(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】基板上に単結晶層を製造するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
C30B29/36 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554286
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 SE2022050178
(87)【国際公開番号】W WO2022191751
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523337856
【氏名又は名称】キーセルカービッド イ ストックホルム エービー
【氏名又は名称原語表記】KISELKARBID I STOCKHOLM AB
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドン,リン
(72)【発明者】
【氏名】エクマン,ジョハン ピエテル
(72)【発明者】
【氏名】アラサード,カッシーム
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE08
4G077DA02
4G077EG04
4G077EG16
4G077HA06
(57)【要約】
基板(20)上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステム(100)であって、当該システムは、ソース材料(10)及び基板(20)を収容するための空洞(5)を画定する内側容器(30)と、内側容器(30)を内部に収容するように配置された断熱容器(50)と、断熱容器(50)及び内側容器(30)を内部に収容するように配置された外側容器(60)と、外側容器(60)の外側に配置され、空洞(5)を加熱するように構成された加熱手段(70)とを備え、内側容器(30)は、基板(20)の成長表面が全体的にソース材料(10)に対して露出されるように、所定の距離で空洞(5)内の基板(20)の上方で固体モノリシックソース材料(10)を支持するための支持構造を含む。対応する方法も開示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(20)上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステム(100)であって、
ソース材料(10)及び基板(20)を収容するための空洞(5)を画定する内側容器(30)と、
前記内側容器(30)を内部に収容するように配置された断熱容器(50)と、
前記断熱容器(50)及び前記内側容器(30)を内部に収容するように配置された外側容器(60)と、
前記外側容器(60)の外側に配置され、前記空洞(5)を加熱するように構成された加熱手段(70)と、
を備え、
前記内側容器(30)は、前記基板(20)の成長表面が全体的に前記ソース材料(10)に対して露出されるように、前記空洞(5)内で前記基板(20)の上方の所定の距離に固体モノリシックソース材料(10)を支持するための支持構造を含み、
前記支持構造が、第1の高さ(H1)を有し且つ前記ソース材料(10)をその周辺端部に沿って支持するように配置された1つ以上の第1の脚部材(4)と、第2の高さ(H2)を有し且つ前記基板(20)を支持するように配置された1つ以上の第2の脚部材(3)とを備え、前記第1の高さ(H1)が前記第2の高さ(H2)よりも高い、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
第3の高さ(H3)を有し、且つ前記断熱容器(50)内で前記内側容器(30)を支持するように配置された少なくとも1つの容器支持体(32a)を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記内側容器(30)、前記断熱容器(50)及び前記外側容器(60)が、円筒形状であり、前記ソース材料(10)及び/又は前記基板(20)が円盤形状である、請求項1~2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記内側容器(30)の内径が、100~500mm、好ましくは150~300mmの範囲である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記空洞(5)内において前記内側容器(30)の頂部に配置された、高密度グラファイトで作られた加熱体(40)を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ソース材料(10)の表面積が、前記基板(20)の表面積以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記内側容器(30)が、下壁部(36)を有する上パーツ(31)と、上壁部(37)を有する下パーツ(32)とを備え、これらが互いに接合されて封止・漏れ防止接続を形成するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記上パーツ(31)の頂部部分(34)が第1の厚さ(T1)を有し、前記下パーツ(32)の基部部分(33)が第2の厚さ(T2)を有し、前記第1の厚さ(T1)は前記第2の厚さ(T2)以上である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記下パーツ(32)の内径が前記上パーツ(31)の内径よりも小さくて、レッジ(38)を形成しており、リング状部材(1、1´)が前記レッジ(38)上に配置されている、請求項7又は8に記載のシステム。
【請求項10】
前記リング状部材(1、1´)が、前記ソース材料(10)をその周縁端部に沿って支持するための複数の内側に延在する半径方向突出部(6)を備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記リング状部材(1、1´)が、タンタル、ニオブ、タングステン、ハフニウム及び/又はレニウムで作られている、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記断熱容器(50)が、頂部(50a)、中間部(50b)、及び底部(50c)を備え、前記断熱容器(50)が断熱剛性多孔質グラファイトで作られ、前記頂部(50a)及び前記底部(50c)の繊維方向が、前記断熱容器(50)の中心軸に直交し、前記中間部(50b)の繊維方向が、前記断熱容器(50)の中心軸に平行である、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記加熱手段(70)が、前記外側容器(60)に沿って移動可能な高周波コイルを備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
基板(20)上にエピタキシャル単結晶層を製造する方法であって、
ソース材料(10)及び基板(20)を収容するための空洞(5)を画定する内側容器(30)を設ける工程と、
前記内側容器(30)の空洞(5)内に前記基板(20)を配置する工程と、
前記基板(20)の成長表面が全体的に前記ソース材料(10)に対して露出されるように、前記内側容器(30)の空洞(5)内で、前記基板(20)の上方の所定の距離に固体モノリシックソース材料(10)を配置する工程と、
前記内側容器(30)を断熱容器(50)内に配置する工程と、
前記断熱容器(50)及び前記内側容器(30)を外側容器(60)内に配置する工程と、
前記空洞(5)を加熱するために前記外側容器(60)の外側に加熱手段(70)を設ける工程と、
前記空洞(5)を所定の低圧に排気する工程(S101)と、
不活性ガスを前記空洞(5)内に導入する工程(S102)と、
前記加熱手段(70)によって前記空洞(5)内の温度を所定の成長温度まで上昇させる工程(S103)と、
前記基板(20)上のエピタキシャル単結晶層の所定の厚さが達成されるまで、前記空洞(5)内の前記所定の成長温度を維持する工程(S104)と、
前記基板(20)を冷却する工程(S105)と
を含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、基板上での単結晶又は単結晶層の成長に関する。具体的には本発明は、昇華サンドイッチ法を用いた高品質な単結晶層の昇華成長に関する。より具体的には本発明は、昇華サンドイッチ法を用いた高品質な単結晶層の成長の新しい構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力レベル及び高温で動作可能な電子機器のエネルギ効率の向上に対する要求が高まっている。シリコン(Si)は、現在、パワーデバイスに最も一般的に使用されている半導体である。近年、Si系電力電子機器の性能が著しく進歩している。しかしながら、Siパワーデバイス技術が成熟するにつれて、この技術を使用して革新的な躍進を達成することはますます困難になっている。非常に高い熱伝導率(約4.9W/cm)、高い飽和電子ドリフト速度(約2.7×107cm/s)及び高い破壊電界強度(約3MV/cm)を有する炭化ケイ素(SiC)は、高温、高電圧及び高出力用途に適した材料である。
【0003】
SiC単結晶の成長に使用される最も一般的な技術は、物理気相輸送(Physical Vapor Transport:PVT)の技術である。この成長技術では、シード結晶及びソース材料は両方とも、ソースの昇華温度に加熱され、ソースとわずかに低温のシード結晶との間に熱勾配を生成するように反応るつぼ内に設置される。典型的な成長温度は、2200℃~2500℃の範囲である。結晶化のプロセスは、典型的には60~100時間継続し、その間に得られたSiC単結晶(本明細書ではSiCブール又はSiCインゴットと呼ばれる)は15~40mmの長さを有する。成長後、SiCブールは、主にスライス、研磨及び洗浄プロセスを含む一連のウェハリングステップ(ウェハ加工工程)によって処理されて、バッチのSiCウェハが製造される。当該SiCウェハは、十分に制御可能なドーピング(性)を持ち且つ数マイクロメートル~数十マイクロメートルの厚さを有するSiC単結晶層を化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)によって堆積することが可能な基板であるために使用可能である。
【0004】
昇華サンドイッチ法(sublimation sandwich method:SSM)は、物理気相輸送(PVT)成長の別の変形である。ソース材料としてのSiC粉末の代わりに、ソースは、単結晶又は多結晶構造のモノリシックSiCプレートであり、これは温度均一性を制御するために非常に有益である。ソースと基板との間の距離は、直接分子輸送(DMT)には短く、典型的には1mmであり、蒸気種がグラファイト壁と反応しないというプラスの効果を有する。SSMの典型的な成長温度は約2000℃であり、PVTの成長温度よりも低い。このようなより低い温度は、PVTの場合よりも高い結晶品質のSiC単結晶又は単結晶層を得るのを助けることができる。成長時、成長圧力は、約150μm/hの高い成長速度を達成するために、約1mbarの真空条件に維持される。ソースの厚さは通常0.5mmであるため、成長したSiC層はほぼ同じ厚さを有し、これは通常15~50mmの長さであるPVT成長ブールの厚さよりも薄い。したがって、SSMを使用して得られた試料は、バルク成長の観点からSiCミニブール、又はエピタキシの観点から超厚SiCエピタキシャル層のいずれかと見なすことができる。
【0005】
SSMでは、ソース及びシードがグラファイトるつぼに搭載され、その結果、ソースとシードとの間に小さな間隙が形成される。非特許文献1及び特許文献1で明らかにされているように、シードは、中央にスペーサの支持を伴ってソースの上方に搭載される。シードの成長面がソース側を向いている(フェイスダウン構成)ので、スペーサはシード面の一部(通常はシード端部領域)を被覆している。既存のSSM構成における問題は、シード全体で成長が実現されないことである。したがって、成長後、成長した領域は常に元のシード領域よりも小さい。これにより、半導体規格を満たす製造へのこの技術の適用が妨げられ、この規格は成長した試料が標準的な形状及び直径を有する必要がある。さらに、これによって、連続成長セッションにおいてシードとして使用される場合、結晶の直径を維持又は拡大することが不可能になる。上述した理由により、SSMは、既知の基板構成を適用する基板製造に使用することができない。
【0006】
したがって、上記の既知のシステム及び方法を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,918,937号(B1)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Effect of Tantalum in Crystal Growth of Silicon Carbide by Sublimation Close Space Technique」、Furushoら、Jpn.J.Appl.Phys. 第40巻、2001年、第6737~6740頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書に記載のシステム及び方法は、従来技術に関連する問題及び欠点を克服し、結晶品質、欠陥密度がより低いこと、基底面転位及び炭素含有物がないこと、結晶応力が最小であること、反りが最小であること、歪みが最小であること、成長速度がより速いこと、基板直径に対する柔軟性があること、直径の拡大が容易であること、成長システムへの投資がより少ないこと、並びに(結晶成長中の)電力消費がより少ないことに関して、PVTプロセスと比較して全ての利点を有するSSMを使用した基板製造を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記及び他の目的を考慮して、本開示の第1の態様によれば、基板上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステムであって、
当該システムは、ソース材料(原料物質)及び基板を収容するための空洞(キャビティ)を画定する内側容器と、内側容器を内部に収容するように配置された断熱容器と、断熱容器及び内側容器を内部に収容するように配置された外側容器と、外側容器の外側に配置され、空洞を加熱するように構成された加熱手段とを備え、
内側容器は、基板の成長表面が全体的にソース材料に対して露出されるように、所定の距離で空洞内の基板の上方に固体モノリシックソース材料を支持するための支持構造を含み、支持構造は、第1の高さを有し、且つソース材料をその周辺端部に沿って支持するように配置された1つ以上の第1の脚部材と、第2の高さを有し、且つ基板を支持するように配置された1つ以上の第2の脚部材とを備え、第1の高さは第2の高さよりも高い。
【0011】
上記のSSMにおける新規な構成により、著しいスペーサ関連の非成長領域又はマークを残すことなく、基板又はシード全体での成長を実現することが可能である。新しい構成では、ソースは、基板の成長表面を上に向けて、即ちフェイスアップ構成で、基板の上方に配置される。ソース及び基板は、特別に設計された構造によって互いに別々に支持される。より重要なことには、ソース材料(固体モノリシックプレートの形態のソース材料)を支持するために使用される構造は、基板を支持するために使用される構造と接触しない。代わりに、基板支持体は基板の裏面のみに接触し、基板の全領域の成長をもたらす。本発明の文脈において、「完全に露出した」という用語は、ソース材料に面する基板の成長表面の部分が被覆されていないか、又は別の構成要素と接触していないことを意味すると解釈されるべきである。脚部材の異なる高さにより、基板及びソースが互いに接触することなく異なる高さに配置されることが可能になる。
【0012】
一実施形態では、システムは、第3の高さを有し、且つ断熱容器内の内側容器を支持するように配置された少なくとも1つの容器支持体を更に備える。容器支持体は、断熱容器の底面から内側容器を上昇させることにより、熱伝導による内側容器から断熱容器への熱伝達を低減して最適な温度分布を可能にする。
【0013】
一実施形態では、内側容器、断熱容器、及び外側容器は円筒形状であり、ソース材料及び/又は基板は円盤形状である。円筒形状により、空洞内並びにソース及び基板上のほぼ均一な半径方向温度分布が容易になる。好ましくは、内側容器の内径は、100~500mm、好ましくは150~300mmの範囲である。この範囲は、半導体デバイスにおける標準的なウェハサイズに対応する。
【0014】
一実施形態では、システムは、空洞内の内側容器の頂部に配置された高密度グラファイトで作られた加熱体を更に備える。加熱体は、加熱手段との結合を可能にして、空洞内の加熱及び最適に近い温度分布をもたらす。
【0015】
一実施形態では、ソース材料の表面積は、基板の表面積以上である。ソースのより大きい又は等しい表面積は、基板の成長表面全体の最適な露出を保証し、ソース材料の支持構造の位置決めを容易にする。
【0016】
一実施形態では、内側容器は、下壁部を有する上部と、上壁部を有する下部とを備え、これらは互いに接合されて封止漏れ防止接続を形成するように構成される。2部品構成は、ソース及び基板を内部に配置した後の内側容器の組み立てを容易にする。
【0017】
一実施形態では、上部の頂部部分は第1の厚さを有し、下部の基部部分は第2の厚さを有し、第1の厚さは第2の厚さ以上である。この構成により、ソースの領域では基板の領域よりも熱損失が低くなるため、空洞内の最適な温度分布が容易になる。
【0018】
一実施形態では、下部の内径は上部の内径よりも小さく、レッジ(ledge)を形成し、リング状部材がレッジ上に配置される。この構成により、リング状部材を内側容器の下部の底面から離間して配置することができる。好ましくは、リング状部材は、その周縁端部に沿ってソース材料を支持するための複数の内側に延在する半径方向突出部を備える。したがって、ソース材料のための代替的な支持構造が達成される。
【0019】
一実施形態では、リング状部材は、タンタル、ニオブ、タングステン、ハフニウム及び/又はレニウムで作られる。これにより、リング状部材が炭素ゲッタとして作用する。
【0020】
一実施形態では、断熱容器は、頂部、中間部、及び底部を備え、断熱容器は、断熱剛性多孔質グラファイトで作られ、頂部及び底部の繊維方向は、断熱容器の中心軸に直交し、中間部の繊維方向は、断熱容器の中心軸に平行である。繊維方向のこの配向は、頂部及び底部の両方、並びに中間部を通る熱損失を低減する。したがって、改善された断熱がもたらされる。
【0021】
一実施形態では、加熱手段は、外側容器に沿って移動可能な高周波コイルを備える。加熱手段は、空洞の最適な加熱を可能にする。
【0022】
本開示の第2の態様では、基板上にエピタキシャル単結晶層を製造する方法であって、
ソース材料及び基板を収容するための空洞(キャビティ)を画定する内側容器を設けることと、
内側容器の空洞内に基板を配置することと、
基板の成長表面が全体的にソース材料に対して露出されるように、所定の距離で基板の上方で内側容器の空洞内に固体モノリシックソース材料を配置することと、
内側容器を断熱容器内に配置することと、
断熱容器及び内側容器を外側容器に配置することと、
空洞を加熱するために外側容器の外側に加熱手段を設けることと、
空洞を所定の低圧に排気することと、
不活性ガスを空洞内に導入することと、
加熱手段によって空洞内の温度を所定の成長温度まで上昇させることと、
基板上のエピタキシャル単結晶層の所定の厚さが達成されるまで、空洞内の所定の成長温度を維持することと、
基板を冷却することと、
を含む、方法が提供される。
【0023】
ここで、添付の図面を参照して、例として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の一実施形態による基板上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステムの概略断面図である。
【
図2a】本開示の一実施形態による内側容器の上部の概略断面図を示す。
【
図2b】本開示の一実施形態による内側容器の下部の概略断面図を示す。
【
図3】本開示の一実施形態による容器支持体の断面図及び上面図である。
【
図4】本開示の一実施形態による断熱容器の概略断面図を示す。
【
図5】本開示の一実施形態による、内部にソース材料及び基板が配置された状態の内側容器の概略断面図である。
【
図6a】
図5に示す実施形態に係る支持構造を構成する第1の脚部材の概略側面図である。
【
図6b】
図5に示す実施形態に係る支持構造を構成する第2の脚部材の概略側面図である。
【
図7】本開示の代替の実施形態による、内部にソース材料及び基板が配置された状態の内側容器の概略断面図である。
【
図8】
図7に示す実施形態による支持構造を構成するリング状部材の上面図及び断面図である。
【
図9】本開示の一実施形態による方法のステップを示すフローチャートである。
【
図10】本開示に従って製造された成長SiC試料の外観を示す図である。
【
図11a】本開示に従って生産された、直径150mmの厚さ1.5mmの4H-SiC単結晶エピタキシャル層についてのラマン分光法を使用した結晶品質評価を示すグラフである。
【
図11b】本開示に従って生産された、直径150mmの厚さ1.5mmの4H-SiC単結晶エピタキシャル層についてのX線回折(XRD)分光法を使用した結晶品質評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本開示による基板上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステムの詳細な説明を提示する。図面において、同様の参照番号は、いくつかの図面を通して同一又は対応する要素を示す。これらの図は例示のみを目的としており、決して本発明の範囲を限定するものではないことが理解されよう。
【0026】
図1は、基板上の単結晶層の成長を可能にする、高い成長速度及び高い再現性で昇華エピタキシを容易にするように設計されたシステム100の概略図である。ソース材料(原料物質)10及び基板20は、内側容器30の空洞(キャビティ)内に配置される。なお、ソース材料10及び基板20の詳細な構成については後述する。内側容器30は断熱容器50内に配置され、同様に断熱容器50は外側容器60内に配置される。内側容器30は、容器支持体32a上に置かれてもよく、容器支持体は、同様に断熱容器50の底部50cの頂部(トップ)にある。内側容器30の頂部には、加熱体40が配置されている。当該外側容器60の外側には、当該内側容器30の空洞を加熱するために使用することができる加熱手段70がある。
【0027】
一実施形態によれば、加熱手段70は、高周波加熱用の誘導コイルを備える。前記外側容器60は、この例では石英管であり、前記断熱容器50及び内側容器30は円筒形であり、それぞれ絶縁グラファイト発泡体及び高密度グラファイトで作られる。断熱容器50及び内側容器30はまた、高温に耐える能力を有し、高周波誘導コイルが加熱手段70として使用される場合に当該高周波誘導コイルへの結合も容易にする別の適切な材料で作られてもよい。加熱手段70は、容器を加熱するために使用され、これにより、ソース材料10を昇華させる。加熱手段70は、内側容器30内の温度及び熱勾配を調整するために垂直方向に移動可能である。ソース材料10と基板20との間の温度勾配はまた、当技術分野で既知であるように、上部(上パーツ)31及び下部(下パーツ)32の厚さ等の内側容器30の特性を変えることによって変更することができる。さらに、内側容器(図示せず)を排気するための、すなわち約10-4~10-6mbarの圧力を提供するためのポンプがある。
【0028】
加熱体40は、高密度グラファイトから作られる。また、加熱体40は、覆われていてもよい。内側容器30とともに、加熱体40は、RFコイル70によって生成された電磁場と結合して、システム内に十分な熱を生成する。加熱体40の形状は、円筒バルク状であることが好ましく、加熱体40の厚さ又は高さT3は、以下で更に説明するように、所望の温度分布を得るために内側容器30の高さと併せて調整されることが好ましい。加熱体40の直径は、好ましくは内側容器30の直径の50~150%、より好ましくは70~110%である。
【0029】
図2a及び
図2bは、高密度グラファイトで作られた円筒状又は管状の内側容器30を例示する図である。高密度グラファイトは、内側容器の内容物の加熱を容易にするために、高温に耐え、RFコイル70によって生成された電磁場への結合を容易にするために使用される。
図2aは、内側容器30の上部(上パーツ)31を示し、
図2bは、内側容器30の下部(下パーツ)32をそれぞれ示す。内側容器30の内径をソース材料10及び基板20の半径に合わせることで、これらを内側容器30内の中心に合わせやすくなる。直径が100mm、150mm、200mm又は250mmである
図2a及び
図2bに示す内側容器30は、それぞれ約50mm、100mm、150mm又は200mmの直径を有する基板上での成長に特に適している。上部(上パーツ)31の頂部部分34は第1の厚さT1を有し、下部(下パーツ)32の基部部分33は第2の厚さT2を有する。
【0030】
上述の加熱体40を参照すると、頂部部分34及び加熱体40の合計の高さ、すなわち第1の厚さT1と第3の厚さT3との合計は、基部部分33の高さ、すなわち第2の厚さT2よりも大きい。これは、内側容器30内の適切な垂直温度勾配を容易にするためであり、また、水平方向又は当該内側容器30の円筒軸にほぼ直交する方向又はエピタキシャル層成長方向に直交する方向の温度均一性を改善するためである。一例では、T2=15mm及び合計(T1+T3)=50mmである。
【0031】
ソース材料10と基板20との間の垂直温度勾配は、好ましくは1~5℃/mmであり、基板20の水平温度勾配は、好ましくは0.3℃/mm未満である。なお、垂直温度勾配の正の値とは、上部31(ソース材料10)側の温度が下部32(基板20)側よりも高いことを意味し、水平温度勾配の正の値とは、基板20の中心温度が基板20の端部よりも低いことを意味する。このような均一な温度分布は、エピタキシャル成長される単結晶層の厚さ及びドーピング均一性にとって重要である。
【0032】
さらに、内側容器30には、好ましくは、容器を十分に漏れ防止し、成長の安定性が損なわれるような量までの蒸気種、特にケイ素の損失を回避するために、封止接続をもたらすキャッチ又はねじ山等の締結手段35が設けられる。
図2bの下部(下パーツ)32には、その上壁37の外側に2mmピッチのねじ山35が設けられる。
図2aの上部(上パーツ)31には、その下壁36の内側に対応するねじ山35が設けられる。
【0033】
容器支持体32aは、高温に耐えることができる材料、好ましくは高密度グラファイト、又はタンタル(Ta)のような高融点の金属で作られる。容器支持体32aの構成を
図3に示す。
図3の容器支持体32aの構成は単なる例であり、容器支持体32aの他の可能な設計を限定しないことに留意されたい。容器支持体32aは、高さH3を有する。一実施形態では、高さH3は、均一な温度分布をもたらすために、任意選択的に加熱体40を含む、空洞5内の内側容器30の上方及び下方の自由空間H4がほぼ等しくなるように選択される。
【0034】
一実施形態では、下部(下パーツ)32の内径は上部(上パーツ)31の内径よりも小さく、したがって上壁37にレッジ(棚部)38を形成する。
図5から分かるように、上部31及び下部32のそれぞれの凹部によって形成された内側容器30の空洞5は、下部32の近くよりも上部31の近くで広い。レッジ(棚部)38は、以下で更に説明するように、空洞5内に他の構成要素を配置するための表面を提供する。
【0035】
図4は、上部50a、中間部50b及び底部50cを備える断熱容器50の例示的な図である。頂部50a及び底部50cは、断熱容器50の中心軸と直交する繊維方向(
図3の矢印)を有し、中間部50bは、中心軸と平行な繊維方向を有する。このような繊維配向は、熱放散を改善し、次いで温度均一性を改善するのを助けることができる。また、頂部50aは、成長時の温度監視を目的として、真ん中に計測孔50dを有する。断熱性を良好に保つためには、計測孔50dの大きさは、温度計測精度に影響を与えることなく、できるだけ小さくする必要がある。
【0036】
上述のシステム設計にはいくつかの利点がある。特に、当該システムは、基板及びソース材料におけるより高く、より均一な熱分布が達成されるように設計されている。これは、温度が高いほど成長速度が速くなり、熱分布が均一になるほどエピタキシャル層の品質が向上するため好ましい。断熱容器50及び内側容器30の幾何形状は、高品質の材料を達成することができる成長条件を得るために必要な所望の温度プロファイルを確立するのに役立つ。
図1~
図4に関連して例として特定の手段が与えられているが、所望の成長条件も与える他の設計もある。
【0037】
図5は、内側容器30内の構成要素1、3、10、20の配置を示す一実施形態の概略図である。ソース材料10は、ソース支持体4によって支持され、基板支持体3によって支持される基板20の上方に配置される。ソース材料10の直径は、基板20の直径よりも大きくあるべきである。例えば、基板20が150mmの直径を有する場合、ソース材料10は、160mmの直径を有するべきである。ソースの近くでは、炭素ゲッタ1が内側容器下部32の側壁37のレッジ38に搭載される。炭素ゲッタ1は、2200℃より高い融点を有し、タンタル、ニオブ、及びタングステン等の、SiCから蒸発した炭素種で炭化物層を形成する能力を有する材料で作ることができる。
【0038】
図6a及び
図6bは、基板支持体3及びソース支持体4の概略図を示す。ソース支持体4と基板支持体3との間の主な違いは、高さである。材料を安定的に支持するために、それぞれの数は3である。基板支持体3の場合、基板20を安定して支持できる限り、基板20との接触位置は厳密には画定されない。ソース支持体4の場合、
図5に示すように、ソース材料10との接触位置は、ソース材料10の端部にあるべきである。言い換えると、ソース材料10及び基板20の直径がそれぞれ160mm及び150mmである場合、ソース材料10との接触位置は、直径151mm~160mmの間の領域であるべきである。ソース支持体4及び基板支持体3は、高温に耐えることができる材料、好ましくは高密度グラファイト、又はタンタル(Ta)のような高融点の金属で作られる。
【0039】
上述したように、ソース材料10は、ソース支持構造4上の基板20の上方に配置されることになる。これを達成するために、ソース材料10は、その周縁端部に沿ってソース材料10を支持することを可能にするのに十分に剛性である固体モノリシックプレートである。一実施形態では、ソース材料10は、SSMを介して基板20上にエピタキシャル単結晶SiC層を製造するためのモノリシックSiCプレートである。しかしながら、例えば窒化アルミニウム(AlN)等、製造される所望のエピタキシャル層に応じて、他のソース材料も本開示のシステム100及び方法とともに使用することができる。
【0040】
ここで
図7を参照すると、ソース材料10のための支持構造の代替の実施形態が示されている。この実施形態では、支持構造はリング状であり、半径方向内側に向けられ、円周に沿ってほぼ規則的に分布する複数の突出部6を備える。突出部6は、ソース材料10をその周縁端部に沿って支持するための支持面を提供する。有利には、当該支持構造は、代替的な炭素ゲッタ1´に組み込まれ、代替的な炭素ゲッタ1´は、そのとき、ソース材料10の昇華から過剰な炭素を収集するとともに、基板20の上方の位置でソース材料10を支持するという二重の機能を果たす。
【0041】
図8は、リング状の炭素ゲッタ1の概略図を示す。炭素ゲッタ1の直径は、下部(下パーツ)32の内径と一致するべきである。例えば、内径が200mmの下部32の場合、炭素ゲッタ1の外径は198mmであるべきであり、炭素ゲッタ1の内径は、ソース材料10よりも大きい直径であるべきことが
図5から明らかである。直径160mmのソース材料10の場合、炭素ゲッタ1の内径は170mmであることが好ましい。理解され得るように、突出部6には、
図7の実施形態の代替的な炭素ゲッタ1´が設けられているが、
図5の実施形態の炭素ゲッタ1は突出部を有さない。
【0042】
内側容器30内のソース材料10及び基板20の位置、並びにソース材料10と基板20との間の相対距離は、ソース支持体4の第1の高さH1及び基板支持体3の第2の高さH2によって決定される。例えば、内側容器30の空洞5の全高が20mmである場合、H1は17mmであることが好ましい。SSMにおけるソース材料10と基板20との間の相対距離は、好ましくは1mmに設定され、H2は、1mmと基板20の厚さを減算するようにH1を用いた値に等しい。言い換えれば、基板20が1mmの厚さを有する場合、H2は15mmに等しい。
【0043】
ここで、上記のようなシステム設計を参照して方法を説明するが、当業者は、前記設計が一例にすぎず、所望の成長条件が達成される限り、他の設計も使用できることを知っている。
【0044】
図9は、この方法におけるプロセスフロー(手順)を示す。成長プロセスは、予熱段階S101を含み、システム100は、上記の説明に従って設定され、内側容器30は、従来の圧送手段を使用して排気される。10
-4mbar未満のベース真空レベル、好ましくは10
-4~10
-6mbarが通常望ましい。その後、不活性ガス、好ましくはアルゴン(Ar)を空洞5に挿入して、950mbar未満、好ましくは600mbarの圧力を得る(S102)。その後、システムは加熱される(S103)。本発明者らは、温度の最適な上昇が好ましくは10~50℃/分、より好ましくは約20~30℃/分の範囲であることを発見した。このような温度上昇により、ソースの良好な初期昇華及び核生成がもたらされる。1900~2000℃の範囲の所望の成長温度、典型的には約1950℃に達するまで温度を上昇させる。適切な成長温度、すなわち所望の成長速度を促進する成長温度に達すると、圧力は成長圧力までゆっくりと低下する。当業者は、どの温度で所望の成長速度が得られるかを知っている。所望の厚さのエピタキシャル層が達成されるまで、温度はこの成長温度に維持される。加熱段階に続く期間は成長段階S104と呼ばれ、この段階の間、温度はほぼ一定に保たれることが好ましい。一実施形態では、成長段階S104で得られるエピタキシャル層の厚さは1500μmである。
【0045】
所望の厚さの単結晶層が製造された場合、加熱が低減され、基板を冷却することができ、これを冷却段階S105と呼ぶ。製造時間を短縮するために、予熱及び冷却段階を最適化することができる。
【0046】
図10は、この方法を用いた成長SiC試料の外観を示す。厚さ1.5mmの4H-SiC単結晶層が、スペーサマーク(スペーサの痕跡)を残すことなく150mmのシード表面全体に成長した。
【0047】
図11a及び
図11bは、本発明の方法に従って生産された、直径150mmの厚さ1.5mmの4H-SiC単結晶エピタキシャル層についてのラマン分光法及びX線回折(XRD)分光法を使用した結晶品質評価を示す。
図11aは、4H-SiCの折返し横波音響(Folded Transversal Acoustic:FTA)、折返し縦波音響(Folded Longitudinal Acoustic:FLA)、折返し横波光学(Folded Transversal Optical:FTO)、及び折返し縦波光学(Folded Longitudinal Optical:FLO)のピークに対応する、204cm
-1、610cm
-1、776cm
-1、及び968cm
-1の波数を有するラマンピークを示す。
図11bは、この試料の(0008)面のXRDロッキングカーブを示す。半値全幅(full width at half maximum:FWHM)値は約18アーク秒であり、高品質の4H-SiC単結晶であることを示している。
【0048】
本開示は、論じられた実施形態に関連して詳細に説明されたが、本開示の発明的思想から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で当業者によって様々な修正が行われてもよい。さらに、本方法は、当業者によって容易に実現されるように、同じ空洞内に2つ以上の層を製造するために使用することができる。
【0049】
上記の全ての記載された代替実施形態又は実施形態の一部は、組み合わせが矛盾しない限り、本発明の概念から逸脱することなく自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1´ 炭素ゲッタ(リング状部材)
3 基板支持体(第2の脚部材)
4 ソース支持体(第1の脚部材)
5 空洞(キャビティ)
10 ソース材料(原料物質)
20 基板
30 内側容器
31 上部(上パーツ)
32 下部(下パーツ)
40 加熱体
50 断熱容器
70 加熱手段
100 システム
【国際調査報告】