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特表2024-509244フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを用いた眼疾患の処置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを用いた眼疾患の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/44 20060101AFI20240221BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/7084 20060101ALI20240221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20240221BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20240221BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20240221BHJP
   C12N 9/02 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
A61K38/44
A61P27/02
A61P27/06
A61P27/12
A61K31/7084
A61P43/00 121
A61K31/7076
A61K38/46
A61K33/06
C12N9/12 ZNA
C12N9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554855
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022055727
(87)【国際公開番号】W WO2022189344
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161313.8
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514185611
【氏名又は名称】ユニベルシテイト ゲント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デランゲ,ヨリス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン アーヘン,エリザベート
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA44
4C084DC22
4C084DC23
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZC192
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA18
4C086HA04
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA06
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、最終糖化産物(AGE)の存在によって特徴づけられる医学上および美容上の状態における、酵素フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)の-プロテアーゼの添加なしでの-適用に関する。より具体的には、本発明は、ヒトまたは動物における眼疾患の処置に関する。AGEは、老化した目に蓄積して、老眼、白内障、ドライアイ、加齢性黄斑変性症、緑内障および糖尿病網膜症の原因となる。ゆえに、本発明は、該AGEを脱糖化および不活化させるためのFAODの適用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
老眼、白内障、加齢性黄斑変性症、ドライアイ症候群、糖尿病網膜症および/または緑内障を処置することへの使用のための、フルクトシルアミノオキシダーゼを含む組成物。
【請求項2】
フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)をさらに含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
フルクトサミン-3-キナーゼおよびアデノシン三リン酸(ATP)をさらに含む、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
マグネシウムイオンをさらに含む、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
ペルオキシダーゼをさらに含む、請求項1~4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
点薬としてまたはあらゆるその他の外用を介して、または内用を介して投与される、請求項1~5に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、最終糖化産物(AGE)の存在によって特徴づけられる医学上の状態における、酵素フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)の-プロテアーゼの添加なしでの-適用に関する。
より具体的には、本発明は、ヒトまたは動物における眼疾患の処置に関する。AGEは、老化した目に蓄積して、老眼、白内障、ドライアイ、加齢性黄斑変性症、緑内障および糖尿病網膜症の原因となる。
ゆえに、本発明は、該AGEを脱糖化および不活化させるためのFAODのin vivo適用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
タンパク質糖化は、老化のプロセスであり、そこでは代謝的に重要な糖が第一級アミン基と反応して、再配列およびさらに反応する可能性のある付加体を形成し、ひいてはタンパク質間の架橋(メイラード反応)につながる(1)。このタンパク質糖化の老化プロセスは、目および皮膚などの長寿命のタンパク質を持つ器官で特に起こる。
【0003】
目における水晶体クリスタリン、網膜細胞、角膜細胞、小柱網および視神経は、生涯再生されず、および糖化しやすい。結果として、老化した水晶体が硬くなり、高齢者が老眼鏡を着用するようになる(老眼)。さらにまた、水晶体は濁りさえし、および、外科手術以外に利用可能な治療法がない白内障に起因する失明が起こる(2)。涙液膜中のAGEの量の増加は、角膜の生体力学を変化させ、およびドライアイ症候群を誘発する可能性がある(3)。加齢と共に、網膜内および網膜下にもまたAGEが蓄積し、加齢性黄斑変性症(AMD)および75歳を超える人の25%における失明の原因となる(2)。加えて、小柱網のコラーゲン基質および視神経の篩状板の老化は、高い眼内圧によって特徴づけられる疾患である緑内障に起因する失明の原因となる(4,5)。糖尿病患者において、加齢および高血糖症は、糖尿病網膜症に起因して失明を発症することへの最も顕著なリスク因子である(5,6)。
【0004】
酵素フルクトサミン-3-キナーゼ(F3KまたはFN3K)による、AGE依存性の眼の疾患の非外科的処置が、以下のものに記載されている:WO2019149648は、水晶体クリスタリンを脱糖化させるために、目に組換えF3Kおよびその補因子(単数または複数)を投与することによって、白内障を処置する方法を開示し、および、WO2020053188は、目に組換えF3Kおよびその補因子(単数または複数)を投与することによって、最終糖化産物依存性の眼の疾患を処置する方法を開示する。
【0005】
フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD;フルクトシル-α-L-アミノ酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱フルクトシル化))は、多くの細菌および酵母において見出される酵素である(7,8)。FAODは、フルクトシル部分のC1とフルクトシルアミノ酸のアミノ基の窒素とを連結するC-N結合の酸化を触媒する。フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)は、その補因子として作用する。それは、フルクトシルリシンおよびフルクトシルバリンの両方に対して活性である。糖化タンパク質に対するFAODをベースとした検出方法-例えばShen et al.(2013 AACC Annual Meetingの要約B44)(9)により記載されたものおよびUS2005/0014935におけるものが、1999年以来商業的に利用可能となっている。
【0006】
しかしながら、FAODは、ほとんどの無傷の糖化タンパク質とは反応することができず、および、よって試料は、糖化アミノ酸または糖化ジペプチドを遊離させるための最初のタンパク質分解消化ステップを要する。Capuano et al.(J. Agric. Food Chem 2007:4189)は、インスリンなどの一部の低分子量タンパク質に対するFAODの脱糖効果を示し、およびFAODが食品系におけるタンパク質糖化を阻害するツールとして使用できると結論付けている(10)。しかしながら、ヒトまたは動物においてのAGE誘発性の状態におけるFAODのin vivo治療的な使用については、考えられたことがなかった。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、第1の事例においては、老眼、白内障、ドライアイ症候群、加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症および/または緑内障を処置することへの使用のための、フルクトシルアミノオキシダーゼを含む組成物に関する。
本発明はさらに、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)をさらに含む、上に記載のとおりの使用のための組成物に関する。
【0008】
本発明はまた、フルクトサミン-3-キナーゼおよびアデノシン三リン酸(ATP)をさらに含む、上に記載のとおりの使用のための組成物にも関する。
本発明はまた、マグネシウムイオンをさらに含む、上に記載のとおりの使用のための組成物にも関する。
【0009】
本発明はさらに、ペルオキシダーゼをさらに含む、上に記載のとおりの使用のための組成物に関する。
本発明はさらに、上に記載のとおりの使用のための組成物に関し、該組成物は、点薬としてまたはあらゆるその他の外用を介して、または内用を介して投与される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したブタの網膜の蛍光分光測定。 グリコールアルデヒド(GA)で糖化させ、および次いで、FN3K+ATP+MgCl2図1A)、FAOD(図1B)、FN3K+ATP+MgCl2とFAODとの組み合わせ(図1C)で処置した、ブタの網膜(n=40)の発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。陰性対照については、PBS+ATP+MgCl2を使用した(図1D)。ベースラインの自家蛍光分光測定を、糖化の前(ベース、黒色の第1のバー)、25mmol/Lグリコールアルデヒドでの3時間の糖化の後(GA、薄灰色、第2のバー)、および3時間の処置の後(処置済、濃い灰色、第3のバー)の、すべての網膜について行った。
図1B図1.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したブタの網膜の蛍光分光測定。 グリコールアルデヒド(GA)で糖化させ、および次いで、FN3K+ATP+MgCl2図1A)、FAOD(図1B)、FN3K+ATP+MgCl2とFAODとの組み合わせ(図1C)で処置した、ブタの網膜(n=40)の発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。陰性対照については、PBS+ATP+MgCl2を使用した(図1D)。ベースラインの自家蛍光分光測定を、糖化の前(ベース、黒色の第1のバー)、25mmol/Lグリコールアルデヒドでの3時間の糖化の後(GA、薄灰色、第2のバー)、および3時間の処置の後(処置済、濃い灰色、第3のバー)の、すべての網膜について行った。
図1C図1.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したブタの網膜の蛍光分光測定。 グリコールアルデヒド(GA)で糖化させ、および次いで、FN3K+ATP+MgCl2図1A)、FAOD(図1B)、FN3K+ATP+MgCl2とFAODとの組み合わせ(図1C)で処置した、ブタの網膜(n=40)の発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。陰性対照については、PBS+ATP+MgCl2を使用した(図1D)。ベースラインの自家蛍光分光測定を、糖化の前(ベース、黒色の第1のバー)、25mmol/Lグリコールアルデヒドでの3時間の糖化の後(GA、薄灰色、第2のバー)、および3時間の処置の後(処置済、濃い灰色、第3のバー)の、すべての網膜について行った。
図1D図1.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したブタの網膜の蛍光分光測定。 グリコールアルデヒド(GA)で糖化させ、および次いで、FN3K+ATP+MgCl2図1A)、FAOD(図1B)、FN3K+ATP+MgCl2とFAODとの組み合わせ(図1C)で処置した、ブタの網膜(n=40)の発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。陰性対照については、PBS+ATP+MgCl2を使用した(図1D)。ベースラインの自家蛍光分光測定を、糖化の前(ベース、黒色の第1のバー)、25mmol/Lグリコールアルデヒドでの3時間の糖化の後(GA、薄灰色、第2のバー)、および3時間の処置の後(処置済、濃い灰色、第3のバー)の、すべての網膜について行った。
【0011】
図2図2.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したヒト水晶体フラグメントの蛍光分光測定。 処置の前(黒色の線)および処置の後(灰色の線)の、ヒト白内障水晶体フラグメントの3つの類似したプール(n=30)の発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。FAOD(灰色の点線)、FN3K+ATP+MgCl2(灰色の実線)、FAODとFN3K+ATP+MgCl2との両方の組み合わせ(灰色の破線)のいずれかで、プールを処置した。
【0012】
図3A図3.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したヒト角膜の蛍光分光測定。 グリコールアルデヒド(GA)で糖化させ、および次いで、FN3K+ATP+MgCl2図3A)、FAOD(図3B)、またはFN3K+ATP+MgCl2とFAODとの組み合わせ(図3C)で処置した、ヒト角膜フラグメントの発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。陰性対照については、PBS+ATP+MgCl2を使用した(図3D)。ベースラインの自家蛍光分光測定を、糖化の前(黒色の曲線)、25mmol/L GAでの3時間の糖化の後(破線の曲線)、および3時間の処置の後(点線の曲線)の、すべての角膜フラグメントについて行った。
図3B図3.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したヒト角膜の蛍光分光測定。 グリコールアルデヒド(GA)で糖化させ、および次いで、FN3K+ATP+MgCl2図3A)、FAOD(図3B)、またはFN3K+ATP+MgCl2とFAODとの組み合わせ(図3C)で処置した、ヒト角膜フラグメントの発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。陰性対照については、PBS+ATP+MgCl2を使用した(図3D)。ベースラインの自家蛍光分光測定を、糖化の前(黒色の曲線)、25mmol/L GAでの3時間の糖化の後(破線の曲線)、および3時間の処置の後(点線の曲線)の、すべての角膜フラグメントについて行った。
図3C図3.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したヒト角膜の蛍光分光測定。 グリコールアルデヒド(GA)で糖化させ、および次いで、FN3K+ATP+MgCl2図3A)、FAOD(図3B)、またはFN3K+ATP+MgCl2とFAODとの組み合わせ(図3C)で処置した、ヒト角膜フラグメントの発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。陰性対照については、PBS+ATP+MgCl2を使用した(図3D)。ベースラインの自家蛍光分光測定を、糖化の前(黒色の曲線)、25mmol/L GAでの3時間の糖化の後(破線の曲線)、および3時間の処置の後(点線の曲線)の、すべての角膜フラグメントについて行った。
図3D図3.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したヒト角膜の蛍光分光測定。 グリコールアルデヒド(GA)で糖化させ、および次いで、FN3K+ATP+MgCl2図3A)、FAOD(図3B)、またはFN3K+ATP+MgCl2とFAODとの組み合わせ(図3C)で処置した、ヒト角膜フラグメントの発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。陰性対照については、PBS+ATP+MgCl2を使用した(図3D)。ベースラインの自家蛍光分光測定を、糖化の前(黒色の曲線)、25mmol/L GAでの3時間の糖化の後(破線の曲線)、および3時間の処置の後(点線の曲線)の、すべての角膜フラグメントについて行った。
【0013】
図4図4.FAODおよびペルオキシダーゼで処置したブタの網膜の蛍光分光測定。糖化の前(小さい黒色のバー)、および25mmol/Lグリコールアルデヒドでの3時間の糖化の後(大きい濃い灰色のバー)の、ブタの網膜(n=40)の発光スペクトル(400~600nm)の3回の測定の平均自家蛍光値および標準偏差。ブタの網膜を、次いで、1時間(薄灰色のバー)、2時間(白色のバー)または3時間(灰色のバー)、FAOD単独または473U/mLペルオキシダーゼとの組み合わせのいずれかで処置した。
【0014】
図5A図5.FAODでまたはFN3Kで処置した白内障水晶体フラグメントの蛍光定量法のシフト。老齢かつ糖尿病の患者のプールに由来するヒト水晶体フラグメントを、異なる脱糖化酵素で3時間処置した。処置の前(破線)および処置の後(実線)の、ヒト白内障水晶体フラグメントの3つの類似したプール(n=30)の発光スペクトル(400~600nm)の3回の実験の平均自家蛍光値。FN3K+ATP+MgCl2(図5A)またはFAOD+FAD(図5B)のいずれかで、プールを処置した。
図5B図5.FAODでまたはFN3Kで処置した白内障水晶体フラグメントの蛍光定量法のシフト。老齢かつ糖尿病の患者のプールに由来するヒト水晶体フラグメントを、異なる脱糖化酵素で3時間処置した。処置の前(破線)および処置の後(実線)の、ヒト白内障水晶体フラグメントの3つの類似したプール(n=30)の発光スペクトル(400~600nm)の3回の実験の平均自家蛍光値。FN3K+ATP+MgCl2(図5A)またはFAOD+FAD(図5B)のいずれかで、プールを処置した。
【0015】
図6図6.FAOD処置の前および後の尿素可溶性の水晶体フラグメントのゲル濾過パターン(Sephadex(登録商標)G-25 Fine樹脂)。溶離時間の関数として、高分子量のフルクトース含有化合物(AGE)の488nmでの吸光度(Seliwanoff反応)が提示される。V0(>5kDa)は空隙体積を、Vt(<500Da)は末端体積を示す。溶離時間165分後のシャープなピーク、および235分後のより小さなピークは、FAOD処置の前の水晶体におけるフルクトース含有AGEの存在を表す。横軸上のドットは、各溶離時点でのフルクトース含有AGEの総損失を示す。
【0016】
図7A図7.FAOD処置後のヒト水晶体パワーのゲイン生理食塩水での提示された処置時間(時間)の関数としての、(D、水)におけるヒト水晶体の水晶体パワー(図7A)。FAODでの処置時間の関数としての、ヒト水晶体パワーのゲイン(D、水)(図7B
図7B図7.FAOD処置後のヒト水晶体パワーのゲイン生理食塩水での提示された処置時間(時間)の関数としての、(D、水)におけるヒト水晶体の水晶体パワー(図7A)。FAODでの処置時間の関数としての、ヒト水晶体パワーのゲイン(D、水)(図7B
【0017】
図8図8.AGEを伴うヒト網膜の染色された組織切片に対する近赤外顕微分光法は、FAOD処置と比較してFN3K処置の後の異なる生化学的変化を解き明かす。部分最小二乗判別分析によって分析された、FN3Kで処置されたDruesen(四角)とFAODで処置されたDruesen(ドット)との間のはっきりとした区別を示している、スペクトルデータのHotellingのプロット。
【0018】
図9-13】図9.アルギニンを含有する試料において検出された、RT0.82でm/z 133,09695の化合物(化合物#A1)についての提案された構造。図10.アルギニンを含有する試料において検出された、RT0.88でm/z 337,17098の化合物(化合物#A3)についての提案された構造。図11.アルギニンを含有する試料において検出された、RT0.88でm/z 319,16064の化合物(化合物#A4)についての提案された構造。図12.リシンを含有する試料において検出された、RT0.85でm/z 309,16554の化合物(化合物#L1)についての提案された構造。図13.リシンを含有する試料において検出された、RT0.89で219,13387の化合物(化合物#L2)についての提案された構造。
【0019】
図14-16】図14.リシンを含有する試料において検出された、RT0.91でm/z 205,11825の化合物(化合物#L3)についての提案された構造。図15.アルギニンを含有する試料において検出された、RT0.95でm/z 351,15047の化合物(化合物#A9)についての提案された構造。図16.アルギニンを含有する試料において検出された、RT0.83でm/z 131,12904の化合物(化合物#A2)についての提案された構造。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の詳細な記載
本発明は、FAOD-これは先行してプロテイナーゼの利用がなければタンパク質糖化を元に戻すことはできないことが示されている-がin vivoで眼組織内のタンパク質を脱糖化させる能力がありおよび-それ自体で-治療的な効果を有するという驚くべき知見に関する。さらにまた、本発明は、さらに、FAODはタンパク質F3Kとは異なるタンパク質を脱糖化させることで、同じ組織に対して両方の酵素を同時に使用することが、改善された(追加的な)治療的な効果を有するようにする、ということもまた開示する。
【0021】
本発明は、第1の事例においては、緑内障、目の加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症、ドライアイ症候群、老眼および白内障などの目の特定の疾患、およびAGEに関する皮膚の外観を処置することへの使用のための、フルクトシルアミノオキシダーゼを含む組成物に関する。
【0022】
一態様において、本発明は、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ単独でのまたはフルクトサミン3キナーゼおよびその補因子(単数または複数)と組み合わせての投与が、AGEに誘発される眼組織における蛍光をより少なくしおよび眼内圧を低くする結果をもたらすという驚くべき知見に関する。換言すれば、後者の処置は、緑内障などのAGE誘発性の疾患がある患者において眼内圧を低下させおよび視力を改善させる。
【0023】
別の態様において、本発明は、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ単独でのまたはフルクトサミン3キナーゼおよびその補因子(単数または複数)と組み合わせての投与が、AGEに誘発される網膜における蛍光をより少なくする結果をもたらすという驚くべき知見に関する。換言すれば、後者の投与は、加齢性黄斑変性症および糖尿病網膜症などのAGE誘発性の眼の網膜症がある患者において、光透過率をおよびよって視力を取り戻させる。
【0024】
別の態様において、本発明は、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ単独でのまたはフルクトサミン3キナーゼおよびその補因子(単数または複数)と組み合わせての投与が、AGEに誘発される角膜における蛍光をより少なくする結果をもたらすという驚くべき知見に関する。換言すれば、後者の投与は、ドライアイ症候群などのAGE誘発性の眼の角膜症がある患者において、光透過率をおよびよって視力を取り戻させる。
【0025】
もう1つの態様において、本発明は、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ単独でのまたはフルクトサミン3キナーゼおよびその補因子(単数または複数)と組み合わせての処置が、老眼および白内障などのAGE誘発性の眼の水晶体疾患がある患者において、AGEに誘発される水晶体における蛍光を低減させ、およびよって光透過率および視力を取り戻させるという驚くべき知見に関する。
【0026】
本発明の数個の態様は、よって、ヒトまたは動物における、加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症、老眼、白内障、ドライアイ症候群、緑内障などのAGE誘発性の眼の疾患を処置することへの使用のための、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを単独でまたはフルクトサミン-3-キナーゼおよびその補因子(単数または複数)と組み合わせて含む組成物に関する。
【0027】
用語「眼組織における蛍光」とは、眼組織をUV光で照射した後で観察されるUV蛍光シグナルを意味する。AGEは、Maillard型自家蛍光測定(UV光365nmの励起波長、発光波長390~700nm)に基づき定量化される。
用語「低い眼内圧」とは、眼圧計(接触式眼圧計または非接触式眼圧計)のあらゆる手段によって測定される、目における圧力を意味する。
【0028】
用語「眼組織」とは、水晶体、網膜、角膜、小柱網、硝子体、視神経などの、AGEが蓄積するすべての眼組織を意味する。
用語「視力を改善する」とは、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ単独での、またはフルクトサミン3キナーゼおよびその補因子(単数または複数)と組み合わせての、またはペルオキシダーゼと組み合わせての、適用の後の臨床試験において視力がより良くなっていることを意味する。
【0029】
用語「AGE誘発性の疾患」とは、-視力に関する本発明の態様については-老眼、白内障、ドライアイ症候群、加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症または緑内障などの、AGEが関与する視力を脅かすすべての疾患を意味する。
【0030】
本発明は、よって、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを含む組成物に関する。
用語「フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD;フルクトシル-α-L-アミノ酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱フルクトシル化))」は、フルクトシル部分のC1とフルクトシルアミノ酸のアミノ基の窒素とを連結するC-N結合の酸化を触媒するものとして分類されるあらゆる酵素に関する。反応は不安定なSchiff塩基中間体へ進み、それがそれが加水分解してグルコソンおよびアミノ酸を産生する。酵素の、還元されたフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)補因子は、次いで分子状酸素によって再酸化され、過酸化水素の放出を伴う。
【0031】
より具体的には、用語「フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(フルクトシル-α-L-アミノ酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱フルクトシル化))」は、Sakaue et al.(11)により記載されたとおりのEscherichia coliにおいてクローン化され発現されたCorynebacterium sp. 2-4-1のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(フルクトシル-a-L-アミノ酸:酸素オキシドレダクターゼ(脱フルクトシル化);EC 1.5.3)をコードする遺伝子によってコードされる酵素に関する。後者の酵素-本発明において使用することができる酵素の非限定例として-は、-例えば-Creative Enzymes, Shirley, NYから購入することができ、または、例えばSakaue et al.(11)により記載されたとおりである、周知の組換え方法を使用して作ることができる。
【0032】
用語「フルクトサミン-3-キナーゼ」は、-例えば-Brenda 酵素 データベース(www.brenda-enzvmes.org)における酵素2.7.1.171として分類される酵素に関する。後者の酵素は、非酵素的に糖化されたタンパク質から炭水化物を除去するためのATP依存性のシステムの一部であり、および以下の反応を触媒する:ATP+[タンパク質]-N6-D-フルクトシル-L-リシン=ADP+[タンパク質]-N6-(3-0-ホスホ-D-フルクトシル)-L-リシン。より具体的には、用語「フルクトサミン-3-キナーゼ」は、-非限定例として-受託番号または国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)参照配列番号:NP_071441.1を有するヒトフルクトサミン-3-キナーゼ(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP 071441を参照)に関する。WO2019149648およびWO2020053188の両方が、-例えば-Pichia pastorisにおけるF3Kの組換え産生について記載している。
【0033】
用語「フルクトサミン-3-キナーゼ」および「フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ」は、上に記載のとおりの酵素に関するが、しかしまた機能的フラグメントおよびそのバリアントにも関することがさらに明確なはずである。用語「機能的フラグメントおよびバリアント」は、天然に存在する酵素のフラグメントおよびバリアントに関する。実に、酵素の多数の用途について、酵素的効果を達成するのにタンパク質の一部が充分であり得る。同じことが、バリアント(すなわち、タンパク質において1以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されているが、しかし機能性を保持しているかまたは改善された機能性さえ示すもの)に対して、とりわけ酵素活性について最適化された酵素のバリアント(また組換え酵素に関してもさらに記載されているとおりである)に対して当てはまる。
【0034】
用語「フラグメント」は、よって、NCBI参照配列番号:NP_071441.1を有するヒトフルクトサミン-3-キナーゼの309アミノ酸配列またはSakaue et al.(11)により開示されたとおりのフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの372アミノ酸配列よりも少ないアミノ酸を含有し、かつ、該酵素活性を保持している酵素を指す。かかるフラグメントは、-例えば-Cおよび/またはN末端にアミノ酸の総数の10%以下の欠失があるタンパク質とすることができる。用語「バリアント」は、よって、NCBI参照配列番号:NP_071441.1を有するヒトフルクトサミン-3-キナーゼの309アミノ酸配列とまたはSakaue et al.(11)により開示されたとおりのフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの372アミノ酸配列と少なくとも50%配列同一性を有し、好ましくは少なくとも51~70%配列同一性を有し、より好ましくは少なくとも71~90%配列同一性を有し、または最も好ましくは少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98または99%配列同一性を有し、かつ、該酵素活性を保持しているタンパク質を指す。
【0035】
ゆえに、オルソログ、または他の属および種における遺伝子(NCBI参照配列番号:NP_071441.1を有するヒトフルクトサミン-3-キナーゼ以外またはSakaue et al.(11)により開示されたとおりのフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ以外)でありアミノ酸レベルで少なくとも50%同一性を持ち、および該酵素活性を有するものは、本発明の一部である。アミノ酸配列同一性のパーセンテージは、2つの配列のアラインメント、および、同一のアミノ酸がある位置の数をより短い方の配列中のアミノ酸の数で除算×100の同定によって決定される。後者の「バリアント」はまた、タンパク質の酵素活性を有する能力が保持されるような保存的置換および/または修飾においてのみNCBI参照配列番号:NP_071441.1を有するタンパク質またはSakaue et al.(11)により開示されたとおりのタンパク質と異なるものであってもよい。「保存的置換」は、タンパク質化学の分野の当業者がタンパク質の性質を実質的に変化しないと予想するような類似した特性を有する別のアミノ酸に、アミノ酸が置換されるものである。一般に、以下のアミノ酸のグループが保存的変化を代表する:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0036】
バリアントはまた(または代替的に)、例えば、上に定義されるとおりの酵素活性、酵素の二次構造および疎水性性質に対し最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加によって修飾された、本明細書に記載のとおりのタンパク質であってもよい。
用語「アデノシン三リン酸」(ATP)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)および「マグネシウムイオン」は、後者の酵素の周知の補因子に関する。
【0037】
本発明はさらに、ペルオキシダーゼをさらに含む、上に記載のとおりの使用のための組成物に関する。用語「ペルオキシダーゼ」は、EC番号1.11.1.xを有しおよび過酸化物を分解する能力がある、より具体的には、FAODの補因子である還元されたFADの酸化の間に放出される過酸化水素を分解する能力がある、あらゆる周知の酵素に関する。
用語「動物」は、哺乳動物(イヌ、ネコ、ウマ、…)、鳥類および爬虫類などのあらゆる動物に関するものであり得る。
【0038】
本発明は、よって、-換言すれば-加齢関連の老眼、白内障、ドライアイ症候群、加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症、緑内障を処置する(または予防する)ことをこれを必要とする対象において行う方法に関し、ここで、該方法は、該対象の目へ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを単独でまたはフルクトサミン-3-キナーゼおよびアデノシン三リン酸、および-本発明のある態様において-マグネシウムイオンおよび/またはペルオキシダーゼと組み合わせて含む化合物の治療的に有効な量の点薬を投与することを含む。
【0039】
用語「治療的に有効な量」は、1U/mL~100U/mLの間の範囲にわたるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ単独の、または10~946U/mLの間のペルオキシダーゼとの組み合わせでの、または4.17~12.5mg/mlの間のフルクトサミン-3-キナーゼ、2.50~4.17mMの間のATPおよび1.00~1.67mMの間のMgCl2との組み合わせでの、治療的な用量から採用される量に関する。後者の治療的な用量は、25mg/mlフルクトサミン-3-キナーゼの溶液を新鮮な5mM ATP/2mM MgCl2の溶液と1:1、1:2、1:3または1:5で混合することによって得ることができる。
【0040】
該治療的に有効な量の「点薬を投与すること」-これは投与の1つのやり方であるが-の他にも、ゲルを介するなどの外用、および、脈絡膜上の注射または硝子体内の注射または網膜下の注射または目の中もしくはその周りのその他あらゆる箇所への移植などのその他の内用などの-しかしこれらに限定されない-他の投与の手段もまた企図されることは明確なはずである。ゆえに、および例えば、本発明はしたがって、加齢性黄斑変性症、糖尿病網膜症、老眼、白内障、ドライアイ、緑内障といったAGE誘発性の眼の疾患を処置することへの使用のための、フルクトシルアミノオキシダーゼを単独でまたはフルクトサミン-3-キナーゼおよびATP(およびこれはマグネシウムイオンをさらに含む可能性がある)と組み合わせて含む組成物に関し、該組成物は、点薬もしくはあらゆるその他の外用、または内用(注射または移植など)、または眼の薬物送達のあらゆるその他のやり方によって投与される(12)。
【0041】
用語「治療的に有効な量」は、-F3Kについては-、約4,17~12.5μg/mlの間の範囲にわたるフルクトサミン-3-キナーゼ、2.50~4,17mMのATPおよび1.00~1.67mMのMgCl2の治療的な用量から採用される10μl~100μlの範囲にわたる量に関する。後者の治療的な用量は、25μg/mlフルクトサミン-3-キナーゼの溶液を新鮮な5mM ATP/2mM MgCl2の溶液と1:1、1:2、1:3または1:5で混合することによって得ることができる。
【0042】
用語「治療的に有効な量」は、-FAODについては-、1U/mL~100U/mLの間の範囲にわたるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの治療的な用量から採用される10μl~100μlの範囲にわたる量に関する。2mmol FAD/mol FAODのFAD濃度を、最適に酵素が機能するために使用することができる。溶液緩衝剤は、6.8~7.7の間のpH値を有していなければならない。
【0043】
本発明は、さらに、該フルクトサミン-3-キナーゼおよび該フルクトシルアミノ酸オキシダーゼが組換え酵素である、上に示されたとおりの組成物に関する。用語「組換え」は、細菌または酵母細胞などの生細胞の内部のフルクトサミン-3-キナーゼまたはフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードする組換えDNAの発現の成果として得られたフルクトサミン-3-キナーゼまたはフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを指す。実践する者は、Sambrook et al. Molecular Cloning: A laboratory Manual 第4版, Cold Spring Harbor press, Plainsview, New York(2012)およびAusubel et al. Current Protocols in Molecular Biology(捕足114), John Wiley & Sons, New York(2016)にさらに向けられる。
【0044】
より具体的には、本発明は、Pichia pastorisにおける組換え産生によって得られる組換えフルクトサミン-3-キナーゼに関し、さらにいっそう具体的には、ここでPichia pastorisにおける組換え産生によって得られる該組換えフルクトサミン-3-キナーゼは、配列番号1または配列番号2によって与えられるとおりのアミノ酸配列を有する。配列番号1は、N末で切断可能なHISタグ、およびHis6タグとタンパク質コード配列との間にカスパーゼ3で切断可能なAsp-Glu-Val-Asp(DEVD)リンカー(タグをきれいに除去することが可能である)を持つ構築物である。配列番号2は、配列番号1の切断されたバージョンである。
配列番号1および配列番号2のアミノ酸配列(ならびにそれら夫々をコードする核酸配列、配列番号3および配列番号4)は、以下のとおりである:
【0045】
配列番号1:
【化1】
【0046】
配列番号3:
【化2】
【0047】
配列番号2(=N末端HISタグ除去後のFN3K):
タイプ:アミノ酸1文字
EQLLRAELRTATLRAFGGPGAGCISEGRAYDTDAGPVFVKVNRRTQARQMFEGEVASLEALRSTGLVRVPRPMKVIDLPGGGAAFVMEHLKMKSLSSQASKLGEQMADLHLYNQKLREKLKEEENTVGRRGEGAEPQYVDKFGFHTVTCCGFIPQVNEWQDDWPTFFARHRLQAQLDLIEKDYADREARELWSRLQVKIPDLFCGLEIVPALLHGDLWSGNVAEDDVGPIIYDPASFYGHSEFELAIALMFGGFPRSFFTAYHRKIPKAPGFDQRLLLYQLFNYLNHWNHFGREYRSPSLGTMRRLLK*
【0048】
配列番号4:
タイプ:DNA
GAACAGTTGTTGAGAGCTGAGTTGAGAACTGCTACTTTGAGAGCTTTTGGTGGTCCAGGTGCTGGTTGTATTTCTGAGGGTAGAGCTTACGATACTGACGCTGGTCCAGTTTTCGTTAAGGTTAACAGAAGAACTCAGGCTAGACAGATGTTCGAGGGTGAAGTTGCTTCTTTGGAGGCTTTGAGATCCACTGGTTTGGTTAGAGTTCCAAGACCAATGAAGGTTATCGACTTGCCAGGTGGTGGTGCTGCTTTTGTTATGGAACACTTGAAGATGAAGTCCTTGTCCTCCCAGGCTTCTAAGTTGGGTGAACAAATGGCTGACTTGCACTTGTACAACCAGAAGTTGAGAGAAAAGTTGAAAGAGGAAGAGAACACTGTTGGTAGAAGAGGTGAAGGTGCTGAGCCACAATACGTTGACAAGTTCGGTTTCCACACTGTTACTTGTTGTGGTTTCATCCCACAGGTTAACGAGTGGCAAGATGACTGGCCAACTTTCTTCGCTAGACACAGATTGCAAGCTCAGTTGGACTTGATCGAGAAGGACTACGCTGACAGAGAAGCTAGAGAATTGTGGTCCAGATTGCAGGTTAAGATCCCAGACTTGTTCTGTGGTTTGGAGATCGTTCCAGCTTTGTTGCACGGTGATTTGTGGTCTGGTAACGTTGCTGAAGATGACGTTGGTCCAATTATCTACGACCCAGCTTCTTTCTACGGTCACTCTGAATTCGAGTTGGCTATCGCTTTGATGTTCGGTGGTTTCCCAAGATCCTTCTTCACTGCTTACCACAGAAAGATCCCAAAGGCTCCAGGTTTCGACCAGAGATTGTTGTTGTACCAGTTGTTCAACTACTTGAACCATTGGAACCACTTCGGTAGAGAGTACAGATCTCCATCCTTGGGTACTATGAGAAGATTGTTGAAGTAA
【0049】
本発明は、実に、-加えて、-Pichia pastorisにおける組換え産生によって得ることができおよび配列番号1および2によって与えられるとおりのアミノ酸配列を有する組換えフルクトサミン-3-キナーゼが、該AGE関連の状態を処置するための好ましい酵素であるという知見に関する。実に、後者の酵素は、1)Pichiaにおけるそれらの産生が、-例えば-E. coliにおける産生と比較して、より高い酵素の収率を結果として生じており、2)SDS-PAGE上で分析したときに酵素がより高い純度を有しており、および3)投与に続く炎症を招くことが知られている内毒素の存在を回避することができるので好ましい。
以下の例は、本発明をよりよく解説するために提供されており、および、本発明の範囲を限定するものと考えてはならない。
【0050】

例1.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したブタの網膜の蛍光分光測定。ブタの網膜(n=40)を地元の食肉処理場から取得し、および処理まで4℃で保管した。死後12h以内に、訓練された眼科医によって解剖を通じて神経網膜を単離し、滅菌6ウェルプレート(Thermo scientific, Roskilde, Denmark)へ移し、および-20℃で凍結させた。網膜のフラグメントを各凍結された網膜から切り取り、および蛍光測定のための96ウェルプレート(FluoroNunc PolySorp, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)へ加えた。続いて、各網膜のフラグメントについてベースラインで蛍光測定を、固定された距離および90°の角度で行った。網膜のフラグメントを、200μLの25mMグリコールアルデヒドダイマー(結晶形態、Sigma-Aldrich)とリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で3hの間37℃にてインキュベーションすることによって、AGE修飾を行った。インキュベーションの後、活性剤を慎重に洗い流し、および網膜のフラグメントを、化学反応の停止が完了するまで終夜(4℃)保管した。最終的に、FN3K(WO2019149648)250μg/mL+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/L(n=10)、FAOD 10U/mL(n=10)または組み合わせFN3K 250μg/mL+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/L+FAOD 10U/mL(n=10)を含有する溶液を使用して、in vitro脱糖化を開始した。
【0051】
FAODは、Creative Enzymes, Shirley, NYから購入した。20マイクロリットルの溶液を、各網膜のフラグメントへ添加し、および37℃にて3hの間インキュベートした。蛍光測定を、脱糖化溶液の添加の前に行い、およびインキュベーション期間の後で繰り返した。対照実験として、10の網膜のフラグメントを類似したやり方で処理した。しかしながら、フラグメントは、AGE修飾の後PBS+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/Lで対照処置した。
【0052】
高出力LED光源(365nm、Ocean Optics)を備えたFlame小型分光計(FLAME-S-VIS-NIR-ES、350~1000nm、Ocean Optics, Dunedin, FL, USA)およびリフレクションプローブ(QR400-7-VIS-BX、Ocean Optics)を使用してMaillard型自家蛍光(AF)測定(励起365nm、発光390~700nm)に基づきAGEを定量化した。407nm~677nmの範囲についてのnmあたりの発光した平均光強度を342nm~407nmの範囲にわたるnmあたりの平均光強度で除算することによってAF値を算出した。
【0053】
平均AF測定値は、すべての網膜のフラグメントにおいて、GAでの糖化の後で急激な増大を示す。神経網膜におけるAFは、FN3K溶液で処置したときに34%(図1A)、FAOD溶液で処置したときに38%(図1B)および、FN3KおよびFAODの両方を含有する溶液で処置したときに62%減少したが(図1C)、その一方で、対照処置された網膜は安定なままであった(AF+4%)(図1D)。
【0054】
例2.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したヒト水晶体フラグメントの蛍光分光測定。超音波水晶体乳化吸引の外科手術の後で得られたヒト白内障水晶体フラグメント(n=30)を、PBSで数回洗浄し、プールし、および4℃で保管した。水晶体フラグメントの3つのプールにおいて、UV蛍光を測定した(図2)。高出力LED光源(365nm、Ocean Optics)を備えたFlame小型分光計(FLAME-S-VIS-NIR-ES、350~1000nm、Ocean Optics, Dunedin, FL, USA)およびリフレクションプローブ(QR400-7-VIS-BX、Ocean Optics)を使用してMaillard型自家蛍光(AF)測定(励起365nm、発光390~700nm)に基づきAGEを定量化した。
【0055】
プールされた水晶体フラグメントを次いで、37℃にて3時間、FN3K(WO2019149648)250μg/mL+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/L(n=10)、FAOD 10U/mL(n=10)、または組み合わせFN3K 250μg/mL+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/L+FAOD 10U/mL(n=10)で処置した。FAODは、Creative Enzymes, Shirley, NYから購入した。FN3K処置は、450nmでのUV蛍光測定について68.85%の減少および490nmでの69.71%の減少を結果として生じた。FAOD処置は、450nmでのUV蛍光測定について90%の減少および490nmでの90.57%の減少を結果として生じた。FN3KおよびFAODの両方の組み合わせでの処置は、450nmでのUV蛍光測定について93.68%の減少および490nmでの93.77%の減少を結果として生じた(図2)。
【0056】
例3.FAOD単独でまたはFN3Kとの組み合わせで処置したヒト角膜の蛍光分光測定。
ヒト角膜(n=3)を死体の目から取得し、および処理まで4℃で保管した。死後12h以内に、訓練された眼科医によって解剖を通じてヒト角膜を単離し、滅菌6ウェルプレート(Thermo scientific, Roskilde, Denmark)へ移し、および-20℃で凍結させた。角膜のフラグメントを各角膜された網膜から切り取り、および蛍光測定のための96ウェルプレート(FluoroNunc PolySorp, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)へ加えた。続いて、各角膜のフラグメントについてベースラインで蛍光測定を、固定された距離および90°の角度で行った。角膜のフラグメントを、200μLの25mMグリコールアルデヒドダイマー(GA)(結晶形態、Sigma-Aldrich)とリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で3hの間37℃にてインキュベーションすることによって、AGE修飾を行った。
【0057】
インキュベーションの後、活性剤を慎重に洗い流し、および角膜のフラグメントを、化学反応の停止が完了するまで終夜(4℃)保管した。最終的に、FN3K(WO2019149648)250μg/mL+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/L、FAOD 10U/mLまたは組み合わせFN3K 250μg/mL+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/L+FAOD 10U/mLを含有する溶液を使用して、in vitro脱糖化を開始した。FAODは、Creative Enzymes, Shirley, NYから購入した。20マイクロリットルの溶液を各角膜のフラグメントへ添加し、および37℃にて3hの間インキュベートした。蛍光測定を、脱糖化溶液の添加の前に行い、およびインキュベーション期間の後で繰り返した。対照として、角膜のフラグメントを類似したやり方で処理した。しかしながら、フラグメントは、AGE修飾の後PBS+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/Lで対照処置した。
【0058】
高出力LED光源(365nm、Ocean Optics)を備えたFlame小型分光計(FLAME-S-VIS-NIR-ES、350~1000nm、Ocean Optics, Dunedin, FL, USA)およびリフレクションプローブ(QR400-7-VIS-BX、Ocean Optics)を使用してMaillard型自家蛍光(AF)測定(励起365nm、発光390~700nm)に基づきAGEを定量化した。407nm~677nmの範囲についてのnmあたりの発光した平均光強度を342nm~407nmの範囲にわたるnmあたりの平均光強度で除算することによってAF値を算出した。
【0059】
平均AF測定値は、すべての角膜のフラグメントにおいて、GAでの糖化の後で急激な増大を示す。角膜のフラグメントにおけるAFは、FN3K溶液で処置したときに3%(図3A)、FAOD溶液で処置したときに12%(図3B)および、FN3KおよびFAODの両方を含有する溶液で処置したときに27%減少したが(図3C)、その一方で、対照処置された網膜はAFにわずかな増大を示した(図3D)。
【0060】
例4.FAODおよびペルオキシダーゼで処置したヒト網膜の蛍光分光測定。ブタのブタの網膜(n=40)を地元の食肉処理場から取得し、および処理まで4℃で保管した。死後12h以内に、訓練された眼科医によって解剖を通じて神経網膜を単離し、滅菌6ウェルプレート(Thermo scientific, Roskilde, Denmark)へ移し、および-20℃で凍結させた。網膜のフラグメントを各凍結された網膜から切り取り、および蛍光測定のための96ウェルプレート(FluoroNunc PolySorp, Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)へ加えた。続いて、各網膜のフラグメントについてベースラインで蛍光測定を、固定された距離および90°の角度で行った。網膜のフラグメントを、200μLの25mMグリコールアルデヒドダイマー(GA)(結晶形態、Sigma-Aldrich)とリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で3hの間37℃にてインキュベーションすることによって、AGE修飾を行った。
【0061】
インキュベーションの後、活性剤を慎重に洗い流し、および網膜のフラグメントを、化学反応の停止が完了するまで終夜(4℃)保管した。最終的に、FAOD 10U/mLを単独でまたはペルオキシダーゼ473U/mLと組み合わせて含有する溶液を使用して、in vitro脱糖化を開始した。FAODは、Creative Enzymes, Shirley, NYから購入した。20マイクロリットルの溶液を各網膜のフラグメントへ添加し、および37℃にて夫々1時間、2時間または3時間インキュベートした。脱糖化酵素を、PBSで慎重に洗い流し、および高出力LED光源(365nm、Ocean Optics)を備えたFlame小型分光計(FLAME-S-VIS-NIR-ES、350~1000nm、Ocean Optics, Dunedin, FL, USA)およびリフレクションプローブ(QR400-7-VIS-BX、Ocean Optics)を使用してMaillard型自家蛍光(AF)測定(励起365nm、発光390~700nm)に基づきAGEを定量化した。407nm~677nmの範囲についてのnmあたりの発光した平均光強度を342nm~407nmの範囲にわたるnmあたりの平均光強度で除算することによってAF値を算出した。
【0062】
平均AF測定値は、すべての網膜のフラグメントにおいて、GAでの糖化の後で急激な増大を示す(図4)。神経網膜におけるAFは、FAOD溶液単独でまたはペルオキシダーゼと組み合わせて1時間処置したときに、同じように47%減少した。脱糖化溶液を用いた2時間のインキュベーション後には、しかしながら、神経網膜におけるAFは、ペルオキシダーゼと組み合わせてFAOD溶液で処置したときに、FAOD溶液のみを使用したときの29%と比較してさらにもう40%減少した。3時間のインキュベーション後、神経網膜におけるAFは、ペルオキシダーゼと組み合わせてFAOD溶液で処置したときに、FAOD溶液のみを使用したときの26%と比較して5%さらに減少しており、ペルオキシダーゼを用いた脱糖化用FAOD溶液を使用したときに脱糖化プロセスがより速くなることを示唆した。
【0063】
例5.FN3Kと組み合わせたFAODでの処置の後のin vivoでのイヌにおける視覚機能および眼内圧の測定。両目に失明白内障を患う4匹のイヌ(11歳のチワワ犬、8歳のプードル犬、8歳のマルチーズ犬および7歳のシェパード犬)を、右目において4週間、FAODおよびFN3Kの組み合わせを含有する点薬で、および左目では突然変異型不活性FN3K酵素で処置した(WO20200053188)。4匹のイヌのうち2匹、チワワ犬およびシェパード犬は、直近3週以内に白内障を発症していた。他の2匹のイヌは、より昔からの白内障を有していた(3月よりも長い)。処置は、第1日に5分間隔での6滴からなるものであり、および次いで4週間毎週行われた(合計4回の処置)。
【0064】
右目(RE)における点薬は、100U/mLのFAODおよび70μg/mLのFN3K、5mmol/LのATPおよび2mmol/LのMgCl2を含有した。FAODは、Creative Enzymes, Shirley, NYから購入した。対照として、左目(LE)における点薬は、70μg/mLの突然変異型FN3K、5mmol/LのATPおよび2mmol/LのMgCl2を含有した。処置の前(ベースライン)およびその後は処置の間毎週、3つの異なる視覚試験において、視覚機能(VF)を試験した。すべての試験は、REおよびLEに対して個別に行った。テーブル試験では、イヌがテーブルに近づくときに足を伸ばしたら、イヌは正(+)のスコアを獲得し、コットン塊の試験では、イヌはテーブル上に投げられたコットン塊を探したら正(+)のスコアを獲得し、トレイル試験では、イヌは入口から出口までトレイル上にランダムに置かれた椅子および箱にぶつかることなく歩いたら正(+)のスコアを獲得した。
【0065】
表1は、既に処置の2週間の後の、4匹のイヌのうちの2匹(チワワ犬およびシェパード犬)の処置されたREにおける視覚機能における改善を示す。速やかな改善を示したイヌは、直近3週以内に白内障を発症したイヌであった。
【表1】
【0066】
第二に、眼内圧(IOP)に対する脱糖化酵素での処置の効果を、4匹のイヌ(11歳のチワワ犬、8歳のプードル犬、8歳のマルチーズ犬および7歳のシェパード犬)において評価した。IOPを測定する前に、麻酔薬の点薬を角膜へ加え(オキシブプロカイン)、およびIOPを次いでTono-pen獣医用(Reichert, NY, USA)を用いて圧平眼圧計によって測定した。IOPを、RE(FAODとFN3K酵素との組み合わせ)およびLE(突然変異型不活性FN3K酵素)の処置の前および30分後に測定した。処置は、5分間隔での6滴からなるものであった。
【0067】
右目(RE)における点薬は、100U/mLのFAODおよび70μg/mLのFN3K、5mmol/LのATPおよび2mmol/LのMgCl2を含有した。FAODは、Creative Enzymes, Shirley, NY, USAから購入した。対照として、左目(LE)における点薬は、70μg/mLの突然変異型不活性FN3K(WO20200053188)、5mmol/LのATPおよび2mmol/LのMgCl2を含有した。REでは、処置の前の高いIOP(>13mmHg)が2匹のイヌにおいて注目された:マルチーズ犬では最大22mmHgまでの、およびシェパード犬では最大14mmHgまでであった。脱糖化酵素の組み合わせ(FAODとFN3Kとの組み合わせ)での処置の後、IOPは、マルチーズ犬において54%、およびシェパード犬において29%降下した。他の2匹のイヌにおけるREのIOPは処置の前に低く(<13mmHg)、および脱糖化酵素での処置の後も低いままであった(<13mmHg)。すべての4匹のイヌにおいて、LEにおけるIOPは、処置の前に低く(<13mmHg)、および突然変異型不活性FN3K酵素での処置の後も低いままであった(<13mmHg)。
【0068】
例6(図5)異なる蛍光パターンは、FN3KおよびFAODについて異なる基質特異性を示す。超音波水晶体乳化吸引の外科手術の後で得られたヒト白内障水晶体フラグメント(n=30)を、PBSで数回洗浄し、プールし、および4℃で保管した。非糖尿病患者と比較して糖尿病患者において、すべてのAGEについて加齢伴う増大が完全に類似してはいないので、水晶体フラグメントのプールを拡大し、および糖尿病を患う老齢患者もまた包含させた(13)。高出力LED光源(365nm、Ocean Optics)を備えたFlame小型分光計(FLAME-S-VIS-NIR-ES、350~1000nm、Ocean Optics, Dunedin, FL, USA)およびリフレクションプローブ(QR400-7-VIS-BX、Ocean Optics)を使用してMaillard型自家蛍光(AF)測定(励起365nm、発光390~700nm)に基づきAGEを定量化した。水晶体フラグメントの2つの類似したプールを、次いで37℃にて3時間、FN3K(WO2019149648)250μg/mL+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/L(n=15)で、またはFAOD 10U/mL(n=15)での、いずれかで処置した。FAODは、Creative Enzymes, Shirley, NYから購入した。
【0069】
FN3K処置を伴うインキュベーションに続いて、AGEのスペクトル(450~500nm)において自家蛍光における大幅な減少が観察された。結果として、FN3K処置の後、1つは500nmでの大きなピーク、および450nmでの第2のより小さな自家蛍光のピークという2つの極大値を観察することができ、450nmで自家蛍光の大幅な減少を伴っている。対照的に、FAOD処置の後の蛍光パターンは異なっており、450nmで自家蛍光シグナルの完全な喪失を伴うが、しかし520nmで観察されるより小さな新たなピークを伴い、これは前者のAGEの二次蛍光産物を表す(14)。よって、FN3K処置なしでのFAOD処置に続いて、FAOD処置の後の自家蛍光の損失の相対的な量は、520nmでの新たな自家蛍光ピークでシフトされる。
【0070】
例7(図6)尿素可溶性のプールされたヒト白内障水晶体フラグメントの異なるゲル濾過パターンはFN3KおよびFAODに対する異なる基質特異性を示す
ヒト水晶体フラグメントを、10名の患者から、白内障外科手術の間に超音波水晶体乳化吸引に続いて取得した。非糖尿病性のおよび糖尿病患者が含まれていた。外科手術の後、水晶体フラグメントを含有する保存液を遠心分離し(1902×g、5分、21℃)、および上清を除去した。その後、プールされたフラグメント(20mg)を、FAOD(3.83U/mL)を含有する200μLの溶液中で37℃にて3hの間インキュベートした。未処置のプールされたフラグメント(20mg)を、同じ条件下で保管した。
【0071】
白内障は水に不溶性のタンパク質の強い増大に関連するということが周知であることから、未処置のおよび処置済みの水晶体フラグメントの両方からの尿素可溶性の(水に不溶性の)タンパク質を、Eppendorf SafeLock試験管(Hamburg, Germany)内で4℃にて4hの間、PBS中の6M尿素中において抽出した。遠心分離(16,000×g、10分、21℃)の後、ゲル濾過のために上清を保持した。AGEなどの水晶体化合物を含有するフルクトースの分子量を査定するために、未処置のおよびFAODで処置された水晶体フラグメントのゲル濾過を、Sephadex G-25(登録商標)Fine樹脂(Sigma-Aldrich)が詰まったクロマトグラフィーカラム(長さ:60cm、直径:15mm)上で行った。
【0072】
分画に続いて、高出力LED光源(365nm、Ocean Optics)を備えたFlame 小型分光計(FLAME-S-VIS-NIR-ES、350~1000nm、Ocean Optics, Dunedin, FL, USA)およびリフレクションプローブ(QR400-7-VIS-BX、Ocean Optics)を使用したMaillard型自家蛍光(AF)測定(励起365nm、発光390~700nm)に基づき、AGEの存在を第1にチェックした。FAODで処置された水晶体フラグメントについての自家蛍光ピークは520nmで検出されたが、その一方で、FN3Kで処置された水晶体フラグメントについての自家蛍光ピークは、450nmおよび500nmで検出された(15)。次に、すべての個々のフラグメントを、ケトースについての周知の着色反応であるレゾルシノール-HCl(Seliwanoff)反応を使用して、測光的に試験した(16)。この反応では、50μLの試料を100μLのレゾルシノール(9mM、Sigma-Aldrich)および1mLの塩酸(9M、Sigma-Aldrich)へ加えた。5分間の煮沸水浴中でのインキュベーションに続いて、生じた色を、標準的な10mmキュベット中で488nmにて測光的に読み取った。
【0073】
未処置の水晶体フラグメントのゲル濾過は、処置の前に、±2500Daの分子量に対応する165分の溶離時間でのシャープなピークおよび1660Daに対応する235分の溶離時間での第2のマイナーなピークを示しており、これは架橋されたAGEなどの高分子量の構造の存在を示す。FN3Kで処置された水晶体画分では、1500~2500Daの間の範囲にわたる分子量を持つ一連のケトース(フルクトース由来のAGE)が検出された(15)。対照的に、FAODでの処置の後のヒト白内障水晶体フラグメントにおいてはフルクトースを含有するAGEは完全に不在であり、および、溶離のいずれの時点でも何らピークが検出されなかった。FAODでの処置は、よって、FN3Kでの処置と比較して、分子量が異なるのみならず構造もまた異なる構成要素を結果としてもたらす。
【0074】
例8(図7)。FAOD処置の後のヒト水晶体パワーのゲイン
ヒト水晶体は、角膜移植が拒否された死体の目から取得した(Biobank Antwerpen, Antwerpen Belgium, ID71030031000)。熟練した眼科の外科医によって、目を解剖し、および水晶体を取り出した。水晶体を、FAODまたはPBSとインキュベートした。水晶体パワーを、処置の前、および最大4時間までの連続した1時間毎に測定した。焦点距離測定は、水晶体の焦点距離fを水晶体からの対物距離Sおよび水晶体からの結像距離Sに関連させる、次の薄型レンズの式に基づく。
【数1】
3つの量が薄型レンズの式を満たすとき、対象物体は焦点が合って見えるようになる。他方、光学系の倍率Mは、次のとおり表現することができる。
【数2】
対象物体と像面との間の合計距離L=S+Sおよび倍率Mを測定することによって、試験下の水晶体の焦点距離は次の方程式を使用して容易に得ることができる。
【数3】
【0075】
試験下の水晶体の焦点距離がかなり小さいことから(約8mm)、CMOSセンサー上へと直接結像することは非実際的であり、および、追加の結像レンズが使用される。高分解能CMOSセンサー(Basler ace - acA2000-165uc、2040x1086ピクセル、およびピクセルサイズ5.5μm)が、固定焦点長撮像レンズ(25mm/F1.4 59871 Edmund optics, New Jersey)と組み合わせて使用される。対象物体は、濃色および白色の線の周期的なパターンからなる。第一に、画像の焦点が合う位置にカメラを位置させることによって、試験下の水晶体なしの参照画像が撮られる。次いで、試験下の水晶体が対象物体からランダムな位置に位置させられ、および対象物体の画像の焦点が合うようにカメラの距離が再配置される。
【0076】
カメラによって撮像された線の周期を測定することによって、倍率を算出することができ、およびカメラの位置を用いて、最終的に焦点距離を算出することができる。測定方法は、焦点長の1%未満の誤差を結果としてもたらす焦点距離4.03mmの既知の非球面レンズ(Thorlabs C340TMD-A)について手順を実施することで検証した。試験下の水晶体の品質(ヘイズおよび収差に起因して)は、ガラスレンズよりも大幅に悪いので、画像に焦点を合わせることでのあり得る問題には、対象物体と試験下の水晶体との間の種々異なる距離について手順を反復することおよび結果を平均することによって対処される可能性がある。
【0077】
ベースラインでの水晶体パワー(図7A)は17±0.95Dであり、および、生理食塩水で処置されたときに変化しなかった。水晶体パワーを空気中で測定し、および水中の水晶体パワーへ変換した(空気中の水晶体の屈折率は1.5であり、水中の水晶体の屈折率は1.13である)。水晶体パワーは、2時間のFAOD処置の後0.45±0.35Dで、3時間のFAOD処置の後0.96±0.96Dで、および5時間(最大)の後2.11±0.67で増大した(図7B)。ヒト水晶体のFOAD処置は、よって、水晶体の機械的特性との直接的な関係性を反映する増大した水晶体パワーを結果としてもたらす(17)。
【0078】
例9(図8)AGEを伴うヒト網膜の染色された組織切片に対する近赤外顕微分光法は、FAOD処置と比較してFN3K処置の後の異なる生化学的変化を解き明かす。
ステージ3のAMDを患う2名の患者(年齢>70歳)からドナーの目を得た。組織切片化の後、処置に先立ち試料を脱パラフィン処理してから、キシレン(3×1.5分)、アルコール(90% 2×1分、75% 1×1分)中に連続的に浸漬し、および水中で濯ぐことによって処置した。スライドを、60℃にて10分間乾燥させた。対照処置のために、1つの切片を1mLのATP/MgCl2溶液でカバーした。FN3K処置のために、隣の切片を、1mLのFN3K溶液(FN3K(WO2019149648)250μg/mL+ATP 5mmol/L+MgCl2 2mmol/Lを使用して処置した。FAOD処置のために、隣の切片を、1mLのFAOD溶液3.83U/mLを使用して処置した。切片を、24hの間37℃にてインキュベートした。
【0079】
インキュベーションの後、組織切片を慎重に蒸留水で洗浄しおよび37℃にて終夜乾燥させた。切片を、次いで染色し、およびカバースリップをかけた。赤外線(IR)顕微分光法は、光学顕微鏡法をIR分光法と組み合わせており、および、組織切片の生化学的な選択的可視化を得るための強力な分析技法である(18,19)。IR分光法は、組織(例として、炭水化物、タンパク質および脂質)内での様々な分子によってIR光の異なる領域が吸収されるという原理に基づく(19,20)。典型的なIR顕微分光法システムでは、可視光が、組織切片上の関心対象のエリアを可視化しおよび標的化するために用いられる。ひとたびその特定の領域が見出されると(例として、特定のドルーゼン)、システムはIRコンフィギュレーションへと切り替えられ、およびIR光が所定の標的上へとビーム照射される(19)。
【0080】
光学顕微鏡検査のために使用された同じ組織切片上のドルーゼン病変の化学的フィンガープリントを得るために、ハロゲン光源、CaF2ビームスプリッターおよびInGaAs検出器とともに作動するBruker Vertex 80v FTIR分光計(Bruker, MA, USA)とカップリングされたBruker Hyperion 2000顕微鏡を用いてフーリエ変換近赤外(FT-NIR)透過顕微鏡スペクトルを記録した。顕微鏡の対物倍率を15×に、および 開口を20μm×20μmに設定した。バックグラウンドを、800co-addで収集した。スペクトルを、12,000~4000cm-1の範囲において16cm-1の分解能で記録した(800スキャン)。スペクトルデータ分析は、SIMCAソフトウェアバージョン15.0(MKS Data Analytics Solutions, Malmoe, Sweden)を使用して行った。
【0081】
無関係な光散乱を最小限にし、および分光シグナルを標準化するために、種々異なる前処理ステップを行った。小さな構造上の差を強調し、およびベースライン効果を低減させるために、差別化を行った(21)。乗算スケーリング効果および追加的なベースラインオフセット変動を排除するために、標準正規変量正規化(SNV)を行った。前処理の後、スペクトルデータは、主成分分析(PCA)などの教師なし(unsupervised)パターン認識方法、および、どの変数が2つの別個のグループの間の判別に関与しているかを解説するのに有用な方法である部分最小二乗判別分析(PLS-DA)などの教師付き(supervised)パターン認識方法によって分析した。その結果得られるHotellingのプロットは、FN3Kで処置されたDruesenとFAODで処置されたDruesenとの間のはっきりとした区別を示す。
【0082】
例10
フルクトースとリシンとの混合物、ならびにフルクトースとアルギニンとの混合物、ならびにグルコースおよびアルギニンおよびグルコース-リシンをインキュベートした。1週間の37℃でのインキュベーションの後、混合物の一部分を、夫々フルクトシルアミノオキシダーゼ(FAOD、38.3U/mL)およびフルクトサミン3キナーゼ(F3K、250μg/mL;ATP、5mmol/L;MgCl2、2mmol/L)によって消化させた。
高分解能質量分析(HRMS)とカップリングされた超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)に基づく非標的代謝物プロファイリングアプローチを適用した。
【0083】
材料および方法
試料
酵素での処置に先立つ混合物(グループ1):
● 1週間37℃にてインキュベートされた、水中のグルコース(100mg/mL)とアルギニン(100mg/mL)との混合物。
● 1週間37℃にてインキュベートされた、水中のフルクトース(100mg/mL)とアルギニン(100mg/mL)との混合物。
● 1週間37℃にてインキュベートされた、水中のグルコース(100mg/mL)とリシン(100mg/mL)との混合物。
● 1週間37℃にてインキュベートされた、水中のフルクトース(100mg/mL)とリシン(100mg/mL)との混合物。
【0084】
酵素での処置後の混合物(グループ2):
● FAODで処置された混合Glu-Arg、
● FN3Kで処置された混合Glu-Arg、
● FAODで処置された混合Fru-Arg、
● FN3Kで処置された混合Fru-Arg、
● FAODで処置された混合Glu-Lys、
● FN3Kで処置された混合Glu-Lys、
● FN3Kで処置された混合Fru-Lys。
【0085】
加えて、グルコース、フルクトース、アルギニンおよびリシンの溶液もまた、最適化の目的およびこれらの化合物のMS断片化パターンの研究のために提供した。
【0086】
UHPLC-HRMS条件
クロマトグラフの分離は、Accela 1250ポンプ(Thermo Fisher Scientific)上で、Zorbax RRHD Eclipse Plus 逆相C18カラム(100A、1.8μm、100mm×2.1mm)を使用して達成した。移動相は、水中の0.1%(v/v)のギ酸(溶離液A)およびメタノール中の0.1%(v/v)のギ酸(溶離液B)からなるものとした。勾配溶離プログラムを、以下のとおりに適用した:0~0.5分:5% B、0.5~20.0分:5~99% B、20.0~21.0分:99% B、21.0~24.0分:99~5% B、24.0~28.0分:5% B。移動相の流速は、0.3mL/分とした。カラム温度は40℃に設定し、およびオートサンプラーの温度は10℃とした。注入体積は、5μLであった。
【0087】
加熱エレクトロスプレーイオン化(HESI-II)インターフェース付きを備えたQ-Exactiveハイブリッド四重極Orbitrap質量分析計(Thermo Fisher Scientific)を使用して、高分解能精密質量およびタンデム質量分析(MS/MS)フラグメンテーションデータを取得した。機器は、陽イオン化モードで作動させた。データ取得は、完全MSおよびデータ依存性MS/MSスキャンを包含した。イオン化源のパラメーターは以下のとおりとした:3.0kVのスプレー電圧、350℃のキャピラリー温度、375℃のヒーター温度、45任意単位(a.u.)のシースガス流量、10a.u.の補助ガス流量。138~1721Daの質量範囲にわたってThermo ScientificからのCalmix溶液を使用してHRMSの毎日の外部較正を行った。フタル酸ジイソオクチル(C24H38O4)をロックマス(lock mass)として使用したオンライン質量較正を有効化した。
【0088】
機器の制御は、Xcalibur 4.2ソフトウェア(Thermo Fisher Scientific)によって実施した。データ処理のために、XcaliburおよびCompound Discoverer 3.3ソフトウェア(Thermo Fisher Scientific)の両方を使用した。
【0089】
結果
調査した試料中の関連化合物の検出
UHPLC-HRMS/MS分析によって生成されたデータの処理は、調査した試料中の大量の化合物の存在を明らかにした(±800の別個の化合物が各試料中に検出された)。グループ2からの与えられた試料(すなわち、37℃にてインキュベートされ、および続いて酵素で処置された、特定のアミノ酸と糖との混合物)中に検出された化合物の大多数は、グループ1からの対応する試料(すなわち、37℃にてインキュベートされたが、しかし酵素的に処置されなかった、特定のアミノ酸と糖との混合物)中にもまた存在した。
【0090】
したがって、検出されたMSピークは、以下の基準に適合したときに、関連する(すなわち、潜在的な最終糖化産物(AGE))とみなした:
● 化合物は、ブランク(水)中に存在しない。
● グループ1からの与えられた試料については、検出された化合物は、同じ糖および異なるアミノ酸を使用して得られた試料中には存在しない。
● グループ2からの与えられた試料については、検出された化合物は、同じ糖および酵素をしかし異なるアミノ酸を使用して得られた試料中には存在しない。
アルギニンを含有するおよびリシンを含有する試料について、夫々、40および19の関連化合物(ことによるとAGEであった可能性がある)が選択された。
【0091】
比較分析MS FAODおよびF3K消化
AGEの消滅(A=アルギニンをベースとした、L=リシンをベースとした)
強い=:80%超の低減(対 未処置の試料)
弱い:20~40%の間の低減
不活性:20%未満の差
【0092】
【表2】
【0093】
形成された産物
【表3】
【0094】
結論:F3KおよびFAODの両方は、様々な最終糖化産物を分解することができる。FAODは、F3Kによって認識されない基質を認識する(化合物#A3および#A4)。AGE分解に対するFAODの効果は、一般にF3Kのそれよりも顕著である。
【0095】
参考文献
【表4-1】
【表4-2】
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9-13】
図14-16】
【配列表】
2024509244000001.app
【国際調査報告】