、ルテインエステルのエステル交換率は、4kgの水酸化ナトリウムのみを使用する比較実施形態C1のエステル交換率よりも低く、比較実施形態C1における加アルコール分解(エタノールによるルテインエステルの分解)によるルテイン結晶の調製はアルカリの量を減らすことができ、且つ加アルコール分解によるルテイン結晶の調製はより完全になり、ルテインエステルの利用率を向上させることができることを示している。
【0220】
実施形態C4を比較実施形態C2と比較すると、実施形態C4は、より少ないアルカリを使用し(200kgのマリゴールド抽出物の同じ反応の場合、実施形態C4は1.2kgの水酸化ナトリウムを使用し、比較実施形態C2は50kgの水酸化ナトリウムを使用する)、ケン化時間がより短く(実施形態C4のケン化時間は7分であり、比較実施形態C2のケン化時間は3時間である)、ルテインエステルのエステル交換率がより高く(実施形態C4のルテインエステルのエステル交換率は99.73%、比較実施形態C2のルテインエステルのエステル交換率は99.61%である)、実施形態C4では、加アルコール分解方法と組み合わせた管式反応を使用するルテイン結晶の調製がアルカリの使用を削減し、環境に優しく、コストを節約し、反応時間を大幅に短縮し、従って経済的利益を改善することを示している。
【0221】
実施形態C5~C8と比較すると、比較実施形態C2では、複合化剤を使用せずに95%エタノールを使用してルテインを抽出し、製品中のルテイン結晶の含有量は88.52%であり、ルテイン結晶の収率は83.74%であり、実施形態C5~C8における複合化剤により抽出されたルテインのルテイン結晶の含有量及びルテイン結晶の収率よりも低い。これは、複合体化法はルテインをよりよく分離することができ、それにより、ルテイン結晶の含有量と収率を増加させ、抽出に大量の有機溶液の使用を回避し、後の段階での溶媒洗浄又は結晶化の必要性、及びルテインの純度を向上させるその他の操作をさらに削減することができることを示している。
【0222】
比較実施形態C1及び比較実施形態C2を実施形態C1~C4と比較すると、比較実施形態C1及び比較実施形態C2のケン化時間は3時間と長く、実施形態C1~C4の管式反応を使用するルテインの調製がルテインエステルからルテインを調製する反応時間を短縮できることを示している。
【0223】
比較実施形態C2を実施形態C1~C4と比較すると、比較実施形態C2では、200kgのマリゴールド抽出物は、反応のために50kgの水酸化ナトリウムを使用し、1時間の反応後にルテインエステルのエステル交換率はわずか77.22%である。実施形態C1では、200kgのマリゴールド抽出物は、反応のために0.375kgのナトリウムエチラートのみを使用し、ルテインエステルのエステル交換率は13分間の反応後に99.4%と高い。実施形態C2では、20kgのマリゴールド抽出物は、反応のために0.75kgのカリウムエチラートのみを使用し、ルテインエステルのエステル交換率は8分間の反応後に99.73%と高い。実施形態C3では、20000kgのマリゴールド抽出物は、反応のために50kgのナトリウムメチラートのみを使用し、ルテインエステルのエステル交換率は7分間の反応後に98.15%と高い。実施形態C4では、200kgのマリゴールド抽出物は、反応のために1.2kgの水酸化ナトリウムのみを使用し、ルテインエステルのエステル交換率は7分間の反応後に99.73%と高い。これは、比較実施形態C2において反応に大量の水酸化ナトリウムを使用し、実施形態C1~C4において加アルコール分解方法を使用してルテイン結晶を調製し、それにより、同じ質量のルテイン結晶を調製するときにアルカリの量を低減することができ、同時に、より短い反応時間内でルテインエステルのより高いエステル交換率を実現することができ、反応をより完全にし、ルテインエステルの利用率が向上することを示している。
【0224】
比較実施形態C2を実施形態C5~C8と比較すると、比較実施形態C2ではルテインを抽出するために複合化剤を使用せず、ルテインの含有量及びルテインの収率はより小さく、実施形態C1~C4ではルテインを抽出するために複合体化法を使用し、それにより、ルテイン結晶の含有量及びルテイン結晶の収率を増加させ、抽出のために大量の有機溶液を使用することを回避し、さらに後の段階での溶媒洗浄又は結晶化の必要性を減らしてルテインの純度を向上させることができる。
【0225】
比較実施形態C3
【0226】
ルテインは、特許出願CN106316909Aに記載の方法に従って調製される。
【0227】
(1)ルテイン含有量16.023%のルテイン抽出物を68.62kg調製し、40℃で保存する。質量濃度35.0%の水酸化カリウム溶液を37.28kg調製し、82.02Lの95%エタノール溶液と混合してアルコール・アルカリ溶液を形成する。まず、30.0kgのアルコール・アルカリ溶液及び20.0kgのルテイン抽出物をケン化装置に加え、ケン化装置を60℃に加熱して保持し、1.5時間予備ケン化して、ケン化ルテイン抽出物混合物を得る。
【0228】
(2) ケン化装置は、20kgの有効ケン化能力を有する。ルテイン抽出物及びアルコール・アルカリ溶液を、それぞれ1時間当たり16.27kg及び24.41kgの速度で、ケン化ルテイン抽出物混合物に添加し、3時間連続的に供給し、急速な連続ケン化には29.5分かかり、ルテインケン化溶液(lutein saponified solution)を得る。
【0229】
(3)ルテインケン化溶液(lutein saponification solution)を加熱水で希釈し、濾過し、濾過ケークを真空乾燥し、重量が11.01kgである。カロテノイドの合計含有量は87.32%であり、UV検出によるカロテノイドの収率は87.19%である。
【0230】
比較実施形態C3を実施形態C1~C8と比較すると、比較実施形態C3では管式反応も複合化剤も使用していない。比較実施形態C3における調製プロセスは、連続ケン化を開始する前に予備ケン化プロセスを有し、予備ケン化には1.5時間かかり、連続ケン化には30分近くかかり、合計時間は2時間であり、ケン化時間は長すぎる。予備ケン化プロセスは、複雑で操作が面倒である強制混合装置によって実現される。
【0231】
比較実施形態C4
【0232】
ルテインは、特許出願CN101260071Aに記載の方法に従って調製される。
【0233】
60gのルテイン抽出物、120mLのイソプロパノール、及び60mLのメタノールを秤量し、秤量した物質をケン化装置に加える。14gの水酸化カリウム及び6gのビタミンCを秤量し、秤量した物質を混合システムに加える。物質を十分に撹拌して混合し、70℃で6時間ケン化する。窒素をケン化システムに導入し、物質を減圧蒸留する。得られた濃縮液に250mLの水を加え、室温で40分間撹拌し、分液漏斗に移し、280mLのジクロロメタンを加えてルテインを抽出し、ジクロロメタン層と水層を形成する。水相を無色かつ中性になるまで洗浄して、水溶性不純物のないジクロロメタン層と水相とを得る。得られた水相に毎回塩化カルシウムを加えて脂肪酸石鹸を分離し、分離した脂肪酸カルシウム石鹸を合わせて濾過し、濾過ケークをジクロロメタンで洗浄し、濾液を水溶性不純物のないジクロロメタン層に組み込んだ後、減圧蒸留して溶媒を回収し、粗製ルテインを得て、14gの塩化カルシウムを加える。粗製ルテインに酢酸エチルと石油エーテルからなる混合溶媒24mLを加え、溶液を室温で30分間撹拌し、減圧濾過し、濾液が無色になるまで濾過ケークを無水メタノールで洗浄して、ルテイン結晶を得る。ルテイン結晶を50℃で72時間真空乾燥して、4.0131gのルテイン結晶を得る。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、全トランスルテインの含有量は92.71%である。
【0234】
比較実施形態C4を実施形態C1~C8と比較すると、比較実施形態C4では、管式反応と複合化剤を使用しておらず、調製プロセスにおけるケン化時間が6時間と高く、時間が長すぎ、生産能力が低い。さらに、大量の水酸化カリウムの使用及び抽出溶媒としてのジクロロメタンの使用は環境に優しくなく、溶媒の回収と処理も煩雑である。
【0235】
比較実施形態C5
【0236】
ルテインは、特許出願CN106748947Aに記載の方法に従って調製される。
【0237】
(1)100gのルテイン抽出物(ルテインエステルの含有量は32%である)を33℃で250mLのジクロロメタン溶液に溶解し、溶液を0.5時間撹拌して還流し、遠心分離して不溶物を除去し、遠心分離溶液を得る。
【0238】
(2)得られた遠心分離溶液に250mLのメタノールを加え、得られた溶液を33℃で0.5時間撹拌し還流して、均質溶液を形成し、10℃で10時間静置して結晶化させ、濾過して濾過ケークI(粗製ルテインエステル)を得、濾液を回収する。
【0239】
(3)得られた濾液を反応釜に移し、40℃で低沸点溶媒のジクロロメタンを回収し、残った溶液に350mLのn-ヘキサン及び13gの固体水酸化ナトリウムを加え、保護のために窒素を充填し、50℃で2.5時間ケン化することによりケン化溶液を得る。
【0240】
(4)得られたケン化溶液に600mLの脱イオン水を加え、得られた溶液を45℃で0.5時間撹拌し加熱し、得られた溶液のpHを酢酸で7.4に調整し、濾過して濾過ケークII(粗製ルテイン)を得る。
【0241】
(5)濾過ケークI(粗製ルテインエステル)及び濾過ケークII(粗製ルテイン)をエタノールの水溶液(イソプロパノール:水比=1:1)で洗浄し、洗浄した濾過ケークI及び洗浄した濾過ケークIIを25℃、-0.095MPaで10時間真空乾燥して、24.93gのルテインエステル及び2.71gのルテインを得る。紫外可視分光光度計検出により、ルテインエステルの純度は86.68%であり、ルテインの純度は89.01%である。HPLCによる検出により、全トランスルテインエステルの純度は91.38%であり、全トランスルテインの純度は92.16%である。原料の合計利用率は93.51%に達すると計算される。
【0242】
比較実施形態C5を実施形態C1~C8と比較すると、比較実施形態C5における調製プロセスは、環境に優しくないジクロロメタンを抽出溶媒として使用し、ケン化時間は2.5時間と長い。また、比較実施形態C5における調製プロセスは、ケン化前にマリゴールド抽出物中のルテインエステルを精製する必要があり、プロセスが煩雑である。
【0243】
本開示の幾つかの実施形態の可能な有益な効果は、以下を含むが、これらに限定されない。(1)カロテノイドが前処理され、デンプンとセルロース誘導体の混合物が壁材として使用され、重量比1:(1~5)の壁材と炭水化物が前処理されたゲル化壁材を調製するために使用され、カロテノイド製剤が前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材に基づいて調製され、これにより、塩酸溶液中のカロテノイドの放出率を低下させるだけでなく、胃酸による破壊も回避することができる。カロテノイド製剤は、カロテノイドの生物学的活性を維持し、色素溶解率を効果的に低下させ、カロテノイド製品の使用プロセスで衣服、舌、手などの染色を避けることができる。(2) カロテノイドが前処理され、デンプンが壁材として使用され、重量比(1~5):1の壁材と炭水化物が前処理されたゲル化壁材を調製するために使用され、カロテノイド製剤が前処理されたカロテノイド及びゲル化壁材に従って調製され、これにより、塩酸溶液中のカロテノイドの放出率を低下させ、胃酸による破壊を回避し、カロテノイドの生物学的活性を維持するだけでなく、リン酸塩緩衝液中での放出率も大きく、腸管吸収を促進する。カロテノイド製剤は、色素溶解率を効果的に低下させ、カロテノイド製品の使用中に衣服、舌、手などを染めるのを回避することもできる。(3)ルテインが加アルコール分解を組み合わせた管式反応によって調製され、それにより、ケン化時間を短縮するだけでなく、環境保護を実現し、人件費や原材料費を削減するようにほんの少量のアルカリでルテインエステルをルテインに変換することができる。(4)ルテインは、抽出に有機溶媒を使用する必要がなく、複合化剤を使用して精製されるため、環境に優しく、後処理プロセスを効果的に削減し、生産時間を短縮し、ルテイン結晶の生産効率を向上させることができる。異なる実施形態は異なる有益な効果を生み出す可能性があることに留意されたい。異なる実施形態では、生み出され得る有益な効果は、上記の任意の1つ又は組み合わせ、あるいは得られる任意の他の有益な効果であり得る。
【0244】
上記の実施形態は、本開示の技術的解決策を説明するためにのみ使用されており、技術的解決策を限定するためのものではないことに留意されたい。当業者は、技術的解決策の目的及び範囲から逸脱することなく、本開示の技術的解決策を修正又は等価に置き換えるものは、本開示の特許請求の範囲に含まれるべきであることを理解すべきである。
【0245】
一方、本発明は、本発明の実施形態を説明するために特定の用語を使用する。実施形態について、「1つの実施形態」、「一実施形態」、及び/又は「幾つかの実施形態」は、本開示の少なくともつの実施形態に関連する特定の特徴、構造又は特性を指す。従って、本開示の様々な部分における「一実施形態」又は「1つの実施形態」又は「代替の実施形態」への2つ以上の言及は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているとは限らないことが強調され、理解されるべきである。また、本開示の1つ以上の実施形態の特定の特徴、構造又は特性は、適切に組み合わせることができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイド製剤であって、前記カロテノイド製剤は、前処理されたカロテノイドと前処理されたゲル化壁材とを混合し、乳化し、顆粒化することによって取得され、前記前処理されたゲル化壁材の量は、前記カロテノイド製剤の重量の40%~80%であり、
前記前処理されたゲル化壁材の原料は、壁材と炭水化物を含み、
前記壁材は、変性デンプン又はデンプンとセルロース誘導体の混合物を含み、
前記炭水化物は、スクロース、グルコース、グルコースシロップ、キシロース、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、及び固形コーンシロップのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とするカロテノイド製剤。
【請求項2】
前記カロテノイドは、ルテイン、ルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、リコピン、α-カロチン、β-カロチン、カンタキサンチン、及びアスタキサンチンのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項3】
前記前処理されたカロテノイドの原料は、ルテイン又はルテイン脂肪酸エステル、ゼアキサンチン、及びβ-カロチンを(1~3):(1~3):(1~3)の重量比で混合することにより取得される、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項4】
前記前処理されたカロテノイドの色素含有量は70%より大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項5】
前記デンプンと前記セルロース誘導体は、1:(1~2)の重量比で混合される、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項6】
前記変性デンプンは、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項7】
前記壁材と前記炭水化物は、1:(1~5)
又は(1~5):1の重量比で混合される、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項8】
前記カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は1%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項9】
前記カロテノイド製剤の水中における色素溶解率は5%未満であり、前記カロテノイド製剤の胃腸液中への0.5時間の放出率は35%未満であり、前記カロテノイド製剤の胃腸液中への4時間の放出率は90%より大きい、ことを特徴とする請求項1に記載のカロテノイド製剤。
【請求項10】
カロテノイド製剤の調製方法であって、
カロテノイドとエタノール水溶液を混合し、撹拌し、高速剪断により分散させ、抗酸化剤を添加し、エタノール溶液残留物が10ppm未満となるまで溶媒を除去することにより、前処理されたカロテノイドを得るステップであって、前記前処理されたカロテノイドの水分含有量が10%~30%の範囲内であるステップと、
壁材と炭水化物を混合し、撹拌し、分散させることを通じて第1固形分を有する水溶液を調製することによって、前処理されたゲル化壁材を得るスッテプと、
前記前処理されたカロテノイドと前記前処理されたゲル化壁材を混合し、乳化し、顆粒化することによって、カロテノイド製剤を得るステップとを含む、ことを特徴とする調製方法。
【請求項11】
前記抗酸化剤は、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ショ糖脂肪酸エステル、トコフェロール、脂肪酸アスコルベート、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、プロピル没食子酸、及びtert-ブチルヒドロキシキノリンのうちの少なくとも1つを含む、ことを特徴とする請求項
10に記載の調製方法。
【請求項12】
前記壁材と前記炭水化物は、1:(1~5)又は(1~5):1の重量比で混合される、ことを特徴とする請求項
10に記載の調製方法。
【請求項13】
前記カロテノイドはルテイン結晶を含み、前記ルテイン結晶は、
第1パイプライン、第2パイプライン、及び第3パイプラインをそれぞれ「Y」型接続弁に接続するステップと、
マリゴールド抽出物と低級アルコールを混合し、マリゴールド抽出物と低級アルコールの混合物を第1流量で前記第1パイプラインに投入して、予熱することによってマリゴールド抽出物溶液を得るステップと、
アルコール混合溶液を第2流量で前記第2パイプラインに投入ステップであって、前記マリゴールド抽出物溶液と前記アルコール混合溶液の流量の比が第1流量比であるステップと、
前記マリゴールド抽出物溶液と前記アルコール混合溶液を前記第3パイプライン内で混合し、前記第3パイプラインを第1温度及び第1圧力に維持してケン化反応を行うことによって、ケン化された反応溶液を得るステップと、
前記ケン化された反応溶液に酸を添加して第1pHまで中和し、複合化剤を添加し、室温で撹拌してルテイン結晶を沈殿させ、濾過することによって第1濾過ケークを得るステップと、
アルカリ-アルコール溶液を第1濾過ケークに添加し、室温で撹拌し、濾過することによって第2濾過ケークを得、第2濾過ケークに水を添加し、撹拌し、濾過し、乾燥することによって、前記ルテイン結晶を得るステップと、を含むステップにより調製される、ことを特徴とする請求項
10に記載の調製方法。
【請求項14】
前記低級アルコールはC1~C4低級アルコールを含
み、前記アルコール混合溶液は、ナトリウムエトキシドエタノール溶液、ナトリウムメトキシドメタノール溶液、カリウムメトキシドメタノール溶液、カリウムエトキシドエタノール溶液、水酸化ナトリウムアルコール溶液、及び水酸化カリウムアルコール溶液のうちの少なくとも1つを含み、前記第1流量比は、1:(1~5)の範囲内であり、前記複合化剤と前記マリゴールド抽出物の質量比は、(0.0005~0.01):1の範囲内である、ことを特徴とする請求項
13に記載の調製方法。
【請求項15】
食品、飲料、ヘルスケア製品、医薬品の分野での応用を含む、1~
9のいずれか一項に記載のカロテノイド製剤の応用。
【国際調査報告】