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特表2024-509229基板上に単結晶層を製造するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】基板上に単結晶層を製造するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20240221BHJP
【FI】
C30B29/36 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554293
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 SE2022050179
(87)【国際公開番号】W WO2022191752
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2150284-4
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523337856
【氏名又は名称】キーセルカービッド イ ストックホルム エービー
【氏名又は名称原語表記】KISELKARBID I STOCKHOLM AB
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エクマン,ジョハン ピエテル
(72)【発明者】
【氏名】ドン,リン
(72)【発明者】
【氏名】アラサード,カッシーム
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE08
4G077DA02
4G077EG04
4G077EG16
4G077EG18
4G077HA06
(57)【要約】
基板(20)上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステム(100)であって、当該システムは、ソース材料(10)及び基板(20)を収容するための空洞(5)を画定する内側容器(30)と、内側容器(30)を内部に収容するように配置された断熱容器(50)と、断熱容器(50)及び内側容器(30)を内部に収容するように配置された外側容器(60)と、外側容器(60)の外側に配置され、空洞(5)を加熱するように構成された加熱手段(70)とを備える。内側容器(30)は、固体モノリシックソース材料(10)の上方で基板(20)を所定の距離で支持するように配置された複数のスペーサ要素(320)を含み、各スペーサ要素(320)は、基部(321)及び頂部(322)を含み、頂部(322)の少なくとも一部は、基板(20)に接触するように配置された頂点(323)に向かって先細になっている。対応する方法も開示される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(20)上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステム(100)であって、
ソース材料(10)及び基板(20)を収容するための空洞(5)を画定する内側容器(30)と、
前記内側容器(30)を内部に収容するように配置された断熱容器(50)と、
前記断熱容器(50)及び前記内側容器(30)を内部に収容するように配置された外側容器(60)と、
前記外側容器(60)の外側に配置され、前記空洞(5)を加熱するように構成された加熱手段(70)と、
を備え、
前記内側容器(30)が、固体モノリシックソース材料(10)の上方に所定の距離で前記基板(20)を支持するように配置された複数のスペーサ要素(320)を含み、
各スペーサ要素(320)が、基部(321)及び頂部(322)を含み、前記頂部(322)の少なくとも一部が、前記基板(20)に接触するように構成された頂点(323)に向かって先細になっている、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記頂部(322)が、前記基部(321)から前記頂点(323)に向かって先細になっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スペーサ要素(320)が、角錐、円錐、四面体、及び角柱から選択される形状を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
各スペーサ要素(320)が高さ(H)を有し、前記基部が横幅(D)を有し、前記高さ(H)と前記横幅(D)との比が1:3~3:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
各スペーサ要素(320)の高さ(H)が約0.7~1.4mmであり、前記横幅(D)が2.5mm以下である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記頂点(323)の表面積と前記基部(321)の表面積との比が1:1000~1:5である、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記頂点(323)の表面積が約100μmである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記スペーサ要素(320)が、前記基板(20)の周縁に規則的に分散配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記スペーサ要素(320)が、タンタル、ニオブ、タングステン、ハフニウム、炭化ケイ素、グラファイト及び/又はレニウムで作られている、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記内側容器(30)が、100~500mm、好ましくは150~300mmの範囲の内径を有する円筒形であり、前記基板(20)及び前記ソース材料(10)が円盤形状である、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記内側容器(30)の下方に配置された高密度グラファイト製の加熱体(40)を更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ソース材料(10)の表面積が、前記基板(20)の表面積以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記内側容器(30)に配置された炭素ゲッタ(300)を更に備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
基板(20)上にエピタキシャル単結晶層を製造する方法であって、
ソース材料(10)及び基板(20)を収容するための空洞(5)を画定する内側容器(30)を提供するステップ(S100)と、
前記空洞(5)内に固体モノリシックソース材料(10)を配置するステップと、
複数のスペーサ要素(320)を使用することにより、前記ソース材料(10)の上方に所定の距離で前記基板(20)を配置するステップであって、各スペーサ要素(320)が基部(321)と頂部(322)とを含み、当該頂部(322)の少なくとも一部が、前記基板(20)に接触するように配置された頂点(323)に向かって先細になっている、ステップ(S104)と、
前記内側容器(30)を断熱容器(50)内に配置するステップと、
前記断熱容器(50)及び前記内側容器(30)を外側容器(60)に配置するステップと、
前記空洞(5)を加熱するべく前記外側容器(60)の外側に加熱手段(70)を提供するステップと、
前記空洞(5)を所定の低圧に排気するステップ(S106)と、
不活性ガスを前記空洞(5)内に導入するステップ(S108)と、
前記加熱手段(70)によって前記空洞(5)内の温度を所定の成長温度まで上昇させるステップ(S110)と、
前記基板(20)上でのエピタキシャル単結晶炭化ケイ素層の所定の厚さが達成されるまで、前記空洞(5)内で所定の成長温度を維持するステップ(S112)と、
前記基板(20)を冷却するステップ(S114)と、
を備えた方法。
【請求項15】
前記スペーサ要素(320)が、前記基板(20)の周縁に規則的に分散配置されている、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概ね、基板上の単結晶又は単結晶層の成長に関する。具体的には、本発明は、昇華サンドイッチ法を用いた高品質な単結晶層の昇華成長に関する。より具体的には、本発明は、昇華サンドイッチ法を用いた高品質な単結晶層の成長の新しい構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力レベル及び高温で動作可能な電子機器のエネルギー効率の向上に対する要求が高まっている。シリコン(Si)は、現在、パワーデバイスに最も一般的に使用されている半導体である。近年、Si系電力電子機器の性能が著しく進歩している。しかしながら、Siパワーデバイス技術が成熟するにつれて、この技術を使用して革新的な躍進を達成することはますます困難になっている。非常に高い熱伝導率(約4.9W/cm)、高い飽和電子ドリフト速度(約2.7×10cm/s)及び高い破壊電界強度(約3MV/cm)を有する炭化ケイ素(SiC)は、高温、高電圧及び高出力用途に適した材料である。
【0003】
SiC単結晶の成長に使用される最も一般的な技術は、物理的気相輸送(Physical Vapor Transport:PVT)の技術である。この成長技術では、シード結晶及びソース材料は両方とも、ソースの昇華温度に加熱され、ソースとわずかに低温のシード結晶との間に熱勾配を生成するように反応るつぼ内に設置される。典型的な成長温度は、2200℃~2500℃の範囲である。結晶化のプロセスは、典型的には60~100時間継続し、その間に得られたSiC単結晶(本明細書ではSiCブール又はSiCインゴットと呼ばれる)は15~40mmの長さを有する。成長後、SiCブールは、主にスライス、研磨及び洗浄プロセスを含む一連のウェハリングステップによって処理されて、バッチのSiCウェハが製造される。SiCウェハは、十分に制御可能なドーピング及び数マイクロメートル~数十マイクロメートルの厚さを有するSiC単結晶層を化学的気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)によって堆積することができる基板であるために使用可能である。
【0004】
昇華サンドイッチ法(Sublimation Sandwich Method:SSM)は、物理的気相輸送(PVT)成長の別の変形である。ソース材料としてのSiC粉末の代わりに、ソースは、単結晶又は多結晶構造のモノリシックSiCプレートであり、これは温度均一性を制御するために非常に有益である。ソースと基板との間の距離は、直接分子輸送(Direct Molecular Transport:DMT)には短く、典型的には1mmであり、蒸気種がグラファイト壁と反応しないというプラスの効果を有する。SSMの典型的な成長温度は約2000℃であり、PVTの成長温度よりも低い。このようなより低い温度は、PVTの場合よりも高い結晶品質のSiC単結晶又は単結晶層を得るのを助けることができる。成長中、成長圧力は、約150μm/hの高い成長速度を達成するために、約1mbarの真空条件に維持される。ソースの厚さは通常0.5mmであるため、成長したSiC層はほぼ同じ厚さを有し、これは通常15~50mmの長さであるPVT成長ブールの厚さよりも薄い。したがって、SSMを使用して得られた試料は、バルク成長の観点からSiCミニブール、又はエピタキシの観点から超厚SiCエピタキシャル層のいずれかと見なすことができる。
【0005】
SSMでは、ソース及びシードが炭素るつぼに搭載され、その結果、ソースとシードとの間に小さな間隙が形成される。非特許文献1及び特許文献1で明らかにされているように、シードは、中央にスペーサの支持を伴ってソースの上方に搭載される。従来技術では、例えば、図1及び図2に示すように、スペーサの形状は、通常、リング状であり、試料に応じて正方形又は円形のいずれかの内側切り欠き部を有する。この形状の欠点は、試料縁部が完全に覆われ、材料の使用領域が大幅に失われることである。
【0006】
基板上にエピタキシャル層を製造するときに遭遇する別の問題は、成長表面のエピタキシャル層内に伝播する欠陥及び関連するプリズム状積層欠陥の形成である。表面形態学的欠陥は、一般に、それらの物理的外観に従って分類される。したがって、そのような欠陥は、顕微鏡下でのそれらの外観に基づいて「コメット」、「キャロット」、及び「三角形」欠陥として分類されている。キャロット欠陥は、炭化ケイ素膜の表面における大まかなキャロット形状の特徴である。特徴は、膜のステップフロー方向に沿って整列し、それらが形成される層の深さよりも特徴的に長い。炭化ケイ素膜中にこのような結晶欠陥が存在すると、欠陥の種類、位置、及び密度に応じて、膜中に制作された電子機器の性能が低下するか、又は完全に破壊される可能性さえある。また、上記スペーサがリング状形状であると、基板縁部に接触したスペーサによって成長が阻害される可能性があるため、特に上流側において、リング縁部に由来する上記結晶欠陥が形成される確率が高くなる。
【0007】
スペーサのリング状形状を使用することの更なる欠点は、スペーサと接触する縁部領域の基板裏面が、スペーサと接触しない領域よりも高い昇華速度を有し得ることである。基板のこのような不均一な裏面昇華は、基板縁部で望ましくない材料損失をもたらし、完成した基板の総厚を不均一に増加させる。
したがって、上記の不足及び欠点を克服するために既知のシステム及び方法を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,918,937号(B2)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】論文「Effect of Tantalum in Crystal Growth of Silicon Carbide by Sublimation Close Space Technique」、Furushoら、Jpn.J.Appl.Phys.、40巻(2001年)、第6737~6740頁
【発明の概要】
【0010】
上記及び他の目的を考慮して、本開示の第1の態様によれば、基板上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステムであって、ソース材料及び基板を収容するための空洞を画定する内側容器と、内側容器を内部に収容するように配置された断熱容器と、断熱容器及び内側容器を内部に収容するように配置された外側容器と、外側容器の外側に配置され、空洞を加熱するように構成された加熱手段とを備え、内側容器は、固体モノリシックソース材料の上方で基板を所定の距離で支持するように配置された複数のスペーサ要素を含み、各スペーサ要素は、基部及び頂部を含み、頂部の少なくとも一部は、基板に接触するように配置された頂点に向かって先細になっている(テーパーになっている)、システムである。
頂点又は点に向かって少なくとも部分的に先細になるスペーサ要素は、基板との接触面を最小にする。これは、基板上の利用可能な成長表面を増加させるだけでなく、そのような欠陥形成を引き起こすスペーサと基板との間の接触面積が最小化されるため、成長表面内の結晶欠陥の形成も減少させることが分かった。同様の理由で、不均一な裏面昇華も低減される。
【0011】
一実施形態では、頂部は、基部から頂点に向かって先細になっている。スペーサ要素の延在部全体に沿って先細になる形状により、例えばレーザ切断によって生産プロセスが容易になり、最適なスペーサ要素が得られる。好ましくは、スペーサ要素は、角錐、円錐、四面体、及び角柱から選択される形状を有する。
【0012】
一実施形態では、各スペーサ要素は高さを有し、基部は横幅を有し、高さと横幅との比は1:3~3:1である。好ましくは、各スペーサ要素の高さは約0.7~1.4mmであり、横幅は2.5mm以下である。選択された範囲は、ソースと基板との間の最適な安定性及び間隔を保証する。
【0013】
一実施形態では、頂点の表面積と基部の表面積との比は、1:1000~1:5である。好ましくは、頂点の表面積は約100μmである。
【0014】
一実施形態では、スペーサ要素は、基板の周囲に規則的に分配(分散配置)されている。
【0015】
一実施形態では、スペーサ要素は、タンタル、ニオブ、タングステン、ハフニウム、炭化ケイ素、グラファイト及び/又はレニウムで作られる。選択された材料は、理想的には、変形することなく、基板上のエピタキシャル層の成長と反応することなく、又は他の様態で影響を及ぼすことなく、高温に耐える。
【0016】
一実施形態では、内側容器は、100~500mm、好ましくは150~300mmの範囲の内径を有する円筒形であり、基板及びソース材料は円盤形状である。円筒形状によって、空洞内並びにソース及び基板上の最適な温度分布が容易になり、範囲は半導体機器の標準的なウェハサイズに対応する。
【0017】
一実施形態では、システムは、内側容器の下に配置された高密度グラファイトで作られた加熱体を更に備える。加熱体は、加熱手段との結合(カップリング)を可能にして、空洞内の改善された加熱及び最適な温度分布をもたらす。
【0018】
一実施形態では、ソース材料の表面積は、基板の表面積以上である。ソースのより大きい又は等しい表面積は、基板の成長表面全体の最適な露出を保証し、ソース材料上のスペーサ要素の位置決めを容易にする。
【0019】
一実施形態では、システムは、内側容器内に配置された炭素ゲッタを更に備える。
【0020】
本開示の第2の態様では、基板上にエピタキシャル単結晶層を製造する方法であって、
ソース材料及び基板を収容するための空洞を画定する内側容器を設けることと、
空洞内に固体モノリシックソース材料を配置することと、
複数のスペーサ要素を使用することによって、ソース材料の上方に所定の距離で基板を配置することであって、各スペーサ要素は、基部と頂部とを含み、頂部の少なくとも一部は、基板に接触するように配置された頂点に向かって先細になることと、
内側容器を断熱容器内に配置することと、
断熱容器及び内側容器を外側容器に配置することと、
空洞を加熱するために外側容器の外側に加熱手段を設けることと、
空洞を所定の低圧に排気することと、
不活性ガスを空洞内に導入することと、
加熱手段によって空洞内の温度を所定の成長温度まで上昇させることと、
基板上のエピタキシャル単結晶炭化ケイ素層の所定の厚さが達成されるまで、空洞内の所定の成長温度を維持することと、
基板を冷却することと、を含む方法である。
【0021】
一実施形態では、スペーサ要素は、基板の周囲に規則的に分配(分散配置)されている。
ここで、添付の図面を参照して、例として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術から既知のスペーサ構成の概略図を示す。
図2】従来技術から既知のスペーサ構成の概略図を示す。
図3】本開示の一実施形態による基板上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステムの概略断面図である。
図4】本開示の一実施形態による、内部に配置されたソース材料及び基板を有する内側容器の概略断面図である。
図5】本開示の一実施形態によるスペーサ要素の概略図である。
図6】本開示の一実施形態によるスペーサ要素の配置の概略図である。
図7】成長プロセス時の温度対時間の図である。
図8】本開示の一実施形態による方法のステップを示すフローチャートである。
図9】本開示に従って製造された成長SiC試料の外観を示す図である。
図10a】本開示に従って生産された、直径150mmで、厚さ1.5mmの4H-SiC単結晶エピタキシャル層についてのラマン分光法及びX線回折(XRD)分光法を使用した結晶品質評価を示す図である。
図10b】本開示に従って生産された、直径150mmで、厚さ1.5mmの4H-SiC単結晶エピタキシャル層についてのラマン分光法及びX線回折(XRD)分光法を使用した結晶品質評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本開示による基板上にエピタキシャル単結晶層を製造するためのシステムの詳細な説明を提示する。図面において、同様の参照番号は、いくつかの図面を通して同一又は対応する要素を示す。これらの図は例示のみを目的としており、決して本発明の範囲を限定するものではないことが理解されよう。
【0024】
本発明の1つの目的は、シード表面上のスペーサの占有面積を最小限に抑えながら、ほぼシード全体での成長を実現することができるSSMで新しい種類のスペーサを提供することである。スペーサは、角錐形、円筒形又は円錐形の形状及び小さいサイズ(底辺2.5mm未満及び高さ0.7~1.4mm)を有するタンタルで作られる。実際には、そのようなスペーサのうちの3つがソース表面に搭載され、シードがスペーサに搭載される。
【0025】
図3は、単結晶又は単結晶SiC層の成長を可能にする、ソース材料10として上述の多結晶SiCプレートを使用して昇華エピタキシを容易にするように設計されたシステム100の概略図である。ソース材料10及び基板20は、フェースダウン構成で、すなわち、基板20がソース材料10の上方に配置された状態で、内側容器30の空洞内に配置される。内側容器30は断熱容器50内に配置され、同様に断熱容器50は外側容器60内に配置される。内側容器30は、容器支持体(図示せず)上に支持されてもよく、容器支持体は、同様に断熱容器50の底部の上部にある。加熱体40は、任意選択的に、内側容器30の下方に配置されてもよい。外側容器60の外側には、当該内側容器30の空洞を加熱するために使用することができる加熱手段70がある。
【0026】
一実施形態によれば、加熱手段70は、高周波加熱用の誘導コイルを備える。当該外側容器60は、この例では石英管であり、当該断熱容器50及び当該内側容器30は円筒形であり、それぞれ絶縁グラファイト発泡体及び高密度グラファイトで作られる。加熱手段70は、容器を加熱するために使用され、これにより、ソース材料10を昇華させる。加熱手段70は、内側容器30内の温度及び熱勾配を調整するために垂直方向に移動可能である。ソース材料10と基板20との間の温度勾配はまた、当技術分野で既知であるように、上部31及び下部32の厚さ(図4参照)等の内側容器30の特性を変えることによって変更することができる。さらに、内側容器(図示せず)を排気するための、すなわち約10-4~10-6mbarの圧力を提供するためのポンプがある。
【0027】
図4は、内側容器30の空洞5内の構成要素10、20、300、310、320の好ましい配置の概略図である。基板20は、スペーサ要素320によって支持され、ソース支持体310によって支持されるソース材料10の上方に配置される。ソース材料10の直径は、基板20の直径以上であるべきである。例えば、基板20が150mmの直径を有する場合、ソース材料10は、少なくとも150mm、好ましくは160mmの直径を有するべきである。ソース材料10の近くで、炭素ゲッタ300が内側容器30の内底部に搭載される。スペーサ要素320、ソース支持体310、及び炭素ゲッタ300は、2200℃より高い融点を有し、タンタル、ニオブ、及びタングステン等の、ソース材料から蒸発した炭素種で炭化物層を形成する能力を有する材料で作ることができる。
【0028】
基板支持体は、好ましくは、各々が同一の形状を有する3つのスペーサ要素320を含む。しかしながら、異なる形状又は複数のスペーサ要素320を有する基板支持体も考えられる。ここで図5を参照すると、本開示によるスペーサ要素320の一実施形態が示されている。スペーサ要素320は、基部321と、基部321から上方に延在する頂部322とを備える。基板表面との接触面積を最小限に抑えるために、スペーサ要素320の頂部322の少なくとも一部は、先端又は頂点323に向かって先細になる。好ましくは、スペーサ要素320は、基部321から頂点323に向かって先細になり、生産プロセスを単純化する。スペーサ要素320の好ましい形状は、角錐、円錐(図5に示す)、四面体、又は角柱である。角柱の場合、頂点は、基部の反対側に位置する最も高い縁部として理解される。基部321の横幅又は直径Dは好ましくは2.5mmであり、スペーサの高さHは好ましくは1mmであり、高さHと横幅Dとの比は1:2である。しかしながら、比H:Dは、3:1~1:3の範囲内であってもよい。
【0029】
スペーサ要素320の頂点323と基板20との間の接触面を最小限に抑えるために、スペーサ要素はレーザ切断によって生産される。このプロセスにより、約10μm×10μm、すなわち約100μmの頂点323の表面積が達成される。好ましくは、頂点323と基部321との表面積間の比は、1:1000~1:5である。
【0030】
図6は、ソース材料10の上部における3つのスペーサ要素320の配置の一例を示す。基板20を安定して支持するために、3つのスペーサ要素320は、好ましくは、ソース材料10及び基板20の周囲に規則的に分配(分散配置)され、例えば正三角形の構成を形成するように配置される。
【0031】
ソース材料10は、ソース支持体310によって持ち上げられ、ソース材料10と内側容器30の底部との間に間隙を形成する。これは、ソース材料10と内側容器30の底部との間の不均一な接触を回避することによって、ソース材料10の温度均一性を改善するのに役立つことができる。当業者は、ソース支持体310がいかなる特別な形状にも限定されず、例えば、図5に示すものと同一であり得ることを知っているはずである。ソース支持体310の要件は、ソース材料10との接触面積サイズの特別な要件なしに、可能な限り体積が小さくなければならないことに留意されたい。比較すると、スペーサ要素320は、基板20との接触面積を最小にする目的で、最小体積だけでなく、頂点323に鋭い端部も有することが好ましい。
【0032】
上述したように、基板20は、ソース材料10の上方でスペーサ要素320上に配置されることになる。これを達成するために、ソース材料10は、その周縁に沿って基板20を支持するためにソース材料10上にスペーサ要素320を設置することを可能にするのに十分に剛性である中実モノリシックプレートである。一実施形態では、ソース材料10は、SSMを介して基板20上にエピタキシャル単結晶SiC層を製造するためのモノリシックSiCプレートである。しかしながら、例えば窒化アルミニウム(AlN)等、製造される所望のエピタキシャル層に応じて、他のソース材料も本開示のシステム100及び方法とともに使用することができる。
【0033】
ここで、上記のようなシステム設計を参照して方法を説明するが、当業者は、設計が一例にすぎず、所望の成長条件が達成される限り、他の設計も使用できることを知っている。図7は、エピタキシャル昇華中の基板の温度変化を概略的に示している。成長プロセスは、予熱段階401を含み、システムは、例えば上記の説明に従って設定され、内側容器は、従来の圧送手段を使用して排気される。10-4mbar未満のベース真空レベルが通常望ましい。その後、アルゴンのような不活性ガスを反応器チャンバに導入し、チャンバ圧力を約2mbarに維持する。次いで、成長システム全体が、高周波(RF)コイルの形態の加熱手段によって成長温度まで加熱される。
【0034】
本発明者らは、温度の上昇が好ましくは10~50℃/分、より好ましくは約20~30℃/分であることを発見した。このような温度上昇により、ソースの良好な初期昇華及び核生成がもたらされる。加熱段階402の間に、1900~2000℃の範囲の所望の成長温度413、典型的には約1950℃に達するまで温度を上昇させる。適切な成長温度413、すなわち所望の成長速度を促進する成長温度に達すると、温度上昇は急速に低下する。当業者は、どの温度で所望の成長速度が得られるかを知っている。所望の厚さのエピタキシャル層が達成されるまで、温度はこのレベル413に維持される。加熱段階に続く期間は成長段階403と呼ばれ、この段階の間、温度は実質的に一定に保たれることが好ましい。
【0035】
所望の厚さの単結晶層が製造された場合(414)、加熱を停止し、基板を冷却することができ、これを冷却段階404と呼ぶ。製造時間を短縮するために、予熱及び冷却段階を最適化することができる。
【0036】
本発明の文脈において、成長した単結晶層の厚さは、5μmを超え、又はより好ましくは100μmを超え、最も好ましくは500μmを超える。成長した結晶の最大厚さは、ソース材料10の厚さによって決まる。
【0037】
ここで、上記のようなシステム設計を参照して方法を説明するが、当業者は、設計が一例にすぎず、所望の成長条件が達成される限り、他の設計も使用できることを知っている。
【0038】
図8に、この方法におけるプロセスフローを示す。第1のステップS100では、内側容器30の空洞5内に、ソース材料10及び基板20を設ける。任意選択で、ステップS102において、炭素ゲッタ300が空洞内に配置される。続いて、ソース材料10と基板20との間にスペーサ要素320を配置する。成長プロセスは予熱段階S106を含み、システム100は従来の圧送手段を使用して排気される。10-4mbar未満のベース真空レベル、好ましくは10-4~10-6mbarが通常望ましい。その後、不活性ガス、好ましくはアルゴン(Ar)を空洞5に挿入して、950mbar未満、好ましくは600mbarの圧力を得る(S108)。その後、システムは加熱される(S110)。本発明者らは、温度の最適な上昇が好ましくは10~50℃/分、より好ましくは約20~30℃/分の範囲であることを発見した。このような温度上昇により、ソースの良好な初期昇華及び核生成がもたらされる。1900~2000℃の範囲の所望の成長温度、典型的には約1950℃に達するまで温度を上昇させる。適切な成長温度、すなわち所望の成長速度を促進する成長温度に達すると、圧力は成長圧力までゆっくりと低下する。当業者は、どの温度で所望の成長速度が得られるかを知っている。所望の厚さのエピタキシャル層が達成されるまで、温度はこの成長温度に維持される。加熱段階に続く期間は成長段階S112と呼ばれ、この段階の間、温度は実質的に一定に保たれることが好ましい。一実施形態では、成長段階S112で得られるエピタキシャル層の厚さは1500μmである。
【0039】
所望の厚さの単結晶層が製造された場合、加熱を停止し、基板を冷却することができ、これを冷却段階S114と呼ぶ。製造時間を短縮するために、予熱及び冷却段階を最適化することができる。
【0040】
図9は、本開示による方法を用いて成長させたSiC試料の外観画像を示す。厚さ1.5mmの4H-SiC単結晶層を150mmの基板表面上に成長させる。試料表面には、スペーサ要素320に関連する三つの印(窪み)350のみを見ることができる。大きさは約3mmであり、スペーサのベースDの底辺(2.5mm)よりも僅かに大きい。印350の周りの他の形態学的欠陥は引き起こされない。
【0041】
図10a及び図10bは、本発明の方法に従って生産された、直径150mmで厚さ1.5mmの4H-SiC単結晶エピタキシャル層についてのラマン分光法及びX線回折(XRD)分光法を使用した結晶品質評価を示す。図10aは、4H-SiCの折返し横波音響(Folded Transversal Acoustic:FTA)、折返し縦波音響(Folded Longitudinal Acoustic:FLA)、折返し横波光学(Folded Transversal Optical:FTO)、及び折返し縦波光学(Folded Longitudinal Optical:FLO)のピークに対応する、204cm-1、610cm-1、776cm-1、及び968cm-1の波数を有するラマンピークを示す。図10bは、この試料の(0008)面のXRDロッキングカーブを示す。半値全幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)値は約18アーク秒(arc second)であり、高品質の4H-SiC単結晶であることを示している。
【0042】
本開示は、論じられた実施形態に関連して詳細に説明されたが、本開示の発明的思想から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で当業者によって様々な修正が行われてもよい。さらに、本方法は、当業者によって容易に実現されるように、同じ空洞内に2つ以上の層を製造するために使用することができる。
【0043】
上記の全ての記載された代替実施形態又は実施形態の一部は、組み合わせが矛盾しない限り、本発明の概念から逸脱することなく自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0044】
5 空洞
10 ソース材料
20 基板
30 内側容器
40 加熱体
50 断熱容器
60 外側容器
70 加熱手段
300 炭素ゲッタ
320 スペーサ要素
321 スペーサ要素の基部
322 スペーサ要素の頂部
323 (頂部の)頂点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
【国際調査報告】