(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】複合負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20240221BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240221BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240221BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240221BHJP
C01B 33/113 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/13
C01B33/113 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554386
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 CN2021128547
(87)【国際公開番号】W WO2022205904
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110335383.8
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ 春雷
(72)【発明者】
【氏名】梁 騰宇
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
(72)【発明者】
【氏名】賀 雪琴
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA24
4G072BB05
4G072BB07
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4G072DD04
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4G072GG03
4G072HH01
4G072HH14
4G072JJ47
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4G072QQ09
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4G072TT01
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4G072TT30
4G072UU30
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050CB02
5H050DA09
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5H050GA02
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5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】本出願は、負極材料分野に関し、複合負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池を提供する。
【解決手段】前記複合負極材料は、ケイ素酸化物材料と、前記ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含み、前記複合負極材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、II型又はIII型であり、前記ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型又はV型である。本出願の複合負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池は、リチウム電池のレート特性及びサイクル安定性を効果的に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合負極材料であって、前記複合負極材料は、ケイ素酸化物材料と、前記ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含み、前記複合負極材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、II型又はIII型であり、前記ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型又はV型である、ことを特徴とする複合負極材料。
【請求項2】
ラマンスペクトルにおいて、前記複合負極材料は、炭素特徴ピークD、炭素特徴ピークG及びシリコン特徴ピークAを有し、前記炭素特徴ピークDのピーク強度I
Dと前記炭素特徴ピークGのピーク強度I
Gとの比I
D/I
Gは、0.5-2であり、且つ前記シリコン特徴ピークAのピーク強度I
Aと(I
D+I
G)との比は、0.1-10である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合負極材料。
【請求項3】
以下の条件a~fのうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
a.前記ケイ素酸化物材料は、SiO
x(ただし、0<x<2)を含むこと、
b.前記ケイ素酸化物材料は、SiO
xの複合材料をさらに含み、前記SiO
xの複合材料は、SiO
xとSiO
yの複合材料、SiO
xとSiO
2の複合材料、SiO
xとLi
mSiO
nの複合材料、SiO
xとNa
mSiO
nの複合材料、SiO
xとK
mSiO
nの複合材料、SiO
xとMg
mSiO
nの複合材料、SiO
xとCa
mSiO
nの複合材料、SiO
xとAl
mSiO
nの複合材料、SiO
xと非晶質炭素の複合材料、SiO
xとグラファイトの複合材料、SiO
xとグラフェンの複合材料、SiO
xとカーボンナノチューブの複合材料、SiO
xと高分子材料の複合材料の少なくとも1つを含み、そのうち、0<y<2且つx≠y、m≧1、n≧1であること、
c.前記ケイ素酸化物材料における酸素の含有量は0.1質量%~50質量%である;
d.前記ケイ素酸化物材料におけるシリコン結晶粒サイズは、1nm~100nmであること、
e.前記ケイ素酸化物材料の比表面積は、100m
2/g未満であること、
f.前記ケイ素酸化物材料の空孔率は、φ
a<10%であること。
【請求項4】
以下の条件a~eのうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の複合負極材料。
a.前記複合負極材料粒子は、球形又は略球形を呈し、そのワデル球形度係数は、0.01より大きいこと、
b.前記複合負極材料の平均粒径は、1.0μm~50μmであること、
c.前記複合負極材料の空孔率は、10%未満であること、
d.前記複合負極材料の比表面積は、1m
2/g~50m
2/gであること、
e.前記複合負極材料における炭素の含有量は、0.1質量%~50質量%であること。
【請求項5】
複合負極材料の製造方法であって、
保護雰囲気下で、第1脂肪族炭化水素ガスを導入し、ケイ素酸化物材料及び前記第1脂肪族炭化水素ガスを予熱し、そのうち、前記ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型又はV型であるステップと、
間欠式パルス方式で第2脂肪族炭化水素ガスを導入し、前記第2脂肪族炭化水素ガスを前記予熱した後の生成物に化学気相成長させ、前記複合負極材料を得るステップとを含む、ことを特徴とする複合負極材料の製造方法。
【請求項6】
以下の条件a~fのうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
a.前記ケイ素酸化物材料は、SiO
x(ただし、0<x<2)を含むこと、
b.前記ケイ素酸化物材料は、SiO
xの複合材料をさらに含み、前記SiO
xと材料は、SiO
xとSiO
yの複合材料、SiO
xとSiO
2の複合材料、SiO
xとLi
mSiO
nの複合材料、SiO
xとNa
mSiO
nの複合材料、SiO
xとK
mSiO
nの複合材料、SiO
xとMg
mSiO
nの複合材料、SiO
xとCa
mSiO
nの複合材料、SiO
xとAl
mSiO
nの複合材料、SiO
xと非晶質炭素の複合材料、SiO
xとグラファイトの複合材料、SiO
xとグラフェンの複合材料、SiO
xとカーボンナノチューブの複合材料、SiO
xと高分子材料の複合材料の少なくとも1つを含み、そのうち、0<y<2且つx≠y、m≧1、n≧1であること、
c.前記ケイ素酸化物材料における酸素の含有量は0.1質量%~50質量%であること、
d.前記ケイ素酸化物材料におけるシリコン結晶粒サイズは、1nm~100nmであること、
e.前記ケイ素酸化物材料の比表面積は、100m
2/g未満であること、
f.前記ケイ素酸化物材料の空孔率は、φ
a<10%であること。
【請求項7】
以下の条件a~dのうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
a.前記保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスの少なくとも1つを含むこと、
b.前記第1脂肪族炭化水素ガスおよび前記第2脂肪族炭化水素ガスは、それぞれ独立して、アセチレン、エチレン、プロピン、エタンおよびプロピレンの少なくとも1つを含むこと、
c.前記第2脂肪族炭化水素ガスの導入総量と前記ケイ素酸化物材料との重量比Aは、1.5φ
a/(1-φ
a)≦A≦15φ
a/(1-φ
a)(ただし、φ
aは前記ケイ素酸化物材料の空孔率である)の関係を満たすこと、
d.前記第1脂肪族炭化水素ガスおよび前記第2脂肪族炭化水素ガスのガス流量は、それぞれ独立して、0.1L/min~5L/minであること。
【請求項8】
以下の条件a~eのうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項5或いは7に記載の製造方法。
a.前記予熱温度は、100℃~600℃であること、
b.前記予熱時間は0.5h~24hであること、
c.前記化学気相成長の反応温度は、600℃~1050℃であること、
d.前記間欠式パルスの間隔時間は、8s~12sであること、
e.前記間欠式パルスのパルス時間は、8s~1minであること。
【請求項9】
前記製造方法は、堆積して得た前記複合負極材料に対して冷却及び篩分を行うことにより、前記複合負極材料の平均粒径は1.0μm~50μmとなることをさらに含む、ことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
リチウムイオン電池であって、前記リチウムイオン電池は、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合負極材料、又は請求項5~9のいずれか1項に記載の製造方法で製造された複合負極材料を含む、ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月29日付で中国専利局に提出した、出願番号が2021103353838、出願の名称が「複合負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容を本出願に援用する。
【0002】
本出願は、負極材料の技術分野に関し、具体的には、複合負極材料及びその製造方法、並びにリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
シリコン炭素複合負極材料は、高容量で長期サイクルの新型リチウム電池負極材料であり、黒鉛よりはるかに高い容量及び金属ケイ素より優れるサイクルを有し、現在重要な次世代リチウム電池負極材料である。シリコン炭素複合負極材料における炭素は、ケイ素酸化物材料体系の導電性及び安定材料を強化する構造であり、より優れるサイクル膨張特性を有する。しかし、従来のケイ素炭素複合材料において、炭素被覆層の構造が十分に緻密ではなく、ケイ素炭素複合材料の内部に一定の空孔が存在するため、炭素被覆層のシリコン活性材料に対する導電率の向上が制限され、材料の容量及び初回効率の向上に不利であり、また、活性シリコンのリチウムを放出・吸蔵する過程において、材料粒子が粉化し、安定性が悪く、さらにサイクル特性が悪くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑み、本出願は複合負極材料及びその製造方法、リチウムイオン電池を提供し、材料のサイクル安定性を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様では、本出願は、複合負極材料を提供し、前記複合負極材料は、ケイ素酸化物材料と、前記ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含み、前記複合負極材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、II型又はIII型であり、前記ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型又はV型である。
【0006】
本出願が提供する複合負極材料において、ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型又はV型であり、ケイ素酸化物材料と炭素被覆層とはより緊密に結合することができ、リチウムを吸蔵・放出する過程における電子伝導及びイオン伝導に有利であり、材料の初回効率、容量及びサイクル安定性の向上に有利であり、複合負極材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、II型又はIII型であり、複合負極材料は緻密な構造を有し、炭素被覆層は一定の機械的強度を有し、構造が安定であり、活性シリコンのリチウムを放出・吸蔵する過程において粒子の完全性を維持し、粒子の粉末化を抑制し、ケイ素酸化物材料の安定性を向上し、さらに材料全体としてのサイクル特性を改善することを確保できる。
【0007】
本出願において、物理的吸脱着等温線タイプの分類根拠は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)により提案された物理的吸脱着等温線分類方法である。
【0008】
1つの実現可能な実施形態において、ラマンスペクトルにおいて、前記複合負極材料は、炭素特徴ピークD、炭素特徴ピークG及びシリコン特徴ピークAを有し、前記炭素特徴ピークDのピーク強度IDと前記炭素特徴ピークGのピーク強度IGとの比ID/IGは、0.5~2であり、且つ前記シリコン特徴ピークAのピーク強度IAと(ID+IG)との比は、0.1~10である。
【0009】
1つの実現可能な実施形態において、前記複合負極材料は、以下の条件a~fの少なくとも1つを満たす。
a.前記ケイ素酸化物材料は、SiOx(ただし、0<x<2)を含む;
b.前記ケイ素酸化物材料は、SiOxの複合材料をさらに含み、前記SiOxの複合材料は、SiOxの複合SiOy、SiOxの複合SiO2、SiOxの複合LimSiOn、SiOxの複合NamSiOn、SiOxの複合KmSiOn、SiOxの複合MgmSiOn、SiOxの複合CamSiOn、SiOxの複合 AlmSiOn、SiOxの複合非晶質炭素、SiOxの複合グラファイト、SiOxの複合グラフェン、SiOxの複合カーボンナノチューブ、SiOxの複合高分子材料の少なくとも1つを含み、そのうち、0<y<2且つx≠y、m≧1、n≧1である;
c.前記ケイ素酸化物材料における酸素の含有量は0.1質量%~50質量%である;
d.前記ケイ素酸化物材料におけるシリコン結晶粒サイズは、1nm~100nmである;
e.前記ケイ素酸化物材料の比表面積は、100m2/g未満である;
f.前記ケイ素酸化物材料の空孔率は、φa<10%である。
【0010】
1つの実現可能な実施形態において、前記複合負極材料は、以下の条件a~eの少なくとも1つを満たす。
a.前記複合負極材料粒子は、球形又は略球形を呈し、そのワデル球形度係数は、0.01より大きい;
b.前記複合負極材料の平均粒径は、1.0μm~50μmである;
c.前記複合負極材料の空孔率は、10%未満である;
d.前記複合負極材料の比表面積は、1m2/g~50m2/gである;
e.前記複合負極材料における炭素の含有量は、0.1質量%~50質量%である。
【0011】
第2態様において、本出願は、複合負極材料の製造方法を提供し、前記製造方法は、
保護雰囲気下で、第1脂肪族炭化水素ガスを導入し、ケイ素酸化物材料及び前記第1脂肪族炭化水素ガスを予熱し、そのうち、前記ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型又はV型であるステップと、
間欠式パルス方式で第2脂肪族炭化水素ガスを導入し、前記第2脂肪族炭化水素ガスを前記予熱した後の生成物に化学気相成長させ、前記複合負極材料を得るステップとを含む。
【0012】
上記技術案において、まず、予熱により、脂肪族炭化水素ガスを物理的吸脱着等温線タイプがIV型又はV型であるケイ素酸化物材料粒子の空孔内に吸着させることで、ケイ素酸化物材料の空孔を充填し、間欠式パルスで脂肪族炭化水素ガスを導入し、局所的な炭素源の過剰な堆積を招くことがなく、脂肪族炭化水素ガスが分解時に零次元の単一炭素ラジカル又は一次元の比較的に短い炭素鎖に分解され、互いに積み重ねられると、より緊密になり、緻密な構造且つ球形又は略球形の複合負極材料粒子の形成により有利であり、負極材料の導電性ネットワークの完全性及び構造の安定性に有利であり、複合負極材料のサイクル安定性の向上に有利である。
【0013】
1つの実現可能な実施形態において、前記製造方法は、以下の条件a~fの少なくとも1つを満たす。
a.前記ケイ素酸化物材料は、SiOx(ただし、0<x<2)を含む;
b.前記ケイ素酸化物材料は、SiOxの複合材料をさらに含み、前記SiOxの複合材料は、SiOxの複合SiOy、SiOxの複合SiO2、SiOxの複合LimSiOn、SiOxの複合NamSiOn、SiOxの複合KmSiOn、SiOxの複合MgmSiOn、SiOxの複合CamSiOn、SiOxの複合AlmSiOn、SiOxの複合非晶質炭素、SiOxの複合グラファイト、SiOxの複合グラフェン、SiOxの複合カーボンナノチューブ、SiOxの複合高分子材料の少なくとも1つを含み、そのうち、0<y<2且つx≠y、m≧1、n≧1である。
c.前記ケイ素酸化物材料における酸素の含有量は0.1質量%~50質量%である;
d.前記ケイ素酸化物材料におけるシリコン結晶粒サイズは、1nm~100nmであり、
e.前記ケイ素酸化物材料の比表面積は、100m2/g未満である;
f.前記ケイ素酸化物材料の空孔率は、φa<10%である。
【0014】
1つの実現可能な実施形態において、前記製造方法は、以下の条件a~dの少なくとも1つを満たす。
a.前記保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスの少なくとも1つを含む;
b.前記第1脂肪族炭化水素ガスおよび前記第2脂肪族炭化水素ガスは、それぞれ独立して、アセチレン、エチレン、プロピン、エタンおよびプロピレンの少なくとも1つを含む;
c.前記第2脂肪族炭化水素ガスと前記ケイ素酸化物材料との重量比Aは、1.5φa/(1-φa)≦A≦15φa/(1-φa)(ただし、φaは前記ケイ素酸化物材料の空孔率である)の関係を満たす;
d.前記第1脂肪族炭化水素ガスおよび前記第2脂肪族炭化水素ガスのガス流量は、それぞれ独立して、0.1L/min~5L/minである。
【0015】
1つの実現可能な実施形態において、前記製造方法は、以下の条件a~eの少なくとも1つを満たす。
a.前記予熱温度は、100℃~600℃である;
b.前記予熱時間は0.5h~24hである;
c.前記化学気相成長の反応温度は、600℃~1050℃である;
d.前記間欠式パルスの間隔時間は、8s~12sである;
e.前記間欠式パルスのパルス時間は、8s~1minである。
【0016】
一つの実行可能な実施形態において、前記方法は、
堆積して得た前記複合負極材料に対して冷却及び篩分を行うことにより、前記複合負極材料の平均粒径は1.0μm-50μmとなることをさらに含む。
【0017】
第3態様において、本出願は、リチウムイオン電池を提供し、前記リチウムイオン電池は、第1態様に記載の複合負極材料又は第2態様に記載の製造方法によって製造された複合負極材料を含む。
【発明の効果】
【0018】
本出願の技術手段は、少なくとも以下の有益な効果を有し、
1)本出願が提供する複合負極材料は、ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプがIV型又はV型であることにより、炭素との結合点がより多くなり、炭素被覆層とより緊密に結合することができ、リチウムを吸蔵・放出する過程における電子伝導及びイオン伝導に有利であり、複合負極材料の物理的吸脱着等温線のタイプがII型又はIII型であることから、複合負極材料が比較的緻密で、構造が安定しており、活性シリコンのリチウムを放出・吸蔵する過程において粒子の完全性を維持し、粒子の粉末化を抑制し、ケイ素酸化物材料の安定性を向上させ、長期サイクルに有利であり、完成品の電池全体としてのサイクル安定性を改善することを確保できる。
2)本出願が提供する複合負極材料の製造方法は、まず、予熱により、第1脂肪族炭化水素ガスを物理的吸脱着等温線タイプがIV型又はV型であるケイ素酸化物材料粒子の空孔内に吸着させることで、ケイ素酸化物材料の空孔を充填し、間欠式パルスで第2脂肪族炭化水素ガスを導入し、局所的な炭素源の過剰な堆積を招くことがなく、第2脂肪族炭化水素ガスが分解時に零次元の単一炭素ラジカル又は一次元の比較的に短い炭素鎖に分解され、互いに積み重ねられると、より緊密になり、緻密な構造且つ球形又は略球形を呈する複合負極材料粒子の形成により有利であり、負極材料の導電性ネットワークの完全性及び構造の安定性に有利であり、複合負極材料のサイクル安定性の向上に有利である。また、製造方法が簡単で操作しやすく、製造過程が安全で、効率的であり、製造コストが効果的に低減され、定量化生産に適し、製造された生成物が電池極片として使用され、リチウムを吸蔵・放出する過程における電子伝導とイオン伝導に有利であり、電池のサイクル安定性の向上に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本出願の実施例が提供する複合負極材料の製造方法のフローチャートである。
【
図2】本出願の実施例1が提供する複合負極材料の物理的吸脱着等温線の模式図である。
【
図3】本出願の実施例1が提供するケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線の模式図である。
【
図4】本出願の比較例1が提供する複合負極材料の物理的吸脱着等温線の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下は本出願の実施例の好ましい実施形態であり、当業者にとって、本出願の実施例の原理から逸脱することない前提で、いくつかの変形及び改善を行うことができ、これらはいずれも本出願の実施例の保護範囲に属すると指摘すべきである。
【0021】
第1態様では、本出願は、複合負極材料を提供し、複合負極材料は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含み、複合負極材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、II型又はIII型であり、ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型又はV型である。
【0022】
本出願において、物理的吸脱着等温線タイプの分類根拠は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)により提案された物理的吸脱着等温線分類方法である。
【0023】
上記の技術案において、本出願が提供する複合負極材料は、ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型又はV型であり、炭素被覆層とより緊密に結合することができ、リチウムを吸蔵・放出する過程における電子伝導及びイオン伝導に有利であり、材料の初回効率、容量及びサイクル安定性の向上に有利であり、複合負極材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、II型又はIII型であり、複合負極材料は緻密な構造を有することを示し、炭素被覆層は一定の機械的強度を有し、構造が安定であり、活性シリコンのリチウムを放出・吸蔵する過程において粒子の完全性を維持し、粒子の粉末化を抑制し、ケイ素酸化物材料の安定性を向上し、さらに材料全体としてのサイクル特性を改善することを確保できる。
【0024】
以下は、本出願で好ましい技術案であるが、本出願に係る技術案を制限するものではなく、以下の好ましい技術案により、本出願の技術的目的及び有益な効果をよりよく達成し実現することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、ケイ素酸化物材料は、SiOx(ただし、0<x<2)を含み、SiOxは、具体的には、SiO0.5、SiO0.8、SiO0.9、SiO、SiO1.1、SiO1.2又はSiO1.5などであってもよい。好ましくは、ケイ素酸化物材料は、SiOである。SiOxの組成は、比較的複雑であり、ナノシリコンがSiO2に均一に分散して形成されるものであると理解できる。
【0026】
いくつかの実施形態において、ケイ素酸化物材料は、SiOxの複合材料をさらに含み、前記SiOxの複合材料は、SiOxの複合SiOy、SiOxの複合SiO2、SiOxの複合LimSiOn、SiOxの複合NamSiOn、SiOxの複合KmSiOn、SiOxの複合MgmSiOn、SiOxの複合CamSiOn、SiOxの複合AlmSiOn、SiOxの複合非晶質炭素、SiOxの複合グラファイト、SiOxの複合グラフェン、SiOxの複合カーボンナノチューブ、SiOxの複合高分子材料の少なくとも1つを含み、そのうち、0<y<2且つx≠y,m≧1,n≧1である。
【0027】
いくつかの実施形態において、ケイ素酸化物材料におけるシリコン結晶粒サイズは、1nm-100nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm又は100nmなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。ケイ素酸化物材料のシリコン結晶粒サイズを上記範囲内に制御することは、負極材料の構造安定性、熱安定性及び長期サイクル安定性を向上するのに有利であることが理解できる。なお、ケイ素酸化物材料におけるシリコン結晶粒サイズは、XRDパターンを用いて28.6°Si(111)ピークの半値幅を測定し、シェラーの式により算出されるものである。
【0028】
いくつかの実施形態では、ケイ素酸化物材料中の酸素の含有量は、0.1質量%~50質量%であり、具体的には、0.1質量%、1質量%、10質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%又は50質量%などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用できる。ケイ素酸化物材料における酸素含有量が高すぎると、材料の容量が低下し、初回クーロン効率が低下し、ケイ素酸化物材料における酸素含有量が低すぎると、即ち、シリコン含有量が高くなり、材料がサイクル中に膨張しやすくなり、材料の粉末化が深刻になる。
【0029】
いくつかの実施形態において、ケイ素酸化物材料の比表面積は、100m2/g未満であり、具体的には、1.50m2/g、2.50m2/g、3.50m2/g、5.00m2/g、10m2/g、50m2/g又は90m2/gなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。複合負極材料の比表面積が上記範囲内であることにより、材料の加工性能が確保され、該負極材料で製造されたリチウム電池の初回効率の向上に利し、負極材料のサイクル特性の向上に利する。
【0030】
いくつかの実施形態では、ケイ素酸化物材料の空孔率はφa<10%であり、具体的には、1%、2%、3%、5%、6%、8%又は9%などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。ケイ素酸化物材料の空孔率が高すぎると、緻密な構造の複合材料を形成することに不利であり、材料のサイクル安定性を向上させることに不利であり、好ましくは、ケイ素酸化物材料の空孔率が1%<φa<10%である。
【0031】
いくつかの実施形態では、複合負極材料は球形又は略球形を呈し、そのワデル球形度係数は、0.01より大きく、具体的には0.02、0.04、0.08、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.5、0.6、0.8、0.9、0.95又は0.99であってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。好ましくは、複合負極材料のワデル球形度係数は0.1~0.3である。複合負極材料のワデル球形度係数が低すぎると、粒子の安定性が悪く、循環過程で粉末化しやすく,循環膨張率が増大する。
【0032】
いくつかの実施形態では、複合負極材料の比表面積は、1m2/g-50m2/gであり、具体的には、1m2/g、10m2/g、15m2/g、20m2/g、25m2/g、30m2/g、35m2/g、40m2/g、45m2/g、または50m2/gなどであるが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。複合負極材料の比表面積が上記範囲内であることにより、材料の加工性能が確保され、該負極材料で製造されたリチウム電池の初回効率の向上に有利であり、負極材料のサイクル特性の向上に有利である。
【0033】
いくつかの実施形態では、複合負極材料の平均粒径は1.0μm~50μmであり、具体的には、1.0μm、2.0μm、3.0μm、4.0μm、5.0μm、10μm、15μm、20μm、30μm又は50μmなどであってもよい。複合負極材料の平均粒子径が上記範囲内に制御されることにより、負極材料のサイクル特性の向上に有利である。好ましくは、複合負極材料の平均粒子径は、1.0μm~10μmである。複合負極材料の平均粒径が大きすぎると、材料のサイクル特性が低下し、レート特性が低下し、電池の初回効率が低下する。
【0034】
いくつかの実施形態では、複合負極材料の空孔率は10%未満であり、具体的には、0.5%、1.0%、2.0%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は9.9%などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。複合負極材料の空孔率が上記範囲内に制御されることにより、材料が良好なレート特性を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、複合負極材料における炭素の含有量は、0.1質量%~50質量%であり、具体的には、0.1質量%、3.0質量%、5.0質量%、10.0質量%、15.5質量%、20質量%、30質量%又は50質量%などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用できる。炭素含有量が高すぎると、リチウムイオンの輸送効率が低下し、材料の高レートでの充放電に不利であり、負極材料の総合性能が低下し、炭素含有量が低くすぎると、負極材料の導電性の増加に不利であり、かつ材料の体積膨張への抑制性能が弱く、これにより長期サイクル性能が悪化する。好ましくは、複合負極材中の炭素の含有量は、1質量%-10質量%である。
【0036】
いくつかの実施形態において、ラマンスペクトルにおいて、複合負極材料は、炭素特徴ピークD、炭素特徴ピークG及びシリコン特徴ピークAを有し、炭素特徴ピークDのピーク強度IDと炭素特徴ピークGのピーク強度IGとの比ID/IGは、0.5~2であり、具体的には、0.5、0.8、1.0、1.2、1.5、1.8又は2.0などであってもよく、ID/IG比が大きすぎると、複合負極材料の初回効率が低下し、ID/IG比が小さすぎると、複合負極材料のレート特性が低下する。ID/IG値がこの範囲にある場合、炭素層は鎖状炭素鎖の分解により形成され、グラファイトシート層が生成しにくいことを示す。
【0037】
いくつかの実施形態では、シリコン特徴ピークAのピーク強度IAと(ID+IG)との比は0.1~10であり、具体的には、0.1、0.2、0.3、0.5、0.6、0.8又は1.0などであってもよく、IA/(ID+IG)の比が大きすぎると、複合負極材料のサイクル特性が低下し、IA/(ID+IG)の比が小さすぎると、複合負極材料の放電比容量が低下し、電池のエネルギー密度の向上に不利である。IA/(ID+IG)の値がこの範囲にある場合、炭素被覆層は緻密であり、シリコンは炭素層の外に露出しにくい。
【0038】
第2態様において、
図1に示すように、本出願は、複合負極材料の製造方法を提供し、前記製造方法は、
保護雰囲気下で、第1脂肪族炭化水素ガスを導入し、ケイ素酸化物材料及び前記第1脂肪族炭化水素ガスを予熱し、そのうち、前記ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型又はV型であるステップS100と、
間欠式パルス方式で第2脂肪族炭化水素ガスを導入し、前記第2脂肪族炭化水素ガスを前記予熱した後の生成物に化学気相成長させ、複合負極材料を得るステップS200とを含む。
【0039】
上記技術案において、まず、予熱により、第1脂肪族炭化水素ガスを物理的吸脱着等温線タイプがIV型又はV型であるケイ素酸化物材料粒子の空孔内に吸着させることで、ケイ素酸化物材料の空孔を充填し、ケイ素酸素材料の物理的吸脱着等温線タイプがIV型又はV型であり、第1の脂肪族炭化水素ガスが空孔に堆積することにより有利であり、間欠的なパルスで第2脂肪族炭化水素ガスを導入し、局所的な炭素源の過剰な堆積を招くことがなく、第2脂肪族炭化水素ガスが分解時に零次元の単一炭素ラジカル又は一次元の比較的に短い炭素鎖に分解され、互いに積み重ねられると、より緊密になり、緻密な構造且つ球形又は略球形の複合負極材料粒子の形成により有利であり、負極材料の導電性ネットワークの完全性及び構造の安定性に有利であり、複合負極材料のサイクル安定性の向上に有利である。
【0040】
以下、本技術案が提供する製造方法を詳細に説明する。
【0041】
ステップS100において、保護雰囲気下で、第1脂肪族炭化水素ガスを導入することで、ケイ素酸化物材料及び前記第1脂肪族炭化水素ガスを予熱する。
【0042】
いくつかの実施形態では、ケイ素酸化物材料は、SiOx(ただし、0<x<2)を含み、具体的には、SiOxは、具体的にSiO0.5、SiO0.8、SiO0.9、SiO、SiO1.1、SiO1.2又はSiO1.5などであってもよい。好ましくは、ケイ素酸化物材料は、SiOである。SiOxの組成は、比較的複雑であり、ナノシリコンがSiO2に均一に分散して形成されるものであると理解できる。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記ケイ素酸化物材料は、SiOxの複合材料をさらに含み、前記SiOxの複合材料は、SiOxの複合SiOy、SiOxの複合SiO2、SiOxの複合LimSiOn、SiOxの複合NamSiOn、SiOxの複合KmSiOn、SiOxの複合MgmSiOn、SiOxの複合CamSiOn、SiOxの複合AlmSiOn、SiOxの複合非晶質炭素、SiOxの複合グラファイト、SiOxの複合グラフェン、SiOxの複合カーボンナノチューブ、SiOxの複合の高分子材料の少なくとも1つを含み、そのうち、0<y<2且つx≠y,m≧1,n≧1である。
【0044】
いくつかの実施形態において、ケイ素酸化物材料におけるシリコン結晶粒サイズは、1nm~100nmであり、具体的には、1nm、10nm、20nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm又は100nmなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内であれば列挙されていない数値も同様に適用される。ケイ素酸化物材料のシリコン結晶粒サイズを上記範囲内に制御することは、負極材料の構造安定性、熱安定性及び長期サイクル安定性を向上するのに有利であることが理解できる。なお、ケイ素酸化物材料におけるシリコン結晶粒サイズは、XRDパターンを用いて28.6°Si(111)ピークの半値幅を測定し、シェラーの式により算出されるものである。
【0045】
いくつかの実施形態では、ケイ素酸化物材料中の酸素の含有量は、0.1質量%~50質量%であり、具体的には、0.1質量%、1質量%、10質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%又は50質量%などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用できる。ケイ素酸化物材料における酸素含有量が高すぎると、材料容量が低下し、初回クーロン効率が低下し、ケイ素酸化物材料における酸素含有量が低すぎると、即ち、シリコン含有量が高くなり、材料がサイクル中に膨張しやすくなり、材料の粉末化が深刻になる。
【0046】
いくつかの実施形態において、ケイ素酸化物材料の比表面積は、100m2/g未満であり、具体的には、1.50m2/g、2.50m2/g、3.50m2/g、5.00m2/g、10m2/g、50m2/g又は100m2/gなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。複合負極材料の比表面積が上記範囲内であることにより、材料の加工性能が確保され、該負極材料で製造されたリチウム電池の初回効率の向上に有利であり、負極材料のサイクル特性の向上に有利である。
【0047】
いくつかの実施形態では、ケイ素酸化物材料の空孔率φa<10%、具体的には、1%、2%、3%、5%、6%、8%又は10%などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。ケイ素酸化物材料の空孔率が高すぎると、緻密構造の複合材料を形成することに不利であり、材料のサイクル安定性を向上させることに不利である。
【0048】
いくつかの実施形態では、保護雰囲気は、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスのうちの少なくとも一種を含む。保護雰囲気下で熱処理を行うことにより、反応安全性を高めることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1の脂肪族炭化水素ガスは、アセチレン、エチレン、プロピン、エタン、およびプロピレンのうちの少なくとも1つを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1脂肪族炭化水素ガスのガス流量は、0.1L/min~5L/minであり、具体的には、0.1L/min、0.5L/min、1L/min、1.5L/min、2L/min、2.5L/min、3L/min、3.5L/min又は5L/minなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。
【0051】
いくつかの実施形態では、予熱温度は100℃~600℃であり、具体的には、100℃、200℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃又は600℃などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。予熱時間は0.5h~24hであり、具体的には、0.5h、1.0h、1.5h、3h、5h、6h、8h、12h、15h、18h又は24hなどであってもよく、十分的に予熱することにより、第1脂肪族炭化水素ガスがケイ素酸化物材料内部の空孔内及びその表面に吸着することができ、緻密な炭素被覆層の形成に有利であることが理解できる。好ましくは、予熱温度は400℃~600℃であり、予熱時間は1h~5hである。
【0052】
ステップS200において、間欠式パルス方式で第2脂肪族炭化水素ガスを導入することで、前記第2脂肪族炭化水素ガスを前記予熱した後の生成物に化学気相成長させ、複合負極材料を得るステップS200とを含む。
【0053】
第2脂肪族炭化水素ガスが分解時に零次元の単一炭素ラジカル又は一次元の比較的に短い炭素鎖に分解され、互いに積み重ねられると、より緊密になり、緻密な構造の複合負極材料粒子の形成により有利であり、材料の導電性ネットワークの完全性及び構造の安定性に有利であり、複合負極材料のサイクル安定性の向上に有利である。通常の固相炭素源、例えば成分が芳香環又は高級脂肪族炭化水素を含む有機物であれば、その沸点は一般的に分解点より高く、分解時に2次元の炭素環又は長炭素鎖に分解され、互いに積み重ねられた緊密度は、零次元の単一炭素ラジカル又は1次元の比較的に短い炭素鎖に及ばず、孔径分析により得られた物理的吸脱着等温線にヒステリシス環が存する。ベンゼン蒸気のような芳香族炭化水素ガスを採用し、分解した後に2次元の炭素環になり、その積み重ねられた緊密度も1次元の短炭素鎖又は零次元の炭素原子に及ばず、孔径分析で得られた物理的吸脱着等温線にヒステリシス環が存在し、負極材料のサイクル安定性を維持することに不利である。
【0054】
いくつかの実施形態では、第2脂肪族炭化水素ガスとケイ素酸化物材料との重量比Aは、1.5φa/(1-φa)≦A≦15φa/(1-φa)(ただし、φaはケイ素酸化物材料の空孔率である)の関係を満たす。適量の第2脂肪族炭化水素ガスを導入することにより、ケイ素酸化物材料の表面に均一な炭素被覆層を堆積形成することに有利であり、且つ炭素被覆層に包まれたケイ素酸化物材料が緻密な構造を形成し、ケイ素酸化物材料の空孔率を低下させることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、第2の脂肪族炭化水素ガスは、アセチレン、エチレン、プロピン、エタン、およびプロピレンのうちの少なくとも1つを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、第2脂肪族炭化水素ガスのガス流量は、0.1L/min~5L/minであり、具体的には、0.1L/min、0.5L/min、1L/min、1.5L/min、2L/min、2.5L/min、3L/min、3.5L/min又は5L/minなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。
【0057】
いくつかの実施形態では、化学気相成長の反応温度は600℃~1050℃であり、具体的には、600℃、700℃、800℃、850℃、900℃、950℃、1000℃又は1050℃などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。化学気相成長によって、第2脂肪族炭化水素ガスが分解時に零次元の単一炭素ラジカル又は一次元の比較的に短い炭素鎖に分解され、互いに積み重ねられると、より緊密になり、緻密な構造の複合負極材料の形成により有利であり、材料の導電性ネットワークの完全性及び構造の安定性に有利であり、複合負極材料のサイクル安定性の向上に有利であることが理解できる。好ましくは、化学気相成長の反応温度は、800℃~1000℃である。
【0058】
いくつかの実施形態では、化学気相成長過程において、間欠式パルス方式で脂肪族炭化水素ガスを導入し続け、間欠式パルスの間隔時間は8s~12sである。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記間欠式パルスのパルス時間は、8s~1minである。パルス時間は、具体的には、10sおきに脂肪族炭化水素ガスを10s導入する。間欠式パルス方式で炭素源ガス(第2脂肪族炭化水素ガス)を導入することにより、ケイ素酸化物材料表面の炭素源が局所的に過剰に堆積することを引き起こしにくく、ケイ素酸化物材料表面の炭素被覆層の均一性を向上させることに有利であり、均一で緻密な炭素被覆層の形成に有利である。第2脂肪族炭化水素ガスを連続的に導入する方式を採用すると、複合負極材料を生成する物理的吸脱着等温線のタイプが、II型又はIII型構造であることに不利であり、負極材料のサイクル安定性の向上に不利である。
【0060】
いくつかの実施形態において、ステップS200の後、
堆積されて得た複合負極材料に対して冷却及び篩分を行い、複合負極材料の平均粒径を1.0μm-50μmにし、具体的には、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、30μm、40μm又は50μmなどであってもよい。複合負極材料の平均粒子径が上記範囲内に制御されることにより、負極材料のサイクル特性の向上に有利である。好ましくは、複合負極材料の平均粒子径は、1μm~10μmである方法をさらに含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、篩分は破砕、ボールミーリング、スクリーニング及び分級のうちの少なくとも1つを含む。
【0062】
第3態様において、本出願は、リチウムイオン電池を提供し、リチウムイオン電池は、前記第1態様に記載の複合負極材料又は前記第2態様に記載の製造方法によって製造された複合負極材料を含む。
【0063】
以下に複数の実施例を分けて本出願の実施例をさらに説明する。ただし、本出願の実施例は、以下の具体的な実施例に限定されない。保護範囲内において、適切な変更を実施することができる。
【0064】
実施例1
【0065】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、C2H2を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC2H2を10s導入する。流量計の示度と時間により、C2H2の導入総量を100gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0066】
本実施例で製造された複合負極材料S1は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。複合負極材料の物理的吸脱着等温線は、
図2に示すように、その物理的吸脱着等温線のタイプは、II型であり、複合負極材料中の炭素元素を焼却除去した後、ケイ素酸化物材料の物理的吸脱着等温線は
図3に示すように、その物理的吸脱着等温線のタイプはIV型であることが分かる。
【0067】
実施例2
【0068】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、C3H6を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC3H6を10s導入する。流量計の示度と時間により、C3H6の導入総量を100gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0069】
本実施例で製造された複合負極材料S2は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。
【0070】
実施例3
【0071】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがV型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、300℃に昇温し、C3H4を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC3H4を10s導入する。流量計の示度と時間により、C3H4の導入総量を100gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0072】
本実施例で製造された複合負極材料S3は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。
【0073】
実施例4
【0074】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、300℃に昇温し、C2H2を導入して12h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC2H2を10s導入する。流量計の示度と時間により、C2H2の導入総量を100gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0075】
本実施例で製造された複合負極材料S4は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。
【0076】
実施例5
【0077】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、C2H2を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC2H2を10s導入する。流量計の示度と時間により、C2H2の導入総量を200gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む
【0078】
本実施例で製造された複合負極材料S5は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。
【0079】
実施例6
【0080】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、C2H2を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC2H2を10s導入する。流量計の示度と時間により、C2H2の導入総量を1000gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0081】
本実施例で製造された複合負極材料S6は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。
【0082】
実施例7
【0083】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO0.8材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO0.8材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、C2H2を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC2H2を10s導入する。流量計の示度と時間により、C2H2の導入総量を100gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0084】
本実施例で製造された複合負極材料S7は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。
【0085】
実施例8
【0086】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO1.5材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO1.5材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、C2H2を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC2H2を10s導入する。流量計の示度と時間により、C2H2の導入総量を100gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0087】
本実施例で製造された複合負極材料S8は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。
【0088】
実施例9
【0089】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、C2H2を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC2H2を10s導入する。流量計の示度と時間により、C2H2の導入総量を75gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0090】
本実施例で製造された複合負極材料S9は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。
【0091】
実施例10
【0092】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、C3H4を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC2H2を10s導入する。流量計の示度と時間により、C2H2の導入総量を100gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0093】
本実施例で製造された複合負極材料S10は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。
【0094】
比較例1
【0095】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがII型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、ベンゼン蒸気C6H6を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、10sおきにC6H6を10s導入する。流量計の示度と時間により、C6H6の導入総量を100gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材を得るステップとを含む。
【0096】
本比較例で製造された複合負極材料D1は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。複合負極材料の物理的吸脱着等温線は、
図4に示すように、その物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型である。
【0097】
比較例2
【0098】
複合負極材料の製造方法であり、
(1)SiとSiO2を真空蒸着反応させ、SiO材料を得た後、950gの空孔率5%、物理的吸脱着等温線タイプがIV型であるSiO材料を選択するステップと、
(2)上記SiO材料を取って回転炉Aに入れ、回転炉AにAr保護ガスを導入した後、500℃に昇温し、C2H2を導入して2h処理するステップと、
(3)さらに回転炉を800℃に昇温した後、C2H2を継続的に導入する。流量計の示度と時間により、C2H2の導入総量を100gに制御するステップと、
(4)反応終了後、サンプルを冷却して取り出し、クラッシャーを用いて分散し、複合負極材料を得るステップとを含む。
【0099】
本比較例で製造された複合負極材料D2は、ケイ素酸化物材料と、ケイ素酸化物材料の表面に位置する炭素被覆層とを含む。複合負極材料D2の物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型である。
【0100】
性能パラメータテスト
【0101】
1.上記実施例及び比較例で製造された複合負極材料をそれぞれ酸素・窒素・水素分析装置を使用して測定した炭素除去後のケイ素酸化物材料の酸素含有量を表1に示す。
【0102】
2.上記実施例及び比較例で製造された複合負極材料をそれぞれレーザ粒度計を使用して測定した複合負極材料の平均粒径を表1に示す。
【0103】
3.上記実施例及び比較例で製造された複合負極材料をそれぞれBET法窒素吸着比表面積計を用いて測定した材料の比表面積を表1に示す。
【0104】
4.上記実施例及び比較例で製造された複合負極材料をそれぞれ測定した比表面積及び平均粒径を用いて、材料粒子のWadell(ワデル)球形度を算出し、具体的な数値を表1に示す。
【0105】
5.上記実施例及び比較例で製造された複合負極材料をそれぞれ窒素吸着ポロメーターを用いて1.7nm~300nm孔径範囲内で複合負極材料の孔径分布を試験し、物理的吸脱着等温線及び空孔率、その物理的吸脱着等温線がp/p0で0~1区間内にヒステリシス環が存在するかどうか及びその物理的吸脱着等温線タイプを得て、結果を表1に示す。
【0106】
6.上記実施例及び比較例で製造された複合負極材料をそれぞれラマンスペクトル装置を用いてラマンスペクトルを測定し、ラマンスペクトルにおいて、前記複合負極材料は炭素特徴ピークD、炭素特徴ピークG及びシリコン特徴ピークAを有し、前記炭素特徴ピークDのピーク強度IDと前記炭素特徴ピークGのピーク強度IGとの比ID/IG、及び前記シリコン特徴ピークAのピーク強度IAと(ID+IG)との比を表1に示す。
【0107】
7.上記実施例及び比較例で製造された複合負極材料をX線回折分析装置で分析すると、Si特徴ピークが観察され、28°~30°のSi(111)ピークに対してフィッティングを行い、さらにシェラー式を用いてケイ素酸化物材料の粒径寸法を計算し、結果を表1に示す。
【0108】
8.上記実施例及び比較例で製造された複合負極材料を微量炭素分析装置を用いて分析して得られた複合負極材料の炭素の質量%含有量を表1に示す。
【0109】
9.上記実施例及び比較例で製造された複合負極材料は、それぞれ300℃の空気雰囲気の電気炉に入れて、恒量になるまで処理し、且つ微量炭素分析装置を用いてその炭素含有量<0.1%を測定した場合、炭素除去処理後のケイ素酸化物材料を得る。窒素吸着ポロメーターを用いて1.7nm~300nm孔径範囲内でケイ素酸化物材料の孔径分布を試験し、物理的吸脱着等温線及び空孔率、その物理的吸脱着等温線がp/p0で0~1区間内にヒステリシス環が存在するかどうか及びその物理的吸脱着等温線タイプを得て、結果を表1に示す。
【0110】
10.炭素除去処理後のケイ素酸化物材料をそれぞれBET法窒素吸着比表面積計を用いて測定した材料の比表面積を表1に示す。
【0111】
11.炭素除去処理後のケイ素酸化物材料をそれぞれ酸素・窒素・水素分析装置を用いて測定したケイ素酸化物材料の酸素含有量を表1に示す。
【0112】
12.上記で製造された複合負極材料をそれぞれ過剰のフッ化水素酸と濃硝酸からなる混酸で処理し、混酸を添加し続けて30min放置した後も赤褐色ガスを放出しない場合には、材料を吸引濾過して乾燥させ、得られた処理後の材料は炭素被覆層である。窒素吸着ポロメーターを用いて1.7nm~300nm孔径範囲内で炭素被覆層の孔径分布を試験し、物理的吸脱着等温線及び空孔率、その物理的吸脱着等温線がp/p0で0~1区間内にヒステリシス環が存在するかどうか及びその物理的吸脱着等温線タイプを得て、結果を表1に示す。
【0113】
13.上記で製造された炭素被覆層に対して充放電試験を行い、炭素被覆層の充放電容量を得て、結果を表1に示す。
【0114】
14.上記製造された炭素被覆層をそれぞれラマンスペクトル装置を用いてラマンスペクトルを測定し、ラマンスペクトルにおいて、前記炭素被覆層は、炭素特徴ピークD、炭素特徴ピークGを有し、前記炭素特徴ピークDのピーク強度IDと前記炭素特徴ピークGのピーク強度IGとの比ID/IGを表1に示す。
【0115】
【0116】
さらに、本実施例1~実施例10及び比較例1~比較例2で製造された負極材料、導電性カーボンブラック及びPAAガムを質量比75:15:10で負極スラリーを調製し、銅箔に塗布し、乾燥して負極極片を製造した。金属リチウム片を対極とし、アルゴンガスを充填したグローブボックス中にボタン式電池を組み立てて完了する。0.1Cの電流密度で、0.01V-1.5Vの充放電区間で充放電試験を行う。電池の初回可逆比容量、初回効率及び50サイクル後の容量維持率を測定によって得られた。
【0117】
リチウムイオン電池性能テスト
【0118】
1.上記12組の電池に対して、LANDCT2001A電池テストシステムで放電比容量試験を行い、1時間放電の電気量と電池容量との比は、初回放電比容量であり、結果を
図2に示す。
【0119】
2.上記の12組の電池に対して、LANDCT2001A電池テストシステムで初回クーロン効率テストを行い、充放電電流は0.05Cであり、初回クーロン効率を測定して、得られた初回クーロン効率を表2に示す。
【0120】
3.上記の12組の電池に対して、LANDCT2001A電池テストシステムで50周サイクルテストを行い、充放電電流は0.2Cであり、50周サイクルした後、サイクル後の電池容量及びサイクル後の容量保持率を計算する。
【0121】
そのうち、0.2C50サイクル後の容量維持率=50サイクル目の放電容量/第1サイクル放電容量*100%であり、結果を表2に示す。
【0122】
【0123】
上記表1~表2から分かるように、実施例1~実施例8では、まず、予熱し、第1脂肪族炭化水素ガスをケイ素酸化物材料粒子の空孔内に吸着させることで、ケイ素酸化物材料の空孔を充填し、間欠式パルスで第2脂肪族炭化水素ガスを導入し、局所的な炭素源の過剰な堆積を招くことがなく、第2脂肪族炭化水素ガスが分解時に零次元の単一炭素ラジカル又は一次元の比較的に短い炭素鎖に分解され、互いに積み重ねられると、より緊密になる。
図2~
図3に示すように、実施例1の複合負極材料の物理的吸脱着等温線は、II型であり、実施例1のケイ素酸化物材料物理的吸脱着等温線のタイプは、IV型である。且つ、実施例2~実施例8で製造された複合負極材料の物理的吸脱着等温線のタイプは、II型又はIII型であることから、複合負極材料が比較的に緻密で、構造が安定しており、活性シリコンのリチウムを放出・吸蔵する過程において粒子の完全性を維持し、粒子の粉末化を抑制し、それにより製造された電池サイクル安定性が効果的に向上させることを確保できる。
【0124】
実施例6における第2脂肪族炭化水素ガスが過剰に導入され、第2脂肪族炭化水素ガスとケイ素酸化物材料との重量比Aが0.79より大きく、即ち15φa/(1~φa)=0.79であり、過剰な第2脂肪族炭化水素ガスによりケイ素酸化物材料の局所的な炭素源が過剰に堆積し、負極活物質(ケイ素酸化物材料)の質量比が減少し、負極材料の初回放電比容量及び初回クーロン効率が明らかに低下することが分かる。
【0125】
実施例9における第2脂肪族炭化水素ガスの導入量は少ない方であり、第2脂肪族炭化水素ガスとケイ素酸化物材料との重量比Aが0.079と等しく、即ち15φa/(1~φa)=0.079であり、それによりケイ素酸化物材料の表面で堆積された炭素源が過少し、負極材料の導電性が低下し、初回放電比容量、初回クーロン効率及びサイクル保持率はいずれも実施例1より低下した。
【0126】
比較例1と実施例1との主な相違点は、化学気相成長時に導入された第2脂肪族炭化水素ガスがベンゼン蒸気であり、ベンゼン蒸気(C
6H
6)が分解された後に2次元の炭素環となり、その積み重ねる緊密度がエチレンの分解により形成された1次元の短炭素鎖又は零次元の炭素原子に及ばず、被覆後の複合負極材料の孔径分析を経た物理的吸脱着等温線にヒステリシス環が存在し、
図4に示すように、その物理的吸脱着等温線がIV型であり、比較例1のサイクル容量保持率が実施例1のサイクル容量保持率より低いことである。
【0127】
比較例2と実施例1との主な相違点は、化学気相成長時に第2脂肪族炭化水素ガスを連続的に導入し、間欠式パルスの方式で導入しないため、ケイ素酸化物材料表面の炭素源が局所的に過剰に堆積し、ケイ素酸化物材料表面の炭素被覆層の均一性の向上に有利ではなく、製造された複合負極材料の物理的吸脱着等温線のタイプがIV型であり、比較例2のサイクル容量維持率が実施例1のサイクル容量維持率よりも低く、負極材料のサイクル安定性の向上に有利でないことである。
【0128】
以上のように、本出願が提供された複合負極材料の製造方法は、簡単で操作しやすく、製造過程が安全で、効率的であり、製造コストが効果的に低減され、定量化生産に適し、製造された生成物が電池極片として使用され、リチウムを吸蔵・放出する過程における電子伝導とイオン伝導に有利であり、電池のサイクル安定性の向上に有利である。
【0129】
本出願は、好ましい実施例として上記のように開示されているが、特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者であれば、本出願の思想から逸脱することなく、いくつかの可能な変更および修正を行うことができるので、本出願の保護範囲は、本出願の特許請求の範囲によって定義される範囲を基準とすべきである。
【国際調査報告】