(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】核酸脂質ナノ粒子の乾燥粉末製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20240221BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240221BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240221BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240221BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240221BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240221BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240221BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240221BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240221BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240221BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240221BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240221BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20240221BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240221BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K9/51
A61K9/19
A61K9/127
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/34
A61K39/00 G
A61K39/215
A61P31/14
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554805
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022019318
(87)【国際公開番号】W WO2022192239
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ ロバート オー.ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ムーン チェホ
(72)【発明者】
【氏名】サハキジョピジャルン サウィットリー
(72)【発明者】
【氏名】シュ ハイユエ
(72)【発明者】
【氏名】キュイ ジェンロン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA30
4C076AA65
4C076BB11
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC06
4C076CC50
4C076DD15F
4C076DD15H
4C076DD23Z
4C076DD26Z
4C076DD38Q
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4C076DD49H
4C076DD51
4C076DD63F
4C076DD63H
4C076DD67Q
4C076DD70F
4C076DD70H
4C076EE23
4C076EE23F
4C076EE23H
4C076EE49
4C076FF16
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4C076FF36
4C076FF43
4C076FF61
4C076FF63
4C076GG08
4C076GG26
4C085AA03
4C085BA71
4C085DD84
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA10
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA43
4C086MA44
4C086NA03
4C086ZB09
4C086ZB33
(57)【要約】
一部の局面では、本開示は、(A)核酸;(B)核酸が脂質ナノ粒子に実質的にカプセル化されている脂質ナノ粒子;(C)糖;および(D)薬学的に許容されるポリマーを含む、乾燥粉末薬学的組成物を提供する。乾燥粉末組成物は、脂質ナノ粒子にカプセル化された核酸治療物質の溶液ベース薬学的組成物と比べて改善した安定性を示し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)核酸;
(B)脂質ナノ粒子を形成するのに十分な1種類または複数種の脂質;
(C)糖;および
(D)薬学的に許容されるポリマー
を含む、粉末として製剤化された薬学的組成物であって、核酸が脂質ナノ粒子に実質的にカプセル化されている、前記薬学的組成物。
【請求項2】
粉末が乾燥粉末である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
粉末が、水を含まない、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
粉末が、水を実質的に含まない、請求項3記載の薬学的組成物。
【請求項5】
粉末が、水を本質的に含まない、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
核酸がmRNAである、請求項1~5のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項7】
核酸が、抗原をコードするmRNAである、請求項6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
抗原が抗ウイルス抗原である、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
抗ウイルス抗原が、SARS CoV2抗原である、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
SARS CoV2抗原が、SARS CoV2スパイクタンパク質またはその修飾されたバージョンをコードするmRNAである、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項11】
mRNAが、SARS CoV2スパイクタンパク質の修飾されたバージョンをコードする、請求項10記載の薬学的組成物。
【請求項12】
SARS CoV2スパイクタンパク質の修飾されたバージョンが、1つまたは複数のプロリン置換を含む、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
核酸が、1つまたは複数の修飾を含む、請求項1~12のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
核酸が、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の修飾を含む、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項15】
修飾が、5’キャップ、1つもしくは複数の非翻訳領域、シグナルペプチド、リンカー配列、ポリ(A)テール、修飾ヌクレオチド、または一連の同じヌクレオチドを含む、請求項13または14記載の薬学的組成物。
【請求項16】
修飾が、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域を含む、請求項15記載の薬学的組成物。
【請求項17】
1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、または8種類の脂質を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項18】
3種類、4種類、または5種類の脂質を含む、請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項19】
第1の脂質を含む、請求項1~18のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項20】
第1の脂質が、2つ以上の疎水基を有する脂質である、請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項21】
第2の脂質を含む、請求項1~20のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項22】
第2の脂質がリン脂質である、請求項21記載の薬学的組成物。
【請求項23】
リン脂質がホスホコリンである、請求項22記載の薬学的組成物。
【請求項24】
リン脂質がジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項25】
第3の脂質を含む、請求項1~24のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項26】
第3の脂質がペグ化脂質である、請求項25記載の薬学的組成物。
【請求項27】
ペグ化脂質が、1つまたは複数のポリエチレングリコールユニットを含む、請求項26記載の薬学的組成物。
【請求項28】
ペグ化脂質が、約1キロダルトン~約10キロダルトンの分子量のポリエチレングリコールユニットを含む、請求項27記載の薬学的組成物。
【請求項29】
ペグ化脂質が、約2キロダルトンの分子量のポリエチレングリコールユニットを有する、2-ヒドロキシ酢酸のN,N-ジミリスチルアミドである、請求項28記載の薬学的組成物。
【請求項30】
ペグ化脂質が、約2キロダルトンの分子量のポリエチレングリコールユニットを有するN,N-ジテトラデシルアセトアミドである、請求項29記載の薬学的組成物。
【請求項31】
第4の脂質を含む、請求項1~30のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項32】
第4の脂質がステロイドである、請求項31記載の薬学的組成物。
【請求項33】
ステロイドがステロールである、請求項32記載の薬学的組成物。
【請求項34】
ステロールがコレステロールである、請求項33記載の薬学的組成物。
【請求項35】
第1の脂質、第2の脂質、第3の脂質、および第4の脂質が、脂質ナノ粒子を形成する、請求項1~34のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項36】
核酸が、脂質ナノ粒子に本質的にカプセル化されている、請求項1~35のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項37】
核酸が、脂質ナノ粒子に完全にカプセル化されている、請求項1~35のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項38】
糖が多糖である、請求項1~37のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項39】
多糖が、二糖または三糖である、請求項38記載の薬学的組成物。
【請求項40】
多糖が二糖である、請求項38または39記載の薬学的組成物。
【請求項41】
二糖がグルコースを含む、請求項40記載の薬学的組成物。
【請求項42】
二糖が、スクロースまたはトレハロースである、請求項40または41記載の薬学的組成物。
【請求項43】
二糖がスクロースである、請求項42記載の薬学的組成物。
【請求項44】
糖が糖アルコールである、請求項1~37のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項45】
糖が、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトールである、請求項44記載の薬学的組成物。
【請求項46】
薬学的に許容されるポリマーがコポリマーである、請求項1~45のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項47】
コポリマーがトリブロックコポリマーである、請求項46記載の薬学的組成物。
【請求項48】
コポリマーが、1つまたは複数のポリオキシプロピレンユニットと1つまたは複数のポリオキシエチレンユニットを含む、請求項46または47記載の薬学的組成物。
【請求項49】
コポリマーが、1つのポリオキシプロピレンユニットと2つのポリオキシエチレンユニットを含む、請求項46~48のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項50】
コポリマーが、ポリオキシプロピレンユニットと、ポリオキシプロピレンユニットの両側にあるポリオキシエチレンユニットを含む、請求項46~49のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項51】
ポリオキシプロピレンユニットが、約500g/mol~約5000g/molの分子量を有する、請求項46~50のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項52】
ポリオキシプロピレンユニットの分子量が、約750g/mol~約3000g/molである、請求項51記載の薬学的組成物。
【請求項53】
ポリオキシプロピレンユニットの分子量が、約1500g/mol~約2000g/molである、請求項52記載の薬学的組成物。
【請求項54】
ポリオキシプロピレンユニットの分子量が、約1800g/molである、請求項53記載の薬学的組成物。
【請求項55】
それぞれのポリオキシエチレンユニットが、約100g/mol~約2500g/molの分子量を有する、請求項46~54のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項56】
ポリオキシエチレンユニットの分子量が、約250g/mol~約2000g/molである、請求項55記載の薬学的組成物。
【請求項57】
ポリオキシエチレンユニットの分子量が、約600g/mol~約1000g/molである、請求項56記載の薬学的組成物。
【請求項58】
ポリオキシエチレンユニットの分子量が、約800g/molである、請求項57記載の薬学的組成物。
【請求項59】
薬学的に許容されるポリマーが、ポロキサマーP188である、請求項1~58のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項60】
1種類または複数種の塩をさらに含む、請求項1~59のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項61】
塩がリン酸緩衝剤である、請求項60記載の薬学的組成物。
【請求項62】
塩が塩化ナトリウムである、請求項60または61記載の薬学的組成物。
【請求項63】
塩が、リン酸緩衝食塩水(PBS)に由来する固形分である、請求項60~62のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項64】
約0.1%w/w~約50%w/wの脂質ナノ粒子を含む、請求項1~63のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項65】
約1%w/w~約15%w/wの脂質ナノ粒子を含む、請求項64記載の薬学的組成物。
【請求項66】
約2%w/w~約10%w/wの脂質ナノ粒子を含む、請求項65記載の薬学的組成物。
【請求項67】
約2%w/w~約5%w/wの脂質ナノ粒子を含む、請求項66記載の薬学的組成物。
【請求項68】
約6%w/w~約10%w/wの脂質ナノ粒子を含む、請求項66記載の薬学的組成物。
【請求項69】
約25%w/w~約98%w/wの糖を含む、請求項1~68のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項70】
約40%w/w~約95%w/wの糖を含む、請求項69記載の薬学的組成物。
【請求項71】
約50%w/w~約90%w/wの糖を含む、請求項70記載の薬学的組成物。
【請求項72】
約50%w/w~約70%w/wの糖を含む、請求項71記載の薬学的組成物。
【請求項73】
約80%w/w~約90%w/wの糖を含む、請求項71記載の薬学的組成物。
【請求項74】
約0.1%w/w~約25%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項1~73のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項75】
約0.25%w/w~約15%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項74記載の薬学的組成物。
【請求項76】
約0.4%w/w~約5%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項75記載の薬学的組成物。
【請求項77】
約0.5%w/w~約2.5%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項76記載の薬学的組成物。
【請求項78】
約1.0%w/w~約1.5%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む、請求項77記載の薬学的組成物。
【請求項79】
約1%w/w~約50%w/wのそれぞれの塩を含む、請求項1~78のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項80】
約2%w/w~約45%w/wのそれぞれの塩を含む、請求項79記載の薬学的組成物。
【請求項81】
約2.5%w/w~約40%w/wのそれぞれの塩を含む、請求項80記載の薬学的組成物。
【請求項82】
約5%w/w~約30%w/wのそれぞれの塩を含む、請求項81記載の薬学的組成物。
【請求項83】
約5%w/w~約10%w/wのそれぞれの塩を含む、請求項82記載の薬学的組成物。
【請求項84】
約20%w/w~約30%w/wのそれぞれの塩を含む、請求項82記載の薬学的組成物。
【請求項85】
1つまたは複数の粒子を含む、請求項1~84のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項86】
それぞれの粒子が、脂質ナノ粒子、薬学的に許容されるポリマー、および糖を含む、請求項85記載の薬学的組成物。
【請求項87】
プロセシング後のmRNA回収率が、60%超である、請求項1~86のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項88】
mRNA回収率が70%超である、請求項87記載の薬学的組成物。
【請求項89】
mRNA回収率が80%超である、請求項88記載の薬学的組成物。
【請求項90】
脂質ナノ粒子が、約50nm~約250nmのZ平均を有する、請求項1~89のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項91】
Z平均が、約75nm~約200nmである、請求項90記載の薬学的組成物。
【請求項92】
Z平均が、約80nm~約150nmである、請求項91記載の薬学的組成物。
【請求項93】
30℃より低い温度で保管された場合に、1ヶ月後に10%未満の分解を示す、請求項1~92のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項94】
1ヶ月後に5%未満の分解を示した、請求項93記載の薬学的組成物。
【請求項95】
1ヶ月後に3%未満の分解を示した、請求項94記載の薬学的組成物。
【請求項96】
1ヶ月後に1%未満の分解を示した、請求項95記載の薬学的組成物。
【請求項97】
5℃未満で保管された場合に低分解を示した、請求項93~96のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項98】
低いかさ密度を有する、請求項1~97のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項99】
溶液へと再構成されている、請求項1~98のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項100】
溶液が、水を用いて作製される、請求項99記載の薬学的組成物。
【請求項101】
溶液が、リン酸緩衝食塩水を用いて作製される、請求項100記載の薬学的組成物。
【請求項102】
1種類または複数種の追加の賦形剤をさらに含む、請求項1~101のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項103】
追加の賦形剤が、タンパク質、アミノ酸、第2の薬学的に許容されるポリマー、抗酸化物質、または界面活性剤である、請求項102記載の薬学的組成物。
【請求項104】
(A)SARS CoV2抗原をコードするmRNAである核酸であって、SARS CoV2抗原がSARS CoV2スパイクタンパク質の修飾されたバージョンである、前記核酸;
(B)脂質ナノ粒子を形成するのに十分な1種類または複数種の脂質であって、脂質ナノ粒子が、第1の脂質、第2の脂質、第3の脂質、および第4の脂質を含み、第1の脂質がイオン化可能な脂質であり、第2の脂質がリン脂質であり、第3の脂質がペグ化脂質であり、かつ第4の脂質がステロールである、前記1種類または複数種の脂質;
(C)二糖である糖;ならびに
(D)2つのポリオキシエチレンユニットと1つのポリオキシプロピレンユニットを有するトリブロックコポリマーである、薬学的に許容されるポリマー
を含む、請求項1~103のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項105】
請求項1~104のいずれか一項記載の薬学的組成物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
(A)核酸をカプセル化している脂質ナノ粒子、糖、および薬学的に許容されるポリマーの混合物を溶媒に溶解させて、薬学的混合物を得る工程;
(B)薬学的混合物を、0℃より低い表面温度の表面に適用して、凍結した薬学的混合物を得る工程;ならびに
(C)凍結した薬学的混合物を収集し、凍結した薬学的混合物を乾燥させて、薬学的組成物を得る工程。
【請求項106】
溶媒が水である、請求項105記載の方法。
【請求項107】
薬学的混合物が、第2の溶媒をさらに含む、請求項105または106記載の方法。
【請求項108】
第2の溶媒が有機溶媒である、請求項107記載の方法。
【請求項109】
有機溶媒が、アセトニトリル、tert-ブタノール、または1,4-ジオキサンである、請求項108記載の方法。
【請求項110】
混合物を塩と混合する工程をさらに含む、請求項105~109のいずれか一項記載の方法。
【請求項111】
均一な薬学的混合物を得るために、第1の溶媒が第2の溶媒と混合される、請求項105~110のいずれか一項記載の方法。
【請求項112】
薬学的混合物が、透明になるまで混合される、請求項105~111のいずれか一項記載の方法。
【請求項113】
薬学的混合物が、混合物の約0.05%w/v~約25%w/vの固形分を含む、請求項105~112のいずれか一項記載の方法。
【請求項114】
固形分が、混合物の約0.1%w/v~約10%w/vである、請求項113記載の方法。
【請求項115】
固形分が、混合物の約0.15%w/v~約5%w/vである、請求項114記載の方法。
【請求項116】
固形分が、混合物の約0.2%w/v~約2.5%w/vである、請求項115記載の方法。
【請求項117】
固形分が、混合物の約0.5%w/v~約1.25%w/vである、請求項116記載の方法。
【請求項118】
薬学的混合物が、約0.5mL/min~約5mL/minの供給量で適用される、請求項105~117のいずれか一項記載の方法。
【請求項119】
供給量が、約1mL/min~約3mL/minである、請求項118記載の方法。
【請求項120】
供給量が約2mL/minである、請求項119記載の方法。
【請求項121】
薬学的混合物が、ノズルを用いて適用される、請求項105~120のいずれか一項記載の方法。
【請求項122】
ノズルが針である、請求項121記載の方法。
【請求項123】
薬学的混合物が、約2cm~約50cmの高さから適用される、請求項105~122のいずれか一項記載の方法。
【請求項124】
高さが、約5cm~約20cmである、請求項123記載の方法。
【請求項125】
高さが約10cmである、請求項124記載の方法。
【請求項126】
表面温度が、約0℃~-190℃である、請求項105~125のいずれか一項記載の方法。
【請求項127】
表面温度が、約-25℃~約-125℃である、請求項126記載の方法。
【請求項128】
表面温度が約-100℃である、請求項127記載の方法。
【請求項129】
表面が回転面である、請求項105~128のいずれか一項記載の方法。
【請求項130】
表面が、約5rpm~約500rpmの速度で回転している、請求項129記載の方法。
【請求項131】
表面が、約100rpm~約400rpmの速度で回転している、請求項130記載の方法。
【請求項132】
表面が、約200rpmの速度で回転している、請求項131記載の方法。
【請求項133】
表面が静止している、請求項105~128のいずれか一項記載の方法。
【請求項134】
凍結した薬学的組成物が、凍結乾燥によって乾燥される、請求項105~133のいずれか一項記載の方法。
【請求項135】
凍結した薬学的組成物が、第1の低い圧力で乾燥される、請求項134記載の方法。
【請求項136】
第1の低い圧力が、約10mTorr~500mTorrである、請求項135記載の方法。
【請求項137】
第1の低い圧力が、約50mTorr~約250mTorrである、請求項136記載の方法。
【請求項138】
第1の低い圧力が、約100mTorrである、請求項137記載の方法。
【請求項139】
凍結した薬学的組成物が、第1の低い温度で乾燥される、請求項134~138のいずれか一項記載の方法。
【請求項140】
第1の低い温度が、約0℃~-100℃である、請求項139記載の方法。
【請求項141】
第1の低い温度が、約-20℃~約-60℃である、請求項140記載の方法。
【請求項142】
第1の低い温度が約-40℃である、請求項141記載の方法。
【請求項143】
凍結した薬学的組成物が、約3時間~約36時間の第1の乾燥期間にわたって乾燥される、請求項134~142のいずれか一項記載の方法。
【請求項144】
第1の乾燥期間が、約6時間~約24時間である、請求項143記載の方法。
【請求項145】
第1の乾燥期間が約20時間である、請求項144記載の方法。
【請求項146】
凍結した薬学的組成物が、第2の乾燥期間にわたって乾燥される、請求項134~145のいずれか一項記載の方法。
【請求項147】
凍結した薬学的組成物が、第2の乾燥時間にわたって第2の低い圧力で乾燥される、請求項146記載の方法。
【請求項148】
第2の乾燥時間が、約10mTorr~500mTorrである低い圧力で行われる、請求項147記載の方法。
【請求項149】
第2の乾燥時間が、約50mTorr~約250mTorrである低い圧力で行われる、請求項148記載の方法。
【請求項150】
第2の乾燥時間が、約100mTorrである低い圧力で行われる、請求項149記載の方法。
【請求項151】
凍結した薬学的組成物が、第2の乾燥時間にわたって第2の低い温度で乾燥される、請求項147~150のいずれか一項記載の方法。
【請求項152】
第2の低い温度が、約0℃~30℃である、請求項151記載の方法。
【請求項153】
第2の低い温度が、約10℃~約30℃である、請求項152記載の方法
【請求項154】
第2の低い温度が約25℃である、請求項153記載の方法。
【請求項155】
凍結した薬学的組成物が、約0.5時間~約36時間の第2の期間中の第2の時間にわたって乾燥される、請求項147~154のいずれか一項記載の方法。
【請求項156】
第2の期間が、約6時間~約24時間である、請求項155記載の方法。
【請求項157】
第2の期間が約20時間である、請求項156記載の方法。
【請求項158】
温度が、ランピング期間にわたって第1の低い温度から第2の低い温度に変更される、請求項134~157のいずれか一項記載の方法。
【請求項159】
ランピング期間が、約3時間~約36時間である、請求項158記載の方法。
【請求項160】
ランピング期間が、約6時間~約24時間である、請求項159記載の方法。
【請求項161】
ランピング期間が約20時間である、請求項160記載の方法。
【請求項162】
請求項105~161のいずれか一項記載の方法を用いて調製された、薬学的組成物。
【請求項163】
疾患または障害を予防する方法であって、疾患または障害の予防を必要とする患者に、治療的有効量の請求項1~104および162のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項164】
疾患または障害を処置する方法であって、疾患または障害の処置を必要とする患者に、治療的有効量の請求項1~104および162のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項165】
疾患または障害が、ウイルスの感染症である、請求項163または164記載の方法。
【請求項166】
ウイルスが、SARS CoV2である、請求項166記載の方法。
【請求項167】
感染症の重篤度を低下させる、請求項163~166のいずれか一項記載の方法。
【請求項168】
症候性感染症を発症しないように患者を予防する、請求項163~167のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月8日に出願された米国仮出願第63/158,280号の優先権の恩典を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
1.分野
本開示は概して薬剤および製薬の分野に関する。さらに詳細には、本開示は、乾燥粉末として核酸を含む脂質ナノ粒子を含む組成物、および乾燥粉末として核酸を含む脂質ナノ粒子を含む薬学的組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連分野の説明
核酸治療物質は成長中の製薬分野であり、核酸新薬の数は対前年比で増加している。残念ながら、これらの化合物はインビボで治療に有効になるために特定の製剤の使用を必要とする。特に、これらの組成物は一般的に水溶液として脂質ナノ粒子として製剤化される。これらの製剤は特定の保管要件を必要とすることが多い。SARS CoV2ワクチンのうちの2つは両方ともmRNAをベースとし、脂質ナノ粒子として製剤化される。ワクチン活性を維持するのにはコールドチェーンが必要なため、これらの組成物は、十分に確立されており、かつ長期の調製、保管、および輸送プロトコールを有する。コールドチェーン要件の一部は、使用直前までワクチンを-80°の温度に保ち、次いで、その直後に使用しなければならないことを含む。この特別な要件には、この温度を維持できるサプライチェーンの導入が必要であり、そのため、先進国では一般集団への迅速な展開が妨げられ、これらの組成物の低開発国へのアクセスが大きく制限されている。従って、改善した安定性を示す薬学的組成物を開発することが依然として望まれている。
【発明の概要】
【0004】
一部の局面では、本開示は、改善した安定性を示す、脂質ナノ粒子にカプセル化された核酸治療物質の乾燥粉末薬学的組成物を提供する。一部の態様では、本開示は、
(A)核酸;
(B)脂質ナノ粒子を形成するのに十分な1種類または複数種の脂質;
(C)糖;および
(D)薬学的に許容されるポリマー
を含む、粉末として製剤化された薬学的組成物であって、核酸が脂質ナノ粒子に実質的にカプセル化されている、薬学的組成物を提供する。
【0005】
一部の態様では、粉末は乾燥粉末である。一部の態様では、粉末は水を全く含まない。一部の態様では、粉末は水を実質的に含まない。一部の態様では、粉末は水を本質的に含まない。
【0006】
一部の態様では、核酸は、mRNA、例えば、抗原をコードするmRNAである。一部の態様では、抗原は、抗ウイルス抗原、例えば、SARS CoV2抗原である。一部の態様では、SARS CoV2抗原は、SARS CoV2スパイクタンパク質またはその修飾されたバージョンをコードするmRNAである。一部の態様では、mRNAは、SARS CoV2スパイクタンパク質の修飾されたバージョンをコードする。一部の態様では、SARS CoV2スパイクタンパク質の修飾されたバージョンは、1つまたは複数のプロリン置換を含む。一部の態様では、核酸は、1つまたは複数の修飾を含む。一部の態様では、核酸は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の修飾を含む。一部の態様では、修飾は、5’キャップ、1つもしくは複数の非翻訳領域、シグナルペプチド、リンカー配列、ポリ(A)テール、修飾ヌクレオチド、または一連の同じヌクレオチドを含む。一部の態様では、修飾は、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域を含む。
【0007】
一部の態様では、薬学的組成物は、1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、または8種類の脂質を含む。一部の態様では、薬学的組成物は3種類、4種類、または5種類の脂質を含む。一部の態様では、薬学的組成物は第1の脂質を含む。一部の態様では、第1の脂質は、2つ以上の疎水基を有する脂質である。
【0008】
一部の態様では、薬学的組成物は第2の脂質を含む。一部の態様では、第2の脂質はリン脂質である。一部の態様では、リン脂質はホスホコリンである。一部の態様では、リン脂質はジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である。
【0009】
一部の態様では、薬学的組成物は第3の脂質を含む。一部の態様では、第3の脂質はペグ化脂質である。一部の態様では、ペグ化脂質は1つまたは複数のポリエチレングリコールユニットを含む。一部の態様では、ペグ化脂質は、約1キロダルトン~約10キロダルトンの分子量のポリエチレングリコールユニットを含む。一部の態様では、ペグ化脂質は、約2キロダルトンの分子量のポリエチレングリコールユニットを有する、2-ヒドロキシ酢酸のN,N-ジミリスチルアミドである。一部の態様では、ペグ化脂質は、約2キロダルトンの分子量のポリエチレングリコールユニットを有するN,N-ジテトラデシルアセトアミドである。
【0010】
一部の態様では、薬学的組成物は、ステロイドなどの第4の脂質を含む。一部の態様では、ステロイドはステロールである。一部の態様では、ステロールはコレステロールである。一部の態様では、第1の脂質、第2の脂質、第3の脂質、および第4の脂質は脂質ナノ粒子を形成する。一部の態様では、核酸は、脂質ナノ粒子に本質的にカプセル化されている。一部の態様では、核酸は、脂質ナノ粒子に完全にカプセル化されている。
【0011】
一部の態様では、糖は二糖または三糖などの多糖である。一部の態様では、多糖は二糖である。一部の態様では、二糖はグルコースを含む。一部の態様では、二糖は、スクロースまたはトレハロースである。一部の態様では、二糖はスクロースである。他の態様では、糖は糖アルコールである。一部の態様では、糖アルコールは、ソルビトール、キシリトール、またはマンニトールである。
【0012】
一部の態様では、薬学的に許容されるポリマーはコポリマーである。一部の態様では、コポリマーはトリブロックコポリマーである。一部の態様では、コポリマーは、1つまたは複数のポリオキシプロピレンユニットと1つまたは複数のポリオキシエチレンユニットを含む。一部の態様では、コポリマーは、1つのポリオキシプロピレンユニットと2つのポリオキシエチレンユニットを含む。一部の態様では、コポリマーは、ポリオキシプロピレンユニットと、ポリオキシプロピレンユニットの両側にあるポリオキシエチレンユニットを含む。一部の態様では、ポリオキシプロピレンユニットの分子量は約500g/mol~約5000g/molである。一部の態様では、ポリオキシプロピレンユニットの分子量は約750g/mol~約3000g/molである。一部の態様では、ポリオキシプロピレンユニットの分子量は約1500g/mol~約2000g/molである。一部の態様では、ポリオキシプロピレンユニットの分子量は約1800g/molである。一部の態様では、ポリオキシエチレンユニットのそれぞれの分子量は約100g/mol~約2500g/molである。一部の態様では、ポリオキシエチレンユニットの分子量は約250g/mol~約2000g/molである。一部の態様では、ポリオキシエチレンユニットの分子量は約600g/mol~約1000g/molである。一部の態様では、ポリオキシエチレンユニットの分子量は約800g/molである。一部の態様では、薬学的に許容されるポリマーはポロキサマーP188である。
【0013】
一部の態様では、薬学的組成物は、1種類または複数種の塩をさらに含む。一部の態様では、塩はリン酸緩衝剤である。他の態様では、塩は塩化ナトリウムである。他の態様では、塩は、リン酸緩衝食塩水(PBS)に由来する固形分である。
【0014】
一部の態様では、薬学的組成物は約0.05%w/w~約50%w/wの脂質ナノ粒子を含む。一部の態様では、薬学的組成物は0.1%w/w~約50%w/wの脂質ナノ粒子を含む。一部の態様では、薬学的組成物は0.25%w/w~約50%w/wの脂質ナノ粒子を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約1%w/w~約15%w/wの脂質ナノ粒子を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約2%w/w~約10%w/wの脂質ナノ粒子を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約2%w/w~約5%w/wの脂質ナノ粒子を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約6%w/w~約10%w/wの脂質ナノ粒子を含む。
【0015】
一部の態様では、薬学的組成物は約25%w/w~約98%w/wの糖を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約40%w/w~約95%w/wの糖を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約50%w/w~約90%w/wの糖を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約50%w/w~約70%w/wの糖を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約80%w/w~約90%w/wの糖を含む。
【0016】
一部の態様では、薬学的組成物は約0.1%w/w~約25%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む。一部の態様では、薬学的組成物は約0.25%w/w~約15%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む。一部の態様では、薬学的組成物は約0.4%w/w~約5%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む。一部の態様では、薬学的組成物は約0.5%w/w~約2.5%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む。一部の態様では、薬学的組成物は約1.0%w/w~約1.5%w/wの薬学的に許容されるポリマーを含む。
【0017】
一部の態様では、薬学的組成物は約1%w/w~約50%w/wのそれぞれの塩を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約2%w/w~約45%w/wのそれぞれの塩を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約2.5%w/w~約40%w/wのそれぞれの塩を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約5%w/w~約30%w/wのそれぞれの塩を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約5%w/w~約10%w/wのそれぞれの塩を含む。一部の態様では、薬学的組成物は約20%w/w~約30%w/wのそれぞれの塩を含む。
【0018】
一部の態様では、薬学的組成物は1つまたは複数の粒子を含む。一部の態様では、それぞれの粒子は、脂質ナノ粒子、薬学的に許容されるポリマー、および糖を含む。一部の態様では、プロセシング後のmRNA回収率は60%超である。一部の態様では、mRNA回収率は70%超である。一部の態様では、mRNA回収率は80%超である。一部の態様では、脂質ナノ粒子のZ平均は約50nm~約250nmである。一部の態様では、Z平均は約75nm~約200nmである。一部の態様では、Z平均は約80nm~約150nmである。
【0019】
一部の態様では、薬学的組成物は、30℃より低い温度で保管された場合に1ヶ月後に10%未満の分解を示す。一部の態様では、薬学的組成物は1ヶ月後に5%未満の分解を示した。一部の態様では、薬学的組成物は1ヶ月後に3%未満の分解を示した。一部の態様では、薬学的組成物は1ヶ月後に1%未満の分解を示した。一部の態様では、薬学的組成物は、5℃未満で保管された場合に低分解を示した。一部の態様では、薬学的組成物は低いかさ密度を有する。
【0020】
一部の態様では、薬学的組成物は溶液へと再構成されている。一部の態様では、溶液は水を用いて作製される。一部の態様では、溶液はリン酸緩衝食塩水を用いて作製される。一部の態様では、溶液はクエン酸緩衝液を用いて作製される。一部の態様では、薬学的組成物は1種類または複数種の追加の賦形剤をさらに含む。一部の態様では、追加の賦形剤は、タンパク質、アミノ酸、第2の薬学的に許容されるポリマー、抗酸化物質、または界面活性剤である。一部の態様では、薬学的組成物は、
(A)SARS CoV2抗原をコードするmRNAである核酸であって、SARS CoV2抗原が、SARS CoV2スパイクタンパク質の修飾されたバージョンである、前記核酸;
(B)脂質ナノ粒子を形成するのに十分な1種類または複数種の脂質であって、脂質ナノ粒子が、第1の脂質、第2の脂質、第3の脂質、および第4の脂質を含み、第1の脂質がイオン化可能な脂質であり、第2の脂質がリン脂質であり、第3の脂質がペグ化脂質であり、かつ第4の脂質がステロールである、前記1種類または複数種の脂質;
(C)二糖である糖;ならびに
(D)2つのポリオキシエチレンユニットと1つのポリオキシプロピレンユニットを有するトリブロックコポリマーである、薬学的に許容されるポリマー
を含む。
【0021】
別の局面では、本開示は、本明細書に記載の薬学的組成物を調製する方法であって、
(A)核酸をカプセル化している脂質ナノ粒子、糖、および薬学的に許容されるポリマーの混合物を溶媒に溶解させて、薬学的混合物を得る工程;
(B)薬学的混合物を、0℃より低い表面温度の表面に適用して、凍結した薬学的混合物を得る工程;ならびに
(C)凍結した薬学的混合物を収集し、凍結した薬学的混合物を乾燥させて、薬学的組成物を得る工程
を含む、方法を提供する。
【0022】
一部の態様では、溶媒は水である。一部の態様では、薬学的混合物は第2の溶媒をさらに含む。一部の態様では、第2の溶媒は有機溶媒である。一部の態様では、有機溶媒は、アセトニトリル、tert-ブタノール、または1,4-ジオキサンである。一部の態様では、前記方法は、混合物を塩と混合する工程をさらに含む。一部の態様では、均一な薬学的混合物を得るために、第1の溶媒は第2の溶媒と混合される。一部の態様では、薬学的混合物は透明になるまで混合される。
【0023】
一部の態様では、薬学的混合物は、混合物の約0.05%w/v~約25%w/vの固形分を含む。一部の態様では、固形分は混合物の約0.1%w/v~約10%w/vである。一部の態様では、固形分は混合物の約0.15%w/v~約5%w/vである。一部の態様では、固形分は混合物の約0.2%w/v~約2.5%w/vである。一部の態様では、固形分は混合物の約0.5%w/v~約1.25%w/vである。
【0024】
一部の態様では、薬学的混合物は約0.5mL/min~約5mL/minの供給量で適用される。一部の態様では、供給量は約1mL/min~約3mL/minである。一部の態様では、供給量は約2mL/minである。一部の態様では、薬学的混合物は針などのノズルを用いて適用される。一部の態様では、薬学的混合物は約2cm~約50cmの高さから適用される。一部の態様では、高さは約5cm~約20cmである。一部の態様では、高さは約10cmである。
【0025】
一部の態様では、表面温度は約0℃~-190℃である。一部の態様では、表面温度は約-25℃~約-125℃である。一部の態様では、表面温度は約-100℃である。一部の態様では、表面は回転面である。一部の態様では、表面は約5rpm~約500rpmの速度で回転している。一部の態様では、表面は約100rpm~約400rpmの速度で回転している。一部の態様では、表面は約200rpmの速度で回転している。他の態様では、表面は静止している。
【0026】
一部の態様では、凍結した薬学的組成物は凍結乾燥によって乾燥される。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は第1の低い圧力で乾燥される。一部の態様では、第1の低い圧力は約10mTorr~500mTorrである。一部の態様では、第1の低い圧力は約50mTorr~約250mTorrである。一部の態様では、第1の低い圧力は約100mTorrである。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は第1の低い温度で乾燥される。一部の態様では、第1の低い温度は約0℃~-100℃である。一部の態様では、第1の低い温度は約-20℃~約-60℃である。一部の態様では、第1の低い温度は約-40℃である。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は、約3時間~約36時間の第1の乾燥期間にわたって乾燥される。一部の態様では、第1の乾燥期間は約6時間~約24時間である。一部の態様では、第1の乾燥期間は約20時間である。
【0027】
一部の態様では、凍結した薬学的組成物は第2の乾燥期間にわたって乾燥される。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は第2の乾燥時間にわたって第2の低い圧力で乾燥される。一部の態様では、第2の乾燥時間は、約10mTorr~500mTorrである低い圧力で行われる。一部の態様では、第2の乾燥時間は、約50mTorr~約250mTorrである低い圧力で行われる。一部の態様では、第2の乾燥時間は、約100mTorrである低い圧力で行われる。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は第2の乾燥時間にわたって第2の低い温度で乾燥される。一部の態様では、第2の低い温度は約0℃~30℃である。一部の態様では、第2の低い温度は約10℃~約30℃である。一部の態様では、第2の低い温度は約25℃である。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は、約0.5時間~約36時間の第2の期間中の第2の時間にわたって乾燥される。一部の態様では、第2の期間は約6時間~約24時間である。一部の態様では、第2の期間は約20時間である。
【0028】
一部の態様では、温度はランピング期間にわたって第1の低い温度から第2の低い温度に変更される。一部の態様では、ランピング期間は約1時間~約36時間である。一部の態様では、ランピング期間は約6時間~約24時間である。一部の態様では、ランピング期間は約20時間である。
【0029】
さらにもっと別の局面では、本開示は、本明細書に記載の方法を用いて調製された薬学的組成物を提供する。
【0030】
さらに別の局面では、本開示は、疾患または障害を予防する方法であって、疾患または障害の予防を必要とする患者に治療的有効量の本明細書に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0031】
さらに別の局面では、本開示は、疾患または障害を処置する方法であって、疾患または障害の処置を必要とする患者に治療的有効量の本明細書に記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0032】
一部の態様では、疾患または障害はウイルスの感染症である。一部の態様では、ウイルスはSARS CoV2である。一部の態様では、前記方法は感染症の重篤度を低下させる。一部の態様では、前記方法は、患者が症候性感染症を発症しないように予防する。
【0033】
本開示の他の目的、特徴、および利点は以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、本発明の特定の態様が示されているものの、この詳細な説明から当業者には本発明の精神および範囲内のさまざまな変更および修正が明らかになるので、詳細な説明および具体的な実施例は例示にすぎないことが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
添付の図面は本明細書の一部を形成し、本開示の特定の局面をさらに実証するために含まれる。本開示は、本明細書において提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つまたは複数を参照することによってさらによく理解され得る。
【
図1】mRNA-LNPが薄膜凍結乾燥(thin-film freeze-drying)(すなわち、製剤5)および再構成に供された後のmRNA-LNPの代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
例示的な態様の説明
一部の局面では、本開示は、脂質ナノ粒子にカプセル化された治療用核酸の乾燥粉末薬学的組成物に関する。これらの乾燥粉末組成物は従来の脂質ナノ粒子溶液を上回る1つまたは複数の恩典を有し得る。例えば、これらの乾燥粉末薬学的組成物は、改善した安定性を示すか、またはコールドチェーンの利用を無くす可能性がある。これらの組成物の詳細は下記でさらに詳細に示される。
【0036】
I.薬学的組成物
一部の局面では、本開示は薬学的組成物を乾燥粉末として提供する。これらの乾燥粉末薬学的組成物は保管され、後日、水、食塩水、またはリン酸緩衝食塩水などの溶媒を添加することによって注射液へと再構成されてもよい。これらの溶媒系はスクロースまたはデキストロースなどの糖をさらに含んでもよい。乾燥粉末の中で、薬学的組成物は、脂質ナノ粒子の中にカプセル化された核酸と、糖分子と、薬学的に許容されるポリマーを含む。前記組成物は1種類または複数種の塩をさらに含んでもよい。
【0037】
一部の態様では、薬学的組成物は、核酸をカプセル化する1つまたは複数の脂質ナノ粒子を有する。これらの脂質ナノ粒子のZ平均は、25nm~約500nm、50nm~約250nm、75nm~約200nm、または約80nm~約150nmでもよい。一部の態様では、Z平均は、約25nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、125nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、175nm、180nm、190nm、200nm、225nmから、約250nmまで、またはその中で導き出せる任意の範囲である。乾燥粉末は、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃、15℃、10℃、5℃、0℃、または-5℃より低い温度で保管されてもよい。これらの温度で保管された場合に薬学的組成物は低分解を示すことがある。一部の態様では、分解はワクチン活性の変化によって測定されることがある。他の態様では、分解はZ平均の変化によって測定される。薬学的組成物は、ある期間の後に、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、7.5%未満、5%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の分解を示すことがある。この分解は、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、または1年の期間にわたって測定されることがある。さらに、薬学的組成物を調製した後に、回収されるmRNAの量は、使用されたmRNAの出発量の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92.5%、95%、96%、97%、98%、または99%でもよい。
【0038】
さらに、薬学的組成物は低いかさ密度を示してもよい。かさ密度は0.040±0.003g/mLでもよい。さらに、薬学的組成物のかさ密度は、その比表面積と関連して考慮されることがある。薬学的組成物の比表面積は、約5m2/g~約1,000m2/g、約7.5m2/g~約500m2/g、約10m2/g~約250m2/g、約12.5m2/g~約100m2/g、または約15m2/g~約75m2/gでもよい。薬学的組成物の比表面積は、5m2/g、6m2/g、7m2/g、7.5m2/g、8m2/g、9m2/g、10m2/g、12.5m2/g、15m2/g、または17.5m2/gより大きくてもよい。薬学的組成物の比表面積は、約5m2/g、6m2/g、7m2/g、7.5m2/g、8m2/g、9m2/g、10m2/g、12.5m2/g、15m2/g、17.5m2/g、20m2/g、22.5m2/g、25m2/g、30m2/g、40m2/g、50m2/g、60m2/g、70m2/g、75m2/g、80m2/g、90m2/g、100m2/g、250m2/g、500m2/gから、約1,000m2/gまで、またはその中で導き出せる任意の範囲でもよい。比表面積は、Monosorb急速表面積分析器を用いてシングルポイントブラウマー・エメット・テラー(single-point Braummer-Emmett-Teller)(BET)法によって決定されてもよい。
【0039】
A.核酸
本明細書で使用する「核酸」、「核酸配列」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、または他の文法上の相当語句は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはその類似体である少なくとも2つのヌクレオチドが共有結合したものを意味する。ポリヌクレオチドは、例えば、20、50、100、200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10,000などを含む任意の長さの重合体である。本明細書に記載のポリヌクレオチドは一般的にホスホジエステル結合を含むが、場合によっては、少なくとも1つの異なる連結、例えば、ホスホルアミダート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、またはO-メチルホスホルアミダイト連結、ならびにペプチド核酸バックボーンおよび連結を有することがある核酸類似体が含まれる。天然ポリヌクレオチドと類似体の混合物を作製することができる。または、異なるポリヌクレオチド類似体の混合物および天然ポリヌクレオチドと類似体の混合物が作製されることがある。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例:遺伝子または遺伝子断片、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、cRNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ミニサークルDNA、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーである。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含んでもよい。存在するのであれば、ヌクレオチド構造に対する修飾は重合体が組み立てられる前に付与されてもよく、重合体が組み立てられた後に付与されてもよい。ヌクレオチド配列は非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後に、例えば、標識成分との結合体化によってさらに修飾されてもよい。この用語はまた二本鎖分子と一本鎖分子を両方とも含む。他で特定しない限り、または必要とされない限り、ポリヌクレオチドという用語は、二本鎖型と、二本鎖型を構成すると知られているか、または予測されている2本のそれぞれの相補的一本鎖型を両方とも包含する。ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびポリヌクレオチドがRNAの場合はチミンの代わりにウラシル(U)の特定の配列で構成される。従って、「ポリヌクレオチド配列」という用語はポリヌクレオチド分子のアルファベット表記である。特に定めのない限り、特定のポリヌクレオチド配列は、保存的に修飾されたその変種(例えば、縮重コドン置換)および相補的配列ならびに明示的に示された配列も暗黙的に包含する。具体的にいえば、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することによって縮重コドン置換が行われる場合がある。
【0040】
修飾RNAは、mRNAに高い安定性と低い免疫原性を付与し、それによって、治療に重要なタンパク質の発現を容易にする、ある特定の化学修飾を意図する。例えば、N1-メチル-プソイドウリジン(N1mΨ)は翻訳能力の点で他のいくつかのヌクレオシド修飾とこれらの組み合わせより優れている。一部の態様では、本明細書で使用する核酸は、1-メチル-3’-プソイドウリジルイル塩基などのプソイドウラシルと交換されたウラシルを有してもよい。一部の態様では、ウラシルの一部が交換され、他の態様では、ウラシルの全てが交換されている。翻訳の免疫/eIF2αリン酸化依存性阻害をオフにすることに加えて、組み込まれたN1mΨヌクレオチドは、mRNA上でのリボソームポージングと密度を増やすことで翻訳プロセスの動態を激変させる。修飾mRNAのリボソームローディングが増加するので、修飾mRNAは、同じmRNA上でのリボソームリサイクリングまたは新規リボソーム動員を促進することで開始をもっと許容するようになる。このような修飾を用いると、RNA接種後に、インビボでの抗体発現を増強できるかもしれない。RNAは天然でも修飾されていても裸のRNAとして送達されてもよく、脂質ナノ粒子などの送達ビヒクルに入れられて送達されてもよい。
【0041】
これらのそれぞれが下記でさらに詳細に説明される。
【0042】
1.核酸
本開示の一部の局面では、脂質ナノ粒子は1つまたは複数の核酸を含む。一部の態様では、脂質ナノ粒子は、約5:1~約1:100の脂質ナノ粒子に対する重量比で存在する1つまたは複数の核酸を含む。一部の態様では、核酸と脂質ナノ粒子の重量比は、約5:1、2.5:1、1:1、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、もしくは1:100、またはその中で導き出せる任意の範囲である。一部の態様では、重量比は約1:40である。さらに、本開示は、本明細書において開示される特定の核酸に限定されないことは明らかなはずである。しかしながら、当業者は、非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、ギボン、チンパンジー、類人猿、ヒヒ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、および他の種)に由来する核酸を含む様々な他の核酸供給源において関連するホモログを容易に特定することができるので、本開示は、範囲が、核酸の任意の特定の供給源、配列、またはタイプに限定されない。本開示において使用する核酸は、天然配列に基づく配列を含むことができると意図される。遺伝暗号の縮重を考慮して、天然配列のヌクレオチド配列と同一のヌクレオチドの少なくとも約50%、一般的に少なくとも約60%、より一般的に約70%、最も一般的に約80%、好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは約95%を有する配列。別の態様では、核酸は、天然配列に対する相補的配列であるか、または75%、80%、85%、90%、95%、および100%に相補的である。250、500、1000、1212、1500、2000、2500、3000、またはそれ以上をコードする、さらに長いポリヌクレオチドが本明細書において意図される。
【0043】
本明細書で使用する核酸はゲノムDNAに由来してもよい、すなわち、特定の生物のゲノムから直接クローニングされてもよい。しかしながら、好ましい態様では、核酸は相補的DNA(cDNA)を含むだろう。cDNA+天然のイントロンまたは別の遺伝子に由来するイントロンも意図される。このような操作された分子は「ミニ遺伝子」と呼ばれるときもある。少なくとも、本開示のこれらのおよび他の核酸は、例えば、ゲル電気泳動における分子量標準として使用され得る。
【0044】
「cDNA」という用語は、テンプレートとしてメッセンジャーRNA(mRNA)を用いて調製されたDNAを指すことが意図される。ゲノムDNAまたはゲノムの、プロセシングされていない、もしくは部分的にプロセシングされたRNAテンプレートから重合されたDNAとは対照的に、cDNAを使用する利点は、cDNAが、主として、対応するタンパク質のコード配列を含むということである。最適発現のために非コード領域が必要とされる場合、またはアンチセンス戦略においてイントロンなどの非コード領域が標的化される場合など、完全ゲノム配列または部分ゲノム配列が好ましい時があることもある。
【0045】
一部の態様では、核酸は、遺伝子または遺伝子産物の発現を阻害する1つまたは複数のアンチセンスセグメントを含む。アンチセンス方法論では、核酸は「相補的」配列と対になる傾向があるという事実を利用する。相補的とは、ポリヌクレオチドは、標準的なワトソン・クリック相補性規則に従って塩基対形成できるポリヌクレオチドであることを意味する。すなわち、大きなプリンは小さなピリミジンと塩基対になって、シトシンと対になったグアニン(G:C)と、DNAの場合はチミンと対になったアデニン(A:T)、またはRNAの場合はウラシルと対になったアデニン(A:U)の組み合わせを形成する。ハイブリダイズしている配列の中に、イノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチンなどの一般的でない塩基を含めても対形成は妨害されない。
【0046】
二本鎖(ds)DNAをポリヌクレオチドで標的化すると三重らせんが形成される。RNAを標的化すると二重らせんが形成される。アンチセンスポリヌクレオチドが標的細胞に導入されると、その標的ポリヌクレオチドに特異的に結合し、転写、RNAプロセシング、輸送、翻訳および/または安定性を妨害する。アンチセンスRNA構築物またはこのようなアンチセンスRNAをコードするDNAが、宿主細胞内でインビトロまたはインビボのいずれかで、例えば、ヒト対象を含む宿主動物内で遺伝子の転写もしくは翻訳またはその両方を阻害するのに用いられる場合がある。
【0047】
アンチセンス構築物は、プロモーターと、他の制御領域、エキソン、イントロン、または遺伝子のエキソン-イントロン境界でさえ結合するように設計され得る。最も有効なアンチセンス構築物はイントロン/エキソンスプライス接合部に相補的な領域を含むことが意図される。従って、好ましい態様は、イントロン-エキソンプライス接合部の50~200塩基内にある領域と相補性を有するアンチセンス構築物を含むことが提唱される。この構築物には、その標的選択性に重大な影響を及ぼすことなく、いくつかのエキソン配列を含めることができると観察されている。含まれるエキソン材料の量は、使用される特定のエキソンおよびイントロン配列に応じて変化する。正常細胞機能が影響を受けるかどうか、または相補的配列を有する関連遺伝子の発現が受けるかどうか確かめるために、単に、構築物をインビトロで試験することによって、多すぎるエキソンDNAを含めるかどうか容易に試験することができる。
【0048】
上述したように、「相補的な」または「アンチセンス」とは、全長にわたって実質的に相補的であり、かつ塩基ミスマッチがほとんどないポリヌクレオチド配列を意味する。例えば、15塩基長の配列が13または14の位置で相補的ヌクレオチドを有する場合に相補的だと呼ばれることがある。天然では、完全に相補的な配列は、全長にわたって完全に相補的であり、塩基ミスマッチを有さない配列である。これより低い程度の相同性を有する他の配列も意図される。例えば、高相同性の限られた領域を有するが、非相同領域も含むアンチセンス構築物(例えば、リボザイム;以下を参照されたい)を設計することができるだろう。これらの分子は50%未満の相同性を有するが、適切な条件下で標的配列に結合するだろう。
【0049】
2.修飾核酸塩基
一部の態様では、本開示の核酸は、修飾糖部分を含む1つまたは複数の修飾ヌクレオシドを含む。1つまたは複数の糖修飾ヌクレオシドを含む、このような化合物は、天然糖部分を含むヌクレオシドしか含まないオリゴヌクレオチドと比べて高いヌクレアーゼ安定性または標的核酸との高い結合親和性などの望ましい特性を有することがある。一部の態様では、修飾糖部分は置換糖部分である。一部の態様では、修飾糖部分は糖代替物である。このような糖代替物は、置換糖部分の置換に対応する1つまたは複数の置換を含んでもよい。
【0050】
一部の態様では、修飾糖部分は、2'位置および/または5'位置の置換基を含むが、これに限定されない1つまたは複数の非架橋糖置換基を含む置換糖部分である。2'位置に適した糖置換基の例には、2'-F、2'-OCH3(「OMe」または「O-メチル」)、および2'-O(CH2)2OCH3(「MOE」)が含まれるが、これに限定されない。ある特定の態様では、2'位置の糖置換基は、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、O--C1-C10アルキル、O--C1-C10置換アルキル;OCF3、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2--O--N(Rm)(Rn)、およびO--CH2--C(=O)--N(Rm)(Rn)より選択され、それぞれのRmおよびRnは、独立して、Hであるか、または置換されているか、もしくは置換されていないC1-C10アルキルである。5'位置の糖置換基の例には、5'-メチル(RまたはS);5'-ビニル、および5'-メトキシが含まれるが、これに限定されない。一部の態様では、置換された糖は、複数の非架橋糖置換基、例えば、T-F-5'-メチル糖部分(例えば、さらなる5',2'-bis置換糖部分およびヌクレオシドについてはPCT国際出願WO2008/101157を参照されたい)を含む。
【0051】
2'置換糖部分を含むヌクレオシドは2'置換ヌクレオシドと呼ばれる。一部の態様では、2'置換ヌクレオシドは、ハロ、アリル、アミノ、アジド、SH、CN、OCN、CF3、OCF3、O、S、またはN(Rm)-アルキル;O、S、またはN(Rm)-アルケニル;O、S、またはN(Rm)-アルキニル;O-アルキレニル-O-アルキル、アルキニル、アルカリール(alkaryl)、アラルキル、O-アルカリール、O-アラルキル、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2--O--N(Rm)(Rn)、またはO--CH2--C(=O)--N(Rm)(Rn)より選択される2'置換基を含み、それぞれのRmおよびRnは、独立して、Hであるか、アミノ保護基であるか、または置換されているか、もしくは置換されていないC1-C10アルキルである。これらの2'-置換基は、独立して、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ(NO2)、チオール、チオアルコキシ(S-アルキル)、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニル、およびアルキニルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されてもよい。
【0052】
一部の態様では、2'置換ヌクレオシドは、F、NH2、N3、OCF3、O--CH3、O(CH2)3NH2、CH2-CH=CH2、O--CH2-CH=CH2、OCH2CH2OCH3、O(CH2)2SCH3、O--(CH2)2--O--N(Rm)(Rn)、O(CH2)2O(CH2)2N(CH3)2、およびN-置換アセトアミド(O--CH2--C(=O)--N(Rm)(Rn)より選択される2'置換基を含み、それぞれのRmおよびRnは、独立して、Hであるか、アミノ保護基であるか、または置換されているか、もしくは置換されていないC1-C10アルキルである。
【0053】
一部の態様では、2'置換ヌクレオシドは、F、OCF3、O--CH3、OCH2CH2OCH3、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2--O--N(CH3)2、--O(CH2)2O(CH2)2N(CH3)2、およびO--CH2--C(=O)--N(H)CH3より選択される2'置換基を含む糖部分を含む。
【0054】
一部の態様では、2'置換ヌクレオシドは、F、O--CH3、およびOCH2CH2OCH3より選択される2'置換基を含む糖部分を含む。
【0055】
ある特定の修飾糖部分は、二環式糖部分になる第2の環を形成する架橋糖置換基を含む。一部のこのような態様では、二環式糖部分は、4'フラノース環原子と2'フラノース環原子の間に架橋を含む。このような4'-2'糖置換基の例には、--[C(Ra)(Rb)]n--、--[C(Ra)(Rb)]n--O--、--C(RaRb)--N(R)--O--、または--C(RaRb)--O--N(R)--;4'-CH2-2'、4'-(CH2)2-2'、4'-(CH2)--O-2'(LNA);4'-(CH2)--S-2';4'-(CH2)2--O-2'(ENA);4'-CH(CH3)--O-2'(cEt)および4'-CH(CH2OCH3)--O-2'、およびその類似体(例えば、米国特許第7,399,845号を参照されたい);4'-C(CH3)(CH3)--O-2'およびその類似体、(例えば、WO2009/006478を参照されたい);4'-CH2--N(OCH3)-2'およびその類似体(例えば、WO2008/150729を参照されたい);4'-CH2--O--N(CH3)-2'(例えば、2004年9月2日に公開されたUS2004/0171570を参照されたい);4'-CH2--O--N(R)-2'、および4'-CH2--N(R)--O-2'-、それぞれのRは、独立して、H、保護基、またはC1-C12アルキル;4'-CH2--N(R)--O-2'であり、Rは、H、C1-C12アルキル、または保護基である(米国特許第7,427,672号を参照されたい);4'-CH2--C(H)(CH3)-2'(例えば、Chattopadhyaya et al., J. Org. Chem., 2009, 74, 118-134を参照されたい);ならびに4'-CH2--C(=CH2)-2'およびその類似体(PCT国際出願WO2008/154401を参照されたい)が含まれるが、これに限定されない。
【0056】
一部の態様では、このような4'-2'架橋は、独立して、--[C(Ra)(Rb)]n--、--C(Ra)=C(Rb)--、--C(Ra)=N--、--C(=NRa)--、--C(=O)--、--C(=S)--、--O--、--Si(Ra)2--、--S(=O)x--、および--N(Ra)--より独立して選択される1~4個の連結された基を含み、
xは0、1、または2であり、
nは1、2、3、または4であり、
それぞれのRaおよびRbは、独立して、H、保護基、ヒドロキシル、C1-C12アルキル、置換C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、置換C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、置換C2-C12アルキニル、C5-C20アリール、置換C5-C20アリール、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C5-C7脂環式ラジカル、置換C5-C7脂環式ラジカル、ハロゲン、OJ1、NJ1J2、SJ1、N3、COOJ1、アシル(C(=O)--H)、置換アシル、CN、スルホニル(S(=O)2-J1)、またはスルホキシル(S(=O)-J1)であり、
それぞれのJ1およびJ2は、独立して、H、C1-C12アルキル、置換C1-C12アルキル、C2-C12アルケニル、置換C2-C12アルケニル、C2-C12アルキニル、置換C2-C12アルキニル、C5-C20アリール、置換C5-C20アリール、アシル(C(=O)--H)、置換アシル、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、C1-C12アミノアルキル、置換C1-C12アミノアルキル、または保護基である。
【0057】
二環式糖部分を含むヌクレオシドは二環式ヌクレオシドまたはBNAと呼ばれる。二環式ヌクレオシドには、(A)α-L-メチレンオキシ(4'-CH2--O-2')BNA、(B)β-D-メチレンオキシ(4'-CH2--O-2')BNA(ロックド核酸またはLNAとも呼ばれる)、(C)エチレンオキシ(4'-(CH2)2--O-2')BNA、(D)アミノオキシ(4'-CH2--O--N(R)-2')BNA、(E)オキシアミノ(4'-CH2--N(R)--O-2')BNA、(F)メチル(メチレンオキシ)(4'-CH(CH3)--O-2')BNA(制約されたエチル(constrained ethyl)またはcEtとも呼ばれる)、(G)メチレン-チオ(4'-CH2--S-2')BNA、(H)メチレン-アミノ(4'-CH2-N(R)-2')BNA、(I)メチル炭素環式(4'-CH2--CH(CH3)-2')BNA、(J)プロピレン炭素環式(4'-(CH2)3-2')BNA、および(K)メトキシ(エチレンオキシ)(4'-CH(CH2OMe)-O-2')BNA(制約されたMOE(constrained MOE)またはcMOEとも呼ばれる)が含まれるが、これに限定されない。
【0058】
さらなる二環式糖部分は当技術分野において公知である。例えば、Singh et al., Chem. Commun., 1998, 4, 455-456; Koshkin et al., Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630; Wahlestedt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 2000, 97, 5633-5638; Kumar et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8, 2219-2222; Singh et al., J. Org. Chem., 1998, 63, 10035-10039; Srivastava et al., J. Am. Chem. Soc., 129(26) 8362-8379 (Jul. 4, 2007); Elayadi et al., Curr. Opinion Invens. Drugs, 2001, 2, 5561; Braasch et al., Chem. Biol., 2001, 8, 1-7; Orum et al., Curr. Opinion Mol. Ther., 2001, 3, 239-243; 米国特許第7,053,207号、同第6,268,490号、同第6,770,748号、同第6,794,499号、同第7,034,133号、同第6,525,191号、同第6,670,461号、および同第7,399,845号;WO2004/106356、WO1994/14226、WO2005/021570、およびWO2007/134181;米国特許出願公開番号US2004/0171570、US2007/0287831、およびUS2008/0039618;米国特許出願番号12/129,154、60/989,574、61/026,995、61/026,998、61/056,564、61/086,231、61/097,787、および61/099,844;ならびにPCT国際出願番号PCT/US2008/064591、PCT/US2008/066154、およびPCT/US2008/068922。
【0059】
一部の態様では、二環式糖部分およびこのような二環式糖部分を組み込んでいるヌクレオシドは異性体立体配置によってさらに規定される。例えば、4'-2'メチレン-オキシ架橋を含むヌクレオシドは.α.-L立体配置でもよく、.β.-D立体配置でもよい。以前に、α-L-メチレンオキシ(4'-CH2--O-2')二環式ヌクレオシドは、アンチセンス活性を示したアンチセンスオリゴヌクレオチドに組み込まれている(Frieden et al., Nucleic Acids Research, 2003, 21, 6365-6372)。
【0060】
一部の態様では、置換糖部分は1つまたは複数の非架橋糖置換基ならびに1つまたは複数の架橋糖置換基(例えば、5'-置換および4'-2'架橋された糖;PCT国際出願WO2007/134181。LNAが、例えば、5'-メチルまたは5'-ビニル基で置換されている)を含む。
【0061】
一部の態様では、修飾糖部分は糖代替物である。一部のこのような態様では、天然糖の酸素原子は、例えば、硫黄、炭素、または窒素原子で置換される。一部のこのような態様では、このような修飾糖部分はまた、上記のように架橋置換基および/または非架橋置換基も含む。例えば、ある特定の糖代替物は、4'-硫黄原子ならびに2'-位置(例えば、公開された米国特許出願US2005/0130923を参照されたい)および/または5'位置での置換を含む。さらなる例として、4'-2'架橋を有する炭素環式二環式ヌクレオシドが説明されている(例えば、Freier et al., Nucleic Acids Research, 1997, 25(22), 4429-4443、およびAlbaek et al., J. Org. Chem., 2006, 71, 7731-7740を参照されたい)。
【0062】
一部の態様では、糖代替物は、5-原子以外を有する環を含む。例えば、一部の態様では、糖代替物は6員環テトラヒドロピランを含む。このようなテトラヒドロピランはさらに修飾または置換されてもよい。このような修飾されたテトラヒドロピランを含むヌクレオシドには、ヘキシトール核酸(HNA)、アニトール核酸(ANA)、マニトール核酸(MNA)(Leumann, C J. Bioorg. & Med. Chem. (2002) 10:841-854を参照されたい)、およびフルオロHNA(F-HNA)が含まれるが、これに限定されない。
【0063】
一部の態様では、q1、q2、q3、q4、q5、q6、およびq7がそれぞれHである、式VIIの修飾されたTHPヌクレオシドが提供される。ある特定の態様では、q1、q2、q3、q4、q5、q6、およびq7の少なくとも1つはH以外である。一部の態様では、q1、q2、q3、q4、q5、q6、およびq7の少なくとも1つはメチルである。一部の態様では、R1およびR2のうちの1つがFである、式VIIのTHPヌクレオシドが提供される。ある特定の態様では、R1はフルオロであり、R2はHであり、R1がメトキシであり、R2がHであり、R1がメトキシエトキシであり、R2がHである。
【0064】
アンチセンス化合物に組み込むためにヌクレオシドを修飾するのに使用できる他の多くのビシクロおよびトリシクロ糖代替物環構造も当技術分野において公知である(例えば、総説: Leumann, J. C, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 2002, 10, 841-854を参照されたい)。
【0065】
2'-F-5'-メチル置換ヌクレオシド(他の開示される5',2'-bis置換ヌクレオシドについてはPCT国際出願WO2008/101157を参照されたい)およびリボシル環酸素原子とSとの交換、ならびに2'-位置でのさらなる置換(米国特許出願公開US2005/0130923を参照されたい)または二環式核酸の5'-置換(PCT国際出願WO2007/134181を参照されたい。4'-CH2--O-2'二環式ヌクレオシドは5'位置において5'-メチルまたは5'-ビニル基とさらに置換される)などがあるが、それに限定されるわけではない修飾の組み合わせも提供される。炭素環式二環式ヌクレオシドの合成および調製も、これらのオリゴマー化および生化学的研究と共に説明されている(例えば、Srivastava et al., 2007を参照されたい)。
【0066】
一部の態様では、本開示は、修飾ヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドを提供する。これらの修飾ヌクレオチドは、修飾された糖、修飾された核酸塩基、および/または修飾された連結を含んでもよい。結果として生じるオリゴヌクレオチドが、望ましい特徴を有するような特定の修飾が選択される。一部の態様では、オリゴヌクレオチドは1つまたは複数のRNA様ヌクレオシドを含む。一部の態様では、オリゴヌクレオチドは1つまたは複数のDNA様ヌクレオチドを含む。
【0067】
一部の態様では、本開示のヌクレオシドは1つまたは複数の非修飾核酸塩基を含む。ある特定の態様では、本開示のヌクレオシドは1つまたは複数の修飾核酸塩基を含む。
【0068】
一部の態様では、修飾核酸塩基は、本明細書において定義されるようなユニバーサル塩基(universal base)、疎水性塩基、プロミスキャス塩基(promiscuous base)、サイズ拡張塩基(size-expanded base)、およびフッ化塩基、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6およびO-6置換プリン;5-プロピニルシトシン;5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルならびに他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルならびに他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルCH3)ウラシルおよびシトシンならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルならびに他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に、5-ブロモ、5-トリフルオロメチルならびに他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニン、本明細書において定義されるようなユニバーサル塩基、疎水性塩基、プロミスキャス塩基、サイズ拡張塩基、およびフッ化塩基より選択される。さらに修飾核酸塩基には、三環ピリミジン、例えば、フェノキサジンシチジン([5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン)、G-クランプ、例えば、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-13][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3',2':4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)が含まれる。修飾核酸塩基はまた、プリンまたはピリミジン塩基が他の複素環、例えば、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、および2-ピリドンと交換された塩基も含んでよい。さらなる核酸塩基には、米国特許3,687,808号に開示される核酸塩基、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, Kroschwitz, J. I., Ed., John Wiley & Sons, 1990, 858-859に開示される核酸塩基;Englisch et al., 1991に開示される核酸塩基; およびSanghvi, Y. S., 1993に開示される核酸塩基が含まれる。
【0069】
上述された修飾核酸塩基ならびに他の修飾核酸塩基のうちのいくつかの調製を開示する代表的な米国特許には、米国特許第3,687,808号;同第4,845,205号;同第5,130,302号;同第5,134,066号;同第5,175,273号;同第5,367,066号;同第5,432,272号;同第5,457,187号;同第5,459,255号;同第5,484,908号;同第5,502,177号;同第5,525,711号;同第5,552,540号;同第5,587,469号;同第5,594,121号;同第5,596,091号;同第5,614,617号;同第5,645,985号;同第5,681,941号;同第5,750,692号;同第5,763,588号;同第5,830,653号および同第6,005,096号が含まれるが、それに限定されるわけではない。これらのそれぞれが、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
一部の態様では、本開示は、連結されたヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドを提供する。このような態様では、ヌクレオシドは任意のヌクレオシド間連結を用いて一緒に連結されてもよい。2つの主なヌクレオシド間連結基クラスはリン原子の存在または非存在によって規定される。代表的なリン含有ヌクレオシド間連結には、ホスホジエステル(P=O)、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホルアミダート、およびホスホロチオエート(P=S)が含まれるが、これに限定されない。代表的なリン非含有ヌクレオシド間連結基には、メチレンメチルイミノ(--CH2--N(CH3)--O--CH2--)、チオジエステル(--O--C(O)--S--)、チオノカルバメート(--O--C(O)(NH)--S--);シロキサン(--O--Si(H)2--O--);およびN,N'-ジメチルヒドラジン(--CH2--N(CH3)--N(CH3)--)が含まれるが、これに限定されない。天然ホスホジエステル連結と比較して、修飾された連結は、オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を変更するために、典型的には高めるために使用することができる。一部の態様では、キラル原子を有するヌクレオシド間連結はラセミ混合物として調製されてもよく、別々の鏡像異性体として調製されてもよい。代表的なキラル連結にはアルキルホスホネートおよびホスホロチオエートが含まれるが、これに限定されない。亜リン酸を含むヌクレオシド間連結および亜リン酸を含まないヌクレオシド間連結の調製方法は当業者に周知である。
【0071】
本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは1つまたは複数の不斉中心を含み、従って、鏡像異性体、ジアステレオマー、および絶対立体化学の点から、(R)もしくは(S)、糖アノマーの場合はαもしくはβ、または、例えば、アミノ酸の場合は(D)または(L)などと定義され得る他の立体異性立体配置を生じる。このような可能性のある全ての異性体ならびにそのラセミ形態および光学的に純粋な形態が、本明細書において提供されるアンチセンス化合物に含まれる。
【0072】
中性ヌクレオシド間連結には、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、MMI(3'-CH2--N(CH3)--O-5')、アミド-3(3'-CH2--C(=O)--N(H)-5')、アミド-4(3'-CH2--N(H)--C(=O)-5')、ホルムアセタール(formacetal)(3'-O--CH2--O-5')、およびチオホルムアセタール(3'-S--CH2--O-5')が含まれるが、それに限定されるわけではない。さらなる中性ヌクレオシド間連結には、シロキサン(ジアルキルシロキサン)、カルボキシレートエステル、カルボキサミド、スルフィド、スルホン酸エステルおよびアミドを含む非イオン性連結が含まれる(例えば、Carbohydrate Modifications in Antisense Research; Y. S. Sanghvi and P. D. Cook, Eds., ACS Symposium Series 580; Chapters 3 and 4, 40-65を参照されたい)。さらなる中性ヌクレオシド間連結には、混在したN、O、S、およびCH2成分部分を含む非イオン性連結が含まれる。
【0073】
オリゴヌクレオチド上の他の位置に、特に、3'末端ヌクレオチド上にある糖の3'位置、および5'末端ヌクレオチドの5'位置に、さらなる修飾を加えることもできる。例えば、本開示のリガンド結合オリゴヌクレオチドのさらなる一修飾は、オリゴヌクレオチドに、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取り込みを強化する1つまたは複数のさらなる非リガンド部分または結合体を化学的に連結することを伴う。このような部分には、脂質部分、例えば、コレステロール部分(Letsinger et al., 1989)、コール酸(Manoharan et al., 1994)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-5-トリチルチオール(Manoharan et al., 1992; Manoharan et al., 1993)、チオコレステロール(Oberhauser et al., 1992)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., 1991; Kabanov et al., 1990; Svinarchuk et al., 1993)、リン脂質、例えば、ジヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al., 1995; Shea et al., 1990)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., 1995)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., 1995)、パルミチル部分(Mishra et al., 1995)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., 1996)が含まれるが、これに限定されない。
【0074】
このようなオリゴヌクレオチド結合体の調製を開示する代表的な米国特許には、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号、5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241、同第5,391,723号;同第5,416,203号、同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号、および同第5,688,941号が含まれるが、これに限定されない。これらのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられる。
【0075】
B.脂質ナノ粒子
一部の態様では、本明細書で使用する脂質ナノ粒子は、1種類、2種類、3種類、4種類、5種類、6種類、7種類、8種類、9種類、または10種類の脂質を含んでもよい。これらの脂質は、トリグリセリド、リン脂質、ステロイドもしくはステロール、ペグ化脂質、またはイオン化可能な基、例えば、アルキルアミンと1つもしくは複数の疎水性基、例えば、C6以上のアルキル基を有する基を含んでもよい。
【0076】
3.ステロイドおよびステロイド誘導体
本開示の一部の局面では、脂質ナノ粒子は1種類または複数種のステロイドまたはステロイド誘導体と混合される。一部の態様では、ステロイドまたはステロイド誘導体は任意のステロイドまたはステロイド誘導体を含む。一部の態様では、本明細書で使用する「ステロイド」という用語は、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、オキソ基、アシル基、または2個以上の炭素原子間にある二重結合を含む1つまたは複数の置換をさらに含むことある4環17炭素環式構造をもつ化合物のクラスである。一局面では、ステロイドの環構造は、以下の式に示すような3つの縮合シクロヘキシル環と1つの縮合シクロペンチル環を含む。
一部の態様では、ステロイド誘導体は、1つまたは複数の非アルキル置換を有する上記の環構造を含む。一部の態様では、ステロイドまたはステロイド誘導体はステロールであり、式は、
とさらに定義される。
【0077】
本開示の一部の態様では、ステロイドまたはステロイド誘導体はコレスタンまたはコレスタン誘導体である。コレスタンにおいて、環構造は、式:
によってさらに定義される。上記のように、コレスタン誘導体は、上記の環構造の1つまたは複数の非アルキル置換を含む。一部の態様では、コレスタンまたはコレスタン誘導体はコレステンもしくはコレステン誘導体またはステロールもしくはステロール誘導体である。他の態様では、コレスタンまたはコレスタン誘導体はコレステロールとステロールまたはその誘導体の両方である。
【0078】
4.PEGまたはペグ化脂質
本開示の一部の局面では、脂質ナノ粒子は1種類または複数種のペグ化脂質(またはPEG脂質)と混合される。一部の態様では、本開示は、PEG基が取り付けられている任意の脂質の使用を含む。一部の態様では、PEG脂質は、グリセロール基に取り付けられたPEG鎖も含むジグリセリドである。他の態様では、PEG脂質は、PEG鎖と共にリンカー基に取り付けられた1つまたは複数のC6-C24長鎖アルキルもしくはアルケニル基またはC6-C24脂肪酸基を含む化合物である。PEG脂質の一部の非限定的な例は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジン酸、PEGセラミド結合された、PEG修飾されたジアルキルアミン、ならびにPEG修飾1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミン、PEG修飾ジアシルグリセロールおよびジアルキルグリセロールを含む。一部の態様では、PEG修飾ジアステアロイルホスファチジルエタノールアミンまたはPEG修飾ジミリストイル-sn-グリセロール。一部の態様では、PEG修飾は脂質のPEG成分の分子量によって測定される。一部の態様では、PEG修飾の分子量は約100~約15,000である。一部の態様では、分子量は、約200~約500、約400~約5,000、約500~約3,000、または約1,200~約3,000である。PEG修飾の分子量は、約100、200、400、500、600、800、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,250、2,500、2,750、3,000、3,500、4,000、4,500、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、12,500から、約15,000までである。本開示において使用され得る脂質の一部の非限定的な例は、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,820,873号、WO2010/141069、または米国特許第8,450,298号に開示される。
【0079】
5.リン脂質
本開示の一部の局面では、脂質ナノ粒子は1種類または複数種のリン脂質と混合される。一部の態様では、リン酸基も含む任意の脂質。一部の態様では、リン脂質は、1つまたは2つの長鎖C6-C24アルキル基もしくはアルケニル基、グリセロール、またはスフィンゴシンと、1つまたは2つのリン酸基と、任意で、有機低分子を含む構造である。一部の態様では、有機低分子は、アミノ酸、糖、またはアミノ置換アルコキシ基、例えば、コリンまたはエタノールアミンである。一部の態様では、リン脂質はホスファチジルコリンである。一部の態様では、リン脂質はジステアロイルホスファチジルコリンまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミンである。一部の態様では、他の双性イオン脂質が用いられ、双性イオン脂質は、正電荷と負電荷を両方とも有する脂質および脂質様分子を定義する。
【0080】
6.イオン化可能な脂質
本開示の一部の局面では、親油性成分およびカチオン性成分を含む化合物を含む脂質ナノ粒子であって、カチオン性成分がイオン化可能である脂質ナノ粒子が提供される。一部の態様では、カチオン性のイオン化可能な脂質は、生理学的pHでプロトン化されるが、8、9、10、11、または12を上回るpHでは脱プロトンされ、電荷を有さない場合がある1つまたは複数の基を含む。イオン化可能なカチオン性の基は、生理学的pHでカチオン性基を形成することができる1つまたは複数のプロトン化可能なアミンを含んでもよい。カチオン性のイオン化可能な脂質化合物はまた、1つまたは複数の脂質成分、例えば、C6-C24アルキルまたはアルケニル炭素基を有する2つ以上の脂肪酸をさらに含んでもよい。これらの脂質基はエステル結合を介して取り付けられてもよく、硫黄原子へのマイケル付加を介してさらに付加されてもよい。一部の態様では、これらの化合物はデンドリマー、デンドロン、ポリマー、またはその組み合わせでもよい。
【0081】
本開示の一部の局面では、親油性成分およびカチオン性成分を含む化合物を含む組成物であって、カチオン性成分がイオン化可能である組成物が提供される。一部の態様では、イオン化可能なカチオン性脂質は、電荷(pKa)を獲得することができる窒素原子を有する脂質および脂質様分子を指す。これらの脂質はカチオン性脂質として文献中に公知な場合がある。アミノ基をもつ、これらの分子は、典型的に、2~6本の疎水性鎖、多くの場合、C6-C24アルキルまたはアルケニル基などのアルキルまたはアルケニルを有するが、少なくとも1本または複数本のその6テールを有してもよい。
【0082】
一部の態様では、薬学的組成物においてカプセル化された核酸を有する脂質ナノ粒子の量は、約0.1%w/w~約50%w/w、約0.25%w/w~約25%w/w、約0.5%w/w~約20%w/w、約1%w/w~約15%w/w、約2%w/w~約10%w/w、約2%w/w~約5%w/w、または約6%w/w~約10%w/wである。一部の態様では、薬学的組成物においてカプセル化された核酸を有する脂質ナノ粒子の量は、約0.1%w/w、0.25%w/w、0.5%w/w、1%w/w、2.5%w/w、5%w/w、7.5%w/w、10%w/w、15%w/w、20%w/w、25%w/w、30%w/w、35%w/w、40%w/w、45%w/w、50%w/w、55%w/w、60%w/w、65%w/w、70%w/w、75%w/w、80%w/w、85%w/w、90%w/wから、約95%w/wまで、またはその中で導き出せる任意の範囲である。
【0083】
C.糖
一部の局面では、本開示は、薬学的組成物に製剤化される1種類または複数種の糖を含む。一部の態様では、本明細書で使用する糖は糖類である。これらの糖類は、乾燥プロセス中の不安定化から薬学的組成物を保護するリオプロテクタントとして作用するために用いられる場合がある。これらの水溶性賦形剤には、炭水化物または糖類、例えば、二糖、例えば、スクロース、トレハロース、もしくはラクトース、三糖、例えば、ラフィノースを構成するフルクトース、グルコース、ガラクトース、多糖類、例えば、デンプンもしくはセルロース、または糖アルコール、例えば、キシリトール、ソルビトール、もしくはマンニトールが含まれる。一部の態様では、これらの賦形剤は室温では固体である。糖アルコールの、いくつかの非限定的な例には、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリトール、マルトテトライトール、またはポリグリシトールが含まれる。
【0084】
一部の態様では、薬学的組成物における糖の量は、約25%w/w~約98%w/w、40%w/w~約95%w/w、50%w/w~約90%w/w、50%w/w~約70%w/w、または約80%w/w~約90%w/wである。一部の態様では、薬学的組成物における糖の量は、約10%w/w、15%w/w、20%w/w、25%w/w、30%w/w、35%w/w、40%w/w、45%w/w、50%w/w、52.5%w/w、55%w/w、57.5%w/w、60%w/w、62.5%w/w、65%w/w、67.5%w/w、70%w/w、75%w/w、80%w/w、82.5%w/w、85%w/w、87.5%w/w、90%w/wから、約95%w/wまで、またはその中で導き出せる任意の範囲である。
【0085】
D.薬学的に許容されるポリマー
一部の態様では、薬学的に許容されるポリマーはコポリマーである。薬学的に許容されるポリマーは、別々の異なるタイプのポリマーサブユニットの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのサブユニットをさらに含んでもよい。これらのポリマーサブユニットは、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン、または同様のサブユニットを含んでもよい。特に、薬学的に許容されるポリマーは少なくとも1つの疎水性サブユニットと少なくとも1つの親水性サブユニットを含んでもよい。特に、コポリマーは、疎水性ユニットの両側に親水性サブユニットを有してもよい。コポリマーは、ポリオキシエチレンの親水性サブユニットと、ポリオキシプロピレンの疎水性サブユニットを有してもよい。
【0086】
それぞれのポリオキシエチレンサブユニットの分子量は、約50g/mol~約5000g/mol、約100g/mol~約2500g/mol、約250g/mol~約2000g/mol、約500g/mol~約1500g/mol、約600g/mol~約1000g/mol、または約700g/mol~約900g/molである。ポリオキシエチレンサブユニットは、約50g/mol、100g/mol、250g/mol、500g/mol、600g/mol、650g/mol、700g/mol、750g/mol、800g/mol、850g/mol、900g/mol、950g/mol、1000g/mol、1250g/mol、1500g/mol、1750g/mol、2000g/mol、2500g/molから、約5000g/molまで、またはその中で導き出せる任意の範囲のサブユニットを有してもよい。一部の態様では、ポリオキシエチレンサブユニットの分子量は約800g/molである。
【0087】
それぞれのポリオキシプロピレンサブユニットの分子量は、約250g/mol~約10000g/mol、約500g/mol~約5000g/mol、約750g/mol~約3000g/mol、約1500g/mol~約2000g/mol、約1600g/mol~約1900g/mol、または約1700g/mol~約1900g/molである。ポリオキシプロピレンサブユニットのサブユニットは、約250g/mol、500g/mol、750g/mol、1000g/mol、1250g/mol、1500g/mol、1550g/mol、1600g/mol、1650g/mol、1700g/mol、1750g/mol、1800g/mol、1850g/mol、1900g/mol、1950g/mol、2000g/mol、2250g/mol、2500g/mol、2750g/mol、3000g/mol、3500g/mol、4000g/mol、4500g/mol、5000g/molから、約10000g/molまで、またはその中で導き出せる任意の範囲でもよい。一部の態様では、ポリオキシプロピレンサブユニットの分子量は約1800g/molである。
【0088】
一部の態様では、薬学的組成物における薬学的に許容されるポリマーの量は、約0.1%w/w~約25%w/w、約0.25%w/w~約15%w/w、約0.4%w/w~約5%w/w、約0.5%w/w~約2.5%w/w、または約1%w/w~約1.5%w/wである。一部の態様では、薬学的組成物における賦形剤の量は、約0.1%w/w、0.2%w/w、0.25%w/w、0.3%w/w、0.4%w/w、0.5%w/w、0.6%w/w、0.7%w/w、0.75%w/w、0.8%w/w、0.9%w/w、1%w/w、1.1%w/w、1.2%w/w、1.25%w/w、1.3%w/w、1.4%w/w、1.5%w/w、1.6%w/w、1.7%w/w、1.75%w/w、1.8%w/w、1.9%w/w、2%w/w、2.25%w/w、2.5%w/w、5%w/w、7.5%w/w、10%w/w、15%w/w、20%w/wから、約25%w/wまで、またはその中で導き出せる任意の範囲である。
【0089】
E.塩
一部の局面では、本開示は、1種類または複数種の塩を含む薬学的組成物を提供する。塩は、無機カリウム塩またはナトリウム塩、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、またはリン酸二水素ナトリウムでもよい。薬学的組成物は、リン酸緩衝溶液を生じるような1種類または複数種のリン酸塩を含んでもよい。リン酸緩衝溶液は、溶液をpH約6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0、またはその中で導き出せる任意の範囲に緩衝するような、それぞれのリン酸塩を含んでもよい。
【0090】
一部の態様では、薬学的組成物における塩の量は、約0.5%w/w~約75%w/w、1%w/w~約50%w/w、2%w/w~約45%w/w、2.5%w/w~約40%w/w、5%w/w~約30%w/w、5%w/w~約10%w/w、または約20%w/w~約30%w/wである。一部の態様では、薬学的組成物における塩の量は、約0.5%w/w、1%w/w、2%w/w、2.5%w/w、5%w/w、6%w/w、7%w/w、7.5%w/w、8%w/w、9%w/w、10%w/w、12.5%w/w、15%w/w、17.5%w/w、20%w/w、22.5%w/w、25%w/w、27.5%w/w、30%w/w、35%w/w、40%w/w、45%w/w、50%w/w、60%w/w、70%w/wから、約75%w/wまで、またはその中で導き出せる任意の範囲である。
【0091】
F.賦形剤
一部の局面では、本開示は、薬学的組成物に製剤化される1種類または複数種の賦形剤を含む。「賦形剤」とは、対象へのAPIの投与もしくは送達を容易にするのに用いられるか、または対象の作用部位に送達するのに薬学的に使用することができる薬物製剤へのAPIの加工を容易にするのに用いられる、比較的不活性な物質である薬学的に許容される担体を指す。さらに、容易に測定することができるか、または患者に投与することができる投与量を得るために、これらの化合物は希釈剤として使用されてもよい。賦形剤の非限定的な例には、ポリマー、タンパク質、アミノ酸、安定化剤、界面活性剤、表面改質剤、溶解度強化剤、緩衝液、カプセル化剤、抗酸化物質、防腐剤、非イオン性の湿潤剤または清澄剤、増粘剤、および吸収強化剤が含まれる。賦形剤の非限定的な例のいくつかの具体例には、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、デキストラン40、またはタンニン、例えば、没食子酸エピガロカテキンのようなカテキンもしくはカテコールが含まれ得る。
【0092】
一部の態様では、薬学的組成物における追加の賦形剤の量は約0.5%w/w~約95%w/w、または約1%w/w~約85%w/wである。一部の態様では、薬学的組成物における賦形剤の量は、約0.1%w/w、0.25%w/w、0.5%w/w、1%w/w、2.5%w/w、5%w/w、7.5%w/w、10%w/w、15%w/w、20%w/w、25%w/w、30%w/w、35%w/w、40%w/w、45%w/w、50%w/w、55%w/w、60%w/w、65%w/w、70%w/w、75%w/w、80%w/w、85%w/w、90%w/wから、約95%w/wまで、またはその中で導き出せる任意の範囲である。
【0093】
II.製造方法
最終製剤はまた薄膜凍結法を用いて調製されてもよい。いかなる理論に拘束されるものではないが、このプロセスは、組成物の全要素を含む乾燥粉末を調製するのに使用され得ると考えられる。このプロセスから得られた粒子は、大きな表面積、低いタップ密度、低いかさ密度、または改善した流動性もしくは圧縮率、例えば、小さなカーの指数(Carr’s Index)を示してもよい。一部の局面では、本開示は、本開示の薬学的組成物を調製する方法であって、
(A)脂質ナノ粒子にカプセル化された核酸、糖、および薬学的に許容されるポリマーの混合物を溶媒に溶解させて、薬学的混合物を得る工程;
(B)薬学的混合物を、0℃より低い表面温度の表面に適用して、凍結した薬学的混合物を得る工程;ならびに
(C)凍結した薬学的混合物を収集し、凍結した薬学的混合物を乾燥させて、薬学的組成物を得る工程
を含む、方法を提供する。
【0094】
一部の態様では、薬学的混合物は、約0.05%w/v~約25%w/v、約0.05%w/v~約5%w/v、約0.1%w/v~約2.5%w/v、0.15%w/v~約1.5%w/v、0.2%w/v~約0.6%w/v、0.5%w/v~約1.25%w/v、もしくは約0.050%w/v、0.075%w/v、0.10%w/v、0.125%w/v、0.150%w/v、0.175%w/v、0.200%w/v、0.225%w/v、0.250%w/v、0.275%w/v、0.300%w/v、0.325%w/v、0.350%w/v、0.375%w/v、0.400%w/v、0.425%w/v、0.450%w/v、0.475%w/v、0.500%w/v、0.525%w/v、0.550%w/v、0.575%w/v、0.600%w/v、0.650%w/v、0.700%w/v、0.750%w/v、0.800%w/v、0.900%w/v、1%w/v、1.5%w/v、2%w/v、4%w/v、5%w/v、7.5%w/v、10%w/v、12.5%w/v、15%w/v、20%w/v、25%w/v、30%w/v、35%w/v、40%w/v、45%w/vから、約50%w/vまで、またはその中で導き出せる任意の範囲の混合物の固形分を含む。一部の態様では、薬学的混合物は、約0.50mL/min~約5.00mL/min、約1.00mL/min~約3.00mL/min、もしくは約0.500mL/min、0.750mL/min、1.00mL/min、1.25mL/min、1.50mL/min、1.75mL/min、2.00mL/min、2.25mL/min、2.50mL/min、2.75mL/min、3.00mL/min、3.25mL/min、3.50mL/min、3.75mL/min、4.00mL/min、4.25mL/min、4.50mL/min、4.75mL/minから、約5.00mL/min、またはその中で導き出せる任意の範囲の供給量で適用される。
【0095】
一部の態様では、薬学的混合物は、約2cm~約50cm、約5cm~約20cm、もしくは約1cm、2cm、4cm、6cm、8cm、10cm、12cm、14cm、16cm、18cm、20cm、21cm、22cm、23cm、24cmから、約25cmまで、またはその中で導き出せる任意の範囲の高さから適用される。一部の態様では、表面温度は、約-190℃~約0℃、約-125℃~約-25℃、もしくは約-190℃、-180℃、-170℃、-160℃、-150℃、-140℃、-130℃、-120℃、-110℃、-100℃、-90℃、-80℃、-70℃、-60℃、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃から、約0℃まで、またはその中で導き出せる任意の範囲である。一部の態様では、表面は、約1rpm~約1000rpm、約5rpm~約500rpm、約100rpm~約400rpm、もしくは約5rpm、10rpm、15rpm、25rpm、50rpm、75rpm、100rpm、150rpm、200rpm、250rpm、300rpm、350rpm、400rpm、450rpmから、約500rpmまで、またはその中で導き出せる任意の範囲の速度で回転している。他の態様では、表面は静止していてもよい。
【0096】
一部の態様では、凍結した薬学的組成物は凍結乾燥によって乾燥される。さらなる態様では、凍結した薬学的組成物は、約10mTorr~500mTorr、約50mTorr~約250mTorr、もしくは約10mTorr、20mTorr、30mTorr、40mTorr、50mTorr、75mTorr、100mTorr、150mTorr、200mTorr、250mTorr、300mTorr、350mTorr、400mTorr、450mTorrから、約500mTorrまで、またはその中で導き出せる任意の範囲の第1の低い圧力で乾燥される。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は、約-100℃~約0℃、約-60℃~約-20℃、もしくは約-100℃、-90℃、-80℃、-70℃、-60℃、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃から、約0℃まで、またはその中で導き出せる任意の範囲の第1の低い温度で乾燥される。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は、約3時間~約36時間、約6時間~約24時間、もしくは約3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間から、約36時間まで、またはその中で導き出せる任意の範囲の第1の乾燥期間にわたって乾燥される。
【0097】
一部の態様では、凍結した薬学的組成物は、約10mTorr~500mTorr、約50mTorr~約250mTorr、もしくは約10mTorr、20mTorr、30mTorr、40mTorr、50mTorr、75mTorr、100mTorr、150mTorr、200mTorr、250mTorr、300mTorr、350mTorr、400mTorr、450mTorrから、約500mTorrまで、またはその中で導き出せる任意の範囲の第2の低い圧力で乾燥される。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は、約0℃~約30℃、約10℃~約30℃、もしくは約0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃から、約30℃まで、またはその中で導き出せる任意の範囲の第2の低い温度で乾燥される。一部の態様では、凍結した薬学的組成物は、約0.5時間~約36時間、約6時間~約24時間、もしくは約3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間から、約36時間まで、またはその中で導き出せる任意の範囲の第2の期間中の第2の時間にわたって乾燥される。一部の態様では、温度は、約3時間~約36時間、約6時間~約24時間、もしくは約3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間から、約36時間まで、またはその中で導き出せる任意の範囲のランピング期間にわたって第1の低い温度から第2の低い温度に変更される。
【0098】
III.定義
特許請求の範囲および本明細書において、「含む(comprising)」という用語と一緒に用いられた時、「1つの(a)」もしくは「1つの(an)」という単語の使用は「1つの」を意味することがあるが、「1つまたは複数の(one or more)」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは複数の(one or more than one)」の意味とも一致する。本明細書で使用する「別の」とは少なくとも第2の、またはそれより多くを意味することがある。
【0099】
本明細書で使用する、「薬物」、「薬剤」、「活性物質」、「治療物質」、および「治療活性物質」という用語は、ヒトまたは動物において治療的または薬理学的な効果を引き起こし、かつ疾患、障害、または他の状態を処置するのに用いられる化合物を表すために区別なく用いられる。一部の態様では、これらの化合物は、生物への投与について規制当局の認可を経ており、かつ受けている。
【0100】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢だけを指すか、または選択肢が互いに相容れないことを指すと明示されていない限り「および/または」を意味するために用いられる。本明細書で使用する「別の」とは少なくとも第2の、またはそれより多くを意味することがある。
【0101】
「組成物」、「薬学的組成物」、「製剤」、「薬学的製剤」、「調製物」、および「薬学的調製物」という用語は本明細書において同義で、かつ区別なく用いられる。
【0102】
疾患もしくは状態を「処置する」または疾患もしくは状態の処置とは、疾患の徴候または症状を軽減しようとして、1種類または複数種の薬物を患者に投与する工程を含み得るプロトコールを実施することを指す。処置の望ましい効果は、疾患進行の速度を遅らせること、疾患状態を寛解させるか、もしくは緩和すること、および軽快または予後の改善を含む。軽減は、疾患または状態の徴候または症状が現れる前に、ならびに疾患または状態の徴候または症状が現れた後に生じてもよい。従って、「処置する」または「処置」は、疾患もしくは望ましくない状態を「予防する」こと、または疾患もしくは望ましくない状態の「予防」を含む場合がある。さらに、「処置する」または「処置」は、徴候または症状の完全な軽減を必要とせず、治癒を必要とせず、特に、患者にわずかな影響しか与えないプロトコールを含む。
【0103】
本願全体を通して使用する「治療的利益」または「治療に有効な」という用語は、この状態の医学的処置に関して対象の健康を増進する、または向上させる、どんなものでも指す。この用語には、疾患の徴候または症状の頻度または重篤度の低下が含まれるが、これに限定されない。例えば、癌の処置は、例えば、腫瘍サイズの縮小、腫瘍の侵襲性の低下、癌の増殖速度の低下、または転移の阻止を含んでもよい。癌の処置はまた、癌のある対象の生存時間の延長も指すことがある。
【0104】
「対象」および「患者」とは、ヒトまたは非ヒト、例えば、霊長類、哺乳動物、および脊椎動物を指す。特定の態様では、対象はヒトである。
【0105】
本明細書において一般的に使用する「薬学的に許容される」とは、適切な医学的判断の範囲内で、妥当なベネフィット/リスク比に対応する、過度の毒性も刺激もアレルギー反応も他の問題も合併症もなくヒトおよび動物の組織、臓器、および/または体液と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0106】
「薬学的に許容される塩」とは、上記で定義されるように薬学的に許容され、かつ望ましい薬理学的活性を有する、本明細書において開示される化合物の塩を意味する。このような塩には、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを用いて形成される酸添加塩、または有機酸、例えば、1,2エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ2エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクト-2-エン-1カルボン酸、酢酸、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、第3級ブチル酢酸、トリメチル酢酸などを用いて形成される酸添加塩が含まれる。薬学的に許容される塩はまた、存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応することできる時に形成され得る塩基添加塩も含まれる。許容される無機塩基には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、および水酸化カルシウムが含まれる。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが含まれる。塩が全体として薬理学的に許容される限り、本発明の任意の塩の一部を形成する特定のアニオンまたはカチオンは重要ではないことが認識されるはずである。薬学的に許容される塩ならびにその調製および使用の方法のさらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use (P. H. Stahl & C. G. Wermuth eds., Verlag Helvetica Chimica Acta, 2002)に示されている。
【0107】
「その誘導体」という用語は、単量体糖ユニットの少なくとも1つが原子または分子の基または結合の置換によって修飾されている、任意の化学修飾された多糖を指す。一態様では、その誘導体は、その塩である。塩、例えば、適切な無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸、硫酸、またはリン酸との塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、またはリン酸塩、適切なカルボン酸、例えば、ヒドロキシル化されてもよい低級アルカン酸、例えば、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、乳酸、またはピバル酸との塩、ヒドロキシル化および/またはオキソ置換されてもよい低級アルカンジカルボン酸、例えば、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸との塩、および芳香族、複素環式芳香族、またはアラリファティック(araliphatic)カルボン酸、例えば、安息香酸、ニコチン酸またはマンデル酸との塩も、ならびに適切な脂肪族または芳香族スルホン酸またはN-置換スルファミン酸との塩、例えば、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、またはN-シクロヘキシルスルファミン酸塩(シクラミン酸塩)である。
【0108】
本明細書で使用する「溶解」という用語は、固体物質、ここでは活性成分が培地中に分散され、次いで、分子の形で溶解されるプロセスを指す。本発明の薬学的用量の活性成分の溶解速度は、液体/固体境界面、温度、および溶媒組成の標準化された条件下で単位時間あたり溶解される原薬の量によって規定される。
【0109】
本明細書で使用する「生理学的pH」という用語は、平均的なヒトの正常pHにある溶液を指す。ほとんどの状況において、溶液のpHは約7.4である。
【0110】
本明細書で使用する「乾燥粉末」とは、水性液体に懸濁も溶解もされていない微粒子組成物を指す。
【0111】
「非晶質の」という用語は、分子がはっきりした格子パターンで配列されていない非結晶固体を指す。または、「結晶の」という用語は、固体中にある分子がはっきりした格子パターンを有する固体を指す。組成物中にある活性物質の結晶化度は粉末X線回折によって測定される。
【0112】
本明細書および特許請求の範囲において使用する「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の変化形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの有する(having)の任意の変化形)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの含む(including)の任意の変化形)、または「含む(containing)」(ならびに「含む(contains)」および「含む(contain)」などの含む(containing)の任意の変化形)は包括的(inclusive)またはオープンエンドであり、さらなる列挙されなかった要素も方法工程も排除しない。
【0113】
本明細書で使用する「有意な(significant)」(および「有意に(significantly)」などの有意な(significant)の任意の変化形)という用語は、2つの値間の統計学的差異を含むことを意味せず、パラメータの重要性または差違の範囲を含むことしか意味しない。
【0114】
本願全体を通して「約」という用語は、値が、その値を求めるために用いている装置、方法の誤差の固有の変動、または試験対象または実験研究の間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。別の定義が適用できなければ、「約」という用語は、示された値の±5%を指す。
【0115】
指定された成分の点からみて本明細書で使用する「がない」または「ない」という用語は、指定された成分がどれも目的を持って組成物に製剤化されていない、および/または汚染物質として、もしくは微量にしか存在しないことを意味するために本明細書において用いられる。その組成物中に、全ての封じ込め、副産物、および他の材料の全量が10%未満の量で存在する。指定された成分の点からみて「が実質的にない」または「実質的にない」という用語は、指定された成分がどれも目的を持って組成物に製剤化されていない、および/または汚染物質として、もしくは微量にしか存在しないことを意味するために本明細書において用いられる。その組成物中に、全ての封じ込め、副産物、および他の材料の全量が5%未満の量で存在する。「が本質的にない」または「本質的にない」という用語は、組成物が2%未満の特定の成分を含むことを表すのに用いられる。「が全くない」または「全くない」という用語は、0.5%未満の成分を含む。同様に、「実質的に」という用語は、組成物の少なくとも60%が、特定された特性を有することを意味し、「本質的に」という用語は、組成物の少なくとも80%が、特定された特性を有することを意味する。
【0116】
本発明の広範な範囲を定める数の範囲およびパラメータは近似値であるが、具体的な実施例に示される数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、どの数値も、必ず、それぞれの試験測定値およびパラメータに見出される標準偏差に起因する何らかの間違いを本質的に含んでいる。
【0117】
本開示の他の目的、特徴、および利点は以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例は本開示の好ましい態様を示しているが、この詳細な説明から本開示の精神および範囲の中での様々な修正および変更が当業者に明らかになるので、例示にすぎないことが理解されるはずである。
【実施例】
【0118】
IV.実施例
本開示のさらなる理解を容易にするために、特定の態様の以下の例が示される。以下の実施例に開示される技法は、本発明者が発見した技法が本開示の実施において十分に機能することを表すことが当業者により理解されるはずであり、従って、本開示の実施に好ましい態様を構成するとみなすことができる。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すれば、開示される特定の態様において多くの変更を加えることができ、それでもなお、本開示の精神および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似する結果を得ることができると理解するはずである。以下の実施例は本開示の全範囲を限定も規定もすると解釈してはならない。
【0119】
以下に示した実施例に加えて、さらなる実施例は、i)培養細胞をmRNA-LNPでトランスフェクトし、mRNAによってコードされる遺伝子の発現を測定することによる、乾燥粉末中のmRNA-LNPにあるmRNAの完全性および機能の評価、ii)乾燥粉末を希釈剤で再構成した後に針ベースの注射によってmRNA-LNPを動物またはヒト対象に投与することによる、乾燥粉末中のmRNA-LNPの活性の評価、ならびにiii)乾燥粉末のエアゾール性能特性の評価、ならびに代替の投与経路、例えば、鼻腔内に直接、ドライパウダー吸入器を用いた肺への経口吸入、または鼻腔、眼、もしくは皮膚創傷などの空洞へのガス注入によって乾燥粉末を動物またはヒト対象に投与した後のmRNA-LNPの機能および活性の試験を含んでもよい。
【0120】
実施例1-TFF-mRNA/LNP乾燥粉末の調製
製剤1:
シンチレーションバイアルに3.5mLのポロキサマー188(1.0mg/mL)を添加した後に、10.0mLの認可済みmRNA COVID-19ワクチン(再構成済み、2.567mg LNP/mL)を添加した。混合物を穏やかに振盪し、極低温に冷却した(-180℃)ステンレス鋼ドラムの上に滴下した。凍結した試料を、液体窒素を満たしたステンレス鋼容器に収集した。試料を凍結乾燥ガラスバイアルに移し、凍結乾燥機に入れるまで-80℃冷凍庫で保管した。凍結乾燥機によって、100mTorr以下で-40℃で20時間保ち、100mTorrで20時間、25℃までランピングし、100mTorrで25℃で5時間保つ処理によって溶媒を除去した。乾燥窒素ガスを埋め戻し、ストッパリングシステム(stoppering system)によってバイアルの蓋を閉じた後に、凍結乾燥機のドアを開いた。保管のためにバイアルをアルミニウムキャップで密封した。
【0121】
製剤2:
シンチレーションバイアルに10.5mLのスクロース(20.0mg/mL)と4.2mLのポロキサマー188(1.0mg/mL)を添加した後に、3.0mLの認可済みmRNA COVID-19ワクチン(再構成済み、2.567mg LNP/mL)を添加した。混合物を穏やかに振盪し、極低温に冷却した(-180℃)ステンレス鋼ドラムの上に滴下した。凍結した試料を、液体窒素を満たしたステンレス鋼容器に収集した。試料を凍結乾燥ガラスバイアルに移し、凍結乾燥機に入れるまで-80℃冷凍庫で保管した。凍結乾燥機によって、100mTorr以下で-40℃で20時間保ち、100mTorrで20時間、25℃までランピングし、100mTorrで25℃で5時間保つ処理によって溶媒を除去した。乾燥窒素ガスを埋め戻し、ストッパリングシステムによってバイアルの蓋を閉じた後に、凍結乾燥機のドアを開いた。保管のためにバイアルをアルミニウムキャップで密封した。
【0122】
製剤3:
シンチレーションバイアルに8.0mLのトレハロース(20.0mg/mL)と4.6mLのポロキサマー188(1.0mg/mL)を添加した後に、2.0mLの認可済みmRNA COVID-19ワクチン(再構成および透析済み、2.127mg LNP/mL)を添加した。混合物を穏やかに振盪し、極低温に冷却した(-180℃)ステンレス鋼ドラムの上に滴下した。凍結した試料を、液体窒素を満たしたステンレス鋼容器に収集した。試料を凍結乾燥ガラスバイアルに移し、凍結乾燥機に入れるまで-80℃冷凍庫で保管した。凍結乾燥機によって、100mTorr以下で-40℃で20時間保ち、100mTorrで20時間、25℃までランピングし、100mTorrで25℃で5時間保つ処理によって溶媒を除去した。乾燥窒素ガスを埋め戻し、ストッパリングシステムによってバイアルの蓋を閉じた後に、凍結乾燥機のドアを開いた。保管のためにバイアルをアルミニウムキャップで密封した。
【0123】
製剤4:
シンチレーションバイアルに8.0mLのスクロース(20.0mg/mL)と4.6mLのポロキサマー188(1.0mg/mL)を添加した後に、2.0mLの認可済みmRNA COVID-19ワクチン(再構成および透析済み、2.127mg LNP/mL)を添加した。混合物を穏やかに振盪し、極低温に冷却した(-180℃)ステンレス鋼ドラムの上に滴下した。凍結した試料を、液体窒素を満たしたステンレス鋼容器に収集した。試料を凍結乾燥ガラスバイアルに移し、凍結乾燥機に入れるまで-80℃冷凍庫で保管した。凍結乾燥機によって、100mTorr以下で-40℃で20時間保ち、100mTorrで20時間、25℃までランピングし、100mTorrで25℃で5時間保つ処理によって溶媒を除去した。乾燥窒素ガスを埋め戻し、ストッパリングシステムによってバイアルの蓋を閉じた後に、凍結乾燥機のドアを開いた。保管のためにバイアルをアルミニウムキャップで密封した。
【0124】
製剤5:
200μL遠心管に40μLのスクロース(20.0mg/mL)と13μLのポロキサマー188(1.0mg/mL)を添加した後に、10μLの認可済みmRNA COVID-19ワクチン(再構成および透析済み、2.16mg LNP/mL)を添加した。混合物を穏やかに振盪し、極低温に冷却した(-180℃)ステンレス鋼ドラムの上に滴下した。凍結した試料を、液体窒素を満たしたステンレス鋼容器に収集した。試料を凍結乾燥ガラスバイアルに移し、凍結乾燥機に入れるまで-80℃冷凍庫で保管した。凍結乾燥機によって、100mTorr以下で-40℃で20時間保ち、100mTorrで20時間、25℃までランピングし、100mTorrで25℃で5時間保つ処理によって溶媒を除去した。乾燥窒素ガスを埋め戻し、ストッパリングシステムによってバイアルの蓋を閉じた後に、凍結乾燥機のドアを開いた。保管のためにバイアルをアルミニウムキャップで密封した。
【0125】
棚式凍結乾燥(shelf freeze-drying):
上述したmRNA-LNP製剤1および2については、従来の棚式凍結乾燥でも乾燥粉末を調製した。懸濁液(0.6mL)に溶解したmRNA-LNPを2mL凍結乾燥バイアルに入れ、バイアルをAdvantage EL棚式凍結乾燥機に入れた。棚の温度を室温から-50℃まで1℃/minの速度で冷却し、乾燥前に1時間、50℃に維持した。乾燥サイクルは、薄膜凍結試料から水を昇華するのに使用したものと同じであった。
【0126】
実施例2-透析
認可済みmRNA COVIDワクチンを少なくとも1,000倍体積のジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水に対して4℃で24時間透析した。次いで、LNPの濃度を透析後の体積変化に基づいて調整した。
【0127】
例えば、1.200mLの認可済みmRNA COVIDワクチンを透析チューブ(Spectrum, Stamford, CT)に入れ、次いで、透析チューブを、4℃で24時間、100rpmの穏やかな撹拌速度で外部ビーカーの中にある1,500mLのDEPC処理水に入れた。透析溶液(すなわち、DEPC処理水)を8時間ごとに交換した。最後に、1.398mLの試料を透析チューブから回収した。TFFの製剤調製のためにLNP濃度を体積変化に基づいて計算した。
【0128】
実施例3-TFF-mRNA/LNP乾燥粉末の特徴付け
A.粒径分布(PSD)
少量のTFF粉末を使い捨てのUVキュベットに入れ、濾過水(Evoqua, Warrendale, PA)で再構成した。粒径分布を、Zetasizer Nano ZS(Malvern Panalytical Ltd, Malvern, UK)を用いて分散剤屈折率1.33および材料屈折率1.45で測定した。薄膜凍結乾燥(TFFD)に供する前と、TFFDおよび再構成に供した後、ならびに乾燥粉末を冷蔵庫(約4℃)で、または温度(約25℃)で3週間保管した後のmRNA-LNPの粒径(Z平均)を以下の表1に示した。
【0129】
(表1)乾燥粉末の粒径分布
データは平均±SD(n=3)である。
【0130】
B.mRNAカプセル化効率の定量
認可済みmRNA/LNP COVIDワクチン製剤中のmRNAローディングを、以前に説明されたように(Blakney et al., 2019; Yang et al., 2020)、Quanti-iT RiboGreenアッセイキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて定量した。粉末試料をTFFプロセス前の液体製剤と同じ濃度まで再構成した。全mRNAを検出するために、全試料を15分間のインキュベーションにわたって0.5%(v/v)Triton X-100(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)を含む1×TE緩衝液(RNaseフリー)で2倍、20倍、200倍、および2000倍に希釈した。遊離mRNAを検出するために、全試料を1×TE緩衝液(RNaseフリー)で2倍、20倍、200倍、および2000倍に希釈した。Triton X-100処理試料および未処理試料を全て、黒色の96ウェルプレート(Costar, Corning, NY)の中でRiboGreen試薬とインキュベートした。蛍光強度を、BioTek Synergy HT Multi-Mode Microplate Reader(Winooski, VT, Ex=485nm, Em=528nm, ゲイン=35)によって測定した。蛍光強度値を、全mRNAについて作成した検量線およびLNP外のmRNAについて作成した検量線に基づいてmRNA濃度に変換した。カプセル化効率を、以下の式:
に従って計算した。
【0131】
【0132】
C.透過型電子顕微鏡(TEM)分析
LNP製剤の形態を、FEI Tecnai透過型電子顕微鏡を用いて研究した。薄膜凍結乾燥されたmRNA/LNP粉末を水で再構成し、0.1~0.3mg/mLのLNP濃度になるように精製水で希釈した。5μLのLNP分散液を200メッシュのカーボンフィルム、銅グリッド(Electron Microscopy Sciences, Hatfield, PA)の上に添加した。1分後に、濾紙を用いて液体をグリッドの端から穏やかに除去した。5μLの1%リンタングステン酸をグリッドの上に滴下して、試料を陰性染色した。1分後に、濾紙を用いて染料をグリッドの端から除去した。試料を風乾した後に画像を取り込んだ。
図1を参照されたい。
【0133】
実施例4-ポリ(A)-脂質ナノ粒子の調製、特徴付け、および薄膜凍結乾燥
A.mRNA-脂質ナノ粒子の調製
mRNAをロードした脂質ナノ粒子(LNP)は、25mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3)に溶解したポリ(A)(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)の水溶液を、イオン化可能な脂質DLin-MC3-DMA(MedChemExpress, Monmouth Junction, NJ)、DSPC(Avanti Polar lipids, Alabaster, AL)、コレステロール(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)、およびPEG2000-DSPE(Avanti Polar lipids)を、それぞれ、40:10:45:5のモル比で含む脂質のエタノール溶液と組み合わせることによって調製した。マイクロフルイディクスフロー制御系(すなわち、PG-MFCコントローラ, PreciGenome, San Jose, CA)を用いて水相と有機相を組み合わせた。水相中のポリ(A)濃度は0.189mg/mLであったのに対して、有機相中の全脂質濃度は7.56mg/mL(すなわち、12.5mM)であった。ポリ(A)と全脂質の比は1:20w/wであった。全流速は12mL/minであり、流速の比(水:有機)は2:1v/vであった。合成されたLNPを含む水/エタノール相における最終ポリ(A)濃度は63μg/mLであった。
【0134】
B.ポリ(A)-LNPの透析
水/エタノール相に溶解した1ミリリットル(1mL)のポリ(A)-LNPを、分子量カットオフ8~10KDaの透析チューブ(Spectrum, Stamford, CT)に入れた。次いで、透析チューブを、4℃で24時間、100rpmの穏やかな撹拌速度で外部ビーカーの中にある1000mLのDEPC処理1×PBS(すなわち、10mM、pH7.4)に入れた。透析溶液(すなわち、DEPC処理1×PBS)を8時間ごとに交換した。透析後に1.602mLの試料を透析チューブから回収した。凍結防御物質としてスクロース原液を10%(w/v)の最終濃度になるように添加した。ポリ(A)-LNP試料をエッペンドルフチューブ(それぞれ0.2mL)に分注し、次いで、-80℃冷凍庫に入れて凍結および保管した。LNPの濃度は、TFF用の製剤調製のために透析およびスクロース添加した後の体積変化に基づいて計算した。その間に、透析なしでオリジナルの緩衝液(すなわち、クエン酸ナトリウム緩衝液とエタノールの混合物)に溶解したポリ(A)-LNPもTFFのために製剤化した。
【0135】
C.薄膜凍結乾燥されたポリ(A)-LNP粉末の調製
製剤6:
1.5mLのエッペンドルフチューブに0.05mLのポロキサマー188(60mg/mL)、0.05mLのトレハロース(400mg/mL)、および0.05mLのロイシン(20mg/mL)を添加し、徹底的にピペッティングした後に、0.063mgポリ(A)/mLの濃度でクエン酸ナトリウム緩衝液/エタノール混合物に溶解したポリ(A)-LNP 0.1mLを添加した。
【0136】
製剤7:
1.5mLのエッペンドルフチューブに0.05mLのポロキサマー188(60mg/mL)、0.05mLのスクロース(400mg/mL)、および0.05mLのロイシン(20mg/mL)を添加し、徹底的にピペッティングした後に、0.063mgポリ(A)/mLの濃度でクエン酸ナトリウム緩衝液/エタノール混合物に溶解したポリ(A)-LNP 0.1mLを添加した。
【0137】
製剤8:
1.5mLのエッペンドルフチューブに0.05mLのポロキサマー188(60mg/mL)、0.025mLのスクロース(400mg/mL)、0.025mLのトレハロース(400mg/mL)、および0.05mLのロイシン(20mg/mL)を添加し、徹底的にピペッティングした後に、0.063mgポリ(A)/mLの濃度のクエン酸ナトリウム緩衝液/エタノール混合物に溶解したポリ(A)-LNP 0.1mLを添加した。
【0138】
製剤9:
1.5mLのエッペンドルフチューブに0.05mLのポロキサマー188(60mg/mL)、0.05mLのトレハロース(400mg/mL)、および0.05mLのロイシン(20mg/mL)を添加し、徹底的にピペッティングした後に、0.039mgポリ(A)/mLの濃度の透析済みポリ(A)-LNP 0.1mLを添加した。
【0139】
製剤10:
1.5mLのエッペンドルフチューブに0.05mLのポロキサマー188(60mg/mL)、0.05mLのスクロース(400mg/mL)、および0.05mLのロイシン(20mg/mL)を添加し、徹底的にピペッティングした後に、0.039mgポリ(A)/mLの濃度の透析済みポリ(A)-LNP 0.1mLを添加した。
【0140】
製剤11:
1.5mLのエッペンドルフチューブに0.05mLのポロキサマー188(60mg/mL)、0.025mLのスクロース(400mg/mL)、0.025mLのトレハロース(400mg/mL)、および0.05mLのロイシン(20mg/mL)を添加し、徹底的にピペッティングした後に、0.039mgポリ(A)/mLの濃度の透析済みポリ(A)-LNP 0.1mLを添加した。
【0141】
D.薄膜凍結および昇華
ポリ(A)-LNP分散液を数秒間穏やかにかき回し、極低温に冷却したステンレス鋼ドラム(-70℃)に滴下した(9~10の滴下で0.250mL)。凍結した薄膜を、液体窒素を満たしたステンレス鋼容器に収集した。次いで、凍結した薄膜をガラスバイアルに移し、VirTis Advantageベンチトップトレー凍結乾燥機(The VirTis Company, Inc. Gardiner, NY)に入れる前に-80℃冷凍庫で保管した。凍結乾燥サイクルは、80mTorr、-40℃で20時間、80mTorrで20時間、25℃までランピング、次いで、80mTorr、25℃で20時間の保持であった。乾燥窒素ガスを埋め戻し、ストッパリングシステムによってバイアルの蓋を閉じた。保管のためにバイアルをアルミニウムキャップで密封した。
【0142】
E.TFFD粉末から再構成したポリ(A)-LNPの特徴付け
TFFD粉末を使い捨てのUVキュベットに入れ、濾過した脱イオン水で再構成した。粒径と多分散指数(polydispersity index)(PDI)をMalvern Zetasizer Nano ZSを用いて測定した。ポリ(A)-LNP中のmRNAローディングを、以前に説明されたように(Blakney et al., 2019; Yang et al., 2020)、Quanti-iT RiboGreenアッセイキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて定量した。簡単に言うと、TFFD粉末をクエン酸緩衝液(50mM, pH4.0)で再構成し、次いで、TFFDプロセス前に1×PBS(10mM, pH7.4)を用いて液体製剤の2倍の体積まで希釈した。全試料を、0.5%(v/v)Triton X-100(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)を含む1×Tris-EDTA(TE)緩衝液(RNaseフリー)で2倍、20倍、200倍、および2000倍に希釈し、次いで、全mRNAを検出するために15分間インキュベートした。遊離の、カプセル化されたmRNAを検出するために、全試料を1×TE緩衝液(RNaseフリー)で2倍、20倍、200倍、および2000倍に希釈した。Triton X-100処理試料および未処理試料を全て、黒色の96ウェルプレート(Costar, Corning, NY)の中でRiboGreen試薬とインキュベートした。蛍光強度を、BioTek Synergy HT Multi-Mode Microplate Reader(Winooski, VT, Ex=485nm, Em=528nm, ゲイン=35)を用いて測定した。蛍光強度値を、全mRNAについて作成した検量線およびLNP外のmRNAについて作成した検量線に基づいてmRNA濃度に変換した。カプセル化効率は、以下の式:
に従って計算した。
【0143】
i.結果
10%(w/v)溶液を用いて、1xPBSに溶解したスクロースに対して透析した後の、および上述したようにポリ(A)-LNPを製剤6~11から再構成した後のポリ(A)-LNPの粒径(Z平均)、PDI、およびカプセル化効力を表1に示した。全体的に見て、TFFDおよび再構成に供した後のLNPの中にあるポリ(A)のカプセル化効力は(透析後の値と比較して)変化しなかった。製剤9~11の中にあるポリ(A)-LNPの粒径も変化しなかった(表3)。しかしながら、クエン酸緩衝液とエタノール溶液に分散させたポリ(A)-LNPを用いて調製した製剤6~8の中にあるポリ(A)-LNPの粒径は有意に増加した。
【0144】
(表3)ポリ(A)-LNPをTFFDに供した後のポリ(A)-LNPの粒径、PDI、およびカプセル化効力
データは、Z平均およびPDIについては3回の測定値、カプセル化効力については2回の測定値の平均±SDである。
【0145】
実施例5-PBSおよびスクロースを除去するために再透析したmRNA-LNPの薄膜凍結乾燥
A.ポリ(A)-LNPの透析および薄膜凍結乾燥ポリ(A)-LNP粉末の調製
スクロース(10%, w/v)を含むPBS(10mM, pH7.4)に溶解したポリ(A)-LNPを-80℃で2ヶ月間保管した。次いで、ポリ(A)-LNPを、透析溶液であるDEPC処理水中で16時間透析し、透析溶液を8時間ごとに交換した。ポリ(A)-LNPの濃度を、TFF用の製剤調製のために透析した後の体積変化に基づいて計算した。1000mg/mLのスクロース、500mg/mLのトレハロース、20mg/mLのロイシン、200mg/mLのマンニトール、1500mg/mLのソルビトール、1200mg/mLのキシリトール、80mg/mLのP188、1MのTris緩衝液、10×PBS、20mg/mLのデキストラン-40、および4mg/mLの没食子酸エピガロカテキン(EGCG)の原液を調製し、TFFD用のポリ(A)-LNP製剤(表4)を調製するのに使用した。
【0146】
(表2)ポリ(A)-LNPの製剤(
*水で再透析したポリ(A)-LNPの体積)
【0147】
C.薄膜凍結および昇華
表4のポリ(A)-LNP分散液を、極低温に冷却したステンレス鋼ドラム(-70℃)の上に滴下した。凍結した薄膜を、液体窒素を満たしたステンレス鋼容器に収集した。次いで、凍結した薄膜をガラスバイアルに移し、VirTis Advantageベンチトップトレー凍結乾燥機に入れる前に-80℃冷凍庫で保管した。従来の凍結乾燥手順を利用した。乾燥窒素ガスを埋め戻し、ストッパリングシステムによってバイアルの蓋を閉じた。保管のためにバイアルをアルミニウムキャップで密封した。
【0148】
D.TFFD粉末から再構成したポリ(A)-LNPの特徴付け
TFFD粉末を、脱イオン水を用いて、TFFDプロセス前の液体製剤と同じ濃度まで再構成した。以前に説明されたようにMalvern Nano ZSを用いて粒径とPDIを測定した。
【0149】
i.結果
水で再構成した時の製剤12~28中にあるポリ(A)-LNPの粒径およびPDI値を表5に示した。ポリ(A)-LNP分散液からPBSとスクロースを除去する追加の透析工程によってLNPの粒径が増大した(表5対表3)。さらに透析したポリ(A)-LNPについて、分散液に添加した賦形剤は、TFFDに供し、次いで、水で再構成した後のポリ(A)-LNPの粒径に影響を及ぼした(表5)。例えば、TFFDと再構成に供した後に製剤14、16、および17中にあるポリ(A)-LNPの粒径は増加しなかったのに対して、製剤25および26ではかなり大きくなった(表5)。
【0150】
(表5)ポリ(A)-LNPをTFFDに供した後のポリ(A)-LNPの粒径およびPDI
データは2回の測定値からの平均±SDである。
【0151】
本明細書において開示および主張される組成物および方法の全てが、本開示を考慮すれば過度の実験なく作製および実行することができる。本開示の組成物および方法が好ましい態様に関して記述されたが、当業者には、本開示の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書において記述される方法、ならびに方法の工程または工程の順序において変形が適用され得ることが明らかである。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連する特定の物質が、本明細書において記述される物質の代わりに代用され得るが、同じまたは同様の結果が達成されることは明らかである。当業者には明らかなそのような同様の代用および変更は全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神、範囲、および概念の範囲内であるとみなされる。
【0152】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書において記載されたものを補足する例示的な手順またはその他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【国際調査報告】