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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-29
(54)【発明の名称】衝撃測定のための改善された支持
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/30 20060101AFI20240221BHJP
   G01N 19/00 20060101ALI20240221BHJP
【FI】
G01N3/30 S
G01N19/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554857
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022055953
(87)【国際公開番号】W WO2022189466
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161386.4
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520030800
【氏名又は名称】グラインドソニック・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】GRINDOSONIC BV
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デン・ボッシェ,アレックス
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA07
2G061AA13
2G061AB04
2G061AC03
2G061BA10
2G061BA17
2G061BA19
2G061DA01
2G061DA05
2G061EA06
(57)【要約】
本発明は、試験チャンバと、インパクタと、センサシステムと、支持システムとを備える衝撃励起測定システムであって、インパクタは、所定の高さで支持システムによって支持された試験片に衝撃を与えるように構成されており、センサシステムは、インパクタによって試験片に与えられる衝撃に対する試験片の振動応答を取得するように構成されており、支持システムは、試験チャンバ内の所定の高さにおいて固体試験片を支持するように構成されており、支持システムは、インパクタの熱膨張係数に本質的に等しい熱膨張係数を含む支持バーのセットを備え、支持バーのセットは、各々が支持端部を有する少なくとも3つの支持バーを備え、3つの支持端部は非共線的に位置付けられる、衝撃励起測定システムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験チャンバと、インパクタと、センサシステムと、支持システムとを備える衝撃励起測定システムであって、前記インパクタは、前記所定の高さで前記支持システムによって支持された試験片に衝撃を与えるように構成されており、前記センサシステムは、前記インパクタによって前記試験片に与えられる衝撃に対する前記試験片の振動応答を取得するように構成されており、前記支持システムは、前記試験チャンバ内の所定の高さにおいて固体試験片を支持するように構成されており、
前記支持システムは、前記インパクタの熱膨張係数に本質的に等しい熱膨張係数を含む支持バーのセットを備え、前記支持バーのセットは、各々が支持端部を有する少なくとも3つの支持バーを備え、3つの支持端部は非共線的に位置付けられる、衝撃励起測定システム。
【請求項2】
前記支持バーは、前記インパクタと同じ材料から作成されている、請求項1に記載の衝撃励起測定システム。
【請求項3】
前記支持バーは、熱的に安定な材料から作成されている、請求項1または2に記載の衝撃励起測定システム。
【請求項4】
前記支持端部は点状形状を含む、先行する請求項のいずれかに記載の衝撃励起測定システム。
【請求項5】
前記支持端部は、高さ(h)が最大3mmであり、キャップの基部における半径(a)が最大0.5mmの球形キャップの形態を有する点状形状を含む、請求項4に記載の衝撃励起測定システム。
【請求項6】
前記試験チャンバが、前記チャンバ内の温度を制御するように構成された温度制御システムを備える加熱チャンバである、先行する請求項のいずれかに記載の衝撃励起測定システム。
【請求項7】
前記材料は、最大30.0×10-6-1の線膨張係数を含む、先行する請求項のいずれかに記載の衝撃励起測定システム。
【請求項8】
前記材料は、最大10.0×10-6-1の線膨張係数を含む、請求項7に記載の衝撃励起測定システム。
【請求項9】
先行する請求項のいずれか1項に記載の衝撃励起測定システムと、少なくとも1つの試験片とを備えるキットであって、前記試験片は、ベース面を備え、前記ベース面は、少なくとも3つの非共線凹部のセットを備え、以て、前記少なくとも3つの非共線凹部は、前記少なくとも3つの支持バーの非共線的な前記支持端部に対応して位置付けられる、キット。
【請求項10】
前記凹部は各々、前記試験片の所定の振動モードに対する前記試験片のノードに位置付けられる、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
好ましくは1つまたは複数の温度における試験片の材料特性を音響的に測定するための方法であって、
a.請求項1~8のいずれかに記載の衝撃励起測定システムの試験チャンバ内の前記支持システム上に試験片を配置するステップと、
b.較正期間内に前記試験片から振動信号を捕捉し、以て、ノイズ信号を取得することによって、好ましくは前記試験温度範囲内で好ましくはバックグラウンド測定を実施するステップと、
c.
c1.前記試験片に振動励起を付与することと、
c2.試験期間内に前記試験片の振動信号を捕捉し、以て、前記振動励起に対する振動応答信号を取得すること
によって、前記試験温度範囲内および前記試験期間内で前記試験片に対して音響測定を実施するステップと、
d.前記振動応答信号を分析し、好ましくは、以て、前記ノイズ信号を考慮することによって、前記試験片の前記材料特性を取得するステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記試験片を試験温度範囲内に加熱するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、衝撃励起技法を使用して固体試験片に対して測定を実施するための非破壊方法およびシステムに関する。本発明は、試験片に対して異なる温度で試験を実施するのに特に有用である。測定は、固体の欠陥および異常を検出し、E弾性率、G弾性率、ポアソン定数および減衰パラメータを特徴付けるのに有用である。
【背景技術】
【0002】
背景
固体の試験は、いくつかの方法で行うことができる。第1の試験は、通常、固体が正しいサイズおよび形状を有するかどうかを確認し、表面欠陥をチェックする目視検査から成る。しかしながら、多くの場合、固体の特性は、目に見えない可能性がある内部構造に大きく依存する。例えば、金属および合金の強度は、バルク欠陥の特定の種類および量に大きく依存する。これらの欠陥は、小さいものと大きいものの両方があり得、自然な原因、製造方法、損耗および裂開、事故などのために発生する可能性がある。
【0003】
欠陥がどのように発生するかとは無関係に、場合によっては、その欠陥に関する固体の状態を知ることが重要である。欠陥について固体を分析するために、固体の試験片に対して侵襲的方法または非侵襲的方法を使用することができる。これにより、非侵襲的方法により、試験片を破壊または改変することなく分析が可能になる。したがって、非侵襲的方法は、典型的には、後に依然として使用する必要があるか、またはさらなる試験(それ自体が侵襲的または非侵襲的であり得る)を受ける必要がある試験片に使用される。
【0004】
固体に対する1つのタイプの非侵襲的試験方法は、試験片を分析するために振動を使用する。これにより、試験片は、固体を通って伝播することができ、これにより透過、反射または吸収される制御された振動を被る。制御された振動は、衝撃励起技法(IET)を用いて誘発することができ、それによって試験片は、衝撃を受けたときに実質的に妨げられることなく振動することができるように位置付けられる。インパルス励起技法では、次いで、試料に専用の工具または発射体によって衝撃を与え、圧電センサ、マイクロフォン、レーザ振動計または加速度計などの振動信号測定センサでピックアップされるときに、結果として生じる振動を分析することによって、試験片の材料特性が決定される。固体を通る振動は、音または音波とも呼ばれ、測定は音響測定とも呼ばれる。したがって、振動信号測定センサは、本出願の文脈では「音響センサ」とも呼ばれる。
【0005】
音を使用して固体を試験するための装置は、国際公開第2019/020825号に記載されている。この文献は、固体材料試料の機械的振動応答を分析するための装置であって、上記固体材料試料の表面上のそれぞれの明確な点に衝撃を与えるように構成されたインパクタのアレイと、上記少なくとも1つのインパクタの衝撃に続いて、上記機械的振動応答を時変信号として捕捉するように構成されたセンサと、上記時変信号を分析して、上記時変信号を構成する正弦波の周波数および減衰定数を決定するように構成された処理手段とを備える、装置を開示している。その発明はまた、固体材料試料を特徴付ける対応する方法に関する。
【0006】
振動励起に対する固体試験片の応答の分析は、典型的には、以下のパラメータ、すなわち、
- 試験片の引張弾性を示すヤング率(E);
- せん断応力に対する試験片の応答を示すせん断弾性率(G)、
- 加えられた一軸応力に直交する方向における試験片の変形を示すポアソン比(ν)、
- 内部摩擦によって引き起こされる信号の減衰または減退
の1つまたは複数、好ましくはすべての抽出を含む。
【0007】
これらの特性は、典型的には、振動励起の周波数または周波数範囲に依存する。これにより、試験片は、試験片の異なる振動モードに依存するいくつかの共振周波数を有することができる。ここで重要なモードは、曲げモードおよびねじりモードである。これらの共振周波数におけるパラメータ値は、試験片の状態を説明するための重要な数値である。
【0008】
多くの用途において、例えば機械における固体部品は、異なる温度で使用される。これにより、動作温度は、急速におよび/または広い温度範囲にわたって変動し得る。例えば、車両のブレーキディスクは、動作中に(基本的には環境温度からわずか数秒で500℃超まで)大きくかつ急速に加熱する可能性がある。別の例は、航空機のジェット用の灯油の噴射ノズルであり、これは動作中に1500℃を超えて加熱する可能性がある。高温範囲は、構成要素の材料特性、特に上述のヤング率、せん断弾性率、およびポアソン比などの弾性特性に大きく影響する可能性がある。例えば、一般に、固体は、平均して内部結合の弱化に起因してより高い温度でより柔軟になると予測することができ、これは基本的に、EおよびGが温度の増大と共に徐々に減少すると予測されることを意味する。
【0009】
異なる温度では、固体成分は異なる材料特性を有し得る。これは、構成要素の機能に影響を及ぼす可能性がある。構成要素の通常のまたは意図された機能が妨げられる温度または温度範囲を見出すことが重要である。これは、材料のバルク特性、温度を改変することによって誘発され得る欠陥、より高い温度でより重要になり得る欠陥、構成要素の異なる部分の膨張の変動性などに起因し得る。部品の材料特性の温度依存性の具体例は、以下の通りである。
【0010】
- 弾性特性の一般的な変化。これにより構成要素の剛性が低下し、それによってその適切な機能が妨げられ、例えばブレーキディスクが高温で弾性になりすぎて適切な制動を可能にすることができない可能性がある。
【0011】
- 特定の温度または特定の温度範囲内における相転移が、構成要素の材料特性を著しく変化させる可能性がある。
【0012】
- 化学反応が、構成要素の材料特性を等しく改変する可能性がある。
- 例えば、合金中の化学量論的な異なる相の析出が、例えば製造方法の不良に起因して材料中に存在し、異なる温度依存膨張を有する材料間の内部材料境界をもたらす可能性がある。明らかに、これは深刻な問題をもたらす可能性がある。
【0013】
- 積層体または他の層状構成要素。これにより、ある層の次の層への接着性が、温度の増大で低下する可能性がある。
【0014】
異なる温度における、および/または意図した動作の全温度範囲にわたる固体成分の適切な機能を試験するために、試験片の材料特性を異なる温度で測定する必要がある。ここで、試験片は、例えば、構成要素全体、構成要素の一部、または構成要素の同じ材料の一片であり得る。試験は、好ましくは、少なくとも温度の制御を可能にする制御された環境で行われる。次いで、異なる温度で材料特性を測定する。
【0015】
本発明者らは、-50℃未満から2000℃超に及ぶ可能性がある広い温度範囲にわたって試験片の材料特性を測定することが、実際には非常に困難であり得ることを見出した。そのような温度範囲のための温度制御された環境を作成するには、典型的には、複数の振動生成構成要素を備え得るオーブンが必要である。明らかに、オーブンによって生成される背景振動は、測定プロセスと干渉する可能性がある。これらの背景振動は、典型的には、より高い温度で悪化する。さらに、いくつかの材料特性(例えば、EおよびG)は温度の増大と共に減少すると予測され得るため、信号も減少する。両方の効果は、高温でより低い信号対雑音(STN)比をもたらす。
【0016】
国際公開第2020/254698号は、高温における試験片の材料特性を音響的に測定するための方法であって、a.試験片を試験温度範囲内に加熱するステップと、b.較正期間内に試験片から振動信号を捕捉し、以て、ノイズ信号を取得することによって、上記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実施するステップと、c.c1.試験片に振動励起を付与することと、c2.試験期間内に試験片の振動信号を捕捉し、以て、上記振動励起に対する振動応答信号を取得することによって、上記試験温度範囲内および試験期間内で上記試験片に対して音響測定を実施するステップと、d.振動応答信号を分析し、以て、ノイズ信号を考慮することによって、試験片の材料特性を取得するステップとを含む、方法を開示している。この文献はまた、高温における試験片の材料特性を音響的に測定するためのシステムを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記の従来技術文献は、異なる温度における衝撃に対する音響応答を取得するための方法およびシステムを開示しているが、本発明者らは、特に異なる温度において実施される試験について、正確度が依然として改善され得ることを見出した。
【0018】
本発明は、高温における試験片に対する音響測定についてSTN比が悪化するという問題を解決し、任意の温度におけるより精密な減衰測定結果を取得することを目的とする。さらに、本発明は、試験チャンバ内で試験片を支持するための新規かつ発明的な支持システムを提供し、支持システムは、試験片を異なる温度において安定して誤差を低減するように支持することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
本発明は、試験チャンバと、インパクタと、センサシステムと、支持システムとを備える衝撃励起測定システムに関する。試験チャンバは、好ましくは、チャンバ内の温度を制御するように構成された温度制御システムを備える加熱チャンバである。支持システムは、試験チャンバ内の所定の高さで固体試験片を支持するように構成される。インパクタは、上記所定の高さで支持システムによって支持された試験片に衝撃を与えるように構成される。センサシステムは、インパクタによって試験片に与えられる衝撃に対する試験片の振動応答を取得するように構成される。
【0020】
本発明者らは、既存の支持システムで取得されていた測定の正確度が改善され得ることを見出した。これにより、本発明者らは、正確度が温度に依存し得ることに気付き、支持システムの熱膨張が正確な測定値を取得するのに重要な役割を果たすことを見出した。この効果は、測定が実施される温度間隔が大きい場合に特に顕著である。したがって、本発明のシステムの支持システムは、熱的に安定な材料から作成され、好ましくは全体が熱的に安定な材料から成る支持バーのセットを備える。付加的または代替的に、支持バーは、インパクタと同じ材料から作成され、好ましくは本質的に全体がインパクタと同じ材料から成る。同じく付加的または代替的に、支持バーは、インパクタの熱膨張係数に本質的に等しい熱膨張係数を含む。
【0021】
「熱的に安定な材料」という用語は、大きい温度間隔にわたって非常に小さい熱膨張を有する材料を指す。好ましくは、材料は、最大30.0×10-6-1、より好ましくは最大20.0×10-6-1、さらにより好ましくは最大10.0×10-6-1、さらにより好ましくは最大9.0×10-6-1、さらにより好ましくは最大8.0×10-6-1、さらにより好ましくは最大7.0×10-6-1、さらにより好ましくは最大6.0×10-6-1、さらにより好ましくは最大5.0×10-6-1、さらにより好ましくは最大4.0×10-6-1、最も好ましくは最大3.0×10-6-1の線膨張係数を含む。好ましくは、材料は、測定が実施される温度間隔の全範囲にわたってそのような低い熱膨張を含む。
【0022】
支持バーの熱膨張係数は、インパクタの熱膨張係数に本質的に等しくてもよい。「本質的に等しい」という用語は、本明細書では、熱膨張係数が、インパクタの熱膨張係数のわずかな相対差まで、典型的には最大25%、より好ましくは最大20%、さらにより好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、さらにより好ましくは最大5%、例えば5%、4%、3%、2%、1%以下まで同じであることを指す。
【0023】
支持バーは、好ましくは、部品を支持することができる支持端部を備え、上記支持端部は、点状形状を備える。支持端部の点状形状は、支持端部と試験片との間の接触面が小さく、好ましくは2mm未満、より好ましくは1.5mm未満、さらにより好ましくは約1mm以下であることを確実にする。例えば、支持端部は、好ましくは、高さ(h)が最大3mm、好ましくは2mm~3mmであり、キャップの基部における半径(a)が最大0.5mmの球形キャップの形態を有する点状形状を含むことができる。
【0024】
支持バーのセットは、各々が支持端部を有する少なくとも3つの支持バーを備え、3つの支持端部は非共線的に位置付けられる。3つの非共線的な支持点は、安定した支持をもたらす傾向がある。実際、好ましい実施形態では、支持バーのセットは、正確に3つの支持バーを備える。他の好ましい実施形態では、支持バーのセットは、正確に4つの支持バーを備え、そのうちの少なくとも3つは、非共線的に位置付けられた支持端部を有する。これにより、3つの非共線的な支持点は、好ましくは、試験を支持することができる本質的に水平な支持面を画定する。これは、試験片が本質的に平坦なベース面を備える場合に特に好ましい。ここで、試験片は、典型的には梁状の形状を含むことができることに留意されたい。
【0025】
本発明はまた、本明細書で上述し、本明細書でさらに説明する衝撃励起測定システムと、少なくとも1つの試験片とを備えるキットであって、試験片は、ベース面を備え、ベース面は、少なくとも3つの非共線凹部のセットを備え、以て、少なくとも3つの非共線凹部は、少なくとも3つの支持バーの非共線的な支持端部に対応して位置付けられる、キットに関する。好ましくは、凹部は各々、試験片の所定の振動モードに対する試験片のノードに位置付けられる。
【0026】
本発明はまた、好ましくは1つまたは複数の温度における試験片の材料特性を音響的に測定するための方法であって、
a.本発明によるシステムの試験チャンバ内の支持システム上に試験片を配置し、好ましくは試験片を試験温度範囲内に加熱するステップと、
b.較正期間内に試験片から振動信号を捕捉し、以て、ノイズ信号を取得することによって、好ましくは上記試験温度範囲内で好ましくはバックグラウンド測定を実施するステップと、
c.
c1.試験片に振動励起を付与することと、
c2.試験期間内に試験片の振動信号を捕捉し、以て、上記振動励起に対する振動応答信号を取得すること
によって、上記試験温度範囲内および試験期間内で上記試験片に対して音響測定を実施するステップと、
d.振動応答信号を分析し、好ましくは、以て、ノイズ信号を考慮することによって、試験片の材料特性を取得するステップと
を含む、方法に関する。
【0027】
図面の概要
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】球形キャップを記述するための命名規則を示す図である。
図2A】梁状試験片の振動ノードのノードの位置を示す図である。
図2B】梁状試験片の振動ノードのノードの位置を示す図である。
図3】本発明によるシステムを示す図である。
図4】本発明による、異なる温度において音響応答を測定し、これらの測定値から材料特性を取得するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、上記で説明されており、本明細書でさらに説明される衝撃励起測定システム、そのような衝撃励起測定システムおよび少なくとも1つの試験片を備えるキット、ならびに上記で説明されており、本明細書でさらに説明される試験片の材料特性を音響的に測定するための方法に関する。
【0030】
本発明のシステムまたは方法を使用して実施することができる測定は、好ましくは、下限および上限を含む温度間隔にわたって実施される。この温度間隔は、好ましくは最大50℃、より好ましくは最大30℃、さらにより好ましくは最大20℃、さらにより好ましくは最大0℃、さらにより好ましくは最大-18℃、さらにより好ましくは最大-80℃の下限を含む。温度間隔の特に好ましい下限は室温である。温度間隔は、好ましくは、少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも50℃、さらにより好ましくは少なくとも100℃、さらにより好ましくは少なくとも200℃、さらにより好ましくは少なくとも400℃、さらにより好ましくは少なくとも600℃、さらにより好ましくは少なくとも800℃、さらにより好ましくは少なくとも1000℃以上、例えば1100℃、1200℃、1300℃、1400℃、1500℃およびそれらの間またはそれを上回る任意の値の上限を含む。支持バーの材料は、好ましくは、上記温度間隔にわたって熱的に安定である。場合によっては-80℃~1500℃の大きい温度間隔を考慮して、支持バーは、好ましくはセラミック材料またはガラス様材料、例えば、ガラス、ホウケイ酸塩、ホウケイ酸ガラスマトリックス中のフルオルフロゴパイトマイカ(例えば、46重量%のシリカ(SiO2)、17重量%の酸化マグネシウム(MgO)、16重量%の酸化アルミニウム(Al2O3)、10重量%の酸化カリウム(K2O)、7重量%の三酸化ホウ素(B2O3)、4重量%のフッ素(F)を含むMacor(登録商標))、石英、溶融石英、炭化ケイ素、ケイ素、結晶性ガラスセラミック(例えばSitall)、リチウムアルミノケイ酸ガラスセラミック(例えば、Zerodur(登録商標))から作成される。
【0031】
好ましくは、試験片は、所定の形状および/または所定のサイズを含む。これにより、同じ支持システムを使用して、同じ所定の形状および/またはサイズを有する異なる試験片に対する測定が可能になるため、測定をより容易に実施することができる。
【0032】
好ましくは、インパクタは、機械的インパクタであるか、または少なくとも機械的インパクタを備える。機械的インパクタは、例えば機械的または電気機械的など、複数の方法で作動させることができる。機械的システムは広い温度範囲にわたって使用可能である傾向があるため、機械的インパクタが好ましい場合がある。
【0033】
好ましくは、凹部は各々、試験片の所定の振動モードに対する試験片のノードに位置付けられる。これにより、好ましくは、支持システムは、支持端部を有する支持バーを備え、これらの支持端部の位置は、試験片の凹部の位置に対応し、すなわち、支持端部の位置は、好ましくは、試験片の振動モードのノードの位置に対応する。
【0034】
「針」とも呼ばれ得る点状形状の支持点を有する3つ以上の支持バーの使用は、支持によって引き起こされる減衰を大幅に低減する。したがって、被試験試料の内部摩擦によってのみ引き起こされ、支持システムに由来する外部摩擦によって本質的に妨害されない減衰の精密な測定を行うことができる。これにより、本発明はまた、非常に基本的な、さらには手動励起、室温インパルス励起測定、または任意の利用可能な温度における測定にも非常に有益になる。
【0035】
これは、図2Aおよび図2Bに示されている。図2Aは、梁状試験片上の曲げモードの2つのノード(破線)の位置を示す。これは、試験片に衝撃、好ましくは曲げモードのアンチノードの位置にもたらされる衝撃が与えられたとき、試験片は主にこの曲げモードに従って振動し得ることを意味する。これにより、ノードの位置における曲げモード振動の振幅は、試験片の重心系において消失するか、または少なくとも非常に小さい。これは、試験片がノードの位置で支持される場合、それが試験全体の間で支持されることを意味する。支持体がランダムな位置に位置付けられる場合、試験片は、支持体ロケーションにおける振動の非ゼロ振幅のために支持点から跳ね上がる傾向があり得る。さらに、曲げモードのノード上に支持端部を位置付けることにより、曲げモード振動が他のモードよりもはるかに小さく減衰される(本質的に減衰されない)ことがさらに保証され、曲げモード振動応答の信号対雑音比を増大させることが可能になる。これはまた、曲げモード減衰の非常に正確な測定をもたらす。本発明は、支持バーのセットを備える支持システムに関する。図2Aにおいて、支持システムは、支持プレート(204)上に固定することができる正確に3つの支持バー(201,202,203)を備え、各支持バーは、試験片(205)と接触し、上記試験片を支持する支持端部を備える。2つの支持バー(201,202)の支持端部は、第1のノード(206)において試験片を支持し、第3の支持バー(203)の支持端部は、第2のノード(207)において試験片を支持する。曲げモードの場合、これは、3つの支持端部が非共線的に位置付けられ、それによって試験片の安定した支持面を画定することを意味する。この曲げ振動モードの固有周波数fは、試料の動的ヤング率Eを示す。質量m、長さL、幅b、および厚さtを有する図示の梁の場合、以下の関係を使用することができる。
【0036】
【数1】
【0037】
ここで、L/t≧20の場合、補正係数Tは
【0038】
【数2】
【0039】
として定義される。
図2Bは、梁状試験片上のねじりモードの2つのノード(破線)の位置を示す。これは、試験片に衝撃、好ましくはねじりモードのアンチノードの位置にもたらされる衝撃が与えられたとき、試験片は主にこのねじりモードに従って振動し得ることを意味する。これにより、ノードの位置におけるねじりモード振動の振幅は、試験片の重心系において消失するか、または少なくとも非常に小さい。これは、試験片がノードの位置で支持される場合、それが試験全体の間で支持されることを意味する。支持体がランダムな位置に位置付けられる場合、試験片は、支持体ロケーションにおける振動の非ゼロ振幅のために支持点から跳ね上がる傾向があり得る。さらに、ねじりモードのノード上に支持端部を位置付けることにより、ねじりモード振動が他のモードよりもはるかに小さく減衰されることがさらに保証され、ねじりモード振動応答の信号対雑音比を増大させることが可能になり、このモードの減衰の非常に正確な測定値が得られる。本発明は、支持バーのセットを備える支持システムに関する。図2Bにおいて、支持システムは、支持プレート(214)上に固定することができる正確に4つの支持バー(210、211、212、213)を備え、各支持バーは、試験片(205)と接触し、上記試験片を支持する支持端部を備える。2つの支持バー(210,213)の支持端部は、第1のノード(216)において試験片を支持し、第3の支持バーおよび第4の支持バー(211、212)の支持端部は、第2のノード(217)において試験片を支持する。ねじりモードの場合、これは、3つの支持端部から成る各サブセットが非共線的に位置付けられることを意味する。一般に、正確に3つの非共線的に位置付けられた支持端部が、支持面を自動的かつ一義的に画定するため、好ましい可能性があるが、追加の支持バーが、少なくとも1つの支持端部が試験片と接触しないようにすることができることに留意されたい。それにもかかわらず、図2Bに示すねじりモードなどの特定のモードでは、そのノードによって、4つの支持バーを使用することがより安定し得る。これは、典型的には、試験片の中央で交差するノードを有するモードで発生する。
【0040】
このねじり振動モードの固有周波数fは、試料のせん断弾性率を示す。質量m、長さL、幅b、および厚さtを有する図示の梁の場合、以下の関係を使用することができる。
【0041】
【数3】
【0042】
ここで、補正係数Rは
【0043】
【数4】
【0044】
として定義される。
図3は、本発明によるシステムを示す。この図は、加熱チャンバおよび/または試験片を所望の温度または所望の温度範囲にすることができる加熱要素(302,303,304,305,306)のセットを備える加熱チャンバ(301)を示す。加熱要素(302,303)は、加熱チャンバ壁に取り付けられ、例えば高温の高圧流体との熱交換、電気抵抗加熱、磁気誘導などによって加熱チャンバ壁に熱を供給することができる。これらの壁加熱要素の熱は、例えば換気装置(304,305)によって加熱チャンバ内に分散させることができる。換気装置(304,305)はまた、加熱された空気または蒸気などの温かい流体を加熱チャンバに供給するように構成されてもよい。加熱要素はまた、マイクロ波要素(306)などの放射加熱要素を含んでもよい。加熱チャンバは、好ましくは、加熱チャンバおよび/または試験片の実際の温度を測定するための1つまたは複数の温度計も備え、好ましくは、試験片および/または加熱チャンバの温度を制御するように構成された制御回路も備える。
【0045】
試験片(307)は、好ましくは試験片の振動ノードのロケーションにおいて支持することによって、試験片が可能な限り自由に振動することを可能にする支持バー(308a,308b,309)のセットを備える支持構造によって懸架される。支持バーは、好ましくは本質的に針状であり、好ましくは試験片との小さい接触面を有する非共線的に位置付けられた支持端部を有する。任意選択的に、試料中に非常に小さい窪みを作成して、試験片に多くのインパルスが与えられる長い測定サイクル中に試料が振動しないようにすることができる。材料の動的特性に影響を与えないように、これらの窪みは非常に小さく、好ましくは試料の質量の1/100000未満であるべきである。マイクロフォンまたはレーザ干渉計を備えてもよい音響センサ(310)または複数の音響センサは、好ましくは明確に画定されたロケーションにおいて試験片と接触(311)させることができ、または導波管を使用して音響応答を音響センサへと案内することができ、好ましくは導波管の一端は加熱チャンバ内で試験片の近くに運ばれるかまたは直接接触させられ、もう一端は好ましくは加熱チャンバの外側に位置する。後者の実施形態は、センサを加熱チャンバの外側に配置することを可能にする。
【0046】
好ましい実施形態では、音響センサはレーザ干渉計を備える。レーザ干渉計は、真空中における測定に特に有用であり、非接触測定を可能にする。代替的または付加的に、音響センサは、例えば
- S-R.Huang、R.M.Lerner、K.J.Parker「Time domain Doppler estimators of the amplitude of vibrating targets」(.J.Acous.Soc.Am.,91(2),965-974(1992))、
- J.Tapson「High precision,short range ultrasonic sensing by means of resonance mode-locking」(Ultrasonics,33,6,441-444(1995))、および
- R.Kazys、R.Sliteris、L.Mazeika「Ultrasonic technique for Vibration Measurements」(Proceedings of the 15th World Conference on Non-Destructive Testing,15-21 October 2000 in Rome,https://www.ndt.net/article/wcndt00/papers/idn246/idn246.htm)
に記載されるように、超音波測定センサおよび/または飛行時間センサおよび/またはドップラ式センサを備えてもよい。
【0047】
また、これらのタイプのセンサは、非接触測定に使用されてもよい。
一実施形態では、加熱チャンバが大気圧よりも低い圧力、好ましくは0.5バール以下、より好ましくは0.2バール以下の圧力、最も好ましくは本質的に真空圧力を含む、本発明の方法が実施される。これにより、好ましくは、レーザ干渉計が、低圧力からゼロ圧力において非接触振動測定を可能にするために使用される。ゼロ圧力まで低減した測定は、周囲のノイズを減衰させ、以て、信号対雑音比を増大させる。
【0048】
インパクタは、好ましくは、インパクタアクチュエータ(313)によってインパルスを与えることができる弾道インパクタ(312)を含む。弾道インパクタ(312)は、好ましくは、高温に耐えることができ、その特性が温度と共に大きく変化しないセラミックロッドであり、すなわち、インパクタは、好ましくは、熱的に安定なセラミック材料から本質的に成る。これは、インパクタアクチュエータ(313)を使用して試験片に向かって上方(314)に発射することができ、インパクタアクチュエータは、
- 好ましくは垂直方向に沿って弾道インパクタを案内するための、加熱チャンバの底部を通る案内チューブ(315)と、
- インパクタ(312)に好ましくは垂直なインパルス(317)を付与するように構成された電気機械操作式ハンマー(316)と
を備える。ハンマー(316)は、電気コイル(318)と、コイル(318)を通って流れる電流に応じて移動することができる可動ロッドまたは弾丸(319)とを備えることができる。そのようなシステムの一例が米国特許第6,782,970号に提示されており、それにより、本発明では、インパクタアクチュエータの弾丸は、試験片に直接ではなくセラミックインパクタ(312)にインパルスを付与する。代替的に、インパルスをインパクタに付与するための、圧力駆動インパクタまたは圧力駆動衝撃アクチュエータ(380)が使用されてもよい。
【0049】
好ましくは、支持バーは、インパクタおよび/または案内チューブと同じ材料から作成される。好ましくは、これにより、支持バーは、熱的に安定なセラミック材料から本質的に成る。代替的または付加的に、支持バーは、インパクタおよび/または案内チューブの熱膨張係数に本質的に等しい熱膨張係数を含む。
【0050】
本発明の方法の一実施形態では、較正期間内に試験片から振動信号を捕捉し、以て、ノイズ信号を取得することによって、上記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実施するステップbが実施されることが好ましい。振動応答の分析を実施するときに環境のバックグラウンドノイズを考慮することによって、材料特性をより良好に決定することができる。さらに、音響測定と同じ試験温度範囲内でバックグラウンドノイズを考慮することによって、本発明者らは、振動応答のはるかに良好な分析を実施することができることを見出した。これは、例えば、各々が異なる温度範囲で異なる挙動をする可能性がある、測定を実施するために使用される加熱要素、換気装置、または任意の他の機器もしくは機器構成要素に起因して、ノイズが温度範囲に大きく依存する可能性があるためである。
【0051】
本発明者らはさらに、試験片に振動励起を付与することを除いて、音響測定のすべてのステップを行うことによってバックグラウンド測定が実施される場合に最良の結果が達成されることを見出した。したがって、好ましい実施形態では、バックグラウンド測定を実施するステップbは、試験片に振動励起を付与するステップc1を除いて、音響測定を実施するステップcのすべてのステップを実施することを含む。これは、上記の方法、ならびに本明細書および特許請求の範囲で後述する方法のすべての実施形態に適用される。
【0052】
好ましい実施形態では、本発明の衝撃励起測定システムの試験チャンバは、試験片を試験温度範囲内にするための加熱要素を備える。
【0053】
好ましい実施形態では、衝撃励起測定システムは、試験チャンバ内に位置する試験片に振動励起を付与するときにインパクタを作動させるためのインパクタアクチュエータを備える。
【0054】
好ましい実施形態では、衝撃励起測定システムは、試験チャンバ、センサ、およびインパクタに関連する制御システムを備え、制御システムは、
・任意選択的に、試験片を試験温度範囲内にするように試験チャンバに指示し、
・試験期間中に、振動励起がインパクタによって加熱チャンバ内に位置する試験片に機械的に付与されるようにインパクタアクチュエータを用いてインパクタを作動させ、上記振動励起に対する振動応答信号をセンサから取得するように、衝撃システムに指示し、
・任意選択的に、較正期間中に、インパクタが加熱チャンバ内に位置する試験片に振動励起を機械的に付与しないように、インパクタアクチュエータを用いてインパクタを作動させ、センサからノイズ信号を取得するように、衝撃システムに指示し、
・振動応答信号を分析し、好ましくは、以て、ノイズ信号を考慮に入れることによって、試験片の材料特性を取得するように構成されている。
【0055】
さらなる態様において、本発明は、試験片の熱膨張パラメータを取得するための熱膨張測定方法に関する。この熱膨張測定方法は、
- 第1の温度において実験データから少なくとも2つの共振周波数を抽出するステップと、
- 上記第1の温度における上記少なくとも2つの共振周波数から第1の寸法パラメータの第1の値を取得するステップと、
- 上記第1の測定温度における上記第1の寸法パラメータの上記第1の値を第2の温度における上記第1の寸法パラメータの第2の値と比較するステップと、
- 上記比較から熱膨張パラメータを計算するステップと
を含む。
【0056】
これにより、第1の温度における少なくとも2つの共振周波数は、試験片の材料特性であり、これは好ましくは上記で説明されており、本明細書でさらに説明される音響測定方法によって取得することができる。上記で説明されており、本明細書でさらに説明される衝撃励起測定システムは、好ましくは、少なくとも2つの共振周波数を取得するために使用することができる。
【0057】
図4は、本発明による方法の一実施形態を示す。第1のステップaにおいて、温度が第1の温度範囲内にされる(1021)。次いで、ステップbが実施され(1002)、それによって試験片に衝撃が与えられないように注意が払われ(1001)、それによって好ましくは衝撃システムが作動されるが、衝撃が回避されるようになっている。次いで、ステップcが実施され、試験片に衝撃が付与され(ステップc1,1010)、振動応答信号が捕捉される(ステップc2,1020)。次いで、信号が分析され(ステップd,1030)、それによってE、G、νおよび/または他の特性(特に減衰定数も)がステップaの温度範囲内で取得される。衝撃回避作動ステップ(1001)、ノイズ捕捉ステップ(1002)、衝撃ステップ(1010)、および応答捕捉ステップ(1020)は、信号が分析される(1030)前に繰り返し実施されてもよく(図示されているように、例えば、装置が、連続的に動作する複数のインパクタを有する場合)、または、代替的に、捕捉された各信号が別個に分析されてもよい。これにより、異なる温度または温度範囲におけるノイズ信号および/または振動応答信号をステップdの分析において組み合わせて、材料特性のより正確な値を取得し、および/またはこれらの材料特性の温度依存性を決定することができる。
【0058】
選択された励起モードに応じて、分析1030は、特にピーク周波数を特定し、上記のような式を適用することによって、応答のスペクトルの周波数から動的ヤング率(E)またはせん断弾性率(G)を決定することをさらに含むことができる。
【0059】
好ましくは、分析は、減衰定数を基準値と比較すること1040をさらに含む。このステップは、本発明による方法を品質管理目的で使用することを可能にする。事実、製造品の品質を制御する方法は、上述の方法を使用して製造品の少なくとも一部を上記固体材料試料として特徴付けることと、減衰定数が上記基準値の所定のマージン内にある場合、「合格」条件1040/YESをシグナリングすることと、減衰定数が上記基準値の上記所定のマージン外にある場合、「不合格」条件1040/NOを宣言することとを含む。したがって、本発明の一態様によれば、製造品の品質を制御する方法であって、上述の方法を使用して製造品の少なくとも一部を上記試験片として特徴付けることと、上記減衰定数が上記基準値の所定のマージン内にある場合、「合格」条件をシグナリングすることと、減衰定数が上記基準値の上記所定のマージン外にある場合、「不合格」条件を宣言することとを含む、方法が提供される。
【0060】
本発明の一実施形態では、ステップa~dは、同じ温度において、異なる温度においてまたは異なる温度範囲内で複数回、好ましくは繰り返し行われる。好ましい実施形態では、試験片は連続的に加熱され、それによってステップa~dは後続の温度範囲内で実施される。
【0061】
例えば、試験片は、室温(20℃)から開始して1℃/秒の速度で連続的に加熱することができる。次いで、ステップa~dは20秒ごとに定期的に実施することができ、これは、ステップa~dの第1のセットが20~40℃の温度範囲で実施され、ステップa~dの第2のセットが40~60℃の温度範囲で実施され、さらに例えば1780~1800℃の最高温度範囲まで実施されることを意味する。しかしながら、温度範囲は、等しい大きさである必要はなく、例えば、対象の温度範囲に対してより小さくてもよいことに留意されたい。例えば、試験片または試験片と同じ材料から作成された構成要素が主に700~800℃の温度で使用されることが分かっている場合、例えば5℃に及ぶより小さい温度範囲をとることによって、これらの温度間の材料特性をより正確に測定することを判断することができる。
【0062】
さらに、ステップbおよび/またはcにおいて実施される測定値は、より正確なノイズ信号および/または振動応答信号を取得するために、他の温度でステップbおよび/またはcにおいて実施される測定値と組み合わせることができることにも留意されたい。例えば、80℃~100℃の温度範囲およびまた100℃~120℃の温度範囲でステップa~dを実施すると仮定する。これにより、ステップbは1回目に82~87℃の温度部分範囲内で実行されていてもよく、2回目に102~107℃の温度部分範囲内で実行されていてもよく、一方、ステップcは1回目に92~97℃の部分範囲内で実行されていてもよい。そのような場合、ステップdの分析は、2回のステップbで取得された2つのノイズ信号を考慮して実施することができる。したがって、好ましい実施形態では、ステップa、b、cおよび/またはdは、1つの温度範囲内で2回以上行われる。代替的または付加的に、ステップa、b、cおよび/またはdは、重複し得る異なる温度範囲において複数回実施されてもよい。
【0063】
一実施形態では、制御システムは、ノイズ信号を考慮して振動応答信号を分析して試験片の材料特性を決定するように構成された処理手段を備える。
【0064】
これにより、処理手段は、好ましくは、捕捉された信号に対するフーリエ変換もしくは高速フーリエ変換または高調波分解を使用することによって、時間領域において、またはより好ましくは周波数領域において振動応答信号からノイズ信号を減算するように構成され得る。減算はまた、時間領域と周波数領域との組み合わせにおいて実施されてもよい。処理手段は、好ましくは、時変信号を分析して、時変信号を構成する正弦波の周波数および減衰定数を決定するように構成され、すなわち、高調波反転問題を解決する。高調波反転の問題は、より一般的には、所与の帯域幅における有限数のそのような正弦波の和から成る離散時間有限長信号を構成する正弦波の周波数、減衰定数、振幅、および位相を決定することから成り、文献では周知であるが、今日までIETと関連付けられていない。Vladimir A.MandelshtamおよびHoward S.Taylorは、彼らの論文「Harmonic inversion of time signals and its applications」(The Journal of Chemical Physics 107,6756(1997))において、高調波反転問題を小さい行列対角化の1つとして再評価することによってこの問題を解決するために、WallおよびNeuhauserの一般的なフィルタ対角化方法の使用を説明している。マサチューセッツ工科大学のSteven G.Johnsonによる「Harminv」プログラムを含む、この技法のコンピュータベースの実施態様は当該技術分野で公知である。分析の結果は、画面140に、または記憶もしくは他の機器によるさらなる処理のための任意の他の適切なインターフェースに出力することができる。
【0065】
処理手段は、1つまたは複数の専用ハードウェア構成要素(例えば、ASIC)、適切に設定された設定可能ハードウェア構成要素(例えばFPGA)、適切なソフトウェアを備えたマイクロプロセッサ、または上記の組み合わせから構成されてもよい。同じ構成要素が他の機能も実施してもよい。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、試験片は、加工片、装置または装置の構成要素である。本発明の別の好ましい実施形態では、試験片は、明確な形状、好ましくは梁形状を含み、加工片、装置、または装置の構成要素と同じ材料から、または同じ製造技法を使用して作成される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
【国際調査報告】