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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】2つの炭化ケイ素層の同時成長
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20240221BHJP
   C30B 23/06 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554292
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 SE2022050180
(87)【国際公開番号】W WO2022191753
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2150279-4
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523337856
【氏名又は名称】キーセルカービッド イ ストックホルム エービー
【氏名又は名称原語表記】KISELKARBID I STOCKHOLM AB
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドン,リン
(72)【発明者】
【氏名】アラサード,カッシーム
(72)【発明者】
【氏名】エクマン,ジョハン ピエテル
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE08
4G077DA02
4G077DA18
4G077DA19
4G077EA02
4G077EA05
4G077ED06
4G077SA04
4G077SA07
(57)【要約】
第1及び第2のエピタキシャル単結晶層をそれぞれの第1及び第2の基板上に同時に製造するためのシステム(100)が提供されている。当該システムは、第1のソース材料及び第1の基板を収容するための第1のキャビティを画定する第1の内側容器(3)と、第2のソース材料及び第2の基板を収容するための第2のキャビティを画定する第2の内側容器(4)と、第1及び第2の内側容器(3、4)を内部に収容するように配置された断熱容器(6)と、断熱容器(6)並びに第1及び第2の内側容器(3、4)を内部に収容するように配置された外側容器(7)と、外側容器(7)の外側に配置され、第1及び第2のキャビティを同時に加熱するように構成された加熱手段(8)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2のエピタキシャル単結晶層をそれぞれの第1及び第2の基板上に同時に製造するためのシステム(100)であって、
第1のソース材料及び第1の基板を収容するための第1のキャビティを画定する第1の内側容器(3)と、
第2のソース材料及び第2の基板を収容するための第2のキャビティを画定する第2の内側容器(4)と、
前記第1及び第2の内側容器(3,4)を内部に収容するように構成された断熱容器(6)と、
前記断熱容器(6)並びに前記第1及び第2の内側容器(3,4)を内部に収容するように構成された外側容器(7)と、
前記外側容器(7)の外側に配置され、且つ前記第1及び第2のキャビティを同時に加熱するように構成された加熱手段(8)と
を備える、システム。
【請求項2】
前記断熱容器(6)内で、前記第1及び第2の内側容器(3,4)の間に配置された加熱体(5)を更に備え、前記加熱手段(8)は更に、前記加熱体(5)並びに前記第1及び第2のキャビティを同時に加熱するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の内側容器(3)、前記第2の内側容器(4)及び前記加熱体(5)が一体に形成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の内側容器(3)は前記第2の内側容器(4)の上方に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1及び第2の内側容器(3,4)は円筒形状であり、同じ直径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の内側容器(3)は上部及び底部を備え、
前記第2の内側容器(4)は上部及び底部を備え、
前記第1の内側容器(3)の底部は、前記第2の内側容器(4)の上部と本質的に同一である、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1のキャビティ内で前記第1の基板から所定の距離に前記第1のソース材料を配置するための第1の手段(314)と、
前記第2のキャビティ内で前記第2の基板から所定の距離に前記第2のソース材料を配置するための第2の手段(325)と
を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のソース材料は前記第1の基板の下方に配置され、
前記第2のソース材料は前記第2の基板の上方に配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記断熱容器(6)及び前記外側容器(7)は円筒形状であり、前記第1及び第2のソース材料並びに前記第1及び第2の基板はディスク形状である、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の内側容器(3)の内部に配置された第1の炭素ゲッターと、
前記第2の内側容器(4)の内部に配置された第2の炭素ゲッターと
を更に備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記加熱手段(8)は前記外側容器(7)に沿って移動可能である、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
第1及び第2のエピタキシャル単結晶層をそれぞれの第1及び第2の基板上に同時に製造する方法であって、
第1のソース材料及び第1の基板を収容するための第1のキャビティを画定する第1の内部容器(3)を提供するステップと、
第2のソース材料及び第2の基板を収容するための第2のキャビティを画定する第2の内側容器(4)を提供するステップと、
前記第1のソース材料及び前記第1の基板を前記第1のキャビティ内に配置すると共に、前記第2のソース材料と前記第2の基板を前記第2のキャビティ内に配置するステップと、
前記第1及び第2の内側容器(3,4)を断熱容器(6)内に配置するステップと、
前記断熱容器(6)を外側容器(7)内に配置するステップと、
前記外側容器(7)の外側に加熱手段(8)を設けて、前記第1及び第2のキャビティを同時に加熱するステップと、
前記第1及び第2のキャビティを所定の圧力まで排気するステップと、
不活性ガスを前記第1及び第2のキャビティに導入するステップと、
前記加熱手段(8)によって前記第1及び第2のキャビティ内の温度を同時に所定の成長温度まで上昇させるステップと、
それぞれの第1及び第2の基板上の第1及び第2のエピタキシャル単結晶層の所定の厚さが達成されるまで、前記第1及び第2のキャビティ内で前記所定の成長温度を維持するステップと、
前記第1及び第2の基板を冷却するステップと
を含んでなる、方法。
【請求項13】
前記第1及び第2のソース材料はモノリシック炭化ケイ素である、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項14】
前記第1及び第2のソース材料並びに前記第1及び第2の基板をそれぞれの前記第1及び第2のキャビティ内に配置する前記ステップは、
前記第1のソース材料を前記第1の基板の下方に配置するステップと、
前記第2のソース材料を前記第2の基板の上方に配置するステップと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の内側容器(3,4)を断熱容器(6)内に配置する前記ステップが、前記第1の内側容器(3)を前記第2の内側容器(4)の上方に配置するステップを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の内側容器(3)と前記第2の内側容器(4)との間に加熱体(5)を設けるステップを更に含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2のキャビティの温度を上昇させる前記ステップは、前記加熱体(5)の温度を同時に上昇させることを更に含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、単結晶炭化ケイ素層の昇華(又は凝華)成長のためのシステム及び方法に関する。具体的には、本発明は、2つのエピタキシャル単結晶炭化ケイ素層を同時に成長させるためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高い電力レベル及び高温で動作することができる電子機器のエネルギー効率の向上に対する要求が高まっている。ケイ素(Si)は、現在、パワーデバイス用半導体で最も一般的に使用されている材料であり、その高い熱伝導率、高い飽和電子ドリフト速度及び高い破壊電界強度を持つ炭化ケイ素(SiC)は、非常に適した材料である。
【0003】
昇華(又は凝華)によって単結晶SiC層を成長させるために使用される最も一般的な技術は、物理的気相輸送(PVT)によるものである。この技術では、単結晶層が成長する種結晶及びソース材料をるつぼに入れ、粉末の形態であることが多いソース材料の昇華温度まで加熱する。続いて、ソース材料からの蒸気種が種結晶上に堆積し、そこから単結晶層が成長することができる。しかしながら、原料として粉末を使用することには、いくつかの欠点がある。粉末は、製造工程の結果として不純物が含まれることが多い。更に、粉末内の熱分布は十分に均一化されないため、粉末の昇華の制御が不十分になる。更に不利な点は、粉末の固体粒子がシード上に落下し、最終的な結晶構造中に介在物や不純物が生じるリスクがあることである。
【0004】
PVTのバージョンは、昇華サンドイッチ法(SSM)であり、粉末の代わりに、モノリシックSiCプレートがソース材料として使用される。プレートの使用は、例えば、ソース材料の温度均一性を制御するために有益である。この方法の別の利点は、ソース材料と種結晶/基板との間の距離が短いことで、蒸気種がるつぼの壁と反応しないというプラスの効果がある。
【0005】
しかしながら、このプロセスはまだ時間がかかり、更に一度に2つ以上の単結晶を製造するのには適していない。SiCナノ結晶の需要が増加するにつれて、品質を維持し、又は更には向上させながら、製造能力と効率を高める必要がある。1つ以上のSiC単結晶を同時に成長させるためのシステムは、特許文献1(EP2664695 A1)に開示されている。2つの単結晶はそれぞれ2つの成長区画で製造され、単一区画に収められているソース材料は両方の成長区画に供給される。更にソース材料は粉末状である。
したがって、上記で概説した問題の少なくともいくつかを克服する改良されたシステム及び方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2664695号(A1)
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載のシステム及び方法は、第1のソース材料及び第1の基板を収容するための第1のキャビティを画定する第1の内側容器と、第2のソース材料及び第2の基板を収容するための第2のキャビティを画定する第2の内側容器と、第1の内側容器及び第2の内側容器を内部に収容するように構成された断熱容器と、断熱容器並びに第1の内側容器及び第2の内側容器を内部に収容するように構成された外側容器と、外側容器の外側に配置され、第1のキャビティ及び第2のキャビティを同時に加熱するように構成された加熱手段とを備え、それぞれの第1及び第2の基板上に第1のエピタキシャル単結晶層及び第2のエピタキシャル単結晶層を同時に製造するためのシステムを提供することによってこれらの問題を克服する。
【0008】
2つのキャビティを画定する2つの容器を提供することにより、両方とも同じ断熱容器内に配置され、製造能力を2倍にすることができる。2つの単結晶層の製造は、1つのシステムを使用して達成することができるので、製造された層あたりのエネルギー消費は少なくとも50%低減される。
【0009】
本開示の一実施形態では、断熱容器内に、第1及び第2の内側容器の間に配置された加熱体が更に提供され、加熱手段は、加熱体並びに第1及び第2のキャビティを同時に加熱するように更に構成されている。
【0010】
加熱体は、システム全般に、特に第1及び第2のキャビティに均等かつ同時に熱を分配する蓄熱器の機能を有する。この配置では、1つの単一加熱体で2つのキャビティを加熱するのに十分であり、よりエネルギー効率がよく、したがってエネルギー消費を低減することができる。
【0011】
本開示の一実施形態では、第1の内側容器、第2の内側容器及び加熱体は一体に形成される。
【0012】
本開示の一実施形態では、第1の内側容器は、第2の内側容器の上方に配置される。更に、第1及び第2の内側容器は、円筒形状であり、同じ直径を有する。
【0013】
本開示の一実施形態では、第1の内側容器は上部と底部とからなり、第2の内側容器は上部と底部とからなり、第1の内側容器の底部は第2の内側容器の上部と本質的に同一である。
【0014】
第1の内側容器の底部と第2の内側容器の上部とが本質的に同一であるため、2つのキャビティ内の熱降下が等しいという利点がある。
【0015】
本開示の一実施形態は、第1のキャビティ内の第1の基板から所定の距離に第1のソース材料を配置する第1の手段と、第2のキャビティ内の第2の基板から所定の距離に第2のソース材料を配置する第2の手段とを備える。
【0016】
ソース材料とそれぞれの基板との間の距離を制御することにより、2つの単結晶層が同時にかつ均一に成長することが保証される。
【0017】
本開示の一実施形態では、第1のソース材料は第1の基板の下方に配置され、第2のソース材料は第2の基板の上方に配置される。
【0018】
この配置は、第1の内側容器が第2の内側容器の上方に配置され、したがってシステムの中心により近い第1及び第2のソース材料を提供する場合に、特に有益である。更に、内側容器の間に加熱体を配置すれば、ソース材料は加熱体に近づき、したがって昇華温度に十分に速く到達するために、初期温度の上昇が十分に速くなる。
【0019】
本開示の一実施形態では、断熱容器及び外側容器は円筒形状であり、第1及び第2のソース材料並びに第1及び第2の基板はディスク形状である。
【0020】
本開示の一実施形態は、それぞれの第1及び第2の内側容器内に配置された第1及び第2の炭素ゲッター(carbon getter)を更に備える。
【0021】
本開示の一実施形態では、加熱手段は、外側容器に沿って移動可能である。
【0022】
この機能により、第1及び第2のキャビティ内の温度及び熱降下を調整することができるという効果が得られる。
【0023】
本開示の目的はまた、それぞれの第1及び第2の基板上に第1及び第2のエピタキシャル単結晶層を同時に製造する方法を提供することであり、この方法は、第1のソース材料及び第1の基板を収容するための第1のキャビティを画定する第1の内側容器を提供するステップと、第2のソース材料及び第2の基板を収容するための第2のキャビティを画定する第2の内側容器を提供するステップと、第1のソース材料及び第1の基板を第1のキャビティ内に配置し、第2のソース材料及び第2の基板を第2のキャビティ内に配置するステップと、第1及び第2の内側容器を断熱容器内に配置するステップと、断熱容器を外側容器内に配置するステップと、第1のキャビティと第2のキャビティを同時に加熱するために外側容器の外側に加熱手段を設けるステップと、第1及び第2のキャビティを所定の圧力まで排気するステップと、第1及び第2のキャビティ内に不活性ガスを導入するステップと、加熱手段により、第1及び第2のキャビティ内の温度を同時に所定の成長温度まで上昇させるステップと、それぞれの第1及び第2の基板上の第1のエピタキシャル単結晶層及び第2のエピタキシャル単結晶層の所定の厚さが達成されるまで、第1のキャビティ及び第2のキャビティ内の所定の成長温度を維持するステップと、第1及び第2の基板を冷却するステップとを含む。
【0024】
第1及び第2の内側容器を提供し、両方を同じ断熱容器内に配置し、同じ加熱手段を使用して両方を加熱することによって、2つのエピタキシャル単結晶層を1つのシステムで同時に製造することができる。製造は、よりエネルギー効率が高く、スペース効率が高く、製造時間が短縮される。
【0025】
本開示の一実施形態では、第1及び第2のソース材料はモノリシック炭化ケイ素である。
【0026】
本開示の一実施形態では、第1及び第2のソース材料並びに第1及び第2の基板をそれぞれの第1及び第2のキャビティ内に配置するステップは、第1のソース材料を第1の基板の下方に配置するステップと、第2のソース材料を第2の基板の上方に配置するステップとを含む。
【0027】
本開示の一実施形態では、第1及び第2の内側容器を断熱容器内に配置するステップは、第1の内側容器を第2の内側容器の上方に配置するステップを含む。
【0028】
本開示の一実施形態は、第1の内側容器と第2の内側容器との間に加熱体を設けるステップを更に含む。
【0029】
本開示の一実施形態では、第1及び第2のキャビティの温度を上昇させるステップは、第1及び第2の内側容器の間に配置された加熱体の温度を同時に上昇させるステップを更に含む。
【0030】
ここで、添付の図面を参照して、例示によって本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示に従うシステムを示す。
図2a】本開示の内側容器の上部及び底部を示す。
図2b】本開示の内側容器の上部及び底部を示す。
図2c】本開示の内側容器の上部及び底部を示す。
図2d】本開示の内側容器の上部及び底部を示す。
図3】本開示に従う加熱体を示す。
図4】本開示に従う第1の内側容器構成を示す。
図5】本開示に従う炭素ゲッターを示す。
図6】本開示に従う第2の内側容器構成を示す。
図7】本開示に従う断熱容器を示す図である。
図8】本開示に従う方法のプロセスの流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、SSMを用いて2つのSiC単結晶層を同時に製造するシステム100及び方法の詳細な説明を行う。システム100のセットアップ及び本明細書に説明の方法は、本質的に同一である2つのSiC単結晶層を同時に製造するように構成され、各SiC単結晶層を製造するためにシステム内に必要な空間は最小化される。SiC単結晶層は、例えば、サイズ/寸法及び品質に関して同一であり得、品質は、例えば、結晶中の炭素含有物の数及び転位密度又は応力として測定され得る。応力は、例えば、反りに起因し得る。本明細書に開示のシステム及び方法を使用して製造されたSiC単結晶層の品質は、従来のシステム及び製造方法を使用する場合と比べて更に改善される。
【0033】
図1には、2つのSiC単結晶層を同時に製造するためのシステム100が示されており、一般に、第1の内側容器3と、第2の内側容器4と、加熱体5と、断熱容器6と、外側容器7と、加熱手段8とを備える。第1の内側容器3は、第1のソース材料1a及び第1の基板1bを収容するように構成された第1のキャビティを画定し、第2の内側容器4は、第2のソース材料2a及び第2の基板2bを収容するように構成された第2のキャビティを画定する。
【0034】
加熱体5と第1、第2の内側容器3、4とのセットアップは、加熱体5を同一部分に2つに分ける対称面に対して鏡面対称となり、図1では、この対称面を点線(破線)で表している。例えば、加熱体5と第1の内側容器3内の第1のソース材料1aとの間の距離は、加熱体5と第2の内側容器4内の第2のソース材料2aとの間の距離と等しい。更に、第1のソース材料1aと第1の基板1bとの間の距離は、第2のソース材料2aと第2の基板2bとの間の距離と等しい。温度、熱降下及び加熱速度など、システム100が提供する熱特性は、第1及び第2のキャビティ内で本質的に同一である。したがって、第1及び第2の内側容器3、4内のそれぞれの第1及び第2の基板1b、2b上に成長する2つのSiC単結晶層の成長特性は、本質的に同一である。結果として、2つの本質的に同一のSiC単結晶層が得られる。
【0035】
図1に示す実施形態では、第1の内側容器3、第2の内側容器4及び加熱体5は、いずれも断熱容器6内に配置される。断熱容器6は、外側容器7内に配置される。
加熱手段8は、外側に配置され、外側容器7を取り囲む。加熱手段8は、使用中、第1及び第2のソース材料1a、2aの昇華及び単結晶層が第1及び第2の基板1b、2b上に成長するように、第1及び第2のキャビティ及び加熱体5を同時に加熱するように構成されている。図1に示す実施形態では、加熱手段8は高周波加熱用の誘導コイルである。更に、加熱手段8は、外側容器7の高さ方向に沿って移動可能であるため、第1及び第2のキャビティ内の温度及び熱降下を、第1及び第2のキャビティ内で等しくなり得るように調整することが可能であるという効果がある。
【0036】
システム100は、第1及び第2の内側容器3、4を排気するためのポンプを更に備える。ポンプは、第1及び第2の内側容器3、4の第1及び第2のキャビティ内に10-4~10-6mbarの圧力を供給し得る。
【0037】
図1に示す実施形態では、第1の内側容器3は、第2の内側容器4の上方に配置され、加熱体5は、第1の内側容器3と第2の内側容器4との間に接触して配置される。別の実施形態では、加熱体5は、第1及び第2の内側容器3、4と一体に形成される。代替的な実施形態では、加熱体5は、第1の内側容器3の底部(31b)及び第2の内側容器4の上部(32a)と一体に形成される。内側容器3、4及び加熱体5は、例えば、高密度グラファイトによって形成されてもよい。更に、加熱体5は、被覆されてもよい。このセットアップは、システム100内の高さ単位当たりに製造することができるSiC単結晶層の数を最大にする。
【0038】
図1に示す実施形態では、第2の内側容器4は、2つの容器支持体9上に配置される。支持体は、断熱容器6の底部に載置され、内側容器3、4及び加熱体5が支持体9上に配置されたときに、第1の内側容器3の上面が断熱容器6の上部から離れた位置にあるような高さを有する。更に、支持体9は、第2の内側容器4の底面と断熱容器6の底部との距離が、第1の内側容器3の上面と断熱容器6の上部との間の距離と等しくなるような高さを有し得る。代替的な実施形態では、2つの容器支持体9は、1つの単一容器支持体、又は複数の容器支持体であってもよい。容器支持体9は、高温に耐える材料、好ましくは高密度グラファイト又はタンタルなどの高融点金属を有する材料で形成されるべきである。
【0039】
図2a及び図2bは、第1の内側容器3を示す。第1の内側容器3は、円筒形状を有し、上部3a及び底部3bを備える。図1の実施形態では、図2a及び図2bに示すように、上部3aの底縁部は内側に傾斜しており、下部3bの上縁部は外側に等しく傾斜しているので、上部3a及び下部31bは、取り付け時にいずれの部分も横方向にずれることなく互いにしっかりと嵌合し得る。上部3a及び底部3bは、互いに嵌合すると、第1のソース材料1a及び第1の基板1bを収容するように配置された第1のキャビティを画定し、これについては図4に関連してより詳細に説明する。第1の内側容器3は、高密度グラファイト又は高温に耐える能力を有し、加熱手段8として高周波誘導コイルを使用する場合、前記高周波誘導コイルとの結合を容易にする他の適切な材料から形成されてもよい。
【0040】
図2c及び図2dは、第2の内側容器4を示す。第2の内側容器4は、円筒形状を有し、上部4a及び底部4bを備える。上部4aは、第1の内側容器3の底部3bと本質的に同一である。底部4bは、第1の内側容器3の上部3aと本質的に同一である。更に、第2の内側容器4は、第1の内側容器3の外径及び内径と本質的に同一の外径及び内径を有する。したがって、第1及び第2の内側容器は、加熱体5の上方及び下方に配置されたときに、加熱体5に対して鏡面対称となる。上部4a及び底部4bは、互いに嵌合すると、第2のソース材料2a及び第2の基板2bを収容するように配置された第2のキャビティを画定し、これについては図6に関連してより詳細に説明する。第2の内側容器4は、高密度グラファイト、又は高温に耐える能力を有し、加熱手段8として高周波誘導コイルを使用する場合、前記高周波誘導コイルとの結合を容易にする他の適切な材料から形成されてもよい。
【0041】
図3は、加熱体5を示す。図1に関連して述べたように、加熱体5は、第2の内側容器4の上方、及び第1の内側容器3の下方に配置され、第1の内側容器3及び第2の内側容器4の両方と接触する。加熱体5は、第1及び第2の内側容器3、4に対して同時に加熱され、第1及び第2のキャビティ内の温度分布が本質的に等しくなるように、第1及び第2の内側容器3、4に熱を分配する機能を有する。加熱体5は、略円筒形状の中実体として形成される。加熱体5の直径は、好ましくは第1及び第2の内側容器3、4の外径の50~150%であるべきであり、より好ましくは70~110%であるべきである。加熱体5の高さは、好ましくは、第1の内側容器の底部3b(又は第2の内側容器4の頂部4a)の厚さよりも2~4倍大きく、より好ましくは2.5~3倍大きい。第1及び第2のキャビティの両方を加熱するのに必要な加熱体5は1つだけなので、第1及び第2のキャビティにそれぞれ1つの加熱体5が必要な場合と比ベて、システムの全高を低減することができる。したがって、システム内の高さ単位当たりに製造されるSiC単結晶層の数は最大化される。
【0042】
図4は、第1の内側容器3内における第1のソース材料1a及び第1基板1bの配置を示している。第1のソース材料1aの直径は、第1の基板1bの直径よりも大きいことが好ましい。例えば、第1の基板1bの直径は150mmであり、第1のソース材料1aの直径は160mmであってもよい。第1のソース材料1aは、第1の内側容器3の底部3bに配置された少なくとも1つの第1のソース支持体10a上に配置される。これにより、第1のソース材料1aは、第1の内側容器3の底部3bから離れた位置に配置される。第1のソース材料1aは、例えば、柱状マイクログレイン構造を有するモノリシック多結晶SiCプレートであってもよい。他の微細構造も可能である。少なくとも1つの第1の基板支持体10bは、第1のソース材料1a上に配置され、それによって第1のソース材料1aの上方に、第1のソース材料1aから離れた位置に配置される第1の基板1bを支持する。上方とは、上部3aにより近く、それによって加熱体5から更に離れていると理解すべきである。第1のソース材料1aと第1の基板1bとの間の距離は、0.7~1.2mmであることが好ましい。少なくとも1つの第1の基板支持体10bは、例えば立方体状であってもよい。
更に、第1のソース材料1aの外縁に配置される基板支持体10bは、例えば3つであってもよい。図4に示す実施形態では、第1の内側容器3の底部3bに第1の炭素ゲッター11が配置されており、これについては図5に関連して更に説明する。
【0043】
図5は、第1の炭素ゲッター11を示す。炭素ゲッター11は、第1の内側容器3の内径と本質的に等しいか、又はそれよりわずかに小さい外径を有するリング形状を有する。例えば、第1の内側容器3の内径が200mmであれば、第1の炭素ゲッター11の外径は198mmであってもよい。炭素ゲッター11の内径は第1のソース材料1aの直径よりも大きいので、第1の炭素ゲッター11は第1のソース材料1aを取り囲むことができる。例えば、第1のソース材料1aの直径が160mmであれば、第1の炭素ゲッター11の内径は170mmであってもよい。第1のソース支持体10a、第1の基板支持体10b及び炭素ゲッター11はいずれも、2200℃を超える融点を有し、ソース材料から蒸発した炭素種と反応して炭化物層を形成する能力を有する材料から形成される。このような材料は、タンタル、ニオブ及びタングステンであり得るが、これらに限定されない。代替的な実施形態では、第1の炭素ゲッター11は複数の部分から構成される。前記複数の部分は、同じ又は異なる材料によって形成されてもよい。
【0044】
図6は、第2の内側容器4内の第2のソース材料2a及び第2の基板2bの配置を示す。第2のソース材料2aの直径は、第2の基板2bの直径よりも大きい。例えば、第2の基板2bの直径が150mmであり、第2のソース材料2aの直径が160mmであってもよい。第2の基板2bは、少なくとも1つの第2の基板支持体12b上に配置される。少なくとも1つの第2の基板支持体12bは、第2の内側容器4の底部4bに配置される。第2の基板2bは、第1のソース材料1aが第1の内側容器3内に配置されているのと同様に配置されていると見ることができる。第2のソース材料2aは、少なくとも1つの第2のソース支持体12a上に配置される。少なくとも1つの第2のソース支持体12aも底部4bに配置され、更に少なくとも1つの第2の基板支持体12bの外側に配置されており、外側とは、ここでは第2の内側容器4の中心軸から更に離れていると理解すべきである。少なくとも1つの第2のソース支持体12aの高さは、第2のソース材料2aが少なくとも1つの第2のソース支持体12a上に配置されるとき、第2のソース材料2aが第2の基板2bの上方に配置されるように、少なくとも1つの第2の基板支持体12bの高さよりも高い。上方とは、ここでは上部4aに近く、したがって加熱体5に近いと理解すべきである。例えば、第2の内側容器4の内側高さは20mmであってもよく、少なくとも1つの第2のソース支持体12aの高さは17mmであってもよく、少なくとも1つの第2の基板支持体12bの高さは、第2の基板2bが第2のソース材料2aの下方に1mmの距離で配置されるような高さであってもよい。第2のソース材料2aは、例えば、柱状のマイクログレイン構造を有するモノリシック多結晶SiCプレートであってもよく、更に第1のソース材料1aと本質的に同一であるべきである。第2のソース材料2aのための他の微細構造も可能である。
【0045】
図6の実施形態はまた、第2の炭素ゲッター13を備える。
第2の炭素ゲッター13は、第1の炭素ゲッター11と同じ形状であってもよいし、他の形状であってもよい。第2の炭素ゲッター13は、第2の内側容器4の内面上の棚部上に配置されるのが好ましい。例えば、底部4bの壁は、上部4aの壁より厚くてもよく、したがって、取り付けられたとき、底部4bの内縁は、第2の内側容器4の中心軸に向かって更に延び、それによって棚部を形成し得る。第2の炭素ゲッター13は、2200℃を超える融点を有し、ソース材料から蒸発した炭素種と反応して炭化物層を形成する能力を有する材料から形成される。このような材料は、タンタル、ニオブ及びタングステンであり得るが、これらに限定されない。代替的な実施形態では、第2の炭素ゲッター13は複数の部分から構成される。前記複数の部分は、同じ又は異なる材料によって形成されてもよい。
【0046】
第1の内側容器3内の第1のソース材料1a及び第1の基板1bのセットアップ、並びに第2の内側容器4内の第2のソース材料2a及び第2の基板2bのセットアップは、それぞれの第1及び第2の基板1b、2b上に成長する2つの単結晶層に対して本質的に同一の成長特性を提供する。
【0047】
図7に断熱容器6を示す。断熱容器は、好ましくは円筒形であり、高密度グラファイトによって形成され、上部6a、中間部6b及び底部6cを更に備える。上部6a及び底部6cは、円筒状の断熱容器6の中心軸に対して垂直な繊維方向を有する。中間部6bは、中心軸と平行な繊維方向を有する。好ましい繊維方向は、図7に矢印で示されている。このような繊維方向を有することにより、放熱性が向上し、断熱容器6内の温度均一性が向上する。上部6aは、測定孔6dを更に備える。孔6dは、温度測定装置などの測定装置に適合し、測定装置を受け入れるのに十分な大きさでなければならない。更に、測定孔6dは、断熱容器6内に十分な圧力を維持するように適合されるべきである。代替的な実施形態では、測定孔は代わりに底部6cに配置される。代替的な実施形態では、上部6a及び底部6cはそれぞれ測定孔を備える。別の実施形態では、断熱容器6は測定孔6dを備えない。この実施形態では、断熱容器内の温度は、システムに入力される既知のエネルギーから計算される。断熱容器6は、外側容器7の底部に配置された断熱容器支持体(図示せず)上の外側容器7内に配置される。断熱容器6は、石英(SiO)管であることが好ましい。
【0048】
ここで、上記のようなシステム設計を参照して本方法について説明するが、当業者は、この設計は一例に過ぎず、所望の成長条件が達成される限り、他の設計も使用できることを知っている。
【0049】
この方法は、上述の実施形態に従ってシステム100を設定することによって、第1の内側容器内に第1のソース材料1a及び第1の基板1bを配置し、第2の内側容器内に第2のソース材料2a及び第2の基板2bを配置することを含み、第1及び第2のSiC単結晶層は、それぞれの第1及び第2の基板1b、2b上で成長し得る。
【0050】
図8は、本方法のプロセスの流れを示す。第1のステップは、外側容器7の外側に配置されたポンプを使用してシステム100を排気することを含む排気ステップS101である。具体的には、第1及び第2の内側容器3、4内の圧力は、好ましくは10-4mbar未満であるべきである。排気ステップS101では、システム100が予熱される。第2のステップは、システム100を不活性ガス、好ましくはアルゴン(Ar)ガスでフラッシングするフラッシングステップS102である。フラッシングステップS102の後、システム100内の圧力は、好ましくは5mbar、更により好ましくは1mbarを超えてはならない。第3のステップは、システム100を単結晶層の成長温度まで加熱する加熱ステップS103である。例示的な成長温度は、1900~2000℃である。加熱ステップの間、温度は、第1及び第2のソース材料の所望の初期昇華を与え、基板での核生成を促進する速度で上昇する。このような温度上昇は、好ましくは10~50℃/分、更に好ましくは20~30℃/分である。第4のステップは、第1及び第2の基板のそれぞれの上で2つの単結晶層が成長する間、システム内の温度を成長温度に一定に保つ成長ステップS104である。この温度は、単結晶層の厚さが所望の厚さ、好ましくは少なくとも50μmに達するまで、この温度に維持される。第5のステップは、冷却ステップS105であり、システム100及び単結晶層は室温に冷却される。
【0051】
本開示を、論じられた実施形態に関連して詳細に説明したが、当業者であれば、本開示の発明的思想から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で様々な修正が行われてもよい。例えば、本明細書に開示したシステムは、窒化アルミニウム(AIN)など、SiC以外の材料から単結晶層を製造するのに適し得る。このような場合、当然、他のソース材料を使用する必要があり、当業者は、本明細書に開示されたソース材料の特性と本質的に等しい特性を有するソース材料を使用することを知っている。更に、本方法は、当業者によって容易に実現されるように、同じキャビティ内に2つ以上の層を製造するために使用することができる。
【0052】
上記の全ての説明された代替実施形態又は実施形態の一部は、組合せが矛盾しない限り、本発明の概念から逸脱することなく自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0053】
1a,2a 第1及び第2のソース材料
1b,2b 第1及び第2の基板
3 第1の内側容器
4 第2の内側容器
5 加熱体
6 断熱容器
7 外側容器
8 加熱手段(高周波加熱用の誘導コイル)
11,13 炭素ゲッター
10a,12a ソース支持体
10b,12b 基板支持体
100 システム
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】